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1958-03-25 第28回国会 衆議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)     午後一時三十三分開議  出席委員    委員長 福永 健司君    理事 相川 勝六君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大橋 忠一君       大村 清一君    小金 義照君       辻  政信君    中川 俊思君       眞崎 勝次君    山本 粂吉君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       稻村 隆一君    西村 力弥君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         国防会議事務局         長       廣岡 謙二君         調達庁長官   上村健太郎君         防衛政務次官  小山 長規君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月二十五日  委員大橋忠一君及び中村高一君辞任につき、そ  の補欠として薄田美朝君及び小松幹君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十六回国会閣法第一五五号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)  国防会議構成等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第四二号)      ————◇—————
  2. 福永健司

    福永委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案及び第二十六国会より継続審査になっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最初に領空侵犯に対する措置について若干お尋ねをしておきたいと思うのですが、最近新聞の報道等によりましても、従来米軍が担当しておりました領空侵犯に対する措置を今後防衛庁が担当するような話し合いが進められておるやに聞いておるわけでございます。本来この措置自衛隊法に定められておる通り自衛隊がやるべきものであったというふうに考えるわけでございますけれども、能力その他から米軍に委任したような形がとられておったと思うのでありますが、実際にこれを自衛隊が担当するということになりますと、法で定められておるわが国の領域の上空から敵機を退去させるために必要な措置をとるというけれども、実際にどのような措置がとられることになるのかということをまずお伺いしたいわけであります。
  4. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。御指摘のように現在の自衛隊法八十四条には領空侵犯に対する措置というのが規定されておるのでございます。これまた御承知のように、航空自衛隊の発足が二十九年であります。自来三年余でございまするが、まだ実動部隊としての十分なる育成発展を見ておりません。そのために今日までこの八十四条の規定を実行する段階に至っておらなかったのであります。逐次準備を整えまして、今日ではその体制も整いつつあるという状況でございます。従いまして八十四条の規定に即応したる侵犯に対する措置というものについて、私は至急実行したいという考え方でございまして、この点につきましては、現にこの方面措置を担当しておりまする米駐留軍側とも始終折衝を重ねまして、近く全面的とは現状において申し上げかねまするが、これを実行いたしたいというふうに措置を今進めておる次第でございます。おそらく一ヵ月以内において具体的の準備が全部でき上ると思います。その場合に、御質問の点にありました航空自衛隊としてどういったような方法を講ずるかという点でございますが、これはいろいろやり方もあると思います。今日考えておりまして、また部隊に対しても一応の考え方を申し伝えておりまするところは、航空法によって許可も受けないような飛行機がわが領海、領土の上空に飛来した場合において、その飛行機がいかなる種類のものであるかということについても、十分な確認をするという措置がまず第一でございます。それに対して、もしこれがはっきり許可を受けない飛行機であるということであれば、自衛隊機はこれの退去を命ずる措置をとる。これは信号発射といったようなやり方もありますが、そういったものによると思います。そうして領空外に退去するか、またはそれをしない場合においては、着陸の措置をこちらから警告して、もよりの航空場に着陸させる、こういうことでこの措置をとる考えでございます。なお、実際の場合において、先方から何らかの実力行動といったようなものがない以上は、当方としては、すなわち俗にいう自己防衛といった以外には、実力行使すなわち実弾の射撃といったような措置は講じない、こういうような考えでございます。  なお、こういった違反事項があった飛行機に乗った航空士と申しますか、それらの人々に対しては、関係官庁と十分な連結をとって、適当な措置を講じよう、これが荒筋でございます。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 一ヵ月以内にやりたいというお話でございますが、考えようによっては、非常に大切な問題のわけです。特に自衛隊本来の仕事の中にもはっきりと含まれておるわけでございます。そういうものを米軍から引き継ぐということになりますと、相当準備も必要でありましょうし、いつからやるんだというめどは、おそらく日米双方において話し合いがなされておると思うのでございますが、大体いつを目途にして、その引き継ぎが完全に行われるようになさるおつもりでありますか、もう少し明確にお示し願いたい。
  6. 津島壽一

    津島国務大臣 期日につきましては、先ほどの答弁の中にありましたように、航空集団指令を通じて、航空団に対しては、長官の名前をもって、二月十七日にいろんな手続をきめた上で、その措置を発足するという一般的な命令を出してあります。その前からこの問題は、レーダーサイト等の継承という問題に関連のある問題でございまして、昨年以来から米駐留軍とその話し合いを始めてきた問題でございます。そういった準備が大体近く完成する見通しでございます。従って、これが完成次第——私が申しましたのは、一ヵ月くらいというのは大体予測されたる期間でございまして、そういった尚に全部の準備ができる、こういうように思われますので、今この際、何日ということをはっきり申し上げることは、まあ差し控えた方がよくはないかと存ずる次第でございます。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その引き継ぎが行われることになりますと、在日米空軍領空侵犯機に対して措置をとらない、もっぱら自衛隊の方だけで受け持つということになるわけですか。
  8. 津島壽一

    津島国務大臣 領空侵犯という問題は日本領空全体の問題でございます。航空自衛隊の今日の段階においては、そういった全面的にこの領空侵犯措置に対処するというだけの段階にまで至っておりません。従ってある部面においてはわが方の航空自衛隊がこれに当り、なお足らざるところと申しますか、そういった方面においては従来通り駐留軍においてこの措置をとる、こういうような並行する場合もあり得ると思う次第でございます。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると日本自衛隊の引き受けます地域というのは大体どの辺になるわけでございますか。
  10. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。現在の自衛隊のこういった部面を担当し得る部隊としては、北海道千歳におる航空部隊は、そういったものにすぐ即応し得るような体制にあります。逐次これを他の方面に広げていこうということでございまして、これらは航空自衛隊の実動部隊としての訓練その他の点において逐次これを広げていこう、こういう計画でございます。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほどの長官答弁の中にもあったわけでございますが、これは日本にありますレーダー基地というものとの関連が非常に深いと思うわけであります。大体日本に今二十四カ所米軍関係レーダー基地があるというふうに聞いておるわけでございますが、このレーダー基地を漸次これまた日本移管する話し合いが進められておる。しかもそれが具体的に話し合われるのは、今度開かれる日米安保委員会であるというふうにも聞いておるわけでありますが、この点、次期安保委員会をいつ開かれるつもりであるか、その議題の中にレーダー基地移管の問題も含まれるのであるか、それからそのほかにどのような議題が用意されているのであるか、この点外務大臣からお伺いしたいと思います。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保委員会はなるべくひんぱんに開きたい、そしていろいろな問題について話し合いをしたいと思っているのですが、この次に開かれますのは四月に入ってからになろうかと存じております。議題等につきまして準備を要するものもあり、あるいは準備を要さないで話し合いをするものもあると思うのでありますが、この次開かれます安保委員会についての議題等についてまだ確定的な話し合いをいたしておりません。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 昨年末開かれたきりこの安保委員会はさっぱり開かれてないわけです。期日についても来月になるだろうということでございますが、来月といってもあまりそう日にちはないわけでありますが、向うからどういう提案がなされてくるかはわからないとしても、日本側からどういう議題を持ち出していくかというようなことについては、十分話し合いがなされておらなくちゃならぬと思うのでありますが、一体安保委員会というのはそういう受け身の形でなければ開かれぬわけですか。日本側の方から積極的に問題を持ち込んでいくというふうな、そういうところに重点があったように、従来総理以下の答弁でわれわれ承わっておったわけでございますけれども、持ち出す議題準備すら日本側にはないというわけですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 持ちす議題につきましては、われわれは常時考えておるわけでありまして、議題準備はいつでも開いた場合に——むろん受け身でやっておるわけでないのであります。こちら側からも積極的に議題を出す、あるいはこちら側からも期日等につきましても注文をつけてやっておるわけなのであります。ただ今申しましたように、この次につきましては、何を議題にするかということが最終的にきまっておらぬということを申し上げたわけであります。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今の問題について、こういう領空侵犯飛行機に対する措置自衛隊が一部受け持つというようになろうということを津島長官ははっきり言っているわけなんですが、この問題を日本側が積極的にやるといいましても、勢いレーダー基地というものとの関連も非常にあろうかとわれわれ推測するわけなんです。そうしますと、このレーダ産地移管という問題については当然話し合いがなされるのではないかと思うのですが、大体準備いたしております議題の中に含まれておるかどうか、この点をお伺いしているわけです。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 津島長官の言われましたように、今のレーダー基地移管というような問題につきましては、この委員会で話が出ると思います。しかしこの次の委員会議題としてはいまだ確定的にそれを取り上げているわけではございません。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 津島長官にお尋ねしますが、従来米軍が主として担当しておったわけでございますけれども、領空侵犯が実際にどこかの国の飛行機によって行われたという事例が過去においてあったかどうか。あったとすれば、その件数、発生地域といったようなものについて詳細にお答え願いたいと思います。
  18. 津島壽一

    津島国務大臣 領空侵犯があったということの事例ははっきりしないのであります。ただ許可を得ないと思われる飛行機がわが領空を通過、飛翔した、国籍不明であるといったものは、レーダーによって発見されるわけでございます。そういう機数と申しますか、それは昨年中では大体十八くらいあったと思います。そういう報告を受けておりますが、本年はそういった探知によっては一月以来はございません。これに対してどういう措置を講じたかという問題でございますが、ここにいう領空侵犯に対する措置というものをとった報告は受けておりません。発生地域については防衛局長からお答え申し上げます。ちょっと私は十分その区域を知っておりませんから……。
  19. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今大臣のおっしゃったごとく、領空侵犯ということをはっきり認定するにつきましては、レーダーでは高度及び距離がわかるわけでありますが、果してそれが領空の中に入っているのかどうかということにつきましては、それだけでもって確定するということはなかなかむずかしい問題だと思います。地域につきましては、大体承知しておりますところでは北海道方面のようでございます。
  20. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今後自衛隊がこれを担当するということになりますと、法律上も非常に問題が出てこようかと思うのです。その点を懸念されてのことと思いますが、実際に実弾を発砲することはやらぬというようなことを決定したというように聞いておるわけですが、この点は確認していいわけですか。
  21. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいま申し上げましたように、今日のこのやり方について研究したところでは、お説のごとく、相手機が何らかそういったような実力行動に出るということでない以上は、いわゆる自己防御というか、正当防衛、こういったような趣旨においていわゆる実弾を用いよう、それ以外の場合には信号発射とかそのほかいろいろ警告の方法を講じていこう、こういう建前でこれを実施したい、こういう考えでございます。
  22. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 侵犯してきた敵の飛行機が先に発射、発砲してくればやむを得ぬというふうな考え方なんですが、ここに非常に問題があると思うのです。かりにそれじゃ敵が先に発砲したから応戦したということになって、ここで戦闘行為が行われるということになりますと、勢い問題が複雑になるわけでございますが、もしこの発砲が許されるとした場合には、いかなる条文によってその根拠が示されることになるのかということと、それからどちらが発砲したかわからないというようなことが空中のことでございますし往々にしてあると思うのでございますが、非常に問題を複雑にするおそれがないかどうかということについて再度確認しておきたいと思います。
  23. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいま申し上げましたように、当然に相手方、すなわち敵機という言葉はまだ当らぬだろうと思うのでございますが、そういったような不法侵略と申しますか、領空侵犯をしたものが進んで当方に向って実弾発射するというために、自己の生命また機体の損害等起るのをそのまま待っていることは私は許されないことだと思います。従ってそういった場合はやむを得ず正当防衛としてこれを実行するということはこれは当然のことであろう、こういう趣旨でございます。必ずしもこれを敵機という趣旨ではないのでございます。
  24. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私がお伺いしているのは、その正当防衛と称して発砲することが国際間の事態を非常に紛糾させる、そういうことになるおそれがありはしないかということと、正当防衛というゆえをもって発砲することがいかなる法規によって保証されておるのかということなのです。
  25. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えをいたす場合に多少簡略にしたから、一応補足いたしておきます。すべての場合において必ずそういった措置をとれという強制的の、一方的の措置のみに限るという趣旨ではなくて、集団指令、統率しておるものからそういう場合にあってもこういう措置を講ずることもあるという弾力性ある措置は訓令いたすつもりでございます。機械的に何でもそうやるという趣旨ではないということであります。  それからそういった場合にかりにこちらが正当防衛のために実力行使をやるということの法律上の根拠でございますが、これは大体刑法規定によってやり得るものだと思います。自衛隊には刑法規定は全面的に適用されておるわけでございます。大体刑法の明治四十二年の法律何号でしたか、三十六条というものは私は適用していいものではないかと思っております。
  26. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと自衛隊法第九十五条に基くものではないわけですね。
  27. 津島壽一

    津島国務大臣 九十五条、これは警備の関係であろうと思います。人または武器弾薬等を防護するために必要と認める相当理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度武器を使用することができる、こういう以外に自己防衛というか正当防衛に関する限りは刑法規定というものが当然にあるわけでございまして、この規定に該当して私はこういった措置がとり得るものとこう解釈いたしております。
  28. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 北海道地域にやや領空侵犯と患われるような事件が一番よけい発生しておるというお話でございましたが、これはどこの飛行機かということは全然確認されておらないわけですか。
  29. 津島壽一

    津島国務大臣 その点については昨年十八件あったということでございますが、これは国籍不明であるということの報告を受けただけでありまして、その点についての報道は、これは駐留軍航空部隊がやっておることで、受けておりません。
  30. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは領空侵犯に関しての質問は以上で終ります。  次に、私が第一にお伺いいたしたいのは、今度の陸上自衛隊の一万人増員の問題であります。現在の国際、国内の諸情勢を判断した場合に、陸上自衛隊をさらに一万人増員する必要はないのではないかということは、圧倒的に国民の世論になっておると私は思う。これを受けて与党の中にも非常に強い反対意見がある。しばしばこの内閣委員会におきましても与党の議員の中から批判が出ておる。私はなぜこのような反対の多い、無用だと言われながらも、一万人の陸上自衛隊の増強をやらなくてはならないのかということについては、もう少し掘り下げてお伺いをし、ほんとうのところをお伺いしなくてはならないと思うのです。こういう観点に立って、以下いろいろ質問をやりたいと思うわけですが、もう一度なぜ政府陸上自衛隊一万人を増強しようとするのかということについて御答弁を願っておきたいと思います。
  31. 津島壽一

    津島国務大臣 今回の予算において、また御審議中の防衛庁設置法におきまして、陸一万人の増加をお願いしておるわけであります。ただいまその理由はどこにあるかということでございます。これはきわめて重要な点を申し上げて御了承を得たいと思います。全体といたしまして、わが国防衛というものは、国力、国情に応じて最小限度必要なもので防衛体制を固めて、自分の国は自分で守るという体制を築き上げていこうという見地に立ち、同時にまた財政その他の事情も勘案してこれを実行するということで国防基本方針を定め、また防衛整備目標というものがきめられるわけです。この目標にまで陸の方は十八万、この十八万がいかなる計数であるかということについては、これは三十二万あるいは二十五万といい、二十万といい、これは数次にわたる種々の検討の結果、十八万を最小必要限度としてこの目標にしようというような長い研究と慎重なる討議の結果そうきめられたのでございます。その意味におきまして、基本的にはわが国の地形、地理また国際間における地位その他の状況からいって、最小限度十八万の陸というものが国防の骨幹としてどうしても必要である、こういうことであります。ややこれは抽象的になりまするが、大体当初の案においては管区隊あるいはまたそういったものの混成団等を加えて十単位のものを作っていって、これを格地域に必要に応じて配備するという計画のもとに、こういった計数が出たわけでございます。しかし今日目の状況において最も考慮される点は、わが国防衛体制において予後備を持たない、いわゆを現役中心であって、このいい悪いはしばらく別といたしまして、現行の法制その他の建前からいって、予後備を持たない自衛隊構成になっております。御承知のように旧陸軍あるいは現在の各国においては、まず大体現役に対しては三倍ないし四倍くらいの予後備を何どきでも召集して国の守りに当て得るという体制にある。ところが御承知のように日本は九千五百人しかいないわけであります。これが少いからこれを増加するという問題はございましょう。しかしながら現状においては、いわゆる志願、自由契約によってやる制度のもとにおいては、非常な基本的な改正がない限りは、大体において現在の陸上自衛隊——海上も同様でございますが、人的の要素の最も多い陸においては今予備自衛官というものはわずかに九千人余という実情であります。それらの点も部隊の数を与え、編成する上において当然に考えるべき特殊の事情にあるということも、いろいろな計画を立てる上において必要かと思います。なおまた地理的の関係から申して、今日十六万の現員に対してこの配置の状況から申しまして関東地区中部地区においては大へん手薄になっております。しかも自衛隊の任務は外部から侵略、いわゆる間接侵略等に対して国を守ると同時に、国民生活の安定をはかる上においても、重要な産業施設防備体制をとっていかなくちゃいかぬ。その意味においては関東地区あるいは中部地区、中国にわたって今日わずかに二管区隊を持っているだけでございまして、はなはだ手薄であります。それを補強するということも編成上は考えるべきだという意味において、今回の二万人というものも、そういった面に重点的に配置いたしたい、こう考えている次第でございます。  なおしからばこういったような通常兵器と申しますか、在来兵器というものによって装備されたる一万人というものは、効率的なものじゃないというような御議論も伺うのでございます。しかしその点につきましては、今回の一万人、これはいろいろ財政上の都合もありましていまだ十分とは行きませんが、装備改善また機械化部隊によってこの半分ばかりを装備して、この機会に新しい自衛隊の体系を作っていこう、こういうことでございます。もとよりたびたびお答えいたしたところでございますが、核装備というものは今日われわれは全然考えていない、こういうようなわけでございます。そういう意味において果してこれが今日の内外、特に世界の軍事情勢に十分対処できるかという問題はあり得ると思います。しかしながら元来わが国防衛というものは、これは全面的にわが国が各種の装備国力を超越してやって守っていくという体制は、今日はとるべき時期じゃないというふうに考えているわけでございます。それならばこういったような誘導弾兵器、特にICBMといったような兵器と申しますか、弾道弾の起っておるような時代において、これは役に立たないだろうというような考え方も一応もっともであります。この点になりますと、見方、見通しの相違はいろいろあり得ると思います。米、ソあるいは英といったような国その地核装備を持ちあるいはミサイル基地を作って、防備の強化をはかろうという国もございまするが、大多数の国はそういった装備を持っておらない。今後はどうかわかりません。しかしこれらの国はみな在来兵器によって装備改善し、質的な改善を施して、自分の国は自分で守ろうという体制を固めておるわけでございます。その点からいって、今後の戦争の様相はどうなるかということに関連があると思う。ICBMが常にあらゆる戦争に毎回全面的に使用されるというような場合もないとはだれも断言できませんが、しかし今日各国軍事当局の話、また現にアメリカ、ソ連あるいは英国においても通常兵器による戦闘ということも十分想定されまして、あわせてこれを保有しておるというのが現状でございまして、ああいった究極兵器というものができたからこれは全然要らないといって、たな上げしつつあるという現状ではないと思います。もっとも陸についてはある程度の縮減を行いつつある国があります。しかしこれは大体において、装備が新科学兵器、特に核兵器によって転換されて、その防衛力の強化を見た上においてそういった意味の縮減が行われておる、こういうわけでございまして、これをもって直ちにわが国に適用するというのはどうだろうか、こういったようないろいろな観点から、わが国国防の根幹をここに作るということには、この場合一万人の増勢は必要である、こういう見地から予算並びに法制を国会の御審議を仰ぐべくここに提出した次第でございます。  はなはだ粗雑なことでございましたが、一応の荒筋を申し上げる次第でございます。
  32. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 おそまつどころか非常に親切な答弁をなさっておられますが、さっぱり要領を得ない面もあるわけです。それでは端的にお伺いいたしますが、限られた財政の中で防衛力を強化するということになりますと、おのずから量と質との問題が出てこようかと思うのですが、基本的に日本の場合量と質との関係について、どちらにウエイトを置かれようと考えておられるのか、この点率直にお答えを願いたいと思います。
  33. 津島壽一

    津島国務大臣 量の点については一定の国防防衛整備目標というもので明示されております。これには具体的の装備関係は入っておりませんが、陸十八万、艦船十二万四千トン、航空機千三百余機、こういうものを量として、これは当然に根幹的のものであるという見通しを研究の結果出しておるわけです。質につきましては、航空機についても同じ三百機といたしましても、性能の高いまたわが国に最も適応し、能率の上るといったものを撰定してここにその内容的の強化、質の改善をはかろう、艦船についても同様でございます。また陸についても質的の改善、刷新ということは今後もっと重視して、いわゆる全体の量がかりに完全なる防衛の目的を達するには足りないとしても、質によって補っていこう、こういう方針で今後こういった整備とともに両々相待っていくわけで、量については少くともある程度までは、これは根幹としてまず作っておくというその目標達成の段階にある、こういうふうになっているわけでございます。
  34. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、昨年の十二月二十三日私本会議においてサイドワインダーに関しましていろいろとお尋ねをしたわけですが、そのときに岸総理は「わが内閣としても、壁よりも質に重きを置いて防衛力の漸増を企図しておることから申しましても、」こういうようなお答えを私にしておられるわけでありますが、これはどういう意味でございましょうか。総理の言ったことだからわかりませんか。
  35. 津島壽一

    津島国務大臣 壁よりも質というのは普通言われることでございます。しかしながらかりに十八一万が達成せられ、またさらにそれをやるかというような場合の整備目標というものの達成を無視して質だけをやるというようには、総理の発言を私はとっておらぬのでございます。まず質がよければこの際これを十六万そのままでいいという趣旨に、量よりも質という言葉をお使いになったとは思っておりません。
  36. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 軍事情勢が特に大きな変化をもたらしてきたのは、やはり昨年の八月の大陸間弾道弾のソ連における完成、あるいは十月でしたか人工衛星の打ち上げといったようなもの、そういうものを現実にまのあたりに見せつけられて以後の話だと思う。今長官がいろいろと述べられましたことは実は昨年の六月に国防会議で決定を見たいわゆる防衛力整備目標であろうかと思う。現に陸上十八万、海上十二万四千トン、飛行機千百機といったような基本的な量を確保したあの防衛力整備目標が確認され、制定された以降において実は大きな変化がやってきているわけなんです。だからこそ十八万に達するよりも、それよりも先に質の強化ということにウエートを移していった方がいいんじゃないかという御意見が、与党の中からなされておるものと私は理解しておるわけなんです。それを必要はないのだ、もう国防会議できまった防衛力整備目標に向ってやるのだというふうにおっしゃっているのが、政府側の立場であろうかと思うのですが、現に辻議員が本委員会において質問された場合も、岸総理ははっきりその点を言っておられた。国防会議できまったいわゆる防衛三カ年計画、これを今変更する必要はないというふうに認めてやっているんだ、こういうことをおっしゃっておられるのです。変更する必要はないとおっしゃいますけれども、しからばそういう大きな情勢の変化があった以降において、国防会議でこれを検討する機会はありましたか。その点いかがですか。
  37. 津島壽一

    津島国務大臣 あとの御質問に対して答える前に、前段に対して一言申し上げておきます。岸総理の量よりも質という言葉も、また私自身もそういうことは言っておりますが、しかし今のお話のように、国防基本方針その他について、内外の情勢に応じてこれを変更するか、現状においてそれを変更するかということについては、岸総理も今の方針としてはこれを変えないということをたびたび答弁された。現に三月十三日の当委員会においてもそういった答弁をしているわけでございます。でありますから、言葉のあやでありまして、十八万は要らないんだという意味に量より質ということをすぐ理解するということには私は考えておりません。なおまたこの一万人増勢については国防会議で最近の事態において決定したが、防衛庁の予算関係また装備関係についても、国防会議においては逐次飛行機の問題その他についてのいろいろな審議の問題はあるわけでございまして、今回の予算に現われたる増勢、これについては私から申し上げておる次第でございます。今後の情勢がどうなるかということについての問題は、これはまた十分検討を要することでございますが、現状において一万人増勢ということはぜひ実行をいたしたい、こういう考え方でございます。
  38. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私がお伺いしているのは、国防会議でもうきまったことなんだから、そのきまった防衛力整備目標というものを達成するために、今度の地上軍の一万人増強もやるんだ、こういうお答えを得ている。ところが国防会議国防基本方針がきまったのは昨年の五月です。いわゆる三カ年計画、この整備目標というものができたのは六月です。大きく軍事情勢国際情勢が変化をもたらしてきたのはそれ以後なんです。そうするとこの国防会議という重大な使命を帯びたところで、この大きな国際情勢軍事情勢の変化に伴って、国防基本方針は変らないにいたしましても整備目標についての再検討が行われたかどうかということを聞いているのです。国防会議が作られましたときに、内閣委員会において再三論議がなされたのです。こんな屋上屋を重ねるような国防会議を作ったって何にもならないのじゃないか、この程度のスタッフでは何にもできないのじゃないか、防衛庁あたりで作った資料を持ってきて、はい承知しましたと言うだけの機関になるのじゃないか、その程度のお粗末な国防会議になるのじゃないかということが再三委員から質問が出ておったけれども、そんな必配はないと言った。ないと言うけれども、もし今私が質問したようなことが行われておらないとするならば、整備目標を変える必要がないと言っているのは、単に政府だけ、防衛庁だけにすぎない。国防会議においてもしこれが論議されておらないとすればですね。そういう国際情勢の急激な変化、軍事情勢の急激な変化に伴って、責任ある国防会議というものが一たん六月にきめたこの整備目標を再検討する必要ありと認めて検討したかどうかということをお伺いしているのです。
  39. 津島壽一

    津島国務大臣 国防会議は秋以後においてもたびたび開催されたわけでございます。従って六月に決定した整備目標のその一部がいよいよ実行の段階になるのはこの予算の編成時期、またその予算を決定する時期でございます。それまでに国防会議はたびたび開き、また私も、来年度すなわち三十三年度においては陸一万その他のことをやるという計画は述べて、これに対しては異議がなかった。また新機種の選定の問題もあり、P2Vというような飛行機についても、三十三年度にこれが製造を始めていくといったような問題、これらの問題に対しては慎重に検討いたし、また今後とるべき新機種の選定についても何回も会議を開いたわけでございまして、ただ防衛庁できめたものをそのまましていくというようなことは、私に関する限りは考えておりません。すなわち何も審議しなかったという事実はないわけでございます。
  40. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 国防会議の事務局長来ておりますか。どなたか答弁できますか。——再三開かれた、論議したとおっしゃいますが、事務局長にお伺いしたいわけでありますが、いつ開かれて、この整備目標の再検討が行われたかということを具体的にお答え願いたいと思うわけです。だれか答弁できますか。
  41. 福永健司

    福永委員長 今事務局長は急遽こちらに参るように連絡をいたさせますから御了承願います。
  42. 津島壽一

    津島国務大臣 ちょっと中間的に。今の一万人の問題についてたびたび会議を開いた、こういう趣旨を申し上げたわけではございませんで、国防会議はたびたび開いて、今度の予算に関する限りは防衛庁長官として計画を話し、報告して了承を得た、こういうことでありまして、一万人問題についてたびたび会議を開いて論議を重ねたという趣旨ではなかったわけであります。ほかの問題がずいぶん出されたわけでございますから、さよう御了承を願いたいと思います。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 だから私は問題があると思うのです。総理はこの間辻委員質問されたときに、はっきりと、国防会議できまったのだ、だからその目標に向って進んでいくためにこの一万人の増強はやるのだ、再検討の必要はないのだ、こういうように答えておる。その場合総理の言葉も政府という言葉を使っておるわけです。私は、この国防会議を単に政府の機関というふうには了承いたしておりません。そういうことであるならわざわざ国防会議を作る必要はないとわれわれ言った。その国防会議がみずからの作った防衛力整備目標というものを再検討して、現在の情勢に応じて、そのままでいいか、あるいは改訂する必要があるかということの論議が行われておらなくちゃならないと思うのですが、今の答弁ではまたその点ちょっとぼけてきたのですが、いかがですか。この防衛整備目標、普通われわれが言って、おる防衛三カ年計画ですね、これについてこの急激な情勢の変化に伴って再検討が国防会議において行われたか、このままでいいか、あるいは修正する必要があるかというようなことについての論議が、熱心になされておるかどうかということをお伺いしておるわけです。
  44. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えします。防衛整備目標の中にも一項目ありまして、全体の目標、たとえば十八万ですね、そうして各年度ごとに予算の編成に応じて財政事情を勘案いたしまして、年度別の計画を立てていこうということが示されておるわけでございます。従って全体の目標をきめた六月、それから三十三年度で幾らのうち幾らを実行するということは、国防会議に私は、三十三年度に一万人増勢、こういうことで予算計画にみな現われるのでございます。それを報告して、これは再検討という言葉はどうでありますか、内外の情勢、岸総理も申しましたように、今まできめておる国防基本方針防衛整備目標は変えることがないというその了解のもとに、三十三年度予算が実行計画としてその年度の分をきめていった、こういういきさつになっておるわけでございます。何回議論したかということでございますが、この問題はそういう意味において何回も繰り返してやったということは私は記憶いたしておりません。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうことであれば、私が冒頭申し上げたように、国防会議というものは何のためにあるのかわからぬということなんです。それこそ当初私たちが主張しておったように、単に防衛庁で作ってきたものを承知したというだけの機関にすぎないということを露呈することになると思う。みずからが作ったこの整備目標というものは情勢に応じてみずからの手によって再検討されなくちゃならぬ。それが行われないような国防会議なら要らぬじゃありませんか。何のための国防会議ですか。私たちはこの一万人の増員の問題について非常に大きな懸念を持っている。与党の議員までが言っているように、今さらあわてて一万人ふやす必要はないんじゃないかというにもかかわらず、政府がこれを強行しようとするのは、一にかかってアメリカとの関係だけじゃないのか。アメリカと約束してしまっているから、今さらこれを中止するわけにはいかぬ、こういうふうな考え方防衛庁なりあるいは全般的に政府なりの閣僚の頭の中にあるんじゃないかということを懸念するわけです。この点は長官答弁によると、全然関係ないとばかりは言えない面が今まであるのでございますが、いかがですか。
  46. 津島壽一

    津島国務大臣 まあこの必要云々についての御議論は別として、これはアメリカと約束したからやらなくちゃならぬのだろうということについては、私はそういうことを承知いたしておりません。わが国防衛目標をちゃんと整備していく上において、これだけのものは必要だということを自主的にきめたんだ、こういうことに私は了解して参っているわけでございます。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 昨年の六月に行われました岸、アイク共同声明の中には、この点明らかになっておるんじゃないですか。合衆国は日本防衛力整備計画を歓迎し、よって安全保障条約の文言及び精神に従って、明年中に日本国内の合衆国軍隊の兵力を、一切の陸上戦闘部隊のすみやかな撤退を含み、大幅に削減する、このようにうたわれているわけです。これはどういうことかというと、五月と六月にでき上りました国防基本方針防衛整備目標、このうちの防衛整備目標、いわゆる防衛力整備計画というものは岸さんがアメリカに持っていった、そしてアイゼンハワー大統領に提示した。まあアメリカはこれを歓迎した。その結果に基いていわゆる地上軍全部の撤退というような問題が出てきておる。現に在日米地上軍の撤退というものは、補給部隊を残して完了しているやに聞いております。そうしますと、アメリカの方は、日本がそれだけの整備目標を示したので地上軍を撤退さした、そこでこの一万人の増強を取りやめるということになると、アメリカとの関係で非常に信義にもとる面が出てくる。こういうようなことになってきて、せっぱ詰まって、どのような批判があろうとも、一万人の増強はやらなければいかぬのだ、こういうことになってきたんじゃないか。そういうことならそれなりに一応われわれは理解できるわけなんですが、その点はいかがですか。
  48. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまの日米共同声明と申しますか、アイゼンハワー大統領、岸総理の共同声明の中の文句でございますが、これは読み方もいろいろあると思います。日本の整備目標というものを岸総理が米側に報告、説明したという事実はあるでしょう。従ってその文と直接因果関係を持って、それでは撤退しよう、こういうように読む読み方もあると思います。しかし当面の問題の一万増勢というものが来年度の計画としてはっきり出ておったかどうだかということは、私は承知いたしておりません。それはその後の予算の状況その他を考えて、各年度計画までも説明して、そうしてこれでやるんだというような説明をしたとは、私は承わっておりません。従って三十三年度予算の一万増勢というものが、これが即アメリカとの約束だということが、私はこの日米共同声明の文章から出てくるものとは思っておりません。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この岸総理が持っていった整備目標というのは、明らかに陸上自衛隊は十八万人という線なんです。陸上自衛隊を十八万人に増員するということが確認されたから結局米軍の地上軍の撤退という形が行われてきた、そういうものじゃないんですか。
  50. 津島壽一

    津島国務大臣 この問題については、わが国の自衛体制としてはこれだけのものが必要だという防衛計画でございます。それによってアメリカ側がどういうような安全保障条約によってやるかということは、また同様に考えているのだと思います。原因、結果の直接の関係があって、これをやればこれをやるという直接的の因果関係を持ってこの話が行われたというようには、私は承わっておらぬのです。全然関係のないことであるかといえば、これは関係のあるということは認めても、私はあやまちではないと思いますが、今おっしゃったように、ちゃんとこれだけやるからこれだけこうやるというような具体的な話があったということは、私はまだ承わっておらぬと言う以外には申し上げようがないというわけでございます。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 長官は前にはある程度正直にその事情を述べておられたんじゃないですか。三月七日辻議員の質問に対して、やはり関係があるというふうにとれる答弁をなさっておるわけでございますが。
  52. 津島壽一

    津島国務大臣 それはよく読んでみないとわかりません。私の言った趣旨は、また今日まで考えていることは、米軍陸上部隊の撤退は、昨年夏以来行われたものでございます。そういう事実は、これは事実としてあるわけです。そこでわが国の一万増勢という問題を考える上に、いろいろな事情があるだろう、日本の地理的関係、その他置かれたいろいろな地位、また先ほど申しました隊の後方的の体制とか、また中部関東地区のいろいろな事情等、それに関連して私は触れたと思いますが、地上軍がとにかく一万数千名引いてしまったという事実があるので、さらに地上防衛についての手薄というものを加えておる。こういう事情もやはり現実の事実とじて考慮に入れなくちゃならぬということは、私は申し上げたと思います。しかしながら、これが今の日本防衛計画関連して、一万増勢はアメリカと約束したのだからやりますというようなことは、私は言わなかったと思いますし、もしそういうことがあったら、それは私は言い過ぎか何かの間違いであったということを申し上げるほかはないと思います。
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 言い過ぎかどうか、読んでみましょうか。「日米共同声明において、米の陸上戦闘部隊が全部撤退したわけでございます。これは約二万名に上っておるわけでございます。こういった意味におきまして、陸の防衛上、どうしても間接、直接の侵略に対応してある程度の陸上部隊を増強することが必要になった事態も、一つ考慮の中に入れなくちゃならぬ。」こういうように述べておられるわけです。整備目標とこの米軍の撤退というものが十分関係があることは、これはもう常識だと思うのです。その中で今度の一万人とどうかということになると、ぼかそうとなさっておるわけでございますが、私は何もそれはぼかす必要はないじゃないかと思う。現に安保条約の精神からいっても、ふやさなければ向うは撤退しないというような関係にあるだろうと思う。その点、もう少し率直にお述べになるわけにはいかぬわけですが。
  54. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまお読み下さったところは行き過ぎでも何でもなく、私はそのままの気持を持っておりますから訂正いたしませんが、とにかく現実の事態として、米駐留軍陸上戦闘部隊が撤退を開始して、昨年からいえば年内に、大きくここに、陸上防衛についての一つの欠陥と申しますか、そういったことが起った、そういった事情考えてみても、これは一万人を今年度において整備するということの必要を私は感じておる、こういうことを申し上げた。けれども、この一万人を、アイゼンハワー大統領、岸のなにで必ず原因、結果としてきちっとその年度にこれだけということを約束したかというような御質問でございましたら、それは私は聞き及んでない、こういうように申し上げた次第でございます。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、昭和三十五年度までに二万人をふやすということは、きちっとした約束になっておるわけですか。
  56. 津島壽一

    津島国務大臣 この問題は岸総理も、将来のことははっきりここでは述べられないが、目標はそうなっておるということでございまして、先ほど申しましたように、個々の年度において財政事情を勘案し、民生の安定というものをはかりつつ、弾力性を持ってやろうということが示されておるわけでございます。従って三十四年度において一万人、三十五年度は一万ということまでも具体的にここで申し上げることはできませんが、整備目標に関する限りにおいては、十八万にはまだ一万不足しておるという事実を申し上げました。この整備目標も絶対に変えられないということはないので、その中にも、今後の事情において再検討をすべきものがあるときは再検討をするということがうたわれておるわけでございます。であるから、三十五年度までには、絶対という言葉ではここの決議はできていないので、再検討する場合もあり得ることが、この整備目標の項目の中に示されております。それでありますから、今日の段階においては、その程度に御了承を願いたい、こういう次第でございます。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この整備目標自体も、アメリカというものを抜きにしては成り立たないような目標になっているわけですね。一つの例が、相当部分の供与を、装備品の整備についてアメリカに期待しているというようなことがうたわれておるわけです。そういたしますと、この面において、しからばどの程度の、アメリカとの話し合いが進んでおるわけですか。結局装備品の整備については、国内生産によるもののほか、艦艇及び航空機の一部を初めとし、なお相当部分の米国よりの供与を期待する、この相当部分の供与期待というものについて、アメリカとの話し合いがどの程度なされておるのか。
  58. 津島壽一

    津島国務大臣 これは、お答えいたしますが、装備に関して供与を期待するというのは、これは毎年度先方の対外軍事援助費等と見合って、また当方情勢に伴って、調達困難またはその他の事情で供与されたいというものについて当方から申し出、また全体を見合って軍事援助経費の中で、まかなっていくことでございまして、具体的に何年度には幾ら、何年度にはどういうものというものが、この整備目標と相待って相手方と話し合って予定されたものがあるというのではございません。ただ長期にわたる生産物資、たとえば飛行機のごときものは、これは長期計画においてある一定の基礎を作るといった場合に、長期間にわたった向う側のいわゆる供与と申しますか、そういった方針が具体化するわけでございます。個々の装備品等についてはその年度に応じて、当方計画、それに見合って、向うの予算その他の事情によって毎年きまっていく、こういうことに相なっておるわけでございます。その考え方をただ示した、こういう意味でございます。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 じゃあかりに十八万人は必要ない、今度の十七万人ぐらいでとめておこうというような変更が行われたとします。そういった場合に、こういった面で支障を来たすというようなことは絶対ありませんか。
  60. 津島壽一

    津島国務大臣 今の御質問は、先ほど申し上げたようなことで、まだ十八万というものが改訂を見てないわけであります。改訂した場合には供与はどうなるか、そういうところまでもアメリカと話し合った事実はないと思いますから、こうなるということを今申し上げるのは、ちょっと時期が早いんじゃないか、こう思う次第でございます。
  61. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 岸総理がわざわざ持ってきて、十八万人にしますと言って、アメリカに見せたじゃないか。それを十七万人でとどめておくというのは信義にもとる、だからこの供与の面においても、そうは応援できないということになるおそれはないかということなんです。
  62. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。非常に不完全なお答えで十分御了承願えなかったわけですが、大体日本の整備目標国防基本方針は、私の承知いたしておるところでは、岸総理は当方計画を十分説明した。従ってこれを実行するについてはどういったような期待物資供与を得るか、何年度にはどうなるというようなところまでの交渉というようなものに属するものは私はいたさなかったということの報告というか、そういった話を承わっておるわけでございます。従って、これが変更した場合に供与物資がどう変るかというようなことは、向うと話し合いが済んだ事項についての変更でも何でもない、全然新しい問題であって、またその新しい問題を今日こうなるであろうということをここで想像によって申し上げることは、私は差し控えた方がいいのじゃないかと思うのでございます。
  63. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最後に念を押しておきますが、これは新聞の報道ですけれども、防衛庁では現在の第一次防衛三カ年計画、これが時代に即応したものではなくなってきた、非常に不適当なものになってきておるという与党内等の批判にもこたえる意味で、再検討を加えている、たとえば陸上は十七万人に抑えるといったような計画の変更を行う意思を持っておるやに聞いておるわけでありますが、この点再検討が行われ、計画が変更されるというようなことがあるかどうか、お答え願いたいと思うのです。
  64. 津島壽一

    津島国務大臣 私もそういった新聞の記事を読んだことはございます。しかし防衛庁の意見がそうであるということは、私はここで認めるわけにはいきません。研究はしょっちゅうしなければいかぬ問題でございます。なるべく経費をかけないで能率を上げ、国防の目的を達するためにはたゆまざる研究をする必要があります。しかしながらこの整備目標についての改訂ないしは次の整備目標というものは、そう簡単にきめるというわけには私はいかぬだろうと思うのであります。従ってお説のごときいろいろな意見というものはこれはわれわれも非常に有益なものとしてそれらを十分に考慮するということにはやぶさかでないのでございますが、もうすでに十七万でいいということを防衛庁が言っているということが、もし記事で出ているなら、それは防衛庁の方針がそうであるということとは全然違っておる、こう申し上げていいだろうと思います。
  65. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは次に移りますが、武力、軍事力によって国を防衛する建前をとる限りにおいては、財政の極度の膨張というようなものを押えるというようなことも、いろいろ条件として出てくるでありましょうが、とにもかくにも戦力を増強しよう、装備も近代化しよう、こういったことが次々に行われてくることは必然だと思うのです。先ほどのサイドワインダーの受け入れといったようなものも、当然そういった考えにつながっておるものとわれわれは理解しておるわけでございますが、このサイドワインダーの供与を日本側からアメリカに要請したのはいつであったわけですか、それはどのような政府機関において決定を見たのであるか、あわせて御答弁願いたい。
  66. 津島壽一

    津島国務大臣 御承知のように、これは国会等でも政府側からお答えしたところでございまして、この科学の進歩に応じて装備改善ということが必要である。しかしそれについては科学的な研究開発というものが伴っていかなければ、常に海外のそういった供与に待たなくちゃならぬということで、国防上の大きな自主性を持てないわけでございます。その意味において、一昨年来誘導兵器と申しますか、それらの七種について研究開発をして、基礎的に国防の安泰をはかりたいという意味におきまして、供与をこれは申し出たわけでございます。ところがかこの問題が種々の事情によりまして、十分に実現を見るに至らなかったという事情があるのであります。私は何とかしてこういうものを見て研究して、いわゆる科学の進歩に寄与し、また装備改善自分の手でもやれるようにしないと、国防の裏づけができないということを痛感したのでございます。しかしながらこの問題を、研究開発の目的でもって供与を受けるということには種々の支障がございまして、実現はできないわけでございます。しかしながら一方その後の状況は、軍事情勢の変化等にかんがみまして、特にわが国の防空の問題が非常に重大であり、F86の現状において、その機能というものも十分に発揮できない場合は、ここに大きな欠陥が起るということを痛感いたしました。従って研究開発は、並行して国内においてもいろいろな資料その他の情報によってやるということは当然で、これを転換したわけじゃございません。しかしながらもっと経費が安く、効率的で、今日の軍事情報に即応するような装備だけは何とかして持ちたいという考えになったわけです。そこでこの問題は、抽象的には近代化というような問題で、安保委員会においても問題が十一月にはあったことはございますが、それは具体的な問題ではございません。その後考案の結果、私としてはこれは何とか最も適切なる、そうして核の弾頭のつけられないようなもので、安いもので効率的で、そうしてF86に適応するようなものがないかということは、私が向うの軍当局と話し合いの際に出ておったわけでございます。このような希望は十二月の中旬です。それが急に進行いたしまして、そこで安保委員会会議において、こちら側の要望というものに応じて、もしサイドワインダーというものならば供与する用意はあるというような発言があったわけです。その意味において、これは適当であろうという考え委員としてなって、これを閣議に諮り、国防会議にも諮って、それじゃ受け入れしよう。御承知のように、委員会政府の交渉の場面じゃないのでございます。しかしこれを要求するもとになったものは、防衛庁としてこういったような構想があるということは、向うにも申し上げたわけで、これは委員会の場面ではございません。その結果が、今のようにこの受け入れについて、これは幾ら受け入れるか、いつやるかという問題は、事実上の政府間の交渉の問題でございます。そういった意味においてこの話を急速に運んだ、これが全貌でございます。
  67. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 親切に答弁していただくのはけっこうなんですが、もう少し要点をはっきりお答え願いたいと思うのです。日本防衛整備計画の中では各種新式兵器については当面研究開発の面に力を注ぐとはっきりうたわれているわけです。こういう考えに立って、七種の誘導弾の供与をアメリカに申請しておるという事実は私どもも十分知っているわけなんです。それがいつのまにか実戦用の誘導弾の供与というように振りかわっているところに私は疑問を持っているわけなんです。どのような機関で、当面研究開発だけやるんだといっておったのが、実戦用のも合せて供与申請するんだというように変ったのか、どういう責任ある機関でそういうことがきまって、どういう手続によってアメリカに申し入れられたのか、こういうことを聞いておるわけなんです。しかもその申し入れられた期日というものはいつなのか。今のお話でしたら十二月中旬とおっしゃいますが、サイドワインダーの供与が決定したのは十二月十九日です。このことに関してはえらく早いことで、日本側からくれと言ったらオーケーといってすぐ来たような格好になるわけですが、そこのところをもう少し率直にお答え願いたいと思います。
  68. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほどのはもう間違いのないところをありのまま申し上げました。それから御指摘の新式兵器と申しますか、各種の新式兵器につきましては当面主として研究開発という面に力を注ぐというようなわけで、その事項は確かにございます。従って研究開発に非常な主力を注ごうというような方針は持っております。しかしなかなかこれがそう急速に行けるものでもございません。また一面においては装備の刷新をはかるということは防衛整備目標の中の、編成なり、また装備の刷新をはかるということは同時に決定しておるわけでございます。その一意味において、私どもは内外の情勢に応じて、ことに先ほど御指摘のありましたような宇宙関係の弾道兵器というようなものができた、その情勢に応じて、研究はもちろん促進する。しかし装備の刷新ということもやるべきであるということから、私としては必要なものだという見解で、まず、何とかできぬものだろうかと、いう話を、私はいたしました。しかしその期間が短かった、早過ぎたということはこれは事実の問題で、うそでも何でもないのですから、それ以外にお答えの方法がないというわけでございます。
  69. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではサイドワインダーをくれという提案をいつなさったというわけですか。
  70. 津島壽一

    津島国務大臣 わが国の国情なりまたこの機種——欠陥のあるこの防空の関係において、装備の強化をはかって、これを完全にするという方針並びにそれに適応するものということは私は要望しました。しかしながらサイドワインダーをどうということではこちらから指摘して言ったという事実はございませんでした。それは向うでいろいろ国情を研究して、実情に沿う、またわが国の要望に適応するようなものというので、先方の方から示唆を受けたわけでございます。
  71. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこでちょっと私疑問を持つわけですが、この安保委員会の共同発表を見ますると、日本政府の要請に基いて供与を決定したとあるわけなんです。日本政府の正式な手続というものは当然そのあとにとられておわけです。翌日の閣議で初めて長官から説明がありまして、純然たる防御兵器であること、核弾頭を装備できないこと、製作費が安くしかも命中率は非常にいいこと、といったような説明を長官からなさって、閣議の了承を得ておるわけなんでございますが、この点、それでは、日本政府から要請して、向うが承知しました、供与オーケーだということになった場合に、あとで閣議で、そういうようなものは困るというようなことになっても追っつかぬのじゃないかと思うのですが、そこのところの関係はどうなるわけですか。
  72. 津島壽一

    津島国務大臣 その発表の文は読み方もいろいろあると思います。私の了解しておるところではこういったような必要あるといったのは、防衛庁長官としてでございまして、この委員会というものはこれは政府会議という性質のもので、交渉の場面ではございません。そこで政府から、要求がもし正式というか、あれば、自分たちはこういうものなら供与してもいい用意があるという発言があった。そこですべての政府間の交渉は——委員会は協議機関でございますから、ここで政府間の意思決定をするわけじゃございませんで、そういったような事実を閣議に報告し、そうしてそれならばこれはいいだろうということなら、一つ本筋のいわゆる正式のルートにおいてこの交渉が始まる、こういう手続をとったわけでございます。あらかじめ政府の意思を決定して——政府と申しますか、閣議というか、あるいはそういう協議ですか、それで交渉を進めたということではなかったようでございます。
  73. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この点はあとで本論に入るときに非常に必要になってくるので、よく今の答弁を覚えておいていただきたいのです。かりにそれはさておいたにいたしましても、大体この共同発表を読んでみました場合に、今長官がおっしゃるような場合でしたら、日本側委員の、というふうな表現が使われるのが通例じゃないのですか。米国政府日本政府の要請に基き、こういう表現を使うということになると、非常に問題を残すんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  74. 津島壽一

    津島国務大臣 その点は私は専門的に、ドラフトというか、その草案を作ったわけでもございませんが、そのあとに、「他の委員は」、これはこのことはけっこうだろう、というふうなことをつけてあるようでございます。その意味において、この協議は委員の資格でいたしたということには間違いはございません。
  75. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今長官は、「他の委員は」とおっしゃいましたが、これはスタンプ大将が、日本の要請に基き米国政府は供与を決定したという発言をした。それで「他の委員は」というのはあなた方のことを指すだろうと思う。そういうことじゃないんですか。そうしますと、スタンプ大将がはっきりと「米国政府日本政府の要請に応じ」と、こう言っているわけなんでしょう。そうしますと、長官がおっしゃっているのと趣旨が少し達ってくると思うんです。スタンプ大将が、日本側委員の要請に応じ、アメリカ側委員は供与することに同意ということじゃないんですけれどもこの点どうですか。
  76. 津島壽一

    津島国務大臣 ちょっと発表案文を持っておりませんが、私の記憶ではスタンプ大将がこういうものを供与する用意があるということを言った。そこで他の委員はそれはけっこうなことだということを述べたというように発表の中にあったと思います。そこには私も入っておるわけでございます。それはけっこうだろう。しかしすべての場合に、あそこで協議されていることは政府間の交渉として話をきめるべきことは、正当のルートによって交渉して、あらためて政府の資格で話し合いをするという建前になっておる、こういうふうに私は議事のやり方承知しておるわけでございます。
  77. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私がなぜこれをしつこく聞くかというと、もうおわかりだろうと思うんですが、サイドワインダーの供与申請というものは日本からとられたものでなしに、アメリカの方から積極的にやる、こう言ってきたんじゃないかという疑問を持って前々から質問しているわけです。現にそういうことでないとすれば、この共同発表自体おかしんじゃないか。これは外務省情報文化局の発表したものを私は持ってきて言っているんです。この内容は明らかに「スタンプ大将は米国政府日本政府の要請に応じ、空対空誘導弾サイドワインダーを供与する旨を明らかにし、他の委員はこの誘導弾は自衛隊防衛力を強化するであろう。」と述べた。こういう発表になっているわけなんです。スタンプ大将の発言は、日本側委員の要請に応じ、でないんです。「日本政府の要請に応じ」なんですよ。そうすると私にはわからないんです。日本政府が要請しておきながら、向うがそれを承知したと言っておきながら、翌日は、今度は閣議に諮って、そうして正式の承認を求めなければならぬという関係が非常に不明確になると思うんですが、この点をお尋ねしているわけです。
  78. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは向う側から自発的というか、イニシアチブをとってこれを持たぬかという話は絶対にございません。しかしそのコミュニケといいますか、発表案文に、要求に応じてということは、われわれは正式に要求があった際は、エニタイムにこれを何とかする用意があるというふうに実は私は読んでおったんです。事実の問題としては先ほど申し上げましたように、先方からこういうものを持たぬか、装備をしたらどうかというような話の経過がその前にあったということはございません。むしろ私は内外の情勢に応じて、何とかあれを補強することができないか、それについては何とか装備の上の改善ということは私は話したことはございます。その後に委員会があったわけです。その案文としての英文なり日本文がどうであったかということの問題のようでございますが、これはどういう意味の言葉であるか、おそらくその発表案文は、もし日本政府が正式に要求があればいつでも用意がある、こういうふうに私は読んで差しつかえなかったように思っているのでございます。しかしいずれの場合においても、今仰せられたような、こちらが要求もしない——要求という意味は、正式の要求でなくても、下話も含んでの話でありますが、そういう事実は、私は自分がやったことでございますから、非公式に、何とかしなければならぬということで、装備の上の改善という問題はこれは当方から持ち出した話が、委員会においてこれが協議の事項になった。そこでいよいよ交渉は政府間の方でやる、それについては閣議も経て、正式のルートで交渉しよう、予算の関係もきめて、それでこの程度のものというような段取りにするというのでございます。
  79. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私も本会議質問の際そういうふうに言っているのです。これは日本政府の要請があればの間違いじゃありませんか、こう指摘している。この点については何ら明確な答弁が当時なされておらない。長官はその点に触れずに、今ここでお答えになったようなことを本会議でも言っておられる。これは安保委員会において協議し、しこうして実際の決定は政府においてなすべきものでございます、こうおっしゃっている。しかし、そういうことであるならば、私が質問の際言ったように、日本政府の要請があればという形で発表が行わるべきじゃないか。ところが実際には外務省発表の共同発表こよりますと、明らかに米国政府日本政府の要請に応じ、としかなっていない。これはほんの言葉のあやのように聞えるかもしれませんが、実際の安保委員会の性格という問題からいった場合に、見のがすことのできない表現の違いだと思うのですが、私はこれは外務大臣に来てもらわなければらちがあかぬのじゃないかと思うので、至急外務大臣を呼んでいただきたいと思います。  それで長官質問いたしますけれども、サイドワインダーの性能について非常に高く評価するような発言が閣議においてもなされております。また国会におきまする答弁の中でも述べられているようでございますが、この点、アメリカが今持っております誘導弾の中で、サイドワインダーは空対空ですが、そのほか、地対空でも、あるいは地対地でもけっこうですが、こういったアメリカが現に保持している誘導弾の中で、サイドワイダーというものは性能その他の面からどの程度の地位を占めているものなんですか。
  80. 津島壽一

    津島国務大臣 これは防衛局長からお答えした方がいいと思います。
  81. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 サイドワインダーは、御承知の通り空対空の誘導弾でございます。空対空の誘導弾といたしましては、いま一つ米国で使っておりますのはファルコンというのがございます。ファルコンはレーダー・フォーミングのものでございまして、このサイドワインダーは相手の熱線に吸着をして命中するという式のものでございます。これは操作はサイドワインダーの方が非常に簡単なんでございますが、今使っておりますファルコン及びサイドワインダーとも、精度においては大体同様であるというふうに私どもは承知しております。     〔山本(正)委員長代理退席、委員長着席〕 サイドワンダーはもともと米海軍において開発したものでございますが、最近に至りましては優秀な機能を認めまして、米空軍においてもこれを使用しているものでございます。
  82. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、アメリカの持っている誘導弾の中では非常にハイ・クラスのものだというふうに理解していいわけですか。
  83. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 空対空の誘導弾の中ではファルコンに比べまして操作が簡単であるにかかわらず、ほぼ同程度の効力を発揮し得るものであります。ファルコン以外にどういうふうな空対空の誘導弾があるかということにつきましてはいろいろ資料を集めておりますけれども、正確に申し上げるところまで結論は得ておりません。大体において私は優秀なものであると申して間違いないと思います。
  84. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 研究開発のためだけではなしに、実戦用としてこのサイドワインダー以外の誘導兵器を供与してもらうというような考えを持っておりますか。
  85. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 誘導弾につきましては、一昨年、御承知であろうと思いますが、七種のものを研究開発用として防衛庁から要求している事実がございます。それはナイキ、オネスト・ジョン、テリヤ、ファルコン、スパロー、タロス、ボマーク、このほかには米政府に要求した事実はございません。
  86. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 このサイドワインダー受け入れのときの情勢から見ても、日本政府が要請したと言うけれども、私はまだその点懸念を持っている。このサイドワインダーのときと同じように、向うからまた、こういうものはどうだと言ってこないとも限らないのですが、研究開発用ではなしに、直ちに装備する、いわば実戦用として、向うがこのサイドワインダー以外の何らかの——これは空対空に限らず、誘導弾兵器を、どうだ上げようと言ってきたときに、喜んでまたもらい受けるつもりかどうかということです。
  87. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。今のところはそういうことを考えておりませんし、またそういうことについて何ら米軍側から、私の方へ申し出たこともございません。この問題はわが国防衛装備の刷新ということで、独自に自分の判断によってきめるべき問題であろう、こう思っております。
  88. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 どうもはっきりしないのですが、ほしいのですか、ほしくないのですか。今の自衛隊はくれればもらいたいという気持があるのですか、ないのですか。
  89. 津島壽一

    津島国務大臣 これは財政事情その他全部のものと見合う問題でございまして、核装備しないような、そういったものが安価に得られて、それが装備の強化になるということであれば、これは必ずしも悪くないと思うし、また防衛力増強になると思います。でありますから、絶対にいやだということは私は申しません。しかしこれは財政状況その他と見合ってやらなければならない。サイドワインダーは一番安価なものでございます。これでも全体の飛行機装備するためには訓練その他からいって相当の経費が要るわけでございます。そういった点も考慮して、われわれは自主的に考えるべき問題だ、こう考える次第であります。
  90. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私が先ほど、この整備計画によれば各種新式兵器については、自衛のため必要な限度において当面研究開発の面に力を注ぐというと、ころにウエートがあると思って、研究開発という点に力を入れておったのが、いつの間にか直ちに装備する方に変ったのではないかと言えば、いや、そのあとの方に重要装備について逐次改善をはかると書いてある、こうおっしゃる。どちらにウエートがあるかわからない。研究開発に当面力を注ぐというのは、それなりにわかるのですが、できればすぐ装備改善という形でやりたいという意思があるように承わったわけです。そうなってくると、勢い研究開発というまだるっこいことをやっているよりも、向うがくれると言いさえすれば直ちにほしいという考え方になってくると思うのですが、空対空は幸いにサイドワインダーをもらった、あるいは地対空も地対地もほしいというような考えが出てきて少しもおかしくはないと思うのですが、そういう点は別に考えておらぬというのは少し筋が通らぬように思うのですが、どうですか。
  91. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほど一応お答えしたと思いますが、この目標をきめますに当り、一種の準則的なものが決定になっております。お示しの各種新兵器については、当面研究開発に重点を置くとともに——重点というか、力を注ぐとともに、ということでございます。その項目以外に、特に科学技術の進歩に即応して、新式兵器の研究開発の促進と並び装備の刷新をはかるということもともにあるわけでございます。でありまするから、研究開発に非常に力を注がなければならぬし、また同時に、新式武器の研究開発とともに装備の刷新をはかるということが書いてございます。でありまするから、どちらが重点だということを申し上げると、これはいずれも重大なる目標達成上の一つの準則と申しますか、そういった方針になっているわけであります。前段の部分だけで当面何とか注ぐというよりも、もっと強く書かれておるわけであります。私どもは先ほど申しましたように、国防の基礎的な地盤を張っていくためには、どうしても自国で研究開発して、そういったものが必要ならば、作るだけの科学技術の進歩というものの背景なくしては、防衛力というものは弱いもんでございます。従って単純に、今できた装備がいいからといって、そればかりをたよりにして、そうしてわが海上、陸上、また空に至るまで、そういう外国製のものだけにしてやるということは、これは補給に困るわけであります。その意味において、刷新も同時に必要、また同時に研究開発して、基礎的な力をここに持っていくことによって、初めて私は完全なる防衛力というものが起る。ただこれは非常に大きな金が要るわけであります。目標は非常に重要なことである。しかしそれは逐次実行せざるを得ない今日の財政事情であると思うのです。そこらを十分勘案して、緩急よろしきを得ていくということが防衛当局としては必要であろう、私はこういう考え方をいたしております。
  92. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこで、従来の整備目標というものは、どちらかというと、まだ質の強化というものに全面的に力を入れる段階ではない。たとえば陸上自衛隊をさしあたって十八万という数をそろえるというところに重点があったと思う。だからこういった新式兵器については、研究開発にウエートがかかっておったと思う。そう了解しているんです。今長官がおっしゃったように、金がかかるんだからどっちもできない。とにかく今の段階は地上兵力を十八万にするという、とにかく量をふやしていくというところに重点があって、そうしてこの新式兵器というようなものについては、研究開発に力を注いでいく。できれば直ちに装備に回すということも考えているけれども、あくまでもウエートは研究開発にあると思う。誘導弾については、いわゆる研究開発のための七種の誘導弾の供与を申請してるじゃないか。ところが今情勢が変ってきた。だからこの十八万人というような、量をふやすことをしばらくストップしてでも、直ちに新式兵器装備する、こちらの方に重点を置く、こういう考え方に移るんじゃなかろうか、移ってしかるべきだという意見が与党の皆さんから盛んに出ておった。私が先ほど量か質かと言ったのは、この問題です。国際情勢軍事情勢が急激に変化を示してきておる。こういうときになお十八万人にウエートを置いて、金がかかるからというので新式兵器については、これはやはり研究開発よりも一つ下にウエートを置いていくのか、それとも数を必要以上にふやすということを押えて、それによって浮く金を近代兵器装備の方に回すのか、こういう問題が出てくるのは当然だと思いますが、この点いかがですか。
  93. 津島壽一

    津島国務大臣 この問題は二者択一の問題ではないと思います。必要なる量も確保する、しかも現在の状況に応じて装備の刷新ということもやるんだということは、国防基本方針、整備目標に書かれたことでございます。しかして重点をどちらに置くかという問題は、これは個々の場合について考えるべきものがあると思います。今の航空機のごときは、その性能の関係上、研究開発を待って装備するということでは、訓練にも間に合わないわけでございます。従ってこういうものは、装備の刷新ということが研究開発より先に、早く重点を置くべきものであるというふうに考えます。なおまた一万人の増勢につきましては、従来も頭数をそろえ、量ということに着眼してやっておりません。すなわちこの一万人のうち大体四割四、五分は、機械化部隊を編成しよう、通信であるとか、ヘリコプターとか、その他機械化部隊をもってやりますので、この一混成団の設置とともに、いわゆる質的には非常に変ったものになっているわけです。そういった改善は、これは頭数の問題というだけでなくて、装備改善という質的の強化という方針がこの部面に現われておるわけでございます。もとよりそういった装備改善が急速に行われる可能性があれば、あるいは諸外国において、核兵器装備されたる国においては、旧来の兵器による陸兵というものの圧縮をはかるというところもございます。しかしまだ日本はそこの段階にいっておらぬわけであります。従ってものによって重点の置き方が違う場合があり得るわけで、一般的に申しまして、もう研究開発はよろしい、これからすべて装備にいくのだというような割り切った転換というものはできない、いわゆるバランスのとれた防衛力というものを育成していこう、こういうところでありまして、ものによっては刷新を早くやる、またものによってはゆっくりとやるというようなこともあり得ると思うのでございまして、もちろん全体の傾向といたしまして、今日の情勢においてはいわゆる質的強化と申しますか、そういった装備改善ということが大きく、特に近代科学の進歩に応じてそれにおくれないようにしていくような研究、また装備改善といった問題に取り組むということは当然なことであろうと思うのでございます。
  94. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 自衛隊員一万人の増員を切り離して考えてみても、従来の部隊とは装備の面で違うのだ、質的に強化されているというお話でございますが、しからば従来の部隊装備と今度計画されようとしておりますこの新たな部隊装備とどのように違うのか、具体的に一つお示しを願いたいと思います。
  95. 津島壽一

    津島国務大臣 装備においても、今試験実験をいたしております装甲車の関係、それのみならず、ただ単純な装備よりも、編成自体に機械科部隊とかあるいは通信部隊とかヘリコプター隊とか、そういったような隊自体が全体の編成において非常に重くなるような増勢を今度ははかっておるわけであります。なおまた開発研究については陸海空ともに、その必要とする武器等につきまして技術研究所にその予算をさいて研究開発を促進させる。従ってこれらの経費も十数億に及んでおるわけでございます。そういった意味において、ここは相当の現在の情勢に即応したような措置を講じつつこの増勢をはかっていきたい、こういう段階に今日あるわけでございます。
  96. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 防衛局長からでもいいのです。前の委員会においても長官は再三おっしゃっておるわけなのです。今度の一万名の増員は単なる量の増加じゃないのだ、質的にも非常に変革を示しておるのだというお話でございますから、在来の部隊と今度の部隊装備の面ではこう違うのだ、火力の面ではこう違うのだというようなことを具体的に一つお示し願いたいわけです。
  97. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 先ほどから長官が御説明になっておりますところの今回の一万名増員の内訳を申し上げますると、第十混成団関係の増員が約四千名、その次が空艇団の増員が約八百名、ヘリコプター隊の増員が約二百名、機械化実験隊の増員が約百七十員、それから地区施設隊、これの増員が約六百三十名、その他の施設部隊の増員が約五百名、通信部隊の増員が約四百五十名、教育関係部隊の増員が約一千四百名、特科部隊の増員が約六百名、後方部隊等の増員が千二百五十名となっておるのでございまして、一万名の内訳を申し上げますると、技術関係部隊が四四・五%、このうち施設部隊の増員が一八・六%、通信部隊が七・八筋、その他が一八・一%、一般部隊が五〇・五%、行政管理部隊が五・〇%こういうことでありまして、装備自体が変るということではなしに、部隊として技術的な部隊が今までよりか多いというふうに御了解願いたいと思います。
  98. 福永健司

    福永委員長 ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止〕
  99. 福永健司

    福永委員長 速記を始めて下さい。  暫時休憩いたします。     午後三時二十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕