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1958-04-16 第28回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十六日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 林   博君    理事 三田村武夫君 理事 横井 太郎君    理事 青野 武一君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    高瀬  傳君       徳安 實藏君    中村 梅吉君       長井  源君    堀川 恭平君       横川 重次君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         検     事         (民事局長心         得)      平賀 健太君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石野 信一君         農林政務次官  瀬戸山三男君  委員外出席者         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房総務課         長)      水間 光次君         総府理事務官         (科学技術庁原         子力局政策課         長)      島村 武久君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         大蔵事務官         (大臣官房秘書         課長)     森鼻 武芳君         大蔵事務官         (管財局総務課         長)      谷川  宏君         農林事務官         (大臣官房秘書         課長)     中西 一郎君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 四月十六日  委員椎名隆君及び三木武夫辞任につき、その  補欠として高瀬傳君及び堀川恭平君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員高瀬傳君及び堀川恭平辞任につき、その  補欠として椎名隆君及び三木武夫君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十五日  最高裁判所機構改革に関する陳情書  (第九二一号)  強制執行の取扱に関する陳情書  (  第九二二号)  破産債権の保全に関する陳情書  (第九二八号)  売春防止法実施推進に関する陳情書  (第九九七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  企業担保法案内閣提出第七〇号)(参議院送  付)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一二号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一三号)  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一二四号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一三四号)  (参議院送付)  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案一括議題といたします。  御質疑はありませんか。——別に御質疑もないようでありますから、議題の四法案に対する質疑はこれにて終局することといたします。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の各案に対しまして、それぞれ自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる修正案が提出されております。この際その趣旨説明を求めます。林博君。
  3. 林博

    ○林(博)委員 自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、修正案提案理由を御説明いたします。  まず修正案を朗読いたします。   裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正す  る。   附則中「昭和三十三年四月一日から施行する」を「公布の日から施行し、昭和三十  三年四月一日から適用する」に改め、同附則附則第一項とし、同項の次に次の一項  を加える。  2 最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官昭和三十三年四月一日以   後の分としてすでに支給を受けた報酬その他の給与は、この法律による改正後の裁   判官の報酬等に関する法律規定による報酬その他の給与の内払とみなす。   検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正す   る。   附則中「昭和三十三年四月一日から施行する」を「公布の日から施行し、昭和三十  三年四月一日から適用する」に改め、同附則附則第一項とし、同項の次に次の一項  を加える。   検事総長次長検事及び検事長昭和三十三年四月一日以後の分としてすでに支給  を受けた俸給その他の給与は、この法律による改正後の検察官俸給等に関する法律  の規定による俸給その他の給与の内払とみなす。  その趣旨説明いたします。政府原案附則においては、この法律は本年四月一日から施行するとなっておるのでありますが、これを、公布の日から施行し、本年四月一日から適用すると修正する必要がありますので、附則第一項を置いた次第でございます。従いまして、附則第二項において、高等裁判所長官以上の裁判官及び検事長以上の検察官報酬俸給等についても、四月一日以降の分としてすでに支給したものは、本法の改正後の報酬俸給等の内払いとみなす必要があるのであります。  以上が修正案趣旨説明でございます。何とぞ御賛同をお願いいたします。
  4. 町村金五

    町村委員長 これにて趣旨説明は終りました。  それでは、これより、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及びそれに対する修正案検案官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及びそれに対する修正案訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、以上を一括して討論に入ります。  別に討論もないようでありますから、直ちに採決に入ります。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案修正案通り修正議決するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  5. 町村金五

    町村委員長 起立総員。よって、本案修正案通り修正議決いたしました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案修正案通り修正議決するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  6. 町村金五

    町村委員長 起立総員。よって、本案修正案通り修正議決いたしました。  次に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。両案に賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  7. 町村金五

    町村委員長 起立総員。よって、本案は可決されました。  なお、ただいま可決されました各案に対する委員会報告書作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 町村金五

    町村委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  9. 町村金五

    町村委員長 次に、企業担保法案議題といたします。  前会に引き続き質疑を行います。質疑の通告がありますから、これを許します。長井源君。
  10. 長井源

    長井委員 昨日福井委員から質問があったそうでございますから、重複する部分はそのよしを答えていただきまして時間を節約したいと思います。  この法律は、私ども法律に携わっている者から見ますと、きわめて画期的な法律だと思われますが、おそらく財界から強い要望があって当局においてもいろいろ調査研究もされた結果立案されたものだと思いますが、それに関する経過を簡単に御説明願いたい。
  11. 平賀健太

    平賀政府委員 現在、企業資金を必要とします場合に、担保としましては、前回も申し上げましたように、財団抵当制度があるのでございますが、この財団抵当制度手続が非常に繁雑で、費用と時間がかかりますために、かねてからこの改正の必要が叫ばれておったわけでありまして、昭和二十四年に日本経済団体連合会から、財団抵当制度簡素化要望が正式に法務省に対してなされたわけでございます。法務省としましても、かねてからこの財団抵当制度改正ということを考えておりましたやさきでありましたので、昭和二十七年に工場抵当法の一部の改正を行いまして、ある程度の改善をはかったわけでございます。ところが、この工場抵当制度骨子はこれでは改まっておりませんので、部分的な不備の点を改めたにすぎなかったのであります。その際どうしてもやはりもっと画期的な新しい担保制度が必要であるのではないかということになりまして、前回も御説明明し上げましたように、イギリスフローティングチャージなんかの制度も参照いたしまして、本法案骨子を同じくする一般担保法案と称しますところの試案を法務省事務当局立案しまして、それを公表し、各方面意見を徴したのでございます。それは昭和二十九年でございます。産業界金融界はもちろんのこと、学界その他にもこの案をお送りいたしまして、各方面意見を求めまして、最後に、今お手元にありますような企業担保法案骨子が大体まとまりましたものでありますから、これを法制審議会にかけたのでございます。そして、法制審議会民法部会というのが民法改正目的として設けられておりますが、その民法部会の中のさらに財産法委員会——民法財産法関係を主として検討いたしております財産法の小委員会に昨年の十月にかけまして、さらに、この小委員会でできました企業担保法案要綱案を昨年の十二月に民法部会にかけまして、この民法部会の決議を経ました要綱案を本年一月法制審議会の総会にかけまして、要綱がこれで確定いたしたわけであります。その要綱に基きましてこの法案立案いたしたのでございまして、産業界金融界はもちろん、学界その他におきましても賛同を得ましたこの要綱に基きましてこの法案ができておる次第でございます。非常に画期的な制度ではございますが、まともに法務省がこの新しい制度立案に着手いたしましたのは昭和二十四年以来のことと申し上げてもよいと思うのでございます。
  12. 長井源

    長井委員 今のお話によると、英国あたりのフローティグ・チャージですか、そういうものも参照したというお話でありますが、英国のような国でありますから、きわめて自由な立法がされておるだろうと思うが、その英国フローティングチャージの成績、あるいはまた今日までのその実施状況はどういうものでございますか。非常に財界にこれが役立っておるか、あるいはまた、これがいわゆる実行段階というものに入りますと相当財界に大きな影響を及ぼす問題が起ると思いますが、それらの状況はどんなことでありますか、お調べになったものがあれば聞かしてもらいたい。
  13. 平賀健太

    平賀政府委員 イギリスにおきましては、日本財団抵当制度のような制度がございませんために、会社企業におきまして資金調達をいたします場合の担保としては、フローティングチャージが非常に活用されておるということでございます。それから、イギリスでは信用ということを非常に重んじまして、銀行がフローティングチャージ担保に取りまして企業に対して融資をするといった場合には、どこまでも信用を重んじまして、なかなか実行という段階には至らぬそうでございます。それで、実行に移るというケースはきわめて少いというふうに私どもは承知いたしております。
  14. 長井源

    長井委員 英国はああいう特殊な国柄でありますから、そうですが、日本では、これは新しい制度でもあるし、その実施状況によっては相当問題になるようなことが起るのでないかとも考えられるので、なおこの実行に関する面についても多少お聞きするつもりでありまするが、この提案理由は、「設備の頻繁な改廃、変動に伴って、この財団組成物件について変更手続をするということは、きわめて煩雑であるばかりでなく、多大の時間と費用を要する」、こういうことでありますが、経済界における利用価値の問題は別として、法律的に見まして、ほかにもっと工場財団法とかその他の方法によって、その手数を省くというようなそれだけの目的であったらば、達することができるのでないか。この企業担保法は単にそういう手数を省くというようなことのみでできた法律とは思えないのでございますが、その点はいかがですか。
  15. 平賀健太

    平賀政府委員 この財団抵当制度におきましては、財団組成内容でありますところの個々財産というものを特定いたしまして、不動産なんかのように、登記のあるものについては登記をする、それから、機械器具などのように、そういう公示制度のないものについては、目録を作りまして、この目録がさきの登記と同じような効用を果すということで、個々財産特定しまして、それで財団を組成するということになっておるわけであります。そういう関係で非常に手数がかかるのであります。それから、その財団を組成しておりますところの個々財産変更を生じますと、一々その変更をやはり公示することが必要になってくるわけでございます。それが財団設定維持に非常に手数がかかるという原因になるわけでございまして、それを何とかできないか。そういう一切の手続を省略いたしますと、これが財団組成物件になっておる、その上に抵当権が設定されておるということが公示できない結果になってしまいまして、財団抵当制度というものは根底からくずれてしまうことになるわけであります。そこで、どうしても、現在の財団抵当制度というものを存置する以上は、そういう公示制度個々財産特定いたしましてそれを公示するということが不可欠の問題になってくるわけでございます。ところが、この企業担保権は、財団抵当制度を極度に簡素化したものということも言えるのではないか。個々財産特定しまして公示するかわりに、現にある会社の総財産担保とする。そのかわりに、この企業担保権追及力を持たない。財産が処分されても、それにくっついていかない。財団でありますと、それがくっついていくことになるわけであります。そういう関係で、この企業担保権は、いわば財団抵当制度を極度に簡素化したもの、そのかわり財団抵当のような強い力は持たない、追及力は持たない、効力が非常に弱められておるわけであります。そういうように効力を弱めるかわりに、財団抵当制度の繁雑な手続を一切省くということで、現在の財団抵当制度を簡素化し合理化する手段としては、結局はこの企業担保権のようなものになるのではなかろうかというふうに考えた次第でございます。
  16. 長井源

    長井委員 こういうものになるのでないかというのは少したよりないのですが、第一、企業担保という画期的な観念ですね、それがなかなかのみ込めないものがあると思うのです。われわれが担保と申しますれば、どうしても——ことにこれを物権とするというような考え方に立った担保とすれば、いわゆる担保物件特定がせられなければならないのでないか。差しかえられるということはあり得ることであるけれども、しかしながら、全く企業というようなばく然としたものの上に担保を持つということは、ある意味では時代の要求はあるにはありますけれども法律的に見まして、きわめてばくとした考え方に受け取れるのであるが、それでは、この企業という言葉自体をどういうように扱っておいでになるのですか。それを一応聞いておきます。
  17. 平賀健太

    平賀政府委員 企業というものは何ぞやということになると、非常にむずかしい問題かと思うのでございますが、物的、人的な組織それ全体を総称して企業というのか、あるいは動いておる状態、動的な状態まで含めて企業というのか、企業という言葉の定義は非常にむずかしいと思うのでございますが、ただ、この法律案におきましては、なるほど企業担保権という名称を使っておりまして、会社企業そのもの担保になっておるというような感を抱かせるのでございますが、実は、これは、この担保客体になっておりますのは株式会社の総財産なのでありまして、これは民法一般先取特権が、債務者の総財産の上に先取特権を有するという、債務者の総財産という言葉を使っておるのでございます。この法案におきましても、株式会社の総財産というその総財産は、民法一般先取特権債務者の総財産というのと同じ意味でございまして、要するに、株式会社の現に持っておるところの個々財産、それにやはり企業担保権が及んでおる。この関係一般先取特権と全く同じだと言っていいと思うのでございます。
  18. 長井源

    長井委員 それは違うのじゃないですか。一般先取特権と申しますものは、その先取特権公示されるときにある総財産ということになりますね。ところが、これは、担保に入れて、それからあとに動くことが予定されておるところの総財産でございますから、先取特権の場合における総財産は、いわば一応特定しておるわけです。いろいろ債権債務相殺等がありましょうけれども、しかし、一応総財産というものは特定されておる。この場合の総財産というのは、担保に供するときはなるほど現況のままということも言えないことはないかもしれなないが、しかし、その財産特定されていないし、その後に財産がなくなっても仕方がないという格好のものである。そういう場合には大した問題はないかもしれないけれども、減るというような場合になると、これはまた総財産という言葉のうちでやっかいなものになってくるのではないかと思うのでありますが、かりに企業ということが担保目的としては総財産意味だ、こういうふうに受け取れるならば、総財産という名前にした方がわかりいいんでないかと思うのですが、企業という名前にすることと、総財産という名前にすることとは、この法案立案に当ってどういう違いがあるのでございましょうか。この点を一つお伺いしたい。
  19. 平賀健太

    平賀政府委員 一般先取特権対象になりますところの債務者の総財産というものも、要するに、被担保債権発生しましたときにおける債務者のすべての財産、これが一応先取特権対象になるわけでありますが、ある特定財産債務者所有でなくなる、外へ出ていきますと、それには先取特権は及ばなくなる。それから、新しい財産債務者所有になりますと、それには先取特権が及ぶ。やはり被担保債権発生後総財産内容というものは変更していくものであります。出ていくものには先取特権は及ばない、入ってくるものには当然及ぶ、その点においては企業担保権も同じでございます。ただ、一般先取特権法律で当然に発生するが、企業担保権約定によって発生するというだけの違いで、担保権発生対象となっております財産は変動していくという点は、一般先取特権企業担保権も全く同じでございます。違いますところは、企業担保権は今申し上げましたように約定担保権であり、一般先取特権法定担保権であるというだけの違い。それから、もう一つ違う点は、一般先取特権実行します場合には、特定財産を目ざして実行していく。ところが、企業担保権におきましては、実行の際におけるすべての財産を包括しまして差し押え、そしてそれを換価していく。実行方法が違うという、それだけの違いでございまして、債務者といいますか、株式会社財産内容がときどきに変更していく、出たり入ったりしていく、それに伴って担保権対象が変っていくという点は、一般先取特権企業担保権も全く同じと言っていいのであります。  そういうことであるならば、総財産担保権とかいうような名称にして、企業担保権という、あたかも企業そのもの担保にしたような名称を避けた方が、名称と実質が符合するわけでございますけれどもイギリスなんかにおきましても、やはり、フローティングチャージとは何ぞやということにつきましては、アンダーテーキング——企業担保にしているんだということを説明しているわけであります。しからば、それを法律的に分析していくとどうなるかということになりますと、やはり会社のすべての財産ということにならざるを得ないのでございまして、企業担保権という名称が、総財産担保権と申しますか、そういう読みにくい、わかりにくい名前よりも、かえって通りがいいんじゃないだろうかというので、企業担保権という名称をとることにいたした次第でございます。
  20. 長井源

    長井委員 そうすると、イギリスフローティングチャージをとったので、そういう趣旨を織り込めたというふうに受け取れます。それはけっこうでございますが、ここで提案理由説明にこだわるわけではないが、合理的な新しい担保制度、今までに類がない担保制度を設定したと言われるが、今説明のような趣旨においてしたことが合理的であるというお考え方でございますか。
  21. 平賀健太

    平賀政府委員 さようでございます。
  22. 長井源

    長井委員 そうしますと、この総財産というのが問題になってくるわけです。出入りはいたしますけれども、総財産のうちに含まれているものというのを観念的につかまえなければなりませんが、一般有体動産不動産等物権は、これはすぐわかるのでございますけれども、たとえば商号であるとか、あるいは、商号といううちに含まれているかもしれぬが、のれんというようなものもあるわけでありまして、その盾の商号営業地その他伝統、沿革、歴史等も含まれた一種ののれんがありますが、そういうものとか、商標、それから、ばくといたしておりますが営業権、それがもし許可営業であればその許可権特許品などを製造するということになると、その特許権とか、例をあげますとそういうふうなものがあり、かつ、信用と申しますか、そういうふうなものもあるわけですが、それらをひっくるめて総財産というのであるか、あるいはまた、商号商標などはいろいろと使用する地域によって法律上違っておることがあるので、そういうふうなものは入らないという考え方に立っているものか、この点について一つはっきりしておきたいと思う。
  23. 平賀健太

    平賀政府委員 企業担保権客体であります総財産内容は、民法先取特権の場合の債務者の総財産と同じであることは今申し上げたのでありますが、ただいま御例示になりました商標権であるとか特許権であるとか実用新案権であるとか、そういう工業所有権はその総財産の中にもちろん入るわけでございます。  それから、行政上の許可に伴う地位と申しますか、資格と申しますか、そういうものがこの総財産の中に入るか。これは総財産の中には入らないのでございますけれども、その企業施設は、この企業担保権実行されますと、この企業施設競落人がこれを承継するわけでございますが、その場合に、許可に基く地位もやはり競落人に移転することが必要でありますので、その点はこの法律案の第四十四条の第二項において特別に規定を設けまして、会社営業に関する行政庁許可、認可、免許その他の処分に基く地位競落人が承継するということで、特に規定を設けて、その点は解決をいたしたのであります。  それから、商号はこの総財産の中に入るかというお尋ねでございますが、この商号は、民法一般先取特権の場合と同じように、商号は総財産の中に含まれないと解しております。と申しますのは、商法では、商号営業をともにするにあらざれば譲渡できないということになっておりますし、競落人が個人であれば、会社商号を譲り受けましてもどうにもしようがない。それから、競落人がもし会社であれば、自己の商号があるわけでございますので、そういう商号を取得しましてもどうにもならない。そういう実際上の考慮もあるわけでございまして、商号は総財産の中には入らないというように解しております。  それから、のれんであるとか信用というようなもの、これはどうなるか。これなどもやはり総財産の中には入らないというふうに解釈しております。これは民法一般の先攻特権の場合と同じでございます。
  24. 長井源

    長井委員 そうすると、実際問題としてこういうことになりますか。商号は入らないということになると、三越というデパートで企業担保権実行する場合に、あなたは自分が持っておるからと言われますけれども、小さな自分のは持っておりましても、三越と書いた方が大きな経済的な価値のあることは明らかでありますから、それをも継承した方が、また継承しなければならぬようなことになるのではないかと思いますが、入らないとなると、三越呉服店が隣でまた新たに初めてもしようがないようなことになりまして、担保権としては一そう弱いものになりはしないかと思いますが、その点はどうなんでございましょうか。
  25. 平賀健太

    平賀政府委員 この商号は、現行の商法におきましては、営業とともにしか譲渡はできないということになっておりまして、営業譲渡の場合は、これは契約の内容にもよることでありますが、大体債権債務全部移転する、いわば人格を承継するような関係なのであります。でありますから、現行商法ではそういうことになっておりまして、そういう場合に限って商号の譲渡が認められておるのでございます。ところが、企業担保権実行の場合には、何も債務会社であるところの株式会社の人格を消滅して解散になるわけでもございませんし、会社としてやはり存続しておるわけであります。それから、会社債務は依然として残っておるわけでありまして、どうも営業譲渡と同じように見るわけにはいかないのでございます。現行商法の建前からいきますと、どうしても商号が総財産の中に入ってそれが強制的に移転するというふうに構成していくことは無理なので、もし商号の点についても企業担保権との関連で何らかの合理的な処置をとらなければならぬということになりますと、商法自体の改正ということになるわけで、さしあたっては、企業担保権関係では、現行制度を基礎にして、商号は総助産の中に含まれないということで、この案ができておるわけでございます。なお、商号につきましては、そのほかにいろいろ問題もありますので、法制審議会の商法部会におきましては、商号制度改正についても検討をいたしておる次第でございまして、何らかの合理的な改正が実現できましたならば、この点はなお企業担保権関係でも再考を要するのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  26. 長井源

    長井委員 それだと、なお企業という名が適当でなくなってくるのではないかと考えられるのですが、今設例いたしました三越なら三越というものの企業担保というものを取った場合に、一括競売ということも実行方法のうちにあるわけです。その場合に、営業権だけ残るというようなことは、企業担保という名にふさわしくない結果ではないかと思うが、やはり三越という商号とともに現在行なっておる営業がありますから、それは移転するというような感じを、この企業担保法では常識的にすぐ考える。もっとも商法等の関係はありますけれども企業としてならば、営業も移転する、一括競売するというような場合になったら営業商号とともに移転するということが筋ではないかと思うのでありますが、これはどういうことになりますか。
  27. 平賀健太

    平賀政府委員 営業譲渡の場合は、いわばこれは合意による人格の承継と言ってもいいようなもので、ひとり積極財産のみならず、消極財産も譲受人が承継いたします。ことに、問題になりますのは、雇用関係ども全部そっくり承継する。そういう関係でありますから、商号ども当然これを移転する、いわばそこまでそっくり移転するという関係になるだろうと思うのであります。しかしながら、企業担保権実行は、あくまでこれは担保権実行なのでありまして、経済的な価値あるもの、金銭的な価値あるものを換価いたしまして、その換価代金から債権の弁済を受けるという関係になりますので、債務なんかが一緒にくっついていればどうにもならない。ことに、雇用関係、労働関係などを競落人が引き継ぐなどということになりますと、大へんなことになるわけでありまして、どうしてもこれは営業譲渡と同視するわけにはいかない。株式会社の積極財産だけを、いわば企業の物的施設を売却しまして、金にかえて、その換価代金から債権の優先弁済を受けるということに相なります関係で、会社の人格に属しておりますところの商号なんかが移転しては、理論的にまずいのではないかということなのでございます。もっとも、これは、商法の改正によって商号制度が改まりました場合には、もちろんこれは再検討する必要があるだろうと思うのでございます。
  28. 長井源

    長井委員 もうちょっとその点を……。営業は人格の継承であるということは当然でございますが、企業担保権による会社の総財産がこの実行によって処分される、こういうことになりました場合に、もちろん、その営業権に基いた従業員であるとか何とか、特殊のものもあるかもしれませんが、そういうものが継承されていった方が、担保目的を達するのに都合がいいのではないですか。実際問題としてどうでしょう。
  29. 平賀健太

    平賀政府委員 雇用関係お話が出たのでございますが、その雇用関係どもそっくり承継をするということになりましては、競落人としては非常に負担になるのではなかろうか。むしろ、雇用関係なんかを実際上引き継ぎたいというのであれば、その債務会社でありますところの株式会社の従業員たちと個々的に契約をいたしまして、新たに採用すればいいことになるわけで、前の会社とその労働者との間の雇用関係をそっくり引き継ぐということになりますと、退職金の問題だとかいろいろな問題を承継することになりまして、新規まき直しに新たに雇用契約を締結することの方が、競落人としては競落がしやすいように考えるのでございます。そういう関係で、雇用関係などは一切引き継がない、純然たる物的施設を引き継ぐ、物的施設といいましても、工業所有権のような、そういう無体財産権は入るわけでございますが、すっきりしたものだけを引き継ぐということにすることの方がいいのではないかという考えで、一般先取特権と同じように、株式会社の総財産、こういうことにした次第でございます。
  30. 長井源

    長井委員 私は、それらの点について、企業担保という名より、総財産担保の方がはっきり実体を表わしておるのではないかという感じを持っておりますので、それは私の考え方でありますけれども企業とつきますると、一つの人格的な、法人格でも個人格でも人格的なものをも、一つの動いておる姿でございますから、それを頭に浮べますから、名としては総財産とした方がよいのではないかと実際は考えておるのであります。その点はそれだけにいたしておきます。  次は、社債に限ったわけを一つ聞かしてもらいたい。
  31. 平賀健太

    平賀政府委員 これは株式会社の長期の資金の獲得の方法としては、日本でも社債の発行ということが一番の常套手段でございまするし、それからまた、イギリスフローティングチャージ制度では、必ずしも社債のみに限定するということになっておりませんが、実際は社債の場合がほとんど全部でございます。株式会社の長期資金獲得の方法としては社債ということが一番好ましい姿でありますので、その関係から、株式会社の社債ということに限ったのでございます。これは第一の理由でございます。  第二の理由といたしまして、企業担保権を設定し得る会社の規模というものをこの法律の中で限定するというわけにいきませんので、御存じの通り第一条では、いかなる株式会社でも企業担保権を設定できることにいたしておるのでございます。そうなりますと、貸付金についてもこの企業担保権が設定できるということになりますと、あまり強力な基礎を持たない株式会社なんかが、ことに町の金融機関なんかの要求によって会社の総財産企業担保権によって担保に入れまして金を借りるというようなことが起りはしないか、そうなりますと、企業担保権はなるほど担保権としては弱いとは申しますものの、いざ実行が始まりますと、総財産を一手に押えられて身動きができなくなるわけであります。会社といたしましては、いつ何どきそういう脅威にさらされるかわからないというので、全く金融機関から完全にその企業を支配されてしまうというような困った事態が生じはしないだろうかということで、さしあたりは貸付金については企業担保権は設定できないということにして発足をしたわけでありまして、この制度が動き出しまして、状況を見まして、貸付金についても企業担保権の設定ができるということにすべきだという、そういう客観情勢がそろいました暁には、さらにこれを拡張いたしまして、貸付金についても企業担保権を設定できるということにしてもいいんではないか、まず長期資金の獲得の普通の手段でありますところの社債のみに限って発足をしてみよう、経済界もそういう要望をいたしておりますので、そういう経済界要望も参酌いたしまして、まず社債に限ろうということで第一条ができておる次第でございます。
  32. 長井源

    長井委員 ここに特例が一つありますね。ほかに特例は認めない方針ですか。外債か何か、附則の第二項に一つ特例があったと思いますが、これはどうなんですか。この特例はほかには絶対に今のところは認めないという方針ですか。
  33. 平賀健太

    平賀政府委員 これはほかのものには認めない全くの例外でありまして、世界銀行から借款ということでやむを得ずこういう例外を認めたのでありまして、ほかにこういう例外は認めないということで立案いたしたわけであります。
  34. 長井源

    長井委員 現在この企業担保を設定するという会社は社債発行のできる会社に限られてくるし、どこでもこれは非常に便利な方法だからというので企業担保を設定するというふうなことになるかもしれませんが、今日本会社における社債の状況ですね、これはどんなことになっておりますか。あるいは無担保社債なんかもあるわけですか。それらの点についても状況はどんなふうになっておりますか。この参考書類にも実は出てはおるのでございますけれども、どの程度の会社がこの制度を利用し得るでしょうか。
  35. 平賀健太

    平賀政府委員 この社債の発行状況につきましては、法務省の民事局の方で調査いたしまして、昭和二十六年一月から昭和三十二年十二月に至るまでの社債発行調べという資料をお手元に差し上げておりますが、相当数の会社が社債を発行しておるわけであります。この資料に会社名前も全部上っておるわけでございますが、昭和二十六年の一月から昭和三十二年十二月までに社債を発行しました会社の数は総計二百六十二社になっておりまして、その金額の総計を申し上げますと、四千三百四十九億四千九百五十万円と、そういう数字になっております。こういう社債が一体担保付なのかどうかという点でございますが、電力会社などのような特殊な会社につきましては、特別法の規定でもって、その会社の総財産について社債権者が先取り特権、優先弁済を受ける権利があるということで、民法一般先取り特権類似のものが法律規定にございますので、そういう電力会社のような特殊な会社につきましては別に担保権を設定しないわけであります。その他の会社におきましては、大体これは担保付になっておりまして、私どもの聞いておりますところでは、無担保の社債というものはないという実情でございます。
  36. 長井源

    長井委員 社債の償還不能というのは、実例はどんなものですか。
  37. 平賀健太

    平賀政府委員 社債はそういうわけで担保付のものでありまして、大体において大きな銀行が受託会社になりまして社債が発行されておるわけであります。もし社債の償還が非常に滞るということになりますと、その社債を発行した株式会社のみならず、銀行の信用にもかかわることでありますので、社債の償還状況は非常に円滑に行っておるというふうに私どもは承知いたしております。
  38. 長井源

    長井委員 関西経済連合会から要望書が来ておりますが、いずれ政府の方に出ておると思うのでありますが、それによると、担保附社債信託法の改正を行なってからこれをやるべきだと言っておるのでありますが、その点に関するあなたの方の御意見を伺っておきたい。
  39. 平賀健太

    平賀政府委員 担保附社債信託法、この現行の法律につきましても、手続の簡素化その他の面でいろいろ改正を要するところがあると思いますが、この企業担保権の設定、創設に当って、特に担保附社債信託法に改正を加えなくてはならぬという必要はないように考えられるのであります。これはまた別途に担保附社債信託法の改正は考えておりまして、この損保附社債信託法の根本的改正はこの際はいたしていないのでございます。単に整理の意味におきまして附則の第四項で部分的な改正をいたしておるのでございます。
  40. 長井源

    長井委員 企業担保権の順位の譲渡、放棄等の問題、それから、損保権の処分禁止原則とでも申しますか、担保附社債信託法の七十三条になっておるこういうものは、今度の企業損保法では抵触してくるのではないかと思いますが……。
  41. 平賀健太

    平賀政府委員 現行の損保附社債信託法では担保権の順位の譲渡や放棄はできないことになっておるのでございますが、なぜ一体現行の法律ではこれを禁じておるのか、その必要はどうもないのではないか、この改正要望もかねてからございますし、ことに、社債権者集会の決議によってやるのなら一向差しつかえないのではないかということで、この機会に七十五条の二という規定を設けて改正したのでありますが、実際の必要といたしましては、社債の発行の場合にはできるだけ先順位の担保権を取りたいという受託会社の要求があるわけでございます。でありますから、新たに社債を発行しまして前の社債を償還するという場合、先に発行しました社債の償還のために新たに社債を発行するという場合には今度新たに発行する社債について先順位の担保権をつけたいわけであります。ところが、前の社債についてすでに担保権がついておる関係で、前の社債の担保権に順位を譲渡あるいは放棄してもらって、新しい社債の方に先順位を譲るということをする必要が実はあるわけであります。それで、この規定を設けまして、これによってそういうことを可能にしよう。これは従来からもこういう要望が非常に強かったわけで、緊急を要するというわけで、この機会にこれを入れようということで、七十五条の二を新設した次第でございます。
  42. 長井源

    長井委員 そうすると、今の担保附社債信託法は改正しないでいいですか。した方がいいのじゃないですか。
  43. 平賀健太

    平賀政府委員 でございますから、企業担保権の創設に伴いまして、担保附社債信託法にも部分的な改正はどうしても必要になるわけであります。それで附則の四項で必要な改正をしたわけであります。
  44. 長井源

    長井委員 それではちょっとこまかくお尋ねしないとわからないのですが、この要綱の第六に、「第三の登記の後に対抗要件を備えたものでも、企業担保権者に対抗することができるものとし、」となっておるが、この「第三」というのは順序でいきますとどんなことになりますか。
  45. 平賀健太

    平賀政府委員 要綱の第六で「会社財産の上に存する権利は、第三の登記の後に」というこの「第三」というのは、この要綱の第三でございまして、企業担保権の設定の登記のことをいっておるわけでございます。
  46. 長井源

    長井委員 わかりました。  そこで、企業担保権の順位の問題についてちょっとお尋ねをしておくのですが、御承知の通り、日本登記制度というものは対抗要件主義になっておりますが、これでは効力発生順位になっておることになるが、この点の法律上の統一といいますか、それはどう考えられておいでになりますか。
  47. 平賀健太

    平賀政府委員 この企業担保権相互の順位につきましては、数個の企業担保権の設定がありました場合に、その順位につきましては、第五条によりまして、「数個の企業担保権相互の順位は、その登記の前後による。」ということで、今までの担保権と同じ原則に従っておるわけでございます。発生の前後ではないのでございます。
  48. 長井源

    長井委員 しかし、総財産について企業担保権登記されまして、それからあとからまたつけた場合でも、質権あるいは先取特権等は優先することになっていますね。これは一体企業担保権効力の上から言いましてどういうことになりますか。
  49. 平賀健太

    平賀政府委員 企業担保権におきましては、その企業担保権対象となっております個々財産について、それが担保になっておるという公示を伴いません関係で、その会社に属しなくなった財産あるいは他の権利の負担を負った財産については企業担保権が及ばなくなるというその原則がここで働くわけでございまして、企業担保権設定後その会社財産が他に処分されますと、その財産企業担保権対象ではなくなってくる、それと同じように、たとえばある財産について抵当権が設定されますと、その抵当権財産企業担保権が及んでいるということで、企業担保権より抵当権の方が優先することにいたしておるわけであります。それから、たとえば借地権・賃借権が設定されますと、その賃借権ももちろん有効で、企業担保権設定後に賃借権が設定されましても、その賃借権は企業損保権に対抗できる、賃借権付の財産に対して企業担保権がついておる、こういうことに相なってくるわけでございます。これが英法でいうところのフローティングチャージ、常に浮動していると言えるのでありまして、この関係はこの法律の第六条で現わしてあるわけであります。
  50. 長井源

    長井委員 英国のような信用を重んずる国ではうまくいくのだろうと思いますが、もし会社の経営者が悪意でもっていろいろな担保権を設定したりいたした場合、賃借権のようなもの、賃貸権というようなものを設定いたしました場合に、企業担保権というものはきわめて狭い範囲になってしまうのでないか。その企業担保権によって、貸し付けた金の確保というものができるかどうか危ぶまれてくるのではないかと思うが、この点についてはどういうふうに考えておいでになりますか。
  51. 平賀健太

    平賀政府委員 その点はなるほどでもっともでございますが、受託会社ごありますところの銀行がこの企業担保権担保に取ります場合には、社債発行会社信用というものを十分考慮して、そういう背信行為をするようなおそれのない、信用の確かな株式会社の社債のみについて企業担保権の設定を受けるということになるのでありましょうし、さらに、その受託会社と社債発行会社との間の特約によりまして、その会社企業にとって重要な財産企業担保権者に無断で処分するというようなことがあった場合には、期限の利益を喪失するというような、そういう特約を設けることになるだろうと思うのであります。でありますから、もしこの株式会社の方にそういう特約違反の背信的な行為がありました場合には、直ちにこの受託会社でありますところの銀行としましては企業担保権実行に着手するということになると思うのであります。そうなりますと、会社の総財産が一斎に差し押えを受けて、企業がたちどころにストップするということになるわけで、株式会社としては、そういう結果になってはこれは大へんでありますので、そういう特約が設けられておりますれば、そういう背信行為をするというおそれもまずないのではないか。銀行としてはそういう自衛手段を講ずることになると思われますので、なるほど、この担保権対象となっております総財産が浮動しておりまして、重要な財産が逸脱してしまうという危険は、観念的には考えられるのでございますが、実際の運用におきましては、そういう、心配はまずないと考えていいと思っております。
  52. 長井源

    長井委員 それはなかなかそんなものがないとは言えないと私は思います。もちろん、英国の場合には特殊な国で、信用を重んずる国は大丈夫でございますけれども、まだしっかり固まっていない日本のような場合におきましては、期限の利益を失う、ということは最初から予定して、担保をつけてしまうとか、あるいは債権の弁済等に自由にあり金でもって自分の都合で弁済をしてしまうとかというようなとになって、会社はかすにしてしまうというようなことがありますので、これは大へんな問題になるのじゃないかと思いますが、これは、実際として、会社が存続しようという熱意のある場合には、今お話の通り、実際問題としてはそういうことは起らないかもしれないけれども、しりをまくると申しますか、そういうふうな考え方に立って、会社はもうつぶしてしまってもいいのだということもずいぶんあり得ることでございますので、これらの点については明日参考人によく聞くことにいたしますが、運用の面について、これはよほど考慮されなければならぬのではないか。経済法のことでございますから、これは運用でうまくいくのでありまして、われわれ法律家が心配するようなことはないかもしれませんけれども法律の面では心配する面がはっきり現われている法律である、こう思いますので、この点についてもよく聞きました上で、われわれもなお意見を申し述べたいと思っております。  もう一問ばかり。一般債権者の保護についてどういうふうな考慮をされておりますか。
  53. 平賀健太

    平賀政府委員 一般債権者の保護につきましては、この企業担保権実行手続の内部で、優先する債権者全部に弁済をいたしまして余りがあれば一般債権者にも配当をしてやるということで、この実行手続のところに規定を設けてありまして、これによって一般債権者が保護されることに相なるだろうと思います。ところが、優先する債権者に全部弁済して余りが出ないという場合には、これは債務超過で破産になるわけであります。一般債権者の場合におきましては、その破産の申し立てをするということで保護がはかられるのではないかと思います。と申しますのは、破産手続に入りますと、企業担保権実行はだめになる、企業担保権実行はできなくなるわけであります。そういう関係で、この企業担保法の中では、一般債権者にも債権の配当をするという規定を設けることによりまして、一般債権者の保護をはかっておる次第でございます。
  54. 長井源

    長井委員 これも重大な問題でございまして、一般債権といっても、単に金を借りるとか何とかいうことじゃなしに、商取引のしりというようなものもあるわけでございまして、それを、財産の方はいろいろな抵当権等の優先権がついておる、そこに総財産企業担保権がついておるということになりますと、ほんとうの信用という以外にたよることのできないようなことになるのではないか。今お話しの通り、優先弁済したら残るということでありますが、会社が倒れるときは残りがあるわけがないのでありますから、そういうときは、一般債権者は危胎に陥れられることになって、日常の取引というものに対して安全を欠くということはないでしょうか。その点いかがでしょうか。
  55. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいま御説明いたしましたのは、会社がどうにもならなくなって企業担保権実行をされるというような最後の段階のことを申したわけでございますが、日常の取引の過程におきましては、個々債権者というのは、もし会社から弁済を受けられなければ、個々財産に対して強制執行するということになるわけでございますが、これは自由にできるわけであります。もっとも、企業担保権者が企業担保権実行をはかりますと、これは仕方ございませんが、会社の資本なんかに比べまして少額の通常の取引から生ずる債権につきましては、一般債権者は、いかようにも、もし弁済を受け得なければ強制執行していい。その強制執行をした場合は、企業担保権者は、優先弁済権を持っておりますけれども個々強制執行の場合は優先権は主張できないというは仕組みにいたしておりますので、その点は一般債権者の保護に欠くるところがないのではないか。第二条の第二項で、会社個々財産に対する強制執行または担保権実行としての競売の場合には企業担保権者は優先弁済権を有しない、ということで処置をいたしておる次第でございます。
  56. 長井源

    長井委員 ただいまの場合、一人の債権者が強制執行するという場合にはよろしゅうございますけれども、多数の債権者がありまして、破産にまで至らない強制執行というようなことになりました場合でも、企業担保権によって確保された債権は弁済することができないというような状況がわかっておりましても、この企業担保権者は黙っておらなければならぬのですか。企業担保権者は見ておらなければならぬということになるのでしょうかね。それはいかがでしょう。
  57. 平賀健太

    平賀政府委員 社債の償還の期限が来てなければ、これは企業担保権者はまだ実行できないわけでございまして、この期限の利益の喪失という特約によりまして実行できる場合は別といたしまして、社債の償還が滞られていない限りは、企業担保権者としては黙って見ておらなければならぬということになるわけであります。その点は、銀行の方におきましても、そういう事態を見越しまして特約を設けることによって、手をこまぬいてばかりいなくちゃならぬという事態の発生は防止するのじゃないか。そういうところは、金融取引の実際の中でまかしておいていいのじゃないかというので、この法律の中では特にそういう規定は設けておりません。
  58. 長井源

    長井委員 破産になった場合は、ただいまのように全然この企業担保権実行ということは入らなくなってくるわけですね。そうすると、結局これは破産管財人の手に移ることになって、企業損保権の実行の管財人というものはないわけでございますね。そうなっておりますか。
  59. 平賀健太

    平賀政府委員 その通りでございます。企業担保権実行が始まりました後に破産の手続が始まりますと、手続が今全部破産手続の方に移ってしまいまして、企業担保権実行関係で選ばれておりますところの管財人の任務はそれで、終了するということに相なるのであります。
  60. 長井源

    長井委員 最後に一つ伺いたい。これはこまかいことでございますが、第四節の換価で、任意売却というものが入っております。総財産の一括競売または任意売却です。これは公告も何もしないでやることになりますか。任意売却の場合、何か特に任意売却をする条件がどこかにありますか。
  61. 平賀健太

    平賀政府委員 任意売却につきましては、特にこまかい規定は設けておりません。ただ、第四十五条におきまして、裁判所の認可を要するということにいたしております。そういう関係で、一括競売の場合のようなこまかい規定は特に設けておりません。
  62. 長井源

    長井委員 きょうはこれで終ります。     —————————————
  63. 町村金五

    町村委員長 この際発言を求められておりますから、これを許します。青野武一君。
  64. 青野武一

    ○青野委員 質問の前に、関係各省のお呼び申し上げた方が御出席になっておるかどうかを一つ委員長からお確かめ願いたいのですが、総理府法制局、科学技術庁、経済企画庁、農林省、大蔵省、法務省、以上六つの関係当局の御出席を昨日からお願いしてありましたが、御出席になっておりますか。
  65. 町村金五

    町村委員長 今法制局だけが来ておりません。あとは大体来ております。
  66. 青野武一

    ○青野委員 それではまず法務省側に御質問を申し上げたいと思います。  昨年の十二月二十七日の朝警視庁公安課は国家公務員法違反の容疑で数名の人を検挙した、その結果は処分保留のままに釈放したということを私は聞いておりますが、これは事実でございましょうか。
  67. 川井英良

    ○川井説明員 ただいま御質問のように、五名の人に対しまして逮捕状を執行いたしまして逮捕した事実はございますが、ただいま処分保留のままで釈放になったというふうなお話でございますが、五名のうち一名だけが釈放になっておりまして、残りの四名につきましては、勾留状が出されて、目下勾留して取調べ中でございます。
  68. 青野武一

    ○青野委員 それでも重ねてお尋ね申し上げますが、四月十一日の朝、公安一課が国家公務員法違反の容疑で数名の人を検挙して勾留処分に付して、ただいま取調べ中であるということでありますが、この人たちを初めとして、今新聞の報ずるところによりますと、経済企画庁や科学技術庁あたりが官憲のために家宅捜索を受けたということでありますが、大体どことどこと何カ所捜索を受けたのか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  69. 川井英良

    ○川井説明員 昨年の十二月二十七日に、この事件の第一回の捜査が、具体的にはただいまお話しの家宅捜索が行われまして、それから、そのときに押収されましたいろいろの証拠品を検討の結果、容疑が明らかになって参りましたので、四月十一日に至りまして、先ほどの数名に対しまして身柄の拘束が行われ、その際同時に二回目の家宅捜索が行われたということになっております。そこで、第一回の昨年の十二月二十七日の家宅捜索は、たしか八カ所について行われたと報告を受けております。それから、今回の十一日に行われました分につきましては、まだ詳細な報告を受けておりませんが、やはり数カ所に対して同じような捜索が行われたものと考えております。
  70. 青野武一

    ○青野委員 よくわかりました。それで多少商業新聞と内容が異なっておりますが、それでは、十二月二十七日の朝に容疑のために検挙せられ、四月十一日の朝、公安一課が数名の諸君を拘束されましたが、その名前はだれとだれであるか、そうして、大体その人たちの略歴をお知らせ願いたい。農林省は瀬戸山政務次官、経済企画庁は宮川官房長が御出席になっておりますから、それぞれ、その人の大体の略歴でよろしいのですが、経済企画庁の計画局の専門調査員というような人もおりますし、科学技術庁の原子力局に勤めておる人もありますし、大蔵省の管財局の管理課に勤めておる人もあるようでありますから、それぞれその人たちの名前、それからその人の大体の経歴というものが、ぜひ質問をする前提として私は必要と思いますので、お示しを願いたいと思います。まず、川井公安課長から、大体この名前がだれとだれであるかということを一つお答えを願っておいて、それから、それぞれ関係各省の責任者の方から、たとえば林雄二郎はどういう経歴であって、矢島不二男はどうういう経歴であるかということを、簡単でよろしゅうございますから、お示し願いたいと思います。
  71. 川井英良

    ○川井説明員 五名の人の名前でございますが、農林省の関係で早野正夫、経済企画庁の関係で二人ございまして、一人が矢島不二男、他の一人が林雄二郎、大蔵省の関係で一人ございまして、小林昭治、それから、科学技術庁の関係で一人ございまして、長谷川誠一、五名になっております。
  72. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 経済企画庁の分を申し上げます。家宅捜索を受けました者の氏名はただいま担当当局より御説明いたしましたように、林雄二郎、矢島不二男の両名でございます。  林雄二郎は、昭和十五年東京工業大学を卒業いたしまして、当局技術院に入りましたが、経済企画庁の前身であります経済安定本部の部員といたしまして昭和二十二年に入っております。その後ずっと経済安定本部におりまして、その機構改革がございまして、昭和二十八年の十月に経済審議庁の調査官に任命いたしておりまして、計画部付を命ぜらております。職務は長期経済計画に関する事項を担当いたしております。その後、内部の機構の改変に伴いまして、若干の官名、あるいは担当事項の変更がございましたが、おおむねその後長期経済計画、それから統計に関する事項等を担当して今日に至っております。  いま一名の矢島不二男は昭和二十二年経済安定本部主事を命ぜられまして、生産局化学第一課勤務になりまして、化学肥料、アンモニア精製品の生産、流通、消費に関する施策一般についての所掌事務を担当いたしております。昭和二十四年に経済安定本部技官となりまして、やはり生産局の化学課勤務になっております。二十七年の調査部調査課勤務となりまして、担当は産業班におきまして化学工業を担当いたしております。さらに、三十年に至りまして、計画部計画第一課に勤務いたしまして、鉱工業を担当いたしております。その後分課制を廃止いたしまして、計画部付となりまして、長期経済計画に関する業務のうち、化学工業、軽工業に関する事務を担当いたしております。その後若干の機構改画がございましたが、職務の担当といたしましては、おおむね長期経済計画のうち、鉱工業部門、軽工業に関する調査等の担当をいたしております。
  73. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 先ほどお話に出ました農林省関係の早野正夫君でありますが、ただいまこまかい資料を持っておりませんので詳細なことは申し上げられませんけれども、早野君は終戦後農林省の総務局に入ったのであります。その前は満州国の官吏ということになっております。一時、約一年半か二年程度でありますが、通産省に出向しておりまして、その後農林省に帰りましてからは、農地局の愛知用水公団の監理室の勤務を兼ねて農林経済局組合検査課の事務官をしておった、こういうことであります。
  74. 原田久

    ○原田政府委員 科学技術庁関係の者の略歴を申し上げます。長谷川誠一と申しまして、大正十五年生まれの者でございます。昭和二十二年に立教の理科専門学校を卒業いたしまして、二十三年六月に通産省に入りました。所属は軽工業局の無機化学課でございます。昭和三十一年四月に原子力局のアイソトープ課に参りまして、現在はアイソトープ課の障害防止第一係長をしております。
  75. 青野武一

    ○青野委員 この検挙せられて取調べをされております人々について大体経歴はわかりましたが、大蔵省関係説明員が今御出席になっておらぬそうですから、あとから、御出席になってからでけっこうですから、委員長においてしかるべくお取り計らい願います。  この二回にまたがって、公安一課の手によって公務員法の違反容疑によって検挙せられて、今取調べを受けておりますが、国家公務員の違反容疑は同法の第百条、「職員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と、こう書いてありますが、この国家公務員法の百条のこの規定によって検挙、お取り調べになっておることは間違いございませんか。これは一つ川井公安課長にお尋ねいたします。
  76. 川井英良

    ○川井説明員 さようでございます。
  77. 青野武一

    ○青野委員 ではお尋ねいたしますが、この国家公務員法の第百条は、職員が職務上知ることのできる秘密を漏らしてはならないということでありますから、これはよくわかります。読んで字のごとしです。だが、職務上の秘密ということや秘密文書というものを認定する係りの人は、大臣でありますか、次官でありますか、あるいは局長か課長か、その点は、その人の考え方によっては公務員法を拡大して解釈せぬとも限りません。当該政府官庁のどういう人が秘密文書であるということを認定なさるのか、そこの点を一つ明らかにしておいていただきたいと思います。これは、法務省も農林省も関係をしておりますので、御出席になった責任者の方から一つ明らかにしておいていただきたい。
  78. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 国家公務員法の第百条に秘密ということが出ておりますが、農林省の関係について申し上げます。農林省におきましては、昭和十八年に農林大臣の訓令が出ておりますが、その規定におきましては、人事上の秘密文書、こういう文書には秘密の「秘」の印を押す規定があります。ほかには、いわゆる秘密の定義についての法律規則はございません。実際上の取扱いといたしましては、その事項を担当いたしておりますあるいは大臣その他でありますけれども、局長または課長においてその事項が秘であるかどうかの判断をして、「極秘」あるいは「秘」あるいは「部外秘」という判を押して秘密事項であるということを示す、そのほかには、必ずしもそういう表示をいたしませんけれども、事務取扱い上、局部、課長において秘密事項であることをその担当の課員に示す、こういう実例になっております。
  79. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 経済企画庁におきましては、その前身でありまする経済審議庁時代におきまして訓令が出ておりまして、秘密保全に関することが定めてあります。秘密事項といたしましては、おおむね農林省と同様、機密、極秘、秘、部外秘及び人事に関する人秘と分けられておりまして、これらの秘密区分につきましては、当該秘密事項が機密または極秘に属するものにつきましては、当該事項を所掌する部の長、その他のものにつきましては、当該事項を所掌する者または当該事項の処理を命ぜられた者が指定することになっております。
  80. 原田久

    ○原田政府委員 科学技術庁の方を申し上げますが、科学技術庁では、昭和三十一年八月一日に科学技術庁訓令第二号をもって科学技術庁文書取扱規程というものを制定しております。その規定によりまして、秘密に関しましては三つの種類分けをきめております。機密、極秘、秘と三つの区分をしております。そして、この秘の扱いをするということの判断につきましては主管課長が認定するという規定を、設けておりまして、それに基いてやっております。
  81. 青野武一

    ○青野委員 ただいま法制局の野木第二部長が御出席になったということでありますから、第二部長にお尋ねいたしますが、それぞれ関係各庁の御出席になっておる方の御説明を今求めましたが、これは、具体的でないと、どの程度のものが秘密文書でどの程度のものが秘密文書ではないということが非常に困難で、たとえば、私ども委員会を開くに当りましても官庁に対して資料の入手を求めるとか資料の要求をやるし、それからまた、官庁あたりもわれわれ代議士に対していろいろな点から説明をする場合に、秘密文書がどの程度に具体的に限定せられておるかということを頭の中に入れておらないと、ややもすると逸脱して非常に秘密に属することを答弁するかもしれない。相手が国会議員であるからいたし方ないといえばそれまでですが、そういう限界がはっきりしないと困る。各官庁によっては、課長が認定する、あるいは局長が認定するということで、初めから秘密文書というものは大体限界を作ってあるということはよくわかりますけれども、問題によっては、その一当該課長が自分の課員が秘密文書を漏洩した場合には直ちに課長の手によって認定してこれをやるということは非常に危険性を伴うことでありまいす。そこで、たとえば今回の事件につきましては、具体的には、大ざっぱでかまいませんが、項目別にあげるとどのようなことが秘密文書を漏洩したのか、これを流したのか、それを一つ説明願いたいと思うのです。秘密文書であるということが大体において規定されておりましても、今回の事件はどのようなことを結局共産党関係諸君に資料として流したか。新聞によりますると、日共の官庁スパイ事件として大きく取り扱われておりますが、私どもの入手いたしました情報によりますると、前もって商業新聞と緊密な連絡のもとに大々的に宣伝をするのは、何か選挙の前哨戦につながりがあるようにも考えられる。今度の裏作に限って非常にこれを誇大に取り扱っている。その内容は、一体どういうものが秘密文書であり、どういう点が国家公務員法の百条に抵触しておるのか、その点を一つお聞きしたいと思います。その前提で、野木第二部長に対し、大体どのようなことが、たとえばどのような問題は秘密文書に属するのですという具体的な御説明を願えれば、これに越したことはないと思いますが、いかがでございましょうか。
  82. 野木新一

    ○野木政府委員 具体的的事項と申しますと、急の答弁に多少苦しむわけでありますが、国家公務員法にいういわゆる官庁秘密というものは究極にだれが認定するかと申しますと、同法百条二項に現われているように所轄庁の長ということになるだろうと思いますが、所轄庁の長は先ほどもここで御説明申し上げましたように、それぞれ訓令で下級の官吏に認定権をまかしておるというような状況になっておると思います。その場合において、何を官庁秘密とするかということは、大体長年の行政慣行等によって一応きまりつつあると思いますが、具体的には、その各省長官なり各省のそれぞれによって、あるいは個々の場合においては多少ニュアンスがあり得るとも存ぜられます。ただ、今度の事件につきましては、私新聞でそういう事件があるという程度のことをちょっと見た程度で、あまり関心にもとめませんでしたし、また事件の内容はもちろん警察から知らされておりませんので、具体的の事件につきましては、どうも、どうということは答弁いたしかねるわけであります。
  83. 青野武一

    ○青野委員 重ねて川井公安課長にお尋ねいたしますが、今第二部長にお尋ねいたしました前提として私の意見を少し申し上げたように、今度の事件は、大体私どもの聞いております範囲では、日比賠償の物資のリスト、日比交渉の簡単なメモ、七%作業案、社会党の五カ年計画批判の四つの資料を何か含めていろいろ問題があったように聞いておりますが、大体その辺が秘密文書資料を流したという容疑の中心ではないかと思います。この四つの資料を中心にして今度の事件が検挙せられて取調べが続行しておるというように私どもは聞いておるのですが、きのう弁護士団を中心といたしまして社会党の法務部会というものを慎重に開きました結果の質問でありますので、かなりの資料は社会党としても手に入れておりまするし、いろいろな関係も大体握っておるのですが、一つ腹蔵のないところを、今私が申し上げたような点を中心にして、今度の事件はこういうことが問題になっておるんですという、もっと掘り下げた具体的のことを一つお聞かせ願いたいと思います。
  84. 川井英良

    ○川井説明員 ただいま身柄の拘束をいたしまして、具体的な事件の捜査に入ったところでございまして、その事案の内容の詳細につきましてある程度の報告は私ども検察庁を通じて受けておりますが、まだ取調べは、先ほど仰せの通り警視庁の取調べの段階になっておりまするし、それから、新聞にもいろいろ大きく取り扱われておるようでございますが、法務省並びに検察庁としては、まだその事案の内容について発表などした事実はございません。かような関係になっておりますので、ごく掘り下げた腹蔵のない事実の詳細をという仰せでございますが、捜査中で、具体的な事案であるというふうなことと、まだ検察庁の段階に来ていないというようなことで、あまり立ち入ったところは一つごかんべんを願いたい、こう思うわけでございます。ただ、私ども聞いておりまするところでは、今おあげになりましたような表題のある文書がその対象として問題になっておるようには聞いております。ただ、そのほかにも、当初に申し上げました通り、昨年の暮れにやりました家宅捜索の結果、相当ないろいろな資料が押収されておりまして、さようなものを順次検討をいたしまして、関係官庁と連絡をとりつつ、だれがいかなる手続に基いていかなる必要から秘密の指定をしたか、それが実質的に秘密として保護するに値するかどうかというようなことを、捜査当局におきましては検討しつつ捜査を進めておると、かようなことに相なっておりますので、その程度で一つ御了承賜わりたいと存じます。
  85. 青野武一

    ○青野委員 大体捜査中のことでありますので、法務省を代表しての御答弁としてはなるほど私の質問にお答え願いますことは非常に困難があろうと思います。新聞によりますると、日本共産党の党員である堀江壮一君に秘密資料を流したという容疑がある、その容疑の内容は、私が大体申し上げましたように、日比賠償物資リスト、日比交渉メモ、七%作業案その他でございますが、これは大体はずれはないと思います。政府委員委員会等に御出席になって委員の質問に懇切丁寧に答弁するときには、この程度のことは答弁の内容に言っても差しつかえないのではないかという程度のものが、今度検挙の対象になったように私どもは聞いておるのでありますが、新聞によりますると、共産党の堀江さんという人に秘密資料を流した、しかも家宅捜索の結果は共産党員であるという確証を握った、断定的にそういう記事も出ておりますが、この点はどうでございましょうか。たとえば、林さんあたりは、新聞記事によりますると、共産党員の堀江さんに情報を流した、しかも、家宅捜索の結果あらゆる資料によってはっきり党員であるということの確証を握っておるというような断定的な記事も出ておったのですが、こういう点が社会に与える影響力——共産党がまた何か問題を起した、しかも公務員がその党員であって、非常に密接な関係を持っておった、だからこういう連中にだまされちゃいけない、選挙は目の前に来ておる、こういうように私どもやはり一面からとれるのです。実際は中身は大したことはないが、一課長とか、部長とか、局長とかが、自分に所属するところの職員を統制していくために、これは秘密文書であった、それをどうしてこういう外部に流したかといって、狭い範囲で認定をしておいて、宣伝だけは全国的にやる。よくあるんです。私はここに持っておりまするが、最近の事件を十四、五拾ってみましても、たとえば新潟県の六日町の警察が社会党の労働組合を調べた。これは作業簿を中心にして調べた。そういう項目をずっと一から十五まで私は具体的に調べている。それがみなとにかく泰山鳴動してネズミ一匹。何か大きな問題があったから検挙して調べておるんだといって、調べてみたけれども、実際は何も出てこなかった。そういうような事件が、私はお聞きになれば申し上げますが、最近の警察の行き過ぎが十五項目も出てきている。そういう点について、どういうところで、どういう関係で、どういう内容で今容疑を調べておるんだということが、やはり新聞を読んだ者にもある程度納得のいくようにしないと、一方的に警察が勝手に認定する、秘密文書も一課長、一部長が勝手に認定してやるということになれば、迷惑を受ける者はその本人たちだけではない。そういう点を一つ考えてみていただかないと、まじめな官吏たちの意見の交換なんか将来非常に困難になるし、また、進歩的な学者あたりが、官庁の嘱託であるとか、行政委員会委員等に出ている場合には、もう全然何も言われないというような一つ規定がそこにできてしまう。箱根の関所が簡単に通れないように、一応職員のような待遇を受け嘱託になった場合に、官庁のことはもう何にも言われない、言わない主義をとらなければならぬというようなことになれば、それは将来大へんなことになると思います。そういう点について、やはりこれは一種の言論弾圧であり、思想統制のためにやられたのではないかと私どもは考えるのですが、一つもっと——私はおっしゃれないことを御答弁願いたいとは申しません。けれども、事件を疑惑の中から解明への道をとろう点すれば、やはりある程度はおっしゃっていただかなければ困ると思いますが、どうでございましょう。
  86. 川井英良

    ○川井説明員 同じことを繰り返して申しわけございませんが、四月の十一日に逮捕状が執行されまして、それから四十八時間警察の方の調べがございまして、おとといの四月十四日に検事の方から裁判所に対しまして勾留の請求をいたしまして、ただいま勾留をしたところでございまして、検察庁といたしましてまだ本格的な取調べがございませんので、果してその中の何人が共産党員であるとか、あるいはどういうふうな文書を的確にあれしたかというような詳細は、まだ私ども法務省の方には報告が来ておりませんし、私自身も、むしろその点は新聞の記事を見て、こういうふうなことがあるのだろうかというようなことを考えている程度でございますので、もうしばらく時間をかしていただかなければ、そのようなことは私ども法務省としてはちょっとお答えいたしかねる状況でございます。
  87. 青野武一

    ○青野委員 大蔵省の代表者の方、お見えになりましたか。
  88. 町村金五

    町村委員長 見えたようです。
  89. 青野武一

    ○青野委員 見えているなら、小林昭治君の経歴についてお聞きしたいと思います。ほかの関係代表者の方にみな検挙され逮捕された者の経歴を言ってもらっておりますので、小林昭治という人の経歴をお聞きしたいと思います。
  90. 石野信一

    ○石野政府委員 小林昭治、昭和二年六月三十日生れでございます。学歴は、目黒の工業学校の機械化を昭和二十年三月に卒業、役所の職歴は、昭和二十一年の九月三十日に外務省の雇として大臣官房文書課に勤務いたしまして、それから二十四年六月一日に賠償庁の雇として長官官房秘書課勤務、それから賠償庁雇のままで二十五年の九月に特殊財産部総務課、それからこの仕事の方が大蔵省に移管されましたのに伴いまして、昭和二十七年の四月二十八日に大蔵事務官になりまして、管財局の外国財産管理課のドイツ財産管理係に勤務いたしております。その後ずっと管財局におりまして、ことしの四月一日現在では管財局の管理課の財産調査第二係の係員でございます。
  91. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連質問をいたします。  これは野木さんに一つお尋ねしておきたい。国家公務員法の第百条の「秘密を守る義務」、及び国家公務員法の八十二条の「職務上の義務に違反し」、こういう言葉がある。そこで、この八十二条の職務上の義務というのと、百条の秘密を守る義務、結局この秘密を守る義務は義務上の義務なのかどうか。その百条の秘密というのは何をいうのか。それから、この秘密を守る義務が八十二条の二号の「職務上の義務」ということに入るのかどうか。  実は、この前、高田という行政管理庁の公務員が「不正者の天国」という本を書いた。しかるに、この本を書いたということでこの人は免職になっておる。そこで、一体、この公務員の秘密を守る義務というのはどういうものなのか、その範囲はどうなのかという質問を決算委員会でやっておりましたが、はっきりしない。そこで、これは法務委員会で事を明らかにしなければならぬと思うのです。実は、本日法務委員会でこういう質問が行われることを私知らなかったものだから、きょうはアウト・ラインだけ聞いていただいて、そうしてもう一回法務大臣と法制局長官の間で政府の見解を統一してはっきりした基準を示されたいと思うのです。なぜならば、これが簡単な問題じゃないのです。今どこの官庁にも憲法二十八条に基く職員組合というものができているのでありますが、場合によってはこれを全部切りくずす一つの手段に使われる。そうして公務員というものに対してまた昔の天皇の官吏のような性格つけをするおそれもあるのです。これが乱用せられますと驚くべきことになる。ことに、今お聞きすると、課長だとか何とかいう者が勝手にこれは秘密だと認定して、その義務に違反したと判定を下すという。そういうことはむちゃです。公務員という重大なる地位にある者に対して、そんなに簡単に首を切ったり、簡単に義務違反で検挙したりするようなことを、そこの課長級で簡単にやっちまう、これは公務員の地位を脅かす大問題だと思う。そこで、私は、高田君の問題や、今また同僚青野君が質問したような、とかく現在問題になっているこういう公務員の秘密漏洩というものに対する政府としての統一した見解を確立していただきたいと思う。  その意味において、まず、この国家公務員法の百条の「秘密を守る義務」の「秘密」とはいかなるものか。なお、私の質問の前提として申し上げますが、現在の公務員というものは昔の官吏と性格が違っているはずなんです。これは公務員法の九十六条の「服務の根本基準」というものにも書いてある。「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」、この「国民全体の奉仕者」ということは、憲法に規定があり、それを受け継いだ明確なる基準であります。国家公務員法に書いてある。しかるにかかわらず、いたずらに、自分の官庁の便益や、くさいものにふたをするような場合において、これは秘密だこれは秘密だといって、これを首にする。高田君の場合のごとき、まさにその通り。彼は、国民の奉仕者として、官庁のかような不正事実を国民に知らしめた。汚職の根絶はそれなくしてはできません。みんな官庁の上の者と下の者とが結託してくさいことにふたをしてしまったならば、国民の前に官庁のあり方というものは明らかにならない。これが汚職というものが根絶できない根本原因です。官庁の内部の行動がガラス張りで国民の前にさらされておりますならば、悪いことはできないのです。それをみんな上の者が下の者をかばう。下の者は上の者のきげんをとるために口をぬぐっておる。ここに官庁の秘密が生じ、ここに腐敗ができる。高田君はその意味においてあの著書を著わして、しかも大部分は正式なる行政管理庁の調査事項を明らかにしたにすぎない。それを、この官庁の秘密を漏らした、義務を守らないというようなことで免職になってしまったり首を切られてしまったが、それはやはり、公務員というものを局長や大臣の下働き、天皇の役人だと見る、こういう昔の官僚思想というものが抜け切れぬために、この「秘密」の解釈が違っているのじゃないか。官庁の秘密とは何ぞや、国民のために秘密を守るべきことなんです。国民のための秘密なんだ。しかるに、国民のためになるような行動を秘密と称して、これを処罰し免職にする。基準が違っておると思う。  そこで、あなたから、九十六条の「服務の根本基準」、百条の「秘密を守る義務、」八十二条二号の「職務上の義務」、こういうものを総合した御解釈を願いたい。
  92. 野木新一

    ○野木政府委員 まことに根本的の御質問でありまして、十分慎重に答弁しなければならぬと存ずる次第であります。しかし、一応私のただいまの御質問に対するお答えを申しますれば、九十六条におきましては、御指摘のように、新憲法下の公務員は、旧憲法下の公務員と違いまして、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、職務の遂行に当っては全力をあげてこれに専念しなければならない、そういうことになっておるわけであります。従いまして、官庁に職を奉ずる者は旧憲法下におけると違いまして、この九十六条の精神を体して公務に従事しなければならないことは言うまでもないと存じます。ただ、官庁の職員がすべて頭が切りかわっているかどうかという点につきましては、これは官庁自身としては相当努力しておるわけでありますが、具体的な問題でありますから、それぞれの立場で批評されるのはいたし方ないと存じます。  次に、百条の「秘密を守る義務」の「秘密」とは何ぞや、この秘密という点につきましても、たとえば防衛秘密保護法などを制定する際に、秘密とは何ぞやということについていろいろ議論になったところであります。旧憲法時代におきましては、軍機保護法とか軍用資源秘密保護法などをめぐって、秘密について規定し、そういう角度から論ぜられたことがあるわけであります。新憲法下になりましては、秘密に関する規定というのは、旧憲法下よりは非常に少くなりまして、公務員につきましては、百条、そのほかに、先ほど申し上げました防衛関係の秘密保護法ですか、あれもこの特則とでも言いますか、かぶってくるわけでありますが、まず百条を基準にして申しまれば、秘密というのは、やはり国として一般人に知らせることを禁止した事項とでも一応定義したいと存じます。従いまして、何を一体いわゆる秘密にするかということにつきましては、先ほどから申し上げましたように、所轄庁の長が一応最高の責任を持って認定できるわけだと存じますが、実際の取扱いにおきましては、それぞれの訓令をもちまして、それぞれの部課の課長あるいはその事項を担当する者に一応委任しておる、そういう関係になっておると存じます。これは、事務の遂行上、官庁事務としてはあるいはやむを得ないところとは存じます。しかしながら、御指摘のように、何を秘密にするかという点、すなわち訓令をもって何を秘密にするかという点についてはいま少し検討したらどうかというと、これはいろいろの点であるいはなお反省するという点も理論的には考えられると存じます。それから、下級の課長とか当該係官が秘密を一応認定するのはけしからぬじゃないかという点でありますが、これも、その上級者はおそらくその指定が不都合だったならば解除することができるわけであります。また、一たん指定されたとしましても、場合によっては、時間の経過によって一般に公知の事実になれば、秘密がおのずから解ける場合もあります。また、そうでなくとも特に外部に発表するのはよいというような場合には、それぞれの上司の許可を得て発表する、そういう手続が残っておるわけであります。ただ、何を秘密にし、また秘密をいかなるときに解除するかという点につきましては、いま少し考えたらどうか、いま少しどうかしたらどうかという点は、もちろん議論の余地はあるかとも存じます。  最後に、八十二条の職務上の義務違反になるかどうかという点につきましては、一応私は、秘密を守る義務ということ、それに違反をすれば、職務上の義務に違反したということになると考えております。
  93. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたとしてはそれだけの答弁だと思いますが……。
  94. 野木新一

    ○野木政府委員 なお、私今申し上げましたのは、きょうは実は突然出て参りまして、十分打ち合せもしてきませんものでしたから、その程度でお聞きおきを願いたいと思います。
  95. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 野木法制第二部長の趣旨もよくかりましたが、きょうはここに各役所の幹部諸公がみなお見えになっております。そこで、各役所と、それから法制局あるいは法務省と連絡をとられまして、政府の見解として、国家公務員法の第百条の秘密の基準、及び範囲、及びその判定者を何人にするかということについて、もっと明確なものを打ち出していただきたい。一片の訓令で、秘密であるやいなやを勝手に課長級が判定して、認定されたとたんに、その公務員は一年以下の懲役に処せられるのです。あるいは懲戒処分になって首が飛ぶのですよ。かようなことは、どうもやはり昔の官僚国家、天皇の官吏といわれた時分と同じ頭でやっていられるのじゃないか、私どもはそこに不満があるのです。憲法の規定、あるいは国家公務員法の服務の基準なりとして示されたものについて、役人諸公は頭が直っておらない。昔と同じ旧態依然たる頭を持っておる。私は行政管理庁の高田君の事件であきれ返った。昔と何も違ってないのです。封建国家ほど、あるいは独裁国家ほど、あるいは軍事国家ほど、警察国家ほど、この秘密というものの範囲が拡大される。また、これを犯す者に対する処罰は峻厳である。民主国家であり、自由国家であり、人格尊重の国家、基本的人権の尊重の国家ほど秘密というものは少いわけなんです。ことに、日本の憲法のごとく、戦争を一切放棄し、兵備を備えることができない、軍備を持つことができないという憲法を持ち、国民の奉仕者としての公務員の地位というものは憲法上確立せられているにかかわらず、その解釈は昔と同じような態度をとっておる。何が一体秘密なんというものがあるのですか。戦争のさなか、軍事国家の場合には機密が高度になることもやむを得ないでございましょう。平和国家の今日、一体役所の機密とは何だ。国民の前に知らせることが国民を裏切るようなことが秘密だ。それはいけない。それを明らかにすることが国民全体の奉仕者としてふさわしくないような行動ならば、それは秘密です。しかし、国民に知らした方がいいのだという場合でも、なお、官庁のセクト主義から、自分たちの特権意識から、それを秘密にして、極秘でござい、秘でございますと、やたらに判こを押しまくって箝口令をしいている。それは役人の諸君には都合がいいでしょう。都合の悪いことは部外には出さぬようにしておく。それだから、幾らやったって役所の汚職は絶えないのです。諸君らは恥かしいとお思いになりませんか。何ぼやったって官庁の汚職は浜のまさごのごとく絶えない。石川五衛門をして喜々たらしめる。それは何にあるか。私は、根本的のこの中心は官庁の秘密主義にあると思う。官庁のやっていることが国民と直接しておらない。国民主権主義の今日において、まるで天皇の官吏みたいな頭でもって諸君は仕事をやっておられるとすれば大いに間違いであるが、この国家公務員法の解釈についても、どうもそういう頭でやっているのではないか。そして、自分たちに都合の悪いことは秘密だといって、それを犯したといってその人を首切る。もってのほかだと思う。昔の官吏諸公はいわゆる官僚というものの組織体を作っておられた。私も、自分のごく近親者がその一人であったから、よくその実体を知っております。もちろん長所があります。みんなお互いに相互扶助をやっている。たとえば、内務省の役人であったとすると、みんな相互扶助をする。やめたあとまでその人の就職の世話を同僚なり上官がやっている。これは美点だと思うのでありますが、その弊害は、今度はお互いに攻守同盟を結んで、お互いに悪いことは人民に知らせない、国民に知らせない、そしてお互いに自分の保身の術を全うしている。これが弊害であります。緊密に役人の諸君が連絡をとって、相互扶助までやっているのはいいが、とんでもない相互扶助もやってしまう。こういうことでは汚職の粛正ができないのでありますが、それには、この秘密というものの解釈、それが重大な問題だ。今日、官庁の汚職を根絶するには、内部からどんどん不正を摘発してもらわなければだめだと思う。われわれがどんなにあせりましても、内部のことはわからないのです。だから、内部のことで目に余るものがあったら、内部の人たちがどんどんそれを国民の前に公表する、そうしたら悪いことはできなくなる。こういう態度をとったなら、検察庁をわずらわすまでもなく官庁の粛正は期して待つべし。しかるに、その障害をなすものは国家公務員法百条であり、あるいは八十二条であります。ゆえに、この解釈の基準というものは、新憲法にふさわしいものでなければならぬ。すなわち、軍備を持ってはならないのだから、軍の機密なんてあり得ない。どこの国だって国家の機密なんてものは軍の機密であります。その軍というものがない以上、軍の機密なんてないはずなんです。また、国民全体の奉仕者という考えからすれば、天皇の秘密だとか上官の秘密なんてあり得ようはずがない。そうすれば、この秘密なんてものは縮小解釈さるべきものであります。しかるに、近ごろ、秘密保護法なんてものを作らなければならぬなんて、とほうもないことを言い出して、こういう官庁の公務員の大量の検挙もその前提じゃないかという心配をわれわれはするのであります。かような意味におきまして、私どもは、どうか至急政府が中心となってこの秘密の解釈を確定してもらいたい。そして、秘密だと断定して人の首をちょん切ることのできる者はいかなる地位の者であるか、これは相当の人権問題でありますから、ほんとうに上部の責任の中心者でなければならぬと思う。そういうふうなただ一片の訓令で勝手に首切ることのできることをきめるものがあっていいのかどうか。また、今各官庁にお聞きしても、極秘だ、部外秘だと、いろいろな名前の判こを押されている。こんなものも統一してもらいたい。何のことかわけがわからぬ。どうもああいう「秘」という判こを押すことが好きなんだね。わけがわからぬね。昔の慣習だと思うな。そこに一種の特権意識を満足させ、そして場合によればお互いの攻守同盟で世間にくさいものを出さぬ、そして自分たちだけが知っておって国民に知らさない、民はよらしむべし知らえしむべからず、こういう頭が今の役人諸君にある。それでなければ、みずからこの国家公務員法百条の解釈につきましてもっと民主的な憲法に沿うような解釈をとらなければならぬのであるが、昔と同じ解釈をやっておる。  法務大臣もお見えになりませんし、野木さんも突然おいでになったので無理もないと思いますが、法務省法制局、その他の各機関にもっと相談されまして、秘密とは何ぞや、その秘密の断定を下すものはいかなる機関がすることが妥当であるかというようなことにつきまして、私は徹底した解釈のもとの御答弁を求めたいと思うのです。きょうおいでになりました方々は、みな法務省のような法律解釈を主とするような官庁の方でもありませんので、私今質問をいたしませんが、おのおのその官庁の諸君もお互い考えていただいて、そうして秘密の範囲を決定していただきたい。秘密なんていうものは、日本の憲法下においてはないはずだと僕は思う。国民を本位に考えたら、ないはずだ。あったとしても、よほどの国家国民全体に危害を与えるものでなければならぬはずなんだ。そういう観点から御検討を願いたい。これを私は御注文として申し上げておきます。  それから、今回の具体的の事件につきましては、今捜査中であるから答弁ができない、これも無理もないと思いますので、なお事件が進展してから質問したいと思いますが、法務委員会といたしましては、国家公務員法の「秘密」の範囲をどこまでも確立しておきたい、これを要望いたしまして私の質問にかえます。
  96. 青野武一

    ○青野委員 大体同僚猪俣委員からお話のありましたように、かなり掘り下げて、もう少しもう少しというので御答弁を伺っていたのですけれども、急の質問でもあるし、大体捜査中の関係もあって、本日御出席になった方々は相当責任のある地位にあられる方々でありますので、そう私の質問の通りに納得のいくように御答弁のできなかったことは、私も大体了承するのであります。しかし、今申しましたように、秘密保護法を制定する前提条件としてこういうようなでっち上げが行われたのではないか、あるいは官庁に再びレッド・パージが襲いかかるようなこういう問題を、そのためにことさらに針小棒大に大きく取り上げたのではないかという疑いは相当残っておるわけであります。  そこで、法務大臣が参議院の法務委員会関係で御出席にならないのはまことに遺憾でありますが、総理府の法制局長官なりあるいは法務大臣なりの御出席を求めて、ここに御出席の方の御答弁のできない点をもう少し問いただしてみたいと考えますので、本日のところは私はこれ以上は御質問申し上げるわけにいきませんが、その点委員長において一つお含みの上、次回の委員会に法務大臣の出席ができますようにお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  97. 町村金五

    町村委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会      ————◇—————