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1958-03-05 第28回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 福永 健司君    理事 相川 勝六君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大橋 忠一君       北 れい吉君    小金 義照君       纐纈 彌三君    田村  元君       辻  政信君    中川 俊思君       永山 忠則君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ケ久保重光君       淡谷 悠藏君    稻村 隆一君       木原津與志君    西村 力弥君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         総理府総務長官 今松 治郎君         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月五日  委員薄田美朝君辞任につき、その補欠として大  橋忠一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  九四号)      ————◇—————
  2. 福永健司

    福永委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。高橋等君。
  3. 高橋等

    高橋(等)委員 このたびの恩給法改正は、まことに機宜を得たときになされたものと考えております。昭和二十七年に援護法を制定しまして、自来いろいろと改正を継ぎ足し的にやって参りましたが、このたび、この遺族の父の年齢も、平均が六十七才になったといわれております。子供もだんだんと大きくなっておる。傷病者も傷を負ったままいろいろ苦労しております。結局一連の関係者が非常に老齢になり、これから数年先に、恩給文官とつり合いがとれたようにいたしましても、手おくれになる状況にあったと考える。そういう意味から、政府がこのたび根本的に文官との均衡をとって、これらの人の処遇を改善しようとするこの法案自体の出されました時期等につきましては、きわめておそかりしとはいえ、私は機宜を得たときになされたものと考えております。しかるにこの言論界その他の方面では、このたびの恩給法改正、すなわち恩給増額につきまして、いろいろと非難攻撃をなしておる向きがあるのでございます。この非難攻撃をなしておる内容につきましては、政府もすでに十分御存じだと思うのでございまするが、いろいろな誤解の点が含まれておるように思うのでございます。ことに生存軍人に対しまする反感といいますか、感情的なものが極端に表面へ出ておるということは、まことに私は遺憾にたえないと考えておる。この生存軍人といえども矢だまの中をくぐって参りまして、一歩間違いますれば、あるいは英霊となり、あるいは傷痍軍人となる、こうした運命のもとに、非常に辛苦を重ねまして、そうして武運よく生還をいたしたものでありまして、これに対しましてはむしろあたたかい目で国民は接していく、そうした態度があって私はしかるべきだと考えておる。ところがその点非常に偏見があるように考える。しかもこのたびの恩給法改正増額が、これら生存軍人に対する増額というような印象を国民の間に植え付けんとし、また植え付けられておる向きもある。これらについて、私はこれらの評論をなし、言論をなしておられる方々は、もう少し研究を願わぬと、世論を指導する上の非常な責任があるんじゃないかと考えておる。そこでこのたびの恩給増額につきましての性格といいますか、増額はどういうところに重点を置いてなされておるか、これらの言論界の一部の人々批判というものは当らないのだという点が多々あると思います。これらにつきましていろいろ説明も今まで行われた点があると思いまするが、一応これをまず政府からお伺いをいたしておきたいと思います。
  4. 今松治郎

    ○今松政府委員 高橋委員の御質問お答えをいたします。今回の恩給是正の問題が、当初三百億というワクが新聞に出ました際に、この三百億をいかように恩給方面に使うのかということがわかっていなかった関係で、ただいまお話しになりましたような、一部の評論家やその他民間の方々から非難があったことは事実でございます。従いまして私どもはこの三百億の使途を明瞭にいたしました直後において、あるいはテレビやラジオにおいて、その内容をつぶさに御説明申し上げたのでありますが、その後はそういうような一部の方々考え方が間違っておったということがわかった向きが非常に多いと見えて、私どもの方にも、ああいう分け方ならば、われわれもああいうような誤解をするんじゃなかったという、激励の書面もたくさん参っております。今回の恩給是正は、要するに重点戦没軍人遺家族公務扶助料増額傷痍軍人年金増額、それからまた老齢者に対する処置、こういうことが重点でございまして、大体今回の三百億のうち援護関係を除きまして、三百七十億円弱の金のうちの八割以上、八割五分くらいのものは戦没車人公務扶助料傷痍軍人年金増額、こういうことに充てた次第でございます。従いまして、お話になりましたような生存軍人恩給者、並びに文官恩給者に対しまする分は、三百億のうちの十三億足らずの額でございまして、このことに対する政府のPRが少し足りなかった点につきましては、われわれ当事者としてはまことに遺憾に考えておりますが、今申し上げましたような八割ないし八割五分が戦没軍人遺家族公務扶助料傷痍軍人年金増額、こういうことに相なっておる次第でございます。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 この恩給と申しまするものは、在官中に受けました俸給を基礎といたしまして、たとえば常道恩給につきましては退職後その三分の一、及び在職の勤務年限が十七年以上になりますれば、次第にこれを増加していく、逓増していく、こういうことになっておる。しかるにこのたびの改正当りましては、いろいろの制限が行われておるのでございます。たとえば年令の制限でありますとか、あるいはまた上級者に対して非常なしぼりをいたしておる。そこでこうしたやり方自体恩給法精神を没却するものではないかということが考えられるのでございます。それについては、どうしてそういうことをなさったか、またこの恩給法精神自体を没却するものであるのかどうか、というようなこと、そうしてもう一点お答え願っておきたいことは、これらの制限については、将来の財源の状況をにらみ合されまして、これを緩和される意思があるのかどうか、その点につきまして、政府の御答弁をいただきたいと思います。
  6. 今松治郎

    ○今松政府委員 今回の処置につきまして、ただいま御質問がありましたような、上に非常に薄く、下に非常に厚く、こういう方針で処理をいたしました関係で、今、恩給法の趣旨に反しやしないか、こういう御質問でございますが、この点は厳密に法律論として考えますれば、あるいはそういうような点がないとはいわれないと私は思うのであります。ところが恩給制度時世の進運とともに、時世に即応したような考え方で進まなくちゃならぬという点から考えましても、また今回の是正が、先ほど申し上げました上に薄く下に厚くすることが、ただいまこの問題を当面解決するに最も必要な条件である。また若い方々は年寄りに一つ譲ってもらうと、こういうような考え方、こういうようなものを勘案いたしまして、今回のような処置をとった次第でありまして、将来こういうような問題をどうするかという御質問に対しましては、私ども考えとしましては、今のこの恩給法が存続いたします以上は、将来非常に財政的の余裕ができたような場合には、あらためて考えられる問題であろうかと、こういうふうに考えております。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 そうしますと、これは恩給法の従来のあり方というものと、今の時世国民考え方といいますか、今の時世にマッチしたやり方というものを組み合せてなされた、こう理解いたします。それでこれが将来緩和の意思があるかないかということを承わった。特に六十才以上の制限ということは、これは財政上やむを得ざる予算関係上そうなっておるのだろうと思う。別にこれは近代的なものと私は考えない。この点についてもう一度将来どうなさるのか、お考えを承わっておきたいと思います。
  8. 今松治郎

    ○今松政府委員 六十才以上の方にとりあえずこういう処置をとったと申しますのは、主として財政上の処置でございまして、財政が許しますときにはまたその点をあらためて考える必要があると思います。
  9. 高橋等

    高橋(等)委員 次に傷病恩給についてお尋ねいたしたい。この傷病恩給につきましては、予算総額傷病恩給関係十八億六千万円、それに普通恩給併給二億六千万円、こうなっております。普通恩給まで加えますと二十一億程度のものになると考える。それで予算面の上で遺族公務扶助料に非常に多額のものがいきまして、傷病恩給関係には非常に僅少なものしかいっておらない。こういうことで、いろいろと関係者もこれには、傷病関係で、戦争に行って非常に不自由なからだで戻って、現に生活を営んでいる非常に気の毒な人、こういう人々生活を保障するには不適当じゃないか、少しそういう関係を冷遇しておりはしないか、こういう不足がございまするし、また最近の新聞論調その他を見ましても、予算総額が十八億とか二十一億というのでは、遺族の方の関係の二百数十億に比べまして、非常に傷病圧迫である、こういう予算面だけを見たいろいろな非難があるのでございます。この点はぜひとも政府におきまして解明をしていただかなければならない。この点はどういうようになっておりますか、一応御説明をお願いいたしたいとともに、傷病恩給についてどういうお考えでこの増額をおやりになったか、これを承わっておきたいと思うのであります。
  10. 今松治郎

    ○今松政府委員 傷病恩給につきまして、お話のような非常に傷病者処遇をこの案においては軽く見ておるのではないか、こういう御質問でございますが、私どもといたしましては、傷病恩給につきましては特に力を入れたつもりでありまして、私は予算編成の当時におきましても、傷痍軍人処遇の向上につきましては最後まで努力をいたしまして、先ほどお上げになりました十八億六千万円の金額をとったわけであります。これが非常に少いような感を一部の方が抱いておられることにつきましては、おそらくこれは二十八年の法律が制定されました際に、傷痍軍人素礎の額が少し少きに過ぎたのじゃないか、こういうような点がないでもないと思いますが、今回におきましてはこれは全部一万五千円ベースにいたしまして、その一万五千円ベースにのっとって算出いたしましたものが、第一項症が十七万一千円であります。これがもっと二十万くらいになるのが至当じゃないか、こういうような御意見もあったのでありますが、算出の基礎から申しますと十七万一千円、それでは重症者に非常にお気の毒であるから、二項症以上の重症者に対しましては、初めて今度介護手当というものを設けまして、介護手当は年額二万四千円でございます。これを一つ出すことにいたしたい、こういうような処置もとりまして、全体といたしましては、恩給審議会の御意見を尊重いたしますと、重症者に非常に厚く、軽症者にはまあ軽く、こういうことが強くありましたが、私ども軽症者といえどもこういう際に予算の許す限りの増額をいたすことはぜひ必要である、こういうことの観点から、五割五分から八割の増額をいたした、こういうわけでありまして、事実をよく知って傷痍軍人処遇が少いという方がございますれば、それはまた数字をあげて御説明いたしますが、全然そういうことでなくて、どうも総額において十八億六千万円は少い、こういうことは、内容をよく御検討いただくと当らないんじゃないかと思っております。なおまた従来一番問題になっておりました一番むずかしい内部疾患の問題、これに対する裁定は従来非常にシビヤーでありまして、お気の毒な点がだいぶあった。この点につきましては、そういう方面調査会を将来作りまして、これが是正をはかりたい、こういうふうな考えを持っております。いずれ案ができましたらまたお示しして御批判を聞きたい、こう思っております。
  11. 高橋等

    高橋(等)委員 ただいま内部疾患の格付と申しますか、等差例改正といいますか、そうしたものについて調査会を設けて、内部疾患についての款項の関係をもう一度洗う、こういう重要な御発言があったように思う。これはきわめてけっこうなことだと私は思う。そこでその調査会と申しますものは、これは法律による調査会であるか、あるいは内閣に設置されるものであるか、一応まだはっきり閣議などで出ているように思いませんが、どういう構想でおられるか、その構想の一端をお漏らし願いたいと思う。  それからこれは恩給局長からでもけっこうですが、今傷病関係で問題になっているのは、先ほど申しました予算振り分けです。増額三百億に対する予算振り分けが相当問題になっている。すなわち傷病恩給十八億では少な過ぎるのだ、遺族公務扶助料は非常に多いのだ、こういうふうな表現でなされているのでございますから、予算総額に対する振り分けについて、どういうような率を公務扶助料は占め、傷病恩給は占めるか、そこで政府がやりました措置の判断の資料にしなければならぬ、こう考えるので、その点の御答弁を特にお願いいたしたい。
  12. 今松治郎

    ○今松政府委員 ただいまお答えいたしました調査会の問題でございますが、これはまだ私の私案の程度でございますが、法律による調査会ではなく、閣議決定による調査会を作って、それによって慎重に審議をして、今のような問題の足らないところを補っていきたい、こういうふうに考えております。
  13. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 億の中における傷病恩給関係増額というものがどうなっているかと申しますと、本年度の現在における予算額と対比いたしまして、その増加分というものを考えて参りますと、公務扶助料におきましては、六百三十四億六千万円という現行の恩給費に対しまして、今回の増額案におきましては二百二十九億六千万円、約三六%の増になっております。これに対しまして増加恩給につきましては、現在二十億の予算でございますが、これに対しまして十四億六千万円、すなわち七三%の増加となっております。また傷病年金につきましては、現在七億七千万円でございますが、これに対しまして三億六千万円を増加しようとするものでありまして、約四七%の増となっておるのでございます。また一人当り増加分につきまして考えてみましても、増加恩給につきましては、七項症から第一項症まで平均いたしまして、一人当り二万二千四百三十八円、これに併給されるときの普通恩給の増を考えて参りますと、二万五千八百三十八円、こういうふうになるのでございます。また傷病年金につきましては、一人当り平均五千五百五十七円、こういうことになっております。これに対しまして、公務扶助料の方は、これは兵から上の階級まで平均でございますけれども、一人当り一万六千六百六十三円、こういうふうなことになっておりますので傷病恩給につきましての予算対比におきましても、また一人当り増額比率におきましても、そう遜色のないものと考えておる次第でございます。
  14. 高橋等

    高橋(等)委員 ここで法制局にちょっとお尋ねを申し上げたい。それは憲法第二十九条の財産権に関する問題でございます。この恩給関係をたとえば年金に改めるとか、いろいろな制度に変えまする場合に、現実に受け取る金額というものが、個人々々の手取りが減少をいたすという場合は、第二十九条の侵犯になるかどうか、この点を承わっておきたいと思います。
  15. 野木新一

    野木政府委員 憲法二十九条の財産権の問題でございますが、恩給に関する権利、たとえば年金恩給を受ける権利、これもすでに給与事由が発生して権利が発生した以上は、やはり憲法二十九条の財産権に入るものと解されます。しこうしてこの場合に現実手取り額を減らすような結果になる法律改正をすることは、果して財産権侵犯になるかどうかという点に関しましては、やはり現実手取り額が減るようになるのは憲法違憲疑いがあるのではないか、さよう存ずる次第であります。
  16. 高橋等

    高橋(等)委員 それではもう一つ承わりますが、たとえば三年間に分割して受け取るべきものを、それと同じ総額を五年間にあるいは六年間に延長しまして分割して受け取らすようにする、こういう場合に、これが二十九条に抵触するかどうか、その点もう一つお答え願いたい。
  17. 野木新一

    野木政府委員 ただいまの御質問はなかなかむずかしい点を含んでおると存じますが、まず第一に三年間なら三年間に年金として受け取るべき権利を、五年なら五年に変えることはどうかという点が問題になると思いますが、やはりそれが合理的な理由があるかどうかという点がまず問題になると思います。かりにその点が何か公共の福祉とか合理的な理由があるといたしましても、次に三年のものを五年なり七年にするという場合において、その財産的価値が果して等価値であるかどうかという点が第二の問題になるのではないかと思います。しこうして、かりに全く等価値と認められる場合におきましては、これは必ずしも直ちに憲法二十九条の問題になるかどうか、この点は先ほどのようにはっきり違憲疑いがあるとまで申さなくてもあるいはよいのではないかと存ずる次第でございます。
  18. 高橋等

    高橋(等)委員 私の質問がちょっと抽象的過ぎるので、お答えもそうなったのだろうと思うのですが、そこで最近ある党が、国民年金制度へ移行いたしますために、恩給打ち切り補償をやろうという案を発表いたしておる。それは今までの恩給をやめまして交付公債でこれを出そう、しかも交付公債を一定の年限据え置いて出そう。そして困窮者その他事由ある者には据え置きはやめて出そう。しかも相当年限を限った打ち切りをやる、七年なら七年で打ち切りをやる、こういうようなことを実は持ち出されているのでございます。それも一つ考え方だと私は思う。しかし今の年々受け取っておりまする恩給公債に切りかえまして、その公債の対価が今までのものと同じであるかどうか、これは疑問がまだあってはっきりしないのですが、公債にして、しかもそれを七年なら七年据え置いて、その後においてこれを分割して公債償還の形でやっていく。こういうようなことをやりますことは、私は二十九条の財産権関係から考えてみますと、非常に大きな疑問がある。今この憲法下においてそういうことは無理だと考えるのでありますが、これについての法制局の御意見を承わっておきたいと思う。  それとともに、この公債を発行いたしましても、今の恩給と同じ手取りを出すとするならば、これは国家財政の上から言いましてちっとも財政切り詰めにも何もならない。もし今の手取りより減すとすれば、これは明らかに、先ほど御答弁になりましたような、憲法第二十九条の財産権の侵害になると考えなければならない。そこにこの案について非常な疑問があるのですが、御答弁をお願いいたしておきたいと思います。
  19. 野木新一

    野木政府委員 ただいま仰せになりました公債に切りかえることは、これまたいろいろ構想考えられると思います。しかしながらこの場合におきましても、まず第一に、先ほど申しましたように、原理といたしましては、果して年金公債に切りかえる合理的理由があるかどうかということが問題になります。  第二におきまして、かりにそうだといたしましても、その等価値関係において切りかえられるかどうかという点が問題になります。等価値関係において切りかえられないとすると、これはやはり違憲疑いがあるのではないかと存ぜられる次第であります。そして等価値関係において切りかえるということになりますと、果してどういう実績があるかというような点が、これは政策問題になるかもしれませんが大いに論議されるべき点だと思います。  それからなおつけ加えて申しますれば、恩給性質上、たとえば財政的の点を考えますと、大量観察によって二十年、でやるというようなものを今度は四十年に引き延ばすということになれば、年々財政的負担は減るということで財政一つ貢献するということも考えられると存じますが、そうなりますと、果して死んでから——たとえば扶助料なら扶助料普通恩給なら普通恩給につきまして、生きている間にもらうのが恩給一つのあれでしょうから、それが四十年の後おいて死んでしまってからもらうということになると、果して恩給の本来の性質に合致するかどうかというような点も、なお研究すべき問題だと存じます。そうしてみますと、果して等価値という関係において公債に切りかえられるかどうか、かりに切りかえるとしても、果してどれだけの財政上の実績があるかという点につきましては、なお非常に研究すべき問題があるのではないかと存じます。
  20. 高橋等

    高橋(等)委員 二十九条の財産権恩給権の問題につきましては、また口をあらためて詳しくお伺いをいたしたいと思います。  それで、世の中に恩給亡国論ということをしきりにいわれる。それは恩給費が年々増額をする。事実増額をいたしておるのでございます。ことに今回の三百億円の増額は、四年間でこれを完了いたすものでありますが、やっている内容は、今政府説明しました遺家族傷痍軍人戦争犠牲者に対するこれは戦後処置的な性格を持ったものであって、当然これはこの時期にやらなければ手おくれだというので、冒頭言いましたように、いい時期に、おそかりしといえどもおやりになったことはけっこうだ。ところが三百億の負担ということは、やはり何と申しましても財政上相当の負担でございます。この点が非常に、やらねばならないことと、やりたいけれども、どうも金が非常に困るということで、実は苦痛がある。しかもこのたび三百億の増額というものは、将来財政に大へんな影響を及ぼすと思います。しかしやはりこの恩給は、今後新たなる裁定があればふえますが、その他新らしい原因によって恩給がふえる要素はないのであります。そこで、かえって減耗率の方がだんだんと出て参ると私は思う。そこで恩給費というものが将来どういうようになっていくのか、一応十ヵ年くらいの見通しを、この際恩給費全般について及び三百億の内容について、もしできておりますれば、あわせて国民の前にこれをはっきりとさしておいていただく必要があると思いますので、お答えをお願いいたしたいと思います。
  21. 今松治郎

    ○今松政府委員 恩給亡国というような言葉をときどき承わるのでありますが、私ども考えといたしましては、本年度一兆三千億余の予算のうちで、恩給費が占めるパーセンテージは、正確なことはわかりませんが、大体七%くらいだろうと思っております。それから今回の恩給増額によって、一番ピーク時になりまする三十六年度におきましても、経済の伸びというもの等勘案して予算考えてみますと、大体八%くらいになるのじゃないか、こういうように考えておりまして、私は恩給亡国ということはどうも考えられないのでございます。ただ、今の恩給費のうちで大部分を占めますものは軍人恩給でございまして、そのうちまたその大部分を占めますものは、いわば戦後処理とも申すべき戦没軍人扶助料、こういうことになっております。この扶助料を受ける方々は、大体非常に老齢の方が多いのであります。また近く成年に達する子女も多いのでありまして、この分の増額は、三十六年を契機といたしまして、あとは漸減の道をたどっていくように考えられます。一応私から申し上げまして、足りない点は恩給局長から申し上げますが、三十三年度を一〇〇といたしまして、三十四年度は一一三、三十五年度は一二一、ピーク時の三十六年度は一二二でございます。その次の三十七年度には一一六、三十八年度には一一四、三十九年度には一一〇、四十年度には一〇八、四十一年度には一〇五、四十二年度には一〇二、四十三年度には九九、こういうような指数を大体たどっていくように考えております。
  22. 高橋等

    高橋(等)委員 ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、それは今年度恩給と来年度以降の恩給との比率でございますか。
  23. 今松治郎

    ○今松政府委員 三百億の増額をいたした上の計算になっております。
  24. 高橋等

    高橋(等)委員 それは三百億の増額をいたさないものと三百億の増額をいたしたものとの比較じゃないのですか。
  25. 今松治郎

    ○今松政府委員 私が説明をいたしましたのは、三百億を増額いたした後のものでございます。三十三年度を一〇〇とした計算でございます。
  26. 高橋等

    高橋(等)委員 恩給局長にその具体的数字の説明を求めます。
  27. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま総務長官からお述べになりました指数は、三百億増額案を実施いたすといたしました場合の指数の伸びでございます。それを解析して申し上げますと、現在のままで今回の増額を行わないといたしました場合において、どうなるかと申しますと、三十三年度予算におきましては一千億でございます。今回の増額分は、これの上に三十四億のるわけでございますが、それがのらないといたしますると、一千億。この一千億というものが将来の趨勢においてどうなるかと見て参りますと、それが十年先には八百十九億、約二百億落ちるような見当になっております。これに対しまて、今回の平年三百億の増額案というものを実施いたします場合、これは今年度におきましてはその八分の一を計上いたしまして、逐次実施していくわけでございますが、これをやりますると、今年度予算は一千三十四億、これが三十六年度におきましては一千二百六十三億というピークを示しまして、漸次下降の傾向をたどって、十年先の四十三年度におきましては千二十六億というところで、約二百億以上のものがピーク時よりも落ちてくる、こういう勘定になっております。
  28. 高橋等

    高橋(等)委員 この数字の点につきましては、あらためてまた十分に御質問をいたしたいと思います。それで、いわゆる加算制度というものは、昭和二十八年に軍人恩給法を制定しましたときに、政府答弁では、遺族傷痍軍人が優先である、この遺族傷痍軍人の補償がまだ十分に行われておらないとぎにこの加算をやることは、しばらく待ってもらいたい、これが政府答弁で、その後ずっとその答弁で参ったのであります。そこでこれは恩給調査会でも問題になったのでありますが、これは大へん不均衡のはなはだしいものだ。もらっている金額が少いというのじゃないので、もらっている人ともらわない人がある。しかも条件におきましては、長らく戦地へおった人ほどもらってないということに実はなる。早く帰ってきた人が恩給権ができて、苦労して長くおった人は全然ない。これくらい不均衡はないのでございます。そこで政府におきましても、この加算制度、これは御答弁をここで特にお願いはいたしませんが、この制度につきましては、先ほど来申すように、国会で一貫した御答弁があったのでありますから、遺族、傷痍者の問題が片づいてきた本日、この加算制度というものに一つ真剣に取っ組んでお考えを願いたい。これは特に希望を申し上げておきます。  それとともに、公務員の退職年金制度につきまして、政府においてもいろいろと御検討になっておるように思うのでございますが、合理的なものをできるだけすみやかに本国会へ提出なさるように私からお願いを申し上げておきます。これをもって私の質問を終りたいと思います。
  29. 福永健司

    福永委員長 淡谷悠藏君。
  30. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はまず恩給法等についてお伺いいたします。提案理由説明の中に、昨年六月臨時恩給調査会を設置していろいろ検討したということがございます。この報告も一応は受けておりまするが、この臨時恩給調査会においていろいろ意見の出ました中に、少数意見があったはずであります。本日は一つこの発表されない少数意見についていろいろと承わってみたいのでありますが、先ほど高橋委員から話がございました通り、この恩給の問題が出ましたとたんに、世間では恩給亡国論が強く出ました。その中で、今回の恩給増額に関連しまして、恩給そのものの本質的な問題が相当論議されたのであります。もとより戦争当時の恩給の観念と、今日あなた方が増額されました恩給との間にいろいろ考え方の相違があるはずなのであります。あの戦争当時と同じような軍人恩給の観念では、国民はとてもこれを受け入れまいと思う。この調査会におきまして、そういう基本的線について何らかの論議がなされたかどうか。あったとするならばその点を御説明願いたいと思います。
  31. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま、臨時恩給調査会において恩給性格というものについての基本的な論議がなされたかどうか、こういう御質問でございます。  臨時恩給調査会の答申の冒頭の前書きにも書いてございますように、恩給の本質というものが歴史的な変遷を経てこういうものであるということを述べ、また戦後における恩給制度というものが、本質的には国の使用主責任に立脚するものであるという見地に立ちながら、しかもいろいろな歴史的な背景あるいは戦後における諸事情の背景のもとに、法律百五十五号におきましても相当な改変を加えられたものとして参りましたし、またその後の類似の改正においても、現実即応、現実重視という方向に相当形を変えて参ったということを指摘しております。この点につきましては今回の改正案においても、本質的なそうした恩給の根本観念には立脚いたしましても、なお現実を重視するというような意味におきまして、遺族傷病者現実生活重点を置くような考え方にだんだんと近寄ってきておるということはいなめないと思うのであります。そういうような問題についての論議は相当かわされたわけでございまして、この臨時恩給調査会の冒頭陳述のうちにこの点が指摘されておると思っております。
  32. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今回の措置はこの提案理由説明にもございます通り、「戦没軍人遺族ならびに戦傷病者処遇の改善と老齢退職公務員の処遇の向上に重点をおいて、」とございます。この場合に、いわば戦争の犠牲者に対して報いるという観念が相当強いように思いますが、この戦争犠牲者に対する報い方が、今度の戦争の特質上、軍人ならざる者の犠牲も相当に大きかったと思いますが、こういう点の御論議はなかったですか。
  33. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 臨時恩給調査会におきまする主題は、恩給法のワク内の問、題、あるいは援護法のワク内の問題でございましたので、そうした広範な問題については積極的に論議の対象にはならなかったと私は記憶しております。与えられた使命というものが恩給法のワク内の問題、援護法のワク内の問題でございますので、その処理重点が置かれたために、その答申の内容もそこまでに手が及んでおらない。もちろんそういう問題は頭に置きながら、背景に置きながら答申を出されておりますけれども、正面からそれをどうこうするというところにはなっておらぬ、こういうふうに思います。
  34. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今松長官に質問いたしますが、今お聞きの通り、非常に慎重に考慮されましたという報告のある臨時恩給調査会においては、その点は触れてなかったようです。長官は一体そういう点はどうお考えになっておりますか。
  35. 今松治郎

    ○今松政府委員 戦争の場合に赤紙で召集を受けて戦地でなくなられた方、また総力戦でありますから、国内においても敵の爆弾その他正で非常に被害を受けた者と、これはお気の毒な点においては同じでありますが、しかしこういう問題を、戦没遺族とこちらでそういう爆弾等でなくなった方と同じにするということは、今この恩給法考え方はちょっとむずかしいのではないかと思います。ドイツなんかのような国におきましては、こういうものを全体ひっくるめまして、戦争犠牲者の援護の年金なんかができておりますが、わが国ではまだそこまで至ってないのは一非常に遺憾であります。
  36. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 恩給法のワク内ではそれが解決つかぬことはわかっておりますが、少くともあの戦争の結果、日本は大きな変革を見ておる。この際そういうふうな不自由かつ不均衡な恩給法改正等にだけよらないで、こうした戦争犠牲者に対する根本的な報い方、また一般国民の苦労にも報いるような国民年金との均衡は一体どういうようにお考えになっておるか、これはしばしば国会で問題になっております。近くこの国民年金制度も出てくる、こういうようになっておる。この場合に特殊な古い恩給法の再現するような形になりはしないかという点が大へん危ぶまれるのですが、その点はどうですか。
  37. 今松治郎

    ○今松政府委員 ただいま淡谷委員お話のような戦争犠牲者に対する援護の問題は、これは大きな社会保障制度の確立に待ってこれをやっていく、こういうより仕方ないのじゃないかと思っております。またそういうような方向に——私の方の所管ではございませんが、厚生省の方でも考えて、いろいろ検討しておられる段階にあると思うのです。国民年金制度が非常に伸展して参りますと、それと恩給制度とは非常に調整を要する面がたくさん出てくるのじゃないか、こういうように考えて私の方でも検討を始めてはおります。
  38. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 先ほどの御説明によりますると、恩給亡国論に対する一つの反論としまして、七%あるいは八%という。パーセンテージが出て参りましたが、やはり一千億円という額は小さくはないのです。従って社会保障制度においても全般的にこれが均霑するとしました場合に、この一千億円の恩給というものは予算的に非常に大きなしこりを残すと思います。社会保障制度を徹底的に行なった際に、今長官の御答弁の中にありました恩給法と相接して摩擦するような面があった場合に、これを大幅に直すような含みはございますか。恩給制度があるために、完全な年金制度あるいは社会保障制度が実行できないというような立場になった場合に、さっきもやかましく言われました財産権の問題等もございまするので、今増額したものをその際また改定するという形になった場合に、そういうふうな変な問題を残すということになりませんか。
  39. 今松治郎

    ○今松政府委員 社会保障制度が非常に進展して参りまして、非常に気の毒な国民全般の経済上の援護をする、こういうことは非常に望ましいことではありますが、これは日本のただいまの経済事情から見て、果してそういうような恩給に見まがうような社会保障制度が行われるかどうかということは、私はちょっと見当がつきませんが、社会保障制度恩給制度というものは、これはもともと出発点を異にしておりまして、御承知のように恩給は国家が使用主の立場において、その使用しておる者の退職または死亡後の生活の補いをするのであるという観念でございますから、それを今の与えておる財産権ともいうべき恩給権をなくして、そしてそれを社会保障に振り向けるということは困難かと考えております。
  40. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それならなお私は事は重大だと思うのです。今度の戦争は日清戦争、日露戦争と違いまして、国内戦における犠牲が非常に大きいのです。国家にかり出されて、赤紙一枚で戦場に引っぱっていかれた軍人も、むろんこれは気の毒でございますけれども、何らそういうふうな覚悟はないうちに、空襲の下に死んでいった人はもっと私は気の毒じゃないかと思うのです。そうすると国家は、あなたのおっしゃる使用人に対しては十分補償するが、国家の施策の誤まりのために受けた損害に対しては、ちっとも補償する意思がない。この犠牲者に対しては報いるところがない、こう解釈されますが、それはどうでしょう。この辺に、私は非常に大きな今回のこの法改正に対して国民の反論があると思う。その点はどうお考えになっておりますか。
  41. 今松治郎

    ○今松政府委員 その御議論は非常にごもっともな点があると思いますが、私の方の所管外のことでありますので、私からここで御答弁をいたしますことはちょっとむずかしい問題だと思います。
  42. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたに御答弁ができなければ、あとでまた総理大臣にでも出てもらいますけれども、そういうふうな点の願慮はなされなかったのですか。増額しなくても残る問題です。増額するだけ他の戦争犠牲者との間の均衡が大きく失われていくのでございますが、その点は委員会等でも論議されず、あなたもまた考えないでやったとは私には思われませんが、御考慮はなかったのですか。
  43. 今松治郎

    ○今松政府委員 今度の恩給是正の問題につきましては、その恩給法のワク内において私どもは作業をいたしましたので、ただいまお話のような問題は、所管といたしましては、御承知のように、厚生省で検討をしている問題じゃないか、こういうように考えております。
  44. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっきならその御答弁で——もし国民年金制度かあるいはまた社会保障制度が、全国民に均霑するような大きなワクになった場合には、この恩給法というものは若干の摩擦が生ずるかもしれないという御答弁は、そのまま確認してよろしゅうございますか。
  45. 今松治郎

    ○今松政府委員 私が御答弁申し上げましたのは、かりに国民年金制度ができて、今の、そういうことがいつのことか私にも見当つきませんが、年金制度が今の恩給額よりも上回るようなことも、将来においては予想されなくちゃいかぬじゃないか。それからまた将来恩給増額の問題が、また経済上の変動に伴って出てくるかもしれません。そういうような場合、社会保障制度でいろいろな制度がこれから実行に移された場合、恩給法の今の観念を加味したような制度になる、あるいはならぬかもしれませんが、そういうふうなときに両方が相反するような、ダブるようなことがあっては相ならぬと思いますので、かりに国民年金が出るような場合、恩給法でもらっておる者は、年金法の場合どういうような処置をとるか、こういうようなことで調整をする必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  46. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはどうせあなたの所管外でございましょうから、あらためてまた質問いたしますが、この理由説明の第四点に、「上に薄く下に厚くするという精神に立脚し、」というふうに書かれてある。以前の恩給が少数の将官に非常に厚くて、下の兵隊さんたちには薄かったというような非難があったことは当然でありますが、今回の改正において、その点がどの程度に緩和されましたか、数字は見ておりますが、一体あなたの観念の上にどの程度精神が実現されておるか、承わりたい。
  47. 今松治郎

    ○今松政府委員 生存者の恩給の場合を例にとって申し上げますと、将官級のべース・アップというものは、この際は一つもいたしません。それからいわゆる大佐から少佐に至る佐官級の恩給につきましては、五割ないし八割の減額、一万二千円べースから一万五千円ベースに上げましたもののうちで、五割ないし八割の減額をいたしました。それから尉官の場合は、一割ないし三割の減額をいたしております。こういうような工合に、従来相当高給でありました将官級は、ストップをして、佐官級も、そういうような大幅の制限をいたしました。尉官級におきましても、相当の制限をいたしました。また公務扶助料の倍率を上上げました場合にも、下士官以下の方々は三十五倍半の倍率に引き上げましたが、少尉以上の方には倍率の引き上げは行わなかったのであります。
  48. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 恩給局長一つお答え願いたいのですが、今の御説明に基いて改正された場合の具体的な数字を、あらためて御説明願いたいと思う。将官級はどれだけ、佐官級はどれだけ、尉官級はどれだけ、一般兵はこう、こういうふうに具体的な数字について御説明願いたいと思います。
  49. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今回の法律案におきまする増額におきまして、公務扶助料の例をとりますと、公務扶助料は兵から准士官までのところを倍率を修正いたしますとともに、一万五千円ベースにしてございます。それ以上は倍率は現行のまま据え置く。そうしてまたベース・アップの面は、将官は現行の通り据え置く、大佐は二割程度増額、すなわち一万二千円べースと一万五十円ベースの間の二割程度増額、中佐は四割、少佐は五割、大尉は七割、中尉は八割、少尉は九割というような程度の引き上げにとどめたわけであります。その結果どの程度増額になるかと申しますと、増額の率の方から申しますと、兵の公務扶助料増額率は五割一分上っております。伍長の場合は四割四分、軍曹の場合は四割二分、曹長が三割九分、准士官が三割二分、少尉が一割六分、中尉が一割三分、大尉が一割一分、少佐か六分、中佐が五分、大佐が二分、この程度の上り方でございまして、佐官クラスにおきましてはわずかに二%ないし六%ということでございます。従いまして将官におきましては、全然現行のまま担え置きでございまして、今回の改正におきましても増額は見ておりません。また普通恩給におきましても、大体今申し上げましたような程度の上昇率、すなわち佐官級におきましては現行よりも二%ないし六%くらいしか上らぬ。尉官クラスにおきましては、一割ないし一割六分という程度しか上らぬ。普通恩給におきましては、大体におきましてこれは年功恩給でございますから、下士官兵におきましてはそうした実在職年の長い年限恩給をもらうということは少いのでございまして、これの率をここで比較して考えるということは、あまり当りませんので、ここでは申し上げないことにいたしておきます。  それから実額について申し上げますと、先ほどの公務扶助料の額は、兵の額は今回現在よりも一万八千円ばかり上るわけでございまして、それに対しまして、尉官クラスは約七千円、佐官クラスは少佐において五千四百八十円、中佐において四千九百八十円、大佐において二千四百二十円、この程度でございます。以上申し上げました数字は、これは普通恩給最短年限というもので計算いたしました数字でございまして、在職年限が延びれば延びるだけ、また数字が若干変って参りますけれども、今申し上げましたのは、最短在職年ということで計算をいたした結果を申し上げたわけであります。
  50. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 局長にいま一応お伺いしたいのですが、これはいろいろその人によっては違いましょうけれども、これらのすべてのものを総合した場合に、将官級は実額がどれくらいになるか、佐官級はどれくらいになるか、尉官級はどれくらいになるか、兵はどれくらいになるかという実額の一、二の例をお聞きしたいと思うのであります。
  51. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま申し上げましたのは、すべて在職年を普通恩給最短在職年として計算しておりますので、たとえば将官の場合に、三十五年お勤めになった方もございましょうし、また四十年でおなくなりになった方もございましょうし、いろいろでございます。そこで将官の場合に三十五年であれば幾ら、佐官の場合に二十五年であれば幾らというふうな想定を立てた数字というものは、今手元にございませんので、いずれそれを作らしていただきまして、お手元にお届けいたしたいと思います。
  52. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そう正確でなくともよろしいのですが、従来の恩給額は明らかに上に厚かった。たとい据え置いても、この上に厚い現状は変らぬと私は思うのです。パーセンテージでいえば大した違いはないのですが、実額で例を出しますと、まだ相当開きがあります。これはやはり戦争中の階級制が、戦争後の今日に至るまでずっと残ってきた恩給制度を踏襲したものとして、今回うたわれました、上に薄く下に厚くというのは、非常にごまかしみたいに受け取れるのですが、その点はどうですか。
  53. 今松治郎

    ○今松政府委員 そういうふうにお考えになることも、あるいはごもっともかもしれませんが、しかし従来の恩給は、先ほど高橋委員からも法制局に御質問がございましたように、一種の財産権になっております。私どもは今回の増額分について、先ほどから申し上げておりましたような、上に薄く下に厚い、こういう方式をとったわけであります。従来の分は今のところといたしまして何ともいたし方がない、こういう見方に立っております。
  54. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 財産権に基いてやったと申しますが、やはり戦争中多くの国民は財産を失ってもどんな目にあっても、やむを得ざる犠牲としてあきらめておる。戦争中の財産権はあくまで主張するという観念を持つならば、こういう戦争の犠牲になった一般の国民の間には、その財産を失った責任に対して強く政府を責め、また要求するという風潮が生れてくるように思われますが、その点はどうですか。
  55. 今松治郎

    ○今松政府委員 私の申し上げたのは、恩給権というものが、今大体大部分の学者の観念では財産権ということになっております。ですからこの問題を二十八年に初めて軍人恩給がなくなっておったのを復活さしたときに、そのときの法律でそのことが何らかの措置がとってあれば、あるいはまた別の、お話のような観点が出てくるわけでございますが、あのときにそういう権利が発生したのでございます。これは今われわれとしては何ともいたし方がない、こういうような見方であります。
  56. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたではどうにもならぬかもしれませんけれども、私この際恩給観念を根本的にやり直して——やはり戦争の犠牲は大きかったのだから、国民もその点は十分考えておる。思い切って恩給考えを変えてしまって——それは将官や佐官は非常にたくさんの実額を支払われますから、これを失うのはなかなか大へんな財産権の喪失でしょう。しかしこれは数は少いのです。非常にたくさんの数を占めておるのは、一兵士として戦場におもむいて、その家族が非常に困っておる。そういう人たちに基本的に厚くするとような根本的建て直しをやるというような説は、一つもなかったのでしょうか。これはこの調査会の論議の点においても、また長官のお考えの点においても、私は確かめておきたい。この際あまり急いでこういうふうな恩給改正などはやらないで、そうした国家の将来を見越して、抜本的な措置を加えるのが今大事じゃないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
  57. 今松治郎

    ○今松政府委員 恩給審議会には私委員でありませんので、始終出ておりません関係で、どういう論議が行われたかということは、口頭でときどき聞いて、答申によって判断をしておるわけであります。今淡谷さんのおっしゃるような、大きなそういう観点から見た問題につきましては、今回はわれわれの与えられたる仕事の範囲といたしましては、恩給審議会の答申に基いて、なるべくこれに沿うような意味で恩給法のワク内でありまする戦没軍人傷痍軍人のいろいろな問題を処理する、こういうことが緊急な問題と考えまして、そういう方面だけに重きを置いてやりましたので、そういう大きな問題については、まだ検討が私どもの方としては十分にやっておりません。
  58. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今国民年金制度やあるいは社会保障制度が大幅に推し進められようとしておる場合、特殊な軍人恩給だけ増額しようという観念は、国民の間に私は対立抗争の種をまくと思う。少くとも戦争の跡始末として、この軍人恩給だけを引っぱり出して論ずることは非常にまずいと私は思うのですが、この審議会の答申等についても今一応検討されるような御意思はございませんか。
  59. 今松治郎

    ○今松政府委員 委員会の答申を私どもは尊重して今回の措置をとったわけであります。従ってその答申の問題につきましてはまた今後それによって恩給法をどうしようという考えは今持っておりません。
  60. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 名の知れた将官や佐官などは案外こうした恩典からは漏れないと思うのです。非常に混乱をきわめましたあの戦争の末期の、特に外地における傷病者たちは今日でもこの恩給のワクの中に入らぬで大へん帯しんでおる人があるやに承わっておりまするが、そういう例はございませんか。外地における手続ができなかったとか、さまざまな点からあなた方は、根本的にこの傷病者については階級性をなくしたと言っております。そういう点について非常に不均衡な、また嘆かわしい事態があるやに承わっておりまするが、そういう点はございませんでしたか。
  61. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 お尋ねの点は外地におけるそうしたいろいろな諸事情の関係上不均衡が起ったことがないかというお尋ねでございます。恩給法の上で照合されておりますところの国の恩給法上の公務員、これに関する限りその給与基準はどこで生じようとそれによって差異があるというふうには考えておりません。ただ御指摘の点はおそらく恩給法上の公務員として扱われない方々、すなわち国の文官なり武官でなかった方々についてのそうした状態に対してこれをどうするか、それとのバランスを失しないかというふうなお尋ねであろうかと思いますが、これはやはり恩給法上の公務員というものを対象にして、それに対する処遇としての恩給処遇というものとそれとのバランスの問題は、それは全然別の角度から考えなくちゃならぬのでありまして、そういうような問題はここでは恩給法のワク内では考えられない問題だ、私どもはこう思っております。
  62. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ここに提出されました説明書の中に「傷病恩給におきましては、階級制を撤廃することとしたのであります。」これは額の上においてあるいは、撤廃されたかもしれませんが、取扱い上においては外地でなくなった兵隊さんたちの処置については非常に大ざっぱにやられたのじゃないかという点が考えられるのです。ここに「国家と私」という本がございますが、これは贈られた本なのです。真鍋需という人が書いた本で、参議院議員の湯山勇君が大へん世話をしてこの本を出されたようであります。マーシャル群島で傷を受けました一兵隊が、その手続がつかなかったために戦争中の療治もろくにしてもらえなかったし、また至るところの療養所で、この本によりますと目も当てられないような虐待を受けておる、今日なおその傷病恩給にあずかれない、非常に困っているという非常に切々たる訴えを書いておりまするが、私はこの本に書いてあることの内容が、ことごとく真実であるかどうかは確かでありませんけれども、少くともこれだけの傷病者がこれだけの膨大な本を書いて訴えようということの中には、何かそういうような例がほかにもたくさんあるように思いまするが、そういう例はございませんですか。
  63. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 御指摘の点は、おそらくその症状の判定についての御不服であるとか、あるいは症状の起った起因関係においての十分な立証ができないとか、そうした立証段階におけるつまり傷病恩給請求におけるいろいろな問題であろうと思うのであります。これらにつきましては、厚生省の出先機関でありますところの各府県の世話課あるいは厚生省の援護局におきまして、その人々の症状がこういうふうな原因に基いたものであるということを十分立証いたしまして、またその人の現在の症状がどういうふうな状態にあるかということを国立病院等におきまして診断を受けまして、それに基きまして私ども裁定しております。またそれに対して不服であれば、具申をする、あるいは第三審として訴願するというようないろいろな道もございます。その間におけるいろいろなトラブルがあってのことだろうと思うのでありますけれども、ある特殊なケースにおけるそうした問題は、それぞれの御事情によりましてあろうと思いますけれども、一般的の問題といたしましては、われわれはできるだけ親切に具体的な事例について十分な審査を遂げて参った、こう思っております。
  64. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたからはあとで実額の概算表をいただきたいと思います。今度の軍人恩給では、こうした気の毒な人を救い上げ、その家族に報いるという立場が濃厚に主張されましたが、出されました案について、その点まだいろいろ疑問があるのであります。恩給そのものの根本的な諸点については、またあらためて質問いたしますけれども、現われたケースにおいても内地の将官あるいは佐官、尉官というものと外地のそれらとは大へんに違った境遇に置かれましたし、特に前線の非常に危険なしかも敗戦の戦場におった兵士の間には、間々こういう事例があるかと思うのです。実額においても幾ら増額されましても非常に薄い待遇を受け、また取扱いにおきましても、まるで一本の草みたいに扱われたこれらの傷病者が、どうもこの恩給法では救われようとは思いませんが、そういう意味からもう一ぺんこの恩給法というものは、根本的な調査を進めて、真に国民にも納得のいくような方法にしていくのが最もいい方法と思います。さっき高橋委員も非常な誤解を受けたと言っておりますけれども誤解があるといけないし、また誤解じゃない面でも、この恩給法にはたくさんの兵の幸福あるいはその家族の救助に言葉をかりて、やはり戦争中の特殊な財産権を主張しようというような、上級に厚いという点がどうしても免れないことと考えますが、理想的な増額案考えておりますか、もしできるならば、もっと理想的なものがあってもいいと考えてますか、その点はどうですか。
  65. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今回の増額案におきましては、できるだけ下級者あるいは重傷病者老齢者等に増額重点を置いたということは、逆に申しますと、高級者あるいは若年者、こういう方々にはほとんど今回の増額が均霑しないということであります。御指摘の点は、従来の恩給制度のレールの上で、階級の高い人に厚かった、これは本来退職時の俸給を元にいたしますから、それは当然のことでありまして、その上にさらにそれを乗っけるということに対していろいろ考えて参りまして、できるだけ重点を下の者に厚くするということにしたことでございますから、決してそういう人たちの分が厚くなっておるわけではございません。また一方においてそうした人々の既得権を害するということもまたできないわけでございます。  また一方、こういうふうにも考えてみたいと思います。つまり現行恩給に関する限りは、やはり退職時の俸給というものが母体になっておりますので、その人の恩給というものはやはり尊重されなければならないだろうと思います。しかしその上に立って、今度の増額というものは、できるだけ下級者に厚くして、上級の方はプラス分はないんだ、こういうことで、決して上級者あるいは、高級者についての増額は行われておらない、こういうふうに御承知を願いたいと思っております。
  66. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あと一点。増額の分は確かに下の方には厚かったでしょう。けれどもその基本をなす恩給法そのものが戦争中のものであって、これを踏襲しておりますから、あの戦争の最中でも、こういう国家に殉じようという偉い将軍諸君は、財産奉還論さえ唱えたことがあるのですから、その戦争が失敗した今日では、これはもう非常に上に厚かった恩給法を自発的に返還して下すった方が、私は最もよき処置であると思うのでありますが、これはまああなたに言ったってしようがないことであります。私はやはり恩給法国民年金と社会保障制度と今後せり合う危険性が多分にありますから、この際根本的に考え直す必要があると思いますが、重ねてお尋ねします。長官そういう考えはございませんか。
  67. 今松治郎

    ○今松政府委員 国民年金制度がこれから進展して参ることは、私もそういうように考えております。そういう場合に、現在の恩給制度と非常に競合する点や何かがたくさん生ずる場合があり得ると思うのです。そういう場合には今の既得権ともいうべきものの損傷しない範囲内においてそれの調整に当っていく、こういうことが今の一つ考え方でございます。
  68. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 では終ります。
  69. 福永健司

    福永委員長 眞崎勝次君。
  70. 眞崎勝次

    眞崎委員 私は恩給の根本観念について非常に認識がまだ足らぬと思います。また特に軍人恩給を優先して下さることになっておったことに対する認識も非常に足らぬと思う。また世論世論と申しますけれども、世論はむろん尊重せねばならぬが、その世論が誤まっておる場合には是正すべきものだと考えますが、これらについて、なお加算及び傷痍軍人恩給等について二、三伺いたいと存じます。  まず第一に、恩給というものと、社会保障あるいは国民年金、そういうものと平等に混同して考えておるところに、この問題のあやまちがありはせぬかと思うのであります。恩給は、さっきから長官もお答えになっておったよろうに、同じ損害でも、空襲を受けていろいろな損害を受け、あるいは生命をとられたのと、初めから生命を捨てる前提のもとに立って働いておる者とは、これは根本において考えを異にせねばならぬと思うのでございます。そこに恩給と社会保障、国民年金との差がなくちゃならぬ。つまり国民として一般の平等観に立つ上に、特殊の事情、特殊の職業、特殊の責任、それからについてそれぞれの差があるのが治国平天下の根本じゃないかと考えますが、それについてまず伺います。
  71. 今松治郎

    ○今松政府委員 お答えいたします。この恩給制度と社会保障の制度とは、おのずから出発点を異にしておりますことは、先ほど御答弁申し上げた通りであります。社会保障制度の一番進歩しておりまする英国におきましても、やはり恩給制度というものはこれと並んで行われておるわけであります。従いまして私どもは、いかに社会保障制度が将来進展いたして参りましても、国家が自分の使用人である公務員に対する、使用者としての責任に立脚した恩給というものは——恩給と申しますか、まあ将来漸次年金制度に変るかもしれませんが、こういうような形のいかんを問わず、国家がある程度のめんどうを見るということは、私は必要なことであると考えております。理想といたしましては、今眞崎委員の述べられました通りに、ドイツのごとく、財力が豊かになった場合には、実際の戦争犠牲者には一律に国家が年金も出すし一時金も出す、そういう措置をとることは理想的な形態としてはそうなるべきだと思いますが、日本の現状においては直ちにこれはできることではない、こういうように考えておる次第でございます。
  72. 眞崎勝次

    眞崎委員 次に、いわゆる犠牲ということと、天災、遭難ということと、結果において一致しておるけれども、さっき申し上げたように、その根本の出発点において違っておる点を、恩給並びに社会保障を考えるときに念頭に置かねばならぬと思うのです。それから今日ではだいぶ戦後日本の世論が冷静になりましたけれども、なおこの日本のどさくさに乗じて日本を赤化せんとするところの策動に乗せられて、日本人の世論が公正を欠いた点があると思う。その実例を申しますと、本土決戦ということが盛んに主張されて、そうして終戦に臨んだ。そのとき、当時の近衛師団長なり田中司令官などは、当時の乱暴者が近衛師団に命令を出して、宮中を包囲してあの玉音放送を取りやめさせよう、そうして自分で内閣を作って戦争を継続しようとしたときに、その脅迫に応ぜず拒絶したために殺されておる。それがために内地で戦争がなかったから、日本は無条件降服をしたにかかわらず、今日今までの戦史に例のない再建を降服後たどりつつあるのでありますが、それらの遺族に対しての手当はほとんどしておりません。これは無知のことでもあったろうと思いますが、私は吉田内閣のときに、たびたび吉田総理大臣にも申し上げた。こういう国民を救ってくれた——内地で戦争があったならば、国家再建などは思いもよらぬことであったろうと私は思います。しかるに一方、漁業に行ってたまたま不幸な目にあって、ビキニの灰をかぶって死傷いたした人があります。それに対する国民の同情は全く至れり尽せり。かわいそうなことは当然でありまするが、病気中にも、まるで昔の陛下の御病気ででもあるように、時々刻々脈搏、呼吸を伝えて、そうしてその補償を千万円も出せというようなことを叫び立てた。それとこれと比較してみますと、それはかわいそうではあるけれども、民族の恩人である人と、商売に行って不幸な目にあった、すなわちほんとうの犠牲と災難、これを混同してしまって逆にするような国民の世論になっていることが、今日のような恩給に対する極度の非難になっている。もう一つ戦争の原因を研究していない。戦争は軍閥が始めたものである。軍閥は戦争の下手人であるけれども、いわゆるサル使いに使われたサルにすぎない。一般軍人は天皇の名においてするところの命令に忠実に服従して命をささげて働いたものでございますが、それをよく区別せぬために、戦争に対する憎悪心が、坊主にくけりゃけさまでにくいというようなふうで、軍人さえいじめれば平和は保てるような錯覚があるのでございまして、そういう一般の世論に対する政府の御意見伺いたいと存じます。
  73. 今松治郎

    ○今松政府委員 私が御答弁申し上げますことはいかがかとも思いますが、日本は戦争に初めて負けまして、非常に国民の思想に動揺を来たして、いわば思想のよろめきというものがあったのじゃないかと思います。だんだんと近時冷静になって参りましたので、今お話のような点も、将来は民心が安定するとともに解消していくのじゃないか、こういうふうに考えております。お説の点で非常にごもっともな点が多いかと思いますが、私からお答えいたしますことはこの程度でお許し願いたいと思います。
  74. 眞崎勝次

    眞崎委員 福祉国家とか社会保障とか、これは当然理想としなければならぬことでございますが、まずこの大戦争をやった以上は、終戦処理をしてこそ福祉国家の基礎ができると思うのでありまして、その意味から申しましても、今日の恩給あるいは援護法等をなおざりにしておいては、とうてい福祉国家なんかはできそうもなく、たびたび国民は——恩給亡国という言葉をさっきから論ぜられましたが、軽くこれに調和することはいかにも戦争を避けることのように考え、また愛国心をなくすことをモットーのような占領政策にわざわいされて、こういう言葉に非常に迷わされておる。まず根本の終戦処理、なかんずく命をささげた者に対する処理をしてこそ福祉国家の基礎が築けると思いますが、これに対してもなお先刻から、社会福祉問題と社会保障の問題がございますが、こんな日本の力におえぬような大戦争を始めまして、その跡始末他は理想的にはいきませんから、まず恩給の本質と社会保障とをどこで折り合うかということを考えるのが、今日のほんとうの問題と思いますが、旧恩給、日本を強大にした根本のこの制度、これに財政が及ばぬ——今流行しているところの非常な平等主義にわざわいせられて、恩給を忘れて福祉国家ができるような議論がありますが、これも大いに是正せぬと、恩給亡国にあらずして、私は思想亡国だと思います。恩給亡国という言葉自身が亡国的性質を帯びておると私は考えておりますが、所見を伺いたいと思います。
  75. 今松治郎

    ○今松政府委員 恩給という問題は、私は先ほどからたびたび申し上げましたように、国家が自分の使用人に対する責任に立脚した点でございますので、その点はどういう形になっても存続すべさものであると考えております。ドイツのように戦争の犠牲者に対しては——私は参ったことはありませんが、ドイツの労働者の話を聞いた人から聞きますと、われわれは生きていて働くから、戦争の犠牲になった方々処遇はよくしてくれということを非常に申し入れているそうであります。私は日本においてはその逆な面も多少あるのではないかということを心配いたしますが、しかし戦後処理ともいうべき戦没軍人公務扶助料と戦傷者に対する年金の問題は、これはいわば戦後処理、ともいうべきもので、これを一般の恩給のワクに入れて、その額を含めて恩給亡国などというものは絶対に当らない議論だと考えております。
  76. 眞崎勝次

    眞崎委員 次に、さっきから問題になりました加算の問題でありますが、不均衡の一番大きなものは加算で、るる説明する必要はございませんが、昭和二十年前に裁定になった者は加算になって、ちゃんと恩給がついている。その後長く働き、戦友を助け、しかばねをおぶって働いた人たちは、これが廃されたために一文ももらえぬような境遇にあります。その数を見ましても、二十八年の恩給復活の当時で数えますと、普通恩給者が百六十五万四千人、それから普通扶助料が三十五万、五千人、右のうち百五十五号の恩給受給資格者の人員は、普通恩給が五十七万二千人、それから普通扶助料が十六万一千人であります。差し引き失権せしめられた人員は、普通恩給が百八万二千人、普通扶助料が十九万四千人、合計百二十七万六千人という多数に上っておりまして、この規則の改正によってこういう残酷な処遇を受けておるのであります。それは恩給調査会の報告を見ましても、これを非常に軽く扱っておりまするが、これは真剣にもっと再調査していただく必要があると存じます。  次に傷痍軍人についても先ほどから問題がございましたが、人間は生命が一番大事でございまするから、まず遺族、英霊と順序を持ってきましたが、命を保たんとして正しく生きるということも非常に困雑な問題ございまするから、傷痍軍人の今日の生活、ただ金ばかりでなく、日常生活においてちょっとかゆいところがあってもかけない、歩きもされない、ものも見えぬという点に思いをいたされまして、傷痍軍人が陳情している点は今後もさらに考えていただきたいと存じます。  そのおもなる点は、今度の増加恩給の勘定の仕方であります。戦闘勤務と普通勤務とを取り違えて、普通勤務をもととして計算した点に非常な誤りがあるので、それに対して不服がある。  それから間差の問題、こういうことについてなお一そう御研究を願いたいと存じます。  なおこの際、御答弁はお願いたしませんが、金鵄勲章についても、これは栄典法に属しますけれども、そのもとは同じものでございまして、どうかこれも一つ研究していただきたいと存じます。  最後に一つ、われわれ経験者でなくてはわからぬ点を一言申し上げて、恩給に対する御理解を願いたいと存じます。つまり軍人なる者は初めから今日で言う基本的人権をなげうっている、自由をすべて犠牲にし、そこで教わる教育は全部生活関係のない、経済的にはますます無能になる教育を受けて、ひたすらその使命に後顧の憂いなく尽瘁することを理想として働いてきておるのでございます。それで一たび職を去れば不具者になる、またとうとい生命を捨てることを前提としておりますから、こういう今までの特別の何があったろうと思う。それを戦争の原因を、さっき申し上げる通り、知らぬもんだから、軍人に対する反感が感情に走って今日均衡を失して、かえって国家を危うきに導きつつあることを御考慮願いたいと存じます。  これをもって私の質問を終ります。
  77. 福永健司

    福永委員長 午前中の会議はこの程度といたしまして、午後一時二十分まで休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  78. 福永健司

    福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案についての質疑を続行いたします。稻村隆一君。
  79. 稻村隆一

    ○稻村委員 私は、ごく原則的な政治的な問題に関して質問をしたいので、総理大臣、厚生大臣にぜひとも出席していただきたいと思っていたんですが、出席できないというので、今松総務長官に御質問申し上げますが、今松さんも国会議員であり、政治家ですから、率直に答弁をしていただきたい。  というのは、今度の軍人恩給ぐらい国民各層の間に批判のあるものはないのです。新聞論調も、ここに配付されたのがありますが、多くの権威ある新聞もこの軍人恩給に対して鋭い批判を加えております。政治というものは公平であることが絶対に必要なんであって、不公平な政治くらい危険なものはない。こういう立場から、私は、一般国民の中にある不満の声、そういうものを代表して政治的な質問を申し上げたいと思うのです。  本年度予算は、だれが見ても全くインフレ予算でありますが、この最大の原因は軍人恩給にあることは明瞭であります。国を守って犠牲になった者は、それは軍人だけじゃない。もし軍人恩給増額するならば、たとえば大東亜戦争中に都市の爆撃によって犠牲になった人々、広島や長崎で犠牲になった多くの人々、こういう者をやはり同じように援護するのが、私は公平な政治じゃないかと思う。ところが、こういう人々は、やはり前線以上に銃後において危険な目にあい、苦労し、戦ったのに、ほとんど顧みられておらないのです。こういうことは社会正義の立場から見て断じて許すことはできない。こういう点に対してあなたは一体どうお考えになりますか。私はあなたを政府の代表として御質問申し上げるのです。
  80. 今松治郎

    ○今松政府委員 お答えを申し上げます。政府を代表して今のような問題について私から御答弁申し上げることは、ちょっといかがかと思いますが、私個人といたしましては、ただいま稻村委員のおっしゃいましたことは、一般論としてはまことに傾聴すべき点が多いと思います。しかし私どもが今携わっておりまする問題といたしましては、少し範囲が広過ぎるのでございまして、私ども政府の命令によって行動した者に対する国家の責任、こういうものの観点から、今回の恩給の点につきましては、戦没軍人遺族傷痍軍人、こういう者をまずまっ先に取り上げたわけであります。一般の戦災者の問題につきましては、これはけさほどもちょっとお答えいたしましたが、ドイツではそういう者をくるめて戦争犠牲者の援護の法令が出ているようであります。わが国も理想としてはそういう点に向うことが大へんいいことと思いますが、現在のところまだそこまで至っていない、こういうような状況であると考えます。厚生省の方でどういう程度にこの問題を検討しておりますか、まだ私もつまびらかにいたしませんが、いずれ他の機会に当局の方からその問題についてお答えをしていただく方が適当じゃないかと思います。
  81. 稻村隆一

    ○稻村委員 旧軍人方々は、恩給が国の約束であり、国はその約束を果すべきである、こう言っておられる。なるほど国家の命令によって行ったのは間違いないけれども、しかしそれは国民だって戦時中はほとんどこれは政府の命令によってやっておった。現に国は戦時中、戦争保険法というような方法で、焼爆を受けた人命、財産に対して補償を約束しているのです。ところがその約束は全く果せなかったのですね。こういうふうなことは実に日本の敗戦という冷酷な現実からいってやむを得ないのだけれども、これは実際普通の観念からいえば不都合千万なんです。こういうふうなことすらやっていないのに——これは軍人恩給は絶対にいけないと私は言うのじゃない。こういうふうな不公平なことをするのはいかぬと言うんです。それに対して国民は黙々としてそういうことに対して黙っておる。軍人人々が軍服を着て、そうして集団的に騒ぎ出した。そうすると岸内閣軍人だけの恩給をやる、恩給増額すると、こういうことを決定したわけなんです。こういう岸内閣の政策というものは、これは私は実になってないと思う。老人、未亡人、親のない子供たち、そういう者は陳情、圧力をかける方法を知らないのです。そういう人々は全然顧みられていないのが、私は現在の政治じゃないかと思うのです。  先ほど西独の話が出ましたけれども、西独でやっていることをこっちでできないという理由はないですよ。西独もやはり日本と同じようなミリタリズムの国であるといって批判された国なんです。その西独においては、御存じでしょうが、戦争犠牲者の扶助に関する法律というものを制定しております。これによって、軍人文官、民間人を問わず、およそ戦争によって受けた犠牲に対して、全く平等に、犠牲の程度に従って援護を行なっておる。だからして、同じ軍国主義で世界の袋だたきにあって崩壊したドイツが、それは戦争の被害を受けたことは日本の比ではないですよ。それにもかかわらずこういう公平な処置をするから、国民は一致して戦後の再建に当ったために、驚くほど国力が発展しておる。そしてアメリカの次の金持の国である、こう言われているでしょう。これはむずかしいことでも何でもないのですよ。公平なことをやったからなんです。こういうふうなことは理想としては何とか言えますけれども、できないはずはない。最良の政治というものは公平にあるのです。そういう点に対して全然熱意がないのだ。ドイツのような戦争犠牲者の扶助に関する法律というふうなものをほんとにやるつもりがあればやれるのですが、どうですか。あなたはそういうことをやるつもりはありませんか。
  82. 今松治郎

    ○今松政府委員 ただいまの一般戦争犠牲者の問題は、厚生省において十分に検討中と私は承知しておりますが、私の方では、そういう方面の人をどうするかという問題については何ら検討しておりません。
  83. 稻村隆一

    ○稻村委員 だから私は、政治家としてのあなたに答弁を求めておるのですよ。衆議院議員であるあなた今松総務長官、大臣と同じでしょう。僕よく知らぬですけれども……。そんな局長みたいな答弁はよしなさいよ。あなたは官僚上りなんだ、もう少しその責任の地位にある者は、堂々と自分の所信を述べなさいよ。総理大臣いないのだから、総理大臣にかわってあなた答弁しているのだから、厚生省に云々だなんて、厚生省の事務官僚にそんなことできますか。岸総理大臣、今松総務長官というえらい人、そういう人がきめなければだめじゃないですか。あなたの考えはどうですか。こんなことはできるのですよ。こういうことを怠っているのですよ。声なき民のあれを無視しているのです、今の政治は……。やる気はないですか。これはできるのですよ、日本だって……。そのくらいならわれわれだっていくらでもプラン作れますよ。そういうことはどうです。そうすれば一切の問題は片づくのです。
  84. 今松治郎

    ○今松政府委員 御説はまことにごもっともな点が多いと思いますが、現在のところ、今政府といたしましては、そういう方面までの計画が及んではいない、こういうことを申し上げたのでありまして、理想としてはそういう方に向うべきものであろう、こういうように考えます。また私厚生省と申しましたが、何も厚生省の事務官僚がやっておるわけではありません。厚生大臣はその責任者として、おそらくそういうことについては十分のお考えがあってやっておられる、こう思うのであります。私どもも全然無関心というわけではありませんが、今回の恩給是正のワク内では、どうもそういうところには全然関係のない分野で処理をいたしましたので、将来、今お尋ねのような問題を政府として考えておるかと言われますると、まだそこまで考えていない、こう申し上げるよりしようがないと思います。
  85. 稻村隆一

    ○稻村委員 こういう問題は、やはり一般原則のもとに立って、厚生省とか何とかいう各省の人々が着手するわけなんですね。だからそれはあなただってそういうことをほんとうに——閣僚ですか、閣僚の一人として——閣僚じゃない、閣僚待遇ですか、待遇の人は、そのくらいのことは言うべきですよ、閣議において、これはそういう意見通りますよ、これは何でもないですから……。  それはとにかくといたしまして、さらにまだ御質問申し上げますが、このたびの恩給増額は、ベース・アップ、倍率の引き上げなんだ、及び傷病恩給増額を同時に行おうとするもので、その所要経費は三十三年度で三十八億、三十六年度には実は三百億に達するのです。そうしてこの増額のために、今日すでに一千億をこえる恩給額になるのです。そうすると、これは昭和三十六年度以降においては一千三百億円以上を上回る巨額に達するわけなんです。文字通りこれは、恩給亡国といわれても仕方がないと思うのです。倍率を引き上げたのは、戦時中死亡したきわめてわずかの文官に対する恩給の倍率に対して均衡をとろうとするものである、こういうところから軍人の方から要求が出たわけなんです。臨時恩給審議会の答申においても、文官並みの倍率を引き上げるということに対して、反対の答申をしている。ところが総理大臣は、みずから自分の設置したこの審議会の答申をじゅうりんしてしまった。これは実に確信のない話なんですよ。あなたに幾ら言っても仕方がないかもしれないが、あなたもその責任者の一人だから、私は申し上げるのですが、圧力に押されてにわかにやったのです。しかも所要額を各項目別に積算してその額を求めたものじゃない。つかみ決定なんです。全くでたらめなんです。だからもうすべての人は非難しておる。圧力団体に押されて、大野副総裁が出ていって、おれにまかせろと胸をたたいて、こういうでたらめなことをやった。こんなでたらめなことを歴代の政府でやったものがありますか、と言うのです。それは軍人の苦しい立場も考えてやらなければならぬでしょう。一般の国民の苦しい立場とこれはマッチして、よくこの点を解決しなければならないのですが、そんなに急いでやる必要は何もなかった。こういうふうなことは、なるほど一部軍人の不平は解消したかもしれぬけれども、一般国民の不平は断じて解消できない。こういうふうなことに対してあなた一体どう考えますか。私の質問ははなはだ抽象的ですけれども、あまりにひどいですよ。こういうばかなことをどう考えるのですか。
  86. 今松治郎

    ○今松政府委員 今回の恩給是正が、過般四カ年間で三百億の支出になる、こういうことが発表されましたが、まだその内容がわからなかった当座におきましては、あるいは大将が月に六万円も七万円も恩給を取るのじゃないか、こういう非常な誤解がありまして二、三の恩給制度に理解の少なかった評論家非難をしたことは私は存じております。しかしこの三百億の使い方が、提案理由に御説明申し上げましたような方法で使われるということがわかりまして以来は、私は今お話になりましたような非難はあまり——かえって、そういう方面に使われるならばわれわれも納得できる、こういうような激励もたくさんいただいております。従いまして圧力団体に押されてこの三百億ができた、こういうお話でございますが、これは多年の懸案でございまして、こういう時期に、いつかは解決しなくちゃいかぬ。理由が多少乏しいじゃないかと言われましても、文官と武官との公務扶助料の不均衡ということは厳然としてあったわけであります。これはいつか解消しなければやはりいけない問題でありまして、今回はそういう方面重点を置いて私どもは作業をいたしたつもりでございます。けさほど高橋委員からも御質問がありましたが、決してその圧力団体に押されてやったわけでもありませんし、おい先短かい公務扶助料を受ける老齢者に対して、一日も早く解決することが時宜に適しておる、こういうふうに考えまして措置したような次第でございます。
  87. 稻村隆一

    ○稻村委員 私はそれは強弁だと思うのです。おい先短かい者に対する社会保障なら、やはり多くの困っておる老人、それから未亡人というふうな者がたくさんいると思うのです。そういう者をも同時に片づけるのが政治じゃないですか。むろん私は老軍人を片づけていかぬと言うのじゃないのだ。おい先の短かい老軍人を助けてやってはいかぬと言うのじゃない。その老人を助けてやるならば、普通の老人も助けたらいいじゃないですか。ずいぶん老人はみじめな目にあっていますよ。社会保障がないために、親子げんかがある。どうも親不孝になったとか、道義がすたったとかいわれておりますが、今の日本の経済の状態は非常に貧乏になりましたから、親を養うだけの余裕がないのですよ。そこで親子げんかになる、親不幸ができるわけです。何もそれは軍人を助けては悪いというのじゃないのだが、ほかの老人も一緒に助けるべきなんですよ、これは。現に病人で医者にかかれないでおる者がたくさんある。それからまた親のない子供がたくさんある。おそるべきことです。そういう親のない子供なんというものは、そういうものも一緒に救済するのが私は公平な政治だと思うのです。だからして岸総理大臣もわが党の質問に答えて、将来軍人恩給は一般の年金制度の中に加えてもよろしいという答弁をしているでしょう。それに対してあなたはどう考えますか。ほんとうに今政府軍人恩給というものを一般の年金制度に加える意思を持っておりますか。その点お聞きしたいのです。いいかげんなことばかり言って、そうして特殊なものだけを助ける。助けては悪いとはいわないが、全体を助けなければいけない、私はこう言うんです。その点どうです。ほんとうに一般年金制度の中に軍人恩給も入れるという、そういう考えは今政府にあるのですか。
  88. 今松治郎

    ○今松政府委員 ただいまお話がありましたように、非常にお気の毒なお年寄りや親のない子供たちがたくさんあることは、私どもはもうよく承知しております。そういう問題につきましては、ただいま社会保障制度審議会で年金部会というのがありまして、非常に熱心に検討しておられますので、これが実はこの秋ごろに中間報告があるはずであったのを特に早めてもらってこの五月ごろに中間の答申を得る、こういうようなことになっておりまして、これは私ども考えとしましても、社会保障として少くとも今どういう方面年金にも入っていないような方々年金制度がしかれるということは、非常に望ましいことであって、私どもも熱意を持っております。ただ日本の現状からいたしますと、非常な理想的な、全部の今まであるような年金制度一つにした社会保障の制度が、近い将来にしかれるかということにつきましては、私個人といたしましては、相当疑問を持っております。従いましてこの社会保障による年金制度が非常に進んで参りますと、恩給制度との間に調整を要すべきものが相当あると思いまするが、しかしけさほども申し上げましたように、この恩給というものは、名前がちょっと今の時代に適しませんが、退職年金と申しますか、そういうようなものは、これは一般の会社でも銀行でも何かありますように、国家公務員の場合には、国家が使用者の立場として、使用人である国家公務員に対する、退職後または死亡後における経済的のめんどうを見るという制度でございまして、この制度はどういうような工合に社会保障制度が進展いたしましても、ある部分のものは並行して存する、こういうように私ども考えておるわけであります。
  89. 稻村隆一

    ○稻村委員 これ以上どうも幾ら質問申し上げましても、やはり抽象的な応答に終ると思いますから、いずれまた岸総理大臣、厚生大臣の出席を要求いたしまして、私の質問をしたいと思います。きょうはこれでやめておきます。
  90. 福永健司

  91. 中川俊思

    ○中川委員 私は御質問を申し上げます前に、まず政府の正確なる二つの資料を御提出を願いたいことを要望いたします。  その第一は、午前中の委員会におきまして、恩給局長はこの恩給の減粍額をたしか昭和四十三年には二百億という御発表があったと思う。ところが昨年来臨時恩給調査会におきまして、恩給局から、発表された減粍の一覧表を私はここに持っておりますが、これによりますと、四十三年の減粍率は二百六十七億となっている。わずか数カ月の間に六十七億円という差が生じておるのでありますが、これはいずれが正しいのであるか。もしお間違いでありまするならば、前通りでよろしいのですが、どちらが正しいか正確な資料を出していただきたいということが第一点。  それからいま一点は、この恩給改正案を進捗いたします上については、先ほど来いろいろ各委員からお話のありましたように、かなり膨大な費用を伴うのであります。従ってそれを他の方面に向けたらどうか、社会保障費に向けたらどうかという気がかなりございます。これは委員だけでなく国民的にそういう議論がある。従って恩給費として出しておりますものの中に、出さなくてもいいものがあるのじゃないかと思う。たとえて申しますと、これは国民の諸君はあまりよく御存じないが、私ども同じ国会議員の同志でございまして、長年官途についておられた諸君の中には恩給をとっておられる方がかなりあると思うのであります。これは結論から申しますと、国費の二重取りではないかと私は思う。御案内の通り同じ国会議員でございましても、今松長官や岸総理のように官途につかれますと、おつきになった翌月から恩給は停止されることになっておるのであります。しかし国会議員はその恩給が停止されておりません。これは選挙によって出たのである、公務員でないからという議もあると思います。しかし私どもは確かに選挙によって出て公務員ではございませんが、しかし国会というトンネルを通して国費から俸給をもらっておることに間違いはないのであります。一つの私企業からもらっておるわけではございません。従って国費から恩給ももらい、歳費ももらいということになりますと、国費の二重取りになる。つまり恩給をとっている者が再び公務員についた場合には、恩給は停止されるという五十八条の規定があるのでありまして、これは私どもは公務員でございませんから、この規定の適用を受けていない。しかしただいま申し上げますような観点から、私はこれはとるべきものであるかないかということについていろいろ検討をいたしました。いたしましたが、どうもわれわれの良心からして、国会議員が国費の二重取りをすべきではないのではないか、こういう結論を私は得ておるのであります。従ってこれはいろいろ議論の分れるところでございますから、重大な問題でありまするが、しかしわれわれ国会議員は、先ほど来者委員お話もお聞きになりましたように、できるだけ経費は節約をして、そして社会保障の面、困っている面に回す、国民生活を少しでも豊かにするというのが私どもの責務である以上は、国会議員が国費の二重取りをやっておるというようなことは、私は許されないのじゃないかと思うのであります。従ってそういう観点から、一体国会議員の中でどのくらい恩給をもらっておる者がおるか。だれが幾らもらっておるか。現在若年停止で停止されておるとか、あるいは多額停止の条項に基いてどれどれ、幾ら幾ら停止されておるのかという精密なる資料を出していただきたいのであります。名前も全部連記して出していただきたい。この二つの資料を早急に出していただきたいのであります。  ただいます申し上げますようにこういういろいろ問題のあります恩給法が上程されたときでありまするから、私ども会議員も国費の二重取りをやるようなことは許されない。きれいに、もらうべからざるものは自発的に遠慮して、そうしてこれを多くのお気の毒な方々に向けるのが、私ども国民生活の安定をはかっていかなければならない議員の責務だと考えまして、この二つの資料を早急に出してもらいたいと思うのであります。いつごろまでに出していただけるか、恩給局長の御返答をいただきたい。
  92. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 午前中に、恩給費の将来の見通しにおきまして、三十六年度におけるピークと四十三年度との開きについて大きく二百億程度と申し上げましたが、厳格に申しますと、三十六年度ピーク時における恩給費というものは千二百六十三億、それに対しまして四十三年度の見込みは、千三十六億でございます。従いまして、その差は二百三十七億となるわけでございます。二百億と申し上げましたのは、そういうふうに訂正いたしておきます。  それからその次は、国の税金から給与が出ているにかかわらず、国会議員で恩給もまたもらっておられる方の例をおとりになりまして、これについての御意見がございました。これらの恩給というものは、国の公務員として長年在職いたしまして退職後、国がこれに対する補いとして給付されるものでありまして、その方がたとい会社にお入りになりましてある一定の給料を受けられても、また公団にお入りになってお取りになっても、また市町村役場にお入りになってお取りになっても、これはこれとして別なものでございます。そしてこれらとの関係におきまする普通恩給に対する調整と申しましょうか、普通恩給額に対する問題といたしましては、五十八条ノ四でございますか、多額所得の停止というのがございます。すなわち恩給年額九万五千円以上、そして恩給外所得が五十万円以上の方々につきましては、それぞれ各段階に応じまして恩給額を制限する、こういう措置が講ぜられているわけでございます。従いまして、国会議員の例をおとりになりましたが、国会議員としての御収入は当然恩給外所得として、そしてそれが五十万以上であり、ある段階においても百二十万円以上である場合におきましては、恩給全体に対して三割を限度として減ずる、こういうふうな措置が講ぜられているわけでございます。こういうふうに、単に国会議員としての地位ということだけではなくて、その他の恩給を受ける人がその他に収入がある——これは給与としての収入であろうと、ほかの収入であろうとかまいませんけれども、収入があるというところにおきましては、多額所得の停止という規定を働かせまして、ある程度制限をいたしておるわけでございます。従いまして国会議員というところにあるということだけで問題が起るかどうかということが、私ども技術的に問題であると思っております。なお公務員が再就職した場合には、当然普通恩給が停止になるということは、御承知の通り、再就職と申しますのは、恩給法上の公務員として再就職をして、再就職いたしますことによって、その年限がさらに通算される、こういうことになります。それをやめますと、前の恩給がさらに再任改定される、こういうことになりますので、従いまして通算される期間内における恩給というものは重ねて受けられない、こういうことになっておるわけであります。先ほど資料の御要求もございましたが、この点につきましては、国会議員で恩給をもらっておる者というのは、恩給というものの意味がいろいろございます。たとえば普通恩給もございましょうし、また父母というような立場において扶助料を受けておられる方もございましょうし、いろいろあると思います。ただ技術的には現在一連番号でずっとカードになっておりますので、これを調べますことはなかなか容易でないと思いますけれども、御要求の内容等につきましてもう少し詳細に承わりました上で、十分考えたいと思います。
  93. 中川俊思

    ○中川委員 あなたから恩給の理念、意義を私は聞いておるのじゃございません。そんなことは、あなたがおっしゃらなくても、そのくらいのことは、はなはだ僭越ですが、私は知っております。問題はそういうことじゃないのです。それから恩給にいろいろある。扶助料をもらっておる者まで出してくれというのじゃないのです。普通恩給をもらっておる者の名前と金額、それだけでよろしいのです。扶助料なんか出してもらおうと思っておらない。恩給の意義については、あなたのおっしゃる通り。それはだれでもわかっております。そういう問題じゃないのです。扶助料とか何とかいう問題は別といたしまして、普通恩給だけです。こうでございます。それはいつまでに出していただけるか。それによってこの恩給の問題の審議に非常に私としては考えなければならない点がありますので、その要求をしたのであります。いつまでに出していただけますか。
  94. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 国会議員の方々の中で恩給を持っておられる方の名簿を、まずある程度国会の事務局の方でお調べいただいてお出し下されば、それによってまた見るということもできると思います。しかしながら、私がもう一つの問題を今検討してみなければならぬと思っておりますことは、個人々々の財産なり、それを調べましてお知らせするということは、果して職務上の秘密であるかどうかという点につきまして十分な確信を持ちませんので、その点につきましても十分検討させていただきたいと思っております。
  95. 中川俊思

    ○中川委員 先ほど私が減耗率をお尋ねいたしたことによって、三十七億がまたふえてきた。午前中二百億とおっしゃったのが、三十七億ふえた。昨年は、先ほど申し上げましたように二百六十七億、それから三十億まで減っておるのですが、一体この調査はどうなんです。どういう科学的根拠、というとえらいむずかしくなりますが、大体想定に基いてこういう調査をお出しになっておるのか。あるいは毎年々々の大体の統計に基いて、やや科学的に御調査になったのであるか。午前中は二百億とおっしゃったのが、二百六十七億と私が指摘をしたら、今度は急に三十七億ふえちゃったんだ。これはどういう御調査であるかということです。それから今の個人の財産権の問題とか、そんなことはいわゆる逃げ口上であって、ちゃんとそういうことは私どもとしては国会の審議を進める上において、先ほど来申し上げます通り、恩給費をできるだけ少くして、そうしてこれを他の社会保障事業費に回すとか、方法を講じなければならぬという建前から申し上げておる。従ってそういうような理由のもとにお出しにならないということになりますと、この恩給法審議は勢い渋滞を来たすのではないかと思う。またそういうことで個人の財産権の侵害とかなんとかいうことにはならないはずです。一体法制局はこれをどういうように考えるか。法制局を呼んで下さい。法制局の方がお見えになりましてから、この問題はあらためて伺いたいと思います。  先ほど来稻村委員お話を承わっておりますと、恩給亡国であるとか、あるいは圧力団体の圧迫によって政府は折れたとか、あるいは国民のすべてが反対しておるとか、一般国民は不平たらたらとかいうような御発言があったように思うのでございますが、一体国民の一部の間にでも、もしそういうものがありといたしますならば、そういうふうなことに対して、政府恩給法を出されるに当って、なぜもっとはっきりしたこの恩給問題に対する認識を深められなかったか。先ほど今松長官がお答えになっておったことは、まことにりっぱだと思う、その通りだと私は思う。ところがあなた自身がそれをお考えになっておりましても、国民の一部には、先ほど稻村委員がおっしゃっておったようなことを考えておるものがおるのです。これは政府のPR運動が足りなかったのじゃないかと私は思う。何が恩給亡国であるか。何が圧力団体に屈したのか。私から一言わせれば、圧力団体に屈したのは社会党です。これは長官十分考えておいてもらいたい。そしてこれに反駁してもらいたい。先年来臨時恩給調査会にも社会党は御承知の通り委員を送っております。私どもが最後にこういう答申は反対だというので退席をしたのでありますが、あの答申に対しては社会党の諸君は賛成をしておられるのです。それから、その答申の内容が、政府の出してこられたこの恩給問題と必ずしも合致しておるとは思いません。しかし少くともあのときには、この恩給制度というものに対しては、社会党の諸君にもある程度の理解があったと思う。その後遺家族の会合や大会がしばしば東京で開催されましたが、そのときにも社会党は毎回代表を送って、あなた方の要望は全面的に支持しますということをはっきり言っておるのですよ。それがこの恩給法が国会に提出されるや、わいわい騒いで、国民の一部の中に、先ほど長官がおっしゃったように、何か大将か中将のような生存軍人に対してのみ国家の恩給を与えることはけしからぬという批判が起ってきたのです。新聞なんかの投書欄を見ましても、私のうちの隣に元の大将がおられるが、お嬢さんは毎日ピアノを習いに行っておられる、いや琴をひいておられる、ぜいたく三昧な生活をしておられるのに、なぜそういう方に恩給を増さなければならないのだろうかという、そういう意味の投書が新聞にたびたび出ておりました。長官もごらんになったと思うのです。私はそれに対してそのつど反駁の投書をするのですが、どういうわけか新聞社は反対の投書はほとんど載せなかったのです。そこで国民の中にはそういう議論に惑わされて、稻村委員がおっしゃったような観念を持つ者がかなり出てきたと思うのです。私が地方へ行ってみましても、やはりそういう質問をされる人がありましたから、私は国民の中に、稻村君のおっしゃったような間違った考えを持っておる国民が非常に多かったと思うのです。これは政府のいわゆるPR運動が足らなかった、政府の怠慢だと私は思う。政府は今回恩給の改善というのは、主として兵隊で公務死の者の恩給を少し増そうというのと、それから手足をなくした傷痍軍人恩給が少いからこれを増そうというのが主眼であるという宣伝をなぜなさらなかったかと思う。先般恩給問題に対する予算の公聴会がこの部屋で開催されました。そのときに私は御質問したのです。たしか早稲田大学の時子山さんという教授の方ですが、今稻村君がおっしゃるようなことをおっしゃったから、私は質問したのです。われわれ自由民主党におきましては政府とタイアップして今回の恩給増額の措置をとったのだが、これは少くとも兵長以下、主として兵である。公務のために死んだ兵の遺家族と、そうして手足を失ったような傷痍軍人のお気の毒な方々だけを主眼として今回の措置を講じたのだ、こう私が申しましたところが、時子山さんはそういうことは知らなかったと言うのです。だから私は、あなたは少くとも早稲田大学の教授でしょうと言ったのです。あなたぐらいな、いわゆるりっぱな方が公開の席上で知らなかったからというので、そういう無責任なことをおっしゃることが、一犬虚にほえて万犬実を伝えるで、だんだん全国的に広がってきているのが今日の実情なのだ。いささか無責任ではありませんかとと言って私は追及したのでございますが、まあこれはお客さんですから、公聴会にわざわざ来て下さった方でございますから、あえてそれ以上のことは追及しなかったのです。実にそういう無責任な言動が全国に行われておるのでありますが、これは政府がこの恩給問題に対して国民にもっと啓蒙しなければならない、あるいは宣伝しなければならないということについて怠慢であったとお認めになりませんか。
  96. 今松治郎

    ○今松政府委員 今回の恩給是正の問題がきまりましたのは、中川委員も御承知のように、一月二十日に総額がきまりました。それからその配分方法がきまりましたのはだいぶおくれてでございます。従ってその配分方法がきまるまでは、ただいまお話のありましたような非常な誤解方々にあったのでありますが、あの配分方法がきまりまして以来は恩給のことを担当して下さっておる官邸の記者諸君にも非常な理解をしてもらって、これが徹底に努力をしてもらったのであります。ただ困りますことはどういう関係か、やはりこれは言論界評論家といわず、そういうことを聞いても黙っておって、自分が前に言ったことは間違っておるということをはっきり申されない方が非常に多いのでありまして、そういう方に対してはあるいは徹底しなかったかもしれませんが、あの配分方法がきまりましたときからは、ラジオを通じ、あるいはテレビを通じて今回の恩給是正内容を十分にお知らせしたのであります。ただ、今中川委員から申されたように、少し政府のPRが足りないのではないかという点につきましては、私も率直にこれを認めて午前中にも遺憾の点があったということを申し上げたのでありますが、われわれとしてはもう大体の方々には理解をしていただいておる、こういうように考えております。それはわかっても理解しない方は相当ありましょうが、これは何ともいたし方がないのであります。
  97. 中川俊思

    ○中川委員 長官のおっしゃるように、正直のところだんだんとわかってはきておりますが、やはりまだ稻村委員のおっしゃったような間違った考えを持っておるものがありまするから、さらにまたこの問題につきましては機会のあるごとにPRを徹底さしていただきたいということをお願いを申し上げておくのであります。  それから、近時国民年金制度という声が非常に急激に出て参りました。もちろんこういう問題は以前から各方面で唱えられてはおったのでありますが、この恩給問題を契機といたしまして、国民年金制度を実施したらいいだろう、社会保障制度を拡充して国民年金制度を実施すべきだという議論が急激に出てきたように思うのであります。しかし、この国民年金制度まことにけっこうでございます。社会保障制度を完備するということは、今日の文明国におきましてはそれぞれみな心がけておるところでございますが、御案内の通り、なかなかこれには莫大な財源を要しまするので、各国とも私はこの問題では悩んでおるのではないかと思うのであります。イギリスのごときは御案内の通り、社会保障制度をやり過ぎて、前のチャーチルは引退せざるを得ないような事態にまで立ち至っておる事例がある。従って国民年金制度を実施するに当りましては、国家財政と十分にらみ合せてやらなければならないことは申し上げるまでもございません。  そこで私はお尋ねをしたいと思うのでありまするが、国民年金制度を実施いたします場合に、既存の恩給その他いろいろ共済年金とか各種のものがございまするが、それとの調整を一体どういうふうにやっていくのか。午前中以来の御答弁を承わっておりますと、長官も恩給局長もそういう既存のものとの調整をやらなければならぬとおっしゃっておりまするが、これは具体的にどういうところにどういう方向で調整をなさろうとするのか、また社会党の諸君も打ち切り保障をやって、そうして今の国民年金制度に切りかえるというばく然たる御意見の発表は私ども伺っておるのでありまするが、これをどういうふうにやったらいいかという具体的の問題については、私はまだ寡聞にして伺っていないのであります。なかなかこれはむずかしいのです。そこで具体的の方法があるかどうか、これは政府にはむろんないでしょう。社会党に聞きたいのですが、この場合社会党に御質問することは御遠慮いたしますが、とにかくそういうことはなかなか、言いやすくして至難ではないか。たとえば国民年金制度に切りかえた場合に、既存の恩給の額というものを減らすことができるかどうか。たとえば今一千億という恩給が出ておるといたします。その一千億の恩給というものを全部パーにして、新たに国民年金制度というものを、創設することができるかどうか。そういう場合には憲法第二十九条でしたか、財産権との問題は一体どういうふうになるのか、こういう点は私はよほど慎重に考えなければならない問題だと思う。従ってそういうふうに簡単に調整するするとおっしゃっておるが、そう簡単に調整ができるとお考えかどうか。これは長官からでもまた局長からでもよろしゅうございますが、御答弁を願いたい。
  98. 今松治郎

    ○今松政府委員 社会保障による国民年金制度がどういう形で生れますか、私どももまだ見当がつきませんが、ただ常識的に考えますと、今各所に行われております退職年金制度というようなものを一つ御破算にして、これを一つにまとめて社会保障的の年金制度ができる、こういうことは理想ではあるかもしれませんが、ちょっとわが国の現状としては非常にむずかしいのではないか。従って私ども考えといたしましては、今年金制度に何ら浴していない方々にまず——たとえて申しますと、老齢年金とかまた母子年金とかいうような形のものが行われるのが一番最初ではないか、こういうように考えておるのでありますが、これもしかし社会保障制度審議会の年金部会で検討しておりますので、この答申が出てから厚生省の方で原案をおきめになるのではないかと思います。従いまして調整を行いますといっても、どういう調整を今行うか、こういう場合があろうというようなこともはっきりいたしませんので、そういう場合があれば調整するよりしようがないということを申し上げておるので、具体的にはまだ御説明する段階でないと思います。
  99. 中川俊思

    ○中川委員 そうだろうと思います。おそらく社会党にも私は確たる御腹案はまだないのではないかと思う。ただ世論に迎合するために国民年金制度にしてみんなによくしたらよかろう、こういうような無責任きわまる言動であろうと私は考えておるのであります。もちろん政府恩給問題に没頭しておる恩給局ですら具体的な案はないのであります。社会党がいかに力んでみても、これは結局絵に描いたもちにしか過ぎないだろうと思うのであります。どうかそういう点につきましては国民の中には迷っておるものがありますから、そういう点についても政府は徹底的にPRを徹底させていただいて、むしろ社会党の絵に描いたもちのいわゆる空論を粉砕するように努力されぬと、国民の中には迷うものがありますから、この点ははなはだ僭越でございまするが御注意を申し上げておきたいと思うのであります。  それから先ほど来いろいろの委員によっての御質問の中にもあるし、また新聞の投書なんかによく現われておりますことは、戦争犠牲者は何も軍人ばかりでなく、爆撃によって家を焼かれたものもあるし、また命を失ったものもある。さらにまた農地改革によって土地を取られたものもある。これはみな戦争犠牲者ではないか。何も軍人だけ恩給をふやそうというようなばかなことがあるか、こういう議論がかなり世間で行われておりますことは、長官初め政府でも御存じだろうと思う。ところが先ほど来各位からの御質問に対して長官並びに局長からもしばしば御説明がございましたが、恩給というものは一体そういうものと同列に見ていいものであるか悪いものであるか。私は少くとも恩給制度は、先ほど私が聞きもしないことを局長は説明しておりましたが、その中にあった通り、確かに恩給は恩恵ではございません。社会保障とは私は違うと思うのです。極端にいえば、恩給制度の問題はすなわち給与の延長だろうと思うのです。いわばあと払いの賃金です。だから雇用主である国家が使用人に対する契約を忠実に履行するということは当りまえのことであって、これを社会保障費と同じだというような理念から恩給をそのまま社会保障にせよというようなことは、ちょうどサラリーマンの月給を社会保障で支払えということと私は大差ないのじゃないかと思う。そういうようなことに対しましても、どうも政府のPRというものが、ことごとに社会党にしてやられている感じがするのであります。そういうところから新聞はまたおもしろがってやる。社会党の議論は空論ではございまするが、おもしろいものだから報道機関はこれを取り上げる。そうすると国民はわからないためにこれについていくというまことに遺憾な風潮が、この恩給問題について今全国にびまんしておる。ですから、社会党の諸君にはまことにお気の毒でございまするが、払は決して悪い気持で言っておるのじゃないのでございまするから、十分に一つお許しをいただいて、要するに政府はどうか恩給問題に対して国民にもっと正確なる資料を提供してわかっていただく、何でもかんでも政治には国民は黙っておれ、ついてくればいいんだというような気持でなく、国民に納得してもらって、そうして国民の協力を得るにあらざれば、私はいかなる政治も達成できないと思います。どうかそういう点からいたしまして、今後はそういう機関が政府にもあるのでございまするから、そういう機関を動員してPRを徹底させていただきたいということをお願いしておくのであります。  いよいよ本論に入りまするが、今回の恩給改正につきまして、文官の一部に公務扶助料に対する倍率四十割というのがあった、ところが軍人遺家族は二十六・五であるというので不均衡であるから、この不均衡を是正せよという要求が御承知の通り各方面からあったわけでございます。これに対して政府文官の一部でとっておりました四十割というものを三十五・五に下げて、そうして軍人の二十六・五を三十五・五に上げて同列にした、頭をそろえたわけです。そうしてあまり要求のなかったベース・アップで一万二千円というものを一万五千円にしたわけでございまするが、一体四十割を三十五・五に下げられましたために、文官の一部では一万五千円ベースになったならば、四十割なら当然六万円もらえるところを五万三千二百円という金しかもらえない。べース・アップといっても実際はべース・アップの恩典には一つも浴さないわけなんです。ここのとこおわかりですか。四十割ろということは、今まで四十割、ところが三十五・五に下げられた。ベース・アップをやってやったぞといっても三十五・五に倍率を下げられておるのですから、実際問題としてべース・アップの恩典には浴していないわけなんです。これは一つのからくりなんです。ほんとうに一万五千円にベース・アップしてもらって今までの倍率通りに四十割もらえれば六万円もらえるわけなんです。ところがべース・アップしても四〇割を三五・五に下げたのでありますから、一万五千円にベース・アップしてやったぞということはかけ声だけでこのべース・アップの恩典には浴していないわけなんです。現にそういう不平が各方面からぼつぼつ起っておる。しかも御案内の通り普通恩給、普通扶助料には倍率はございません。そこで今回のべース・アップの恩典に浴します者は普通恩給、普通扶助料をもらう階層である。言葉をかえて申しますならば、生存者だけがべース・アップの恩典に浴することになるのであります。死んだ遺族は倍率というもので一定の制約を受けておりますけれども生存者で普通恩給を受けております者は倍率がございませんからべース・アップの恩恵をまるまる受けることになるのであります。せっかく不均衡を是正するというのがここにまた新たなる不平が起る。新たなる不均衡の発端を政府は作っておる。だから私どもは何も要求をしないベース・アップなんかしないでもよろしい。倍率の四十割の頭だけそろえなさい、そして将来国家財政とにらみ合わせて、国家財政がよくなったときにはベース・アップすればよろしい、こういう主張をしたのでありますけれども政府が出してこられた法案を見ますと、二万五千円ベース・アップで従来の四十割もらっておるのを三五・五に下げるという非常なからくりの法案を出してきておられるのでありますが、一体これについてはどういうお考えでございましょうか、伺っておきたい。
  100. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今回の増額におきましては、いわゆる仮定俸給の引き上げということと公務扶助料につきましては倍率の引き上げという両方をからみ合せまして、遺族扶助料増額をはかろう、こういうことにしたわけでございます。御承知の通り各種恩給を通じてその計算の基礎となりますものは退職時の俸給でございます。その退職時の俸給はその後の物価指数に応じまして上昇させる、これをいわゆる仮定俸給といっておりますが、この仮定俸給を見直していくということによって、各種の恩給につきましての増額が行われていくわけでございます。従いましてひとり公務扶助料だけではございません、普通恩給、普通扶助料につきましても仮定俸給を見直す、仮定俸給というものがすべての恩給の尺度になって、そしてこれを見直されることによって全面的な各種恩給を通じての増額がはかられる、こういうことになるわけです。その上にさらに公務扶助料の場合におきましては普通扶助料に対する一定の倍数というものがありまして公務扶助料の額が出ております。従いましてこの方も引き上げるということによって、両方相かねまして公務扶助料の額の改善が行われる、こういうことになるわけであります。従いましてこれによって新しい不均衡が起るという点につきましては、私は絶対そういうようなことは起らない、こう思っております。
  101. 中川俊思

    ○中川委員 局長は新しい不均衡は起らないとおっしゃるが、恩給は寄せ算じゃない、かけ算ですよ。御存じでしょう。今二つのお巣子をもらっておる者と一つのお菓子をもらっておる者がある。これを同じように二倍にすれば、どっちも二倍にしてやるんだからいいじゃないかという世間の理屈ですが、二倍にしてやりますと片一方は四つになるんですよ、片一方は二つになる。今なら一つの差であるが、同じ二倍にすれば二つの差が生じてくるということは、退職時に高禄をはんでおった者は、かけ算ですから、取得する恩給の額はうんと多くなっていくのです。しかもただいま申し上げましたように、一万五千円べースというのは、文官の今まで四十割もらっておりました者は三五・五に倍率を下げられておりますから、実際は一万五千円ベースの恩典に浴していない。しかし生存者には倍率がございませんから、一万五千円のべース・アップをするというと、もらう額は非常に多くなって、聞きはますます大きくなって参ります。この四十割受給者という者の中には、薄給者が御承知の通り非常に多いのですが、ほとんど薄給者のみでございますが、この倍率の犠牲になった者は薄給者だけだということになって、弱い者いじめの政策という結果になる。それでもあなたは不均衡は生じたとおっしゃらないのですか。  それから法制局がおいでになっておりますから承りますが、四十割を三五・五に下げましたことは、取得する恩給の額が五万三千円というものが変らないから、これは憲法二十九条の違反にはならないかどうかということです。法制局から御答弁願いたいと思います。
  102. 野木新一

    野木政府委員 ただいま御質問の点につきましては、憲法違反にはならない、そういうのが私どもの一致した見解でございます。
  103. 中川俊思

    ○中川委員 それから先ほど私がお尋ねしたときに、法制局がおいでにならなかったから、あわせてお聞きをするのですが、国会議員の中で恩給を取っておる者がおる、この資料を出してもらいたいということを私は要求したのでありまするが、個人の財産の問題をあらわに出すということは、二十九条の財産権の問題に該当するということでございますが、そういう理屈が一体成り立ちますか。
  104. 野木新一

    野木政府委員 御質問の趣旨が果してお言葉の通りの趣旨なのか、お言葉の通りの趣旨だとすれば、憲法二十九条の問題には直接にはならないと存じます。
  105. 中川俊思

    ○中川委員 私も実はそう考えておる、ところが恩給局長はそういうへ理屈を言って出すまいとする、けしからぬ。それはいつまでにお出しになるのか、資料を御提出にならないと、この法案は審議が進みませんよ。
  106. 福永健司

    福永委員長 中川君に申し上げます。政府委員諸君で答弁の正確を期するために、念を押してからということがあるそうでございますから、五分間ばかりお待ちをいただきます。  五分間ほど休憩いたします。     午後三時三十六分休憩      ————◇—————     午後三時四十二分開議
  107. 福永健司

    福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
  108. 中川俊思

    ○中川委員 政府側でいろいろ御準備があるようでございますから、私は一応質問は留保いたしまして、次の機会にさせていただきたいと思います。
  109. 福永健司

    福永委員長 永山忠則君。
  110. 永山忠則

    ○永山委員 今中川委員が言われましたように、今回の恩給改正は不均衡是正ということでございますが、実際問題としてはさらに不均衡が残ったという結果になっておりますことをわれわれは遺憾に思っておるのでございます。それは生存者並びに普通扶助料の方の恩給は実質的に一万五千円ベース・アップになりましたが、遺家族扶助料は倍率を落しました関係上、実質的には二万二千円で四十倍の倍率五万三千二百円のところで頭打ちをしておるのであります。さらに傷痍軍人関係は、実質一万二千円ベースにも及ばないそれ以下のベースで頭打ちを受けております。従って戦時中の基準を中心にして、今日値上りした恩給額を比較してみますと、すなわち今回値上りした一般普通恩給の年額三万円を戦前の兵の階級の百八十一円の恩給額で割りますと、生存恩給並びに普通扶助料は百七十二倍に上っておるのでございますが、遺家族の方は、そういうような計算方法でいきますと百五十三倍の値上りになり、傷痍軍人関係は百十一倍の値上りにしかなっていないのであります。従って生存者並びに普通扶助料の方が一番値上りの率がよくて、傷痍軍人は最も低いところに追いやられておるのでございます。この恩給不均衡是正はさらに不均衡を残しておるという点に関する所見、並びに傷痍軍人が一番値上り率が悪くて非常に不遇な処置を受けているとわれわれは思うのでございますが、それに対する所見を承わりたいのであります。
  111. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま今回の改正法案におきまして傷病恩給普通恩給の上り方ほど上っておらないというような御指摘がございましたが、この点について御説明させていただきます。傷病恩給につきましては、御承知の通り昭和二十八年の法律一五五号制定当時第一項症の額を月大体二万円に押えよう——押えようというよりはその程度は兵の第一項症の額として差し上げなければならぬ、そういうことから一万円を目安にいたしまして兵の第一項症の額を十一万六千円ときめたわけであります。これに対しましてその後の物価水準の上昇等を考えまして、今回これを十七万一千円といたしたのでございますが、この上昇率は兵の仮定俸給というものが当時六万六百円というものが今度二万五千円べースになりまして九万円になったということで、その比率に相応しているわけでございます。従いまして普通恩給の上昇率よりも悪いということは言えないと思います。また同時に、そうした重症者につきましては今回介護手当と申しましょうか、年額二万四千円の加給をつけるということになっております。また全体のこの改善の順序といたしましても、こうした重症者につきましては今年の十月から全額実施ということをいたしておりますに反しまして、一般の普通恩給とか、普通扶助料のべース・アップにつきましては、二年先の三十五年七月から実施する、そしてそのうちの高年齢者につきましては半額をことしの十月から実施するということにしておりまして、傷病恩給につきましては重症者についていろいろな配属を加えているわけでございます。御指摘の点は軽病者につきまして重症者ほど厚くしておらないということであろうと思うのでございますが、この点につきましても四項症、五項症、六項症というふうなところの処遇につきましては、法律一五五号で考えました当時よりも相当程度の手直しをいたしまして、現行額に対する八割程度増額を見ておるわけであります。また以下の款症におきましても五割五分以上の増額を見ておるわけでございまして、決して傷病恩給をないがしろにしておる、軽傷者においてもないがしろにしておるというようなことは毛頭ございません。またその予算増額率につきましても、先刻申し上げましたように、他の諸恩給費に比べまして相当増額いたしておるわけでございまして、傷病恩給が他の普通恩給、普通扶助料等に比較いたしまして低いということはございません。またこの際申し上げておきたいのは、普通扶助料普通恩給につきましては、尉官以上の各階級につきましてはベース・アップ仮定俸給の引き上げというものを相当抑制いたしております。従いまして完全に一万五千円ベースになっておるのは、准士官以下のいわゆる応召兵のクラス、まあ文官で申しまするというと判任官の三級とか二級とかいうふうなクラスでございます。こういうような事態でございまして、一がいにベース・アップと申しましても、上級者については相当の抑制を加えておるというようなことからいたしまして、傷病恩給とはまた逆に、そうした面におきましてはこれらの人々増額というものが抑制されておるということも御承知を願いたいと思っております。
  112. 永山忠則

    ○永山委員 傷病恩給その他の不均衡がさらに生じたという点に対する今後の問題については、総理大臣並びに大蔵大臣の列席を得まして、十分質問をしたいと思うのでありますが、私は本日はその計数について、不均衡であるという数字について、当局にただしておきたいと思うのでありますが、傷病恩給関係は算定基準が戦闘公務でなくて、普通公務に基礎が置かれたのであります。すなわち最初の算定基準が、戦闘公務の傷病恩給金額兵の一項症年額千百七十円でなしに、普通公務の九百三十六円を中心に計算をされておるのであります。戦闘公務の年額恩給兵一項症の千百七十円を基準にやるべきものを、普通公務の額を基準に置いて計算をされておるのであります。この九百三十六円を基礎として計算されたのは、臨時恩給調査会にお出しになりました数字であり、さらに昭和二十七年の恩給調査会の際に出された数字であり、さらに昭和二十八年度に旧恩給法改正案を議会へ提出されましたときの計算方法もそういうようになっておるのであります。そういうように戦闘公務で傷ついたにもかかわらず普通公務の金額にしたということ、もう一つその後において一般は二回にわたってべース・アップがございました。すなわち昭和三十年の十一月からと昭和三十一年の七月からと、二回にわたってのベース・アップがございましたが、この傷病恩給についてはもう全然二回ともベース・アップをしてないのでございます。そういうように基準が普通公務の金額の基準になっており、戦闘公務の金額でなく、そして他の恩給は二回にわたってベース・アップがあったにかかわらずベース・アップがないのであります。そういうような関係で、旧来傷病恩給は不当に圧迫を受けておるのでありますが、しかも今回の算定方式は前に臨時恩給調査会その他昭和二十八年に恩給法が出されました当時の算定基準とは全然別の平面的な算術計算で、昭和二十八年恩給法改正当時、兵の階級仮定俸給額年六万六百円が今回一万五千円ベースの仮定俸給年額九万円ベースに上ったのだから、それを比較パーセントにした一・四八%を昭和二十八年の恩給法改正当時の普通恩給額を基準として計算された兵一項症一万一千六百円に剰ずるというような、平面的な計算をされておりまして、旧来計算を提出されました方式のものは、全然顧みない、新しい計算方法でこれをおやりになり、しかも相変らず普通公務傷害恩給を用いておる。そのことが一そう合理性を欠いてきたのでありますが、どういうわけで旧来の算定方式をそのまま踏襲されずに、今回は新しい方式でおやりになったのでございますか。
  113. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 傷病恩給の第一項症の額の算定の方式につきましてのいろいろ御意見がございました。今回の考え方というものは、臨時恩給調査会における答申にございますように、第一項症の額というものを昭和二十七年恩給法特例審議会が建議した当時の考え方を想起して、そうしてこれを相当額に増額したらよかろう、こういうことに従ったわけです。しかし昭和二十八年の法律第百五十五号におきましては、いろいろの事情を勘案いたしまして、第一項症の額というものを兵において十一万六千円ときめたわけでございますが、これはその当時の生計費の状態であるとか、また過去における兵の第一項症の額とのにらみ合せの問題であるとか、いろいろ考えたあげくの結果でございまして、十一万六千円というものは法律第百五十五号においてきまったわけでございます。私はこれはその当時いろいろの、重傷者に厚くという精神の現われた結論であると考えます。またこれはその当時として十分に尊重すべき問題であると思っております。従ってそれを中心にその後の物価の上昇等を考えまして今回の額を定めた、こういうわけでございます。
  114. 永山忠則

    ○永山委員 当時の計算方法は九百三十六円が昭和十三年当時の第一項症の普通公務の恩給額でございますが、当時の戦闘公務を中心にしますれば、千百七十円になるのであります。従ってこの戦闘公務恩給額を基準として計算をいたしますれば兵一項症年額十四万四千円というのが当時算定をさるべき数字であったのでございます。この基礎数字を直さずにただ物価の値上りというものを平面的にかけるというところに基本的数字の間違いがあるのであります。その結果といたしましてここに傷痍軍人関係が非常に不当に圧迫を受けておるのでありますが、私は先刻局長が説明されました傷痍軍人の傷痍恩給の値上り率は非常にいいのであるという言葉を聞いたのでありますが、あのときの数字をもう一ぺん一つ聞きたいのでございます。どうも計数に根本の間違いがあるということをまず第一研究してみたいのであります。なおただいまお話がございましたが、いわゆる尉官で一割以上、大佐まで八割を頭打ちをしているのだ、だから生存者を押えているのだ、こういうことでございますが、しかし傷痍軍人の方もこれらの併給をもらっているのでございますが、傷痍軍人の方はこの階級差の頭打ちはしない、併結される普通恩給頭打ちをしないということでございますか。また遺族関係もこれらの頭打ちは、いわゆる普通恩給に対しての倍率をかけるのでありますからこの頭打ちは当然されておるべきだと思うのであります。従って生存者だけが頭打ちを受けているのではない、傷痍軍人並びに遺族もすべて頭打ちを受けておるのでありまして、生存者だけを押えておるから公平を保っておるんだという議論にはなりかねると思うのでありますが、この点に対してもお聞きしたいのであります。
  115. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 午前中の御質疑の中で、傷病恩給の今度の増額率と申しましょうか、そうしたものが決してそう低額のものではない、こういうことの例証といたしまして、現在増加恩給あるいは傷病年金のために支出されておるところの恩給費に対する今回の増額分の割合というものを申し上げたわけでございますが、増加恩給といたしましては、現在二十億に対しまして今回の増額分が十四億六千万円、約七三%、厳格に言いますと七三・二九%、こういうことになっております。それから傷病年金につきましては現在七億七千万円、これに対しまして増額分が三億六千万円、四六・九%という増額率になっております。予算的に申しますとそういうような増額率になっておりますので、ほかの、たとえば公務扶助料の場合を例にとって申し上げますと、六百三十四億六千万円に対して、今回の増額分が二百二十九億六千万円、その増額割合は三六・一%ということになっておるのであります。すなわち十三万人の増加恩給あるいは傷病年金受給者を対象といたしましての予算に対する割合というものはこのような状態になっておるわけでありまして、百五十数万の公務扶助料の現行予算に対する増加額というものの割合は、今申し上げましたような三六%程度になっております。このような意味におきまして、予算額との対比の関係におきましては決して割合からいって小規模のものではないということが言えるのではなかろうか、こういう意味で申し上げた次第正でございます。
  116. 永山忠則

    ○永山委員 本年度予算では、増加恩給は二十億じゃないのじゃないですか。増加恩給は四十六億八千万円じゃございませんか。
  117. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま申し上げました二十億というのは、加給とか併給普通恩給を除きましたはだかの増加恩給でございまして、今申し上げましたそれに対応する十四億六千万円というものもそれに見合つた増加額でございます。
  118. 永山忠則

    ○永山委員 三十三年度の四十六億八千力円は、併給されておるところの普通恩給がどれだけあるのでありますか。
  119. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ちょっと経理課長に調べさせておりますから、少しあとこで申し上げます。
  120. 永山忠則

    ○永山委員 この増加恩給は、三十三年は四十六億八千万円でございますし、今回の増加恩給増額関係が十四億六千万円であります。それに普通恩給の併給が二億六千万円でございますから、十七億二千万円になるのであります。そうすると二十億円に対する十四億六千円の七三%というようなことは、計数的に全然誤まっておるのである。現在併給されておるところの普通恩給並びにその他の加給等全都寄せて四十六億八十万円、そうして今度の増額されるところの家族加給並びに普通恩給の併給等増額分を合せますと、十七億二千万円でございますから増加比は三四%にしかなりません。この七三%というような数字は全然当らぬ数字でございますし、さらにこの傷病年金も本年は十億一千万円の予算になっておるのでございますから傷病年金増加額三億六千万円の比は三三%であります。局長が七億七千万円を基準に計算をされて四六・九%であるから、非常に増加率がいいというようなお言葉でございますが、この基礎的数字が完全に違っておるのではないかということを思うのであります。局長が、こんな数字で増加比率を多きに言われることは遺憾であります。これに対しては資料で出していただきまして、それによって検討を続けたいと思うのでございます。  私はこの傷病恩給が非常に低きに押えておるということに対しましては例証を申し上げてみたいと思うのでありますが、第一介護手当というのは一項症と二項症しかこれをやらぬ、こういうことでございますが、三項症あたりこで事実上介護を受けなければどうすることもできぬという傷病者に対してはどうするお考えなんでございましょうか。何のために一項症と二項症だけにこれを平面的にやって、そうして三項症以下の事実上介護なくてはやれないという傷病者に対しての介護手当をやらないのか、ここに私は第三項症の症状の関係のある人を承知いたしておるのでございますが、首や両側の肩や腕が全部動かない、そして筋肉が萎縮しておる、体重が十貫五百匁になった、そして尿は出っぱなしである。もちろん陰茎の勃起は不可能で、上半身は脱力する力もない、歩行さえもできない。そこで着物を着がえたり、顔を洗うということはもちろんできない。食事、用便に至るまで介護を必要とするというような現実の人を承知いたしておるのでありますが、そういったようなお気の毒な関係者は非常に多数おるのでありますが、どういうわけでその介護手当をを事実上介護を要する者にやらずして、ただ一律的に一項症二項症だけにやるのであるか。このことは要するに傷病恩給は兵二項症は一万五千円のベースで戦闘公務を中心に計算したならば、二十万一千円になるのであります。この二十万一千円の一万五千円ベース、兵の第一項症の傷病恩給の数字に近寄らせたいというようなことから、介護手当というものを加えて、そうしてできるだけ一項症と二項症だけを引き上げていこうという便宜的な処置から介護手当支給が考えられたのではありませんか。そのことは実際上傷痍恩給の方は一万五千円のベース・アップになっていないところから、介護手当でからくりしょうということから出ているやり方ではないかということをわれわれは深く遺憾に思うておるのでございますが、こういうような事実介護を要するものが三項、四項等に相当あるのでありますが、これに対してどういうような処置をされようとするものでございますか。また介護手当をおつけになりました根本理念を聞きたいのであります。
  121. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今回第一項症、第二項症、特項症につきまして、介護手当というのを加給することにいたしたわけでございますが、これは臨時恩給調査会の答申にもありましたように、重傷者にできるだけ厚くということ、そして現実にマッチした処遇考えるようにということでございまして、私どももそれは全く賛成でございます。従って現在までの立て方の基本額に、そうした介護を要するような項症の方々につきまして、新しい制度としてこれを設けたわけでございます。御指摘の三正項症でもあるいは四項権でも、そういう人があるじゃないかという問題につきましては、これは判定の問題でございまして、そうした症状、状態にある方が何項症であるべきかということは、そのときどきの診断書によって、そうし判定に従って格づけをせらるべき問題である。たまたまそうした人がそうであったということで、そのことが第三項症に介護手当が必要である、第四項定にも必要であるということではなかろうと私は思う。第一項症、第二項症というものは、法文の上にも書いてあります通りに、複雑な介護を要する、常時介護を要する、こういうふうに書いてございます。また第二項症というようなところでは両手あるいは両足のない、こういうようなことが書いてございます。こういうようなところでは、やはり日常生活の起居動作の上において介護、介抱を要するということが認定されるわけでございまして、こうした重傷者に対して加給制度を設けるということは、やはり重傷者に厚くという精神の現われであり、また調査会の答申にも従うゆえんであろう、こう思っております。
  122. 永山忠則

    ○永山委員 一万五千円べースで、昭和二十八年当時の恩給調査会並びに昨年の臨時恩給調査会に出されました計算方式へ戦前の戦闘公務傷病恩給額の千百七十円をかけた場合には、兵一項症は年額二十万一千円になるのである。一万二千円ベースでそういう計算をいたしましても十七万三千円でございます。しかるに今回はその一万二千円ベースの十七万三千円より安い十七万一千円になさっておる。だからここに介護手当を一項症、二項症でつけるということのからくりにおいて金額を引き上げようとなさったように考えられる。そうするとただいまのお言葉では、そういうような事実上介護手当を受ける者は、症状の診断の結果で考えるべきであるというならば、介護を要するとの診断を受けた者は、全部二項症または一項症に引き上げるということになるのでございますか。すなわち介護を要するという診断が出たならば、ただいまのお言葉ではその症状等差に関係なく、一項二項に引き上げるというお考えのようにとれたのですが……。
  123. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 傷病恩給の判定の問題は、はなはだこれは医学的にむずかしい問題でございまして、一がいにわれわれ行政官がここで御説明申し上げることができないのでございますけれども、同じく介護、介抱、看護を要すると申しましても、病気が進行しておる、あるいは療養状態にある、機能の欠損と申しましょうか、機能の障害が低くても一つの療養状態にあるというときには、これは寝たきりでなくちゃならぬ、こういう場合もあるわけでございます。傷病恩給というものは、やはりその症状が固定いたしまして機能が欠損したとか、あるいは機能の傷害というものがこの程度に固定しておる、そういう状態を押えて、そうしてそれに対する一定の給付をするわけでございまして、療養に対して療養費をまかなう、療養に対して給付するのではございません。そういうような療養状態の停止して、そうして一つの固定状態になったところを押えての状態ににらみ合せた給付をするわけでございます。従いまして、一がいにただ寝たきりでおるということでは、なかなか判定のしにくい問題でございますので、それらの点も十分御了察を願いまして、一つ今回の介護手当というものは、平板的にいって第一項症、第二項症、特項症というところは介抱、介護を要するという基準的なところであるという意味におきまして、また第一項症、第二項症、特項症である限りにおいて当然のこととして介護手当を付加するということにいたしたわけでございます。
  124. 永山忠則

    ○永山委員 私が今例証しました三項症の病人は、固定症状でこれ以上なおりっこないのでありますが、この例についてはそうすると二項症へ上げて介護手当を出すということに解釈してよろしゅうございますか。すなわち実質—上は症状は固定しておる。しかし事実—上介護は要するというものは、すべて二項症もしくは一項症へ上げるという解釈にいたしてよろしゅうございますか。
  125. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 結局法律別表に書いてございますように、第一項症、第二項症にはこういうものを第一項症、第二項疾というのだというふうに例示的に掲げてございます。それに当ると判断したものについては第一項症、第二項症と判定いたしまして、それ相当の傷病増加恩給が給されるわけでありまして、そう判定されますならばそれに対して介護手当がつく、こういうことになるわけでございます。
  126. 永山忠則

    ○永山委員 そういう判定がついた場合においては一項症もしくは二項症へ引き上げるのだというようにお話を承われば非常にけっこうでございますので、ここで私は、先刻総務長官が、症状等差について是正を要するのがあるのではないか、ことに内部疾患等について非常に軽きに失しておる感があるからこれが是正を要するということは、臨時恩給調査会の答申に基いてもそうだから、ここで内閣の方に審議会を設けてやるということをと言われたのでございますが、それは内部疾患ということだけでなしに、こういったような各種の症状についてもあらゆる角度から再検討するという考えでございますか、聞きたいのであいます。
  127. 今松治郎

    ○今松政府委員 私が午前中に御答弁申し上げましたのは、今お話のありましたような広い意味でやるという考えはなかったのでありますが、まだ未定稿の問題でありますから、そういう点も含めて検討したいと思っております。総理府内に調査会を置きたい。そうして内部疾患の中で、どうも今までの裁定が非常にきびしいというようなものについては、特に周到なる調査の上で善処したい。つけ加えて申し上げておきますが、そういう際に、婦人で顔などに負傷されたような場合がある。これは男の場合と女の場合とでは非常に精神的に受ける打撃が違うのでありますから、そういう点は十分に加味して考えたい、こういうように考えております。
  128. 永山忠則

    ○永山委員 ただいま全面的に十分検討してみたいというような意図があることを承わりまして、非常に喜ぶのでございますが、同時に症状等差は間差との深い関連性を持つものであります。症状等差、間差不可分一体でございますので、この間差の問題についてもやはり総合的に御検討をいただくということでなければ合理性を欠くと思うのでありますが、この点の御所見はいかがでございますか。
  129. 今松治郎

    ○今松政府委員 承わっておきまして、考慮したいと思います。
  130. 永山忠則

    ○永山委員 私は特にそれを申し上げておきたい。と申しますことは、第三款症の傷病年金は月額八百三十三円で、年一万円でございましたが、今度は一万七千円でございます。この第三款症はもちろん併給である普通恩給もございませず、家族加給もないのでございまして、この三款症のある例を申し上げますれば、右手の背に爆弾を受けました。そうして第二、第三、第四の骨が全部折れておる。事実上においてこの指の一切の自由を失っておる。そこで把握力もないし執筆もできない。着衣や洗顔等ももちろんできませず、食事及び用事一切は左手で行なっておる。元会社員でありましたが復員後傷害のために復職もできない。その後戦友の努力によって応援でようやく生活をしているといったような関係の人が、年一万七千円しかもらわないのであります。月に一千円ばかりでございますが、そういうような状態の款症関係が非常に圧迫を受けておるのであります。どういうわけで特に款症の関係がひどく押えられてきておるのであるか。これでは事実上ほんとうに傷ついた人がこの状態では生活することができない情勢に置かれておるのでありますが、これに対して款症の方が非常に不当に圧迫を受けているというお考えはございませんか。どういうわけでそういうように不当に款症を抑えたかということに対する意見を承わりたいのであります。
  131. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今第三款症というところを例をお引きになりまして御意見がございました。第三款症と申しますと大体外形標準で申しますと中指の喪失あるいは人さし指の機能を廃したというようなものが代表的にたしか表示されておったかと思います。そのほかのいろいろな症状につきましても、それに見合うと申しますか、それと同じくらいの傷害程度考えられるものを第三款症と見ておる、こう見ていいかと思うのですが、第一項症の一番重いものを一〇〇にいたしまして、一番軽いところ、つまり十一番目にランクする第四款症との開き、これを各項款症問の間差と申しておりますが、これの第一項症を一〇〇として第四款症をどのぐらいに見るかということ、何%くらいに見るかということ、これは見方によっていろいろございます。戦前においてはたしか第一項症の全廃疾を一〇〇といたしまして、一番下のランクを一三%くらいに見ておった。これを昭和二十八年の法律百五十五号のときは、上を一〇〇にして下の第四款症を八%くらいにしたわけですが、この考え方というものは、やはり重傷者に厚く軽傷者にはできるだけ薄くするという精神が流れておったと思うのであります。今回の改正におきましては第一項症から第四項症、第五項症、第六項症くらいのところは相当手直しをいたしましたが、いわゆる款症のところでは若干法律百五十五号から上昇を考えましたけれども、御期待をいただきましたほど多くの引き上げを見ておりません。これはやはり臨時恩給調査会における答申にもございましたように重傷者に厚く、そうして項款症間の間差というものについては、その考え方をもっと徹底して考えたらよかろうというような考え方もございました。また今回の改正当りましては同じような考え方で、できるだけ上に厚く、そうしてまた法律百五十五号のときにそこまで手が届かなかったいわゆる第三款症、第四款症の間を手直しする。順次それに関連いたしまして第五項症、第六項症というふうな増加恩給部分についても手直しをするということで、増加恩給につきましては相当程度の改善を考えたわけであります。もちろん款症におきましても五割五分程度増額になっておりますから、決して全然改善されていないということは当らないと思いますけれども、中間における八割八分というふうな上り方から比べれば、第三款症、第四款症というところは上っておらないということは言えると思います。しかしこうした軽傷の方々に対する年金というものは、どちらかといえば精神的補償と申しますか、そうした面の考え方が強い年金でございまして、それによって生活を云々するというふうなことよりも、むしろそうした面の考え方が強いのでありまして、これらの方々についてはできるだけがまんをしていただく、こういうような精神から出ておるわけであります。先ほどおあげになりましたような症状が果して第三款症でいいのかどうか、そういう位づけの問題につきましては、これは先ほど総務長官からも申し上げましたように症状等差なりあるいは症状等差に当てはまる最低基準なりというものについて、さらに詳細な専門的な研究を必要とするという意味で専門的な調査会内閣に設けたい、こういう御意向であります。これによりまして私どもも十分勉強をいたしまして、その調査会の結果によって今後の指導方針を決定して参りたいと思っております。
  132. 永山忠則

    ○永山委員 基本的に款症が非常に押えられておるということは、上に厚く下に薄いという指導理念からであるというふうに言われておるのでありますが、それは当然のことでございますけれども、実際上の処置は、当時二十八年の恩給法改正ができましたときには、政府の方では四百五十億というワクをきめたんです。そのワクをきめて、その範囲で一切を操作したのであります。そのときに政府原案は七項症及び一款症から四款症は、一時金になっていたのであります。それを議員修正で年金に持っていった。そうして総体の金額はふやさなかったから、結局傷痍軍人の方の関係の計算の基礎を戦闘公務におくべきを普通公務におきまた款症をうんとしぼって、そのワクこの中に当てはめたのでありますから、理論的のものでもなんでもない。これを要するに総金額をしぼっておいて、その金額の中に当てはめるために款症の方を押えていったことが、今日非常な不合理を叫ばれておるのであります。私は今度の症状等差の審議会には、すべてを包含して研究すると言われるのであえて言いませんけれども、ここに一款症の関係の人、一款症といえば現在三万二千円、月に一千八百円くらいしかならぬ人の例もあるのでありますが、これは昭和二十五年まで入院治療しておったが、肋骨を九本もとって肺活量が九百である。右手の把握力が五である。右の腕は前方五十度くらいしか上らない。日常生活は座業ができる程度で就職就業は不可能であるから、妻の収入のみで三畳の間を借りて生活をしておる。こういうような人が結局今度上って月額千八百円で、前には月額千百六十七円でありました。こういうような気の毒な状態に追い込まれておるということは、総ワクの数字をきめておいてこれを当てはめた。それには下に薄くする以外にないというので款症を非常に極度に圧迫いたした結果が起きておるのであります。今回もまた総ワクをきめて、その総ワクの中で操作をしようということになりましたから、再びこの間差においても下に薄くなりました。旧来極度に款症が薄かったものをさらに率を悪くしたのであります。それで一そうの不合理が生じてきたのでありますが、この際今回の間差是正に対しまして、われわれは旧聞差——旧聞差というのは戦前のものでありまして、あらゆる角度で検討されて適正なものであるというように信じておるのでございますが、少くとも現行間差と旧聞差の中間の間差くらいは何とかやるべきであるというので、わが党におきましてもずいぶん政府と折衝を続けたのでございますけれども政府は一方的にさらに下を抑えるという間差の是正をされたのでございますが、一款症の人は間差が旧来は三四であった。一項症に対する一〇〇に対して二四であったものを昭和三十八年恩給改正で半分の一二に落した。今度はさらに昭和二十八年よりも安い一一に落したということはどういうわけですか。高く是正せねばならぬものを一款症の間差を一二であったものを一一に落した。また三項症の間差は六五であるものを五七に落した。結局少しでも上げねばならぬものを、三項症の間差は六五を五七に落しておる。一款症の間差は一二を一一に落す。それはなぜ三項症をそういうふうに落したかといえば、介護手当というものを一項症、二項症に持ってくるというようなことからその比率が変ってきたのです。そこに介護手当というものの合理性がないということを言うようにもなってきた。ことに一款症を現在の率よりも下げる、戦前の率の半分になっておる。それをさらに下げていくという考え方はどういう理由からであるか。そういうことだから症状等差とこの間差とは総合して、今度内閣に設けられるところの調査会で、十分御検討を願いたいということを私は申しておるのでございますが、この款症をしぼったということは理論的なものじゃない。総金額をつまみ金で出して、そしてそれに逆算して計算したのであるから、不等の間差ができたということに非常なる不満を抱いておるのでございますが、御意見を承わりたいのであります。
  133. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま各項款症間の間差の問題について、今までよりも悪くなった、こういう御意見でございましたけれども、基本年額に対しましては、第一項症の基本年額十七万一千円というものを一〇〇といたしましての間差というものをわれわれは考えておるのであります。従いまして第二項症は八一、第三項症は六五で従前とかわりません。これは戦前もそうだったわけであります。第四項症につきましては、今まで三五であったものを一〇上げまして四五%にいたしたわけでございます。第五項症におきましては二〇であったものを二五にして五%上げました。また第六項症におきましては一五%でありましたものを一九%、四%上げております。このようにいたしまして。昭和二十八年の法律一五五号でできました間差を、相当程度見直しております。また款症におきましても現在の行われております間差というものに、それぞれ第一款症、第二款症、第三款症とも一%ずつ上げてございます。これを旧間差と申しますか、戦前に行われていた比率になぜ高めないかという点につきましてはこうした軽傷者については、戦後における新しい目から考えていくということで、法律一五五号におきましても考えられたわけだろうと思うのでございます。また今回われわれが臨時恩給調査会の答申の線を尊重いたしまして、そして考えました点も、やはりこれを戦前の程度にまた逆戻りさせるということについては、いささかと申しますか、多分にいろいろ考えなければならぬ点があったわけでございまして、これを改善するといたしましても、戦前通りにするというところまでは、考えられ得なかったわけでございます。なお第四款症、第三款症、これらのところの症状につきましては、現在ほかの公務災害補償でありますとか、厚生年金保険でありますとか、その他の一般の補償制度等とのにらみ合せもありまして、それらのバランスというものも考慮に入れておるわけでございます。
  134. 永山忠則

    ○永山委員 昭和二十八年に恩給改正法を出されましたときに三橋局長は、実は間差の点は是正はいたしたいのであるけれども、やはり金の関係でどうしてもそこまでいかないのだ、経済状態を見た上でこれが是正をやりたいということをはっきり言われたのであります。すなわち衆議院内閣委員会で言われておることは、国家財政が許せば、そうでないものにも十分な措置をなすべきである、すなわち、低い方のものに対しても十分な措置をなすべきである、十分なことができかねる現状において、与えられたる金額でそういうことをきめたのだからやむを得なかった、将来の国家財政を見た上で直したいのだということをはっきり言われておるのでございまして、私は特に今回問差が三項症面びに一款症率が下っておるというようなことは、とうてい了承できない点があるのでございます。  次に、傷病恩給に対してはきわめてまま子的な扱いがされておる。すなわち一定の金額に縛られておるからそれに通算をしてやる関係上、やはりやむを得ずここへしぼってきたという観があるという点に対しまして、失権率の問題を取り上げてみたいのであります。公務扶助料の失権率は、昭和三十三年は三・五二%でございます。昭和三十四年は二・八五%、昭和三十五年は三・二七%、昭和三十六年は三・六九%でございます。そうして十年間の失権率を政府は出しまして、四十三年には五・一〇%、半分くらいは失権してしまう、すなわち旧来遺族扶助料はこの率からいえば十年後には半分に減ってしまうというような失権率になっておるのでございますが、これは三十一年の三月末現在、恩給統計の階級別年令別人員を第十回の簡速生命表の各歳別生存率を用いて人員を算出したと政府は言っておるのでございますが、どういうわけか傷痍軍人の分だけはこの失権臓の逓増を見ずして、二十六年から二十九年までの四カ年の平均だけしかとってない、そうして増加恩給の失権率を二・五%にいたしておるのでございますが、われわれはこの遺族の方の失権率、これさえも非常に辛きに失している、これ以上の失権率があるのだということを承知いたしておるものでありますが、しかしこの方は第二としまして、私は今傷病恩給でしぼって話をいたしておりますので、何ゆえ増加恩給失権率〇・二五%、あるいは傷病年金の失権率は〇・九四%、昭和三十一年三月末の恩給統計失権率によるといっておりますが、今後の失権の逓増率を見ないかということをお聞きしたいのであります。
  135. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 増加恩給受給者及び傷病年金受給者の失権率というものの見方の問題について御意見がございました。前に使っておりました昭和二十六年から二十九年までの四カ年の平均恩給統計上の失権率というものが増加恩給におきまして二・五%、傷病年金につきまして〇・九四%というものを使っております。今回推計方法を昭和三十一年から昭和四十七年までの推計をやってみたのでございます。これは現在の増加恩給受給者、傷病年金受給者の年令構成によりまして、人口問題研究所の第十回簡速生命表の各歳別の生存率というものを適用いたしまして推計いたしますと、増加恩給受給者におきましては、これはこまかく申し上げますと大へんでございますから、結果だけを申し上げます。昭和三十一年から四十七年まで、全体を平均して考えて参りますと、増加恩給受給者の方では、幾何平均減少率というものは一・四五%になっております。それから傷病年金受給者の方は、昭和三十一年から昭和四十七年までの全体の総合平均、幾何平均減少率は一・二二%になっております。この三十三年度予算を組むに当りまして使わるべき失権率というものは、増加恩給受給者におきましては一・二八%、傷病年金受給者におきましては〇・九一%というものが妥当な数であるというような結果が出ております。私どもがこれの作成以前の昭和二十六年から二十九年までの四カ年平均恩給統計の失権率で使いました二・五%あるいは傷病年金における〇・九四%というものは、今回の精密な人口問題研究所の簡速生命表によりまするところの年令別構成に当っての失権率から比べますと、まだ相当甘い点もある、こういうことでございます。むしろ逆にそんなに落ちないという結果が私ども実績に出ております。
  136. 永山忠則

    ○永山委員 公務扶助料の方は逓増された失権率で計算をしたわけでございますか。傷痍軍人の方だけは固定した失権率で計算をして四カ年——これは四カ年間三百億、要するに四年目の三百億のピークを押えておるのでありますから、その間の計算の仕方で非常に数字が狂ってくるのであります。一方は失権率の逓増によるものによって計算をする、一方は固定した失権率でやるというようなことで計算をしていった場合におきましては、その均衡を失することになる。傷痍軍人の方が平均率だけで掛けられるということは非常に不利な計算になる。われわれはこの三百億のうちの金額の計数操作によってもう少し款症は上げてもいいんだということを考えておるのであります。この失権率の点においても無理があるのではないか。すなわち現在の実態調査によりますと、増加恩給の失権率は三%になっておるんだ、さらに傷病年金の分も一%になっておる。これは日本傷痍軍人会の方においても全国実態調査から出てくるところの数字なんです。このわずかの〇・五%あるいは 〇・〇六%の違いでも一億という金がすぐ違う。でございますから、私はこの増加恩給及び傷病年金の失権率に対して、ただいま局長が言われましたところの資料の要求をいたして十分検討を続けたいと考えておるのであります。  さらに人数の関係でございますが、私はこの三十三年度の総理府恩給局が大蔵省へ要求されましたところのトラの巻を持っているんです。そのトラの巻から見まして、恩給局が大蔵省へ請求いたした項症の人数、大蔵省へこれだけが本年度の項症の人数だということを請求しておるのでありますが、しかるに大蔵省にさらに二千七百人ばかり項症は増加する見込みだということを言われて、そうしてその計数に基いて臨時恩給調査会にその数字を直してお出しになっておる。他の方の数字は少しも訂正せずして、すなわち傷病年金の人数は六万四千九百二十人だ、あるいは公務扶助料の人数は幾らだということが、こういうように要求通りされておるにもかかわりませず、この増加恩給の人数だけを恩給局案よりも三千七百人も多く見積って、そうしてそれを増して恩給総額の数字をふやしておるというところに、われわれはどうも傷痍軍人関係の数字はきわめてしぼり過ぎておるのではないかという不満を持っておるのでございます。どういうわけでこの項症の分の増加恩給だけを恩給局の方よりも人数を増したのであるか。款症も増すべきではないか。七項症並びに款症はこれを一時恩給にされておったのが年金となったから、これがどんどんと申請がくるという理由で七項症申請が多いからこれを増したのだというようにおっしゃるならば、また款症もこれを増さねばならぬ。しかるに款症の方は恩給局が大蔵省へ要求した数字そのままにしておいて、そうして項症だけを多くしておるということは、結局傷病恩給の数字を多く見積るすなわち水増という結果になるのでありまして、この点に関する御意見を承わりたいのであります。
  137. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 来年度並びに再来年度予算の趨勢を見ます場合に、増加恩給傷病年金がどう伸びていくかという新規の裁定部分についての見込みの問題でございます。これは御承知の通り現在までの裁定されました傷病恩給につきましては、十三万受給者がございましたが、今後なお増加恩給受給者、傷病年金受給者、合せまして約四万くらいが将来進達せられるであろうということが、厚生省援護局の方からも数字が出ております。今後出て参りますものは、結局増加恩給につきましては第七項症、それから傷病年金という方々の分でございます。もちろん第七項症以上の方々につきましても事後重症というふうな問題として、六項症以上として請求されるものは相当あろうと思いますけれども予算の数字といたしましては大体三十四年度、三十五年度にわたって増加恩給が一万一千円、傷病年金が二万七千円くらい、合せて約四万円くらいが、現在の十三万円というものにプラスされてくるであろう、こういうふうに見ております。これを厚生省とも打ち合せまして、来年度どのくらい進達があるかということを見込みまして、来年度予算を作る基礎にいたしておるわけでございまして、決してそうした客観的なと申しましょうか、進達見込みと申しましょうか、各般の事情を考えまして、予算基礎を作っておるのでございまして、勝手に数字を作っておるわけではございません。
  138. 福永健司

    福永委員長 永山君の御質疑はまだおありのようでございますが、いずれ後日さらにこれを継続していただくことにいたしまして、次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十五分散会