運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-02-14 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 原  捨思君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    大野 市郎君       木村 文男君    清瀬 一郎君       草野一郎平君    小枝 一雄君       鈴木 善幸君    中馬 辰猪君       永山 忠則君    丹羽 兵助君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       松野 頼三君    阿部 五郎君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石山 權作君    稲富 稜人君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農林事務官         (振興局長)  永野 正二君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 大坪 藤市君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁長官   奧原日出男君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月七日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として牧  野良三君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員牧野良三辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員足立篤郎君及び永山忠則辞任につき、そ  の補欠として山口喜久一郎君及び河野金昇君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員河野金昇君及び山口喜久一郎辞任につき、  その補欠として永山忠則君及び安藤覺君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 二月十二日  臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四四号) 同月十一日  農林漁業団体職員共済組合法制定に関する請願  (阿左美廣治紹介)(第七八六号)  農協役職員年金制度実現に関する請願外一件(  助川良平紹介)(第七八七号)  同(高木松吉君外二名紹介)(第七八八号)  同(林讓治紹介)(第七八九号)  同(八百板正君外四名紹介)(第七九〇号)  同(吉田茂紹介)(第七九一号)  同(大森玉木君外三名紹介)(第八一七号)  同(森下國雄紹介)(第八一八号)  同(松浦東介紹介)(第八六一号)  秋田県下国有林野行政処置に関する請願齋藤  憲三君紹介)(第七九二号)  森林資源開発育成等に関する請願足鹿覺君  紹介)(第八三六号)  山林荒廃防止事業費国庫補助増額に関する請  願(足鹿覺紹介)(第八三七号)  黒鴨林道開設事業費全額国庫負担に関する請願  (松浦東介紹介)(第八六二号)  大野村の林野開拓反対に関する請願山本猛夫  君紹介)(第八六三号)  座繰器械無免許かま整備に関する請願藤枝泉  介君紹介)(第八六四号)  日高郡下の治山事業費国庫補助に関する請願(  世耕弘一紹介)(第八九二号)  高野町の治山事業費国庫補助に関する請願(世  耕弘一紹介)(第八九三号)  大塔村の治山事業費国庫補助に関する請願(世  耕弘一紹介)(第八九四号)  湯川部落治山事業費国庫補助に関する請願(  世耕弘一紹介)(第八九五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  先週の委員会において赤城農林大臣並びに本名政務次官より、来年度における農林水産業基本施策並びにこれに対する予算措置についてそれぞれ説明を承わったのでありますが、本日はこれに対する質疑を行いたいと思います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。石山權作君
  3. 石山權作

    石山委員 昨年の八月二十一日でしたか、これは赤城農林大臣大臣になって早々の抱負の一端として述べられたいわゆる農林白書なるものが初めて出たわけでございます。私たち去年も臨時国会等でこの白書の問題を論じたのでありますが、あれから約半年以上たちます。日本経済も、いうところの神武景気から神武以来の不渡り手形の出たという不景気の方向に転落をした。そういう点から考えてみますると、当時の白書考え方というものが、今年度の予算の中でそのまま受け入れていいかどうかという疑問もおのずから出てくるわけでございます。その当時の白書の骨子になっているのは、第一には、他の鉱工産業に比べますと、農業が立ちおくれているという点が強く主張されております。それから次には、自分たち自身内部反省と申しますか、現実の分析と申しますか、いうところの五つ赤信号を出したわけでございます。一が農家所得の低さ、二が食糧供給力の弱さ、三が国際競争力の弱さ、四が兼業化の進行、五が産業就業構造劣弱化、これはいずれも基本、あるいはその農家経済の劣弱さの根底を探っていったものではなくして、現象面をとらえたのだというふうに私などは解釈しておるものの一人でございますが、それはまた後ほど論ずるとしまして、いずれにしても五つ赤信号を出したわけでございます。白書の序論にこんなことが書いてあります。かつては食糧木材需給その他戦争中の物動政策的な考え方が強く出て、経営者としての農漁民立場がゆるがせにされたきらいがある、こういうふうに過去の農林行政を反省していられるようでございます。つまりこういう至上命令による農産物供出制度のみを集約的に考えて、農家個々経済の安定というものを少しく置き去りにしたきらいがあるというふうな内部反省だと私は見ております。次に言葉を継いで言っているのは、今後の農政において追求されなければならない新しい理念は、国土資源の積極的な開発利用と劣弱な生産構造体質改善を柱とする生産性向上であろうと言っております。生産性向上を唯一の目的にするような考え方がここに出ているわけでございますが、なお言葉を続けて言っております。今後の農業発展、農民の経済的地位向上は、農業生産性向上基礎としない限り明るい発展は望めない、ここでも生産性向上という言葉を端的に持ってきているわけでございます。  私の聞きたいことは、他産業に追いつくためにはもちろんでございますが、五つ赤信号を抜本的に埋めて、そして新しい発展を望むことが、いうところの生産性向上のみで問題が片づくかどうかというところに私は疑問を持っているわけでございます。それで今考えられている生産性向上ということは一体何を意味しているのか、それから前にも言いましたように、当時の経済白書分析あるいは見通し、こういうふうなものは経済の変動によって洗われたのであるけれども、今もって五つ考え方は変える必要がないかどうか、以上の点をお聞きします。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話がありましたように、戦争中あるいは戦後におきましては、よく当時も金の経済より物の経済というようなことを言われまして、戦争が済みましても荒廃した日本国土といたしましては、物に重点を置いて物動的な農林対策がとられておったことは御承知通りであります。しかしながら戦後十数年を経まして、物の面におきましても戦前に比較いたしまして相当増産がされたような状況でありまよす。でありますので、もちろん増産といいますか物の方も考えなくてはなりませんけれども、なおさらにわれわれが留意しなくてはならないのは、農山漁家経済の安定、経営者としての工場を考慮していくべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで今も御指摘のように、自書におきまして五つ赤信号を出しておるのでありますが、御指摘のように農山漁村民所得が他産業に比べて低い、これは農林水産業そのものの本質からも出てきておるわけでございます。戦後その面におきまして相当回復はしてきておったのでありますが、最近におきましてやはりその較差がまた出てきておる、こういうことで、所得が低い、あるいはまた食糧供給力が非常に薄い、また国際的の関係におきまして、日本農産物総合需給の点にも達しておりませんと同時に、また生産費も相当高くかかっておる。これは日本農業実態からそういうことにもなっておりますけれども、そういう点で国際競争力からいって、安い小麦などが世界的には出てきておる、こういう点においての弱さがある。あるいは農家兼業化が進んでおる、あるいは就業構造として高年齢の人や婦人が非常に多い、こういうことは、ことに白書で申し上上げなくても御承知通りだと思うのであります。そういう実態あるいは赤信号に対処して、農林政策をどういう方向へ持っていくか、こういうことでありますが、それにつきましては、これらを総合いたしまして、農業政策につきましては、この手を打てばこの政策だけでこういう問題の解決に近づくというきめ手というものは、御承知通りなかなかないのであります。しかしながら、これらの赤信号を総合して大きな線で考えまするならば、私が種々申し上げ、また政策としても出し、あるいは予算の面にも考えておりますことは、やはり農漁業というものは長期にわたるものでありますので、今その手を打ったから直ちにというわけにいきませんけれども、第一に考えなくちゃならないのは、農林水産業基盤を拡大強化していく、こういうことによってこの赤信号の幾分でも解消していく方向に持っていけるのではないかということで、土地改良とか開拓、干拓あるいはまた林業の問題、拡大造林とか林道あるいは漁港あるいは浅海増殖というようなことで基盤一つ作っていきたいということが一つ、それからもう一つは、今の国際競争力供給力ということを考える場合におきましても、総合的に考えなくてはなりませんが、米の方におきましては相当増産研究も進めておりますが、生産力という点で非常に劣っております畑作振興、こういう方面に力を入れ、これと強い結びつきを持っている酪農、畜産、こういうことによって土地生産力あるいはまた労働生産力というものを増していこうではないか。なおそれだけでは足りないので、やはり流通対策とか価格対策ということに重きを置かなければ、先ほど申しました物動的なものから経営者立場ということを考える面から考えて欠陥があるではないか、こういうことで十分とは申し上げられませんが、流通価格対策というような面に目を向けるといいますか、力を入れていこうという抱負を持っておるのであります。今の結論的なお尋ねで、生産性向上だけで問題は解決しないじゃないか、こういうことでありますが、いろいろ結論的に持ってきますと、やはりこれは土地生産力というものとは別の問題でありますけれども生産性向上ということにいたしまするならば、やはり投下した労働に対する報酬が相当得られるように、それには一面において収穫の安定と同じに、流通価格対策について所得が保障され、同時に一面においては生産費を低下していくということ、これは鉱工業などと違いまして、農林水産業におきましては生産費を低下するということは非常に困難だと思います。困難ではありますけれども、やはり一面においては生産費を低めていくということ、そうしてまた生産されたものに対しまして、価格の安定の方向へ持っていくということが、やはり農林水産業経営の安定の方向へ向けていくべき方向だ、こういうふうに考えまして、生産性向上ということを強く打ち出しておるわけでありますけれども、これのみによって農林水産関係経営者の安定ということに参りませんことは御承知通りでありますので、各般施策を総合して、そうして経営者の安定あるいは国内食糧総合的自給力という方向へ持っていきたいと思うわけであります。考え方としては以上申し上げたような次第でございます。
  5. 石山權作

    石山委員 基本的な考え方は、去年の八月以降から変っていないというふうに私は受け取っております。繁雑でありますけれども、この経済白書あとで出された農林政策要綱なるものにも私は二つ眼目があると思っておりますが、その眼目一つにはやはり生産性向上を強く打ち出しているわけでございます。たとえばコストの引き下げをやって生産性向上と相待って農林水産業所得を増大し、健全で安定したという言葉を使っておりますが、これはちょっぴりしか使っていないと思うのです。実際の意味からすれば、これはあと予算と対照すればわかるんですが、特に健全で安定したという言葉文章だから使ったと思うんだが、実際の中身はないけれども、ここで健全で安定した農漁業家育成強化に努めなければならぬというのが一つ眼目だと見ております。  第二の眼目には、先ほど大臣言葉にもあった国際上の問題でございますが、国際収支国際経済上から国内農林水産資源を開発し、最も基礎的な食糧総合自給力を強化することである、これは文章上から見れば私は経済白書を通じて見、この政策要綱を通じて見ると、大臣初め農林省当局考え方というものは、実にりっぱだと私は思う。剣道でいえば大上段に振りかぶった格好だと思うんです。非の打ちどころがないんですよ。しかしこういう考え方であなたは今度の予算をお組みになったかどうかということです。私から見ると、文章では大上段に振りかぶっていられますけれども、どうも実際お金のことになりますと、その予算項目がどこにあるか探してもなかなか見えない。あってもちびりちびりの何とかで、総花主義と申しますか、ちっとも役に立たないように見えてなりませんが、あなたはどういうふうに見ておられますか。  それからもう一つは社会党は前々からいわゆる計画経済なるものを主張し、吉田首相当時には、そんなことはあり得ないんだ、経済というものは生きものだから、春は春、夏は夏の着物を着ればいい、そういうふうなことにやっていくのが経済の妙味だと言って、計画経済をば否定された時代もあったのですが、最近ようやくにして政府長期経済計画なるものを考え始めてきた。その中に、われわれの担当する農林経済政策も当然位置を占めてきておりますが、先ごろわれわれが配付してもらったところの長期経済の中に、三十一年を基準にして出ていった経済一つの想定の中に、三十三年度の予算を通じて見て、実際に結果として生まれてくる数字が、いわゆる長期経済ワクの中で正当な位置を占めているかどうかということをやってみたかどうか、そんな点をせんだってわれわれは集計しましたけれども、その数字は五カ年後のものであって、今のものではないという。しかし計画というものはやはりやってみていただかなければ、自分位置づけというものはわからぬと思う。五年後の姿だけをわれわれは見て仕事をするわけにはいかぬでございましょう。やはり一年には一年、二年には二年というふうな積み重ね方、特に飛躍的なことを望み得ない大地相手農林水産業でございますから、当然計画というものは緻密に考え、緻密に積み上げていかなければならぬのでございますから、この長期経済ワクの中に三十三年度の結果の数字というものが、正確に正当な地位にあるというふうな考え方を持っておられるかどうか、この二つをお聞きしたい。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 白書に続いて農林政策要綱を出した、その農林政策要綱に基いて予算編成されておるかどうか、第一はこういうお尋ねかと思います。これにつきましては、どうもちょっぴり出しているところもあるし、ばらばらでもあるし、自分たちとしてはあまり予算に反映されていないのじゃないかというお尋ねのようであります。しかし私どもとしましては、農林白書によって農林水産業の現状と問題点分析し、それに基いて農林政策要綱を出したのでありますから、これがペーパー・プランに終ったのでは、政策を担当しておる私どもとして、それでは済まない問題でありますので、予算編成に当りましては、この政策を極力実現すべく努力いたしたのであります。でありますので、先ほど申し上げましたように、大体三つの面、土地あるいは海といいますか、そういう生産基盤確立強化という点におきましても、昨年度あるいはその前よりも相当充実した内容予算に組み入れておるわけであります。それで先ほど申し上げました畑作とか畜産、これはどうも十分とは率直に申し上げられません。ことに畑作の問題につきましては各般にわたっておりますし、また畑作に対する研究技術指導という面も多岐にわたっておりますので、これも従来あまり進んでいなかったのであります。でありますか、こういう技術指導の面におきましても、試験研究などに相当力を入れておるとか、あるいはまた、これは生産基盤とも関連いたしますが畑地灌漑というような点も相当考え、あるいは小団地の土地改良あるいは耕地整理というような、土地基盤とも関連いたしますが、そういう点も考え、あるいはまた畑作につきましていろいろ小さい問題もあります。たとえば特技技術員の新設とか——これは畜産にも漁業の方にもありますが、そういうような面とか、各項目に少し分れ過ぎておりまして、一つの大きな柱としての考え方はあっても、予算面においては少しあっちこっちに入っておるような関係もありますが、そういう点も考えておる。また流通加工の面におきましても、これは従来あまり手をつけなかった。御承知通り日本統制経済下経済ではありませんで自由経済基礎に立って行われておるものでありますから、何から何まで統制的にきちっといくわけにはいきませんけれども、弱い層である農林水産でありますから、統制経済ではないといたしましても、ある程度の調整といいますか、そういう面を少し満たしませんと、農林水産の人々をバック・アップするといいますか支持することはできませんので、これはほんとうの手放しというわけにはいきませんで、ある程度調整的といいますか、バック・アップするようなことはしなくちゃならぬというようなことで流通加工方面も考えて、そういう種をまくといいますか、そういう方面にも熱意を持ってやっていく。従ってこの流通加工方面は非常にむずかしい問題でありますから、予算そのものはそう大きな予算額とは申されませんけれども、この方面にも力を入れていく。その他個々的な問題の御指摘がありますれば、事務当局からもお話し申し上げますけれども予算編成に当りましては石山さんが御指摘のように、全然無関係とか、盛られておらないということでなくて、極力農林政策をこの予算面裏づけしていくということでやっておりますので、その点は御了解願いたいと思います。ただ国において農林省だけがあるならば、全部私の考え方予算面に出ると思いますが、国全体の予算ワクといいますか、経済との見合いによりますいろいろの問題もありますので、全部が全部思うように載っているとは申し上げられません。しかしながら農林水産関係におきましては、私はことしは相当政策面を実現できるというような形において予算裏づけをしている、こういうふうに申し上げて差しつかえないのじゃないか、こう思うのであります。  それから第二の経済計画の問題でありますが、長期経済計画というものを最近各国とも策定して、それと政策あるいは予算というものとをマッチさせようという努力をいたしますことは今御指摘通りであります。ただ日本におきましては、御承知通り、かつて経済自立五カ年計画というものを立てておったわけでありますが、その後あるいは一部における神武景気とかあるいはまた政策におきまして金融の引き締めというようなことがありまして、この自立計画相当修正を加えなくちゃならぬということになってきたわけであります。でありますので、本年、三十七年を目標として経済長期五カ年計画というものを策定したのでありますが、これは御承知通り、国としての長期経済計画というのとは内容において相当違っておると思うのであります。たとえばお手元にもあります長期経済計画策定意義が、この計画は五カ年後における日本経済の姿を描き、それに到達するために果さねばならぬ政府企業、国民の努力目標手がかりを提供するものである、こういうふうな策定意義を持っておりますし、計画性格といたしましても、この計画は、自由企業自由市場を基調とする体制のもとにおいて、経済運営の指針となるべきものである、従って経済全分野にわたって詳細な計画目標を掲げ、その一つ一つについて厳格な実行を期することはこの計画の意図するところでもなく、またわが国経済の実情にも即していない、こういうようなことにもなっておりますので、日本における長期経済計画、またことしきめました長期計画性格といいますか、内容についても一度一つ御考慮願った上で話を進めたいと思うのであります。  そこでこの長期経済計画では、もちろん五カ年間の後における経済の姿、また計画がその目標手がかりを提供するものだということで、各方面にわたってその目標あるいは計画をきめてあります。その中におきまして、私どもといたしましても、農林水産関係の問題はこの長期経済計画策定のためにいろいろな注文をつけましたり、計画につきましても企画庁でやったのでありますが参加いたしております。でありますので、三十七年度における生産がどれくらいになるか、こまかい点においては家畜の増殖だとか、米はどういうふうになるとか、輸入所要量はどういうふうになるとか、あるいは水産物の生産はどういうふうな姿になるとかいうような形は出ております。しかしこまかい数字というものはあまりないのであります。ただこの数字の中で特に出ておりますのは、農地開発行政投資を巨視的に試算すれば五カ年間に約二千三百億円の数字が得られるだろう、こういう見通しがあるわけであります。これを私どもといたしましては年次別といいますか、平均的には参りませんけれども年次別に分けて、そして生産基盤なら生産基盤といたしましてはどの程度の予算がこの長期計画数字に合うものかということにつきましては、予算折衝の際も、実は御承知かもしれませんが初め大分切られておったものですから、そういう面ではこの計画内容にこまかい点はありませんけれども、私どもとして考えてみた年次別と大分違うじゃないかというようなことで、予算折衝の際などもこういう問題を持ち出して折衝をいたしたわけであります。そういう関係から申し上げますと、この計画年次別に算出できるものもありますし、またできないものもありますが、大体私どもとしていろいろ算定してみますと、十分とは申し上げられませんが、この計画に近い予算裏づけを持っている、こういうふうに私どもは考えております。
  7. 石山權作

    石山委員 私は、大臣が親切丁寧に説明されているのは、要約すれば三十三年に格づけすると少しずれがあるから格づけができないということなんだと思うのです。それはなぜかというと、鉱工産業界はたとえば六・八%の上昇率を見るといっても、基盤はちゃんとできておるのだ。過剰投資をして過剰設備をしたのですから、基盤はできている。一朝景気が来れば、来年度は一二%、一五%の生産上昇というのはやさしいことなんですよ。それが農家の場合三十三年度に格づけしても三十三年の位置にすわり得ないということでしょう。だってあなたは一千七百億の計数を出して、三十三年度に正常の位置にすわろうとなさったのですもの。それが大蔵査定で九百億に減らされた。選挙があるから、それではとてもやれないからという泣きの涙が千億を突破さしたというのが実情でしょう。ですから問題は、あなたが何べんおっしゃっても、実際からいうと三十三年度は格づけできないのだ。私はそういうふうに解釈したいのですが、どうなんです。二十八年から農林予算は落ちてきました。去年は井出さんが大臣になられてこういうことを言っておる。去年よりことしの予算は実質的に上回っているという言葉を使って、去年よりも下ったいわゆるパーセンテージを読み上げたときは、われわれは笑いましたよ。だって、総予算の八・四%から三十二年度は七・九%に農林予算が下って、実質的には去年より上回りましたと農林大臣が説明されても、われわれ委員としてはどうも納得がいかないので、あははと笑うしか方法がなかったのです。そういう点から見てみますと、去年度は一兆一千三百七十四億対八百九十五億、ちょうど七・九という数字が出ました。今年度は一兆三千百二十一億対一千八億です。これをあなたはどういうふうに説明なさるのです。井手さんみたいな説明を、なさるのですか、実質的には去年よりも優秀であると。これはだれか計算尺をお持ちになったら計算尺を使って下さい。どういうふうにあなたは御説明なさるのですか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のお話とは私の予算編成方針は違っておるのです。一千億に到達することでやっておって、しかもそれはまずいじゃないかというのですけれども、一千億を突破しろというのは、実は石山さんあたり社会党の人から、一千億は突破しなければだめじゃないかという議論があったのです。私の方では今の政策を実は積み上げてきて、だんだんこれも足らぬ、あれも足らぬ、こうやらなければならぬということで一千八億になったのでありまして、だから一千八億というのは何も私どもは得々としておるわけでも何でもありません。決してまだ満足しておるわけでもないのであります。一千八億になったということは、二十九年以来まだなかったのじゃないかという気持は持っていますが、しかし決して得々としているとか、満足しているというわけではないのであります。  それから今のパーセンテージでありますが、去年は私の方の計算として七・八%ということになっております。ことしは七・七%になっておりますので、こういうようなことも、実は本会議等で指摘された例もあるのでありますが、しかしパーセンテージに拘泥する気持はありませんけれども、もしもパーセンテージでいくならば、一千八億という額は、去年の災害復旧費とか、その他減じられた当然減の二十五億がありますから、実は一千八億に二十五億を入れますと、一千三十三億くらいにもなるので、パーセンテージからいえば、実はいろいろな見方があると思うのでありますが、しかし、そういうものは抜きにいたしまして、実質的に積み上げてきて政策を持っていこうということから、いろいろな面でこれが一千八億になったということでありまして、そういうふうに御了承をいただいて、御審議にもお力添えを願いたいと思います。
  9. 石山權作

    石山委員 社会党が一千億をこせばいいと言ったから、一千八億になったからむしろ喜んだ方がよかろうというような点もほの見えます。しかし、社会党が考えていたのは去年の予算規模を想定にして、一兆一千億を想定にした農林予算一千億円なんですから、これはお間違いのないように。みんなむしりあった結果が一兆三千百億になった予算に対しての一千八億でございますから、社会党の言い分は認めていられないという結果になっているのではないかと私は思います。そういう点では、残念ながら前年度の井出農林大臣予算編成の説明と、新しい赤城農林大臣のお話もやや似たり寄ったりではないか。今度は九百億から一千億になった。しかし、その千億も一兆三千億の問題から端を発すれば、パーセンテージが下ったという現象が起きているのでございますから、われわれのように正直に数字を大切にするものから見れば、前年度よりも本年度の予算は少なかった、こう言わざるを得ないのでございます。しかもここで予算項目に入って私はお聞きしたいが、この一千八億の積み上げが、一千億をこえさすためにどんなに無理をしたか、これをお聞きしたいのです。例の小団地等の土地改良その他を育成するために、農林公庫に六十五億の土地改良基金を項目に載せてあります。この六十五億というのは、私から見ればずいぶん無理をなさった数字ですなあと言いたい。こういうことを予算面に載せなければならない意図、いわゆる会計法からしてここへ載せなければならないものかどうかということなんです。私はこの数字を見て、これはうっかりすると二重帳簿になるという考え方を持っておる。同じ一つ項目がこっちにも使われ、あっちにも使われるという懸念のある数字が、この六十五億なのではないか、この点はいかがでございますか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは御承知の上での質問だと思いますので、あまり長くは申しませんが、三十一年度に剰余金が一千億程度出たわけであります。でありますので、これはやはり予算に計上いたしませんと、それこそどこへいってしまったかわかりません。しかし一千億の限度において今度の予算は組んでいくということでありましたならば、その剰余金の方もただやみからやみへ持っていくわけにいきませんので、予算面におきまして二百十一億は資金として将来使う。そのほかは基金として使っていくというような方針をきめたのであります。  そこで、その基金の問題につきましては、六つでしたか、基金を設けておるのでありますが、そのうちに今お話のように、小団地等の土地改良事業に使う基金として六十五億円が予算面に——歳入面は当然剰余金になっていますが、歳出面として計上されることになったわけであります。これは単なる名目的なものじゃないかということじゃないかと思うのでありますが、決してそういうことではありませんで、農林政策を実行していく上におきまして、私ども生産基盤を拡大強化する点におきましては、国営、県営、団体営という各工事のテンポといいますか、テンポをそろえていきたい、こういうことを考えておりますが、小団地等はとかくおくれがちであります。そこで補助金にたよっていくものも必要でありますが、同時に融資の面においてこの工事を進めていくということも必要であります。そういう点から考えまして、非補助の小団地等の土地改良をするということは、農業政策として、また石山さんも御賛成だと思うのですが必要なことであります。しかし、その額が少いじゃないかということでありますが、六十五億の基金によって金利を下げて、五分の利子を一分くらい下げていくことにいたしまして、そうして、またその融資の面はどれくらいの額になるかといいますと、六十五億のほかに別に六十億くらいが確保されておるわけであります。そのうちの三十五億につきましては、金利を一分下げるということによりまして相当小団地等の土地改良が推進される、農林関係基盤がそういう末端の方においても確立されるということでありますから、この六十五億というものは無理に取ったわけでも何でもないのであります。予算編成の方針といたしまして、剰余金は一応資金あるいは基金として残しておく、その基金の中で、私どもといたしまして六十五億を確保して小団地の土地改良を進めていくということになっておりますので、実質的にこれは相当有効に働ける基金だ、こういうふうに考えておりますので、実質的に考えていただきたい、こういうふうに私ども考えております。
  11. 石山權作

    石山委員 私は予算というものは大体その年使われるものだと考えておるのです。それはもちろん繰り越しになる分もありますけれども、この名目からすれば来年度また六十五億ちゃんともらわなければならぬ、再来年にも六十五億予算面に計上しなければならぬという項目だろうと思うのです。そういう項目を持ってくるところに疑問があるし、実際上予算上使われる金は利子補給なんです。ですからあなたが正直に、予算編成のいわゆる巧妙なる技術ということを考えないで、率直な予算編成をするとするならば、六十五億の六分くらいですか、六分五厘ですか、いずれにしても五億以内の経費を計上して、六十五億は当然財政投融資の面に回していってみせてこそあなたは初めて良心的な予算編成をしたということになるのではないですか。しかもここでちょっと奇妙に感ずることは、食管特別会計から無理々々に持ってきておる。これは一体何です。こういうこともできるものですか。食糧管理特別会計(農産物等安定勘定)経理繰入れ、これはおもしろいでしょう。食管会計の全部から見れば食管は赤字である、その赤字の方は別会計だ、こっちの方は黒になったから十億の繰り入れ分はこっちに見せてあげましょう、こういう手なんだ。どういうのでしょう、そういうことは、おやりになっているところを見ると、これは合法なのかもしれませんけれども、そういうテクニックで千億を無理々々にでっち上げなければならぬという理由が私には不可解なんだ。特に六十五億の場合は、これはよく銀行なんかでやっている手なんですが、たとえば銀行は取引者がありますから、三月、六月、九月というように決算期がくると、いわゆる預金の残高を多く見せたいために取引者の某に向って手形を出させます。これは甲の銀行でもやるし、乙の銀行でもやることなんです。いわゆる粉飾預金というものをやるのです。実際の金は動かさないのですけれども、手形で預金をする、そうして翌月これを双方で決済するから、金は動かさないで決算期の予算の報告書にはその手形の何百万円かは預金の形になって現われるということなんです。これは銀行がやっていることなんですが、あなたは銀行屋と同じことをやろうというのですか。一体何です、空手形ではありませんか。だからこれは財政投融資に回すべきが当然だ。これは、来年度も六十五億もらわなければならない、再来年度もこのことをしなければならない、昭和三十五年度も六十五億を計上しなければならない。そうでなければ、あなたの言からすればこれは行方不明になってしまう。そういう予算の組み方は、しろうとのわれわれでも納得がいきません。そういうやり方では困ります。こういうことでは、計画的に一千億をでっち上げるためにこういう項目を出してきた、こう言わざるを得ません。残念ながら私は赤城さんの誠意を認めたいものの一人だけれども、あがった項目数字の形成から見れば、そうでございましたかというふうになかなか私は納得ができないのです。項目上からしてこれはどうして財政投融資に回すことができないのです。利子補給として五億なら五億を計上するという手をなぜとり得ないのでございますか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 利子補給としてそれを計上するということになりますと、三十三年度も三十四年度もずっと計上することになる。ところが、これは基金として計上していますから、この運営利益によってどんどん回していけますから、私どもの計算によりますと、ことしの事業も来年の事業も、相当長期にわたって繰り返し繰り返し事業が行われていく。今のお話のように利子補給としてというなら、ことし補給するならば来年もしなければならぬ。毎年六十五億やらなければならぬ。これは石山さんのお話ですと逆になります。これは今の方が事業を行なっていくのに非常にいいと思います。  それから十億円の農産物価格安定資金を入れておる、これで数字を合せておるのじゃないかということでありますが、農産物価格安定制度は、御承知のように、実は生産者の価格安定のために、価格を支持するために高く買ったり何かしますから、これは損をいたします。損をいたしますから、損をいたした場合にこの十億でくずしていって生産者の価格を支持するということでありますから、これは名前だけでやっているのではなくて、支持する目的に従ってこういうような十億をあげたのです。ですからこれはほめていただいてもいいのじゃないかと考えております。
  13. 石山權作

    石山委員 私は、赤城さんのことだから二へんぐらい聞いたら納得したいところですが、どうもこれだけは将来のために難点があると思う。たとえば、この六十五億という数字はいつ消えますか。六十五億という数字は消えないものですか、消えるものですか。  それから、ここにくると、基金というものと資金というもののいわゆる法律的な解釈はきちんとしておいていただかないと、やはり問題が残るような気がいたしますが、そういう点はいかがでございますか。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私から説明するのはおかしいようなものですが、資金というのは元金をくずしていく方を資金と称しておりますし基金というのは、元金をくずさないでいこうというのでありますから、六十五億の元の金については、くずさないで、それはあくまでも六十五億として保留していく、そうしてその運用利益によって小団地の方の土地改良についての利子補給をしていく、こういうことであります。
  15. 石山權作

    石山委員 それでは、私が先ほど言った通り、三十四年も予算書に六十五億の基金というふうに出るわけですか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 三十四年度におきましては、これは予算書から除かれるわけであります。この三十三年度によりましてこの基金は農林漁業金融公庫の出資という形になりまして、それを預金部に預託している。そうして運営利益を持っていくということでありますから、三十四年度の予算にはこれは計上されない、こういうことになります。
  17. 石山權作

    石山委員 これは悪口になるかもわかりませんが、いろいろなテクニックを使って何ぼでもこさせるようなことができるなら、財政投融資の分だって今回三十四億よけいに取ったのだから、これも何かの格好で出してみたらどうか、そういうふうな拡大解釈じゃないだろうけれども、何か名前をつけて、われわれが当然考えてもいい実質的な金の使い分は予算に盛るべきものであるし、そうでなく年度がかわるたびごとに動くようなものは財融投資にすべきである。こういう考え方からするならば、この小団地土地改良基金の六十五億というものは、私は多大の疑問を残すと思うのです。それは来年、再来年になれば金融公庫に繰入れるから予算上には盛られない、ことしは盛ろうという、それはどういう意味ですか。実際予算上で動かす金、来年度も動くわけなんでしょう。それはことしだけは特に予算の中に麗々しく出さなければならぬという理由だ、私はそういう点はどうも納得できないのです。何回も言っておそれ入りますが、無理をした形で、実際の予算で減っていく金はいわゆる利子だけなんですよ。腹が痛むのは利子だけなんです。予算関係がないじゃありませんか。私はそういう点は予算じゃないと思うのです。これはだから私銀行屋に言ったように、あなたが数字を少しふやしたいための苦労だ。こういうテクニックをだれが教えただろうか、わが純真なる赤城大臣にだれがこういうぶざまな予算編成を教えたかということなんです。けしからぬですよ。皆さんは皆さんの立場を守るために、やはり千億やらなければ都合が悪いと思ってやったかしらぬけれども、私たちが大事にしている、保守党の中ではピカ一である、農政通である赤城大臣をこういう立場に追い込める必要はないじゃありませんか。率直に、私は今回は努力をしたけれども、奮闘をしたけれども予算面ではこれしかなかった、しかし実際の財融投資の面には、農民にはこれだけ多く今回取ったと言うことができる。それをまじめさを欠くような形式主義でごまかそうなどとははなはだけしからぬ。まず官僚の人たちは常に形式主義だといって批判されている。しかし私の見たものの本の中に、たった一人、農林官僚をほめていた点があった。それは、ほかの官僚は机上プランでいろいろなことを集約的に数字的にしようとする傾向があるけれども、農林官僚は農家の生活に足を突っ込んでいる、組織の中に足を突っ込んでいるだけにこれは買ってやる点が多々あるのではないかといって、汚職のにおいふんぷんたる農林官僚をカバーした人さえある。私はそれを高く買っておったのだ、しかしこれを見るとどうも、そうはものを許して、いろいろな問題をむぞうさに処理してはいかぬという考え方に私は気がついた。そういうことではいかぬでございましょう。大臣どうなんです。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 最初のお尋ねの中に、予算に計上する必要ないじゃないか、こういうことでありますが、先ほど申し上げましたように、剰余金として歳入の方にも入っておりますから、これについては支出の面にも計上しなければならぬ、こういう形になっておるのでありますから、その中で財政の総ワクの点の問題もあり、一千億の範囲で去年よりも新しい事業というか、これには予算づけをしようということであったので、資金あるいは基金として使っていくということになりましたので、予算の計上をいたしたのであります。
  19. 石山權作

    石山委員 ことしは予算に現われ、来年度は予算書に現われないといっておるのでしょう、そう言っておるのでしょう。だからことしは同じ六十五億の金が、さっき言ったように銀行の粉飾預金のような格好で六十五億という金は二重に農民にアッピールするということなのです。財融投資六十五億、基金として六十五億、同じ金を二つに使い分けた。ここが私は手品だと言ったのです。なぜ予算書に六十五億をあげたのだ。二重に使われるじゃありませんか。実際政府の腹を痛める金とすれば、六十五億の五六、三十、六六、三十六ですから、約四億近くの金だけが実際政府の腹を痛める金だ。ここに四億計上すればよいのだ。そうすれば、これは二重帳簿になりません。銀行のいう粉飾預金にもなりません。みながなるほどとはっきりわかる。これはなるほどとわからぬじゃありませんか。そういうインチキな予算の組み方には私は疑義があるといっておるので、何べんも念を押しておるのです。しかしこの問題だけやるためにきょう私は立っておるのでないので、非常に残念ですが、まだまだ私はあなたとやりたいのだけれども、いずれにしましても、こういう予算の組み方は正常なものではないということを指摘しておきたい。大臣にもう一ぺん念を押しておきますが、こういう予算書は今度からは作らないでおいてもらいたい。そうでなければ、あなたみたいに無理々々何でも数字を大きくしようとするならば、財融投資の増額分をみな計上しなさい。そうやればほんとうは百何ぼくらいになる。それをあなたはそっちは見ないけれども、これだけは持ってくる。こういうやり方は私にはどうしても賛成できません。しかし先ほど申しましたように、もう少しお聞きしたいのでございますが、ほかに質問があるので、これは納得したという形で私は質問を打ち切るのではございません。時間があればまた一番おしまいの一番先に持ち出して話を進めたいと思っております。
  20. 中村寅太

    中村委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  21. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石山權作君
  22. 石山權作

    石山委員 先ほど私小団地の改良基金六十五億の問題について質問いたしましたが、なかなか明快な御答弁を得られません。これに対して明快な御答弁を得るにはまだ相当時間がかかるように思います。慣例上の問題もございましょう、その基金の使い方その他に対してもいろいろ問題があるのでございますから、この委員会を進める意味におきまして、一応この問題は私は将来の質問として保留しておきます。  次に私質問申し上げたい点は、生産性を大へん強調しておられますけれども生産性向上によって作られた品物をうまくさばかなければ、結局皆さんの方で言っておられる健全なる農家経済安定という言葉は、私は夢になる可能性があると思います。たとえば酪農振興が赤城農政のたった一つバック・ボーンにはなっておりませんけれども、ちょっと小指の先ぐらいの程度で顔を出しているわけですが、それにしてもそろそろ牛乳が余った、余ったことに対して乳業者がそれに圧力を加える、あるいは有名なお菓子屋さんたちがそれに便乗して生産物を買いたたくというような現象が現われているようでございます。それに対して政府予算的に措置したのは、牛乳の学校給食として七億を計上しておる。私は、これを悪いとは申し上げません。ただこういうふうなやり方は、非常に安易なやり方なんです。努力するやり方ではございません。そして私は、これよりもっと乳が出た場合、こういう考え方ではすぐ頭打ちが来るのではないか、こう思うのであります。今回の場合はよろしいが、今後の酪農振興上におけるところの安定策というものは、どういうことを考えていられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  23. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 学校給食としてなま牛乳等を使うということは、酪農振興法制定当時から衆議院の決議もありましたし、そういうことから、学校児童の栄養の問題からも必要だということで、これを始めることになったのであります。そのほかに酪農振興問題でどういう点を考えているかということでありますが、御承知通り生産もふえるということでありますから、一面において消費を拡大するということが必要だろうと考えておるわけであります。そういう面から学童の給食も考えておりますが、病院とか、あるいは事業場等の集団飲用というようなことは、やはり消費面を拡大することであり、消費面を拡大すれば、生産者の方でもこれがさばけるということになりますし、消費者の面にも非常にいいわけだ。こういうことで、消費面を拡大するということを考えております。  それからまた、乳価の安定ということが必要でありますので、従来も行なってはおるのでありますが、共販態勢の確立、あるいは団体契約といいますか、そういう面を協同組合等を通じて、なお強化していきたいというふうに考えております。一面また生産費を低くするということでありますので、飼料の問題も考えまして、草地の改良、拡大という面やら、自給飼料等を相当生産できるような形、あるいは飼料の価格安定とか、いろいろな面から、せっかく振興しつつある酪農が途中で挫折しないように、そしてまた農家の安定に資するような方策を講じておるわけであります。
  24. 石山權作

    石山委員 酪農振興について、赤城農林大臣からえさの話が出たわけですが、私はえさの問題でもほんとうはお聞きしたい点がたくさんあるのです。特定の業者に多大の利潤を与えているという資料を私見せてもらったのですから、これも聞きたいが、あまり私一人で質問して時間をとるのは恐縮ですけれども、このえさの問題についても大臣は重要視していただきたい。非常に問題が深刻で、酪農振興に、私らから見れば暗影を投じているのがえさ問題だと考えております。これはたまたまあなたが発言されたから、私はそれに便乗して言っているわけですが、農林省関係の一般の輸入物資に対しては、多大な疑惑が持たれております。残念でございますけれども、多大な疑惑が持たれておる。これは個々の例を話し合えば解明するところもありますけれども、先ほど申したように、時間をとると私の目的とするところからはずれますので、これはほかの方々がやって下さるだろうし、そのあとで私も関連質問で、いつか質問を申し上げたいと思います。いずれにしましても、農林省の今までやっている全般の行政のうちで、一番欠点のあるのはできた品物をいかにしてさばくか、いかにして価格維持をなすかという点に、非常に欠けているのでございます。これは何と申しましても、お役人が商売人の方々とせり合って、農産物価格安定をなすのは並み大ていなことではないということは理解ができます。理解ができるからといって、難儀だからといって、私はごめんしておくというふうなことにはならないと思うんです。こういうことを大臣はお知りですか。たとえばMSA協定による余剰農産物の問題について、小麦が非常に圧迫を受けた。関東その他においては非常に問題が起きているわけですが、静岡県一県だけでも、七万町歩くらいな小麦が蔬菜その他に転換せざるを得なかったと、私は報告を聞いております。大へんな数字でございます。それは果樹になると一年や二年でできませんから、手っとり早い畑地の転換というものは、花卉、蔬菜等に向けられるというのは、これは当然なのでございます。その例として、新聞などをにぎわしている例の白菜の暴落、これは実に悲惨なことだと思う。手取りが去年の四分の一くらいしかならない。荷作りなわ、むしろ、そういうふうなものをとると、ほとんど手取りのものがないのだ、大根その他になれば畑にほって置くしか手がないのだ、こういう報告が出ているわけでございます。蔬菜とか花卉とか、あんなものは物価安定などとても考え得えられないというふうに、皆さん農林当局の方々は考えられるかもしれませんけれども、麦の畑地転換をなさなければならないような要因が、いわゆるMSAというふうなものを背景にしてなされたとすれば、私は簡単に、それは農家の責任であるということにはなり得ないと思う。お前たちのものの判断がまずくて、一緒に白菜を作ったり玉菜を作るから、暴落するのは当りまえだ、こういう言い方をすることはできるのです。しかしそれはひどいと思う。一斉に花卉、蔬菜に転換せざるを得ないような要因があったということです。しかも麦に対しては前の国会あたりでは、買い上げしないとか、値下げをするとか、いろいろな圧迫を加えたということは事実でしょう。そういうことを考えますと、私はこの蔬菜の問題、花卉の問題に対しても、政府当局としては放任はできないのではないか、もっと親切な指導をする必要があったのではないかと思う。これに対する今後の方策があるのでございますか。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 小麦等が、MSAといいますか、余剰農産物の輸入等によって圧迫を受けているのではないかという前段の御質問でありますが、余剰農産物関係あるいは輸入の関係で、小麦の価格等は圧迫はいたしておりません。心理的にはいろいろあろうかと思います。しかしながら、御承知通り麦類は、間接統制には移しましたが、その大部分は政府が買い上げております。そして、今お話がありましたように、前の国会でこれを下げるんだとか、あるいは圧迫をこうむらせるのだというような話があったということでありますが、私になってからはそういうことはありません。麦類の価格も昨年と同じであります。  それから外国の麦、小麦につきましては、政府が一手に管理をしておりますし、これが内地小麦の生産を、直接圧迫するというようなことはないのであります。ただ御承知のように、小麦とか米というものは、一年に大体一回しかとれませんから、農家にとりましては、現金収入という点において非常に苦しいのであります。そういう点で総合的に、やはり果樹とか、園芸とか蔬菜とかいうようなことに向くのも、これは立場上そういうことも多いと私も考えております。そこでこういう蔬菜とかその他について野放しにしておいては、とかく生産が過剰になったり、価格の面で不利な立場に陥るのではないかという御指摘と思います。これにつきましては、非常にむずかしい問題だと、今御質問の中にもありましたが、ほんとうにむずかしい問題であります。特に先ほど申し上げましたように、統制経済でございませんのでむずかしい問題でありますが、むずかしい問題だからといって捨てておくわけにはいきません。そこで、今まで流通加工対策という方面農林政策としてもとかくおろそかにされておった傾向があるのであります。でありますので、私どもといたしましては、これは農産物価格安定作物として入れることは、いろいろの点からむずかしいと思いますけれども流通加工対策につきましては、前にもお話し申し上げましたが、御承知のように省内におきましても流通合理化対策委員会を作りまして、その成案を得て、それからまたその対策につきましても、先ほどから牛乳の点にも触れましたけれども、共販体制の確立とか、需給調整とか、あるいはまた市場の価格が非常に変動することに対しまして生産農家がそれをうかつにしておるというか、そういう変動にもっと注意する、敏感にこれを知るというような意味でインフォーメーション体制といいますが、市場の価格の動きを知らせるようなこと、ことに北海道等におきましては、有線放送等も相当発達しておりますので、これに結びつけてインフォーメーション体制なども作っていきたい。あるいはまた出荷したものについて市場関係がまずいということでは、ひっかけられるといいますか、出荷した金が取れないというようなこともある。こういうこともありますので、中央市場法等の改正も、公共性を持ったものに改正して、出荷したものに対する保障といいますか、安定性を持たしたい、こういうようなことも考えておるわけであります。いろいろな点でこの方面も進めていきたい、こう考えております。
  26. 石山權作

    石山委員 安定政策が一番私は農林関係では重大に取り上げておかなければならない問題だと思います。特に生産の場合は個々の単位でございますが、買い受ける団体は膨大な資本を持っておる、加工の団体はまた膨大な組織を持っておる。これに対抗するには、やはり今の農業協同組合の育成強化はもちろんでありますけれども政府自身として大きな目から見たところの全般の価格安定策というのは当然農林省以外にも考えられてしかるべきことだと思います。そういう点から見ますと、日本経済全般というものは商工業中心であり、鉱工業生産が中心である。どうしても農林の場合の価格安定というものは、いわゆる一般の大衆の奉仕の形で投げやられる傾向がある。これは国民が安いものを手に入れるということはいいのでございますから、悪いことではないのでございますけれども農家経済を破壊するような形においてものの生産を助長させる、ある種目を特定に選んで、そこに集中的に農家経済を投入させ、できたものが、国民大衆の奉仕の形のみで行われるとするならば、これは決して農林行政としては私は妥当なものではない。日本経済全般から見ても、四割をこえる農民生活を破滅の方向に導くのですから、私は十分に考える必要があるのではないか。特に私はこの場合に、生産性の問題については御質問申し上げたいと思っておりますが、一般的に数字を通じて見た三十三年度の予算書は、私は生産性向上に何ぼか役立つ若干の項目はあると思います。しかしそれも、今進行中の農村経済のジリ貧——放っておくとだんだん貧乏になって身動きができないようなのが今の農家経済だと思う。これを私たちはジリ貧の農家経済だと見ているわけですが、このジリ貧の速度とにらみ合せてみますと、冒頭にもちょっと申し上げましたが、他産業に追いついて自己の生活安定を望むというふうな政策要綱にうたっていることとは、かなり縁遠いものだといわざるを得ない。あなたの御説明を聞いたのですが、そういうような考え方でございます。何といっても前年度の予算にちょびちょびと積み重ねた傾向が見えます。いうところの総花主義でございましょう、ちょびちょびと少額を積み重ねております。これはある意味では農林省内におけるところのセクトが災いしているかもしれません。あるいは日本農林行政がそういうような現実をとっているのかもしれませんけれども、いずれにしても主たる眼目をどこへ置くかということに対しては、私は支柱がない、大きな柱がないような数字の組み立て方であるといわざるを得ません。ですから私の知人の農民運動家の一人はこういうことを言っております。この予算は二階から子供がおしっこしたような姿である、こう言っております。これは考えてみたら、しかるにしかれない、怒るに怒れないまあまあ予算だというような、やゆを加えた表現だろうと私は思っておりますけれども、いずれにしてもそういう表現がそんなに的をはずれていないようなのが今回の予算案ではないか、だから皆さんの方から出された政策要綱の中でも言っています。こんなことを言っている。「施策の大部分は従来からとられてきた施策に総合性を付与したものか、あるいは改善したものであって、奇手妙手というものはない。」と言っている。あなたはさっき妙手という言葉を使いましたね。その通り言っている。次にまた言っている。「農林水産業発展長期的観点に立って体系化された施策を忠実かつ入念に実施することを何よりも必要とするであろう。」こう言っております。これは前に言ったこととあとに言ったことと、だれが見てもなるほどそうなんだと、文句のつけようのないような組み合せ方をしております。それは言葉をかえて私に言わせれば、長い間政権をとっていた保守政権、自民党の諸君が何もやらなかったということを意味しているのですよ。今までも大したことをやらなかった、ことしもやりませんでした、来年もまたやりません、こういうことになる。そうではありませんか。あなたの方の出した政策要綱の中で言っていることをそのまま率直に聞きますと、今までも何もやらなかった、ことしもやらなかった。しかしこの予算ではまた来年も何もやれませんということを告白しているのではないか、たった一つ言っている。まあまあ長い目で見て下さいよということだろうと思うのです。入念にやるというので、まあまあ長い目で見て下さい。——私だって百姓の子ですから、そういうことは長い目で見たいのですよ。長い目で見たいにしても、それにしてはもの足らな過ぎる予算ではないか。このまじめさを買ってくれということは、普通世上でいう老いの繰り言葉になるだろうと思いますけれども赤城農林大臣のほんとうのねらいは、好意に解釈して、今年度の予算は私の考え方がちょっと芽を出したくらいだ、そんなところでしょう。そういうふうに考えるのは私の善意な解釈だと思いますけれども、そうでなくて、一般的な考え方からすれば、先ほど私が申し上げたような憎まれ口をきかなければならない予算だとこう思います。  生産性の問題について二、三お伺いいたしたいと思うわけですが、生産性向上させるというと、たとえば土地の改良をなさる、あるいは化学肥料を重点的に使う、重農機を購入する、この資金の借り入れが今の場合、農家にとっての一番の問題だと思う。そしてコストを引き下げるためにいろんなことをやるわけでございますが、実際から言うと、そうしてできた場合の経済状態はどうも農家の生活の、農家経済の安定でないという場合が最近出ております。生産性向上という農林省がとられている措置と、農家経済農家の生活の安定というものはお互いが非常に相剋しておる、矛盾を感じている、そういうふうに大臣はお考えになりませんか。最近の皆さんがおやりになっている農林行政農家の生活の安定というものには、何かそこに行き過ぎのような、農家経済というものよりも農林行政が少しく片寄っているか、あるいは速度が速いか、いずれにしてもぴたっといっていないところがある。あるいは指導方針が農家経済と全然別個な方向に向いているのかもしれませんけれども、大へんな矛盾があるというふうに私は見ているのでございますが、大臣はそういう現象をお見受けになりませんか。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ予算に対しての御批判があったようであります。御批判は自由でありますが、私はあまり当てはまっていないと思っておるのであります。私どもといたしましては、非常に農山漁村民立場を考えまして、仕事を進めてきたのでありますが、しかし今お読みになった要綱の中にもありましたように、逃げ口上ではないけれども、やはり農業は採算上、ことし予算をつけたから来年すぐにそれが芽を吹くというわけではないと思います。でありまするから、去年の三年続きの豊作にいたしましても、十年間にわたるわが党の政策がやはり相当効果もあったというふうに私どもは感じております。何もやらないんだというふうに頭からこなしつけられるのもどうかという考えを持っております。しかし今までの政策の上におきましても、足らぬ分もありまするし、改めなくちゃならぬ分もあるということは御指摘通りであります。でありますので、私どもといたしましては、ことしは重点的といいますか、筋を通して、先ほど申し上げました生産基盤の確立とか、あるいは畑作酪農とか、流通ということに手をつけてきたわけであります。その政策生産性向上ということと、農家の安定ということと矛盾しやしないかということでありますが、共産性の向上はやはり生産量を高め、しかも生産量を高めるのに労働の収入が合っていくように、あるいはまた生産費を低めるようにということでありますから、生産性向上が何かすぐに現われるというわけではありませんが、生産性向上ということは、結局農家経済の安定ということだと私どもは考えておりますので、この点におきましては、考え方におきましては全然矛盾したことはないと思います。個々の政策におきましてまだ足らぬじゃないか、こうしたらよいじゃないかというような点はまたあると思います。そういう点は極力改めて今の方向に持っていきたい、こう考えております。
  28. 石山權作

    石山委員 自民党内閣は二年や三年じゃなかったのですから、長い相当な経過を経ている、ですから今ごろになれば、農家経済は他産業よりも格段の差がある、日本経済全般から見て、農業経済というものが日本経済発展のじゃまになるなどという言葉は出ないはずでございます。ジリ貧という言葉も出ないはずでございますが、残念ながらそういう声もある、実態もある、そこを私は申し上げたのでございまして、大臣の言い方は少し自己弁護に過ぎるのではないかと思います。  それから生産性の問題は、農家経済の安定に資するものであるというのは、机上プランでございます。私はこういう報告書を見ております。これは亀田郷という新潟県の村に起きている事情を一人の人が報告しておりますので、少し読んでみたいと思います。「亀田郷といえば日本でも有数の低湿地帯であって、稲刈りといえば腰まで水びたしになって泳ぐようにして刈るのがあたりまえの程だったそうだが、そのあたりまえが、土地改良と排水の整備によって、水びたしの稲刈りから地下タビばきの稲刈りに一変してしまった。」まことに驚くべき現象だと思います。「またそれと同時に、耕土の方法もどんどん機械化が進んで、あの三本鍬で一株一株起してゆくやり方から耕耘機へと一変してしまった。」と言っております。「そうした機械化の進展により、労働の軽減のもたらす喜びもつかのま、深刻な経済問題や激しい階層の分化が追いせまってきたのである。」よいですか、ここら辺からよく聞いていただきたいと思います。そうしてその中で「私の部落では二十五年から六年にかけて、農林中金からの融資の下にその工事が断行され」と言っております。ここでこの人が指摘されている点は、最初工事にかかるときは、一反歩当り千円ぐらいの予定で改良工事に入ったと言っております。それがだんだんふくらみまして、反当り三万円近くもかけなければならないような計画ができたと言っております。農林中金へ払う利子だけでも一日に三万五千円、こういうことを言っております。今になると利子と維持費、人件費のために最近は反当り八千円まで賦課金がかけられるようになってきた、ここで彼の言いたい点は次のところだと思います。結果として、かりに一町歩の田を作って四十俵くらいの供米が出せても十八万円、土地改良費を引かれる、土地改良費はあぜ道を含むのだから今では一町歩に対して十万ぐらいの改良費になると言っております。それに税金が四万円、肥料の約三万円と引かれると、あとの農機具代などはすべて借金になるのだ、もし万が一病気などしたならどうだろう、こういうふうに言っております。特に農林中金の六分五厘の利子をとることにきゅうきゅうとしている農林官僚のやり方は、農民の実情を無視したものであるというふうに言葉を結んでいるわけなんです。最初はおかげだといって喜んでおったのです。おかげさまで腰まで水浸しであったたんぼが地下たびでやれるようになった、まことにありがたいことだ。今までは一株々々馬くわで耕作していたのが、今では耕耘機で、こういうふうになった。しかしこんなにお金がかかるのではとてもとても農家は立ち行かないということを言っているわけです。これは私はこの問題だけでないと思う。何も新潟に起きた問題だけでなく、秋田にもあるし、山形にもあるし、全国至るところにあるのが最近の現象だと思う。生産性の矛盾、指導の方法、速度ということを申し上げた点は、ここに問題があるということを私は申し上げたかったから言っておるのでございますが、事実はその通りだと思う。こういう事実を赤城大臣はおそらくお知りでなかったでしょう。実際はこういうことがあるのです。きょうは農地局の方も来ていると思いますが、そういう点で私は質問を申し上げたのでございますから、こういうことの事例をあなたはお知りになっているかどうか。こういう事例はたくさんあるのです。これに対して生産性向上だけで、それのみを念頭に置いて、コストの問題だけを念頭に置いて農林行政をやると、個々の農民が困るのです。全体的には農家生産は拡大され、コストは下ったのでございますけれども、皆さんの言われる農家自体の、農民一人々々の問題になると、決してその成果が上っていないという逆作用が起きているというのが現実の土地改良その他の生産性向上の問題なのではないか、私はこう思いますが、あなたの所感を一つ伺います。
  29. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大臣は知らないじゃないかというお話でありますが、私も農業恐慌時代に土地改良をやりまして、そういう事態は身にしみて感じていますし、今もそういうことはあり得ると思います。しかしこれは今のお話で言いますと、非常によくなったという前提があります。元の方がよかったというならやらない方がいいということになるのであって、これはどうも農林省としては捨てておくわけにはいきません。やらないでいいということはない、やった結果は非常によくなると思います。ただし今土地改良の地元負担といいますか、負担がどの程度かという問題にもちろんこれは関連いたしておると思います。しかし一つも金を出さないでやることもどうかと思いますから、その限度において考え方はいろいろあろうと思います。しかしそれによって前より非常によくなったという前提の今のお話もありますし、それからまたそういう土地になったということは、これは土地生産性も上っていますし、それから労働生産性からいっても私は上ってきておると思います。ただ負債の問題とか地元負担が多かったとかどうとかいう問題は別個に、私どもとしてもそういう負担が多くかからないようには政策としても考えておるわけでございますが、その仕事そのものは土地生産性においても、労働生産性においても上っておる。従って個人の所得という方面も上ると思っております。しかしそのほかにおいて、価格の問題とかあるいはまた負担の問題、こういう問題は別の方面で考えなくちゃならぬ、こう考えて、今度の土地改良等におきましても、そういう負担率などは非常に考えておりますと同時に、さっき申し上げました質問が留保されている七十五億の小団地等におきましても、利子を安くしてやっていけるような方法を講じておりますので、決してその事業そのもの、あるいは土地改良そのものを否定するということではないと思いますが、今のお話のようなことにつきましてはなお注意して、私ども政策を進めていきたい、こう考えております。
  30. 石山權作

    石山委員 それは私が一番先にお話ししたように、皆さんの方のいわゆる白書に序論を書いてありましたが、その序論の中で、かつてはわれわれはあまりに集約的なものの考え方をして、農家個々の問題には思いをいたすことがいささか欠けておったという反省をなされておるわけなんです。しかし現実はその反省が生きてきてないという点を私は指摘したいのです。机の上における土地生産性向上はなされています。土地の改良はなされております。コストもおそらく下りつつあるでごさいましょう。しかしそれと同時に、負担金の問題等を抜きにして生産性向上のみを考える面がこの報告書の中にあるということです。ですから私は生産性のみを取り上げる危険性を指摘申し上げたいし、現実に行われているこの問題に対しては、よほど注意深くやっていただかないと困るわけなんでございます。特にここに、見せかけの補助金とモデル・ケースという美名のもとになされた工事の結果がこのごとくである、こういっておる。  そこで私は身につまされる。わが八郎潟の問題等も、あの大きな湖が一朝にして稲田になる、まことに考えただけでもうれしいことでございます。あそこでは湖一つに大きな郡が一つくらい入るだけの可能性もある。モデル・ケースとしては特に私はいろいろ考えさせられる面がある。新しい農村というもののあり方、部落の配置、こういうようなことは、いまだかつてわれわれの脳裏にない新しい田園風景がそこに生まれるだろうという考え方もあります。しかしこの報告書などを見てみますと、非常に不安にもなるわけなんです。これは今の農林省の方々にまかしておくと、田もできるでしょう、稲もできるでしょう、しかしにっちもさっちもできない負担額を農民がしょい込むのではないかという心配がございます。そういうふうな心配のないような適切な行政措置がとられなければならぬと思う。特に八郎潟の場合には膨大な金額とかなりの長い年数をとるように当初の計画はなっておりますが、本年度の予算を組んだあと、今どういうふうな計画のもとに問題を進めていられるか、大要でよろしゅうございます。  それから補償の問題については、皆さんそれぞれの努力によりまして湖畔の農民も大半は賛意を表してあの問題を受け取っているように私は聞いております。しかし配分の問題になりますとかなりな異論が個々の単組の中でもあるようでございますので、そういう問題に対して、交渉の過程において何か特別の案が示されて補償額が決定されているかどうか、こういうことも、もしありましたら簡単でよろしゅうございますが一応の御説明をいただきたい。
  31. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 八郎潟等につきまして大いに夢も持てる面もあるというようなお話もありましたが、私ども考え方としては、夢が持てるようにということで、いろいろ御指摘の欠陥などにつきましては十分に注意して、負担などが重くならないように考えております。ことに八郎潟は全国の干拓でも非常に費用が安くできることになっています。そういうことで、その後の経過等につきましては事務当局から答弁いたさせます。  補償の問題でありますが、この補償は主として漁業補償でありますけれども、これは一定の基準に従って補償を話し合ってきめまして、その配分方法等につきましては大体その基準に従ってやることでしょうが、不公平にならないように、特に地元ですから石山さんなどもそういう点にいろいろ御注意をいただけば、私どもといたしましても大いに不公平にならないことを期してやつ、いきたい、こう考えております。
  32. 清野保

    ○清野説明員 御質問になりましたうちで、最初に亀田郷の問題につきまして一言申し上げます。御承知のごとく、亀田郷は、戦時中あそこにあります鳥田野潟という湖水の排水を主にいたしましてポンプ排水をいたしまして、非常な苦労もしまして戦時中に排水を終りました。その後それに関連しますところの国営事業並びにそれに引き続いて行われなければならぬところの県営事業等が行われたのでありますが、遺憾ながら戦争前の計画でありまして、多少土木技術と営農技術との関連が十分でなかった点がございます。次には国営事業と県営事業、それと団体営の末端事業との関連につきまして十分な連絡がとれなかったために、国営の進度に合わして県営が進みません、また県営の進度に合わして待っておったのではとうてい生産性を上げることができないものですから、やむを得ず土地改良区では、その自己資金または公募資金の一部を借り入れまして、区画整理、団体営等の工事を行いました結果、現在その経費の負担に苦しんでいるという点は十分承知いたしております。なおこの土地改良区の負担金の賦課金が反当八千円、また六分五厘の金利に悩んでおるという点も承知いたしておりまするが、六分五厘の金利と申しますのは、これは補助残融資の意味でありまして、非補助融資でやっておる場合には五分の金利で現在工事が進められております。五分の金利といいましても相当の高利でございまして、現在では、お示しのようにその維持費並びに賦課金に苦しんでおりますので、とりあえず現在土地改良区が管理いたしておりますところの水路の一部が埋まりまして現在では排水もかえって悪くなっておる、こういう状態でありますのが一つと、橋梁等がいたんでおりますので、そういうものは土地改良区の負担において維持せしめることは不適当であると考えまして、これらにつきましては、三十三年度予算において維持費の一部を計上して、これらの管理を十分にさせる、こういう方向に持っていくつもりであります。なお反当負担金、つまり金利の問題につきましては先ほど大臣からもお話がありましたが、六十五億の基金による運用益を利用いたしましてかかるところにも経費の軽減をはからせる方がいいのではないか、こう考えて目下財務当局と打ち合せ中でございますので、しかるべくその点につきましては考えていきたい、こう思っております。なおただいま御質問になりました八郎潟の経過でございますが、三十二年度現在におきましては五億六千二百五十万円の経費で、主として準備工事、つまり用地あるいは漁業補償の一部の支払いとか、あるいは機械、営繕費とかそういうのに充てまして、現在着々と工事の準備を進めております。三十三年度におきましては、三十三年度以降において、この工事は七カ年間で完成させる、こういうような予定のもとに現在その準備をいたしておりまするが、三十三年度の国費は十三億で、さらにそれに二割の借入金を入れまして十六億二千五百万円をもって、三十三年度は試験堤並びに西部干拓の一部、その他採石場、送電線等の準備を進めまして一部の工事を開始いたしますが、本格的にやります工事の三十四年度分に対する的確なる準備を行いたいと考えております。  なお補償につきましては、昨年末に漁業補償におきましては約十六億九千万円で妥結いたしました。その内訳は、生業補償、権利補償、その他に分かれておりまするが、生業補償が約十三億、権利補償が三億四千万円、その他の補償を入れまして約十七億のものが現在妥結に終っております。この補償額の支払いにつきましては、秋田県知事並びに農林大臣と地元の漁業関係者の代表の間に協定が結ばれておりまして、この協定によりますと、漁業組合は全部この協定に従って異議なく漁業権を放棄することになっておりますが、それに対する漁業組合と秋田県知事並びに漁業者の代表者の間にはすでに全部の協定が終りまして、その三者の協定は円満に現在進行いたしております。従って近く農林省といたしましては、秋田県知事に公有水面埋め立ての権利の申請を行いまして、それによるところの権利を取得いたしまして、三十三年度から、先ほど申し上げたような順序によりまして工事を進めていく所存でございます。
  33. 石山權作

    石山委員 土地改良問題につきましては予算委員会でも話が出たと思いますが、農地の補償問題に関しまして政府や農林大臣考え方が少しずつ答弁のたびごとに動いているようであります。補償額を合計すると膨大になるので、納税等を考えてみますと非常に不安を感じておるのではないか。こういう意味で、自民党は今農地問題調査特別委員会を作って党でわざわざ一千万円を出して問題を研究さすというようなことを言っておりますが、大臣は、大臣であるとともに自民党の方でございますから、そこら辺の経緯、それから農林当局として、責任者として、農地補償の問題をばどういうふうにお考えになっておられるか、簡単でよろしゅうございますから御意見を承わりたい。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農地改革に対しての補償等につきましては、依然として私の方針は変っておりません。農地補償は、私といたしましては、でき得ない、やり得ない、やらない、こういうように一貫しているわけであります。また党の方のいきさつでありますが、農地の補償を離れまして農地問題につきましてはいろいろ問題があろうかと思います。たとえば一例を申し上げましても、土地解放当時は自作農に精進する者が土地取得の条件でありましたが、精進しないで非常に高い価格で転売したり、農地の転換をするというような例、その他いろいろあります。そういう問題がありますので、農地に関する調査会というものを貫いたことは私も承知しております。それには学識経験者等も入れて根本的に調査してみようではないかということをしているようであります。ただそれにつきまして一千万円の予算を党の方で計上したかどうか、承知しておりません。御承知通り政府といたしましては予算も計上しておりません。要求もしておらなかったのであります。調査は党の方で進めると思っておりますが、補償を前提にするということは全然ないというふうに私聞いております。
  35. 石山權作

    石山委員 その問題については、私もまだたくさん聞きたい点もありますし、意見も申し上げたいのでございますが、それは他の委員からおそらく追及することと思いますので、次の問題に移ります。  私たち農林行政というものは他の鉱工業のようにそんなに年がら年じゅう新しいもくろみというものはできないものだというふうに承知しております。その中で酪農振興とかあるいは災害共済の問題等は農家に対してかなり新風を送ったものだというふうに私は考えております。その共済問題に関しまして、これは行政指導が悪いのか、あるいは法そのものに欠陥があるのか、想定される考え方としては、私は、この共済はぜひとも必要なものだ、新しいもくろみである、こういうふうに賛成をしておるのでございますけれども、最近、特に去年は、新潟県でございましたか、解散問題が一つ起ったのであります。今年は秋田の雄物川というところに起きております。そして解散の気配を見せているのが同じ秋田で六つか七つあります。農林省の持っている新しいもくろみはかなり計数的に見てもおもしろい——おもしろいという言葉は妥当ではありませんけれども、やり方によっては農家にとっては大切な制度だということには間違いはございませんけれども、しかし起っている現象を見ますと、あまりいい結果を招いておりません。私たち国会から帰りましてそれぞれ地方を回ってみますと、農業行政のうちでいろいろ批判がございます。批判がございますけれども、口をそろえて言っておるのは、この農業共済のいけないという点でございます。指摘されている点は何かといいますと、第一に言われている点は、掛金が高いということであります。それから支払いがおそいということでございます。最近見ていると、自分たちの掛けたお金の半分もおれのところの組合には補償されていないのではないか、そしておれたちの掛けた金はすべて人件費に回っているのではないか、こんな制度というものはない方がいいのではないかというふうに、われわれが当初考えていたものとは大へん違った受け取り方を農民の人たちはしている。それが最悪の事態と申しますか、解散の決議をなすというところまでいった原因であると存じますが、これは行政指導の面ももちろんあるけれども、法的に制度上の欠陥があるのではないか。特に新しい意図のもとでやられたのでございますから、農民がこれになれ、この法律をよく熟読翫味して、理解して協力態勢をとるまでには政府はよほど指導援助の形をとらざるを得なかったのにもかかわらず、人件費等の問題に関してはほおかむりをしておった、こういうのが私は今回の問題の起きた原因ではないか、こう思っております。実際こういうふうに起きた問題、解散決議をしたが県知事はそれを許可しない、こういうふうな行政上の紛争等はどういうふうに見ておられて、これをどういうふうに処理されるかというふうなことは当然考えていただかなければならない問題でございますが、その点に関しまして御意見を伺いたい。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいまのお話にも、制度そのものは非常にけっこうだというふうな前提がありましたが、私も、制度そのものは、これは一つの社会保障制度にも似たようなものでありますから、農業災害の補償制度というものは続けていきたい、こう考えます。今お話にありましたように、掛金の問題等もありますが、実はその掛金が非常に高いという声も聞いております。最近凶作というものが非常に少くなりました。平年作が七千万石以上になるだろうというふうなことでありますし、個々の農家につきましても災害が非常に少くなって参りましたので、掛金が掛けっぱなしになって戻ってこない、こういうことがだんだん出てくるわけであります。ことに農家におきましては、私から御説明申し上げるまでもなく、給料から掛金を差し引かれるというような制度と違いまして、一たん農作物を売ってそれからまた掛金を取られるということでありますから、掛金の苦痛がある。そういういろいろな事態や、あるいは支払いがおくれているという事態、こういう事態もあろうかと思います。しかし、御承知通り二十六国会で災害の法律も相当改正されました。改正の内容につきましては私から申し上げる必要もないと思いますが、補償内容土地生産力実態に即応するようにして、従来の一筆反当りでやったのを石当り制度にしたとか、あるいは共済金額の選択についての制限を廃止したとか、料率の個別化をはかって、共済掛金においての農家の負担を少くしたとか、あるいは一定規模以下の農家については強制加入から脱退、脱退というか、入らなくてもいいというようにしたとか、そういうようないろいろな改正を加えまして、ことしの一月一日から改正法が施行されたわけであります。そういうことでありますので、先ほど申し上げましたような、凶作が非常に少くて掛金が多いというような事情などから、私も歩いてみて、これは解散した方がいいのじゃないか、そうしてこれは国でも相当負担しておりますから、農業の実際の費用の方面にこれを向けたらいいのではないかというような声も聞かないわけではないのであります。しかしこれは、社会保障制度と並んで行われるような農家生産安定に対する一つの保障制度でありますから、いろいろまだ十分でない点もあろうかと思いますが、そういう点につきましてはなお改めつつ強化していく必要がある、こう考えております。でありますので、例に引かれましたような、秋田県その他における、解散決議をして知事に認可申請をして、知事がそれを認めなかったという例でありますが、やはりこれは改善を加えつつ解散をしないで存続していくということが長い目で考えてみれば非常にけっこうなことだ、その方がいいことだ、こういうふうに考えております。いろいろな内部の点につきましてはいろいろと指導もし、その他是正すべきものは是正させますけれども、解散には賛成はいたしかねる、こういうつもりであります。
  37. 石山權作

    石山委員 たとえば秋田の場合なんかを例にとってみますと、掛金が三億円、実際の保険金は一億八千三百万円くらいです。ですから一億一千万というものは、秋田県自体から見れば、農民の方々から見れば、実際ただ納めたというような気持です。なぜかと申しますと、平坦部であれば最近は肥料も潤沢でありますし、それから技術員の指導も適切を得ており、秋田などで昔あった冷害などというものはほとんどなくなったのでございます。ですから、平坦部の方々とすればこういうふうな高いものは無用であるというような考え方一つです。それから農林省がきめられたところのいわゆる基準の反当りの米の量が、これまた実績とかなりにかけ離れている。そうしますとたとえば三割以上なければ補償しない、そういいながらも実質的には五割も六割も被害を受けないと三割の保険が支払われないという現象でございます。基準反収、反当りの量が違うためです。こういうことも私は問題だと思います。それから目に見えて彼らが気になりますのは、つまり組合の維持、経営の人件費、こういうようなものが目に見えてむだだというふうな印象を彼らは強く持っているのではないか。こういう点は、私先ほど申し上げたように、政府の意図もいいと言っておるのですし、農民もこれを理解しておるのでございます。ただ彼らは法の改正をば何に訴えたかと申しますと、解散という形によって、政府に法の改正を迫っているのがほんとうの姿なのではないか。制度そのもの、意図そのものに反抗を示しておるのではなくして、制度を改正する、法律を改正してもらう一つの便法、手段としてとられているのが、今の秋田などでたまたま起きた解散の姿だ。あるいは解散に動きつつある姿なのではないか。先ほど私四つ、五つ上げました農民の声というものをば、農林省は十分に分析をしまして、一つすばやいところ、この法の欠点をば是正されるようにしていただきたい。それに対して大臣考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 法律は御承知通り昨年改正して、ことしから施工するようになっております。その法律の趣旨が相当徹底すれば、農民の理解も深まろうかと思います。  運営の点におきましていろいろ御指摘のような点もあると思います。たとえば反別制についても今度は石建てになっておりますし、非常に低い前の反取というところでりまと、これは災害が農家から見てあっても補償されないということもあります。そういう点につきましては改めて、運営をよくしていきたい、こう考えております。ただ掛金というものは、一つの保険制度でありますから、火災保険に似たようなところもありまして、掛金が必ず全部戻るというわけにはいかないのであります。そういう点についても、御指摘のような点について、いろいろ運用の点において改善を加えていきたい、こう考えております。
  39. 石山權作

    石山委員 これは農民運動か、あるいは農民の反抗の姿か知りませんけれども、随所に解散決議をした、それを県知事が許可をしない、そういう形の中で問題を放棄された場合の、政治的な責任というものはお互いにあるのではないかということなんです。それに対して去年法律を改正したからどうもというような考え方ではおかしいと思うのです。法律は去年改正したからことし改正されないという手はないはずなんですよ。悪法は改むべきであり、悪制度は改むべきである。あなたは何に遠慮して去年やったからことしやれないと言うのですか。遠慮しなさんな、ほんとうですよ。皆さん考えてごらんなさい。農民の声というものは声が小さいのです。それをわれわれが代表して申し上げなければならぬから、こまかいことも申し上げておかなければほんとうは理解がいかないわけなんでしょう。それを私一生懸命しゃべっておることを、あなたはぼうっと聞き流していられる。私はそれは残念だと思います。たとえば解散問題が起きた、県知事が行政的にあくまでもそれに許可を与えないでおいたということを想定してみた場合、あなたの方では去年法律を改正して、まだ改正された法律は農民の方々が理解していないだろうということは、農民の方々の知的水準をあなたは卑下しているということです。そうでなければもう一つはあなたの手下であるところの経済局長初めをば、指導的能力に欠けているということをあなたは言っていられると思う。一月一日からこの法律は施行されたのです。去年のうちにあなたは十分に——今の場合は私たちが法律の内容を説明して歩いているなんて体たらくです。いけません。一つ法律を改正するなり、制度を抜本的に考えてみて、意図がいいのでございますから、一つこれを生かすようにあなたは努力していただきたいと思う。もう一ぺん御答弁を願います。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大へんおしかりでありますが、私は制度そのものについて答弁申し上げておったのであります。しかも制度といたしましては昨年法律を改正し、今年一月一日から施行されておるのだ。農民は理解しないだろうということは申し上げたような覚えはありません。法律が改正されたのだから、この法律の趣旨をなお徹底させるならば、改正の理解をなお深めるであろうということで、農民が理解しないだろうとか、侮辱したような言葉は使っておりません。その点御訂正願います。今のような個々の場合があちらこちらで出てくるという事実も、耳を傾けていないわけではありませんで、大いに緊張して今も聞いておったのであります。でありますので、そういう点につきましては改正した法律のもとにおいて、相当改善されておるから、運営の面におきましてあなたの御指摘のような欠陥があることについては、なお十分にこれを改善していきたい。事務当局も非常に熱意を持っているので、なまけているわけではありません。なお具体的な問題につきましては事務当局から答弁いたさせます。
  41. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、法律の改正に伴いまして運営面で、二十六国会の改正案審議に当りまして、当委員会で十三個条の附帯決議をいただきました。それに基きまして三十三年度の予算にも相当実現したものもございますから、それらについて具体的に御説明申し上げまして御理解を願いたいと思います。  改正法律案が一月一日から施行になっておりまして、三十三年植付の水稲から新しい制度によっていくわけであります。これは一筆石建てでありますとか、制度の内容につきましてはいろいろ大臣から御説明した通りであります。まず法律に基きまして掛金の国庫負担の割当が通常被害の三分の一が二分の一になりまして、これは予算計上になっております。それから基準収量が低過ぎる、こういうのはもう前からありまして、私の方も年々直してきておりますが、いかんせん統計を過去の統計を基礎にして直してきておりますから、過去の供出制度におきますゆがめられた統計を相当修正して、修正値を出さなければならぬ。これも相当思い切って理屈のつく限り基準収量を直したいと思って、目下作業中であります。ことに東北等は最近非常に生産の伸びが上っておりますので、お話もっともだと思います。それから団体の運営等につきましても、団体職員の補助を三十三年度から職員のベース・アップをいたしましたものに対して三分の一を補助する、こういうことも考えましたし、それから本制度の根本であります損害評価の適正を期するため、損害評価会を法律できめていただきまして、それに基きまして損害評価委員の手当——要するに物理的に損害評価することが問題の紛議をなくするゆえんでありますから、坪刈り等をできるだけ多くするために坪刈りの機具等についての補助も計上しております。そうでありますから、先ほどお述べになりましたように、そういったことを早く直せという一つの運動で解散決議が出ておるのじゃないか、こういうこともありましたが、私の方で法律に基きまして省令を準備して、ブロック会議を開いてそれぞれ下に下げております。さらにそういった新年度の予算に盛られたものも末端に浸透いたしまして、制度の理解を願う。要するに、災害は忘れたころに来るというのでありますから、この数年の豊作の短かい期間の状況のもとにこの制度をゆがめられないように、もっと努力していきたいと考えております。
  42. 石山權作

    石山委員 どうも皆さん官庁で長い間仕事をされた方々は、われわれ野人のようにはいかぬと思いますけれども、それにしてもあなたたちの一ぺんお考えになったことは曲げられないものだというふうな前提のもとでいろいろなお話をなさる。自分たちの意図でなければ改正はされないものだ、他人の言うことを聞くなどということは不見識きわまるものだ。天下国家を論ずるのはわれわれの任務であってお前たちの任務でない。そこまで言っちゃいかぬかな。どうして皆さんは自説をば曲げないのでございますか。私は二時間もしゃべっているのだから、そういう点をくんで少しぐらいは改正するという色を見せない限りは、解散はどんどんふえていきますよ。あなたがここへ出ておっしゃるようなことで問題は済まされないのです。たとえばこういうことを言っている。事務費の全額国庫負担をしなければわれわれはうまくない、こう増田というところの組合の連中が言っている。人件費を少くするために県の農業共済連を廃止して単組と国と直結せしめるという提案もしている。こういうことを言っているのをあなたは聞いて、よしその問題くらいは一つ考慮をしてみましょうというふうな工合にいかぬものですか。検討してみるというような考え方になれませんか。何でも自分の方から提案しないと気が済まぬというような習性は、新しい時代ですから、そろそろおやめにならなければいけないと思います。大臣にもう一ぺんお聞きします。
  43. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府の方でばかり法律を出すつもりで、大へんな事大思想を持っているじゃないかということでありますが、そういうことはありません。御承知通り議員提出法律案も大へんありまして、国会が非常に力強い態勢になっております。私どもといたしまして、決して議員提出法律案を拒否するとかなんとかいうことはないので、私どもはできるだけ法律を押しつけようとかなんとかいうことは考えておりません。それから今御指摘になりましたいろいろな問題、これを検討するという気持はないかと言いますけれども、従来からもいろいろ検討しているのです。まだ結論が出ていませんけれども、検討はしています。そして検討の結果、昨年ともかく法律を出しまして御審議を経て法律になったのであります。それがことし施行されたばかりでありますから、それの施行をまず考えておりますが、検討しないわけではありません。なおいろいろ検討はいたすのであります。
  44. 石山權作

    石山委員 話をしているとだんだん延びますが、こういうふうな経済団体、特に農民に利益を与えるような団体がみずから解散を行わなければならないような情勢は、私はやっぱり憂うべき情勢だと思う。これが農協など、たとえば災害だけでなく、他の部門までそういうふうな形式をとってこられるとすれば、これはなかなかゆゆしい問題になると思います。私たちこれらをずっとにらみ合せてみますと、どうして政府は農民の農民組合法というふうなものに気持を向けないか、目を向けないかということに対して不審感を持ちます。農民の場合にはないけれども労働団体にはある、あるいは中小企業の団体にも団体交渉権その他を与えるような仕組みにしてやった。そうしますと、これは一つ経済というもののルートをこわさないで、別個の団体がいろいろな不平不満の運動を起し得るというよさがあるわけなんです。農民を経済的にいたわろうとすれば、そうして農民のもっとほんとうに下から上まで届かせるとするならば、私はやはり農民組合法などを設定して、こういうふうな経済団体が解散になるというふうな行動を未然に防ぐのが、農林行政にとっては私は大切なことだと思う。そういう時期が今来ているのではないか、こう思うのですが、農民組合法に関してどういうお考えですか。
  45. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 労働関係には労働組合があるが、農民組合はどうかということでありますが、これもまた私から申し上げるまでもなく労働関係におきましては労使という、経営者あるいは資本家と使用される側、使用する側と使用される側、こういうふうな関係にありますので、労働組合法による労働組合という形ができておるわけであります。しかし農山漁村におきましては今使う側と使われる側というものはなくて、自立農山漁村民という形であるわけであります。でありますので、労働組合があるから農民組合を作らなくちゃならぬということには相ならぬかと思います。それからまた戦前のように地主と小作人というような階級対立といいますか、そういうふうな対立も土地改革の結果非常になくなってきているわけであります。ただ農村における階層の分化というような形はあると思います。そういうことでありますので、農民組合法を作るということならば、どういう目的で作るかということになりますが、今のお話のようですと、農民の利益増進というような形であろうかと思います。これにつきましては今いろいろな農業関係の諸団体もあります。必ずもよくいっているとばかりは限りませんが、そういう団体もあるわけであります。でありますので、今農民組合法を出すというような気持は持っておりません。
  46. 石山權作

    石山委員 私は大臣が言われる昔のように交渉相子がいないのだ、地主というような搾取階級がいないからだ、こう言っていますが、農民は別のことを言っているのですよ。国家権力にしてやられている。国家に収奪をされている。ある意味では農林官僚の指導に反対もしたい場合もございましょうし、対象は幾らもあるのでございます。特に最近酪農振興一つ取り上げてみても、蔬菜の問題一つを取り上げてみても、商行為がわれわれの農村にもたくさんあるということ、商行為が起る場合には、対象がちゃんとあるということでございます。それか農協だけでは処理できないというのが現実であります。残念ですが、それが現実でございます。農協を育成するのに、ただむやみやたらに農協経営だけに主力を注ぐ法律だけがたくさん作られているのが現状でございましょう。農協の経営は黒字であったが、農家自体の帳じりを見たら赤字だというのが、最近の農家がジリ貧だという言葉で呼ばれている次第です。そういう点はやっぱり考えていただきたいと思う。経済団体というものは別個に生かしていって、政治的な言い分あるいは自分たちの気持、こういうふうなものを十分に反映させ、別個に団体を育成すべきが当然だと思う。この点一つ御考えを願いたい。  それからもう一つ、前々からの予算をずっと並べてみますと、自衛隊費がふえるたびごとに農林予算が減っている現象があるんです。これはアメリカでもある例でございますが、いわゆる工作隊ですか、農林省でもやっていられる農村建設隊、こういうものの一部として吸収して、林道なり村道なり、あるいは河川工事なりに使うという手はございませんか。皆さんの方には妙手はないということを言われているんですが、私は妙手を教えて上げたい。一つは農民組合を作って、下からの声を十分反映さす方法、もう一つは今申し上げたように治山治水、道路、そういうふうなものに自衛隊の工作班をば農村建設隊の一部として包含するという方策があるのではないか、私の妙手のたくさんあるうちの二つを教えて話を終ります。
  47. 中村寅太

  48. 永山忠則

    永山委員 われわれは岸内閣に非常なる期待をいたしておるものでございます。岸内閣が第一に声明をいたしましたものは三悪追放でございます。すなわちその中で貧乏追放を強く打ち出されておるということでございます。本年度予算編成に当りまして、われわれが非常に期待をいたしましたことは、この貧乏追放ということがいかに予算化されるかということであったのであります。その貧乏の一番どん底にあるものは、まさに農民であるとわれわれは農林省経済白書をもって教えられており、また体験をしておるものでございます。農村の経済が非常に悪い、また農民の生活水準が低いということに対しましては、今さら申すまでもないのでございまして、生活保護を受けておる者の四〇%以上が農村にあるというような点から見ましても、さらにまた農村の総所得が国民総所得のわずか一割九分に足らないものでありまして、しかも農村の就業人口は、実に四割八分にもなっておるのでございますし、さらにまたエンゲル係数から見ましても、農村の方は五〇%以上になっておりますけれども、都市生活はエンゲル係数は五〇%以下になっておるのでございます。これらの諸点から見ましても、どうしてもこの貧乏の一番苦しい立場にあるものは農民であるということを考えますときに、この予算編成におきましては貧乏追放、ことに農村の経済をよくし、農民生活を向上するということに対して、最も重点的に施策が盛られるものであることを期待いたし、また今後の施策においてもそれを深く期待し、信ぜんとするものでございます。さらにまた、今回の予算編成におきまして、大きな柱は何であったかと申しますと、国際収支を均衡して、経済の安定をはからねばならぬということが大黒柱であったのであります。この基本方針に基きまして、剰余金の四百三十六億の景気調整基金というようなものが考えられてきたのでございます。この国際収支均衡、安定経済ということが今度の予算編成の中心であることを考えましたときにおいて、われわれは農村が食糧増産に非常な努力をいたしておることによって、ここに国際収支の均衡に対して非常な寄与をいたしておることを知るのであります。三カ年間豊作であったということを言うのでございますけれども、天候必ずしもよくございませんでした。さらに風水害があったのでございますけれども、これら悪天候を克服し、風水害に対処しながら、よく増産をいたしたということは、農村が農業技術に力を入れ、あるいは高い農薬品を使い、さらにまた農業機械等を入れ、農業経営の合理化、多角化に努力する、あるいは耕地の改良事業等に力を入れまして、かくして三カ年の間増産努力をいたして豊作を続けてきたのであります。これらの諸点から見まして、予算編成の中心は、どうしても農村政策に最重点を置かねばならぬということを考えるのでございますけれども予算編成過程を見ましたときにおきまして、最初貧乏追放ということを強く打ち出されておったにもかかわりませず、実際上の予算編成の重点施策は、あるいは道路であるとか、科学技術であるということが強く押し出されて参りまして、そして農村の施策に対するところの重点的な考え方が薄らいだのではないかという感を深くいたしたのでございますが、その点に対して、大臣のお考えなり、あるいは予算に対して大臣のおとりになりましたところの態度等についてお知らせを願いたいと思うのであります。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の御意見は私も全く同感であります。ただ私に対してのお話よりも、総理大臣とか、ほかの方へ話していただいた方が、より適切じゃないかというふうに考えておるわけであります。お話の通り、何といいますか職業的に見ますならば、やはり農山村民が国民の層において貧乏な階層に属しておるというふうに思っておるのです。でありますので私どもとしましては、内閣の方針が貧乏追放ということが一つ大きく掲げられておるといたしますならば、農山村民の生活の安定、向上に努めなければならないという熱意を強く持っておるわけであります。予算編成の過程等におきましても、御承知通り、昨年の暮れでありましたか、予算編成につきまして重点的に考えるべきものという中から農業が抜けておったのであります。こういうことでは今のお話の趣旨にも一致していないし、私の農村に対する考え方、あるいは国全体の考え方から見ましても憂うべきことだ、こう考えまして、予算編成方針におきましても、閣議において農業を重点的に見るということにいたしまして、原案を訂正したといいますか、原案にそういうものをつけ加えることにしたのであります。その予算編成過程におきまして、農林予算におきましては、人件費の補助とか、いろいろそういう面で整理すべきものがあるのじゃないかというような観点から、財政当局等におきましても一応第一次の査定においては相当きびしい査定、削減を受けたのであります。しかしながらそういうことであっては、実際再々お話のような立場に立って農山漁村民の生活水準を維持する、あるいは向上するということに欠くる点がある、こう考えましたので、よく財政当局その他の理解も深め、また議員各位のいろいろなそういうお話なども反映いたしまして、今提案になっておりまするような予算案ができているわけであります。予算案の内容につきまして、ことに農林予算内容につきましては、すでに御承知だと思いますが、再々申し上げておりまするように、生産基盤の強化とか、あるいは畑作畜産の振興とか、あるいはまた流通加工の面とか、その他いろいろありますけれども、そういう面からお話のようなことにしたい。これは端的に貧乏追放ということができ得ませんけれども、少くとも他産業との不均衡をより多くするということは、これは避けなければならないのですが、業態の本質からいって、なかなか鉱工業の状態には及ばないのでありますけれども、その差が広がるというようなことは、これは極力やめるようにして農山漁村民の生活水準を上げていかなければならない、こういう方針のもとに予算編成したようなわけであります。
  50. 永山忠則

    永山委員 大臣努力されつつあることには敬意を払うものでございますが、この経済五カ年計画並びに本年度予算を通じまして、農村と都市の生活水準のギャップがあるのでございますが、これが漸次に縮小されまして、そうして農村の生活水準並びに農村経済の水準を一般国民並びに都市の経済、生活水準まで引き上げる態勢へ漸次に持っていくことができるというお考えを持っておられますか。この点私は、この予算面あるいは五カ年経済計画等によりました程度では、農村と都市の開きをできるだけ縮めるという意図はございますけれども、この開きをなくしていく、あるいは逆に言うたならば、むしろ開きがますます大になろうという鋏状価格差を何とか食い止めようというくらいな消極的なものしか出ていないのじゃないかということを心配いたします。いつまでたっても農民を経済的に苦しい立場に置くというようなこと——今日われわれの信頼している岸総理、赤城農林大臣のこの時代においてもなお鋏状価格差を直すことができぬというような状態は非常に遺憾だと思うのでございますが、これに対して大臣の自信を持ってこの鋏状価格差を是正するのだということに対するお考えなり抱負をお示し願いたいと思うのであります。
  51. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 鉱工業における所得農山漁村民所得とを同一にするということは非常に困難であります。これは業態から見まして非常に困難であります。しかしながら今の鋏状価格差といいますか、開きが非常に大きくなるということは避けなくてはならぬと同時に、そういう開きはあっても、やはり農山漁村民の生活水準を上げていくということは必要だと思います。これを下げていってこう開くのでなくて、上げていけば、相当の開きはあっても、業態からいっていたし方ないと考えております。しかしこれを下げて開いていくということは極力避けなくてはならぬ、こういうふうに考えております。  そこで長期計画でありますが、長期計画につきましては、昨日も申し上げたのでありますが、御承知のような計画経済統制経済下長期計画として一々こまかくこの計画は立っておりません。自由主義、自由市場を基調とした体制下における計画であります。でありますが、この中におきましても、三十七年度を目標といたしまして、鉱工業生産水準あるいは農林水産生産の水準等におきましても一つ目標を持って、その目標に進んでいくという計画を盛っています。これは差を同じゅうするという目標ではありません。しかし農林水産生産も上げていくという目標を持っています。あるいは所得の点につきましても、五カ年後におきましては、農林水産所得は一二五%くらいを目標としておりまするし、鉱工業の方は一二三%くらいかと記憶しておりますが、そういうような目標を持って計画を立てておるわけであります。これを年次別にそれぞれいたしましてどういうふうな形に予算面に現われるか、こういうことでありますが、予算の面等につきまして特にこの計画等に掲げておりますのは、上地生産基盤の培養等がこの数字においては出ております。これは開発行政投資を二千三百億円というふうな数字がこの計画から見られるわけであります。そのほかに、ほかの投資も加えますと、この方面に五千億ばかりの投資が必要だ、こういうふうに算定されるのであります。そういう面から、三十三年度の予算につきまして対照し、この計画に沿っておるかどうかということになりますと、農林水産基盤予算等につきましては、長期五カ年計画の線に沿っておる——幾分の違いはありますが、大体その線でやっていく、でありまするから、そのほか次年度、あるいは次々年度、こういうものは一五%くらいの伸びの率というものを見ていけるということでありますならば、大体五カ年長期計画の最終年においては国民の農林水産生産目標にも達しまするし、また所得水準等につきましても、それに近いところに到達するのではないか、こういうように考えておるわけであります。しかしこの長期計画にはそういう生産基盤のものだけしか数字が出ておりません。そのほかの本年度の農林予算に盛られておる点につきましては、個々的に畜産はどうするとかあるいは流通面についてはどうするかという数字的な裏づけはありまませんが、しかし牛なら牛を何頭に持っていくべきだとか、牛乳はどれくらいの生産に持っていくべきだとか、あるいは林業についてはどうだとか、水産業についてはどうだとか、長期的に数字的には出ておりませんけれども、その目標に合わして予算の要求も実はいたしたわけであります。その長期計画そのものが数字的に詳しい裏づけが全然ありませんから、それとどの点で合っているかいないかということはちょっと申し上げかねるような事情がありますけれども、三十三年度の予算におきましては、その目標に沿っておる、こう御了承を願いたいと思っております。
  52. 永山忠則

    永山委員 五カ年計画を中心に行政面に非常な奮闘をされておる大臣には敬意を払うものでありますが、しかし実際上の問題としては、いかにして現状の差を拡大しないかということだけにきゅうきゅうとしておるという状態でしかないのではないかということを、われわれは予算編成過程並びに予算面からこれを指摘せざるを得ないのであります。今や抜本的に農村政策を展開をする根本の時期がきておるのでございますから、この場合大臣にお伺いをいたしたいと思いますことは、予算編成過程において補助金を整理するという主張を大蔵省は強く出したのであります。今なおその考え方を強く推進せんといたし、最近においては補助金整理に対する特別委員会を作って徹底的にこれを整理しようというような意味のことを、その点については予算委員会において大蔵大臣が声を大にして強く言っておるような状態でございますけれども、われわれは補助金を現在のを削減する、あるいはその補助量を少くする、事業量を少くするということ自体は、もちろんそんなことは考えるべきではないと思うのでありまして、大蔵当局の方で補助金を削減をし、あるいは整理しようという問題については、農林当局努力によって幸にして一応旧来のままに復活をしたのでございますけれども、旧来のままに復活するということであってはならない。少くとも昭和二十七、八年ごろの一兆円予算の緊縮政策のときに一割ないし二、三割落された、そうして事業量ももちろん二割内外を縮小された、せめてその削減をうけた程度はこの予算のときには復活をしなければならぬ。今回補助金の一割、二割ないし事業量の一割、二割はこれを拡大していくというようなところに持っていかなければ、私はどうしても農村の経済をよくすることはできぬのではないかということをこの場合強く申し上げるのであります。いかにも大蔵省の考え方をもってみますれば、補助金が適当に使われていないというようなことを会計検査院が指摘しておるからというようなことで、補助金整理をしようとするのでございますけれども、補助金が適当に使用されていないということと、補助金政策の根本とを混同すべきではないのでございますから、われわれは補助金をどこまでも引き上げる、同時にさらに事業量をふやすということと並行いたしまして、さらに低利の資金を回すということであります。年五分ないし六分五厘というような金利のつく十五年々賦くらいの金では、とても土地の改良も、その他治山治水等の利潤を生まざる商利的なものでないところの土地政策あるいは治山治水政策に対しては、これは短かきに過ぎる、あるいは金利は高きになり過ぎておるということを考えるのであります。少くとも土地関係、治山治水等の関係については、二十五年年賦の無利息もしくは年三分を上回るようなことでは、実際上の問題として耕地の改良事業、土地改良事業なんかできるものじゃないのです。だからして先刻の御質問にありましたように、実際上は土地改良事業をやってみたところが反当七百円ないし千円ではできないのです。それを上回るところの借金を負ってしまった、だから今となっては農産物も安くなっておるし、この借金をどうして返すか、結局政府土地を上げる以外にはないことになるのではないかということは、農民の痛切なる叫びになっておるのであります。これらの点に対する補助金政策に対する根本的な考え方について、農林大臣の意見を承わりたいのであります。
  53. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように農林水産関係農山漁村民というものは弱小な立場にあります。でありまするので、一がいに補助金をなくするというようなことは非常に考えものだ、やはり国といたしまして、こういう弱小の立場のものをバック・アップするといいますか、こういうふうなことをしていくことは必要なことだというふうに私どもは考えておりますので、農林関係等においては補助が非常に多いといいますけれども、やはり農山漁村の育成という点から考えますならば、これは必要なんだというふうに私どもは考えてきておるのであります。ただ今もお話がありましたように、補助金が非常に多いので、補助金の使い方等においていろいろ会計検査院から指摘されたり、あるいは私どもの方の省内における監査においても、そういう点が相当あるのであります。この使い方の点につきましては、やはり有効適切に使えるようにしなければせっかくの補助が生きてこない、こういうふうに考えておりますので、その点については心を用い注意をいたしております。補助金をある程度整理するというふうなことになりまするならば、補助金によるか、別に今のお話のように融資によってやるか、いずれかによりましても、そういう面で弱小の農山漁村をバック・アップするということは必要なことだと思うのであります。でありますので、補助あるいは融資、しかも融資におきましては、今もお話のように短期ではなかなか効果が現われないものであります。さっき長期計画のお話も出ましたが、たとえば八郎潟なら八郎潟へ、国費といたしましては十三億投入いたしますが、これが来年にすぐに効果が現われるというわけでもありませんから、どうしても資金としても長期の資金を必要とするわけであります。そういうことでありますので、ことしは予算面もさることながら、財政投融資の面においても三百一億でしたか、財政投融資をつけております。そのほかに自巳資金、回収金というものを入れますと、約五百五十億くらいの投融資面が予算と伴ってつけてあるといいますか、これが活用されることになっております。ただその資金につきまして、従来とも農林関係はほかよりは長期になっていますが、まだ十分というわけにはいきません。今度法案として出す開拓の融資等につきましても——八年でありますが、これは十二年に延期するというような法律案も追って出すことにしているわけであります。なおつけ加えておきますが、二十八年度あたりの事業量よりも少いではないか、こういうことでありますが、あの当時の事業量の中には、あるいは予算の中には、外国の輸入食糧との価格差補給金とか、あるいは災害といったものが非常にありまして、総ワクにおいては相当上っておりましたが、内容においてはむしろ今度の方が充実しているのではないか、ことに土地改良等におきましての費用は戦後最高であります。そういうふうになっておりますので、実は私は満足しているわけではありませんが、とにかく熱意をもって農山漁村民の生活水準を向上するのに踏み出そうという気持で予算編成もしてきたような次第でありますので、御了承願います。
  54. 永山忠則

    永山委員 農村の経済が悪いということの一番大きな原因は、何としても農産物価格生産費を割っておるということであります。生産費も補償されていない、いつでも赤字であるという関係が農村の経済を悪くしているのでありますが、農産物価格の安定施策の面から見ましても、農産物価格を高く売るというようなことはできるだけ避けなければならぬのでありますから、合理的に下げていかなければならぬ。合理的に下げていく意味においては、やはり補助金政策というものが抜本的にとられなければいけないのであります。ここでさらにこの農産物価格を安定せしめるということと並行して重大なる問題が起きて参ります。それは総合自給調整の問題でございます。この五カ年計画をお立てになりましたとき、あいは年末の予算編成当時よりは現在さらに農村が総合自給調整の必要性を感じて参りましたということは、野菜が豊富で価格が非常に下る、あるいは果樹の価格も下ってくる、さらにまた鶏卵の値段も下るという工合で、各種の農産物が豊作で下ってきているという状態になってきているからであります。従って、総合自給調整というものを考えて価格政策と並行してやらねばならぬと考えるのであります。そこで総合自給調整の主軸はどこに置かねばならぬかといいますと、やはり主食物に置かねばならぬのであります。何と言っても主食物は外国から輸入をいたしておる。年々一千億ないし一千五百億からの主食物の輸入をしておるのでございますから、この輸入を防止するという意味におきましても、国際収支を均衡に安定経済を保つ意味におきましても、この主食を中心とする食糧増産には全力をあげねばならぬのでございます。五カ年計画に出ておりますところの土地改良関係の費用では足らないのであります。それは現在どんどんつぶれていく土地を補給するだけであります。これらの点に対しまして、一千五百億から輸入食糧に外貨を出しておるのでありますから、五カ年で七千五百億ではありませんか。五千億や七千五百億はどうしても土地改良に入れるべきである。私は、今日の農村の経済をこれ以上悪くしないように、この五カ年計画は、単につぶれ地にわずかに補給するというような程度であっては断じて相ならぬと考えるのでありまして、この総合自給調整による主食を中心とする施策、そうして今非常に暴落いたしておる蔬菜、果樹、その他鶏卵、牛乳等に対する対策について農林省の根本方針を承わりたいのであります。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農山漁村民の生活水準を上げるということにつきまして、流通価格の支持が大事である、こういうお話でありましたが、御承知通り、米は食糧管理法によって統制を続けておりますし、麦類につきましても、これは間接統制でありますが、実際には直接統制と同じような形で政府が買い上げる、あるいは農作物価格安定法あるいは飼料需給安定法、てんさい糖法、こういうものによって価格を支持しているものは大体農産物の七割程度に達しておるのであります。そういう意味からもちまして、私はやはり米の問題につきましても今の統制制度を維持していくことが一つ価格安定策でもあり、農家経営計画性を持たせるためでもあると考えて、現在の制度を継続していく、こういう考え方を持っているのであります。それと同時に、そういう価格安定の対象となっている七割以外の果樹とか蔬菜とか、こういうものにつきましてどういう対策を講ずるかということも今の御質問の中にあったかと思いますが、それにつきましては、先ほどからも申し上げておりますように流通価格対策に力を入れて、そうして、これは全然統制経済ではありませんから何から何まで政府がやるというわけにはいきませんけれども、今お話のように、需給の調整をするという意味でいろいろな対策を立ててこれを実行に移したい、こういうことでやっておるわけであります。その対策につきましては先ほどから申し上げましたのでこまかくは省略さしていただきたいと思います。ところで、そういうようなことで国内食糧を総合的に自給して行って輸入を減らしていくべきではないか、こういう御趣旨もごもっともであります。でありますので、私どもは外国の麦等が安いから幾らでも入れていい、こういう考え方ではなくて、やはり価格といたしましても国内の自給対策を講じて輸入等を少くしていく、そうして外貨はほかの面に使うようにして、日本の鉱工業等の方の伸展に回した方がいいのではないか。食糧の方はできるだけ少く輸入して外貨を使わないように、そうして今のお話のように、農林水産の育成のためには、鉱工業の投資のようにそろばんずくめでいけばそういいわけでもありませんが、土地改良とかその他の方に投入していけば、先ほどもお話がありましたように、昨年度のような三カ年続きの豊作もあり得る形になってくるわけでありますから、そういう方面にやはり財政の投融資を相当すべきではないか、こういうように考えております。そこで、輸入量につきましては、米等につきましても今年は非常に減らしております関係から麦等も減らしておりますが、小麦等は大体同じくらいだったかと思います。そういうふうに漸次国内総合自給力を高めて輸入量を減らしていく。でありますので、長期計画におきましても、総輸入量に対する農産物の比率は、二十九年度から三十二年度の平均では二一・五%でありますが、三十七年度の五カ年後には一三七%に低下する、こういう目標を持っておるわけであります。そういう線にぜひ沿っていきさたい、こう考えておるわけであります。
  56. 永山忠則

    永山委員 この総合自給調整の中には、いわゆる生産の総合自給調整というものが考えられなくてはならぬのでありますが、この具体的な問題はまたお問いすることといたしまして、これらの生産自給調整、すなわち主食への転換、あるいは農地の転換基準というようなものに対して、農林省の方はやはりしっかりした基本方針を確立するとか、諸種の生産の自給調整に対しては抜本的な施策を考えられるべきであると思うのでございますが、同時にこれらの点が十分行われていない、また計画も非常に疎漏であるということを、われわれは予算面等を見て残念に思うものであります。その次の価格安定調整というものは、これは何としても重大でございますけれども、この七割以上を占めておるという支持価格の点につきましても、米の価格の問題、あるいは麦の価格に対しても、これはできるだけ引き下げよう——これは生産の合理化によって下げようというのではなくして、食管会計の赤字をなくしようという考え方のもとに、引き下げていこうという意図が予算面に現われておるということは、われわれは非常に残念である。この食管会計の赤字というのは、これは商業採算的な考え方で見るべきではない。赤字じゃない。国民経済からいったならば、この赤字は当然に補てんをすべきものであるのでありますから、われわれはそういうような農村の経済状態を漸次よくして、そうして国民生活の水準まで上げようという意図があるならば、これは価格政策に対して、ダウンしていこうという意図が予算面に出てくるということは、これは何といっても予算べースだ、だからまた米価審議会の議を経てあるいは直すのだという考え方が考えられるかもしれませんけれども、われわれは実際上の問題において、予算に出たこのものが、どこまでたっても大蔵省はその原案を押してくるのでございます、この点について、パリティが上ろうという状態において、これを米価は一石一万二百円として押えていく、さらに各種の予約奨励金をまた削減しようという考え方、あるいは地方税におけるところの米価の特別措置、すなわち税金の特別措置を地方税の方だけは中止しようといううな考え方が流れておる。そうして麦の関係におきましても、畑作価格安定をはかる目的の資金を出して、そうして漸次今日の麦の価格を引き下げる方面の合理的な生産によるところの引き下げということでなしに、食管会計の改正によって現在のパリティを中心とするところの考え方でくぎづけされたる麦の価格というものをパリティ計算をやめて下に抑えていこうというような意図が、この予算面に出ておるのではないかということをわれわれは非常に心配をいたしておるものであります。むしろこれはどうしても生産費を補償する、すなわち生産費を確保するというところへ持っていくように努力するあとが見えなければならぬと思うのでございますが、この価格政策に対する政府の意見を承わりたいのであります。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まず麦から申し上げます。麦類につきまして、価格安定資金といいますか、畑作振興資金を設けて麦の生産費を低めていこうという考え方は、これは御同感できるだろうと思います。決して悪いことだと思いません。しかし、これはそういう考え方を持っていますが、予算面にはこれは現われておりません。麦価格につきましては、こういうことによってだんだん均衡のとれたものにしたいという考え方はありますけれども、そういうことがまだ進んでおりませんときに、麦の買い上げ価格を下げるということは差し控えるべきだということで、予算面は、よく御承知のはずですが、麦の価格を下げるということは全然いたしておりません。それから米の価格でありますが、これは予算米価として一万二百円という決定をいたしたわけであります。御承知通り、昨年の予算の米価は一万円であります。昨年の予算米価よりはことしは二百円上げております。決して下げるという方向を持っておらないことは、それをもっても御承知できるかと思います。ただ、今の買い上げておる価格からは百何十円ばかり低くなっております。しかしこれは米の実際の買い入れは九月から十月ごろになっております。今からその価格を決定しておくということは、これは非常に動くのでありますので、その価格の決定は米価審議会等の意見を聞いて決定することにいたしますから、今からパリティも違うし、七、八カ月光のことを、あるいは十カ月先のことをきめるということは少し早過ぎる。こう思いますので、予算米価におきましては、昨年の一万円を一万二百円というふうに二百円上げて計算をしておるわけであります。それからまた私も価格の決定につきましては生産費を補償する、所得補償方式というものはいい方法だと思います。そういうことにつきましてずいぶん研究を重ねてきております。また永山さんも米価審議会の委員でありますから、だいぶ検討はされたと思いますが、実際技術面からいきますと非常にむずかしいのであります。それは労賃の見方あるいはバルク・ラインをどの程度にしくかということにつきまして技術的には非常にむずかしい。理想的であり、筋が通っておるようなわけでありますけれども、なかなかできませんので、とにかく予算米価におきましてはパリティ計算で算出いたしました。算出いたしましたが、これは三十一年度の米価を基準としてやってきておりますので、三十一年度の米価というものはパリティ計算でやっていけるといたしましても、所得補償方式というものは今までの価格決定にも相当組み入れられて、これをわきの方にそろばんを立てて、それに似たようなことも考えておるので、ごく最近のものを基準といたしておりますから、所得補償方式もある程度は加味されておる、こういうふうに御了解を願って差しつかえないのじゃないか、こう思っております。
  58. 永山忠則

    永山委員 農産物価格を安定して、生産費を割らないように努力をするという大臣のお言葉を信ずるものでございますが、実際上において一段と努力をしてもらわなければ、言葉通りになかなかいきかねるのではないかということも憂慮いたすものでございますが、さらに価格の安定施策と並行しまして、農家経済をよくする面の一番大きな問題は、流通過程の整備の問題であると思うのであります。何としても庭先価格が安いのであります。この流通部門を整備するということに対して農林省の方にもっと積極的な施策がなければならぬと考えるのでございますが、流通過程の整備に対するところのいわゆる庭先価格が絶えず安い。この価格を安定するところの流通面をどういうように整備していくかという問題に対する御方針を承わりたいのであります。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その前に先ほどの御質問の中で一つ漏らしたことがありますが、米を買い上げて、予約買い上げの分だけ所得税を減らす、こういう法律をきめましたが、地方税においてはそれを減税しないということになっておるんじゃないかというお話でありましたが、この点につきましては地方税も減らすということになっております。これは自治庁の方から減らさないという法律を出さなければ当然減ることになります。それはそういう法律を出さないことにいたしましたから、地方税についても税金が減ってくるということに御承知を願いたいと思います。  それから庭先価格をということでありますが、これは自由経済によりましては、特にまた自由販売のものにつきましては庭先価格が非常に不利な立場に追い込まれるということが多いのでありますので、この点につきましては共同出荷とか需給調整とか団体協約とか、こういう面によりまして庭先価格が不利な点に陥らないような方策をとっております。ただ米麦等につきましては、大体庭先価格もこちらできめてやりますので、そのきめ方につきましても、庭先価格が不利に陥らないようなきめ方をしておるわけであります。この点につきましてはなお心を用いて、庭先価格が低廉にならないように注意いたしたい、こう思っております。
  60. 永山忠則

    永山委員 この流通過程の整備拡充の問題については、農林省の力で一段と努力していただきたいと考えるのでございますが、総体的にこれらに関連をいたしまして、やはり価格が少し高くなれば輸入をしていこうという、やすきにつこうとする考え方が、通産省あるいは大蔵省当局からも絶えず農林省を圧迫いたしておるのであります。すなわちコンニャクの関係が少し高くなればコンニャクを輸入する、あるいは木炭を輸入する、あるいはレモンを輸入するというようなこと、さらにまた枝肉を豪州から輸入するというような関係で、輸入によりまして価格が高い場合には押えていこうというような考え方が安易に行われようとするのでありますが、これらに対しても十分一つお考えを願わなければならぬのでございます。さらにこれらの流通関係価格の問題等と並行して一番大きな問題は、何としても他力本願的に政府だけをたよりにするということであってはならぬのでありますから、協同組合の育成強化ということに対して、農林省が積極的な指導をされるべきときがきているのであると思うのであります。ことに市町村が合併をいたしておるのでございますが、しかるにかかわらず、各協同組合は小さい単位に分れておるのでございますが、この経済単位を強くしてやるということに対して一段の構想を立てべきときがきているのではないか。すなわち各協同組合の育成強化、あるいはその経済単位の拡充強化、あるいは資本力の強化といったようなものに対して農林省はいかなる指導方針なり、あるいはこれに対する予算的措置を持って進められようとしておるのであるかということでございます。ことに今問題になりました農業共済関係の問題はきわめて重大でありまして、本年度改正をしましたという程度では、とてもこの団体が健全に発達していくということは事実上困難な状態に立ち至っておるのでございます。この点は特に農林当局が十分御検討されねばならぬ状態でありますことは、三割以上の被害を生ずるようなことはないように、特に病虫害防除等に力を入れておりますからして、これらの点に対して、病虫害の防除の農業共済制度も考える、あるいは無事戻しも断行するいうような、旧来われわれの方で絶えず進言をいたしておるところの諸点を、今回も勇敢に取り入れられて、そうして徹底的にこれらの団体を育成強化するということに進まなければ、農村の経済をよくすることはとてもできないのだ。ことに農協におきましても、小さい単位はみなもうセクショナリズム的で、統合いたそうとしていないのであります。それには経済事情が違うのだ、その違う場合においては農林中金もしくは信用連でこういうような経済的な援助をするのだというようなところまで指導をされまして、農協その他の協同組合の育成強化に一段と力を入れられなければ、いつまでたってもこの農協の健全なる発達によって農村の経済を確立することはでき得ないと私は考えるのでありますが、この各種の協同組合の育成強化に対するところの根本的な指導方針なり、予算面に現われたところの諸種の問題を承わりたい。  さらに時間的関係もありますから、これに関連した点で、今度分収造林のようなものをおやりになるのでございますが、それに対してはどうしてもいわゆる森林組合の単位組合がそれと結び合い、そして単位組合の育成強化をやるという方面に、やはり力を入れられなければならないのに、漸次に保安林に繰り入れる、そうして事業を官庁的にとってしまうということをして、そうして単位組合の育成強化ということの面から離れようとする官僚的な山林行政へ入ろうとする傾向があるのではないか、ということは、いわゆる協同組合の育成強化と逆のコースにいくのではないかということをも憂慮いたしますので、あわせてこれらに対する所見を承わりたいのでございます。
  61. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業協同組合等につきましては実態を御承知のことと思いますが、戦後統制が継続している時代に急激にできてきましたので、どうしても農業協同組合が国の物資を扱っていて、トンネル的な手数料を取っていたというような、少し安易な気持で進んできたと思います。しかし途中でそういう制度が変ってきましたので、ずいぶん不振の組合とか、解放するというような組合が、単協等において出てきていることも御承知通りでありますし、県連等におきましても再建整備ということに追い込まれた県連も相当あったわけでございます。そういう点につきましては、これにつきまして再建整備法その他によりまして、これの立て直しをすると同時に、また悪いものにつきましては、これは整理した方がいいと私は考えて、抜本的に整理をさせたいということで立て直しをやっておるわけであります。その点につきましてはまた法律案として出しますが、再建整備の期限を一年なお延長するという法律案も出すわけであります。そこで積極的に強化すべきであるということも御同感であります。同時に今私が申し上げましたように、これは国の農林水産の仕事と農民の盛り上りとの中間において、大いに役割を果たさなければならないのでありますから、やはり自主的に農協等も立ち上るといいますか、そういうことでないと、商業的あるいはその他の工業的なものに押されるきみがあると思います。そういう面も考えてもらわなければなりませんけれども国といたしましても、この強化拡充につきましては十分力を入れているわけであります。ただ強化の方向が、合併をすればよいとばかりは私は考えられないと思います。これは経済団体でありますから、各単位組合等におきましても、もっと資本を充実して、しっかりなってきて、そうして合併の機運といいますか、合併した方がいいという機運にならないで、甲の組合、乙の組合、丙の組合というものを、農業委員会あるいは共済組合のように、ただ形式的な合併を奨励するということは、やはりその中に欠陥があると思いますので、農協等の充実、それからまた合併の必然性といいますか、そういうものとにらみ合して、大きくしていくという方針を持っておるわけであります。  それから共済組合についてのお話もありましたが、これも運用の点等につきましても、なお考えなければならぬ面が相当あると思います。と同時に、これは国がほとんど金を出しておる。こういう実態でもありますので、そういう実態をも考えて、こういう制度の本質を私どももよく運用いたしますと同時に、やはりその組合等におきましても、国からだけ金を出させればいいのだということでなくて、組合自体の運営についても注意を促していきたい、こう考えております。  なおこまかい点等、これについての予算面その他についてどういう措置をとっているか、こういうことでありましたが、それにつきましては事務当局から答弁させていただきます。
  62. 永山忠則

    永山委員 さらに中小企業団体法等ができまして、一応農業協同組合はその規制から排除いたしておるのでございますけれども、実際上の問題としては団体法の強化によって、必然的にやはり規制を受ける結果になるのであります。すなわち、ものの売買等におきましても、一方は団体的行動をなしていく、農村においては個々に取引をするということになるならば、この団体法の強化による必然の結果として、農村側の協同組合を一応規制からはずしたといえども、実質的には規制されるというような結果になりますから、農業協同組合の育成強化の点につきましては、これらの将来の点をも考慮されて、一段と新しい構想で進まれんことをつけ加えておくのでありますが、さらにこの場合何としても中心は人でございます。ですから、やはり農村の技術指導その他の経済面に対する指導立場に立つ技術員を、各部門において設置強化し、その待遇を改善をするということに対して、一段と構想を練らるべきであると考えるのでありますが、その技術員の設置の補助、あるいは技術員の数、その待遇改善等に対しての、現在の予算面等において農林省のお考えになっておるところの所見を承わり、かつ農林漁業団体、職員共済組合の問題についても、積極的にこれが確立を見られるように特に要望いたしたい。こういういわゆる共済組合というものの原理は、もうきまっておるのでありまして、事務費は全額国庫負担であり、長期給付は一割五分ということは、いかなる共済組合でもできておるのでありますから、このきまっておるところのルールの線は確保されまして、そして身分の保障等に一段と力を入れらるべきであると思うのであります。  あまり時間をかけてもいけませんので、続いて特に申し上げておきたいことは、積雪寒冷の零細農の地帯であります。積雪寒冷の零細農地帯は、積雪寒冷地帯の中でも最も経済的に因っておるのでございます。この零細農地帯に対する取り扱いが、たとえば耕地の改良等におきましても、小団地開墾でも、あるいは五町歩、二十町歩というような線で押えられていったときにおいては、事業をやる上においても非常に困難であります。あるいは畜産関係におきましても、積雪寒冷畜産振興によるところの乳牛もしくは和牛の貸付の関係につきましても、裏作の関係をあまり形式にしぼられるが、将来は、やはり裏作をすることによって飼料の関係とマッチしなければならぬのでございますから、その見通しをもって進むならば、これを許すべきでありますが、形式的に裏作付面積四割というようなことで、地域的にしぼっていくというようなことでいったならば、この積雪寒冷地帯の零細農地帯というものは、いつまでたっても恵まれない情勢にあるのでございまして、私は特に積雪寒冷零細農地帯の保護に対する考え方を、当局に承わりておきたいのであります。  さらに、地方的なことになって恐縮でありますが、尾道の家畜市場の関係につきましても、これは商人のやっているところの家畜市場でございまして、農村はすべてせりをやっているのでございます。ただ尾道市場はもう全国商人の畜産の寄るところでありまして、世界一の市場である。全国七万ないし九万の集散地である。この集散というものができなかったら、尾道市場はつぶれることになる。その特殊な商人だけが取り扱っているところの集散地を、しかも地形的にどうしても全部のせりのできない情勢にあるにもかかわらず、これを強引にやろうという考え方が、ついには月三回の市場をさらに六回に数を増して、そしてこのせり取引を強要するというような考え方でいくならば、そこには集散ができなくなってしまって、それがためにかえって農村は非常な不利な結果になるのでございますから、これらの点に対しても、一つ十分お考えをいただきたい。尾道では代表的なものを午前せりをいたし、そして午後は正札つきにいたして、公正な取引をいたしている。この正札取引こそが、せりよりももっと公正にいっているということは現実に県が証明いたしておるのであります。こういうように法の精神に基いて、県の方があらゆる努力をいたしているにもかかわらず、この開設日を増して、そして集散する日にちを狭めてしまうから、全国的な集散を不可能ならしめようという結果に終るのではないか。かつてこの開催日をふやすことによって、ついに尾道市場はやむを得ずつぶれたことがある。こういう歴史過程を持っておるのでありますから、これらの点についても十分お考えを願いまして、その法の精神に従って、地元的ないろいろな要素を取り入れて、官僚主義的な行き方を排除して、民主的にこれを運営するという考え方を、私はこの場合申し述べておきたいのでございます。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどの答弁で、一つ漏れたことをつけ加えておきます。分収林制度を、今度は法律において強く行なっていくわけでありえますが、そういう場合に、植林団体としての森林組合を強く使ったり、あるいはこれを強化する意思があるかどうかということでありますが、これにつきましては御説の通り森林組合を強化いたしまして、森林組合が植林等の主体となる、こういうことに——そのほかにも木を植える団体等もありますけれども、森林組合を中心としていくということにつきましてはお話の通りいたしたいと思っております。  それから小小企業団体法と農業協同紹介法との関係、これは非常にむずかしい問題であります。中小企業団体法員による団体と協同組合とは目的は似たようなものがありますけれども、協同組合につきましては、協同組合の設立の目的といいますか、その趣旨に従って強化していく、こういうことを申し上げておきます。  寒冷地帯につきましては、予算面におきましても昨年度から特に取り上げておりますが、本年度におきましても相当強くこの寒冷地帯の零細農に対しましての措置を予算面においても講じておるわけであります。  それから農業団体のいろいろなことも、突き詰めれば人の問題じゃないか、こういうお話もありましたが、その通りであります。でありますので、農業改良普及員、技術員等につきましても増員をいたしております。たとえば園芸等につきまして、特技技術員といいますか、そういうものも今度は増しております。あるいはまた漁業の方にも特技技術員を増したり、あるいはその他いろいろな方面において技術員を増したり、あるいは共済組合の職員等につきましても、べース・アッフ等をいたしておりまするから、各団体に対する予算面におきましても、昨年度よりは相当増額されておるわけであります。全体を通じまして、農村の団体の技術員は給与も低いし、それから老後といいますか、こういうものの保障もありませんので、御承知かと存じますが、このたび農業団体——これは協同組合ばかりじゃありません、農業団体相当の団体につきまして、短期の給付でありませんが、長期の年金制度というようなものを確立していく、こういうことで近く農業団体共済組合法といいますか、そういう法律を提出して御審議を願って、地位の安定を期して、大いに農業団体のために活動してもらいたい、こういうことを期しておるわけであります。  尾道の家畜市場等につきましては、私の方針といたしましては、従来全国的にそでの下取引といいますか、そういう不明朗な取引が多いので、中央市場法の精神にのっとりまして、公正なる取引をして、出荷者のためになるようにということで、各方面指導をいたしているわけであります。尾道の話を今承わりますると、相当公正な取引が行われているように聞いております。これは事務当局になおよく調査させまして、公正取引という線に沿うておるということでありまするならば、そうしいて直さす必要もありますまいけれども、しかしこちらの方針もありますので、現状等をなお深く調査の上対処していきたい、こう考えております。
  64. 中村寅太

    中村委員長 残余の質疑は、来たる十九日午前十時より行うこととし、本日はこの程度にとどめ散会いたします。     午後四時四十四分散会