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1958-02-27 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 笹山茂太郎君 理事 助川 良平君    理事 原  捨思君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    石坂  繁君       大野 市郎君    草野一郎平君       小枝 一雄君    椎名  隆君       鈴木 善幸君    中馬 辰猪君       大森 玉木君    永山 忠則君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       村松 久義君    阿部 五郎君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石田 宥全君    久保田 豊君       中村 英男君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   北島 武雄君         農林政務次官  本名  武君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁税部         所得税課長)  亀徳 正之君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  藤巻 吉生君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 二月二十一日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として河  野金昇君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野金昇辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員綱島正興君及び楯兼次郎君辞任につき、そ  の補欠として大森玉木君及び島上善五郎君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十一日  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣  提出第九〇号) 同月二十四日  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇〇号)(予) 同月二十五日  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇二号) 同月二十二日  たばこ耕作組合共済組合法適用に関する請願  (二階堂進紹介)(第一〇九〇号)  甘しよ糖業振興に関する請願二階堂進君紹  介)(第一〇九一号)  畑地農業改良促進法期限延長等に関する請願  (二階堂進紹介)(第一〇九二号)  奥地製炭及び木炭公営検査に対する国庫補助に  関する請願二階堂進紹介)(第一〇九三  号)  農協役職員年金制度実現に関する請願三浦一  雄君紹介)(第一〇九四号)  総合的農林漁業政策の推進に関する請願中馬  辰猪紹介)(第一〇九六号)  有明海沿岸漁業振興対策に関する請願井手以  誠君紹介)(第一一四八号)  狩猟法の一部改正に関する請願加藤鐐五郎君  紹介)(第一一四九号)  同(春日一幸紹介)(第一一五〇号)  農業協同組合刷新強化に関する請願中馬辰  猪君紹介)(第一一五一号) の審査を本委員会に付託された。 二月二十五日  農薬費半額国庫負担等に関する陳情書  (第四三三号)  北海道の開拓農地犠牲者救済に関する陳情書  (第四五  一号)  乳価安定対策に関する陳情書外一件  (第四五二号)  蚕糸価格安定法改正による玉糸の一般買入実施  に関する陳情書  (第四五三号)  漁業協同組合職員退職金等法制化に関する  陳情書  (第四五四  号)  全国水産業協同組合共済会漁業共済事業支払  調整準備金国庫補助等に関する陳情書  (第四五五号)  冷害対策に関する陳情書  (第四五六号)  漁港整備促進に関する陳情書  (第四五七号)  漁港法に特別第三種漁港追加規定等に関する  陳情書  (第四五八号)  森林資源開発育成等に関する陳情書  (第四五九号)  農地改革の行過ぎ是正に関する陳情書  (第四六〇号)  畜産会事業費全額国庫補助に関する陳情書  (第  四六一号)  沿岸漁業に対する共済制度確立に関する陳情書  (第四六二号)  林業政策審議会設置等に関する陳情書  (第四九一号)  台風常襲地帯農業災害防止に対する特別法制  定に関する陳情書外一件  (第五〇三号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林中央金庫の融資問題に関し参考人出頭要求  に関する件  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣  提出第九〇号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇二号)  農業所得税に関する件      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  農業課税の問題について調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、質疑を行います。中村時雄君。
  4. 中村時雄

    中村(時)委員 議事進行国税庁長官にお尋ねしたいのですが、先ほどこういう話がありまして、これは当農林委員会全体の問題としての取り上げ方になってきたのです。というのは、大蔵委員会理事会出席をされておるので、そのために当委員会の方には直ちには出てこれない、あと出席をする、こういうお話があったわけなんです。当委員会としては十時以来ずっと長官出席を求めて待っていて、同時に長官がいらっしゃるという建前に立ってこの委員会を開いたわけなんです。そこで大蔵委員会の方に理事の連中が出ていって、その交渉方をやってきたわけなんです。ところが実際に行ってみますと、長官はいらっしゃらない、こういうお話になった。そうすると実際の問題として、当委員会に対するあなた自身考え方——あるいは悪く言えば、農林委員会が何だ、そんなところに出る必要ないじゃないかととられても仕方のないような、誤解を受けるような行為になって現われてきた。そこでその問題に対して、私の考えでは、長官自身にも誤解があったのじゃないか、あるいは何か別の理由があったのじゃないか、あるいはだれかが間違えてそういう報告をしたのじゃないかという辞意な解釈の仕方も成り立つわけなんです。そこで一身上の問題としての弁解だけはきっちりしておいていただかないと、もしかりに私の悪い意味考え方が当ったならば、これはそのままでおいておくわけにはいかないと思うのです。そこで一言だけあなたの弁明をお聞きしたいと思うのです。それだけの道はつけるつもりでおりますから……。
  5. 北島武雄

    北島政府委員 行き違いましておくれて大へん申しわけない次第でございます。実はこれは部内の問題でございますが、けさ九時半から、全大蔵職員労働組合の諸君と前から打ち合せておりました陳情を聞いておったわけなんです。そのうちに、実は本日は、参議院大蔵委員会理事会、それから衆議院の大蔵委員会出席の御要求がございました。非常にあわただしい時間でございましたので、とりあえず直税部長に出てもらって、私もすぐあとから出かけるからということでございました。そのうちに交渉がおくれまして、終りましてから出発いたそうと思いましたところ、また部内の問題でちょっと政務次官と打ち合せをいたしましたので、大へん出席がおくれまして申しわけございません。しかし当農林委員会を軽視するとかなんとかいう気持は毛頭ございませんので、どうぞその点あしからず御了承願います。
  6. 中村時雄

    中村(時)委員 それじゃ私は一言、これはあなたに注意だけしておきたいのは、私たちはあなたの公務に対して束縛するというような考えは持ってないのです。そこであなたの方も正直に、これはこういうふうになっているのだという事情をよく委員長と連絡をとっていただきたい。でないと、そういう誤解も受け、その誤解がひいてはいろんな問題も起すということになってきがちなんです。その点は特に長官ともあろう方なんですから、それほどラフな頭をしておるとは思っておりません。だからその意味において、きょうは私はこれ以上追及はしませんけれども、これはほかの委員会におきましても同様な事柄が起りがちなんですから、どうか今後十分の注意をしてそのありのままの姿をよく訴えていただきたい。その点だけ御忠告をしておきます。
  7. 中村寅太

  8. 吉川久衛

    吉川(久)委員 私は農業所得税の問題について二、三の点についてお尋ねをいたしておきたいことがございます。申すまでもなく日本農業原始産業であるばかりでなくて、規模がきわめて零細でございます。従って非常に所得が少いのでございますが、所得のあるところ課税なかるべからずで、その原則はよくわかるのでございますが、保護を要するような悪い条件のもとにある日本農業に対しての課税の方針といいますか、考え方について、私どもいろいろ疑義を持っておるのでございますが、どういう基本的な考え方で臨まれているか、基本的な考え方をまずお伺いをいたしたいと思います。
  9. 北島武雄

    北島政府委員 お答え申し上げます。私どもはもちろん税法執行に当る任にあるわけでございまして、税法によって定められた通り課税をするのが建前でございます。ただ私ども気持といたしましては、農業所得に限らず、すべての所得者に対しまして、できるだけ実際に合う、しかもモデレート課税をいたしていきたい。しかも納税者個々の間におきまして不公平のないような取扱いをいたしたい、こういうところに基本観念を置いております。ただ実際問題といたしますと、全国五百四の税務署におきまして、いろいろ場合によりますと諸般のつり合いがとれないとか、あるいは所得者のつり合いがとれないということも往々あり得るわけでありますが、これは私ども厳に戒めまして、できるだけ広い立場から、納税者相互間の公平と、しかもモデレートな適正な課税をいたしたい、こういうふうに考えております。
  10. 吉川久衛

    吉川(久)委員 適正な課税とおっしゃるのはよくわかるのでございますが、そういう基本的な考え方で、税源の把握についてどうも欠くるところがあるのではないかと思う。国税庁職員の中に、たとえば農業なら農業というようなものの実態を発令に把握できるような、そういう教養といいますか、資格の条件を備えている人はどのくらいいるのでございますか。
  11. 北島武雄

    北島政府委員 ちょっと数字的にただいまお答えいたすデータは持っていないのでございますが、地方のいわゆる田畑の所得を取り扱います署におきましては、地元の農村の子弟が多いわけでございます。生まれたときから農家の家庭に育ち、そうして中等学校あるいは現在の高等学校を出て税務署に来ているというのが大多数でございます。この人々がさらに農事所得を受け持ちまして調査いたしておるのでありますが、現在全国税務署を通じまして農業所得専用調査いたしております担当員は約二千名程度かと存じましす。
  12. 吉川久衛

    吉川(久)委員 これはただいまここで問題になっているものとは違いますが、このごろ層定資産税評価がえの問題で、税の合理化をということで決定を見ました内容を拝見いたしますと、だいぶ農家課税増になっているのでございますが、これらを見てもやはり考え方農村実態把握の仕方が十分でないのではないかというようなことを考えるのです。御案内の通り商工業伸びというものと農業伸びというものには非常な相違がございまして、農林省のせんだって出されました白書を見ましても、戦後非常な農業の進歩は見ておりますけれども、他産業に比べてきわめて伸びは少いのでございます。そういうすべての産業の中における、伸びの少い農業に対しては、保護政策をとらなければならないことは当然なわけでございます。しかも外貨事情等を考慮いたしますと、食糧増産とかいうような、食糧自給度の確保というようなことが基本的な問題になってくるわけでございますが、そういうものに対する地方税課税の問題について、政府考えておりますところを見ますと、私ども納得のいかない一、二の例を申し上げますと、たとえば都道府県民税市町村民税について、所得税課税標準である総所得金額算定について、総収入金額に算入されない米の予約売り渡しにかかわる収入金額の一部も、市町村民税所得割課税標準である課税所得金額算定については、これを総収入金額に算入したいというような考え方があります。あるいはまた三十三年度、三十四年度分の所得税において、その年分所得税額から控除される貯蓄控除額都道府県民税市町村民税課税標準である所得税額算定について、これを控除しないようにしたいといったような考え方、これはたとえば米の問題について見ましても、低米価をカバーするために、そしてできるだけカバーして食糧増産意欲を起させ、また予約数量を増して、国の需給の運営を円滑ならしめるという考え方から見まするならば、非常に矛盾した考えだと思うのですが、こういう点はどういうようにお考えなんでございますか。
  13. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまの御質問地方税に関する問題でございまして、私の方は国税執行に当っておるものでございますので、地方税にわたる意見については、差し控えさせていただきたいと思います。
  14. 吉川久衛

    吉川(久)委員 農業所得関連をしておりますので、どういうふうに長官としてはこういう問題を考えていますか。
  15. 亀徳正之

    亀徳説明員 事務的な点にわたりますので私からお答えさせていただきます。固定資産税評価の問題はこれまた自治庁の問題でございます。今御指摘になりました一番重要な点、例の米の減税につきましては、現在所得税の特別な法律を設けておりまして、予約売り渡しましたものにつきましての収入は総収入金額に算入しないという形で、事実上減税と申しますか、課税対象外に置くという措置をとっておるわけでございます。今お話しになりましたのは地方税の、たとえば住民税なりその他の課税関係では、その分を逆に課税所得に加えて課税するという考え方かと思います。自治庁であるいはそういうふうな考え方を持っておられたかと思いますが、国税庁といたしましては、先ほど長官が申されましたように、むしろ本来の筋は国税地方税とはやはり一体であるべきではないかという基本的な考え方は持っております。しかしこれはやはり自治庁なり、ほかの関係にわたることでございますので、それにつきましての積極的な意見は差し控えた方が適当ではないか。少くとも国税についてはまだ法律が通っておりませんが、近く参議院で上るかと思いますが、その法律通りますれば、それに従いまして予約申し込まれた数量に関する収入につきましては、所得税関係では総収入金額に算入しないという形で課税対象外になる。国税については、法律通りますれば全然問題がないと思いますが、ただ基本的には一緒であるべきではないかというのが私の所見でございます。自治庁についてはどういう考えを持っておるか、できますれば自治庁の方に御見解を出していただきたい、こう考えております。
  16. 吉川久衛

    吉川(久)委員 お話通りでございます。自治庁についてただすべきことですけれども、税に関して政府の一貫した考え方というものがあるわけでございますので、今私が例としてお尋ねした問題については、だいぶ与党内に反対もございまして、米の予約米についての減税措置は依然として続けることにはなったのですが、そういう考え方政府の中にあるのですね。ですからこういったことは今度は皆さんの方の関係農業所得の見方に関連をしてくるので、あらかじめ含んでおいていただきたいと思います。  それから今地方で非常に問題になっておりますのは、もとの話に戻りまして、農業所得のつかまえ方でございますが、統計調査の資料は、これは国の機関でございますので、これを私は取り上げるべきだと思うのでございますが、先ほど長官のお答えのように、だいぶ自信を持っておいででございますが、実際には税務署調査をしたものと、統計調査機関調査をしたものと数字相当の開きがございます。これはやはり統計調査数字を尊重すべしという考え方を私たちは持っておりますが、また一部には税務署数字を確定する場合には、農協等農業団体意見を入れて決定をすることが妥当ではないかという考え方もあるのでございますが、農業所得のつかまえ方についての寄りどころはどこに求めるべきかということについて、長官の御所見を伺いたい。
  17. 北島武雄

    北島政府委員 税務署といたしましては、いわゆる坪刈り調査、あるいは在庫米調査坪数調査等によりまして、収獲量についての独自の調査はいたしております。しかし昭和三十年の閣議決定によりまして、農林統計調査機関の作成する市町村別当り収穫量を尊重して妥当な課税標準基礎となる収穫量決定する、こういう趣旨もございます。実際に当りましては、いわゆる作報収穫量相当尊重いたしております。ただ作報統計指定統計でございますので、そのまま見ようということはなかなかむずかしいわけでございます。私どもでも独特な調査はするとともに、作報調査相当尊重いたしまして、収穫量決定いたしておる次第でございます。
  18. 吉川久衛

    吉川(久)委員 私は作報調査基本にして、それから農業団体意見も聞いて基礎をきめていただきたい、こういうふうに希望をいたします。近年政府の施策よろしきを得てか、均衡を欠くことなしに農業生産はかなり上昇をいたしております。しかしながら、反収は飛躍をいたしましても、個人所得はきわめて零細、これは世界的に見てきわめて低い状態にあることはよくおわかりだと思う。四五・五%の農民が総所得の中に占める比率は二二%だといわれている。この低さを見てもやはり日本農業保護していかなければならないことはもう宿命的なものでさえあると思うのです。こういう低い所得のものにし課税する場合には、よほど農民納得のいくような御配慮をわずらわしたいと思います。これは私希望としてつけ加えておきます。  私の質問はこれで終ります。
  19. 中村寅太

  20. 石田宥全

    石田(宥)委員 長官農業所得税の問題についてお伺いしたいのでありますが、三十二年度の農業所得税の総額はどれくらいの額になっておりますか。前年度と比較してどの程度伸びになっておりますか。
  21. 北島武雄

    北島政府委員 昭和三十一年分課税所得金額は三百八十億でございまして、この税額は六十七億五千万円でございました。昭和三十三年分農業所得数字は、ただいま確定申告の期間中でございまして、まだ申告が終えませんので、集計の時期ではないのでありますが、予算といたしましては三百五十五億という所得の見積りをいたしております。三十二年分課税所得見込み金額は三百五十五億円でありまして、税額といたしましては約五十億円を予算上見込んでおります。
  22. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと所得相当に下っておって、税収見込み相当下っておるということでありますが、ところが地方実情を見ますると、税額は前年度よりはるかに上回っておるのであります。所得が下れば税収見込み額が下るのは当然なんでありますが、おそらくこの見込み額をはるかに上回ったものが上ってくると思うのであります。この点について実はお伺いしたいのは、国の税収見込み額と見合って、やはり国税庁としては各国税局に対し一定ワクをおろしておるのではないか、また国税局は各税務署ごとに一応の責任額割当をやっておるのではないかという疑いがあるのでありますが、この点を伺っておきたい。
  23. 北島武雄

    北島政府委員 国税庁におきまして全国国税局幾ら税額を出せ、あるいはさらに国税局税務署に対しまして幾ら割当をするというようなことは全然いたしておりません。往々にしてそういうような誤解を受けますことは、税務行政としても非常に注意しなければならぬと存じております。私どもといたしましては、幾ら徴収しろ、幾ら賦課しろというような割当課税は絶対にいたしておりません。
  24. 石田宥全

    石田(宥)委員 実はそういう疑いを持たれる事実があるのであります。これは新潟県内で起った問題でありますけれども、ある税務署長農業所得税についての説明会出席をいたしまして、ただいま長官説明されたように、所得が下回っておるので農業所得税は減額になる、こういうことを、やや数字までほのめかして強調いたしたのでありますが、これはその後に国税局における署長会議出席をいたしまして帰って参りますと態度が変って参りました。それからもう一つの署の署長署長会議の前に反収についても大体内示をいたしまして、前年と変りがないということを説明会説明をいたしておったのであります。ところがやはり署長会会議の後になりますと全然態度が変りまして——前年度よりはるかに増税となり、また反収も上って参っておる。長官はそういうワク考えておらない、こうおっしゃるけれども、われわれはこういう具体的な事実から推定いたしまして、やはり署が実情に即して現山犬の事態を把握して考えておったものを、国税局なり国税庁なりが一つ標準を示してそれを修正せしめておる事実があるのではないかということを考えておるのでありますが、そういう事実についてもう少し詳しく御説明を承わりたい。
  25. 北島武雄

    北島政府委員 国税局といたしましては、各税務署間のつり合いがとれる  ことを第一義に考えております。国税庁といたしまして、各国税局間のアンバランスはないか、それから各国税局におきましては各税務署間のアンバランスはないか、しかも全体としてモデレートであるか、これが私どもの一番の関心事であります。従いまして署長会議等によりまして、国税局において全体のバランスを見ておるわけでありますが、そのバランスを見る場合におきましては、あらかじめエキスパートを派遣いたしまして実際に調査をし、それに基いて税務署調査内容を一応聞くわけであります。そうしまして全体的に見まして少し過強ぎるという署は低目に、どうしてこう高くなるだろうということで下げることもございます。逆にまた著しく低いようなところは、全体のバランスを見る上において見直す必要はないかということで、全体のつり合いをとるということはいたしております。しかし全体といたしまして幾ら金額を割り当てるという  ようなことはやったことはございませんし、現にまたいたしておらない次第であります。ただ私どもといたしましては、納税者の心理も十分に尊重しなければならないと思います。えてして、私もやはり国税を離れておりましたときに、どこからともなく、税務署では割当をやっておるのだということを、聞くのであります。そういうやり方は私どもとしてはとるべきではない。納税者の方といたしましては、これは無理もないことでございますが、実際はつり合いをとるというのが目的でございまして、幾ら徴収せよとか幾ら賦課せよというようなことは絶対にいたしておりません。
  26. 石田宥全

    石田(宥)委員 各署ごとの、各局ごとのアンバラスを調整するというお話でございますが、ここに問題があるのじゃないですか。そういう農村所得というようなものは地域的に著しく差があるはずであります。また耕作面積別で、すなわち農家経営階層別相当な差異があることは、これはもう常識で長官もおわかりだと思うのです。ところが、やはりたとえば収量のパーセンテージ、あるいは価格パーセンテージ必要経費パーセンテージというように、一定一つ尺度があるのじゃないか。その尺度によってこれを調整をされるということになると、かえってでこぼこが大きくなる可能性も出てくるわけなんであって、むしろそういうことがいわゆる一つワクを下げることと結果においては同じことになるんじゃないか、こう思うのですが、そういう今申し上げたような反収とか価格とか必要経費とかいうものの指数上昇というようなものを、やはり一つ標準として調整をされるのではないか、どうですか。
  27. 北島武雄

    北島政府委員 先ほども申しましたように、各税務署間のつり合いをとることが第一でございますが、農業所得につきましては、御指摘のように土地によって非常に違いがあるものでありまして、非常にむずかしいのであります。そこが他のたとえば営業とは相当違う面もあろうかと思われますが、そういう事情を頭に入れた上での、果して全体のつり合いがとれているかどうかということを、国税局の直税都においては注意しておるわけであります。決して全体として幾ら割り当てるというようなことは毛頭いたしておらないのでありますが、そのような印象を与える、とすれば、私どもは非常にやり方はむずかしい、これはもうなかなかむずかしい問題である、こういうふうに考えております。要は結局つり合いがとれること、てんでんばらばらに各署が思うようにいたした場合におきましては、納税者間の不権衡を生ずる、これは私ども最も禁物なのでございます。ただ結局地方々々の実情に応じてバランスがとれているかというねらいどころがむずかしいところなんです。しかし決して全体として割当をしているというようなことは絶対にございません。
  28. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほどから伺っておるように、指数上昇というような点で一つ標準を腹の中え置いて、そうしてやはりそういうこの指数上昇率というものから話をお進めになると、結局下の方では一つワクを下げたと同じ結果に受け取らざるを得ないのではないか、こう思うのですがどうですか。
  29. 北島武雄

    北島政府委員 そのような印象を与えないように前々注意いたしておるのでありますが、もしそのような印象を与えるとすれば非常に遺憾でございます。しかし決して割り当てるというようなことは全然いたしておりませんので、何とぞ一つ御了承願いたいと思います。
  30. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは次に、先ほど吉川委員からも質問が行われたのでありますが、この所得標準の作成の問題でありますが、一昨年まではいわゆる中唐標準というものをお作りになっておったわけでありますが、昨年の閣議の了解事項ということで、これを基準町村を指定し、さらにその中正で有資格者標準というものをお作りになっておるようでありますが、この以前の中庸標準を有資格者標準に改められた理由はどういうところにありますか。
  31. 北島武雄

    北島政府委員 技術的な問題でありますので所得税課長より十分御説明いたさせます。
  32. 亀徳正之

    亀徳説明員 技術的な問題でございますので、私から答弁させていただきたいと思います。  実はこの局の——先ほど長官がおっしゃいましたように、ある程度このつり合いをとって見なければいかぬというときに、局の作業といたしましては、ある程度基準的な町村の状況はどうかという数年をしっかり調べるということが前提になるわけでございまして、これは実は基本的にはやはり基準町村を中心によく調べて、そうしてそれにつり会言いをとったような標準ができるということがやはり望ましいわけです。今御質問の点は、特に関信局で、今までは中庸標準を示しておったのを基準町村に変えたということでいかにも根本的に考え方が変ったように、関信局に該当するものにつきましてはお感じになったかと思いますが、これは全国的にはそういった考え方を変えたということは決してないのでございます。やはり基本的には基準町村というものをよく調べて、全町村をこまかく調べるということは不可能でございますから、それを中心にいろいろつり合いをとっていく。ただおそらく御疑問になりました点は、局の段階あるいは署の段階でいろいろ農業団体の方の御意見を聞く際に、その聞き方として基準町村についてはこうなっておるという説明の仕方もございましょうし、また一般的な村の全部の標準の平均的なところ、姿をとりますとこういうところになる、とこういうふうに説明の仕方か変ったということで、やり方の作業そのものは基本的には変ったのではない。ただ説明の仕方として、今こまで中庸標準というものによって説明を聞いてそれになれておった。急にその基準町村一本の考え方で、言うと前とのつながりがよくわからぬというようなことであるいはお困りになっている点があるのじゃないか。その点については、具体的には、これは局の各農業団体の方々の意見をお開きし、こちらの案を提示するときの説明の仕方の違いでございます。やり力そのものは従来から決して変っておらないのであります。ただ前とのつながりにおいて、また平均的なものを見せてもらった方が前からのつながりがよくわかる、その意味でそういった説明もしてほしいという御希望ではないかと思う。それで国税庁として標準の作成の仕方なり考え方を根本的に変えたという点は一切ございません。この点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  33. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは昨年から有資格者標準に改めるということの閣議の了解事項、としてこれを閣議にはかったということでありますが、これは従来不統一であったものを統一するということではないかと思うのでありますが、それはどうなんです。
  34. 亀徳正之

    亀徳説明員 有資格者標準に切りかえるというようなことを閣議決定で取ったというような事実は一切ございません。ただ関信局が常に会議でいろいろ申しておりますことは、非常に最近納税者が少くなかった、非常に納税者の数が少いところに一々標準を作るのも大へんだし、そういう場合ではたとえば納税者が十名とか十五名とかいう非常に数が少くなっている事例があるわけです、それらのところまで一々一般的な標準という格好で作るべきかどうか、そういうところはもうたった十名なり十五名の人の話ですから、それらの人たちに限った標準なり、あるいは極端なことをいえば、場合によっては個別課税ということでも話が済むのじゃないかということで、非常に納税者が少くなったところについては、従来通り標準課税方式でいいかどうかという疑問を持っていることは事実でございます。しかし納税者の非常に多いところ、これはやはり標準課税をせざるを得ないのじゃないか。今言ったように基準町村を設けてそこをしっかり調べて、ほかとつり合いをとりつつ調べるという点は変りないのですが、ただ説明の仕方が基準町村を一本にして具体的にこまかく説明をするか、あるいは平均的な姿で説明をするか、説明の仕方に変更がありましたために、あるいはよくわかりにくく御迷惑をかけているという点があると思います。
  35. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に基準町村をお選びになる場合に、これは徴税者の立場からは当然のことかもしれませんけれども、一税務署管内の最も条件のいい、経理内容の優秀な町村を御指定になるようでありますが、これは一方的に税務署がそれを決定するということは非常に誤解を招くもとになると思う。これはやはり各税務署ごとに農政対策協議会であるとか、農業団体農民団体、市町村長等が参加したいろいろな団体があるのでありますから、そういうところと協議の上で、ほかに説明をしても一般の農民納得のできるような町村を定むべきではないかと思うのです。従来はこれは署の方で一方的におきめになっておるようでありますが、これについてお考え長官に伺いたい。
  36. 北島武雄

    北島政府委員 田畑の所得標準率の作成につきましては、御案内のように山間部、中間部、平坦部、この三つに分けて、山間部と申しますと耕地率が三〇%以下、それから平坦部は耕地率七〇%以上、その間に中間部が入るわけですが、これこれの各地帯につきまして、それぞれ中庸と認められる一市町村を基準市町村として調査いたしておるわけであります。その中で特に成績のいいものを選ぶという趣旨ではございません。ただいまも申しました山間部、中間部、平坦部においてそれぞれ中庸と認められる町村を選ぶということになっております。これにつきましては、もしその前提につきまして御意見がございますれば、農業団体等からお申し出があれば、いただいて、十分反省いたしたいと思います。ただ事柄といたしましては、税務署といたしましても標準的なものを選ぶという意味でやっているのでありまして、決して内容のいい町村を選ぶという仕方はいたしておりません。
  37. 石田宥全

    石田(宥)委員 長官実情をよくおわかりにならないのですね。山間部、平場地帯、中間地帯というようなところは、局などで参考にお調べになるのはいいかもしれないけれども、大体一税務署が山間部も持ったり、平場地帯も持ったり、その中間地帯も持っておるというようなところはあまりないのですよ。ことに新潟県の平場地帯などでは、もう幾つもの署が全部平場地帯というようなところが多いのでありますから、そんなものに山間部、平場地帯、中間地帯というような標準は何の役にも立たない、これは参考にならないのです。ですから問題は、今長官の答弁のように、その基準町村を定めるに当って、一方的にこれを決定することは当を得ない場合が多いのではないか。やはりその税務署管内の農業団体農民団体、市町村等の意見を十分聞いて、両者の間でこれを決定するということが妥当なものではないか、こういうことを私は申し上げておるのであります。
  38. 北島武雄

    北島政府委員 税務署の選びました標準町村につきましていろいろ御批判もあろうかと存じます。その御批判がありました場合におきましては、税務署におきましても十分反省の資料にいたしたいと思います。ただ今後につきまして、すべてあらかじめ事前に御相談するかどうかという点につきましては、一つ検討させていただきたいと思いますが、もしかりに従来の税務署の選びました標準町村なるものが、市町村や農業団体の方々の目からごらんになりまして工合の悪い場合は、おそらくその都度そのお話があると思います。それに従いまして翌年から十分御意見も承わってやっておることと私は存ずるのでありますが、もしこれに反しまして、市町村や農業団体の御意見も無視して、一方的にやるというようなところがございましたら、私も十分注意はいたしたいと思います。御意見はやはり十分承わってやるべきだ、こういうふうに考えております。
  39. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に所得標準の取扱いが必ずしも一定しておらないようであります。ある署においては、標準決定した以上、その標準によって算術的に計算して課税を行うのだ、こういうことでかなり強硬にやっておるところもある。またある署では、標準標準であって、各個人個人の課税の場合は別に考慮し計算するのだ、こういうふうに必ずしも一定しておりません。こういうことははなはだ当を得ない処置だと思うので、この点についての意見を伺っておきたい。
  40. 亀徳正之

    亀徳説明員 今の御質問実情が私ちょっとつかみかねるのでございますが、標準課税でございますと、一応原則的には標準がきまったらそれで計算するという建前でいくと思うのであります。ただ特別経費の問題をあるいは御質問になっておるのか、その辺がちょっとはっきりしないのですが、一応標準がきまればそれで計算するのが建前であります。あるいは、納税者の非常に少いところに個別課税という考え方を持ち込む場合があるかと思いますが、標準課税建前としては標準によって御申告される方に御納得をいただいたわけでありますから、大体標準がきまりましたらそれで計算して御申告いただくというのが一般の事例でありますし、大体そのようにわれわれは了解しておるわけであります。
  41. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは課長もよく実情を知らない個々の農家、あるいは団体交渉等の場合に、特別経費は特別経費でもちろん特別に引くのですから、標準以外のもので、これはわかり切った話です。そうではなくて、個人々々の交渉になると、標準標準なので、それは参考にすればよいので別だ、こういうふうにやる署が事実あるのです。もしおわかりにならないとすればお調べになれば出て参ります。そういうことが今後あってはならないのではないか、どうでしょうか。
  42. 亀徳正之

    亀徳説明員 標準課税建前でございますと、今おっしゃるように、個々に標準でやるという建前でございますから、標準に基いて計算するのが普通でございます。ただ、おっしゃっておる事項と私食い違って申し上げておるかとも思いますが、どうしてもおれは標準はいやだ、こういう個人の力がおられる、また同時にどうしてもおれは標準ではやらないといったときに、お前どうしても標準でやらなければいかぬという筋合いではないのでございますが、そこは従来とも円滑に標準課税で、むしろそれで合理的に課税が進められておりますし、標準がきまったら、それに従って申告してもらうというのが普通の姿なのでございます。どうしてもおれは標準申告するのはいやだ、こうがんばられたときに、お前どうしても標準申告しなければいかぬということは、別に法律にも書いてあるわけではございませんので、そういった場合にまで、お前標準でなければならぬということはできないかと思います。しかしおよそ問題がなく、農業団体の長の方のいろいろな意見を取り入れて、そしてある程度確定した標準でございますので、大体それに従って御申告いただくということが、お互いにスムーズに申告を済ませるゆえんではなかろうか、こう考えるわけでございます。
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 税法建前としては申告納税でありますから、そういう点からいうと、標準を作って調整することは間違っておる。それを大方の農民納得をすればこそ標準というものは生きるので、もし納得をしない農民には自主申告をやるのが建前だと思うのです。そういうところが今の課長の答弁じゃどうも少しはっきりしないのですが、やはり納税というものは申告納税という建前を貫く、そういうことを中心に、立法の精神に従って指導をされるべきではないかと思うのですが、どうですか。
  44. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま石田先生の御意見、私は全くその通りだと思います。現在の申告納税制度のもとにおきましては、納税者の方が個々に御自分の収支をおつけになってそれに基いて進んで税法に従って申告するのが建前でございます。従いまして田畑につきまして、他の所得、たとえば商人などと違いまして、税務署で作成して市町村長あるいは農業団体の長の方々とお話し合いして、これでやりましょうというのは、実はほんとうは私は邪道だと思います。しかし農家の方は、御承知の通り、記帳ということは本来無理でございます。それからまた農業所得につきましては、地域によりまして、地味それから作柄等、大体その付近においては標準的なものがあるわけであります。収入におきましてもまた経費におきましても、大体標準というものがあるわけでありまして、一つモデレート標準率でやった場合におきましては、かえって納税者間のつり合いがとれるという面もございますので、従来から田畑の所得標準というものを作ってやっておるわけです。しかしこれにつきましては、もちろん本来の理想といたしましては、農業の方でも青色申告を作って、ありのままを御申告していただくのが筋ではございますが、現在におきましては、ただいまのような指導はやむを得ない、あるいは窮余の一策である、こういうふうに私は考えております。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいまの長官の答弁の中にありますように、実は農民も全都青色申告をするようにやるべきだと思う。ところが事実記帳能力というような点から、なかなかこれは行われない。そうしますと青色申告をやっておるのはきわめて部分的ではないか。これは昨年の例でけっこうですが、農業所得税納税者のうちで、青色申告をやっておる農家が、パーセンテージでどの程度いっておりますか。
  46. 北島武雄

    北島政府委員 農業所得者として課税されている農家の方は約六十万ございますが、全農家として約一割でございます。そのうちで青色申告の方は一割弱、ただいま数字——記帳者は七、八であろうかというふうに記憶いたしております。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 この青色申告の場合ですが、これは長官一つ伺っておきたいのですが、青色申告をやる場合に、農家におきましては今御答弁の通りで、大よそ一〇%あるいはそれ以下、そういうものが行われておるとすると、これは非常な弊害を生んでいる。なぜかというと、その青色申告をやりますと、家族専従者控除という特典がありますから、この特典があるために記帳がやや放漫になるというか、粗雑になるというか、多少必要経費くらいは少く見積ってもよかろう、所得が少し上回ってもよかろう、専従者控際でぐっと落ちて課税対象にならないのだから、そういう考え方が先入観になっておる。ところが税務署やあるいは国税庁におきましては、そういう基本的な考え方のもとにできた青色申告というものを、普通の申告のそれこそ標準にし、参考にして必要経費は非常に少く所得は多くという資料に使われておる例があるのです。そういう点から考えますと、農業所得の対象農家は非常に少いとおっしゃるけれども、必ずしもそうではないのです。これは小、貧農村の多い地方あるいは多角経営の地方はなかなか所得では現われて参りませんから、対象農家に少いようでありますけれども、単作地帯に参りますと対象農家の数は非常に多いのです。そうして今申し上げたような弊害が現実にあるのですね。だから税務行政の立場からいえば、これは私は全部青色にするか、でなければ農村における、これは特別な法律でできておりますけれども、全然これをなくするか、どっちかにする力が私は徴税上公平になるのではないかと思うのですがどうですか。
  48. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま石田先生のお話の中にございました、青色申告者であるから特典がある、従って経費のつけ方もまあ少くつけているというふうな事例があるというようなお話でありましたが、私は果してそういうものかどうかということについては相当疑問も持っているわけでございます。青色申告につきましては白色申告と違いまして、恩典は与えてございますが、これは先ほど申しました申告納税制度の本来の建前からいたしまして、できるだけ帳簿をつけて、正確な収支を把握して、税法に従って御申告いただくという、現在の自主的申告納税制度の建前におきまして、その自主的申告納税を助長する意味において青色申告制度というものがあるわけでございます。従いましてこれに対して相当の恩典は与えておるのでありますが、ただいま先生のお話のように、青色申告なるがゆえに収入をたくさんつける、経費を少くするということかは、私は実際問題としてはいかがであろうか、こういうような感じがいたすのでございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこでこれは農業所得税と少し離れた問題になるけれども、一体青色申告がどの程度信憑性のあるものというふうに、長官考えておられますか。これは一般論です。
  50. 北島武雄

    北島政府委員 これは私に対しまして非常にむずかしい御質問でございます。私は青色申告をなさる方はほとんど全部信用いたしたいのであります。ところが実際に税務署におきまして、青色申告者の方の——言葉はちょっと語弊があるかもしれませんが、記帳指導というようなことでときどき回ってみますと、やはり帳簿におなれにならない方が相当多いようでありまして、これを健全なものに助長することにつきましては今後相当の努力を要すると思いますが、しかし第一線の報告によりますれば、年々言色申告者の記帳状況は、全体としてはレベル・アップしつつあるということでございます。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 農民の場合は耕作面積等がはっきりしておりますから、なかなか要領のいい申告はできないのです。ところが他の産業になりますと、二重、三重帳簿というのが常識なんです。おそらく二重帳簿、三重帳簿をやっていない事業者あるいは法人は少いのじゃないか。一昨年でしたか、関東信越国税局管内で青色申告で正当な申告と認められるものは六五%程度、四五%程度は不正な青色申告をやっているということが発表されたことがあるわけでありますが、そういう点から見て、農業所得税の場合は、特別にこれは考慮する必要があるのではないか、こう考えておるのです。  その点はその程度にいたしまして、時間の関係で少し結論を急ぎます。そこで今の農業所得税に当っては、しばしば統計事務所の数字が参考にされておるようであります。地方によっては作報の面積の把握の場合に、なわ延びの率をかけて、それをまた市町村で把握した面積に加えて、それを二で割って、これを使っている。こういうような事実がある。この作報数字というものを税務行政の面においては、どの程度に、どういうふうにこれをお使いになっているか。
  52. 亀徳正之

    亀徳説明員 作報調査は先ほど長官が申されましたように、これは特別の統計法でございましたか、その内容は、個々の少くともサンプルは秘扱いとされておりますし、また作報調査統計の性質上、全国的な規模にわたるほど精度が高まっていく。それから下になるほど精度が若干薄れてくるという性格のものであります。従いまして、この数字をそのまま使ったらどうかというような声も実はあるわけでございますが、それはやはりとるべきではないのではないか。それで及ばずながら、いろいろの御批判もございますけれども、先ほど長官がおっしゃいましたような、三千人足らずの人間ではございますが、それなりに苦労して調査もいたしておるわけであります。ただその際にたった二千人足らずの、非常に予算も乏しい中での調査でございますので、はなはだ不十分な点もありますので、そこで小さい規模の段階になれば精度が落ちると申しましても、やはりある程度統計機関数字でもございますので、それをなまに使うことはいかぬと思いますが、全体の傾向として、どの程度あるかというような調査と、われわれとの調査を比較検討して、それがひどく使う場合には、なぜここが違ったのだろうか、また同時に標準を開示いたしますような際に、農業団体の方、あるいは市町村の長に適切な御意見はいろいろお伺いするということになっておりますので、またそれらの御意見を伺った際に、なぜこういう違いが起ったかというような点をいろいろ反省して調整する。従いましてこれは各地方よくごらんになりますればおわかりになると思いますが、統計調査部と数字が若干違っておるところ、また似たところいろいろあるわけでございます。おそらくこれは作報調査に当っておられる方々も、下に行けば行くほどそういう矛盾があるということもよくおわかりだろうと思います。私も率直にそういう傾向があると思いますので、やはり建前はこちらの調査が一応中心で、その際にやはり有力な参考資料として参酌さしていただく。同時にわれわれの調査と食い違いがありましたときに、なぜだろうということを常にわれわれは反省して、そこの処理を適切ならしめたいというような格好で、作報の資料を参考とさしていただいておるような次第であります。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 作報数字を参考にされることは、ただ単なる参考ということなら弊害はないわけでありますけれども、どうも作報数字の中で面積を、すなわちなわ延びなど——これは県全体というような場合のなわ延びというようなものは、これは作報数字としてはある程度納得ができる。しかしそれを徴税事務にお使いになるときに、どうも反収の計算の場合に強くこれを参考に取り入れる、しかも必要経費等については、どうもこれをとらない、こういうような傾向が強いのですが、そういうことはありませんか、どうですか。
  54. 亀徳正之

    亀徳説明員 収穫の方は作報でございますが、経費の方はあるいは生産費調査の話をしておられるかと思いますが、経費の問題はまた別に触れるといたしまして、収穫につきましては、先ほど面積の話が出たわけでございますが、これは作報調査の性質上、一応実際の一反当りの収穫量を出しまして、それにサンプル調査で、面積を逆に抑えていく、それをかけて全体の収穫量をつかまえるということで、農林省の方は作業しておられるわけであります。われわれの方は個々の納税者の反当り標準課税でございますので、個個の農業者の耕作面積がわからなければ仕事ができない。そこで個々の納税者の耕作面積は、一応農業委員会等にあります台帳面積による。従いましてこれらの面積と作報で出しました面積の食い違い、これを俗になわ延びとよくいわれておりますが、なわ延びというような表現を使いますと非常にぎらぎらしておりますが、これは要するにその村なり何なりの収穫量をどう見るかということであろうと思うのでありまして、われわれもそこになわ延びを機械的にそのまま課税のベースに持っていくというような考え方を決してとっているわけでございません。結局その村なり何なりの収量を一体どう見るか。われわれの方は台帳面積というものによらざるを得ないために、そこに自然一反当りの石数というものは、作報考えておられます一反当りの収穫量というものとはベースが違いますために、その間に誤差はあろうかと思います。それだけにまた一方作報のサンプル調査による面積というものもそのままとるということは、非常に危険ではないか。同時に作報数字を参考とする。その見方とあまり食い違ってもいかぬわけですが、しかしその作報の面積そのままではこれは昨年のなわ延びという問題を越えまして、作報のとっている面積、特に下の方の面積というものは、サンプル調査の結果のものでございますので、必ずしもそのままとり得ないのじゃないかということでわれわれもそこは機械的に作報数量をそのままわれわれの参考にするということは危険であると考えているわけでございます。
  55. 石田宥全

    石田(宥)委員 もちろん必要経費という表現をしたのはこれは徴税事務の必要経費なのであって、統計の面では生産費調査、これは間違いないですよ。そこでなわ延びというものを今申し上げたように国全体、県全体では、これは統計事務所で発表しております。どの程度正確なものであるかということは別といたしまして、なわ延びというものは、これは必ずしも平均しているものではない。国全体、県全体で、どこの町村も一律にあるわけでない。ことに土地改良をやった地方などについては、なわ延びなんというものはあり得ない。これはあと統計部長に伺いますけれども、そういう性格のものなんです。ところがどうもこれは統計事務所の方では常に平均的に見ている。これは取扱い方が統計統計という建前からだからやむを得ないかもしれませんけれども、またなわ延びがあれば、反収が下るというのが常識なのです。面積がふくらめば反収は下る。ところが面積もふくらみ、反収も上っておるというような統計も出ておるのです。しかもそれが平均的に出ておるというような問題もあるのです。だから、この問題の取扱いというものは非常に重要だと思うのです。そこで結論的に伺いたいのは、各税務署で基準町村をきめて、その基準町村内で一体どの程度——標準といえば、一件調べてそれが標準だ、二件調べてこれが標準だなどということはあり得ないと思うのです。相当パーセンテージ調査されなければ標準とは言い得ないと思う。どの程度パーセンテージでこれを標準と取り扱うのか。一定の取扱い方針があると思うのですが、承わりたい。
  56. 亀徳正之

    亀徳説明員 これは基準町村に先ほどおっしゃいましたように選びますと、その町村につきましてはやはり坪刈り調査なり、これは局によってもいろいろ特色がございますが、関信局でありますと、やはり在庫米調査の方に計だいぶ重点を置いておりますが、やはりこういった個々の収継母調査の件数を相当ふやしております。それで、一つの町村で、不十分ではございますが、四十件ないし五十件程度調査をやっております。大体新潟の平場地帯のところではそう違いませんが、やはり山間部と平坦部を双方持っておるような税務署もございます。そうしますと、なかなか地帯ごとにある程度調査していかなければならぬということで、地帯の性格に応じて調査の件数も必ずしも今申した四十件ということを機械的に押しつけておりませんが、とにかくほかの町村にはとても手が回りません。件数が非常に少うございます。基準町村だけはほかの町村以上にそれだけ手を加えて、やはり実態をできるだけ調査するということに努めております。
  57. 石田宥全

    石田(宥)委員 その町村によって、その地帯によって、必ずしもそう正確にワクをはめるということを私は要求するわけではないのです。問題は、その対象として調査される農家の選定の問題です。これは税務署が一方的にきめております。比較的経営内容のいい、能率のいい農家というふうに一方的にきめておる。そういうことが、今農業所得課税の問題でいろいろ紛糾を生ずる一番重要な原因ではないかと思うのですが、この点はどうお考えになっておりますか。
  58. 亀徳正之

    亀徳説明員 基準町村の調査に際しましてどのような農家の方を調査の対象に選びますかということは、実は非常にむずかしい問題であろうかと思います。やはり標準標準でございますから、あまり特定の人たちに限定するということは標準の性格が失われるので、本来おもしろくないと思うのでありますが、ただ率直に申して、やはり国税の立場から申しますと、全然課税の対象にならない農家という方々は、主として調査が経費の調査でございますから、肥料をどの程度お買いになったかというようなお話から、資料だけでなしに口頭でいろいろお聞きすることが多いわけです。そうしますと、どうしてもそういうお答えのできる方々が限定されてくる、またそういう方々が自然課税対象の農家でもあるということで、結果としてどうしても課税の対象になっております農家の方々が選定せられやすいということはあろうかと思うのですが、故意にいいところだけを選んで聞くということはやっておりません。またある程度こういった経費の内容その他の説明がよくできる方を選んでいろいろお聞きする場合が多いと申した方が正確だと思います。大体これは毎年いろいろ繰り返してやっておることでございますが、おっしゃったようないろいろ御不満もあろうかと思います。大体それで各地ともある程度作業を進めておるわけであります。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 今課長が言われたような事情もありましょうけれども、それを税務署の方で一方的に調査するところに、納得の上で標準を定め、納得の上に税金を納めるということのできないポイントがあると思う。この点で、どういう階層の、どういう経営内容農家ならば、これを標準作成の資料になるかということについての基本的な打ち合せがなされていない、そういうところに紛糾の重大な原因があると思うのですが、どうですか。
  60. 亀徳正之

    亀徳説明員 率直に申しまして、われわれの方も調査の段取りがいろいろあるわけであります。必ずその調査の対象とする農家を、事前に打ち合せて了解をつけなければ調査できないということになりますと、これは大部分のところでは問題ないですが、特定のところではここはいかぬというようなことでいろいろ抵抗を受けましたり、いろいろな事態もありますので、どうしても了解を得なければそこが調査できないという建前にしてはわれわれの方の調査は一歩も進みませんので、おっしゃったように、了解を得なければそこの調査ができないというような建前ではわれわれの作業は非常に困難かと思います。ただいまいろいろ各地の状況を見ておりますと、たとえば坪刈り調査その他の場合に、事実上市町村の方々なり農業団体の方々もついておられまして、状況もやはり聞いておられるというような現状はあるわけでございます。それを制度的に、どうしてもそういった人たちが立ち合わなければ調査ができないとか、事前に了解を得なければ調査ができないという建前にすることは困難ではなかろうか。ただ実情は今言ったように円満に進んでおりますようなところは、市町村の関係の方々が事実上来ておられるというような状況はあると思います。それを建前にするということはやはり無理ではなかろうかと考えておるわけであります。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 それが一番大きなガンなんですよ。  そこで話を進めますが、そういたしますと、先ほど来伺っておりますように、統計事務所の数字というようなものは参考にすぎないということでありますが、従来の課税標準作成の基礎は実額調査にあるのだ、こういうことをさっき長官も言っておられるのです。その実額調査基礎について今伺っておるわけですが、その実額調査基礎というものが、今言ったように、一方的に選定をされるところに一つの問題がある。それからもう一つは、それがどの範囲に行なっておるかということが一つ問題です。先ほどの答弁によりますと、対象農家の四〇%程度、しかし地方々々ではっきりしたことは言えない、こういうことです。これはそのものずばりで申し上げますが、私のところの新潟県の新潟税務署管内の基準町村は新潟市の以前の両川村をとっておるのですが、なるほど反収については坪刈りその他いろいろやったでしょう。これは二十七戸やっておる。ところが必要経費調査はたった一件しかやっていない。たった一件の農家の聞き取り調査をやって、そうしてその必要経費幾らだという数字をあげて、これが標準だ、こういうことは一体何の権威がありますか。しかもそれを動かすことはできない、われわれは確信を持って云々、こう言っておるのです。私は全国至るところにやはりそういう事実があるのではないかと思う。その結果として現われた今あげた両川の事例ですが、建物の償却をたった九円上げておる。ああいうふうに雨の多い地帯であり、雪の降る地帯の建物の償却がたった九円、農業所得の対象になるような経営をやっておる農家の建物の償却が九円だ、こういうことなんです。これはもう常識から判断してどうしても了解ができない。全国至るところでやはりそういうようなことをやっているのではないですか、どうですか。
  62. 亀徳正之

    亀徳説明員 今の町村は基準町村でございますか。
  63. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうです。
  64. 亀徳正之

    亀徳説明員 一件は率直にいって少し少いと思います。たとえば全然新たなところに作業をいたしますという場合には相当件数やらないとなかなかわかりませんですが、毎年心々調査いたしておりますものですから、大よその傾向なり大体の内容はわかっておりますが、ともかく収穫量につきましては毎年々々相当大きな違いがあるではないかということで、率直に申しまして収穫量調査につきましては相当件数を多くいたしております。経費調査は、一件の調査に三日ないし四日かかる事例も多いものでありますから、期待に沿うほどの件数はなかなかやり得ない。しかし一件はちょっと少いとは率直にいって思いますが、限られた中ではございますが、いろいろ前年の実績と比較しましたり、またその年の状況も十分考えながら結局最終的な結論を出すわけです。その際に農業団体の方方もこれだけの経費はかかるというようなことを別な面からおっしゃる、そういった場合はどうなるかというような調査なり、感度を得るための調査をまた別個にやります。率直にいって一件だけできめておるというわけではなかろうと思います。ただ件数が非常に少いではないかということは、われわれの能力の範囲内で最善を尽すということしかお答えできないわけです。しかし調査時期は非常に繁忙でございますが、その中で許され得る余力は全部出しまして、収穫量調査、経費調査をやる、その際に先ほど申し上げましたように収穫量調査の方はどうしても毎年変る話でございますし、非常に重大な問題でございますので、率直にいって経費調査よりは収穫量調査の方が件数は多くしてございますが、しかしあらゆる余力はその調査に全部注いで努力しておる次第であります。
  65. 石田宥全

    石田(宥)委員 年々やっておるからといって、年々やはり農家の経営内容というものは変っておる、たとえば農機具の問題、農薬の問題というようなものは年々変化するのです。それをたった一戸調査したからそれで完璧だ、こういうようなことは暴論もはなはだしいのです。ことにここでは畑があるのです。畑の回転率もずいぶん論争の種になるところですが、畑の回転率についてはたった二戸調べておる。ことに畑作については、蔬菜や果実のような価格の不安定な作物が多いのです。そういうところで二戸だけ調べて畑の回転率の数字を出す、こういうよう乱暴なことをやりながら、なおそれを固執しておるのが現状です。全国的にこういうような乱暴な調査です。手不足だからというお話もありました。その通りでしょう。しかもそれを一たんきめると、これは動かし得ないものとして強制しようとしておる。そういう事実が明らかになった場合に、一体どういうふうな措置をとるべきか。農家側では農民団体、農業団体その他で相当広範囲にわたって資料を集めて、決定数字を持っておる。しかるに税務署の方では今申し上げたような貧弱な調査資料に基いてその標準を作成しこれを強制していく、ここに混乱のもとがある。そこで長官に伺いますが、徴税官というものは今日いかに国民から恐れられておるか、税の負担がいかに苛酷であるかということは私から申し上げるまでもないのですけれども、今申し上げましたような実額調査基礎に立って、あえてこれを強行しなければならないとお考えになりますかどうか。
  66. 北島武雄

    北島政府委員 税務官吏の心構えについて石田さんから触れられたわけでございますが、私どもも税務官吏というのは実にむずかしい職業たと思っております。私も個人的なことになりますが、内国税を約十年やっておりますけれども納税者間の負担の公正平しかも適正な課税をしようという場合において、これを指導する局の幹部は実に苦労いたすわけであります。ただ私の方針はできるだけ納税者の方々の身になって、おっしゃることはよく承わって、その上でまた税務署側の所信はやはり述べて、そうしてお互いに十分な了解のもとに納得した課税をしていきたい、こういう方針に変りございません。この方針は局長会議におきましても、直税部長会議におきましても申し伝えておるところでありまして、ただ個々の具体的な事例につきまして、ただいま御指摘の個所が果して無理な態度に出ているのかどうかにつきましては、また具体的に承わりまして、一つよくその事情調査の上、もし無理な点があればこれを是正させるのにやぶさかでないのでございます。
  67. 石田宥全

    石田(宥)委員 従来も標準決定に当っては農業団体農民団体等の話し合いの上、いわゆる納得納税ということで納得を得てやる、こういう基本方針を持っておられたのでありますが、今の長官の答弁によると、その基本方針には変りはないということですね。これは間違いありませんか。
  68. 北島武雄

    北島政府委員 さようでございます。私どもはあくまでも納税者の理解のもとに適正な課税を行うべきだ、こう考えております。
  69. 石田宥全

    石田(宥)委員 その基本方針に変りがないとすれば、今申し上げたような貧弱な基礎資料に基く実額調査をとってこれを強制しようとする、こういう税務署、長の態度は果して妥当であるかどうか、どうお考えになりますか。
  70. 北島武雄

    北島政府委員 具体的な事情は私よくわかりませんが、もしかりに先生のおっしゃるように、納税者の言うことを聞かないで一方的に押しつけるというような態度がありますれば、これはまことに遺憾でございます。私どもは決して一方的な押しつけ課税をいたすつもりはございません。ただし税務署にはやはり税務署だけの理由もあるわけでございますから、納税者側におきましても虚心たんかいに税務署の言うことにも一つ耳をお傾け願いたい、こういうふうに思うのであります。
  71. 石田宥全

    石田(宥)委員 それを今話し合いをしておるわけです。話し合いをしておって、税務署署長納得しがたい、農民側の資料が正確じゃないか、こういうことで押し合いをやっておるわけです。しかし今私が申し上げたようなことが事実であるとするならば、これは考慮しなければならないという長官の答弁ですが、そういう事実が次から次へと出て参りました場合に、一体これはどういうふうな措置をとるべきであるか。かつて農業所得税標準決定に当って税務当局の不手ぎわから再調査をやった事例もあるのでありますが、そういう場合には、当然農民側の提示する資料の正確度と税務署側の主張する資料の正確度を比較検討して、再検討しなければならない性質のものであろうと思いますが、どうですか。
  72. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま全国的に税務署におきまして、所得標準率につきまして、市町村あるいは農業団体等とお話し合いをいたしております。おおむね大体平静に目下妥結しつつあります。ただ御指摘の新潟県につきましては、昨年特に収穫高がよかったことも原因しておりましょう。が、先生のお話のようになかなか妥結に至らないということも聞いております。私もその点非常に心配しているわけでありまして、できるだけ早く両方で十分に話し合った上で妥結の道に至ることを私は期待しております。
  73. 石田宥全

    石田(宥)委員 今私は具体的に聞いているのだから、もう少し具体的に答えてほしい。だれが見ても農民側の資料が正確であって、税務署側の資料が正確度を欠いておるという事実があれば、当然これは再調査をしなければならない事案ではないかということを聞いておるのです。しかもそういう事実が次から次へと現われてきた場合に、どうこれを処理されるかということを聞いておるのです。
  74. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま先生のおっしゃるように、だれが見ても税務署が無理であるということになれば、これはいかぬわけであります。どなたが見ても納税者のおっしゃることがもっともであり、税務署のいうことが無理である、こういう事情がございましたならば、私どもは是正いたすわけであります。
  75. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこでどうしても地方的に税務署側と農民側との間に、了解がつかない、納得ができない、そういう場合に、その資料を国税庁なりあるいは国税局なりへ取り寄せてこれを再検討すべきであると思うが、どうですか。
  76. 北島武雄

    北島政府委員 第一段階におきましては、国税局においておそらく現在の推移を心配していると思います。まず国税局にそれを取り寄せて分析するように私の方として指示いたしたいと思います。
  77. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと当然なことだと思いますが、すでにきょうかあすが各町村の標準を公示される時期ではないかと思うのです。これが各町村別に発表されてしまいますと、各市町村においてさらに混乱を大きくすると思うのでありますが、これについてはいかなる措置を講じられますか。
  78. 亀徳正之

    亀徳説明員 今の具体的な税務署名もわかりませんが、長官のただいまの御答弁の趣旨に沿いまして、さっそく連絡をとって善処したいと考えております。
  79. 石田宥全

    石田(宥)委員 もうきょうあすに迫った問題でありますので、これは直ちにお昼の休憩時間にでも、電話連絡なり電報なりでそれに対する善後措置について手配をすべき事態ではないかと思いますが、それをおやり下さいますか、どうですか。
  80. 北島武雄

    北島政府委員 さっそく関東信越国税局長に対しまして、御趣旨のように調査するよう指示いたすつもりでございます。
  81. 永山忠則

    永山委員 関連して。広島国税局の方も非常に言っておりますから、お願いいたしたいと思います。
  82. 石田宥全

    石田(宥)委員 だいぶ時間が迫っているようでありますから、あまりこれ以上はいたしませんが、ただ農家の保有米の品質低下の問題であります。これもあるいは国税局の問題だと逃げられるかもしれませんけれども、昨年の公定米価は二万三百二十二円五十銭であります。ところが最近の集計によりますと、二万二百七十一円という実勢米価であります。それは何を物語るか、これは国税庁でもおわかりだと思いますが、昨年の米質が非常に低い。検査の成績の結果も証明しているわけでありますが、低品位の米の量が非常に多い。そうなりますと、農家の保有米の品質は一そう低下するわけです。販売米の方の品質がずっと高い場合はそれほどでもありませんけれども、全体の実勢米価が五十何円と下っておる。それほど米質は低下しておるわけだ。その中における保有米の品質は一そう下っている。これについては、局に参りますと、これは庁の問題だと言っておるのでありますが、これは公定米価の二万三百二十二円五十銭を標準として、これから〇・三%を引いた価格全国一律におとりになっておるようであります。この点にも問題はあるけれども農家の保有米について、いわゆる五等米の価格相当大幅に評価しなければならないと考えますが、これについてのお考えを承わりたいと思います。
  83. 亀徳正之

    亀徳説明員 米価の問題は非常にむずかしい問題でありますが、米価を全国一本でやっているというようなことはいたしておりません。これはやはり地方々々によりまして、大体予約売り渡しをいたしました実績もわかっておりまして、それぞれの地方の品質い問うものは、政府の買上価格が一応平均しておりますので、おのずから各方面の実勢が現われております。先ほど 〇・三%とおっしゃいましたのは、各地方ごとにそういった実情に即した平均的な米価をとらえて、それからさらに〇・三%を引くという考え方をとっておりますので、その面で各地の状況には応じていると考えております。ただ保有米について米質はどうかということは非常にむずかしい問題でございまして、実は石当り標準課税から反当り標準課税の方式に切りかえたときまでは、供出米の価格をそのままとるということで何らのしんしゃくを行なっておらなかったのでございます。〇・三%平均的に引くということは、やはり売り渡した数量が多ければ多いほど、残る保有米の品質が下るということがおのずから計算されるような建前になっておるわけであります。こういった問題については、なお見足りないといえばこれはいろいろ問題もありましょうが、ここ二年くらいまでは一切見なかったところを〇・三という米価のしんしゃくをやっているような状況であります。なお今後も研究問題かとは思いますが、現在のところは旧来の課税方式と比較いたしまして、現状でさほど弊害もないのではなかろうかと考えておる次第であります。
  84. 石田宥全

    石田(宥)委員 今の課長の答弁のように、もう一度再検討する、これは、ことし前年度の所得課税について間に合わないといたしましても、再検討を要する問題であろうと思うので、やっていただきたい。  それから次に長官にちょっとお伺いいたしますが、参議院の農林水産委員会で、先般河合義一君がこういう質問をしておる。「国税庁は、この農林省の発表の面積増加に関連しまして、所得税課税上、国税局へ何か通達をお出しになったのでありましょうか。あるいは会議の席上で何か命令をなさったんでありましょうか。その点をお伺いしたいと思います。」という質問に対して、金子部長は「会議の際におきましても、また通達におきましても、先ほど私が申し上げましたようななわ延びを、農林省が郡単位で発表されたなわ延びを、そのまま課税に使うことは、はなはだ危険である、従いまして、なわ延びを見ます場合におきまして、この点は十分注意して、実情に即するようにやれいという趣旨の話をいたしましたし、また通達も出しております。」こうと言っておるのでありますが、その通達の写しか何かありましたら、ちょっと伺っておきたい。
  85. 亀徳正之

    亀徳説明員 通達を出したとおっしゃっておりますか。——口頭でいろいろ議論いたしまして、成規の文書による通達は出しておらないのでございます。口頭では、よく基本的な考え方は年度当初の事務運営方針でうたっておりますが、今申したのは、あるいは部長の書面での通達と申しましたらあれでございますが、会議では議論いたしましたが、おそらく部長は、当初の事務運営方針の中にも、やはりいろいろ収穫量の見方なり何なりはよく用心してやれという一般的な通達は年度当初出ておるわけでありますから、あるいはそのことをおっしゃったのかもしれませんが、今度の会議後具体的な文書では何も出しておりません。
  86. 石田宥全

    石田(宥)委員 実情に即する、ようにやれいという趣旨の話をいたしましたし、また通達も出しております、こう言っておるのです。これは思い違いか何かであれば、あと一つお調べを願いたい。
  87. 亀徳正之

    亀徳説明員 ただ、この間も参議院の農林水産委員会での申し入れその他もありますし、今石田先生からのお話もいろいろございますので、各地で大体円滑に標準の作成作業を進めておるのでありますが、若干地方によって問題のところもありますので、念のため、特にやはり実情に即して、こちらの意見の言い足りないところがあるのじゃなかろうか、そういうところについては、なおよく意見を聞いてやるようにという通達を、やはり今起案して長官にお目にかけて出した方がいいのでなかろうかと事務的には考えております。
  88. 石田宥全

    石田(宥)委員 もう一、二問でやめますが、所得標準住民税との関係ですが、これは私よく勉強しておらないのでありますけれども所得税を納める農家は、その住民税所得割の標準は、税務署の定めた標準によらなければならないということになっておると考えます。ところが、実情は市町村所得標準を作るというようなことは常にむずかしいので、ややもすると所得税の対象農家でないところの零細農家所得割までも、税務署の定めた非常に高い所得農家標準をそのまま用いる市町村が非常に多いのであります。で、これについては、先般陳情団が参りましたときに、お供をいたしまして、長官は、税務署の定めた標準を直ちに全面的に住民税所得標準にすることは妥当でないということを、自治庁の方にも申し入れをいたしましょうという話がありましたが、その後自治庁との話し合いがございましたかどうですか。またその問題についての国税庁長官としての所見を伺っておきたい。
  89. 北島武雄

    北島政府委員 御案内のように、税務署の田畑標準税率は、いわゆる課税農家に対するものでありまして、これを直ちに非課税農家の基準に持っていくことは、私としては妥当でないと思っております。でありますから、自治庁におきまして、地方団体については、また別の角度から適正な方法を一つ考え願いたいというふうに考えております。実はあのときに自治庁にも申しましょうと申しましたが、私は急ぎにとりまぎれて、私自身はいたしておりませんが、直税部でいたしておるかと思います。事情を聞きまして、もしいたしておらなければ、直ちにいたさせます。
  90. 亀徳正之

    亀徳説明員 率直に申し上げまして、連絡がちょっとおくれて申訳ございませんが、自治庁の方にも、さっそく趣旨の点をお話ししておきたいと思います。ただ、この際私自治庁の代弁をするわけではございませんが、一応明文の上では、国税課税標準に乗り得るという規定がございますし、それから、直ちに今自治庁が独自の標準を作れといわれましても、また困難なことではなかろうかとも思うのでございますが、ただ場所によりましては、われわれの方は有資格者を中心に作った事例もあって、うまくいかぬという場合もあろうかと思います。その点は注意して使っていただくように申し入れをしたいと思います。
  91. 石田宥全

    石田(宥)委員 最後に、これは長官にお尋ねしますが、二月十八日に、参議院の農林水産委員会は、農業所得税に関する申し入れを行なっております。非常に簡単ですから読んでみますが、「本年度農業所得税課税標準については、収量及び必要経費の見積或いは縄のびの取扱その他幾多の問題を生じ、各地において紛糾を惹き起したことは真に遺憾とするところである。ここにかんがみ、よろしく政府においては、関係機関充分協議し、農業団体等の意見を尊重し、適正な課税標準を策定し、これを周知せしめ、以って一課税の公正を期せられたい。右当委員会の総意を以って申入れする。」これは大蔵大臣並びに農林大臣あてに行われておりますが、大蔵大臣から国税庁長官に対し、この申し入れに対する措置の話があったかどうか。また話を受けたならば、いかなる措置をとったか。
  92. 北島武雄

    北島政府委員 直税部長より、参議院の農林水産委員会においてそのような申し入れがあったということは承わりました。さっそく善処するように申したのでありますが、ただいま聞くところによりますと、その後農林省と当直税部とにおいて打ち合せて円滑に連繋していこうということになっておるようであります。詳細は所得税課長からその後の経過を申し述べます。
  93. 亀徳正之

    亀徳説明員 参議院の農林水産委員会から申し入れがありました直後、農林省から農政課長が参られまして、今後の農林省としての立場からの申し入れ、また同時に、同じような趣旨のお話しもありまして、いろいろ協議いたしました。措置といたしましては、先ほども申し上げましたように、大体標準の作成は円滑に進んでおるわけでございますが、円滑に進んでおらないような国税局の一部税務署に対して、なおよく意を尽してこちらの考え方を話し、また農業団体意見もよく聞いて善処するように、特別の措置をするように手配いたしておる次第であります。
  94. 石田宥全

    石田(宥)委員 国税庁関係あと同僚委員質問の通告もあるようでありますので……。統計部長にちょっと伺います。統計というものはいろいろな誤差があって、それの修正等の関係もあり、これを市町村段階に当てはめることは妥当でないというのが常識であります。また従来は郡段階においても統計をそのまま適用するのは妥当でないと考えられておった。しかし統計の事務を充実して今後郡段階くらいまでは把握できるようにという要望もあり、また前の部長としては、郡段階程度まではやはり信憑性のある統計を作りたいということを伺っておったわけでありますが、郡段階における統計数字というものはどの程度信憑性のあるものがお作りになれるか、これを一つ伺っておきたい。
  95. 藤巻吉生

    ○藤巻説明員 お話のございましたように、私どもの作っております統計は、県段階、郡段階、町村段階と下りますごとに誤差が大きくなって参ります実情でございます。そこで、ただいま私の方では、県段階の数字統計としてかなり正確のものを出しておるわけでございますが、郡段階、町村段階のものは、統計というほどの自信が持てませんので、資料として出しておる、こういう実情でございます。今後郡段階の統計数字を出すようにしたらどうかというお話でございます。私どももなるべく統計数字地方で使っていただくためには、郡段階、町村段階の数字を出していかなければならない、かように存じておりますが、相当予算を伴うもようでございますので、その方面も検討いたしまして、順次そういう方面に進んでいきたい、こういうふうに考えております。
  96. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間の関係がありますので簡単にいたしますが、実はお示しになっておる資料がかなり国税庁に利用されておる。ことに先ほど申し上げましたように、なわ延びの問題は県全体としては相当妥当な信憑性のあるものかもしれませんけれども、郡別にこれを一定の比率で割るようなことをやっておられるようです。そういたしますと、ある郡では、ほとんど大部分土地改良が行われて、区画の延びというものは全然ない。ところがある郡においては、開田その他で相当な延びのあるところも事実である。それを参考資料というようなもので、確信のないものをお作りになることは、まさか秘密文書でもなかろうし、それが発表されますと、税務署に利用されて農民が非常に不利益な立場に追い込まれる。私はたくさん資料を持っておりますが、時間の関係がありますのでいずれ別の機会によく伺いたいと思います。今申し上げたような点は、農民の立場、農民の利害と重大な関関係がありますので、単なる参考資料というようなものの発表は差し控えるべきではないかと思います。この点は今後慎重にやらなければならないと思いますが、一つ伺っておきたい。
  97. 藤巻吉生

    ○藤巻説明員 お話のございましたように、たとえばなわ延びの面積などにつきましては、県段階では一定数字がございますが、那段階、町村段階等に行きますとかなり差がございます。そこで、私の方では一応郡段階の数字を出しておりますが、統計として確信の持てるものではないものでございますから、できるだけ注意して使っていただきたいということでいたしております。なお、出すことはいろい要求されて出しております。せっかく作ったものならそういう注意をつけて使っていただこう、こういうことで出しておりますが、使い方につきましてはかなり注意を要するものでございます。
  98. 中村寅太

    中村委員長 芳賀貢君。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げます。もう一時半ですから、午前中これ以上継続することは国税庁管も無理だと思います。私はむしろ午後にした方がよいのです。ただこの問題は、確定申告の時期ですから、午後長官の都合が悪いとしても、明日の午前中に必ず出席できるということであれば明日午前中でもいかかですか。委員長と同税庁長官と打ち合せをして、どの方が都合がよいか……。
  100. 中村寅太

    中村委員長 打ち合わせました結果、引き続いてもうしばらく長官におってもらってやることにいたしておりますから、御了承願いたいと思います。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一時半で、昼飯抜きでは人権に差しつかえがありますから……。来週になると困りますが、明日必ず出席をするということであれば……。
  102. 中村寅太

    中村委員長 特にこの問題は急ぎますから、引き続いてやることにいたします。御了承願いたいと思います。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたにはまことに気の毒ですが、質問の第一点は、当面した問題で、昭和三十一年度の凶作地帯における所得上の実損失の本年度の確定申告に対する繰り越し措置の問題、これは税法上から言うと、青色申告をしたものは当然でありますが、それ以外のものは適用を受けないということになっていることはみな承知しておるわけです。しかし、たとえば北海道であれば北海道全体が天災によって農業経営上に大損害を生じた。そのために、個人の力だけではこれをいかんともすることができないので、たとえば国会等においても特別の措置を講ずるとか、あるいは政府においてもできるだけの配慮を行なって昨年の再生産が行われたわけです。その場合、青色申告をする諸君は町村においても比較的上層農家が多いわけです。これはおわかりでしょう。そういう人たちに対しては、個々によって違いますが、大体十五万ないし二十万円程度の繰り越し損失が本年度の所得から控除されるわけです。ところが中農以下の場合においてはおおむね青色申告の記載能力も比較的薄いということで、一昨年の実損害が何ら練り越されることなく今年の確定申告をやらなければならぬということになるわけです。この点に対しては、私ども税務行政の運用上においてある程度の幅を持って処理できる面もあるのではないかというふうに考えておるのですが、現地の税務署等においては、こういう点に対する配慮がいささかも行われていないというようなことが現実なんです。ですからこういう点に対しましては、国税庁長官はどういうような考えをもって——大災害の生じたような県とか北海道とか、そういう地域の被害農家に対する措置の問題ですね、それを御説明願いたい。
  104. 北島武雄

    北島政府委員 御指摘のように青色申告者の方々に対しましては、損失の繰り越しが認められておりますが、青色申告者でないいわゆる青色申告者の方に対しては、その制度がございません。私ども税法執行の任に当る者といたしましては、税法に従って執行する建前でございまして、その範囲内においてできるだけのしんしゃくはいたしますけれども税法にそむくようなことは実はできないわけであります。ただいまの場合、個々の具体的な事例におきましては非常にお気の毒な事例もあろうかと思いますが、やはり税法建前からいたしまして、青色申告者だけに認められた特典なのでございますので、これを他の白色申告者に及ぼすことは私はできないと考えております。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は青色申告と同じようにやれと言うのではないのです。とにかく三十一年の北海道等の冷害に対しては、国自身としても特別の措置を損じておるわけです。たとえば天災融資法によって営農資金の貸付を行うとか、あるいはまた保有食糧さえも確保することができなかった被害農家に対しては、政府の手持ちの米麦の払い下げをやるとか、あるいは政府資金の延納措置を講ずるとか、国の責任において、その損害を認めて、そうしてその施策を講じておるわけです。ですからこれは損害の根拠というものは全く不明確で捕捉できないということではないのです、こういう面に対してはですね。ですから青色申告をやっておる農家がわずかに一〇%以内しかない、あとの九〇%のほとんどの農家は、しかも中農以下の困窮しておる農民がそういう配慮を全然国から受けることができないという現実があるわけですね。ですから今日の税法上においてはすべてを見てやることはできないとしても、今年の確定申告をやる場合において、これはその指導的な配慮というものを講ずれば、ある程度措置というものは可能ではないかと思うのです。そういう気持があればですね、これは。そこを聞いているのですよ。税法上からいってやれるかやれぬかなんていうことは聞いていないのですよ。
  106. 北島武雄

    北島政府委員 御趣旨はまことにごもっともかとも存じますが、先ほど申しましたように、税法の範囲内でしか私ども執行を許されておりませんので、ちょっとただいまのお話は、私は税法執行のらち外ではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、何とぞ一つ御了察願いたいと思います。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ではそういう現実に対しては、いささかもその配慮はやれぬというのですか。しかしその基準の設定とか個々の申告に対する査定とか、こういうものはこれは行政官の権限でやるわけですからね。それはしゃくし定木できちっときまったものじゃないでしょう。やはりその気持というものはそれに反映するわけですからね。ですから北海道なら北海道の三十一年度全体の冷害に対して、昨年は普通作がとれたけれども、それ以前の年においては大きな損失が、何十万という農家において損失があったということは、これはもう明白になっておるわけです。ですからそういう地域に対して、ことしのこの標準の策定であるとか、あるいは申告に対する税務当局の指導方針というものは、何ら血も涙もない今までの方針通りでやるのかやらぬのかという点なんですよ。
  108. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまのような場合に、たとえば営農資金を多少借り入れたとかいうような場合につきましては、もちろんその利子を見ております。だから税務職員気持といたしましても、そのような場合においてはおのずと標準率作成について私はある程度気持が出ているのじゃないか、こういうふうに考えております。しかしこれを公けにこうせいとかどうとかいう問題では実はございませんので、その点は何とぞあしからず御了承願いたい。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう言わずもがなの気持というものは、これは末端の職員等にも大体伝わっているのですか。そうであるとすれば、現在北海道において各町村の標準の策定が行われて、町村長とか農業団体の代表を呼んで大体開示を行う段階になっているわけですね、そういう場合に、先ほど石田委員が言った通り、基準反収あるいは実収等の面においてもこれはもう過酷過ぎるのではないかというような実態が生じているんですよ。そういうような温情がもしあるとすればめちゃくちゃなことはやらぬはずなんですね。
  110. 北島武雄

    北島政府委員 もし昨年分の収穫の見方あるいは経費の見方について無理があるならば、それは是正すべきでございますが、先ほども申しましたように、税法執行の任に当る者といたしまして、税法のらち外に出ることはちょっと許されないのであります。従いまして何とぞ一つ私のただいまの程度の答弁で御了察願いたいと思います。もともとこれは税法の問題でございまして、そういう場合にどういう減免措置をするかというようなことが税法上出ておりますれば、私の方でできるわけでございますが、遺憾ながらただいまの制度におきましては、青色申告者についてはただいまお話のような恩典がございますが、白色申告者にはございません。何とぞその点一つあしからず御了承願いたいと思います。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 所得税の講釈を私は聞く気はないんですよ。税法上の問題は、先ほど主税局長出席を求めているんですがね。ただ実際に確定申告をやらしてそれを取り扱う場合の態度というものの中においては、大きな災害地帯の農家の前年度の損失というものに対して、実際青色申告と白色申告者を比較した場合において、あまりに差異が出てくるわけですね。これが市町村民税にもまた及んでいくわけですよ。青色申告を行なった上層農家の諸君は、おそらくことしも課税対象にならぬ人が多いわけです。こういう人たち市町村民税の段階においても均等割さえ払えばいいということに自然なるでしょう、地方税法上からいっても。ですからそういう場合においてはやはり許された範囲内において気分的な配慮というものは当然末端においても浸透しているべきなんですが、先ほど石田君も言った通り統計調査部が市町村別に示した平均反収に対して、いわゆるなわ延びと称するものを一〇%あるいは二〇%程度、それを全部平均反収の上に加算して、それで反収標準率を出して示しているというような、こういう税務署が多々あるのですよ。もしあなたがお気づきないとすれば、私は具体的に北海道国税局管内の税務署の名前を指摘して、そうして資料としてどの税務署がどれどれの町村に対してどのような反収を示したか、それが統計調査部から取り寄せた反収等の資料とどの程度食い違いがあるかということ、これは一目瞭然になると思うのですよ。今日現在北海道の災害地帯の農民に対して税務署が臨んでいるこの態度というものは、やはり問題にして取り上げなければいかぬと思うわけです。ですからもしそういう現地の実情がわからぬとすれば、これは直ちに資料を取り寄せて検討をされたらいいと思うのですが、いかがですか。
  112. 北島武雄

    北島政府委員 お尋ねの青色申告者とそれから白色申告者の問題につきまして、これは税法上の問題でございますので何とぞごかんべん願いたいと思いますが、ただちょっと先生のお話の中に、昨報の一反歩当り収穫と税務署の一反歩当り収穫と食い違いがある、税務署の方が高いというお話だろうかと思いますが、この点につきましては建て方が多少違っております。税務署の方は災害地を除いたところでやっております。これに対しまして作報の方は災害地が含まっております。それからもう一つは、税務署の方は総収穫量を市町村または農業委員会の台帳面積で割っているわけであります。従いまして一反歩当り収穫高は高く上るということはあり得るわけです。それをもって直ちに税務署の収穫高の見方の方がきついということに私はならないのじゃなかろうかと思うわけであります。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昭和三十二年度は比較的北海道は平年作にいっております。だから災害地というものはほとんどないのです。それで先ほどのお話によると、昭和三十年には閣議決定に基いて作報収穫量を基準として、それを尊重して標準率を作るということはこれは閣議決定になっているでしょう。そうじゃないですか。そうでないとすれば、もう一回この閣議決定内容を述べてもらいたいです。
  114. 北島武雄

    北島政府委員 閣議決定の趣旨は作報統計資料をそのまま使用するということじゃございません。作報の資料を尊重して標準率を作成するという趣旨でありますから、具体的に申し上げますと、昭和三十年の十月二十八日の閣議決定でございますが、これによりますと、市町村の反当り収穫量につき当該税務官庁は農林統計調査機関の作成する市町村別当り収穫量を尊重して妥当な課税標準基礎となる収穫量決定すること、とあり、あくまでも参考の意味であります。そこでこの閣議決定の実施に当りましては、私どもといたしまして農林省と打ち合せいたしました上、農林統計調査機関調査にかかる市町村別の反当り収穫量は実反別一反当りによって作成されているというものでありますから、反当り所得標準を台帳の反別一反当りで作成する場合には、換算の必要があることに留意を要するという点を農林省と打ち合せ、特に税務署の方に通達いたしております。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、尊重するということになれば、やはり統計調査部が示した市町村別のこの資料というものが根拠になるのですね。そうじゃないですか。それを尊重するなら——あなたの方は何も確たる基礎を持っておらぬのですね。ですから、同じ国の調査機関であるところの——たといその所管が違っても同じ政府です。その政府調査機関であるところの農林省の統計調査部が調査をした市町村別の実収の資料というものが基礎になって、それをあなた方は尊重して、それを参考にしてやらなければならぬというのが方針だと思うのです。ですから、あくまでこれは基礎であり、尊重されなければならぬ建前ですから、どうでもいいということにはならぬ。そこで藤巻統計調査部長にお尋ねしますが、先ほどは郡段階までの資料は提示できたけれどもというお話がありましたけれども市町村別の資料というものはこの閣議決定以降今日まで、毎年度国税庁の方へ資料提出をされておるわけですか。
  116. 藤巻吉生

    ○藤巻説明員 従来は市町村別数字まで資料として提示しておりましたが、三十二年度につきましては、私どもの作業が市町村別数字を作るまでに至っておりませんので、今のところまだ提示いたしておりません。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは長官にお尋ねしますが、本年度の基礎になる反収の資料、あるいは尊重しなければならぬ農林省から提出を求める資料というのは、まだあなたの方では取っていないわけですね。
  118. 北島武雄

    北島政府委員 技術的な問題にわたりますので、所得税課長から大体御説明申し上げます。
  119. 亀徳正之

    亀徳説明員 今統計調査部長からお話しになりました作報の点、ちょっとあれでございますが、町村ごとの反収数字はあるいはお示しいただいておるかと思いますが、要するに先ほどの面積は郡までということでございます。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 藤巻さん、その点はどうなんです。
  121. 藤巻吉生

    ○藤巻説明員 市町村別の反当収量はお示ししてございます。ただし作付面積の方は例の面積改訂の作業がございましたので、市町別の面積までまだ私どもの方では提示するまでに至っていないのでございます。反当収量だけ提示いたしました。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点はわかりました。それでは長官にお尋ねしますが、市町村別反収だけはわかったが、なわ延び面積はどこで把握したか。なわ延び面積をこの反収に加算したり、そういう作業は何を根拠にしてやっているか。
  123. 亀徳正之

    亀徳説明員 また技術的な問題で、私から説明させていただきます。作報の面積は今度の新しい分はございませんですが、従来からのものはある程度市町村ごとにわかっているわけでございます。若干の本年の作業との誤差はあるわけでございますが、過去のそういった数字なり、そういったものをべースにして、少くとも郡の段階の収量はわかるわけであります。そこから市町村の収量を推定するという作業はある程度やらざるを得ないのではないかと思いますが、それにいたしましても、今回の新たな分がわからないだけで、従来の、大体作報でお示し願いました面積というものはある程度わかっておりますし、先ほどるる申し上げましたように、それを機械的に取り入れてやるということをやっておらないわけでございますから、そのことによって直ちにわれわれの作業がどうにもならないということにはなりません。やはりわれわれの方の調査した収穫量をある程度検証するということには十分役立っている、こう考えている次第であります。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 本年度のなわ延びがわからないという場合には、たとえば郡段階が一〇%のなわ延びがあるという場合には、その管内の村は同じような角度で見るということは可能だと思います。ところが北海道における毎年の事例は、一つ税務署管内の町村別に、村ごとにある村は九%とか、ある村は一二%とか、ある町村は一八%とか、全部なわ延びの歩合が違うのです。そうなると今あなたの言った通り推定して、この管内で一〇%のなわ延びがあるというのは、そういう一つの予測のもとにやる場合と内容が違ってくるのじゃないですか。個々の町村においてこういうような具体的ななわ延びの差があるということになれば、何かの明確な根拠がなければできないと思うのです。
  125. 亀徳正之

    亀徳説明員 私一般の北海道以外のところを頭に描きながら申し上げましたので、あるいは特に疑義をお持ちになったかと思いますが、北海道は内地と違いまして非常に状況が違っておりまして、われわれの台帳面積といわゆる作報で発表していただきます面積とに違いがある。これは非常に極端に違いますものですから、内地の各国税局と同じようなことではなかなかできにくいということで、特に昨年あたり税務署でも大体実測を、完全には行なっておりませんが、ある程度実測して感度を得るというような努力を北海道としては特別にやっております。これは現実に昨年予算まで配付してやっておりまして、サンプル的な調査にとどまりますが、及ばずながら若干そういうこともやりまして弊害のないように努力しておる次第でございます。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 弊害が生じておるから私は指摘しているのです。弊害がなくて適正に行われ、しかも各税務署ごとに、先ほど長官が言われた通り税務署間における均衡というところに相当重点を置いている。そう言われたですね。当初税務署ごとの横の均衡というものを十分注意してやっているということは長官言われたでしょう。それがまたでこぼこになっているんですよ。だからあなた方の言うことと現地の実情というものは全く天地の差が生じているわけですね。だから長官は東京にすわっていれば末端のことがわからないといったって、それじゃ済まないですよ。それでこれはきょう北海道の事情をすぐ説明しろったって無理ですから、できるような資料を私は要求します。この町村別の反収については統計調査部から資料が出ておる。それはあなた方はもう持っているわけだ。それからもう一つはなわ延びに対して——なわ延びというようなそういうものは、もう各税務署が町村ごとに全部持っているわけですね。ですからこれを一つ資料として即刻出してもらいたい。特に北海道の場合には空知支庁管内と上川支庁管内、この二つの支庁管内が北海道の米作の中心をなしておる。北海道全体の八割がここで生産されるわけです。この二つの支庁管内に税務署が六つか七つあるんですね。ですからこの管内の税務署ごとの各町村に対する統計調査部の反収と、あなたの方で今作られたなわ延びを加算した反収の比較された数字、これを手数でも取り寄せて、ぜひ当委員会に参考資料として提出願いたいと思います。これはできるでしょう、いかがですか。
  127. 亀徳正之

    亀徳説明員 今御指摘のように多分現地ではいろいろ御意見を言っておられますし、まだ確定しておらぬと思います。それで確定しない段階——これはいろいろ御意見を聞いたりそれから状況を聞きながら最終の標準が確定されると思うのでございますが、確定前の数字ということではちょっと困難かと思いますので、やはり確定しましたところの数字を取り寄せるということは場合によれば可能かと思います。その意味で若干時間は——きょう、あすは無理でございます。そう早い時期にということはちょっと困難ではなかろうか、もうすでに問題なく落着しているところにつきましては問題ございませんが、現在問題であるところの、その過程のまだきまらぬ資料を持ってきてどうこうということは、ちょっと問題ではなかろうか。一応落ちついたところでその資料を取り寄せるということは可能かと思います。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それが落ちついてしまえばみなあきらめて確定申告を出して、泣く泣く税金を納めるんですよ。確定する以前に問題があるんでしょう。落ちついたところとか問題のないところとかというのは、もうあなたの方から押しつけられて、不本意ながらこれはもう太刀打ちができないから引き下らなければならぬ、あきらめるという形が多いと思うのですよ。ですからその確定以前における現在の段階において、各税務署がどのような態度で各町村長とかあるいは農業団体の代表者を集めて、何を示してやっているかというその作業の実態把握しなければわからないと思うのです。ですからこれはやはり急ぐわけです。確定申告の締め切りは三月十五日までですよ。町村ごとに開示するということになれば大体でき上がっておる時期だと私は考えるわけです。こういう手数をかけるような問題はあまり要求したくはないですが、三十一年度の大きな凶作の後における農民の疲弊こんぱいした中において、今日そういう窮乏したる農民に臨んでおる税務署態度というものは、政府の官吏の態度かどうかわからない点が非常にあるわけです。そういうものは長官わからないと思うのです。ですから現地のそういう具体的な資料を取り寄せてみれば——税法上では白色申告納税者に対しては何ら特別の措置を講ずることはできないけれども、しかし許された範囲内において温情をもってそういう実情を配慮の中に入れたぎりぎりの段階までの措置というものは、当然なことであるということは、あなたも言われておるのであるから、この資料は非常に参考になるわけですから、ぜひ取り寄せていただきたいと思います。これが出ないと質問をこれ以上進めるわけにはなかなかいきませんから、いかがですか。
  129. 北島武雄

    北島政府委員 できるだけ御希望の趣旨に沿うような資料を早く取りまとめたいと思います。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは国税庁の方は資料をお出しになるそうですから、それが出てきてからさらに質問を続けることにいたします。
  131. 石田宥全

    石田(宥)委員 関連して。御承知のように、確定申告の期限が三月十五日になっております。ところが今いろいろお話があったように、各地方において紛争を生じておるわけです。その紛争を生じておるところへまた町村の標準を発表したりいろいろ強行されますと、結果においてかえって紛争の処理が困難になると思うのです。そこでやはりお互いに納得のいくような円満解決を見て適正課税が行われるように、紛争のある地帯においては確定申告の期限を若干延期をすべきではないかと思いますが、その点についての所見をお伺いしたい。
  132. 北島武雄

    北島政府委員 確定申告が三月十五日まででありますが、田畑につきましては、御承知のように、市町村等と十分お打ち合せして納得の上でしていただくことになっておりますので、今までの実情におきましても、局の地方によって若干おくれるところがあります。ことしも従来の慣例に従うつもりであります。
  133. 中村寅太

    中村委員長 暫時休憩いたします。     午後一時五十九分休憩      ————◇—————     午後三時四十二分開議
  134. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業所得税の問題について調査を進めます。質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 主税局長にお尋ねしますが、租税特別措置法の規定の中で、法の二十四条でありますが、開墾地等の農産物に関する所得税の免除の規定がありますね。これはおそらく新しく農地が造成された場合の特別の所得税の免税措置でありますけれども、この租税特別措置法によって、現在年間どのくらいこの法の規定の恩恵を受けておる人たちがあるか、もし具体的な調査が行われておれば説明願いたい。
  136. 原純夫

    ○原(純)政府委員 今資料を出しますが、件数はごくわずかだったように思います。三十一年分が一番新しい実績ですが、全国で三十七人がこの条文の適用を受けております。その結果免税になっておる額が、約四万八千円ということになっております。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全国で三十七人ですか。こういうごく僅少な人たちしか、この法律の恩恵に浴することができないというのは、どういうところにその原因があるのですか。
  138. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これは当然のことでありますが、開墾して入植するという場合は、当然初めの数年は非常に収益が少い。それで所得も少いわけで、農林省あたりのこういう際の計画数字を拝見しましても、四年や五年はなかなか所得が出ない。それを考えますと、本来所得がほとんど出ないから、こういう措置が実際に大きく働くということは、そもそもないというような実情のところに適用するということになるわけで、そういう意味ではこういう条文が一体どこまで効力があるかといいますか、必要かという問題も起ると思いますけれども、制定の際にもいろいろ議論があったように記憶いたしますけれども、なかなかこういうので多額の減免税が出るということは、事柄の性質からちょっとむずかしい。そこはそういうふうに御了承いただかなくちゃならぬのじゃないかというふうに思います。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もちろん開拓者が入植して農地の造成等を行なって五カ年間くらいは、その農地から所得というようなものが、それほど上ってこないということは理解できるわけです。しかし、せっかく法律で規定まで設けて、そうして特別の保護をしようという場合においては、もう少し成果が上るようなことにならぬと、全国でわずか三十七人で、金額にして四万八千円ということになると、せっかくこういう法律を規定しても何ら実効が上らぬというようなことになっておると思われる。今回また法の改正が国会に提出されておりますので、土地改良事業等による適用等も拡大されると思いますが、主として開拓者の、いわゆる低所得者に対する農業所得税が実際かかっておらぬのは当然のことなんですが、これと関連して、この特別措置法の規定が、市町村のいわゆる住民税に対して、どういうような影響を与えておるかという点に対しては、いかがですか。
  140. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ちょっと私今手元に法文を持ち合せておりませんが、国で所得税が免除になりますと、所得税割の所得税額を元にしてやる第一方式では、当然その通り響いて、いわゆるゼロはゼロということになるわけであります。第二方式も、大体措置法による所得額に乗っかって第二方式でやっておるというのが原則でございますから、多分響いていると思います。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 住民税課税方式は、第一、第二方式とがありますが、地域によっては、たとえば北海道等においては、ほとんどが第二課税方式をとっておるわけです。第一方式の場合には、当然そこに現われてくるわけですが、第二方式の場合には、課税の対象が総所得金額標準とするということになるわけで、結局そういう場合、地方税法の規定の中において、そういう国税の免税措置が具体的に行われておらないようにも見えるわけです。これは指導が徹底しないせいもありましょう。しかし、地方自治体ができるだけ税をよけい徴収しようというような気持も働いて、具体的なそういう住民に対する指導を行わないためもあるかもしれませんが、こういう点に対しては、もう少し明確にする必要があると思う。たとえば、政府に売り渡す米の免税措置等に対しても、一石千四百円分は所得税の面においても税外に置かれておるし、地方税の面においても、それを今年度もやはり適用するということに政府態度決定されておると思いますので、やはり租税特別措置法におけるこの種の問題も、同じような取扱いがされてしかるべきと考えるわけですが、基本的にはいかがですか。
  142. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ある種の政策目的で特定の場合に減免税をする場合に、それを国税だけでなくて地方税にも及ぼすかどうかという問題。一般論としては、たいがい国で大事なことは地方でも大事だろうというふうに言えると思います。ただ実際には、必ずしも全部そろっているというわけにも参らない。そこには事柄の性質のほか、技術的な難易の問題もあり、また減免税の幅が大きいか小さいかというような問題も実際問題として働いて参ります。まあ一般に国がやるという場合に、地方もやるという気持を持つのがおおむね自然だろうとは思います。この場合、どうも条文がないのでちょっとなんですが、おっしゃるところだと、さっきから心配しておったのですが、地方税国税課税標準をそのままとってやるということになっておりますから、これは所得に対する所得税を免除するというので、課税標準自体を削ってないから、あるいは免除する前の税課標準でいっているかもしれないと思います。その辺のところはよく自治庁にもお活の筋を伝えて研究を頼むようにいたしますが、現在概していって共適正である。しかし勘で申すのはいけませんが、おそらく割くらいの措置は共通でないようなふうになっておったと思います。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうするとこの法の解釈上から言うと、国税において減免措置がとられた分に対しては、当然これは市町村民税に対しても同じような適用がされる、妥当である、そういう理解で差しつかえないですか。
  144. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいま私は一般論として申しましたので、この二十四条を住民税に移していきます場合にどうするかということについては、私だけで御返事ができる問題でない、むしろ自治庁が所管し、私どもが一緒に共管しているという状況でありますから、それについての御返事は、自治庁とも打ち合せました上で申し上げる方が穏当だと思いますので、先ほどのように申し上げた次第でございます。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただこの二十四条の規定を見ると、開拓地から生産された農産物全部でない、米麦及び命令で定める農産物の被培所得ということになっておるのですから、特に作物の種類等定めたものだけに対して免税の特例措置を講ずるということになっておりますからして、これは市町村民税においてこれを適用する場合においてもその根拠が明白になるし、また把握も十分できると思うのですね。全体に対してという場合には非常にばく然としてきますが、特別指定された米麦及びそれ以外の指定された農産物ということになると、この捕捉が完全に行われるということにもなるので、これは当然疑義を持たなくて、地方自治体においてもこれを適用するというのが私は至当であるというふうに考えるのですが、この一番根拠になるところの主税局長が、この法の精神はそうなんだということを明らかにすれば、これはもう明快になると思うのですがどうですか。
  146. 原純夫

    ○原(純)政府委員 住民税をどうするかということについては、私だけで申し上げるのはいささか行き過ぎだと思うので、ただいまのように申しているわけです。自治庁によく伝えておいて、自治庁と相談した上で、自治庁から直接にお答え申すという方が穏当だろうと思いますから、そういうふうに運ばせていただきたいと思います。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ではこの問題は関係自治庁等の解釈も後日明らかにしてもらうことにして、この程度にしておきます。  その次に申し上げたい点は、これは所得税法上の問題でありますが、毎年農業所得税申告時期に問題になるのは、青色申告と白色申告による不均衡ですね。これを今日どう考えておられるかという点であります。この措置がとられる当初においては奨励的な恩典のある措置というふうに考えられたのですが、もう数年たった今日、午前中の国税庁長官の答弁によりましても、いまだに青色申告を行う納税者農民の場合にはわずか八%ないし七%程度にしか至っていないというような説明があったので、現在においても九〇%以上の農民は、依然として白色申告を行なっているという実態に置かれているわけです。ですからこの措置は、単なる奨励規定としてこういうような青色申告制度を設けたものであるか、将来はこの青色申告のような制度を普遍化するために一本化する考えのもとにやっているのであるか、この最初の方針というものは明らかにされてないわけなんですね。それでこの点に対しては、税法土の問題でありますが、主税局長はどういうような見解に立たれているか。
  148. 原純夫

    ○原(純)政府委員 専従者控除はおっしゃる通り青色申告についての奨励措置でありますから、これがあるかないかをもうそのことを別にしてこの利益を受けられない白色申告者に酷であるというふうに言われると、ちょっと私どもも困るのでございますが、お話の筋は、奨励ということが、やはり奨励には奨励らしい時間的な広がりと申しますか時期があるだろうというようなお話、そういうことはあるだろうと思います。だいぶそういうような意味で時間がたったというふうなことのために、おっしゃるようなお話が出てくるのだと思いますので、これは十分慎重に研究しなくてはならぬと申いますが、ただいまのところ私どもとしては、やはりこれは奨励措置である、従ってそこに不公平があるからということで、一般にこれを及ぼすというのはいかがかというふうに考えます。まあもともと奨励措置の形としてこういう形がいいか悪いかというよう議論もいろいろあり得るところでございますので、それらも含めて十分検討はいたしてみたいと思いますが、これはそれを整理するという場合にも、財源があって他の人にも同様な控除を与えるということは、つまり奨励措置としての段差は少くなるというようなわけですけれども、それらはやはり財源を用意し税負担の公正を考えるような角度で考えなければならぬ問題ですので、将来の問題として検討さしていただきたいと思います。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 原さんは従前主計同次長をやられておって、特に農政問題等に詳しいわけですね。それで今まで大蔵省の態度は、農業施策等に対するいわゆる奨励とか保護助長の施策は、一定の奨励期間とか過渡的な時間が経過した場合には、それでそれを打ち切るとか一般化するという方針の上に立っておった、ということはこれは否定できないと思う。ですからあくまでも青色申告の制度は単に奨励的な措置であるということだけであれば、一定の奨励期間とかそういう啓蒙期間が過ぎた場合には一般化するという段階に当然至るべきだと考える。特に専従者の場合は事業所得——農業の場合はいわゆる事業所得になるわけですが、農家の自家労働の労働に対する報酬というものが、賃金に見合うものが農業所得であるという場合の規定づけによって、解釈がだいぶ違ってくると思う。ですから専従者控除という場合には、やはりその経営の中において農業に専従する家族労働者に対して、基本的にいわゆる基礎控除を行うということになるのですね。ですからやはりそれは白色申告をやる場合における家族の専従者の場合においても、そういう規定を採用することは可能だと思うのです。いかがですか。
  150. 原純夫

    ○原(純)政府委員 おっしゃる通り家族従業者の勤労に対する対価をその事業所得の経費に見るということは、確かに一つの方式として可能な方式であります。ただそれをそうするか、あるいは現在日本税法がとっておりますように、それは一体として担税力を見るかということは、非常に税制としては大きな骨組みの問題であります。世界でも必ずしもおっしゃる通りにそういう家族従業者の給与を分離をするという方式だけではないのであります。やはりその点は私どもとしてこの青色の奨励措置という以上に、これはもう税法にとってはかなり根本的な、おそらく一番大きい問題の一つだろうと思います。で、私卒爾の返事を申し上げれば、それはなかなかむずかしいという感じを持っております。翻って最初におっしゃった奨励段階を過ぎたのだから一般化しろというお話については、先ほども申した通りで、奨励段階を過ぎればこの奨励としては、ちょうど補助金をだんだん整理していくというようなことで減らして参る。ところが実際問題として八万円の控除をぽこっと全部なくしてしまうというようなわけにいかないというようなところから、やはり一般の控除が上るという際に吸収していくというようなことにいかざるを得ないというのが、これは実情はそういうことだろうと思います。先般も基礎控除を上げたときにこの分は上げないというようなことをやったりしたわけです。お話の御趣旨はよくわかりますが、それはそういう意味で一般化と申しますか、一般の控除を高めて、こういう特殊な奨励控除はだんだん減らして参るというようなことが大きな方向だろうと私は思っております。将来機会あるごとにそういうふうにやって参りたいというふうに思う次第でございます。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 局長に申しますが、この奨励段階が過ぎたから後退させるという意味じゃないんですよ。むしろ今の青色申告の規定の中では、家族従業者に対する概念規定が明確になっているのだからして、そういう基礎的な問題はやはり統一するような措置に進めていった方がいいんじゃないかというのが私の一般化という意見の根拠なんです。それをなくせとか逆行させた方がいいのじゃないかということを言っているのじゃないのですよ。その点は誤解のないようにしてもらいたいと思います。ですから結局現在においては、農村で青色申告を行う階層はどういう階層かということは、私が言うまでもなくもう局長御存じだと思うのです。やはり農村における上層の農家、いわゆるこういう申告能力を持っておるというような人たちが大体これをやって、中層以下の農家の場合にはほとんどやってないのですよ。そういう人たち所得が低いから熱意をもってやらぬということも言えないこともないですが、とにかくこれは能力の問題も当然あると思うのですね。ですからもう数年たった今日、わずかに全体の八%か七%くらいしか青色申告をやっておらぬということになると、これは技術的にも能力的にも今の青色申告の規定というものは非常にむずかしいということが言えると思うんですね。ですからこれを一般化させてみんなの農民に対してこういう恩恵を均霑させるようにするためには、一歩前進して、そうしてもうほとんどの農家がこの青色申告を容易にやれるというような、そこまで進むべきでないかと思うのです。数年間奨励とか実験段階で大体の見通もついておると思うので、もう少しこれを簡易化するとか、たとえば専従者であるという確認が何らかの規定によって行われた場合においては、たとえば青色申告をやらぬ場合においては、その確認された家族従業者を専従者と規定して、そうしてこの人たちに対しましても、やはり専従者としての特別控除が行われるというような改善の措置は、当然行われていいんじゃないかと私たち考えるわけなんですが、いかがですか。
  152. 原純夫

    ○原(純)政府委員 青色について専従者控除を認めたというところを非常に理論的に大きく評価されまして、これが所得税法の一般原則になるべきだという角度でのお尋ねでございますけれども、私どもは実はそうは考えておらないのでございます。もともと青色申告について奨励措置考えようとした場合に、専従者控除でいくか、あるいは青色申告をやるためにいろいろ記帳に手間がとれるだろうというような意味で記帳控除を認めるか、記帳控除となればやはり所得に応じて何%控除する、ただし最高はここまでというふうな方式も考えられたわけです。この結論としては、こういう格好になったのですが、これは家族従業員の給与をそのときに落すのは大へんだからという考え方でなく、やはりそういう奨励の方法としてこの方が簡便だというようなところでいったわけなんです。一方翻ってこれを一般化した場合の所得税法の構成と申しますか、性格というようなことを考えますと、この点は税法では非常に大きなポイントであって、私どもとしてそれを一般化して所得税法の基本原則にするというまでの踏み切りがついておらない、率直に申してなかなかつかぬと私は思います。そういうような意味で、これをそういう角度で一般化しろとおっしゃるのはごかんべんを願いたい。ただ奨励の段階ももうすでに二十五年から九年目になるわけですから、そろそろ奨励々々というだけでなしに、一般のものとの較差があまりあってはいけないという点は、私どもいろいろ考えております。それは先ほど申したような、と言うと、またおしかりをこうむるかもしれませんけれども、やはり実際問題として、一般の控除を上げていくということによって一般の税負担を軽減する、その際にこういう偏差のあるものは薄めていくというようなことではなかろうかというふうに考えておりますので、そういうふうな方向でいきたいということで御了承をいただきたいと思います。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農業所得税の実績は、三十一年度には税収が大体六十億です、三十二年度の見込み税額は大体五十億程度で、所得税全体から見ての農業所得税の額はわずかのウエートしか持っていないのです。このことは結局日本農業がだんだん零細化し、また細分化されて、もう農業所得税を納めるだけの能力を失ったような実情に落ち込んできたのです。ですからそういうようなことを考えたような場合においては、現在一〇%以下の青色申告ですが、これが全体に普遍して、たとえば八〇%、九〇%の農家が青色申告をやるという段階にもしなったとすれば、この五十億、六十億の税額というのは大体どういうようなことになりますか。
  154. 原純夫

    ○原(純)政府委員 その計算はちょっと数字がすぐ出て参らないと思いますが、昭和三十三年分についての課税額を予算計算の際に見込みましたものでは、五十四万人の農業所得者が三十四億円の課税税額を負担するだろうというふうに見ております。その一人当りの所得金額が三十万六千円ということになっておりますから、これは総所得金額——まあこの中にもちろん何%かの青色申告者がおって、こうなっておるのですが、全部が青色申告になって、何万かの専従者控除がとれるということになると、非常に減ってしまうということは、確かだと思います。ほとんど言うに足りなくなるだろうと思います。なお一方で例の供出米の非課税の分で二十億から二十四、五億の税額が落ちておるというのが大体のバランスであります。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、毎年のように税額が減少する方向をたどっているのですし、一方においては青色申告が非常に様式がむずかしくて全体にいきわたっておらぬ、こういう矛盾が生じておる。せっかくの恩恵の措置が講ぜられておってもそれを使用ができない。だれでも結局税金が安い方がいいのですから、青色申告にすれば必ずいいということを承知していながらこれが非常にむずかしい。ですからもう知りながら恩恵に浴することができないというのが実情なんです。もしも専従者控除を基本的な控除として全体に及ぼすことが今の段階では困難性がある場合においては、青色申告の様式とかそういうものをもっと容易な様式にして、大筋だけ把握できればいいというような形にこれを是正して、できるだけ大部分の農家が青色申告によって税を納めることができるように、積極的な指導とか改善措置を構ずる必要があるんじゃないですか。
  156. 原純夫

    ○原(純)政府委員 青色申告の様式をあまりめんどうなものにして、それができないということにしてはいけないと思うのですが、しかし青色申告というのは、いわゆる青色申告の特典、利益というものを得させるためにやるというのではなくて、やはり正確な所得が自動的にわかるようにしようというのが眼目でありますから、そこにはおのずから様式を簡易化するにしても限度がある。おっしゃるような気持を毎年伺い、私どももその気持にはできるだけ忠実にと思ってやっておるわけなんで、なお今後もそういう角度での検討はいろいろ続けて参りますけれども、とにかく全部といいますか、大部分にやれるようにしようと言われましても、なかなか実際問題としは、今申したように、本来は所得が自動的にわかるようにという線にきませんといけないので、大へん抽象的なお答えで恐縮ですが、お尋ねの御趣旨はできるだけ含んで、今後私の方また国務庁の方も研究はいたしますが、なかなか一足飛びには参らないので御了承を願いたいと思います。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に損失の繰り越し控除の問題です。これもやはり税法上の問題なんですが、たとえばある地域に大きな災害等が生じ、その地域全体の農民農業経営上に、大きな損害を受けた、その場合青色申告の場合には当然損失が次年度に繰り越されるのは言うまでもないのですが、白色申告の場合においては、そういう損失の繰り越し措置というものは全然講じられておらないわけです。こういう点でやはり農民個々の間において、青色と白色の場合の不平等が大きく生じてくるわけなんです。ですから地域全体における、たとえば北海道なら北海道全体が昭和二十九年度とか三十一年度に冷害凶作によってほとんどの農家が損失をこうむっておるというような場合、それに対して国が特別の立法措置とかあるいは施策の上においても特別な措置を講じたという場合においては、そういう国の施策の中で、確認される損害等については、次年度に何とか繰り越しができるような措置も必要じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  158. 原純夫

    ○原(純)政府委員 損失の繰り越しにつきましては、原則論として年度課税の原則というか、年度を区切って所得はその年々に片づけていくという方式でありましたのが、二十五年の改正で繰り越しの制度が認められる、ただし青色申告に乗っけて認められるという形になっていることはおっしゃる通りであります。この問題はおっしゃるような角度からもなお検討を要することではありますけれども、青色申告に乗っけておりますのは、やはり繰り越すにも損失を正確に確定しなければいけない。それにはやはり記帳をきちんとしておいていただかなければならぬというのがもとなんであります。御趣旨はその損失の中で公権的に確認し得るものがあるというような御趣旨を含んでおられるようですが、それが一体所得全部とどういう関係に立つのか、その辺のところも問題だろうと思いますし、やはり全体の所得についての経理がはっきりいたしませんと、繰り越しに乗っけるのはなかなかむずかしいのじゃなかろうかという感じはいたしますが、なお十分検討はさしていただきたいと思います。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば天災融資法の適用地域の指定とか、こういう地域は農家の損失がおおよそ何割以上という規定の上に立っておるからして、大体の把握ができるわけですね。あるいは専業農家であって保有米麦を持つことができないという場合に、政府の手持ちの食糧を特例措置で払い下げたその数量とか金額とか、あるいは政府資金等の融通を受けて、災害によってそれが返済することができなくて、延納措置を受けたとか、こういうのは国の施策の中で大体容認し得る、平年次と比べた場合の損失ということにも大体の見通しがつくと思うのです。こういう場合においては、大まかに次年度の確定申告の場合において、何らかの取扱い上の措置によって、ある程度前年の損失が次年度の確定申告の中で緩和できるということになれば、災害を例年受けておる地域の農民は助かると思う。現在国税庁とか税務署等の場合においては、税法だけをたてにして、そういうことは今の税法上できませんとか、税法を変えてきなさいとか、木で鼻をくくったような態度で全然配慮が行われていない。ですから、こういう問題に対しては、原さんあたりがもう少し思いやりをこめて、この程度のものは配慮できるのではないかというような法の精神の上に立った解釈とか、改良を行うことができれば、末端に対しても相当効果が上ってくるのではないかと思いますが、そういう積極的な御意思はありませんか。
  160. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お気持はよくわかるのでございますが、これを損失の繰り越し制度に乗っけて措置できるかどうかということになりますと、ある地域は被災度がそれ以上だから翌年の経費を何割引くというようなやり方ができるかどうか、なかなかむずかしいのじゃなかろうかという感じがいたしますが、もちろん総括的にやる方法としては、別の法律で災害減免法と通常呼んでおるのがありますが、これはその年限りの減免、徴収猶予だけが次の年にわたるというようなことで、おっしゃるような場合は、次の年度でよけい肥料が要るとか、整地その他にもよけい手間が要るといえば、経費がよけいかかるということではなかろうか。損失の繰り越し問題として処理するのには、やはりはっきりした損益をやっていただきませんと——そういう事例は必ずしも農家だけではございません。たとえば相当きつい引き締め政策をやったために、ある年の所得相当影響を受けるというようなことがあり、次の年にこれをどう調整するかというような問題、まあ農家が災害で全部やられたというときほどのがあるかどうかは問題ですけれども、多かれ少かれ、そういうような問題もありますし、今にわかにだめだと申し上げてしまうわけでもないのですけれども、十分慎重に研究さしていただきたいと思います。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は十分研究願いたいと思います。  それから次に所得税地方住民税との関係ですね。これは全く不可分の関係に置かれているので、所得税の青色と白色の恩恵の差というものは、これはまた住民税にも及んでいくわけなんです。特にその現象は住民税の中において激しいと思うのです。所得税の面においてはそれほど金額において差がないという場合でも、たとえば第二課税方式を町村でとるというような場合には、またそこに相当差異が出てくる。同じ村に住んでおって隣近所を見回した場合、青色申告をやった農家が非常に上の階層にありながら、わずかに町村民税は均等割くらいしか払っておらない。それ以下の経済力の弱い農家が町村民税が非常に上位に置かれておるというような問題は、どこへ行っても見受ける点なんです。ですから、こういう所得税地方税との間における弊害、こういうものはやはり一日も早く除去するような努力が必要だと思うのですが、現在主税局等においてはこの点に対してどういうような考えを持っておられるか。
  162. 原純夫

    ○原(純)政府委員 先ほどもちょっと触れましたように、専従者控除が青色申告の奨励の方式としては必ずしも満点のものじゃないというふうに私は思っております。そういうような意味でだんだん青色申告も九年、十年というような年月を経て参ったわけですから、この際奨励の方式について再検討をしなければならぬだろうということは、先年以来考えております。その調整の方式は、先ほど申しました一般の控除が上る際にだんだん吸収していくというようなこと、また地方税でどうするかというのが大きな項目だろうと思います。これは実際に税制改正をいろいろ議論いたします場合に、住民税については専従者控除を認めたくないというような議論が出たりするわけです。ただいまお話し申し上げている角度においては、そういうことはまことによくわかるわけなんですが、一方青色申告は青色申告で大いにこれは奨励しろというような向きもあるわけで、そういうような向きは地方税だけでもやめるのはけしからぬという声が出るわけです。やっぱり一般の控除が上る際にだんだんそういうものを整理するというのは地方税の場合も含めてそういうふうにいくことにならざるを得ないのじゃないかと一応考えております。なお独立して住民税について何か調整をはかれるかどうかは、なお研究問題として別に考えるに値するとは思いますけれども、おそらくだんだんとそういう格好で整理をしていくということにならざるを得ないのじゃないかというふうに思っております。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 きょう直ちに結論を出すこともできないと思いますので、私の指摘した幾つかの問題に対しては、やはり税法上の大きな問題でもあると思いますので、今後できるだけ熱意をもって積極的に検討していただいて、特に青色、白色申告者の専従者控除の問題であるとか、それから損失の繰り越しの問題、あるいはまた租税特別措置法における開拓者に対する住民税の免税の措置等の問題等に対しては、これは次の機会にまた十分御質問することにしてきょうはこの程度にいたしておきます。
  164. 石田宥全

    石田(宥)委員 関連して原局長にお尋ねしますが、きょう午前中国税庁長官に対して、昭和三十一年度並びに昭和三十二年度の農業所得並びに所得税額見込み額とを承わったのです。ところが三十一年度は所得の総額は三百八千億で、税額で六十七億五千万円、三十二年度は三百五十五億の所得で、見込み額としては五十億、こういうお話がありました。ところがただいま局長の答弁になりますと、対象農家は五十四万、税額が三十四億だ、こういう答弁です。そうしますと、税額で十六億ほどの食い違いができるのです。私はこれは必ずしも一致したものでなければならないとは存じませんけれども、こういうところに予算を編成する過程と、国税庁が税を徴収する場合との一つの大きな食い違いが起ってくるのではないかと思うのです。それらの事情をちょっと承わりたい。
  165. 原純夫

    ○原(純)政府委員 先ほど申し上げましたのは、三十三年度の予算でわれわれの見ている数字、しかも三十三年度における収入額ではございませんで、課税額、つまり三十三年の産米その他三十三年の作による所得から所得税の納められるべき額を申し上げたわけです。収入額になると前の年度の分の繰り越してきた、何といいますか、滞納になった分、あるいは更正決定になる分の収入あたりがありますから、三十七、八億ということになっております。ところで三十二年度分につきましては、同様に申しますと、収入見込み額は合計しまして農業関係では約四十億ということに予算の積算では見ております。これがただいま五十億というようなお話が出ておりますが、それは三十二年の作が予算で見ておりますのは平年作で見ております。平年作が少しよくなりますと、これは御案内の通りすぐ限界的なところのは上ずみになるので、すぐそういう影響が出てくる。供出のあれだけでも二十四、五億あろうかということでございますので、私その十億がはっきりそれだと言い切るだけのなにはございませんが、大体そういうことで出てきておるのじゃなかろうかというふうに感ずるわけでございます。
  166. 石田宥全

    石田(宥)委員 いや、その点了解しました。それから専従者控除でいろいろ意見を伺ったのでありますが、これは一つあとの研究題目として御検討願いたい。現在の税法のもとにおいても、自家労力、家族の従業者に対してこれは適当なる給与をして、そうしてそれを必要経費として算入するということは、今の税法建前で可能なのではないか、こう思うのですが、これはどうですか。
  167. 原純夫

    ○原(純)政府委員 所得税法の十一条の二というのがありまして、御主人がおってある事業をやっている。その事業に生計を一にする親族が従事しておって、その事業から所得を得ているという場合には、それは主人の所得と一緒に見るという規定が入っております。これが先ほどもお話の出た同一事業についての家族合算、これは現在の法律でただいまおっしゃいましたようなふうにはならないということになっております。税制の仕組みとしては非常に大きな問題の点でありますが、今の日本税法は、そこははっきりそういうふうに割り切ってやっている、そういうことであります。
  168. 石田宥全

    石田(宥)委員 税法改正としては、青色申告によらないものも、家族の専従者控際をするという税法改正と、今御指摘になった税法改正とでは、どっちに可能性が大きいか。これは一つ専門の立場から伺っておきたい。
  169. 原純夫

    ○原(純)政府委員 両方、非常にむずかしいということでございます。決してこれは意地を張ってとか何とか申すのではなくて、この問題は税法でいいますと、法人の所得と個人の所得とをどう調整するか、法人で一度所得課税されているから、その残りは配当がいく、配当控際というものを認めておりますが、一体配当控除がよろしいかどうかという問題、これも税法では非常に大きな問題です。あと、やはり家族従業員の給与を経費に認めるかどうかという問題、この辺は直接税の中では一番大きな問題だと思います。大きいからふん切りがつかぬというのではなくて、やはり家族の合算というのは社会の実情所得実情から考えて合算した方が、むしろ担税力に合うというような一応の考え方でやっておるわけなんでありますが、社会の状況が変ってくれば、そういう問題もまたいろいろ議論が出るわけでありますし、またものことの考え方自体がいろいろ変れば、というようなこともあり得るわけでありますが、これは決して技術的に何か調整すればいいというような問題でなくて、いわば税制の性格をかなり大きく変えるというほどの問題だと思っておりますので、私としても、なかなかふん切りがつかないというふうに感ずるわけであります。
  170. 石田宥全

    石田(宥)委員 農業経営の場合に、今共同化の方向にいろいろ努力を払われておるわけでありますが、共同経営というものを、法人格を与えた一つの株式会社というように性格を明らかにした場合は、これは当然法の適用が変って参りますが、農業経営を株式会社化するということについては、どういう限界でお考えになっておりますか。たとえば水田なら水田を全部共同経営にする、一つの株式会社の法人格を与える、あるいは果樹なら果樹、あるいは全体のものなら全体のものというところに一つの会社を設立して、それによってやる。そうすると税法の適用がすっかり変ってくるわけで、非常に救済されることになるのです。それについての局長のお考えを承わっておきたい。
  171. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これまた一番われわれがむずかしい面と思っている問題でございます。率直に申しますれば、農家が会社になるというようなことは、私ども考えてみようもないのであります。おっしゃっている向きは、会社になれば税が減るじゃないかというふうにおっしゃるのですが、私はやはり会社になるには、世間がなるほどあれは会社だと思うようなものが会社になるというような制度がよろしいのだと思うのです。今会社になれば税が減るために、どんどん会社になってしまうというようなことがもし起るとすれば、これは何か日本法律制度は非常におかしいぞということになるだろうと私は思うのです。そういう意味で、今それまでのなにを聞きませんですけれども、事業所得の方では、割合にそういう問題が長く、うるさくいわれております。私どもそこの解決方法として、非常にかどは立つけれども、きつくやってしまおうとすれば、法人を個人にばらして課税するというような方式もありますが、先般第二十六国会で大きな改正をお願いしました際の気持は、やはり個人の所得税相当軽減、合理化すれば、法人になってもかえって重くなるというような場合も、下の方ではあるわけです。三、四百万か四、五百万か、そのくらいの所得のところまでは、法人になってもかえって重くなるというようなバランスになれば、軒並みに法人になってしまうというようなこともあるまいという気持をもって、先般の所得税の大減税をやったような次第でもあります。その後まだ実績をよく見ておりませんが、一時法人になるのがとまったとか、減ったとかいうことを聞いたことがあります。実績は握っておりませんが、その辺は、税のために法人になるようなことを考えるような法律は困るので、そういう事態が出てくれば、またそこに手を打たなければならぬのではないかというふうに考えております。
  172. 石田宥全

    石田(宥)委員 課税の負担が過重であって、実は具体的にすでに検討を始めている農村もあるような状況でありますので、なお一つよく御検討を願いたいと思います。  もう一点だけ伺いたいのです。専従者控除の問題もなかなかむずかしい問題ではありますが、農家の自家保有米というものは、これは課税の対象からはずすべきではないか。給与所得常は家族手当というものが支給されている。ところが農家は経営主体が一つであって、さっきおっしゃったように、法的にも明らかになっておりますが、家族の保有米、飯米も全部課税の対象になるということは、どうも建前としては納得ができないのです。これは当然課税の対象からははずすべきであろう、こう考えるがどうですか。
  173. 原純夫

    ○原(純)政府委員 私はやはり、それはその農家が経営をしてできた生産物であり、それから所得が出るというふうに考えるのが、むしろ税負担の公平というような見地からいってもよろしいのではないか。どういう意味でおっしゃっているのか、ちょっと私お気持がくみ取れないのですが……。
  174. 石田宥全

    石田(宥)委員 意味も何もないのですよ。経営主体は一つで、それから家族が大ぜいあって農業に従事しておっても、それに対して給与を与えても、それは法律必要経費として算入されない。そういう事情であるから、家族の飯米とする保有米まで課税の対象にするということは、非常に不合理ではないか、当然課税の対象からはこれをはずすべきであろう、こういうことです。ほかの意味はないのです。
  175. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまのお話は、やはり家族従業者の給与を控除しろという方向といいますか、角度と類似した角度でおっしゃっていると思います。そういう議論があり得ることはあり得ると思います。それは当然そうなるかどうかという点になると、いろいろなやり方があるが、今の日本税法はそういう方式をとっていない。やはり一体として担税力を見る方がよろしいという考え方をとっているわけであります。問題は、農家の場合一番はっきりしておりますが、同様の問題は、やはり農家以外の事業所得者についてもあるということになるわけで、やはりその家族で得たものを家族が消費しているという場合においても、それは所得所得だということでいくのが、税の公平を保つという見地から必要なのではなかろうかというふうに考えます。
  176. 中村寅太

    中村委員長 ただいま調査中の農業所得担税の問題について、自由民主党、日本社会党共同提案により決議をいたしたい旨の申し出があります。この際これを許します。石田宥全君
  177. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいま委員長よりお諮りになりました昭和三十二年度農業所得課税に関しまして、本委員会において決議をいたしたいのでありますが、その内容については、すでに本朝来討議をされておりますので、案文を朗読いたしまして、委員長からお諮りを願いたいと思います。   昭和三十二年度農業所得課税に関する件   昭和三十二年度農業所得税課税標準について、反当収量の決定必要経費の見積及び縄のびの取扱等に関連し、各地において深刻な紛争を生じていることはまことに遺憾である。よって、政府は、すみやかに関係当局間の協議を尽し、農業団体意見、資料を慎重に参しゃくし、適正な課税標準を作成して、これが周知徹底を図り、なお農家側の自主申告が行われた場合にはこれを重視して課税の衡平を期することとし、これがため、要すれば適当な期間、確定申告の期限を延長する等の措置を講ずべきである。   なお、災害常襲地帯における経費率の算定についても特別の配慮を行うこと。   右決議する。   昭和三十三年二月二十七日    衆議院農林水産委員会  以上であります。
  178. 中村寅太

    中村委員長 ただいま石田君より提案されました自由民主党、日本社会党共同提案にかかる昭和三十二年度農業所得課税に関する件を本委員会の決議とすることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  この際政府所見を求めます。原政府委員
  181. 原純夫

    ○原(純)政府委員 全部が税の執行の方の問題でございますから、所管の国税庁長官によく伝えまして、できるだけのことをするよう私から申し伝えたいと思います。
  182. 中村寅太

    中村委員長 ただいまの政府の発言に対し吉川君より発言を求められておりますので、これを許します。
  183. 吉川久衛

    吉川(久)委員 ただいまの決議は当然過ぎるほど当然でございますので、私ども大賛成で決議をしたのでございますが、問題はこれが末端の機関までの周知徹底であります。ただいま主税局長は、政府所見として、関係機関、特に国税庁を指しておいでになると思いますが、末端の税務署までの周知徹底がなければこの決議の趣旨が実行に移されて効果をおさめるわけには参りませんので、あわせて主税局長にその点を特に国税庁長官に連絡方を要請をいたします。それについて、主税局長のお考えを伺っておきたいと思います。
  184. 原純夫

    ○原(純)政府委員 御要望はよく伝えます。伝えました上で、国税庁の方でどういうふうにやりますか。何かそういうお墨付のようなものがそのまま行きますと、妙な話ですけれども、いろいろなリアクションというものもありますから、その辺はやはり国税庁国税庁なりに御自分で処置するだろうと思います。御趣旨は十分お伝えすることにいたします。
  185. 吉川久衛

    吉川(久)委員 主税局長は非常に含みのある、しかも幅が広過ぎる御答弁でございますので、この趣旨をあわせて委員長より国税庁長官へも直接御連絡方を要請をいたします。
  186. 中村寅太

    中村委員長 ただいま吉川君の発言の趣旨の通り委員長において取り計いたいと思います。     —————————————
  187. 中村寅太

    中村委員長 去る二月二十一日付託になりました内閣提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案、及び去る二十五日付託になりました内閣提出農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を順次議題といたし、審査に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、まず両法案の趣旨について政府説明を求めます。本名政務次官。     —————————————     —————————————
  189. 本名武

    ○本名政府委員 ただいま提案になりました繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明申し上げます。  この法律案は、生糸の輸出の増進をはかるため、輸出適格生糸についての特別買い入れの制度を拡充するとともに、この制度による生糸の買い入れ及び保管の業務を行う日本輸出生糸保管株式会社を、法律に基く特別会社に改組して、繭糸価格安定制度の運営の円滑を期するための改正であります。以下、法律案内容についてその概略を申し上げますと、第一は、生糸の輸出価格の安定をはかるため必要があるときは、輸出適格生糸について、一定数量の範囲内で、日本輸出生糸保管株式会社が買い入れ保管しているもののうち、所定の期間内に売主から買い戻しの請求のないものについては、政府において、これを最低価格に保管に要する経費を加えた価額で買い入れることがでる旨の規定を、新たに設けたことであります。  次に、右の特別買い入れの実務を行う日本輸出生糸保管株式会社の事業の範囲及び同会社に対する政府出資等について規定するとともに、その業務の運営等について所要の監督規定を設けることとし、この改正に伴い、現に在する日本輸出生糸保管株式会社を、法律に基く、特別会社に改組するために必要な規定を設けました。  なお政府が保有している生糸について、買いかえを行う場合の規定を加えることにいたしました。  以上が、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の提案理由を、御説明申し上げます。  農林漁業金融公庫は、その設立以来五年、その前身である農林漁業資金融通特別会計時代をも通算いたしますとすでに七年間にわたり、農林漁業の生産力を維持増進するために必要な長期かつ低利の資金を融通して参りましたことは、各位のよく御承知の通りであります。この間公庫の貸し付けて参りました資金の総額は、千六百七十五億円に上り、その融資残高は、本年一月末現在で千百七十七億円に達しておりますが、昭和三十三年度におきましては、前年度に引き続さ、重要農林漁業施策に即応して、上地改良事業、林道の整備、漁船の建造等農林漁業の生産力の維持増進及び農林漁業経営の安定に必要な資金の融通を行いますとともに、さきに国会に提出されました経済基盤の強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案によりまして、公庫に設立されます非補助小団地等土地改良事業助成基金の運用により、国の直後または間接の補助の対象とならない農地の改良または造成にかかる事業に対する貸付金の利子を軽減し、もってこれらの土地改良事業の促進をはからんとするものであります。  今回この農業漁業金融公庫法につきまして改正をいたす諸点について、御説明申し上げます。  まず第一に資本金の増額であります。昭和三十三年度における公庫の貸付予定計画額は三百七十五億円でありまして、前年度に比較いたし二十五億円の増加となっておりますが、この三百七十五億円の貸付を行うための原資は、年度内の資金交付所要額等を勘案いたし、産業投資特別会計からの出資金八十億円、借入金といたしまして資金運用部から三十五億円と簡易世生命保険及び郵便年金特別会計から八十億円及び回収金等百六十億円の合計三百五十五億円となっております。従いまして政府産業投資特別会計から八十億円出資いたしますため、現行規定を改正いたすものであります。  次に米麦に次いで重要な農産物であるカンショ、バレイショ等につきましては、農産物価格安定法に某く農産物等の買い入れ措置等によりまして、その価格の正常な水準からの低落を防止し、もって畑作農家の経営の安定をはかっているものでありますが、なお積極的にこれらの農産物等の新規の用途を開拓することによって、恒常的な需要を拡大することが必要と考えられるのであります。  そこでこれらの農産物等を原材料とする製造または加工の事業で、その新規の用途を開拓することにより、消費の拡大をもたらすと認められますものを育成して参りますことは、この目的を達成する上に効果的な手段であると考えられますので、今回新たに農林漁業金融公庫から、これらの製造または加工の事業を営む者に対し、長期かつ低利の設備資金を融通する道を開くため、所要の改正を行うものであります。  最後に、以上御説明申し上げて参りました公庫の業務の拡大や、昭和三十三年度において予定されております全国四ヶ所の支店の開設等に伴いまして、総裁を補佐するため、役員として副総裁一人を置くことといたし、関係規定の改正を行うものであります。  以上が、この法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  190. 中村寅太

    中村委員長 これにて両案についての趣旨説明を終ります。  なお、両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  191. 中村寅太

    中村委員長 この際お諮りいたします。農林中央金庫の融資の問題について農林中央金庫より関係者の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認めます。  なお参考人の選定、その意見聴取の日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会