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1958-03-12 第28回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 山中 貞則君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    杉浦 武雄君       渡海元三郎君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    並木 芳雄君       牧野 良三君    池田 禎治君       木下  哲君    小牧 次生君       高津 正道君    野原  覺君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 三月十一日  委員野原覺辞任につき、その補欠として上林  與市郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員千葉三郎君、上林與市郎君及び鈴木義男君  辞任につき、その補欠として永山忠則君、野原  覺君及び池田禎治君が議長指名委員に選任  された。 同日  永山忠則辞任につき、その補欠として千葉三  郎君が議長の指命で委員に選任された。     ————————————— 三月八日  学校教育法の一部を改正する法律案小牧次生  君外二名提出衆法第六号) 同月十日  無試験検定旧制実業学校教員免許状所有者を新  制大学卒に認定の請願世耕弘一紹介)(第  一六二一号) 同月十一日  へき地教育振興法の一部改正に関する請願(愛  知揆一君紹介)(第一七三三号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一七三四号)  同(伊藤郷一君紹介)(第一七三五号)  同(稻葉修君紹介)(第一七三六号)  同(池田清志紹介)(第一七三七号)  同(今村等紹介)(第一七三八号)  同(大橋忠一紹介)(第一七三九号)  同(奧村又十郎紹介)(第一七四〇号)  同(大石武一紹介)(第一七四一号)  同(小澤佐重喜紹介)(第一七四二号)  同(加賀田進紹介)(第一七四三号)  同(勝間田清一紹介)(第一七四四号)  同(加藤清二紹介)(第一七四五号)  同(菊地養輔君紹介)(第一七四六号)  同(井岡大治紹介)(第一七四七号)  同(松原喜之次紹介)(第一七四八号)  同(久野忠治紹介)(第一七四九号)  同(小坂善太郎紹介)(第一七五〇号)  同外四件(纐纈彌三君紹介)(第一七五一号)  同(佐々木更三君紹介)(第一七五二号)  同(薩摩雄次紹介)(第一七五三号)  同(下平正一紹介)(策一七五四号)  同(志賀健次郎紹介)(第一七五五号)  同(田村元紹介)(第一七五六号)  同(田中織之進君紹介)(第一七五七号)  同(竹谷源太郎紹介)(第一七五八号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第一七五九号)  同(田口長治郎紹介)(第一七六〇号)  同(堂森芳夫紹介)(第一七六一号)  同(永井勝次郎紹介)(第一七六二号)  同(中居英太郎紹介)(第一七六三号)  同(西村彰一紹介)(第一七六四号)  同(濱地文平紹介)(第一七六五号)  同(平岡忠次郎紹介)(第一七六六号)  同(保科善四郎紹介)(第一七六七号)  同(正木清紹介)(第一七六八号)  同(村松久義紹介)(第一七六九号)  同(森三樹二君紹介)(第一七七〇号)  同(柳田秀一紹介)(第一七七一号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第一七七二号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第一八三六号)  同(五十嵐吉藏紹介)(第一八三七号)  同(稻村隆一君紹介)(第一八三八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一八三九号)  同(大平正芳紹介)(第一八四〇号)  同(川村継義紹介)(第一八四一号)  同(加藤常太郎紹介)(第一八四二号)  同(川村善八郎紹介)(第一八四三号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一八四四号)  同(木原津與志君紹介)(第一八四五号)  同(小林かなえ紹介)(第一八四六号)  同(小林郁君外二名紹介)(第一八四七号)  同(佐竹新市紹介)(第一八四八号)  同(椎熊三郎紹介)(第一八四九号)  同(床次徳二紹介)(第一八五〇号)  同(中垣國男紹介)(第一八五一号)  同(西村力弥紹介)(第一八五二号)  同(長谷川四郎紹介)(第一八五三号)  同(藤本捨助君紹介)(第一八五四号)  同(松浦周太郎紹介)(第一八五五号)  同(松澤雄藏紹介)(第一八五六号)  学校保健法制定に関する請願青木正紹介)  (第一七七四号)  同(田中伊三次君紹介)(第一七七五号)  同外一件(渡邊良夫紹介)(第一七七六号)  同(川崎末五郎君紹介)(第一八五七号)  養護教諭必置に関する請願竹谷源太郎君紹  介)(第一八八二号)の審査を本委員会に付託  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案小牧次生  君外二名提出衆法第六号)  国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一九号)  教職員勤務評定等に関する件      ————◇—————
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  まず学校教育法の一部を改正する法律案議題  とし、提出者よりその提案理由趣旨説明を聴  取いたします。小牧次生君。     —————————————
  3. 小牧次生

    小牧委員 ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知通り学校保健健康管理立場から、児童生徒の健康に対する基礎的意識をつちかうために、学校の中に、養護教諭を置くことはきわめて重要であり、その必要性は疑いを入れないところであります。このことは、法律的にも明らかでありまして、教育基本法の第一条に、「教育は心身とも健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあり、学校教育法の第十二条にも、「学生、生従、児童及び幼児並び職員健康増進を図るため、身体検査を行い、及び適当な衛生養護施設を設けなければならない。」と規定いたしてあります。そして、同法第二十八条におきまして、小学校には養護教諭をおかなければならないとされており、この規定は第四十条におきまして、中学校に準用されております。ところが、附則第百三条では養護教諭は当分のうちこれを置かないことができるとなっており、せっかく本則必置のものとされているのにもかかわらず、この附則によって、置いても置かなくともよいということになっております。そのため、全国学校数のうち、小学校三〇・五%、中学校一二・七%、盲学校八〇・〇%、ろう学校九六・六%、高等学校五八・六%、平均二六・八%に養護教諭が置かれているにすぎない現状であります。これを詳しく申しますと、養護教諭が最も多く配置されている県は、別紙資料にございますように、小学校では佐賀の九四%、東京の八二%、中学校では佐賀の五三%、高等学校では大阪の一〇〇%でございまして、最も少い県では、小学校愛知の三%、島根の四%、中学校養護教諭が一人も配置されていない県が、山梨、島根、岡山、徳島の四県で、高等学校でも二県あります。このような実態は、地方公共団体財政的貧困ということもありますが、その主たる原因義務設置になっていない点にあると思います。従って学校教育法本則にうたわれておりますように、義務教育立場からも、養護教諭をぜひ置かなければならないのであります。  以上申し上げましたように当分の間、置かなくてもよいとする附則はこれを削除し、もって、学校保健制度の確立をはからなければならないと考えるのでありますが、なお、国及び地方公共団体財政事情及び、これに伴い必要とされる養護教諭養成に多少の時日を必要とする点等考えあわせますと、一挙に整備することは、事実上不可能であろうかとも存じますので、本案におきましては、昭和三十三年度から三ヵ年計画を定め、これによって年々財政措置、その他の必要な措置をとり、順次、整備を行なっていかなければならないことといたした次第であります。  次に高等学校養護教諭に関してでありますが、現在高等学校におきましては、養護教諭必置とされてはおりません。しかし、生徒養護に当る教諭必要性は小、中学校と何ら異らず、現に高等学校の方が養護教諭を置いてある学校の割合が高いということも、その現われであるということができるのであります。そこで本案におきましては、第五十条の規定を改正し、高等学校につきましても養護教諭を必ず置かなければならないものといたしました。しかし、この場合におきましても、先ほど申し上げましたような事情がございますので、直ちにその完全な実施を求めることは、問題があろうかと存じますので、小・中学校の場合と同じように昭和三十六年度から完全な実施を求めることといたし、年々整備をはかることとした次第であります。  次に、事務職員に関し、御説明申し上げます。  御承知通り戦後わが国の教育制度は根本的に改善され、ようやくにしてその基盤が整いつつあります。以前はそれほど問題にされなかった学校事務も今日では教育の機能を十分に発揮せしめる背後の推進力として不可欠の要素となって参りました。しかしながら学校事務を担当する職員の置かれていない学校では教師複雑多岐かつ膨大な学校事務を、児童生徒の指導という重責を果しつつ、分担処理しなければならない状況であり、義務制学校教職員過重負担は他の社会人の想像に余るものがあります。  専門的な事務陣容を持つ高等学校以上の学校に比べて、小学校中学校は、県教育庁県出張所地方教育事務所地方教育委員会市町村役場管理を受けるために事務量は決して少くないのでありますが、事務を処理する専門的機関がなく、専門的な事務職員配置されていないので学校教師学校事務まで分担処理することは不可能であります。  現在の義務制学校事務職員配置状況全国学校数三万四千三百八十五校に対し、八千八百三十五名にすぎません。このことは地方公共団体財政的貧困ということもありますが、主たる原因義務設置になっていない点にあります。かくのごとき状態では、教師保健児童教育の建前からも、正常な学校運営は不可能であります。従って、学校教育法根本精神からも学校の正常な運営を行う上からも、全国小学校中学校には事務職員をぜひ置かなければならないと思うのであります。  学校教育法第二十八条に「小学校には、校長、教諭養護教諭及び事務職員を置かなければならない。但し、特別の事情のあるときば、事務職員を置かないことができる。」となっておりますが、以上申し上げました理由により、同法第二十八条のただし書きを削除して事務職員義務設置し、学校運営の万全を期したいと考えるのであります。なお国及び地方公共団体財政事情考えまして、一挙に配置することは事実上不可能であろうかと存じますので、本案につきましては国及び地方公共団体はその実施のため昭和三十三年度から三カ年計画を定め、これによって年々財政措置その他必要な措置をとり、順次配置を行なっていかなければならないことといたした次第であります  以上が、この法律案提案理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、御賛成下さるよう御願い申し上げます。
  4. 山下榮二

    山下委員長 本案に対する質疑は追って行うことといたします。     —————————————
  5. 山下榮二

    山下委員長 次に国立学校設置法の一部を改正する法律案議題となし審議を進めます。質疑の通告がございますからこれを許します。佐藤觀次郎君。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 文部大臣にまずお尋ねいたしますが、今度国立学校設置法の一部を改正する法律案の中に、多年伝統のある大阪外語並び久留米工業大学関係学校が新たにできることになりました。私たちは特に久留米などは現場を見に行って参りまして、これら学校が具体的になったことは非常に喜ばしいことでありますが、将来こういうような伝統のある学校が、いろいろな関係上廃校になったり、あるいはそのままになっているような学校がたくさんありますが、そういうような学校については逐次大学を設置されていくような御意図があるのかどうか。私たちはこういう伝統のある学校はやはり生かして使いたいという考えを持っておりますが、この数年来の文部大臣の声明で、実は新しく学校を作ろうという方針があったのを、今度松永文部大臣のときに初めてこういうような具体的な問題が出てきましたので、今後の御方針一つ承わりたいと思います。
  7. 松永東

    松永国務大臣 佐藤委員の御質問でありますが、実は御質問のうちにもありました通り、現在大学がまことに多過ぎる、しかもその内容を充実すべき問題が非常に残されておる。しかしながら今仰せになりました久留米並び大阪等は、私どもが主張しておりまする科学技術教育振興にどうしても必要性がありますので、それで今度新たにこういう大学を設けることにいたしたのであります。いずれ国立学校設置法の問題で、その趣旨の中で説明すると思いますけれども、要するに久留米の方は、すでにそこに旧来ありました学校の敷地も校舎も機械もそのままでありますので、これを利用いたしまして、そうして科学技術教育振興して中堅層の技師を作りたい、こういうことであります。久留米にはそうした種類の学校がありませんので、ちょうど地域的にも適当な場所だと心得ておる次第であります。大阪外国語学校の問題もやはり同様の趣旨であります。これは大阪土地柄外国貿易等に従事している青年がたくさんおりますので、この人々夜間を利用してそうした教育を施したいという趣旨であります。従ってこれからこうした大学を新設いたしますについては、相当研究を要すると思いますけれども、右申し上げるように必要性がありますので、それでそうした提案をいたしたような次第でございます。  なお御指摘になりました、そうした大学がいろいろ全国にありますので、こうした問題も研究してなるべく活用させたいというふうに考えておる次第でございます。
  8. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点大臣にお尋ねしたいと思いますが、科学教育の普及が非常に問題になりまして、今度政府もいろいろそういうふうな方針を立てておられますが、実は設備や教授の関係でそう簡単にはできない面があります。そこで私が大臣にお尋ねしたいのは、実は私学の方で理工学部とかあるいは医学部というような問題があるわけでございます。私立大学医学部方針などをいろいろ聞いてみますと、戦前には百二十人くらいとっておった大学が現在は定員数がありまして、四十人、六十人あるいは八十人というような非常にわずかの生徒を募集しておるわけでございます。御承知のように昔は大学経営は、自分の付属病院でうまくいったのでありますが、現在は付属病院が昔のように経営上うまくいっておりません。そこで今大体五万円程度でありますが、そういうようなわずか五万円くらいの月謝ではとうてい大学がまかない切れない現状があり、また一方においては文部省の方からやかましく定員数を言われている関係上、私立医科大学は非常に経営困難な事情もあって、とかくのうわさもあるわけでございます。こういう点と考えあわせて、おそらく私立大学理工学部も非常に科学が発展しました関係上、機械設備なども古くなって新しい設備を入れなければならぬような状態になっておると思います。そういうような関係国立学校でまかなえないところは私立学校でまかなわせるために、何らかの方法私学方面を救う道はないか。松永さんは私立大学を出ておられますから御存じだろうと思いますが、そういうような私学理工学部医学部方面の収容のことに対して、文部省は積極的に補助を与える考えはあるかないか、また何らかの形をとらなければ——私たち私学経営困難になっている今日、何らかの手を打ってほしいと思うのでありますが、大臣はどういう御所見を持っておられますか、お伺いしたいと思います。
  9. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたその趣旨については全く同感の点が多いのでございます。官立公立でまかない切れない点を私学が非常に協力してくれまして、そしていろいろ時勢に応ずるような教育をやってくれていることは御承知通りであります。しかしながらこれに対して、仰せ通りそのまま放置しておきますと、私学も非常な経営難で、学生月謝のみに依存してやっておりましてもなかなか経営困難なことは私どもよく承知しております。従って特に理科、工科等推進につきましてはいろいろ私学の方とも協議いたしまして、三十三年度の予算ではざっと二億円ばかりを補助費として出しまして、そして私学科学技術系統への切りかえ並び文部省意図に対して協力してもらうための費用として計上しているような次第であります。これはまだまだ足りませんけれども、しかしながらまず初年度といたしましてはこのくらいで十分やっていけるというような私学側の意見もありましたので、これで不満足ながら出発をしようということに大体私学側の方とも協議が成り立っているわけであります。従って右申し上げるような科学技術教育振興私学側の協力もまず滞りなく進行することができるのではないかというふうに考えております。
  10. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大臣がそういう理解があるのでこれ以上は申しませんが、国立学校と並行してぜひ私学関係の方も国家としても文部省としても考えていただきたいということをお願いしておきます。  なおこれは大学局長にお尋ねするのでありますが、久留米大学及び大阪外語学校定員数とか、どういう方法でおやりになるかというようなことについての、簡単なことでいいですから、構想を承わっておきたいと思います。
  11. 緒方信一

    緒方政府委員 まず久留米工業短期大学でございますが、以前の工業専門学校のありました場所に、先ほど大臣から御説明がありました通り設置いたすわけであります。これは終戦後九州大学分校として利用されておりましたけれども、その後分校が福岡の方に引き揚げましたので、跡は九州大学研究所が一部使っておりましたけれども、大部分の施設あるいは設備が残ってそのままになっております。これを利用いたしまして新しく短期大学を設置したいというわけでございます。そしてこの学科数は二つ設けたいと思います。機械科工業化学この二つであります。学生数はおのおの四十名でありまして、合せて八十名であります。まず来年度から設置いたしますのは短期大学でございますので、昼間二年制でございます。  御承知のように従来国立学校短期大学といたしましては、勤労青年に対します教育機関として、夜間三年制を設けまして、これを国立大学に併設する形でやって参っておりますが、この久留米工業短期大学は全く独立の学校でございまして、従来の例を破って新しい型を作りたいという構想でございます。これはいくいくはさらに旧制高等工業学校が果しておりましたように、充実した中堅工業技術者を育成する学校機関として発達させていきたいという構想はございますが、まず最初といたしましては、二年制の短期大学、かようなことを考えております。  それからもう一つは、お尋ねの大阪外国短期大学でございますが、これは英語科中国語科イスパニア語科、この三学科でございまして、学生数英語科五十名、中国語科三十名、イスパニア語科三十名でありまして、総数百十名でございます。これは先ほど御説明しました従来の短期大学と同じでありまして、夜間三年制で、これは先ほど大臣から御説明のございましたように、実際に貿易業務に従事しております実務者資質向上と申しますか、そういう面でこの学校を活用していきたいという趣旨でありまして、大阪外国語大学に併置いたして進めていく構想でございます。大体以上でございます。
  12. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 せっかくできた以上は、内容を充実するような大学を作りたいと思いますが、次に、昨年の四月二十三日、同僚の坂田委員から提案が あって、科学技術教育振興及び教員養成機関について、実は満場一致の決議案が通過したわけでございます。そこでそのことについて文部大臣も非常に御熱心でございまして、私たちも喜んでおるわけでございますが、実は学芸大学の問題は、御承知のように二年制度と言いうのがだんだんすたれて参りまして、今は学生需給関係からいいますと、二年の課程を出た生徒では、もうほとんどその用をなさぬ。現在の科学技術教育が非常に盛んになった以上は、やはりどうしても四年制度学校でないと、一人前の先生になれないと思うのでございます。そういう点について、たびたび御陳情申し上げたわけでございますが、愛知学芸大学以下、高田、池田それから小倉等分校が問題になっておりますが、こういう問題について文部大臣はどんな方法でこれを具体化していただけるのが、まずお尋ねしたいと思います。
  13. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は、長い間非常に研究を議院においても重ねられて参りました。さらに仰せになりましたような決議も出ておることも承知いたしております。従って何とかこれをその決議趣旨に従って具現化したいと思いまして、いろいろやってみたのでございますが、ちょうどたまたま昨年来御承知のように、科学技術教育振興ということが力強く国民の間に世論として盛り上って参りましたので、そうした各地に存在いたしておりまするところの学芸大学と、それからさらにそうした大学における科学技術教育に必要な先生養成する、こういう点もあるのじゃなかろうかというような事柄から、実はそれぞれの専門人々一つくまなく調査をして善処してもらうというような考え方から、御承知のごとくこの三十三年度の予算調査費として合計百万円を計上いたして、御協賛を仰ごうといたしております。これは右申し上げました画期的な科学技術教育振興とさらに各地に存在いたしております学芸大学処置について、どうすれば充実したる先生養成することができるかというような点とにらみ合せまして、万全を期するという考え方から、予算を要求いたしておるような次第であります。御了承置きを願いたいと存じます。
  14. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ御心配をかけておるわけでございますが、愛知県の場合は、愛知県会が決議をして、教育委員会も同様の決議をして、ぜひ四年制度にしていただきたい。これは大学内の問題でなくて、やはりこれは政治的な問題にわたりますので、文部省がもっともお力を示して下さって、しかるべく処置をしていただきたい。これは多年の問題でありまして、私たち文教委員といたしまして、こういう問題が具体化されないと、教育機会均等という立場から、いろいろ不利な状態が出てきておるわけでございます。こういう点で緒方大学学術局長は現実の実情をよく知っておられますので、この問題は将来どういうふうに処置されるものであるか、またどういうような方法で何らかの明るい見通しをつけられる方法があるのか、その点を緒方大学学術局長にお尋ねしたいと思います。
  15. 緒方信一

    緒方政府委員 教員養成大学学部の問題はいろいろ問題点がございます。制度自体といたしましても改善しなければならぬ問題点指摘されておりまして、文部省といたしましては、御承知のように昨年来この制度の改善につきまして、中央教育審議会に諮問をいたしまして、ただいま検討中でございます。問題として指摘されておりますことは、これは申すまでもございません。新しい教員養成制度におきましていわば批判として出ておりますことは、その教員の特に義務教育における指導能力の点が一つございます。いわゆる学力の問題、それから教員としての技術的な指導力の問題、それからもう一つは、教師としての信念の問題と申しますか、あるいは心がまえの問題、それらの点につきまして、今の制度でいいかどうかという根本的な問題が指摘されておるわけでございまして、やはり教師として養成をするという目的をはっきりした方向に改善すべきじゃないかという意見がありまして、それらを中心として根本的な検討を今いたしておるような次第でございます。  それからもう一つの問題といたしましては、需給調節の問題でございます。御承知のようにだんだん児童生徒数が減って参る傾向がございまして、また一面教員構成がだんだん落ちついて参りまして、無資格者がだんだん少くなってくるというようなここともございまして、やめる先生が少くなる。従ってそういういろいろな要素がからみ合いまして、需要面が少くなってくる。卒業生がなかなか就職できないような状況がございます。これは需要と供給の調節が今の制度では十分うまくいっておりません。従ってこれらの質の問題と量の問題の両方の問題を中心として検討いたしておるような次第でございます。  これらを検討いたしますと、どうしても大学の今後のあり方、あるいは設置単位の問題、現在では一府県に一大学を原則としておりますが、設置単位をどうするが、その際に、今お述べになりましたような分校の問題等も出てくるわけでございます、私どもとしましては、全般の問題としましてこれを十分よく検討しまして、全般の見通しを立てました上で、各大学の実情に応じた態度をとりたい。かように考えておるような次第でございます。
  16. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実は先ほども大臣が言われましたように、科学技術のことが第一でありますので、これはおそらく——内藤初中局長は来ておりませんが、将来科学教育を普及するのには、ひとり大学研究ばかり大事にするのではなくて、やはり小学校中学校の理科教育というようなものをもっと具体的にやらなければ、上の方だけやっても、下の方がよくなければ科学技術の全体は上らないと思います。そういう点で、教員養成大学はやはり二年制度のようなことでなくて、やはりそういうような先生養成して、それから立ち上らなければ、真の科学教育の普及徹底はできないと、思います。そういう点について大学局長はどんなようにお考えになっておるのか。私たちは、二年制度のような一時的なやり方では、もうすでに御承知のように短期大学の問題を文部省は今度構想されておりまして、法案を出そうとされております。そういう点から考えまして、基礎的な教育を、小中学校先生に対してこの際徹底した教育を行わなければ、真の科学教育というものの前途は私はだめだと思うのでございますが、そういう点についてのお考えをただしたいと思います。
  17. 緒方信一

    緒方政府委員 先ほど私が御説明いたしました中に落した点でございますが、私どもといたしましても、二年課程で養成をするということにつきましては、不十分であると考えております。これは例外的に需要がまだ非常にある、たとえばこの前申し上げましたけれども、北海道のごときはさようでございますが、そうでない、需給が落ちついている、むしろ余っているというようなところがだんだん多くなって参りますから、二年課程を存置することにつきましては、非常な問題があると存じております。やはり四年間みっしりと教育をした先生でなければ、今御指摘のように、特に科学技術教育振興という観点から申しまして、不十分であるということが言えると思います。さような点から申しまして、各二年課程につきましては、漸次これを四年課程に移していくというようなことが必要だと存じますが、その際に先ほど申し上げましたように、需給の問題がありまして、その土地土地の養成数をどういうふうに押えていくかといういうことが、これに関連して問題になってくると存じております。従来文部省がとって参っておりますのは、二年課程を減少し、そうしてそれを四年課程に——大体半数くらいを四年課程に振りかえていく、こういう方向で参っております。しかし先ほど申し上げましたように、これはもう少し根本的に検討を加えまして、はっきりした対策を今後きめていかなければならないものと存じております。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実はこの学芸大学の問題についわれわれ——竹尾君はなくなりましたが、実は坂田委員あるいは並木委員などと一諸に、各地を具体的に見て参りました。まだそのほかの委員の方も現地を見てこられましたが、実際の場合書、教員養成学校というものは、御承知のように需給関係がありまして、地理的あるいは伝統的ないろいろな問題があって、それが一派閥というような問題で、いろいろ問題を起しております。現に私どもの愛知県でも、そういうような懸念が絶対にないとは申せません。しかし戦後大学制度が変りまして、そのためにいろいろ問題がありましたけれども、逐次これは解消されてきました。今国の予算関係上いろいろの点に金が必要なときに、国がやたらに予算を出すということはなかなが困難な事情があることは私は承知しておりますが、しかし設備のある学校で、しかも需給関係のあるような、そういうようなところならば、やはり逐次これを整備していただきたいと私は考えるわけです。私は名古屋ではありませんけれども、名古屋のように百五十万も人口のあるところに、学芸大学の四年制が置かれないというそんなばかなことは常識上考えてもないわけです。しかもりっぱな設備があって、愛知県の全体の三分の二の教員を必要とするようなところに四年制度がないというようなわけであります。今のような状態考えていくと、将来小中学校生徒には非常に優秀な者が少くなる。私の選挙区に一宮というところがありますが、ここには正規の四年制を出た人が全教員の一割、十五人しかいないというような現象が出ております。これはゆゆしき問題でありますので実は地方から何とかしてもらいたいという非常に強い陳情があるわけであります。このままでいったならば、非常に学力が低下するのではないかということで、私たちは地方にいくたびに現在文教委員をやっておりますので、責められるわけあります。私たちは何も理屈のないことを言ってだだをこねるわけではありません。今の稲田次官が局長当時名古屋に来てもらいましたが、実際にそういう問題にからんで、こういう問題を等閑に付さないで、文部省自身が積極的に何らか具体的な対策を講じていただきたいと思います。並木君、坂田君も現場を見ていただきましたので、十分御存じでございますが、ただ地理的な問題は、御承知のように両方から陳情がありまして、いろいろ関係当局も困りますけれども、しかし公平な立場から何らかの方法を講じなければ、だんだん一方に偏して学力が低下するような懸念があるわけでございます。私たちは、師範科あるいは学芸大学を出たものではありませんけれども、公平な立場からこれを善処するのには、やはり地元でどうこうやることは、できません。やはりどうしても文部省が高い見地に立って、そうしてこれを処理していただきたいというふうに私は考えるわけでございます。自分のところだけよくしよう、そういうけちな考えではなしに、将来の学芸大学の問題あるいは大学の教養学部の問題は、科学技術教育と関連して大きな問題になると思うのでございますが、こういう点について文部大臣はどういう所見を持っておられるか、一つその点お聞かせ願いたいと思います。
  19. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたその理由は、われわれ全部賛成でございます。先ほど来仰せになりました通り科学技術教育振興するには大学だけではいかぬ、ピラミッドの一番頂点だけを幾らやってみたって何もならない。ピラミッド型の下から積み上げてこなければならなぬ。すなわち小、学校中学校の時代から科学技術の基礎教育をやっていかなけりやならぬ。理科、数学等をやはり培養していって、そうしてそれが大学となり大学院となってちっとも差しつかえのないような基礎教育をすでに小学校中学校時代にやっておかなけりやならぬというような仰せごもっともで、文部当局といたしましてもその趣旨に従って今いろいろな計画を立てておるのでございます。従って仰せになりましたそうした各地に存在いたしておりますところの教員養成学部、これについてどういう処置をとるか、しかもそうしたりっぱな学部、りっぱな校舎があり、施設があるのに、それを遊ばせておくということはもったいない話であるばかりでなく当面の必要として迫らている科学技術教育養成の一端にもしなけりやならぬのじゃないかというような考え方がら、御承知のように今度委員会を新たに設置いたしまして、そうしてそれにそうした面に対する専門家、エキスパートの人々にたくさん委員に入ってもらって、そうして各地の、仰せになりましたような問題を解決すると同時に、科学技術教育を基礎的にどういうふうにしていくかということもあわせて研究したいというふうに考え予算を請求しておるような次第でございます。予算がもし御協賛を得ましてとれましたら、いたずらに予算を眠らせておくというようなことは絶対にいたしません。早急に一つ着手するつもりでございます。御了承願います。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大臣に私たちが言うのは釈迦に説法でありますから、これ以上申しませんが、四月二十二日の坂田委員決議案は、私たち会議員として三回も実はうまくいかなくて、非常に苦心に苦心を重ねて、全会一致の決議案になったわけであります。法律ではございませんから、これをたてにとってどうこうということは言いませんけれども、院議をもって、全会一致ということになっておる決議案でございます。科学技術教育と同時に、教員養成機関もここの際すでに文部省は先ほども申しましたように、短期大学の問題を、云々されておる以上は、やはり戦後重大な問題として絶えず文部省を悩ましておる問題でございますが、どうか一つ、この問題についての具体的な、しかも抜本的な対策を講じていただきまして、一つ教育に対し後顧の憂いのないようにやっていただくことをお願いいたしまして、私の質疑を終ります。
  21. 河野正

    河野(正)委員長代理 永山忠則君。
  22. 永山忠則

    永山委員 ただいま大臣は、今度の予算で、教員養成充実に関する調査費を組んでおるから、委員会制によって十分一つ実情を調査して万全を期したいという御言葉をいただいたのでございますが、大体の委員会構想並びに現在教員養成学部あるいは教員養成機関の充実問題については、中央教育審議会においても審議をされておるのでございますが、それとの関連性についてはどういうようにお考えでありますか。
  23. 緒方信一

    緒方政府委員 中央教育審議会に諮問をいたしまして、今審議中でございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、制度の基本問題をやるわけでございまして、このたび調査費によりまして調査をいたすということは、各大学の問題のありますところにつきまして、個々の問題、各大学事情を十分調査をいたしたい、こういうことでございます。従いまして、その間に若干性格が違うと思います。     〔河野(正)委員長代理退席、佐藤(觀)委員長代理着席〕
  24. 永山忠則

    永山委員 この調査会の委員会制によって個々の問題を研究するいうことでございますが、その委員会制の構想はまだおきめになっておりませんか。
  25. 緒方信一

    緒方政府委員 これはまだ十分確定いたしておりませんが、予算成立の上はすみやかに実施に着手したいと思っております。十分検討した上で考えをまとめたいと思います。
  26. 永山忠則

    永山委員 個々の大学の実情をよく検討し、しかも中央教育審議会制度に関する根本問題とあわせて、十分万遺憾なきを期したいという考え方には共鳴いたすものでございますが、この委員会の構成等に関しましても、高い見地から、きわめて公平に妥当に構成をされて結論を得られることを要望いたしておきます。  この際、佐藤委員から申されましたように、院議で満場一致決議されました、この伝統と歴史を尊重して、一県一校主義にとらわれず、地方の実情をよくしんしゃくしてやるのだという院議尊重に対しましては、十分御配意をいただきたいと思うのでございますが、念のために大臣にさらにその点をお聞きいたしておきたいと思います。
  27. 松永東

    松永国務大臣 もちろん院議を尊重せなければならぬということは重々心得ております。しかしながら、御承知のようないろいろな環境の変遷によりまして、新たな考え方をせなければならぬ点もあります。従って、先ほど佐藤委員からの御質問にお答えしたように科学技術教育振興等とにらみ合せて、そうして教員養成の上に万全を期したいというふうに考えておる次第であります。
  28. 永山忠則

    永山委員 ただいまお言葉にございましたように、時代の進展とともに、あらゆる面を総合して御研究をいただくというお言葉を了承いたしますので、さらにお尋ねいたしたいことは、先年大学を各大学ごとに中央集権的に統合しようという考え方のもとに、統合案というものが出ておった。その統合案というものは、すでにきわめて古い数年前の社会実情を中心にできました一県一校主議の統合案でございます。その後においての社会情勢すべてが変化いたしておるのでございますので、ただいまの文部大臣のお言葉によりまして、大学を一県一校主義に統合しようという考え方にとらわれず、その後の実情等を十分勘案してやるというお言葉であると拝承いたしたのでございますが、その点はいががでございますか。
  29. 松永東

    松永国務大臣 御指摘通りでございます。実は四、五年前に県内一ヵ所に統合しようという企てをしたときは、それがその実情に沿うことであったと思いますが、今日ではそうばかりにいかぬ点もあります。さらにまた、県内におきましても、やはりその地方々々のいろいろな特異性があります。その特異性を生かしていくということも教育の上に考えられることじゃなかろうかというふうにも考えております。しかし、こうした問題は、あげて委員会議題の主要な研究問題となるであろうと存じております。必ず適当な方策ができ上ることと信じておる次第であります。
  30. 永山忠則

    永山委員 今なお教育方面において中央集権的な考え方が、大学の首脳部その他教育の指導的立場の者に相当根強く考えられておるのであります。その理由はいろいろございますが、中央集権的に一校に統合することによりまして、非常に教育内容が向上するのだという点、さらにもう一つは、経費が節減されるのだという関係であります。すなわち教育内容の向上ということは、優秀なる先生を多数擁しておりますので、それによりまして相互にその人材及び教授の交流ができるから、やはり中央集権的に集中いたしておくことが、よほど教育内容を向上させていくのだ。また経済面からいいますと、分散をしておくことは設備の点から見ましても、あるいは教員配置上、県内を担当していく県単旅費というのが要るわけであります。いわゆる各大学並び分校へ教授に回って行かねばならぬというような旅費も要るこことになる。また従って先生配置も重復する点もあるので、能率的でないというような点で非常に費用がたくさん要る。だから経費の面から見て、あるいは教育内容の向上の点から見ても、これは中央集権的なものがいいという考え方が強く存在いたしておるわけであります。なお、事実上教職にある人は大都会で生活することが自分の教養上さらに勉強する上から見ても、あるいは子供の教育の面から見ても、生活環境から見ても、文化生活から見ても、やはり一番中心の都市におることが好ましいといったような状態から、今なお中央集権的な考え方がございますけれども、しかしこの中央集権的な考え方を、われわれはどこまでも経済的な理由とか、あるいはそこにおる先生の生活環境の問題とかいうような関係だけを中心に考えるべきではない。すなわち最も恵まれざる辺境の地にも国民が存在をしておるのでございますから、国民全部の幸福から見ましても、地方々々に学校が存在しておって、ことに教育養成機関においては、県の中心だけでなしに、適当なところに教育センターがありまして、そこを中心に付近の教育をすべて今全体のレベルを高めていく。またそこの付近の先生がその教育センターを中心に絶えず練成をして、付近全体の先生教育程度を高めていくというような点から見まして、また県民の全体からいいますと中央集権的であってはいけない。また国民の全体からいいますれば、東京中心だけであってはいけないのだ。国民全部の幸福を考え国民全部の教育の全体のレベルを上げていくというような観点から見まして、中央集権的な考え方を排除して、適当の地区を教育養成機関として、そこを教育センターとして全体の教育のレベルを上げていく先生の教養度を高めていくことが望ましいという考え方が、一県一校主義にとらわれず、さらに伝統と歴史をとおとぶものであるというようにわれわれは考えておるのでございますが、この点に関する大臣の所見を承りたいのであります。
  31. 松永東

    松永国務大臣 永山さんの仰せになったことはまことに仰せ通りだと思うのであります。ことに私どもは、主として東京を例示いたしますが、東京が中心である。そうしていわゆる中央集権的な学制をしくということは戒めなければならぬことだと考えております。それぞれの地方々々に御承知通り一県一大学がございます。従ってそのそれぞれの県々で、その地方の特異性を生かしてくい、そしてその学校に勉強するところの青年層の人々も、その特異性のもとにやはり教育を受けていくということが望ましいことだと思っておる。しかしながら現状は何といたしましても東京々々というふうにみんな青年層があげて大学に参ります。これは御承知通り、長い間東京に大学がありまして、これが学問の中央部になっておりますために、勉強するのには東京だ、東京だというので、私もそうでありましたが、永山君も皆さんもその通り、東京々々といって目ざして過去に来られ、今日でもその趨勢は見せております。だがしかし、それは何に起因するかというと、やはりその学校々々のそれぞれの校風と申しますか、経歴と申しますか、歴史と申しますか、それがものを言っておるのだと思います。従って地方にあります、ところの各大学を、りっぱな大学にして、そしておのずからそれに威成を持たせるというようなこことにいたしますれば、先ほど来申し上げておりますように、その地方々々の青年が、東京に集まらないでもよろしい、大阪に集まらないでもよろしいというふうになる。従って私どもの理想といたしましては、右申し上げる通り各地方々々にありますところの大学で、りっぱな大学教育を施すようにしたいというふうに考えておるのがわれわれの考え方でございます。なお各県々々においても、やはり中央集権的な施設をしておるところがある。大学の集まっておるところがあります。そういう点は必要上各地方々々に散在しておりますその必要性考えて、処置しなければならないというふうに考えております。
  32. 永山忠則

    永山委員 私は今問題になっております広島大学の三原分校の件について例証を申し上げたいのでございます。いわゆる中央集権的な考え方だけでなしに、伝統と歴史をとおとんで、そして一県一校にとらわれずに、教育行政機関は特に伝統のある地に存置することをお考えを願いたいのであります。私は三原分校の件について事例を申し上げて、御意見をさらに承わりたいと考えておるのでございますが、広島県は大県でございまして、中国山脈の背筋を北に控え、山また山、それから南の瀬戸内海の島々を全部持っておるのであります。この山間僻地と離島振興法で、今回さらに恵れざる電灯のないところに、電灯をつけてやろうという法律ができましたのですが、こういう島々まで控えておるのであります。こういう地形の状態のところである広島県の東部三原に、教育養成機関がございます。その教育養成機関を卒業した先上が非常に優秀なる成績を持っておるのであります。ここは二年課程でございますが、将来四年課程へぜひ持っていかねばならぬという考え方で、われわれは構想を進めておりますが、二年課程でありながら——これはあまり内容的には申し上げられぬのでございますけれども、県の教員の採用の試験があるのであります。この教員採用試験を見ましたならば、一番平均点の成績がいいのであります。その点数まで申し上げることはどうかと思うのでありますけれども、大学の四年課程を経てきた者よりは、数段優秀なる成績をもってパスいたしておるのであります。そして山間僻地あるいは島の奥地で一生涯教育に専念をいたし、模範の学校を作り、模範の教育を行う先生として非常に尊敬されておるのであります。そういうように先生自体が、——卒業生がいいだけではなしにそこを中心に付近の先生が練成を続けられておるのであります。あらゆる講習会、研修会をやっておるのでございます。ことに付属小学校がございますので、その機関を通じて、また先生を中心にして練成を続けておるのでございますから、付近全上体の教育レベルが非常に高く、しかも文化が高いのでございます。われわれはそれはどういう理由であるがということについていろいろ検討いたしておるのでございますが、通学し得る範囲及び層が深いのであります。しかも経済的に悪くても勉強したい、大いに自分も知性を伸ばしていきたいという燃え上った生徒が多く集まるのであります。そういう関係におきまして非常なる成績を上げておるのでございます。今日なおこの時代に至りましても教育機会均等主義は行われていない。こういうような経済的に悪いところの、しかも優秀なる将来伸びる生徒機会均等的に養成をする、教育をしてやるということが今なおできていないということに対して、非常に遺憾に思う。しかしそれらの層を三原分校はある程度まで吸収をいたしておるものであります。やはり広島市へ集中するということでなしに、三原市に一つ教員養成機関があるということが、教育機会均等の不備を補正しておるのではないかというように考えておるのでございます。この機会に、教育機会均等主義によりまして、さらに言葉をかえて教育の社会保障制度政府はどう考えておるか。今日高等学校へもなお行けないところの層が四割五分ないし五割に近いものがあるのであります。そういうような経済的に恵まれぬ層の中にむしろ優秀なる人がたくさんあるのであります。それらの皆さんの教育をぐんぐん伸ばすために、政府はどういう抜本的な施策をなさっておるのであるか。そういうようなこともせずにおいて、ただいたずらに学校の経済的な理由で、文部省の経費を節減するために大蔵省から強く圧力をかけられる、あるいはただ先生の生活環境というようなことで、中央集権的に統合をされるということに対しては、われわれは断固反対をいたしておるものでございます。それに対しては今回育英資金法の改正によって五千人の英才教育をやるというようなお考えを持っておられるのでありますけれども、そういうような微温的なる、微々たる考え方であっては教育機会均等、あるいはほんとうに恵まれざる経済におられるところの子弟の教育を、その分に応じて伸ばすというようなことはできないのではないかということを私は非常に残念に思う。社会保障制度を確立するということは、まず教育からである。教育の社会保障制度の確立が第一だ。いやしくも非常に優秀なるとこころの子供は幾らでも伸ばしてやるのだからというような考え方がなくてはならぬ。そういうような関係人々を三原分校は自然に吸収をいたして教育をしておるのであります。やはり伝統と歴史をとうとぶということは、そこにあるのだと思うのであります。こういうような伝統と歴史による教育のセンターが広島においては三ヵ所に分散をしております。当局の考えは如何でありますか。  この場合育英資金の中で、教員養成を目ざす者に対しまして別ワクをもってこれをやるというようなお考えをお持ちでございますか。またこれに対する教育機会均等あるいは経済的に恵まれざる者の教育を伸ばしてやるということに対する根本問題についても所見を承わりたいのであります。
  33. 松永東

    松永国務大臣 今この学芸大学とかもしくは先生志願の人々に優秀な人があります。そういう人々を特別扱いをして別ワクで何か育英事業をやる考えがあるかというような御質問であります。これは実は今育英法の一部を改正いたしまして、さらにワクを広げて一般的に貧乏なうちの子供でも、教育機会均等にあずかるようどんどん伸ばしていこうということで企てておることは御承知通り。さらにこれは協賛を仰ぐということになるわけですが、しかしながらそのうちで、ただ単にその教員志望の人だけを別ワクでやるということは今日考えておりません。また考えておらぬばかりでなく、これは今実は教員の需給問題とからんで、一体どう処置すればいいかということで、専門家の意見を煩わしておるというのが実情でございます。従って御指摘になりましたその広島県の問題、これはその地方々々で相当の、やはりあなた以上の意見を持って熱望しておられるお方々もあるので、そういう地方の実情も勘案しまして、そうしてあとにできる委員会一つ諮問をして善処したいというふうに考えております。  なお先ほども申し上げました育英会の奨学金のことでありますが、これは別ワクは全然ないことはありません。その別ワクは、それは今まで奨学生として採用しておった人のほかに、優秀な頭を持った学生で、家貧なるがためにその向学の志を達することができないというような青年に対して、今度この育英法を改正してもらって、五千人だけ、これは別ワクです。そうしてどんどん引き上げていこうというような計画を立てておる次第でございます。
  34. 緒方信一

    緒方政府委員 育英奨学金の問題でございますが、教育学生に対しまして、今大臣からもお話がございましたように、別ワクといたしましては、一般大学学生のほかにとっております。これは率から申しましても、一般の大学生よりも高くいたしております。一般の大学生のワクは、在学生のうちのおよそ二〇%でございますけれども、教育関係の奨学生につきましては、ここれを四〇%にいたしております。
  35. 永山忠則

    永山委員 今度の優秀なる生徒に対する特別措置でございますが、それはやはりただいまのような教育関係の方の率を多くとるというお考えでございますか。
  36. 緒方信一

    緒方政府委員 これもただいま大臣からご説明がございました通りに、これは別ワクとしては考えておりません。
  37. 永山忠則

    永山委員 旧来教員養成関係の師範学校では別途県が費用を支出いたしまして、優秀なる先生を賛成し、さらに教育に将来専念するという心がまえの士を、しかも経済的に悪い層も含めた、深い層から教員養成をいたしておりましたので、そのため中学校よりも上り以上優秀なる人物を得たのであります。何といっても教育がもとでございますので、教員養成に対しましては、別途今回の優秀なる生徒に対する特別措置は率をよくされまして、将来はますますこれを拡大をさるべきであります。今日やはりお医者の方の関係は、これと同じように別途法律を設けて、こういうような特別措置をとつておりますので、将来の教員養成に対してもお考えをめぐらされまして、いわゆる私が基本的に質問をいたしましたところの教育機会均等、恵まれざる層の英才をいかに伸ばすかということに対しての一助ともされることを私は希異いたしますと同時に、さらに教員養成に対して、ただいま大臣は、生徒の数が移動する関係上、教員養成機関があるいは縮小するんではないかといったような気持が受け取られるのでございますけれども、われわれは政府構想されておる学級定員法と今後の教員養成機関との問題に関してお伺いをいたしたいのでございます。  学級定員法を、漸次にすし詰め教育を解消して、理想化するという方面に持っていくならば、今日の教員養成機関を縮小するというようなことは毛頭考えなくていいのだ、あるいはむしろこれを合理的に拡充していいのではないかということを考えておるのでございますが、これに対するお考えはいかがでございますか。
  38. 緒方信一

    緒方政府委員 全体の傾向といたしましては、教員の需要の傾向としては、先ほどもちょっと申し上げましたが、教員構成がだんだん質がよくなっつております。つまり無資格者の率がだんだん少くなっておりますのが一つ、それからそういうことで教員構成が落ちついておりますので、やめる人が非常に少くなっておるというのが現状であります。そういう面からいたしまして、現在正では需給がつり合っていない、卒業生が出ましても就職ができないという現象が起っております。しかし今お話のように、今後教員定数を拡充いたします等の措置を講じます場合には、その要素も十分考えて、需要を計算しなければならぬと思います。それらのことは十分含めまして今後研究いたしたいと考えます。
  39. 永山忠則

    永山委員 ことに今度の調査会あるいは中央教育審議会で御研究をいただかねばならぬことは、教員養成の学部を出た者の優先採用でございます。何としても教育に専念しようという心がまえで入学をいたし、それに専念しておるのでございますから、これは優先採用するのだという考え方と、同時にすし詰め学級定員を漸次に理想化していくのだということをあわせてお考えの上で、教員養成機関の縮小どころかむしろ充実を御研究にならなくてはならぬにもかかわらず、そういうようなことは考えずに、ただ、一年過程のものはつぶして漸次に四年過程だけにするのだというようなことで、いたずらに二年過程の縮小に狂奔するという感がなきにしもあらず。これらの根本的な問題と総合して二年過程というものが考えられねばならぬのでございますが、この審議を見ずして、この調査を見ずして、ただ二年過程のものをやめるということに指事をかけるというようなことがあってはならぬと私は思うのでございますが、このすし詰め教育の解消による学級定員の理想化、さらに優先採用等を勘案し、調査並び教育審議会の意見等を相待って、そうして、しかる後に教員養成の二年過程の数等に対して慎重を期せらるべきであると思うのでありますが、この点に対する御意見をお伺いしたいと思います。
  40. 緒方信一

    緒方政府委員 優先採用のお話でございますが、これは先ほども何べんも申し上げましたけれども、中央教育審議会で今検討いたしておりまするのは、教員養成制度そのものをどうするか。現在の考え方としましては、ある程度計画養成しなければならぬではないか。ただいまのように質の上でも量の上でも、いわば無計画養成するということではいけないのでございまして、計画養成の方向に進むべきであろうということになってきつつございます。そういうふうに計画養成をするということになりますと、どうしても計画養成をしました者を優先的に採用していく、こういうことになるかと存じます。昔の師範学校教育の弊は十分避けなければなりませんが、今のままではいけないであろう、こういう批判から、制度そのものの検討が行われておる次第であります。
  41. 永山忠則

    永山委員 それでは中央教育審議会の答申は、いつごろまでに出すような御方針にされておるのでありますか。
  42. 緒方信一

    緒方政府委員 この見通しはちょっと非常にむずかしい問題でございます。まだ途中でございまして、なるべく急いで結論を出してもらいたいとは思っておりますけれども、いつごろまでということを今日申し上げる段階になっておりません。
  43. 永山忠則

    永山委員 それでは本年度の教員養成に関しまして二年過程をどういうように少くするか、どういうように教員養成計画を持ってくるかということに間に合わぬのではないか。私はすみやかにこれが結論を得て、やはり計画養成の線を少くとも三十三年度から実行されるように特に督励をされなければならぬと思うのであります。そういうようなことなしに、ただ二年課程というものがどうも評判が悪いからというようなことで、これをどんどんと募集を少くしていこう、あるいは募集が少くなって自然に廃校以外にないじゃないかといったような、そういう募集によって重大なる学校の統廃合へ追い込むというようなことは、私はそういう策を持つことはないと思いますけれども、そういうことは断じてあってはならぬと思うのでございますが、この点はいかがですか。
  44. 緒方信一

    緒方政府委員 いろいろお述べになりましたような点は十分勘案いたしまして、制度の検討をすみやかにやりたいと思っております。その上で根本的な態度をきめなければならぬと思います。少くとも今日におきましては、根本的な方針がきまりますまでは、原則として現状でいきたいと考えております。
  45. 永山忠則

    永山委員 私が特に教員養成機関を出ましたところの先生を優先的に採用してもらいたいということを申し上げますことは、今日各大学を出ました人々が、優秀なる会社その他官公署へ就職をやってみたけれども、どうもうまくいかなかったというような関係の残りの——そういうことを申し上げることはちょっと強過ぎるかもしれませんけれども、そういう人々が相当多数に、まあ行くところがないから教員になろう、しかもそういうような大学へ行く人は家庭的に恵まれております。そういう関係で、また地方の社会的地位に恵まれておる人との関連が強いのであります。そういうような政治的な強い動き等をもちまして、そうしてせっかく教員を目ざして専念しようとして就職を求めておりながらそういう関係に強く抑されて就職が因っておるというような非常な不合理が出ておるのであります。そうして試験の結果を見ますと、やはり教育養成学校を出た者がきわめて成績はよろしいし、将来採用後においても成績がよろしいと、いうような状態でございますので、優先採用という点についても十分御考慮いただきますと同時に、やはり教員養成計画性をもってやる、しかも調査会の結論をすみやかに出されて、そうしてその線においてやるというような工合に進めてもらいたいのでございます。  これらの点に関してさらに一点だけお尋ねいたしておきたいことは、優秀なる教員養成するのだということであるならば、お医者さんがやっておるようなインターン制、少くとも六ヵ月ないし一年くらいの教員養成の練成期間を設ける必要はないか、あるいは今日専科大学を設けられようとしておるのでございますが、高等学校と今の二年課程を一緒にしましたところの五年課程ですが、さらに一年延ばして、高等学校と一緒にした六年制の教育専科大学を設置する考え方はないかどうかを承りたいのであります。
  46. 緒方信一

    緒方政府委員 何か実習のためのインターン制のお考えでございますけれども、現在私どもの考えておりますことの中には、現在の制度、やり方では教員の実習が非常に少い、これはもう少し強化しなければならぬじゃないかという考え方が出ております。しかし卒業しましたあとの実習制度というものは考えておりません。  それからもう一つ、将来専科大学、五年制で賛成制度考えたらどうかという点でございますが、これも慎重に考慮すべき問題で、私どもとしては、やはり基本は、四年制の大学養成するのが建前であろうと思いますので、その観点からすると、中学校から入ります五年制の制度教員養成する方向にはいかないのではないかと思います。
  47. 池田禎治

    池田(禎)委員 関連して。大臣局長にお伺いしますけれども、去る二十六国会の本会議において、院議をもって決定せられました教員養成機関の改善と充実並びに理数科教育及び自然科学研究振興に関する決議案、この決議案について私ども実は第二十七国会で大臣がちょうど御都合が悪かったので、文部事務次官と政府から官房長官の出席を運営委員会で求めて、院議をもって決定されたものの扱い方について政府の態度をただしました。この決議案につきましては、これは当然深甚なる考慮を払い、あらゆる措置を講じたい、あらゆる措置とはどういうことか、それはこの決議案趣旨に沿うように、予算上の措置なり行政上の指導なりそういうことをいたしたい、こういう御返事がありました。このことは大臣局長も御了承のことでございましょうが、いかがでしょうか。まずこのことを伺っておきます。
  48. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点はよく承知いたしております。さらにまた仰せになりました院議も承知いたしております。何とかこれを尊重して、そうして院議に沿うようにやっていかんけりゃならぬというふうに努力はいたして参っております。
  49. 緒方信一

    緒方政府委員 承知いたしております。
  50. 池田禎治

    池田(禎)委員 そこで、私の伺い知るところでは、本年度予算におきましてもこれに対する調査研究のために費目を計上しておる、こういうふうに聞いておりますが、この内訳は、どういう形において表明されておるのでございましょうか。
  51. 緒方信一

    緒方政府委員 これは百万円計上しておりますが、そのうち教員養成制度についての調査につきましては五十万円を充てております。それで、これは特定の学校を対象として考えておるわけではございませんで、問題のあります、特に分校を設置しております大学について十分実情を調査いたしたい、こう考えております。
  52. 池田禎治

    池田(禎)委員 そこで、実は本委員会でもいろいろともう長きにわたって議論が行われ、質問も行われ、当局側の回答も出ておるわけですから、私は繰り返して申しませんが、今日当面している問題といたしましては、いろいろ他の委員からも申し上げておったようですが、教員養成機関の二年制というのは全く実情に即さない。そうして受け入れる方も、この二年課程の先生ではもう受け入れられない。だから一応そのクラスが、A級、B級、C級とあれば、A級でないものは一応その資格をとっても事実はその職につくことができない、あたら英才をむなしくしておる、もう一つ上級のコースにいくのには経済的に恵まれておらない、こういうような不合理はすみやかに是正すべきである。そこ正でこれは先ほど永山委員からも述べられておったようですが、やはり学校設置に対する文部省の画一的な方針というものを、時宜に応じて、必要に応じてそのときの客観情勢に対応するような、即応する態勢というものは、あなた方としてもこれをお認めになるかどうか、これはいかがでしょう。
  53. 松永東

    松永国務大臣 仰せのことをよく承知いたしておりますので、その客観情勢に沿うて実現したいというふうに考えまして、今御指摘になりましたような調査費予算に計上したような次第でございます。
  54. 池田禎治

    池田(禎)委員 そういたしますと、この際私は特に申し上げたいことは、実は第二十七国会でも、名前は特に申し上げませんが、いろいろな決議案が上程されようとし、またされたものもございます。その際、かつて帝国議会の時代ならいざ知らず、今日は憲法の示すところによって、国権の最高機関は国会である、国の唯一の立法機関である。このことを憲法は明示しておるのでございます。かつては国民制度も、三権分立とはいいつつも、立法府というものについては政府みずからの判断を持って、これに大きな制約を加えておる。すなわち対等に評価されておらなかった。今日は国民の代表は国会である。天皇にあらず。国民の代表は国会にあり、また国の法律をきめるただ一つ機関は国会であるということを明記しております。その国会の院議をもって可決されたるものを、過去においてこれを尊重されておらないというならば、今後他の決議案といえども、そういう院議を無視するがごとき決議案は、断じて私どもはこれに同意できない、こういうことを主張した。従ってそれに基き、それでは今まで院議をもって可決されたところの決議案趣旨にいまだ沿わざるものは何と何があるか。その結果政府関係からそれぞれの人を呼んで、その所信のほどを聞いたのであります。このことは先ほど私が冒頭に申し述べましたその中の一項に、文部省所管のこともあった。このことはただいま大臣のお答えをもって、皆さんが御努力なさっておるということを私ども認めるにやぶさかではありません。ただ私どもとしては、こういう経過をたどったものについて、文部省はほんとうに責任を持ってこれを実現し得るかという、決意のほどをお伺いすれば私としては足りるのでありますが、重ねて一つ大臣なり局長のこれに対する決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 松永東

    松永国務大臣 仰せになりましたその院議を何とがして実現したいというふうに考えまして、そうしていろいろ昨年来計画を重ねてきておったのでございますが、何といたしましても、事教育に関する問題であるばかりでなく、その地元々々においてもそれぞれの異論も承わっております。しかし異論があろうと何があろうと、仰せになりましたような客観情勢に従ってやりさえすればいいという決心は持っております。しかし御承知のように科学技術教育振興に関する世論も相当高まってきております。さらにまた三十三年度予算に、御承知通り科学技術教育振興に対するいろいろな予算も協賛をお願いしている。従ってそうしたいろいろな施設を完備するためにも、やはり教育養成の面において、科学技術教育教育する先生を、りっぱな先生にしなければならぬ必要もあるのではないかというような点とにらみ合せて、そうして専門家に研究をしてもらうために委員会を作りたい。そうしてその委員会で十分研究してもらって、そして実現さしたいという気持で予算会議費を一つ計上したような次第であります。
  56. 緒方信一

    緒方政府委員 衆議院の決議は、教育養成制度を根本的に検討して、それを改善するという御趣旨でございます。これは教育上非常に大きな重要な問題でございますから、私どもも鋭意努めておる次第でございます。
  57. 池田禎治

    池田(禎)委員 そこで今大臣のお答えの中にありましたが、それぞれの地域においてはそれぞれの特殊な事情がある。私もこれを認めます。しかしその場合においては、私は教育の充実と刷新であり強化である。そのことを——大学にはなるほど自治はあります。私どもは大学の自治を侵そうと思いません。同時に学問の自由を侵そうと思いません。研究の自由を侵そうと思いません。けれども学校内容をよく知り、さらにそれを充実するということについて、特定の学校がこれに対して異論を唱えたり、他に学校がふえる、ちょうど、ひどいことを申せば、隣のうちに蔵ができるのは悲しいというような、そういうなわ張りのけちくさい根性です。こういうあり方であっては、ほんとうに教育の充実、刷新強化ということは実現できないのです。そういうものは、大学の自治に名をかりるところの一つのなわ張り根性的のものであって、人の出世をうらやむ一つの偏見にすぎない。今日予算上においてそういうものが、本校が反対をするとできぬというようなことを聞きますが、そういうものは文部省としてはどういうような行政指導をなさる決意がありましょうか。たとえば今大臣なり局長の申されておる、中教審にかけてその答申を持つ、その結果かくあらねばならぬ、こうすべしというところの結論を得た場合には、片々たるところの議論はあるけれども、文部省としては断固としてこれを行政指導をもって、英断をもって実現する決意があるがどうか伺いたいのであります。
  58. 松永東

    松永国務大臣 いろいろなその地方地方における主観的の考え方や主張は、私はそう重要視する必要はないと思います。しかし仰せになりました大学の自治制、これは法律上自治制がしかれておるのでありますからやむを得ぬといたしましても、しかし先ほど来申し上げる通り専門家の意見は聞いて、そしてこうすべきだということが確定いたしますれば、それに基いてわれわれは善処するということは、強い決心を持っております。
  59. 池田禎治

    池田(禎)委員 私はもうくどく申し上げません。この点については大臣なり局長は十分意を体して、そうして国の教育の刷新と強化のためには、あらゆる障害があろうとも英断をもって一つこれを実現していただきたい。こういうことを特に私は希望申し上げまして終ります。
  60. 永山忠則

    永山委員 ちょっと一点私は関連しまして、各県の実情によりまして、学芸大学の分離をいたしたい、独立をしたいというような場合におきましては、これをどういうようにお取扱いになられますか。いわゆる学芸大学教育学部の分離でございます。いわゆる教員養成機関大学から独立してやりたいという考え方構想に対する御意見を承わっておきたいのであります。
  61. 緒方信一

    緒方政府委員 これは同じように大きな問題でございまして、軽々に考えを申し上げる段階ではないと思いますが、少くとも計画的な養成の方向には進むべきであるということを考えております。現在学芸大学としまして単科大学のところが七校ございますが、あとは教育学部あるいは学芸学部としまして、総合大学の中の一学部として付設されております。これを教育学部、学芸学部といたしまして、他学部と総合して教員養成しておるのが現状でございますけれども、この養成の仕方につきまして、今申しましたように改善すべき点が多々あると思いまして、この点の検討をいたしておるのが現状でございます。全部の大学から教育学部を引き離しまして単科大学にするかどうかということは、これは非常に大きな問題でございますので軽々には申し上げかねると思います。
  62. 永山忠則

    永山委員 学芸部を独立をしてやることが望ましいということを県の実情に応じて申し出たるような場合においては、十分一つそこで計画養成の線と相総合して御研究をお願いを申し上げたいということを申して、私の質問を終りたいと思います。
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 河野正君。
  64. 河野正

    河野(正)委員 わが国におきまして科学技術の振興がきわめて急務だということは、論を待たない事実でございますし、なおまた大臣も今日まで、この点につきましてはしばしば強調せられておるところでございます。すなわちこの一つの現われというものが、今日の理工科系学生千七十四名の増員となり、あるいはまた科学技術庁におきましては、科学最高会議の設置というものを発表するというふうな実情になったと思うのでございます。今私どもが三十三年度の新予算をながめてみましてもわかりますように、原子力関係は、昨年の六十億に比べまして、本年は一挙に百十二億という、約二倍近い予算が計上されておるわけでございます。一方、文部省関係科学技術教育関係予算をながめてみましても、大体十五億増額され、百三十二億に達しておるといわれております。このように、今や科学技術の振興という言葉は、日本の合言葉となったというふうに申し上げても過言ではないと思うのでございます。しかしながら、私どもがよく考えてみなければならぬことは、それがちょうど線香花火のように、一時的な科学振興ブームと申しますか、そういったブームに終ってはならぬということだと思うのでございます。以下いろいろ御質問いたしたい点がございますので、こういった点に対します大臣の御所感をまず伺っておきたいと思います。
  65. 松永東

    松永国務大臣 河野君の仰せになりましたように、これを本年度だけのブームに終らせるというようなことは、とんでもないことであります。私どもはこれを初年度として、そうして来年度、再来年ずっと進めていきたい。そうして最後には——最後はいつまでいくかわかりませんが、とにかく第一期といたしましては、いわゆる経済五ヵ年計画の最終年度、三十七年度には、社会の要求に応じるように一つ全部完備したいというふうに考えて、計画を進めておる次第でございます。
  66. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣の、本年を第一年度として、五ヵ年計画で逐次その充実をはかっていきたいという御答弁は、了といたしますけれども、今日起って参っておりますいろいろの現象、たとえば本年度の国立大学の志望者を眺めてみましても、理工科系統に志望者が殺到しておる。また一方、いろいろな予算の面をながめて参りましても、中身につきましてはまた異論がございますけれども、一応それぞれ増額というような状況を見ておるというようなことで、けっこうだと思うのでございますけれども、しかしながら真のこの科学技術の振興ということには、その科学技術に対します根本的な理解と認識とを持っておらなければ、単に理工科系の学生を千数十名増員したとが、あるいは本日審議をしております、すなわち国立学校設置法にございますような、いろいろな学部の増設あるいは研究所の新設、こういったものだけでは、その実質的な効果というものは私はとうてい期待することはできないというふうに考えるわけでございます。問題は、科学技術に関します根本的な理解と認識の上に立って、理工科系統の学生の増員が行われ、あるいは学部の増設が行われ、あるいはまた研究所の新設が行われるということでなければならぬと思うのでございます。そこで、多少具体的になりますが、お伺いいたしたいと思いますことは、なるほど科学技術の振興といわれておりますけれども、しからば一方、その設備あるいは研究費、あるいはまた教授その他の人的構成と申しますか、そういった物心両面において具体的にどのような考慮が払われておるか、この点につきましては、局長の方からでもけっこうでございますから、お伺いをいたしたいと思います。
  67. 緒方信一

    緒方政府委員 来年度の予算におきまして、教官研究費といたしましては四十億を計上いたしております。これは国立学校病院研究所、合わせた計数を申し上げておるわけでございますが、約四十億でございます。前年度に比べまして五億二千百万円の増でございます。中身を申し上げますと、特に理科系に重点を置きまして、学科制の大学におきまして一〇%、講座制の大学に対しまして二〇%の増をはかりました。他は五%の増でございます。それから次に教育研究経営費としましての経費の一つとしまして、学生経費がございますが、これは来年度十二億を計上いたしております。前年度に比べまして一億七千二百万の増でございます。それから設備でありますが、約二十億四千万を計上いたしております。前年度に比べまして三億七千一百万円の増でございます。大体教官研究費、学生経費、設備の充実更新、こういうことが大学の質の向上のための経費の中心になるかと思いますが、三十三年度といたしましては以上のようなことでございまして、これは決して来年度だけで十分だとは思いませんけれども、それぞれ増額をはかった次第でございます。今後この努力を年々積み重ねていきたいと考えております。
  68. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長の方から数字をあげて、教官研究費あるいは学生経費、その他設備等々に関します予算の増額が示されたのでございます。なるほど数字の上からながめますとけっこうでございます。ところが、今度文部省から示されております増設あるいは創設、あるいはまた新設、こういった増設、創設、新設されました講座、研究部門あるいは学部というものは、実におびただしい数のようでございます。たとえば原子力関係一つをながめて参りましても、講座の増設が九講座、研究部門の創設が六部門、学部の新設が十一というように、きわめておびただしい数のものが行われておるのでございます。従って、一つ一つを切り離してながめて参りました場合に、果してその設備の拡大、強化、拡充というものがどのように行われたかと、いうことにつきましては、私ども多少疑念を持たざるを得ないと思うのでございます。たとえば今度東京大学医学部の中から薬学部が新設されております。事医学でございますので、私多少知識がございますけれども、この薬学部が新設されたのでございますが、これは従来の薬学科の範囲からどのように拡大強化等が行われておるのであるが、一例でございますけれども、若干御説明を願いたいと思います。
  69. 緒方信一

    緒方政府委員 これは薬学の最近の進歩に対応いたしまして、東京大学におきましても一つの学部を設置して進めることが適当であると考えまして、これを独立させることといたしたわけでございます。来年度におきましては一応、従来医学部の中にございました薬学科を切り離して薬学部にするということでございまして、内容的に拡大ははかっておりません。従来もございましたように薬学科の八講座をそのまま取り出しまして薬学部といたしたいということでございます、これは初年度でございまして、こういう学部を一つ独立させて今後充実していきたいということであります。申し上げるまでもありませんが、医学の課程と薬学の課程とは修業年限においても違いますし、それから先ほども申しましたように、最近の薬学の進歩に対応しますためには、やはり医学部と切り離して一つの学部を独立さした方が適当である、かように考えた次第でございます。ただ内容的には今申しましたように八講座そのままでございますから、内容的な拡大の面はございません。
  70. 河野正

    河野(正)委員 一例でございますけれども、たまたま医学部の中から薬学部が切り離して新設されたという事実がございましたので、お尋ね申し上げたのでございますが、御答弁を承わりますと、なるほど進歩に対応してということでございますけれども、進歩に対応したならば、単に医学部の中から薬学部を切り離すということのみでなくて、それぞれ施設の充実あるいはまた教授その他の人的構成に関する充実、拡大、こういったものが行われなければ、単に講座がふえたりあるいは学部がふえたり研究部門がふえたりというふうなことだけでは、科はかえって質的には低下するのではないかという心配を持つわけでございます。そういった考え方を強くいたしましたので実はこういう質問を重ねて参ったのでございますけれども、ただいまの御答弁では、私ども専門的な立場からながめますとどうも不安でならない。もちろん私は、充実、拡大、拡充ということが考えられずに単に切り離していくということだけでは、やはり学問研究というものが低下するのではないかということを強く感ずるので、こういった点につきましては、一つ将来十分御考慮を願わなければならぬ点ではなかろうかと考えております。  そこで、私はさらに進めて参りたいと思うのでございますが、先ほど来いろいろと私が御指摘申し上げましたように、科学技術のほんとうの成果をあげるためには、ただいまのも一例だと思いますけれども、単に机上の予算操作、机上の計画であってはならぬと思うのでございます。これは多少わき道へそれるかと思いますけれども、今日科学の中でも最も花形でございますのは原子力研究所でございます。ところがこの原子力研究所の実情をよく伺ってみますると、非常に高い科学機械を買い込んでおる。ところがりっぱな機械は買い込みましたけれども、一方研究費が足りない。そこでせっかく高い金を出して買った機械でございますけれども全然これが活用されない。極端な話でございますけれども、こういったりっぱな機械がほこりをかぶって研究室のすみに積んでおかれておるというふうな話も実は仄聞いたすわけでございます。ところが一方非常にじみな研究室、研究所等におきましては、今度は逆に試験管やその他の機械予算関係で買うことができない。そのためにりっぱな研究者が研究を続けることができない。一方はりっぱな機械を買ってもらったけれども研究費がないために研究することができない。一方におきましては機械を買ってもらえないために研究することができない。こういったようないろいろな問題が今日のいろいろな研究所あるいは研究室におきましては山積いたしておる実情を私ども知っておるわけでございます。こういったことを私どもがながめて参りますと、これこそ一つの机の上の予算操作というものがこういった結果を生み出したのではなかろうかというふうな心配を私ども強く持つわけでございます。先ほどから申し上げますように、科学技術のほんとうの成果を上げようといたしますならば、やはりどうしてもその実態を十分把握した上に立って予算措置をしていただかなければ、ただいま申し上げましたようないろいろな結果が出てくるというふうに私ども考えておるのでありまして、今日の予算操作をながめて参りますと、どうも一つの机上の空論と申しますか、机上の計画と申しますが、そういったきらいが強いのではないかということを強く考えるわけでございますが、その点に対しましては一つ大臣の所感を承わっておきたいと思います。
  71. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたように、いろいろな費用が満足でないのです。実はもう少し何とかして取りたい。せめて研究費、それから研究せられる人々の優遇の費用、設備費、そういうものも何とかしたいというふうに努力したのでありますけれども、三十三年度はまだ完全というところに参りません。しかしながら、先ほども申し上げたように、まず第一歩を踏み出したと考えておりますので、逐次その目的に沿うように努力して正みたいというふうに考えておる次第であります。
  72. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣からも、一歩を踏み出したので、今後さらに努力をしていきたいというふうなお言葉をいただきましたので、私どもそういったお言葉に今後期待をいたすわけでございます。そういった努力をしていただきたいために私さらに一、二の例をあげて御参考のために御指摘をいたしておきたいと思います。  それは、科学技術の振興ということを一枚看板として強くここの問題をうたいます限りにおいては、やはり予算の中にも重点的な考え方、重点的な姿というものが表われてこなければならぬというふうに思うわけでございます。ところが残念でございますけれども、先ほどもちょっと触れましたが、今日の予算状態を一覧いたしましてもわかりますように、なるほど先ほど局長からもいろいろ数字をあげての御説明がございました、けっこうでございますけれども、その数字の状態をながめてみまするとどうも総花的な傾向のあることを私ども指摘をいたさなければならぬというふうに思うわけでございます。なるほど各項目ごとに少しずつ増額されておるということは、先ほど局長からも御説明のあった通りでございます。しかしながら、少くとも科学技術を重点的に強く推し進めていく、こういうふうに大臣がお考えになります以上は、やはりこの問題がどこかで重点的に予算面におきましても考慮されなければらなぬということになろうかと思うわけでございます。ところがどうも総花式で、どれにもこれにも少しずつ入れておるというふうな実状を私どもながめて参りまして、この点はまことに残念に思うのでございます。そこで先ほどもたびたび触れましたが、こういった科学技術に対しましては、やはり当局が何と申し上げましても、科学技術教育に、対しまする真の理解と認識を持っていただかなければ、その実を上げるということは私はきわめて困難であるというふうに申し上げなければならぬと思うのでございます。ところがそういった理解と認識に欠けておる、そういった事柄が私は一つ原因にもなっておると思うのでございますが、今日日本におきまするいろいろ優秀な科学者がたくさんおられますけれども、そういった優秀な科学者というものがどんどん外国に出て行ってしまうというふうな状態にあること、これも大臣承知通りだろうというふうに考えております。あまりどんどん日本の学者が外国に出て行きますので、そこでこういう笑い話がございます。どういう話かと申しますと、外国の研究室において、日本の碁がはやって困るというふうな笑えぬ逸話が今日いろいろ伝えられておるというふうなことも聞くわけでございますが、これはやはり日本の優秀な学者というものがどんどん外国に留学に行く、そのためにさっき申しましたような笑えぬような、外国の研究室あるいは研究所で碁がはやってきたという話も出ておるわけでありますが、こういった実情に対しまして大臣がどのようにお考えになっているのか、この点も私はきわめて重大なことでございますので、大臣の率直な御意見を承わっておきたいと思います。
  73. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたような点も、承知いたしております。そこで何とか優遇方を講じなければいかぬということは、ほんとうに痛感しているところであります。諸外国の学者との間に待遇方法において、格段の差がある。さらに諸外国ばかりじゃない。日本の戦前の教授、先生、そういう人々との間でも、今日の貨幣価値からいっても、まことに少な過ぎるというふうに考えておる。しかしながらなかなかこれは三十三年度で何とかしようと思ってもがいてみましたけれども、御承知のような財政状態では一ぺんにいきません。三十四年度あたりになりますれば、そうした研究費とかあるいは待遇とかということも是正されるようにしなくてはならぬというふうに、これは文部省一同考えておるような次第であります。なかなか思う通りには本年度は参りません。その点一つ承知おきを願います。
  74. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣からもいろいろ実情に対しまする今後の善処に対しまするお話がございました。私どもぜひともそういった善処を行なっていただきたいというふうにこいねがうわけでございます。大臣も御承知のように、私も先ほど申し上げましたように、たとえば昨年度におきまして文化勲章の受賞者でございます小平博士、あるいはその他日本で著名な数学者あるいは物理学者、こういった人がどんどん外国に出て行く。しかも一ぺん外国に出て参りますと、なかなか日本に帰って来ようというふうな傾向がない。一ぺん外国に出て参りますというと、どうも外国の方が十分研究ができる、科学者に対しまする待遇もよろしいというふうなことで、日本に帰って来るという気持がなかなかわいてこないというふうな傾向が今日非常に強く出ておる。さっき大臣もそういった点につきまして若干触れられ、将来に対しまする善処力を御表明になりましたので、私どもその点につきましては、大臣が今後十分御善処あることを期待いたしておりますが、どうかこういった科学者に対しまする有利な地位あるいは生活条件、こういったものをやはり与えていただかなければ、私は真の科学技術の振興の成果というものは上げることができ区ないというようなことを強調いたしたいと考えます。その点に対しましては一つ十分御善処を願いたいと思います。  それかさらに、結論的に申し上げてみたいと思いますが、それは今日日本におきましても、かつて戦時中また終戦直後におきましても、科学振興政策というものが一つのスローガンとして強く掲げられたわけでございます。とこころが振り返ってみましても、こういった科学振興政策というものが時の政府の政策として強く掲げられたのでございますけれども、結果的にながめて参りますと、そのスローガンというものがすべて絵にかいたもちに終っておるようなきらいがあるわけでございます。そこで私どもはこういった政策が強く打ち出されまする以上は、やはりその政策というものを完全に実行し、完全なる成果を上げていただかなければならぬというふうに考えるわけでございます。私どもは、この科学あるいはまた科学者、こういったものに対しまする理解と認識というものを十分徹底せしめ、真剣に科学技術の具体策と取り組まなければならぬのではないかというようなことを考えて参っておるのでございます。そうしませんと、せっかく大臣がしばしば科学技術ということを強調されておりまするけれども、これがまた絵にかいたもちに帰してしまうというふうなおそれなしともしないわけでございます。従って冒頭に私が御指摘申し上げましたように、今回も単に科学振興ブーム、そのブームに終らしめることなく、やはりその成果というものを最大に上げていただかなければならぬということを強くこいねがうわけでございますので、最終的にこういった点に対しまする大臣の総括的な御所見を承わっておきたいと思います。
  75. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたように、こうした科学技術教育振興を単にブームに終せるようなことがあっては、これは大へんなことであると思います。申すまでもなく、原子力時代といわれオートメーション時代といわれ、さらに宇宙時代といわれておりまする今日、日本だけが諸外国に取り残されては生存することはできません。でありまするから、やはり月に日に進んでおりまするここの現状に即応ずるように、これはもうどうしても日本の教育を根底から改革していかなければならぬというふうに、強い決心をするわけであります。私ども毎日毎日これではいかぬということを強く感じますのは、青年人々が就職難で追われておる。これは実際河野さんあたりも御承知のことと思いますが、私どもの家へ履歴書を持って飛び込んでくるのは、科学技術の学校を卒業したものは一人もございません。全部法文系であります。しかもこの三月に卒業する人が予定がきまっておらぬというばかりじゃございません。去年卒業した人も、はなはだしきに至ってはおととし卒業した人あたりも、履歴書を持って飛び込んできます。現に私は今ここに持ってきております。けさも出がけに持ってきておりますが、とても法文系を出た人を入れるといったって入れるところなんかありゃしません。けれども、まあ選挙も近まるという、こんなことを言っちゃいけませんが、いろいろな考え方から何とか一つできはせぬかという考えで預っておるような次第、それはこの法文系を何とか——御承知のように、今日では法文系が七割、お医者さんというか医学生を入れて科学技術が三制、これでは法文系が就職難に陥るのは無理がない。そこでこの四月の入学期から——去年のままでいいとすれば、失業者の卵をわれわれ政府が作るような結果になってしまう。そこでこれをせめて七・三をあべこべの比率に切りかえることができぬでも、五分々々もしくはそれに近い数字にこぎつけたいと思いまして、昨年来努力を続けてきたのであります。おかげさまで三十三年度予算を協賛していただくことができるといたしますと、本年度から国立、公立だけでもざっと千七百人ばかりの入学生を新たに入れることができるばかりでなく、各私立大学でもそれに即応するように協力をしてくれておりますので、相当その方面学生も流れ込んでいく。従って先ほど来申し上げました通り、経済五ヵ年計画の最終年度にはやはり八千人くらいの科学技術の卒業生がふえることになりますので、従って法文系がなくなって、この方に転換ができるというふうに、まあかすかな希望を認めながら努力をしておるような次第でございます。今後もこうした情勢が消えようはずはございません。科学技術系統は各国とも日に月に進展していくことは想像するにかたくございません。従って私はそうした時代におくれをとらぬように一生懸命努力していきたいというふうに考えております。     —————————————
  76. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 次に文教行政に関し調査を進めます。質疑の通告がありますから順次これを許します。山中貞則君。
  77. 山中貞則

    ○山中委員 初中局長に申し上げますが、昨今伝えられるところによりますと、勤務評定の話し合いの問題あるいはその他の問題に関連をいたしまして、入試事務の拒否の問題が報道され、現在がたまたま入学試験のシーズンでございますから、直接関係のあります者、ない者に関係なく、世人の耳目を聳動しておるといっても過言でないのですが、そういう事実は教育行政の上に、まことにゆゆしい問題であると考えますので、福岡、兵庫その他について、初中局長が現在までに入手もしくは調査されました経過についてとりあえず御報告を願いたいと思います。
  78. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 福岡県におきましては、先般来勤務評定を実施するなら入学試験事務を拒否する、こういうことで話し合いが行われておったようでございます。いろいろと経過はございますけれども、昨日の会議できまりましたことは、入学試験の事務はやる、そのかわり勤務評定については抜き打ちにはやらないというのが第一項でございます。第二点は、四月中には勤務評定は実施しない、こういう覚書を交換いたしまして、入学試験の事務を行うということに決定いたしたわけでございます。  それからもう一つお尋ねの兵庫県の問題でございますが、兵庫県は入学試験の事務を拒否するという動きがございましたけれども、父兄、世論の関係で非常に強い反対がございましたので、教員組合の方も自粛いたしまして、今のところ入学試験事務には支障がないようでございます。  それから和歌山県に入学試験事務拒否の問題が起きておりますけれども、これはちょっと性質が違うのでございまして、しかしその根底にはあるいは関連があるかとも思いますが、表面に出ております理由は、和歌山県は従来小学区制をとっておりました。小学区制と申しますのは、一学校に一学区というのであります。しかし小学区制を固執いたしますと、かえって教育機会均等が破れるという場合もあり得ますので和歌山県は中学区にいたしたいというので、教育委員会は中学区制を決定して実施することにいたしたのですが、これに対しまして入学試験の事務を拒否しまして、和歌山県の場合には試験受付期日を延期いたしました。本年度はとりあえず中学区制を認めまして、今後審議会を設けて学区制のあり方について検討する、こういうような覚書をいたしまして、この問題が一応片づいたのであります。
  79. 山中貞則

    ○山中委員 今の報告は非常に概略でございますが、この福岡の問題について覚書が交換されている、もちろん県教育委員会との間にかわされたものと思いますが、その協定の内容は、評定は抜き打ち実施しないということ並びに具体的には四月中には行わないということ等を条件として、入試事務に応ずるということがきまったようなお話であります。兵庫その他については自粛されたいということでけっこうでありますが、このような入学試験というものと全く関係のないものによって、そういうような勤務評定が覚書その他で制限され、もしくは交渉の条件となるというような事態が、一体正しいものであるかどうか、私としては非常に疑問に思います。この問題が幸いにして覚書で片づいたとしても、それは入試事務の拒否という問題が、直接の父兄もしくは教育関係ある人々に与えた衝撃の大きさに比べたならば、まことに大きな波紋を描いているといわなければなりません。従ってこの福岡の問題について局長よりいま少しく経過を具体的に報告してもらいたいと思います。
  80. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 教育委員会もこの問題に対しては当初非常に強い態度をとっておりまして、入学試験事務を拒否するなら、業務命令を出しても入学試験事務は遂行するというような態度をとっていたようでございます。その後たびたび折衝の結果今申したような結論でたしか昨日だったと思いますが、覚書の交換をした、こういうように聞いております。
  81. 山中貞則

    ○山中委員 大臣にお尋ねいたしますが、ただいま局長より概略の経過報告が行われました。この事件は実ははなはだ重大な事件だと私は考えるのであります。そこで大臣の見解をあらためてお伺いすることにいたすわけでありますが、私は今さらここで勤務評定の可否を論議するために立ったのでは実はないのでありまして、勤務評定は当然社会人である限り、何らかの形において、たばこ屋のおかみさんから八百屋のおやじさんまで、全部が社会人としての評定を受けて生活しておるのであります。現に基本的に反対の態度をとっておられます社会党の同僚諸君でも、政治家としての勤務評定の点をかせぐために与野党円満に話し合いをいたしまして、土曜、月曜は一切委員会を休むというような精励恪勤ぶりをしている現状から考えましても、教職員であるからだけでもって勤務評定を拒否するという根本的な態度というものは、世人の容認するところにならないであろう。ただそのやり方その他については、教職にあるべき特殊なる立場というものについての検討は当然加えらるべきでありましょうが、単にピケを張ったり、すわり込みをやったり、あるわはストをやったりするときは、自分たちも労働者であるということを主張しながら、一方においては教職員の特権を主張してその中に閉じこもること、これは勤務評定拒否という具体的な問題として世人が認めないであろうということが、おおむねその前提になっていると私どもは考えるのでありますが、このようなことを議題にいたしまして、ただいま局長の報告にありましたような、いわゆる日ソ交渉において、漁期が、はっきり日にちがきまって迫ってくる、それを見越して魚とりに出ないわけにはいかないだろう、平和条約をからめる、あるいはオホーツク海の全面禁漁を主張するというような、ソ連のやっておるような、いかにも見えすいたようなこの入試事務の拒否という問題を聞きまして、私は非常に遺憾に思うのですが、その点最高の責任者たる大臣のお考えを承わりたいと思います。
  82. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました通りに、この問題はまことに重大な問題で、困った問題だと思っております。幸いにして、今局長が御答弁申し上げた通り円満に解決ができまして、まことによかったというふうに胸なでおろしておるような次第なのでございます。しかしながら仰せになりました通り、入試事務と勤務評定とは何の関係もございません。勤務評定のことをここでいろいろ申し上げようという気持はございませんが、しかし入試事務を拒否した結果、一番迷惑をこうむるものは入学生徒であります。そのために、そうしたいろいろな政治上の争いと申しますか、こうした争いのために、肝心の学校に入らなければならぬ子供たちに非常な迷惑をかけるということを、私は当局といたしまして非常に心配をいたしておるのでございます。今局長のお話し申し上げた通り、幸いにして事なきを得たことをまことに喜んでおる次第であります。従ってこの問題についてまあ責任というところまでいかずに済んだということは喜んでおる次第でございますが、こうしたできごとも、やはりこれは先生方に理解させることが徹底しなかったのじゃないか。それは御承知のように、勤務評定のような問題は、これは都道府県が指導性を持っておりまして、私の方はわき役でございますから、直接に私の方が飛び出していって理解をさせるというようなことまではいたしませんけれども、しかしながら、そうした面から考えてみまして、やはりもっと理解させて、そうして納得させるような手はなかったものかというふうに考えておる次第でございます。しかしながら幸いにして、まずまず入試に事なきを得ましたことは非常にけっこうなことだと喜んでおる次第でございます。
  83. 山中貞則

    ○山中委員 もちろん申し上げるまでもなく、教育というものは形よりも内容でございます。形は落ちついたかもしれませんが、その問題が何ら罪のない、しかも当然試験を受ける権利を持っておりまする子供たちに与えた影響というもの、これは非常に大きいと私は思うのであります。そういうことを考えますると、大臣がただいま胸なでおろしたとおっしゃいますが、私は結局入試事務拒否という法外なる問題をふっかけたことによりまして、やむなく県の教育委員会はそれを最終的にのんだという形にはならぬかもしれませんが、勤務評定というものを、条件を二つつけることによって、覚書交換をもってその問題の始末をせざるを得なかった。まことに私はその具体的な事実というものがありまする以上は、胸なでおろす段階よりももっと大きな問題ではないかと実は思うのであります。現在入学問題につきましては、裏口入学の子供に与える悪影響、あるいは父兄に与える悪影響、あるいはそれに伴う金額等によりまして、子供たちの運命が左右されるやのごとき——主として私立学校でありますが、風評等の与える悪影響というようなことから、大きな問題が現在入試についてありまするにもかかわらず、その以前の問題として、入試事務そのものが純粋に教育の場から離れたものとして取引をされていくということ、私はこれは非常に大きな問題だと思います。ことに教職員組合は、法に定められた交渉団体ではないことは大臣も御承知通りでありまして、団体交渉権を持っていないと私は判断をいたしておりまするし、当然法的にそうであるはずであります。もちろんしかし先生方や教育の場の問題等についての共通の問題について苦情を述べ、あるいは不平不満等を処理するについての話し合いが持たるべきことは、これはまた組合を結成いたしておりまする以上当然なことでありましょうが、またわれわれとても、ことに文部行政に、党は違っても席を打ちますることは、教育の改善、条件の向上、先生方の教育者としての身分の保障について深甚なる興味と、そして積極的なる協力の意味をもっておることにおいて劣るものではありませんが、このような教育本来のものを離れて、私どもがとうてい無視し得ないと思われるようなできごとに対しまして、私どもはまたあらためて私どもの考え方というものを、実は正しいものとしての前提において持っておるのであります。でありまするから、私はこのような問題について、片づいたとはいいましても、片づくに当って、当然条件や覚書等が、勤務評定に関してなさるべきでなかったにもかかわらずなされておりまする現状を、あるいはまたその結論以前に大きな問題を投げ与えておりまする紛争の過程等において、文部省直接の事務責任事項でないからといって、いたずらに傍観しておられるがごとき態度というものは、私は責任を責める前に、教育の良心というものから考えて、最高の責任者としてあるいは最高の責任ある文部省としてこれはとるべき態度じゃなかった、積極的に文部省の意向を表明し、これは関係をもって論議さるべき問題でないことを大臣談話等において表明されて決して私は行き過ぎでなかったと思うのでありますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  84. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたような点につきましては、ようやっと片づいてまあよかったということを申し上げたわけですが、しかし今後こうした問題についての研究をいたしまして、そうしてどういう手を打つかということを、善処してみたいというふうに考えております。
  85. 山中貞則

    ○山中委員 ただいまの問題について、事務責任者としての局長の御意見を伺いたいと思います。
  86. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 福岡県の事態に対しては、私どもも非常に憂慮しておったのであります。御承知通り勤務評定については私どもは組合と交渉すべき筋合いではない、教職員組合は御承知通り給与、勤務時間その他の勤務条件に関し当局と交渉する事項でございますので、勤務評定そのものが組合との交渉事項にはならないという見解を私どもは示しまして指導いたして参ったのであります。いわんや入学試験事務との関連においてこの点を討議させることは、父兄及び児童生徒に与える影響がはなはだありますので、好ましくないという見解をとっておったのであります。十分福岡県にも御注意を申し上げておったのであります。途中では先ほど申したように、この問題に対して福岡県教育委員会は相当強い態度で業務命令まで出しても処置したいという考えがあったようであります。しかしながら一方入学試験の実施状況の点を考慮されて、最後にはやむを得ずこういうような協定を結ばれたと思うのでございますけれども、非常にこのことは遺憾に思っております。
  87. 山中貞則

    ○山中委員 これ以上申し上げませんが、あなた方文部省の役人に限らないでありましょうが、われわれが考えてつまらないことをやると思うような問題には、非常に強硬に、表明する必要のない意思まで表明することがあるかと思えば、教育についてこそ最も大英断をもって効果を十年、二十年の先に期待しなければならないような問題について、ほんとうにその問題には身命を賭してしかるべきだと思うような問題については、案外あなた方は、そう思っていたかと問われれば答えるけれども、思っていただけであって、何らの意思表示も行動もしないというようなことが間々あることを、私は率直に指摘しておきます。ですから文部省教育の責任の場に職を奉じたならば、あなた方はみずからの教育の責任者としての良心に殉じても、その効果は一時の毀誉褒貶をこえて、やがて評価されるときがあることを信じて、正しいことについては正しい行動をとられるように私は要望しておきます。  いま一つ、日本の大新聞のある一つの新聞小説に、作者は石川達三氏であったかと思うのでありますが「人間の壁」という小説が連日掲載をさておることはもちろん皆様方御承知のことでありましょう。私は小説というものは、これはフィクションも用いまするし、あるいはその人の自由なる思想、あるいは意思、構成等によって、個人の自由においていかなる小説が書かれてもけっこうだと思う。ただし、今日ほど世界においても日本は非常に高いレベルを誇っておりますが、マス・コミの異常な発達を遂げました時代において、新聞は単なる新聞経営のための新聞ということを越えまして、公共の機関に準ずべき非常に重要な立場を今日持ちつつあります。昨日の本会議において放送法の一部改正における質疑応答等の中において、質問者もしくは答弁者の田中大臣より触れられました放送の発達等についての、いわゆる公器としての責任がだんだん高まってきつつあることに論議がされたようでありますが、そのこと等に照らしましても、新聞も非常に貴重な国家形成、民族養成の大きな柱であることは、今日だれも疑うものはないと思います。でありまするから、経営方針、あるいはどのような小説が載ろうが、そのこと自体は自由でありましょう。しかしそのことが国家的な問題、ましてや直接突き詰めて言えば、教育的な大きな問題に、いかような角度でもって、いかような目的をもって書かれつつあるかということについて、新聞社自体も当然考えた上のことであろうとは思いますが、そこで私が申し上げるのは、文部省は、先ほどから私が申し上げましたように、教育について、よかれあしかれ責任を問われたり、あるいは意見を聞かれたりする責任のあるところでありますが、日本の教育という問題について、あのような角度から数百万の人々の目に直接日常訴えていく小説が書かれていることについて、何らの見解も持たれないものであろうか、私はまずこれを疑問に思うのであります。大臣から御意見を承わりたいと思います。
  88. 松永東

    松永国務大臣 私は話には開いたことはありますけれども、その小説を見たことがないのであります。ことにこのごろの小説を書く人は、いたずらに想像でいろんなことを書いておりますので、それで私は小説はあまり見る気にもなりませんで、見ておらぬのが事実であります。しかし御指摘になりましたようなことがあるとすれば、一ぺん一つその小説を読んでみたいというふうに思います。
  89. 山中貞則

    ○山中委員 これはものの言い方をうっかり間違えますと、言論の自由、報道の自由に対して干渉するということになりかねない問題でありますから、慎重なる御見解の表明はけっこうであります。あるいは大臣が実際上小説を読んでおられない、それもまたけっこうでありましょう。しかし私が申し上げるのは、実はこの小説は架空のことばかり書いてあるのではないのでございまして、国会の、時の大臣の清瀬一郎民の氏名を明らかに文部大臣の氏名として、委員会における速記録、もしくは本会議の速記録等がそのまま抜粋引用されて、しかもその問題について、筆者をして、すなわち石川氏をして言わしむるならば、非常に活躍された日本教育界の恩人であるとも称せらるべき——ことは筆者の考えですが、議員各位が、委員会その他において発言されたことも抜粋をされておるのであります。私が抜粋と申し上げるのは、そのことに関連をいたしまして起りました諸種の不祥事件、たとえば参議院において乱闘事件等が起りまして、法のさばきを告訴によって仰ぐというような具体的な事例等が起ったこと等は触れずということであります。あるいは、従って筆者が考えて不利だと思うような速記録等は落してございます。そういうようなことで、速記が実は抜粋してあります。このことは直接文部省そのものに関係はありますまいが、しかし知っておいていただきたいということは、委員会会議録その他の参考資料の類は、何人もこれを議院の外に持ち出すことはできないと書いてあります。覚えておいていただきたいと思います。持ち出すことはできないのです。しかし現実に持ち出されておる証拠は、もちろん小説に何月何日の文教委員会において、あるいは本会議においてと明記し、そうして文部大臣清瀬一郎君の発言、あるいは質問者某君の発言、詳細に都合のいいところだけ抜粋してございます。でありまするから、もちろんこのような衆議院規則の五十八条くらいはじゅうりんされておることは、これは前提として認めざるを得ないのでありますが、原則が法規においてこのように定められておるものが、そのまま抜粋されて、さきに言ったような角度から組み立てられて、権威ある国会というものの描写がその小説においてなされておるのであります。これが毎日々々その新聞の読者を通じて国民の間に、興味ある小説の中のできごとでありまするから、そのまま無条件に無批判に、なるほどそうであったのかいう受け入れ方がされていくことは、これは私は間違いないと想う。このような事実をさらにつけ加えて申し上げまするから、大臣の御見解を更に承わりたいと思います。
  90. 松永東

    松永国務大臣 全くその小説を見ておりませんので、答弁する資格があるかないかも疑問だと思う。しかし御指摘になりましたような、委員会の速記録が、これは持ち出したんじゃないだろう、その委員会の速記録が各議員にやはり配付されますから、それを借りて見られて、それを引証して小説ができたのかもしれません。しかしいずれにいたしましても、御指摘になりました問題ですから、一つ研究してみたいと思います。私も読んでみます。そうしてさらにそれについて善処したいというふうに考えております。
  91. 山中貞則

    ○山中委員 別段御善処されるようなこともありますまいが、しかし当然その問題について自分自身の責任者としての考え等を持っておられることにおいて、あるいは私的な、あるいは半公的な会合等において新聞経営者の方々の良心に訴える方法もありましょうし、あるいはその他の方法というものが当然あり得ることでありましょうから、別段どういう善処をせよということを私は申し上げているのではないのでありまして、うっかりいたしますと、あなたの文部大臣のときの速記録が、また再びだれかの手によって新聞小説となって、毎日々々あなたを苦い思いにさらす日がないとも限りませんから、その点で一つ御勉強を賜わりたいと思います。私はこの問題については別途の角度で別の場所でまたあらためて考えてみたい問題だと思っている次第であります。  以上をもって打ち切ります。
  92. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 河野正君。
  93. 河野正

    河野(正)委員 すでに御承知だと思いますけれども、今次の戦争で動員学徒のうち、戦時災害による犠牲者というものが、死亡者数をあげますと九千六百七十一名、なおまたきわめて高度な傷害を残しました犠牲者が八百六十名、傷害が直接の原因となりまして病気になられた学徒が二千三十名、これは昭和二十六年十一月における文部省の発表でございます。これは直接戦争によります被害者でございますが、そのほか、たとえば工場でクレーンあるいは旋盤、こういった作業中に、事故に基きまして死亡された方、あるいはまたそのために傷病を受けられた方、こういった方々を合算いたしますならば、これは実におびただしい数に上るのではなかろうかということを私ども推定いたすのでございます。こういった問題は、きわめて大きな社会的あるいはまた道義的な問題であると思うのでございますが、こういった問題は一日も早く国家補償によって、国の責任において何らかの解決が行わるべきではないか。ことに戦後十数年の間におきまして、かつての軍人軍属、戦没者の遺家族及び傷病者にとりましては援護の手が伸べられまして、次々とその援護の方法というものが改善されて参っておるというふうな実情でございますので、学徒動員令に基きまする犠牲者のみがとり残されるということは断じてあってはならぬというふうに考えるわけでございますが、そういった点につきまして、もちろん今国会におきましても遺家族援護法等で若干の趣旨が盛られましたところの法案も出ておりますけれども、一応勤労学徒につきましては文部省が所管でもございますので、こういった問題に対しまして大臣がどういったお考えで臨んでおられ、なおまた将来どういった考えで臨んでいかれようとするか、そういった点に対しまする御所感をまず承わっておきたいと思います。
  94. 松永東

    松永国務大臣 河野委員の御指摘になりました戦争中の勤労学徒の問題、まことに御所論同感の点が多々あります。ことに若い学徒、青雲の志を抱いてそうして日常遠い将来に光明を認めながら働きつつあった人々が、ああした戦争のために犠牲になってしまった、まことにかわいそうにたえない。しかもそうした同じ列に置かれた人々のうちで何がしかの慰安の道を講じられた人々があるのに、ひとり勤労学徒においてはそのままになっおるということについては、これは私は何とかしなきゃならぬと思います。そうした法的根拠について一つ研究してみたいと存じます。さらにまた御指摘になりましたそうした学徒がどの県で何人が、どの県で何人くらいなくなったかというような点も詳細に一つ調べてみたいと存じます。もし局長がそうした調べをしておりますなら、局長からお答え申し上げてもよろしゅうございます。
  95. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣からきわめて適切なお言葉をいただきまして、私どもそういったお言葉が今後次次と具体的な施策となって現われて参りますことをきわめて強く期待をいたすのでございます。先ほどちょっと申し述べましたが、今国会におきましても戦傷病者遺家族援護法の改正というものが考慮されつつあるようでございます。こういった考慮が払われることにつきましては、まことに私は同慶の至りでございますけれども、しかしながらその中で私どもがただ遺憾に思いますことは、この援護法の改正の中に盛り込まれております——なおまた今日審議中でございますから、最終的なものではないと思うわけでございますので、さらにお尋ねをを申し上げ、またいろいろ御努力をお願いいたしたいと思うのでございますが、それはこの援護法の改正の中におきまするいわゆる支給内容、あるいは支給期間というようなものにつきまして、私ども若干の不満を表明せざるを得ないと思うのでございます。こういった点について大臣はどのようにお考えになっておられまするのか、またその間におきまするいろいろな折衝におきまして、どのような努力が払われて参ったのか、一つお尋ねを申し上げたいと思います。
  96. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は主管が厚生省でございます。それで厚生省でせっかく今鋭意研究を進めておるそうでございます。なお厚生省だからといって決して責任を転嫁しててんとしておるものではございません。しかし私は実のところを申し上げますと、その内容をよく承知いたしておりません。局長がよく承知いたしておりますから、局長から弁答いたさせます。
  97. 緒方信一

    緒方政府委員 先ほど大臣からも御意向の表明がありました通り、私どもといたしましても、さような不幸な方方に対しまする援護の手がなるべく厚くのべられますことを衷心より希望いたしております。ただ今後の現実の問題といたしましては、厚生省の方でまとめられまして予算と法律が今審議されておりますので、今日におきましては、政府といたしましてはその線で進むわけでございます。ただ今後におきまして、一般的な考え方といたしましては先ほどから申し上げた通りでございますが、内容のこまかい点につきましてはさらに法律の審議等で御審議をいただくことになると思います。
  98. 河野正

    河野(正)委員 実は厚生省もお呼びしたわけでございますけれども、おいででないのでございまして、そこで文部省もやはり勤労学徒に対しましては当然責任を持っていただかなければならぬので、そういった意味でお尋ねをいたしておるのでございますから、あらかじめ御了承を願いたいと思います。  ただ局長からも御指摘ございましたように、なるほど援護法が今日鋭意審議されておるということは私ども十分承知をいたしております。しかしながら先ほどもちょっと申し述べましたように、その支給内容におきましては五〇%という制限がある、あるいは期間におきましては約五ヵ年問という制限があるかのように私ども仄聞をいたしております。そういたしますと、せっかく私どもは期待いたしておりますけれども、その内容と期間におきまして非常に他と均衡を欠く事実が生まれて参りますので、この点につきましては十分一つ当局もお考えを願って、今後厚生省とも鋭意折衝をやっていただきたい。少くとも折衝していただくことによって、今日考えられておりますことに最も近づくように私ども強く御要望を申し上げたいと思うのでございます。  なおまた厚生省も御出席でございませんので、文部省当局に御要望を申し上げたいと思います。具体的な例を申し上げますならば、先ほど申しましたようなし支給内容の問題、あるいは期間の問題、国立保養所に対しまする収容の問題、あるいはまた義手、義足等の支給の問題、あるいはまた患者の輸送の問題、こういったいろいろな要望があるわけでございますけれども、これを総括的に申し上げますならば、いわゆる援護法の一般と同様な完全適用によって、一般の援護の場合と均衡を失することがないように、こういった点につきましては、先ほどから大臣からもいろいろと温情ある御趣旨が申し述べられましたので、そういう御趣旨に基いて、ぜひとも、均衡を欠くような、たとえば内容の制限だとかあるいは期間の制限だとか、あるいはまたいろいろ今日まで問題のございまする義手、義足の支給につきましては、全額本人が負担しておるというような問題もございますので、そういった今日までの隘路を全面的に克服して、援護法の、一般と同様に完全なる適用を受けられますように、一つぜひとも遺憾なき努力をやっていただきたいということを、厚生省が御出席でございませんので、十分一つ大臣にお願いし、私どもその御努力に対しまして心からなる期待をささげておるということを申し上げておきたいと思います。  それから先ほど大臣ちょっと申されたのでございますけれども、いろいろ犠牲者の数字その他については今後十分調査をいたしたいというようなことのようでございます。もちろんそれはその通りでございまして、私ども十分なる調査を今後とも続けてやっていただきたい、そして完全な適用が行われるように努力していただきたいということを御要望申し上げるわけでございます。  そこでそういったことと関達することでございますが、先ほどちょっと私が御指摘申し上げましたように、昭和二十六年十一月の報告によりましても、実に膨大なる学徒の諸君が犠牲になっておるのでございます。ところが先般の委員会におきましても取り上げたのでございますけれども、御承知のように昭和二十年五月戦局がますます悲運の度を加えたとき、いわゆる戦時教育令が公布、実施されました。ここで学校の授業というものは全く廃止され、そして授業を受けないでも卒業証書をもらえるというふうな状態になったことは、すでに御承知通りでございます。そこで各学校におきましては学校報国隊を組織して、それぞれ軍需工場に出向きまして、飛行機の部分品作りとが、あるいは軍服、大砲のたま磨き、こういったいろいろな作業に従事をいたしたのでございます。その際もちろん若干の労賃と申しますが、賃金が支払われ、その支払われました賃金の中から何%かのものがけがをしたり、病気をしたりあるいは死亡したりした場合の弔慰金あるいは見舞金となる、そういったためにいわゆる積立金が賃金の中から何%が行われたということも、これまた先般の委員会で御指摘申し上げました通りでございます。ところが私どもの得ました資料によりますと、そういった学徒動員令によって、それぞれ学校報国隊が軍需工場その他で作業して、そして賃金をもらったということで、いろいろ事故の場合にはその賃金の中から積み立てられました中から、それぞれ弔慰金あるいは見舞金をもらったということでございますが、その結末がどうなったかということを資料でながめて参りますると、青森県、秋田県、山形県、埼玉県、神奈川県、富山県、岐阜県、大阪、それから熊本県、こういったところでは死亡者に対しまする弔慰金あるいは傷害見舞金、傷病見舞金というものが全然支払われておらないというような状況になっております。そういたしますと、さっきも御指摘申し上げましたように、ある者は軍需工場で汗を流し、血を流して、そうして得たる賃金の中から一たん事ある場合のために賃金の一部を積み立てておりながら、ただいま申し上げまする各県におきましては、全然弔慰金、見舞金あるいは傷病見舞金というものは支払っておらないと言いうようなことになりまして、戦時教育令の実施によって授業を放棄し、そうして作業に従事し、しかも犠牲をこうむりながら、その趣旨に沿い得られなかったということは、私は全く不可解千万といわなければならぬと思うのでございますが、そういった実情に対しまして当局側はどういう判断をいたされておりますのが、その点に対しましてはこまかいことでございますので、政府委員からでも御答弁を願いたいと思います。
  99. 緒方信一

    緒方政府委員 前国会のとき、委員会におきまして河野委員からお尋ねがございましたので、文部省としましても当時の状況につきまして、全国の各都道府県知事と教育委員会に対しまして照会をいたしたのであります。御指摘学校報国隊に対しまする報奨金のその後の取扱い方でございますが、それにつきまして、当時混乱中でございましたので、なかななか各府県でも詳細なことはわかっていないわけでございます。従いまして私どもの方としまして、詳細にいろいろな項目を示しまして調査をいたしたのでございますけれども、なかなか正確な回答が出て参っていないのが実情でございます。私どもの知りたいと思いましたことは、御承知のようにあの報奨金の取扱いは学校報国隊の本部で一応取り扱うことになっておったわけでありますけれども、しかし終戦後都道府県に学校報国隊の本部ができまして、そこで一括して経理したんじゃないかということが考えられますので、その点について、第一、どういうふうな実情にあるかということを聞いてみました。これに対しましては四十一都道府県から今日まで報告が出ておりますけれども、そういうことをやったというのが香川県だけでございます。それからあるらしいというのが熊本県、ないというのが、二十八県、これは各別々に取り扱っている。不明というのが十一県、こういう報告が来ております。  次に、一括経理したとすれば、その特別会計の残余金の額、または終戦後どのような経緯によってどう処理されたかというようなことにつきましても照会いたしましたが、これはほとんど不明というのでございまして、回答が参っておりません。  三番目に、これは終戦後でありますけれども、学校報国団の基金等があれば、それは各学校の校友会に引き継ぐようにということを文部省から申してやった事実がありますので、その取扱いがどうなったかということを聞いてみました。これに対しましては、その通りやったというのが十三県ございます。やらないというのが七県で、不明が二十一県であります。かような実情で、特に残余金額の処理の経緯につきましては、ほとんどわかっていないのが実情でございます。何と申しましても終戦直前並びに終戦当時の波乱のさ中でございますので、非常に混乱いたしまして今日わかっていない実情であるようでございます。特にまた学校あるいは地方関係当局の機構制度等もだいぶ変って参りましたし、また取扱いに当っておりました具体的な人も交代をするというようなこともございまして、今日ではほとんど使途がわかっていないというのが実情でございます。
  100. 河野正

    河野(正)委員 調査に対する報告が行われたのでございますけれども、私どもの満足のいくような状態ではないようでございます。  そこで若干資料がございますから、その資料を提示しつつ御質問を続けて参りたいと思いますが、たとえば広島、長崎では原子爆弾が投下されまして、膨大な動員学徒の犠牲者が出ていることは常識的に判断ができます。文部省の統計によりましても、長崎、広島の区分はございませんけれども、いずれにしましても六千七百九十三名という動員学徒の諸君が原子爆弾の犠牲になって倒れている。それから臨時恩給等調査会の資料によりましても、原子爆弾による死亡が八千五百九十三名ということでございます。いずれにいたしましても広島、長崎において原子爆弾の犠牲になって倒れた動員学徒の数は大体六千から八千名に上るであろうということは、この統計を見て参りましても、容易に承知できる事実でございます。ところがさっき、いろいろ不明だということでございましたけれども、私どもの持っております資料によりますと、たとえば広島におきましては、死亡いたしましたために弔慰金を出しました人数が十名ということになっております。それから障害見舞金を出しました人員が一名という数字を示しております。それから長崎の方は、死亡いたしましたために弔慰金をやりました方々の数が十六名、それから障害見舞金を渡しました方々の数が十二名。広島、長崎だけで二十六名という方々に死亡弔慰金を出されたという数字が明らかでございます。ところがさっきも申し上げましたように、長崎か広島かわかりませんけれども、いずれにいたしましても、原爆の犠牲によって倒れた学徒の諸君が、臨時恩給等調査会の資料によりますれば八千五百九十三名、文部省の資料によりますると六千七百九十三名、こういったような膨大な数が出ておりますにかかわらず、ただいま申し上げますように、弔慰金を出しました数というのは、零にひとしいような数字であるわけでございますが、こういった点について、いろいろ調査したけれども明らかでなかったということでございますけれども、しからば、こういった書類が提出されたという事実につきましては、文部省としてはどういうふうにお考えになっておりますか、この点につきまして、一つ御所見を承わっておきたいと思います。
  101. 緒方信一

    緒方政府委員 今のおあげになりました広島、長崎の弔慰をいたしました状況は、なお私どもも今具体的にお示しございましたから、さらにこれにつきまして調査をいたしたいと存じます。これは今お話の通り、報奨金によって弔慰をした件数だろうと思いますが、当時、動員学徒援護会の手によりまして援護の行われました状況は、また別に私ども資料を持っております。先ほど、わからぬと申し上げましたのは、報国隊に支払われました報奨金の取扱いの状況は、今日わかっていないのが実情でございますが、なお今具体的にお示しもございましたので、これはまた調査をいたしたいと存じます。動員学徒援護会におきまして、同会の扶助実施規程によりまして実施されました援護の状況は、一般災害によるものが、人員にいたしまして七千八百八人、それから原爆によるものが一万二千九百四十七人、合計いたしまして二万という数がわかっております。しかしこの数といえども、これは終戦当時の混乱でございまして、援護会の支部から報告のなかった数字もございましょうから、正確とは申しかねますけれども、こういう数を一応は私どもの資料として持っておる次第であります。
  102. 河野正

    河野(正)委員 さらに申し添えておきたいと思いますが、たとえば奈良県、和歌山県、佐賀県、大分県、こういった各府県におきましては、若干の死亡弔慰金あるいは障害見舞金は出ておりますけれども、傷病見舞金は全然出ておらないというふうな報告になっておるようでございます。そこで私ども不可思議に思いますことは、こういった各府県においては、死亡弔慰金あるいは障害見舞金は出ておるのに、傷病見舞金は全然出ない。傷病になった方が一人もおられないということは常識的にはちょっと考えられぬわけでございます。今申し上げた事実も一例でございますけれどもいずれにいたしましても、こういったいろいろな資料を一覧して参りますと、この資料というものが全くずさんきわまるものである。要するに、処理せんがために処理されたというふうに判断せざるを得ないと思いますし、なおまたそのことがきわめて重大なことは、それはその背後に金銭上の問題がからんでおるからであります。先ほども御指摘申し上げましたように、勤労学徒がそれぞれ軍需工場その他の工場におきまして勤労に従事した。そうしてその尊い賃金の中から若干の積立金を行なった。ところがただいま申し上げますように、その積立金の処理というものが、こういったような全くずさんな、極端な言葉で申し上げますならば、失礼かもしれませんけれども、ごまかしのためのような資料が作られておる。そういうことでこの問題を葬り去ろうとしておるというようなことにつきましては、私ども断じて承服して参るわけには参らぬと考えております。たとえば大学局長がさっきもおっしゃいましたように、全然その当時の人がおらぬとか、全然その当時の資料がないというようなことでございますならば、これは一歩下りまして別でございますけれども、先ほども申し上げますように、ほんとうに処理せんがための若干の数字だけ出しておる。そういうことでごまかしておる。ごまかすことによって、こういったとうとい資金というものをうやむやの中で葬り去っておる。こういった事実につきまして、私ども断じて承服して参るわけには参りません。そこでこういった資料を提起いたしましたので、当局におきましても、こういった資料に基いて再調査をやっていただきたい。その調査の結果につきましては、後ほどまたいろいろこの委員会におきまして論議したいと思いますけれども、こういった問題を提起いたしましたので、あらためて一つ調査をしていただきたいということを御要望申し上げます。  それからさっき調査報告の中で熊本県の話が出ておりましたが、熊本県の方からどういうふうな報告が出て参ったか、これを一つ詳細にお示し願いたいと思います。
  103. 緒方信一

    緒方政府委員 熊本県の状況につきましても、満足な状況は出て参っておりません。県のどこかの機関で一括処理したのではないかという点につきましては、そういうふうに想像できるという回答でございます。しかしはっきりした報告はございません。そういうふうに思われるという表現でございます。それから金の取扱いにつきましては、熊本県学校報国団本部という名称による郵便為替貯金が保管されておったけれども、これが今の報奨金の特別会計の残余金であるかどうかは、はっきり確認してないということを言っております。当時の関係者から聞きましたところでは、当時の担当者が、終戦時の混乱によって、法的に清算する時期を失ったまま、油断しているうちに封鎖の対象になって、何年かして後にようやく封鎖が解除されるに至ったというような経緯でございます。支出につきましては、証憑書類が保存されていないということでございます。二十四年から二十六年までの間に、今この預金を、その当時占領治下でございましたので、何が特殊な渉外的な用途に充当されたというふうにこれはいわれておるという表現で来ております。それからさらに残余金は、その後熊本県に発足を見ました動員学徒犠牲者の会に支出または寄付されたという報告がございます。それからなお校友会の方に引き継いだかどうかということでございますが、これも終戦直後の事務処理困難のさなかでございまして、いつ受理されてどういうふうに処理されたかは不明であるという報告であります。結局この処理の状況としましては、教育委員会という行政機関正で処理したというのではなくて、たまたま担当者がそれの保管をしていて、事実上保管されてきたという経緯のようでございます。
  104. 河野正

    河野(正)委員 ただいまいろいろ具体的な説明がなされましたけれども、私どもその説明だけでは納得がいかぬのでございます。と申し上げますのは、たとえばいろいろ残余金があったが、それが報奨金であったかどうかわからぬというようなお話でございましたけれども、明らかに預金者名は熊本県学校報国団本部というように示されております。しかも占領治下で渉外的にいろいろ金を使ったんであろうということでございますけれども、私どもの得たる資料によりますと、昭和二十四年の四月十五日以降昭和二十六年の十二月二十四日までに関しまするいろいろな支出の数字がございます。たとえば二十四年の四月十五日には二万円引きおろした、あるいは二十四年の十月十九日には五千円というふうな数字がざっと示されております。その支出されました金額と残高を計算いたしますと六十一万五千四百十五円五十銭というような数字でございます。しかもその当時と今日と貨幣価値が違いますので、正確には三百七十倍でございましょうが、約四百倍といたしましても今日の貨幣価値に計算いたしますならば二億四千万円という膨大な額に達します。それが何月何日には幾ら引きおろした、何月何日には幾ら幾らというような金が引きおろされているんだから、それが何に使われたかわからぬというようなことでは、私は、この勤労学徒には承服できぬというふうに考えるわけでございます。そういった事実がおわかりでなかったということでございますならば、一つこの点も再調査していただきたい。わかっておったといたしますならば、これは全くけしからぬことだというふうに思うのでございます。その点いかがでございますか。
  105. 緒方信一

    緒方政府委員 熊本県からの正式な報告は先ほど申し上げた通りでございまして、十分わかっておりません。今御提示になりました事実につきましては、その点さらに調査をいたします。
  106. 河野正

    河野(正)委員 ただいま申し上げた事実はこちらにはっきりした資料がございますので、当局側で御不明でございますならば、一つこの事実に基きましてさっそく再調査をやっていただきたい。それからこの点はすでに御承知だと思いますけれども、さっき申し上げましたように、終戦後この報奨金は当時の学務課で所管をしたということでございます。その後教育庁ということに制度が改革されましたので、その後は教育庁だということでございますが、その教育庁の次長で当面の責任者でございました後の熊本第一高校の永井という校長がおられます。この方が当時の責任者であったということでございますが、熊本県動員学徒犠牲者の会というものが設立されて、この問題を取り上げて以後、いろいろ理由もあったと思いますけれども、この熊本第一高校の永井校長が自殺をされたというふうな事実もございます。もちろんそれにつきましては学校職員の異動の問題とかあるいはいろいろの問題が提起されておるようでございますけれども、しかしながらたまたまそういった問題が摘発されて、当時の責任者でございまする校長が自殺されたというふうなことも新聞で非常に大きく報道されておるようでございます。こういったことが必ずしもそういったことに一致するかどうかわかりませんけれども、こういったこともやはり当時非常に大きな疑問と申しますか、疑惑を県民に抱かせたあるいは勤労学徒に抱かせたということもやはり事実のようでございます。これに対しまして現地では人事委員会等で紛争処理のための問題が進められておるようでございます。この点につきまして、何らかの事情を御承知でございましたならば、一つこの委員会でお示し願っておきたいと思います。
  107. 緒方信一

    緒方政府委員 これは私直接の担当でございませんから、正確な御返事はできないかと存じますけれども、永井高等学校の校長の自殺の問題は、従来伝えられておりますのは、教員組合との折衝等の問題が原因であったように聞いております。ただ今のお話の報奨金の問題につきましては、私全然存じておりません。従いまして正確なことはこの席では申し上げかねると存じます。
  108. 河野正

    河野(正)委員 いずれにいたしましても、問題はそういった当時の責任者が自殺されたために、こういった問題の実態が明らかにされぬということでございますならば、私はきわめて残念だというふうに考えざるを得ないのでございます。  申し上げたいことはたくさんございますけれども、時間もございませんから結論に移りたいと思いますが、いずれにいたしましても、冒頭からいろいろ私が御指摘申しましたように、当時の動員学徒はまことに悲壮な、しかも報国の熱情に燃えて、血と汗の勤労に従事をいたしたのでございますし、その勤労の血と汗の結晶が報奨金となって現われ、それがまたいろいろな犠牲の場合の弔慰金あるいは見舞金として積み立てられた。ところがその金というものが、全くうやむやのままに葬り去られるということにつきましては、最大の犠牲を払われました勤労学徒に対しましても、私はまことに申しわけない次第であるというふうに御指摘を申し上げなければならぬと思います。そこで前回も取り上げたのでございますけれども、そういった事実を明確にして、その処理というものを明確にすることによって、そういった犠牲者に対して報いなければならぬというようなことを私ども強く御指摘を申し上げたいと思います。  それから厚生省の方にお尋ねを申し上げ、なおまた御要望を、申し上げたいと思うのでございます。先ほど文部大臣あるいは文部当局に対しましていろいろ御要望を申し上げました。今後厚生省当局とも密接な連携のもとに、非常に大きな犠牲を払いました勤労学徒の援護に対しましては、万全を期していただきたいということを申し上げたのでございます。言葉が重複いたしますのでいろいろ申し上げませんが、この勤労学徒の援護というものに対しまする御所感を厚生省当局から承わっておきたいと思います。
  109. 河野鎭雄

    河野政府委員 勤労動員されました学徒に対しまして、私ども従来から関係をいたしておりました面は、御承知のように、戦没者遺族等援護法というのがございまして、これに基いて従来仕事をやって参っておるわけであります。同法におきます動員学徒の取扱いと申しますか、規定内容といたしましては、従来その他の、たとえば徴用工であるとかあるいは満州開拓青年義勇隊であるとか、そういうふうな国との雇用関係のない人々で、何らかの意味において国の権力関係とのつながりのために戦争犠牲を受けた人たちを一緒の範疇に置きまして、俗に準軍属という総称をいたしておるわけでございますが、そういうふうな範疇を設けまして、なくなった方の御遺族に弔慰金を差し上げる、こういうふうな措置をとって参ったわけであります。それにつきましては、従来から弔慰金だけを出すということでは足りないではないかというふうな御意見を、国会等においてもしばしば拝聴いたしておるわけでございます。たまたま今回恩給法の改正がございまして、それに伴って援護法も改正をすることになって参ったわけでありますが、ただいま申し上げました準軍属の処遇につきましても何らかの措置が必要ではないかというふうなことが、その改正の前提になりました臨時恩給等調査会においても慎重に御審議いただいた点でございます。大体調査会の答申の線に沿いまして、今回改正法案を本国会に御提案申し上げておる次第でございます。  内容等はすでに御承知かとも思いますが、簡単に申し上げますと、なくなった方の御遺族に対しましては、先ほど申し上げましたように、従来三万円の弔慰金を差し上げるというだけにとどまっておったわけでございますが、今回の改正が成立いたしますれば、軍属に差し上げる年金額の半額を五年間にわたって差し上げる、こういうふうなことになる次第でございます。なおただいま申し上げましたのは、なくなった方の遺族に対する処遇でありますが、本人がけがをされましてまだ生存されております方々に対しましては、軍属に対しまする障害年金の半額を差し上げる、こういうふうにいたしたいと考えておる次第でございます。なお厚生医療であるとか、補装具の支給であるとか、あるいは国立保養所への入所というような措置につきましても、軍属と同様の処遇をするように今回の改正で盛り込んでおる次第でございます。
  110. 河野正

    河野(正)委員 話が重複いたしますのでいろいろ申し上げませんが、いずれにいたしましてもただいま御指摘がございましたように、その支給内容、それから期間の問題、五〇%と五ヵ年間の問題、こういった問題につきましては勤労学徒の犠牲に報いるためには、私ははなはだ過少に過ぎるのではなかろうかということを考えるのでございまして、これは後ほど文部大臣からも厚生省当局に対しましていろいろ御要望等もあろうかと思います。先ほどお願い申し上げて大臣からも適切なる御答弁をいただきましたので、後ほど折衝等があるかと思いますが、そういった支給内容、制限期間の問題等につきましてはぜひとも善処をしていただきたい。なおまた厚生医療、補装具の問題、こういった問題につきましても完全適用ということで最善の努力をしていただきたい。もし今国会で不可能であるならば、私どもはそういう点に不満でありますから、将来はぜひとも完全適用という方向に努力願いたい。この点につきましては先ほどるる文部大臣局長等にもお願いをいたしましたから、後ほどいろいろ御折衝もあろうと思いますので、この点に対しましては十分なる御努力を願いたいということで私の質問を終りたいと思います。
  111. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 本日はこの程度とし、次会は明後十四日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後二時五分散会