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1958-03-11 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十一日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       足立 篤郎君    井出一太郎君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       川野 芳滿君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       夏堀源三郎君    平野 三郎君       古川 丈吉君    前田房之助君       山本 勝市君    有馬 輝武君       井上 良二君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       横錢 重吉君    横路 節雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         食糧庁長官   小倉 武一君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君  委員外出席者         外務参事官   白幡 友敬君         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         通商産業事務官         (通商局次長) 伊藤 繁樹君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月十一日  委員足立篤郎君辞任につき、その補欠として安  藤覺君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月六日  夜勤手当等に対する所得税特例に関する法律  案(横山利秋君外十三名提出衆法第四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案平岡  忠次郎君外十三名提出衆法第五号) 同月七日  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七号)(参議院送付) 同月六日  税理士法の一部改正に関する請願佐藤榮作君  紹介)(第一三九四号)  公認会計士法等の一部改正に関する請願佐藤  榮作紹介)(第一三五号)  旧国鉄共済組合年金改善に関する請願外四十三  件(保科善四郎紹介)(第一三九六号)  国家公務員等退職手当暫定措置法施行令の一部  改正に関する請願今井耕紹介)(第一三九  七号) 同月十日  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部改正に関する請願河野金昇紹介)(第一  五二三号)  同(阿左美廣治紹介)(第一六一七号)  同(小川國男紹介)(第一六一八号)  運動具に対する物品税撤廃に関する請願古川  丈吉紹介)(第一六一九号)  旧陸軍共済組合員中の女子組合員年金支給に  関する請願横錢重吉紹介)(第一六二○  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酒税法の一部を改正する法律案平岡忠次郎君  外十二名提出、第二十六回国会衆法第一二号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案平岡  忠次郎君外十三名提出、第二十六回国会衆法第  四六号)  夜勤手当等に対する所得税特例に関する法律  案(横山利秋君外十二名提出衆法第四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案平岡  忠次郎君外十三名提出衆法第五号)  日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の  臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二一号)(予)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金の設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一六号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第三一号)      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案議題として質疑を続行いたします。石村英雄君。
  3. 石村英雄

    石村委員 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案関係しまして、外務大臣にお尋ねいたします。この法律は、申し上げるまでもなくインドネシアのいわゆる焦げつき債権棒引き処理法律であります。ところでインドネシアにつきましては、一方では二億二千三百万ドルの賠償があるわけですが、その賠償とこの債権棒引きとが関連があるのではないか。国民の間では、この債権棒引き賠償の変形したものではないかという疑問を持っておるわけでございます。ところで、従来の予算委員会、あるいは本委員会での政府の御答弁では、債権棒引きは、賠償ではございませんという御答弁でございますが、なるほど賠償は、平和条約において規定し、債権棒引きは、別個議定書で定められておりますから、形式的には、なるほど別個だと思います。しかし、単に形式だけで別個だ、こういう御説明では、ただいま申し上げましたような国民の疑問というものは氷解いたしません。従って、外務大臣から、まず賠償交渉と及びこの債権棒引きとの交渉の連関があったか、ないものかどうか、この点を明らかにしてほしいのであります。たとえば、どなたが下交渉をなさったのか知りませんが、賠償の下話がついた、そのついた最後の日に、一方的に日本の方から、これでおめでとうございます、そこで、日本としてこの債権をはなむけとして棒引きいたしますというような、最後に突如として日本政府が一方的に出したものであるかどうか、あるいは、それとも賠償交渉過程において、賠償金額幾らにするかという交渉をする過程において、この焦げつき債権処理の問題が同時に賠償交渉の一部として議題に上っておったものかどうかという点を明らかにしてほしいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、インドネシア賠償の問題につきましては、長年にわたっての交渉でございます。初めにインドネシア側は、御承知と思いまするが、百七十億ドルというような膨大な数字を出してきて参ったわけであります。その後数年の経過、また数度の折衝等によりまして、だんだん金額が減って参りましたことは御承知通りであります。最終的には、御承知のようにフィリピン賠償が片づきまして、インドネシア側も、非常に進んでこの交渉妥結に導きたいという意図になって参りまして、少くもフィリピンと同じような五億五千万ドルというような要求も出しておったわけであります。さらに日本としては、そういう金額は払えないということで折衝を続けておりまして、四億ドルになりまして、それもさらに折衝をいたしておりました結果として、二億二千三百八万ドルということに、最終的に決定をいたしたわけであります。  賠償決定をいたしますと、平和条約締結をいたすことになるわけであります。この際インドネシア側としては、平和条約締結その他から新しい日本に対する事態が発生するのであって、従って従来の日本インドネシアとのいろいろな関係について、ことに焦げつき債権等の処理の問題についても、平和条約ができ賠償も片づいたらば、こういう問題についてのいろいろな解決方法をみたいということは、かねてからインドネシア側も申しておったわけであります。われわれも、賠償決定し、平和条約締結されるようになって、そうしてインドネシアが新しく日本友好関係に立つという場合には、これらの問題を解決していくのは、両国の新しい友好関係に立ちましても、またインドネシアが反植民地の旗を掲げて独立をいたしました今日、日本としてそれを援助するという立場からいいましても必要だろう、そうことの結果として、一億七千七百万ドルの焦げつき債権解決することにいたしたわけでありまして、賠償とこの解決とは全然別個の問題でございます。
  5. 石村英雄

    石村委員 ただいまの御説明では、やはり疑問は氷解いたしません。なるほど当初インドネシア要求額は大きかったと思う。大きかったと思うのですが、そこで最後に二億二千三百八万ドル、それも十一カ年賦で払うという交渉妥結した、その背後において、インドネシアに対する日本焦げつき債権、向うから言えば債務、これは生きておるものとしてこの二億二千三百八万ドルというものは決定されたのですか。インドネシア側としては、二億二千三百八万ドルを日本に払え、同時に債務というものはやはり債務として払うべきものだ、こう考えておったのか。日本政府とすれば、二億二千三百八万ドルを払うが、同時に債権は取り立てるという前提のもとにこの二億二千三百八万ドルというものが決定されたのかどうかということなんです。新しい平和条約妥結によって、新しい国交関係が発生するという一つのおめでたいところで、インドネシアに対して債権棒引きするという考えもわからないではありません。しかし棒引きする債権が、日本経済力から考えるとあまりに膨大なのです。これが千万ドルや二千万ドルの債権棒引きするというのなら、それはあるいはそうかもしれない、こう国民は考える。しかし、賠償自体が二億二千三百八万ドルで、しかもそれが十一カ年賦で払うという賠償なんです。ところが棒引き債権は、御承知のように約一億七千七百万ドルという膨大なものでございます。これを棒引きするということになると、やはり二億二千三百八万ドルという決定した背後には、約一億七千七百万ドルの債権棒引きするということが、暗黙であるか何であるか知りませんが、少くとも二億二千三百八万ドルの決定一つ要因になっておったのではないかという疑問は、依然として氷解しないわけでございます。ただいまの外務大臣の、結論として別でございます、こうおっしゃったのではわかりません。もっとはっきりした交渉過程を御説明願いたいと思います。インドネシア側がこの焦げつき債権に対してどういう態度をとったのか、日本政府がまたその賠償額決定するに当って、この焦げつき債権に対していかなる態度をとったか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 焦げつき債権賠償の問題は、ただいま申し上げたように、全然別個の問題で解決をいたしたわけであります。焦げつき債権の問題につきましては、長い間やはりこれは交渉されていた経過がございます。従って、それに対して、過去においてこの問題についてやはり交渉があったことは事実でございますが、しかしながらわれわれとしては、日本インドネシアとの将来の関係を考えまして、この際焦げつき債権における長い間の交渉を最終的に打ち切りまして、そうしてこれを棒引きすることが将来のためにいいということで、これはこれで解決いたしたわけでございます。焦げつき債権につきます長い間の交渉経過については、政府委員より説明させます。
  7. 白幡友敬

    白幡説明員 賠償焦げつき債権に関しますインドネシアとの交渉過程を、概略御説明申し上げます。  ただいま外務大臣からお話しございましたように、当初非常に賠償に対する数字が、日本先方との間に懸隔があったわけでありますが、だんだん狭まって参りまして、昨年になりまして、かなり先方要求というのは下って参りました。先方は、大体四億ドルくらいのものを賠償として要求したいという希望でございました。しかし日本側といたしましては、内外のいろいろな要因から考えまして、そんなには賠償としては払えない、どうしても大体二億前後の数字でもっておさめなくちゃならないということでございました。そういうことで訓令を受けまして、交渉しておったわけであります。ところが先方にいたしますと、一つには、御承知のようにインドネシア国内経済再建計画というものがございまして、二億ドルだけではどうしても満足ができないのだ、しかし日本が、その大体二億ドル前後の数字しか賠償として提示できないのだという理由も、先方は昨年の中ごろになりましてほぼ了解して参りました。ですから、賠償としては二億二、三千万ドルしかもらえないけれども、しかし何とかしてインドネシアとしては、自分の国の経済再建計画というものに少し日本の方から助けてもらうと申しますか、協力してもらう、そういう面を何とか考えてもらいたいということでございました。そのためにわれわれといたしましては、われわれが日本側でもって二億前後という数字を出しましても、いろいろな要因がございますので、インドネシア側の現実の経済情勢から見まして、決してこれはインドネシア経済にとっては、それほど大きな数字じゃないので、何とかこれをできるだけの方法で助けてやらなくてはならないという問題があったわけであります。そこで、いろいろな方法が考えられまして、一つには、たとえば何か政府借款を考えるというようなこともございました。それからまた、あるいは日本から何か経済援助をしてやるのだという考え方もございました。それからまた一つには、この棒引きという問題もあったわけでございます。そういういろいろな問題をそれぞれの角度から研究して参ったのでございまするが、ほかのたとえば借款であるとか、あるいは政府援助であるとかいう問題、それからこの焦げつき債権をどういうふうにして返させるかという問題につきましては、具体的な条件をお互いに研究し合いまして、先方でも非常に熱心に、インドネシア国内でもいろいろこれは研究の対象になっておりまして、議論になっておったというふうにわれわれは聞いております。結局最終段階に至りまして、賠償はあくまでも大体二億前後の数字にしなくてはならない。それ以外に、それではどうしてくれるか、一方原則的な問題としまして、われわれがインドネシア賠償交渉解決しようという意図は、もちろんこれは、戦争中に与えました戦争損害に対する補償という意味もございますが、同時にインドネシア日本との関係の一番重要な障害になっておりましたのは、この賠償問題の未解決ということなんです。これを解決することによって、日本にとって非常に経済的に意味の深いインドネシアとの間に、貿易上あるいは経済協力という面からいって、何か日本で相当積極的にインドネシアとの間に経済関係を結ばなくてはならないという思想がございました。そこで、そういう考え方も生かすという点から見まして、結局インドネシア希望というのは生かして、かつそういうインドネシア日本との間の経済関係を緊密化するという観点から、この棒引きで最終的に話を閉じるということが一番いい方法ではないかということになったのであります。しかしわれわれといたしましては、これは賠償というものと、先ほど申し上げましたようにそれ以外の方法、つまり経済協力であるとか、経済援助の問題であるとか、この焦げつき債権棒引きの問題というものとは、一応別個考え方に立っております。従いまして、われわれといたしましては、これはあくまでも別なものであると考えております。
  8. 石村英雄

    石村委員 ただいまの御答弁だと、なるほど形式別個にしたが、実質的には賠償密接不可分関係にあるということになると思います。外務大臣もそのように理解されるのではないかと思いますが、いかがですか。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、賠償はあくまでも賠償でありまして、賠償としての交渉をいたして、申し上げたような経過でもって、三億二千三百八万ドルとなったわけであります。今後インドネシアに対して、どうしてわれわれが経済協力をしていくかという別個立場に立ちまして、この焦げつき債権の問題を解決したのでありまして、賠償とは全然別個のものであります。
  10. 石村英雄

    石村委員 別個だ、別個だといかに強弁されても、ただいまの賠償交渉、あるいは債権交渉過程から見ると、密接不可分のものだと言わざるを得ません。いかに外務大臣が、藤山さんが結論として強弁されても、国民はそれを真正直に受け取るわけには参りません。つまりただいまのあなたの方の御説明では、平和条約に、戦争中に日本が与えた損害及び苦痛を償うために賠償インドネシア共和国に払わなければならないが、しかし、やはり存立可能な経済日本側として維持するためには、日本資源が十分な賠償をする余裕がないのだということは平和条約に書いてあるわけであります。従って余裕がないから、二億二千三百八万ドルでかんべんしていただきたい、かんべんしてやろう、しかし同時に、日本インドネシアから取り立てるべき債権一億七千七百万ドルは、日本インドネシアのために放棄して差し上げる、一億七千七百万ドルという膨大な債権を放棄する、ここが問題なのです。これが千万ドルや二千万ドルなら、なるほどあなたがおっしゃるように、全然別個のものと言い得るかもしれない。しかし、日本としては二億二千三百八万ドルしか払えないのだ、こう言いながら、一方で一億七千七百万ドルという膨大な債権棒引きにする、それはインドネシア側としては、今一億七千七百万ドルを払う余裕はないのかもしれません。ないからこれを負けてやるという考え方も生まれるかもしれませんが、日本としては、同時に日本資源からいうと、二億二千三百八万ドルを、しかも一時金でなしに、十一年の年賦で払う余裕しかないのだ、こう言いながら膨大な一億七千七百万ドルを棒引きにするという決定をなさったということは、実はこの債権棒引き賠償額の二億二千三百八万ドルにプラスされるものだ、こう理解せざるを得ないわけであります。常識人として藤山さん、そう理解されないのですか、やはりこれは別個だ。そうすると、もし仮定するならば、この債権が千万ドル、二千万ドルだというなら、やはり賠償額は二億二千三百八万ドルでとどまったはずだということになるわけなのですか。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この賠償は、ただいま申し上げましたようにあくまでも賠償でありまして、これは、二億二千三百八万ドルという数字でもって最終的に話し合いがついたわけであります。私どもとしましては、インドネシア独立をいたしまして、その経済的な裏づけをしていく、そうしてりっぱな独立国家となって、将来日本と手をつないでいくという立場から考えまして、全然賠償とは別個に、こういう問題をこの際解決するのが適当である、長い間の懸案でありますから、解決するのが適当であるというので、棒引きの処置をとったのでありますから、賠償とは全然別であります。
  12. 石村英雄

    石村委員 この問題の追及は、他の委員がさらにされると思います。私一人が藤山さんを独占するわけにもいかないと思いますから、次の問題に移って、藤山外務大臣にお尋ねします。  そういたしますと、賠償額は二億二千三百八万ドルにとどまるべきものであるということになると、仮定ではありますが、さっき申しましたように、債権がこの一億七千七百万ドルでなしに、五千万ドル、あるいは三千万ドル程度であったならば、その棒引き賠償額は変更されないものだ、こう予想されるわけだと思います。そうなんですか。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償決定しましたときに、二億二千三百八万ドルと決定をいたしたわけであります。かりにその他の棒引き債権という種類のものがどういう金額であったか、それが変っていた場合にはどうだという御質問だと思うのでありますが、私はこの点については、賠償は二億二千三百八万ドル、こういうことで決定した、こう思っております。
  14. 石村英雄

    石村委員 そういたしますと、日本インドネシアに対して一億七千七百万ドルという膨大な焦げつき債権を作った、もしこれを作らなければ、やはり賠償は同じように二億二千三百八万ドルだとすると、焦げつき債権を一億七千七百万ドル作った日本政府責任というものは、非常に大きなものだということになると思うのです。これが少い場合には賠償額がふえるんだというのなら、あるいはどちらからいったって同じことだという結論になるかもしれませんが、賠償額は、日本の状態から考えて、焦げつき債権が大きかろうが小さかろうが、やはり二億二千三百八万ドルにとどまるものであったならば、焦げつき債権が少なかった方が、日本としては非常によかったはずであると思います。これを一億七千七百万ドルまでに膨大化させた日本政府責任というものは、実に大きなものだと言わざるを得ません。一萬田さんはいつかの委員会で、遺憾でございます、こういう御答弁をなさいましたが、一億七千七百万ドルも棒引きにしなければならぬような事態を生んでおいて、ただ遺憾でございますくらいでは、私は済まぬ問題だと思うのです。国民一人当り七百円以上の負担をかける焦げつき債権を作り上げておいて、ただ大蔵大臣は遺憾でございますといえば、その責任が済むものではないと思う。この間の委員会での当局の御説明によると、焦げつき債権は、二十七年に占領軍から引き継いだときに六千万ドル、二十八年になってそれが七千二百万ドルに拡大され、さらに二十九年では一億六千二百万ドル、三十年一億七千七百万ドル、三十一年では約百万ドル減りまして一億六千八百万ドル、三十二年はやはり減りまして一億五千七百万ドル、そうして三十二年の最後の秋、清算協定をやめたときの最終的なものは幾らかというと、一億七千六百九十万ドルという膨大なものになっておるわけでございます。この間の責任については、通産省にも大いにあると思います。大蔵省にもあると思いますが、外務省占領軍から引き継いだときに、すでに六千万ドルという焦げつき債権が発生しておる。インドネシアとの貿易協定では、毎年六月末で決済して、残高の二千万ドル以上は、ニカ年以内に半年ごとの分割払い、こういうことになっておるのです。それから二千万ドルのうちの千五百万ドルはスイッチ・トレードで決済する、それをこえる五百万ドルは、年次決済後四十五日以内に米ドルで決済する、こういう協定がちゃんと結ばれておるわけでございます。従って、二十七年に占領軍がでたらめなことをした、あるいはそうかもしれませんが、それを引き継いだ日本政府は、直ちに六千万ドルの決済を、この協定によってインドネシア側交渉をしなければならないと思います。それがどんな交渉をしたのかしりませんが、さっき申し上げましたように、年次的にどんどんふえて、最後には一億七千六百九十万ドル、こういう膨大なものになっているわけです。この間外務省は、大蔵省というか、通産省というか、どこからか話があって、当然この協定に基く決済をしてもらうための交渉インドネシア側となさったと思います。この交渉がどのように行われたか、この経過を御説明願いたいと思います。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 五四年に引き継ぎましたときには六千万ドルあったわけでありますが、それを二年間にわたりまして、五回に分けて支払うように交渉をいたしたのであります。インドネシア側としては、これを拒絶しているわけであります。
  16. 石村英雄

    石村委員 拒絶したのですか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 協定は一応成立したのでありますけれども、それをその後拒絶したのであります。なおそのときの経過につきましては、政府委員から説明いたします。
  18. 佐藤健輔

    佐藤説明員 御説明申し上げます。インドネシアの最初の焦げつきが六千四百万ドルありましたことは、御指摘の通りでございまして、これに関する協定が五二年にインドネシアとできまして、その中の四百万ドルは新しい債権の方につぎ込む。従いまして残余の六千万ドルは、五四年の七月から二カ年にわたり五回年賦で支払う、こういう協定ができたのでございます。そこで五四年に至りまして、本来ならば支払うべきものでございましたが、先方は、外貨が非常に枯渇いたしましたので、支払えなくなった、こういう関係になっております。
  19. 石村英雄

    石村委員 そうすると、向うが払えないということになったということで、その交渉はそのままになっている。それからずっと増加する一方で、それを外務省はほったらかしにしておった。大蔵省通産省から、この処理についてさらに引き続き交渉してくれというような依頼はなかったわけなんですか。
  20. 佐藤健輔

    佐藤説明員 その後五二年以後には、御承知の新しい協定ができまして、先ほど御指摘のように、二千万ドルを限度として、三種の支払い方法がございましたが、この三種の支払い方法によりまして、インドネシア政府は五三年の末までは、新しい協定通り支払っていたのでございます。ところが五四年の六月の末ないし七月初めに支払うべき問題、これは五四年の七月になりますと、先ほど申し上げました旧債権の支払いがくるわけですが、この両者が五四年の七月に支払えなくなった、こういう状況に至りましたので、それ以後は日本側で処置を講じまして、向うの輸入に応じた輸出をいたしまして、できるだけ債権が向うに累積されることを避ける処置をやったわけでございます。なお五四年の半ばに、合計いたしますと相当の債権が向うにできましたが、その債権につきましても、毎回向うにつけを出しまして、交渉はいたしておったのでございます。
  21. 石村英雄

    石村委員 そうすると、請求書だけは出したが、金はもらえなかったというのが外務省の御答弁だと思います。
  22. 佐藤健輔

    佐藤説明員 遺憾ながらその通りでございます。
  23. 石村英雄

    石村委員 まことに遺憾な話ですが、外務省は、なるほど請求書を出したが金がもらえぬ、どうにもなりませんということだと思うのですが、これは、通産省大蔵省は、こういうように焦げつき債権が累積していくのを、手のつけようがございませんでほうっておいたのかという問題になってくるわけなんですが、外務大臣に対する他の方の御質問があるようですから、その点の通産省あるいは大蔵省に対する追及というか、お尋ねは、私はあとにいたしますから、ほかの方に……。
  24. 足鹿覺

  25. 平岡忠次郎

    平岡委員 外為資金特別会計の一部改正案に関連しまして、外務大臣にお尋ねいたします。先ほど石村君から質問のあった事項でございますが、別な角度からお伺いしたいと思うのです。  わが国経済貿易に依存する度合いの高いことは、論を待たないところであります。貿易の成否は、わが国経済の興廃を決するものでございます。政府によって示されている統計の羅列は、昭和三十一年度、同じく三十二年度のわが日本輸出貿易の仲張を誇示しております。しかしながらこれが実態は、名目上の統計数字とは雲泥の相違であり、焦げつき債権政府保有外貨のうちで三十数%にも達する現状は日本経済的破局をはらむものと断ぜざるを得ないのであります。すなわち昭和三十三年一月末の外貨保有は約九億六千万ドルでありますのに、焦げつき債権が三億ドルをこしておるのであります。これを指摘しないわけには参りません。焦げつきは、邦貨で換算いたしまして一千億円を上回っておるのであります。しかもこの傾向は、決して減少していかないということころに問題がございます。御承知のように、わが国は、貿易制度において為替集中政策をとっておりますので特定メーカーあるいはシッパーによるところの外貨建て輸出は、その等価である円をもちまして、船積みと同時に銀行を通じて政府からの支払いを受けまして、いささかもリスクを負いません。かわって外貨債権政府に帰属しますが、その不渡りの危険も同時に政府に移る仕組みになっております。この支払い円貨の調達は、国民の税金の集積である一般会計からの資金をもってまかなわれているのでありますから、一度焦げつきができれば、これは輸出者にまでは遡及求償せられるものではなく、しょせん国民がしりぬぐいをさせられるのであります。制度上は、外国為替資金特別会計というクッションを介在させておりまするけれども、一般会計の金でしりぬぐいをさせられるのには相違ございません。政府は、その保有する外貨の瑕瑾なきを前提といたしまして、他方においては、その一部を日銀に売りまして、日銀から円札を発行させることもできるのであります。そういたしますると、政府保有の外貨債権の非常に多くの部分が焦げつきであって、無価値にひとしいものとしたならば、被害者は一般国民となることは自明の理であります。すなわち国民は、仮空外貨の基礎の上に過当に散布された円札のもたらす貨幣価値の下落によるインフレの加害を受けるか、あるいは外為特別会計資金の取りくずしにあって、血税をもって跡始末をさせられるか、このいずれかでございます。このインドネシア債権棒引きの背景がかようなものである点に、まず御留意を願いたい。  従いまして、このインドネシアに対するところの債権の取り立ては、政府当局は真剣に取り組んで、これを回収しなければならぬ義務があるのです。そうでない限りは、一部の輸出業者、あるいはメーカーに対して国民がその不始末をしりぬぐいをする、ほかの表現で言うならば、補助金を特定のメーカーあるいはシッパ一にくれる結果と同じことになるのです。ですから、あなた方は、この取り立てに対しましては細心の注意を払い、断固として相手方と折衝しなければならぬはずのものであります。ところが、石村君から指摘されるように、あなたの答弁は、国民を納得させるには至っておらないのです。私どもは、むしろ賠償であると言っていただいた方が納得するのです。ところが、賠償ではない、これは債権棒引きだ、こういうことです。ただ一つの理由が、新しく開かるべきところのインドネシアとの修交のための引出物だ、こういうことでは国民は納得しません。  私は、少しく外国の例をとりたいのであります。現在、イギリスと西独の間に、いわゆるNATOの軍事同盟の条約上の義務でございましょうか、イギリスからドイツに派遣されておりまするところの防衛隊に対するドイツ側の負担金の問題で、大きな問題を起しております。ドイツ側は、このイギリス軍の派遣に対して、もはや駐屯費を払う必要はないということで突っぱっております。そこで、しかしイギリスの外貨事情とか、そういう点が非常に悪いのだから、別な意味においては、ドイツはこれに対しまして協力するということで、ドイツがイギリスから購入すべき武器の前渡金として、一億二千万ドルか何がしかをイギリスに払うからということでかんばっております。ところが、これはドイツの思いつきではないのです。私どもは、昨年大蔵委員会から欧米に派遣されまして、その折ドイツの予算書を見ましたところ、やはり武器購入のための引当金として、予算上にもとっくにそれは組んである。ですから、今回の対英交渉が決して思いつきでないということ、非常に慎重にそういうことも予見して処置したことであることがはっきりわかるのです。この一つの事例に徴しましては、日本の外交はなまぬるいと思うのです。  なお、もう一つの例を、ついでですから申し上げますが、おそらく一九五三年でしょう、当時復興のおくれておったドイツに対しまして、おそらくこれはマーシャル・プランの一環をなすものと思うのですが、イギリスがおそらくヨーロッパを差配する立場にあったであろうところからのことだろうと思うのですが、ドイツに対しまして、十億ドル十カ年無償で金を貸しました。ところが、三年もたたずに、逆にイギリスの外貨が不足に陥り、ドイツは国際収支の上におきまして非常な黒字を持つに至りました。そこで、貸していた十億ドルを十カ年たたずに戻してくれという要求がイギリス側から行われ、ドイツも、黒字を相当持っておるから、これを返そうということになりました。そのときに、連邦銀行総裁のウイルヘルム・フォッケがこの折衝に当りまして、どういうことを交渉したかといいますと、十億ドル十カ年無償で借りるという約束であったにもかかわらず、今直ちにこれを返してやってもよろしい、ただしまだ三カ年きり時間が経過してないので、七カ年先に返すということになる、そうすると、受け取ったイギリスがその七カ年間これを運用しますならば、相当の利子所得を得る、ですから、ドイツは今返してあげるけれども、この利子の分を引き去って返すということで突っぱって、さすがにイギリスは怒りまして、この点はそのときは落着を見ませんでした。そこで、その交渉のときは、おととしですが、おととし五億ドルだけ何とはつかず先払いして、あと五億ドルは、この結着を見るまで払わない、こういうことで現在まで経過しております。ですから、一国の経済外交交渉に当って、各国の外務大臣とか、あるいはその衝にある人たちは、真剣に取り組んでおるのです。そのときに、何も日本におきまして——大して日本は金持ちの国ではありません。なけなしの外貨を、政府の不手ぎわのために焦げつきにさして、それをあっさり棒引きにするというようなことは、とうてい常識では考えられぬのです。これは、あなたの方の大野副総裁が、いつぞや胸をたたいて非合理的にものを解決しているようですが、こういうことは一つも合理性のないことであって、外務大臣としましては、ほんとうに国民立場を考え、血税がこうした無意味に浪費されるというような事態に対しましては、これは真剣に取り組んでもらわなければならぬと思うのです。こうした意味におきまして、石村君に対するあなたの回答に私は不満でございます。ですから、賠償なら賠償として率直にそうおっしゃっていただきたい。しかして、賠償ということをうたい得ない政府の苦境があるならば、秘密会議でも何でもいいですよ、そういうことを漏らしてほしいのです。私どもはビルマから——これはレビュー・クローズが条約に挿入されておりますので、ビルマあたりからもゆれ返しがあってはいかぬというような配慮が、あるいはあったかもしらぬと思うのです。しかしその反面において、これは棒引き債権だという新しい解決方法をいたしますと、ビルマに対する一つの防衛にはなるかもしらぬけれども、逆に韓国から、これを棒引きにしろと言ってくる一つの可能性もあるわけなのです。ですから、いろいろ外務当局としては考慮なすったことであろうと思うけれども、少くともあなたの公式的な答弁では、私どもを納得さしておりません。国民も、この点には納得するわけには参らぬと思うのです。重ねて恐縮ですが、もう一回あなたの棒引きに関しての御説明をお願いしたいのです。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたように、こういう問題は、国民の大きな負担の上に立つ問題であるので、交渉に当っては真剣にやらなければならぬと、いろいろ例を引きましてのお話ですが、私もまことにその通りだと思います。従いまして、われわれ外務当局といたしましても、今後この種の問題について——今日までもそうでありますけれども、今後この種の問題の取扱いについて、むろん慎重に十分注意して、そうして国民一般の税金から起っております問題を解決するという心がまえでなければならぬことは、申すまでもないことであります。従いまして、そういう意味において努力をいたして参るわけでありまして、またインドネシアのこの問題につきましても、私どもといたしましては、やはりそういう点を十分に考慮に入れ、われわれの態度も、その上に立って交渉をいたしたわけであります。私といたしましては、インドネシアの将来が、政治的独立を達成しました後の経済的なバックによって経済建設ができ、十分りっぱな独立政権が完成するということが望ましいことであり、またそれが日本の外交政策の上においても必要だという固い観点に立ちまして、そうしてインドネシアの今日までのいろいろな経済上の事情も考え、将来も見通して、そういう意味において私としては決定をいたしたわけなのでありまして、賠償とこの問題とは別個でありますけれども、この問題の決定に当りましては、ただいまお述べになりましたような御趣旨を十分に心に入れながら、この取りきめをいたした次第であります。
  27. 平岡忠次郎

    平岡委員 外務大臣のお答えですと、そういうことも十分念頭に入れた上で交渉をし、解決をしたという御回答でございます。私どもは、あなたが念頭にそういうことを置いたということ、しかも解決がこのようになったということを聞きまして、寒心にたえないのです。藤山外相の経済外交は、あなたが実業界の出身者でありまするだけに、官僚外交とは違った新しい方途を開くものと、私どもは国民とともに期待いたしておりました。ところが半歳の実績に徴しますと、あなたの外交は、これは山岸首相に追随してのものでありましょうが、とほうもない浪費外交にあらずやとの疑念を抱かざるを得ないのです。たとえて言いますならば、今まで論議されましたインドネシア債権棒引きにいたしましても、なおまたアルゼンチン債権のたな上げ措置にいたしましても、はたまた対韓国、対台湾政府、対エジプトのオープン勘定債権の非流動化に対する無策無放任、これに加えまして、カンボジア、ラオス等に対する不相応の供与、なおまた経済協力の看板のもとに行われんとするところの後進国ヘの円借款の供与の問題、これは、文字だけ見ますと非常に美しいのです。日本がアジア諸国に対して、経済問題においてリーダーシップをとるような印象を与えておりますが、しかしこの点も、相手方が外貨不足の国であり、経済的に弱体な国柄であるだけに疑問が多いのです。それに加えまして、パラグァイ国ヘの船舶十隻の貸与の問題、私どもは何をやっているかさっぱり見当がつかぬのです。これらは、対外的な日本国債権処理であるとか借款供与と言わんよりは、岸内閣の、財閥とかあるいは有力な商社に対する変装した一つの助成策であるとすら、われわれは考えざるを得ないのです。今まで保守内閣の、財界との経済政策上における結託関係を見ますと、最初のうちは、例の造船利子補給の問題で天下を驚倒せしめたところの補助金政策でやってきたのです。次には、この点が非常に目につきやすいので、補助金政策というものをやめまして、租税特別措置法で、年々歳々一千億円近いものが少数の特定階層に対しまして減税されている、こういう形をとってきている。次の段階には、オープン勘定で商社、メーカーの危険負担を国民に転嫁してしまう。これからまさになさんとするものは、賠償輸出と円借款供与で、あなた方の立党の基盤であるところの財界とか独占資本に対しまして、こういう形で一つの助成策を講じていく。私どもは、ひがみかもしれぬが、こういうように思わざるを得ない。だから、インドネシア債権棒引きというものを賠償にひっかけて解決したということ、この心がけが、将来賠償輸出と円借款供与の点において、再び国民の疑惑を招くような方途にいかないとはだれも保障できない。私どもは、このことをまことに心から遺憾に存ずるのであります。助成金とか補助金とかいう目につくことから、外為会計というようなわけのわからぬものをクッションにして、いろいろなことがやられてきておる。私どもはこうした点に対しまして、やはり保守党の閣僚諸君はほんとうに反省してもらわなければ、日本経済は成り立っていかぬと思う。こういう点で、日本はまさに危機にあると思う。外務大臣、この点に対しまして、あなたの所信を述べていただきたい。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のございましたように、何か私が過去におきまして経済界の出身であるだけに、財界とつながって経済外交の問題をやっておるかのような印象を与えておるように考えられるのでありますが、私といたしましては、そういう観点に立ちまして外交の仕事をやってはおらない、ことに経済に関します外交を遂行していることは絶対にないのでありまして、私としましては、就任のときに私の気持を申したように、要するに今日の外交というものは、経済の面とのつながりが非常に多い。しかしまた同時に、政治的な面におけるつながりも決してゆるがせにできないのでありまして、今日の世界の情勢を見てみれば、政治的な大きな動きが流れておるわけで、その間におきまして、日本日本立場をはっきりしていきますためには、東南アジアその他アジア・アフリカ・グループとも手を握って参らなければならぬのでありまして、そういう意味からいいますと、アジアの経済建設に同感の心持を持って、これに乏しいながらできるだけ協力していくということは、日本外交の一つの面でなければならぬと思うのであります。むろんお話しのように、日本の財政金融事情はいいということを申し上げかねるわけでありまして、その点、私も十分心得ておりますので、何でもただ金を貸せばいいのだ、何でもこういう問題について金で解決するのだということを私は考えておるわけではありませんけれども、しかしながら、やはりある場合には、向うの非常に困っております外貨事情なり、あるいは経済建設の過程なり、そういうものに対して同感もし、援助の手を伸べられる限りにおきましては、日本としても若干の無理はありましょうとも貸してやることが、これらの人との共感の上に立って今後仕事をしていく上において、非常に有効じゃないかという観点に立って、こういう問題を処理しておるのでありまして、決してお話しのような、賠償その他に対して有利になるようなことだけに持っていっておるわけではないことを、一つ御了解願いたいと思います。
  29. 石野久男

    ○石野委員 関連。大臣は、非常に時間を急がれておるようでございますから、あと大蔵大臣とか通産大臣にお聞きするために聞いておきたいのですが、今度の債権棒引きをいたしましたことについて、大臣は折衝過程において、この債権は取り立てができないという判定に立ってこの棒引きをなさったのかどうか、この点をはっきり聞かせて下さい。  それからなお、インドネシア側では、この債権に対しては、支払いをしないということをはっきりあなたに明言したために、あなたは債権棒引きをするということを決意されたのかどうか、この二点について、明確に一つ答えていただきたい。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシア側とこの債権交渉に当りましては、御承知のようにいろいろな面で考えて参らなければならぬのでありまして、これを全然取り立て不能のものと考えるかどうかという御質問であります。これは、むろんいろいろな方途によって、全然取り立てができないというものとも申し上げかねると思いますけれども、しかしながら、同時に、今までの長い経過から見まして、取り立てが非常に簡単なものではないということも申し上げられると思います。従って、それらの両方の観点に立ちまして結論をつけたわけでありまして、それがインドネシア経済に非常に大きく友好的に響いていく、こういうつもりで解釈いたしておるのであります。
  31. 石野久男

    ○石野委員 もう一問。インドネシア側であなたに対して、その債権を支払わないということを明言したかどうかということをお聞きしておる。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシア側におきましては、この債権につきましても、その処理方法について、そのときに応じて、いろいろな考え方を申しております。もちろん棒引きにしてもらいたいということも強硬に主張しておりますし、あるいは非常に長期な債権にしてもらいたいということも言っておる。ただいま申し上げましたように、過程においていろいろな意見を申し述べておるわけであります。
  33. 石野久男

    ○石野委員 一つ確認しておきたい。インドネシアの側では、この債権については、払わないということを明確には言っていないというふうに理解していいのですね。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この債権の問題については、ただいま申し上げました通りインドネシア側としていろいろな案を考えておったわけであります。しかしながら、その一つに、払わないから棒引にしてくれという案もはっきり言ったことは事実でございます。従って、そういういろいろな点を考えました結果として、私どもは、将来のためにこれが適当であろうというので、処置をいたしたわけであります。
  35. 井上良二

    ○井上委員 一、二点はっきりしておきたい問題があるのです。それは、ちょうど昨年この問題が議定されますときに、政府は、外貨の獲得に非常措置をとるという国策を推進してきた。そういう外貨獲得に国をあげて全力をあげなければならぬ事態に当面しておるときに、相手が、少々長くかかっても債権債権としてお払いはいたしますということを言明しておるのに、いかなる理由によって、日本側がこれを棒引きしなければならぬ根拠があるかということです。しかも政府は、このインドネシア賠償及び債権棒引きに対して、条約を結び、議定書を作ったときには、インドネシアの政情というものが非常に安定しておるという一つの状況判断をいたしまして、予想以上にインドネシアの政情、経済の安定を国民に信用づけてきた。ところが、その後のインドネシアの政情は、一体どういう事態になっておるのです、現にインドネシアでは、中央政府軍がスマトラに敵前上陸しようとしておる、そういう事態が今起っておる。そういうときに国民に対しては、インドネシアの政情、経済は絶対安定しておるという、一つの信用的な外交辞令を盛んに流して、そして相手が払う——少々年月はかかりましても、借りましたものはお払いいたしますと言っておるのに、何ゆえにさようなうそをついて、さような不見識な見通しのもとに、かような条約と議定書締結したのですか、その責任はだれが負うのですか、これを明らかに願いたい。
  36. 足鹿覺

    足鹿委員長 井上君に申し上げますが、外務大臣は、外国使臣との会見があるそうであります。なおもう一つ、参議院の外務委員会から出席を求められております。それが十二時が定刻だそうでありますから、追ってもう一回でも二回でも、都合のつく限り外務大臣の御出席を求めて審議を進めますから、一問で本日のところは打ち切っていただきたい。
  37. 井上良二

    ○井上委員 ただいま私の質問しておることは、きわめて重要でありますから、ぜひ政府側として答弁願いたい。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシアの政情の問題でありますけれども、インドネシア国内、特に外領におきまして、中央政府に対する若干の不満の動きのあることは、私どもも承知をいたしております。しかしこの不満のおもなものは。中央政府を転覆さす、そうしてそれぞれ外領が独立するというような形態になるようには考えられませんし、またそういう動きではないのであります。原因から申しますと、それぞれの外領があまりにジャワ島中心主義だ、特に経済の諸関係の問題において、外領に薄く、ジャワ島に厚過ぎるという問題が不平の大きな一つだと思います。従いまして、今回起ったような事態も、根本的にはその立場から出ておるのでありまして、インドネシアが完全独立をして、せっかくインドネシア共和国として発展する際に、これを四分五裂して、それぞれ独立させようというような考え方は。いわゆる反乱軍の人たちも持っておらぬのであります。反乱軍が一応引き入れよう、あるいはかつごうというハッタ氏のごときは、全然そういう考え方ではないのでありまして、やはりスラバヤにおきます中央政府をジャワの唯一の政府として持っていこう、ただ経済の問題その他については、地方にある程度自治を許し、ある程度自由な裁量ができるように、いわば連邦式の方向に中央政府を改組しようというのが、大体反乱軍の考え方であります。しかしながら、これらの動きに対しまして、西欧側の二ュースを見ておりますと、いろいろ誇大に粉飾したニュースがきておるように私は思います。従ってそういう問題については、われわれは相当冷静な判断をして参らなければならぬと思うのでありまして、そういう意味において、インドネシア共和国政府がそんなに四分五裂するというふうな見通しを私は持っておらぬのであります。しかしながら、これに対しましては、むろんアメリカなりあるいは一部の西欧側におきましても、そうでないような見方をしておるところもあるわけであります。そういうことで、ことにハッタ氏とスカルノ氏とは数回会見をいたしておりますし、そういう意味において、あるいは総理大臣がかわる、あるいは政権を担当する政党がかわるということはありましても、外領が独立するというような状態には陥らぬ。従ってインドネシアとしては、内政の問題としてこれらの問題が一日も早く解決されていくことを希望しておりまして、その立場に立って日本賠償問題も解決し、また将来の経済発展のために協力し、平和条約も作って、現インドネシア政府と十分に緊密は連絡をとって参ることが必要だという観点に立ってやったわけであります。私の観測が誤まりであれば、それに対しては私としても責任をとらざるを得ないのであります。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員長 井上君に申し上げますが、先ほど申し上げた通りでありますから……。石村英雄
  40. 石村英雄

    石村委員 それでは、外為の特別会計の件で続いてお尋ねいたします。政務次官にお尋ねしますが、なぜインドネシア焦げつき債権なるものが六千万ドルで出発して、今日のような一億七千七百万ドルという膨大なものになったか。この間通産省は、貿易協定のことも御存じと思いますが、金はとれなくても、日本の品を外国に売りさえすればよいという考えでどんどん輸出させたのですか。通産省としての見解を明らかにしていただきたいと思います。
  41. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 私どもとしては、輸出貿易の振興をはかることもとより当然でございまして、それが回収されることは当然考えておるのでありますが、ただインドネシアの問題につきましては、ちょうど六千万ドルの支払いの協定ができまして、その翌年の第二年目に至りまして、輸出額で一挙に一億四千万ドルという数字が出たのであります。ここに一億ドル以上の債権が出たことが、この大きな債権を作った一つの理由であります。私どもといたしましては、今外務当局からお話がございましたように、輸出の制限といいますか、調整措置を講じて、その後の増加を極力押えることに努力いたしたのでありますが、何と申しましても、既契約の関係がございます。そこで既契約の関係から若干ふえて参った、こういう状況に相なっておるのであります。
  42. 石村英雄

    石村委員 なるほど契約は、日本としても果さなければならないと思います。しかし、金をもらうということも、向うの契約にあるはずであります。こっちの契約だけを正直に守って、金をもらう方は一向かまわないというような、そんなばかな契約の守り方が一体ありますか。占領軍から引き継いだときは六千万ドル、これでさえケリをつけなければならないのに、そのケリもつけずに、最後には一億七千六百九十万ドルというふうに膨大化した。それを既契約だからということで——なぜもらう方の既契約は主張しないのか。
  43. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 私が申し上げましたのは、協定の五三年七月から五四年六月までの間、すなわち六千万ドルを五回に分けて分割払いをするということの第二年目になりまして、日本からの輸出が一億四千万ドルという巨額の数字が出たのであります。  第二の増加いたしました原因は、協定の第三年目、すなわち五四年の七月になりまして、支払いの時期になりまして支払いができないということに相なりましたので、輸出入規模の均衡を保持するような努力をいたしたのであります。この努力をいたしました五四年七月から五五年六月の間におきまして、なおインドネシアとの既契約がありまして、約千四百万ドルばかりが出た、こういうふうな状況から債権額が大きくなった、こういうふうに申し上げたのでありまして、国内の取引におきまする契約ではなしに、第二点のインドネシアとの既契約関係を履行したために千四百万ドルというものが続いてふえた、こういうことから債権の額がふえて参った、こういうふうに申し上げたのであります。
  44. 石村英雄

    石村委員 どうも小笠政務次官の説明は、われわれしろうとには納得いかない。インドネシアに対する契約だ、そうしてそれは輸出しなければならないというのですが、日本インドネシアから金をもらうという契約を同時にしておるのでしょう。金をもらわずに輸出する契約があるはずはないでしょう。金をもらわずにどんどん輸出しなければならないという協定か何かあるのですか。インドネシアが金を払わなくても日本は輸出しなければならない、そんな協定でもあれば、それはしようがないということもあるが、そんなばかげた協定が一体あるのですか。二十七年に六千万ドル、二十九年六月末には一億六千二百万ドル、二十八年から二十九年にわたってばかに輸出がふえたのでしょうが、輸出をふやすということは、同時に一方では金をもらうということだと思う。輸出するのは契約だ、金をもらうのは契約でない、そんな契約はないと思うのです。まことにお人よしというか何というか、わけのわからない契約をしたものだと思います。輸出をして金はいただきませんというのでは、最初から贈与の契約で、棒引きなんという議定書は必要ない。
  45. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 その点につきましては、御承知通りに、その前にインドネシアとの間に貿易及び支払いに関する協定ができておりまして、三段がまえで支払うという内容を持っております協定ができておる、その協定に基きまして輸出をしていた。たまたま支払いが滞ってきた、こういうことでありまして、当初から支払いということを頭に置いて輸出をやっておった、これは私は当然だと思います。
  46. 石村英雄

    石村委員 そこで、なぜ滞ったのか、三十二年の秋までどんどんふえたかというのです。途中でちょっと減ったことがありましたが、三十二年の最後になってみると、一億七千六百九十万ドルにふえている、どうもそこがわからない。契約だ、あるいは向うが履行しない、こういう話ですが、大体清算協定というものは、貿易のバランスをとるための清算協定だと思うのです。こんなに残がふえていくということは、バランスがとれていない証拠だと思うのですが、その間通産省は、契約が履行されないならされないで、何らかの措置をとられなければならぬと思う。インドネシアの物を買うのには、あるいは高くて買えないということがあるかもしれませんが、少々インドネシアの砂糖が高くても、棒引きにしてただにするより買った方が得なんです。なぜそんなことをしたか、どう考えましても理解できない。それは、日本から輸出する輸出業者は、政府から金をもらうから、インドネシアが支払おうが支払うまいが、輸出した方が得であろうと思います。しかし、それでは国民はたまりません、そんなことをされたのでは。通産省は、またその間にあってどんな責任を感じてやってきたか、金が取れない、それは向うが払わぬからしようがないのだ、あれよあれよとながめておって、一億七千七百万ドルになりました、そこで、大蔵大臣が大蔵委員会で、まことに遺憾でございます、それで済むものであるかどうか。こんなばかげたことは、そのままでは国民は済ませないと思います。どうですか、これは通産省責任が非常に大きいと思うのです。払わないからしようがないのだ、そしてあとは出していく。もし払えなければ、少々高くても砂糖でも何でも買ったらどうですか、なぜそういう措置をとらなかったのですか。
  47. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、五三年の七月から五四年の六月の間、協定ができましてから二年目に一挙に一億四千万ドルという輸出をいたしました。それで、その後支払いができませんので、われわれといたしましては五四年から貿易を引き締めていく、輸出と輸入を均衡さしていく、こういう措置をとったのであります。ところが第三年目の五四年の七月から五五年の六月にかけましては、遺憾ながら一挙に引き締めることができなくて、向うとの既契約もありまして、千四百万ドルというものが増加してきた。その後は、御指摘のように入超もございまして、順次減って参りまして、一億五千七百万ドル見当まで落ちて参ったのであります。ところが昨年の六月末にインドネシア側の申し出によりまして、貿易支払い協定が停止になりました。私どもといたしましては、六月中に受け付けた分以外は輸出は認めないという措置を講じたのでありますが、御承知のように、向うは昨年インドにLCをたくさん発行いたしておりまして、これらの商品が、日本の中小企業製品にかかわるものが相当多い、こういうふうな状況から、約九百万ドル見当のものの追加輸出を認めた、これがふえて参った、こういう状況であるのでありまして、債権の非常な累積額に対処して順次引き締めて参っている、こういう措置を講じて参ったのであります。
  48. 石村英雄

    石村委員 ただいまの小笠さんの御説明は、三十二年六月末の一億五千七百万ドルが三十二年秋に一億七千六百九十万ドルにふえた点が、中小企業に関係があるという御説明かと思うのですが、まず根本の二十九年に約一億ドルふえたこと、この一億ドルふえた処置というものは、どうにもつかなかったのですか。三十年、三十一年で少しは減っておりますが、この一億ドルを解消する方法、あるいはその前の占領軍のときの六千万ドル、合せて一億六千万ドルを解消する交渉、あるいは方法、二十九年の六月末に締め切って一億六千二百万ドルになったとき、どのような方法を具体的にとろうとなさったのか、そしてどのように実現していったかを御説明願いたいと思います。
  49. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、先方債務の履行を断わって参りましたのは、五四年の六月末日ないし七月一日でございまして、それまでは確実に債務を履行しておったわけでございます。ところが七月一日になりまして、向うが外貨不足等を理由にいたしまして、債務の履行を断わって参りましたので、そこで政府のとりました手は、一応これからの輸出輸入をバランスさせようということで、至急に措置を講ずるということを政府全体として決定したわけでございます。
  50. 石村英雄

    石村委員 五四年の六月に一億六千二百万ドルになった。なる過程でも一億ドルもふえていくということについて、通産省は、締め切りまでは全然何も考えずに、インドネシア側から金が必ず順調にもらえる、あるいは向うから適当な物資が必ず入るという見通しで、五四年の六月末に一億六千二百万ドルになるのを放置しておったのですか。締め切ってみたら一億ドルふえておったのだ、そして向うからは支払いをしないぞとこう言われた。それで、これは困ったことだといって頭をかかえておるというのですか。
  51. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 結果的に見ますと、まことに申しわけないのでありますが、ただいま申しましたように、インドネシア側といたしましては、五三年十二月末まで協定に基いて確実に債務を履行しておったわけでございまして、その間並行的に輸出が増加しておったのでございます。そうして、決済期は六月末でございますので、そこで締め切りましたときに、その間の輸出の激増があって、一方債務の支払い拒絶があった、こういう事情でございます。
  52. 石村英雄

    石村委員 締め切らなければ、通産省にはインドネシアに対する輸出の激増というのがわからないのですか。輸出するたびに、日本銀行の勘定にはおそらく記帳されると思うのです。確定は六月末に締め切らなければならないかもしれないが、その過程で、毎日私はわかると思うのです。インドネシアに対する日本債権がどうなっておる、幾らある、また債務幾らあるということは、当然わかるはずだと思うのです。六月にならなければ一切わからない、そういう制度にはなっていないと思うのです。それを、五四年の一月から六月末まで漫然と通産省はながめておったのか。増加は知っておるが、必ず金がもらえるものと確信しておったのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  53. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 過程におきまして、輸出入のバランスがくずれていきつつありますことは、もちろん承知いたしておりました。しかしながら、先ほどの繰り返しになりますが、インドネシア側といたしましては、それまで確実に債務は履行しておりましたし、それからまた、その間に請求する時期でもございませんので、その場合に、先行して輸出調整をとるまでのことは、政府としては措置を講じなかった次第でございます。
  54. 石村英雄

    石村委員 措置を講じなかったから一億ドルふえたんだと思うのです。しかし、清算協定というものは、本来貿易のバランスをとるのが目的でしょう。それが、日本の輸出が一方的にふえていくというのをながめておって、おそらく支払うだろうということで、清算協定の本来の目的を逸脱しておるにもかかわらず、それを放置しておる通産省というもの、私は、責任を何ら考えない当局だと言わざるを得ません。貿易のバランスが乱れていくということはもうその過程ではっきりしておる。それを、ただいずれ払ってくれるだろう、今まで払ってくれたから今度も払うだろうというようなことで——請求は、なるほど六月末にならなければできません。しかし、日本の輸出を抑え、バランスをとらせるという方法は、そのとき考えてやれば、通産省の手にあったはずだと思うのです、漫然としてながめていなければ。貿易のバランスをとるために、日本の輸出がこれほどむやみに一方的に拡大しては、インドネシアが支払うことも困難になるんではないかということは、清算協定というものを作った趣旨からいえば、当然判断されなければならない問題だと思います。それをしないでおいて、そうして六月末になって一億ドルふえた、前の分も片がつかない、その一億ドルも片がつかない、向うが払わぬからいたし方ございませんというので、一体役所として国民に対して責任が済みますか。今度の一億七千七百万ドルは、外為会計の資金の三割以上に達すると思います。それだけのものを今棒引きにしなければならぬ、こういう事態を生んでおる。先ほどの外務大臣説明によると、賠償ではない、賠償には関係がないと言うておる。従って、インドネシア焦げつき債権がこれほど膨大にならなくて、二千万ドル、五千万ドルというものであったら、それを棒引きにしても、簡単に問題はおさまったと思うのです。それをこのように膨大にしておいて、どうもいたしかたがありません。まして、昨年の六月末から二千万ドルふえたのが、中小企業の製品を輸出するのだからいたし方ありませんというような小笠次官の御答弁ですが、中小企業だから金が払われなくても輸出させるという、そんな勝手なやり方を通産省にまかされておりますか。輸出したら、それを為替集中主義で、当然日本政府がその代金を払わなければならぬ。ところが、それはとれる見込みはないのだ、とれる見込みがないのを出す。製品が中小企業の製品であるから、金はとれなくても輸出させます、そして中小企業を助けますというような、そんなばかげた理由が一体ありますか。中小企業を助けるためなら、別個法律を作って、ちゃんとした筋道の通った方法をとればいい。金のとれないところへ輸出させておいて、そうしてこれは中小企業だからやむを得ませんなんて、そんな勝手なことを、通産省国民はまかしておるとは思いません。さっきの小笠さんの説明も、どうも納得いかないのです。通産省は、国民の損になること、大きな負担になることでも、中小企業の製品であるならば、金がとれなくても外国に売らして、日本政府が金を払っていく、そういう権限が通産省にあるとお考えですか。
  55. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 石村さんのお話、一応ごもっともな点が多々あるのでございますが、御承知通り、六月の協定が失効いたしますまでにいろいろな契約がございます、相当大きな契約があったのでございまするが、インドネシア向けの特殊商品を作っている日本の中小企業者の立場も考えまして、関係省と相談の上で、先ほど申し上げましたように、九百万ドル相当額の分だけの輸出を認めたのであります。通産省にそういう権限があるかとおしかりでもございますが、私どもは、そういう権限はないのでありまして、ただあの事態に対処して、どこにも売れない商品というようなものを中心にして、中小企業の事情等を考えまして、いろいろ関係省相談の結果、既契約の一部として、しかもLCが来ているので、そういうものの一部を輸出を認めていくという臨時的な措置を講じたのであります。小中企業振興対策が、こういうふうな臨時的な邪道的な形でいくべきでないことは、石村さん御承知通りです。ただそのときの事情から、やむを得ずそういう措置を講じた、こういう次第であります。
  56. 石村英雄

    石村委員 やむを得ないと、こういう御説明ですが、あなたはなるほどやむを得ないとお考えになったかもしれない。しかし、それは中小企業が特殊な製品を作っておって、インドネシアに売るよりしようがないものだ、従って金はとれないかもしれないが、輸出させる。そうしてそのしりぬぐいは政府がするということを、やむを得ないことだからやるというのはどうですか。そういう既成事実を作って、棒引きにするからって、今ごろ国会にかける。なぜ早く国会に中小企業のそういう特殊製品の処置に関する対策についての方針を立て、国がそれに対する損失を補償しなければならないものとして法律を出して、正式な処置をおとりにならなかったのか。やむを得ない、やむを得ないといって、やってしまったあとで、今ごろになって棒引き債権法律を出してくる。既成事実を作って、それを国民に承認しろという態度、それが、やむを得ないというあなたの説明で済むとお考えなんですか。まあ考えておるから出されたのかもしれません、そんなむちゃなことはないでしょう。中小企業のことなら、何もインドネシアのものばかりではありません、今日繊維関係で非常に困っておる、繊維製品を作っているのはもちろん大紡績ですが、一方機屋なんか、中小企業がたくさん関係しております。これに対して今何をしておるか、何もしていないじゃありませんか、やむを得ないなら、なぜやらないか、その方はやりやしない。インドネシアのだけは、これはインドネシア向けの特殊製品を作っておるから、損になったって、それは国でかぶりますということを、はらをきめておやりになる、そんなわけのわからんやり方はないでしょう。当時の事情でやむを得ません、こう幾らあなたがおっしゃっても、国民は納得いたしません。それを納得すると、あなたはお考えでしょうか、大体わけのわからぬやり方だと言わざるを得ない。二千万ドルなぜふやさせたか。これは商社も関係しておると思いますが、貿易商社は非常にもうけておる。貿易商社がいかにでたらめをしているかということは、またあとで申し上げたいと思うのですが、とにかくこんな御説明で、われわれはこの法律を認めるわけにはいきません。中小企業を助けるために、やむを得ない措置であった、だから今度棒引きして、これを承認しろ、こうお出しになっても、そういう御説明ではとうてい承認はできません。もっと承認できるような、国民を納得させるような御答弁をお願いします。
  57. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 私は、先ほど来お答えいたしております通り、当時の事情を考えますと、こういう措置をとることがやむを得なかった、こういうふうに考えておるわけであります。
  58. 石村英雄

    石村委員 これでは、小笠さんと私との押し問答になると思います。やむを得なかったのだ、そんなばかなことがあるかということで、押し問答になるから、私はこれを通産大臣に聞くことにしまして、保留します。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員長 石野久男君。
  60. 石野久男

    ○石野委員 私は、この際ただいまの小笠次官の答弁にも関連しますが、まず最初に大蔵大臣にお伺いいたしたい。インドネシア棒引き問題は非常に重要な問題になっていると思います。それで、今度あなた方の方から外為特別会計法の一部を改正する法律案を出されましたのは、財政法の第八条の規定により、債務の免除または効力の変更を行うためには法律によらなければならないと定めておるからだと思います。なぜ法律によらなければならないと規定しているのか。この財政法の第八条の規定を、大蔵大臣はどういうふうに解釈されておるか、まずその点からお伺いいたします。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、国の債務に異同を与えるということでありますから、国会でもって御審議を願って、法律でもってやる、こういうことだと考えております。
  62. 石野久男

    ○石野委員 大蔵大臣は、財政法の八条で、とにかく今度の債権棒引きに関連する金額の処置について、これを議会にはからなければならなかった理由は、今度棒引きしました一億七千六百九十一万三千九百五十八ドルというものは、これは外為特別会計の中で起きた損失とかなんとか、そういうものではなくて、そうじゃない面からくるからこういう措置をしなければならぬというふうに理解されておると思いますが、その通りに御理解なさっておりますか。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今回の処置によりまして、外為会計のうちにおきまして、その資産の減額をしなければならぬ、こういうことと考えております。それを法律によっていたそう、かように考えております。
  64. 石野久男

    ○石野委員 外為会計の資産の減資をしなければならぬということからきている。その問題については、あとでもう一度お尋ねしますが、こういう減資をしなければならない原因になっている、インドネシア債権の放棄をしなければならないというふうにあなたが認定された、その理由をちょっと聞かしていただきたい。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私は広く考えなくてはならぬと思います。それは、戦後において、東南アジア諸国と日本の国交が漸次回復いたしております。特にインドネシアとの国交の回復については、この国と日本との経済関係が将来においても大きいというような見地から、朝野の希望は特に私は熱心であったと考えるのであります。しからば、この重大な日本インドネシアとの国交を回復するには、どういうふうなことがまず解決されなくてはならぬかという点に問題があると思います。これをやるためには、まず賠償の問題、それから多年にわたって両国の係争になっておる、いわゆる貿易から生じておる日本の対インドネシア債権処理も考えなければならぬ。そうして平和条約もやる、通商航海条約もやる、一切を含めてここで解決をする、そういうような見地から、今回のいわゆるインドネシア債権に対する処理を行なったわけであります。
  66. 石野久男

    ○石野委員 インドネシア日本との間に、賠償問題も解決しなければならないし、平和条約締結もしなければならぬ、これから後の国交を友好的に持っていくために、いろいろの措置をしなければならぬ、これはわれわれも真剣に考えます。そこで、そういうために焦げつき債権棒引きをするということが、どういうふうに有効に働くかという問題なんです。もしこの焦げつき債権棒引きしなかったならば、どういう結果が出たんですか。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、棒引き債権をしなかったならばどういうふうになるかということを、ここで仮定的に申し上げる筋ではないと思いまするが、おそらくこういうことがないとすれば、日本インドネシアとの国交の回復というものは困難であったろうということは言えると思います。
  68. 石野久男

    ○石野委員 昨年の七月の中ころにジュアンダ首相から、インドネシア賠償に関する意見が出ていると聞いてるんです。当時新聞は、このように報じておる、日本側インドネシアに対する貿易じりの焦げつき一億七千万ドルは日本が放棄するという従来の考え方をとらず、インドネシア側がこの貿易上の債務賠償別個日本に対して支払うということを、ジュアンダ総理から岸総理のところに文書として来ておる。インドネシアは、賠償別個に支払うという意思をはっきりしておるし、先ほど外務大臣も、インドネシアの方では、別にこの債権については払わないということを言ったことはないのだ、こういうふうにはっきり言っておられる。別段この焦げつき債権というものを棒引きしなくても、賠償問題については一向に差しつかえなかったのじゃありませんか。何かこれをやらないというと、賠償交渉は成立しなかったのですか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 賠償交渉がどう、これは、私直接関知いたしておりませんが、私が先ほどから申しますような日本インドネシアとの国交、それから経済的な双方の繁栄を促進していくという見地から、今度の処置に賛成をいたしたのでありまして、むろんこれは債権として残して、そういう国交というようなことも今せずに、あくまでこれを取り立てるんだ、こういうふうな考え方一つ方法でありましょう。それが何十年先に完済ができるかわかりません。その間日本インドネシアとの関係は一切断っていくというようなことも覚悟してやるなら、これも一つの行き方であります。私は、だからこういう債権がある以上、債権の請求ができぬというようなことは一切出しません。ただ日本インドネシアの国交の関係を考え、大局見地に立った場合に、どういうふうに処理することが最も日本のためにもなり、インドネシアのためにもなる、こういうふうな——特にこの場合においては、日本のためになる、プラスになる、こういう見地から判断をいたしたわけであります。
  70. 石野久男

    ○石野委員 インドネシアの方で、この焦げつき債権はもう払わないということを強く意思表示を、しておる場合であれば、今大臣の言うようなことをわれわれはすなおに聞いて、それなら確かにそういうふうにしてやった方がけっこうなことだというふうに思うのです。しかし向うの方では、これは賠償とは別個に、長期にはなるだろうけれども払います、こういうことを言っておりますときに、何もあなたが大蔵大臣立場で、そういうふうによけいな考え方をしなくてもいいじゃないですか。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この債権を払いますという、そういう先方の申し出は私は存じません。
  72. 石野久男

    ○石野委員 それでは向うは支払わないと言ったのですか。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体、従来の経過からすれば、この債権の取り立てはきわめて困難であるということは申し得たのであります。
  74. 石野久男

    ○石野委員 きわめて困難な場合は大蔵大臣は、いつでも債権棒引きするのですか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうわけではないことは、先ほどからくれぐれも申して、何回も申しております。これは日本インドネシアとの大局的見地に立ちまして、双方の国交をなるべくすみやかに回復する、この朝野の要望にこたえるためにはいかにするか、これを、平和条約も通商航海条約も賠償もこの債権も、一切の関係において解決するのが妥当であるという見地に立ったということを申し上げております。
  76. 石野久男

    ○石野委員 あなたは、朝野の要望にこたえてやるのだという。しかし、だれも棒引きにせよということは国民はそんなに要望してないのですよ。しかもインドネシアの方ではその棒引き要求してくるというわけでもない。あなた方がこれをやるのには、やる理由があったと思うのですよ、はっきり言ったらいいでしょう。この棒引きをしなければ、賠償の話し合いは進まなかったのだということを言うなら、われわれはそうかと聞くのだ、それならそれのようにまた考えられるのです。国会に対して明確なことを言いなさいよ。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申した通りであります。これは幾ら繰り返しても、私はその信念と見地に立っておるのであります。そうしてそのことにつきましては、これは法律にもよりますし、また協定の方は、国会の御審議にお願いをして、そうして国民の御審議にお願いをする、かような手続をとっておるわけであります。
  78. 石野久男

    ○石野委員 お尋ねしますが、今わが国が外国に持っている債権はどういうものがあって、そしてまた現在、五年か三年くらいの債権で非常に新しいものばかりなのか、それとも明治時代、大正時代からの債権債務もあるはずだと思うのだが、そういうものはどういうものがありますか。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、正確に申し述べないと間違いを生ずるおそれがありますから、事務当局からお答えいたさせます。
  80. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大臣からお答えになりました対外債権でございますが、これは正確を要しまするので、取り調べまして、数字をはっきりお示しいたしたいと思います。
  81. 石野久男

    ○石野委員 数字はあとでよろしい。現在相当長期にわたる債権は持っておるのですか、いないのですか、その点をお聞きしたい。
  82. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま私の記憶しておりますものでは、あまり大したものはないように記憶いたしております。その点はよく調べまして、資料をもちましてお示しをいたします。
  83. 石野久男

    ○石野委員 大臣に一つ聞いておきたい。日本では、明治時代からの外国に対する債権債務も残っているのだ。そういう債権があっても、まだ根気強く、そういう債権債権として持ちながら、国の富を少しでも減らさないようにしようという考え方をしているのです。それにかかわらず、今インドネシアの問題については、向うが別に払わないというわけでもないし、これを棒引きしなくても、向うでは文句は言わないのですよ。将来の国交を友好的に進めるために棒引きしたら、それが直接どういうふうに利益をするかということを、私が先ほど尋ねているのです。これはおそらく賠償交渉が、これをやらないと進まなかったということでないかということを、私はあなたに聞いているわけなんです。もしそれでなければ、こういうことを棒引きしなくても、国の債権を何も減らす必要はないのですよ。債権棒引きするということは、われわれが商法上考えるところの棒引きとかなんとかいうことは、その客体となるものがなくなったときとか、もうどうしても支払い能力が絶対にないときに判定を下すものであって、インドネシアは厳然としてまだあるのです。今すぐ取り立てられなくても、十年先に取り立てたら、国の富はそれだけ残るのではないですか。そういうことがはっきりしておるのに、何も大臣は国の富の管理者であるあなたが、簡単にそういうふうに放すのですか。向うの方で、どうしてもこれを棒引きしなければ賠償交渉にも応じないし、平和条約締結もしないのだ、こう言うのならば、われわれは考えなくちゃいかぬ。だけれども、いやしくも六百億という膨大な金を、やはり賠償ではないのだ、ただ単なる友好的関係を増進するためにということの理由だけではちょっと納得がいかないから、そういう点をはっきりしてくれと言っているのです。大臣、その点をもう少しはっきり言って下さい。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから私はきわめて明瞭に申し上げておると思うのでありますが、賠償を払うということも、それ自体が目的ではない、賠償も、日本インドネシアとの国交を友好にするというために解決しなければならぬ一つの問題である、債権についても、またしかりなんです。これは、要するに日本インドネシアとの国交をすみやかに回復して、平和な状態に入り、経済関係がうまくいくように、通商航海条約も結んでもらわなければいかぬ、こういうことも、その目的に対する幾つかの柱だ、私はかように考えております。
  85. 石野久男

    ○石野委員 先ほど外務省説明員の説明によると、向うはとにかく四億ドルの賠償要求をしたのだ。しかし日本の方からの何が、どうしても二億ドルしか払えない、その差については何とか工面しなければならぬから、これを賠償としては払えないから、仕方がないから、その他のこと、借款とか経済援助とか、いわゆる焦げつき債権棒引きとかいうことで考えているのだという話があった。だから、そういう関連性を持っているということを先ほど言ったのです。しかも、われわれインドネシア日本との関係については——戦争中被害を与えたものに対して、それにこたえるための行為も一つ必要だし、それと同時に、平和条約締結することによって、今後経済関係を緊密化させることも一つの考えなければならぬことだ、こういうふうに言ったわけであります。賠償という問題は、戦争中の被害についてこたえるのが賠償ですよ、戦争中被害も何も与えていなかったら、別に賠償なんか払う理由はない。戦争によって与えた被害について日本国民が負わなければならぬものとして、賠償をわれわれはインドネシアにやらなければいけない、こういう事例になっているのです。われわれは、そういうような意味から考えますと、賠償要求が向うから四億ドルあって、そして今この棒引きになる一億七千数百万ドルというものを考えない場合に、この四億ドルの要求された賠償問題を日本インドネシアとの間で完全に解決できないという事由があった、こういうふうにわれわれは理解しておるわけなのです。もし国会の法律によって、平和条約なりこの問題が多数決できまってしまえば、それはそのまま外為会計の方でも落ちるし、またインドネシアの方でもよろしいというでしょう。しかし、もしそれが落ちない場合には、賠償問題は不調になるというようなことは出てこないのですか、その点、はっきりしていただきたい。(「外務大臣に聞いてくれ」と呼ぶ者あり)外務大臣がいないから、大蔵大臣に聞いておるのです。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、先ほど申しますように、交渉自体については、私は何ら直接タッチいたしておりません。これは直接の責任者にお聞きを願います。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  88. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  去る二十六国会より継続して審査いたして参りました平岡忠次郎君外十二名提出酒税法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきまして提出者より撤回いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  89. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よって許可することに決しました。     —————————————
  90. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、去る第二十六国会において提出され、以後引き続き本委員会に付託されております平岡忠次郎君外十三名提出租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに去る六日付託に相なりました横山利秋君外十三名提出夜勤手当等に対する所得税特例に関する法律案及び平岡忠次郎君外十三名提出租税特別措置法の一部を改正する法律案の三法律案を一括して議題とし、提出者より提案理由の説明を聴取することといたします。平岡忠次郎君。     —————————————
  91. 平岡忠次郎

    平岡委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案外二法律案の提案の理由を御説明いたします。  まず租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  わが国の所得税法によれば、給与所得者については勤労控除が認められておりますが、申告所得者については何ら特別の控除がない状態であります。この際事業所得者についても、勤労性の強い事業については、特別の控除を認める必要があります。この法律案は、勤労事業を営む個人の事業所得については、各年においてその事業所得の金額が百万円以下である場合に限り、当該金額から当該勤労事業から生ずる所得の十分の二に相当する金額、ただし最高六万円を控除した金額を事業所得とするものであります。またここでいう勤労事業とは、常時使用する従業員の数が十人以下、商業、サービス業を主とするものについては二人以下の事業で、金融業、風俗営業を除くことといたしております。  次に、夜勤手当等に対する所得税特例に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  深夜十時から早朝の五時まで、官庁、民間産業を問わず、業務の必要に応じて働く夜間勤務労働者の夜間労働に対して支給される金額は平均して僅少であり、実費支弁的な内容をもっているにかかわらず、一般給与と同様の税率が適用されております。夜間勤務の特質は今さら言うまでもありませんが、肉体的、精神的な疲労おびただしいものがありまして、人間として不規則な生活を重ねる結果、回復し得ない疲労が残り、平均年令についてまで影響あることは、すでに統計にも明らかであります。  従ってこれらの者について、税制上からも措置すべきであるとの意見は数年来からございまして、すでに日直料、宿直料として支給されているものにつきましては、二十九年一月一日以降課税しない旨を、国税庁長官から通達が発せられております。しかるに、実際に働いている労働者の夜勤手当等について同時に考慮ができなかったことは、大蔵省として当時調査中として、時間の関係上からとはいえ、不均衡きわまるものがあると言わなければなりません。関係者の痛嘆しているところでございます。  夜間勤務者の種別、階層、金額など調査してみましても、まことに気の毒であり、収入する夜勤手当等は、夜間勤務者が夜食とするシナそば二はい分に該当するくらいのものであります。この際実費支弁の意味において、非課税とする立法措置を講ずる必要があると存じます。労働基準法におきましては、夜勤手当は最低百分の二十五としておりますが、率によって恩恵が区々にわたるのを遊けるために、この特例の限度率は基準法通りの百分の二十五といたしております。  またこれが適用されるのは、警察官、看護婦、交通労働者、その他民間産業にあって熔鉱炉を守って働く夜間勤務者などでありまして、そう大きな金額にならないものと推定をいたします。このくらいの金は、政府において十分措置し得ると考える次第であります。  今日税制の特例は、各方面にわたり行われておりますが、それらはほとんどが大企業、大口所得者に対するものでありまして、日本産業の基礎となっております労働者に対する思慮は、ほとんど皆無であります。何とぞ御審議の上、深夜黙々として産業復興、公共、治安、病人の看護、交通安全に携っております男女労働者諸君に対し、深甚の考慮を払われまして、すみやかに可決されんことをお願いする次第であります。  最後租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  最近、わが国における労働金庫の役割は日増しに増大しておりますが、労働金庫及び労働金庫連合会の運営はいまだ十分であるということはできません。労働金庫の発展のためには、その内部留保を充実させることが当面の急務であります。この観点に立って、ここに労働金庫及び労働金庫連合会が、各事業年度において、その所得の全部または一部を留保したときはその留保した金額が出資の総額の二分の一に達するまでは当該事業年度の所得に対する法人税は課さないこととする改正案をここに提案いたしました。  以上租税特別措置法の一部を改正する法律案外二法律案について御説明申し上げましたが、慎重御審議の上、御賛同あらんことを希望いたします。     —————————————
  92. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、去る五日予備付託に相なりました内閣提出日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案議題として、政府より提案理由の説明を聴取することといたします。一萬田大蔵大臣。     —————————————
  93. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  この法律案は、合衆国軍隊の構成員等の用に供するため免税で輸入された物品が譲渡された場合における関税法等の適正な執行をはかるため、これらの物品についての関税及び内国消費税の徴収等に関する規定を整備しようとするものであります。  以下、改正の内容について簡単に御説明申し上げます。  まず、合衆国軍隊の構成員等が免税輸入した物品が譲渡された場合の納税義務者につきましては、現行規定によりますと、譲り受け人から申告がなければ関税の徴収ができず、また、その後の転得者に対する徴税についても解釈上疑問の余地があったのであります。これを、この際納税義務者に関する規定を整備するとともに、税関の許可を受けないで免税輸入物品を譲り受けた場合には、申告を待たずに一方的に告知、徴税できることとしようとするものであります。  次に、未納税の譲り受け物品の処理につきましては、従来においては、譲り受けの申告を指導する以外に法的な強制方法がなかったため、関税法規の適正な執行に支障があったのにかんがみ、納税義務のある者がこれらの物品を所有し、または所持している場合及び法令の規定により譲り受けの許可をすることができない譲り受け物品を所有し、または所持している者がある場合には、これを保税地域に入れることを強制できることとしようとするものであります。  なお、法律改正前に許可を受けないで譲り受けられた免税輸入物品については、原則としてなお従前の例によることとするが、申告を待たずに徴税できる点及び保税地域への搬入を強制できる点については、改正法の規定を準用することとしようとするものであります。  以上が、この法律案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。
  94. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて提案理由の説明は終了いたしました。各法律案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————
  95. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案及び食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。神田大作君。
  96. 神田大作

    ○神田(大)委員 まず議事進行について、一言委員長に申し上げます。御存じの通り、社会党は一応入っているようですが、自民党は、藤枝先生ただ一人というようなこと、こういう委員会の行き方を続けておったのではこれは、委員会の権威に関することでございますから、今後は、委員長から厳重に自民党に申し入れをして、過半数に達しない限りにおいては、委員会を開かない、こういう強い態度をもって自民党に申し入れをしてもらいたい。そうでなければ、このように出ている人は、一生懸命委員会をやっておるが、ところが出ていないで、選挙区を回っているような人がおっては、どうもそういう不均衡な議事の運営では困りますので、この点、よろしく委員長から責任あるところの御忠告を願いたいと思います。  それでは、私はこの前の食管に関する問題につきまして、大蔵大臣がおりますから、大蔵大臣に伺いますが、私の方からは時間の関係もありますので簡単に質問しますから、大臣も、一つ簡明に、しかも明確に御答弁願いたい。  今度食糧管理特別会計法の一部改正の法案というものを出しましたが、これによりますと、今度は調整資金というものを作って、食糧管理特別会計の運営資金にするというようなことでありますけれども、これは財政法から申しましても、このように年度内におけるところの歳入を年度を越しても使用するというようなやり方は、財政法十二条に違反するし、また財政法四十四条によって、特別の資金を設置することができると弁明しますけれども、これは、その四十四条の趣旨に沿うものではないとわれわれは考えるのでございますが、大臣は、いかなる考えを持っておるか、お尋ねを申し上げます。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まず、この資金を設ける必要が生じましたので、従ってそれには経費が要る、この経費を三十二年度の方から繰り入れをする、こういうことになるのでありまして、これは私、何も財政法十二条ですか、これに反することはないと思っております。それからこの資金自体は、お話がありましたように、財政法四十四条に基くものでありますから、この資金がその当年度に消費されないということは、これは当然だ、私は初めから予定されておるもの、かように考えております。
  98. 神田大作

    ○神田(大)委員 法的にそういう解釈をすることもあるかもしれませんけれども、そういう大臣の考え方であると、いろいろの資金を作って、それを年度内の歳入で年度外の支出に充てるようなことがたくさんできるようなことになります。この法文を広義に解釈しますと、いわゆる財政が放漫に流れるのじゃないかと思うのでございますけれども、そういうような理由をつけて、これからどんどん特別な資金を積み立てて、いわゆる四十四条に基く調整資金とか、あるいは資金の保有というものを認める考えであるかどうか、お尋ねします。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さようでありません。これは、私はぜひとも必要のある場合に限って考えていくつもりをいたしております。
  100. 神田大作

    ○神田(大)委員 この食管特別会計の場合は、それほど必要があるとお考えでありますか。今まで赤字が出た場合は、一般歳入から繰り入れておったのでありますけれども、そういうようなやり方でも何ら差しつかえないのにかかわらず、今度はこの特別会計法の改正でもって、不足を一般会計から繰り入れるというようなことを全然削って、そうしてこの調整資金を作ったということについては、非常な疑義をわれわれは持っておるのでありますけれども、特別な事情というような事由をかぶせるだけのものがあるとお思いになりますか、お尋ねします。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この食管に入れました今回の調整資金は、昨年あたりから特に食管会計について議論がやかましくて、そのうちでもまず食管会計の勘定を区分して、その間の収支関係を明らかにしろという議論があった。もう一つは、従来食管に赤字が出ました場合に、糧券等で泳いでいっている、これは食管会計の健全性を害する、こういうような意見が強くありました。そういうような関係から、まず年度途中においてなし得べきことは、この食管の赤字を運転資金で泳いでいくということ、これを改めるということが急務であると考えまして、食管の運転資金を補強する意味におきまして、この資金を置いたのであります。むろんこの勘定において益があれば、この資金に繰り入れる、こういうことになっておりますから、経理の扱いといたしまして、食管に損が出ればこの資金から落す、かように考えておるのであります。特に食管の赤字の補てんということにつきましては、かりにこれを予算主義的に前もって入れるということにいたしますと、もう申すまでもないことでありますが、まず生産者米価とか、あるいは麦価の価格の決定がおくれる、あるいはまた買入れ数量というものの見通しが必ずしも確定しない、さらにまた輸入食糧に至っては、どういうふうに輸入ができるのか、あるいはまた価格がどうなるか、これもはっきりしないということで、なかなか実行できない。それから決算期が済んでから入れるとなると、その間の赤字をやはり糧券で泳いでいかなければならぬ、そういう不便がある。こういうふうな双方の不便をも考えまして、一面と申しますか、主として食管会計の運転資金の補強であるが、経理の取扱いの上において、食管の赤字をやはりこれから落すという扱いにいたしますと、まあ私は今までに比べて、食管の経理の上において非常に経理がよくなる、かように考えて、そうして、こういう事例はほかにはそうたくさんないから、特に悪例ということにはならないであろう、こう考えておるわけであります。
  102. 神田大作

    ○神田(大)委員 農林大臣にお尋ねしますが、今度の米価の決定に対しまして、予算米価が一万二百円ということになっております。去年は実質米価が一万三百二十二円五十銭生産者手取りに払われておりますが、このように低く予算米価を組んでおりますけれども、これは、一体どのような基礎に立ってこの予算米価を作ったのでありますか。
  103. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 予算米価につきましては、従来の例のように、パリティ方式で予算米価を決定いたしたのであります。そこで、最近のごく近い年の三十一年の米価が非常に適当な基準であるというふうに見まして、その三十一年の米価に対しまして、パリティ方式によって計算したのが一万二百円であります。昨年の予算米価は御承知通り一万円でありましたが、今年は昨年、と計算方式は同じでありますが、基準年度をごく最近の年にとりました、それにパリティ指数をかけましたので、一万二百円というふうに計算が出たのであります。
  104. 神田大作

    ○神田(大)委員 パリティ方式による基本的態度は変らないといいますけれども、それの取り上げ方において、やはり年度を変更した、その年度を変更したために、生産者に不利益な影響を及ぼすおそれがあると思うのでございますけれども、大臣はどうお考えになりますか。
  105. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知通り、実際に米価を決定するのは、米ができるなるたけ近いときがいいわけであります。でありますので、六月ごろに米価審議会の諮問を経て、その上できめる方が、パリティの計算上も、あるいはまた実際にも当てはまるということで、米ができる近い時期に実際の米価を決定されるわけであります。でありますが、今予算の提出時期においてはパリティ指数等も、今年の六月等の見通しがなかなか困難であります。でありますので、予算提出に近いときのパリティ指数で予算米価をきめるということでありますから、予算米価そのものが実際買い入れる米価になるということには相なっておりませんことは、御承知通りだと思うのであります。そういう意味におきまして、実際の米価は変更があり得る、こういうふうに思っておりますので、一万二百円の予算米価は、去年の予算米価に比較して二百円上っておるのでありますから、生産者をそこなうとういうような意味を持った計算ではないのであります。
  106. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうしますと、実際においては六月ごろに米価審議会を開いて、その米価審議会の議を尊重して実際の米価をきめていく、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  107. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 六月ごろになりますれば、今お話し申し上げましたように、六月ごろに間近いパリティ指数もできますし、米価審議会においていろいろ論議が出ましょうし、それの結論を待ってきめるということが適当だ、こういうふうに私考えております。
  108. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、農家が米作を準備する用意——現在は予約集荷制度でございますから、一体ことしの米価はどのくらいになるのだというようなことを、やはりある程度見当をつけて、そうして作付というものはしてきたと思うのであります。もちろん六月の実態に即した米価になることはけっこうでございますが、できるだけ早くその米価の基本線というものをはっきりと農民にのみ込ませるというのが、やはり農政の本義じゃなかろうかと思いますけれども、そういう意味合いにおきまして、できるだけ早く政府の、予算米価以外の基本的な実際の価格の考え方を知らす必要があると考えますが、いかがでございますか。 まる赤城国務大臣 今のお話はごもっともだと思います。そこで、そういう考え方で、戦争中に内田農林大臣のときでしたか、実際の作付前に早く米価を決定したことがあるのでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、事情が変ることがありまして、あれがうまくいかなかったことも御承知だと思います。そういうこともありますので、ともかくも予算米価においては、昨年より二百円上っている、またこれが一定の基礎において算出されておりますので、生産者においても、予算米価において去年より上っておるということは、米価審議会等の価格決定においても、こういう要素が含まれていると申しますか、見通しは、今の農家においてはつくのじゃないか、こう考えます。でありますから、あまり早く実際の米価をきめるという考え方、賛成でありますけれども、算定の基礎が非常にくずれますので、今やっていますように、予算米価は米価審議会の議を経て、そのころに実際買い入れの米価をきめるということが適当だ、こういうふうに考えております。
  109. 神田大作

    ○神田(大)委員 ある程度早くきめましても、いわゆるバック・ペイをするということでありますれば、これはそういう欠陥は補うことができるのだ。最近政府は、このバック・ペイをしないような、何かと理屈をつけて、こういう当然農民に支払わなくちゃならぬところのバック・ペイの問題を濁しておるようでございます。農政通といわれ、また農民から非常に信頼されておる赤城農林大臣は、この問題についてどうお考えになりますか。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 やはり一応支払うべきものは、はっきり価格をきめていった方がいいのじゃないか。腰だめ的に価格をきめて、足らなかったらふやしてやる、少し高かったからバック・ペイするというようなことでない方がやはり合理的であり、一つの安定価格支持を含んでいるわけですが、一面においては、そういう点におきましては、安定感を与えている、こういうふうに考えます。
  111. 神田大作

    ○神田(大)委員 このバック・ペイの問題について、もし、その価格差ができた場合、大臣は、農民に支払う意思を持っておるかどうか、お尋ねします。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 現在、終戦直後のように、経済に変動があり、また価格等におきましても、非常に高下の動きが多かったときと違っておりますので、現在におきましては、バック・ペイということの制度をとらずに価格を決定したら、それで買い上げる。ことに予約買付といいますか、予約売り渡しといいますか、そういうことでありますから、価格を決定したもので約束をするということが筋じゃないか、こういうふうに考えます。
  113. 神田大作

    ○神田(大)委員 予約制度と言いながら、米の場合は統制下です。ほかには売れない、そういうような一つの強い規制のもとにあるものは、政府が価格を保障しなければならぬ、物価が上れば、物価が上ったに応じて、これは支払いをするのが当然だと思う。そういう意味合いにおいて、今大臣が言われたことに対しては納得ができない。時間がありませんから、このことについてはあとでまた御質問申し上げます。  それでは予算米価に、いわゆる歩どまりとか、予約に対する特別の金が削られておるようでございますけれども、この点はどうお考えになりますか。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 申し込み加算金百円は、予算上予算米価には組んでおりません。というのは昭和三十年から予約買付といいますか、こういう制度にいたしたのでございます。初めてそういう制度を設けましたので、申し込みの加算というものをつけて、この制度を生かしていきたいということで始まったのでございますが、三十年、三十一年、三十二年、こういうふうにこの制度にもなれてきておりますし、また私どもといたしましても、この制度を、食糧の管理というもの、米の管理というものを続けていくということを声明して、米を売るところの農家の方においても、この制度になれてきた。でありますので、奨励的な意味をもってつけたところの予約申し込み加算金を米価の中に含めるということは、一応これは取り除いておるのであります。申し込み加算をして奨励したものがなれてきて、この制度でいくのだというふうになってきておりますので、今のところその必要がないのじゃないかというところから、申し込み加算金を、予算の上におきましては、予算米価の中に加えておらぬ、こういうことでございます。
  115. 神田大作

    ○神田(大)委員 非常に重大な発言だと思うのでございますが、この予約申し込み加算金をつける必要はないということになりますと、全国で二千九百万石の予約米に対しましての二十九億円という金が農家に入らなくなる。私は、現在米の統制が徐々にくずされつつあると思う。またくずすような条件を政府はいろいろと考えてやっておるわけです。消費者米価を上げて、そうして生産者米価にできるだけさや寄せをしようとしておる。あるいはその他のいろいろの施策によって、いわゆる米の統制がくずされようとしておるときに、予約加算金を除くということは、大きな農家の米の統制に対する不信というものが出てくると思う。私は二年や三年で農民がなじむとは思いませんし、たとい、これはなじむから奨励金を出した、なじまぬから出さぬのだ、こういう性質のものではないと思うのです。これは、農民にとっては、二十九億から三十億の実質的の米価の切り下げになるのでありますから、今の大臣の言明は、非常に重大な影響を農民に及ぼすと思うのでありますけれども、これは、あなたはよく慎重に御考慮の上、そのことをお考えになっておるかどうか、再びお尋ねいたします。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、農民のふところ工合がよくなることは、心から希望しておるのであります。米価の決定の要素には実はなっておりません申し込み加算金というのですから、約束をしたときに、申し込みを確約する意味におきまして、奨励的な意味をもってやったのでありますから、言葉をかえていえば、補助的な意味を持っておるわけであります。でありますから、その金を予算上除いておくということは、それだけふところに入る金は少いかと思いますが、筋といたしましては、これは米の値段の中に入るべきものじゃない、やはり奨励的な補助的なものである、こういうふうに考えていますので、予算米価決定の中には、申し込み加算金を入れない方が筋道が立っておる。米価は米価として、別にいろいろな要素から実際には決定すべきものだ、こういうふうに区別して考えておるものですから、申し込み加算金は、米の価格の中には入れない、こういうことでございます。
  117. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは大事な問題です。あなたは、米価をほんとうに適正なものにするという基本的態度に立ってやるならいい。ところが、あなたは、パリティ方式によってやると言っておりますけれども、農民は生産費補償方式でもってやれということを長年要求しておる。にもかかわらず、こういう農民の生産費補償方式によるところの米価決定を怠って、パリティ方式で米価はきめる、米価はなるべく安くなるようにきめておく、そうして消費者米価を上げ、生産者米価を下げて、だんだんとさや寄せして、統制経済がくずれ去るという方向へ持っていくようにわれわれは見られる。今日せっかくなじんできたところの予約加算金がはずされるということになりますと、農民は、米の統制政策に対しましても大きな不信を持つ、これに対しまして協力することが薄らいでくるのじゃなかろうか、そういう意味合いにおきまして、日本の食糧行政の非常に重大な段階のときに集荷予約加算金をはずすというような考え方に対しては、われわれは絶対賛成できないと思います。こういう問題については、米価審議会におきましても非常に議論になると思いますが、米審においては、おそらくこういうものは、今日はずすべきじゃないという議論になると思う。こういう場合に、あなたは米価審議会の意見を尊重するかどうか、お尋ねいたします。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米価審議会の決定は尊重いたします。尊重いたしますが、農民の出す米が生産費に合うということは必要でございますけれども、再々申し上げていますように、私はこれを価格の中に組み入れるべきものじゃないと思います。米価は米価として、適当に生産費を補償するような形において決定されるのは当然でありますが、申し込み加算金のような奨励金、補助金を価格の中に入れるということは、これはまた非常におかしなことになると思うのです。でありますから、米の価格を決定する場合には生産費を補償するような方向において決定されることは非常にけっこうだと思います。しかし、奨励費、補助金を入れなければそうならぬということは、やはり算定方式が十分でない、こういうことになろうかと思います。
  119. 神田大作

    ○神田(大)委員 生産費補償方式による算定を大臣は強く推進して、そして奨励的な予約加算金というようなものははずすべきだ、こういうお考えでございますね。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、生産費補償とか、所得補償という考え方は、非常にけっこうな考え方だということで、現在研究を進めております。しかし実際問題として、技術的には非常にむずかしい、こういうことで、なかなかそれが結論に達しないということは御承知通りであります。というのは私が詳しく申し上げる必要もありませんが、たとえばバルク・ラインを引くのにも、八〇%、九〇%に引くか、その引き方一つによって非常に価格が違ってくる。あるいは自家労働賃金を評価する場合にも、都市の労働賃金でいくか、あるいは農村の労働賃金でいくか、あるいはその中間をとるか、こういうことで、自家労賃の評価の方式が非常にむずかしい。あるいはまた反当りの収穫の決定等につきましても、非常にむずかしい。それから理論的には、所得方式というのは非常にいいのでありますけれども、農民の所得、あるいはほかの鉱工業の生産費というようなものとの関係があって、すべての物価はすべての労働力を基準としてきめるということになりますと、非常に労働力がかかっておるということであっても、全体の平均の労働力ということになりますと、必ずしも農民の労働力を補償するという形にはならないことは御承知通りだと思います。そういう技術的な面におきまして非常にむずかしいので、研究を続けてきているのでありますが、生産費補償あるいは所得補償方式というものが十分に技術的に結論を得るということが、まだでき得ない状態であります。でありますので、御承知のように米価審議会におきましても、一方においてはパリティ計算をいたしますと同時に、また別な方面にいろいろな生産費方式をとってみて、それと比較したり何かしまして米価決定の答申をする、こういうような事情になっております。でありますから、理論的には私は賛成いたしますけれども、技術的にはなかなか結論に達しない、こういうのが実際問題であります。
  121. 足鹿覺

    足鹿委員長 この際暫時休憩いたします。     午後二時三十七分休憩      ————◇—————   [休憩後は会議を開くに至らなかった]