○中川
委員 そうだろうと思います。おそらく社会党にも私は確たる御腹案はまだないのではないかと思う。ただ世論に迎合するために
国民年金制度にしてみんなによくしたらよかろう、こういうような無責任きわまる言動であろうと私は
考えておるのであります。もちろん
政府で
恩給問題に没頭しておる
恩給局ですら具体的な案はないのであります。社会党がいかに力んでみても、これは結局絵に描いたもちにしか過ぎないだろうと思うのであります。どうかそういう点につきましては
国民の中には迷っておるものがありますから、そういう点についても
政府は徹底的にPRを徹底させていただいて、むしろ社会党の絵に描いたもちのいわゆる空論を粉砕するように努力されぬと、
国民の中には迷うものがありますから、この点ははなはだ僭越でございまするが御注意を申し上げておきたいと思うのであります。
それから先ほど来いろいろの
委員によっての御
質問の中にもあるし、また
新聞の投書なんかによく現われておりますことは、
戦争犠牲者は何も
軍人ばかりでなく、爆撃によって家を焼かれたものもあるし、また命を失ったものもある。さらにまた農地改革によって土地を取られたものもある。これはみな
戦争犠牲者ではないか。何も
軍人だけ
恩給をふやそうというようなばかなことがあるか、こういう議論がかなり世間で行われておりますことは、長官初め
政府でも御存じだろうと思う。ところが先ほど来各位からの御
質問に対して長官並びに局長からもしばしば御
説明がございましたが、
恩給というものは一体そういうものと同列に見ていいものであるか悪いものであるか。私は少くとも
恩給制度は、先ほど私が聞きもしないことを局長は
説明しておりましたが、その中にあった通り、確かに
恩給は恩恵ではございません。社会保障とは私は違うと思うのです。極端にいえば、
恩給制度の問題はすなわち給与の延長だろうと思うのです。いわばあと払いの賃金です。だから雇用主である国家が使用人に対する契約を忠実に履行するということは
当りまえのことであって、これを社会保障費と同じだというような理念から
恩給をそのまま社会保障にせよというようなことは、ちょうどサラリーマンの月給を社会保障で支払えということと私は大差ないのじゃないかと思う。そういうようなことに対しましても、どうも
政府のPRというものが、ことごとに社会党にしてやられている感じがするのであります。そういうところから
新聞はまたおもしろがってやる。社会党の議論は空論ではございまするが、おもしろいものだから報道機関はこれを取り上げる。そうすると
国民はわからないためにこれについていくというまことに遺憾な風潮が、この
恩給問題について今全国にびまんしておる。ですから、社会党の諸君にはまことにお気の毒でございまするが、払は決して悪い気持で言っておるのじゃないのでございまするから、十分に
一つお許しをいただいて、要するに
政府はどうか
恩給問題に対して
国民にもっと正確なる資料を提供してわかっていただく、何でもかんでも政治には
国民は黙っておれ、ついてくればいいんだというような気持でなく、
国民に納得してもらって、そうして
国民の協力を得るにあらざれば、私はいかなる政治も達成できないと思います。どうかそういう点からいたしまして、今後はそういう機関が
政府にもあるのでございまするから、そういう機関を動員してPRを徹底させていただきたいということをお願いしておくのであります。
いよいよ本論に入りまするが、今回の
恩給改正につきまして、
文官の一部に
公務扶助料に対する倍率四十割というのがあった、ところが
軍人の
遺家族は二十六・五であるというので不均衡であるから、この不均衡を
是正せよという要求が御承知の通り各
方面からあったわけでございます。これに対して
政府は
文官の一部でとっておりました四十割というものを三十五・五に下げて、そうして
軍人の二十六・五を三十五・五に上げて同列にした、頭をそろえたわけです。そうしてあまり要求のなかった
ベース・アップで一万二千円というものを一万五千円にしたわけでございまするが、一体四十割を三十五・五に下げられましたために、
文官の一部では一万五千円
ベースになったならば、四十割なら当然六万円もらえるところを五万三千二百円という金しかもらえない。べース・アップといっても実際はべース・アップの恩典には
一つも浴さないわけなんです。ここのとこおわかりですか。四十割ろということは、今まで四十割、ところが三十五・五に下げられた。
ベース・アップをやってやったぞといっても三十五・五に倍率を下げられておるのですから、実際問題としてべース・アップの恩典には浴していないわけなんです。これは
一つのからくりなんです。ほんとうに一万五千円に
ベース・アップしてもらって今までの倍率通りに四十割もらえれば六万円もらえるわけなんです。ところがべース・アップしても四〇割を三五・五に下げたのでありますから、一万五千円に
ベース・アップしてやったぞということはかけ声だけでこのべース・アップの恩典には浴していないわけなんです。現にそういう不平が各
方面からぼつぼつ起っておる。しかも御案内の通り
普通恩給、普通
扶助料には倍率はございません。そこで今回のべース・アップの恩典に浴します者は
普通恩給、普通
扶助料をもらう階層である。言葉をかえて申しますならば、
生存者だけがべース・アップの恩典に浴することになるのであります。死んだ
遺族は倍率というもので一定の制約を受けておりますけれ
ども、
生存者で
普通恩給を受けております者は倍率がございませんからべース・アップの恩恵をまるまる受けることになるのであります。せっかく不均衡を
是正するというのがここにまた新たなる不平が起る。新たなる不均衡の発端を
政府は作っておる。だから私
どもは何も要求をしない
ベース・アップなんかしないでもよろしい。倍率の四十割の頭だけそろえなさい、そして将来
国家財政とにらみ合わせて、
国家財政がよくなったときには
ベース・アップすればよろしい、こういう主張をしたのでありますけれ
ども、
政府が出してこられた法案を見ますと、二万五千円
ベース・アップで従来の四十割もらっておるのを三五・五に下げるという非常なからくりの法案を出してきておられるのでありますが、一体これについてはどういうお
考えでございましょうか、伺っておきたい。