○岸本
政府委員 今回国会に御提案申し上げております共済組合
法案でございますが、これは経営主体が国でなくて特殊法人である共済組合であるという点で、
恩給と相相違するわけでございます。どちらがすぐれておるかどうかという問題でございますが、便利、不利というようなことを離れまして、理論的に、共済組合がいいのか、国がいいのか、こういうものの
考え方があろうと思います。これは結局年金の性格によるのだろうと私どもまず第一に
考えるわけであります。たとえば現在の
恩給のように、国の給与という色彩の強い年金の場合には、給与主体が国になる、これは当然
考えられることであります。ところが共済組合の年金になりますと、これは国の給与という
考えではないわけでありまして、使用者である国と被使用者である
公務員とがお互いに費用を折半負担する、そしてその金を積み立てて年金を支給する。いわば費用折半負担保険方式でありますから、国から給与するという
意味の年金ではない。そういう年金の根本的性格から言いまして、それは国が運営の主体になる必要があるかというと、必ずしも私はそうは
考えません。むしろ沿革的に見まして、こうした折半負担の年金方式は、わが国は共済組合が主体となってやってきております。その
意味で共済組合をそのまま存続させていった方がむしろすなおである、かように
考えておるわけであります。これは根本的な
考えでございますが、あと長くなりましてよろしゅうございましたら……。
もう
一つは、国の年金
制度とするという場合、つまり国がするという場合の
退職年金は、おそらく折半負担でなく国の給与負担であるという御前提があろうかと思っておりますが、そうでなく折半負担であるというふうにいたしました場合、これは
公務員制度の一環にはならぬじゃないか、国の人事
制度に役立たぬじゃないか、こういう御疑念もあるわけでありますが、しかし私ども必ずしもそうも
考えておりませんで、国が従来のように給与する年金でなければ
公務員が喜んでもらってくれない、従って働かないとまでは極言できないと思うわけでございます。共済組合の年金
制度にいたしましても、やはり
公務員によく働いてもらう、
公務の能率的運営に資する、こういう目的に向って発達して参っております。国が雇用主として適正な保護監督を加え、内容も絶えず改善をはかることをやって参りますれば、これはやはり人事
制度の有力機関である点は間違いないわけでございます。共済組合にほうり出しておって、
公務員は勝手にやれ、国は知らぬのだ、こういうものではもちろんないと思うのであります。そういう
意味から申しましても、私どもも必ずしも、国の折半負担の年金である場合には、共済組合の年金を国の年金
制度にまでする必要はない、かように
考えております。
さらに第三点といたしまして、折半負担の年金はそれはそれでよろしい、しかしそれでも国営にしたらいいじゃないか、こういう御
議論も中にはあるのであります。その場合に、どうして国営にしなければいかぬかということを申しますと、いろいろ論点が
考えられますが、
一つには年金
制度を保護監督を十分にやっていこう、国が自分の手で運営していく年金
制度ならそう運営も乱れないで全うにいくじゃないか、こういう
考え方もあります。もう
一つは、年金の積立金を特別会計で保管いたしまして、その資金を確実に運営しようという点が第二番の
考え方であると思います。第三点は、非常に政策的な問題になりますが、保険年金になって非常に巨額に達して参ります積立金、これを国の政策目的に運用していくことができる。ちょうど厚生年金特別会計の資金が、すべての資金運用部の預託に運用されておると同じ
意味合いにおいて、
公務員のものも政策目的に使うことができる、こういう
考えもありまして、こうした三点がおそらく折半負担の年金であってもなおかつ国営にしなさいという
議論だと思います。
しかしその場合にも、最初に申しました年金
制度の保護監督を十分に行う、あるいは年金積立金特別会計で確実に運営する。この二点は国が握っていったからといって、必ずしもそうなるかということも言えないわけであります。この点は共済組合の方式、特殊法人にいたさせましても、国が
法律で厳重なワクを定めまして適正な監督を加えていけば目的は達せられるわけであります。むしろ問題は積立金を政策目的に使ったらどうかという問題の方にいくかと思いますが、これもやはり積立金の規制
方法を政令か何かで用途を規制すればいいわけであります。現在の共済組合の積立金はすべて大蔵省令でありますが、それで使途は規制いたしております。そういう
意味で保護監督とか、確実に資金を運用するとか、そういう問題につきましては、ひっきょう程度の差と申しますか、要するにやり方の問題であります。国に持っていったらそうなるかといえば必ずしもそうはいかない。それは過去のいろいろな特別会計の実情なんかを御承知だと思いますが、そういう問題があるわけであります。
さらに第四番目に、それでは積極的にそうした折半負担の年金
制度にした場合に、これを特別会計にしたらむしろもっと困る問題が起ることがあるわけであります。と申しますのは、積立金の運用問題でありますが、積立金を特別会計に入れますと、国庫金という
一つの色がつくわけであります。国のお金ということになるわけであります。そうなりますと国庫金の福祉事業に還元という問題が非常にむずかしくなってくる。病院建設というような一般公衆にも役立つようなものへの福祉還元でありましたら、世間的にも成り立つことであります。しかし国庫金をさらに組合員の個々の
生活需要に応ずる貸付金に使うとか、あるいは
生活必需品の売買資金に回すとか、こういうことになりますと、おそらく国庫金の性格を相当はみ出てきます。そんならほかの国庫金もいろいろ使わせてくれという
議論に発展して参ります。そういう
意味で積立金を国庫金にするという問題は、特別会計で福祉事業をとめる
——現在福祉事業をとめることは、
公務員の
生活にとってこれはなかなか大へんな問題であります。そういう
意味におきまして、年金というものを折半負担の
退職年金にいたしました場合には、国よりはむしろ共済組合という方が理屈も
通り便宜でもある。私どもはかように
考えるわけであります。もちろん将来
公務員の
退職年金はなお御検討に相なるわけでありますが、それがかりに給与部門の多い
——名前は
恩給とは言いません。
退職年金といたしましても、給与部門の多い年金
制度ということになりますと、国がやはり持っていく、これは当然のことであろうと思います。この辺は新しくできる
退職年金の性格を一体どこに置くかという点によって、根本的に
考え方が違ってくるものだと思います。