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1958-04-23 第28回国会 衆議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十三日(水曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 林   博君    理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君    理事 青野 武一君 理事 菊地養之輔君       小島 徹三君    小林かなえ君       徳安 實藏君    中村 梅吉君       横川 重次君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         公安調査庁長官 藤井五一郎君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局任         用課長)    池田 正亮君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局給         与課長)    西山  要君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十二日  委員久野忠治君辞任につき、その補欠として古  島義英君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月十九日  悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関  する請願外一件(戸叶里子紹介)(第三二四  一号)  同(松浦周太郎紹介)(第三二四二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。  発言の通告がありますので、順次これを許します。青野武一君。
  3. 青野武一

    青野委員 私は委員長のお許しを受けて法務大臣質問したいと思います。  四月の十六日でございましたか、参議院でのあっせん収賄罪暴力取締り関係の法案の審議のために、法務大臣竹内刑事局長がこちらに御出席できなかったので、十六日の衆議院の法務委員会は、法務省から川井公安課長、大蔵省から石野官房長、農林省から瀬戸山政務次官経済企画庁から宮川官房長、科学技術庁から原田官房長法制局から野木第二部長、以上六名の責任者の方に御出席を願って御質問申し上げたのですが、どうしても、大切な質問に入りますると、これ以上はかんべんしてくれといって、確答を得ることができませんでしたので、猪俣委員発言もありまして、次回の法務委員会には竹内刑事局長法務大臣法制局長官の御出席委員長にお願いいたしまして、本日の委員会になったわけであります。  内容は、新聞で非常に大々的に宣伝せられました官庁スパイ事件であります。この官庁スパイ事件についてかなり詳細に各項目別に御質問を申し上げたのでありますが、先ほど申しましたように、非常に大切な質問の個所に参りますると、最高責任者でないために御答弁を濁される。そこできょうは法務大臣においでを願ったのであります。  そのときにも申し上げたのでありますが、以上先ほど申しましたように、六名の各省官庁責任者をお呼びしても、まちまちであった。大体国家公務員法の第百条に規定しておりまする秘密とは一体どんなものか、それは、あるときは課長によって、あるときは局長によってこれが認定される、政府部内において、各省官庁によってばらばらじゃ困るじゃないか、どういうわけでそういうことになっておるかという質問を申し上げたのでありますが、これは刑法その他から見て関連がありまするので、ばく然とした規定で無制限に適用することは、私どもに言わしめますると、これは一種弾圧行為である。そこで、大体各省にあってはだれがこれが秘密文書であるということを認定されるか、これを一つ法務大臣からお答えを願いたいと思います。
  4. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま青野委員からお尋ねの件は非常に重要な問題でございまして、この秘密とは何ぞや、この秘密であるかないかをどこできめるかということにつきましては、私どもの部内でもだんだん研究をいたしております。これにつきましては一応法制局の方で主として研究を続けておりまするから、法制局の方からとりあえずお答えをお願いしまして、それからさらに私どもお答えを申し上げたいと思います。
  5. 野木新一

    野木政府委員 国家公務員法第百条の「秘密を守る義務」の点につきましては、前回お呼び出しにあずかりしました際に一応の御答弁を申し上げました、が、その際の御要求もありまして、かつ、帰りまして長官から特にこの点を担当して研究するように命ぜられまして、私個人としても若干書物を読んだりなんかして研究をいたしました。そうして、なおこれに関係ある人事院とかあるいはことに法務省刑事局担当係官とも連絡し、ことに昨日は午後引き続きおそくまで研究を遂げました。そうして、非常にむずかしい問題をはらんでおるということがわかったのでありますが、一応の私ども研究の結果といたしましては、実質的の点におきましては、私ども法務省刑事局と、表現の点はともかくとして、大体意見が一致してきたのではないかと存じます。  それに基きまして私から申し上げますが、国家公務員法百条におきましては、秘密ということは、第一項に「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」とあり、第二項に、やや表現を変えまして、「職務上の秘密に属する事項を発表するには」と、こうあるわけであります。  もちろん、国家公務員法でありますから、職員というのは一般職国家公務員をさすのであります。  次に、職務上知ることのできた秘密職務上の秘密、こういう表現差異があることによって多少差異があるかどうかという点が問題になるわけでありますが、やはり、この文字に表わされているように、職務上知ることのできた秘密というのは、職務上の秘密を含んで、それよりもやや範囲が広い。たとえば職務遂行する機会に知ることのできた個人秘密というようなものも前者の方には含まれ得るということであります。しかしながら、そういう個人秘密も同時に公務上の秘密となり得る場合もあり得る、そこは大体そういうことに一致しました。  なお、その前に、一体秘密とは何ぞやということは、秘密概念一般性についてちょっと研究の結果を申し上げますと、秘密たるには、まずその形式的要件と申しましょうか、第一の要件として、一定のその事項がまだ小範囲の者にしか知られていないで一般の人に知られていない事項である、すなわち、当該事項の未公開性とでも申しましょうか、そういう要件がまず第一に必要であろうと思います。これは言うまでもないことでありまして、すでに公知となっている事項国家権力をもって秘密とする、そういうことはできない。これはもちろん言うまでもないと存じます。次に、こういうような小範囲の者にしか知られていない事項であっても、それが直ちに法にいう秘密となるかどうかといいますと、やはり、そこには、そういう事項であって、しかも一つの隠しておく必要性、そういう実質的要件が必要ではないかと存じます。秘密という概念にはある意味で非常に相対的な面もありますし、ある時期において、諸般事情、たとえば政治行政経済社会生活個人生活その他諸般事情に照らして、一定の時期においてこれら小範囲の者以外の者に対して隠しておくことが必要と認められるものである、そういうような必要性があって法律が保護を与える、そういうことになると思います。  これを百条の場合について考えてみますと、百条に先ほど二つありましたが、ことに、問題になる方は職務上の秘密という方が特に問題になりますので、それについて申し上げますと、この職務上の秘密、いわゆる官庁秘密とでも申しましょうか、そういうものにつきましては、その内容をいろいろ考えてみますと、その事項が漏れることによって、直接、国民生活といいますか、政治経済社会生活等に悪影響を及ぼすおそれのあるような事項ということを含むことはもちろんでありますが、それ以外に、この国家公務員法趣旨に照らしまして、当該行政の円滑適正な一体的遂行と申しましょうか、そういうような行政の円滑な遂行を害すると法的に認められるようなもとが問題になりますが、これは、理論の、そういう事項も、これを保護するに値するものとして、ここで秘密性を得るものと存じます。ただ、別の面からまた考えてみますと、この秘密と申しましても、当該事項性質と申しましょうか、あるいはその種類内容から見て、いま申し上げた要件に該当することは、大体だれが見ても納得される、わかるというように明白なものもありますし、また、必ずしも通常の人が見ては直ちに明白とまで言えないことでも、先ほど申し上げたような要件に該当するというものもあるかと存じます。この両者区別も、一応の区別でありまして、その境がどこにあるかというと非常に断定に苦しむ点もありますが、以上、大まかに言って、そういうような「秘密」の分け方もできるのではないかと思います。  そこで、公務員法百条におきましては、そのどちらの秘密をいうか。いわゆる何人が見ても事柄の性質上明白なもの、自然秘と申しましょうか、そういうようなものは含むことはもちろんでありますが、それ以外の秘密も含み得るわけであります。それにつきましては、やはり一種指定と申しましょうか、この秘密国家意思で秘匿しておくことが必要だということを認定したもの、こういうものが第二の秘密になるのではないかと思います。いわゆる指定秘とでも申しましょうか、そういう両者を百条は含んでおるものと解されるわけであります。  いわゆる自然秘的のものは割合問題がありませんですが、しからば、指定秘的のものは一体、だれが指定するのか、指定権者はだれであるかということが問題になりますが、これは、理論的に考えてみますと、やはり第一次的には当該職務所轄する所轄の長ということになるのではないかと存ずる次第であります。しかしながら、所轄の長は全部みずから一々指定しなければならないのかどうかと申しますと、その点は、いわゆる委任——通常委任とは違いまして、行政学上から申しますと特に内部委任と称せられておる事項でありますが、そういう法理によりまして、部下の職員のうち最も当該秘密事項に通じ、しかも適正にこれが運用をはかり得るような者に内部的に指定委任する。もちろん、一たん委任しても、それを取り消し、変更するということは所轄庁のと長は留保しておるわけでありますが、そういうことも法理としては可能である。もちろん、どの範囲指定責任内部委任するか適切かどうかという妥当論は非常に問題になると思いますが、法理としては一応そういうようになるだろうと存じます。  ただいままで申し上げましたところが大体昨日まで一応検討した結果でありますが、表現の点はともかくとしまして、大体の考え方の方向におきましては、法務省側もほぼ同様な見解になったのではないかと、きのうの会議の結果では私思っておるわけであります。なお足りない点は法務省側から補足していただきたいと思います。
  6. 青野武一

    青野委員 詳しく言ってくれることはけっこうですが、なるべく要点をあげるように。時間を答弁の方に食われてしまいますから。
  7. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいま野木部長からお答え申し上げましたように、国家公務員法第百条の秘密というのは、刑法の百三十四条の秘密漏泄罪というのがありますが、これは人の秘密に関するものであり、百条の方は申すまでもなく国の秘密に属するものであります。従って、その秘密の中には二種類あるということを今お話申し上げました。この点につきましても私ども意見は全く一致いたしております。  その秘密の二種類のうちで、指定をしたことによって秘密となるもの、そういうものの指定権者はだれかという点でございますが、今申しましたように、この秘密は国の秘密でございますから、これは国家指定するということになるのでございますが、国家指定したと見られる場合には、だれがその国家機関としてそれをやるかという点であります。これはもう各省大臣あるいは外局ならば外局の長というものがその国家機関として責任を持つことは当然でございますが、今お答え申し上げましたように、その国家機関が、内部委任形式によりまして、これを局長部長あるいは課長にまで指定委任する場合があり得るのでございます。そういう場合には、その局長部長あるいは課長手元において秘と指定いたしましたものにつきましては、それが国家機関指定をしたと同じ法律上の意味を持つのでありまして、そういう場合にはこれが百条の適用を受ける、こういうふうに解釈いたしております。
  8. 青野武一

    青野委員 大体詳しくお答えがありましたので、その点は内容はよくわかりました。  そこで、秘密認定各省ばらばらであるということは先ほど私が申し上げた通りでありますが、特に、経済企画庁という官庁は、他の行政庁とは趣きを異にしておりまして、いろいろな問題を計画して研究をしていく機関である。こういう経済企画庁などというところに——これは国民及び国会に発表せられ、いろいろな内容が各委員要求によって委員会等には出されているが、そういう経済企画庁などというところに、国民秘密を保たなければならぬ、外部に秘密を保たなければならぬといったような秘密が、実際問題としてあるのでしょうか。私どもよくいろいろな官庁決算委員長当時に出入りをしましたが、スタンプ秘密の「秘」がついている、あるいは持ち出し禁止といったようなものが、整理かごに何ぼでもほうり込んであるのです。それを、官庁で仕事をしておったのでは時間が足りないから、自分のうちに持って帰って、晩の九時、十時まで官庁で働いている延長として自分自身の家庭の時間をさいて勉強する、そういうものを持って帰ってあるいは写しを取るとか研究するとか原稿を書き直すとかする、それを警察に押収されたから、これは秘密文書だといったようなことは、それは子供のけんかと同じなんです。あまり子供じみていると私は思います。大体、この秘密文書というようなものは、時期的な関係で、秘密文書となるものもあれば、あるいは一定の時期を過ぎると秘密文書でなくなっていくものもあると私は思いますが、そういうものを混同して刑罰の対象とするのですか。この点は残された質問のうちでも大事な点ですが、それを一つ法務省側に御意見を聞きたい。
  9. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、両方を含むという解釈をいたしております。そしてそのことは裁判判例においても是認せられているところでございまして、私どもは、ある時間がたってしまえば公表されるようなものでありましても、ある時期秘匿しておくことが国家利益に合致するというふうに考えられます場合に、それを秘としておく。その秘としておかれる間におきましては、それが国家公務員法百条によって保護されなければならぬという解釈に立っているのでございます。
  10. 青野武一

    青野委員 この文書取扱い規程秘密文書法制上の秘密文書適用上非常に厳格に区別しておかなければならぬことは、警察官あたりが非常に勝手な認定をするので間違いが生じやすい。それで、文書取扱い規程秘密文書法制上の秘密文書適用上厳密な区別を設けなければならないと私は考えておりますが、この点について法務大臣の御意見を伺いたい。  それから、政府はこれを混同して、公務員法の「秘密」というものを広く解釈して、言論圧迫の具に供しておるのではないかという資料を、私は全国で今二、三十持っているのです。それは下級警察官の勝手な認定、それから地方検察庁の検事の思想と考え方と性格によって勝手に、昔の代官とか奉行のように、自分利益になるように、不利益になる点は勝手な解釈をして、そうしてこれを起訴し、裁判に付する、拘束する、検挙する、そういうような相当に不当な事項全国に起っております。法務委員会の私ども手元には、そういう資料相当届いております。おそらく二十を越すでしょう。そういうところから考えてみて、この点をはっきり、適用範囲区別を厳格にすべきであると思うが、その点は、法務大臣並びに局長はどうお考えになっておられますか。
  11. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 秘密を漏洩したというかどでもって検察あるいは警察当局がみだりに権力を行使するということがあってならないことは、ただいま御指摘通りでございます。ただ、数多くの中でございますし、また、秘密というものも、今御論議のありましたように、非常に認定のむずかしい点もありまするので、数多くの事件のうちには、あるいは御指摘のような場合があり得るかと思われるのでございますけれども、われわれの指導方針といたしましては、絶対にそんなことがあってはならない、また、他の何か意図をもって、そうして秘密を漏洩したというかどによって一応捜査を開始するというようなことがもちろんあってはなりませんので、そういう点は、過去においてもしありましたならば改めていかなければならぬと考えております。  なお、お尋ねのうちの漏れておる詳しい点は刑事局長の方から申し上げます。
  12. 竹内壽平

    竹内政府委員 このような事件検察権乱用というような面から御批判を受けるということは慎しまなければならないことでございまして、私どもも今後とも運用に十分遺憾なきを期して参りたい所存でございますが、問題は、広く解釈するということから起ってくる御批判であるのか、あるいは、秘と扱いますこと、秘と認定いたしますことの範囲が明確でないという点から起ってくるのでございましょうか、これは私両方から問題があろうかと思うのでございます。もとより、行政官庁が、ある事項国家的な秘密として、国家一般に知られては困るという意味において公表を禁ずる意味においての秘密認定しますのが、非常に乱用にわたって、秘密でないものまでも秘密という扱いにするということは、これはいけないことでありますことは申すまでもございません。そのような認定をしますについては、それ相当の合理的な理由が必要なわけでありまして、合理的な理由もないのに、やたらに秘密認定をするということになりますと、これは認定権乱用とでも申しましょうか、そういうことに相なろうかと思うのでございます。しかしながら、合理的な理由が存します限りにおきましては、その認定権というものは行政官庁に属さしめられた権限でございますので、そういう認定がありました場合に、今度はこれを漏らすという問題が起ってきたときに、検察側ではそれをどう解釈するかという点でございますが、その解釈につきましては、先ほども詳しく申し上げましたように、この点は判例も是認をいたしておりますので、この判例の線に沿って検察権運用しておるつもりでございます。  そこで、前の、認定の方の乱用にわたるような点があるということから、今度は検察権乱用という方に議論がそれてきても、これまた困るのでございまして、両者とも乱用でないというところから正しい運用が生まれてくるというふうに思うのでございます。
  13. 青野武一

    青野委員 その次にお伺いしたいのは、同じく官庁スパイ事件で逮捕せられて今調べられております矢島という人のことでございますが、矢島氏については、七%モデル作業——これは経済計画作業の一環として行われたものである。ところが、これは試案であって、企画庁では、行って調べてみますと、この課、あるいは局あたりでは広く言われており、こういう文書はだれでも自由に入手ができるのです。なぜこれが秘密文書にならなければならないか。秘密というスタンプを押してあったら秘密だ、それを警察が手を入れたとき自宅に持ち帰っておったという、そういうばかげたことで基本的人権を無視するような行き方は、やはり警察権乱用という言葉以外にないと思います。  それで、一つ一つお伺いしたいと思っておりましたけれども、時間の関係もありますので、二つ三つ一緒にして御質問申し上げたいが、たとえば経済計画要綱に関する問題で、これもやはり秘密文書の中に入っておる四つのうちの一つです。これは社会党の五カ年計画批判した文書です。しかし、この社会党経済計画新聞にも発表せられておるし、その批判各界でも広く行われたことは御承知の通りであります。私どもは何べんもそういう批判書を読んでおります。特に、経済企画庁総合計画局の某参事官は、この社会党経済計画批判した文書を彼が試案として作成して、それを間もなくほとんど同趣旨内容日経連月報に載せておる。それがどうして秘密文書と言われるか。これもやはり警視庁は問題にしておるのです。これは公知の事実です。こういうことについて、警視庁公安課長は、これは高度の秘密だ、非常に高い秘密の中でも高度なものだと言っております。私は頭を疑うんですよ。そういう人が捜査最高責任者になって帝都の治安維持をつかさどっておるということになると、松沢病院警視庁になったように思わざるを得ないじゃないですか。これは日経連月報にも載っておるし、新聞各界にも発表された内容です。そういうところが、大体頭がどうかしておるのではないか。こういう問題が起って紛糾するのも、国会の問題になるのも、こういうところにある。  それから、林雄二郎君については、フィリピンと日本との賠償品目リスト、これを、日比賠償の経過は高度の秘密であるということで、これをひっかけておる。こういうことは、単に日比賠償会議に随員として出ていって、そしてその席上におって心覚えを日誌帳か何かにメモした程度である。それをたまたま自宅に持ち帰って自宅に置いてあったのをひっかけた。これは日比賠償リストの問題である。非常に秘密な問題である、不都合だ、捜査当局秘密文書認定することは、経済企画庁上司が行なった認定による、こう言ってこの間御答弁がありましたが、経済企画庁組合の諸君の代表者上司質問したところが、この文書内容については警視庁から聞かれただけで、秘密文書認定した事実はないと明瞭に言っておる。これは結局責任なすり合いではないかと思う。警視庁の一課長の言うことは、経済企画庁課長なり局長なりに問うてみたところが、秘密文書認定をされるからやったのだ、こう言っておる。ところが、組合代表者には、秘密文書認定しておりません、ただ文書内容を説明しただけだと言っておる。こういうところか大きく食い違っておる。最初の出発点が違うと、九州から北海道に向ってその方角がちょっと右に行くと、北海道に着いたときには大へんなことになる。そういうことで責任なすり合いがあるし、事実か非常に大げさに報道されておる。こういう点についてどうお考えになるか。
  14. 竹内壽平

    竹内政府委員 この問題が大きく新聞紙等に報道されておりまして、私ども新聞紙等で見ておるのでございますけれども、何と申しましても今捜査中でございますので、その秘密とせられておる文書が、いわゆる秘密に当るかどうかということを、局外者の私かここで議論することは適当でありませんので、これは差し控えさせていただきまして、ある時期になりましたら、また意見を述べさせていただくこともあろうかと存じます。  ただ、仰せのように、警視庁側では高度の秘密だと言い、主管庁においては説明を求められただけだというような意見があって、その辺はあいまいもことしておるというお話でありますが、公務員法の百条は、秘密を漏らしたという構成要件になっておりまして、その秘密は、先ほど申しましたように、指定によって、つまり認定を受けたために秘密になっておるということでありまして、秘密文書であるかどうかということはまず第一次的には捜査官憲が認定してかかるわけでございますが、それを秘密文書認定した覚えはないというような御意見にも今伺われるのでございますが、その辺はいろいろいきさつがあるのじゃなかろうかと思いますが、私どもとしましては、まず一応、この段階におきましては、捜査官憲はそういうものを秘密文書として捜査を進めておるということを申し上げるほかないかと存じます。
  15. 青野武一

    青野委員 局長と議論しても仕方がありませんから、私は次の質問に移ります。  そのうちの矢島君に関する新聞記事では、これは警視庁から大体いきさつを示さなければ新聞記事にならぬことはわかり切ったことでありますが、矢島君の場合には、新聞記事では、昭和三十五年経済計画七%モデル作業を漏らしたために逮捕した、こういう記事がある。私は切り抜きを取ってある。ところが、逮捕状を見ると、逮捕理由として、経済計画要綱に関する問題点と記載されておる。そうすると、どういうわけで正確な報道を行わずに宣伝効果だけをねらったのか、たしか朝日新聞と思いますが、とにかくそれを初めとして、どの新聞にも非常に誇大に報道されておる。それが警視庁から流れたことは事実でございましょうけれども、どうかすると宣伝第一主義のきらいがある。選挙を前にして、共産党に関係しているとか、あるいは社会党経済五カ年計画とが、それに対する批判の問題点とか、そういうものを、われわれの党の不利になるようなものを大々的に宣伝したというように考えられる節も実際はあるのです。  そこで、組織的、系統的に長期にわたって体系的に情報を提供した、こういうことを新聞紙を通じて公安課長は言っている。だから、その証拠あるいは認定事実が確実なものであるかどうか。新聞記事と逮捕状の理由とはこのように食い違っておるのですが、どういう基準によってこのようなことをおっしゃられておるのかということが刑事局長におわかりになっておりましょうか。わかっておれば一つお答え願っておきたい。
  16. 竹内壽平

    竹内政府委員 その点は、なぜそういうふうに食い違っているかというお話でございますが、私どもはまだこまかい内容を実は報告を受けておりませんので、先ほど申しましたように捜査中でもありますし、しいて報告を求めていないのでございます。ただ、はっきり申し上げられることは、新聞にも出ておったことでございますけれども、この事件は昨年の十二月に容疑が発覚をいたしまして、関係官庁の問題の個所を捜索をいたし、また多数の文書を押収したのに端を発して、自後捜査をずっと続けてきておって、最近に至って被疑者の逮捕という問題になったようでございまして、これは証拠を追って捜査を進めておると思いますので、何も選挙を前にして何らかの意図をもってこういうことをやったというふうには、技術的に見ましてそういうふうに考える余地のない事案のように私は思っておりますが、実際の容疑と新聞に報道せられておる容疑との問に果してどのような食い違いがありますか、それは私としてはここで申し上げるわけにはいかないと思います。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 ちょっと関連して……。  今の百条の問題ですが、この百条の秘密義務に違反すると百九条で処罰せられることになっております犯罪でありますが、そこで、秘密なるものの解釈も、結局秘密を守る目的、法益、そこからまた考えなければならぬのではないか。そうすると、百条違反の秘密罪の法益は一体何なのでありますか。犯罪構成要件上の法益は、何を守らんとしてその漏らした人を処罰するのでありますか。
  18. 野木新一

    野木政府委員 この被害法益と申しましょうか、百条ないし先ほど御引用になりました百九条第十二号の罰則によって保護しようとする法益につきましては、先ほど私の言及したように、一つは、それが漏れることによって国家、社会に、ことに社会、国民に直接に害を及ぼすということのほかに、行政庁としての行政の運営の円滑、適正ないし一体的な運営が確保されるという法益、そういうものをやはり保護しておる、そういう面もあるものと存じておる次第であります。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたの答弁はよくわからない。もちろん被害法益というものは単一でなければならぬという議論はないと思いますけれども、しかし、被害法益の一元性ということは罪刑法定主義の原則だと思う。職務遂行の円満を妨げる、それがなぜいけないか。そこで、一元的に法益解釈が出てこなければいけない。結局、国家あるいは国民生活全体にとっての悪影響ということというふうに一元的にならなければ、あなたがさっき説明されたように行政官庁行政の円滑というようなばく然たることを法益にするから権利の乱用が起こってくる。しからば、行政の円滑とは何であるが。大臣なり局長なり課長なり、自分たちの都合の悪いようなことを全部行政の円滑を欠くという認定でやられる。そしてそれがもう犯罪の構成要件になる。こういう、ばく然たる法益論から権利の乱用が起ってくる。結局、私が先般申しましたように、わが憲法におきましても、国家公務員法におきましても、新しい公務員は全体の国民の奉仕者ということが基本理念でなければならない。そこから法益を考えてこなければ、昔と同じような、軍閥、官僚ばっこの時代の法益論になってしまいます。そこに非常に危険性がある。もう少しこれは一元的に大所高所から法益論を御研究願いたいと思います。そうして、この悪用、乱用の徴候がもう見えてきております。これを抑止しなければヒトラーの官僚政治にもなって参ります。そこで、法益についてあなたの解釈ははなはだ統一を欠いていると私は思うから、もっと御研究を願いたい。何ゆえに行政の円滑な遂行を阻害することを法益とするのであるか。そこに私は一元的な解釈ができてくるのじゃないかと思う。そういう法益論を確立するということは、私は大事だと思う。そこから秘密とは何ぞやも考えてこなければならぬと思います。  それから、なお、そういうあなたのおっしゃったような大所高所から、国家全体、国民生活全体に対していかなる被害があるか、あるいは国の全体の行政遂行上いかなる円滑を欠くことが起るかというような判定は、相当責任ある者か大所高所から判定しなければならぬと思う。こういう犯罪の構成要件の最たるものに対しまして、一課長、一係長がぽんと印形を押せば直ちに犯罪構成要件ができ上るような、こういうやり方に私は問題があると思う。あなたの言う法益論が正しいとしても、そういう認定をする者は行政最高責任者でなければ、行政全体の円滑な運用を阻害するかどうかわかったものじゃない。ことに、官庁はなわ張り根性が強くて、甲の官庁と乙の官庁、それぞれみな意見を異にする。同じ官庁の中においても、ある課とある課とでは意見を異にしている場合がある。そうすると、その課がみな勝手に秘、秘とやってしまったら、全部が秘になってしまう。どうもそういう傾向があなたの答弁から出てきている。われわれが受け取る文書もすべて部外秘、部外秘。この間法制審議会の議事録を受け取ったら部外秘という判こがみな押してある。勝手に事務官程度のやつが秘、秘と印形を押す。それが彼らの一種の優越感を満足させることかもしれませんが、国民は迷惑しますし、下僚の役人も迷惑します。だから、あなたのような法益論がほんとうだといたしましても、そういう国政全体の円滑を阻害する判定、あるいは国民生活全体に影響を及ぼすような判定は、もっと高度の責任者がしなければいけないと思うのでありますが、法務大臣の御難解はどうです。
  20. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この秘であるかどうかということをきめますことは、やがて犯罪の構成要件をきめることでございますから、非常に重大な事項であることは仰せの通りでございます。しかしながら、御承知のように、官庁の事務、たとえば一つの省をとって考えますと、非常に分量か多いのでございまして、これに関係して各種の書類か出て参ります。これについて一々大臣が内容に目を通してそれの価値判断をして、秘密であるかどうかということを認定していくということでは、とうてい仕事をさばいていくことができないという事情も御了察を願いたいと思うのであります。そこで、官庁では、なるべく事務を簡潔化して、てきぱきと片づけていく、それがやがて国民に向ってもサービスをするゆえんであるというような見地にも立ちまして、内部委任というような慣行ができておる次第でございます。しかし、これは、先ほどもお話のありました通り一つ間違えば、それが秘であるかどうかということによって、人が罪せられるかどうかという重大問題にもなりますから、これは慎重に、内部委任を受けた者が判定するにいたしましても慎重にいたさなければなりませんし、また、さらに、法理的にも、一応秘という判こを押せば、その認定が下ったわけではございますけれども、突き詰めてこれを調べて参りまして、何でもないものに秘という判が押されていたからといって、それがいわゆる犯罪構成要件の秘となるかどうかということは別論になるかとも思うのでございます。しかし、お尋ねの点は私も全く同感でございまして、この点は慎重にやっていかなければならないと考えております。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 お説のように、実に官庁の機構は複雑であって大へんだと言われる。そこは私の考えは違うのです。何でも秘密にしたがるから大へんなことになるのです。今日本は国防国家じゃありません。戦時体制でもないのです。そんな国家全体の存亡にかかわるような、国民生活を破壊するような秘密がさらにあるはずはない。あんまりつまらない小さいことでも秘密にしたがるから、とても一々大臣の決裁ができないというようなことが起ってくる。そこにすでに弊害がある。刑罰の構成要件になるような秘というものは、相当高度なものでなければならない。そういう高度の秘なんというものは、今日憲法九条を持ち、かつまた戦時体制でもない日本の現在において、そうあり得ようはずはないのです。戦時中といえども、軍事の機密に対しては非常に狭い解釈をとられておったのです。その戦争中における慣習が今日まで残ってしまっておるから、今大臣の答弁するように、とてもそれではなかなか判こを押し切れない。その判こを押し切れないような今の行政秘密の状態に対して私どもはメスを入れなければならぬというのですから、大臣の答弁は実は答弁にならない。刑罰でもって保護しなければならぬような法益を侵害する秘密というものは、もっと縮小しなければならぬ。戦時中の慣習をここで一擲して、新しい憲法論の観点からすれば、秘密なんというものはほんとうばないはずなんです。ほんとうの民主政治の明朗なあり方は、秘密なんというものがあってはなりません。国民に直結しなければならぬ。国民に知らしてはならぬ秘密なんというものは、もうそれ自体おかしいのであるが、しかし、絶対にないとも言えないと思います。しかし、それはごく数少くなければならぬ。われわれの今問題にいたしておりますのは、戦時中と同じような慣習が今の公務員諸君にあって、やたらに秘、秘とやる。今、大臣は、秘であっても必ずしも犯罪構成要件にならぬと言いますけれども、反動的な権力を持って公務員なりあるいは職員組合なりを弾圧しようとするならば、この秘とせられておるものが非常な有力な犯罪容疑になるわけです。それならば逮捕しても人権じゅうりんにならぬということになる。なぜならば、秘という判の押してあるものを持ち出したじゃないか、それで片づけてしまいます。そこに危険がある。そこで、秘というものを法理的にもう少し検討していただきたい。国家の機密なんといって刑罰をもって臨まなければならぬものは、ごく少いものじゃなかろうか。それならば、その測定者、指定者は、最高責任者が、国家全体、国民生活全体の運営を考えて、しかる上にやむなく秘ということを判定するというふうにしなければ、権利の乱用に陥る。これは水かけ論になりますから私の意見を申し上げておくのでありますが、そういう意味において、私はもう少しこの国家公務員法百条の現代的解釈を確立していただきたいと思うのです。  いま一点お聞きいたしますが、今度はこういう心配が一つあるわけです。一体、検事がこれを起訴する際に、これが国家公務員法百条の秘密であるかどうかという判定を検事独自の法的概念でやるのであるか、各官庁の監督者の意見が非常に尊重せられるのであるか。なぜこの質問をするかと申しますと、戦時中軍機保護法違反として告発、起訴せられた事実がある。これが裁判に相なりまして、くしくもここにおいでになる藤井さんが裁判長の部にかかりました。藤井さんは、どうも公安調査庁長官になってからちょっと私ども意見は違いますが、当時はなかなか名裁判長であった。その際に、私はその被疑者の弁護人となって、国家機密じゃないということでやった。それは蒙古の徳王が独立政府を樹立することに対して満州国の参謀長が参列したということが国家機密なりとして二年間も未決にほうり込まれた事件であります。これは藤井裁判長のもとに無罪になりました。そのときの検事の態度であります。まず彼が出した甲一号証は何であるか。陸軍大臣に対する御伺いなんです。かようかようのことは、これは軍の機密でございましょうかといって検察庁から陸軍大臣に伺いを立てたら、陸軍大臣は機密だと判こを押した。ほらごらん、これだこれだといって有罪の主張をしたのです。私はそのときに、何というだらしのない検察官だ、司法の解釈は司法でやらなければならぬじゃないか、陸軍大臣の解釈をもって最も有力な機密の解釈にするとは何ごとだといってやりましたが、これは一審、二審とも、最後には非常に難航いたしましたけれども、無罪にしていただきました。そこで、それを思い出してお伺いするのですが、この百条の違反者として今捜査されている人たちがありますが、一体これが機密であるかどうか、一体何をよりどころにするのですか、検察庁の態度としては。
  22. 竹内壽平

    竹内政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、認定によって秘密とされましたもの、——この認定をいたします場合には、これを秘密とするについて合理的な理由が必要であるということを申し上げたわけでございます。この合理的な理由がなくてやたらに秘という扱いにしたということになりますと、これは行政官庁としての認定権乱用ということになろうかと思うのでございます。この乱用があったかないかということにつきましては、これは検察官といたしましても検察の対象にしなければならぬ事項でございましょうし、さらに、裁判所もまた同様な立場をとろうと思うのでございますが、一応その合理的な理由がその認定について存します限りは、これは行政官庁責任でおやりになることでございまして、それを前提として検事側は処理するほかはないのではないかというふうに考えておるのでございます。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はもう一点だけ……。今のあなたの答弁にも承服できないものがありますが、私は実は関連質問で立ったので、長くは遠慮いたします。ヒトラーの有名な「マイン・カンプ」には、わが忠誠なる官僚諸君という言葉があって、そして官僚の秘密厳守を非常に強調し、それを実にドイツの官僚はよく守ってくれて大へん忠実なものであるというふうに非常に役人をほめそやした。むほん人は一人もいないといって、そしてファッショ政治が確立しました。それからいかなる運命が、ドイツを訪れたか、申すまでもないのであります。しかし、官庁秘密をやかましく言い出すのは、必ず反動勢力であります。これが究極するところ、まるで羊のごとき公務員をでかしてしまい、これによってファッショ政治が完成するのであります。私は、いたずらに公務員の政治上の中立を強調し、あるいは秘密漏洩を強調するということは、このヒトラーの故知に学ぶのではないかという心配があるがために、われわれはこの法務委員会にこれを問題にしておるのであります。かように、官吏という、公務員というものに対して秘密を強調するということに対しましては、法務大臣はほんとうにお考えにならぬというと、それだに岸政権は何かちょっとファッショに向うのではないかという非難が国民にあるから、さようなものは払拭するにいたしましても、こんな公安調査庁なんかと一緒になって——一緒ではない、あなたの監督下にあるのでございましょうが、警察だの公安調査庁、これは赤いめがねをかけて歩いて見ますからみんな世の中が赤に見える。こういうものによって政党出身の大臣が事を処されますと、岸内閣それ自身に対しても批判が起るのであります。この秘密を強調するということに対して、大臣の所信を承わりたいと思います。
  24. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 先ほどもお言葉がありましたように、国家機密といたしまして、旧憲法治下と今日とでは非常に秘密の重要性も、またその分量も違ってきたというお話がございまして、私もまたその通りと思います。従いまして、今日国家の機密を保護する法律制度も戦前とは非常に違っておるわけでございます。それからまた、官庁職員秘密保持を強要することによって、それがやがてファッショヘの道を開く危険があるという仰せでございます。私は、必ずしも、機密を保持することを公務員に求めるということがすぐファッショヘの道を開くとは考えないのでございまするが、この機密といいましても非常に幅が広いのでございまして、わが国の今日のたとえば国家経済活動を見ましてても、よその自由諸国よりは、国の経済方針というか、あるいは経済的の援助というか、そういうものが国民経済相当の深いつながりを持っておるのでございまして、その意味からいきますと、国が一つ経済政策についてどういうことを考えておるか、行政官庁国民経済活動について今度こういうような方針で進む、こういう制度を作るというようなことを言うと、非常に神経過敏な事業界に響いて、それは国家的の大損害というような大それた秘密の漏洩ではございませんが、それを早く知った者は得をする、おくれた者は、ばかを見るというようなこともございましょう。これは国家機密とか何とかいって大げさに騒ぐほどのことではございませんが、やはり官庁秘密を早く知った者と知らない者との間に不公平ができるとかいうようなことは、今日の国家生活、社会生活には必ずあると思うのでございまして、そういうことが官庁で行われるということは、国民へのサービス機関であるところの官庁の仕事としてはまことに不本意なことである、こういう考えから、そう大げさに国家機密ではございませんが、その程度の官庁秘密というものは相当あり、またこれは、公務員としては、外へ漏洩してはならない、こういうふうに要求せられることが当然であると考えるのでございます。大きな国家機密の問題につきましては、ただいま仰せのあった通り私も同感でございまするし、また、公務員に秘密厳守を要求することによって、それがファッショヘの道を開くことでございますれば、それは厳に戒めなければならない、かように考えております。
  25. 青野武一

    青野委員 それでは、私はまだ各項目別にかなり質問の材料を持っておるのですが、時間の関係もございますから大体三つ四つかためて質問を申し上げておるのですが、四月十三日の、これは朝日新聞の日曜版でございますが、警視庁当局が逮捕したのは対謀略的活動の情報警察から捜査中心の公安警察へという方針の切りかえが生んだ当然の結果だ、こういうことを自信満々のうちに一課の諸君が新聞を通じて発表しておる。そうすると、この秘密文書というものはあくまでも課長局長級が認定したことであり、先ほども申しましたように、企画庁の責任者は、質問に対して秘密文書内容の説明はしました、けれども、これは秘密文書であるという認定はした覚えはありませんと言っておる。これは大臣に聞いてもらいたいと思いますが、逮捕状記載秘密文書新聞発表のそれとは全然違う。それは御承知だと思いますが、その節に企画庁の職員の諸君の代表者が大来計画局長と太田計画課長とに面会を申し込んだときに、こういうことを言っておられた。御参考になると思いますからお聞き願いたいと思います。逮捕状記載の秘密文書新聞発表の内容とは全然違うが、課長局長はどう考えるかと言ったら、あなたたちの組合機関紙である「せんく」を今読んで驚いておると言う。それから、組合の諸君が、逮捕状の記載は経済計画要綱に関する問題点というものであるそうだが、その内容はいつ作成せられて、今それはどんなものか見せてもらいたいと言うと、それは仕方がないから、当然の要求であるからというのでお見せしたそうです。ところが、その経済計画要綱に関する問題点というものを見てみると、表題が、横書きで、経済建設五カ年計画要綱についての問題点。これは、社会党経済五カ年計画に対する自民党側の、経済企画庁に頼んで作らしたいわゆる批判書なんです。そして、サブタイトルとして、経済自立五カ年計画との比較というのがその内容になっておる。これで大体そういうものが秘密文書になり得るかどうかということを調べてみましたところが、官庁が一党一派に偏してはいけないという配慮から部外には発表しなかった。社会党を刺激してはならぬから、部外には発表せずに秘密というスタンプを押しただけだ。こんなものがどうして犯罪構成要件になって、警視庁の一課に引っ張られなければなりませんか、それから質問を続けて参りますると、私どもとしても国家の機密文書だとは思っておりませんということをはっきり組合の代表に課長は言っておる。それから、形式的にも秘密文書要件を欠いておるという一例でありますが、配付したのはどういう範囲に配付したかという質問をして、この文書には日付もなければ計画局の名も入っていない、部外秘——まるに秘の字の入っているのと、取扱い注意も記載されていない、形式的にも秘密文書としての要件を欠いていると言ったところが、太田という計画課長が明瞭に局長の前で、配付したのは計画課と企画課だけである、さきにも言った通り、全くこれは計画課と企画課の職員の勉強用の文書である、参考にする、勉強のためにする内容である、社会党を刺激すると困ると思って、どこでいつ作成されたか知られたくないために、日付も局名も、これは意識的に入れなかったと言う。それから、七%モデル作業についてはどうだという質問をしても、課長が、あれは三十五年の計画経済についてのもので、すでに三十七年度の作業に移っておる今からは何も役に立たない、あれは私文書であると言っている。それを警視庁が問題にしている。当局の課長局長組合代表者と話し合って、私文書である、勉強用であると言っている。ただスタンプが押してあっただけだ。こういうことで犯罪人をでっち上げられたら、それは今回の問題だけではない。これを右へならえで全国でこういう例をとられると、正常な組合運動もできなければ、特に、経済企画庁の内部あたりでは、いろいろな計画に頭を悩まし、雑多な参考資料を取り集めて、非常に職員の諸君は給与の低い中から勉強して、そしてなおかつ時間が足らなければ自宅に持ち帰って勉強しておるし、いろんな研究をしておるが、そういう人たちは、将来勉強する意思も、まじめに働こうという意欲も萎縮してしまう。こういう弾圧が次から次に続いていけば、警視庁の今度とったような態度をとられれば、いたずらに犯罪人を作ることであり、一方的に解釈をして、あるいは逮捕あるいは起訴あるいは裁判に付するというようなことが例になったら、私は大へんなことであると思う。私と逮捕せられておる諸君とは何の関係もありません。問題がこういう問題であるから、法務委員会であるいは問題になるかもわからぬと、緻密に私はあらゆる情報機関と人を使って調べた。みずからも当って調べた。これは明らかに警視庁の諸君の行き過ぎであると思う。こういうことが再び繰り返されるようなことになれば、経済企画庁だけではありません。どこの、官庁でも、国家公務員の諸君は萎縮してしまう。研究の自由を失ってくる。計画をやろうとする意欲もなくなってくる。だから、私は、この事実に基いて判断いたしますると、こういう行き過ぎは法務大臣責任でこれを是正してもらわなければならぬ。こういうことをやられると、それは弱い者はたまったものではない。この点については、今のまま放任すれば警察ファッショの再現になります。往年の軍部はなやかなりし時代のような状態が来ないとも限りません。また、それがために、暴力取締法を強化し、あっせん収賄罪を作ったのです。だから、こういう点を手を抜いていくならば、何も刑法とか刑事訴訟法の改正をする必要もなかったはずなんです。こういう点について、国会で問題になった機会をとらえて、法務大臣並びに刑事局長、そういう人たちが先頭に立って、こういうばかげたことで問題にならないように善処し、厳重な警告を発して、その真相究明のために努力してもらいたいということを、質問をかねて最後に私は希望しておきますが、どういう御意見か承わりたい。
  26. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 官庁スパイ事件につきましては、先ほど刑事局長からもお答え申し上げました通り法務省といたしまして、あまり詳しい報告も受けておりませんし、また現に捜査中でございますから、この内容についてお答えすることを差し控えたいと、こう申し上げたわけでございますが、ことに、私は、こういう検察事務につきましては、大体検事総長以下検察当局の常識と良心にまかせて、そしてその常識と良心の導くところに従って進めてもらうようにいたしておりまして、具体的の事項については指図はいたしておりません。でありまするから、このことにつきましては、今この席上で何事も申し上げることはできませんけれども、しかし、私も、考えの方向といたしまして、しっかりした疑いも材料もなくてやたらに人を罪する、あるいはそれが人権じゅうりんになるというようなことにつきましては、これは、この事件関係なく、法務省の態度といたしまして、どこまでも戒めなければならないと、かように考えておりまするから、その方針につきましては、そういうことをはっきり言えると思うのでございます。ただ、しかし、この事件に関連いたしましては、まだ具体的の報告も受けておりませんし、また捜査中でございまするから、私はこれを言うことは御遠慮申し上げたいと思っておる次第でございます。
  27. 青野武一

    青野委員 これで官庁スパイ事件というものの質問が大半は済んだわけでありますが、大体きのう委員長の御了承を求めておきましたように、これに加えて、長崎の機関車労働組合最高幹部五名を不法に逮捕して、そしてこれを調べて起訴に付した事件に非常な食い違いと誤まりがあるので、この機会に、時間はごく簡単で差しつかえないのでありますが、法務大臣の御意見を聞きたいと思います。  それは、昨年来年末手当その他の要求のために行われた順法闘争に関して、馬場義治という門司地方本部の副執行委員長を勤めておる諸君を初めとして、全部で五人、それが、御承知の通り、ことしになって捜査をされて、そうして二十二日という長い勾留期間を連れられて、非常にみな迷惑をした事件であります。ここに私の手元決算委員長の坂本代議士からいただいたその起訴理由が四項目にまたがったものがあり、そして私がこれを友人として入手したのでありますが、その一、二、三、四と四項目に分れております内容が、事実とほとんど全部違うのです。それは白と黒の違いどころの騒ぎじゃない、全然違うのです。果してどの程度に真実があるかということを疑わざるを得ない。ここに起訴理由を四項目に分けてプリントしてありますので、これはあとで大臣に差し上げてもいいと思いますが、大体起訴の事実は、いろいろ順法闘争を通じてピケを張って、そうして列車の遅延をはかったということが項目別に四つあげられている。それが、短かい時間で七分遅延さした、それから二十四分遅延さしたというのが一項目。それから、三番目の区項目には、十八分長崎定期発車をおくらかした、こういうとにかく何分といったような問題を、非常に大げさに、何か徳川十五代将軍を暗殺でもするような工合に問題を取り扱っているのです。  そこで、私は、第一点について申しますが、これはあとで大臣に差し上げます。この起訴理由の第一とどれだけ違うかということの内容になりますが、三一六列車の牽引車が出区に際して乗務員作業基準に示されている石炭の積載量が立会確認を欠いている、機関車に石炭を何トン積んだかはっきりわからぬから、いつもの通り立ち会いをして調べてくれろ、やはり客車を引っ張って走る機関車のことですから燃料は非常に大切です。これが確認と安全の保障を組合要求したときに、当局側からは、当初威圧的態度に出てきたけれども、話し合った結果、第一番に、今後は間違いなく完全に立ち会いをします、石炭積載量については大切なことであるから当局が来て立ち会います、三番目は、この列車については安全であることを保障するとの確認を得たが、そのために話し合いの時間で約三十分ほどつぶれた。それを検察庁は、ピケを張って威圧的態度をとって三十分、あるいは二十四分とも第一項目には書いてありますが、遅延さしたと言う。ところが、実際はそうじゃない。機関車労働組合代表者と、国鉄の現地における当局の代表者とが話し合って、合理的に話のついたものを、なぜここで警察が介入をして、そしてこういう問題をでっち上げなければならないか。話はたったこれだけなんです。  起訴理由の第二は、入れかえ四一仕業の機関車出区の際に、速度計が、御承知の通り日本の機関庫には舶来のがみんなついておりますが、これが不備で非常に悪くなっている、それで運転士が危険だからすみやかに整備の上に出区さしてくれと組合側が要求したのに対して、機関士の勘で大丈夫行けるじゃないかというようなことですったもんだ間答が繰り返されて、終始威圧的態度で当局側はやってきたけれども、最後には応じまして、組合側は安全の確保がなされるまではピケを張って話し合いを続けておった。第一に、列車がおくれるので機関車を出すことを認める、第二は、入れかえの合い間に速度計を当局の手で取りかえます、それから、三は、その間安全運転とするが、これによって列車をおくらした責任職員には問わないことを確認し、ピケを解除したのである。この話し合いのために十四分機関車の出るのがおくれた。これが内容なんです。当局が全責任を持って組合代表者と話をつけておるのです。  それから、三番目には、八一八列車の牽引車が出区の転向の際に転車台の電流計が故障のために、組合側からこれが全安の確認と修理を要求した。ところが、現場における当局は電気に対する知識が全然ない。そこで、専門家の代表者、電力区の責任者を呼んで検査の上に次のことが確認された。電流計が不備であることは認める、不備なままに機関車が出ることは危険であることは間違いございません、転向には安全であることを、ちょこちょこ回った結果、安全なことは保障されたが、確認までの話し合いで大体二十分間列車が遅延したというのです。  四番目も、八三三列車、これが入区に際し線路分岐器の先端軌条が浮き上り、入ろうとしたところが、入っていく途中の軌条が、レールとレールの電気熔接のつぎ目のところが不密着ではね返っておるから、もしここで脱線でもして事故を起したときには大へんだというので、こういう故障が発見されたのですみやかに修理してもらいたいと組合側から要求した。当局側は無謀にも、問答無用だ、そんな一々言われたことをしておったのでは大へんだというので、話し合いを見守っていた組合員の諸君の中に公安官を突っ込ませて若干のトラブルが起った。問題は、レールがそってつぎ目がはずれておるから危ないじゃないか、何とかして熔接工を呼んできて全部修理をしてくれと頼んだ。ところが、それを相手にせずに、公安官に命令をして、その話し合いがどう解決つくかとぐるりと取り巻いてピケという厳格なものではなくしてじっとその交渉の過程を見守っていた組合員の諸君の中に突っ込ませた。いろいろ調べた結果が、危険がない、じわっと列車が入る、機関車がレールを通って走ったあとすみやかに修理をするということを確認をして、この関係列車の一本が約五分間おくれた。  これが現地からの報告であり、私どもの調べた範囲では非常に信憑性か強い。ところが、起訴理由を読んでみると、あたかも計画的に多人数をもって列車を遅延させたように事実を隠蔽した起訴理由になっておる。  こういうことは機関車労働組合だけじゃない。いろいろな組合に対して警察権が介入して挑発を行う。刑法の問題のときでもここで問題になりましたように、たとえば私鉄争議なら私鉄争議で五百人の代表者全国を代表して社長に会おうといって広場に集まっておる、そこに何か右翼の暴力団の若い連中が同じような作業服みたいなものを着てやってくる、警察官の一部の私服の連中が飛び込んでくると、あいくちの二、三本ぽろぼろと落してさっと引き揚げてしまう、そして、事務所のガラスを割った、凶器を持っておった、多人数をもって集合した、そこで待機しておった警察官がいきなり引致勾留するというようなことは、全国相当の例があるのですよ。だから、そういう正常な労働組合の運動にこの暴力取締りを強化して適用され乱用されたときには大へんだというのが、刑法の問題のときの法務委員会における私ども質問の要項であったのですが、事実そういうことが行われておる。この問題にしても、起訴理由内容を検討してみると、四項目にわたってあるが、これはやはりだいぶ食い違いがある。八幡太郎と番太郎の違いじゃない。私は三晩も四晩も徹夜してあらゆる資料を集めて検討したのです。こういうことが公然と許され、職権の乱用を認めていくということになれば、それは民間であろうと官公庁であろうと正常な労働組合運動というものはできやしない。まして、いわゆる三公社五現業に至っては争議権を剥奪しておる。団体交渉によって解決をしなければ、それは仲裁裁定を求めて最後にはそれを実施しなければならぬのが政府責任である。吉田内閣以来、私は労働委員を五年ほどしておりましたか、たびたびの経験がある。最近まではただの一ぺんも仲裁裁定の内容を完全実施したことはない。武田信玄と上杉謙信との川中島の戦いは、どっちか一方武装解除してしまえば、必ず他方か勝つ。上杉をたたきつぶして武装を解除して、よろい、かぶと、刀や鉄砲を取り上げれば、必ず武田信玄が勝つことはわかっておる。力と力の対立の組合運動の心臓であるところの争議権という武器を取り上げておいて、そして、話し合いがつかなかったときには裁定が下るが、その裁定が下って決定したものを政府が誠意をもって実行しないということになれば、勢いこれくらいな摩擦は起るのです。争議権を取り上げた労働組合なんというものは、それは武装解除せられた軍隊と同じだ。それは満州における関東軍のやり方と同じなんだ。そこで、円満に話し合う場を作って、これが解決のために誠意をもって全力をあげなければ、こういう問題は片づくものじゃない。三公社五現業の諸君、官公庁の諸君、みんな歯を食いしばって苦しんで、一生縣命でその職責を尽しておるでしょう。それを、頭ごなしに、昔の御用聞きか目明かしのように権力をもって頭からぴしゃっと長屋の連中を押えるような行き方は、私は承服できない。私も、倉石委員長時代から吉田内閣の時代には、今申しましたように五年間は労働委員で、労働三法改悪のときには微力にむち打って先頭を切って反対したものであります。だから、公労法の内容にわたりましては、人後に落ちぬだけの知識を持っておる。こういう状態において武装を解除して、争議のできないようにしておいて、あらゆる面で、賃金値上げの運動をする、待遇改善の運動をする、それを、ぴしゃりぴしゃり、警察権を中に入れて、ことさらに挑発して問題を起すようなやり方は、少くとも法務省としては十分気をつけてもらわなければならぬ。こういう点について、きょうはせっかく法務大臣においでを願っておりますので、この前は六つの官庁責任者の方がおいでになっておりましたけれども、この国鉄の機関車労働組合と長崎地検、長崎警察署との問題は、こういうことが全国的に右へならえで繰り返されては、正常なる労働運動なんというものはあり得ません。そこで、一つできればお二人の意見を聞いておきたいと思います。
  28. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この事件につきましての捜査当局の処置につきましては、ごく簡単な報告は届いておるようでございます。今御指摘のようなことがございましたかどうですか、私どもつまびらかにしておりませんが、十分取り調べてみたいと思います。しかし、何分にもこの事件はすでに起訴すべきものは起訴して手続中でございますから、会その内容についてどういうことであるかということを批判することは御遠慮申し上げたいと思っております。
  29. 竹内壽平

    竹内政府委員 長崎事件の発生原因と申しますか、そういう点につきましての貴重な御経験と御見識に基いての御意見につきましては、私どもも深く傾聴しておったのでございます。ただいまの御意見の中の……。
  30. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 議事進行について……。  大臣がお差しつかえのようでありますが、午後は二時ごろからお達しつかえないようでありますから、そのとき続行願います。
  31. 町村金五

    町村委員長 これにて暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに一至らなかった〕