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1958-02-18 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十八日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       足立 篤郎君    有馬 英治君       井出一太郎君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    川野 芳滿君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       高瀬  傳君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    夏堀源三郎君       前田房之助君    森   清君       山本 勝市君    井上 良二君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       竹谷源太郎君    横錢 重吉君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   北島 武雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁税部         所得税課長)  亀徳 正之君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 二月十五日  委員河野密君及び横錢重吉辞任につき、その  補欠として横路節雄君及び加藤清二君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員加藤清二辞任につき、その補欠として横  錢重吉君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員石野久男辞任につき、その補欠として門  司亮君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員門司亮君及び横路節雄辞任につき、その  補欠として石野久男君及び山崎始男君が議長の  指名委員に選任された。 同日  理事横錢重吉委員辞任につき、その補欠とし  て横山利秋君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月十五日  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号) 同月十七日  ラムネに対する物品税撤廃等に関する請願(淺  香忠雄紹介)(第九一一号)  同(井出一太郎紹介)(第九一二号)  同(植木庚子郎君紹介)(第九一三号)  同(大高康君外一名紹介)(第九一四号)  同(大坪保雄紹介)(第九一五号)  同(加藤鐐五郎君外一名紹介)(第九一六号)  同(鹿野彦吉君紹介)(第九一七号)  同(黒金泰美紹介)(第九一八号)  同(小西寅松紹介)(第九一九号)  同外一件(小林郁君外一名紹介)(第九二〇  号)  同(徳田與吉郎君外一名紹介)(第九二一号)  同(中島巖紹介)(第九二二号)  同外一件(野田卯一紹介)(第九二三号)  同(野田武夫紹介)(第九二四号)  同(久野忠治紹介)(第九二五号)  同(保利茂紹介)(第九二六号)  同(松田竹千代紹介)(第九二七号)  同(松浦東介紹介)(第九二八号)  同(宮澤胤勇紹介)(第九二九号)  同(八木一郎君外二名紹介)(第九三〇号)  同(横山利秋君外二名紹介)(第九三一号)  鏡台類に対する物品税撤廃に関する請願西村  直己紹介)(第九三二号)  節句用飾物及び人形類物品税撤廃に関する請  願(西村直己紹介)(第九三三号)  煙火類に対する物品税率引下げに関する請願(  西村直己紹介)(第九三四号)  同(原茂紹介)(第九三五号)  濁酒密造防止対策に関する請願八田貞義君紹  介)(第九三六号)  同(平田ヒデ紹介)(第九九一号)  国民金融公庫増強対策に関する請願阿左美廣  治君紹介)(第九七四号)  こと、三弦に対する物品税軽減に関する請願(  藤枝泉介紹介)(第九七五号)  旧陸軍共済組合員中の女子組合員年金支給に  関する請願藤枝泉介紹介)(第九七六号)  昭和三十三年度税制改正に関する請願水谷長  三郎君紹介)(第九九〇号) の審査を本委員会に付託された。 二月十五日  葉たばこ耕作組合法制定反対等に関する陳情書  (第二六九号)  国民金融公庫貸付金制限緩和に関する陳情書  (第二八〇号)  政府関係金融機関資金わく増額に関する陳情書  (第二八一号)  内地塩生産制限に関する陳情書  (第三〇三号)  法人税軽減等に関する陳情書  (第三二六号)  ポンド為替自由化に対する措置陳情書  (第三四四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)  税制に関する件  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任についてお諮りいたします。理事でありました横錢重吉君が去る十五日委員辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。  これよりその補欠選任を行いますが、これは先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長において横山利秋君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、去る十五日付託に相なりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、政府委員より提案理由説明を聴取することといたします。大蔵政務次官坊秀男君。
  5. 坊秀男

    坊政府委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、提案理由説明いたします。  政府昭和三十三年度税制改正の一環として、すでに所得税法等の一部を改正する法律案等関係法律案提出して御審議を願つているのでありますが、さらに当面要請される貯蓄増強及び科学技術振興に資する等のため所要改正を行うこととして、ここに租税特別措置法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  以下この法律案についてその大要を申し上げます。  第一は、貯蓄増強に資するための臨時措置として、新たに貯蓄控除制度を創設したことであります。これは昭和三十三年四月一日から昭和三十四年十二月三十一日までの間に特定の長期貯蓄を行なつた個人昭和三十三年分及び三十四年分所得税について、年間貯蓄額の三%相当額、最高六千円をそれぞれの年分所得税額から控除することとしようとするものであります。この貯蓄控除対象となる貯蓄種類は、預貯金、合同運用信託、公社債、証券投資信託、株式及び生命保険とし、その貯蓄の形態は、継続的な長期貯蓄の風習を奨励し、かつ既存の貯蓄からこの貯蓄に振りかえて貯蓄控除適用を受けるような弊害を防止する見地から、原則として六カ月以上毎月一定額の積み立てを行うものであること及びその平均預入期間が二年以上のものであることを条件といたしております。なおこの貯蓄控除は、給与所得者の場合は年末調整の際、申告所得者の場合は確定申告の際にそれぞれ控除を行う建前にいたしております。  第二は、科学技術振興に資するための特別償却制度拡充であります。すなわち、まず試験研究の実施を奨励するため、現行試験研究機械設備等特別償却制度拡充し、現行の三年均等償却方法を改めて、その三年間の償却額に傾斜をつけ、初年度にその取得価額の二分の一の償却ができることとするとともに、重要な新技術企業化を促進するため、新たに新技術企業化用機械設備等特別償却制度を設け、昭和三十三年四月一日から昭和三十八年三月三十一日までの間に重要な新技術企業化するための機械設備等を取得して企業化の用に供したときは、初年度にその取得価額の二分の一の特別償却をすることといたしております。  第三に、輸出振興に資するための輸出所得控除制度改正等であります。すなわち輸出所得控除制度については前国会において割増控除制度を設け、その拡充をはかったのでありますが、今国会においても輸出振興重要性に顧み、同制度についてさらに若干の改正を行い、対外支払い手段を対価とする三国間の運送について、特別控除率取引金額の三%から五%に引き上げるとともに、紡績業者等の委託を受けて行う縫製加工輸出所得控除制度適用対象に加えるものとするほか、現行輸出損失準備金制度及び海外支店用設備等特別償却制度適用期限を、法人については昭和三十五年一月一日を含む事業年度直前事業年度まで、個人については昭和三十四年まで延長することといたしております。  第四は住宅建設重要性に顧み、現行住宅建設促進のための特別措置適用限度を延長したことであります。すなわち新築貸家住宅に対する特別償却制度及び新築住宅に関する登録税軽減及び非課税措置について、それぞれ適用期限昭和二十七年三月三十一日まで延長することといたしております。  以上のほか、開墾地等農業所得及び土地改良事業施行地後作所得に対する所得税免税制度共同事業用機械等の三年間五割増し特別償却制度外航船舶に関する登録税軽減措置及び航空機の乗客に対する通行税軽減措置について、これらの特別措置がなお必要と認められる期間その適用期限を延長するとともに、重油ボイラー改造費特別償却制度については存続理由が認められなくなつたので、その適用期限の延長を行わないものとし、その他所要規定の整備をはかることといたしております。  以上この法律案につきまして提案理由とその大要を申し上げましたが、何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたす次第であります。
  6. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本案に対する質疑次会に譲ります。     —————————————
  7. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、税制に関する件、金融に関する件及び国有財産に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。神田大作
  8. 神田大作

    神田(大)委員 私は簡単に、この前大臣質問したときに答弁が留保になっております、農業所得に対する専従者控除の問題についてお伺いいたします。  農業所得に対する専従者控除青色申告をすれば控除する、しかし青色申告がない場合は控除しない、そういうようなことになっておりますけれども、この点はどういうふうにお考えでございますか。
  9. 原純夫

    ○原(純)政府委員 専従者控除を認めるということは、青色申告をする人に対する青色申告奨励のための一つ方法なのであります。従いまして、これはもともとから青色申告奨励策一つであるということから、青色申告に限るということになっておるわけであります。お話の趣旨は専従者控除というのは、ほかの理屈からも考えられるじゃないか、そういう理屈からなら、ほかのものにも認めたらどうかというようなお話かと存じますが、私ども現行法における専従者控除というのは、もともと青色申告奨励策でありますから、当然青色申告だけに限るということに相なるわけであります。
  10. 神田大作

    神田(大)委員 青色申告をすれば控除する、その他のものに対しましては控除を認めないというようなお話でございますが、税というものは、この専従者に対する控除というものは奨励規定としてきめる性質のものじゃないと思う。農業というものは、やはり一つ事業をやつておるのですから、そこに働く専従者に対して控除するということは、青色であろうと白色であろうと、当然考慮すべきであろうと思うのですが、これを青色のものだけに控除を認めるということは、ちょっと筋が通らぬじゃないか。とにかく私は、事業者に対しましては控除を認める、農業者に対しましては控除を認めないというような、そういう不公平なやり方はぜひ直してもらわなくてはならないと思いますが、その点について、もう一度御答弁願います。
  11. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お話の点は、青色奨励策としてでなく、一般的な制度として、こういうものはあつてしかるべきじゃないかというお話であります。まことにそういう考え方は、あり得る考え方であります。世界各国立法例を見ましても、そういうような考え方をとつておる立法例もあります。しかし同時に、一方では家族所得は合算する、しかも同一事業から出たものだけでなくて、何でも合算するというような極端な立法例もあるわけで、日本もかつてはそういう立法例をとつてつたわけです。この家族所得を合算するかどうか、あるいは同一の源泉から出る、同一事業から出る所得は合算するかどうか、あるいは全然もう分離する、同一事業であつても、雇用賃金といいますか、こういうものは別にするということにするか、その辺は税制の立て方として非常に大きな分れ目であります。私は、何もただいま神田委員の言われたことは決して間違つているとは思いません。しかし、それだけに、この問題は、長年の間各国税制がどちらによるかということで、常にどこでも非常に悩んでおる問題であります。私どもとして、そういう点について十分検討せにやならぬということは考えますけれども、こういう問題は、現在とつております建前をにわかに変えるのはよろしくないというふうに思っておりますので、ただいまのところ、この点について直ちにどうしようという考えは私ども持っておりませんが、大きな問題として、十分検討をしなくてはならぬというふうに思っております。なおだんだん検討さしていただきたい。しかし今の建前は、同一事業から出る所得については、家族所得は合算する、生計を一にする親族所得は合算する、この方が担税力の実態に合うという判断をしておりますので、ただいまはこれでいくということ以外には、お答えのいたし方はないと思います。
  12. 神田大作

    神田(大)委員 これは非常に大きい問題だと言いますが、大きい問題であるから、一つこういう筋の通らぬことを、いつまでもそういうことでやつておらないで、農業をやつている者に対する控除というものをはっきり認めるということにしないと、事業をやつておる者とのバランスが非常にとれなくなってくる。また青色申告をするということでありますけれども農業者青色申告というのはなかなかできるものじゃない。毎日々々が非常に重労働でございますし、帰ってきて帳簿をつける、それを一々届けるというようなことはでき得ないことでありますし、この青色申告というものは、農家においてだんだんと減つてきておる。この青色申告をやれということそれ自体が非常に無理であろうと思う。だから、農業者専従者控除というものは、ほとんど恩恵を受けておらない。しかしながら専従者控除というものは、奨励規定として認めるべきじやなしに、当然認められるべきものであろうと私は思うのです。そういう意味合いにおきまして、この専従者控除の点を早急に考慮されて善処されることを強く要望いたします。本案に対しましては、私はきよう詳細な書類を置いてきましたものですから、後刻、例を引いていま一度御質問申し上げたいと思うのですが、この点について、専従者控除は当然認めるべきであるという私たちの考えについて、当局としてもぜひ考慮を願いたい、こういうことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  13. 足鹿覺

  14. 横山利秋

    横山委員 この間本委員会で私が質問をいたしました、俗にいう兼業農家、片つ方が工場、会社官庁等へ勤務して、片つ方は農業ないしは事業をやつておる場合、同一家族の場合に、合算を分離せよという私どもの主張に対しまして、ただいま拝見をいたしましたところによりますと、北島長官から各国税局長通達が出された模様であります。私は、本日の朝日新聞を見まして、今通牒を十分にまだ拝見をしておりませんから、この間本委員会概略説明されたことを含んで、この通牒最終的決定内容概略まず御報告を願いたい。
  15. 北島武雄

    北島政府委員 先般の当委員会におきまして、会計を一にしている親族間におきます農業経営者判定について、従来の取扱いの基準を相当大幅に緩和したい旨を御説明申し上げました。その際、ごく概略の方向を申し上げたのでございますが、その後さらに検討いたしまして、はっきりした通達に確定いたしまして、昨日付をもって通牒を発しました。その内容をこれから御報告申し上げます。  まず生計を一にしている親族間における農業経営者判定につきましては、現在の所得税法に関する基本通達にかかわらず、今後次のように取り扱うこととするという構想でございます。先般も御説明いたしましたように、一応所得税に関する基本通達一五九、一六〇というものがございますが、それを農業経営者につきましては殺しまして、この通達一本でいくということでございます。  考え方といたしましては、まず第一点は、夫婦間における農業、これにつきましては、両者農業経営についての協力し度合い、耕地所有権所在とか、あるいは農業経営についての知識経験程度家庭生活の状況などを総合勘案いたしまして、いずれがその農業経営者と見るべきかをきめるべきではございますが、次のような場合には、おおむね次のように取り扱うものとするという考え方であります。  その第一号は、これはあまり問題はございませんが、「夫婦がいずれも他に職業を有しないでともに農業に従事している場合」だんなさんと奥さん一緒農業をやつている、こういった場合には、「生計を主宰している方がその農業経営者であるものとする」ということが第一でございます。  第二点は、「生計を主宰しているが主として農業に従事し、他方会社官庁などに勤務するなど他に主たる職業を有する場合には、その農業に従事している方がその農業経営者であるものとする」これもあまり問題にならないかと存じますが、たとえば生計を主宰している、かりに夫が主として農業に従事している、奥さんが小学校の先生などをしていらつしやる、こういう場合には、農業に従事している夫の方が農業経営者であると見るという考え方でございます。これもあまり問題がない。  次は、一番問題が多いところでございますが、「生計を主宰している方が会社官庁地方団体などに勤務するなど他に主たる職業を有し、他方家庭にあつて農業に従事している場合には、その家庭にあつて農業に従事している方または会社官庁地方団体などに勤務している方に特別の事情があるかどうかなどの別に応じ、次のように取り扱う」これが一番問題の点でございまして、たとえば生計を主宰している夫が会社官庁などに勤めておつて、そして家にある妻が農業に従事している、こういう場合の問題でございます。一番多く起り得る問題でございます。その場合に、まず家庭にあつて農業に従事している方、すなわち、たとえば妻といたしますが、その妻の方に、次に掲げる場合のいずれかに該当するような事情があるときは、その家庭にあつて農業に従事している方、たとえば妻という方が農業経営者であるといたします。  まず第一に、それは家庭にあつて主として農業に従事している、たとえば妻が、その耕地の大部分について所有権または耕作権を有しているような場合、たとえば一町歩同一家族で耕している、そのうちに家庭にあつて主として農業に従事している奥さんの方が、八反歩とか九反歩とかいうように大部分所有権または耕作権を持っている、こういった場合は、その全部の農業奥さんの方と見ますという考え方であります。ただし婚姻後に生計を一にする他の親族から耕作権の名義の変更を受けたため、その家庭にあつて農業に従事する方が、その耕地の大部分について耕作権または所有権を有するに至つた場合は、これはまた別でございます。なお家庭にありまして農業に従事する方、たとえば妻がその耕地の大部分について所有権または耕作権を持っていない場合でありましても、もちろん婚姻前から所有している耕地とか、婚姻後に相続によって取得いたしました耕地のように、その家庭にあつて農業に従事している方の特有財産と認められる場合、その場合には、その家庭にあつて農業に従事する方、その妻がその部分農業経営者であるといたします。  それからもう一つの場合、これは、今までこういう場合は大体合算しておったのでありますが、農業がきわめて小規模でありまして、家庭にあつて主として農業に従事するものが内職の範囲を出ない場合、こういう場合は、従来は生計を主宰している方、夫ということで、そうして妻のわずかばかりの内職程度農業所得も合算しておったのですが、これは、奥さんの方で見ようということでございます。  それから次は、会社官庁地方団体などに勤務するなど、ほかに主たる職業を有する方、たとえば、夫の方に次に掲げるような場合のいずれかに該当するような事情がありますときは、これは、その人の農業所得としませんで、その家庭にあつて主として農業に従事している方が、農業経営者であるといたします。たとえば夫が会社官庁地方団体に勤務いたしておりまして、その主たる職業に専念いたしているために、その農業経営を主宰していないと認められるような場合、それから農業に関する知識経験がないために、その農業経営を主宰していないと認められる場合、それからまた第三は、勤務地が遠隔の地でありまして、事実上その農業経営を主宰することができないと認められる場合、こういった場合に、こういった事情が夫の方にあるというような場合には、これは妻の方の所得といたします。ただしその農業相当の規模でございまして、その会社官庁地方団体などに勤務している方を全体としてやはり経営者と見るを相当とするような場合は別でございます。  それから次は親子間の農業の場合でございます。この場合におきましては、親子の間の両者年令、農耕の能力、それから耕地所有権所在などを総合勘案いたしまして、いずれが農業経営者であるかを定めるべきでございますが、たとえば父と子がともに農業に従事している場合、この場合には、原則として一応父が農業経営者であるものといたします。ただし子が相当年令に達しまして、生計を主宰するに至つたと認められるときは、子の方でございます。これは、親子一緒農業をやつているのでございますから、あまり大した問題はございません。次は、生計を主宰している父が会社官庁地方団体などに勤務するなど、他に主たる職業を持っておりまして、子供が主として農業に従事する場合、この場合には、子がまだ若年であるとき、または父が本務のかたわらその農業経営を主宰していると認められるときを除きまして、子が農業経営者であるといたします。それから、これもときどきあることでございますが、生計を主宰している子の方が会社官庁地方団体などに勤務するなど、ほかに主たる職業を持っておりまして、お母さんが主として農業に従事している場合、こういう場合には、大体夫婦間の場合に準じまして、先ほど申しましたような順序でもって取り扱うということでございます。  ただいま申し上げましたのは筋でございますが、いろいろな場合を考えますと、非常にむずかしいのでございますが、種々検討いたしまして、このような通牒をいたしたわけでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 本委員会の要望に基きまして、非常に長期間慎重に各種類の実情に応じて検討せられたということについては、よくわかるのでありますが、今各委員がいろいろ意見も述べておりますように、非常に難解のような気がいたすのであります。しかし、これはお出しになつたようでありますから、二、三私どものわからない点を質問いたしまして、この内容を明確にさしたいと思うわけであります。  第一ページの前段にありますが、結局こういう各具体的なときにはこうする、しかし、これらに当てはまらないときにおいては、いずれがその農業経営者と見るべきかをもって判定する、これが大前提になっているわけであります。いろいろ具体例をお引きになりましたけれども、結局そうでないときには、いずれを農業経営者と見るべきかを総合勘案してきめるという点であります。これは、ケース・バイ・ケースということになるのか、どういうことによって最終的な決定が行われるか、前段の方、大前提の問題であります。これに書いてありますことは、基本通達の一五九の前文にありますところの、わからぬときには生計を主宰するものに合算してしまえという考え方からは、この前文は違うようでありますが、違うと見てよろしいか、これが第一。よろしければ、どういう判定でこれをきめていくかという点をお伺いいたします。
  17. 北島武雄

    北島政府委員 基本通達の一五九におきましても、私は、この前段は、やはりほんとうの事業経営の主体を判定する有力な基準であると存じます。ここに書いてありますように「生計を一にし、且つ、日常の起居をともにしている親族のうちの誰の事業所得であるかについては、原則として、当該事業に要する資金の調達をなし、その他当該事業経営の方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が何人であるかにより判定するものとする。この場合において、その者が何人であるか不明であるときは、生計を主宰していると認められる者がその者であるものとする。」実は、この後段の方が一般的に相当使われているのであります。その結果、非常な無理な例が出てきているように思います。今回ば、相当内容を分析いたしまして、従来やつておりましたことの反省の結果、現在の状況にかんがみて、できるだけ分けた方がいいというのを具体的にこまかに考え規定したわけであります。ただ一番最後にございますように「1から3以外の場合には、原則として、生計を主宰していると認められる者がその農業経営者であるものとする」こういう原則が残つていますが、これは、いろいろの事情を抜き出してみて、それでもなお当てはまらない場合には、一番最後の項でやるということでございます。この通達が非常にむずかしいというおしかりでございますけれども、従来ここまでに至ります間におきましては、あるいは直税部会議、あるいは所得税課長会議におきまして、いろいろ議論が出ておりましたところであります。この通達がいけば、少くとも国税局においては、この方針はすぐのみ込んでもらえると考えております。
  18. 横山利秋

    横山委員 この一番最後の1から3までということは、五ページの二の親子間における場合のことを言っている。そうでしよう。ですから、私の聞いていることとは違う。私の聞いているのは、今あなたがおっしゃった一五九の後段です。わからぬときには生計を主宰するものに合算してしまえということは原則なんです。一ページの前段は、夫婦間においては、いずれが農業経営の主宰者かを実質判定しろ。親子間については、わからぬときには農業経営者であるものにしてしまえ。ずいぶんこれは矛盾があるようですな。
  19. 北島武雄

    北島政府委員 実は、親子間の方は、夫婦間に準じてやれというふうに書いてございますので、非常に簡単なようではございますが、大体におきまして母と子の場合におきましては、その親子間の通牒によっておるわけでございまして、最後の際の備えとして、こういうことが書いてあるわけであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 あなた、そうおっしゃるけれども、この文書でいくならば、夫婦間においては、わからぬときにもよく総合勘案して、どつちが農業経営者であるかをきめよ、親子間の方は、この一番最後に書いてあることは、わからぬときにはおとつつあんの所有にしてしまえ、こういっている。なぜ夫婦親子とそう違うのですか。
  21. 北島武雄

    北島政府委員 親子間の場合におきましても「両者年令、農耕能力、耕地所有権所在などを総合勘案して、いずれが農業経営者であるかを定めるべきであるが、」という大前提があるのであります。
  22. 横山利秋

    横山委員 それだったら、四番はいらぬじゃないですか。そういう大前提を親子間において前段に掲げながら、四番で、わからぬときにはおとつつあんを農業経営者にしてしまえというのは、これは、四番は要らぬじやありませんか、持って回つたような議論じやありませんか。
  23. 北島武雄

    北島政府委員 私は、実は親子間の場合も、ここに書いてあることによりまして、1、2、3までの間においてほとんど大部分が解決されるものと思っております。
  24. 横山利秋

    横山委員 それならば四番は要りませんよ。それは、お役人さんのほんとに用意周到なる文書だと思いますけれども、その用意周到は、親子間における前段でいっている。しかも夫婦間には、こういう四番のような、わからぬときにはという項目はないのですから、四番は有名無実であつて、書く必要はなかったんですよ。
  25. 北島武雄

    北島政府委員 考え方といたしましては、先ほど申し上げた通りでありまして、親子間におけるときにおきましても、年令、農耕能力、所有権などの所在などを総合勘案して判断するということになっております。そして1、2と3までありまして、これによりまして、夫婦の場合に準ずること、あるいはまた親子間の特殊なことなどは、ほとんど大部分片づくのでありまして、最後の備えとして四番があるのでございますが、その点、何とぞ一つ御了承願いたいと思います。
  26. 横山利秋

    横山委員 今のところわかります。しかし北島さん、最後の備えというのは、親子間の前文に、前の文章に返るわけですね。返るわけですよ。最後の備えというものは、実質所得判定というわけで、親子間の前段に返るわけですよ。夫婦間はそういうふうにしておいて、親子間だけは四番を入れたということは、どうも私納得ができないのです。これは、一ぺんぜひとも検討してほしいと思うのです。  それからその次の質問に移ります。三番目の「家庭にあつて主として農業に従事している方がその耕地の大部分につき所有権または耕作権を有している場合」、この「大部分」とはどのくらいであるかということが第一、同じような問題で、四ページにございます「農業がきわめて小規模であつて家庭にあつて主として農業に従事する方の内職の域を出ないと認められる場合」の「小規模」とは一体どのくらいのことであるかということを、まずお伺いします。
  27. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま御質問のございました、農業がきわめて小規模であるかどうかにつきましては、大体の考え方としまして、おおむね水田で三反歩未満程度の規模、こういうふうに考えております。  それから「耕地の大部分につき所有権または耕作権を有している場合」この場合は、耕地のおおむね八〇%以上の所有権または耕作権を有する場合というふうに考えております。
  28. 横山利秋

    横山委員 一番問題になりますのは、ここだと思うのです。四ページの「主たる職業に専念しているため、その農業経営を主宰していないと認められる場合」これが一番問題になると思うわけですが、この夫が、あるいは父が、会社官庁地方団体等に勤務しておつて、八時間労働、普通勤務ですね、普通勤務をして、日曜はもちろん休みになる。そういうことは明らかに主たる職業に専念していると見られますが、いかがでございましょう。
  29. 北島武雄

    北島政府委員 見られると思います。
  30. 横山利秋

    横山委員 その場合、例外的に、そういう人でも合算をされる場合があるのかないのか。たとえば、あとの方に出てきますけれども、一町歩以上ですか、そういう人も、例外がある場合はどんなときであるか、それをお伺いします。
  31. 北島武雄

    北島政府委員 この点につきましては、ただいまの数行前に「ただし、その農業相当の規模であつて、その会社官庁地方団体などに勤務している方を経営者とみるを相当とする場合を除くものとする」ここで「農業相当の規模であつて」とはどのくらいをいうかということになりますが、この点につきましては、私どもでは、さしあたり水田一町歩程度を標準にして考えております。
  32. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、この項が一番全般的に影響をすると思うのです。この項によって、一番問題が各方面で改善をされると思うのでありますけれども、この通達によってどのくらいの減税を本年度ないしは平年度行われるものであるか、またこの通達によって、三月十五日までの確定申告に支障はないかどうか、支障がない方法は、どういう方法が講じてあるか等をお伺いします。
  33. 北島武雄

    北島政府委員 どの程度の税収の減になるかは、まだよくわからないのでございますが、いろいろ試算の方法がありまして、数億程度、多く見ますと十億なんという見方がありますが、私は、十億なんかまでにはとてもなるまいと思いますけれども、おおむね五億前後というところではなかろうかと考えております。  それからなおこの通達の取扱いにおきましては、本日刷り上がりまして、一斉に税務署の末端に直ちに送りつけまして、この趣旨を国税局に直ちに連絡いたしまして、今回の確定申告に間に合うようにいたしたい、こう考えております。
  34. 横山利秋

    横山委員 最後にもう一つだけ。親子の場合に、1に、「子が相当年令に達し生計を主宰するに至つたと認められるとき」とありますが、「相当年令」とは幾つくらいであるか。二番目に、やはり「子がまだ若年であるときまたは父が本務のかたわら」云々とありますが、その親子の場合の子供の年令を、それぞれの場所ではどういう年令と見ているのか、お伺いいたします。
  35. 北島武雄

    北島政府委員 お答え申し上げます。1の場合は、親子がともに農業に従事している場合でございますが、この場合「子が相当年令に達し生計を主宰するに至つたと認められるときは、子とすること。」こうなっておりますが、このときの考え方は、大体農村におきましては、おおむね三十程度ではなかろうか。お父さんと子が一緒農業をやつている、その場合においては、原則としては、やはりお父さんが農業経営者であろう。ただ子が、農村におきまして三十程度になり、妻子を持つというような年令になりますれば、これはやはり子であろう、こういうふうに考えております。  第二の「生計を主宰している父が会社官庁地方団体」に勤務して、子供の方が「主として農業に従事している場合には、子がまだ若年であるときまたは父が本務のかたわらその農業経営を主宰していると認められるときを除き、子がその農業経営者である」、この場合にはお父さんがほかに勤めておつて、子供がうちで農業に従事している場合でありますので、一よりも差し当り年令は低いのではなかろうか、二十五才程度ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  36. 横山利秋

    横山委員 大体通達内容については判明をいたしました。二、三意見を申し上げておきたいと思いますが、せつかく通達をお出しになつたのですから、また研究なさったわけですからなにですけれども、文章が非常に難解でわかりにくい点がありますし、四番目の一番最後の文章が、先ほど申し上げましたように、やや前後矛盾するのではないかというふうに見られる点がある。それから内容的には、いろいろな数字的な点について、百尺竿頭一歩を進めてもらいたい点が若干ある模様であります。たとえば、子供がまだ若年であるという場合、今日としては、成年式を経たならば一人前の人間でございますから、特に二十五才といたされた点、私は漏れ承わるところによれば、二十才というふうなお考えが一部にあったように思うのであります。この点はいささか問題のように思います。要するにこの通達が、すみやかに、各税務署へ徹底して、押し迫つております三月十五日の確定申告に、税務署だけがこの問題を知っておるばかりでなくして、納税者側にこの通達について十分な知識を持ってもらうということが必要であろうかと思うのであります。そういう点について、国税庁として格段の努力をいただきたい。そうして今日まで全国的に起つておりました合算所得の問題が、この際一歩前進をしたわけでありますから、可及的に紛争が解決をいたしますようにお願いしたいと思います。特に税務署の職員の諸君につきましては、今までの通達を基礎にして、今までは当然税金をかけるのだという立場であったわけでありますから、この通達を運用するに当つて、既成概念を捨てて、減税が行われるのでなくして、ほんとうの立場になるのだ、恩恵的なあり方でなくして、ほんとうの立場に返るのだということを、十分翼下各税務署に徹底させていただいて、積極的に納税者の立場を援護する立場で、紛争の理解に努められるように要望いたしたいと思うのであります。  私の質問はもう一つあったのでありますが、関連質問がおありのようでありますから、一応これで中断をいたします。
  37. 春日一幸

    ○春日委員 関連して。私、一度このことは厳に申し上げなければならぬと考えておつたところでありますが、この機会に一つ明確にしておきたいと存ずるのであります。と申しますのは、そもそもこの国税庁長官通達というもの、あるいは直税部通達、あるいは間税部通達という国税庁通達というものは、租税法定主義の立場において、その法律の条文の解釈あるいは条文にないことは、法律の精神とその趣旨にのつとつて執行の基準が定められるものと理解しておるのであります。そういたしますと、この国税庁長官あるいは国税庁通達というものは、国民との関係において、国民に対して新たな権利と義務を課していくという結果になると思うのであります。たとえば、それによって減税の恩典を受けるのでありましようし、あるいは新たに租税負担の義務を負うてきたる場合等があると思うのであります。従って、国民との関係は非常に深いのです。全く法律と同様の権威と機能を持っている。そこで、今横山君も触れられたのでありますが、ならば、法律と同等の機能を持つところの通達に対して、あなた方は、国民との関係においてどういう手だてを講じておるか、問題はここであろうと思うのであります。法律は、官報によって告示され、公布されるときに、国民はそれを知るの機会が与えられておる。ところが長官通達というものは、あなたの方が結局国税局に通達する、あるいは税務署長に通達する。たまたまそれを新聞が報道することがあるであろうけれども、これは義務的ではない。結局それは新聞社の自由選択という形になってくる。報道するもよし、報道せざるもよしという形になってくる。国民はまるつきり知らないではありませんか。  そこで、私のお伺いいたしたいことは、こういう通達が発せられた場合、国民は、こういう権利が与えられるということを何によって知るのでありますか。これは、租税法定主義であり、しかも現在は、申告納税制度なんです。本人が申告をするのです。そうすると、これを知らね諸君は、税務署へどういう通達が行っておつたところで、知らなければ、こういうような控除の申告はいたし得ないわけです。しかも、今までそういう方式がとられていなかったから、いよいよそういうような新しい制度がここにできたということを、国民は知るよしもない。どうしてこの三月十五日に間に合わせるようにやるのでありますか。この点をちょっと伺いたい。
  38. 北島武雄

    北島政府委員 この通達の決定がおくれましたことは、まことに遺憾でございますが、先ほど申し上げましたように、直ちに全国の五百余の税務署に対しまして、直送いたしますとともに、国税局に対しまして、この趣旨を直ちに全税務署に徹底するようにしたい。また納税者の方々におかれましては、市町村、農業団体等を通じまして、確定申告に間に合うように、できるだけのPRを講じたいと思う次第であります。
  39. 春日一幸

    ○春日委員 確定申告は二月十五日から受け付けております。だから、きのうもきようもどんどん提出しておるのですよ。そうでありませんか。きよう出すとすれば、着くのはいつかしら、そこで、税務署が会議を開いて団体に通達をするということになれば、確定申告というものがすでに出された後に通達がくる場合等もあるわけです。私は、ただ今回のことを申し上げておるわけではないのです。すべて国税庁長官通達というものは、法律にかわるものなんだ、法律と同じような機能を持つものなんだ、国民との関係において、同じような権利、義務がここに発生してくるから、私は一般の問題としてお伺いしておるわけだが、今までのような一片の通達文書をもって、あなたの方の部内の者だけにこれを知らしめることのみをもって十分その職責が果されておるとお考えになりますか。たとえば、法律は官報によって公布されますね。あるいはまたこの国会論議を通じて国民に十分知らされる。ところが通達というものは本日問題になつたからこそ、本委員会にもこれが示されて、それのよしあしも論ぜられる。あるいは本委員会を通じて、国民もよく知ることができるであろうが、制度として国民にこれを知らしめるという手段が何らとられてはいない。これで差しつかえないとお考えになりますか、制度の問題としていかがでありますか。
  40. 北島武雄

    北島政府委員 今回の通達につきましては事実認定の問題でございまして、その事実認定につきまして、税務署の判断を統一させるためにやつたわけでございますが、こういう通達は私はできるだけ公開にすべきだと存じております。現に今までも、所得税法、その他基本税法の特別通達、一般通達は公開いたしておるのであります。できるだけこういう通達をすみやかに公開いたしまして、納税者の方々に全部知っていただくようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  41. 春日一幸

    ○春日委員 公開する手段、方法はどういう方法をとらんとされておりますか。
  42. 北島武雄

    北島政府委員 まずこの点につきましては、本日正式に新聞発表をいたしておるのでございます。新聞発表によりまして、正しく全国の農業者の該当の方々にわかつていただくようにするつもりでございます。その他特に税に関する各種の団体もあることでございますから、こういう方面を通じまして、できるだけ周知徹底をはかりたいと考えております。
  43. 春日一幸

    ○春日委員 私はそれでは十分でないと思います。特に強調いたしたいことは国税庁通達こそは、繰り返して申し上げますが、これは税法と同じような機能を持っておる、国民に権利義務をそれだけ新しく増す、あるいは減ずる、こういうことでありまするから、法律に準ずる取扱いがされなければならぬ。今あなたは、新聞に発表すると言われるけれども、新聞はこれを記事として取り扱うやら取り扱わないやら、そんなことは新聞社の勝手なんです。だから、そういうような商業機関を通じてあなたの方が一方的にそういう発表を行うことによって、国民に対する周知徹底が行われたと断ずることは適当なことではないと思う。私は法律と同じように、やはり官報なら官報とか、義務掲載とか、こういう形で、少くともより多くの国民がその事柄を知るという態勢において、これが公開されなければならぬと思いますが、この点について御見解はいかがでありますか。
  44. 北島武雄

    北島政府委員 法令につきましてはもちろん御指摘のように官報掲載という方法があるわけでありますが、私は官報掲載という方法は実は疑念をはさんで申しわけないのでありますが、国民に全部知らしめるに適当かということにつきましては個人としていろいろ疑問があるわけであります。ただし、これは公示的な効力があるわけであります。もちろん法律、政令につきましても、官報で公示いたしますとともに、それだけでは足りないということで、いろいろ新聞社を通じ、他の機関を通じて公表いたしておるのでございます。私の方では官報に掲載すべき事項であるかどうかにつきましてはちょっとただいま検討はいたしておりませんが、官報掲載事項につきましては一定の基準がありまして、こういうものを掲載してくれるかどうかということにつきましては私ただいまちょっと資料を持ち合せておりません。しかし私は、かりに官報の掲載の方法がない場合におきましても、ただいま申しましたような新聞社を通じ、あるいは市町村、農業団体等を通じて知らせることによりまして、十分に納税者の方々に浸透し得るものと考えている次第でございます。なお本件につきましては、これが官報掲載ができるかどうかにつきましては十分検討はいたしてみたいと思います。
  45. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの問題と関連をいたしまして、今あなたが、官報にこれを掲載することによって効果があるかないか、比較的疑わしいというようなお説がありましたけれども制度として国民に対して権利義務を課するような法律、政令というような国の取りきめについては、ことごとく官報に掲載するということが制度になっている。従って全国の官公署は、その官報をみな購読をしておるのであります。少くとも行政機関は、それを知る機会を得て、その行政機関では、それぞれ末端の国民組織に対してこれを流していく、こういう制度になっておるのだから、これに知らしめなければだめだ、こういうことなんです。私は、国税庁通達というものについては、非常に疑義を持っておる。だから、あなたの方が庁内において独断的にお作りになつたこの通達についても、私たちは大へん疑義がある。これは結果的には、国民との関係において法律と同等の機能を持っておるものなんです。そもそも法律というものは、てにをはの狂いもないように、衆議院ならば法制局、内閣提出ならば内閣法制局、こういうところで、きちつと他の法律との関係において間違いがないかどうかを検討し、さらにこれを国会において精査審議して、そうしてこれが完全無欠なものとして、とにかく国民との関係において、弊害なからしめんためのいろいろな段階が経られておる。ところが、この法律と同じ効果を持つところの国税庁通達というものは、あなた方が勝手に作るわけなんです。私は、別にあなた方の機能、あるいは見識を疑うわけではないけれども、しかし実例を述べろと言われるならば、私は幾つかの異例を持っておるわけなんだが、国税庁長官通達が、法律違反の通達を出したことは一再ならずある。私たちが本委員会の公開論議を通じて、これを明らかにした問題もあるし、あるいはわれわれの個別の折衝において、通達を撤回せしめた例は幾つもある、こういうわけで、私は国税庁長官通達というものの取扱いについては、これは法制的に根本的な問題として検討を必要とすると思うけれども、私は暫定的な、中間的な処理といたしましては、少くとも法律の精神、あるいは法律のそれぞれの条文、これと相もとるところはないかどうか。これは、少くとも本委員会ぐらいにはその素案を示されて、そうして法律に準ずる十分な審議検討を経て、そうした後において通達を発せられるような方式を、今後とられた方がしかるべきではないかと考えるわけなんです。私は、かつて事業組合に対する間税部通達が、法律によって国民に与えられておる権利を剥奪したことによる法律違反を指摘した。その結果、これはまさしく法律違反の通達であったから、取り消して別の通達を出すという連絡を受けたこともある。その他今までの長官通達の中に、不備、欠陥、法律違反事項、実情に沿わざるもの、こういうものが幾つもある。しかも、それが国民に対して財産権上の権利義務を新しく負わしめているというところに重大なる疑義がある。私は、こういう意味で、まず第一番に明らかにしておきたいことは、そういうような性格の通達であるから、国民に十分知らしめることのために必要なる措置を講ずることと、その具体的な一つの構想としては、当然これは官報掲載事項として、その必要は手段を尽すこと、それからもう一つは、みだりに通達を発すべきではない、国民に権利義務を新しく課したり、あるいはこれをやめたりするような場合にはこういう通達を出そうと思うが、国会の御意見はいかかであろうか、あるいはまた間違つたところはないかどうか精査を請う、こういう意味で、今までの慣例の中においても、そういういい慣例はないわけではない。たとえば物品税の免税点等の問題についても、法律の精神と経済情勢の実情に照らしていかがなものであろうと、これは国会側の意見を聞かれ、そうして政府側の所見も述べられて、おおむね妥当な線をそこから導き出して、そうしてこれが執行に移されておる。従って、そういうような問題は、できるだけ不公平のないような、均衡をはかった措置がとられておると思うのです。そういう意味で私は今後すべからくこの通達は——あなたの方が一方的に勝手に書いてめちやくちやに乱発する、間違つてつたら取り消す、委員会質疑があったら、ああそうでしたかといってまた書き直すというようなことでは——これは法律にかわるところの国税庁長官通達なんですよ。今まで、とにかく税金を納めておつた諸君が納めなくてもいいことになってきたり、あるいは納めないでいた者が、通達でもって納めなければならぬような形になってくる。新しい権利の発生、新しい義務の発生、こういうような問題は全く法律事項と同じなんであります。これは、法律に準ずる取扱いをなされなければならぬと私は思うが、この問題について、坊君の意見はいかがでありますか。
  46. 坊秀男

    坊政府委員 通達は、元来法律の趣旨の範囲を逸脱してはならないことは申すまでもございません。法律の範囲において作られるものでございまして、過去において、御指摘のようなことがもしあったといたしますならば、非常にこれは遺憾なことでございます。ただこれは、委員会の皆さんに御審議をいただいて、国会を通過した法律の範囲の中において、その趣旨を逸脱しないというようなこまかい点をきめるものでございますから、もちろん春日委員のおっしゃる通り、これは周知徹底させなければならぬものでございますが、これにつきまして、機会があれば十分皆さん方に御検討を願う、また審査もしていただくということでいくのが穏当だと私は思いますけれども、必ずこれを委員会で御審議を願うというようなことも、将来の問題といたしまして、各般の情勢から考え相当研究を要することであろうと考えております。
  47. 春日一幸

    ○春日委員 政務次官の答弁は、全く悪ずれのした答弁である。それでは、的確な答えになっておりませんよ。これは、具体的に国民に知らしめなければならないのだ。特に通達する必要というものは、今までこの取扱いがされていなかったから、法律の範囲内において通達を書いたというけれども、それなら、なぜ法律通りに今まで執行していなかったのかということなんです。だから、執行されていなかったことを特に執行すべしという通達なんで。だとすれば、国民に対してこのことを明確に知らしめなければならぬ。どうして知らせるかというのです。新聞に発表するというけれども、新聞社は書きたければ書くし、書きたくなければ、実際そんなものを書きやしませんよ。だから、全国の末端行政機関の最小規模の諸君がこれを知るためには少くとも官報掲載事項として、それぞれの市町村とが、税務署とか、農業団体とか、官報をとつておる諸君がそれを知って、自主的にそういう浸透のための活動のできるような態勢にしてやるのが、通達の使命、性格、機能からしてふさわしいことではないか、こう私は言っておる。これに対して、あなたの見解を伺わなければならぬと思う。  それから、通達は法律の範囲内だと言われるが、当りまえのことです。法律違反の通達なら、法律違反として当然法律的責任また政治的責任をとつてもらわなければならぬ。いいですか。だが、間違つたそういう通達が現に出されておる。過去において出されておるし、本日また冗漫にわたる必要以上の通達が出されておる。こういうようなことであれば、国民に対する迷惑ははかり知れないものがある。さらに法律違反の通達を出したなんということになって、その男が法律上、政治上の責任をとつたとしたところで、それによって問題が解決したというわけではない。国民に与える弊害は重大なものがある。だから、そういうあやまちを犯すことのないように万全を期すべきである。万全の期し方とは何であるか。すなわち、こんな通達を出したいと思うが、法律的に、あるいは政策的にいかがなものであろうかというふうに、そういうような権利義務を新しく発生せしめる事柄については、これは、本委員会に公式であろうと非公式であろうと一応かけて、そうして、そういうような失敗のなからざらんように善処する。こういうことについて、あなたの考えはどうであるか、こう聞いておる。だから、この二つのことについて答えなさい。ヒョウタンナマズのような一萬田のまねをしておつてはだめ、だ。
  48. 坊秀男

    坊政府委員 大へんおしかりを受けたのでございますが、新しい通達が出ましたときに、その通達をどうして周知徹底するかという方法について、非常に欠陥があるじゃないか、こういうことでございますが、私もかつて新聞記者の端くれをしておりまして、通達のごとく国民に非常に重大なる影響を及ぼすものは、商業新聞とおつしやいますけれども、これを掲載しないということになりますと、その新聞の価値が非常に疑われて、従って商業新聞としての価値が下るというようなことから、商業新聞も、こういう通達については必ず掲載するということを私どもはやつてつた。しかし、私は、新聞に発表するだけで十分だということを申しておるわけではございません。ただ制度として官報のごときものに掲載するということは、これは、その法律の効力とかなんとかいうことに関係のあることでございまして、実際先ほど国税庁長官が申しましたように、新聞に掲載するとか、税務署、各別体を通じてこれを国民に知らしめるということは、周知徹底という見地から申しますならば、その方がはるかに効果があるように私は考えております。  それから制度として、これらの法律の範囲で決定したものを、一々大蔵委員の皆様方の御配慮をわずらわすということも、これは、法律をすでに審査していただいてあるものでございますから——もちろん国会が開会中で、今日のごとく機会のあるようなときには、一応お目を通していただくということに相なろうと思いますが、通達のごときものは、時々刻々その場において急いで発しなければならないといったこともあるであろうと思います。かかる場合に、わざわざ国会を開いていただく、あるいは大蔵委員会を開いていただくということもどうかと思いますので、これを制度として取り上げることは、必ずしも通達の趣旨に沿うものでないのではないかと考えております。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 私は、承服できません。納得できませんよ。あなたも新聞記者の端くれだという話だが、駄物の新聞記者だったと思いますけれども、そんなばかな答弁はありませんよ。新聞記者の経験がおありになるならば、なおさらだと思う。一つの新聞がすでにニュースとして発表したものは、他の新聞社は、なかなかとらぬものなんです。一つの新聞社がニュースとしてスクープしたら、何となく二番せんじになるような記事は、それぞれのプライドもあったり、いろいろな関係があつて、しかるべき報道という一つの形式において、これはなかなか報道にならぬ。小さい記事にされてしまうとかなんとかいう形になってくることは、あなたの長年の御経験をもってすれば、容易に判断できることなんです。本日この問題は、朝日新聞が大きくお取り上げになっておるが、私は、明日あるいは明後日の新聞を期待してみたいと思うんだが、おそらく小さな虫めがねの記事になると思う。こんな難解な通達は実際解説しなければわかりやしませんよ。私は、そういうような事柄をも含めて申し上げるのだが、今あなたがそんなことをしなくつたて、これは官報に載せなくたつていいと言うのだけれども、それでは、一体政令だとか法律を官報に載せるゆえんは何でありますか。それは国民に周知徹底して、国民に知らしめるということのためにこういう措置がとられておる。必要から発生したことなんです。だから、私は申し上げておるのだが、国民に権利義務を課するような新しい関係のこの通達は、特に国税庁長官通達なるものは、これは、国民の財産権に対して影響力を与えるのだから、憲法から考えてみても、国民の財産権というようなものは、これは大したものなんです。基本的人権のチップトップなんです。だから、こういうものに影響するような通達を長官が出そうとするときに、あれは当然法律と同等の執行をもって国民に知らしめなければならぬということを申し上げておる。あなたがその必要はないとここに断言され、断定されるということは、早計ではありませんか。私は、これを傾聴すべき意見として、あなた方がその必要なる真意をあるいは閣議なりあるいは省議なりにかけられて、なるほどそうだと言うて、正しい意見には耳をかして、その措置をとるにあらざれば、国会委員会の論議というものは、意味をなさぬじやありませんか。ただ、今までのやり方がこうだからこうだということでは、実際の話が、一歩の前進も改善もない。私は、こういうような通達については、やはり市町村の諸君が、ああこういうことになつたと、町役場、村役場、村中の人が集まつて、こういう方式で申告しようじゃないかと言うてやれる態勢を、官報でやれば一ぺんに通達ができるじやありませんか。なぜそのことをやり得ないかというのです。やれるべきことがやれるならば、これをなさぬというわけはどういうわけであるか。
  50. 坊秀男

    坊政府委員 ただいまの御意見にお答え申しますが、新聞に発表ということでもって私は十分だとは申していない、そう申し上げたのです。そこで、新聞に発表ということと、春日委員の、スクープされたら翌日の新聞には載らないじゃないかということも、私はよく心得ております。そこで、その新聞発表ということとこのスクープということは、これは別に考えていただきたいと思います。現にスクープをされたということは、当局といたしましては非常に遺憾なことでございます。発表ということは、そういうスクープといったようなものを考えずに発表するということを申し上げておるのでございまして、スクープされたということにつきましては、ここに私は非常に遺憾なことであると存じております。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 それは、私はただ今回のことだけを言っておるのじやありません。新聞記者の鋭敏をもってすれば、これはあくまでもスクープしたい。それは、あなただつて経験の中にあることなんです。何か新しい制度は、一日も早く国民に知らしめようというその職務の感じから、これはだれしも、今回ばかりじやなく、いつでもみんなスクープしたい。たまたまスクープすれば、やはり他の新聞はこの記事に対しては、そんなに熱意を込めて報道しないというのが慣例なんですよ。あなたの時代から、これは慣例なんです。これは、将来ともに変るところはない。従って、これは人間感情の必然なんです。それだから、こういうような重大な問題は、新聞機関の報道に待つというのではなく、これは、言うならば人のふんどしで相撲をとるようなものじやありませんか。政府みずからの機関を持っておるから、なぜそれを報道しないかというのです。国民に知らしめよう、国民との関連において重大な権利義務を持つものを、政府みずからが一つのそういう機関を持っておつて、官報、広報を持っておつて、それを載せないというわけはありません。私は、改善ということがあつていいと思う。足らざるところは補うということがあつていいと思う。日々これ前進じゃないか。必要なことをあえてなさぬという断定的な御意見を今ここであなたが述べられるということは、私はふさわしいことではないと思う。だから、私は国税庁の長官の通達というものが——現在は、法律というものが非常に難解だから、特に税法というのは複雑多岐にわたっておるので、従って、なかなか法律の条文通り国民はわからない、税務署すらわからない。さればこそ、ここに国税庁長官通達というものが必要になってくる。だから、その通達されたものが何であるかということは、これは、国の報道機関を通じてこれを十分周知徹底せしめる、さらに補完する施設として、新聞報道によってこれが広く普及されていく、こういうことを私は要望しておるのであつて、あなたが今この場合において、そういうことは必要ではない、必要の度を越えたという断定的な御意見を述べられるということについては、私は満足することはできません。しかし、あなたも一たん言い出されたのでありますから、今ここで結論を得るということは困難であろうから、いずれ大臣の出席を求めて、あるいは予算委員会等においてこれを明らかにする。  それからもう一つ申し上げておくが、それは文章を考えてもらいたいということです。これは、皆さんが今お聞きになっておつたけれども、ギリシャ語か、ラテン語か、朝鮮語か、全然わからぬと言っても、私は言い過ぎではないくらいだと思う。われわれが聞いてわからぬのだから、肝心のお百姓さんが聞いて、父だとか子だとか、そんなことはなかなかわかりつこがありません。だから、今税法に対する一つの懸案事項は、この法律の条文をわかりやすくする、こういうことも、懸案として長年にわたって論ぜられてきておるところであります。だから、全税法をわかりやすく書きかえるということは困難だから、少くともこの通達ぐらいは、ものわかりのいいように書いてもらう必要があると思うのです。これは父と子だとか、子の父だとか、おいとめいだとか、そんなことを言つたつて、実際の話が、そんなことはわかりはしませんよ。だから、今後の通達は——私はこの通達を読んでみたのだが、大体七割以上は、まるで判じものかクイズものみたいなもので、なかなかわかりはしません。これは、もう少しわかるように砕いて、そうしてそのフェーバ一を受ける、あるいは義務を課せられるところの対象がよく理解納得いけるような表現をもってこの通達を書かれんことを強く要望いたしまして私の関連質問を終ります。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員長 内藤友明君。
  53. 内藤友明

    ○内藤委員 一つ確かめておきたい。今の通牒は、生計を一にしている親族間における農業経営者のわからないものについては、こういうふうにやるのだ、こういうことですね。——わかりました。そこで、農業経営者であるということがわかつている場合は、これによらないのですね。
  54. 北島武雄

    北島政府委員 この通達をごらんいただきますと、「生計を一にしている親族間における農業から生ずる所得がだれに帰属するかについては」「今後下記によりその農業経営者判定し、その者に課税する」こう書いてあります。これでわかる事態もはっきり中には書いてございます。これで大体総合的に包括しておると思います。ただし、先ほど通達が非常にむずかしいというおしかりを受けまして、はなはだ恐縮でございますが、あらゆる場合を総合いたしまして漏れなく書こうとすると、どうもこういうことになりますので、まことに申しわけないのでありますが、それもあわせてただいまおわび申し上げます。今後通達の書き方につきましては、十分わかりやすく書くことにいたしたいと思います。
  55. 内藤友明

    ○内藤委員 そうしますと、だれが経営者であるか、はっきりしておる場合は、これによりませんな。もう一ぺん尋ねます。農業経営者がだれかということがはっきりしておる場合、これに当らないでしよう。
  56. 北島武雄

    北島政府委員 これによってだれが農業経営者であるかを判定するわけであります。
  57. 内藤友明

    ○内藤委員 そこで、農業経営者というのは、御承知の通り、具体的に申し上げますと、経営者というものば危険を負担しておる者なんです。もっと具体的に申しますと、米を供出して、農業協同組合へだれが持っていっておるか、妻の名前で持っていっておる、肥料は農業協同組合から妻の名前で買つておる、これは、純然たる妻の危険においてその農業経営しておる、こういう場合ば、これに該当いたしませんな。農業経営者なんだから、妻というものば。主人公というものはよそへ行って働いて、この農業経営の危険を負担していない。折々は手伝いをさせるかもしれないが、義務は妻が負つている。だから、税金も妻が納めている。供出も妻がした、肥料も妻が買つた、労働も主として妻がやつておる。こういう場合は農業経営者というものはその妻なのですから、これはもうこれによりませんな。そうでしよう。
  58. 北島武雄

    北島政府委員 所得税法におきましては、名義のだれであるかを問わず、実質によって課税するのが原則でございまして、所得税法第三条の二にその趣旨が出ておるわけであります。名義の何たるを問わず、実質的にだれが農業経営者であるかを判定する。そこで、むずかしい問題が起るわけであります。
  59. 内藤友明

    ○内藤委員 だから、経営者というものは妻なんです。実質は妻なんですね。主人公というものは経営者でない、そうでしよう。法律がそれを書いておる。それを税務署が今まで悪く考えている。何でも主人公というものは経営者なんだ、こういう先入主に陥つている。混乱に陥つている。そこで整理しようということで、こういうものが出てきた。こういうことなんですね。だから、妻が妻の名前で米の供出をしている、妻の名前で農業協同組合で肥料を買つてくる、妻が労働しておる、いろいろこうやつておる。こういう場合は農業経営者は妻なんですから、主人公が経営者ではないのだから、これは当然なんですよ。それははっきりしておいてもらいたい。それを、こんなものでごまかされたんでは増税になるのですよ。
  60. 北島武雄

    北島政府委員 やはり名義の何たるを問わず、実質によって課税するのです。たとえば……。
  61. 内藤友明

    ○内藤委員 実質上は妻が経営者なんだ。
  62. 北島武雄

    北島政府委員 実質上は妻が経営者である場合ば、妻が経営者でございます。ただし、それは名義によるわけではございません。
  63. 内藤友明

    ○内藤委員 一つはっきりしておいてもらいたい。——わかりました。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は今の内藤委員の御質問に関連して、もう少しその点を明確にしたいと思います。しかしこの問題は、御承知の兼業農家の課税として、農業課税のガンであつて、御承知の通り、全国の税務署でも、税務署ごとにこの方針がまちまちであつて、ひどいところになると、国税局の管内でも、税務署の直税課長の方針によって、取扱いがまちまちであった。だから、税務署員も非常に困っておられた。これを何とかこの際解決しようというので、今度この通達をお出しになろうとするその努力については敬意を表します。しかし、そのせつかくの努力をなさつても、どうも非常に複雑な、またあいまいな通達であるので、これはもう少し響きかえしていただきたい。これは私の質問の要旨です。  そこで、申すまでもなく、所得税法規定そのものが非常にわかりにくいので、これは、われわれ国会議員にも責任があるのだが、その所得税法規定を現実に適用する場合に、この所得税法規定だげではわかりにくい。税務署員も実際の税務執行がしにくいというから、その税務署員の解釈の便宜上、この通達というものをお出しになる。従って、少くともこの通達というものは、もう少し現実に即して、わかりやすくお書きになるのが当然である。これについてば、私は春日委員のさっきの御議論とば多少違います。通達と法律とは違う。これは、裁判所で争うた場合、通達というものは意味のないものだ、法律があくまでも土台である。こういうふうに私は考えますので、多少違いますけれども、しかし、そういう通達ならば、もう少し現実に即してわかりやすくしていただきたいことと、今までの通達ではわかりにくいから、特に御心配になってこういう通達をお出しになる以上は、少くとも、今までよりは明確に、もっとわかりやすくなさるべきであるが、どうもこれを読んでみると、今までよりももう一つわかりにくい。また今までの範囲内にこだわつて、わかりにくい、こう思うので、重ねてお尋ねをいたします。  そこで、私のお尋ねいたします趣旨は今の内藤委員と同じようなことでありますが、要するに実質の所得者は妻であるかどうかということを判定するのが問題であります。それがために、それを明確に判断させるための基準として、ここに通達が出ておる。そこで通達の骨子としては三ページの(一)の(1)に規定してある、一町以上の大きな農家になれば、これば別といたしまして、これは大体一町以下三反までの中農家をおそらく主としておるのでしよう。この場合において、要するに妻に所有権または耕作権がある場合は、これを認める。ところが所有権耕作権というものは、一体どういうことによって認めるのか、これが今まで一番あいまいであった。そこで、所有権または耕作権というものは、登記所にその田地を妻の名義で登記されれば、それでお認めになるのか。登記所に登記し、なおかつその田地を妻が耕作しておるということであれば、われわれは常識上妻に所有権があり、また耕作権が認められる、こういうふうに思うのでありますが、それでいいのですか。
  65. 北島武雄

    北島政府委員 所有権耕作権はもちろん一般の概念による所有権耕作権でございます。
  66. 奧村又十郎

    ○奧村委員 その一般の概念によるというようなぼかしたことを言われるから、税務署によっては、登記しても認められぬとか認められるとか、こういうことになる。そこで登記の一般の概念というのは、登記したらそれで認められるのですか。
  67. 北島武雄

    北島政府委員 この通達の趣旨でございますが、三ぺ—ジの(一)の方は、まず家庭にあつて農業に従事している方にこういう事情があれば、それは、全部その家庭にあつて農業に従事している者の経営考えます。それから四ページの(二)の方は今度は会社官庁などに勤務する等他に主たる勤務を有する方に、以下の事情がありました場合には、その人の農業経営と見ませんで、家庭にある方と見る、こういうわけでございます。まずこの家庭にあつて農業に従事しておる、たとえば妻の方に、その耕地の大部分について所有権または耕作権を有しておりましたならば、どんなに大きくても妻のものとする、こういうわけでございます。それから一町歩云々ということは、この場合関係ございません。一町歩云々が関係がございますのは、(二)の方の、たとえば夫の方が会社官庁等に主たる職業を有する者に次のような事情があった場合には、これは奥さんの方としますが、ただしその農業相当規模、たとえば一町歩程度以上であつて、そしてその会社官庁などに勤務している方を経営者と見るを相当とする場合は除く、こういう書き方でございますので、一つ御了承願います。
  68. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねしておることに御答弁をしてもらわぬと、いつまでもむだな時間をたくさん使わなければならぬ。それじやもう一つはっきりしませんから、その(一)の(1)ですね。三ページの(一)の(1)所有権耕作権を有しておる場合は、妻の経営として認める。ところがその次に、ただし書きがあるんですね。ただし書きには「婚姻後に生計を一にする他の親族から」たとえば夫から妻にたんぼの耕作権名義を変更した、そういう場合は認めぬという文章にこれはなっております。そうすると、夫から妻に、あるいは父親からむすこに相続をするとか、あるいは登記して名義を切りかえる、これでも妻の農業として認めないのか。これでは認めないという。それでは、実質妻の所有である、妻の耕作であるということは、一体何をもって証明するのか。これは、私どもお尋ねするのは、所得税法というのは分離課税が原則である。分離課税が原則であるにかかわらず、今のお話のように、法律できめてあることを通達でもってこれをはばむということは、できぬはずです。妻が事実上たんぼを登記し、それを耕作しておる。事実上妻の経営であるにかかわらず、この規定によって、登記しても、耕作権の名義を変更しただけでは認めないというように書いてあるでしよう。従って、私は重ねて聞きたいのは、一体所有権耕作権というものは何を意味するのか、名義を登記所に登記すれば認めるんじゃないのかどうか。
  69. 北島武雄

    北島政府委員 どうも、通達がちょっとむずかしいために、御了解願うのに大へん申しわけございませんが、よくごらん願いますと、「ただし、婚姻後に生計を一にする他の親族から耕作権の名義の変更」をする、所有権とは書いてございませんので、単に耕作権だけの名義の変更をしたためにこうなつた、場合にはだめでありますが、所有権の変更があった場合にはよろしいわけでございます。
  70. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、その耕作権というものはどういう現実の形をもって認めるのですか。現実に妻が耕作しておつても、耕作権の移譲とは認めぬのですか。耕作権というものはどういうことで表現されるのですか。
  71. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 ちょっと技術的な点になりますので、私からお答え申し上げさせていただきます。実はこの耕作権は、事実上非常に簡単に名義が変るということでありまして、やはり所有権まで移すというような場合には、これははっきり認めていいのではないか、こういう趣旨でございます。なお、なぜこの第一点できつく縛つたかと申しますと、これは、規模の大小を問いませんで、とにかく絶対的に、所有権が移つたらこれで割り切りましよう、こういうことでありますので、そこはきつく縛つております。同時に、この小規模云々は、これはほかのあらゆる条件を抜きにして、こういう条件が一つあれば分離でございます、こういっておるわけです。そこで、第二点の一町歩未満の場合には、所有権なり耕作権の有無を問わず、これは、実はその名義でいろいろ判定が異なるということになりますと非常にまずうございますので、一町歩未満のような場合につきましては、御主人がほかに職業を持って専念しておられる——これは、通達をごらんになりますとよくおわかりになりますように、これも相当思い切つて割り切りまして、御主人がいわゆる常勤の程度というか、朝から夕方まで毎日働いておられるというようなことでございましたら、主たる職業に専念しているため、その農地の経営を主催していないと認めるということで、ここは、一町歩未満のところは、そういった所有権あるいは耕作権の有無を問わず、ともかくこういった、ここに書き上げておりますような事情がございましたら分離しよう。それで問題は、今言つたように、規模のいかんを問わず、大前提として働くところの問題でございますから、やはりこの耕作権のように、ある程度簡単に名義が変るというようなもので処理してはどうであろうかということで、耕作権所有権の、しかも結婚後所有権を移した場合はよろしい、しかし結婚後耕作権をたまたま奥さんの名前にしたというだけで処理するのはどうであろうかということでございます。
  72. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この所有権で、たまたま今までずっと議論が続いてきたのですから、私も頭が悪いのかしりませんが、重ねて伺いますが、所有権というのは、登記所に登記したことをもって認めるのですな。
  73. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 そうでございます。
  74. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そういたしますと、この通達は非常にありがたい、けさの朝日新聞に出ておるのを見ても、兼業農家には非常な朗報であると出ておる。私どもも、これはけつこうな措置と思うのですが、それじやこれによって所有権を明確にして、分離課税を受けようという場合に、今度は、たとえば夫の田地を、事実上妻のものであるが、税法上の分離課税を受けるために登記所で登記するということになりますと、これは贈与税がかかりますね。そこで贈与税がかかるというと、一方で所得税を負けてもらつても、一方で贈与税を取られるというので、地方によって非常に困る。そこでこの贈与税は、今度相続税法が変りますので、どのように変るのか、またやり方によって、たとえばことしと来年と再来年と三年くらいに分割して贈与していけば、贈与税の免税点以下くらいわずかずつ分割相続すればいいわけですか、それはどうですか。せつかくこれをお出しになつたのだから、これの親心の適用を受けるようなやり方で、これはこうなさったら相続税も贈与税もかからないように税務署も認めてあげますと、せつかく改めた以上は、もう一歩進めてありがたい朗報を聞かせてやりたいと思うので、この私の聞いた点をかみ砕いて御説明願いたい。
  75. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 所有権を移しました場合に贈与税の対象になるのは、税法上当然で、やむを得ないことと思います。むしろ耕作権の場合には、先ほど申し上げましたように、簡単に名義が変るものでありまして、耕作権を移しただけでは、実は贈与税の対象にいたしておりません。そのような関係からも、この二つを違つて取り扱つておるようなわけであります。
  76. 奧村又十郎

    ○奧村委員 肝心のところを……。それじや亀徳さん以外の方でもいいですが、この通達適用を受けて、分離課税をすぐ受けたいというものは、全国の農家の中でずいぶんある。今のお話のように、これを実施することによって五億円減税になるか十億円減税になるか、農家にとつて非常な朗報です。新聞に今度お出しになりましたが、三月十五日には適用を受けようと思うその場合に、税務署で問題になるのは、登記所で田地を奥さんの名義にする場合に、贈与税がかかるぞと一言言われると、一方で所得税を負けてもらつても、贈与税でおどかされて、しゆんとしてしまつて、せつかくの通達の親心が消えてしまう。そこで、何とかもう少しわかりやすく、親心がわかるように、方法一つ教えてやつてもらいたい。委員会を通じて——委員会を抜きにして新聞にスクープされるよりは、一ぺん大蔵委員会の権威を重んずる意味において、教えていただきたい。
  77. 北島武雄

    北島政府委員 この通達は、みなさん御案内の通り、所得税法に関する問題でございまして、贈与税につきましては、また別でございます。相続税法の定めるところに従って、贈与税がかけられるわけでございます。この点は全然別個でございます。
  78. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それじや、ここに主税局長もおられるから伺いますが、贈与税は、今度お出しになるのは、この一月一日から施行ですか四月一日から施行ですか。四月一日からの施行ということになれば、これはもう来年の話になってしまいますが、今お尋ねしたいことをお聞きであると思うが、税法全体を総合して、兼業農家にせつかくの朗報をことしから適用を受けるようにしてやりたいという意味において、何とか適当な便法をあなたの知恵でお考えいただいて、ここでお話をいただきたいと思います。
  79. 原純夫

    ○原(純)政府委員 まだ御提案申し上げておりませんが、ただいま考えております法案、これでは、贈与税は年分割税でありますから、三十三年一ぱい分について適用するようにいたしたいと思います。がしかし、ただいまお話しのような所有権を移すというような場合に、控除は現在の十万円を二十万円に上げようというつもりにいたしておりますけれども、それだけで完全に贈与税がかからなくなるかどうか、これは、やはりその控除の額の範囲内に納まるかどうかにかかると思います。なお親族間といいますか、特定の関係の贈与については、累積をしようということになっておりますから、その辺の条件にはまるかはまらぬか。はまる限りにおいて、贈与税がかからない。今の相続税、贈与税の評価では農地は平均して大体一反歩六万円くらいだったと思います。従いまして、一年に二十万円というとどのくらいになりますか、三反歩くらいということになります。そのくらいならばかからないということになりますが、五反歩、六反歩となってもかけないでくれと言われますと、それはちょっとできかねるのじゃないかというふうに思います。
  80. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、今度贈与税の免税点を二十万円にすると、一反六万円と見られて、三反で十八万円ですから、たとえば九反のたんぼなら、三反歩ずつ毎年贈与して三年間で免税に切りかえられるわけですな。これでもってできるだけ兼業農家を救つていこう——これは私の意見でありますが、農業だけをこのような取扱いにしておるのです。たとえば小売酒屋さんとか、タバコ屋さんとか、パーマネント屋とか、こういう農業以外のものは、文句なしに免許そのものだけで分離課税になっておるのだから、ただ農業だけをこのようにたんぼに縛りつけて所得を合算することは、私は遺憾に思っておつたのです。今までに農民に特に犠牲を払つてもらつてつたので、この際できるだけこの通達の親心を適用してやりたい。しかし、今の御答弁によりますと、この通達はできても、名義が夫の場合であるならば、これは妻の所得としては認められぬ。しかし夫が常勤して、とうてい農業の手伝いはできないという場合は認めるとここへ出ておるのだから、これはけつこうです。しかし、夫が果して常勤しておるかどうかという証明とか判定が、またこれはめんどうだ。おそらくこの通達をお出しになっても、また日本中の税務署でやつさもつさが起る。だから、その点も親心ではっきりしてやつていただきたいのだが、三反ずつ分割して、今後かりに三年間に登記所の名義を書きかえるという場合に、ことし妻の所得として認めてやつてもらえるか、来年に妻の所得として認めてやつてもらえるか、そういう点も、各税務署には詳しい通達を出してやられるのですか。その点、ちょっとお尋ねしておきます。
  81. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 多分誤解されておられる点があるのではないかと思いまして申し上げるのですが、今の所有権云々はある程度規模が大きくてもかまわないかということを前提にして議論しておりますので、規模が一町未満の場合はあまり耕作権とか所有権がどちらかということをやかましく言いませんで、実質に応じて判定したい。その実質に応じて判定する際に、税務署の思想統一がされていないといけないものでありますから、その際に、たとえば御主人が大体常勤で勤めている、そして奥さんが実際に耕作しておられる場合はそこまで考えていきません。従って一町歩未満の場合には、耕作権所有権がどちらにあるかということを別にやかましく言いませんで、従いまして、同じように取り扱うということになっておりますので、多分その点は御懸念はないと思います。
  82. 石村英雄

    ○石村委員 大へん関連質問が長くなって、横山さんに恐縮ですが、ごく簡単にお尋ねします。この通達は結局経営者がだれであるかということを判定するための通達ではないかと思います。そうなのですか。
  83. 北島武雄

    北島政府委員 御趣旨の通りであります。生計を一にする親族の中で、一体だれが農業を営んでいるかという、その経営者判定に関する通達でございます。
  84. 石村英雄

    ○石村委員 そこで、ただいま亀徳さんの説明にも、一町以下とか一町以上とかいう言葉があつて、またこの通達を見ましても、四ページの二の「会社官庁」というところにただし書きがあつて、「その農業相当の規模であつて」云々とあるのですが、それなら、なぜ一町以上とか一町以下とかいうことで制限をする必要があるのですか。実際の問題を考えると、むしろ大きい一町以上の方が、他の官庁に主人が勤めておる。そういう人こそ、その農業に関係することが少いはずだと思う。それがただし書きで「相当の規模」という条項が入れられておる。そうすると、このことは、亀徳さんの説明にもあったわけですが、一町以上の場合には、実質的な経営者というものをあまり考えないで、名義人である主人の方に持っていこうという意図が含まれておる。このただし書きがわざわざつけ加えられておるということを考えると、そのようにとれるのですが、そうすれば、経営者がだれであるか、実質的な経営者を認めよう、考えようという通達としては、変なただし書きだと思うのですが、どうですか。
  85. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 一町と限るのが問題であると言えば、確かに問題かと思うのであります。これはともかく経営者がだれかという事実認定が署によって非常にまちまちだということを、いかにして歩調を合せるかということがまず根本のねらいでございます。先ほど奧村先生の御発言の中に、一町以上はまあ問題はないかと、こうちょっとおっしゃったように拝聴したのでありますが、規模が一町以上ともなりますれば、もう奥さん一人で田地を耕すということも、なかなか困難でございましょうし、そこらあたりは、やはり御主人がどうしても監督することになるのではないかという推定が当然働いておるわけであります。それで、この問題は解決するのではないか。現実に国税庁の方に、農給合算に関連しまして、いろいろな投書なり、どうしたらいいかという問題を全部洗いましていろいろ検討いたしますと、六反ないし七反、多くてせいぜい八反、九反というくらいが限度一ぱいでございまして、大体ここらあたりであらゆる問題が解決されるのではないか、従って、このような考え方を打ち出すこと自身に、やはり合理的な根拠もあるのではなかろうか、こう考えておる次第であります。
  86. 石村英雄

    ○石村委員 時間がありませんから、あまり押し問答はいたしませんが、一町以上であろうとあるまいと、この四ページの二のただし書きは必要がなくて、やはり「主たる職業に専念しているため、その農業経営を主宰していないと認められる場合」とか、あるいは二、あるいは三の事項があれば、経営規模は関係しないで、この証拠があれば当てはめる方がむしろ当然ではないか。わざわざただし書きを入れて、一町以上の場合には当らないようなこんな通牒の出し方では、一町以上の場合には、経営者は妻を全然認めない、こういうような反面解釈が生まれるのではないでしょうか。
  87. 金子一平

    ○金子説明員 やはり今お話しのような場合におきましても、御主人が従来の経歴その他から見まして、奥さんを指揮して、雇い人なら雇い人も相当使つて農業を営んでいる。実質上の経営者はやはり御主人なら御主人と見るのが相当だ。税務署も見、社会通念上もそう見られる場合もあろうかと思います。そういった場合を予想して、経営者相当する場合を除く、かような書き方をいたしておるわけでございます。
  88. 石村英雄

    ○石村委員 続いて横山君の質問もあるでしようし、私も先に聞きたいと思うのですが、そうすると、一町以上の場合には、四ページの下にある(1)(2)(3)の事項が認められても、それは妻が経営者とは認めないという趣旨なんですか。
  89. 金子一平

    ○金子説明員 今のお話のような場合には、全然認めないというわけではございません。実質的に見て、御主人が農業経営者だと世間でも認めるような場合は別だが、そうでないような場合には、やはりあとの(1)(2)(3)が適用になる、かような原則的なものの見方であります。
  90. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 一町歩以上を認めないという理論的実質的根拠のないことは、僕も石村君と同じ意見ですが、それはさておいて、そういうところに限界を置く場合に、一言私が注意を喚起したいことは、同じ一町歩でも、その一町歩から得られる所得額等も考慮せらるべき立地条件となると思うのですが、二毛作もしくは三毛作をやる一町歩と、東北や北海道の単作の、非常に単位面積当りの収穫の少いところと、同一に取り扱つてはならないということを頭に置いてもらいたい。この点、国税庁の御意見はいかがですか。
  91. 金子一平

    ○金子説明員 一応水田一町歩と申しておりますが、大体平年作における所得が十七万円程度というようなことで、たとえば野菜畑でありますとか果樹畑、そういった場合におきましては、大体所得で十七万円程度のものではなかろうか、かような考え方通達の二ページの三に明らかにしてございます。
  92. 横錢重吉

    横錢委員 関連して。横山君の質問中ですが、御了承願つて、銀行局関係でちょっと質問したい。前の国会において、いろいろと引き続いてなおまだ解決しない問題があるので、まずそれらの点で、若干ただしてみたいと思う。  現在各府県に労働金庫が作られて、それぞれ経営は発展をいたしておるわけですが、これの支店、あるいは出張所の設立に関して、当局が少しく干渉に過ぎるほどの制限を最近与えているのではないか、こういうふうに見られておる節があるわけです。従って、この点に関して、出張所を設ける基準というものについては、どういうような指導をただいま行なっておるのか、この点について伺つておきたい。
  93. 大月高

    ○大月説明員 労働金庫の支店の設置てついての基本方針はどうかというお尋ねでございますが、この点につきましては、特に労働金庫だけについて、特別の扱いをいたしておるわけではございません。一般の金融機関の支店設置について考えております方針と同様でございまして、その地域の預金者の状況、あるいは貸付に対する需要の増、それから各金融機関の店舗との競合度、あるいはその金庫自体の人的、物的な能力、そういうものを彼此勘案いたしまして、認めるか認めないかということをきめておるわけでございます。特に労働金庫についてやかましく申しておるということはないと存じております。
  94. 横錢重吉

    横錢委員 今の税明を承われば、これは各金融機関に対する指導理論、それをそのままおつしやられておると思うのです。しかし、具体的には、労働金庫の場合には各金融機関と違う性格がある。これは、預金者あるいは利用者、そういうような面で、金庫の持っておる組織上からくる相違がある。従って預金者や利用者が、ここにぜひ支店や出張所を設けてほしいという場合、これは他の金融機関との競合ということがまず考えられる。そこで、こういうものは、その土地における労働組合の考え方、それからまた預金を持っておる量、あるいは熱心に希望する熱の度合い、そういうようなところで、おのずからここには支店を持つ、ここに出張所を作ろうという意見が出てくるわけです。最近そういうものが千葉県でも行われておつて、熱心に地元の労働組合が運動したが、これに対して当局が、いかなる理由からかこれを峻拒しておる。このために、地元の労働組合は非常な失望と、大蔵省当局の指導に対する疑義、そういうようなものを今日持つに至っておる。この点は御承知であろうと思うのですが、この点に関してさらに御説明を承わりたい。
  95. 大月高

    ○大月説明員 先ほど申し上げました一般原則につきまして、具体的にどういうような気持でやつておるかということを申し上げますと、やはり現在の金融機関の店舗はいずれかといえば、過剰であるというように考えておるのです。労働金庫は労働金庫といたしまして、労働組合の関係という特殊の事情がございますので、その事情は十分に勘案しておるわけでございますが、何分預金というもの自体につきましてはやはり金に糸目はないというわけでありまして、店舗の一つとして考えざるを得ない。こういうように考えておるわけでございます。従いまして、労働組合の方の御要求があれば大体認めるというわけではなくて、全般の店舗配置等を考えてやつておると思います。ただ、最近全体の考え方といたしまして、御存じのように、国際収支の改善のための緊急対策ということで、できるだけ各方面の投資を押えるという方針をとつておるわけでございます。そういう意味で、店舗を設置いたしますと、その関係の店舗に対する投資がある。そういうことから、店舗自体の取得等についても、一般的に相当やかましく規制いたしておるわけでございまして、その一つの現われとして、あるいは労働金庫にもそういう問題があるのかと存じておりますが、これも特殊な事情であると思います。
  96. 横錢重吉

    横錢委員 今の財務官の答弁は投資を押える意味で、店舗の増大を防ぐというのですが、たとえば千葉県の船橋の例ですが、この場合には市の方で店舗を提供しておる。市の勤労会館を提供して、その中の一部において出張所業務を行う。こういう、今のあなたの答弁とは全然違う条件で、こういうものを提供するから出張所を作つてくれ——地元の各地区労の会議等においてはこれは、また熱心にやつてもおれば、また過去の実績もあるので、預金も相当の金額に達しておるわけです。従って、ここに三人や四人の出張所を作るというようなことは、さして経理上の問題にもならない。押えることの確たる理由というものが何ら見当らないにもかかわらず、これが大蔵省の方の考え方において、ここには認めてはならぬ、そういうような考え方が強く出されているやに承わる。今の御答弁の中には特にここを拒み続けるという理由は見当らない。こういうような点で、これは今の御答弁の通りとするならば、この点については再考をされて、出張所くらいのものを作つて、それが経常の赤になるか、あるいはどうなるかというようなことについては少くも経営を担当しておる者は十分承知の上で、これだけのものをやるならば黒字になるか赤字になるか、その点は了承の上で、申請をしておるのでありますから、もう少しこういうような点については、国としての考え方を再考されてよいのではないか、こういうふうに考えておりますが、この点、いかがですか。
  97. 大月高

    ○大月説明員 具体的なケースでございまして、私もそのことについて詳細は存じませんが、よく検討いたしまして善処いたしたいと思います。
  98. 横錢重吉

    横錢委員 今私、話の中から御答弁が出てきたので、さらに明確にするために具体的なケースを申し上げたわけで、事実こういう問題があるので、ここの答弁では、これ以上のものは出ないかもしらぬが、一つこの点を進められて、さらに親切な御回答に接せられるように、御尽力をお願いいたしたい。この点を申し上げて、私はまだ質問が残つておりますけれども横山君が途中でありますから、ここで打ち切つておきまして、後刻また……。
  99. 神田大作

    神田(大)委員 この通達を見ますと、今見たばかりではなかなかよくわからぬが、先ほども前の委員から質問があったように、一町歩ということできめるということとか、農業に関する知識とか経験があるないでもって、経営者であるとかないとかいうことを決定するのはおかしいと思うのですが、それはいかがです。
  100. 金子一平

    ○金子説明員 お答え申し上げます。一町歩というのは先ほども申し上げましたように、一応の目安でございます。やはりその場合には実際にだれか経営者であるかという事実認定の問題は残ろうかと思います。一応いろいろな場合を予想して、すつぱり割り切ることはむずかしゆうございますから、そういった点では、やはり若干の事実認定の要素が残ろうかと思うのであります。  それから第二点の、たとえば職業に専念しておるとか、農業に対する知識経験があるかないかという区切り方は、これも、見ようによってはおかしいではないかという御議論も出ようかと思うのでありますが、しかし、前に出しておりました基本通達考え方におきましては、やはり、この通達による場合よりも非常に無理な問題が起ります。事実認定の問題が相当たくさん出て参りますので、やはり実際的な税務の運営のやり方といたしましては、こういったことを基準にいたしまして、ある程度すつぱり割り切るというような行き方がやはり自然であるのではないか、かように考えまして、この基準をとつた次第であります。
  101. 神田大作

    神田(大)委員 たとえば一町歩以上であつて奥さんがちゃんとりつぱに経営している農家というものは、たくさんある。それから男女同権といっておるときに、一町歩以上だから、だんなさんがいなければ経営できないというようなことはあり得ないと私は思う。そういうふうに一町歩とか、そういう耕作面積でもって経営者がだれであるかというような基準をきめるというようなことは、これは少し考え直さなければならぬと思う。問題は、やはり経営者がだれであるか、その農業をだれがやつているのかということが、実は問題であると思う。たとえば奥さんの場合はそうですが、子供の場合なんか、たくさんあります。一町歩以上でもって子供が経営をやつている、あるいは弟が経営しているというようなところは、たくさんあると思う。それは、町歩でもって制限するという考え方は、直してもらわなければならぬ。それから農業知識経験というようなものは、まことに幅広いもので、日本一の米作りのものもそうだし、あるいはまた白菜や菜園あたりを作るのも経験です。この農業知識経験というようなものでこれを判定することも、おかしいと私は考える。  要するに、こういう点で、二重課税をすべきじゃない。だから、いわゆる勤労所得農業所得というものを分離すべきであるという筋を通してやつてもらわなければならぬと思う。これは、同じ者が経営するというような考え方を直して、勤労所得農業所得というものをはっきりと分離していくという形にしていけば、もっと簡素になるのじやなかろうか。この通達を見ても、なかなかむずかしくてわからないけれども、いろいろ疑問があります。横山君の質問中ですから、これ以上申し上げません。あとで関連して質問させていただきたいと思いますけれども、一町歩以上でもって経営の主体をきめる、農業経験があるとか、あるいは知識があるとかで経営主体をきめるというようなことはおかしい、間違つておるのじやなかろうか、こういう点を私は指摘しておきたい。
  102. 金子一平

    ○金子説明員 前段の問題は、その通達にもはっきりうたつておりますように、主人の方が、従来の経歴等から見て、あくまで農業経営者と、こう認定するのが相当な場合に限つて、この考え方から除くということを書いております。実際上も、奥さんの方で一町歩以上のものを経営しておられるという認定がつきましたならば、これは奥さん所得と見ていいわけであります。奥さん経営者、こういうことで課税をしていっていいわけでございます。その点は、誤解のないように願いたいと思います。  それから後段の農業に関する知識経験、これは、考え方はいろいろございましょうけれども、結局学校を出まして、そのまま会社、工場に勤めているというような場合におきましては、やはり農業所得までもその人に帰属させるのは無理だろう、むしろ有利になるようにと、一応こういった判定をしておるわけであります。決して今お話しのございましたような点はなかろうと考えております。
  103. 横山利秋

    横山委員 非常におくれましたけれども質問を中断してまた長官に来ていただくのはお気の毒でありますから、この機会に、ほかの問題でただしておきたい。それといいますのは、この間、税の執行に関する調査小委員会で、標準率表、効率表の存否及びその運用について大いに議論をいたし、参考人の意見も聴取いたしたのでありますが、そのやさきに、新聞で承知するところによりますと、大阪国税局の組合の役員、と申しましても国税局の職員でありますが、それが、この標準率表、効率表を見せたために処分を受けた、こういうことが掲載をされておりました。まずもって、その経緯を要点だけ承わりたいと思います。
  104. 北島武雄

    北島政府委員 去る二月十二日の午後十一時ごろ、大阪府警察本部の手によりまして、堺税務署の直税課勤務の岡田事務官が、大阪商工団体連合会、大商連と言っておりますが、その三国事務局長にひそかに税務行政の機密文書を渡したという認定のもとに、国家公務員法第百条第一項、第百九条第十二号違反容疑として逮捕されたのは事実でございます。
  105. 横山利秋

    横山委員 この間も問題になつたのでありますが、国税庁の文書に、機密文書というものはいかなる規定があり、いかなる内容が機密文書であるということを、管下職員に通達されておりますか。
  106. 北島武雄

    北島政府委員 文書取扱い規程がございまして、各国税局には、またそれに準拠いたしまして、文書取扱規程がございます。なお今回の昭和三十二年分のいわゆる所得標準率表とそれからいわゆる業種目別効率表につきましては、大阪国税局長におきまして、前者の所得標準率表につきましては本年の一月十日、それから効率表につきましては、同じく本年の一月二十二日に、各税務署長あてにいたしまして、こういう趣旨の通知をいたしております。たとえばこういったふうでありますが、昭和三十二年分営業庶業所得標準率を別冊の通り定めたから、この活用及び取扱いに潰憾のないようにされたい。なお貴署分として下記部数を送付するから、この管理に留意し、いやしくも外部に漏洩することのないよう厳に注意されたい。また関係職員への交付に当つては、番号等を明確に記録しておかれたい。また具体的な通牒によりまして、これを一連番号として、署員においても十分注意して、秘に扱えという通知をいたしておるわけであります。
  107. 横山利秋

    横山委員 この大阪国税局長が出しました文書は、局長の権限に属するものであるか、よって立つ法律ないしは長官の通達に準拠しておるものであるか、準拠しておつても、その内容が果してあなたの意思の通りであるのか、局長の自由裁量が動いておるのか、この点をお伺いします。
  108. 北島武雄

    北島政府委員 いわゆる所得標準率表につきましては、これは、昔から税務部内の取扱いの要領を定めたものでございまして、部外に対しては、一般に公開しないという取扱いにいたしております。これは昔からのことでございます。今回の大阪国税局長のただいま申しました通達も、その趣旨に従って、従来から一般に公開しない所得標準率表、効率表については、厳重に取扱いに注意せよ、こういう通知をいたしておるわけであります。
  109. 横山利秋

    横山委員 こういう通達を出す理由は何ゆえでありますか。
  110. 北島武雄

    北島政府委員 これは、所得標準率、効率というものの性格いかんになるわけでございますが、所得調査は、原則といたしまして、個々の納税者について、本人の記帳に基き調査を行なっておるわけでございます。たとえば青色申告者のように、収支にわたって詳細に記帳されておる者の調査につきましては、このような率を使う必要もないわけでありますが、たとえば納税者が記帳していない場合や、記帳いたしましても、はなはだしく信憑性がない場合には、財産の増減とか、生計費支出の状況、あるいは同業者とのつり合い等の具体的な事情を勘案いたしまして、売上高や所得金額を推計することになるわけでありますが、この際は、実際に当つて調査いたしました同業者、同業種の平均値を示すいわゆる効率や標準率を、所得推計の場合の一つの重要な資料として使用することにいたしておるわけであります。すなわち売上高の記帳がない場合には、効率によって売上高を、それからまた売上高の記帳はいたしましても、必要経費の記帳がない、こういう場合には、売上高に標準率を乗じて、大体この程度所得金額だろう、こういうふうな推計をいたすわけであります。それで は、なぜこういうような標準率表、あるいは効率表を公表できないか、公表したらどういう弊害があるか、こういう問題でございますが、これは、はなはだ申しにくいことでございますが、これを公表いたしますと、実際の売上高が、効率によって算定される推定よりも上回るような場合とか、あるいは実際の所得金額が、標準率によって算定されました所金額を上回るような場合に、場合によりまして納税者の方が、これに記帳を合せて操作すことが可能になるわけであります。そういうことになりますと、現在の申告納税制度のもとにおいて、納税者の方々が、各自めいめいが誠実に記帳している、そうして誠実に正しい申告をしてきた、こういう趣旨に反するわけでありますので、これは、ちょっと公開いたしかねるわけであります、それからまた、そればかりでなくて、これを公開いたすことによりまして、納税者の方にも、あらぬ誤解を生むこともあり得るわけでありまして、たとえば、自分のところの所得はとても税務署の標準率にならないのだが、それなのにかかわらず、税務署はこれで押しつけるのか、こういうような感じも持たれる。昔から税務行政の上におきまして、こういうものは公開することはよろしくない。少くとも現在の段階におきましては、適当でない、こう考えております。しかし、納税者の方がすべてほんとうに正しく記帳され、そしてほんとうに正しく誠実に申告していただければ、そういうことはないわけでありますが、現在の段階におきまして、納税者の方々の記帳の能力に限界もございまして、なかなか正確には記帳できないこともございましょうし、それからまた、場合によっては脱漏ということもあるわけであります。私どもといたしましては、この所得標準率表、効率表というものを一般に公開することにつきましては、現段階においては、どうもいたしかねる、これは、部内間に秘扱いにしておくべきものである、こう考えております。
  111. 横山利秋

    横山委員 わかりましたが、そのお考えの根底を流れているものは、納税者はごまかすものだという基本概念が動いておると私は思うのです。税務署の職員は、一つのトラの巻といいますか、国税局あるいは本庁で作つた効率表や、あるいは標準率表を腹の中に秘めて、それに合わないものは、まずこれはごまかしだというふうな基本的な概念を植えつけられておるのであります。あなたの言葉を借りて言えば、納税者は、百もうかったものを五十と言うに違いない。だから、五十と言ってきたならば、ふところを見ながら、これは百が正しいのだ、こういう立場に立ってほじくり返せ、こういうことになる。しかも、この間小委員会で明らかにされましたことは、この標準率表、効率表が、実際上もう漏れている、しかも売買されておる。こういうことが参考人によって明らかにされておるわけであります。このことは、私は今回の問題をもって、今あなたの方でなされておる法規、通達によってかりに間違いがあったといたしましても、この際根本的に考えるべきことではないか。春日委員は、この間この標準率表、効率表については、もう必要がないのだ、大体そういうものがあるということ自体に、納税者と税務職員との間に、まず前提において根本的な食い違いがあつて、双方とも疑いを持って折衝に当つておる、これは、もっとすなおに申告を中心にして考えるべきであると言って、廃止論を唱えました。私は、また一歩譲つて、今日各地においてアンバランスがあるから、そのアンバランスを是正するために、効率表なり標準率表というものが国税局において検討される場合においては、これはまた全然悪いものでもなかろうと思う。しかし、両者の意見の間を共通に流れるものは、税務職員だけがこういうものを持っておつて、納税者に臨むときに、ごまかすから、信用せずに、ポケットの中の帳面を見て、これがこのうちの大体の所得だと見てかかれというふうになさつていることに、根本的な問題があるのではないか、こう考えるが、いかがでございましょう。
  112. 北島武雄

    北島政府委員 私どもは、決して納税者はごまかすものと、初めから疑つておるわけではございません。ただ残念ながら、現状におきましては、納税者の記帳の能力等から申しまして、完全な記帳がなかなかできていないのが実情でございます。御承知の通り、青色申告者は、まだ申告納税者の半数程度でございます。その他の方々は、まだいわゆる白色申告でございまして、その方々の記帳内容につきましては、まことに残念ながら、正確にはできていない場合も相当あろうかと思うのであります。しかし、私どもは、決して初めから納税者がごまかすときめてかかって、この所得標準率表なり効率表なりによって出てきた結果を押しつけるということはございません。もちろん調査の段階におきまして、一般的に考えれば、こういう業種目については、ことしは大体こういうふうな傾向であるという調査は出ております。もちろんこれは、いろいろその人の具体的実情に応じて適用するわけでございまして、一律にこれを押しつけるということはいたさない。結局納税者個々の実情、その方のうちの所得がどの程度であるかということをほんとうに把握することが、必要であります。それの一つの手がかりとして、内部において表を使つておるわけでございます。その使用に際しましては、一律に流れることのないよう、十分に注意はいたしておるわけでございます。
  113. 横山利秋

    横山委員 あなたの御答弁を聞きますと、これを公表することによって、この標準率表、効率表よりも下の方の人には出させなければならぬかもしれない。しかし実際に上の方の間違つている者は、それならそこまで出せばいいのかということになって、ごまかされるおそれがある、そういうことに尽きると思う。ところが逆にあなたの言葉をもってすれば、これを公表することによって、その起るべき弊害というものは除去し得ないかということであります。私は先般来、経済が全く平穏になつたのであるから、税務署は説得と納得と合理主義をもってやつてもらいたい、権力的背景というものは、できる限りなくしてもらいたいということを、重ねて小委員会において主張して参りました。もしも、標準率表というものが標準であるから、効率表というものが標準であるから、これを一つの税務職員の参考としてやるんだという気持がほんとうに徹底しておるならば、納税者の納税申告を調査しあるいは検討することによって、これが一般的水準でございますから、お宅の方は間違つておるはずです、もっと所得があるはずですと言って、堂々たる態度で主張しても何ら差しつかえないのであります。その確信と自信があなたの方にないのではないか。自信がないから、帳面をポケットに隠しながら、いや違いますよ、違いますよと言って、相手に反証を出さしめる、自分の方で言わずに、相手に反証を出さしめることにきゆうきゆうとしておるのではないかと思うのであります。もしも標準率表、効率表というものがほんとうの標準で、モデルで、税務職員としての参考書であるならば、これを公表して何が悪いか。この際百尺竿頭一歩を進めて、これを公表して、そしてそれを上回るものについては、さらに堂々と摘出すべきでありましょう。下回るものについては、実情をさらに審査すベきでありましょう。こういうものがあるから、弊害がよけい出てくるのであります。二千円、三千円でこういうものを買つておる人もある。そういう人は、それによってまた別の恩典を受けるのであります。秘密にしておくものは、だれでもほしがるものであります。きようのこの新聞についても、あなたの方が秘密にしておくから、一生懸命スクープしたいという気持になるのでありましょう。同時に、これを公表すれば、不均衡というものは私はないと存じます。今後あなたの方がこの標準率表、効率表を秘密に存置すればするほど、この種の問題は続発する可能性があると、私は確信するわけであります。この際税務職員の誤まりがないようにするためにも、同時に納税者に対して堂々たる態度を堅持するためにも、この種の表は公表をして、これを基礎にして、税務署としても堂々と納税者と話し合いをする。納税者も、税務署も、それぞれの主張については、一歩も譲らないという態度は持たない、こういう説得、納得、合理主義によってこそ、ほんとうの協力が得られるものと私は存ずるわけであります。いかがでありますか。
  114. 北島武雄

    北島政府委員 元来から申しますれば、納税者の方に、ほんとうに税法に従つた正確な申告をしていただければ、こういうような標準率表というものは必要ないわけであります。税務執行の理想といたしましては、標準率表のないことでありましょう。しかし、遺憾ながら現在の段階におきましては、税務執行の権衡を保ち、納税者の負担の均衡を保つ等のために、所得推定の重要な参考資料として使用するのは、私はやむを得ないと思います。これを公表することの可否につきましては、また先生のただいまの御意見もございますので、これは、私は御意見として承わつておきたいと思います。私どもの内部におきましては、まだ一般的に、標準率表を公表すべきものではないと考えております。
  115. 横山利秋

    横山委員 それでは、今も税の執行に関する調査小委員長の淺香さんから、この問題は小委員会で一ぺんやろうというお話もございますので、それに譲りたいと思いますが、私は重ねて申し上げます。この種の問題は、今後ともやはり起る。従って、北島長官の長官就任のときにおっしゃった言葉を、私は新聞で拝見したのでありまするが、そのお考えであるとするならば、大体税務行政の中に秘密文書というものがあること自体が、おかしいのではないか、納税者と腹を割つて、そうして真実の中で納得のある納税をするとするならば、この際思いを新たにしてもらいたい。これは、政務次官にも一つ十分に考えていただきたいと思うわけであります。後日小委員会で明らかにいたしたい。  もう一つこれに関連してお伺いしたいのでありますが、先般あなたから労働行政についての御意見を承わりました。私は、今度の問題は、この者が国税局の職員組合の役員であるがゆえに、よけいにまた問題があるような気がしてならないのであります。この種の問題は、参考人から明らかにされたことでありますが、今までほかにもあったわけであります。ちようど国税局の組合役員なるがゆえにという感じがしてならない。しかも、検察庁といえども、無断でやつたのではないでありましょう。おそらくあなたの方に連絡があり、ないしはあなたの方から通報があった、そういうことであろうと思う。そうでなければ、検察庁としても、この種の規定はどうなっておつたか、国税局への照会もあったのではないかと考えるわけであります。今日職員の労働組合とあなたの方の関係については、先般私が申しましたように、非常にむずかしいデリケートな段階にあるわけであります。従いまして、私は特に組合役員だから何とかしてやつてくれという気持はありませんが、しかし、こういう段階であれば、特に組合役員に関連するものについては、慎重に手順を踏んでもらいたい、こういうことを私は要望いたしたいのであります。不幸にもこの問題はなお尾を引きそうであります。国税庁と労働組合の間に新しい問題をかもす結果になつた次第でございます。先般も申しましたように、この際あなたの手によって、国税局と労働組合との新しい窓口を開いて、円滑な団体交渉が行われることを特に望んでおつたやさきであるがゆえに、きわめて遺憾であると思います。この点につきまして、長官の御意見を承わりたいと思います。
  116. 北島武雄

    北島政府委員 岡田事務官がたまたま大阪国税労組の執行委員でありましたために、ただいまのような話があるわけであります。今回の問題は、組合問題とは全然別個でありまして、私も、この問題が新聞に出ましてから、さつそく大阪国税局よりいろいろ至急報告させたわけでございますが、今回の事件は、もちろんかねてから、所得標準表が部外に出ておるということにつきまして、国税局においてはやはり相当気を使つてつたようでありまして、あらかじめ一般的な問題として、警察関係に未然防止について依頼したことはあるようであります。しかし今回の事件につきまして、特に国税局の方からこれを依頼したというふうなことはございません。一般的な問題といたしまして大阪府警察本部におきまして探知いたしまして、逮捕に至つたものでございます。
  117. 横山利秋

    横山委員 それでは時間もありませんから、本問題は、追つて委員会におきまして根本的検討を続けたいと存じます。私の質問を終ります。
  118. 足鹿覺

    足鹿委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時四十二分散会