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1958-03-12 第28回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 阿左美廣治君 理事 内田 常雄君    理事 笹本 一雄君 理事 島村 一郎君    理事 長谷川四郎君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       大倉 三郎君    川野 芳滿君       菅  太郎君    神田  博君       齋藤 憲三君    櫻内 義雄君       篠田 弘作君    首藤 新八君       福田 篤泰君    南  好雄君       村上  勇君    横井 太郎君       山手 滿男君    佐竹 新市君       田中 武夫君    帆足  計君       水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官          (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官          (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十一日  発明考案者バッジ交付請願大野市郎君紹  介)(第一八〇五号)  小売商業特別措置法制定反対に関する請願外五  件(小山亮紹介)(第一八〇七号)  同外十三件(下平正一紹介)(第一八○八  号)  同(横路節雄紹介)(第一八〇九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  企業合理化促進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五九号)  日本貿易振興会法案内閣提出第八八号)  合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇六号)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審議を進めます。  質疑に入ります。通告があります。これを許します。笹本一雄君。
  3. 笹本一雄

    笹本委員 私は合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案について、二、三質問をいたしたいと思うのであります。  まず第一には、日本合成ゴム株式会社は、昨年の十二月設立されたのでありますが、その設立の経緯並びに最近の状況はどうなっているか、これを簡単にまず説明を伺いたいと思います。
  4. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 合成ゴム育成特別措置法が、昨年の通常国会で制定されましてから、政府としましては、その会社設立いろいろ力を尽して参ったのであります。昨年の七月上旬に、大体今後の会社設立及び運営の中心人物になるのであろうと思われるような方に対して、通産大臣から委嘱をいたし、設立委員といいますか、そういうことで、お仕事を始めていただくことになったのでありますが、その後、事務的な、あるいは技術的な検討をいろいろやりまして、会社事業計画あるいは資金計画というものの研究に、相当時間を費したのであります。また、一方この会社は、中小ゴム業者出資も広範囲に集めようという意図がありましたので、そういう出資の勧誘もやっていったのでございますが、大体事業計画についてのめどがつきましたのが十月の下旬でございます。そこで、第一回の発起人会を開催いたしまして、その事業計画の公式の審議をやることにしたのでありますが、その後、これが大体発起人会承認されましたので、法律に基きまして、事業計画承認申請政府にこの会社から出しまして、それが認められたのが十一月の中旬でございました。ここで、現在の日本合成ゴム会社合成ゴム事業特別措置法による会社ということになったわけでございます。このようにいたしまして、十二月の十日に創立総会を開催して、会社が正式にできたのでございます。  その後、会社としましては、まず工場敷地の選定に努力をするとともに、技術提携の相手方の発見及びそれとの交渉に全力を尽して参ったのでありますが、これもほぼ見通しがつきました。技術提携の契約は、三社とやることになっておりますが、その認可申請書を二月の二十日ごろに政府に提出しました。これは三月中に認可される見込みであります。また、一方工場敷地も、先日、四日市のある地点に決定いたしました。  このようなわけで、今後は機械設計あるいは用地の地ならし、整地等に作業が進んでいくわけでございますが、大体六月、七月ごろに、その設計に基きまして機械の発注が行われまして、来年の九月にその機械据付完了し、十月から操業が開始されるというふうに考えております。  大体、資金につきましても、全体の建設資金は百五十億円程度でございますが、このうち二十五億円は出資でまかなう。これは来年度中に調達完了すると思います。そのほかに開銀から別に融資をしていただくことになっていますが、これが二十五億円程度というわけです。この百五十億円の建設費のおよそ半分の七十億円を、昭和三十三年度において支出することにいたしております。従って、その調達先としては、先ほど申しました出資の二十五億円、開銀融資の二十五億円から三十億円、残りの二十五億円から三十億円程度は市中から融資を受けるという計画にして進んでおるわけでございまして、発足当時、いろいろ非常に広範に業界に呼びかけたりした関係上、少し出発点ではおくれた感じがいたしましたが、現在では順調に進んでおりますので、今後ともこの育成についてはお力添えをいただきたいと思います。
  5. 笹本一雄

    笹本委員 次に伺いたいのは、今度の法律題名変更についてであります。現行法趣旨は、合成ゴム製造する事業者のうち、その事業計画について通商産業大臣承認を受けた会社に対して、日本開発銀行出資することになっているのでありまして、その法文の建前では、対象となるべき会社は、複数制がとられているのでありますけれども、現実には、この法律によって日本合成ゴム会社一社が設立承認され、このことに伴って、題名も「合成ゴム製造事業特別措置法」を「日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律」と改めようとするのであります。当初、複数会社制をとっていながら、直ちに単独会社制に切りかえることは、業界において何らの影響を与えないものかどうか。本法制定の当時、業界においていろいろ問題がありまして、法案提出までにはかなり難航したと思うのでありますが、今回の改正案を提出することになって、同様な問題、つまり一会社にのみ育成措置を講ずることを明確に打ち出すことは、他の合成ゴム製造事業会社に対して、片手落ちな処置にならないかどうか。日本合成ゴム株式会社以外の合成ゴム製造事業会社に対しては、他の方法によっていろいろと育成措置はとられていると思いますが、どのような考慮を払われているのか、その点をあわせて御答弁願いたいと思います。
  6. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 現在の合成ゴム製造事業特別措置法の御審議を願いましたときに、今後の日本ゴム需給、ひいては合成ゴム需給ということについて、いろいろ御検討願ったわけでございます。合成ゴム製造は、いわゆる装置工業と申しますか、近代的な技術を用いて製造するものでありますので、非常に設備資金を食うわけでありまして、従って、小規模のものをぽつぽつ作るということでは、国際水準に達した製品ができないということになるわけでございます。ところで、今後数年先の日本合成ゴム需要は、おおむね四万五千トン——これは普通の合成ゴムでありますが、これが四万五千トン程度ということになっておりますが、これは一社でやる程度の数量でございますので、そういう通常天然ゴムとほぼ同様の性質を持っております合成ゴムは、大体一社でやるという結論が技術的に出ておったわけでございます。イギリスでもドイツでもイタリアでも、需要量がその程度の国では、大体一社で、国策会社的なものを作りましてやらしておるのでございます。このようなわけでございまして、法律建前は、一応事業計画承認を受けた会社はどの会社も、何社でも、開銀出資を受けられるという建前になっておりますが、現実の運用の、問題解決方法としましては、一社がその事業計画承認を受け、開銀出資を受けるということが予想されていたのでございます。  ただ、以上申し上げましたのは、天然ゴムとほぼ同様の性質を有する特殊の合成ゴムについての話でありますが、スチレンを非常にたくさん含有いたしましたゴム、あるいはアクリル系の成分を多分に含んだもの、そういうものにつきましては、少量の生産単位でも、一応企業化できるというので、別に企業体政府としては認め、その技術導入について認可を与える別の会社が、現在育成されつつあるわけでございます。しかしながら、両者の分野は、それぞれ別のものでございますので、両者相摩擦を起すことなく現在進んでおります。将来も、そのようになると存じております。  大体そのようなわけでございまして、天然ゴムと同様の性質を持つ合成ゴムにつきましては、一社で当分やっていけるというので、日本合成ゴム株式会社というものを、合成ゴム製造事業助成法律対象として限定してもよろしい段階であるというふうに判断をいたしましたので、法律題名も変えまして、こういう特殊な一社を掲げるということにいたしたのでございます。
  7. 笹本一雄

    笹本委員 そうすると、問題はないわけですね。
  8. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 さようでございます。
  9. 笹本一雄

    笹本委員 法律制定後一年たたないのに、このような題名変更を行うのであったならば、当初から、はっきりと単独会社法として明確にしておいた方が、よかったのではないか、そういうふうに感ずるのであります。何かすっきりしないようなものを感ずるのでありますが、それはさておきまして、すでに設立された会社に対して、特殊会社法を制定してその対象とすることは、今までにあまり聞いておらないのでありますが、こういう例がほかにもありましたら、どうかそれを一つ聞かしてもらいたい。
  10. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 現在の法律ではその助成対象一つに限定していない、いわゆる先生の今おっしゃいます複数制の形をとっておるのでございますが、これはいわゆる特殊会社、たとえば電源開発株式会社とか、あるいは石油資源開発株式会社とか、そういうふうな特殊会社としての合成ゴム会社育成していこうという考えは、当初はなかったわけであります。開銀出資という形をとりましたので、いわゆる百パーセントの特殊会社ではない形で、合成ゴムについての製造業者育成していこうという考えがあったわけでございます。そのほか、当時は予算関係でも、実は本年度の予算が一応きまった後にこの法律が出たというような格好で、予算では政府出資という道は、もうすでに開かれていなかったものでございます。そういうようなわけで、いわゆる特殊会社の形をとった合成ゴム会社を、初めからこの法律で打ち出すということはいたさなかったのでございます。しかしながら、その後、いろいろ各方面の意見によりまして、出発はそれでも差しつかえはないが、しかし、近いうちにこれを政府出資の形に切りかえなければならないというふうなことがいわれまして、それももっともだと思いまして、実は現在の法律付則に、そういう趣旨のことを書いてあるわけでございます。この付則に基きまして今回の改正法案を出し、御審議を願うことにいたしたのでございますが、初めは一応民間会社のような形で出発して、それが途中で政府出資の形に切りかわってくるという実例は、非常に例が少いのでございます。ただ私たち承知いたしておりまするのは、昭和十二年に制定されまして、現在なお効力を持っておりまする日南産業株式会社に関する法令というものがありますが、それらにおいては、純然たる民間会社と特契しまして、これに政府出資を行なっております。このような法令もありますので、過去の法律によって、政府の監督を受けているような会社を十分運用して、これを政府出資対象とすることも、実行論としてはおかしくないというふうに考えまして、今回のような改正案を作ったような次第でございます。実例がないというわけでもございませんので、よろしくお認めを願いたいと存じます。
  11. 笹本一雄

    笹本委員 次に、政府出資の切りかえ方法についてであります。今お話にありましたように、日本開発銀行は現在二億五千万円の出資を行なっておるわけでありますが、提案理由説明によりますと、日本開発銀行が十億円全部の出資完了してから、政府出資に切りかえることになっております。その開銀出資完了の時期は、いつごろの予定であるか。また、政府昭和三十三年度の予算案によりますと、産業投資特別会計に十億円を計上しておるのであります。そこで、開銀出資分の十億円を買い取る措置が講じられているのでありますが、何ゆえに予算案に計上しなかったか。直ちに政府出資に切りかえず、開銀出資完了を待ってから切りかえるという回りくどいようなやり方は、どうしてこういうふうなことをとったか。開銀が三十三年度に出資完了するに必要な資金は、どこに計上してあるのか。私の了解によれば、開銀手持ち資金によって出資完了し、その後政府予算による出資に切りかえることになると、その間は政府資金のたな上げと同じ結果になるかと思います。開銀出資完了が今年度末にでもなれば、他に使えるはずの開銀資金が、使えないことになるのではないかと思うのであります。その点について、そういう心配があるかないか、御意見を聞きたい。
  12. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 最初に御質問のありました、開銀出資政府出資に切りかえるのは、いつの時期かということでございますが、これは今度の改正案では、一応来年度中のある時期を政令でもってきめるという形になっておりますが、実際の問題といたしましては、開銀から大体十億の出資がなされてしまった時期というふうに考えております。開銀出資が終了いたしますのは、民間出資進行、あるいは工場建設進行ということによってきまるのでございますが、民間出資進行はまた一般の金融情勢によっても、相当大きい影響を受けるのでありまして、簡単に予断はできませんが、われわれの希望といたしましては一応本年の十二月ごろまでに政府出資に切りかえをいたしたいというふうに考えておるのでございます。十二月までに開銀出資完了して、来年の一月中ぐらいには、完全に政府出資になっているようにいたしたいという希望を持っております。  それから次に、開銀出資の十億を全部やってから後に、政府出資に切りかえるというのは、まどろこしいのではないかというお尋ねでございましたが、現在の予算の形といたしましては、産投会計投資先としまして開発銀行というものをあげまして、そこに十億円が計上され、これは開銀出資政府出資に切りかえるためのものだという説明がついております。そういう形式をとっておりますから、直ちに開銀出資を全部終って後に政府出資に切りかえなければならないということは、言い切れないかと思います。これは形式的な説明でありますが、実質的な説明といたしましては、一体この改正法が施行されるまでに、民間出資、ひいては開銀出資がどの程度まで終了しておるであろうかということが的確につかめないことが、一番実質的な原因だと思います。その改正法施行までに、開銀出資がどのくらい行われておるだろうかということがわからないために、政府出資をどのくらいやらなければならぬであろうかということが、はっきり予測できないということで、予算計上技術としても、先ほど申し上げましたような形式になっていると思います。  それから、もう一つの実質的な事情といたしましては、やはり政府資金出資をいたすからには相当厳重な審査をしなければならぬ。現在、開銀としても、合成ゴム会社については、出資の適否につきまして、相当慎重な審査をやって参っております。これが、もし政府出資にかわりますと、政府機関でそういう審査をしなければならないということで、非常に次の出資までに手間がかかるということがある。合成ゴム会社出資は、迅速に終了いたしたいと考えております建前からいいましても、開銀が続けて出資する方が、円滑に出資ができて望ましいというふうに考えて、現在のような形をとった次第であります。
  13. 笹本一雄

    笹本委員 今の説明を聞きますと、広くゴム業界からも民間出資をもってやり、また十二月ごろまでに出資完了ができるというようなお話でありました。ゴム業界は、非常に不況のようでありますが、これに対して、予定通り民間出資はできるかというような点について、見通しはいかがでありますか。
  14. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 これは金融界全般工業界全般の今後の推移についての見通しになってくると思うのでありまして、なかなかむずかしい問題でありますが、これからは、だんだん金融も緩和されてくる方向に向うものとわれわれは考えております。しかしながら、現在すぐに、年内に必ずこの出資完了でき、ゴム業界が十分その資金を持ち得るに至るであろうということを断言することは、尚早であろうと思います。われわれとしては、そういう希望が実現できるように、できるだけ業界を援助し、努力をいたしたいというように考えております。
  15. 笹本一雄

    笹本委員 これは今のお話で、敷地もきまった。特許の問題も話し合いがついた。それで工事にかかるわけでありますが、それから製品が出るのは、大よそいつ時分見通しでありますか。
  16. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 来年の九月に機械設備据付完了して、十月から運転を開始するという考え方でおります。設備建設については、これは外国技術導入をいたすわけでありますが、そのときには、製品の保証も同時に取り付けておりますので、運転が開始されますと、短期間に所定のものが出てくるというふうに私たち考えております。
  17. 笹本一雄

    笹本委員 この合成ゴムの問題は数年前から、民間においても、また政府においても、これに対して関心を持ってやってきたのでありますが、ようやく昨年この合成ゴム製造に踏み切ったわけです。ところが、今、ゴム業界の方は、あまり景気がよくないというようなことで、今、局長お話では、民間投資の上においても、それを予定通りやらせるつもりだと言っておりますが、なかなか今の状態ではむずかしいのじゃないかと思われるのであります。しかし、この合成ゴムというものは、世界各国でもやっておりまして、せっかく政府がここまで力を入れて踏み切ったのでありますから、これに対して、政府は強力な育成をして、そして一日も早くこの製品の出るように、特にこれを助長するように留意されることを要望しまして、私の質問を終ります。
  18. 小平久雄

  19. 松平忠久

    松平委員 合成ゴムに関する法律改正案につきまして、関連しまして一、二点お伺いしたいと思うのです。  大体天然ゴム合成ゴムとの関係について、まずお伺いしたいのですが、世界的傾向として、天然ゴムが漸次後退して、合成ゴムの進出を今日まで見てきておるわけであります。そこで、各国事情にもよるけれども、ドイツのごとき、あるいはアメリカもそうでありますが、合成ゴムが比較的多く使用されておるような行き方をとっておる国と、そうでなく、天然ゴム育成しなくてはならぬ、保護を与えなければならぬという立場にある国とは、おのずから、どこに調整点を置くかということが、違うだろうと思うのです。日本としては、将来、東南アジア貿易というものも考慮に入れながら、なおかつ、日本における合成ゴムの伸張をはかっていかなければならぬ。こういうふうな立場にありますので、近い将来におきまして、どういうところに目標を置いていくかということが、この法律を作るとき並びに今後これを運営していくときの、一つの目安になろうと思うのであります。御承知のように、東南アジア各国におきましてはこのゴムの値下りということが、非常に購買力を減らすということになるので、時と場合によっては、日本はそれらの国のゴムを買ってやらなくてはならぬという立場に立たされることがあるのであります。そこで、政府としては、一体どの程度のこの合成ゴムの発達ということを予想しておられるのかということを、まず最初に伺っておきたいと思います。
  20. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 合成ゴムが一番広範に使われておりますのはアメリカでございまして、ここでは、ゴムの全体の消費量のうちの六割くらいが合成ゴムであります。そのほかの世界文明国傾向としては、大体三割程度が、ゴム全体の需要の中に占める割合であります。日本の場合も、現在通産省で想定いたしております合成ゴム需要の今後の伸びといたしましては昭和三十二年度は、全体のゴム需要量が十四万トンばかりでございますが、そのうち合成ゴムが一万四千トン程度で、大体一割ちょっと欠ける程度ですが、昭和三十七年になりますと、全体のゴム需要量が、これは概略の数字でありますが二十万トンで、これに対しまして六万六千トン程度需要があると見ております。すなわち大体三割ちょっとこえる程度の比率ということになるのでありますが、この程度合成ゴムの使用をいたさないと、世界工業水準からおくれをとるということになろうかと考えております。ちょうど昭和三十七年に、日本合成ゴム生産量が、われわれが第一次の目標といたしておりまする四万五千トンになるというふうに考えております。この四万五千トンと申しましたのは、合成ゴムのきわめて普通の品質を持っているものでございますが、いわゆる特殊合成ゴムは、そのほかに二万トンばかりあるわけでございます。合成ゴム会社で今後作らせていこうといたしておりまする普通品質合成コムにつきましては、昭和三十七年におきまして四万五千トン程度のものを作らせようというふうに考えておるのでございます。
  21. 松平忠久

    松平委員 通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、これは日本東南アジア貿易に関連してくると思います。私は、現在かなりゴム中共へ入っている、こういうふうに思っているわけでありまして、従って、東南アジアが、ゴムもしくは米というようなものを通じて、将来中共経済と密接になっていくような傾向があると思うのです。そこで、日本としては、ゴムのほかに、その他の物資にいたしまして、東南アジアからの買付が減ってくるということになると、貿易は伸びないわけであって、そこでゴムも減ってくる、米のようなものも減ってくると思います。そういたしますと、将来東南アジアからの輸入物資というものについての考え方を、どういうところに置いていかれるのか。これは、もちろん経済開発というようなものとも関連してくると思うのですが、その点について、通産当局一つの御構想というものがあるかどうか、これをあわせてこの機会に伺っておきたいと思います。
  22. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ゴムにつきましては、中共には実はあまり出ておらぬのであります。しかし、将来を考えますと、これはやらなければならぬと思います。ただ合成ゴムは、天然ゴムの足らぬところを補う、ただいまの現状におきましては、そういう考え方でいっておるわけです。また、今後の東南アジア中近東その他の貿易考えますと、お話しの通り、農産物の輸入というものが、だんだん減ってくると思います。これはやはり鉄鉱石なり、あるいは石油資源開発ということをやって、鉱物資源を極力入れるという考え方でいかなければならぬというふうに考えておりまして、石油資源開発ということは、これは御承知のようにインドネシア等におきましても、今後そういう点で考えていかなければならぬと思います。中近東におきましても、鉱物資源開発、インドにつきましても、同様な考え方を持っております。
  23. 松平忠久

    松平委員 次に、具体的な問題について、法律案についてお伺いしたいと思うのですが、昨年この法律案を提案されたときの提案理由の中に、政府の持ち株は、数年後には採算ベースが合う段階になる。数年後にそれを予定しておって、数年後にはこの株券を民間に放出する、こういうようなことを、提案理由の中に説明されておるわけであります。そこで、数年後にそれを予定しておるというのでありますけれども、先ほどもこの点については若干触れたようですが、今の政府考え方は、数年後になると、これは採算がとれて、果して民間政府の株を処分するということになるのかどうか。今のゴム見通しから考えて、その点は一体どういうふうに考えておるか。去年の実情と、今年はかなり違っているように思うのですが、二、三年後の模様を、どういう見通しを持っておられるのか、お伺いしたい。
  24. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 合成ゴム会社の今後の営業成績、そういうものについて考えてみますと、基本的な事実としましては、先ほどもお話がございましたが、天然ゴムは、今後だんだん足りなくなるということで、合成ゴム需要が落ちるということは、まずあるまいという前提に立って考えております。そこで、操業開始後といいますから、来年の暮ぐらいですか、操業開始後四年目くらいから若干の黒字に転ずる、そして五年目から配当が可能である、こういうふうな計算に一応なっております。つまり、この会社が年間四万五千トンの生産を行うようになりますと、黒字になるわけであります。そして黒字の第一年度は、従来の繰り越しの赤字を整理する。五年目から配当開始ということになるわけでございますから、おおむね昭和三十八年の暮れから三十九年ごろにかけまして、大体配当が可能であろうと存じます。そういたしますと、この会社の株券は相当な市価が出ますので、そのときに政府がこの株を処分するということになろうかと存じます。
  25. 松平忠久

    松平委員 大体操業後四年という目標を立てておられるようでありますが、今の御答弁にもありましたけれども、天然ゴムを補うという性格のものである、こういうことであったわけですが、今の天然ゴムの実情は、どういうような実情にあるのか。すなわち、アメリカのような大口消費国が、すでに天然ゴムから切りかえて、六割も合成ゴムになっておるというような実情であるためもありましょうと思うのですが、ゴムが非常に値下りをしてきている。一時キログラム当り五百円くらいしたものが、最近は二百二十円というような工合に、非常に低落の傾向があるということになりますと、天然ゴムを補うというために作ったといわれるけれども、そうではなくて、むしろ天然ゴムと競争しているような格好で、天然ゴムを圧迫しているのだというふうにも見えるわけですが、今のお考えだと、非常に楽観的なように私には聞える。聞くところによると、大体一キログラム二百十円とか二百五円とかいうことを、合成ゴムについては一応基準として予定されておるようだけれども、今の状態でいくと、キログラム当り二百二十円ということになると、これは採算上そんなにうまくいくかどうか。四年後に黒字になるというようなことになるのかどうか。私は天然ゴムの現在の実情からいうと、その楽観論は、少し理由に乏しい、こういうふうに思うのですが、この点は、一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  26. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 私の方も、最近の天然ゴムの価格の推移をよく見ております。今お話のありましたような五百円をこえるというのはこれは非常に高い時代であろうかと存じます。大体昭和三十一年から三十二年の平均的な価格をとってみますと、やはりキログラム当り二百三十円から二百三十五円程度のものでございます。一方合成ゴムの方も、アメリカからのCIF価格をとってみますと、二百十四円から二百十六円とかいう、ちょっと二百二十円に欠けておるところでございますが、これが工場着の価格になりますと、やはり二百二十円をこえるという状態になろうと思います。従いまして、現在われわれが合成ゴム会社で作らした製品を、一応工場の原価で、これは営業費も入っておりますが、大体キログラム二百二十円というふうに想定して、消費者渡し価格が二百二十五円というふうに想定いたしておりますが、そういう計算で、ただいま申し上げましたような経理の黒字になる時期が来ると申し上げたのでございます。従ってキログラム当り大体二百二十円前後で想定しておきますれば、今後、海外のゴムの市場価格の変動、あるいは外国の合成ゴム価格の変動が若干ありましても、大体それには耐えていけるというふうに考えております。
  27. 松平忠久

    松平委員 今までのゴムは、かなり軍需物資的な性格があったと思うのです。従って、相場も急激な変動があったというのは過去の実情でありますが、今の世界的な傾向からいうと、私はそういった軍需物資的な傾向というものは少くなると思う。従って、非常に大きな変動というものはないと思います。  それから、もう一つ考えられることは、そういう世界的な大きな変動がないということのほかに、東南アジア開発ということを考えてみると、やはりあそこの開発をするには、ゴムか何かで外貨を獲得しなければならぬということもありまして、結局、合成ゴムに対抗するために、むしろ値段をだんだん下げてくる、つまり、二百二十円を二百円台にまでしていくという可能性はないとはいえない。私はそういうような国が出てきはせぬか。ことに独立をしましたマラヤにしましても、あるいはその他のいわゆる新興国家にしても、自分の国の経済開発考えていって、それの工業化ということを進めていくためには、どうしても外貨を獲得しなければならぬので、しかも、その傾向が、何と申しますか、やや社会主義国家的な傾向というものも帯びてきていると思うのです、セイロンにいたしましても……。そういたしますと、資本主義経済の今までの実情とは、やや違った形が行われるのではないか。つまり、合成ゴムと競争するために、国家的に値段を下げるような傾向がないでもない、こういうふうに思うのです。従って、この会社がぎりぎりの線、二百円台というようなことに、今想定をしておりましても、果してそれでいいかどうか。百五十億というような大きな資本を投じてやる事業でありますが、これを投じまして、結局天然ゴムとの間に非常な競争が起るということになってきて、そうして操業四年後に、政府予定されておるような、民間に株を放出できるような、そういう配当ができるというような考え方は、私は少し楽観に過ぎるのじゃないか、こう思うのです。これは国家的な事業でありますから、私はこれに反対しているのじゃありませんが、やはりもう少し力を入れてやらなければならぬような時代が、長く続きはせぬかというふうに私は思っておるので、今のような質問をしたわけです。それに対する見解を承わりまして、この質問を終りたいと思います。
  28. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 お話のように、ゴムの生産地になっております東南アジアが、外貨獲得のためにゴムの増産に努力をするだろうという御推測は、まことにごもっともであろうと思います。しかしながら、一方私どもの方で調査いたしたところによりますと、世界ゴム研究会——これは世界各国が協力して調査、研究いたしておるものでありますが、そこの調査によりますと、一九五六年から一九六〇年の五年の間に、世界天然ゴム生産量の増加は、わずかに二・二%ということになっております。これは何が原因しておるのだろう、私どもの方でも、完全な答えは出ませんが、しかし、考えまするに、これは当地の政情不安で、なかなか資本の投下が行われないのじゃないかということが考えられるのであります。そうして、もしかりに、そういう事情が解消いたしまして、外国資本がそこに入って参って、大いに植林をやりましたところで、それが製品を出すようになるには、数年かかる。何年か先のことになるということで、ここ当分は、世界における天然ゴムの増産はあまり期待できない。むしろ、国が援助をいたしまして合成ゴムを国産しようというのは、天然ゴムの供給不足のために、日本の工業界が非常に困る時期がくるのではないかという心配からいたしたのでございますけれども、やはりそういうふうな前提的な事情は、当分は変らないのじゃないかというふうに考えております。しかしながら、御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、われわれとしても、そういう点についての研究と対策を常に怠らないように、あまり楽観的な考えを持っていたのではいけないというふうに考えております。
  29. 小平久雄

    小平委員長 これにて質疑を終局いたしました。  引き続き討論に入るわけでありますが、別に討論もないようでありますので、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。
  30. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  31. 小平久雄

    小平委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  32. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。     —————————————
  33. 小平久雄

    小平委員長 次に、企業合理化促進法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案については、他に質疑はないものと認めます。これにて質疑は終局いたしました。  引き続き討論に入るわけでありますが、別に討論もないようでありますので、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
  34. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、企業合理化促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  35. 小平久雄

    小平委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  36. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  37. 小平久雄

    小平委員長 次に、日本貿易振興会法案を議題とし、審査を進めます。  質疑を継続いたします。帆足計君。
  38. 帆足計

    ○帆足委員 貿易振興のことと連関いたしまして、数日前に中国との第四次協定の使節が帰って参りましたので、二、三商工大臣の御見解をただしておきたいと思います。  第四次日中貿易協定の中で、政治問題になっております点は、通商代表部の待遇の問題等でございますから、これにつきましては、政府側の善処を期待いたしまして、深くはお尋ねいたしませんが、当委員会といたしましての関心事は、中国の第二次五カ年計画に対応する日本側の、特に輸入計画の問題であろうと思います。先日、関係業界の代表を当委員会に招致いたしまして、参考人として、いろいろ有益な業界の実情を伺ったのですが、ちょうどそのときに、大臣は御在席でなかったと思いますから、重ねてお尋ねいたしますが、中国と日本との貿易の隘路は、輸出の側で今残っておりますのは、何といってもココムの解除の問題だと思うのです。私は、この問題につきまして、以前チンコムの解除のときに、もうすでに後手になっておりまして、そして日本より関係の薄い英国が解除して後にわれわれが動いた。指紋問題では、一番強硬であったアメリカの国務省の方が先に解決してしまって、そしてまたそのあとからついていく。まことに謙譲の美徳にも、ほどがあると思うのです。アメリカの外交委員会の論議を見ましても、ココムというものは、あれは十年前の国際情勢が生んだものであって、今日、原料が豊富で、重工業の建設は鉄鋼五千万トンに近づいておるというソ連の生産力、技術においても、人工衛星を生み出すような状況になっておる国に対して、そういう幼稚な経済封鎖の対策でいこうということは、結局自縄自縛で、アメリカのように原料の豊富な自給自足のできる国はいいですけれども、日本のように原料の乏しい国が、そういうおつき合いをして、一体持ちこたえられるものかどうか。最近、いよいよ景気が行き詰まって、これが不景気の始まりだといわれて、みんな心配しているわけです。こういう重要なときに、他国の政治的おつき合いをして、経済的実利まで捨ててしまうということについては、私は、やがて総選挙になって、国民の声を前にして討論してみれば、国民の意思がどちらにあるかということは、おのずから明らかになると思うのですが、通産大臣は、このココム解除について、どういう心境をお持ちになっておられるか、まずこれを伺いたいと思います。
  39. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ココムにつきましては、ただいまお話しの通りに、最近の情勢は非常に変っております。従って、われわれとしましても、ココムの解除につきましては、積極的にいくべきであるというふうに考えておりまして、ただいまいろいろ検討し、先ほどのお話のように、おくればせにやるという考え方でなしに、もう少し積極的にやっていきたいと考えております。
  40. 帆足計

    ○帆足委員 天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず、というのは、国内だけでなくて、国際的にも適用し得ると思う。保守党の諸兄が、アメリカと政治的に提携しておることを、別にわれわれが、かれこれ言うべき筋でないかもしれませんけれども、今の時代には、武力の小さい国でも、困難の多い国でも、皆平等に発言して、そして平等の資格で事を行うというのが、今日の世界の風潮だと思うのです。小さなエジプトが、ああしてがんばっておるのも、インドが、あれほど大きな発言力を持っておるのも、それぞれ国としての誇りと見識を持って事を行なっておることからきておると思いますから、ただいまの大臣の御答弁のように、自分の国の利益を第一に考えて、そして政府の見識において事を進めていくことを、われわれは、党派を離れて期待したいわけであります。  ココム解除のために、積極的に努力をされると言われましたが、それでは一体どういう手順でその努力を進めておられるか、その御努力の一端を、もう少し示していただきたい。
  41. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま申し上げましたように、実情として、現在、今までのココムは意味をなさぬというふうに考えておりますので、各品目について、検討をしておるのであります。これはココムの会議等におきまして、積極的に発言をしていく、こういうことであります。
  42. 帆足計

    ○帆足委員 それから、輸出の方はココム制限を取りはずせば、あとは日本商品が概して国際的に割高であるということが、一つの障害になっておる。これは日本の石炭事情と、それから鉄鋼事情からきている点も大きいと思うのです。原料の輸入関係を、もっと合理化せねばなりませんし、そのための努力をせねばならぬのですが、当面は、大量の鋼材を輸出するかわりに、鉄鉱石、粘結炭を中国から輸入しようということで、近く中国から経済使節が参りまして、この問題の細目の具体化について話し合う、こういうことになっておるそうです。そこで、私どもの考えでは、中国貿易で、もちろんすべてが解決することでもありませんし、また中国貿易も、日本国民の忍耐強い努力によって、漸次切り開いていかねばならぬ問題でありますから、問題の取り扱いを、きわめて実際的にいたさねばならぬことは当然ですけれども、もっと話し合うならば、よい品質の原料を、お互いの距離が近いのですから、お互いに運賃の半分ずつを利益するといたしましても、割安の原料を安定した形で確保することができるのですから、中国側が、従来のような灰分の多い悪い炭でなくて、アメリカ炭と同一品質のものを掘り、かつ選炭して持ってくる。そしてその値段も、国際的に見て割安であるということになれば、通産省当局は、中国からの粘結炭、鉄鉱石に、ある程度原料輸入を切りかえる御準備がもうできておるかどうか。これは見返りとして、鋼材と機械類が輸出される、原則としてバーターですから、これでドルやポンドは要らなくなるわけです。そして日本の余剰設備でできた品物を輸出して、それによって原料をあがなうことができるのですから、とにかく問題はないわけだと思いますが、通産大臣は、これに対してどういう見通しと、熱意を持っておられるか、伺いたい。
  43. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は鉄鋼使節団につきましては、われわれとしては、輸出もさることながら、輸入努力をしなければ、将来開けないということを勧奨して行ってもらったわけです。それにつきましては、御承知のように、良質の粘結炭なり石炭を入れるというような計画になっております。ただ、遺憾ながら、鉄鉱石なり石炭だけでは十分でない。ただいまの計画では、率直に申し上げまして、まだ少量であります。大豆等によって補っていかねばならぬ、こういう計画になっております。その点につきまして、われわれは、石炭なり鉄鉱石につきましては、コマーシャル・べースに乗る限りにおいては、極力入れるというふうに考えておりますし、大豆につきましても同様な考えで、輸出を促進するために、輸入も促進するという考え方で進んでおります。
  44. 帆足計

    ○帆足委員 従来、石炭などは、確かに中国の石炭の品質が悪くもあったし、また相互に技術的な話し合いとか、安定した取引を結ぶような条件も備わっていなかったと思うのです。従いまして、今後とも、お互いに経済使節、技術使節を交換して、十分に技術上の改善や品質についても、話し合いをすれば、現状より、はるかに改善されていく見通しがあることは明らかです。確かに、中国側も隣の国ですから、非常に有利である。一部の人は、たとえば中国から大豆が入れば、おとうふの大きささが倍になるというような演説をしておって、私は、これはちょっと言い過ぎでなかろうかと思って聞いておりましたが、そのくらいの期待を持っておりましたのに、中国から出すものが、案外値が高い、品質も思うほどでないというようなことで、多少幻滅の悲哀を感じたという向きもあったと思うのです。しかし、これらのことは、やはり忍耐強く話し合って進み、よい条件を戦いとるべきであって、そのために、相互の理解がもっと深まれば、日本側の希望も、立地条件が有利なことですから、次第に達せられると思うのです。大豆なども、品質換算して、アメリカの大豆、また国際的な大豆市場の値段よりも、距離が近いだけ有利である。明らかに品質換算して値段も有利であるということになれば——もちろん、一挙に大量のものを市場転換するということは、こちらの事情もあるし、また見返り貿易は、相互の問題ですから、他の国との関係もありますし、また中国の供給能力の問題もありますから、一挙に非常識な案を立てることはできませんけれども、値段が折り合い、そして見返り物資とうまくマッチし、品質もよいということになれば、三十万トンや四十万トンまでくらい、すなわち、日本輸入している大豆の半分くらいまでは、中国市場に切りかえるというようなお考えはありますでしょうか。
  45. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまのお話につきましては、全く同感でありまして、そういうような考え方で進んでおります。
  46. 帆足計

    ○帆足委員 通産大臣から、積極的な御決意のほどを承わって、まことに意を強うする次第でありますが、そうなりますと、今度はまた輸出に戻りまして、ココムを解除することと並んで、どうしても長期にわたる貿易ということになれば、これは単に中国だけでなくて、東南アジア諸国においても、一般的傾向ですが、技術を輸出し、開発に協力し、またプラント輸出に協力する、こういう形になってくると思うのです。プラント輸出をするとなれば、どうしても延べ払いにいたさねばならぬ。こういうことのために、日本銀行から、また適当な機関から信用を造出するということは、私はインフレーションにはならないと思うのです。インフレというものが、国内の通貨の増発で起るときは、それは戦争とか飢饉とか非常事態で起るのであって、通常国民生活の向上とか、建設的な方面の金融の増加などでは、悪性インフレは原則として起らないのではないか。国民生活が向上したからといって、てんぷらのインフレが起ったり、すしのインフレが起ったりということは、よほどの凶作か、飢饉か、または戦時状況でない限り起らない。そうすると、今日インフレの心配になる点は、何といっても、やはり国際収支の面だけだろうと思うのです。国際収支が逼迫して、原料の輸入を制限し、原料輸入に割当制をしかねばならぬということになると、どうしてもこれは日本経済を養っている基礎原料の値段が高くなってくるわけです。従って、インフレと戦って国民生活の安定を得るということは、結局、貿易の振興をはかって原料の輸入を楽にする。そしてよい原料を安く安定した形で確保する。これが私はインフレとの戦いの今日の眼目ではないかと思うのです。そうなりますと、どうしても輸出を奨励して、そうして原料を確保する。そのために長期の契約、またはプラント輸出、開発計画などに伴う輸出信用の増大ということ、延べ払いということは、財政上、またインフレ対策上からは、何ら憂慮すべきことはないということは、理論的にも実際的にも言い切れることでないかと思うのです。従って、もうこの辺でぼつぼつ中国市場に対する信用の供与、延べ払いの活用ということは、準備を始めてしかるべきであって、そのためには、たとえば輸出入銀行の資金貸し出しを、中国その他の市場にも適用してもらえばよいと思うのですが、先日、大蔵大臣の答弁では、まだそういうことは時期尚早であるというような御答弁があったのです。これは、大蔵省の認識不足であると私は思いますが、通産大臣は、それをどういうようにお考えになりますか。
  47. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 長期安定した輸出入を考えていくということは、もちろん原則として同感であります。従って、また、民間のべースにおきまして長期契約をやられることにつきましても、異存はないのであります。ただ問題は債権確保の手段という問題です。何らかのそういう保証があれば、私は延べ払いも考えていっていいのじゃないかと思いますが、そういう保証が現在のところないというところに問題がある。これは今後の推移を考えて、極力推進しなければならぬというので、大蔵省とも話をしておるのでありますが、ただいま申し上げましたように、要するに問題は、債権の確保をどうするかということだと思います。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 中国貿易には、いろいろ特色がありまして、非常に楽な点もありますし、なかなか困難な点も確かにありますけれども、中国側は、約束したことに対しては信用が厚いということは、今日万人の認めておるところだと思うのです。従来オープン・アカウントにした地域に、債権の焦げつきが至るところで起っておりますが、その多くは、国内政治情勢の不安定な国が多かったと思うのですが、中国においては、そういう心配がないということは、大体すべての人が常識的に認めておるところです。あとは手続の問題であろうと思うのです。手続の問題としては、双方に信用状を開いて取引をしておるのですから、向うの中央銀行なり為替銀行なり、または貿易促進委員会なりが、そういう取引について、保証に当るというようなことは、何らかの技術方法はあろうと私は思うのです。従いまして、通産省当局としては、中国貿易増進の見地から、そしてプラント輸出等の振興は、インフレーションには、現段階では、なるおそれはない、逆に国際収支を好転させることによって、インフレ防止になるというかたい見通しがおありになるならば、それらのことの技術的検討に、直ちに着手してしかるべきだと思うのですが、そういう積極的態度をおとりになる気持があるかどうかということを、伺っておきたいと思います。
  49. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中国が信用が厚いという点については、私は別に異議を持っておりません。しかし、ただいままでのいろいろ焦げつきが起りました国々を考えましても、当初は、みな正常に取引が行われた。それがある段階において、外貨の不足というような点から、焦げつきになるというような問題が起っておるわけであります。従って、やはり債権確保につきましては、慎重に考えていくべき問題だと思います。従って、ある程度技術的に解決し得る面もあるのではないかと、実は積極的にいろいろ検討もし、話し合いもしておるのであります。
  50. 帆足計

    ○帆足委員 通産大臣の方で、積極的にそういう方向には賛成するというのであるならば、民間におきましても、また専門的な見地から、この問題を積極的に研究いたして協力いたしますから、そういう積極的態度で、一つ政府も善処していただくことをお願いしたいと思います。  また、ポンド貨の前途に対して、現在不安は薄らいでおります。保証制度が行われておりますが、これも、中国市場には適用していない現状のように聞いております。こういう点も、共産圏に対しても適用するようにしていただきたいと思いますが、通産大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  51. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 為替損失その他の問題につきましても、これは延べ払いと関連した問題であります。みなあわせて検討しておるわけであります。
  52. 帆足計

    ○帆足委員 通産大臣の御答弁は、検討しておるということであって、これを短期間にてきぱき解決していこうというお考えがあるのかどうか。ただいまの御答弁では、明確を欠いておるように思いますが、必要に応じて、時期を失しないように解決していかれるというお考えで研究しておるのかどうか、その点をさらに確かめておきたい。
  53. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私としましては、積極的にいろいろ大蔵省とも話し合いをしておるのでありますが、ただ見通しがつかぬ場合におきまして、私の答弁としては、これ以上のことを申し上げるわけにいかぬというわけであります。
  54. 帆足計

    ○帆足委員 通産大臣が、これに積極的御熱意を持っておるということはわかりましたけれども、大蔵省との関係において、まだ見通しがつかない。これは、大蔵省というものは元来、非常に保守的な場所ですから、これを啓蒙して、そして教育して、そして正しい方向に踏み切らせることが、通産省の任務だと思いますから、どうか大蔵省に対しては、強く折衝していただきたいと思います。  最後に、今度通商代表部が相互に設置されるようになれば、いろいろな問題についての話し合いも、非常に楽になります。通商代表部ができさましたときに、これは民間の機関でありますけれども、責任ある機関として話し合う相手になり得ると思うのですが、通産省当局の事務関係の方々も、専門家として、代表部の人たちに、用件によっては会ってもらうと、私は工合がいいと思うのですけれども、この程度のことはお考えになっておるかどうか、伺いたいと思います。
  55. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 外交上の問題とか、そういうことでありません商売の関係におきまして、いろいろ御相談があれば、われわれといたしても、十分お話ししてけっこうだと思います。
  56. 帆足計

    ○帆足委員 貿易取引上の問題であれば、すなわち商売の問題であれば、役所の諸君も必要に応じて気持よく接触を保つと言われる御答弁で、大へんけっこうだと思います。なお、それと並んで、今次外国人登録法の改正によって、外国からの滞在客は、指紋をとらない期間が一年ということに延びましたので、そうなりますと、必要に応じて、政治上の問題でなくて、純粋の貿易経済技術上の問題で、中国その他の国々から日本を訪れることも、大へん円滑になって参ったと思うのです。そういう場合に、問題がはっきり電源開発とか、プラント輸出とか、農業機械の研究とか、そういうきわめて実際的な問題で、社会主義圏からお客さんが参りますとき、通産省の方では、やたらにそれを制限したり、引き延ばしたりするようなことは、今後はもうなかろうと存じますけれども、それについての大臣の御意見を伺っておきたい。
  57. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 通産省としましての仕事につきましては、これは別に妨げる必要はないと思います。法務省の問題とか、あるいは外務省の問題になりますと、これはいろいろ別個の観点があると思いますが、われわれとしましては、純粋な経済なり貿易の問題につきまして話をするのは、先ほどから申し上げておりますように、何ら差しつかえないと思います。
  58. 帆足計

    ○帆足委員 最後に、前国会で輸出入取引法の改正の問題が起りましたときに、われわれは、付帯決議をもって、政府に警告を発してあるわけでございます。それは共産圏との貿易につきまして、不当競争というような事態は、まだあまり起っていないように聞いておりますけれども、足並みをそろえますために、公正合理な立場から話し合いをするとか、またメーカーの意思の統一をして参るとかいうことは必要でありますけれども、いわゆる窓口を一つにして、一商社だけに取引をさせるとか、一つの国策会社を作って全部縛ってしまうとかいうようなことは、実情に即しない。このことは、ソ連貿易の問題でも、河野さんが意味しておったことは、どういう意味か知りませんけれども、窓口一本化という問題で、ソ連の方とも意見のそごを来たしまして、そのために、貿易交渉上の時間を空費した点があったと思うのです。不当競争を防いで、秩序のある貿易が業種によって必要であるということは、何人も異論がないことで、そのために、現在、通産省関係の中国貿易では、メーカーまたは貿易商が十社とか二十社、あるいは三十社が、それぞれ懇談会などを作りまして、そして輪番幹事を置きまして、比較的秩序のとれた共同の仕事をしておるように聞いております。今日の段階では、前国会の決議の趣旨にもかんがみまして、私はそういう方式がよかろうかと思っておるのでございますが、政府側としては、特定の商品の取引を、一社でやらせるとか二社でやらせるとか、そういうようなかたいお考えは、もはや今日では持っていないと思いますけれども、行政指導に当って、どういう方式がいいかと今日お考えになっておりますか、この点を伺っておきたいと思います。
  59. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 いわゆる窓口の一本化とか、あるいは公団とかいう点については、われわれ全然考えておりません。ただ、現在におきまして、そういうことは申し上げませんが、過当競争は、あくまで排除しなければなりません。過当競争につきましては、一般にとっておりますように、各業種の自主的な規制を、ぜひ強力にやってもらいたい。これは一般原則であります。その一般と原則に従って、過当競争を排除し、秩序ある取引をやってもらいたいという方針で進んでおります。
  60. 帆足計

    ○帆足委員 けっこうです。
  61. 内田常雄

    ○内田委員 関連して。通産大臣通商局長がおられますから、簡単にお尋ねいたすのでありますが、最近米国の日本の中小企業等の製品輸入制限、あるいは関税率の引き上げに関連いたしまして、日本側でも、自主的に輸出の調整をするとか、あるいは数量制限をするとかいうことで対処しておられることは、私はまことにけっこうだと思いますが、最近、私がアメリカから来た弁護士と、いろいろ話をいたしました際に、このアメリカの弁護士が、このことを指摘しまして、今の日本計画は、まことにけっこうであるけれども、やり方いかんによっては、米国の独占禁止法にひっかかって、せっかく日本側が自主的にコントロールして持っていった案が、またそれでごたごたするようなことが起る可能性がなきにしもあらずであるから、そこのところは十分検討を加えて、米国側と事前に打ち合せをしてほしいという話であります。通商の問題がちょっと問題になりました際に、このことをお耳に入れておくわけでありますが、日本政府としても、御承知か、あるいは対案がおありだろうと思いますので、遺憾なきようにお願いしたいと思います。御答弁は要りませんが、あるいは何らかのお話がありましたら……。
  62. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 こちら側で規制をやる点につきましては、何ら向うの独禁法にひっかかるわけではないのです。向うである業者を指定してやるとかなんとかいうことになると、独禁法にひっかかってくるわけです。その点は十分注意してやっていきたいと思います。
  63. 内田常雄

    ○内田委員 私も、もちろんそう思ったのでありますが、ただ、こちらのカルテルの作り方、それに関連する価格のきめ方、向うへの商品のアロケーションに関連して、こちらでそういうカルテルを作ってやる場合にも、向うのやり方いかんによっては、向うの独禁法にひっかかる場合がある。そこは非常に微妙であるから、こっちで案を作った場合には、日本の在外公館、出先の機関と打ち合せてやらないと、事が行ったり戻ったりして、妙に紛糾することを心配するのだということを、アメリカの弁護士が言っておったのでありますから、その点は十分……。
  64. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいまのお尋ねに関連しまして、ちょっと大臣の御答弁を補足して申し上げますと、日本の法域下におきます輸出数量、価格、品質の統制は、別段アメリカの独禁法にはひっかからないのであります。ただ、かつて一つそういうケースがあったのでございますが、日本の輸出調整を、より効果あらしめるために、アメリカ側における輸入業者といいますか、荷扱い人を指定するとか、あるいはその指定をするとか、要するにアメリカ法域におきまする輸入業者の取扱いの量を規制するというようなやり方をやりまして、実はアメリカの独禁法にひっかかった例があるわけであります。多分そういうことかと思います。われわれも、十分心得まして、問題の起らないように善処しつつあるわけであります。
  65. 阿左美廣治

    ○阿左美委員長代理 本日はこの程度にとどめます。  次会は明十三日午前十時より開会することにし、これにて散会いたします。     午前十一時五十九分散会      ————◇—————