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1958-04-05 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月五日(土曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 芳賀  貢君       井出一太郎君    大野 市郎君       木村 文男君    清瀬 一郎君       小枝 一雄君    椎名  隆君       綱島 正興君    永山 忠則君       松野 頼三君    村松 久義君       赤路 友藏君    石田 宥全君       石山 權作君    稲富 稜人君       川俣 清音君    久保田 豊君       細田 綱吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         農林大臣臨時代         理国務大臣   石井光次郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         農林政務次官  本名  武君         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      山崎  齊君         農 林 技 官         (林野庁業務部         長)      藤本 和平君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業金融公庫法の一を改正する法律案(内  閣提出第一〇二号)  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣  拠出第一三九号)(参議院送付)  分収造林特別措置法案内閣提出第一四五号)  (参議院送付)  農地に関する件  米価に関する件     —————————————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  農地及び米価の問題について調査を進めます。本日は総理大臣に対する質疑を行うことといたしますが、まず農地次米価の問題について質疑を行うことといたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。石田宥全君
  3. 石田宥全

    石田(宥)委員 岸総理に伺いますが、農地改革が行われまして十余年になっておるのでありますが、農村には地生の亡霊が全国農地解放同盟というような名のもとに活躍をいたしておりまして、農地解放前の地主小作の対立のような状態を再燃いたしておるのであります。これは政府与党が明確な態度方針を示さないところからくるものであって、政府与党責任ではないかと思うのであります。首相は二十六国会までは地主に対する補償はこれを行わないと言い切っておられたようでありますが、二十七国会から答弁内容が変って参りまして、単に農地補償を行わないということではなしに、日本農村社会に急激な変化をもたらしたために、これから生じているいろいろな社会上の問題がある、これに対し政治考慮しなければならない点があるというふうに答弁が変っておるのでありますが、二十七国会以来答弁内容が変ったということは何を意味するのであるか、なぜその内容を変えられたのであるか、この点をまず伺いたい。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 従来国会におけるこの点に関する質疑応答に対して私の考え自体が変ってはおらないと私は思います。あるいは説明が十分でなかったために誤解があったかもしれませんけれども、終始一貫私が考えておることは、いわゆるこの農地改革の問題は、これの補償価格が非常に安かったというようなことに対して争いもあったのでありますけれども農地改革が行われたということは、これは正当な法律に基いて正当に行われたことであって、これを是正する意味における補償ということは政府考えておらないということはちっとも変っておりません。しかし同時に、この問題が御承知の通り日本において非常な変革、その農村における大変革でありますために、それからいろいろな社会上の問題が起っておることは事実であります。この社会上の問題に対して放流全般責任から見まして、その社会土の問題をどういうふうに処置するかということを考えることは、これは当然のことであります。また考えなければならぬことであると思います。そういう意味において私としてはそういうことを常に終始一貫考えておるわけでありまして、あるいは説明等が不十分なためにそういう点において誤解があったとするならば、私は明瞭に申し上げおきますが、そういう考えで終始一貫考えておるのであります。
  5. 石田宥全

    石田(宥)委員 社会上の激変による諸問題について政治的な考慮を払うということですが、政治的な考慮とは一体何を意味するのですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 私の申し上げておることは、政治上そういう変革によるところの社公主の諸問題を処理していくという考えでございます。この具体的の内容はどういうことを考えるかということにつきましては、従来の地主土地改革関係上非常に生活上の困難を来たしておる人もありましょうし、いろいろな弟子の教育等にも支障を来たしておるような人もありましょう。従いましてそれらに対してどういう具体策を講ずるかは、十分検討をしなければならないことでございますけれども、これはいわゆる農地改革制度そのもの法律的にどう動かそうということでなしに、こういうことから生じている今の諸問題は、あるいは社会保障見地からあるいは教育制度見地からあるいはその他の方法、いろいろな方法でその社会的の激変からきておるところの社会上の問題を処置するということは、やはり日本政治の大きな眼目であり、そういう意味において適当な方法を講じてこれに対する処置をつけるというのが私の考えでございます。それを政治的に考慮する、こう申し上げておるのであります。
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 社会上の急激な変革からくる諸問題を政治的に処理するということでありますると、学徒動員とか強制疎開あるいは戦災家屋、民間の防空従事者徴用工あるいは徴用工傷害者、戦時中の沈没船舶補償の問題、金融措置による預金の封鎖あるいは農民に対する低米価の問題、郵便年金の問題、簡易保険の問題、これらの諸問題はいずれも社会上の激変から大きな打撃を受けておるのでありますが、これらの問題とどう区別されるお考えでございますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 大きな意味においてあれだけの戦争をしまして有史以来ない敗戦の状態にあいました結果として、社会各面において非常な激変があり、また戦争中もしくは戦争直後の混乱状態から生じたいろいろな事態というものは、こうした回全体の基礎が固まり、これが復興を見てきました際におきまして、いろいろな点においてそういう激変から生じておる社会上の問題がいろいろな方面に頭を出してきておることは、今いろいろおあげになりましたが、あると思います。政府としては、これらの問題について、やはり国全体から見てそれぞれいろいろと方策を考えていかなければならないことは言うを持ちません。一つ一つ取り上げて、一つ一つに対してどうするかという考え方もございましょう、あるいは社会保障制度というもので大体をカバ一していくという考え方もございましょう。これらの問題は、個々の問題の与えておる社会的の影響なり問題のそれぞれの具体的内容等を十分考え処置すべきものであって、一律一様にどうするということをはっきり申し上げることは、これはむずかしかろうと思います。いずれにしても、そういう戦争の終末といいますか、戦争から生じておるところの犠牲なり、あるいはその後におけところの社会変動なり、そういうことから生ずる国内の社会問題を処理するということは、政治全体として考えなければならない。今回の国会に提案いたしております、いわゆる軍人恩給と称せられるところのものも多分にそうした意味を持っておると思うのです。しかしこれでもって、あるいは農地の今の問題を研究して、それだけでもってすべてがおおわれるという問題でもございませんし、事の降車並びにそれが及ぼしておる社会的影響その他を十分に顧慮して、それぞれ過当な方法考えていくということが政治上必要である、かように考えております。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 率直に端的にお尋ねしますが、今私があげましたような戦争による犠牲あるいはその後のインフレ現象による犠牲というものは、いずれもほぼ同様に取り扱わなければならないという趣旨の答弁でありますが、実際は全国農地解放者同盟という旧地主団体の強力な政治的な活動があったために、政府並びに与党はこれに対して特別な措置をとっておるのではないかと思われるのでありますが、最近いわゆる圧力団体などということが言われまして、強力な政治的な圧力を加えることによってそれぞれ問題が処理されていくという傾向が顕著なようでありますが、やはり農地有償の問題もそういう関係でこれを特に取り出して問題にしておるのではないかと考えられるのでありますが、総理所見を伺いたい。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私はこのいわゆる軍人恩給等につきまして、あるいは圧力団体いこうような言葉が出ておりますし、あるいは農地処理の問題についての私ども研究の背後に何か圧力団体があるのではないかというお話でございますが、そういう意味では私はないのであります。ただ言うまでもなく民主政治でございますから、国民のそれぞれの意見のある者が、あるいは同様な立場にある人々自分たちの共通の問題に関してそれぞれ意見を出し、またそれの実現を強く主張するということは私はこれは決してそういうこと事態圧力団体であるとか、あるいは不当なものであるとは実は考えておりません。ただそれの問題はそういう意見自分たち要望を達しようとする手段の問題については、これは大いに民主的であくまでもなければならぬということもいわれましょうし、また政治に当るところの者がそれらの要望というものの理非曲直を十分に判断をして、その判断を誤まらないということも、これは必要であると思います。そういうことは当然私はどういう団体行動でありましょうとも、主張でありましょうとも、またその主張の仕方がもしも民主的な方法として適当でないと思う場合におきましては、厳にそういうことをたしなめてもおりますし、また政治としてはそういう声があるものだけではなしに、声なき国民要望というものにもやはり政治の首班に立つ者として耳を傾けていって正当な、あるいはここに不公平な、あるいは非常な不当に困難に面しておるというような人々に対しましては、たといそういう団体的な行動がなくとも、またそういう強い主張がなくともやはり政治としては考えていかなければならぬ、私はこういう気持で実はいろいろなことに当っております。民主主義でございますから、いろいろな万両の意見も十分間きますし、またそれを到達しようとするならば、やはり団体的な行動といいますか、主張を取りまとめて、それを強く要望するということも、私はこれはとがめるべきものではない、こういうふうに考えております。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと、先ほど申し上げました、たとえば金融措置令によって預金が封鎖された問題、あるいは郵便年金や、簡易保険の問題というような、そういう個々の問題について、これはやはり地主に対する補償と同様にいろいろな方面から国民の世論が高くなってくれば、それに対してもやはりそれぞれの措置を講ぜられる、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、私はたといそういう声が強くなかろうとも、政治全体から見て、また国全体から見て、これに対して特別の措置を講じなければ、社会的のこの問題を解決できないというような場合におきましては、これに対して政府として考えることは当然である。ただ問題は、そう方法で解決していくかということについてあるいは、私はさきほど申し上げましたように、社会保障的な考えでもって大体が解決できるものでありましょう。たとえば国民年金制度政府としては至急に実施したい考えでおりますが、そういうものにおいて解決するという考え方もございましょうし、その他いろいろな金融の道をつけることによってあるものは解決するという問題もありましょうし、あるいは幾らかこれに対してこの前引揚者の問題に対する処置を講じたような方法がとられる問題もありましょうし、また農村につきましては、現にわが常といたしましては党員外の人も入れて公平にこの問題を審査、審議して、十分これに対する対策一つ考えようということで研究をいたしておりますが、どういう結論になりますか、その結論を見た上でまた政府としてはさらに十分検討を加えて結論を出さなければなりませんが、方法自体が、かりに今申しますように軍人恩給の問題はああいう方法で解決した、あるいは引揚者の問題はこういう方法で解決した。それと同様な方法ですべてのものを解決するかどうかということは別でございますけれども方法については十分考えなければなりませんけれども、私はそういうことからとにかく生じておる社会的のいろいろな問題そのものを、たとい団体ができましょうとも、できますまいとも政治としては十分これらの問題、それから生じておる事態が憂慮すべきものであり、またこれを放置できないという事態のものであるならば、それぞれ措置をしなければならぬことは当然であると考えております。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 要するに戦争犠牲者あるいはその後に起ったインフレによる犠牲者に対する総括的な対策というものは、やはり社会保障制度の確立ということに集約されなければならぬのではないかと思うのでありますが、この点は別といたしまして、次に総理大臣でなくて自民党総裁として一つ伺いたいのでありますが、自民党では昨年来農地問題調査特別委員会というものを設置され、これは七十名に上る大委員会でありますが、この委員会目的は、農地改革により農地を買収された旧地主に対し国家補償をなすべしとなす者多く、何らかの措置を講ぜらるべきではないかと思われるので、これが対策調査して報告ありたい、こういう目的を示されておったわけです。これに対しまして十二月二十七日にこの委員会から、農地改革善後処理調査会設置法案要綱というものとともに中間報告が行われたのであります。この中間報告によりますると、明らかに旧地主に対する農地補償を行うべきであるという方向が打ち出されておる。ただその金額については十万円と言われ七万円と言われ、あるいは五万と言われておる。また財源については、創設農地転売等の場合に国が税金として相当程度を徴収して、それをもって補償に充てるべきであるというふうに、明確にその方向を打ち出しておるのでありますが、党の特別委員会結論がさらに党議としてきまった場合におきましては、先ほど総理答弁されたことと違った結論が出た場合においては、やはり総理はその党の決定に従わなければならないのではないか、従うのが民主主義の原則ではないか、こう思うのでありますが、それとの関連をどうお考えになりますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 その問題については、今お話のようにこの調査会結論を得て、これを党議に付したとは私まだ聞いておりません。いろいろな研究の道程にありますし、さらに研究を続けるように私は党の総裁として常に申しつけておるわけであります。もちろん私が政党に属しており、また私が総裁である自民党党議というものがきまりますれば、党の総裁としてこれを尊重しなければならぬことは民主主義政党として当然であろうと思います。しかし私の政党におきましては、党議を決定する場合において総裁意見というものも相当に尊重されてきておる従来の民主的な党内の運営から申しまして、全然私の意思に反するような方向において物事がきまるとは実は考えておりません。先ほど来申しておるような、私の精神は、党におきましてもその根本考えにおいては変っておらないし、その結論としてどういうものが具体的に出て参りますか、審議を待って党としてまたさらに検討をすべき問題である、かように思います。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 党内事情はよくおわかりにならないようでありますが、先ほど申し上げましたように農地改革善後処理調査会設置法案要綱というものができておりまして、このために内閣予備費から一千万円の調査費を一たんあげたが、あとでまた党内に反対があって引き下げたというような事情もあるようでありますし、さらに二月三日に再び農地問題特別調査会というものをお作りになっております。前には農地問題調査特別委員会というものをお作りになって、これは七十名をもって構成されておる。それから二月三日になって農地問題特別調査会というものを今度は三十名で発足されて、きのうあたりもその会合が特たれたようでありますが、この二月三日に農地問題特別調査会が設けられた際に、これに対して農地補償は行わない、国の財政負担が大幅にならぬように措置するという二つワクをはめられておる。これは補償は行わないとこういうことは、農地補償としてはこれをやらないが、昨年の海外引揚者に対する資産補償要求運動が起った際に、給付金というものを交付した例があるのでありまして、補償金としては出さないけれども給付金あるいは交付金あるいは見舞金その他の名目をもってやるのではないかということが考えられるのであります。もう一つ国財政負担は大幅にならぬように措置するということは、これは国の財政負担によらずして、今申し上げたところの財源というものを、創設農地負担においてこれを行うということを考えておるのではないか。こういうことで二つワクをはめたということは、補償は行わないということは、表面からながめておれば補償は行わないような感じを受けるけれども、別の名目で、事実上反当り幾らというふうなことであるならば、名目がどうあろうとも、やはり事実は補償金になるのではないか。国家が大蔵省から、国家財政負担においてこれを支出するというならば、これは国家補償でありましょうけれども、それがかって小作人であって、それが農地改革によって自作農になった、その創設農地負担においてこれを行わしめようとする意図のもとに、再びこの委員会を設けられたのではないかということが考えられるのでありますが、さような意図があるのかどうか、この二点だけはぜひ明確にしていただかなければならないと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げました通り、党がそういう特別調査会を設けて研究をいたしておる段階でありますから、先ほど申しましたように、党としてこの結論がきまっているわけではございません。また今回設けます調査会調査のなにとして農地補償は行わない、これは私がしばしば答弁をいたしております総理大臣としての答弁があると同時に、総裁としての考え方を党も入れて、一つその上で問題を研究しようじゃないか、問題を扱っていこう。それからこれはどういうなにになりますか、社会保障と申しましても、これは国家財政見地から、国民年金創設につきましても、国家財政負担がどうなるか、これとの間にどういうふうな調整をとるということは、これは大きな問題でございます。これを無視してただ理論的だけで、こういうことが社会保障制度として望ましい、またこれが理想的だといって掲げても、それが財政的負担としてとうていできないようなものであるならば、これは絵に描いたもちみたいなものであります。また従来国民の間にそういう要望があり、非常に大きな補償を要求したいというような気持の人も旧地主の中にあると思います。しかしそれらの問題については、少くともこういう範囲内においてこれに対する具体的な措置をこの調査会においては考えてもらいたいということでありまして、私から言えば、先ほど来私が申しておる方針範囲内において特別調査会としては具体的な案を研究してもらいたいということを願っておるわけでありまして、その結論を見なければ、どういう結論になりますかわかりませんけれども、私はやはり考え方としては、戦後の農地改革によって生じた社会的の変革から、農村にいろいろな問題を起しておる事柄を——いわゆる補償の観念ではなくして、社会保障的な気持でもって適当な方法考えられることが望ましい。しかし具体的に社会保障制度とは何だ、あるいは国民年金一本の方法でこれがすべて解決できるかどうかというようなことは申し上げるわけじゃありませんけれども、そういうことを真剣に研究してもらいたい。そこでどういう結論が出てきますか、その出てきた結論が、今石田委員の言われるように、ただ補償しないといっておるけれども名目を変えただけで補償ではないかというような性質のものになりますか、あるいは補償ではなくして、社会保障的な意味を持っている、いわゆるわれわれが考えておる社会保障というものは、国民年金健康保険だけではなしに、こういうことから生じておる社会的な変革に対する社会保障的な性格を持っているものだ、こう認められるかはその具体的な内容において初めて論議できる問題であろうと思います。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間の関係がありますので、もう一点伺いたいのでありますが、岸総理は、農地制度というものはどういう制度が理想的だとお考えになっておりますか。日本農地というものは、かつては地主制度がありまして、そこからいろいろなトラブルが起って紛糾が絶えなかったのでありますが、農地改革によっていわゆる自作農主義が行われて今日に及んでおります。しかし今日の農地法なるものが果してその法律通り実施されておるかというと、そうではないのでありまして、たとえば耕作権の問題にしてもしばしば一方的に地主の方から侵害をされる、あるいは小作料問題等やみ小作料が横行するというような問題が起っておる。香川県等においては、旧地主団体が現在の地主勢力と一緒になって、暴力的に土地取り上げ等をいたしておるのでありますが、私どもはやはり農地改革精神にのっとって、今日の農地法を厳粛に、厳格に守らなければならないと考えるものでありますが、今それはくずれつつあるのであります。これに対する総理大臣所見をお伺いしたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 私は従来、これは日本だけではないでしょうが、特に日本農地が少い、しかも農民が多いなにから申しまして、農民自分耕地に対する愛着というものは、これは非常に強いものがあると思います。これを十分考えていくことが、農業の生産性を向上する上からもいいのであって、従ってそういう意味において自作農というものを根幹として、これを維持育成していくべきものであるという考えを持っております。従いまして今度の農地法考え方、いわゆる昔の地主というものをなくして、耕作農家にそれぞれ土地が配分されまして、そして自分の田地を自分で作るという、これを基礎考えるべきもので、それを維持育成していくのが最も望ましい形であると思います。そういう精神農地法もできておると思いますが、ただああいう社会的変革が起きましてから、いろいろと時間がたつにつれましてこれがくずれてくる形があることは、私は非常に遺憾だと思います。今いろいろおあげになりました旧地主の方からもこれがこわれてくる方向もありましょうし、またいわゆる耕作農家として考えられておった人が、その耕地をむしろ捨てて農村を離れるというような傾向も一部ありましょうし、あるいは工場や公共施設等がいろいろ施設されるのについて、従来は農地として考えられておったものがそういう方向に転用される、そういう場合におけるところの移転価格等がこの補償価格と非常な大きな差額をもって、実際上転々しているというような事態も起っておる面があると思うのです。これらに対しましてわれわれとしては、やはり根本のなには先ほど申しましたような気持から、農民土地に対する特別の愛着を育て、これを基礎考えていく、いわゆる自作農を中心としたものにこれを維持育成していくということが望ましいと思います。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 農地の問題は農業の生産基盤の問題でありまして、農地制度のいかんは農場経営、農民生活に直接大きな影響をもたらすものでございますので、この点は今御答弁の趣旨に従って農地法も厳重に守るように、農地制度自作農主義を貫かれるように御配慮を要望いたしまして私の質疑を終ります。     —————————————
  20. 中村寅太

    中村委員長 次に米価の問題について質疑を行います。芳賀貢君。
  21. 芳賀貢

    ○芳賀委員 岸総理にお尋ねします。特に食管制度並びにこれに関連した昭和三十三年度の米価決定に当っての総理所見をお尋ねしたいのでございます。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 米価の問題は、御承知の通り米価審議会会に付議してこれを毎年きめることになっております。予算編成でいつも予算米価というものを一応立てて、予算の基準として編成いたしておりますが、これと現実のその年度における米価というものは、これは必ずしも一致するものではございませんで、米価審議会において審議し、その答申を尊重して政府において決定するということになっておりまして、今はまだ具体的にどういうふうにするということを政府として明言するわけにはいかぬと思います。
  23. 芳賀貢

    ○芳賀委員 総理政治的信念の中で、特に貧乏追放を強調されておりますが、この貧乏追放の問題と、特に農業政策の問題、さらに米価の問題というものは、これは一連のつながりを持っているわけです。貧乏を農村から追放するという場合は、結局は農民の所得水準を引き上げるということも大きな要素だと思うわけです。ところが本年度の予算米価内容を見ますと、昨年度の実行米価は一石一万三百五十円、本年度の予算米価は一石二万二百円ということになっているわけなんです。ですから農村から貧乏追放をやろうとする場合には、農民の実質的な所得を引き上げるというところに意を注がなければならぬわけです。その場合に、たとえば予算米価であってもそれを決定する場合の基本的な構想というものをどこに置くかということは、これは農村の貧乏追放と重大なる関係があると思うのですが、この点はやはり総理政治的な信念の上に立った場合の、明確な構想というものがあると思うのです。そのことをお述べ願いたいのです。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 予算米価は私の承知しております限りにおいて、必ずしも実行米価と一致するものではございませんで、昨年はたしか予算米価は一万円であって、今実行米価はおあげになりました一万三百五十円というふうに何しておりました。従いましてこの一万二百円と定めたことが決して実行米価そのものを束縛するものではないし、そのことについてはすでに従来の慣行もあることでございますから、私は決してこれだけでもって、こういうふうにきめたから農村に非常に悪影響を与えておるということは私は考えておりません。それよりもやはり三十三年度の実行米価をどういうふうにきめるか、これから検討を加えて、今お話のように農村における再生産意欲というものを十分に高揚できるように、また農村の経営は米作が非常に中心になっておりますから、この米価いかんによって非常に経営が困難になったりあるいは今お話の、米価のきめ方いかんによって農村にこの上とも貧乏を多くするというようなところに、実行米価を定むべきものでないことは言うを持ちません。そういうことにつきまして各般の事情を十分に調査して、今申しますように米価審議会で審議してもらって決定する、こういう慎重な態度にこの問題を扱うべきである、かように思っております。
  25. 芳賀貢

    ○芳賀委員 総理答弁によると、予算米価であるからして実行米価をきめるときに適正な算定をすればいいというお話でありますが、本年度から御承知の通り食管特別会計の予算の編成方式あるいは運用の方式というものが従前と変ってきておるわけです。従来は食管会計において生じた赤字を一般会計から補てんするという方式を採用してきたのですが、本年度は趣きが変っておるわけです。血管特別会計の中における均衡方式をとるということで進むわけです。特に食管会計の内容を区分して、調整勘定というものを設けて、そうしてみだりに一般会計から赤字補てんをしないという建前をとっている限りは、従来いわれたところのいわゆる予算米価であるからして実行米価とは全く別だというような考え方は改めていかなければならぬと思うわけです。しかも昨年の実行米価がいわゆる豊年型のもとにおいて一石一万三百五十円であったということは御承知の通りですから本年度は、たとえば平年作であるということを予想した場合においても、昨年度より予算米価としてもこれを百五十円下回った価格で予算を編成するということは重大な手落ちであり、また農政に対する後退であるというようにわれわれは考えておるのです。この点はいかがですか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 今回食管会計を、勘定科目を設けかつ調整資金を設けましたことは、できるだけこの会計を合理的なものにし、その運用によって不慮の、不必要な損失をなるべく来たさないように、この会計の最も円滑にして適正な運営を期する目的で作ったわけでございます。  それから今予算編成のときにそうなったのだから考えるべきじゃないかというお話でございますが、米価というものは、やはりこの予算米価がきまるときと、実行米価がきまるときの間には半年以上の時日がございます。そうして実行米価をきめるのは、三十三年度産米の価格でありますから、できるだけその三十三年度の米に近く、しかもその後におけるところのいろいろな経済上の変化等を織り込んで、実際に適した、近い価格を作らなければならぬと思います。予算編成は、御承知の通り年末年始にかけて最後の決定をいたすのでありますから、そのデータとなるところのものは、どうしても一年近く前のデータを基礎とせざるを得ない。ただ見込みでこうなるだろうというような大ざっぱなことでいくわけにはいきませんから、やはりそういう見地から申しますと、私は予算米価と実行米価との間に相当な開きがあり、一致しないものがあるということは、実際上からいうとやむを得ないことである。それよりも、農民に最も重大な影響のある実行米価というものをきめる際に、経済上の事情やその実態を十分に検討いたしまして、そうしてさっきにお話のような趣旨の、また私がお答え申し上げたような趣旨の実態にあった米価をきめることに努力することが一番必要であろう、かように考えております。
  27. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在の米の買い入れ制度は事前売り渡し制度となっていますからして、少くとも六月の上旬に米価を決定して、そうして予約契約を進めるということになるわけです。そういたしますと、おそらく四月二十日前後に国会を解散されると、五月が総選挙でありますから、六月上旬に政府責任において実行米価を決定して買い入れ契約を進めるということは、おそらく岸内閣の手においては困難であると考えるのです。ですから少くとも解散以前に、本年度の実行米価をいかなる算定方式の上に立ってきめるか、総理が言われた経済事情というものを十分勘案して農民の実質所得が向上するような方式をとっておきめになる考えであるか、これは岸内閣の現存する間において方針を明らかにしておいていただきたいわけです。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 実行米価が一番実態に合うのには、ある程度三十三年産米の見通しがはっきりつくあるいは八月とか九月が適当であるかもしれませんが、今お話通り予約買い入れという制度をとっておりますから、どうしてもその前の六月、実際の植付をするころにはこれを決定しなければならぬことでございます。今お話がございました解放等と関連して、それは非常に不都合を生ずるのじゃないかというお話でございますが、私はまだ解散の時期について確たる決定をいたしておりませんので、今のお言葉は十分参考にして、時期をきめる場合においても考えていきたいと思います。
  29. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このような答弁は全く無責任な態度です。全国の国民、おそらく全農民が四月解散は必至、解放をしなければならないぞということはみんなえているわけです。ですから解散前に本年度の実行米価をどうするのだという確たる方針を立てる御意思があるのかないのかということをそれではお尋ねいたします。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 私は米価をきめるのは先ほど申しました米価審議会に付議してやるということを申しております。そうしてこれは、例年の例から申しますと、今おあげになりましたように六月の初旬にこれが決定されるということが最も適当であり、またそういう考えで今日まで参っておりますし、今日もまたそういうことを変更する意思はございません。
  31. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは総理の御意思は、米価審議会の本年度米価算定に対する方針あるいは態度を尊重されて、米価審議会がきめた決定の方式あるいは三十三年度産米価格に対する答申を十分尊重しておきめになりたい、そういう御意思ですか。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 その通り考えております。
  33. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、米価審議会はもうすでに米価算定の方式を、従来のごとき農業パリティ指数による算定方式ではますます農民を貧乏の方に追いやることになるからして、算定方式を改めて、いわゆる生産費及び所得方式という算定方式を採用して米価の決定をしなければならぬというのが米審の決定事項なんです。これを政府は現在まで採用していないわけです。今総理答弁を聞くと、本年度の決定方針は、米審のこの算定方式をも尊重して、いわゆる所得方式による米価の算定をもやるという御意思なんですか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 この米価審議会がきめております生産費方式、所得方式という考え方は、私どもも望ましい案だと思います。ただ芳賀委員も御承知の通り、この生産方式ということにつきましても、具体的にこれをどういうふうにきめるかということにつきましては、生産費が非常に違っておる現状から見まして非常にむずかしいことであると思います。そういう所得補償方式につきましても、また同様な困難がございます。方向としては私はまさに熱意をもってその方向にいくように実際努力をいたしておりますが、具体的にこれを数字に当てはめ、現実に当てはめてみますと、非常に困難を伴う問題であることも十分御承知のことだと思います。従って当局におきましても、その米審の決議の方式を尊重して十分に研究をいたしておりますし、また十分これを尊重した方向において考えていくようにいたしたいと思います。
  35. 芳賀貢

    ○芳賀委員 所得方式をとった場合、困難性があるというのはどの点ですか。これはおそらく所得方式を採用すれば現在の米価相当上回った答えが出るわけです。そういうことは好ましくないという意味ですか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 技術的なことは専門家からお答え申し上げますけれども、私の言わんとしているのはそういう意味ではございません。
  37. 芳賀貢

    ○芳賀委員 こまかいことを聞くのではないのです。総理として、所得補償方式を採用した場合には困難性があるということを言われたが、これはやはり政策の基本なんです。現在の生産者米価が適正妥当であって、国民経済全体の中における農民の所得水準がこの程度でいいという建前の上に立った場合には、現行米価をできるだけ押えるとか引き下げるということになるわけなんです。これでは貧乏追放にならないということであれば、貧乏が農村から追放されるような、農民の所得が上るような、そういう方式を採用することに勇敢でなければ、あなたが幾ら貧乏追放と騒いでも何にも実効が上らないのです。いかがですか。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 私は、出産者米価を決して上げないということを申し上げているわけでもありません、またこれを上げるについて、正確な基準なくしてただ上げればいいんだというふうに処置するわけにはいかぬと思います。それで、今生産費方式とかあるいは所得補償方式とかいうようなことが言われ、またパリティ方式というようないろんな基準が設けられておるのでありますが、米審の決議にある生産費方式や所得方式というものを考え、尊重するのは望ましいことだと申しておるのであります。しかしかんじんの生産費というものをどういう基準において考えるか、補償すべき所得の基準をどういうふうに考えるかということについて、事実問題としてはそれを決定するのになかなか困難があるということを申し上げておるのであります。決して私は、生産米価を押えてそれでもってきめることがいいというようなことを言っているわけではございません。
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在日本の農業に対して、政府は赤信号を上げているのです。五つの赤信号が日本農業には上っているのです。これは総理としても御存じだと思うのです。とにかく国民全体の中の約四〇%は農民なんです。この農業の面に赤信号が上っているわけですから、これは貧乏追放に重大な影響があるのです。政府がお上げになった赤信号というものはそれでは一体何であるかということをお尋ねします、
  40. 岸信介

    岸国務大臣 現在の農村の実情を見ますと、私は、農家経営の実情は決して私ども考えているような望ましい事態ではないと思います。その原因はいろいろあると思うのです。従ってこれに対する対策というものも総合的に考えていかなければなりませんから、ただ米価一つでもって農村のすべてのこの問題を解決しようということは考えられないと思います。先ほどありました農地の問題もありましょうし、また水田と畑作の問題もございましょうし、あるいは米麦中心のなにに対して多角の経営をしなければならぬ事態もありましょうし、これもまた地方々々の実情というものを十分に顧慮しないと、一律にこういう方策でなにするということは、日本の複雑な農村事情から申しますと困難であろうと思います。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう抽象的な論議を聞く気はないのです。赤信号というのは結局これなんですよ、いいですか。一つは、国民所得全体の中における農民の所得が非常に低下しているという点です。全産業の平均所得は大体一日一人五百三十円、ところが農民の所得の場合にはその半分の二百七十円程度にしかなっていない。こういうように、国民所得の中における農村の所得水準が二分の一くらいにしかなっていない。こういう点は実に重大な点だと思うのです。第二点は、日本の農業は食糧の供給力が非常に低いという点。第三点は国際競争力が弱いという点。第四点は、現在の農業は兼業化の方向にどんどん進んでおる。農業を専業とする農家が現在においては全体の三五%くらいしかないというような実情なんです。第五点は、農業に就労しておる、いわゆる農業労働に従事しておる構造が非常に弱くなって、老人とか婦人とかそういう老齢化したあるいは女性化した就労人口で日本の農業はささえられておる。こういう点がやはり日本農業の危機を示しておるし、また農民の貧乏を立証しておるわけです。ですからこの点に立脚した場合に、しからば何をやるかということになると、現在の岸内閣には農政というものがないと言われておるのですよ。農業行政はあるけれども、農政はないというように批判されておるのです。ですから米価を引き上げることだけが万般の問題を解決することでないことはもちろんわかりますが、しかし一つの問題として、たとえば農産物の価格をどうするかということ、これは所得水準の低い農民の所得を引き上げるという場合においては、米価問題をどうするかということが重大な農政上の問題になると思うのですか。この点はいかがですか。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん米価というものは——私は米価だけでもって農業のすべての問題を解決することはできないということを申し上げましたが、それは今でも正しいと思います。と同時に、米価をいかに定めるかということが日本の農家経営に非常に影響の大きい問題であることは事実であります。従って米価政策というものが日本の農業政策から見まして重要な一つのポイントをなすことは当然であると思います。従って先ほど申し上げましたように、米価審議会で慎重審議して、これを政府が尊重してきめるという方針をとっておるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、予算米価には全然こだわらなくて、実行米価の決定に当っては、先ほどお述べになったように米審の方針を尊重してきめる、その場合でも、政府として基礎になるものはあると思うのです。米審の方針は別にして、政府自体の、本年度の実行米価決定に当っての、算定に対する基本的な態度をどこに置くかということは方針がきまっておると思うのです。その点はどういうようになっておりますか。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げました通り、実行米価につきましては、大体六月初旬に米審に諮問して、ここで審議してもらって結論を得ようというわけでございますから、先ほど来抽象的な、一般的の方針につきましては、従来の米審の決議等も尊重して、そうして最も事態に合うように経済的諸般の事情考慮してきめるということを申し上げておりますが、具体的にどうするなんということは、まだそれを決定いたしておりません。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは昭和三十一年度の産米価格を基準として、パリティ指数の変動を勘案して本年度の実行米価をきめる、そういうような政府方針というものはまだ全く未定と考えて差しつかえないのですか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 まだ決定をいたしておりません。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは米審の決定に従って米価をおきめになる場合、たとえば現在の食管特別会計の中における調整勘案等で間に合わないという場合には、結局一般会計からこれを補てんする、負担するということに当然なると思いますが、そのことについても総理考えは間違いないのですね。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 調整資金は、食管会計の運営を円滑ならしめるために置いたことであります。しかし三十二年度の損失は当然落すことになります。三十三年度の問題につきまして、もし黒字があればこれに入れるし、赤字があればこれを落す、ところが今の三十二年度のなにを落し、三十三年度において残るものでは足りないような事態が生ずるならば、当然一般会計から補てんすべきものである。その補てんの方法としては調整資金をふやすという方法もありましょう、また直接に補てんするという方法もありましょうが、その方法いかんにかかわらず、結局は一般会計から補てんするということになります。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、従来まで米の買い入れ制度の中に各種奨励制度あるいは加算金の制度というものがあるのです。その中で特に政府に六月売り渡しを契約する場合、予約加算金と申して、一石に当って百円の加算がつくわけです。これを新聞等の伝えるところによると、本年度は予約申し込み加算金百円を廃止するというようなことが伝わっておるわけでありますが、これに対しましては、そういうことまでやって米価を下げるという御意思はないと思いますが、いかがですか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 米価を決定する際に、ああいう特殊の政策的意義を持った加算金等をするのがいいのか、あるいは米価を審議決定する場合において、すべてのもの、すべての事態を取り入れて、一本の米価できめることがいいかということにつきましては、いろいろ議論のあるところであります。私は米価審議会においてそういう問題も十分に一つあわして検討してもらいたいと思います。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは予約申し込み加算金の問題は、これは米審の決定された方針を尊重してその通りやるということですね、いかがですか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 さように考えます。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、時期別格差というのがあるんですね、これは主として早場地帯に適用される加算金の制度なんですが、この点に対しましても政府方針は、昨年あたりからもうこの時期別格差を廃止したいという考えであったのですが、これは政府としてもこれを実行することができなかった、本年度もこの時期別格差を廃止するか、あるいは従来よりも圧縮するという考えが非常に強いように伝わっておるわけでありますが、この点に対しましても、予約加算金と同じように米価審議会がこれを存続すべきであるというような方針をきめた場合においては、それを尊重して継続されるかどうか、いかがですか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 趣旨としては私は、米価審議会に——米価に関する問題につきましては、いろいろ今の各種の加算金等は、やはり名目は違いましても、実質的に農家の立場からいえば、米価の一部をなすものでありますから、そういうものを包括して審議してもらいたいと思っております。そしてその結論に対しては、これを尊重していきたいと思います。ただあまりこまかい技術的な問題になりますと、私もまだそこまで研究をいたしておりません。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一国の総理大臣ですから、大まかな線だけでいいのです。こまかいことをあなたはあまり知り過ぎるから……。  なおこれに加えてお尋ねしておきますが、このほかに歩どまり格差がある。これは岸さんは山口県ですが、あなたの方の地帯は歩どまり格差というものがつくことになるのです。この点に対しては、やはり米価審議会の意見を尊重する。それからさらにこの米の出荷の奨励施策といたしまして、農業所得税に対する減免措置というものが今日までとられておるわけです。これは出荷いたしました一石当り一千四百円分を、これを税の対象にしないというのが税法上の特例措置になっておるのであります。従来これは継続して行われたのでありますが、これはまさか米審の答申を尊重するというわけにもいかぬと思いますので、この税の減免措置等に対しては、やはり従来の方針を継続する御意思であるかどうか、この点をどうお考えですか。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほど申し上げておるように、やはり米審というものはできるだけ農民の実質的の米価をきめることの機関であり、またあらゆる問題を米価として、名前はいろいろなことの名前がついておるようであり、私も今御説明でいろいろなものがあると承知したのでありますが、そういう問題もみんな含めて、実質的ななにとして実は考えるべきものである。米審で審議してもらって、そしてそれを別個の、今言ったように名前をつけるのがいいか悪いか、あるいはそれを一本に入れた方がいいか、そういうことも一切考えてもらいたいと思うのです。ただ減免税のところは、これは米価審議会がどうするという問題でないようでございますけれども、しかし減免税の問題が、実質的には農家の所得と非常な関係がございますから、そういう制度があるものとして、その前提のもとに米価がきめられるのであって、もしもそれをやめるとすれば、当然米価の中へそれのなにを繰り入れて考えなければ、それだけ農家の経営が悪くなるわけですから、制度としてそのまま存続するか、あるいはそれをやめるとすれば、実質に組み入れるか、いずれかの制度として、農民にこのための不利益を与えるというようなことはしてはならぬ、かように思っております。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 非常に米審尊重の総理の見解を聞いて、われわれ意を強うしたわけであります。そこまで総理が米審の決定を尊重するという熱意があれば、この際食管法を改正して、従来は米価審議会の使命は、政府の諮問に答えるというような役割がおもでありましたが、むしろこの際米価審議会というものを決定機関にして、米審の決定に基いて米価あるいは麦価、農産物の価格を、政府はそれによって実行するというところまで進めば、これは農村の農産物価格問題等も、やや根本的な解決ができるようなことになると思いますが、この点に対しては岸総理大臣としては、進んでそのような改善を行う意思があるかどうか伺っておきたい。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 私は尊重するということを申しております。実際尊重していきたいと思いますが、これを決議機関にして、それが審議決定するということは、私は制度として適当な制度であるかどうか、ここではむしろ否定的な考えを申し述べるほかはないと思います。私は諮問機関であっても、できるだけ尊重していくという方針でいくことが、実際の行政の運用としてはもっともで、最後の責任政府が負うということを明確にするということが適当であると思っております。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体答弁によって了承しますが、結局これを集約すると、本年度の実行米価の決定に当っては、全面的に米価審議会の決定を尊重して、これによって予算米価あるいは現在の食管特別会計の現行制度にこだわらないで、農民の実質的な所得が向上する方向に向って実行米価を決定する、これが総理の所信であるということを確信すると同時に、さらに本年度の麦価の決定に当っても、これと全く同じであるということをもう一度確認しておきたいと思いますので、御答弁を願います。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 同様に考えております。
  61. 中村寅太

    中村委員長 石山權作君。
  62. 石山權作

    ○石山委員 農地の問題と米価の問題をまじめに考えますと、農村全部の問題に関連していくだろうと私考えております。私は、そういう意味では固定した問題でなく、努めてそういう問題を関連さして聞きたいと思いますがそういう意味では、農村問題はそもそもなどというふうな開き直った意味でなくお聞きしたいのです。  ふだんわれわれが新聞とかあるいはそれぞれの学識経験者などの意見を聞きますと、最近食糧事情がよくなってから、どうも政府の、特に保守党政府の最近のやり方は、農村の産物を踏み台にして、農民諸君の生活をかなりに犠牲にし始めてきている、こういうふうに言われておりますが、それはどうでございましょうか。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 私はもちろん農政の学者でもございませんし、農業問題を特に専門的に研究したこともございませんが、大体農業と工業あるいは商業等との比較等を見ますと、日本だけじやなしに、各国において農村もいわゆる農産物価というものに対し、また工業生産品等との物価の問題については苦労をしておるようであります。傾向としてみると、やはり農村の経営というものは他の産業に比較して非常に困難な地位に上っておるということは一般的に言えると思います。従って政府といたまして、ことに日本においては農民が全体の人口の四割も占めておるというふうな事情から見まして、農村対策、また農業に対しては、やはり相当国家が保護助成の方途を他の工業一般よりもとっていかなければならない性質のものである、こういうふうな見地でいろいろ施策をいたしておりますが、これはもちろん一つの方策でもって、米価だけで先ほど申しておるように解決する問題ではございません。米価はもちろん大事な問題でありますけれども、他のいろいろな諸政策と総合的に考えまして、私は今お話しのような傾向にあり、また世界的の一つ傾向であり、日本においてはそれが非常に重要に考えられている点から、特に農村問題には意を用いていきたいと思っております。
  64. 石山權作

    ○石山委員 総理の言葉を聞いていますと、農村に対しては特別の思いやりがなければならぬというふうに聞えます、それを今の言葉で言えば、思いやりということはおそらく愛情に通ずるというふうに解釈していいと思いますが、最近の若い者の愛情は心だけではだめなんですよ。私は農村を思っているなどと言ってみましても、今の若い者はそれではなかなか承知はしない。あなたは青年の方々に非常に一生懸命やれというふうなことをおっしゃっていますが、今の若い者は大へんに割り切っているのですね。割り切っているということは、数字を大へんに尊敬しているということなんですよ。金を愛して、数字を尊重して……。こういう建前からしてみますと、私は、ほんとうはきょう時間がなかったから、大きな表でも書いて総理に見ていただいた方が早いと思ったんですが、たとえば農林予算と補助金の関係、それから政府が投資している金額、こういうふうなものは昭和二十六年から一つの段階で、農村の優位というものが失われたんです。三十年、三十一年になってから、今度は他の産業よりもずうっと悪いという傾向が出てきているのです。これは数字をあげれば、あなたは前に商工の方をおやりになっているからすぐおわかりになると思いますが、これはひどいものです。そのひどい傾向を他の批評家が批評して、保守党の内閣は食料事情の悪いときはおだてて米を出さしたが、食糧事情がよくなって、もうそろそろ農村をいじめてもいいような時期がきたから補助金は打ち切る、そして融資に振りかえていく、こういうやり方が最近顕著になって現われているのです。そういう点では、総理は言葉だけで言っていますが、ほんとに思いやりをやっていたという証拠が二、三ありましたら、ちょっと示していただきたい。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 これは私は、ただ予算の数字だけでどうだということを言うことは適当かどうかということについて、非常に疑問を持っております。特に投融資等におきまして、なるほど基幹産業であるとか基礎的な産業——これはやはりそういう基幹産業が成り立つということが、日本の農業を支持する一つの陰の力になると思います。電力あたりでもうんと開発され、これができるだけ安く豊富に供給されるということが、やっぱり農村の利益であることは言うを待たないのであります。各産業はやはり有機的な関係がございますので、ただいわゆる農林省予算というものがどれだけであるか、あるいは商工省予算がどれだけであるかということだけで、商工業中心か、農業中心かということを直ちに論断するわけにはいかぬと思います。しかしその役所の予算だけをごらん下されば、予算として現われた農林予算というものに対しても、われわれは全体の予算の上から申しますと重点を置いて、考えていることは、これは異論ないと思います。ことに何か保守党内閣が云々ということをお話しになりましたが、私はこれは決して社会党を攻撃するわけじゃございませんが、むしろ社会党の方面からいえば、労働者の収入増加ということに対しては、ある場合には非常な熱意を持ってやられておるけれども農村の方となるとそれほどでないというような批判のあることは、私はあると思います。そういう意味から、保守党がそうした政策に非常に愛情を持たないというふうに論難されることは、むしろ間違っておるのではないか、こう思っております。
  66. 石山權作

    ○石山委員 私は、総理日本国民全体に対しての一つの義務があると思います。たとえば総理はよく共産党はきらいだというふうにおっしゃっておりますけれども、共産党員であっても日本国民であれば、あなたはそれをめんどうを見ておやりになる義務があります。社会党員も私はその通りだと思う。あなたは社会党と対決をなさると言う。対決をなさると言っていても、総理という役職からすれば、社会党員である石山をも愛さなければならぬ。ましてや——急激なる生活環境の変転をいやがる農民は、保守党の政策を今まで支持してきたと思っておるのです。これはその意味から言うと、皆さんはこの農村の急激に生活環境をば変転さすのをきらっているということに、その盲点につけ込んで、自分たちの勢力を温存していると思っている者の一人でございますが、いずれにしても、あなたの言う愛情を一番投げてやらなければならない農民に対して、総合的な施策においてというふうな言葉でございますが、総合的な施策において、ですから農林予算一つ、商工予算一つのみでは論じられない。私もそれは理解できます。しかしそれでは、そういう意味で何年農村はがまんをすればよろしいかということなんです。きょうは、お前質問するときは総理にこまかい数字を言ってはいけないのだと言われたんです。だから私は数字を申し上げませんけれども、農林省がお出しになっている、総理府がお出しになっている、あるいは大蔵当局がお出しになっている数字を突き合せてみると、収入の比較、あるいは食費の比較、あるいは衣服の比較、こういうふうなものを全部総合してみても、農村生活というものは決して潤うているものとは思っておりません。しかしこの傾向が、私は先ほど申し上げましたように、二十六年を一段階、二十九年、三十年を二段階にして、落ち目になってきている。この落ち目になってきたところをここにおいて盛り上げるような、特にあなたの下に赤城農相のようなまじめな人がおるのですから、私はほんとうをいうと大いに期待したのです。しかしそれも見てみたら精神的な話だけで終りそうな傾向でございます。残念ながら本国会のこの委員会の論議を通じてみますと、精神論に終りそうな可能性がある。それでは私いけないと思うのです。特に私総理に気をつけていただきたい点があるわけなんですが……。
  67. 中村寅太

    中村委員長 石山委員、ちょっと発言中でありますけれども、時間が来ましたので……。
  68. 石山權作

    ○石山委員 わかりました。二つだけです。たとえば農家の方々が土地改良をやる、これは最近大へんに皆さんの方で一生懸命やって、有能な人たちが指導していただくのでとてもよくなってきておる。しかしその負担金という問題になりますと、これはやはり頭をかしげざるを得ない。最近は負担金のために農村は困っておるということ、それからもう一つは、ものを作れ作れというから一生懸命作るわけなんです。作った品物が大へんに暴落という形になる。増産で暴落という形になれば、これでは農村には潤ってきません。こういうふうな部門は私はやはり総合的にお考えいただかなければならない問題だと思っております。これは農林当局に聞きましても、たとえば酪農の問題でいろいろとやっていただいているようでございますけれども、乳が少し多くできるとその処分に困っておる。持ちあぐねておる。なぜそういう傾向が出るかというと、私たちに言わせれば、今の岸内閣のおとりになっている農林政策というものはあまりに資本主義的な考え方があるのではないか。今の農林行政をやるには、修正資本主義というよりももっと突き詰めたところの、社会党が言うような経済理念に立って総合的にものを律しなければ、生産と流通、需給というものが決してうまくいかないだろう。これらは農村の次男、三男対策にも通ずる問題だと私は思っております。こういう点に関して一つ意見を伺いたい。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り農業政策を推進する上におきまして、私も私の郷里においてそういう実態を見ておるのでありますが、乳牛を飼うことが、有蓄農業とし、また酪農業の面からいって農家の経営上非常に有利である、これを大いに奨励する。これを買い入れる資金等の貸付その他のなにについても適正な保護を加えていく。ところがこれは言うまでもなくその飼料の問題をどうするかという問題、それからまたそれから生ずる牛乳というものがどうなっていくかということと非常な関連があり、かえってそういう牛乳を持ちあぐんでおるとか、あるいは十分な飼料の方策が立っておらぬために困っているというような事態もございます。従って一つの政策を行う場合においては、私はさっきから総合的にということを申しておりますが、特にマーケッティングということもそういうことから言うと重要な農業政策の部門として考えなければならぬ。今いろいろな農産物の増産を奨励して、せっかく豊作になったら困ってしまう。私たち大根でも何でもそういうことをよく聞いておるのでありますが、これはやはりマーケッティングの問題を考えなければならない。こういうことから農業協同組合の施設というようなものも重分機能を働かしていくというようなことを加味していけば、よほど事態は変ってくるだろう、こういうように考えるのでありまして、私は資本義主とかあるいは社会主義とかいう根本の理念におきましては非常な相違がございますけれども、だれも今政治をやっていく上におきまして、根本的に保守党が資本主義だからといって資本主義の発達の初期のような考え方でしておるわけでもございませんし、また社会主義理論といいましても、これは実際を無視して実現はできないことでございますから、要するにそこは互いに具体的な指導方法でもって歩み寄って、いつかは事態に順応したような政策が行われるわけであります。ことに政治を行なっていく上におきまして、われわれの心持は、そういうイデオロギーにとらわれずに、たとえばわれわれが大いに国民年金だとか、社会保障ということ、これは一体資本主義ではやれないのだというような論もありますが、そういうものじゃないと思うのです。従って農村の問題も、われわれがこれに関連する諸問題を十分に総合的に考え処置しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  70. 石山權作

    ○石山委員 確かに現実の問題においては、農村漁村をよくするという問題については、私はイデオロギーの問題によって生活の安定とか、そういうことは得られないと思います。そういう点は同感でございます。  ただここで私、総理にもう一つだけ念を押しておきたい点は、日本の国の安定とか、あるいは日本の国の繁栄とかいうことは、先ほどあなたは社会党は何だか労働者の何とかと言われましたが、そういったことを別にして、私は日本全般の経済から見まして、農漁村の安定が日本の国の繁栄を意味する第一の段階になることだろうということは、それはよく理解していただけることだと思います。こういう機会でございますから、当委員会は農林と水産を取り扱っております。で、日ソ交渉の過程において非常にこれは秘密だというならば別でございますけれども、当該委員会でございますから、もし総理大臣が発言の気持がございましたら、日ソ交渉についてお漏らしを願いたいと思います。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 日ソ漁業交渉の問題につきましては、赤城代表が参って今折衝中でございます。ただもちろん結論がまだ出ておりませんし、両方の主張の間には相当の懸隔がございますが、世間一部で言われておるように、この問題を解決するのに領土問題等政治問題とからまさなければ解決できないというふうな疑惑が一部にはあるようでありますが、そういうことではなくて、両方歩み寄りの方向に話を進めておるようでありますから、私は遠からず妥結できるものだ、こういう見通しをいたしております。     —————————————
  72. 中村寅太

    中村委員長 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。  本案は前回質疑を終了いたしておりますので、直ちに討論に入ります。討論はありませんか。——なければ採決いたします。  本案に賛成の諸君規律を求めます。     〔総員趣立〕
  73. 中村寅太

    中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決することに決しました。  この際本案に対し久保田豊君より自由民党主、日本社会党共同提案にかかる附帯決議を付したい旨の申し出があります。これを許します。久保田豊君。
  74. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいま可決になりました農林漁業金融公庫法の一部改正案についての日本社会党並びに自由民主党共同の附帯決議を付したいと思います。  理由についてはすでに審議の過程で十分意見が出ておりますので、この際時間の関係もありますから、これを省かせていただき、直ちに決議案の内容について申し上げます。    農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  一、公庫の原資構成は、最近、政府出資金に対して借入金の比重が高まる傾向が強まっているため、直接又は間接に貸出業務の円滑な遂行が妨げられる虞れがあるので、政府は、今後、農林漁業における長期低利資金の需要の増大とその特殊性に即応して、原資の確保と貸出手続の簡素化に努めるとともに、資金構成上の欠陥をすみやかに是正するよう特段の考慮を払うべきである。  二、最近の農林水産金融制度は、徒らに複雑化しているきらいがあるので、政府は、その内容について再検討を行い、特にいわゆる制度金融と系統金融との関係につき、農林漁業者の資金需要を完全に満たし得るよう速急に合理的な調整を図るべきである。    なお、公庫支店の設置に当っては、貸付業務の迅速化、簡素化により農山漁民の利便を図ることを旨としてこれを行い、かつ既存受託機関の人事、経理等に急激な影響を及ぼさないよう配慮すること。  三、政府は、非補助小団地等土地改良事業助成基金に係る融資事業の実施に当っては、地元農民の意向を尊重し、農民負担等に考慮を払い補助事業の推進と平行して両者の効率的運用を図るものとし、いやしくも補助金予算を削減することのないよう、引続きその確保につき万全の措置を講ずべきである。  四、海外農業移住者に対する国の施策は甚だ不満足な状態にあり、現在の海外移住振興株式会社を通ずる援護措置をもってしては、到底農業移民の促進及び円滑化を期し得ないので、政府は、この際、画期的な移民政策を樹立し、もって農林、外務両省間の所管専務の再調整を図るとともに、特にすみやかに同社の機構、融資条件等について改善の措置を講じ、要すれば特別の方法による農林漁業金融公庫等からの融資の途を拓くことを考慮すべきである。  以上でございます。何とぞ一つすみやかにこれを可決していただきたいと思います。
  75. 中村寅太

    中村委員長 ただいま久保田君より提案されました附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  この際付帯決議に対する政府所見を求めます。本名政務次官。
  77. 本名武

    ○本名政府委員 ただいまは農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を御可決いただきましてありがとうございました。これに関連いたしまして附帯の御決議をいただいたわけでございますが、この内容につきましてはいずれもしごくごもっともなことでございますので、政府といたしましてもこの御趣旨に沿いまして善処いたしたいと考えております。
  78. 中村寅太

    中村委員長 本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  80. 中村寅太

    中村委員長 芳賀貢君。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 経済局長に資料を要求します。農協法の一部改正が公布になっておるのですが、この法案の審議のときに申した通り、特に農協事業の共済事業について、たとえば準備金の問題、特に特別基金準備金に対する税法上損金に算入する諸点等については、大蔵当局と十分打ち合せ済みであるというような答弁もありましたが、この内容については特に火災共済、家屋の更生共済あるいは生命共済等各共済事業の内容等についても特別基金準備金の税法上損金算入等に対する省令、政令、これはすでに発表になっておると思いますが、これを午後でもけっこうでありますから、委員会に資料としてお出し願いたいと思います。
  82. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 承知いたしました。
  83. 中村寅太

    中村委員長 午後一時より分収造林特別措置法案及び森林開発公団法の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査を進めることとして、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  84. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  分収造林特別措置法案及び森林開発公団法の一部を改正する法律案を一括議題といたし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。井出一太郎君。
  85. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいま提案になりました二つの法案につきまして、ごく概括的な質疑をいたしたいと存じます。ちょうどただいまは造林のシーズンにも当っておりまして、あるいは街頭に緑の週間の運動が展開され、きょう両陛下は、九州において行われます植樹行事に行幸啓されるわけでございます。こういう時期を背景といたしまして、森林に関する二つの法案が出されましたことは、すこぶる時宜を得たものと思うのでありますが、しかし日本の山林というものを考えてみますと、私どもは必ずしも安閑としておられないのであります。なるほど山は、あるいは木は、ものを言いません。山容動かず、白雲去来する状態にはあるでしょうけれども、さてその山林の内容に立ち至ってみますと、戦事中の乱伐、過伐、戦後も引き続いて木材需要の旺盛なるままに、やはり日本の山は、非常な切り過ぎが行われておるのであります。今後本材需要は、日本の諸産業が活発旺盛になればなるほど、一そう多量の林木を必要とするわけでございます。従来は一般建築材の方が公共用材に比べて多かった。今後はその需要はむしろ逆になる、こういうふうなことも予想せられるのであります。やはり私どもは山のことを考えますと、SOSの警鐘を乱打しなければならぬ、かような感じがいたすわけでございます。そこで第一点といたしまして、今私が申し上げましたごとく、戦後の木材消費量が急速に伸びておるのに反して、供給力はなかなかこれに伴っておらない。しかも国土保全上の問題もまた閑却できません。幸いここ三、四年は大した自然災害というものはなかったかもしれません。災害というものは人の忘れたころに起ってくる、こういう寺田博士の言葉を思い出すまでもなく、今にしてやはりこういう備えもなければならぬと思うのであります。林野当局はこの需要に応ずる生産の増強に対して、どう考えておられるか。国の経済発展は、やはりバランスのとれたものでなければならぬのであります。林野というものに対して、私はこの際その重要性を特に強調する次第でございます。これについての一つ政府の一般的な方針を承わりたいと思います。
  86. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 お話のごとく、確かに日本の森林の現状と申すべきものは、非常に危機的な内容を持っておるように私ども考えるわけでございます。かりにこれを用材需要の面について考えてみますと、昭和三十一年度末現在におきます年間の用材の消費量は一億六千万石、こういわれておるわけでございますが、これに対応いたしますいわゆる既開発林の森林の生産力はわずかに六千五百万石というのが現状でございまして、従いましていわゆる生長量に応じた伐採量というものを正常なものと考えます場合においては、三倍の切り過ぎをいたしておる。こういうような状況が物語っておりますがごとく、非常に危機的な内容をはらんでおるということは全く同感でございます。ただこれらの一般の消費量の伸びと申すべきものは、いわば国内の産業発展に相応するものでございますので、これをいたずらに供給制限をするというようなことについては、これまた非常に問題が多かろうかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、これらの消費というものを適切に合理化しながら、これに対応する生産の確保をはかって参るということが、いわば林政の基本方針一つに相ならなければならない、かように考えているわけでございます。今申し上げますように、非常に窮屈な状態でありますにもかかわりませず、現在日本に残されております森林につきましては、これらのものが全面的に木材生産の活動態勢に入っているという現状ではないわけでございます。おおむねの数字をもって御説明申し上げますれば、その全森林の約三分の一、全用材林蓄積の約半分というものが、いわば林道のないままに奥地に休眠をいたしております資源でございまして、そういうものをそのままにしておいて、しかも既開発林については、生長量の三倍にも達する伐採をいたしておるという状況は、すみやかにこれを解消するべく努めなければならない、こういうように考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、利用可能な森林の休眠資源といたしまして、現在七百四十万町歩の森林にございます約三十四億石の蓄積開発を目ざしているわけでございます。そのためには緊急に奥地開発を中心にいたします林道綱の完成をはかる必要があろうかと、かように考えるわけでございます。しかも御承知のごとく、全林野面積のわずか二割五分程度のものがいわゆる人工植栽にかかる森林でございまして、残余の七五%に相当するものは、いずれも天然に生育し、これが利用されたあとも天然に再生をはかる、こういうようないわば野放しの森林であるというのが現状であるわけでございます。そこでこれらの森林の平均の毎年の生長率というものを調査して参りますると、わずかに二・一%というような非常に低い水準にあるわけでございまして、これと申しますのも、平均いたしまして一・六%程度の生長率しか示しておりませんところの天然成林が全体の森林の四分の三を占めているという現状から、こういった結果が招来されているというわけでございますので、私どもといたしましては、可能な限りこの天然成林の伐採いたしましたあとには、生長率の高い人工造林を進めまして、すみやかに森林の生産力の向上をはかるような措置を、しかも計画的にやって参りたい、こういうように実は考えるわけでございます。現在は約二千五百万町歩の森林の中におきまして、国有林、民有林を合せまして、いわゆる人の手によって育成された森林というものは三十二年度末現在をもちまして六百十五万歩にすぎないという現状であるわけでございますが、今後の方針といたしましては、ただいま申し上げたような対象に対しまして、伐採の進行にあわせましてこれらを進めて参るということで、最終的にはおおむね全森林面積の四五%に当ります千百万町歩に対しまして、人工造林を確保いたしたいということを目標に長期の計画を立てて進めておるような次第でございます。と申しながらも、ただ単なる量的拡大をもっていたしたといたしましても、なかなか必要量の伸びに追いついて参るというわけに参らないような見通しも得られまするので、従来とかく閑却されておりました林木につきましての品種改良事業等もこの機会に大きく取り上げまして、質の面からの改善をも考えて参りたい、あわせましてできるだけ木材の使用を節約するなり、あるいは利用の仕方を合理化するなりの方法によりまして、合理的なる節用を考えて参るということも必要であろうかと考えておるわけでございます。そのような努力をいたすといたしましても、今から約四十年後の木材需給の見通しを立ててみますると、少くとも用材消費二億八千万石程度に対しまして、二億二、三千万石程度の供給力しかこれに見合わないというような見通しのものが、いわば日本の森林の実情であるわけであります。ただいま申し上げましたようにさまざまな方策をあわせ講ずることによりまして、できるだけ国内の消費量に対しましては正常なる供給力をもってこれに対応するごとく進めて参りますことが、いわば日本林政の当面いたしておりまするすべての課題の中の最重要なる問題点ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  87. 井出一太郎

    ○井出委員 大体ただいまの御答弁で林野当局が持っておられます構想ははっきりしたと思うのであります。ただこれは長官が今述べられた点を、実際問題として今後相当長期にわたって一方では計画的な林野の育成をする、そして増大する需要にこたえていくということでございますが、この実施は私は言葉にして言うほどたやすい問題じゃないと思う。ぜひその構想を、しっかりした裏づけを持ってやっていかなければならぬと思うのでございます。林野の面積が二千五百万町歩内外と抑えましたのは、国有林がそのうちの約三分の一、民有林が三分の二でありますが、蓄積の面から参りますると、面積において少くとも国有林の方がはるかに大きな蓄積を持っておるわけであります。この膨大なる資源を有する国有林は、これを運用よろしきを得て計画的な開発をなしまするならば、大きなポテンシャル・エナージーといいますか、こういうものを持っておるのでございますが、これを面積のみいたずらに膨大で、蓄積の貧弱な民有林の面に対しても援助の道が講じられるのじゃないかというように思うのであります。その手段の一つといたしまして、国有林の持っておる資本力あるいは組織力、こういったものを民有林のために投入をする方法がないか、こういう点を私は承わりたいのであります。たとえば現に国有林が相当な余裕金を持っておるはずでありますが、この内容であります、私の今申し上げた目的のためにこれを活用するには、具体的には一体どんなお考えをお持ちになっているか、これを承わっておきたい。
  88. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいま三十一年度末現在におきましても大体一億六千万石程度の用材消費があるという現状を、申し上げたのでございまするが、ただいまの数字を昭和九年ないし十一年の数字と対比いたしてみますると、当時におきましては国内生産がおおむね六千万行程度、移輸入を合せまして千八百万石程度、さらに国内から移輸出いたしますものが三百万石程度ということで、合計いたしましてかれこれ六千五百万石程度の木材の消費しか国内につきましては実はなかったのでございます。要するにきわめて安定した需給事情の中にあって林政が行われて参ったということが言えると思うのでございまして、そういう意味合いからいたしまして、現に存在いたしております国有林につきましても、むしろその現有林を極力温存維持しながらその利用開発をはかって参るという、いわば非常に消極的な資源維持の方策が国有林経営の基本区であったように思います。しかしながらもちろんそういった国有林でありましただけに現有蓄積は相当のものを保有し、さらに戦後十年の間に内容的に相当な発展をいたして参りました関係上、御指摘のごとく現在は、総額におきまして三十一年度末百三十二億円程度のいわゆる歳計上の剰余金を実は保有しておるという現状であるわけであります。何といいましても日本林政の最も基本的な、いわゆる弱い面は御承知のごとく民有林の行政面であるわけでありますので、あげて民有林行政の強化策を講じませんことには林政の発展は行い得ないということは当然であろうと思うのであります。従いまして私どもは極力民有林の施策につきまして手だてを講じておるのでございますけれども、それはそのときどきの一般的の好況の影響を顕著に受けまして、必ずしもこれを計画通りに遂行していくことができないといったような事情のありますことは御承知の通りであります。従いましていわば林業内部に蓄積されておりまする力といたしましての国有林野事業の成果を、林政一般の推進の面に強力に及ぼして参るということは、私どもといたしましては従来も不十分ながらやって参ったのでございまするが、今後はさらに一そうこれを徹底をして参る必要があると思うのでございます。そういう意味におきましては、現在行なっておりまする官行造林事業あるいは保安林の買い上げないし必要な治山工事の実施というようなことも、いわば一般林政面での協力と申しても差しつかえないと思うのでございますが、これらのことではまだまだ不十分であるというふうに私ども考えておるわけであります。そこで一体この歳計上の剰余金でございますけれども、これはいわばこの発生の経緯を考えてみますると、実は国有林野の資本に見合う資産の一部門であるというような性格を持った部内保有金であるというふうに私どもは理解をしておるわけであります。従いましてこれらの金額は国有林野の売り払いによりまして得られました現金収入でありますとか、あるいは増伐によって現金増収をいたしたようなものでありまするとか、これらのものが年々積み上ってきた結果がこういうような姿に相なっておるということであるわけでございまして、いわゆる正常な意味の利益金の累積ではないということは一つ御了承いただきたいと思います。従いまして私どもといたしましては、結局これらの内部保有金というものがあるわけでありますが、非常におくれた出発ではございまするけれども、国有林野事業そのもののあり方も、当面いたしまする日本林政の方向にからだを合せまして、その内容改善、体質改善を強力にやって参りたいということでございまして、本年度以降国有林野事業の合理化問題を取り上げまして、これを推進をしていくような取り運びにいたしておるのでございまするが、これらに対しましても、かれこれ必要な投資内容改善のためのさまざまな施設といったようなものにつきましての投資が、当分の間行われて参ることになりますので、これらをかれこれ見返りました上で、私どもといたしましては、一般林政への協力関係をさらに強化して参る手だてを考えて参りたい、かように考えておるわけでございまして、実は三十二年度末の状況をもって御説明申し上げますと、さきに申し上げました百三十二億の歳計剰余金に対しまして、さらに四十億の剰余金の累増が期待されるような現状であるわけであります。その中でいわゆる損益計算上の収支計算をいたしますると、利益金といたしまして三十二年度におきましては、大体二十四億程度のものが計上されるという見通しもあるわけでございまするので、私どもといたしましては、今後具体的にいわゆる損益計算上の利益金を一応の限度といたしまして、可能な限りの一般林政への協力を国有林野事業がはかって参ることにいたしたい、こういうように考えておるわけでございまして、現在直ちに研究課題といたしまして取り上げられる問題といたしましては、民有林と関連いたしておりまする林道の開設に伴うよう事業、あるいは先ほども申し上げました中にございましたいわゆる材木、林種改良事業の中の軸といたしましての育種場の経営あるいは林産物の流通改善のために行いまする各般の事業、こういうようなものは少くとも従来やって参りました事業のほかに、この機会に研究課題として取り上げるべきものと思うのでございます。ただこれらのものを具体的に解決いたして参りまするためには、現行法規の検討を要するべき面も多々あるかと思うのでございまするが、以上申し上げましたような点に一応の焦点をしぼりまして、さらに必要な林政面への協力の態勢を強化していくことに努力いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  89. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいまの御答弁は私は非常に重要だと思うのであります。従来ともすれば林野庁のあり方が国有林偏重であるという批判がございました。これにこたえるためには、今長官が発言されたように新しく一歩踏み切る、そういう意味において、ただいまの御発言は林野行政において画期的なものであったというふうに思われるのであります。そこで問題点は、林野当局がそのような考え方を持っておるにしましても、今の御発言でも少し触れられましたが、法的な規制がある。例の国有林野事業特別会計、こういったものの制約等もあるのではないかというふうに見ておるのであります。この辺に対する心がまえはどうでございましょうか。
  90. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 実はすでに国有林野事業の経営のあり方を、時代の要請に対応いたしまして改善をするという措置といたしまして、国有林野事業経営規定の改正をいたして参らなければならぬわけでございます。こういうことによりまして、自主的に規律できます国有林野事業の体制の切りかえというものは現実に今可能になって参るわけでございます。そういった前提に立ちまして今後の国有林野事業の進め方というものを資金の面からもいろいろと規制をして参るということになりますと、当然ただいまのお話にもございましたように、国有林野事業特別会計法の内容検討、これに伴いまする改正というような問題が入ってくることに相なるわけでございますが、私どもといたしましては、すでに国有林野事業の合理化問題を取り上げまして以来、部内的にもあるいは関係方面とも逐次研究を進めておるという段階であるわけでありまして、一応成案が得られました場合におきましては、これらの問題の扱いもさして困難ではないのではないかというふうに考えております。
  91. 井出一太郎

    ○井出委員 以上私の問わんとするところは、国有林が林野全体の観点から、ことに民有林に対する援助態勢を作り上げる、こういうことのために踏み切りをつけられるという御答弁でありますから、この問題は一応この程度にしたいと存じます。  そこで分収造林特別措置法に関しまして、ごく簡単に一、二点を伺っておきたいと思います。この法律を作成されまする課程におきましては、いろいろと苦心が払われたということも承知をしておるのでありますが、この法案を一通り拝見をしますときに感じますことは、これが法律というものの形態をなしておるのかどうか、この程度のことは行政措置でもいけるのではないかという感じがするのであります。もちろんぴちっとした法的基礎を持つということが要請されるわけでございましょうけれども、その辺は善意に解釈すれば贅肉をだんだんとってこうしたということかもしれませんけれども、そういう観点について、いかようにお考えになっておるか、ちょっと承わっておきたいと思います。
  92. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 お説のように、全く骨だけの構成というようになっておりますことは、私どもも同様に考えておるわけでございますが、今回分収造林特別措置法におきまして、具体的に取り上げておりますることは、どうしても立法措置によらずしては取り上げられないという問題だけを実はここに取り上げておるということでございます。従いましてこの分収造林という方式に基く造林を今後強力に取り上げていくというようなねらいからの問題といたしましては、一体どういう体制をもってこれを推進しようとしておるか、その中で現在のこの法案で取り上げておりまする二、三の項目というのは、どういうふうな位置に位するものであるかということを実は御了解をいただきたいと考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、法律によらなければ解決のできないものだけを法律に規定をしておるわけであります。さらに政令の改正ないしは通達というものによって事柄を明確にすべきものはそういう方向にやる、さらに一般の指導によって行いますものは、この指導の要綱を作りまして努力をいたすことに相なっております。これらの何段階かのものをあわせまして、いわば分収造林の推進要請なるものの内容といたしまして、その取り進めをはかって参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  93. 井出一太郎

    ○井出委員 今のお答え通り、この法律は法三章的な規定でございます。その多くをあるいは政令に、あるいは措置要綱というふうなものにまかせるということでございまする以上は、十分慎重を期していただかなければならぬと思います。この長期にわたる何十年を要する契約であり、そういった性質の産業でございますから、その間においてあるいは造林者であるとか、土地所有者、資金を提供するものであるとか、この三者の間に不測のトラブルというふうなものがあってはならぬわけであります。こういう長期の見通しの上に立って、十分運用に注意をしていただかなくてはならぬと思うのであります。その点からちょっと伺っておきたいのは、ただいまの構想は、この法律をもっておよそどれくらいの規模の造林をなさろうとするか、その輪郭を承わりたい。
  94. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 おおむね今後昭和五十五年を目標にいたしまして造林地域の拡大をはかろうといたしておりまする全面積三百万町歩の中で、この方式によりますものは約五十一万町歩と考えておるわけであります。
  95. 井出一太郎

    ○井出委員 この法律が出まして、私は次のような要望に接したことがあるのであります。それは、この法律の中で「一定の樹木」、こういう表現をとっておられますが、およそどういうふうな樹種を予定をされておるか。その際竹林——竹も木竹といわれますように、近ごろはパルプ資源などとしては相当に注目もされておる。またこれは短期に育成をされまするから、短伐期林業ということを標傍しておられる林野当局としては、竹などというものも一つは取り上げられる題目ではないか、こういうものもこの法律の対象になるか、あるいは実際の扱いをどうなさるか、そういう点を承わりたい。
  96. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 実はこの目的といたしますものは、必ずしも全面的に用材林というものを心がけておるわけではないのでありまして、時によりましてはやはり薪炭林につきましての面もままあろうかと思うのであります。実は竹林の問題でございますけれども、御承知のように、竹林と申しますものは毎年収穫が得られる、こういう性格のものであるわけでありまして、この分収造林の意図いたしまするところは、実は伐期において一回収穫されるというもののわけ合いによりましてその間の負担をし合おうじゃないか、こういう趣旨のものでございますので、私どもはこの法律で言います分収造林の中には竹林経営のごときものは一応取り上げないという考え方で整理をして参ったのであります。
  97. 井出一太郎

    ○井出委員 それから造林に関連をいたしまして、造林金融でございます。現在農林漁業資金として制度が打ち立てられておりますが、五年据置の二十年返済というふうなあり方では、長期にわたる林業の場合にどうも不適切ではなかろうか。少くとも間伐収入があるというまでには五年ではどうもこれは無理だ、もう少し据置期間を延ばし、それから償還の期限を延長する、こういうふうな考え方はいかがでしょうか。
  98. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 確かにお話しのように、現在農林漁業金融公庫の資金をもちまして、造林事業に対する長期融資をいたしておるわけでありますが、据置期間五年、償還期限二十年ということで必ずしも林業の実態には十分には対応しているものではないという状況でございます。ただ、いわば循環経営の可能なような比較的規模の大きい林業者にとりましては、こういった種類の資金でも十分活用できるだろうということでございますが、おおむねの場合におきましては、投資したものが成果するということによって回収がつくということになると思いますので、ただいまのごとく、少くとも第一回の間伐が出てくるというような時期まで据置期限を延ばすというような金融方法考えられませんと、正しい意味合いの林野金融としての活用には十分なるものが期待できないというように私考えているのでありまして、今後の問題といたしましては、そういう方向に努力をいたさなければならぬ、かように考えているわけであります。
  99. 井出一太郎

    ○井出委員 どうかそういう方向一つ御尽力を願いたいと思います。  それからこの法律の中にはうたってございませんが、造林を担当する者としまして、林業関係団体を活用する森林組合などがその一番の該当する団体ではないかというふうにわれわれ考えるのでありまするが、法律には現われておりませんけれども、そういうことはもちろん考えるわけですか、伺います。
  100. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 十分に考えているわけであります。
  101. 井出一太郎

    ○井出委員 それから公団法の方でありますが、これは余剰農産物の見返り円資金を従来の計画通り使用し得ないというふうなことから、当面債券発行ができ得るようにという改正だと思いますが、おそらく民有でまだ未開発の地帯というものは必ずしも熊野、剣山地域だけに限らない、相当に集団地として全国あっちこっちと散在しているのではなかろうかと思うが、将来今申し上げたような熊野、剣山地域以外の地域に対してもこの公団法を適用して拡大していこう、こういう構想はお持ち合せになっておりますか、これを伺います。
  102. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは一昨年の二十四国会におきまして、森林開発公団法が制定されましたときに御説明を申し上げたのでございますが、民有林を主といたしまする地域であり、さらに未開発の地域が大面積に、しかも集中的にあり、伐採をした土地が造林によりまして相当程度にこなせる、しかも現在の針葉樹蓄積というものが全体の資源の中で相当な部分を占めている、こういうような観点から取り急ぎ選定をいたしますと、この地区ということにひとまず限定せられる、こういうふうに申し上げたのでございますが、実はただいま申し上げましたような要件をそのまま完全主に満たすような地域というものは、民有林を主体にいたします限りにおきましては国内どこにも見当らない、こういうのが実は現状でございます。そこで未利用地域二万町歩くらいの森林を持っております個所というものがどれくらいありかともうしますると、北海道におきまして六カ所、内地、四国、九州合わせて九カ所、合計いたしまして十五カ所くらいあるわけでありますが、これらの森林はおおむね現在の森林内容が非常に貧弱であるといったようなことなり、あるいは特に治山治水上の面を考慮いたしますと、必ずしもそれを伐採した跡地に造林をするような適地というものは非常に少い、かような条件がそれぞれにあるわけであります。そういうことで、いわば地域開発的な考え方をもちましての公団機能の活用ということにつきましては、私どもといたしまして、必ずしも将来に対する期待というものは持てないと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、いまだ膨大なる未利用資源というものをその中に死蔵している現状でございますが、この中にはいわゆる主幹線林道と申しまして、動脈に相当するような林道の未開発な対象地区もあるわけでありますので、むしろ路線主義によりまして、一般公共事業の場合の採択基準等と比較検討いたしながらそういうものに対してせっかく努力して参りました。公団機能を活用するというような面については、今後十分期待を持って研究すべきものに値するではなかろうか、かように考えております。
  103. 井出一太郎

    ○井出委員 必ずしも地域個所数をふやしてという構想ではないようでありますが、基幹線林道を公団の機能を活用して開設をする、これは私ども賛成でございます。それで私冒頭に伺いました国有林の余裕金を運用する、これも主たる使用向けはやはり林道だと思うのであります。そういたしますと、一般の公共事業費による林道もある、国有林の余裕金を使う林道もある、またこの公団機能を活用せしめるということも可能である。そうして林道綱を完璧ならしめることが奥地未開発林分を世に出すことであり、里山の林力を休養せしめることであり、当面林政の焦点をそういう問題に合せていくということは焦眉の急ではないか。私も同感であります。ただそういう三本立になるからといって、一般公共事業による分を減らしてしまったのでは意味がありません。ですからその上にこれはプラス・アルフアだ、こういうふうに私は了解いたしますから、どうかそのつもりでしていただきたい。私の与えられた時間は超過しておりますから、この程度にしますが、最初に申し上げました国有林の余裕金を活用する、そのための法的な障害があるならばこれを取り除くという方向で踏み出すことを言明されたのでありますが、それをバック・アップする意味において、いずれ私は同僚委員の各位にも御賛成をいただいて、この二法案を仕上げる最後において附帯決議のようなものにでもして政府に要請をいたしたい、こう考えておりますので、あらかじめお含みを願いたいのであります。  以上をもって私の質問を終ります。
  104. 中村寅太

    中村委員長 久保田豊君。
  105. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 長官にお尋ねいたしますが、今度の分収造林特別措置法、これによって従来ある程度荒廃されておりました山が、造林計画というふうな点からいって、木材生産というふうな点からいって相当に効果があるであろうということはわれわれも大いに期待をするところであります。そこで今井出さんからもお話がありました通り、非常に法文が簡単でありまして、果してこれは法律と言えるかどうかわからぬような、きわめて簡単な法三章であります。従ってこれが実施上についてはいろいろ問題が出てくると思いますが、特にお聞きしたいのは、この構想によると、いずれにしましても費用負担者というふうな新しい一つの範疇を加えて参りまして、これによって造林計画を進めよう、こういうわけであります。しかも五十五年まで約三百万町歩の造林計画のうち、これに要するものが五十一万町歩、こういうことであります。これは三百方町歩を五十五年までにやるということになると相当大きな計画になると思いますが、要するにそういう点については、土地の所有形態は別にして、国がこういう造林について補助なり援助なりをするということは困難である、だから民間にしろ何にしろ、国以外の出資者を求めてやるよりほかはないという考え方なんですか、あるいは国としては将来出していかなければならぬが、また出せるようなめどがあるが、こういう民間といいますか、国以外の出資者を新しく入れる方が効率的である、こういう考えから出発したのか、どちらなんでしょうか。
  106. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 実は御承知のように、市町村の土地に対しまして現在のところでは部落有林が対象になっておりますが、国が地上権を設定いたしまして、五分五分の分収で官行造林事業というものをやっているわけであります。これに対しては、近年ではおおむね十二、三億円程度の予算を支出いたしまして、国の直営造林をいたしていることは御承知の通りでございます。私どもといたしましては、昭和三十年度以降この種の事業をできるだけ拡大をいたしまして、今後の規模といたしましては、年によって違いますが、大体一万八千町歩ないし二万七千町歩くらいは官行造林事業でやって参りたい。こういうことを考えております。しかしながらこういう方式によります仕事にもおのずから財政的な限度があるということを考えざるを得ない実情にあるわけであります。一方民有林に対する造林推進の原則的な方法といたしましては、あくまでも補助金の交付を前提といたしまする自力造林でございます。そのほかに補助金にかわるべきものとして、循環経営等を営めるような大規模所有者に対しては長期資金の融資のあっせんをするという方向でやって参ったのでございまするが、さらに今から天然成林あるいは原野の一部に対して、新たなる造林地域の拡大をやって参ることにいたしますると、必ずしも補助金を出しましただけで、自己負担力といいますか、自分負担しなければならない資金の調達が完璧にできるような対象ばかりでなくなるということを実は考えているわけであります。要するに補助金を出しまして、そうして自己負担分というものは自分で調達してやって参るという比較的小規模な、しかも里山周辺の森林におきましては、そういうことを中心にしてやってきてよかったのでありますが、今後新たな造林地域が広がって参るということになりますと、そういう方式を極力取り入れて、中心にして、やっていくと言いながらも、さらに二割程度のものにつきましては、土地はあるけれども資金はない、あるいは資金はあるけれどもなかなか適当な土地というものがないというようなものが出て参るわけであります。こういう特別なものを取り上げましてやって参る。いわば基本的なものに対してこれを補う方法として分収造林というものを実は考えたという経緯であります。
  107. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ここには大体三つの要素があるわけであります。土地所有者並びに造林者、費用負担者、従来においては大体において二つないし一つということでしょうが、今度こういう新しい形が出て参ったのですが、土地所有者については個人所有の場合と公有、公有というのが、ここでは実際の計画を見ましても、五十一万町歩の中で要するに市町村有林と部落有林ということに分れると思うのであります。そこで造林者という意味は、いろいろあるでしょうが、具体的にはどういうことを予想しておるのか。それから費用負担者とここで規定しておる者は、具体的には主としてどういうものを考えておられるのか、この点をまずお聞きをしたいと思います。
  108. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 要するにただいまお話のございましたように、従来は土地所有者と造林者というものの間の二者契約というものが大体多かったのでございますが、近年になって、それが自然発生的に出て参りました契約を見ましても、造林者、土地所有者のほかに費用負担者というものを加えなければ理解し得ないような新しい要素が加わって参ったのが現状であるわけでありまして、私どもといたしましても、こういう原則にのっとって取り進めやすい分収造林計画の推進をはかって参りたい、こういうことに考えております。そこで造林者というものは、三者契約の場合と二者契約の場合は違うわけでございますが、二者契約の場合におきましての私どもの造林者としての考え方というものは、やはりあくまでもその土地に定着する形のものを尊重して参りたいというように考えておるわけでございまして、いわば農林業者の組織いたしまする法人、地元市町村民の組織いたしまする団体、あるいは市町村または学校設置者というようなものをいわゆる二者契約の場合の造林者の第一次順位の適格者というように考えておるわけでございます。ところがこういう優先順位によってあっせんをいたすとしても、当然地元にある造林者たるべき人たちの負担というものがどういう方法を講じてもできないというような場合におきましては、初めてそこに費用負担者というものを考えて参るという順序に相なると思うのでありますが、費用負担者として考えられます主要なものにつきましては、やはり関連産業の方面であろうかと思うのでございまして、あるいはパルプ産業、あるいは石炭産業に伴います坑木あるいは一般の木材の消費産業、こういうものがいわゆる費用負担者として造林資金の提供をするというように考えられますおもなものでございます。
  109. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体われわれもそういうふうに想像するのですが、そこでこの法文は非常に簡単ですが、しかもこれは最低で十年ないしは五十年というような長期の契約になるわけです。その場合に地元の——所有者はそう簡単に変ることはないと思いますからよろしい。造林者は要するに地元の農民ということになると思います。これが町村であれ、農協であれ、あるいは森林組合であれ、実際に造林をする者あるいは管理をする者は農民ということになるわけであります。費用負担者はここでは資本家ということになるのが一般だと思うのであります。その場合に問題になってきまするのは、今の現状ではなかなか費用負担者が五十年間にわたって正常な費用——一町歩どのくらいかかりますか。ところによって違いましょうが、相当にかかると思うのであります。お伺いすると六万円ないし八万円くらいの造林費が一町歩についてかかる。これも五十年間の造林費として見るのか、あるいはどういうふうに見るのかわかりませんけれども、そういう経費がかかる。これが五十年間とかあるいは三十年間続いて出せる企業が果してあるのかないのか、そういう保証がとれるのかとれないのかという点が一点であります。かりに契約では知事があっせんをしてそういう契約をしても、今の官行造林ならば相手は県です。県がなくなるとかなんとかいうことはめったありませんから、これはいいにしましても、これが会社であり、多くは資本家であるという場合には、五十年の間には相当の変化がある。事実上負担するといっておってもとても負担し得ない場合、あるいは途中で負担が切れる場合がある。その他いろいろ状況の変化が起り得る場合があるわけです。その場合といえども地元の造林者は一度植えつけた以上は管理をせざるを得ない。しかもその多くは必ずしも日当をもらってやるとばかりは限らない。相手が町村であるとかその他多くの場合にいかにするかというと、賃金を非常に安くしたり、あるいはその他いろいろのことになる場合が非常に多いわけであります。こういう場合についての保証は一切三者間の契約なり何なりに譲ってやるのかどうか、あるいはこれに対する政令を別に定めて、そうして地元の造林者なり、あるいは土地所有者なり、そういう者の賃金を保全するのかしないのか、これが地元で考える場合にはおそらく一番重点だと思います。特にはっきりした共有関係ができ上ってしまうということになりますと、こういう点について何らの規定をしない、これは一切契約だということでは、非常に地元の造林者なり何なりは不安な地位に陥る場合が多い。しかも一たんこの契約をした以上は、土地所有者なり地元の農民は手が出ないという点があるのですが、こういう点についてはどのように考えておるか、また具体的な措置をどのようにおとりになるつもりか、この点をお聞きしたい。
  110. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは必ずしも知事のあっせんの手を経ませんで、従来もありましたように当事者間で自由な結びつきというものが行われて参るというようなことは今後もあり得る、私どもかように考えておるわけであります。そこで問題は、ただいまの問題の中で二者契約の場合におきまして、いわゆる造林者というものにつきましては、私どもは優先的にその土地に定着をする造林業者の組織する団体、あるいは地元の町村民の組織する団体、あるいは市町村みずから学校設置者みずからというふうに申し上げたのでございまするが、こういう人たちのいわゆる造林をして、維持管理をするということが途中においてできにくくなるというような場合につきましては、私はそのケースは非常に少いのじゃないか、かように考えておるわけでございます。従いましてこういった場合におきましては、私どもといたしましては、自家労力ないし自家労力に近いものを使いまして、しかも補助金の対象にいたすことになりまして、大体苗木の調達額に相当するものが補助金でまかなえるということになりますると、全体の経費の半分以上を要しまする新植は自分みずからの格別の出費なしにできることに相なろうかと思うのでございまして、その後はいわゆる補植、それから引き続いて手入れ、さらに若干期間ずれて若干の保育手入れ、こういうものが続くわけでございまするが、これはおおむね労力費ということに相なりますので、格別に金銭出費を伴うということは大体新植のときで終るのじゃないか、実はかように考えておるわけでございます。従いましてただいま御指摘のような一番安心のいく形といたしましては、土地所有者といわゆる地元の造林者との間の二者契約、従いましてわれわれもこれを主体にいたしまして、これを優先順位の第一にいたしましてあっせんをして参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。ところが費用負担者というものが個々別々に考えなければ必要な資金調達ができないというケースがあるわけであります。その場合におきまするいわゆる造林者とはどういうものかと申しますると、県でありましたり、あるいは森林組合でありましたり、あるいは農協であったり、こういうものをもっていわゆる造林者と私ども考えておるわけであります。造林事業を責任を持って営み、さらにその後の維持管理に当って参ることのできる主体というものを造林者にとっておるわけであります。ところがこの契約に基きまして合理的に費用負担の区分がされたといたしましても、ある時期以降どうしてもこれに基く費用の負担が経済上の事由等で確実にできなくなるということは実はあると思うのでございますが、その点につきましても、ただいま申し上げまするように、契約当初に行いまするいわゆる新植事業というものが全体の経費のほとんど半分以上を占めるということで、その後は年によりまして、あるいは間断をおいて少額の保育手入れを負担させればいいという制度でございますから、私どもは新植ができさえしますれば、その後の経費につきましての支出は、よほどの事情の変化がない限りにおきましては、大体続くものではなかろうかと考えておるわけでありますが、しかしそれでも続かないという場合は確かに考えられるわけでございますので、そういう場合におきましては、他に費用負担を希望する者をつのりまして、その他の当事者との了解を得ました上で持ち分の譲り渡しをする、そうして費用の継続をはかって参る、こういうことに取り運んで参りたい、かように考えておるわけであります。
  111. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それは普通の場合はそうですけれども、それを要するに政令なり何なりである程度はっきりした基準、取扱い、そういう場合の処理、これをはっきりするのかしないのか。当事者三者間の契約なり何なりに、たとえばかりに模範契約というような程度のものを作って、それでもって当事者三者間で勝手にやれというのであるかどうか、それはいろいろ今お話のような点はあります。確かに、一番最初に植えるときだけは相当経費がかかり、あとはそうかからないという点はありますけれども、かかってもかからなくとも、これは財界の事情なり木材事情等が変れば会社等は投げる場合もありましょうし、また同時に持ち分の譲り渡しその他によって費用負担を継続するにいたしましても、それが必ずしも現地の造林者と土地所有者とぴったりいくかどうかというこことも疑問ですし、いろいろの問題がある、いろいろのトラブルが起る公算があると私は思うが、こういうものについてはこの法律には規定がないが、それは何かはっきりした、法律ではないが政令なり何なりによってそういう点を明確にするのかしないのか。今こまでの範囲では、確かにパルプ会社や何かが契約をしたのはまだ年限が少いですから、あまりトラブルがひどく起ったというようなことを私は聞いておりませんけれども、とにかくこれから長いのですから、そういう場合の行政的措置なり法律措置をどうするのかということを聞いておるのです。
  112. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 その点につきましては、はっきり申し上げますると、これはすべて当事者間の契約の内容に譲る、こういうことであるわけでございますけれども、何といいましても長い期間にわたる契約でございますから、契約内容というものにつきましては必要な事項を細大漏らさず具体的に取りきめておく必要があるということで、実は知事があっせんをいたしまする場合に、模範契約に基きまして契約の締結が行われるようにこれを世話をするということにしておるわけでございます。ところがただいまのような問題が確かに発生をするわけでございまして、その場合に当事者間の一種の紛争というようなものも予想されるわけでございますが、これも指導事項といたしまして都道府県知事がそれらの問題に対する紛争の処理調停にも当って参るということで、実は指導要綱をきめましてやって参るということになるわけでございます。
  113. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の点ではこれは基本的には、法律的には三者間の契約にまかせるのだ、こういうお考えですが、私はこれでは非常に不安だと思うのであります。この点をもう一歩突っ込んで何かの法律的なあるいは行政的なもっとしっかりした、そういう問題の起きた場合の措置をお考えになっておかないと、これはあとあとになって非常に困る問題が多々続出しやしないか、こう考えますので、この点はさらに一歩深めて御検討をいただきたい、こう思うのであります。それから次に知事があっせんをして三者契約を結ばせる、こういうことになっておりますが、知事のあっせんはどういうわけで必要なのですか、また知事の責任というのは単なるあっせんだけなのですか、あるいは将来三者契約の行われた場合のその契約の履行について三者それぞれについて保証人的意味において責任を持つというのですかどうなんですか。それでなければあえてここに知事のあっせんという事項を持ち出した意味が私どもにははっきりのみ込めない。ただ単に知事が指図して、どこかパルプ会社なり何なりがこういう山をほしい、金を出しますからと言ったときに、知事がこういうところへ持っていって、お前のところはやらないかどうだというようなあっせんをする、こういう程度ならあえてこういうあっせんというようなことを特に法律で規定をする必要はなかろうと思う。これは当然林業行政として分収林というものがいいということになれば、これは知事が法律で規定しなくても当然やるべきことだと思うのであります。問題は知事があっせんする以上は、この三者の契約の内容についても、あるいは契約の履行についても知事がその地域の行政官庁の最高責任者として責任を負うということでなければ、これはざっくばらんに言って土地の所有者なりあるいは造林者なりは安心はできません。知事があっせんをする以上は、あっせんしたものがまとまった以上は、その結論をはっきり保証してくれなければ困る。ところがこれの法文ではあっせんだけであとは何にもない。これがどうにも私どもには解せないが、この点はどういうふうにお考えになっておるか。
  114. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは土地の提供に関しましては造林を相当とすると考えられるものの中で、本人が分収造林によることを希望いたしますものは、これは当然まっ先に取り上げるわけでございます。そのほか予定されるものといたしましては、森林法に基きまする造林義務の違反者というものが実はあるわけでございますが、この造林義務の違反者の持っておりまする土地につきましては、知事から積極的に分収造林によるべきことを勧奨する、こういうように実は考えておるわけでございまして、そこでこれらの土地の中で自分はどういう相手と結びつくことを希望するという者は、まっ先にその希望を受け入れまして、二者ないし三者契約というものが取り運ばれて参るということになると思うのであります。ただ全国的に近年になりまして分収造林というものが行われておるのでございますが、これらを見ますると歴史的な発展の過程というものが非常に違っておるようでありまして、ある地域には非常に行われておるけれども、ある地域には全然そういうことが行われておらないというような状況があるわけでございまして、ただ単に自然発生的な結びつきだけにまかしておくということになりますると、計画的に分収造林事業というものを進めていく上に問題があるのではなかろうか、従ってあくまでも当事者間の結びつきを積極的に取り運んで参るということが、いわゆる分収造林事業による造林推進の実を上げるゆえんだろう、こういうことで知事のあっせんを私どもは規定をいたしておるわけでございまするが、同時に問題に相なりますのはやはりこの契約の内容でございます。契約の内容いかんによりましては非常に将来トラブルを起しやすいということになるのでございまするが、その中でしかも一番問題になりやすい問題は、いわゆる分収の割合のきめ方ということ、及びこのでき上りましたものを売りまする場合の価格の算定方法なり売り払いの方法ということが、一番重要になる問題であろうと考えるのであります。従いましてただいま申し上げまするように模範的な契約事例を作りまして、それによって正しく妥当に契約が進められるように、そのあっせんのときに指導をして参るということに実はいたしておるわけでございます。ただいま申し上げました分収割合でございまするが、これは従来ありまするものをいろいろ見ますると、地方的な慣習なりあるいはそのときどきのさまざまな事情に制約をされまして、必ずしも妥当な分収歩合で決定されておる向きが少いといったような地方も実はあるわけであります。やはり分収造林事業を正しく伸ばします上におきましては、どうしてもそういったことにつきまして、知事の積極的なあっせんというものが必要になって参るということに考えておるわけでございます。ただもう一点の問題といたしましては、そのようにやって参りました分収造林でございましても、長い期間にわたる仕事でございまするので、その間においてしばしば紛争というものが起りやすいということでございまするが、私どもといたしましては、従ってその紛争のあっせんも知事の手によってやってもらうようにこれを指導的に取り運んで参りたい。実はこれを法律事項として規定をするという考え方も取り得たのでございますが、民事調停裁判等の関係から見まして、紛争解決のあっせんを法律事項といたすことを除外したような次第でもあるわけであります。
  115. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の御答弁だと、大体地方は知事の権力を利用して相当押すということが一面出てくるわけです。その次は契約の内容に適切な一つの指導を加えていくということ。あとは紛争等が起ったときにこれを調停する、こういうことのようです。しかしそういうことは特にどうこう言わなくても、現在の林業行政からいえば当然知事がやらなければならぬ仕事なのですね。それを特にあっせんということをここで出した以上は、こういう新しいケースの分収林についての契約なり契約の履行なりについては、知事がある程度保証人的な立場において責任を持つということが明確にならなければ、私はこれはほんとうに生きていかないと思うのであります。特に今御答弁のありました通り、ある程度の強制を加えなければこの契約が必ずしもうまくいかないような場面もおそらく相当出てこようと思う。そういう場合にただあっせんをするというだけではこれは意味がないと思いますが、そういうところまで——これは法律を改正するかどうかは別問題としまして、何らかの形でそういう三者契約なり二者契約、特に三者契約の場合が問題ですが、こういう点については、まだパルプ資本等が山を借りて植えたとかなんとかいうケースが、戦後の最近の問題でありますだけに、めんどうな問題がそうたくさん出ておるとは私考えておりませんけれども、今後長く相当大規模にやるということになりますと、ここらに何らかの新しい措置が必要になると思うのですが、特にこれをこういう程度にとどめたというのには、今の御説明では納得がいかないのですが、この点についてもう一度何かそこに今御説明の以外にお考えがあるのかないのか、この点を一つ……。
  116. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいま御説明を申し上げました通りでございまして、御承知のように近年いわゆる分収方式による造林が各地に起りつつあるという現状であるわけでありますが、私どもの指導上の問題ということできわめて不徹底な感もあるわけでありますけれども、こういう措置をいたすことによりまして、現在ようやく各方面で実施しておりまする分収造林事業というものが十分伸び得る段階にあると考えておるわけであります。
  117. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 次にお伺いしますが、第四条の、地方自治法二百十三条二項の規定を特に書いた意味ですね。これはどういう意味ですか。特に契約を見ますと、五十一万町歩の本法による分収林計画のうちで市町村有が十六万一千町歩、部落有が八万八千町歩、計二十四万九千町歩というものが、要するにこの対象になってくると思います。あるいは実際の私有というふうなものも含まれておるかもしれませんが、五十一万町歩の約半分近くが町村有林もしくは部落有林、こういう格好になる。これに対してこれに関係する農民並びに部落民の総意を問うという形を簡略にして、市町村議会の三分の二の議決があればそれでよろしいというふうにした点は、これはどういう意味を持っておるかということを御説明をいただきたい。
  118. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは御承知のように、市町村有林だけについて排除するということになるわけでございまするが、しかもおおむねの場合におきまして、山林といったようなものが市町村条例で指定されました重要財産ということに相なっておるものが多いのでありまして、そこで一応こういう場合に十年以上というのは——森林の育成事業というものを除外いたしますると十年以上というのは、かれこれ長い期間ということに相なるかと思うわけでございますが、ただその土地を山林の事業に供するというような場合におきましては、一般のものが十年に対しましては、やはり四、五十年というものが当然見合っていいものだ、こういうふうに私ども実は考えるわけであります。ただ分収造林契約というものが進みやすくいたしまする方法といたしまして、こういうことを明確にいたすことが一そう適切ではなかろうか、かように考えてきたわけでございます。
  119. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の御説明を簡単に言えば、関係農民全体の総投票だとかなんとかはめんどくさいから、市会の三分の二で片づけろ、こういうことですか。
  120. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 必ずしもめんどくさいというふうに考えるわけではございませんけれども、一件々々の契約につきまして、そのつど村民の投票というような非常に煩瑣な手続を経るというふうに考えなくとも、市会の三分の二の同意が得られるということで村民の意思というものは十分尊重されるものではなかろうかというように私ども考えておるわけであります。
  121. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点も一つの大きな問題点だと思うのであります。と申しますのは、最近の傾向、特に市町村合併が行われました以降においての実情はどうかというと、市町村合併が行われて非常に大きくなったために、従来は部落有林あるいはその他の形、場合によりましては町村有という形を見ましてもあるいは財産区という形を見ましても、実質上は部落民の直接の利用にまかされておるところが非常に多いのです。ところがそういうところがだんだん町村有に召し上げられてしまって、結局部落民はそういう部落有だけではなくて、名義上は市町村有あるいは財産区名義であっても、実質上においては、ほんとうの部落民なり関係農民の利用にまかされておったものが、結果的にはみな取り上げられているという場合が多いと思うのであります。  もう一つの点は、今日の町村の議会なりあるいは町村長は、そう言っては失礼ではありますけれども、言葉が過ぎるかもしれませんが、実際上は必ずしもそこの農民なり町村民とぴったりいっているとは限りません。特に市町村合併が行われた場合におきましては、市町村議会には、ほとんど農民の利益なり意思は反映できないような格好になっておる。そういう中で部落民の共同の利用なり何なりをやって、とにかく一つの生活の基盤なり、農業経営の基盤になっておったものが実際にはどんどん取り上げられ、しかも取り上げたものの処分はどうかというと、市町村議会等が勝手に処分をしてしまう。しかも処分をされてから農民はあとになって気がつくという場合が非常に多いのであります。こういうわけですと、特に規定を設けて村民の総意の表現を排除して市町村議会の三分の二の議決にしたということは、これは一たん設定をされれば従来それを利用しておった部落民は勝手にはできないということになりますから、こういう点に何か非常に割り切れないものを感ずるわけです。この点は、これを実施する方からいえば、一々そのたびに投票してやることはめんどうくさくてしようがないから、市会議員なり町会議員なりの連中の三分の二の議決の力が簡単なんです。同時に市町村当局としては、今まではろくにまとまった金も市町村当局自体には入ってこなかったが、今度の契約によって分収利益というものが相当入ってくることになれば非常にいいという問題もあります。  また私も長いこと町村長をやってきたが、大体そういうやりくりをして、農民に実際は奉仕をさせておいて、最後にはそれを村の財政に使うというような場合が多いのが実情であります。ですから農村や山村に行ってごらんなさい。村有林なり何なり山持ちの多いところは、役場や学校は鉄筋コンクリートでりっぱな家が建っておる。ところが住民の家に行ってみれば、戦前のような畳のない家はありませんけれども、従来と同じような貧乏な生活をしている連中が大部分です。子供は学校に行って近代生活をしており、家に帰ってくれば、徳用時代の生活に帰っていくというのが実情です。そういう場合に、特に関係の深い山村民は、小さくてもこういうものに依存する面が非常に多いわけであります。特に総産を聞く機会を、手続上めんどうだからということではずしておくことはどうかと思う。しかもそれに対しては、そういうあっせんをするのは知事だ。権利は知事が持っておる。そうやったら町村会なり町村長の連中が喜ぶのは当りまえだ。何も知らない関係部落民は、いつの間にか自分たちの山の所有権という意味ではないが、実質上の山をとられる危険が非常に多いと思いますが、いろいろな点で納得がいかない。この点をもうちょっと突っ込んで説明願いたい。
  122. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 先ほど長官からお答えした通りでありまして、久保田さんみたいな名村長がおられるところではそういうことがあったということは私は考えません。今お話の中に、これは御冗談であろうと思うのでありますが、町村会議員があまり町村民の利益にならないようなことを決定するというようなことは、万々ないであろうと私は思います。そこでこれは先ほど御説明申し上げましたように、普通の財産状態でありますると、十年以上にわたる処分をするということは、基本的な財産でありますから住民投票によるということは、地方自治法の精神であろうと思います。事の性質上、御承知の通りに植林、造林をするということになりますと、長期にわたるものでありますから、地方自治法の精神からいっても、事の性質上そういうものであるから、現在普通の市町村、いわゆる公共団体が持っておりまする土地を造林の方に活用する方が、市町村民全体のためによろしいという方針でありますならば、事の性質上、五十年以内においては地方自治法によって一々住民投票をしなくてもよかろう、その方が簡単にいくのだからそうだろう、一面そういうところであります。ただそれだから、今お話のように、一部町村合併等によりまして、部落有であったものが町村有になっております。そういう際に、その町村の三分の二以上の代表者が、それを同意するということになれば、今話のようにいわゆる住民を無視した取扱いはなかろうというのが私どもの見解であります。
  123. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 次官の今の御答弁ですが、その点は実情となかなか違う。特に町村合併あるいは市村合併したところへ実際行ってごらんなさい。百姓を代表して出た町村議員や、市会議員は、発言権はざっくばらんにいって何にもありませんよ。ほとんどない。しかも市部を中心とした連中が、市の財政と言う観点、それに結びついたいろいろなことから、ほとんど勝手なことをやっているのが実情であります。私どもはそういう例を幾つも持っておるわけであります。ですからこういう契約を、たとえば村有地について、あるいは区有地についてやる場合には、一つの町村でそんなにケースがよけいあるはずはないのです。五年なり十年の間に毎年こういう住民投票をやらなければならぬというような、そんなケースはよけいあるはずはない。あそらく一回やることによってこういうある程度の分収造林計画は設定をすると思う。これはやればそんなにめんどうなことではありません。そのことによって、ここがはっきり分収林計画になるのだということを村民が初めて知るのです。それでなければ、おそらくこの規定でいけば、関係の住民は何も知らないうちに、いつの間にか自分たちが利用していた山が、要するに分収林になって手がつけられなくなったという結果に必ずなる。実情がそうである。これは表側だけでいえば今の次官のような御答弁になります。事実そうである。私は特にこの規定を置く必要はなかろうという点を考えるわけですが、どうも今の御答弁では、議会が住民の利益をほんとうに守るのは当然の任務でありますが、現実はそういっていない。時間もありませんから実例は出しませんけれども、実例を出そうと思えば全国的に幾つも出せます。ですからこの点は住民に周知徹底をして、そんなに手続上めんどうなこともなかろうから、私はこの点は実は再考願いたいと思うのですが、この点についてはどうですか。
  124. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 実は私どもといたしましては、ここで初めてこれが分収造林の対象地になるのだということにいたすのではなくて、知事があっせんをいたします場合に、そのあっせんをいたします対象地につきまして、もちろんその所在地あるいは面積といったようなもの、さらに林野の状況、それから植栽その他管理に必要な費用の概算を見積りまして、やはり公表をする。その公表いたしましたものにつきまして、造林者あるいは造林費用負担者というものを求めて結びつける、こういうことに順序として相なろうかと思うわけでございます。従いまして、知事がこういった対象地を最終的にきめます場合における調査内容といたしましては、さようなことを調査されなければなりません。その上で、これは一応分収造林の対象地にしてもいいというようなことになりましたら、初めてこれを公表する、こういうことにいたすわけでございますので、従いましてただいまの地方自治法第二百十三条の契約を推進する上の一つの便利的な促進措置というように御了解をいただきたいと思うのであります。さらに市町村有林の場合におきましては、昨年の二十六国会で森林法の改正をいたしまして、いわゆる公有林野の経営契約を立てることにしております。これは公有林野につきましては、土地の利用区分を明らかにして、造林地として適当なものだけについて造林を進めるということになりませんと、さまざまな点で私どもの従来繰り返したような苦い経験を繰り返す、こういうことで、実は土地利用区分とあわせまして、林地といたしますものにつきましては、これを用材林でやっていくか、薪炭林でやっていくか、あるいは用材林と薪炭林の場合を通じまして、いわゆる自力造林でやっていくか分収造林でやっていくかというふうなことまでも、かなり詳細に、具体的な内容をもちまして公有林の経営契約を作りまして、それに基いてやって参るというふうな措置を、実は前提にいたすようにいたしておるのでございます。従いましてただいま申し上げますように、ただ手続上これを促進するということにお考えいただきますのが適当かと思うのであります。
  125. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点は御再考いただきたいと思います。  それからもう一つの点は、これは、特に村有林、部落有林あるいは私有林、あるいはそういう点に連関して、単に分収造林だけに連関する問題ではございませんが、特に分収造林にもひっかかってくる大きな問題として、確かにこの対象といっても、私有地のうちで管理が悪い生産性の低いものをこの分収造林でやろうということになるでしょうし、同時に町村有林あるいは部落有林にいたしましても、確かに今山林として見た場合においては、管理状況は非常に悪い。決していいとはいえません。ただ特にこの計画にしても、一般的な造林計画の場合でも、特に慎重にお考えをいただきたいのは、今ずっと見て、山村というのは一番貧乏です。ひどいものです。これはあらゆる面からそういうデータが集められると思う。しかも山村は田畑が少くて山に依存しなければならぬ。その山がだんだん山村民の手の届かないような格好になっていくというのが実情であります。しかも反面においては、こういう日本の農業の生産力を拡充するとかなんとかいいましても、なかなか、たんぼだけを相手にしておったのではだめな時代である。これを牧草地にだんだん変えていく、あるいはその他新しい時代の条件に応じたような利用の方法を今後政府としては積極的に考えていかなければならぬと思う。開拓の問題とか、あるいは牧草化の問題、こういうことが相当問題になる。こういう場合にこそ、私は大体町村有林とかあるいは部落有林とか、あるいはそれに連関するいわゆる里山系統のものをまず優先的に考えるということは当然だと思う。今これが軌道に乗っておりません。政府はかけ声だけでやっておりません。今お話のあったように、いろいろの町村別の土地利用計画を立てるなんて言っておられますけれども法律できまっても立っておるところはありません。実際問題としてなかなかありはしないのです。たとえば政府の言っておられます今の新農林計画も、村に行ってみればどうかというと、役場の上の方の連中がこそこそと作ってしまっただけで、下の方の連中は何もわかっておらない。わかっているのは、共同出荷場ができたとか、有線放送ができたとか、できたできたという程度であります。ましてこういう農民の一人々々に密着した具体的の計画等はほとんど立っておりません。そういう状態の中での森林政策というものは、森林政策だけから言えばけっこうであります。けっこうでありますが、私は将来新しい資本家が、土地に対する支配力をある意味において持ってくると思う。そういうことになると、次の当面これからやっていかなければならぬ新しい山村全体の計画が、あちこちで非常に大きく阻害される場合が出て参ります。つい昨日だったか、私の方のある村で、かつて解放になったところがなかなか困難な状態なものですから、全体の開懇がまだできない。どうなるかというと、それを持っていたのは前にえらい資本家であり、その連中が成功検査ということにひっかけて土地を取り上げる。村の農地委員がこれと同調してブローカーをやっている。村当局がそこを何にするかと言ったら、今度は観光場とかを作るので、土地がよいからよこせという。百何名が一生懸命やったものがこうして取られる、こういう実情であります。特に山村の公有林、市町村有林あるいは部落有林、——市町村有林といっても大部分は名前だけで、実際は部落有林の場合が多いわけです。それとこれに連接した里山系統、新しい総合計画の観点から、林業だけでなくこの計画を本気にやっていかなければうまくいかない。それが支障になることが多いと思うのであります。今この長官のお話で、県の方も知事がそういうふうに指導するとか、市町村でもそういうようにある程度規制をやるといっても、現実はそういっていない。しかもこれから国も農民もそういう方向に行かなければならぬという段階に、この分収林計画が大きな阻害になる危険があると思うのですが、この点について大局的の数字は林野庁の方からいろいろいただいてわかっているから、全体の計画は今聞こうとは思いません。現実に村に入った場合、そういう問題をどう解決するかということが、農民の立場から言えば大事な問題だと思いますが、これらについてどのようなお考えを持っているのか、実際具体的にどういう措置をとるのか、これは開拓と牧野、林野の関係について、土地の利用区分なり利用計画を具体化するという観点から林野庁長官のお考えも聞きたいが、農林省全体としてどう考えているか。中央の雲の上だけでいいかげんにやってもなかなかうまくいかない。これに対するしっかりした方針をぜひほしいと思うのであります。これらについて林野庁のお考えと、総合的な見地から農林省の考えと両方聞いておきたいと思います。
  126. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 今久保田さんのお話の点は、日本の農林行政上きわめて重要な問題だと思います。なるほどお話通りに、土地利用区分などというものの具体的な計画は、日本では非常におくれております。その通りでありますが、その通りではいかないのでありまして、今林野庁の方で造林というか、植林を計画しておりますところと、それから農地がまだ御承知の通りきわめて不十分、不足でありますから、開拓をしなければならないところ、そのほか畜産の問題が大きく取り上げられる時代でありますから、それに相応する牧野の問題、こういう問題は農林省全体として十分調整をとりながら計画を立てなければならない、こういう考え方で進んでいるのであります。
  127. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 林野庁といたしましては、特に造林推進の問題を大きく取り上げておるわけでありますが、過去におきましては造林地の未墾地買収というようなことによりましてしばしばの機会にさまざまと難渋をいたした経験も実はあるのでございます。これから新しく造林をして参るという土地に対しましては、現段階で見通される限りこういう問題を排除しながら進んで参りたいというのが基本的な考え方であります。従いまして、一口に土地利用区分と申しますけれども、具体的な場について具体的内容を伴った計画が先行しなければならぬことは当然であります。私どもとしましては、ただいま申し上げましたように、私ども見地からではございませんけれども、公有林に対しましては、実情に即して造林地をきめて市町村の造林事業を進めていくというような措置も実はとり行なっているわけであります。毎年計画によりまして地域を指定いたしましてやっておるという現状でもあるわけでありますが、開拓あるいは牧野事業としての土地利用というような関係とも十分調整をはかりながら、無理のない進め方をして参る考え方でおることを御了承いただきたいと思います。
  128. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点次官のそういう抽象的な御答弁を何回承わっても現実の解決はしない。また中央で土地利用について機関か何かができて参事官か事務管が二、三人おるという話も聞いておりますが、どうかそういうものをもっと具体化して、県なり町村なり末端で実が実るような措置を早く講じてもらいたい。いろいろむずかしいことを言えばあるでしょうが、そういう点はっきりした基本的間違いのない方針を立ってやらないと、現実に末端に行って何の役にも立たないのであります。特に林野庁にお願いしておきたいのは、たとえば現地の営林署なり県の林政関係の連中のところに行きますと、今お話のような点はほとんどできておりません。どういう措置をされているのか知りませんけれども、林野庁自体の固有の事業の場合には多少ありましょう。しかし全体の特に民有林であるとか何なりのことに対しましては、現地を歩いてそういう措置はほとんど聞いたことがない。そういう指導をしていることに接したこともない。今度新しく法律によって民有地なりあるいは公有地について全般的な造林をしようというわけである。ですから林野庁の長官なり中央の方が頭で考えておられるだけでなく、末端の営林署なりあるいは林務課の連中が、本気にこういう問題と取り組む状態でないと、林野オンリーだけ、おれの方の林政だけうまくいけばよいというふうになって、実際には非常に開拓しよいような条件のところが山になっておったり、あるいは当然森林にした方がよいと思うようなところが開拓地になって、そんなところへ入れられた開拓民がきゆうきゆう言って苦しんでいるという場合が非常に多いのであります。どうか今申しましたような国会答弁だけでなく、早く基本的な方針を立って、末端が実行できるように徹底してもらいたい。そうでないと林政面からの具体的施策だけがどんどん先へ行ってしまう。これもよいことです。決して悪いとは言いませんけれども、それではやはり全体の農民経済なりあるいは全体の農業生産力の増強ということにはならぬわけである。そういうしわ寄せが山村へ参っておりますから、多くの場合山村民はみじめな経済的立場に置かれている実情であります。その点は百も御承知の方にこんなことを言うとなまいきだということになりますが、国会答弁だけうまくやっておけばあとはいいわというふうないいかげんなお考えでなしに、私はこれを真剣に、早く末端でやれるような態勢をとっていただきたいというこことを特にお願いをしまして、私の質問を終りたいと思います。
  129. 中村寅太

    中村委員長 川俣君。
  130. 川俣清音

    ○川俣委員 与えられた短かい時間で、要点だけを一つお尋ねしておきます。  第一は井出委員から総括的な質疑が行われたのでございますから、総括的な点は取り除きまして、今度の分収造林についての大まかな点からお尋ねしたいと思います。今度の分収造林の考え方基礎になっておりまするのは、提案説明並びに井出委員に対する説明によりますると、今後ますます木材の需要が増大するに対応するために分収造林計画を立てたのだ、こういう説明でございます。なるほどかくあるであろうと想像されます。しかしながその観点からだけ分収造林計画を立てて、一体所期の目的が達成できるかということにつきますと、まだ疑問があると思う。そこで別な角度から一つお尋ねいたしたいと思いますが、第一は、この日本のような矮小な土地に山岳地が多いのでありますから、土地の利用度を高めると申しますか、高度利用の面からも一体分収造林の必要があるのかないのか、こういう検討が行われますると、この分収造林の方向というものが非常に明るくなると思うのであります。単にその需要だけからだといたしますと、どうもその必要度が薄い、というわけにはいかないにいたしましても、将来を期待される上に事欠くのではないかと思われる。そこで一体土地の高度利用という面からも必要だという検討がなされたのかどうか、この点一つお伺いしておきたい。
  131. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、やはりどのような山林事業が実施をされるといたしましても、そのことは直ちに農山村の経済の向上の上に役立つということでいくべきことを本旨といたしまして施策をいたしておるわけでございまするので、従いましてこの分収造林事業のごときは、今後山村地帯に進展をしていくということにつきましては、私どもは明らかにこれは山村民の経済向上ということに役立つこともあわせて十分検討の上で裁量をいたしていきたい考え方であるわけであります。
  132. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでもう一つですが、やはり土地の高度利用の上から未利用あるいは不完全利用の山地が非常に多いから分収造林をやるのだという意味も、やはり大きな意味だと思うそういたしますると、このような規定だけでは未利用または不完全利用の面積を、これだけによって解消はできないんじゃないか、もう少し利用度を高めるような方向で分収造林計画を立てていかなければならないのじゃないかと思うのですが、この点についてはどうですか。
  133. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私ちょっと御質問の要旨につきまして、もう少し具体的にお尋ねを願いたいと思います。
  134. 川俣清音

    ○川俣委員 非常に時間がないものだから簡単に申し上げたのですが、山村のいわゆる林地と申しますか、山林地の利用度が低い、低いからこれをさらに樹種転換をして、または人工造林を加えて天然発生的な林地を人工造林的な林地にかえていくということが目的だ、こういうことになっていると思うのです。そういたしまするというとやはり目標は木材の需給調整にもありまするけれども、やはり土地の利用度を高めるという意味が非常に強くこれに入っているのだと私は理解したいのですが、そう理解してよろしいかどうか、こういうことなんです。早く言うと、五十一万町歩というようなことだけではまだ未利用地あるいは不完全利用地を解消するということにはならないのじゃないか、こういう点もあわせてお尋ねしているわけです。
  135. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは私どもといたしまして、ただいまの御質問に対しましては確かに土地の高度利用というものを進めて参りたいという考え方でいるわけでございます。一応三百万町歩の造林地拡大計画の中で五十一万町歩と申しておりますのは見当であるわけでありまするが、しかし主張といたしましては、やはりあくまでも自力造林というものを中心にしてやって参りたいというのが私どもの基本的な考え方であるわけでございます。たとえば分収契約によりましてひとまず造林地になったものが、次の契約期間には一体どういうふうな計画でいくつもりかということに対しましては、私どもはむしろ自力造林をなし得る素地を与えていくための一段階の問題として考えていきたい、その後はむしろ自力を中心にする造林によりまして循環を考えて参りたい、こういうように考えているわけであります。
  136. 川俣清音

    ○川俣委員 問題は二つございます。一つは自力造林へのワン・ステップとしてこの道をとるのだということでありますから、それでは自主造材についての方向として重要な問題として物価の動向があると思う。これは日本の林政発達の上から見まして、物価の上昇下降と木材の価格とが必ずしも同じ傾向をとっているとはいえなかったのであります。しかし今後は世界的な木材の需要の増からいたしまして、大体物価と並行するかあるいはそれ以上の伸びを見せるのではないかと思います。この木材の将来の需要というものに対して、それと需給のバランスが破れてくるところの木材の価格というものについて、やはり一定の見通しが必要だと思う。この長期見通しがあることによって、自主造林というものがかなり刺激されると思う。一体こういう長期造林計画というものがとかく困難を来たすのは、長期経済予想が困難であるところであります。従って資産造林というようなことだけ考えられましていわゆる経営造林というものが日本に今まで発達しなかったゆえんも、木材の価格の変動、需給の変動がこの造林をはばんでおった大きな原因であると思う。すなわち資産造林ならばそういう物価の変動にあえて動揺なく造林も行われたでありましょうが、やはり経営造林ということになり、木材の需給という大きな面からの造林ということになりますると、やはり木材価格の動向というものが見通しされる。これは林野当局が見通すのでなくして、一般に木材の価格というものはどういう傾向をとるかということが理解されるというところによって自力造林というものが増大していくと思うのですが、これはどうでしょうか。
  137. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 御承知のように木材の消費動向と申しまするものは特に近年顕著に増大をいたしているわけであります。これは実はただ単に日本だけの現象ではなくて、世界的な現象ともいうべきものであろうと思うわけであります。過去におきまして西欧方面の一部の国におきましては、おおむねのところは天然林生産に依存するということで、かれこれ需給の均衡を得ておった事情でありますけれども、近年の様相を見ますと、いわゆる天然林の利用ということにもおのずから限度があるということで、いわゆる資源培養的な見地からの造林事業というものが相当手厚い保護のもとに各国とも行われておるということが現状であろうと思います。一般基礎物資としての木材という観点から考えますと、確かに終戦後だけの状況をお取り上げいただきましてもおわかりいただけますように、一般的なものに対しましてややおくれて上昇傾向をたどり始めたのでございまするが、ある時期から以降というものはそれを追い越しまして、しかも現在のようなかなり低調な経済情勢の中におきましても、木材価格につきましては非常に固い調子を続けておる、こういうことが実はかなり顕著な現象であるように思うのでありますが、私どもといたしましては、やはり過去における上昇の趨勢というものの上には乗っかりながらも、他の基礎物資に比べますと将来にわたって相当強い調子が続いていくだろうということを申し上げて差しつかえないように思うのであります。と申しますのは、やはり一般的に資源と消費というものの不均衡からくる事情がもたらす結果であろうと思うわけでありまして、従ってそういうような将来の見通しのもとに立ちまして実はこの拡大造林事業というものも考えておるわけでありまして、従ってあくまでもこれはいわゆる経営造林という立場において事柄を進めていくという基礎がこの段階においてはおおむね見通しがつく、こういうことでこの計画を取り上げて推進いたそうといたしておるわけでございます。
  138. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一ぺん元へ戻りますが、土地の高度利用という面から申しまして、今の分収造林計画だけでは十分でないので、おそらく今後とも官行造林または部分林制度を活用されて、不完全利用面の利用度を高めていくということになっていかなければならないと思うのです。しかし政府としては、木材需給計画のバランスをとりたいために造林計画をやるのだということになりますと、その圧力はそう強くはできないと思うのです。一つの経済界の見通しから、木材の需給が困難であるから協力を要請するということになるでありましょうし、また一面土地の利用ということになりますと、これは国の生存の上に非常に大きな影響を及ぼすものであるから、この面からいけばかなり強制的な法制的措置をとり得るのであろうと思うが、経済面からするとそう強要はできない。やはりこういう狭小な土地を高度に利用していかなければ国の存立に影響してくるということになりますと、そこに所有者に対する強力な権限を発動し得る余地が出てくると思う。そういう面からいきまして、どうも今度の点は、土地の高度利用という面から出発した分収造林ではなくて、全く経済面のみから考えられた分収造林計画ではないかという歯がゆさが出ておるのであります。そこで私は高度利用というようなことをここで質問いたしたのですが、まあそのことは別にいたしまして、問わないことにいたしまして、官行造林及び部分林を今後分収造林と同じように強力に進めていかれるのであるかどうか、この点を一つお伺いしたい。
  139. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 お話のように確かに私どもといたしましては、ある時期においては、いわゆる造林推進という問題を、国の要請に基く一つの強制的な措置によりまして進めた時代もあったのでございますが、現状をもっていたしますと、ただいま申し上げましたような長期見通しの上に立ちましても、いわゆる経済造林ということによりましておおむねこれはその軌道に乗せ得るということを実は確信いたしておるわけであります。と申しながらも、この造林事業の中には多分に公共的な性格を持ったような対象も実はあるわけでございまして、こういうものに対しましていわゆる経済造林というものを誘導するということは、これは本来的に非常に至難な問題であるわけであります。こういうような対象にこそ、いわゆる官行造林事業のように国の資本による造林事業というものが進められていっていいじゃないかということで、実は大正十年に始まりまして約三十万町歩計画を目標にして、おおむねその目標を達しました機会に、さらに三十年以来第二期官行造林事業というものを計画いたしまして、その目標は、ただいま申し上げましたように、多分に公共的性格の高い対象、いわば水源林造成といったような事業に焦点を合せましてやって参りたい、また一般の広い意味の経済造林と考えられているような面につきましては分収造林でやっていきたい、こういうふうに実は考えておるのであります。官行造林の予定は、年によって違いますが、大体年間一万八千ないし二万七千くらいの規模で続けていく予定で現在おりますが、おおむねの目標といたしましては、三十四万町歩ぐらいは官行造林で今後進めて参りたい、かように考えておるのであります。  部分林につきましては、これは明らかに官行造林事業の場合と全く反対のケースであるわけでありますが、これらにつきましても、地方対策といたしまして、希望のある向きにつきましてはこれを積極的に進めて参りたい、目下五万八千町歩ぐらいの面積しかないのでありますが、今後これをさらに十万町歩ぐらいに拡大いたしたいということで進めておるような情勢であります。従いましてこの分収造林事業を実施いたしまする対象と官行造林事業を実施いたします対象は、地帯的にもやや明確な区分がつくということでありまして、そういう意味におきまして、両者の競合を排しながらそれぞれの特性に応じた進め方をやって参りたい、かように考えております。
  140. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで、官行造林についてもう一点お尋ねしたいのですが、三十年に官行造林法を改正いたしまして、造林対象目標の拡大に対しまして目下施行しておるのでありますが、この拡大は、従来やっておりましたものを放棄して水源林にだけ制限をしたのではないはずであります。しかし予算上は、従来とって参りました公有林地に対する官行造林はこれを放擲いたしまして、主として重点的に水源培養地域にのみ官行造林を行うというふうに、むしろ縮小した態度をとっておられるのじゃないかと思う。そこで私がお尋ねしたいのは、一方に民間に、経済的にも成り立つ造林であるということで、分収造林計画を経済的な立場でもちろん強要されるでありましょうが、一方国土保全の上からも、また地方山村の経済の発展の上からも、また山林所在町村の状態から見ましても、資源の不足な地方自治体育成の上から見ましても、もっと官行造林を拡大する必要があるのではないか、もう一段と拡大していくべきじゃないかと思うが、この点いかようにお考えになるか、伺いたい。
  141. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいまも冒頭に御質問があったのにお答え申し上げたのでございますが、官行造林事業とあわせまして、近年はいわゆる民有保安林の買い上げをいたしまして、必要な治山施設を実施いたし、その機能を長く責任を持って維持管理する、こういうことで、いわゆる一般の林野行政への協力を、国有林野事業の毎年の益金の一部をもちましてやっておるという事情があるわけでございます。今後時代の新しい要請にこたえまして、さらに国有林野事業が一般の林政のおくれた面の推進に、その資本力と組織力を利用いたしまして協力をするという面の問題が検討されなければならぬという段階にもあるように思うわけであります。そのように考えますと、かれこれ官行造林事業といたしまして、全体の一般林政協力の一部としてやりまする仕事にもおのずから限度があるのじゃなかろうか。ただいま申し上げますように、年々の規模というものをさらに一そう拡大をしてやって参るということには限度があるのではなかろうか、かように私ども考えておるわけであります。しかも一般の造林資金の入ってきにくい、いわゆる経済造林というものの対象になりにくいような公共造林の性格を持っている対象地こそ、官行造林でやって参る、そういうことによりまして、一般の分収造林事業を進めまする対象地域と官行造林をやっておりまする特殊地域というものが、お互いに妙なからみ合いをいたしませんようにしながら、両々相待って推進して参りたい、こういう考え方でおるわけであります。
  142. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると、こう理解してよろしゅうございますか。三十一年、二年は水源涵養的な地帯にだけ官行造林をやってきたが、従来のような地域に、法律上はもちろん当然でございますが、予算上も拡大していくのであるというふうに理解してよろしゅうございますか。従来通りの地域もさらに遂行していくのだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  143. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 御承知のように官行造林事業といたしまして、私有林のいわゆる水源というものの造林も実はできることにいたしたわけであります。公有林の場合におきましては、必ずしも水源林造成事業のような対象地だけを官行造林事業の対象にするということには、法律上の明文はなってないわけでありまして、適当なものを選べるということになっておるわけでございます。しかしながら今後の問題といたしましては、むしろ新しい契約地に対しましては、重点はあくまでも水源林のようなものにしぼって契約を進めていくようにする。と申しながら、そういう地域に介在しておりますものとか、あるいは過去においてすでに契約済みのものにつきましては、一般林地における官行造林事業も合せてこれをやって参る、こういう考え方に立っておるわけであります。そういうふうになりますと、官行造林事業自体のいわゆる分収率の問題にも触れまして、この新しく展開しようといたしておりまする分収造林事業との間にそういう問題をめぐっての妙なくっつき合いの生じないような措置も講ずる必要があろうか、かように考えておるわけであります。
  144. 川俣清音

    ○川俣委員 そういう衝突をおそれてさらに官行造林を縮小するような——律法上は縮小する必要はないのですけれども、実際的に予算処置としてはかなり対象面積を縮小しておる、制限をしておるという傾向があると思う。これが地方によりましては、あたかも法律が改正されたような印象すら持っておるところもないとはいえない。そこで問題は、一方において造林の必要を強調されまする反面において、官行造林の地域を縮小するというような考え方が出て参りますと、この精神的な打撃が相当大きいのではないかと思うのであります。かなりPRが必要なときに、みずからこの事業を部分的に縮小するというようなことが行われますと、この規制の上に非常に影響を来たすであろう。もう一つはこの官行造林の負担率と今度の分収林の負担率とが相当相違するので、やりにくいところはあろうと思いますけれども、久保田君が質問いたしましたように、やはり公有林地の中には、かなり粗悪林地を押しつけられたという形において、あるいは未利用部分を公有林地が持っておるというような形において、利用度の低いところを持っておるものもたくさんあるわけであります。従ってこれらに対しましては、特段の造林計画を立ててやる必要があるだろうと思いますので、今の質問をいたしたのでございます。  そこで問題を改めまして、一体林野庁の特別会計というものについて再検討をする必要があるのじゃないかというふうに私考えます。これは年度会計で、一つの会社と同じような収支計算を出されておりますけれども、本来はこれは財産の処分益でありまして、事業益ではないのであります。今後造林計画が進められて初めて事業益というようなことが考えられてくるのです。大体民有林は伐採され、国有林は国民の援助のもとに温存しておいて、利益で——利益と申しますか、伐採益でありまして、必ずしも利益という判断はこれはできないのではないかと思うのであります。それを利益があるとかないとかいうような判断で、独立採算制で利益があるないというような特別会計のあり方について、もう少し再検討されなければならぬと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  145. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいまのお話のように、いわゆる天然林の伐出事業であります限りにおきましては、必ずしもこれは厳密な意味の利益ということには相ならないというお尋ねも私はあり得るかと思うわけでありますが、要するに引き受けました財産というものを維持存続しながらそれに基いて毎年の経常的な事業を計画し、これを規律するという建前の上に立っての制度を実は打ち立てておるということに御了解をいただきたいと思うのでございますけれども、なるほど一方には伐採しておきながら、一方においては非常に温存しておるではないか、こういうようなお考えもなくはないのでありますが、決して意識的にこれを温存するという考え方のもとに立っておるわけではないのであります。いわゆる従来からの国有林の運営方式というものに規制を受けてこういう結果になっておる。しからば果していつまでもこういうような方式をとってよろしいかという問題につきましては、これは十分に再検討されなければならぬ時期であるということから、実は今年度から国有林野事業の体質改善を主といたします事業の合理化計画というものを打ち出しまして、民有林と相ともに歩調を合せまして、この生産力の拡充強化の対策を取り上げよう、かようにいたしておるわけであります。
  146. 川俣清音

    ○川俣委員 木材として伐採をいたしまして、それからの収益を上げていくというのは、これは本来の業務かもしれませんが、たとえば国有林野を処分をいたしまして取得をいたしておる金額も相当な金額に上っておると思います。これは別な言葉で言えば、自分の資産を食いつぶしたことになっております。これに見返りになるような資産が確保されなければならないのであろうと思われるわけであります。またはこれを山村民に還元をしていくというような考え方が出てこなければならないのではないか。そういう意味で一面において保安林の買い上げ等が行われておるわけでありますが、もっと進んで造林の不適地であろうとも、国土保全の上からまたは経済林として成り立たないようなところを国有林が買い上げて、もっと大きな犠牲を払って造林をするというような考え方が出てこなければならないのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  147. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいまお話のように、確かに国有林を売り払いまして金にかえたというようなものもあるわけであります。こういうようなものが積り積りましていわゆる歳計上の剰余金という形で、利益によって補助されておる、こういう現状にあるわけでありまして、いわゆる山なり物なりが金に変えるという実情であるわけでございます。そういう姿はあるわけでございますが、とにもかくにもこれだけの一つの余力といこうものが現実の面においては一応目につくのではないか。しかも一方において、民有林事業というものはなかなか計画通りに進んでいかないということになりますと、国有林野事業としてこれらに対する何らかの協力措置というものが必要になってくるということは当然であろうと思うわけであります。そういう意味におきまして、冒頭の井出先生の御質問に対していろいろ申し上げたのでございますが、国有林野といたしましては適当な事業を取り上げまして、一般林政の進展の上に貢献するような仕事をさらに従来のものに加えて措置すべく目下研究を進めており、その研究の結果を得まするならば当然法律改正の措置等も伴うわけでございますけれども、私どもといたしましてはこれをやって、一般の要望にこたえるような仕事のあり方に国有林野事業の運営とその方針自体を改めて参りたい、こういうように考えております。
  148. 川俣清音

    ○川俣委員 井出委員の質問に対する答弁の中に、将来民有林と関係する林道の開発であるとか育種場の経営をさらに促進するとかという御説明でした。私はさらにつけ加えまして、地元山林地帯の経済の発展などを考慮しなければならないであろうと思います。国有林は、もちろん国有林として国が管理し経営をして保存がされておりますけれども、地元山村民の愛育のたまものでもあるわけであります。従いましてこれらと相ともどもに国有林が存在するわけでありますから、地元山村民に対しまする経済的な援助と申しますか、発展についての計画もやはりこれは考慮されなければならないと思うのであります。そこで具体的にもう一つお尋ねしたいのですが、育種場を経営するということは必要だと思いますが、今まで母樹、母樹林等について指定はいたしておりますけれども、保護が足りないのではないかと思うわけでございまして、今後育種場を経営するということになりますならば、当然母樹、母樹林等についても考慮していかなければ完璧でないと思うのであります、御存じの通り法律はありますけれども、これに対する育成というか保護が行き届いていないと思うのであります。これはもちろん一般会計で見ることが、できないわけではありませんでしょうけれども、ここに進んで民有林の開発を志したからには、母樹、母樹林等についても一段と力を入れる必要があるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  149. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 林業種苗法におきまして母樹、母樹林等について指定をされまして、指定されたものに対してはこれに対する補償をするという道が開かれておるわけでございますが、必ずしも母樹林ないし母樹のその後の管理が十分でないという現状につきましては、私どももその実態を承知しておるわけてあります。昭和三十二年度以降、新しく林木品種改良事業というものを始めて以来、従来の母樹林あるいは母樹というものを育種的な見地から再検討いたしまして、毎年おおむね二万町歩の計画をもって五カ年間に終了するといういわゆる採種林というものの選定を実はいたしております。こういったような地帯に指定されたものの管理につきましては十分徹底をしていきたい、かように考えております。
  150. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がなくなりましたので、もう二点だけにとどめたいと思います。どうも林野庁はときどき森林所有者という名前を使うのでありますが、日本土地区分については、森林所有者というものはない。もし土地所有者でありますならば、このときには、地目としては山林所有者と畠の所有者、田の所有者ということであって、森林所有者という登記はないと思うのであります。もちろん山林所有者が森林を所有していることもあるだろうと思いますが、分収造林の対象になるのは森林所有者ではなくて山林所有者だと思うのであります。この点は法律的になかったかと思うのでありますが、私一度あったように思ったのでお尋ねしたのですが、その点については明確に区分されていると思うのでありますが、この点についてもう一度お伺いしておきたい。
  151. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 法文としては土地所有者ということに明確にいたしております。
  152. 川俣清音

    ○川俣委員 次に、森林公団法についてお尋ねしたいと思いますが、森林公団は、最初は余剰農産物の資金を当て込んで未開発資源を開発し、林道を開設して森林資源を開発するのだという建前をとっておるのでありますが、今後分収造林をこのままの法律では施行できないような段階になった場合におきましては、最初質問いたしましたように、土地の高度利用の面からと造林計画を強力に遂行していく建前からいたしまして、これに協力しないような土地は国が買い上げることは困難にいたしましても、少くとも公団がこれを買い受けることができるような道を開き、みずから造林計画を進めていくというような方向に進むべきではないかと思うのでございます。また森林公団はさらに造林に寄与していかなければ開発だけではその使命が十分ではないのでありまして、結局開発すると同時にみずから進んで造林計画を行うという段階にまで到達させることが必要でないかと思いますが、この点についてはいかような見解をとっておられるか、伺いたい。
  153. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、最近の造林事業の進展趨勢から見まして、いわゆるただいま御質問になりました何かどうしても協力しないところに強制措置までも講じてやる必要があるのではないかという見解をとっておるわけであります。おおむねのところはただいま申し上げましたように、一応促進措置だけを適宜考慮しさえすれば進んでいくものだ、しかも一般的な行政の中で造林推進を行おうとしておる、こういうように考えておるわけであります。ただ森林開発公団におきましては、現行法に基きまして委託を受けて造林をするということを実は規定いたしておるわけでありますが、このための資金はいわゆる公団の資金のやり繰りによりまして委託を受けて造林をいたしまして、十六年の年賦償還によって投資いたしたものを返してもらう、こういうことで実は内容規定がされておるわけでありますけれども、現在までには委託造林についての希望は全然出ておらぬわけであります。と同時に最近の公団の引き受けでありますと、余裕金の一部をもってこういった種類の事業をやることについてもいろいろ問題があるわけであります。しかしながら現在の公団開発地域だけを見ましても、その地域内の造林事業というものは決して停頓しておるわけではないのでありまして、むしろ近年におきましては、新しい伐採地に対しましていわゆる分収造林というような方法による受託造林が行われるような情勢がかなり顕著に出ておる、こういうことでございますので、公団の資金において余裕のあります限りにおきましては、規定にのっとって一応受託造林というものをいたすつもりでおりますが、そう積極的に公団の事業として造林事業を取り上げて参るという意思は実は持っておらぬわけであります。
  154. 川俣清音

    ○川俣委員 分収造林にせよ自主造林にせよ、強力に進めていくということになりますと、法的な背景を持つかあるいは経済的な背景でいたすかということになると思うのでありまして、法的な問題については、先ほど申し述べましたから、経済的な面から申しますと、森林公団または森林組合、森林組合については今弱体であるという批判もないわけではありませんけれども、森林組合または森林公団が担保金融をいたしまして、自力造林または分収造林に寄与していく、その回収のつかなかったところのものは買い受けるというような、幾らか公け的な機関かまたは公共的な性質を持った機関がそれらの土地を引き受けるというような方向をとっていかなければ、日本のように非常にわずかな面積を持ち、経済的にも弱い基盤の上に立っておる森林所有者の多く存在するときには、そうした山林をあるいは林地を担保金融をして造林計画を進めさせる、不時の場合にはそれ引き受けるというような機関がなければ、いたずらに分収造林をいたしましても、その所有点がどんどんとかわっていかなければならぬ、または自主造林をいたしましても、せっかく自主造林をした土地を売買しなければならないというようなことになりますと、この分収造林の目的、自主造林の目的の半分が喪失することになると思うのでありまして、それをやや公共的な機関に委託をする、または担保で取られましてもあとで買い戻しができるというような経済的な裏づけをして、造林計画を進めていく必要があるんじゃないかと思うのですが、この計画を近く分収造林計画の裏づけとして考慮される余地がないかどうか、この点を伺いたいと思います。
  155. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 非常に弱い森林所有者でもありますし、要するにインフレが進行する過程におきましてもあるいはデフレのときにおきましても、山林というものがまっ先に処置されやすいというような現状にありますことは私どももよく承知をしておるのでありますが、何かこれを自己保有させるために特別な措置を講ずべきであるという問題につきましては、分収造林の問題とは別にいたしまして、林野庁といたしましてはかねてから研究はいたしておるわけであります。そういった問題について引き続き研究をして実現を期して参りたい、かように考えるわけであります。
  156. 川俣清音

    ○川俣委員 分収造林のときにこれは考えるべぎだと思うのです。非常に不利な条件で分収造林計画をしなければならない。これは国の要請だからやむを得ないということで契約をされることは経済の実情に合わない計画をしいられることになる。それならば森林組合に委託をする、または森林公団に委託をして、そうして三者契約をしていくという方法をとるべきではないか、非常に弱いのです。いわゆる協定だということになりますと、弱い者が弱いままに契約の上に出てくるのではないか。従ってこれを森林組合が一括して委託を受けて、森林組合が契約の当事者になる、あるいは森林公団が委託を受けて当事者になるというようなことをすべきでないかと思う。そういう点についてもう一歩前進する必要があるだろうと思いますが、今急に法を改正あるいは修正しようという意図はないにいたしましても、漸次二年、三年経過のうちには、そうした事態が起ってくるということが予想されますので、今から検討をしていただきたいと思います。それでは私の質問は終ります。
  157. 中村寅太

    中村委員長 芳賀貢君。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 森林開発公団法の改正に対する質疑をいたします。森林開発公団法ができるときに私たちは審議をしたのですが、一番問題になったのは、余剰農産物に依存して公団の資金調達をやることに対しては非常に不安があるのではないか、不安定ではないかとのいうことを、われわれは当時強く指摘したわけなのです。ところが余剰農産物に依存した場合においても、三十億の益金調達はもう絶対間違いありません、もし最悪の場合、それが不可能な状態になった場合においても、他に十分資金確保の道がありますということを当時政府が言明しておられた。そういうことを思い起した場合において、今度の改正の場合に公団が債権発をしなければならぬというような必要はないのではないかと思いますが、どうしてもこの債券発行をやらなければならぬという、法の改正を要する必要点、その点をお尋ねいたします。
  159. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 当時の見通しといたしましては、熊野、剣山両地域におきます第一次開発計画の所要資金の約三十億というものは、余剰農産物の受け入れによる見返り資金をもってまかなえるということで発足いたしたのでございますが、第三次協定があのような事情で中止をされましたような関係をもちまして、この資金による受け入れば三十一年度十億で一応やまったというような状況にあるわけでありまして、三十二年度以降におきましては余儀なく資金運用部の資金を受け入れることによりまして、当初三十二年度分として九億の資金を得たのでございますが、年度中途において財政投融資計画の一部変更に伴って五億円が繰り延べということになって、残りの四億円を農林水産金融公庫を通じて資金の借り受けをすることにいたしたのでございます。そういったようなことになったので、他の措置が伴わなければ引っ込みがつかぬことになるのではないか、こういうことに相なりまして、実は見返り円資金の償還期限を当初十年ということにいたしたのでございますが、これを二十五年に延長するというような内部調整をいたしますこととあわせて、この事業の実施に伴う国庫補助金を当初の予定では事業実施の留年から四カ年間に均等分割いたしまして繰り入れることにしておったのでございますけれども、それを事業実施の翌年度には四、その翌年度には三、その翌年度二、最後に一というふうに当初によけい繰り入れるということによりまして、公団の資金繰りを楽にするという措置をいたしたのでございます。ところがただいま申し上げました三十二年度におきます四億円の資金借り入れというものが一年間の短期借り入れでございまして、三十三年度中にはこれを返さなければならぬというような特別なる事情もありまして、かりに三十三年度に災害が発生することに相なりました場合においては、公団資金のやりくりだけで緊急な災害復旧が十分にまかない切れないというような事態にありまして、この機会に債券発行の機能を公団自身が持ち得るような措置をお願いする、こういうことにいたしたのでございますが、私どもといたしましては、あくまでも公団資金運用の中でこういった資金もまかなって参りたいというのが本旨でございますので、三十三年度のような特殊事情の年度を経過いたしますと、その後おおむね災害発生をみるようなことはございましても、ある程度の資金というものはやりくりでいけるのではないか、かように考えておるわけでございますので、三十三年度といたしましては、ただいま申し上げたような事情に実はあるわけでございます。と同時に公団自身が債券発行の機能を持ちますことによりまして、資金運用部資金を直接に公団が借り入れるという道も開かれる。でありませんというと、やはり直接借りということができないというような事情もございますので、三十三年度十五億の資金が予定をされておりますが、これらを直接借ります方法といたしましても、どうしても森林開発債券の発行のできるようなふうにいたしたい、こういうわけでございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは本年度資金計画に予定されておる資金運用部資金から十五億の借入れをやる。これは直接運用部資金を借り入れる場合においては、債券発行の機能を持っておらなければ借り入れができないということなんてすね。
  161. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 それはできないのであります。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると法律の改正が行われなければ、結局借りることができないというのですか。その場合でも他に政府は産投特別会計とか、いろいろな特別会計を持っておるので、特にことしは余裕金を四百五十億をたな上げするような措置さえ講じておるのです。ですからそういうような国家財政に余裕がある場合には、余剰農産物の資金に依存することができなかったような事態が起きても、国家財政の中において森林開発公団の資金運用がやれるような手配というものは十分講ぜられると思うのですが、この点は瀬戸山さんいかがですか。
  163. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 現行の開発公団の第三十三条でありますか、政府または金融機関から長期または短期の借り入ができる。この政府から借り入れするというのは、先ほどお話しになりましたように、余剰農産物の資金を借りるという予定をしておったのであります。それが不可能になりましたので、他に直接借り入れることができないようになっておりますので、そういうことで公債発行の権限を与えよう、こういうことであります。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから余剰農産物の特別会計からの資金を借りることができなくなった場合、それ以外の政府の各特別会計等から、絶対に債券発行をやらなければ、その資格をとらなければ借り入れができないのかどうかということなんです。そういうことはないと思うのですが、どうですか。
  165. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 昨三十二年度未、資金運用部資金をこれに引き当てるということできておりますので、資金運用部資金の場合においてはこういう機能がないと借りられないということが、先ほど御説明申し上げましたように、この発行機能を与えることによりまして、あわせて可能になる、こういうことに相なるわけであります。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 とにかく昨年も九億円借り入れしているのでしょう。これはどういう形ですか。
  167. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは実は直接借りしなかったのでありまして、そのうち五億円は投融資計画の繰り延べによりまして、一応四億円だけにつきまして農林水産金融公庫から借りるということにいたしたわけでありますので、いわゆる一年間で返還しなければならぬ短期資金というものが、ここで初めて生じたわけであります。こういうことをやっておりましたのでは、とうてい公団のやりくりがつかない。計画通り事業実施もできないということが、実は直接借りをいたさなければならない理由であるわけであります。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 お尋ねしますが、公団は出資の関係はどうなっておるのですか。
  169. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 全然政府の出資はございません。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 出資のない公団、これがたとえば債券の発行をやるという場合に、その根拠ですね。債券の発行を行うというのには、たとえば信用度とか、いろいろ資格条件が出てくると思うのですが、たとえば他の公庫の場合には産投特別会計からの出資とか、そういう一つの条件も加わっておって、そして債券発行もやる、それから資金運用部からの借り入れもできるというような仕組みが、通常の形だと思うのですが、全く出資を持っていない公団ですから、その点いかがですか。
  171. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 政府出資がなくても債券の発行はできる、私どもはかように考えております。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはやってやれぬことはないかもしれないが、形態の上からいえばそういうものはちょっと整った姿ではないのではないかと思いますがどうですか。
  173. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 既存の農林省関係の二公団につきまして同様な条件であるように思います。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは機械開発公団や愛知川水公団債券発行をやっておるのですか。
  175. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 現実に債券発行は、いまだやったことはないと思います。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もし債券発行をやるという場合は、債券発行の限度とか、計画等に対してはどういうような内容を持っておりますか。
  177. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 一応三十三年度におきましては、一億という予定を実はいたしておるわけであります。と申しますのはちょうどこの地域は御承知のようにかれこれ災害のあり得る地域であるわけでありまして、今まで幸いにして全然災害があっておりませんけれども、おおむね初年度当りにおきます事業費、投資額の五%程度というものを一応災害資金として見積らなければならないという意味で一応一億ぐらいのものを予定しておるわけでございます。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこの問題はしばらく保留して、次の分収造林の関係の質問をいたします。この分収造林特別措置法は、相当無理をして作った法律のように私は解釈するわけなんですが、そういう点はありませんか。
  179. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 心ずしも無理心々に作ったというわけではないわけでございまして、ただこういう措置をいたすことは、当面の情勢からいたしますとぜひとも心要であると言いながら、法律上ぜひとも規定しなければならぬような事項がごらんの通り非常に少いといったようなことで、いろいろと事務的に手数を要したという経緯があるわけでございますが、あえて情勢を押して無理をして作ったという意味合いのものは何もない。むしろ私どもはこういう措置をすることによって林政の一番問題であります造林推進が補える、かように確信まといたしております。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば民法の規定による共有物の分轄請求権、この規定を排除するとかあるいは地方自治法の重要財産の処分に対する投票規定、この問題を排除するか、既存の法律とかあるいは国民に与えられた財産権に対する程度の制限とか抑制を行うようなことをあえてこの法律はやっておるわけですね。ですからそういう点には私は相当無理があるのじゃないかと思うわけです。
  181. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 私からお答えいたします。御存じの通りに、先ほど来林野庁の長官からお答えいたしましたが、現在自分の資金で自分の山に造林する、それから補助の制度もあり、あるいは融資の制度もあるということで造林計画を進めておるわけでありますが、先ほど御説明を申しました約五十一万町歩というような一種の未利用の、しかも補助あるいは融資によってその土地の所有者ができかねる、そういうところに御承知のような三者あるいは二者の協力によってやらせよう、こういう道を開こうということであります。しかもその内容の大部分はいわゆる当事者の任意の契約によってやり得るのでありますから、法律事項としては一般の法律、民法等に従いますので、法律事項としてはきわめて少いのであります。そこでいわゆる民事上と申しますか当事者の契約によって、場合において、その分収造林契約が結ばれて、そういう一種の荒廃地に造林を進めることのやりやすいように、その道をできるだけ簡単にしてやろう、こういうことだけがこの法律の明文に現われておりますので、一つは先ほど御説明を申し上げましたように、山林所得ということで所得税の面である程度有利にしてやろう。それからもう一つは、ただいまお話しの民法上の共有になりますので、共有分轄がいつでもやれるということになると安定した分収造林の計画が進められない。従っていつでも分轄請求ができるというような制度はこの際排除しなければならない。もう一つは先ほども御議論がありましたが、こういう長期にわたる契約について自治法の特別の規定を排除しよう、こういうことに相なったわけであります。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 分割請求権の問題にしても、これはやはり個人の国有の財産権に対する規定なんですから、これを排除するとか制限するということは、やはり公共のためとか公共の利益とかそういうそれに対抗するものが明確でなければ、ただ単に個人間の分収契約を結んだことだけで分割請求権を排除するということは、これはやはり相当行き過ぎになるのではないかと思うのですがいかがですか。
  183. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 この第三条で民法二百五十六条の第一項を排除しておりますのは、民法第二百五十六条自体が共有はできるだけ避けたいという気持の規定だと思います。そこでその共有関係者の持ち分を有しておる者は、いつでも当事者の一方が分割の請求をすることができるということが建前になっております。でありますので、この分収造林は二者あるいは三者間の契約によって一つの二十年あるいは五十年という長期のいわゆる立木の成長を期しておるわけであります。その立木が共有になっておりますので、いつでも当事者の一方から任意にそれを分割請求ができるのだということになりますと、不安定な要素が出てくる。そこで二者あるいは三者のうちの一方的な考え方でそういう分割を請求することを許すということは適当でないという考え方であります。しかし今個人の自由あるいは個人の財産について強力な制限を加えるじゃないかというお話でありますが、その点は当事者の契約でありますから、もし両方が合意の上であればこれを分割排除するということはないわけでありますので、当事者の意思と申しますか自由あるいは個人の権利を不当に圧迫する、こういうふうには考えておらないのであります。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その問題はまたあとでお尋ねしますが、この法律内容を見ると、第一条にも土地についての造林ということが表現されていますが、この法律でいうところの土地というのはどういう概念を持っておるわけですか。
  185. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 この一定の土地というあれでありますが、これはやはりあくまでも造林を相当とする土地ということでありますと同時に、その中で個人がやはり分収造林契約を希望する土地ということをおおむねの場合考えておるわけでございます。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではすでに造林をされた、あるいは自然林でもかまわぬですが、荒廃したり放置されておるけれども、形態はやはり林地であるところをさすわけですか。
  187. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 必ずしも林地であるものをさすわけではないのでございまして、たとえば現在原野だというものの中で、本人があくまでも造林を相当とするという原林野なり分収造林によって造林いたしたいというものはあるということであります。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは土地の利用区分からいうと、これは所有者の認定だけで造林に適しておるとかあるいは農耕適地ということにはならぬと思うのです。たとえば農地法等の規定から見ても、本人はあくまで造林地にしたいとしても、本人の意思だけでこれをきめるわけにはいかない場合が非常に多いのです。地方においても現在農耕適地にこれをきめるとか、あるいはこれはむしろ農耕適地よりも植林適地であるというような判断が非常に激しく行われて、たとえば北海道等においても、同じ北海道庁の内部においても、所管によって考え方とか論点が違うというような場合もあって、これはたぶん林野庁と農地局が中に入って、大体北海道の方針は一定基準をきめたというふうに私は理解しておるのですが、この場合においてもやはり農地法というものがありますので、農地法と本法との立場を考えた場合に、これは法律のいずれが優先するということにはならぬと思いますが、やはり土地に対しては農地法がむしろ優先するのではないかと私は考えるのですが、その点はいかがですか。
  189. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私ども考えもその通りでございまして、一たん分収造林契約に基いて造林が行われたとしても、その後になりましていわゆる農地法に基く未墾地買収というものの対象にするということはあり得ると考えております。問題は明確なる土地利用区分というものがそれぞれの土地について行われるということが確かに前提であるわけでございますが、しかしながらそれを最末端までに徹底いたしました上ですべての仕事が出発しなければならぬということになりますと、非常に手間ひまがかかりますので、私どもといたしましては、おおむね造林を相当とするという土地、しかしそれは一方においては必ずしもそうじゃないので、開拓を適当とする土地というもの、非常に分れるものがあると思うのでありますけれども、おおむねの区分、いずれかに属することが明確になる区分というものは、私はあるべきであろうと思うのでございます。ただなかなかはっきりいたしません土地については確かに問題になる個所もなくはない、私はかように考えるわけでございますけれども、おおむねの判断としては、土地所有者のそういった判断というものが基準になって進めていかれることにおいて大きな間違いはないと考えております。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀委員 分収造林方式は先ほど川俣委員からもお話があったのですが、当委員会においてもしばしば論議されたのですが、今回の方式は単に個人間における二者あるいは三者の契約によって造林を行なっていく。特に三者契約によるなんということはちょっと理解に苦しむ点なんです。土地の所有者が自分の意思で植林をやる考えは絶対にない。それは経済的な能力がないという場合もありますが、そういう場合にはやはり融資造林の道管もあるわけですからして、国あるいは公共同体が適切な指導とか勧告を与えるようにして、資金がないとすれば融資の道をそこに与える。そうしてある程度強い公的な意思をそれに加えて造林をきせるというようなところに持っていかなければいけないのじゃないかということが今日まで論議されたことなんです。ですからせっかくこういう新しい試みをするような場合においては、今日まで論議されたようなそういう方式を一歩も二歩も前進するということであれば、これは共鳴できるのですが、単に個人間における契約方式だけでこれをやっていくということになると、それほど大きな成果というものは上らないと思うのですが、いかがですか。
  191. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 御承知のように、従来の方式は確かに土地所有者と造林者の二者の契約による分収というものが多かったわけでありますが、やはり何といいましても、自己調達すべき資金の調達がなかなか困難だということが造林を進めていく上に大きな隘路をなしておるという現状もあるわけであります。しかも一方におきましては、確かに将来の木材の計画事情というものを頭に描きまして、適当な造林地を確保いたしておきたいというような希望を持つ関連産業も相当ふえておるという現状があるわけでございます。しかも山村地帯におきましては、自己労力を持ち、さらに苗木の調達に値いするだけの補助金を受けさえすれば、自力でも造林ができるというような事情にありながらも、自分たちの造林をすべき対象の土地が求めにくいというためになし得ないでおるというような事情のところもあるわけでございます。私どもといたしましては、まっ先にそういったものを取り上げまして、分収造林方式による経済発展を考えて参りたいというように考えておりますことは、すでに申し上げた通りでございますが、現にいわゆる費用負担者というものが造林のために必要とする資金を提供いたしまして、土地所有者からも費用負担者からも信頼される造林者というものが造林事業を責任を持って行い、さらにその後の維持管理に当って参るというような形のものがすでにでばえておるという実態をとらまえまして、そういったような三者契約の場合の内容を発展させますために必要な指導を加えて参りたい、こういうことであります。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この場合契約によるのですか、土地所有者という場合は、土地だけは所有しておるけれども、それ以上の能力は全然ない、それに造林者が加わるわけですが、これは造林能力があるということになればもちろん経済能力を伴ってということに私はなると思うのですが、どうなんですか。
  193. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 確かに自己負担分の経済力を伴って、しかもみずからが造林をし、管理経営に当って参るということの可能な造林者というものは十分にあるわけでございます。ところが造林事業の実施能力なり、機能としての能力なり、あるいは維持、管理する場合の機能としての存在は持ち合せておりましても、自分自身で造林をする場合の自己負担分の資金調達のできないという造林者も同時にあるということはいえると思うわけであります。
  194. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合の造林者ということは、単に労力提供だけに限定されてしまうわけですか。負担能力も持っていない、経済能力もない造林者ということになると、ただ植林したり、手入れをするために労力を提供するだけに終るのじゃないですか。
  195. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 そういう典型的な三者の契約の場合におきまする造林者というものは、決して労力提供者というような意味合いのものじゃございませんで、私が一応考えられるものとしていえますのは、たとえば県でありますとか、あるいは森林組合あるいは農協だとか、こういうようなものに相なるように思うわけでございます。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは三者協定の場合は主として造林者というのは公共団体あるいは団体ということで、個人という場合はあり得ないわけですね。
  197. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 今申し上げましたおおむねの場合におきましては団体ということに相なろうかと思います。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは団体が加わる場合の共有という場合には、これは分割請求権というものは停止されていくわけですね。この場合には民法の二百五十六条の規定は適用にならぬわけですか。
  199. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 それは団体でありましても、団体としては一個人と申しますか、三者のうちの一人でありますから取扱いは同じであります。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀委員 地方公共団体あるいは組合であってもですか。
  201. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 いわゆる公共団体とか、あるいは組合、そういうものがいわゆる分収造林契約の二当事者あるいは三当事者の一人になるかもしれません。そういう場合においては今お話の第三条の規定の適用については、やはり個人間三人と同じように、一個の単位として共有分割の請求があるかないかの判断をしなければならぬ、こういうことであります。
  202. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に分収契約をする以前にこの土地に対して使用権、たとえば入会権等を持って現存しておったという場合には、この契約が締結された後も既存の権利というものは継承されていくわけですね。
  203. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 土地所有者との関係において他の人たちがあるいは入会の権利を持っておる、そういう場合にはこの分収契約そのものには直接関係はありません。その土地所有者との間に入会権を持っておった人たちの権利はそのまま存するわけであります。ただその間の調整をしておかないと、あとで、先ほどどなたかお話がありましたように、分収造林契約によってそういう地方の人とのトラブルが起る可能性がございますから、そういう点はあらかじめ三者の間においても、あるいは県等があっせんする場合においても、その問題をよく調整してかからないと、後日問題を起すおそれがある、かように考えております。
  204. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は特に内地府県の山村の場合においては、現地の住民のそういう利益とか権利というものを剥奪するような場合も多々出てくると思う。たとえばそれが放置された林地であっても、それに対して部落の人たちがたとえば入会権を持っておった。それは権利ですからね。それは永代的に続く場合もあるでしょうから、その場合に、今度はその所有者が二者あるいは三者間において契約を締結する。しかしその土地に対して入会権を持っているのですからね。これはやはりあくまでも有効であるというようにわれわれは理解するのですが、どうでしょうか。
  205. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 土地所有者との関係では、その権利が存する以上はもちろん権利が消滅するということはありません。でありますから、今申し上げたように、もしそういう土地について分収造林契約をするときには、あらかじめ三当事者あるいは二当事者においてそれを処理するか、その問題をその契約の中に入れるかして、そういう問題を解決しなければ、後に問題が錯綜するであろうと思います。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、山林の売買は現在自由なんですね、農耕地以外は。ですから分収契約をした場合に、土地の所有者はやはり土地の所有権を持っているのですから、その場合は第三者に土地を売り渡しても差しつかえないことになるわけですね。そういう譲渡の権利というものは、分収契約においては何ら拘束しないことになるのですか。そして今度は土地が第三者に売り渡された場合は、結局土地所有者としての分収契約の当事者はやはり第三者にそのまま移行していくのかどうか、そういう点はどうですか。
  207. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 土地所有権の処分については、別にここの法律によって制限を加えるわけではございません。ただしかしその土地について分収造林契約ができますと、造林者としてはそれに対して地上権ができますので、さらに所有権を譲り受けた人に対してそれはついていくということになるわけであります。しかしながら具体的に分収造林契約をする場合においては、先ほど申し上げましたように個人間の契約でありますから、そういう場合のことも、場合によっては契約の条項に入れておかないと困る場合があるかもしれませんが、法律的にはあとの譲受人に対して地上権が設定される、こういうことであります。
  208. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、現実の問題としては、その土地の所有者が事情によってその土地を売り渡さなければならぬということになれば、その売り渡しを受ける相手方は、土地はもちろん買い受けるわけですが、その場合、当然土地所有者に将来帰属するわけですね。やはりその分割の問題や何かというものは出てくると思う。これは分割請求権はできないのだからだめなんだということにはならないと思うのです
  209. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 それは権利義務の承継がありますから、もし分割に対して将来当事者の契約によってやる場合は別でありますし、また最初契約する場合に、何年後以降は分割をお互いに請求し得るようにしておこうじゃないかという契約があればそれに従いますが、やはりその契約を承継するということになるわけであります。
  210. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に収益分収の割合の問題が出てくるわけですが、これはその地域とかいろんな事情によって違うと思うのですが、何か根拠を与えておかぬと……。二者協定の場合においてはどういう分収割合にするか、三者の場合はどうするかという、その収益分配の割合は何を基準にしてやられるお考えであるか。
  211. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは双方が出し合いました費用の比率と申しますか、そういうものが分収割合を決定します主たる要因になる。従いまして造林者の場合におきましては造林地であり、土地の所有者の場合におきましてはいわゆる地代相当額というものを中心といたしまして、かれこれ他の事情もこれに加えて決定するのだという決定のいたし方を実はいたそうと考えておるわけであります。
  212. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは分収割合は省令か政令か何かで基準を示して、それによって適正に行われるように指導されるわけですか。たとえば土地所有者の場合には地代に相当する分ということになると、その地代相当分というのは一体どの程度のものかということにもなると思うのです。あるいは費用負担者の場合は、やはり金融的な役割を持つにすぎないのですから、そこに金融をつけてやった、金を貸してやったというだけで契約に参加して分収を受ける根拠を持っているのですから、結局金利に相当する分ということになりますか。
  213. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 この基準につきましては、実は政令ないし省令でこれを定めるという意図は持っておらぬわけであります。と申しますのは、具体的に率をきめます場合の基準の考え方というのは、長官通牒で明確にしておきたい、かように考えておるわけでございますけれども、これに対しまする政令なり省令の措置は、現段階では考えておらないということでございます。それから費用負担者の分収比率の問題でございますが、これはやはりそこに実際造林費を投ずるわけでありますから、投じました額と契約満了のときまでのそれに対しまする一定の金利というものの累計額がその額を決定する場合の金額の全体になってくる、こういう工合に了解を願いたいと思います。
  214. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると石谷さん、ちぐはぐになりますね。費用負担者は投資した額の利回りに相当するものを分配として要求できる。土地の所有者はそういう資本の上に立った利潤とか金利相当分というものでなく、地代の上に立った分配にあずかるということになると根拠が違ってくると思うのですが、いかがですか。
  215. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 やはり土地所有者は地代相当額のものを毎年取得するという建前に立ちまして、それをいわゆる分収のときに一挙に回収するのだという考え方で、毎年の地代相当分に対しまして一定の率をもって契約満了のときまで加わって参る、そういう累計額というものがいわば土地所有者の場合の比率をきめる場合の主たる要因になる、こういうことでございます。
  216. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただ費用負担者の場合、いわゆる動産をそこへ投入しているのですから、十分利回りに相当しなければ出さぬですからね。これは十分な金利としての利益が上る条件のもとで費用負担者は出す。土地もやはり固定の財産ですから、その提供した土地が、評価された財産がどれだけだということになって、一方費用負担者が出した資金の利回りに相当するような割合というもので算出された地代であれば、これはどっちも均衡がとれる。土地所有者の場合はそうではなくて、いわゆる農地法なら農地法に根拠を置いた地代ということになると、金貸しの方が配分率が多くなって、土地所有者の力が非常に不利益を受けるというような現象は確かに生まれてくると思うのです。むしろこのねらいは金融資本家とまではいかぬとしても、費用負担者が指導権というか発言権を持つようなことになるのではないかということが憂慮されるわけなんですが、そういう点に対する利益の不均衡をいかにして調整するかという点は、やはり分収割合の基準を作る上においては、非常に大事な点ではないかと思われますが、規定を作るときには、そういうことを十分配慮しておきめになる御意思であるかどうか、お伺いしたいと思います。
  217. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 やはり何といいましても、双方の出し合いました費用負担というものの合計額の比率が、私どもといたしましては分収割合をきめる要因である、こういうように御了解をいただきたいのでございます。ただしそういう場合において、毎年支払うべき一定の地代額というものを、どういうふうに見込むかということは問題があると思うのでございますが、やはり土地所有者が一定の資産といたしましてこれを所有しておるというものにつきましては、その時価相当額に対して一定の比率を山かけたものによって、私どもは地代と理解いたしたい、こういうことでおるわけでございます。
  218. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、農地法に根拠を置く地代とは、だいぶ性格が異なってくるというふうに解釈していいわけですね。
  219. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 それは、いわゆる分収造林の方式による共同経営を行う場合の、最終成果の分け前をきめる基準でございますから、私どもといたしましては、農地法の場合の地代とは趣きのかわったものだというふうに考えております。
  220. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は将来非常に問題になると思うのですが、前回森林開発公団法を審議したときも、当初公団の事業の中で、やはり分収方式というものを考えられたのです。分収割合という点、あるいは林地を所有している受益者の負担区分というようなことが問題になって、分収というものがとりやめになった。ですから、これはこの法案の審議の中で結論を出すということは、ちょっと無理かもしれませんが、これはやはり今後わが国の土地問題についての問題点として残るのではないかということを、ここで指摘しておく次第であります。  次にお尋ねしたい点は、これはただ当時者間の任意の契約だけで十分だということになるのですか。あるいは契約を登記によって十分確認するとか、あるいは契約を行うということを許可とか認可とか、そういう一つの段階を経て十分確認して、それが所期の目的を達成できるように持っていくというようなことになさるお考えであるか。そういう点はこの法案には現われておりませんので、ちょっとお尋ねしておきます。
  221. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これはこの法案がかりに施行されたといたしましても、この法案の有無にかかわらず、従来通り二者ないし三者の分収造林契約というものが行われる余地があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、可能な限りこの法案によりまして今後の分収造林というものの全体を把握しながら指導して参りたい、こういうように考えておるわけでございます。先ほど来御説明申し上げましたように、いわゆる分収造林の促進をいたしますために、知事があっせん者となりまして、土地の所有者、造林者ないしは費用負担者の三者間の分収造林契約のあっせんに努めるということにいたすわけでございます。そういうことによってまとまりましたものにつきましては、その後の指導なりあっせんなりを行いますための参考といたしまして、それらの契約の内容を具体的に届けてもらうということにいたそうかと考えておるわけでございます。もちろん契約の締結のあっせんをいたします場合においては、先ほど来問題になっております、いわゆる契約内容というものを、将来にわたって問題のないように、十分に整備したものとして指導をいたす必要があるという意味におきまして、その基準を明確に指示しながら、それによりあっせんを行なって参るということにいたしたいのでございます。しかもその後におきまして、契約事項にかかわらず、なかなか十分なる履行が双方において行われにくいというような事態をもとにいたしまして、紛争等が発生いたします場合においては、この紛争の第一次的なあっせんにつきましても、知事の指導事項としてその衝に当ってもらう、こういうような一連の指導態勢を考えているわけであります。
  222. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このあっせんの規定は、これは当事者となろうとするものは、あっせんの申し出をした場合に限るわけでしょう。必ずあっせんの申し出をしなければならぬということじゃないと思う。ですから、当事者間で契約が締結されたという場合には、別に何もあっせんの申し出はないというここになるのです。ですから申し出をしない場合の方が非常に多いのではないかと思います。そういう場合に、契約の内容を確認したり、適正に行われるということを十分内容を確認する場合には、この契約というものを、何かの根拠をおいて明確にさせるということは、手続上からいっても必要ではないかと思うのですが、それはいかがですか。
  223. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 法律事項としては、なるほどそういうものは具体的に規定をいたしてあるわけでありますが、何分にも長い間の契約でございますので、やはりそれぞれの当事者は、いずれも第三者的なもののあっせんなりその指導による契約の内容の取りきめなり、ないしは一たび紛争が起った場合の処理等につきましての関心というものは、非常に深いわけでございます。従来行われております分収造林におきましても、そういった種類のことを要望する声は非常にあるわけでありまして、私どもといたしましては、この法律が出た以降におきましては、大むねのものがやはりこの法律によって扱われていくような状況になってくるものと、かように期持しているわけであります。
  224. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからその場合には、むしろ当事者になろうとするものは、締結について知事に申し出て、そしてそれによって知事が適正な介入を行なって、そして正しい契約を結ばせて、これが成果を上げるようにするということの方が、むしろ効果的ではないですか。
  225. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただ指導といたしまして、そういう方向に持って参りたい。従いましてこの法律が出たからといって自由なる結びつきによるものがなくなるというわけにはいかない、かように考えているわけでございますが、大部分のものは指導によりまして、この法律による妥当な契約を結び得るように、十分に指導できる対象になり得る、かように考えております。
  226. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからここをしっかりするために、たとえば契約をした場合は、それを届け出なければならぬとか、何か規制するものがなければ、分割権まで排除して、そして今度は契約の内容とか、契約の効力等に対しては、非常に大まかな態度で臨む。ですから当事者間が適当な取りきめをして、文書の取りかわしをすでに行なって、それで済ましてもいいわけですね。何も登記も届出もしなくて……。そういうことになると、やはり三十年とか五十年の長期にわたるのですから、だからその当事者が死んでせがれの時代になる場合もあるし、第三者に権利が移っていく場合もあります。ですから非常に長期にわたる契約の締結等については、やはり将来の事態考えて、しっかりした契約を結ばせるということにする責任はあるのじゃないですか。単にばく然とした指導だけではなくて、登記とか届出とか何かの方法で、ここをきちっとしていく必要があると思うが、そういう必要はありませんか。
  227. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 お話のように、相当長期にわたり効力のある契約でありますから、今お話にありましたようなことが起る可能性がある、こういうふうに予想できるわけであります。でありますけれども、これを法律的に規制するといいますか、契約は自由なりという立場で法律を作っておりまして、当事者が当事者自身の利益を守るという点については、単に一般法律によりまして登記したい人は登記がやり得る、こういう制度もあるわけでありますけれども、御承知のように立木登記というものはなかなか実際に行われておらない実情であります。でありますから、この点一応検討いたしましたが、必ず登記しなければならない、こういうこともなかなか実情に合わないことになりはしないか、こういうことであります。なるほど考えようによっては、ちょっと手ぬるいじゃないかという御非難もあるかもしれませんが、長官から御説明申し上げましたように、せっかくこういう法律を作って分収造林によって森林の増植をはかりたい、こういうことでありますから、指導によってそういうことのないように、これは当事者自身も将来のことを大いに考えてやらなければならないところでありますから、知事等のあっせんによってできるだけ将来不測の紛争を起さないように進めたい、こういうことを今御説明いたしておるわけでございます。
  228. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば農地法によると、小作契約の場合には、それは文書契約をしなければならぬ、その契約を結んだ場合には、農業委員会に届出をしなければならぬというような規定も、一方においてはあるわけです。ですからせっかくこういう法律を作って、このことによって当事者も利益を受けることができるし、また国としても将来の経済発展とか、林政の発展のために、これは非常にいいことになるのですから、そういう目的を明確にさせるためには、契約の内容まで立ち入ることができないとすれば、その締結した場合には、それを知事に届け出るようにするとか、何かの形ぐらいはとらしてもいいのではないかと思うのですが、そういう心配はないのですか。あなた方の生存中はないかもしれませんが、将来あり得る事態だと思うのです。
  229. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 お説のようなことがないとは、先ほど申し上げたように限らないのでありますけれども、当事者自身も、将来長いことの問題でありますから、慎重にやってもらわなければなりませんが、法律によって強制するということは適当であるかどうかというところに、重点があるわけであります。指導によっては、できるだけそういうふうにいたしたい、こういうことであります。
  230. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これ以上は論議になりますから、避けまして、それでは最後に、第四条の地方自治法の特例、実際問題として地方公共団体が二者契約、三者契約を結ばなければ造林ができないというような事実があるでしょうか。
  231. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは御承知のように、みずからの造林をするという場合もあるわけでございますが、地方公共団体に対しまして、造林を実施いたします場合には、造林補助金の交付対象にはいたしておりますが、ただ自分で自己負担をしなければならぬ部分の資金調達をするという道につきましては、実は地方自治体には非常に措置が不十分なわけでございます。と申しますのは、特別起債のような道もございませんし、農林漁業金融公庫の長期資金の貸し出しを受けるという道も閉ざされておるというような事情もございまして、やはり地方公共団体がみずからの土地にみずから造林をするということにつきましては、従来の官行造林事業等の経緯から見ましても、非常に限度があるのではないか、こういうように考えております。
  232. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この事業は、これは財産を滅失させるとか、減少させるという事態でないのだから、むしろ造林をやれば公共団体の財産が造成されるということになるわけです。ですからこの事業をやる場合は、何もマイナスにはならぬわけです。ですからわざわざ費用負担者を探し出して、造林者を求めて契約を締結して、そして重要財産の処分の投票権までも排除してやらなければならぬ、そういう貧弱な町村はないと思うのですが、どうですか、実際あるのですか。
  233. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは実際問題としてもあるわけでございます。先ほど久保田委員の御質問に対しましてお答え申し上げたのでございますが、ちょっと私どもといたしましては、これは最終的にきめられたものに対します手続的なものといえば手続的なものというような理解に立っておるわけでございまして、あくまでもこれは自力造林を中心にやって参るというような考え方からいたしますならば、最後に残されたやむを得ざるものに対しまして、こういった分収造林の造林を考える、こういう考え方であるわけであります。市町村林の場合におきましては、この経営契約の中でむしろ分収造林をすべき対象地というようなものがあらかじめ研究の上きまりましたその後に対してこういう道が行われる、こういうように御了解をいただきたいのであります。
  234. 芳賀貢

    ○芳賀委員 むしろ町村が植林適地を所有して造林しようという意思がある場合には、それができやすいような道を、隘路があれば開いてやるということに努力すればいいのではないかと思うのですが、公共団体が個人と同じような形でこの分収造林に参加しなければならぬなんということでは、健全な公共団体の育成ということは絶対できませんよ。これはやはりもう少し思いを新たにして、公共団体の所有地の造林に対しては、今までより積極的な融資とか助長の方法を講じてやらせる、そうして公共団体の財産の造成とか財政の健全化をはからせるということの方がいいのじゃないですか。
  235. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 従来から、公有林野に対しまして造林が非常におくれているというような実情に対しましては、もちろんその通りであるわけでございます。従いまして、やはり資源造成なりあるいは土地保全の問題と合せて解決する意図をもって、基本財産の増加を目標にする官行造林事業というものを、すでに大正の中期以来実施して今日に至っておる、こういうことであるわけであります。もちろん公共団体みずからの力によりまして、自主造林をいたすということにつきましての方針は変らぬわけでございますが、御承知のような事情でその自己負担すべき部分の財源確保が非常にむずかしいというような事情で、やはりそういうような措置を講じたといたしましても、なおかつ自力で造林し得ないというものがあり得るわけであります。私どもといたしましては、一契約期間が満了いたしましたあと、その後も引き続いてこういった種類の造林方式を同一の土地にとって参るというような考え方は、むしろないわけでございまして、むしろその後の自力造林の素地を作りますために、やむを得ざるものに対しましてこういう方式の造林を考える、こういうふうに考えているわけであります。
  236. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先年官行造林法を改正したときに、公共団体よりまたさらに下った部落までも対象にするような法律の改正をやりましたね。ですからそこまでやっているのだから、公共団体の場合にはやはり国と公共団体の協力で、もうすべて解決できると思うのですが、それをまたさらに後退させるような民間の発言権や何か、費用負担者がこれに介入してくるようなことになると、先ほど久保田君が言われたように、投票を排除して議員の三分の二以上の同意だけで済むということになりますと、やはりそういう事態にならんとしている疑惑が起きるということもあると思うのです。ですからこういう法律の規定を設けるとしても、本筋は公共団体の場合には、こういうことであってはならぬという態度だけは明らかにできるでしょう。
  237. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 むしろ公共団体の場合におきましては、現行の官行造林事業を拡充するという方向で扱うべきものでないかというような御議論があるわけでありますが、先ほど来申し上げましたように、この林野事業において負担いたしまして実施いたしております官行造林事業にもおのずから財政的な限度があるということで、そういった資金は、一般造林では推進しにくいようなむしろ公共性の高い対象地域にこそ造林をさせる。そういうことになりますと、やはりこういった方式で考えなければならぬという問題が当然公有林野の場合においても依然としてある程度は残るのを一つふさぐ、というのがいわばこの分収造林の考え方であります。
  238. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一つお伺いしておきますが、地方自治法の特例をここに設けた場合、こういうことが一つの先例になって次々にほかの法律が公共団体の財産処分に対する特例を設けるという事態が生じないとも限らぬ。この点に対しては自治庁とも十分熟議されたと思いますが、いまさら自治庁長官を呼ぶのもどうかと思うのですが、その協議内容等においては、これは完全に意見が一致して、今後こういうような事例が出てもそれはどんどんやらせる、そういう了解ができているかどうかはいかがですか。
  239. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 もちろん自治庁の方とよく協議をいたしましてこの規定を設けたのでありますが、先ほども説明申し上げましたようにやはり造林でありますから、芳賀さん御存じの通り相当長期のもの、性質上そういうものであります。そこで木を育てていくには、樹種によって違いますけれども、場合によっては四十年、これが普通の常識でありますから、その分収造林によりましてそういうものを作ろうという契約でありますが、事の性質上やむを得ないであろう、こういうことになっております。でありますから他のこういう事業の財産についてこういう特例を多く作ろうという考え方は全然ありません。
  240. 中村寅太

    中村委員長 他に質疑はありませんか。——なければ両案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。     午後四時五十三分散会      ————◇—————