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1958-04-02 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    倉石 忠雄君       小島 徹三君    小林  郁君       田子 一民君    中山 マサ君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       山下 春江君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中原 健次君    長谷川 保君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 四月一日  遺族年金及び公務扶助料生活保護収入認定  より除外に関する陳情書  (第七六八号)  戦前引揚者引揚者給付金等支給法適用に関す  る陳情書  (第七六九号)  国際労働条約第八十七号批准促進に関する陳情  書外一件  (第七七三号)  戦没動員学徒及び女子挺身隊遺族援護に関す  る陳情書  (第七七四号)  同和問題解決に関する陳情書外二件  (第七八八号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間  延長に関する陳情書  (第八一三号)  調理改善法制定促進に関する陳情書  (第八一六号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する陳情  書  (第八一八号)  社会福祉事業法の一部改正に関する陳情書  (第八二〇  号)  世帯更生貸付金指定都市への補助に関する陳  情書(第八  二一号)  社会保険医療費単価引上げに関する陳情書  (第  八二四号)  二見浦保育所新設費国車負担に関する陳情書  (第八二六  号)  社会福祉事業関係予算措置改善等に関する陳  情書(第八二七号)  国民健康保険義務制等に関する陳情書  (第八二八号)  社会保障の拡充に関する陳情書  (第八二九号)  失業対策事業費全額国庫負担等に関する陳情書  (第八三〇号)  保育事業援護率引上げ等に関する陳情書  (第八三一号)  社会福祉費削減反対に関する陳情書  (  第八三二号)  老人福祉法制定等に関する陳情書  (第八三三号)  最低賃金制に関する陳情書外六件  (第八三五号)  国民健康保険財政の確立に関する陳情書  (第八三六号)  医療費値上げ反対に関する陳情書  (第八三七号)  衛生検査技師法制定に関する陳情書外一件  (第八四六号)  保育所関係予算確保に関する陳情書外十一件  (第八七〇号)  最低賃金制実施に関する陳情書外六件  (第八七一  号)  戦没者遺族処遇改善に関する陳情書外八件  (第八七二号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本労働協会法案内閣提出第三九号)      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  日本労働協会法案を議題とし、審査を進めます。質疑を許します。五島虎雄君。
  3. 五島虎雄

    五島委員 この労働協会法案に対する質問は、従来幾人かの委員から多岐にわたって行われております。そこで、私が本日質問をする中にも、幾分ダブる面があるかもしれませんが、大臣は、それは質問がダブりますから答弁の必要はないとかなんとかいうようなことをいつも言われるが、きょうはそういうことのないようにお願いします。   労働省設置法の三条には、「労働省は、労働者福祉職業確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」ということを定めておって、そして九つの種類をあげておるわけであります。労働組合に関する事務労働関係の調整及び労働に関する啓蒙宣伝、それから労働条件向上及び労働者保護、あるいは婦人の問題、職業紹介仕事失業対策に関する件、労働統計調査、それから前各号に掲げるものを除くほか、労働者福祉の増進及び職業確保、それから労働者災害補償保険の問題、失業保険事業の問題というように、幾つ労働省の一体的な行政事務をあげておる。そしてそれは一体的に遂行する責任を負うと明記してある。ところが今回の日本労働協会法案の第一条の目的には、労働問題の研究、それから第二点には、広く労働者使用者並びに国民一般労働問題に関する理解良識をつちかうことにあるとうたつておるのです。労働省みずから、その目的を達成することができないというような観点から、こういうように民間協会を作って、これらに宣伝啓蒙、あるいは統計調査、そういうものをまかせなければ、設置法三条の目的を完遂することができないというような観点で、この労働協会法案が作られるような気がするのですけれども、この点に対する大臣の見解はどうでしょうか。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 設置法三条の第一項の規定を、より効果的にやりますために、民間団体をしてこういう仕事をさせることが適当と考えたからでございます。
  5. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、この第一条の目的の「理解良識をつちかう」ということの理解という意味は、一体どういうように解釈され、良識というのは、いかなるものを良識と解釈されるかということについて……。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 理解は、労働問題についての各般の知識普及に努めるということであります。それから良識は、いずれにも片寄らない、正鵠を得た判断力を養うということであります。
  7. 五島虎雄

    五島委員 この組織法の第三条には、「労働者福祉職業確保とを図り、」云々とありますが、これらに関する業務協会法案には見当らないのです。何だか協会法案自身が空虚な感じがするのです。協会そのものに、何が本質的な疑惑がわくような感じがするわけです。福祉の問題等々について、この協会法案の中に一つもうたっていないということは、一体どういう観点からうたわれなかったかということについて……。
  8. 石田博英

    石田国務大臣 労働省のやります仕事は、全部労働省福祉ということを目標といたすものでありますが、労働問題について広く理解良識を養いますことは、ひいては労働者諸君福祉向上になるものと考えるわけであります。そういう建前から、それが労働省のやります仕事全体の大きな目標でありまして、その中に含まれる一つの部門として、労働者に関する啓蒙宣伝をより効果的にやるという意味で本協会を作ったのでありまして、その本協会具体的目標を明確にしておるわけでございます。大きな目標は、これは言うまでもないことでありまして、労働者あるいは労働省全体の仕事でございます。
  9. 五島虎雄

    五島委員 第四章、二十五条の点について伺います。二十五条は業務範囲をうたっておるわけですか、二号に「労働問題に関し出版及び放送を行うこと。」というようにありますが、その「放送を行うこと。」という放送ですね。労働省放送は一体どういうような構想ですか。これは法案が成立して日本労働協会が設立された暁において、「放送を行うこと。」というのはどういうような放送局を利用されるのでしょうか。
  10. 石田博英

    石田国務大臣 この協会仕事は、たびたび繰り返してお答え申し上げております通り、できるだけ協会自主性中立性を保ちますために、協会会長を委嘱いたしましたら、具体的な職務の内容について、あるいは仕事内容につきましては、会長の独自的な判断によって運営していただく建前でございます。従ってこちらから、放送をやる場合にはどの放送局を使えとか、出版をやる場合にはいかなる出版に限局しろというようなことを初めから考えているわけではございませんけれども、この「放送を行うこと。」というのは、常識的にはNHKを初めとする現在わが国にございます各種放送設備というものを利用するという意味であります。
  11. 五島虎雄

    五島委員 協会が設立されたら、独自的に協会自身にその放送局なんかの選択はまかすというようなことですが、ある信頼すべき学者の話を私たちは聞いた。ところが労働問題の講座あるいは講演等々については、放送局のうちでNHKが一番話しいいのだ、民間放送局講座あるいは講演なりをする場合は何か一つの型をはめられるような気がする、こういうような少しばかりの自己意識を織り込んだ講演というようなことは、やはり民間放送としては非常に困るのだというようなことで、ワクをはめられて、講演などは非常にむずかしいのだ、講座は非常にむずかしいのだ、そうすると、学者等々に講演講座日本労働協会から委嘱されたりなどした場合は、ワクをはめられて、学者特有の自主的な講演が非常にしにくいという経験をわれわれに話されたのであります。こういうようなことについて、NHKあるいは民放、それぞれ色があるだろうと思うのです。色がある幾つかの各種放送局あるいはテレビ、そういうようなところでやる場合の講演講座が、大臣が言われる一条の目的を達成するために、非常に良識をつちかうとか、あるいは公正な判断とかいうことでワクをはめられるおそれがなきにしもあらず、こういうようなことについては大臣は今後どういうように考えられて処置されるつもりですか。
  12. 石田博英

    石田国務大臣 民間放送が学術的な講演や何かにいろいろワクをはめているということは私も初めて聞くのですが、もしそういうようなことがあるとすれば、それはおそらくこの放送時間のスポンサーというようなものに制約を受けるのだろうと思います。本協会でやりますいろいろな事業は、本協会スポンサーになってやるわけですから、他の民間事業がやるという場合とはよほど違ってくると思います。しかしそういうように、本協会中立性を侵したりあるいは講演内容放送局が制限を加えるというようなおそれがあります場合は本協会においてそういう設備を使わないようになるだろうと思います。それはやはり協会の独自の判断でやっていただくことになるだろうと思います。
  13. 五島虎雄

    五島委員 今のような「放送を行うこと。」という業務内容があるわけですが、今後放送局の利用等々について私たちは非常に危惧するわけです。一条の目的ほんとうに達成されるかどうかというような問題ですね。  それから次に第三号の「労働問題に関する講座を開設すること。」という業務があります。この講座というのは、やはり教育目的とするところの講座だろうと思うのですが、これは私が解釈するように教育という面も内容に含まれているかどうかということをお尋ねします。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 現在でも労働省夏期大学とか労働大学とかいうようなものをやったり、またそれに対して援助したりいたしておりますか、それをより以上積極的に、それから同時に、役所やり方でなく民間人やり方で、より大衆的にやりたいというわけであります。もちろん教育という意味も含まれているわけであります。
  15. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、その講座を開設することの内容知識内容教育も含まれているということに解釈されるわけですね、教育も含まれているというように私たち大臣答弁の中から聞き取るわけです。そうすると、非常に自主的な構成で、そうして良識をその目的とするという目的内容において、国民教育せしめるということが今後非常に重要な意味を持ってくるんじゃないかと思われる。そうすると、この教育という業務内容があるということになると、今後の質問に非常に重要な関連か生じてきます。この四号ですね。「労働組合及び使用者団体等の行う労働教育活動に対して援助を行うこと。」という援助仕事業務にある。そうすると、この援助というのは一体どういうようにして援助をされていくのですか。援助の具体的な方途いかんということです。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 教育という意味は、いわゆる道徳教育とか思想教育とかいう言葉でよく使われる一定考え方を押しつけるという意味教育ではなくして、知識普及するということもやはり教育の中に含まれると思います。従って、労働協会のやります教育というのは、考え方やあるいは思想などについて一定方向づけを行おうとする教育という意味ではなくして、知識普及という意味、こういうふうに御理解願いたいと思います。  それから労働教育活動に対して援助を行うという援助ということは、たとえば資料の提供、講師の派遣、そういうようなことをさしておるわけであります。
  17. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、教育自体は、思想普及とかなんとかじゃなくて、ただ単なる知識普及知識の育成というようなことを教育と解釈するのだということですか。この第五号に「前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。」とあり、第一号第二号、第三号、第四号のほかに、第一条の目的を達成するために必要な業務を行うということがあります。もちろん第一条の目的それ自体は「労働問題について研究を行うとともに、広く労働者及び使用者並びに国民一般労働問題に関する理解良識をつちかうことを目的とする。」理解良識をつちかうことを目的とするために四号以外のいろいろの業務を行うとここに規定しようとすることは、一体どういうようなことができるか。その業務範囲ばく然としておる。ばく然としておれば、その仕事自体業務内容は非常に広範にわたるのじゃないかということです。たとえば今大臣が言われたような四号以外の仕事になった場合でも、法律を読めば、こういうような業務内容法律できまっているのじゃないですか。従ってよく大臣が口に言われるところの、法に照らしてという言葉その通りに、法律にきまっているのだ、従ってこういう仕事もやれるのだということになりかねないのじゃなかろうかとも解釈されるわけですけれども、その点の具体的なことの現在構想されているところを一つ……。
  18. 石田博英

    石田国務大臣 この第五号を掲げておきましたのは、たびたび申します通り、これは協会の新しい人事構成がきまりましたら、その人の自主的な活動に待つことを建前といたしております。従って一から四までのことに限局しておきますと、その人たちの新しい別途の構想というものを押えてしまうことになりますので、そういう人たちの新しい、われわれの気がつかない構想などもこの中で生かしていきたい、こう思っておるのであります。具体的に申しますと、たとえば映画の作成などというようなこともこれに含まれておる、こういうことであります。
  19. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、今のところでもう一ぺん聞くのですが、新しい構想ということは、新しい構想であればどういうことでもやれる。どういうことでもやれるというと語弊があるのですけれども、新しい構想ということについては、これは大臣等相談されて、それがよかろうと言ったら、あるいは労働省自身相談に応じた場合は、それは新構想としてどんなことでもやれるということですか。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 それは第一条の目的を達成するためという限定がございます。これが第一点。それから第二点は、業務を行われる場合においては一々相談にあずからないつもりです。完全に自主性を保たせるつもりでございます。この第五号を設けましたのは、第一条の目的を達成する仕事というのは一から四だけのものじゃない。もっとほかにたくさんありそうなものだ。ありそうなものだけれども今ここで一々列挙しておきましても、またのがれるものもある。従って新しくできました構成人たちの自主的な判断に基いて、第一条の目的を達成するという限界の中でいろいろやっていただきたい。その仕事について一々、これをやるからどうだこうだという御相談労働省があずかるというようなことはいたしません。そういうことはやはり協会自主性を妨げるものだ、こう考えておるわけであります。
  21. 五島虎雄

    五島委員 労働省みずから今の答弁の二、三点について教育をやるということが明らかになった。しかしそれも限界のある教育だということが明らかになったわけですけれども、そうすると労働省みずから労働行政の補足として労働協会などを設立し、教育までやろうとすることは、何か労働省みずからが官僚的な行政では国民教育できないのだということを認識されたような説明に私には聞こえるわけです。労政局長もここにおられる。そうして労働運動労使の正常なる慣行等々については教育しておられる。あるいは各都道府県でも、労政事務所を通じて映画あるいは機関誌あるいは講座等々をこの十数年にわたってやってこられて、労働問題の普及等々については、不完全ながらも努力の途中であり、そうしてその効果はすでに上ったというように思われるわけです。しかし大臣が従来から言われるように、経営者には、労働組合法の精神を理解せざるがゆえに、労働組合を作ろうとしたりあるいは労働組合ということを聞いただけでもびっくりしたり、それをぶちこわそうとしたりしようとする者がおる。しかしそれは労働省行政としていまだ不十分である。不十分であれば、これからもなおその労働行政の正常なる運営、あるいは労働三法の普及のためには努力しなければならぬが、それができないがために、それを補足するということにおいて日本労働協会を作り、教育までそれにさせようということになると、労働省教育事業日本労働協会教育事業がダブってくる。教育は二重にも三重にもやる方がいいということかもしれないが、何か独自的なものだ。そうすると労政局教育をやろうとするのと、自主性があり、独立性がある日本労働協会教育をやろうとするそのダブる面において、ちょっとの食い違いがあるというような場合も起るかもしれない。そうして学識経験者理事になったりあるいは審議会委員になったりするような規定になっておるわけですが、学者みずからが研究し、そうして学説を立てた。それは何も労働省にその学説等を曲げられるはずはないと思う。そうすると労働省自身教育をやりたいと思うその意図と、日本労働協会学者等々がやるその教育食い違いを生ずるかもしれない。食い違いを生じた場合に、どういうように国民は受け取っていいかということなどの疑問がわくと思う。こういうような疑問の中から、日本労働協会が今度設立されるが、一体外国はどうだろうかというように思うわけです。外国外国であり、日本日本だと言ってしまえばそれきりのもですが、外国ではこのような協会を持っておるかどうかということです。僕が調べたところでは、日本労働協会という法案内容を持つようなこれらの組織は、外国にはないような気がするわけです。しかも国民教育までしようというようなこれらの組織は、外国にはないような気がするのです。これは労政局長でもよろしいです。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 まず第一に、私どもの方の役所で今までやって参りました労働教育についての仕事の成果が上っていないということを申し上げるわけではありません。しかしやはり今までのやり方で不十分、不徹底な面があればこそ、現在労使双方の間あるいは国民の間に労働問題の理解の度合いがまだ全体的に低いのであります。これを補うのには、やはりいわゆる官僚的な機構の中で官僚的なやり方をするよりは、民間の人でやってもらいたいという考え方に出ておることが第一点であります。  それから教育々々とおっしゃいますが、さっきも明確にいたしておきました通り、これは知識普及するということです。知識普及するということによって理解良識を高めるということが目標でありまして、考え方思想方向つけをしようとするものではございません。それはもう明確にいたしておきたいと存じます。  そこで諸外国の場合どうなっておるか、それから労働協会のやるものと労働省のやることとの間に具体的な食い違いがそれではどこで生ずるかと申しますと、それは具体的に起ってくる個々の事例についての判断あるいは法解釈、そういうものでは食い違いがありましょうが、しかし私は、食い違いがあってもやむを得ない、こう思っております。別に特に調整する必要はないと思います。やはり問題を多く提起し、知識を多く広めていくということの中から国民良識判断力を養っていくということが正しいのであって、それを意識的に調節したり方向づけをしたりする必要は私はないと考えております。諸外国の例については労政局長から答弁をいたさせます。
  23. 亀井光

    亀井政府委員 諸外国の例につきましての御質問でございまするが、日本労働協会のように全額政府の出資で、民間教育団体としての存在を持っているものはないのでございますが、しかし国庫補助あるいは地方公共団体補助によりまして教育活動をしておりまする民間団体は諸外国にもたくさんございます。たとえばイギリスにおきまする労働教育協会あるいは労働大学全国評議会、あるいはアメリカの労働教育協会、スエーデンの同様労働教育協会、フィリピンの労働教育センター、こういうようなものはすべて国の補助金または地方公共団体補助金によって労働教育をやっております。その労働教育内容も、ただいま大臣から御答弁ございましたように、労働問題に関する知識普及という意味労働教育活動をやっております。従いまして、日本労働協会が今考えておりますることが外国にないということでは決してないのでございます。事例はたくさんあります。
  24. 五島虎雄

    五島委員 外国には国の補助等々でやっていて、そして知識向上等々については諸外国にもあるということですが、諸外国のこういうような組織はこのような業務内容を持って、日本労働協会のような内容を持っておるのですか。
  25. 亀井光

    亀井政府委員 日本労働協会は大きな二つ機能を持っておるわけでございます。一つ研究機関としてこの機能一つ教育機関としての機能であります。外国におきましては研究機関研究機関としてやはり民間団体で別個のものを持っております。そして教育機関は今申しましたように、いろいろな労働教育協会でやっておるというような形でございまして、日本労働協会はこの二つ機能、諸外国でやっております二つ機能一つ団体で行おうという趣旨でありまして、外国では同じように二つ目的を持って別々の機関がやっておるのでございます。その点で例があるといえば諸外国にも例があるわけであります。
  26. 五島虎雄

    五島委員 イギリスの例ですが、イギリスでは労働組合等々がこれらの趣旨に賛同して、労働組合援助等々も受け入れているように承知するわけです。そうすると、日本労働協会法案そのものにいろいろ疑惧を持つ、今後の運営とか、それを設立して一体何の価価があるだろうか、かえって逆に悪い効果が出てくるのじゃなかろうかというような疑義があるゆえに私たち質問するわけですけれども、イギリス労働組合等々が喜んでこれに援助を決議したりして、労働者等々がこれらの機関にどんどん入学したりしているが、それは一体どういうことか。その点については、この法案全体を見渡して、労働者自身の意欲も意思も何もこれに通わないような協会内容になっており、機構になっているというように考えるわけです。この協会そのものの中に労働者自身運営の意向を注入できないような、シャット・アウトしてしまったような、ほんとう政府御用機関であるかのような印象を持つところのこの日本労働協会に何か疑義が持たれる、こういうことです。イギリスあたりでは、さいぜん申しましたように、労働者みずからもそれに非常に賛同をして、どんどん労働者などを大学に入学させたり何かやっている。それはやはり、日本労働協会本質と、イギリスに持たれるところのこれらの協会本質がずいぶん違うような気がするわけですが、その点についてはどういうお考えですか。
  27. 石田博英

    石田国務大臣 まず労働団体労働組合その他の御協力、御理解を願うことについては、今私どもの方から、各種の組合の幹部の諸君に対して説明をずっと継続してやっております。中には、だんだんと御理解を得てきている向きも相当あるわけであります。それでは、この法律の上でどこでそれを表わすかと申しますと、評議員であります。二十四条の評議員会に労働組合の代表の人たちその他が入っていただきまして、この運営についていろいろ協議を願いたい、御意見も聞かしていただきたい、こう思っているわけであります。しかし全体の運営といたしましては、労使、公益三者の構成によって運営をいたすと申しますよりは、やはり第三者的な、中立的な立場の人々によって公正な公平な知識普及をはかっていただきたいというところに重点を置いておりますがゆえに、特に理事その他の人選についても、三者構成というような考え方は採用していないのであります。しかし、労働組合の御協力あるいは運営についての御援助を得まするためには、今申しましたように実際上のお手伝いも願うように話も進め、それぞれだんだんと賛成の人を得ておりますと同時に、評議員会でそれをやりたい、こう考えておるわけでございます。
  28. 亀井光

    亀井政府委員 外国労働教育協会におきましては、今御質問のございましたように、組合みずからも一つの会員になりましてこの事業に参加をしておりますことは事実でございます。協力の仕方が、日本的な協力の仕方と諸外国の行き方と若干違うのでございますが、この日本労働協会におきまして、ただいま大臣から答弁を申し上げましたように、評議員会の中に労働者の代表の方々に入っていただきまして、この協会の具体的な事業の決定あるいはその事業の実施というふうな面につきまして労働者の意向が十分反映されるようにわれわれとしては法律上考えているわけでございます。ただ表面に、二十三条の中には、「協会目的を達成するために必要な学識経験を有する者のうちから、」というような表現で出ておりますが、その趣旨はそういう趣旨をこの中に含んでいるわけであります。
  29. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこの問題は、今の件については何か釈然としないものがあるわけでございます。評議員会の中に組合を入れるというようなことについては、私はきょう初めて意向を知ったわけです。が、相当前にも大臣に中原さんが質問されておったわけです。労働協会に対して労働大臣は何を監督するのか、この監督の権限が非常に幅が広いじゃないかというような質問に対して、労働大臣は、日本労働協会中立性を持っておる、そして自主性を持つんだ、だから労働大臣の監督は経理を中心に監督していくのであって、あとのことは労働協会自主性中立性にまかせるんだ。中立性自主性という言葉を使う限りにおいては、そう介入はできないわけなんですが、そうすると依然としてそういうような見解で日本労働協会に臨もうとされるかどうかということについて伺いたい。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 中原委員の御質問にお答えした通りであります。財政上の監督以上のことには出る意思はございませんし、また出ないように規定をいたしております。
  31. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、その第六章の雑則の第三十五条の監督というところに、「協会は、労働大臣が監督する。」と冒頭にうたって、「労働大臣は、この法律の適正な施行を確保するため特に必要があると認めるときは、協会に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。」とある。必要と認めるときは、監督上必要な命令をすることができるというような条文の持つ意味は、労働大臣がすべてを監督するんだ。その監督上において特に必要と認めた場合は業務に関して命令をすることができると二項には規定してあるわけです。そうすると、今大臣の説明では、経理上の問題のみを監督するんだ、ほかには介入はできないことになっているんだと言われるけれども、労働省あるいは労働大臣が特に必要と認めた場合は、これに業務の命令をすることができるということになっておる限りにおいては、今大臣が言われたような一面だけで監督をするというようなことにはならないのじゃなかろうかというように解釈されるが、この点はどうですか。それから、「前項の規定による命令は、協会業務運営自主性に不当に干渉するものであってはならない。」というようにここに制限がある。その制限は不当という字句が使われている。不当に干渉してはならないということは、どういうような判断において不当と解されるか、そのときのニュアンスの問題もあるでしょうからわかりませんが、干渉というものは、不当と判断される程度までは干渉ができるということに条文の規定では読めるわけです。読めるのに、大臣が説明されたように経理上の面だけで監督するのであって、その他は自主性独立性にまかせるんだという問題は何か食い違っているように解釈されるが、この点についてはどうですか。
  32. 石田博英

    石田国務大臣 一、二、三項一緒に読んでいただきたい。それから、この協会のやる仕事の正当、不当というのはどこで区別するかというと、この協会目的ということによって縛られるわけであります。従ってこの協会は、一面においては自主性というものを尊重しなければならないとともに、いま一面においては、この協会目的範囲で行わなければならないということであります。従ってこの協会目的を逸脱した行為を行おうとした場合においては、これはやはり監督しなければならない。だから正当不当の限界はどこにあるかというと、この協会法に制定してあるこの協会目的範囲内か範囲外かということであると思います。  それから自主性はどこまで認められるかというと、経理上、財政上合法的であるという限界一つあります。それからいま一つは、この協会法の目的ワクの中、この二つによって自主性というものもやはり縛られる、しかしその中の自主性というものは尊重していくということでございます。
  33. 五島虎雄

    五島委員 それからその監督の面についてもっと多岐にわたること、それはさいぜん質問しました二十五条に各五号にわたる業務内容規定されておる。その業務内容を監督することができるし、特に会長理事、監事、評議員まで、すべての人事権は大臣が握っておられるわけです。そうすると今言われたような大臣業務の監督は、軍営方法のみならず人事権もすべて掌握できるようにこの条文ではそれぞれなっている。人事権も運営もできるようになると大臣オンリーということになって、そうして運営がいけなければ不当と判断される範囲まで干渉ができる、介入ができる、しかも人事権においてはこれを罷免したりすることができる、こういうようになって大臣の権限は非常に大幅に実現できる。ですから今後日本労働協会が発足して、いろいろの教育思想普及等々はやらないのだと言いながら、いろいろそういうような解釈が行われがちな労働問題の面において、これは非常に権限が大きいものですから、石田労働大臣は非常に答弁がうまいし、そうして答弁される石田労働大臣の時代はそういうような気持で運営されるかもしれませんけれども、すべて日本労働協会運営、人事権は掌握するというようなこういう権限を大幅に持っておるというようなことについては、日本労働協会自身が、労働省あるいは時の労働大臣、時の労働行政を担当する局その他の意向に、公正妥当なあるいは自主的りな独自的なという性格が、いつかつぶれてくるというような時代も必ずあるような気がするわけですが、その点についてどういうように解釈されておりますか。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 これは滝井さんあるいは中原さん、皆さんお触れになった問題でございまして、私はもうすでに四回ぐらい同じことについてお答えをいたしておいたことでございますが、冒頭におっしゃったことにも関係いたしますので、もう一ぺん明権にいたしておきたいと存じます。それは第一、労働大臣が純粋に任命できるのは会長だけであります。その初代会長の任命については、たびたび繰り返して申します通り、私は良心にかけて公正な人を選びます。そうしてその初代会長に他の理事その他の任命はおまかせをいたします。形式的には労働大臣が承認をすることになっておりますけれども、実際上はおまかせをいたします。そうして構成された労働協会というものは一つの性格を作り、それぞれの役員は監事においては二年、理事いおいては四年間の任期を持っておるわけであります。それはその間において労働省の首脳はどうかわろうと、その任期は続くのであります。ただそれが交迭せられる場合は何かというと、十六条の二項においてなるほど労働大臣会長はそれぞれ自分の任命権を持っておるものを任期の途中においてかえることができるのでありますが、そのかえるのには二つの絶対条件がある。それは「心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。」これについても心身の故障というのは一体どういう状態でやるのか。昔錦織それがしという人はちゃんとした常人であったにかかわらず、気違いといわれて気違い病院に入れられたようなことがあったが、そういうことが起りはしないか。これは本委員会においてはお医者さんもたくさんいらっしゃいますが、現在においてはそういうようなことは行われない、必ず医師の診断を必要とするのでありますから、これは科学的に立証される場合に限る。それから第二に「職務上の義務違反があるとき。」これは刑事上あるいはその他の訴追を受ける事態がこれに伴ってくるわけでございます。こういう要件が伴わないと、労働大臣は勝手に任期中の役職員をかえるわけにいかない。それだけの制限が明確に設けられておるわけであります。それから他の業務上の監督権は、こういう特殊法人について国の財政を使ってやる場合におきまして、政府の通常持たなければならない義務的な監督権であります。しかし本協会の持っております性格、その中立性を維持いたしますために、通常の特殊法人の規定のほか、中立性確保するための規定を特に加えておるということでありまして、これは労働省あるいは労働官僚というものが、この協会運営というものを途中においてゆがめるというような事態はございません。それから一たん任命をいたしますと、その協会の性格が作り上げられ、それが社会の認識となります。その社会の認識を、いかなる権力をもっても、今日のデモクラシーの世の中においては勝手に変えられるものでは実際上ないのであります。私どもはそういう事実の上に立って、この協会中立性確保というものについて十分の自信を持っております。
  35. 五島虎雄

    五島委員 石田大臣は、現在の心境においてその中立性独立性ということを判断して、日本労働協会設立後の人事的な問題を解釈するに当って、答弁は現在の心境を説明されたのだろうと思う。石田労働大臣を、私は何も非常に官僚的で独裁的でというようなことで質問をしているのではないわけです。大臣はいつまで労働大臣におられるかわからない。ところがこの法律は、この法律が一たび制定せられるや、各歴代大臣がそれを運営されるわけです。そうすると石田大臣のような現在の心境を持たざる労働大臣が出てくるかもしれない。あなたと同じような心境にある大臣ばかりではなかろうと思う。そこに法の条文の内容、精神を解釈するに当っては、執拗に聞いておかなければならない必要がある。従って石田労働大臣の現在の心境を問うのではなくて、法そのものがどういう運営に将来なっていくか、法そのものがいかなる運営で人事権その他がなされるかというようなことについて、私は質問しているわけです。石田さんの説明は、それはそれなりに了解できるわけですが、そうすると二つの問題、心身の故障のため職務の執行にたえないと認められる科学的な現象が出てきた場合、あるいは職務上の義務違反があるとき——職務上の義務違反というのは一体何か、それは、日本労働協会法という、その中で付与されたところの業務上の違反だろう。ところが第二項の「労働大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他」——その他というのがある。あなたは今、二つの重要な場合にやめさせることができるんだと言われたけれども、その他ということがここに項目にうたわれておる。「その他役員たるに適しない非行があると認めるとき」、その他というのも含めておるのです。これに対するところの説明はない。あなたは、「その他役員たるに適しない非行があると認めるとき」という、役員に適しない非行というのは一体どういう非行を指すのかということも、ここに明快に解明しておかなければならないと思うのです。
  36. 石田博英

    石田国務大臣 「その他役員たるに適しない非行があると認めるとき」という規定は、これは特殊法人に限らず、どこにも認められることで、いわゆる個人的非行も含めるわけであります。つまり社会の指導的な役割を果す人たるにふさわしくない非行、あるいは破廉恥罪、そういうものを含むわけでございます。これはどこの規定にも、どんなところにもあります。  それから私の役員任命についての考え方やり方というものについては了解するとおっしゃっていただきました。その後においてどうなるかわからぬ。しかしそれは今申し上げました通り、一たん四年間という任期がございます。そうしてそういうものによって性格が作り上げられていくわけです。法律における実際上の性格が作り上げられていくわけでございます。従ってその間にでき上ったそういう中正公平な性格というものは、意識的に一ぺんに、このデモクラシーの世の中、議会政治下において変えられるものでないということを申し上げる。幸いにして私の考え方やり方に御賛成でございましたら——御賛成かどうかしらんが、御理解がいただけるのでございましたら、どうかこの法律を、解散によって私がやめなくて済む前に成立させて、私によって任命させていただくようにお願いをいたします。
  37. 五島虎雄

    五島委員 そこまで答弁を飛躍されることはどうかと思う。すべて大臣の言われたことを了解し賛成するということではございません。当面の人事についての答弁言葉そのものは理解ができるけれども、法そのものは理解するものではないということを、ここに明確にしておきたい。この法律を通すか通さぬかということは別問題で、私は今質問すればよい。  そうすると次に、これもかつて委員質問されたわけですけれども、今度の予算案は通った。ところが日本労働協会の基金として三十億円当初は要求されたはずである。それが大蔵省が削ったのか、労働省が当初予算を変更されたのかわからぬのですけれども、三十億が十五億になったということは、算術計算で二分の一になったということ。あなたたちが考えられるような国民に対するところの知識普及とか向上とか、あるいは講座とか等々をやる事業内容は、金額的にいうと半減されたということになる。そうするとその目的を達成するためには倍の年数がかかる。これは算術計算の問題です。そうすると、あなたたちの現在の考え方は、半減をもって労働問題について国民教育を徹底させることであるが、あるいは十五億円で三十億円の効果が得られるとお思いになるのか。その辺の自信のほどをお聞きしたい。
  38. 石田博英

    石田国務大臣 これは何年間でこの協会目的を達成しようという限時的な目的を明らかにしてかかっているものではありません。従って金額が半分になったから倍の年数がかかるというような性質のものではないのであります。  それから三十億の当初請求が十五億になりましたことは年度内の予算の使用し得られる額が一億八千万円から九千万円になったということであります。これは当初の構想を半減せざるを得なくなったことはいうまでもない。そこでしからばいかなるところを制限をし、いかなるところでこの協会目的を達成するかと申しますと、当初は東京に本部を置きまして主要な、たとえば京浜あるいは京阪神あるいは北九州その他主要な産業地に、それぞれ支部を置いて活動をせしめる目的でございましたが、予算が半減せられましたので、初年度におきましては東京だけで、中央だけの活動にとどめる予定であります。しかしながらこれをもって十分とは考えておりませんので、逐年基金の増加に努めて参る方針であります。
  39. 五島虎雄

    五島委員 今度は労政局長に伺いますが、名称の使用制限というのがあります。これは本質には触れないわけですけれども、この七条に、「これに類似する名称を用いてはならない。」とある。現在どういうような団体がありますか。
  40. 亀井光

    亀井政府委員 この規定は、この前も御説明申し上げましたように、この協会が不測の信用の失墜あるいは損害を受けることを防ぐために規定いたしたものでございます。現在の民間のいろいろな団体の中で、日本労働協会という名前に類似する名称を用いているものとしては具体的にはないのでございますが、たとえば日本労働者教育協会とかという名前を使っている民間団体がございます。しかし日本労働協会という類似の名前を使っているものは現在のところ見当っておりません。
  41. 五島虎雄

    五島委員 それはよろしいです。それでは質問をもう一ぺん前に返して、大臣に十六条の問題についてさいぜん質問したわけですが、二項の「その他役員たるに適しない非行があると認めるときは、その役員を解任することができる。」という規定はさいぜん答弁されたわけですけれども、たとえば大臣と役員が意見が合わなくなるということは、さいぞんの大臣答弁によって、ほんとうはおまかせするのだ、意見が食い違ったっていいじゃないかというように思うと言われた。政府労働行政というものはこうやらなければならぬと考えられているときに、非常に食い違いが出てきた。日本労働協会の役員はほとんど労識経験者でしょうから、そうすると、学者学者なりの学説判断によって、教育はこうするのだ、運営はこうするのだ。ところがそれは自主性を持たせるというような大臣考え方だ。しかし大臣は非常に進歩的な解釈で行政をされる方ばかりではないだろうと予想もされる。そういうように食い違ったときなんか、大臣としては、あるいは政府としては、これをやめさせなければならぬ、やめさせたいというように思われることがなきにしもあらずと思う。そのときはどういう条項をもってやめさせるのか。絶対にやめさせないのか、やめさせるのか。そうしてそのときは、非行があると認めるときというような理屈でもつけなければ、なかなかやめさせることができない。それからまた第一条の目的である公正な判断自主性知識普及というようなことを言われているわけですが、公正な判断をしなかったという判断労働省がした。この公正な判断ということは、それぞれ人に解釈させれば、これは主観的なものになりがちなものです。公正な判断とは一体何か。公正とは普通妥当なことであるという説明について、公正とは何ぞというときは、全国民がこれは公正であったかどうかということの判断はなかなかできない。そうすると、何が公正で何が公正でなかったか判断するのは労働省自身の主観的な判断にあるでしょう。われわれもそのときの公正な判断とは何かという公正な判断をするでしょう。そうすると、公正な判断の食違いが生じた場合に、非行な行為があったからそれでやめさせたんだというような理屈になりがちなものである。かつてもいろいろ事例がある。そういうようなことについてはどういうように解釈されますか。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 労働協会考え方判断労働省判断が食い違っていることはやむを得ないということはしばしば申し上げております。しかし労働協会は個々の事象についていろいろ判断をしたり裁決をしたりするところではございません。従って、これは恒久的な労働問題についての知識普及研究団体でありますから、判断というようなことがしばしば出てくることではありません。しかしそういようなことがあっても私はやむを得ないと考えております。そこで、公正でない、公正であるというような場合、そういうことが十六条の二項の役員を罷免する原因になり得るかどうかというと、私は原因になり得ないと考えます。なぜならば、ここに規定してある役員たるに適しない非行、あるいは心身の故障、あるいは職務上の義務違反、これは非常に個人の名誉に関することであります。従って、そういうあいまいなことをもって処分をすれば、言いかえるならば、その役員に対して、適しない非行があったか、あるいは心身が故障しておるか、あるいは職務上の義務違反があったかということを明示しなければなりません。そのことは、言いかえればその人にとっては個人として名誉毀損で訴える基礎に直ちになり得ることでありますし、第一社会の常識がそんなことを許しませんから、公正であるとかないとか、あるいは協会運営が本条の目的範囲内において行われておるとかいないとかいうことは、役員の罷免の原因にはなり得ない。それは目的に違又している場合、目的から逸脱している場合、それはむしろ先ほど御説明しました規定に準拠する、こう思っております。
  43. 五島虎雄

    五島委員 次に十八条です。十八条の代表権の制限で「協会会長との利益が相友する事項については、会長は、代表権を有しない。この場合には、監事が協会を代表する。」というように代表権の制限がうたわれておる。ところが十二条を見ると「会長は、協会を代表し、その業務を総理する。」、そうして第三項には「監事は、協会業務を監査する。」という職務がある。監事は協会業務を監査する職務であるにかかわらず、十八条においては、利益が相友するときは会長は代表権がない、その代表権は監事に付与するのだという規定になっておる。ところがその会長が利益相反するとき代表権がなくなった場合でも、それを代表して業務を総理しなければならない。ところが十二条において監事は協会業務を監査するという監査の職務があるものが、十八条において代表権があるというようなことはちょっとおかしいのじゃなかろうか。ところが案ずるに、会長及び監事は労働大臣が直接の任命である、理事会長相談して大臣が任命するということになって、一部間接的なものである。そうすると、直接大臣が任命される会長、監事の立場の中に、職務としては二つの権限がはっきり二分されていると思うのです。それにもかかわらず代表権を監事に置いたということは、やはり大臣が直接任命されたがゆえに、直接任命されるものに代表権を与えたいという企図があるのかどうか。これは間違いじゃなかろうかというように思うのですが、この点についてはどうですか。会長が代表権がない場合は、理事会の理事者のたれかがこれにかわって代表権をつかさどるというようになるのが大体通念じゃなかろうかと思いますが、ここだけはちょっと違うから、特に質問しておきます。
  44. 石田博英

    石田国務大臣 これはどの公法人の規定の中にもある規定でありまして、きわめて特殊な場合に限っておるわけであります。一例をあげますと、会長の財産というか、会長個人の品物を処分する、そういうような問題にからむわけであります。具体的な事柄は労政局長から答弁させますが、どんな公法人にも規定があるわけであります。
  45. 亀井光

    亀井政府委員 大臣の御答弁をもう少し補足いたしますと、趣旨は今の大臣の御答弁通りでございます。会長個人のいろいろな財産の処分、これは協会との取引におきましてやりますると、会長は一方では個人の資格、一方では協会会長の資格でございますから、これは協会に不利益に取り扱われるおそれがございます。従いましてそういう場合には、第三者の立場にありまする者を代表権者として選ぶことは、これは特殊法人の通例でございます。その場合に理事を選びますることは、理事会長が任命いたすものでございますから、任命いたす者と任命された者との間の関係につきましては、これは若干問題があるわけでございます。従いまして同等の地位、すなわち労働大臣から同じく任命されておりまする監事をその代表権者として選ぶということが適当じゃないか。これはどの特殊法人にも共通なものでございます。
  46. 五島虎雄

    五島委員 第二十条を見て下さい。「協会の職員は、会長が任命する。とあります。」そうするとこの職員の規模などはどういうように構想されるのか、あるいは協会の役員だけを作って、評議員を作って、そうしておぜん立てをするのだという説明がこの前はあったわけですね。そうすると役員が本部を置き支部を置く、支部を置こうと思ったけれども、三十億が十五億になったのでひとまず支部をやめておこうというように予算の上では制限されてくるのだというような説明があったわけですけれども、その規模がどのくらいであるか。その規模というのは、職員の数は一体どのくらいで実際の業務がやられるのか。
  47. 亀井光

    亀井政府委員 職員の数の問題につきましては、これはかねがね大臣が御答弁申し上げておりますように、この協会ができましてから理事会において決定されていく性質のものだと思います。すなわちその人数なりその構成あるいは組織という問題につきましては。しかしわれわれとしましては、一応この協会が二十五条に規定しておりまする事業を円滑に行いまするには、これに四十名ないし四十五名の職員が要るのではないかという一応の計算は立てておりますが、具体的にはただいま申し上げますように会長理事会の議を経て決定していく性質のものだと思います。
  48. 五島虎雄

    五島委員 そうすると四十名から四十五名が想定されているというわけですが、二十一条には「役員及び職員の公務員たる性質」ということを特にうたってある。その公務員たる性質をこの法律が付与しようとするに当って、「役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」ということになっております。その身分の保障、待遇関係は一体どうなるのであろうか。ただこの法律は罰則を適用するときだけ公務員の公務に従事する職員とみなす、あとは何にもない。野放しである。そういうようなことで、その職責に当ってはやはり責任はとってもらわなければならぬ。だれでも信賞必罰ですから責任はなければならぬ、ところがこれらの職員や役員については罰則だけを公務員並みに規定して、その他は知らぬぞ、あとは自主性にまかせるというようなことについては、その身分の保障、それから待遇関係は一体どういうように構想されておるか、
  49. 亀井光

    亀井政府委員 それらの具体的なことは先ほど御説明申し上げましたように、すべて理事会の決定を経まして定款で具体的に定められる、あるいはその下部細則でございまする執務細則、こういうふうなものできめられていくと思うのでございますが、この協会に従事しまする職員は、言うまでもなくその事業内容が高度の知識経験を要する事業でございまするだけに、これに従事しまする職員の賃金のベースその他は、もちろん社会水準よりも高いものを予定せざるを得ないと思うのでございまして、われわれもそういう意味で、具体的には理事会その他が決定するのでございまするが、予算の上におきましては高い賃金のベースというものを考えて予定をいたしておる次第でございます。
  50. 五島虎雄

    五島委員 第三章の評議員会ですが、さっき大臣とあなたも一部触れられたわけですけれども、評議員会は理事会の諮問機関になっておるわけですね。ところがその理事会の諮問機関である評議員会の委員大臣の任命になっておるわけです。このように、会長は直接大臣が任命する、理事会長の推薦者を大臣が任命する、その理事会の諮問機関である評議員会をまた、それらの意向を上申して——上申というと語弊があるかもしれぬけれども、これまた大臣が任命する、三段に分れておるのを、すべて三段とも大臣が直接任命する。何だかこの評議員会が労働大臣の諮問機関であるかのような印象がある。さいぜんからずっと大臣が言われているように、中立性、独自性があるものならば、しかもこれは監督とういことは任意にする、意見が食い違って教育の方法が食い違ったって、これはやむを得ないだろう。国民知識向上労働運動の認識を広め、上げるためには意見、教育の方法が食い違ったって仕方がなかろうと言われる。そういう言葉があるにもかかわらず、法律では理事会の諮問機関である評議員まで大臣が任命する。この点については二重にも三重にも四重にもこの労働協会そのものを縛りつけることになるわけです。大体諮問機関は、理事会の諮問機関だったら理事会にまかせて、適当な人を自由に選ばせて、そうして諮問に応じさせることが、より中立性を尊重するゆえんになろうと思うのですけれども、この点についてはどうですか。ここまでこの法律で縛りつける必要がありますか。
  51. 亀井光

    亀井政府委員 この評議員会を持っておりまする特殊法人というのはあまり例がないのでございまして、そういう意味で先ほどから大臣が御説明申し上げておりますように、この団体自主性を尊重する意味におきまして、この評議員会制度をこの法律として認めておるのはこの団体の大きな特色だと私は思うのでございます。そこで評議員会は諮問機関ではございますが、できるだけ諮問に対する答申ができまするために、やはり会長なり理事会で任命されるより、これは会長の諮問機関あるいは理事会の諮問機関でございますから、自分の任命された者から諮問を受けて答申をするということよりも、やはり第三者の労働大臣が任命した方がより諮問に公正に答え得る、自主的な判断で自由に答え得る力を付与するといいますか、そういう趣旨理事会あるいは会長の任命よりも、労働大臣の任命の方がより公正であろうというふうに考えた次第でございます。
  52. 五島虎雄

    五島委員 理事会の任命よりも大臣の任命の方がより公正ということは、何か理事会を信用せざる者の言葉になるのじゃないかと思う。まあ解釈の仕方はいろいろな面からできるわけだが、どうもその点、そんなに労働協会を役員あるいはその他の機構で縛りつけて、そして言葉の中では、独自性、自主性中立性というようなことを宣伝したって、われわれの理解の中には、言葉そのもの百パーセント響いてこないように思う。この点はあとに残しておきます。  それから中山会長がこういうことを言れれたそうです。日本労働協会というものを作ることは希望しておったのだ。ところが実際法律案が出てみると、こういう内容日本労働協会は希望していなかったのだ。中山会長は私鉄争議を調停し、あっせんし、そして時の人になっておる。そして中立委員として今を時めく人なんです。そういう人たちが、日本労働協会として調査資料の収集というような問題については、早く作らないと日本労働運動の資料等々がなかなか収集できない。それで歴史的なものになるから、そういう方面では希望していたのだ。ところがこの法案が出てみると、案に相違して教育宣伝啓蒙というようなところまで持ってこられて、その権限が非常に大幅に拡大されている。こういうことでは二重にも三重にも縛りつける。こういう内容を持つ協会そのものは希望していなかったということを言われたそうだが、こういうことを聞かれたことがありますか。こういう学者がこういうことを言っていることが、われわれに今までのような疑問を持たせるゆえんではないかと思うのです。
  53. 石田博英

    石田国務大臣 今五島君のおっしゃったような中山先生の御意見は、聞いたことはございません。それから、もし中山先生がそういう御意見を持っておいででしたら、私は座談会とかそういうところでしょっちゅうお目にかかる機会がございますし、私が当の責任者でございますから、中山先生が真剣にそういう御議論でしたら、本法案を立案したあとからでも、何度でもおっしゃる機会があるはずでありますが、一度も私は伺ったことがございません。むしろ協会法はどうなったかと非常に心配された御質問はたびたび伺っております。
  54. 五島虎雄

    五島委員 それではもう一点で終ります。大正八年、米騒動の後に協調会ができた。そうしてその行く末は産報会議になってしまった。協調会は、大正年代の労働問題が芽を出すころは非常に進歩的であると評されておったわけです。ところが、現在昭和三十三年の時代になって、それが進歩的であったからこれも進歩的であるということには必ずしもならないと思う。日本労働協会は、この協調会の精神あるいはやり方等々を参考とされたのかどうかということについて、端的に聞いておきます。
  55. 石田博英

    石田国務大臣 いろいろな人なり団体なり法人なりの果した役割というものは、そのときどき進歩的であっても、長い年月がたてば、同じものを作ってみても進歩的でないということはその通りであります。しかし、そのもののそのときにおける価値はそのときにおいて判断すべきものであって、今日判断すべきものではない。協調会は協調会なりにあの時代においては進歩的役割を相当程度果したものだと思っております。しかし、本協会を作るときに協調会を参考にはいたしません。むしろ協調会的なあり方にならないように注意をいたしまして、参考にしたとするならばそういう点であります。その第一点はどこかというと、協調会の財源というものはたしか六百万円であったと思うのですが、四百万円が財界の寄付、二百万円が国庫の支出でありました。こういうことで現われますように、あるいは経済界の立場から労働問題の処理を考えた。それだけであってはなりません。やはり労使双方の中立的立場というものを確保しなければならないので、全額政府出資といたしました。それから協調会の果す大きな役割の一つ労使紛争の調停でありまして、今日労使紛争の調停は中央労働委員会あるいは公共企業体等労働委員会等ございまして、それがやっておるわけでありますから、そういう役割は完全に除外をいたしているわけであります。協調会のおもな役割はむしろそこにありまして、本協会の果そうという役割は、現在の段階における労働問題の知識普及する、その一点であります。その知識普及するために必要な啓蒙宣伝、基礎的な調査研究、そこに重点を置くことによって労使あるいは国民全体の労働問題の理解良識をつちかう。従って、協調会の重点を置いた仕事は全く失われておりまして、性質も内容も違っておるわけであります。
  56. 五島虎雄

    五島委員  一応これで終ります。まだほかにあるのですけれども、保留します。
  57. 森山欽司

    森山委員長 本日はこれにて散会します。     午後零時二十七分散会