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1958-03-19 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十九日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 笹山茂太郎君 理事 助川 良平君    理事 原  捨思君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       五十嵐吉藏君    大野 市郎君       木村 文男君    清瀬 一郎君       草野一郎平君    小枝 一雄君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       永山 忠則君    丹羽 兵助君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       松野 頼三君    村松 久義君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石田 宥全君    石山 權作君       稲富 稜人君    稻村 隆一君       川俣 清音君    神田 大作君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       中村 英男君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         農林大臣臨時代         理国務大臣   石井光次郎君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局次長) 小山進次郎君         農林事務官         (農林経済局参         事官)     森  茂雄君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      河野 恒雄君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部農         業協同組合課         長)      尾中  悟君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 三月十八日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  楯兼次郎君が議長指名委員に選任された。 四月十九日  委員赤路友藏君、阿部五郎君及び永井勝次郎君  辞任につき、その補欠として稻村隆一君、神田  大作君及び川俣清音君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十四日  中央卸売市場法の一部を改正する法律案内閣提出第一三七号)(予) 同月十五日  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出第一三九号)(予) 同月十九日  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出第一四二号) 同月十四日  狩猟法の一部改正に関する請願飛鳥田一雄紹介)(第一九六〇号)  同(加藤高藏君紹介)(第一九六一号)  同(小西寅松紹介)(第一九六二号)  同(塚原俊郎紹介)(第一九六三号)  同(横井太郎紹介)(第一九六四号)  農地改革による旧地主に対する補償反対に関する請願外十一件(石田宥全君紹介)(第一九六五号)  パン、ミルク値上げ反対に関する請願加藤鐐五郎紹介)(第一九六六号)  宮之浦漁港防波堤築造に関する請願伊東岩男紹介)(第一九七七号) の審査を本委員会に付託された。 三月十八日  農業共済団体職員年金制度確立に関する陳情書(第六五三号)  畑地農業改良事業予算確保等に関する陳情書(第六五四号)  海岸砂地地帯農業振興に関する陳情書(第六五五号)  奥会津地域開発林開発促進等に関する陳情書(第六五六号)  農業委員会補助金増額に附する陳情書(第六五七号)  治山事業予算拡充等に関する陳情書(第六五八号)  農業共済団体事務費国庫負担増額等に関する陳情書(第六五九号)  戦時徴用船に対する災害補償に関する陳情書(第六八九号)  林野予算増額等に関する陳情書(第七三二号)  農業委員会職員国庫負担金増額に関する陳情書(第七三三号)  農林漁業金融公庫法の一部改正に関する陳情書(第七三四号)  農林漁業団体職員共済組合法制定に関する陳情書(第七三五号)  土地改良事業に対する国庫補助率引上げに関する陳情書(第七三六号)  渥美外海漁業特定海域指定に関する陳情書(第七四八号)  国営豊川水利事業特定土地改良工事特別会計法適用に関する陳情書(第七五七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法案内閣提出第一二九号)      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  農林大臣臨時代理石井光次郎君よりあいさつをいたしたい旨の申し入れがあります。この際これを許します。
  3. 石井光次郎

    石井国務大臣 このたび、御承知のように赤城農林大臣がソビエトに漁業交渉のため全権として昨日出発いたしましたので、不肖私が留守仕事をお預かり申すことになりました。私、農林行政についてははなはだ知識も乏しく、経験もないのでございます。皆さん方の御支援によって留守番を十分勤めたいと思っております。  昨日別れるとき赤城君に向いまして、君が日本の方を向いて心配しながら交渉するようでは困る、うしろの方は皆さん方の御支援を得てちゃんと留守をやっていくから、前の方を向いて一生懸命やってこいと言うてお別れをしたわけであります。  はなはだ至らぬ者でありまするが、どうぞ皆さん方の御支援によりまして、この議会におきますいろいろな問題を初め、農林行政全般にわたりまして私が留守仕事をやっていけますようにお願い申し上げましてごあいさつといたします。(拍手)     —————————————
  4. 中村寅太

    中村委員長 農林漁業団体職員共済組合法案を議題として、審査を進めます。質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 農林漁業団体共済年金制度の問題について、法案が提出されるまで政府部内における意見が不統一であったというふうにわれわれは承知しておるわけでありますが、政府内部において本法案を国会に提出するまでの経緯、持に問題になったのはどういう点であるかということを、この際厚生大臣が来ておられますので、堀木さんからますお伺いしておきます。
  6. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 農林漁業団体職員共済組合法案につきまして、新聞はいろいろ伝えているところでありますが、農林大臣と私の間では、この問題が提起されましたときから意見の扞格はないのでございます。そういうことを申しますために、社会労働委員会ではしばしば、お前はけしからぬというふうなおしかりもちょうだいいたしておるような次第でございますが、率直に申して、厚生行政をあずかっておる私どもとしては、厚生年金が近く行われる国民年金の中枢になるというふうに考えておりますし、かたがた、御承知通りに、社会保障制度審議会答申もすでに間近に迫っておることであり、私どもの方に国民年金創設いたしますための準備として置きました五人委員会答申も近く出るような状態であります。従いまして、厚生年金自身組合員である方が脱退をするということは、率直に言って、厚生行政を守り、国民年金を近く創設しようとする者から考えますならば、この際厚生年金から脱退されて別個の共済組合ができますことの好ましくないことは言うを待たないところであります。しかしながら率直に申しまして、私どもの方で国民年金の具体的な構想をあげて、そうしてこういう国民年金制度を仕組んだということをお示しする段階にまだなっておりませんときに、これらの団体自分たち負担を増しても自分たち年金制度創設してもらいたいという現実の動きに対しまして、この際反対すべきでないという考え方に立ちまして、私は初めからお作りになることを承知申し上げておったような次第でございます。  以上申し上げたのが簡単に申し上げますれば経過でございます。大体今申し上げました経緯問題点のおもなものはその中に織り込みまして申しましたと思いますので、一応簡単ながら以上をもってお答えといたします。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの御説明は、これは厚生大臣として、厚生年金制度分野からみて、農林水産業団体職員共済制度の問題に触れられたのでありますが、この法案政府提案理由説明を聞くと、必ずしも社会政策的な面からだけの理由ではないようです。むしろ、原始産業に従事するいわゆる農林水産業団体の今後の育成強化といいますか、経済的な基盤を強めるためには、どうしても協同組合あるいは農林漁業関係団体運営強化しなければならぬというところに、その問題があるわけですね。しかもその運営強化というのは、直接その運営の衝に当っている常勤役員あるいは職員諸君質的向上社会的な身分の安定が期せられなければ、結局その所期の目的が達成できない。それで、この際農林水産団体関係のこの年金一つのものにまとめてやっていくというところに一番のねらいがあるわけですね。やはりこれは農業政策的に見た場合においても必要なことであるということに、当然なるわけです。そういう点に対しては、厚生大臣としてはどのように理解されていますか。
  8. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今芳賀さんの御質問のような観点から、すでにたくさんの共済組合ができておるわけであります。年金制度をやはりしいているわけでございます。そういうふうな現実の要請というものを、単純に国民年金制度というものの考え方があるからといって反対すべきでないという考え方に初めから私としては立っておるわけであります。ただ、今おっしゃるように、各経営団体が、今ここであらためて申し上げるまでもなく、私立学校の教職員共済組合、あるいは市町村職員共済組合、最近に至りましては公共企業体共済組合、その他相当多くのものがあるのでありますが、それは今芳賀さんからお話のありましたような観点から出てきました問題と、芳賀さんのおっしゃるような現実要求自分たち生活を守り、そして自分たち団体の質の向上をはかろうという意欲の強いものが出て参りましたときに、国民年金制度創設という観点からだけで反対しておるわけには参りますまいというのが私の考え方でございます。ただ、今おあげになりました生活の安定というものにつきましては、やはり国民年金制度も同じような趣旨に立っておりますから、そういう部面について、ひとりこの共済組合のみならず、現存の各共済組合との関係において、将来国民年金制度のしかれましたときには、調整をはからなければならないという考え方には立っております。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 今までの答弁を聞くと、これは将来の国民年金制度発展に対して何ら障害にならぬということは、厚生大臣もはっきり確認して答弁されておるというふうに聞き取れるわけですが、世間では。厚生省なんかが、これは国民年金制度発展する場合に、今ごろこういう共済組合制度を作るということは一つ障害になるというふうな意見があったということは否定できないと思うのです。今の大臣の言葉をかりれは、必ずしもそうではないというふうなことなんですが、その点はいかがですか。むしろこのような共済組合制度というものは、単に本法案だけでなくて、既存の組織としては、私学の共済組合とか、あるいは市町村職員共済組合とか、そういう既存制度というものがあるわけです。むしろこういう制度国民年金制度実施の場合の底辺的な役割を果すのじゃないかというふうにわれわれは考えるわけです。そうじゃありませんか。恩給とか既得の権利ですね、そういうものはあくまでも尊重しなければならぬのですから、国民年金制度が行われるような場合においては、こういう共済組合制度というものは、やはりその一つの基礎的な役割を今まで占めておったというような考え方の上に立って、今後国民年金制度水準をどのくらいのものにしてやるかというようなことにもなり得ると思うのです。そういう点についてはどのように考えておりますか。
  10. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今芳賀さんのおっしゃったように国民年金制度を作るときの底辺的な役割一つの固定的なペースになるまくらのようなものを調節するというふうな点から言えば、確かに一つ考え方だと思うのです。国民年金制度を作りますときに、実際に問題として一つ大きく取り上げられなければならないのは一体資金運用の点が全体でどうなるか。それから国民年金制度は、御承知通りに、富の再分配というものが税金の面において行われますと同時に、単純な保険制度と違いまして、その制度の中でも幾分再配分的なものが行われるという情勢であります。ですから標準報酬の高いものだけが自己生活を守ろうとしてその分だけについて自分たち適実共済組会員がどんどんできて参ります。そうして残されたる非常に低所得階層と申しますか、比較的国民の貧しい方の人だけが残されるような形で国民年金制度がしかれますことは、国民年金制度の性質としてはおかしいのじゃなかろうか。しかしいずれにいたしましても、そう申しますが、数え上げればすでに八つぐらい、いろいろな形ではございますが、年金制度をしいておる階層があるとすれば、ひとり農林漁業団体関係者にのみそれを拒否するのは、事務的の潔癖と将来の支障を予想して反対するよりは、現実にこの問題を解決するのが政治家として当然ではなかろうか、こういうふうな観点に立ちましてこの問題について最初からお進めになることを農林大臣に向って承認いたしておりましたような次第でございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 今お話がありましたが、この農林漁業団体関係職員給与水準というものは極端に低いのですよ。これは今大臣の話から言うと、低所得階層だけが置き去りになって、それ以外のものが有利な共済制度の方に入っていくというようなことを言われましたが、これは多分勉強されておると思うのですが、たとえば農業協同組合関係職員の全国の平均給与は約九千四百円くらいなんですよ。全産業平均賃金は大体一万七千円くらいです。ですからそれと対比した場合、極端に低いということは、もう明確になっておるわけです。これはただ単に職員給与が低いということでなくて、農林漁業団体そのもの経済力が非常に弱体化して、その中で働いておる職員給与に対しても、社会的に他と均衡のとれた給与の支払いができない、不可能であるという状態までこれはきておるわけです。こういう点を十分考えた場合においては、この制度がただ単に中層以上の所得者のための共済組合制度であるということには断じてならないと思うのですがいかがですか。
  12. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 確かにこの団体に属する人の給与は比較的少いのです。ただ今できておりますものをごらん願いますと、これは相当高いものが多いのであります。現に最近できました公共企業体従事員諸君給与その他の問題から見れば、国民全体から見てどうか。実は率直に芳賀さんに申し上げますが、初め御相談があったときに、給与の低いのをせいにして年金制度をおしきになることはおかしいじゃありませんかと逆に私が申したくらいであります。まず現実給与をお上げになる方がほんとうじゃないかということを私申し上げたくらい、現実給与問題は私了承いたしております。ですからほかの団体よりは確かにそういう問題について芳賀さんのおっしゃる点について考える余地は十分ある。しかしあまり個々の事務的な問題よりも、私の結論的判断は、すでに多くのそういう共済組合によって年金制度をしいているところがある。そしてそのうちには厚生年金から脱退した前例もある。なるほど国民年金制度創設は迫っておるが、現実はこれらの階層が、みずからの負担においてみずからの利益を守ろうとしていくのを、今単純に事務的な議論でもって阻止するのは政治の本道に反すると思って御賛成申し上げましたというところが基本的でございます。ここで事務的にそういういろいろな議論をすれば議論はございますが、そういうことよりも今申し上げた観点から、政治としては私は賛成すべきものなりと初めから考えております。現に他の委員会に参りますと、私はもうしょっちゅうこの問題について攻撃を朝から晩まで受けて、お前のような厚生大臣は資格がない、現に社会党諸君からボロクソに言われておるわけでございます。しかしながら私は、率直に申し上げますが、初めからそういう観点に立って、政治家としてはこれを阻止すべきものではない、こういうふうに考えた次第でございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 今社会党諸君というお話があったが、そういうことは何も私が質問申しておらぬことです。そういう不穏当な言辞は大臣ともあろう者が軽々しく述べるものではない。それは自発的にお取消しになったらどうかと思いますが、委員長は注意願いたいと思います。  そこで厚生省は三十二年の白書を発表になった。この中では明らかに国民階層の中においては貧富の差がますます増大しておる。いわゆる階層差が激化しておるということを厚生省は認めておるわけです。大きな産業分野の中から見ると、第一次産業は特に貧しい層へ押しやられておるということは、大臣もお認めだと思うのです。とにかく農林水産業を入れますと全国民の約五割くらいがその階層になっておるわけです。これらの階層は、毎年のように国民所得の中においても所得が増大しない階層なわけなんです。ですからこういうことを考えた場合においては、今後の社会保障制度の中で原始産業に従事する農民漁民、これらの階層に対して一日も早く国民年金制度等適用になる、実施が行われるとすれば、一体どういうような構想でこれを取り扱おうとされるか、大体の構想ぐらいはおありでしょう。
  14. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 まず社会党諸君からボロクソに言われておるということがお気にさわったようでございますが、申しわけありませんから取り消します。委員長からお取り消しの要求がございませんから進んで取り消します。しかし事実は事実です。厚生白書にも申し上げておりますように、最近におきまして貧富格差が少し開く、しかし三十年度においてはまた少し縮まりました。これはもうただ単純な終戦後からの状況の分析でございまして、終戦生活給を守ろうとする状態国民が食うに困るような状態のときに富が平均して参る、格差が少くなって参るというのは私は当然の現象であろうと思うのであります。自後国民経済の拡大に伴って、ある程度の資本の蓄積が認められてくると、資本の面からの格差が出て参ります。それから現在よく言われておるように、賃金労働の面から見ても、大企業とその他の問題との格差が出て参ります。それから大きく分ければ、芳賀さんがおっしゃるように、農民とその他の間の所得格差が出て参ります。私どもこれを是正していく上においても、一つ社会保障の前進が必要であるというふうに考えますので、国民年金制度はぜひ一般国民、特に農民等を含みまして国民年金制度創設いたすことによって、国民生活の安定をいたしたい。毎毎岸総理が申しますように、医療保障の達成と国民年金制度創設によってこれらの問題を解決して参りたいというふうに考えておるわけでございます。  しからばどういう国民年金制度を考えておるのかというふうな問題なのであります。御質問はまさにそこでございますが、御承知通り社会保障制度審議会答申がもう間近に迫っております。私どもも最近の社会情勢及び終戦後の社会情勢の変化、ことに家族制度の崩壊というふうな問題から考えまして、両委員会にもぜひこの問題について早く御答申をちょうだいいたしたい。せっかく皆さんが熱心に御論議をされておって、その一部が御承知通り新聞紙にも伝わっておるような状態であります。予想以上に早く出るのではなかろうかと思いますので、この際まことに申しわけございませんが、ここで私がこういう国民年金制度をやりたいのだということを申すことだけは、今の段階では私は差し控えるべきだ。ただ私どもはこの両答申案が出ました場合に、事務的に藉口して実施がおくれてはいけないので常に緊密な連絡をとりまして、事務の折衝と相呼応して進捗をはかっておるというのが現在の段階でございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 特に私がお尋ねしておるのは、堀木さんは自民党の厚生大臣なのですが、しかし厚生行政を預っておるものの立場から見れば、農民漁民というのは、やはり資本主義の下積みになって、もう日陰に置かれておる。これはもう認められると思う。これは、あなたの方の党の資本主義の悪がこういうことをやっておるのですから、こういう階層に対する国民年金制度とか医療制度実施は、一番急がなければならないことだと思うんです。その場合、特に農業とか漁業というのは形式的に見ればこれは企業なんですが、しかし実質的に見ると自家労働——自己労働によって生産を行うわけなんです。それは生産したものの販売の中の所得で、それは利潤ということではなくて、むしろ自分労働に対する報酬として考えた場合に、それだけでも非常に低いわけですね。それは賃金報酬と見合った場合においては極端に低いわけです。しかし雇用関係は何もないという場合において、国民年金期度実施する場合、農民あるいは漁民に対する制度適用というものは、やはり実態を十分把握してやらないとちぐはぐなものになってしまうんじゃないかと思うんです。そういう点はやはり厚生大臣として就任された場合、何らかの構想くらいはあってしかるべきじゃないかと思います。審議会答申答申で出ると思いますが、堀木厚生大臣としての何らかの政治的な所信というものはあると思うんですが……。
  16. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 芳賀さんのおっしゃるように、私ども資本主義社会におきまして、ある程度の富の再配分をはかって国民生活を安定するということにおいて修正されなければならぬことは、これはもうその通りであると思います。それが新しいデモクラシーの社会でもある、こう考えております。そして今おっしゃいますように国民年金制度の性格上、雇用と被用の関係に立っている人だけの問題を考えるわけには参りません。これは全国民を包含し、なかんずくあなたのおっしゃるような農民だとか漁民だとか、そういうふうな全国民階層、それが事業主であろうか事業主でなかろうが、それらを全部包含するところの国民年金制度でなければ、国民年金制度の態様をなしませんことだけは確信いたしております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 この法案が成立して実施される場合は、この法律にいうところのいわゆる団体というのは、農民が組織しておる農業協同組合とか漁民が形成しておるところの漁業協同組合等がいわゆる団体ということになるわけですね。ですからそうなると、組合職員にはこういう共済年金制度ができた、しかしおれたち百姓漁民は一体どうなるんだということに当然関連していくわけですね。ですから私どもとしては、これはあわせて農林水産業一つ生成発展のために、今この段階ではまず職員社会的な身分というものを安定さして、そして団体を十分しっかりしたものに盛り上げてもらう。それと同時に、その次はおれたちの番なんだということにいかなければ、これはしっくりしないと思うんです。ですからそういう場合には、今の内閣は、あるいは厚生大臣は、この点に対してはこういうふうな見解を持っておるということが、あわせて明確にならぬと、政府はそのことについては、厚生大臣さえも何らの案がなかったということでは、お粗末しごくなことになるんじゃないかと思うわけです。ですからこの点は、提案者である政府としては、やはり明確にしておかれる必要があると思うのですがいかがですか。
  18. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 おっしゃる通りであります。私ども国民年金制度創設を急ぎますのは、終戦後の日本の社会情勢から家族制度に変革を生じて非常に違って参ったときに、やはり国民年金制度の必要性が叫ばれますと同時に、最近の情勢にかんがみまして、ことに御承知通り、恩給制度及び農業共済組合制度ができます以上は、全国民を対象とした国民年金制度創設を一日も急がなければならぬ、こういうふうな確信をいたしておるわけであります。しかしこれはもう芳賀さんも御承知通り国民年金制度であります以上は、全国民を対象といたしますから、同じべースに立ったものでもって至急作らなければならぬ。しかし現在の共済組合制度における年金制度との調整を無視するわけに参りません。国民年金制度も、それができるような観点から、現に私どもが現在やっております厚生年金制度——最初に申し上げました厚生年金制度自身も再検討いたしまて、そうして国民年金制度創設したいと思っております。ただ具体的にこういう案がある以上は具体的なものを示せとおっしゃいますが、国民年金制度の案が、先ほども申し上げましたように、もう審議会なり五人委員会でまさに出ようとしているときですから、しばらく御猶予を願いたい、こういうことでございます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点お尋ねしておきますが、この共済事業の中から今回の法律に限って短期給付事業を除いてあるんですね。これは全く異例なことです。この点に対しては、なぜ農林漁業団体共済組合の事業から短期給付事業だけを除いたか。他の共済組合の事業は長期給付と短期給付をあわせてやっておる。それが一つの体系だとわれわれは考えているわけですが、先ほど来の御答弁を聞くと、厚生大臣もこれには全面的に賛成しておったと言われているのですが、こういうびっこな法律が出たことに対してはなかなか了承できないのですが、その理由をお尋ねします。
  20. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 医療関係の問題につきましては、御承知通り皆保険と称しまして、国民健康保険を初め各種社会保険でもって全国民を網羅するというふうな状態にすでに議会の御承認も得て進んでおるわけでございますので、その分につきましては、今回この法案改正から除いたということでございます。それ以外の規則給付は、今申し上げたような医療保障観点から見まして、短期給付の分はことさらにこの法律に規定する必要がなく、すべての組合が同様に均霑できるという観点から抜きなったようでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いておるのではないのですよ。共済事実をやる場合に、長期給付はもちろんですが、短期給付、たとえば医療給付とか、罹災給付とか、休業給付、これらのものを合せていわゆる短期給付と言うわけですよ。なぜこれを落したのかということを私は聞いておるわけです。これは変じゃないですか。全く反対しておって妥協案でこうしたというなら話はわかるのですが、厚生大臣は全画的に賛成しておったと言いながら、こういう短期給付事業を落したというところが合点がいかないのです。
  22. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 大臣としましては、実は初めから賛成していたことは、先ほど申し上げた通りです。両省で法案を作るのにつきましては十分相談をせいということで、相談を命じましたのでございます。ですからむしろ法案の細目につきましては政府委員からの答弁でお許しを願いたいと思います。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 これは細目じゃないですよ。制度の体系を私は言っているのです。条文の中のこまごましたことがどうということじゃなくて、体系上から見て短期給付事業が落ちている言いうことはいかなる理由かということをお伺いしているのです。これは農林大臣と御相談なすったときにも大事な問題だと思うのです。
  24. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お許しを得て私からお答えしたいと思います。お話のように共済組合制度は今日短期給付、いわゆる医療部面ですね、これも一緒にやっておるのが大部分であります。それで今回の法律案を御相談いたしましたときにもその点が問題になったわけでございます。ところが医療給付部面は、御存じのように国民皆保険というものが具体的な政府の施策として目下進行申であるわけであります。この点が国民年金というふうな問題とは若干ニュアンスが違うわけであります。おまけに医療給付部門は分けて出ましても、特別に農林漁業関係団体職員の方々のプラスにはならないわけでございます。今日健康保険制度でやっておりますこと以上やるというふうなことも現実の問題として考えられない、給付は同じである。ところが年金部門は掛金も多くなりますけれども、同時にもらえる年金というものも多くなる、これだけプラスになる。そういうふうな事情もございますし、さらに制度が分かれますと、医療機関の関係なんかで医療機関側にもいろいろなごめんどうをかけるというふうなことになって参りますので、分けるというだけの実益もなし、分けたところで大したこともないじゃないか、こういうわけで、両省相談の結果この制度では短期部門を落したわけであります。このことによって別に関係者の不利益というふうなものは現実問題としてない。医療機聞なんかが一本の制度で運用されることによりまして、むしろめんどうを避け得る、こういうふうな考え方でございます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは農林省にお尋ねしますが、最初の構想は、農林省の要綱案によると、短期給付事業もあわせて行うということになっておったと私は記憶しておるわけです。ですからこれは最初から農林、厚生両省の意見が一致して短期給付は行わないということになったとは思えないのですが、その間の経過はどうですか。
  26. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま保険局長からお話があったような意味で、現在の案に入れないことにしているのでありますが、御説のように、当初の案には私の方は短期給付も入れて行う、こういう案になっておりました。それは一方では五人未満の組合は除外するということで、長期、短期を一本にした案で考えておったわけです。そして私の方の国民皆保険とかあるいは国民年金というものに対する研究が、当初の案のときには十分でなかったのでありますが、その後厚生省といろいろ事務的に詳細にわたって討論をしておる間に、どうしても一方において独立するとすれば五人未満の厚生年金の対象になってない部分も救わなければおかしい、これは年金の方としてはそれでいいだろうけれども、短期の方になってくると、現在の組合の状況から見れば、短期給付の内容そのものが厚生年金と区別するほどの相違は全然ない。従って独立分離する必要を認めない。一方では年金の対象を広げると同時に事務がふえますから、何ら給付の内容が変らないものを一本にすることも必要ないじゃないか、かてて厚生省側の御意見としましては、先ほどお話がありました国民皆保険がもう現にスタートしかかっている。従ってこれは君らの方で独立しなくても、おれの方で認めたらそれで独立したと同じ効果が出るのじゃないか、だからこの点は了承してくれるようにということで、私の方も理に服した、こういうことになります。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 短期給付を行なっても別にプラスにもならぬということなんですが、そういたしますと保険局長にお尋ねしますが、国民皆保険の立場から見ると、既存のたとえば私学とか役場の共済事業等の場合も、将来は短期給付事業というものは切り離して、国民皆保険の方へ統合するというような考え方の上に立っているのですか。
  28. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大きい方向といたしましては、短期給付部門が非常にいろんな制度にばらばらに分れております。これを今御指摘のように統合の方向に向けるのが大きい方向でございます。ただ今直ちにこれをやるかどうかというこにつきましては、現存の制度をぶちこわすということは実際問題としてはなかなか至難な面もございますから、直ちにはそういうことには相ならぬ。被用者保険と地域保険の二本建で短期給付部門を、やって、国民皆保険を実現したい、こういうのが当面のあれでございます。しかしながら大きい方向としましては、先生今御指摘のような方向に将来は進むべきものと私どもも考えております。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 次に内容的なことについてお尋ねします。組合加入の問題ですが、この法案によると全面的に強制加入という建前である、厚生年金制度の場合には五人以上の事業場ということになって、五人未満というのは強制ではないのですが、これは五人未満でも全部強制ということになるのです。その点は非常に強く、団体としての体裁をなさぬような組合に対しても強制加入ということになっていくわけなんですが、この点はどうですか、少し強過ぎるようにも考えられるのですが……。
  30. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは法律の十四条以下に規定しておるのであります。常勤の役職員は全部組合員となる。十五条で、その始期は職員となった日から資格を取得する。十六条で、団体はその資格の取得及び喪失に関する事項を組合に届けなければならない、こういうことになっております。従ってこの届出によって結局組合員であると掛金をかけなければならない、あるいは掛金をかけたから年金をもらう資格ができた、こういうことが確認されることになります。御指摘のように、休眠組合が相当ありますから、そういうものはこの届出が正確に行われないではないか。しかし、私の方では、年金制度そのものの問題ではなく、団体そのものを整備強化するという面から、この条項によってそういう休眠組合はそのまま置いておくのがいいか、整備統合した方がいいかということも指導して、組合指導面と法律の確認を並行していくことによって五人未満の御指摘のような組合を整理ができる、こういうふうに考えます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 この制度実施する場合は、やはり団体の経営の問題に当然触れてくると思うわけなんです。たとえば給与の問題等にしても、今回対象になる九団体給与内容を見ても、非常にでこぼこになっておるわけです。特に目立つのは、市町村の単位組合段階職員給与が非常に低く、その上が都道府県の連合会の段階、全国段階が最高というように、給与一つ段階を示しておるのです。こういう点はやはり年金制度実施に伴って漸次改善していく必要があるのではないかと思うわけです。また同じ農協なら農協の給与の内容を全国的に調査してみれば、都道府県によって非常にでこぼこが多い。ですから、年金制度を行うことはいいことなんですが、その基礎になる給与体系の改善ということを無視してはこの制度が十分活用できないと思うのです。農林省としては、今後どういう指導の態度をもって団体職員給与の体系の改善等に当るのか。
  32. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 農林漁業団体には、一つの統一的な給与体系というものは御指摘の通りございません。これは、農林漁業団体一つの地域をもとにして成立しておりますから、その地域の経済力の差によって、組合の状況がまちまちであります。従ってその組合の事業に応じて支払い可能の給与が支払われているのが現状であります。しかしこのことをそのまま認るめことは、団体それ自身の指導の建前からいって放置できないのであります。組合を適正規模に合併なら合併を進めていく、そういうことによって組合の経済カをつけ、職員に一定の給与を払っていく、こういうことを考えていかなければならないのであります。そこで、この法律を準備するに当りまして、私どもが最もその点を懸念し、一面におきましては、給与体系がはっきりしておりますと、過去の短い期間の給与を標準にして年金を交付することができるわけです。これは過去五カ年間の平均標準給与を出しまして、それをもとにしてやることを法律の中で仕組んでおります。さらに団体それ自身の心構えに、現在の状況では、たとえば御配付してあります表の農業協同組合等を見ますと、特殊農協、総合農協合せて三万四千くらいあるうちで、この法律の準備するに際して報告のあったものは一万四千くらいで、あとの二万余りの組合からは報告も来ていない。その中には養蚕農協のように常勤職員のないものもございます。これが約六、七千ございますが、その残りの組合は常勤職員があってなおかつ報告もないのであります。こういう状況でこの法律を取り上げるとあとに問題を残す、不公平の問題も起ることになるから、その点団体側としてどう考えるかということで検討いたしまして、団体側としては団体別の加入予定の組合のカードを中央で集め、カードには定期的に決算の状況なり職員の異動、昇給の状況を載せるように団体側として責任を持ってやる。三十二年三月末の調査は予備調査でありますから全体をやらなかったのでありますが、この法律の施行に当りましては、団体がそういうことを責任を持ってやる。それは団体の指導に当る面でもつぶさに見ることができますし、従って団体経済力をつけることにも使えますから、それによって御指摘のように団体の整備強化の方に一段と努力ができ、組合員給与も漸次改善される、こういうように考えております。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 今のお話ですが、経営能力の低い組合に直ちに適正な給与実施するといったって、これは無理なんです。しかし漸次そういう方向に持っていくことはどうしても必要だと思います。先ほど厚生大臣が言ったように、給与の低いのをそのまま放任しておいて年金制度だけでこれを救うということでは妥当性を欠く。今全国には農林漁業組合の再建整備の指定を受けてやっているところもありますし、あるいは整備特別措置法の指定によって再建を進めているものもありまして、すぐというわけにはいきませんが、この機会にあわせて全国的な職員の適正給与というものを発見していく、そういう点はいかがですか。
  34. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 身分保障は年金制度を作ればできる、こういう主張が相当強かったのであります。しかしその前に、給与ベースが低いために協同組合あるいはそのほかの団体職員が他に転出するのを防止することはできないから、その給与を上げることが先決ではないかという議論を相当やったわけであります。その給与を上げるのにはやはり団体経済力をつけることが必要でありますから、どうしても経済力をつける努力をしなければならぬ。しかしそれはそれでやりながら、年金制度一つ身分安定が主であることは間違いないのでありますから、まず経済力をつけるということに対して団体側が努力することが一つの前提になってこの年金制度をわれわれは取り上げたわけであります。しかし御指摘のように、団体経済力をつけることは非常に困難な問題があります。現在の中で大体総合農協の三分の一は非常にいい組合、三分の一は大体まあまあというところ、三分の一はいろいろトラブルが起きたりあるいは休眠状態にあり業績が上らぬ、こういうものでありますから、いろんな法律で努力しておりますが、まだまだ努力をしなければならぬ。合併の推進にいたしましても経営の管理にいたしましても、そういう問題があるわけであります。それはそれで並行しながらやっていく。しかし先ほど御説明申し上げましたように、この年金制度を施行することによって掛金を職員一人々々がかけることになる。その状態がわからなければならぬ。さらに、掛金をかけなければおそらく年金はもらえないことになるだろうから、どうしてもこの制度を施行することによって、やはり組合事務担当者それ自身の組合の経営計画に対する考え方が変ってくるのじゃないかという期待も持っておるのであります。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから結局、不振組合に対する育成強化というものの施策が伴っていかないと、逆効果になるような場合があると思うのです。この制度実施において職員質的向上を期待しておるわけなんですが、不振組合に対する育成というものを放任しておくと、逆に今度はこの制度から逃げるようなやり方を考えて、たとえば臨時的な職員をたくさん入れるとか女子職員に依存するとか、あるいはまた地方町村では、比較的ひまなこの給料だけで食っていかなければならぬというわけでないというようなボスの有閑子弟をそこに入れてやるとか、そういう逆の現象が生まれないとも限らない。ですからやはりその制度に期待を持つ場合には、不振組合に対してどういうような育成強化の施策を講ずるかということで、これは相当強力にやっていかぬといけないと思うのです。そういう点はどうなんですか。
  36. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 全く御指摘の通りでありますが、現在まで不振組合の整備強化が徹底しないゆえんは、不振組合それ自身の現状の把握ができなかったのじゃないか。それは三十二年三月現在の協同組合だけについての調査を表にしまして今お配りいたしますが、結論的に申し上げますと、総合農協一万二千七百、そのほか特殊農協二万連合会等合せて農協全体で三万四千二百九組合があるわけであります。その中で加入予定者数として予定されておりますのが、先般お配りした総括資料にあります一万四千百五十一というのでありますが、その残りの二万余りの組合は一体どういう状態にあるのか、こういう内訳をつくってみますと、三万四千のうち三千七百が業務停止でありまして、連絡先不明が五百二十五、その他が六千、それから専任職員の全くないものが九千七百五十三、こういうふうになっておるのであります、この中で選任職員のないものは、これは養蚕農協が六千でありまして、特殊の状況であります。それからその次に大きいのは開拓農協でございます。これは非出資の組合で、経済事業等はあまり行わないのでありますから、これらはしばらく論外に置きまして、そのほかの組合は業務停止、連絡先不明、その他——その他というので実情の把握ができないのがこれだけあるわけであります。こういう状態でありますから、結局不良組合の指導が徹底を欠いておるわけであります。この際年金制度実施することに関連いたしまして、このその他の組合は、先ほど御説明申し上げました組合員の確認をどうしてもやらなければいかぬわけであります。この職員も、今度はうかうかしておればこの年金制度から脱落する。従ってこの際組合の常勤役職員についてあらためて注意を喚起することになります。そこへわれわれの方でも年金制度を中心にして、御指摘のような経営の整備と強化の方に指導を徹底することによって、今までの再建整備であるとかあるいは整備特別措置法でありますとか、あるいは今後それ以外の実際指導が相当徹底することになるのではないか、こういうふうに期待しておるわけであります。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、結局、職員給与改善にしても一応の目標というものが必要だと思うのです。私は市町村団体職員の場合は、市町村役場の職員給与にやや準じたような、その辺までの改善は必要だと思うのです。特に戦前の産業組合等に例を見ると、その当時は役場と産業組合職員給与というものは、ほぼ均衡がとれてきたのです。戦後になってずっと変ってきて、町村役場は今一万二千円ぐらいの平均水準で、組合の場合には大体九千円台ということになると、同一市町村の区域内において役場の職員と農協の職員が三千円も違うということはちょっと当を得ないです。これは農協にしても、漁協にしても一つ社会性とか公共性を持って、産業なり経済の仕事をやっておるのですから、でき得ればその辺まで適正に改善させるように、漸次その方向に移向させる必要があるのではないかと思うわけです。
  38. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは職員の側からいえば当然でありますが、支払う側からいいますと、支払う財源がないのに、その給与は支払えない、こういうことでありますから、どうしても御指摘のように団体そのものの経営をよくするということが先行しなければならないことになると思うのです。従って今度の年金制度実施いたしますとすれば、経営改善に対して相当強力な反省の材料になるのではないか、こういうことを期待しております。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 その点はちょっと局長認識が足らぬですよ。同一市町村の中において役場の場合は、支払い能力がなくても住民に税金をかけてその税金から給料を払う。そうでしょう。ですから同じ市町村の中の経済圏の中で、能力が異なるということではないと思うのです。ただ一方は自治体ですから、税金を無理にでも取り立てて、それによって給料を払う。一方農協とか、漁協はなかなか経済的な経営不振で払えないというところに問題があるわけで、やはり地域内における均衡というものは考えていかなければならぬと思うのです。ですから最低の給与保障がやれるような経営というものをやってもらわなければいかぬのです。この制度によって職員の資質が向上すれば、漸次そういうことは期待に沿えると思うのです。だから方向としてはそういかなければいかぬというくらいのことを明確にしておく必要があると思う。
  40. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ですから職員の側からいいますと、とにかく同じ地域で不均衡があることは耐えられないことだと思います。どうしてもそこに持っていかなければならないのは当然だと思いますが、支払う側が違うわけでありますから、市町村とか公共団体でありますと、御指摘のように公的な権力的な収入で確保しているけれども協同組合はいわゆる自主的団体でありまして、経済的行為により上った収入で払っていくということでありますから、協同組合の経営が悪ければ収入が少い。そうすると支払いたくても支払えない、こういうことになっている。端的に申しますと、たとえば市町村が合併していろいろな経営の合理化をしているにかかわらず、協同組合は依然として三百なり五百なりの小規模の単位で、経済状態が非常に変ったにかかわらず、そういうことをやっておれば支払えないのが当りまえだ、経営者側においてこういうできることをやらない。こういう面も多々あるわけでありまして、この年金制度でそういう点がはっきり表面に出てくることになりますから、同一地域において同一給料を払わなければいかぬという理想を実現するのには非常に役立ってくる。またそれを私どもで、少し語弊があるかもしれませんが、これを一つのよすがにして経営刷新強化の指導の一つのてこにしてい、こういうふうに事えております。
  41. 神田大作

    神田(大)委員 関連して。今の給与の問題でお尋ねしますが、なるほど給与を払う組合が独立の事業をやっておるのだから、まちまちであってもこれはやむを得ないかもしれないけれども協同組合やその他の農業団体のときはそれが非常にはなはだしい。非常にはなはだしい部面をそのままにして年金制度を進めるというと、そういう給与のでこぼこあるいは不振組合等の問題がガンをなして、せっかくこの職員の待遇改善のために、あるいはそのほか農業団体の振興のために作った年金制度が、そういう点からくずれ去るおそれがある。ですから私は、今までも農林省はそういう点においてもっと積極的にそういう問題を取り上げてやるべきだと思ったのですが、こういう点において農林省の今までの指導はあまり貧弱だった。そういうのが、今度の年金制度実施するに当って非常に問題になっておると思うのです。だかりして、今度はこの際これに対してちゃんとした方針を立ててこれを推し進めていってもらいたい。それにはたとえば中央において、あるいは県段階において、これは何もいいとは言いません、いいとは言いませんけれども、少くとも単位の組合が県の経済連あるいは信連につながる。信連や経済連は全国の販連、購連あるいは中央会、中央金庫につながっていく。ところがそういう一つの系統的な力を利用して、同じ系統に働く者の待遇を向上させる一つのくさびになると思う。これは一つの手づるになると思うのです。そういう点において、末端における非常に安い賃金でもって働いておる農協の職員を、そのまま系統の人たちが見捨てるということはいけないことである。私は系統の上級機関がほかの機関よりも給与がいいとは決して言いませんけえども、それよりもっと低いところに甘んじて働いておるところの単協の職員給与に対して、みんなが関心を付って、この年金制度がスムーズにいくような方法を考えるべきだと思う。そういう点について私はいろいろ問題があると思いますが、この問題を言うと長くなりますから、この給与問題だけ申し上げておきます。  いま一つは、職員の採用の問題、やはりいい職員を採用すれば事業は伸びでいく。ところが、現在のように八千円かそこらの平均賃金しか払えない。女の子でいえば三千円ぐらい、男の子でいえば五千円や六千円という給与のところもあります。そういう給料でもってりっぱな仕事をやれといってもできっこない。りっぱな人が来っこない。長続きがしない。一年か、二年の腰かけでやめてしまう。そういう問題もありますから、職員の採用に対する基準というものは、今までは組合長さんが適当に採用したところが多いのでしょうけれども、少くとも私は給与をちゃんとすると同時に、将来の職員の採用を、ただ頼まれたから入れるということじゃなしに、一つ段階等において審査委員というものを作るとか、あるいは農業協同組合職員適格試験というようなものを通して、そういう試験を受かった者を入れるということにして、そうして職員質的向上をはかることによって、一方において給与を上昇させるということによって、両方面において努力すべきだと思うのです。そういう方面においてあなたの御意見一つ伺いたいと思うのです。
  42. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 協同組合その他の農業団体に対する農林省の従来の指導が不徹底であった。その結果職員の待遇等についてもまずい点がある、こういう点は率直に認めなければいけないと思います。これは終戦後のいろいろな混乱、新しい農地改革以降の農村社会経済状況から、新しくできた団体が、これは全部といっても共済組合と土地改良区を除きまして、協同組合には自主的な民主的な団体でありまして、アメリカ占領軍の指導からいえば行政府は指導をするのでなくして情報を提供するのだ。一切の団体の行為は団体の自主的活動にまかすべきだ、こういう声が非常に強くありましたから、そういうふうな結果が出てきている。これはある程度やむを得ないと思います。しかし協同組合法施行以来十数年を経ておりまして、一つの新しい転機に来ておるのじゃないかと思います。従って過去の実情をもとにしまして一体どうしたらいいか、こういうことで昭和二十九年の改正について協同組合については中央会というものも作りまして、そこでもっと徹底した指導をやっていく、こういう制度もできております。しかしいずれにしましても団体が自主的な独立団体である。従って個々具体的な事情によって団体経済力が違うわけでありますから、そこにただいま御指摘がありましたような給与のアンバランスというものも当然できてくるのであります。しかし現状でいいかということになれば、現状ではよくないと私は考えております。従ってこの年金制度あるいは整備特別措置法とか、あるいはいろいろな方向でもっと虚心たんかいに団体側あるいは団体における中央会等の指導機関、行政庁、こういうものが一丸となって団体向上に努力すべきである。こういうふうな時期に到達しておると思います。これは先ほどの協同組合改正のときにも委員さん方から数々御指摘をいただきまして、速記録をもとにして整備をいたしておりまして、新しくそれらを取り上げてやっていきたいと思います。ただお話がありました、職員協同組合で採用する場合には、一定の資格のある者は一定の給与でなければならない——こういうことを今すぐやれと申されても、これは組合言の状況がよくなければ雇わない。雇う経済能力がないわけでありますから。この年金制度を施行した後に当然そういう問題ははっきり解明しなければいかぬのでありまして、今後の問題というふうに私は考えております。
  43. 神田大作

    神田(大)委員 そういう点について農林省が全知能を結集して、一つこの年金制度ができるのを契機として、職員の質が上ると同時に給与も上る、そうして人間らしい生活ができるように、そういう方法をとってもらいたい。実際において末端にいくと全く気の毒な状態である。それからいま一つ、あなたは、努力が足らぬが占領軍のあれでやむを得なかったというようなことを言われましたが、そういうこともあったろうと思います。しかしながら施策の上において農林省関係の補助金にいたしましても、予算措置において、私はやはりそういう面において年々少くなってきていると思うんですが、そういう点は私は口では強化する、振興する、指導すると言いながら、実質面において低下している点があると思う。こういう点は一つ反省をして、農業団体を維持育成する上において必要なる予算的措置を果敢にとって、そうして農業協同組合その他の農業団体を振興させるという方向へ行ってもらいたいということを要望しておきます。関連でございますからこれで終ります。
  44. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 農業団体に対する補助金は、整備特別措置法とか、相当膨大な金がかかっているわけです。それはここ二、三年実施されておるのでありますが、しかしそれでは団体自身幾らやろうとしても、団体員の強化がなければ効果がないわけでありますから、その団体員を強化することについて、これは協同組合あるいは団体だけの問題でなしに、日本農業全体の問題に関連するわけでありますが、そういう点にもさらに一段の努力をしなければならないと思います。ただ何といいますか、市村町その他の公共団体側は相当果敢に市町村の合併等ができておりますが、団体側は自主団体であるから、やりたくてもいろいろな問題でできない、こういうような問題が残っております。こういう問題をやはり片つけないと経済力もできませんから、御指摘のように年金制度ができますと、いやおうなしにそういう問題は前面に押し出されますから、これを取り上げて果敢に実施していきたい、かように考えます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 具体的な問題に入りますが、たとえば給与の範囲——職員給与といっても基本給とか手当とかいろいろあるんですが、この法律はどの程度のことを言っているんですか。
  46. 河野恒雄

    ○河野説明員 給与につきましては私から答弁申し上げます。法律の十二条に「この法律において「給与」とは、給料、俸給、賃金、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、勤務の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月をこえる期間ごとに受けるものを含まない。」ということにいたしております。これは先ほどからいろいろ議論がございますように、農協等の団体における給与につきましては、基準と申しますか、公務員のような一定の組織のもとにおける給与という体系ができておりませんので、実質的に受けるものを前提といたしまして、かような書き方をいたしております。従いまして「臨時に受けるもの」ないしは「三月をこえる期間ごとに受けるもの」、これもいわば臨時的なものでございますので、かようなものについては除いて、通常受けるものを一応給与という考え方で整理をするということにいたしております。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は個々の組合員の掛金算定の基礎になるんですから明確にしてもらわぬといかぬと思います。組合の場合ですから全国一律の給与体系ではないんですが、たとえば家族手当というのがあるんです。それから期末手当というのが——公務員や何かは夏期手当と年末手当に分れておるんですが、とにかく期末手当というものは団体でも出しておるんです。それから薪炭手当とか石炭手当、これは当然支給しているわけです。それから、たとえば決算手当——毎年決算やなんかで特に繁忙をきわめておる場合の手当、こういう通例支給されておる手当は臨時的というものにはならないと思うのですが、これらの見解はどうなっているんですか。
  48. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの点でございますが、われわれの手元では一応検討いたしておるのでございまして、大体家族手当、薪炭手当等はこの給与の中に入れる考え方でおります。ただし期末手当あるいは決算等の繁忙期における若干の手当のようなものは、臨時的収入というふうに考えられますので、一応そういう考え方で整理をいたしたいと考えております。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 今河野さんの言われたのは、家族手弱と薪炭手当と石炭手当ですね。それで期末手当を落すのはどういうわけですか。これは組合の毎年の収支計画を見ても、これらのものは当然基本的な給与の中に入っているんですよ。これは臨時的な、もうかったから出すというものではなくて、給与一つの体系の中に入っていると思うのですが、これが入っておらぬということになると大へんな問題になると思うんです。
  50. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの点でございますが、実はこれは社会保険その他の例を一応調べておるのでございますが、それらの例によりますと一応除かれておりますので、大体そういう例にならってしかるべきではないか、かように考えております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 しかし全国で一番給料が安過ぎるということは、厚生大臣も立証しているのですから、給与の中から期末手当を落すということになると、なお水準が低下すると思う。これは全国的にも、どこの不振組合であっても、期末手当はおそらく出しておると思う。これはただ臨時的とか三カ月をこえるというものとは全く性格が違うと思う。一歩譲って決算手当は別にしても、この点だけは審議を進める上において態度を明確にしてもらいたい。
  52. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいまの説明は、現状の制度をもとにして今検討中のものを御説明申し上げたのであります、ここに法律に書いております臨時的なものの範囲の認定の問題になります。従ってたとえば公務員のように期末に一・五カ月分を払うとか、そういう問題がきまってくればそれは当然臨時的でなくなりますが、今の制度でやっておるのは、いわゆるボーナス、期末手当、そういうものは臨時的なものと称しておるわけであります。そういうものをはずすというわけであります。従ってこれは私の考えでは、どうしても組合でそういう臨時的なものか、経常的なものかという何かの準則を作ってもらわなければいかぬことになると思います。たとえば家族手当なり薪炭手当というようなものは明らかでありますけれども、今の期末手当をこれだけは保証する、あるいはそれ以下になる場合もあるかもしれませんけれども、しかしこれまでは必ずやるのだということになれば、そのものはいわゆる臨時的なものではない、こういうふうな取扱いをやらなければいかぬことになるだろうと思いますが、その点は御指摘のように、給与体系でそういう準則が各組合にできていないと思いますから、そういうものを作ってやっていきたい、こういうふうに考えます。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 期末手当は、これは官公庁ともちろん別ですが、期末手当というのは、一般の企業体等においても基本給与の中に入っておるのですよ。だから農林漁業団体の場合は全国一律に期末手当が二カ月とか二・五カ月ということにはなっていないとしても、とにかく期末手書は基本給与の中に入っているということは通念です。だからそれをあなた今落してしまうというのは局長らしくないじゃないですか。あなただって期末手当というものに対しては、これは当然基本給与だということを理解しておるでしょう。
  54. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは給料、俸給、賃金、手当、賞与、その他いかなる名称を問わず、そういう基本的なものは入れるという前提でありまして、今期末手当、期末手当とこちらで説明しているのは、臨時的な期末手当として会社でもうかったら出す、そういうものは入らぬ、こういうわけであります。ところが必ずしも協同組合では全部この本文のいわゆる手当なり賞与だといってしまっていいのか、あるいは臨時的なものがあるのか、その区別をこちらで行政的に通牒なら通牒を出して仕分けしてもらったらいいのではないかと私は考えるのであります。ですから一般的に期末手当というのは当然この本文の中の手当、賞与の中に入るわけでありますから、それは問題ないわけであります。それ以上のいわゆる臨時手当、そういうものは入らない、こういうことでありますから、基本的なものは当然入ると思います。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 大体わかったのですが、ただ名称は必ずしも団体の力は期末手当と言っておらぬのです。大体二回に分けて年末手当と夏季手当として出す場合もあるし、あるいは決算手当というような意味で出す場合もありますから、こういうものをいわゆる期末手当であるというふうに解釈していくとすればこれは問題ないわけですが、なおこれは法案の採決までもう一回あとで間違いのないように明日でもいいですから明確にしていただきたいと思うわけです。  その次にお尋ねしたい点は、この法案の中にも各所に政令の定むるところに従いというような字句が大分ありますが、政令等の用意されたものの内容。なお聞くところによると農林、大蔵当局間において覚書が交換されておるというふうに私は承知しておるわけです。おそらくそれは掛金率の問題であるとか、国の補助の問題であるとか、あるいは厚生年金特別会計からの本制度への交付金の問題とか、そういうものは政令とか、覚書の内容に示されておると思うのですが、この際それらの点を具体的にお示し願いたいと思います。
  56. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 大蔵省との了解事項というのはあります。それは、この制度による退職給付についてはその国庫補助を行うに当っては、この制度の成立の経緯にかんがみて、厚生年金の場合と同様六十才以上の受給者に限ることを原則とするが、他の共済年金制度との均衡も考慮して、暫定的には五十五才から六十才までの受給者についても国庫補助の対象とする。すなわち退職平金給付の年限を国民年金制度の確立まではペンデイングとして五十五才から支給する、こういうことが第一点であります。  それから第二点は、法律の第六十二条であります。給付に要する費用の百分の十五に相当する額を補助する、こういうことになっております。その「給付に要する費用(政令で定めるところにより算出した額)を除く。」の「政令で定めるところにより算出した額」とは何かということでありますが、これは五十五才から六十才までの受給者に対する給付に要する費用の額から、給付に要する費用の総額に整理資源率の割合を乗じて算出した額を除く、こういうことであります。その意味はこういうことであります。厚生年金の積み立てが完全積み立てになっておりませんから、財源率の計算の場合に、いわゆる整理資源率というものが一四・七四%でありますが、そのものには百分の十五の補給を考えない。すなわち掛金率は七八%でありますから、それから一四・七四%を引きますと約六三%、六三%に対する百分の十五の補給を行うという意味で、そういうことを申し合せておるのであります。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大分法律と比べるとインチキが出てくるのです。どうですか。法律では五十五才が給付開始の年令になっているでしよう。今局長の言われたところによると、原則は六十才以上ですね。暫定的には五十五才ということになると、そういうことは法律に何もうたってないじゃないですか。これは問題だと思うのです。五十五才から開始されて、原則六十才ということになると、これは組合員の受給額が結局低下しますから、余命率というものは下る。こういうものは覚書としてはけしからぬ内容じゃないですか。
  58. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは国庫補助率の問題でありまして、給付の開始はあくまでも五十五であります。五十五から六十の間は、補助の対象にしないことを原則とする。しかし、全体の国民年金制度ができたときに、それはあらためて相談しよう、こういうことで、これはあくまでも国庫補助率の問題でありまして、年金開始の点は、御承知通りであります。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃないのです。年金開始は五十五才となっていますが、補助の対象になる面が少くなって、実質的に一五%にならないのじゃないですか。大体一三%くらいしか国庫補助が出ない。法律では一五%になっているけれども、中身がだいぶ狂ってくると思うのです。それから整理資源率の問題にしても、果して一四・七四%というのは妥当なものであるかどうかということも不明確なんですが、これは専門的な分野だから局長じやなくてもけっこうですから、もう少しこの点は、整理資源率とか、財源率とか、特別会計から移行される場合の算定の基礎とか、そういう問題はやはり制度運用上大事な問題になると思いますので、できるだけ具体的に説明してもらいたい。
  60. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 どれだけの補給をするかということは、程度の問題でありまして、どこでなければならぬという問題はないのであります。それから厚生年金積立からの移管につきましても、今度の法律では私学あるいは地方公共団体に比べますと格段の改善がなされているのであります。たしか市町村の場合は脱退と同じに扱われておるのであります。そういうのに比べると非常に改善されております。なお詳しくは課長の力から説明いたさせます。
  61. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの御質問の点でございますが、お手元に出ております資料の二ページをごらんいただきたいと思います。ここに農林漁業団体職員共済組合所要財源率というのがございます。この表の一番左の方の上から、予定利率五・五%と書いてあります。これは御承知通りこの資金の運用をどの程度に見るかということでございまして、大体国債の公称利回りをとって五分五厘にいたしております。これは各組合によって若干相違はございますが、当組合においては五分五厘ということにしております。  その次の段は、退職年金支給開始年令五十五才とありますが、これはその通りであります。これを前提として退職一時金、遺族一時金、障害一時金、退職年金障害年金、遺族年金、これらの点についてこの法律に基く給付額どのくらいなるであろうかということを、アクチュアリーな計算によって出したわけであります。この出し方は、たとえば脱退残存表等につきましては、脱退率と申しますか、これは昭和二十七年から三十年までの四年間の農協の実績を前提といたしまして計算したものでございます。死亡率につきましては、四ページをごらんいただきますとわかりますが、国民生命表の男子死亡率の二割減というのをとっております。これはなぜそういうふうにしたかと申しますと、生命表は健康な者も弱い者も全部入っておるのでありますが、大体就職して仕事についている者は悪い者が少いので一応二割減という比率をとっているのでございます。障害率につきましては、大体各組合の実態等を調べましたがなかなか正確なものがございませんで、一応国鉄の癈疾率を採用いたしております。ほかに資料がございませんのでやむを得ずこの資料をとっております。給料指数等につきましては、昭和二十七年から三十年までの農協の実績を中心にいたしまして、勤続年数によって上昇率を若干変えております。早い時期におきましては、五%の上昇、漸次四、三、二、一と上昇率は減退するという前提で給料指数の上昇を考えております。そういうようなことを前提にいたしまして退職一時金、遺族一時金その他のものが一人当りどのくらいの内容になるであろうかという内容の千分率を出したものが一番左の財源率の計算の基礎になるわけであります。先ほど局長から説明がありましたように、国庫補助一五%というものは、この小計の通り千分の七二を中心にして計算をされております。それから整理資源を一四%と見たこの整理資源とは何かということでありますが、これは厚生年金の被保険者期間を通算することになっておりますので、従来の掛金率が低い給付を予定されましてきまっておりますために、責任準備金の不足が生ずるわけであります。この不足の責任準備金を一度に補てんすることは技術上不可能でございますので、未来永遠にわたって償却をしていくという考え方で計算いたしますと、大体元本にはほとんど影響がありませんで、利息相当分を収入していくことになります。それを一応整理資源と申しておりますが、ここに計算いたしますと、アクチュアリーの計管理によりまして約一四・七四%ということになります。その計算の基礎は右の表にございますが、責任準備金として一応必要なものが百五億。厚生年金の積み立てから移管されるものが、これは農協分だけでございますが、大体三十三億。従いまして、不足分が七十二億ということになります。給与の年額等から計算して現価率を出して、そうして結局利子相当分が幾らになるかという計算を出して、それが整理資源として出てくるわけであります。そういうふうな形で一応この財源率を出しておりますので、当分の間の掛金としては大体千分の七六程度になるという見通しを立てております。これは過去の実績をもとにした推定でございますので、実施した暁においては当然修正をいたさなればならぬと思います 大体各組合におきましては四、五年を単位として修正をいたすことにいたしております。従いまして当組合におきましても、実施後五年程度たてば当然実績等を勘案いたしまして修正をするということを考えておるわけでございます。  それから厚生年金からの移管の問題でございますが、それは先般局長からも御説明がありましたように、不足する責任準備金の一部移管ということでこの問題を解決いたしたいと考えておるのであります。前例によりますれば、いろいろの方式をとったようでありますが、当組合厚生年金との関係につきましては、移管をするという形で整理をいたしたいというふうに考えております。それでその移管の方式は昭和三十三年十二月現在の積立金を今までに払い込みました掛金の割合によって、農林漁業団体職員厚生年金加算加入者は約二十三万になりますが、二十三万人分を移管するということにいたしております。しかしこの計算は実際は相当の期間を要します。約四、五年を要するというふうに関係者は申しておりまするので、それでは非常に不足でありますので、とりあえずは三十四年度中に概算をもらうということにいたしております。この計算は、概算につきましては三十三年の十二月三十一日現在の積立金を基準にいたしまして、それを総人員中に占めます農林漁業団体の人員と給与、この比率で分類をして概算額をもらうということにいたしております。大体大ざっばに計算をいたしますと、約四十億前後になるのではないかというふうに考えております。
  62. 中村寅太

    中村委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時十九分開議
  63. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林漁業団体職員共済組合法案を議題といたし、質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 午前中にお尋ねした国の補助の関係なんですが、局長の答弁によると、六十才と五十五才との五カ年間の給付分に対しては、政府は百分の十五の補助対象にしないという点と、それから整理資源率分に対しても補助の対象外にするということにしてあるわけですね。この点は法律では百分の十五を補助するということが建前になっておりますが、実質的にはだいぶ補助率が下るということに結局なるわけですが、この内容を午前中も一応伺ったのでありますが、どれくらいにこれが低下するか。それからまたこの二点を補助の対象から除外しなければならぬという具体的な理由、これをもう一度御説明願いたいと思います。
  65. 尾中悟

    ○尾中説明員 六十二条にございますように、給付に要する費用の中で、政令で定めるものを除きまして、その残額の百分の十五ということになっております。その内容を申し上げますと、まず第一点は整理資源相当分は除外するということでございます。整理資源と称しますのは、組合設立のときに厚生年金等の通算に関連いたしまして生ずる料率になるわけでございます。これは理想的に申しますと、整理資源というものをゼロにするか、あるいは他の市町村、国家公務員共済組合等でとっておりますように、国なり市町村負担する、こういう建前にいたしますれば、団体なり、あるいはその職員負担にはならないわけでございますけれども農林漁業団体の場合には雇用主でございます団体がそれを全部負担するということは、負担能力の関係もございまして、不可能な現状にあるわけでございます。従いまして組合員団体負担せざるを得ない、そういった性格の整理資源につきましては、政府として補助の対象にはできないというのが財務当局の一貫した考え方でございます。従いまして今度の場合には整理資源相当分を除外いたしまして、その残余のものについて百分の十五の政府補助を行うということに決定されておるのでございます。  それから第二点の問題でございますが、大蔵省と農林省との間の話し合いによりまして、法律年金の支給開始時期は五十五才ということになっておりますが、国庫補助の対象にいたしますものについては、さしあたっては五十五才から給付される年金について国庫補助の対象にするということで決定しておるわけでございます。しかしながら将来他の共済組合におきまして、あるいは厚生年金国民年金等におきましては年金の支給開始時期が五十五才以上の年令に改正されるというような事態が出た場合、現在厚生年金は六十才以上の者に年金を出すことになっておりますし、他の共済組合、国家公務員なり市町村等におきましては五十才から年金を支給するということになっておりますが、そういうものにつきまして、五十五才以上になった場合に初めて年金を支給するというふうな一般的情勢になりました場合には、共済組合の場合におきまして五十五から支給はするけれども国庫補助の対象についてはそれを対象にしない、こういう経緯になっておるのでございます。率の点で申しますと、前段の整理資源相当分を除いて百分の十五ということになりますと、給付相当額に対する百分の十五に対しまして約百分の十二・一くらい、こういう数字になろうかと思います。  それから、五十五才から六十才の間を国庫補助の対象にしないという点につきましては、これは将来給付が発生する場合のヒントと申しますか、それを推定しなければなりませんので、これは御承知のように、あと少くとも六年掛金を新組合においてかけませんと年金の受給資格は出ないということにもなりますので、将来の計算の結果いかんによって、あるいはその時期によって率は変動して参るということになろうかと思います。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 補助の対象になる給付年令の問題は、午前中の局長の答弁と違うのですが、局長は原則を六十才にして、暫定的には五十五才ということにしてあるけれども、とにかく政令の内容はこの五十五才と六十才の年令の差に相当する分の給付分については、これは補助の対象から除外するのだという説明をしておるのですよ。局長は今の課長の答弁とちょっと違うのです。
  67. 尾中悟

    ○尾中説明員 きょう午前中局長が説明したことと変っておりません。と申しますのは、現状におきましてはさしあたり五十五才からの者についても補助の対象にする。従いまして原則は六十才以上の者に対して給付する場合に補助の対象とするという申し合せになっておりますが、しかし当分の問先ほど申しましたような問題が将来出た場合には、その開始年令につきまして、国庫補助の対象にするかどうかということを検討した上で六十才以上ということにする。さしあたっては五十五才から国庫補助の対象にする、こういうことでございますから、局長から申しましたことと同じ内容のことを敷衍して申し上げたのでございます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことになるとますます問題になると思うのですけれども法律とまた違ったことを農林、大蔵の覚書できめるというようなことは当を得ないのじゃないですか。原則がもし六十才であるとすれば、法律で明確にそれをうたって、ただし書きか何かで、ただし暫定的に五十五才からの分を当分の間は補助対象にするというなら話はわかるけれども、全然そういうことがうたわれておらなくて、両当局だけの覚書で、将来これを六十才に改めるというようなことは、法律の精神とか内容のどこにもうたわれていないことではないですか。どうですか。
  69. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 今お尋ねの点は、ざっくばらんにお話をいたしますが、立案当時、実は給付開始年令を六十才以上にしようという財務当局の強い話がありました。しかしわれわれの方としては五十五才が適当だ、こういう主張をしたのであります。そこでいきさつをお話しするのですが、それでは五十五才以上六十才に至るまでの間は国庫補助の対象にはしないという意見が出ておる、そういう不都合なことはない、こういうことで結局この法案のように五十五才以上ということにいたしまして、五十五才以上に対しては国庫補助の対象とするということになったのであります。しかし先ほど来課長あるいは局長から御説明いたしておりますように、将来の問題でありまして、他の類似の共済年金等の問題が六十才以上ということに改まった場合には、この法律を統一する意味においてそういうふうにいたしたい、こういうことであります。将来の問題でそうなるかどうかわかりませんが、そういうことになれは法律の統一上やむを得ないだろう、こういう意味の覚書を交換しております。法律といたしましてはそういうことは例外といいますか、この法律通りに、改正になるまでは通すという建前でありますから御了解願いたいと思います。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 それでありますと、政令には別に覚書の内容を書くわけではないのですね。
  71. 尾中悟

    ○尾中説明員 政令には原則として六十才からの給付について補助の対象とするけれども、当分の間は五十五才から給付する者について国庫補助の対象にする、こういう書き方になろうかと思います。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。瀬戸山さんの言ったのなら話はわかるのですが……。政務次管にもう一回この点を確認したいですね。
  73. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ざっくばらんの内輪話で、これはうそも隠しもいたしません、こういういきさつがありますということで、まあわれわれとしてはこの主張を通しまして五十五才以上をこの制度に取り入れて、先ほど申しましたように他の法令の関係等が改正になる場合に、それと調整をとる場合は六十才以上にいたす、こういうことになるわけであります。先ほど申し上げましたように、その間五十五才以上六十才までの分は、この農業団体関係だけにそうするのであれば、その間の補助の対象としないといういきさつがありましたけれども、それは先ほど申し上げましたように、適当でないという主張が通りまして、その間も国庫補助の対象にする、しかし将来、先ほど申し上げましたように他の法令が改正になれば、これも軌を一にしようではないか、こういうことでありまして、ずっと将来まで続くわけであります。しかしそういう事態が起れば、今申し上げましたように、六十才以上から給付をする、こういうふうになっておるわけであります。どうか御了解願いたいと思います。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 大体わかりました。それでは他のこれと同種の事業が、たとえば現在五十才とか、五十五才とかいろいろありますが、そういうのが全体に統一されて、六十才なら六十才から給付開始というような事態になった場合は、この制度もそれにならうことも将来はあり得る、それまでの間は五十五才というものは、原則であるということには変りえないのですね。
  75. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 もちろんこの法律通りでありますから、さように考えておる次第であります。今申し上げましたようなことが問題になりましたのは、御承知通り社会保障制度について、それぞれ個々別々にこういう制度を作るということについては、相当異論があるわけであります。国民全体について統一した社会保障制度を作るべきだというのが相当の世論でありまして、理論的には私どももそれが正論であると思います。しかしながら現実の問題として、そういう理想論によって処理するということが、現実問題としてはなかなか現実に沿わない点がある、特に農林漁業団体のこういう役職員につきましては、すみやかにこういう制度を作らなければならない、こう私も考えておりますし、そういう強い現実の必要性もあるわけであります。しかし将来統一するというような線が出ましたとき、必ずしも現在あります各法律を一本にするということもなかなか困難であろうという事態があるわけであります。そういう場合に、法律自体は一本にならなくても、やはり制度の趣旨として一本にする必要があるであろう、こういうことを想定いたしまして、今このようなことを話し合いをしておる、こういうことでありますから、どうか御了解を願います。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの点は次官の答弁で了承いたしました。  もう一点は整理資源相当分を補助対象から除く、これは金額にしておよそどのくらいになるのですか。
  77. 尾中悟

    ○尾中説明員 きょう午前中に御説明いたしましたように、整理資源の総金額は、農協分だけの資料でありますが、組合発足当時に責任準備金の不足額が約百五億円という推定をしております。厚生年金から移管されますものが、農協関係だけで約三十三億七千万ということになっておりますので、不足責任準備金としましては七十二億円ということになるわけでございます。これを給与年額で現価率とを勘案いたしまして、整理資源率を出しますと、掛金に対しまして、千分の一四・七四ということになるわけでございます。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから千分の一四・七が金額にすると、およそどのくらいになるのですか、その金額の部面が結局補助対象から除かれるということになるでしょう。
  79. 尾中悟

    ○尾中説明員 支出額に対しまして、年間支出額は初年度で約九億というふうに想定しております。従いましてそのうち七十八分の十五をかけましたものが、整理資源に相当する金額ということになりますので、金額にいたしまして、約二千三百万円程度額が減少するということになります。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 二千三百万ですか。そんな少い数字じゃないでしょう。とにかく。パーセントで百分の三ぐらい減るのですからね。そんな程度ですか。
  81. 尾中悟

    ○尾中説明員 国庫補助額が支出が約九億に対しまして一億一千五百万程度だと推定しておりますので、今この整理資源を含めない場合の国庫補助の減少額というのは、先ほど申し上げましたような金額でございます。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、国庫補助の減少額でなくして、その減少するもとであるところの、その整理資源の率の相当額というのは、果して何億ぐらいになるかということです。
  83. 尾中悟

    ○尾中説明員 そのもとは、先ほど申し上げましたように、不足責任準備金といたしまして、現在農協分について計算しております七十二億というものが埋まらないために、それに見合う金利相当分を、今後掛金の形で団体なりあるいは職員の方から出していくというのが整理資源率になるわけでございますので、もとの金額ということになりますと、農協分だけで計算いたしますと、約七十二億程度、こういうことになっております。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 その七十二億が対象にならぬということですか。そうじゃないでしょう。その金利相当額が対象にならないというのではないですか。
  85. 尾中悟

    ○尾中説明員 この七十二億の金利相当額を毎年掛金として出すものでございますが、その掛金率に相当するものが支出金に対しましてその整理資源相当分のものを差っ引いたものが国庫補助の対象になるということでございます。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうやり方がこれは妥当かどうかということですね。結局こういうことになれば掛金が引いた部分だけ増すということになるでしょう。
  87. 尾中悟

    ○尾中説明員 さようでございます。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 午前中も言った通り共済組合自身も経営が非常に貧弱である、そういう貧弱な経営実態の中で年金制度をだんだん充実していくということになると、これは容易ならぬことですよ。ですからそれを健全化するために政府が百分の十五の補助を行うということになるのですね。ですからねらいが団体及び組合員負担の軽減というところにあるとすれば、そういうものをことさら差し引いた残りの分だけということは少しけちくさいように思うのですが、どうですか、政務次官。
  89. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 芳賀委員はいきさつをよく御承知の上で聞かれていると思います。それは国家財政あるいは他のこういう諸制度との関係で支障がなければ、できるだけ国庫補助率もふやして、たとえば今お話のようなけちくさい整理資源率に対する国庫補助の分は除くなどということは、必ずしも万全な対策だとは、正直なところ考えておりません。しかしながら法案立案の過程からいいまして、そう理想的なものばかりもできまいというところで、そういう点が出てきている、こういうふうに一つ御了解を願いたいと思います。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 ただ問題は整理資源率を対象から除外するということになると、組合の健全な運営とか組合員負担の軽減上適正な運営が行われないような不安も出てくるんです。午前中にも言った通り、不振組合言なんかの場合、掛金の徴収等については国税徴収法等号によってこれを行うということになっているんですが、実際能力のない組合の場合には相当困難を来たすことも予測できるわけです。だから整理資源率の対象除外というものは、金額は二千七百万くらいとしてもこれは大事な点だと思うんですよ。このくらいな点は何とか農林省が少しがんばれば、大蔵省との覚書なんか書かなくてもよかったんじゃないですか。
  91. 河野恒雄

    ○河野説明員 お尋ねの点につきましては、私どももさような点についていろいろ大蔵当局と議論をいたしたのでございますが、その間におきまして、国庫補助につきましては厚生年金等の補助率一五%というようなものを一応前権にして大蔵当局としても考えるということになりまして、その間に厚生年金に対しましてはかような整理資源率等に対する分はございませんので、一応除くとこいうことになったわけでございます。しかしながらこの整理資源率の中にはこの厚生年金自体における責任準備金の積み不足というものもございますので、さような点について将来何らかの措置をいたす場合には、それに準じてその補てんをしてもらうということの打ち合せもいたしておるのでございます。従いまして、われわれといたしましては不満ではございましたが、しかしこの辺でやむを得なかったということになったのでございます。さような事情でございますので御了承いただきたいと思います。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 前例はどうなっていますか。たとえば私学の共済とか市町村共済組合も、やはり厚生年金制度から特別法で分離して現在行われておるわけですから、そういう前例はあると思いますね。私学とか市町村の共済の方はやはりこういう整理資源率というものは補助の対象から除外されておるんですか。
  93. 河野恒雄

    ○河野説明員 前例といたしましては私学がございますが、今のお話の私学については、一応整理資源も含まれて補助の対象になっております。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 市町村はどうですか。
  95. 河野恒雄

    ○河野説明員 市町村につきましては国庫補助の関係はございません。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ先に生まれた私学が除外されていなくて、あとに生まれてくるこれが除外になるというのは変じゃないですか。政府としても取扱いが全く平等を得ないということになるんですね。これはどういうところに理由があるんですか。短期給付事業も切られておるし、国庫補助の場合においても実質百分の十五ではない。これはまことにままっ子扱いのようなことで、この法律案は生まれてくるわけですね。何も最終便だから特別に扱わなければならぬということはないと思います。その辺はどうですか。
  97. 河野恒雄

    ○河野説明員 お話の点につきましては、われわれといたしましてもいろいろ検討いたしたのでございますが、将来さような点についてある程度の手直しは大蔵省としても他のものとの措置に関連いたしましてするというふうな了解も取りつけておりまするので、やむを得ずこの辺でいわば妥協したという格好になったのでございます。従いまして将来さような点につきましては、できるだけ十分な措置がとれるように努力いたしたいと思っております。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は結局政令にまかせるということになっておりますが、この点を政令にうたう場合には、十分われわれの期待に沿ったような内容のものにされると思うので、今後の推移をわれわれは関心を持っていきたいと思いますが、これは当委員会としてもこの点をどういう政令にするかという点に対しては問題があると思うので、これは問題点として一応保留しておきます。  次にお尋ねしたいのは厚生年金特別会計から本制度に移行する算定方式の問題ですが、これもやはり相当問題があると思う。非常に不利な計算になるようにできているのですが、この点についても算定方式の内容に対してもう一度詳しく御説明を願いたいと思います。
  99. 尾中悟

    ○尾中説明員 厚生年金特別会計から本組合に対する積立金移管の方式でございますが、その考え方は、まず本年末現在におきまして厚生年金における積立金の総額を基準にいたすわけでございます。その金額は約二千五百億円程度という推定をしております。それから現在厚生年金から現に障害年金あるいは遺族年金というような年金額を支出しておりますが、それが今後継続して支出されます際に、その支出に要する財源を確保しておかなければならぬという問題があるわけでございます。従いまして現在出ております厚生年金の年間の年金の支出額というのは約六十億程度であるという推定がなされておるのでございます。これを現価に引き延ばしまして、それを財源として現在の積立金から出していくということになるわけでございます。ところが現価率で引き延ばしました額そのままを用いますと、その中には当然百分の十五の国庫補助が予定されておりますので、その百分の十五を差し引きまして残額の八五%相当額を今後どうしても支出する遺族年金障害年金の財源として厚生年金は保留しなければならぬということになるわけでございますので、本年末現在の総積立金額からその年金の現在出しております年金の財源相当分を差し引きまして、その残額に対しましてある比率をかけたものを移管するということでございます。その比率と申しますのは、分母におきましては、現在の厚生年金の被保険者が過去におきます厚生年金に支払った保険料の総額と過去において被保険者であった者の支払い保険料の総額をプラスしたものが分母になるわけでございます。分子になるのは、現在厚生年金の被保険者であって、今度来年一月一日から発足を予定されております本共済組合に入ってくる者が、過去において厚生年金に支払った保険料の総額を分子にいたしまして、その比率をかけたものをこの組合に移管す錢というのが考え方でございます。この計算方式につきましては、最後にかけます比率のうち、分子のいわゆる農林漁業団体職員が過去において支払った保険料額の計算というのが非常に期間を要するということになりますので、さしあたり三十四年度に概算払いをしてもらうということで相当額を厚生年金特別会計から本組合に移管する、こういうことになっております。その差額の調整は本計算が終了いたしました際に取り過ぎておれば返す、取り足らなければさらに追加して移算してもらう、こういう筋道になっておるのでございます。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 ところが問題は算定方針が結局分母が大きくなるようになっているでしょう。従って分子が小さくなるわけであって、結局交付金が少くなるような、そういう方式になっているじゃないですか。たとえば昭和三十三年の十二月三十一日以前に厚生年金保険の被保険者であったすべての者が支払った保険料が、積立金の分配を行う場合の算式上正分母の中に加えられることになっている、ですから私学とか、市町村共済組合関係者などすでに他の制度に転じてしまったのも入っておる。それからすでに六十才以上であって厚生年金の支給を受けており、現に掛金を納入しておらない者が支払った保険料も算定の基礎に全部入ったのがこの分母でしょう。ですからそういうことで計算をやると、結局分子が小さくなることになるのですね。実態よりながめた場合において、こういうような交付金の率の算定には、やはり理論的にも誤まりがあるのじゃないかと考えられるのです。これ以外の算定方式というのはないのですか。経理の理論上からいってどういうことになるのですか。
  101. 尾中悟

    ○尾中説明員 この移管の考え方には実はいろいろ考え方がございまして、過去の例を申し上げますと、市町村共済組合厚生年金から分離、独立いたしました際には、個々人につきまして脱退一時金という金額を計算いたしまして、それをもらって市町村共済組合というのが設立したわけでございます。ある意味からいたしますと、現在の厚生年金の掛金は不完全積立方式というのをとっておりまして、現在の年金支出額は一部を除きましてまだ大部分の者は厚生年金では発生していないわけでございます。従いまして現在とっておる掛金は遺族年金なり、あるいは障害年金、そういうものを充当するという趣旨でやっておりまして、今後膨大に出て参ります老齢年金の相当額の掛金は追加して今後の問題として残されておるわけでございます。従いましてある面から申しますと、市町村方式のように、脱退していくのだから脱退一時金だけでいいではないかという議論も出るわけでございます。そういう市町村方式で計算いたしますと、移管金の額は農林漁業団体の場合には十数億にしかならないというようなことになるわけでございます。そういう市町村方式ではやはり問題があるということで、いろいろ折衝いたしました結果、制度の分割であるという考え方をとりまして、先ほど申しましたような計算方式に基いて移管金額を計算する、こういうことにしたわけでございます。ただ御指摘の点の、分母において、過去において被保険者であり、すでに厚生年金から脱退しておっても、将来また厚生年金に復帰する可能性があるものもあるわけでございます。と申しますのは、具体的な例で申しますと、厚生年金適用事業所をやめまして今は失業している、あるいは他の共済組合組合員になっている、ところがそちらもまたやめまして、厚生年金適用事業所に復帰してくるということになって参りますと、そういう人たちは将来厚生年金に二十年間掛金をかけますと、厚生年金からも年金が出る、こういう可能性があるわけです。ただ厚生年金の被保険者であって死亡した人につきましては、これはもう厚生年金に復帰するという可能性は全然ないわけでございますけれども、生存しておる人につきましては、また何らかの事情によって厚生年金に復帰するということも考えられるわけでございます。従いましてそういう人が復帰しました場合には、これは当然厚生年金で将来障害年金あるいは老齢年金を出さざるを得ないという事態にもなるわけでございますので、若干計算上議論はございましたけれども、過去において被保険者であった者の掛け金を分母の中に入れるということで、最終的に話をつけた訳でございますが、その辺若干厳密に考えますと議論が残っておるということは事実でございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は結局厚生年金の保管分が弾力性を持つということにもなるから、これは大きな立場から見れば別にけしからぬということにならぬかもしれないが、問題は、厚生年金からの通算で給付を受ける人たちは結局普通の人たちより支給率が減るでしよう。ですから厚生年金からの交付金の移管の内容によっては、それとの関連は当然であるわけです。厚生年金からの通算をされた組合員が給付を受ける場合には、率が逓減しているという事態に当然密接な関係があると思います。ですからそういう点に対して私は指摘をしたわけなんですが、そういう点はいかがですか。
  103. 尾中悟

    ○尾中説明員 厚生年金の通算期間につきまして、給付額の調整をやることになっておりますけれども、そういう調整をやりましても、現在予定しております厚生年金からの移管金だけでは足りないという結果、いわゆる整理資源という概念が出ているわけでございますけれども、従いまして、この額と厚生年金から移管されます額と厚生年金の通算期間に相当する将来の給付額の調整とはもちろん関係はございますけれども、直接額の多い少いによってどうこうというわけではございません。計算上は当然先ほど来申し上げましたように、移管金額が多ければ整理資源率が減るということになるわけでございます。現在は調整をしなければならぬ、なおかつ農協分だけで七十二億程度の不足準備金が出るというような現状になっておるわけでございます。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、概算払いの方式を当然とられるわけですが、これが完全に移管される時期はいつごろになりますか。
  105. 尾中悟

    ○尾中説明員 これは付則の第六条によりまして、政令によって期日を規定することになっております。現在厚生省との間に何年何月というはっきりした話し合いはついておりません。と申しますのは、現在厚生年金の方でカードの集計方式等の変更をやっておりますので、そういった事務的な関連もございまして、できるだけ早い機会に見通しをつけまして、その上で何年何月、までということを政令で確定して参りたいというふうに考えております。ただ事務的に、聞くところによりますと、やはり相当期間かかるんじゃないかということを聞いております。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでその間における、厚生年金特別会計が保管しておるわけですが、特別会計の方で運用益が当然生まれるわけです。この運用益の配分、というのはどういうふうに処理されるのですか。
  107. 尾中悟

    ○尾中説明員 もちろん移管されるまでの間の運用益につきましては、厚生年金特別会計の収入になるわけでございますが、先ほどの移管方式で申し上げましたように、三十四年度におきまして大部分の概算払いをこの組合の方に移管してもらうということになっております。その概算払いの額が本計算をやりました際に取り過ぎであるならば返さなければなりません。取り足らなければさらに追加額を移管してもらう、こういうことになるわけでございます。従ってこれは概算払いの計算方式なり、あるいはその額、あるいは本計算の場合の額によりまして、取り過ぎになればこれは共済組合の方がむしろ有利になるということも理論的には考えられるわけであります。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 取り過ぎの場合はこれは返すということになっているのでしょう。概算払いをやって取り過ぎている場合は返還するということになっているのですが、私の言うのは運用益の処理をどういうふうにやるのかということです。積立金の運用上の利益が当然出るでしょう。それは今度の共済制度の場合にどういうような関連を持たして配分を行うのですか。
  109. 尾中悟

    ○尾中説明員 運用益につきましては厚生年金特別会計から移管されるまではこれは当然向うの特別会計の収入になるということでございます。ただ附則の第六条の第四項にございますように、取り過ぎた場合には向うに精算払いのときに返すわけでございますが、その場合には、その間の運用利益はこちらの共済組合の収入になるということでございます。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 この制度ができた場合、本来だとそれは全部全面的に移管すべきですね。ところが、いろいろな計算上の問題もあって、概算払いを行っている。ですから、事後に特別会計に保管されている分の益というものは、当然こちらへ配分になってもいいと思うのです。そうじゃないですか。
  111. 尾中悟

    ○尾中説明員 取り過ぎました場合にはこちらの共済組合が利益になることもありますし、取り足らなければ、その間の差額につきましては、厚生年金特別会計の収入になる。その収支いずれが利益になるかというようなことは計算の結果でないとわからないわけでございますが、一応厚生年金特別会計の方では幾らの金利で運用しなければならぬという一定の計算方式が必ずしもできていないようなのでございます。従いまして、取り過ぎたり、取り足りなかったりというようこともございますので、一応金利面は除外いたしまして、元本額について移管の方式を規定してあるわけでございます。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 その次はこれは第五十四条に規定されていますが、この掛金ですね。これも政令によって掛金率がきまるわけですが、団体組合員負担区分は二分の一ですね。あとの掛金率は千分の七十八というふうにわれわれは承知しているのですが、その内容はどういうことになっておりますか。
  113. 尾中悟

    ○尾中説明員 これは参考資料の二ページにございますように、退職一時金その他ここに一時金なり年金を出す場合にどれだけ毎月俸給から掛金を取らなければならぬかという率を計算したわけでございます。そのいわゆる数理的に計算いたしました掛金率が全体で千分の七十二・〇二ということになっております。それから国庫補助一五%を差し引きまして、それに整理資源の千分の十四・七四を加えましたその合計額の千分の七十五・九六というのが一応なまのままの財源率になるわけでございますが、この計算の中には幾多の仮定が入っておりますので、若干の安全率約二%を見込みまして千分の七十八という掛金率を算出したわけでございます。この掛金を団体職員がそれぞれ半々負担するということになろうかと思います。そこで掛金率の決定の仕方は政令で最高額を規定いたしまして、その範囲内において定款でもって共済組合側が決定するということになるわけでございます。
  114. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの政令できめる最高額は千分の七十八ということになるわけですね。あとは組合の定款において千分の七十八以内で決定するということになるのですか。
  115. 尾中悟

    ○尾中説明員 この計算で大体最高額を千分の七十八ということに決定するようになろうかと思います。ただ問題は、この財源率計算は農協分だけを一応前提にしてやっておりますので、他の団体の要素も将来入れますと、その率はまた変ってくることが考えられるわけでございます。かりに千分の七十八という最高額が政令できまりました場合には、この計算通りで参りますと、二%の安全率しか見込んでありませんので、ほとんどそれに近い線で共済組合側は決定せざるを得ないだろうというふうに考えております。
  116. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、農協以外の団体も全体を勘案した場合当然全部そうするのだと思いますが、政令を出す場合の最高の掛金率というものは千分の七十八以上になることは絶対にないですね。以上になる場合もあるとすれば、ここで政令の根拠も明らかにしてもらわないと、法律だけ急ぐというわけにもいかない。
  117. 尾中悟

    ○尾中説明員 現在までの計算によりまして最高千分の七十八で十分だと思っております。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 それから厚生年金との通算の問題ですが、これは厚生年金から今度の共済に移行してくる人は別に問題はないのですが、たとえば農協に勤めておって今度は隣の役場へ入ったという場合もあるのですね。そういう場合には市町村共済組合というものがこれまたあるわけですが、そういう類似の共済組合間における交流といいますか、他に転じた場合の処遇というのはどういうことになるのですか。
  119. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの点はわれわれも非常に苦心をいたしたところでございます。厚生年金から共済組合に移る際に厚生省として非常に問題にいたしました点はまさにその点でございます。通算ができないという不利があるではないかということでございます。われわれもいろいろ研究いたしたのでございますが、ただいま御指摘のように、市町村なり、比較的職場の近いところで交流がありはしないかということで、われわれも市町村共済組合との交流がどういうふうになし得るかという点も一応検討いたしたのでございます。遺憾ながら過去において市町村と農協等との間でどれくらいの人間が交流されているかという実績がつかめませんでしたので、それらに基く方法はとれませんでしたが、現実には市町村におきます職員といたしましては、一方いわゆる年金に相当するものとして恩給組合によるものがあります。それから共済組合に入っているものは、事実問題といたしましては、いわゆる雇用人でございます。そうなりますと、いろいろ研究をいたしましたが、実際問題として現実雇用人との関係があるいは起るかもしれませんが、共済組合と恩給との関係は、そういう点につきましては非常に調整がむずかしいということになるわけでございます。そこで、実際問題といたしましては、さような点におきましては遺憾ながら今回の措置ではそこまで全部通算をするという措置はできかねたのでございます。しかしこの制度の中で任意継続制度というものを設けまして、さような際の工合の悪い点をできるだけ救済いたしたいということを考えております。任意継続制度と申しますのは、大体十五年在職いたしますと、あと五年で年金がつくわけであります。さような際に本人があと五年分の組合及び本人の掛金分を両方とも負担するということになりますれば、任意継続として認めるということになるという制度でございます。これによってある程度救済できるのではなかろうかというふうに考えております。各共済組合間において制度が違いますので、その間における通算問題については、厚生省においてもいろいろ研究をしておりますので、われわれもできるだけ研究を遂げて、さような工合の悪い点を将来できるだけ早い機会に改正いたすように努力をいたしたい、かように考えております。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 今お話になった、特に同一市町村の区域内における、たとえば役場と農協の間における人事交流というのはある意味で実際行われているのです。ですから恩給の方の該当にならない場合であっても、いわゆる市町村共済組合にそれが通算されるようなことになれば、またその市町村共済組合から農協の方の共済組合に通算できるというようなことになれば非常にそれはいいじゃないかとも考えられる、これは今後検討されるそうですから期待をしておきます。  もう一つ任意継続組合員制度というのは非常にいい構想だと思うのですが、厚生年金制度の始まったのは昭和十六年ですから、その当時すでに加入している人は大体今退職しても十五年には達しているわけですね、そういうことになるでしょう。
  121. 河野恒雄

    ○河野説明員 厚生年金ができたのは昭和十六年でございますが、農協等の団体職員がこれに加入いたしましたのは昭和十九年からでございます。従いまして、大体通算をいたしますので、三十九年から二十年になるわけでございますから、それ以降年金が発生する可能性が出てくるというふうに考えております。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 農協職員が十九年からというと三十二年までで約十三年、三十三年までで十四年ですね。全国的にはいろいろ事例が違いますが、農協の中には五十五才で定年制をとっているところがある。北海道なんかそういう事例が非常に多い。そうすると不本意ながら定年制でやめなければならないで、十三年ないし十四年で任意継続の資格も持てないでやめるという場合が出てくる。これは定年制というものが、現在の組合の定款や規則によってとられている場合には、本人は何ともしようがないわけです。五年間の継続期間というものがあるのですが、もう一年か二年でそれにつながれるというような人たちも、現在の団体職員の中の相当上のクラスに出てくるのじゃないか。そういう分に対して、何らかの運用上緩和規定か何かでもう一年とか二年で定年でやめなければならばならぬという人たちに対する救済措置というものは何ら考えてないですか。
  123. 河野恒雄

    ○河野説明員 お話の点はごもっともな点があろうかと思いますが、しかしどういう形にしても年限を限りますと、やはりそういう問題が出てくるのじゃなかろうかと思います。従いまして、そういうふうなめぐり合せになる方もあろうかと思いますが、これはやむを得ないもの、さように考えております。
  124. 芳賀貢

    芳賀委員 これは今後検討してもらえばいいと思うのですが、次に従来自主的にやっている団体の退職給与制度というものが全国的にあるわけです。それが今度はこの共済組合制度に全部移行するわけですから、これらの農協とか各団体が自主的に行なっておった退職給与制度というものは、これは調整していく必要が出てくる。これらの調整措置ということに対しては、農林当局としてはどのような考えを持っておられますか。
  125. 河野恒雄

    ○河野説明員 お話通り、現在自主的にさような措置をとっているところがございます。また組合的なものを作っているものもございます。従いましてさようなものについて本組合が全部引き継いではどうかというようなことも当初検討いたしたのでございます。しかしながら現在ありますものをいろいろ検討いたしてみますと、退職金的なものが多い。いわゆる年金的なものでなくて、退職金の財源を供給するとかあるいは退職金の不足分を補てんするという考え方のものが大部分でございます。従いまして年金を中心とする本組合がそれを引き継ぐということは筋から申しましても妥当ではないということで、さような点については、実は引き継ぎ措置をとらなかったわけでございます。しかしながら実際問題として、すでに過去においてさようなことが行われておりますから、将来この組合がいわゆる強制権を持って、この組合に加入するということになります、さような組合の将来の問題ということもいろいろ考えなければならないということになりますので、さような点についてはわれわれも今後さらに十分な検討をいたしたいと考えております。できますれば、この組合において可能な範囲内において、さような事務の一部をやり得ないであろうかということを実は検討いたしておりますが、できるだけ現在の組合員等が不利にならないように、いわゆる厚生的な面からもこれを考慮して参りたいと考えております。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 以上で大体大綱的な質疑を終ったのですが、なお逐条的な問題については幾多ただしたい点がありますけれども、私だけ一人でやっているわけにいきませんから、この程度にしておきますが、午前中に保留しておきました給与の範囲の問題については、明日でもけっこうですから、経済局長を通じてこの点は明らかにしてもらいたいと思います。  もう一つは、国の補助の支出について第一点の五十五才と六十才の点については政務次官の明快な御答弁でわかりましたが、あとの整理資源率を除外するという点については当然政令に書かれると思いますが、もう一度部内において検討していただいて、明日さらに政府としての態度を明らかにしていただきたいと思います。この点だけを保留しておきまして、きょうはこの程度でやめておきます。
  127. 中村寅太

    中村委員長 久保田豊君。
  128. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 まず政務次官に大ざっぱな点だけ三、四点伺いたいと思います。  この制度が今まで非常に低い給料で苦しんでおりました農協の職員身分の安定なり、経済的な安定に役立つ。従ってそれを通じて農協なり、農林漁業団体の内容がある程度改善されるであろうことは、われわれも十分期待いたします。従ってそういう面からわれわれもこの法案については賛成をするものでありますが、第一にお伺いしたいのは、今全体的に農民も含む国民年金制度実施が非常に間近に迫っておるときであります。社会保障審議会の方の国民全体を対象とする年金制度答申も近く行われる、また厚生省の方でやっておられる五人委員会の結論も近く出る。これに対して岸総理も、できれば三十四年度からこの実施を一部でも始めていきたいということを言われておるわけです。今そういう時期であります。これは前々から農林関係の役職員の間では問題になっている問題ではありますけれども、特に来年度からというと、もし岸さんの言う通りなれば実施の時期が一緒になってしまう。そういう時期に特にこの問題だけ早めて実施しなければならぬという理由が必ずしも私は明らかにならぬと思うのであります。特に農民側から見た場合に、農協関係の役職員だけは、こういうものが出ることによって非常な保障を受けてくるわけですが、では農民の方に対してそういう保障が行われているかというと、なかなかこれに対しては行われていない、こういう時期であります。もう一つは、社会保障制度審議会から農林大臣に出された答申におきましても、国民年金制度は一本化の方向にぜひ行くべきだ、それに反するような行為は原則的に反対だ、政府の考えは間違っておる、こうはっきり言っておられる、こういう時期であります。さっき厚生大臣の話を聞きますと、原則的にはそうだが、とにかく従来からのあれもあり、これに似た先例もある、かつ関係団体の役職員がみずから負担を増してもこれをやろうという非常な熱心さがある、だからまあやってもいいだろうというところで賛成をした、こういうお話です。今あなたのお話を聞いていると、厚生年金なんというのは問題に上っているけれども理想案だ、どれだけ実行できるかわからない、だからこれを早めてやるのだというような説明に受け取れるわけです。これではなかなか国民全体が納得をしまいという点と、特に今いろいろ問題になっております農民生活の安定という点から見て納得をしない、こういうふうな点が心配されるわけです。従ってわれわれとしては、そういった点を十分納得のできるような説明がぜひ必要だと思うのですが、政府提案理由を見ましてもこの点は明らかになっておらない。この中で言っておることは、農林漁業団体が非常に農民に役立っておるということと、もう一つは、農林政策を実行する一つの主体としての農林漁業団体というものを強化しなければいけない、こういう二つのことがおもな理由になっておるように思われる。この点は重ねてしつこいようですが、はっきり私は御説明をいただきたい。特に一般の国民年金制度が近く実施されようとしておるときに、もっとはっきり言いますと、岸さんはそんなことを言っているけれども、当分の間は国民年金制度というようなものはものにならない、だからこれを実施するのだというお気持かどうか、そういうふうにしかとれない。厚生省の方もいろいろ理屈を言っておるけれども、そんなことは財源その他の関係からとてもできそうもないから、まあ皆が熱心であって、ほかにも特例があるからこれをやろうというようなことなんです。こういうふうな点はどういうふうに割り切ってやられておるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  129. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 先ほども簡単でありましたがお答えいたした通りでありますけれども、理想といたしましては国民全体の年金制度を確立するということが最後の目標であると思います。そのために政府も今お話のようにどんどん準備を進めておるわけでありますが、できるだけ早くそれを実施したいという決意でやっておりますけれども、全般的にこれが直ちに昭和三十四年度から実行できるということは、なかなかそうはいかないと思っております。そこで全般的な問題からすると、今お話のように、今もある程度異論があるわけでありますけれども、そういう時代にこの農林漁業関係だけをやるのはおかしいじゃないか、こういう議論承知いたしております。そういう意見も直接聞いたことはあります。しかしながら当初提案理由にも申し上げましたように、日本の農村の中心をなしておる農協を強化しなければならないということ、これは異論がないと思うのであります。しかしながら農村自体も貧弱でありますし、従って農協も貧弱だ。農協職員はなかなか安定した地位において農村行政の中心をなすことができないというような実情も見受けられます。これをまず強化しようじゃないか、しかも今仰せの通りに、この関係者も非常な熱意を持って、掛金を出してこういう組合を作りたい、こういう熱望がありますので、これを先にやろうじゃないかということでありまして、それはどうか一つ御了解を願いたいと思います。
  130. 中村時雄

    中村(時)委員 関連して。今非常に重要な発言をされたのでありますが、農協の共済の問題に関しまして、現実にそれを取り上げて施行していきたい、それは現在その前提になっておるところの農民生活を守るということが先行しなければならない、しかしそれは十分な準備ができてないので、三十四年度実行に間に合わないのだ、しかしその準備は行なっておるのだ、こういう御発言があったわけなんです。そこでこれは非常に重要な問題なんです。一部においては、これが選挙運動に利用されるのではないか、あるいは三十億の金を使用したいがゆえにこういう方向をとっているのではないかという、いろいろな疑義が持たれておるのです。そこで私は一つ委員長にお願いをしておきたい。このような準備ができているなれば、どういう準備ができておるのかということをまず第一点にお聞きしておきたい。そのためには、現在の農林大臣の代理をしていらっしゃる石井さん、同時に総理大臣、続いて厚生大臣、その出席要求を私は求めたいと思うのです。これは非常に重要な問題でありますから、この点委員長の方にお諮りしておきたいと思いますが、委員長どうですか。
  131. 中村寅太

    中村委員長 できるだけ中村委員要求に応ずるように努力をしてみます。
  132. 中村時雄

    中村(時)委員 できるだけじゃなくして、これはほんとうなんですよ。その農協の一部の人たちというのは、それはそれなりに私はけっこうだと思うのです。しかしそれよりも大事なことは、農民自身がどうなるのだろうか、定位置にあるとはいいながら、われわれが月給を出しているのだ、しかもその人たち一つの方向の確立はやってくれるのだ、しかし実際その基礎となるところの農民には何もないじゃないかという大きな批判が出てきているのです。農林省の中において、農業協同組合部というものは部分的なものだけを取り上げておる。その中に政治家が入ってそれを何とかまとめていこうというなれば、もっと大きな視野に立たなければならぬ。その大きな視野を忘れてしまっておる。実際に聞きただしてみると——今の久保田委員でもそうなんです。聞きただしてみると、準備がに間合わないけれども準備はしておるのだ、こうおっしゃる。ところがその準備については何も言われてない。しかもそれはあすの朝じゅうに通さなければならぬなんと言っていらっしゃる。このような重大な問題をそんなに軽率に取り扱うということは、いろいろな疑義を持たれる。私はそれは真剣に言っておるのですから、よく聞いていただきたいと思うのです。そこで総理大臣もそういうふうな発言をしていらっしゃる。農林大臣もしていらっしゃる。厚生大臣もしていらっしゃる。さすれば農村に対してどういう準備があるのか、そういうことも十分聞かなくちゃならぬと私は思うのです。だから委員長もそういうただ単なる形式的な問題でなくして真剣に取り組んでみようという心構えを示されて、一つ出席要求を的確にあなたの方からお伝えを願い、どうしてもいけなかったら首になわをつけてひっぱっていらっしゃい。そのくらいやっていいと思うのですよ。これは非常に重要な問題ですから、再度要求する次第であります。
  133. 中村寅太

    中村委員長 中村委員要求通りにやりますが、ただ参議院で予算の関連等もありますので、総理と副総理と厚生大臣を三人呼ぶことが果してできるかどうかということは、非常にむずかしさがあると思いますから、できるだけ三人を呼ぶことに努力はいたしますけれども、その点は一つ中村委員もお含みの上、私の言うことを御了解願いたいと思います。
  134. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいま政務次官の御答弁は、農民を含む全体の国民年金制度については、いろいろ言っているけれども、理想論であっていつのことになるかわからぬ、準備はしているけれどもいつのことになるかわからないから、とりあえず農政の担当団体であり農民の保護団体といいますか、協、同団体であるこの農林漁業関係職員年金制度を、ここでもって共済年金制度を作りたい、こういうことに理解をするよりほかはないと思うのです。そこで私はこの農林漁業団体職員身分安定あるいは社会保障制度の一環としても、この共済組合法案は、部分的には問題がありますけれども、大体においていいと思うが、それならば農林省にぜひお聞きしたいのは、現に一カ月ないし二カ月後には、社会保障制度審議会においてもあるいは厚生省の五人委員会においても、国民全体として、その中には当然全農民を含む国民年金制度の討論あるいは立案ということが進められておる。これに対しまして農林省として今日までどれだけの調査あるいは準備、検討をされておるのか。この共済組合年金制度を主張され要望されておりまするいわゆる農林漁業団体から、私ども不幸にして農民全体を対象とするところの年金制度はかくあるべきであるという主張や陳情や要請を受けたことがないのであります。こういう点が私は非常に問題だと思う。ですから農民の方からいうと、農林団体というものはおれたちの機関ではないんだ、おれたち団体ではないんだという空気が非常に強くなってきておるのが実情です。これは私どもは非常に困ったことだと考えておる。単にこれだけの問題ではありませんが。そこで私は特に政務次官にお聞きしたいが、今まで農民全体を対象とする国民年金制度について、当然厚生省なりあるいは審議会がやっているならば、農林省としては農民の立場からこのような年金制度をしいてもらいたい、あるいは一般に対してこういう要求農民の立場からはすべきだというはっきりしたものを現に用意されていなけ、ればならぬ、これは当然な話であります。これがおありになるならば、ここにはっきりお示しをいただきたい、これを一つお伺いいたします。
  135. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 国民全対を対象といたします国民年金制度を作って生活の安定に資したいということは、これは単に農林省であるとかあるいは厚生省であるとかいう問題では考えておりません。これは私どもの党でも現在の岸内閣でも、あるいは社会党の方でも考えておられることでありまして、そういう趣旨において先ほどお話のように社会保障制度審議会などにおいて検討を願っておるのであります。農林省は農家のことを持ち出すとか、そういうことは今やっておりませんで、政府全体の問題としてやっておるということを申し上げておきます。
  136. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今のお話は納得ができない。それはなるほど国民全体を対象とするのですから政府全体としてやることは、そんなことはわかり切った話です。しかしながら今日のような経済機構下において、第一種産業でありまする農林漁業がどういうふうな地位に置かれておるかということ、またその中から年金制度をやるならば、中小企業にしてもあるいは労働者にしましても、それぞれ生活の特徴なり何なりがあるわけです。そういうものをただ単に抽象的な国民年金制度というもので割り切ることは間違いであり、これは悪平等になる。今の農民全体の生活なり経営を管掌されております農林省としては、国民年金制度を全体にしく場合におきましても、国民年金制度観点から、農民の実情はこうである、こうあってほしい、あるいはこうなくては農民の立場からいった年金制度は意味をなさぬということを、当然御調査になり御研究になり、そうして意見を反映する。そういった各面から来た意見の反映を内閣全体が総合的にとられて、国民全体の調和をはかっていかれる、これは当然な話だと思う。内閣全体でやっておりますから農林省の方としては何もやっておりませんという御答弁、これでは話にならぬ。では今の厚生省なりあるいは五人委員会なりのメンバーが、現在の農民生活の実態なりあるいは今後の農民生活、他の国民層との間の所得なり生活の内容がどう変っていくかというようなことについての的確な見通しを持っている人がおりますか、非常にりっぱな方たちではありますけれども。特にそういう点については、農林省がこの原案を出される以上は、これのもっと基本法であるべき問題について出されるのが私は当然だと思うが、今のお話では全然ない。そういうことについては無関心でありながらこの法案だけ出した、こういうふうに理解をしていいのかどうか、この点をお伺いしたい。  もう一つは、この法案法案としてとりあえず片づけて、今後農林省なりあるいは農業団体が、真剣にいわゆる国民年金制度としての農民年金制度の確立なり何なりに取っ組むという腹があるのかどうか、決心があるのかどうか。今のお話では全然ないと理解せざるを得ないが、この二点について一つはっきり御答弁いただきたいと思います。
  137. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 私の方で、国民全体を対象とする国民年金制度について政府全体として検討を加えておる、こういうことを申し上げましたところ、農林省としてはいわゆる農村と申しますか、農業者に対する問題は考えておらないというふうにお受け取りになったようでありますけれども、そういうつもりではございません。ただこの問題は御承知通りに、農業団体の役職員に関するものでありますから、農林省の所管になっておりますので、こちらで直接立案検討をいたしたという次第であります。しかしながら農村その他生活に困っておられる各位、いわゆる国民全体を対象とするような年金制度は、先ほど政府全体と申し上げましたが、その作業をするところは御承知のように厚生省であります。でありますから実際の仕事はそちらでやっておる。現在審議会等において熱心に検討を加えておるわけであります。その審議会には、御承知でありましょうが各省ともそれぞれ人を出しております。農林省としても出しておりますから、もちろん今お話のような日本の農村事情を決してゆるがせにしておるということでない、これはどうか御了解を願いたいと思います。
  138. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 厚生省の所管だから、そっちに協力する意味で農林省はこれに参画しておる、こういう程度のお話で、それ以外にはやっていないという大体のお話です。そうしますとどの程度の参画をしておるのか、どういう立場からこれに参画をしておるのか具体的にお示しをいただきたい。
  139. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 社会保障制度審議会の内容を私からここで答える材料を持っておりません。農林省が関係いたしておりますのは、先ほど申しましたように、社会保障制度審議会に各省から出ておりますので、それによって全般の問題を検討しておる、従って農林省といたしましては、農林省所管の問題について審議会に参画をしておる、こういうことでございます。内容については私はここで申し上げる材料を持っておりません。
  140. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 わかりました。要するに省全体が取り組んでやっておらないということですね。そこでお願いをしたいのは、ぜひこの問題については、農林省自体が地方的な農民を対象とする全体の制度については、たとえば所得の基準をどこに置くかということ一つをとってみても、今のように兼業農家がいろいろな形であり、むずかしいことになると、問題が山積して参りますよ。簡単にはいきませんよ。そういうこと一つをとってみても問題はたくさんあるのですから、これは少くとも農林省としては、ただお義理に社会保障制度審議会へ役員だか職員だかを出して、形だけでやっているということではなく、もう少し本気に取っ組んで、あるいは農業団体農林漁業団体も一緒になって取っ組んで、そして少くとも全体の国民年金の中で、農民要求する国民年金制度はこういう程度のものでありたいというぐらいのものは用意をして臨んでいただきたい。それが何も調査もしておりません、具体案の検討もしておりません、それは厚生省にまかしておいて、その厚生省の方に役員か何かを一応お義理で参画いたしておりますということでは、これは困ると思う。この点を要望して、次の質問に移ります。  そこで今度のこの農林漁業団体共済年金制度、これはけっこうであります。私ども賛成でありますが、これと今後行わるべき農民全体の年金制度との関連については御検討になっておるのかおらないのか。これをもっとはっきり言いますと、今の共済組合制度を見ますと、国家財政その他の観点からいって、これと同じようなものが農民に実行できるかということはなかなか困難だろうと思います。そこでこれを何かの特権的な特別のいい給与を受けるような態勢を考えておられるのかどうなのか。農業団体というのはこれは単に使用者じゃありません。御承知通り基本的にいえば、農民の大多数はこういう団体に働いている役職員と同じように、勤労者であります。実質においては勤労者の団体が勤労者を使用しているという格好です。ですから普通の公共企業体その他とは内容が違ってくる。そういう立場ででき得れば農林漁業団体の役職員が受ける将来の年金的な保障というものと、農民が受ける将来の国民年金的な保障というものは、なるべくバランスのとれたものであってほしいと私は思う。しかし必ずしも斉一でなければならぬという理屈はありません。ありませんがこれらの関連について御検討の上これらの案を出されたのかどうか。さっきのお話で、農民の方の国民年金制度は実は研究しておりませんということになると、私は本法案についてもほとんどそれらの関連については御検討になっておらないように思いますが、この点はどうですか。
  141. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 将来国民年金制度を作りますときに今農民だけのものを作るかどうかということは、これは審議会は全般の問題として検討を加えて案を立てなくちゃならないのです。直ちにただいま御審議願っております農林漁業団体職員に対する共済組合と同じようなものができるとは現在は想像いたしておりません。それは国家財政の問題もありましょうし、あるいは醵出の問題もありますから、これと同一のものができるとは思いませんけれども、先ほどほかの年金制度の問題もありましたように、案ができたときにできるだけ調整をとる、こういうふうに考えておるわけであります。
  142. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これは将来の問題ですが、今の点でも農林漁業団体の持つ特質をもう一ぺん強く省察をされまして、農漁民年金制度とこういう団体職員制度とが必ずしも斉一でなくてもいいと思います。ただ何らか脈絡一貫するような、生きた血の通うような制度を打ち立てるようお考えいただいて、今後農林漁民国民年金制度についての研究と同時にそれをさらにもう一歩研究していただきたいということを要望いたします。  それから今度この法案の直接の問題に入って参りますが、ここで大体さっきのお話で約百億が出てくる、三十何億が移管をされる、こういうことですね。これは五分五厘で計算されておる。これもちょっとお話が出ましたが、これについては具体的にどのようにお考えになっておるのか。どういう方法で、この金利なり五分五厘というものを見てくるのか。この管理のやり方は農林大臣が規制することになろうと思いますが、これについて具体的にどういうようにお考えになっておりますか。この管理のやり方について私たちの理想を言いますと、この百何億の基金なり何なりの運用管理は、でき得れば農民の生産力の向上なり農業の生産力向上と見合ったような方向に持っていっていただきたい。今度の例のたな上げ資金の六十五億みたいに、資金運用部にまかせておいて、資本家にやってしまってその利子だけ何億かもらって、それでもって農民の方に少しばかり潤そうということでは非常に困ると思うのであります。相当大きな金額になるので、こういう点について特別の配慮をされて研究されておるのか。あるいはすでにきまった点があればお示しをいただきたい。そういうことは非常にむずかしいことではありますけれども、その点について何らか特別の考慮を払う必要はないかどうか。この点について具体的にどのように考えられておるか、お聞きいたしたい。
  143. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの御質問の点でございますが、非常に重要な問題であろうかと思います。その点につきましては、かねて私どももいろいろ検討をいたしておるのでございます。お手元にございます法律案の七十条でございますが、この金が一定のワク以上に勝手に使われることを防ぎたいという趣旨から七十条に規定をいたしております。この七十条の第一項は、農業協同組合あるいは水産業協同組合等のいわゆる信連、漁信連、農林中央金庫あるいは銀行といったところにも預金することができる。しかし銀行または信託会社への金銭信託、国債、地方債、その他農林省令で定める有価証券の取得、不動産の取得というふうに運用の方法を相当限定いたしております。これはやはりただいま御質問がありました点について、積立金の運用をできるだけ厳正にかつ能率的にやりたいということが趣旨でございます。ただいまお話がございましたように、団体ないしは職員から醵出されました金が積立金になるわけでありますから、できるだけそれが地方に還元するということも望ましいわけでございます。従いましてここに書いてありますように、信連なり中金なりに預金して、それが地方に還元して参るということを当然考えておるわけであります。しかしながら一方国債利回り程度の五分五厘ということを予定利率として考えております。これは五分五厘が適当であるかどうかということについては、いろいろ御議論があろうかと思います。国家公務員の共済組合の場合には、四分五厘ということにいたしております。従いまして、将来とも五分五厘の予定利率でいいかどうかということには問題があるかと思いますが、現在の段階においては、ほかの共済組合につきましては、大体五分五厘ということを原則にいたしておりまするので、まずそれにならって差しつかえないのではないかというふうに考えております。そこで五分五厘でございますから、この運用等につきましては、ここに規制しておりまする方法によりましても、五分五厘の運用は大体確保できるものというふうに考えております。従いまして、一方におきましては長期の資金としてこれが運用できますと同時に、一方におきましてはできるだけ効率的な運用によりまして、五分五厘以上のいわゆる利差益を確保するということも必要でございますから、さような点からここに法律に規定いたしておりまする範囲内におきまして、有効適切な方法を考慮いたしまして、将来運用等について監督して参りたい、かように考えております。
  144. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これはここに書いてある通りですが、具体的にいえば、たとえば信託銀行等の長期の信託をやれば七分二厘くらいは回ります。ですから、こういう方へばかり回っていきますと、結局農協等へは回ってこない。どうしても利益の多いところということになると、金銭信託とか、あるいはここにもあるような不動産の取得とか、これはいなかの土地をとったんではなかなか利回りにはなりません。どうしても町のまん中で金をそういうふうに投資するということになりがちです。そういういろいろな、単に利ざやをよけいとって、従って共済基金の運用を潤沢にするという意味なら、それは高いところにやった方がいいわけです。しかしながら、この資金の掛金のもとは何かといえば、やはり農民負担なんです。ですから農協あるいは信連、中金等で多少困難であっても、私はこういう点について厳重な規制と同時に、できるだけ農協関係の方へ、農民関係の方へ還元するような措置をしっかりとっていただかないと、どうしてもこういう資金の運用というものは、金のよけいとれる方、楽な方へいってしまいます。この点について法律ではこう書いてあるが、特別に何か考えておるのかどうかということをお尋ねしたわけです。この点はどうです。
  145. 河野恒雄

    ○河野説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、実はわれわれもさような観点から考えておるわけでございます。七十一条にも省令でもっていろいろな点について規定をできることにいたしておりまするので、将来さような点について十分考慮いたして参りたい、かように考えております。
  146. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点は省令でかなり詳しくおきめこなることと思いますが、しかしたとえば省令できめても、今の中金や何かの金の流れを見れば、これは農民に還元できるか、ほかの方に逃げるか大体わかるわけです。ですから単に省令でやるだけでなくて、よくそこを実際的に合うように特段の措置を講じてもらいたいということを申し上げておきます。  その次に、これは、私は主として団体の立場から申し上げるわけですが、本法の適用になれば、確かに農林漁業団体職員としては安心をして一生懸命やれる。これがまた間接に団体のあれに対して、非常にいい効果を持ってくるということは、当然私どもそう思います。また現在のように安い給料で使っておるのであるから、やめてから後も何らか補償してやることは当然なことです。しかしここでは、いただきました資料でもあります通り、とりあえず農林関係だけ見ても、職員の方で大体において年間十億、団体の方で大体十数億というものを負担をすることになる。ところで団体十数億ということになると、資料にいただいた千四百の農林団体だけでも、年間に大ざっぱに平均して七万五千円くらいの団体負担になるわけです。片方において、この中で、非常に無理をして、五人以下ですとか非常に危ないようなものも、これは強制的に入れていかなければならぬ。そういうときに、この十数億の負担はなかなか私は困難ではないかと思う。これらについての具体的な御検討等は行われておるのかどうか。特に小さい組合や不振組合、常勤職員五名以下というふうなものも強制的に入れる。あなたの方の通牒で見ると、そういうものは危ないから早く統合して大きくしろということになる。大きくなれば危なくないから、それはその通りです。しかしながら必ずしも事態はそうばかりはいかない。保険の立場からだけやって組合の本来の活動なり機構がいびつになっては困るわけです。この点について、私は本法そのものはまことにけっこうであります。それから使用者と使用団体との負担が半々だということは、普通常流です。しかしながら、今この農協なり農林漁業団体の対象になるべきものからいって、この点について、果してこれでやれるのかどうか、この点について十分な検討を行なっておられるのかどうか。これは東京の団体や府県の団体はみなやりますよ。要するこ末端の単位組合なり何なりの犠牲において上の方の連中は楽しておるから、これはやれるでしょう。またこういうことは、出そうと思えば、負担金なんか書いていけばすぐできるが、末端はなかなかそうはいかない。特に今度のように、農協団体も、農協の活動も、組織の面でも、あらゆる面において相当の変化を遂げなきゃならぬときに、これが組合の経営なり何なりを圧迫する材料になりはせぬかということを相憂するわけですが、この点についてのお考えはどうですか。
  147. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 その点は、団体のみならず、個人でも同じ問題が起きるのであります。この制度を農林省で取り上げるのに非常にひまがかかったゆえんは、一つはそこにあるのです。全国の農協大会で、ここ数年毎年年金制度が議題になっておったのでありますが、そういう点を安易に取り上げ、あとで悔いを残すことがあっては、せっかくのいい制度が怨嗟の的になるおそれがあるということで、十分各団体にその趣旨を徹底さしまして、この程度なれば負担やむを得ないということを団体に念を押して本案を立案しておるのであります。しかし、御指摘のように弱小組合が非常に多いのでありますから、その点は、先ほど芳賀委員からお話がありましたように、われわれもこれを機会に一段と団体の整強化に邁進したいと考えております。
  148. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点。これは職員が非常に安定して長く勤められます。従って、能力その他経験等も増してくるということはその通りでしょう。これは非常に喜ぶべきことです。しかし同時に、県段階や中央は別としまして、末端では、安いものですから長く勤める者は多くはないのです。役員は三年交代ですが、だんだん長くなってきている傾向はありますけれども、その長くなっておるのは、必ずしも非常に優秀だからということばかりではない。変なボスみたいなものがやって、むしろ長くなったために組合の経営がうまくない場合も間々ある。しかし概して最近は役員の就業年限が、一期だけでなくて長くなって、しかもよくなっておることはわれわれも認めます。これは政府の指導のよかった点だと思っております。この点は非常にいいと思う。しかし職員についても五、六年が非常に多いわけですね。大体女の子が大多数ですが、これでいきますと、少くとも士五年、二十年を勤続することになると、これはどうしたって、その間給料を上げていかなければならぬ。ベースはどうであれ、全体の給与総額はよけいになってくる。いただいた資料で見ますと、初年度が二百九十二億で、十年先に三百二十七億くらいに給与総額がなるということなんです。これは農協関係だろうと思うが、こんなことではとうてい実際には追いつかないと思う。今の十億何がしかのほかに、大体給与全体が相当よけいになると、今のような非常に低い給与にいつまでもくぎづけすることは無理でありますから、給与はぜひ上げたい。上げたいけれども、特に単協の場合給与を上げるには、はっきり言って農民をしぼるより手がないのです。そうでしょう。肥料だって上の方できめ、手数料は中央できまり、県段階できまる。末端に行ってそれはよけいになりません。同時に、売る物はどうかというと、上の方できまってくれば、それからすべて経費を差し引いて、最後が農民の手取りとなるから、ただみたいになってしまう。ですから、これだけのことをやるならば、さっきからおおむねあなたがお話になったように、農協の経済的実力の充実をはからなければならぬ。これにはいろいろ方法があります。あなたのおっしゃるように、小さなものを統合して大きくするのも一つの方法でしょう。しかし、同時に、反面では、サービスというか、活動が大体において減退する。そういう意味において、私は農協を単なる一つ企業体とだけ見て、今も政府は少しずつ出している。しかしこれは穴埋め程度であって、ほんとうの事業体としてしっかり立っていくという指導がなかなか行われていない。特に援助も不十分であると私は思う。こういう点について、本法を施行すれば確かに職員はよくなる。多少よくなるが、これに連関して必ず給与の全体、総額はよけいになる。そういうことになってきますので、こういう点については、組合全体のあり方、活動の仕方、あるいはこれに対する政府の援助なり保護の方向というものを、私はもう一度再検討する必要があるのではないかと考えるわけです。これらの点についてどういうふうに考えておられるかお聞きしたい。
  149. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 職員給与が将来どうなるかという点は、一応私の方では資料をお配りしておりますように、一定の勤続年限に応じて昇給率を逓減さすのが普通でありますから、そういうことで推算しております。さらにまた現在の職員の脱退残存表に基いて計算をしております。これは組合の経営状態が」よくなれば、当然現在の低位給与ベースより高くなるのであります。その際には、先ほどの質問にお答えしましたように、大体どの年金制度でも五カ年ごとくらいこういう事情の変化を勘案して計算をやると書いておりますので、そういうことになると思います。お話組合負担を可能ならしむる、団体負担力を拡大する方法いかんの問題でありますが、これは直接団体に補助するのも一つの方法でありますが、やはり何と言っても団体組織員の経済の向上をはかることがまず先決ではないか。このために、いろいろな農林施策を講ずることによっていかなければならないのであります。そお上で足らぬところを団体事務費の負担、こういうことを考えておるのであります。この農協団体メンバーの経済の向上については、今後さらに一そう努力しなければいかぬと思いますので、いろいろな方面で御指摘を受けてやっていきたいと思っております。
  150. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点、抽象的にはあなたの言う通りですが、それがうまくいかないから農民がだんだん苦しくなっているのが現状である。それに対してほとんど的確に手が打たれていない。農協自体資本家の道具にだんだんなりつつあるのが今日の実情です。しかも農業が大きく商品化されて動いているそての動きについて行けないので、経営中心でやっておりますから、そろばんが合う経営ということになってなかなか活動がうまく行かないのが現状である。私はこの制度をしくことによって職員の安定してくる点はよいと思いますが、区反面において職員給与総額がだんだん増額してくるのは当然で、この負担額がよけいになってくると、組合の経営がますます営利中心主義といいますか、農民の利益をはかるよりか経営中心主義になりがちである。この点は単にこの法案だけではありません。農林省としては、一般の農業施策とともに、組合の経営について農民のかゆいところへ手の届くような生きた指導をしていただかないと、今はもうかっているものだけで、危いものはやめてしまえ、米と麦とあと肥料を扱って、金融をやっていれば間違いないというので、農民からそっぽを向かれている現状である。あるいは野菜の問題、豚の問題一つとっても今の農協ではやれない。新しく組織の拡大も考えて来なければならぬし、また新しい経営なり波動のやり方も考えて来なければ農民現実要求と合っていないので、この制度をしくことによって組合の経営がますます農民と離れた営利主義的になる。しかも非常に固定化して、官僚的——官僚的と言うと語弊がありましょうが、そういうことになる危険が多いので、これらについては農林省としてよほどしっかりした考えを持って、そういう欠陥の出ないようお骨折りをいただくことを特に申し添えるわけです。  小さな問題ですが、もう最後ですから、一つだけお聞きしたいと思います。常勤の役職員はこれでもって大体よいと思いますが、こういう共済制度によりまする退職金なり一時金なりあるいは年金なりがあっても、多くの場合農村なりでは、あの人は功労があったとかいろいろの名目で相当多額の金が支出されるわけです。特にボス的な人やあるいは政治家になろうとか、選挙に出ようという連中がやるときは、表ではどうあれ、実際には小さな単位組合では特別慰労金を出すのが通例になっている。こういうことに対しては、本法ではありませんけれども組合法なり何なりによってとめるのが当然であると思う。これについての措置を法律的に考えているかどうか。行政指導といっても、通達一つくらい出しても、ざっくばらんに言って二階から目薬程度である。私は、やはり農協法なり何なりを改正して、この制度ができた以上退職金や慰労金は出さないことにするのが農民の信頼を得、農協の経営をしっかりさせる一つのめどだと思うが、この点についてはどう考えておりますか。
  151. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 現在の法制ではそういうものについての考慮を払っておりません。ただこの年金制度が確立いたしますれば、そういうものがあるのですから、二重取りになるようなことについては農家自身が考えてくれるもの、こういうふうに考えております。それを法律でもって年金制度を作るのだからそういうものを出してはいかぬ、こういう規定をするのは現在のところではどうか、こういうふうに私どもは考えております。
  152. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もうぼつぼつやめますが、今の点あたりはもう少し徹底して、私は具体的なはっきりした措置をとらないと、またそういう点からくずれてくる危険が非常に多いのです。そうするとこれで年金はとるわ、やめるときはごっそりもらう。そういうことをやっていると、幾ら有効な長いものでも、これはなかなか信頼はとれませんよ。同時に組合の経営はそういう点からくずれる場合が多いわけですから、これに対しては一つはっきりした措置をとっていただきたいと思います。こまかい点はいろいろありますけれども時間の関係がありますからやめますが、当初に申しましたように、ぜひこれは農林省としては農民全体の年金制度についてもっと真剣に取っ組んでもらいたい。今の次官の答弁のごときは、私は農林当局としては無責任もはなはだしいものだと思う。それはやはり農民年金制度については、基礎的な資料なり調査なりをして、そうしてこうあるべきだということを出して、それを内閣全体なり厚生省の作業の中に反映させるということが当然の話だと思う。特に都会のまん中で抽象的にものを考えている人たちがやっている五人委員会とかなんとかいうものに対して、そういう意味において協力をしない、積極的に協力をしないで、それで一応おつき合いをしているという程度では何にもならぬと思いますから、特にこの点を強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  153. 中村寅太

    中村委員長 石山權作君。
  154. 石山權作

    ○石山委員 私はこの掛金の表をいただいているのですが、算定基準は年金というものの計数から拾われたのでございますか。そういう点を一つ……。
  155. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これはそれぞれの年金制度につきまして、それぞれの特色を持っておるわけであります。そこでこの制度を考えるに当りましては、職域を同じくする市町村共済組合あるいは私学、そういうものの職員が受ける年金の給付と大体バランスをとっていく。かつまた一方では負担能力というものを考えまして、私の方では現在の厚生年金ではとても不十分であるから、そういうものとバランスがとれるようにしよう、こういうのを考えまして、給付の方から考えまして、それをもとにしますとどれだけの掛金が必要になってくるか、こういうことを出しておるのであります。
  156. 石山權作

    ○石山委員 各種の農業団体は、政府の補助金あるいは農林行政の末端機関としてそれぞれの農林行政に協力しておりますから、民間の団体でありましても特殊な性格を持つ団体だろうと思います。ただ私特に奇異に感じられるのは、その私学の共済に近づける、こういう面が非常に私は強く出ているのではないか。私はなぜ民間団体に準じて農協の団体を見ているかといいますと、いわゆる負担能力の問題が非常に——事業主の負担能力ですよ、事業主の負担能力というものがこの場合大へんに尊重されていいものではないか。ということは、厚生年金の表を見ますると、それは私は比較ができるのではないか。国民の一般の厚生年金の場合は、いうところの事業主の負担能力というものを念頭に入れながら低率な額が算出されたという経緯を持っているわけでございます。私がなぜこういうようないやみを言うかといえば、皆さんが口を開けば日本の経済の中に占める農家の経済云々ということがしょっちゅう話をされ、われわれの念頭にあるものでございますから、こういう点がきちんと解明されないと、いたずらに私学の共済に近づけるということだけではいけないのではないか。そういう点を一つ説明願いたい。
  157. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 基本的な給付の内容はお配りいたしました表にありますように国家公務員共済、市町村共済、私学共済、これは二十年以上の勤続でその後一年につき日額の四日分を加算して月額の四カ月分を交付する。ただ開始年限が農林漁業共済団体では、そのほかの五十才を公共企業体職員と同様あるいは恩給と同様に五十五才に掲げている。そういう点から、それからもう一つはやはり厚生年金からの分離の際の整理資源等の関係から掛金の率が変ってきているのであります。それからもう一点は、この年金では公務傷害年金の場合に、ほかのものででは労働基準法でもらった場合後のものにもらえないものを、もらえることにしているというところ、あるいは遺族年金の交付をほかのものでは二十年以上勤続した者が死亡した場合に限っているのを十年以上勤続した者にも遺族年金を交付する、こういう点が変っております。そういう関係から掛金率が変っているのであります。従来のバランスとさらに最近の年金制度の全般的な改善という点を織り込んでこの案ができているのであります。
  158. 石山權作

    ○石山委員 ではちょっと格好を変えまして。昭正和三十二年度の農家の一年の収入の概算が出ましたか。出ましたらお知らせを願いたい。
  159. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 三十二年度のやつはまだ出ませんです。
  160. 石山權作

    ○石山委員 それでは三十二年度の後半の見通しという広報をあなたの方で出している、その見通しの中に必ずや一年の集計の予想というものが出ていなければならぬはずでございますが出ているはずでございますね。
  161. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 アウト・ルックで将来の見通しを出しておりますが、金額的なものはあれでは出てこないのであります。
  162. 石山權作

    ○石山委員 それでは三十一年度のではどういう工合になっていますか。
  163. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 三十一年度の農業の粗生産額は一兆四千四百八十一億、水産物は二千百六十六億、こういうふうになっております。
  164. 石山權作

    ○石山委員 なるべくわれわれがのみ込みやすいような一戸単位あるいは一人単位にお知らせ願うと非常にわかりいいのであります。三十一年度はあなたの方で広報で出しまして、確かに農家では黒字になったという計数をお出しになっております。
  165. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御指摘の点は農家経済調査のものだったと思いますが、これは全体のものでありませんで、全国五千戸余りの農家で調査したものの集計であります。それは現在手元に資料を持っておりませんから、あでまた……。
  166. 石山權作

    ○石山委員 私がなぜこの問題を出しいてるかと申しますと、先ほど久保田委員からも言われたように、農家のいわゆる経済問題ということと、農家に依存している、自己が育てている団体というものの姿の検討ということになるだろうと思いますが、それは非常に大事だから、それだけでまかない得られないような負担をかりに農家に与えるような施策であるとするならば、これは十分に考えて施策を、施さなければならぬというのが私の考えなんですから、農家のその年度における黒字というもの、負担する諸経費というようなもの、それから将来農協の団体として伸びていく将来性の問題、こういうふうなものがおのずから浮かんできて率なり給与というものがきわめられていかなければならぬわけです。そういうことの御説明があまりなく、法律解釈のみが先行するものですから、私としては、法律解釈よりもこの問題は経済的な問題だから、経済的な方両から一つ説明をいただければ大へんにすっきりするのではないかと思う。そういう意味で農家の最近における収入、黒字、それから農協自体の、全国的に見た場合の不良農協と申しますか、なかなか立ち直り得ないような農協も相当あるようにわれわれは資料から受け取っておりますが、それらを再生させながら新しい項目で支出をしなければならないのでございますから、そういう点をどういうふうに解釈されてこの法案をお出しになったか、こういう点も一つ説明願いたいのでございます。
  167. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御指摘のように農業同体の中には優良な組合と赤字の組合がございます。農家の中にも、これは農家経済調査で出てくるのはみな平均で出てきますから、平均で黒字が出ましても必ずしもそれが全体の姿を現わすということはありません。またこれは地域別に非常に差があります。しかし私の方といたしましては、この年金制度に関する限りは、先ほど申し上げましたように、組合としての存立が確認され、その組合で俸給を受けておるということは、この十四条以下の規定によって確認されたものは、一応制度を施行する以上はそれぞれの法律に基く負担をしていただけるもの、こういう前提でおるわけであります。その際に非常に苦痛を感ずる組合が相当あると思いますが、それらをこの制度を機会に、先ほど御説明申し上げましたように、団体の不振なゆえんがいかなるところに基くかということを、また新たな面からはっきり確認する一つの手段になりますから、組合の整備強化に資することができると思います。組合自身、それから一般の組合員である農家も、この制度をやることによって、組合をいかに育て、いかに利用し、そうして自分の経済をいかに改善すべきかということの一つのよすがになると思います。これで百パーセントの効果を期待するというわけには参りませんけれども、各方面からそういうふうに改善の策を講じていくことが必要である、こういうふうに考えております。
  168. 石山權作

    ○石山委員 経済問題の場合は、非常に経済が潤沢でない場合には、まず目の前のものから順次に整備していくということが経済のやり方でございます。ですから私は、たとえば給与が悪いというならば給与を上げるというのが前提だと思う。前々からの質疑応答を聞いておりますと、これはもちろん補助的な説明だろうと思いますけれども、賃金が安いから将来の安定性をどうのというようなことを二、三承わっております。けれども経済問題は、現実が貧しくあれば将来を論ずるというのは非常に危険なことだと私は思う。現実さえまかない得ないところへ十五年、二十年の将来を論ずるということは、経済問題としては理想に走り過ぎると思います。賃金はもちろん低いです。資料を見ますると非常に気の毒に存じます。ただし私に言わせるならば、その面も考え方によってはしいて低くしているのではなく、農家経済の一種の反映の姿でもあるのではないか、こういうふうに私は解釈しているわけなんでございますが、そういう意味で、もしかりに職員の方々が一生懸命やっていてもどうも気の毒であるとするならば、たとえば官公などはこのたび二千幾らという賃上げ交渉を行わんとしているが、そういうものを見ながら賃金を上げてやるというのが経済政策としてはまず一番に取り上げなければならない問題だと私は思いますが、そういう点ではいかがでございますか。
  169. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは賃金を受ける方の側からいいますと、多ければ多いほどいい。また多い人があれば、少い人はそれとバランスのとれたものを要求するのは当然であります。しかし一方支払う方からいきますと、支払う財源の面から、それをその通り要求を満たすことはできないということはこれまた当然であります。しかし一定のバランスというものはどうしてもなければ工合が悪いのじゃないかと思います。従ってそれに向っていろいろな手段を講ずる、たとえば組合の経営状態をよくしなければ賃金は払えないから組合の経営状態をよくする、そのためには組合員の農家経済をよくするということをしなければならぬ、こういうように各方面のあらゆる努力で目的が達せられるのでありまして、一挙にはできないわけであります。しかし目標はそういうふうなところに置いてやらねばならぬ、われわれはそういうつもりでやっておるのであります。
  170. 石山權作

    ○石山委員 あらゆる仕事というやつはすぐ目に見えないということは事実でございます。特に農家経営の場合は、そういうことは一番大切にしなければならぬことだと私は思っております。この問題は、農協の方々あるいは皆さんの方でも、現実的な問題をもう少し論じてみる必要があったのではないか、その結果年金制度を考えてもよろしかったのではないか。ということは、今無理して急ぎ足で厚生年金からはみ出していこうとする姿が、私には少し将来の理想のみを追うて、今は貧しくても、二十年もたてばよくなるのだから、まず昇給などはさておいて、そっちへいこうじゃないか——だけれども、出す方の側からすれば、やはり出していくわけなんですね。しかしそれを受け取る方では、実際ある程度の金を出しても、なかなか給料としては受け取らぬわけですよ。それはささいな金でございますけれども、受け取る方は、これは給料というような考え方では受け取っておりません。将来の恩給的な考え方でこれを受け取ると思います。ですからこの年金制度というものは、結局現実給与から切り離して今も将来もお考えになっていただかなければ、何ら意味をなさぬということなんです。そうでなければ、これは何か給料の問題が起きるたびごとに、年金を出しているから、年金を出しているからというようなことになりますと、失業保険だって健康保険だって、みな給料の範範に入りまして、せっかくの福祉国家の面というものは何も浮んでこないと思う。私はそういうふうな点は、やっぱりこの場合論議の過程において、年金制度というものは、給料とは別個なものだという考え方を行政機関である皆さんからも一つ確認をしていただきたい。そういう点はいかがでございますか。
  171. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは、この制度を取り上げる際に、給与の改善の問題はまず先行的な問題として論議されたのであります。この年金制度を考える一つ理由は、農林漁業団体職員身分の安定ということが一つの大きなねらいでありますから、そのためには、まず給与をよくすれば、身分の安定になるじゃないか、一体それはどうするのだということを当然議論されたのであります。私どもの方で協同組合の、あるいはその他の団体の整備促進なり整備特別措置をやっておるのも、そういうことによって、団体の経営をよくしていく、団体として確立したものに持っていこう、こういうのであります。それを忘れて年金だけやれば身分が安定していく、こう思われてはかなわぬというところが、この問題を数年間農林省として取り上げることを渋った一つの大き理由であります。そういう点を押しまして、それはそれで今後とも給与の改善に必要な経営の刷新、向上はやっていく、同時にこの年金制度もやっていく、こういう結論に到達したのであります。
  172. 石山權作

    ○石山委員 この厚生年金が非常に率が低いということは、事業主が大へんに強い声をしおるために、こういうふうに低いわけなんです。農協の職員の方々、あるいは農協の役員の方々が昭和二十七年以来大へんこの問題を取り上げて一生懸命にやっております。それについて、いわゆる負担される農民の方々の声というものをどういう形で皆さんのところでキャッチしておるか。このくらいの率ならば、私は農協をよくするために、農協の職員の将来の安定のために賛成である、こういうふうな農民の方々の声をどういう形でつかんでこの制度を作り、どういう率をお作りになったか、それを一つ承わりたい。
  173. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 それは先ほど久保田委員の御質問にもありましたように、給付の内容だけをよくすることで、自分が出す金のことを忘れてもらっては困る、そういうことが、われわれがこの案を団体側と協議するときに、やはり一つの大きいポイントであったのであります。従いまして、この点は各府県の団体、これはそれぞれブロック会議等を開きまして、その点を十分念を押しまして——これは実を申しますと、私どもの方でも去年の暮れまでそういう点についてある程度、協同組合大会の決議だけでいわれても困るのであって、あとは現実の掛金が寄らなければせっかくいい制度ができても、かえってあとで怨嗟の的になるのだから、そういう点についても、それぞれの確固たるあかしがなければ取り上げないのだということで、これは農協中央会を中心にしまして各団体の責任者を寄せまして、何回かブロック会議を開きまして、まあこれならば取り上げてもいいだろう、こういうことでスタートしておるのであります。
  174. 石山權作

    ○石山委員 経済局長にもう一つだけ……。これは念を押すというような形になると思いますが、たとえば貸しい農家もこの案に賛成をしたということはこういう解釈が成り立ちますか。つまり将来の農林行政発展になる、農業の増産に非常に役立っものだ、自己に非常に有益にはね返ってくるものだというふうな確信のもとで、これを経済的に言えば一種の投資だ、こういうふうに解釈してもよろしゅうございますか。
  175. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方では、何を申し上げましても、農林漁業団体は農林漁家の経済の一つのささえになっておるわけでありますから、それをよくすることはひいては組織員の経済をよくよることである、こういうふうに受け取っていただいておるのであります。そういう確信を持っております。
  176. 石山權作

    ○石山委員 私はこの案が通れば、これはあなたに言うよりも、むしろ農協の職員の方々に言うべきがほんとうだろうと思うけれども、これからの国民年金として農民の方々の意見を大いに運動の中で発揮できるように工夫をこらすという一つの任務が当然付加されてきたのではないか、私はこう解釈するが、それはいかがでございますか。
  177. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 おそらくこの年金制度についてこれだけの問題になったのでありますから、関係の役職員だけではなくて、農家も年金制度そのものについて非常な関心を深めたことと思います。御承知のように、新聞でも、ラジオでも、社会保障制度審議会でも国民年金との関連においてこの制度が論議されておったのでありまして、お話のような点は、当然団体の役職員組合員あっての役職員でありますから、お話のように動くものと期待しております。
  178. 石山權作

    ○石山委員 農林省関係でもう一つお聞きしたい点は、四十億の過去の積み立てのお金が返ってくるようになる、その運営の仕方、これは先ほど久保田委員からいろいろ言われておりますが、私は運営の仕方にいろいろの方針があると思います。独立採算ができないような運営の仕方ではならぬでございましょう。ただ私最もおそれるのは、運営はうまくいくと思います。かりに何十億となれば、よほどばかなまねをしない限りは、お金は子を生むものでありますから、私は独立採算は可能だというふうに信じております。ただここでしょっちゅうわれわれいやな思いをして聞くのは、そういう金とともに、たとえば何省の外郭団体ができる、こういうことであります。これは皆さんは善意で、つまり大蔵省にまかしておけば、厚生省が一手に握れば非常に運営が大ざっぱになって効率が上らぬということで変革を要求して、運営の独立性をはかられたと思っている。けれども世間ではなかなかそうは言わぬのです。そういう点は今後も役所間の一つの問題になるだろうと思いますけれども、この役職員の問題、運営の仕方というものは十分注意していく必要があるのじゃないかと思いますが、法律的な問題はきのうも部長さんから聞いたので大体わかっておりますけれども、あなたたちの腹がまえを一つお聞かせ願いたい。
  179. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 この組合はあくまでも農林漁業団体の役職員共済組合でありますから、たまたまそれが農林大臣の監督に属するということはありますけれども、御心配のようなことは私は毛頭考えておりませんから、その点は世間のうしろ指をさされないように十分慎重に取り扱いたいと思っております。
  180. 石山權作

    ○石山委員 厚生省の方にお聞きしますが、厚生省年金制度については大へん熱心におやりになっているようでございます。特に去年あたりから各種委員会を動員されて結論を急いでおるようでございますが、まずその厚生年金——将来これは国民年金になるわけですが、これから逃げ出そうとする欠点と申しますか、その中心はどこにあるのですか。それを一つお聞きしたい。
  181. 小山進次郎

    ○小山説明員 私どもとしては、厚生年金から逃げ出すという傾向がそれほど普遍的にあるとは考えておりませんけれども、御承知のことでありましょうけれども外から言われておることを申し上げますと、どうも年金額が低い、これではせっかく老後に備えてということでやっている制度としては帯に短かしたすきに長しとでも申しますか、こういうふうなことを言われておるわけでございまして、その点は私どもも今後は十分考えなければならぬ、こういうふうな気持でいるわけでございます。
  182. 石山權作

    ○石山委員 帯に短かしたすきに長しというようなことが厚生年金にあるとすると、非常にたよりのないものだ、こういうことになりそうなんです。実際からいえば、年金とかこういうものをたよりにしたくて一生懸命われわれがやろうとしておるときに、たよりのないような姿があなたの説明の中に出るわけなんです。ですからたよりのあるようなものにするためには、やはりもう少し速度を早めていただかなければならぬのでございますが、その速度を早められない原因は一体どこにありますか。
  183. 小山進次郎

    ○小山説明員 これは先ほども御論議になっておられたことでありますが、この種の積み立て方式というものをもとにして作られます年金制度におきましては、よい給付を保証しようということになりますれば、勢いより多い醵出をしなければならない、こういうことに相なるわけでございますが、比較的限られたサークルの場合はそういった了解が成立しやすいのでございますけれども、この了解は地盤が広くなればなるほどいろんな事情から成立しにくい、そういうようなことが今のところ厚生年金年金額というものを思うように引き上げることができないという一番大きな事情でございます。
  184. 石山權作

    ○石山委員 それも私たちに言わせれば、非常に歩みがぬるいために、そういう現象が起きてくるのではないか。大多数の人をまとめていただけば低率でもやっていけるというのが経済の一つのうま味なのでございます。保険なんぞは特にそういううま味があるわけでございますが、こういうふうにしていつも苦しい苦しいというふうにしてぼんやり見ているわけではないでしょうけれども、ちょっとためらったような形で問題を見ていますと、どうも帯に短かしたすきに長しというような、こんなのじゃたよりがないというので逃げ出す格好が出る。たとば今度も町の商店の方々や中小企業の方々のもう一つ作って独立しよう、こういう動きも、今の場合は、皆さんの方でそんなことは全然やらせないのだ、こう言っても、形ができ、きちんと団体がまとまれば私はそれは防ぎようがないと思いますけれども、技術的に見て、事務をとる皆さんから見て、それはただ閣僚会議だとか、次官会議できめたというようなことがいつもひっくり返るのですから、そういう形でなく、実際事務的にやってみて、そういうふうなことのないような方策が今とられているかどうか、そういう自信がおありかどうかということをお聞きしたい。
  185. 小山進次郎

    ○小山説明員 ただいま仰せになりました御趣旨については、私ども全く同じ考えで考えております。事情を申し上げますと、大へん歩みがぬるいという御批判はその通りだと私ども思っておりますが、実は戦争中に作りました制度が、御承知の非常な貨幣価値の下落によりまして、普通の場合でありますれば、それで多くの場合既往の年金制度は破産するわけでございますが、日本の場合は、それを破産させないで実際上それを使って何とか戦後の年金制度のもとにしていこう、こういうことになりましたので、実はインフレーションが非常に進んでおりました二十三年、二十四年当時までは全くのこうやくばりの手当をしておったわけであります。幸か不幸か、その当時は創設後間もないことでございましたので、老令年金の給付が始まっておりませんでしたので、一応そういうしのぎはできたわけでございますが、これを何とか新しい条件のもとです長続きのできる制度にしようということになりまして、二十九年に現在の厚生年金にしたわけでございますが、その際に実は実質的に相当程度の保険料の引き上げが行われたのでございます。料率で申ますと、千分の三十という料率には動きはなかったのでありますが、その当時までは標準報酬をすべて八千円というふうに仮定いたしまして、八千円をもとにして収めておりましたのを、二十九年の改正の際に一万八千円まで最高額を引き上げる。かようにいたしましたので、ご承知のように、この種の年金加入者の平均の標準報酬は大体一万三、四千円どころでございまするから、実際上の問題としては八千円のしばりが解けたということだけで、料率が同じでございましても、被保険者と事業主双方に非常に多くの負担がかかるようになったわけでございます。二倍まではいきませんけれども、実質的にはそれで五割方ふえるというようなことになったわけでございます。そういった事情からいたしまして、二段にせざるを得なくなりまして、二十年年のときには、まず新しい条件のもとで長続きのできる制度まで持っていく、それからその後五年ごとにそのときの情勢で再検討いたしまして、ただいま仰せのような方向に進んで、内容の改善をはかっていく、こういうふうな運びで動き出しておりますこのさ中に、これはまた国民の方から見れば一面無理からぬことでございますが、いつまで見ておってもどうも年金額は上らない、一方官吏の恩給等を見るとすこぶるいいものが予約されている、何とかならぬものか、こういうふうな動きが現在出ておるわけでございますので、私どもとしましては、ちょうど国民年金創設に取りかかっておるときでもございますので、来年度においては何とか一つこの点をもう一段進んだところまで持っていく、おっしゃるように、単に縛るとかなんとかいうことで解決するのでなくて、事実上そういうことをしないで済むような状態へ早く持っていきたい、かように考えて目下作業を進めておるところでございます。
  186. 石山權作

    ○石山委員 私たちも今の制度でいくと年金制度に該当しないのです。年金制度を考えるとどんな人でも楽しいのです。この楽しさをある意味では薄くても全般に与えていくことが、われわれ政治家の端くれとして政治一つの大切なポイントだ、そう考えております。ましてわれわれ選挙に落ちれば何もないが、それは別にしても、身分的にいうと、私らよりもまだ困っておる人が相当あるということは常識的にも理解される。厚生省いえばそういう点は一番御理解がいくと思いますので、私たちとしては年金制度が拙速主義であっても、いろいろな点はあると思うけれども、早く手をつけるということがこの場合は一番大切なことではないか。そのあとはあとでお互いが知恵を出し合っていくということで問に合うと思うこれは拙速主義でいくという勇断が、今の場合国民年金制度にとっては一番重要なことではないか。そういう場合に総理大臣もああいうふうな踏み切り方をしておりますので、きょう大臣がおいでになれば、もう一ぺん堀木大臣にもよくこの点を要望申し上げるつもりでおりましたが、あなたからも省内の方々にそういう点でこういうふうに大いに賛成して協力する人もいたのだ、こういうふうにお伝え願えれば私はそれでよいのでございます。あとでまた社労などにおいてこの問題を十分一つ研究さしていただきたいと思いますが、今日はこれで打ち切ります。
  187. 中村寅太

    中村委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、明日残余の質疑を続行することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時五十四分散