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1958-03-05 第28回国会 衆議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 阿左美廣治君 理事 内田 常雄君    理事 笹本 一雄君 理事 島村 一郎君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       大倉 三郎君    川野 芳滿君       菅  太郎君    神田  博君       齋藤 憲三君    櫻内 義雄君       首藤 新八君    南  好雄君       山手 滿男君    横井 太郎君       佐竹 新市君    志村 茂治君       田中 武夫君    田中 利勝君       中崎  敏君    永井勝次郎君       帆足  計君    水谷長三郎君       八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         工業技術院長  黒川 眞武君         中小企業庁長官 川上 爲治君  委員外出席者         大蔵事務官         (財務調査官) 大月  高君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本貿易振興会法案内閣提出第八八号)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  まず日本貿易振興会法案議題とし、審査を進めます。  質疑を継続いたします。松平忠久君。
  3. 松平忠久

    松平委員 昨日の質問に続きまして、きょうは大臣か見えておるので、主として大臣に、昨日局長でちょっと答弁できなかったところに対して、質問をしたいと思います。  まず第一に伺いたいのは、岸総理が二回にわたって東南アジアを訪問して、一つ東南アジア開発に対する構想を持っていったわけですが、その構想もだいぶ変ってきて、伝えられるような開発基金構想に落ちついたわけであります。そこでお伺いしたいのは、通産省として、通商政策上、東南アジア方面に対して、政府がとっておられる開発基金の設定と、通産省考えておられる通商政策とは、どういうような関係を持っておるものであるか。すなわち、ドル不足ということに関連して、東南アジア貿易がなかなか伸びない。一方において、東南アジアは、ああいうような民族主義的な国家群がありまして、そして国内の開発を計画しておる。そういう段階にあって、政府考え方も、前のいわゆるアメリカひもつきの金を導入するということをやめるような段階になってきた。そこで、現在の構想に変ってきたわけでありますが、これに関連して、通商政策はどういうふうに進めていくお考えになっているのか。この点について、大臣の所見を、まず伺いたいと思います。
  4. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまお話しのように、東南アジア諸国が、ドル不足で困っておる。こういう状態に対処します方法としましては、アメリカ援助ということも考えられますが、日本としても協力して援助をしていく。そうして、開発につれまして、早い話が、インドにいたしましても、鉄鉱石の資源の開発ということをやりますと、将来、日本鉄鉱石の輸入が安定され、また廉価なものが入る、こういう関係になります。要するに、その開発基金調達をどうするかということに帰着すると思います。それにつきましては、先ほど申し上げましたように、アメリカ援助というような姿も考えれらるのですが、それより、まず日本が、欧州共同市場考えましても、それについて、対抗するという言葉は、語弊があるかもしれません。しかし、経済なり通商を密にして相互に利益を得る、こういう考え方に基いていきますと、開発基金調達ということについて、日本が率先してやっていくべきだと私も思っておるのであります。これはそういう開発基金調達ができますと、将来の日本通商という——輸入するものがなければ、われわれも輸出ができない、こういう現状にあるわけであります。これは非常に緊要な今後の要請だと思っておるわけであります。
  5. 松平忠久

    松平委員 開発基金調達が問題でありますが、そこで、私は、昨年でありましたか、申し上げておいたのは、世界銀行の中にある日本円資金、これをまずフルに活用してみたらどうか、こういうことを申し上げておったわけでありますけれども、この円資金活用が、私はあまりはかばかしくないと思っておるわけです。かなりまだ円資金というものは余っておるのではなかろうか、こういうふうに思いますが、この円資金活用ということに対して、政府自体は、今日までどういうような措置をとってきており、また今日どの程度の成果があったかということをお伺いしたいと思います。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいままでは、あまりはかばかしくなかったという、ただいまのお話は、私、そうだと思います。しかし各国におきまして、要請相当強くなっております。われわれもまた喜んでそういう協力をすべきだ、かように考えておりますが、詳細につきましては、政府委員から答弁させます。
  7. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 実は昨日お尋ねのときに、資料を持ち合せておりませんで、十分なお答えができなかったのでありますが、ちょっと数字を御説明申し上げますと、御存じのようにわが国の世銀に対する円貨による払い込み額は四千五百万ドル相当額になっておるわけであります。そこで世銀からの要請に基きまして、三十一年度には五百万ドル相当額、三十二年度には一千万ドル相当の円の解除が行われておるわけであります。貸付先はタイ、パキスタン、セイロン及びインドにわたっております。これは日本から鉄道車両発電設備及び港湾設備を購入するために使用されましたし、また使用されつつあるのであります。今後の解除額につきましては、明確にはわからないのでありますが、多分三十三年度におきましては一千万ドル以上あるいは一千二、三百万ドル程度解除が行われるのではないかというふうに予定をいたしておるわけであります。
  8. 松平忠久

    松平委員 円資金の今までの使途というものは、今も大臣の言われた通り、きわめて拙劣であって、効果が上っておらぬように私は見ておるわけです。そこで、むしろそういうことであるならば、円資金を引き揚げてしまって、新しく構想されておるところの東南アジア開発銀行か何かに投資をする方がいいのではないかということまで私どもは考えておるわけです。伝えられておるところのいわゆる一萬田構想というか、東南アジア開発銀行の、東南アジア諸国だけで、ひものつかない金を集めていこうという資金調達方法については、どういうふうに進んでおるのか。またその可能性は、どの程度あるのかということについて、政府部内における現在の話し合い状態があるならば、お知らせを願いたいと思います。
  9. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実はまだそこまで話が進んでおりません。この開発基金につきましても、今後の運営をどういうふうにするか、今後各省でいろいろ討議いたしまして詳細の構想を練りたい、こういうことでありまして、ただいまのところ、そういう具体的な話し合いは、まだ私自身も話したことはありません。
  10. 松平忠久

    松平委員 先ほど、通産大臣答弁の中には、東南アジア開発をはかるために、東南アジアが手をつないでやっていく必要があると同時に、ヨーロッパにおける共同体の傾向もあるので、いわゆる東南アジア内における地域聞貿易促進していくことが必要であるというような答弁があったわけであります。そこで、伺いたいのですが、東南アジア地域間の貿易協議会を作り、もしくはその東南アジア地域間の貿易促進していく、こういう考え方に対しまして、日本政府態度は、きわめてあいまいな態度を今日までとってきておったのではないか、こういうふうに私は考えておるのであります。すなわち、地域間の貿易促進していくということを、どんどんやっていきますと、結局中共との問題が出てくるわけであります。そこで、インド等におきましては、地域間の貿易促進していくべきである、こういう立場をとっておるけれども、日本はその間において、それに対して水をぶっかけなくちゃならぬような立場に立たされたような格好が、今日までの態度であります。そこで、今日は、日中の貿易も、相当将来性のことを考えなければならぬし、鉄鋼等におきましても、この間のようなああいう契約を結んできておる。本格的に貿易を広げていかなくちゃならぬ、こういう立場に、もう来ておるのであって、この二、三年前の日本中共との貿易関係とは、かなり変ってこなければならぬはずであると私は思うのであります。従って、東南アジア地域間の貿易促進していく、このことに関しても、日本態度は、以前とは変えていかなければならぬと私は思うのであるけれども、この点に対して、政府はどういう考えを持っておられるか伺いたい。
  11. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 東南アジア地域内の問題につきましても、また地域間の問題にいたしましても、これはできるだけ促進していくべきだと思います。ただ、ただいままでの地域内の問題については、あまり大した問題はないのでありますが、エカフェ等におきましては、他の国を刺激するということを、多少遠慮ぎみ考えておるわけで、結局においては、刺激しないようにしながら促進していくという考え方のもとに、ただいままできておるのだと思います。しかし、お話のように、もう事情はだいぶ変ってきております。それに応じて、われわれも今後大いに促進していきたい、かように考えております。
  12. 松平忠久

    松平委員 この刺激をするというのは、結局、エカフェの中にアメリカ代表が入っておって、そしてこのアメリカ代表の言うことに対して、たてをつくのは困るというような考え方が、日本政府部内にあるわけであります。そこで、私は、状況も非常に変ってきておるということと、もう一つは、通産省自体立場におきましては、そんなことは遠慮する必要はないのじゃないか。外交外交でまかしておけばいいのであって、通産省は、あくまで積極的にこれをやっていくという方針を立てて、そして政府部内意見統一をはかっていくべきである、こういうふうに思うのです。聞くところによると、大蔵省あたりが、今まではかなり遠慮をしておるように私は聞いておる。そこで、通産大臣決心を聞きたいのだが、今、エカフェ会議も行われる段階に来ております。第十四回総会も行われるわけであるけれども、私は、この際、日本としては、はっきりした態度をもって、そうしてインド等との間に対立を来たさないような方向に行くべきではなかろうか。こういうことによって、初めて地域間の貿易促進していくことができる、こういうふうに私は思う。今の総理東南アジアへ行ってきまして、そうしてあちらこちらでいろいろな話をしてきているけれども、結局そこに底流として、かなりの意見相違があるということであるならば、東南アジア貿易なんというものは、うまく行きっこないわけです。また東南アジア開発も、うまく進展しっこない。むろん、東南アジアの中には、いわゆるSEATOのグループと、そうでない反対立場グループがありますけれども、この中に立って、日本首鼠両端をきめておるという時代ではなくて、率先して融和をはかっていって、地域間の貿易促進するという一つの目標のもとに結集していくべき役割を、日本は持たなければならぬと思うのだけれども、それに対する決心のほどを、一つ伺わしていただきたいと思います。
  13. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私、言葉の使い方をよくはっきり存じませんが、アジア地域内の貿易につきましては、積極的にわれわれも主張いたしておるのでありまして、決して消極的でも何でもないのであります。アジア諸国間の、これは先ほど申しましたように、欧州共同市場考えましても、これは大いに促進していかなければならぬ、何も遠慮することはないと私は思っております。今後大いに推進したい。またエカフェ等におきましても、大いに主張しておるところであります。
  14. 松平忠久

    松平委員 地域内は、むろんそうでありますけれども、地域間の貿易促進協議について、私はもっと積極的な態度をとるべきである、こういうことを言っておるわけです。その点に対しては、どういうふうにお考えですか。
  15. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 地域内の貿易問題と、それから地域間の貿易問題、これは観念がときどき混同しやすくて、われわれも少しはっきりしないような、場合もあるのですが、インター・リージョナルという場合と、イントラ・リージョナルという場合と、二つあるわけであります。アジアの問題は、地域内貿易の問題であります。従って、もちろん地域内の貿易問題という場合には、アジア地域内における国家間の貿易問題になります。地域内の貿易問題につきましては、先ほども大臣が御答弁になりましたように、先般の貿易委員会におきましても、日本議題として提案をしたような次第でありますし、きょうからクアラルンプールで開催されますエカフェ総会においても、日本提案をしておるような次第であります。まだその帰趨は、はっきりはいたしませんか、アジア諸国には、かなり共鳴が得られるのではないかというふうに考えているわけであります。  それから地域間の問題。地域間というと、アジアヨーロッパとか、あるいはいわゆる東西地域とか、あるいはアジアと中南米、あるいは北米との問題という地域の間の問題になるわけです。その問題につきましては、数年前におきましては、エカフェにおいて議題となったこともあるのでありますが、若干時期尚早でもあろうということで、その問題は影が薄れまして、今、もっぱら地域内の問題ということが、中心議題になって、論議がされておるという事情でございます。
  16. 松平忠久

    松平委員 私は、地域間の問題については、エカフェにおいては、かなり問題になったと思います。大体、この会議においても、日本インド正面衝突をしておるわけであります。そういうことが予想された関係からか、日本はきわめて消極的な態度をとっておる。しかし、日本が現在の状況のもとにおいては、ソビェトとの間にも国交を回復しておるわけだし、中共との貿易促進していかなければならぬという立場にあるしするので、今までの態度を放擲しなければならぬということを、私は言っておるわけです。それに対して、政府はどういうふうに考えているかということを質問しておるわけです。
  17. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 地域間の問題にしましても、これは推進していかなければならぬことは、お話通りであります。まただいぶ事情が変ってきていることも、事実であります。その事実に対応いたしまして、われわれといたしましても、極力推進していきたいと思います。
  18. 松平忠久

    松平委員 私はおざなりではなくて、そういう考え方を持っているならば、政府部内で、通産大臣意見をまとめて、そうして貿易に関する限りは、ほかの関係各省を、その方向に引きずってくるというくらいの範を示さなければならぬと思うのです。ただ単に、それはけっこうである、あるいはそうすべきであるというような原則論ではなくて、これは生きた問題でありますから、私は、東南アジアに対して、日本貿易の地歩を固めていくという上からいきましても、この問題に関しては、相当政府自体は腹をきめていかなければならぬ、こういう段階に来ていると思うので、特にその点を通産当局決意を促したいと思うのです。ちょっと通産大臣に、この前の会議議事録を私はここに持っているので、それを読み上げてみたいと思う。日本代表団がどういう態度をとったかということに関して、こういうことが議事録に書いてあるわけであります。会議の開催前に、日本代表団は数回にわたって協議を重ねざるを得なかった。ところが、この協議の結果も、日本東西貿易とも必然的にこの問題がひっからんでくるので、政府代表が積極的な意見を述べるのは好ましくない、こういうような意見と、それから、そうではなくて、日本貿易促進するためには、大いに日本の積極的な意見を述べなければならぬ、こういう意見の二つが対立しているのであります。そうして、大蔵省のごときは、地域門貿易促進協議の可否が表決に付された際は、日本は棄権すべきである。こういうことを最後に主張した。しかし、事前にそうはっきり態度をきめるわけにはいかなかった。なぜならば、東西貿易の問題を一応考慮外に置けば、地域間の貿易促進ということは、だれしも原則として反対することはできないはずだ、だれしも原則的に反対すべき筋合いのものでない。従って、大部分の国が、反対するよりも、原則的な賛成論を述べる見込みの方が強く、この場合、日本が棄権することは、反対態度をとったと同様にとられ、アジア主要国に好ましからざる印象を抱かせる結果になりかねないということが懸念されたから、積極的な反対もしなかった。こういうことで、日本態度はきわめてあいまいなんです。従って、どっちからも信用されない。日本がこういう態度をとっておって東南アジアにうまく貿易問題が進展していくことはできないと思う。要するに、アジアかけ橋になるようなことを言っているけれども、かけ橋どころでなく、これはむしろ気がねをして、その結果、今のようなあいまいな態度をとるから、両方から信用が得られない、こういうように私は、今までなっていると思うのです。そこに貿易を伸展させるという上からいって、日本信用問題、これが私はあると思う。そこで、これを打開していくことは、私は通産大臣の責任ではないかと思うのです。日本関係各省の間に、なかなか意見がうまくいかぬという場合に、貿易を伸展させていくためには、やはり東南アジア信用を回復していかなくてはならぬ。日本がたよりになるという印象を与えていかなくてはならぬ。そのためには、東南アジアの多くの国々考えておるような工合に、もっと地域間の貿易促進していくような積極的な役割日本自身が果さなくてはならぬ、こういう態度を私はとるべきであると思う。それを今日まであいまい模糊としておるからいかぬわけであるが、今や中共貿易に対しても、ああいう踏み切りをつけなければならぬし、日ソ通商条約もできた今日でありますから、私はもっと遠慮せずに、堂々たる態度をもって東南アジア諸国に臨んでいく、こういうことでなければならぬと思うのだけれども、もう一つ決心のほどを伺わしてもらいたい。
  19. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 外交上といいますか、政治的な問題と貿易の問題とは、画然と別個に考えていかなければならぬと思います。従って、われわれとしましては、貿易拡大ということについて強力に推進することについては、何も怠っておるわけではないのです。ただ、今度外交上の問題なり、また借款その他の問題等考えます場合には、これは総合してどういう方法をとるかということは、考えていかなければならぬ。ただ通産省だけが、貿易さえできればいいのだというわけには参りません。しかし、それらについて、最大限に貿易を進推していくということには、私は十分な決意を持っておりますし、各省にそれだけのリーダー・シップをとって邁進するということは、常に心がけておるところであります。
  20. 松平忠久

    松平委員 私の言っていることも、貿易だけを念頭に入れてやるという意味ではなくて、やはり外交その他の問題もあることは、私も承知しております。しかしながら、今までの極東における経済関係会議に対する日本態度というものは、貿易をいかに促進していくかということが一つ議題になっており、そうしてこの議題に対して日本政府部内意見が分れておる、こういうことなんです。ところが、今日は、その時代とは日本立場がかなり違ってきた、今日の情勢は、こういうふうになっておる。以前とは違っておるわけであるから、貿易を伸展していくためには、通産省として一つ方針を立てられて、そうして日本はもっと積極的に地域間の貿易促進をはかっていかなければならない。私は、こういう態度をとるべきであると思うのですが、今までの問答の状態からいうと、大臣も、このことはよく勉強しておらぬように思われるし、私はもう少し勉強してもらって、通産省自体考え方というものをはっきりさしてもらいたいと思うのです。それによって、日本貿易がさらに東南アジアに伸展していくいい素地を作っていくのではなかろうか、こういうふうに思うから申し上げておるのであるし、同時に、岸総理が二回にわたって東南アジアを訪問してきたということも、ひっきょう、これは東南アジアに対する日本貿易を伸展させていきたい、経済開発に協力していきたい、こういう気持で行ったに相違ないわけであるから、その間の今までの日本政府矛盾をあくまで解消して、新しいスタートに立って出発していかなければならぬ。こういうふうに思うから、私は申し上げておるわけであります。しかし、これ以上これは追及しません。  それから、もう一つ伺いたい点は、貿易自由化の問題であります。きのう局長から答弁をいただきましたけれども、あらためて大臣から御答弁をいただきたいと思う。  日本は、今まで、大体原則として貿易自由化方向ということであったわけでありますが、現在、通産当局格関係国との間の協定、並びに世界的に日本意見を発表する場合において、一体日本は、自由化賛成なのか、反対なのか、私はその態度は、きわめてあいまいであると思うのです。日本は、一体貿易自由化ということに、ほんとうに賛成なのですか、反対なのですか。
  21. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 われわれとしては、あくまで貿易自由化ということを推進していかなければなりません。ただ、御承知のように、昨年のような問題が起りますと、やむを得ず多少停頓ぎみのときもある。これは決して自由化から後退するという意味ではありません。今後におきまして、極力自由化促進し、また各国に提唱していかなければならぬ立場にあると思います。
  22. 松平忠久

    松平委員 そこで、日本がそういうような自由化促進していかなければならぬというその考え方と、東南アジア民族主義国家との考え方とは、反発すると私は思うのです。東南アジア人たち考え方は、おそらく自由化には反対であります。そこで、その矛盾を、日本東南アジアに対して、一体どういうふうに調整していくつもりであるか。これに対しましては、通産当局としては、一つの具体的な考え方を持たなければならぬと思う。日本はあくまで貿易自由化だ、こう言っていきますと、東南アジアとは、正面衝突すると思うのです。そのことを、日本は一体どういうふうに調整を求めんとしておるかを伺いたいと思う。
  23. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 自由化という問題は、やはりある程度基盤ができないと、できません。従って、東南アジア開発という問題が促進されてくれば、自然に自由化各国とも向っていくものだというふうに考え、結局において、東南アジア開発ということを主題にして自由化をはかっていくというふうに考えていかなければならぬと、私は考えております。
  24. 松平忠久

    松平委員 私は、東南アジア開発のテンポは、なかなかそうは進まないと思います。従って、当分の間は、東南アジア貿易自由化というものを、期待することはできないと思う。そこで、それまでの間をどういう態度をもって臨むかということを、質問しているわけです。
  25. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 必ずしもほかの国々も、自由化を望んでおらぬわけではありません。オープン・アカウントにしましても、フィリピンもインドネシアも、みな向うから言ってきたわけであります。結局は、それだけの経済基盤がないというところで、やむを得ずやっている問題だと思うのです。お話のように、開発ということは、そう簡単なことではありません。しかし、賠償におきましても、経済協力というようなことを、各国にこちらも提唱しておるわけで、これを具体化して、もっと促進するということ以外にないと私は思うのです。
  26. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 関連して。  松平君の質問に対する通産大臣の御答弁を聞いていますと、もちろん貿易専門の通産大臣でないから、今、通産大臣の言っておられる程度のことで、無理もないと思うのですが、私は具体的に、いろいろな局なり課からいろいろの資料を取っておいて、その上に立って通産省の一貫した方針を打ち出されることが必要だと思う。今の東南アジアの問題にいたしましても、私、昨年、中共に参りましたが、中共に参りまして一番考えたことは、商工委員の一人として、いろいろな問題はありますけれども、東南アジアの華僑勢力というものは一体今後どういうように動くのであるか。国民政府の蒋介石のときは、蒋介石一辺倒でありました。しかしながら、今度行ってみると、中共相当華僑を東南アジアから国内に呼び入れております。学校の生徒も、優秀な者は、みな中共の中で教育いたしております。こういうようになりまして、東南アジアにこれが散在すれば、政府の方でいろいろお話し合いによって上の方で話されても、実際の経済的な基礎を持っておるのは華僑です。華僑勢力が相当大きなウエートを占めております。こういうようにいたしますと、中共の勢力が、だんだんと東南アジア全体に伸びていく可能性は十分にあると私は見たのです。そういうような点から、日本は、今日からその基盤を作っていくべきである。東南アジアが、現在の状態から、将来どういうように変っていくのであるか。開発基金を入れて開発をして、それを通して親善関係を結んでいこうという考え方——あの民族的な解放運動をやって独立した国家というものは、われわれ日本国民の角度と違った考え方を持っている。華僑が長い間あそこへ入り込んで経済的な基盤力を持っている、そこに中共一つ方針というものを打ち込まれていきますと、今、第四次貿易会談をいたしておりますか、こういうわずかなことが乗り上ってきたり何かすれば、私は大へんなことになってくると思う。そういうような点で、もう少し東南アジアに対する考え方を、通産大臣は根本的に変えなければならぬ時代じゃないか。そうしなければ、だんだん後手々々になってくる。後手ということは、要するに売れないということです。なかなか入っていかない。西ドイツも入っていっておりますし、イギリスも入っていっている。日本がこれだけ近いところで、やはり日本貿易の拡大促進をしていこうとするならば、その考え方を、今からずっとつないでいくという考え方でなければいけない。それには、やはり今の華僑勢力あたりは、どの程度経済カを握って、どういうようにしてやっているかを、詳細にお調べになる必要があると思うのですが、どうですか。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまお話しの、華僑勢力が非常に大きな力を持っておるということは、われわれも認識いたしております。また東南アジア貿易等に対する基礎調査につきましても、従来から進めておりますが、来年度の予算におきましては、委託調査費もとりまして、極力基礎調査をやっていくというふうな、あるいは手ぬるいかもわかりませんが、今まではそういう調査費もとっておらぬような状況でございました。これは外務省ではとっておるようでありますが、われわれとしても、来年度から調査費をとっておるような状況で、極力根本的な研究をして、それに対応する政策をとっていきたい、かように考えております。
  28. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私、四、五年前、吉田内閣の時代に、東南アジアを今の川島幹事長あたりと一緒に回ったとき、たしか政府に進言をしておるはずです。出先の大使館なんというものは、実に貧弱きわまる外交をやっている。東南アジアに伸びていく貿易や、あるいは経済全般の問題に対して、一つも基礎調査をしていない。インドネシアに至っては、自動車の車庫を買って、領事館の者や出先の者が泊っておるという貧弱きわまることをやっているのです。東南アジア外交というものは、外交経済と並行して、大使館なんかにおいても、相当の技術者なりあるいは経済のわかる、貿易のわかる者を入れるべきであると思うのです。そしてこれらの国々の進歩的な要路の人々に会いましたところが、よその国に来て開発するなんという考え方自体が、日本経済侵略であるというふうに、露骨にわれわれの前で言ったことを覚えております。やはり東南アジアの国は、一国の総理大臣が行かれたときは、体裁のいいことを言いますけれども、あとを締めくくっていこうとすると、なかなか簡単に話は進まない。実際に長い間の民族運動をやって、日本の帝国主義と正面から衝突した人々も、ずいぶん今は要路についておるわけであります。その人々は、国際的な動きを見る視野というものは非常に広いと思う。そういうところに行って、一辺的な外交方針、官僚外交方針だけでは、これは日本の帝国主義の陸軍や海軍の強いときであって、アジアを征服するなんていう力を持ったときならいいのです。しかし、平和外交の今日におきましては、そういう力がないのですから、やはり出先でそういう実態調査をして、本国に知らして、いかにしてこの国に持っていったらいいか。御承知のように、シンガポールや香港は、中継ぎ港であったが、生産工場がどんどんできつつある。そうして、そういうものはどこからきておるかといえば、西ドイツの技術やイギリスの技術が入ってきておる。それでどんどんやっていく。もう後手も後手も大後手です。これから調査費を出して、それから今度やっていこうというようなことは、いかに日本か一辺倒外交にとらわれていたかということだ。ごきげんを伺わなければ、東南アジア国々に出ていくのがむずかしいという宿命的な運命を背負わされておったことが、日本の今日ここに至った原因だと思う。華僑が中共に入り込んで、国内において勢力を持たせていく。そうすると、華僑は商売ですから、中共方針に従って自分の出先の国々に物を入れてくる。日本がそれで締め出される、こういうのが実態だ、東南アジアに関する限りにおいては、今までの外交なり経済のやり方では、もう手おくれだ。今からでもおそくはないから、まず地域に対するところの一辺的な考え方を変えて、一つ大きな力を加えていくことについての通産大臣決意を伺いたい。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまのお話は、全く同感であります。また今までの外交なり貿易につきまして、そういう欠陥があったことも、認めざるを得ないと思います。従って、今からでもおそくないというつもりで調査費もとり、また経済協力につきましても、技術センターを作るなり、あるいはいろいろ各地にセンターを設けるなり、努力して、他の諸国との競争に負けぬようにやっていきたいと、強い決心をしておるわけであります。
  30. 松平忠久

    松平委員 最近、国連の日本における貿易についての報告書を見ますと、日本貿易は後手々々になっておる、こういう結論であります。それは、ここ数年来、あまりにも無方針に繊維産業を発達させるということであったが、世界の繊維の実情はこれこれだ。そこで日本は、重工業、化学工業に重点を置かなければならぬということなんですが、ことしの通産省の四大政策の一つに、重工業、化学工業を振興させていくという政策が盛られております。そこでお伺いしたいのは、この混乱の状態になっておる繊維産業を、大臣は今後どの程度の規模にしていこうとお考えになっておるのか。その繊維産業に対して、何らか新しい手をお打ちになるというお考えはお持ちになっていないかどうか、お伺いしたいと思う。
  31. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 今後の貿易は、重工業品なりあるいは化学工業品に転換をしていかなければならぬということは、従来からわれわれも痛感しておるところであります。今までの繊維産業というものに甘んじてはいけない。ことに、今後東南アジアにつきましては、プラント輸出なり、あるいはただいま申しましたように、重工業品なり化学工業品に転換していくという考えを持っていかなければならぬことは事実であります。従って、今後は、アメリカや、むしろ開発された地域について、繊維品を考えていかなければならぬ。それにつきまして、今後伸びる輸出については、私はむしろ重工業品なり化学工業品に転換していくべきであると思いますが、現在程度は、私はまだ繊維品はいけると考えております。しかし、従来通り考え方で繊維品を作っておったのでは、だめと思います。これはやはり、よほど恒久化されたものを作っていく。それには、従来のあまり能率のよくない機械類は極力整備して、そして新しい高度化された繊維品を織るような方向に持っていかなければならぬ。御承知のように、また過剰織機の処理というようなことにも予算を出してやっておるのであります。ただいまの程度以上には、あまり繊維品について多くを望むことはできないのじゃないか。もちろん、一割なり二割くらいなことは考えてもいいと思いますが、これが大きく伸びるということは考えられない、こういうふうに思っております。
  32. 松平忠久

    松平委員 むろん、これ以上多くを繊維に期待するということは、間違っておると思いますが、今の混乱しておる繊維界というものを、このままに放置しておくわけにもいかぬと思う。これに対して、昨年の秋ごろでありましたか、人絹が非常に問題になったというようなときに、何かこのストックを一掃しなければとてもだめだというような議論があって、たとえば賠償にしてくれというような話も、当時出てきておったわけです。そういう何かカンフル注射的な措置を講じていかなければ、この危機というものは、私は乗り切れないのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、その将来のことはともかくといたしまして、当面これをどういうふうにして、カンフル注射をして軌道に乗せていくということをお考えになっておるかということなんです。
  33. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のような不況は、その根本原因は、輸出が減っておるということではありません。この人絹につきましては、多少減っておりますが、一昨年から見ますと、昨年はそう減っておるわけではありません。従って、やはり過剰生産ということを、まず第一に処理していかなければならぬ。御承知のように、操短をやったり何かやっておりますのは、そういうような関係でありますが、その操短の方ががっちりいくことになりましたら、私は金融のことを考えてもいいと思います。また御承知のように、輸出入取引法に基きまして、一手買い取り機関というようなものを、政府が勧奨して作らしていくということも、一つの対策だと思います。それから、ただいま申し上げました過剰織機につきましても、予備金を出しまして、従来の使い残り、あるいは他の過剰織機の処理の費用をそちらに回しまして、年度末までに一億の金が出せるわけであります。そういうような対策も考え、いわゆる総合対策として業者の方々のお考えになっておりますような対策は、全部とっておるようなわけであります。将来賠償の問題で、これはわれわれの方から押しつけるわけには参りませんが、向うの要求がありました場合におきましては、正常貿易との関係も十分考えなければなりませんが、極力処理をしていくように推進したい、かように考えております。
  34. 松平忠久

    松平委員 今の御答弁によりますと、輸出が減退して混乱が起きているのではなくて、過剰生産のために混乱が起きているというお話であったわけです。そういたしますと、この過剰生産というものを、操短もしくは企業整備等によって、縮めていくということにしなければならぬわけであるけれども、先ほどの御答弁によると、この程度はまあいい、この程度の繊維産業というものは維持していきたいというような御答弁もあったわけであります。その間ちょっと矛盾なような響きがするわけでありますけれども、現在の繊維の機械設備というものを、大体経済単位に動かしていけばいい、こういうお考えなのですか。それとも、今のものをある程度減らしていかなければならぬということになるのか。その点は先ほどの答弁と今の答弁と、ちょっと食い違いがあるように思うのですが、いかがでしょうか。
  35. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 昨年は一昨年よりも輸出が減っているわけではないと申し上げたのでありますが、一昨年がまあ正常貿易といいますか、本年度はいろいろ混乱は起しておりますが、とにかく輸出は従来通りいく。インドネシアは別であります。従って、私がこの程度と言いましたのは、一昨年なり本年度における輸出している数量くらいが、まあ一応の線じゃないかというふうに考えているわけであります。
  36. 松平忠久

    松平委員 それから、先ほど御答弁になった中に、あらゆる手を打っているものの中で、賠償についても、先方がもしこれを欲するならば、その中へ正常貿易を圧迫しない限度において繰り入れていきたい、こういうお話がありましたが、賠償については、通産省は、政府部内においてどの程度の発言権を持っておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
  37. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、通産省に賠償室というものがありまして、どういうものを出すかというようなことにつきましては、相当な発言力を持っているわけであります。これが所管しているわけですが、ただ、正常貿易を害するか、害さぬかという問題になりますと、これはわれわれだけの判定でも参りません。これは各省とも相談して参るのが、従来の例であります。しかし、それらにつきましては、相当な発言力を持っていることは事実であります。
  38. 松平忠久

    松平委員 そこで、絹、人絹に対する賠償物資の繰り入れの要望について、インドネシア等の賠償にこれを繰り入れるということが、可能性があるかどうか。私ども、インドネシアの代表者と会って話をしたところによると、この可能性があるような印象を受けているわけでありますが、繊維製品の賠償物資の繰り入れということについては、今までに何か具体的に話し合いをされたことがあるかどうか、今後どういう態度をもって臨まれるか、伺わせていただきたいと思います。
  39. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 公式の話は、全然出ておりません。しかし、要求は非公式には相当あるように聞いておりますし、いろいろな場合に、そういう気持は出ておりますから、相当可能性は強いと思います。
  40. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して。  ただいま繊維の問題が論議されておりますので、この際関連して質問いたします。いずれ繊維の問題については、体系的に質問を試みようと思っておりますが、ただいまの大臣答弁に、非常に多くの矛盾を発見いたしております。だから、その矛盾の点だけをお尋ねいたしますので、はっきりお答え願えたいと思います。大臣は、ただいま、繊維産業の構造、特に輸出の数量については、この程度が適当である。この程度が適当ということは輸出の数量である、かように松平委員質問に答えられましたが、それはほんとうでございますか。
  41. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど言いましたように、今後の貿易の数量の増大ということは、低開発地域につきましては重工業品、化学工業品を輸出品にしていくということに重点を置いて、転換して考えていかなければなりません。従って、ただいまのところ、これを過剰生産によっておるのでありますが、私はこれをもっと品質なり、それを高級化していかなければいかぬというので、あまりに過剰生産を考えて数量の多きを望みますと、今後の輸出はできない。ことに、世界の輸出の割合を見ますと、日本の繊維品の割合か非常に高い。従って、全体の需要がふえていきましたら、別でありますが、今後そう多きを数量として望むわけには参らぬと思います。
  42. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは、とんでもない話です。あなたは、えらい矛盾を犯しています。それではお尋ねいたしますが、通産省の繊維局において、合成繊維上期が八十万錘、下期が三十万錘の増設を今はかっております。これは、何を隠しましょう、将来の輸出を見通しての話なんです。その原案は、どこでできたかというたら、あなたの好きな人を集めたブレーンの繊維協議会において出された、その答申によって、これをきめておるわけです。しかも、目下通産省、あなたのお手元の中で、下期の三十万錘をどこにふやそうかということを審議しておる。そのやさきに、輸出の数量はもうこの程度で、これ以上は望めませんということを、責任者であるあなたが、こういう委員会で答えられるということは、これはちょっとどうかしているのじゃございませんか。よろしゅうございますか、もう一度お尋ねをいたします。
  43. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど言いましたように、来年度として、これは種類によります。種類によりますが、一割五分とか二割までのあれを考えておるのでありまして、私がさっき言ったように、今後一割とか二割程度しか考えられぬということを申し上げたことと、何ら食い違っておりません。
  44. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは、松平さんの質問に対して、輸出は今日この程度とおっしゃった。これは記録に残っておるはずなんです。ところで、そういうことは、大臣としての答弁ではない。もし同じ大臣でも、アメリカ大臣だったら、そう答えられてもやむを得ぬ。日本の繊維製品の輸出は、この程度でとどめておいてもらいたい、こう言われてもやむを得ぬと思う。しかし、少くとも日本の繊維の輸出を一そう振興しょうと、すでに業界はみな営々努力している。そのやさきに、大臣がそのような御答弁ではちとどうか。昨夜あまりにもおそ過ぎたのではないか。寝不足ではなかったか。寝不足程度で、私はこの際は次に進みますが、今後そういう考え方では、ちょっとちょっとと思うのですね。  そこで、私は、もう一つ大臣にお考えを願いたいことがある。なるほど過剰生産はある程度認めましょう。ところが、この過剰生産に追い打ちをかけているのが、あなたたちが奨励していらっしゃる化学工業なんです。それに対して、どういう手が打たれておるかについて、私はいつか聞こう、いつか聞こうと思っておりました。ところが、一向に手が打たれておりません。一体どういうことかといえば、繊維の原材料は、綿花や羊毛であるならば、これはある程度手が打てましょう。その羊毛でさえも、昨日も委員会でやりましたが、モヘア・ヤーンの輸入を、あれほどいやじゃ、いやじゃと与野党一致していいながら、その輸入制限ができていない。その上、なお大切なことは、今日化学工業が行われますと、必ずそこから繊維原材料が生まれつつあるのであります。これを紡績の方に売り込んで参ります。紡績は、これを加工して糸にしようという努力が、あっちでもこっちでも行われておる。日本で行われておるだけではない。アメリカのパテントも買いましよう、イギリスのパテントも買いましょうと、その買いたい人がたくさんに出てきて、どうです、テトロンのごときは奪い合いではございませんか。こういう状況をほっておいてからに、ちっとも抑制、制限もせずに置いておいて、制限するのは、やむを得ずそれを受けて立った末端の機場や最終仕上げの染色加工部門。こんな部門を押えておいて、どうしてそんなことができます。洪水で山の上からどんどん流れてくる水はほっておいて、最後に海のはたにいくときに小さい土管をはめ込んだって、これはよそにあふれるだけではありませんか。これはどうしてくれますか。この原材料部門に対する政策が、繊維局ではできかねる、大臣ならばできるのだ。繊維局長だけでは、繊維の設備制限とか、繊維製造制限といったって、とうていでき得ることではない。それを放置しているのが、あなたなんです。これはどうしてくれます。
  45. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 同じ繊維品と申しましても、これは先ほど来申しておりますように、いろいろ種類があって、それを今後の嗜好に適するものに応じて変えていかなければならぬ。従って、繊維品の中でも、まだ育成しなければならぬ部門もたくさんある。また押えていかなければならぬ部門もあるわけです。それを一がいに、同じ繊維品だからというて、また従来のものばかり追っていくという考え方では、私は今後の輸出も、国内の問題もいかないと思います。それで原材料につきましては、必ずしも野放しでも何でもないのでありまして、今後要求があれば、需要がなければこれは押えるというのは、当然のことと思っております。
  46. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは困ります。野放しという実例を御存じあって、とぼけていらっしゃるかもしれませんから、ここに明らかにいたしましょう。第一に、石油の化学工業が発達します。そこに糸へんの材料ができます。石炭の化学が発達します。またここにそれができます。肥料の工業が盛んになりますと、ここにまた糸へんの材料が生まれております。こういう調子なんです。どの工業もこの工業も、およそ糸へんの材料を作らないというような化学工業は、ほとんどないのです。これが従来の紡績業者との結びつきにおいて——何の結びつきかといえば、血統、毛並みの結びつきと金融の結びつきなんです。これによって、またいわゆる糸に加工することが、今ずっと行われているのです。これは糸へん業界の識者が、もう数年前から憂慮しているところなんです。それに対して、通産大臣は、いやそんなことはありませんと言ったら、今の輸出数量と同じことですよ。そんなことは、私が今ここで口火を切ったのが初めてですけれども、業界の識者では、すでに前から憂えられていることなんです。うそだと思いなさったら、田代会長にしても、袖山さんにしても、あるいは賀集さんにしても、そこらに一ぺん聞いてごらんなさい、みんな同じことを言いますから。これに対して、大臣はどうお考えでございますかということを聞いておる。
  47. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 自然繊維と人工的な繊維と、これは将来のことを考えますと、だんだん転換していくと思います。要するに、その間の調和をどうするかという問題、これにつきましては、実は先般も繊維の各種類の業界の代表者がお集まりになって、毎月集まろうじゃないか、こういうような話で、そこで一つ検討してもらいたい。このコンビネーションをこのままにほっておいて、何らの方針も立てずにいきますと、どうも今度いろいろ問題が起ることは必然でありますから、その調整をどういうふうにやっていくかということについての話し合いの場を作るというふうなことで、今後の大きな研究課題として、われわれも乗り出しておるわけであります。
  48. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ここの答弁をうまく切り抜けるということでなしに、大臣としては、ほんとうに真剣に考えておいてもらいたいのです。と申しますのは、ただいま御承知の通り、銘柄にすればナイロン、ビニロン、アミロン、アセテート、きょうこのごろはテトロン、テリレン、テビロン、このように化学繊維の銘柄もふえ、数量も徐々にふえる傾向がございます。このことはやがて、今日スフ人絹が過剰生産だといわれ、操短しなければならない状況に追い込まれている、その轍を再び踏むのではないか。なぜかならば、各企業家としては、よそが転換した場合に、わが社も同じように新しきものにつかなければ、自分の会社の経営上困りますから、各社が競争してそれに向っておる。ところが、その総体を一歩高いところでながめて、これにブレーキをかけたり、あるいは交通整理をしたりという役割は、当然のことながら政府の任務なんです。それを政府が怠っておれば、必然的にそうなるのは目に見えている。操短々々というと、あなたはどうお考えか知りませんが、操短ということは、企業家にとっては、決して自分の会社の設備の操短ではございません。自分のところは次々とふやしたいのです。操短したいのは、相手方の会社の設備を操短したいだけのことなんです。決して自分のところを操短しょうとか、自分のところを制限しようなどとは考えておらぬのですよ。そういうやさきに、合成繊維だけはよろしいというわけで、こっちの門をあけっぱなしにしておいたならば、ここへどんどんと殺到するのは当然のことです。そこで、この交通整理なり、ブレーキがかからないというならば、一つ私は次にお尋ねしたい。  大臣、あなたは、数量はこの程度、とおっしゃいました。それは、アメリカ向けの場合は、そう言わなければいけないでございましょうが、少くとも私、ないしは社会党の審議会で調査したところによれば、決してこの程度のものではございません。なぜかならば、インドネシアの賠償が解決をすれば、ここに金額にして二億ドル程度の輸出増が見込まれます。その約七割と言いたいが、まあ六割五分程度遠慮しておきましょう。これは繊維でございます。なぜかならば、すでにそういう実績は、日本インドネシアに対して持っていた。ただし、あの焦げつき債権のおかげで、通産省みずからの手によってストップ令をかけられたわけです。その結果、インドネシアとしては、はるか遠い、しかも高い品物をイギリスから買い入れ、何とかして日本のものがほしい、ほしいという声が、今やあちらの住民に充満している。これを解決すれば、当然のことながら輸出できる。先ほど松平さんが、賠償の中に入れる気はあるかないか、賠償にこれを入れれば、それが見本となって、やがて次の商品の買付の原因になる。一挙両得だからこれをやったらどうか、こう言われているのは、その点ですよ。次に、先ほど中国の話が佐竹さんから出ておりましたが、中国の糸へんの需要というものは六億です。しかも、あすこの生産数量というものは、伝えるところによれば、もう自給自足が立って、よそへまで売り出しているということを言われますが、あにはからんやでございます。そういうことを言う人は、糸へんの質を見きわめない、しろうとの人の帰朝報告なんです。中国では、なるほど東南アジアインドあたりまで糸は売りに出しております。しかし、その糸の質は何かというたら、綿でいえば三十番手以下ばかりでございます。しかもネップの非常に多い製糸でございます。従って、あなたのおっしゃるように、程度の高いものを作れば、中国へもどんどん売れていきます。程度は低くても、現在の質だけでも、なお人絹糸は一回の買付が千五百万ポンドと、こう聞いている。それをよう売り付けないのが日本状態なんです。なぜ売り付けないか、それは日本の政策が悪いからです。向うは買いたい、買いたいと言っておる。雑品公司の孫立基あたりは、ぜひこちらからほしいと言うておる、すでにオファーもたくさんきている。それをようやり得ないだけの話です。指紋の問題だとか、人数の問題だとか、国旗がどうでしたとかこうでしたとか、まるで小学校の生徒みたいなことを言うておる。そこで、これを解決すれば、中国へ伸びるのは、まず第一番に人絹糸、次に伸びるのは、毛織物の中の、特に梳毛がきっかけになりますが、続いて北部地帯に紡毛製品が、日本の現在の設備をフルに動かしても、なお足りないほど出ます。現に梳毛が先般出たのです。あまり急激に出たものですから、クレームをつけられなければならぬような品物と一緒くたに持っていった。これほど出るのです。だから、輸出の数量をそんなに遠慮して、この程度などとおっしゃらずにもっともっとその輸出振興策をお考えいただきさえすれば、何もアメリカ市場とは言いません。もちろん、それも大事な市場でございますけれども、東南アジアと中国と、その東南アジアと中国にまたがる華僑、これに対する対策が完全に行われさえすれば、糸へんは決して斜陽産業ではない。私はかように確信し、業界もまた、さように確信すればこそ、片や操短して、片や増設をしていくという状況でございます。実態をよく把握していただきまして、糸へんの産業を一そう振興していただくよう、大臣決意を促す次第でございます。
  49. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 別に輸出振興なり、あるいは繊維産業の振興を押えるとか、そういうような意味は、一つも私考えておらぬのであります。ただ、ほかの商品は、二倍なり三倍なり今後ふえていく。しかし、繊維品は、そうはふえません。先ほど言いましたように、一割とか二割とかいう程度のものです。従って、ほかの産業につきましては、ただいま申し上げましたように、重化学工業品その他について、輸出振興をはかっていくと申し上げたのであります。中共につきましても、そのことは言い得ると思います。と申しますのは、中共は、御承知のように、やはり機械類、あるいは繊維にしましても繊維原料を入れる、将来はどうしてもそういう方向に向っていくと思います。また現にそういう傾向にもあるわけであります。従って、中共が有望な繊維の市場であることを、決して否定はしませんが、あまりまた多くを望むというわけには参らぬということなのであります。そういう意味で、先ほど来御答弁を申し上げたのであります。
  50. 松平忠久

    松平委員 関連質問が出ましたので、続けていきたいと思いますが、昨日、ただいま提案になっておる日本貿易振興会の事務的なことについて質問をし、また資料の要求をして、本日ここに資料が出ております。今までのジェトロを、より拡大強化していく、こういう考え方提案されている法案でありますが、今までのジェトロに、いろいろな非難があった。この非難をよく反省して、再び非難が起らぬようにしていかなければならぬと思うのであります。そこで、第一点として伺いたいのは、貿易振興会もしくは今のジェトロがやっておりますことと、それから外務省の在外公館でやっておりますことと、かなりダブるようなことがあると私は思うのです。調査にいたしましても、あるいは貿易のあっせん等にいたしましても、どうしてもダブるようなことになると思うのだが、聞くところによると、閣議か何かの了解事項というのがあって、そこのところの調整をとるようになっておるということでありますが、どういうふうなやり方でこの調整をとっていくつもりであるか。その了解事項というものは、どんなことになっておるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  51. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 お話のように、外交関係とこのジェトロの仕事とダブる、ともすれば、接触面は確かにあるわけであります。というより、結局同じ目的で、官としてやる場合と民としてやるべきことと、並行してやっていかなければならぬ問題であります。従って、市場調査とかいうような面につきましても、官側として見る市場調査もありますし、また民側として見るものもあります。しかし、いずれにしましても、これが同じことをやったのでは意味をなしません。これにつきましては、もちろん外務省と通産省と常に緊密な連絡をとって、実際にやることの分野なりあるいは方法、目的なりについて、こちらでいろいろ協議していかなければなりません。この協議は、緊密に連絡をとるというので、やはり覚書の一つになっております。  それからもう一つは、海外に出張しておりますものにつきましては、やはり官としていろいろ指導なり、監督というと多少語弊があるかもわかりませんが、指導監督してもらわなければならぬ。それにつきましては、外務省が、出先のジェトロの調査員に対しては、指導監督するということが主眼になった覚書があるわけです。
  52. 松平忠久

    松平委員 そこで、日本貿易振興会の仕事は、一体どこに重点を置いて今後やろうとしていかれるのか。今までのところは、北米にかなり重点を指向されておったように思うのです。ところが日本貿易は、北米との貿易を、市場転換をはからなければならぬという段階にあるので、むしろ行き方としては、今までのように、北米中心のジェトロの活動ということではなくして、日本貿易振興会は、他の地域において活動しなければならぬということと、もう一つは、ただいまの御答弁のように、覚書の交換というか、了解事項というものがあるようでありますけれども、なるべくならば私は、日本人のだれもいないようなところ、在外公館も何もないようなところにこそ、相当力を入れていくべきではなかろうがと思うのだけれども、その点に対して、どこに重点を置いていくのか、伺いたいと思うのです。
  53. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 お話はごもっともで、われわれもそう思っております。ただ、ニューヨークにしましても、まだ手不足で、必ずしも十分でないというような面があります。極力アメリカ以外のところに重点を置いていきたいと思っておりますが、御承知のように、まだ輸入制限なんかの問題もありますので、勢い、そういう面も補強していかなければならぬというので、実はその点では、今度の予算は十分とは言えませんが、極力御趣旨のような考え方で配置していきたい、かように考えております。
  54. 松平忠久

    松平委員 今までの調査なり、貿易のあっせんで、よく苦情を聞くわけであります。その苦情は、結局、派遣されている人の能力があまりよろしくないということ、それから、ともすると、その人たちがある商社のひもつきになっておる、そういうことを聞くわけであります。そこで、結局、日本全体の貿易を伸張するという立場ではなぐて、ひもつきのところとのコネクションによって、そこの御用を承わるというようなことがかなり多いということを、われわれは聞いておるわけであります。そこで、これを根本的に直していくためには、結局、待遇を改善することよりほかに方法はないと思う。そうして、もっと有能な人を連れていくということにするか、もしくは待遇を改善して、自分だけの仕事をするというような、アルバイト的なことをしないような方向に持っていかなければならぬ、こういうふうに思うのです。きょう提出された予算書を見ましても、ジェトロの場合と日本貿易振興会の場合と、手当等はほとんど変っておらぬ、こういうふうに見えるのですけれども、一体この程度で仕事がうまくいくのかどうか。また、たとえば、海外市場調査、最高八百三十ドル、最低四百八十ドルとありますけれども、これは海外に派遣されている日本の商社の職員と比べると、はなはだ少いと思う。またこれは、在外公館の公館員に比べても、きわめて貧弱な待遇であると思うが、一体これでもってうまくいくかどうか。これはもうこれでもってきまっただけであって、この表の通りに俸給を払っていくということになっていくということになっておるわけですか。
  55. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、今までひもつきというのは、いろいろ府県の寄付金とかいうようなものにたより過ぎておった。大体が政府として本腰を入れた機構でなかった、また安定した機構でもなかったわけであります。今度、二十億の出資をいたしますと、安定しておりますので、その意味で、人が得られるというふうにわれわれ考えております。もちろん待遇は、ここに掲げておりますように、別に変らぬというので、おしかりをこうむると思います。この点は、政府の補助金のベースがこういうことであるということでありまして、ジェトロの収入その他によって、これをふやすことはできるわけです。ただ補助金は、こういうものをベースとして出しておる、こういうことであります。
  56. 松平忠久

    松平委員 補助金がこういうことであるということになりますと、このジェトロや日本貿易振興会の今後の活動によって、収入をふやして、そうしてこれ以上の手当を期待し得る、こういう御答弁ですか。
  57. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 それは出すことはできます。
  58. 松平忠久

    松平委員 そういたしますと、通産省から別途に出ておるところの事業計画というものがあります。この事業計画の中には、これらの手数料等の収入を見込んだ上の事業計画というものになっておるのかどうか、あるいはそれは全然入ってない事業計画ですか。
  59. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ちょっと補足してお答えいたします。在外職員の給与の問題でございますが、ただいま大臣が御答弁になりましたように、海外市場調査の関係の派遣調査員につきましては、補助金のベースからいいますと、三十二年度と三十三年度とは、ほとんど変りがないのであります。ところが、貿易斡旋所につきましては、かなり増加をいたしております。たとえば、斡旋所の所長にいたしましても、現在最高が九百ドル、それが千八十ドルというわけであります。それから最低も、この表でごらんになるように、上っておるわけであります。このべースがどの程度になるかということになりますと、長にしましていわゆる在外公館の若い参事官クラスになるのではないかと思っております。今度新しく派遣になります特別宣伝関係の人間につきましては、大体海外市場調査と同率を一応補助金のベースで考えられておるのであります。しかしながら、平均をいたしますと、ここに掲げてございますように、現在は一人当り六百五十ドルになっておりますが、この新法人会におきましては、七百十ドル程度になるわけでございます。これは、今大臣からも御説明がありましたように、いわゆる補助金のべースでは、実はこういう格好になっておるわけでありますが、われわれといたしましては、できるだけ民間からの醵出金あるいは今度二十億円の資本金をいただくことになりますので、その利子の一億二千万円を何とか活用しまして、できるだけの待遇の改善に努めたい、こういうふうに考えております。
  60. 松平忠久

    松平委員 私の質問に対して答えてもらいたい。私が今申し上げたのは、「昭和三十三年度日本貿易振興会出資金及び事業補助金明細」というのがありまして、ここに一つの事業計画というものが出ているわけです。その事業計画というものは、収入金や何かも見込んでおることになっておるのかどうか。日本貿易振興会は、収入金、手数料等の雑収入とかそういうものは、どのくらい予定していますか。
  61. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 資料を前にお配りいたしておりますが、補助金のほかに、地方庁の交付金としまして三十三年度におきまして六千万円、それからこの基金の運用収入は、一応一カ月ばかりおくれるという前提に立ちまして一億一千万円、それから民間の賛助金が二千五百万円。この民間の賛助金については、最近経団連方面におきまして、大いに協力してやろうという動きが非常に強くなっておりますので、われわれは、もっと多くを期待できると思っておりますが、一応従来くらいのベースで二千五百万円、こう考えております。それから利用者の負担としまして六億九千二百万円、雑収入を千二百万円、こう予定をしておるわけであります。
  62. 松平忠久

    松平委員 今ここに出されたのは、それらの収入を見込んだ上の人件費じゃないわけですか。大臣答弁によると、これは補助金によってこれだけなのだ、しかし、その他の収入があるならば、もっとよけいになるのだということだった。補助金だけで、つまり政府の二十億の利息等によってまかなわれることを基準にして、今ここに人件費を計上された、その他収入があるならば、これよりふえるのだというお話があったわけだ。今あなたの説明したところの地方庁とか、あるいは民間の賛助金とかと、利用者負担、雑収入というのも入れれば、この人件費が、手当その他にさらにどのくらいふえるのです。
  63. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 先ほど申し上げました在外職員の給与は、御説明申し上げましたように、補助金のベースになっておるわけです。ところが、今また繰り返して申し上げましたような国からの補助金以外の収入、地方庁から、あるいは民間から、あるいは利用者の負担分というふうなものは、それぞれ国内費あるいは在外職員の給与以外の費用に大部分が使われてしまうわけであります。またそれは、御存じのように、在外職員がいろいろ送ってきました報告にしましても、それを整理して国内に配るとか、あるいは見本市にしましても、その関連をした調査員なり斡旋所の給与以外に、かなりの費用がかかるわけです。従いまして、大部分はそういうものに充てられるわけでありまして、従って、在外職員の待遇の改善に回される分は、率直に申しまして、あまり期待はできないのであります。しかし、たとえば先ほど申し上げましたように、民間の賛助金等につきましては、かなりこれよりも、より多額が予定されるのじゃないかと思いますので、そうなりました場合は、できるだけそれを待遇の改善の方に回したいという意味に御説明申し上げておるわけでありまして、この収支予想表ということでお配りしています程度の国庫補助金以外の収入をもってしては、あまりこの在外職員の待遇の改善の問題も、先ほどの資料で御説明いたしました程度の改善以上には、大きくはできない。この予想しました収入以上が期待された場合にやれる、こういう趣旨でございます。
  64. 松平忠久

    松平委員 今のお答えは、どうもあいまいです。人件費というものは、私はきちっとしてあるべきものだと思うのだけれども、今のお答えによると、地方交付金、民間賛助金、利用者負担あるいは雑収入というものが、この収支予想表に計上されておるものが集まるということになっても、大部分はほかのものに使われるのだ。そうすると、小部分は人件費に回る、こういうことになるわけです。それから、あまり期待できないということを言っているけれども、あまりでなくて、幾らかは期待できるのかどうか。もっと正確に御答弁を願いたいと思う。事これは身分上の問題です。従って、これはこの収支予想表でいくならば、さらにこのほか幾らか、どの程度が人件費に回り得るのかということを、私は聞いておるわけです。
  65. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 今この頭割りにしましても、給与の改善という面でどの程度になるかということは、先ほども申しますように、なかなか算定がむずかしいのであります。しかしながら、われわれといたしましては、できるだけ民間等からの寄付を仰ぎまして、給与の改善をいたしたい、こういうふうに申し上げておるのでありまして、一がいに給与だけでも判断はできないのであります。一人派遣されている調査員につきましては、かりに六百五十ドルもらっている。給与は六百五十ドルだ。しかし、その事業費として二百五十ドルもらえるということは、結局九百ドルの範囲内において調査もし、その生活もしているということでありますので、あるいは給与の改善ということにかりにならぬでも、事業費といいますか事務費を増加することによっても、それはできるわけでありまして、その辺のところを、今まだ最終的に、その月給として今差し上げた表以上にどの程度になるかということは、非常に申し上げにくいのでありますが、できるだけそういう趣旨でやろう、こういうわけであります。
  66. 松平忠久

    松平委員 そんなばかなことはないと思うんだよ、僕は、人間を使うときに。またこの法律案がかかってきているときに、人件費が幾らということを算定して、一応基準を出して、もっとよけいやるのだ、こういうことをあなたは言っているが、しからば、ここに収支予想表というものが出てくる。この収支予想表というものの中で、こういうものを予想した場合に、これを前提として、この中で幾ら給与に回せるのか、このほかに幾ら回せるのかということが、あなた方、できないことはないはずだ。この予想が出ているのだから、この予想表を前提として、給与は幾らかということをきめなければ、一体どうしてこれはできるのか。この協会なんというものができるのか。それは事務費を増す。事務費を増すということは、あり得るかもしれません。しかしながら、給与というものは、勝手に、これはもうかったから増す、もうからなかったから削る、こういうことであるのか。これは商売をやっているものじゃないと思うのだ。これは国家の外郭団体なんだ。国家の外郭団体というならば、そこの職員の給与というものは、きちっと決定してこなくちゃいかぬと思うのだ。それをあなたは、ただ一応こういうふうに決定しておくけれども、これ以上にやるのだと言っている。やるのならば、この収支予想表の中で、あまり多くはやれないということを言っている。あまり多くはやれないといっても、やれるのだったら、それを計算して出してくるのが当然じゃないかと思う。そうしなければ、何で新しい機構を作って、人間を雇っていく上に、そういう基準というものがないのか、その点を私は聞きたいのです。
  67. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま申し上げておるのは、これ以上には絶対にやれないのかというのに対しまして、これは補助金のべースであるから、上げることはできるということを申し上げておるのが一点。それからもう一点は、これはあくまで収支の予想でありまして、実はいろいろ経団連その他と話しておりますと、政府がそこまで力を入れるのならば、もっと会費をふやそうというようなお話があるのでありまして、まあそういうようなものができれば、待遇の改善ができる。こういう意味で申し上げたわけであります。
  68. 松平忠久

    松平委員 いや、それでも、私は納得いかぬと思うのですよ。しつこいようだけれども、今ここに収支予想表ができておりまして、この収支予想表というものを前提に、今審議しているわけです。ところが、この収支予想表の中で、ただいまここに手元に配付になっているところの給与の表があるわけだ。この表以外にもっと手当を出せるんだ、こういうことを言われているから、しからば幾ら出せるのだということを、私は聞いているわけです。この予想表というものに基いて幾ら出せるのだ、あまり多くは期待できない、あまり多くは期待できないなら、少しは期待できるだろう。そこで、それを聞いているわけです。そうじゃなくして、あっさりかぶとを脱いで、もうこれだけなんだ、あとはみな事務費に回すんだという答弁でも、われわれは納得するわけです。そうでなくて、事務費に回すことは回すけれども、少しは給与の方にいくと言うから、しからば、その少しというのは幾らかということを聞いているのですよ、予想表が出ているのだから。
  69. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 この予想表を作っているときに、そういうことを期待する余裕があったとは考えておりません。しかし、その後いろいろ状況を見ておりますと、ただいま申し上げましたように、会費をもう少しふやそうじゃないかというような動きがありますので、そういうことが実現すれば、必ずしもこれで限られるものではありませんのでこれを増すことは可能だ、こういうことを申し上げておるのでありまして、お話通りに、収支予想表を作っておりますときには、これ以上に払うという考えではなしに作っているわけであります。
  70. 松平忠久

    松平委員 そうすると、今の大臣答弁局長答弁は、違うのですがね。この予想表を作った、そこでこの予想表に書いてあるいろいろな収入というものは、大部分は事務費と調査費に回るのだが、幾分は人件費に回るのだというのが、今の局長答弁だった。ところが大臣答弁は、この予想表は、作ったときには待遇改善というようなことはなかったので、ここに与えられた予想表の中の数字は、待遇改善に回せる金はないのだ、これ以上のものか出てきたときに待遇改善に回せるのだ、というのが大臣答弁です。二人の答弁は違うのですよ。一体どっちが正しいのです。
  71. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の申し上げた通りのようであります。
  72. 松平忠久

    松平委員 それはもう追及しません。あまりに答弁があいまいなので、しっこく聞くわけです。  そこで、伺いたいのは、この給与の中には、これは給与がぽつんとこれだけあって、家族手当というものは、これに含まれておらぬわけですか。
  73. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 この中に、家族手当を含んでいるわけであります。
  74. 松平忠久

    松平委員 そうしますと、もし家族手当を含んでいるということになりますと、たとえば、貿易斡旋所の所長が一千八十ドルということになっているが、この中で、家族手当は幾らなんです。それから海外市場調査員の八百三十ドルは、家族手当は幾らなんです。つまり、本俸と家族手当は、どういうふうな率でこれは分れているのですか。
  75. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 家族手当は、斡旋所の所長につきましては三〇%、それから斡旋所の所員と市場調査員につきましては、二〇%を見込んでいます。
  76. 松平忠久

    松平委員 そうしますと、家族のない者は、斡旋所長は約七百ドル、それから所員は二〇%引けば四百八十ドルぐらいになるわけです。従って、これはかなり商社との間のつり合いがとれてこない、こういうふうに私は思う。そういうことであるとするならば、また在外公館との間の、あなたは若い参事官と同じだと言われたが、家族手当を引いてしまうということで、一人七百ドルということになると、かなりそれは違ってきます。そこで、先ほど申し上げたような工合に、ひもつきだとかなんとかいうことが起る可能性があると思うので、この点は何とかならぬものか。また、聞くところによると、大蔵省との折衝においても、もっと出さなくちゃならぬということを強調されたように聞いておるけれども、そのいきさつを一つ聞かしてもらいたい。
  77. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 大蔵省の折衝の過程における予算としては、これかぎりぎりであったわけです。しかし、われわれとしましては、年を追いまして、できるだけ改善に努めたいというふうに考えております。ただ、今、先生のおっしゃいました斡旋所長の千八十ドルでありますが、私もしばらく在外公館でごやっかいになったのでありますが、家族手当を入れまして、若い参事官はやはり千八十ドルであります。単身に行っておる場合は、やはり四割引になっておるのであります。従いまして、斡旋所の所長が、参事官並みというのがいいか悪いかの議論はあろうかと思いますが、今度の改善ならば、十分とは言えませんが、かなりの改善になっておるのではないか、こういうふうに考えております。
  78. 松平忠久

    松平委員 もう一つ、最後に伺いたいのは、これはこの前横井君からも出たのですが、府県からの補助金の問題です。今まで四千五百万円取っておった。そこで、これは今度の二十億によって、府県では、もう出さなくてもいいのだ、こういう空気が非常に濃厚にあるにかかわらず、収支予想表によると、去年よりもよけいに、六千万円取らなければならぬ、こういうことになっておるわけです。非常に矛盾していると思うのですが、この点に関しては、府県との間に何か折衝をしておられるのがどうかということ、それから、これは二十億出したならば、もはや府県等をあてにしなくてもいいじゃないかという議論が府県側にあるのは、私は当然だろうと思うのですが、それでも、なおかつ府県から取る分をよけいに取るというのは、一体どういう根拠に基いて取るのか、その辺を伺いたいと思います。
  79. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 三十二年度の地方庁からいただきましたのは四千五百万円、それを三十三年度におきまして六千万円見ております。千五百万円の増を見ております。これは、東京都は従来よりも千五百万円多く出してやろうという非常に固いお話が実はありましたので、それを見込みまして、それから東京都以外の地方庁につきましては、大体現状ということで見たわけでありますが、いろいろ最近の話し合いによりますと、もっとふえるのじゃないかというふうに期待をしておるような次第であります。
  80. 松平忠久

    松平委員 これで私は質問を終りますけれども、一つ要望を申し上げておきます。この日本貿易振興会を作っても、ジェトロと同じような欠陥が、こういうふうな給与の状態で現われてきます。そこで、どうも日本人の中には、ジェトロで海外において活躍するようないい人間が、正直に言っていない。それは、官庁の人間もだめだ。また貿易商社の職員もうまくいきません。帯に短かし、たすきに長しというのでありまして、日本人の中には、国の貿易をあっせんし、もしくは国の貿易の伸張をはかるための人材というものはないのです。そういう教育は、日本ではしておりません。そこで、こういう人たちを見つけるのに非常に困難であり、また見つけても、いいのがいないですから、どうしても何か訓練を与え、研修をして、その人材を養成していくよりしょうがないのです。そこで、これらの人材を養成し研修をしていく、そして意識を高めて、技術その他の知識も十分持って活躍できるような人間を仕立てていくことが必要であると同時に、その人間を仕立てていくためには、どうしてもやはり待遇というものを考えてやらなければならぬので、その点を特に考えられてやっていかれることを希望しまして、一応私の質問を打ち切ります。
  81. 笹本一雄

    ○笹本委員長代理 阿左美君。
  82. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 時間もありませんので、簡単に一つ大臣にお伺いいたしたい。昨年の春以来、国際的に非常な不況によりますところの輸出の停滞、わが国の国際収支の悪化に伴う金融引き締め政策の実施等によりまして、内需にもまた非常な不況の状態が参りまして、繊維業界の不況は逐次深刻化して、私どもの予想しておらないような事態が起りつつあるのでございます。この間、各繊維界とも、需給のバランスを調整するために、現在操短を実施して参っておるのでございます。現在、次に申し上げますような操短を実施しておるのであります。綿糸においては二割三分、綿織物においては三割、スフ糸においては三割、スフ織物においては三割、人絹糸においては五割、人絹織物においては三割、毛糸が三割、毛織物が三割。しかしながら、最近におけるところの繊維状況は、一般に悪化が非常に急変いたしまして、次々と安値を示しております現在、昨年の一月末の相場に比較いたしますと、横浜の生糸が一四%、東京人絹が二六%、東京綿織物、これは三十番単糸でございますが、一四%、大阪スフ糸が三〇%、名古屋の毛糸が、四十八番双糸でございますが、三七%、人絹塩瀬が二五%、めいせんがやはり二五%、こういうふうに各界の繊維は、現在操短を実施しておるのでございます。そのために、コストの逆比例によりまして、暴落したために、いずれも現在出血生産を継続しておるのでございまして、経営はいよいよ困難な状態に陥って参ったのでございます。そのために卸、小売の各部門、すなわち流通段階におきまして、製品の取引は、先行き不安のために、ほとんど現在では停止状態、こういう実情でございまして、このまま放任しておきますならば、中小企業は申すに及ばず、倒産者は続出して参るのでございます。そのために、製品の投げ売り、乱売ということが最近行われつつあるのでございまして、このまま放置しておきますならば、繊維界には、いまだかつてないところの恐慌相場が出現するのではないかと考えられるのでございまして、私どもはこの前途を非常に憂慮しておるわけでございます。  こういう最近の実情から、繊維界は、今刻々と不況の状態にありますが、これに対して、どうも政府は、比較的安易な気持でいるのではないか。私どもはこれを、思わぬ結果が生まれてくるのではないか、こういうふうに非常に心配をしておるわけであります。これは、何と申しましても、現在政府におきまして対策を講じていただかなかったならば、今後、非常に悔いを残すようなことが起きるのではないかと考えます。現在、業者は、金融のために投げ売り、乱売をしておるのでございまして、金融措置を講じていただきませんと、現在の実情から見まして、将来、非常なる問題が起きてくるのではないかと考えるのでございます。もちろん、過剰生産によって今日の結果をなしたということは、業界におきましても、承知しておりますので、できるだけの生産の制限はしておるような状態でございますけれども、現在の滞貨と申しましても、これは常時の生産の滞貨とは違いまして、実際に取引が停滞しておりまして、製品によっては、ほとんど取引皆無ともいうような品物もあるのでございます。決してただいま野放しで生産者が生産をしておるのじゃございませんで、できる限り生産は調節をしておる現状であるにもかかわらず、製品が滞貨しておるということは、ある意味からいきますと、政局不安とでも申しましょうか、いろいろな政治的関係もあるのではないか。ただ業者が無謀な生産をしておるから滞貨するのだというのみではないと、私は信ずるのでございます。何と申しましても、中小企業は、資金の浅い業者でございまして、この際何とか資金の面において融資を与えてやらなかったならば、これ以上の乱売をするならば、もう最後は倒産続出という結果になるのではないかと思われます。こういう事態になりますれば、何らかの政治的な手を打たなかったならば、解決をしないのじゃないか、こう考えますので、一つ大臣に御所見をお伺いいたしたいと思います。
  83. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 繊維の不況の問題につきましては、われわれ、決して楽観をいたしておるものではありません。非常に憂慮をいたして、あらゆる手を打ちたいというわけで、先ほど来申しておりますように、業者の方々のお話のような手は、一応打ってきたわけであります。過剰織機の整理の問題、あるいは一手買取機関の設立の問題、また、まだ実現はいたしておりませんが、賠償につきましても、検討いたしております。ただ、インドネシアの政情不安という問題と、暖冬異変というような問題が新たに起りまして、三月まで生産調節をやっていただきましたら、何とか正常に返るというふうに最初考えておりましたのが、非常に変って参りました。さらに操短を続けていただくなり、ものによりましては、さらに強化していただくというようなことをやらなければならぬことは、事実であります。従って、私は、生産調節が十分できるということになりましたら、それに伴って、金融の面につきましては、これは一がいには言えませんが、ケース・バイ・ケースによって考えていかなければならぬと思っておりますし、また事実考えてくれるように話はしてあるわけであります。また、政府関係の機関としましては、商工中金にしましても、その他の金融機関にしましても、極力融通を円滑にして、そうしてお困りにならぬようにということにつきましては、いろいろこちらからも申して、極力善処をいたしておるのでありまして、多少ずれて参ると思いますが、しかし、お話のように、どん底までいってしまうというようなことは、極力避けるように心がけておる次第であります。
  84. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 現在、一番金融機関に信用のないのは、維繊業者です。各地方銀行あたりといたしましても、繊維関係の業者には、絶対融資はできぬというような実情であると思うのです。それも、考えてみますと、無理からぬことでありまして、製品が二割も二割も五割も値下りをするというようなことであれば、いかなる業者といえども、信用が自然になくなることは、当然なことだと思うのであります。結局、ただいまの実情から申しますと、滞貨融資ということは、絶にできないし、やらないわけです。そういたしますと、どうしても製品を乱売する以外には道がない。これは、もう採算とか利益とかいうものは度外視して、幾らでも買手のある値段で売って、その日を過ごさなければならぬというような現在の実情であるように考えられるのです。しかし、こういうことを長く継続するわけにはいかないのでありまして、結局これに対しましては、何らかの措置がなければならぬと思うのでありまして、それがあとの祭にならぬように考える必要があると思います。どうも消費者におきましても、買わずにいれば、一日おそければおそいほど、物が安く買えるのだというような考え方から、最近百貨店あたりにおいても、非常に売り上げか減っておる。ことに繊維品関係がそうであるということは、消費者も、一日過ごせば過ごすだけ物が安く買えるという不安からきておるのが、現在の実情だと思うのですが、これは何らか資金を与えて、そう乱売しなくても、その日が過ごせるということにしてやらなかったならば、これは限りのないことになるのじゃないかと思います。政府一つの政策といたしまして、金融引締めというようなことから、滞貨融資は絶対やってはならぬし、できないというようなことから、こういうような現象が顕著になってきた。これがある程度滞貨に対しても融資か得られるということになれば、そう投げ売りをしなくてもよろしいのですが、現在は投げ売り以外には道がないという状態でございますので、金融の面に対しまして、何らか特別の御処置をとっていただくことはでき得ないものでしょうか。
  85. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 政府が、滞貨融資は絶対にしない、こう申しておりますのは、滞貨融資をやるということになりますと、生産調節も何もやらずに、滞貨に対して融資をすると安易に考えられては、非常に困りますので、従ってわれわれとしましては、操短をしっかりとやっていただく。それに対して、あらゆる努力をしていただくということでありましたら、ケース・バイ・ケースで、金融については考える。これは、従来からそういうふうに考えております。滞貨融資という言葉は、どうも語弊を伴うものでありますから、厳に慎しんでおるようなわけであります。私、聞いておりますのに、必ずしも繊維業者の方々に、信用がないとは考えておりません。日銀でも、繊維業者の方がむしろまじめだということを言われているようなわけでありまして、その点につきましては、まず根本の生産調節をしっかりやっていただく。そうすれば、十分考えていこう、こういうことであります。 さらに、対策としましては、これは全部の繊維についてはそうはいきませんが、場合によりましては原料の割当、それから輸入につきましても極力押えて、価格の安定をはかりたいと考えております。
  86. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 確かに、滞貨金融という言葉は悪いと思います。現在の繊維製品は、常態においての滞貸ではないのです。業界でも、生産の調節はでき得る限りしておりますから、生産は相当減っているわけです。ところが、いかに減っても、取引がほとんど停頓しているのですから、先行きに道がないということになっておりまして、そこに滞貨ができるわけであります。これは生産者も、扱い業者も、消費者も、心理状態に非常な影響があると思う。そうなりますから、これは政府のわずかの施策によって回復することができるのじゃないか、こういうふうにも考えられるのでありまして、実際に物があり余って、実需に合わぬところの過剰生産が継続しておるのならば、なかなか重大な問題と思いますけれども、そう大した滞貨ではないのです。やはり売れないし、買わないし、扱わないというようなことから、いろいろな結果が出ているのではないか、こういうふうに考えますので、これは何らかの政治的の手を打つ必要があるのではないか。金がなければ貸すから、そう投げ売りをするなと言うだけでも、相当効果があるのではないか、現在は、銀行へ行こうがどこへ行こうが、金は借りられない。だから、投げ売り以外に道はない。ただ金を借りようといたしましても、こういう切迫した時期でありますから、今申し込んで今金を借りるわけにいかない。融資を受けるにいたしましても一月とか二月、あるいは三カ月もたたなければ手に入らない。そのうちに手形の期日がくる、投げ売りをせざるを得ない。こういうのが現在の実情でありますので、どうしてもある程度の手を打っていただきませんと、業者は次から次へと倒産をする。私が非常に心配することは、今までの不況というものは、繊維製品には、いつでもこういうようなことがあるのです。ですから、ほんとうに信用のない人、貧乏人は、なれていますから、そうたまげもしないのであります。今度のは、よく考えてみますと、貧乏人ばかりじゃない、相当な商社、メーカー、またわが国の経済代表しておる人絹六社、貿易会社というようなものまで、今、出血生産です。綿の値段と加工した糸の値段とでは、糸の値段が安いのですから、いかに膨大な資本力を持ち、設備がある業者でありましても、毎日の事業が赤字を出しておる状態では、最後の結果はわかることでありましょう。実際わが国の繊維界というものは、上から下まで一貫してみんな出血、赤字生産をしておるということは、重大問題だと思います。こういうことを長くこのまま放任するならば、国の経済にも、輸出振興どころの騒ぎじゃないと思う。これはどうしても大きな手を打つ必要があると思うのでございます。そこで、金融に対するいろいろな関係は、通産省だけではどうにもならぬと思いますが、幸い大蔵省から大月さんがおいでになっておりますから、大蔵省としてのお考えを、一つお聞かせ願いたい。
  87. 大月高

    ○大月説明員 ただいまお話しの繊維の関係は、大臣からもお話がございましたように、根本的には、やはり生産過剰にあるといわれております。昨年の五月ごろから、金融の引き締めをやって参りましたけれども、ただいまの繊維の状況は、金融の引き締めの影響というよりも、むしろ需要供給の関係に基く点が多いのではないかと、われわれは判断しておるわけであります。金融の面から考えましても、ただ単に滞貨金融をやるということでは、次第に滞貨がふえて、いずれかの機会に、さらに大きな意味の価格の下落を生ずる原因になるということでございますので、安易に滞貨金融はやるべきじゃない。それで、われわれの金融的な感じから申しますと、まず、実際の面におきまして生産の調節をやっていただきまして、次第に滞貨がなくなっていく方向考えていただく。その計画の立ったものにつきましては、それに必要な限度におきまして、必要に応じて金融面についても考えていく。それから、一がいに滞貨金融といわれておりますけれども、いろいろな関係の金融がございまして、たとえば、輸出商品について季節性を持っておるものがございます。たとえば魚のカン詰というようなものを考えましても、北洋のサケ、マスがとれる時期は秋で、輸出期は春になる、こういうものがございます。こういうように、一時どうしても製品としてかかえていなければならぬ性質のものもあります。そういうものについては、やはり一般の金融ベースを考えまして融資すべきもので、織物の関係におきましても、たとえば、国内の内需品でありましても、ある時期に生産されて、季節性がある。それまでは、当然一般の情勢においても、ストックして持っておらなくてはいかぬ。そういうようなものにつきましては、別に金融についてこだわっている面はないわけでございます。一般的な滞貨金融と別に、具体的な実情に応じて考えている次第でございます。金融全体の基調は、ゆるめるわけには参らないわけでございますが、一般的に繊維業者については、金融をつけるについて、信用がないということで避けておるわけじゃないわけでございます。銀行についてそうでございます。銀行についても、具体的に必要に応じて個別的に処理いたしておるわけでございまして、さらに中小金融機関といたしましては、中小企業金融公庫もございますし、あるいは商工組合中央金庫もございますが、組合金融の面についても、具体的に考えておるわけでございます。ただ、繊維の実情からいたしまして、実態が改善されませんと、やはり先行き不安というようなこともあると思いますので、そういうような通産省の方面の価格安定対策とにらみ合いまして、適宜実害がないように、できるだけ安定し得るように御協力申し上げております。金融的にはそう考えております。
  88. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 やはり滞貨というものに金融するということは、これは将来おそるべき結果が起きるというようなことは、一応ごもっともだと思うのであります。しかし、現在の状態は、滞貨という言葉を使いますけれども、実際は極度に生産制限をして、工場の経営の成り立たないところまで生産の制限をやっておるわけですから、その制限をして作ったものがやはり滞貨になっておる。その滞貨が自然に解決するまでは、どうも融資はできない、こういうことになれば、倒れて、しかる後に解決するというところまで得たなければならぬということになると思うのであります。滞貨がなくなれば、むろん品物も必要になるだろうし、また値段も上るだろうし、買い手もあるでしょうが、そこまでは持たないのです。自然に解決するまでは業界は持たないですから、これは倒産続出ということになるおそれがあるのであります。別段繊維業者に対して、特にそういう扱いをしろとか、しなければならぬということはないとおっしゃいますけれども、これは現在内需面に対しましては、全国的に、どこの銀行でも、製品を担保に取って金を貸すところはありません。これは実際自己の力で品物を持つ以外には、持てないのです。そういうようなことから、これはこのままいきますれば、どうしても投げるということになって、市場を非常に撹乱する。そういうことになりますから、扱いたくも扱えない。また買い手の方は、一日おくれればおくれるほど安くなる、安くなれば、そう買う必要はない。その上、やはり最近暖冬異変などといって、寒のうちでも非常に暖かいというようなことになりますから、春物は夏になれば要らないというようなことになりまして、時が過ぎれば、もう買う必要もないし、作る必要もないというような自然の解決になってしまいます。そういうような関係で、現在、業者は四苦八苦、どうにもならぬ。こういうようなことで、結局これはこのまま捨てておきますと、従業員の給料も支払うことができない。これは手形決済どころの騒ぎではない、生活問題にまでくるというような、大きな問題に発展しないとも限らないのです。滞貨融資という言葉は、非常に悪い言葉でございますが、そういうふうな御認識でなく、現在、中小企業者の実際の経営内容から見て、このまま放任してはおけない。何らかの特別の融資方法を講じないと、これは精神的にも心理的にも倒れてしまう、こういうふうに憂慮をしておるわけです。さほど一般には、政治的にもそういうことを御心配になっておらないのですが、われわれは渦中にあって、いろいろな業者と接近しておる関係上、真実の内容を知っておるだけに心配するところの程度が一般とは変っておるわけです。やはり表面に出ておることだけでなく、内容の実際、資金繰りその他の状態から見ると、全くきょう一日も捨ておけないような窮迫した問題が、各所に起っておるのです。これは大きな面から見れば、金融引き締めだとか滞貨とかいうものに融資はできないのだ。国際収支のバランスとかいうようなことで、これは国の面からいえば、そういうことも当然なことと思いますけれども、実際の業界の内容から見ますと、そう簡単にこれを片づけてしまわうけにはいかぬと思うのであります。  そこで、繊維局長さんにお伺いします。先ほどからいろいろ申し上げているのですが、毛織物の不況は、過去に見ないような現状でございまして、二十九条のアウトサイダーの取締り命令ということは、業界からも、相当要望が出ているのですが、まだその命令が出ないようです。これはどうせ出していただくなば、一日も早い方が、結果が非常によいと思うのです。いろいろな問題が片づいてからこの命令が出たからといって、それはあとの祭だと思うのです。ですから、事ここに至りますれば、一日を争う、こういうふうに考えます。まだその命令が出ておらないようですが、これはいつお出しになるお考えですか。
  89. 小室恒夫

    ○小室政府委員 三月十一日に、中小企業安定審議会にかけまして、即日実施というような形にやりたいと思っております。
  90. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 それでは、なるべくその手続はお急ぎをいただきまして、三月十一日に即日施行できるように、取り計らいをお願いいたしたいと思うのであります。  そこで、私は、大臣にお伺いいたしますが、そういうふうな実情でございまして、実際、案外皆さんは御心配になっておらないように考えられる。これは政府におきましても、中小企業の問題でございますので、倒産が始まると、もう将棋倒しに上から下まで列を組んで倒産をするというようなことが起きないとは、断言できないのでありまして、そういうようなことですから、どうか何らかの手を打っていただきたい。そういうことが、やはり現在の政府といたしましても、とるべき道じゃないか。中小企業はどうなろうとも、自然にまかせておけというようなことでは、どうも無策ではないか。これはこのままにしておけば、どうやら解決はします。そして、これは倒れて解決するということになりますので、どうか自然にまかせずに、何らかの政治的な手を打っていただくよう大臣に要望いたしまして、質問を終ります。
  91. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 決して放任して、倒れるのを待っておるというわけではありません。早急に繊維全体の需給調整をやるとともに、これと並行して金融の道も考え、強化して——大体不安人気というか、人気が非常に左右しているわけでありますが、これを早く払拭したいというふうに考えているのでありまして、御心配のかかるようなことは絶対しませんから、どうぞその点は御信頼願いたいと思います。
  92. 松平忠久

    松平委員 今の繊維の不況に関連をして、私もお伺いしたいのですけれども、きのうの委員会で質問をした続きであります。絹織物並びに生糸も、やはりあおりを食って、非常な危機に追い込まれておるわけでありますが、これは必ずしも私は生産過剰のためにこうなったのではなかろう、こういうふうに思うわけです。しからば、どこに一体原困があるのか。アメリカの景気によって左右されておるということであるのか、その辺もよくわかりませんが、生糸並びに絹織物の危機というものは、一体どこに根本的な原因があるのか。これに対して、蚕糸局長意見を聞きたいのです。
  93. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 今月になりまして、横浜の取引所の相場が、特に先物について非常に暴落をいたしました。その原因を簡単に申し上げますと、去年の十二月以来、政府に対する生糸の売り込み額は非常に増加をして参りました。去年の十二月、ことしの一月、二月、この三カ月の間で、約一万五千俵の政府売り込みがあったのでございます。その結果、市場人の判断といたししてまは、現在、糸価安定制度によりましてささえられておりますけれども、今のような政府売り込みの状態が継続するといたしますと、おそらく六、七月ごろには、糸価安定資金の底が見えてくるのではないかというような観測が出てきたわけです。その結果、先物につきまして、特に六月期以降につきまして焦げつきの心配から、大幅の値下げをいたしたのでございます。なお、その背景になつおりますのは、ことしの一月以来、輸出が著しく振わない、それから内需の面におきましても、去年上半期ないしそれに続きます数カ月の間は、例の神武景気その他で、相当内地におきましても絹織物が消費されましたなごりが続いておりまして、かなり消化されておったのでありますが、去年の秋以降、一般繊維の不況の波を当然生糸の面に受けまして、輸出、内需の面を通じまして、需要が非常に低調になって参った。一方、生糸生産の方は、去年の繭が非常に豊作であった、三千百八十万貫という戦後の最高記録になったわけでございます。その関係もございまして、去年の十二月末で私どもが調べましたところによりますと、製糸工場が持っております繭の手持ちというものは、前年に比べて約二割ぐらい多い。そこで、その需要は停滞をしておる、先行きの見通しは必ずしも明るくない。一方、繭の手持ちは非常に多いというような関係で、製糸業者といたしましても、それを製品化することに拍車をかけておる。先ほど暖冬異変の話が一、二十ましたが、製糸工場におきましても、暖冬異変が影響しておりまして、燃料費が非常に安くあがる。例年でありますと、一、二、三というのは、操業を控える月でありますが、ことしはそういうような関係もあって操業を手控えない、むしろ例年よりも非常に操業度を上げてきておるというような結果でありまして、結果的に見ますれば、生産過剰になって参ったわけでございます。従いまして、輸出の関係、内需の関係、それから生産面では、繭が去年非常によけいにとれた、それを加工する面での製糸工場の操業の状態が非常に上っておるというような結果、それらが積み重なりまして、需給関係が非常にゆるんで参った、そういう状態になっておるわけであります。
  94. 松平忠久

    松平委員 伺っておると、いろいろな原因によってこういう危機になったというふうに聞いたわけでありますが、しからば、六月ごろになれば糸価安定の資金の底も見えるということであると、実に大問題であると思う。御承知のような零細企業であり、農民も相当多数の関係農民があるわけであります。そこで、この危機を突破するということには、いろいろな原因があるから、いろいろな対策が総合的に講ぜられていかなくちゃならぬと思うのですが、政府はどういうことを考えておられるのであるか。まず第一に、底の見えるような安定資金では心細いのであるから、何かこれはふやさなければならぬということが、業界の要望しておるところであるし、われわれも、どうしてもこれは六月ごろになると、そういう危機が来るから、今のうちに用意をしなくちゃならぬということになると思うのです。と同時に、輸出の振興のために、何か画期的な手も講じていかなければならぬ。これは、先ほども問題になりましたように、たとえば、人絹について、賠償物資に繰り入れるというのであるならば、これに便乗といっては、ちょっと語弊がありますが、絹もここに加えてもらうというようなことも、一つ方法であろうと思うのです。そういったいろいろな手を打たなくちゃならぬと思うのですが、これに対して、蚕糸局としては、どういうことをとりあえず考えておられるか、まず伺いたいと思います。
  95. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ただいま申し上げましたような状態にありますので、われわれとしても、対策は総合的に考えておるわけでございますが、糸価安定資金も、ただいま申し上げましたような業界なりの観測をいたしますと、かりに、今後、月に五千俵くらいの割合で政府に入ってくるというような状態が続きますれば、これはもう申し上げるまでもなく、現在の糸価安定資金でも十分なささえができないというような事態に相なることは、当然予想されるわけでございます。従いまして、今後の問題としては、私どもも十分それに対応する措置を、政府部内におきましても協議をして参る用意はいたしておりますが、それはそれといたしまして、やはりその前提になります需給状態を改めて参ります手を早く講じて参りませんと、政府が最低価格で買い入れるというだけの制度で、現在の生糸の不況を切り抜けるということは、困難であろうと考えておるわけでございます。それで、目下私ども、関係業界と相談をいたしておりますのは、先ほど申し上げましたように、いろいろな事情によりまして、製糸業者といたしましては、製品化を極力急ぎまして、それを一般需要者に販売をするという気持よりも、むしろ政府の糸価安定制度というものを、この際使えるだけ使っておこうというような気持も見えるわけであります。そういう行き方で事柄が動いて参りますと、糸価安定制度そのものの運営にも、非常に将来考えなければいけない問題も出て参りますので、この際、糸価安定制度というものを維持して参るために、それぞれの分野においてできるだけの協力をするという建前から、製糸業者も操短を行うことについて、目下協議をいたしておるわけでございます。生糸は、御承知のように、原料が農家の生産するものにつながるわけでございますので、製糸の操短ということは、直ちに繭生産の面にも影響を及ぼして参るわけでありますが、この面につきましても、生産者団体との間におきまして、今後の繭生産の持って行き方について、いわゆる養蚕農家として、生産、販売の両面を通じまして、どういう態勢でいくのが最も有利であるかという判断に立って、一つことしの備えをしてもらいたいということを相談をいたしておるわけでございます。なお、それはそれといたしまして、実際の需要を広げて参りますことは、もちろん努力をいたさなければならぬ。私は、先般来、業界といろいろ協議をいたしまして、海外における需要喚起のためには、従来は、生糸の生産者及びその取扱い業者が中心になりまして、宣伝費等も出しておったのでありますが、このような情勢になりますと、繭生産者側においても、直接その面にも協力をしていく必要か出てきておるのである。そういう気分も、繭生産者団体の中にも出ておりますので、そういう角度からも、一つ需要喚起に努力をさせるようにいたしたいと考えております。
  96. 松平忠久

    松平委員 これは、今お話しのように、製品化していくということになっていった場合には、人絹その他のほかの繊維と、国内で相当競合することになる。ほかの絹以外の繊維が非常なる不況にある際であるから、ここへ絹がうんと製品化されてくることになると、大へんなことになるというようなことも予想されるし、それから海外貿易についても、ほかのものとの競合ということが考えられる。そこで、これは全般の問題として考えていかなければならぬわけでありますが、その際には、ほかの方の繊維の産業から見ても、この際は、やはり絹の糸価安定制度というものを、むしろ強化していってつそうして、一時それによってしのぎをつけていくということにしなければならぬと思うし、そういうことをすることによって、またほかの繊維産業をも間接に救い得るということにもなると私は思のです。従って、これはどうしても、糸価安定制度の強化ということを考えていかなければならぬ。その強化を考えるには、金の点と絹糸価格自体の維持ということが、当然問題になってくる。農林省としては、現在の十九万円というものを原則として維持していかなければならぬと思うが、これに対しては、どういうような考え方を持っておられるか。
  97. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在、最低糸価十九万円にきめられておるわけでございます。三十三年六月以降の最高価格、最低価格につきましても、近く安定審議会を開きまして、諮問をいたす段取りに今なっておるのでございます。いろいろ最近の情勢から考えまして、十九万円という最低価格に対する考え方を、今後いかように持っていくかというようなことにつきまして、いろいろな意見が出ておりますが、私どもの考え方といたしましては、十九万円の最低価格を、三十三生糸年度において変更する考え方を持っておりません。安定審議会の意見の結果にもよりますが、農林省としましては、十九万円の線を維持して参りたいと考えておるわけでございます。それには、今後十九万円か維持されていく裏づけが必要でございます、これは先ほど来申し上げておりますように、安定資金といたしましては、現段階におきましても、一応その業界では、底をつくような見方をしておるわけでありますけれども、全体の資金の半分が今使われておる程度でありまして、資金量としてはなお半分、いわゆる二万俵相当分のものを残しておるわけであります。従いまして、この程度資金をまだ持っております段階において、生産の調整なり、それがそれぞれ需給の状態を改善して参りまする措置を講ずることによって、現在の最低価格の線を維持して参るようにして参りたい、さように考えております。
  98. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 関連して。  農林省といたしましてば、実際に十九万円の価格は変えないおつもりであるか。また、現在買い上げ資金が底をついておるということになれば、場合によれば、これは現在の資金量ではでき得ないということになると思いますが、そういう面に対しましての資金を増しても、十九万円は変えないというお考えであるか。今、一般の業界におきましては、これは結局生糸も十九万円の価格を維持することはできないだろう、今後やはり相当の値下りがやむを得ないだろうという関係で、非常に前途を悲観しておるわけです。それがために、現在の製糸界におきましても、また農民の心理状態におきましても、生糸に対しましては、前途非常に不安の人気を持っておるわけですが、御承知の通り、生糸というものは、わが国の唯一の輸出商品でございまして、国民の生活にもいろいろ関係の深い生産物でございますので、やはり国は相当の力を入れるべきものだと思うのでありまして、十九万円の糸価を、当分変えない方が実際いいのじゃないか。そしてまた、その資金が不足するならば、その資金を用意する必要があると思いますが、実際に農林省といたしましては、そういうお考えでありますか。
  99. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 私ども、十九万円を維持する方針をとっておりますと同時に、業界におきましても、製糸業者が操短を考えておるというような態勢になっておりますことは、十九万円というものは、どうしても糸価安定制度を継続する限り、その線は動かせない線である。もし、十九万円を動かすという事態になりました場合は、これは私どもも、そういうことを予想するのでありますが、相当大幅に生糸の値段は動揺をするということを考えなければならない。糸価安定制度を維持しておりまする以上、やはり最低価格は十九万円に維持するだけの努力を、いろいろの角度から総合してやらなければいかぬわけでごごいまして、製糸の操短などは、ただ一口に操短と申しますけれども、御承知のように、製糸業者というものは、繭の出来秋に、全部繭を収納しております。これは、その当時の糸価を見合いにして収納しておりますから、それの金利でありますとか、その経営上、いろいろめんどうな問題がありまして、操短といいましても、簡単に踏み切れる問題ではないのでありますが、今そういうようなことで、きょうも実は協議をしておるのでありますけれども、日程に上りかけておりますのは、やはり業者としても十九万円は全力を尽して守り抜かなければならぬという考え方に立ってやっておるわけであります。その意味におきまして、今資金の問題もお話に出ておりますが、これは先ほど来申し上げておりますように、なお二万俵相当分の資金を残しておるわけでありまするし、さらにこれに対する対応措置を今後考えますにつきましては、やはり生糸の需給関係そのものの、ある程度の長期的な見通しを立てまして、それに即応しての資金的裏づけということを考えませんと、ただそのときだけのこうやくばりのような形でいきますと、資金も足らぬわけであります。基本的な需給関係の立て直しを、まず前提にいろいろ考えまして、それに対応して、また資金などにつきましても、十分対策を考えてやらなければならぬ、このように考えております。
  100. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 もし、かりに生糸の価格を十九万円を変えるということになったら、重大なことが起きる。これを下げたら輸出か振興するかということになると、もし価格を下げますれば、わが国の生糸は、世界的にゼロになるのじゃないか。それで、どうしても国の施策の上から、いかなる難行苦業を越えても、十九万円の糸価は変えないという方針をぜひがんばってもらいたい。農林省は、しっかりしてもらわなければなりません。生糸は、何といっても繊維の親玉です。他の繊維も、つまり人絹とかスフとか綿というような繊維にいたしましても、生糸が幾らだから何々が幾らだというように、生糸というものは、世界の繊維の一つの標準になるものですから、いわゆるこれはダイアモンドです。これに狂いがくることになれば、何もかも狂いがくることになるから、十九万円をせっかく今日維持しておるのでありますし、これはあくまでもこの価格を変りえないということを、強く私は要望いたします。
  101. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して。  いい話になっておりますので何ですが、これは農林省としては、ただいまの繭糸相場十九万円をかえない、どのような手を打ってでもこの値段を堅持する、こういう確信を披瀝することは、先ほど来阿左美さんや松平氏の言っておられますように、不況対策のてこ入れの一つのいい手なんです。農林省は、そこでも絶対動かないのだ、こうなれば、先行き不安定というもの、が、ここから一掃されてくるのです。そこで、これはあなた個人の考え方だと、あとで逃げられると困りますので、農林省として、絶対にそれを堅持する、この建値をあくまで堅持する、こういう態勢が整っているのかいないのか、その点を明確に、確信を持った声で御答弁願いたい。
  102. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 三十三生糸年度の最低価格につきましては、昨年末に農林大臣が声明をいたしわけであります。これは十九万円を割らないという声明です。それから、過般予算委員会の分科会におきまして、来年度の糸価に対する御質問がありまして、農林大臣から、動かさない方針であるということをお答えになっております。最近、さらに農林大臣の声明等を要望せられる向きもあるのでありますが、今日の段階になりますと、あと旬日足らずして、正式に来年度の最低糸価をきめる時期が迫ってきておりますので、むしろ、農林大臣からこの際いわゆる声明をなさるよりも、もう近いうちに正式の手続で、きめる日取りが迫っておりますから、そちらの方で正式にきめたいというふうに考えております。私ども、今後最低糸価を維持して参りますにつきましては、いろいろむずかしい問題も非常に多いわけでございますが、全力を傾倒いたしまして、生糸につきましては、安定帯価格を守って参りますように、努力をいたしたい考えでおります。何分よろしく御支援のほどをお願いします。
  103. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その言たるやまことによし、地獄で仏の声を聞いたようなものです。繊維が総くずれのときに、ひとり絹糸だけは、農林省がうしろだてとなって堅持する、こういう声がひとたび市場に伝わりますや、必ずこの市況を挽回するところのきっかけとなると思うのです。  ところで、せっかく農林省がかくのごとき精神を堅持していらっしゃるやさきに、通産省は一体どうしていらっしゃるかと思うことがあるのです。それは、つい先般、毛糸相場を、この委員会においては七百円台ときめた。チェック・プライスをきめた。きめたほんの翌々日に、またそれを割らなければならぬような状況になり、御承知の三品市場始まって以来初めての底値だ、こういうことになっておりますが、一体通産省がきめまするチェック・プライス、フロアー・プライスというものは、どういうものでございましょうか。これは、農林省と同じようにやれないものでしょうか。
  104. 小室恒夫

    ○小室政府委員 ただいま、毛糸の七百円の通産省のチェック・プライスとかなんとかいうお話がありました。
  105. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通産省じゃなしに、例の委員会のです。
  106. 小室恒夫

    ○小室政府委員 毛糸の買い上げ機関が最近新設されて、これは七百円という線を維持するために全力をあげよう、こういう空気であったことは事実であります。また事実六百八十円に下ったときも、全力をあげて買い向つた徴候もあるわけであります。そういうことは、取引所では間々あることなのであります。底値を入れるということについての基本的な考え方は、振興会の方も変っておりません。私どももそれを支持するという考え方に、変りはありません。
  107. 松平忠久

    松平委員 ただいま同僚議員の関連質問に関して、農林省当局から、糸価の安定帯格価には変更なし、こういう態度をきわめて明確に言われたので、このことは、他の繊維全般にわたって非常な好影響があると思うのです。そこで、これをやっていく上においては、今説明がありましたごとく、結局は安定資金を増額しなくちゃならぬということかあるかもしれぬ。そこで、この覚悟を持っていなければ、維持できないわけです。従って、今あなたがそういうように変更なしと言われたことは、この安定資金の増額も、一応念頭に入れてのお考えであるということを、私は了承したいと思うのです。従って、その点は、ここで明確なる答弁をいただこうとは思いません。ただそういうことが前提とならなければならぬというふうに、私どもは了解しておるわけです。  そこで、三月二十日に、蚕糸業危機突破全国大会というのが東京で行われることになっております。これらの全国大会の要望は、おそらく安定価格の変更があってはならぬということと、従って、それを前提として安定資金の二十億円だけでは不十分だから、もっと増額してくれということが、おそらくこの大会では要望されると思うのですが、今のうちから、そのお覚悟でいてもらいたいと思います。  そこでこれに関連して、これは結局内需もありますが、外国に売らなければならぬ。またこの売るという方面については、他の繊維もありますけれども、一体繊維局長は、この停滞しておるストックを、今後どういうふうに売りさばこうというふうにお考えになっておるのか。これは今の生糸並びに絹織物というものを含めて、それを中心としてお答えを願いたいと思うのです。
  108. 小室恒夫

    ○小室政府委員 昨年の生糸、絹織物の輸出は、生糸については数百俵一昨年より減りましたが、ほぼ横ばい、絹織物については三割五分ばかり輸出の数量かふえております。しかし、実は価格の面では、下りぎみになっている。最近のような生糸の市況でありますと、これが悪い影響を輸出の面に及ぼすということは避けられない。これは農林省が価格支持のためにやっていただく施策に協力していける面があれば、できるだけ協力していきたい、こう考えるわけであります。生糸の最近の輸出は、やはり今の価格の状況なども大へん影響しているのじゃないかと思います。絹織物については、そう悪い徴候はありません。ただ一部の羽二重等について、先ほど申した価格が安過ぎるとか、過当な競争が展開されておるというようなきらいがあって、これを是正するように努力しておるわけであります。一般的にいって、昨日もお尋ねがあった点でありますが、絹製品の海外の需要を何とか喚起していかなければならぬ。これは長期を要する非常に地道な努力を重ねていかなければならぬので、予算の面でも、農林省、通産省両省とも、三十三年度予算に、生糸の宣伝費と申しますか、こういう需要喚起に要する予算は、前年度に比して増額しております。そういう政府の努力と関係業界の努力と相待って、この海外の景気の悪い際でありますので、できるだけ絹製品の需要が落ちないように、また増加するように期待しておる次第であります。
  109. 松平忠久

    松平委員 そこで、きのうも申し上げた点ですが、大体生糸と絹織物の輸出は、半々ぐらいだろうと私は思います。この原料としての生糸と、製品としての絹織物というものが、半々という輸出の現象というものは、大体将来もこういう半々の形でいくべきものであるか、もしくは漸次綿製品の方に力を入れていくべきであるかということについては、何らかお考えになる方策というものがあるのかどうかということを、この機会に伺っておきたいと思うのです。
  110. 小室恒夫

    ○小室政府委員 現状では、半々より幾らか生糸の方が多いかもしれません。この生糸、絹織物、あるいはスカーフその他の形で出る二次製品、そういうものがどういう割合であるべきかということについては、これは、市場の状況は刻々に変化もしておりますし、私どもは、それほど形式的な基準は設けないで、全体としての絹製品の需要がふえ、綿製品の輸出がふえればよろしいという感じを持っておるわけであります。
  111. 松平忠久

    松平委員 私は、できればもう少し綿製品の方をふやす方がよかろうではなかろうか、こういう考え方を持っておるわけです。四分六ぐらいにいくのが、一つの理想の形ではないか。すなわち、綿製品六分、原料たる生糸が四分というような方向にいった方が、日本としてはためになる、こういう考え方を持っておるわけであります。従って、これは絹製品自体の輸出に相当重きを置くということは、日本の産業構造からいっても、原料を売るよりも製品にして売った方がいいという考え方に立つと、結局そういうふうにならざるを得ない。そこに私は努力を傾倒していくべきであると思う。しかしながら、これはやはり原料も四割程度は供給してやるということでもって、向うの業者とのコネクションというものは、これを維持していくということにしなければならぬと思うので、私自身はそういうような考え方を持っておるわけです。そういたしますと、結局、やはり絹織物を伸ばすということになると、そこに私は根本的に考え直さなくちゃいかぬと思うのは、これは昨日も申し上げた通りに、繊維製品としての絹というものと、アメリカの婦人用の靴下の原料としての生糸というものと、この二つが、今まではあったわけでありますが、今日は、おそらく婦人用の靴下の原料になる生糸というものはないと思う。そうすると、繊維製品の原料たる生糸を作っていくということに、私は日本の蚕糸業というものは、編成がえをしていかなければならぬ段階に来ておると思うのです。すでに、これは終戦後そういう方向になってきておる。ギャップによってナイロンができまして、婦人用の靴下はことごとくナイロンになったということが現われてきた。と同時に、日本の生糸というものの根本的な考え方を改めていく段階に来ておるのではなかろうか、私はこういうふうに思います。もちろん、これは一つの嗜好品であるから、ときによってその嗜好が変るということはありましょうけれども、一つの傾向としては、私は世界における生糸の将来というものは、そういう方向に来ておると思うので、その点に関して、靴下の原料以外の繊維製品の原料としての生糸を作っていくという考え方に立って、農林省は生糸の生産というものを指導しておられるのかどうか。今日の法律制度あるいは機械その他のものが、それにマッチしたようなことになっておるかどうかということに対して、私は疑いを持っておるわけです。その点に対して、須賀蚕糸局長は、どういう見通しを持っておられるのか、伺いたいと思います。
  112. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 生糸の需要の動向は、戦前と戦後におきまして著しく変っておりますことは、申し上げるまでもありません。現在、靴下用に絹は、ほとんど使われておりません、主として織物の原料になっておるわけであります。従いまして、繭の生産から糸に引き上げる過程におきましても、順次織物向けの生糸を作るような態勢に変ってきておりまして、特に農林省でその点に強く頭を置いてやっておりますのは、年々種の品種の指定がえをいたしておりますが、この場合、昔の靴下向け専用の糸の品種は、現在ほとんどなくなっております。みな織物用の糸を作ることに適したような品種に、だんだん変ってきております。それから、生糸検査の面におきましても、数年前までは、昔の靴下用に適当な糸という角度で、検査の格づけが行われておったのであります。最近は、そこをいわゆる手直しをいたしまして、織物向けに適した格づけをいたすようになってきております。それは、昔と相当変っておりますから、さよう御了解を願いたいと思います。
  113. 松平忠久

    松平委員 そういう傾向であるとするならば、これは繊維局と蚕糸局との関係になりますけれども、私は、最終の製品であるところの絹織物というものが、どういうふうに相手国において変化をしておるか。また、先ほど申した嗜好とか地合いというものも、変ってくると思うのですが、それらの傾向というものを、末端の輸出業者並びに織物業者というものは、よくこれを把握して、それに合うような原料を作らせていくということにならなければならぬ、こういうふうに思うわけです。その点に関して、輸出業者並びにメーカーというものが、外国における嗜好の変化もしくは流行等の変化というものをよくつかんで、これを農林省に移してそれに合うような原料を作っていく、こういうような仕組みに今日政府の機構がなっているか。そういうことをやっておられるかということを、まず伺いたいとともに、今後、そういうことは、ますます必要となってくる段階となるので、それらの点の仕組みを何か考えておられるかどうか。たとえば委員会だとかその他のやり方で、その仕組みを補っていくということが必要になろうと思うのですが、その点に対する見解を伺いたいと思います。
  114. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ただいま御指摘をいただきました点は、蚕糸業として、非常に大事なことでございまして、現在までは、遺憾ながらそういう点に対する努力と手配が、非常に欠けておるわけでございます。と申しますのは、少くとも昨年ぐらいまでの傾向といたしましては、日本の製糸業者は、糸を引きまして、それを横浜まで出荷をいたしますと、大体もう輸出向けと内需向けとに、ほぼ右から左にさばきがついたわけです。ほとんど販売面において、特別の努力をする必要もなかったというのが、今までの実情でございます。従いまして、製糸業者の内部の体制等を見ましても、昔は販売面に相当の人員と経費をかけましてやっておったのでありますが、最近は、むしろ原料獲得だけに狂奔をしておるというような形で、販売面の努力が非常に清かったわけです。順次情勢も変って参りまして、海外の糸の消費者と直結をいたしまして、実際の需要の動向なり、また先行き等を早く的確につかみまして、それを日本の製糸ないし、さらに繭を作るところまで響かして参るようにしなければならないわけでございます。これは、むしろ政府の仕事として考えるよりも、業者自身の販売努力に待つべき面が非常に多いわけでございますので、そういう角度から、われわれも主要製糸業者に対しては働きかけをいたしておるのであります。最近は、郡是等も、ドイツにまた新しく生糸専門の店を出したりいたしまして、多少そういう傾向もできかけておるわけでごごいます。情勢が急速に変って参りましたので、われわれとしても、今の御趣旨を体しまして、せっかく指導をいたしたい、かように考えております。
  115. 笹本一雄

    ○笹本委員 蚕糸局長に伺いますが、言うまでもなく生糸は、今中共を別にしまして、世界の生産の八〇%が日本です。イタリアが、まず一割ちょっとであります。あとは南方の方でございます。ところが、戦後におきまして、中共が非常に出てきました。一昨年私らが中共へ行って聞きますと、戦前の五%近いものであるというが、昨年あたり聞きますと、戦前同等ぐらいまでやってきている。しかし、日本の桑と違いまして、質は悪いです。質は悪くてもシルクはシルク、これが香港の市場を通して世界へずっと出ているわけです。今のお話の糸と布の問題ですが、フランスあたりでも、御承知の通り、これはなるべく糸で出してくれと言っておる。しかし、四、五年前の例の綿業会議へ参ったときも話したのですが、僕らは、日本の織物は小幅物が多いのだ、だから、織物はやはりあなたの国の方が先進だった。それは競争したって、世界市場に一つも心配することはないのだから、やはり日本の織物は織物で扱った方がいいでしょうと言ったのですけれども、向うはどうしても糸で出してくれ。蚕糸局の方では、糸で出してもいいが、やはり織物にして出した方が日本の利益はそれだけ出てくるわけでありますが、どうしても糸を、イタリアでもどこでも——郡是でも今度くつ下をやっておるようですが、糸で出しましたものがイタリアで出て、イタリアの例のコモあたりのネクタイ工場で織ったものが、ニューヨークで宣伝しますと十ドルに、その実、日本から出した糸で、それはやはり染色とデザインによって値がとれておるのです。日本の製品は、ニューヨークのデパートへ行きましても三ドル五十セントくらいのようです。向うは十ドルです。ここでどうしても外貨を上げていくためには、日本でも、繊維局が大いに指導して、製品で、出した方がよいのではないかというけれども、世界市場の方では、それを望まない。また、話が飛びますが、今、安定価格のお話がありました。これを堅持することは当然のことで、やらなければならない。農村の問題なんです。しかし、これを堅持していきますが、なおこれが農村の方では、今あなたの手元で研究しておるように、これに対する融資の問題がある。三月二十日に大会をやるのは、それにからんでくるのでありますが、養蚕の方におきましては、これ以上進んでいくということは、もう極度までいっておると思っておるのです。ただ、これからはどうして安く持っていくか、いいものを出すかということは、桑の反収ですね、つまり、反収が上ってくれば、生糸の利益がそれだけ上って、またいい品物を出していけば、市場ではどうかというと、化繊が出ても何が出ても、驚くことはない、売れるのです。今、欧米においては、三十五、六才くらいの女の人は、化繊ばかりで、絹をはだにつけたことがない。それが一たび絹を使ってみると、非常に愛好してくる。一つお話しすれば、帝国ホテルの地下室へ行ってごらんなさい。あそこへ行くと、玉糸の洋服地がずらっと出ておる。毛唐がみな買っておる。われわれが行っても、玉糸のシルクだといって。日本ではこれを使わない。またあらゆるフアッションショウにしましても、大統領の奥さんが夜会にシルクを着ていったということでも、それが宣伝で、すぐ売れていく。絹のハンカチ一つ出しても、ぱっと出ていく。そこで、どうしても宣伝が大事である。これはいつの会議でも、宣伝が大事である。まず宣伝です。この宣伝に、今、小室君が、予算も一つ増加さしてもらいましたというけれども、これは、もっと宣伝すれば売れる。ところが、業界自体、糸屋さんにしても、種屋さんにしても、あるいは織物屋さんにしても、政府だけが宣伝してくれ、自分の方はもうけただけはふところに入れていく。蚕糸業の人は、これは蚕糸業だけに限りませんけれども、損して得とれというような気分が少いのです。あなたは、業界を見てもわかるでしょう。業界では、もうかったときは黙っている。そうではなく、どんどん宣伝すれば、入ってくるのです。この宣伝が何よりも大事である。そこで、この委員会に貿易振興会、ジェトロの法案が出ております。ジェトロを通じて世界に出ていきますが、蚕糸局はこれに対して、どういう考え、どういう連絡をとっているか、その点を一つ伺いたい。
  116. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ジェトロと蚕糸関係の宣伝機構の問題でございますが、これは私どもの方は、こういうふうに考えております。ジェトロは、申し上げるまでもなく、世界の全般を対象といたしまして、日本の各種輸出品につきまして、その販売分野を広げて、輸出を振興していくということで、やっていただいておるわけでございますから、その幅の中で生糸、絹織物につきましても、ジェトロの方にも御協力をいただくということは、当然必要であると考えております。ただ、生糸につきましては、特にアメリカ市場におきまして、ややほかの輸出品と違った事情がございます。と申しますのは、生糸は、御承知のように、そのまま最終商品になるわけではございませんで、いわゆる向うの機屋さんの機にかかって、消費者に使われていくという格好になるわけであります。従いまして、生糸の消費宣伝につきましては、一般大衆を相手にしたものではなくて、いわゆる向うの機業家、生糸取扱い業者を相手にいたしまして、その連中に、どのようにし、生糸をよけい使わせる意欲を持たせるか、またその便宜を供与するかというところに重点があるわけです。そこで、多少ジェトロがやっておられまする仕事と変っておりまするし、また今までいろいろ沿革かありますので、その分野につきましては、私どもの方で現在、現地に補助をやって事務所を開いております、そちらの仕事を続けさして参りたい、かように思います。
  117. 笹本一雄

    ○笹本委員 それはわかるのです。あなたの方の出張所がニューヨークにもありますし、やってることは、わかるのですが、農林委員は別として、通産委員の方から言いますと、さっき松平さんも言っておったが、糸と布とどちらにするか。せめて四分六ぐらいにしろというお話のごとく、やはり日本で製品にした布が出れば、糸も出ていく。ニューヨークなんかでは、絹糸の方は、日本にないぐらいの絹糸の試験場があって、やっておりますけれども、しかし、やっぱりどうも宣伝です。糸が売れるということも、シルクの宣伝でありますから、私は積極的に、ジェトロなんかも、海外に、あなた方の出張所がないところもありますし、見本市とかいろいろなものが出ておりますから、そういうところにおいては、繊維局と協議され、糸ばかりではなくて、その方にも積極的にジェトロを活用することがいいことではないが、こう思うのですが、その点に対してお答え願いたいと思います。
  118. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 われわれの方の考え方といたしましても、私の方でアメリカに事務所を設営いたしておりますことと関連をいたしまして、それなるがゆえに、ジェトロの方の御協力をいただかないということは、毛頭考えておりません。私どもの方でやっております仕事も、おのずから規模におきましても、資金の裏づけにおきましても、限度があるところでございますから、ジェトロのような大きな機構の中で一緒にやっていただく面は、ぜひやっていただきたい。決してそこはセクショナリズムな考え方でやっておりません。
  119. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 関連して。  この繭の取引ですが、ただいまは団体取引の掛目取引になっておりますが、この取引は、将来このまま継続する方針ですか、あるいは自由取引をやる御方針ですか、御答弁を願います。
  120. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在、繭の取引を自由取引にするつもりであるかというお尋ねの趣旨は、何か統制をされておるというふうに御理解をいただいておるのではないかと思いますが、これは建前として、農協によりまする団体取引をやっておるわけでございます。この取引のやり方は、だんだん繭の需給関係が変って参りまして、今までのように売手市場と申しますか、農協の側では黙っておっても、全部製糸の方で有利な条件で引き取るといったようなわけにも、だんだんいかなくなって参ったと考えますので、団体取引をさらに整備をしていくという方向考えなければいけない、かように思っております。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今の宣伝の話でございますが、絹の宣伝は下手だけれども、ほかの糸の宣伝は上手だ、なぜほかの糸の宣伝のようにうまくやれないかという質問が、ここからも出ておりましたが、これはしかし無理からぬことだと思うのです。なぜかなれば、糸の宣伝というのは、これは御承知でございましょうが、大てい原料メーカー部門でやるのです。ナイロンという糸ができれば、日本においては東洋レーヨンがやるというわけで、メーカー部門がやるわけです。ところが、絹ということになりますと、直接メーカーはお百姓さんなんです。お百姓さんが、個人でアメリカへ行って宣伝をするなどということは、できることじゃございません。そこで、当然のことながら、今それを直轄していらっしゃる本省あるいは輸出を担当していらっしゃるところの通産省、あるいはまたこのたびできます、直接それが目的で行われるところのジェトロ等々が、行わなければならぬことだと思いますが、通産省の方としては、果して絹の宣伝ということについて、過去においておやりになったか、ならないのか。私はあまり聞かないのですが、けちをつけられた例は、本委員会でもありました。燃えない糸へんが燃える、燃えるというので、可燃性繊維でござるとかいうて、あほな話で、燃えない繊維があったら、たまったものではない、燃えるにきまっている。それをデュポンのナイロン会社その他の関係が、日本の絹織物が憎たらしくてかなわないので、あのようなことが行われたと、その道の識者はみな解釈しているわけなんです。そこで、ああいう逆宣伝を食いとめることは、皆さんの努力で、できるにはできたのですが、私自身考え方からいけば、どんなに化学繊維が発達いたしましても、吸湿性とエネルギーの消失の度合いからいきますと、これは天然繊維には追いつかない。特にまた、皮膚のやわらかい子供を育てます場合には、保温のみならず、吸湿性とエネルギーの消耗度ということが、非常に大切になって参りますが、それには、日本で行われる絹糸、それからできました布、これが最も適当であるということは、世界の学問がどのように発達いたしましても、なかなか容易にくつがえされる原理ではない、かように考えております。こういうりっぱな特長を持った絹を、もっと宣伝すれば一そう発展の道はあると、しろうと考えにも考えられるわけですが、農林省、通産省においては、この宣伝のことについては、どのように考え、どのように努力していらしゃるのですか。
  122. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 生糸、絹織物の宣伝につきまして、農林、通産両省で、できるだけのことはやっておるのでございますが、何分にも、今までのところ、まだ十分なる成果を上げるには至っておりません。特に、ただいま御指摘がありましたように、絹は、繊維としては、あらゆる繊維を総合した性状の中で、一番いいものを持っておるということは、もう化学的にも証明されておる。特に昨年、一昨年あたり、通産省の方で出しておられます補助金によりまして、アメリカで、直接はだに触れます絹製品と申しますと、たとえば敷布でありますとか、あるいははだ着でありますとか、そういうものをいろいろ試作をいたしまして、それを業者に企業化せさるべく、いろいろ努力をされたわけです。これなどは、私非常にいい着想であると思います。一つの試作の例など見ますと、敷布を作りますのに、表面へ絹が出まして、裏ヘナイロンが使われる。そういたしますと、洗たくをいたしましても、しわにならぬとか、あるいは早くかわくとかいう特性を備えながら、絹のはだざわりが味わえるというようなものができるわけであります。そういうものを、通産省の方の補助金でいろいろやってもらったのであります。アメリカ市場におきましても、従来のように、いわゆるデラックスな繊維というだけの意味ではなくて、もう少し大衆消費にも食い込みますような努力を、いろいろ続けておるわけであります。
  123. 小室恒夫

    ○小室政府委員 今、通産省の分も、ある経度農林省でおっしゃっていただきましたので、簡単に申します。  私ども、生糸の宣伝費については、大体、はだ着だとか、その他の織物あるいは交織の織物、あるいは編みもの、そういうものを現実にいろいろ試作さして、そういう面から需要の喚起をするように努めておるのです。それから、絹織物の宣伝費は、展示会その他の補助金ということで、絹織物を現実にそのまま売ることを目標にした補助金があります。両々相待って、十分の効果は上げませんけれども、絹織物の最近の輸出は、前年、相当の勢いでアメリカに対してふえておる。どれだけその効果が上ったかということは、なかなか関連して言いにくいことですけれども、そういう事実がありますので、今後もそういう努力を続けていきたいと思います。
  124. 松平忠久

    松平委員 私が質問しようと思ったことを、同僚諸君が大体やってくれましたので、私は、最後に締めくくり的に、一点だけ申し上げたいと思うの区です、それはただいまの糸と織物とのことに関連しておりますが、通産省の繊維局の所管でありますか、繊維工業試験所というのがあります。この試験所では、絹についていろいろ研究しようという考え方があっても、予算がなかなかとれない。化繊等の新しいことを持ち込んでいくと、予算が割合ぽんととれる、こういうことを聞いているわけです。ところが、ただいまもお話がありましたように、混織というか、こういう方向が、私は一つ方向だろうと思います。それは人間の文化の程度が進めば進むほど、一つの複雑性というか、繊維製品については、私は複雑な繊維というものができてくる可能性があると思っているわけです。それには、混織ということが考えられなければならぬので、そこで、通産省として、織物について絹を使っていくことに対して、相当指導性を持ってもらいたい、こういう希望があるわけです。ところが、今言うような工合に、絹ということになると、ちっとも予算がつかないし、上局も熱心にならないということを聞いておるわけです。そこで希望としては、混織等の場合において、もう少し繊維工業試験所というものを、絹の分野についても、十分な研究をここで遂げていくということにして、農林省との関係を、さらに密接にしていくことが、私は最も望ましいやり方ではないかという意見を申し上げまして、私の質問を一応終りたいと思います。
  125. 小平久雄

    小平委員長 本日はこの程度にとどめます。  次会は明六日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後二時五分散会