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1958-04-23 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十三日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 川村善八郎君 理事 笹山茂太郎君    理事 原  捨思君 理事 芳賀  貢君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       今井  耕君    大橋 忠一君       木村 文男君    小枝 一雄君       鈴木 善幸君    田口長治郎君       丹羽 兵助君    松野 頼三君       阿部 五郎君    赤路 友藏君       石田 宥全君    石山 權作君       永井勝次郎君    中村 英男君  出席政府委員         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         水産庁長官   奧原日出男君  委員外出席者         参議院議員   小山邦太郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      新澤  寧君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月二十一日  委員安藤覺君辞任につき、その補欠として田村  元君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田村元君につき、その補欠として安藤覺君  が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員細田綱吉君、中馬辰猪君及び松田鐵藏君辞  任につき、その補欠として永井勝次郎君、大橋  忠一君及び今井耕君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 四月二十三日  養鶏振興法案参議院提出参法第九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  養鶏振興法案参議院提出参法第九号)  北洋漁業に関する件  北海道周辺海域における中型機船底曳網漁業の  禁止区域拡張に関する件      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  北洋漁業に関する件について調査を進めます。さきに妥結しました日ソ漁業交渉のこれまでの経緯及びその内容につきまして政府説明を求めます。奥原水産庁長官
  3. 奧原日出男

    奧原政委員 第二団の日ソ漁業委員会は、一月十三日にモスクワにおきまして第一回本会議を開きましてから実に九十九日目にいたしまして、去る二十一日の深更、日本の時間にいたしますれば二十二日の朝妥結を見た次第でございます。今回の会議におきまするソ連側の強硬なる規制要求の決意は、冒頭の政府代表のあいさつにおきましても十分看取されたのでございます。  そこでいよいよ議事に入りまして、日本側といたしましてはサケマス漁獲量十四万五千トンという提案をいたしたことに対しまして、ソ連側漁獲量についての話し合いに全然入らずに、オホーツク禁漁その他のサケマスについての強硬なる規制措置要求をいたして参ったのでございます。そこでサケマス規制措置に関しまする議論が一応暗礁に乗り上げまして、そこでさらにカニ規制措置についての話し合いに移りましたけれども、これも妥結をせず、さらに話を移しまして、ニシンについての措置についての話し合いに入ったのでありますが、ニシンについてはソ連側が当初提議いたしました問題を向うの方で譲歩いたしまして、まず話が妥結を見、さらにカニに関しまして委員会の場における公式の話し合いのほかに、委員非公式会談をたび重ねました結果、これについても四月の十日の出漁に十分間に合う余裕を持ちまして話がまとまった次第であったのでございます。ところがサケマス規制に関しまする問題の中で一番大きな柱でありますオホーツク禁漁の問題及び漁獲量の問題に関しまして、禁漁については、ソ連側は当初の強い態度を一歩も譲らず、また漁獲量に関しましては、ソ連側は八万トンだ、こういう数字を出したのみで、一向にほぐれて参りません。そこで先月の十八日に赤城代表一行ソ連におもむかれまして、イシコフ漁業相との間に実に十回にわたる会談をせられたのであります。その間におきまして、サケマスの以上申しました二点以外の点に関しまする規制についての話は妥結を見たのでございますが、オホーツクの問題及び漁獲量の問題は、両者からみ合いましてようやく二十一日に話がまとまり妥結を見た、こういう次第でございます。以上のような経過でございますが、ここにそれぞれの問題点及び妥結いたしました点をかいつまんでお話申し上げたいと存じます。  ニシンにつきましてソ連側の当初主張いたしました線は、最近のニシン漁獲の減少は、日本側が大量の未成熟魚をとっておる、こういう根拠のもとに、五八年より未成熟魚二十三センチ以下の漁獲禁止する、また五八年三月二十日から四月二十五日まで樺太北海道周辺における産卵ニシン漁獲禁止する、また五九年より三年間北海道樺太周辺におきまする会水域漁獲を停止する、こういうきわめて過酷なる提案であったのでございます。これに対しまして日本側は、日本が特に未成熟魚をとっておるということは事実に反するのみならず、近年ニシン漁の衰退というものは、むしろ自然条件による原因の方が多いのであって、その辺をもっと調査した上で規制措置強化を行うべきであるということを強く主張いたしました結果、現存の漁業条約の付表によりまして、二十センチ以下の未成熟魚混獲規制しておりますものを一センチ引き上げて二十一センチとするということに話がまとまった次第であります。混獲限度につきましても、ソ連側は、現在認められております一〇%を八%に引き下げるということを強く主張したのでありましたが、これも最後には撤回をいたしまして、両国でニシンに関する共同調査を行うということで、ニシンについての問題はまとまりましたのでございます。  次に、カニに関する問題でございます。ソ連側がまず第一にぶっつけて参りましたのは、船団規模を一九五五年の規模に引き下げる——ということは、日本オホーツク海に四船団出ておるのでありますが、一九五五年におきまして、日本はただ二船団試験操業として出ておっただけであります。従いまして、日本船団数を半減するが、ソ連側は今出ております六船団をそのまま維持していく、こういうふうな提案でございます。また北緯五十三度三十分以南西カム沿岸を広範に禁止区域にいたしますのみならず、それよりも以北に対しまして、四十海里の幅をもちまして操業区域禁漁区域を作って、九つの禁漁区域を設けるということをソ連側としては提案いたしたのでございます。また漁業の開始を五月十五日からにする——ということは、日本側が今力を入れてやっております操業の姿、四月に入りまして生殖産卵のために接岸いたして参ります入りカニをとっております日本操業形態をすっかり否認して、日本生殖産卵の終った出カニソ連がとったあとわずかとらしてもらう、こういうふうな結果に相なるのでございます。日本といたしまして、オホーツクカニ資源が、漁獲努力との見合いにおいて、もう少し保護のため規制を考慮しなければならないということについては共感を持つのでありますけれども、その負担が全部日本にかかってくる、こういうことはとうてい了承するわけに参らないということで、いろいろ談論を重ねました結果、船団規模に関しましては、五七年の船団数で、漁獲量は五七年の五%減できめていくということで話がついたのでございます。すなわち、日本は四船団、三十二万ケース、ソ連は六船団カン詰の四十八万ケース、ただしソ連大型カンでございますのでその三分の一、二十四万ケースがソ連製造限度でございますが、そういうことで規律をしていくということで話がついたのでございます。また五十三度三十分以南禁止区域に関しましては、これは日本ソ連も従来操業をあまりしておらない区域であるのであります。この区域保護していくということに意見が一致をしまして、五十三度以南につきまして、二ヵ年間禁止区域を設けるとともに五十二度以北につきましては、カニ接岸を容易にいたしますために、保護帯を七ヵ所設ける、こういうことにいたしたのでございます。日本側船団操業区域の問に七つの保護帯を設置する、こういうことにいたしました次第でございます。なお申し落しましたが、五十七年の船団数を維持するということは、今後三カ年やっていく、こういうことに相なったのでございます。また五月の十五日から漁業を始める、これによって日本側入ガニ漁獲をシャット・アウトするということに関しましては、ソ連側はその案を引っ込めまして、ただ四月及び五月につきまして水中に綱を残しておきまする期間及び反数をそれぞれ規律していく、こういうことで話し合いがまとまりました次第であったのでございます。  次にサケマスの問題に関しましては、オホーツクの問題及び漁獲量の問題を一番最後に申し上げるといたしまして、その他の規制につきまして、まず第一に熾烈に論議のかわされました問題は、規制区域外操業いたしておりまするはえなわ漁業業に対しまして、現在四十五度線まで操業いたしておりますものを、釣針によるサケマス資源損耗ということを防止いたしまするために、四十二度まで下げるということを、非常に強く要請をいたして参ったのでございますが、これに関しましては、日本側が、はえなわ漁業が非常に零細な東北方面沿岸漁民漁業であり、これに与える経済上の損失が非常に大きいということと、はえなわ漁業については、すでに日本政府としては法制的に漁雄努力をふやさないという規律をいたしておるのでございまして、またその制度の実行のための監督方法も厳重に講じておる、こういうことを強く申しました結果、ソ連側釣針による資源損耗という問題を共同研究事項として残す、こういうことによりまして、はえなわの規制強化要求をます撤回をいたした次第であったのであります。  次に四十八度以南流し網船に対しましては、流し網船が非常に大きな影響オホーツク沿岸マスに対して与えておるということから、母船に付属する独航船についての網の長さ及び間隔についての規制を当然以南流し網船にも及ぼすべきであるということを強く要求して参ったのでありますが、これもまた、現在のあの海域におきまする操業実態からいたしまして、とうてい先方の要求をいれることはできませんので、その実情をよく説明をいたしました結果、綱の長さについての規定はこれを適用するが、網の間隔について非常に広範に間隔をあけなければならないという規定はこれを適用しない、こういうことに取りきめができました次第であります。  次にサケマス種類別漁獲割合をきめまして、その割合母船及び流し網船操業していく、こういうことをはかるべきである、こういう要請が出て参ったのでございますが、これは沖取り実態に合わない、こういうことを強く反駁いたしました結果、これに関しまするソ連側提案撤回をいたしまして、なお双方で研究を進めていく、こういうことにいたしたのでございます。その中で特にベニザケに関しましては、昨年の第一回の委員会におきまして、ベニザケ若年魚漁獲を防止いたしますために、カムチャッカ半島の東南におきまして七月の二十日以降操業しない区域をきめておるのでございますが、この取りきめは今年も引き続き実行することとし、その間におきまして科学的な調査を進めることによりまして、来年またその存否についての論議を重ねよう、こういうことにいたした次第であります。またべニザケの若年魚混獲限度をきめよう、こういう提案ベニザケについてあったのでありますが、これにつきましても今後の問題として研究するということで一応まとまった次第であります。  漁業の終期につきまして、ソ連側はこれを七月末までにすべきであるということを要求いたしたのでありますが、日本側といたしましては、その拠拠について納得することができないので、現行通り八月十日に据え置くべきであるということを主張いたしました結果、日本主張通りにその点もまとまりましたのでございます。そのほか綱の糸の太さの問題だとか綱の結節間の、長さの問題だとかいろいろこまかい問題がございましたが、これはこまかいことでございますので、省略をさせていただきます。  そこでソ連側は当初禁止区域といたしましてコマンドルスキー群島オホーツク海及び千島列島の外側に距岸六十海里から二十海里のところに線を引きまして、その線の内側からオホーツク海全部及び樺太の南端から西北の日本海、これを全部禁止区域にするということを提案をいたして参ったのでございます。その論拠といたしまして、オホーツク周辺特に西カム河川に対しますサケマス接岸を確保いたしますためには、日本オホーツクの中で沖取りをするということは非常に支障がある、資源保護のためにはこれを禁止区域にするべきだという論拠を申し立てたのでございます。非公式会談等の舞台におきましては、日本沖取りをすることによります西カム沿岸漁民の深刻なる影響というようなものも述べ立てて、これらの漁民感情というものがとうてい日本沖取りを許容するわけにいかないということを強く述べたのでございます。これに対しまして日本側といたしましては、資源保護河川に対するサケマスの遡上を確保するということであれば、その前面に四十海里であるとか二十海里であるとか、そういう禁止区域を置けば十分であって、オホーツク全体を禁漁区域にするいかなる理由もない、その主張公海自由の原則を否認するものだということを強く主張をいたしたのでございます。また漁民感情論を言い出せば、これはもう日本国民全体の世論というようなものと引き比べなければならないのであります。その辺も強く反駁を加えました結果、漁民感情論という話はおしまいには全然ソ連側撤回をいたしております。しかし終始一貫、これが禁漁を確保するということは、ソ連としては量の問題ではなくプリンシプルの問題だということを強く主張し、日本側が自主的な操業禁止期間を設ける、そういうふうな妥協案を出しましたことに対しても、これを受けつけようとはしなかったのでございます。またソ連側オホーツク禁漁ということを要求いたしておりますことの内容には、母船式操業によります漁業禁止のみならず、北海道基地といたしますいわゆる基地独航船による操業をもソ連はこれをあわせて認めない、こういう立場をとるのだということも申して参ったのでございます。  ところで一方、漁獲量に関しましては、八万トンで非常に強く主張をして参ったのでございますが、赤城代表及び高碕代表が行かれまして、そしてイシコフとの間に、あるいは、ミコヤンとの間に高いレベルにおきます話し合いを重ねましたところ、ある程度、八万トンを固執するものではない、しかしそれはあくまでもオホーツク禁漁問題を日本がのむかどうか、こういうことにかかっておるのだというふうな線をからみ合して出してきたのであります。  そこでいろいろ折衝いたしましたところ、まず第一にほぐれて参りましたのは、今年は日本もいろいろ準備をしておることであろうから一船団、後ほどその船団漁獲量といたしましてさらに六千五百トンという数字も加えてきたのでありますが、当初は一船団操業だけは認めよう、しかし五九年におきましては全面的に漁業を停止してくれ、こういう話であったのであります。これに対しまして日本側といたしましては、今年の一船団にとどめることはのもう、しかしあくまでも共同調査を行なって、その調査の結果によって明年オホーツク禁漁をやるかどうかということをきめるべきだ、そういうふうな主張をし、そちらの方をいろいろ論議を重ねておる間に、ソ連側としては、オホーツク禁漁ということを日本がのむならば十万トンはこれを認めよう、こういうことを申して参ったのであります。ところでわれわれはあくまでも、来年直ちに漁業を停止するということについては、そこに共同調査というあやと同時に、ソ連もそれほどの強い希望であれば、ソ連の意向をくんで差し控えるように努力するというふうな程度のことは意思表示をしてもいいけれども、しかしあくまでも日本の国内における世論ソ連の言うておるようなことではとうていこれを了承しないというようなことで反駁を加えて参ったのでございます。ところでソ連も十万トン、同時にある程度努力するというふうな程度の表現で余地を残すというところまで話が進行しておったのでありますが、その段階においてさらにソ連側から、オホーツク漁業を停止する、こういうことを明年から約束してくれるのであれば、ソ連としては十一万トンを今年の漁獲量として認める用意がある、一体その二者どちらを選ぶか、こういうふうな段階に問題が転換をいたして参ったのでございます。日本側といたしましては、昨年十二万トン、今年十一万トン、こういう実績ができてくるということが、将来における日本北洋漁業安定化ということに、その方角にいささかでも前進をさせるというような実際上の効果もあるというふうなことにもかんがみ、最後にはソ連側要請を了承いたしまして、五九年からオホーツク海におきまするサケマス漁業を停止するということにいたしまするとともに、十一万トンの漁獲量ということで最後に取りきめをいたした次第でございます。  なお共同調査の問題に関しましては、これは同町委員会決定といたしまして、オホーツク問題等ももちろんでございますが、広範に日ソ漁業に関連いたしまする問題についての共同調査をやりまする内容を取りきめまして、また同町にそれぞれの政府調査のために専門家を派遣することを勧告するということが、委員会として決定を見たことを承知をいたしておるのでございます。  まず以上のような経過をもちまして、日本側としては決して満足する線ではございません、しかしながらとにかく代表団一行の非常なねばりによりまして、ソ連側が当初打ち出しました規制の強い要請をここまでほぐして、そしてここで今年の話を取りまとめをいたした次第でございます。目下事務当局といたしましては、これが出漁の円滑をはかりますために、出漁に関しまするいろいろな解決いたさなければならない問題について鋭意作業をいたしております段階でございます。  以上御報告申し上げます。
  4. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま奥原長官から説明がございましたが、質疑の通告がありますのでこれを許します。永井勝次郎君。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 ただいま長官からいろいろ伺ったわけでありますが、非常に長かったので、重点がどこにあるかはっきりつかめなかったわけであります。あらためて一つ要約してどこに問題の重点があったかということを明確にしていただきたいと思います。  今回の日ソ漁業交渉に当りまして、交渉重点をどこに置いたか、また交渉立場はどこに置かれてあったのか、この二点について、条項的でよろしいですから、はっきり一つお開かせ願いたい。
  6. 奧原日出男

    奧原政委員 今回の交渉におきましてわれわれが重点的に努力をいたしましたことは、北洋漁業に関しまする国際的環境を安定させるという方角にできる限りの努力を払った次第でございます。従いましてその具体的な内容といたしましては、ただいま申し上げましたように漁獲量及びオホーツク海の禁漁問題、これにいかに対処するかということが一番大きな二大柱であった、かように考えるのでございます。  また交渉立場に関しましては、特にオホーツク海の禁漁問題等に関しまして、ソ連側はこれは日本資本漁業だけの問題ではないか、採算的にいえば東へ行ってとればそれでいいではないかというようなことを申したりしたこともあるのでありますが、日本側はもちろんその段階においてもそれを強く反駁いたしますのみならず、終始一貫この北洋漁業日本国民世論の上における重要性というふうなものを強く反映するとともに、北洋漁業は同時に沿岸漁村の問題であり、沿岸漁業の問題であるということを主張いたした次第であったのでございます。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 北洋漁業として日本国際環境の安定、こういうお話でありました。その具体的内容として、漁獲量の問題とオホーツク禁漁区域の問題、こう二つあげられた。北洋漁業を通しての国際環境の安定、こういうことになりますと、これは私はやはり質的な問題だと思うのです。たとえば漁獲量の問題ということになりますと、これは企業の安定という上から相当大きなウエートを占めて参ります。しかし北洋漁業だけではないのでありまして、いろいろ国際的な関係で広がりを持つ問題といたしましては、最の問題よりはやり質的な問題、政府が最初言いました公海の自由とかあるいはどの区域においてどういう理由により禁漁されるかというような、こういう質的な問題が重点だと思うのであります。この関係において、私は国際環境の安定をはかるというならば、後者の方のオホーツク禁漁問題にこそ重点が置かるべきだし、これは単にオホーツクの問題にとどまるものではない、非常に大きな発展性を持つものだ、こういうふうに考えます。それが最終的にどうすりかえられたかといえば、このオホーツク禁漁の問題と量の問題、一万トンの量の問題とが取引されてすりかえられたわけであります。     〔吉川(久)委員長代理退席、原(捨)委員長代理着席〕 この関係について長官はどういうふうに理解をされ、問題を分析され、そうしてその分析の上に立って、この一万トンふやすことが国際環境の安定に役立つことなのだ、オホーツク禁漁問題よりもより重点なのであるという、この点を一つ明確に伺わせていただきたいと思います。
  8. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉過程におきましては、日本側としてはいろいろな議論を交換をいたしましたが、しかし日本側オホーツクサケマス漁業を来年から停止するということを承知いたしました考え方の根拠と申しますものは、これはあくまでも資源論立場に立っておるのでございます。すなわちサケマスの川に対する遡上を保証するということのために、安全度を非常に高く見過ぎるきらいはあるかもしれませんが、とにかくオホーツク海の中でサケマスをとらないということが資源的に伸び得る、かようにも考えられまして、これを受諾いたした次第でございます。ソ連側交渉過程においてよく繰り返しました議論でございますが、ソ連としてはオホーツク公海における沿岸漁業も全面的に禁止しょうという立場をとっておるのではない、すなわちカニについても先ほど申し上げました通り解決をいたしましたし、そのほか底びきその他の漁業についてもソ連はこれを今制約しようという考えは持っていないのだ、要するにサケマス資源論立場に立って、この際ぜひ漁業の停止をはかりたい、こういうことを申しておりましたその論拠をわれわれとしても結果として了承をいたす、こういうことに相なったのでございます。  ところでしからばこの問題が日本をめぐる国際環境の上にどういう影響を与えるかという問題でございます。国連におきまする海洋法案の審議がどういうところに落ちつくか、ただ結論が出ておらない状況であるのでありますが、それは別といたしまして、日本をめぐる沿岸国主張はそれぞれにその論拠なり事由が違っておるのでございます。一番対比して取り上げられます日米加漁業条約によります日本漁業の抑止の問題に関しましては、アメリカ及びカナダ河川から出ましたアメリカ系サケマスについては、西経百七十五度から以東について、一方においてアメリカカナダ側が増殖についての責任を果すとともに、日本側がその区域に立ち入って漁業をすることを抑止する、こういうことにいたしておるのでございます。従ってプリンシプルとしてアメリカ及びカナダ側が、今度のオホーツクの問題のこういう解決に乗じて、さらに日本側に対して質的なそういう新しい要求を加えてくるということは全然あり得ないのじゃないか、かように考えております。  ただ現在アメリカとの間に問題になっておりますのは、アメリカ系サケマスとアジア系のサケマスとを分つ線が一体どこにあるか、今の西経百七十五度という線がその線として適当であるかどうか、こういうことにあるのでございまして、従ってその問題は今後いろいろ論議を重ねなければなりませんが、オホーツクの問題が直ちに新しいアメリカ側の論拠に質的なものを加えるというふうには考え得ない、かように思っております。  また韓国の問題については、全く問題の様相が違っておることは今機微の段階でありますので、言葉を省略いたしますといたしまして、アラフラ海の問題は大陸だなの問題でございまして、従ってこのオホーツク海の問題ともまた全然その論拠及び内容を異にいたしておるのでございます。従ってこれによって直ちに日本が、日本をめぐりまする関係国から質的な新しい漁業規制要求を受けることには私は相ならない、かように考えております。
  9. 芳賀貢

    ○芳賀委員 議事進行について。先ほど長官から日ソ漁業交渉妥結経過を聞いたのですが、これはあくまでも政府の事務当局の経過説明というふうにわれわれは聞いております。ただいまの永井委員の質問は、政府の政治的な責任において答弁がなされる、そういう重要性を持っておる。当委員会におきましても、昨日石井農林大臣代理の出席を求めて、本問題の調査を進めるということになっておるのですが、いまだに石井大臣の出席がないのです。まことに政府としては怠慢しごくなんですが、いかなる理由で石井農林大臣代理が出席できないのか、その事情等について説明を願いたい。
  10. 原捨思

    ○原(捨)委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  11. 原捨思

    ○原(捨)委員長代理 速記を始めて。
  12. 永井勝次郎

    永井委員 今芳賀理事から話がありました通り、この問題は政策的な問題であり、しかもこの国会があとあすを一日余すだけの重要な段階における議題でありますから、これはもっと政府がこれらの問題について国会を通じて国民に明らかにする、そうしてその政策的な立場については質問を受けて立つという誠意がなければならぬと思う。ところが一事務官である長官をひとりぼっちぽつんとその席にすわらしておるというような姿で、その問題に対処するというのは、いかにもこの問題に取っ組んでおる政府の態度がすでに敗北色を明確にしておると思うのであります。非常に遺憾に思いますが、しかしそういって大臣の出席を待っておりますと、あしたになることやらあさってになることやらわかりませんから、大臣の関係の質問はさらに保留することにしておきまして、長官への質問を若干継続したいと思うのであります。  今のオホーツク漁獲の問題は、向うが言っているように、これは量の問題ではなくて、プリンシプルの問題だ、こちらもその通り理解しておる。この点は譲れないということで、最初がんばっていた。ところが最終段階において東の海域における一万トンの増加と取引した。取引ができない性質のものだ。量と質で、これは取引できるものではないのでありますが、そういうものと取引した形において、オホーツク禁漁の問題は、これを受諾して敗北した。そうしますと、あとに残るのは、今度の自ソ漁業交渉重点である問題は漁獲量の問題だけであります。オホーツクの問題は敗北したのですから、消えてなくなってしまった。漁獲量の問題だけがそんなに重点になるのかどうか。その魚獲量の問題も二万トンの問題で、しかもこれは本年だけで、来年また新しく交渉しなければいかぬ、こういう状況でありますが、この十一万トンの見通しの問題はどうなるのか。これは確保できるのかどうか。またさらに十一万トンを足場にして発展できるというような、こういう見通しに立って、オホーツク禁漁というようなこの重要な問題をあっさりと頭を下げて、そうして一万トンの量をふやすということと取引したという、このそろばん勘定をもう少しわかるように説明をしてもらいたいと思います。
  13. 奧原日出男

    奧原政委員 十万トンの場合におきますれば、オホーツク漁業停止ということは防止し得るか。こういう問題に関しましては、日本側としてやや多少の表現上の余地は残し得たかもしれませんけれども、しかし交渉の長い流れから考えてみますれば、ソ連側の強い要請にもかんがみ、今この際多少のあやを残そうと努力してみても、オホーツク禁漁を防止し得るとは、とうてい考え得ない状況にあった次第であるのでございます。また十一万トンをこの際とったことが、今後の北洋漁業の安定の上にどういう影響があるか、こういうことに関しましては、公的にはもちろんソ連側も、今年十一万トンを認めたということを今後の基礎とするということについての保障は与えておりません。しかしながらあの論議経過をいろいろ考えてみますれば、昨年十二万トン、本年十一万トンこれは一つの確たる事実として当然明年の委員会におきます折衝に反映し得ることに相なるのでございまして、そういう意味におきましては、北洋漁業出漁安定化という方角には、むしろこういう踏み切りをした方がより適当ではなかったかというふうに、われわれは考えておるのでございます。     〔原(捨)委員長代理退席吉川(久)委員長代理着席
  14. 永井勝次郎

    永井委員 より有利であったというような自己陶酔的な答弁は別といたしまして、客観的にそれが立証されるものでなければいけない。そこでそういう立証がわれわれが納得できるかどうかという問題について、今問題になっているわけですが、先ほど長官は、交渉重点を二つにしぼった。その一つは、基本的な問題の力が、これは敗北してしまった。そうすると残るのは量だけの問題、その量がどのように確保されるのかというと、ことしだけ一万トンふえたというだけの量です。来年からどうなるかわからぬわけであります。こういう不確定な、しかも一万トンという量の問題と、本質的な問題とを取引して、そしてことしの日ソ漁業交渉というものは、結局最終的には漁獲量の問題だけで、しぼってくれば一万トンふやすかどうかというだけの問題で、あとの一切の問題は敗北に帰した。こういう形によって、長官は孤影しょう然と敗北の姿をそこにさらしているわけですが、それが差引勘定をして有利であるという根拠がどこにあるのか。不確定なことしだけの一万トンと、オホーツク漁業を放棄するという問題と取引して、それが有利であるということは、どういうことなのか。政府の敗北によって、政府が力がなくて、あるいは無能にしてこの問題は解決できないから、そこで今年一年限りの一万トンにかじりついて何とか面目を保持しようとした、こういうことならその気持はわかる、ですけれども、有利であるか有利でないかという問題は別です。気持だけはわかる。弱き者よ、なんじの名は水産庁長官である、あるいは自民党政府なりというような意味で、その気持はわかりますが、一万トンと取引したことが有利であるということは、私は頭が悪くてわからないのですが、わかるように一つ説明してもらいたい。
  15. 奧原日出男

    奧原政委員 先ほど申し上げました言葉を繰り返すことに相なるかと思うのでございますが、オホーツクサケマス漁業停止の問題は、これはいかようにもあれ、来年はソ連側はこれを必ず確保するという態度には変りはないと、かように了解をするのでございます。それらの状況判断のもとにおきまして、ただいま御指摘のように公的な保障を取りつけることは、これはできませんでしたけれども、しかしその間におきます言葉のやりとり等から考えまして、来年は十分、十二万、十一万トンという過去の事実を基礎といたしまして、北洋漁業資源の許します限りの漁獲量主張することが可能である、かように判断いたしたのであります。
  16. 永井勝次郎

    永井委員 長官の答弁と外務大臣の答弁とは違っております。外務大臣はオホーツクの問題についてはなお共同調査という事項が残っているんだから、共同調査をした上で、さらにこれを主張していく、この区域漁獲をしていくという条件がまだ残されているというようなことを、外務大臣は言っております。ところが長官は、もう見込みがないのだ、見込みがないから一万トンと取引したのだ、振りかえたのだ、こう、群っている。それじゃオホーツク海の問題についてどれだけの努力をしたか、どれだけの手を尽したかというと、何かここで母船漁獲をするということだけだ。少くとも基地独航の問題、あるいはそのほかのいろいろな漁業方式の問題、いろいろあるでありましょうが、そういう問題についてどの程度交渉をしたか、私はしていないと思う。長官はしておらないと言っている。だからそういう母船だけのことをやって、これがだめならもうあとの問題は一切だめなんだ。こういうようなことで、共同調査というようないいかげんなことをくっつけて、そうして今度は、役に立たないことを、外務大臣はまたここから問題を発展させるのだと言う。こういう内閣の中の不統一、長官は事務当局だから、正直でそう言ってているのでしょうが、そういう問題がありますが、一時までに問題を解決してしまわなければならないということですから、その先へ進みます。  それで、事務当局にこういうことを質問するのは無理ですが、簡単でいいから答弁してもらいたい。日ソの漁業交渉がこのように、本年のように難航した、原因はどこにあったのか、何であったのか、この問題をどういうふうにつかんでいるのか、一応簡単に御答弁願います。
  17. 奧原日出男

    奧原政委員 資源調査が同じベースの上に立っていない、こういうことでございます。
  18. 永井勝次郎

    永井委員 事務当局だから何だけれども、資源調査だけの問題でこの日ソ漁業交渉がこのように難航したのだ、こういう非常に子供らしい、単純なものの理解の仕方では、これは問題になりません。すでに問題の出ているように、平和条約が基盤になって両国が仲よくするということが条件にならなければ、そのほかのいろいろな問題はなかなか円滑にいかないのだということは、今ばかでも知っている問題です。それからまた河野・イシコフの前の会談におけるいろいろな問題が、今日いろいろな災いをなしているということも、これは天下周知の事実なんだ。それからまたこういうような具体的な問題があるにもかかわらず、これに対して、これから交渉するというに当って、向うの情勢、考え方というものの打診、あるいは向うの情報偵察というものがほとんどなしに、無感覚に、ばかみたいな感覚で、そうしてめくらめっぽう自分の主張だけすればいいというようなことで、ばかみたいに出るから、一つ一つ問題にぶつかると、向うが不誠意だとか、向うがどうだとか難くせを向うだけにつけて、国内放送だけをして、向うへ行ったら太刀打ちができない、こういう結果になっているのだと思う。こういう問題も長官に聞いたってしょうがないからお伺いしません。いずれまた政府代表にこれらの問題を聞きたいと思う。  長官に伺いたいのは、よかれあしかれ使命を果してきたわけではなくて、使命をはずかしめて帰ってくるわけでありますが、十一万トンということを一応取りきめてきた。そこでこの十一万トンを持ち帰って、この十一万トンの国内配分について、どういう基準で、どういう方式で、またどんな手続で具体的に配分をなされるのか、この点を伺いたい。
  19. 奧原日出男

    奧原政委員 十一万トンの配分の問題に関しましては、目下事務当局におきましていろいろな角度から検討をいたしておる次第でございまして、今ここでそれをどういうふうにするかという内容に立ち、至ってのお話ができないのは、これは申しわけなく存じております。  なお、手続のお尋ねがございましたが、これが手続については、当然農林省の内部の決定で、大臣が御判断をなされる問題である、かように考えております。
  20. 永井勝次郎

    永井委員 昨年配分の問題については、過去三カ年の実績、それから昨年の実績、それからコマーシャルべース、こういう三つの基準によって配分するのだと当時の長官は言われたわけであります。そういう一つの過去の扱った実績があるわけですが、今まで過去においてどういう配分をしたかというその作業及び基準というものは一切白紙に返して、本年は十一万トンというふうに条件が変ってきたのだから、新たな形で一切の問題を処理する、こういうお考えなのか、あるいは過去のその作業、基礎というものに若干の新たな条件というものを加えてするというのか。そういう関係は、すでに何日かの後には出漁しなければならぬという差し迫った問題で、赤城代表が帰るまでばかづらをして待っているわけではないでしょう。事務当局として事務的な作業を進めておるわけでしょう。どういう基準で、だれに幾らやるというようなことを聞いておるのではなくて、どんな基準で配分するかというのですから、その基本的な、原則的なことだけは明らかにできると思う。それができないようなことはないはずだし、そういうばかな態度ではわれわれは承服できませんから、どういう基準で配分するのか、その基準を明確にしてもらいたい。過去の条件をどういうふうに扱うのかというようなこととの関連を明確にしてもらいたい。どこの会社にどれだけとか、どこの船にどういうふうにというような個々の問題を聞いておるのじゃない。原則的なことを聞いておるのです。
  21. 奧原日出男

    奧原政委員 原則的な点に関しましても、目下いろいろな角度から検討をいたしておる最中でございまして、まだ方角づけについての結論を得ておりませんので、ただいまのご質問に対してこうだというお答えができないことをおわび申し上げます。なお昨年どういう事情で配分したかというようなことも、もちろんわれわれとしては十分検討いたしております。
  22. 木村文男

    ○木村(文)委員 関連して。  今永井君の質問に対して長官は、原則的な水準というものはまだ検討中でございますという答弁でございましたが、そういうことは——今ここにもたくさん傍聴者がおるが、私も与党でありますけれども、事務的なことを永井君は聞いておるのです。あなたは事務屋ですから、ある程度事務屋としての立場に立って、配分する一定の基準、いわゆる因子があると思う。最後決定は大臣がやるでしょう。しかしながらあなたは事務当局者としての最高の地位の人である。ですから、最高の地位の立場に立つあなたが、こういう基準のもとに、こういう原則に従って私どもは事務的な操作は進めておりますと、こういうことの答弁は当然できると私は考える。もしかりにそれも答弁しないということになりますと、これは今、御承知の通り選挙を目の前に控えて大きな疑惑を投げることになる。だからそれだけは事務当局としての範囲内において、もう五月にはきめなければならぬ、それなのにまだ何らきめてないと言うが、それは最後的にはきめてないけれども、事務当局としての操作上の一つの因子があるはずである。その因子の発表は当然事務当局としては一応するべきだと私は思う。その点についての明快な答弁を願いたい。
  23. 奧原日出男

    奧原政委員 十一万トンの配分の問題に関しましては、今、利害の合致しないいろいろな立場の方々が、この数量がどういう方角であるかということを知りたいということで、非常に関心を持っておられる次第であるのでございます。ただいま私はいろいろな角度から検討しておると申し上げましたが、大体考え方の基準を申し上げるということに相なりますれば、まだきまらない前におきまして大体の内容を申し上げるというのと同じ結果に相なるのでございまして、われわれといたしましては、十分検討してきめますとともに、きまれば迅速にこれを実行に移したい、かように存じますので、実はこの段階におきまして、どういう内容のものを幾つ考えているということを申し上げることは差し控えたい、かように考えます。
  24. 木村文男

    ○木村(文)委員 もう一つだけ、それは私は、たとえば内容を言えというのじゃないのです。あなたが事務的な作業を進めていく上においての因子があるはずなんです。私も役人上りですよ。その因子は、あなたは事務当局者としてはこうでありますということは言えるはずです。あとのあなたの上の問題は別なんです。政治的な配慮を、日本のいわゆる水産業界という全般の行政運営の立場から考えて、あなたは今含みのあるようなことを言いましたが、それはあなたの上の人たちのやる仕事です。あなたはあくまでも事務当局としての最高の地位だ。その最高の地位のあなたに、事務屋としての立場における因子を発表しろということは、これは日本の水産業界に携わる者の当然の要求と私は思う。これは決して私は与党の立場においてだけではなしに、全国の水産業に関係のある人は、これだけはみな知りたいことだと思う。それを発表することはあなたの上のことの域を発表しろというのではないのです。それをもし発表しなければ、社会党の永井君たちの諸君に今度の選挙で大いに利用されるということになりますよ。私はそれをおそれるから、愛党の精神から言っても、岸内閣を守る立場においてもそれを申し上げるのですから、あなたはその点を慎重に考えられて、そうして御発表なさい。
  25. 奧原日出男

    奧原政委員 因子あるいは基準という言葉もありましょうが、それは同時に数字的な内容に直ちに計算すれば反映するということは容易なことであるのでありまして、従いまして私、今の段階におきまして、ただいまのこのデリケートな時期において、いろいろな混乱を避ける意味におきましても、今いろいろ考えております因子なり基準なりというものの内容についてのお話を申し上げるところまで、私たちの作業も熟しておりませんので、御了承願いたいと思います。
  26. 永井勝次郎

    永井委員 それじゃ何も熟していないというから、一つ成熟を促進する意味において一つ、二つ尋ねます。長官はこの配分については母船重点にお考えになる、こういうお考えですか。母船が相当実績もあるし、現在の量でもあるいは相当減船しなければならぬというような実情だから、母船重点に、まず第一に優先的に考えてそろばんをはじき出そう、そのはじき出す作業はいろいろな方式があるけれども、結論をちゃんとつけておいて、そうして逆算的に事務的にそれを作業しよう、こういうお考えであるかどうか。
  27. 奧原日出男

    奧原政委員 われわれといたしましては、公正に配分をいたしたいと考えております。従いまして、特に母船に対して重点を置く、あるいは傾斜をつけるというふうな前提をもって作業はいたしておりません。
  28. 永井勝次郎

    永井委員 時間がないからいろいろ私聞きたいことかありますが、最後に言いますが、今度の日ソ漁業交渉に当りましては、オホーツク海その他の問題について、日本政府沿岸漁民の生活権の問題、沿岸漁村の問題、こういうことを重点的に押し出して折衝した、こういうのです。そのことは私は正しいと思う。しかし交渉だけはしたが、その交渉の結果がちっとも沿岸漁民のことは考えない形において処理される、沿岸漁民だけは日ソ交渉でだしに使われて、そうしてとってきたやつは沿岸漁業をぽいして母船だけを考える、こういうようなことをやったのでは、これはただこの場だけ、あるいはことしのそういう関係だけは乗り切ることかできるかもしれないし、そのことによって母船の方からは非常に感謝されるかもしれないが、そういう一つの政治不信、行政不信というもの、そういうことがやがて一般漁民大衆からの反撃となって現われてくるでありましょうし、あるいは木村委員が言われましたように、選挙にそれが現実に反映してくるでありましょうから、私はこの問題は明確に、この際考え方としても確立しておく必要があると思う。交渉に当って、単に沿岸漁民をだしに使ったのですか。そうしたら使っただけのことははっきりとしなければなりませんし、またこの問題は、漁民はどうかというと、孵化事業をやっているのです。魚を孵化するという、つまらない縁の下の力持ちで、労力と金を負担している。そうしてこれを放流する。放流すると沖の方で全部とってしまって、沿岸の者はただぽかんと定置を張って、かかったものだけをとっている、しかもこの北洋漁業沖取りが始まってからぐんと沿岸は漁港が減っておることは、ソ連の場合は別として、日本沿岸の場合は顕著な事実なんです。そういうような犠牲——魚は孵化する、そして放流する、そして独占漁業にだけ独占される、沿岸では漁獲が減っていくのを黙って指をくわえて見ていなければならない、こういうようなことを放置して、それが公正な一つの漁業政策であるというようなことには結論としてならないと思うのです。ですからもし長官がほんとうに公正な立場でこれを処理するというならばこういう考え方の問題、原則的な問題だけははっきり答えが出ると思うのです。母船だけのことを考えていない、沿岸漁民のことはできるだけこれをより重点的に考えていくのだ、こういう答弁くらいはできそうなものだと思う。あえて最後長官の答弁を煩わしたい。
  29. 奧原日出男

    奧原政委員 水産庁の現在とっております施策の最重点が、沿岸漁業の振興にある、沿岸漁民の福祉にあるということにつきましては、いろいろ御批評もございましょうが、もう少し時間をいただきますれば私るる御説明申し上げてもよろしいのでございますけれども、それに最重点をしぼって仕事をいたしておるつもりでございます。北洋漁業の問題にいたしましても、それは同時に東北、北海道の漁村につながる問題であり、漁民の就労の問題であり、これが後退するということによってそれらの地帯が非常に不幸を招く、こういうことについての認識は十分持っておるつもりでございまして、従いましてたとえば漁獲規模問題等につきましても、そういうふうな問題の背景を十分考慮いたしまして善処いたして参りたい、かように考えております。
  30. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 芳賀君。
  31. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長にお尋ねしますが、石井大臣の出席はどうなりましたか。
  32. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 朝から探しておりますが、まだ見当りません。十二時四十五分から閣僚懇談会に出席することになっているそうでございます。それが済みまして本会議に出席をし、本会議が済みましてから、商工委員会の方で北海道長官として答弁に立たれることになっているそうであり、そのあとでならば何とかなるのではないかという、ただいま政府委員の方からの連絡でございます。
  33. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実は水産庁長官に質問する点はなかったのですが、石井さんが来ないというので、来るまでの間若干の質問をいたします。  第一の点は、けさの新聞によりますと、政府代表に参加して行かれた安藤、片柳の両君のこれは談話の形式でありますが、最終的に交渉妥結した場合、いわゆる十一万トンの線にきまった場合のこの内容は、日本赤城代表の方からオホーツク海に出漁しない、いわゆるオホーツク海不出漁を条件として十一万トン確保という問題がきまったのだということが発表されておるのですが、これは重大な点だと思うのです。これはまだ赤城さんも帰っていませんし、石井大臣も出席しておりませんので、政治的な答弁を求めようとはしませんが、これは事務的に見ても、日本政府が訓令を出した場合ににおいてもこれに関連があると思うのです。これは十一万トンを確保するために、こちらからオホーツク海に出漁しませんということを条件として日本側が提起したものであるかどうか、その点はどうですか、良心的な答弁を願います。
  34. 奧原日出男

    奧原政委員 条件としてという言葉には、私よくお管えをいたしかねるのでございますが、とにかくオホーツク海に対して今年度は一船団六千五百トン、明年はサケマス漁業を停止する、こういう了解ができ上っておることは事実でございます。
  35. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は、わが方からかかる案を提起したものかどうかということを私は聞いておるのです。妥結内容とか共同声明というものは全部われわれは承知しておるのですよ。ただ、十一万トンをきめる場合に、日本赤城代表からオホーツク海には出漁しません、一札入れますから十一万トンにして下さいという提起をしたんだということが言われておるわけです。この点は長官としても知らぬということはないと思うのですが、いかがでしょう。
  36. 奧原日出男

    奧原政委員 話のいろんなやりとりにおきまして、当初ソ連側の話の中に、十万トンだけでなしにさらにそれ以上にも、十一万トンまで持って行き得るというニュアンスが十分くみ取れたように思うのでありまして、従ってそのニュアンスに基いて日本側といたしましては十一万トンをぜひ認めてもらいたい、こういう提案をいたしたのでございます。
  37. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、その十一万トンを認めてもらいたいという場合、日本側から、オホーツク海に対しては明年度から出漁いたしませんからそのようにして下さいという申し出を行なったというところに問題があると思うのですが、その通りかどうかということなんです。これは事務的にも答弁できると思うのですがね。
  38. 奧原日出男

    奧原政委員 十万トンにいたしましても十二万トンにいたしましても、オホーツク出漁という問題にからましての話は、むしろソ連側の方から出てきたのでございますが、最後日本側といたしましては、十一万トンというものをぜひ確保したいということで話を出したのでございます。
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの長官の答弁を確認すると、結局これはソ連側から呼びかけた過程はあるとしても、最終的にはわが方から、明年度からオホーツク海に対しては出漁いたしませんから十一万トンをきめてもらいたい、こういう経過であったということをここで確認しておく次第であります。  その次にお尋ねしたい点は、今度の交渉に当りましては、領土問題、いわゆる講和条約に当りましては、領土問題、いわゆる講和条約の問題と安全操業の問題と漁獲量の問題は切り離していくという大前提の上に立って交渉が進められたわけでありますが、その場合、オホーツク海に対してもあくまで公海自由の原則は貫く、これをソ連側が否定する場合においては強行出漁も辞さないということを赤城さんは出発当時には言っていたわけですが、今度こちらから公海自由の原則を放棄するような提起を行なったことについては、これは重大問題だと考えるわけです。そこで事務官僚の立場から、このことによって公海における漁業の自由の、原則というものは、どういう影響を受けるとお考えになりますか。
  40. 奧原日出男

    奧原政委員 先ほども御説明を申し上げましたように、日本といたしまして、オホーツク漁業停止の問題が即公海自由の放棄であるというようには考えておらないのでございます。経過的にはいろんな議論の交換がございましたけれども、この問題はあくまでもサケマス資源保護のための規制措置でございまして、オホーツクにおきましては公海の自由というものは依然として保障されておる次第でございます。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、これは資源保護という立場からいえば対等の立場ですね。日本の方でもオホーツク海における資源保護立場で当分の間出漁を見合せる。しかしソ連側においてもそれと同じような措置が講ぜられなければ、そういうことにはならぬわけです。ところがソ連の方でも、母船式等による漁法は用いないにしても、日本と同じようにいかなる漁法をもってしてもオホーツク海における鮭鱒の漁業を全く行わないというような明確な対等の立場に立った資源保護話し合い決定ではないというふうにわれわれは考えておるのですが、その点はいかがですか。
  42. 奧原日出男

    奧原政委員 業漁条約は、御承知のごとく公海に適用があるのでございますが、オホーツク海という公海におきまする五九年以降のサケマス漁業の停止に関しましては、日本ソ連も同じ立場をとるということに相なっておるのでございます。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 公海といわれる海域における鮭鱒漁業の停止ということになると、たとえばオホーツク海をソ連は自国の内海であるというように考えておるような表現もしばしば行われるのですが、地図を見ると、オホーツク海は決してソ連の領土だけで囲まれておるわけではない。海岸線は短かくても、やはり日本の国土である北海道の稚内から根室沖に至るまでの間はオホーツク海をめぐる一翼をなしておるわけです。そういう場合においては、たとい海岸線の占める比率が少くとも、やはりオホーツク海に対する発言権は当然日本側においてもある。ソ連の内海であるというような考え方は全く持つべきでない。またそういう考えを持たないで交渉に臨まれたと思いますが、この見解はいかがですか。
  44. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉過程におきまして、ソ連オホーツクソ連の内海であるというふうな考え方を出したこともございませんし、また日本といたしましても、もちろんソ連及び日本両国が接岸をいたしておりまする公海という立場において論議を重ねて参った次第でございます。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう話し合いが全くなかったということになれば、当初から、安全操業の問題もありましたが、日本沿岸漁民あるいは零細漁民の利益を守るために、今回の漁業交渉を、それを基本として進めるのだということが交渉過程においてはしばしば表現されたのですが、今回の妥結の結果によって、たとえばオホーツク海にしますと、オホーツク海に関係を持つところの沿岸漁民の利益あるいは日本のいわゆる資本漁業にあらざる全く零細な漁民の利益というものは、日本側の代表のいかなる努力と表現によって成果が上ったか、その点は具体的に言ってどうですか。どの点で沿岸漁民の利益を擁護するために赤城さんががんばったというそういう点がありますか。
  46. 奧原日出男

    奧原政委員 先ほども申し上げましたように、北洋漁業操業安定化というその方角に一歩を進めた、同時に北洋漁業沿岸漁業と、就労の問題あるいは底びき転換の問題、その他いろいろな意味において非常に密接な関係を持っておるという意味におきまして、沿洋がこれによって守られる、こういうことに相なろうか、かように考えております。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在までの日ソ間における漁業交渉経過を見ると、規則ライン内における漁業の問題が尽されておりまして、結局今回の総体が十一万トン、そのうち六千五百トンがオホーツク海における漁獲量として決定になったわけてあって、その東カム、西カムの中における漁法の相違によりましての漁獲量というものが、日本の国内問題として、いわゆる内政問題、行政の範囲内における問題として従来は処理されてきたわけでありまして、今回においてもこの原則というものは変りがないというふうにわれわれは思っておるのですが、その点はいかがですか。
  48. 奧原日出男

    奧原政委員 オホーツクの問題に関しましては、交渉過程において論議された問題は、あくまでも今年許容いたしますものは一船団、六千五百トン、すなわちこれは母船式操業のみを前提にするものであります。また明年以降の停止につきましては、これは席上において論議いたしました中で、ソ連側が述べましたところによりますれば、これは母船のみならず、北海道基地にいたします独航船をも含めまして、オホーツク漁業の停止をソ連としては強く要求をいたしたような次第であったのでございます。今交渉過程におきますその他の区域についての論議におきましては、現在の漁獲構成、すなわち漁業努力の構成、これは母船に付属いたします独航船及び流し網船規制区域外におきましてははえなわ船というものがございますが、こういう構成を前提にする議論の交換が行われた次第でございます。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは私の質問の趣旨とはいささか違うわけです。たとえば昨年に例をとると、昨年は総体で十二万トン、そのうちオホーツク海においては一万三千トンですね。日本側において編成した船団は、全体が十六船団であって、そのうち二船団西カム出漁したわけなんです。この船団の数は、日本政府としては、勘案して方針をきめたのであって、昨年の交渉の場合においても、ソ連側との交渉においては、十六船団にするとかしないとか、あるいは東カム、西カムに何船団ずつ、そういう話し合いというものが行われていないのです。それであるからして、昨年、たとえば東カムの母船式と流し網の数量の配分の問題等に対しても、ソ連側は何ら関知しておらぬのですよ。日本政府の責任において、母船が東カムにおいては十四船団、そうして流し網に対しましては二万トンを四十八度以南の分に対しては認めるという決定が行われておるのです。その措置については、ことしも何ら方針が変っていないと思うのです。ただ問題は、長官は、オホーツク海においては一船団でありますということを強調されますが、それは何かの根拠があって、そういうことをさらに誇大に言うのではないかと私は考えます。この漁業の方式、それから漁業方式が違うことによる母船とか流し網等に対する数量配分というものは、あくまでも日本の責任においてこれを配分して、そうしてこのことが、両国の交渉によって取りきめられた資源保護とか、あるいは約束を守るという、そういう誠実なる実行が行われるというところに日本政府が責任を持てばいいのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  50. 奧原日出男

    奧原政委員 オホーツクにつきましては、交渉経過を先ほども申し上げましたように、一船団六千五百トンということで話がまとまっておるのでございます。その他の区域につきまして、先ほどは漁獲努力の構成の問題を申し上げましたが、それではその構成の中にどういうふうに配分していくか、こういうふうな点に関しましては、それはただいまお尋ねのように日本政府が自由にきめ得るところでございます。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからそのきめ方については日本政府の責任でやれるのですよ。だから東カムはやれるけれども、西カムの、オホーツク海の場合にはやれないという、そういうことはないのですよ。ただ私がお尋ねしたい点は、今日までの交渉経過を見ると、たとえばオホーツク海における日本沿岸漁民の利益を守るための出漁等に対しては、日本側においては、交渉過程において何ら発言をしていないわけです。たとえば四月四日のイシコフ・高碕第二回会談等においては、ソ連側基地独航等を含めた沖取りに対しても許容するのじゃないか、そういう表現が日本側にも伝わっておるわけですが、しかし日本側からは、オホーツク海における母船出漁が不可能であるとするならば、せめて北海道なら北海道オホーツク沿岸基地としたところの小型独航船方式によってでもこれはやれぬかという、一言くらいの話し合いを持ち出してしかるべきであったのじゃないかというふうにわれわれは考えておるのですが、遺憾ながら、新聞とかその他の情報においては、日本の代表はこの基地独航方式等については全く触れておらないということで、これをわれわれは遺憾に思っておるわけでありますが、交渉過程においてそういう問題を日本側から持ち出したことがあったかなかったか、その点をお尋ねいたします。
  52. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉過程におきまして、そういう話を持ち出し得るような余地のある話の進行では全然ございませんでした。ソ連はまっこうからプリンシプルとしてサケマス漁業の停止を要求いたして参ったのでございまして、そしてまた同町に向うの方からも、はっきりと基地独航方式、それも認めないのだということに触れて発言があった次第でございます。従ってその話を持ち出すような余地のある話し合いではございませんでした。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう子供だましみたいなことを私は聞いておるのじゃないのですよ。交渉ですから、相手が何を言おうとどう思っていようと、日本を代表して、日本の利益を守るために出かけていった場合には、こちらの方針というものを率直に伝えて、これを説得するために努力するというのが代表の務めでしょう。向うの態度が最初からあまり楽観的でなかったから、遠慮して何も言いませんでした、それで母船の問題だけを終始頑強にやって、一船団だけは確保しましたというような報告を、日本に帰ってやれますか。しかも出発当時から大きなのぼりを立てて、日本沿岸漁民の利益を守るのだといって出かけた代表が、両うに行って沿岸漁民をダシにだけ使って、何ら基地独航方式等の問題に関しては一言も触れていない、こういうばかげたことは許されることではないと思うのですよ。あなたを責めるわけではないのですが、ただ交渉過程で、そういうことを赤城さんにしても高碕さんにしても、日本立場として述べたことさえも、あるかないかということを聞いておるわけです。いかがですか。
  54. 奧原日出男

    奧原政委員 私、その会議の公電によって承知をいたしておるのでございまして、従いまして別段録音をとったわけでもございませんし、一々こまかい発言まで全部そのまま反映していないかもしれません。しかしそういう前提のもとに、私の了解しておる限りにおきましては、おそらく基地独航という問題は、漁業調整上、現存する北洋操業漁獲構成に対して新しい因子でもあり、なかなか困難な問題もあろうかと思うのでありますが、そういう意味であったかどうかは存じません。しかしとにかく、こちらからそれを持ち出してはおらないように承知をいたしております。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで事情はわかりましたが、このオホーツク海の問題は、特にソ連側においても、西カム沿岸ソ連漁民の利益を守るために、やはりその資源をまず保護する必要があるということを向うも主張しておるわけです。日本側においても、この交渉日本沿岸漁民や零細漁民の利益を守るのだということで、この基本をどこに置くかということについては両国とも漁民沿岸の利益——ところが日本の場合にはそれを宣伝の具とか交渉の材料だけに使って、結局は沿岸漁民の利益を考えない交渉をやったということが、ここで明白になってきておるわけです。特に今年度から両国間においてそれぞれ三カ月にわたって共同調査を行うのですね。ですから、将来このオホーツク海域に何らかの足がかりを残したいというのが、これが国民一致した考えなんです。ですから、科学的な共同調査を行うということをお互いが理解しあっておる場合においては、共同調査の結果に基いて一つの可能性とか前進を期待するということが眼目でなければならぬわけです。そうでなければ、せっかく共同調査をやっても出漁しませんということを文章に示して明らかにした場合には、その行われた調査の結果というものはそれほど大きな期待を持つことができないと思うのです。ですから、母船漁業オホーツク海において不可能であるとすれば、せめて今年度、数量はいかなる程度の数量であるといたしましても、試験操業的な意味も含め、てこの北海道オホーツク沿岸基地とした基地独航方式によるところの鮭鱒漁業を何とかそこへ足がかりをつけてやってみる、そうして試験操業あるいは共同調査の結果によって、この程度の漁法をもってするならば、オホーツク海域の鮭鱒の資源を荒らすようなことはないだろう、この程度であれば、やはり日本の領土の一部もこのオホーツク海をめぐる島になっておるのだから、この程度はいいだろう、あるいは五十度なら五十度ぐらいの線まで基地独航船が来ても差しつかえない、こういう結果を見出すためにも、私は今回のオホーツク海域における基地独航方式が非常に大事でなかったかと考えるわけです。長官も行政部面を担当する官僚の立場においては、おそらくそういうことは考えておられたと思いますが、この点についてはいかがでありますか。
  56. 奧原日出男

    奧原政委員 一般的に申し上げまして、共同調査が行われて、その結果規制措置のいういろいろな再検討が行われるということは、一般的にはその通りであろうと思います。しかし今具体的な問題に結びついてとやかく申し上げますことは、この二十二日に妥結したばかりでありまして、これから共同調査をやって、こういうことで来年ゆさぶるぞということをこの席で申し上げるような結果にも相なりますので、私としてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは両国間の取りきめですから、当然尊重しなければならぬことはわかるわけです。ただこれは今後の大事な問題になると思うわけなんです。  最後にお尋ねしたい点は、赤城大臣が帰ってくれば一番明白になるわけですが、たとえば六千五百トンですね。あなたは母船だけによっての六千五百トンと言われますが、オホーツクにおける六千五百トンの範囲において、たとえば日本の責任において、そのうち一千トンでも、二千トンでもこれを基地独航方式によるところの操業の方でやる、総体においては六千五百トンでやるというようなことを、今後日本政府がそういう善意な判断を下して行なった場合において、これが今回妥結された協定に対する違反になるかどうか、そういう点は、専門的な立場からはどうお考えになりますか。
  58. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉経過から申し上げまして、この六千五百トンを新しい漁獲努力の構成に割り振るというふうな余裕があったとは私にはとうてい考えられないわけでありまして、その辺のことはいずれ代表団が帰って参りますれば、明らかになるだろうと存じます。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、この点は日本政府の代表が帰ってこなければわかりませんが、責任においてやれるということは、東カムにおいてもやはり母船と流し網の配分ができるわけですから、西カムにおいても六千五百トン、これは一母船が主体になるのはもちろんでありますが、そのうちの数量のわずかを割愛して、その分に対しては日本政府が監督とか指導の責任を持って基地独航方式によるところの操業に対してこれを与えてやらせるというようなことを、わが方が方針として行政的な措置を行なった場合において、今回の協定というものは、その行為が協定違反とかということになるかならぬか。これは専門的なことになると思いますが、参考までにお尋ねしておきます。
  60. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉経過からはそういう余地はなかった。従ってそういうことは非常に意外なる反響をソ連側に与えるのではないかというふうな経緯であるということを申し上げたいと思います。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は、長官にこれ以上追及しても無理と思います。いずれ赤城代表が帰られてから機会を得て明らかにしたいと思います。  それで最後にお尋ねしたい点は、最近の新聞に毎日出ておりますが、結局前年より一万トン減ったわけですね。それで水産庁の方針としては、まだ明確な態度が表明されませんが、おそらく船団構成については前年通り十六船団ということで行かれると思うわけです。同じ十六船団で数量が一万トン減るということになると、当然母船に付属する独航船の減船の事態が現われてくるのです。昨年も減船問題が非常にやかましかったのですが、減船の事態が生まれると、この減船による独航船に対する損害の補償とかなんとかをどうするのだという問題がまた生まれてくるわけです。これに対しましては母船側、あるいは独航船側からいろいろな意見が出ております。たまたま連日のように水産庁長官の談話としてこの減船した独航船に対しては政府として補償を行う意思はないということが出ておるわけです。この点に対しましても、これは今後の問題と思いますが、水産庁当局の方針としては、この減船された独航船に対しましては政府の責任において補償は行わない、これは一貫した既定方針であるかどうか、伺います。
  62. 奧原日出男

    奧原政委員 私の水産庁長官としての考え方は、ただいまおあげになりましたように、政府が補償をするべき筋合いではないと考えております。しかしまだ別段これを有権的に問題として取り上げまして決定を何らかの手続でいたしたわけではございません。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長行にお尋ねする点は以上で尽きたわけですが、委員長に申し上げますが、特に先ほどの質問の中で、最終妥結を行なった十一万トンの決定の場合に、わが方からのオホーツク海に出漁しませんという条件提起の内容と、それからもう一点はオホーツク海における六千五百トンの母船主体でありますけれども、そのうちの一部の数量を今後の沿岸漁民の利益確保の点から見て、これを日本政府の行政上の責任において処理することがどうかというような点に対しては、これは担当大臣である石井大臣の出席を求めて、解散前に必ず出席してもらわなければなりませんが、この点を委員長にお願いいたしまして、以上で本件に対する私の質問を終ります。
  64. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 芳賀君の最後の御要請については、午後大臣に出席してもらうように手配をいたしておりますので、その上でなお御相談をいたします。
  65. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。今芳賀君から要求されたことは、非常に重大なんです。先ほどの長官経過報告によると、オホーツク海での操業禁止するなれば十一万トンを承認する用意があるということを、ソ連の方から提示された、長官説明によるとソ連の方からこのことが提示された、こういうことになっておる。ところが昨日の片柳発言によると、それが逆な形になって、赤城代表がこれを提示した、こういうことになります。そこに非常に大きな問題がある。だからこれはやはりこの際明確にしておかなければいかぬ。長官がそう言ったんだから……。
  66. 奧原日出男

    奧原政委員 交渉過程において、いろんなニユアンスはございました。しかしそれを具体的にそういう言葉で交渉場裏において告げましたのは、そうしてそれを解決したのは、赤城大臣でございます。
  67. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 暫時休憩いたします。午後は二時から再開いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後四時二十二分開議
  68. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  北海道周辺海域における底びき綱漁業の問題について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。芳賀貢君。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 政府委員にお尋ねしますが、主として北海道近海における中型底びき船の禁止区域の拡大の問題につきましては、三月の四日に当委員会の水産に関する小委員会においてこの問題に対する質疑を行なったのでありますが、当時は水産庁におきましては、北海道関係調査に係員を派遣して、三月の二十日ごろに調査の結末がわかるので、それを土台にしてすみやかにこの問題については適切な措置を講じますというような言明があったわけでありますが、今日においてもいまだにその処理の内容が明確になっておりませんので、その後の経過等に対して御説明を願いたいと」思います。
  70. 新澤寧

    ○新澤説明員 ただいまお話がございました通り、三月の上旬から中旬にかけまして北海道に現地調査に参りまして、種々調査して参ったわけであります。その結果われわれの案を立てますに必要な基重な資料を多々得て参ってきておるわけでございます。ただ非常に重要な問題でありますので、なおこれに加えまして若干の資料を整備いたしまして具体案の作成に入りたい、こういうことでなお若干の、不足な資料について収集検討を続けておるわけでございます。ただ今までの調査の結果得ましたわれわれの方針といたしましては、北海道沿岸漁業の実情並びに資源の事情等にかんがみまして、北海道の中型機船底びきの禁止区域の拡大という方向に施策を打ち立てていかなければならないであろう、ただしその場合あわせて底びきの転換対策も講ずる必要があるだろう、こういうことでございます。こういう線に沿いまして今着々と案の樹立について作業を続けておるわけでございますが、われわれの作業の目標といたしましては、間もなく夏の禁漁期に入りまして、九月の中旬からまた新しい漁期が始まるわけでございます。この間が時期的にも、そうした二つの漁業の状態に非常に大きく影響するような施策を立てます場合に、休んでいる問が非常にやりやすい時期でありますので、新しい漁期に入ります前に所要の調整を終りまして、新しい漁期からは新しい態勢をもって臨むようにいたしたい、そういう心がまえで今作業を進めておるわけでございます。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し具体的な御説明を願いたいのですが、調査に行かれた場合、何を目的にして調査を行なったかということです。これはやはり底びき漁業沿岸漁業との競合の問題だとかあるいは底びき漁業資源乱獲の問題とかいろいろ問題はあると思うのです。調査の明確な目的を持って現地に係官が出かけていったわけですから、そのような問題に対してどのような現地における実情の把握を行なったかということは、これは説明ができると思う。ですからその点に対して、もう少し詳しく現地における問題点に対する実情はどうであったかという点に対する御答弁を願います。
  72. 新澤寧

    ○新澤説明員 資源問題は、これは主として水産試験場の意見が権威あるものとしてわれわれ拝聴しておるわけでありますが、現地調査の主たる目的は、そうした水産試験場の申しております資源の状態を実地に見まして、よく実態を把握するというようなこともいたしましたが、最も眼目といたしましたのは、実際に町漁業の間の現地における漁業調整の問題、相互の摩擦の問題等を実地に見きわめまして、その対策を立てるに必要な実情を把握するというところにあったわけでございます。その結果明地に参りまして現地も見、話も聞きまして、おおむねのことは把握して参りました。しかし実際に禁止線を新たに引くということになりますと、現地の話を聞いただけでなくて、さらにもう少し精細な資料的な裏づけも必要であろう、こういうような考えを持ちましたので、その不足な資料の補充という作業を今やっておるわけでございます。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも新津さんの答弁は不明確なんです。両漁業の調整をはかるとしても、問題点は最初から明らかなわけです。たとえば水産庁の沿岸漁業に対する行政方針というものが、沿岸漁民の利益を守るというところに重点があるとすれば、沿岸漁業に対するこの底びき漁業の乱獲の問題、漁業を混乱させる問題であるとか、あるいは資源を枯渇させる問題だとか、これは水産行政の上からいっても重大な点だと思うのです。沿岸資源培養とか資源保護という観点から見た場合、今日の底びき船の禁止区域のラインの程度で可能であるか、いいか悪いか、そういう点の見きわめもやはりついたと思うのです。それからまた次に沿岸漁業の漁具が非常に損耗を受けるわけです。たとえば底びき船が共同漁業権の中へ入って、そうしてタコなわの問題とかあるいはカレイの刺し綱とかスケトウの刺し網沿岸漁業の漁具、漁網等に対しましてもひんぱんな損害を与えているというようなそういう事実もあるわけです。それからまた共同漁業区域の中に北海道等においては禁止区域のラインが引いてあるわけでありますから、これらの漁業権上における競合の問題等に対しても、やはりこれは調査の対象になっておると思うわけです。ですから大別してこの三点等につきましてはどういうような調査の結論ができたか。これらの点が把握されなければ今後両漁業の紛争の調整とかあるいは今後禁止区域を拡大する場合の中型底びき船の転換の問題、それに対する行政的な最善の措置の問題というような答えは出てこないと思うので、その点に対してもう少し詳しくお述べ願いたいと思います。
  74. 新澤寧

    ○新澤説明員 現在まで調査をした結果によりますと、確かに資源の問題にいたしましてもあるいは漁業の競合の問題にいたしましても、非常に差し迫った問題として以上に深刻に問題が起きていると考えられる海区もございますし、それと同時に、北海道沿岸振興対策に伴いまして、将来の漁場として、予想される地区、従いまして現実における競合の問題がやや将来において起るであろうと予想される地区と、いろいろあるわけでございます。私どもそれらを現地で見まして、非常に差し辿った問題として考えられております海区につきましては、至急解決の策を立てる、将来の転換政策に伴って問題が生ずるであろうと予想される地区につきましては、沿岸漁業の転換伸長計画と相待ちまして、底びきの操業区域決定をはかりたい、こういうふうに感じておるわけであります。それぞれどの海区が今申し上げたような海区に具体的に当るかということにつきましては、現在調査したところでそれぞれ私どもの心証と申しますか、感じとしては持っておるわけでございますが、なおその心証を固めまして、確信を持って案を実施するということのためには、先ほど来申し上げましたように、なお若干の資料の補足を得ました上で、それに基きまして成案を立てていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では一つ一つお尋ねしますが、第一の点は、特に北海道沿岸漁業の場合には、最近連続して沿岸における春ニシン漁業が凶漁であるために極度に疲弊こんぱいしているわけですね。こういう点、国全体の沿岸漁業の中における北海道沿岸漁業の困難性というものは十分認識されておると思われる。ですから、このようなニシン凶漁等が中心になった沿岸漁業のこんぱいを何とか行政的に振興の方向へ向けるためには、やはり重点沿岸漁業保護政策に置くのが当然なことだと思うわけです。そして、いずれを主体にするかということなら、当面に行き詰まった沿岸漁業を速急に救済するというところに重点を置く必要がある。たとえば昨年から北海道庁が考案してやっておりますところのニシンの沖刺し漁業等の問題もその中の一つでありますが、政府の責任においてやれる適切な措置としては、やはり現存の禁止区域というものが妥当であるかどうかということと、それから沿岸漁業の保養をもう少し強力に進めるためには、この禁止区域をいま一歩拡大する必要があるかどうかということを明確に判断する必要があると思うわけです。あわせてこの沿岸における資源の培養の問題、それから保護の問題から見ても、この点に対してはもう明確な答えかてきておると思いますが、いかがですか。
  76. 新澤寧

    ○新澤説明員 ただいまお話がありましたように、北海道におきます底びきの禁止区域の拡大の問題も、やはり一つの大きな動機と申しますか、原因は、ニシンの不漁によります沿岸漁業の不振、それを打開するために新しい漁業に転換しなければならない、それによりまして底びきと沿岸漁業との間の競合が非常に激化してきた、それを解決するための方策として考えられなければならないという点につきましては、その通りに私ども考えております。その場合ニシンの凶漁による影響の強弱、あるいは転換先なり、あるいは転換のテンポ、範囲、漁業の種類というようなことに関連して参りまして、底びきの操業区域も考えて参らなければならないのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。それらのことを考え合せまして具体案を作っていぎたい、かように考えておるわけてございます。問題の解決の方法につきましては、御指摘のようなことを私どもも考えておるわけでございます。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もとより、底びき船は北海道関係が百七十隻ありますね。ですからこの底びき船の将来を全く無視して物事を判断するということは避けなければなりませんが、しかし何といっても北海道沿岸漁民の今後の生活をどうするかということの方が切実でもあるし、また重要だと考えるわけです。特に北海道の場合には、漁獲構成が内地府県と少し違うわけです。北海道の場合には漁業経営を行なっておる世帯が北海道全体で約三万二千戸でありますが、その中で専業及び第一種兼業に類する戸数は二万一千戸に及んでおる。大体全体の一八〇%ですね。全国的に見ると全国の世帯数が約二十三万六千戸、そのうち第一種及び専業世帯が十三万五千戸で一五七三%ということになっておりまして、結局専業及び第一種兼業の率は北海道の力が度合いが高いわけです。内地府県の場合はむしろ第三種兼業的な経営基盤のものが多いということになりますね。第二種は漁業以外が主であって漁業が従であるというものでありますが、そういうような状態に置かれておる関係から見ても、やはり北海道における三万戸に及ぶところの沿岸漁民の今後の生活の問題というものは、やはり百七十隻の中型機船の問題よりも比重が非常に強いのではないかと思う。ですから沿岸対策をまず先に行うことによって、付随的に禁止区域が拡大された場合の中型機船の対策というものを考えていけばいいのじゃないか、順序があると思う。それをあなたの方では、一挙に解決するために、なかなか名案がないからして、もう少し検討しなければならぬというようなことで、じんぜん日を過ごしておられるようでありますが、これはどちらが主でどちらが従であるということを明確にした場合においては、その施策の進め方というものは、沿岸漁民の生活安定と沿岸漁業の振興というところに置かれてしかるべきであるという判断の上に立った場合においては、すみやかに禁止区域拡大の問題を解決すべきではないかと思うわけです。禁漁期がくるからとか、やれどうだということになると、これはことしもまたできないわけです。それから午前中にも申し上げましたが、たとえばオホーツク海域における鮭鰹漁業等に対しましても、来年からは出漁しませんということを日本側から提起しておるような場合においては、オホーツク海域における日ソ漁業協定以外の漁業の進出等に対しても大きな障害が当然くるのではないかとわれわれは考えておるわけです。そうなるとみずから、発展しなければならぬ漁場とか権益というものを放棄する形の中で、今後の底びき船の保護政策とか転換を考えるとかいうことは、全く不可能な事態もくると考えられるのですが、それらの点を総合して、どういうふうなお考えを持っておられますか。
  78. 新澤寧

    ○新澤説明員 底びきの転換を待ってその後においてこの問題の解決をはかろうという考え方をいたしますと、確かに御指摘のありましたような、順序が逆転するというような御批判をこうむることになると思いますが、ただ私どもといたしましては、もちろん底びきのまず転換策を立てた後でという考え方でありませんで、もちろん沿岸というものを重占的にものを考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ具体的に案を実施いたします場合に、現在までの調査の得た心証では、先ほどもちょっと申し上げましたように、海区によりまして、緊急の度合いも違うように思われますし、禁止区域の拡大につきましても、いろいろある程度の時間的な順序を立ててやってもいいような事情もあるように考えられるわけであります。そこで一方において底びきの転換策を講じますとともに、禁止区域の拡大をはかっていくわけでありますが、その場合におきましても、もちろんその両者のテンポがぴったり合っていけば問題ないわけでございますが、いろいろな事情から底びきの転換というものはとかくおくれがちになる事情にあることは、これは避けられないと思うわけでありますが、その場合におきましても、問題の解決につきましてはウエートを沿岸漁業の振興という点に置きまして、問題の逐次的な解決をはかって参りたい、こんなふうに考えておるわけであります。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題の第二点ですが、北海道の場合には、共同漁業権内に禁止区域ラインが引かれておるわけです。ですから結局共同漁業権の中へ入ってきて底びき船の操業が行われるわけです。ですから共同漁業権の中におけるいわゆるタコなわとか、あるいは刺し網漁業等をやっている場合の漁具とか漁網とかが、この底びき船によって大きな被害を受けておるわけです。特に利尻、礼文両島附近のあの三角地点においては、毎年のようにこの問題が起きておるわけです。ですからこれらの問題を根本的に解決してやるということも非常に大事だと思う。せっかくの零細漁民の限られた漁業権内における漁業に対して、全く道義を越えたような形で乱獲あるいは漁網が破損されておるというような点も、この問題の解決がおくれておることによって生じておる現象であると思いますが、これらの点に対しましても、現地においては十分調査されたと思うのでありますが、どのような今後方途を講じて、この問題の解決をおくらすという場合には、この紛争を解決するお考えですか。
  80. 新澤寧

    ○新澤説明員 共同漁業権の範囲と中型機船底びきの禁止区域との関連でございますが、北海道におきます共同漁業権はいろいろの種類があるわけでございます。中には、たとえばタコなわのようなものにつきましては、おおむねこの禁止線は、大部分の海区におきまして共同漁業権の外に禁止区域が引かれているように思っております。ただいろいろな海況、漁況の変化によりまして、従来の共同漁業権の範囲内において操業しなくてはならない事情ができたために、新たなる漁業の競合という形が生じてきているように考えられる地区も見ているわけでございます。それから共同漁業の種類によりますと、非常に沖に遠く出ている漁業類もあるわけでございます。これにつきましてはその共同漁業の性質上、時期的に非常に競合する時期がありますが、通年非常に競合しているというふうに考えられないようなふうにも見える点があるわけでございます。共同漁業権と中型機船底びきの禁止区域との関連は、概略ただいま申し上げましたように、海区によりまして、共同漁業権の種類によりまして、両者の競合関係は非常に千差万別な形はとっているように思っているわけでございます。そこて現実に非常な競合をなくするためには、明らかに禁止区域漁業を行わなければならないというふうに考えられるところもあります。と同時に時期的な調整をはかることによりまして、解決をし得るのではないかというふうに考えられるところもあるわけでございます。それらの実態に即しまして具体案を立てていきたい、かように思っているわけであります。しかし共同漁業権にいたしましても、機船底びき網漁業操業区域にいたしましても、海の変化によりまして、実際の図面上に引かれた線と、また実際に操業を行う必要がある区域というものは、年々によりましてあるいは変化してくるものとも考えられるわけでありますので、そうした実情の推移ともからみ合せまして、両者の間の競合というものがてきるだけ起りませんような具体的なものを考えていかなければならないだろう、こんなふうに考えております。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今お話のあった共同漁業権と禁止区域の問題ですが、新澤さんは共同漁業権の中に禁止区域が入り込んでいる事例はそれほどたくさんないというようなお話ですが、北海道の場合には、この海図を見ても、もう全海域にわたって共同漁業権の中に禁止ラインが入っていることになっている。これは、内地府県の場合はこういう事例はないのです。内地府県の場合の共同漁業権と禁止区域の場合は、それほど入り込んだ競合はないのです。これは北海道だけにおける一つの事例なのです。これは特に理由があって、戦時中蛋白資源を非常に要求した時代に、一つの戦時的な行政措置に基いて従来の禁止区域を共同漁業権の中にすっと入れ込んできたわけです。ですからそういうところに一つの特異性があるのであって、その後改訂が微温的には行われてきましたが、全面的には正常な姿にこれを戻すというところには来ていないわけです。だから問題は、全国的に見ると、こういう競合問題はありませんが、特に北海道沿岸の場合においては、漁業法に基くところの共同漁業権の区域の中に、取締り樹則に基いて大臣告示のこの禁止区域を勝手にどんどん設定して、そうして共同漁業権の既得権益を侵害するような行為をあえて許否している、こういう点はやはり国の制度上から見ても問題があると思うわけであります。ですからこれは近い将来共同漁業権の問題と、それから禁止区域設定の問題を全面的に調整解決をはかる必要が迫ってきているわけです。ですからそのような根本的な解決をこの機会にあわせて行おうという御意図があるかどうか、その点はいかがですか。
  82. 新澤寧

    ○新澤説明員 先ほど私が申し上げましたことは、共同漁業権によりましても、いろいろな種類がありまして、共同漁業権の内容によりましては底びきとの競合が、周年と申しますか、非常に長い漁期間を通じてといいますか、当然生ずると考えられます漁業種類もございますと同時に、種類によりましては競合がある限られた期間、特定の漁期、比較的短い期間に起るというふうに考えられる共同漁業権の種類とあるように思うわけでございます。それと同時に一応共同漁業権の線は引かれておりますけれども、その後いろんな海況、漁況の変化によりまして、共同漁業権の外へ出て漁をしなければならない事情も生じておるようなところもあるように思っておるわけであります。従いまして機械的に共同漁業権の線に合せて底びきの禁止区域を引くということでは、必ずしも直ちに問題の解決にはならないのではないだろうか。そうした漁業実態に合せて業者の競合を排除するような実体的な案を考えていかなければならないのではないか。こういうような点で現在検討を進めておるわけでございます。その場合にももちろん先ほど来申し上げておりますように、沿岸優先という考えは頭の中から捨てないで、それを基本としてそうしたものの考え方を生かしていきたい、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の答弁からみると、禁止区域と合せて共同漁業権の区域の調整をはかるというふうな話もありましたが、これは全く逆だと思うのです。もっとも共同漁業権も権利の期限というのがありますから、十カ年でこの共同漁業権は更新されることになりますので、海流の変化とか、資源の変遷等によって実情に沿わない面があれば共同漁業権の区域を実情に沿ったようにこれを漸次改善して、そうして沿洋の漁民の共同の利益保護をはかると同時に、浅海魚族あるいは魚族の保護を共同漁業権の区域内においてはかっていくということを当然やらなければならぬわけであって、その点はわかるわけなんですが、入り込んできておるところの禁止区域に合せて、将来共同漁業権の区域を考えるというのは全く逆な態度であると思いますが、そう思いませんか。
  84. 新澤寧

    ○新澤説明員 私の申し上げ方が悪かったのかと思いますが、底びきの禁止区域に合せて共同漁業権の線を引き直す、こういうふうに申し上げたのではありませんので、漁業の種類によりまして競合の事情というものがいろいろ変っておる。実際の競合の起っている実態を見ますと、非常に空間的に相いれない空間的な競合の問題と時間的の競合の問題と二つの形態があるのではないだろうか。こういうふうに考えておるわけでございます。そうした実態に沿いまして競合を排除する、ような方向にものを考えて参りたい、こういう申し上げ方をしたわけであります。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特にこの共同漁業権の確保の問題に伴って、現地の漁業協同組合は、主として組合員である零細漁民は、この共同漁業権の中において仕事をしておるわけですね。これが生活の一つの源をなしているようなことも考えられますから、今後の漁業協同組合の健全なる育成ということを考えた場合においても、やはり弱い資本力しかない協同組合あるいは零細漁民に近代的な漁法を与えて、そうして沖に進出しろといったって、これは全く理想ではあるけれども、現実からは離れておりますから、どうしても沿岸における漁業のあるいは生活の基盤を確保してやるということを積極的にやっても、何もわが国の漁業政策に誤りがくるということは考えられないですよ。あなた方のやっておる点は、大資本擁護とか資本漁業を中心にしていかなければ日本漁業政策は成り立っていかない、そういうような間違った考えの上に立った政策というものが行われていることが、今日このような事態を生んでいると思うわけなんです。ですからこの機会に、根本的にこれを改善するという御意思であれば、もう少し積極的に禁止区域の問題あるいは特に共同漁業権との競合の問題、この点を抜本的に解決すべきであると思いますが、いかがですか。
  86. 新澤寧

    ○新澤説明員 私もまさに二つの漁業の間に競合の問題があるならば、その解決沿岸漁業を優先的に解決をはからなければならぬ、こういう基本的な考え方はまさに同感でございまして、そういう方向にものを考えていきたいというふうに思っているわけでございます。ただ共同漁業権の区域という問題と、それから機船底びきの禁止区域との問題は、いろいろな漁業の種類がありまして、相当共同漁業施としては沖に出していかなければならない漁業の種類もありますと同時に、その間のそこにおきます競合の問題が必ずしも年間を通じてそうした広範な範囲内に起るということもない場合もあるわけでございますから、競合を排除する場合には、沿岸を優先してものを考える、しかしその考え方を単に線をどこに合せるというようなことじゃなしに、実体に即してものを考えていきたいというふうに思っているわけであります。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ結局共同漁業権を優先して、そうして実情に沿ったように漸次禁止区域の問題は共同漁業権を優先さしていく、それに合せて調整を行なっていく、今度の区域拡大等の問題に対しても、そういう思想的根拠の上に立って仕事を進められる、そういうふうに解釈してよいわけですね。
  88. 新澤寧

    ○新澤説明員 設定せられております共同漁業権の内容に基きまして、その漁業の実施が支障を来たさないということに眼目を置いてものを考えていきたいと思っております。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから付随して結局禁止区域拡大が行われる場合においては、やはり中型底びきの問題も考えてやらなければいかぬと思うのです。現在では中型機船というのは二十トンから七十五トン未満ということになっているのですが、これらの二十トンから七十五トンの間の底びき船を今後転換させるということになると、できるだけ沖合漁業の方にこれを進出させるということになると思いますが、これらの転換の態勢を立ててやるということになれば、これは全く自己の責任とか資本においてやることが当然でありますが、これを速急に進めるためには、何らかの保護的な施策も必要であるということも考えられますので、そういう点に対しましては、現在どのような具体的な構想でこの中型機船の転換工作を進めるかという点に対してお尋ねします。
  90. 新澤寧

    ○新澤説明員 中型磯船底びき網漁業の新しい漁場の探索につきましては、この両三年来政府が予算をとりましてやってきているわけでありますが、本年も引き続きそれを促進して参りたい、こういうふうに考えております。ただ今日までの段階では、経済的な強化を含めましての漁場的な価値につきましては、まだ確定的な評価が出てないような感じがしておりますので、本年はさらに一そう特に北洋方面におきます調査を長期にわたりましてやっていきたい、こう思っております。その結果に基きまして、北洋における漁場の価値、それに伴う収容能力、あるいはまたそれへの適正船形というものに対する考えが確立をいたしましたならば、そうした新しい漁場にどしどし転換ができますような助長策を講ずるようにしたい、こんなふうに考えておるわけであります。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後にお尋ねしますが、実は昨年の八月ごろに北海道庁が禁止区域拡大の案を策定して、それを水産庁の力へ提示してきておる。ですから先般の現地調査の場合においても、北海道庁の案というものはわれわれが見ると、現実の実情の上に立った沿岸と底びきの調整案的な性格で、根本的な案ではないと思いますが、これらの一つの案に対して、現在水産庁としては現地調査の結果等と相待ってこれをどのように見ておられるか。
  92. 新澤寧

    ○新澤説明員 道庁案というものはいろいろ試験場等とも打ち合せ、現地の事情もよく調べて作られた案であろうということは、私ども感ずるわけでございます。なおいろいろ細部にわたって十分検討を加えているわけでございまして、十分われわれの考えの基礎になる案と考えておりますが、細部の点についての個別的な具体的な意見ということになりますと、もう少し日をかしていただき、検討した上で申し上げさせていただきたいと思います。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 おおむね妥当であるというふうに考えられるのですか。それとも非常に消極的な案であるというようにお考えになるのですか。
  94. 新澤寧

    ○新澤説明員 最終的な評価をいたしますには、もう少し検討をやらなければならないのではないか、かように思います。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、この拡大の実施の時期ですが、先ほど新津さんの話では九月ごろの時期に入ってからというお話なんですが、また答弁の中には、漁場によってはもう直ちにやれるような条件のところもあるから、漸次やっていきたいというふうなそういう意味の答弁もあった。ですから禁止区域措置は、いつごろ告示していつごろまでにこれを全面的に終らす考えであるか、この機会に将来の大まかな目標を明らかにしてもらいたい。
  96. 新澤寧

    ○新澤説明員 たままた間もなく早いところは五月一日から、おそいところは六月十五日から九月十五日まで底びきは禁漁期に入りまして、九月十五日から新しい漁期に入るわけであります。この底びきが漁を休んでおります期間がこうした問題をきめるのに一番いい期間ではないだろうか。底びきが漁を始めてから操業区域が変ったりするということになりますと、かえって混乱が生じますので、休んでいる間に案を立てていきたい、こういうように申し上げておるわけでございます。ただ先ほど来申し上げておりますように、道庁案なり何なりを全面的に実施することになりますと、これは底びきにとりましても相当漁獲量が減り、それを一船当りに換算して参りますれば、経常的に成り立たない船もたくさん出てくるという結果になりますので、底びき優先にも考えているわけではありませんけれども、海区ごとによりましては、底びきにある犠牲を忍ばせても速急にやらなければならない海区もありますし、沿岸の伸張とあわせまして、ある程度両者を見合いまして、時期を将来にずらせるというふうに考えられる海区もあると私ども考えているわけでありますので、そうした緊急の度合いに応じまして、本年の秋から直ちに着手できますものは、休漁期間にはっきり方針を定めまして、秋から実施するようにいたしたい。それから将来のやり方につきましても、この際方向というか方針というものもあわせて明かにしておくようにいたしておきたいと考えております。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは質問を整理してお尋ねしますが、実施段階は今年度の禁漁期から次の新漁期の間まで、底びきのいわゆる休止状態の間に一切の手順を立てて、今後の禁止区域等の問題、あるいはそれに付随する底びきの転換等の問題に対する折本方針をおきめになって、これに基いて新漁期までには具体的に根本的な解決をはかるというふうに理解していいわけですか。
  98. 新澤寧

    ○新澤説明員 その通りでございます。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に対してはまだいろいろ尋ねたい点もありますが、大体答弁があったのできょうはこの程度にしておきます。  ただ最後に、口だけでは沿岸漁民の問題であるとか、零細漁民対策が叫ばれているけれども、現在の政府の施策の中では、そのことが立証されない点が多いわけです。新津さんは良心的な人ですから、この禁止区域問題等を契機として、この機会に何とか抜本的な、期待に沿えるような沿岸漁業振興、あるいは零細漁民保護育成のために、さらにまた沿岸漁業協同組合等の大きな発展のために努力してもらいたいということをつけ加えておきます。
  100. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま調査いたしております北海道周辺海域における中型機船底びき網漁業の問題について芳賀貢君より自由民主党、日本社会党共同提案にかかる決議をしたい旨の申し出があります。この際これを許します。芳賀貢君。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際北海道周辺海域における中型機船底びき網漁業禁止区域拡張に関する件につきまして、当委員会において決議を行うの勤機を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    北海道周辺海域における中型機船底曳網漁業禁止区域拡張に関する件   わが国漁業の大部分の経営体を占める零細なる沿岸漁業は、その漁獲高において年々減少の一途を辿り、漁家経済は益々困窮の皮を累加している現状であって、これが抜本的対策の樹立こそ最も重要且つ緊急なる水産政策の一つである。   しかも、北海道地方においては、沿岸漁業の大宗ともいうべきにしん漁業の不振等の影響により沿岸漁民の生活は看過できない状態である。   よって、政府は、これら沿岸漁業と密接不可分の関係にある中型機船底曳網漁業操業上の競合性を除去し、沿岸漁業資喜源の維持培養を図り、沿岸漁場を零細漁業者の生産の場として安定せしめるよう速やかに中型機船底曳網漁業禁止区域の拡張を図ると共に、これに伴う中型機船底曳網漁業の合理化対策を確立すべきである。  決議の趣旨につきましては、前回の三月の四日当委員会の水印小委員貝会等における質疑、あるいは本日の本問題に対する質疑の中において大よそ尽されておるわけでありますが、これを要約いたしますと、一つは、中型機船底びき網漁業の主として共同漁業区域内における乱獲の状態、これが共同漁業権漁場を荒廃させ魚族資源を枯渇させておるわけであります。すなわち沿岸における北海道等の凶漁の素因はニシンの不漁等による自然的な現象に基くものが多いのでありますが、その他にただいま指摘いたしました底びき網漁業の隻数がだんだんふえておるということと、沿岸接岸いたしまして、さらに零細漁業の漁具、漁法等にも大きな脅威を与え、底棲魚族はもちろん、回遊魚族の産卵魚巣の破壊、幼稚魚の乱獲を惹起しているということの指摘が第一点であります。  第二点は、沿岸漁民の漁其の喪失損害が非常に激化しておるわけでありますが、これらは沿岸漁民に大きな不利益を与え、かつ好まざる紛争を各地において惹起しておるわけであります。このことも結局は共同漁業権内における底びき機船の操業が、たとえばタコのから釣、あるいはカレイの刺し網やスケトーの刺し綱等が漁具漁網に甚大なる被害を与え、いたずらに紛争場にこれを巻き込んでおるという事実の指摘であります。  第三点は、共同漁業区域内における底びき網漁業操業というものが沿岸漁民に対しましては、特に漁業権の権益上の問題としての不安と脅威を与えておるわけでありますが、これらは単に漁業上あるいは漁業政策上の問題というよりも、社会問題的な、漁民感情に対しましても大きな影響を与えておるということが黙過できないのであります。こういうような三点を特に指摘いたしまして、私はこの決議案の趣旨弁明にかえる次第でありす。
  102. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま芳賀君より提案されました北通道周辺海域におる中型機船底曳網漁業禁止区域拡張に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本決議の政府への参考送付等の手続につきましては委員長に御一任願います。     —————————————
  104. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に、本日付託になりました参議院提出養鶏振興法案を議題といたし審議に入ります。  まず本案の趣旨について発議者の説明を求めます。小山邦太郎君。
  105. 小山邦太郎

    ○小山参議院議員 私は小山邦太郎でございます。ただいま御審議をわずらわすことに相なりました養鶏振興法につきまして、私のような未熟の者が、この道にかけて権威ある皆様の前に御説明を申し上げるというようなことは、はなはだ恐縮のことでございまするが、提案者の責任といたしまして、かいつまんで申し上げたいと思います。  まずお手元に差し上げてありまする提案理由書にお目通しを願いたいのでございますが、今日わが国農政の重点が、食糧の総合的増産と農業経営の安定向上に置かれておることは御同慶にたえませんが、その一環としての畜産の振興をはかることは、農業経営の合理化を促進し、もって畜産物食糧の供給を増加する観点から見ましてまた有効適切な方策であると存じます。  しかしながら、予算上から見ました海産奨励の方向は、酪農方面に重点が置かれております。もとより酪農対策といえども、なお不足の感を免れませんので、これが充実をはからなければなりませんが、これと並行いたしまして、小家畜に対する助長を行なって、酪農に親しみ得ない中農以下の農家対策を講ずる必要はさらに切なるものがあると存じます。とりわけ養鶏は全国のどの地域にも行きわたり、行うことができ、またその規模の点についてはどのような階層の農家にも容易に取り入れることができるという長所があるばかりでなく、国民の栄養上から見ましても重要な鶏卵肉の供給源でありますから、今後ますますその振興をはからなければならないと信じまして、まず養鶏振興を取り上げた次第でございます。  御承知の通りわが国の養鶏は、飼養戸数におきましては、全国の農家戸数の約七割を占める四百二十戸に達し、飼養羽数におきましては四千五百万羽をこえ、さらに鶏卵の生産量は年産七十億個に達しようとしているのでございまして、鶏卵、鶏肉、鶏糞等の養鶏生産物を金額に換算いたしますれば一千億円になんなんとするのでございます。この額は農業生産物中では米に次いでおり、畜産物中では第一位を占めているといわなければなりません。養鶏事業がいかに大きな役割を果しているかがうかがい知ることができるのであります。  このように、わが国の養鶏は全体的に見ますれば大きな産業でありまするにもかかわらず、個々の養鶏農家の実態についてつぶさに検討いたしますれば、すみやかに幾多改善を要すべき点があります。このことが四百万養鶏農家を明日への養鶏に対して大きな不安に陥れているのは事実であります。  従って農家の養鶏経営の安定をはかるためには、鶏の能力、資質の改良に努めることがまず第一の要件でございまして、このためには民間の優良な孵化業者を育成強化いたしまして、これらの優良な孵化場から能力、資質のすぐれたひなが生産されてそれが農家に渡るような組織を確立するとともに、年により季節によりまして価格変動の激しい鶏卵につきまして需給の調整をはかりまして、あわせて生産から消費に至る一貫した面において養鶏経営の安定方策を講ずるとともに、低廉な鶏卵肉を国民に提供することにより、国民食生活の改善に寄与せんとするものであります。  以上が、本法律案提案理由でありますが、以下簡単にその内容について御説明を申し上げます。  第一は孵化業者が用いる種卵の規制と登録の制度を定めました。現在全国には約千四百戸の孵化業者がありますが、これらの孵化場から生産虫される初生びなは、全国の養鶏農家の手に渡るのでありますから、この初生びなが不良なものであってはなりません。そこで孵化業者が用いる種卵につきましては、一定の種鶏検査に合格した鶏の生産する、種卵に限るように規制をいたしまして、不良な種卵を用いないようにするものであります。もっとも、この種鶏検査に相当するものは、現存、各都道府県において実施されておりますが、その方法及び内容がまちまちでありますので、この機会に、種鶏検査を国の法律に基き都道府県知事の行うものとし、これにより全国的に統一した種鶏検査を実施しようとするものであります。  次に優良な孵化業者の事業場につき、申請により都道府県知事が登録を行うことにいたしまして、孵化業者の種鶏改良事業に対する協力を期待いたしますとともに、養鶏農家が安心して資質のすぐれた初生びなを購入できるための制度を確立しようとするものであります。  第二には、養鶏経営の改善等のための助成であります。御承知の通り低廉な鶏卵肉を生産するためには、生産から消費に至る養鶏経営全般にわたって、その合理化を強く推進する必要があります。本法律案におきましては、養鶏経営または鶏卵肉の処理の改善、養鶏に関する指導普及等に対する助成措置を講じようとするものであります。  第三には、鶏卵の需給調整のための助成であります。鶏卵の価格は、年により、また季節によって著しい変動があるために、養鶏農家の経営を常に不安定にしているばかりではなく、鶏卵の消費の拡大をも阻害している現状であります。そこで鶏卵の需給の調整に必要な助成措置を講じまして鶏卵の価格の安定をはかるとともにその需要の拡大を促進し、もって養鶏経営の合理化に寄与しようとするものであります。  以上が本法律案の提案理由及びその主要な内容であります、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります、なおこの機会に、この法律を成文化いたしまするためには、私はその方面の知識を欠いておりまするので、もつぱら法制局をわずらわしていたしたのでございます。  またこの内容について取り上げました奨励助長の対策につきましては、いずれこれが実施に当っては農林省の関係でございまするので、その当面の責任者としてこれらのわれわれの要望をどう受け入れるか、これらについて御相談を申し上げました。また財政その他の関係においては自治庁にも関係がありまするので、自治庁にも御相談をいたしましたところ、両省ともおおむね賛意を表せられておるのでございます。さりながら若干予算がつくということで、どうも大蔵省は予算のついた法律には直ちに賛成しがたい旨を申されております。これまたやむを得ざるものとは思いまするが、予算のないような作文をいたしてもしようがないし、将来また予算を大いに引き出し得る作文でなければこれも生命がないと思いまするので、大蔵省がどうであろうと一つ皆様の公正にして、この道に明るい各位の熱意ある善意の御検討と御審議をわずらわして、より力強いものが生れますよう、この生れ方はまだ小さくとも、漸次皆様のお力で大きくお育ていただくように切にお願いをして、提案者の説明といたします。(拍手)
  106. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 本案に対する質疑は明日に譲り、本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十五分散会