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1958-03-13 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十三日(木曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       有馬 英治君    井出一太郎君       加藤 高藏君    川野 芳滿君       吉川 久衛君    笹山茂太郎君       杉浦 武雄君    助川 良平君       高瀬  傳君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    夏堀源三郎君       平野 三郎君    古川 丈吉君       松野 頼三君    山本 勝市君       有馬 輝武君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       久保田鶴松君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         国税庁長官   北島 武雄君         食糧庁長官   小倉 武一君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局次長) 磯田 好祐君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    中西 泰男君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月十三日  委員有馬英治君、竹内俊吉君及び中山榮一君辞  任につき、その補欠として笹山茂太郎君、助川  良平君及び松野頼三君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員笹山茂太郎君、助川良平君及び松野頼三君  辞任につき、その補欠として有馬英治君、竹内  俊吉君及び中山榮一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 三月十二日  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第一三三号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七号)(参議院送付)  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第一三三号)(予)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金の設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一六号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九六号)  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第四五号)  小委員長より報告聴取の件      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。——質疑はないようですから、本案に対する質疑は終了することといたします。  なお本案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。本案原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よって本案原案通り可決いたしました。  なおこの際お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成並びに提出等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。     —————————————
  5. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、昨十二日予備付託に相なりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案議題として、政府委員より提案理由説明を聴取することといたします。大蔵政務次官坊秀男君。     —————————————
  6. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。  外国為替及び外国貿易管理法は、外国貿易の正常な発展をはかり、国際収支均衡通貨の安定を確保することを目的といたしております。そのため国際通貨基金協定規定を受けて、外国為替相場の建て方に関する規定を設けておりますが、本邦における外国為替売買相場の変動の幅の制限に関する管理法規定は、国際通貨基金協定規定に比して、より制約的な面があり、必要以上に制限されております。このため、かりに、為替相場の建て方に関しまして海外において何らかの措置がとられました場合には、本邦においてこれに即応して措置することが著しく困難となることも予想されますので、この際、この点についての規定を改める等、最近における外国為替に関する海外の動向にかんがみ不適当と思われる規定を整理するため、所要の改正を行うことといたしました。  次に、現在の管理法におきましては、質問検査対象外国為替公認銀行と両がえ商に限定されておりますが、為替貿易管理制度簡素化を進めるに伴い、管理の適正を期するためには、内外の貿易業者保険業者海運業者等この法律の適用を受ける取引を営業とする者に対しましても質問検査を行い得るようにすることが必要と考え質問検査対象にこれらのものをつけ加えることといたしました。  以上がこの法律案提案する理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の五法律案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。仁村英雄君。
  9. 石村英雄

    石村委員 まず相続税法改正案についてお尋ねをしますが、今度の相続税改正は、一般的には減税になると思うのですが、相続財産の多少によって、増税になるのではないかと思うのでありますが、大体どの辺の限度までが減税になって、どの程度から以上が増税になるのか、その境目をお示し願いたい。
  10. 原純夫

    ○原(純)政府委員 相続税法改正によります負担比較は、なかなかむずかしいのであります。それは、御案内のように現行法におきましては、相続の場合にどんなふうに分割をするかということで、税額が端的に言いますと非常に変ってくるということになっております。従いまして、現行法でどんなふうな分割の仕方をするかということを仮定しませんと、比較ができない。そこで、先般三十三年度の「租税及び印紙収入予算説明」という刷りものの三十一ページに、一応の比較表を差し上げてございますが、この表は、現状における実際の財産相続の状況をサンプル調査に基いて推定いたしました基礎で、現行法負担計算する。改正案の方は、法定相続人の数、またその中で、配偶者とその他の者はどういう関係にあるかということできまって参りますので、それを、実際に現われた基礎数字でただいまの数を知りまして、それによって計算したわけであります。この表でごらんいただきますと、遺産価額にして三百万円程度までのところは、現行法では三%、六%、八%というような負担率になっておりますが、改正案ではゼロである。それからだんだん上へ参りましても、改正案によって若干ずつの軽減がある。千万のところで、一四・六%のものが一〇・六になる。それから三千万のところで二四・七が三一・〇。それで改正案負担現行法負担をこえておりますのが、三億の遺産のところであります。そこで、現行法で四八・二が四九・〇となる。五億のところでは五二・五が五五・二となっております。こまかい、どこが境目になるかというのを実は用意いたしておりませんので、もし必要でございましたらば、計算をして後ほど申し上げるようにいたしたいと思います。
  11. 石村英雄

    石村委員 お説のように、相続税相続実体によって非常に変ってくると思うのです。そこで、今度の改正案によって少し調べてみたのですが、そういたしますと、全般的には下りますが、その中で特に配偶者、妻の税額は全面的に上るように見えるわけなんです。私は計算を個人的にやったことで、検算も十分にいたしておりませんから、あるいは計算間違いかもしれませんが、かりに五百万円の相続財産があって、そのうち妻が百五十万円相続するということにしますと、新しい法律では約六万四千円ばかりの相続税になる。現行法では、これが二万七千五百円。また一千万円の遺産相続で、妻が三百万円相続する、こういうことにしますと、改正案では二十七万六千円の相続税である、現行法ではそれが十六万五千円。また同じく一千万円の相続財産で、妻が二百五十万円相続するということにしますと、改正法律では二十二万円の相続税になり、現行法では十一万五千円。さらに二千万円の遺産相続で、五百万円妻が相続すると、改正案では六十八万八千円、現行法ではそれが四十一万五千円。あるいは妻が二千万円のうち二百万円相続するとしても、改正案では二十二万九千円になる。現行法ではそれが六万五千円。三千万円の場合に、妻が一千万円相続するとすると、改正案では約百七十一万円、現行法では百十九万円。このように、妻の相続税が今度の改正では非常に高くなる。相続財産の分配の仕方によって、いろいろ違いはいたしますが、しかし、私の計算が全然間違っておれば問題ありませんが、かりに大した計算間違いがないと仮定いたしますと、どの例を取り上げてみましても、配偶者相続税が今度の改正案では非常に高くなるという傾向があるということは、どうもいなめないように思うわけでございます。またその他子供相続についても、場合によると現行法よりも高くなるという例もあるわけですが、しかし、これは私の計算間違いであるのか。それとも大蔵省としても、こういう法律お作りになる場合には、いろいろ具体例を検討なさって御判断なさっていらっしゃることと思うのですが、私の乏しい経験から申しますと、税法というものは、ただ表面的に見ると大へんよくなっておるようですが、実際に当てはめてみないと、いいか悪いかということはなかなかわかりにくいもんですが、このような計算をなさっておやりになった結果、やはり妻の相続税は、今度の改正案では高くなるという傾向を御承認になるものかどうか、御答弁願いたいと思います。
  12. 原純夫

    ○原(純)政府委員 妻の相続税は、今度の改正案では、まずほとんどの場合高くなると思います。これは、現在、この現行法における配偶者控除というのは、御案内通り財産価格の二分の一ということになっております。これが負担としてその結果非常に低くなるということで、配偶者控除本質考え、今回の改正の本旨でありますところの、いわばこの操作による税額の差をなるべく下げようというようなことなども考えまして、大体配偶者控除による利益と申しますか、軽減を、大体の場合において、現行法による場合の半分程度に減らすという考え方をとったわけであります。ただいまおっしゃいました数字は、石村委員計算でありますから、多分間違いないと思いますが、なお後ほど私の方にいただいて、念査させていただきたいと思いますが、数字の一々についてはどうと申せませんけれども、まずおそらくおっしゃったようなことではなかろうかと思います。なお数字の精細なところは、別途申し上げたいと思います。
  13. 石村英雄

    石村委員 私も、実はこれは時間がなくて、検算する余裕がありませんでした。従って、金額的には確信は私にはないわけですが、しかし傾向だけは、いろいろな例をあげてやってみた結果、妻の相続税が非常に高いという傾向は、どうもいなめないように考えるわけです。このことは、今度の相続税が、遺産のあまり大きくないところは安くするという考え方は必ずしも悪くないと思うのですが、妻の相続税を今度非常に上げるということは、どうも現在の一般的な考え方からいうと、おかしなものじゃないかと思うのです。逆行したやり方ではないかと思うのです。大体遺産というものは、夫婦で作り上げた財産で、主人だけの力でその財産ができたとは言えないと思うのです。やはり奥さんの内助の功というか、何かがあって、初めてそういう遺産は生まれたという考え方からいえば、少くとも遺産の半額は、妻に全部やつてもいいのじゃないか、そうして、それに対する相続税なんか取らなくてもいいのじゃないか、その妻の財産を、今度さらに次に相続される場合に税金を取ればいいのであって、そのときの財産というものは妻の協力によって初めて成り立った財産である。従って、その半額くらいは、相続税を取るというときは——妻協力の結果でき上った財産だということになると、相続税を免除しても、その場合にはいいはずだ、こういう考え方になると思うのです。それが、逆に今度相当高い税金に引き上げられるということは、これは妻の地位というものを、非常に大蔵省は軽蔑していらっしゃるか、区別していらっしゃるか、全く今日男女平等と申しますか、そういう観念から逆行した、きわめて反動的な相続税ということにならざるを得ないと思うのです。どうもこの点に対する考え方が、われわれには了解できないわけです。やはり大蔵省は、あるいは税制調査会の答申によってお作りになったと思うのですが、大蔵大臣税制調査会の皆さんは、妻の座というものを抹消する、抹殺するという御意見に基いてお作りになった相続税法であるかどうか、はっきりしたお考えをお示し願いたいと思います。これは大問題だと思う。なるほど全面的には一応減税になった、しかし、その中で、妻が自分の力によってたくわえた遺産を、妻の名儀になるというときに税金を今までよりもよけい取られるということはどうもおかしな話だ、こう考えるわけですが、御答弁をお願いしたい。
  14. 原純夫

    ○原(純)政府委員 まことにごもっともな御意見であるとは思うのであります。しかしながら、率直に申しまして、現行法配偶者控除の度合いが多過ぎるというのは、私ども改正いたしました一番のもとでございます。配偶者控除には、おっしゃるような、妻が一緒に財をなしたという意味がもちろんありまするし、そのほか妻は——妻と申しますか、妻が残るとだけ仮定してもいけないわけですが、配偶者は大体世代がなくなった本人と同じ世代である。従って、相続がいわば横にいくというようなわけですね。子供にいけば、子供が次になくなる時期は、一世代先である。それは一度入るから、相続税として一段階多くなるというようなこと、その他配偶者の、何と申しますか、必ずしも老後とはいえないかもしれませんが、余生のめんどうを見る、いろんな意味があると思うのであります。それらに非常にはっきりと意味を持たして計算をすることはなかなかできない。ただいまおっしゃっております、ともに財をなしたということにつきましても、それは気持ではわかるわけですが、それを非常にかっきりとやるとなると、必ず半分かどうかはなかなかわからぬことであります。また同様な問題が、実は子供と親との間にもあるわけです。子供が親の仕事を手伝って家業をやっているという場合には、同様な問題があるわけですが、そういうものを、それではどれだけということはとてもできないというので、基礎控除、あるいはその他の関係で、各種控除でやっておるわけですが、配偶者の場合だけそれをやりますと、他とバランスが相当問題になってくるということになります。それから世代から世代へというのでなくて、同じ世代で横へ行く、一つ関門がよけいになるというような問題は、実は御承知だと思いますが、別途相次相続控除という制度がありまして、相続が十年以内に二度ありますと、二度目の相続からは、前の相続税税額の何割かを引くというような制度もあるわけで、それで、ある程度はカバーされているというふうにも思わなければならぬ。老後の養いといいますか、めんどうを見るというような意味であると、総額において何億も取得しているものにも配偶者控除を与えるというのは、おかしいという問題が出て参ります。それらをいろいろ考えまして、私ども、現在配偶者控除によって受けておる利益をどの程度にするか、いろいろな計算をしました結果、まずまず結論は、半分程度のところにしたらいいじゃないかというので、税額控除で三分の一としたわけです。ということは、現在の制度による利益税額控除計算しますと、大体三分の二程度税額控除になるということを申しているわけですが、もちろんこれは場合によって違いますか、そういうような感覚でやった。なお別途実際面で見ますと、こういう弊害があるわけです。現行法の全般的な弊害でありますけれども配偶者控除で非常に税額が減るものですから、実際には配偶者相続するのでないのに、税のために配偶者相続する、あるいは場合によって、そういうふうに仮装するというような場合もあり得るわけであります。私ども、それが一番いやなんです。ほんとうの取得でなくて、税のために、こうなるというのはいやなんです。その中に、単にいやというだけでなくて、たとえば農家であるとか、あるいは商売をやっていられるというような場合は——特に農家なんかだと、御主人がなくなって、奥さんが五十だ六十だというような場合に、どう申しても世間のなにからいって、それはお子さんがあれば、お子さん相続になるのは当りまえだと私どもは思うのです。思ってそう伺うと、いやこっちへいきますと、こう言われるんだけれども、どうもそういう実情は、やはり実際の相続と違う。相続前提として税負担をきめるべきであるのに、税負担のために相続の形態をきめるということに、実際上なっているんじゃないか。多くの場合は、農家ほんとうはそうだというようなことをいわれ、それじゃ御長男相続したことにして、その通り長男相続として納めて下さいということで、農家は割合にそういう場合の税額を、配偶者控除軽減するということができにくい。農家を一番の例に持ち出して恐縮ですが、ほかにも事業をやっておられる方、そうでない単に資産だけを持って、資産を単に分けることは自由ないわゆる資産所得家とでは、だいぶそういう場合結論が違って参ります。そういうことがいやなんです。私ども各種控除も大幅に引き上げて、税率も下の方は軽減する。そのかわり、そういう、相続税制度がこうであるために、実際の相続が違うんだが、こういうふうにしておくというようなことは、なるべくなくしたい。裏にはそういうこともあって、それを一切考えまして、税額控除として三分の一ということにいたしたわけでございます。
  15. 石村英雄

    石村委員 どうも納得できない。いやだいやだとおっしゃるのですが、うそを言わせることになってはいやだということかもしれませんが、税法というものは、相手がうそを言うという前提税金をかけられたんじゃ、たまらないと思います。これは正しいものとして、税法は同時に、それに応じて作っておかなければ、インチキをするだろうから、税法の方でもインチキをカバーしてやれという考え方税法お作りになっては大間違いである、こう考えます。  それから妻の場合に、妻の財産というものを認めないという考え方は、これは全くもってのほかのことであります。大体昔から日本では、夫婦というものは一心同体といわれている。一心同体である以上、遺産は平均をとるべきなのを、今度うんと高くとるというようなことは、全くもってのほかのことであります。また最近特に親と子との関係等のことを考えますと、妻に相当な財産を与えて、それには税金はあまりとらないという方向にむしろ進んでいく。それが反対に相続税を高くとる逆行したやり方は、これでは、楢山節がますます繁昌せざるを得なくなる。どうもこういう考え方——原さんのおっしゃるようなことは、ほかの面でやり得ることだと思う。そのほかの面の関係から、妻の方の税金を上げるということが必然的に生まれてこざるを得ないという結論には、私はならないと思う。一定の遺産については税金を低くしてやっていこうという考え方は、ある程度は認められると思いますが、しかし、その場合、妻の分だけは必ず上げてやる。そこで、税金をよけいとって、妻に遺産相続があまり行われないようにする。極端にいえば、妻に遺産は全然やるなという考え方である。五百万円の場合に、百五十万円妻が相続しても、現行法よりもかなり高い。二倍以上の相続税になるということは、これが二億だ三億だというものなら、それは高くなってもいいかもしれません。しかし、たかの知れた五百万円のうちの百五十万円を妻がもらって、その相続税現行法よりも高い。あるいは一千万円の場合でも、そのうちのわずか三百万円を妻の財産として確保しても、相続税現行よりも相当高くなる。これも倍近くなると思うのですが、そういうやり方は逆行したやり方で、国民はとうてい了解し得ない相続税改正案だと思います。これは、決して妻の場合だけを特に現行と同様、あるいは安くするという方法がないわけではないと思うのです。今度の考え方によりましても、どうかこの点、いま一度御再考を願っての御答弁をお願いしたい。
  16. 原純夫

    ○原(純)政府委員 現行法制度は御案内通り財産価額で二分の一にいたしますから、財産価額で半分になる。その上にこの低い税率がかかってくるということで、実際には、先ほど申しましたように、税額は半分になるのじゃなくて、三分の一程度になってしまうわけです。それまでのことが必要であろうかということを私ども考えたわけです。それで、それを税額控除に直してどうするかということを考えて、ただいまのような三分の一という御提案をいたしておるわけでございます。従いまして、現行法で幾らかかる、それが倍になるというふうにおっしゃられれば、まことにその通りでありますが、その現行法負担が、他の子供が百五十万円取得した場合の負担に比べて非常に低い、そこに問題があるというふうに考えたわけで、私ども全体としては三十三年分の課税見込み現行法計算しますと、五十四億余りの相続税額になる、それを改正法案によりますと二十七億の税額、つまりちょうど半分になるというような大幅な調整軽減をいたそうとしているわけであります。従いまして、決して重くするというような考えではない、全体としては半分にする、ただその中で、税負担を最も合理的に配分するというアイデアで控除考え税率考え、かつ配偶者控除未成年者控除等について考えたわけでありまして、決して全体として重くするという考えはない。現行法における財産価額控除というところからくる大きな不均衡と申しますか、そういうようなものを排除して、この制度本質から考えて、この程度でよかろうということを判定いたしましたわけで、おっしゃるところに全然理屈がないという意味で申し上げるわけではないけれども、そういうつもりでやっておるということを、御了承いただきたいと思います。
  17. 石村英雄

    石村委員 あとの質問の、大臣が見える時間の予定があるようですから、この程度で保留しておきたいと思うのですが、原さんの御説明だと、大体今までの妻の相続税が安過ぎたから、今度は高くしてやろうというお考えのようですし、またいろいろ計算してみますと、今度の遺産相続の場合に、子供のある一人に特に集中した場合に、その人の税額が安くなって、次男、三男、ほかの子供が少しもらったときには、場合によれば現行法よりも高くなるという例もあるようですが、どうも今度の相続税法の根本のねらいは長子相続長男相続に集中させるという、一定の反動的な方向をもってこの相続税法が作られておるというように、結果において現われておると言わざるを得ません。しかし、さっき申しましたように、もう十二時ですから、あとの関係がありますから、一応この程度にとどめておきます     —————————————
  18. 足鹿覺

    足鹿委員長 税の執行に関する調査小委員長より、同小委員会における今日までの調査の経過について中間報告の発言を求められております。この際これを許します。税の執行に関する調査小委員長淺香忠雄君。
  19. 淺香忠雄

    ○淺香委員 税の執行に関する調査小委員会の調査の経過並びにその結果について御報告申し上げます。  まず、小委員会の設置の目的から申し上げます。戦後の混乱時においては、納税道義が極度に低下した結果、必然的に課税、徴収面においても強力に執行がなされたが、現在では経済も安定し、その間数次の減税措置により、租税負担も相当軽減されるとともに、納税道義も漸次高揚されて来たのであります。しかし、現在の課税執行面の状況を見るとき、戦後の混乱時における執行そのものがなお存続しており、これがため行き過ぎと見られる点が多くあり、より民主的にして納税者の納得する税務への改善は、必ずしも十分とはいえない実情にあります。  以上の観点から、昭和三十二年十一月七日の大蔵委員会において、税の執行に関する調査小委員会の設置を決定し、主として税の執行面が真に民主的に行われるために、実情を調査するとともに、改善方式をこの際十分検討することとしたのであります。  次に、調査の経過について申し上げますと、小委員会の調査の方向は、税の執行面全般にわたる諸問題について行うこととしておりましたが、特に当面の問題となっておりますものを重点として取り上げることとし、まず査察制度と協議団等の苦情処理の制度及び当面執行面に起りつつある諸問題を調査検討することといたしたのであります。  小委員会は、設置以来数回開会し、参考人などの意見を聴取し、またその間委員会においては東京、名古屋、大阪各国税局に委員を派遣して、実情を調査して参ったのであります。  以上のように調査、審議を続けて参りました結果、次のように、検討すべき点について一応の意見がまとまりました。  一、査察制度について、  査察制度は、当初昭和二十三年七月五日大蔵省主税局に設置され、後に昭和二十四年六月一日国税庁に現在の調査査察部として設置されたのであります。設置されたときの査察制度の性格は、収税計画を促進強化するための一翼として、社会的に非難さるべき悪質脱税者を告発して、その刑事責任を追及することであります。従って、本制度は、戦後の納税道義の低下していた時代には、第三者通報制度とともに、効果はあったのでありますが、社会情勢が安定してきた今日、本制度を創設当時の機構、性格をそのまま存続させることは妥当でないという意見が圧倒的であり、うちには、現段階では廃止すべしとの強い意見もありました。なお、実情調査の結果、次の問題点があげられました。  (一)、最近の査察の対象が、結果的に中小企業、特に同族会社に対して行われる傾向が多いこと。  (二)、科学的裏づけ調査よりも、検察的権力の強制調査を重点とする結果、査察の効果よりも、善良な納税者及び第三者に対して必要以上に圧迫するおそれが多分に現われ、査察に対する社会感情は不信に傾いている。  (三)、査察事件の内容が外部に漏れて、査察ブローカーの介在する疑いが多分にあること。  (四)、中小企業の特殊性と商慣習を無視されていること。  二、協議団制度について、  本制度はシャウプ勧告に基き、侵害された納税者の権利、利益の救済機関として、昭和二十五年七月団令をもって創設されて現在に至ったのであります。その間処理されてきた審査諸事案は約六万五千件であります。この制度に対する一般納税者のおもな批判は、次のようなものであります。  (一)、協議団は、救済機関というが、国税局長の下部機構であるから、主管部(直税部、徴収部等)から強い反論があるときは、勢いそれに押されて、当初の判断と異なる審査決定が行われる場合が多いこと。  (二)、協議団に持ち込んでも、審理が相当長期にわたり、その間納税者は不安定の状態に置かれ、利子税等の累積に悩まされていること。  (三)、協議官の人事は、税務職員の姥捨山的な観があるので、沈滞していること。  以上の観点からも、本制度については、苦情相談所とともに、早急に再検討を行い、いまだ不当に取り扱われている数多い納税者救済のために、強化拡充することについては意見が一致しております。  以上の理由から、査察制度、協議団関係制度に対する再検討については、早急に結論を出すべきであるが、この際政府に対して反省の機会を与え、政府においても、実情に即した執行面の改善方法の研究を行い、可及的すみやかに成案を得て、小委員会に報告せしめるよう手配されんことを希望いたします。  なお小委員会においても、納税者の納得する最終結論を出すために、さらに実情調査を行い、不合理な点を発見することが、現段階においては最も妥当であるとの意見が一致いたしました。  その間においても、政府はその他の点で改善さるべき点があれば、逐次これを断行するとともに、協議団制度については、PRを徹底せしめるよう努力すべきであると考えます。  三、その他  その他の問題につきましても、次のような議論が行われました。  (一) 現在の課税の実体を見るとき、効率標準の濫用により、申告納税制度国税庁みずから否定する結果となるおそれがあるから、この効率標準率を廃止せよ、または公表すべきであるとの強い意見があります。いずれにせよ、当面この運用については、再検討をすべしとの強い意見に一致しました。  (二) 国税庁外郭団体の実情については、一般から疑惑を招く点が多々ありますので、今後は公正、明朗な協力関係を樹立するよう早急に改善すべきであるとともに、特に人事については、慎重を期せられるよう指導すべきであると考えます。  以上が調査の経過並びに結果でありますが、言うまでもなく、本小委員会は、所期の目的達成のために、今後なお継続的に税の執行上生じております諸問題について調査を進め、税務行政の民主化と合理化の実をあげたいと存じます。  以上簡単ながら中間報告といたします。  この際一言つけ加えておきたいと存じます。それは、去る二月十二日の小委員会で取り上げました国税庁職員の労働問題であります。ここでは、詳細は省略いたしますが、税務の執行が能率的に行われますために、労使が中央においてとくと話し合うことが必緊のことであると考えますので、国税庁においては特にこの点配慮せられることを、小委員会意見として希望しておきます。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて小委員長の報告は終りました。ただいまの小委員長報告においても述べられました国税庁当局に対する要望事項につきましては、政府において至急検討の上、すみやかに報告せられるよう希望いたします。  なお、この際政府の所信を求めます。
  21. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいま淺香小委員長の御報告を承わりまして、非常に御熱心なる御審議に対しましては、その労を多とするものであります。御報告の趣旨にもございます、いろいろ査察制度についても改善していかなければなるまいという点も承わりましたが、慎重にこれらの点につきましては政府においても審議いたしまして、今後善処いたしたいと思います。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  23. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案議題として審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。石村英雄君。
  24. 石村英雄

    石村委員 経済基盤のための四百三十六億の資金のたな上げ関係につきまして、いろいろお尋ねしたいと思いますが、まず最初に、この前の臨時国会の予算委員会で、私が大蔵大臣にお尋ねし、返答をいただいたことで、まだ実現していない問題を先にお尋ねしたいと思うのですが、いろいろ臨時国会でお尋ねしましたが、その中で為替専門銀行についてお尋ねしましたところが、大蔵大臣の御答弁は、日本銀行と相談をしなければならないが、大体お説のような方向をとっていいと思う、こういう御返事であったわけでございます。その内容は、言うまでもなく、為替銀行法を作るとき、当大蔵委員会で附帯決議をいたしまして、為替専門銀行に低利の円資金を供給するようにという附帯決議をつけたわけですが、それに対して大蔵大臣は、大蔵大臣の御一存としては、そういう方向に進むべきであろうというような御返事があったわけですが、今日なおそういうことが行われたということを聞きませんが、大体どのように運んでおりますか。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 為替専門銀行をどうするか、現状のままでいいか、さらにこれについて何らかの改善を加えるべきか、この点につきまして、日本銀行、東京銀行等と相談しまして、そうして、やはり御承知のように東京銀行は、国内支店を、専門為替銀行たるゆえをもって非常に制限を受けておる、従って円資金が乏しい、従来は、外貨の預託でいっておったのでありますが、この外貨の預託が今後十分にないばかりでなく、また外貨の預託制度自体が、やはり問題になるのであります。これは、為替政策全体の基本問題にも触れるのでありますが、従って将来に属しますが、こういうふうな基本的な点からも考えて、やはりこの際東京銀行、いわゆる為替専門銀行に低利の円資金をある程度日本銀行から供給するのがよかろう、こういう点については、ほぼ見解が私は一致しておると考えております。ただ、しかしそれだけでいいのか、為替専門銀行と他の公認為替銀行との関係が現状のままでいいか、これはまた一つの問題で、この間の関係をどういうふうにするかというのが、一つの問題になっております。これらを総合しまして、ただいま率直に申しまして、公認為替銀行、東京銀行のトップレベルと申しますか、頭取連中に話しまして、一応お前方でこういうふうにしたらいいじゃないかという案を一つ考えてほしいということを申してあります。まだその結論は持って参りませんが、今日真剣に考えておるように思います。低利の資金を銀行が出す点については、これは、日本銀行の同意があれば、言いかえれば、大体その方針はいいが、いつ実行するかというようなはっきりした時期について日本銀行が十分考えてくれれば、これは実行ができるんじゃないか、私は、かように考えております。一応今のところは、そういうふうにして低利の円資金を供給する、これが当面の問題であろうと考えております。
  26. 石村英雄

    石村委員 どうもはっきり聞きとれない点もありましたが、では日本銀行も、専門銀行というのは東京銀行ですか、その東京銀行に対して、低利の円資金を供給するということに対しては、反対はないという段階に至っておるわけですか。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一応内々に今のところは話してあるので、正式の意見を取りまとめておるということはまだ聞いておりません。それと申しますのは、一方また公認為替銀行と専門銀行との関係考えなければならない。言いかえれば、専門為替銀行というよりも、東京銀行自体のあり方が今日問題になっておりますから、この東京銀行という具体的な銀行と、他の公認為替銀行との関係を円満にするのには一体どうすればいいかというような問題も残されておりますから、そういう点も今後十分考慮していかなければならぬ、かように考えております。
  28. 石村英雄

    石村委員 そこで、他の為替をやっている銀行との関係ですが、この前の臨時国会でも、為替に限らず、一般の金融について、現在の各銀行が何もかもみな手を出して、設備金融もどんどんやり、本来商業銀行として短期金融を専門的にやるべきはずのところが、長期の設備金融をどんどんやっていくというようなことから、今度の行き過ぎということも起ってきておるというのでお尋ねして、大蔵大臣は、やはりその点につきましても、普通の銀行は短期金融の方向へ進むべきであるというような御意見だったと思うのです。為替につきましても、昨年の今ごろの事態を考えてみますと、あまりに過度の競争をして、むちゃをやったというようなことから、非常な悪影響が国際貿易にも起ってきておると思うのです。東京銀行のあり方ということが問題でありましょうが、現在各銀行が為替をやって、そうして不当な過度の競争をして、国の方針にも反し、国民経済にも反するような悪影響を与えておるという事実を考えますと、やはり大蔵省としても、この一般銀行が為替業務をやっておることに対して、何らか適切な手を打たなければならない段階に立っておるのではないかと思います。東京銀行のあり方を問題にするということは、同時にその方面についても適切な手を打つということが、あわせて考えられなければならないと思うのですが、そういう点を、どのように考えていらっしゃいますか。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 公認の為替銀行、これは非常に数が多いではないかという御質問かと思うのでありますが、この数がどういう程度がいいかという点は問題でありますが、私も、今のように、為替を営む普通銀行が多いのがいいとも必ずしも思っておりません。できれば、適当な数に持っていくことがよかろうと考えております。しかし、すでにやはり法律に基いて為替業務を許しておりますものを、にわかにこれをやめるということも、形の上においても、また取引という実態からいっても、いろいろ支障を生ずるおそれもあります。かつまた、今日為替取引自体が変則といいますか、言いかえれば、若干のリスクは為替銀行で漸次負うようになっておりますが、まだその本来の為替業務が営まれておるとも考えられません。ごく限られた相場の範囲内で、大体為替業務を行なっておる。言いかえれば、リスクは非常に少い、従って、ここに多くの銀行が為替業務をやろう、こういうことにもなろうと思うのでありまして、こういう為替取引の正常化ということが今後進みまして、それぞれの為替は、それぞれの銀行の危険においてこれを売買する、処理もする、こういうような形になれば——多くの銀行がそういう能力を持ち得ないのでありますから、従いまして、そういう際が、適正な銀行数ということに持っていくのに一番いい場合でなかろうか、かように今考えておる次第であります。
  30. 石村英雄

    石村委員 私がこうしたことを問題にいたしますのは、何も東京銀行がどう言ったとかなんとかいうのではなしに、一昨年の暮れから昨年の今ごろにかけての、貿易金融のあり方に対する反省からきておるわけです。こういう状態をそのままにしておいては、日本の国際貿易に対していい影響を与えないという考えから、いろいろお尋ねしておるわけですが、大蔵大臣も、ほぼ同じような御見解のように思いますから、ただいつまでも小田原評定をしていないで、早く適切な手をお打ちになることが必要ではないか、あまりそちらを考え、こちらを考えるということをしておると、結局どうにもならないことになってしまう。そういうおそれがありますから、一日も早く円資金の供給、その他過当競争の防止等の点について、適切な手を打たれんことを希望いたしまして、この問題は打ち切ります。 次にお尋ねしますが、三十三年度の日本の経済状態については、いろいろな見方が行われております。先般横山委員の当委員会での質問に対して、大蔵大臣は、かなり明るいようなお話をなさり、その後は、少しまた不況の状況が続くような御判断も新聞では見ておるわけですが、まず資料的にお尋ねしておきますが、政府の御発表になっておる財政法二十八条による参考書類を見ますと、財政資金と民間収支は三十三年度は千二百億の散超、こういうことになっておるようですが、この千二百億は、他の個所を見ますと、外為関係で約五百四十億ですか、それから食管特別会計で約四百五十六億、合計九百九十六億という数字になりますが、残りの二百四億というものはこれは何から出てくる勘定であるか、この点をお尋ねいたします。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今外為会計が五百四十億ということを言われましたが、これは、おそらく七百四十億ではないかと思います。そのほかは、一般会計が三百五十億くらいだったと思います。それで千九十億ですか、そのほか特別会計で百十億程度、それで千二百億くらい、大体そういうふうに思っております。なお数字でありますから、事務当局に確認をさせます。
  32. 磯田好祐

    ○磯田説明員 今手元に資料を持ち合せておりませんので、至急持って参りまして、お答えいたしたいと思います。
  33. 石村英雄

    石村委員 千二百億の散超というのも、輸出が多くなければ、こういうことにもならないことになると思います。そこで、期待の問題だと思いますから、その点はそのままにしておきます。  次にお尋ねしますのは、財政投融資の関係ですが、今度三十三年度の財政が、放漫だとか放漫でないとか、いろいろ批判があると思いますが、また不況が続くという場合に、政府として適切な手を打たなければならないという場合に、まず財政投融資関係に手をつけていくということにおそらくなると思うのですが、その場合の原資の関係ですが、国会へ御提出になりました三十三年度の予算の説明によりますと、財政投融資の原資が、全部三十三年度の資金計画の中に使われておる数字になっておるわけです。それで、ただいま議案になっておる経済基盤の強化の関係が約四百三十六億三千万円。これは、政府の説明によりますと、うち二百十一億を除いたほかのものは中小企業だとか、あるいは労働協会だとか、何とか使途はきまっておりますが、その使途というものは、何もこの金をすぐ使ってしまうというのではなくて、預金部に預けて、その金利をもってどうするというようなことになって、資金全体は、特殊なところに消費されるということにはなっておりません。従って、いわゆるたな上げといわれる四百三十六億の金は、預金部の原資の中には含まれていないものかどうか。御説明からすると、含まれていない、これは別個のものだ、こう言わざるを得ないのじゃないかと思うのですが、予算の説明に出ておる財政投融資の原資と、その運用との数字的な関係を御説明願いたいと思います。
  34. 磯田好祐

    ○磯田説明員 ただいま御質問の趣旨は、経済基盤強化資金の四百三十六億が、来年度の財政投融資の原資に見込んであるのかどうかという御質問だと拝聴したのでございます。御承知のように四百三十六億は、三十一年度におきます異常な経済の膨張に基きます特殊の原因に基く剰余金でございます。従いまして、これをたな上げするということで、今回経済基盤強化のための資金に関する法律案提出するようにいたした次第でございます。従いまして、来年度の財政投融資の原資の中には、この四百三十六億円は見込んでないのでございます。
  35. 石村英雄

    石村委員 そうしますと、来年度の預金部の金のいわば余裕金と申しますか、運用の定まっていない、従って、運用する場合にはきわめて短期に運用するところの原資は、大体幾らありますか。
  36. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 詳しいことは、あとで事務当局からお答えいたしますが、私の考えでは、約四百億から五百億のゆとりが今残っております。
  37. 石村英雄

    石村委員 事務当局、今のお話で間違いありませんか。
  38. 磯田好祐

    ○磯田説明員 大体間違いありません。
  39. 石村英雄

    石村委員 そうすると、余裕金というのは、たな上げの四百三十六億プラス・アルフアはほんのわずかなものだ、こう理解してよろしいわけですね。
  40. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 アルフアを約五百億とお考えいただけばけっこうであります。
  41. 石村英雄

    石村委員 四百三十六億プラス五百億ですか。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の承知しておる限りでは、四百三十六億の資金を別にいたしまして、今ゆとりが四百何十億あるつもりであります。
  43. 石村英雄

    石村委員 いつの時代でも、預金部にある程度のゆとりがあって、短期的な運用が行われておると思うのですが、そういたしますと、三十三年度は合せて約八、九百億の余裕金がある、こういうことになるわけですが、ところで今度大蔵大臣は、もう日本の経済の情勢も相当進んだので、きめのこまかい手を打たなければならない時期であるというような趣旨の御答弁を、昨日ですか、参議院でなさっていらっしゃると思いますが、政府としてきめのこまかい手を打つということになりますと、打つ時期の問題ですが、まず考えられること、この預金部にある余裕金、経済基盤の分の四百三十六億プラス約四百億、この金を適当に放出して、金融を緩和するという手を考えていらっしゃる、こう理解していいわけですか。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金融を緩和するという意味は持っておりませんが、財政資金を、たとえば金融債等に運用をいたしまして、この金融債を通じて民間に長期の資金を出す。そうして、現存日本銀行の資金で長期に回っておる分がありますので、それを日本銀行に返済する、こういうふうな格好で、資金の性質に応じて区分といいますか、それぞれの分野で働いてもらう、私はこういう考えでしておるわけであります。
  45. 石村英雄

    石村委員 金融債を引き受けるということですが、そうすると、現在政府としては、来年度の予算をお作りになり、あるいは財政投融資計画をお立てになる場合に、一応一般的な金融債の計画を前提に置かれて財政計画をお立てになったのではないかと思うのですが、この予算をお作りになったときの計画である金融債の発行高、それとは別個に、今後新しく興銀だの、あるいは長期信用銀行等に金融債を発行させて、そうしてそれをこの預金部の余裕金で引き受ける、こういうことなんですか。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私が若干考えておりますことは、これはやはり短期の運用で、金融債と申しましても割引債です。そうして一時をつないでおきまして、市場の消化をはかっていって、長期資金を調達していこう、こういうことであります。
  47. 石村英雄

    石村委員 割引債であろうが何であろうが、当初予算をお作りになったときの計画の割引債等の数字が、おそらく大蔵省にはあったのではないかと思うのです。一応予定の金融計画と申しますか、そんなものがあったはずであると思うのであります。その一応のワク以外に、さらにそのワクを拡大して金融債を発行させる、そうしてそれを預金部のこの資金で消化する、こういうことになるわけでありますか、その点をお伺いするわけであります。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 新しい財政投融資をするというわけでもないと私は思いまして、三十三年度にはこういうふうに財政資金から投資をする、こういうふうな計画を進めまして、その他はそのときどきにおきまして、やはりこの資金資金で市場の資金量の調整はする。一面において、たとえば中小企業金融ということになれば、市中にある金融債を買い上げて、そして中小企業向けの資金を豊富にするとか、あるいはまた場合によっては、その買い上げた金融債を市場に売り出して、市場の金を吸い上げる、こういう操作をすることは、私は一向差しつかえないと考えております。むろんこれ、資金運用委員会の御承認は得るわけであります。
  49. 石村英雄

    石村委員 私がお尋ねするのは、いつものように預金部が余裕金があって、それを短期的に、単にその場その場で運用するという意味でお尋ねしておるわけではなくて、三十三年度の日本の経済の前途、現在は非常に不況に陥っておるわけですが、大蔵大臣もこれに対して、もうそろそろ適当な、きめのこまかい手を打たなければならぬ、こういうようなことを参議院でおっしゃったように新聞で見たわけですが、そうすると、新しく何らかの積極的な措置というものが考えられる、こういわなければならないと思うのです。最初予算をお作りになったときの全般的な国の資金計画以外に、きめのこまかい手として新しくお打ちになる方法というものを考えてこられなければならぬ。従って、当初金融債を何百億と見られたか知りませんが、それをさらにワクを拡大して出していくということか。それとも、当初の計画通りの金融債のワクの範囲内で、ただ民間が消化する予定であったのを、預金部の金で消化するのだ、そうして民間を楽にするという意味にとどまるのか。積極的に金融債を当初計画よりもよけい発行させて、そうして資金を供給するという意味であるかどうか、その点をお伺いするわけでございます。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今きめのこまかい、これ、今後考えていくつもりをいたしておりますが、これは、結局金融を正常化していくということと、経済の実態に即応するような金融政策をとる、こういうことになるのでありますが、その点については、この会計年度中に約二百八十億ばかり——三十二年度の財政投融資中から緊急総合施策に基いて六百億と思いますが、繰り延べております。そのうち二百八十一億は、この会計年度中に戻すということにいたしております。それが電力その他に、当初の計画のうちではありますが、繰り延べたうちの二百八十億前後のものが年度中に出ていく、こういうことに相なると思います。これは、もう一つ、ある意味において当初一五%、約六百億の繰り延べをしたんだが、その後の情勢において、そういう程度に元に返してもいいという意味において、やはりこれは金融をこまかく見ておるということに相なろうかと思うのであります。その他の点については、私の考えておるの、資金資金はごく金融市場の一時的な調整に、市場からあるときは金融債を買い、あるときは金融債を売るとか、こういうふうなことは私はやっていい、かように考えておるわけであります。
  51. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、ただいま約六百億繰り延べて、二百何十億繰り延べた分、すでにこの会計年度中にまた復活させたということですが、残りの約四百億前後の金というのは、さっきのように、預金部の余裕金が幾らあるというときには、もちろんこれは、余裕金の中に現在入っておると理解していいわけですね。
  52. 石田正

    ○石田政府委員 ちょっと話がこんがらがっているかと思うのでありますが、御承知の通りに、民間の資金計画を、三十二年度中におきまして繰り延べをするというふうなことをいたしましたが、それに対しまして、財政投融資の面その他で、今いったような数字がいろいろ問題になっているわけでありますが、これは、大体一番初めの趣旨というのは事業それ自体を繰り延べようということが趣旨でありまして、事業はやりっぱなしで、そうして金だけ延ばすという意図では必ずしもなかったと思うのであります。従いまして、事業がある程度進んでいるところの部分、そういうものなどをしんしゃくいたしまして、三百八十億というような問題が起ってきているわけでありまして、必ずしもその残りの分を全部見なければならないほど事業が進んでいる、こういうふうに見るべきではないと思います。その点が、多少今のお話の中で、要するにあとの金は必ず出すのかというふうな工合になりますと、少し感じが違うのではないかというふうに思っております。
  53. 石村英雄

    石村委員 私は、結局三十三年度に政府が経済界の模様に応じて何らかの手を打つというときの資金的な源泉が幾らあるかということを明らかにしたいと思ってお尋ねしたわけなのです。従って、今までのお話を聞いてみますと、結論としていえば、まず当初から予定されておる千二百億という散超の部分と、それから預金部運用資金の約四百三十六億プラス四、五百億のもの、合計約二千億、新しくいえば約千億というものが、今後政府として打つべき手のうちのこれは宝と申しますか、材料と申しますか、そういうものは約千億程度がある、こう理解していいかということが、突き詰めた質問の要旨なのです。
  54. 磯田好祐

    ○磯田説明員 先ほど大臣からお答えがありましたように、財政上の持ち起し原資として、三十二年から三十三年度度に持ち越し得る財政資金は約四百億内外ということになっております。これに、先ほどお話のありました四百三十六億の分が、財政投融資の原資になるのではないかというお話でございますが、この四百三十六億の分につきましては、これは、御承知のようにたな上げをするという形になっておりますので、この四百三十六億分を来年度の財政投融資の原資に見ることは、適当ではないのではないかという問題があるのでございます。それからなお先ほど話しました三十二年度から三十三年度に繰り越されます約四百億の財政投融資の原資の分につきまして、これは電力借款、道路借款等の外資の導入の引き当て等の関係もありまして、これまた長期の原資に見込むということは、困難ではないかと思うのでございます。
  55. 石村英雄

    石村委員 どうも話が、われわれのようなしろうとにはよくわからないのですが、四百三十六億の経済基盤強化関係の金というものも、長期投資に使われるわけではないが、少くとも二百十一億の予算上の決定がない以上、長期投資には使われないが、預金部に預けられて、預金部は余裕金として、それを年度を越して運用はできないのでしょうが、年度内の運用は可能である、こう理解しなければならぬのじゃないか、こういうことをまず問題にしているわけなんです。金利をつけるというのですから、預金部は、何もその金を寝せても金利を払えないわけではないかもしれませんが、少くともその四百三十六億は、年度間の運用として利用することは、可能ではないか。それと財政余裕金の四百億を合せたものが、三十三年度において政府として経済の実情に応じて何らかの手を打たなければならぬという事態が発生したときに、さしあたりすぐ使える金ではないかということをお尋ねしたわけです。
  56. 磯田好祐

    ○磯田説明員 ただいまのお話の四百三十六億の分につきましては、経済基盤強化に関する法律の趣旨によりまして、昭和三十一年度における剰余金の分のうち、四百三十六億の部分をたな上げしょうという趣旨でございます。これを運用する際に、今の石村委員のお話では、これを短期に運用できるのじゃないかというお話のように拝聴したのでございますが、この点につきましては、本来のたな上げの趣旨にかんがみまして、市中の金融債にこれを運用することは、現在の段階では考えていないのでございます。これは、現在の段階におきまして、経済に過度の刺激を与えないというのを根本的な法案のねらいといたす趣旨によりまして、日本銀行の手持ちの短期国債にこれを運用しようと考えておるのでございます。それによりまして、四百三十六億分の運用においては、市中に資金として流れないと考えておるのでございます。
  57. 石村英雄

    石村委員 そうしますと、現在そう考えていないということですか。大蔵大臣は、もう適当な時期には、何かきめのこまかな手を打たなければならぬとおっしゃっている。日本銀行がどんどん金を貸し出すことは、きめがこまかいかこまかくないか知らないが、とにかく打つ手だと思うけれども、それは日本銀行がやることです。政府自体がやるのは、自分の金を出していく以外に手はないと思う。大蔵大臣がきめのこまかい手を打つというときに、そうした手持ちの金をいわば開放してお出しになる御意向であるか、きめのこまかい手というの、そのことを考えていらっしゃるのであるか、これは、大蔵大臣のお考えをお聞きするわけであります。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 きめのこまかいという言葉は、具体的には非常に多岐にわたるのでありまして、たとえて言いますれば、私は何も政府の持っておる若干の金を出してやるからといって、それがきめがこまかいというようなことは言っておりません。若干の政府財政資金の余裕で、市場の調整をするということもいいでしょう、そういうことも一つの方法でありますけれども、私は、もう少し基本的なもので民間資金を特に考えております。たとえば、今後においてもこういう経済情勢がずっと続けば、今でも若干そういうきざしを持っておりますが、同じ金融機関でも、地方銀行は金が余るというような情勢になり、大銀行の方は依然として詰まる、こういう場合に、地方銀行は変な方に金を回しはせぬかという心配があるから、この金をオペレーションをやってすぐに吸い上げる。たとえば、資金部を持っている金融債その他のものを売り出して吸い上げるというような行き方、私はいわゆる引き締め一方に徹する場合のやり方で、必ずしも妥当ではないと思う。それで、地方銀行の金が余るというようなことになってくれば、むしろそれを社債市場に導入するようにしたらどうか、そこで会社等が安定した長期資金が調達できるように、それを会社は取引銀行に——これは大銀行になりますが、大銀行に返し、大銀行は日本銀行に返し、日本銀行の金が長期に使われておるような分がだんだんと少くなっていき、本来の日本銀行の金としての働きに返っていくような行き方をする、これは一つの考え方でございます。     〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕 そういうような形を考慮に入れて、そういう場合、大きな金でなくても、若干いざない水的に作用することができれば、ごく短期的には資金資金の運用として考えてもいい、こういう一連のことを考えておるわけでございます。それからまた、従来、何としても投資意欲を抑えることが眼目でありましたから、少し無理があっても資金を押えて、投資意欲を滅却させることにした。ですから、会社なんか苦しくても、事実資金が足らぬでも、まあまあといって押えておるが、生産調整ができて、需給状況が大体平常化し、操短もよほどやって、それを額を落してやっていく、そういう状態になって、資金の不足が生ずれば、そのときにおいては、その資金をある程度見て円滑にやる方が、むしろ中小企業等にしわがよることが少くなる。今、大企業に対する資金を特に押えると、大企業は何とかして仕事をする、なかなか生産調整をすることはいやがりますから、結局中小企業等にしわ寄せがくる。政府としては、中小企業金融は大事だが、中小企業金融として金を出して見ても、果してその金がほんとうに苦しんでおるところに適正にいくかどうか、これもわかりません。ですから、そういうある一定の時期にくれば、大企業がほんとう資金不足ということになれば、しかもそれが、生産を増大するとか、設備を拡大するとかいうことでないという見通しが十分つけば、むしろそこに資金を流して、関連産業とか下請工場とかいうものに従来滞っておる借金を返してあげる方が、中小企業金融としてもむしろ私は適正ではないか、そういう点をやれば、だんだんきめがこまかくなると考えておるわけであります。
  59. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣の御答弁は、主として金融政策を考えておるということになるのですが、なるほど地方銀行は、今相当金を持っておるのです。そこで、これを社債なんかに回すというお話ですが、現在政府のとっておる社債金利の仰制策、あるいはまた一方、コールが最高も最低も同じように日歩三銭、これは協定金利か何か知りませんが、ずっと続いておる。コールが三銭もすると、果して現在の地方銀行の余裕金が十分社債に回るかどうか、相当疑問じゃないかと思うのです。従って、この点に対する大蔵省の社債政策の面でも、従来の方針を変えられて、社債金利を無理に下げて、下げた水準を維持するということでなしに、現在の金融の実態に応じた金利にする社債を認めるとかなんとかいうようなこともおやりになるのですか。その方は現在通り、ただ地方銀行の余裕金を社債の方に回すというお考えですか。それでは、なかなか回らないのじゃないかと私は考えるわけです。
  60. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私は二つあると思うのです。今日コールのレートが非常に高いということが、金利体系を乱しておると考えて、できればこれは下げなければならぬ。下げる手もあると思っておりますが、基本的には、日本銀行の貸し出しが非常に多いということが、コール・レートを高くしておる。言いかえれば、日本銀行の第二次高率が適用される資金が相当ある。日本銀行の第二次高率となると、日歩二銭八厘は当然であります。どうしても日本銀行に行くよりもというような見地から、二銭八厘より高くてもということになれば、コール・レートがやはり三銭に近いものになります。ですから、日本銀行の貸し出しを減すような方向にどうしても持っていく必要がある。それでないと、コール・レートがどうしても下らない。そういうふうに持っていくと同時に、金融機関としても、コール市場を通じて三銭というようなレート、あるいはそれに近いものをとるべきではない。私はこれをきびしく言っておるのですが、これは、話し合いでもう少し下げ得ると思う。コール市場を何も資本市場としなくても、コール市場のレートをある低位に保つことは、私はできぬことはないだろうと思っております。ただ、なお社債についての金利、これは、何も一斉に応じないような低金利というものを今考えておりません。私は、やはり情勢に即応した金利でいいと思う。社債をコールにする場合に、どういうふうに考えるか、これは私も検討を加えてみたいと思っています。
  61. 石村英雄

    石村委員 ただいまのコールの金利を下げる方法の御説明が聞き取れなかったわけです。三銭も取るのはよろしくない。修身のお話の方はわかりましたが、修身でない方の、この三銭を下げる方法を何か御説明になったようですが、聞き取れなかったから、もう一度大きな声でお願います。
  62. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結局コール・レートが高いというのは、資金の需給において、供給不足というところからきておる。その供給不足が日本銀行の資金に合わなくちゃならぬ。日本銀行の資金は、今日ではおそらく第二次高率がみなかかっておるだろうと思う。そうすると、二銭八厘は日本銀行にとられてしまう。それ以上の金利でなければならぬ。短期の金利ですが、三銭近いものになる。私は、それにしても日本銀行の第二次高率というもの、日本銀行に来て金を借りては困る、むしろ借りることを防止する金利なんですから、それよりも高い金利がコール市場にあるということ、私はおかしいと言っているのです。少くとも日本銀行で二銭八厘で借りて、しかも第二次高率があるという高い金を借りて、それをコール市場に出して、なおさやがあるというようなコール・レートのあり方は、私は理屈をこえて高過ぎるというような感じを持っている。それは、人為的に当然私は指導によって下げ得ると考える。三銭何厘かまであったのを、三銭まで自粛させたのでありますが、私は、少くとも二銭八厘まで自粛するのは当然と思う。そろばんをとっても二銭八厘でいいわけです。日本銀行から金を借りて損はしないわけですから、それまでは、当然今言ったように下げ得ると考える。それから先は、やはり資金の需給を調整する。そうすると、今の経済情勢から見て、一時ストック金融といいますか、いろいろな滞貨を持っている。生産を調整して、滞貨ができて、それが将来消費されるという見通しがつけば、金融の道もここで考えられていくだろうと私は思う。そうしてくると、そこに一時金が要りますが、ある一定の段階にくると、物がはけていくということで代金回収ができ、資金の需給がやや楽になる。そこに持ってきて、貿易が予定通り出超に転ずれば、その面からも、財政の対民間の払い超に現われたように、外為会計からの緩和作用も行われていく、こういうようになって、金利も漸次低下するようになることを期待もいたしておるわけでありますし、そういうふうに押し進めていかねばなるまいかと考えております。
  63. 石村英雄

    石村委員 現在は、日本銀行の貸し出しが六千億からあるわけです。こういったような多額の貸し出しのあるときに、そう簡単に緩和するということも困難である。その多額の貸し出しが少くなるということが、一方で、同時にか実現していかねばならぬと思う。従って、政府がその貸し出しが少くなるようにするということのためには結局政府の手持ち資金の放出ということでやっていくよりほかしようがないじゃないかと考えますが、どうですか。
  64. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府の手持ちの金を出すといっても、これは、先ほど説明したように、幾らもないのですが、日本銀行の金が六千億出ておるというが、私は出ていないと思います。五千億くらい出ておると思います。そのときに、若干のものを持ってきても、緩和するところまでいかない。日本の金利市場が緩和するの、結局どういう程度輸出超過になるかということに期待するほかはない。この前金融がずっとゆるんだのも、外貨の手持ちがふえてきて、十二億か十四億までたしかなったと思いますが、そういうふうにふえたときに、初めて外為会計から資金が大きく流れて、ゆるむわけなんでありまして、結局輸出超過という事態を出現しなくては、金融市場の緩和ということにはならないと思う。今回の三十三年度の財政投融資全体をくるめても、財政資金の対民間払い超というものは、そう必ずしも大きなものではないと思います。去年の引き揚げ超過に比べれば、むろん差引大きく感じられますが、しかし、現状の金融の状況から、幾ら払い超になるかといえば、そう大きなものは必ずしも期待できない。結局貿易の出超ということをもとにしなくてはならぬ、かように考えております。
  65. 石村英雄

    石村委員 政府の、そういう積極的な手が幾らあるかというので、冒頭でしきりに金が幾らあるかということを聞いたのです。ただいまの大蔵大臣説明によりますと、金融を緩和するとかなんとか世間で騒いでおりますが、しかし、なかなかそういう具体的な手はない。ただたよるところは、正統的な方法であるが、輸出の伸張よりほかにはないという結論になるように思うわけです。政府の今のこまかい手というのも、どうもこまが過ぎて、どれだけの効果があるかわからない手しか考えていられないように思うのですが、何かもっと積極的な手を、大蔵大臣考えていらっしゃるのじゃないかという気がするわけなんです。ただいまのようなお話なら、何もあらためて言うほどのこともない。輸出が伸張して、金融が緩和するということは、わかり切ったことなんです。何か政府が打つ手というもので、もっと端的にわかりいい、効果のありそうな方法というものを、大蔵大臣考えていらっしゃるかどうか、御説明願いたいと思います。
  66. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、そんなに効果のある、しかもわかりやすい手はないと思います。やはりこの際は正攻法でいくのが、日本経済のために一番いい、かように考えております。
  67. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、輸出の伸張というのも、そう大した金額にはなりません。従って、金融が三十三年度にあまり緩和するとも考えられない。先ほど大蔵大臣は、中小企業の金融を緩和するためには、大企業の金融を緩和するよりほかには手がないというような御説明であったわけですが、私も、実態はその通りだと思います。しかし、それでは中小企業はどうにもならぬと思う。そこで、昨年もおやりになりましたように、大企業の金融がゆるむことによって、自然中小企業の金融がゆるんでくるという自然の道程を踏まなければならないと思いますが、政府の中小企業専門の金融機関としての中小企業金融公庫だとか、国民金融公庫というものに対して、政府に余裕の金があれば、もっとこの金を増すということを積極的にやることによって、中小企業の金融の緩和ということをさらにおやりになる御意思があるかどうか。現在一応の計画はお話しになりませんか。とにかくあるのですか。そろそろきめのこまかい手を打たなければならぬ、こうおっしゃっていられる時期です。この予算をお作りになったときには、この程度の金ですが、さらに中小企業の金融を直接緩和するために、政府の中小企業専門の金融機関に対する財政投融資を近いうちにふやすというような御意意思でもあるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業の金融について非常に力をいたしておることは、これは、政府の変らぬ方針としてやっておるのであります。特に三十三年度では、商工組合中央金庫その他国民金融公庫、中小企業金融公庫を含めて、私の今の記憶では、昨年度に比べて四百億以上は貸し出しは増加し得るようになっておると考えております。なおまた中小企業については、私が今配慮いたしておるのは、この緊急対策を施行したときに、中小企業のために金融債を買い上げたもいがある、その残りが、まだ二百億あります。一部にはこれを今地方銀行も若干の資金的な余裕もあるから、これを売って、資金部に二百億の資金を吸収したらどうかというような考えもないことはないが、私もまだまだそこまではいっていない。私先ほど失礼いたしました、日本銀行の貸し出しが六千億にならぬだろうと申しておりましたが、昨日は六千億をこえておるようです。これは、私もはなはだ不勉強でしたから、訂正いたしておきます。日本銀行が六千億というのは、これは月央ですから、会計年度末にはなりますが、やはり多い方です。資金の需要も多いと見なければなりません。そういうことも控えております。これは、結局地方銀行等の資金をなるべく豊富にして社債の方に向け、また中小企業に向ける。そして、特に今私は、地方銀行の資金が余っておるときに地方銀行に要請しておることは、地方銀行の預金、地方の産業から、あるいは地方における所得から起っておる、振りかえ勘定、あるいはいろいろな勘定もあるが、地方における所得はやはり地方の産業、何かの形における産業からきておる。そうしてみると、その預金はやはりもとになる地方に還元する、このために役立てるのが、だれが考えても至当じゃないかという意味合いでもって、地方銀行になるべくその地方のめんどうを見るようにということを強く要請をしていく。前からもそうでありまして、なかなか思うようにいかなかったのですが、特に私は、今日そういう要請を強くいたしておるわけでございます。こういうようにして、できるだけ中小企業金融については、皆様の御意見もありますし、御注意に従いまして、最善を尽していきたい、かように考えております。
  69. 石村英雄

    石村委員 他の方の御質問もあることと思いますから、大体やめたいと思うのですが、そういたしますと、大蔵大臣のお考えは、予算をお作りになる、あるいは昨年の十二月ころは大へんきびしいことを考えていらっしゃったのですが、最近では、あまり状態が悪くなったからというのかどうかわかりませんが、適当な緩和策も考えなければならぬというような趣旨の御発言もあるようです。しかし、具体的にはさっぱり、ただいまのお話では何もない、わからないということになったと思うのです。そこで、念を押しておきたいのですが、よく新聞には、大蔵省が例の昨年の中小企業金融緩和のために、先ほどおっしゃいました公債を買い上げて、それを今度は売り戻しをするということが、大蔵省の意向としてしばしば出ておるのです。ただいまの大蔵大臣のお話を聞きますと、そういう御意図は現在のところはない、やはり地方銀行はその金をもって、自分の資金をもって地方産業に貸し出しをしろ、もし余裕があれば社債市場に金を持っていけ、大蔵省の一たん買い上げた国債売り戻しということはやらない方針である、こう確認してよろしゅうございますか。
  70. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今それを差しとめるわけではありませんが、やる考えを持っておりません。
  71. 石野久男

    ○石野委員 関連して。ただいま大臣は、金融を緩和させるということと、またそれに関連する問題として、中央に集まっている金をなるべく地方産業へばらまいて利用させるように指導をしておるのだ、こう言いましたが、実際には、どういうような指導の仕方をしておるのか、この際聞かしていただきたい。
  72. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、コールにも関係しますが、地方の銀行は、そういうことが必ずしもあるということじゃありませんが、傾向的にそういうことがあり得るのじゃないかと思うのです。それは、地方銀行もだんだん規模を大きくしてきました。今地方銀行の預金は、平均どのくらいですか、おそらく三百億か四百億くらいが標準型じゃないかと思いますが、そういうふうにだいぶ伸びました。そうしますと、支店あたりも、なるべく東京、大阪、いろいろなところに出したいという傾向も持っておる。そこで預金が特に集まる気づかいはないので、東京あたりに資金を送ってくるというような傾向をとる。特にコールが三銭もしておりますと、もう何にもしなくても、三銭までの金利をとる、しかもとる相手は大銀行で、きわめて安全だというようなこともありますので、それは適当でないから、まず日本銀行の支店長あたりが十分指導をなさって、そして地方の銀行は、先ほど申したように、その預金の根源が地元にあるんだから、地元の産業の培養、あるいは育成にまず使われて、そして余裕あれば、それは中央に持ってくる、そういう営業方針というものが地方銀行の存在する理由でもあるのじゃないだろうか、私はこういうように言って、そういう指導方針をとっております。
  73. 石野久男

    ○石野委員 その場合、大臣はそういうお考えになっておっても、コールが相当に高い場合に、そういうことを希望しても、事実上は地方で集めたものが、中央へ集まるのはいたし方ないことです。これには、何とか手を打たないとだめだ。しかも大臣は、コールが非常に高いから、二銭八厘までは損得なしでやれるはずなんだから、そこまで下げるようにということを希望する旨の御答弁をなさいました。しかし、ただ希望だけしておったって、実勢としては、そういうことはなかなか希望のようには動いてくれない。これには、何か政府として手を打ってくれないと、地方に集まっておる金を地方で使えと幾ら口で言っても、使わないのじゃないか。その点について、大臣はどういうふうに考えておりますか。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今までは、特に何としても投資意欲を押える、それには金融政策でやっておりますから、やはり金融を締めるという方針でいかざるを得ません。そういう場合に、やはり金利を下げるという方法は、何だかゆるくなったのじゃないか、きびしい態度が幾らかゆるんだんじゃないかという印象を与えがちです。従いまして、ある程度不自然ではあるが、今は目をつぶってやるというようなところでありますが、今の程度まで日本の経済がきますと、先ほどからのきめのこまかいというのは、コール・レートなんか、ここまでくれば下げるようにという具体的な手を打てばいいじゃないかという意味であります。コール・ローンのレートにつきましては、日本銀行でほんとう考えねばならぬ、日本銀行の金利とコールのレートというものは不可分でありまして、これをほっておくという手はないと私は思うと言って、日本銀行も、必ず実現するような具体策を今練っておるように、私は承知いたしております。
  75. 石村英雄

    石村委員 最後に、その点で一つお尋ねしておきますが、コール・レートが三銭だということは、やっぱり一方で、高率適用で二銭八厘ということがあるから三銭にもなるわけです。この高率適用を緩和するということも、コール・レートを下げる一つの方法だと思うのです。緩和がいいか悪いかは別ですが、コール・レートを下げたというならば、高率適用を緩和するという具体的な措置に出なければ、なかなかお説教では下らないと思う。この点に対する大蔵大臣の御見解に、いかがでございますか。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、金利政策一般と関連をしてきます。日本銀行の第二次高率適用というのは、むろんコール・レートとも関係がありますが、コール・レートが高いから安いからということで、これを上下するというわけにもいきません。これは、日本銀行としては、その金利政策の最も高い方針に属すると私は考えております。それで、私は今これについてかれこれ批判はしません。日本銀行も、この点について十分考慮を加えておるだろうと考えております。
  77. 石村英雄

    石村委員 そうすると、これはもちろん日本銀行がきめることです。政策委員がきめることであって、大蔵大臣の御決定になることではないが、政策委員には大蔵省の代表も出て、大いにその主張をなさると思うのです。従って大蔵大臣は、そういう主張をあなたの代理として出ておる者にさせたいという希望を持っていらっしゃるわけですか。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話しのように、これは政策委員会考えることで、大蔵省からも代表として行っておりますから、諸般の相談、あるいは意見も開陳しておると思いますが、それ以上のことについて私がここで申すことは、私の立場からして無用な——誤解ではありませんけれども、いろいろな意見も生じやすうございます、ごかんべん願います。
  79. 石野久男

    ○石野委員 いろいろな誤解を生じやすいから言いにくいところであろうと思いますけれども、ただ金融緩和の問題は、国内的にも、また先ほど大臣が盛んに言われる国際貿易第一主義の観点からしましても、大事なことなんで、金融緩和の問題は、先ほど言われたように、コールの問題と日銀の公定歩合との関係が不可分のものとなっているわけです。こういう事態の中で、私はここで一つお聞きしておきたいのですが、金融界の自然の趨勢のままでいけば、近い時期に金融の緩和を生むような事態が、コールの中でも、あるいは日銀の公定歩合の中でも出てくるというようにお考えになっておられるか。そういう自然の姿のままではなかなか金融緩和の道が出てこないから、ここで一つ政策的にあなたが指導しなければならぬか、この点が非常に大事な問題なんです。私ども考え方では、大蔵当局が相当程度指導性を積極的に出さなければ、今日の金融事情を緩和することはできないだろうと思いますけれども、その点について、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、日本経済の今日の状態をどういうふうに把握、認識するかという点にあると思います。まだ生産調整の過程にあるといたしますれば、金融緩和というようなことは、そう考えられません。一般の考え方としても、生産調整が、政策的に考慮しておるものよりも実際は若干ずれて、おくれつつあるというような事態だと考えられます。これは、何としても生産の調節ということは、生産業者にとってはある意味において最も苦しいことであります。健康な人の食事を制限するようなもので、非常に苦しい、あらゆる抵抗を受けるというのが、大体従来のあり方であります。そういうようなことで、自然これは政策よりもずれます。そういうふうなときに、今金融の緩和というような雰囲気が出ることは、生産調整の意欲を鈍らせる。ここまできた以上は、生産調整はきちんとやって、そうして需給状態の均衡を得させるようにして、経済全体をバランスさせ、そうして、その価格状況のもとにおいて輸出の振興をはかって、輸出の振興に応じて、また日本経済が物価騰貴というようなものを起さずして生産力を続いて拡大をしていく、こういうふうに考えております。それだから、輸出超過になれば余裕が出てくる。そういう生産調整が十分にできてくると、ある程度滞貨があっても、しかしその滞貨は将来十分消費が確保される。そういうことになってくると、単に滞貨であるが、需給のずれというふうにも見られるのであります。従って、そういう場合の金融の道はおのずからついてくる、従来とは違った形でついてくる。そういうような例はもう前からあった。たとえば繊維なんかそうで、御承知のように、生産の関係は少しも調節ができないで、だれもかれもが繊維の生産をして増産になっていく。一方貿易も、必ずしも伸ばさなくともやはり過剰が出てくる、オーバー・プロダクションでストックができる。そうして、金融をつければつけるほど、また生産が繰り返されていき、またストックがふえてくる、金融では解決しない、こういう場合は絶対にいけないのであります。そこで、生産調節をやっていく、それで、生産の基本的な関係では需給がほぼ確立する。そうして、ここにストックがあっても、これはまたある一定の期限がたてば売りさばけていき、消費が可能になってくれば、そこで私は必要な金融のめんどうを見ることも可能になってくると思います。そういうふうな時期がいつであるかということで、金融のかじのとり方が違ってくる。それから自然の形では、輸出超過という形で金融がゆるんでくる、かようなことになってくると思います。しかし、今はその時期ではないというふうに私は考えております。
  81. 石野久男

    ○石野委員 私の質問に対して、大臣はぐるぐる回りをして、はっきりした答弁をしてもらえないのだが、今大臣は、今の時期では生産調整が非常に大事である、その生産調整ができることによって輸出も伸び、そうして、そこから金融の緩和の道も出てくるだろうと言われたが、その生産調整の問題に対する金融の面からの処置をどういうふうになさるかということを、私は聞いておるわけであります。今ここで一番大事なのは、オーバー・プロダクションになっておって滞貨が多く、しかも、その面からいろいろな弊害が出ておるわけでありますが、そういう時期に、生産調整をするために、金融の面からあなたがどういう処置をとるかということでありまして、この点をはっきりお答えいただきたいのです。
  82. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、先ほど答えたつもりでありますが、自然の形では輸出超過になるが、生産調整ができ上って、そうして、その生産の基盤において需給の調整がとれ、その生産関係からいって、もうオーバー・プロダクションにはならない、しかし、滞貨の方は、従来の分が若干あるだろう、こういうような関係ならば、従来のように、生産過剰だから仕方がないじゃないかというような態度で、むげに金融を見ずにおくというわけにはいかない、そうなれば、やはり金融を見ることができるだろう、こういうような考えであります。
  83. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、今あなたのおっしゃることは、政府としては、滞貨が今非常に多いが、滞貨は滞貨として別に考えて、生産の調整の問題だけを考える、こういう意味なんですか。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 第一に生産の調整がとれますと、従来の在庫についても、むろん業者としても、じっとしておるわけではありませんので、できるだけ売りさばいてくれるだろうと思います。輸出もできるでしょう。ただ輸出について、これはまあストックだから競争して安く売ってしまえ、こういうような行き方も、ある程度は輸出の振興のためにはやむを得ないでしょうが、やはりそういうことは、日本のマイナスになってくる。そうなれば、向うでも買い控えをした方がよいということになり、結局競争で売るということになり、損になってきますから、そういう場合には、最小限度の金融というものを考え、そんなむちゃな投げ売りをしないでもよいようなことを考えるのが、国のためになるだろうという見地に立っております。
  85. 石野久男

    ○石野委員 それでは、ちょっと確認しておきますが、滞貨金融というものを、ある点では投げ売りさせないように考えなくちゃならぬということを言われたわけですね。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 滞貨金融というのは、言葉はどうにでもなるのですけれども、やはりそういう言葉は非常に誤解を招く、私は、そういう場合は滞貨と見ないのです。需給のズレと見ておる。それははけるということが前提になる。たまっておる滞貨というのではなくて、はけることが前提になっておるから、需給の調整ですね。先にいったらはけてしまう見通しがついておる。そういう意味です。
  87. 石野久男

    ○石野委員 品物を作るときは、みなはけるということを前提に作っておるのですよ。しかし、はけることを前提に作っておるけれども、ある一定の時期にそれがはけないから、それで、またそのズレがあまりにも激しいから、経済界にいろいろな影響が及んでくるわけです。現在それで苦しんでおるわけじゃないですか。だから、その問題に対して、あなたは金融政策的にどういうふうに処置なさるのかということを私は聞いておるのです。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それで、私が言うのは、生産の調整をまずやれということです。生産の調整の基盤ができれば、それから先は新しいストックはできない、そこを言うておるのです。
  89. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、そこで生産の調整をやれと言う。生産の調整ということに対しても、今金融的問題があるから、その問題について、金融的にはどういうふうに処置されるかということを、私は聞いておるのです。その点、はっきりあなたの所見を聞きたいのです。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的にどういうことですか、生産の調整のために今金融が要るというその金融は。
  91. 石野久男

    ○石野委員 生産調整をするために必要な金融的措置ということを、私は聞いているのですよ。あなたは、それはどういうことなんだと言うが、実際問題として、今生産する人は、滞貨をたくさん持っている。生産調整をしろと言ったって、この滞貨の問題とのかね合いで、生産の問題がくるんじゃないですか。この問題を分離して、メーカーは生産ができますか。当然この滞貨の問題と関連しながら生産調整というものを考えなければ、メーカーとしては、これを調整することはできないという現実に追い込まれておると思うのです。だから、あなたが言われるように、生産調整だけは別個にして、滞貨の問題は別だというような考え方はとても成り立たないのですよ。私の言うのは、この滞貨の問題と生産調整の問題とは一体の問題として考えなければならない。そうなると、当然ここにメーカーについての金融の問題が出てくるわけです。それに対して、あなたはどういうふうな指導をされるかということを、私は聞いておるのです。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、私も記憶しておるわけではない、滞貨の状況を見なくちゃならぬが、しかし滞貨があるから生産を制限しよう、生産を調節しよう、こういうことになるのです。滞貨がなくて、まあ需給がとれておれば、生産調節は要らないのです。滞貨があるから生産調節をまず確立するということが、金融の一番先決の条件になるということを申しておるのです。
  93. 石野久男

    ○石野委員 そうなると、あなたは生産の問題と金融の問題は別個にお考えになっているようだ。ところが実際には、生産をする側からすれば、自分は調整はしたいけれども、その調整をするについては、いろいろな経営上の問題が出てくる。経営上の問題で一番大きな問題は、金融の問題ですよ。その金融の問題でデッド・ロックに乗り上げるからこそ、あるところでは、非常に過剰生産を次から次へとやっていくわけだ。すぐそこには労働問題も出てくる、雇用問題も出てくるわけですよ。そういう問題を、経営としてはどういうふうに解決するかというときに、すぐ問題になるのは、金融じゃないですか。そういう問題に対する金融的な措置をどういう工合にするのかということを聞いておるのです。これはただ労働問題とか雇用問題だけでなしに、一つの経営が経営として維持していくために、操短をやって、もう仕事をストップするという形になれば、一番自然の形で滞貨ははけるんだからという。そこまで持っていったら、経営をつぶすことになってしまうでしょう。そういうことはできないから、それに対する金融措置をどうするかということを聞いておるのです。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 率直に申しますと、滞貨ができると生産調整をする。むろん金融というものは、商売をしておる間は、しょっちゅう動いておるのです。これは、金融問題がないことは決してない。あるんだが、今申すのは、生産調整と滞貨ということ自体に、特別に何らかの金融ということに問題があるんだろうと思うのです。そこで私が言うのは、滞貨があると生産調節をする。そうすると、新しい生産過剰はまあ妨げるという状態がここに出てくる。そうなってくると、そういうことをするについては、いろいろと金の入り用が出てくるだろうが、その金融はつく、また現実に私はついていると思う。それは、会社がそういう状況になると、その会社と取引銀行というものは、もう話し合いで、必ず金融はついている。その後において、業者ですから、むちゃにストックを作るという、そういう乱暴はしませんから、自然生産調整をせざるを得ない状況に追い込まれてきているから、金融機関も個々のケースで——滞貨々々といって、滞貨に特別金融措置をするかのようにしなくちゃ満足されぬようだが、そういうことでなくて、その状態にくれば、個々のケースとして、会社と金融機関との間に金融がついてくる、そうして破綻が起きずに済むというのが、現状であると思います。
  95. 石野久男

    ○石野委員 滞貨が非常にあるときに、生産調節をするようなときには銀行とそのメーカーとの間に話し合いもついて、当然金融が順調にいっているのだ、あなたはそうおっしゃる。しかし、それは日本の産業の中におけるすべてじゃないですね。そういう銀行との話し合いがついているのは、大企業なんですよ。中小企業についてはそういう調整がつかないのは見放すのですよ。そういう問題にこそ、ここで考えなくちゃならぬ問題が出てくるわけだ。われわれの今一番大事な点は去年からずっとやられた引き締め政策によって生じたところの犠牲を受けた産業、そういうものに対してどういうふうに処置するかという問題が、当然出てきていると思うのです。だからこそ、先ほど石村委員からも言われているように、中小企業に対する金融の道はどうなるのだという問題が、出てきているわけだ。あなたが言われるように、大企業に対しては、確かにその通りですよ。銀行がちゃんとバック・アップしております。けれども、他の中小企業については、そういう保障が全然ないから、破産し、倒産するという状態が出てきているのです。産業界が混乱するという道が出てくる。あなたの方向をいけば、独占の方向が出てくるだけです。それでは、全体の調整が金融的には出てこない。そういうような、あなたの言われるような線でなく、他の面で出ている被害に対しての金融的措置というものは、どういう手を打たれるかということを私は聞くんです。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ですから、直接的には、さっきも申しましたように、三十三年度におきましても、中小企業に対する政府の金融機関、これの貸し出しは、四百億以上はふやすというような措置もとってやるというのも、一つの方法です。それから先ほどの、たとえば大企業に対して、この会計年度——といってもまあこの月でありますが、二百八十億前後戻しをしよう。これも中小企業のためになるのです。たとえば、大企業と中小企業との関係というので一番顕著なのは、やはり造船なんかだと思うのです。造船所で、一つの船を作るために、一体どのくらいの中小企業がそれに関連をしているか、業種が数百に及ぶ中小企業が、一そうの船を作るためにやはり関連している。そうすると、何か造船会社に金融をつければ、造船会社は大企業と言われるが、造船業者に金融をつけぬでおけば、何百に及ぶ部分品等を製作する中小企業はみな悩んでしまう。ですから、大企業が金を借っても、それをふところに入れておるわけではないので、その金は中小企業から物を買う代金なんですから、これは、中小企業の方にやはりはけていく。  ただ問題は、そういう大企業と中小企業との関係をどういうふうに結びつけることがいいかということが、問題にならなくてはならない。それで、私どもは、なるべくそういうふうな大企業と中小企業を系列化して、この大企業にはこういうふうに中小企業がいく、そうして、その中小企業には、大企業が金融のめんどうは当然見る。またそういうふうになるのだから、大企業が問屋のかわりをしたらいいだろう、こういうような指導もしておる。それを聞かぬ場合は、たとえば大企業に金を出させるが、その金をすぐ——中小企業の名簿を作って、この大企業が中小企業に幾ら滞りをしておる、そのリストを作っておいて、そうして中小企業のその下に取引先銀行をかかえておいて、大企業に金を渡さずして振りかえてやる。そういう方法をとって、中小企業の方に金が流れるような措置考えておるわけなんです。私は、要すればそういうこともまあやむを得ないだろう、こういうふうに考えておるわけであります。大企業と中小企業を、ものにもよりますけれども、そういうものもあるかもしれませんが、何でも離れているようには、どうぞお思いなさらぬようにしていただきたい。私は、双方から考えております。
  97. 石野久男

    ○石野委員 今そこまで聞きますと、私はもう一つだけ聞いておきたい。大企業へ金を出せば、中小企業へ行くんだから、中小企業は捨てないのだとあなたはおっしゃる。ところが現在大企業に対する下請工場が、その下請代金をどの程度毎月々々受けているか、あなたは調査しておられますか。現在こういうふうに金融の逼迫化しておる時期においては、大企業のほとんどのところが、その月その月の支払いはおそらく二割か三割ですよ。そういう状態だから、中小企業の段階では、金融的に経営ができないのです。そういう実態をあなたはどういうふうに把握しておられるか。そうして、もし私が言うように、大企業が今下請工場に対して払っているものがせいだい二割、三割くらいだということになっておる場合、こういう金融逼迫の情勢下における中小企業者は、どうして経営を維持していくことができるか、そういう場合には、あなたはこれに対しての金融的措置をどういうふうに考えておるのか。今あなたのおっしゃるところによると、政府の支払いとしては、なるべく大企業に払う、大企業に滞りがあれば、それを振りかえて、中小企業者に直接払うようにしてもいい、こう言われる。しかし、それは全部の産業に対してじゃないと私は思う。ほとんど多くのところは、中小企業者は、大企業から二割か三割の支払いしか受けていない、そのやりくりをするのにやはり往生しているのです。それで、十・一の金まで借りてやっているというのが実情なんです。これはもう少しシビヤーに現実の状態を見なければいけないと思う。私はこういう問題について、それでは大蔵大臣は、どういう金融的措置をするのか。あなたは、おそらくおっしゃるだろう、三十三年度は、そういう問題に対して、中小企業に対する公庫と通じての資金を出すのだ——しかし、中小企業金融公庫だって、国民金融公庫だって、あるいは商工中金だって、そう簡単にはこれらの人々を救う段階にまでいけない。そういうような実情の中で、これらの犠牲を受けているところの中小企業に対する特殊な金融的措置をしない限りは、今日のこの産業界における、異常なでこぼこのある状態を是正することはできないのじゃないか。そういう問題について、あなたは金融措置としてどういうような方法をとっているか、今ここではっきり一つ話してほしい。私は、関連ですから、これだけでおきますが、そういう点を、一つぴしっと納得のいくように説明を願いたい。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私は、金の流れの筋道を一応申し上げた。それはなぜかというと、たとえば、私が社債発行というものを起していかなければならぬ、こう言うた場合に、それはすぐに大企業の金融だ、こういうふうにおしかりを受ける。しかし、そうじゃないので、今日大企業自体がやはり金に困っておる、ですから、それのしわが中小企業に寄っておる。だから、大企業に金をつけるのは、どうしてもやはり社債というようなもの、安定した長期資金というものが手に入らないと、自分の関連のある中小企業等に金が払えない。そういう意味において、社債なんかを発行できるようにしょう。それにまた、そういうことに必要があれば、私は財政資金等で一時お助けをしてもいいだろう、先ほどから申しておる意味は、そこにあるのであります。お説のように、何も今大企業自体に金を流す理由はない。しかし、造船なんかを見ますと、造船もなかなか金に困っておる。それは、銀行の方に金が足らない。ですから、計画造船にしても、これだけは自分が金を出すといったものでもやはり出せない、それで、その分はどうなっておるか、これに関連するいろいろな部分品を入れたところの代金を払わずにおる、こういうふうな状態です。しかし、そういうところは、今度は何かの形で金がいくようにしてあげて、部分品なんかを入れた人にその金が流れるようにする。そのときの仕組みは、先ほど申したような、部分品を払った人にも金が流れるような仕組みにして、中小企業の方々のお困りをなるべく緩和しょう、こういうことを今考えているということを申し上げておるわけでございます。
  99. 石野久男

    ○石野委員 今、うまくいかないところは、何かの形でうまくやりたいと言ったけれども、それはどういうことを言うのですか。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど言ったように、むろんそれは、いろいろな指導でもって、今日金融機関がよほど様子が違って、金融機関で融資調査会というものも作っております、それから資金審議会というものもあります、これらの指導に待ってもよろしいのですが、いかぬとなれば、先ほど申した振りかえという形で、これは私は社債を発行して、そういうような振りかえという形にして流していくこともよいだろうと考えております。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、新聞をごらんになっておるだろうと思いますけれども、今大臣の身辺に対しまして、わが党としては、非常に不気味なものの考えを持っておるわけであります。といいますのは、今二人の委員を通じていろいろあなたに聞きただし、あなたに一つものの考え方を明らかにしてもらいたいといっているのですが、その根本的な原因は、先般当委員会で私も言ったのですけれども、去年は見通しが違ったから、ことしは見通しが違わぬように、一つ十分な見通しを持ってもらいたいし、そからまた、見通しがかりに変化が生じたならば、適宜適切に手を打ってもらわなければいかぬ、こう言いましたら、あなた、二つのことを言いました、一つは、景気の観測を確実にするようにしたい、それからもう一つは、その変化があったならば、機動力をもって、機動的にこれに対応するようにしたい、こういうふうに言われたのであります。ちょうど思い出せば、去年宇田さんがトントン大臣とあだながついて、二カ月たたぬうちにトンバラリ大臣になったと同じように、あなたが財政演説をやられてから、まだ一カ月か二カ月たたぬのに、財政演説の根本にありました景気の見通しについて、変化が生じています。ここ数日来、あなたはわが国の経済の調整の終るのも長引くであろうと言われて、本委員会及び予算委員会で言われた、七月ごろになったらアメリカの景気にささえられて上向くという考え方が、本年一ぱいこれはだめだというふうに、にわかにこの数日間態度を変えておられるわけであります。このことは、一体どういう原因なのか。なぜわが国の経済の調整が長引くというふうに、あなたのものの考え方を変えてこられたのか。そこを、今までも若干触れられておりましたけれども、経済援助の基礎になった問題でもありますし、その後国民にそういうつもりでがんばってくれというのがあなたの気持でありましたから、国民の希望を裏切るのもはなはだしいと思うわけです。なぜそういうふうにものの考え方を変えられたのか、その辺の経緯をまず明らかにしてもらいたい。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、何も考えを変えておりません。そのことは、もう国会の委員会できのうも私は申しております、何も変っておりはしません。私は、何をもって変ったとおっしゃるか、それがわからないのですが、公けの席上において、私自分の意見を変えたことを発表したことは、何もありません。大体、従来からこういうふうな表現を使っておったと思います。生産調整の過程で、やはり三月まではどうしても——しかし、これは政策的に自分は考えている、そうすると、実際は若干はずれるだろう。そこで、私は四、五、六というものを、やはり調整的な期間としてもちろん考えなくちゃならぬだろう、こういうふうな言い方をしております。むろん経済は生きものですから、私がこうしたいという気を持っておっても、その通りに行くか行かぬか、これは、時間的にはわかりません。しかし、方向を誤まっていないとするならば、これは、私は正しい考えだと思っております。方向を誤まってはいけませんよ。しかし、日本の経済の動きが、全く反対の方向に動いていくなら、これは別ですよ。しかし、その動きが同じ方向であれば、時間的に若干ズレが生じるということは、当然なことです。これは、生きものですからね。経済は、刻々内外の情勢に応じてやはり変化する、ただ見通しまで間違ってはいけない、そういうことです。それが、私は大事だと思う。で、なぜ七月をとったか、七月によくなるとは、私は一ぺんも言いません。七月という月はアメリカの会計年度の始まりで、新しい年度になる。その新しい年度において、アメリカの景気に対する政策というものが新しく動いてくるのだから、そこで、やはりいつが境目といえば、七月ということを一応境目にして——景気がすぐよくなるとは言いませんよ。やはり幾らか前よりも明るい方に向く可能性を持っている、こういうふうに私は申しておるのですが、その七月が若干ずれてもいい。大体、今私はこれを明らかにしておきますが、この前新聞にも若干出たことから言うなら、私はあのときには、こういうふうに説明をしたのです、これはむしろ私の意見じゃない。今世界の景気について、アメリカやロシヤや、あるいはその他の経済学者がどういう見解をとっているか、それを、僕はきょうは一応話そうということで話したのです。それは、くれぐれもそのときも断わっておいた。共産圏のロシヤの学者だけが、今度の世界の景気の情勢を見て、ちょうど第一次世界大戦の後二十年目に来たあの世界恐慌と同じ性格を持っている。これは十三年目か十四年目に来たんだが、同じだ。これは大へんだというのが共産圏の学者の大体一致した見解と見ていいと思うのです。しかし、それに対しておるのが、また政策的でありますが、アメリカの大統領、あの方は一時は三月くらいからよくしていく、こういうことを言うておったことは、経済報告にも明瞭です。それは、大統領を取り巻く学者、それにハーバード大学の先生が、やはりややアイゼンハワーをバックしていたと私は思います。しかし、その他の自由国家の学者は違いますよ。その説は、七月という考え方もあり、秋があり、それから来年の春までかかるだろう、こう言う。しかし、いずれの学者も、自由国家の学者は、だんだん明るくはなる、しかしいつ明るくなるかという時期において見解が分れておる、こういう状況にあるということを話したことはあります。そういうふうなことから、何だか私がばかにいろいろ自説が変っているように言われるが、そうじゃない。世界の学者の説がそういうふうに区々にあるぞ、こういうことなんです。私は、事柄をきわめて明瞭にしておきます。そういうことなんです。だから、私はやはり将来だんだん明るくなるという確信は依然として持っておる。それを持たなければ、日本の三十三年度の経済が三%拡大するということは、一体どこから出てくるか。あるいはまた三十一億五千万ドルの輸出というものができるか。私は、どうしてもそうならざるを得ないのでしてね。ただ、時期については、お前は七月と言うたじゃないか、いや六月だ、そういうことを言うのは、これは少し無理です。経済は生きている。だから、それは刻々の内外の諸情勢を見て、それぞれ判断をする。その判断をする資料は、政府としては、三十三年度になれば、企画庁に特に景気についての統計を集め、そういうことをする。そうして、企画庁から政府の統一した経済の見通しというものは出ていくのですから、どうぞそれをごらん下さい。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 長々と学説を承わりまして、ありがとうございました、けれども、あなたは、ここで何かアメリカあるいはソビエトの学説を言ったとおっしゃっておるのだが、私は、残念ながらここで承わったことはないのであります。ここであなたがおっしゃったことを、一つ読み上げてみます。おそらくこういう調整作業も、私の一見地では、三月くらいまでには大体終るだろう。そうして四、五、六というようなところでいわゆる横ばい的な、もう少しきめのこまかい地ならしができて、そうして七月あたりから、世界経済と相呼応して、日本の景気も若干よくなっていくであろう、それほど大きな起伏なくして、日本の経済が推移していく、こういうふうに言うておられるのです。またこのことは、本委員会ばかりでなく、あれから私が重ねて公定歩合の引き下げの問題の論争を通じてもう一ぺん聞いたら、同じことを言っておる。ほかの委員会でも言うておられるのです。同時にあなたのおっしゃることは重大だと思うのは、私はそうしたいと思っているというだけで、それがそうなるかならぬかは知らぬというのは、無責任きわまる言葉です。私どもは、同じ政治家として、こうしたいと言う以上、そうするようにしなければいかぬ。これが底が抜けた何とやらで、絵に書いたぼたもちです。私の悲願でありまして、どうなるかわかりませんというようなことで、国民を瞞着するもはなはだしいではないかというのです。あなたが、七月ごろに大体景気も若干よくなってきますと言うことは、とりもなおさず国民の諸君に、今は苦しいけれども、それまでは一つがまんしてやってくれという意味が、自然に伝わるものなんです。さればこそ国民の諸君も、そうか、そういうことなら、もう少しがんばろうかという気持になるものです。ところが、それを期待して得ないとするならば、何のためにそういうことを言っておるのか、全然わけがわからぬ。そこで、そういう期待感というものを持たせておきながら、見通しが狂いました、ことし一ぱいだめですばいということを言うて、先方のこっちゃから、わしゃ知らぬということは言えませんよ。そんなことはありませんよ。もう一ぺんあなたの答弁を許します。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今速記録をお読みになったその方向は、私は今も実は持っておるわけです。そうして、それは政策的にそう考える、実際は若干ずれる、先ほど言ったように生きものでありますから。もしも私自身の政策で、世界経済全部を私が思うようにやり切ったら、それは私は大したものですよ。そんなことをかりに私が言ったら、それはみんなが笑いますよ。そんなことを言うてもいかないので、私どもとしては、私どもの立て得るだけの政策と目標を立ててやって、こういうように自分たちはやりおるぞということを国民に示して、しかしそれは、内外の情勢に応じて、やはり政策はその政策通りきさちきちと、日程を組んで、きょうは五里歩み、あしたは十里歩むというようなわけにいかないのです、経済は生きているのですから。ですから、君たちは、よくそのときどきにおける情勢を判断して政府はこう考えてやりおるが、やはり食い違いが生ずるから、君たちがよく情勢を判断していけ。しかし、方向はみんな同じなんです。ただ、われわれは、大いに努力して、日本の経済をよくしていこう、またよくなる政策であり、よくなるであろうということは一致しておる。ただ期間の問題です。もしもこう行くべきものを、ああ行けと言いおるのなら、あなたの非難は当る。しかし、みんなこう向いていこうというだけなんですから……。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 あなたが何も世界経済を動かしておるとは、夢にも思っておりません。けれども、あなたが言うところの、七月から若干よくなるという、そのものの言い方というものは、大蔵大臣として世界の情勢を判断し、それからわが国の今後の経済の推移も見、そうしてその中から、一つ七月には経済をよくするのだという決断というものが動いたと見るのが、常識ではありませんか。そういう中における判断が誤まっておって、ことし一ぱい景気の調整が続く、こういうふうになりましたと、なぜあなたは言いませんか。それなら話がわかるというのだ。七月と言っておったものが、今あなたは、ことし一ぱい続くとおっしゃるから、あれは一萬田さん、何ちゅうこっちゃ、これでは八月までは生きている人間がおっても、十二月になったら生きとらぬ、死んじゃっておる人間が生ずるのですよ。それを私は言うのです。これは、あなたはまだ言いたいらしいけれども、ほかに問題がありますから、明らかに一萬田さん、あなたの考え方は判断が間違っておったという烙印をここで押しておきます。  そこで、それでは何で延びたかという問題なんです。何で判断が間違っておったか。あなたが、七月は大ていよいよなると言うたのだけれども、それが延びた原因を一つ言うて下さい。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 何も判断が間違っておりません。まだ七月は来やしませんよ。そうして、今日世界の経済を動かすのに、どこが一番力があるかということを考えれば、いわば物の判断で、それはアメリカをおいてないでしょう。アメリカは自由国家です。そうして、アメリカの経済を動かすのに、だれが一番力があると思われるのですか、それは、アメリカの大統領です。そのアメリカの大統領が、アメリカのあれほどの国民と世界の人に対して、何と言っておりますか、それが無視できますか。私は、そういうことはできぬ。あの責任ある人が、アメリカの経済をどう持っていくか、どうするか、どういう政策をとるかということは世界に大きな影響を持ちますよ。それだから、アメリカの経済が世界の経済を支配するともいう。その責任者である大統領が、こうしよう、おれはこう思う。その回りの多くのブレーンと、そしてアメリカの大統領は、大きな政治力を持っておる。そうしてアメリカには、大きな資源を持っておる。保有の金、保有のゴールドだけで、おそらく二百億ドル以上ある。その上、ああいうふうな資源を持っておる。その見解を全然無視して、あるいはそれに相当な重きを置かずして、私は世界の経済を考えるわけにいかぬと思う。私は、それでやはりそういう見地から、一応七月——何も七月からよくなるとは言わぬ。七月というの、かりに一つの境をとればということなんです。境をとれば、それなら九月からというのもおかしいから、七月からアメリカの新しい会計年度が始まるから、一応七月というようなところを考えてものを言うておるということなんでありまして、私は、何も今のところ間違っておるとは考えておりません。しかし、今のところまだ来もしないうちに、早まって間違っておるなんということは、私はどうも納得できません。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 何を言うておるのかわからぬ。私の言うのは、延びたということは、——(「いつ言っているのだ」と呼ぶ者あり)参議院で言うておる。記者会見でも言うておるよ。延びたということはどういう原因であるか。あなたは私の質問に対して、アメリカの景気を動かすアイゼンハワー大統領が言うとるから、しょうがないのだというお答えならば、それでもいいが、そういう答えですか。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、非常に故意に言われることで、何もアメリカの大統領が言うからしようがないなんということは、一言も言いやしませんですよ。私は、そういうふうな論議は、ほんとう考えていない。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 はっきり答えて下さい。
  110. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは先ほど言うたように、やはりアメリカの経済というものは、世界経済に大きな影響を与える。そしてアメリカの実際の実力者であるその人が、こういう政策をとって、こういうふうにやろうと言うて、そしてその政策は、着々具現して、今日は減税にまで持っていこうというようなところまでやっておる。そのことを考えずして、世界経済の動向というものを論議するのは少し無理じゃないか。だから、その点はやはり考えていいじゃないかということを、私は申しておるだけなんです。若干ずれるということはこれは、今経済を抑えていく所作をやっておりますから、特に生産調整というのは、私がたびたび言うように、メーカー、いわゆる業者から見ると、これは命の次の問題で、生産を拡大するために、生産業者というものは一生をささげておるようなものです。それを、せっかく拡大したものを切れ、あるいは押える、やめなさい、こういうふうな方向に持っていくのですから、これはすなおにいかない。ですから、少し苦しくても金融を締めるのです。すなおにいかぬということは、やはりこっちが考えている政策よりも若干ズレを生ずるということは、これは経済界では常識ですよ。ですから、私はやはり若干ズレは常に考えておかなければならない、これは、生産調整のむずかしい仕事に取り組んでいるから、こういう意味なんです。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 どうも、まだ私とあなたとピントが合わないのです。あまり時間をとるのもいかがかと思いますが、もう一ぺん端的に聞きたいのですが、あなたの観測は、七月から若干よくなるのだと言うた。それが、ここ数日来、ことし一ぱいになるだろうと言うておる。なぜそういうふうに変ったかということを聞いておるのです。あなたは、それに対して、十分な話ではなくして、アメリカの景気があるから、そう思うようにはいかぬというならば、七月には若干よくなるというときだって、そういう観測はあり得たではないかと言いたいところです。そこで、私が推量いたしますのに、もし間違っておったら、一つ判断をしてもらいたいのだが、アメリカの景気観測、アメリカの経済が世界に及ぼす影響、そういうことについての判断が、あなたが考えておったことと実際の進行というのが違ってきたのではないか、私はそういうふうに判断をするのですが、それが間違っておったら答えて下さい。そういうふうに御質問しましょう。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今のところ何も間違っておりません。今アメリカは、景気の回復策のいろいろな政策を打ち出す最中なんです。従来は、大体金利政策でやっておったことは御承知の通りです。それが、今財政政策に移って、今一番当面の問題になっておるのは、公共事業を拡大するのがいいのか、減税がいいのかというのが当面の問題で、いずれをとるかという問題になっている。これは相当思い切ったインフレ的な施策だと私は思う。今日アメリカの物価が相当上りつつあることも、御承知の通りです。よほどインフレ的です。これは何を志向しておるかといえば、輸入です。これは、アメリカ当局が去年の秋から言うておった。輸入をふやすということは、自由国家からなるべく物を買おう、そして、従来のような、アメリカの受取勘定の貿易になることを防がないと、自由国家も苦しいから、輸入をふやそう、それにはああいう景気政策をとって、アメリカをインフレートして、外国の品物が安く入るようにしなければならぬ。そういう政策をとりつつある。それには、十分アメリカは耐え得る力を持っておるというのが、一応の私の判断で、従って、私は前よりもあとが悪くなるとは見通しておりません。前よりもアメリカがああいう施策をだんだん進めるにつれて、幾分かはよくなるという見通しをやはり持っております。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 アメリカがそういう景気回復策を今後とるであろう。しかし、とることを想定に入れて、なおかつあなたは、ことし一ぱいは調整が日本の場合続くであろう、そういう判断をされたというふうに理解をしておるわけです。違いますか。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 違います。ことし一ぱいというようなことは、何も言うたことがありません。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 それでは言いますが、一萬田蔵相は七日の記者会見で、米国の景気回復は、予想よりおくれるようであるし、わが国の経済も、調整を終るのは長引くだろうと語り、国会の答弁と違って、見通しを修正して、そうしてほかの新聞では、ことし一ぱい続くというふうにあなたは言ったといわれております。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、私は取り消しておきます。取り消すという意味は、ないという意味であります。あったのを取り消すのではありません。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 もう一ぺんはっきり言って下さい。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうことはありません。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 新聞の、わが国の経済も、調整を終るのは長引くだろうと語ったことは、うそですか。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が先ほどから言うたように、常に表現した場合に、自分たちはこういう政策をとってやるつもりだが、これはきちきちものを置いたようにいきませんよ。いきませんが、一応ものを説明する場合には、区切りをつけないと説明ができませんから、大体こうこうと言う。しかし、実際は若干ずれていくだろう、常にそういうことを言うておりますよ。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、悪口を言うのは私はよしたいのですが、あなたの言うことは、これから常にずれるだろう、そういうことになってしまう。
  122. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、先ほどからその原因についてよくお話し申しましたように、生産の調整というものは、生産業者にとっては、命の次の問題なんです。ほんとうに心身を賭して生産の拡大をはかるというのが、これが生産業者の生命なんです。それを押えていこう、あるいはそれを切りなさいというのですから、抵抗がありますよ。ですから、ここでどうしてもやろうという政策を立てるのだが、その政策よりも、若干現実はずれるということは、これは経済では常識ですよ。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 いささか水かけ論になりますけれども、大臣のそういうお言葉は、もうそれでは、あなたの言うところの生産業者をも国民をも納得させるわけには参りますまい。もしそういう言葉で、おれが言う言葉は何月なら何月、こうするならこうするということは、実際問題としては、経済の常識で延びるだろう、そうはいかぬだろうということを、あなたが自分で裏書きをされたということは、まことに残念なことであり、遺憾なことであり、私は国民の非常な不信を買うことになるだろうと警告をいたしたいのであります。  それで、今あなたのおっしゃったようなことだとしても、調整がかなりすれるであろう、ずれる段階において、どういうふうに問題をこれから処理をするのか。先ほど両委員から、そういうふうにずれるのであったならば、よりよけいに中小企業対策というものを積極的にやらなければいかぬ、こういう質疑応答がありました。そこで、私は、政府部内と日本銀行との間に、この間の考え方について、相当の意見の対立とは言いませんが、見解の相違があるように聞き及んでおるわけであります。この点について、私は委員長にお願いをいたしまして、一つ日本銀行の山際総裁に本委員会に出席してもらいたい、こういうふうに考えておるのであります。原因を今ここで長々と申し上げるのは、農林大臣も来ていらっしゃるからやめますけれども、新聞に伝えられ、各方面からいわれております日本銀行のものの考え方というものが、企業の設備投資意欲が今なお潜在的に根強いというような意見や、国際収支の黒字は、輸入が減ったためで、輸出が伸びたことによるものではないから不安定だという判断や、そのほかのいろんな判断からして、今片鱗ではありますが、あなたが考えておる緩和といいますか、その方向へと背反をしておるように私ども考えておるわけです。詳細を今ここで十分申し上げる時間がございませんが、私の言わんとするところは、大臣も御存じだと思うのでありますから、そういう日銀のものの考え方と微妙に対立をする大蔵省考え方を、どういうふうに大蔵大臣として判断をされておるのか。また聞くところによりますと、経済閣僚が、十四日ですか、懇談会か何かをして、経済の見通しについて、各主管大臣が区区な見通しをしていることを調整しようというような話が伝えられておるわけであります。十四日であるかどうか、私はさだかに知りませんが、経済閣僚懇談会が行われるという話を聞いておるのです。こう考えて参りますと、あなたの本日言われた意見、あるいはそのほか政府内部の大臣の意見、日銀の意見等々、経済の展望とそれに対応する対策について、いろいろな見方があるようであります。そういう点について、大蔵大臣として今後どういうふうに調整をされ、そういう意見についてどうお考えになっておるか、これを最後に私は質問をしたいと思います。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府部内に見解の相違は何もないと思います。ありません。ただ経済の関係の閣僚が飯を食いつつ、いろいろと資料、材料を持ち寄って話をしよう。そんなことは今後もありましょうし、そういう話はやっております。しかし、別に今きわだって何か思想統一のために経済閣僚会議を開く、そういうふうなことは企図いたしておりません。ただ、もう少しいろいろ話し合ってみようじゃないかぐらいはありますが、何もこれは、経済閣僚のいわゆる懇談会とか、そういうものじゃありません。そういうふうなものは、何も企図いたしておりません。  それから日本銀行と何か意見の相違——これは意見の相違じゃありません。金融政策自体については、日本銀行の関係するところは、金融政策、いわゆる市場に対してどういう資金量を提供するのが一番いいのか、通貨価値を維持するにはいかに政策をとるべきかが日本銀行の問題であります。大蔵大臣の分野は、それだけじゃおさまらない。日本の経済の全体、あるいは国民生活の安定、その一つとして、金融政策というものを大蔵大臣は当然考える。その金融政策に関するところにおいては、私と山際君と違うところはありません。私の発言は、場合によっては、単に金融政策ではなく、全部の国民生活、経済全体——むろん金融も国民生活に関係ない、あるいは日本経済に関係ないというのではありませんが、いわゆる金融という立場、特に通貨価値を安定させる、通貨価値を維持するということが生命でありますから、そこの基本に立っておるのでありまして、何も今日山際君と意見の違っているということはありません。表現のなには幾らか違うかもしれません。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 表現の相違というものは、本質的な相違ではないとおっしゃるのですけれども、日本銀行といたしましては、今日なお設備投資意欲というものは衰えていないから、ここで金融の緩和をいたしますと、必ずまたもとへ復元をするおそれがあるという意見が強いのです。また国際収支の黒字は、輸入が減ったためで、輸出が伸びたものではないという考え方、もしこういう考え方が今後の金融政策の一つの基調となりまするならば、国際収支を重点と見るか、国内経済の均衡を重点と見るか、その二つのものの考え方によって、私は今後の政府のものの考え方、金融政策の方向というものは大きく——最初の一歩は同じであっても、将来の方向というものは、大きく違っていくわけです。今日政府、国際収支ということが焦点となって、そのために、国内の経済の均衡というものは犠牲になってもやむを得ないというところに基調が置かれているわけです。そういう基調を少しも今後変えるつもりがないということであるのか、その点を、最後に腹蔵のない大蔵大臣の御所見をお伺いします。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私どもの企図しているところは、輸出の増大ということであり、そのために、国内的な景気がある程度押えられてもやむを得ないということで、それで今日生産調整ということまでいたしまして、一方国内需要を抑えつつ、生産を押えて輸出に向ける、こういう手段をとっているゆえんであります。むろん輸出が伸びるにつれて、国内の購買力も増し、国民所得はふえる、ですから、それに応じてまた国内景気もある程度出てくる、やはり貿易の拡大と同時に輸出が超過になる、それが国内にまたはね返って国内景気をよくする、それが循環していく、こういう考え方であります。
  127. 横山利秋

    ○横山委員 意見の相違になりますから、それでは、私の質問は終ります。
  128. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 横田君御要望の、山際日鉄総裁を参考人として本委員会に招致の件は、後刻理事会に諮って善処いたします。     —————————————
  129. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案及び食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の両案をあわせて議題とし、質疑を続行いたします。足鹿覺君。
  130. 足鹿覺

    足鹿委員 先日来この両法案について伺っているのでありますが、大蔵大臣並びに農林大臣の御両名に並んでいただいて、よく念を押して御所見を承わって、善処したい、こういうつもりでありますので、きょうはきわめて簡潔に申し上げますので、はっきりお答えをいただけば幸いと存じます。  お尋ねをしようと思いますのは、大体三つないし四つあるわけでありますが、まず最初に、食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案についてお尋ねをします。まず一般会計から食管特別会計に資金として繰り入れる額は、そのつど立法措置を講じなければならないかどうかということについて、昨日来農林大臣並びに大蔵事務当局にお尋ねをいたしたのでありますが、その場合は、補正予算を組むと同時に、そのつど立法措置を講ずるか、あるいは他に適当な措置を講ずるであろう、こういう趣旨の御答弁でございました。農林大臣は昨日もおいでになっておりますから、私の言っておりますことが間違っておれば、御発言願いたいのでありますが、     〔平岡委員長代理退席、横山委員長代理着席〕 大蔵大臣といたされましては、どのような措置を講じられるのでありますか、まずその点をお伺いいたしておきます。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御質問は、予算米価が一万二百円になっているので、今後米価が正式にきまった場合に損失が出る、この損失の補てんについてどういうふうに考えているか、こういうことでございましょうか。
  132. 足鹿覺

    足鹿委員 昨日は、そういう御質問を申し上げたのです。ところが、本年度の予算は、現在国会で審議中であります。従って、今現実の予算をとらまえて、赤字が出たならばどうするかということについては、政府としても、国会で審議を受けておられる予算案について赤字が出るとか出ないとかいうことでは、立場上非常にお困りであろう。従って、これは本年度の予算にかかわりなしに、法の建前として、こういう法律お作りになりますならば、これは恒久立法であります。今まではそのつど必要な措置を講ぜられて参ったのでありますが、今度初めてこういう資金の設置をされまして、そして一般会計から運転資金意味をも含めて金が繰り入れられることになったわけでありますから、これは、よほどの情勢の変化のない限り、将来にわたってもこういう方式がとられると思うのであります。従って、法の建前として、ことしの予算とは別個に、そうした場合にはどういう措置をおとりになる御所存であるか。こういうふうな、ことしの予算とは一応離れて、法の運用について御所信を承われば、問題は明らかになるのではないかと思いますから、きょうはそのおつもりで、あまりことしの予算には関連なしにお答えを願えればよかろうと思います。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今お尋ねのことは昨日も申し上げましたように、食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、この法律案によりまして、百五十億の運転資金一般会計から食管特別会計に繰り入れるわけであります。この法律は、この百五十億が足りなくなった場合に、そのつど立法措置を要するということではないのであります。これは、このたび資金を設けることについての立法措置をいたしまして、一たん資金が設定されることになりますると、もう一つの法案、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案、この中に、第六条の四において、調整資金を設けるということが規定されております。そして第六条の五によって、一般会計から、予算の定むるところによって調整資金に充つるために繰り入れがなされる、こういうことに相なっておるわけであります。でありますので、これから百五十億の運転資金が足りなくなるという場合について、どういうふうな措置をとるかということがお尋ねの中心だと思うのでありますが、そういう場合には、あとで申し上げました食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案によりまして、一般会計から繰り入れる場合もあるだろうと思うのであります。あるいはまた、非常に食管会計等におきまして損が大きく出るというような場合で、その場合には、単独法を出しまして、一般会計から繰り入れをする、こういうこともあり得ると思います。二つの方法によって措置をしていく、こういう建前であります。
  134. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度の調整資金を百五億入れてあるのでありますが、これは、御承知のように、予算主義でも決算主義でもどうもうまくない、いずれも欠陥がある。そこで、調整資金を入れて、一面赤字を糧券なんかで融通を受けて埋めていく、他方または調整資金で、食管の損益を持ってきて損が出れば落す、この両方の作用をするのであります。従いまして、私の考えでは、財政状況が許すとすれば、やはりこれを補強するようにここで考える。他方食管会計の方も、なるべく赤が出ないように双方で努力する。双方で食管会計を健全化していくというのが今一番の、幾らか抽象的になりますけれども、趣旨じゃないか、それが一番いいのじゃないか。この調整資金を、こういうふうに一般会計から入れて設けることによって、食管会計の赤がルーズに出るというようなことがあれば、この制度はやはり弊害を生じますから、私は、将来場合によっては、単独法によってそういう赤字を埋める方向に行かざるを得ないかとも思うのでありますが、その辺は、今後の食管会計についての事情、財政状況等を考えてきめていきたい、かように存じております。
  135. 足鹿覺

    足鹿委員 私が聞いておりますのは、もちろん本年度は、この資金の設置が初年度でありますから、資金を設置すると同時に、一般会計からの繰入金もなされているわけでありますが、次に年度からは、要するに食糧管理特別会計に幾ら幾ら入れるかということをおやりになれば、その立法措置をお講じになればいいことになると思うのです。それと同時に、補正予算をお組みになれば、事足りると思います。そういう建前には間違いないのでありますが、大体われわれが情勢を考えてみた場合に、第三条に規定している損益の処理の場合において、その年度の損失が資金額をこえることが大体明らかになった場合には、どうされますか。来年度まで待たないで御処理をなされなければならないのではないかと思うのです。  このことをなぜ昨日来伺うかと申しますと、結局米価を、かりに生産者米価、あるいは消費者米価をきめていく場合、あるいは消費者への配給数量をある一定数量確保していこうとする場合、関連が出てくるのです。たとえば二千九百万石の予定で予算に計上してあったものが、実際は三千百万石を必要とする場合も出て参りましょう。また消費者米価や生産者米価や生産者の麦価等をきめる米価審議会が意見を述べて、政府もその意見を適正妥当なものだとお考えになった場合に、もとの予算米価をもっては処理し切れない場合が出てくる。そうした場合には現在調整勘定に入れる予定の金額をもってしてはまかない切れない場合が出てきます。そこで、そのまかない切れないということを前提にしてやらなければならないことを、むしろ抑制している場合が出てきやしないかという心配を、私どもは抱いているのであります。その心配がない、そういう運営はやらない、こういうことであれば、別にこの問題については、従来決算確定後において赤字を埋められようとした運営が、今後当初において相当の資金を入れて、食糧証券の発行をできるだけ少く押え、あるいは一時借入金等によって生ずる金利等のロスをでき得る限りこれを圧縮していく。いわゆる食管会計の健全化の線に沿った措置でありますから、その措置自体には、私どもは別に異論はないわけであります。だが、一定の金額を区切って、その範囲内においていわゆる食糧政策を行なっていこうという意図があると、これは非常に問題が大きくなってくる。一つの食糧政策の大きな転機をも意味する結果になりはしないかという疑問を持っておるわけなんです。その点について、いやそうではないということを両大臣から明らかに御確認をいただけば、大体私の質問は満足できると思うのです。年度にこだわらないで、運営の原則、基本方針を明らかにしていただけばけっこうです。
  136. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今お話しの前段のところで、ちょっと私の方で御説明申し上げたいのですが、食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の第二条には、百五十億という金額が上っておりますが、これが足りなくなった場合には補正予算を出す、補正予算を出すときには、法律改正するかどうかするのだろうというお話でありましたが、一たんこの法律が通過いたしますならば、今申し上げた法律は、もうそれで済むわけなんです。こちらの食糧管理特別会計の一部を改正する法律案によって、百五十億の資金を増額するという必要があれば、この法律によってこれを増額する。別に新しく法律改正する必要はない、こういう建前になっております。  それから今お尋ねの百五十億という運転資金で、食糧証券で損失を見込むということは不健全だから、これを健全化するために運転資金百五十億を置いたのであるけれども、生産者米価、あるいは消費者米価等をこのワク内で押えるという目的で運営するのかどうか、こういうお尋ねかと思うのでありますが、昨日来御答弁申し上げたように、生産者米価等につきましては、これは予算米価であり、実際には、買い入れ時期にはパリティ指数も違いますので、それから米価審議会という機関の諮問による答申もあるわけでありますから、変ることは、適正に変るべき建前は持っております。そこで、そういう場合に、もしもこの百五十億の運転資金の中から、損失がふえていけば落すのだが、足らなくなった場合にはどうするか、こういうことだと思うのですが、この運転資金につきましては、決算が確定したときにこれから落していくという形になります。でありますから、三十二年度の九十六億円も、決算が確定してから九十六億円は落す。そうして百五十億の金の残りは三十三年度に引き継がれるわけであります。三十二年度の見込みでは、今のところ四十三億円赤字の見込めであります。しかし、これがもっとふえるということになれば、あらかじめこの資金を増額するという措置が必要である、こう思います。でありますから、これはそのときの状況によりまして、赤字のふえる要素もありましょうし、あるいはまた輸入食糧等につきまして、黒字が出る区要素もありましょう。そういうものを調整勘定に移して処理していきながら、ふえるということでありますならば、あらかじめこの資金を増額しておく。そうして、最後に決算が確定したときに、それを取りくずしていく、こういう手順になるわけでありますから、この百五十億というものは、生産者米価とか、あるいは消費者米価その他を拘束して、これによってそのワク内できめていくという意味を持っているということではないのであります。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今農林大臣からお話のあったことで、私もいいと思います。
  138. 足鹿覺

    足鹿委員 今大蔵大臣と農林大臣の御答弁が完全に一致いたしましたので、大体私の持っておりました疑念の一部は解消しました。世間では、いろいろ風説を唱え、また疑惑を持っておりましたが、今の御答弁によって、何ら現在の繰入額百五十億をもって米価その他を拘束していくものではないということが、両大臣によって確認されましたので、その点はけっこうだと思いますが、ただもう一つ、だとするならば、この第八条の四の場合、つまり農産物等安定勘定の損益計算上に出た損失の場合は、はっきり積立金の減額によってこれを整理した後、さらにまだ足らないときには、一般会計からの繰入金によってやるのだということを明文化しておられます。その理由は、昨日もいろいろお尋ねをしましたが、これは、はっきりとした政策上の問題であって、農産物価格支持制度に連なる政策上の問題であるから、損をする場合が多いのであるから、はっきり一般会計で補うのだ、こういう趣旨の御答弁でございました。これは、その通りだろうと思うのです。しからば、この食管会計の一番中心である食糧の問題にしてみた場合に、農産物の大宗である米と麦、国内麦に国内産米、これは一番大きな問題でありますが、価格支持制的な性格は、一面持っておると思うのです。ところが一方農産物等の安定勘定の場合は、価格安定政策に関連するから、はっきりとこの繰り入れの方法も明文化しておくが、米麦の場合はそうでなくして、一たん調整資金に入れて、さらに調整資金から繰り入れて、なお足らぬ場合には、その損失の処理は特別立法で処理していくのだというただいまの農林大臣の御答弁、何か農産物安定勘定の場合ははっきりしておるけれども、食糧勘定の場合はそうでない印象を受けるのです。そういう疑念を持つのでありますが、こういう処理にされたのは、輸入食糧その他の関係で黒字が出る場合があり得るから、一応調整資金を減額し、なお足らぬ場合には云々と、こういうふうに単純になさったのでありますか。その辺は、この条文を読んでみますと、何か割り切れないような印象を受けるのです。それでなくても、コスト主義の米麦価政策というものは、これは大蔵省の年来の主張であります。買い入れ価格にかかったコストはみなこれに積み上げて、そうして消費者に売ればいいのじゃないか、こういう考え方、また生産者米価の場合はいろいろな加算金はやめて、基本米価一本でいけばいいのじゃないか、その一つの現われとして、三十三年度の生産者米価には、歩どまり加算と予約奨励金の二つが落ちておる。また麦価の場合においても、小麦価比というものが落ちておる。そういう点は、一つの従来の大蔵省考え方が、現実に具体的になって現われておるのではないかと思いますし、その結論としては、結局食管特別会計においては、赤字を税金によって埋める必要はないのだ、健全化ということは、独立採算でいけということであるというふうに、従来の大蔵省の主張から見まして、一般はとりがちなのです。そこで、一方の農産物勘定においては、一般会計から損失を補うということをはっきり規定しておきながら、また一方においては、これをあいまいに調整勘定で一つクッションをつけて、そしてさらに一般会計に及んでいく、こういうふうになっておりますと、何か私どもの感じでは、農産物価格安定法も農産物に対する価格支持制の大事な法律でありますが、食糧管理法の場合においても、これは、そう簡単に価格支持的な性格を無視することはできないと思うのです。そういう点において、同じような取扱いをされれば、疑念がなくて済んだのではないかと思うのです。その点、両大臣の御所信はどうでしょう。
  139. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今御指摘の第八条の三、第八条の四でありますが、農産物価格安定制度というものは、今お話しのように、直接農産物の価格を安定する、農産物の価格の支持をする、こういう制度になっておることは、御承知の通りであります。でありますので、この制度の目的からいいまして、「毎年度ノ損益計算上ノ損失ハ積立金ヲ減額シ之ヲ整理スルモノトス」こうはっきりしておるわけであります。ところが米麦等につきましては、食糧管理制度等によって、米は政府が買い入れております。ところが、麦等については、御承知の通り、これは間接統制でありますけれども、事実上はほとんど全部政府が買い上げておる、こういうことでありまして、直接は価格支持ということを目的としておるのではありませんけれども、今お話しのように、農産物として主要食糧等につきましての制度を設けておりますので、間接的といいますか、価格支持の意味も相当強いのであります。価格安定という意味も持っております。しからば、今お話しのように、農産物価格安定法の農産物と同じように取り扱ったらどうか、取り扱わないというの、何か底意があるのではないかというふうなお尋ねかと考えますが、そこで、今米麦等の損が出た場合に、「其ノ損失ノ額ヲ限度トシテ当該資金ヲ減額シ処理スルコトヲ得」——「得」ということになっておるわけであります。その意味は今お話も出ましたが、政府の管理しておる米麦等につきましては、輸入食糧等もありまして、黒字が出る場合があります。それで、相互調整勘定においてその損益を調整したそのあとにおいて、この資金を取りはずす、こういうことになるのであります。そこで、資金を設けた以上は、これを限度として当該資金を減額して処理することがある——大体は処理するわけであります。同時にもう一つ、先ほどもお話し申し上げましたように、非常に損失の多いというような場合もあるし、あるいは財政の都合上等によりまして、単独立法でそのときに法律を出しまして、この赤字を一般会計から繰り入れてこれを処理する、こういうこともあるわけであります。そういう二段の方法によって処理するということでありますから、このことだけできめるという建前ではありませんので、調整資金を減額し処理することを得る場合もありますし、また単独法を提案いたしまして、それによって赤字を処理する、こういう場合もあるわけでありますので、これに限定しない、こういう意味におきまして、幅を持っておるわけであります。なお重ねて申し上げますならば、一つは、農産物価格安定法による作物等におきましては、直接価格を支持するということでありますから、積立金を減額して直接これを整理する、こうはっきりしております。食糧管理の方の、農産物安定勘定以外の米麦、輸入食糧等につきましては、損益がそれぞれ出ますけれども、これは調整勘定に移して整理した上で、赤字が出ました場合には、調整資金を取りくずして処理することができるという一つの方法があり、そのほかにもう一つの方法としては、赤字が相当多いような場合に、単独法を出してこれを処理する。それは、そのときの財政上の都合等によりまして、どちらの方法をとったらいいかということをきめるべきでありますが、原則といたしましては、この調整資金でくずしていく二つの方法がありますから、一つの方法に限定しておりませんので、この法律におきましては、調整資金を取りくずすことを得、こういうふうに規定しているということに御了解願いたいと思います。
  140. 足鹿覺

    足鹿委員 その辺が私ども意見の違うところなんですが、まあ農林大臣がるる誠意を披瀝されますから、私はこれ以上申し上げませんが、むしろ農林大臣の今の御答弁を聞いておりますと、昭和三十年度であったと思いますが、インベントリーを取りくずし、なお決算赤字を補てんをした事例もあります。いわば、これは運転資金という格好はついておりますが、実質的には、もともとインベントリーのあったときのやり方を大体形を変えてやっておられる、そう受け取ってとれないこともないと思うのです。ですから、私どもの見解をもってすれば、処理することを得というよりも、むしろ処理するものとして、その損失の額が当該資金の額を超過するときには、その超過額を、予算の定むるところによって、一般会計から当該資金に繰り入れるのだという趣旨のことを明文化しておけば、疑義もないのではないかと思いました。私、今でもそう思っておりますが、この趣旨に何ら反するような方針でもないようでありますから、これ以上申し上げることをやめます。  最後に、大蔵大臣にお尋ねをしておきますが、ことしの情勢から見た場合に、大蔵大臣の経済の見通し論を聞いておりましても、パリティはだんだんと上昇していくという見通しを持っておられる。そういたしますと、大体において農業パリティの場合も、下るというよりも、むしろ上っていく要素の方が強いと思います。なお現在政府が考えられる、昨年通りの配給を確保されようといたしますと、予算に見込まれておる集荷数量では不足するのではないか、私どもは、大体長い間の経験からそういうふうに思っております。そういったところから考えてみまして、どうせことしの場合は、好むわけではありませんが、結果としては、昨日来論議をしたような結果に落ちつかざるを得ないのではないかと思うのです、しかし、それは想定でありますから、あえてこれ以上申し上げませんが、そこではっきり念を押しておきたいことは、もし不足を生ずるような場合があっても、消費者米価の値段を上げたり、あるいは著しく生産者価格を切り下げたり、あるいは配給日数を切り下げたりというような、一連の好ましからざる施策はおとりにならぬであろうと私は思います。昨日も農林大臣は、はっきりそういうことはやらぬということを申しておられましたが、この際大蔵大臣からも、配給日数の問題にしてみても、消費者価格にしてみても、生産者米価にしてみましても、消費者米価を値上げすることによって一般繰入金を少くしようと試みたり、その他それに似たような措置はおとりにならぬということを、はっきり言明ができるかどうか。それを伺いまして、満足のいく御答弁であれば、両大臣に対する質疑は、私は打ち切りたいと思います。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、別な見地から、食管会計の赤字が出ないように、いろいろと努力をしていただかなくてはならぬということは、大蔵当局としては当然考えておるのでありまするが、しかし、調整資金の金額によって米価等にいろいろな影響を与えるということは、私は考えておりません。
  142. 横山利秋

    ○横山委員長代理 関連質問の要求があります。石村英雄君。
  143. 石村英雄

    石村委員 ごく簡単にお尋ねします。この前も聞いたのですが、どうもよく要領を得ないので、もう一度お尋ねしますが、第六条ノ五の最初のところには、一般会計よりの受入金、これが歳入になると書いてある。そうして前項ノ一般会計ヨリノ受入金ハ予算ノ定ムル所ニ依り調整資金ニ充ツル為一般会計ヨリ之ヲ繰入ルルモノトス」こうあるわけです。この「前項ノ」云々は、調整勘定の歳入になった一般会計よりの受入金というものは、これは調整資金になるものであるという説明なんですね。従ってこれは、どうも官庁の予算と帳簿との関係が、われわれしろうとにははっきりわからないのですが、調整勘定に一般会計から十億なら十億、百億なら百億という受入金をしたというときには、貸借対照表の調整資金という勘定科目は百億同時にふえる、こういうことになると理解していいのですか。
  144. 小熊孝次

    ○小熊政府委員 お答え申し上げます。ただいま先生のおっしゃった通りでございます。
  145. 横山利秋

    ○横山委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は追って御通知をいたします。     午後四時三十三分散会      ————◇—————