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1958-04-16 第28回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十六日(水曜日)     午後二時五十二分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 佐藤觀次郎君       杉浦 武雄君    渡海元三郎君       並木 芳雄君    濱野 清吾君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       鈴木 義男君    高津 正道君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君 四月十一日  委員野原覺君辞任につき、その補欠として猪俣  浩三君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員猪俣浩三君、小牧次生君及び福田昌子君辞  任につき、その補欠として野原覺君、櫻井奎夫  君及び平田ヒデ君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 四月十日  女子教育職員の産前産後の休暇中における学校  教育の正常な実施の確保に関する法律の一部を  改正する法律案高田なほ子君外二名提出、参  法第一一号)(予) 同月十一日  産業教育振興法の一部を改正する法律案(竹中  勝男君外二名提出参法第一二号)(予) 同月十六日  農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及  び公立高等学校教員に対する産業教育手当  の支給に関する法律の一部を改正する法律案(  渡海元三郎君外五名提出衆法第二一号) 同月十一日  養護教諭必置に関する請願外四件(神田大作君  紹介)(第二九一九号)  同(田原春次紹介)(第二九二〇号)  同外二件(藤枝泉介紹介)(第二九二一号)  同外十六件(田中稔男紹介)(第二九二二  号)  同(下平正一紹介)(第三〇〇一号)  同外十八件(戸叶里子紹介)(第三〇六一  号)  事務職員各校必置に関する請願外十三件(田  中稔男紹介)(第二九二三号)  同(下平正一紹介)(第三〇〇二号)  へき地教育振興法の一部改正に関する請願(三  浦一雄紹介)(第三〇〇三号)  米納津中学校存置に関する請願櫻井奎夫君紹  介)(第三〇六〇号) の審査を本委員会に付託された。 四月十五日  義務教育施設費国庫負担制度確立に関する陳情  書(第九三一号)  養護教諭必置に関する陳情書外三件  (第九三二号)  教育関係予算増額に関する陳情書  (第九三四号)  修身科復活反対に関する陳情書外一件  (第九三五  号)  勤務評定反対に関する陳情書外十五件  (第九三六号)  市町村合併に伴う小中学校統合促進に関する  陳情書(第一〇〇  五号)  天然記念物指定地域における鶴の被害補償に関  する陳情書  (第一〇〇八号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律案内閣提出第一一五号)  農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及  び公立高等学校教員に対する産業教育手当  の支給に関する法律の一部を改正する法律案(  渡海元三郎君外五名提出衆法第二一号)  産業教育に関する件      ――――◇―――――
  2. 山下榮二

    山下委員長 それではこれより会議を開きます。  この際議事進行に関して、平田ヒデ君より発言を求められております。これを許します。平田ヒデ君。
  3. 平田ヒデ

    平田委員 議事進行についてお伺いいたしますが、本委員会法案審議は、いつも政府提出法案が優先的に取り扱われております。議員提出法案はなかなか日の目を見ないでおるわけでありますが、これはどうしてそういうふうにおくらせていらっしゃるのか、委員長にお伺いいたします。
  4. 山下榮二

    山下委員長 平田ヒデ君に私よりお答えを申し上げます。本委員会法案審議は御承知通り理事会でいろいろ御相談を申し上げまして、両党の意見一致を見て、できるだけ委員会審議をスムーズに運営いたしたい、こういう考え方から理事会等相談を進めて、法案審議を進めて参ってきておるのであります。従いまして議員提出法案を軽視するというわけではございませんが、過般来も野原委員よりこのことについていろいろ質疑等がございまして、平田委員も御承知であろうと思うのであります。議員提出法案も、政府提出法案同様、なるべく早く取り上げて審議を進めて参りたい、かように考えておりますので、御了承をいただきたいと存じます。
  5. 平田ヒデ

    平田委員 委員長のおっしゃること、まことにごもっともでございますけれども、会期も何か押し詰まっているような感じがいたしているのでございますが、この際大臣もお見えになっていらっしゃいますので、大臣とそれから内藤局長さんにちょっとお伺いをいたしたいと思います。私の提案いたしております法律案についてでございますけれども、これは二十六、二十七と継続審議になっておるのでございます。ところでこれはどういうのかと申しますと、お忘れになっていらっしゃるかもしれませんが、ちょっと一言申し上げたいと思います。これは市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案でございます。これは実はただ一回だけ審議をいただいておるわけでございまして、この法案は決してむずかしい法案でもございませんし、それからこれにつきましては大臣にも陳情いたしておるわけでございます。ちょっと申し上げてみますと、これは神戸、大阪、京都、名古屋、横浜のいわゆる指定都市定時制高校教職員給与が、府県支弁であることは教育上非常な支障を認めますので、市支弁に切りかえるというのでございます。これは第二十四国会におきまして成立いたしました地方教育行政組織及び運営に関する法律第五十八条、地方自治法第二百五十二条の十九等に照らしても明らかでございます。本法の成立によりまして、市町村立定時制高校と全日制高校教員との間に、定員給与退職金等に非常な格差を生ずる結果となりまして、いわゆる新教育委員会法の意図した身分の保障、給与改善は、逆の結果を生ずるようになったわけでございます。この不合理を解消し、そしてこれの改善をはかろうというのが、いわゆる定時制教育の能率的な発展をするというわけであったのですけれども、結果としては反対になった、こういうのでございます。  もう一つ公立幼稚園教員給与についてでございますが、資格義務教育職員と同様に要請されているのにもかかわりませず、市町村立学校職員給与負担法も適用されておりませんし、全般的に給与が低いところに問題があるのでございます。これが不合理を是正するというものでありまして、職員給与の二分の一を県負担としたいというのでございます。この幼稚園予算につきましてはわずかに九百六十九万円を計上していただければ、これは今のところでは解決を見る、こういうわけでございまして、国家予算から見ますれば小指の先ほどの額であると思うわけでございます。松永大臣もそれから内藤局長さんも、その趣旨はよくわかる、ことに大臣は、それはよくわかる、これはしてやらにゃいかぬ、こういうふうにほんとうにおっしゃっていらっしゃるのでございますけれども、どうも委員会におきますところの法案審議の過程におきまして、そういう大臣のあたたかい御意思があまりここに反映していなかった。これから反映さしていただければ大へん仕合せでございますけれども、そういう点でこの問題について大臣局長さんはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、伺わせていただきたいと思うわけでございます。
  6. 松永東

    松永国務大臣 ただいま平田委員の御質問の問題は、これはもうかねがね申しておりますように、趣旨は十分私どももそうしなければならぬというふうに感じておるのです。特に定時制の問題や通信教育に当っておる人々の問題等についても、何とか善処しなければならぬということは、これはもう私がその職についた初めから主張しておるものであります。さらにまた幼稚園の問題、これも御指摘通り何とかしなければならぬということは考えておりますけれども、本年度すなわち三十三年度にはどうも完全にわれわれの主張がいれられなかったのであります。しかしこれは順を追うて来年度には相当御要求に応ずるようになり得るということを確信いたしておるわけであります。
  7. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 五大市定時制高等学校負担都道府県から市町村に移すようにという点が第一点でございます。この点私どももできるだけそういうことが可能ならばいたしたいと考えて、五大市の当局ともいろいろと相談をいたしましたけれども、これを受ける五大市と話す方の都道府県との間がまとまりませんので、この点について今円満なる解決を待っているわけでございまして、今後とも努力をいたしたいと考えておりますが、今直ちにここで御賛成するわけには参らぬと思っております。  それから幼稚園の件でございますが、幼稚園の方はむしろ御指摘のように小中学校と同じような教員資格なり体系になっておりながら、給与小中学校先生に比べて非常に悪い、これは何とか改善しなければならぬという点は全く私どもも御指摘通りだと思っております。この点は市町村における教育費が貧弱なために幼稚園の経費が食われる。そうして幼稚園教員給与費が保障されないというところにあるわけでございます。この点は何らかの形で幼稚園先生方待遇改善をいたしまして、小中学校並みに引き上げたい、こういうふうに念願をいたしておるわけでございますが、ただいま御提案になりました法案につきましては、まだ私ども検討すべき点が残っておると思っておりますので、もう少し検討さしていただきたいと思っております。
  8. 平田ヒデ

    平田委員 大臣それから局長さんのお考え方はよくわかりましたが、どうかその趣旨をよく御了解いただきまして、できるだけ早くこれが実施されますように、格段の御努力をお願いいたしたいと思います。また私どもの方といたしましても、いろいろとまだ研究しなければならない問題もございますけれども、どうかよろしくお願いいたします。     —————————————
  9. 山下榮二

    山下委員長 それでは次に農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員に対する産業教育手当支給に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  提案者より提案趣旨説明を聴取いたします。渡海元三郎君。     —————————————
  10. 渡海元三郎

    渡海委員 ただいま議題となりました農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員に対する産業教育手当支給に関する法律の一部を改正する法律案につき、その立案の趣旨を申し上げますとともに、内容の概略について御説明申し上げます。  産業教育振興法におきましては産業教育に従事する教員勤務特殊性にかんがみ、資格定員及び待遇について特別の措置が講ぜられなければならない旨を規定しており、この規定に基き、取りあえず農業または水産にかかる産業教育に従事する教員に対して産業教育手当支給する現行法の制定をみたのでありますが、同法審議の際の附帯決議もあり、その後種々、検討の結果、今回さらに、工業電波、及び商船にかかる産業教育に従事する教員並びに農業及び水産を含め、これら教育実習について、教諭職務を助ける実習助手政令で定める者に対しても、産業教育手当支給し得るよう所要改正を行おうとするものであります。  そもそも、工業高等学校教育は、工場における実質的推進力となる現場技術員を養成することを目的とするものでありまして、この意味からその教育は実質的な生産教育であります。従って、その教育の中心をなしますものは生産的実習でありますから、生徒一人々々の体験と反復練習が絶対に必要なのであります。そのため、工業科教員実習指導のための諸準備実習資材の手配、設備の保全、修理及び整備、実習作業指導あるいは特別研究指導等多忙をきわめるのでありまして、その実習指導に当りましては、機械操作薬品処理高温高熱処理、高圧作業等困難かつ強度な作業、危険な作業等に従事しなければならないと同時に、生徒安全管理に対する特別な心労をも費し、さらにまた生産実習でありますので、継続的指導の都合上深夜に及ぶこともしばしばであります。  以上でおわかりのように、これら工業科教員勤務は、農業あるいは水産科教員と並んで他の教科の教員やその他の研究機関等職員に比し、精神的肉体的負担がきわめて大きいのでありまして、高等学校農業または水産科教員との比較においてまさに匹敵するものがあるのでありますから、工業科教員をもこの手当対象とすることが妥当と考えられるのであります。なお電波高等学校工業高等学校に、商船高等学校工業高等学校及び水産高等学校に、それぞれ全く準ずるものとして今回同時に取り上げた次第であります。  次に実習助手についてでありますが、実習助手教諭を助けて各分野別実習指導を分担し、また実習指導準備整理始末を主たる任務としており、その職務内容教員に準ずるものであり、単なる施設設備の保守や備品の出し入れを職務とするものと異なるものであります。しかし実習助手のすべての者を対象といたしますことは、他の職務のものとの均衡もありますので、政令で定めるものに限ることにしておりまして、特殊技能を有する等教員に準ずる者に限定いたす予定でおります。  これら産業教育手当支給の額並びに方法につきましては、現行農業または水産教員におけると同様であることを子定しております。  なお、この法律は、昭和三十三年四月一日にさかのぼって適用することとし、本年四月分から支給できるようにしております。  以上はなはだ簡単でございますが、提案理由説明を申し上げます。  何とぞ、御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  11. 山下榮二

    山下委員長 質疑通告がございますからこれを許します。佐藤觀次郎君。
  12. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 本案は前国会においていろいろ審議された問題でありまして、農水手当を与えたあとでは必ず工業学校及び商船学校手当支給し得るようにするという附帯決議をつけて、全会一致これを通過させたわけであります。それが今度自由党の提案で出されたということはまことにけっこうでありますが、ただ問題になりますのは、実習助手手当範囲をどのくらいにするのか、その点について提案者質問いたします。
  13. 渡海元三郎

    渡海委員 提案理由説明の中でも申しましたように、実習助手のすべてのものを対象といたしますことは、他の職務のものとの均衡もありますので、政令の定むるものといたしまして、政令で定むるものの大体提案者として予定いたしておりますのは、特殊技能を有する教員に準ずるものを予定しておるのでございまして、細部の点につきましては本委員会における審議の経過をも考えまして規定されるもの、かように考えておる次第でございます。
  14. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お尋ねいたしますが、これは公立学校には適用されておりますが、私立学校に適用されないことになっておりますが、その点について何か提案者に御意見なりあるいはお考え方があるのかお尋ねいたします。
  15. 渡海元三郎

    渡海委員 私立学校重要性佐藤委員の言われるのももっともでございまして、私たちもその重要性は十分認めておるのでございますが、私立学校待遇標準が、国立並びに公立学校に比しまして非常に区々雑多であるのが現状でございまして、その実情などもいま少しよく調査いたしまして措置を講ずべきものである、かように考えておったものでござごいますから、今回これを割愛した次第でございまして、御趣旨十分同感であります。
  16. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今度は政府委員にお尋ねしますが、この実習助手のことについて、政府はどういうようにお考えになっておるのか、この法案の将来に関係がありますので、内藤局長にお尋ねします。
  17. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 提案理由でお述べになりましたように、特殊技能を有する等、教員に準ずる者ということで、私どもはその範囲一つ明確に政令規定いたしたい、かように考えております。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実はこの法案については、先国会において赤城宗徳氏からいろいろ提案理由説明があり、今はなくなっておりますが、当時竹尾委員から強い反対がありました。そのときにも、実習助手の問題については片手落ちであってはいけない、とにかく工業学校商業学校に適用するようにという強い案があり、予算関係もありますので、十分ではないにしても、一応は先国会を通ったのでありますから、ぜひとも一つこの趣旨を体して、本案が実際にうまく行われるように私は要望して、質疑を終ります。
  19. 山下榮二

    山下委員長 この際国会法第五十七条の三の規定により、本案に対する内閣意見を聴取いたしたいと存じます。松永文部大臣
  20. 松永東

    松永国務大臣 政府といたしましては本案については、三十三年度はこれに伴う財政措置が講ぜられていないのみならず、他の公務員との均衡、さらに今後の財政負担関係等、種々検討すべき問題が多いので、賛成しがたいのでございます。
  21. 山下榮二

    山下委員長 他に質疑はございませんか。——なければ本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  これより討論に入ります。佐薩觀次郎君。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私は日本社会党を代表して、本案に対し賛成の意を表するものであります。  しかしながら本案審議中再三検討が加えられましたように、私立学校に対しては何らの措置もとられていないのでございます。政府私立学校重要性にかんがみ、理振法、産振法によって見られるような私立学校への補助について、来国会までに措置されるよう、特に要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。
  23. 山下榮二

    山下委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  24. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって本案原案通り可決いたしました。(拍手)  この際坂田道太君より発言を求められております。これを許します。坂田道太君。
  25. 坂田道太

    坂田委員 ただいま可決されました農業又は水産に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員に対する産業教育手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に関しまして、次の通り要望いたしたいと存じます。    要望案   産業教育振興法趣旨に基き、私立学校重要性とその財政の窮状とに鑑み、本法  案の内容農業水産工業電波を含む。)、又は商船に係る産業教育に従事する  私立高等学校教員及び実習助手に対しても来年度より等しく準用されるよう、政  府は速やかに所要措置を講ずべきである。   右要望する。  以上でございます。委員各位の御賛成を得まして、本委員会の決定としていただきたいと存じます。御賛成をお願いいたします。
  26. 山下榮二

    山下委員長 ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止
  27. 山下榮二

    山下委員長 それでは速記を始めて。  ただいまの坂田君の御提案賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  28. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって坂田君の提案のごとく決しました。  ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  30. 山下榮二

    山下委員長 次に公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案議題となし、審査を進めます。  質疑通告がございますからこれを許します。櫻井奎夫君
  31. 櫻井奎夫

    櫻井委員 公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案について質問をいたします。  この法律は第一条に目的が明記してあります通り公立義務教育学校に関しての学級規模と、教員の配置の適正化をはかるために、学級編制及び教職員定数標準についての必要な事項を定めて、もってわが国の義務教育水準の維持、向上をはかる、こういう法律でございまして、その法の精神趣旨、こういうものについては私どもは全く賛成の立場をとるのでございます。この法律をしさいに検討して参りますならば、全くこの義務教育水準が向上する面もあるし、あるいはまた逆に逆行する面も出て参るし、またせっかくこの法律を作りながら、幾つもの抜け穴を設けておる、こういう点について私どもははなはだ不満に思うのでございます。従いまして、私はこの法案内容につきまして、ただいまより質疑をいたしたいと思います。  まず第一点は、この法律の題名でございます。学級編制及び教職員定数標準に関する法律案標準という言葉をどうしてお使いになったか。今まで学校教育法施行規則におきましても基準という言葉を使ってある。高等学校甲号乙号というふうに法的には基準という言葉を使ってある。ところが今回出てきた法律案を見ると、今までのそういう言葉を一擲して、標準という言葉を使ってあるわけでありますが、この基準標準との法的意味相違一つお聞かせを願いたい。
  32. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 基準と申しましても標準と申しましても同じような趣旨でございます。別に他意があったわけではございません。
  33. 櫻井奎夫

    櫻井委員 基準標準も同じだとおっしゃるのですか。
  34. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 中身は同じでございます。
  35. 櫻井奎夫

    櫻井委員 中身が同じならば、今まであらゆる教育関係法律に使ってある基準という言葉をどうしてお使いにならないで、今回に限って標準という言葉をお使いになったのか、御心境を承わりたい。
  36. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 実体は標準と申しましても基準と申しましても中身が同じだ、こういう意味でございまして、そこは基準標準の多少のニュアンスと申しますか、そういうものについて受け取り方が違うかと思います。いろいろ自治庁大蔵省等との折衝をしている間に、標準という言葉に変えてくれということでしたから、標準といたしたわけでございます。
  37. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の局長の答弁によって、くしくも私はこの法律性格が明瞭になったような気がいたすのでございます。自治庁大蔵省との折衝の段階に基準標準と変った、こういうことでございますが、なるほどこの法律案を見ますと、附則のごときはどうも文部省精神ではないような気がする。自治庁ないしは大蔵省の意向が多分に入って、そうしてこういうあいまいもことした法律案ができたという感がするのでございます。どうも基準から標準に一転したこの中にすでに私はこの法律性格が明瞭化しておるような気がするのでございます。これは遺憾ながらあなたと私の見解の相違ですけれども標準基準と同じだ、こう解釈してよろしゅうございますね。
  38. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  39. 櫻井奎夫

    櫻井委員 字句の論議をいたしましてまことに恐縮ですけれども内容が同じ、ニュアンスが少し違う、こうおっしゃるわけですね。ニュアンスはどれくらい違うのですか。
  40. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 中身は別に変ったわけではございません。標準基準との言葉のあやの問題だと私どもは思いますので、少くとも内容的には同じものだと考えております。
  41. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それでは文部省の解釈は従来の文教関係法律に盛られておる基準と同じ考え方である、こういうことに確認してよろしゅうございますか。
  42. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  43. 櫻井奎夫

    櫻井委員 次に問題は第三条にあるわけでございます。第三条の二項に学級編制の区分と一学級児童または生徒の数というものをここではっきりと今回出されておるわけでございます。「下欄に掲げる数を標準として、都道府県教育委員会が定める。ただし、同学年の児童又は生徒を四以下の学級に編制する場合の一学級児童又は生徒の数の基準は、別に政令で定める数を標準として、都道府県教育委員会が定める。」こういうことでありますが、一体「政令で定める数を基準として」というこの政令内容はいかなるものであるか、お示しを願いたい。
  44. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは後にも問題になりますが、大体私どもは五十を基準にいたしますが、小さい学級の場合には五十五まではやむを得ないだろう、たとえば単式と申しますか一学級でずっといく場合、この場合には五十を一つこえますと二十六人で今度学級を作らなければならぬ、こういうことになりますので、こういう場合を予想いたしまして五十五までは認めよう、こういうことで考えておるわけでございます。
  45. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると単式の場合は五十五名までは認めよう、こういうことですか。
  46. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  47. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると第四条に、五人を加えた数をこえる数によろうとするときは文部大臣意見を聞かなければならないとございます。これは五十五人にはまた五人を加えるということですか、五十人に五人を加えるという意味ですか。
  48. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 そこにカッコに書いてございますように「政令で定める数」となっておりますから、五十五人以上にはならないという意味です。
  49. 櫻井奎夫

    櫻井委員 このカッコの中の政令は前の政令と同じ政令ですか。
  50. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  51. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうするとこれは五十五人までの単式学級といいますか、五十五人までは認める、こういうことに解釈してよろしゅうございますか。
  52. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  53. 櫻井奎夫

    櫻井委員 学校教育の設置基準には大体五十名となっておる。ところが今回このような、政令で定める五十五名までもよろしい、こういうことになると、この法律はすし詰め学級に対して何ら前進していないでしょう。学校教育の設置基準よりもさらに後退しておる、五十名とうたっておるから。今度は五十五名まで政令で認める、これはかえって逆行しておる法案だと考えるのでありますが、その点いかがですか。
  54. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘のように施行規則では五十人以下を標準とするというようになっておりますが、現在五十人以下の学級が全国で十四万学級に及んでおるのであります。ですから、私どもこの法律によって財源の裏打ちをしなければならぬ。施行規則の場合には必ずしも財政的な保障がないわけでございます。今回の法律は半額は国で負担しますし、残りの半額につきましては地方交付税におきましてこの定数をとることになっております。従ってこの定数は確実に保障されますので、私どもすし詰め学級が大幅に解消できる、かように考えておるのであります。
  55. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると大体学校教育法施行規則では一応の理想というものをうたったのであって、今度のは現実に即して予算の裏づけをしなければならないから五人くらいの幅を認めた、こういうことでございますか。
  56. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体その五人程度の範囲は認めないと困るのではなかろうか。たとえば先ほど申しましたように、一学級五十一人になったら二つ分の学級に分けろとおっしゃいますと、これは二十六人で一学級にしなければならぬという点で、財政上不経済になる点もありますので、多少のゆとりというのはいただかなければならぬのではなかろうか、かような趣旨でございます。
  57. 櫻井奎夫

    櫻井委員 局長趣旨はわかりました。しかし今日日本の義務教育の大きな障害となっておるのは、しばしば申し上げます通り、すし詰め学級あるいは二部授業、こういうようなものが、やはり義務教育の水準を向上させる上に大きな壁となっておることは、おおうべからざるところの事実でございますし、先般の委員会でも申し上げました通り、五十五名あるいは五十七名を定数としておる学級、これが日本の全国的のあれから見ますと実に多いわけですね。それで、そういうものに対して文部省は何とかしたいということでこういう法律を出しておられるわけでありましょうが、これははなはだ私どもとしては不満足である。もう一歩前進した数を出して、もっと積極的にこのすし詰め学級の解消という点に熱意を示してもらいたい。このことについてはすでに広島大学でも実験をやっておるというような報告を私どもは聞いておる。たとえば同じ学年の生徒を五十人と三十人に分けて、同じ教師が同じ期間内に同じ学科を教えて、その結果の測定をやっておる、あるいはまた東大でもそういう実験がなされておるということを聞いておるわけでございますが、そのような資料を文部省はお持ちであるかどうか。
  58. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘のように児童数が少ければ少いだけ手の込んだ指導ができますので、教育効果のあるのは当然のことでありまして、欧米各国は大体三十人から三十五人の範囲でございます。わが国でもできるだけ生徒数を低くいたしたいのでございますけれども、終戦後六・三制を一挙に実施いたしました関係でまだ整備ができておりませんので、この程度で現状は一歩前進したと考えておりまして、十分満足という意味ではございません。今後努力いたしたいと考えます。
  59. 櫻井奎夫

    櫻井委員 一歩前進という意味では私どもも同感なんであります。先ほど私が申しました適正学級とは、わが国において一体どれくらいなものを適正学級にしたらいいか。そういう科学的研究の資料——諸外国でもございましょう、こういうものを資料として本委員会に御提出を願いたい、これをお願いいたしておきます。  同じく第四条の、大体五十人を五十五名にしようというときには、「当該基準について、あらかじめ文部大臣意見をきかなければならない。」こういうことになっておりますが、これは文部大臣意見を言われるわけですが、この文部大臣意見というものは一体都道府県教育委員会に対して拘束力を持つものか持たないものか、ただ意見の言いっぱなしか、公的な解釈を聞きたい。
  60. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この趣旨は五十五人以上のすし詰め学級を抑制したいという趣旨でございますので、できるだけ指導勧告によりまして、五十五人以下に切り下げるように最善の努力をいたします。しかしこれは意見でございますので、法的拘束力はございません。できるだけ五十五人以下になるように指導いたしたいと考えております。
  61. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それではこれはやはり文部大臣が単なる意見を述べて、そういう姿に徹底してもらいたいという要望をなさる程度のものだ、こういうことでございますか。
  62. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど申しましたように、五十五人以下に押えるという趣旨で、財政的な措置文部省自治庁と交渉してとりますから、できるだけ五十五人以下に押えるように強く指導する、こういう意味に御了解いただきたいと思います。
  63. 櫻井奎夫

    櫻井委員 財政的な責任を持って指導をする。こういう意味ですね。
  64. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  65. 櫻井奎夫

    櫻井委員 第七条でございますが、これは教職員定数基準、あなた方の言葉で言えば標準説明しておるわけであります。この中の「学級総数に一を乗じて得た数」、これは五学級あれば五に一を乗じた数でしょうから五と出るわけですね。十二学級であれば十二に一を乗じて十二、こういうふうに出るわけで、これは学級担任の先生の数をここで考えておられるのかどうか。
  66. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  67. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうするとこの第七条の第二項の表を見ますと、六学級から十七学級までの学校には二で、一学級というのはないでしょうけれども、理論的にはあることですが、一学級から五学級までは一ということになるわけですか。
  68. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御説の通り学級から五学級までは一でございますが、第三項に「五学級以下の学校の総数に政令で定める数を乗じて得た数」、この三項がございますから、一プラス・アルファーでございます。
  69. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私はこの法律の大きな欠点は、何でもかでも——何でもかでもと言っては語弊がありますが、大事なところにいくと政令にゆだねて義務づけていない、ここにこの法律を私どもがざる法という大きな原因があるのです。この政令がないとすると学級から五学級までの間は学級数かける一でしょう。それは学級担任とおっしゃる、そうするとそういう学校には校長を置かなくてもいいのですか。五学級学校には学級担任が五人、校長はいないのでしょう。そういうことがここに出てくるわけです。それも政令にゆだねて、あるところは校長を置かない、あるところは校長を置く、こういうふうにごまかそうとおっしゃるのか、その点をはっきりして下さい。
  70. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体私ども指導行政といたしましては、五学級以下は校長というものを大体認めない方針でございます。六学級以上に校長というものを置くように指導いたしたいと考えております。
  71. 櫻井奎夫

    櫻井委員 五学級以下に校長を置かないという理由は、どういう理由によるものですか。
  72. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 特別の場合はもちろん置きます。しかし、五学級以下の場合は全国ばらばらなのでございます。五学級以下の場合分校になっておるところが相当多いのでございます。それから独立校になっておるところも多い、こういうような点で、その辺で非常に学校としてどうしても他との関係で独立せざるを得ないような場合はもちろん校長を置くと思います。しかし分校でもいい場合が相当あるわけでございます。ですから、分校の場合には校長を置いておりません。そのことを申し上げたわけであります。
  73. 櫻井奎夫

    櫻井委員 もちろんこれは小さな学校でございますから、五学級以下の学校は山間僻地の学校が多いと思います。そういう場合は分校にして校長を置かない、こういうことになりますと、最近盛んに問題になっておるところの、僻地教育の振興ということにも大きな影響を持っている。やはり五学級以下の小さな学校でも校長がなければ校長にかわる分校主任、校長という名前がつかなければ分校主任というものを学級担任外に置いて、その学校運営に対する責任を持たせるということ——私は僻地教育振興のためにはそういう形をとっていかなければ、学級担任だけ置いて、非常に離れておるからいいというようなことでは、義務教育の水準の向上ということにはほど遠いと思うのです。しかもこのような僻地の学校は、数の上からして非常に多いのですから、そういうところに政令で定めて、置いても置かなくてもいいというようなあいまいな態度にあるこの法律というものが、義務教育の水準の向上をうたいながら、実質的には現状と大した変りはない、現状より後退する場合もあり得る、この法律の欠陥を私はそういう面で御指摘を申し上げたいのでありますが、どういうふうにお考えでございますか。
  74. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 五学級以下の場合に、どうしても専任の教員を置く場合があり得ると思うのです。専任の校長を置くことがあるから、政令である程度の数を認めているわけであります。これは全部の学校に専任の校長を置くかどうかということは、必ずしも必要ないと思います。しかしいずれにいたしましても、兼任の主事なり兼任の校長はどうしても必要でございます。ですから何らかの形で兼任で責任者を置くことは、これは必要でございます。さらに専任の者につきましては、十分その環境によりまして専任を置けるような数を政令考えているわけでございます。
  75. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると政令で定める、この政令内容には専任を置く数を考えておる、もちろんそうでなければこれはならないわけです。そうならなければ、これは現状より悪くなるわけです。従って私が聞きたいことは、その政令内容が現状よりも進んでおるか、これは資料を出してもらえばはっきりいたします。しかしそういう資料を今ここで引き合いに出してやっておる時間もないようでございますから、必ず私は分校を置いても、分校主任なりあるいは校長を置かなければならないところがある、あるべき姿は学級担任外に学校の責任者というものを置かなくちゃならない、従って現状のそういう専任教諭を置いておられるものよりもこの政令は上回った数を考えておられるのか、現状でもいいと考えておられるか、この政令内容をはっきり御答弁を願いたい。
  76. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 現状よりは上回っていることを予想しております。
  77. 櫻井奎夫

    櫻井委員 内藤さん、数字がないんだからはなはだ抽象的なことで、現状よりあなたは下回るとおっしゃるはずはないんだから、実際の配置状況を見てからのことにしなければなりませんが、あなたの言葉は議事録に載っておりますから、現状より決して下回らせないのだ、こういうことを確認してよろしゅうございますか。
  78. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 それは責任を持って下回らないようにしていきたいと思います。
  79. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それから今の表によりますと、六学級から十七学級までの学校がその学級数にかける二という形でございますから、ここで初めて校長と学級担任という形が出てくるわけですね。ところが十八学級から三十学級までの学校は四という形が出てくる。この四はおそらく事務職員あるいは養護教員をさしておると思うのでありますが、その内容はどのようにお考えですか。
  80. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 十八から三十までの四のうちは、先ほどお話の校長、それから事務職員、あとの残りの二名が級外でございます。いわゆる専科教員の制度を加味しておるわけであります。それから養護教諭は、これは入っておりません。養護教諭につきましては、四号に「児童総数に千五百分の一を乗じて得た数」とございます。
  81. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると、私どもが非常に不満に思うのは、六学級から十七学級というと、現在の地方の小学校は大体この中に入るかと思うのです。十八学級から三十学級、これは都会、中都市の学校にはそういう形が出てくる。ところがこの一番地方に多い十七学級までの学校には校長一と担任一という形で出て参る。私どもはもう少しこれを細分されて、六学級から十か十一くらいは二として、そして一挙に十八に飛ばないで、ここに十二学級から十七くらいまでを設けて、そこにやはり事務職員を置かないと、今日の義務教育の教師の教科内容、教務内容と申しますか、教育活動というものは非常に雑務が多いのはあなたの御承知通り。こういうところにやはり大きな思いやりをなさって、そういう雑務から職員教員を解放して、教育に専念させるという立場をとる、そのためにはやはり十二学級あたりから三とする、そして事務職員必置の形を出されるべきことが私は大前進だと思いますが、この法律はそれがない。来年度あたりからそういうふうな方向でやられる意思があるかどうか、その点を明確にしておきたいと思います。
  82. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 事務職員の増加につきましては、まことに私ども趣旨には同感でございまして、この法案でも約七百名ほどの事務職員の増員を予想しておるわけであります。私どももなるべく早い機会に十二学級くらいから事務職員を置けるように考慮したいと考えておりますが、来年のお約束はちょっと私は無理かと思っております。
  83. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それは大蔵省との折衝もあるでしょうから、ここでお約束できないかもしれませんが、そういうふうに努力してもらわないと、これが一番地方にいって多い学校なんです。三十、四十というのは都会のまん中なんです。十一から十七学級あたりの規模の学校が一番多いのですが、そういうところにやはり事務職員を置かないということは、これはやはり教育の能率を低下させる大きな原因だと思う。こういうところに文部省はもっと本腰になり、勤務評定なんというよりもこういうところに力を入れたらどうですか。それでほんとうにこの義務教育の水準の向上をはかるということになれば、そういう雑務から解放して、教育そのものの中に教師を没入させるということの手段が当然とられなければならない。  次に四の方でございますが、これはあなたおっしゃったように、養護教員の数だと思いますが、「千五百分の一を乗じて得た数」、これは現在の養護教員と、この基準による養護教員との数の比較はどのようになっておりますか。
  84. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 約三千名の増員でございます。
  85. 櫻井奎夫

    櫻井委員 このようなことで一応の定数というものが確保されると思うのでありますが、しかし現在事務職員、養護教員の数がこの基準より上回っておるという県が十三県くらいあると聞いておるわけでありますが、この定数がふえたとたんにそういう上回っておる府県に対する、特に事務職員、養護教員というのは力が弱いのでありますから、そういう者を一体この法律によってどういうふうに処置をしていこうと考えられておるか。
  86. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは各県ごとに教員の総数の算出の仕方がございますので、この通り養護教諭を置けとか、あるいは事務職員を置けという意味ではございません。ですから、総数が上回っていない限りは、その中で彼此融通し合うことは差しつかえないのでありまして、それぞれの県の特殊性に基いて、事務職員の多いところもあるし、養護教諭の多いところもあることは、私どもけっこうだと考えております。
  87. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは各府県の実情によってそれを配置しておるわけでございましょうから、あなたの今おっしゃる通りでありますが、しかし私はこの基準よりも事務職員なり養護教員なりの数を多くしているということは、やはり学校の健康管理というものに非常な関心を持っておるとか、あるいは雑務の面を省いて、先生方教育に専心させようという、要するに教育に熱意がある県がそういう上回った数を置いておるのだと思うのです。従ってこういう法律が出たために、その上回った県の、特に養護教員が多いからこれを普通の一般教職員に振りかえようというようなことで、ここに一つの出血、首切りというものが起きないとは保障できないわけであります。そういうことを私どもは非常に心配いたしますので、このような教育に熱意のある県が示しておる実態というものは、やはり現状のままこれを認めていく、そこに首切りであるとか、事務職員は要らないのだというような事態が起らないような御指導文部省にしていただきたいと思いますが、この点についてはいかがでございますか。
  88. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御趣旨通り指導いたしたいと考えております。ただこの前佐賀県あたりで起きた場合、主として佐賀県は事務職員、養護教諭を非常に多く置いておるのでございます。ですから、この基準よりもあるいは上回っておると思いますが、全体としては、この定数あたりで佐賀県も間に合うことになっておるのであります。
  89. 櫻井奎夫

    櫻井委員 この法律が出たために、上回ったところにそういう首切りというものが起きないように指導なさる、これは文部大臣いかがでございますか、そういうふうに責任を持ってお答え願えますか。
  90. 松永東

    松永国務大臣 ただいま内藤局長が申し上げた通り、責任を持って断行するつもりでおります。
  91. 櫻井奎夫

    櫻井委員 特に上回っておる県は、いろいろ県の実情もあると思いますが、群馬、長野、埼玉、宮城、静岡、兵庫、東京、こういうところは、この法律より実際現実に上回っておるのであります。従って、そういう府県において、この法律が出たために後退しなければならないという事態が起きないような御指導をいただかなければ、せっかくのこの義務教育の水準を向上させるという大精神法律が、逆な方向を持ってくる。このことを私どもは非常に憂慮するために、根掘り葉掘りして聞いておるのであります。  それから第十一条でございますが、この十一条の「教職員の総数が教職員定数を著しく下る都道府県があるときは、あらかじめ自治庁長官に通知して、当該都道府県に対し、教職員の増員について必要な勧告をすることができる。」こういうことでありますが、著しく下回るとは、一体どれくらいのことを考えておられるのですか。この定員法ができまして、それを著しく下回るとは、一体どれくらい下回れば著しいのか。
  92. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 一人や二人、あるいは数人程度下回ったからといって、私ども著しいとは考えておりませんが、少くとも百人以上下回るような場合には、勧告いたしたいと考えております。
  93. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そういう下回った都道府県全部に対して、この標準まで引き上げる、こういう努力をなさるおつもりであると思いますが、念のためにお聞きしておきたいと思います。
  94. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御趣旨通りでございます。
  95. 櫻井奎夫

    櫻井委員 最後にこの附則でございますが、この附則は、実はこれは全くこの法の精神から、せっかくの法律がこの附則があるために何だかおかしげな形になっておる。特にこの二項の後段ですね、これはない方がいいのじゃないですか。すし詰め学級解消の熱意がさらにない、こういう問題がたくさんあるのです。この後段に「一学級児童又は生徒の数の標準については、当分の間、同項の規定にかかわらず、児童又は生徒の数の減少及び学校施設の整備の状況を考慮して政令で定めるところにより、暫定的にその標準となるべき数を定めるものとする。この場合における第四条の規定の適用についての必要な読替は、政令で定める。」こういうことで、せっかくこの前の方に法律でこういう定数の規定をうたっておるにかかわらず、学校児童生徒の数の減少、それから施設の整備の状況、こういうものを考慮して政令で定めるところによって暫定的に考える、こういうのですが、その暫定的というのはどれくらいのところを考えておるか。何年ですか。来年も暫定的だし、三年先も暫定的だし、こういうものを設ければ、ここにはっきり法律で五十名とか三十名とかいうことをうたいながら、暫定的にまた政令でいつまでも認めていくことができるということになれば、この法律は何のために出されておるのかわからない。ただ気休めに出しておいて、これは政令で暫定的に認めていくということも——悪意に解釈すればそういうこともできる。私は、この附則というものは何の用もなさない附則だと思うのであります。この法律を拘束しておる、制約しておる附則であると思うのでありますが、何のためにわざわざこういう附則をおつけになったのか、御答弁をお願いしたい。
  96. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 一ぺんに五十五人以下に切り下げますと、これは財政負担も非常に多くなります。またそれだけの教室の整備もできないわけでございます。ですから、一つは、学校の建築の整備の状況も考え一つは、三十三年が生徒数はピークになりますが、三十三年以来の生徒数の減少をも見合せて、そうして大体五年間ですし詰め学級を解消する、こういう方向でございますので、それと全国的な歩調を合せる趣旨政令できめたい、かような趣旨でございます。
  97. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると、この暫定的というのは最大限長くて五カ年、できればそのできるところは二年間、三年間において解消をしていく、最大の年限は五カ年である、五カ年計画である、こういうふうにはっきり確認してよろしゅうございますか。
  98. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体五カ年の予定でございます。
  99. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それから第三項であります。第三項に標準定数といいますか、標準となるべき定数がうたってありますが、これは自治庁からいく交付税の対象になるのは、この政令で定めた定数が交付税の対象になるのか、それとも本法にずっと規定してあるこの数が定数になるのか。
  100. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは政令でございます。
  101. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは地方交付税法にもありますが、地方交付税法の第十二条にいうところの法律に定めた定数というのが、本法の場合は政令で定めた定数、こういうふうになさっておるわけですか。
  102. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは暫定的にその標準となるべき数を定めるのでございますから、この附則もあわせて法律の一部でございますので、この場合にはこの政令で基本になるわけであります。
  103. 櫻井奎夫

    櫻井委員 附則が法律の一部であることは、あなたから教わらなくても私は十分承知をしておるつもりでございます。そうすると、この法律において、しばしば申し上げます通り政令というものがこの法律全体を生かすも殺すも自由というところの死命を制することになる。この中には政令で定めるということがあっちこっちにある。この法律はざる法で、あなた方の非常な熱意にもかかわらず、どうもそこに大きな抜け穴がある。法律できちっと定めるのではなく、何でも政令で定める、いよいよ大事なところになると政令で定める、こういうようなことで暫定的なものが設けられておる。ここに私どもはこの法律案というものが大きなざる法であって、全面的に賛成ができない理由がある。この政令というものがほとんどこの法律を規制しておる、こういう点についてどうですか。
  104. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体この定数を用いますとふえる県が三十五、六県で、四分の三くらいがふえるのでございます。そのふえる場合に、一挙に数百人もふえますと、地方財政の上からも一挙にはなかなか参らぬと思いますので、私どもは大体三年間程度を予定して、三年間のうちにこの定数まで引き上げたい。一度に増員することはかえって混乱を起しますので、さような趣旨であります。
  105. 櫻井奎夫

    櫻井委員 さっき五年間とおっしゃったが、あれは違うのですか。ちょっともう一ぺん……。
  106. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは三年間にこの定数まで引き上げたい。多いところで一ぺんに六、七百ふえるところもございますから、六、七百一ぺんにふやすわけには参らぬ、こういう趣旨でございます。
  107. 櫻井奎夫

    櫻井委員 附則第四項に至っては、これは全くざる法の本質を暴露しておる。「公立の小学校の同学年の児童で編制する学級のうちに、一学級児童の数が五十五人をこえるものがある場合においては当分の間、当該都道府県の小学校教職員定数は、第七条の規定にかかわらず、同条の規定により算定した数に政令で定める数を加えた数を標準とするものとする」、ここにもまた政令が出てきている。それでは五十五人をこえても、また政令で定めたら六十人の学級もいい、こういうことになるのですか。その解釈はどうなんです。
  108. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 それは違うのであります。これは、五十五人以上で現実に学級編制をしておるところがあるわけです。私どもは五十五人以下にしたいのだけれども、やはり当分の間五十五人以上の学級が相当あることを予想しまして、こういう場合には教員数をふやしてやりたいということです。大体三%くらい割増ししてやりたいという趣旨でございます。
  109. 山下榮二

  110. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間もだいぶ過ぎておりますし、櫻井君からもいろいろ質問がありましたので、簡単に二、三の点だけお尋ねしたいと思います。  すし詰め学級の解消ということは非常にいいことでございまして、この法案について何も反対することはないと思いますが、いろいろ議論もありまして、長い間審議をしたのですが、私ども愛知県なんかでも六十五人くらいの生徒数を持っておる学級がある。そこで、一体文部省は一学級でどれくらいの生徒数なら工合がいい、これが理想案だというような目安があるのかないのか。御承知のように、大蔵省並びに自治庁なんかは、予算関係もありますから、すぐというわけにもいかぬけれども、どういうところに標準を置いておられるのか、その点について、すし詰め学級の解消といいますけれども、どのくらいの数ならばすし詰め学級が解消されるかという標準を、内藤さんから承わりたい。
  111. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私どもは五十人以下にいたしたいと思っております。やむを得ざる場合には五十五人程度まで認めているわけであります。しかし私どもとしては、これは理想ではございませんで、将来五十人以下になりました暁には、四十人程度に下げていきたい、かように考えております。
  112. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大体小学校生徒のピークがきておりますので、これ以上生徒がふえることはありませんけれども、この法律について非常に心配されるのは、教員の首切りが行われるのではないか。先ほど申しましたように、四分の三はふえるけれども、あと四分の一減れば、そこで教員の定数を減らされて首になるのだという心配の人があるわけです。この点について参議院でも予算委員会でいろいろ質疑があって、自治庁並びに文部当局からもいろいろ話があったことを承わっておりますが、私どもが心配しておるのは、そういう点について角をためて牛を殺したというような例があるのであります。どんな法案でありましても、やはり欠陥がありますが、そういう点についての心配はないのか、この点について内藤さんの御意見を承わりたいと思います。
  113. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この法律を適用した場合に、先ほど申しましたように、大体九県がこの基準よりも下回っております。そこでさような県につきましては、ぜひ私どもの予定しておりますところのすし詰め学級の解消よりもさらにテンポを早めていただいて、その余っている分だけすし詰め学級解消に回るように指導いたしたいと考えております。
  114. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一ぺんにはいかぬとは思いますけれども、これはただ文部省がすし詰め学級を解消したという宣伝に利用されるようなことがあってはいけないので、この点についてはわれわれが地方におりましても、学校の増設あるいは今の小学校、中学校におけるところの生徒数のすし詰めの現状を見て、このままではしようがないという意見もあり、またわれわれも現状を見ておるわけでありますので、できる限り本法案を生かして、いろいろな心配のないように、父兄に心配をかけないように努力していただくことを要望いたしまして、私の質疑を打ち切ります。
  115. 山下榮二

    山下委員長 他に質疑はございませんか。——質疑がなければ本案に対する質疑はこれにて終ることといたします。  ただいま櫻井奎夫君より本案に対する修正案が提出されております。その趣旨説明を聴取いたします。櫻井奎夫君。     —————————————
  116. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私はこの公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案に対して修正案を提案したいと思うのであります。  それは私が先ほどの質疑で明らかにいたしましたように、やはり現在の義務教育の水準を向上させよう、一歩でも前進させようというこの精神は私は賛成でございますけれども、この法律の中には、やはり多数の抜け穴があるし、特に問題点となるのは、現在この法律が施行された場合において、この法律よりも上回って定数を持っておる都道府県が十県か九県くらいあると思います。こういう上回って教育に熱意をささげてきたところの都道府県が、この法律が出たために、その上回った定員が削られる、こういうおそれがあることを最も憂慮するわけでございます。今内藤さんの答弁を聞きますと、そういうことはしないのだ、そういうことはできるだけ避けるんだ、文部省はそういう指導はしないということを言っておられるわけでありますが、それを法律の中で明確にうたわない限り、内藤さんは信頼すべき局長ではありますけれども、内藤さんの言葉だけでは、そういう事態が起きたときに責任を追究してみたところで、これはあとの祭でございますので、私どもはやはりこの法律の中にはっきり、そういう事態が招来されないように、附則の四項のあとに(現員が定数をこえる場合の経過措置)、こういう五項を起しまして、「この法律の施行の際、現員が定数をこえ、かつ、現に公立の小学校又は中学校学級編制の認可に当り一学級児童又は生徒の数について第三条第二項の表の下欄に掲げる数をこえる数を基準としている都道府県は、第三条第二項の基準を定める場合には、附則第二項の標準にかかわらず、当該現員が定数をこえる範囲まで、」すなわち現在持っておる範囲まで「学級規模適正化に努めなければならない。」こういうことをこの法律に付加することによって、このような教育に熱意を示している県に対する不安、動揺を防ぐことができると思うし、また文部省精神もそこにあると思いますので、私はそのような趣旨に基いて修正案を提案をいたします。何とぞ委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。修正案提案理由説明を終る次第でございます。
  117. 山下榮二

    山下委員長 これにて修正案の趣旨説明は終りました。  本修正案に対して質疑はございませんか——別に発言もないようでございますので、これより櫻井提出の修正案及び原案を一括して討論に付します。  別に討論通告がございませんので、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 山下榮二

    山下委員長 異議なしと認め、これより採決をいたします。  まず櫻井提出の修正案についてお諮りいたします。本修正案に賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  119. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって櫻井提出の修正案は可決されました。  次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  120. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案は、櫻井奎夫君提出の修正案の通り修正議決すべきものと決しました。この際坂田道太君より発言を求められております。これを許します。坂田道太君。
  121. 坂田道太

    坂田委員 公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案に対する附帯決議をつけたいと思います。  案文を朗読いたします。    公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案に対する附帯決議   政府は、本法施行の際事務職員及び養護教諭の現員が本法によって算定された定数をこえる都道府県においては、その現員を確保するよう万全の措置を講ずべきである。 以上でございます。
  122. 山下榮二

    山下委員長 ただいまの坂田君の提案について何か質疑がございますか——別になければ、お諮りいたします。  坂田道太君の提案通り決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  123. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律案は、坂田提案通り附帯決議を付するに決しました。  本決議案に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 山下榮二

    山下委員長 異議なしと認めます。さよう取り計らいます。     —————————————
  125. 山下榮二

    山下委員長 次に文教行政に関し調査を進めます。質疑を許します。野原覺君。
  126. 野原覺

    野原委員 内藤局長に私は質問したい。あなたは最近通達を次から次へと出しておるのですが、あなたが出された通達の中に産業科の新設についての通達が出されておるように聞くのですが、これは一体どういう内容のものですか。その中身及びいつ出したのか承わっておきたい。
  127. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 本年度予算におきまして産業教育振興法に基きまして産業科の新設を認めていただいたわけでございます。これは二十三課程分でございます。制度的には高等学校の別科という形をとっております。大体一年ないし夜間の場合には二年で短期速成に技術者を養成するという趣旨のものでございます。日付はちょっと今記憶しておりませんけれども予算に伴う措置でございます。
  128. 野原覺

    野原委員 別科による産業科を設けていつから実施しようというわけですか。
  129. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 すでに高等学校別科で発足しておりますので、相当数が出ておりますが、今度の予算ではこれに新しく補助をいたしたわけでございます。二十三課程分を予算に計上いたしましたので、本年度から実施するように府県に通達いたしたわけでございます。
  130. 野原覺

    野原委員 今年度からということになりますと三十三年四月から実施というわけですね。そうするとあなたが通達を出された日付はいつになっておるのですか。四月から実施するのをいつの日付で通達を出されたのか、お聞きをいたしたい。
  131. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど申しましたように、日付を今ちょっと思い出せませんけれども予算の施行に伴うものでございますので、四月には発足できるように、予算成立前に私どもの希望を申し述べたと思います。
  132. 野原覺

    野原委員 通達はたしか三月の中旬ではなかったかと私は聞くのです。なるほど別科という制度はありますが、別科による産業科を設ける場合に、四月からやるものを、わずか二週間しかないような詰った日に通達をされるというところに問題点の一つがあります。しかし、これはしばらくおいておきましょう。そこで、産業科の新設という通達になっておるようでありますが、この点について一体中教審の答申は出ておるのかどうか承わっておきたい。
  133. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 中教審でも科学技術教育の振興という点で御意見が出ておりますので、特にこれは新しい制度ではございません、高等学校の別科でございますので、別科を産業科として発足したのでありまして、新しく補助金を出したのであります。従来も別科として存在しておるわけであります。性格は変っておりません。
  134. 野原覺

    野原委員 なるほど別科というのは学校教育法にもあるわけです。あなたは新設という文句で下に流したのですが、別科というのはあるのですが、中教審は結論は出していないはずです。科学技術教育についての論議はあったかもしれないけれども、私の記憶では高等学校に別科の産業科をやれという結論は具体的には中教審から出ていない。そういうものは出ていないはずです。ところが別科の新設などというような通達を出すことは間違いでないか。どういうわけで新設というような通達を出したのか承わっておきたい。
  135. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは中教審でも御審議になっておると私思います。この趣旨は従来高等学校の別科には補助いたしておりません。このたび新しく補助いたしましたので、従来のものと区別する趣旨でございます。
  136. 野原覺

    野原委員 新設と言われるわけを御答弁願いたいと思います。通達に産業科の新設についてということになっておりませんか、それを承わっておきたい。
  137. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 産業科という名前は新しく起したわけでございます。それは先ほど来申しておりますように、従来の高等学校別科と区別する趣旨でございます。
  138. 野原覺

    野原委員 三十三年の四月から実施するということですが、このために予算はどれだけになっておりますか。これは予算書にたしか出ておったと思いますけれども、あらためてお聞きしておきたい。
  139. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 たしか四千四百万だと記憶しております。
  140. 野原覺

    野原委員 それではこういう別科による産業科でどういうような社会の要求にこたえる人間を作ろうと文部省考えておるのか。こういうものを設けて一年か二年でやるんでしょう。一体どういう人間をこの別科で養成しようと考えておるのか、社会のどういうような需要によって、熾烈なる要求によってこういうようなことをあなたが考えられたのか、これを承わっておきたい。
  141. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 非常に短期速成で、中堅技術者の養成が要望されておりまして、現に労働省でやっておりますところの都道府県の職業補導所でございますが、これも非常に需要が多いのでございます。また一方において各種学校の入学者も非常に多い、こういうような状況で、高等学校三年では少し長過ぎるというような方が、一年の別科では早く卒業ができるから、こういう趣旨であります。大体労働省の職業補導所がやっておるような、主として単能工の養成になると思います。
  142. 野原覺

    野原委員 たしか私の記憶に間違いがなければ、予算説明書の中にも中堅技術者の養成、こういうようにうたわれておったように思うのであります。そこでこのこともしばらくおいておきますが、もう一点念のためにお尋ねしておきます。産業科の新設ということになると、設置基準が問題になると思う。その点をどうお考えになっておるか承わりたい。
  143. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 従来の別科の基準でございます。
  144. 野原覺

    野原委員 別科の規定というのは実にあいまいなものでしょう。あなたはこれは別科だからというけれども、それじゃ具体的に別科の規定による設置基準とはどういうことになるのか、これを承わりたい。
  145. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 従来指導して参った基準がございます。たとえばどの程度の教員数が必要であるか、あるいは時間数は年間どの程度の時間数をやるべきか、あるいはどういう内容のものを教えるべきか、かような基準が従来もございましたし、また私どもはそれに即応して定めておるのでございます。
  146. 野原覺

    野原委員 それではお尋ねしますが、時間数は年間を通じてどれだけ用意しておりますか。
  147. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体千四百時間くらいを予定しております。
  148. 野原覺

    野原委員 もちろん教育課程審議会に私はおかけになったと思う。なるほど教育法には別科ということはうたっておりますけれども、これは実際は新設なんです。具体的に別科をとっておるようなところは定時制はありますよ。しかし別科という形で、こういった特殊な産業教育が今日までなされていない。だからそうなって参りますと、やはり教育課程上の問題になってきはしないか、こう私は考えるのです。この問題で教育課程審議会の意見をお聞きになったことがありますか。
  149. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教育課程審議会には諮っておりません。従来の別科と同じ考え方でございます。
  150. 野原覺

    野原委員 それでは学習要綱についてはどうなんです。つまりこの内容ですね。
  151. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 高等学校の別科については、すでに学習指導要領が出ておりますので、それに準じておるわけであります。
  152. 野原覺

    野原委員 私が言うのは、この別科による産業科というのは具体的にどういうようなことを学習していくのか。今度労働省からは企業内の訓練所というものについての明確なこまかいものが出ておる。あなたが考えておるところの、通達を出した産業科は、どういうような具体的な学習を要求されてこういう通達が出たかということです。これは準備があるだろうと思う。それをはっきり具体的に述べてもらいたい。
  153. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 従来の別科と同じ趣旨でございます。
  154. 野原覺

    野原委員 そこで従来の別科と同じ趣旨だ、こう言われるから、そういうような紋切り型の答弁でなしに、千四百時間の割当ですね、こういうことをどういうように考えておるのか。それは説明できないはずはない。
  155. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体千四百時間を予定をしておる、こういう趣旨でございまして、その中にはどういうものが必要かということは、おのずから高等学校教育課程の中できまることだと思っております。
  156. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、ある高等学校が別科を設けていく、こうなって参りますと、そういった学科、つまり別科による産業科を設置していく場合に、どういうような課目を教えていくのかということをきめる権限、これは文部省ですか、都道府県教育委員会ですか。だれがきめるのですか。
  157. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは具体的には都道府県教育委員会でございます。文部省は必要があれば基準をお示しする程度でございます。
  158. 野原覺

    野原委員 それでは別科による産業科の通達を出されたのだが、あなたの方に産業界の要望なり、あるいはこういうものを至急に作らなければならない、——三月十四日に通達を出して四月からやれ、そういった差し迫った産業界の熾烈な要望というものは、あなたの方にあったのですか。あったとすればどういうような内容の要望であるのか、承わっておきたい。
  159. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは三月十四日に通達を出したのは、予算の成立前に、政府提案したときに、大体こういう見込みであるということは各都道府県にも十分連絡しておるのでございます。ですから予算を年度当初に配当する場合には、予算成立前に政府準備をするように指導しております。そういう趣旨でございまして、文書の出たのはむしろおそくなったわけでございます。これは衆議院の委員会を通って後に出たと思っております。この場合に私どもは別科については従来もやっておったわけであります。ただことしから初めて補助金を出すので、補助の予算の執行上、本年からは産業科という名前のもとに新しく補助金を出す、こういう趣旨のものでございます。
  160. 野原覺

    野原委員 実はこれは委員長もお聞きのように、どういうような学習要綱なのか、設置基準についてはどうなのかということをお尋ねしても、あなたはこれは従来の別科と同じだという答え一点張りなんです。従来の別科と同じと言われても、私は勉強が足りませんからよくわかりませんので、お教え願いたいのですが、学習要綱、つまり別科に基く産業科が設けられた場合、その産業科の別科においては、どういうようなことを学習するのか。それからあなたは設置しろという通達を出しておるのだけれども、その通達というのは一体どういう高等学校にこれは設置されていくのか、そこら辺をもう少し詳しく説明を願いたいと思う。
  161. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほどから申し上げておるように、従来から高等学校に別科というものが相当あって、そこで短期速成の技術者養成をやっておるわけであります。本年から変った点は産業科という名称のもとに補助金を出します。こまかいことは全部各都道府県なり高等学校できめることでございます。
  162. 野原覺

    野原委員 中堅技術者の養成が目的だという局長の答弁ですが、それでは工業高等学校というのが中等教育としてあるわけですね。これは全日制、定時制ともあるわけです。それとは一体どう関連がありますか。工業高等学校の卒業生とはどういう相違があるのですか。
  163. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 別科は高等学校の従来資格はないわけであります。ですから一種の各種学校のようなものでございます。しかし今後この点は別科の制度を奨励する趣旨からさらに検討して、できるだけ単位をやるとか、今中央教育審議会でも実は勤労青少年問題でいろいろ御研究になっていらっしゃるので、こういうところの意見もお聞きしまして、なるべく高等学校の単位をやって修学を奨励するようなことも考えてみたいと考えております。
  164. 野原覺

    野原委員 どうもそこのところが私は理解に苦しむのです。別科というものは社会の心要があるのだ、こう申されますけれども、中等教育としては工業高等学校があるわけですからね。ほんとうに産業界にそういった中堅技術者を送らなければならない、そういう必要がある、こういうことであるなら、工業高等学校定時制を拡充していくなり何なり努力すべきじゃないか。どういうわけで別科にしたのか。たった四千四百万円の予算を通しておいて、そうして別科だ、こんなもので一体どれだけ産業界に貢献できるものか、その辺を御説明願いたい。
  165. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 文部省も、お説の通り工業学校の電気と機械の課程を、各府県一課程、約四十二課程分だけ増設をしておるわけでございます。一方に御承知通り職業訓練法で都道府県の職業補導所を整備充実いたしまして、これも大体一年ないし二年間でやっております。私どもも同様な趣旨で、工業高等学校があるのですから、そのあるところで短期速成の希望がございますから、工業高等学校の別科です。付設されておるわけでございます。施設設備も大体備わっておりますので、そこで養成する方がむしろ経費の点からも好都合ではなかろうか、かように考えて補助したわけでございます。
  166. 野原覺

    野原委員 それではお尋ねしますが、労働省の技能者養成として衆議院を通過いたしましたいわゆる一般訓練所ですね、企業内一般訓練所その他いろいろあったと思う。あの労働省の一般訓練所とこの別科というものはどこが違うのですか。
  167. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 労働省のは働きながら学ぶと申しますか、新制中学校を出てその会社、工場に入って、その工場で二年ないし三年働きながら養成をいたしておるわけでございます。この養成は、私どもはただいま学校教育法の一部改正によりまして、ここでやっておる教育で文部大臣が指定した施設の場合には、これとこれは高等学校の単位に認めようということで、ただいま国会の御審議をわずらわしておるわけでございます。これは純然たる高等学校の一部になるわけです。ただいま申しました別科は、これは一年ないし二年のものでございまして、むしろどちらかといえば労働省の職業補導所の方に近いものでございます。
  168. 野原覺

    野原委員 私は労働省の技能者養成のあの目的を見たところが、労働省の職業訓練所の場合は熟練工の養成ということがうたわれておる。あなたの方の文部省が出した別科によると、中堅技術者の養成ということになっておる。これは違うのですか、同じですか。この点はどうなんですか。
  169. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは大きな意味でいえば技術者養成の一環です。ですから技術者養成をする場合に三年の工業高等学校のものもありますし、労働省が労働基準法で進めておる企業内の技術訓練も一環だと思います。またただいま私どもがやっておりますところの産業科も一環ですし、それから定時制の職業課程も一環です。私どもはできるだけ広く技術者を養成することが必要であろうと考えておるのであります。
  170. 野原覺

    野原委員 労働省の企業内訓練と比較いたしますと、学科の時間なりそれから実習の時間というものは、別科による一千四百時間とどちらが質的に見て、内容的に見て充実されておるのか承わりたい。
  171. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 労働省が直接やっておるわけではないのですが、労働基準法に定めておりますところの企業内訓練というのは、大体三年くらいやっております。ここではりっぱな施設も持っておるし、専任の教員もおりますし、そしてりっぱな実習場を持ちまして相当充実した教育を行なっております。これは年限が大体三年くらいでございます。ところが別科の方はこれは原則的に一年でございまして、夜間をやる場合に二年程度を予想しておりますので、むしろやはり単能工ということになると思っております。たとえば旋盤なら旋盤、そういう単能工の養成になろうかと思います。
  172. 野原覺

    野原委員 あなたの方は一年で中堅技術者の養成ですね、それから労働省の方は三年で昼間の定時制高等学校に比すべきようなほんとうに充実した内容を持っておる。予算においてもこれは問題になりませんよ。片一方は数十億円の予算を——いやそうなっておる。これはあなたの方は四千四百万円だ。労働省の方の予算を見ると——あなたかぶりを振られたが、それでは労働省の技能者養成の予算は幾らなんですか、お聞きしておきたい。
  173. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 労働省の技能者養成というのは、労働省が補助しておるのではないのです。会社が自己負担でやっておるわけなんです。ちょっとそこに誤解があると思います。各都道府県に職業補導所というのがあるのですが、この職業補導所というのは労働省が都道府県に補助金を出してやらしているわけです。この分の金は相当額が計上されております。ところがただいまおっしゃった企業内訓練は、各企業の責任においてやっておるわけですから、別に労働省は補助金を出しておらないはずであります。
  174. 野原覺

    野原委員 それでは企業内訓練だけに限定しないでお聞きしますが、労働省の職業訓練法の一般関係予算は幾らになっておりますか。
  175. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私今詳細に存じませんが、労働省の都道府県の職業補導所に対する補助費だと思います。
  176. 野原覺

    野原委員 これははっきりあなたも数字を見てもらいたいと思うのですが、一般会計で五億八千三百五十八万円、特別会計として十二億五千六十一万円、あなたの方は四千四百万円、こういった予算の裏打ちから見ても問題にならない。片一方は三年間で熟練工の養成をうたっておる。僕が疑問に思うのは、こっちの方は一年ですぬ。別科の一年で何をやるのか。産業教育なんて一年間くらいやったってできやしない。一年間で中堅技術者の養成というのは一体どういうことなのか。これは労働省が熟練工の養成、職業訓練をやり出したものだから、お株をとられては大へんとばかりにあわててやったのと違いませんか、ほんとうを言って。
  177. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 それは私非常に誤解だと思います。今申しました労働省が労働基準法に基いて指導しておりますのは、これは企業内訓練で、三年だと申しました。それからもう一つあなたが御指摘になって補助金を出しておりますのは、都道府県の職業補導所なんです。たとえばタイピストの養成とか、これはほとんど一年であります。ですからこの労働省がやっておりますのは、単能工と申しますか、そういうところをねらっておるわけでございます。そこで文部省がやっておりましたのは、従来高等学校の別科に補助金が出ていなかった、短期間で技術を習得したいという希望が相当多いのでございますので、ここに設備費の補助金として三分の一出した。ですから三分の二は地方負担でございます。それからさらに教員給与費学校運営費、こういうものは全部都道府県予算に組まれるものでございまして、これは地方財政交付金の方で処理しております。ですから、こういう経費を入れますと、相当多額に上ると思います。工業高等学校でも国は大して補助金は出しておりません。建物、施設だけでありますが、大部分の経費は地方負担でございます。
  178. 野原覺

    野原委員 いや、私が聞いているのは、中堅技術者の養成と熟練工の養成は同じものなのかということを聞いている。これはあなたは同じものだとお考えになるかもわからない。しかしはっきり労働省は熟練工、あなたの方は中堅技術者、こうしている。これは一体違うのか、同じか、あなたはどう考えるか、この答弁をしてもらいたい。
  179. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど私が申しましたように、労働省が考えておるのは二種類あります。都道府県の職業補導所と企業内訓練、労働省が考えております都道府県の職業補導所と私どもの産業高等学校の産業科のものは大体似た程度のものでございます。
  180. 野原覺

    野原委員 答弁がないのです。僕は大臣にお聞きしたいと思います。こういった別科というものは、あなたも御承知のように学校教育法にあるわけです。しかしながらこういう一年か二年の別科による産業科ということになって参りますと、これはやはり相当研究しなければならぬと思う。政府は片一方では労働省が熟練工養成を目的にした三年間単位の職業訓練法を出してきておる。一方には工業高等学校がある。工業高等学校には全日制もあれば定時制もある。今度は労働省からその職業訓練法によるところの三カ年の職業教育というものがなされるわけです。そこに持ってきて、何の役にも立たぬと言ったら語弊がありますけれども、ほんとうに申しわけ程度の予算をとって、こういった新たなる教科を設置するというその理由、その必要性というものが私はどうも納得ができないのです。だから、この点を文部大臣はどう考えておるか、それが一つ。  ついでに文部大臣にお聞きしておきますが、そういうものを設けるならば、これは労働省の職業訓練との関連あるいは工業高等学校教育との関連、そういう関連性というものをもっと綿密に検討されてから打ち出すべきじゃないか。労働省の場合は相当時間をかけておりますよ。教員養成の機関まで労働省の職業訓練法によれば作ることになっている。もちろん労働省は長い間審議会にかけて検討して打ち出してきている。どうも文部省の別科というのは、何だかあまりにも促成栽培的で、私ども何を一体やるのやら見当がつかぬのです。大臣、どう考えますか。
  181. 松永東

    松永国務大臣 私の承知しておるところでは、この別科というもの、産業科ですな、これは定時制に行かない子供達、要するに今工場に行って働いておるそういう人々に一年、きわめて短期に手ほどきをしてやる。そういう必要から今の産業科の別科に相当補助金を出す、こういうことに承知しておる。そこで労働省で職業補導所というのがあるじゃないか、これも議論したことがありますよ。私はさっきあなたの御質問のうちで、その当時私らが議論したことを今頭に浮べておったのですが、それはこうなんです。職業補導所と産業科とは違う。なぜかなら職業補導所に入る人、つまり職業安定所あたりから来た人たちは、現場に入ってそうして腕を修練せんければならぬ。そのうちには年が五十になる人もあれば、四十四、五になる人もある。この文部省関係の産業科は、これはやっぱり青年層なんです。そうして将来学問を身につけ、そうして伸びていこうとする人だ、つまり若い連中に職業を身につけ、学問もまた身につけさしたい、こういう趣旨だというふうに私は承わっております。
  182. 野原覺

    野原委員 どうも私の頭が悪いせいか、要点を把握するに苦しむのです。それではお尋ねしますが、労働省の今度の職業訓練法によるこの制度は、これは教育制度の一つの改変だとも思われますが、これはどう考えますか。
  183. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 労働省のこのたびの職業訓練法は従来からあったものを集大成しただけだと私ども考えておるのであります。一つは先ほど来お話がございました企業内の職業訓練、これは各企業がそれぞれ自主的にやっていらっしゃるものでございます。それが一つの大きな柱でございます。もう一つ都道府県が、今大臣がお話になりました、経営しておりますところの職業補導所でございまして、この職業補導所と、それから従来職業補導所は主として職業安定法の中に規定されておったものでございます。それから企業内訓練は労働基準法の方に規定されておった、この両部門を集めまして職業訓練法という新しい体系のもとに作ったのでありまして、技術者の養成という面から私どもとしてはけっこうなことだと考えておりまして、必ずしもこれは学校教育とは矛盾しないという考え方をとっておるのであります。
  184. 野原覺

    野原委員 そうなって参りますと、労働省の職業訓練法をより充実していく方向に文部省は協力すべきであって、文部省のやるべきことは工業高等学校の全日制と定時制だ。これでやって、労働省の方は職業訓練法でやる。職業訓練の方を充実させることがこれは最も大事なことではないかと私は考える。あなたが言うようにそういうものであるならば。そこで何かわけのわからぬ、一年くらいで工業高等学校に別科など併設して中堅技術者の養成と言われてみても、中学校を卒業した子供が、一年くらいの産業教育で何が中堅技術者になりますか。労働省の場合は実業について働きながら学ぶ。だから働きながら必要性をどんどん痛感してくるわけなんです。学校で学んだことは直ちに自分の実地に使っていく。だから三年間でも私は教育のやり方によっては、これはほんとうに実利的な効力をあげることのできる技能者養成ということも可能になるかと思うけれども工業高等学校に一年くらい併設して、僕は一体何の——できないとは言いません、一年やったのですから。それはやらぬよりはましといえばましなんですね。しかしながらそういうことをやるよりもむしろ職業訓練を充実さしていくという方向にこそ協力すべきではないかと思いますが、どうお考えになりますか。
  185. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 中学校を出てそのまま社会に出るのが大体八十万ないし百万おるわけです。ですから、できるだけ職業を身につけるということが必要ではなかろうか。特に科学技術が叫ばれておる今日、私どもはできるだけ青少年に技術を身につけさしたい。そこで労働省がやっておりますところの企業内訓練では、せいぜい四、五万にしかならないわけでございます。それからこの場合は職業と教育が一体になっておる。ところが都道府県の職業補導所は、これは大体原則として一年でございます。これは一年間の間にやりますが、先ほど大臣がお述べになりましたように、大体職を求めて職業安定の立場から来るわけでございます。私ども考えておりますのは、中学校を出てすぐ高等学校で一年ないし、夜間の場合は二年くらい、この場合は各種学校でも相当技術を身につけておりますし、また都道府県の職業補導所でございますか、ここでもやっております。私どもは大体短期にできるという見通しを立てておるのでございます。そういう点からできるだけ広い層に技術なり職業を身につけさしたい、こういうことで、また労働省がやっておる部分もほんの数万足らずでございます。文部省がいかに定時制をがんばりましても、定時制はわずかに中学校卒業の一割程度にすぎませんので、まだまだ私どもは勤労青少年のために技術なり職業を身につけさせるように努力しなければならぬと考えております。
  186. 野原覺

    野原委員 勤労青少年のための職業教育努力しなくちゃならぬことは私も認めます。それはそれとして、あるいは中教審なら中教審で十分討議をするとか、世論に聞くとかするならわかる。ところが、片一方で労働省が熟練工の養成だといって莫大な予算をとって本格的にやっている。文部省は何だかなわ張りを荒されたという印象を国民に与えている。今度のあなたの通達は、何といっても与えています。三月十四日に通達を出して、あわてふためいて——予算はなるほど前からとっておりますけれども、たった四千四百万円くらいの予算だ。あなたが言うように八十万の中学校卒業生が出る、これは四、五万しか職業訓練は受けないのだ。それから高等学校に行く者は、どれだけあるか、とにかく莫大な数の子供が中学校を卒業しただけで実社会に出なければならぬのだ。だから実技の訓練、教育は必要だ。私もそれは認めます。必要は認めるけれども、必要ならばもっと本格的に、産業教育はいかにあるべきかということを検討した上で打ち出すべきじゃないですか。たった一年くらいでは、一体職業とはどういうものかというほんとうの基礎概念を与えることもむずかしい。それを麗々しく中堅技術者の養成とはどういうわけですか。中堅技術者の養成という文句はとったらどうかと思う。一年くらい子供に教えて中堅技術者とは、聞いた者が笑いますよ。これはどういうわけなんですか、もう一ぺん説明して下さい。
  187. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体中等程度の技術者の養成については従来から中堅技術者という名前を使っておりました。それから大学を出た場合には一般の技術者と申しますか、幹部技術者、中等学校程度の者は中堅技術者。高等学校の産業科も別科でございまして、従来から別科がやっておったわけです。これで相当成果を上げておりますので、私どもはこの実績を見て今度は補助をしただけでございまして、私どもは今までもやっておったのですから、これに対して補助をすることは一向差しつかえないのじゃなかろうかと思うのです。
  188. 野原覺

    野原委員 中等教育を受けた者、それから定時制でも全日制でもよろしいが、工業高等学校教育を受けた者、そういう者に対して中堅技術者の養成ということは従来も言っておった。私の言うのは、たった一年か二年だ。しかも別科だ。そういう者に対して中堅技術者の養成とは、事があまり大き過ぎないか。労働省の方は熟練工の養成と控え目に言っているのですよ。労働省のやっていることと文部省の今度の別科と比較すると、片方は三年間やって、時間数においても問題にならない。しかも熟練工の養成と言っている。一年くらいやって中堅技術者の養成、これは産業を知らぬ者の言うことだ。大臣、こんなことはどう思いますか。
  189. 松永東

    松永国務大臣 中堅技術者という言葉は、私は御議論を承わって、少し吹き過ぎたような気もするのですが、しかし私はこの問題では議論をしたことがあるのです。すなわちこれは青年層の技術屋になる人々を手ほどきしていくという趣旨から、一年なり二年なりやるのだというふうに聞いておった。御指摘になりました職業補導所はさっきも申し上げた通り、学生もありましょう、若い青年もありましょうけれども、これは主として勤労青年というものではないようです。大体四十、五十の人あたりがそうした職についてその職を補導してもらう、こういうことのように承わっておった。ですからこの産業科すなわち以前の別科、これはやはりこれからだんだん仕上げていって、そうしてあるいは定時制の方にくらがえする人もあるでしょうし、さらに上級学校に行ける資格をとる人もあるでありましょう。相当のやはり希望と向上を認めながらやっている行政だというふうに私は考えておる。
  190. 野原覺

    野原委員 時間がありませんから簡単に終りたいと思いますが、労働省が職業訓練というようなことを打ち出してくることに、私はとやかくは言いませんけれども、しかし職業訓練による教育が中等教育を実質的に改変したことはいなめないと思うのです。今日は四、五万かもしれませんけれども、これはどんどんふえてくるのです。私は中等教育という場合には、高等学校教育とかあるいは実業高等学校教育というものを考えておりましたけれども、実際は働きながら中等教育をしていくという方向に改変してきたことはいなめないのです。だからこのことを一体文部当局はどう考えるか、もう一度これは大事な点ですから、局長から御答弁願いたい。
  191. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 労働省で指導していらっしゃるいわゆる企業内訓練につきましては、できるだけ高等学校教育の一部とみなしたい、かような趣旨から学校教育法の一部を改正いたしまして、高等学校の単位が認定できるような措置を講じたいということで、ただいま御審議を願っておるわけでございます。このことはむしろ私どもは非常に望ましいことである、かように考えております。
  192. 野原覺

    野原委員 そういう教育上の大事な点が文都省から考えられないで、労働省から考えられるというのは一体どういうわけなのか。労働省の場合には工業その他いろいろな労働につくという面があるでありましょう。文部省こそこの児童生徒の労働教育に関するものを基本的に検討して国会に打ち出すなり、政府の方針とするなりすべきではないか。労働省からこういうものが出てきたということをあなたはどうお考えになりますか。
  193. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは労働省がやっておりましても各会社がやっておるのです。各会社が自分たちの後継者やりっぱな指導者を養成しようという趣旨からやっておるのです。これは労働基準法でそういう技能者の訓練をすることを認めておる、こういう趣旨でございます。ですから私どもはその各企業内の訓練が充実することを非常に期待しておるわけです。その充実したものにつきましては、高等学校教育の一部とみなすように、これは文部省が積極的に乗り出そうというので、むしろ私どもの方が積極的に乗り出そうという態勢なのでございます。
  194. 野原覺

    野原委員 いや、各会社がやっておるという問題ではなしに、職業訓練法というのは労働省が所管として法案提案しておる。労働省が中心になって研究を続けてきておるのです。私はこれはすでに衆議院では審議が終っておりますから、今とやかくは言いませんけれども文部省こそこの種の基本的な検討をして国会に諮るべきではないか。文部省学校教育について全責任を負っておるのですから、やはり学校教育の体系と関係があるのですから、これをどういうわけで——あなたの方はそれを知っておったけれども、労働省に移管をしたのか、それともあなたの方はつんぼさじきに置かれておったのか聞いておきたいと思うのです。それともあなたの方はそういう基本的な検討をサボっておって、たとえば管理職手当勤務評定で忙しくてお留守にしておる間にそういうものが出てきたのか、これは後学のためにはっきり聞いておきたいと思う。
  195. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 その名前が実は職業訓練法という名前なんで、私も実はそういう案が労働省から発表になったときに驚いたわけです。ところがだんだん中身を調べてみましたら、そしてまた私どもも労働省の委員会に出ましていろいろ主張した結果、労働省はそういう全般的な職業訓練をやるのではないのだ、従来あるところの労働基準法に定めた企業内訓練を一つの柱とし、それから職業安定のために従来からあったところの都道府県の職業補導所、この二つだけしか考えていないのだ、それ以上のことは考えていないということなんです。それなら従来の通りで、名前が少し大き過ぎるけれども、まあその点はやむを得ないということにしたわけでございまして、お説のような広範な職業訓練ということなら、これは文部省が当然やらなければならぬ仕事だと考えております。今申しましたように従来あったものをまとめたという趣旨でございますので、了承したわけでございます。
  196. 野原覺

    野原委員 この問題は、実はずいぶん問題が残っております。しかし時間がありませんから、他日機会があればお尋ねしたいと思います。以上で終ります。
  197. 山下榮二

    山下委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時一分散会      ————◇—————