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1958-03-12 第28回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(水曜日)     午前十時五十三分開議   出席委員    委員長 福永 健司君    理事 相川 勝六君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 石橋 政嗣君 理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    小金 義照君       纐纈 彌三君    辻  政信君       永山 忠則君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    岡  良一君       木原津與志君    中村 高一君       西村 力弥君    山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         農林政務次官  瀬戸山三男君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房総務課         長)      水間 光次君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局企画課         長)      岡  雅一君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十二日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十一日  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三〇号) 同日  建国記念日制定に関する請願外八十五件(纐纈  彌三君紹介)(第一六九三号)  恩給法等の一部を改正する法律案中一部修正に  関する請願安藤覺紹介)(第一六九五号)  同(臼井莊一君紹介)(第一六九五号)  同(大平正芳紹介)(第一六九六号)  同(小川半次紹介)(第一六九七号)  同(加藤常太郎紹介)(第一六九八号)  同(木崎茂男紹介)(第一六九九号)  同(草野一郎平紹介)(第一七〇〇号)  同(五島虎雄紹介)(第一七〇一号)  同(小坂善太郎紹介)(第一七〇二号)  同(小島徹三紹介)(第一七〇三号)  同(小金義照紹介)(第一七〇四号)  同(薩摩雄次紹介)(第一七〇五号)  同(高瀬傳紹介)(第一七〇六号)  同(高橋等紹介)(第一七〇七号)  同(藤本捨助君紹介)(第一七〇八号)  同(保科善四郎紹介)(第一七〇九号)  同(粟山博紹介)(第一七一〇号)  同(吉川兼光紹介)(第一七一一号)  同(遠藤三郎紹介)(第一八二九号)  同(河本敏夫紹介)(第一八三〇号)  同(佐竹新市紹介)(第一八三一号)  同(渡海元三郎紹介)(第一八三二号)  同(中曽根康弘紹介)(第一八三三号)  同(山本正一紹介)(第一八三四号)  同(山本粂吉紹介)(第一八三五号)  農林省定員外職員全員定員化に関する請願(  井谷正吉紹介)(第一七一二号)  同(池田清志紹介)(第一七一三号)  同(大坪保雄紹介)(第一七一四号)  同(大石武一紹介)(第一七一五号)  同(大橋武夫紹介)(第一七一六号)  同(加藤常太郎紹介)(第一七一七号)  同(菊地養輔君紹介)(第一七一八号)  同(小島徹三紹介)(第一七一九号)  同(伊東岩男君外一名紹介)(第一七二〇号)  同(床次徳二紹介)(第一七二一号)  同(丹羽兵助紹介)(第一七二二号)  同(吉川兼光紹介)(第一七二三号)  同(川崎五郎紹介)(第一八二四号)  同(木原津與志君紹介)(第一八二五号)  同(長谷川四郎君外二名紹介)(第一八二六  号)  同(保利茂紹介)(第一八二七号)  同(前田正男紹介)(第一八二八号)  建設省高知工事事務所臨時職員身分保障に関  する請願井谷正吉紹介)(第一七二四号)  建設省定員外職員身分保障等に関する請願(  井谷正吉紹介)(第一七二五号)  同(池田清志紹介)(第一七二六号)  建設省北上川下流工事事務所臨時職員身分保  障に関する請願(佐々木更三君紹介)(第一七  二七号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する請願(青  木正紹介)(第一七二八号)  同(高瀬傳紹介)(第一七二九号)  同(中曽根康弘紹介)(第一八二二号)  建設省地理調査所臨時職員身分保障に関する  請願池田清志紹介)(第一八一九号)  国土の日制定に関する請願川崎五郎君紹  介)(第一八二〇号)  元満鉄社員恩給法等適用に関する請願(瀬戸  山三男紹介)(第一八二一号)  建設省岩手工事事務所臨時職員身分保障に関  する請願西村力弥紹介)(第一八二三号)  靖国神社の国家管掌等に関する請願高瀬傳君  紹介)(第一八〇四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三〇号)  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五二号)  科学技術会議設置法案内閣提出第七七号)      ————◇—————
  2. 保科善四郎

    保科委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が不在でありますので、私が委員長指名により委員長の職務を行います。  農林省設置法の一部を改正する法律案議題とし、政府提案理由説明を求めます。瀬戸山政務次官。     —————————————     —————————————
  3. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ただいま上程されました農林省設置法の一部を改正する法律案提案理由を、改正事項内容とあわせて御説明いたします。  第一に、食糧庁経理部を設けることであります。御承知の通り食糧管理特別会計合理化をはかるため、政府といたしましては、今国会食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案を提出し、新たに六勘定を設けて経理明確化をはかり、この会計合理化に資するようにいたしたいと考えて、目下御審議をお願いしている次第でありますが、このような措置に対応して、多岐にわたる経理関係事務を統括整理し、食糧管理業務経理の実態を的確に把握し、その処理に遺憾なからしめるための機構として、食糧庁経理部を新設しようとするよものであります。なおこの改正によって機構人員が膨張することは極力避けることとし、現在総務部に属している主計、経理、監査の三課をそのまま経理部に属させるとともに、その人員の配置も、現在の定員のワク内で措置したいと考えております。  次に、輸出品検査所に、農林省所掌事務にかかる指定貨物についての指定検査機関が行う検査指導監督事務を加えることでありますが、去る第二十六国会におきまして輸出品検査法制定され、本年二月一日より施行になり、これに伴って冷凍水産物、合板、食料カン詰及びびん詰等輸出品検査を、新法に基く民間の指定検査機関に行わせることとなったのでありまして、この機会に検査の実務に通熟している職員を配置した輸出品検査所指定検査機関の行う検査指導監督を行わせて、その適正な実施をはかろうとするものであります。  第三の改正点は、現在全国十五個所に置かれております種畜牧場家畜家禽等飼養管理及び改良増殖並び草地改良に関する調査研究を行う事務を加えることを内容としております。最近の急激な畜産発展に伴い、家畜家禽等飼養管理の改善、草地改良等の面におきましては、現在の試験研究機関が行なっております基礎的な試験研究拡充強化と相待って、現実に解決を迫られている問題についてのいわば実用化試験の面をも推進することが必要と考えられますので、このため、多数の家畜を飼養し、用地、設備、技術者のそろっている、種畜牧場を活用することが、畜産発展に寄与するところきわめて大なるものがあると考えてこの改正をいたしたいのであります。  これらの改正にあわせて若干の規定の整備を行なっておりますが、以上がこの法律案の主要な内容及び改正理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 保科善四郎

    保科委員長代理 本案に対する質疑は、次会以後に譲ります。     —————————————
  5. 保科善四郎

    保科委員長代理 次に、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案及び科学技術会議設置法案議題とし、質疑を続行いたします。岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 このたび、科学技術会議が設置されることに御提案の運びとなりました。正力国務大臣は、科学技術振興のための施策を推進するために、内閣に相当権威ある中枢の機関を設けるべきであるということが、かねての御持論であり、われわれもそれにはあげて賛成をいたしておったわけであります。ところが、ただいま御提案科学技術会議というものは、当初の正力国務大臣の御構想からみると、かなり後退をしておるのではないかという感が深くいたしますので、この点から若干お尋ねをいたしたいと思うのです。  そこで、まず機構の点でお伺いをいたしたいのでありますが、この科学技術会議は、総理府付属機関として設けられることに相なっております。そこで、総理府付属機関として設けられているものの中にはたくさんな機関がありまするが、その中でも、この科学技術会議総理府に付置される地位が一体どこにあるのか。恩給審査会等々たくさんありますが、これは総理府本府の付属機関の中で、大体どのレベルに属するものであるのか、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  7. 正力松太郎

    正力国務大臣 科学技術会議について、後退したじゃないかという御質問がありましたが、それについて、これは法律規定上できないのでありまして、それで形においては幾らか後退したようになっておりますが、実質的においては、私は後退していないと思っております。たとえて言うならば、総理大臣諮問に応じて初めてやるような形になっております。ところが、そういうことにしなければ法制工合が悪いのでして、実質においては技術会議は常に研究しておるのでありまして、しかも常設研究しておるのであります。総理大臣諮問があって初めて応ずるということになっておるが、こちらの研究は絶えずやっておるのでありまして、実際においては変らぬのであります。それからなお科学技術会議内閣に置くということに法制上しないと、工合が悪いのだそうです。私も法制上あまり詳しくないのですが、そこで内閣外郭機関にした、こういうわけなのであります。実質においては、総理大臣諮問のない場合やらぬようになっておるが、事実は絶えず研究しておる。総合政策には必ずこれが関係しておる。それと、同じく内閣に置くと、総理大臣は一人の国務大臣のような地位になっておりますが、事実はやはり総理大臣としてかかわるのであります。それからなおさきのお尋ねの、内閣にいろいろな機関があるのと同じものじゃないかというようなお話でありますが、これは内閣のほかの機関と違っておりますのは、各省大臣がかかる会議に出られません。これは文部大臣大蔵大臣企画庁長官、それに科学技術庁長官、この四大臣委員になっております。それからなおほかの会議には常設委員が少いのでありますが、これは学識経験がある者の中から二名が常設になっております。こういう点などもほかのものと違っておるのであります。
  8. 岡良一

    岡委員 それでは端的にお尋ねをいたしますと、この総理府本府に付置されている機関といたしまして、原子力委員会売春対策審議会奄美群島復興審議会等々があるわけです。そこでおそまきがなら科学技術会議も、この売春対策審議会あとにこのリストに上せられる、こういう地位を占めるわけですか。
  9. 正力松太郎

    正力国務大臣 売春対策とは地位が多少違うのは、これには常設委員がおります。売春対策には常設委員がないと思います。学識経験ある四名のうちから二名は常設にして、常時研究をしておるという点であります。
  10. 岡良一

    岡委員 事務次官、この科学技術会議はどこへくるのですか。
  11. 篠原登

    篠原説明員 ただいま正力国務大臣が御説明申し上げました点につきまして補足説明申し上げますと、最初科学技術会議内閣機関として置く構想でございましたところが、内閣に置きまする機関といたしましては、国防会議憲法調査会等がございますが、これはすべて一般行政機関に分掌させることが適当でない、内閣みずからの事務ばかりでございます。これに反しまして、科学技術に関する科学行政は、現制度下におきましては各省にすでに分掌されておりまして、問題となりますのは、この分掌されておる科学技術の全般につきまして総理総合調整権を発揮して、そして科学技術の強力なる推進をいたそうということでございますので、おのずから内閣に置かれます機関と別個の関係がございますので、法制上の立場から総理府付属機関としたわけでございます。  なおどこに置かれるかと申しますと、従来の習慣上、いろいろな審議会とか、あるいは会議とかございますと、新しくできましたものは、順序といたしましては、既存の機関の次に参ります、しかしながら、その内容等につきましては、本会議は非常に重要でございますので、先ほど大臣から御説明がありましたように、総理議長とし、関係国務大臣、あるいは常時この問題を考えております常勤の学識経験者というものが加わっておりまして、なお第二条にもあります通り、「当該事項について会議諮問しなければならない。」という、内閣総理大臣が常に諮問の義務を負っているという点が、相当従来のものと変っているんじゃないかと思います。
  12. 岡良一

    岡委員 会議運営はよくわかるのですが、ただその格付は、そうしますと、売春対策審議会国土開発縦貫自動車道建設審議会あとに今度新しく科学技術会議が入るわけですか。
  13. 篠原登

    篠原説明員 その格付と申しますと、よくわからないのでございますけれども、順序は、従来既設の機関の次につくわけでございますが、順序を追いまして最初が大事で、あとは大事でないということはちょっと言えないと思いますが、格付順序とはおのずから違っていると思います。
  14. 岡良一

    岡委員 そういたしますと、科学技術会議議長というのは内閣総理大臣をともって充てる。この内閣総理大臣は、もちろん内閣首班としての内閣総理大臣でしょうね。
  15. 篠原登

    篠原説明員 これは総理府の長たる内閣総理大臣でございます。と申しますのは、総理府の長たる内閣総理大臣は、各省各庁にまたがりますすべての施策あるいは事務を調整する権限を持っておりますので、その立場におきましてこの会議運営していくということになります。
  16. 岡良一

    岡委員 そうすると、この運営は、総理府の長である内閣総理大臣がこの会議を主宰する、そうしてこの会議諮問に応じて決定した意向については、政府首班である内閣総理大臣がこれを尊重しなければならない、こういう運営になるわけですか。
  17. 篠原登

    篠原説明員 尊重立場にあります内閣総理大臣も、また総理府の長であります。しかしながら、これはただ——ただと言っては語弊がありますが、諮問に応じまして答申しまして、総理府の長たる内閣総理大臣がこれを尊重し、最後決定は、やはり閣議という段階におきまして最高決定をしていくものと存じます。
  18. 岡良一

    岡委員 第三条の、尊重しなければならないと義務づけているものは、政府首班である内閣総理大臣ではなく、会議議長であり、かつまた総理府の長である内閣総理大臣であるといたしますと、この会議決定について尊重するのは、この会議議長をしている内閣の長である内閣総理大臣がやる、この運営上非常におかしげなことになるんじゃないですか。
  19. 正力松太郎

    正力国務大臣 それはやはり内閣総理大臣として尊重しなければならぬということであります。総理府の長でもあります。
  20. 岡良一

    岡委員 それでは第三条の内閣総理大臣は、答申があったときは、これを尊重しなければならない。これは内閣首班としての内閣総理大臣である。しこうして科学技術会議議長は、総理府主管者としての内閣総理大臣である。内閣総理大臣が二重にいわば使いわけられて運用される、こういうことですか。
  21. 水間光次

    水間説明員 この科学技術会議を当初内閣に置くという構想もございましたけれども、現在の内閣制度とのかね合いで、内閣に置くことなしに総理府に置いたわけであります。この点については原子力委員会も同様な姿になったわけでございますが、原子力委員会も同様に内閣総理大臣は、原子力委員会決定その他を尊重しなければならないという規定がございます。あの際の内閣総理大臣の読み方も、総理府に置きました関係上、尊重する立場にある内閣総理大臣総理府長官としての内閣総理大臣諮問する立場総理大臣総理府長官としての総理大臣という解釈をとっております。従って今御質問になりました第三条の内閣総理大臣も、総理府長官としての内閣総理大臣尊重するという建前をとっております。
  22. 岡良一

    岡委員 そうすると正力国務大臣の御構想と違ってくるんじゃないですか。
  23. 水間光次

    水間説明員 その点は長官説明申し上げたかと思いますが、もともとこの会議内閣それ自体に置くという構想であったようでございますけれども、その構想が後退したと申しますか、後退したわけではございませんけれども、内閣に置くことなしに総理府に置くというふうに形を変えたわけでございます。というのは、科学技術というような行政事務は、国防会議がやっている姿、あるいは憲法調査会がやっているようなものは各省に分属せずに、各省がこれをやらないで内閣それ自体がやるのが適当であるという理論からいたしまして内閣それ自体に置いたわけでございます。それに関しまして科学技術行政各省にそれぞれ関係しているという問題がございますので、それを総合調整する立場に立っておる。従ってその総合調整する立場に立つ内閣総理大臣は、総理府長官としての内閣総理大臣総理府設置法上そういう任務を持っておりますので、そういう任務に含ませて第二条のような書き方をいたしまして、総合調整立場から総理府長官としての内閣総理大臣科学技術会議を主宰する。従いましてその内閣総理大臣立場でこれを尊重する。従ってその際にはキャビネットの、内閣の長としての総理大臣でなくて、総理府の長としての総理大臣総理府設置法規定によりまして、各行政機関施策総合調整任ずるという任務は、総理府長官としてもあるわけでございます。それを受けまして、総理府長官である総理大臣尊重するという立場をとっております。それで法制上の建前から内閣に置かないで総理府に置いたわけでございますけれども、実際の運用としては総理府長官としての総理大臣もそういう任務を持っておりますので、そういう任務に従ってこれを運用して参るならば、内閣に置いた場合とそうへだたりのない実効をおさめられるんじゃないかと思っております。
  24. 岡良一

    岡委員 そうすると、もう一度正力国務大臣お尋ねいたします。どうも私ははっきりわかりませんが、まだ納得いきかねるのですが、要するに科学技術会議を主宰する議長である内閣総理大臣は、総理府の長である内閣総理大臣である。しこうしてこの科学技術会議のなす答申尊重しなければならないものも総理府の長としての内閣総理大臣であって、内閣首班者としての内閣総理大臣ではない、こういう立場において運営されるのですか。
  25. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど私が説明したことと変らぬと思います。法律上はそういうふうにしなくてはならぬが、事実上はちっともわれわれの主張と反しておらぬわけでありまして、原子力委員会がきめたことを内閣総理大臣尊重する。それと同じくこれも内閣総理大臣尊重する。議長としては総理府の長である総理大臣であるが、尊重するのは内閣総理大臣として尊重するわけであります。だから、法律上からそうしなければいかぬのでそうなったわけで、事実上においては変らぬという意味なのであります。
  26. 岡良一

    岡委員 原子力委員会が最近、よろめいている、よろめいているという声を聞くのですが、問題はここにあるわけなのです。そこでこの点はやはりはっきりしておいてもらわなければならぬ。この第三条の内閣総理大臣は、答申尊重しなければならない、尊重しなければならない内閣総理大臣は、閣議主宰者としての内閣総理大臣ではなく、他の国務大臣と同列の総理府の長としての内閣総理大臣であるということでは、この答申尊重のされ方が違うじゃありませんか。そこのところなんです。
  27. 正力松太郎

    正力国務大臣 尊重するのは内閣総理大臣としての尊重であります。総理府の長じゃありません。そこでこれが原子力委員会と違うのは、原子力委員会内閣総理大臣尊重しなければならぬということになっておるにかかわらず、事実上はなかなかそうはいっていない。そこで私はここにこういう構想をもってきた。何となれば、政策決定権内閣にあります。内閣決定するのであるから、総理大臣尊重しただけではいけないのです。それで今度大蔵大臣も入れ、それから企画庁長官も入れ、さらに文部大臣も入れたということであります。原子力委員会のよろめきと言われては、はなはだ遺憾ながら、よろめいておるのは、つまり幾ら総理尊重するとしても、各省の間がうまくいかないのです。そのよろめきを直すめたに今度こういうものを作ったわけであります。
  28. 岡良一

    岡委員 そうすると、さっきの大臣以外の方の解釈と違うわけですね。第三条における答申尊重しなければならないのは総理府の長である内閣総理大臣である、そう私はお聞きしたのですが。
  29. 篠原登

    篠原説明員 どうも、法制的に申し上げますと、科学技術会議の主たる根拠は、総理府の長たる内閣総理大臣各省庁の施策並びに事務総合調整し得る権限を持っております。その立場において内閣総理大臣がこれを実施されるわけでございます。結局この第三条の内閣総理大臣は、法制上の解釈はやはり総理府の長ということになると思います。しかしながらここで内閣総理大臣が、内閣の長たる総理大臣総理府の長たる総理大臣と同じ人物でございますので、先ほど大臣がおっしゃった通り、結果におきましてはあまり相違がない。しかも最後決定閣議において内閣の長たる総理大臣決定するわけでございますので、建前上はそうでございますが、実質上は大臣のおっしゃった通り変りないと存じます。
  30. 岡良一

    岡委員 私は運営上の問題を聞いているのではないのです。機構上の問題として解釈を一定しておきたいと思うのです。それからその後の運営が出発しなければならぬと思うのです。今次官がおっしゃったのによれば、第三条の内閣総理大臣は、内閣首班であり閣議を主宰する内閣総理大臣でなく、総理府のと長である内閣総理大臣、こう言っておられるのですが、正力国務大臣はそれで納得がいくのですか。
  31. 正力松太郎

    正力国務大臣 この尊重しなければならぬというのは、総理府の長である内閣総理大臣として尊重しなくちゃならぬことだと私は思っております。しかし尊重しなくちゃならぬのであるけれども、尊重するだけのものであるから、今まで原子力委員会はうまくいっていないので、あの原子力委員会の失敗を繰り返したくないというのがこの科学技術会議を作ったゆえんであります。しかし何としても、決定するときは閣議決定しなければなりませんから、それで閣議に関する人もここに入れて、事実上これできめたことはそれでいくと思っております。
  32. 岡良一

    岡委員 どうもはっきりしませんが、そこで運営立場から見て、内閣総理大臣総理府の長である内閣総理大臣、第三条のこれがこの会議決定された答申尊重しなければならぬ。そこでその答申に基く法制的、予算的措置というものは、総理府の長である内閣総理大臣閣議にはかる、そして内閣主宰者である内閣総理大臣はこれに対しては何ら拘束を受けないという立場にあるわけですか、そういうことになるのですか。
  33. 正力松太郎

    正力国務大臣 総理府において、総理府の長たる内閣総理大臣がこれを主宰しますから尊重はします。尊重はしますけれども、この政策最後決定閣議でありますから、閣議によってどうなるかわからぬということになってはくるのです。要するにこれは単なる諮問機関でありますので、そういうことになるより仕方がないと思います。だから私の最初の主張から見ると、法律的には多少後退したような気分がありますけれども、事実上においては後退していないと思っておるわけであります。
  34. 岡良一

    岡委員 そこが僕は大後退だと思うのです。  それではこの第十条に会議議員の職分について書いてあります。この第一号の「政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をすること。」というのはどういう意味ですか。政治団体の役員であっても、地方の役員もあるし、中央の役員もある。
  35. 正力松太郎

    正力国務大臣 これはこの間も問題になりましたが、役員というのは大きな役員のことでありまして、地方の小さいものは事実上この中に入っておりません。
  36. 岡良一

    岡委員 それでは内閣総理大臣は、また同時に政党の総裁であるわけですね。これは最も重要な役員であるわけですね。この議員の資格に対して欠格的な条件になるのではないでしょうか。
  37. 篠原登

    篠原説明員 これは第六条第一項の第五号でございますが、これは「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」とございますが、この四人に対する欠格条項でございます。
  38. 岡良一

    岡委員 わかりました。ところでこれは正力国務大臣、政党その他の政治的団体の役員というものは、二大政党対立で特に科学技術ということは超党的に進めなければならぬものでしょう。特に政党を排除するというような条項はこの会議の性格から見て不適当だと思うのですが、何がゆえにこういうものが必要なんでしょうか。
  39. 篠原登

    篠原説明員 これは法制局審議の段階におきまして、前例によりまして、こういう条項を入れるということに相なったわけでございまして、これは単にこの会議議員のみならず、特殊法人の役員その他に全般的な問題でございます。全般的に御審議いただきますれば幸いと思います。
  40. 岡良一

    岡委員 特殊法人と、そしてこの設置されようとする科学技術会議というものを全く同列に見て、特殊法人では政党の役員を排除する規定があるから、これも排除しなければならないという、そういう画一的な見解は妥当じゃないでしょう。これはぜひ一ぺん委員長から法制局の担当者にきてもらって十分説明を聞きたいと思います。さもなければ私の意向を率直に申し上げれは、こういうものは修正すべきだと思います。いずれにいたしましても、先ほど来正力国務大臣は、とにかく現在日本の各省庁にそれぞれ科学技術関係の担当部門があり、試験研究機関があり、実施部門がある、これを総合調整するということが重要な仕事である。そこで設置法にも総理府の長たる内閣総理大臣には総合調整の任が与えられているから、この総理府の長である内閣総理大臣が、そのいわば示された権限に基いて総合調整していく、こういうようなことを期待しておられるわけですね。そこで私が先ほどあげましたように、実に総理府にもたくさんの審議会委員会が、できており、それぞれの機能はあるでしょう。しかしながらただ審議会ばかり作るというようなことは、屋上屋を架して実際上の仕事ができるかできないかということに私は非常に疑問を持つわけであります。そういう意味から、科学技術会議がそのときの政府の重要な科学技術の基本的なコースをきめ、それを具体的に法制化し予算化していくという実施機関として、当然科学技術省というようなものを作って、これが実施機関となっていくという、そういう構想をお持ちじゃないでしょうか。
  41. 正力松太郎

    正力国務大臣 今度の科学技術会議を作ったのも、各省のセクショナリズムをやめたいというのが趣旨であります。もちろん科学技術省を作るためにこれを考えたわけであります。
  42. 岡良一

    岡委員 それから、これも昨日前田委員からお尋ねになった点でありますが、原子力委員会との関連性は運営上どうなさるおつもりですか。
  43. 正力松太郎

    正力国務大臣 原子力委員会との関係は、昨日も申し上げました通りに、原子力プロパー、原子力の平和利用と表になっているものだけを原子力委員会できめる。そしてほかの部門、原子力以外のものもみな多少関係がありますから、原子力プロパーというてもなかなか範囲がむずかしいところがありますが、とにかく原子力以外、つまり電子に関係があるというような問題につきましては、この科学技術会議できめるということになっております。しかしてその連絡には、幸い私が原子力委員長であり、科学技術庁長官であるから、その調節の任務はとれるものと考えておるのであります。
  44. 岡良一

    岡委員 正力国務大臣のように、科学技術にも原子力にもきわめて豊かな識見を持っておられる方が兼ねておられればそれはいいかもしれませんよ。しかしとにかく原子力委員会委員長国務大臣である科学技術庁長官をもって充てるというので、たまたま科学技術庁長官に当った者が原子力委員長にもなったけれども、これが科学技術についてあまり認識がないとなかなかうまくかね合いができないと考えます。たとえば具体的な例を申しますと、核融合反応というような問題はこれは非常に重大な問題であり、おそらく二十年もすれば、核融合反応の平和利用の時代が来るでしょう。日本でもごく初歩的な実験では成功しておる。こういう問題は、核融合反応であるから原子力委員会の担当のものである。同時にやはり全体的な科学技術の推進のための重要な科学技術会議の問題でなければならぬ。核融合正反応という具体的な問題は、原子力委員会科学技術会議とどちらがさばいていくのですか。
  45. 正力松太郎

    正力国務大臣 核融合反応のような問題は、もちろん原子力委員会会でやらせます。その上で科学技術会議の方にかけるつもりでおります。
  46. 岡良一

    岡委員 そうすると、原子力委員会設置法を見ると、原子力委員会決定は、内閣総理大臣がこれを尊重しなければならない。ところがここでは総理府の長である内閣総理大臣が、今度は「関係行政機関施策総合調整を行う必要があると認めたときは、」云々ということで、会議諮問しなければならぬ。そこで原子力委員会から核融合反応についての具体的な、いわば施策決定されて、これが内閣総理大臣に勧告される、内閣総理大臣はこの科学技術会議に今度は諮問する、科学技術会議からノーという答えが出るという可能性はあるわけですね。
  47. 正力松太郎

    正力国務大臣 今このような問題については、やはり科学技術会議でも、原子力委員会の点を尊重していかなければならぬつもりでおります。
  48. 岡良一

    岡委員 この科学技術の振興ということがキャッチ・フレーズのように、総理大臣の施政方針演説でも、大蔵大臣の財政演説でもうたわれている。正力国務大臣は特に熱心に科学技術の振興を唱えられておられる。そうして今や科学技術会議というものが設置される。しかし私は先ほど来お尋ねをいたしましても、どうもこの科学技術会議運営が、ほんとうに権威づけられていくのかどうかという点に一まつの疑義を持つのです。そこで、それでは一体科学技術会議ができたが、まず何から取りかかるかということです。ここではなるほど抽象的な方針は書いてありますが、正力国務大臣はやはり当然科学技術庁の長官として、この会議の最も有力な発言者である。あなたは、一体この科学技術会議ができ上ったら、まず何を取り上げなければならぬと思いますか。
  49. 正力松太郎

    正力国務大臣 これはまた抽象的とと言われるかもしれませんが、科学技術に関する基本的総合政策決定せしめるということを第一に考えております。
  50. 岡良一

    岡委員 それは投網でかぶせたような非常に抽象的な表現なので、こういう抽象的な表現の中で網一をしぼって、具体的にまず何をつかまえなければならぬかということですが、あなたの御構想を伺いたい。
  51. 正力松太郎

    正力国務大臣 私は第一、根本的に考えなければならぬ問題は、科学技術教育の問題であると考えております。それから科学技術研究の目的つまり結局研究費の問題になってきますが、今大学の研究費なんというのは、実に哀れな状態になっております。そうして大学と民間の方との調和がちっともとれておりません。そういうことをこの会議で十分根本的にきめさせたい、これはまだ私見でありますが、私はそういうことを思っております。それからなお進んで言うならば、現在の科学技術者の待遇の問題がまだばらばらであって、つまり一致しておらぬという点があります。そういうようなことももう少し科学技術会議で根本的にきめて参りたいというふうに考えております。
  52. 岡良一

    岡委員 教育という問題を非常に強調しておられますが、たとえば四月からは小学校等の課程に道徳科目が一時間加わります。ところが現在の小、中学校の卒業生は、数学では戦前のレベルに比べて二、三年おくれているといわれている。こういうものをまず改めて、国民の自然科学に対する知識の水準を高めるということが、まず一つの大きな仕事である。これには文部大臣を加えて、いかにしてこれを高めるかということについてこの会議は真剣に取り組む、こういうお考えであります
  53. 正力松太郎

    正力国務大臣 むろんそれも一つに考えております。御承知の通りに、今日数学の問題を文部省が取り上げてきたのはけつこうです。今までは文科を、尊重しておって、理工科系というものを軽く見ておったのですが、それを小学校のときから科学思想を植え付けたい、どういうことをやっていくかということは科学技術会議で考えて参りたい、こう思っております。
  54. 岡良一

    岡委員 それから、先ほどやはり正力国務大臣の御指摘になった基礎研究の分野、昨年の卒業生の統計を見ると、国立、私立、公立を含めての大学卒業生の中で、自然科学分野の人たちは大体三割弱です。しかもこの三割弱の者が今度は研究室にどれだけ残るかということを、一例をあげますと、たとえば東大といえば日本の理工科部門でも最高の権威とも言えるわけですが、ここが理工学部合せて大体百四十弱の講座を持っています。定員というのは一講座当り四名、これは教授を含めての定員ですから、助手にすれば二名かせいぜい三名ということになってくる。こういうことで、まず人の点で基礎研究分野に進もうという人たちが非常に大きく制限されておる。こういうことも科学技術振興のための基礎分野の陶冶という意味で、この科学技術会議で真剣に取り上げてもらわなければならぬ問題だと思います。具体的にこういう事実について大臣はどういうふうにすべきで、あると思われますか。
  55. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほども申しましたが、大学の研究状態というものが今日のような状態では、とてもできないのであります。私が驚いたのは、戦前の大学の研究費か何かを見ると一万円とかいう、それが今百万円とかになっておるそうですが、その一万円が、今日物は三百倍、四百倍にもなっております。だからそれでできるはずがないのです。今までは文部省でも学術の研究に対する予算をどうしてもとれなかった。御承知のごとく、アメリカでは二兆億も予算をとっている。ソ連では一兆二千億もとっている。日本はたった四百四十億です。こういう程度の予算しかとっておらなくてうまくいくわけがないのであります。今度の科学会議に大蔵省を入れたり、経済企画庁を入れたのはそれなんです。どうしてもそういうものの力を得て、ここで予算に対する考えを全く変えなければならぬ。しかしことしは、そういう欧米に比較すれば遜色がありますけれども、大蔵省としては今度の予算でも、科学技術庁は今のような民間を合せてたった四百四十億ですが、政府の予算でも一番早くきめた。今までから見ると非常な進歩なんです。進歩だが、今日世界の大勢から見ると非常に情ない状態でありますから、一つ科学技術会議でこの点をしっかりきめたい、こう思っております。
  56. 岡良一

    岡委員 今御指摘のように、科学技術とは一体何かという問題に対する——私は正力国務大臣閣議で孤軍奮闘かもしれないが、内閣全体として認識が足りないというところに、この会議設けて一体どれだけの実効を奏するのかという点に、私は非常な疑問を持ちたいと思うのです。なるほど科学技術というものは自然界の法則を探究する、これを人間の生活や国家の経済に有用なものにするのが科学技術というものなのです。だから科学技術につぎ込む資金というものは、自然界の法則を探究して、これを人間の生活に有用なものに役立たしめるための投資です。その投資が四百四十億、国民総所得の大体〇・六%強ですね。ところがこれが他の先進国とでは、あるいは一・五%、二%、三%というふうに非常に科学技術というものに対する認識が国政府全体として高められて、非常な予算的努力をやっておる。これに一つ追いついていこうというのが正力国務大臣の御抱負のように私承わるわけですが、そこでしかしながらこれまではその予算的努力が足らなかった。これからこの科学技術会議ができるから、もう今度はそういう低調な予算では済まされないんだ、必ずやってみせるというあなたは御抱負を漏らしておられるわけです。しかし先ほど来申し上げたような格好で、機構内閣総理大臣議長になり、また勧告を受ける、しかし一人の人間だから、多少勧告の尊重のされ方も閣議では違うだろうというような、単なる期待的な考え方で、果して答申案というものが、予算的に法律的に政府の誠意ある実現が期待できるかという点に私は非常に疑問を持つのです。それはたとえば科学技術庁長官としても、今度の理科学研究所にしても、日本じゃなるほど国民全体の自然科学の水準が低い、だからこれを高めなければならぬ、その努力は今までのところほとんどなされておらない。次には基礎研究にもっともっと力こぶを入れなければならぬ。ところが、基礎研究は、国務大臣御存じのくせに御努力になっていただけなかった。今度講座の主任である教授の研究費は、自由に使える研究費が二〇%上っても十七万円、戦前の五分の一です。戦前は三千六百円、今の貨幣価値で百万円くらいのものが教授が自由に使える金として研究につぎ込まれた。今は十七万円です。そうして東大の工学部のごときは、そこにある設備といったってほとんど旧式の、大正年代のものが四〇%、明治年代のものが三四%もある。戦争以後の新しい設備なんというものは、二%にも満たない。だから、予算的にも何らの努力もない、施設が古い、しかも定員で押えられて人が足らない。十分人もなく、金もなく、設備がなくて、基礎研究の方に大幅な力こぶを入れるといってもできっこない。こういう面をただばく然と、会議が設置されればできるんだという夢を与えていただくだけでは、私は納得できない。それならばあなたは当然やはり国務大臣として、閣議の席上でこういう問題についてはほんとうに声を大にして叫けんでもらわなければいかぬのだ。この点私はまだまだ非常にこの会議がせっかくできても、ほんとうにこういう面において成果を上げるかどうかという点、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  57. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御忠言まことにありがとうございました。私はもちろん強い決心を持っております。実は閣議の席上でお前は大いに言えといわれても、今まで言ったってだめなんです。それだから、今や内閣の一番重要な政策科学技術の振興ということをしているのだから、一つここにこういう科学技術会議を作って、先ほど申し上げましたように文部大臣も入り、大蔵大臣も入り、そして私も入って、そこでそれだけではどうしてもまだ今までは閣議で言ったってだめなんですから、ここにつまり専門家、学識経験ある人を四人入れる。これは私は確かに今までより相当に進歩したことができるということに思うし、また何にしてもこういうことをやるについては、世論の背景が必要です。閣議だけではいかぬもんです。幸いこういう人が出てくれれば、世論も支持しますと御承知の通り、今のようじゃ幾ら私が言うても、幾ら文部大臣ががんばっても、閣議ではああいうふうになってしまう。だから私はどうしても世論の支持というものが必要である。ところが幸いにして政府の大政策にきめた、そうして世論もこれを支持してくれる。そうして今言った通りに、科学技術者を優遇しなくちゃならぬということも世論認めてきたし、予算も多少とれました。ただ、これは不十分だが、今度の科学技術会議ができれば、できただけでも世論も、なるほど政府も目がさめた、政府も力を入れるなんていうふうに思うてくるのです。そうすれば非常にやりやすくなる、こう思うておりますから、私は今度は相当の効果を上げ得ると確信をいたしております。
  58. 岡良一

    岡委員 そこでこの科学技術会議が当面する問題としては、まず国民の自然科学に対する知識を高める教育的努力をしなければならぬ。次には、基礎研究の分野において人もふやし、設備も切りかえ、予算もふやし、研究者の処遇も改善をして、そうして喜んで若い学徒に研究してもらえるようにするということも、第二の科学技術会議の大きな当面の仕事だと思う。そこでその次の問題なんです。さていよいよそういうふうにして基礎研究がどんどん進められた、しかし象牙の塔の研究ではこれは話にならない。だから基礎研究が日本の産業技術として、日本の経営の中へ生きてこなければならぬ。いわば応用化され実行化されてくるということ、ところが日本の国は、民間会社の研究的努力というものは非常にまだ乏しい。だから国がこれを一つうんと力こぶを入れなければならない。そこで理化学研究所というものも設置されることになった。ところが理化学研究所にしたって、国がことし三億三千万出したところで、総出資金は十一億弱です。十一億弱の出資金をもっては、こうして基礎研究をほんとうに応用し工業化するという、基礎研究と産業的実用化を結ぶ結び目としては、理化学研究所のごときはまだ私は予算が足らないと思う。これはもっと大規模に、この規模を拡大をしてその機能を十分に発揮せしめるように、年次的に五カ年なら五カ年計画ということ、こういう方向に持っていくんだという総合的な理化学研究所、こういうものを一つ作り上げていくということも、私は科学技術会議の大きな任務ではないかと思います。こういう点正力国務大臣いかがでしょう。
  59. 正力松太郎

    正力国務大臣 全く御意見に同感であります。実は今までの日本の民間の研究室というものが、外国に比較してはまだはなはだ劣っております。これは何としても基礎研究が必要だが、それと同時に応用面を力を入れなければならぬ。それについては政府だけでいかず、民間にもやらせなくちゃならぬ。その民間がまだ御承知のような状態である。それだから政府としても、この理化学研究所の応用面も置いたんだから、これについては予算がはなはだ少くて残念でありますが、幸い科学技術会議もできたんだから、来年は相当の予算をとり得るようになると思うておりますし、またしなくちゃなりませんから、また一つ御声援をお願いします。
  60. 岡良一

    岡委員 体裁よくお願いされちゃかないませんが、そういう点ことしも科学技術庁として私は努力が足りなかったという点を指摘したいのです。われわれは大いに声援をしておるけれども、結果から見れば正力国務大臣の成績はどうも落第点を上げるよりしょうがない。  それから先ほど正力国務大臣科学技術省を設立するという方向に持っていきたい、それには現在各省庁にまたがっておる試験研究機関なりこういうものにつきましても、事務次官が集まって話し合いをさせても、互いのなわ張り争いからまとまらないので、そこで科学技術会議のような高いレベルのものでこういう方向をきめる。そして内閣総理大臣尊重して、閣議段階でこういう従来の最も悪弊である官省庁のセクショナリズムを一つ打破して、一つの機構にまとめていこう、こういうふうにあなたは御抱負を申された。これはあなたの信念として私ども了解していいのですか。
  61. 正力松太郎

    正力国務大臣 全く私はそう信じておるのであります。これをぜひ一つ実行に移したい、こう思っております。それだから一つまた御声援をお願いします。
  62. 岡良一

    岡委員 なお私正力国務大臣の率直な御意見を聞かしてもらいたいのだが、防衛庁では二十二億の研究のための予算が組まれておる。それでエリコンでも買ってきて、誘導弾を研究しよう。日本の科学技術会議というものは、もちろん科学技術が国民の福祉に関連する、国家経済の繁栄に貢献をする、こういう方向にもうどんどん一途に進めらるべきものだと私は思っております。あなたのお考えはどうなんです。
  63. 正力松太郎

    正力国務大臣 防衛庁のことは私はよく知りませんが、われわれは全くこれは、平和利用、経済促進ということに力を入れてやっておるわけであります。
  64. 岡良一

    岡委員 大体正力国務大臣科学技術会議を設置しようと思い立たれたこと、そして科学技術会議がまず何を取り上げて解決をしなければならないかということについては、まず国民の自然科学の教育水準を高める、基礎分野における研究をもっと高める、そしてそれと応用との結びつきについて、国としてはもっと計画的に予算的な協力をしなければならぬ。そうして現在各省庁にまたがっておる官庁のセクショナリズムは、なるべくこれを統一ある運営に持っていくような努力を、機構的にも考えなければならぬ。そこで何といっても一番の根本は、国民の自然科学に対する教育というものの高め方にあると思う。  そこで私は委員長にお願いをいたしたいのですが、ぜひこの点についても私は文部大臣の御抱負をしっかりとお聞きをしておかなければ、容易に科学技術会議に賛意を表しがたい。この際科学技術会議というものが正力国務大臣構想のような、基礎研究と国民の自然科学水準を高めるということについて、文部大臣にも私はしっかりとしたお言葉をいただいておかなければ賛意を表しがたい。委員長において次の機会にでもぜひ一つ文部大臣の御出席をお計らい願って、もう一度この問題について私どもの所見を申し上げて政府の御所見を承わりたいと存じますので、委員長にそのようにお取り計らいをお願いいたしておきまして、一面私はこれで終ります。
  65. 保科善四郎

    保科委員長代理 午前中の会議はこの程度といたしまして、午後一時十五分まで休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  66. 福永健司

    ○福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡良一君。
  67. 岡良一

    岡委員 法制局の方から専門的な解釈をお伺いをいたしたいと思います。  ただいま御提案科学技術会議設置法案の第三条におきましては、「内閣総理大臣は、前条の諮問に対する答申があったときは、これを尊重しなければならない。」こう書いてあるわけであります。そこで午前中科学技術庁の方々との質疑応答の結果、御説明といたしましては、この会議を主宰する議長総理府の長である内閣総理大臣であり、また内閣総理大臣は云々の、この第三条の規定における内閣総理大臣も、総理府の長である内閣総理大臣である、こういうお答えであったのであります。そのように承知をしていいのでありましょうか。
  68. 野木新一

    ○野木政府委員 御指摘のように、この法案におきましては、内閣総理大臣という文字が二条、三条、五条等にも出てきておるわけであります。三条の内閣総理大臣はどういう意味かと言いますと、この法案の趣旨といたしましては、この科学技術会議設置法案総理府の附属機関として置かれるということになっておりまして、第二条の内閣総理大臣というのも、しいて言えば総理府の長としての内閣総理大臣ということになりますし、第三条も、やはり二条と同じように、しいて言えばそういうような地位における内閣総理大臣、つきつめていえば、そういう解釈になると存じます。
  69. 岡良一

    岡委員 この科学技術会議設置法の目的はここにうたわれてある通りでありますし、科学技術の振興そのものも、政府の重大な施策となっておるわけであります。このような重大な施策のプログラムを決定する科学技術会議決定なるものは、単なる総理府の長である内閣総理大臣尊重をしなければならないということでは、科学技術会議そのものの権威の上から見て妥当ではないのではないか。従って、この第三条の内閣総理大臣は、内閣首班であり、閣議を主宰する内閣総理大臣であるということが、科学技術会議そのものの目的にもかなうのではないか、事実上運営の問題として、私はそういうふうに考えるのでありますが、そういうわけにはいかないのでありますか。
  70. 野木新一

    ○野木政府委員 法案でありますから、法律といたしましては、実体的の政策いかんによって法文を作るというふうになりまして、もし実体的の政策も、内閣の長としての内閣総理大臣と  いうふうに持っていこうとするならば、やはりそういうふうな実体的な政策となるわけでありますが、この案といたしましては、そうではなくて、内閣総理大臣というのは、総理府の長としての内閣総理大臣、そういう建前で書いておるものと解されるわけであります。しかしながら、総理府の長といい、閣議を主宰する内閣総理大臣といっても、人は同じでありますから、実際におきましてはそこに運用の妙を発揮できる、そういうことで目的が達せられるというような前提で、この法案ができているものと解される次第であります。
  71. 岡良一

    岡委員 それでは、原子力委員会設置法第三条に「内閣総理大臣は、前条の決定について委員会から報告を受けたときは、これを尊重しなければならない。」こういう規定があります。私どもはこの原子力委員会設置法審議に際しては、政府側からは、この第三条における内閣総理大臣政府首班である内閣総理大臣であるという説明を、実は承わっておるのです。今御説明の第三条では、総理府の長である内閣総理大臣原子力委員会設置法における内閣総理大臣内閣首班であるというふうに、著しく釈解が違っておるわけでありますが、この点はいかがなのでありましようか。
  72. 野木新一

    ○野木政府委員 実は前のときのいきさつを私ははっきり記憶しておりませんが、原子力委員会設置法も突き詰めて言ってみますれば、同じような法文になっておりまするので、解釈としては今平らかに申しますれば、やはり同趣旨になるのではないかと存ぜられる次第であります。一応ここの答弁としてはそう申し上げたいと存じます。
  73. 岡良一

    岡委員 科学技術庁の力、このときの審議の事実を御存じだと思うのですが……。
  74. 水間光次

    水間説明員 審議の経過はつまびらかにいたしませんけれども、原子力委員会設置法も第一条に総理府に置くという前提を打ち立てておりますので、第三条の決定尊重の項における内閣総理大臣も、総理府長官としての内閣総理大臣解釈しております。
  75. 岡良一

    岡委員 その点が非常に重大な問題であったものですから、私どもが念には念を入れてただしたわけなんです。当時は内閣総理大臣内閣首班である内閣総理大臣、こういうふうに御答弁を私はいただいたと記憶しておるのです。この点は一つ速記録等をあなたの方でもよく御調査いただいて、その解釈の統一をはかっていただきたいと思います。  それで法制局の方にお尋ねいたしますが、かりに原子力委員会設置法第三条の、内閣総理大臣総理府の長である内閣総理大臣として、第四条で、原子力委員会は「原子力利用に関する重要事項について必要があると認めるときは、内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。」とあります。この内閣総理大臣はやはり総理府の長である内閣総理大臣、そういう意味ですか。
  76. 野木新一

    ○野木政府委員 これも同様の意味ではないかと存ずる次第であります。
  77. 岡良一

    岡委員 これはこの程度でよろしいですが、その次に第十条の二項の一です。政党その他の政治的団体の役員となり、また積極的に政治運動をすることは、科学技術に関してすぐれた識見を有する者として選ばれた四人の科学技術会議議員の資格としては許されないということになっておるわけです。どういう理由で政党その他の政治的団体の役員は議員になることができないのでしょうか。
  78. 野木新一

    ○野木政府委員 これは法制的の問題よりもむしろ政策的の問題に属する部分が多いのではないかと存じます。しかしながら一応法制的の見地に関連づけて御答弁申し上げますれば、科学技術会議はなるほど総理府付属機関で、一極の諮問機関になっておりまするが、その実際的の重要性は非常に大きいものがあるものと存じます。日本の将来の科学技術の進歩という面にあるいは貢献し、あるいは影響を与えるという点においては非常に大きな役割を演ずるものではないかと思います。そういうような非常に重要な機関でございまするから、なるべく何人が見ても、そこから出した意見は中正な公平な意見であると認められるような仕組みが好ましいのではないかと存じます。もちろんこの会議におきましては、第六条に書かれてありますように、大蔵大臣文部大臣科学技術庁長官、経済企画庁長官というような方が入っておられまして、この方々は現在の政党内閣におきましては政党人が多いことになるとは存じますが、少くともほかの四人の方から出た意見につきましては、政党政派を超越して真に日本の科学技術の進歩というものを純正な中立的な立場で真剣に考えてもらう、そういう人がほしい。そういうような法案の趣旨になっておるのじゃな問いかと存じます。もちろん政党の役員にも科学技術に非常に練達の方がおられるということは、この法案も否定をしておるわけではないと思います。しかしながらもしそういう人がこの四人の少数の議員の中に入っておりますと、せっかく政党内閣の閣員以外の人の意見を聞いてやろうというその趣旨が、少し達せられないことになるのではないか。従いまして政党その他の政治的団体の役員とか、または積極的に政治運動をする、そういうような方はこの種の議員にはさせないようにいたしまして、そしてあくまで科学技術会議の純粋性、中立性というものを内容的にも確保し、また一般の世人からもそういう疑いを持たれないように確保したい、そしてそこの意見を一そう権威あらしめるものにし、そして日本の科学技術の振興に寄与したい、そういう精神に貫かれており、その精神から発しているものと存ずる次第でございます。ただこれは大きくいえば、一つの立法政策の問題になりまして、憲法との関係を云々というような問題でありませんから、立法政策上はあるいは反対の見解もあるかもわかりませんが、少くとも方針としては、ただいまるる申し上げたような立場をとって、その方策を前提として立案せられたものと解せられるのであります。
  79. 岡良一

    岡委員 「政党その他の政治的団体の役員」、この政治的団体の役員といってもいろいろあるわけです。あなた方の慣例から見てどこまでが政党団体の役員ということで、この議員になる資格がないことになるのですか。
  80. 野木新一

    ○野木政府委員 結局「政党その他の政治的団体の役員」ということの解釈問題になると存じます。私まだ具体的にこの解釈が実際上の事例において争われたという点をはっきり聞いておりませんが、この解釈といたしましてはまず政党という点、その他の政治的団体という意味、役員の意味、三つの用語の解釈内容になっておると存じます。政党につきましては常識で大体わかると一思いますが、今までの法律としてはたとえば政治資金規正法にたしか政党の定義が下されてあったと存じます。ここにいう政党もあそこにいう政党もほほ同じといってよいのではないかと存じます。「その他の政治的団体」という文字は同じであったかどうか今必ずしもはっきりしませんが、あそこに政党その他協会と書きまして、政党以外の政治的団体ということがあったと記憶しております。やはり法律が違いますから、法律論的にいうとその趣旨は違うのじゃないかという議論も出てくると思いますが、大体の法律の趣旨としてはあれらにある概念がここでは前提にして書かれておる、そういうふうに存ずる次第でございます。そして役員とは何かといいますと、これもどの範囲を役員とするかということは、それぞれの政党その他の政治的団体の規約なり何なりを見て、具体的の場合において判断するよりほかにないのではないかと存ずる次第でございます。
  81. 岡良一

    岡委員 それではこれは提案者である科学技術庁の方では、この役員というのはどこまでの限度を見るか。自由民主党の総裁、政務調査会長、幹事長、総務会長、総務までが役員ですか、それとも埼玉県支部長福永さんも役員になるのか、そこのところを一つ。
  82. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 私どものこの役員というものの解釈につきましては、その政党あるいは政治団体におきまして相当支配的な影響力のある役員というふうに考えておりますので、大体政党でございますれば、党本部の役員というふうに考えております。
  83. 岡良一

    岡委員 正力国務大臣お尋ねをいたしますが、今法制都の専門家の御意見では、この議員の資格として、政治的団体や政党の役員正でない、あるいは積極的に政治運動をしないということが条件になっておるわけです。ところが、これらの条件を付したゆえんのものは、多分に政策的な顧慮がある、こう思うわけです。その理由は、お聞きをすれば、とにかくこの会議運営に当っては、いわば政党的な偏向のないようにしなければならないから入れない、こうおっしゃるわけです。そこで正力国務大臣の御抱負を一つお聞きしたいのですが、科学技術会議運営において、あるいはここに書いてあるこの科学技術会議諮問事項となるものは、おそらく政党的なものは何もないのですよ。またこういうものは当然あってならないと、思うのです。科学技術というものは、これは国境さえも越えたものなんです。性別や年齢や人種を越えたものですよ。こういう科学技術というものの長期的な、総合的な研究目標を設定するあるいは基本的な総合的な政策を樹立する、特に重要なるものについての推進、方策の基本をきめるあるいは日本学術会議へ何を諮問するかということをきめる、こういうものは、その政党とか小政派とか国境とかいうものを越えた一つの理真探求のための政策を立案しょうというのでしょう。こんなものに政党人を排除するというようなこと、そのこと自体会議そのものの本来のあり方から見て私は納得がいきかねるのです。こういう科学技術会議には、政党が何党であろうとも、真にこの両において学識経験のある者ならばどんどん採用できるという、開放された構成に持っていくのが、私は科学技術会議というもののためにも大事なことじゃないかと思うのです。正力国務大臣の御所見はいかがですか。
  84. 正力松太郎

    正力国務大臣 なるほどお話の点はもっともでありますが、これは閣僚がみな政党的な関係の者が入っております。そうして学識経験者の四人だけなんです。その四人だけに対してこういう制限をするわけでありますから、私はむしろ一般的に考えて、学識のある人は大体においてあまり政党に入っておりません。だからこれで実際の運営上差しつかえないのみならず、今まで、大体こういう規定は、慣例的にこういうなにで設けますから、差しつかえなかろうかと思います。
  85. 岡良一

    岡委員 そうすれば、この科学技術合議の構成メンバーの中には、政党人が総理を含めて五名入っておる。あとの残りのものへは入れないでおくこういう御解釈のようですね。しかしそれはこうした科学技術の探求というような、超党的な唯一の真理の探求、その政策立案の機関が、政党的に左右されるということを前提としての御議論ですね。こういう必要があるのですか。こういうような条件を設けるのは……。
  86. 正力松太郎

    正力国務大臣 どうせ政党の方は政党の調査会でみな調査しておりますから、ここに入らないでいいと思っております。
  87. 岡良一

    岡委員 政務調査会は、党の独自な政務調査活動としてしてもらえばいいのです。しかし設置法に基いて設けられる科学技術会議なるものには、政党を入れるとか入れないとかいう、こういう制限をする必要はない。とにかく学識経験ということを中心にして門戸を開放するというのが、科学技術会議というものの真の目的に照らしても私は正しい方向だと思うのです。
  88. 前田正男

    前田(正)委員 関連して。私が申し上げたいと思うのは、きょうも実は科学技術特別委員会におきまして、特殊法人理化学研究所の法案が通過するに当りまして、私から代表いたしまして、修正案を提出したのでありますけれども、自由民主党、社会党共同で「政党の役員」という条項を削って、きょう修正可決したのであります。どうかそういうふうないきさつもあるから、今大臣いろいろ御答弁しておられるようでありますけれども、この問題については一つ十分御研究を願っておきたい、こう思っておるわけであります。
  89. 保科善四郎

    ○保科委員 関連。今の問題私も全然同感でありまして、政党人の中にも科学技術のオーソリティがいるわけです。大臣にしてもそうでしょう。われわれも研究しておりますし、皆さんこういうエキスパートがおるのですから、これはやっぱり科学技術なんていうのは、政党なんか考える必要はない。国家として重要な施策であり、日本の運命に関するような問題ですから、やはりそういうようなところには適任を選ぶというようなことでやるべきであると思います。  それからついでに、私はこの科学技術会議内容は、これは国防会議とほとんど同じなんです。非常に重要なるウエートを私は持たせておると思うのですが、これを一つ、先ほど来格下げされたような印象を実は与えておるわけでありますから、実行の上においては、必ず総理大臣が出て、ときどきよりもなるべくひんぱんに開いて、そうして科学技術の重要性——科学技術会議を開いたとなると、新聞はこれを取り上げて書くと思いますから、できるだけ国民にやはり重要性を認識させて、そうしてやるような運用上の特別な注意が必要だと思います。
  90. 福永健司

    ○福永委員長 暫時休憩いたします。     午後二時八分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  91. 福永健司

    ○福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡良一君。
  92. 岡良一

    岡委員 松永文部大臣に若干お尋ねをいたしたいと存じます。それはただいま本委員会提案になっておりまする科学技術会議設置法に関連いたしまして、この会議の議員といたしましては、文部大臣もその構成にお入りになることに相なっておるわけであります。そこで午前中、科学技術庁長官正力国務大臣にいろいろ御抱負を承わったのでありまするが、問題は科学技術の振興をはかるということに相なりますると、まず国民全体、あるいは小、中、高等学校等におけるわれわれの次の時代をしょってくれる若者たちに、自然科学の知識というものを力強く教育をしてやる必要がある。この点についてせっかく設置法会議が構成されましても、政府としていかなる御方針を持っておられるのか、まずこの点から承わりたいと思います。
  93. 松永東

    ○松永国務大臣 御指摘になりました科学技術の振興については、これは仰せの通り、主として教育の面から振興をはからなければいかぬと思います。そこで教育の面と申しましても、ピラミッドの頂点だけ、すなわち大学だけを、あるいは専門学校だけを強化いたしましても、効果が薄いのであります。従ってまず小学校から中学と順次科学技術教育の基礎学を教え込んでいかなければいかぬ、こういうふうに考えておるのであります。ことに仰せになりました通り、そればかりではない、一般社会においても科学技術に対する関心を高め、さらに家庭においてもそうした関心を高めるということが望ましいことだと考えております。社会教育等についても、三十三年度予算にはそういう面に相当関心を示しておるのであります。しかし私の所管の問題の中で、小学校、中学校、これにまずどういうふうにして基礎学を教授していくかということであります。それはつまり小学校、中学校、高等学校における理科の内容改善をはかっていくということが第一点でございます。その改善をはかりますのは、まず設備を充実せなければなりません。従って理科教育の設備を急速に整備する。それはやはり今日までの小学、中学、高等学校における設備の内容は完備したものではございません。そこでこれを完全なものにしなければならぬということが一つ。さらに現職の教員の資質の向上をはからなければなりません。従って現職教員の教育を強化して、そうして実習、実験の指導力を高めなければなりませんので、五カ年計画で理科関係教員の半数、小学校一割でございますが、これらを集めまして、そうして都道府県に講習会を開催する、こういうことになっております。その点につきまして三十三年度予算に計上せられました額は、設備の整備、充実に必要なる経費として、四億四千六百力余りを計上いたしております。さらに現職教員の教育に必要な経費として、八百万円を計上いたしております。大体これで十分というわけに参りませんけれども、何とか初年度としては踏み出しができるというふうに考えております。さらに産業教育を振興いたしまして、高等学校の職業課程の実験、実習の設備を相当充実するようにいたしました。こまかな計算につきましては、大学局長がおりますから、局長から御答弁申し上げることといたします。そうして高等学校の産業教育の振興をはかり、さらに今日までと違いまして、一そう充実して基礎学を教えることにいたします。さらに大学では、いろいろ広範にわたっておりますが、質の上からも充実をはかる。すなわちいろいろな研究費あるいは設備、そういう面についても充実をはかっておるわけであります。さらに量の上においても、すなわち学生数を増加しなければいかぬということで、三十三年度は一千七百名を増員することにいたしております。そうしてだんだん、三十三年度は初年度でございますが、逐次累加して参りまして、経済五カ年計画の最終年度の三十七年度には、大体予想せられております八千人を増員することができるという計画で進んでおる次第でございます。その予算が三十三年度の予算に盛り込まれておる次第でございます。
  94. 岡良一

    岡委員 国民特に少国民の基礎的な自然科学の教育に力こぶを入れる。そこで今お話の点は、まず第一に教員の質を高める。そこで八百万円で教員の質を高めるための講習会をやる。御存じのごとく、この点について申し上げますと、高等学校においてもそういう先生があると思いまするが、一単位六十時間物理を習えば、高等学校の生徒にも物理を教える資格があるというような取扱いになっているのではないかと思います。また、ある先生のお話を聞くと現在の小、中学、高等学校の数学の水準は戦前に比べて二年以上おくれておるという、率直なことを言っておる。こういうように、教える側の質においても非常に大きな問題があるんじゃないか。それから教育課程においても、四月から道徳科目を加えられるというが、自然科学、数学においてどういう具体的な御配慮をしておられか。それから四億二千万円プラス七百万円——御存じの通りアイゼンハワー大統領は、ソビエトが二回にわたって人工衛星の打ち上げに成功したというので、本年度の年頭教書で、科学技術教育に二億七千万ドルの予算を要求しておる。そのときに、戦後の空白から非常な立ちおくれにある日本が、特に小、中学等における基礎的な若い世代に対する科学技術教育がわずか四億ぐらいの金で、今日までの欠陥が補えるでありましょうか。
  95. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまの教員の資質の向上の問題でございますが、この八百万円を計上いたしておりますのは、現職の教員に対します講習会の経費でございます。特に理科の指導力を向上いたしますために、教員をブロック別に集めまして、そうして講習をいたしたいという計画でございます。ただいま御指摘のように、現在の教員養成の制度におきまして、科学教育を実施いたしまする十分な教員の資質が養われているかどうかという問題につきましては、いろいろ御批判がございます。これは教員養成制度の全般に関する問題でございますけれども、理科のみならず、ほかの教科についてもそういう批判がありますので、私どもこれを今全面的に検討をいたしまして、改革、改善をはかりたいと考えております。つまり現在の教員養成は、昔の師範教育と違いまして、一般の大学のワクの中で行われることになっております。そうして今、御承知のように、一定の単位を取得いたしますと、それに対しまして免許状を出す、これではやはりいけないのであって、もう少し教員として、特に理科ならば理科の指導力を持つような計画的な教育内容にしていくべきじゃないかという観点から、現在検討いたしておるような次等でございます。特に実験、実習の力が足りませんので、それらにつきましては、今後十分この面を強化していきたいというふうに、現在考えておる次第でございます。  それから来年度の理科教育の設備の予算が四億四千六百万でございますけれども、これは年々努力を重ねまして、今後基準に達するようにしていきたいという計画でございます。御承知のように、理科教育振興法というのがございまして、この法律に基いて年々計画いたしておりますが、来年度は三十二年度に比べますと、六千二百万円の増額を計上しておる次第でございます。
  96. 岡良一

    岡委員 結局局長の御答弁は、検討中だということなんです。文部省は、私ども外部から見ておりますと、非常に遠慮がちで、予算を取ることがあまり上手でないように思う。こういう科学技術振興政府の重要施策になりながら、この期に及んでまだ検討中で、小、中学の理科教育の予算は、四億余の予算しか持ち得ない。科学技術の基礎を培養するのに、これだけの予算で何がやれましょうか。そうしてあとのところは検討中、これでは私は非常に無責任ではないかと思うのです。文部大臣、無責任ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  97. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいま私検討中と申上げたのは、教員養成制度につきまして申し上げたのでございまして、先ほど御説明を一つ落したのでございますけれども、小、中学校の教育課程につきましては、これは近く成案を得るわけでございますけれども、理科あるいは数学の時間数が、ただいまお示しがございましたように、現在少い実情になっておりますので、時間数をふやしましてその点を強化していきたい。これは教育課程審議会で今検討いたしておりまして、近く結論を得ましてすみやかに実施するような運びにいたしております。
  98. 岡良一

    岡委員 とにかく先ほど大臣も言われた通り科学技術の振興といえば要は人の問題です。そこで人といえばこれは教育の問題ですから、今いかに予算をぽっと出してみたところで直ちにその人を得られるものでもありません。しかしそれだけにまず何よりも早く着手しなければならないのは、われわれの次の時代の子供たちに自然科学なり数学に対する教育を高めていくことです。だから教育課程の問題なり教える先生の質の問題あるいはその施設の問題なり、こういう点においては本年度予算では、私どもが承知している範囲では非常に足らないと思う。さて審議会答申を出すといったところ、それに予算が必要となればやはり来年度に回すというようなことにもなり得るわけです。今度は重要な科学技術振興の費用としてたな上げの二十億もあるわけだから、この科学技術会議あたりがまず教育の問題を取り上げた場合には、こういう財源をも活用して、ぜひ一つまず子供のうちから数学に対する水準を高める、あるいは自然科学に対する興味を持つという方向に強く指導してもらいたいと思う。  その次には今度はいよいよそうして小学校、中学校、高等学校を出て大学へ入った、ところが日本の科学技術の振興上非常に遺憾な実情は、いわば基礎分野における研究が人手薄であり、施設が古く予算が足りないという現状なのです。これに対して今年度はどういうような手をお打ちになりましたか、大臣の御答弁を願いたい。
  99. 松永東

    ○松永国務大臣 御指摘になりましたように設備が全く古いのもあります。そこでそうした設備を改善するために、満足する程度じゃありませんけれども、相当の予算は組み立てておるつもりであります。すなわちその設備のす費用といたしまして二十億四千万円計上いたしております。それでさらに、岡委員の仰せになりました今の、まず、何といっても人の問題、適当な教師を得て教育の任に当らせなければならぬことは御説の通りであります。ところがそういう人に対する待遇の問題、研究費の問題、そういう問題もまだ相当不満足でございますけれども、しかし今年度はまず第一歩を踏み出したという考え方から、逐次増加いたしていくつもりでおりますが、本年度はこの程度でいけるのじゃなかろうかというふうに考えておる次第でございます。なお詳細な数字の点につきましては政府委員から申し上げます。
  100. 緒方信一

    ○緒方政府委員 研究の基礎を固めますためには、御指摘のように、研究費と施設、設備の充実、更新ということが必要でございますが、研究費につきましては実は二通りあるのです。一つは国立大学の経営的な研究費の増加が一つございます。これは来年度の予算には四十億六千万円を計上いたしておりまして、昨年度に比べますと五億二千八百万の増となっておる次第でございます。それから施設、設備につきましては、ただいま大臣からお示しのありましたような数字を計上いたしておりまして、二十億四千万円でございます。それからもう一つの研究費でございます。これは今国立大学の経営的な研究費のほかに、特別に重要な研究を促進し、それを引き上げて参りますために、科学研究費というものを計上いたしておりますが、これは来年度二億二千万円の増額をはかりまして、十四億四千万円を計上いたしております。先ほど申し上げました教官研究費と科学研究費両方の運用によりまして、研究の充実をはかっていきたい、かように存じております。
  101. 岡良一

    岡委員 それじゃ具体的に、東京大学の工科並びに理科の講座数、それからその一講座の定員並びにその講座を。指導する教授の自由に使用し得る研究費並びに停年に近い権威ある教授の月給ですな、これを一つ数字で示していただきたい。
  102. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまおあげになりました全体のことは、すぐ資料をお示しする準備がございませんが、研究費につきまして申し上げますと、理科系の研究費は、一講座当り今度増額いたしまして百三十万円になります。これは前年に比べまして、二〇%の増加になっておるような次第であります。ただ教授一人あるいは講座一つにつきまして、自由に使えるということになりますと、これは各大学の運用によりましていろいろ実態が変っておりまして、一律に幾らということはなかなかお示ししにくい状況になっております。研究は申し上げるまでもなく電気を使い、水を使い、あるいはガスを使うというような、光熱費等に非常に経費を使います。あるいはまた消耗品等も相当使います。あるいはまた人を使う賃金支払いなどもございますので、こういうものは大学としまして、あるいは学部といたしまして、一括計上いたしておるような状況でございますので、教室が直接に幾ら使うということは各大学によりまして区々になっております。今東京大学で幾ら使うかというお尋ねでございますが、これは講座講座によりましても違いまのすで、お示ししにくいと思います。  それから一方の科学研究費でございますけれども、これは先ほど申しましたように、特別な研究の課題々々によりまして特別に配分をいたしております。東大全体といたしまして二億くらい配分をいたしております。これも問題々々によりまして、研究の態様々々によりまして、大体一人の人が幾ら使うということはちょっとお示ししにくいのでございます。  またいずれ資料をもってお答え申し上げることにいたします。
  103. 岡良一

    岡委員 先般別な委員会で、茅先生にも御出席をいただきまして、このような問題について若干数字的な資料をお伺いいたしました。なるほど御説明のように百数十万円に上っておる。そうしてこれは二〇%増である。しかしその中からガス、水道、光熱費も要る。あるいは共同の図書購入費も要る。あるいは学生に対する教育のための費用も要る。そういうことで相当のパーセンテージが大学本部の方にとめられるというようなことになりますと、実際講座を指導する教授の自由に使用し得る研究費というものは、増額になってなお十七万円に満たないということを言っておられます。こうなったのでは、これは学校の先生がアルバイトするのも無理がないと思うのです。自分のことを申し上げて恐縮ですが、私は実は大学の専攻生ですが、昔は試薬一本あるいはウサギ一匹、全部学校の費用でやれたものです。今では助教授までがアルバイトをしなければ自分の満足な研究ができません。こういう状態をこのままに放置しておいては、日本の基礎研究というものは絶対に向上しない。今の御答弁では、ただ現状を御説明になっただけで、これをいかに切りかえていくかということについて、しっかりとしたやはり責任ある御方針を承わりたいのです。これは文部大臣から直接承わりたい。その御方針を承わらなくては、あんのないもなかみたいな科学技術会議なんかを幾ら作っても意味がない。あなた方は、これができたらこういう抱負で進もうという具体的な方針をやはり与えてもらわなければ困る。
  104. 松永東

    ○松永国務大臣 この研究費の問題については、御説のようにこのままではやれぬというので、実は予算も相当額計上してやったのでありますが、しかし三十三年度予算に計上しております程度しか計上することができなかった。しかしこれでは非常に不満足と思いますけれども、初年度としてこのくらいあれば、先ほども申し上げます通りまず一歩踏み込んでいくことができる、こういうつもりで実はやり出したわけです。けれども、先ほど来申し上げます通り、年を追うて逐次額をふやさなければならぬことは申すまでもございません。しかし何とかしてこれでやっていけると確信いたしておる次第であります。
  105. 岡良一

    岡委員 それじゃ具体的にお聞きしますが、各大学から研究の補助として申請をされた総額はどれだけか、そのうちから文部省はどれだけ補助として交付されることになったのか。もう一つ東大の工学部の資料を見ますと、工学一部の研究施設の中で明治年代のものが三十数%、大正年代のものも三十数%、戦後のものは二%に満たないという数字を私はもらっておるのです。東大の工学部といえば、日本の国立大学の中でも最も権威あるものでなければならぬ。しかも理工学部関係のものは日進月歩なんです。これに対して本年度はこの施設の近代化のためにどの程度の予算をさかれたか。
  106. 緒方信一

    ○緒方政府委員 第一点の研究費の問題でございますが、これは先ほど申しますように、国立学校の予算に計上しておりますのは経営的な研究費でございますので、大学から申請をしてその中からこっちが与えるという性質のものでございません。文部省でこれを大蔵省に要求いたしましてそれを各大学に配分して運営していっております。これにつきましては、私の方としましては来年度計上いたしております額ではまだ不十分なことは重々承知いたしております。かりに戦前と比較してみましても、現状の二倍か三倍の額にいたさなければならぬと考えるわけでございまして、大蔵省に対しましては相当要求をいたしたわけでございますけれども、全体のバランスから見まして、先ほど申しますように、理工科系につきましては二〇%増で落ちついたような次第でございます。今後この努力を積み重ねていきたいと考えております。  第二点の設備でありますけれども、これは御指摘のように工学部の設備の中で戦前に購入したものが約六割でございます。これは全国の大学を通じての話でございますが、そのうち明治、大正のものは私の計算では約二割と見ております。この古いもの、特に老朽のはなはだしいものから逐次更新していかなければならぬと考えるわけであります。これにつきましては私どもの要求は、これから相当の金額を要すると存ずるわけでございますけれども、来年度におきましては二十億四千万を計上いたしまして、一面老朽設備を更新すると同時に、さらに最近の科学の進歩に対応いたしまして新しい高性能の装置が必要でございますから、この両者を更新し、かつ充実をはかるように努力いたしていきたいと考えております。
  107. 岡良一

    岡委員 昨年度の国立、公立、私立の大学の卒業生の総数、その中で法文と教育を除いて、理工学部、医学部、薬学部、農学部の卒業生の数は総体の何%になっておりますか。
  108. 緒方信一

    ○緒方政府委員 総数は国立私立を合算して約十六万くらいになるかと存じます。ただ私立大学におきましては、実数が押えがたい面もございますので、正確には申し上げかねますが大体十六万程度と思います。そのうち、全体を通じて見ますと、自然科学系が大体三割程度になっております。
  109. 岡良一

    岡委員 御存じの通り、ソ連は第六次五ヵ年計画の末期では三十万人のテクノロジストを増加させる計画に成功したと伝えられる。英国でもテクノロジストは大体倍にしようと計画している。ところが日本は法文が七割ほどを占めている、卒業すると今度はまた就職地獄にさらされておるという実情です。子を持つ親の気持もさることながら、こういうアンバランスでは、ほんとうの科学技術振興はできない。だからアメリカが一億七千万ドル、約一千億の金を今度投入しようというのも主としてこの教育の面における基礎科学にできるだけ人をとどめよう、それを優遇しよう、そして、施設のよいものを与え、頭のいい者には奨学金をどんどん出そうというのがその内容なんです。こういうふうに急いでおるときに、日本では三割に足らない。せっかく大学を出ても自然科学にとどまる者がほとんどない。しかも大学の定員は一講座当り教授を含めて四名です。そうすれば、研究者としては、定員で押えられ、予算で抑えられて設備が古いという状態、しかも子供たちは、学士様になればすぐメーカーに勤めにいった方がサラリーがいいということで、とどまらないという状態にある。こういう状態を放置しておいたのでは、教育の面における科学の進歩は望めないと思う。問題は、第一に何とか大学を卒業する諸君が自然科学の道に踏みとどまる、あるいはそうなったらできるだけ基礎科学の分野にとどまることが第二、この二点について、ただ今日こういう状態で予算が足らなくてきわめて遺憾であるということじゃなくて、こうすべきだという御意見、政府の御方針を承わりたい。
  110. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいま申し上げましたように、現在のいわゆる文科と理科との比率は七割対三割という状況でございますが、先ほど大臣からお話もございましたように、技術者の不足に対応いたしまして、来年度を第一年として三年あるいは四年の計画をもって八千人まで増加いたしたいと考えております。そこで、国立大学におきましては文理の比率は、大体来年度においては文科三五%、理科六五%といったところまで参ります。さらに今後私立も含めまして、このパーセンテージを漸次理科の方に重点を移していくように努めたいと存ずる次第でございます。  また今のお話の中にもございましたけれども、基礎分野におきます研究に対しまして、特に大学院の問題がございますけれども、学校を卒業いたしましてすぐ就職をしてしまう、むしろ優秀な者は会社に引っ張られて就職してしまう、従って大学院に残って基礎の研究をやる者が漸次少くなっていく傾向がございますので、これに対しましては特に博士課程に対する育英資金の拡大をいたしたいと考えております。今博士課程に対する育英資金は二口ございまして、一万円口と六千円口とございますが、その一万円口の方のワクを広げまして、なるべく基礎研究を大学に残って落ちついてやれるような方向に持っていきたい、かように考えております。大体大学生に対しまして来年度の計画で申しますと、七割くらいの学生に対しまして育英資金が出せるような予算を計上していきたいと考えております。
  111. 岡良一

    岡委員 なるほど理工学部の方の学生の数はふやすというような計画も承知しておりますが、しかしある大学では工学部に五十人ふやされたけれども、教育する施設と人が足りないから断わろうかと言っているのですよ。あなた方はそういう衝におられるからそういう事実もお聞きだろうと思う。問題は人をふやしてもそれをほんとうに仕込む教育者の陣容というものがなければ、結局は何もしないと同じような状態になるわけです。こういうものは総合的に施設も充実してやり人もふやしてやる、そうして学生もふやしてやるというようにして教育の実が上るようにしなければならない。ただ定員だけふやしてみたところで技術者がふえるものではないと私は思う。そこで、たとえば学生を応募させたところについてどの程度具体的にやっておられますか。
  112. 緒方信一

    ○緒方政府委員 御指摘の中の教官問題でございますが、来年千七百名を増員いたしますに対しましては、大体百三十名を教官増に充てたいと考えております。これは大学の態様によりまして若干違いますが、いわゆる講座制の大学におきましては、不完全講座の充実ということで年々教官を充実して参っておりますので、その一部を充てまして、来年度増員の教官の充実に充てたいと考えております。それからなお学科目制のところに対しましては新たに増員をいたしまして、両方合せまして大体百三十名ぐらいの者を千七百名の増加分に対する教官増に充てたいと考えております。なお御指摘のように学生を入れますと、初めは基礎教育でございますので、一般教育に当ります教員をまず初年度としては充実しなければならぬと思っております。これが学年進行によりまして漸次専門課程に移って参りますので、来年、再来年からはさらに専門課程の充実ということに進んでいきたいと考えております。
  113. 岡良一

    岡委員 いろいろ承わりましたが、私は文部省の科学技術振興に対する現在の予算措置は非常に不満足だと思う。これでは先進諸国に追いつくだけの科学技術の振興というものはなかなかできない。なお科学技術庁にいたしましても、そのようにして基礎が充実をする、基礎研究の分野が向上する、これを今度は応用化し工業化するということで、自主的な科学技術の振興をはかって、日本の産業の中に持ち込んでいくという工夫も、今度の理化学研究所三億三千万円出資というようなことではなかなかこの目的は達せられないと思う。もちろんこういうようなことは一挙に何千億の金を積んだところでできるものではないが、それならばこそ科学技術会議というものができて、そうして教育の面でもあるいはまたその応用化の面でも、あらゆる面で総合的にこの会議というものが所期の目的をぜひ果していただきたい。そういう意味で特に重大なのは文部大臣科学技術庁長官のお仕事だと私思うのであります。ぜひこの会議においては強い発言権を持たれ、また思い切って予算要求をされて、これがほんとうに科学技術振興のための会議として——科学技術の振興なんというものはワンマン・コントロールでいくべきものなんです。ワンマン・コントロールでいくくらいの意気込みで、この会議というものがほんとうに日本の科学技術の総合的な進展の中核となるという任務を果していただきたいことを、心からお願いをいたしまして質問を終えたいと思います。
  114. 福永健司

    ○福永委員長 西村力弥
  115. 西村力弥

    西村(力)委員 松永さんおいででございますので、ちょっとお尋ねいたします。  科学教育の振興のために教材の充実あるいは教員養成、再教育あるいは研究内容の充実、こういう方向に御努力なさっていらっしゃること、今までの御説明である程度知り得ましたが、そこで一つだけ大臣として大事な点を見失っておるのではないだろうか。それは科学教育をやるにはすし詰め教育は絶対にだめだということです。この点に一つ着目しなければならぬのではないか。小学校時代から一人々々に科学的なものの考え方、把握の仕方、処理の仕方というものを教え込むには、今のようなすし詰め教育では絶対にそれは不可能だ。科学的なものを身につけさせるには、もっともっと人員を減らしてやっていかなければならぬ。そして個々にじっくりと指導できるような工合にしなければ、科学技術振興ということは不可能であると思う。その点は直接的ではないように見えますけれども、ぜひそういう観点からすし詰め学級というものを完全に解消するということが基礎になっていかなければならないと考えておるのですが、文部大臣の御所見はいかがですか。
  116. 松永東

    ○松永国務大臣 これはもう私がいろいろ申し上げるより、専門家の西村委員はよく御承知ですが、実はすし詰め教育を解消するということが前提とならなければならぬということは御指摘の通りでございます。そこで実は三十三年度から何とかこれをやりたいと思って努力したのですが、財政上の見地からどうしても実現することができませんでした。しかし中学校は三十三年度と三十四年度で、これを予定通り五十人以下にするということに大体見当がついております。小学校は本年度が一番山でありますから、来年度から逐次減少いたしまして、大体五年かかれば完全に解消ができるという見通しでやっております。遺憾ながらそれよりほかには財政上の建前からどうにもできなかったことがまことに残念ですけれども、しかしながらおかげさまで中学校の方は、化学、理学あるいは数学、そういう基礎学をたたき込むには中学が一番重要なところだと思いますが、それは三十三、三十四年度に間違いなく解消できるというふうに考えております。一ぺんに本年度から解消するわけにいきませんが、年を追うていけるというふうに考えておる次第であります。
  117. 西村力弥

    西村(力)委員 その点はせっかく御努力いただきたいと思います。  次に伺いたいのは、大臣には耳の痛い点があるかもしれませんが、勤務評定の問題をあなたはどう考えられるかという問題です。これは文教委員会の問題かもしれませんが、科学技術の振興のために非常な熱意を持っていらっしゃるならば、関連のある問題ですからお答え願いたい。教員の勤務を評定する科学的な根拠というものはないということは、だれでもが認めているところであるわけです。ですからそういう科学的な客観的妥当性を持つ基礎がないのに評定をやるということになれば、主観的になるしあるいは権力支配的になるから、そういうことはやれないのだ、こういう工合に校長さん方が反対をする。そういう校長さんたちを押しつけて勤務評定を無理やりにやらせる。そういうふうに校長さんたちは沈黙させられたならば、真理は追究してやむなという信念というようなものは完全に沈黙させられてしまう。そういう状態に教育を押し込んで、科学教育をさせようということは、全く矛盾しているではないか。こういうことを私ははっきり申し上げたいと思うのです。  それからもう一つは、松永さんは紀元節問題に涙が出るほど感激を催しておるということを新聞で見ましたが、紀元節問題に対しては、御承知の通り保守的な歴史学者でも、こういうことが国の祝日として表面に押し出されてくれば、学術研究は不可能になると言って反対をしておる。これは思想的な立場からではない。学問の真理を守ろうという立場から反対をしておる。それに対して、そういうことは一切抜きにして、そうして民族感情的なものがあるのだからという工合にいってやるのでは——私がお聞きしたいのは、そういう工合に、一方においては紀元節というような、ともかく理も非もなく御幣をかついで、一方では科学技術振興といってサイン、コサインをやる、御幣とサイン、コサインが両立できるのかというのです。そういうことで、せっかく科学教育に御熱意を持たれて、だんだんのお話をされるこの際においては、少し敬虔なるお気持でお考えになるべき必要があるのではないか、こう思うのです。  お耳痛いかもしれませんが、そういうことは私はやはり申し上げなければならぬ。そういうことに対して、紀元節論争のときにはやはりそのときの論理を言うでしょうけれども、今は科学教育振興という純粋な立場でいらっしゃる。そういうときにおいてこそ、最も謙虚な、敬虔な立場において、そういう御幣とサイン、コサインを両立させるような自己矛盾をどういう工合にお感じになるかということもはっきり割り出せるではないだろうか、こう考えるわけなんですがね。その点はいかがですか。
  118. 福永健司

    ○福永委員長 西村委員に申し上げますが、御如才もございませんでしょうが、御発言は議題外にわたることがないように、なるべく……。(西村(力)委員「そんなことはない」と叫ぶ)いや、全部がわたっていると申し上げるのではない。そういう御趣旨で御発言をいただきたい。
  119. 松永東

    ○松永国務大臣 これはどうでしょうかな。御幣をかつぐときもあれば、また科学を考えるときもある。そう通り一ぺんにはきません。  第一に御質問になりました勤務評定、この勤務評定の問題は文部当局が自主性を持っているのじゃない。御承知の通り……。(西村(力)委員「そんなことを言ったってだめだよ」と呼ぶ)いや、だめじゃない。それは、あなたも御承知の通り、都道府県において自主性を持って、そうして都道府県の各教育委員会が実施する。でありますから、私の方では指導とか助言とかということはやれますけれども、私が自主性を持って、文部省が自主性を持ってやっているのじゃないということをまずもってお考えおきを願いたい。  さらにこれは法律はもう制定されて、いる。ですから法治国のわれわれとしては法律に従って行動せなければなりません。法律に反することができませんので、そこで都道府県の教育委員会がやる。従ってわれわれも、やっておられるのはけっこうなことだというので、まあ賛意を表しておるわけなんであります。これはまたいずれ文教委員会等で申し上げます  紀元節の問題ですが、あれは新聞に、私が随喜渇仰の涙を流したとかなんとかいいますけれども、そうじゃないのです。言ったことはこれなんです、紀元節のあの歌、雲にそびゆる高千穂の歌を歌うと、六十年前のことが頭に浮かんできて目がしらが熱くなるのを感ずると言ったんです。何も紀元節に私が随喜渇仰の涙をこぼしたというのではない。しかしそこは生きている人間ですから、そのくらいの感情があるのは当然であります。紀元節の是非についてはいずれまたその所を得、時を得て、申し上げることにいたします。
  120. 西村力弥

    西村(力)委員 どうも松永さんとあまりやり合う気持もありませんが——私も明治生まれで、四十五分の三くらい明治の血が入っているのですがね。大学の研究室が三〇%明治の者だというようなことを聞きまして驚いたのです。松永さんは何分の一になりますか、わかりませんが、そういお立場の人間の自然の気持というもの、これはだれも否定はできないと思うのですが、そういう気持は尊重しなければならない。それを若い青年にも押しつけることはやらない。相互に理解し合うということが、若い者と年寄りの相互の立場じゃないかと思うのですよ。だからあなたが随喜渇仰の涙を流したとか流さないとかは問題じゃないと思う。流したい人は何度でも流したらいい。ゲートルをはいて宮城遥拝をやりたい人は何ぼでもやったらいいじゃないかと思うのです。だけれどもそれを押しつけるのは——年寄りを敬うということを若い者に要求するなら、若い者を理解するということをしなければならない。双方の立場尊重し合うということでなければならないと思います。その話はいつか折がありましたら文教委員会などで御教示をいただきたい。本日は議題外になりますので、これで終ります。
  121. 松永東

    ○松永国務大臣 ついででありますから申し上げますが、私は押しつけるという考えはちっともありません。そうして大多数で紀元節は決定してもらえばそれでよろしいというふうなつもりであります。それだけを御了承願います。
  122. 福永健司

    ○福永委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時六分散会