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1958-03-28 第28回国会 衆議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十八日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 伊東 岩男君 理事 稻葉  修君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 河野  正君 理事 佐藤觀次郎君       杉浦 武雄君    渡海元三郎君       灘尾 弘吉君    並木 芳雄君       野依 秀市君    濱野 清吾君       山口 好一君    櫻井 奎夫君       高津 正道君    戸叶 里子君       野原  覺君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 莊一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         議     員 鈴木 義男君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 三月二十七日  委員井原岸高辞任につき、その補欠として馬  場元治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員馬場元治辞任につき、その補欠として井  原岸高君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員平田ヒデ辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十七日  著作権法の一部を改正する法律案野本品吉君  外三名提出参法第六号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六二号)  義務教育学校施設費国庫負担法案内閣提出  第一三八号)  学校教育に関する件      ————◇—————
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を議題といたしまして審査を進めます。質疑の通告がございますからこれを許します。鈴木義男君。
  3. 鈴木義男

    鈴木義男君 この義務教育費国庫負担法は大体においてわれわれ賛成の法案であり、もっとよい法案にしたいという意向は持っておりまするが、とにかくそのうちで私の一番関心を持っておるのは図書館、ことに学校図書館設備をどうして充実していくかという問題であります。この学校図書館に限らず、私は一体図書館というものがりっぱであれば、教育は半ば達し得ると思っておるのでありまして、自分の経験でも、私が中学時代に、図書館を持っている学校などはなかった。私ども学校だけが持っていた。私はその図書館に入り込んで、おもしろいような本はずいぶん乱読いたしました。それが非常にためになった。よく大学などに来て、この大学はどうも建物がよくないから、あまりいい大学でないなんという学生がありますが、私はそういう学生によく言うのであります。りっぱな図書館があり、少くとも君方が読む本には事欠かないだけの本は備えておるつもりだ。しかも指導する先生もこの通りりっぱな先生がおるのに、建物が貧弱だとか有名でないというようなことで、その大学を軽蔑するなどということは、学問をする人の心がけとしては間違っている。本居宣長とか荻生徂徠なんという学者は、明治以来あれだけの学者はまだ現われないと思う。本居宣長の研究をするだけで、文学博士が十人も出る。それだけの大学者であるのに、彼は一日も大学に行かずして、自学自習をして、各大名の家から本を借りてきたり、行って見せてもらったりして、苦心惨たんしましたが、とにかくあれだけの学問をやったわけであります。ゆえに図書館というものは、非常に大事なものであります。ことに幼いときから図書を利用するようにしなければいけない。私はあまりほかの物は買ってやらないが、小学校及び中学校高等学校に行っている孫がおりますが、それらには本だけは希望すれば買ってやる。ところがこれがなかなかばかにできない。毎月月末に払う額というものは大きいわけです。要するに学校図書館充実していないから、図書館から借りてくることもできないし、そこで読むこともできないから、結局おやじに買ってもらう。そういう意味において、図書館というものの基準が低ければ高くしなければならぬし、あらゆる努力を払ってもこれは充実していくべきものであり、教育の半ば達し得ると考ておるので、そこで御質問を申し上げるわけであります。  今度文部省においても、できるだけあらゆる種類の教材を豊富にする、こういうことをうたっておられます。最初に、教材充実させるために、今度御提案になっておる義務教育費国庫負担法並びにその予算程度で事足れりとお考えになっておるかどうか、その点をお伺いいたします。
  4. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 国庫負担金の中で、教材費として組んでおりますものは十五億でございます。従来は一部負担でございましたので、必ずしも市町村では同額をつき合っていただけなかった、こういう弊害がございましたので、このたびの法律改正では、給与費と同様に二分の一を国の負担にして、他の二分の一は地方財政交付金の方で考慮することにいたしたのであります。そこでこの十五億と合せて地方負担分十五億、三十億で教材費が十分かというお尋ねでございますが、これは十分でございません。
  5. 鈴木義男

    鈴木義男君 それじゃ一そう将来増加するために努力を続けたいというお考えである、こう承わってよろしゅうございますか。
  6. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  7. 鈴木義男

    鈴木義男君 そこで学校図書館法負担金は独立の費目を持っておったわけでありますが、教材費の中に繰り入れたというのはどういうわけでございますか。
  8. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは御承知通り学校図書館法に基きまして、昭和二十九年からすでに四カ年間国補助を出しておったわけでございます。二十九年に二億五千万円、昭和三十二年に一億五千万円、この間学校図書館充実が非常にできまして、これは単に国庫負担だけじゃございませんが、特にPTA等の御協力によりまして相当な充実を見まして、三十一年度現在では、小学校で七九%、中学校では七四%まで基準に対して充足いたしまして、昭和三十二年度を加えますと八十数%に上っている実情でございます。そこでほとんど近い将来一〇〇%の基準に到達いたします。ところが図書館経費は一〇〇%に到達したらすぐ終りになってしまっては困るので、先ほどあなたから御指摘のように、ずっと必要なので、むしろ私どもは恒常的に必要な経費だと考えております。基準に達すればそれでよいという経費ではなくて、どんどん補充しなければならぬ経費でございますので、むしろ教材費の中核をなす経費であろうと考えますので、もう一年で五カ年計画が終るときに、私どもは恒常的に教材費負担に入れた方がより適切である、かように判断したわけでございます。
  9. 鈴木義男

    鈴木義男君 わかりましたが、ことしの予算には学校図書館に一億二千百三十一万五千円が計上されておったのですね。それから高等学校の分が一千万、これはどういうふうにお使いになるわけですか。
  10. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 義務教育の分が一億九百万でございます。この分を教材費の方に入れたわけでございます。それから残りの分が千二百万ほどございますが、これは高等学校図書館経費と、盲学校ろう学校高等部に対する経費補助でございます。
  11. 鈴木義男

    鈴木義男君 学校図書館費用としては、高等学校の分を除いて事実上費目がなくなるわけであります。教材費に繰り入れることは一つの利益があるということは、ただいまの御説明でわかったのでありますが、しかし繰り入れることによって、学校図書館の設置なり充実なりについて努力をしておる教育委員会や、学校の現場にあって専心努力しておる校長とか、先生とかいうような人たちにとってみれば、学校図書館の金はもうなくなったのであるから、これについては努力する必要はない、あるいは学校図書館法PTA負担軽減を目的として成立した意義を持っておる。そういう点からかんがみて、負担金教材費に吸収されることは再びPTA負担の増大を来たすというような誤解をさせるおそれがないか、これについて当局の御意見を承わりたい。
  12. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教材費充実させましたのは、御指摘になりましたようにPTA負担軽減をはかりたい、こういう趣旨でございまして、前年十三億程度のものを十五億にいたしまして、さらに今申しましたように同額のものを地方負担に入れまして、それで三十億でございます。そのほか理科の関係で約五億、これが地方負担分合せまして十億、四十億関係が一応確保した分でございます。しかしながらこれでもなおかつ不十分でございますので、自治庁と協議いたしまして、さらに地方負担分として三十五億程度、本年度教材費関係地方負担分は約五十億増額しております。ですからこの点の趣旨を明らかにいたしまして、PTA負担軽減に資するように、すでに地方には通達済みでございます。なお本件に関しましては、今後は学校図書館経費教材費の中に繰り入れたから、十分この中でも支出するようなことを通達しております。それからなお従来の教材費の中でも重要な経費として学校図書関係が支出されておったのです。ですから今回の分と合せて、さらに一そう学校図書館充実に資することと私ども考えております。
  13. 鈴木義男

    鈴木義男君 それでやや安心をいたしましたが、できるだけ一つそういう誤解の生じないように行政指導を希望いたしておきます。通達をお出しになったということでありますが、文部大臣が任命した学校図書審議会が、大臣あて答申した答申というのがあります。こういうものを実行させるようにするという御意思がないか、このことを確かめておきたい。
  14. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 学校図書館審議会答申されましたことは、十分尊重いたしまして実施する考えでおります。
  15. 鈴木義男

    鈴木義男君 今まで答申が三回なされております。何か答申がされっぱなしであるということを承わっております。一つできるだけ実際に具体化するように御努力を願いたいのであります。  それから学校図書館法の第二条と第四条においては、図書館の資料及び図書館運営について、相当広範な学校図書館の望ましき姿とでも申しますか、そういうものを定めてある。しかし負担金になると、実際は予算がなくてやむを得ないことではありまするが、きわめて低い基準で、その基準に達するまでに必要な図書とかカード・ケースとか本だなとか、そういうものについてだけ今まで支出されてきておるわけであります。今度は教材費ということになりますと、もう少し大きく範囲が広くなるわけでありますから、学校図書館法の精神を生かして、またこの答申趣旨も生かして、一つ何か書いたもの等によって指導をして、指導方針を生かす意味で、教材費というような学校図書館関係で購入できる品目を、ただいま申した図書カード・ケース、書架などというものにしぼらないで、いろいろな図書修理製本をする用具であるとか、雑誌を並べるたなであるとか、そういうものを設備するようにさせるというようなお考えはないかどうか。
  16. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教材費は、直接教授に役立つ経費でございますので、今御指摘になったように周辺のものは困難かと思いますが、こういうものは地方財政充実をはかりまして、それによって支出するように通達をいたしたいと考えております。
  17. 鈴木義男

    鈴木義男君 この負担金の問題は、学校図書館法にとりましては、重大な眼目だと思うのでありまするが、この学校図書館には特別の負担金がなくなることによって、学校図書館法の実体が失われるというようなことはないでありましょうか。私はあと図書教育職の問題に触れたいと思うので承わっておきたい。
  18. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 学校図書館のことは、単に財政補助だけではなくて、むしろ学校図書館運営あり方、そういう点に主眼が置かれると思います。今御指摘になりました司書教諭等の問題もあると思います。ですから全体的に学校図書館運営に関する基本法学校図書館でございますので、その財源を直接学校図書館負担金で出すか、あるいは教材費という大きなワクの中で出すかという問題だと思います。むしろ私が先ほどお答え申しましたように、図書館という経費は経常的に支出して、ある意味では消耗費でございますので、基準に達するだけでなくて、今後どんどん更新されるべき経費であると考えておりますから、むしろこの方が適切である、かように考えております。
  19. 鈴木義男

    鈴木義男君 現在司書教諭養成補職、そういうことはどういうふうになっておりますか。
  20. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 司書教諭につきましては、現在は大学に委嘱いたしまして大学講座等で行なっておるわけであります。先般非常にたくさんの講習をいたしまして、必要な養成は一応終りましたので、今後はただいま申しましたように、大学に委嘱して、大学の中でそういう司書教諭免許状の取れるようにしていただくように配慮しております。
  21. 鈴木義男

    鈴木義男君 私の調べたところによると、すでに約八千名の司書教諭養成されており、有資格者があるというんだが、実際に補職されておるのは百名くらいのものというふうに聞いておる。どうも私立大学に委嘱しないために、養成はしても委嘱した国立大学を経由しないと、文部省は受け付けないというようなことを聞いたのであるが、ほんとうであるかどうかを確かめたい。  それから補職促進の手は多少打たれたのでありましょうが、山口県の教育委員会に、初等中等教育局長の名前で正式な補職促進の手を打たれたというふうに聞いておりますけれども、すこぶる心もとないもののように聞いておる。従って学校図書館法の第五条というものは死文同様になっておる。私どもよく例に出すのでありますが、司書教諭一般教諭の中から補職することができるのであって、また補職してもよろしいので、一銭も経費はよけいに出ない。ぜひ愛知県などのやっておるように、学校定員増をして、司書教諭を任命するというようなことを、文政当局としては一つ御奨励になってしかるべきではないかと思う。また中学校の生徒が減ったために、中学校教員がダブついて、小学校に回すとか、中にはやめさせるというようなことがある。これならばそれこそ司書教諭というような仕事を生かして使うべきではないかと考えておりますが、そういう点はいかがです。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 司書教諭原則として、教諭の中から補職する建前をとっておりますので、教諭の方が司書教諭を兼ねておる、こういうかっこうが普通であります。ですから専任司書教諭というものは、非常に少いと思います。  もう一つは、国立学校私立学校を区別するかというお尋ねでございますが、これは全然差別いたしておりません。
  23. 鈴木義男

    鈴木義男君 私ども無理に専任司書教諭を置けというのではないのでありますれども、間もなくまたふえてきて、中学校先生が足りなくなる。今ごくわずかの時間だけ足りなくなるというのに、しいてやめさせるということは好ましいことでありませんから、教諭としては補充的役割を努めつつ図書館のようなものをよく管理していく職員が、各学校に一人ずつあるというようなことになれば、この問題は相当うまく解決ができるのじゃないか、こんなふうに考えるので、その点を御注意申し上げておくわけであります。  それから義務教育学校分について負担金教材費の中に繰り入れられることはわかりましたが、高等学校分のことはどうなっておりますか。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは予算で別個に負担しておりますので、高等学校と、先ほど申しました盲学校ろう学校高等部に関するものは千二百万円予算に計上されております。
  25. 鈴木義男

    鈴木義男君 来年度以降においても新設の学校、それから基準に到達していない学校については、やはり図書館法の十三条の規定によって従来通り負担を続けることになるのでございましょうか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  27. 鈴木義男

    鈴木義男君 しかし高等学校実情から見ると、非常に基準が低いために、ほとんどの学校基準に到達していることにはなっておる。従って負担金が少くなっておるのであり、実際上もらえないような状態になっておる。これは全国高等学校長会議というものでも決議をし、請願もしておりますように、基準そのもの一つ上げて、低い基準が満ちたからそれでいいというのでは、ことに高等学校あたりから上級になるほど私は図書館使命、価値というものを発揮することが大きいと思うのでありまして、その点についてもぜひ一つ文政当局努力される御意思があるかどうかということを承わっておきたいのであります。
  28. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 基準の問題も一つの問題だと思います。しかし基準を上げただけでこの問題が解決するかどうか、これも一つ疑問だと思います。と申しますのは、日進月歩の今日、図書は、どんどん新しい知識がふえてきます。こういうものをどういうふうにして与えるか。私どもはむしろ図書なんというものは経常的に見る方が必要ではなかろうか。基準というものはある一定のところまでは必要であるけれども、その後基準を上げることによって解決するのか、あるいは恒常的にこういうものを見ていく方がいいのか、こういう点もあわせて検討いたしたいと考えております。
  29. 鈴木義男

    鈴木義男君 私は両方であると思います。基準も高める、むろんそのもの日進月歩に追随していくような努力をすることも図書館運営使命であると考えておりますから、その点は一つ一そうの御努力を希望して、私のこの点に関する質問は終っておきます。
  30. 山下榮二

  31. 河野正

    河野(正)委員 ただいま鈴木委員からいろいろ御指摘がございましたが、私どももこの義務教育費国庫負担法の一部を改正することによって、教材費に国が一部の負担をいたしていただくことにつきましては、了承するにやぶさかではございません。ただ一点、私どもが今日までいろいろ御指摘申し上げておりますように、問題でございますのは、義務教育に関しましては憲法無償原則というものがうたわれておるのであります。従ってなるほど本法案提案というものは具体的には一歩前進でございますけれども、基本的にはやはり問題が残っておるというふうに私は御指摘申し上げなければならないと思います。ところが今日までのいろいろな法案提出されて参りました状況から見て参りますと、なるほど具体的にはいろいろな形で前進はいたしておりますけれども、結果的には憲法に明記されました義務教育費無償原則を否認するというふうな結果が生まれて参っておる。これは非常に痛しかゆしの点でありますけれども、こういういろいろな点で前進はいたしますけれども、その前進することがかえって憲法にうたわれたところの無償原則が否認されるという結果になりはせぬかというふうに心配いたします。そこで、この点は当局におかれましても十分お考えになってのことでございますし、ただ問題は、教育財政問題等からこういった変則的な法案が出て参ったというように理解しておりますけれども、その大きな流れであります義務教育費無償原則というものはあくまでも貫かなければならないというふうに考えなければなりません。従ってそういった観点に立っての御所見というものをまず私はお伺い申し上げたいと思います。
  32. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘通り、私どもはできるだけ義務教育無償なものにしたいというので、実は現在PTA寄付が百五十八億もございますので、そのPTA寄付をできるだけ解消いたしたい、かような考え方から教材費負担分充実し、なお私用負担分も加え、さらに理化学教育設備につきましても増額をいたしたわけでございます。なおかつこれによっても十分まかなえませんので、市町村教育費単位費用の引き上げによりましてさらに数字をふやして、本年度増額は約五十億見込んでおるのであります。ですから私どもPTA負担軽減にさらに大きく一歩前進したものと考えておるのでありますが、なお今後年次計画を立てまして、なるべく早い機会にPTA負担を絶無にいたしまして、公費支弁原則を確立したいと考えております。
  33. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長から御説明ありましたように、さらに大臣説明の中でもこれまた明らかでございますように、国の負担額増額をはかって、教材充実PTA会費等を通ずる教材費父兄負担軽減に資したいと考えるというふうな御説明があるのでございます。ところがどうも、言葉のあげ足をとるわけではございませんけれども教材費父兄負担軽減をはかりたい、なるほど具体的にはそうでございますけれども、そういった言葉が先ほど申し上げますように、軽減ですからやはり原則的には父兄負担は当然だというふうな印象も、大臣説明からも、受けるわけであります。そうしますと、私が冒頭に指摘しましたように、これは若干言葉のあやでございますけれども無償原則に反するような結果になりませぬか。もちろんさっき申し上げますように、こういった法案各個ばらばらばらでございますけれども出て参りますことは、一歩前進でございますから、それは私ども全面的に否定するものではございませんし、それにつきましては私ども十分了承もし賛同も申し上げるわけでございますけれども、何と申し上げましても大きな流れというものは原則としてはやはり無償原則である、これは私は否定することはできないと思う。ところがただいま局長からも御答弁がございましたし、なおまた先般の大臣の御説明の中にも軽減したい、そういうことになりますと、何か原則はやはり負担するんだというふうな印象をその言葉のあやからは受けるおそれがあるのではないかというふうなことを考えましたので、実はそういったことを御指摘申し上げたということでございます。そこでそういった点につきましては、今後とも十分一つ無償原則を貫くという方針で臨んでいただきたい、そうしてさらに大きな前進をはかっていただきたいというふうに、これは御要望を申し上げておきたいと思います。  なおまた、さっきの学校図書館の問題につきましては、鈴木委員からもいろいろ詳しく詳細に御指摘ございましたから、私がいろいろ重ねて申し上げるまでもないと思うのでございますが、その御説明を承わって参りますと、すでに学校図書館の経常的な整備というものが非常に充実した。そこでこの際この一部負担法あと設備整備といいますか、そういうものをはかっていきたいということでございます。ところがそういう学校図書館あり方等につきましては、先ほど鈴木委員からいろいろ御指摘ございました通りで、私ども必ずしも完全なものとは考えません。ところがこれまた御説明のあげ足をとるわけではございませんけれども、何かもう一段落ついたのだ、そこであとはこういった一部負担法整備をはかっていった方がいいのではないかという印象を受けるような御発言があったようでございます。そういたしますと、一応学校図書館の問題が一段落した、あとはもう仕上げだというようなことになりますと、今後財政的な面で、だんだん圧縮されるおそれがあるのじゃないか、こういう心配もあるわけです。そこで何のために一部負担法をお出し願ったかということにつきまして、疑問を持たざるを得ないというふうな結果になりますので、そういった点については十分御考慮いただいておると思いますけれども、さらにそういった点に対しまする御所見を承わっておきたい、かように思います。
  34. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 学校図書館法は、御承知通り、ある一定基準をきめまして、その基準までに充足する経費を国が一部を負担する、こういう建前になっております。そしてその場合に、地方で非常な御協力を仰ぎまして、自己負担分が毎年相当額に及んでいるわけです。そこで大蔵省は昭和二十九年以来を見ますと、毎年五千万円ずつ落してきている。そしてもうそろそろぜロになる心配もあるわけです。こういうことになったら、学校図書館の振興が期待できませんので、ゼロにならないうちに、むしろもともと学校図書館経費教材費から抜いていったいきさつがある。これは義務教育国庫負担法の成立当初は十九億あった、そういういきさつがありましたので、むしろ経常的に図書充実した方がいいのではなかろうか。それから同時に教材費の中で、従来も図書費を支払っておった、こういういきさつもございますので、二重に、教材費の方で見る、図書負担金の方で見る、こういう格好になっておった。これをこのまま放置しておきますと、基準に達したら学校図書館経費は落ちるいう不安もございますので、義務教育国庫負担法の中に入れた方がむしろ経常的に確保することができる。それから教材費の中では、何と申しましても理科の設備を除きますと図書が圧倒的に多いのです。中心的経費でございますから、十五億と地方負担分十五億、合せて三十億ございますから、その活用によって私どもは今後の学校図書館の振興を十分期待できるし、また充実できるという確信を持ったわけでございます。
  35. 河野正

    河野(正)委員 ただいま御答弁があったのでございますが、私たち実は心配いたしましたのは、科学というもの、文化というものは、日進月歩でだんだんと進んでいくということです。従ってただいまも、今のままでいけば、一応ある程度の水準に達したので、かえって学校図書館に関しまする経常費というものが圧迫を受ける、そこでこの一部負担法ですりかえる、そして学校図書館運営というものが阻害されないように努力する、その考え方はけっこうです。しかし私ども心配いたしますのは、さればといって、学問、文化というものは日進月歩で、非常にものすごい勢いで進歩している。そこで旧態依然たる水準でいいものかどうか。この点に対しまして私どもは非常に大きな疑問を持つわけです。なるほど今局長から御答弁いただきましたような御心配から、この法案一つすりかえを行っうという考え方もけっこうでございますけれども、私どもがむしろ御要望申し上げたい点は、今までの水準には一応逐次達したとはいいましても、その水準というものは、むしろ今後引き上げなければならぬ、日本の文化的あるいは科学の実情からながめても、そういった趨勢になるのだ、そういった積極的な考え方で、今後予算折衝その他については極力働きかけ、啓蒙をやっていただかな旧ければならないのではないかということを強く念願するわけです。そこでなるほど今までの水準には逐次到達したであろうけれども、今後その水準はさらに高いところに求めなければならぬという考え方を当然貫いていかなければならぬ。そうしないと、一応形式的には達成いたしましても、実質的には達成できないということになるわけでございますから、その点につきましても、十分一つ努力願いたいということを御要望申し上げておきたいと思います。
  36. 山下榮二

    山下委員長 ほかに質疑の方ございませんか。——なければ、この法律案に対しての質疑を打ち切っていいでしょうか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 山下榮二

    山下委員長 それでは質疑を打ち切ります。  これより本案を討論に付します。佐藤觀次郎君。
  38. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この際要望しておきます。   義務教育費国家負担法等の一部を改正する法律案に対する要望   憲法に規定する義務教育無償原則を尊重し、義務教育学校における児童、生徒の教材等に関する父兄負担は一日も速かにこれを根絶すべきものと認め、政府のこれに向っての善処を要望する  以上を持ちまして討論を終ります。
  39. 山下榮二

    山下委員長 他に御発言もないようでございますから、これにて討論は終局いたしました。  これより採決をいたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  40. 山下榮二

    山下委員長 起立総員。よって原案の通り決定をいたしました。  なお本案議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認めます。さよう取り計らいます。      ————◇—————
  42. 山下榮二

    山下委員長 それでは次に、義務教育学校施設費国庫負担法案を議題といたしまして、審議を進めます。質疑の通告がございますから、これを許します。河野正君。
  43. 河野正

    河野(正)委員 先ほど来いろいろ義務教育国庫負担に対しまする討議が行われたわけでございますが、今日義務教育設備というものをすみやかに充実整備しなければならぬという段階に入っておりますことは、これは万人の否定し得ざるところでございます。そういった建前から若干質疑を行なって参りたいと思います。今回政府当局から提案されておりまする義務教育学校施設費国庫負担法につきまして、基本的には私どもも賛意を表するのでございます。しかしながら具体的にはなお幾多の問題が出ることは、これまた御承知通りでございます。なるほどこの法案の目的は、この法を整備することによって、今後義務教育学校教育の円滑なる実施を確保するということでございますけれども、現実の面におきまして、たとえばこの法案には建物の定義として、校舎、屋内運動場及び寄宿舎という点が指摘されておりまするけれども、実際には生徒の移動あるいは増加等によって、運動場を拡張しなければならぬというような問題もございましょうし、あるいはまた町村合併促進法等に基いて、地方財政の合理化をはかるための学校の統合の問題、そういう点も多々あるのでございまして、私は必ずしもこの法案のみでそういうものの完璧を期するわけには参らないのではないか。そこで、基本的には私どもも同調いたしますけれども、なお今後こういう問題につきましては多くの改善が行われなければならぬと考えるわけでございます。従いまして、そういう点に対しまする基本的な当局のお考え方を、この点は次官からお願いを申し上げておきたいと思います。
  44. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 ただいま河野委員のお説にもございましたように、義務教育の問題のうちでも、学校の施設という問題につきましては非常に多くの問題を含んでおりまして、世上いわれておりますすし詰め教室の解消のような問題も大きな問題であります。ただしかし、戦後非常に国の財政が乏しくなってきたのにかかわらず、義務教育は従来六年でありましたのを三カ年間延長した、そういう点についての非常に財政上の無理もありますので、これを一挙に解決するということは非常に困難であります。なおまた人口も非常に増加した。こういうような事柄がからんで、さらに都市に人口が非常に集中するという傾向が戦後特に顕著になって参りました。こういうようなことのために、大きな都市におきましての義務教育の施設——施設ばかりではございませんけれども、ことにそういう顕著な問題がありますので、これを何とか逐次解決いたしていきたいということが文教政策の大きな問題になっております。政府といたしましても、これにつきましてはできるだけの努力は従来して参りましたが、今後もこの努力を一そう強めて、特に義務教育に対しましての国民の御期待に沿い得るように努力いたしたい、かように考えております。
  45. 河野正

    河野(正)委員 ただいま次官から、この法案に基いて今後教育の円滑な実施を、確保するための努力を、逐次行なって参りたいという御答弁がございました。今後いろいろ御努力を願わなければならぬことは、全くその通りでございます。しかしながらこういった法律案が施行されましても、なおいろいろと今後残って参りまする問題もございます。と申しますのは、ただいま次官から御指摘のございましたように、逐次努力をされて参るわけでございますので、どうしてもその弊害と申しますか、設備の欠陥と申しますか、そういったものを完璧に芟除することはなかなか困難でございますから円滑な運営あるいはまた実施につきましてはいろいろ問題を残して参るものと考えます。そこで私はそういった点に対しまする一、二の具体的な例を示して実はきょう御質問をいたしたいと思います。  その第一の問題は、これはすでに参議院の文教委員会におきましても問題になりましたが、いわゆる越境入学、もぐり入学の問題でございます。毎年のことでございますが、新学期が近づきますと、もぐり入学、いわゆる越境入学が問題となって参ります。すでに文部省でも都道府県教育委員会に対しまして、区域外の就学防止のための通達を出されて参りましたことは御承知通りでございます。こういった傾向は最近新聞でも大きく取り上げられておりまして、全国的な問題でございます。しかもまた、これは私ども個人もそうでございますが、父兄にとりましてもきわめて深刻な問題のようでもございます。さればといってこういった問題をこのまま放置すれば、せっかくの学区制がくずれ、あるいは教育計画というものが崩壊するというようなことになりますので、そういった点に対し善処を行うということにつきまして、私どもも全く賛成でございます。しかしながらその実態は、最近いろいろ統計等も出て参っておりますが、私どもが想像いたします以上に深刻な状態のようでございます。こういった問題は先ほど申し上げましたように、もちろん今後の設備充実あるいは整備その他いろいろございますが、後ほど触れたいと思いますが、そういった問題とも当然関係してくる重大な問題でございますので、この点につきまするまず次官の御所見を承わっておきたいと思います。
  46. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 越境入学の問題は、まことに困った問題でありまして、親の人情からすれば、また人情ばかりでなく、本人の将来を考え、本人としても何とか世上にいわれる優秀な学校に入りたい、それによって将来さらに上に進学する上においても便宜があろう、こういうようなこと等によって行うのでありまして、それでなくても都市に人口が集中して校舎等も足りないところへ、また他から越境してさらに拍車をかけるというような傾向もありますので、何とかこれを解決したいということは今日に始まった問題ではございません。  そこで文部省としてもこれに対して何らかの方法はないかということで、従来もそれぞれ指導はして参ったのでありますが、しかし一方これも脱法というより法律の盲点をついて実行しているような向きがありますので、そこで善意に、やむを得ず居住の移転とか職務の関係で籍が移って、そういう学校を志願するのか、いわゆる越境の入学であるのかというそういう区別もなかなかむずかしい場合もありましょうし、従ってこれを法規的にどうやるかという問題はなかなか困難な問題でありますので、文部省でもいろいろ研究いたし、またそういうことのないようにということをそれぞれ通達をいたしておるのでありますが、しかし実際にはまだまだこれが根絶しない。それがためにいろいろの弊害も生まれておる。こういう実情については、今後とも一つこれは皆様方のお知恵も拝借して、完全にということはむずかしいでございましょうが、できるだけ解決していきたい。それには、一つ学校の差をなくして、いずれの学校に入ってもそう差はないのだということになれば、おそらくそういうこともなくなり、むしろ環境のいい郊外の方において就学するということの方がよろしいということになって、わざわざ都会の学校に入ってくるというようなことも少くなるのではないか、かようにも考えております。
  47. 河野正

    河野(正)委員 この問題の処理の困難性については、ただいま次官からの御説明にあった通りでございます。これも一例でございますけれども文部省通達に基きまして、福岡市の教育委員会ではいろいろこの問題の調査に努力して参りました。たとえば委員会の職員が手分けをして、市内電車やバスの停留所に見張りを出して、そうして学童の定期券を検査したり、あるいは一方におきましては住民登録をシラミつぶしに調査したというような、いろいろな問題も起って参ったようでございます。もちろんさっき申し上げましたように、もぐり入学というものがいろいろ法的にも弊害を起していく。たとえば学校教育法の学区制の問題等にいたしましても問題が起っておるというような点がございますから、そういった点に対する防止というものについては、文部省通達通りにいろいろ善処されなければならぬということについては、私どもも了承するにやぶさかではございません。ところがこの問題を徹底して解決していこうという熱心のあまりだと思いますけれども、ただいま申し上げますように、何かかつて私どもが終戦後食糧難の時代に見て参りましたような、やみ米退治を行うような格好で、バスの停留所やあるいは電車の中へ行って子供たちから定期券の提出を求めたりというような行動と申しますか、そういったことが学童に及ぼした影響というものもやはり非常に大きかったろう。何も学童がみずから越境入学をしようというような意図があるのではなくて、非常に学校差等がございますので、父兄が将来の問題等もおもんぱがって、熱意のあまりにやったことであるのにもかかわらず、学童が公衆の面前等におきましてそういった検査あるいはまた調査等を受けることにつきましては、非常に大きな問題があったのではなかろうか。そこで私は、やはりこういった問題は、なるほど学校教育法の学区制を順守していくのだというふうな考え方から、当然なされなければならぬ問題でございますけれども、しかしその適切な指導というものが行われなければ、そういったことでいろいろ反響を呼び起すというような問題も起って参るかと思います。そこでこういった問題について将来どういった態度で——御研究というとこもございましたが、現実にそういった問題等も起っておりますので、そういった点等をごらんになって、今後どういう態度で臨んでいかれようとするのかという点につきましての御所見を承わっておきたいと思います。
  48. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 この点につきましては、先ほども一部お答え申し上げましたように、法令でそれができないようにということはもとより必要でございますし、従来も一応は学区制があってそういうことになっているのでございます。ところがやはりその法律の裏をくぐるというか、そういうことでもぐり入学をする。そこでこれはどうしても一つ父兄の方に良心的に御協力を願うということも必要かと思います。それよりはさっき申し上げましたように、学校の差をなくすということが必要じゃないか。それで諸所に起っておりますこれによってのトラブル等も、やはり一つは、学校の施設がいいとか、あるいはいい先生がおられるとか、あるいは上の学校への入学率が過去においてよかったからとか、そういうようないろいろのことからやるのでございましょうが、できるだけどこの学校へ入っても同じような条件であるということが望ましいのであります。しかしこれは言うべくして実際にはそうした差を根本的になくすということが事実上むずかしいし、またPTAPTAで、それぞれ自分の子弟の学校をよくしようというので、それに努力をする。そこで生徒が大ぜいになったから新しい学校を作る。ところがその施設が不十分だというので、それの方に移るというのに反対するということでトラブルが起きている学校等があるのでありまして、そういう場合にも、新しい学校の施設が十分行き届かぬ、あるいはそこに差異がある、こういうことがやはり一つ大きな原因のように見受けられますので、今後としては、できるだけ当初申し上げたような学校差をなくして、いわゆる教育の機会均等の趣旨一つはそこにあろうと思いますので、そこら辺にまず根本的な解決点があるのではないか、かように考えております。
  49. 河野正

    河野(正)委員 ただいま次官からいろいろ御答弁もございましたように、非常にむずかしい問題のようでございます。この福岡市が今度調査した結果を伺いますと、当初福岡市の教育委員会では、大体四百人くらいもぐり入学があるのではないかというふうに予想をしておったというのです。ところが、この調査の方法等につきましてはいろいろ異論もございましたけれども、いずれにいたしましても、調査いたしましたところが、小学校だけで千四百二十四名、中学校が四百九十一名、合計千九百十五名、約二千名近いもぐり入学がおったというような結果が出て参ったようでございます。しかもさっき都市周辺というような話が出て参りましたが、福岡市内の五十五校の小学校の中で、もぐり入学のなかったのは離島の二校だけであったというふうな調査結果が出て参っておるようであります。これは参議院の文教委員会でもいろいろ問題が出たそうであります。あるいは週刊新潮にも、東京の番町小学校のごときは大体半数がもぐり入学であるというふうな記事も掲載されております。そこでまずこういった中小というような義務教育に対して早期に手を打てということで通達が出されたかと思います。ところが一方におきましては、そういうことに対して片手落ちではないかと言うこともできるのであります。たとえば先ほど申し上げましたように、小中学校のもぐり入学に対しては非常にきびしい手が打たれているけれども高等学校については何ら手が打たれていない。そこで小学校の場合は、福岡市の一例で恐縮でございましたけれども、予想以上の実情だった。ところが高等学校の場合も、これも資料でございますけれども、熊本県では二割、長崎市におきましては一割、こういったようなもぐり入学というものが半ば公然と認められておるというふうな調査資料も出て参っております。そこで私どもが申し上げたい点は、なるほど、さっきからいろいろと次官がこの対策に対しまして、設備の改善あるいはまた、ひいては学校差の改善というような点が考慮せられる、その点につきましては私どもも非常に大きな期待を持つわけでございます。ところがこういったように高等学校については何ら手が打たれていない。ところがこういった問題については、高等学校でございますし、ある程度学区制というものを拡大していくというようなことで、多少そういった弊害が除かれるのじゃないか。一方においては片手落ちだという非難もございますし、さればといって直ちに学校差をなくすということも早急に実現は困難でございましょうけれども、そういった点については学区制の改善等で考慮を払っていくというふうな具体的な方策もあるのではないかというふうな感じも持っわけでございますが、この点に対してはいかがお考えでございますか。
  50. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 義務教育高等学校は事情がちょっと違いまして、義務教育は御承知通り就学義務がございまして、住民登録に基いてやっているわけです。高等学校は自由進学を建前としておりますので、これは御指摘のように学区制の問題だと思います。そこでこの場合に一学校一学区というような狭い学区制をとりますと、往々にして御指摘のような、いわゆるもぐり入学があると思うのですが、最近の傾向は大体中学区と申しまして、数校で一学区を形成しております。ですから中学区の場合にはこういうことはほとんどないように私どもは聞いております。小学区制に相当無理があるし、また必ずしも私どもは一学校一学区という学区制は実情に適してないと考えております。こういう見地から、中学校高等学校については中学区制を勧めておるわけでございます。この点によって今御指摘のような点は解消されるものと考えております。
  51. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長から答弁がございましたように、なるほど小学区制については問題がある。そこで中学区制だというお話でございましたけれども、先ほど申し上げたように、統計によると熊本県では二割、長崎市においては一割というようなことでいろいろ資料がございますが、そういうようにやはりもぐり入学が現実に行われておるという点は否定することはできないと思います。しかも内藤局長からも御説明がございましたように、小中の場合と高等学校は違う点もございますし、なおまたそういう点が違うがゆえに解決しやすい面もまたこの場合には起って参るわけでございますから、そういう点も十分考慮に入れて、一方では非常に強く処置を行い、一方においては片手落ちだというようなことではなくて、やはり同様に適切な処置が講ぜられるべきだというふうに考えますので、この点については十分適切なる行政指導を行っていただきたいといふうに御要望申し上げておきたいと思います。  今までもいろいろ御質疑申し上げましたように、やはり現実にはあの学校にはよい先生がおる、あるいはまたあの学校設備や施設が完備しておるというようなことで、学校差というものが現実には明らかに存在をいたします。そこでわれわれ先ほど来いろいろ御指摘申し上げますように、すみやかに学校差をなくすること、あるいは学校差というものを平均化するということ、このことが私はきわめて緊急なる対策でなければならぬと思います。こういった学校差をなくするということにつきましては、今度の法案によって施設がある程度拡充される、あるいは整備されるというようなこともあるかと思いますけれども、私はやはり人の問題と設備、施設の二点が、学校差の場合には基本的にあるというふうに考えます。そこで法律的には、この施設あるいは設備というものにつきまして改善を加えられましても、人的に改善を加えていかかなくては、この学校差を完全になくするということはなかなかむずかしい問題ではないかと考えるわけです。ところがこの人的問題につきましては、具体的に今日なかなか改善をはかられるという気運が残念でございますけれどもございません。全然ないというわけではございませんけれども、そういったものの完全なる動きというものは、私はないと思います。そのためには地域給の問題もございます。あるいは住宅その他の厚生施設等の問題もございます。こういった問題等も解決しなければ、人的な問題を完全に解決するということはできない。ところがこの学校差をなくし、あるいは学校差を平均化するというためには、施設、設備と一方におきましては人的な面というものが基本に存在するわけでございますから、どうしてもそういった人的な面について、具体的に今後この施設改善に関します法律案と並行して考えていただかなければ、この問題を根本的に解決するということは、困難じゃなかろうかと考えるわけでございます。そういった点につきましては、今後十分一つ努力をしていただかなければならぬのでございます。そういった点に対します一つの御所見を次官から承わっておきたいと思います。
  52. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 先ほど内藤局長からもお答え申し上げましたように、高等学校については——義務教育中学校小学校もそうでございますが、だいぶ趣きが違うのでありますが、それでも学校差をなくして、あまり無理な入学試験等がないようにすることが教育上は理想でありますので、できるだけそういう趣旨に沿うような指導を、文部省としてはいたしておるのであります。しかしこれもなかなかむずかしいことではありますし、理想通りにはいかないというのが現実であります。そういう点で今後なお研究すべき問題は多々あると思うのでありますが、しかしまた一部には、学校の特色がむしろあって、競争があることによって優秀な生徒も出るのじゃないか、こういうような意見の方もないではないのであります。しかし教育の本旨としては、やはりできるだけ学校学校における学校差というものをなくして、そして学区をもぐって入ってくるとか、あるいは激しい人学試験がある、またそれに伴ういわゆる準備教育というものが、中学校において行われることがないことが理想でありますので、私どもといたしましては、そういう考えのもとに一つ指導しやっていきたい、かように考えております。
  53. 河野正

    河野(正)委員 ただいままでいろいろ申し述べましたように、こういった問題の根本的な解決というものは、やはり義務教育から大学に至るまでの間の学校差をなくすることであるというふうに考えるわけでございます。そこで先ほどから述べて参りましたように、学校の施設あるいは教師の質などに善処を加えなければならぬことでありますが、私はこういった問題というものは、やはり今日の日本の大きな文教政策につながっていく重要な問題だというふうに考えております。日本の今日の文教政策の基本から、そういったいろいろな弊害が生まれて参っておるというように私ども考えて参るわけであります。従って今後いろいろ困難な問題等もあると思いますけれども、そういう点を十分考慮に入れて、そういった教育機会均等というような面がこわれないように、十分なる御努力を願っていただきたいということを御要望しておきます。  それからこれも法案関係のあることでございますが、先ほどちょっと私冒頭に申し上げたように、町村合併に伴う義務教育学校の統合、こういった問題は地方財政合理化の線に沿って全国各地方においてそれぞれ実施され、あるいはまた今日実施されつつあるというのがその現況であるようでございます。しかしながらその実績が容易にあるいはまたスムーズに進んでおるかというと、これは地方のそれぞれの特殊な事情というものも手伝って、いろいろと困難な面に遭遇いたしておりますことは、今日までいろいろな形で本委員会におきましても取り上げられて参りました。  ところが、各種各様の障害があったというのでございますが、私は、そういった障害が起って参ります原因というものを大別させますと、二つの点に集約されるのではないかというようなことを今日まで指摘をして参りました。その第一は、町村財政、すなわち経済上の問題というものが一つの障害になってきたということでございますし、第二は合併した旧町村のそれぞれの利害というような問題が一つの障害になって、この学校統合という問題がスムーズにいかぬ一つの障害となってきたというふうに考えるわけでございます。  そこで私は、きょうも、これまた恐縮でございますけれども、具体的な一例を取り上げまして、当局側の御所見を承わって参りたいと思いますが、それはもうすでに文部省でも御承知だと思いますが、福岡県の杷木町の中学の統合の問題でございます。この問題は、今日各地方におきましてはきわめて深刻な状態に追い追まれておるというふうに私ども拝聞をするわけであります。もちろんこういった問題は、町村におきまする問題ではございますけれども、ひいては子供たちの教育上に及ぼす影響というものも非常に甚大なものがあるというふうに私は判断をいたします。そこでこういった問題につきましては、すみやかに、しかも円満に解決されることを私ども心から期待をいたすのでございますが、まずお尋ね申し上げたいと思いますのは、今日の現況というものがどういう状態になっておるのか、その点に対する御所見を承わっておきたいと思います。
  54. 小林行雄

    小林(行)政府委員 ただいまお尋ねのございました福岡県の杷木町の学校統合でございますが、これにつきましては三十二年度の統合の補助金の申請がございまして、その申請書によりますと、全町一致してこれをぜひ統合したいということで、県の方でも円満にその点が行われるという申請書もつけてございますので、文部省としましてはこれに補助金をつけております。ただ最近になりまして反対者の方々が中央の方にもお見えになりまして、いろいろ反対の事情をお述べになったのであります。その反対の事情を大約申し上げますと、それは学校統合ということについては必ずしも反対ではないけれども、たとえば生徒の通学距離が相当長くなるとか、あるいは父兄負担がふえるとか、学校の位置が必ずしも適当でない、そういうようなことから、また町村の財政上からいっても時期尚早であるというようなお話がございます。なお、これにつきましては、いろいろ賛成派と反対派の両派に仲立ちをなさる方がございまして、いろいろな案を御相談になっておるようでございます。文部省といたしましても、地元のいろいろなお骨折りで、また県教育委員会のいろいろな尽力によりまして、これができるだけ円満に、またすみやかに解決されて、統合が実施されるならば非常にけっこうである、こういうふうに考えておりまして、おいでになりました地元の方にもその旨をお話し申し上げた次第であります。
  55. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長から御説明がございましたように、この問題はかねて久しい以前から起こっておる問題のようでございます。形式的には昨年の十二月でございますか、町議会で統合を可決したということでございますが、この問題はやはり以前からずっと長い間尾を引いた問題のようであります。しかも町議会で議決いたしました当時は全員一致というようなお話でございましたけれども、十六名中四名の反対だったというような話も承わっております。私はこういった問題を取り上げますことは、どこまでもこの問題が円満に、しかも早期に解決するという建設的な立場から取り上げて参っておるわけでございますが、御承知のように補助金の申請が出て参りまして、それに対しましては五百六万円の補助金が交付されたというような報告も承わっております。そこで当然私は、この問題の事態収拾につきましては当局側にも責任の一端を背負っていただかなければならぬというふうに考えるわけでございます。単に第三者の仲介があるのでそれに一任をする、要するに対岸の火事のような態度がただいま表明されたようでございますけれども、こういった問題が遷延いたしますればいたしますだけ、いろいろ複雑な要素もはらんで参ります、あるいはまた要素がはらんで参るだけでなく、やはり児童、生徒に及ぼします、あるいは教育上に及ぼしまする影響というものも、非常に甚大なものが生じてくるというふうに考えますので、私はもっと積極的な御努力が必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、その点に対しましてどのようにお考えでございますか。重ねて承わっておきたいと思います。
  56. 小林行雄

    小林(行)政府委員 こうした学校統合のいろいろなトラブルにつきまして、文部省の方で積極的に介入したらどうだというような御意見と承わりましたが、私どもといたしましては、この学校統合の建物補助金につきましては、円満に統合が実施されるものに対して補助金をつけるという建前をとっております。私どもの方でこの学校とこの学校は統合せよとか、あるいはするなとかいうことはじかに申し上げないという従来の行き方をとっております。ただこうした問題が起りまして、補助金は一応つけたものの、実施されないということがありますと、将来にも影響することは考えられますので、私どもといたしましては、県を通じてできる限り円満に話し合いが進みまして、建築が実施されるということを期待するという程度にいたしまして、積極的に、たとえば学校の場所をどこにしたらいいとか、あるいは統合をいつごろまでに行えというような具体的なことについては、文部省自体が乗り出すことはどうかと思っております。
  57. 河野正

    河野(正)委員 ただいま私の発言には多少誤解があったと思います。何も文部省に積極的に介入しろというようなことを申し上げたのではなくて、解決のためにできるだけ積極的なあっせんをされてはどうかということでございますから、その点につきましては一つ誤解のないように願いたいと思います。  私どもがどうしてそういったことを申し上げるかと申しますと、御承知のように統合校舎の予定地でございまする二千坪の敷地、これも近々完成するということを聞いております。なおまた建築用材も組み立てるばかりになっております。四月中には第一期工事でございます三百八十坪、すなわち六教室が完成するともいわれております。こういったように校舎の建設というものはどんどん進んでおる。ところが、一方におきましては、この建設のためのブルトーザーの音にも全然耳をかさず、絶対反対を唱えておられます旧志波村の住民の方々がおられる、絶対反対を唱えておられる方が多数おられる。そういうふうに、一方ではどんどん工事が進んでいく、ところが一方においては反対運動というものが熾烈化していくというようなきわめて複雑な情勢というものがかもし出されつつある。そこで私ども先ほどできるだけ早く、しかも円満に解決することが望ましいというようなことを申し上げたのでございます。なおまた、私は重ねて申し上げますが、現地の空気というものは非常に先鋭化して参りました。先日のごときは甘木署の全警察官が動員されてその警戒に当らなければならぬほど地元の空気というものは先鋭化してきた。しかも杷木町の教育長も、それからさっきも申し上げました、旧志波村の出身であります四名の町会議員、これは全部でございますがそういった町会議員や、あるいは公民館、婦人会、それから消防団、こういったそれぞれの役職員が総辞職をした。そして一応統合をいたしましたけれども、さらに分町のための署名運動を展開していくというふうな情勢にあるようでございます。私はこういった問題が教育上あるいはまた生徒に及ぼす影響というものは非常に甚大なものがあるのではなかろうか、またこういう中で今後解決いたしましても、こういったいろいろな感情的な、あるいはさっき申し上げましたようないろいろな影響というものがどこまでもあとを引くのではなかろうかというふうな心配をいたすわけでございます。しかもさっき申し上げますように、地元の警察署が全署員を動員しなければならぬほど険悪なる究気もあるというような、きわめて深刻なる、険しい情勢でございます。私はこういった点についても単に対岸の火災視するだけでなく、やはり一刻も早く解決していただかなければなてぬというふうに考えるわけでございます。これはむしろ今日におきましては政治問題化しておるというふうに考えるわけでございますが、この点につきましては、さっき申し上げますようにきわめて深刻な、険しい情勢でございまして、これは一例でございますけれども、こういった問題が大なり小なり各地域でもあるというふうに判断をいたしますので、こういった問題について文部大臣としては今後どのように善処されようというお気持があるのか、この点は一つ明確にお示しを願っておきたいと思います。
  58. 松永東

    ○松永国務大臣 御指摘のような問題がやはり全国に随所にあるようでございます。ですからこういうことはあまりほっておきますと、非常に先鋭化してしまって、それがやはり政治化してきて取り返しのつかぬようなことになるおそれがありますので、地元とも相談をいたしまして、何とか早急に善処するように努めたいというふうに考えております。     —————————————
  59. 山下榮二

    山下委員長 それではこの際お諮りをいたしたいと存じます。去る二十四日南極地域観測の長途を終えて、本隊に先だって帰国されました本観測隊長永田武君、越冬隊長西堀栄三郎君及び宗谷航海長山本順一君を本委員会に参考人として招致し、南極地域観測の実情を聴取し、本観測越冬計画の放棄と今後の対策について意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお参考人招致は理事会の申し合せにより、四月一日午前十時よりといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  62. 山下榮二

    山下委員長 次に、文教行政に関し調査を進めます。質疑の通告がありますからこれを許します。戸叶里子君。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 私は勤務評定に関連した問題で大臣に一言御質問を申し上げたいと思います。それは勤務評定がいかに不合理なものであるかということは、この委員会では当然議論せられたと思いますけれども、それだけでなくて、一般の人の中でも、多くの人たちが子供の将来にとって憂うべきものであるということを言っているわけです。その一つの実例といたしまして、栃木県の未亡人会の会長が、勤務評定に対しましてアンケートをとられましたときに、自分の意のままを発表して、教育を事務的に取り扱おうとすることに反対であるという意思表示をいたしました。ところがこれに先だちまして、三月の八日に県庁前の広場で各校からの代表の先生方が数千集まって反対をされましたときに、この未亡人会の会長である佐藤さんと同じ姓の佐藤さんという方が、たまたま佐藤会長が出られないので友人として出席いたしまして、勤務評定がいかに子供の将来に幸いでないかというような発言をせられたのでございます。ところが会長の佐藤さんと同じ名前でありましたために、会長がこの大会に出て祝辞を述べたのだととった自民党の市会議員の人がこれをとがめまして、未亡人会の事務局に二度電話をかけてきたのであります。その最初の電話は、まずお前はなぜあいさつに出たか、そしてもう一つは、どうして法律できめたものをお前は反対をするか、場合によっては未亡人会のめんどうを見ないぞというふうに半ば脅迫めいた怪電話をかけているのでございます。そこで留守居の事務局の人が今会長がいないから、会長に電話をかけて御返事をしてもらいますが、あなたのお名前はどなたですかと言って聞きましたところが、市会事務局にかければわかるのだと言って電話を切られたそうです。そこで会長さんが、これはまあ会長ではあるけれども、個人の資格で行ったのだということをある機会に発表いたしました。ところがさらに十七日に電話をかけてきまして、会員の中には賛成者も反対者もいるはずだ、もしお前が個人の資格で行ったとするならば責任をとれ、こう言って二度にわたって電話をかけてきたのでございます。これが事の真相であるのでございます。そこで文部大臣にお伺いしたいことは、これは地方のことですから御存じはなかろうと思いますけれども、こういうようなことが他の地方にも起っているというようなことをお耳にした例がないかどうかをまず伺いたいと思います。
  64. 松永東

    ○松永国務大臣 今御指摘になりましたような点は一つも聞いておりません。さらにまた地方でもさようなことは耳にしておりません。私どもはあくまでも教育の中立性をとうとばなければならぬというので、教育のこうした問題の中に政党政派が介入し、混入することは好ましくないことだというふうに考えております。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣のお耳に入っていないそうでございますけれども、これは事実で、県の方の新聞には取り上げられた問題でございます。そこでめんどうを見ないというのはおそらく今まで出していた補助金をある程度削るとか、あるいはやらないということであろうと思いますが、未亡人会の性格というものが非常に弱いものであるということにつけ込んで、こういうような脅迫的なことを言うというのは、私は脅迫罪が成立するのではないかとさえ思うのでございますけれども大臣としての御意見はいかがでございましょう。
  66. 松永東

    ○松永国務大臣 脅迫罪が成立するかどうかそれはわかりませんが、実際だれがそういうことを言ったかもわかりません。電話のことですからわかりませんし、さらにまたそういうことは好ましくないことで、そういうことを言ったから未亡人会に補助金を出すとか出さぬとか、そういう結果を生ずるようなことはおそらく私はないと思います。またあってはなりません。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう結果を生ずることはないと思う、あってはならないという御答弁でございましたから、もしそんなことがあった場合には、大臣としてそれこそ責任を持ってそうならないようにしていただけるでございましょうか。
  68. 松永東

    ○松永国務大臣 今から言明するわけに参りませんが、そういうことがあったときには善処いたします。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう言葉を伺いまして多少安心をいたしましたけれども、しかし個人の資格で言ったといたしましても、あるいは未亡人会という団体を通じて言ったとしても、自分の意思というものをそこに表わすことは、これは当然であって、そうした意思を表わすことは弾圧を加えるということは、非常に言論の弾圧ということで、けしからぬことだと思うのでございます。大臣は私と同感でおありになると思いますが、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
  70. 松永東

    ○松永国務大臣 仰せの通り、全く同感でございます。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、そのあと会議員の中では、その新聞を見まして、ある議員が名前をあげて言われましたことは、自分は何々という議員であるけれども、自分はそういうことを言った覚えはありません、こういうふうにわざわざ言っているわけです。しかしそれは問題ではなくて、未亡人会という、たよりにする人の少い婦人団体に、いろいろな形で、自分たちと意見が違うという場合に弾圧をする、こういう権力乱用のあり方を何とかするということこそ、私はほんとうの生きた道徳教育であろうと思うのです。文部大臣は道徳教育に対しては大へんに御熱心な方でいらっしゃいますから、こういうふうな意味においての道徳教育というものをまず実践に移していただきたいし、また勤務評定に対してそういうふうなことが今後ないような方法を何かの方法でとっていただきたい、こう考えますが、御所見はいかがでございますか。
  72. 松永東

    ○松永国務大臣 勤務評定の問題は、あなた方と私どもの意見は違うのですよ。あなたはさっき勤務評定くらい不合理なものはないとおっしゃいますけれども、私としてはこのくらい合理性なものはないというふうに考えておりますので、結局長崎に行くのと北海道に行くのと、そのくらいの違いがあるくらいに意見が相違しております。しかしそれはそれとして、そういう意見を発表するのは、これは仰せの通り自由であります。そうした意見を発表したことによって弾圧を加えるとか、制裁を加えるとか、不利益を加えるとか、威圧をするとかいうような考えは寸牽も持っておりません。またそういう考えがあろうとも考えません。そういうことがあったときには、これはわれわれはまたわれわれの許す範囲において善処したいと存じております。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 それではやはり権力を乱用するというようなあり方は、文部大臣の道徳教育に反するものである、こうお考えになるわけでございますね。
  74. 松永東

    ○松永国務大臣 もちろんでございます。権力を発揮するとか何とかいうことはあろうはずはありません。あることはよろしくないことだと考えております。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 それに関連いたしまして市会では、市会議員の方が、この勤務評定反対の大会に出席した教師の名前と人数をはっきり知らせろということを質問しているわけです。このことは、議員としてどういう質問をしようとこれは私は自由だと思いますけれども大臣のお立場から、勤務評定の反対のために出席した教員の名を今後——調べることは、やはり必要だなあということをお考えになりますか、お考えになりませんか。当然そんなことは大臣としてはお考えにならないと思いますが、いかがでございましょう。
  76. 松永東

    ○松永国務大臣 それは市会でそういうことを発言した人があるとすれば、これもまた言論の自由ですから、それを何も圧制するとか制限するとかいう必要はむろんありません。しかしそういう発表に応じさえしなければいいと思います。ですから、やはりこういうことは言論は言論として認めていき、そうしてやはり教育の中立性は中立性として認めていくというふうにせなければならぬというふうに考えております。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 私も市会で議員がどういうふうなものを要求し、そうしてまた発表しても、これはいけないということを言っているわけじゃないのです。これは自由だと思うのです。けれども、ただそういうふうな形で大臣が陰の方で大臣として一々調べる必要があるかどうかを、大臣の意見としては私は伺ってみたわけでございますけれども、今の御答弁で大体了承いたしました。今までの質問に対する大臣の御答弁で、大体このことは非常にけしからぬことである、そのなした行為自体は非常に言論の弾圧であり、そうしてまた脅迫めいたことということをお認めいただきましたので、今後こういうことがないように、できるだけ担当の大臣として御努力を願いたいということを要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  78. 松永東

    ○松永国務大臣 それは市会議員がどういう行動をやったか、どういう弾圧といいますか、どういう行為をやったかということは私にははっきりわかりませんけれども、結局今市会議員が弾圧といいますか、未亡人会にあるいは電話をかけて申し入れをしたということ、それはだれがやったかということもわからぬのだそうですから、それじゃどうも威圧をしたとか、弾圧を加えたとかいうことにもならぬ。ですから、事実の真相はまだつかめません。それでそういう問題に対する私の意見は差し控えたいと思いますけれども、先ほど来私が申し上げることによって、言論の自由は自由として認め、さらに教育の中立性はどこまでもこれは認めなければならぬということだけは御了承願いたいと思います。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 私、要望して打ち切ったのですが、大臣はこれは何か事実でないかのようなことをおっしゃいますけれども、もう一度訂正しておきますが、これは事実なんです。確かに電話がかかってきて威圧されているのですから、この点はどうぞ私の方が確かな情報を持っておりますから、お認めいただきたいと思います。
  80. 山下榮二

    山下委員長 本日はこの程度とし、委員会散会後理事会を開きたいと存じます。なお先ほどお認めいただきました宗谷の関係に関しまして、次会は四月一日午前十時より開会し、南極地域観測に関し参考人より実情を聴取いたします。御了承を願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十八分散会      ————◇—————