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1958-04-04 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月四日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 助川 良平君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       井出一太郎君    木村 文男君       清瀬 一郎君    小枝 一雄君       鈴木 善幸君    中馬 辰猪君       綱島 正興君    永山 忠則君       松浦 東介君    松野 頼三君       村松 久義君    阿部 五郎君       赤路 友藏君    石田 宥全君       石山 權作君    稲富 稜人君       川俣 清音君    久保田 豊君       楯 兼次郎君  出席政府委員         農林政務次官  本名  武君         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林事務官         (大臣官房寒冷         地農業振興対策         室長)     中野 和仁君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    小林 誠一君         農林事務官         (農地局管理部         管理課長)   石田  朗君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      松田 壽郎君         農林漁業金融公         庫総裁     山添 利作君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    楠見 義男君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月四日  委員中馬辰猪君、丹羽兵助君及び日野吉夫君辞  任につき、その補欠として山本粂吉君、井出一  太郎君及び川俣清音君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員山本粂吉君辞任につき、その補欠として中  馬辰猪君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月四日  分収造林特別措置法案内閣提出第一四五号)  (参議院送付) の審査を本委員会付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農振興基金法案内閣提出第一一六号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇二号)  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三九号)(参議院送付)  分収造林特別措置法案内閣提出第一四五号)  (予)  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  輸出品検査所支所設置に関し承認を求める  の件(内閣提出承認第三号)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  酪農振興基金法案議題といたし、審査を進めます。  本案に対し、芳賀貢君より自由民主党日本社会党共同提案にかかる修正案提出されております。その内容は各位のお手元に配付いたしてある通りであります。  まず、修正案趣旨について提出者説明を求めます。弥賀貢君。     —————————————
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、日本社会党並びに自民党を代表いたしまして、酪農振興基金法に対する修正案提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    酪農振興基金法案に対する修正案   酪農振興基金法案の一部を次のように修正する。   第一条中「生乳取引関係改善に資するため」を「生乳取引関係改善生乳及び  乳製品等の価格の安定並びに乳製品等需給調整に資するため」に改める。   第二十九条第一号中ロをハとし、イを次のように改める。  イ、生乳の購入又は処理若しくは加工に要する資金設備新設又は改良に要する資   金を除く。)  ロ、イに掲げる資金のほか、乳製品脱脂乳、クリーム、バター、チーズ、れん乳、   粉乳その他生乳を原料として製造した食品で農林大臣の指定するものをいう。以下   同じ。)の保管その他乳業経営に必要な資金設備新設又は改良に要する資金   を除く。)   第二十九条に次の一項を加える。  2 基金は、前項に掲げる業務遂行に支障のない範囲内で、飲用牛乳及び乳製品の   需要増進に関する業務を行うことができる。  内容につきましては、第一条の修正点は、これは基金目的でありますが、原案に対しまして、さらに生乳及び乳製品の価格安定並びに乳製品等需給調整をもこの基金運用の使命とするというほどの意味であります。  第二十九条の修正点は、これは業務内容の区分を明らかにするということがその本旨でありますが、特に二十九条中第二項を加えた理由は、原案によりますと、この基金債務保証を主とした業務内容になっておりますが、この際この業務内容をさらに一歩積極的に前進せしめて、債務保証以外にも牛乳関係取引改善あるいは消費の拡大、あるいは需要増進等に対するこれに必要な業務等をも本基金が行えるようにするということがその修正内容であります。  簡単でありますが、以上をもって修正案提案趣旨説明にかえる次第であります。
  4. 中村寅太

    中村委員長 修正案について質疑はありませんか。——なければ修正案及び原案を一括して討論に付します。討論はありませんか。——なければ採決いたします。まず修正案について採決いたします。賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  5. 中村寅太

    中村委員長 起立総員。よって、修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除いて政府原案について採決いたします。賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  6. 中村寅太

    中村委員長 起立総員。よって本案芳賀貢提出修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。  この際、助川君より自由民主党日本社会党共同提案にかかる附帯決議を付したい旨の申し出があります。これを許します。助川良平君。
  7. 助川良平

    助川委員 ただいま議決せられました酪農振興基金法につきまして、次の附帯決議を付したいと存じます。  決議案を朗読いたします。     酪農振興基金法案附帯決議  一、政府は、すみやかに酪農振興政策を再検討し、乳価の安定、生乳取引に関する紛争のあっ旋処理機構確立学校給食及び職場給食等集団飲用の促進並びに生乳生産者共同販売組織の整備による生乳取引改善のために必要な酪農振興法改正並びに財政上の措置を講ずること。  二、政府は、生乳生産者団体集乳、冷却、輸送等共販体制確立に必要な施設新設又は改良につき助成措置を講ずるとともに、所要資金の貸付につき積極的にあっ旋を行うこと。  三、政府は、基金の設立及び運用に当り、主として中小乳業者及び生乳生産者経営が安定することとなるようその指導に万全を期すること。  四、政府は、本法が大かんれん乳等に使用される砂糖消費税偽税の撤廃に対処する措置として制定せられた経緯にかんがみ、引続き基金に対する政府出資の増額に努めること。  五、政府は第二十九条第一項第三号の資金融資保証に当っては、農協の系統融資の体系に混乱を生ずることとならないよう注意すること。  六、 政府は、生乳の増産に伴い必要となる処理加工施設改良造成又は取得に要する資金についても農林漁業金融公庫等からの融資の途を拓くよう検討すること。  右決議する。  以上でございます。  提案趣旨等につきましては、今日までの法案審議において十分御理解いただけるところでありますので、一切省略いたします。
  8. 中村寅太

    中村委員長 ただいま助川君より提案されました附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  この際附帯決議に対する政府の所見を求めます。本名政務次官
  10. 本名武

    本名政府委員 本法案提案いたしましてから、長期間にわたって御熱心に御審議をいただき、かつただいま御可決いただきましたことを厚く御礼を申し上げます。審議中においていろいろな御意見を承わることができ、さらにまたただいまは本法案に対しまして附帯の御決議をいただきまして、政府は今日までの御審議並びに本日御可決下さいました附帯決議に対しまして、御意思を体し、十分誠意を持って善処いたすつもりでございます。ありがとうございました。
  11. 中村寅太

    中村委員長 なお本案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  13. 中村寅太

    中村委員長 去る三月二十八日付託になりました内閣提出参議院送付森林開発公団法の一部を改正する法律案及び予備審査のため内閣より送付され、去る三月二十四日本委員会付託になっております分収造林特別措置法案一括議題といたし、審査に入ります。まず両案の趣旨について政府説明を求めます。瀬戸山政務次官。     —————————————     —————————————
  14. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ただいま議題となりました二案のうち、まず第一に森林開発公団法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明いたします。  森林開発公団は、膨大な森林資源を抱きながら未利用のまま放置されている奥地未開発林を急速、かつ計画的に開発するために、御承知通り昭和三十一年第二十四国会において成立をみた森林開発公団法に基いて設立せられたものであります。  現在までの事業概要を申し上げますと、農林大臣が定めた基本計画に基いて、公団は、鋭意その事業遂行に努力しているのでありますが、昭和三十三年二月末日における事業進捗状況は、完成路線五、工事施工中二十となっております。しかし工事着工後の進捗は概して良好でありますので、未落手の八路線をも含めまして昭和三十三年度末までにはおおむね全計画路線完成する見込みであります。  次に公団事業に対する将来の見通しでありますが、現在公団事業を行なっております熊野、剣山両地域には、なお公団が開発することを必要とする未開発林が存在しますので、三十四年度以降約八億円の資金をもちまして林道開設いたすようにしたいと考えております。  以上が現在の公団事業概要並びに将来の見通しでありますが、次に改正要点を御説明いたします。  公団は、林道開設改良を行うのみならず、当該林道災害を受けた場合には直ちにこれが復旧事業を行い、常時適正に維持管理する任務を有して、いるのであります。しかるに、昭和三十二年度以降余剰農産物協定が締結されなかったため、事業資金資金運用部資金をもって充てることとしているのでありますが、これに伴い資金計画を変更いたしました結果、公団手持ち資金が減少し、災害復旧事業等に要する資金としては若干不足しているのではないかと思われるのであります。従いまして公団開設した林道に不測の災害が発生した場合等には資金運用部資金を借り入れ、あるいはやむを得ない場合には債券を発行して資金をまかなう必要があると考えられるのであります。  以上の理由によりまして、森林開発公団業務の円滑な運営に資するため公団森林開発債券を発行する能力を与えるよう、森林開発公団法改正をいたしたいのであります。  以上がこの法律案提案理由であります。  次に分収造林特別措置法案について、その提案理由を御説明いたします。  最近における木材需要は著しく増大し、昭和三十一年度においては、戦前基準年次の二倍に達したのでありますが、なお将来のそれを見通しました場合、昭和七十年における木材需要はさらに現在の二倍近くに増大するであろうと推定されておるのであります。このような情勢に対処いたしますためには、人工造林面積経済的及び技術的に可能な限り拡大することがきわめて必要でありまして、これにつきましては、森林所有者自力による造林を中心として人工造林面積計画的に拡大することを目標として推進いたしているのでありますが、資金経営力等関係補助融資措置を講じてもなお自力では造林することが困難なものにつきましては、土地所有者以外の者の資金経営技術を導入し、その収益を分収するという形の造林いわゆる分収造林を積極的に進めることが必要であります。  この法案は、以上述べましたような趣旨に基きまして分収方式による造林を進めて参ります上に必要と考えられる措置を講じようとするものであります。  すなわち、その内容について御説明いたしますと、第一に都道府県知事契約当事者になろうとする者からの申し出があった場合には、適正な分収造杯契約が締結されるようあっせんに努めなければならないものとし、第二に分収造林契約にもかかる共有樹木については、契約安定性を確保するため、民法第二百五十六条の共有物分割請求規定を適用しないものとし、第三に地方公共団体が条例で特に重要な財産として定めている土地について、分収造林契約を締結することによりその土地の独占的な使用を許す場合において、その期間が十年をこえるときは住民投票によらなければならないこととなっているのを五十年に延長するため地方自治法の特例を設けることであります。以上がこの法律案提案理由であります。何とぞ右両案について慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。     —————————————
  15. 中村寅太

    中村委員長 次に、去る三月二十六日付託になりました内閣提出地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、輸出品検査所支所設置に関し承認を求めるの件を議題といたし、審査に入ります。まず本件趣旨について政府説明を求めます。瀬戸山政務次官。     —————————————
  16. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ただいま議題となりました輸出品検査所支所設置について御説明申し上げます。  農林省の所掌しています指定輸出農林水産物輸出検査は、従来輸出品取締法に基き、小樽、東京、静岡、神戸門司輸出品検査所と横浜、名古屋、岡山、長崎の四支所において実施して来たのでありますが、本年二月一日から施行されました輸出検査法は、従来の輸出品取締法自主検査建前とするのに対して、強制検査建前とするものであります関係上、ここに検査の円滑な実施をなし輸出関係業者の便益をはかるためには、さらに神戸検査所の下に大阪検査所と、門司検査所の下に鹿児島検査所とを増設する必要に迫られましたので、今回両支所開設をはかることといたしたいと存じ、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上妥当なる結論を得られたいのであります。
  17. 中村寅太

    中村委員長 本件に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  18. 中村寅太

    中村委員長 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたし、審査を進めます。本日は参考人として農林中央金庫理事長楠見義男君がお見えになっております。参考人よりの意見聴取質疑応答の形式で行うことといたしたいと存じますので御了承願います。  それでは質疑を続行いたします。稲富稜人君
  19. 稲富稜人

    稲富委員 それでは大臣が見えておりませんから、政務次官にお尋ねしたいと思います。第一に、農民経済力というものが上昇をたどっていないということはすでに農林省の方で発表されております農林白書においても明確になっておると思うのですが、この点に対して、私は公庫法改正に当りさらに再確認をお願いする意味におきまして、最近の農民経済力がほかの業体と比較して上昇線をたどっているかどうかということ。私ども農林白書が発表しておりますように上昇線はたどっていない、かように考えておりますが、これに対してどういう御認識を持っておられるか、この点はっきり御答弁願いたいと思います。
  20. 本名武

    本名政府委員 農林白書でも御承知通り、ただいま御指摘がありましたように、全体的には一応上昇していないという見方もなされますけれども、完全に上昇を停止したというふうには考えておりません。むしろ生産経営基盤確立することによって今後上昇の道をたどる傾向と、またたどらなければならない。その上に立って今後の農業政策を進めていきたい、このように考えております。
  21. 稲富稜人

    稲富委員 そうしますと、ただいまの次官の御答弁でも明確になりましたように、今後の日本の農政は、農民経済力上昇せしめるような方向にすべての施策をやっていくことが必要であると思う。こういう点から考えまするに、すべての政治の上において農民負担を軽減せしめるということがこれまた非常に大きな一つの要件ではないかと思う。この点に対してどういうお考えを持っておるか。
  22. 本名武

    本名政府委員 先ほど申し上げましたように、大体生産の面では一応若干の上界をたどっておりますが、ただこれについて需要がついていけるかどうかということ、ここに非常に大きな問題があろうと思います。従いまして生産は、その基盤なり経営方式なりその他改善を要するところに重点を置くと同時に、流通及び需要の道をどう開くかということに一つの大きな政策の問題が起きてくるのではないか。従いまして、今後は生産とあわせてその点を一そう充実改善し、あるいは需要喚起転換の面に力を入れていきたい、このように考えております。
  23. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま生産上昇しておるとおっしゃるが、問題は生産上昇農民経済上昇せしめるかということなんです。政治のやり方においては、生産上昇しても経済力上昇しないというようなことになってきている。これは実際、現在の農村のすべての問題で、たとい生産上昇いたしましても、生産費もこれに対して上昇するというようなことから、経済力というものは決してそれに比例していない、こういうような事実があると思う。このような事実から見て、今申しましたように農民経済的負担というものをできるだけ少くするということが、農民経済をよくする上に非常に必要なことではないか、こういうことをわれわれは考える。この点に対する政府考え方というものを、私はおわかりになっておると思いますのでくどいことは申し上げませんが、ただ私は質問の時間を短かくするために要点だけを聞いておりますので、要点だけ御答弁願えればけつこうであります。そういう意味から、農民負担を軽減するということがまず必要ではないか、こういう点をはっきり承わりたい。そしてこの議題となっております法の改正の問題に対してさらに質問を進めていきたい、こう考えておるわけであります。
  24. 本名武

    本名政府委員 仰せの通りに存じております。生産性が非常に低いことと、従って所得がそれに応じて十分でないということ、これは一応われわれも認めております。ただ問題は、需要の面に問題がある。これを今後どうするか。さらにまた農家の所得というものが、鉱工業を初め他産業の比較の上において、どういう姿まで引き上げることが必要であるか、こういうようなことを総合的に勘案して、まずもって生産性を高めると同時に、需要転換あるいは増高をはかっていきたいと考えております。
  25. 稲富稜人

    稲富委員 そこでお尋ねしたいと思いますことは、これは農林白書からも農林省がはっきり新政策を主張いたされておりますように、現在の農村経済力に対しまして、将来日本が処すべき問題は土地造成である、こういうことがはっきりうたってあるわけであります。こういう点から、生産を高める上においてあるいは土地改良事業であるとかということの必要性については、政府も認められておると思う。ただここにおいて承わりたいことは、そういうような傾向をたどっておる政府方針というものが、従来の農村土地改良その他に対する補助政策というものからだんだん融資方向に向っていく、こういうような傾向があるという事実なんです。この事実に対しまして、私たちはこの結果は農民負担というものが増大していく結果になると思うのだが、こういうような基本的な土地改良その他に対する農民補助融資に切りかえようというような、一貫した最近の政府方針のあり方に改まったのであるか。こういうことは果して妥当であるかどうかという問題なんです。今日のこの法改正の問題にもそれがあると思いますので、その点を私は政府にお聞きしたいと考えるわけであります。
  26. 本名武

    本名政府委員 土地造成とそれに関連いたしまして土地改良を強力に押し進めなければならないことは、先ほどの目的を達するためにも必要であろうと思います。ただ御指摘のように、保護政策基本ともいうべき土地改良などにおける補助事業が、助成がだんだん融資に切りかえられる。これは私どもはそのように考えたくはないし、またやっていかずに強力に補助事業を伸ばしていきたいという気持であります。ただ問題は投下される資金の効率なりあるいは土地改良完成の時期というもの、時間的な問題が非常にその効果を左右すると思います。さらにまた財源上から申しまして、補助政策だけで果して所期の目的を達し、広範な土地造成土地改良ができるかどうかという点が非常に疑問であります。そういう意味で従来の補助事業にあわせて融資による土地造成土地改良をやっていきたいという方向にいっていることは事実でございますが、補助事業をだんだん融資に切りかえていくのだというような考え方は出発においていたしておらないということを申し上げたいと思います。
  27. 稲富稜人

    稲富委員 あなたは知りながらそういう御答弁をなさっているだろうと思う。あなたもたぶん次官としてそういう答弁をしなければ困るからそういう答弁をなさっているだろうが、事実は私が言ったような傾向をたどっておるということは否定はなさらないと思う。しからば今本名次官答弁いたされますような趣旨を、一応認めはしませんけれども、そういうような趣旨だといたしましても、今日政府から提出されております経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案、これはもちろんこの融資に対する金利が安くなることなので、この措置を私は悪いというのではないのでありますが、こういうようなことで融資の対象がだんだん広げられていくということは、土地造成あるいは土地改良等に対する補助助成というものを少くする。こういう方向をたどっておるのではないのだ、補助助成等は従来よりもさらにこれを拡大していくという方針を持ちながらプラス・アルファ分においてこういうような金融面に対する負担軽減をやるのがその方針であるのだ、こういうことをそれではあなたの方では今日はっきり答弁することができますか、この点を承わっておきたい。
  28. 本名武

    本名政府委員 先ほど申し上げたように、これはやはり投資効果やあるいは事業完成の時間的な問題、こういうことを考えますと、個々の事業についてこれを見、特に国営から末端に至るまでの一連の土地改良の実情を見ますと、やはり補助事業だけでやっていくということよりも、むしろこれにあわせて融資をやっていく、しかも金利を低減してやっていくということの方が投資効果も上り、時間も早く完成し、しかも全体的な土地改良ができるという考え方から、一応融資事業というものをもう少し積極的にやろうということで計画を進めていることは事実でございます。ただ御指摘のように、補助事業を減らしてこれから融資をふやすのかどうか、これをはっきりしろということでございますが、これは今後の国営事業から始まりまして、一連のその土地々々の実情によりまたは農民負担力または農民御自身の御希望なりによって融資が有利な場合には積極的に融資の方を進める。いずれにいたしましても、そういうことを勘案しつつこの制度も補助とあわせて活用することによって土地造成土地改良目的を早期に達成したい、こういう考え方でございます。
  29. 稲富稜人

    稲富委員 ただいまの答弁で明らかになったのでありますが、融資が有利な場合は融資の方をとっていく、こうおっしゃる。それでは補助助成の方が有利な場合は、その農民負担及びその希望等において補助助成という建前でやっていく、こういう意味でございますか。
  30. 本名武

    本名政府委員 従来補助事業で継続いたしておりますものは、もちろんその計画通り補助事業でやっていくつもりでおりますが、ただ新規の採択につきましては、先ほど申し上げましたように特に小団地の新規のものに対しては、それぞれそのケースごとに検討していきたい。従って新規の場合に補助事業がぜひ必要だ、有利であるというその判断等につきましては、これは努めて一方的な政府だけの考えではなくして、できるだけ御相談の上でやっていきたい。いずれにいたしましても補助事業融資にどんどん将来切りかえてしまうのだというような考え方に立つのではなくて、あくまでも土地造成土地改良の法律と早期完成を願ってやる方法がプラスアルファとして加わったという考え方、これを有効に活用して運用したいという気持でおります。
  31. 稲富稜人

    稲富委員 私のただいま申し上げましたようなことは、最近の政府のやり方、土地改良その他に対する費用、こういうような予算面においてこれが現われておると思うのです。それをいかにもあなた方は補助助成もやっていくんだというようなことを言って、補助あるいはそういうような農村保護政策というものは従来通りやっていくんだということを非常に言うことに苦しい御答弁をなさっているのでございますが、実際はそうじゃないと思うのです。だんだん金融に切りかえるということが、農林省はそうじゃないかもしれないけれども、大蔵省あたりはそういう計画がたくさんあると思う。これはあなた方が常に大蔵省に対して、予算編成のときに予算要求をされている場合もそれが現われておると思うのです。この点は農林省と大蔵省の考え方というものが違うのじゃないか。大蔵省はやはり従来の農村補助等に対しては、いろいろ会計検査院等の指摘等もあったので、なるたけ補助というものはやりたくないのだ、融資に切りかえていくのだということが大蔵省の予算編成に対する方針のようにわれわれは承知しております。そういうような会計検査院の指摘等を受けるということは、これは補助をやることが悪いからそういうことになるのではなくして、これは仕事の執行上における問題であって、そういう点に不都合があるとするならば、これは監督及びこれに対する行政面におけるずいぶんなる注意等はすべきであると思うのでございますが、そういうものがあるからといってこれをできるだけ金融に切りかえていこうということは、私は先刻から申し上げましたような農民負担を多くする面からも好ましくないと思う。また次官は、非常に早期にこれを完成する場合は融資にした方がいいとおっしゃいますが、早期にこれを完成しようというならば、融資よりも補助の方がいいということは子供でもわかることなんです。わざわざ早期にやらなくちゃいかぬという熱意を持つなら、金融面に切りかえるということはその趣旨に沿わないと思う。この点はわれわれがどうも点に沿わない、納得のできない点であります。融資をもって補助を少くするような考えがないのだ、こういう点に非常に陳弁を努められておるのだが、事実はそうじゃないのです。あなたは十分知っていらっしゃると思う。そういう点から私は今回のこの法の改正によりまするこの融資という問題がそういうような轍を踏むのではないか、従来の補助というものをやはり融資に切りかえるというこういう轍を踏む第一歩じゃないかという懸念をするがために、こういう基本的な問題をお尋ねしておるわけです。その点を明確にしていただきたい。幸いに大蔵省も来ておられますが、最近の大蔵省の傾向というものは、そういう補助融資に切りかえようというのが大蔵省のほんとうの腹らしい。これが私の邪推ならばけっこうでありますが、大蔵省は将来の土地改良その他に対する補助をやっていくか、こういう問題はどう考えていらっしゃるか、この点もこの機会に大蔵省の意見を承わっておきたい。
  32. 高木文雄

    ○高木説明員 土地改良事業を行います場合に、農民負担を軽減するのでなければ、現在の農業の実態からいってうまくいかないということは、私どももそのように考えております。ただその場合に具体的な手段として、補助でやりますか、融資等といっても一般の融資でなくて低利の融資でやりますかということにつきましては、ただいまお話しのように二つの方法があり得るというふうに考えております。それを現在直ちに補助をやめて融資に切りかえるというような考え方は、予算全体としては考えておりません。ただ先ほど来御指摘がありますように、実行の状況を見ますと、融資の場合と補助の場合とでいずれが効率的かということについては、一がいには言えないと、思うのでありはして、必ずしも補助だけが不当に使われているということはございませんので、融資についても現にいろいろ問題がございます。そこでその両方を並行的に現在やっておるのでありまして、現在の段階で補助を全部やめて融資に持っていくとか、あるいは少くとも方向としてそっちに持っていくとかいうところがきまっておるわけではございません。ただ今回の小団地土地改良事業につきましても、また特定土地改良特別会計の場合につきましても、できるだけ与えられた金額の範囲内で多くの事業をやるということをも念頭に置いて考えました場合には。補助でやりますと御存じの通り回転いたしませんし、融資でやりますと、その金が返ってきて次に使えるということにもなりますので、補助だけでなくて融資を大いに活用するということが、この際事業を伸ばす上においても非常に重要なんじゃないかということで、年々できる限りにおいては融資需要も伸ばすというふうには考えております。ただおっしゃいますように、補助をやめてどんどん片端から融資に切りかえていくというようなことは現在方針としてそういうふうに考えているということはないということを申し上げられると思います。
  33. 稲富稜人

    稲富委員 あなたは今直ちに補助を、やめて融資にするような考えは持たないとおっしゃいますが、大体の傾向としては補助をだんだん融資に持っていこうというような傾向にある事実を否定なさらないだろうと私は思う。しかもあなたはただいま融資というものは返ってくるのだからまた後に使われるのだとおっしゃる。これは金融をやる政府からいえば、返ってくるのだから損失はないでしょうが、これは農民負担をしなくちゃいけないのです。農民負担なくして返ってくるならいいけれども、大きな負担をしなくちゃいけない。今日の農民経済力というものは、そういうような負担をさせられるほど上昇していない。そういう負担をさせられるということは、農民経済力をますますよくしないのだ、こういう点をわれわれ考えていかなければいけない。私が説明しなくても、今日経済的に日本農村がどういう状態に置かれているかということはおわかりになっていることと思う。資本主義下において農村経済というものは積極的な保護政策を行わなければ立ち行かないのです。その保護政策としてやる場合に、今申しましたように、金融面から保護政策をやらなければ、今あなたは低利の金融をやるのだとおっしゃるが、その金利負担しなくちゃいけない。その負担能力をほんとうに持たせるような農村経済確立されているなら、これは融資に持っていってもいいだろう。ところが今日の農村負担力というものは、実際困難な状態に置かれているということを、まず私たちは農村の現状から、これを考えていかなければならないと思うのです。補助をなくして融資にするという考えはない、今のところ直ちにそれをするという考えはないとおっしゃるけれども、将来は、少くとも農村に対するいろいろな土地改良その他の問題は、補助というものを少くして、だんだん融資に持っていこうというような傾向をたどっておるということは、最近のわが国の農林予算をごらんになればよくわかるのです。あなた方はそういうことをやっていないとおっしゃるけれど、そういう事実が現われておるのです。この点を私たちは憂慮しておるがゆえに聞いておるわけです。あなた方は従来の補助政策というものは、やはり従来の方針通りに、時代に沿うたようにだんだん増強していくのだ。それと同時に、さらに農村経済をよくするために、プラス・アルファとして融資を持っていくのだとおっしゃるなら、われわれはうなづけるのです。ところが融資をするがために補助というものが少くなってくるということが、事実現われているのです。この点をわれわれは憂慮するがゆえに、今度の処置というものも、そういうようなだんだん農村補助というものを少くする第一着手として計画されたのではないか、こういう点からお尋ねをいたしておるわけですが、それを従来通り補助というものはだんだん増していく、こういう考えを政府は持っているのだ。しかしながら、やはり融資の面もさらに農村をよくするためにやっていこう、こうおっしゃるなら、私は何も反対することはありません。その点をはっきりしていただきたいということを、私はお聞きしているのです。
  34. 高木文雄

    ○高木説明員 例を三十三年度の予算にとった場合におきましても、三十二年度の予算と比べまして、補助事業の予算額というものは、別に減っておるわけではございません。小団地等につきましてもそうでございますし、あるいは特定土地改良工事特別会計の場合におきましても、一般会計の負担額が減っておるわけではございません。事業量はと申しますと、特定土地改良工事特別会計についても、相当最事業量はふえております。それから小団地等の補助事業についても、今回の経済基盤強化資金を、活用することによって、事業量をふやすことができるのではないかというふうに考えておりますので、三十三年度の予算を見ていただきますれば、ただいまの御指摘のように、補助をやめて融資へ持っていこうという意味ではなくて、補助の上に、これから事業量を伸ばすについて、特に融資に力を入れているのだという点は、御理解願えるのではないかと思います。
  35. 稲富稜人

    稲富委員 そういうことをはっきり言われるなら、将来のこともありますので、農村補助というものは既定方針通りやっていただきたい。プラス・アルファとしてますます融資をふやしていただきたいと思いますが、今大蔵省からはっきり意思表示がありましたのでその点を、将来後退することのないように、一つ私は希望を申し述べたいと思います。  それでは次の問題に入りたいと思います。今回の非補助によります小団地土地改良事業基金の、利子軽減の問題についてお尋ねしたいと思いますが、この融資の対象範囲というものをどういうふうに考えておるか、承わっておきたいと思います。
  36. 清野保

    ○清野説明員 非補助小団地等土地改良事業基金運用につきましては、先ほど来政務次官並びに大蔵省主計官から御説明申した通りでありまして、決して補助事業をやめて融資に切りかえるということではございません。あくまでも両者を並行して進める、こういり方針につきましては間違いでございませんし、またそれによって、従来非常におくれておりました特殊立法地帯の各種の事業が効率的に運用できる、こういうふうに考えております。御質問になりました運用方針でございますが、あくまでも農民負担は、経済的に可能な負担の範囲において事業を施行しなければならぬということはもちろんでございますので、そういう点を一つの、ベースといたしまして、従来五分の金利でもって運用して参りました非補助土地改良事業金利を、一分五厘下げまして三分五厘といたしまして、この事業を三分五厘といたしまして、これによって非補助土地改良事業を進めていきたい、こう考えております。一分五厘下げました理由は、先ほど申し上げましたように、農民負担を、ほぼ負担力が同一であるとするならば、融資の場合も補助の場合も変らない、こういうことを一応の前提として考えました結果が、一分五厘の利子の軽減でございます。なお具体的に、どういう地点に対して補助をし、どういう地点に対して融資を行うかという問題につきましては、前年度から継続しておりますような団体や事業、そういうものにつきましては従来通り補助をもって実施する。ただ、今後新しく事業を開始するという場合には、従来あまり国の助成の恩典に浴さなかった山場地帯、その他の単独の施行地帯に、今後重点を置いて補助運用していきたい。なおその次といいますか、従来から補助の恩典を受けておった国営または県営の施行地域内の団体につきましては、基幹工事、たとえばため池とか、ポンプとか、あるいは取入口、そういうようなものを新設する場合、または新設すると同様な仕事をしなければならぬような改修事業のような場合には、これは従来通り補助をいたしまして、その他の場合には、ただいま申し上げましたような事業のものに比べますと、若干後順位になりますが、これは後順位でもって補助をやっていく。従いまして、融資をいたします事業につきましては、絶えず補助事業との関連あるいは補助事業との均衡を考えながら、かつまた農民負担が過重にならないということを一つの原則にいたしまして、融資事業に対して一分五厘の利子の引き下げを行なって事業の奨励を行っていきたい、こういうふうに考えております。なお、従来から五分の金利でやっておりました融資事業の中でもって、特に今回の三分五厘の均衡をとる必要がある場合には、間の均衡をとる必要がある場合には、従来五分であったものも、やはり一分五厘の利子の補給を行いまして農民負担の軽減をはかりたい、こう考えております。
  37. 稲富稜人

    稲富委員 今の建設部長の御答弁からいきますと、従来県営でやっておった事業がある。これが来年度から団体営に移る。こういうような場合に、従来当然補助対象になったものであるならば、この法案ができたからといって、それはこの法案融資の対象になるのではなくして、従来の経過等から見て、やはり従来通り一つ補助対象として、そういう問題は関連的なものとして考えていくのだ、こういう意味ですか。
  38. 清野保

    ○清野説明員 従来から補助事業をもって実施しておりますところの団体営の事業につきましては、従来通り補助事業をもって実施する、県営事業または国営事業の末端の団体営事業であって、新規に着手いたしますところの団体営事業につきましては、原則として非補助事業をもって実施したい、こう考えております。しかしながら、それはあくまで原則でありまして、その地区の事情によりまして、たとえばその非補助事業をやることによって、従来よりも農民負担が非常にふえる、こういうような場合には、地元の申請を十分尊重いたしまして、これらのものに対しては補助事業をすることも運用によってやっていきたい、こう考えております。
  39. 稲富稜人

    稲富委員 ただいまの部長の答弁は大蔵省も同じ意見でありますか。
  40. 高木文雄

    ○高木説明員 全体とたいたしまして、この五分三分五厘に切り下げる措置をとることによりまして事業量はふえるわけであります。その事業量のふえた分について、その全体の中でどういう部分を今の三分五厘でやるかということについては、現実問題としては非常にむずかしい問題であると思われますが、ただいま建設部長が説明されましたような原則に従ってやっていきたいと思います。特に制度の切りかえに伴いましては、いろいろ現実問題として特例的な措置をとっていかなければならぬという御説明がございましたが、その点は私どもも同じ意見でございます。
  41. 稲富稜人

    稲富委員 それではこの問題はこのくらいにしておきます。
  42. 石田宥全

    石田(宥)委員 今の問題に関連して……。ただいま建設部長の説明ではまだはっきりわからない点があるのですが、要するに非補助事業に対する利子補給ということでありますが、非補助事業というものは非常にたくさんある。六十五億の利子でありますと、わずか四億程度しかないと思うのですが、四億程度で非補助融資の全体に対してこれを及ぼすことは不可能ではないかと思うのです。そうなりますると、同じ小団地の土地改良事業をやっておりましても、その恩典にあずかり得るところと、あずかり得ないところと出るのではないかと思うのでありますが、全体に及ぼすとすれば、どの程度の金額があれば及ぼし得るのか、またその選択の基準はどこに設けられるつもりか。
  43. 清野保

    ○清野説明員 御質問通り本年度の六十五億の基金では現在のわれわれの推算では約三十五億程度の非補助事業を行うことができることになります。六十五億の六分の利子と考えまして、三億九千万円の運用益が得られますが、この運用益を利用いたしまして、一分五厘の利子補給をするといたしますと、おおむね三十五億程度であります。従いまして本年度の非補助融資の総額が六十億ございますので、残りの二十五億がただいまお示しの通りやはり従来通りの五分の金利運用をしなければならない、こうなって参ります。もし六十億全部の非補助事業を一分五厘金利を下げるといたしますと、基金といたしましては約百十億程度を出さなければならぬ、こう考えております。この五分と三分五厘、つまり一分五厘利下げをいたしますところの二つの融資事業の間の取扱いにつきましては、前者につきましては先ほど申し上げました通り、非補助小団地等の土地改良事業基金運用といたしまして、新しい制度を設け、その他のものにつきましては五分の金利でもって従来からやって参っておりますので、そういう意味においてでき得るものはこの五分である、結局こうならざるを得ない、こう考えております。
  44. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと、五分の利子の融資を使うか、三分五厘の融資によって事業をやるかということになれば、三分五厘の利子補給のある方に殺到することになると思うので、その取扱いが非常に困難であろうと思うのであります。そこで一方は三分五厘、一方は五分で事業を進めさせるという、その線の引き方を先ほど伺ったわけなんでありますが、それをお聞かせ願いたい。
  45. 清野保

    ○清野説明員 先ほど非補助小団地等の土地改良事業基金運用について申し上げたと思いますが、若干説明が不十分だったので、今御質問のような誤解が生じましてまことに申し訳ないと思います。この三分五厘の基金運用につきましては先ほど原則論としましては国営または県営事業の末端の直接関連する団体営事業のうちの新規事業、それを一つの対象にし、かつまた従来補助率が比較的低くて三分五厘の融資で十分やってなおかつ相当有利である、こういうふうに考えられるところの事業がございますが、これらの事業のうちで客土事業と農道事業、この事業ただし急傾斜地帯と地すべり地帯は補助率が高いのでやはり従来の補助でやった方が有利である、こう考えまして急傾斜地帯と地すべり地帯を除いた客土及び農道事業、以上の二つの点つまり国県営に関連しますところの団体営と急傾斜地帯と地すべり地帯を除きました客土と農道事業、こういうものにつきまして、ただいま申しました三分五厘の融資をいたしまして、その他のものは五分、こういうふうな線を引くつもりであります。
  46. 石田宥全

    石田(宥)委員 小団地と土地改良特別基地を設定するに当りまして、本委員会でしばしば問題になっておりましたところの、従来長期間にわたって土地改良事業が行われております場合に、幹線水路はできたけれども末端の工事ができない、それがために資金効果も上らなければ、農民は一方的な負担加重に苦しんでおりながら遅々として工事が進まない、これに対して抜本的な対策が必要であろうということがしばしば論議されるのでありますが、この基金をお作りになる場合に、そのような特別な地域に対する締めくくりと申しますか、そういう方面に特別な措置を講ずるお考えはなかったのかどうか、農林省は当然そういう資金として、これを取扱うべき筋合いとして要求されるべきであったと思うのでありますが、そういう要求はされなかったのかどうか。
  47. 清野保

    ○清野説明員 この基金運用に当りましては、ただいまお示しの通り、これによって従来非常におくれていますところの国営または県営の末端の団体営事業を先に完了させる、たとえば従来三年以上をおそらく要したでありましょう団体営の事業、特に国県営関連の末端におきましてはそういうような関連事業も相当ございまして、それが場合によっては五年も十年もかかっておる、こういう事情がございますが、もし農民の申請によって、農民の希望によりましてそれを二年または三年で仕上げる、こういうことができるならば、政府といたしましては極力その線に沿って、今御質問になりました抜本的または締めくくり的な取抜いをいたしたい、こういうように考えておるのであります。
  48. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういうことは、先ほど御説明通りで、わずか三十五億くらいの融資だけしか対象にならないということであれば、付帯や関連の融資に対して一分五厘の補給をするくらいで、今お話しになったような大事業が早期に完成されたり、締めくくりがついたりするはずがないのです。だからもう少し積極的なそういう予算要求をすべきではなかったかということを聞いておるのです。
  49. 清野保

    ○清野説明員 では数字的に御説明申し上げます。三十二年度の補助事業と関しまして実施しました事業量が、事業費で約百億ございます。そのうちただいま問題になっておりますところの締めくくり的な事業、たとえば国県営関連の事業に使いました金が約三割、約三十億であります。これに対して三十三年度は、三十二年度に実施いたしております事業の継続分といたしまして約二十億、それから低利融資によるところの事業を二十五億、合計約四十五億の事業を行うことができるように考えておりますが、三十二年度に比べますと約五割も事業量がふえております。この五割増ということは事業全体から見ますとなお少い、こういうような御質問かと思いますが、われわれといたしましては、極力こういう関連事業をこの基金を使って伸ばしていく、こういうふうにいたしたいと思っております。なお団体営並びに耕地整備の補助予算についてましては、先ほど高木主計官が御説明申し上げました通り、前年通りの予算を計上し、補助融資と両方相まって仕事を進めていく、こういう方針でありますので御了承願います。
  50. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは事務当局に答弁を求めても無理だと思うのです。先ほど本名政務次官は、土地改良事業に対して積極的に対策を進めるという御答弁であったのでありますが、御承知のように今建設部長も申しておりますように、もう十数年もかかってまだ基幹水路だけしかできないで、末端が困っておる地方が非常に多いのです。いつかの機会にそれに対して抜本的な対策をとらなかったならば、農民は過重な負担のために、自分の土地を売り払わなければならない。もうすでにそういう地方も現われてきておるわけです、せっかく六十五億も土地改良のために、いかなる性質であろうと、いかなる名目であろうと、ここにできたのであるが、こういう機会に今申し上げたような工事の締めくくりのために使うべきではなかったかと思うのでありますが、そういう面について強く要求されたことがあるかどうか。なお今後の考え方について、この基金をさらに膨張させる方針であるのか、あるいは取りくずしをしていくか、どういうふうにこれを扱っていく御方針なのか承わりたい。
  51. 本名武

    本名政府委員 六十五億の基金を三十三年度予算で御決定いただいたわけでございますが、その六十五億の基金をもって行おうとする事業は、先ほど部長から御説明申し上げた通りであります。われわれも予算要求当初におきましては、例の四百三十六億でしたか、あの資金の活用について特に大蔵当局には強く要望いたしまして、数字的にはこの基金として運用できる予算は実は最低百億を下らないようにということで終始要求をして参りました。しかし中小企業その他の基金の用途もございますので、一応農林関係の予算としては六十五億に決定したわけでございます。従いまして六十五億で私どもは満足をして、これで事足れり、これで一切片づくのだというようなことは毛頭考えておりません。今後においても機会を見まして増額いたしたいという熱望を持っておるわけでございます。そこで、それならば要求当初より少い六十五億できまったのであるから、基金の取りくずしをするかどうかということでありますが、これは基金の性格から申しましても、六十五億は取りくずしをいたさない考えでおります、ただ資金運用部に預けました金利運用益と申しますか、そういうものに残余があれば、これは別途に積み立てをいたしまして、その分に対しての取りくずしはいたしていって有効に活用したい、こういうふうに考えておるわけであります。
  52. 石田宥全

    石田(宥)委員 さらにもう一点お伺いいたしますが、三億九千万円ずつずっと利子補給をされておりますと、一定の年次に参りますと今度はだんだん元金に食い込んで参る。そういう場合に、大蔵省はその元金に食い込んできた部分を一体どうされるつもりか、だんだん減らしていく方針なのか、あるいは補てんをしていかれる方針なのか承わりたい。
  53. 高木文雄

    ○高木説明員 今後の三分五厘の対象といたします事業が将来どういうふうになっていくか、どんどん広げていくかどうかという考え方によって、元金に食い込まなければならない時期がいつ来るかということは動いて参りますので、全く試算の問題でございますが、一応先ほど部長の説明がありましたように、三十五億という事業量を対象にして、その部分について一分五厘下げるという前提で計算をいたしますと、現在のところで相当長期に元金にまでは手をつけずにやっていかれる、十数年持てるということになります。ところで、それでは対象は三十五億でいいかどうかということになると、もちろんそれは十分とは言えないわけでございまして、そうなればどうするかということになりますと、将来の問題でございますから、私から今どうと申し上げるわけに参りませんけれども、方法としてはあるいは基金をふやすということもありましょうし、あるいはそのときの情勢によって元金をくずすこともございましょう。ただし本年度の予算の問題といたしましては御存じの通り四百三十六億は特に経済事情が変らない限り手をつけないということで、いわばたな上げをした資金の一部でございますので、現在のところでは制度上それを取りくずすことを前提に制度を組み立てることは、最初の予算編成のときの趣旨と食い違って参りますものですから、はなはだ全体としてすっきりした答弁になりませんですが、現在の段階では、とにかくそれは手をつけないことにして法律を組み立てざるを得ないということになっておるわけでございます。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 稲富委員補助事業関係の問題に関連して質問しますが、非補助小団地等の土地改良事業助成措置ですが、これは先ほど建設部長からも説明がありましたが、農林省はすでに基金運用要綱を用意しておるでしょう。この内容について具体的な説明を願えば、果して今日政府が考えておる非補助事業に対する分と、従来の補助対象事業関係がどうなったかということが明確になると思いますので、非補助小団地等土地改良事業助成基金運用要綱なるものをここで明らかにしてもらいたい。
  55. 清野保

    ○清野説明員 非補助小団地等土地改良事業助成基金の要綱につきましては、細目がきまっておるとは申し上げられません。地方庁の声等を十分しんしゃくいたしまして、若干考慮しなければならぬという点もございますので、細目がきまっておるとは申し上げられませんが、一応の案がありますので、それを申し上げたいと思います。  非補助小団地等土地改良事業助成基金制度というものは、団体営灌排事業及び耕地整備事業に対する国の補助予算額が、特殊立法地帯の振興計画に基く事業予定等に比べて必ずしも十分でないため、所期のごとく振興しない現状を改善するためにとられた措置でありまして、これらの補助事業との間の均衡を考えながら、運用をすることが必要であります。従いまして、政府としては、これらの事業を総合的に促進するために、非補助融資事業に対する金利軽減の措置を一段と進め、これに必要な基金制度を創設したのであって、補助事業事業量を削減する意図に基くものでなく、両者並行してその効率的運用をはかり、事業を推進せしめる考えであります。補助事業につきましては、前年度から引き続き実施中の継続事業を優先することとし、新規事業の採択に当っては、農民負担に考慮を払い、従来国の助成の恩典に欲することが、とかく十分でなかった山場地帯、その他の単独施行の地域に特に重点を置き、国営または県営事業の施行地域内の団体営事業については、基幹工事その他特に補助の必要の緊切なものを優先し、その他のものは後順位といたします。土地改良基金に基く利子の軽減は、申請に基き現行の貸付利子五分を三分五厘となるように補給いたしまして、団体営事業及び小団地事業を低利融資事業として実施いたしますが、この低利融資事業は、以上の補助事業との関連において、補助事業との間の均衡をとりながら、かつ農民負担に考慮を払いながら、おのおのの融資事業の早期完成を期して、次の事業につき実施するものであります。  その一、国営または県営事業の地域内において面接関連する新規事業、二、急傾斜及び地すべり地帯を除く客士及び農道事業、次は過去に行いました事業に対する扱いでありまして、昭和三十二年度までに施行された融資事業のうち、前に申し上げました事業についての取扱いとの均衡上必要と認められる事業については、その貸付残についても同様の利子の軽減の措置を講ずるものであります。  以上がただいま農林省案といたしまして考ておりますところの助成基金要綱でございます。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し具体的に説明してもらわぬとわからないのです。こっちから問題点を出しますから、これに対してそうであるかどうかということを明確に答えていただきたい。第一は、昭和三十三年度以降に着手される次の事業については基金運用により利子の軽減を行い、低利融資による事業の推進をはかるという点ですが、これは、低利融資の対象事業にするということは、今度はこの対象になる事業は非補助事業になるということに当然なるわけですね。三分五厘の低利融資をつけて補助事業にするというようなことは毛頭考えていないのでしょう。その点はいかがですか。
  57. 清野保

    ○清野説明員 それは、ただいまお示しになりました事業は、原則として融資事業というふうに考えていますが、先ほどから御説明申し上げました通り補助をやめるわけじゃございません。やはり特例の場合もございますので、そういう場合には、その場合々々に応じて考えていきたいという意味でございます。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 そこがあいまいなのです。とにかく三分五厘の低利の対象事業になった場合には、補助はつかないという解釈をしていいのでしょう。両方つきますか。補助事業であり、なお三分五厘の低利融資を行うという、そういう期待に沿うような運営をやる面もあるのですか。特別の考慮というのはそのことですか。
  59. 清野保

    ○清野説明員 融資事業によることを正応の原則と考えておりますが、その融資事業を行います場合に、地元の申請によりましてその地域の者が補助でやってもらいたい、こういう希望がありまして、その内容を察査いたしますと、場合によっては、特に三十三年度は第一年度でありますし、前年度からのいろいろの行きがかりもあると思いますので、そういう事情を勘案いたしまして、融資または補助というふうな扱いをして参りたい、こう考えております。もう少し具体的に申し上げますと、この融資事業という一つの線を引きます場合に、継続事業という線を一つ引きます。継続しておるものは補助事業、新規事業融資、こうやっております。継続事業というものの解釈でございますが、その解釈も、解釈のしようによりましては、これは継続事業であるか、あるいは新規事業であるか、あるいは直接関連と申しましても、直接関連のものは、これは融資になっておりますが、直接関連と申しましても、直接か間接かというような問題でかなり幅のある解釈もとれると思いますので、それからの運用を地元の申請によりまして十分考えていきたい、こういうふうに思っております。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは一つ一つ聞きますが、三分五厘の低利融資の対象になる事業は、従来の補助金がつくかつかぬかということです。
  61. 石田朗

    石田説明員 説明員からで恐縮でございますが、ちょっと言葉の上での誤解が生ずる点があるかと思いますので、その点だけ私から申し上げます。ただいま非補助事業になるから、これは補助がつかないというような御趣旨の御質問がございましたが、非補助融資事業というふうに私どもが申しておりますのはこれは公庫融資の場合の非常に技術的な用語でございまして、公庫が融資いたします場合に、補助事業に対しまして、たとえば、ある事業が三割補助でございますと、残りの地元負担分に対してさらに公庫が融資をいたす制度でございます。これを通称補助融資と申しております。補助の残りでございます。この補助融資の制度と、それから補助がつかない事業融資、これを非補助融資、こういうふうに申しております。それで今回の利子軽減の措置は、この補助融資については考えておりませんで、この当該事業補助がついておりません事業、これの融資でやられる事業につきましてこの利子軽減の措置が講ぜられておるわけでございます。それで従来の補助事業、非補助事業と申しましても、一つ事業の種類の性質そのものからそういうものが出ておるというわけでは必ずしもございませんで、当該御要望なり諸種の事情から、ある事業補助でやられ、ある事業融資でやられる、非常に大きな規模の事業でも補助がつくのを待ち切れないで融資でおやりになった場合が多々あります。こういうものは非補助事業として扱い上は整理いたしておるわけであります。この点だけ、ちょっと言葉の上で食い違いがございますと、いろいろ御説明申し上げるのにも食い違いが出てくるかと存じまして御説明申し上げました。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 政府委員に申し上げますが、われわれ問題がわからなくて、学校の生徒が先生に聞くような質問をやっておるのじゃないのですよ。了解に苦しむ点があるから、この点はどうだということを明らかにしてもらえばいいのです。補助事業と非補助事業がどうだというようなことは当然わきまえておるのです。ただ今度の改正措置によって従来の補助事業が非補助事業になる、そういう傾向が今度は拡大されておるのですよ。従来補助事業であったものが今度は非補助事業の範疇に入っていく、しかしその分についてはこの三分五厘の利子を適用するということになっておるから、結局補助事業が圧縮されてそして非補助事業の方に移行されていく、非補助事業の分に対しては、この六十五億の基金制度の中から生まれたわずかな利子だけをもって利子軽減をはかるというのがこのねらいなんですから、その点を私は聞いておるわけです。ですから、今までの質問で明確になった点は、もちろん非補助事業に対しての三分五厘の融資だからそれには補助はつかぬということが明確になったからいいです。  その次にお尋ねしたいのは、今度この非補助事業の対象にされる事業は、一つは国営及び県営事業の受益地域内においてこれらの事業に面接関連する団体で、灌漑排水事業、この中からは用排水等の基幹工事は除かれるわけですね。それから耕地整備事業がこの非補助事業の対象に今度変わっていくわけですね。この点はいかがです。
  63. 清野保

    ○清野説明員 先ほどから御説明いたしております通り、ただいまお示しになりましたものであっても、現在継続してやっておりますものは従来通り継続である、新規のものは、ただいまお示しのようなものは原則として融資でやるようにいたします。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 その次はこれは単独施策の耕地整備事業のうち客土及び農道、この中からは急傾斜地帯は除かれるわけですね。この単独事業というものは今度は非補助事業ということに変るわけですね。いかがですか。
  65. 清野保

    ○清野説明員 ただいまお示しになりましたうちで、急傾斜地帯及び地すべり地帯が除かれております。それ以外はお示しの通りであります。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、今言ったような非補助事業に今度切りかえられる事業に対してはこれは原則でも何でもいいですが、とにかく補助金はなくなって、そのかわり現行の非補助事業の貸付五分というものが三分五厘になるような措置に変るわけですね。これはいかがですか。
  67. 清野保

    ○清野説明員 ただいまお示しになりました国県営の末端の直接関連する事業、それから単独施行の耕地整備事業の中で急傾斜地帯と地すべり地帯を除きました客土及び農道は一分五厘を軽減いたしました融資事業、こういうふうになって今後事業を進める考えでございます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 その次は昭和三十二年度に施行された非補助土地改良事業において、先ほど指摘いたしました第一の事業についての取扱いとの均衡上必要と認められる事業については、その貸付残額分についてやはり三分五厘に利子の軽減措置を講ずる、こういうことになるのですね。
  69. 清野保

    ○清野説明員 その通りであります。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 その次は、先ほど申しました事業に対しては明らかになるわけですが、補助金はこれは該当しないということをさらに念を押して運用要綱の中には書いてあるのです。第一の事業融資事業として施行することに対応し、補助金は第一に該当しない団体で灌漑排水事業及び耕地整備事業に集中的に配分して、これにより特殊立法地帯等を中心とする事業の伸張を期す、このことは結局、たとえば一の事業である国営及び県営事業の関連事業のうち用排水等基幹工事についてはこれは補助事業として残る、それから単独施行の耕地整備事業のうちで、急傾斜地帯とか地すべり地帯のものは補助事業として残るわけですね。ですから、そういう特殊地帯等の関係土地改良事業に対しては集中的に事業を進め、これに補助金をつけるということになると、特定に定められた特殊地帯あるいは特別の事業だけに今度は補助金が残って、それ以外の通例言うところの関連土地改良事業等はすべて非補助事業になるということはこれによって明確になったと思います。これをはっきり言ってもらわぬと、いかにも補助金も出すしそれから利子も安くしますというふうな本名次官のような答弁になるわけです。現地ではこれは非常に迷っているのですよ。これは私が今質問したことによって明らかになったわけです。明らかにこれは、補助金を整理して、そうして非補助事業に対して従来の五分の貸付利子を三分五厘に軽減するというようなことに尽きるわけです。もしそうでないとすれば、これは政務次官からでけっこうですから言明を願いたい。
  71. 本名武

    本名政府委員 事務的なことにつきましては若干補足して部長から申し上げるようにしたいと思いますが、その前に私から申し上げます。  先ほど概括的に申し上げましたが、やはり補助事業と関連して、目的効果を上げるために新しく低利の利子補給の制度を設けたわけでありまして、建前としては、必ずしも補助を打ち切って融資に全面的に切りかえるというような方向はとらないということで、それをさらにあらためてまた部長から御説明させることにいたします。
  72. 清野保

    ○清野説明員 先ほど来要綱の御説明をいたしましたし、かつまた稲富委員の御質問に対しても例をあげて御説明申し上げました通りでありまして、ただいま問題になっておりますところの直接関連する国県営の末端の新規事業とか、それから急傾斜地帯とか地すべり地帯を除くところの客土及び農道事業はいずれも原則としては融資事業だ、こういうふうな御説明を申し上げておりますが、しかしこれも補助事業との関連を絶えず考えながら、たとえば従来の耕地整備事業は三割でございまして、三分五厘の融資はほぼこれに匹敵する農民負担と考えておりますので、いずれをとりましても農民負担というものはあまり変化がない、でありますので、こういう案を考えたのでございます。なお特に国県営の末端におきましては従来から相当な補助がありますが、従来から補助のあまりいかないような山場地帯にこれを運用して補助事業をもっと広くやる、こういうふうに考えた結果一応国県営に縛ったのであります。しかしながら国県営末端といえども現在継続してやっております事業であるとか、あるいは間接に関連する事業、たとえば排水改良事業を行なった場合のその末端の暗渠排水とか、区画整理とか、そういうようなものは具体的に申しましてこれは直接関連とは考えられないというような解釈も成り立ちますので、要するに関連事業とはいいましても、間接的に関連するものは従来通り補助をもって施行するのだ、それでありますからある場合には非常に狭く縛りましてその融資事業というものはやっていくのだ、こういうふうに考えて、極力農民の過重なる負担を避けよう、こういう方針をとり、かつまた農民の意思、農民の申請を十分に尊重して運用して参りたい、こう考えております。ただ客土及び農道事業のように補助率の非常に低いような事業は三分五厘でありまして、優に経済的に見て、これは完全に農民負担ができる、こういうものにつきましては——従来三割、四割、五割というような高い補助率がございます急傾斜地帯とか地すべり地帯の特殊なものを除きましては、これは非補助融資でいったらどうか、こういうふうにえ考まして、こういう要綱を立案したので、御了承願いたいと思います。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも原則とか原則でないとかいう点が明らかでないのですよ、説明によると。これは地元の希望によって選択が任意であるというようにもとれる。補助金でやってもらいたいという場合は従来の五分の利子で補助金はやる、それから安い金利の方でやりたいという場合にはそれは非補助事業にします、それは間違いないのですか。非補助補助事業の選択は、地元民の意思とか希望によってこれは決定される。有利な方を選択すればよろしいというのがこの規定の妙味ですか。この点は明らかにしてもらわぬといけないですよ。この委員会のこの場限りの問題ではないのですから。
  74. 本名武

    本名政府委員 この要綱を御説明申し上げるときに部長からも申し上げました通りに、この要綱はあくまでも農林省として考えております仮定のものでありまして、最終的に決定した要綱ではないが、ただ御質問がありましたので、今考えたことはこうだと申し上げました。そこで今御指摘の一体どっちのことなんだというお話でごさいますが、これは御指摘通りに、また部長も申し上げましたように、地方の御意見もございますし、努めて、先はどから申し上げましたように、この対象とする事業については、御希望あるいは農民負担の実情、その他の要件をそれぞれ検討いたしまして決定するのであって、一律にこの方法に全部切りかえるのであるという考え方には立っていないわけであります。その線に沿うて最終決定をいたすつもりで検討いたしておるわけであります。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 くどいようですが、本名さんは議会が解散になればあと政務次官になるかわからぬわけです。事務当局に聞いておきますが、今政務次官が言われた非補助にするか補助にするか、これを地元の希望、いわゆる選択権を地元にまかせるという運営で必ずいくのですか。その点が明らかになれば、われわれはこの制度の内容にある程度の理解は持てるのですが、この点を建設部長と高木さんから明確にしてもらいたい。
  76. 清野保

    ○清野説明員 補助または非補助融資事業いずれを選択するかということは、あくまでも地元の申請によるのでございます。従ってわれわれの方としては地元の希望、意見、申請を十分尊重して運用していきたい、こういう考えでございます。
  77. 高木文雄

    ○高木説明員 政務次官の御答弁通りでございます。ある特定のものについて、先ほどからお示しの国営または県営というような地域内において直接関連する新規事業等について、これを補助の対象から全然はずしてしまうということは考えておりません。完全に除外してしまうというふうには考えておりません。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 その点が選択制でいけるのかどうかということです。地元の意思によって従来通りこれは補助事業にしてもらいたいといえば、そうやれるか、非補助分にして、三分五厘の利子でやった方が有利だから、低利の方でやってもらいたいという声が地元から計画として出された場合には、地元の要望とか意思を尊重して、それによっ決定するかということです。
  79. 高木文雄

    ○高木説明員 地元の意思を尊重していたします。特に補助をやめることによって著しく負担が重くなるということにならないようにいたします。
  80. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、こういうふうに解釈してよいのでございますか。従来県営で継続事業をやっておる、ところが三十三年度からその県営事業の末端に団体営としての新規事業を始める、こういう場合は、従来の県営事業の継続としてこれをみなす、こういうことになるのでございますか。これは新規事業なるがゆえにやはりこの対象になるという解釈をするのか、あるいは地方の希望が従来のような継続事業の一端であるということで補助の対象としてもらいたいという希望があった場合は、補助としてこれを取り扱うか。この点をはっきりしていただきたい。
  81. 清野保

    ○清野説明員 ただいまお示しになりましたような事例も三十三年度におきましては特に起るだろうと思います。そういう場合には特例として扱って処理して参りたいと考えております。
  82. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 関連。一点だけその点をお伺いしますが、その選択権が地元にあるという場合、地元がどちらを選択するかというと、要するに負担の軽い方がいいということになる。負担の軽い方がいいという点が一点と、事業を早くやった方がいいという点と、この二つがひっかかってくるわけです。従って、補助分以外のものに五分の利子がつく場合と、全体の非補助に三分五厘ということになれば、普通の場合においては、農民の方とすればどちらをとるかといえば、補助金があって普通のものをとる方が、勘定ずらでは安くなる。従って非補助で三分五厘でやる場合には相当事業費をみてやる、こういう特典がなければ、選択権なんか与えられても何の役にも立ちませんよ。そういう場合において、こういう事業費の面において三分五厘の融資のワクをよけいにするという前提がなければ意味をなさぬ。この点についてはそういう用意があるかどうか、こういう点を明らかにしてもらいたい。
  83. 清野保

    ○清野説明員 選択権の問題でございますが、お示しのように補助事業の方が融資事業よりもいいのだということ、融資事業補助事業とを比較した場合に、融資事業は当然早期完成、いわゆる従来の完成年次を三年を二年にする、あるいは五年を三年にするというふうに、早期完成をはからなければ、当然融資事業の有利性は生まれてこないことはお示しの通りと考えております。なおそれにつきましてどの程度まで三十三年度においてこの融資事業を運営する事業量がふえるか、こういうような御質問と考えますが、先ほども説明しましたように、本年三十三年度のわれわれの計算によりますと、前年度の団体営灌排並びに耕地整備事業よりは、その他をいろいろ勘案いたしましても、なお三割以上の事業量がふえる、こう考えておりますので、地元がもし融資事業によって早期完成を希望するならば、大体その希望が達せられると考えております。
  84. 稲富稜人

    稲富委員 補助関係する問題はこのくらいにしまして、次の問題に移りたいと思います。今回の法の改正によりまして、この漁業金融公庫の支店を東京、札幌、仙台、福岡等に設置して、直接窓口業務を行わせる、こういうことでございますが、何がためにこの四ヵ所に特に支店を設置するという便宜があるのか、将来この支店をさらに拡張するという意味であるのか、またこれに対する取扱い方はブロック的にやるのか、どういう計画でやるのか、この点を御説明願いたい。
  85. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私ども計画といたしましては、公庫の事業分量の増加に応じましてブロック別に十ヵ所程度まではふやしたいという考えを持っております。しかしその時期等につきましては、公庫の事業分量の進展とにらみ合せましてやりたい。さしあたりこの程度にいたしたいと考えております。
  86. 稲富稜人

    稲富委員 東京、札幌、仙台、福岡となりますと、関西、中国というようなものは支店設置計画に入っていない。これは事業分量等から必要がないという意味でございますか。
  87. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいまのところは九州、中国の一部を福岡で見て参る。それから北海道は広いですから北海道。東北は土地改良等の部面が非常に多いですから、そちらに重点を置く。東京は営業所でもっと小規模のもの等について取扱いを簡易にやっていく、こういうような考えを持っております。交通の便、通信の便、それから事業内容等をにらみ合せまして、さしあたりはただいまお示しのありました程度にいたしたいと考えております。
  88. 稲富稜人

    稲富委員 将来は中金に対する委託業務というものは廃止していこう、漁業金融公庫としてはそういうような建前に将来は持っていこうということを前提として窓口業務をしぼっていく、こういうような考えであるかどうか、この点をお伺いいたします。
  89. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 支店設置目的には二つあります。ただいままでの貸付の管理の問題、それから貸付審査の問題、それからあと直接貸すか貸さないか、こういう問題であります。その既往のものの貸付の管理と、これから貸しつけるものの審査の問題これは先ほども申し上げましたように、だんだんと貸付の件数が多くなっておりますから、あとの取り立てとかあるいは管理についての業務は、一々本所から全国を回っておったのでは手が回りかねますので、支所を置く。それから貸付につきましても、現在受託機関から公庫の本所まで上って、公庫で最終的な認定をして、そうして貸付を実行に移しておりますが、それももうなれてきましたから、それから件数が非常に多くなってきておりますから、一定金額までは支所で、本所まで上げずにそこで処理した方がいい、こういう問題があります。それからもう一つは、それでは直接貸しをだんだんやったらいいじゃないか、こういう意見があります。この点につきましては、現在の傾向を見ますと、だんだん信連を通じて貸し付ける額が多くなってきております。それから土地改良等についてはだんだんなれてきましたので、相当大口のものは直接貸した方がいいではないか、それから新規の用途等のものについては直接貸した方がいいじゃないか、こういう意見も出てきておりますが、これらにつきましては、受託機関の営業既得権といいますか、そういうものにも関連するのでありますから、関係機関の間で十分話をつけた上でそれを実行に移したい、こういうふうに考えております。
  90. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、従来の委託業務は廃止しない、二本建でいこう、こういうような計画でございますか。
  91. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 結論的にはそういうことになりますが、それを業種と、それから一件当りの金額によって区別していったらいいじゃないか、こういうふうに考えております。
  92. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、あえて委託業務は従来通りやっていく。さらに窓口はこれによっても業務は行なっていく。こうなると二本建になって、従来の委託機関に対する費用の軽減というようなにとは別に考えていないわけなんで、かえって費用が非常に増額するというような結果になってくるのじゃないですか、この点はどう考えられますか。
  93. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 直接貸しをしたらいいじゃないかということは、直接貸しすれば費用を軽減できるじゃないか、こういうことから問題が出てくるわけであります。しかし直接貸しをあまり急激にやりますと、先ほど申しましたように既存の受託機関の営業を侵食することになるわけでありますから、どういう業種の貸付にどの程度の範囲までやったらいいかということは、これは慎重にやった方がいいのじゃないか、こういう考え方であります。
  94. 稲富稜人

    稲富委員 それから元来農林漁業金融公庫等の貸付というものが非常に事務的におくれるということはあなた方もお聞きになっていると思う。こういう点が、この支店設置等によって業務が非常に簡素化するとか、あるいは貸付の期間が早くなってくる、こういうように取扱い等が非常に簡便になるというような傾向があるならともかくも、こういうことになりますと、二本建でこれはかえって複雑化してくるというようなきらいが起ってこないのですか、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  95. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 先ほどちょっと御説明いたしましたように、受託機関借り入れ者に対しまして審査をいたします。それを公庫の本所に上げまして、そこでオーケーをとって初めて貸付になるわけでございます。その支店設置する理由として、先ほど最初の理由は大きいもの、あるいは非常に問題のあるものは当然慎重を期するために本店まで持ってきて慎重を期したらいいと思いますが、たとえば今一口当り五百万以下のものについては、支所でたとえば農地事務局とすぐ相談して、この土地改良はいいかということになれば、支所でオーケーを与えますれば、支所ですぐ貸付を受託機関に通知すれば、本所まで伺う、少くとも往復の期間が節約できるわけであります。あるいは審査に行くのも、本所から行かなくても、疑問があっても支所審査すれば手続が簡便になる、こういうことをねらっておるのであります。
  96. 稲富稜人

    稲富委員 現に今日の中金が県信連とそれから支所との間において同じような業務を同じ地方で二つの窓口でやつている、こういう点から非常に不便を感ずるというようなそしりを、われわれも聞く場合があるのでありますが、やはりこれも金庫というものは、委託業務とまた別個の窓口を作ってやるというと、同じ轍を踏むというような結果になって、かえって費用の増大を来たす、かえって融資等がおくれてくるというような、こういうかえって期待するのと逆な結果を生みはしないかと思うが、こういう点に対しては、あなた方は十分御検討なさっておるのですか。
  97. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方では支所設置する理由は、先ほどから説明いたしますように、事務を簡素化するというねらいで出てきているわけです。しかしそこで業務を奪い合うとか、あるいはいろいろな理屈をこねて複雑になるおそれはないかという御心配ですけれども、それは先ほど申し上げますように、どの業種、しかも一口何万円以上のものということで区別することによって、その間の調整はできると思います。それから今信連と中金の間でトラブルがある、こういうふうなお話でありますが、これはやはり今のような趣旨で、はっきり貸付の業種、金額をきめて分担いたしておりますから、その関係はないと思います。さらに根本にさかのぼりまして、これは今の系統金融機関内で問題になっておりまして、信連と中金との全体的な仕事のあんばい、そういう問題が出ております。これらは特別に関係者の間で意見を交換しまして、早急に結論を出す予定になっております。
  98. 稲富稜人

    稲富委員 この問題に対しては、ただいまいろいろ部長から御説明なさったのでございますが、私はもっと内容に触れて検討したいと思うのでありますが、どうもかえって複雑にするおそれがあるのではないかというような気がするのであります。将来にわいて一切委託業務を廃止して、これに一本化するんだというような計画のもとにこれをやるというならば、また別でありますが、依然として二本建によって、業務の種類によって変えていくというと、経費等がかえって非常に多くなつてくるのではないかと思うのですが、われわれはこの現在の金融及び金利等はできるだけ少くしなければいけないという考えを持っておることは、先刻も申し上げました通りであります。こういうことによって、やはり維持費というものが多くなってくるというそしりを受けるような結果になってくるのではないかということを、われわれは考えるわけであります。十分検討された上でこういうことが立案されただろうと思うのでありますが、この点はどうもわれわれはそういうような心配があるわけなんです。これに対してそれ以上説明しろといっても、あなた方はそういうことでやったとおっしゃるだろうと思うのですが、この点は実際の運営面に当っておる総裁が見えておりますので、総裁からその点を一つつぶさに承わりたいと思います。
  99. 山添利作

    ○山添説明員 この支所設置いたします理由につきましては、先ほど局長から説明がございましたように、事業量が非常に堆積をして参りまして、件数にいたしましても現在十五万件くらいになっておるのでございます。これにはずいぶん小さいものも含んでおります。自作農等もございます。そういうものを抜きにいたしましても、一年にどうしても二万ないし二万五千件扱っておるわけであります。そういうふうにしておりまして、だんだん堆積をしておりますと、そこにおのずから回収について問題があるものも出てきて参っていること御承知通り。そこでどうしても公庫といたしましては、これをもっと現地に近くおって、そうしてそれぞれの具体的な事情に通じてやりたい、そのことによって管理を適正にし、また不良貸しの発生するのを防止したい、 こういう趣旨であります。あわせて事務の簡素化をいたしたい。たとえば東京だけでありますと、ただ書類だけで往復をしておる。ところが地方などであらかじめその辺の事情に通じておれば、一々そういう形式的な書類上の不備等を問題にしなくても、貸付決定を簡単にやれるとか、これはいろいろ近ければ近いほど便利だと思います。ところがただいまお話しになりましたような、本来一元的と申しますか、直接貸しのような方針でいくのか、それから委託ということを原則にしていくのかということにつきましては、私の考えといたしましてはこれは委託を原則にしているのでありまして、従って支所を設けましても、どこまでもこまかくやっていくということではございません。直接貸しを原則にするということであれば、これはもう各府県にそれぞれ持たなければできない、こういうことでありましょうが、私の考えといたしましてはブロック別ということで、支所はそのブロック別に置き、かつそれを限度とする、こういう考えでございます。そこで今お話のように、二万何千件というようなものを、かりに直接貸しがいいという仮定に立ちましても、それはとてもできるものではございません。また一面から申しますれば、国家資金ではありますけれども、これもいわゆる農林漁業の一般の資金と混在している一つの体系をなしているものでありまして、これは借り手が農林漁業者であります限りにおきまして、それらの団体の事情に通じている機関に委託するのが、やはりこれは事務的にも、事情をよく知るという上にも適切であろうと思うのであります。その委託を原則としつつ、先ほど申し上げますようにブロック別まで身近にいたしまして適正な処置をしていきたい、そこで費用の問題になりますれば、これは当然それを置くだけの費用はふえるわけであります。しかし一面から申しますれば、これはそのこと自体の費用はふえますけれども、公庫の採算と申しますか、これは貸付金利を上げないことはもちろんであります。そういう意味では公庫の全体としての経費というものは、それは委託料を含めて膨張しないようにやっていきたい、その他につきましては、ある程度大きなものにつきまして、公共事業のある種の一定部分について、公庫が直接貸しというようなことをしますれば、そこに全体としての経費の膨張は来たさずに済むのではないか、こういうように考えておるのでありまして、公共事業は、これは金融ではございますけれども、御承知のように県当局が主として事業計画等も援助してくれております。これらのものにつきましては、そういうところとよく連絡をしますれば、比較的取扱いも、そうめんどうなくやれるわけであります。そういう業務の分担というようなことも考えているわけでありますが、これらのことにつきましては、それぞれ関係の者と十分意見を交換して、意見の一致したところで処置をいたしたい、こういうように考えているわけであります。
  100. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、ブロック別に支所を作るということを非常に強調されておるのでありますが、私の聞くところによりますと、先刻も申し上げましたように、四カ所になっているので、これはブロック別になっていない。どういう意味で特定なこういうブロックというものを作られたのか、事業量ということからこういう格好になっているのか、この点を一つ計数的に御説明願いたいと思います。
  101. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 先ほどからブロック別を目標にして、さしあたり四カ所ということを言っておりますが、ブロック別の貸し出し状況をちょっと参考に申し上げますと、これは三十二年三月三十一日におけるところの貸付残高でありますが、大きい順で申しまして、北海道は百三十八億、東北は百八十九億、九州が百六十八億、関東は百五十五億、北陸は百十億、四国は九十億、近畿は八十四億、中国が七十七億、中部が六十五億、こういうふうになっております。私の方では、当初からもう少し数を多く置きたいという希望はあったのでありますが、先ほどから申し上げましたように、公庫の経費の総支出をふやさない限度ということで考えておりますので、遠隔の地には最初からぜひ支所を置きたい、交通通信の便利な東京管下で処理できるものは、少し事業分量が多くなりますけれども、東京で処理していく、そのゆえに北海道、仙台、福岡それから東京、この四ヵ所でスタートしよう、こういう考えであります。
  102. 稲富稜人

    稲富委員 農林省の大体ブロック別の支所設置の問題に関しては、公庫の意見とあなたの方の意見は相当食い違いがあるのです。もちろん東京は東京管下でできるからいいけれども、今申し上げましたように、北陸あるいは中国、四国という方面は東京までは相当便利が悪いので、やはりあのあたりを一括した一つのブロックというものが心要じゃないか。そういう意味で、ブロック金融をもとに支所をお作りになるというならば、この点は非常に片手落ちなのじゃないかというのがわれわれの意見であります。農林省としては、将来必要によってはやはり支所を考えていきたいという御意向のようであるし、公庫の方ではこれを限度としてこれでやっていこうというようなお考えのようであるが、これの運営を全からしめるについては、何か将来の見通しその他について、公庫の方と農林省の方との間には一致したものがあるべきではないかと思う。いつまでも意見の対立したまま設置していくということになれば、この問題はいつ解決するかということが起ってくる。この点はどういうようなお考えか。やはり二つの平行線で行かれるのであるか、どうですか。
  103. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 公庫と私の方と意見が食い違っているわけではないのです。先ほど総裁からも御説明がありましたように、目標は大体農地事務局単位のブロックです。そうしますと、北海道、東北、北陸、関東、それから大阪と岡山、それから九州、こういうことになります。そこまで持っていきたい。しかし経費とにらみ合せて、差し当り四カ所でスタートする、こういうことで、食い違いはないのであります。現在の状況から見まして、御指摘がありましたように、経費を増高してまでそこをやる必要はないのでありますから、経費とのバランスをとりながらサービスを改善していく、こういうわけであります。
  104. 稲富稜人

    稲富委員 その点がはっきりしないと思うのです。それはさっき総裁も、これがために経費がかかるということは認められておる。これは運営上そういうふうな効果が上っていくのであるから、経費がかかってもいいのだ、こういうことを総裁も先刻はっきり御説明なさっておる。それで、効果が上っていくことによって公庫のと運営を全からしめようとするならば、経費がかかるからこれはやめるというような考えでなくして、それを作ってもその事業の運営を全からしめるということに進んでいくというにとが必要じゃないかと思う。ところが、経費のために制約されるというなら、一切行わなければいいわけです。その点が半端なのです。この点がわれわれにはぴんとこないところです。経費を使えばそれだけ公庫の目的が十分達成されて、みなの期待に沿うようにできるというなら、またお作りになってもいいわけです。ところが、作れば費用が要るからやめるのだと言われる。そんな費用が要るということなら、みなやめた方がいいということになる。その点の考え方がどうも半端だと思うのです。実際問題として今やっているのだから、この点支所を作るについて、支所を四ヵ所だけ作るのだという意味がわれわれにはふに落ちない。何がために四ヵ所作らなくてはいけないのかという点があなたの説明では納得できないのです。ここのところをもっとわかるように御説明願いたい。
  105. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 公庫の御説明で、支所設置すれば支店設置の経費がかさむ、それはその通りでありまして、それは人員も増さなければなりません。しかしそのかさぬ費用を貸付利子の引き上げでまかなうわけにいかぬから、どっかで浮かさなければいかぬ。その浮かすのに二つの方法があると思います。一つは、委託機関に対する委託手数料を節減すること、その節減の方法には、現在の手数料を引き下げるのが一つ、それから委託機関に頼まないで直接貸し付けるのが一つ、これは委託機関に対する委託手数量を省くことができるのですから、その二つの財源とにらみ合せながら、その財源でまかなえる範囲内で支所設置していくことが一番いいじゃないか、こういう説明をてしいるのでありまして、私の方としてはその点は一致しておるのでございます。ただ受託機関の手数料を節減するという問題は、受託機関の既得権を侵すことになりますから、これは受託機関にも十分得心をお願いいたして、全体的な公庫金融の面から考えてみたらこういうふうに事業調整をしたらいいじやないかというように、相談ずくでいかなければいかぬ。そして相談ずくで今までできた範囲内では、さしあたり四ヵ所くらいの財源しか出ない、こういうことでありますから、御了解願いたいと思います。
  106. 山添利作

    ○山添説明員 先ほど言葉の点で、私がブロック別に設置して、かつそれを限度とするというのは、先ほど渡部局長がおっしゃいましたように、たとえば中国、四国あるいは大阪というようなところにそれが設置されることを希望し、かつそれを限度とするということでありまして、四ヵ所を限度としているというのではございませんから御了承願いたいと思います。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの稲富委員支所設置に関する件なんですが、農林漁業金融公庫法が成立した経緯にかんがみると、当時附帯決議を付して、支所設置は当分の間行うべきでないということで昭和二十七年十二月二十日に当委員会でこの法律が成立しておる。これは議員立法で公庫法というものはできておるのです。これはもう法律ができたときからこの公庫の末端業務は委託方式で行くべきだということになっておって、法律の体裁上は従たる事務所を置くことができるということになっておるけれども、しかし法案成立の趣旨からいうと、地方に支所事業所等は当分の間置かないということでこれが発足しているわけなんです。そういうことは当然政府においても承知しておられたと思うのです。今稲富委員質問の中にもありましたが、なぜ四つぐらいの支所を置かなければならぬかというような点に対しては明らかにしてもらわなければならぬ。
  108. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいまお読み上げいただきました附帯決議は、私の方も十分承知しております。当分の間の解釈の問題であります。私の方では、先ほど来御説明いたしておりますように、事業分量が非常にふえてきておりまして、貸付の管理、すなわち回収、保全、それから貸付の簡素化、そういう点からいえばもう支所設置してもいい段階じゃないか、こういうふうに出えたのであります。  それからその支所をどこまで設置するかという問題でありますが、この附帯決議がついたゆえんのものは、現在の系統機関があるから、むやみに支店を設置して金融が二途に出ると工合が悪いから、こういう趣旨と私どもは了解しております。ですから、どの程度の支所設置が必要であり、また関係機関の間で了解がつくかという点がまだ問題として残っておると思います。そういう点は関係機関の間で十分議論を尽した上で、今の四支店をあるいは五支店にするのか、あるいは八支店にするのか、あるいは四支店でもうやめるのか、そういう点は公庫側の希望、あるいは農林省意見等もありますけれども、最終的な意見としてはどこまで支店の数をふやすかということはきめてないわけであります。ことしきめてから翌年すぐまたふやすという考えは持っておりません。さらによく今後の支店設置後の運営状況等を見て決定したら間に合うのじゃないかと思います。
  109. 芳賀貢

    芳賀委員 ただ問題はこの公庫法ができたときに、しかも議員立法でこれができたときに、支所事業所は当分の間は置かない、ただ置けるということは法律の体裁上作ったわけなんだからその趣旨を尊重した場合においては、当分の間が過ぎたから置くということにはならぬと思うのです。しかも当分の間というのは局長は大体何年くらいを当分の間と考えておるか。九十九年という場合もあるし、あるいは十年という場合もありますが……。
  110. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 当分の間というのは短く解釈する、長く解釈する、いろいろ解釈の仕方があると思いますが、私どもの方では先ほど来申し上げましたように、貸付分量、件数の事務が非常にふえまして、今までは貸付けておればよかったというような状態であったのが、やはり貸付後の回収官理の問題もありまして、会計検査院の指摘等もだんだんふえてきておりますので、それらについて公庫としても十分責任を持っていただかなければならない、それから貸付の件数がふえれば、やはり受諾機関に全部まかしておるわけではございませんので、結局最後の貸付決定は公庫がやっておるわけであります。それを一々今は東京まで受諾機関からお伺いを立ててやらしておるのでありますから、そういうことはこの際はやはりもう少し整理した方がいいのじゃないか、整理するためには必要最小限度の支店を置くこともやむを得ないのじゃないか、こういう関係でそういう時期的の当分の解釈ということよりも、公庫の運営の状況から見て、ぜひこういうふうに支店を設置することが必要であると考えまして、その結果としてその当分の時期に触れることになると思います。
  111. 稲富稜人

    稲富委員 次に役員の問題についてお尋ねしたいと思うのであります。農林中金のごときは理事長、副理事長は主務大臣が任命することになっておりますが、今回の改正案によりますと、公庫の副総裁及び理事というものは主務大臣の認可を得て総裁がこれを任命関することになるわけであります。主務大臣の認可を得てこれを任命するような権限を総裁に持たせたのはどういう意味が含まれておるのであるか、この点承わっておきたいと思うのであります。
  112. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 理事理事長あるいは総裁の任命の仕方についてはいろいろな例があると思いますが、最近のこういう政府機関の例では、総裁を主務大臣が任命する、そのほかの理事は総裁が主務大臣の認可を得て任命する、こういうふうな考え方になっておるわけであります。その理由は結局するところ、普通の株主でもって構成される株式会社と違いまして、総裁に政府政府機関としての非常に大きな権限を与えておるのであるから、やはり総裁が統率し十分の効果を発揮できるような仕組みにした方がいい、そのためには総裁の推薦によって大臣が認可した方がいいのじゃないか、こういう考え方であります。
  113. 稲富稜人

    稲富委員 なぜ私がこれを質問するかと言いますと、最近農林省関係のあらゆる各団体の人事の問題でとかくの問題がある。たとえば愛知用水公団総裁並びに副総裁の任命問題であるとか、機械化公団の総裁の任命であるとか、非常に政治的な意図のもとにこれが行われる場合があるということは非常に遺憾である。しかもその政治的意図があって運営が非常によくいっておるのならいいけれども、それがためにかえって暗礁に乗り上げて、その運営はおもしろくないという結果をたくさんに出しておる。こういうような事実を特に農林省関係の諸団体にわれわれ見るがゆえにこの点を特に質問しておるわけなんです。これに関連して申し上げれば、特に愛知用水公団のごときは、最近しばしば新聞でも騒がれておるのでありますが、政治的意図によって総裁を更迭し、あるいは副総裁を入れる、しかもこれは従来あまり知識がなかったような人が入ってくる。それがために指導力というものが非常に分散されておるというのがたくさんあって、そのやることさえもとうとう暗礁に乗り上げてしまうというのが非常に多いわけなんです。でありますからこの点を私は聞いておるわけでありますが、今回のこの公庫の副総裁設置に当っては、過去においてなめられた苦い経験をもうなめないように人事をやろうという考えがあって副総裁を設置し、その副総裁の任命に当っては総裁が主務大臣の認可を得て任命する、こういうようなことでいこうという確信があるのであるか。私はあえて以上の問題をお聞きしたいと思います。
  114. 本名武

    本名政府委員 今日まで政府関係の団体、機関におきまして人事の問題がとかく騒がれたことは私も承知いたしております。それに関連してこのことが政治的の意図があるかないかの論議は別といたしまして、あくまでも主管大臣の良識と責任においてなさるべきであり、今後においてもかかる問題を惹起しないように心がけなければならないと思います。ただこの法案関係いたしまして、副総裁を大臣が認可します場合に、おそらく総裁は人選についてはあらゆる角度からいろいろ検討されると思いますが、その検討の段階において、あるいはまたいろいろそういうような他からの意思見などというものが表面に、あるいは新聞等に宣伝されることがあるかもしれませんが、しかし今申し上げましたように、その総裁の人選に対して大臣はあくまでも厳正公平な判断のもとに認可をすることと私は信じております。
  115. 稲富稜人

    稲富委員 今次官から話がありましたから申し上げるのでありますが、たとえば愛知用水公団のごとく——もちろん愛知用水公団の副総裁は総裁が認可を得て任命することになっておる。ところがその総裁は愛知用水公団事業に対して、あえて私の言葉で言わせるならば、あまり御理解のない方を主務大臣が任命しておる。さらに選ばれた副総裁がまた愛知用水公団事業にはあまり関心をお持ちにならない、ような方が任命されておるのじやないかとさえ思われる。こういうような人事の失敗というものが、愛知用水公団事業進捗に非常な悪影響を及ぼしているということはあなた方お認めになっておるだろうと思う。それで今次官が言われるように、総裁が主務大臣の認可を得てこれを任命するにいたしましても、このときに政府の圧力が加わって、いろいろな政治的意図が画されると、あえて総裁になると思っている人が選ばれないという結果にもなってくるわけです。それでほんとうに総裁に任命権を持たせるならば、総裁をほんとうに信頼するならば、これに対してあえて政府はくちばしを入れないで、どこまでも総裁自身の考えでやらせるこれは——次官は、総裁はあらゆる角度から検討してと言われるが、それはあなた方が干渉するとは言われぬだろう。ところが今までは往々にしてやられておるという事実がたくさんある。それだから私はこのことを言うのであります。今後これに対して十分注意をすると同時に、総裁は幸いここに見えておりますが、副総裁をもし任命するならば、この法律が通れば現在の公団の内部から任命することの認可を大臣に求めようとされるのか、外部から持ってこようとする考えなのか、腹案があるならばこの機会に承わっておきたい。
  116. 山添利作

    ○山添説明員 そういうことは、かりに私に考えがありましても、この際申し上げない方が適当だと思います。
  117. 稲富稜人

    稲富委員 申し上げないことが適当だとおっしゃるならあえて聞きません。ただあなたの考えでは、政治的な意図等によって動くのではない、ほんとうに公団の運営のために、あなたの補佐役として最適の人を、たとえほかのいろいろな団体の反対があっても推すのだという確信だけはお持ちになっているのか。今後その人選いかんによってはわれわれも意見があるが、その点だけをはっきり承わっておけば私はいいわけだ。
  118. 山添利作

    ○山添説明員 私は責任者でございますから、責任は尽したいと思います。
  119. 稲富稜人

    稲富委員 本会議の予鈴も鳴りましたからもう一点だけ聞きたいと思います。今回のこの公団業務目的でございますが、第十八条に——これはすでに陳情等においてお聞きになっていると思うのでございますが、海外移住との関係に対してのいろいろな援護措置がないということをよくいわれているのであります。これに対して、われわれといたしましても、農林漁業金融公庫がもっと積極的な方法をとることが、将来の日本の海外移住の発展上非常にいいのではないかと考えるのでありますが、これに対して政府はどういうお考えを持っているか、簡単に承わっておきたい。
  120. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 その点はこの法律改正案の作成に関連いたしまして、非常に問題になったのであります。海外移住に対する補助融資の問題は非常に重大であり、海外に金を出すということで問題が非常に多いのであります。すなわち、例を申し上げますと、日本の国内の貸付なれば、公庫が直接それを管理してその償還を確保することもできますが、海外だとそれに対して特別の措置を講じなければならぬ。あるいはまた、海外に貸し付けますと、日本の貨幣と向うの貨幣とのレートの変化による損失をどこでどう処理するかという問題等いろいろあるわけでありまして、それらについて一定の計画、一定の方法をもちまして、もしこの公庫でやるといたしましても、公庫の内地の業務と海外向けの業務とは損得を別建にして処理しなければ、幾ら海外投資が重要でありましても、海外投資により国内の公庫の業務が阻害されるということになっては、角をためて牛を殺すおそれもありますので、十分関係方面と話し合いをつけた上でそういうものを処置する必要がある、こういうふうに考えまして法律改正までには間に合わなかったのであります。もう一つの問題としまして、国内的の問題としましては、この公庫でそういう金を貸すのかあるいは移住会社で貸すのか、その両者を併立すればどういうふうな事業調整をやるか、こういうことも一つ残っているわけであります。それらの点は法案提出するのに間に合わなくて、法案提出後も関係方面でいろいろ御議論されておったのでありますが、早急に結論を出すことはむずかしいので、目下引き続いて大蔵、外務当局と一緒に検討を続けておる現状であります。しかし農林省といたしましては、移住金融につきましてもっと抜本的な——国内の入植につきましても必ずしも十分とは言えないのでありますが、順次改善されております。ましていわんや海外に行くのでありますから、もっと重要なウエートを置いて考えなければならないのではないか、そういう点で各省と交渉を続けておるのが実情であります。
  121. 稲富稜人

    稲富委員 それではただいま局長が言われるような、海外に対する問題なるがゆえに一つ不安の点があるが、その不安の点が一掃される方法が立てられることになれば、これに対しても何とか考慮される、こういうような意味で検討している、こういうのですか。
  122. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 その通りであります。
  123. 中村寅太

    中村委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————    午後三時二十五分開議
  124. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたし、質疑を続行いたします。久保田豊君。
  125. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今出ておりまする公庫法改正の一般的な土台をなす問題について一番大事な点について二、三点経済局長にお尋ねをしておきたいと思います。  その一つは、最近時に農民の立場からいきますと、全般的にいわゆる農村金融が非常に不円滑になってきた、つまり金が借りられないという問題が非常に強くなってきたのでありますが、そういう中で系統金融全体の循環からいいますと、大体においてそういうものが非常に不円滑というか、乱れてきておるように思うのであります。というのは大体農民の方も農協に金を預ける、あるいは品物を出しましたり何かしますると、肥料その他を買う場合にはなかなか金が借りられないということで、なるべく農協に預金をしないような傾向が相当顕著になってきておることは事実であります。特に少し金のあるような富農層というものは、大体そういう傾向が強くなってきている。また借りる方からしますると、預金だけは農協を通じて相当強く、半強制的というと語弊があるかもしれませんが、米の代金は御承知通り預金の振替、あるいは物を出せばすべて一応は預金に振りかえる、さてこれを出す場合には非常に困難だというようなことで、預金の吸収については農協が非常に熱心であるが、貸し出しということになると非常に不円滑になってきておる。今の数字がどういうふうになっているかわかりませんけれども、たとえば三十年度を基準にしてみると、農協に対する農民の預金というものは十五万幾ら、約十六万足らず、それに対しまして貸し出しは、一戸当りの平均貸し出しは一万八千幾ら、二万円足らずという状況です。しかもその二万円足らずの貸し出しの中で、半分はいわゆる制度金融ということになってきておるのが一般の状況でございます。ところが農民の方はどうかというと、いろいろ新しい商品経済といいますか、これが昔とは違って、すべて金がかかるわけです。資金をある程度投じなければ生産をやっていけないという状態がひどくなってきておる。ところが農協に行っても、肥料等はある程度貸してくれますけれども、なかなか実際は借りられない。特に新しい仕事を考えてやろうということになると、制度金融の場合は多少いいが、そうでない場合はなかなか金が借りられない。そういう窮屈なものなら農協にあえて無理なことをしてつき合わぬでもいいというふうな空気が出て参る。これが商品生産を非常に阻害している。従ってそういう中からも最近農民全体の農協に対する乖離の状態が出てきておる。単協はどうかというと、信連にぎゅうぎゅうと締めつけられる関係上だんだん——それだけではありません、特に市中銀行等の特利攻勢といいますか、そういうものが強くなって、単協でも少し金のあるところは信連に金を入れないで、銀行等へ預金をしておるというふうなのが、特にいい農協については、そういう面が相当出てきておる。信連はどうかというと、中金には預金をせずに、他の方へ系統外融資をどんどんやっている。こういう傾向が、一般的に非常にひどくなってきておるように思います。確かに一般市中銀行の特利攻勢とか、その他いろいろありましょうけれども、私はこれらについては農林金融全体の問題として、基本的にもう少し考えなければならない段階に来ておるように思うが、こういう点について農林省としては、あるいは中金としては、十分に検討をして対策を立てられておるかどうか。このままいきますと、もちろんこの系統が全面的にくずれるということはありませんが、そういう意味農民の方からいうと、単協がだんだんたよりにならない。離れていく。単協は信連とはだんだん乖離するような面が出てくる。信連は中金その他との間に相当なあれが出てくる。これらについての基本的な原因の研究なりなんなりをしませんと、それぞれがやり切れないというようなことでなくて、農林金融全体の循環が非常に阻害されてきつつあるように私は見るわけです。しかもそのしわ寄せが、末端においては、農民に対しては預金の半強制的な吸収ということと、貸付をしばる。しかも貸付をしばりながら、貸付の条件もしくは返済の条件等は厳格になる一点張りです。こういうのが、大体において今の農民の立場から見た系統金融の実態のように思う。そういう点が特に最近は強くなって参りましたが、これらについて農林省としては、具体的にどのような分析なり把握をしているのか。あるいはこれらに対して今後どのように対処していくのか。こういう点について、はっきりしたところがあれば聞かしていただきたいと思います。
  126. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 農家の借入金の借入先別の利用状況を、私の方の農林統計調査部の農家資金動態調査によって調べますと、大体こういう内訳になっております。協同組合から借りておるのは四五・七%、財政資金からの低利資金が六・四%、個人から三四・三%、銀行等から三・六%、その他が一〇%、これは三十二年三月末の調査であります。これを二十五年の調査に比べますと、協同組合は三九・八%であったものが四五・七%になっております。それから財政資金は一・五%であったのでありますが、それが六・四%、個人からの借人は五二・八%であったのが三四・三%に減っております。これは全国の農家から調べたのでありまして、地方事情によって事情が違っておりますが、大体系統金融なり、あるいは政府の低利資金の方も相当利用率が上っておる、こういうふうに考えております。しかし最近の情勢を見ますと、ことに去年の春から夏にかけては、財政引き締めで金融が逼迫して、信連の系統利用率が急激に低下いたしまして、利用率六八、九%から一〇数%下落いたしたのであります。その後これに対しましては大蔵省の銀行局長を通じて、それぞれの銀行に、そういう異常な金利でほかの系統金融を阻害するようなことをやってはいかぬ、こういう厳重な達しをしていただきまして、現在は六六、七%まで回復しておるのであります。そういうこともありました。しかしいずれにしましても農家は、預けるときには少しでも利子の高いところに預けることを希望し、借りるときには安いことを希望する。のみならず預ける人と借りる人が、相当食い違うのが当然だろうと思いますから、どうしても安い金を融通するということを考えなければならないのではないかと考えます。しかし、幾ら系統機関でありましても、預金利子を割って貸し付けるというわけには参りませんから、おのずから限度があります。さらにまたある部面においては、負担力のあるところには高く貸して、その余裕をもって安く貸す部面を作る、こういう工夫も要ることになってくると思います。それらの点につきましては、農家経済の動向をにらみ合せまして、財政資金と系統金融とのかね合せを考えまして、農家の経済の立ち行くように工夫をしていきたいと考えております。
  127. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 中金の理事長がおいでになっているから、この点についてのお考えをお聞きしたいのです。今政府当局にお聞きしましたのは、私ども末端で、農民の側からいいますと、なるほど農協金融、単協金融というものが、農民金融のほとんどよりどころになっていることは事実であります。ところが預金は、御承知のような機構で、半分無理みたいな格好で、大がいのものは預金の口座に振り込まれるということになるわけです。ところが借りるということになると、なかなかこれがうまくいかない。まあ肥料資金その他については、比較的楽に借りられますけれども、さて新しく何か一つ企画してやろうということになると、ほとんどこれに対する金融が得られない。その場合得られるものは何かというと、御承知通り大体において、いわゆる制度金融という程度にしぼられてしまうわけです。制度金融の恩典をうまく受けられないような農協においては、農民はどんどん牛を飼っているが、つまり農協の信用がないために、制度金融、つまり有畜農家創設資金の割当がないというので、ほとんど農協からは牛を入れる金を借りられないというような実情になってきております。そういうところから、農民の方から見ますと、要するに農協は預金だけは吸収するが、必要な事業資金あるいは経営資金等は、なかなか貸してくれない。それでは役に立たないというようなことになってきて、従って、そういうところから、少し金のある者は、ほかの方の銀行その他に預金をする、あるいはそのほかから融通を受けるというような傾向が、相当強く出てきている。その間において、単協と農民の金融との不円滑というものが、特に今のように新しい時代に農業が発展していこうという場合には出てきている。今の制度金融の程度ではとてもだめです。さらに今度単協を見ますと、いい単協ほど、ざっくばらんに言うと信連をたよりにしない。あるいは銀行等が特利でやる点もありましょうが、そっちの方に預金を特利でやっている。借りる場合にいたしましても、信連へ行って金を借りてくるということになると、いろいろうるさいことを言うので、なかなか金が借りられないというようなことから、信連の利用というものが落ちてくる。信連はどうかというと、一般かどうかわかりませんけれども、私は静岡県ですが、静岡県あたりの例を見ると、ほかにもあると思いますけれども、大体において、なかなか中金ばかりは今までのように系統利用ということをやっておらない。その乖離の状態が非常にひどくなってきております。そういうところから、本来系統金融というのは、農業の生産力を増すために作用しなければならぬものであるが、それが現実の農民の方からいうと、そうでなくなってきている。系統金融自体もそういう資金の循環が不円滑になりつつある。この原因をどのようにつかまれ、これにどう対処されようとしておられるのか、この点を基本的な問題として、長期の資金についての公庫の問題もありますけれども、一番基礎の問題として中金の理事長のお考えをはっきり私はお聞きしておきたい。今の渡部局長のお話の程度では私どもは満足できない。
  128. 楠見義男

    ○楠見参考人 今局長から御答弁になっておりました点のしまいのころに私入って参りまして、その御答弁になりました点で同感の点が実はあるのであります。私はいろいろ農協の金融の問題で、できるだけ金利を安くして貸し出しを伸ばしていく必要があるという場合に、その貸し出し金利を安くするためには、従ってできるだけ安い利子の預金を集めることによって、勢い貸し出し金利を安くさせる必要があるという議論が一部に有力にございます。これはいわゆる農協理念といいますか、それに徹底した議論だろうと思うのであります。しかし現実に全国の農民また農協の組合員が、理想通りそういう農協理念に徹底し、また農協理念を実践していく上において百パーセント期待できるかどうかといいますと、これは久保田さんもよく御存じの通り、現実の姿はそうでないわけでございます。従って一方で昨年のような情勢の場合には、いろいろ系統外の金融機関の誘惑等もありましたが、それにもちろん物質的に対抗はできませんけれども、一面精神的な面を強調すると同時に、一面できるだけ貯蓄推進増強等の、いわゆる特利ではございませんが、そういう一面の努力もしなければならないというので、預金の獲得等にも実は努力して参ったわけであります。これは平たくいえば、今局長からもお述べになっておりましたように、農民の貯金はできるだけ有利に系統で扱い、そしてできるだけ安く農業関係に使う、こういうなかなかむずかしい問題でありますけれども、そういう点に努力するのが実は私どもの努めであろうかと考えております。そうすると結局普通の銀行、金融機関でやっております経費、その経費を実は三段階で分けておるわけでありますが、それをできるだけ系統機関内で合理化をはかっていって、そのことによって一般金融機関にも十分太刀打ちができるだけの業務の上における改善を講じていかなければならぬということで、実は農林中金におきましても、昨年来合理化の線に努力して参っておる、こういうのが一般的な考え方であります。  今お述べになりました事柄、二つのうちの前半の、現実に農民が農協の資金を利用する上において、これはいろいろ欠陥があり、そしてまた不満があるということについてのお話でございましたが、まさにそういう面が従来あっただろうと思いますし、現在もその点はないということは、絶対に私どもの口からも申せないような実情で、はなはだ遺憾でありますが、そういう点はあることは重々承知いたしております。ただ今までの点で、若干是正を要することを指摘され、そしてまたそういう方向改善を加えられた点に、たとえば財務基準令でありますとか、あるいは経理の面のいろいろの行政上の方針があって、一個人当りある程度以上の金は貸せない。従ってちょっとした中大農具なりあるいは家畜を買うという場合に、それに対する資金融通が困難であったというような点も現実にはあるかと思います。こういう点は財務基準令の先般の改正等である程度緩和されたことと思いますが、それよりも基本的に農協の組合員に対する態度というもののある程度の転換といいますか、これは必要であろうかと思うのであります。そこで、これはなかなか一朝一夕には行かないかとも思いますけれども、御案内のように農協刷新拡充、特に刷新という点は、そういう今申し上げたような意味、質的に改善を加えていくという意味で、刷新という点が非常に強調されているわけでありますが、御案内の農協刷新拡充三万年計画、本年は第二年度で、昨年はいわばその準備段階の第一年度でございましたが、こういう方面で現実に再生産に必要な、あるいは生活改善に必要な面に対する信用部門の拡充ということをやかましく言っている。同時にまた従来は、あるいはところによりますと、今お話がございましたように上級機関あるいは他の機関に預金をすることによって利ざやをかせぐというような態度を持しておった組合も少くなかったかと思うのでありますが、そういう面を系統内における今申し上げた刷新拡充の方向に向けていって貸し出し伸張をはかっていく、こういうことを全系統を通じての運動と申しますか、こういうことでもって今努力しているようなわけであります。申し上げますように、一朝一夕には従来の頭が百八十度転換するということは困難かとも思いますけれども方向はそういう方向で各段階を通じて努力していきたい、そのために私どもといたしましても、まず末端でできるだけそういう面に努力をし、そうして余ったものを信連に、信連の段階で同様に努力をしていただいてそうして余ったものを中金にということで、そういうことをすることによって中金に集まってくる金が少くなることはむしろ歓迎だ、けっこうだというような方向で、私どもも実は考えているようなわけであります。現地に、といいますが地方におられて、直接そういう面に非常に御努力をなさっておられます久保田さんからごらんになりますと、なお全般として不徹底また不十分の点があろうかと思いますが、私どもといたしましては、なお御鞭撻を受けまして一そう今申し上げました点に努力をいたしたい、かように考えております。  第二番目に、優良なる組合あるいは連合会が出てきて系統外運用という面にずいぶん向っているという点でありますが、これも昨年の例に徴しましても、まさにそういう事例は決して少くありません。しかしこれも先ほど申し上げましたように、まるまる精神的な運動というものにたよるわけには参りませんけれども、しかし全体としての組合運動は、やはり相当の部分は精神的なつながり、あるいは農協理念の徹底なり実践ということにあるわけでありますから、これも時間をかけ、また努力を重ねて、できるだけ正道と申しますか、本道に戻っていただくように、機会あることに努力をして、だんだんとこういう方向に向っていきたい。もっともそういうような組合も系統外運用等については、いい気持でやっておるわけではないし、また気がねをしておるということは、結局本道なり正道というものはそうでないということについての理解、認識をやはり持っておられるわけであります。そういう点をよく呼び起し、ゆり起して正当な道に戻っていただくように、私どもとしてできるだけ今後も努力を重ねていきたい、かように考えておる次第でございます。
  129. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 政府当局並びに中金の理事長としてのお気持はよくわかるんですが、そういう指導方針でやられるということは、またそうでなくちゃならぬと思うのですが、それだけではなかなか簡単に解決がつかない問題だろうと思うのであります。これは今のような条件の中における農林金融といいますか、系統金融そのものの全般的なあり方、本質の問題にもつながって参りますので、簡単には解決のつかない問題であるということは、私どももよく承知をしているわけであります。ただ、今のような状態の中でも基本的な問題として考えられるのは、私は大きく言って二つないし三つあると思うのであります。今農民がいろいろと新しい条件の中で従来の米麦作から新しい農業に転換していこうという際に、それに必要な資金がなかなか獲得できない。その獲得の道はどうかというと、農機具の場合でも酪農の場合でも、ほとんど正道金融ということで財政の裏打ちがあって、特別に利子の安いものでなければこれは使えない。しかも非常に窮屈にしばられて、手続が困難なために、それだけでは役に立たないというところに片方においては追い込まれている。それが末端の農協を通じて出る農業の転換資金のおもなものになっておると思うのであります。このことは今の系統金融なり何なりが持っております普通の金融機関——普通といっても農業を対象にしていますから特殊な性格を持っていることは明らかでありますが、そういう意味を含めましても、そういう機関だけでは農業の転換に必要な資金は回せないのじゃないかということが一つあるのではないか。これを具体的にどう切り開いていくかということが、やはり日本の農業を近代化していく場合においては、非常に大きな問題になりはせぬか。特に政府補助政策から融資政策に変わって、いこうとする場合に、農協側としてはもっと深く再検討して、農林金融全体の問題として考える必要があるのじゃないか。全体からそういう正道金融だけをたよりにしてやろうとしても、なかなかうまくいかぬ面が非常に多い。それでは農業の転換などはなかなかできない。また農民の方は、そういう資金の相当のの部分を一般金融なり系統金融なりから借りてやったのでは金利が高くて、よほどいい条件でなければ、新しく始める農業はできないという問題、この点も正道金融と一般の系統金融との連関なり本質上の関係をどういうふうに調整をされていくのかということを、私どもはもう少し突っ込んで——どもに具体的な結論があるわけじゃありませんが、考えていただきたいということが一つ。  それからもう一つは余裕金——中金にしても公庫にしても、これは余裕金じゃありますまいが、問題があると思うのであります。今の農林金融からいうと、系統金融から余裕金が出ることは当然であります。従ってその余裕金をコール資金なり何なりに回すのも当然であります。しかしこの余裕金の中で、私の理解が不十分かもしれませんが、大体においていわゆる系統外の部外融資といいますか、その比重がだんだん余計になってくるのではないか。それが農産物を原料とする企業に貸せるとか、あるいは農産物にいろいろな資材を提供するというようなことから流れておりますけれども、その方の比重がだんだんふえてくる。しかもそれらの資金は、実際にはどうかというと、農産物の買いたたき資金になっているというのが実情であります。たとえばおととしのイモのごときは明白である。酒会社にしましても、あるいは澱粉工場にしましても、それ相当の資金がいっておる。またその金が農協を通じていっておる。政府が一貫匁二十四円五十銭の保証価格を出しておるにもかかわらず、現場においては十二貫俵一俵百五十円くらいでたたいておる。東京ではどうかというと、百八十円くらいで売りつないで、手数料をとっておりますから、現場で百五十円というようなことになっておる。こういう意味での系統外の部外融資がだんだん大きな比重を持ち、しかも実質上固定化してきておる。農民の方は預金を吸収されて、そうしてだんだん上へ上げていって、それが余裕金の形になって、なるほど消費の促進にはなりましょうけれども、その裏においてはそういう関係になってきておる。こういう点についても、中金の経営上から、いろいろ問題があろうかと思いますけれども、この点についてもう一度根本的な再検討を要する時期にきているのではないか。この問題が解決しない限り、農民の新しい農業への生産力増強資金というか転換資金というか、こういうものは円滑にいかないという問題が片方に出てきていると思います。もう一つは機構の問題ですが、理屈通り中金も大体二段階で、中央の中金と府県の中金支所ということになる。信連は一段階になっているが、実質上は二段階と見てもいいのではないか。これは御承知通り県に信連があって、郡には大体信連の出張所みたいなものがあって、これも二段階になっている。今度また長期金融をやるような公庫が、ある意味において二段階になってきている。こういうことになりますと、勢いそういう場合における経営コストというものは全般的に高くなってくるのではないかと思うのであります。そこで私はお聞きいたしたいのは、中金の場合でも公庫の場合でも、原資コストがどのくらいになっておって、それに経営コストがどれだけ加わっているのか、こういう点を、もし御調査がありますればお聞かせを願いたい。それと同時に、私どもにはっきりした結論があるわけではありませんけれども、それぞれの金融機関が、金融機関としては自主性を持っているわけでありますから、その自主性を中心とする限り、支店がだんだんふえていくのは当然だと思う。つまり事業の自主性をだんだん強めていくのは当然だと思う。そういう点からいわゆる経営コストがだんだんよけいになってくる。午前中の質疑応答でも、今度公庫の支店設置については大体ブロック別に一行を原則とする、さしあたりは四行ということでありますが、だんだん公庫の業務が大きくなればどうしたって支店網は広くなっていくと思う。そういう点中金もそうだ。見方によりましては信連さえ二段階になっておる。こういうのが今の信用系統の実態ではないか。そういうもののいわゆる原資コストに経営コストが加わっていくところに一つの大きな問題があると思う。こういう点を今ここでどう機構的に改革しなければならぬかということは別としまして、それぞれの機関から見れば、中金は中金としてごらんになり、公庫は公庫としてごらんになり、信連は信連の立場で見れば、私はそれぞれ問題があり、なかなか譲れない点があると思う。しかしながら農民の見地から見た場合には、これは迷惑な話であります。何らかこの間においてこれらの調整をとっていけないものか。そうして経営コストをできるだけ切り下げることによって、農民金利負担を少くしていくことを当然全般的な立場からして考えなければならぬ。これが今のところ逆行しているというふうに私どもは見ておる。この三点についてのお考えを政府並びに中金の理事長並びに公庫の総裁からそれぞれお聞きをしたいと思う。そうでないとここに出ておるような支店問題のごときは、この点をどう考えるかということによって将来がきまる問題である。午前中に渡部局長からお話のありましたように、片方においては経費も考え、片方においては事務能率も考えてやらなければいかぬという程度の話では、この問題はますます拡充するだけです。そういう程度でとまる問題ではないと私は思いますが、この点についてのお考えをそれぞれお聞かせいだきたいと思う。
  130. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま三点について政府並びに関係機関からお答えをせよということでありますが、まず第一点の制度金融と一般金融との関係でありますが、これは第二の予備金の利用の問題にも多少関連してくると思います。先ほど御説明申し上げましたように、預ける方は高い金利を要求する。預ける余裕のある人は金を借りなくても仕事ができるわけであります。また借りる方は少々預けておってもそれ以上のものが要る。あるいは預けることができない人がいる。従って借りる方は安い金利を心要とする。ところが幾ら系統金融機関といいましても金融の一部門を占めるのでありますから、そういう両方の都合のよいことをやるのにはどうしても限界がある。従ってどうしても農業については低金利のものが心要になってくる。従って制度金融的なものが心要になってくる、こういうふうに考えます。先ほど御説明申し上げましたように、政府の低利資金が二十五年には一・五%であったものが三十二年には六・四%にふえております。普通資金は協同組合の貸し出しが三九・八%、すなわち四〇%から四五・七%まで上っておりますが、その内訳を見ますと、普通資金の占める割合口が二五年には四〇%のうち二八%であったものが、三十二年には四五%のうち二六%になっておる。そうして災害融資とか、あるいは低利保証つきの金が前は一二%弱のものが現在は二〇%弱までいっている。こういうふうに制度金融の方はふえてきておるわけであります。それは農業に対する資金融通が低金利を要求するから、普通の農業内の金をやり繰りしたのでは限界があることを物語っておるのではないかと思います。この問題をどう解決するかが今後の問題になってくると思います。  それから余裕金の問題は、ここ数年間豊作の関係で余裕金が非常にたくさんありました。従って年度末には十二月から一、二月にかけてはその金を遊ばせておくわけにはいきませんから相当民間に貸し出しております。しかし最低ピークのときは、大体現在、今年の四、五日ごろでは二百七十億人ぐらいまでに下げていきますから、これはあくまでも系統内の金融を主にしてその残ったものを予備金として運用する、こういう原則は貫かれていくわけであります。そのためにお話がありました、たとえば農産物の加工とか関連産業では相当金融逼迫の声をあげております。しかしそれといえどもやはり系統の中の金融の方は優先的であるというので、中金も苦慮しておるようであります。ですから、余裕金の運用はあくまでも余裕金の運用でありますから、余ったものはほかに回すということであります。しかしこの問題も資金量がだんだんふえてきますと、余裕金の運用によってもうかったものを一般金融の金利低下に使ったらどうか、こういう問題が出てくると思います。これは中金その他ひとり系統金融機関だけの問題でそういう問題を解決することができなくなってくると思います。これは公庫の金なり、建物共済、生命共済をやっておる農協連の積立金が三十二度末では二百億を数十億越していっておる現状でありますから、この金の運用ともにらみ合せなければならぬ、これが今のところ毎年倍ずつふえておりますから、この金も相当持てあましてくるということになりますから、それらの問題を全般的に考えなければならぬというので、農林省の他関係機関が寄りまして、それらのそれぞれの機関の分担をきめて、そうしてほんとうに農村金融としてのできる限界、政府にたよらなければいけない点、そういうものをはっきり分野をきめようじゃないかということで、これは早急に委員会を持ちまして、結論を出したい、こういうふう考えております。  それから資金コストの点でありますが、公庫の方は大体三十三年度の平均運用利回り五分五厘五毛、前年度が五分六厘三毛という試算をいたしております。資金コストは五分三厘ということになっておりまして、その内訳は借入金利息が三分五厘二毛、それから事務費が二厘一毛、委託費が一分五厘七毛となります。それに償却引き当て二厘五毛を加えると合計五分五厘五毛ということになっております。中金の方につきましては、理事長からお答え申し上げます。
  131. 楠見義男

    ○楠見参考人 制度金融と組合金融との関係については、御指摘のように基本的に非常に重大な問題、また速急に解決しなければならぬ問題がございます。今お述べになりましたことのほかに、私どもといたしましては、例の農業共済の責任準備金、これが一般に言われておる希望的観測も入っておろうかと思いますが、五年先にはその準備金が千億に近くなるだろう、こういうことを言われております。本来共済の資金農村に自己資金として長期低利の金をみずから確保したいということから出発したのでありますが、それが今申しますように、近く五年先には千億になろうというような情勢であるわけです。まだ今日の段階ではそこまでは至っておりませんけれども、現実に地方で信連と共済との間においていろいろ問題をすでにはらんでおります。そういうふうに、農業内部の自己調達の資金の間でもそういう問題があるわけでありますが、大きくは、先ほど御指摘になりましたように、各種の制度金融と組合金融と申しますか、系統金融との間でいろいろ問題をはらんでおります。これはこのまま推移いたしておきますと、農林漁業金融全般について将来取り返しのつかない混乱を来たすおそれがあると考えられますので、私ども政府にその点を意見具申をいたしまして——もちろん私どもだけでこの問題は解決できないことでありますから、政府が中心になっていただきまして、私どもあるいは公庫、そのほか組合金融、共済、こういうものがよく話し合いをし、研究をいたしまして、あるベき姿についてぜひ一日も早く結論を得たいということで、政府にも実はお願いをし、政府もそのおつもりになって近く具体的検討の発足を見よう、こういう段階で、私どもも実は非常に期待をし、できるだけその線に沿って努力いたしたい。かように考えております。先ほどそれに関連してお述べになった現実に農協が金を貸す場合に非常に金利が高い、これも久保田さんよく御存じの通り、今日の単協の経営の実態は信用部門にあまりおんぶをし過ぎておる、従って、これもいわゆる部門別収支を明確にすると申しますか、こういう点をはっきりして、信用部門におもりがかからないようにしたい、従ってそういうことになりますれば、貸出金利は今日よりも相当金利低下が可能であろうと確信をいたしております。従ってそういう点を将来ともに推進をしていきたい、かように考えておるようなわけであります。  それから二番目の余裕金運用の問題については、先ほど経済局長からお述べになった通りでありますが、実は私は一つ積極的な考え方を持っておるのであります。これはまた別の機会に十分御批判を仰ぎたいと思っておりますが、それは、こうやって三年豊作——私は実は四年豊作、五年豊作が続く、こういう確信を持っておる一人でありますが、そういうふうに蓄積がだんだんできていった場合に、最優先的に考えるのはもちろん系統金融である。先ほど来お述べになっておりましたような直接生産あるいは生活改善に必要な面に投ずるというのが最優先的な問題でありまするが、しかも余裕金がある場合にこれをどういうふうに運用していくか。今日のような不安定な状態でありますから、昨年来金庫といたしましてもコール市場等に放出をいたしておりましたけれども、これは本来の姿ではない。一方関連産業が、資金が苦しくなることによって農家から買うものを、おっしゃるように、たとえば買いたたきの材料に使われるということになりますと、その点は絶対に注意をしなければなりませんが、そうでなしに、関連産業が資金が不足することによって逆に買い控えをしたり、あるいは買いたたいたり、あるいは延べ払い、遅払いが起ったりするということが、たとえば蚕糸関係でも従来私ども経験したことがあるのであります。そういう面である程度われわれがお役に立つことができることが、結局そのはね返り——いい意味のはね返りが生産農民にくるのだ、こういうことでありますから、あくまで農民あるいは組合金融というものを中核に考えますけれども、それに関連をして、いい意味のはね返りがくるという意味で関連産業を育成していきたい、こういう面も積極的に考えていいのではないか、こういうことを実は考えております。しかし先ほどお述べになりましたような悪い結果が生ずることがあるといけませんから、その点は十分警戒しつつ積極的な面を考慮していく必要があるのではないか、こういうふうに実は考えておるようなわけであります。  それから三番目の段階の問題でありますが、まさにその通りでありまして、先ほど申し上げましたように、一般金融機関と同じ立場でかりに農林中金というものを考えていきます場合に、一般金融機関の一段階で得ておる、あるいは使っておるコストを三階で分けるわけでありますから、従って各段階でできるだけこれを合理化して、一般金融機関に比べて三つ合せてなおかつ少いということがまた組合金融の特色でもあるのでありますから、その点に努力する必要がある、そういう意味で、できるだけ私どもから言えば直接関係のある信連との間の業務分野の調整と申しますか、いやしくも普通一般農業関係において信連と私ども支所とで業務が重複したり、あるいは無用の摩擦が生ずることのないように、そういう意味で、あるいは私ども支所というものを信連にやってもらいますとか、あるいは信連のしっかりしたところでは一般農業関係は私どもはできるだけ手を引いて、そうしてできた余力を他の所属団体である水産、森林あるいは開拓、こういう方面に向けていくとかいう努力をいたしたい、こういうことで合理化の線はそういう方向で進めておりまするし、もちろんこれは総代会なり監督官庁の認可を必要といたしまするけれども、本年度は全国の支所の中で六ヵ所ばかりはそういうことで支所も機構を改革して、看板をおろして、事務所のようなものにやっていく、こういうような方向で現在検討を進めておるようなわけでございます。それからコストの問題でございますが、これはそのときの金融情勢によりまして非常に違いまして、たとえば金融が緩慢であるとき、あるいは金融が梗塞しておるとき、こういうので非常に違うのでありますが、昭和三十二年度はつい四、五日前に年度が終ったばかりなので全体の検討はできておりません。最近は三十一年度のコストであります。これはいろいろ計算方法もありますが、私どもの内部で検討いたしましたところでは、資金の平均調達コストは七・〇六五で、それから平均運用利回りは七・八四七、差額、これは結局利ざやに当りますが、〇・七八二、これはさっき申し上げましたように、金融の情勢によって非常に違って参ります。その前の年は、同じような計算方法で参りますと、平均調達コストが七・三四二で、平均運用利回りは七・八八六、こういうようなことで利ざやは〇・五四四、一昨々年度はこのように利ざやは〇・五四四でありましたが、一昨年は金融情勢が反映いたしまして〇・七八二、それで昭和三十二年度は先ほど申し上げましたように、まだこれから検討するわけでありますが、非常に金融が詰まっておりましたから、資金量は、これは毎年百五十億ないし二百億ふえておりましたが、昨年は今までの趨勢とは逆に全体を通じて六十六億ほど資金量は減りました。これは系統外にだいぶ流れましたから資金量は減りましたけれども、一般の金融が非常に梗塞しておりましたから、運用は前年度に比べればもっと楽にできた。従ってこれは当っているかどうかわかりませんが、利ざやは減ることがあるのではないか。今までそういう余裕金は特配の形で戻したり、あるいは政府から優先出資を拝借しておりますが、その優先出資の返却に当てたり、そういうことでことしは前年度よりは、そういう政府出資の返却なり、あるいは特配というものが今までよりは多くできるのではないか、こういうふうに大体見込んでおります。
  132. 山添利作

    ○山添説明員 経費の率等につきましては、先ほど局長から答弁があった通りであります。久保田さんから支所を置くようになればずるずると将来いくのではなかろうか、こういうような観察をお述べになりました。私どもは、これは言葉の相違でありますけれども、いわゆる自分のところの独自性とかいうことを主張しておるわけではないのでございます。しかし言葉をかえていえば責任を自覚しております。これは公庫を運営するためには、原則的には委託方式でいくわけでありまするけれども、最終的責任は公庫にあるわけでありまして、できるだけ現地の事情をのみ込んでやることが、貸付の適正化にもなるし、管理の正確を期することもできるし、また仕事も迅速に運ぶであろう。そこで言葉は二段階のような格好になりますけれども、これは一つの統一司令部の分散でありまして、支所を置けば権限はそちらに移譲する、中央に一まとめになっておるのを現地に分散する、こういう考え方でございます。構想といたしましてブロック別に置きたい、またそれを本拠とする。これは先ほど稻富さんにお答えした通りでありまして、久保田さんの観察は、将来あるいはそういうことがあるかもしれませんが、これは私が考えておるところを御信用いただくよりほかはないのでありまして、私はそういうつもりでおるわけであります。
  133. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 一般の問題について今それぞれ御答弁いただきましたが、実はいろいろの問題点についてもう少し突っ込んで御意見をお伺いしたいのでありますが、時間がありませんから、大体においてこの程度でやめます。  ただ今の答弁法案に引っかかった問題で、第一の問題としては、今お話のありました通り、山添さんの方からは、午前中から通じて一つは公庫の業務については大体委託ということを原則にする、しかしながら責任ということを考えれば、ある限度、ブロック別くらいにはこれを分けなければいかぬというお話。これに対して中金の方からは御承知通り政府並びに公庫に対しまして、公庫が支店を持つことに正面から反対という表現はとっておりません。けれども二項目、三項目にわたる申し入れ書が出ておるわけであります。この趣旨は、要するに反対とはっきりはうたっておりませんけれども基本的には委託ということを今後貫いてもらいたいということに正直な話尽きております。そこでお聞きしたいのは、公庫の方から見ますと、責任という観点から、大体において公庫の委託業務はほとんど六五%程度が中金だと私は見ております。二〇%程度が信連、あとの一五%程度が大体において一般金融機関こういうことになっているようであります。あるいは多少違うかもしれませんけれども、ほぼそういうところだろうと思う。そういう点で先ほど山添さんからお話のありました、あなたの観測はあなたの観測で、おれの方はこういうふうな考え方だというのでは、ほんとうに責任ということを考えて、回収なんということを考えていたら、金融機関として委託ということはできるはずがありません。ですから、今特に山添さんと楠見さんにお伺いいたしたいのは、委託という以上は、この責任についても、業務の事務の能率についても、両者の間にもっとはっきりした関係が結ばれているということが根本である。そういう点を全部抜きにすれば、中金、信連、公庫またしかり、みんなそういうことになって、下の方は実際に利用しようと思っても、上の方は責任だと言って、頭でっかちになって、何十という経営機関ができてしまう。こういうことでは困るわけでありまして、支店を設ける意味というのは、午前中にもありましたように、非常に事務量がふえた、ですから委託だけではなかなか責任がとれないから、自分でもって支店を持って、五百万か千万か、これは中金から言えば、千万円にしてくれ、渡部局長から言えば五百万円くらい扱ったらいいじゃないか、ここらでなれ合えばいいじゃないか、ざっくばらんに言えばこういうお話であります。私はこういう考えでいく限り、山添さんの御決意、御責任もさることながら、そういう点がはっきりしなければだんだん公庫が支店を持ちますよ。中金も一たんは引き合わないところは控えるかもしれませんけれども、責任という点からいえば、金融機関が人にまかせて金を貸して、回収がうまくいくかどうかわからぬということが出てきますから、自分で直接扱うのがいいにきまっている。少くとも農林金融機関というものはそういう点について了解とかなんとかいうことではなく、法律的にも、あるいはその他の点についても、もっと何か基本的な工夫があってしかるべきだ。そういう点については、上の方はいろいろの系統の金融があるから分れてもいいが、末端にいく場合には一本でいくようにぜひやってもらいたい。こう思うのであります。この点について公庫から見まして、その方が経費が安くなるのか、局長の考えだと、経費の点も考えると言う。総裁の話だと、これは事務能率を上げる、それから今言ったように、責任の所在という点からだと言われる。それぞれの面がありましょうけれども、これらを総合して今後どのように実際には対処されるか、とりあえずの問題としては中金を中心とする公庫業務の委託を五百万にするか千万にするかということでなく、もっと本格的な解決策はないものか、こういう点をお聞きいたしたいと思うのであります。
  134. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 支店開設理由はけさほど説明申し上げましたが、久保田先生にちょっと誤解があるのではないかと思うのですが、取扱い分量が大きくなって、件数が多くなりますと、債権の償還について問題が残る件数も多くなってくるわけです。現在は公庫の本所に検査役という者がおりまして、それが地方を回って督励し、監督しているのであります。それを支所を作ることによって支所から行けば、もっと簡便にできるという点が一つ。  それから次には、貸付は委託金融機関、農林中金、信連、銀行、この三本のルートで貸しておりますが、その貸付について、受託機関が最後の決は公庫の本所に照会して、公庫の本所で決定してもらって貸付を実行しておるわけです。件数が多くなりますと、これの往復文書だけでもひまがかかる。それを支所を作れば、一定の規模までは、本所を通ずることなくして支所で貸付を決定すればそれだけ事務がスムーズになる、これが第二点であります。  第三点は、ある種の公共事業を主としたもの、これは先ほど公庫の総裁から説明がありましたように、土地改良その他については府県の補助金の支出なり、府県の計画を相談して貸さなければいかぬわけですから、それについてはやはり支所で府県と密接な連絡をとって、それのうちの既存の受託機関に影響を与えない限度においては直接貸しをした方がいいじゃないか、こういう三つの理由があるのであります。かてて加えて、直接貸しをいたしますれば、受託金融機関に対する委託手数料を払わなくていいわけですから、そこで経費が浮くわけです。その経費の浮いた分で支店の事務をまかなわなければ、公庫としては、先ほど公庫のコストなり運用利回りを申し上げましたが貸付利率を上げなければ赤字が出る。あるいは償却に回るものを減らさなければならない、こういうことになるのでありますから、それらの点をにらみ合せて支店を設置するのであります。ただ毎年三百数十億ずつ新規貸付がふえておりまして、従って貸付残はだんだんふえていくのでありますから、公庫は事業開始からまだ六、七年でありますが、一千億を越しておる。千五百億も二千億にもすぐなるのでありますから、その事業分量に応じて支店もふやしていったらいいじゃないか。しかしそれはあくまでもそういう趣旨で支店を設置するのでありますから、ブロック別に置くことを最高限度として、それ以上の各県別に支店を置く必要はないのじゃないか、こういうことで最高限度はブロック別を目途としておる、こういう説明があったのであります。
  135. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間がないので、その点もっと突っ込んで聞きたいのですが、要するにこれは、公庫の方とすればだんだん貸付もよけいになってくることはきまった話です。またよけいにならなければ困るわけです。問題は貸付業務だけを預託してこういう格好になる、要するに債権の取り立てまでどうするという問題も含めて、やはりそういう問題の調整をはからなければ、貸付の方だけは預託をして貸し付けた、取る方は公庫が取れ、これは普通の今までの関係でしよう。そういう関係を土台にする限り、公庫はいやであっても、将来貸付がよけいになってくれば、取り立てる人間がないから、ざっくばらんに言って自分のところで支店を出していくほかありません。それは今の関係からいって、預託の経費が安いの高いのといっておりますが、そういうことでいけば公庫は各地に支店を出さざるを得ないことになる。きまり切ったことです。だから少くとも信連とか中金の間においては、今の経済態勢で、中金にいたしましても貸し付けた金を今度は回収まで責任を負うという場合においては、これは経営にも大きな影響がくると思います。しかしそういうところにくると責任の分担なり、責任の比較ということを明確にしなければ、この問題は山添さんがさっきお話しになり、またあなたが言われたけれども、当然そこにいかざるを得ない。この問題の解決をしない限り、農民の方は長期の金融の負担がよけいになり、中期、短期の金融の負担もよけいになる。こういうことになって、しかも農協としての経済事業としてはますます利潤が出なくなってきつつあるのが今日の実情です。そういう中からこういう二重なり三重なりの金利負担をしていくということは非常に問題になってくる。そこを実はもう一歩お考えをいただきたいというのが私の趣旨でありますが、時間がありませんから、この点についての御意見を伺うのはやめます。  次に私はもう一点だけ、ほかの人も次に控えておりますから簡単に言います。大蔵省の方にお伺いしますが、今度六十五億を公庫に出される。その運用益の使い方については午前中にるる御説明があった。この六十五億は、最後にこれを取りくずす場合どういう扱いになるのですか。それに連関いたしまして、この利子で考えれば、たとえば小団地が三分五厘している場合において、この六十五億がかりに公庫の原資に従来と同じ政府出資という形で振りかえられた場合——そういう公算は相当ありますよ、その場合においては、いわゆる資金運用部に出して預金をして五分なら五分の運用益をとって、それによって一応三分五厘にしようというこの点はくずれてきてきますよ。その場合において農林省としてはどういうふうにこれを扱っていかれるつもりか。今まで三分五厘でやったものを、その次の年からまた五分に変えるのですか。その取りつぶしといいますか、取りつぶしというと語弊があるが、この六十五億を今のような形でやっていくと、これは暫定的であるということは政府も言っておるのですから、その場合時期はどうなるのか。それに連関して、これが公庫の原資としてどういう格好になるのか。従ってその場合の運用益の利用と、それが補助事業にどうなってくるかということについての連関をはっきりお伺いしたい。そうでないと、一応この資金がどうやら今のような形で生きておる間は小団地は多少安くなるが、これが切れたとたんに高くなるというようなことになって、その前後の不均衡がうんと出てくる。それと同時にこの取りつぶしの方法、時期、形式等によっては公庫に対する将来の政府の財政出資というような点に対してもある程度の影響があるのじゃないかと思うが、この点については大蔵省としてはどういう考えでおるか、政府としてはっきりきまった方針があるならば、ここで説明をしておいていただきたい。
  136. 高木文雄

    ○高木説明員 午前中の御質問にもお答え申し上げましたが、私どもの試算によりますと、毎年度の事業費が三十五億くらいであります場合には、この六十五億円から生じますところの預託利子をもって相当長期間、十年以上十分に利子の補給ができます。しかしながら現実の問題といたしましては、今後にわたりまして土地改良事業を充実していかなければならぬという要請が一方においてございますから、いつまでもその対象額が三十五億のまま固定しておったのではだめではないかという御質問と思いますが、そのときにはそのときの問題としてまた別途何らかの方法を考えなければならない。その方法としては、一つは原資をさらにふやすことでございましょうし、あるいはまた基金の取りくずしについて、今御審議を願っております経済基盤強化のための法律の十五条の一項の一部を改正しなければならぬということになりますが、取りくずしの措置を考えなければならぬというようなことが将来においては起ることがあり得ると考えます。ただ現在におきましては、午前中の御質問にもお答え申し上げました通り、四百三十六億円というものは三十三年度の歳入として異常なものであるという認識のもとに、特別な取扱いをすることといたしましたので、現在の法律の形としてはこれらの六十五億円は当分の間は取りくずしをしないという趣旨で、十五条の規定が置かれたものと考えます。
  137. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもその点が、この四百三十六億はことしのつまり異常所得というか収入ですからこういう措置をとった、今のお話だと、小団地が三十五億くらいになるから、当分はこれでやれる、もっとふえたらこの六十五億と同じ性格の原資をどんどんふやす予定なんですか。それともこの二百何億とかいうこの資金と同じようにこれは一時的なものである、これだけでもって、この資金六十五億だけで独立はできないでしょう。ですから全体がくずされるという場合にはこれはくずされる、どっちかということを聞いておるのです。
  138. 高木文雄

    ○高木説明員 現在の段階におきまして、将来の時期において六十五億をどういうふうにふやすというようなことは、ちょっと私どもの口から申し上げかねます。さりとてそれではいつ取りくずすかということにつきましては、もともとこの法律の第一にございますように、将来におけるわが国の経済基盤の強化と健全な発展に資することを目的とするということになっておりますので、これを具体的にいつどういう形で取りくずすことがあり得るかということにつきましても、そのときの経済情勢によって考えられることであろうと思われますので、現在の段階でいつどういう形で取りくずすかということは、せっかくの御質問でございますが、私から答弁いたしかねます。
  139. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点について農林省としてはどうですか。そういう将来どうなるかわからない、何年続くかわからない、要するにそれの運用益を当てにして小団地の分について利子を今までの五分を三分五厘に下げる、短期間でも下げられることは農民の方からいえばありがたい、ありがたいが、これが変な扱いをされますと、小団地なり土地改良事業に対しまする全体の態勢が相当混乱しますよ。この点についてはどうなんですか。どういうふうにお考えになって、それらに対する対処策も一応考えてこれを活用しようというお考えですか。とにかくことしは四百何億余って、くれるというのならもらっておいて、これを使っておけ、あとはどう出るかわからないから出たとこ勝負だという考えですか、どっちですか。
  140. 本名武

    本名政府委員 午前中も申し上げましたように、六十五億で目的をすべて達するという考え方はいたしておりません。ただ四百三十六億のワク内において諸般の基金等の振り合いから六十五億という数字がきめられ、同時にまたその反面三十五億の事業量を一応予定し、これを遂行したいというところから、六十五億で運用していきたいというふうに考えると同時に、この六十五億は今のところ取りくずしをいたすという考え方は持っておりません。
  141. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点は午前中だいぶやられたそうですから、私もまだ質問したいところがありますがやめておきます。  もう一点だけ伺います。今度の公庫法改正の中で新しくカンショや生切りぼし、菜種、大豆等を原料または材料として使用する製造または加工事業であって、これら農産物に対する新規の用途が開かれ、消費が拡大されると認められるものに対して公庫において金融する云々として新しい道を開いたわけです。これはどういうわけなのですか。特に新規事業というのは、もっと具体的に言うと、中金的べースでは、あるいは一般金融的ベースでは引き合わないから、特に中金の比較的低利の長期の資金をこれにぶち込んでやろうというのですか、それとも何かほかに別の理由があってやられたのですか。これは新例を開くのですから、もちろんこれは農業に深い関係は持っております。もっと悪く解釈しますとこういうことにもなるのじゃないですか。今政府がいわゆるカンショの統制をやって、澱粉を四千何百万貫と持って、始末するのに困っておる、だからこれを何とかやらなければならぬが、普通の銀行から借りてやったのじゃそろばんが合いそうもない、だから政府機関の公庫から一応低利、長期の金を出させて、これでうまくいくかいかないかやってみろ、こういうふうにもとられる。特にこれを公庫の新しい対象事業として選んだという理由が私どもにははっきりわからない。この点をはっきり御説明願いたい。
  142. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 この条項を入れましたのは具体的には結晶ブドウ糖の事業を急速に伸展させたい、こういうねらいで入れておるのであります。その理由は結局それに類するものはほかにもあると思いますけれども、さしあたり農産物の加工販売で非常に問題がありますのは今の澱粉処理の問題であります。澱粉までは少しできておりますが、澱粉を新しい用途に拡大するためにはもう少し高級のものにといいますか、もっと用途の広いものにした方がいい、こういう考えで入れておるわけであります。新しい事業を開くのには補助金を出して育成するか、あるいは特別の融資をして育成するか、こういう二つの道があると思います。これらの仕事につきましてはすでに企業合理化資金、応用研究等で相当の研究を積ませてきております。しかし新しい事業でありますから、どうしても普通の金融べースで野放しにしておいたのではなかなかこの事業に取りつく人はない、協同組合でやる場合には公庫の方から共同施設として出ますが、協同組合でなくとも、そういう農産物の用途拡大のために新しい事業をやる者にはこういう道を開いていく必要があるのではないか、こういう考えでやっておるのであります。
  143. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これは大体計画もぼつぼつあるでしょうが、大体幾らくらい資金が要るのか、それから確実にこれは成功する、採算に乗る可能性を持っておるのかどうか、損をした場合には公庫に対して政府はどうするのか、これを明確にしてもらいたい。おそらく今後今のような情勢になってくれば、単に今の澱粉の結晶ブドー糖化だけではない、ほかのいろいろな農産物の過剰的な結果が出てくれば、その新用途というようなものを開かなければならぬ場合が相当あると思うのです。そういう場合にこれも普通の金融ベースに乗らないから全部公庫にやらせるというのでは、ちょっと——それでなくても危ないでしょう。欠損金の積立金もろくにやれないような状態になっておるのじゃないですか。そういう際に、こういう普通で考えれば相当終局的には利益が出るかもしれないが、さしあたりは普通の金融ベースに乗らない、採算に乗らないと思われるものに相当大きな資金を特に貸し付けた場合には、必ずそれが他の農民の貸付その他に対して響いてくることは当然です。しかも原資の構成においては逐次、いわゆる財政出資が少くなってほかのものがよけいになってきて、原資のコストはだんだん高くなってくる、こういう段階で特にこれをそうしたという理由は、私は何かそこにはっきりした理由がなければ工合が悪いと思う。とりあえずそれに連関してどのくらいの資金が要るのか、果してこれがほんとうにものになるものかならぬものか、損が出た場合には、あるいはこれが欠損になってこげついた場合には、政府は公庫に対してどういう責任を負うのか、これを、明確にしてもらいたい。
  144. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御質問の第一点で、ほかの種類にも及ぼすのではないか、こういうお話でありますが、さしあたりのところこれと同種の、結晶ブドー糖製造と同種のものに金を出すという目当てはまだついておりません。議題になっておるのはあります。たとえば菜種油の加工によって新しい用途を開く研究をいたしております。こういうものも農産物価格安定法の中の一つの品目でありますから、もしそれが応用試験等をパスして一応採算がとれるということになると、そこまで拡大いたしたいと思っております。  第二段の結晶ブドウ糖の増産計画としましては、さしあたり三万トン程度を五ヵ年ぐらいまでに作るようにいたしたい、こういう目標を持っております。現在五社ばかり日産二十トン工場が——一社は日産十トン工場でありますが、企業計画が出てきております。その資金を向うの要求通り計算してみますと、約五億ぐらいになります。これは向うの申請通りでありますから、その内容を聞きまして自己資金の割合等をきめますればはっきりしたことがわかると思います。  それから第三点の公庫の責任でありますが、これは一般の貸付と同じ責任になるわけであります。御心配の点はそういう新しい用途は危険の度合いが多いでないか、こういう御心配であると思いますが、その点はこの制度を開始するに際しまして、十分な審査を加えることによりまして取扱いを慎重にいたしたい、こういうふうに考えております。
  145. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点は、もしこの事業が失敗する、あるいはそろばんに乗らないで焦げついたとか赤字になった場合は、政府はどういう責任を負うかと言っているのです。この点だけはっきり言ってくれればいい。
  146. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 公庫の責任そのものは、財政資金でありますから公庫の損になる、公庫の損はすなわち政府機関でありますから終局的には政府の損になる、こういうようになっておりますから、一般の貸付と同じ責任になります。
  147. 中村寅太

  148. 芳賀貢

    芳賀委員 今久保田委員から質問がありましたが、澱粉の精製糖事業は、これは当委員会においても、澱粉の需給調整、あるいは政府の買上量がだんだんストップしていくという点から見て、早急に精製ブドウ糖の、工業化の問題を委員会としても取り上げて参りましたから、これが現実に向って踏み出したということに対しては賛意を表示するわけであります。これは特に農林政務次官にお尋ねしますが、この精製ブドウ糖の製造をやる場合に、原料の依存ですが、これはおそらく政府の手持ち分を原料として製造するということになると思います。現在の経済的な情勢からいうと、通常の企業として精製ブドウ糖工業を起した場合における製品と砂糖の価格というものと対比した場合において、市場に消化するということに対する消化度というものは非常に低いというふうにわれわれは考えておる。需要が伸びない、そういう点はどういうふうな方針でこれを始めるか、基本的な方針をお教え願いたい。
  149. 本名武

    本名政府委員 今日まで当委員会におきまして澱粉の処理需要転換についていろいろ御熱心な御意見がたくさんあったわけでございます。ただいまお話のように、まず今度の融資の道を開くことによりまして一歩実現と申しますか、進んで実行に入ることになったのでございますが、農林省におきましても、昨年から学識経験者やあるいは業界の代表、あるいはその他関係の方々のお集まりをいただきまして、澱粉調査会を設けまして、数度にわたって澱粉の生産並びに需要についての検討を重ねて参りました。まだ結論が出ておりませんが、近く結論が出される段階に至っております。一応ただいまのところでは、第一に取り上げられるのは結晶ブドウ糖の製造である。そのほか澱粉といたしましは、グルタミン酸の需要が非常に旺盛であると同時に、優秀な科学的な技術ができ上っておる。特に世界的なパテントもとっておる。このようにしていろいろ澱粉の需要に対しましてかなり新しい道が開けてきたということは、調査会としても、設置趣旨からいたしまして非常に喜んでいる次第であります。ただ御指摘のように、できた製品が一般の砂糖と比較いたしまして、端的に申しますと、甘味が二割ないし三割落ちることは事実であります。しかしながらその用途、使用の方法いかんによりましては、栄養、味覚その他の面から非常に利点もあるし、砂糖と同じ扱いをするということになれば、必然甘味が落ちるだけ価格が落ちるのが当然でありますが、大体において今日まで調査会を中心にして論議されておりますところでは、一般砂糖よりも二割ないし三割価格が安くならなければならないのではないかという問題があります。一方この製造の過程は、大体において一トン程度の中間試験的な試験はやっております。さらにまた技術上の研究も進んでおりまして、価格がその程度引き下げになれば、砂糖と同じような使い方をしても一応需要の道はあるというふうな見通しのもとに、ただいま話し合いが進められておるわけであります。このようにいたしまして、さらにその使い方に一段と工夫をいたしますならば、たとえば乳製品やカン詰その他菓子類などにこの結晶ブドウ糖を混入し、あるいは学校給食やその他の甘味料としてこれを使用するならば、需要の面で安定していけるのではないか。このようなこともあわせて調査会の御検討をいただいておるわけであります。こんなところから、大体において現在の見通しでは、これは企業化をいたしましても、販売価格の点にもそのような操作をし、用途の面に工夫をいたしますならば、甘味が劣りましても生産していって差しつかえないものである。ただ問題になりますのは、そのような価格から逆算して参りますと、コストの上から原料価格が今日の澱粉政府買上価格に合うか合わないかという問題が起こって参りますが、一応現在までのいろいろな検討の結果から結論を言いますと、やはり政府買上価格を幾らか割らなければ当分は採算がとれないのではないかという考え方に立っております。従って先般おきめいただきました予算の中に、これらの処分について、ある程度国の予算をもって新しい澱粉の需要転換、用途の開拓をするような準備もいたしたわけであります。大体そういうような方針であります。
  150. 芳賀貢

    芳賀委員 公庫法の一部を改正して、民間産業として精製ブドウ糖工業を企業化させるこの制度金融の中で、有利な資金を与えて企業化させるわけですが、これだけでブドウ糖工業が採算ベースに乗るということにはならないと思います。ですから結局企業の見通しというものを一応持って、それに対して融資を行うということにならないといけないと思います。この点を久保田委員指摘したわけです。ですから、たとえば現在の政府手持ち澱粉を通常の払い下げ価格で原料として放出した場合、それを原料として精製ブドウ糖を製造して市場に出した場合に、現在の砂糖の価格と対比した場合、それで需要がうまくいくかどうかということなんです。今の次官が言った通り、砂糖に比較した場合、砂糖に比べて大体七〇%程度の価格でなければつり合いがとれないということになりますが、そういう採算の見通しというものはどうなっておるかということです。
  151. 本名武

    本名政府委員 先ほど申し上げましたように、一応かりに普通砂糖よりも三割下げた価格が需要に支障のない売れていく価格であるとしまして逆算して参りますと、原料の澱粉価格は、ただいま政府が買い上げております価格よりも、若干安くしなければならないという数字が出ております。ただ問題は、実はさっき申し上げましたように、ほんの中間試験をやったということと、あとは各社において、あるいは各社間において技術的な研究をいたしておりまして、それを基礎にした計算でありますので、実際企業をやってみますと、これは希望的な観測になるかもしれませんが、実際はそれほど採算には原料価を下げなくてもいいのではないかというふうに考えておりますが、これはまだ結論的に申し上げる段階ではないと思います。いずれにいたしましても、原料価格は一応切り下げなければ採算がとれないということは明らかになったようでございます。それともう一つは、用途の面に対して果して自信があるかどうかということでありますが、これは砂糖と同じように扱うという観念からいきますと、なるほど甘味が低いばかりでなく、熱に対する問題などもありまして、ちょっと不安のようでありますが、諸外国の例にも見ますように、特定の用途に用いますなれば、これは決して砂糖に劣るものではないといういろいろな御意見もはっきり出ているようなわけで、この点に対しては一応不安がないというふうに考えております。
  152. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうばく然としたことでなくていいのですよ。ただ融資の道を開いても、民間が企業を起す場合、ブドウ糖工業に対して果して採算がとれるかどうかということの見通しがつかなければ、金を借りるものはないでしょう。ですから、わざわざこういう法律の改正までやってやる場合には、その企業を育成する。将来は現在過剰傾向にある澱粉を、新しい用途に振り向けるための一つ政策から出発しておるわけですから、企業内容に対する確たる見通しを持たなければ、企業というのは民間においても伸びていかないと思うのです。そのことを何もきめないでおいて、ただ公庫からこういう条件で融資するというだけでは、あまりにも考え方が浅過ぎると思うのです。ですから、問題はわずかなんです。現在の政府手持ち澱粉を原料に向けるとする場合には、払い下げ価格をどうするか、通常の価格でそれを払い下げた場合には、たとえば製品に対しては国がどういう態度で臨むかということですね。いろいろ方法はあると思いますけれども、そのまま会社が会社の責任において売り出すという場合もありましょうし、またこれを一定期間保護政策で持っていくという場合は、テンサイ糖工業と同じように、適正なコストを算定して、それによってあるいは国が買い上げるとか、政策的にやっていく場合には方法はあると思うのですよ。ですから、どの道をとってこれをやっていくのかということを聞いておるのです。
  153. 本名武

    本名政府委員 目的目的でございますから、結論的には企業が採算のとれるようにしなくてはならない。ただ問題は、新しい企業でありますので、既存の経験から割り出すわけには参りませんが、まず第一に問題になるのは、加工費をどう見るかということであります。これは申請に基きまして内容を十分検討いたしまして、しかもそれに見合うところの原料価というものをきめて、必ず企業上に危険のない、引き合う価格で当分は原料価をきめていかなければならないのじゃないか、このように考えております。
  154. 芳賀貢

    芳賀委員 原料価をきめるということは、結局端的にいえば、払い下げ価格を特別安くして払い下げたいというのでしょう。そうじゃないですか。
  155. 本名武

    本名政府委員 さっきも申し上げましたように、今までの資料で検討いたしますと、やはり現在政府が買い上げている価格よりも安くしなければならないという結果が出て参ります。たとえば加工費を一キロ当り三十六円と見ますと、澱粉一貫当り千五百二十円、加工費をかりに四十円と見ますと、澱粉一貫当り千四百円、こういうような計算になってくるわけであります。
  156. 芳賀貢

    芳賀委員 ではこれらの方針が確定してから初めて業務の面において貸し出しは開始するということになるのですね。何ら定見のないままで資金の貸し出しだけをやるということは絶対ないわけですね。その方針がきまった場合においては、委員会において明らかにしていただいて、安心のできるような態勢が整ってから積極的に資金の貸し出しを行なって企業を育成する、そういうふうに理解していいですね。
  157. 本名武

    本名政府委員 全くその通りでございます。
  158. 芳賀貢

    芳賀委員 その次にお尋ねしたい点は、やはり業務の中に、今年度から寒冷地農業振興という新しいワクを設定して、セット融資を行うということになっております。これも非常に新しい構想に基く趣旨ですから、非常に期待が持てるのですが、この内容について御説明願いたい。
  159. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 本年度から公庫から北海道の寒冷地帯に対しまして営農改善資金を融通する道を開くことにいたしました。この問題については、先生よく御存じの通りでございまして、趣旨についてはもはや申し上げるまでもないことと存じますけれども、北海道における畑作経営がきわめて不安定である。しかもこの不安定の原因は、気象の条件等もありまして、収奪的な農法を選ぶことによっていよいよ地力が低下する。そこでこれらの悪循環を断ち切るためには、やはり畜産を中心とした経営内容に引き上げていく必要があるのではないか。もちろんこれらの施設基本的な改善策といたしましては、ひとり融資のみならず、従来の生産基盤強化の事業であるとか、あるいは試験研究の事業とが相関連して行われなければならないわけでありますが、今回われわれが直接事業内容として考えておりますところを申し上げますと、官房に寒冷地帯調査室というのがございますが、これが一年かかりまして北海道の経営実態を調査いたしたのでございますが、その結果、やはり地域別に農家の経営改善目標というものを作っていく必要があるので、地域別に営農業改善基準というものを目標として揚げるということにいたしまして、これらの目標を達成するための条件を個々の農家に着いて考えてみる。対象農家につきまして、大体におきまして本年度考えておりますのは、五月九月における積算温度二千五百度以下の地帯をとりまして、それらの対象農家数は、調査によりますとおおむね七万戸程度になりますが、本年度は資金の制約もございますので、そのうち特に積算温度二千四百度以下の主蓄地帯に趣旨から言って中心を置きまして、対象戸数を三千七百戸に置いておるわけでございます。もちろん戸数の具体的な選定は、今申しましたような趣旨に即応し、これらの経営改善計画を実行するような農家でなければならないわけでございます。一応今考えております概要を申し上げますと、三千七百戸について——大体農家群の選定はその地域、地帯によって違いますけれども、おおむね十戸から十五戸程度の農家群で、大体農業所得が三十万円以下の農家をとります。しかも営農改善計画によれば十分改善の実も上るというような農家を選ぶことにいたしまして、そして目標を達成いたしたいというふうに考えております。融資の対象になりますのは、この経営改善計画内容いかんによることになるわけでございますが、一応牧野等の農地の造成、それからサイロ、尿だめ等の建物の建設資金、並びに農機具の購入資金、これらをセットとして融資の対象として考えて参りたい。もちろん今申しましたように、主畜地帯でもありますので、当然乳牛等の導入も一連のものとして考えていかなければならないわけでございますが、これらはすでに有畜農家創設資金で別途融通される道が開かれておりますので、公庫の貸付対象としては今申しましたような主畜地帯ということにいたしております。融資条件等につきましては、目下いろいろ検討をいたしておるところでございます。大体の内容は以上であります。
  160. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま大まかな御説明を受けたのですが、これは寒地農業振興対策一つの構想のもとに行われる事項ですが、これに対する寒冷地帯農民の期待は非常に大きいわけです。ですからこれを恒久的に持続せしめて、さらに拡大していくことが最も望ましいわけですが、こういう施策を進める根拠、たとえば制度上、立法上の根拠が明確でないわけです。以前積寒法という法律ができて、発足当時は相当の期待を持っておったのですが、だんだんジリ貧になりて、現在では積寒法を口にする者もなくなったような状態になってきておる。ですからこういう具体的内容を持った積極的な施策を進める場合においては、やはり法律の背景があればなお強力に進められるのではないかと私は考えるのです。これは昨年から調査を始めて今年から金融上の一つの試みが現われてきたのですが、将来は私が言ったように、法律の背景の上に立って強力に進めるような考えで今日まで調査を進め、あるいは施策を進めておられるのかどうか、その点お尋ねします。
  161. 本名武

    本名政府委員 ただいま官房長から御説明申し上げました通り、北海道の畑作農業におきましては、非常な地力の低下であるとか、あるいは生産力が非常に動揺いたしますために不安定な姿になっておる。これはお説の通りに、法律を背景にした一つ基本的な対策を打ち立てなければならないという考えは私も同感であります。ただ問題は、昨年出発いたしました農林省の対策室が、ともかく三十三年度におきましてただいま御説明申し上げました融資による対策を始めまして、予算あるいは行政措置によってその対策要綱の実現に入ったわけであります。さらにお説の通り、これを裏打ちし強力にするための立法化の御要請も実は非常にありますので検討をいたしているわけであります。ただ問題は、その内容におきまして、今日まで積寒法その他特殊立法による畑作あるいは特殊地帯それぞれの法律がありますが、その関連において北海道の寒地農業に対する立法をどうするか、あるいはまた、基本が後進性の強い畑作の振興であるならば、同様に、北海道ばかりでなくして、九州の果てにおいてもその必要がありはしないか。さらにまた、もしやるとすれば、主蓄農業に限定した行き方で行ってよいものかどうか。あるいはまた、それらのことを実現するために金融だけの措置で行ってよいものかどうか、いろいろな問題がありますので、それらをせっかく今検討いたしているわけであります。いずれにいたしましても、今後検討の進むに連れましてまさしく立法化することが必要であるという結論が出ますれば立法の実現に至るようになろうと思いますが、ただ今申し上げましたようないろいろな問題点がございます。特に寒冷地の北海道の場合におきましては、有畜対策であるとか金融の対策とかいうことだけでなしに、もっと基本的な恒久的なものを考えるべきではないか、こういうような観点に立っていろいろ検討を進めているわけであります。
  162. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は主として北海道が中心になるわけですが、生産条件の劣悪な寒冷地帯を対象にして、従来の畑地帯の生産方式を大きく転換してもう一度建て直すということにねらいがあると思うのです。ですからそういう強力な措置を進めていく場合、拙速主義がよいわけではありませんが、このような調査とか施策が漸次進むに従って——やはりそのときどきの単なる行政的な思いつきとか施策だけでは一貫性がないのです。ですから将来においては、やはり法律を背景にして、畑地帯あるいは寒冷地農業の大転換あるいは確立をめざしてやることが本筋ではないかというふうに考えられるわけです。この点に対しまして関係地域においては大きな期待を持っているのですから、政府として態度を明確にしてもらいたいと思うのです。そうやるとか、そういうことはできないとか、現在の政府ではそれだけの能力がないとか、そういうことが明らかになればわれわれとしてもまたそれに臨む態度が生れてくると思うのです。
  163. 本名武

    本名政府委員 お話の通りでありまして、先ほども申し上げましたように、立法化するかしないかということのために今検討いたしております。もちろんお話のような基本的な、強力な、しかも恒久的な裏打ちがあってこそ初めて今日の北海道その他立ちおくれた寒冷地帯における対策がとられる、そういう観点から今検討をいたしているわけであります。
  164. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで具体的な内容なんですが、このセット融資をやるという構想は非常にいいと思うのです。ですからこれは総合的な一つ融資を行うことによって、この対象になる農家群、あるいは混同経営地帯、あるいは主畜農業地帯の確立をはかるということになるのですが、これを進める場合に一番障害になるのは、これは対策室の中野さんも十分認識されたと思うのですが、たとえば北海道においては現在の農家の負債が、これは約二十万農家がありますが、一戸当り三十五万円程度の固定化された負債を背負っているわけですね。これを無視してセット融資とか新しい農業の形態を進めるということはなかなか困難があると思うのです。ですから現在重圧となっているところの農家の固定した負債というものをどういうふうにしてこれを処理して、前段の障害となっているこれを排除して、そしてこういう方向に持っていくかということが、これは前提になる問題だと思うのですが、これに対するお考えはいかがですか。
  165. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話のように北海道の農家におきまして、累年の災害によりまして負債があるということも承知しておりますが、この問題はひとり北海道ばかりでなしに、災害等に伴って債務の累積した農家もあるわけでございますが、これらに対しましてはもちろん今の制度といたしまして、あるいは天災融資法であるとかあるいは自作農維持資金であるとかいうような制度に乗るものにつきましては、そういう制度で運用していくことがまず当面の問題の措置であろうと考えております。いずれにいたしましても、この問題は基本的にはやはり債務をなくするような経営改善を高めるということに目標を置きませんと、当面の負債だけの問題につきましてどう措置すべきかということについては、もう少し検討するものがあるのではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  166. 芳賀貢

    芳賀委員 この公庫融資の中にも自作農創設資金があります。このセット融資ということでやっていく場合は、この対象になる地域については、むしろ自作農創設資金等とも関連を持たした形で総合計画を立てて、それに対して融資を行うという形の方が僕はいいんじゃないかと思うのですが、先ほど言いました三十五万円の固定した負債も、これは内容は非常に短期の高利率の個人借りもありますし、いろいろな内容を包蔵しているわけですね。ですからそういう債務から脱却できるような営農体系というものを確立してやらなければ、債務の償還はできませんが、しかし現在背負っているところの負債の性格とか内容についても、やはり低利長期の資金にこれを切りかえて、そうして償還が容易にできるようなことに希望を持たせることが一番いいと思うわけなんです。公庫融資の制度の中にも自作農創設資金、これは自作農業を維持するためでありますが、内容はやはり農地の窮迫販売のような形が出た場合、負債が累増して農地を手放すような場合においても対象になるのでありますからして、このせっかくの試みであるこうした総合融資の場合においては、やはりその負債整理と関連を持たして進めた方がいいのじゃないか、こう思うのですがどうでしょうか。
  167. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話のように、今回振興資金として取り上げますものにつきましては、一応の経営改善計画ということを目標にして融資をいたしておるわけでございます。しかし農家として考えますならば、お話の通り自作農維持資金も必要になって参りましょうし、あるいはその他の一般の金融も必要になって参るだろうと思います。また実行上におきましては、それ以外の施設資金等につきましても相関連を持ってやっていく必要があろうと思います。これらは各制度との関連もございますけれども、実行上はできるだけそういうふうな趣旨に沿って運用して参ることが望ましいと考えております。
  168. 芳賀貢

    芳賀委員 この点について、山添さんから御意見を伺いたいと思います。
  169. 山添利作

    ○山添説明員 この寒冷地の農業の個々の農家につきまして計画を立てますときには、当然過去の借金も問題になるわけでありまして、これが将来新しい資金が償還をされるということは、過去の借金についても始末がつくという前提があるわけであります。従って自作農資金等もこれに必要な方面には当然回すべきだと考えている。ただそう申しましても、自作農資金の方もワクがございます。そういう事情を考慮してそちらの方の希望を考慮する、こういうことは当然考えられますけれども、それでは必然的に一つの、年度に自作農資金が完全に回せることになるかといえば、それはそういうことは受け合うことはできない。しかしそういう方向で一年か二年か三年の間にはそういう必要なものについての借金をなだらかに返せるようなふうに持っていくということは当然考慮を払うべきものであると考えております。
  170. 芳賀貢

    芳賀委員 振興計画を立てる場合も、一年二年というふうに五年次ぐらいに立てるということになると、対象農家群が第一年次に全部ということにならぬですよ。本年度初年度で対象になる農家もあるし、二年次三年次五年次に対象になる人もある。ですから全体の計画が始まって終るまでの間に同じ五ヵ年計画であるけれども、始まる時期と終る時期が違うからして、前後十年なら十年の間にこの計画が一応完成するということになると思う。ですから総体の資金需要というものは相当大量にあっても、年次ごとの資金計画の対象になる場合においてはそれほど膨大な数字にならぬと思う。そういう計画性を持っているというところに私は特色があると考えているのですが、そういう点はいかがですか。
  171. 山添利作

    ○山添説明員 御趣旨の点は全く同感でありますけれども、腹勘定をしてみますと、自作農資金は、ただいま三十五万の借金があると言われましたが、平均的に申しますと大体一月当り十方円出ているわけですね。そうすると一万戸といたしましてもこれはちょっと千億、これは対象になりますのは年に三千幾らということでありまするから三億幾らというようなことになりましょう。ところが今の割当はそれではそれだけのこぶをつけて北海道に割り当て得るかと申しますと、そうは参らない。こういう事情もありますので、そういう趣旨に即応してやるけれども、必ずしも自作農資金のワクというものが十二分ではない、こういうことを申し上げたのであります。
  172. 芳賀貢

    芳賀委員 ことしは七十五億しかないのですね。それを大半を北海道へ上げろなんということは言いませんが、この寒冷地農業振興の一つのワクというものを設定して貸し出しを行うことであれば、このセット融資の中に負債整理のような性格のものもすべて含めるとすれば、そういうワクをきめるときに、そういうものを総合して一つのワクの設定を行うということも一つのやり方じゃないかというように私は考えておって指摘したわけですがね。これは資金源の確保等についても、公庫の総裁の力ですべてやれるわけじゃないからして、無理な質問はしませんが、もう一点はこれは主畜農業地帯等を中心に考える場合は、当然その乳牛の導入ということが大事な点になるわけですね。このセット融資の中には、この乳牛の導入資金というものは入っていないわけですね。
  173. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話の通り当然経営改善計画を立てます場合におきましては、主畜地帯あるいは混同地帯のいずれにおきましても、家畜の導入が重要な要素になっておりますので、家畜の導入資金について、お話のようにこれと一つにして考えるという考え方もございますが、せっかく現在有畜農家創設資金に基きまして融資の道が開かれ、これに対する利子補給の措置が講ぜられておりますので、計画としてはこれらと相関連して運用をしていくように関係局と相談いたしておるところでございます。
  174. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの振興計画の範囲は、結局セット融資の対象になる分と、そのほか乳牛の導入とかあるいは自作農創設とか、そういうものと一連のつながりを持った総合性があるということは明らかなんですね。ですからそれを漸次改善して、将来においてはこの寒冷地地帯の総合振興計画を立てる場合においては、それらのすべてのものを包括した完全な計画を地域の農家群に立てさせて、それに基いて、重点的な融資であるとかあるいは助成育成等の施策を進めていくという方向でやるということには間違いないですね。
  175. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 大体御趣旨はその通りであると思いますが、ただいろいろの制度の建前もございますので、それぞれの制度の趣旨に沿いながら、かつ今お話しになりましたような関連を持たしてやっていきたいと考えております。
  176. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうは寒冷地農業の問題はこの程度にして、またこの次の機会にあらためて具体的な内容をお尋ねしたいと思います。
  177. 中村寅太

    中村委員長 石山權作君。
  178. 石山權作

    ○石山委員 これは公庫の総裁にお聞きしたいのですが、小団地の土地改良事業基金として六十五億を預けますね。この六十五億は一般経理と区分して整理される、そして資金運用部に回されて云々というようになっておりますが、その場合に公庫は全くのトンネル的な存在でありますか、あるいはこれに関する利害関係事務、そういうふうなものはどういう関係でございますか。
  179. 山添利作

    ○山添説明員 これは特別勘定を設けてその収入をもって利子を一分五厘下げる分に充てていく、そのことの全体はやはり公庫が管理しておるのであります。どういう対象を三分五厘の利子にするかということは、午前中いろいろお話がございました。公庫は、これは行政上の問題でございますから、そういう方向がきまれば県でその方針に合致すると認定したものを三分五厘の利子で扱う、こういうわけであります。
  180. 石山權作

    ○石山委員 これは経済局長でもよろしいし、主計官でもよろしいのでございますが、その出資金六十五億を資金運用部に預託をする。そのかわりじゃございませんでしょうが、資金運用部から三十五億を借りると言っておりますね。これはどうなんです、これは同じように六十五億を借りるわけにはいかなかったのですか。
  181. 高木文雄

    ○高木説明員 三十三年度におきまして資金運用部資金から農林公庫に貸し付けます金額は百十五億と予定しております。ただいまお話のありました三十五億というのは午前中の御質問に対する答弁として申し上げたのでございますが、三十五億という金額は、普通であれば五分である非補助土地改良事業に対する融資を三分五厘にするものの需要費の範囲が三十五億ということを申し上げたわけであります。
  182. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 今のはちょっと説明が不足だったと思いますが、原資の中では産業特別会計から出資金八十億、資金運用部から三十億、簡易生命保険及び郵便年金特別会長計から八十億、こういうふうになって、この三十五億……。
  183. 石山權作

    ○石山委員 その三十五億です。
  184. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは別勘定の基金として六十五億を政府の一般会計からもらうわけです。それを資金運用部に預託するわけであります。また使う方は一ぺんに全部使うわけではありませんから、三十五億を原資として資金運用部から借りる、こういうことになるわけであります。
  185. 石山權作

    ○石山委員 私の言い方は非常に表面から見た言い方かもしれませんけれども、つまり今の農林省ではお金が足りないということだと思うのです。いろいろな事業を起すのにお金が足りない、こういう前提があると思う。特に私の言いたいことは、今の公庫はほとんど土地改良を主体にしてきた公庫なんだが、それが昭和二十九年以後変ってきているということなんです。ある人に言わせれば、性格的に変ってきているといいます。そういう点からして、小団地のような場合、お金が足りない、もっと土地改良もやりたい、そういうような場合に、やったくらいの金を持ってくるようなことはできなかったか、端的に言えば、預けた金の見返りぐらいの金は取れなかったか、それを私は言ってみたわけですが、そういうふうなことは子供くさい考えでございますか。
  186. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 資金のワクは、用途の需要が多いわけでありますから、多ければ多いほどよいわけであります。しかし先ほどからいろいろ委員さん方のお話がありましたように、一定の一般金利よりは安い金利で貸し付けなければならない、そうしますと安くするための財源が必要になってくるわけであります。それをまかなうのに一番いいのは、全部政府の一般会計なりあるいは産業特別会計のただの金をいただければいいわけですが、そういうわけにもいきませんから、ほかの金をもらってくる。ほかの金で一番安いのは資金運用部なりほかの積立金のお金でありますから、それをいただいている。しかもその額をもっと多くしたらいいじゃないか、こういうお話でありますが、それはその通りでありますが、予算の折衝の過程において、一定の額で最終の結論を出している、こういう経過になっておるのであります。
  187. 石山權作

    ○石山委員 私は、この前の予算の質問のときにもお聞きして、皆さん変な顔をしておりましたが、これはいなかへ行ったら私みたいに錯覚を起している人はたくさんいるのですよ。たとえば非補助という上の三つの字を見落している、それから基金という字の基という字を見落している、小団地等土地改良事業助成金と見ているのです。だからこれは本名さんに何べんも言ったが、六十五億というのは見せかけで、実際は三億九千万円しか使わせないのじゃないか、それを見せかけにしないようにするためには、この六十五億を十分に土地改良費に使わせるということがほんとうから言うと皆さんの任務なんだ。今言ったように、三十五億は折衝過程でやむを得なかったという、そんなことを言うからいけないのです。私に言わせれば、ほんとうにそれをやるにはやはり六十五億分はちゃんとこっちに持ってきてみせなければならぬ。酪農基金というのは私はいろいろ見方があると思いますが、酪農基金の二十五億というものは債務保証費であります。この場合は疑問を持っておるのです。債務保証費でやっていくという考え方がいいのか、利子補給の形でやっていくのがいいのか、どうして物事をあっちにもこっちにも区別をつけて、酪農基金という場合は債務保証の形で二十五億を積みました。今度の場合は利子補給の形です。これも債務保証のような形でやってはまずい点があったわけですか。まずいとすればどういう点がまずいのですか。
  188. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 いろいろな考え方があるわけでありまして、どれか一つに統一しなければならぬ、こうは考えていないわけであります。お話のように、六十五億をことしの土地改良費の助成金にそのまま使うのも一つの考えであります。しかしそれは一年限りのことになります。これを基金にして、それの利子をかせいで、それをこれから将来の公庫の貸付金の利子の低下に使う、これも一つ考え方であります。一がいにどれでなければならないというふうには私どもの方では考えないのであります。もっと金がたくさんいただければいいということは私は考えますけれども、これは予算の規模その他があるわけでありますから、こちらの希望通りにいかないのは当然じゃないか、こういうように考えております。
  189. 石山權作

    ○石山委員 渡部局長に言わせれば、やむを得ないような、当りまえのようなことを言っておられますが、私に言わせれば、ごまかしちゃいかぬというのです。私のような考え方は、農家の方々はみな考えていると思うのですよ。私の言うことを、何だお前、何言っているんだというような顔つきで、六十五億やって三十五億持ってきたって、これは予算全般の上からすればやむを得ないのだ、そういうふうな言い方をするのは、これはずるいのであって、私のような考えは、農民の声を代表している表現なんですよ。それはなぜかというと、われわれ地方で見ているのは、たとえば農家に対して郵便局の方々が来てこういうことを言うのだ。貯金をして下さい、生命保険に入って下さい、この金は黙ってこの土地に戻りますというのですね。つまり資金運用部から預け入れた分を市なり町に戻す、公共事業費に戻す、こういうふうなことを言っているわけなんですから、当然公庫の基金から六十五億資金運用部にやったならば、ひもつきで六十五億の何か特別なうまみがないとすれば、農村の方々とすればおもしろくないということは当然だと思うのですよ。それをあなたは全般から見て多ければ多いほどいいでしょう、ないものはだめですなんてうそぶいたって、これは農民の声を聞き上げたことにはなりません。私はいやみを言っているのじゃない。あなたの方で出している本にちゃんと書いてある。私はこれを見ながら質問しているのですよ。昔は土地改良費のために公庫はその存在価値があった、こういうふうにちやんと書いてある。しかし最近二十九年から急速に変ってきて、今までの無利子というのは、今度は出資の形と借入金の形に変っているというふうに書いております。特に言っているのは、この性格の変った一つの要素としてこういうことを取り上げていますが、これはどういうふうな経緯を経てこういうふうになったか。たとえば主務大臣の指定施設資金、自作農資金等、個人の事業のための資金というふうなものは、これはもちろん個人のために投資をするということは否定しないけれども、全般の農林行政から見た場合には大いに考えなければならないといって、疑問符を投げかけております。こういうふうになった経緯ですね。ここには昭和三十二年十一月末の残高が出ておりますが、このうちで伐採調整費として九十五億七千五百万、それから主務大臣指定費として十九億八千三百万、自作農として八十九億一千六百万というふうな多額な費用が出ているわけなんですが、これに対して疑問符を投げかけておる。これはどういう経緯をたどってこうなりましたか。
  190. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 最初の農林漁業金融公庫の貸付の状況は、昭和二十六年度は総額百二十億でありまして、そのうち六十七億が土地改良費であります。そのほか林業に十九・五億、漁業に二・五億、製塩業に六億、共同利用施設に二十五億、こういうふうになっておるのであります。お話の土地改良費をもとにしてできたという点はどういう意味かよく受け取れないのでありますが、ただ当初におきましては資金のワクが非常に小さかった。従って最も重点的なものに優先的に金を使ったがいいということで、土地改良費の占めるウェートは大きかった。その証拠には二十七年度は三百億になりまして、そのうち九十九億が土地改良費になっておる、こういうふうになっております。そういうことは言えると思うのでありますが、この土地改良なり林業なり漁業なり共同利用なり自作農なり開拓なり、公庫の貸付対象になっておりますのはそれぞれ農林施策の遂行上必要な施設と考えられるのであります。その施設につきまして毎年度の地方の事業計画をもとにしまして予算を組んで、その予算に基いて貸付の実行をいたしておるのであります。その貸し付けたものが前年の年度割償還を差し引いて残りますと、お話のような貸付残高になっておるのであります。
  191. 石山權作

    ○石山委員 私は農業の全般の基本をなすのは土地改良だと見ておるわけです。酪農振興しかり、畑作転換しかり、すべて土地改良基本になっておる、こういう考え方を持つものですから、土地改良費は大いに増額しておかなければならぬという考え方から、六十五億出したから六十五億なぜとれぬというところにしがみついてあなたと言い合っておる。結局私は少いということを言わんとしておるのです。土地造成に対しての熱意が欠けておる、この土地造成の熱意が欠けておるということは、どんなにうまいことを皆さんがお言いになっても、畑作転換あるいは酪農、寒冷地帯の振興あるいは海岸砂丘地の振興などもいずれもこれは見せかけに終るということです。中心は中心として問題を進めていただきたいということを私は言っておるわけなんです。特にこれは経済局長と大蔵省の方に聞いていただきたい点ですが、昭和二十六年といいますと、朝鮮動乱でございますね。それから昭和三十年といいますと、ちょうど吉田内閣の末期ですか、池田さんの例のデイスインフレの始まった年です。全銀行の投資量とわれわれに関係した組合の投資量の比較がここに出ているわけです。その比較の数字を見ますと、いみじくもきちんと合うのです。二十六年、三十年という数字が合う。つまり二十六年の朝鮮動乱のあったときは組合と全金融の比率が九・二、三十年になりますとこれが六・七に落ちております。三十一年が六・三、三十二年がちょっと上って六・四、こういうふうな傾向ですね。この傾向——これは本名さんなどにはいろいろ意見があるかもしれぬけれども昭和二十六年あるいは三十年の予算と農林予算の比率、それから農林の補助率、そういうふうなものの数字をながめてきますと、かなりよく日本経済の全般において占める農業経済の推移というものが、私に言わせれば理解されるわけなんです。これを見ますと、赤城さんがどんなに力説されても、農業経済は残念ながらこの三つの数字を合せてみても、下落の方向をたどっておるということなんです。主計官に言わせれば、長期経済計画では日本の産業の伸展率は六・六でしたか、農業は三・幾らというふうな数字で発展すればよろしいというようなことが長期経済計画の中にあったと私は思っておりますが、その数字と見合うような漸落の傾向ですか。主計官はこの漸落の傾向が正当だと言うなら、私は予算をふやせとか農林経済に対するいわゆる資本の注ぎ方が不足だなどとは申し上げません。つまり全産業の六・幾らという進行率と農業の年率における三・幾らとが見合うものであるというふうにお言いになるならば、私はこの漸落の傾向をそう心配しなくてもいいと思いますけれども、どんなものでございますか。
  192. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまの御質問趣旨が、私ちょっとのみ込めなかったのでありますが、特に経済計画におきまして、第一次産業の生産の伸び率が低くなっておるから、予算なりあるいは金融なりのウェートが低くてもいいのだということは全然ございませんので、それは別個の問題ではないかと思います。その他の点につきましては、ちょっと今お読み上げになりました数字を手持ちしておりませんし、御質問の要旨がちょっとわかりませんでしたので、お答えいたしかねます。
  193. 石山權作

    ○石山委員 それは農林省のお役人さんが出した数字ですから、なるべく農林省に有利になるような数字を出したというふうに思われるかもしれませんけれども、これはやはり金融関係で出した数字でございますから、金融屋はまさかインチキはやれないでしょうから、私はこれは正しいと思っております。いずれにしても漸落の傾向をたどって、しかもここで言われておることは、蓄積の速度が大へんに違うということが主張されておるのです。これはもちろん農業の性格として、普通の鉱工産業とは問題にならぬだろうと思うのですが、その比率の度合いが非常に急速に違っておるということがこの数字の中に出ております。これはきのうもらった本ですから、一つあとでまた詳細に説明を求めますけれども……。私たちとしては、今がきちんとしていないと——そうでなくてもおくれていると言われておりますね。今この段階にきても、まだぼんやりした形で、ないそではふれないというような形で答弁されて過ごされてしまうと、私は困ると思うのです。ここいら辺ででも思い直して、六十五億は見せ金でないように、六十五億を農民に分けて与えるような施策がほしいのです。農民の方々は苦しいものですから、この非補助金ということはすぐ忘れてしまって、助成金だと思ってしまったりするのです。ほんとうですよ。そしてあの予算を見ますと、災害費が削られているわけです。六十五億が三億九千万に変ったり、災害費が削られたりすれば、どんなに人のいい農民の方々でも、自民党の政策はまことに行き届いたものであるとは言わないと思う。私は少くとも農民を愛する自民党の方、本名さんに申し上げておくが、一つここいら辺でふんばらなければ、このケースから見てもお嫁さんにあいそを尽かされてしまう時代がくると思う。一つあいそをつかされないように、一ぺんくらい家庭裁判にかかってもいいのでございますから、もう少し農村に投資をしなければなりません。これは、きょうこの公庫の法律が出たので、私は二、三冊本を見たが、どの雑誌にもそういうことが出ておるのです。農林省がお出しになっている統計にも出ておるのですから、これは私は間違ってないと思います。ですからこれは一つがんばっていただきたい。  それから一つこれは非常に具体的な問題でございますが、今度の予算の中で特に私たち心配しておるのは、これから農林省と大蔵省が三億九千万の益金をば小団地にどういうふうに配分するか、どういうふうなところへどのくらいの利子でどういうふうに配分するかということはお互いが折衝されると思いますが、その折衝が、いつもどっちがふてくされるのか知らぬけれども、その折衝が始めてから非常に長いのです。そうして大体秋田のようなところにくるのは十月の末から十一月の初めでなければその決定が回ってこないのです。それじゃ幾ら農閑期で東北の連中が寒いところになれているといっても、ちょっとかわいそうじゃありませんか。もっと早く、稲の刈り上げが終ったらすぐたんぼをいじり始めるような、灌漑排水を作れるような、あるいは斜面をば削りとれるような態勢にしていただかないと、北海道のクマだって、東北のヒグマだってかないませんですよ。そこは農林省の方々は相当理解をしていただいていると思うが、大蔵省の方々はそういう点では理解が薄いと思います。一つ今度十二月になったら東北及び北海道をお回りになっていただけば、なかなか山間の仕事というものは東北や北海道では難儀なものであるということは御理解がいただけると思う。詳細に、深刻に検討なさるのも私は役職柄けっこうであると思いますけれども、そこのところは、一つなるべく早く、いかにしていかなる土地にどういう格好で配分するかということをきめていただくように要望しておきます。これに対して本名政務次官の御意見を承わりたいと思います。
  194. 本名武

    本名政府委員 お説は一々ごもっともでございます。ただ私どもは御指摘のように、運用資金の中から三十五億しか出せなかったということは、いかにも力がないというお話でございましたが、実はもっとたくさん出したかったのでございますが、全体の投融資計画やそのほかいろいろ経済情勢などから、あるいはまた御指摘通り腕がなくて三十五億でございましたが、この三十五億というのは実は六十五億の基金を預けなくても出る金でありまして、決して六十五億を預けたから三十五億出たということではないのであります。これは全然別個にお考えになっていただきたいと思います。  それから予算の配分なり融資計画というものが非常におくれて、秋田や北海道のようなところは困る、これは全く同感でございます。今日までもいろいろ事務的な折衝段階においてこれを促進するように努力いたしておりまして、三十三年度の配分については再び繰り返すことのないように努めて、早くきめるように努力いたしたいと思います。
  195. 中村寅太

    中村委員長 他に質疑はありませんか。——なければ質疑はこれにて終了いたしました。  楠見参考人には御多用中にもかかわらず長時間本委員会に御出席下さいまして、厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十九分散会      ————◇—————