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1958-03-05 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       有馬 英治君    井出一太郎君       奧村又十郎君    川野 芳滿君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       夏堀源三郎君    平野 三郎君       古川 丈吉君    前田房之助君       山本 勝市君    有馬 輝武君       石野 久男君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    竹谷源太郎君       横路 節雄君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁税務         局長)     奧野 誠亮君         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         国税庁長官   北島 武雄君         食糧庁長官   小倉 武一君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁税部         所得税課長)  亀徳 正之君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月五日  委員高碕達之助君辞任につき、その補欠として  平野三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一八号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)  税制に関する件      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案及び食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。神田大作君。
  3. 神田大作

    神田(大)委員 私は、食糧管理特別会計法改正案等につきまして、若干の質問をしたいと思います。  政府は、昭和三十三年度の米の予算価格を一万二百円といたしましたけれども、これは、三十二年度産の生産者手取り米価が一万三百二十二円五十銭であるにもかかわらず、このような低い価格できめた根拠をお示し願いたいのであります。
  4. 小倉武一

    小倉政府委員 三十三年度予算におきましての生産者米価のきめ方につきまして、まず御説明いたしますが、基準米価といたしまして、三十一年産米手取り米価、これが九千四百七十円、当時の早場の手取り百七十六円を加えまして、九千六百四十六円になりますか、これに、当時昭和三十一年度年間の七月から六月までですが、そのパリティ平均と昨年の十一月のパリティとの比をとりまして、それを乗じまして、その出た答に等級間格差、それから包装代、これを足しますと、一万百九十何円かになるわけであります。それをまるくして一万二百円、こういうふうにいたしたのであります。従いまして、算定基礎において三十二年産米と違っております。三十二年産米においては二十九年から三十一年までの三カ年の平均手取り米価のペースといたしたわけであります。  それからもう一つ違います点は、申し込み加算金が一万三百二十二円五十銭に入っておりますが、それが入ってございません。それから金額は小さくなりますが、軟質米硬質米格差がございます。三十二年産米につきましては、この格差区平均米価の上にプラスされておったわけであります。そういうことを三十三年産米についてはしない。そういったごとが主たる理由で、一万三百二十二円五十銭という昨年産米価格よりは、三十三年度予算に計上しております米価が幾分低くなった、こういうことに相なっておるのであります。
  5. 神田大作

    神田(大)委員 三十三年度の米価算定と三十三年度の算定基準が違うと申しますが、米価というようなものを、毎年々々算定基準を違わせておるようでありますが、これは価格政策としてははなはだまずい政策であろうと思うのです。どうして三十二年度と三十三年度の基準のとり方を変更したか、それをお尋ねします。
  6. 小倉武一

    小倉政府委員 昨年度は、ただいま申しましたように、二十九年から三十一年までの三カ年平均であったわけでありますが、それまでの数カ年間は、実は二十五、六年をベースにしておったわけであります。ところが二十五、六年からもう相当年数を経ておりまして、その間農業生産事情その他も変って参っておるということで、また算定方式につきましても、いろいろの調整をやっておるということで、それをそのまま継続するのはいかにも不適当であるというふうに見られましたので、昨年におきましては、できるだけ最近の年を、ベースにしたい、そういうつもりで、三十二年予算におきましては、三十一年をやはりべースにいたしたのであります。三十一年は、最近年次としては比較的よい年ではないか、よいと申しますのは、米価基準年次としてはよい年ではないか、こう実は考えて、三十二年の予算におきましては、三十一年ベースにしたのでありますが、実際米価決定いたします際に、三十一年では若干工合が悪いのではないかというふうになりましたのが、昨年の六月ごろでございますから、まだ三十一年の年間実態というものが、統計的に把握できていなかったわけであります。そこで、まだ年間統計的実態が把握できていないものについては、それが適当である云々ということを申し上げることは、なかなか問題もあろうということで、三十一年だけでやるのはいかがか、こういうふうに考えましたので、その先の年を入れてみる。そこで何年を入れるかということになりますけれども基準年度としては、そうたくさんの年数をとることは好ましくないということが、一般にいわれておるのでありまして、できるならば二年ぐらいがよろしいかと思いますが、二年入れるとなりますと、三十年は大豊作でありまして、それをべースにしたのでは農家経済がノルマルであるかどうかということの判断をするのは適当でない。若干悪くなりますが、二十九年も加えまして、三年間にするということであれば、三十一年が入りましても、すでに実態がわかっている二十九年、三十年で大体の了解が得られるということで、三カ年にいたしたのであります。ところが本三十三年の予算におきましては、三十一年の実態はすでにわかり得る状態になっておりまして、最近年次としては三十一年というのが一番よろしかろうということで、ベースをさようにいたしたのであります。
  7. 神田大作

    神田(大)委員 そうすると、一万二百円というものはあくまでも予算米価であって、実際には米価審議会等答申によって米価決定されるかと思うのでございますけれども、それに変りはありませんか。
  8. 小倉武一

    小倉政府委員 それは、お尋ねのように、また今までの例が示すように、最終——正式のといいますか、現実に農家から買い上げる米価につきましては、米価審議会にお諮りし、そして決定をする。またいろいろのデータにつきましても、予算の年では最近のものは得られぬわけでございますから、米価決定時の最新の諸事情に基いて決定する、こういうふうに相なるかと思います。
  9. 神田大作

    神田(大)委員 念のためにお尋ねしますが、予約加算のときに、歩どまり加算予算米価には入っておらないようでございますけれども、これについては、政府はどのようなお考えを持っておられますか。
  10. 小倉武一

    小倉政府委員 まず歩どまりの差の問題でございますが、これは私どもの事務的な見解といたしましては、平均米価をべースにして考えますれば、歩どまりのいいものはそれに若干プラスになる、歩どまりの悪いものは、それから若干マイナスになる。幾らぐらいプラス、マイナスするかということは、過去の経験に徴しまして、適正なものをはじくわけでございます。それによって上下開くということが妥当であろうと存ずるのであります。そういう意味におきまして、歩どまり加算は、予算上も実は計上してございません。  それからなお予算の問題といたしましては、実は歩どまり加算も大問題でございますが、金額としましては石当りに直せばせいぜい二、三十円のところでございます。ところが、先ほど申しましたように、二、三十円の問題を非常に厳密に算定するほどのデータが、ほかの面につきましては、そろっておりません。従いまして、そこまでこまかくやるということもいかがかという点もございます。たとえば陸稲などにつきましても、これの買い入れ価格をどうするかという問題がございます。しかし、予算上では、陸稲と水稲を区別してございません。これは、区別しないんだということを政府既定方針としてきめておるからということでは必ずしもないわけでございまして、そういうことで、米価につきましては、未解決の問題はいろいろあるわけでございます。それを、全体といたしまして一万二百円ということで実はお願いをいたしておるわけです。そういう意味もありまして、歩どまり加算についてまでそう云々するという方針を、実ははっきりいたさない点もございますが、気持といたしましては、歩どまりにつきましては、加算ではなくて格差として開くべきものであるということを、実は考え方としては持っております。それから申込み加算につきましてのお尋ねでございますが、これにつきましても、最終的にはこの五、六月ごろの稲の作付状況なり、あるいは当時の経済情勢なり、その他から見て判断しなければならぬと思いますが、予算上計上しておりません理由は、予約制度事前売渡し制度が始まりましてまる三年を経過いたしておりまして、作柄、その他農業関係諸団体の協力等いろいろな事情もございますが、大体所期の目的通り円滑な予約ができておる。従いまして、予約制度はほぼ軌道に乗っておると、見られる。申込み加算金は、予約制度を円滑に運用し、農家の協力を期待するという意味においての奨励的措置であるということで発足したような次第もございますので、申込み加算金は、三十三年度からはやめてもよいのではないか、こういう気持もございまして、予算上は入れてない、こういう次第でございます。
  11. 神田大作

    神田(大)委員 これは、だいぶ重大な発言であろうと思うのですが、予算歩どまり加算予約加算を載せないのは、今の長官の説明を聞くと、もう歩どまり加算というものは僅少なものであるから、硬質米軟質米というような、そういうこまかい芸をやる必要はないから、だんだんとやめたいということ、あるいは予約加算については予約制度ができてからもう三年にもなるから、そろそろこういうことはよしたい、こういうように了解できるのですが、これは農民にとっては非常に重大な問題だと思う。これは、予算委員会、あるいはこの前の大蔵委員会等におきましても、私が大蔵大臣にも質問をしたのでありますけれども、そのときは、米価審議会の意を十分くんでこのことは考慮したいというような答弁をしておりました。ところがきょうは、食糧庁長官が、この歩どまり加算予約加算を廃止するかのごとき発言を、されておるのでありますけれども、これは、全国農民にとりましては非常に重大な問題だと思いますので、その点、今これを廃止する根拠は言われたのでございますけれども、われわれといたしましては、今食糧庁長官が言われた根拠は納得できない。今日予約米に対する制度が三年たったと言いながら、予約制度政府のいろいろの施策によってますます軟化し、崩壊しつつある。これを推し進めるためには予約加算というものをやることが、この予約制度を守る上において非常に大事なことであろうと思います。それからいま一つは、歩どまり加算にいたしましても、相変らず硬質米軟質米というもめは現に存しておるのでございますから、この問題を、ただ単に金額が少額であるというような理由でこれを廃止することは、われわれとして納得できない。この点については、これは、実質的な米価が少くとも百五、六十円程度低まるということになるのでありますから、重大な問題であろうと思う。そういう点について、一体あなたのほんとうの腹はどこにあるのか、いま一回御答弁願いたいと思います。
  12. 小倉武一

    小倉政府委員 歩どまり加算につきましては、額が少いから云々ということではございません。ただ予算上は、そこまできめをこまかくする必要は必ずしもないのではないかと考えられるということを、実は申し上げたわけであります。と申しますのは、パリティ自体も、十一月のパリティをとっておりまして、これは、実際六月にきめますならば、四月か五月のパリティになるわけでございますが、その間半年以上の経過がございまして、幾ら経済が安定しておるとは申しましても、若干の動きがあるわけであります。そういう変動要素がございまするので、そこで二十円、三十円のことを、やかましくどうするということを予算上きっぱりきめてしまうということも、どうかと思われる、こう申し上げたわけ外でございます。つけるかつけないかの問題は、これはお話のように、米価審議会の議を経て最終的にきめるわけでございます。予算上なぜつけていないかと申しますと、格差がございますから開くという考え方もあり得る。われわれとしては、そういう考え方でつけていないのでありますが、最終的には、もちろん米価審議会その他の御意見をお伺いしまして、最終決定をするということに相なると存じます。予約申込み加算につきましても、歩どまり加算と多少同じような関係がございますが、格差とは違いまして、これは主として奨励的な措置であったということで、これも考え方の相違はあるかと思いますが、予算上なぜ計上してないかという御質問でございますれば、奨励的段階を過ぎたのではないか、こういう趣旨でございます。なおこれも、最終的にどうするかということは、実質的には米価の一部分でございまするから、最終的に米価決定願う際にあわせて最終的におきめ願う、こういうことに相なるわけであります。
  13. 神田大作

    神田(大)委員 予算米価としては、歩どまり格差の場合は、これをこまかに数字をはじくことはどうかと思うので、予算米価には入れないと、こう言う。それから予約加算については、長官とわれわれの意見は非常に違っております。長官は、もう予約加算をする時期じゃなかろうというような考えに立っておられるようでありますが、私がさっき申した通り、この食管制度というものはゆるみがちである。そういうときに、この加算を減らすということは、実質的に農家手取りを少くすることでありますし、食管制度を守る上におきまして非常に大事なことでありますので、この点は御考慮願いたい。また私は、あなたが予算上には入れなかったけれども米価審議会の意を十分しんしゃくして考慮するというように了解いたしまして、私は、この点を予算米価にこだわらず、米価審議会の意向を十分しんしゃくして決定する、歩どまり加算にいたしましても、予約加算にいたしましても、従来通りとするよう、米価審議会においては強く要求するだろうと思うのでございますけれども、そういう場合、米価審議会が強くこれを要望した場合は、政府としてはどのような態度をとられるか、お伺いしておきたいと思います。
  14. 小倉武一

    小倉政府委員 米価審議会の席上と申しますか、原案をわれわれ役所が作るわけでございますが、どのような原案になりますか、これは、今から予算とは違う原案が出るというようなことを申し上げては、かえって悪うございますけれども客観情勢変化等がございますので、必ずしも予算通りに、は参らないわけでございます。その席で十分御説明申し上げまして、なおかついろいろ御意見が出て参りますことは、予想され得ることでございますので、そういう御意見につきましては、十分拝聴いたしまして、できるだけ御意見に沿うようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  15. 神田大作

    神田(大)委員 いま一つ米価の中で、包装代の問題でございます。包装代は、予算米価に含まれておると思いますが、一体幾ら含まれておりますか。
  16. 小倉武一

    小倉政府委員 包装代はむろん入っております。石当り百八十八円だと思っております。これは、昨年の予算米価ないし決定米価と同様な額になっております。
  17. 神田大作

    神田(大)委員 何年ごろから百八十八円という価格が出ておりますか。
  18. 小倉武一

    小倉政府委員 しかと記憶ございませんが、三年内外同じ額になっていると思います。
  19. 神田大作

    神田(大)委員 物価はだんだん上っておる、賃金もだんだん上っておるというのに、俵代だけ四、五年据え置きにしてきめておくというのは、不合理であろうと思いますが、どう思いますか。
  20. 小倉武一

    小倉政府委員 お話しのように、俵代をいかに組むかということにつきましては、問題がございまして、この冬実は作るわけでございますから、その実態を私ども調査いたしておりまして、正式のと申しますか、最終的な米価決定には、この冬の調査実態をできるだけ反映するというふうに努めたい、こう思っております。
  21. 神田大作

    神田(大)委員 とにかく四、五年前から、百八十七円か八十八円というような据え置き価格でもって俵代というものが組まれておる。実際にまた米価審議会等におきましても、相当議論はあったけれども、この俵代価格というものは上っていない。三、四年据え置かれる物価というものは、たとえば一番問題になるのは賃金だと思うのです。この賃金も上昇しておる、あるいはパリティも上昇しておるわけです。そういうときに、四年も五年も俵代据え置きにしておいて、しかも、それに対して何らの疑問も持たないで基本米価に組んでおるということは、これは、あまりにも農民経済を無視しておるんじゃなかろうかと思うのですが、その点、いかがお考えですか。
  22. 小倉武一

    小倉政府委員 お話しのように、しかとした実態が私ども把握できておりますれば、あるいはそれによって予算を組むということも考えられますけれども、ただいま御質問にございましたように、昨年の米価審議会におきましても、その点が問題になったわけでございますが、しかし、米価審議会におけるいろいろな御議論にかかわりませず、私どもといたしましては、実はその前の年の俵の生産についても、実態の把握が十分でございませんでした。御意見のような結果には、私どもの推察ではならぬのではないか、こういうふうに実は思われますので、御意見にかかわりませず、決定米価でも俵代は変えてなかったのでございます。しかし、なお詳細な具体的な検討は必要とするであろうということで、この冬実はやっておるのでありまして、まだ結論が出ておりませんので、従いまして、予算米価にも反映できなかった、こういう事情でございまして、ほかに他意はございません。百八十八円で今後据え置きにしていくんだという方針を堅持している、こういうわけではございません。
  23. 神田大作

    神田(大)委員 昨年も一昨年も、この俵代は問題になったろうと思うのです。そういう問題になったにもかかわらず、ここ四、五年これを据え置きのまま通しておって、ことしの予算米価においては、少くとも政府は、そういう不合理なことは是正されるであろうとわれわれは期待しておったのでございますけれども、相変らずこの俵代が同じ価格でもって組まれておるというようなことに対しまして、私は、政府の真意を疑わざるを得ない。あなたは、今調査中であるというようなことを言われましたが、私は深く追及いたしません。  それでは、米価審議会答申によって実際の米価決定する場合においては、このような物価情勢と、にらみ合せて、俵代に対しては十分なる考慮を払うかどうか、それを一応お尋ねいたします、
  24. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま申し上げましたように、俵の生産実態についての調査をいたしておりますから、その結果をできるだけ反映するという方針で参りたい、こう思っております。
  25. 神田大作

    神田(大)委員 それではあなたたち調査した資料を、本委員会一つ提出願います。それは、俵代に対する今まで二、三年前から——今度あなたたち調査する基礎資料です。基礎資料を御提出願いたい。     〔委員長退席横山委員長代理着席〕  次にお尋ねしますが、今度の食管会計法改正によると、調整勘定というものを設けるようでございますが、この調整勘定というのは、どういうあなたたち考えでもって設けようとするのか、それをお尋ねします。
  26. 小倉武一

    小倉政府委員 食糧管理特別会計に設けまする予定の調整勘定の役割と申しますか、目的と申しますか、そういうことに関してのお尋ねでございますが、これは、内地米内地麦等勘定を分けるということと相関連をいたすわけでございます。勘定を分けますれば、収支損益等もそれぞれ独立に処理するというのが、一般の例と相なるわけでございますが、特別会計は、これまで損益収支を一本——収支は若干違いますが、損益は一本に処理して参りました関係、それからまた実態といたしましては、輸入食糧の益でもって、内麦あるいは内地米の損の一部を補てんしている、こういう実態もございます。それを全然無視するわけにも参りませんし、またその間の損益調整等を、ある程度やはり勘定を区分した上でなおかつやっていく方が、特別会計の運営上も適当だろう、こういう意味合いを、もちまして、農産物勘定以外の勘定損益につきましては、それを調整勘定に繰り入れて処理する、こういうことが適当であろうと判断したのであります。  もう一つは、調整勘定資金というのを設ける。特別会計にこれまでいわゆる運転資金、あるいは資本金に相当するのがございませんでしたわけでありますが、補正予算とまた別の法律によりまして、特別会計資金を設ける。この資金が、この調整勘定資金に移りかわるわけでございますが、この資金処理という観点から、調整勘定を置くのが適当である。  それからなお借入金の関係でございますが、申すまでもなく、食糧管理特別会計糧券その他の借入をいたしておるわけございますが、勘定個々については、この借入をそれぞれの勘定別考えるかどうかという、こういう問題が出て参っているわけでございますが、これも勘定別ということよりは、調整勘定一本で調達をするということの方が便利である、かつその方が資金効率の方から見ましてもよいだろうということで、そういう機能を営む調整勘定というものを設けることにいたしたのであります。
  27. 神田大作

    神田(大)委員 この調整勘定赤字を補てんするということになると思いますが、この赤字調整勘定でも補てんし切れない場合、こういう場合は、その損失処理はどうするのですか。
  28. 小倉武一

    小倉政府委員 他の勘定からの損失調整勘定に移して整理するということにいたしました場合に、益もそちらへ移すことになると思いますが、その益と損と相殺してもなおかつ損が残る、こういう場合にいかにするかということでございますが、一つは、資金がございまする場合、調整資金と申しておりますが、これを、取りくずして損を填補するという道が一つございます。もう一つの道は、従来も、あるいは他の特別会計についてもあり得ることでございますけれども特別法によりまして一般会計から繰り入れて損を填補する。方法といたしましては、そういうふうに調整金をくずす方法と、一般会計から入れる方法と、この二つの方法があり得るわけでございます。
  29. 神田大作

    神田(大)委員 今度百五十億円の調整資金を作っております。百五十億円という調整資金は、三十二年度の損失見込みが九十六億円、三十三年度の赤字の見込みが四十三億円、そういうことになりますと、十一億円しか残っておらぬ。この十一億円を、予約加算、あるいは歩どまり加算、あるいは俵装代の値上りというようなことを考慮いたしますると、これは、赤字になることは火を見るよりも明らかであります。赤字になることがもうちゃんと大体見通しがついておるにもかかわらず、百五十億円の調整資金しか持たぬということになりますると、この赤字は、今長官が言われたように、一般会計から繰り入れてこれを補てんするのであるかどうか、その点一番大事なことであるから、はっきり御答弁を願いたいと思います。
  30. 小倉武一

    小倉政府委員 各勘定、事業勘定あるいは業務勘定損益調整勘定に移しまして、差引は損である、その場合に、他方資金があるわけでございますが、まずその資金を取りくずして処理するかどうかということは、出る損の額その他によると思いますが、かりにお尋ねのように資金を、残りの資金と申しますか、そのときにある資金を全部取りくずしてもなおかつ損があるだろう、こういう場合の御質問でございますが、これは、従来の例のように、一般会計から入れるということが大体常道になるんではないか、こう思います。ただそのときの財政事情もございまするし、またそのときに出る、結局差引幾ら損になるかという損の額にもよると思います。多少の額でございまして、これならばそのうち何とかなるという程度のものであれば、あるいは赤字のまま繰り越すというようなこともあり得るかと思いますが、これは、全体としての財政をどういうふうに動かすか、持っていくかということも関連をすると思いますので、あらかじめ決定的にこういうふうにするんだということは、ちょっと申し上げかねると思いますが、おおむねそういう考え方でおるわけであります。
  31. 神田大作

    神田(大)委員 これは、大蔵省の見解も聞きたいと思います。
  32. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 ただいま食糧庁長官の答弁がございました通り考えております。
  33. 神田大作

    神田(大)委員 そうすると、食管会計法の附則第二項に、食糧管理会計に赤字を生じた場合は、一般会計からこれを補てんすることができるというのがありますが、それに基いて、この調整資金百五十億円を取りくずしても、なおかつ赤字が出た場合は、一般会計からこれを補てんする、この食糧管理特別会計法に基いてこれを処理するということに了解してよろしゅうございますか。
  34. 小倉武一

    小倉政府委員 現在ございます附則の第二項との関連でございますが、これは、削除するように今回の改正案ではなっておるわけでございます。この第二項の削除をします理由は、この第二項が、終戦直後の食管特別会計赤字処理することを基本にしてできた法律でございまして、そういう沿革的な理由と、それからもう一つは、先ほど申しましたように、損益処理といたしましては、調整勘定での機能が期待できるという両方でもって、終戦面後できました文句の中にも、当分の聞というふうにございますけれども、こういう規定は削除するということにいたしたのでございます。従いまして、一般会計から損を補てんする、こういう場合におきましては、予算を組むと同時に、繰り入れの特別の法律を制定していただくということになるわけでございます。
  35. 神田大作

    神田(大)委員 これは、非常に重大な問題であります。そうすると、あなた方の考え方は、調整資金を設けて、食糧管理特別会計というようなものは、この調整資金を軸として、それ以上に出ない。調整資金百五十億円限度でもってこれを操作するという基本的な考え方を、あなたたちは持っているのだと思う。そうすると、結局この生産者米価を低目にきめるか、あるいは消費者米価を上げて操作することにしても、もう百五十億円以上は一般会計から繰り入れない、百五十億円限度でもってこの操作をしようという考えが、この法案の中に、あるいはあなたの今の答弁の中に含まれているようにわれわれには聞える。これは非常に大事な問題です。しかも、この食糧管理特別会計法の附則を削って、一般会計から繰り入れるという一つの法的根拠をなくしてしまった。そうすると、あなた方は、赤字ができた場合は、一々法案を提出して、その法案を通して、今度は一般会計から食管会計の赤字へ繰り入れるということになると、非常に大へんなことになると思うのでございますけれども、私が今言ったような腹づもりで、あなたたちはこの法案を出しておるのでありますか、いま一ぺんお尋ねしておきます。
  36. 小倉武一

    小倉政府委員 調整資金の額の範囲内で特別会計の運営による損を押える。こういう趣旨だろというお言葉でございますが、そういう趣旨ではございません。従いまして、ただいまお話のような場合を想定いたしますれば、すなわち各勘定の益、あるいは調整資金をこえるような損が出て参るということが考えられます場合は、たとえば、一つ資金をあらかじめ増額するということも可能でございます。これは、法律資金のワクは限定をしておるわけでございませんから、予算措置だけで、事情が許せばできるわけでございます。従いまして、出たところの損、決算上の損を埋めるという方法だけが残されておる。しかも、その根拠の法の附則二項は削除したからどうということは、必ずしもありません。予算上なり想定上予想される以上に特別な損が出て参るというような場合も、これは全くあり得ないというわけではございませんが、そういうような特別な場合には、これは決算上の損といたしまして、特別法でむしろ御審議願う方が、予算法律と両面から、なぜそういう損が出たかということについて御審議願う方がよりいいのではないか、こういう趣旨でございます。
  37. 神田大作

    神田(大)委員 あなたは、口では調整資金の範囲内で操作するのじゃない、赤字が出れば法律提出して、一般会計から繰り入れるのだというようなことを言われておりますけれども、実際問題とすると、なぜそれでは附則をことさら削除して——今まで、赤字が出れば一般会計から繰り入れをしておる、こういう今までやってきた従来の慣習を、なぜ今回これを削除して、ことさらに一本の法案を作って、この赤字処理をしよう、そういうような非常にややこしい方法に変えたか、この点にわれわれ非常に疑問を持つわけです。これは、大蔵省とも非常に関係があるのですが、私らはもう目に見えているのです。赤字になることは目に見えている。十一億円しか残らないのですから、これに歩どまり加算予約加算を加えれば赤字になる、そういうことがわかっておるにもかかわらず、あえて一般会計からの繰り入れ法文を削除したり、百五十億円の調整資金のワクをはめたりする。そうすると、いろいろな疑問が出てくるのです。それでは外米の輸入をふやして内地米の集荷を少くしよう、あるいはまた外麦の輸入をふやして食管の黒字を増そうとか、あるいは陸稲価格差をつけよう、あるいはもち米の加算をなくしよう、百五十億円の範囲内で操作しようとすれば幾らでも操作できる、いろいろの問題が含まれておる。そういうように非常に大事な問題と関連しておる法案でございますので、これは、現在非常に行き詰まりつつある日本の農業者の経済を危殆に瀕せしむる問題でありますから、私たちは、この問題がはっきりしない限りにおいては、この法案につきまして賛意を表するわけにいかぬ。この点について、そういうことはない、今まで通り陸稲価格差もやらぬ、もち米の加算金をつける、あるいはまた集荷量についての変更はしないのだ、そして赤字が出た場合においては、日本の食糧を安定させる意味合いにおいて、一般会計から赤字を埋めるのだということを、大蔵省の責任者並びに農林省の責任者がはっきりと言明しない限りにおいては、この法案には非常な疑問がありますので、われわれはこれを慎重に審議しなければならぬと思うのですが、その点について、大蔵省並びに農林省の明快なる御答弁を願いたい。
  38. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 私から大蔵省の考えを申し上げます。御承知のように、食糧管理特別会計には現在相当巨額の赤字が出ておるわけでありまして、経理を運営する建前からいいまして、できるだけ経費の節約とか、その他各般の措置を講じて、赤字をできるだけ減らす努力をするということは、また当然の建前であろうと思っております。しかしながら、その赤字を解消するという努力と、その他の重要な事項を決定するということとは、おのずからまた原則が別なものがあると思います。米価は、そのときの、実情に応じまして、与えられた方式に基いて最善と思われるものが適正に決定さるべきものでありまして、従来からその原則は変っておらないわけであります。その建前は、別に今回の改正によって特別に変えられたということではございません。ただ、従来ございました附則の二条は、先ほど食糧庁の長官の説明もございましたが、終戦の直後にできましたいわゆる暫定的な規定でございます。従いまして、適当な時期にこれは当然削ってしかるべきものでございまして、法文の上でも、当分の間となっておったわけでございます。それは、つまり法文の整理ということとして私ども考えております。たまたま今回、一方におきまして調整資金というものが設置せられましたので、そういうものが設置せられた機会に整理したということでございます。御質問にありましたように、この規定を削ったから、一般会計がめんどうを見ないのだというようなことは、直ちに出てくる結論ではございませんので、もちろん食糧管理特別会計に大きな赤字が出ましたときには今度設置せられました資金によるか、あるいは単独法によって繰り入れるか、その方法はいずれにしましても、一般会計において最終的にめんどうを見る以外には方法がないわけでありますから、そういう点においては、従来と特別に考えを変えているということはございません。
  39. 横山利秋

    横山委員長代理 関係質問の要求があります。これを許します。足鹿覺君。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 関連してお尋ねを申し上げたいのでありますが、政府は、最近消費者米価算定作業に入っておられるようでありますが、それはどういうお考えで、どういう機構で、現在どういう作業をしておいでになりますか。この食管関係の二法案を審議していく上において、これはきわめて重要な関係を私は持つと思うので、その点を長官なり、あるいは大蔵当局からお聞きしておきたいと思います。
  41. 小倉武一

    小倉政府委員 消費者米価につきましての専門委員会関係お尋ねと存じますが、昨年の米価審議会におきまして、消費者米価算定につきましては、資料の吟味その他について検討をなすべし、こういう趣旨の答申がありまして、その趣旨に基きまして、昨年末以来いろいろ御相談を申し上げておったのでありますが、その結果に基いて、米価審議会に小委員会を置くことにいたしました。と同時に、米価審議会の専門委員会を置くことにいたしました。専門委員会で専門的に家計米価その他について、消費者米価基礎になるような資料ないし方式の吟味をしていただいて、これをさらに小委員会でお認め願って、適当な機会に米価審議会に御報告願う、こういうことで発足をいたしたのであります。  実は、すでに小委員会と専門委員会との合同会議を二回開きまして、今後はこの一カ月、ニカ月の間は、専門委員会だけが主になろうと思います。とりあえずは、内閣統計局の家計米価をはじくもととしての家計調査についての諸問題を検討する。その後におきまして、家計米価をはじく場合のやり方でございます。御承知のように、現行の家計米価のはじき方は、一応方式として専門委員会、あるいは米価審議会で御審議願ったものがございますが、それが果して現在の情勢でもよろしいかどうかというような点について、家計米価の方式を御審議願う。さらに、その後におきまして消費者価格全体の問題の形成の考え方、これについて御審議願う、こういう段取りになっているのであります。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 消費者米価に非常に問題があることはわかりますが、これはただ単に消費者米価のみならず、米価そのものの価格構成全般にわれわれは問題があるということを従来から指摘しているのです。去年の、政府が諮問機関で作った食糧調査会ですか、あなた方がお作りになった機関においてすら、この価格形成の問題について答申をしているはずなんです。その一つの問題として、中間経費の問題を取り上げておったことも、私記憶しておるのであります。でありますから、米価価格形成の問題については、現在の統制を継続していこうとするならば、当然消費者米価のみならず、生産者米価、あるいは流通経費その他いろいろな点について価格形成自体にメスを入れて、この問題の所在を明らかにして解決していかなければならぬと思うのです。現在の生産者米価についてみても、先ほどから神田委員がいろいろ御質問になっておりますが、加算なりいろいろな形で、基本米価にこまかく政策がとってあるが、この生産費をめぐる価格形成に問題があるから、やむを得ずそういう形がとられておるのであって、農業団体なりその他一般が調べたものと政府生産価格との間にあまりにも大きな開きがあり過ぎるから、一面こういう事態にもなっておると思うのです。そういった問題については一指も染めないで、消費者米価に手をつけていくという意図は、われわれの見たところでは——今度勘定区分を新しく設けてどこのどの勘定区分に損があるか、どの勘定区分には利益があるか、ということを明確にするんだといっておりますが、その区分の結果赤になったときにはどうするかということについては、先ほどからの神田委員質問に対して、明確な御答弁がないのです。今度のこの改正案の内容を見ますと、勘定区分を作ったというだけのことであって、食管制度自体の合理化の問題にも、たとえば価格形成の問題に対する検討の問題も何ら講ぜられておらぬ。あたかもこの法案が出ることによって、食管会計が合理化されて、非常にりっぱになるような印象を表面的には受けますが、内容的には何もないのです。勘定区分を明確にする、しかも百五十億を昭和三十三年度予算において繰り入れてきて、しかもそれは、三十二年度の赤字に大部分持っていってしまって、あなた方の予算の説明によりますと、大体四十三億円の損失が出るということを一応想定しておられるにすぎない。そうしますと、米価審議会なり消費者米価算定委員会の作業が進み、あるいはその答申があって、政府がその答申を尊重し、意見を尊重する場合に、当然損失が多くなっていく場合も、あなた方が正式におやりになるなら、私は当然出てくると思うのです。でありますから先ほどからの神田委員質問にもあったように、客観的に見てそういう事態の起きることは明らかであるように私ども思うのです。ところが、それに対する措置について、何ら具体的に御答弁ができぬということになりますと、当然大蔵大臣、農林大臣の御出席を求めて、この問題に対する明確な政府の態度を聞かないことには、この法案の審議を全うしたことには私はならぬと思います。巷聞伝えるところによると、農林省が麦価安定基金制度こあれだけ熱意を持っておったの投げてしまって、あっさりこの二法案でケリをつけて本国会に提出したいきさつについては、大蔵、農林両省間において、とにかくこれ以上の赤字を出さぬように努力していこうという暗黙の了解があったとか、あるいはそういうことについて意思の統一が行われたその結果が、この法案の提案になってきたのだという話さえわれわれは聞いておる。あなた方にそれを聞いてみたところで、何とも言えないと思いますから、これは両大臣の出席を求めて、その間の事情を明らかにした上で、私はこの問題に対する態度をきめていきたいと思いますが、もし消費者米価算定委員会、あるいは米価審議会その他において、現在の百五十億の調整勘定への繰り入れ以上に損失がありとする事態が起きたときには、これはどうなるか、また買上数量その他の点において、損失がたくさん出るような事態が起きたときにはどうなるのか、また豊作であった場合はよいが、容易ならぬことではありますが、凶作になった場合には、勢い米価問題にも変化が起きてくると思う。そうすると、いわゆる調整勘定についてはきわめて弾力性のある態度がとられなければ、この両法案を出された意図は何ら意味ない。ただ一応区分を明らかにして、その経理の内容を明確にするだけのことであるならば、われわれはこういう法案に期待するものは何もありません。問題は、従来農産物価格安定法や飼料需給調整法やあるいは食管法や、いろいろなものでどんぶり勘定になって、何で損失が出たのか、何で利益が出たのか、あなた方は知っておるかもしれないが、国民一般はわからない。だから、この区分を明らかにして米価対策を立てようというのが、少くとも臨時食糧管理調査会の答申の趣旨であったと思うのです。ただこれだけのものを出して、しかも予算の制約をはっきりつけて、先はどらなるかわからぬというようなことでは、事実においてどこにしわを寄せていくかといえば、結局消費者米価を上げていくか、生産者米価を安くするか、あるいは買入数量をうんと減してもうかる外米をたくさん入れるか、内地麦の買上数量を制限してこの損失をなるべく少くしていくか、いずれにしてみても、消費者か生産者かにしわが寄ってくることは明らかじゃありませんか。こういう案を食糧庁長官の責任において了承され、政府の立場において提出されたそのほんとうの意図はどこにあるのです。一体何をこの法案は目途としておるのですか。小倉さんにその明確な御所信を聞いておきたいと思う。今まであなた方がとられた態度とは、およそ似ても似つかぬものです。
  43. 小倉武一

    小倉政府委員 食管会計制度改正として御審議願っております今回の両法案でございますが、この趣旨といたしますところは、お尋ねの中にもございましたように、経理の明確化、よって来たる損益処理を適正にする、こういうことでございまして、それ以上特に食管あるいは食糧管理制度の運営、すなわち供出なり、価格決定なり、その他についてどうこうするという考え方は持っておりません。むろん経理の区分をすることによって、今後いろいろ政策上のことを考えていきます場合に、的確な経理上の資料が得られる、あるいは一般にもよりよく御認識願うということはあると思いますけれども、これによって特別会計制度を越えて、食糧管理の運営面におきまして、価格について、この制度は今回の改正がなかりせば変ったろう、あるいは買入数量についてどうこうというようなことは毛頭考えておりませんし、またそこまでいくべき性質のものでもないわけでございます。そこで、もの足りないではないかというお説でございますが、これは、別途にまたお考えを願わなければならぬ問題でありまして、食糧管理制度プロパーの問題としてお考えを願いたいと存ずるのであります。  それから消費者価格との関連について、ちょっと触れられたわけでございますが、消費者価格につきましては、当面の消費者価格をどうするという差し当っての懸案があるわけではございませんので、前回消費者価格改訂のときにいろいろ経験をいたしましたことから、消費者価格算定において、特に家計米価算定その他につきましてもっと的確に、あるいはもっと現在の事情に即した資料、方式というものが考えられはしないか、こういうことから発足いたしたわけでございます。そこで出ました結論を、この経理区分にすぐ結びつけまして、生産者なりあるいは消費者にしわ寄せをするというふうな考え方は、全然いたしておりません。経過から申しましても、今度の消費者価格の検討と経理区分とは、いわば別々の動機から実は発足いたしておりまして、その間に特別脈絡をつけておらなかったわけでありまするし、またこれらも、特にそこに脈絡をつけようというふうな考え方はいたしておらないのであります。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 関連質問ですから、もう一間でやめますが、また適当な機会に両大臣の出席を求めて、よくただしてみたいと思います。  食管会計法の一部改正の中に、いろいろわからない点がたくさんあるのですが、たとえば利益及び損失処理について、業務勘定の利益または損失は政令で定めるところによって調整勘定に移して整理するという項目がありますし、調整資金設置については、調整勘定一般会計からの受入金及び調整勘定の利益の組入金に相当する額の調整資金を設ける等、利益あるいは損失処理、あるいは繰入金処理というようなことをめぐって、いろいろな規定があるわけですが、結局私は、大臣でなくても、あなたがほんとうに、絶対に消費者や生産者にしわを寄せないと言われるならば、出てきた赤字は他の処理によって一般会計から埋めます、こういう条項こういう条項によって埋めて、決して他には迷惑を及ぼしません、こういうはっきりとした言質をお与え願えれば、これ以上私は申し上げることはない。勘定区分を明確にすること自体はけっこうなことです。ですから、農産物価格安定法では、損がついたものについては、これは、当然政府は、その法の命ずるところによって埋めていくということが明らかになっておりますから、これは、こういう形に米の場合も麦の場合もはっきりしていくんだ、こういうことを明確にされれば、私はそれで一応まずこの案だけについてはわかるのです。米価算定の問題や、いろいろな問題は、他の問題としましても、先ほどから言いますように、この一部改正法案は、一応農産物等の安定勘定の問題については明確にしております。たとえば、損失は、積立金を減額して整理するとはっきり規定しておりますから、そういう点では一応わかるのです。だから、米の場合は、先ほどからも神田さんが言っておられるように、格差で片をつけると言われますけれども歩どまり金も、去年まであったものをはっきり落しておるし、予約奨励金も、はっきりこれを落しております。それだけは確かに手取りが減ってくる。これを基本米価に正しく織り込んで、そして農民も納得し、一般も、食管会計の内容においてある程度めどのつくような価格が示されていくならば、それでよろしいのです。ところが実際問題としては、そういう肝心なことについてははっきり規定がないから、われわれとしては疑問を持たざるを得ない。結局において、消費者米価算定委員会をあたふたと作って、その作業を開始しておるし、その答申はどういう答申ができるか、私どもはわかりません、あなた方の意図もお聞きしておりますけれども、はっきり聞くことができませんから、結果を見て論ずる以外に方法はありません。もし消費者米価の引き上げをやむなしというような答申が出た場合は、また変った情勢が出てきますし、これは、いろいろ関連が出てくると私は思うのです。だから、そういうことは議論しておっても始まりませんし、大蔵省の責任者がここにおられぬからやむを得ませんが、あなたはいやしくも食糧庁長官とされて、今私が指摘したようなときは、こういう措置によって、何ら消費者米価を上げたり、生産者米価を切り下げたり、あるいは買い入れ数量を動かすというようなことはありません、こういうことを大臣にかわって御言明になれば、私は一応この問題については——派生するいろいろな問題はあります、食管制度全体の大きな問題は残っておりますが、それは他日にして、この一部改正法律案の問題だけは了解できる。それのはっきりとしたことのない限りは、私どもは、ああさようでございますかと言うて通すわけには参りません。両大臣の出席を求めてとことんまでやる。これは、いやしくも食管制度の根本をゆるがす問題につながるのでありまして、そう簡単にこの問題の審議を粗漏にするわけには参りません。ですから、その点、あなたの御言明で、責任のある御答弁がいただけるならばよし、それができなければ、両大臣の御出席を、求めて、その点を胡確にしていくことによって、われわれはこの法案に対する態度をきめていきたいと思う。その点をもう一応お尋ねして、御答弁によっては、両大臣の御出席を求めて、さらに慎重に審議したいと思う。
  45. 小倉武一

    小倉政府委員 初めに、消費者価格をもう一度ちょっと御説明させていただきますが、これは、当面消費者価格を上げ下げするという必要性があって、そのための専門委員会なり小委員会というわけではございませんので、将来消費者価格について問題が起きます場合、どういう資料、どういう方式で検討したらいいかという、そういう意味での、いわば抽象的な研究検討でございます。  それからいまお尋ねの損が出た場合の処理の仕方でございますが、これは、今回の改正法によりまして、技術的には従来と若干変るところがあるかと思いますけれども方針といたしまして、すなわち食糧管理の運営についての関係におきましては、特に従来と変えるということは考えておりません。従来通り考え方であります。従いまして、これから経理区分の結果、その損を消費者に転嫁するとか、あるいは出た損について、それを埋めるために買い入れ数量をかげんするとか、あるいは生産価格の切り下げなど云云するということは、毛頭考えておりません。そういう点は、従来通りというふうに考えておるのであります。
  46. 神田大作

    神田(大)委員 あなたは、足鹿委員質問に対しまして、いろいろ言明をされておるようだが、それじゃ、一つ私は突っ込んでお尋ね申し上げます。食管特別会計法の一部改正法案の第八条の三項においては、損失の補てんについては、調整資金を減額し処理することが不可能なる場合は、どういうふうにして処理するかということが書いてない。しかしながら第八条の四の農産物等安定勘定では、はっきりと、そういう場合の損失は、繰り越しとして整理する、こら明文してある。第八条の三の食糧管理に対しては、この赤字の問題を、あなたはここでは、損をすれば、調整資金が足らなければ一般会計から入れると、こう言いながら、その一般会計から入れる法的根拠であるところの食糧管理会計法の規則を削って、その道を閉ざした、そうして一般会計から損失補てんできないように法律改正しておいて、口では、一般会計から特別の法案を作ってやるんだということを言っておるが、この農産物等安定勘定には、はっきりと、これは繰り越しとしてあるんだけれども、この関連はどうなんです。どうしてこう同じようなものでありながら、ここに区別しておるか、また、ほんとうに一般会計から入れるつもりがあるならば、ここに、損失は繰り越して一般会計からあとで埋め合せるとかなんとか、やはりここで法律としてちゃんと明記すべきなんです。明記してないところに、非常に疑惑を持たれると思うのでございますけれども、この点はどうです。
  47. 小倉武一

    小倉政府委員 第八条の三と第八条の四の書き方の違いでございますが、第八条の四の第二項をごらんになっていただきますと、「農産物等安定勘定ニ於ケル毎年度ノ損益計算上ノ損失ハ積立金ヲ減額シ之ヲ整理スルモノトス」というふうになっております。ところが他方八条の三の農産物以外につきましての調整勘定につきましては、あとの方でありますが、「当該資金ヲ減額シ処理スルコトヲ得」こうなっておりまして、することができる、一方は「整理スルモノトス」ということで、整理する建前を明示しておるわけでございます。従いまして、整理した結果なお足らない分をどうするということが、八条の四の場合には、法文の上で形式上当然出てくるということで、その整理をするために、ただし書きを置いたのであります。八条の三におきましては「得」となっておりまして、処理しないこともあり得る、処理した場合にはどうだということを書けば書けないこともありませんが、「得」となっておりますので、ここはここでとどめたわけでございます。この得という規定によりまして処理することの結果、足りない場合があるということになりますれば、これは当然に繰り越しということになるわけでございます。これは文章上のそういう表現の結果出た違いにすぎないことでございまして、実質的に区別をしておるというわけではないのであります。
  48. 神田大作

    神田(大)委員 これは、大へんな違いです。あなたは、文章上の単なる表現の違いであるというようなうまいことを言っておりますが、片方は、八条の三においては「調整資金二組入レ又ハ其ノ損失ノ額ヲ限度トシテ当該資金ヲ減額シ処理スルコトヲ得」、処理することができる、処理できなかった場合にはどうするんだということが書いてないのです。処理できないこともあるのです。こういう場合もあり得るのです。ところが農産物等安定勘定の方には、第八条の四には、「積立金ヲ減額シ之ヲ整理スルモノトス但其ノ損失額中当該整理ヲ為シ得ザル部分ノ金額損失ノ繰越トシテ之ヲ整理スベシ」こうはっきり書いてある。これは、いわゆる積立金をなしくずしても足らなければ、損失を繰り越せるんだ、片方においては、調整資金以上に赤字の出た場合の処理は書いてないのです。これは、行きと帰りくらいの違いがあるのです。これは、あなたの言葉の単なる表現上の問題じゃない、本質的な違いがあるのです。それでいて、われわれの質問に対しては、あなたは一般会計から損失を入れるというが、一般会計から入れるならば、なぜこれは損失を繰り越すということを書かないのか。法治国である以上は、法文に明記されないで、口先だけで弁明したって、これは納得できないのですが、その点、どう思うのですか。
  49. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 第八条の三と第八条の四で区別した書き方をしておりますが、第八条の四の農産物の安定勘定、これは、調整勘定におきまして損益調整はいたさぬわけであります。  それで、農産物関係につきましては、特に積立金をする、利益があったら必ず積み立てなければならぬ、こういういわゆる積立金の制度を書いたわけであります。そうして、積立金が何ほどかできますれば、損失調整がそれ自体としてできる道を開いておるわけであります。従って、その積立金の規定と関連いたしまして、これは、従来からある規定でございますが、「損益計算上ノ損失ハ積立金ヲ減額シ之ヲ整理スルモノトス但共ノ損失額中当該整理ヲ為シ得ザル部分ノ金額損失ノ繰越トシテ之ヲ整理スベシ」ということで、いわゆる積立金の取扱いに関連して、従来からいわば会計処理の常識的な、注意的な規定としてここに入れておるわけであります。従いまして、御質問にございますような意味において、特別に重大な意味をここに置いたというつもりはないのであります。ただ第八条の三におきまして、食糧庁長官からもすでに説明がございましたが、「処理スルコトヲ得」、第八条の四のように義務的な書き方にはなっておりません。これについて、いろいろの御質問があったのだと思うのでありますが、これにつきましては、いろんな方法が実際問題としても考えられるわけであります。そのときの財政状況、あるいは食糧管理の状況等、いろいろ諸般の情勢を勘案いたしまして、場合によっては、一般会計から単独法によって繰り入れる道も可能であるし、また場合によっては、調整資金を増額する必要があるかもしれない、そういうことも考えられる、こうでなければならぬという一方的な規定をするということは、非常に処理の弾力性を欠くのではないかということで、ここに「処理スルコトヲ得」ということにいたしたわけであります。そういう意味でありまして、この規定から直ちに御質問のような趣旨の、重大な意味を持たせるというつもりはございません。
  50. 神田大作

    神田(大)委員 そうすると、この調整資金というものが非常に大事なものになってくる。果して、それでは百五十億円でもって調整できるかできないかということ、これは、この予算を組む上において、あるいは調整資金を百五十億円ということにする場合に非常に大事な問題だと思うのです。これは、あだやおろそかに途中でもって変更すべき問題ではない。あるいは農産物等安定勘定のように、利益があれば積み立てる、損すれば積立金から取りくずす、それでも間に合わなければ繰り越しする、これははっきりしております。調整資金の場合は、百五十億円の範囲内においてこれを処理するという大きな意味が含まれておると思う。私がさっきから質問しておるのは、あなたたちは、この食管会計を百五十億円の調整資金の範囲内において処理しようとしておる、この意図がそこに見えるのではないかということを私は言っておる。だから、この百五十億円の調整資金でやるべきか、あるいは二百億円の調整資金でやるべきか、あるいは百億円の調整資金でやるべきかという調整資金の額が、非常に重大な問題だと思うのです。それで、この法文から見ますと、赤字になった場合は、一般会計から入れるというようなことは、そのつど、そのつどの状況によらなければできない。今までは、一般会計から全部赤字を繰り入れた、ところが、これは何か濁して、赤字が出ても、一般会計から場合によっては繰り入れるが、場合によっては繰り入れないというような言明だと私は思うのです。そうなりますと、われわれは、あなただけの答弁では、この法案を審議するわけにはいかぬ。なぜかというと、それはさっき足鹿委員も言ったように、生産者米価に響き、消費者米価に響き、あるいはいろいろの加算額に響き、あるいは輸入量に響き、あるいは集荷量に響くのであります。あなたたちの今までの答弁では、私は満足いたしません。これは重大な問題でありますから、私は、今後農林大臣並びに大蔵大臣を呼んで、これらに対する明確なる答弁がない限りにおいてはこの問題は進行するわけにはいかぬと思うのでございます。それで、重ねてお尋ね申し上げますが、一体百五十億円の調整資金というものは、どのような根拠のもとに作ったか、お尋ねいたします。
  51. 小倉武一

    小倉政府委員 運転資金が主たる役割でございますから、特別会計全体の仕事の量から見ますと、相当多額なものが繰り入れられましても、多過ぎるということではないわけです。従って、最高を押えるということは、結局財政が許すかどうかという問題に帰着すると思いますが、最小限度の方は目安がつくのではないか、と申しますのは、赤字のまま泳ぐということは特別会計としては健全でありませんし、また赤字をかかえて動くということになりますと、赤字がさらに赤字を生むということになりますので、予想される赤字以上の額でなくてはならぬだろうということで、先ほどもお話の出ておりましたような三十二年の見込損九十六億、それから三十一年の見込み赤字四十三億、これらを加えまして、それ以上でなくてはならぬということで百五十億、こういうふうに押えたのでございます。
  52. 神田大作

    神田(大)委員 私が先ほど言ったように、九十六億の赤字、本年度の四十三億の赤字、残るものは十一億円しかない。この十一億円ではたとえば予約加算考えてみますと、これは百円にいたしましても、大体三十億円になる、あるいは歩どまり加算を五十円にしましても、三千万石としまして十五億になる、これは、去年通りにいたしましても、赤字になることは火を見るよりも明らかです。そのはか、今度は俵代とか、そのほかパリティ指数の上昇等によっても違ってくる、こういうふうに、もう今日において、百五十億円では足らぬということが十分わかっておりながら、百五十億円の調整資金だけでこれを何とかしてやっていこうというのには、百五十億円でやっていける魂胆があるのか、何かあなたたちの基本的な考えがあるのか、それをいま一度お尋ねします。
  53. 小倉武一

    小倉政府委員 先ほども申し上げたと思いますが、調整資金、あるいは正確にいえば、補正予算でやります資金百五十億円の範囲内で三十二年度と三十三年度の特別会計全体の運営をやっていくんだということを、ここで決定していただくという意味ではございません。これは、予算上想定される、損益考えますれば、その程度で大体まかなえるということで百五十億ということでございまして、それでもって、今後あらゆる仕事を百五十億の中でまかなうのだというわけでもございません。従いまして、資金のワク等についても、法律上の制限はございません。資金を増額するということも、場合によってはあり得るかもしれませんし、あるいは一般会計からの繰り入れというようなことによって処理するということもあると思いますが、そういう方途はあるわけでございますから、この資金ワクでもって今後のことを処理するというわけではない。また制度的に、あるいは私どもの意図として必ずそうするのだということを申し上げておるわけでは毛頭ございません。
  54. 神田大作

    神田(大)委員 この調整資金については、財政法から見ましても疑義があると思う。財政法によると、年度内における費用は、その年度の歳入によってまかなうという原則があるわけです。ところがこの百五十億円は、使うがごとく使わざるがごとく、はっきりしておらない。それにもかかわらず、こういう調整資金というような資金を設けること、それ自体に財政法上の疑義があると思うのでありますが、この点はいかがです。
  55. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 財政法の四十四条にございますが、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」こういう規定がございまして、この財政法の規定に基きまして、各種の資金が設けられているわけでございます。その資金が設けられました場合には、資金の本質といたしまして、当然一会計年度、普通の歳入歳出が縛られているような意味の年度区分の制限というものに属さないということになるわけであります。今回この資金を設けましたのは、たびたび御説明申し上げましたように、本特別会計の経理の運営を円滑にするために運転資金を設ける、こういう趣旨のもとにこれを設置いたしたわけでありまして、これは、四十四条に基いて資金設置しているわけでございます。従いまして、この法律によりまして、当然年度の例外の取扱いを受ける、こういうことになると思います。
  56. 神田大作

    神田(大)委員 去年われわれは、この食管問題で、あなたたちはなぜこの赤字を補てんしないのか、こう言ったところが、あなたたちは、まだ決算がはっきりしないから補てんしないのだと逃げて、答弁しなかった。それがことしは、決算もしないうちに、三十二年度の見込みのやつを調整資金だとかなんとかと文句をつけて作ってやっている。あなたたちは、どうして去年の言明とことしの言明と違う解釈をしているのか。見込額というものは、決算がはっきりしなければ、これを使うことができない、これは、去年あなたたちが答弁したのが、私は正しいと思う。決算が確定しなければ赤字の補てんはできないとあなたたちが言明したのは、正しいと思う。ところがことしはどうか、おかしいじゃないですか。それはどうですか。
  57. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 昨年この赤字繰り入れの問題について、御議論があたようであります。ただ、その際の議論を見ますと、当時は消費者価格決定という問題を控えておりまして、それがまだきまっておらなかった。そういう重要な問題がまだきまっておらないのであるからして、そういうことがはっきりしたところでもって繰り入れた方が適当ではないかというふうな議論になっておったようであります。しかし、この繰り入れの全体の議論といたしましては、必ずそれ以外の方法しかないのだというところまでの議論ではないように承知しておりますし、繰り入れの方法については、いろいろと考えられると思います。私どもは、この繰り入れの方法について、どういう方法がいいかということについては、それぞれに短所長所があるように思われます。今回は、たまたま運転資金設置いたしまして、その運転資金を、場合によって損失処理の場合に使えるということになったわけでありますから、それらの問題に、結果的に総括的におこたえできたことになると思っております。この損失を減額整理いたしますときは、いずれにいたしましても、金額が決算的にはっきりした場合に、それを減額整理するわけでございます。
  58. 神田大作

    神田(大)委員 財政法の第四十四条における資金というものは、この資金を設定して、それがだんだんとなしくずしに資金が使われるという場合に、財政法四十四条によって資金というものは設置するのだと思う。ところが今度は、あなたが今説明したように、運転資金というようなものをこの資金で設定する。財政法第四十四条に基いて設定するというのは、これはおかしいじゃないか。これはもう使わぬというのか、あるいはそれがなしくずされるという資金であれば、それは法的に、財政法四十四条に基いて設置することができる。あなたの言うように、これは使ったり、あるいはふえたり減ったりするような資金を財政法第四十四条によって設置するということは、法第四十四条の精神に基かないと私は思うのでありますが、その点、いかがですか。
  59. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 この財政法四十四条の資金の性格については、いろんな場合が考えられると思うのであります。しかし、いわゆる資金として財政法がいっておりますときには、おおむね回転するというか、リヴォルヴする資金を大体称していっておる場合が多いのでございます。外国為替資金、その他いろんな資金が設けてございますが、いずれもリヴォルヴするという場合が多いのでございます。
  60. 神田大作

    神田(大)委員 この問題については、私は疑義を持っておりますので、この点は保留いたします。時間の関係もありますので、あと関連質問があるそうですから、関連質問に……。
  61. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 佐藤さんに一問だけお伺いしたいと思います。問題は、食管特別会計赤字について、よく中間経費の問題その他が論ぜられるのであります。しかし、御承知のように、昭和八、九年当時二四%から二二%くらいあった中間経費が、現在は一四%くらいになっておるということで、もういじくる余地はない。問題は、その食管特別会計赤字を論議された中で、今度の六勘定についても、一歩前進だということで出しておられますけれども、私は、さほどの意義は認めておりません。むしろここでやるべきことは、たとえば各種の集荷に対する奨励金なり、あるいは農産物の検査費なり、事務人件費、こういったものを、むしろ一般会計から出すべきであった。こういった勘定を設ける際に、六勘定を設ける際に、一歩前進させても、むしろこういったものについては一般会計から支出するという方向をとるべきであったと思うのでありますが、これについて、こういった措置をとられなかった理由、この点についてお伺いしたいと思います。
  62. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 この経理区分を明確化するということは、昨年以来のいわば要請になっておりまして、私どもはまた経理を見る上からいっても、当然の議論だろうと思います。そういう、いわばきわめて当然のことをやったわけでありまして、実はあまり大したことではないと私自身も思っておるのであります。つまりその経理の手続を明確にするということでありまして、それ以上の特別の意義をわれわれは考えておるわけじゃないのです。こういう経理を明確にしておく、運営していくという必要からきておるので、御承知のように、特別会計といいますのは、むしろ事柄の実態は別にございまして、そうして国の会計の整理というものを、一つ特別会計を作ってやるということが便宜であるというものから出てきておるわけでありますからして、そのことから直ちに実態的にどうという結論に特別会計法からくるとは、実は私ども考えておらない。そういう意味で、われわれは経理の明確化を期するということは、特別会計を運営する上においての、それ自体の当然の要求であるという程度の気持でおります。また、その一般会計からこれを入れるか、一定の経費を入れるかどうかという問題でございますが、これは、なかなか重要な問題だと思います。これにつきましては、実はいろいろと農林省とも研究をいたしたのでございますが、なかなか明確な結論が出るまでに至りませんでした。いろいろとむずかしい点、食糧庁長官からもお話があると思いますが、われわれも、研究はできるだけしたいと思っておりますが、結論を得るまでに至らなかったということでございます。
  63. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その食糧管理というものは、国策としての経済行為なんです。それについて、先ほど申し上げましたような点について、いろいろ論議があってむずかしい、どういう点が障害になっているのですか、その点、いま少し具体的にお話し願いたいと思います。
  64. 小倉武一

    小倉政府委員 一般会計食管会計との負担の関係、結局一般会計と消費者その他の負担の関係というようなこにもあるいはなるかと思いますが、この点について問題になるのは、主として中間経費と俗にいわれておる部門でございます。そのうちで、実は昨年の春以来一々検討をいたしたのでありますが、同様に、人件費ももちろんのことでございますが、運賃、それから金利、保管料等についての検討を重ねたりますのは、結局事務人件費、それから運賃等の一部ということになろうかと思います。まず運賃、金利等について申しますと、運賃金利保管料でございますが、運賃は、当然に消費者負担ということでやむを得ないだろう、それから金利、倉敷については、一部一般会計負担が考えられはしないかという点が問題になりまして、あるいは問題にいたしまして、検討いたしたのでございますが、どういう点かと申しますと、一つは、食糧のことでございますから、年々需給が変動するわけでございます。平年作以上、あるいは平年作以下の場合に、いろいろ予想以外のことが起ってくる、そういう予想以外の経費というようなものは、一般会計で持ってもしかるべきじゃないかということが言い得るのではないかという意味で、検討したのでございますが、まず金利の点につきましては、金利は国庫余裕金、食糧証券その他でまかなっておりますが、一般の事業資金の金利として見ますと非常に低い金利に実はなっております。それから財政当局の方でも特段の御協力を願いまして、こういうものを相当ふやして、無利子の金を入れていただいておる、そういった関係上、特に金利の関係上消費者に迷惑をかけておるということはないのではないか、こういうふうに考えられるのであります。それからまた保管料等につきましては、結局一時、非常に豊作でありますれば、在庫が多くなります。その結果、保管料がふえるということもございますけれども、これも、結局生産者ないし消費者のためであるということにかんがみますれば、どうも財政負担ということにもなかなか参りかねる。それから最後の事務人件費の点でございますが、事務人件費につきましては、これは、今回の経理区分にかかわりませず、やはり各部門に属さないで、業務勘定として一括処理しなければならぬように、各勘定にまたがった仕事をやっております。しかも、その間の仕事の種類が多岐多端にわたっておりまして、一刀両断に、これは当然に全部一般会計で持つべきだ、こういう議論にはなかなかならないということも、よくおわかりいただいておると思うのでありますが、そういう意味で、ここからここまでは一般会計という線は、なかなか引きにくいような実情であったわけであります。しかも、特別会計の全体の運営から見ます損が、しからば事務人件費の当然一般会計が持つべしと考えられなければならぬ部分にちょうど匹敵するような損で済むかどうかということになりますと、損になるというふうに保証することはできないのが実情でございます。かりに事務人件費の何分の一というものを一般会計から持っていただく、あとは全部消費者に転嫁してよろしいんだ、こういうふうになるかというと、必ずしもそうでない面が出て参りますので、そこを厳密に割り切るということが、まだ結論を得ない段階でございます。今回の特別会計改正の機会には、そこまで御審議を願う段取りには、実は至らなかった次第であります。
  65. 石村英雄

    ○石村委員 神田委員質問に関連して、ごく簡単にお尋ねしますが、六条の三の規定、六条の五の末尾の「調整資金二充ツル為一般会計ヨリ之ヲ繰入ルルモノトス」この関連ですが、八条の三は「損失ノ額ヲ限度トシテ当該資金ヲ減額シ処理スルコトヲ得」こうありますから、これは、損失の額というものが、その調整資金より以下であるということを前提として作られた法文であろうと思うのです。これをこす場合のことではない。損失の額がそのときにある調整資金より少額の場合に、この条項が考えられて作られておる。従って六条の五の「調整資金二充ツル為一般会計ヨリ之ヲ繰入ルルモノトス」というのは、損失の額が調整資金より多いということが予想せられる場合には、六条の五によって、一般会計から調整資金をまず増額するということが前提とされていると考えておる、こう理解していいわけですか。
  66. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)政府委員 これは、いわば手続規定でございますが、実態的に第八条の三に結びつくというものでございませんで、そのときの予算の定めるところによりまして繰り入れるということになっておるわけであります。
  67. 石村英雄

    ○石村委員 どうもわかりませんが、関連質問ですから、またあらためて質問することにいたします。
  68. 神田大作

    神田(大)委員 この問題は、長官並びに大蔵省の主計局次長の答弁には、われわれ非常に疑問を持っております。それは、後刻大臣が来てから明確にしていただきたい、こう考えております。  それで質問を一転いたしまして、今定員外の職員を定員に入れろという問題が起きておりますが、食糧庁には、ずいぶんたくさんの定員外の職員がおるようでございますけれども、これに対しまして、長官はどのような考えを持っておられるか、御質問申し上げます。
  69. 小倉武一

    小倉政府委員 定員外の職員につきましては、いろいろ待遇上の問題、本人の仕事に対する熱意の問題等もございまして、可及的に正式の定員に繰り入れる、こういうことが私どもの念願でございまして、そういう方針で今後もいきたいと思いますが、幸い今回、全部じゃございませんが、相当数定員に繰り入れることができたわけでございますが、なお今後も、今申しましたような方針でいきたい、こういうように考えております。
  70. 神田大作

    神田(大)委員 たくさんの人が定員に入れることができたと申されておりますけれども、食糧庁関係においては、二年以上の職員でまだ職員に入っていない、いわゆる定員外の職員が農林省全体として一万七千人ある。     〔委員長退席、黒金委員長代理着席〕  ところがそのうち六千人か八千人程度しか入っていないということになりまして、これは半分にも満たない。しかも、この中で、食糧庁関係の人が定員外になっている人が多い。こういう人たちは、非常に安い待遇で、しかも定員に入れられた職員と同様に非常に苦労して食糧管理の仕事に従事している、こういう点について、少くとも二年以上の職員は全部これに入れるような努力をすべきであろうと思いますけれども、あなたは、これに対しまして十分努力しているというお話で、まだ努力は足らぬと思いますけれども、この点、どうお考えでありますか。
  71. 小倉武一

    小倉政府委員 できるだけそういうように努めたいと思います。
  72. 神田大作

    神田(大)委員 それから、先ほどの一般会計の問題に関連いたしまして、一つだけお尋ねしますが、この食管会計の中で非常にむだがあると思う。その中でも運賃の問題でございますが、この運賃は、一体どういうふうな契約でなされているか、お尋ね申し上げます。
  73. 小倉武一

    小倉政府委員 これは、今お話の出ますように、食糧庁の取り扱います米麦その他全体につきまして、年間一本の契約で日本通運と約定いたしまして、それによって運送をする、こういうことになっております。
  74. 神田大作

    神田(大)委員 その点は、私もわかります。そうでしょう。しかしながら、この運賃の契約に関連いたしまして、たくさんな疑問があるわけです。それは、今内藤委員もあとでゆっくりやれと言うから、あとでゆっくりやります。  一点だけ聞いておきます。あなたの方の食糧庁長官とか、あるいは農林省関係の高級職員のうち、マル通の重要な役職についている方があると思うのですが、そういう人たちがおりますかどうか。
  75. 小倉武一

    小倉政府委員 農林省、食糧庁関係のかっての職員でありますか、その中から日通に行っているかどうかというお尋ねでございますが、私、数はよく存じませんけれども、二、三私自身承知しているのもございます。
  76. 神田大作

    神田(大)委員 それでは、あとの参考にするために、元農林省並びに食糧庁の職員であって、マル通の重要な役員、あるいは職員になっているものの資料調査して御提出願いたい。  私の質問を一応終ります。
  77. 黒金泰美

    ○黒金委員長代理 本日午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十八分休憩     —————————————     午後二時二十二分開議
  78. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。春日一幸君。
  79. 春日一幸

    ○春日委員 まず第一番に、先般来参議院の大蔵委員会、それから法務委員会等で、この二月十二日でありましたか、大阪の堺税務署署員が機密文書を漏洩したかどによって逮捕された、これに関連して、必要な質問が行われております。しかしながら、本委員会におきましては、本日で機会なくして、問題を直接つまびらかにする機会を得ていなかったかと思います。幸いな機会でありますから、これが一体どういう実態のものであるか、その真相を一つここに明らかにしてもらいたいと思います。
  80. 北島武雄

    ○北島政府委員 先般当委員会におきまして、横山先生の御質問で、若干お答え申し上げたかと思うのでございますが、なお繰り返して経過を御説明申し上げますと、去る二月十二日に、堺税務署の直税課の岡田事務官が、いわゆる民主商工会の大阪の連合体であります大阪商工団体連合会の二国事務局長に、税務に関する部内の機密扱いの文書をひそかに手渡した事実があるということを大阪府警察本部で探知いたしまして、同日午後十一時ごろ、国家公務員法第百条第一項、第百九条第十二号違反容疑で逮捕し、堺北警察署に留置いたし、その後検事勾留に切りかえて現在に至っておるという事実を承知いたしております。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 要するに公務員法違反の嫌疑となった問題の書類は、いかなるものでありますか、伺います。
  82. 北島武雄

    ○北島政府委員 二月十三日未明を期しまして、大阪府警では、岡田事務官の自宅外堺税務署、大阪商工団体連合会事務所等捜索いたしたようでありますが、その結果、三国事務局長に渡された文書の中には、少くとも昭和三十二年分の営業・庶業等所得標準率表が含まれていることが確認されたように伝えられております。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 その所得標準率表なるものは、一体いかなる内容のものでありますか。そうして、それはまさしく機密文書であるのでありますか。そして、その文書は、国民に対してどういう拘束力を持ちますか。それから税法上、それがどういう根拠に立っておるものか、この点を伺います。
  84. 北島武雄

    ○北島政府委員 所得標準率表はどういうものかにつきましては、すでに先生御承知とは思うのでありますが、なお釈迦に説法のきらいはございますが、御説明申し上げますと、所得標準率表とは、事業所得者などの所得を計算する場合におきまして、年間の売り上げなどの収入金額に対して通常の所得がどれくらいであるかを、業種目別に示す比率でございまして、普通収入金額百円当りの数値で調査いたしたものでございます。これは、毎年各国税局におきまして、管内の商工業者等につきまして、税務署をして調査せしめ、または局自身が調査いたしまして、そのうちから極端なものを取り除いて平均いたしました平均値でございます。  そこで、この所得標準率表は何に使うか、こういう次の問題でありますが、所得税は、もちろん御案内のごとく、年間の総収入金額から必要経費を差し引いて計算した、その年の所得額を課税標準とするものでございまして、納税者は、みずからの事業などにつきまして、正確な記帳を行い、その記帳事績に基いて所得額を計算して、申告と納税をするのが建前となっておるわけでございます。しがしながら、わが国の現状におきまして、は、営業などの事業所得の納税者の約半数が、まだ私どもから見まして、十分な記帳のない状況でございますので、これらの納税者の所得額の調査に際しましては、課税の適正公平を期するために、あるいは財産の増減とか、生計費支出の状況など、納税者の具体的な事情調査いたしますとともに、同業者の権衡並びに事業規模による所得額の合理的な推計をはかるための一つ資料といたしまして、所得標準率表を作成いたしておるのであります。従いまして、この所得標準率表は、税務官庁内部の事務処理基準といたしまして、便宜作成しておるのであります。  しからば、これをどういうふうに使用しているかということでありますが、ただいま申し上げましたような目的で、所得標準率表が作成されておりますので、青色申告者以外の者に対しましては、個々の納税者の実情に即した課税を行うために、財産の増減とか、生計費支出の状況、あるいは事業の規模、または事業の所在場所など、その納税者の具体的な状況を調査して、所得額計算の参考とすることはもちろんでございますが、均衡のとれた公平な課税を行うために、場合によりまして、この標準率表によって所得額を推計して調査いたす場合があるわけであります。なお青色申告者に対しましては、直接は使用いたしませんが、内部の事務の処理といたしまして、青色申告者の申告書及び計算書を検討いたします際に、その申告書が大体において妥当であるかどうかという、感度を得るために、一つのものさしとしてこれを見てもおるのであります。このような所得標準率表は、従来から、大蔵部内におきましては単なる内部の一つ調査の場合の目安にすぎないものでございまして、これを表に公表するという取扱いはいたさないことにいたしておるのであります。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、査定の単なる便宜上、何らの法律根拠なくしてあなたの方でお作りになった、一つの目安にしかすぎない、そんなものが、いわゆる官庁の秘密文書でありますか。要するに試み的なものでしかない、しかも徴税の便宜上、法律によらずして、法律根拠に基かずしてそういうふうな標準ができておる。そんなものは、国家の秘密でもないと思うが、一体どういうわけで秘密文書になるのでありますか、伺います。
  86. 北島武雄

    ○北島政府委員 御案内のように、現在の所得税は、いわゆる申告納税制度を採用いたしております。これは、納税者の個々の方が、御自分の収入等を帳簿に正確におつけいただいて、それに基いて、税法に従った所得計算を行い、税法に従った税額をお納めいただく、それによりまして課税を終結させるというのが建前でございますので、もしその申告に間違いがありました場合におきましては、税務署でこれを調査いたしまして、更正等を行うわけであります。この所得標準率を公表せよという問題につきましては、御意見もあろうかと思うのでありますが、ただいま申しましたような申告納税制度の建前から申しますと、やはり御自分のところでもって御自分の所得税額は計算して、そうして納めていただくのが建前であります。このために、申告納税制度の採用以来、いわゆる所得税法、法人税法におきまして青色申告制度を採用いたしまて、青色申告者に税法独自の恩典を与えて、できるだけ納税者をして申告納税制度の本旨に沿った正確な記帳をさしていくという建前をとっておりまして、これを公表することによりまして、せっかく今まで助長さして参りました青色申告制度を無視するおそれがあると考えるのであります。まあ実際的に申しましても、かりに所得標準率表なるものを公表いたしました場合におきましては、これは、いやな言葉でありますが、納税者の方の中には、税務署の調べた平均値である所得標準率よりも高い率の出るところは、これを故意に操作いたしますことが可能なわけであります。いたずらに過少申告の弊を作るようなわけであろうかとも思いますし、それからまた、標準率よりも低いところは、これを誤解いたしまして、税務署というところは無理なことをするというふうな感じを持つわけであります。彼此勘案いたしまして、このようなことを公表することは、税務行政に対して決してプラスのものではなく、せっかく今まで助長いたして参りました青色申告制度を中心とする申告納税制度の本旨にもとる、こういうふうに考えるのであります。なお国税庁におきましては、昨年までいわゆる事業所得者等の方々に対しまして、その一部分の方でありますが、お知らせ制度を採用いたしております。これは、税務署で見たあなたの所得金額はこうでありますということを、書面でお知らせいたしまして、確定申告の際の御参考に供していたのであります。これは、昨年の当委員会における御議論のごとくに、もとはと申しますれば、やはり申告納税制度の本旨にもとる、こういうことから、いろいろ御議論がございまして、国税庁におきましても、本年度からいわゆるお知らせ制度を廃止するということにいたしたわけであります。で、所得標準率を公表することは、ただいままで参りましたこういう方針と矛盾する、逆な方向をたどるのではないか、こう考えるのでありますので、標準率につきましては、これを公表いたさない取扱いを堅持いたしたのでございます。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 私は、どうも合点がいかないのですけれども、今長官の御意見によりますと、この標準率を秘密文書として特にあなた方が取り扱いをしておるのは、これは、青色申告制度を普及徹底せしむることのための便宜に供するためですね。青色申告制度を普及徹底せしむるためには、この標準率を秘匿しておいた方が効果が上るからと、こういう工合に伺っておるのです。これは、国民は青色申告をしようと白色申告をしようと、自分の自由な選択にゆだねられている。これは、何ら制限を受ける性質のものではない、自主的な選択にゆだねられている。しかし、あなたの方が行政的立場において、青色申告にしたいというその気持は私もわかる、別に非難すべきことではないと思う。けれども、青色申告を普及徹底せしむることのために、何ら法律基準のないところの標準率を秘匿して、そうして、そんなものをちょっと見せたということだけで、刑事罰を課せられるというような取扱いをするということは、これは、税務署員といえども、おそらく国民の基本的人権がいろいろ保障されている立場において、私ははなはだ不当なることだと思う。そこで、私のお伺いいたしたいことは、一体この青色申告を普及徹底することのために、これが秘密文書扱いにされておるのか、ほかに何か目的があるのか、一体どうなんですか、その点を明確に伺います。
  88. 北島武雄

    ○北島政府委員 結局は、先ほども申しました通りに、申告納税制度の本旨にもとると思うのであります。忠告納税制度は、納税者が御自分でもって正確に記帳して、そうして税法に従った所得の計算をされ、税法に従った税金を納めていただくのが建前でございます。私どもは、当初この所得税法が申告納税制度を採用いたしましたときにも、果して戦後のわが国において、これが適用されるのであろうかどうか、またうまく発展していくであろうかどうかにつきましては、だいぶ議論もあったのでありますが、やはり民主的な納税方法として、こういう方法をとるのがよいということになりまして、混乱の中でスタートしたのであります。しかしながら、当初の混乱いたしておりました税務行政も、ようやくその後静まりまして、逐次誠実な申告の方がふえていっている状況でありますので、私どもは、これに逆行するようなことは実はいたしたくない、できるだけこのよい傾向を助長いたして参りまして、申告納税制度というものをあくまでももり立てて、一歩でもそれに近一つけていきたいというふうに念願いたしておるのでございます。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 私は、どうもその点につきましては、わからないのです。それは、法律の問題です。たとえば白色申告制度が欠陥があるならば、現実の問題として、その欠陥のある法律を直さなければいけない。悪い法律でも、法律である以上は、国民も政府も、やはりこの法律基準に基いて執行し、またその義務を果していかなければならぬと思う。これは、租税法定主義であって立憲法治国ではことごとく法律によらざれば権利を行使することもできないし、義務を果す必要もない、それだから、現在の申告納税制度につき、なかんずく白色申告制度に欠陥ありとするならば、その欠陥条項を法律によって補完するにあらざれば、かつてな裁量を行政府にゆだねてはいない、私はかくのごとくに理解いたしておりますが、この点、いかがでありますか。
  90. 北島武雄

    ○北島政府委員 何か私は、春日先生は誤解をしていらっしゃるんじゃないかという気がするのです、はなはだ失礼な言葉かもしれませんが。所得標準率は、一律に適用するものではございませんで、その年の各業種目にわたりまして、実際に調査いたしましたものの平均値を出しております。それを一つのものさしといたしまして、あるいはその納税者の具体的な事情、たとえば特に能率がいい、特に一般の標準より能率が悪いという場合、そのものさしに照らしまして、所得の推計をする、こういうものでございまして、これを一律に、たとえば社会診料保険の報酬のように、ああいうふうに法定するわけのものじゃないのです。このものさしを基準といたしまして、行政上の運用の妙を得るのが一つの作用でございまして、これを一律に国民に、納税者の方に強制するというようなものではないのであります。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 それは、私は現在の徴税行政の核心に触れておる問題かと考えますから、この点は、一つ明らかにしておかなければならぬと思うのです。すなわちシャウプ勧告によって、わが国の税法を民主化するというこの大前提の上に立って、とにもかくにもあの以前における賦課徴収制度というものは、廃止されたわけなんです。そうして、ここにいわゆる申告納税制度というものができ、そこで脱税したりインチキした者については、法律で重き罰が科せられておる、三ヵ年間さかのぼる、あるいは五ヵ年間さかのぼって重、加算税が課せられたり、さまざまな罰則がそこに講ぜられておるわけなんです。従いまして、国民が、納税者がインチキをやるか公正であるかということは、まず本人が申告をした後でなければ、現実の問題として、これは何ら調査することはできないわけなんです。  そこで、私はこの標準率の問題に触れて意見を申し述べたいのでありまするが、これは、昨年のちょうど今ごろでありました、私は税法をいろいろと調べて参るらちにおいて、このお知らせ制度というものが現行税法に違反するものである、法律違反の執行であるという意味で、当時の池田大蔵大臣と長い間一問一答をして、なるほど法律違反の疑いがある、だから、お知らせ制度は廃止いたしましょうということが、池田大蔵大臣の決断によって決定されたわけです。そのとき、渡辺主税局長との間における質疑応答を通じて、その標準率の問題も深く論議されておる。その当時の速記録をごらん願えば、よくわかると思うのです。私がかくこれを非難いたしまするゆえんのものは、商売というものは、いろいろと実態的に、かつ多角的にその変化に富んでおる。言うならば、これは千変万化です。一つの商売、同じ商売をやっておっても、お得意のいい、悪いということもあるでありましょうし、それから自分の従業員の中の優秀、愚昧というような点もあるでしよう。それからまたいろいろな天災地変もそこに入ってくるであろうし、相手方の天災地変等も入ってきて、そこには破産があったり、倒産があったり、さまざまな変化があるわけであります。あるいはまた同じ商店が二軒並んでおれば、その二軒だけがお互いに低いマージンで商売を争わなければならぬような事態等もある。言うならば、標準率が同じ業種、業態について定められるということは、一つの参考にはなるではあろうけれども、その標準率によって執行していくということならば、お知らせ制度というものを廃止した意味をなさないわけなんですね。あのお知らせ制度を廃止したということは、本人の申告する以前に何らかの影響力を与える、こういうようなことがあってはならぬという意見が討論終結して、さようでなければならぬという踏み切り方をして、本人が申告した後でなければ、脱税であるのか、インチキであるのか、あるいは均衡を失しておるのか、失していないのか——これは、法律は、徴税当局にそういうような権限を与えていないのです。この点、御理解ができますか。要するに現行の申告納税制度法律を執行していくというならば、脱税しておるかいないかは、本人が申告しなければわからないじゃありませんか。そうでしょう。従いまして、その申告する以前にお知らせをすることはむろん悪い。けれども、その後において、標準率という問題に一体不可分のつながりを持ってくるのでありますが、その場合でも、私が今申し上げましたように、商売というものが、その御主人が賢い人もあるし、たわけな人もあるし、取扱い商品の優省もあるし、また輸送の途中における事故等もあるであろうし、さまざまな変化があるのだから、すなわち取扱いの一定量に対して標準率をぶっけるというようなことは、これは有害なものである、そうし、それは申告納税制度法律基準をこわすものである、こういうことが深くその当時論じられたことを十分御銘記願いたいと思うのであります。  ここで、私は一つ伺っておきたいのでありますが、あなたは、本人が申告する前に、何らかの影響力を与えることができるとお考えになりますかなりませんか。この点を一つ明らかにしていただきたい。
  92. 北島武雄

    ○北島政府委員 まず先ほどからのお話の中に、業者は業態が人によって千変万化、一律じゃないと、こういう話でありますが、まことにそれはごもっともでございます。従いまして、私どもも、個々の納税者の具体的事情に応じまして、そのものさしをかげんする、かげんして、それが妥当であるかどうかを拝見するわけでありますが、ただ、申告が出てから、それから、さあその業態はどういう動態だろうということを調査するのでは、すでに手おくれでございます。従いまして、御申告がある前におきまして、具体的に、ある業種目が昨年どういう状態であったか。そうして差益率はどの程度で、中間的なところはどの程度のものであったかというようなことをあらかじめ調査しておくことは、これは、私はやむを得ないというよりも、むしろすべきことではないかと思うのであります。ただ先生がおっしゃるように、昨年までのように、あらかじめ文書でもって、あなたの所得金額は、税務署ではこう見ておりますというようなことは、おそらくは申告納税制度の本来の趣旨には沿わないものでございましょう。従いまして、そういうあらかじめ影響力を与えるようなお知らせ制度をやめることにいたしたのでございます。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 あらかじめやるということがいけないというわけですね。それでは、そのものさしというものも、これはあらかじめの準備なんですね。今 申し上げたように、事業者が千人あろうと万人あろうと、その個々の事業者が自主的に損益を計算をして、そうして残存所得について申告するのが、現在の申告納税制度なんですよ。いいですか。そのときに、事前に定められておるところのものさしによって、取扱い金額がこうだから、標準利益がこうだというようなことをやることは、これは税法上許されていないというのです、私の申し上げるのは。たとえば、その業者が千軒あれば、千軒とも状態が違うのです。みんな違うのです。商売の上手な人、下手な人、品物のいいの、悪いの、途中で荷が悪くなったり、無事故で行ったり、それからまた相手方にも同じことが言い得るわけなんです。いい得意先と取引きしておれば、確実に集金されて損失というものがないが、相手がちゃらんぽらんなら、あるいは極道であるならば、だんだんとその響影はおのずからはね返ってくる。だから、そういうような意味から言うならば、千軒なら千軒とも、ことごとくその実態について調査すべきものだ。調査をするならば、実態について調査をすべきものである。そうした後において、インチキがあったり脱税があったりすれば、それはそれとして、税法上処罰の規定があるのです。法律に基いて処罰ができるのです。国民は、法律によらざれば処罰を受けることはありません。いわんやこの税法だって、その法律によらずして課税を受けるという理由は、ないわけなんですね。それだから、私の申し上げるのは、そういうような標準率というものさし、それも伸縮自在のものさしなんですね。そういうようなもので、その外形的なものだけをとらえて税金をぶっかけていくというようなことになれば、特にお知らせ制度を廃止した意味も、あるいは大きくいうならば、賦課徴収制度から申告納税制度法律を切りかえた意味も、全然なくなってしまうではないかと思うのです。ただ問題は、今白色申告の諸君の帳簿が特に完璧を期していないという、そういう面はあるであろうから、そういう面に対する指導は、別の指導をもっていかなければならない。すなわち帳簿が不確実なら、こういう外形標準によって、その標準率をぶっかけてどうこうするというようなことで指導してはならぬと思うのです。私は、やはり法律に基いて指導をするか、善意に基いて指導をするか、何らかの形で指導をすべきであって、刑罰によって、あるいは法律に基かざるところの執行によって指導をしてはならぬと思う。この点いかがでありますか。
  94. 北島武雄

    ○北島政府委員 私どもは、白色申告者に対しましても、標準率を一律にあらかじめぶっかけて税金を賦課するというやり方はいたしてないのでございます。あくまでも納税者の方が自主的に申告されて、その申告を判断する場合の一つ資料として、今のような調査をいたしているのであります。ほんとうの理想を明しますと、納税者の方が全部正しい記帳をされ、そうして、税法に従った正しい所得の申告をされ、正しい税金額を納められる、これが理想でございまして、間々中には百人に一件とか、あるいはそのくらいの間違う方があっても、全体として、そういうふうにおのずから納税者の方々が誠実な納税をしていただくことが理想でございます。私どもは、一歩でも理想に近づけたいと思うのでありますが、残念ながら現状におきましては、まだとてもそこまでは参りません。ただありがたいことには、青色申告者もだいぶふえて参りまして、誠実な記帳をする方もふえて参りましたが、なお半数に近い方は、白色申告者でございます。これらの方々につきまして、申告が出た場合におきまして、それからあらためておっ取り刀で調査に行くというのでは、実は手おくれでございます。従いまして、税務署におきましては、一年を通じまして常に業態の調査を行い、ことに、全体を通じてどのような状況であったかということを、あらかじめ調査しておくことは、私どもどうしてもやらなければならぬことでございまして、その一つ調査として、標準率調査があるわけであります。もちろん申告が出て参りました場合に、標準率一本で所得の調査をするのではないことはもちろんでありまして、あるいは生計費支出の状況とか、財産の増減の状況、在庫品のあり高、そういうものも頭に入れまして、総合的に申告がいいかどうかの判断をするわけであります。そういうものさしがあるわけでありまして、これをもってあらかじめ一律にぶっかけて所得をきめる、こういうやり方は、私どもでは避けております。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 私は、この問題は、大阪で逮捕された税務署員が有罪になるか無罪になるかの分れ目でもあろうと思う。非常に重大な影響力を持つ問題でありますから、これは十分申告に基礎を置くものとしして研究されなければならぬ問題だと思う。私は、くどく申し上げるわけではないけれども、標準率というようなものを作るということは、明らかに法律違反だと断定しておるんです。これは明確に断定している。それは、どれだけもうかったかということは、本人がその収入と支出と、その残ったものを個々の実情に応じて——お店をやっていたって、借金で、運転資金をまかなっているものもあるだろうし、親から財産を継承して、金利を支払ってやっているものもあるだろう。千変万化ですよ。そういうのが商売の実態なんです。現実に、あなたの方が持っている標準率というのは、何の効果がありますか。たとえば、その商売を大体三十軒、五十軒調べてみても——五千軒も六千軒も調べられはしません。五百軒も千軒も二千軒も調べられて、そこから出てくる標準率ならば、ある程度正鵠を期し得るではあろうと思うけれども、かりに千軒、万軒調べたところで、理論的には許されないけれども、百歩千歩退いて、比較的にその標準率というものが正確なものに近い場合があったとしても、これは、税法理論からすれば、そういうようなものを適用すべきではない。本人が違った申告をしたり聞違っておれば、追加申告をするような場合もあるだろうし、あるいは故意に悪意をもって脱税をすれば、税法の定めによって懲罰を課したらいい。現実の問題はあなたの方にそういうようなものさしを持たして、一律の概念でその所得を把握するというやり方は、私は現在の税法は許していないと思う。この点はどうですか。
  96. 北島武雄

    ○北島政府委員 所得標準率を定めてそれ以外のを認めないということになりますと、これはおそらく租税法定主義に反するものでございましょう。しかし、所得標準率は、ただいままで申しましたように、所得推計のための一つ資料でございます。所得税法第四十五条におきましても、「更正又は決定のための調査」といたしまして、「第一項に規定する場合を除く外、政府は、財産の価額若しくは債務の金額の増減、収入若しくは支出の状況又は事業の規模により所得の金額又は損失の額を推計して、前条の更正又は決定をなすことができる。」推計課税もできるということを書いている。推計課税は、必ずしも妥当なことではございませんけれども、やむを得ない最後の措置といたしまして、推計して納税者の方方との権衡を適正に保つことが、私は必要であろうかと思うのでありまして、所得標準率を持つこと自体が法律に反するということは、どうしても私ども、遺憾ながらのみ込めないのでございます。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 推計課税とか、あるいは類推課税とかいう問題は、これは特殊の場合における異例の措置なんです。それは本筋ではないでありましょう。そのために課税することができるといっているのじゃないか。それは、そういうこともやればやれるけれども、本来のやり方というものは、あくまでも本筋は、本人が自分の所得をみずからの責任において申告していくということだろうと思う。一体あなたの方は、本筋を先にされるのか、特殊の、異例の場合を先にされるのか、どうなんですか。特殊の異例の場合のやり方を基準にして徴税行政の執行をなされておるというきらいがあるので、この点を強く非難をしておるのです。それは、類推課税もできるだろうし、推計課税もできますけれども、それは少数異例の場合をさしておるのです。本筋のやり方というのは、本人の申告に待って、それを精査していく、それがなければ、徴税制度の民主化とか、あるいは特にあの当時法律を変えた意義というものは全然なくなってしまうじゃありませんか。推計課税とか類推課税ということは、賦課徴収ということです。ちょうど昔の代官がやった、百姓に年貢を、お前のところはこれだけかけるというやり方と同じやり方なんです。それではいけないからというので、警察法が民主化され、教育制度が民主化された、そのときにこの徴税制度も民主化されなければならぬというので、当時の賦課徴収制度を廃止して、申告納税制度にだんだん踏み切ってきている。いうならば、これは税法における画期的な革新が行われておるのです。そのことは、特殊の特殊の場合に限って、そういうようなこともなし得る。全然これはわからぬというような場合ですよ。本人が脱税をしてめちゃくちゃになって、しまって、帳簿で整理しようといったって、真の所得額が捕捉できないような場合においては、推計するとか類推するとかしなければ課税のしようがないから、そういうようなものに対してその条文が適用される。普通の場合は、あくまでも本人の申告に待つ、こういうやり方でなければならぬと私は思う。このやり方については、時の池田大蔵大臣も、あなたの前任の渡邊長官も、これについて異論はなかった。さればこそ、お知らせ制度というものが廃止になってきているのです。この点を一つ明確にしていただきたい。あなたの方は、その推計課税というのを、法律をたてにとって納税者に立ち向わんとするものでありますか。
  98. 北島武雄

    ○北島政府委員 私は、何も推計課税ができるということを表に立てて、全部何でも推計していこうという趣旨ではございません。幸いにして青色申告者もだんだん数がふえて参りまして、営業者につきましては過半数、五割何分かの方が青色申告になってこられております。ただ、残念ながら残りの半分近くの方は、依然として青色申告をなさるほどの帳簿能力、あるいは余裕などもない方でありまして、そういう白色申告者の方の間の課税の権衡、公平を期しますためにおきましては、やはり出た申告を実際に調査すると申しましても、帳簿書類が整っていないのでありますから、そういう場合におきまして、もし帳簿書類によって適正な申告なりやいなやということがわかれば、これに越したことはないのでありますが、白色申告者の大部分は、まだそういう状況ではございません。従って、このような場合におきまして、税務署といたしましては、納税者相互の間の課税の均衡を保ち、それからまた、税務署間における税務官吏個々の能力の差異等によるところの恣意的な調査をできるだけ避けるために、一つの目安を作りまして、そのものさしを一つのものさしとして、財産の増減とか、生計費、支出の状況等とか、それで所得を推計することといたしたのであります。これは、全体から言えば決して望ましいことではございませんけれども、現在の納税の実情におきましてはこのような措置をとることは、私は万やむを得ないことであり、かつまた必要なことであると感ずるのであります。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、一切の法律というものは、国民に対して権利義務を課していく重大な関係があるのであります。御承知の通り、こういうような過程を経て非常に精査されておる、内閣提出ならば、法制局が、いろいろな憲法その他の関連法規に相反するようなことはないかどうか、本委員会においても、さらにまたこれを深く精査して、そうして非常に慎重に取り扱われておるのですよ。だから、おおむねあやまちなきを期し得ておると思うのです。それでも、ときたま法律上の疑義が生じたり何かして、国会の論議になり、さらに再修正されたり何かしておるのです。そこで、あなたの方のそのバロメーターなるものは、要するに所得の標準率なるものは何といったところで、あなた方お役人たちが勝手にお作りになるわけです。現実の問題として、第三者的批判にさらされてはいないのです。少くともその業界の意見を聞くとか、あるいはまたそれぞれ学者、経験者、法律家の意見を聞くとが、あるいは経済人等の専門的批判にさらすとか、こういうような過程を経られていないと思う。しかも、その効果たるや、法律と同じように、これが標準率であるとすれば、怪しいと、思った連中に対しては、本人が抗弁することができなければ、結局そのものさしによってぴしゃっと当てはめられていく。法律と同じような権威と効力を持つ標準率、私は、そんなことは許されていいものかどうか、非常に恐怖を感ぜざるを得ないのです。あなたに申し上げまするけれども、白色申告は、ことごとく脱税しておるようなものの言い方なのですけれども、あなたはそういうふうに見ておられるのですか、ちょっと伺います。
  100. 北島武雄

    ○北島政府委員 私は、白色申告の方がことごとく脱税しておるとは考えておりません。むしろ誠実な申告をなさる方が大多数だと私は感ずるのであります。しかし、残念ながら、白色申告者の方々は、張簿が十分についておらないのが実情であります。その方々が申告なさった場合に、それが、御自分ではあるいは正しいと思っておるかもしれないけれども、客観的に他の業者とのつり合い等を考えまして、それが適正な申告であるかどうかにつきましては、これはやはり相当問題があることでございます。現在の状況におきましては、はなはだ残念なことではございますが、白色申告者の方が全部漏れなく帳簿をつけて、収入も支出もちゃんとつけておられるということは、ちょっと期待しがたい、もしそういうことがありますれば、そういう方々は当然青色申告者になられているわけであります。現在税務の実行におきまして、このような納税者のつり合いを保つための税務の調査一つ方法といたしまして、青色申告者の誠実な方々等から調べました大体の平均値というものを目安にしておくことは、私はやむを得ないことであろうかと考えております。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 それじゃ、もう一度角度を変えて伺いますが、三月十五日の確定申告の期日が近づいて参っておりますが、巷間伝うるところによると、本年からお知らせ制度がやめられた。けれども、税務署は、全部の白色申告の諸君を対象として、大体これはこの程度課税すべきであるというような、一つ基準を各納税者ごとに作っておる。すでにそのリストができ上っておる。従って、自由に申告してくるものが、その線に近づいておればよし、しからざるものについては、いわゆる所得標準率をかけて、その下の者については、一律に調査するのだとかなんとかいうことが流布されておるが、私がお伺いしたいことは、白色申告のあれが廃止されたから、これを純粋に廃止されておるのか、それとも、形式上廃止したけれども、いわゆるこの所得標準率によって、各納税者ごとに、その申告さるべき予定額というものを作成しておるようなことはないだろうか、その点をお伺いいたしたい。
  102. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、すでに納税者について調査いたしましたものがあります場合には、納税相談と申しますか、申告前に税務署へ相談に来られた方に対しましては、あるいは御相談を受ければ、大体あなたのところは、これくらいと私の方は見ておりますよと言う場合が、あるいはあるかもしれません。しかし全部について、大体甲の人は幾ら、乙の人は幾らという調査を完了して、これでおやりなさいというようなことをやることはないと思っております。
  103. 春日一幸

    ○春日委員 私のお伺いをするのは、今三月十五日を前にして、各納税者がいっておることは、個々の白色申告についての納税さるべき額というものは、税務署の方ですでにきまっておるんだ。白色申告制度のあれはおやめになったけれども、結局実際的な効果は何にも上っていない。結局税務署の方で、その個々の納税者について、いわゆるお知らせにかわるところの、要するに納税さるべき基本額というものは申告を待たず決定しておるんだ。こういう言葉が流布されておりますが、かくのごとき事実はあるかないか、その点を明確にしていただきたい。
  104. 金子一平

    ○金子説明員 今の点でございますが、標準率で、一律にこの人は幾ら、この人は幾らというようなことで、事前に申告してもらうべき額を確定しておるというようなことは、毛頭ございません。先ほども申し上げましたように、すでに納税者の実地について調査をいたしましたようなものがありました場合に、あるいは大体の見当をつけておる場合もありましょう。しかし、申告の当否を決定いたしますのは、申告が出てから、かようなことになるわけでございます。
  105. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、今税務署で、今後白色申告者について納税さるべき額がすでに出ておるというようなことは、全然事実無根でありますか。あったらどうします。
  106. 金子一平

    ○金子説明員 すでに調査をしておりますものにつきましては、大体の見当をつけておりましょう。ただ、これは各税務署ごとの実情によって違いまして、まだ全部の調査が申告期限の終了までに済んでいないところもございましょう。相当部分進行しておる場合もありましょう。その点については、各署々々の実情によって違うと思いますが、いずれにいたしましても、昨年と同様に、相当部分の納税者につきまして、調査に回っておることは事実でございます。
  107. 春日一幸

    ○春日委員 要するに、納税者が納税する前に調査するということは、一体、それは何のために調査するのですか。
  108. 金子一平

    ○金子説明員 長官から先ほど御説明があったと思いますけれども、申告期を過ぎて調査に行ったのでは、状況によっては、実際の額を捕捉し得ない場合もございましょうし、かようなものにつきましては、事前に納税者の実地について調査をいたしておくことは違法ではない、かように考えておる次第でございます。
  109. 春日一幸

    ○春日委員 だから、そこが問題なのですよ。要するに、本人が申告してから調査するというのが、本筋なのですよ。私は、どうもその点が割り切れないんです、くどいようだけれども。そこで、今のお説の、特別の推計調査だとか、標準調査だとか、いろいろなことはなし得るけれども、標準調査というようなものは、その本人の所得額を捕捉することを目的とした調査ではないはずだ。結果的にそういう形に現われてくるかもしれないけれども、これは参考的なものであって、この業種、業体は一体どのくらいの利益が上るものであろうか、こういう一つのバロメーターになるところの参考資料としての調査なのです。それだから、今長官の言われた、推計課税をするための調査というようなものは、これは、結局調べに行っても帳簿も何もなくて、しかも脱税のきらいが現にある、反証も上らない、確かに資産はそれだけふえておるというような場合に、これは推計課税もなし得るとは思う。これは、特殊の場合です。けれども、私が今お伺いしておるのは、三月十五日を前にして、一般納税者、白色申告の諸君に対する税務署の態度としては、全く純白なもので立ち向わなければならぬと思う。あなたの納税額はこの程度だということをにおわすということは、これは、今調査したものと言われるけれども、何千軒、何万軒とある納税者を、税務署の少人数をもって調査できるはずがない。やはり確定申告から確定申告までの間といえども、税務署は忙しい。そこへもってきて、いろいろな標準調査や何かをやらねばならぬ。だから、個々の白色申告の納税者の事前調査というものは、なし得るわけがないのですよ、現実の問題として……。しかるに税務署においては、個々の納税者の申告すべき額というものがもうすでに準備されておることは、実に驚くべきことなのです。お知らせ制度を廃止したところの意義がなくなってしまうと思う。しかも、標準所得率というバロメーターを強引に押しつけることによって、そういう数字が表わされてきておる。許すべからざることではありませんか。そんな執行は、断じて法律はあなた方に与えておりません。私は、そういう意味において、この標準率というものを使うこと自体がいかぬと言うのです。どんなに数が多かろうと、どんなに問題が複雑であろうとも、やはりこの法律に基いて調査をしなければならぬ。個々に艦種の違う、所得の違うものを、ものさしを持っていったところで、はめようがないじゃありませんか。有害なものじゃありませんか。国民としては、被害を受けるじゃありませんか。あるいはそのものさしが小さすぎれば、国家が損するじゃありませんか。そういう不確定なもので国民を拘束してはいけない。正確ならざるものによって、また法律によって何ら権威づけられていないものさしによって、ものをはかるということはありませんよ。そんなものはいけません。酒屋さんが、自分の作ったますで酒や酢を売るようなものだ。やはりそれは国家の法律で、その標準率が正しいものであるならば、いわゆるその標準率を国民に示して、これだけの標準率によって課税されるのだから、その覚悟で自分の商売をやれ、標準率を切って売ったら自分が損だぞ、このくらいのことを国民に知らすことなくして、勝手に秘密なものさしを作って、あるときにはこれを延ばし、あるときにはこれを縮める、そんなばかげた執行がありますか、私は許されぬと思う。法律は、一字一句にまで悔いのないようにここで精査したのに、あなたのものさしは、五軒、十軒と勝手に調べて、まあこんなところだろうというので作っているじゃありませんか。しかも、国民に対しては、法律と同じ権威と拘束力を持ってきている。許さるべきことではないと思いますが、政務次官、お聞きになっていて、どう感じますか。この場合に、お知らせ制度を廃止するときも、これは単なる徴税技術の問題ではない、さらに高い行政上の問題、政治問題として、大臣と私どもとの間で意見がかわされて、そうして、これはまさしく法律違反である、こういうことで廃止になったのです。ところが、今日またこのような尺度が使われて、しかも国民も知らぬ、国会も知らぬ、そんな勝手なものさしで、あなたは三割、あなたは二割だというようなことでやられてたまりますか。この点、いかにお考えになりますか。
  110. 坊秀男

    ○坊政府委員 申告納税制度をとっております以上は、税額がきまりますのは、これは、申告によってきまるという春日委員の御意見は、まことにその通りだと思います。しかし、先ほどからも長官、部長からいろいろと御説明を申し上げましたが、この標準率というものは、ある業態における所得の平均値をとったものでございまして、これ一本やりで個々の人々の税額を決定するというような建前にはなっていない。この平均値というものは、納税者の税額に関しまして、ただ一つの標準でありますから、その他の諸般の事情から税額が決定されるものであろうと思うのでありますが、そういったような制度は、申告納税制度の場合に、必ずしもこれが普遍妥当なものだとは言えないと思います。しかしながら、現在の納税の実情から考えまして、業者の中には、まだ記帳等につきましてはなはだ整備されていないというようなことがあります。たとえば、帳面をつけていないために、申告期限までになかなか自分で申告できない、そういう関係もありますので、一応この標準率といったようなものをきめて、これを一つの標準としていくということも、またやむを得ない制度ではなかろうかと思います。
  111. 春日一幸

    ○春日委員 明確にしておかなければならぬごとは、とにかく余分なものをとってはいかぬということです、実情はどうあろうとも。われわれは立法の府なんだから、とにかく実情は全然別にしましょう。実情に沿わないような法律ならば、これは法律を直さなければいけない。便宜、執行において勝手な裁量を許してはいないのです。立憲法治国であり、租税法定主義ですから、申し上げるまでもない。だから、現在の法律がどういうことをきめておるかということだけでわれわれは判断しなければならぬ。今四十五条を長官はお読みになりましたけれども、これは、標準率を行使して課税してもいいということは書いてないのですよ。ただ、そのときに推計して課税することができるというだけであって、推計するときに、その標準率を行使してもいいというようなことを書いてないのですよ。いかがでありますか。
  112. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは、先ほど来申しておりますように、標準率を一本やりに振りかざして調査するのではないのであります。財産の価額もしくは債務の金額の増減、収入もしくは支出の状況、または事業の規模によって、所得の金額損失の額を推計するその一つ方法、目安として、私どもこういう調査をいたしておるのでありまして、これを一本やりに振りかざして、これでなければいかぬというようなことではない。まあお知らせ制度の廃止の点は、先ほどちょっと触れたわけでありますが、ちょっと、これは余談になりますが、私国税庁に参りまして、お知らせ制度を廃止したという話を聞きまして、これは実に大英断だなと思いました。戦後の納税混乱期におきまして、これを静めることができましたのは、一つは、このお知らせ制度が相当あずかって、力があったと思うのであります。何と申しましても、これは、申告納税制度の本来の理想からは遠いものでありますので、これを思い切って廃止されたということは、私個人としても、非常な英断だと思っています。ただし実際に廃止してみますと、一番お困りになったのは、白色の納税者の方じゃなかろうかという感じがいたします。これは、私もよく耳にするのでありますが、お知らせ制度がなくなって、かえって困る、税務署が自分の所得をどう見ているのか知らしてほしいという声を、町に聞くのであります。先般実は私も、テレビ週報で出演いたしまして、納税者の御不満にお答えしたのでありますが、その中にも、お知らせ制度を廃止されては困るという方もいらっしゃいました。私は、実はそれが今の実情ではなかろうかと思うのであります。そこで税務署におきましては、ことしは積極的に文書でお知らせするということはもちろんいたしません。しかし、所得の計算のできない方、税法のわからない方、税額のわからない方がまだ非常に多いのでありまして、そういう方々のためには、申告期間中、納税相談所を設けて、御相談に応じておりますほか、もし納税者の方から、税務署は一体どう見ているのかという御質問がありました場合には、やはりお答えすべきが筋ではなかろう、こういうふうに考えておりまして、そのように取り扱っているのでございます。現在実施中でございますが、少くとも今は、昨年みたいな押しつけというような気分は去りまして、納税者の方も、御相談になった方は、お感じがいいように私の耳には入っております。まだ三月十五日まで間がございますので、わかりませんのでございますが、ことしの体験を一つ十分かみしめまして、今後どうしたらこのお知らせ制度の廃止に最も沿うように、それから申告納税制度の本来の趣旨に一歩でも近づくためにはどうしたらいいかを、私どもさらに検討したいと思うのであります。
  113. 春日一幸

    ○春日委員 お知らせ制度を廃止することによって困る困らぬという問題は、全然別個の問題です。それは、法律の問題であって、法律がそういうような納税者の困るような法律ならば、現実の問題としてそこを直さねばいかぬ。私は、純粋に立法の府としての見解を申し述べているのですよ。だから、こんがらがってはいかぬ。法律はこういうふうだけれども、実情はこうだから、この法律はちょっとたな上げして、別のを執行するのだ。こんなことは、法律無視のやり方というものであって、あなた方に許されるべきものじゃないのです。あなた方は、法律に基いて権限を行使しているのであって、あなた方に単独独自の権限というものがあるわけじゃないのです。だから、そこははっきり割り切っていただかなければならぬ。時の池田大蔵大臣がそれを踏み切ったということについて、あなたは非難めいたことを言っておられるけれども、現実の問題として、現在の法律の仕組みとしてはかくあらねばならぬから、非常な危険も伴うであろうし、あるいは混乱を生ずるかもしれないけれども法律に基いた執行は、これ以外にないということなんです。これ以外にないから、大臣がやったのでございましょう。それであるから、法律に基いて執行するのに、大英断もへっちゃくれもない。あなたはもっと言葉を慎しまなければならぬと思うのです。大英断などというと、何らなし得ないことをあえてやったみたいだけれども、ただ法律に基いたことを誠実に執行しておるということだけで、誠実に執行していく過程において諸問題が起ってくるならば、やはり国が国民の立場に立って、これをしかるべく指導していく、そうして必要なる措置を講じていくということでなければならぬ。今あなたの語るに落ちたところによると、お知らせ制度は、形式的にはやめておるけれども、実質的には、御相談にいらっしゃればお知らせをしておる、こういうようなことだが、私は、はなはだもってけしからぬと思う。あなたは、まるで請負制でしかるべく税金を取れといって、成文で仕事をやらしておるみたいな錯覚に陥っておられるのじゃないか。何もかも法律以外のことは、あなたはやってはいけないのです。やるとすれば、公務員法違反で、あなた自体が逮捕されなければならぬ。あなたは、そのことを深刻に理解しなければならぬ。そこで、今あなたがおっしゃったのは、このバロメーターだけで処理するのじゃないから、そう非難するな、こう言う。しかし私はあらゆる決定の要素になるものは、すべて合法的なものでなければならぬと思うのです。非合法な要素を含めてはならぬということなんです。その決定一つの要素の中に、その法律によってそれを行使することを許されていない要素を許してはならぬ。ここに与党と野党が来て、いろいろ審議しておるけれども、ここへ県会議員だの市会議員が来て、一緒に論議したら、どういうことになるか。現実の問題として、国会の府において、お互いにその論議にさらされなければならぬけれども、その資格ある分子をもって構成しなければいけないのです。そこに四十五条に書いてある金銭の出入りとか、資産の増減の状況だとか、そういうもので推計課税をすることは認めておるけれども、標準率をもってそういう推計課税をするというようなことは、四十五条では認めていないですよ。ここへ労働組合の委員長や、あるいは村会議員や、そういう人たちが来て、税はわれも関心あり、論ずべしということで論じてきたら、一体どういうことになりますか、混乱するではありませんか。そんなことから出てきた結論は、何ら権威を持たぬ。形式というものは尊重されなければならぬ。全くの話、形式は内容を決定する。それだから、あなたが法律によって資格を与えられていないところの、そういうようなもので所得額を決定するというようなことは、断じて許さるべきものではありませんよ。従って、そういうような有害な、法律に認められていないような、こんな所得標準率というようなものは、官庁の機密文書でも何でもない、いいころかげんなものである。こんなものを漏らしたからといって公務員法違反に問われるなどということは、ちゃんちゃらおかしい。それは、本末転倒、問題を錯綜せしめて、私は恐るべき混乱があなた方にあると思う。だから、そういうような意味合いにおきまして、所得標準率というようなものは実に有害なものであり、法律違反のものであるから、これの行使は、すみやかにこれを停止すること、それからもう一つは、今国税庁長官がおっしゃった、お知らせ制度は形式的にはやめておるけれども、実質的には執行しておるのだ、こういうことは、およそ国会の審議というものを侮辱するものである。この委員会における論議の結果、そういうことはやってはならぬ、こういうことでやめたものを、形式的にやめておいて、実質的に行使するなどということは何事だ。相談に来たら知らせるということは、これはお知らせ制度である。文書によるお知らせ制度でなくて、口頭によるお知らせ制度である。この問題は、まことに法律違反であり、かつは国民の基本的人権をじゅうりんしておる。ことに、刑事罰に処せられるというような犠牲者をここに新しく出そうとしておる、ゆゆしい事態であると考えますので、坊政務次官に特にお願いを申し上げたいことは、私は、当然大蔵大臣も来られて、こういうような問題については十分国民の立場に立って検討をせなければならぬ問題であると考えますので、本日のこの論議をよくつまびらかに大臣と御相談願って、十一日ですか、大臣がここへおいでになるそうだから、そのときに、これは合理的、合法的で、適切妥当な結論が得られまするように御善処あらんことを、要望いたしまして、この問題に関する私の質問を終ります。
  114. 足鹿覺

    足鹿委員長 横路節雄君。
  115. 横路節雄

    ○横路委員 長官に現物給与についてお尋ねをしたいと思います。自衛隊ですが、自衛隊は、一日百円七十銭の割で食費を支給しているのです。私は、やはり給与の一種だと思うんです。その点を、長官から、これは給与の一種だと思うか、その点、あなたの見解を一つお尋ねしておきたい。
  116. 北島武雄

    ○北島政府委員 お説の通り、給与の一種であると考えております。
  117. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、これに税金がかからないという法律的な根拠はどこにあるのでしょう。給与の一種である、そうすれば、それに税金がかかるのがほんとうだが、それに税金がかからないという法律根拠はどこにあるのです。
  118. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは、警察予備隊発足当時からずっと課税いたしておらないのでありますが、これとの関連におきましてまず御説明申し上げたいのは、船舶所有者が、船舶乗組員に対しまして船中において供与する食事に対して、どうしているかという問題であります。船員法八十条によりますと、船舶所有者は、乗組員に対して食事を供与しなければならぬと規定してありまして、これは万国すべて共通でございます。船の性質から申しましても、これは、船舶所有者が当然給与すべきものであるわけであります。これに対しまして、各国とも課税いたしておりません。わが国におきましても、昔からこれは非課税の取扱いをいたしております。これと同様に、警察予備隊以来、現在の自衛隊におきましては、法律によりまして、一曹以下の下士官等は営内居住を強制されているわけでありまして、号の居住を強制せられている関係から、この営内居住の下士官等に対しまして、国としては給与しなければならない義務を自衛隊法によって負うているわけであります。船員との権衡等から考えましても、こういう現物給与に対しましては、課税すべきでないということで、今まで取扱い上課税いたしておらないのであります。船員法の船員に対してはまず課税しておらぬ。そうすると、それとの権衡から申しますと、海上自衛隊、海上自衛艦に乗り組んでいる者に対して供与する食事に課税するのは妥当でないわけでありますから、陸上自衛隊及び航空自衛隊におきましても、一曹以下の下士官は営内居住を強制され、その反面、国は営内居住の下士官に対し食事を供与する義務があるのでございます。あたたかも船員におけると同様に、かかる現物給与に対しては、課税するのは適当でないという見解によるものでございます。
  119. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今のは、強制的に営内に居住を命じているから、従ってそれは課税の対象にならないのだ。そうしますと、たとえば紡績工場等においても、そこの工員は、半強制的にやはり寮に入れられているわけです。そうして、俸給のうちから、相当額を食費として払っておる。そういうことになれば、今あなたの説明からすれば、たとえば二万円俸給をもらっている、しかし、半強制的にそれは寮に収容されて、食べる、食費は払っている。それがかりに三千円だとすれば、二万円の給与だけれども、半強制的に寮に置かれて、食費を払っているのだから、実際には七千円になる、こういうことになりますね。今のあなたの説明からすれば、そういうように解釈しても成り立つのじゃないですか。
  120. 北島武雄

    ○北島政府委員 今の御計算の間、ほかのことを考えておりまして申しわけございません。紡績女工さんは、強制じゃないと考えております。そういう格好ではないのでございましょう。ただし、紡績の女工さん、あるいは料理飲食店、旅館の女中さん等住み込みの場合でございますね。このような場合におきましては、まず現在の取扱いといたしまして、一応理論的に考えますと、住み込みによって居住すれば、どうしても家賃を払わなければならぬわけでありますが、その家賃については、一応現物給与と考えられる。しかし、これはもちろん課税の取扱いをいたしておりませんし、紡績女工さん等の住み込みの場合におきましては、食事の全部または一部を無料で供する場合における取扱いといたしましては、無料で支給する食事の価格の七割に相当する金額を、給与所得といたしまして、一般原則によって課税するということにいたしております。ただし、現物給与の取扱いといたしましては、その金額が月額七百円以下であれば課税しない取扱いでございますので、ただいま申しましたような計算によると、無料で供する価格の七割相当額が七百円以下でございますれば、これはまた課税しておらぬ、そういう取扱いでございます。
  121. 横路節雄

    ○横路委員 長官お尋ねしますが、警察官の被服、あれは被服手当として出れば、課税になるはずなのです。ところが、あれは被服であり、私はあれも給与の一種だと思う。あれには税金がかかっていない。ところが実際に俸給をともらっている中には飯を食うこと——まさかはだかでは働きにいけないのですから、食べることと着ることがある。ところが警察官は、食べることだけであって、被服は支給されて、税金がかかっていない。これはどういう解釈なんです。
  122. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 警官とか消防夫の方につきましては、大体被服はたしか貸与になっております。その分につきましては、課税にならないのであります。
  123. 横路節雄

    ○横路委員 それは間違いだ。あなた知らないのです。長官、よく聞いて下さい。実はこの間専売公社で、たばこの作業をやるので、全部一定の被服なんです、これを支給しようとした。あなたの方で税金をとろうとした。いいですか。そこで、やむを得ないので、これを貸与して、二年なら二年たったら廃棄処分、こうなる。警察官は違うのです。警察官は支給しているのですよ。これを、国税庁と、もあろうものが知らないのは、はなはだけしからぬ。
  124. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 警官については、あるいは間違いだったかもしれませんが、消防夫については貸与である。消防夫が貸与でございますので、多分警察官も貸与であろう——その辺は、もう少し確かめさせていただきたいと思いますが、消防夫は貸与でございます。
  125. 横路節雄

    ○横路委員 私は警察官を聞いている。消防夫を聞いたのではない。私が長官に言っているのは——実はこの間、私は雑誌で見た。専売公社は被服を支給したい、ところが、これをやれは税金がかかる、仕方がないから、従前通り貸与にして、二年なら二年たったら、これを廃棄処分にして落していく、こういうことなんです。これは、前から、警察法の改正のときにずいぶん論議した。どうして警察官だけ支給するのですか。警察官に支給することは、税の対象にならぬというのだから、警察官に支給するなら、専売公社についても、支給した場合については、当然税の対象にならない、国鉄の職員についても、被服を支給した場合においては、税の対象にならないというように、見解を統一しておかなければ、担当の人が、警察は、あれ、どうなっているかなんていうんじゃ、どうやって税をとっておるのかということになります。そこで、統一されなければならない。だから、貸与にしておいて、二年たったら廃棄処分にして台帳から落すなんてなことをやめて、初めから支給、こうやればいいでしょう。
  126. 北島武雄

    ○北島政府委員 今までの取扱いにおきましては、職務上制服の着用を要する、すなわち職務上着なければならぬ制服という場合におきましては、たとい貸与でなく、給与する場合におきましても、課税しない取扱いでございます。
  127. 横路節雄

    ○横路委員 今の長官の答弁は、私はそれでよろしいと思う。私は、非常に長官の名答を得たので、それでよろしい。  次に長官、被服でなくて食べる方に移ります。そこで、先ほどあなたは船員のことや、それから自衛隊のことを話して、それは強制的に一定の場所に居住を命じてやっておるのだと言われた。そこで、あなたは初めてかもしれないが、ここでいつも問題になることは、たとえば警察官、それから鉄道職員だとか、電信電話の関係、これは職場を離れるわけにいかないのです。一時的にそこに居住を命じている。職場を離れてはならぬ。だから、お前には夜食を出す、こうなっておる。そこで、これを七百円でとどめてはおかしくありませんか。自衛隊だって、何もこれは法律で免税にするとはきめていないのですから、おかしくありませんか。矛盾を来たしませんか。
  128. 北島武雄

    ○北島政府委員 技術的なことでございますので、直税部長、あるいは所得税課長から御説明いたします。
  129. 金子一平

    ○金子説明員 今お話しの点の自衛隊の場合は、居住を強制されているわけです。従いまして、課税という問題は少し無理かということで、課税からはずしておるわけでございますが、今お話しのような場合におきましては、これは、勤務の途中でたまたまその場所を離れられないというだけのことなんで、その間弁当を食べますことは当然だ、かように考えておるわけであります。
  130. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、直税部長にお尋ねいたしますが、自衛隊の演習のときには、いわゆる一曹以上にも現に現物支給をしているじゃないですか。これはどうなんです。演習のときには、みんな手弁当でいっていますか。手弁当でなくて、自衛隊でみんな支給しているじゃないですか。これは、全部税の対象になっていません。こういういかにも筋の通らぬ話を、ごまかしで話してはだめですよ。どうなっておるのですか。
  131. 金子一平

    ○金子説明員 自衛隊のただいまの御指摘の場合でも、これは、船員の場合も同様でございますが、やはり居住の制限ということがもとで、演習中におきましても、やはり食事は自衛隊が持つということになっておるわけであります。かような場合に課税するのはいかがかということで、はずしております。
  132. 横路節雄

    ○横路委員 これは、鉄道職員の夜勤のときには演習と同じように、お前はここから離れてはだめだといって、居住を制限しているのですよ。電信電話だってそうですよ。ここを離れてはだめだといって強制している。同じことじゃないですか。どこが違いますか。演習のときには、お前はここを離れてはだめだ、離れたら処罰するといっている。鉄道の職員だって、持ち場を離れたら処罰するといっている。電信電話公社の交換手だってそうです。電話局へ行ってごらんなさい。職場は、ちゃんときめられた時間離れてはならぬのです。同じですよ。どこが違うのですか。
  133. 金子一平

    ○金子説明員 営内に居住するとか、あるいは船舶に居住するとかいうことで居住の制限を受けます場合と、それから、あるいは社宅に住む、あるいは寮に住む、あるいは自宅から通勤できるというような場合とは、相当私は判断を異にしていいのじゃないか、かように考えます。
  134. 横路節雄

    ○横路委員 どうもあなたの話はわからない、話をわきへそらしてはだめですよ。あなたは、今演習の場合だって、それは居住を制限しているから、それには出しているんだ、こう言っている。それならば、鉄道の職員だって、電信電話公社の職員だって、普通の住宅や寮におるが、ある一定の時間は、演習と同じように強制して、お前は晩の十時から朝の六時まで離れてはだめだ、こういっている、同じじゃないですか、何が違いますか。何かりくつが成り立ちますか。
  135. 金子一平

    ○金子説明員 勤務の条件として、八時間なり六時間労働、これはわれわれの場合も同じですが、あるいは今の電信電話の交換手の場合も同様かと思いますけれども、勤務中に職場をみだりに離れることはできぬ、これはいかなる職場においても同様かと思うのであります。この間に食べる食事につきましては、これは、自分のふところから出すのが当りまえです。もしそれが出るのならば、当然課税の対象にしてしかるべきじゃないか。ただ、今申し上げました自衛隊の場合、あるいは船舶乗り組み中の船員の場合はこれはだいぶん事情が違うのじゃないか、そこにやはり何か根本的なる違いがあるのじゃないか、かように考える次第であります。
  136. 横路節雄

    ○横路委員 私は、何も違いはないと思いますよ。それならば、演習中支給した食事を全部金に換算して、俸給から差し引けばいいです。あなたがそう言うならば、私が言うのと同じじゃないですか。私は、何も自衛隊から差し引けと言っているのじゃないです。警察だとか、鉄道だとか、郵便局だとか、そういうものは同じように、そこで支給される夜食について、月七百円に限って免税だというようなことを言わないで、支給されているものについては、それを全額免除するのが至当だと言っているのです。直税部長、どうですか。あなたは差し引けばいいです。片一方から引くならば、向うからも引けばいいです。私は向うが引いてないから、月七百円の限度なんということを言わないで、それを全部免税の措置にするのが当然であります、ごう言っている。長官どうです。部長ばかりでなく、長官が答弁して下さい。
  137. 北島武雄

    ○北島政府委員 なかなかむずかしい問題でございます。一体現物給与というのは、どういう性格であるか、所得税法上も私は相当問題があると思うのです。実は、現物給与につきましては、現在の所得税法で見ますと、これは胡らかに課税という建前なんです。そこで、私も国税庁に参りまして、こういう課税の建前のもとにおいて、なぜ六百円までの通勤費、あるいは夜勤等の場合の現物給与について、七百円という限度までして課税しない取扱いをしているか、これは非常におもしろい問題だと思うのです。しかし、建前といたしましては、やはり現物給与も給与である以上は、課税すべきだという考え方が根本だと思うのです。ほんとうを申しますと、所得税法のもとにおきまして、あるいは政令でもって、こういうような場合は法律で委任して、その上で課税しないで済むような方法を講ずれば、私はそれはいいと思うのですが、しかし、そこまでしなくても、ただいま申しましたような船員の乗り組み中の給与とか食事とか、自衛隊の営内居住を強制されている一曹等に対して、国が給する食事というものは、そういう政令でなくしても、やはり理論上は、認められてしかるべきだというふうに私も考えます。ただ、現物給与一般に、現在の七百円というのを、だんだん類推していってもっと上げたらいいかどうかというのも、この点は、私ももっと検討いたしたいと思います。考え方と申しますと、七百円になりましてから三年足らずであろうかと思います。その間物価も横ばい状態でございますし、いろいろと考えると、まだこれを上げる時期ではないのではないか、こういうふうに私としては一応考えておるわけであります。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 政府の方では、船員については、世界各国でもそうしているのだ。だからしたのだという。しかし、たとえば被服の場合ですよ、自衛隊でも警察官でも、専売公社の職員でも、それから国鉄の職員でも、やはり税は公平にかけるならかけるし、かけないならかけない、こういうようにする。私は、自衛隊の諸君の一曹以上の連中の演習についてとれというようなことを言っているのではない。今長官お話しのように、同じ立場にある国鉄や、特にそういう公益性のあるところについては、何としてもこれは七百円なんという制限でなしに、はずしてもらわなければならぬ、こういうように考えて話をしたのです。今長官の方から、なおよく考えてみますということですから、よく考えて下さい。  次に長官お尋ねしたいのですが、租税特別措置法の第二十四条の農業所得について、これからお尋ねをしたいと思います。大体全国的に農業所得は、今きまってくるところです。そこにございますのは、個人が、昭和二十八年一月一日から昭和三十二年十二月三十一日までの間に所得税法の施行地にある土地を開墾し、または水面を埋め立て、もしくは干拓して、その土地を昭和三十三年十二月三十一日までに当該個人の耕作または採塩の用に供したときは、その者には、その耕作または採塩の用に供した日の属する年及び号の翌年から五年間は、当該土地における米、麦その他政令で定める農産物の栽培または採塩から生ずる所得に対する所得税を免除する、こうなっております。私がお尋ねしておるのは、実は開拓者が営々として新たに土地を開拓していくわけです。あるいはそれは畑地にしても水田にしても、みな一生懸命やっておるわけです。ところが第二項に、「前項の規定は、確定申告書等に同項の規定の適用を受けようとする旨及び当該所得の明細に関する事項の記載がない場合には、適用しない。」こうなっているわけですね。私は、農民の諸君が、このことを十分知っているであろうと思うのですが、しかしいろいろ調べてみると、どうもそうでもないらしいのです。そこで、私は、長官お尋ねしたいのですが、大体昭和三十一年度では、この申告をした者はどれくらいあったのでしょう。話によると、昭和三十一年度では、全国で確定申告したのは、わずか三十七件だという話もある。三十七件しかないとすれば、これは、農民の諸君がこの租税特別措置法第二十四条を全く知らないのではないか、こう思うのです。その点はどうなっていますか。私、昭和三十一年度の確定申告では、全国に三十七件しかない、そういうふうに聞いています。
  139. 金子一平

    ○金子説明員 ただいま御指摘のございました数字は、実は手元に持っておりません。何件になっておりますか、後刻調べて御報告申し上げたいと思いますが、いずれにいたしましても、私どもの感じでは、そう多くはないと思います。やはり今先生からお話のように、こういう点は、特に北海道のような場合でございますと、あるいはもっと周知徹底方をはかる必要があるんじゃないか、かように感じております。
  140. 横路節雄

    ○横路委員 実は、自治庁の税務局長においでいただいているのですが、これは、地方税法の関係ではどうなっているのでしょうか。私がお尋ねしたいのは、こういうことなんです。たとえば、所得税法ではこうきまっていますね、所得税法のこうきまっているものについて、今度は町村においては、本来からいえば、住民税を取り立てる場合には、やはり新たに土地を開拓したものについては、この租税特別措置法第二十四条を適用して、いわゆる課税総額をきめるべきでないか、これは、地方税法との関係ではどうなっていますか。
  141. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 住民税の場合におきましては、その種の所得計算を強制するというような規定は置いておりません。
  142. 横路節雄

    ○横路委員 置いていない。これは主税局長お尋ねしますが、これはどういうものでしょうか。措置法の第二十四条では、私が今申し上げましたように、昭和二十八年から三十二年までの間に新たに土地を開拓した者については、その年及びその翌年から五年間は、できてくる米、麦その他政令で定める農産物から上ってくる収益には課税しないとなっているのでしょう。ところが、今自治庁の税務局長に聞けば、地方税法では、これを考慮しないというのです。これはおかしくございませんかね。主税局長、私はこれは非常におかしいと思うのですな。せっかくここで、特別措置法の第二十四条にそうきめておきながら、それを地方税法においては何ら——その営々として土地を開拓しておる農民に対して住民税を課するときに、全然これの適用をさせないというのは、私は不当だと思うのです。その点、どうなっているのですか。
  143. 原純夫

    ○原(純)政府委員 この二十四条の規定は、所得に対する所得税を免除するとなっておりますから、地方税法の一応の読み方では、課税標準自体はあるわけですから、地方税の方が所得割の分、第二方式以下の分では課税になるのではないかと思いますが、ただいま自治庁の方からそれについてのお話もあったようで、先般来、実は他の向きからも、その点についていろいろ御質問を受けまして、この問題に限らず、国税で軽減免除をいたします場合に地方税はどうするかということは、必ずしも非常にはっきりした原則があって、きっちりそれによっておるということは言い切れないと思います。これについて、よく打ち合せ研究しようじゃないかということになっております。本件は、先ほどお話し通り、適用件数は、三十一年分について三十七件、これはこの周知徹底があるないというふうにお話になったようでありますが、実は、やはり開墾地の営農においては、初めの五年間で所得があるようになるというのが、非常に少い例だと思います。現にこの課税になっております三十七人の方につきましても、それによって免税になりました額は、合計で四万八千八百円、一人当り千二、三百円ということになっております。そういうようなもので、私は、小さいから地方税はいいと申しているのじゃありませんが、さっきお話がございましたので、これは周知徹底がないというよりも、やはり本来適用が少いといいますか、所得が出ない場合が相当多いということになっておると思います。地方税との関係は、なお自治庁とよく打ち合せをいたしたいと思っております。
  144. 横路節雄

    ○横路委員 今主税局長からお話しのように、三十一年度について、租税特別措置法第二十四条の適用について、確定申告の際に申し出た者は三十七件だ、こういうわけです。私は、それはそれなりで、論議をしませんが、しかし問題は、これは住民税の方に非常にウェートがあるわけです。住民税は、今主税局長が率直に、これは自治庁の税務局長とよく打ち合せをして、また態度も明確にしたい、こういう話ですから、私はまあ明確にしてもらいたい、今すぐここでどうとは言いませんけれども、しかし、私が自治庁の方によく考えてもらわなければならぬのは、やはり住民税をきめるそのきめ方は、所得税法によっているわけですな。所得税法の第九条によって、何々は控除する、何々は、とこうなってきている。そうなれば、租税特別措置法の第二十四条だけは、これは、地方税法の住民税をきめる場合の、いわゆる所得金額の中に全然見ないということは、私はおかしいと思う。当然落すべきなんです。しかも、国税の場合においては、おそらく農家は、あるいは所得税がかからない農家がほとんどだろう。だから、全国で三十七件しかなかったかもしれない。ところが、住民税は全部かかるわけです。その全部かかるときに、この第二十四条について全く考慮していないということは、私は片手落ちだと思う。奥野さん、どうです。原さんとよく相談して、あとでまた大蔵委員会で御答弁していただくというならば、それでいいのです。これは、あなた忘れていたとは言わないけれども、知っておったのだけれども、黙っていて、町村財政もつらいことだろうから、まあ黙って取ったらいいだろうという内諾を与えたとは言わぬけれども、もっとはっきりと——これは、やはり租税特別措置法第二十四条があるんだから、明確に控除すべきものは控除する、こういうふうにはっきりしなければならぬと思うのですが、一応きょうはお返事だけ承わっておいて、あらためて両省で協議ができた上で、またもう一ぺんお聞きしたいと思います。一応あなたのお返事を聞いておきます。
  145. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 御指示もございますので、よく相談をいたします。ただ、現在考えております考え方だけ申し上げさしていただきます。法律で別段の規定を置いていないから、市町村は個人のいろいろな事情があるのに、一切減免できないかといいますと、これは、市町村が所得に対する課税額を決定する主体でございまして、国の場合の税務署のような、国の機関ではございませんで、市町村自体がみずからの意思決定に基いて課税をしていくわけでございますので、やはり市町村は、実情に応じた措置をして参ると考えております。その場合に、制度的にいろいろな税額計算を市町村に強要していくことがいいか悪いか、こういう問になりますと、私たち非常に疑義を持って参るわけであります。ことに、政策的にいろんな措置を行います場合に、どちらかといいますと、税で減免するよりは、他の面で補助をした方がよろしい。現に開拓者に対しましては、農道を作りますとか、あるいは生業の器材を供与いたしますとか、相当な便益を供与いたしておるのが実態でございます。そのほかに、さらに租税の面でやるかということになりますと、私は、特に市町村の税のような場合には、国が制度的に強制することは避けた方がよろしいんじゃないか、こういうふうに思っております。国が制度的に強制しております結果、市町村としては非常に困っておる。何か制度的に国のものに乗っからないようにしてもらいたいということで、強い要請を受けておりますものが、二つございます。一つは、家業専従者控除をするものがあったり、しないものがあったりするという点であります。もう一つは、米穀の供出につきまして、一定金額を収入金額から控除するという問題でございます。全国的な均衡、あるいは全国的な政策、こういうものが個々の市町村には必ずしも強要できない、そういう意味におきましても、私たちとしては、市町村としては何もやらぬわけではございませんが、なるべくなら政策的なことを強要したくない、こういう気持を持っておるわけであります。御指摘の点につきましては、大蔵省ともよく相談をいたしたいと思っております。
  146. 横路節雄

    ○横路委員 今税務局長の方から、開拓者の農家に対しては、農道だとか、やれ何だとかいって、町村で、だいぶ補助している。だから、補助は補助、取るものは破った方がいい、こういう御意見のようですが、しかし、なかなか住民税というのは、どこでも相当な負担なんです。ですから、これは黙っておれば、町村においては、できるだけ課税客体をふやしてかけていこうというように働くことは当然です。しかし、法律の建前上、せっかくこういうように租税特別措置法第二十四条できめたのですから、やはりこの精神は、町村においても生かしていくようにするのが至当だと思います。これは、大蔵省と十分協議をして、せっかく法律があるのですから、この精神を生かしてもらいたいと思うのです。  せっかくおいでになったのですから、あなたに一つ。この間の予算委員会で、自転車税と荷車税について今度やらないことになった、これは非常にいいわけです。ところが、まことにけっこうだと思っておったら、今度は、荷車税は固定資産税として取る、その固定資産税のかけ方は、計算してみたら、今までの荷車税よりも大きい、こういうようなことになってきている。これは、まことにおかしい話で、全く与党の方もびっくりなさるだろう。地方税法の御承知のように第三百四十一条の固定資産税に関するところの最後で、第四号に、「但し、自動車税の課税客体である自動車並びに自転車荷車税の課税客体である自転車及び荷車を除くものとする。」これはあなたの方で黙認するのか、どうなさるか、それとも、荷車一台持っているものは取らぬというのか、あるいは荷車を十台なら十台持っているものについては、固定資産税で取るというのか、その点はあなたの方で検討なすったのか、全然自治庁としては知らないんだということはないはずです。どういうふうになっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  147. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 御承知のように、事業用の物件につきましては、その価額を課税標準といたしまして、固定資産税を課しております。この事業用の物件を償却資産と呼んでおるわけでありますが、この償却資産の範囲から自転車や荷車、特に事業の用に供しているものは償却資産に入ってくるわけであります。しかしながら、別途固定資産税的な性格をも合せまして、自転車荷車税を課しておるわけでありますから、自転車荷車税の課税客体である自転車及び荷車は、この償却資産の範囲から除くんだということを、地方税法の中に書いてあるわけであります。ところが自転車荷車税がなくなりまして、原動機付自転車や二輪の小型自動車、それから軽自動車、これに対する課税を軽自動車税というものにまとめるわけでありますので、この規定を、軽自動車税の課税客体である、今申し上げますようなものということに改めようとするわけであります。その結果は、現在は事業用のもののみならず、非事業用のものでありましても、自転車荷車税を課しているわけであります。非事業用のものがおそらく大部分だろうと思います。そうしますと、事業用の自転車や荷車につきまして、特段に事業用の物件のうちから自転車や荷車の形をなしているものだけは除くんだという規定を置きませんので、償却資産の価額を計算する場合におきましては、事業用であります限りは、一応価額の中に合算されてくる、こういうような問題が起ってくるわけであります。もとよりこれは非事業用のものじゃございませんで、事業用のものだけであります。しかしながら、事繁用の物件だからといって、わずかなものをもって直ちに固定資産税がかかってくるということではおもしろくございませんので、従来からもそういう考えのもとに、土地や家屋に対する固定資産税の場合とは違いまして、償却資産に対する固定資産税の場合だけは、免税点を特に高く定めてあるわけであります。その金額が十万円であるわけであります。従いまして、事業用の物件を寄せ集めまして十万円にならなければ、課税はしないわけであります。一台、二台持っているから、自転車荷車税がなくなったけれども、やはり固定資産税がかかってくるんだ、こういうことはあり得ないと私ども考えておるわけであります。同時にまた、事業用のものであるか、非事業用のものであるか、自転車や荷車に関します限りは、大体において事業用のものであっても、非事業用にも使われていることが多いと私は思っております。そういうものは、非事業用と見るべきだ、こういうように私たち考えているわけであります。現に償却資産の範囲をどう定めるかということにつきましては、所得税や法人税の計算におきまして、直ちに損金に算入させない、減価償却額だけを損金に入れさしていく、こういうものに限っておるわけでありまして、従いまして、また一つ金額なり、あるいは耐用年数なりからその範囲を定めておるわけでございますので、たとえば中古の自転車を買った、あるいは荷車を買った、そういう場合には、一万円以下のものがたくさんあるだろうと思います。それをすぐに損金に入れていきます場合には、当然また償却資産課税にもならない、こういうふうに考えておりますので、たとえば日本通運が持っております荷車、大運送会社が持っております荷車、これは、従来からも償却資産課税を受けておりますから、その償却資産課税の中には入ってくると考えております。しかしそれ以外に、零細な事業者が荷車を持っているからすぐに償却資産課税になるんだ、こういうことはあり得ないわけであります。またこういう形になりましても、価格のわずかに一・四%でありまして、今自転車、荷車を特に取り上げて課税をしておりますのは、逆に道路損傷負担金的な性格を持たせておるわけでございますから、固定資産税の計算をするよりも若干高いわけでございます。われわれ自転車荷車税を廃止いたしまして、固定資産税で裏から拾っていこうというふうな考え方は毛頭持っておりません。しかし、例外的には、償却資産の範囲の中に入ってくるものがあり得る。あり得るが、その場合の負担も、従来の負担から見た場合には、はるかに低いものだ、これは、固定資産税の体系を考えていきます以上は、やむを得ないものなんだ、かように考えておるわけであります。いろいろな事業の物件が償却資産の範囲でありまして、特定のものだけは除外するのだという規定は、二重課税の今の物件の排除以外は何らしていないわけでありますので、そういう点から、やむを得ず今のような問題が起ってくるわけであります。しかしながら、その結果負担が過重になったりするようなことは、絶対に起らないような考えを持っておりますし、またそのような注意は、十分にいたして参る考えでございます。
  148. 横路節雄

    ○横路委員 今のお話で、償却資産の固定資産税——大体自転荷車税を廃止して、そして今のようにして取り立てる場合に、全国で税収をどれくらいに見込んでおりますか。
  149. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 自転車荷車税の廃止によりまして減収になる額が五十億でありまして、逆に償却資産の中に入って参りますのが五千万円であります。
  150. 横路節雄

    ○横路委員 次には長官お尋ねしたい。農業所得の問題ですが、今農業所得の中でいろいろ問題になっていることは、俗に言えば、隠し反別という言葉になるかもしれませんが、普通の農家の人は、なわ延びと言っておる。このなわ延びの適用の問題なのですが、これを、実際にこうやっているわけですね。個々の農家について全部をはかれないから、一カ町村で五戸か六戸だけ抽出してはかって、そして実際になわ延びはこれだけあった、だから、ことしは去年よりも一割多いだろうという考え方で、それをその町村の全農家にかけてくる。こういうやり方は、私は違法だと思うのです。それは個々の農家調査して、お前のところは、なわ延びはこれだけ出るというのならわかるが、五戸か十戸摘出して調べておいて、それを平均して、それでもってその町村の全農家にやることは、私は違法だと思うのです。そうでないでしょうか、長官
  151. 北島武雄

    ○北島政府委員 そのようなやり方は、いたしていないと思いますが、詳細は直税部長より御説明申し上げます。
  152. 金子一平

    ○金子説明員 実は、ただいまお話の隠し田と申しますか、なわ延びの関係は、標準率の作成を各局にまかせております関係上、北海道なら北海道の場合どうなっておりますか、ちょっと私どもの方ではつかめませんが、考え方といたしましては、なわ延びの部分を全額つかまえろといったって、これは無理でございます。と申しますのは、ことし農林省の方で発表いたしておりますのは郡の段階であります。従って、個々の町村にそれをおろして、各町村ごとのなわ延びの部分が判然いたしますまでは、郡段階のものをそっくり町村におきまして見込みますことは、非常に危険である。かといって、全然見ないことも、これは見ないという建前をとることも不必要なんで、ある程度各地区々々によって事情が違いましょうけれども、税務署の方で、各町村の部分につきまして、まあ大体この程度はおしなべてあるというような心証が得られ、また町村なり農業団体の方々と御相談いたしました際に、大体郡の段階でこれくらいあるのだから、ここは、おしなべてならばこの程度だろうというようなことで、話し合いがついております場合においては、何%になりますか知りませんが、その部分は見込んでおると思います。ただ、今お話しのように、ここは二割延びておるから、三割延びておるからということで、一律にその部分を標準率に織り込むようなことは、やっていない、かように考えます。
  153. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の直税部長のお話で、町村で、相当多い戸数で五戸か十戸くらい調べて、それで平均を出す、それから各戸にかける、その場合には、税務署と農家との間で十分話をして、農家が納得しなければやらない、またそういう一方的なことはやっていない、こういうようにお聞きしておいていいですね。
  154. 金子一平

    ○金子説明員 各局の実際のやり方は、府県でありますと、あるいは府県の農業団体なり税務署と大体話し合いをする、あるいは郡の段階、町村の段階におきまして、それぞれ系統団体がございます。そういうところと大体の打ち合せをいたしまして、標準率をあるいは収量と言った方がいいかもしれませんが、収量なり経費を話し合いできめておりますので、北海道も、実は実情がどうなっておりますか、まだ報告を受けておりませんが、おそらくさようなことでやっておると思います。  ただ、ー言お断わりしておきたいと思いますのは、なわ延びの部分を、その場合、直接にここは何%ふえておるというようなつかみ方でつかんでおるか、あるいはこちらの方は坪刈り、あるいは粒数調査等によりまして、税務署で独自の調査をやっておりますその収量と、それから作報で発表いたしております収量、こういったものとを比較いたしまして、収量の面において、なわ延びに相当する部分か若干税務署の調査量にプラスされることはあり得三しょう。しかし、これは直接いうよりも間接的になわ延びの部分が収量に反映されて、そういうことになっておるということでありましょう。どの方法をとっておるか、実は私、北海道の場合まだ具体的に聞いておりませんが、大体において、仕事の進め方といたしましては、現地の農業団体の長なり、あるいは町村の長と話し合いをやって進めておる、かように考えております。
  155. 横路節雄

    ○横路委員 直税部長にお尋ねいたしますが、私が質問しておる趣旨は、こういうように、一つの町村でわずか五戸か十戸だけ摘出して、それを平均して各戸にわけるというやり方をやっておるのです。そうなると、正直な農家は、自分の反別はこれだけだ、こう言っておるのに、それを一律に頭からかけてこられるというやり方は、正直者がばかを見るということになる。だから、これは個々の農家をよく調査されてやるならばいいですよ。しかし、そうでなしに、税務署があらかじめ見当をつけていくということはあそこはきっとなわ延びがあるだろうといって見当をつけてやったものを、全町村に及ぼされることは、正直な農家が困るということなんです。そういう方法をとらないで、やはり個々を調査してやるならば、それでかけていかなければならぬ。それは、やはり今あなたが言ったように、直接それぞれの農業団体との間に十分話し合いをして、相互が納得したならばいいですよ。そうでないのに、一方的に押しつけることのないようにしなければならないと思うのですが、この点はいかがですか。
  156. 金子一平

    ○金子説明員 御指摘の点は、私も全く同感です。一律に相当量のなわ延び分をことしから見込むようなことは、第一線では万々やってないと私は信じておりますが、そういう点がございましたら、具体的にまた御指摘をいただきまして、私の方でも十分注意いたします。
  157. 横路節雄

    ○横路委員 これは、長官お尋ねしますが、農家農業所得を調べるのに、税務署は、農業協同組合あるいはそれぞれの農産物関係の会社、亜麻会社とかビート会社とかいうところにいって、帳簿の提出を求めて調べる。そればかりならいいですが、さらに農業協同組合に行って、佐藤何がしの貯金は何ぼあるか、伊藤何がしの貯金通帳はどうなったか見せろとやっている。これは全くの行き過ぎだと思うのです。農業協同組合というのは、農民の組織団体なんです。それを育てるために、できるだけそこに金を預けましょうといっておいてそういうことをやられれば、農民は、もう農業協同組合には金を預け入れしなくなる。長官、これはどうですか。私は行き過ぎだと思う。行き過ぎなら行き過ぎだとおっしゃっていただけば、それでいいのです。
  158. 北島武雄

    ○北島政府委員 各地方々々によりまして、多少収穫量の調査等につき、やり方が違うようでありますが、原則論を申しますと、税務署では、いわゆる坪刈り調査、在庫米調査、粒数調査などによりまして、税務署としての見方を立て、それに昨報の資料も参考資料としてにらみ合せるわけでございますが、ただいまお話しのように、いきなり農業協同組合に行って貯金通帳を見せろとかなんとかいうことは、私は万々ないと思うのです。ただし、個々の方がどの程度の出荷をされているかということは、個々の収穫量調査の一環として、あるいは行われることもあり得ることでございましょう。しかし、直ちに預金調査をやって、それから収穫量をつかまえたりする方法を果していたしておるかどうか、具体的にそういう場合があるかどうか、私存じないのでございますが、いきなり預金調査に出るような無理な方法はやめまして、できるだけただいま申した原則論によることがよろしいと考えております。
  159. 横路節雄

    ○横路委員 今長官が、農業協同組合に行って、各農民諸君の個別の預金台帳の提示を求めることはやめた方がいいと言われた。やめた方がいいということは、ぜひやめるようにしてもらいたい。やめた方がいいということは好ましくないということなんです。あなたの言うように、坪刈りだとか、統制調査事務所の作報でやるならいいですよ。しかし、それを農協に入って、台帳の提示を求めてやらしている例があるのです。それじゃ例を出してくれ、厳重に何とかするというのなら、私の方で出しますよ。私はこれは好ましくないと思う。そのために、農民は農協に対して貯金をしなくなる。農協を育てようと思って、正直に農協に貯蓄すれば、それが税の対象の重要な資料になるということでは、当然そうなりますよ。あなたの方で、これは適当でないとおっしゃるなら、ぜひそういうようにしてほしい。そうでなければ、何ぼここで税法をきめても、そういうところで抜けてしまうのです。長官、いいですね。
  160. 北島武雄

    ○北島政府委員 できるだけ他の適当な方法によってやるべきでありまして、直ちに預金調査に出るというのはどういう場合であるか、個々の具体的事情を見まして、果してそうせざるを得ないような事情にあるかどうかをよく検討してみたいと思います。でき得べくんば、直ちに預金調査に入ることはやめまして、ただいま申しましたような原則論によって、できるだけ調査いたしていきたいと思います。
  161. 横路節雄

    ○横路委員 あと二つだけ。長官お尋ねしますが、農業所得の場合の控除ですけれども、たとえば災害を受けた、冷害だというので、天災融資法によって農家は融資を受ける、その元金と利子を年賦償還で返していく、これは当然経費として控除するのが至当だと思うのです。またそうなっていると思うのですが、どうでしょう。
  162. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまお話しの点は、元金の方は、天災のために融資を受けたということでございますと、控除は無理であろうと思います。ただ利子の方は必要経費に該当するものがございましたならば、控除できると思います。問題は、むしろ税法の問題かと考えます。
  163. 横路節雄

    ○横路委員 所得税法の第九条の四の純損失または雑損失の繰り越し控除ですが、これは、青色申告のものについては、繰り越して控除するようになっているわけです。ところが、今ここで、春日委員がずいぶん長いこと長官と論議されておりましたが、農家の場合に青色申告ができるのは、相当余裕労働力があるか、あるいは子供が高等学校に通って、せめてちょっと帳簿をつけることを覚えているかで、そうでなければ、一般農家は、青色申告がなかなかできないのです。  それでは今度長官、実際に農家に行ってみなさい。青色申告ができている農家とできない農家とは、どこが違うか。高等学校にもいってない、小学校かそこらしか出てないという者は、青色申告なんかできない。ですから、青色申告のものについては第九条の四、とりわけ第二項でそう書いてありますが、しかし災害等による赤字の分については、やはり次年度の繰り越し控除を認めるべきだと思うのです。これは、第九条の四の第三項にもございますけれども、十一条の四でだいぶこの点は青色申告とは違ってきておる。災害による赤字の問題については、次年度の繰り越し控除を認めるのが至当だと思うのですが、どうですか。
  164. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまの御指摘の点は、税法上の問題でございまして、その方で解決していただく以外には、税務の執行面における解決はちょっとむずかしいかということを、率直に申して感じます。
  165. 横路節雄

    ○横路委員 主税局長お尋ねします。今の一点、とりわけ最後の私が申し上げました災害による赤字の分は、今お話のございましたように、税法上の問題だ、第九条の四で、青色申告の分についてはできるようになっている。しかし青色申告というのは実際の農家ではできない面が多いのです。これは、税法上の問題であるならば、政府みずからが、特段に政令か何かでやれるようにしなければならぬ、主税局長のお考えはどうですか。
  166. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまの法律ではできないというのが、ただいま国税庁から答弁があった通りであります。今のお尋ねは、立法論として、そういうふうにすることの可否であります。もちろん、研究に値する問題だとは思いますが、現在、現行法の考え方は、こうであります。およそ所得に対する課税ということをやります場合に、やはり法人でありますれば、事業年度事業年度に区切って課税する。ある期に損が出ました場合に、これを繰り越すというのは、当然の要望として起るわけでありますが、なかなか所得の計算の基礎が理想的な状態になっていないということから、長い繰り越しを認めることは各国においてもそう多く例はございません。わが国の過去の例におきましても、その年その年限りでやってしまう。例外的に一年だけ認めるというようなことがあったのは、二十五年に、御案内の通り、青色申告あたりを中心にして、非常に近代的な税制に切りかえようという際に、そういう理想を描いて、三年、五年の繰り越しというものが認められるようになったわけでありますが、あくまでもこの所得の計算について、かなりよい記帳状態がないと、これは非常に弊害を生むわけであります。従いまして、にわか全般について、青色でなくとも繰り越しを認めることはいかがか。別な言葉で申しますれば、なるほど災害で損があったかもしらぬ。しかし、それがなかなか確定しがたい。それからふだんの所得の計算についても、ぴっしりはじかれているかどうかよくわからないというような問題がからまって参ります。やはり全体の記帳状況、所得の計算の状況が相当よくならないと、この青色に限るというのをはずすのは、いかがかというような気持で今の法律はできておるわけであります。検討問題でありますが、現行法の考え方は、そういうことでございます。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 青色申告の場合については、私も第九条の四項のところで、そういう適用があることは承知しているわけです。実際に先ほど言いましたように、青色申告ができる農家というのはやはり特定の農家なんだ。朝早くから夜おそくまで一生懸命やって、しかも単作地帯においては、耕作面積も大きい、晩に帰ってきてから、それについていろいろ経費その他についてつけるなんといっても、それはできないのです。なまけているわけじゃない。能力がないわけです、特定の指導者がそこにおってやるならともかく。ですから、私はそういう点については、もっと大蔵省主税局において考慮するような措置をとるべきだと思うのです。国税庁の方からは、それは法律の問題だと言いますから、その点は、さらに所得税法その他のときに十分論議したいと思います。  ただ、主税局長に重ねて私から話をしておきますが、先ほど私が自治庁の税務局長に話をしたように、租税特別措置法の第二十四条について、自治庁においては、それは全然考えたことはない。今お帰りになりましたが、せっかく法律がありながら、その点については全然考慮していない、町村はとるならとった方がいいのだという考え方、これは、大蔵省にこういう法律があり、国税庁はその方針で、その通りやっておるのだが、自治庁は、それは町村にまかせっきりだということは、不当だと思う。これは、新年度から直ちに始まることです。もう今都道府県議会並びに市町村議会が始まって、歳入について市町村民税が始まっておりますので、十分打ち合せて、これだけは見解を明確にして、二十四条の精神を生かしていただきたいと思います。  国税庁長官には、きょうは、現物給与についてだいぶ今までより明確になりましたから、一つ私に答弁した件については、お忘れにならないで、それぞれの政府関係機関の方から申し出を受けた場合に、先ほどの答弁からはずれないようにやっていただきたい。やらなければ、せっかく論議した意味がありませんから……。  以上で終ります。     —————————————
  168. 横山利秋

    横山委員長代理 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  169. 奧村又十郎

    ○奧村委員 主税局長と銀行局区長にお尋ねいたします。委員長並びに議員諸君の御都合もありまして、五時までに終れということでございますから、私は、大体問題点だけをあげまして、なお不足の問題は、明日質疑を続行いたしたいと思います。  私は、主として貯蓄減税と金融秩序の関係お尋ねしたいと思いますが、その前に、ちょっと、資料について、原主税局長お尋ねいたします。「租税特別措置による減収額試算」これは、井上良二委員の要求によって資料が出ておるのでありますが、大体八百七億です。ところで、この租税特別措置というものは租税特別措置法に規定された臨時的な措置によるところの減収というふうに考えておったが、この資料を見ると、所得税法などに規定してある、あるいは法人税法に規定してあるものの租税特別措置による減収額、こういうふうに出ておるので、それじゃ一体大蔵省は何をもって租税特別措置というのか。少くとも所得税法に規定してあるものは、臨時的なものじゃないはずです。特別措置ではないはずです。そうすると、所得税法に書いてあるものを含めるとするならば、これは、何をもって租税特別措置とするのかということの判断の基準に苦しむのであります。この資料は、何によって特に租税特別措置ということに分類されたのか、資料に対する御説明を簡単に承わっておきます。
  170. 原純夫

    ○原(純)政府委員 まことにごもっともなお尋ねで、あるいは私ども表題の注釈くらいをつけるべきだったかとも思いますが、一昨年の調査会当時以来、こういうやり方をやっておるものですから、それになれてそのまま出したという点が、若干不用意だったと思います。ただ、こういうふうに、この特別措置法に規定されました事項だけでなく、所得税法、法人税法等につきましても出しておりますのは、およそ税を単純に税負担の公平という見地からだけ見た場合と違う角度で見ておるものについては、実質論として同じ性質のものでありますから、並べてごらん願うことが必要であろうというような考えでいたしておるわけであります。番顕著な例は、いわゆる重要物産所得の免税というのでありまして、この資料の二十番というのにございます。所得税法、法人税法、それぞれ両法に規定されております。これなどは、きわめて政策的な重要な物産に対する投資を促進しようというようなものでありますのでこれは、やはりただいま申しましたような、実質的な意味における特別措置を一覧をしていただくという意味においては必要であろうと思ってなにしておるわけであります。その意味で、租税特別措置というのが、術語としてといいますか、法律用語としての意味以上に広く使われておるので、その点は、注が足らなかったと思いますが、実質的には、この方が一体としてお考えいただくにはよろしいと思って出しました。御了承願いたいと思います。
  171. 奧村又十郎

    ○奧村委員 生命保険料控除、それから退職給与引当金、重要物産、これは法律に期限がないのでしょう。期限がないし、しかも所得税法に規定してあるのでありますから、これは暫定的なものではない、臨時措置のものじゃない。暫定的な臨時的なものは、租税特別措置法に規定してある。それで、臨時税制調査会でも税制特別調査会においても、臨時的な暫定的な特別措置については、なるべく廃止しようということで審議をし、またそのために資料を求めておる。ところが、いつの間にか所得税法に規定された、しかも期限のないものを——所得税法の今の趣旨からいけば、生命保険料控除というものは、何も三年や五年で終るべきものじゃないとするならば、なぜこんなものを臨時措置のものと一緒にしたのか。この資料を見ても、うっかり見ると、八百億というのは、いかにも臨時措置のように思うが、何だ、案外そうじゃない。そうすると、今の御答弁によると、臨時措置、特別措置じゃなしに、政策減税は全部含めた、こういうわけですか。それなら、そのように資料を見ていかなければならない。
  172. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまおっしゃた後段の、政策減免税のおもなものを網羅したということでございます。こまかく言いますれば、まだこまかいものはございますけれども、これで大貌はうかがっていただけるというふうに考えて、あげたのでございます。
  173. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、そのつもりで資料を見させていただきます。  それから貯蓄減税と金融秩序に関する質問を申し上げたいと思います。ずいぶん広範な問題でありますが、これは、主税局長銀行局長お尋ねいたしたいと思います。特に貯蓄減税制度を新たに作ろうとするについては、何とか貯蓄増強をいたしたいという趣旨のものからお考えになったのでありますから、それはいいとして、しかし、それほど貯蓄増強を進めようとする目的ならば、まだまだ大事な考慮すべき問題があるのじゃないか。これは、大きくいえば通貨の安定が第一でありますが、これは、ずいぶん広範なごとでありますから、いずれ大蔵大臣お尋ねしたいと思います。インフレが進むような情勢において貯蓄を勧めたって、国民をだますようなものであって、意味のないことは申し上げるまでもない。その次に、金融機関を厳重に監督する。預けた先がつぶれたということで、せっかく期限がきてとりに行ったが、元も子もとれなんだ、これじゃだめである。また預金者の方も、今三%の貯蓄減税を受けても、それで三年も四年も長期に預けておく、とりに行ったら、金融機関がつぶれておったというのでは、これは意味ないのであります。従って、預金者も金融機関をよく選択して、つぶれるような不安のあるところへ預けない、また政府も、そのようなつもりで金融機関を監督指導を願わなければならぬ、これが大事なことである。その次に、あるいは貯蓄減税もいいでしょう。  そこで、主として今お聞きしたいのは一体日本の金融機関に対して、政府はどんな監督指導をしておられるかということであります。端的に申し上げますと、今度の貯蓄減税に適用される政令で指定しようとする金融機関について、私は非常に疑念を持つものであります。一体この指定しようというものは、全部金融機関ですか。金融機関としての実体を備えていない、それを金融機関と指定して、今までならばともかくも、これから政府の貴重な財源を出して減税しようというのであるが、今指定しようとするこの金融機関と称するものは、国民が安心して預け入れられるものばかりですか。この点、私は非常に疑いを持つので、きょうあすにかけて、これに特に重点を置いてお尋ねをいたしたい。なお、実はこの政令は、閣議決定を経ていないはずです。だから、これは少し変更しなさい。また信用金庫も相互銀行も入れるならば、少くともあの金融三法を一緒に通過させるために、政府は努力をなさい。そうでなければ、この貯蓄減税は、肝心なことを抜きにした先ばしった仕事である。こういうふうに私は考えるので、その角度からお尋ねをいたしていきたい、こういうふうに思うものであります。なぜそこまで突っ込むかというと、大体日本の金融行政が、近ごろ少しゆるんだと申しますか、しっかりした金融行政の一貫した方針を持っていないような感じがする。  お尋ねしようとするために、私の考えをまず申し上げますが、今の銀行法なり相互銀行法、信用金庫法、その他の金融関係法律を読んでみると、銀行、信用金庫、その他のものもいわば私企業である。従って、これらのものは、自主的な運営にまかしておくけれども、少くとも金融機関である以上、大衆の零細な預金に迷惑かけちゃいかぬ、大衆にかわって政府が監督するんだ。もし何かあれば、大衆預金者にかわって、政府が整理その他についてある程度干渉するんだ。しかし、本質は、金融機関の経営者の自主的な経営にまかしてあるんだから、政府も絶対的保証はできません。ある程度政府は、監督もし指導もするけれども、それから先は、やはり同じ銀行の中でも、同じ相互銀行の中でも、預金者がどちらが確実であるか、堅実であるか、自分の判断によって金融機関を選んで預金なさいよ、これが、今日の金融行政に対する政府の一貫した方針であろうと思う。ところが近ごろの第一相互銀行、あるいは東都信用金庫、その他の不祥事件の成り行きを見ると、相互銀行、信用金庫の、看板がかかったら、経営者がどんなことをしておってもつぶさぬのだ、どんなごとをしておっても、大蔵省はめんどうを見るんだというふうなやり方をしておりますから、私は、政府の金融行政の基本的な方針が国民に徹底していない、こういうふうに思うのです。おそらく私の申し上げる基本的な考えには、銀行局長も異論はなかろうと思いますから、答弁は、求めません。その考え方からして、今までならいいが、今度は、政府の指定した金融機関へ預けなさい、しかも、その預け方が六カ月以上毎月預けさせて、それを二年間据え置いたならば、これだけの減税をしてあげる、こういうことをなさるについては、その指定する金融機関について、政府はどの程度の監督指導をなさるのか。そこで、私は、政府の今までの金融行政の基本的な方針がなおくずれやしないか、また国民を誤まらせやしないか、こういう疑念を持つから、これからお尋ねしようと思うのであります。  信用金庫及び相互銀行については、金融三法との関係一つ確かめておきたいと思う。これは、かねてから銀行局長に申し入れてありますから、きょうはお尋ねいたしませず、新たにきょうお尋ねしたいのは、信用協同組合以下の問題であります。信用協同組合、農業協同組合、その他政令で出そうとせられるこういうものについては、大体相互扶助の精神で、加入、脱退は自由である、こういう共同経営が主体になっておるのです。これを本質から金融機関とするのは、根本的に無理があるのでありますが、しかし、少くとも政府が貯蓄減税に適用しようとするならば、この際金融機関として、果してこれでいいのかという点にしぼってお尋ねをいたしておきます。  まず一般に日本で協同組合の標準的なものとしては、農業協同組合ですが、農業協同組合は、加入、脱退自由であり、預貯金も扱うし事業も行う。事業だけではなしに、共済事業も行う。つまり必ずしも営利を目的としていない。従って、預貯金の安全性というものは非常に薄いんです。利益があれば分配する。せめて二年なり三年なり長期にわたって組合員に預けなさいと言われるからには、それじゃ金融機関としてこれを監督し、またもし万一預金が払えないという場合には、政府はどのような手当をなさるのか。つまりどのようにこれを監督し、もし万が一の場合、どのような指図をすることができるのか。金融機関の立場から、これに対する取締り監督の規定と、もし払い戻し停止などが起った場合に、政府はこれにどういう預金者保護の手が打てるのか、その規定を一つお尋ねしたい。
  174. 石田正

    ○石田政府委員 御質問が、前段と後段の具体的な問題に分れると思うのでございます。前段につきましては、あえて答弁を要しないというお言葉でございましたけれども、後段のことについて御答弁申し上げることも、前段と関係があると思いますので、冗長かもしれませんが、前段に対しての考え方一つ申し上げさせていただきたいと思います。  大体今拝聴いたしておりまして、奥村委員のおっしゃいますことは、非常な正論であろうと思います。貯蓄が大切なことであれば、それを受け入れるところの金融機関というものが健全に経営されて、預金者に迷惑をかけないようにすべきである、また金融機関は私企業であるから、必ずしも万全を期せられないこともあり得るのであるから、預金者としても、金融機関の選別をやっていくべきである、これは、私はもっともでございまして、やはり金融というものの根本は、そこにあるのだろうと思うでございます。ただ遺憾ながら、過去の事例及び現在の状況から言いまして、金融機関の全部が、御指摘のように、健全に必ずしも経営されておらない、また破綻を来たしたというような事例もある。それからまた、預金者の方におきましても、そういう場合に、選別もしないでおいて、金融機関が工合が悪くなったときは、政府の責任であるというようなお考えも持っておられる。これらの点は、本来の金融機関と預金者との関係におきまして、考慮すべきものが多々あると思いますが、話の筋は、まさに奥村委員のおっしゃいました通りであろうと思います。それでは、それらの金融機関を監督するところの大蔵省は、一体何をするのか。これは、両方にまたがるのでございますが、主といたしまして、金融機関それ自体を直接対象といたしまして、金融機関ができるだけ健全一な経営をして、預金者に対して迷惑をかけないためにできるだけの力を尽す、こういうことであろうと思います。それが、遺憾ながらまだ効果を上げておらないという点がありまするので、いろいろと問題も起って参り、奥村委員の御心配になる点は、われわれとして大いに反省しなければならぬところであろうと思っております。ただ反省をいたしておってもしようがないのでありまして、反省したことを実際にやっていかなければならぬのでありまして、われわれは、大いにこれを努めて参りたいと思っております。一般的な問題といたしまして、先ほど申しましたように、基本的な問題でございまするので、金融機関というものは、経営者がどんなに悪くても、これは立っていくものであるというような誤解を与えるようなことは今後慎んでいくべきであろうと思います。また、そういうことがなければ、ほんとうに金融機関もしっかり経営することにはならないだろうと思いますので、この点につきましては、今後考え方もはっきりさせます。またそういう意味におきまして、金融機関の指導というものを、さらに一そう徹底させていきたいと思う次第でございます。  それから第二の具体的な問題でございますが、金融機関と言えるか言えないか、どこまでが金融機関であって、どこからが金融機関でないかということが、次の問題になると思います。大蔵省といたしましては、市中銀行、信用金庫、銀行の中に相互銀行が入りますが、これは直接監督に当っておるわけでありまして、中央、地方部局を通じまして、その監督に当っておるわけでございます。これが金融機関であることは、もちろんでございますが、そのほかに労働金庫であるとか、あるいは信用協同組合であるとか、あるいは農業協同組合であるとか、そういうふうな機関があるわけでございます。これを、一体金融機関と見るか見ないかということが、一つの問題であろうと思うのであります。また根本的なことから申しまして、そういう組合が預金を集めるということ、先ほど来お話がございましたように、出たり入ったりするというようなもの、あるいはほかの事業もやるというようなところに預金というものを認めるということが、いいのか悪いのかという根本問題は、確かにあると私は思うのであります。しかしながら、これは過去の歴史的なこともございますし、いろいろな考え方もありまして、そういう組合が預金を受けるということが適当であるということで、現在やっておるわけでございます。それから、そういうふうなものの監督をどこがやるのかという問題でございますが、御指摘の農業協同組合におきましては、府県知事が監督者になっておるわけでございます。それが、いろいろな工合の悪いことが起って、そうして組合員に迷惑をかける、そういう場合に、これを一体どうするかという問題がございますが、そういうことがあり得るところのものを、特に金融機関としてこういうふうな減税の特典を与えることが適当かどうか、こういう問題になって参ります。金融機関の行政と、それから税の行政というものは、できるだけ歩調を合せることが望ましいというふうに思いますけれども、しかし、必ずそれが合わなくちゃならぬとものであるかどうかという問題につきましては、また別の観点から考えなければならない。今度の問題につきましても、金融機関につきまして、いろいろまだ至らぬところがあるのに対して、しかも減税預金をやるということは、金融機関に金が入るということがございますが、主たるねらいは、預金をされる方の人、貯蓄をされる人の方に税の恩典を与えよう、こういうことであります。従いまして、銀行、信用金庫等と一緒に農業協同組合等を金融機関に入れるか入れないかということは、金融機関に入れるとして、監督なり性質なり非常に違っているところはあるけれども、預金をする、貯蓄をするという人に対する扱いにおいて、税の面で区別することが適当であるかどうか、こういう問題があろうかと思うのであります。この点につきましては、預ける方の立場からいえば、もし税法が規定するような形の預金をする、それに対して減税特典を与えるというならば、区別すべきではないではないかという考え方が、過去においてとられてきたわけであります。ということは、これは、今度の減税預金だけではなく、いわゆる長期の預金を扱う場合に、御承知の通りに、一年以上の長期の預金をいたしました場合には、所得に対しては課税しないという制度が現在あるわけであります。この場合におきましても、銀行、信用金庫等と、それからしてほかのものとを必ずしも区別せず、一括してやってきた、こういうのが、税の関係で今までとられてきたところでございます。そういう関係もございますので、今度は、また新しい税法上の特例のことをするのであるから、従来とは違って、金融機関ごとに達った扱いをした方がいいではないかという御意見だと思いますけれども、しかし、今まで申し上げましたような見方、それからまた従来の例から申しまして、私どもとしては、そういうものは適当でないから、これを落すべきだということは、今のところまだ考えておらぬ次第でございます。
  175. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは、主税局長銀行局長、どちらにお尋ねしていいか、私もちょっと判断に苦しみますが、私がさっきから申し上げるように、貯蓄増強が目的でこれをなさるのなら、貯蓄増強のために、この減税をするまでに、もっと政府がなすべきことがあるではないか。つまり預貯金の安全性を守るということです。ところが、預貯金の安全性を守るように十二分の手が打てていないじゃないか。農協その他政府が指定しようという金融機関に、実際に金融機関としての監督、あるいは何かの場合の命令、処置がつかぬじゃないか。塩業組合なんて、これは何の金融機関としての規定があるか。その点、そういう答弁では全然答弁にならぬ。そこで、信用金庫も、現に東都信用金庫はおととし不詳事件を起して、預金者の一部に迷惑をかけて、その跡始末がまだついておらぬ。第一相互銀行にしてもその通り、現に預金者に迷惑をかけて、何割かたな上げして、いまだにたな上げでやっておるでしょう。そういうことをやって、その跡始末がついていない。しかも、これはりっぱな金融機関として、大蔵省が監督しておるのがそうなんでしょう。西村金融なんかはやみ金融で、ずいぶん預金者に迷惑をかけて、首をくくって死んだ人がたくさんあるでしょう。第一相互銀行の預金者でも、その預金がたな上げになったというので、東京で首をくくって死んだ人がある。これは政府の責任ですよ。そういうことがあるにかかわらず、それどころか、現に農協や漁業組合の預金の相当の部分がたな上げになっておる、いわば破産状態になって、再建整備法のお世話になっておる。この政令を読むと、そういうものに預金をしたら、また減税の恩恵を与える、そういうことでありますが、そういう御答弁では、私はとうてい満足ができません。もし私の言うことが間違いなら、もっと事実に即してお尋ねもし、また議論も進めたい、かように思います。従って、きょうは時間がありませんで、あしたの資料として、信用協同組合の実態を知りたいと思いますから、東京都内の信用組合は八十幾つありますが、それの預貯金及び貸付その他の状況、監督の状況、それから農業協同組合については、昨年大阪府の農協が二億円か横流しをいたして、大事件を起した。そういう場合において、どういう法律に基いて、どういう処置をしたか、この跡始末がついておるか。これは、新聞には出ておらぬが、全国的にずいぶんたくさんある。そういう問題を捨てておいて、貯蓄減税なんてとうてい問題にならぬ。従って、政府は、少くともこの政令案は改めるべきである、もし改めなければ、このようにして安心させますということを、はっきり私に一つ御答弁が願いたい。これを、また明日お尋ねいたしますから、きょうは、これをもって終ります。
  176. 横山利秋

    横山委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明六日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時七分散会