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1958-04-23 第28回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十三日(水曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 稻葉  修君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 山中 貞則君    理事 佐藤觀次郎君       北村徳太郎君    千葉 三郎君       渡海元三郎君    灘尾 弘吉君       並木 芳雄君    山口 好一君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       鈴木 義男君    高津 正道君       辻原 弘市君    野原  覺君       平山 ヒデ君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君  委員外出席者         参議院議員   秋山 長造君         参議院議員   野本 品吉君         文部事務官         (初等中等教育         局財務課長)  安嶋  弥君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 四月二十二日  委員辻原弘市君及び山崎始男辞任につき、そ  の補欠として小牧次生君及び木下哲議長の指  名で委員に選任された。 同月二十三日  委員木下哲辞任につき、その補欠として辻原  弘市君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  著作権法の一部を改正する法律案参議院提出、  参法第六号)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(秋  山長造君外二十一名提出参法第一六号)(  予)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(参  議院提出参法第一六号) 同月十九日  養護教諭必置に関する請願五島虎雄紹介)  (第三一三三号)  甲西中学校体育館建設に関する請願今井耕君  紹介)(第三二二五号)  児童文化施設特別助成法制定に関する請願(加  藤鐐五郎紹介)(第三二五六号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第三二五七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  著作権法の一部を改正する法律案参議院提出、  参法第六号)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(参  議院提出参法第一六号)  教職員勤務評定に関する件      ————◇—————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため欠席いたしますので、その指名により理事の私が委員長の職務を代行いたします。  まずへき地教育振興法の一部を改正する法案律議題といたします。提出者より趣旨説明を聴取いたします。参議院議員秋山長造君。     —————————————     —————————————
  3. 秋山長造

    秋山参議院議員 ただいま議題となりましたへき地教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表いたしまして提案理由内容概略を御説明申し上げます。  へき地教育振興法は、憲法に規定されております教育機会均等趣旨にのっとり、僻地における教育振興する目的をもって積極的な対策を講ずるため、去る第十九回国会において制定されたのであります。しかるに、本法施行以来すでに四ヶ年になんなんといたしておりますにもかかわらず、僻地におきましては、小規模学校が多数を占めております関係上、依然としてその施設、設備の整備は不十分であり、しかも教職員を確保することも容易でないという現状であります。  さきに、本法成立の際、本院文部委員会は、「へき地教育に対する総合的恒久的振興策を樹立すること」の附帯決議をいたしておりますが、この決議趣旨にかんがみ、今回、国の地方公共団体に対する補助対象を拡大するとともに、僻地学校に勤務する教員及び職員の特殊勤務手当の増額、その他の措置を講じて、僻地における教育振興をはかることが必要であると考えまして、ここにこの改正案提出いたした次第であります。  改正案内容の主な点について申し上げますと、まず第一点は僻地学校の定義であります。すなわち現行法におきましては、「交通困難で自然的、経済的、文化的条件に恵まれない山間地、離島、その他の地域に所在する公立の小学校及び中学校をいう」とあり、交通困難という大前提のもとに自然的、経済的、文化的、僻地性を形成している各要素がその条件となっておりますため、僻地学校がまず交通困難性によって決定されている現況でありますが、このことは必ずしも実態に沿わない点もありますので、僻地性を形成している諸条件交通条件とを並列させるように改めたことでございます。  第二点は、市町村任務として、僻地学校健康管理及び通学改善につき義務規定を設けるとともに、僻地教育振興をはかるための事務について都道府県任務を明確にしたことでございます。  第三点は、へき地学校指定基準文部省令で定めることとし、新たにへき地手当支給に関する規定を設けるとともに、そのへき地手当支給についての都道府県がよるべき基準を定めたことでございます。  第四点は、市町村が行う事務に要する経費及び都道府県が行う事務のうち、へき地学校に勤務する教員養成施設に要する経費について、国の補助率をそれぞれ二分の一と明確に規定したことでございます。  なお、附則におきまして、施行期日昭和三十四年四月一日とし、本法施行後、都道府県へき地手当に関する条例制定するに当っては、従前特殊勤務手当の月額より低額であるものを生じたときには、受給者に不利益な結果とならぬよう、当該条例を定めるように規定いたしました。  以上が、この法律案提案理由とその内容概略でございます。  何とぞすみやかに御審議の上御賛同賜わりますようお願い申し上げます。     —————————————
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 次に著作権法の一部を改正する法律案議題といたします。提出者より趣旨説明を聴取いたします。参議院議員野本品吉君。     —————————————
  5. 野本品吉

    野本参議院議員 ただいまから著作権法の一部を改正する法律案について、提案者を代表してその提案理由および内容について御説明申し上げます。  まず、この法律案提案理由を御説明いたします。  戦後、外国科学書無断複製して、国内で販売する者が多くなりました。これは、わが国研究者や学生の間で外国書が高価なために、低廉な偽版書の需要が相当多いということにもよりますが、また一方では現行著作権法罰則規定が軽いことが偽版書を横行させている原因となっているのであります。しかも、この種のいわゆる海賊版は、国内の正規の出版者ではなく、不法な常習者によって秘密裏に複製頒布されているのが実状でございます。わが国における外国書無断複製行為は、今日国際的にも非難の的となっており、このためにわが国外国の信用を大へん失っているのであります。  ところが、著作権法罰則規定は、明治三十二年制定当時のままであり、著作権侵害した者は、罰金等臨時措置法によりましても、せいぜい最高二千円以下の罰金に処せられるだけであります。これは、現在の経済事情に照らしましてもきわめて少額でありますし、また、同じ知能的権利保護目的とする特許法意匠法のような工業所有権法規定や、外国立法例と比較しましても大へん軽く、刑罰目的を達することができないのであります。従って、この法律案では、著作権侵害の罪に対して新たに体刑を加えるとともに、罰金最高額を引き上げて、著作権侵害防止し、あわせて著作権者保護目的を完全にしようとしたわけであります。これがこの法律案提出する理由であります。  次に、この法律案内容概要について御説明申上げます。  第一は、著作権法第三十七条に著作権侵害の罪に対して五十円以上五百円以下の罰金罰金等臨時措置法より二千円以下の罰金)を定めておりますのを二年以下の懲役または五万円以下の罰金に改めたことであります。この規定他人著作物無断で複製した場合の罪を定めております。 第二は、第三十八条に著作人格権侵害の罪に対して三十円以上三百円以下の罰金を定めておりますのを五万円以下の罰金に改めたことであります。この規定他人著作物著作者無断改ざん変更を加えた場合の罪を定めております。  第三は、第三十九条に出所不明示の罪に対して百円以下の罰金を定めておりますのを一万円以下の罰金に改めたことであります。この規定他人著作物を利用する際に出所を明示しなかった場合の罪を定めております。  第四は、第四十条に著作者名詐称の罪に対して三十円以上五百円以下の罰金を定めておりますのを一年以下の懲役または三万円以下の罰金に改めたことであります。この規定は自分の著作物他人氏名を冒用した場合の罪を定めております。  第五は、第四十二条に虚偽登録の罪に対して百円以下の罰金を定めておりますのを一万円以下の罰金に改めたことであります。この規定登録官庁を偽わって事実に反した登録を受けた場合の罪を定めております。  第六は、公訴時効に関する第四十五条の規定を削除したことであります。従来、著作権侵害の罪に対する公訴時効は、刑事訴訟法規定によらないで、著作権法に特例を設けて二年としておりますが、これを改めて著作権侵害の罪に対する公訴時効刑事訴訟法第二百五十条第五号によって三年とすることにいたしました。  第七は、第四十五条として新たに両罰規定を設けたことであります。これは著作権侵害に対しましても、その侵害を行なった行為者を罰するほかに法人等に対しても前述の罰金を科することにいたしましたが、参議院において削除することになりましたので、原案にありました両罰規定が取り除かれることになりました。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたします。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 これより両案に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。高津正道君。
  7. 高津正道

    高津委員 ただいまこの法案提案理由説明を聞いておりますと、外国から非常にやかましく言われたからこの法律改正する、そういうことも言われるのでありますが、その通りでいいのですか。
  8. 野本品吉

    野本参議院議員 外国から相当苦情といいますか、が出ておりますことは御承知通りであります。同時に私どもとしましては、国内的に考えましても道義的によくないという考え方を持っておりますことを申し添えておきます。
  9. 高津正道

    高津委員 外国からはどういうことを言ってきたのですか。
  10. 福田繁

    福田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、これは従前から著作権侵害について、外国商社関係から日本商社関係にもいろいろそういった苦情がきております。それからまた抗議というものではございませんけれども関係の国から日本政府に対しても、そういった問い合せがきております。また昨年秋にアメリカで開かれました第二回の著作権に関する政府間委員会におきましても、日本ばかりでなく、スペイン関係海賊版問題等も若干話が出まして、それに引き続きまして、アメリカ関係でも、日本においてアメリカの書物が海賊版として出るというような事実をいろいろ調べられたらしく、それについての問い合せもありまして、とにかくそういったイギリスだとかアメリカドイツ等は、日本に対してそういった問い合せ、あるいはまたそれに対する何らかの対策というものを従前から要望しておったのでございます。そういった意味をただいま提案者野本先生から申し上げたと思います。
  11. 高津正道

    高津委員 どうしてこの法案成立をそのように急がれるのであるか。聞くところによれば、八月に著作権に関する国際会議へ出るので、それまでにこの法案を通す必要があるのだという消息を伝え聞いたことがあるのでありますが、解散になっても国会がすぐに開かれるので、それには十分間に合うと思えるのに、会期末にそんなに急いで、ほんの数十分の審議で通さねばならぬというのはどうもふに落ちないのですが、急ぐ理由がありますか。
  12. 野本品吉

    野本参議院議員 ただいまの御質問ですが、実は従前から著作権を完全に保護してほしいという請願陳情等相当いろいろな団体からあったわけです。一方、ただいまお話のございましたように、国際的な会議もある。私どもはもともとこの種の立法政府でやるのが適当であろうと思っておりましたけれども、たまたま政府におきまする著作権制度調査会等において全面的な検討をしておる、しかしそれが著作権法という非常に複雑な法律全面改正に間に合わぬ、そういうようなことを考えますと、外国からのそういう申し入れもあるし、かたがた以前から国内における関係者団体等からの要望等もありますので、この際としては議員立法で処置していくことが適当である、こういうことで、あわててやったという考え方ではございません。
  13. 高津正道

    高津委員 昔から国会議員民権を擁護する立場にある。政府がもし検事ならば、われわれは陪審官のような、弁護士のような立場にあるもので、公共の利益を代表する立場から——これは多少民権侵害になるかもしれぬけれども、やむを得ずここに何とかかんとか理事者側というものは言うのであります。その場合に民権を大いに守ろうとするのが国会議員なんです。刑罰を重くするという法案を出すのに、親切に朝野両党がそれを引き受けて出すということは、政党とかあるいは国会議員というような立場から見て、ちょっとふに落ちないように私には思えるのですが、その点についてはどうですか。
  14. 野本品吉

    野本参議院議員 民権保護ということはむろんわれわれに課せられました大事な事柄であろうとは思いますけれども、先ほど申しましたように、われわれの著作権保護してほしいという要望にこたえることも、私どもはやはり民権保護の一部ではないか、そういうふうに考えております。
  15. 高津正道

    高津委員 たまたまこの法案参議院提出された日に、最高裁において例のチャタレイ夫人恋人翻訳書偽作版として、すなわち海賊版として判決を下した。この判決によってこの程度のことは十分防止できる道が新たに開かれたのだ、こうわれわれは解釈するのでありますが、それがあれはこのようなことは必要ないのじゃないか、この点に対するお考えを承わりたいのです。
  16. 野本品吉

    野本参議院議員 ただいまの点につきましては、私どもも一応考えてはみたのでありますけれども文部省その他の関係方面意見をただしましたところ、これはこの法案と事態において異なるものがあるということが納得できておるわけで、その点につきましては別な方から詳細に説明していただきたいと思います。
  17. 福田繁

    福田政府委員 ただいまの点でございますが、私から補足して申し上げたいと思います。  ただいまおあげになりましたチャタレイ夫人恋人の偽本に関する判決でございますが、この事件概要と申しますのは、昭和二十五年ごろ岐阜で起りました問題でございますが、岐阜市に在住しております方が小山書店発行の例のチャタレイ夫人恋人という伊藤さんの訳されたものの偽本を印刷いたしまして、販売しようとして、わいせつ文書所持並びに不正競争防止法によって起訴されまして、徴役の刑に処せられた、こういうような事件でございます。これをただいまお話のございました点から調べてみますと、この不正競争防止法と申しますのは、御存じ通りに、不正の競争目的として、他人商品同一ないし類似表示を使用して他人商品混同を生ぜしめるというような行為防止するというのが目的でございまして、営業保護することがこの法律目的だと考えております。従って、大きな観点から申しますと、この不正競争防止法は、むだ、不正を防止して、一般取引の安全を保護するということが主眼でございまして、著作権保護するいわゆる著作権法成立目的あるいは著作権法目的とは内容が異なっておるものだと私どもは考えております。従って、不正競争防止法規定を見ますと、日本国内において広く一般に認識せられているところのものでなければならないというような、いろいろ条件がございますが、そういうことが一つ条件になっております。従ってチャタレイ夫人恋人というこの偽本の問題に関しましては、これは国内におきましても相当広く認識せられておるものでございます。そういった点からこの不正競争防止法の適用があったのであろうと考えますが、御承知のように一般海賊版と申しますのは、外国におきまして出たばかりの科学書等をすぐさま輸入いたしまして、これを内密に複製するというのが通例でありまして、必ずしも一般に広く国内に周知されているものを対象とするというものでもございません。従って、たまたま不正競争防止法にひっかかりましたこの問題はもちろん著作権の問題とは別個の問題でありますが、この法律でもって今申し上げましたような判決が出たから、著作権侵害に対する措置としてのこういう改正は必要でなかろうというような御意見のようにも伺いましたけれども、必ずしもそう考えておりません。たまたまこういうことで広く周知されている商品についてそういう判決がありましても、一般海賊版と申しますのは、周知されていない科学書をほとんど対象にいたしておりますので、そういった点から申しまして、こういう改正も必要であるというように考えるのでございます。  以上が私の補足であります。
  18. 高津正道

    高津委員 チャタレイ夫人恋人の場合は相当広く大いに知られておるが、この洋書の海賊版の場合はその点が違う、こういう御説明だと承わったのでありますが、広く知られておるといっても、国内において日本人の半数が知っておるとか、そういうことを要件としないというのが定説なんではないですか。言いかえるならば、相当範囲説というものがあって、それを広く知られておるといってやっておる輸入業者があり、そうしてまたそれを必要とする専門家がある。その間に知られておる本であれば、何万部という本でもないのでありますから、それはすなわち相当広く知られておるもの、こういうことになるので、最高裁判決というものは、海賊版にもぴたっと当てはまるものだと思われますが、その点はどうですか。
  19. 福田繁

    福田政府委員 ただいまの問題でございますが、これは「広ク認識セラルル」という文言の解釈の問題になると思いますが、要するにこの不正競争防止法営業の安全、不正競争防止して取引の安全をはかろうという趣旨でございますので、その解釈はむしろ裁判所の解釈にまかせるのが適当と思いますけれども御存じのように不正競争防止法の第一条には、いろいろの要件が書いてありまして、「本法施行地域内二於テク認識セラルル他人氏名、商号、商標、商品容器包装其ノ他他人商品タルコトヲ示ス表示ト同一ハ類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シタル商品ヲ販売、拡布若ハ輸出シテ他人商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」というようないろいろ長たらしい制限があるようでございます。そういった条件がございますので、たまたまそういった一つの例がこの不正競争防止法の禁ずるところに該当いたすといたしましても、こういった海賊版防止のための改正措置が必要でないというようには考えられないのであります。なお、この判例を見ましても、偽本ということになっておりまして、この偽本というのは内容、装丁、奥付等を似せた本というような意味に私どもは解しておるのであります。従って直接には著作権侵害のことをいっているのではない、こういうように考えておりますので、先ほど先生のおあげになりました「広ク認識セラルル」というような商品解釈の問題もございますけれども判例そのものは偽本ということになっておるのでございます。
  20. 高津正道

    高津委員 私には法律的な専門的素養があるわけでもないし、そのために了承できないのかもしれませんけれども、了承はできませんが、ところでこの著作権法明治三十二年の制定にかかるもので、不備が非常に多いという評判の法律であります。これは外国会議へ出るために急にこの改正だけをやるというのは、また何回も修復を要すということになるのでありますが、政府はなぜこれを全面的改正、きちんと整ったものにするように政府として企てなかったか、この点を伺います。
  21. 福田繁

    福田政府委員 ごもっともな御質問だと思いますが、政府といたしましても、御存じのように、文部大臣諮問機関として著作権制度調査会というものを置いております。この著作権法規定が、今おっしゃいましたように、明治三十二年にできまして、非常に古いものでございますので、時代の進歩と申しますか、そういった面に適用しない幾多の問題があることは御承知通りであります。従ってそういった点をいろいろ検討して、今後相当の個所について改正しなければならぬということで、今申しました著作権制度調査会におきまして改正研究いたしておるわけであります。しかしながらこの著作権法改正は、実態改正につきましては非常にめんどうな問題がたくさんありまして、たとえばイギリスの例をとりましても、改正をやりますにつきまして数年をかけておるというようなこともございまして、あまり全面的な改正を軽々にやるべきではあるまいというような、非常に慎重な扱いをいたしておるわけであります。従っていろいろ問題はございますけれども政府としては十分これを研究いたしまして、その著作権制度調査会等において成案を得ました暁において、十分改正措置をとりたい、こういうように慎重を期しておる次第でございます。
  22. 高津正道

    高津委員 政府はこれは改正するための研究を今続けておる、著作権制度調査会の議にも付しておる、こういうお答えでありますが、民間関係団体意見を徴する、そして政府意見をも言う、あるいは第三者の意見をも徴する、そういうような方法で研究をする用意はないですか。
  23. 福田繁

    福田政府委員 ただいま私が申し上げました著作権制度調査会の組織でございますが、これは現在四十二名の委員をもって構成しておる調査会でございますが、このうちの過半数は民間団体関係者でございます。各種の著作権関係のある団体から代表を送ってもらっておりまして、この会で調査審議をするわけでございますので、従って私どもとしましてはこの会で結論を得ますれば、大体現在の民間における有力な著作権に関する団体意見は大体聞き得るのではないか、こういうように考えております。民間意見を聞いて改正の案を作るということは申すまでもございません。私どもとしましてはできるだけそういった方向で進めたいと考えております。
  24. 高津正道

    高津委員 参議院速記録を不勉強でまだ読んでおりませんが、第四十五条として新たに両罰規定原案には設けておられたのに、その両罰規定参議院で削られた理由をもう少し詳しく承わりたいと思います。
  25. 野本品吉

    野本参議院議員 実はこの問題につきましては、相当慎重に考えた上での案を作ったわけでありますが、さらに審議の途上におきまして、このような新しい考え方を導入することについては、さらに著作権法の全面的な改正との関連において慎重に考える必要があるのではないかということ、もう一つは、一応それをとりましても、いわゆる海賊版等防止相当の効果を期待することができるであろう、こういう判断の上に種々検討の結果両罰規定を削除したわけでございます。
  26. 高津正道

    高津委員 私の質問はこれでけっこうです。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 辻原弘市君。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 へき地教育振興法の一部改正について、提案者というよりも、むしろ文部省の側に少しお聞きいたしておきたいと思います。参議院の与野党が共同して出されましたこの改正法律案内容は、われわれ全く賛成であります。と申しますのは、従来全国的に見ましたときに、僻地のケースには三つのケースがあるということをいわれております。その一つは平面的な交通の距離関係から、いわゆる一般的にいう僻地でありますが、それと対応して、特に本州の中におきましても、立体的な関係での交通不便な僻地というものがある。これが中国、四国あるいは東海地方、関東、こういう比較的日本全体として便利だといわれている地方における僻地の様相でありまして、この点についての問題。それからいま一つは、四国、瀬戸内海沿岸あるいは九州沿岸、こういうところに多い島嶼であります。こういった三つの問題を考えますときに、現行のいわゆる僻地振興法の地域の指定の問題はいろいろ欠陥があるのでありまして、総じていえば、平面的な形においてしかその地域指定がやられていないというところに、実情に合わざる点が今日まで多々あったのであります。従いまして、私はこの僻地を指定するという問題に関する限り、少くともこの法律は非常に進歩している、具体的に現状にマッチするような形において作られているということが言えると思うのであります。それが交通条件を特に並列的に加味した理由だと思うのでありますが、ただそこで、これは経過規定法律上書かれておりますが、問題は文部省で作られるいわゆる僻地指定基準、これは長い間いろいろ検討されたと思うのであります。まあ大まかに交通の距離を測定し、あるいは官公署の位置と学校との距離を基礎にしたり、いろいろやっておりますけれども、すべてそれらのものは、平面的な形においての僻地基準にしかならなかったと思うのであります。従って今般この法律成立後に、文部省の手にゆだねられている僻地指定の基準というものは、その作りようによっては、せっかくの法律も実際の僻地学校に効果が及ばないという懸念もここに生まれてくるわけでありますから、どういうような配慮でその僻地基準を作るのか、この点を若干伺っておきたいと思います。特にその中で私が伺っておきたいのは、もし現状で全国的な僻地基準を作るとするなれば、先ほども私が申しましたように、地域によっては当然僻地と考えられるところがその基準に入ってこないというような心配もあったがために、文部省が今まで作っておりました僻地基準のいろいろな案に対して、全国の僻地がこぞって賛成するという態度に出なかった原因になっておると思うのであります。そういう立場からいたしますと、今回の法律はあくまでも都道府県支給する、それに対して国が補助するという建前をとっておる、建前ははっきりしておるのであります。しかし基準文部省が作られる以上、われわれはその基準を作られることに至大の関心を払っております。そういう点で、現在の都道府県の実情から、それぞれ独自の僻地を指定いたしております、そういうものと、今後文部省で作るこの僻地基準との間に、相当のギャップが生まれては、やはり問題であろうと思いますので、そういう実情を十分加味した上で僻地基準を作られる、そういう配慮があるか。  それからいま一つは、非常に事こまかなそういう基準を作るのか。それともミニマムな形で、都道府県の自主的な判断にゆだねるという形においてこの基準を作られるのか、そのいずれを文部省としては選ばれるのか。そういう方向について伺っておきたいと思います。
  29. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 僻地基準の問題でございますが、辻原先生からお話しのありました通り、現在各府県で行われております僻地の指定基準は、かつての大蔵省の給与局長通達に準拠しているところが多いわけであります。一昨年の七月人事院が新たに僻地の指定基準を作ったわけであります。これも学校を特に考慮して作られておりませんために、経済的文化的な条件等を考慮する点において相当欠けているのではないかというふうに私も考えておるわけであります。文部省はここ数年来、学校に適当な僻地の指定基準を作りたいと考えまして、鋭意検討を続けてきておるわけでありますが、いまだに結論を得ておりません。ただ今後の方向といたしましては、御指摘の通り特に経済的、文化的な条件に重点を置いた僻地基準を作定したいというふうに考えております。  それからもう一つ、人事院の基準をそのまま公立学校に適用いたしますと、全体の約三割ないし四割が僻地学校ではなくなるというような結果になるわけであります。そういう点も十分考慮いたしまして、現状に即するような僻地基準検討していきたい、というふうに考えております。  それからもう一つ、きわめて大まかな基準を作るか、それとも詳細な基準を作るかというお話でありますが、これは今後検討してみなければ、どういうものになるか、わからないのであります。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 私が心配する点は、この経過規定のところで配慮されておるものと現在の指定基準とのギャップ、それからそれらに続く、いわゆる僻地学校をこの法律によって救済していかなければならぬという建前のときに、先ほど前提として申し上げた三つのケースがあるにかかわらず、それに対して全国的な事こまかなものを作ったときには、どうしても現状と合わないような点が出てくるので、でき得れば作る一つの形というものは、中央においてはこれはミニマムな形での方向を示して、都道府県において十分その趣旨が生かされ得るように、そういう形のものが適切ではないか、こういうふうに考えるので、私は一応これを意見として申し上げておきたいと思います。  それから第二の問題は、一つこれは提案者にも伺っておきたいと思うのでありますが、相当量、今までの僻地に対する振興の具体策というものがこの法律の中に盛られておるのでありますが、特に手当が従来の定額制から率制に改まったということは画期的のことであって、これこそ私は、おそらく僻地学校教職員の待遇改善に大いに資するだろうと思います。同時にいま一つの問題は、これはあまり表面には出ておりませんけれども、私はかねがね考えているのですが、やはり一つの端的な優遇策として、直接の給与の問題があり、それから住宅の確保といったような問題もありますが、いま一つは、教員に対する恩給加算等の問題も一つの方法であろうと思ってりおます。そういう点について今回これを考慮されていないのでありますけれども、これはそういう考慮をされるお考えをお持ちになっておったかどうか。僻地に対するいわる恩給加算、そういう問題についてどういうふうにお考えになっておるか、この点を承わりたいと思います。
  31. 秋山長造

    秋山参議院議員 ただいまの恩給の問題につきましても、この立案の過程におきましては考慮したことは事実であります。ただしかし恩給法の関係はなかなかめんどうな関係がからんで参りまして、とても時期的に、結論を出してすっきり割り切って法案へ盛るという余裕がございませんので、その点は一切省略をして、そして今提案をいたしておりますような点だけにまとめたのであります。今後の問題としては、やはり僻地学校教育振興という大前提がありますので、十分研究をしてみる必要があるということは、提案者の考えであります。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 今この点で文部省意見を伺いたい。
  33. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 僻地の恩給加算の問題でございますが、これは十分今後検討したいと思っております。ただ従来の経過から申しますと、御承知通り恩給法に僻地加算の規定はかつてはあったわけでございます。それが削除されて、僻地勤務の特殊性と申しますか、そういうものは特殊勤務手当で考慮するのが現行の給与制度のようであります。そういった従来の経過を考えますと、必ずしも容易な問題とは考えておりませんが、文部省といたしましては、十分検討したいというふうに考えております。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 次の点は、僻地教員に対する特別な考慮という内容でありますが、これは先般来からの教員の定数確保に関する法律等でも問題になりましたけれども、やはり僻地における教職員の確保ということは、これは特に僻地振興の上では重要な問題でありますので、本来ならば抽象的ではなしに、具体的に規定していくのがほんとうだろうと思うのですけれども、ここでは振興法ということで、ただ考慮、配慮という精神規定が置かれている程度でありますが、しかしその内容を明確にしておく必要があると思いますので、どういう点に特別な考慮を払うか。たとえば定数基準法律によって、一応の各都道府県のあれが出る。その場合に、各都道府県が配当する際に、ただその指定された僻地に対して、特別な教員をワク外ならワク外で配当していくというような形で慫慂していくのか、それとも養護教員あるいは事務職員、こういうものを特に僻地においては別ワクとして、それを規定するような方向に同化させていくような方向に持っていくのか。そういう点については、一体提案者としてはどういうふうにお考えになっておりますか。また文部省としては、行政指導としてどういうふうな方法をおとりになるのか。有名無実に終らさないために、この機会に少し内容をはっきりさせておいた方がいいんじゃないか。
  35. 秋山長造

    秋山参議院議員 ただいまの点につきましては、これははなはだ不十分ではありますけれども、第四条の一項の二号の「へき地学校に勤務する教員養成施設」この養成施設について、その経費の二分の一を国が補助するというように、はっきり補助率を明確に規定するなどの配慮はしたわけです。ただ、ただいまおっしゃる通りに、それじゃ具体的に、教員の数をどう配置するかということは、この僻地法案には盛ることができなかったわけですけれども、それらの点については、今後文部当局において十分考慮されることを期待をしておるわけであります。
  36. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 僻地学校教員の定数でございますが、これは概して申しますと、小規模学校教員の定数と申し上げることができるかと思います。小規模学校に対します教員の配当につきましては、先般御審議いただきました教員の定数基準におきまして、五学級以下の学校に対して、政令で定める数を特別に加えるように措置いたしております。そういう形で、小規模学校に対する教員の加算を考えていきたいというふうに考えております。それから各都道府県におきまする定数の実際上の配当でございますが、御承知通り定数基準によって算定されます標準定数は、都道府県全体の標準定数でありまして、個々の学校に対する配当をこの配当をこの法律は義務づけているわけではないのであります。従いまして、各都道府県におかれましては、当該都道府県の学級規模、その学校数の実態等を十分考慮して、この振興法の趣旨に沿うような配当が現実になされることを期待いたしております。  なお特に小規模学校が多いというような府県におきましては、この標準定数自体は標準でございますので、そういう小規模学校が多いという実態を十分念頭に置いて、現実の各都道府県の定数が決定されるように期待いたしております。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 この機会に私はその点についての意見をちょっと申し上げておきたいと思うのであります。定数確保に関する法律ができない以前なら、私は都道府県に対して慫慂する精神規定というものは、かなり効果が実際にあるだろうと思います。しかし今安嶋さんの説明のように、五学級以下の小規模学校に対して一名加算していくという、国としての予算のとり方がきめられたわけですね。その上に立って今度は都道府県にこうやれといえば、都道府県としてはその基準によって教員を個々に配当していく。そして極端にいえば、小規模に対する国からの財源としての余剰定員というものは、五学級以下の小規模学校に対するものだ。そうするとこの一つの慫慂規定によって、都道府県がそれじゃやりますという範囲のものは、極端にいえば、簡単にいえば、その範囲のものだけということになる。私は、僻地のものをそれだけに期待をするのじゃなしに、たとえばもっと幅広く、養護教員とか事務職員、こういうものまでも期待しているわけです。ところが実際このものを作ったら果してそういうことが都道府県において可能になるかといえば、これは必ずしもそうはならぬと思う。だからこの法律と同時に、むしろ将来においては都道府県において、その僻地学校のあれが全般的にもっと考慮できるようにするために、そういう僻地学校全般についてのいわゆる定員というものについて、いま少しの考慮を国として払う必要があるということであります。だがらこのことを私は将来にわたって、提案者もお考えをいただきたい。そうでなければ、都道府県としてはいわゆる小規模学校に対する定員一名をもって振り回すということになれば、そう現状と変らない定員についての配当の結果が出てくるのじゃないか、こういうふうに心配をするわけであります。地方としては、国で法律をきめた以上、その範囲のものが定員だとしてがんばると思うのです。それ以上のものは、都道府県としてはなかなか予算上計上しないというのが実情だろうと思うのです。そういう点では非常に窮屈な形に実際はなる。これを一つ提案者文部省も考えられて、将来僻地の問題は都道府県に慫慂するだけでなく、国みずからいま少し範囲を広めた形において、定員の確保に努めるようにお考えをいただきいと思います。提案者からその点についてちょっと聞いておきたいと思います。
  38. 秋山長造

    秋山参議院議員 ただいまの御意見は、これは私どもも全く賛成でございまして、できることならば、ただ行政措置にまかせるということでなしに、おっしゃるような点を具体的に、近い将来においてさらに十分検討の上、法案に盛り込んでいきたい、こういう熱意を持っております。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 高村坂彦君
  40. 高村坂彦

    ○高村委員 へき地教育振興法の一部を改正する法律案、これは大体前進でございますが、今委員長からもお答えになりました教員の定数基準の問題、これについて一応法律通りました。ところがやはり僻地は特別な考慮をしないと、特に養護教諭のごときはかけ持ちということが、離島なんかできないところがあるのです。そういうところでは特別に法律規定を待って初めてそういう問題が解決つくと思うのです。そういう意味において、この法案は若干の欠陥があると思う。一歩前進の必要があるのじゃないかと思うわけでありますが、それはそれとしまして、この法案で私ちょっと考えましたのは、附則は三十四年の四月一日からということになっておりますが、これは予算を来年度の予算に編成したからだと思いますが、大体どのくらいの予算がこの法案で実施されると一年間に要るか、その点を提案者からまず聞いてみたいと思います。
  41. 秋山長造

    秋山参議院議員 ただいまの点は、法案の最後のページに所要経費として書いてありますように、約二億八千万円、これはもうほんとうにおおよそ二億八千万円であります。
  42. 高村坂彦

    ○高村委員 実は、僻地に勤める先生方のこうした特別手当を出すということは、われわれも賛成であります。しかし、これは僻地教育振興するという上からでありますが、実は僻地に勤務している者は教員だけではないわけです。たとえば警察官もありましょうし、その他地方公務員などいろいろあると思いますが、そういうものとの関連において研究されましたかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  43. 秋山長造

    秋山参議院議員 こういう給与の関係は、特に他との均衡というようなことが一番問題になると思いまして、いろいろ他との均衡の点を研究いたしました。現在のところ三十一年度から人事院でやっております国家公務員の隔遠地手当というのが一応基準になっておるようであります。確かにそれとの均衡を考える場合、この法案に書いております歩率は少し高いわけです。高いわけですけれども教育という特殊な職務内容を持った、しかもいろいろな面で僻地教育が突き当っておりますいろいろな障害等を考えました場合に、どうしても従来の線から一歩前進させなければ、この問題の解決の糸口はつかめないという結論に達しまして、あえてごらんのような歩率を決定したわけであります。
  44. 高村坂彦

    ○高村委員 私も今日の僻地教育の現状から、何らかの措置をやるべきだということはよくわかる。それについては賛成でございますが、しかしやはり他の公務員との関係——私どもある程度この特別手当を出すことになりますと、当然これは他の警察官なり公務員に響いてくると思う。そうなりますと地方財政計画なんかにも、これは大きく響いてくる。そういうものがどのくらいに一体なってくるかということが、ある程度輪郭がつかめないと、ちょっと冒険のような気もするわけです。従ってこの施行期日が、昭和三十四年の四月一日からということでございますから、何も今日そう急いでこれを提出されなくても、もう少しそういう点も含めて、また先ほど話がありました教員定数の問題も、僻地については特別な法律を作って、ああいった一般的な基準でなしに考慮する必要があるのではないか、こういう点も考えるのですが、そういう点をさらに慎重に総合的に研究してみた方がいいんじゃないかというようにも考えるのですが、これに対して提案者はどういうようにお考えになりますか。
  45. 秋山長造

    秋山参議院議員 実はこれには従来相当長期間の経緯がありまして、決して早々の間に、とりあえず立案して提案をしたということではないのでありまして、参議院の文教委員会の方でも、昨年の二十六国会当時から、各派の間で寄り寄り僻地教育というものの重大性にかんがみまして、研究を続けてきたわけであります。確かに今おっしゃるように、他の公務員等との権衡を十分考え、またその見通し等を考えた上で、来年になって提案してもいいのじゃないかというお話も一理はあると思いますけれども、ただこの法律を施行するためには、相当事務的なあるいは行政的な準備が必要だと思うのです。現に文部当局の意見もいろいろ聞いて参りましたけれども、やはり相当期間の調査なりあるいは準備というものがどうしても必要だ、でございますから、なるほど施行期日は来年の四月一日になっておりますけれども、来年の四月からこの法律を確実に生かしていきますためには、やはり今から見通しをつけて、十分な準備をして、やっと間に合うくらいな見当にちょうどなるようでございますので、今回ぜひとも成立をさしていただきたいというように考えております。
  46. 高村坂彦

    ○高村委員 提案者のお気持はよくわかりました。私は若干今申しましたような点について疑問が残るわけです。持に教員定数というものが、一般基準より、離島とかあるいはごく僻地なんかには変った——ことに養護教諭なんかそれが必要な気がするわけですが、あまりに会期が押し迫っておりますから、そうでなければゆっくり研究して修正ということもできますけれども、やはりあまりとらわれないで、一つもう一ぺん検討してみるというお考えになってもらってもいいんじゃないかと思います。これは御相談するとして、それから今の実施に対して非常に準備がいる。これは御説の通りだと思います。従って実施については、大体こういうことを来年からやろうというある程度心がまえができますれば、法律はできなくとも、文部省としては事務的に進めていかなければならぬ。もちろんこれは来年の予算に組まないと実施できぬものですから、予算に組んでもらわなければならぬ。提案者のお気持は十分わかりましたが、若干私そこにまだどうしてもこの差し迫った国会において、これを無理やり通さなければならぬというほどの緊急性がどうも納得いかないような気がするわけですが……。
  47. 秋山長造

    秋山参議院議員 先ほども言いましたように、私ども昨年来非常に各派の間で熱意を持って準備を進めて参りましたいきさつもあり、また先ほど申しましたように、これを来年の四月からやるために、この一年間徹底的な僻地の再調査といいますか、徹底的な調査等も行った上で、万全の態勢を整えて四月一日から実施に移したいという考慮も払っておるわけで、なお全国多数の僻地関係者からも、これは衆参両院に対してでございますが、一日もすみやかにと申すことで、非常な強い要望がきておるわけでもありますし、かりに施行期日が来年の四月になったとしても、では今法律を作っても仕方がないじゃないかということには私はならないと思っておりますので、期限は先であるにしても、この際この法律成立させていただくことが、やはり全国の僻地関係者の多年の要望にこたえる点でもあり、それからまた地方の府県なり市町村なんかに対しましても、来年からこうなるんだという僻地教育振興に対する一つの心がまえといいますか、準備といいますか、そういうものを与えることにもなるわけでございまして、ぜひその点御了解いただいて、この際成立させていただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
  48. 高村坂彦

    ○高村委員 もう質問は大体終りますが、実は地方行政の方でもこの法案についてはやはりいろいろ意見があるようです。日にちがあれば合同審査でもしたいというようなこともあるわけで、これは取扱い等もございますので、なかなかむずかしい問題があるかと思います。私の質問はこれで終ります。
  49. 坂田道太

    ○坂田委員 ちょっと関連して。簡単に提案者にお尋ねいたしたいと思いますが、この法案の第一点に、僻地学校の概念についての改正を行なっておられるように承知しておりますが、これをもう少し詳しくお話し願いたい。
  50. 秋山長造

    秋山参議院議員 この点は御承知通り、今の現行法では「交通困難で自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない」云々ということで、この交通困難ということがまず前提になりまして、そしてその上にさらに「自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない」という非常に狭い規定になっておるのです。ところが必ずしも全国の僻地実態を考えてみました場合、たとえば形式的にバスの停留所から遠いとか近いとか、あるいは駅から遠いとか近いとかいうような形式的な交通条件だけでなしに、かりに直線距離にすれば、駅なりあるいはバスの停留所からはそう遠くはないにしても、その他の自然的、経済的あるいは一般的な社会通念から考えて非常に恵まれない僻地というものが多々存在しておるわけなので、特に教育という角度から見る場合には、地理的な僻地であると同時に教育的な僻地ということが確かにあると思います。そういう点も十分拾い上げて救っていきますためには、どうも現行法のこの文言では非常に狭ま過ぎるような気がいたします。その点を——交通条件を無視するわけでは決してございません、これは確かに僻地という以上は交通条件というものが重大な要素にはなりますけれども、しかしそれと並びましてやはり他の条件というものも十分考慮されていいんじゃないかということで、こういう書き方をしたわけであります。
  51. 坂田道太

    ○坂田委員 提案者のお気持は非常にわかるんですが、いわば教育僻地というものが私は非常に大切だと思うのです。われわれがへき地教育振興法というものを作った趣旨もそこにある。ところが現行法においてそれを解決できない。しかし今度の改正案でそういう教育僻地、たとえば単級複式学校とかいろいろの恵まれない小規模学校がこの法案で解決できるかどうか、あるいはまたそういうものは残されるのではないかという疑いを実は持っているんですが、その点を。
  52. 秋山長造

    秋山参議院議員 その点は私といたしましても、ただ単にこの第二条の法文を書きかえただけで、今まで漏れていたものが全部救われるとも思いませんけれども、しかしこういう書き方に変れば、これはあとの僻地指定等の場合に、文部当局で省令を作られたりなんかする場合に、私ども提案趣旨を十分勘案されて、従来とはまた違った新しい角度でこの僻地の指定等も行われるという、文部当局の理解ある良識を強く期待しているわけであります。
  53. 坂田道太

    ○坂田委員 せっかく法案を作って僻地教育振興ということをやられる以上は、やはり文部省だけにたよらないで、あるいは期待をかけないで、法律の中に何とかうたいようはないものかというふうに思うのですが、われわれとしましてはそういうような点を考えて、もう少し総合的なことで予算の裏づけ等もやる、あるいは文部当局とも具体案を練って、あるいは地方行政との関係もございますので、その辺のところも十分考えた上で一つやったらどうか。今そう急いでやる必要はないのではないかというようなことで、実は高村さんあたりとも相談をしているような状況なんですが、何かその辺のところ、もう少し具体的に教育僻地というものをも含めるような御工夫というものはできないものでございましょうか。
  54. 秋山長造

    秋山参議院議員 その点は正直に申し上げますが、今ごらんのような文言にまとまるまでにいろいろいきさつがあったわけです。提案者といたしましては、これはこの際同じ改正をやるならば、ここでやって、またこの次にやるというような小刻みな改正でなしに抜本的な思い切った改正をやって、僻地関係者が二度とこういう問題について国会に押しかけてくる必要のないくらいなことをやりたいという気持で、条文なんかについてもいろいろな書き方をしてみたんです。だけれども、今おっしゃるように、あまり抜本的と申しますか、徹底したことをやろうとすれば、それだけ範囲が広がる、そうするとまた経費に響いてくる、あまり響かせてはまたちょっと別の面で困るというようないろいろな要素が出てきまして、結局煮詰めたところ、今ここに提案しておりますようなきわめて抽象的と申しますか、相当不十分なようなところに落ちついたわけですけれども、これが三派で脳みそをしぼった結果を煮詰めた結論なので、その点御了願承いたいと思います。
  55. 坂田道太

    ○坂田委員 御苦心のほどはよくわかるわけなんですが、この僻地の概念が、いわばそこに通っておられる先生というものを重点的に対象として考えていくか、あるいはそこへ集まって来る児童生徒というものを対象として考えていくか、あるいはまた両方を考えているという考え方ももちろんありましょうけれども、この点はどういうふうにお考えなのか。
  56. 秋山長造

    秋山参議院議員 この点はもう申し上げるまでもなく両方考えております。特に職員の場合は勤務地手当の問題がありますので、法案の中でも何か職員のことだけを大きくウエートを持っておるような感じを与えますけれども、決してそういう考え方ではございませんので、たとえば第三条のところにありますように、児童生徒の健康管理だとかあるいは通学を容易にするためのスクール・バスだとか、スクール・ボートだとかいうようなことも十分考え合せまして、改正案を作り上げたわけであります。
  57. 坂田道太

    ○坂田委員 僻地教育振興をやる場合において、またその恵まれない僻地における子供たちを、ほかの地区の教育機会均等を与えるような意味において、何が一番大事かといえば、やはりいい先生僻地に行ってもらう、こういうことが一番大事で、その行ってもらうためには先生に対する手当だとかあるいはその先生方の住宅であるとか、そういったことをやることも非常に大切なことだと思いますけれども、同時にやはり生徒、児童に対する配慮というものが、私は非常に必要じゃないかというふうに考えるわけなんで、その点をよくお考えをいただきたいと思うのですが、文部当局でその辺のところについて、何かこの法案に関連して御意見があれば承わっておきたいと思います。
  58. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 御指摘の点は、私どもといたしましても年来検討をいたしておる点でございます。スクール・バス、ボートにつきましては、昭和三十三年度予算要求の際は要求いたしませんでしたが、それまで二年にわたって要求をいたしております。三十三年度予算にスクール・バス、ボートを要求をいたしませんでしたのは、実際に要望をとってみますと、その要望が必ずしも多くないというような事情があったからでございます。  それから児童生徒の福利厚生の問題でございますが、これは学校の保健設備の充実といったようなことで従来考えております。将来ともさらに検討してその充実をはかりたいというふうに考えております。
  59. 坂田道太

    ○坂田委員 先ほど提案者にお聞きいたしましたことについて、この法案が通過して、そしてその救われない、いわば教育僻地というような学校がどれくらいあるのか、そういったところを一つお話いただきたいと思います。
  60. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 ちょっと数字を手元に持ち合せておりませんが、僻地手当は単複学校のうちの六六%に支給されてございます。従いまして残りの三四%は僻地以外の地域に存在するわけでございます。この法律僻地における教育振興するということを趣旨としておるわけでございます。僻地以外の、坂田先生がおっしゃいますところの教育的な僻地と申しますか、その単複学校に対しましてはこの法律は及ばないわけでございます。
  61. 坂田道太

    ○坂田委員 その点が実は私はやはり僻地教育振育ということを打ち出す以上は非常に問題であって、それをかかえていかなければほんとうの僻地振興にならないのではないか、この点についてはやはり提案者もお考えになっておると思いますし、文部当局においてももう少し考えていただかなければならない点じゃないかというふうに思うのですが、それについて、今後のことで何も文部当局意見がございませんか。
  62. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 これは文部当局としての考えと申しますより、財務課長としての考えでございますが、何と申しましても教員に対する手当の支給ということが大事かと考えております。現在単級学校に対しましては大体単級手当が支給されております。国の予算単価といたしましては千二百円でございますが、実際千二百円まで支給している府県は少いようでございます。それから複式学級に対する手当でございますが、これにつきましては必ずしも十分複式手当が支給せられておらないようでございます。こういう点さらに今後検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
  63. 坂田道太

    ○坂田委員 最後にお伺いしておきたいのですけれども、そういういわゆる僻地という概念で規定するから、それにあまり教育僻地というものを考慮しないがために、同じ僻地の概念で、たとえば警察官だとかその他の地方公務員と同様なことを考えなければならないので、そうじゃないのだという一つのことを文部当局として打ち出せば、それとは別個な、もちろんそれらの警察官あるいはその他の公務員というようなものも考えなければなりませんけれども、同時に別な考え方として僻地先生に対する手当をやるというようなことも出てくるのではないかというふうに思うのですが、いかがでございますか。
  64. 安嶋弥

    ○安嶋説明員 教員に対します僻地手当を一般公務員と違えた率で支給するということになりますと、これはやはり教員が生活するその場所の不便さと申しますか、そういう点からじゃなくて、僻地における教育の特殊性というものを特に考えないと、そこのところはなかなか説明がつきにくいのじゃないかというふうに考えております。僻地教育の特殊性と申しますと、一つには単複教育の特殊性という問題があるわけでございますが、その他たとえば教材、教具が非常に得にくいとか、あるいは僻地の児童生徒は何と申しますか、いわゆる経験が非常に乏しいわけでございます。あることを教えるといたしましても、都会地の児童生徒を教育する以上に骨が折れるといったような、そういった点を十分考慮していく必要があるのじゃないかというふうに考えております。
  65. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後零時五十九分開議
  66. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政に関し調査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。野原覺君。
  67. 野原覺

    ○野原委員 文部大臣にお尋ねをしたいと思いますが、教職員勤務評定の問題は、まことに遺憾ながら最悪の事態に突入して参ったと思うのであります。大臣も御承知のように、本日は東京都の教職員諸君が勤務評定反対のために重大な決意をもって職場集会その他を行なっておるようでございますが、これらの事態に対して、文部大臣としてはどのような御所見を持っておられますか。率直なところをお聞きしたいと思うのであります。
  68. 松永東

    ○松永国務大臣 実はこの問題については、こうした事態に陥らないように何とか善処したいと心得まして、きのうはこの国会委員会でのいろいろな質疑応答を済ますやいなや、すぐ飛び出しまして、これは率直に申し上げますが、都の教育長並びに都知事、そういう方面といろいろ折衝しまして、そうして一応私は参議院の方に帰りまして、委員会に出ました後に、また中座しまして、都議会の議長や、さらにまた東京都知事あたりと折衝いたしまして、何とかしてスムーズに事を運びたい、そういう手はないかというので、実は夕べも十一時ころまでいろいろやってみたのですが、教育長の本島君あたりの話によりますと、何としてももうここまで、十二回もこういう話し合いを重ねてきた。どうしてもこのままではいかぬ。であるから、所定の通り——昨晩の言葉で言えば、明日これを断行する。しかし断行した後において、その内容等についてはまだ話し合う余地があろうというようなことも、ちらちらいろいろな面から聞きました。それで、まあここまで来た以上は仕方がないけれども、まだ期日もあることですから、要するに九月に実施するというのですから、それまでの間にはもっと何とか方法ができやせぬかというふうに考え、さらに努力も続けていくというつもりで、私は覚悟いたしております。
  69. 野原覺

    ○野原委員 文部大臣が昨夜来からこの事態を何とかして円満に収拾したい、そういう誠意を持たれて努力されたというただいまのお答えでございます。その御努力はされたでありましょうが、一体どういう御努力を文部大臣がされたのか、何とか善処したいというその善処の内容ですね。それはどういうことをお考えになられてあちらこちら御奔走になられたのか、承わりたいのです。
  70. 松永東

    ○松永国務大臣 これは御承知通り、私が直接の折衝をする相手じゃないのです。もちろんこれはすべて都道府県教育委員長の所管でございます。従って私らは指導助言をする権限を持っておるのにすぎない。従って一口に申しますれば、都教組といいますか、そういう人々と直接折衝を今日までいたしておりません。でありますから、そういうふうにせよとか、ああいうふうにせよとかいうことも指令もできません。しかし、事実もし児童にそれが影響をもたらす、教育の場を放棄したりなんかするようなことになると、とんでもないことになるから、それのないように何とか手はないかということを頼む以外には方法はなかった。というのは、今も言う通り、私が今日まで一つの折衝でもやっておれば、こういう手を打てば何とかなるのじゃないかとかなんとかという面もありますけれども、私は、新聞で見るのと、いろいろな説を聞いているだけでありますから、いい打開策が頭に浮んでこなかったのが実情であります。しかしきのういろいろ、知事にも会い、教育長にも会い、都議会の議長あたりにも会い、さらにまた東京都内には私の懇意な人もたくさんありますから、いろいろ話してみるうちに、これは何とかその内容についての話し合いができるのじゃないかというふうな気持もいたしておりますので、今後もやはり絶えず努力を払ってみたいというふうに考えております。
  71. 野原覺

    ○野原委員 私は文部大臣が善処されることは、やはり東京都の教育委員会だけでなしに、片一方の組合側に対しても話し合いの必要をお説きにならなければならないと思うのであります。ただいま御答弁を承わっておりますと、教育委員会側の、教育長とか知事とかとは話し合ってみたけれども、組合側の意見はあまりお聞きになっていないのではないかと思いますが、いかがですか。
  72. 松永東

    ○松永国務大臣 御説の通りですが、組合側には折衝する余裕がなかった。それで実は教育長のいる場所を探し出したり何なりするのにも、多少時間もかかりまして、さらに知事、議長あたりもその通りです。ですから組合側と折衝するような余裕もなかったわけであります。しかしこれは相当考えなければならぬ問題ですが、組合側に私がそうした交渉をするということが適当かどうかということも実は考えられる。少し時間の余裕でもありますれば、それは私も考えたり、いろいろ組合の中にも懇意な人もありますから、そういう面とも折衝してやれますけれども、きのう、夕べのことでは、そういう余裕はなかったのであります。
  73. 野原覺

    ○野原委員 私は率直に申しまして、このような実力行使に訴えるということは、これは大臣だけでなしに、私どももきわめて遺憾なことだと考えておるのであります。そこで実は私ども何回もこの委員会で申し上げておりますように、勤務評定に関しましては、勤務評定を実施しようとする教育委員会と、これを実施される側のその職員の団体である組合とが十分に話し合いをする、このことがきわめて大事なことではないか。これは勤務評定の本質から見ても、当然話し合いをしなければならないものであるばかりでなく勤務評定に対しては相当いろいろな批判が出ております。反対意見も高まっておるときには、なおさら必要なことではないかと考えるわけであります。話し合いを十分にやれば、これは教職員の諸君も良識を持っておるわけでございますから、このような事態に突入することは断じてない、このことを大臣はどのようにお考えになるか、承わっておきたいと思います。
  74. 松永東

    ○松永国務大臣 実はそうした仰せのような事態になってしまって、何といいますか、最悪の場合に遭遇した、だからこういうことのないようにと思って、ずいぶん私は焦慮もし、尽してみたわけです。ところが教育長に聞いてみますと、とにかく十二回も話し合いをやった、十二回やったけれども、何としても一致しない、こういう中でもうこれ以上話し合いをやろうとしても、これはむだなことだと私は考えておるというような意見でした。だがしかし、知事とも話し合い、さらに都労連の人々とも知事が会うようになっているからと、こういう話であったから、私は知事ともいろいろ話し合いをし、都議会議長の上条君の話では、これはもうこの七日の日、すなわち入学式のときに突入する、こういうことになりはせぬかと思ったものだから、非常に心配して、それではいかぬからというので、そういうことのないようにといってわれわれは申し込んで、そして両者の間に一つもう一ぺん話し合いをしたらどうだろうということを話して、そうしてそれ以来ずっと今日まで話し合いの回を重ねてきたんだ、どうしても話し合いができないからもうこれ以上われわれは尽す手はない、こういう議長の話であった。それで実はきのうのところでは取りつく島がなかったというのが実情なんです。
  75. 野原覺

    ○野原委員 そういう点の認識について、いささか私は大臣と違うのであります。大臣も話し合いの必要をお認めになっておられまするし、私もこういう問題は話し合いをしなければならぬと実は考えておることは先ほど申し上げた通りでございますが、十二回話し合いを持たれたことは事実です。これは私どもの調査によってもそのようになっております。ところがその十二回の話し合いというものは、教育委員会の側、特に教育長の本島氏が、都の教育委員会原案というものに固執をされて、それを一方的に押しつけようという態度で出てきておりまするから、何回持ってもその話し合いが前進しないわけです。私は話し合いというものは、いかに良識のある教育委員会か存じませんけれども、やはり東京都の教職員の組合は、これはたしか三万ないし四万の先生方を擁しておると思いまするが、そういうところで民主的にしぼり上げてきた意見というものに対しては、やはり教育委員会側も謙虚に耳をかさなければならぬのではないか。それを全然かしていないのです。そういう点についての御認識が、いささか文部大臣には足りないと私は思う。これは率直にいってあなたにはその御認識がない。だから私は一番最初に本島教育長と会われて、十二回話をしました、私どもが何と言っても組合側か聞がないのです、そういう本島教育長の意見をお聞きになると同時に、片一方教員組合側の代表をお呼びになって、一体どういうことなのか、君らの意見はどうなんだということを私はただしていただきたかった。それがなければ、せっかく文部大臣が何とか善処したいと思われても、これはからさわぎに終るのです。実を結ばない、それがなかったことを私はきわめて残念に実は思っておるのであります。  そこで私の調査したところを申し上げますと、東京都の教育委員会勤務評定の評定要素の第一、学級経営というのがあります。その学級経営の一番最初に、学級経営は学校経営の基本に即しているか、こういう立場で校長がその教職員の学級経営についての勤務評定をしていくわけです。そこで今度の評定をされる教職員の諸君は、一体これはどういうことなんですかということを尋ねてみましても、的確な答弁が得られていないようです。私はこれでは話し合いの意味はないと思う。なおまたその教育愛という項目、その教育愛の第三項に、教育に対する正しい信念を持っているか、この教員教育に対して正しい信念を持っておるかどうかということで、校長が第一次評定をして、教育委員会が第二次評定をするということになっておる。教育に対して正しい信念があるかどうかという評定は、教員にとっては最も重大なことなんです。正しい信念がないと烙印を押された教員は、全くその教員としては立っていくことができない、きわめて重要な内容でございますから、これについて次のような問答をやっております。教員組合側がこういう質問をしているのです。たとえばある校長が紀元節賛美論者ですね。紀元節はいい、紀元節というものはけっこうなことである。これは高知県に現にいるわけです。そういう校長はこのごろたくさんふえてきつつあります。そういう校長の下にいる教員が紀元節に反対なんですね、紀元節というものは国家主義的な教育の復活になる、これは旧体制の復活になる、新しい憲法のもとで、新しい教育の精神から言うならば、そういう考え方はとるべきでない。一体そうなった場合に、校長は紀元節復活の賛美論者、教員は紀元節復活は絶対反対だ、こうなってくると、その評定を校長が主観でいたしますということになりますと、この紀元節復活反対の教員は復活賛美の校長から教育に対する信念はゼロだ、こういう判断をされるおそれがあるが、本島先生、あなたはどう考えますか、こういう質問をしているけれども、何ら答弁をしていないのです。何にもないのですね。ただ十二回顔を合せて、おれの案をのめ、君らはその勤務評定には絶対反対だろう、こういうような高飛車的な態度で出てきております、だから回数においては十二回であるけれども、実質的な話し合いはなされていない。話し合いというものは、中味に入って、相手側の意見も謙虚に聞いて、たとえば松永文部大臣のように——私はあなたは非常に尊敬しております。これは失礼な言い方かもしれませんが、きわめて尊敬しております。他人の言に謙虚に文部大臣は、耳をかされている。そういうようなお態度で私は話し合いをしなければならないと思う。特に勤務評定教員の人事管理に役立つ、教員の勤務成績の烙印を押されるということになれば、そういった突っ込んだ実質的な話し合いというものがされなければ、勤務評定の話し合いは意味がないと私は考えるのです。このことを文部大臣はどのようにお考えになりますか、承わっておきたい。
  76. 松永東

    ○松永国務大臣 勤務評定の問題について、都の教育長が日教組の人々とどんなふうの意見の交換をしたか、その内容がどんなふうであったがということは、私は承知いたしません。またそれは私があえて承知する必要もないことだと思います。けだし教育委員会がすべてその衝に当って円満解決するという気持でおられる以上、私が何も立入ってそんなことをする必要はない。ただ問題は、あなたがさっきから組合員に対してはなぜ会っていろいろ話をせぬかという話ですが、組合員に会って私が話をしたりなんかすると、東京都の教育委員会のお株を私が取ってしまうというような格好になります。それは表現の仕方が悪いかもしれぬけれども文部大臣の私が飛び込んでいって、組合の諸君といろいろ話をしたりなんかすることについても、これはプライベートの考え方ではそういうふうなこともやりたいような気もしますけれども、そういうことは私が公式にやるべきものではない。従って、私の与えられた権限は指導、助言。その指導、助言をどこにするかというと、要するに都道府県教育委員会、これに指導、助言をする、あるいは教育長にするよりほかないので、私はそういうふうに考えて、きのうもかけずり回って、右申し上げる人々には折衝を続けてきたのであります。
  77. 野原覺

    ○野原委員 せっかく文部大臣が事態を解決したい、昨日来から善処されたという御答弁がありましたから、私はせっかく善処されるならば、このような事態に突入しないような実のある善処をすべきだというところで、権力者側の教育委員会にだけお話するのではなしに、組合側も呼んで、その真相をお聞くになる必要があるのではないかということを申し上げただけなんです。これは御了解いただけようかと思う。  それから話し合いについてですが、文部大臣も話し合いはお認めになっておられるのです。これはいかがですか。大事な点でございますから、勤務評定の実施は、実施される側の教職員組合の職員団体と、実施する側の教育委員会とが十分話し合いをして実施すべきである、このようにお考えになりませんか。大事な点ですから承わっておきたい。
  78. 松永東

    ○松永国務大臣 もちろんそういうことが望ましいであり、また繰り返して申し上げる通り、そういうことを十二回もやってきたということを聞いております。
  79. 野原覺

    ○野原委員 話し合いをしなければならないという文部省が、話し合いする必要はないという指導をあなたの下僚がやっておるとすれば、事は重大だと思うのであります。どうお考えになります。
  80. 松永東

    ○松永国務大臣 私はそんなことを私の下僚が言ったことは一つも聞いておりません。私は、話し合いをする必要ないなんということを私の下僚が言うはずはないと思う。それは、話し合いをして円満に解決せよということは私の気持でありますから、その気持をやはり教育長なり教育委員会なりに伝達し、指導したものだというふうに私は考えております。
  81. 野原覺

    ○野原委員 いや、あなたの気持はわかりました。あなたはそういうお気持で臨んでいらっしゃる、私はこれは正しい御態度だと思う。敬意を表します。しかし文部省の当面の局長あるいは課長、こういう者が教育委員会の会合に出席をして、勤務評定については話し合いをする必要はないんだ、こういう指導、助言をしておる。この事実があったらどうするかということを聞いておるのです。事実があったらどうなさいますか。事実は断じてないと文部大臣は御信頼になりますか。
  82. 松永東

    ○松永国務大臣 そういう事実は全然ないと確信いたしております。
  83. 野原覺

    ○野原委員 委員長に重ねて要求いたしますが、当面の責任者である内藤初等中等教育局長をすみやかに出席方の御手配を願います。  そこで文部大臣にお尋ねいたしますが、文書で出しておるのです。私はかつて勤務評定をここで質問したときにも、その文書に簡単に言及したことがある。内藤初等中等教育局長から、都道府県教育委員会あてに文書が出ておるのです。勤務評定については話し合う事項ではない、そのように心得てやれ、こういう文書が出ておるのです。それから、内藤局長が見えてから私は申し上げたいと思いますが、内藤局長と木田課長は、各ブロックの教育委員会の主務課長の会議ないしは教育長の会議に出席をして、指導、助言をいたしております。その指導、助言は、私は出席しておりませんから、どういう内容の指導、助言をしておるかは、御本人が出席してからここで究明したいと思いますが、これは重大な指導、助言をしている。文部大臣は話し合う必要がある、十分に話し合わなければならないと考えているにかかわらず、話し合いに関しての実は指導、助言が、私どもとしては納得のできない点がたくさんあるのであります。この点は御本人がお見えになってから私はお尋ねをしたいと思う。そこで文書の点は明らかなる事実でございますから、重ねて文部大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  84. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 局長が出ておられませんので、ただいまの御質問の点、お答え申し上げます。通達の件でございますが、私の記憶によりますと、ある県から、勤務評定に関する当局の定めというものは、地方公務員法に定める職員団体とそれから当局との交渉事項に法的に入るものかいなかとの御質問があったのに対して、それは、文部省としては検討の結果、交渉事項ではないということを答えたということを承知しております。御質問の点はその点ではないかと思うのです。
  85. 野原覺

    ○野原委員 私はこの前の文教委員会でもその点について質問をしたときに申しておりますように、いやしくも交渉事項でないと断定をされて——非常にこれは疑義のあることなのです。私はこれは交渉事項であると思う。勤務評定は職員の勤務条件に関することなのですから、当然交渉事項であるという見解を私どもは持っております。そういう通達を受ける側の教育委員会としても、疑問があるから実はそのお伺いを出している。それに対する回答を出すのに、交渉事項でないと断定をして出されることは——それはそのように考えて判断をされたのですから、当然でありましょうが、それでいいとしても、少くとも法的な根拠を文書で示したかどうか。実は第何条はこう解釈する、第何条はこうなんだ、人事院規則はこうなんだという的確な法的根拠を示してその通達を出したかどうか。これはあなたに承わっておきたい。
  86. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 これが交渉事項であるという主張の方々は、これが勤務条件に結果として関係するから、交渉の内容に入ってくるのだと言われる方がありますけれども、給与その他の勤務条件が交渉事項であるということは、勤務条件に結果として関係するものがすべて入ってくるものだ、と私たちはかようには考えておりません。教育委員会の権限でありますところの任命そのものでありましても、あるいは職員の個々の勤務の内容に影響を及ぼすものはあるわけでございますけれども、こういうものは決して交渉の内容に入ってこないのであります。でありますから、文部省といたしましては、これは私、直接の担当ではございませんけれども関係の方々とも十分に連絡をし、検討した結果、勤務評定の規則の制定そのものは地方公務員法に定める団体との交渉事項ではないという結論を通達したものと考えております。
  87. 野原覺

    ○野原委員 僕が聞いていることは、根拠を示して出したかということを尋ねているのです。あなたが今言われたように、そうしたような見解を付加してこの通達を出しているのか聞いているのです。いかがですか。
  88. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 先生、まことに申しわけないのでございますけれども、実は私、直接その通達の責任者ではございません。ただいろいろ文書を見ておりますので、今その文書が全部どうなっているかという記憶はございませんけれども、要点は先ほど申し上げましたように、地方公務員法に定める交渉事項ではないという旨の通達であったと記憶しております。
  89. 野原覺

    ○野原委員 これは根拠を示して出していない。これは大臣にお尋ねする必要はないから、私は申し上げません。内藤局長がまだお見えになりませんから、私は大事な点は内藤局長がお見えになってから尋ねたいと思いますが、大臣にお聞きしておきたいことの他の一点は、本日のこの東京都の事態というものは、全国的に波及するおそれがあります。私はここで断言しておきます。教員諸君は、このようなむちゃをやるならば、いかなる事態に突入してもやむを得ない。これは犠牲者が出るだろうということを覚悟してやっている。実は昨日から、大臣が教育長なり教育委員会側を奔走したごとく、私も何とかしてこのような事態に突入さしてはまずいと考えて努力をしました。しかしながら事ここに至ってはいかんともできないということを実は私も考えて、本日はあきらめて文教委員会に出ておるわけなんです。だから文部大臣は、こういう事態を今後どのように取拾するおつもりなのか。これは教育委員会教員の間の問題であるからといって、あなたは当然の責任者ですから、ほうっておくわけにはいかぬのです。これをどうお考えになりますか。
  90. 松永東

    ○松永国務大臣 御説の通り、最悪の事態にこれは突入してしまったわけですが、これが全国的に拡大するおそれがあることは御指摘の通りです。そういうことをしたくないために一生懸命になっておる。従ってどういう手を打つかとおっしゃいますけれども、それは相手のある仕事でありますし、各県各県でのいろいろ事情も違っておりましょうから、今ここであなたに、こういう手を打つ、そういう手を打つとかいうことは、これは言ってみたところがだめな話です。ですから当面文部大臣としては、一生懸命そうした事態に陥らぬように、今後も努めていきたいというふうに考えております。
  91. 野原覺

    ○野原委員 内藤局長がお見えになりましたからお尋ねをしますが、あなたは最近の都道府県教育委員会なり教育長の会議に御出席になって、勤務評定の実施についてどのような御指導をされてきておるか承わりたい。
  92. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 勤務評定につきましては、御承知通り昨年の十月二十四日の全国教育委員長会議で、四月の新学期を目標に全国やろうという申し合せがいたしてありますので、私どもはその申し合せの線に沿って実施されるように要望して参りました。
  93. 野原覺

    ○野原委員 私はもっと具体的に聞きたいことは、あなたも御承知のように、勤務評定に対しては教職員諸君が、実は他の職員団体の職員が反対しておるような比ではなしに、事は教育の問題だといって非常に反対の熾烈なことは、あなたはよく御承知のはずなんです。もしあなたがそれを知っていないとすれば、それはよほどどうかしておるので、これはだれが考えても知っていなければならぬことなんです。そういうことを知っておりながら、あなたは最近たとえば関東ブロックの教育会議、あるいは東北、北海道の教育会議、そういうものに御出席なさっておられます。何月何日、最近ここ一カ月ないし二カ月でよろしい、勤務評定を強硬に実施させるために、そういう強硬に実施させる指導、助言をするために——それはどうか私は知りません。これからお尋ねをして参りますが、何月何日どういう発言をされたか。あなたが最近教育会議なり教育委員会の会合なりに、勤務評定に関して出席されたその会合、それを御答弁願いたい。
  94. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 たしか四月になりまして、初めのころに関東ブロックの教育長協議会がございました。それに出席いたしました。その後ごく最近には東北ブロックの教育長及び教育委員長会議が東京でございましたので、その会議に出席をしました。
  95. 野原覺

    ○野原委員 四月二日の関東ブロックの教育会議、こえて四月十一日にはたしか日比谷における主務課長会議、それから四月十七日、十八日には伊豆の下田における会議、こういうことに発展をしております。そこでお尋ねをいたしますが、この関東ブロックの会議において、あなたはどういう発言をされましたか。私は出席しておりません。おりませんけれども、事は本日の東京都のこのような事態に関連があると思うから私は質問しておる。どういう御発言をされたか、どういう御指導をされたか、詳細にお述べいただきたい。
  96. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 関東ブロックは、すでに関東ブロックの教育長協議会で二十日前後に実施を申し合わされたのであります。ですから私どもといたしましては、その関東ブロックの申し合せの線に沿って実施を願うようにお願いを申し上げた次第でございます。
  97. 野原覺

    ○野原委員 四月二十日前後に実施を申し合せるということは、これはブロックとしてはブロックの自主性においてやられることなのです。ところが、あなたがお願いをするというのはどういうことなのですか。あなたは口を開けば、勤務評定というものは教育委員会がやるのだ、文部省が作っておった試案も引っ込めたのだ、こう言われておりながら、今のあなたの御答弁を聞くと、お願いをする、四月二十日に実施をしてもらいたいとあなたはお願いをしたのかどうか。どういうことなんですか。
  98. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私が申し上げましたのは、関東ブロックの教育会議はすでに、たしか三月ごろかと記憶しておりますが、四月の二十日前後に勤務評定を実施するという関東ブロックの申し合せがあったと聞いております。私が参りましたときに、その申し合せの線に沿って実施されるように希望を申し上げたわけでございます。
  99. 野原覺

    ○野原委員 その希望を申し上げる際に大事な点は、文部大臣にただいまあなたがお見えになる前に私が確認したことは、事勤務評定はきわめて重要なことであるから、これは十分な話し合いがなされなければならない、そういうことなのであります。文部大臣はそれをお認めになっていらっしゃる。ところがあなたは、四月二十日前後に関ブロも実施するということをきめた際に、それをお願いしたということも、それはあなたとしては、評定を実施してもらいたい側の方であるからいいとしても、しかしあなたは文部省初等中等教育局長でありますから、実施するに当っては組合側と十分に話し合いをする必要がある、話し合いをしなければいけませんぞ、こういうような指導助言をかつてどこかの席でされたことがありますか。一回でもありますかね。承わっておきたい。
  100. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私どもは、組合が御承知通り絶対反対という建前をとっている以上、なかなかお話しを申し上げても具体的に解決は困難ではなかろうかと思っております。先般島根か鳥取の教育委員会から、この勤務評定団体交渉の事項になるかどうかというお尋ねがありましたから、私どもとしては、法的にはこれは地方公務員法五十二条による給与、勤務時間その他の勤務条件には該当しないという回答はいたしました。私どもは積極的に教組と話し合うなという指導はいたしておりません。
  101. 野原覺

    ○野原委員 文部大臣にお尋ねします。積極的に教組と話し合いをせよなどという指導をしていない、こういう断言を今された。これを大臣どう思いますか。
  102. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 誤解があるのです。私は積極的に組合と交渉するなという指導はいたしておりません、こういう意味ですから……。
  103. 野原覺

    ○野原委員 それではあなたは、そういう大切な教育長の会合なり教育委員会の会合なりに御出席になって、話し合うべきであるとお考えになっておるならば、そのことについて何らかの助言なり指導をされるはずであります。されておるかどうか、それを私は聞いておるのに御答弁がない。
  104. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私どもは、先ほど来申し上げますように、円満に話し合いのつくように期待しておるわけでございます。東京都初め各県とも何回か交渉していらっしゃるので、私どもも、できるだけ組合のご了解が得られれば得ていただきたいと申し上げておるわけです。東京都でもすでに十三回に及んで交渉をしていらっしゃったわけで、作晩も夜を徹して何とかまとめたいというので非常に御努力になりましたけれども、場合によったら中身については今後の相談事項にしてもいいから、一つやるという線だけは協力してくれないかという交渉に対して、やるという線に絶対反対だということになりますと、中身の交渉事項にはどうしても入ってこれないという点で、御了解いただけなかった次第であります。
  105. 野原覺

    ○野原委員 円満に話し合う必要があることをあなたがお認めになるならば、私は何らかの通達を——あなたはよく通達を出されるでしょう。あなたの指導行政のあり方を見ると、ことごとく通達行政と言ってもいいくらいのやり方をしている。その通達に一回も出ていないじゃないか。あなたにそういう気持があれば、そういう通達の一つくらいは出されたらいかがかと思うが、出したことがありますか。
  106. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 円満に話し合うようにという通達はいたしておりませんけれども、私どもの気持は円満に御了解いただけるように教育長諸君が御努力願いたいと思っております。ただ御承知通り日教組は十二月二十日に絶対反対だということで、非常事態を宣言しておりますので、私どもとしては説得いたしましても御理解をいただくことが困難ではなかろうかと考えております。
  107. 野原覺

    ○野原委員 絶対反対だと日教組が宣言しておればおるほど、これを強行したならばどういう事態に入るかということは、良識のある指導的な立場にある局長ならば考えなければならぬ。あなたは絶対反対のことばかり強調される。しかし絶対反対と主張しておりましても、東京都の教職員の組合は、内容について話し合うことには応ずると言っておる。そうしてその話し合いが十二回持たれたという。けれども、私は先ほども申し上げたのですが、学級経営や学校経営の基本方針を守っておるか、あるいは教員としての信念があるかどうかというような問題について話し合いをしてみたところ、本島教育長の考えは支離滅裂、何らつかみどころがないのです。だから話し合いが前進をしない。十二回話し合いに応じておるのですよ。教育委員会が話し合いをしようじゃないかといったが、片一方は話し合う必要がないといって実力行使をやったのならば誹謗もされましょう、非難もされましょう。しかしながらたとえば紀元節を賛美する校長があって、紀元節反対の教員がある、こうした場合に、その反対の教員は、場合によっては高知県のある校長のごとき、ああいう人になりますと、この教員教育者としての信念がないと烙印を押されないとも限らないから、こういう点について東京都の教育長、教育委員会はどう考えるかということに対して——私はこの会見の記録を読んでみましたが、全くなっていない。東京都の教育委員会は自分の試案を押しつけることにのみきゅうきゅうとしておるわけなんです。だから、そういう場合にあなた方としては、どうしても納得できないならば納得できないように、指導の側に立つ者としては、答弁だけは筋道を立ててこなければならぬと僕は思う。それをやっていない。やっていないから片一方では怒る。やらないでおって、もう十二回やったんだから事はしまいだ、君らは絶対反対だからといって強行するということになれば、こういう事態になるであろうということは、およそここ一年来の愛媛の事例が物語っておるのです。私どもは愛媛の教えを十分身にしみて考えなくちゃいかぬ。私は特に文教委員会勤務評定について発言をしてきた。愛媛のああいう二の舞をやったらいかぬという発言をしてきたかにかかわらず、現にあなたのやっておることは、通達を出して、勤務評定は職員団体との交渉事項でないという指導をされておる。これはあなたの信念、あなたの法的見解ですから、私は今これを取り上げません。それはそれでいいとしても、しかしそのただし書きに、あなたがほんとうに話し合いの指導、助言をされる誠意があるならば、法律的にはそうなるけれども勤務評定については十分理解と納得の上に立つべきであると思うから、話し合いを十分せよということでも書いたらどうなんです。書いてないじゃないですか。あなたはどう思います。これを。あなたは、自分の心では話し合いをすることが大事だ、こういうことを今私に答弁されますけれども、かつてそういう指導を受けたことがないと言っておりますよ。東北、北海道のある教育委員から、内藤局長はかつてわれわれにそういうことを言ったことはないと聞いておりますよ。四月二十一日にあなたは日比谷に出席されておるでしょう。四月二十一日のあなたの発言ですね、事は重大で、この東京都に直接関係がありますから、率直にどういう発言をされておるか、記憶をたどっておっしゃっていただきたい。
  108. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 たしか二十一日でしたか、私、日比谷の図書館で東北ブロックの委員長教育長のお集まりがございまして、その席で勤評の問題が出まして、ちょうど全国の情勢が大体どうなっておるか、関東ブロックあるいは東海、北陸、近畿、中国、四国、さらに九州各ブロックの状況について大体の御説明を申し上げました。東北ブロックにおきましても、全国教育委員長協議会で申し合わされた線すなわち四月実施という線で一つ御尽力を願いたい、こういうふうに申し上げました。
  109. 野原覺

    ○野原委員 あなたはその席上で、勤評というものはすみやかに実施しなければならない、教職員組合が絶対反対をしようとも規定方針通り強行すべきである、こういう御発言をされておりませんか。
  110. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 そういう発言はしておりません。
  111. 野原覺

    ○野原委員 衆議院は解散、選挙ということになるわけでありますけれども、おそくとも五月中旬くらいまでに関東東北のブロックは実施すべきである、選挙前にこの問題は解決すべきだと私は考える、こういった内容のことは申しておりませんか。
  112. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私が五月十五日までにやれとか四月中にやれとかいう具体的な日にちを切ったようにお尋ねでございますが、そういう事実はございません。
  113. 野原覺

    ○野原委員 具体的な日にちがなければ、たとえばすみやかにやらなければならない、あるいは選挙前にこの問題は解決しなければいけない、事は長い問題であるからといった内容、これは申しておるでしょう。申しておりませんかな。
  114. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私が申し上げましたのは、勤評と選挙運動とがからまることのないように御配慮いただきたい、こういうことは申しましたけれども、いつ幾日までにやれというようなことは言っておりません。私は、あくまでも全国教育委員会委員長会議の申し合せなんだから、お互いの申し合せを尊重してやっていただきたいという趣旨を述べたわけでございます。
  115. 野原覺

    ○野原委員 そのときの会議録はございませんから、あなたがそう言ったことがないということであれば、本日のところはそれはやむを得ない。私はでたらめはお尋ねしておりません。これは速記に残るのですからね。なるほど選挙とからませてやるなということは言ったかもしれません。そういうことをからませてやれと言ったら大へんです。あなたの初中局長の価値がありませんから、それは当然のことなんです。しかしながら、時期は教育委員長会議の申し合せ通りすみやかにやるべきであって、その時期としては選挙前にこの問題を解決しなければならぬ、からませることはいけないけれども、その解決をはかる時期としては選挙前だ、こういったことをあなたは言われておると実は日比谷の会合に出たという人が申しておるそうでございますが、これはあなたの良心に誓って、断じてそのようなことはないとあなたは言い切れますか。
  116. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私は日にちを切ったような覚えはございません。
  117. 野原覺

    ○野原委員 文部大臣にちょっとお尋ねをしておきたい。大臣は話し合いの必要を力説されておる。内藤局長もその言葉だけの上では話し合いはしなければならないということも言われておる。しかしながら、あなたがおそばでお聞きのように、最近、四月二十一日の会合にいたしましても、四月上旬の会合にいたしましても、あるいは文書による指導行政にいたしましても、十分話し合いをせよということはいまだかつて具体的な形で出されていないのです。私は心で思っておると答弁しますけれども、ないのです。このことはあなたが私に先ほど答弁したことと違う。文部大臣は話し合う必要があると言っている。しかもあなたが実際初等中等教育局の行政をまかしておる局長は、何もあなたの考えを体してやっていない。どうお考えになりますか。
  118. 松永東

    ○松永国務大臣 私はさっきから話し合いの必要があるというのではないのです。それは法的にはわれわれの考えは、団体交渉事項ではないからして、これは話し合いをしなければならぬという必要事項ではありません。しかしながらそんな四角四面の法律や何やというのではない、円満にスムーズに事を運んでいくのには、それは法律にはどうあろうと、その解釈がどうあろうと、やはりお互いが話し合って、次代をになう国民を作る大きな重大な問題です。しこうしてこうした児童たちに多少でも教育上支障をもたらすということはできるだけ避けなければならない。だから法律にどうあろうと、お互いに話し合って、そうして最悪の事態の生ぜぬようにしなければならぬというふうに私は考えて、今日まで努力もしてきた、さらにまたこれから先も私は努力するつもりであります。
  119. 野原覺

    ○野原委員 法的にはどうあろうとも、しかしやはり精神としては話し合いをしなければならぬ、これは先ほどのあなたの御答弁を今も確言されたので、そのあなたの考えていらっしゃる精神が局長によって具体的に出されなければいけないと私は思うのです。法的な見解はそれでいいでしょう。しかしあなたがそう考えておられる精神というものは、局長の具体的な指導行政の中ににじんでこなければならないと思います。それがないのです。大臣も御承知のように尾崎という先生が死の抵抗をなさっております。このことについてはいろいろ批判があります。批判はありますけれども、私はこの人の日ごろの言動なりあるいは学校における勤務の状態なり、私はこの人の人柄というものを聞いた上で、この人の死の抵抗というものを批判しなければならぬと思います。特にこの人が木下教育委員長にあてたこの遺書というものは、まことにりっぱなものです。大臣はお読みになりましたか。事はこういうことになるであろうということは、いやしくも私は文教の指導行政をつかさどるものは予見しなければならぬと思う。こういう強行を東京都がやったならば、四月一日の入学式のときに実は全面授業の放棄ということをうたっておったのです。このことはよし組合がやるならばやれ、それで組合は自滅だと文郎省で豪語したでしょう。これは内藤局長かだれか知らぬが言っておる。いよいよ組合は自滅の一途をたどりつつある、とにかく組合をつぶしたらいいのだ、こういうような考え方で指導行政をしておるから、今日の授業を休むという事態にも入ってきている。私はそうでないと思う。なるほど組合は今日文部省に抵抗しております。文部省のあまりに一方的な官僚的な行政に憤慨して抵抗しておる。しかしながら文部省を敵とするものでも何でもないのです。やはり学校の先生というものは教育を愛しているのです。あなた方は組合の幹部にふんまんがあるかしらぬけれども、(発言する者あり)幹部の言動というものは、これは教員全体の声を反映するために幹部は行動しておる。坂田君などはここでヤジっておりますけれども、これは教員組合の実態を遺憾ながら知らない。従って私は、まだ文部大臣に同僚議員が質問があるようでございますから、最後にお聞きしておきますが、文部大臣として、文部省当局として、今回の事態に対してはどのような反省を持っておるか、責任をいささかも痛感しないとおっしゃるのかどうか、もし責任があるとすればどいう点が自分たちが至らなかったと今日反省をされるか、これを承っておきたい。文部大臣に承わるとともに、その指導の直接の担当者であります内藤局長の御見解もお聞きしておきたいと思うのであります。
  120. 松永東

    ○松永国務大臣 今、野原委員は当然こういう事態になるべきことを予見すべきであったじゃないかという御意見ですが、私はそういう意見は持っていなかった。きわめて甘い意見かもしれません。しかし勤務評定というようなものは、これはそう目に角立ててがちゃがちゃはち巻ねじ上げてやるような問題ではない。要するにこれは多少面子の問題とか何とかいうのがあるのじゃないかくらいにすら考えておったくらいです。でありますから、こうした最悪の事態になろうとは思っていなかった。しかしきのうあたりからいろいろうわさを聞きますと、これはとんでもない最悪の事態に突入しそうだということですから、急にあわてて飛び回ったような次第であります。従って今責任をどうするかと仰せになりましたが、もちろん法的に責任がありますならば、いさぎよく責任は負います。しかし今日のところ私は責任があるとは考えておりません。それはなぜであるかというと、一体組合と折衝するのは私らが折衝するのではない。御承知通り都道府県教育委員会が折衡し、そしてそれぞれの地域々々で主導体となって解決をはかるべき役目である。われわれの方では指導助言をするにすぎない。(野原委員「その責任を聞いておるのです」と呼ぶ)  指導助言は十分いたしておるつもりであります。
  121. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 こういう事態になりましたことは、私ははなはだ日本教育界のために嘆かわしいことと思っております。この件につきまして、私ども勤務評定をやるという建前で組合とお話することは、私喜んでお話したいと思っております。ところが教職員組合とも私お話したときに、私の方は絶対反対なんだ、こういうお考えでございますので、これでは私どもは話し合いの余地がございませんので、今日に至ったわけでございますが、一つは今大臣がお述べになったように、勤務評定というものに対する認識の問題が相当違っておるのではなかろうか。私ども勤務評定というのは人事管理上必要な参考資料でございまして、これは今でも地教委なり校長さんなり、指導主事が頭の中に描いておるものであります。これをより客観的に、よりいいものにまとめ上げていこうという努力が今回実ったわけでありますが、これについてまだこれをどう活用するか、またその結果おそろしく不当人事が行われたとか、そういうような事態なら私どもとしては許せないことだと思います。まだ勤務評定というものについて、私どもとしても十分趣旨徹底がされてない点は遺憾に思っておりますけれども、組合が主張されるようなああいう一方的なお考えもこれもお考えいただきたいと思っております。今後とも私どもは人事管理上どういう勤務評定がいいのか、そうしてすでに法律でも定められておるごとでもありますので、これをどういうふうに活用するか、今後どういうふうにしていくかということは、まだ残された問題もあろうかと思います。要するに職場の勤務能率を向上させるような方法に持っていかなければならないと思っております。いやしくも職場が沈滞し、あるいは萎縮するようなことになっては相ならないと思っております。ですからこの点について私ども趣旨が徹底しなかったというのは遺憾に思っております。
  122. 野原覺

    ○野原委員 これでやめようと思いましたが、実はやめることができなくなった……。
  123. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 時間がないですから……。
  124. 野原覺

    ○野原委員 だからこれで私はやめます。文部大臣がいささかの責任も痛感されないと大みえを切られることになると大へんな問題です。これはほんとうに文部大臣は今日の事態というものを何ら責任を痛感していない。実はあなたの方で勤務評定を強行されて、勤務評定を持ち出したのはあなたの方です。文部省なんです。それから発展してこういう事態がきておるのです、そういうことから考えても、なるほどあなたはお考えの上では自分は責任はないと思っておっても、結果的にこういう事態になってみれば、やはり反省しなければならない点が多々あるのではないかと思う。いささかも責任を痛感しないかどうか。なお内藤局長は勤務評定というものは人事管理だけだ、不当な人事が行われないようにするだけなんだ、それ以外の何ものでもないのだ。今私はそういう法律論を議論しようとは思いません。あなたがそう言っても、実はそれ以上のものであるか、それ以下のものであるか、今度の勤務評定内容検討して、それがどういうことに使われるおそれができてくるか、あなたが言うような保障は何も法的にないんですよ。だからやはり心配なんです。あなたはそう思っておっても、勤務評定によって生ずる影響というものは、事は重大なんです。しかしこういう点については、私は、本日は実は議論しようとは考えておりません。文部大臣は、いささかも責任を痛感しないならば、いささかも責任を痛感しないと、断言をして下さい。
  125. 松永東

    ○松永国務大臣 これは法的に言えば、すでに法律が存在しておる、その法律を施行するということは、当局としては当然でございます。当然ですが、やはり味もそっけもないやり方はいかぬ、円満に解決するようにしなければいかぬというので、私は努力しておるのです。ですからして、それは法的の責任があれば甘んじて受けます。甘んじて受けますが、私がさっきも申し上げるように、法律的に責任があるとは思えない。しかし、そういうふうに感じておるから、何とか解決せぬければならぬ。文教の長として、解決せんければならぬと思って、実は夜も寝ずに飛び回っておったような次第なんです。これから先も努力するつもりです。しかし責任は、そのときにもし生じてくる、それが法律上責任を負わなければならぬならば、それは私は甘受いたします。
  126. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 次に高津、櫻井両委員質疑を許しますが、実は参議院の内閣委員会で三十分大臣を貸してくれということでしたが、御了解を得て待っていただいたわけであります。そこで、だいぶ時間も経過しておりますから、できるだけ簡単にお願いいたします。高津正道君。
  127. 高津正道

    高津委員 文部大臣にお伺いしますが、かくばかり現場の教師が強く反対するという事実は、むろん大臣もお認めであろうと思います。かかる状態に対して、たとい政府が無理に押し切って実施したところで、教育界は混乱するばかりでありまして、この混乱はわが国教育そのものに大きいマイナスを来たす、こう思われるのでありますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  128. 松永東

    ○松永国務大臣 高津委員の仰せられる、全部の教職員が強く反対しているとは思いません。中には、勤務評定は必要だという人もあります。しかしながら、混乱は何とかして避けぬければならぬというふうに、私は痛感いたしております。
  129. 高津正道

    高津委員 教育基本法第十条は、読んでみますと、教育は不当な支配に屈してはならないことになっている。しかるに、今回文部省勤務評定の強引なやり方は、この法律に禁じてあるところの不当な支配に該当すると思われるが、文相の見解はいかがですか。
  130. 松永東

    ○松永国務大臣 決して不当な支配をやったとは考えておりません。
  131. 高津正道

    高津委員 自民党の文教政策に一貫しておるのは、占領政策の行き過ぎ是正という点にあるように思うのでありますが、こういう受け取り方をして、間違いでありませんか。
  132. 松永東

    ○松永国務大臣 仰せの通り、占領政策を是正せぬければならぬということは、痛感いたしております。しかし、ことごとくが占領政策の是正であるとは考えません。占領政策のうちにいいのもあります。すなわち民主主義をわれわれに植え込んでくれた、この功績はまた認めなければなりません。しかしながら、私どもはそうした問題とこれとは違うんじゃないかというふうに考えております。
  133. 高津正道

    高津委員 戦前、戦時中に教えておったところの教育というものは、真実を隠し、上からの命令は無批判に何でも従い、進んで生命を捨てることを教えるのが教育であったわけです。教師は、時の政府から示された通り内容と方法で教えていれば、無事であった。ところが、敗戦のきびしい事実を前に、教師たちは、従来の教育の犯した罪のあまりにも大きかったことに気がついて、今度は真実を教えて、自主性に富み、命をとうとぶ人間に育て上げることを任務としておるのであります。私は、このような教育は、憲法の精神にかない、教育基本法の命ずるところによく合致しておると思います。そうして、これは教師の深い反省から来ておるのであるけれども、国民を代表する国会がまた全面的にこれを承認しておるのであります。この新しい教育を、一口に言えば、民主教育、平和教育ということもできるでありましょうが、それらの戦後の新教育というものは、これを改める必要が生じて、そうして今度の勤務評定が出たのか、あるいはまた勤務評定関係がないにしても、あなたは、この行き方では過不足があるというか、完全でない、このように考えておるのか、この二点をお伺いします。
  134. 松永東

    ○松永国務大臣 私どもはそこまで、あなたの仰せられるような深遠な理論に基いてやろうというのじゃありません。要するに法律規定してあることを、法治国の文教の長としてどうしても実行せぬければならぬというふうに考えております。
  135. 高津正道

    高津委員 それでは、また方面を変えてお尋ねしますが、文部省はよく局長通達とか次官通牒とかを幾つも出されるのであります。文部大臣は車中談を発表し、もちろん各地を遊説なさいます。それらの当局の見解は、勤務評定者の考え方に大きい影響を与えると思います。そうだとすると、勤務評定の実施に当って、そこに教員に対する、あるいは教育に対する思想統制、あるいはまた中央による教育統制という事実が、当然に随伴するというか、必ず現われてくる、こう思うのでありますが、これに対する御見解を承わりたい。
  136. 松永東

    ○松永国務大臣 これは中央で統制をするとか、あるいは中央集権とかというような御観察は、当っておりません。だって、あなた、文部省としては、御承知通り教示とか指導とかという権限は持っておるのです。その権限に基いて通達ぐらい発することは、これは当然のことじゃありませんか。ですから、これは決して中央集権とかなんとかいう問題とは全然違う。さらにまた、私が車中談を発するとかなんとか言われるけれども、私はあまり旅行したことがないので、何でも一ぺんかしらん、そんなことがありましたけれども、そんなことは大した——教員諸君に影響をもたらすようなことは私は言わなかったつもりであります。
  137. 高津正道

    高津委員 あなたの意見の発表がラジオや新聞で伝えられ、局長や次官の意見が伝えられるたびごとに、勤務評定者に大きい影響を与えるだろう。それは思想統制になる、影響ありやいなやということを今私は尋ねておるので、統制しようとは思っておりません——それではない。影響があるかないか。あるというのが常識ですよ。ないというならば、ないという理由を……。
  138. 松永東

    ○松永国務大臣 私はそう影響がないと思うのです。こんな通達で青くなったり赤くなったりするような人があろうとは思いません。だが、しかし、かりに影響があるといたしましても、正理、正論に基く通達でありますから、決して悪影響をもたらすものではないと考えております。
  139. 高津正道

    高津委員 学生や生徒、あるいは新しい卒業者の中に不心得者が出るのを、すべて教師の責任であるように考えて、ちっともみずからを反省せず、政治をも反省しないのがどうも自民党の文教政策のように私には見えますが、こういう不心得者がたくさん出るということと勤評とは関係があるのですか、ないのですか。
  140. 松永東

    ○松永国務大臣 私はこうした学童あたりの不良行為とかあるいは学生が誤った行為、行動に出るとかいうことが、ことごとく先生のあやまちに基因するとは考えておりません。やはりこれは仰せの通り社会の環境が悪いのと、さらにわれわれもまた反省しなければならぬということを痛感いたしております。しかしながら、さればといってこの勤務評定とそうした不道徳行為との間には関連性はないと私は考ております。
  141. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 櫻井奎夫君。
  142. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 先ほどから野原君及び高津さんからいろいろ質問がありましたので、私は簡単に質問を申し上げておきます。大臣はきょうのこの事態に対してあまり大した責任を感じておられないというふうにも見受けられるのですが、きょうの事態は、私は昨年愛媛県の問題が起きましたときに、この勤務評定の問題についてだいぶ大臣に突っ込んだ質問をしておる。この勤務評定の問題も文部省の指導いかんによっては非常な大きな問題に発展するおそれがある、従って文部省としては十分この点については慎重な態度をとられたいということを、これは速記録を見れば明瞭に書いてある。大臣もそれについていろいろ慎重な態度をとる、文部省の試案ということについても十分研究をして今やっておるんだ、こういう問答があったのはすでに昨年の秋ごろですよ。それにもかかわらず、今日これは法的にどうとかこうとか大臣はおっしゃっておりますが、本日のこの現実の事態というものは何といっても否定できない。今までにないような大きな事態が東京都に起きておるし、これがまた関東方面に波及することは明瞭です。こういうときに、そういうことは都道府県教育委員会の責任だから自分は直接法的責任はないんだということで、日本教育の上における混乱の現実に対して、文部大臣が一向責任を感じておらないというのでははなはだ納得がいかないのですが、その点はどうですか。昨年度からこういうことは考えられたのです。私はそういうことを再三文部大臣に御忠告を申し上げておった。が、今日になって予見はできなかったんだ、ただお互いに感情上の問題で引くに引かれずいがみ合っておるのじゃないか、こういう答弁では、日本の文教行政の最高責任者として、その責任を軽んじておられる答弁としかとれないのですが、文部大臣はその点はどうですか。
  143. 松永東

    ○松永国務大臣 私は全くこういう事態になるいうことを予見していなかったということは、先ほども申し上げた通り甘い見方かもしれません。甘い見方かもしれませんが、一体勤務評定は、学校に教鞭をとっておられる先生方がそんなに騒がれるような問題でないと私は考えておるのです。なぜかというと、議論をすれば相当長くなりますし、私の方の理屈を言えば、あなたの方の理屈もあるでしょう。しかしいずれにいたしましても、勤務評定は今日までやってきた問題です。そのやってきた問題の基準を作って、それを校長さんの方に流す、こういうだけの問題ですから、何も私は大した問題じゃないとばかり考えておった。実はこれでいやストライキが起るとかなんとかいうことを聞いて、私はとんでもないことになったと驚いたわけなんです。責任をとらぬのかというお話ですが、法的の責任はないといたしましても、私は文教の大臣として困ったことだということを痛感して、何とかして善処したいというふうに考えておるわけなんです。しかしいずれこうした問題について責任を問われることがあれば、それは私は責任の所在について思考するべき点があるとすれば、私は甘受します。こういうことを私は先ほども申し上げたのであります。
  144. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 大臣の考え方はわかりましたけれども、しかしこの勤務評定の問題が大したことじゃない、こういうことをおっしゃっておられるのが認識不足だ。これは昨年の愛媛の問題のときに、今日のこの深刻な事態の原因があったわけです。あれを文部大臣はやはり一地方の問題であろうというふうに考えて、甘く見ておられたところに今日のこの問題がある。この基準について大臣の考えと私どもの考えをここで述べ合うと長くなりますので、今時間のないところでそういうむだな議論はやめましょう。今の起きておる事態、さらにこれが終息するという方向に向わすに、さらに拡大しようというような形にあるときに、これをどういうふうに善処するかということがやはり私は文部大臣の責任であると思うのです。そういう意味から私は言っておるのであって、あなたの見通しといいますか、これが甘過ぎたことは指摘してもはばからないと思うのです。愛媛でどうしてああいう事態が起きたか、もう少しあなたが事態を突っ込んで考えられるべきであった。愛媛は愛媛の問題としてあそこでおさまったであろうというようなことで、文部省としては全般的な教育行政の面における指導監督に欠けるところがなかったのか、そういうのが今日のこういう事態を起しておる。従って今日のこの事態に対してあなたはどういうふうな指導をし、助言をされようとしておるのか。ただ何とか善処するというようなことではこれはおさまりません。もっとはっきりおっしゃっていただきたい。
  145. 松永東

    ○松永国務大臣 愛媛の問題と今の問題は違うのですよ。(「本質は違わぬ」と呼ぶ者あり)本質は違わないけれども考え方において違う。愛媛県の問題は赤字県で、ああしたことを突破口として、あるいは教員をやめさせよう、整理しようという魂胆があったように解釈せられております。そういう解釈があったと私が言うのじゃありませんが、聞いております。聞いております。ところが今日ではそういうことは絶対にありません。ですから、どうしても愛媛の問題とは違うのですが、しかしそれが違う違わぬということじゃございません。これは見解の相違もございましょうから、それはかまいません。それじゃどんなことをやるのか、こういうお尋ねですが、それは誠意を持って努力する。これよりほかありませんよ。相手のあることですし、千変万化、いろいろな手を打たなければならぬこともあるでしょう。それをどうするか、こうするかと言ったって、こうするんだということも言えない。要するにできるだけ私は努力をしてみたいというふうに考えております。
  146. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 できるだけ努力をなさるというのですが、この実施期間をどうしても四月からというところに混乱がきておる。そういう努力の中に、これをもっと将来に延ばしていく、冷却期間を置くとか、あるいはもう少し両者で話し合って円満な方途を見出していく、こういうような方法も考えておられるかどうか。
  147. 松永東

    ○松永国務大臣 それも一つ研究してみます。それは時に応じて、やはり政治の方法も違ってきましょうし、とにかくいずれにしろ私はそうした最悪の場合が起らぬように努力してみたいというふうに決心いたしております。
  148. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 最悪の場合が起らないようにとおっしゃいますが、この最悪の場合いがもう起きている。東京ではもう起きているのですよ。これがさらに大きくなる可能性もある。早急に大臣は、これは都道府県教育委員会の責任であるとか、そういう見解に立たれないで、これは日本教育行政の一大問題点です。こういうものに責任を持って解決に当る、こういう御答弁を願いたい。
  149. 松永東

    ○松永国務大臣 あなたのおっしゃる通り答弁しろといっても、そうはいきませんよ。ですからできるだけわしはやりますから、私の誠意は、見ておいて下さればわかると思う。
  150. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 それではこの際暫時休憩し、理事会を開きます。    午後二時二十一時休憩      ————◇—————     午後四時十四分開議
  151. 山下榮二

    ○山下委員長 これより会議を再開いたします。  先ほどに引き続き著作権法の一部を改正する法律案及びへき地教育振興法の一部を改正する法律案を一指して審査を進めます。  両案に対し御質疑はありませんか。   [「なし」と呼ぶ者あり]
  152. 山下榮二

    ○山下委員長 別に御質疑がなければ、両案に対する質疑は、これにて終了いたしました。  それではまずへき地教育振興法の一部を改正する法律案について討論に入るわけでございますが、別に討論の通告がございませんので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  153. 山下榮二

    ○山下委員長 御異議なしと認めます。これより採決いたします。本案を原案通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。   [総員起立]
  154. 山下榮二

    ○山下委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決するに決しました。(拍手) 本案議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  155. 山下榮二

    ○山下委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  次に、著作権法の一部を改正する法律案について討論に入るわけでございますが、別に討論の通告がありませんので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  156. 山下榮二

    ○山下委員長 征異議なしと認め、採決いたします。  本案を原案通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。   [総員起立]
  157. 山下榮二

    ○山下委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決するに決しました。  なお本案議決に伴う委員会報告言書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり]
  158. 山下榮二

    ○山下委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会      ————◇—————