○小川(半)
委員 私は自由民主党を代表して、
内閣提出最低賃金法案並びに
和田博雄君外十六名
提出最低賃金法案及び
家内労働法案について、
内閣提出最低賃金法案に
賛成し、
和田博雄君外十六名
提出最低賃金法案及び
家内労働法案に
反対の意を表するものであります。以下その理由を申し上げます。
第一に、
社会党提出案の全国一律八千円、当分、二カ年間六千円案については、
わが国の
産業構造の実情、すなわち大
企業と
中小企業、さらに零細
企業の間に
賃金の格差が非常に大きく、かつ、
中小企業、零細
企業に従事する
労働者数が圧倒的に多い
状態のもとにおいては、産業経済界にいたずらに大きな混乱を生じ、かえって失業者を増大する結果となるので、実行不可能であることを断言するものであります。従いまして、地域別、業種別、職種別に漸進的に、実情に即して
実施していく
政府案が最も適切なものであると思うのであります。
次に、
政府案の
最低賃金決定方式について、
業者間協定を第一段階としている点について、効果が薄いのではないかという論があるが、これについては、まず
政府案の
最低賃金決定方式は四つの方式を採用しているもので、
業者間協定のみではないのであります。零細
企業については、労働組合の結成がおくれており、現状においては
業者間協定を認め、労働組合の結成が進んでくれば、労働協約による決定方法に移行する方法をとることが適当であると思うのであります。また業者問協定は
賃金くぎづけの結果をもたらすおそれがあるとの
意見もあるが、現在行われている四十幾つの
業者間協定では、
賃金が一割ないし二割の
上昇を見ていることは何よりも効果があることを証明していると思うのであります。
また、
業者間協定では
労働者の意思が入る余地がないと言う者もあるが、
政府案の
最低賃金審議会は完全な三者構成をとっており、この
審議会の
審議の過程において、十分
労働者側の
意見が反映する機構となっているので、右の反論は当らないと思うものであります。
次に、右に述べました点に
関連して、国際労働
条約の精神に違反するものではないかと言う者がいるが、
政府案は前述のように四つの方式を採用しており、
業者間協定のみではないことと、
労働者の意思が反映する機構を採用していることにより問題はないのであって、国際労働
条約の精神に沿うものと確信いたしております。
次に、
政府案における
最低賃金審議会の権限を強化すべしとの論があるようであるが、この
審議会は三者構成であって、現在の
制度としては最も進んだものであり、実際の運用において、この
審議会の
意見を無視することはできるものではないのであります。また、行政
委員会としての権限を与えるというようなことは、現在その必要を認める理由がないのであります。これらの点については、将来必要があれば慎重に
検討して、実情に即するよう機構を多少変更することはできないことではないのであって、
労働者保護のため一歩を進めた
政府案に対し、むやみに
反対することが、果して
労働者の福祉増進になるでありましょうか、
社会党の諸君の反省を促したいと思うものであります。
次に、
政府案は
中小企業における労働組合の結成を圧迫するものであるという
意見も見られるのであるが、これはむしろ助長し、健全な発達を育成するものであることを申し上げたい。この点ば
使用者側として、
中小企業の労働運動が激しくなるのではないかということを危惧している。すなわち、
中小企業合同労働組合の動きに対しては、
使用者は敏感で、この
最低賃金法案の成立を推進するなら、合同労組の団体交渉方式その他について、
使用者の立場を認めた労働組合法改正案を並行的に
提出すべきであるという声さえ高かったのであります。この点は
政府としても踏み切ったわけであり、本案の
実施によって
中小企業の過当競争を防止し、合理化を推進し、貿易の振興に役立たせ、あわせて正常な労働組合の組成と運動を期待するゆえに、進歩的措置をとったのが本案の
内容であります。
中小企業労働組合の圧迫などということは毛頭ありません。
また
政府案は家内労働の抑制について、
最低賃金に
関連するのみの規定で効果がなく、諸外国において家内労働法が制定されているのに比較して、劣るものであるかの説をなす者もあるが、
わが国の家内労働は実に
複雑多岐で、この全部に及ぼすというようなことは現状では事実上困難であり、法律を制定して実行はできないという事態を惹起すると思うのでありまして、これも現状としては
関連するものについて適用し、将来的確な調査資料に基いて適用を拡大すべきであると存ずるのであります。
最後に、諸外国の相当多数がこの
最低賃金制について、全国一律方式をとっているかのごとき言を聞くのでありますが、決してかような
状態ではなく、国際労働
条約の中にも全国一律方式をとれということは一言も触れてなく、現在わずかに米国とフィリピンに見られるが、米国は州際産業即ち数州にまたがる大
企業のみ一時間一ドルを規定しているのみで、大
部分の産業は州法で各独自の
制度をもっており、フィリピンは
理想に過ぎる規定のため、実際には実行されていないという
事情にあるのであります。
以上種々申し述べましたが、私は
政府案の
実施により、従来比較的恵まれなかった
中小企業労働者の福祉に多大の貢献をもたらすものであると確信するものであります。この
意味において、
わが国の労働保護法として画期的のものであることを強調して、
政府案に
賛成し、
社会党案に
反対の討論を終るものであります