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津島国務大臣 今回の予算において、また御審議中の
防衛庁設置法におきまして、陸一万人の増加をお願いしておるわけであります。ただいまその
理由はどこにあるかということでございます。これはきわめて重要な点を申し上げて御了承を得たいと思います。全体といたしまして、
わが国の
防衛というものは、
国力、国情に応じて
最小限度必要なもので
防衛体制を固めて、
自分の国は
自分で守るという
体制を築き上げていこうという見地に立ち、同時にまた
財政その他の
事情も勘案してこれを実行するということで
国防の
基本方針を定め、また
防衛整備目標というものがきめられるわけです。この
目標にまで陸の方は十八万、この十八万がいかなる
計数であるかということについては、これは三十二万あるいは二十五万といい、二十万といい、これは数次にわたる種々の検討の結果、十八万を
最小必要限度としてこの
目標にしようというような長い研究と慎重なる討議の結果そうきめられたのでございます。その
意味におきまして、基本的には
わが国の地形、地理また
国際間における地位その他の
状況からいって、
最小限度十八万の陸というものが
国防の骨幹としてどうしても必要である、こういうことであります。ややこれは抽象的になりまするが、大体当初の案においては
管区隊あるいはまたそういったものの
混成団等を加えて十単位のものを作っていって、これを
格地域に必要に応じて配備するという
計画のもとに、こういった
計数が出たわけでございます。しかし今日目の
状況において最も考慮される点は、
わが国の
防衛体制において
予後備を持たない、いわゆを
現役中心であって、このいい悪いはしばらく別といたしまして、現行の法制その他の
建前からいって、
予後備を持たない
自衛隊の
構成になっております。御
承知のように旧陸軍あるいは現在の
各国においては、まず大体
現役に対しては三倍ないし四倍くらいの
予後備を何どきでも召集して国の守りに当て得るという
体制にある。ところが御
承知のように
日本は九千五百人しかいないわけであります。これが少いからこれを増加するという問題はございましょう。しかしながら
現状においては、いわゆる志願、
自由契約によってやる制度のもとにおいては、非常な基本的な改正がない限りは、大体において現在の
陸上自衛隊——海上も同様でございますが、人的の要素の最も多い陸においては今
予備自衛官というものはわずかに九千人余という実情であります。それらの点も
部隊の数を与え、編成する上において当然に
考えるべき特殊の
事情にあるということも、いろいろな
計画を立てる上において必要かと思います。なおまた地理的の
関係から申して、今日十六万の現員に対してこの配置の
状況から申しまして
関東地区、
中部地区においては大
へん手薄になっております。しかも
自衛隊の任務は外部から
侵略、いわゆる
間接侵略等に対して国を守ると同時に、
国民生活の安定をはかる上においても、重要な
産業施設防備の
体制をとっていかなくちゃいかぬ。その
意味においては
関東地区あるいは
中部地区、中国にわたって今日わずかに二
管区隊を持っているだけでございまして、はなはだ手薄であります。それを補強するということも編成上は
考えるべきだという
意味において、今回の二万人というものも、そういった面に重点的に配置いたしたい、こう
考えている次第でございます。
なおしからばこういったような
通常兵器と申しますか、
在来兵器というものによって
装備されたる一万人というものは、効率的なものじゃないというような御議論も伺うのでございます。しかしその点につきましては、今回の一万人、これはいろいろ
財政上の都合もありましていまだ十分とは行きませんが、
装備の
改善また
機械化部隊によってこの半分ばかりを
装備して、この機会に新しい
自衛隊の体系を作っていこう、こういうことでございます。もとよりたびたびお答えいたしたところでございますが、
核装備というものは今日われわれは全然
考えていない、こういうようなわけでございます。そういう
意味において果してこれが今日の内外、特に世界の
軍事情勢に十分対処できるかという問題はあり得ると思います。しかしながら元来
わが国の
防衛というものは、これは全面的に
わが国が各種の
装備を
国力を超越してやって守っていくという
体制は、今日はとるべき時期じゃないというふうに
考えているわけでございます。それならばこういったような
誘導弾兵器、特に
ICBMといったような
兵器と申しますか、弾道弾の起っておるような時代において、これは役に立たないだろうというような
考え方も一応もっともであります。この点になりますと、見方、
見通しの相違はいろいろあり得ると思います。米、ソあるいは英といったような国その
地核装備を持ちあるいは
ミサイル基地を作って、
防備の強化をはかろうという国もございまするが、大多数の国はそういった
装備を持っておらない。今後はどうかわかりません。しかしこれらの国はみな
在来兵器によって
装備を
改善し、質的な
改善を施して、
自分の国は
自分で守ろうという
体制を固めておるわけでございます。その点からいって、今後の
戦争の様相はどうなるかということに
関連があると思う。
ICBMが常にあらゆる
戦争に毎回全面的に使用されるというような場合もないとはだれも断言できませんが、しかし今日
各国の
軍事当局の話、また現にアメリカ、ソ連あるいは英国においても
通常兵器による
戦闘ということも十分想定されまして、あわせてこれを保有しておるというのが
現状でございまして、ああいった
究極兵器というものができたからこれは全然要らないといって、たな上げしつつあるという
現状ではないと思います。もっとも陸についてはある程度の縮減を行いつつある国があります。しかしこれは大体において、
装備が新科学
兵器、特に核
兵器によって転換されて、その
防衛力の強化を見た上においてそういった
意味の縮減が行われておる、こういうわけでございまして、これをもって直ちに
わが国に適用するというのはどうだろうか、こういったようないろいろな観点から、
わが国の
国防の根幹をここに作るということには、この場合一万人の増勢は必要である、こういう見地から予算並びに法制を
国会の御審議を仰ぐべくここに提出した次第でございます。
はなはだ粗雑なことでございましたが、一応の荒筋を申し上げる次第でございます。