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1958-04-02 第28回国会 衆議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二日(水曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 山中 貞則君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       杉浦 武雄君    千葉 三郎君       渡海元三郎君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    野依 秀市君       堀川 恭平君    松田竹千代君       木下  哲君    櫻井 奎夫君       高津 正道君    辻原 弘市君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 荘一君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 四月二日  委員北村徳太郎君、井原岸高君、濱野清吾君、  戸叶里子君及び三宅正一辞任につき、その補  欠として永山忠則君、堀川恭平君、松田竹千代  君、平田ヒデ君及び辻原弘市君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員石野久男辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十八日  学校保健法案内閣提出第一二〇号)(参議院  送付) の審査を本委員会に付託された。 四月一日  オリンピック標識濫用防止に関する陳情書  (第七七五号)  公立学校危険校舎改築費国庫補助増額に関する  陳情書(第八  〇二号)  教育予算増額等に関する陳情書外三件  (第八〇三号)  二見中学校屋内運動場建設費国庫補助等に関  する陳情書  (第八〇六号)  盲ろう学校施設費国庫補助制度確立に関する陳  情書(第八〇七号)  へき地教育振興法の一部改正に関する陳情書外  十八件(第  八〇八号)  義務教育施設費半額国庫負担法制定に関する陳情  書外二件  (第八〇九号)  義務教育学校敷地買収費国庫補助に関する陳情  書(第八一〇  号)  青少年対策費及び社会教育関係経費確保等に関  する陳情書  (第八一一号)  公立義務教育学校施設整備に関する法律の一元  化に関する陳情書外一件  (第八四七号)  写真サイズ規格制定に関する陳情書  (第八五七号)  義務教育費全額国庫負担等に関する陳情書  (第八六八号)  高等学校工業課程施設設備費補助増額等に関  する陳情書(第九  〇六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に  関する法律の一部を改正する法律案内閣提出  第六三号)  義務教育学校施設費国庫負担法案内閣提出  第一三八号)  学校教育に関する件      ――――◇―――――
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  まず義務教育学校施設費国庫負担法案を議題となし、審査を進めます。質疑通告がございますからこれを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まず文部大臣お尋ねしますが、この法案は、文教委員会で、たびたび問題になったものでございまして、義務教育国庫負担の問題については相当に議論がありますが、今度の法律の中で、私たちが一番不満に思うのは、中学校の方は二分の一の負担になっておりますけれども小学校の方には三分の一ということになっております。これがどうして中学校と同様に二分の一の負担にならないのか、まずこの一点を大臣あるいは小林管理局長にお伺いしたいと思います。
  4. 小林行雄

    小林(行)政府委員 小学校整備負担率が、従来通り三分の一でございます点につきましてのお尋ねでございますが、文部省といたしましては、前々回の国会での付帯決議の線に沿いまして、一応予算の折衝も負担率二分の一ということで、財政当局話し合いをいたしたのでございますが、本年度予算のワクの関係から、これが実現を見なかったのでございます。しかし将来できるだけ早い機会に、この小学校整備につきましても三分の一の負担率を二分の一に引き上げるように、努力をいたしたいと考えております。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちもやはり地元の方で非常に心配しておりますのは、小学校の不正常授業あるいは危険校舎につきまして、なかなか整備が整わぬ点であって、おそらく文部当局もよく御承知だろうと思います。現在なお不正常授業並びに危険校舎対象となっております総数はどのくらいあるものか。小林管理局長に御説明願いたいと思います。
  6. 小林行雄

    小林(行)政府委員 御承知のように不正常の関係は、その児童生徒数と、教室整備されておる坪数との関係によって、非常に違って参るわけでございますが、明年度予算におきましては、従来三十一年五月一日現在の不正常の坪数というものを取りまして、それを年々解消するということでやってきておるわけでございます。三十三年度の初めに、小学校におきましては大体十一万坪程度不足坪数がある。これを三十三年度には、約その半分の六万一千坪を解消するというような計画を立てております。しかし御承知のように、小学校につきましては、児童の数が三十三年度以降急激に減少して参ります。三十六年、三十七年になりますと、約二百万円以上の児童が減ってくるということがございますので、文部省といたしましては、明年度以降につきましては、従来の計画と違った新しい計画をもちまして不正常授業解消に当りたい、かように考えております。  なお中学校の点につきましては、本年度相当やはり減って参りますので、減った生徒数と、それから本年度予算で取れました中学校整備教室数、約千七百教室でございますが、これと勘案しまして、今後整備を進めたい、そして三十三年度、三十四年度にある程度整備をいたしますことによって、三十五年度以降の急激な中学校生徒の増加に対処をいたしたい、かように考えております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お尋ねしたいのですが、小学校中学校敷地の問題で、なかなか町村は困難しているのです。これは二分の一国庫補助をお願いしたいのですが、なぜそれができないのか、この点をお伺いいたしたい。
  8. 小林行雄

    小林(行)政府委員 学校校地整備につきまして、いろいろ設置者として困難を感じておるということは、私ども承知をいたしております。実は参議院の方で、これに対する国からの援助制度を作るようにという御決議もございましたので、文部省といたしましても研究いたしまして、予算の数字には一応載せたのでございますが、実はこれにつきましては、全国土地価格等も統一されておりませんし、また敷地購入に非常に困難を感ずるというのは、全国一般の現象というよりも、むしろ大都会その他局地的な性格がございますので、明年度におきましてはこれを一応起債に譲ることにいたしております。従来校地買収費起債対象になっておりませんでしたが、三十三年度におきましては、自治庁とも話し合いをいたしまして、これを起債対象とするということにいたしております。自治庁の方もすでに起債許可方針の中に、この校地買収についての一つの項目を入れておりますので、三十三年度におきましては、その点の援助制度で私どもとしては土地整備をいたしたい、かように考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最近地方でいろいろ問題になっておりますのは、公立中学校雨天運動場新築の問題です。各地方とも今までは、危険校舎をやっと直すくらいの程度で済んだのですが、最近は少し整備されて、問題になってきましたのは公立学校雨天体操場と申しますか、屋内運動場と申しますか、こういう点については今度は法律でできるわけですが、予算とのにらみ合せがありまして、今度の予算のどこに組まれておるか。幾ら法律があっても明文だけで予算が伴わなければ、地方から出てきても思うようにいかない。小林管理局長のお考えでは、三十三年度にはどれくらいの屋内運動場ができるものであるか。おそらく地方から申し込みが相当殺到してくると思うのですが、どれくらいの割当で今年度はできる予定をされているのか、御説明願いたいと思います。
  10. 小林行雄

    小林(行)政府委員 中学校屋内運動場につきましては、ただいまお話のございましたように、従来予算補助をいたしております。法律根拠がありませんでしたけれども予算だけ取りまして補助をいたして参ったのであります。今回の法案におきましてはそれを取り入れまして、法的根拠を与えておるのであります。  実際の執行の計画を申し上げますと、現在中学校の方は小学校に比べて、屋内運動場を持っている率がまだ低うございます。大体三分の一程度しか中学校屋内運動場を持っておらぬのでございまして、小学校に比べて中学校の方が教科関係からいいましても必要でございますので、中学校屋内運動場につきましてはできるだけ文部省としても力を傾けて参りたいと思っております。数字的に申しますと、昨年の五月一日現在の積雪寒冷地帯不足数が十三万坪で、本年度実施計画予定坪数は二万六千坪程度でございます。これで参りますと一応不足坪数の五分の一程度、従って三十三年度実施計画坪数で参りますと五年間程度はかかるというような状況でございます。文部省としてはできるだけ予算をとりましてその年数を短縮するように努力いたしたいと思います。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 義務教育学校設備については全国的な問題でありまして、なかなか簡単にはできないことも十分承知はしております。しかし義務教育でございますから、小学校中学校設備に対してはやはり万全を期していただいて、一日も早くこれらの不足校舎あるいは新築校舎については国がどしどし補助を与えて整備をされることが必要であります。  もう一点お尋ねしておきたいのは、最近科学技術教育普及によりまして、地方においても科学実験室理科教室の要望が非常に高いわけでございます。各地方ともこの際国から半分の負担をしてもらいたい、そういうような時期がいつになるかというような問い合せがあるわけであります。幾ら表の看板で、科学技術教育普及といっておりましても、また大学でだけやっておりましても仕方がありません。中学校くらいからは実験によるところの理科教育をやらなければ実効が上らないわけです。そういう点で科学教育のおくれておる日本でありますから、こういう問題は至急処理しなければなりません。こういう点についてどういう御用意があるか、中学校科学実験室に対しては二分の一くらいの補助はしなければ整備はできないと思いますが、小林局長はどういうようにお考えになっておりますか。それはどういうように進行しておりますか、一つ伺いたいと思います。
  12. 小林行雄

    小林(行)政府委員 ただいまのお尋ねは、少くとも中学校には特別教室を用意できるような基準をとるべきであるというお尋ねのように思います。私どもといたしましても、中学校には小学校よりも特別教室の必要の程度が高うございますので、できるだけこれが十分とれるように基準を上げたいと思っておるのでございますが、現状は御承知のように、中学校一人当り一・〇八坪の基準で計算いたしましても、かなりまだ整備不足坪数が出ますので、もう少し現状のままでこれを続けまして、この不足坪数がある程度減ったときに、私どもの申しております現在の暫定最低基準一・〇八坪を引き上げたいと思っております。現状で計算いたしますと、大体標準の学校、たとえば三百人の生徒数学校でありましても、一応特別教室が三教室程度はとれる。これはもちろんいろいろ職業関係あるいは芸能関係等にも使うわけでございますが、私どもといたしましては、ただいまお話のございましたような理科的な特別教室にできるだけ使ってもらいたい、さしあたってはそうした指導をするようにしていく次第でございます。将来の問題といたしまして、できるだけ早くこの基準坪数を引き上げるように努力をいたしたいと思います。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大臣に一点お伺いしたいと思います。科学技術教育につきましては、前の国会において衆議院は満場一致で決議をしたわけでございます。ところが実際にやってみると、科学教育振興といいましても、ただいま申しましたように小学校中学校科学教育もあれば、また大学におけるところの科学教育もあるわけでございます。そういう点で両方ともできればそれにこしたことはありませんが、私たちはまず、大学科学教育をやることも大事であるけれども、少くとも義務教育のところに基礎知識を与えなければ、それはちょうどわれわれに科学的なものがないと同じように、中学校小学校時代にそういうものを基礎的に教えていかないと、大学へ進むまでなかなか思うようにいかないわけです。そういうところへどういうようにウェートを置かれるのか。ただいま科学技術教育時代のはやりでありまして、今年度も御承知のように大学の学部をふやしたり、あるいは生徒数をふやしたりしているところも見受けられますが、私たちはやはり義務教育のときに科学技術教育をやっていかなければ、大学にいってもだめだと思うのです。そういう点においてどちらか重点を置かなければならないと思うのでありますが、大臣はどちらに中心を置いて科学技術教育をやっていかれるか、その点を承わりたいと思います。
  14. 松永東

    松永国務大臣 佐藤委員の御指摘になりました科学技術振興の問題はまことにごもっともだと思います。もちろん科学技術教育は、大学教育も必要でございますけれども仰せ通りやはり小学校中学校から基礎教育をやっていかなければならぬということは当然のことでございます。従って小学校中学校におきましても理科教育の時間をふやしあるいは数学の教育時間をふやす、こういうことについてこの八月までに学習指導要領ができますので、それまでに検討を加えましてそして増強する、こういうつもりでおります。  科学技術教室理科教室の問題については、ただいま政府委員より申し上げた通り、まことに残念でございますけれども、三十三年度から間に合わないという現状でございますが、しかしこれは三十四年度以後には必ず間に合せて、御説のように小学校中学校のときから基礎科学相当教え込んでいこう、こういう予定でおります。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この義務教育学校施設費国庫負担法というのは、これはまことに耳寄りな話で非常にけっこうでありますが、予算を伴うのでなかなか一朝一夕にいかないとは思います。しかしあとでわれわれの方の櫻井君から修正案が出ますが、いずれそのときにも御説明があると存じますが、どうか一日も早く危険校舎並びに不正常授業解消できるような処置を文部省にとっていただきたいことを要望いたしまして、私の質疑を終ります。
  16. 松永東

    松永国務大臣 ちょっと佐藤委員の御質問に対する答えとして落ちておった点がありますから、補充いたしておきます。これは実は三十三年度から予算の中にも理科設備費として約二割増をやっております。さらに理科教員講習会を開きまして、そうした中学校小学校時代から基礎教育をするための準備をやるようになっております。その点だけをつけ加えておきます。
  17. 山下榮二

  18. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私はこの義務教育学校施設費国庫負担法について少し大臣お尋ねをいたしたいのであります。こまかい点は先ほど佐藤委員の方から質問がありましたので、重複を避けて、私はこの法案の大筋について大臣考えをはっきりしておきたい。  この法案は、先般の第二十六国会において、御承知通り公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案が通過いたしました際に、本院といたしましては附帯決議をつけております。その附帯決議は一、二と分れておりますが、その中に特に「公立義務教育学校施設設備についても、政府は、すみやかに、義務教育費国庫負担法精神に則り、これに必要な経費の二分の一を国が負担するために必要な措置を講ずべきである。」こういう強い附帯決議を本院の名において決議いたしたわけでありますが、今回政府提出して参りましたところのこの施設に関する国庫負担法案を見ますと、これは明らかにこの決議を下回ることおびただしい。これは在来ありましたところのいろいろな負担法律、たとえば公立小学校正常授業解消促進臨時措置法あるいは公立学校施設費国庫負担法の一部を改める、または危険校舎改築促進臨時措置法、こういうもろもろの臨時的なものをこの法案の中に一本化しておる。臨時措置法が恒久的な法になったということは、これはもちろん一歩前進でございましょう。しかしその負担の率を見ますと、この法案の第三条に明らかなごとく、二分の一あるいは三分の一といって必ずしも一定していない、これはやはり国会決議よりはるかに下回るところの線であると思うのでありますが、どうしてこの決議の線に沿って、すみやかに二分の一の国庫負担をするというはっきりした線を出されなかったか、その点について大臣の御説明をいただきたいと思うのです。
  19. 松永東

    松永国務大臣 櫻井委員仰せ通り、私ども院議を尊重して、どうしても二分の一だけは出してもらうというつもりで努力いたしたのであります。ことにこの問題については、ここであとから話をしたって始まりませんが、二晩くらい徹夜のようなつもりで実は相当努力をいたしました。しかしながら何といたしましても、財政現状では一ぺんにこの院議に沿うようにはいかぬというようなことになりまして、とうとうただいま提案しておりますようなふうに落ちついたのでございます。しかし三十四年度から、とにかく何とかまた方法はあろうと考えておりますが、いずれにいたしましても、この一本化しただけでもやはり前進したことであるというふうに私ども考えておるのであります。ことに今の補助するという問題を、それを当然の義務として規定していったという点だけでも、これは相当前進をしたのだというふうに考えております。従ってこれから先、この院議に沿うて十分一つ努力してみたいというふうに考えております。
  20. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今までのばらばらの法律が一本の法律にまとまり、臨時のものが恒久的の法律になり、補助義務的な支出義務づけられてきた、こういうことはなるほど一歩前進であります。しかしこれは私どもが申しますようにあくまでもまだ一歩の前進であって、さらに三十四年度については、これより院の決議趣旨に沿うような努力がなされるのが当然であろうと思うのであります。そこでこの第三条にいろいろ負担の割合が羅列してあるわけでありますが、来年度においてはこの三分の一というものは二分の一になさる決意があるのかどうか、その点をまずお尋ねいたしておきます。
  21. 松永東

    松永国務大臣 私の考えとしては、もうさっきも申し上げた通り、本年度から二分の一にしたいという熱意で働いておったのであります。もちろん三十四年度には、仰せ通りやるつもりで一生懸命努力いたすつもりでおります。
  22. 櫻井奎夫

    櫻井委員 三条の中の三の「公立中学校屋内運動場新築又は増築に要する経費」は二分の一の義務負担となしておられるが、どうしてこれに小学校を入れないのか、屋内運動場というものは何も中学校に限ったことではなく、小学校も持っておる。ことに今日は新しい義務教育年限延長に伴って、校舎整備というものは主として中学校に向けられておる。どうしてもそういう観点から見ますと、小学校の方に老朽校舎あるいは危険校舎というのが多いわけです。従ってやはり小学校屋内運動場というものは義務規定の中に入れて、当然政府が責任を持って義務支出をなすべきであると思うのでありますが、この三の中に小学校屋内運動場を入れられなかった理由をお聞きしたい。
  23. 小林行雄

    小林(行)政府委員 小学校屋内運動場についてのお尋ねでございますが、御承知のように中学校につきましては、これは新しい教育制度になりまして、義務年限延長に伴う屋内運動場整備ということで、従来予算をつけておったのを、今回法的に根拠を与えたわけでございます。先ほど申しましたように、小学校中学校屋内運動場整備状況を比較いたしますと、小学校は持っているのが大体半数以上ある、ところが中学校の方は三分の二は持っていないという整備状況でございまして、やはり中学校の方にもう少し力を入れていかなければならぬ、なお小学校中学校教科を比較いたしましても、中学校の方が屋内運動場を必要とする必要性は一そう強いというようなことでございまして、文部省としては、もうしばらくの間は中学校整備重点を入れたいと思います。  なお小学校屋内運動場整備につきましては、ただいまお話のございましたような危険校舎老朽校舎改築に該当するようなものにつきましては、これはその対象に入れております。  なお僻地の集会室整備であるとか、戦災の復旧、災害の復旧につきましては、小学校屋内運動場対象といたしております。
  24. 櫻井奎夫

    櫻井委員 時間がないそうですから、私は修正案提案説明のときにまたすることにいたしまして、総理が見えられるそうでありますので、一応私の質問はこれで終了いたします。
  25. 山下榮二

    山下委員長 本案に対し他に御質疑はございませんか。——別になければ、本案に対する質疑は終局いたしました。  この際、櫻井奎夫君より本案に対する修正案提出されております。その趣旨説明を聴取いたします。櫻井奎夫君
  26. 櫻井奎夫

    櫻井委員 義務教育学校施設費国庫負担法案に対する修正案趣旨説明いたします。  私ども提出いたしておりますところの修正案趣旨は、先ほど読み上げましたところの二十六国会における本院の決議、この精神に沿いまして、あくまでも施設について二分の一の国庫負担をすべきである、こういう趣旨に基いて立案をいたしたわけであります。詳細はそこに出ておりますところの修正案について御検討願いたいのでありますが、なお政府案と異なるところは、新たに土地購入につきまして、第三条をずっとずらしていきまして、一番最後の方に土地購入についてやはり国が二分の一負担すべきことをうたい上げております。それから第三条の「政令で定める限度において、……」というのを、「国は、次の各号に掲げる経費について、その二分の一を負担する」とはっきり明瞭にこれをうたい上げておること。それからあと条文整理でございますが、公立小学校中学校ともに不正常授業解消するために二分の一、それから先ほど申しました屋内運動場においても、中学校と同じように小学校屋内運動場においても二分の一を負担する、こういう点がおもなものであります。なお基準坪数その他条文整理、そういう点をここに整理いたしたわけでございますが、この本院の決議に忠実な法律案であり、大臣の先ほど表明されました御趣旨に最も忠実な法律案であると私は思います。何とぞ各員の御賛同をお願いいたしまして、提案理由説明といたす次第でございます。
  27. 山下榮二

    山下委員長 これにて修正案趣旨説明は終りました。  修正案に対し質疑があればこれを許します。——別になければ、これより修正案及び原案を一括して討論に付したいと存じます。別に討論通告もないようでございますので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  28. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認め、直ちに採決をいたします。  まず修正案について採決をいたします。櫻井奎夫君提出修正案賛成諸君起立を願います。
  29. 山下榮二

    山下委員長 起立少数。よって櫻井君の提出修正案は否決されました。  次に本案について採決をいたします。本案原案通り可決するに賛成諸君起立を願います。
  30. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって本案原案通り可決するに決しました。  この際佐藤觀次郎君より発言を求められております。これを許します。佐藤觀次郎君。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいま可決されました義務教育学校施設費国庫負担法案に関しまして、要望いたします。  本法案の内容は、去る二十六国会において、公立小学校正常授業解消促進臨時措置法の一部を改正する法律案に対する本委員会付帯決議たる「義務教育が国と地方公共団体との共同責任にかかる重要事項たる点と、地方財政の実情とにかんがみ、公立義務教育学校施設設備についても政府はすみやかに義務教育費国庫負担法精神にのっとり、これに必要な経費の二分の一を国が負担するために必要な措置を講ずべきである。」という精神に照合すれば、その懸隔まことに大なるものがあります。政府は来年度において必ずこの決議精神を実現するため、万全の努力をいたされるよう全委員の名において強く要望するものであります。  以上でございます。委員各位の御賛成を得まして、本委員会の決定としていただきたいと存じます。御賛成をお願いいたします。
  32. 山下榮二

    山下委員長 ただいまの佐藤君の提案賛成諸君起立を願います。
  33. 山下榮二

    山下委員長 起立総員、よって佐藤君の提案のごとく決しました。  なおお諮りいたします。本案議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  34. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認めます。さよう計らうことにいたします。     —————————————
  35. 山下榮二

    山下委員長 次に盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、審査を進めます。質疑があればこれを許します。  御質疑がありませんか——なければ、本案に対する質疑はこれにて終局するに御異議ございませんか。
  36. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって本案に対する質疑は終局いたしました。  ただいま委員長の手元へ佐藤君及び高村君よりそれぞれ修正案提出されております。提出者より順次修正案趣旨説明を聴取いたします。高村坂彦君。     —————————————
  37. 高村坂彦

    ○高村委員 本法律案の、付則第一項中、「昭和三十三年四月一日」を「公布の日」に改める。付則第二項中、「昭和三十二年度まで」を、「この法律の施行の目前」に改める。この二つを修正いたしたいと存ずるわけであります。それは御承知のように、この法案が成立を予定しておりました日にちがずれて参りましたので、それに伴いましてこの修正を必要とするに至ったからでございます。皆様の御賛成を得たいと存じます。
  38. 山下榮二

    山下委員長 佐藤觀次郎君。     —————————————
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいま提案いたしました盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の御説明をいたします。  元来、盲、ろうその他の身心薄弱者を養護すること、また教育してその生活力をつけることはきわめて大事なことでありまして、その教育の非常な不備を考えまして、私たちはこれを救うことが非常に重要と考えております。現行法並びに今回の改正案ともに、この精神から見ますと、残念ながらまだ相当の不備がありまして、私たちはそのために修正案を出すわけでございます。  第一は、幼稚園の幼児をもその保護の対象として、給食費、通学交通費等をも公費の支弁としようという趣旨であります。  第二は、保健対象たる児童生徒実験実習費、見学費、通学用品費等をも全部公費支弁とし、さらに新しく高等部の生徒をも中、小学校児童生徒と同様の処置をしたい、こういうような趣旨でありまして、ただいまお配りしました修正案通りでありますので、何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。
  40. 山下榮二

    山下委員長 以上をもちまして、高村君提出修正案及び佐藤提出修正案趣旨説明は終りました。  両修正案に対し質疑があればこれを許します。——別質疑がなければ、これより本案並びに高村君提出修正案及び佐藤提出修正案を一括して討論に付したいと存じます。討論通告がありませんので、直ちに採決いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
  41. 山下榮二

    山下委員長 異議なければさよういたします。採決をいたします。  まず佐藤提出修正案について採決をいたします。本修正案賛成諸君の御起立を願います。
  42. 山下榮二

    山下委員長 起立少数。よって本修正案は否決されました。  次に、高村君提出修正案について採決をいたします。本修正案賛成諸君起立を願います。
  43. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって高村君提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました高村君提出修正案の修正部分を除く原案について採決をいたします。これに賛成諸君の御起立を願います。
  44. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案は、高村君提出修正案通り修正議決するに決しました。  ただいまの案件について、櫻井君より発言を求めておられます。これを許します。櫻井奎夫君
  45. 櫻井奎夫

    櫻井委員 ただいまの法案に対しまして付帯決議を付したいと思いまれ。満場の皆様方の御賛同を得たいと思います。  付帯決議の案文を読み上げます。    盲ろうその他の心身薄弱者の養護教育は、人道上より、また本人の幸福上よりしてきわめて緊要事である。政府はその趣旨にかんがみ、その改善充実のための万全の努力を払うべきである。    右決議する。
  46. 山下榮二

    山下委員長 ただいまの櫻井君の御提案賛成諸君起立を願います。
  47. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって櫻井君の提案のごとく決しました。  本案議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
  48. 山下榮二

    山下委員長 異議なしと認めます。さよう決しました。     —————————————
  49. 山下榮二

    山下委員長 次に文教行政に関し調査を進めます。発言の通告がございますから、これを許します。野原覺君。
  50. 野原覺

    ○野原委員 私は、大臣に二、三重要な問題でお尋ねをしておきたいと思うのであります。  一つの重要な問題についての質問は、勤務評定の問題でございますが、この問題は、今日勤務評定を実施することが、教育の現場にどのような影響を与えるかというような、そういうゆうちょうな質問を、私はしようとは考えておりません。もう足元に迫ってきまして、そうして各県の教委はあなたからしりをたたかれて、いやいやながら実施しよう、こういうことになっておるように私は思うのであります。そこで、私が緊急に勤務評定でお尋ねをしておきたいことは、この前も質問をしておりますけれども、十分な御答弁のないことなのであります。  そのまず第一は何かというと、あなたはかつてこの委員会におきまして、勤務評定をなぜやるのか、こういう素朴な質問に対しまして、法律にあるからやらなければなりません、こういう御答弁をされておるのであります。そこでお尋ねしたいことは、勤務評定というものは実施しなければ法律違反になるのかどうかということです。これに明確な御答弁を願いたい。
  51. 松永東

    松永国務大臣 もちろん実施しなければ法律違反になります。
  52. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、今日まで、昨年でございましたか、文部省は直轄の国立学校に勤務評定を実施してきていない。そういたしますと、この勤務評定実施の根拠というものは、これは地方公務員法なり、地方教育行政法だ、こう言われるわけでありますけれども、そういった法的根拠というのは、数年前から出されておるにもかかわらず、今日まで文部省は実施してこなかった。そういたしますと、その問文部省法律違反をやっておったということを、おんみずからお認めになられますかどうか、承わっておきたい。
  53. 松永東

    松永国務大臣 法律は実施期日が設けられておりましても、必ずしもその実施期日の即日に実施せられるというものでもございません。それを実施するに当っては、諸般の実情、諸般の環境等を考慮に入れて、そうして実施するということか必要だと思います。従って多少おくれたことはおくれておりますけれども、しかしそれなるがゆえに法律違反をあえてしたというわけには参らぬと思います。
  54. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、法律違反と私どもが言うときには、その根拠になる法律がそこにあるわけなんです。それに違反したときに法律違反が行われるわけである。今、あなたの御答弁を聞いておりますと、諸般の実情、諸般の環境云々ということを言われた。一体諸般の実情とは何でございますか。諸般の実情に違反することは法律違反とはいえない、明らかに今日教育委員会が勤務評定をやらなければ法律違反だ、こうきめつけられるならば、あなたは、今日までの文部省は過去数年間法律違反をやっておったということを認めなければなりません。これはどうお考えになりますか。もう一度承わっておきたい。
  55. 松永東

    松永国務大臣 勤務評定を実施しなければならぬという法律のほかに、これに付随したいろいろな法律問題があります。教育委員制度が変ったとかなんとかいう点も、そのうちの一つでしょう。そうしていろいろな環境が変って参りましたので、それの実施を急速にやることはできなかった実情にあった。しかしながら長い間、いつまでもそんなことをしておるわけにはいきませんので、それでいよいよ実施することになったのでございまして、御承知通り、その実施は都道府県の委員会においてこれを実施するということになっております。その委員会の議がまとまらずに実施がおくれたという実情にもあるのです。その点はよく御承知のことだと思います。
  56. 野原覺

    ○野原委員 どうも納得ができないのです。これは御答弁されておる文部大臣も、失礼ながら自分で納得されないまま御答弁しておると思う。これはだれが聞いてもその通りだと思う。今日まで文部省が勤務評定をやらなかったのは、昭和二十五年に地方公務員法ができましてから今日まで、これはやれなかったからやらなかったのです。だから、勤務評定というものはなるほど法律にはうたっております。地方公務員法の四十条にもうたっておる。これに対する見解は、私どもはあなた方と違った見解を持っておりますけれども、一応法律に明確に示されておるものと仮定いたすとしましても、実際にやれない場合にはやらなくてもいいんじゃないか。これは何も法律にあるから、ぜひともやらなければならぬというものじゃないのです。勤務評定のこの条文というものは、やれるときにやったらいいのだ。だから自主的にある県の教育委員会が、まだ自分の県においてはやれる段階に達していない、その機が熟していない、この点については県としても考えなければならない、こういうことをある県の教育委員会が自主的に考えて、そして勤務評定はやらなければならぬものではあるだろうけれども、しばらく持つ、こういう態度をきめることは何も法律違反じゃないでしょう。それすらも法律違反であるといったらおかしいですよ、この点はいかがですか。
  57. 松永東

    松永国務大臣 法律に規定してあるその事項を、どうしても施行しなければならぬということは当然の約束であります。しかしながら勤務評定の問題は、全国の都道府県の教育委員会が主導権を持っておる。従ってそれがまとまらぬ間に、私らが幾らじだんだ踏んでみたってできょうはずはございません。でありますから、私どもの熱意のあるところは伝えはしておりますが、今日までそれがまとまらない。ようやくまとまるようになりましたので、これはぜひ全国的に施行するようにしたいというふうに熱望いたしております。
  58. 野原覺

    ○野原委員 あなたの熱望は私は知っております。これは新聞も読んでおりますし、たびたび私どもも承わっておるのです。だから全国教育委員会が、どういう決議をされたかということは私どもの関知するところではありませんけれども、ある県の教育委員会が——教育委員会というものは何も全国教育委員会の下部機関でも何でもない。教育委員会というものは、教育行政に対しては独立の権限を持っておる。だからその県の教育委員会が自分の権限において、文部大臣が何と言おうとも、教育長協議会がどんな試案を持ってこようとも、まだその機が熟していないと自主的に判断して、実施はまだ待つのだというような考え方を持つことは、これは何も法律違反じゃないと考えますが、聞違いですか。私のそういう見解というものは、間違いであるかということお尋ねする次第であります。
  59. 松永東

    松永国務大臣 そういう県があるとすれば、法律がありますのを施行せぬのですから、法律違反ではありましょう。法律違反ではありましょうけれども、しかしそれは法律を順守すべく骨を折っておられるけれども、諸般の事情がそこまで参らぬので、従って順守ができなかったということになります。これを法律的の言葉でいえば何と表わしますか、いろいろ新しい言葉がありましたけれども、忘れちまいました。とにかく法律に従おうと思って努力はしたけれども、いろいろの諸般の事情から従うことができなかった、こういう実質は認めなければならぬと思います。
  60. 野原覺

    ○野原委員 だから高飛車的に法律違反ときめつけることはできないのです。もう一度お尋ねしておきますが、文部省直轄の国立大学で勤務評定を実施していない大学はどれだけあるか、実施しておる大学はどれだけあるか。あなたの直轄しておる国立大学、これはあなたの責任にもなります。どういうことか、その数字を示してもらいたい。
  61. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 国立学校につきましては、昭和二十七年度からすでに実施しております。昨年その基準の一部を改正いたしましたが、国立学校、高等学校以下は、これは文部大臣が直接やることでございますので、全部実施しております。大学につきましては、御承知通り教育公務員特例法に基きまして、大学の管理機関がその方法等についてきめる権限がございますので、大学はそれぞれ自主的にやっていらっしゃることと考えております。
  62. 野原覺

    ○野原委員 国立学校は実施しておると言うが、私は大学を聞いておる。たとえば東京大学においては実施していない。なるほど東京大学というものは、大学の自主的な機関が教育公務員特例法によってやることになっておるから、これはそれを待つのだ、こういうことでありますけれども、しかしそうなりますれば、教育委員会がその自主性をもってやるかやらないかを決定することになるのであるから、ある県の教育委員会が勤務評定を実施しないということは、当然たとえば東京大学が実施しないのと同じ性質のものになろうかと私は思う。この点はどう考えますか。
  63. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 大学の教授の勤務評定というのは非常にむずかしいのでございます。たとえば学会におけるレポートとかあるいは学術論文とか、いろいろなものでそれぞれ勤務評定されていると思うのでございます。ですから小中学校のように一律に、今都道府県教育委員会考えられておるような、ああいう仕方の勤務評定は大学教授には必ずしも適当ではなかろうと考えます。ですから私どもは、大学ではそれぞれ教授会で適当な勤務評定が行われておる、かように考えておるのでありまして、ただ形式が今申しましたようなああいう形式をとっていない、こういうふうに御理解していただきたいと思っております。
  64. 野原覺

    ○野原委員 小中学校には勤務評定が実施されるが、大学はむずかしいからなかなか実施が困難だ、こういう見解でありますけれども、小中学校の勤務評定があり得るならば、大学には大学にふさわしい勤務評定があり得るはずだ。大学の教授に勤務評定があり得ないということはおかしいと思う。しかも、教育公務員特例法には、なるほど大学の自主機関がやることになっておりますが、しかし大学文部省直轄なんです。あなた方は県の教育委員会を直轄はしていない。教育行政については教育委員会が独自の権限を持っておって、今日は文部省はサービス機関にすぎない。助言指導の役割しか果せない。助言指導の役割しか果せない文部大臣が、県の教育委員会に対して勤務評定をやれやれと強制しておきながら、直轄機関である国立東京大学には何も出していないというのは一体どういうわけなのか。私はこの問題はこの前も質問しているけれども、速記を見ても的確な答弁が得られていない。これはどういうわけです。あなたの方は東京大学の総長に対して、勤務評定について何らかのサゼスチョン、指示を与えたことがあるのかないのか。与えたとすればそれに対して東大の総長はどういう見解を監督機関の文部大臣に示されたか、その辺を詳しく承わっておきたいと思う。
  65. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 この点は先ほど来申し上げておりますように、大学の教授だからといって勤務評定をしなくていいという意味じゃございません。小中学校の教員も大学の教授も、一様に勤務評定を受けなければならぬ義務があります。しかしながらその様式に至っては、小中学校の様式をそのまま大学の教授に適用することは適当でない、こういうふうに考えておるのであります。でありますから、大学の教授会でしかるべく勤務評定が行われておると私ども考えておるのであります。たとえば先ほど申しましたように、学会における論文とかあるいは批評とか、いろいろ大学で研究を促進し、また大学教育を向上させる見地から、それぞれ適切な勤務評定が行われておる、かように私ども考えておるのであります。
  66. 野原覺

    ○野原委員 いや、あなたがどう考えているかということを聞いちゃいないのだ。大学に対してそういう指示をしておりますか。勤務評定はしなければならぬものですよ、何をしているのですと、こういうような助言指導を東京大学の総長にしたことがあるのかないのか、こう聞いておる。ということは、教育委員会に対してはその具体的な項目まであげて、正常分配曲線とやら、めんどくさいものまで持ち出してやろうとされた。ところがいつのまにか教育委員会の試案に肩がわりして、責任を転嫁されたずるい卑怯なやり方は、あんたが何と言おうとのがれることはできない。そのことの議論はいずれにしても、小中学校の教員に対しては指道助言という、なかば強制というか圧力をかけて、なぜやらぬのだといっておる。ところが、大学に対してはどうしておるのだと聞いておるのです。これは教育公務員特例法によってほおってあるのですか、どうしているのですか、それを聞いているのです。
  67. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 大学でも私どもはやっていただいていると思っておるのであります。
  68. 野原覺

    ○野原委員 出しておりますね。出しておりますか。そういう勤務評定をやらなければならぬという指示を出しておりますか。文部大臣——局長にはもうこの問題を聞かないが、あなたはそういう指示を出しておるか。それに対して、その責任者の東大総長はどう言われたか、京都大学の学長はどういう見解を示しておるか、承わっておきたい。
  69. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 直轄大学については人事課長の方から指示しておるはずでありますので、今呼んでおりますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  70. 野原覺

    ○野原委員 それではその問題は待っておきたいと思います。私が今質問してもわかるように、小中高等学校の教員に対してはどういうものか勤務評定をむやみにあせっておるが、大学に対しては答弁ができないのです。人事課長を呼ばなければ答弁ができない。勤務評定がこれだけ問題になっておるのに、調査しなければ答弁ができないくらい大学というものは実は等閑に付されておる。こういう点は筋が通らないやり方なんです。  そこで私がここでお聞きしておきたいと思うのは、勤務評定がいよいよ強行される段階になってきたのであるが、勤務評定を実施する第一段階の評定者は校長ということになっております。ところが、私も法的にいろいろ検討を進めて参りましたが、学校の校長が教員の勤務評定をする法的根拠については、まだ不勉強なせいかどうも納得がいかないところがたくさんあるのであります。そこでお聞きしておきたいことは、法的根拠ですね、校長は教員の勤務評定ができるという法的根拠は、一体どういうことになるのか、承わっておきたい。
  71. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 これは、学校教育法によりますと、「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」という規定がございます。いま一つ新しい教育委員会——すなわち地方教育行政の組織及び運営に関する法律によりまして、校長は教員の人事について委員会に内申する権利を持っておるのであります。こういう点から、人事行政を担当する校長が職員の勤務評定をすることは当然であると考えるのであります。
  72. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、法的根拠というのは、学校教育法の二十八条の「所属職員を監督する。」これだけが法的根拠だ——これは大事な点でございますから、さらにだめを押しておきたいと思いますが、それだけでありますか、承わっておきたい。
  73. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律によりまして、校長は所属職員に対する内申権を持っておるのでございます。
  74. 野原覺

    ○野原委員 地方教育行政法の内申権というのは、これは権利規定であって義務規定ではない。私は、勤務評定を校長がしなければならないという義務根拠を尋ねておる。内申権というのは権利なんです。義務ではない。これは地方教育行政の担当者、つまり市町村の教育委員会が教員の人事をやる場合に、間違ったことをやってはいけないというところから、これを救済しなければならないという配慮等もあって、所轄の校長の意見を聞く方が正しいことではないかというような配慮から、この種の規定が生まれてきておるのだと思う。これは権利規定です。ぜひともこの規定で評定しなければならないということはなかろうと思う。どう考えますか。
  75. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 つまり校長は所属職員を監督しまた人事に関して内申する権利があるのですから、所属学校の人事については校長が一応の責任者でございます。教育委員会の指揮を受け、所属職員を統轄しているわけでございますので、こういう意味から勤務評定についてこれが第一次責任者になることは当然であろうと考えます。
  76. 野原覺

    ○野原委員 私が言うのは、地方教育行政法の第三十九条というものは、なるほど確かにここにありますよ。ありますけれども、これは権利規定であって義務規定ではない。進退に関する意見を申し出ることができるだけの規定だ。だからこれは必ずしも校長が教員の勤務評定をしなければならないという義務規定にはなっていない。そこであなたが指摘された学校教育法の二十八条、「所属職員を監督する。」ということがこの勤務評定を行わせる法的根処だ、こう言われますが、所属職員を監督するという場合に、その監督の内容というものはどういうことになると思いますか。所属職員の監督、つまり学校教育法二十八条には、学校の教員は児童教育をつかさどることが本務になっておりますね。学校教員が児童教育をつかさどるというその教育本来の仕事全体について校長は監督権を持っておる、こういう見解をとっているのかどうか、承わっておきたい。
  77. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 「所属職員を監督する。」ということでございますので、その監督の態様はどういうことになるか。それはたとえば校務の分掌を命じたり、だれに、どういう担任をさせるとか、指導計画を承認するとか、あるいは休暇を与える、こういう問題と、それからいま一つは、所属職員の服務の問題と人事の問題になると思うのであります。人事については、任免ちっちょくについての内申をする権利がございます。そういうものが総括されて所属職員を監督するのでございます。それがなければ監督は事実上できないわけでございます。
  78. 野原覺

    ○野原委員 学校教育法の二十八条には「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」こうあるわけであります。あなたはそこがつまり根拠だと言われるのでもありますけれども、一体二十八条のつかさどる校務というのは具体的にどういうことになりますか。
  79. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 学校の管理、運営に関する事務でございます。
  80. 野原覺

    ○野原委員 校務の中には人事管理を含んでおるか含んでいないか。
  81. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 広い意味では含まれております。
  82. 野原覺

    ○野原委員 広い意味では含まれておるということはどういうことですか。狭い意味では含まれないということになろうかと思う。その答弁は一体、どういうことなんです。もっと詳しく説明してもらいたい。
  83. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 学校の事務は、たとえば学校の建物のこと、教員の配置のこと、定数のこと、あるいは人事のこと、すべて校務の中に入るわけでございます。
  84. 野原覺

    ○野原委員 人事行政というもの、私が人事管理ということを言ったのは——教員を転勤させたり、退職させたり、任命したりすること、そういう権限が校長にある、校務の中にあるということになると、これは大へんなことになりますよ。そういう権限はありませんよ。これは教育委員会にあるのですよ。そうしたら、そういう権限を持ったものが二つあるということになるじゃないか。そういう権限は教育委員会にある。しかし、教育委員会がそういう権限を行使するに当って、教育委員会に対して一つの進退に関する意見を校長が申し出ることができる。教育委員会から尋ねられたならばそれを申し出ることができるということにしておるだけでしょう。校務の中に人事管埋は入りゃしないじゃないか。人事管理というのは任免転退職だ。校長が自分のところの教員に、お前はやめろとか、お前はどこそこに転勤さすということを言えないことは、常識から考えてもわかっておる。そんなもの入りゃしませんよ。あなたはそれが入るという考えですか。
  85. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 人事管理と申しますのは、広い意味では、たとえばだれを司書教員にするとか、どの方を何年の学級主任にするとか、あるいは担任にするとか、あるいは賜暇を与えるとか、出張を許可するとか、いろいろ人事行政があるわけでございます。そういう人事行政は入るという意味でございます。
  86. 野原覺

    ○野原委員 そういう人事行政は入るものもあるだろう。しかしそういうものは人事行政の中に入らないのです。私ども教育行政法上人事理権がだれにあるかということを言う場合には、当然任免権者というものが地方教育行政法でもその他の法規でも規定されておるのです。そこにあることはこれは当然です。だからそういう意味の人事管理権が校長にあるとは思わない。なるほど賜暇を与えるとか、欠勤届を受理するとか、そういうことはあるでしょう。しかしそういうことは厳密な意味の人事管理じゃないですよ。そういうことが人事管理だという意味であなたが人事管理言うならば、それは当たらないです。私どもがここで議論をする場合には、人事管理とは何かという厳密な法解釈の上に立って論議を進めていかなければならぬと思う。任免転退職の権限は校長にありませんよ。校務の中には入りませんよ。そうなって参りますと、あなたの今の答弁を聞いておると、校長の勤務評定の法的根拠というものは、この学校教育法の「校務を掌り、」ではなしに、「所属職員を監督する。」という規定だけにしぼられてくる。僕はまだほかに答弁のしようはあろうと思っておりますよ。しかしあなたが触れぬから言わぬだけだ。あなたの答弁では所属職員を監督すると言われるが、「所属職員を監督する。」という規定だけで、校長は勤務評定の義務があるとは思われない。もう一ぺんわかりやすく説明してもらいたい。
  87. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 先ほど来説明申し上げていますように、所属職員を監督するわけでございますから、その監督者は部下の職員がどういう勤務の実態をしているかということは当然知らなければならぬと思います。また教育委員会法の三十九条によって任免その他の進退に関し内申をする場合にも、そういうものが当然参考にされなければらぬと思うのです。平素から職員の勤務評定が行われなければ校長は的確な職責が果せないと思うのでございます。
  88. 野原覺

    ○野原委員 それは所属職員を監督するということであるから、勤務の状態を知らなければならないということは言えるでしょう。しかしながら私が聞いておることは、校長が是が非でも勤務評定の義務者——この場合の勤務評定とはいわゆる地方教育委員会に報告する勤務評定を言っておる。校長が校長として学校の校務をつかさどり、学校の経営の責任者でございますから、そういう立場であの教員がどうやっておるか、どういう授業をしておるかということは当然校長の職責として知らなければなりません。しかしながら一定の勤務評定というワクがあって、そのワクというものは上から押しつけられてきておる。その押しつけられてきたことに対して校長は評定をする義務があるかということを僕は聞いておるわけなんだ。これはそういう義務的な根拠にはならないと思う。これはどうもおかしいと思う。どうですか。
  89. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 先ほど来申し上げていますように、校長は学校の経営の責任者でございます。従って教育委員会が校長を第一評定者として指定した場合は、これは義務があると思います。
  90. 野原覺

    ○野原委員 校長が教育委員会が指定した場合は義務がある、こう言われるが、一体教育委員会というものはそういうことについての指定権限、いわゆる校長に対する強制的な権限、勤務評定をやれという権限はどこから出てきますか。それはどの条文ですか。校長が、私はそういう勤務評定はきらいです、私の責任において監督しております、私は良心にかんがみて学校経営に対しても何ら恥ずるところはない、あなたの方から押しつけてきたそんなでたらめな内容、こういう機械的なやり方というものは私は承知できない。こういうようなことを校長が言う場合に、それは許せない、それはできないこう言って押しつける法的根拠はどこにあるのですか。
  91. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 それは公務員の上司に対する忠誠の義務でございます。ですから、公務員である以上教育委員会の指揮監督を受けて学校の管理運営を行うのは当然でございまして、教育委員会の意に反した教育行政は学校長といえども行うことはできません。
  92. 野原覺

    ○野原委員 これはあなたは大へんな答弁をしておると思うのだが、教育員会というものは校長の上司ですか。これは行政組織法上からながめて、学校の校長というものは教育委員会と上司下僚の関係に置かれているのか、また行政法上から見た一つの命令系統というようなものから考えて、教育委員会は上司であるかないか。あなたは上司だ、こういう考えに立っている。どういうわけで上司だと言いますか。私は法的根拠を示してもらいたいと言っている。ただ常識で言われては困る。この条文によってこういうことで教育委員会は上司であるということを示してもらいたい。
  93. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務及び法律又はこれに基く政令によりその権限に属する事務で、次の各号に掲げるものを管理し、及び執行する」。以下教育に関する事務が全部そこにあげられておりますので、こういうことは当然教育委員会の権限であり、それを補佐するのが校長でございます。
  94. 野原覺

    ○野原委員 第二十三条には「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務及び法律又はこれに基く政令によりその権限に属する事務で、次の各号に掲げるものを管理し、及び執行する。」これは教育委員会の権限、管理すべき事務を羅列しただけでしょう。校長の上司というのはこのどこです。
  95. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 たとえば三号の教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関することは教育委員会の所管でございます。それから学校の組織編成、教育課程、学習指導生徒指導及び職業指導に関すること、あるいは校長、教員その他の教育関係職員の研修等が具体的には出ておりますが、なお一号には教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関すること、これが総括的規定でございます。ですから設置、管理、廃止全部が教育委員会の責任でございます。従って校長はこの補助機関でございます。
  96. 野原覺

    ○野原委員 なかなか迷答弁をされますね、失礼ですけれども。第二十三条というものはなるほど——あなたは書かれていることを今読まれただけだ。校長の上司だという積極的な的確な説明にはなっておりません。あなたはどう考えて私に答弁しておるか知りませんが、これは教育委員会の事務権限、その管轄すべき事務の内容、一号から十九号にわたって教育委員会はこういうことをやると言っているだけじゃないか。たとえばあなたは第三号をおあげになりましたけれども教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること、これは当然です。こんなことを私は聞いていない。これは教育委員会の権限、事務内容だ。私が聞いていることは、一体校長は下僚かということを尋ねておる。これは答弁になっていないですよ。文部大臣質問のやりとりをお聞きになってどう考えますか。校長は教育委員会の下僚だということがどこに一体あるのか。たとえば文部省内には局長があって課長があって係長があります。次官があります。これは上司、下僚の関係にあるのだ。そういう関係にありますか。学校の校長は教育委員会の下僚でございますというところはどこにもない。これは私は下僚ではないと思う、今日の行政組織法上から見て。御答弁願いたい。委員長、こんな答弁では議事を進行することはできないです。早く内閣総理大臣を呼んでもらいたい。こんなことではだめです。もう少し勉強して、そして統一された見解を持ってきてもらいたいと思います。
  97. 松永東

    松永国務大臣 これは私は内藤政府委員の答弁でよくおわかりになったと思うのですがね。今申すのは、二十三条の、教育委員会は、「その権限に属する事務で、次の各号に掲げるものを管理し、及び執行する。」その第一号に、「教育機関の設置、管理及び廃止に関すること。」やはりこういう権限を持っておる。ですから、あなたの言われる被管理者と管理者という立場に置けば、それはやはり管理される者が通俗的に下僚である、管理している者が上役人じゃないでしょうか。これは通俗の言葉ですよ。言葉が法令的にどう当てはまるかということは別問題ですが、私はそういうふうに考えております。
  98. 野原覺

    ○野原委員 私は通俗的な議論を蒸し返しているのではないのです。これは、校長は第一次評定の義務がある、こういうような考え方であなた方が行政指導をされておるわけですから、体校長はほんとうにこの評定をしなければならない義務があるかどうかということは究明しておく必要があるのです。これは文部省としてもありますよ。通俗論ではごまかせない面があると思う。校長というのは、都道府県、市町村になりますと、多いところでは三百から千もおる。その三百から千もおる校長というものは、教育委員会の下僚でございます。教育委員会には、事務系統としては教育長というものがある。教育長の下には指導室長とかあるいは学務課長とか、いろいろなものが置かれてある。こういうものは上司、下僚の関係にあります。これは行政組織法上から見て明らかです。しかし学校の校長というものが、教育委員会のそういうような系統に属する上司、下僚の関係にあるという見解を文部省が今日とっておるとしたら重大だ。そんなでたらめな教育行政はありませんよ。そういう考えであなた方が教育行政をやっておるとしたら、大へんなことだと言いたい。どこが一体校長は下僚ですか。——だから校長が下僚だということは答弁できないじゃないですか。通俗的な答弁を私い聞いているのではありません。
  99. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ちょっと補足させていただたきたいと思います。お話に出ました行政機関の上司、下僚という通俗的に言われている言葉で、指揮なりあるいは監督なりという問題でございますが、たとえば国家行政組織法で申しますならば、各省大臣がその機関の長として事務の采配を振る、その根拠といいますのは、国家行政組織法に「各大臣、各委員会委員長及び各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する。」こういう規定だろうと思います。先ほど局長が申し上げましたのは、教育委員会とその所管の学校との関係はどうかということになりますれば、二十三条にありますように、教育委員会教育機関を管理するということ、並びにその任免その他の服務について、人事の権限を持つということ、その二つがいわゆる上下の関係でございます。それがその服務なりあるいは管理なりをどの程度に行うかということは、たとえば国家公務員でございますれば、国家公務員法にそれぞれのルールがあって、そのルールに従ってやる。それから地方教育行政の場合でありますれば、教育公務員特例法あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律の人事に関する規定、それぞれのルールに従ってやるわけでございますから、その点は、現実に行われるルールがどの程度かということは、それぞれのいろいろの関係法規によって律せられるべきでございますけれども局長の申し上げました上下という関係は、やはり先ほどの管理なり人事権ということで同断だと考えております。  [委員長退席、佐藤(觀)委員長代理着席]
  100. 野原覺

    ○野原委員 そうすると、斎藤政府委員の御答弁によれば、上不という厳密な関係はない、ただ人事管理その他の面で関連がある、こう解釈してよろしゅうございますか。
  101. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 上下というのは、要するに国家行政組織法で申しますれば、専務を統括する、あるいは今お話に出ました学校教育委員会関係でありますれば、その学校を管理するということは、上下でありまして、これは横の関係ではございません。ある者がある者を管理をし、あるいは指揮をするということでございます。それから任免につきましても同様でございまして、任免、服務その他について教育委員会がその権限を持っておるわけでございます。国家行政組織法で申しますならば、各省大臣がその所属職員の服務について統督をする。さらに国会公務員法によりますれば、各省大臣がその各省の職員の任免権者である、こういうことでありますから、人事につきましてもそれから仕事につきましても、全部各省大臣なり、あるいは公立学校の場合でありますれば、教育委員会が上司だ、こういう関係になろうかと思います。
  102. 野原覺

    ○野原委員 任免されることが上下の関係を規定されるとは思われない。なるほど校長というものは教育委員会が任免します。それはそうなっておる。しかしながら、だから校長は教育委員会の部下職員であるということにはならない。たとえば人来院の淺井総裁というものは、たしか内閣総理大臣国会の承認を得て任命することになっておると思う。しかし人事院総裁は内閣総理大臣の下僚ではない。ここで部下職員であるか、上司であるか、下僚であるかということは、任免ということだけからは判断されない。それだけではいけない。校長が勤務評定の第一次評定の責任者であるかというこの問題は、これは任免とは別だ。それから管理ということを言われるけれども、私はそんな質問はしていない。教育委員会学校事務を統括することは当然です。そのことが、どこに校長が教員の第一次評定の義務者であるということと関連がありますか。あなたの答弁もどうも了解できない。
  103. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 お説のように任免だけで服務関係の上下のないものは、制度としてございます。しかしながら先ほど局長か申し上げましたように、地方行政組織法の二十三条では、学校を管理するということと、それからただ教員を任免するとだけいっておりません。「任免その他の人事に関すること。」ですから、任免だけではございません。これは単に任免するだけではなく、人事に関しましても、その他服務上のいろいろな権限を政育委員会は持っておるわけでございますから、これはたとえば裁判官を任命するだけで、それを行政府で監督しないという事柄とは、この法律の書き方が違うのではないかと思います。そしてなお学校における責任者として、校長は校務を掌理いたしまして、しかもその職員を監督するということでございますから、教育委員会の定めによりまして、教育委員会の権限となっております任免その他の人事に関する権限の一部を、校長に委任するのに適当な他位にあるということを、先ほどから局長が、学校教育法の二十八条で、所属職員を監督し、校務を掌理する地位にあるから、教育委員会の権限の一部をゆだねるに適当な地位にある、だから第一次評定者として適当である、こういうふうに申し上げているわけであります。
  104. 野原覺

    ○野原委員 教育委員会が教員の任免その他の人事に関する権限を持っておることは、お説の通りです。それは、ちゃんと明記されております。だから、校長が第一次評定の責任、義務があるということの説明にはならないということを、私は繰り返しておるのです。それは教育委員会にはありますよ。教育委員会は、そのことが正当であるかどうかは別にして、評定することはできましょう。権限は明らかに持っておりますよ。しかし校長が評定の義務者でなければならないというのは、一体どいうことなのか。地方教育行政法の二十六条の委任でいくのか。内藤局長が上司だ、こういうことをいったものだから、私はそれは了解できませんから突っかかったのでありますけれども、一体教育委員会はできますか。勤務評定はできます。ところが校長が勤務評定をすることは、教育委員会に頼まれてやるのかということです。それは法律的に代理の形か、委任の形か、教育委員会が執行しなければならないことを補助執行という形でいくのか、そういう法的な解釈はどういうことになるのか。
  105. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 お説のように公立学校の校長は、教育委員会の管理に属しておるわけでございますから、教育委員会が権限として持っておりますところの人事権の行使につきまして、その補助執行を命ぜられたならば、当然にそれをなすべき義務を生ずるわけでございます。従いまして勤務評定につきまして、教育委員会が正当に定めました勤務評定の手続というものにつきましては、学校長はこれを守るべきものと考えております。
  106. 野原覺

    ○野原委員 それは教育委員会が勤務評定について校長に委任をすることなのですか、校長が守らなければならないということは、それはどういうことですか。教育委員会が校長に業務命令を出した場合に従わなければならぬという形になるのか、教育委員会が自分のしなければならぬ権限を校長に、君やってくれ、こういうような形になって校長の義務が生ずるのか、それはどう考えていますか。
  107. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 それは一般論といたしまして教育委員会が所管の学校その他の教育委員会に仕事をさせる、補助執行をさせるということはいろいろな態様があると思います。ですから委員会規則の制定によって、規則自体でその補助執行なりあるいは事務を委任する、こういうこともありましょうし、あるいは仕事によりましてそのつど命令することもございましょう。ただ今問題になっておりますのは、そういうことを命じ得るかいなかということでございますから、それは教育委員会の所管に属します学校の管理者の校長に対しては、教育委員会が正当に命ぜられる。これは規則をもって命ずることもありましょうし、その他の方法もございましょうけれども、その場合はこれを守るべきものだ、かように考えております。
  108. 野原覺

    ○野原委員 齋藤参事官の見解は、命ずることができる、従って教育委員会が校長がやない場合には業務命令を出してやらせることは可能である、こういうわけです。そういたしますと、業務命令ということは、これはやはり私は上司、下僚の問題がここに出てくると思う。上司の職務権限内の行為を下僚に向って命令することが、業務命令です。もう一ぺん蒸し返しますよ、業務命令というものはだれにでも出せはしないのだ。岸総理大臣が人事院総裁に出すことはできないんだ、上司、下僚の関係になければならないのです。そうなると、また一体教育委員会は校長の上司かという問題に突き当る。上司の職務権限内の行為、いわゆる職務限権内の行為であることは私は認めます。それを下僚の職務について命令することが業務命令です。これが業務命令の法的内容になろうと思う。そうでしょう。そうなって参りますと、それじゃ一体校長は下僚でございますか、校長は部下職員ですか、この点を明確に示して下さい。校長は部下職員であるのかないのか、これは法律はあいまいでないはずです。
  109. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 どうも繰り返すようになって恐縮でございますけれども教育委員会学校長との関係は、先ほど来局長が御説明いたしておりますように、地方教育行政組織法の二十三条の一号等に明らかでございます、ただ御質問の点にありましたおよそ命ぜられる方の側の職務の範囲外のことは命ぜられない、これはお説の通りだろうと思います。私に総務課の所掌以外のことの職員の勤務評定を命ぜられても、これはできないのでございます。それが校長の職務の範囲内かどうかということは、先ほど来御説明いたしておりますように、校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する地位にあるから当然命ぜられる、命ずることのできる地位にあるんだ、こういうことを申し上げているわけでございます。
  110. 野原覺

    ○野原委員 私はこの問題は重要なのでもう一ぺんあらためて蒸し返したいと思う。  それから大事な点が抜けていると思う。なるほど自分の職務の範囲外のことを命ぜられることはあり得ない、こればお説の通りです。同時にできないことも命ぜられることはないのです。業務命令が可能であるということは、法律上も事実上も可能であるということです。できないことを命令して、やれと言ってできますか。だからある校長が、自分の良心にかんがみて、こういうような勤務評定はできません、とこう開き直った場合に、業務命令はどうなるのですか。法律上の不能について、命令することは私はできないと思う。法律上、事実上校長ができないというのを、おいやれと言ってもできません。そういうものに対しては強制のしようがないじゃないですか、どう考えますか。
  111. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 その勤務評定が実施できるものであるかできないものであるかということの判断は、教育委員会がいたします。その勤務評定を定める権限のある行政機関がなすべき事柄でありますから、教育委員会が正当に定めました事柄について、校長は実施できるかできないかということを判断する地位には私はないと思います。これはあくまで教育委員会の指示に従ってその事務を補佐すべき責任にある、かように考えております。
  112. 野原覺

    ○野原委員 その点いささか見解が違うのです。私は業務命令という場合には、職員を指揮監督することのできる上級機関の命令が一つの要素であると思う。今日地方教育委員会というものは、なるほど校長に対して人事権、管理権というものを持っている。持っているが、勤務評定についてこれを強制するところの権限は私はないと思う。校長の権限はありますよ。これは権利規定として、先ほど私が指摘しました地方教育行政組織法の何条でございますか、内申権というものを持っている。しかしこれは義務規定ではない。その他に法律的な規定はございません。職員を指揮監督する上級機関の命令であることが一つ。もう一つは部下職員の職務に関することでなければならない。部下職員の職務とは何か、それは教育活動ということになります。そこでこの教育活動について、それでは一体校長はどういうような評定ができるか。所属職員を監督するという学校教育法二十八条のあの規定は、教諭の本来の職務は児童教育をつかさどるということでありますが、児童教育をつかさどる全分野にわたって校長がその教員を監督することができるかということは、非常に疑問があります。それから第三は、法律上それが可能でなければならない。また業務命令においては、その命令されたことが職務上の独立の範囲に属することでなければなりません。これだけの四つが業務命令の要素になる。校長の職務上の独立の範囲に一体属するかどうか、所属職員を、監督するということは校長の職務です。これは二十八条にありますから。しかしながら、だからといってそのような勤務評定をしなければならぬということにはどう考えてもならぬのです。私の見解によれば、業務命令はできない、それから委任という形もできないという見解を持っておりますが、しかしこれはいろいろ齋藤参事官の答弁もございましたけれども、この問題はいずれまた私はあなたの御答弁を冷静に速記録の上で検討して、間違った行政指導をされては困りますから、これはお互いにやはり研究してみたいと思う。  次に私が申し上げたいことですが、この前実は質問をして松永文部大臣からも内藤局長からも的確な御答弁が得られていないのです。それは憲法第十九条に対する見解であります。思想、良心の自由は保障しなければならぬということがあるわけであります。文部省に道徳教育をやかましく言われておるわけでありますが、そうなって参りますと、一そう思想、良心の自由、憲法の尊重ということが考えられてこなければなりません。  そこで私が率直にお聞きしたいことは、校長がどうしてもできない、法律上はかり可能であるとします。しかし私はどうしてもできません。こういうものを書け、ばかなことがあるか。ある学校長、たとえば愛媛県であったことですね。あのABCDEの五段階、正常の分配曲線、優秀な者が一制、劣等の者は一割、こう作れとあのときには言われたのです。校長はそんなことはできない。自分の学校はなるほど悪い者も一人くらいはある。けれども、最優秀の者を一割、一番悪い者が一割という機械的な正常なノーマルな曲線で勤務評定なんか書けるものか、書けません、こう言って校長は誠意をもって訴えた。そうすると、よし、お前の月給は上げない。お前が出さなければお前の教員としての月給は出さない、こうからめ手から圧力がきた。そこで問題が起った。そうして私はこれはゆゆしい問題だと考えた。こういう場合に、松永文部大臣教育委員会というものはそういうことができるものでありましょうか。自分が考えておることを、ノーマルな分配曲線で、どうしても悪い者を一割出さなければならぬと書け、こういう命令、押しつけというものができるものでありましょうか。やった場合に憲法第十九条というものはどういうことになるとお考えになりますか、お尋ねします。
  113. 松永東

    松永国務大臣 御例示になりましたように、どうしても書けないというのを、どうしても書けといって手を握って押しつけるようなことは自由を束縛し、自由を制限することですから、これはすぐ法律に違反していると思います。
  114. 野原覺

    ○野原委員 それはできませんね。押しつけるということはできませんね。
  115. 松永東

    松永国務大臣 それはどうしてもやらない、どうしてもいやだというものを押しつけることはできるものですか。それは事実上もできませんし、法律上ももちろんのことだと思います。
  116. 野原覺

    ○野原委員 さすがは松永さんだと思うのです。私はやはり率直にそういう御答弁がいただきたいのです。私は何もいやがらせでこういう問題を言っているのではないのです。やはりそういう率直な御態度であれば、私たちも率直に意見を述べて、互いに建設的に歩み寄っていくということが大事なことであります。私はただいまの御答弁は非常にけっこうな御答弁だと思う。これは憲法第十九条がある限りできない。そういうできないことを愛媛県の教育委員会はやってきたのであります。やってきたその過程において、私ども文教委員会で、衆参両院とも、こういうことはできないじゃないか、どうだということを追及したのです。その当時の文部大臣松永さんであったかどうかは知りませんが、一体内藤局長はそういうことに対してどういう指導教育委員会に具体的にやってきたか。そういうことは間違いだ、そういう人権侵害的な憲法違反的なことは慎しまなければならぬという、あなたは指導助言を、注意を、勧告をしてきておられるかどうか承わっておきたい。
  117. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 今大臣が申されたことは、法律的にも事実的にも不可能なことは校長といえどもできない、こうおっしゃったのでありまして、愛媛県の場合は私は違うと思う。愛媛県の場合は、適当か不適当かという問題はあるにしても、これはできたのです。それが証拠には、あとで全部の校長が勤務評定を提出したのであります。不可能なことはいかに私は命令があってもできないと思うのであります。
  118. 野原覺

    ○野原委員 あとで書いたと言うけれどもあとで書いたことは、心ならずも書かされたのである。心ならずも書かされたような評定の報告を、教育委員会出でしたということは人事管理上も好ましくないことであります。そういった一つの行政の権力者が圧力をかけて無理やりに出させたその評定が、科学的な人事管理は何が役に立ちますか。やはり校長の良心にかんがみた評定を出さなければならぬ。だから私はそういったやり方というものはないと思う。あなたはあとから出したのだから、それはできたのだ、それはへ理屈だ。そういう考えで君、教育行政を担当しておるから困ったことになる。要するに出したからできたじゃないか、なるほど出したことはできたことにはなる。なるけれども、これは考えてみなさい。これは一つの権力者というものが圧力をかけて、出さないというと月給を上げないぞ、やはり自分の首を心配しますよ。そういうようなことでそういう押し曲げられたような勤務評定では、何の役に立ちますか。そういう押し曲げられたものでは意味がないのだ、ほんとうの校長の良心の上に立った勤務評定でなければならないと思うのですが、そういう注意をしたのですか。
  119. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 愛媛県の勤務評定については、いろいろ御批判があったと思うのであります。ですから私も先ほど申し上げましたように、適当か不適当かという問題はあるとしても、これは不可能なことではなかった、こういうことを申し上げたのであります。その後愛媛県につきましては、本年の二月だと思いますが、これは都道府県教育長協議会の試案を元にいたしまして、円満に二月中に実施を行なっております。
  120. 野原覺

    ○野原委員 円満にということだが、あれが円満と言えますか。あれだけのトラブルを起して……。
  121. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 二月ですが……。
  122. 野原覺

    ○野原委員 ちょっと待ってくれ、二月であろうと三月であろうと、愛媛県の勤務評定の問題は私は円満と言えないと思う。勤務評定の内容その他についても、校長の中にずいぶん意見がある。だからして文部大臣に私ここで要望しておきたいことは、勤務評定はあなたの方はどうしても実施させる、岸総理がお見えになればお尋ねしたいと思うが、自民党は勤務評定を実施するということを決議したと聞く。私はこういうような新聞が出るたびにいつも考えるのですけれども、私どもの社会党にも、この種の問題について政党が態度を決定するというような、そういう行き方はどうかという考えがある。これは文部大臣の当然の責任、権限です。文部大臣は政党内閣の大臣でございますから、政党が何も私は決定して悪いとは言いません。政党は決定してもよろしゅうございます。しかしながら今日教育界の大問題となってきておるものを、政党という強大な権力を持っておるところの団体が、どうだ、こうだと押しつけていくということは、ますます問題を深みに追い込むことになりはしないかと思う。これは文部大臣の権限、責任でやったらいいと思いますが、文部大臣はどう考えますか。三浦組織委員長、川島幹事長、そういうものまで入ってきて、東京で教員が騒ぐそうだが許しがたい、断固四十の都道府県に君やれ、こう言われたという報道はうそですか。あなたはそういうことに対してどう考えますか。一国の文部大臣として、あなたは政党内閣の一閣僚じゃありません。日本全国教育が不当な支配に属してはいけない。全国民から教育をあづかっておるその責任があなたにあるわけです。あなたは岸さんにだけ責任があるのじゃない。自民党だけに責任があるのではない。政党が教育界の大問題に横から口ばしを入れて、動きのとれない圧力をかけていくということに対して、どういう御見解を持っておるか。これは文部大臣に承わっておきたいと思う。
  123. 松永東

    松永国務大臣 これは水かけ論に終りますよ。結局あなたの方は、自民党の方はけしからぬじゃないかとおっしゃるけれども、しかし愛媛県の例によりましても、やはり日教組は圧力を利用して、そしてきのうもやはりあなたの方の党でも、相当決議をして、勤務評定に反対、道徳教育反対というのろしをあげておる。従ってこれは現実の教育の面に政党が飛び込んでいくということは好ましくない。しかしながらこうした政治問題となったことについては、これは私は与論を喚起する上においては差しつがえないと思います。
  124. 野原覺

    ○野原委員 この種の問題について差しつかえがあるという御答弁をなさろうとは私もつい思っておりません。あなたもそういう答弁をされたら大へんです。また政党があなたを呼びつけますよ。何だ、こういうことになる。あなたの良心はどうかしれませんけれども、あなたはうかうかそういう御答弁はなさらぬと思う。なおまた日教組と、こう言われますけれども、日教組というものはこれは教員外の者は入っていないのです。事は教師として、教員としての問題、教員の集団なんです。日教組が出るんだからおれも出ていくんだ、こういう出方でいつも自民党は出ていかれる。日教組は実に偉大なものだと思う。天下の政権を担当する政党がとにかく対々でやっておるのだ。こういうような倒錯されたものの考え方というものはいかがなものかといつも思っておるわけです。日教組が出ることは、教育者の団体ですから当然です。教育者の団体でないその他の団体が出てきたら問題があります。教育者の団体が教育行政の担当者である教育委員会といろいろ話すことは当然です。教育者の団体で態度をきめるときは民主的にきめる。行き過ぎた行為があれば組合の内部で批判され、役員の更迭がある。そうして運動方針なども書きかえられて、戦いの仕方というものが改められる。これは民主的な団体が常にとるべき常道の姿です。ですからそれがやったのだから——政党というのは単なる一労働組合などと比較になりません。日本の国を生かすも殺すも自由にできる、今や天下の自民党です。そういうものが圧力をかけるということは好ましくないと私は考えておるのであります。質問したいことはたくさんありますが……。
  125. 辻原弘市

    辻原委員 関連して。今の野原君の質問について、若干関連の質問をしたいと思います。  内藤局長の答弁によると、勤務評定の実施について、勤務評定というと愛媛県の問題が出されるのでありますが、最近私の県でも問題が起りました。また隣の奈良県でも問題が起りました。これらの問題の中で私どもが気づくことは、教育行政にとって重要な傾向をこの勤務評定は持ってきている。だから本格的にいい悪いの議論が先ほどから展開されておるように、見解の分れ道になっておる問題がたくさんあります。あなた方は、とにかくこの問題については円満だ、強制はしていない、あるいはできる範囲の問題であるといろいろ言われておるのでありますが、われわれは、できる範囲の問題である、あるいはこれは少くとも円満に話し合いができる問題であるとは考えません。ただ最近起っている事象の中で気づく重要な問題は、結局この勤務評定が経済的な問題にのみ利用されているという問題であります。   [佐藤(觀)委員長代理退席、委員長着席] すなわち昇給、昇格等の問題にのみ勤務評定が利用されてきておる。いわゆる教育費をあれしようというような問題が、この勤務評定を機会に利用されておる。そしていわゆる都道府県の給与条例なるもので評定の結果、成績の悪い者は昇給をしない、差をつけるのだということで、実際は教育予算がある程度幅が縮められるというような傾向を持ってきておる、きわめて重要な問題です。こういう問題について、今各府県に起っておる問題を文部省はどう考えておるか、この点だけ私は関連として伺っておきます。
  126. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 勤務評定は職務能率の向上を目ざしてやるものでございますので、こういう職務能率が低下するような方法はよろしくないと思いますので、私どもは勤務評定を実施するに際しまして職務能率の向上に努めるように、今後も指導を続けたいと思います。
  127. 辻原弘市

    辻原委員 本格的な問題についての取扱いは後に譲りますが、その点で私が今申し上げたように、あなた方の意図している勤務評定の取扱いにも、各都道府県は全く方向を異にして、何とかして今の地方財政から教育費を少くしようということのみを今願してこの問題を取り扱っているわけです。あなた方は一生懸命勤務評定をやれやれと言うけれども、実際にやった結果は、能率を高めるとか教員の資質を向上するとか職場の体制を作るとかというような目的は何ら果されていないということです。ただ残る問題は、先ほど野原君が述べられたように、学校長の教育的良心を阻害し、あるいは職場における空気を沈滞せしめる、そういう悪い結果だけが今日残っておるということは、私は教育にとって実に重大な問題だと思います。幸い総理が見えられましたので、おそらくこの問題については他の委員諸君からも問題の提起があるだろうと思います。私は教育にとってきわめて重要な傾向をはらんでいるということを指摘いたしまして、なおこの問題についてはほかの方に譲りたいと思います。
  128. 山下榮二

    山下委員長 野原委員にちょっと申し上げますが、総理大臣はけさから参議院の方にとられまして、時間がおそくなってまことに申しわけないのであります。従いまして約三十分ほどということでございますから、その予定質問をお願いいたしたいと存じます。野原覺君。
  129. 野原覺

    ○野原委員 総理お尋ねをしたいと思うのであります。  最近の政府の文教施策のやり方を見ておりますと、私どもとしてはどうしても納得できない点がたくさんあるわけであります。そこでこの際総理にお聞きしたいことは、教育の基本的な問題についてあなたはどういう所信を持っておられるかということであります。御承知のように、昨年の七月に岸内閣が発足いたしまして、九月十七日であったと思いますが、岸内閣の政策発表が行われたのであります。その政策発表が行われましたときに、特に岸内閣としては文教政策には力を入れていきたい、労働政策には力を入れて参りたいということが声を大にして叫ばれていたのでありますが、一体何が岸内閣の文教政策なのか、どこに力を入れていかれるのか、去年の九月以来今日まであなたがとってこられた文教政策というものは、私どもには得心ができないのであります。どう考えておられますか、何を一体文教政策の重点に置いてその施策を進め今日に及んでおるのか、お示しを願いたいと思います。
  130. 岸信介

    ○岸国務大臣 私が文教政策に重点を置くということを申しましたのは、文教の問題は、国の将来長きにわたるところの繁栄の上から見まして、きわめて大事なことであることは言うを待たないのであります。この意味において、それでは一体どういうことを根本に考えておるのかということでございますが、言うまでもなく教育基本法の精神を尊重していくことが日本の教育の根本であると思うのです。これば言うを待たないと思います。ただ、個々の問題に当ってみますと、そのことが日本の国情に合わないこともございますし、またその基本法を尊重してこれを実現するためには、いろいろの点において不十分な点もありますから、これらを一方において完備すると同時に、国情に合わないところのものは国情に合うように変更していくということを考えておるわけでございます。
  131. 野原覺

    ○野原委員 かつて、岸内閣のときであったかどうかは知りませんが、自由民主党の文部大臣であったことには間違いありませんが、その某文部大臣が、この衆議院の文教委員会で次のように申されたことがあるのであります。それはあなたが答弁されたことと大体似てる。その人は、憲法と教育基本法だけでは今日の日本の教育は十分でないということを言ったのです。今、教育の基本的な点についてどう考えるかという私の質問に対して、総理は、憲法と教育基本法だと一応答弁はされますけれども、国情に合わないと云々というように、何らかそこに一つの大事なこぶがつけられておるように思う。私がお聞きしたいことは、今日の日本の教育というものは、日本の憲法、教育基本法だけでほんとうに十分であるのかないのか、総理はどう考えておりますか。その文部大臣はかつてこう言った。両性の平等だけでは日本の家庭は維持できない、男女平等は今日の憲法の基本原則になっておる、だから教育の面でこれらの点を始末していかなければならない、教育で始末しようというのです。憲法と教育基本法がここにある。教育で始末しよう、この考え方はすでに多分に危険なものがあると私は思う。あなたも御承知のように、明治五年に学制を発布してから西洋文明をわが国はどんどん輸入した。デモクラシー、自由民権の運動が高まってきた。自由民権の運動が高まってくると、明治二十三年には元田永孚さんの考え教育勅語というものががんと示されておる。だから自由民権的なそういうものを教育で始末しておる。大正になるとまたデモクラシー運動が第一次大戦後ほうはいとして起ってきております。起ってきたあとに出てきたのは何か。大正十二年の国民精神作興に関する詔書、こういうものが出てきておる。教育で始末をしようという考え方がどこかにあるのじゃないか。憲法、教育基本法でほんとうに今日の教育は十分であると総理はお考えなのかどうか。この点は一国の総理として明確に私どもに示してもらわなければ困るのであります。
  132. 岸信介

    ○岸国務大臣 法治国であり民主主義国であって、その基本的なものが憲法あるいは教育基本法等において示されておることは言うを待ちません。しかし、いがなる法治国であろうとも、民主主義国であろうとも、法律だけですべてが解決されるものでないことも、これまた言うを待たないと思います。われわれは常に国民の繁栄と福祉を増進し、平和国家としての民主主義政治の徹底を考え、また次の時代を背負う青少年諸君の人格形成の問題を考えますときに、法律の規定だけですべてが解決されるものでないということは、皆さんにもよく御了解願えることと思います。しかし、われわれの国のあり方の基本というものは、今お話しの通り憲法及び教育基本法に示されておるその精神を尊重していかなければならぬことは言うを待たない、かように考えております。
  133. 野原覺

    ○野原委員 答弁の御趣旨がどこにあるのが、頭が悪いものですから把握するのに苦しむのでありますが、それでは私は言葉をかえてお尋ねしたいと思うのであります。  今日、文部省は道徳教育ということに非常に力を入れてきておるのであります。道徳教育ということはもちろん私どもも賛同するところであります。ただ道徳教育をいかしてやるかということになると、たくさんの問題があるから、私ども文教委員会でもこれを取り上げておるわけであります。総理も御承知のように、戦争前のわが国の学校教育——学校教育だけではありません、日本人の進むべき方向というものは、先ほど私が申し上げました教育に関する勅語で尽きておったのであります。教育勅語というものが日本全体の道徳的基準になってきておったことは総理も御承知通りであります。その教育勅語の精神に従って学校教育が行われ、小学校から大学まで、社会教育まで、あるいは国民全体の教育がなされてきておる、これもまた当然であります。しかし、今日教育勅語がそのまま通用すべきものでないことは言を待ちません。日本の国家は変ったのでありますから、言を待たない。そこで総理お尋ねしたいことは、一体これから世界の中で日本人はどう生きなければならぬとあなたは考えておるかという問題です。教育勅語というもので道徳基準が示されて、それを守って今日まで教育をやってきたわけでありますけれども、今日の日本は、これからの世界の中に日本人として一体どう生きていかなければならぬのか。総理教育に非常に力をお入れになるわけでございますから、日本人としての理想的な人聞像、日本人はこうなければならぬというものを明確に持っておられると思う。政府の最高責任者である総理が、今日日本人としての理想的な姿をどこに置いておられるのか、どういう日本人が一番りっぱな日本人だと考えておられるか、御答弁願いたいのであります。
  134. 岸信介

    ○岸国務大臣 言うまでもなく、先ほど私一言触れましたが、日本の国は、現行憲法のもとにおいて民主主義の国であり、平和主義の国であり、また社会の構成において人権が尊重されておる、これは国の三大柱であると思います。従って、将来の国を背負う青少年諸君がそういう根本に徹することは言うを待たないことであり、われわれはあくまでも平和国家として、世界の平和、それから世界人類の福祉の増進、世界の繁栄と文化の向上に、われわれがその一員として十分な貢献をするという心がまえで、それにふさわしいあらゆる徳性やあるいはまた技能、知識等を身につけることが教育の課程においてなされなければならぬ、かように思っております。
  135. 野原覺

    ○野原委員 大体日本国憲法に書かれておることと、教育基本法の前文なり第一条に述べておることに尽きようかと思うのであります。私も同感であります。そういう考え方で文教政策が進められるということについては、私どもはもとより賛同するのでありますけれども、遺憾ながら今日の岸内閣、あなたの政府のとられておる文教政策がそういう方向に進んでおるかどうかということについては、実は疑わしいものがあるのであります。歴史的に考えてみましても、たとえば総理はただいま人格の完成とか人間の尊厳ということを述べられておる。りっぱな人間を作る、平和のために、平和な国家社会にほんとうに献身できるような人間、これがりっぱな日本人だ、こういうことを言われるわけであります。そうなって参りますと、たとえばこれは、人間の尊厳ということに例をとって参りたいと思いますが、国民の間に人間の尊厳を確立しなければならぬ。人間はたっといものだ、こういう考えを国民の間に推し進めて参りますと、私どもが第一に考えなければならぬことは、人権意識ということが問題になってきようかと思う。ほんとうに基本的な日本人の人権を確立してやるということがあらゆる政策の上で出てこなければならぬのであります。そうでなかったならば、それは言うはやすくして、政策の上では何も表われていないということに実はなろうかと思う。ところが権力階級、こういう言葉が悪ければ私は努めて避けたいと思いまするが、権力者側というものは、歴史的にながめてみても、これは洋の東西を問わず、国民の間に人権意識が根強くわき起ってき、そういう意識が民衆の間にぐっと頭をもたげて参りますと、それを抑えにかかる。それが今日までやってきた歴史のあり方なんです。私は、道徳教育の面においても、勤務評定の面においても、そういう考え方がやはり流れておるのではないかという懸念を持っておる。そういうことはないかと言えば、ないとおっしゃるかもわかりません。だからそういう点についてはあえて質問はいたしませんが、そこで総理にここでお聞きしたいことは、今日の憲法なり教育基本法の精神というものは、教育行政を進めるに当っては、たとえば教育予算をふやすとか、あるいは教育の機会均等に十分に尽すとかいうことである。私はそれが教育行政だと思うのです。どういうようなイデオロギー、どういうような考え方で全国の学童に教えなければならぬという教育の内容についてまでタッチするということは、今日の憲法なり教育基本法は考えていない、こう思うのでありますが、どうお考えですか。
  136. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん民主政治の根本は——今前段に、世界歴史を見ると、権力者は常に大衆なり民衆に対してこれを弾圧し押えつけるような歴史を繰り返しておるというお話がありましたが、私は民主政治というものによって、国民の投票によって国民の支持を受けておる者が、政権を担当するということが民主的に行われることによって、今お話しのような弊害が是正されるのだ。たとえば道徳教育の問題にいたしましても、あるいは勤務評定の問題にいたしましても、これに対して政府なりあるいは与党の政策が国民多数の人々の支持を受けないことであり、そういうことはけしからぬということであるならば、選挙において、そういう考えを持ち、そういうことをやっていることを国民は支持しないというところに、民主政治の審判は行われるのであると私は思っております。今お話のありました日本の戦後の教育につきましては、もちろんこれは中央集権的な考え方ではございませんで、地方にそれぞれ教育委員会等の制度もございまして、教育の内容等につきましてはいろんな点について責任を持つことになっておりますけれども、もちろん中央においてそれぞれに対して適当な指導といいますか指針を与えるということはあり得ることであり、それが不当なことではないと私は考えております。
  137. 野原覺

    ○野原委員 民主主義政治は国民が選挙で審判するということはなるほど御説の通りであります。そこでそれではお聞きしますが、国民が審判したらいいじゃないか、自由民主党は学校の教員が勤務評定に反対しておることを知っておる。道徳教育のやり方についても、これは幾多の、東京大学の教授とか、教育学界において意見があることも知っておる。しかしながらこのことがいいか悪いかということは、選挙のときに国民が審判をしたらいいのだ、こういう考えであなたが文教政策を進めておるとしたら大へんな問題です。権力をとっておる間は何でもやったらいいのだ、三年なり四年の間に選挙がある。今日解散はずるずるに延ばされてきておる。昭和三十一年の秋に解散が行われなければならぬとわれわれは主張しておったが、岸さんはずっと延ばしてきている。私は議院運営委員会でもやかましく言ったが、あなたはがんとしてお聞きにならなかった。予算委員会でも同様。権力についている間は何でも勝手にやったらいいのだ、選挙のときに審判をしてもらうのが民主主義政治のあり方だ、公式的にそう考えられて、今日の最も大事な、政治よりも大事な教育政策というものをあなたは本気になって進めておられるのか、承わっておきたい。これは大事な点です。
  138. 岸信介

    ○岸国務大臣 私の申し上げましたことは、民主政治というものの一般の考え方を申し上げておるわけであります。社会党が従来われわれに、政権がかわれば国民の審判を受けてその信任を問えと言われておることも、私のさっき申し上げましたことも精神的には、考え方では、私は同じことを申し上げておるつもりであります。ただ教育の問題が大事な問題であることは、先ほど来の何でわかっておるように、大事な問題でありますから、勤務評定の問題にいたしましても道徳教育の問題にいたしましても、それに対して十分国民が理解し、もしくは批判し、これに対する十分な理解と公正な批判ができるように、あらゆる点において努力すべきことは、与野党とも、私は民主政治の任にある公党としての責任であると思います。そういう点につきましては十分にお互いに努力をしなければならぬことは言うを待ちません。政権を持っている間は何をしようがそれは選挙のときの判断にまかせればいいので、何でもいいのだというような無責任なことを、いやしくも国民のために政権を担当しているわれわれが考えるわけはございません。それはもちろん私がよく申しておるように、あらゆる面において、最後の決定的の審判というものは選挙においてきまりますけれども、世論の動向なり、国民の意向というものには絶えず十分に耳を傾け、あるいは声なき声にまで耳を傾けて誤まりなきを期するということは、政権を担当しておるわれわれとしては、及びませんけれどもかねがねそう考えておることでありまして、もちろん考えていかなければならぬと思います。
  139. 野原覺

    ○野原委員 声なき声を聞いて政治をやっておられるということ、私はそのことはなるほど総理大臣としてはそういう努力をしておられるかもわかりませんが、今日の日本の文教政策に関する限り、声なき声を聞いて政治をやっておるとは言えないのであります。失礼ですけれども、あなたはその点をどう把握しておられるのか。たとえば道徳教育というそのこと自体にはだれも反対はしていないのです、道徳教育に例をとって申しますと。実はこの道徳教育というものを特設時間、特に時間を設けて教えるのだ。今までの道徳教育のやり方は非常に間違いであったから、特に時聞を設けてやらなければ徹底しないからというのでなさろうとしておる。松永文部大臣に言わせると、よいことはよいのだから早くやるのだ、こう言うわけです。ところが私どもはこのやり方について、もう少し時間をかけて、国民の中にもいろいろ批判があるのだから、耳をかしたらどうか、少くともあと半年くらいかしたらどうか。なぜあと半年かというと、学校教育法の施行規則が改訂にならなければ、道徳教育というものは、特設時間を設けるということには無理があるのです。特設時間というものは、生活指導ということは可能になっておりますけれども、無理がある。ところが無理やりに文部省は法的拘束力のない通達——今年の九月までは待てない。算数とか国語とか、そういうものは学習指導要領基準に従ってやっております。学習指導要領もない。手引書というような簡単なものを作って通達を出して、あと四、五ヵ月したら施行規則を作るという。こういう点は粗製乱造のやり方ではないか。少くとも法律的な制度を整え、規則の改訂もやって、そして声なき民の声を聞くと言われるならば、どんなにおきらいでありましょうとも、六十万の教員は教職員組合に加入しておるわけでありますから、教職員組合の声も聞く、これがほんとうの労働行政でもあり、文教行政でもあろうかと思う。頭からあいつはだめだ、こうきめつけないで、やはりそういった意見をも聞いて文教政策を進めなければならない。勤務評定についてもしかりであります。これがなされていないのであります。しかし私はあえてこの点は総理質問しようとは思いません。遺憾ながら、あなたの声なき民の声を聞くということは、文教政策については現われていないということを指摘するにとどめたい。  そこで次にお尋ねしたいことは、平和の問題です。平和な人間を作ることが理想的な日本人だ、平和な社会国家の建設にほんとうに献身的に努力する、平和を築き上げる、平和のためには勇敢に戦う、こういう人間を教育で作らなければならぬ、私はこのことはまことに敬服に値するお言葉だと思う。御承知のように、戦争前におきましては遺憾ながら教育というものは平和と結びつかないで、戦争と結びついてきております。これは私ども認めなければならない。ところが教育は、これから先は、平和と結びついていかなければなるまいかと考えるのであります。そうなって参りますと、私ども総理とは見解を異にしておりますが、今日学校の先生が、今日日本の政府は軍事基地をアメリカに提供しておる。これは勝手に提供したのではなしに、七年前の吉田さんのサンフランシスコにおける日米安全保障条約というものが原因になっておる。ところがこういう安保条約で軍事基地を提供するというようなやり方は、日本の平和にとって非常に危険なことだ。日本がそうい、うようなある特定国とだけ捉携していくということは、今日の日本が生きていく上にとってどうも危険千万だ、こう判断をされて、先生が自主的にそういう教育を子供にされる、そのこと自体どう考えますか。それは先生が自主的にそう考えて、ほんとうに平和な人間を作らなければならぬのでありますから、そういう教育は私は可能であろうかと思いますが、そういう教育はやったらいけないですか。総理はどう考えますか。
  140. 岸信介

    ○岸国務大臣 前段のことでございますが、今道徳教育についてその必要であり、それがよいことであるということについては、国民だれも異存ないというようなお言葉で、われわれますます自信を深めるわけでありますが、やり方等について決して慎重を欠くとか、あるいはなはだ軽率であるというようなことがあってはならない。これは文部大臣が十分その施行のことについて慎重に扱うことは当然でございます。今御質問の次第である日本の平和を守る上において、安保条約というような一国との問にそういう条約を結んで、そうして日本の安全を保障するという考えは間違っており、そうしないことが日本がほんとうに平和国家として成り立つということをかりにある人が考えて、それを子供に教えたらどうだ、こういうお話でありますが、私は実はその根本については違う考えを持っております。今の国際情勢というものを正当に理解し、日本の国の立場を考えてみると、そういう議論も世間にはあることは、私承知いたしておりますが、私はそういう安易な考え方では日本の安全は保障されないと思います。また安保条約によって、アメリカの駐留軍によって日本の平和が、安全が維持されておるという状態が日本民族の将来のために望ましい姿とも思いません。しかしそれらのことにつきましては、各人がそれぞれの批判と考えを持つことは当然でありまして、先生自身がそういうふうなことをほんとうに独立に、その人が一個の考えとして考えられるということは、私は民主主義の国としてどういう考えをするも——私は違った考えを持っておりますけれども、そういう私が間違っておると思う考えをその人が持つことは私何らとがめませんが、子供に吹き込まれることは望ましいことだとは思っておりません。
  141. 野原覺

    ○野原委員 もう一点だけ、大事な点で総理の御答弁がありましたから触れておきたいと思う。私どもが道徳教育賛成するということは、私ども考えておる道徳教育総理から答弁された人聞の尊厳を確立する道徳教育、平和な社会国家を建設する子供を作っていく道徳教育、戦争に協力しない、そういう道徳教育、長いものに巻かれろとか、あるいは真実を求めないというような、そういうゆがんだ人聞を作らない道徳教育というものを、私どもは打ち立てていかなければならぬと実は考えておるわけなんです。今日までの日本人というものは、これは総理もお認めになるように、上は天皇から下は民草に至るまで、家の中にあっては家父長から家族に至るまで、戸主というものが法律的にもあった。いわゆる縦の服従道徳であった。この縦の服従道徳というものはいろいろな弊害がある。自由平等な立場に立った考え方に立って今日の憲法も教育基本法もできておることは、あなたも承知される通りである。だから権威に盲従することのない人間を作っていかなければならない、私どもはこう考えるがゆえに、今日文部省が特設時間を設けて、手引書で——なるほど人聞の尊厳確立とは一応うたっております。しかしながらそのやり方というものは、今までの教師というものは戦争前の教育を受けてきた教師がありますから、十分に時間をかけて考えていかないと、間違った過去の愚を繰り返すかもわからないがら、もうしばらく時間を置いて論議をしたらどうかというのに論議をしない。私ども質問してからやっと文教委員会文部大臣が答弁をするというような体たらくです。どんどん通達を出しておる。いやでもおうでもこれは受ける。学習指導要領、そんなものはどうでもいいんだ、今まで学習指導要領がなければ教科指導はできないといっておきながら、そういうようなやり方を実はいたしておるのであります。だから私どもはそういう考えで道徳教育を進めていかなければならないと思う。これは間違っておるかどうか、そういう考えをも聞かないという今日の文教行政のあり方というものは、それでも声なき民の声を聞いておると総理は断言されますか、承わておきたいと思う。
  142. 岸信介

    ○岸国務大臣 こまかい具体的の、文部省がどういう措置を何月何日にしておるかということは、私実は承知いたしておりませんけれども、この問題は文部大臣におきましても、こういう非常な経験に富み十分社会的のあらゆる面における苦労を積んできておる人でありますから、また、文部大臣教育のことに関する重大な責任も十分に意識しておられる方でありますから、これを実行される時期については万全を尽されておる、ただ今お話しのように、慎重審議という意味においていたずらに時間をかけるということが望ましいか、あるいはとにかく今申したような立場にある人が相当考えて、慎重に考慮して、いいことであるから一日も早く実現したいという考えでやっておられるかということにつきましては、私は十分に文部大臣を信任してやっていただいておるわけでありまして、決してあの人柄から申しましても、無理をするような人ではないと私は確信いたしております。
  143. 山下榮二

    山下委員長 高津君。
  144. 高津正道

    ○高津委員 私は三月の第四日曜日に広島市に行っておったのでありますが、一万七千の県下の教職員の中で実に一万三千人が広島市に教育危機突破大会を開いて集合しまして、そうして教育の危機を守れ、この教育の危機をみずから目撃しながらこの運動に参加しない者があるならば、これは教育界から追放しなければならぬ、実に悲壮な叫びを聞いて参ったのであります。これは多少のでこぼこはあるかもしれないが、全国的に巻き起っておる教育界の大混乱だと思います。文部大臣という担当大臣もありますが、あなたの内閣で戦後十三年間初めてこういう教育界の大混乱が生じたのであるから、総理としてはこの際何らかの手を打たれるべきであると思いますが、手をお打ちになる考えがあるのかどうか、それをまずお伺いします。
  145. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は今この教員組合の諸君が、おそらくそういう議論の根底をなしている一番大きな問題は勤務評定の問題ではないかと思いますが、全体が一つの教育の危機がおきておる、危機に際してわわれわれは一つの突破口を作ってこの危機を突破しなければならぬというような事態は私は考えておりません。むしろ教員諸君がそういうふうにこの事態を持っていこうとしておるところに非常な混乱があるのでありまして、そうでなしに、冷静にこの事態をわれわれが考えるならば、決してそういう危機がきておるというふうなものだとは思いません。
  146. 高津正道

    ○高津委員 私は勤務評定も実に重大な問題であるし、道徳教育を特設されるということも非常に大きな問題だと思います。それからやはり教育委員の公選制をいわゆる任命制に切りかえたことも教員に対する攻撃だと私は考えております。次から次へ持っていかれるのに、岸総理が日本の指揮権を持って今指導者に立っておられるということに対しても、教員は非常に不安を感じ疑問を持っておるように思うのです。道徳教育を特別の時間を作ってそこで教えれば、愛国心の教育をせねばなりません。文部大臣はそのように申します。愛国心を教えれば国防観念、国防思想、そういうことを、やはり国を守るということを教えねばならぬでありましょう。ところが岸総理の動きを見ておると、アメリカへ往復してこられるたびごとに、日米関係というものは深まる一方であって、幾らか修正されそうに見えた保守党の政府の政策が、また日米の新段階というので後退して、再軍備、憲法改正が急調子でまた進められようとしておるのであります。あなたに対する疑念というのは、いよいよ戦争を始める場合に、海軍は自重論、陸軍はアメリカを過小評価してやるべし、その場合に一番文官として最高の発言を閣議で持っておられたのが、日本の経済実力を知っておる商工大臣であるあなたであったわけでございます。そういう場合には文部大臣が発言したって権限ありません。その場合にあなたが大丈夫だと言われたから戦争が始まる、こういう重大な責任があなたにあったということを全国の教師はみな知っております。さらに戦争が終るころに、宮中では会議が始まっておる。そうしてどうしてこの戦争を終局しようかということを心ある政治家がみな考えておるときに、あなたはどのように行動をされたか。総理になられなければだれもそう調べる者もなかったかもしれないけれども、今日はいろいろ調べが行き届いておりまして、八月十五日の数日前に山口市の松田屋においてあなたの組織されておる尊攘同志会の青年隊をお集めになって、一億一心で、断じて平和など語るべきではないという、とても強い、アメリカを過小評価したままの見解をそのときもずっと続けておられた。さらに進んで、今度いよいよ占領軍が来て、あなた方を戦争責任者として引っぱろうとしたときに、あなたはそのときもまだ態度は変らず、キーナン検事であろうと、その他の検事であろうと、裁判官に対して言うべきことはどしどし言うのだと言って巣鴨へ入っていかれたわけであります。そしてそれを貫かれるかと思うと、そうではなしに、あなたは寺内寿一大将を持ってこよう、こういう考えがあったにせよ、東条さんとの意見の相違もしまいには出ておるから、しまいの部分だけ言われて、時の閣僚として東条が悪いような証言を次から次へと重ねられてあなたはここへ出られる、東条さんはあのように死刑、その前の広田弘毅氏も死刑、その他たくさんの死刑者や自殺者が出ておるのであります。国の根本政策について責任のある人間としての態度をとっておるのであります。道徳教育の中では指導者の責任ということも教える。そうして出てこられてアメリカに行かれて、今度はアメリカを過大評価されて、国は一ヶ国では防衛はできないのだ、科学技術が兵器、武器の方面にきておる以上は、一ヵ国ではできないのだ、アメリカと結んでいく以外にはないので、集団防衛が現代の常識である、これ以外のことを教えるものは好ましくない、こういうような意見を、たった今もそこでアメリカ一辺倒を述べられたのでありますが、やはり道徳教育というものには濁りがあってはいかぬと思うのです。国の指導者がすっきりしておれば、この教員のほうはいたる反対運動、教育を守るために、そうして愛国心からも反発をするというような、こういう空気は私は起らないと思うのです。あなたはさきにはアメリカを過小評価して日本を誤まり指導し、今またアメリカを過大評価して、アメリカがソ連と武器の競争において敗れて、あわてて、よろめいて、ノイローゼになり、ヒステリーであることはだれでもみな認めております。アメリカの反共ヒステリー、しかし今や反共ノイローゼの状態になって、しかもソ連の最高会議での自分の国からは原水爆の実験はやらないというあの声明で、アメリカは追い詰められておるのであります。だから動物でいえば、ソ連がライオンでアメリカはオオカミかもしらぬ、その戦闘力において。アメリカと集団防衛集団防衛といって、ライオンのちょうど目の前で戦う訓練をし、軍備を拡張するというような、そういう指導を、そういう国防の方法、それを学校で教えれば、それば批判精神を身につけた子供は、それでは日本は負けるじゃないかという、そういう質問をやるのであります。私はやはり筋が通っておらなければいかぬと思うのです。またこの人は日本を戦争にもう一ぺん引きずり込むのじゃないか。アメリカが三十分後に爆撃されれば、それより十五分前に国は焦土と化するのじゃないか、前線基地だから……。これが日本人の常識であり、裸の王様の話のように、みんな王様は裸だということを知っておるが、公けの席で、あるいは個人的な席で、あなたはこの道あるのみだ、この道あるのみだと言っておられる裸の王様みたいなものだと私は思うのです。だから純真な学童、生徒は国防の方法についていろいろな質問をして先生を苦しめるに違いないのです。そうして学校の先生は戦争前に教育勅語の教育をやって、戦後民主主義の教育をやって、ここにまた岸信介という総理大臣が現われて、それをもう一ぺん七面鳥のように学校の先生を変らせるならば、学校の先生はそれを何と思うでございましょうか。教育の地位というものが、教育の権威というものが失われると思うのです。局、課長はあなたの命令で動くので、それはまあ問題にしない。あなたには責任がありますよ。私はこの際は冷戦というか、低い姿勢といっちゃいやでしょうから、かくばかり混乱をした場合には、なんとか日教組の中央幹部と会って、十分懇談して、そうしてこの大混乱をしずめるようなお考えをお持ちにならなければならぬと考えますが、総理いかがですか。
  147. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん行政の運営につきましては、われわれは決して混乱を望み、混乱を巻き起すことを考えるべきでないことは言うを待ちません。それについて各種の措置をとるべきことは言うを待たないのであります。しかし今直ちに日教組の諸君と会ってこの問題について懇談しようという考えは私としては持っておりません。
  148. 高津正道

    ○高津委員 松田屋のことはどうですか、認めますか。
  149. 岸信介

    ○岸国務大臣 私の過去におけるところの行動についての御批判はもちろん高津委員の自由であります。私は高津委員の名誉のために申し上げておきますが、これは事実なりとお話になりましたが、そのおあげになりました事実はちっとも事実じゃございません。そのことだけを明確に……。松田屋の事実なんというものも間違っております。私は終戦の直前約一ヶ月は病床におりまして、この事実から申しましても数日前にそういうことを言うということは絶対にありません。
  150. 高津正道

    ○高津委員 そのときに読まれたメッセージを持っておるという者さえあるのですが。
  151. 岸信介

    ○岸国務大臣 私の過去におきましては、私が申し上げることは絶対に間違いございません。
  152. 高津正道

    ○高津委員 私の質問はこれでけっこうです。
  153. 山下榮二

    山下委員長 本日はこの程度といたし、散会いたします。     午後一時二十九分散会      ————◇—————