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1958-02-28 第28回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十八日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 伊東 岩男君 理事 稻葉  修君    理事 高村 坂彦君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       大橋 忠一君    渡海元三郎君       並木 芳雄君    山口 好一君       木下  哲君    小牧 次生君       櫻井 奎夫君    鈴木 義男君       高津 正道君    平田 ヒデ君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 莊一君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         海上保安庁長官 島居辰次郎君  委員外出席者         文部事務官         (調査局国語課         長)      白石 六二君         専  門  員 石井 勗 君     ————————————— 本日の会議に付した案件  義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六二号)  盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に  関する法律の一部を改正する法律案内閣提出  第六三号)  日本育英会法の一部を改正する法律案内閣提  出第八七号)  南極地域観測に関する件  国語問題に関する件      ————◇—————
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続きまして南極地域観測に関し調査を進めます。質疑の通告がございますからこれを順次許すことにいたします。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 国民の期待していた南極観測も、不測の天候によって不首尾に終り、まことに残念にたえません。一昨年私は宗谷の出発に当り万才を三唱して送った関係上、ひとしお感深いものがあります。この際文部大臣から統合本部長として、まず今度の計画が何で失敗したか、その結果などにつきまして概略の御説明を率直に承わりたいと思います。
  4. 松永東

    松永国務大臣 御承知通り南極観測が成功することができなかったことはまことに残念に存じております。この成功することのできなかった原因についてはいろいろな面が想像せられておるのでありますし、さらにまた研究せられつつあるのでありますが、やはり問題は装備が不十分であった、すなわちあの昭和基地に対しては、今度やりました宗谷装備、その力ではやはりとうていこれは達成困難じゃなかろうかというふうに感ぜられるのです。私はその点についてはしろうとでありますから、よくわかりませんが、きのうも茅学術会議会長からいろいろ説明を承わりましても、まさにそういう点が原因一つではないかというふうに考えております。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 少くも国費十五億という巨費を投じ、人命の不安を感じつつも、十五頭の樺太犬を除いては比較的に犠牲も少く、一行を迎えることは不幸中の幸だと思います。ただ何によっても日本科学のおくれておること、また宗谷能力の足りなかったことは、今後の科学教育あるいは教育行政に対して何らかの示唆を与えたと思いますが、大臣はそれをいかが考えておられますか、お尋ねいたします。
  6. 松永東

    松永国務大臣 御承知通りこうしてこの問題が成功することができなかった点については、わが国の科学技術教育の将来にも相当研究をせなければならぬ問題であり、さらに憂慮せなければならぬ問題だと心配いたしております。しかしながら三月の半ばごろには、一年間越冬いたしておりました十一人の人々永田隊長あたり帰還せられるというふうに考えておりますので、その上でその原因那辺にあったかということ、並びにその一年間の越冬期間内においてどういう効果を上げられたか、その研究のいきさつ、効果等についてもよく伺った上で、われわれは将来に対する考え方を新たにしたいというふうに考えております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちもいろいろ議論はありますけれども越冬隊員の並々ならぬ苦心、松本船長初め永田隊長らの苦労国民とともに感謝しております。ただ私たち感謝をするだけではいけませんので、今度のこの苦い経験によって今後これをどういうふうに生かしていくかということについては、いずれ永田隊長も三月には帰られるそうでありますが、大臣としては何らかの構想を持っておられるのか。自然のきびしいということは、昨日も同僚委員から質問がありまして、茅学術会議会長からもいろいろ伺ったわけでございますけれども越冬隊及び今度の船の問題について、大臣はその責任者として何か考えておられるかどうかをお伺いしたいと思います。
  8. 松永東

    松永国務大臣 私といたしましては、国民のあれだけ絶大な支援のもとにこの観測隊を派遣いたしまして、そうして現地において並々ならぬ苦労をせられたことでございますから、そのとうとき経験を生かして、何とかしてこの観測を続行したいというふうに考えておることは、これはもう当然のことであります。しかし問題は、今も申し上げておるように、三月の中ごろ帰還せられる越冬隊人々並びに永田隊長あたりの御説を承わって、そうしてそれに基きまして現在の宗谷をさらに装備を新たにして来年も継続できるかどうか、そうなりますれば大した経費も時日もかからずにできるらしいのでありますが、それがどうしてもできないということになりますと、相当巨額の費用の御協賛を仰がなければならぬことはもちろんであります。さらに適当な、堅実な向うへ出す船を新造するには、二年なり二年半なりの日子がかかるそうであります。それに対してどうするかということを一つ新たに研究せなければならぬと考えておる。いずれにいたしましても、繰り返して申します通り現地で働かれた人々帰還せられた上でのその体験談、その研究等に待って善処していきたいというふうに考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 島居長官にちょっとお伺いします。今大臣が言われたように、永田隊長意見参考にして今後また新しく考えられるいろいろなことがありますが、ただ宗谷にかわるような船が今日本にないのか。先回もお尋ねしたわけでございますが、何らかの方法で、外国船にたよらないで南極観測をやることができないのか。私たちは、松本船長があの大自然と闘いながら、宗谷能力の足りないことに切歯扼腕しておられることと思いますが、宗谷にかわるような船があるのかないのかということを専門家立場としてお伺いしたいと思います。
  10. 島居辰次郎

    島居政府委員 一番最初に予備観測に出かけるときからの問題であったのでありますが、あのときは一年足らずでありました。しかし一年足らずという期間を前提にして考えられたときに、国鉄宗谷丸海上保安庁宗谷候補に上ったのであります。そのほかの船には適当な船は実はなかったのであります。しかし国鉄の方の船はいろいろな関係でいけなかったので、私の方の船に行ってもらうということになったのであります。何分一年足らずという期間でございました。しかしながら、その当時申し上げましたように、日本の学界及び民間の造船関係の最高の権威をもって設計その他をやったのでございまして、あれ以上はその当時としてはできなかったかと思っております。そこでその後大きな船ができたかと申しますと、砕氷船というものはその後日本には何もできていないのであります。そうして宗谷以外の適船は、私が今知っている範囲においては——しかも一年もございませんが、この短時日において改装してやっていくという船は今のところではないと思うのであります。私まだその方面については十分調べたわけでございませんので、これからなお調査いたしますが、今のところでは見当らないかと思っておるのでございます。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点島居長官にお尋ねしますが、そうすると、現状としては日本宗谷にかわるものがないとすれば、宗谷改装によってもっと能力のあるものにすることができるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  12. 島居辰次郎

    島居政府委員 一番強力にする大きな問題は、ディーゼル・エレクトリックというものでございますが、これだと非常に強力に、スピードも早く、推進力が出るわけであります。南極に行っておる大型の砕氷艦または砕氷船にはこういうものがついております。これをやるといたしますと、宗谷の船体の大きさからいたしまして、いわゆる観測隊員乗組員の部屋も相当食われますし、また荷物も相当積んでいかなければならぬというようなスペースの関係から、これはなかなかむずかしいことであろうと思うのであります。でございますので、なお今後その方面専門家権威研究をしていただくことと思いますが、会のところでは、あるいはもうちょっとくらいはよくなるかもしれませんが、あの程度ではなかろうかと思うのであります。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 松永文部大臣にお尋ねするのでございますが、今度の計画は現在の文部大臣松永さん自身責任ではありませんけれども、しかしこの観測失敗に終ったとなれば、日本人というものは成功したときには旗を立てて喜びますけれども、逃げ腰になるとなかなかの非難が出てくる、これは政府責任になるかと思いますが、国民とともに私たち国会議員として、これはただ単に責任を追及するということでなくて、将来の計画のためにわれわれはここで文部大臣の決意とその責任のありかだけは表明していただきたいと思います。大臣の御意思を承わりたいと思います。
  14. 松永東

    松永国務大臣 仰せになりました諸般の問題については先ほど来繰り返し申します通り越冬隊帰還並び永田隊長帰還によってそうした失敗原因那辺にあるかということ、さらにそれは適当な注意を払ってもなし遂げることができなかったのかどうかというような点等も考究いたしまして、そして善処したいというふうに考えております。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後にお尋ねするのでありますが、御承知のようにこれは何といっても国の予算から出た費用でございまして、われわれとしてはその事のいかんを一問わず、とにかく帰ってくれば、また越冬隊も一年も行っておられたのでありますから、いろいろな参考の資料もできる、日本学術進歩のためになるということだけはわかりますけれども、しかし一面においてどうしてそういうような不足のことをやったのだというような非難が出てくるわけでございます。私たち松本船長初め船員の諸君、あるいは永田隊長以下の隊員には同情を持ち、最善を尽してやっていただいたことだけは新聞やラジオを通じて知っておりますので、しみじみと感謝しているわけであります。この間文部大臣が四回かわっておりまして、しかもだれがやったということではございませんけれども、少くとも政府並びに文部当局がこういう指導をやられたことにつきましては、将来の大成を期するためにも、私たちはこの際、国民が安心してもう一度この計画を成功させるためにもはっきりとした意思表示をしていただきたいと思いますので、その点大臣はどういうお考えでおられるのか、もう一言お尋ねして私の質問を終ります。
  16. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました諸点はまさにその通りでございます。歴代の文相が仰せ通り四人もかわっております。かわっておりますけれども、帰結するところは文部当局失敗があるとすれば失敗。しかしながら、御承知通り昨年の予備観測ほんとうに奇跡的と今から考えれば考えるほど成功しているわけであります。従って昨年宗谷が出発しますときにも奇跡を頼んだというのじゃありません。これはできることだという確信を半ば持ちながらやったということが事実でごいざます。従って来月の半ばごろには皆さん帰還いたしますので、その上で善処したいと存じますが、しかしさらに繰り返し御主張になりました何らかの意思の発表はしなければならぬというふうに考えております。
  17. 高津正道

    高津委員 関連して、一点島居長官にお尋ねしますが、宗谷改装のために日本鋼管に払われた全額は幾らですか、始めからしまいまで。
  18. 島居辰次郎

    島居政府委員 まことに相済みません。詳細な数字を持ち合せませんが、大体、六億程度でございます。
  19. 高津正道

    高津委員 契約の政府側の当事者はだれでしょうか。
  20. 島居辰次郎

    島居政府委員 海上保安庁長官でございます。
  21. 木下哲

    木下委員 関題して一点だけ鳥居長官に伺いますが、先ほど佐藤委員からの、現在としては、宗谷能力的に一番優秀かというような意味質問に対するお答えの中に、候補としては宗谷国鉄の何とかいう船と二つ上った。ところが国鉄の方はいろいろな意味でやめまして宗谷にきまったというお話がございましたが、私承わっておりますと、能力的にただいまの宗谷がいいのであるというふうにとれなくて、国鉄の方がもっと優秀であるが、別な意味で何か差しつかえがあってできなかったというふうにとれたのでございます。これは二つの候補の中から用いたところの宗谷が、当然能力的によかったというお答えであるか、国鉄のこれこれの船が能力的にはあるいはもうちょっといいかもしれないが、ほかの理由でやめたというのであるか、私はそちらの方に聞えたのでありますが、それであるとするならば、その理由を承わりたい。当然比べて、用いた宗谷が優秀であるということならそれでけっこうでありますが、お答えがどうも能力的には国鉄の持っておる船の方がいいのであるが、いろいろな理由でこっちをやったというふうに私受け取れたので、明瞭にいたしたいと思います。
  22. 島居辰次郎

    島居政府委員 宗谷丸の方はやっぱり石炭だきの船でございまして、もちろん内部を全部エンジンも取りかえなきゃならぬ一つの大きな工事が必要である。それからもう一つ大きな問題は、宗谷丸乗組員沿岸航路乗組員でありまして、それをそのまま南極へ持っていくには不適当であるので、どこかほかから乗組員を探さなきゃならぬということと、それから帰ってからもと通りにしてくれというような要求もございまして、非常に金がまた多くかかる、こういうふうな状況だったと思っております。
  23. 山下榮二

  24. 河野正

    河野(正)委員 南極の本観測を放棄して、今後この観測に対してどういう態度をとっていくかということにつきましては、いろいろ意見が開陳されたのでございますが、御承知のように、来年度南極観測に関しましてはすでに予算として二億三千五百万円が計上されておるのでございます。一応放棄を決定いたしました今日、この予算を今後どういうふうに取り扱おうとしておられまするのか、その点についての大臣の方針を一つ承わっておきたいと思います。
  25. 松永東

    松永国務大臣 仰せになりましたように、今後南極観測を中絶するというような考えはまだ持っておりません。ここまでやってきたことですから、さらに国際的の立場もありますし、何とかしてもしやれることならやりたいというふうに考えております。しかしながらそれは先ほどから繰り返して申し上げます通り現地で働いた人々帰還した後に、果してそうした気持が継続できるものか、すなわち実行の継続が可能なものかどうかというような点を考えてきめなければならぬと思っております。従ってまだ中絶したということではございませんで、帰ってきましてから、予算その他も相談の上きめなけりゃならぬ。さらにまた宗谷が帰ってきますと、いろいろ船も損傷いたしております。装備の改修やら何やらについても相当予算がかかるだろうと思います。こういう点についても一応研究いたしまして、さらに御協賛を仰ぐということになるのではないかというふうに考えております。
  26. 河野正

    河野(正)委員 なるほど大臣がただいま仰せ通りだとも思うわけでございますけれども、しかしながら今度の観測は、世界の十一ヵ国の国際協力という上に立って、それぞれ一貫した観測が行われたわけでございます。たまたま日本が放棄いたしましたので、おそらくその計画におきまして若干の穴が出て参ったということは、私は、これは残念でございますけれども否定することはできないであろうと考えております。しかも現実に、現地における南極観測を放棄したわけでございますから、今後この問題をどうするかというような問題もございますけれども、単にそういった抽象的なことだけでなくて、具体的に、たとえば、私は専門的なことはよくわかりませんけれども、この観測には国内観測という場もあるわけでございますから、この二億三千五百万円の予算の中の一部を重点的に今後は国内観測に振り向けて、そして国際信義上に生じて参りました一つの欠陥というものを、こういった国内観測に重点を向けることによって償いをつけていくというような具体的な方策も私は必要ではなかろうかというふうに考えるのでございまして、こういった点について大臣がどのようにお考えになっておりまするのか、一つ承わっておきたいと思います。
  27. 松永東

    松永国務大臣 御説の通り、この問題につきましては国際的の関係もございますので、たとい南極現地で穴が明きましても、この予算の余りを使って国内的にいろいろの研究を進めるというようなこともやらなけりゃならぬことじゃないかと思っております。それもいま半月待ちますと帰還いたしますので、そうした上で十分一つ研究の上皆さんともまた相談を重ねて善処したいというふうに考えております。
  28. 河野正

    河野(正)委員 私は、国際的な立場もございますので、今日現地における観測ということはとうていできないわけでございますから、不可能でございますから、むしろそういった面で償いをつけていくというふうな努力をやっていただきますことを切望いたしておきます。  それからこれは今までたびたび論議されて参りましたが、例の樺太犬の問題でございます。現地隊員等は、きのうもちょっと御説明ございましたように、飛行機のガソリンを捨ててまで犬の救出に努力したのだというふうな、非常になみなみならぬ努力が払われたわけでございますけれども、しかし国内におきまする世論というものは、必ずしもそれをそのまま率直に受け取るというふうな実情ではないようでございます。承わるところによりますと、ことに愛犬家のごときは、白い大陸から人を呼ぶ犬の鳴き声が耳について離れぬというような、きわめて切実な心を痛めるような意見を述べておられるようでございます。この問題につきましては、今までいろいろと当局側誠意ある態度が表明されましたけれども、私はそういった誠意一つの具体的な形で現わすことによって、愛犬家あるいはまた国民世論を納得せしめていくような方向に努力していただくのが、きわめて適切ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。ことに最近では、愛犬者等の問で樺太犬慰霊祭を行おうじゃないか、あるいは記念碑を建立しようじゃないかというような具体的な動きもあるようでございます。私ども科学技術振興ということを実現して参りますためには、どうしても世論の支持を受けて参らなければなりません。そのためにはやはりこういった国民感情は決して無視しては相ならぬと考えております。そこで単に犬の問題というような気もいたしますけれども、しかし今後日本が大きく科学技術振興ということに足跡を踏み入れて参りますためには、こういった国民の素朴な声も尊重しなければならぬ。そこで今までいろいろ抽象的なことが取りかわされて参りましたが、具体的にそういった慰霊祭を行うとか、一例でございますけれども記念碑建立をはかるとかいうお考えを持っておられるのかどうか、そういった具体的な誠意をもって国民にこたえようとされる意思があるのかないのか、その点につきましてお伺いをし、国民に納得せしめていただきたいと存ずるのでございます。
  29. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたような点は重々ごもっともだと痛感いたしております。これは自分のことを申し上げて恐縮ですが、私も人後に落ちない愛犬家でございます。ほんとうに私自身も犬のことを考えて夜の目も眠れなかったことがあります。従って、文部省内におきましても、仰せになりましたような具体的な方法国民感情をやわらげ、愛犬家感情をやわらげて、科学技術振興協賛を得るようにしなければならぬと考えまして、具体的な方法等についても今研究をこらしておるような次第であります。これもいずれ半月すれば現地から帰ってきますし、いろいろな事情等も伺いました上で適当な方法を講じたいと考えております。
  30. 河野正

    河野(正)委員 私は今日の日本学術的な水準についてはかなりの誇りを持ってもいいというふうに考えておるのでございます。そういった日本が今回の国際観測を実現できなかったことは、学術の向上のためにきわめて残念なことであったと考えるのでございます。今までいろいろ各委員論議されて参ったのでございますが、それは今日の日本砕氷船能力、あるいは能力のある船があるのかないのか、改造すればどうであるのかといった論議に尽されてきたと考えております。そこで私はむしろ今日かなり自信の持てる日本の高い学術を、世界学術のために貢献させるという立場を重点的に取り上げるべきではなかろうかと考えておるのでございます。そのためにはいろいろ面目はございましょう。たとえば、宗谷あるいは宗谷丸というような船を使うこともきわめてけっこうなことでありますけれども、しかしながら、何も日本砕氷船を使うことのみにとらわれて本観測失敗に終らせるということは——結果論でございますけれども、そういった問題もございますので、むしろ基地接岸というような点につきましては、外国砕氷船等を雇い入れてその協力を受ける、もちろん今度は国際観測でございますから、各国間の援助ということが建前であったのでございますけれども、一たん危機に臨んで援助を受けるということではなくて、むしろ積極的に能力ある砕氷船協力を得て接岸だけはスムーズに手っとり早くやらせる、そして観測という実をとるということがきわめて適切な方法ではなかろうかと私ども考えるのでございます。今日までの論議を聞いておりますと、日本砕氷船能力あるいはまた今後の能力といったことにその焦点が向けられて参りましたけれども、今後、大臣がぜひともこの国際観測協力努力されるといたしますならば、今まで論議されなかったこういった面につきましても十分頭を向けていただくべきではなかろうかと考えますので、こういう点に対する御所見一つ承わっておきたいと思います。
  31. 松永東

    松永国務大臣 御所見ごもっともなことだと存ずるのであります。そうした点につきましても一つ研究を新たにして、何らかの方法観測を継続したいと考えております。しかしながら、繰り返して申します通り、もう半月ばかりすれば帰ってきますので、いろいろ研究を、重ねた上でまた皆さんと御相談しようと考えております。
  32. 河野正

    河野(正)委員 いずれにいたしましても、いろいろ論議いたして参りましたが、具体的な今後の措置につきましては、あと半月いたしますれば現地から永田隊長以下御帰還でございますので、その後において、今後は適切な対策を講じていただくように心からお願い申し上げたいと思います。  最後に、これは委員長にお取り計らいをお願いいたしたいと思いますが、国内におきましてもあるいはまた国会、ことに文教委員会におきましても、いろいろ南極観測を中心としての論議が重ねられて参りました。しかしながら永田隊長以下、あるいはまた宗谷松本船長とか、現地の方々がきわめてなみなみならぬ御苦労をなされて参ったことにつきましては、私ども衷心から敬意と感謝をささげなければならぬと考えておりますので、文教委員会といたしましても現地宗谷に対しまして感謝決議電報でも打っていただきますならば、無上の喜びといたすところであります。この点ぜひとも御賛同をいただきたい、これをお願い申し上げまして私の質疑を終りたいと思います。
  33. 山下榮二

    山下委員長 ただいま皆さんのお聞きの通り河野君からの動議でございますが、南極観測隊員に対して、苦闘されましたことに対して、感謝決議をなして、電報その他で伝達の方法をとりたいということでございますが、それを採択することに決定して御異議ありませんでしょうか。
  34. 山下榮二

    山下委員長 御異議の声もないようでありますから、それでは採択することに決定いたします。  その取扱い、文案等については委員長におまかせを願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
  35. 山下榮二

    山下委員長 御異議の声を聞きませんから、さよう決定をいたします。     —————————————
  36. 山下榮二

    山下委員長 次に国語問題に関する調査に入ります。質疑の通告がございますから、これを順次許します。大橋忠一君。
  37. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 今から二十数年ほど前に私が満州におりました当時、当時延安におりました毛澤東が漢字をやめて表音文字にするということを聞きまして、私はこの漢字ではとても満人の無学文盲を救って、そうして文化国家を作ることはできないというので、日本のかなをもう少し合理化し、もう少し科学的にしたところの満州がなというものを作ったらいいだろうということを提議いたしまして、満州国政府においてこれを採択いたして研究することになったような次第であります。しかるに今回の新聞報道によりますると、中共政権におきましては、いよいよローマ字を採用することに腹をきめまして、この漢字にローマ字のルビを付して、そしてまずシナの言葉の発音を全国的に統一するという準備段階にいよいよ入ったのであります。これは非常に重大なるできごとでありまして、これが完成された暁に一体シナという国はどんな国になるか。文字の国であり、漢字の発祥地であるこのシナにおいて漢字をやめて表音文字にするというのは、これは一大革命であります。しかし、今のこの政権が続く限り、私はこれは多分成功するだろう、長い間の研究の結果、また準備の結果そこまできたのでありますから、私は成功するだろうと思います。そこでわが国会におきましても、この中国における運動に刺激されまして、最近国会議員の超党派的な会合ができまして、これからいよいよ日本国語の改良に向って活動を開始するというような機運もできつつあるようでありまするが、この中共の国字改良運動について文部当局におきましてはどれだけ御調査になっておるのか、またその運動が将来どういうような影響を日本に与えるだろうかということに対して、どういうようなお考えでありまするか、その点をお伺いしたいと思います。
  38. 松永東

    松永国務大臣 大橋委員の御指摘になりました点は、常々私どもも非常に困った問題だと考えておる点でございます。ただ大橋さんが満州におられたときの事例を引かれ、さらに中共政権の事例を御引用になりましたが、これはごもっともです。ごもっともでありますけれども、満州では、御説にありました通り全く無学文盲の人がその当時多かった。中共でもまだ学問程度が行き渡っておりません。従って文字もすみずみまで浸透しているというわけには参りません。しかし申すまでもなく日本は、義務教育も普及いたしておりますし、普遍的に文字を解しておる国民がほとんど全部と言ってもいいくらいであります。しかもこのうちで漢字は、これは言うまでもなく漢字という言葉がもう間違っているくらい日本語に同化してしまっておりまして、日本語であり、日本字であると言っても差しつかえないくらいであります。ところがその反面においてローマ字というのが、戦後——戦前もでありましたが、相当はやってきております。そしてこのローマ字を知らなければ社会生活にも非常に不自由を感ずるということになってきたことも事実でございます。従って固有のひらがな、かたかなのほかに漢字を交え、さらに今度ローマ字をたたき込んでいかなければならぬというのでございますから、これは非常にむずかしいことであります。けれども、御指摘になりましたように、今の現実の社会状態は、やはりローマ字が相当使われてきており、またこれなくしては完全な取引等にも困難を来たすというふうになっておりますので、文部省といたしましても国語審議会等の建議もありますので、こういうものに基いて今研究を盛んに進めておるような次第でございます。
  39. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 国語や文字の改良ということはなかなか困難な問題でありまして、急激にこれをやるということはなかなかむずかしいのでありますが、さきにトルコにおいてケマルパシヤがやった、そして今回は中共がやろうとしておる。これは二度目であります。この中共の文字の改革については最近周恩来が全国大会において相当長い演説をやっております。これなども一つよく御研究になって、そうしてこの国語の改善の参考にしていただきたい。察するところ、まだ文部当局においてはあまり深くこの点を御研究になっておらないようでありますが、今からでもおそくない、一つ真剣に御研究になって、そうしてこれが対策を立てていただきたい、こういうふうに私は思っておるのであります。  それから第二にお伺いしたいことは、科学技術でありますが、平和国家である日本の理想というものは、科学技術を高度に発達せしめて、そうして領土や資源が乏しくても十分大世帯をささえていくことができる程度にまで科学技術を発達せしめなければいけない。米ソの争いにいたしましても、これはイデオロギーの争いではありません。私どもの長年の研究によると、結局領土と資源を目標にしたところのアングロサクソン、スラブ民族の世界制覇ということがその本質である。そこで平和国家として運命づけられた日本は、科学技術を高度に発達せしめ、そうして領土や資源なくしても十分やっていけるというところまで進めるのが理想であろうと思うのであります。しかるに従来の日本科学技術というものがどうしても欧米にかなわない、十年ないし二十年おくれておるというのが学者、先生の定説であります。日本人の頭というものは、学者の説によりますると、ドイツ人などよりかえっていいくらいである、それにもかかわらずなぜかくのごとく日本の物質文化というものがおくれておるのか、私はその一つの重大なる原因としては、やはりこの文字の問題——アメリカなんかに行ってみますると、このくらいの小さな子供がわれわれが読めぬくらいの専門書を平気で読んでおります、われわれの読めぬくらいの雑誌を平気で読んでおる。ところがこれはわが国においては、義務教育を終ってもまだ読み書きができない。いなかへ参りますと、ほとんどルビのつかない新聞、雑誌は読めない、非常な知識の程度の相違でありまして、かくのごとき文字の負担というものが国民の頭脳に重くかかっておっては、どんなに努力しても科学技術は発達しない。私は今日までよくきたものだと思う。これは中国と違いまして、日本はかなという補助文字があるがために、そうして日本国民の非常なる勤勉性によって、私はここまできたのだろうと思います。そこで私は今後わが国の科学技術を高度に発達せしめるためには、どうしても日本の文字を改良して、少くともこれを音標文字にする必要があると思っておるのであります。  さらに民主主義の普及でありまするが、結局選挙に金がかかって、そうして民主主義というものがうまくいかない、政党が腐敗するという根本原因は、結局わが国の有権者が民主主義の本領をわきまえない、理解力が足りないというところからきておるのでありまして、この民主主義の完成という点から見ましても、どうしてもこの文字というものを改良して、もう少し民知が発達するように、そうして政治力というものが民衆の間に浸透するようにせぬことにはいかぬ、こういう見地からいっても、どうしても私は文字を簡素なものにして、エネルギーをその方面に使う必要のないようにする必要がある。また文章を——よく御承知の裁判が非常におそい、昭電事件のごときは十年以上もかかっておるというような情ない状態の原因一つは、やはりこの証拠書類を作ったりするのに非常な手数がかかる、タイプライターを使えば一日でできることが一月もかかる、裁判の遅延の根本原因も私は文字の関係、タイプライターが使えないという関係だろうと思うのでありまして、従って裁判が早くできるためにも私は国字の改良ということが必要だろうと思うのであります。  さらに私がアメリカにおる当時に、シアトルというところにおったのでありますが、三井物産の出張所が百人以上の人を使っておる、またアメリカのある粉屋がありましたが、それが八人の人を使っておる。ところがタイプライターを使って、そうしてどんどん仕事をやっていく、この八人のアメリカの商社の取引額と、百人以上使っておった三井物産の出張所の取引額は同じである。そこでどうしても日本の方では賃金の安い勤労者を多数に使わぬことにはやっていけない、従ってタイプライターその他のテレタイプ、文明の利器を使い得る言葉にせぬことには、とても貿易上、商業上の競争においても太刀打ちできぬのじゃないか、現に日本の日興証券という会社におきましては、現在ローマ字でやっておるそうであります。タイプライター、テレタイプその他の利器を一億円の巨費を投じて買い求めた、ところがどんどん原価を償って、数年ならずして一億円くらいのものはかせいでしまった、こういうような現実が現われておるのでありまして、この商工業の上において外国と競争する上からいっても、どうしても国字を改良してかからぬと私はだめである、こういうふうに思っておるのであります。私は文部当局として、こういう問題についてどういうお考えをお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  40. 松永東

    松永国務大臣 御説のような点は、常々国語審議会の決議等にも現われております。十分了承いたしております。ことに御指摘になりました、世界共通、人類共栄共存の建前の上からいっても、やはり言語、文章が非常な支障をなしておるということも御説の通り、さらに裁判の遅延等の点についても私も体験いたしております。まさに御説の通りです。でありますから、こうした文字の改良、文字の簡素化、こういうことはもちろん必要と思いますけれども、なかなかこれは一朝一夕には改善はできません。しかしながら志ありますと、時をふるに従って徐々に善導していくということはできると思います。ことに私どもただいま痛感いたしておりますのは、私どもは遠く九州の端の生まれでございますが、私どもの生まれたところの方言、地方語ですが、それは今から二十年くらい前までは、全然東京の人が行って聞いてもわからなかった。ところが今日では、これは小学校、中学校の教育のしからしむるところでありますが、やはり一貫した言葉をみんな使うようになり、よくわかって参りました。従って御説のような文字並びに言語の改善等につきましても、時をふるに従って何とか是正していきたいというふうに考えております。幸いにして文部省では国語審議会、そのあたりでもいろいろな建議をもたらしまして、言語の簡素化等も建議いたしております。そういう点を参考にいたしまして、御説のように徐々に一つ善導していく、こういうつもりでおります。
  41. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 御方針はなはだけっこうでありまするが、現実を見ますと、どうもそれに逆行したような傾向がちょいちょい見えるようであります。終戦当時から略字を非常にお作りになった、あるいはかなずかいをわかるようにされた、あいは話言葉と書き言葉を一致させるようなふうに指導された、相当進歩の跡は見えますが、最近に至りますと、どうもまた漢文を復活する。中国においてもやめんとしておるところの漢文を復活するとか、あるいはローマ字の時間を減らすとか、あるいは教科書を用いさせないとか、いろいろ時代に逆行するような傾向がちょいちょい見えるのであります。そこで私はこの国語審議会、はなはだけっこうでありますが、もう少しこの国語審議会というものを根本的に改組されまして、有力な権威あるものをお作りになる、そうしてこの会をして国語対策の向う大本をまず決定をする。将来音標文字にするのだ、それにする準備としてこれこれのことをやっていくのだというような大本を決定せしめた上に、さらに細目に入って、しからば具体的にどうするかというふうな準備を急速に音標化の方向に向って進めないと、中共の方が早くやってしまってどんどんやり出しますと、私は再び支那に留学生を送らなくちゃならぬというような事態にまでなるのじゃないかということを実は非常に心配しておるのであります。従って国語審議会をお作りになっても、そのメンバーが現状維持的の、どうも現在の義務教育を出ても読み書きができぬ、これは漢字の知識が足りないのだから、それに漢文を教えろというような、現在をもとにしてこれを訂正するというような素性の、在来の国語科を出たとか、あるいはその他国語を現状維持にすることを利益と考えるような種類の委員をして審議させても、絶対に進歩しない。従って革新的な、どこまでも先を見てどんどん改良していく、そういう種類の委員をもって構成された、もっと権威ある、そうして精選されたメンバーによるところの審議会を作っていただきたいと思いますがどうでありましょうか。
  42. 松永東

    松永国務大臣 御説のように一つやってみたいと思うのであります。ただしかし、この国語審議会の今日までの歴史、伝統、姿等につきましては、内藤政府委員がよく承知いたしております。新米の私が申し上げるよりも、北岡政府委員から申し上げる方がよく徹底すると思っております。御了承願います。
  43. 北岡健二

    ○北岡政府委員 国語審議会につきましては、ずいぶん長い歴史を持っておりまして、そうしてその間に順次新しい国語に関する方策を出しております。この方向につきましては十分御承知のところでありますが、当用漢字からかなづかい、それから話し言葉の改善、正書法の問題、官庁用語、あるいは法令用語の改善、それから文書の横書き、こういうようなものが続々と国語審議会の意見として出されまして、それが採用されて今日に至っておるわけでございます。官庁の文書の横書きにつきましては、内閣から通達を出してこれを官庁に実施させるということになり、それから当用漢字、かなづかい等につきましては、告示で出されたものが教科書の上に採用されて教育の上に用いられておる。それからまた学術用語の改善が別途出されておりまして、今日までかなり多くの学問の分野について当用漢字とかな書きによって学術用語を変えていくというふうな方向も出ておるわけであります。  御指摘のように、国語審議会が大へん保守的であって、先へ進んでいく方向をとらないということは、どうも納得いきかねるのでございますが、ただ実際にやっていこうとする場合に、考え方としましては、問題が国民全体の言語、文化の問題にかかわってくるから、国民全体のものとしての言葉、文字、こういうふうな考え方に立っております結果、協力される分野をそれぞれ開拓していくという意味で漸進的であることは現実でございます。しかしその国語審議会の線に、たとえば報道関係であるとか、放送の関係であるとか、そういうマス・コミの方々も同調され、また産業界の方々も同調されて、そういう意味で徐々に進んでいるわけでございます。国民全体についての言語がすっかり変る、文字がすっかり変るという時期までにはまだ多少時間があると思いますが、その線に進められておりますので、国民大衆の支持を得てその線に進んでいくというような意味で、現実に進んでいる点を御了承いただきたいと思います。  なお国語審議会の方としましては、漢文の復活とかいうようなことは全然考えているわけではございません。この点は別の方の、現在の教育課程の改善の上で考えられている線でございますので、国語審議会ではありませんから、御了承いただきたいと思います。
  44. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 しかし地名、人名なんか当用漢字にないようなむずかしい字があります。特に除外的に今なお使われている。これなんかはやはり国語審議会の問題になったと聞いておりますが、こういうような時代おくれのむずかしい字を使って人名や地名を表わす必要はない。これはかなというものがあのるだから、ローマ字でなくてもかなにすれば私はいいと思う。ちようど信州にちの町というのがあるが、これはかなでちの町となっていて非常にわかりやすい。こういう問題さえ国語審議会では、むしろ消極的な反動的な考えでやっておられたと聞いておりますが、その点いかがです。
  45. 北岡健二

    ○北岡政府委員 国語審議会が地名、人名等について別途の当用漢字以外の部分を残してしまったという点を御指摘になっているかと思うのでございます。地名、人名の書き表わし方については、その後もいろいろ考えられておりまして、当用文の作成の上では地名、人名は差しつかえない限りかな書きにしようというふうな勧告をしておりまして、もちろん地名、人名を全部かな書きにしろというような線までは出しておらないのですが、当用漢字をなるべく使い、当用漢字以外の文についても差しつかえない限りかな書きにするようにというふうな趣旨は、国語審議会としてとっているわけでございます。別に当用漢字以外にそういうものを無理に残そうというような考えを持っているわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  46. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 何か当用漢字をふやすというようなことが新聞に出たようでありますが、これはほんとうですか。
  47. 北岡健二

    ○北岡政府委員 当用漢字は今千八百五十字でございますが、その千八百五十字を加除しようという計画がございまして、あの中にある比較的用いられないものを落して、比較的用いられる他の漢字のうちで当用漢字として採用すべきであるというようなものを検討してみようというので、二十八字ほどの減らすものと加えるものというふうな考え方をとって、一応検討いたしてあります。これは世論を聞いてからその方向に進もうというので、目下その趣旨を発表しただけで、当用漢字の方は公けに内閣告示で発表するわけでございますが、その内閣告示で発表する段取りまではいっておりません。今のところそんなふうな段階でございます。
  48. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 最後に、これはケマルパシャや毛沢東のような工合に、日本の政党政治の現状においてはやることはできぬ、これは私は認めております。しかしながらよほどこれは急いでやらないと、私はすべての面において立ちおくれてしまうと思うのです。私は長く外国におった者でありますが、アメリカなどを見ると、向うは何でもぱっぱっと改める。日本の方はまるで眠っているようなものだ。それを多数の人間と勤勉性でようやく補ってここまできたのであります。最大の重荷であるところの漢字をいかにして駆逐するかという問題について、もっと積極的に一歩民衆より進んで、私は当用漢字のごときも今よりも減らすという原則をきめて、文部大臣から御指示になって、減らすものは、どんどん減らしていくというふうな方針をきめていただきたい。そうしてよほど急がないと、これはもう日本はだめです。立ちおくれちゃってだめです。そこでわれわれ同志がきょうも寄りまして、結局これは国会内外にわたって猛烈なPRをやる。プロパガンダをやる。そうしてこの次の解散後の国会においては一つ決議案を出そうじゃないか、そうして賛成者のわれわれ全部で国字の改良を一つ政綱の中に掲げようじゃないかというようなことを、実は申し合してきたのであります。こういうようなことはわかっておるのでございまするが、今まで手がつかなかった。お隣のあの文字を作った中共において、漢字をやめてしまうというような運動が起る。そうすると、日本だけが時代おくれのエジプトの象形文字みたいなものを使っておって、どうして日進月歩の宇宙時代に即応することができるか。今でも非常な反対論者があるそうでありますが、必ず私はこの運動は勝つであろうと思う。今非常な熱意をもって国会議員の中の有志がよりより協議中であるのでありますから、この意味一つ御勘案になって、文部当局としても古い時代のノスタルジアを捨てて、前途の遠い先のことを見て、一つ国字政策を英断的にやっていただきたい。そうしてそれがためにもまず第一歩として、現行の審議会の委員を、現状に保つことが有利であるというような委員を捨てて、やはり先の夢を持った、もっと想像力のたくましいところの委員に取りかえて、そうしてどしどし進歩的の方向に国語審議会をもっていきたい、こういうように思っておるのでありますが、私はこの際文相にお尋ねしますが、どうか文相の残された非常な大きな足跡として、その方向だけをつけてでもいただければ非常に私は大事業だろうと思うのでありますが、どんなものでしょうか。やっていただけるでしょうか。
  49. 松永東

    松永国務大臣 御指摘の点は重々ごもっともだと存じております。ただしかし何とかやりたいと思いますけれども、やるだけの寿命があるかどうかもわかりませんが、しかし熱意だけは持っております。何とか一つやりたいと思っております。
  50. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 私も大橋委員質問に関連して若干御質問いたしたいと思います。大体大橋委員が一通り質問されましたので、加えるべきものがあまりないのでありますが、私の立ちましたのは、この問題は超党派的に考えなければならぬ大問題である、そういう意味で社会党からも質問をすることがよかろうと思って立ったのであります。別に党議を経ておるわけじゃないので、私個人の考え方でありますが、党内ではこの趣旨に反対する者は一人もないことを確信いたしております。またわが党の文教政策の基本問題として、言語、文字の簡素化ということは立党以来主張いたしておるのであります。その趣旨に沿うて申し上げるわけであります。本来これは内閣全体の最高政策として考えてもらいたい問題でありまするから、総理大臣の出席を求めて、岸内閣が一体本気になってこれをやる気があるかということを確かめたいのでありますが、文部大臣でも、そういう総理の気持もよくわかっておりましょうから、がまんをいたしますか、どうか一つ責任ある御答弁をお願いいたしたい。  本来これは一内閣の問題ではなく、歴代内閣の問題であり、国家全体の大問題であると考えてよいと思います。内閣がやらなければ国会が自主的にやらなければならぬ、かように考えておるものであります。そこで日本語が非常にむずかしい言葉であるということは世界に定評があるわけであります。先ほど文部大臣は漢字と呼ぶのが聞違いだ、日本字なんだとおっしゃった、ごもっともであります。「雲にそびゆる高干穂」という歌を聞くと何ともいえず気持がよくなる文部大臣としては、そういう考えはもっともでありますし、われわれも子供のときから習ってきた漢字——日本字と言いたいなら言ったってかまわない、日本語は漢字とかなとのいろいろな組み合せによってできておるのでありますから、そう言うて一向差しつかえはないけれども、はなはだむずかしい言葉である。大体中国の言葉、それからやまと言葉が混在しておる。書く日本語と語る日本語が違う。かなと漢字の併用をするので、一つのことを表現するのでも、日本語ほどニュアンスの多い言葉はないといわれております。フランス語なども文学者の努力によって非常にニュアンスが多いけれども、それでも日本語ほど豊富じゃない。ある人が死ぬという言葉を日本語で表現すると、ごねた、くたばったという言葉まで入れると十七もあると言っております。それほどニュアンスが多い。これは文学的にはいいことでありますけれども、言葉の多様性を持っておる。それから標準語と地方語の相違——先ほど文部大臣はだいぶごのころは共通してきたと言われたが、それは私も認めます。しかしとにかく九州の人が東北に来てしゃべっておるのを聞いておると、通訳がないとやはりまだわからない。私どもが九州に行って熊本あたりで話を聞いておると、何をしゃべっておるのかわからない、外国語の感がするのであります。そして方言があり俗語がある。それから文部大臣御就任後、昨年の暮れに岸総理が東南アジアを一巡してお帰りになって、至るところで、日本に青年を留学させたいが、どうも言葉がむずかしくて一年や二年ではものにならない、それで言葉だけに三年も五年もかかって、それから専門学校をやるというのでは、とても勉強にやるわけにはいかないから、やはりイギリス、フランス、アメリカのような国にやれば、アルファベットで簡単に比較的早く覚えることができる、そういう話で、困った現象である。何とか日本の大学にもっと東南アジアの留学生を収容するような方途を講ずべきではないかと、文部大臣自身が言っておられたのを新聞記事で拝見いたしました。そういう点一つを見ても、いかに日本語が外国人から見るとむずかしい言葉であるかということがわかる。私ども外国の国際会議などに行って、日本語というものを知っておる外人がほとんど絶無であることに出合いまして、非常に恥かしく感ずるのであります。これがローマ字で表現されておる字がもう少し多ければ、日本語というものがもう少し世界的に理解されて、特殊の言葉くらいはやはり日本語で言われるようになると思うのです。そういう点はおそらく文部大臣といえども御異議はなかろうと思うのであります。まずその点について一応承わって進めたいと思います。
  51. 松永東

    松永国務大臣 鈴木委員の御説一々ごもっともです。私もほんとう日本の文字が、言葉がいかにも複雑といいますか、統一せられるのに骨が折れると思う。外国ではアルファベットだけで、文字に対して苦労しないのですが、日本ではかたかな、ひらがな、漢字、そうしてその言葉が地方々々によって異なっておる。御指摘になりましたようなたった一つの死んだということを表現するのに幾通りもあるというような、ただ君という言葉を使うのにお前とかあなたとか貴様とか幾つもあって、外国で言ういわゆるユーだけではなかなかいかぬ。そういう一事を考えるときに、実にどうも困ったものだとふだんから考えておるのであります。何とかこれを善処する方法はないかということは、今に始まったことじゃないと私は考えておるのでございます。
  52. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 そうすると文部大臣もその点は全く同感であるというようでありまするから、それならば一つ思い切って改革に乗り出してはいかがでありますか。徐々になりますとか、先ほど北岡さんのお話でも、やるつもりはあるが、徐々にやるのだ、それは徐々にやるよりほかにない。大仕事のように見えるのでありまするが、一つの革命を行うのに徐々にとか、そのうちにとかいっておったのではなかなかできないと私は考えるのであります。  ただいま大橋議員から中国の文字革命のお話がありましたが、私はここに周恩来総理が今年の一月の政治協商会議でこの中国の文字改革を説明し、六億三千万の国民協力を求める大演説をやったその速記を持っておるのでありまするが、これだけを読んでも、あらゆる国語と文字に関する考うべき問題が網羅されておると申して差しつかえない。さすがに周恩来であり、中国の指導者であると私は敬服をいたしたのでありまするが、これによると、まず漢字を略字化するということを徹底的にやる。合計五百六十九字があるものはへんだけで間に合せ、あるものはつくりだけで間に合せる。それから私の名前なども新聞に出ておりましたが、「義」という字は「又」というふうになります、電報の「電」の字は雨をとって「 」というふうに電報局の看板に大きく出ております。なるほど簡単で非常にいい。最近中国に遊んで、今まで六億三千万のうち大部分が文字を解しなかったのであるが、革命後この学習運動を盛んにし、文字の簡素化をやった結果、一応三カ月学べば、——業余学習と申しまして、仕事の余暇に勉強をさせるのでありますが、三ヵ月やれば、無学文盲な者でも大てい普通の新聞雑誌を読めるようになるということを承わりまして、驚いたのであります。撫順炭鉱で露天掘り炭鉱長の王昌瑞という男は、二十年炭鉱夫をやって、目に一丁字なかったのであるが、あそこの政治協商会議の議長があとでそっと小さい声で私に説明したのでありますが、あの人はそういう人であったが、革命後学習に従事して文字が読めるようになり、私にも署名してくれました、そうして偉大なる発明をした。二百五十人の生産能力を倹約する発明をしたために、いわゆる模範労働者として毛沢東の表彰を受けて、炭鉱長にまで昇進した。彼が隠されておった能力を革命によって掘り起したのである。こういう奇跡を至るところに行なっておるということを聞いて、私は感激を覚えたのでございます。これはやはり文字の簡略化からきておる。それでこれを徹底的にやるということを周恩来は第一段に主張しておる。それから第二には、標準語を普及すること。四百余州、中国の北と南では全然違った言葉を使われておるのであり、福建省の南と北では言葉が違っておる。だからして、今までは共通に語ることはできなかったのである。ところが標準語の普及をはかった結果、この演説の中にありまするが、張溪若、今の教育部長、文部大臣が四川省に行って、小学校の生徒が北京の言葉で話をしておるのを聞いて、実にりっぱな標準語を語るようになったことを発見して、非常に喜んだ、こういうことであります。だからして標準語というものを普及させれば、ラジオ、テレビ等の発達した今日は、意外に早く全国が共通化していくのである。それから表音を実施する。漢字の上にローマ字で発音通りのルビをふる。私どもは北京と書いてペキンと読むんだ、こう思っておりましたが、ペキンというのは英語であって、中国人はベイジンと言っておる。今度ローマ字のルビを見ると、ベイジンとなっておる。ベイジンと言えばすぐにわかる。それから上海、これは英語と中国と同じようでありますが、「上海」と書いて、「上」のところにはシャン、「海」の上にはハイ、こういうふうにルビをふることにしたわけであります。そうすると、横書きと相まって、きわめて簡単に中国の言葉はわれわれ読めるようになる。ローマ字は多少発音の基礎的なものを理解していなければなりませんけれども……。そういうことも断行する。そういうことを宣言をしておるのであります。それは決して従来の漢文とか、漢学を、芸術として、古典として、あるいは専門学として、大学、大学院等における研究から除外するわけじゃないんだ。ますますこれは保存をされ、育成もされていくであろう、けれどもそれは一部少数の専門家がやる仕事となることは、物理学、医学、ほかの学問と同じであります。一般民衆はこの簡単な文字で読み、語り、音信を交換する、こういうふうにしようというのでありまして、まず第一に、中国内にある五十の異なれる民族は異なれる文字、言葉を持っておる。チベットであるとか苗族とか、いろいろそういうものが一つの言葉で語れるように仕向けていくのであるということをここに申しておる。やがて世界一つの言葉で語るようになるだろうということを周恩来は申しておるのであります。私は必ず遠い将来においてはそうなると思う。現にこの演説の中にもあるが、アルファベットを使っておる国は六十余カ国ある。難字でやっておるのは日本と中国だけである。中国は略字を採用するに当って、日本で略した国という字であるとか、いろいろな日本でうまく略したものはすぐこれを拝借して、そのまま使うことにしておるというほど、非常に度量が大きいのであります。このことを考えると、日本においても、これは一つ思い切ってやらないと、ただ唯一の漢字を使っておる国として取り残されるおそれがあるわけであります。国語国字政策として、この内閣で一つ一大調査会なり委員会をお作りになって、これも何年でもよろしいというゆうちょうなことは言わないで、一年かそこいらの期限を切って、——専門家に尋ねると、どうもいろいろ利害得失、長所短所を述べるので、聞けば一々もっともなんです。それだから、ちゅうちょし、よろめいて、結局ほんとうの改革はできないでしまう。なかなかそれに手がつけられない。ですから、長所短所はおのずからあるが、今周恩来が述べたような長所というものは——中国語が世界に進出していき、世界人々と自由にコミュニケーションができるということは何にもかえがたい利益であるから、ぜひ一つこれはやろうじゃないか、こういうことを演説の中に高調しておりますが、確かにそうなると思う。私どもも中国を旅行し、あるいは新聞を見、すべてそれがローマ字でルビがふってありまするならば便利です。この間筆談をやってみたが、わからない。われわれ正式に習ったむずかしい漢字で、あちらでは略字でもって勉強している人が多いから、実は筆談もできないのでありまするが、ローマ字が使えるということになれば、これは非常に便利であるということを考えておる。日本においても同様である。世界人々日本に来、日本人が外国に行って、やはり日本の言葉をローマ字でもって表現する。地名、人名などはよく問題になりますけれども、ことに歴史上の人名などは問題になりますが、みなやはりローマ字のルビをふることによって、かな書きもけつこうでありますけれども、これは世界的になることができるわけです。そういうふうにして、一つ思い切った改革をおやりになる意思がないかということを私はお尋ねするのでありまして、もっと言葉を簡易にし、やさしくする。私ども実は国会に入ったためにだいぶ演説が上手になった。最初のころは、お前の演説はむずかしくてわからない、もっとやさしく言えというが、どう言えばやさしいのか、私にはよくわからなかった。当りまえなことを言っているつもりなんだけれども、聞いている人はむずかしいと言う。だんだん年を経てきて、なるほど自分はむずかしいことばかりしゃべっておったなということがわかりまして、このごろは、ここではあまりやさしい言葉をわざと使いませんけれども、かんで含めるような言葉を使って選挙演説などをやると、投票も非常によく集まる。これはやはり大切なことでありまして、文部大臣もその点については御異存はなかろうと思う。どうか一つまじめに、この問題は一つの革命事業をやるような気持で、お隣の中国は共産主義の国だ、あれのやることはまねたくない、そういうお考えがあるかもしれませんが、共産主義をまねろというのではないのであります。やっておることで、よいことは遠慮なくまねるべきである。私はまねなければならぬと思うことをたくさん見て参ったのであります。そうして思い切ってやっておる。この勇気と、断行する力が必要であります。どうも文部大臣は心細いことを言う。いつまでこの内閣の寿命が続くやらなどという。そういうことははなはだ遺憾であります。一つ大いにプッシュしますからして、松永文部大臣の時代にわが国の国字国語の改革に手をつけた、その方が東京都知事になるよりはなんぼ歴史に残るかわからない。どうか一つそのことについて責任ある御答弁をいただきたい、こう思うのであります。
  53. 松永東

    松永国務大臣 鈴木委員のお説はごもっともです。平素私が考えておるのもそこなんです。しかし、御指摘になりましたように、周恩来の演説になるほどいいことを言っております。だがしかし、それは国情を異にし、歴史と伝統を異にしておりますし、ことに文字に対する国民感情、観念が違っておりますから、一がいにそれを採用するというわけにはいきませんと思います。しかしながら、御説のようにまことに、先ほど来大橋委員からも申されたように、かながあるところへもってきて漢字があり、そうして今日実用的にはどうしてもローマ字をまじえなければならぬということになって、非常に言語といい文字というこの問題には困り切っておるのが現状なんです。幸いにして標準語は、先ほどもお話がありましたけれども、大体今はもう標準語、東京言葉で話せば、鹿児島の端に行こうと北海道の端に行こうと通用いたすようになっております。ただ文字だけを仰せ通りもっと簡素にし、そうしてもっと文字の研究に骨を折らぬで、あとの科学その他の学問の方に学生たちも進むことができるようにせなければならぬと思います。御指摘になりました点は、重々ごもっともと存じます。
  54. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 文部大臣予算委員会の方から呼ばれているので、私にやめろということでありますから、この問題は論ずれば何時間でも尽きませんで、問題は展開するし、ローマ字についても考えていただかなければならぬと思いますが、それは他の機会に譲ります。ことにこまかい問題は、こういうところでやるのは適当でないと思いますから、別の懇談会のようなときに述べたいと思いますけれども一つ勇気を持ち、信念を持って、松永文部大臣の時代に研究されて、委員会を作って、——それはいわゆる専門家を網羅する委員会じゃない。国語調査会がやっている仕事が決して悪いとは言わないけれども、これは非常に部分的な仕事である。これは政治的にやらなければならぬ仕事である。ゆえに、一つ国家的に最高度の委員会を作って、そうして近い将来に実行に移す、こういうことにお願いいたしたいのであります。
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ちょっと一言だけお尋ねしておきますが、昭和基地が残りますね。本観測は放棄したのだけれども、機材とか器具というものはどういうふうに処置されるのか。残った日本の資材を外国から貸してくれというような場合には、どういう処置をとられるのか。これだけ一つ善後処置として御答弁願いたいと思います。
  56. 松永東

    松永国務大臣 その問題も、先ほど来繰り返し申します通り現地に働いた連中が帰ってきますのがあと半月でございますから、その上でよく実情を聞いて、そうして決心したいと存じております。ただしかし、昭和基地と各外国基地とは相当距離があるようでございます。果して貸してくれということを申し込むかどうかも非常に疑問でありますが、しかしそうした場合には、これはもう世界各国が共通してこの観測を成功さしたいと努力しておるのです。従って国境はこれにはないはずでありますから、私どもはいつでもそれには応ずるのがほんとうではないかというふうに考えております。しかしながら確固たる意見は、今申し上げた通り現地で働いた人々が帰りましてから、実情を承わった上で善処したいというふうに考えております。
  57. 山下榮二

    山下委員長 それでは委員の方に申し上げます。先ほど申し上げましたように、文部大臣予算委員会の方から出席を要求されておりますので、予算委員会の方においでを願うことにいたします。     —————————————
  58. 山下榮二

    山下委員長 次に義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案並びに日本育英会法の一部を改正する法律案を議題といたします。順次その提案の趣旨説明を聴取することといたします。臼井政務次官。     —————————————
  59. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 今回政府から提出いたしました義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  現在公立の義務教育諸学校並びに公立の養護学校の小学部及び中学部の教材に要する経営につきましては、それぞれ義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法によりまして、国庫がその一部を負担いたしております。今回国及び地方公共団体の負担区分を明らかにするため、国の一部負担を二分の一負担と改め、国の負担額と同額の地方費を確保するとともに、国の負担額の増額をはかり、もって教材の充実とPTA会費等を通ずる教材費の父兄負担の軽減に資したいと考えております。また学校図書館の内容の充実に関しましては、昭和二十九年度以来学校図書館法による国庫負担が行われておりましたが、おおむねその充実を見るに至りましたし、また負担金は教材費国庫負担金とほぼ同性質の負担金でもありますので、今後はこれを教材費の中に含めまして、学校図書館の経常的な整備充実をはかることといたしたのであります。  この法律案は、以上の趣旨によりまして義務教育費国庫負担法、公立養護学校整備特別措置法及び学校図書館法につきまして、それぞれ所要の改正をいたしたものであります。  以上、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概略を御説明申し上げました。  次に今回政府から提出いたしました盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  昨年五月、第二十六国会におきまして盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律が制定され、いわゆる非義務学年における学校給食の制度が確立されましたが、この制度の実施に伴い、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正して、これらの学校の高等部に対する学校給食費を新たに就学奨励費の対象といたしましたのが改正の第一点であります。  次に、現行法におきましては、盲学校、ろう学校及び養護学校に就学する児童生徒の就学奨励費は、児童生徒の住所地の都道府県が支弁すべきこととなっておりまして、同一学校に就学する児童生徒について、住所地である都道府県の異なることにより経費の支給期日の不統一、支給の遅延等の生ずるきらいがあり、かねてから関係者の間におきまして、教育上、事務上の見地からこの支弁方法の改善が強く要望されておりました。よって今回就学奨励費は学校所在地の都道府県が支弁すべきことと改めますとともに、他の都道府県に住所の存する者について支弁した経費は、事後において当該他の都道府県に、求償できることといたしたのであります。  以上、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概略を御説明申し上げました。  さらに、ただいま議題になりました日本育英会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  昭和十九年日本育英会法施行以来、日本育英会は年々堅実な発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受け、その勉学を続けることができた学徒はきわめて多数に上り、国家的な育英事業として多大の成果をおさめて参りました。  しかしながら特に優秀な素質、能力を有する者であっても、経済的事由によって著しく修学困難な者にあっては、なおその進学を断念しなければならないことが少なくないのであります。従ってこれらの者に対し、高等学校または大学への進学を保障する制度を創設し、国家社会の発展に枢要な英才の育成をはかるため、現行法の一部に必要な改正を加えることが適当であると考え、この法律案を提出するものであります。  改正の第一点は、学資の貸与を一般貸与と特別貸与の二種に区分したことであります。すなわち、従来行なってきた貸与が一般貸与であり、特別貸与は特に優秀な学徒であって、経済的理由により著しく修学困難な者に対し、進学を保障する目的をもって行う貸与であります。  改正の第二点は、この特別貸与を受けた者が卒業後の貸与金の返還について、過大な負担に苦しむことのないようにするため、その貸与金のうち、一般貸与を受けた場合に相当する額を返還したとき、その貸与金の残額の返還を免除できる規定を新たに設けたことであります。  以上申し上げましたのが本法案の提案理由及び内容の概要であります。何とぞ三法律案について十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたします。
  60. 山下榮二

    山下委員長 ただいま趣旨説明がありました三法案に対する質疑は、追ってこれを行うことといたします。     —————————————
  61. 山下榮二

    山下委員長 先ほど河野正君より動議が出ました南極観測隊に対する感謝決議の案文を用意いたしました、朗読いたしますから御了承いただきたいと思うのであります。   極寒荒天の南極の僻地に科学伸展のため、またひいては人類文化向上のため、連日連夜悪戦苦闘せられつつも、不幸大自然の猛威にいれられず涙をのんで帰途につかれつつある永田隊長を初めとする南極地域観測隊並びに宗谷乗り組みの各位に対して、本委員会は、全会一致、全国民を代表して深甚の感謝と敬意を表し、無事一日もすみやかに帰国あらんことを鶴首してお待ち申し上げる。   二月二十八日       衆議院文教委員長            山下 榮二 御承知を願います。  その取扱いは委員長におまかせが願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十一分散会