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1958-03-20 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十日(木曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       小島 徹三君    小林  郁君       中山 マサ君    古川 丈吉君       松浦周太郎君    山下 春江君       亘  四郎君    井堀 繁雄君       堂森 芳夫君    中原 健次君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   宮本 一朗君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二十日  委員長谷川保辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として長  谷川保君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十九日  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(参議院送付)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五五号)(参議院送付) 同日  民間電気治療営業禁止反対に関する請願楠美  省吾君紹介)(第二〇五一号)  同(須磨彌吉郎君紹介)(第二〇五二号)  同(永田亮一紹介)(第二〇五三号)  同(池田正之輔君紹介)(第二〇五四号)  同外三件(池田正之輔君紹介)第二一六〇号)  同(受田新吉紹介)第二一六一号)  同外二件(千葉三郎紹介)第二一六二号)  同外十一件(受田新吉紹介)(第二一九二  号)  同(吉川兼光紹介)第二一九三号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (青野武一紹介)第二〇七四号)  同(石野久男紹介)(第二〇七五号)  同(今澄勇紹介)(第二〇七六号)  同(石村英雄紹介)(第二〇七七号)  同(稻村隆一君紹介)(第二〇七八号)  同(受田新吉紹介)(第二〇七九号)  同(大矢省三紹介)(第二〇八〇号)  同(岡田春夫紹介)(第二〇八一号)  同(風見章紹介)(第二〇八二号)  同(小平忠紹介)(第二〇八三号)  同(島上善五郎紹介)(第二〇八四号)  同(永井勝次郎紹介)(第二〇八五号)  同(野原覺紹介)(第二〇八六号)  同(原彪紹介)(第二〇八七号)  同(芳賀貢紹介)(第二〇八八号)  同(福田昌子紹介)(第二〇八九号)  同(正木清紹介)(第二〇九〇号)  同(三宅正一紹介)(第二〇九一号)  同(森三樹二君紹介)(第二〇九二号)  同(横路節雄紹介)(第二〇九三号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第二〇九四号)  同(池田禎治紹介)(第二一五六号)  同(河野正紹介)(第二一五七号)  同(滝井義高紹介)(第二一五八号)  同(松本七郎紹介)(第二一五九号)  職業訓練制度確立に関する請願加藤鐐五郎君  紹介)(第二一二四号)  同(足鹿覺紹介)(第二一五四号)  同(横山利秋君外二名紹介)(第二一九八号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  外一件(橋本龍伍紹介)(第二一二五号)  国民障害年金法制定に関する請願足鹿覺君紹  介)(第二一五五号)  国立病院等における看護婦の産休のための定員  確保に関する請願外五件(福田昌子紹介)(  第二一六三号)  調理改善法制定促進に関する請願保科善四郎  君紹介)(第二一六四号)  国立らい療養所の軽快退所者援護に関する請願  (山花秀雄紹介)(第二一六五号)  最低賃金法制定に伴い一般職種別賃金の即時  廃止に関する請願山口丈太郎紹介)(第二  一九四号)  職業訓練法案の一部修正に関する請願山口丈  太郎紹介)(第二一九五号)  結核回復者優先雇用に関する請願山花秀雄  君紹介)(第二一九七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  職業訓練法案について文教委員会連合審査会  開会の件  国民健康保険法案内閣提出第一三六号)  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(参議院送付)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五五号)(参議院送付)  社会福祉事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)(予)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号)  国際労働条約国内労働法規との関係等に関す  る件      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。職業訓練法案について文教委員会より連合審査会の申し出がございますが、これを受諾するに御異議ございませんか。
  3. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  なおこの連合審査会は来たる二十五日午後に開会いたす予定でありますから御了承願います。     ―――――――――――――
  4. 森山欽司

    森山委員長 次に去る三月十四日当委員会に付託されました内閣提出国民健康保険法案、昨十九日本委員会に付託されました内閣提出参議院送付旅館業法の一部を改正する法律案、同じく身体障害者福祉法の一部を改正する法律案及び去る二月二十八日当委員会予備審査のため付託されました内閣提出社会福祉事業法の一部を改正する法律案を順次議題とし、審査に入ります。まず各案の趣旨について逐次政府説明を求めます。厚生大臣。     ―――――――――――――
  5. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 ただいま議題となりました国民健康保険法案につきまして、その提案理由を御説明出し上げます。  福祉国家の理想を実現して参りますために、政府はつとに社会保障向上及び増進に努力して参ったところでありますが、各種の施策のうち、最も緊急を要するものが、疾病に対する医療保障整備にありますことは広く一般の認めるところであります。  このため、政府昭和三十二年度予算の編成に際しましては、最重要施策一つとして、昭和三十五年度を目途とする国民保険の達成を掲げ、国民健康保険普及中心に諸般の基礎的条件整備を進めて参ったのであります。  この法律案は、さきに、社会保障制度審議会が行なった医療保障制度に関する勧告にこたえて、現行国民健康保険法を再検討し、財政上の裏づけとともに国民保険基礎法として、現行法を全面的に改正しようとするものでありまして、社会保障制度審議会におきましても、慎重審議の結果、原則的に賛成を得、さらに答申の線に沿って所要整備を加え、ここに提案をいたした次第であります。  この法律案の要皆は、第一に、国民保険態勢確立のため、国の責任明確化したことであります。現行法では、療養給付費の二割と事務費全額に対しまして補助金を交付しているのでありますが、療養給付費補助金総額療養給付費の二割とし、そのうち二〇%を財政調整に充てて交付しておりましたため、療養給付費最低一割二分程度から二割五分程度まで、その交付割合市町村によって相違し、概して申し上げますと、地方財政の良好な市部には不利となっておったわけであります。これからの普及重点は、大都市を含む市部にありますので、普及障害を除去するとともに、国民健康保険に対する国の責任明確化をはかるため、従来の補助金負担金に改め、療養給付費の二割は、どの保険者に対しても負担することとし、事務費につきましても負担金とするのほか、新たに、療養給付費の五分に相当する調整交付金制度を設けて、国民健康保険財政を調整し、負担の公平及び内容充実をはかることとしたのであります。  第二に給付内容充実であります。従来の国民健康保険は、健康保険と比較いたしますと、給付範囲の面でも著しく劣っていたのでありますが、これを健康保険同一とし、また、給付割合も、大多数の保険者が五割にすぎなかったのでありますが、財政充実とともに、これについても漸進的に向上を期することができるようにした次第であります。  第三に国民健康保険における療養担当者制度につきまして、最近の医療実情に応ずるとともに、この事業協力を希望しているすべての私的医療機関が参加し得ることとするとともに、各般の規定におきまして、公私医療機関を差別せず、全く同一法律的取扱いとし、指定の拒否、取り消し等につきましても、地方社会保険医療協議会の議を経ることとし、さらに弁明の機会を与え、診療報酬につきましても、保険者療養担当者が協議して定めるため、割引等が見られたのでありますが、健康保険同一とする等その地位の安定をはかったことであります。  第四に、昭和三十五年度まで及びその後の例外的な経過規定を設けまして、市町村国民健康保険を実施する建前としたことであります。  政府は、この法案の成立によりまして、いまだ医療保険の対象となっておらない約二千万人の国民に一日も早く医療保障を及ぼしたいと念願いたしておるものであります。  以上が、この法律案提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に、旅館業法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  昨年、旅館業法の一部が改正され、旅館業に対する従来からの公衆衛生上の規制に加え、風俗的見地からの規制をも行い得るものとされたのでありますが、第八条に規定されている婦女に売淫をさせた者等処罰に関する勅令が、本年四月から、売春防止法附則第二項の規定によって廃止されることとなりましたので、これに伴い関係規定整備をはかろうとするものであります。その内容は、第八条中に従来規定されておりました婦女に売婬をさせた者等処罰に関する勅令規定する罪を売春防止法第二章に規定する罪と改めるとともに、これに伴う経過措置規定したものであります。  以上がこの法律案提出いたしました理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、社会福祉法人の設置する身体障害者更生援護施設厚生大臣指定するものに身体障害者収容委託できることとすること及び身体障害者福祉法関係事務に対する民生委員協力義務を明らかにすることをそのおもな内容とするものであります。  まず、改正の第一点は、収容援護を必要とする身体障害者収容委託についてであります。現在、身体障害者を公費をもって収容している更生援護施設は、国立及び公立に限られているのでありますが、身体障害者によっては障害特異性等よりして、民間篤志事業として豊富な経験を有する社会福祉法人の設置する施設においてその更生援護を行うことが効果的な場合も考えられますので、国立公立施設における援護とあわせて、厚生大臣指定するこれらの施設へも収容委託できることとして、身体障害者福祉の一層の向上をはかりたいと考える次第であります。  なお、収容委託に要する費用につきましては、出身地都道府県または市町村全額を支弁し、国がその十分の八を負担することとし、さらに委託を受けた施設の便宜を考慮して、施設所在地都道府県または市町村がこの費用を一時繰りかえ支弁すべき旨の規定を設けております。  改正の第二点は、身体障害者福祉法関係事務に対する民生委員協力について明文化することであります。身体障害者更生指導につきましては、福祉事務所中心とする公的機関の活動とあわせ、地域社会その他民間協力がきわめて重要でありますので、この改正によりまして、特に民生委員協力義務を明確にいたしまして、さらに積極的な協力を得ることにより身体障害者史生援護円滑化に資したい所存であります。  なお、以上のほか、関係条文の整理等必要な措置を講じました。  以上がこの法律案提出いたしました理由であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に、社会福祉事業法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  この法律案は、社会福祉事業範囲を拡張し、社会福祉審議会委員任期を延長したほか、一定規模以上の市について二以上の福祉事務所を設置することができることとし、また、社会福祉法人につきまして、定款記載事項簡素化及びこれに対する指導監督充実を期することを内容としているものであります。  すなわち、改正点の第一は新たに社会福祉事業として結核回復者保護施設を経営する事業及び隣保事業を加えたことであります。  その第二は、従来社会福祉審議会委員のうち関係行政庁の職員以外の委員任期が一年とされておりましたのを二年に改めたことであります。  その第三は、従来指定都市以外の市につきましては、一の福祉事務所を設置することを建前としておりましたが、これを政令で指定する人口おおむね二十万以上の市については、その実情に応じて二以上の福祉事務所を設置できることとしたことであります。  その第四は、現在定款必要的記載事項とされております資産総額につきまして、これを定款必要的記載事項からはずし、資産の変動のつど定款の変更を行う必要がないこととして、社会福祉法人負担を軽減するとともに、行政事務簡素化をもはかることとし、また、社会福祉法人指導監督につきまして、厚生大臣のほか都道府県知事も報告、徴収及び検査の権限を行使することができるものとして、社会福祉法人に対する指導監督充実を期したことであります。  その第五は、低利融資事業による貸付金に関する証書について印紙税を課さないものとしたほか、以上の改正に伴い関係条文改正等所要措置を講じました。  以上がこの法律案提案いたしました理由であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  6. 森山欽司

    森山委員長 ただいま説明を聴取いたしました国民健康保険法案その他各案についての質疑は、後日に譲ります。     ―――――――――――――
  7. 森山欽司

    森山委員長 次に、国際労働条約国内労働法規との関係等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。井堀繁雄君。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 さきに前臨時国会で、日本国際的地位にきわめて重要な関係を持ちまする国際労働機関に対する政府態度お尋ねいたしまして、岸総理から、日本国のこれに対する態度はきわめて明確に御答弁がございまして、その節総理からもILO憲章精神については全く同感の意を表すると同時に、その精神を忠実に履行していく義務を痛感している旨の御答弁がございました。このことによって日本国ILOに対する基本的な態度は明らかになったもの思うのであります。続いて日本政府が、国際外交基本的方針というものを、国連にその基盤を求めておりますことも、すでに明確なところでありまして、この国連ILOとの関係は、言うまでもなく表裏の関係にあるという点も、政府もこれを確認なされている。従って日本国連にその重点を置いて外交を展開していくと同じ意味において、ILOに対してもきわめて強い関心と、ILOの運営についても強い責任を感じておるものと思うのであります。そこでその節にも総理に、日本政府の所見をただしておいたのでありますが、ILO憲章規定してありますことを、日本国が他の国に率先して、これを実施に移さなければなりませんことは、そのときも総理からの答弁で明らかになっておりますように、日本国はすでに常任理事国として責任のある地位についておるわけであります。こういう関係からいたしまして日本国としましてはILOの議決いたしました条約勧告案について、どのような態度で臨まなければならぬかということも、抽象的ではあるが、日本国態度はもうここに明らかにされておるのであります。ことに日本が不幸なことには、当時の国連を脱退いたしましたと同時に、ILOからも離反いたしました。国連に復帰する以前に、言本国ILOに復帰する機会を得て、今日理事国になったといういきでさつから参りまして、ちょうど日本ILOから離れておる問に、幾つもの条約採択され、また勧告案なども議決をされてきておるわけであります。こういう問題に対する日本政府のとるべき措置というものは、どうあるべきかということをお尋ねいたしました。続いてILO採択になっております条約勧告に対する批准手続などについても、お尋ねをいたしておるわけでありますが、重複を避ける意味で――そういう次第で、日本政府態度はもう明らかであります。そこできょうは専門的なお仕事をおやりになっております局長大臣が、参議院の都合で御多用であると思いますから、次官のお立ち合いの上でこの問題を順次明らかにしていきたいと思います。私がこのことをお尋ねいたしますのは党利党略利害関係で扱うべき事柄でない。ことにこういう問題はILO憲章に明らかにされておりますように、日本国民的立場に立って問題を処理していきたいと思うのであります。  ついででありますから、私の質問する目的の一つを明らかにしておきたいと思います。それはここでお尋ねをいたしますることについて明確な御答弁をいただき、また十分納得のできる御説明が伺えれば、それに越したことはありませんが、もし疑義があるような点がございましたならば、このILO憲章に基いて日本国の代表もいっておりますし、直接ILOの本部、事務局に一応見解をただすような措置をもとりたいと思っております。そのつもりで御答弁を願いたいと存じます。前置きは大へん長かったのでありますが、それでは具体的にお尋ねをいたして参りたいと思います。  ILO憲章の全体をここで読み上げることは時間の関係でやめますが、言うまでもなくILO憲章の示すところは、ことに理事国としての責任、権一限、それから加盟国としての責任権限がきわめて明確にここに規定されております。このILO憲章に従いまするならば、当然日本国として多くの条約勧告案に対してしかるべき手続をとらなければならぬじゃないか、たとえば批准手続あるいは勧告に対する履行のための措置を、ここでは権威ある機関といっておるところを見ますと、国会をさすのではないかと思いますが、国会ILOの未批准のものについて批准を求めるとか、あるいは、勧告に対する国内法整備などについて多くの問題が残っておると思うのですが、政府、特に専門にその仕事をなさっておりまする労働省としては、未批准になっております条約のうち、どれどれは批准を急がなければならぬ、あるいは批准をして差しつかえない、あるいは批准ができないといったようなものがあろうと思うので、こういうものに対して一応明らかにしてほしいと思います。
  9. 宮本一朗

    宮本説明員 かねてから労働大臣も申し上げておりますように、国際労働機関採択になりました条約総数は百七でございます。そのうち二十四条約批准いたしております。これは戦前が十四で再復帰以後、すなわち五十二年以降が十、合計二十四、かようになっております。残りました条約の中で、新たな条約によって吸収されましたもの、あるいは加盟国が所定の数ないために効力を発していないもの、あるいは非本土地域その他の関係につきます条約で、わが国としましては全然意味のないもの、さようなものがありますので、そういうものを差し引きまして五十二条約が未批准のまま残っております。この五十二のうちで労働省のみならず各省の所管のもの、あるいは労働省も一部――要するに共管になっておる意味でございますが、そういったものをふるい分けますと、労働省プロパーといたしましては三十三の条約になるかと思います。これだけがまだ批准されずに残っておる、かような状況になっております。これに対します態度といたしましては、従前からそれらの条約そのものが持ちます意味、あるいは解釈上の疑義、その他を検討いたしまして、しかる後に国内法との関連、これを検討いたしまして、疑いのあるものは批准できないのではなかろうかということで処理いたしております。批准一できるものは直ちに批准する、こういう手続をとって参ったわけでございます。現在もそういった意味におきましてすべての条約にわたりまして検討を加えつつある、かような状況でございます。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 確認をいたしておきたいと思いますが、百七の条約のうち二十四が批准されて五十二の条約が残っている、それから三十三の条約が未批准……、何かそこのところがはっきりいたしませんが、計算でいきますと百七のうち二十四で、残りがまだ批准されていないのでありますが、そのうちすぐ批准のできるものが五十二というふうに理解するのですか。その点を明確に答えて下さい。
  11. 宮本一朗

    宮本説明員 それでは繰り返して申し上げます。条約総数は百七でございます。わが国批准いたしましたものの総数が二十四でございます。残りました八十三の中で、新条約によって改正されたものが十四でございます。現在までにいまだ発効していないものが九つでございます。わが国関係のないものが八つでございます。従いまして十四と九と八と、この総数を八十三から差し引きますと五十二ということになります。従って五十二が未批准のままで残っておる、かようなことに相なるわけであります。この五十二のうちで労働省所管事項のものが三十三でございまして、あと残りました数は運輸省あるいは厚生省の所管、かように相なるわけでございます。  この五十二のうちの三十三につきましては労働省自体といたしまして絶えず検討を加えておるわけでございますが、いまだ批准手続をとっておりませんものの中には、条約の立て方と国内法の立て方とが全然矛盾いたしておりまして、はっきりと批准でき得ないものが相当数ございます。それから、かねてわが国政府といたしましては非常に厳格な解釈をとりまして、細部にわたりましてもいやしくもゆるがせにしないという態度をとっておりますので、そういった意味から申しますと、あるいは条約趣旨と抵触するのではなかろうかというのが数件ございます。はっきりした数字は今記憶しておりませんが二、四件につきましてはそういうものがございます。従って、そういう解釈のもとに抵触するのではなかろうかという疑いがございますので、ただいままで批准手続をとっておらない、かような状況でございます。
  12. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、労働省関係の三十三のうち数件ということでございますが、きわめて数が限定されると思いますが、その数件を除けば一応批准の可能なものだという見解に立ってよろしゅうございますか。
  13. 宮本一朗

    宮本説明員 おっしゃることと逆でありまして、数件は厳密な解釈のもとではあるいはひっかかるのではなかろうか、こういう趣旨でありまして、その残りましたものははっきりと抵触しておる、かような趣旨でございます。
  14. 井堀繁雄

    井堀委員 失礼しました。そうしますと三十三件のうちから数件はひっかかる。そうすると約二十五、六件のものが残りますか、問題になるのは……。
  15. 宮本一朗

    宮本説明員 さようになるかと思います。
  16. 井堀繁雄

    井堀委員 その残っておりますものの中で、今すぐわかれば、どれとどれということを号数でけっこうですから言っていただきたい。
  17. 宮本一朗

    宮本説明員 たとえて申し上げますと、労働時間に関係いたします条約が数件ございます。これは第一号、第三十号、第三十一号、第四十三号、第四十六号、第四十七号、第四十九号、第五十一号、第六十一号、第六十七号でございます。しかしながらわが国の労働基準法の建前とこれらの諸条約の中の時間の立て方が違っております。従いましてそういう数字的なもので規制いたしております関係上、この点ははっきりとでき得ないといわざるを得ない状況でございます。
  18. 井堀繁雄

    井堀委員 労働時間関係は以上ですが、そのほかは……。
  19. 宮本一朗

    宮本説明員 そのほかに休め及び休暇関係条約が三つほどございます。これは第十四号、第五十二号、第百一号。それから賃金関係といたしまして四、五ございますが、それは第二十六号、第九十四号、第九十五号、第九十九号、第百号。それから安全衛生関係といたしまして第十三号、第二十号、第二十八号、第三十二号、第六十二号。それから婦人関係条約が第三号、第四号、第四十一号、第八十九号、第百三号。それから児童及び年少者関係が第六号、第二十三号、第五十九号、第六十号、第七十七号、第七十八号、第七十九号、第九十号。それから労使関係といたしまして第十一号、第八十七号の二つでございます。職業安定関係におきましては第三十四号。それから社会保障関係におきましては第十二号と第十七号、第四十四号。それから統計関係におきまして第六十三号、こういうことでございます。ただいま申し上げましたものは、先ほど申し上げた新条約によりましてそのものが吸収されたというものも含めての数でございます。
  20. 井堀繁雄

    井堀委員 そこでこの全体についてお尋ねすることは時間上ちょっと困難かと思いますので、その中で一、二具体的なものを取り上げてお尋ねしてみたいと思います。労使関係の八十七号は、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約となっておるようでありますが、これが批准できないというのはどういう関係であるか、できるだけ具体的にお答えを願いたいと思います。
  21. 亀井光

    ○亀井政府委員 八十七号条約につきまして、現在まで批准できなかった理由といたしましては、各条ごとに問題点があるわけでございます。一応詳細にということでございますので、若干詳しく御説明をいたしたいと思います。  第一条は、これは原則でございますから関係はございません。第二条におきまして労使の団体の自由設立と自由加入の件とを規定いたしておりますが、その中で一番最後のところにございますが、これに加入する権利を「いかなる差別もなしに有する。」すなわち、無差別の権利につきましては、現在の国内法建前から申しますと、公労法の四条三二項、地公労法の五条三項、あるいは国家公務員法九十八条、地方公務員法の五十一条の条文におきまして、それぞれそれらの団体を結成をするにつきまして、その組合員となり得る者について制限が加えられております。この点が、無差別に自由に加入することができる権利を保障しておりまする二条に抵触するという問題があるのでございます。それからまた無差別という中に、職員でなければならないという条件のほかに、公労法の四条一項ただし書き、地公労法五条一項ただし書きで、管理、監督の地位にある者並びに機密の事務を取り扱う者につきましては、組合員になれないという制限規定がございます。これも一応抵触する条項ではないかと思っております。それから次に「事前の認可を受けることなしに」という条項がございますが、これにつきましては国家公務員法、地方公務員法で職員団体が登録をしなければ交渉団体として認められないという規定がございます。この登録につきましての制限がここでいいまする「事前の認可を受けることなしに」という言葉に抵触するかしないかという点に若干の問題点がございます。これが二条関係でございます。  それから第三条は労使団体の自由な活動を保障しております。すなわ規約及び規則の自由作成の権限と、完全な自由のもとにおける代表者の選定及び管理、活動の規定を定めておりまするが、この中で国内法と抵触がございますのは、代表者の被選挙資格でございます。これは先ほど申し上げましたように、公労法の四条三項、地公労法の五条三項、それから国家公務員法の九十八条に職員でなければという制限規定がございまして、職員以外の者が代表者に選ばれるということが制限されるという点に問題点がございます。  それから第四条は、これらの労働者団体、消費者団体の解散の禁止あるいは活動の停止をされることはないという保障がされておりますが、これにつきましても国家公務員法あるいはそれを受けまする人事院の規則におきまして、登録と登録の取り消し、これらの事項につきまして若干この問題に抵触する場合があろうかと思います。  それから第五条は連合体の組成の自由を保障しておりまする規定でございますが、これも先ほど申し上げましたように職員以外の者の加入を禁止しておりまする建前からの制限がこの問題にかかって参りますのと、地方公務員におきましては地方公共団体の地位、地方公務員の職域、こういうものとの関連におきまして連合日体につきましての制限が加えられておるというふうな面において問題があろうかと思いま  六条は、これは問題はございません。  第七条は法人格の取得に関しまして自由の制限を排除しまする保障規定でございますが、これにつきましては先ほど申しげましたように、登録との関係におきまして、国家公務員、地方公務員につきまして若干の問題がございます。  第八条は特別の支障はないと思います。  それから第九条におきまして、この条約の適用について軍隊及び警察を排除いたしておりまするが、日本国内法におきましては自衛隊法の六十四条筑一項で、自衛隊員につきまして団結権の禁止をいたしております。また国家公務員法第九十八条におきまして警察、消防、海上保安庁、監獄の職員の団結権の禁止をいたしております。そこで自衛隊が軍隊てあるかどうかという解釈の問題、さらに海上保安庁の職員が警察に入るかどうかという解釈上の問順、あるいは消防の職員が警察に入るかどうかという問題、あるいは監獄職員の同様の問題、これらの解釈上の問題として問題点がそこにある。以上こまかく各条項につきまして問題があり、その問題が解明されない限り批准がむずかしいという問題を指摘したわけであります。
  22. 井堀繁雄

    井堀委員 これは多少国の政策とも関係がありますから、御答弁が困難なら、次官からお答えいただくなり、あるいは保留してあとで大臣から御答弁いただいてもけっこうだと思いますが、お答えができるのではないかと思うのでお尋ねするのでありますが、第八十七号の前書きのところで「国際労働機関憲章が、その前文において、結社の自由の原則の承認こそ労働条件を改善し、平和を確立する手段であると宣言していることを考慮し、と書いてあります。さらにフィラデルフィア宣言を引用いたしまして、その「表現及び結社の自由は不断の進歩のために欠くことがてきないことを再確認していることを考慮し、」この二つがこの条約のいわば基本精神を表わしているものと思うのであります。これはさき総理が私の質問に御答弁なさったことで尽きておる。速記を引用すればすぐわかるのでありますが、ILO憲章の重要なことは、労働条件を改善することによって世界の恒久平和に寄与しようとするところにあることは、政府もともとにお慰めのところであります。こういう点からいきまして、ILO条約批准し、理事国として日本が国際正義を推進していこうということになりますと、この条約の一と二のこの問題をはずしては私は意義がないと思う。しかるところかどうか知りませんけれども、聞くところによりますと、最も新しいニュースとして、ILO理事会において日本政府の代表が大へんお困りになったようであります。十八カ国の全員が、この条約批准してない国々に対して、その批准を実行に移すためのいろいろの討議の結果採決をしたが、日本政府は留保するというような苦しい立場をとったということを聞いております。その辺の事情について説明ができたら伺いたいと思います。
  23. 亀井光

    ○亀井政府委員 今お話しのような趣旨の具体的な内容につきましては、正式に承知をいたしておりませんので、お答えすることを遠慮さしていただきたいと思います。
  24. 井堀繁雄

    井堀委員 きのう議運の委員会労働大臣総理大臣をお呼び出しになりまして、私もちょうど臨時差しかえで加わったのでありますが、そこでもあの理事会の経過については、今申し上げたような経過について政府もお認めになっておったようでありますが、きょう労働大臣はお見えになっておりませんが、次官はおいでになりませんか。
  25. 宮本一朗

    宮本説明員 結社の自由あるいは八十七号条約に関しまするILOの内部におきまする諸活動の問題に関連いたしまして、この条約批准促進その他の件が案件としてかかり得るという可能性は、理事会の始まります前に承知をいたしております。しかしながらお示しのような具体的な場合に、どういうような状況のもとにおいてどういう議案について採決が行われたかということは、正式の報告が参っておりません関係上申し上げることができない、かようなことでございます。大臣の昨日申し上げましたことは、さような趣旨かと承知いたしております。
  26. 井堀繁雄

    井堀委員 それではこの問題について委員長を通じて要求しておきたいと思いますのは、その正規の報告が来ましたら、この委員会に文書によって御報告を願いたい。  そこで、今の御説明を伺いますと、この条約批准の困難な条章の関係については私も多少心得ております。確かに問題があると思うのであります。そこでその問題をどうするかということについては、政策上の問題ですから、ここですぐ結論を出すということはいかがかと思いますが、このILO憲章のうちの最も重要な部分は、労働条件の劣悪なことが、いろいろな社会上国際的な諸問題、すなわち平和を乱す大きな原因になるということはきわめて明確、しかも繰り返し宣言しておるところであります。またそこでこの八十七号の条約採決になったということも、今二つの理由をここで申し上げたことでおわかりだと思います。この問題は総理大臣が私に御答弁なすったごとと全くうらはらなことなので、時間があればあの節伺いたいと思ったのでありますが、予算委員会てその時間を得なかったので、ここへ持ってきたわけであります。政府態度から、あるいは答弁をそのまま受け取りますならば、この条約は率先して批准する義務日本にあるということは明らかだ。しかしその状態が、今日公務員法や公企業体の公労法や地方公労法などによって困難だということについては、応理解ができるのであります。そこで私はこの条約の中で、すでに日本批准している九十八号、団結権及び団体交渉権条約に対する点で、条文の解釈を―つお尋ねしてみたい。この条約の第二条の1に、労働者団体及び使用者団体は、その設立、任務遂行又は管理に関して相互が直接に又は代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける。と書いてある。それから第四条「労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との問の自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、必要がある場合には、国内事情に適する措置を執らなければならない。」こういうふうにうたってあるわけであります。この今読み上げた第一条と四条の関係というものは、先ほど取りしげました公共企業体の労使関係規制しております公労法、地方公労法の問題はこれによって私はもうすでに改正を迫られておる事柄ではないかと思いますが、この辺の解釈はいかがでありますか。
  27. 亀井光

    ○亀井政府委員 この九十八号条約については、第六条におきまして、「この条約は、公務員の地位を取り扱うものではなく、また、その権利又は分限影響を及ぼすものと解してはならない。という除外例規定がありますために、この条約批准というものができたのでございます。従いまして、この条約と先ほど御説明した八十七号条約においては、その点に関して大きな違いがある。いわば九十八号は民間の労使関係についての団結杉並ひに団体交渉権の促進に関する原則を規定したというふうにわれわれは理解しております。
  28. 井堀繁雄

    井堀委員 そう御答弁になるだろうと思ったのです。ところがあなたもお認めのように、第六条は「公務員の地位」とはっきり公務員と規定しでおります。
  29. 亀井光

    ○亀井政府委員 ですから、公務員としましてはそういう除外例がありますので、八十七号と違います。内容につきましては、御質問の二条の一項に、相互がしという言葉がございまして、これは労働者団体と使用者団体相互がお互いに自由の権利を侵害しないような措置をしていくのだという規定のようにわれわれは了解いたしております。  それから第四条は、あくまでも団体交渉の手続の発達と利用を勧奨し、促進するためのものでございまして、国家公務員法、あるいは地方公務員法等、日本国内法におきましては、団体交渉は認めておりません。従って先ほどの六条で、この点はこの条約批准するに差しつかえない。ところが公労協の組合、三公社五現業につきましては団体交渉権を認められているわけでございます。従いましてその点につきましてはこの四条に抵触することはないという考え方から批准をしたわけ、で、あります。
  30. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで問題は、第六条をあなたは引例されましたが、これは公務員、だから公務員の場合は一応別に考えている。ところが三公社五現業の場合に、あなたは今団体交渉権を認めっているからいいとおっしゃいましたが、四条について明確にしておきたいと思うのでお尋ねいたしますが、第四条の全文に対して説明していただくのは時間がかかりますから、大事なところだけはっきりしておきたい。これは前にもありますように、使用者と労働者の――まあ労働組合、これははっきりわかっております。そこで「自主的交渉のっための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、」こう書いてある。そうすると、今の公労法は手続の上にいろいろ制限を加えておりっます。これはこの条項に対して全然抵触しないというお考えでありましょうか、疑いがあるというお考えでありましょうか。
  31. 亀井光

    ○亀井政府委員 この四条自体につきまする制限は公労法上ないのでございます。御質問の趣旨はおそらく四条三項からきます団体交渉権の制限についての御質問ではないかというふうな気がするわけでとございますが、この四条三項の問題は先ほど申し上げましたように、八十七号の団結権自体に関します制限でございます。この九十八号の四条は、団体交渉の促進に関する手続でございまして、この点八十七号と性格が違うものであると解釈しております。
  32. 井堀繁雄

    井堀委員 誤解のないように願いたいと思います。私は八十七号と九十八号との関係お尋ねしているのではありません。その関係は先ほどの御答弁で了解しております。そこで私が関連させたのは、先ほどあなたが八十七号の批准ができない理由の中に、三公社五現業を規定している公労法の問題を取り上げたから、その公労法との関係お尋ねしている。もちろん八十七号が批准されておりますならば、今の公労法はこれに抵触いたしますから、その点問題になるのです。しかし私の今お尋ねしておりますのは、九十八号の四条と公労法、すなわち三公社五現業の関係だけを取り上げてみますと、    〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 これを律している公労法の条文でお尋ねすればよくわかると思いますが、そこに問題が残っておるのではないか、そういう点に対する疑義はないかということをお尋ねしておるのですから、これに対して疑義がなければない、あるならある、なければどういう理由でない、あるならどういう点があるかということを明確にしていただきたい。
  33. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほども申し上げましたように、第四条は「自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、」という趣旨規定でございまして、公労法におきましてもこの自主交渉の手続の問題あるいはその利用の問題につきましては、特別の制限規定を設けていないというふうにわれわれは理解をいたしております。公労法におきまして制限が加えられておりまするのは、結社の自由につきまして、先はど御説明しましたようないろいろな条項、すなわち八十七号の二条、三条、四条というふうな基末的な条文に抵触をするおそれがあるということを申し上げたわけであります。
  34. 井堀繁雄

    井堀委員 団結権及び団体交渉権の条約でありまして、団結権の問題については私はここで問題にしておらない。団体交渉の擁護の問題については完全に公労法の――具体的な例をあげて申しますならば、第四条の三項はこれはもう明らかにこの四条の問題に抵触すると私は考えるのでありますが、あなたはこれは抵触しないとおっしゃるなら、ここにはこう書いてありましょう。第四条第三項には「公共企業体等の職員でなければ、その公共企業体等の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。」そうしてこれを受け取って団体交渉というものは、こういう資格のない者は団体交渉をすることができぬという制限規定を受けて立っておるわけであります。そういたしますと、ここでいっておりまする自主的交渉に対する手続を十分ならしめるということは、十分どころではなくてこれは制限を加えておる。これはどういうふうに解釈されて抵触しないとおっっしゃるのつか、なるべく答弁をほかへ持っていかないように、その点で一つ明確に御答弁を願っておきりたいと思います。
  35. 亀井光

    ○亀井政府委員 毎度繰り返すようでありますが、八十七号条約は結社の自由及び団結権の擁護に関する条約でございます。そ、れから九十八号はその上に立ちまする条約だというふうにわれわれは理解をいたしております。従って八十七号の方が基本的な結社の自由に関する規定をいたしておるのでございます。そこで四条一項の問題は、われわれとしましては団体交渉の手続といとう問題よりも結社の自由そのものに関しまするいろいろな障害になる規定である、従ってこの障害を、排除しなければ八十七号の条約批准は非常に困難であるということを申し上げておるのでございますが、この四条の団体交渉の手続の問題につきましては、われわれとしまして、この四条三項が直接的にすぐにこれに影響を持っておるというふうに理解をいたしていないのであります。その前提となる結社の自由の方の問題、基本的な問題の方に四条三項の方は抵触を、しておるのだというふうに理解をしております。
  36. 井堀繁雄

    井堀委員 意識的に答弁を避けられておるように思われます。私のお尋ねしておるのは局限してお尋ねしておるのでありますが、しかし今御答弁によりますと、何かあくまで八十七号と九十八号をからませておるようでありますが、私はその問題は前にも言ったようにからませて考えないで、もちろんあなたのおっしゃられるように八十七号が批准されればこういう問題は解消してきわめて明確になるのであります。しかしそうでなくてもすでに日本批准しておる九十八号の第四条と、公労法の団体交渉を制限しておるものとの抵触があるのっではないか、このことを実は伺っておるのです。それはないというならないとおっしゃていただけば、私どもの解釈が誤まっておるかどうかを明らかにしていきたい。私は何も独断にこう解釈するのではなくて、第四条にちゃんとこう書いてある。自主的交渉のための手続を十分に発達させ、なおその利用を奨励し、書いてある。ところが公労法の第四条は明かにこの団結権に制限を加え、団体交渉に対しては極度の制約をする規定が設けられておるのです。でありますからこれは第四条に抵触するのではないか。だからそれはしないならしない、するならする、どうしてするということを明らかにする義務があると思いますからお尋ねをしておる。
  37. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほど来申し上げますように、この四条の規定につきましては、ILOの発行しておりまする審議経過を見ましてもこういう条項がございます。「この条約批准する加盟国は労働関係局の設置、団体交渉手続又は監督機関りの確立、労使団体間の協約の締結等、採用すべき方法については、完全の自由を有するけれども、必ずこれらの機関又は手続を設けなければならない。」完全な自由を有するけれども、必ずこれらの機関または手続は設けなければならないという一項が入っておるわけであります。従いましてわれわれとしまして、法律の上でこの逆に、そういう自主交渉の手続の十分な発達及び利用を制限するような規定というものがありますれば、これは明らかにこの条項に抵触するのでございまするが、今ILOの要望しておりまする、先ほど審議経過で申し上げましたような条項につきましては、一応国内法におきましてもそれを満たしておる。しかもILOに対する条約の実施状況の報告をいたしましても、それに対しましてILOからは何らのわが国に対する注意も来ていない。ILO自体もそれ承認しておるというような実情から申しましても、われわれ生この第四条というものが、わが国国内法上、団体交渉の促進につきましてのこの第四条に合致しておるというふうに理解して、あるいは解釈して差しつかえないと了解いたしておるわけであります。
  38. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは次官に一つ確認を求めておきたい。今亀井局長の御答介のように、この第四条は、公労法の第四条もしくはこれを受けて立つ第三音の関係の制限はこれに抵触しない、それは今局長の言う通りであると政府はおとりになっているか。これは形式的になるかもしれませんが、内々ではありませんで、外交交渉の公文になれば必要だと思う。
  39. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 ただいま労政局長答弁した通りであると理解しております。
  40. 井堀繁雄

    井堀委員 次にお尋ねをしておきたいと思いますが、第二条の「労働者団体及び使用者団体は、」とこう書いてある。この文章は、翻訳がこうなるのでしょうが、「代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける。」とあるのですが、ここで私は、労働省設置法の関係と公労法とこの条約との三つの関連においてお尋ねをしてみたい。労働省は言うまでもなく――ここには使用者団体と並べてありますけれども、労働者の団結権を保護していくことは労働省の重要な職務です。そのためにはむしろ公労法のよ、うな団体交渉を自由にやれない法律が存在しておる場合においては、労働者としてはむしろこの第二条の規定、さらに一条の規定を尊重して、国内法改正機会を作るとか、あるいは改正ができなければ運営の面においてこの条約精神に沿うように努力すべき役所であると私は理解するのでありますが、その点に対して、もし局長答弁がしにくければ次官でもけっこうです。
  41. 亀井光

    ○亀井政府委員 九十八号条約の第二条の一項は、労組法の七条三号に当る行為を持っております条文でございます。すなわち、労使双方の団体がそれぞれの自由権をそれぞれが侵してはいけない、言葉をかえて申しますと、不当労働行為に該当するような行為をそれぞれの団体が相手方に対して行なってはならないという規定であるわけでであります。この精神は、今申し上げましたように、すでにわが国の労組法におきまして十分満足をさせておるわけでございます。従って、この二条の一項に関する限りにおきましては、何ら国内法はこの条約に抵触するところはないというふうに理解をいたしております。そしてまたわれわれは、これらの不当労働行為が現実に行われないということにつきましては、法律の施行上からいろいろな注意をし、また労使に対する指導もいたしておるわけであります。
  42. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで明確になってきましたが、問題は三公社五現業の職員が公務員の地位にあるか、あるいはしからざるかということによって、今のことはきわめて明確になってこようと思うのです。どうも私の解するのには、日本の公労職員は公務員でないことはきわめて明確であるにもかかわらず、一般と差別をするところは公益事業に類するからというのなら、この労調法でやればいいのです。設けたときのいききつもございますが、そういう関係でしかるべく改善を要求する条約精神は、この第二条に私は十分盛られ、さらに第四条でそれを具体化されていると解すべきではないか。ことに労働省の任務はそうあるべきではないか。こういう条約批准しておる国としては、法律改正の時期に到達しない間は、運営の面でも改善すべきものではないか。また労働省はそういうふうに努力すべき立場に置かれておるのではないかとこの条文から感ずるのであります。これに対する労働省見解一つ明確に述べて下さい。
  43. 亀井光

    ○亀井政府委員 先ほどの御質問の中に、三公社五現業の職員が公務員ではないというようなお話もございました。三公社の職員は公務員ではございませんが、各公社法、たとえば日本国有鉄道法の第三十四条を例にとりましても、「役員及び職員は、法令により公務に従事する者とみなす。」ということで、三公社五現業の職員は公務に従事するものとみなされております。それから五現業の職員は、一般の公務員と同じように国家公務員の身分を持っておるわけであります。またこの九十八号条約二条の一項の問題は、これらの三公社五現業の職員団体につきましても同じような適用があるわけでありまして、それらの条約に違反するような行為につきましては、国内法において不当労働行為として制約、制限が行われておるわけであります。三公社五現業の職員団体につきましても、この条約趣旨は貫かれておるというふうにわれわれは理解いたしております。
  44. 井堀繁雄

    井堀委員 この条文の二の解釈というものがある程度明らかになってきたと思いますが、議論にわたることは避けたいので、素直にこの条文をそのまま読んで理解したいと思ってお尋ねしたわけであります。どらも今の御答弁では理解ができないのみならず、第九十八号の条約の二条並びに四条に対する政府解釈は誤まっておる。あるいけ誤まらないまでも、たとえば第六条の公務員の地位を、さっきの説明でも明確になりましたが、国有鉄道法の引例などをして、これは公務員ではないが公務員として取り扱うというふうに結びつけてお考えのようであります。国鉄当局がそういうふうに理解して雇い主の地位を有利にしようということは、労使対立の状態にあってはやむを得ねと思います。しかし、労働省の立場がそうあってはならぬことは労働省設置法の命ずるところでも明らかであります。しかし、それは議論にわたりますから避けます。そういう解釈であれば、これはやはりILO条約を議決されました機関解釈を求めるよりほかないのではないかと思います。その結果によってまたお尋ねをするかもわかりません。  そこで、また元へ戻ってくるのでありますが、このILO条約全体を通じて、政府態度は抽象的には明らかになったのであります。具体的の問題としては、どうしても八十七号の批准の必要に迫られておるという見解をとる。そうしないと、総理国会における答弁が単なる表面上をつくろう言葉になってしまう。そういう抽象論ではなく、批准するかしないか、その批准を求めてきているのも明らかであります。こういう点については、また機会を得てもう一度総理お尋ねするが、ここに労働次官がおいでですし、労働次官は国務大臣の代理者で、権限を持っておいでになりますから、ここで御答弁なさるか。そのことによってこの点に対して一、二問まだ質問を続けてみたいと思います。御答弁いただけますか。
  45. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 大臣もしばしばお述べになりました通りに、ILOの決議については、その精神を十分尊醒していくべきである、これは私どももそのように考えております。なおまた、今具体的にお示しになりましたような公労法との関係については、改善すべき点があるならば十分検討をしていくべきであると考えております。従いまして、ただいま労働問題懇談会等において慎重に検討をしていただいておる段階でありますので、その結論が出ましたならば、その結論に従って善処いたす方針でおります。
  46. 井堀繁雄

    井堀委員 それではせっかく御答弁があったので、ついでにお尋ねをしておきたいと思います。  日本国憲法二十一条とこの条約関係についてどのようにお考えでありましょうか。
  47. 亀井光

    ○亀井政府委員 この条約批准の可能性につきましては、検討する際におきまして、憲法二十一条と二十八条の条項と両方の関係からこれを見なければならぬと思います。この八十七号条約が二十一条の単純な結社の自由の原則から批准できるということになれば、これは言うまでもなく今すぐにでも批准できると思うのでございますが、ILOにおけるこの条約審議の経過記録その他を見ましても、それ以上の団結権の保障をこの条約は期待をいたしておるわけであります。いわば憲法二十一条の結社の自由よりもむしろ二十八条の団結権の保障を目的としての条約であるというふうにわれわれは了解をいたしておるわけであります。
  48. 井堀繁雄

    井堀委員 先回りをして御答弁いただいたのでありますが、二十一条は結社の自由を規定し、二十八条は言うまでもなくこの条約と最も深い関係のある団結権、団体行動権を保障しておる基本的なものを示しておる。だから、国内立法としては、憲法に矛盾するような法律はあるべきではありません。憲法はそれだけ規定しておるので、ほかの規定もありましょうけれども、特に政府がよく引用されまする公共の福祉の問題の二十一条を持ってきますが、それは私ども了解しております。ところが、ここでいっておりまするのは、二十一条並びに二十八条の憲法の精神と全くこれは一致しておるというよりは、この点かIいえば、すでに八十七号の条約などというものは、とっくに批准されていなければならぬ性質のものではないか、こう私どもは思われてなりません。そこで、こういう状態の中にあって、条約批准を拒む理由というものは、先ほど明確にされましたように、国内法の中で公務員法とか、あるいは三公社五現業や地方の公共団体を律する特別法が存在するという、この矛盾であると思うのであります。こういう矛盾については、すみやかに解消することをILO憲章というものは各国に期待しておるわけであります。これは加盟するとしないとにかかわらず、国際信義の上から要請される道義的な圧力となっておることは言うまでもないのであります。日本の場合は、これに加盟をし、さらに理事国にまで積極的な態度を示しておるのでありますかう、こういう点の解決は、政府答弁、今またそれを裏打ちする労働次官の答弁にもありますように、この条約批准をするために国内法整備をしていくということが、きわめて合理的なそうして正しいものの判断の上に立つ政府の行動でなければならぬ、また国会に言明された事柄を実行に移すたった一つの道だと私は信ずるのでありますが、このことは、もし次官で御答弁ができるなら御答弁いただきますし、また機会を得てお尋ねする必要があるならそうもいたしたいと思います。この点は大事な点ですから、御答弁できるものかどうか、労働次官に伺っておきたい。
  49. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 局長から答弁させます。
  50. 亀井光

    ○亀井政府委員 その手続の問題につきましては、今の政務次官から御答弁がございましたように、やはり各方面からの御意見をわれわれとしては慎重に検討しました上、批准の可能性を考える必要があろうかと思います。それにつきましては、現行条約解釈上、国内法に抵触しないという解釈の限界内において許される面もございましょうし、あるいは解釈上では無理だ、国内法改正を考えなければ批准の可能性は出てこないといち問題もございましょう。これらの問題につきまして、今懇談会の小委員会で御検討をいただいておるわけでありまして、われわれとしましても、その御検討が済みましたならば、政府といたしましてさらにこの問題の検討に入るという段階に入って参ろう思います。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕 従って、井堀先生の御趣旨に反するような方向に今政府が動いておるわけでは決してございません。検討の段階を経まして、政府として最後の結論に到達するという順序で進んでおる次第であります。
  51. 井堀繁雄

    井堀委員 なおこれは機会を得て労働大臣なりあるいは総理大臣の御答弁を求めることであるかもしれません。近く補正予算も討議される機会があるようでありますから、そういう機会を得て御答弁を求めるつもりで、おりますので、きょうの事柄について十分一つお打ち合せを願っておきたいと思いま  次にこればILO条約批准政府自身も言明しておることでありますが、が最低賃金制度に関する条約批准の問題であります。これは本会議でも、労働大臣が、最低賃金法を今国会提案しておって、これの成立によってはすぐにでも批准が、できるという言明をしておられますから、これは聞違いがないと思うのですが、しかし、本来からいいますと、政府がああいうものを提案いたしたのでありますかう、ILO条約手続の上かういいますと、国会最低賃金法を不幸にして否決するようなことが万一あったとしても、政府の意思としては変らぬのでありますから、むしろILO条約批准を同時に行うべきものではないか。すなわち手続政府がやるのだかう、やるかやらぬかについては政府の判断一つでできる、やるということができれば、あとは手続上権威ある機関批准をすることの了承を求めるだけでありますから、一応批准て統というものを政府国会にするのが順序ではないか、私はこう考えますが、この手統の点について御説明を願っておきたい。
  52. 宮本一朗

    宮本説明員 わが国の昔からの慣習と申しますか、これは閣議決定にもございますが、条約批准いたします場合には、条約批准したことによってその内容を国内に実施する義務が出て参ります。従って二十八年の閣議決定の趣旨に基きましても、もしその条約を実施する上に国内立法の必要がある場合には、その国内法の立法手続を経た後に批准をする、かようなふうになっておりますので、制度的に保証された国内法が成立した上で批准するのが最も妥当な方法ではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  53. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは日本の慣行でありますが、戦前の場合は枢密院に批准手続ははかって――議事録を見てみますと、かなりこまか過ぎるほどこまかくやかましく言っております。戦後の場合は、今あなたは法律を先に成立させてから、批准することに障害になるものを排除してしまってからというようなことを言っておりますが、必ずしもそうではありませんよ。今日本の戦後批准された条約を見ますと、この手続にもありますように、批准をするかしないかについてまず判断をするのは政府で、閣議の決定でしょう。閣議決定ができればそれを国会に出して、国会批准に承認を与えるか、あるいは否決するかということなんです。否決された場合のことは今のようなことです。むしろ手続としては、政府は今言うように、国会でも言明する以上は同時に批准手続をそれからやるべきではないか。また先ほど幾つかずっとあげられた中で私ももっとこまかく検討をしてみたいと思いますが、最低貸金制度の問題以外に当然まだ批准のできるものがあるのです。こういう批准の問題について手続を当然政府国会に向ってやるべきではないか。ちょうど戦前の政府が枢密院にするように、ああいう手続でやってくれるなら、手続の上についてももっと国会に――一般の制度が変ってきたのでありましょうけれども、権威ある機関といえば国会のことですから、ただ書類を国会議長に出す、手続はそれでいいかもしれませんが、あの枢密院のやかまし屋のところへひんぱんに政府委員が通って了解を求めたり、説明をいたした、大へんな努力をしておる。やはりああいうことは国際法を忠実に日本国は処理しておるという一つの証左にもなると思う。こういう点に対しては、労働省にそういう手続が回されてからというのは、どうも国会の扱いは法律のほんの最小限度の義務を終ればいいといったような感じがいたすのであります。こういう点に対するもっと積極的な努力を払うということになれば、今具体的に言ったような方法主出てくると思うのです。これはしかし私の要望であります。また機会を見て、国会の意思をもっと明確にして、そういう扱い方に対する国際信義を裏切うないように努力をすべきだと私は考えております。  時間の関係もありますので、一応私の質問はこの程度にいたしておきます。
  54. 森山欽司

    森山委員長 本会議の散会後まで休憩いたします。午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――
  55. 野澤清人

    ○野澤委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑を許します。井堀繁雄君。
  56. 井堀繁雄

    井堀委員 日雇労働者健康保険方の問題につきましては、かなり以前からその改善が要求され、またたまたま政府国民保険を指向して、あらゆる保険の制度を改善されようとしておる御努力に対しては、深甚なる敬意を表したいと思うのであります。この機会厚生大臣お尋ねいたしたいと思いますのは、政府国民保険を改善し、あるいは日雇労働者健康保険法改正しようとするに当りまして、国民保険との関係であります。いわゆる国民保険というのは、岸内閣の基本政策の一つであると思いますが、その国民保険を指向しての本法案改正であると思いますが、まずその点についてそうであるかどうかを確認してから質問を続けたいと思います。
  57. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 社会保険全体を通じまして、国民保険の実現をはかりたいというのが私どもの考え方でございまして、それらにつきまして、漸次改善を加えて終局の目的を達成いたしたいと考えておるような次第であります。
  58. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで国民保険という言葉について、世間ではごく安易に文字通りただすべての国民保険医療を受けきせるという機会を与えることだけが国民保険であるかのごとく、安易に理解しておる向きがあると思いますが、少くともここで政府が掲げておる皆保険とは、ただ単に数の上ですべての国民保険医療が受けられるというだけをさすのではなくて、あくまで医療保険の目的である治療の完璧を期することが保険の制度でできるというところになければならぬと思いますが、この点についてもう一度お尋ねいたしておきたいと思います。
  59. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 むろん終局の目的はおっしゃる通りでございます。われわれは各社会保険を通じて医療保障の完成を期するという考え方から申しますと、単純に、保険の未加入者が多い、これを吸収していくということだけであってはならないということを感じておりますが、被用者保険におきましても、地域保険におきましても、いまだその完成の道程にあるわけでございまして、さしあたり保険未加入者を保険に吸収するということが緊要の仕事であると思いまして、さしあたりその点についての努力をいたすということは当然であろうかと思いますが、と同時に各社会保険を通じて内容充実して参る、あるいは整備して参るということは、当然しなければならないことだと考えております。
  60. 井堀繁雄

    井堀委員 それで漸次明らかになりましたが、もう一つ基本的なことについてお尋ねしたいと思う。ここに提案されておりまする日雇い労働者の健康保険一般の雇用労働者のために設けられておりまする健康保険の制度であります。これは私は、以上二つの点を質疑をいたして明らかになりましたように、医療保険の合理的な統合を必要とする時期が来ると思う。またその時期がいつになるかは――すみやかな方がよいということには違いないのでありますから、そのための一つの段階的な処置というものが、この種の改正のときに考えられていなければならぬはずだ、もちろん考えていると思うのでありますが、医療保険の制度の中においては一番近似性を持つこの二つの保険の制度をまず一本にすることが望ましいと思うのでありまして、そういう点に対して、この改正案ではどのようにお考えになっておるか、一応提案理由説明の中では言及されていなかったので、お尋ねをしておきます。
  61. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 同じく被用者保険と申しましても、日雇い健康保険につきましては、これはもう井堀さんがよく御承知の通りに沿革的にごく新しい制度であるとともに、その雇用形態その他が非常な特殊性を持っておる、そういうふうなところから、今回私どもとしては財政の許す限りの処置で、この問題の前進をはかりたい、こういうふうに考えまして、日雇労働者健康保険法改正いたしたいということで提出いたしたような次第でございます。具体的な個々の点につきましては、政府委員から答弁をさせていただきたいと思います。
  62. 井堀繁雄

    井堀委員 雇用の性格が多少異なっておることは、われわれもよく理解しておるつもりであります。しかし雇用労働者の保険としては、急速にこの状態を一つのものに渇きかえるという点について、提案理由説明でも言及されておりませんし、今お尋ねしても明確な御答弁がいただけないのでありますが、全然お考えにならなかったのでございましょうか。今お話を伺えば財政上の実情と言っておられますが、そんなことでございましょうか。大事な点でありますから、もう一ぺん大臣に御答弁を願って、事務当局からお答えを願えればなおけっこうだと思います。
  63. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 率直に申し上げますと、今回の予算編成に当りまして、この日雇い健康保険改正をぜひしたい。むろん健保その他の関係をも考慮いたしますが、ともかくも沿革的に非常に新しい問題であります。そして雇用に特殊性があるということで、さしあたり従来問題になっておりました、医療給付の補助の問題の関係及び傷病手当金、出産手当金の問題だけなりと解決したい。財政的にごらん願いましても、実は被保険者の数から見まして、五億数千万円の金がここにあるということは、日雇健康保険の現在の状態が劣悪であるということから、ウェートから申しますと、相当重きを置いて前進をはかる――むろん私どもこれで満足するわけではございませんが、ともかくも今回の各種社会保険のウエートから見まして、日雇い健康保険のすみやかなる前進をはかりたいという考え方から、現在できる限りのことをいたしますということを申し上げるよりほかないかと思うのであります。なお詳細は政府委員から御説いたさせます。
  64. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 井堀先生のお尋ねの御趣旨は、あるいは現在の健保と日雇い健保とを一緒にして、健保に吸収したらどちかというような点にお触れになっていると思います。なるほどそういうことも同じ被用者であり、しかも健保の方が給付の中身がよろしゅうございますから、そういうふうなことも一応考え方としては、あるいは成り立ち得ると考えられるかもしれないと思いますけれども、私どもといたしましては、健康保険の対象と日雇い労働者健康保険の対象というものとは、これは本質的に雇用の実態というか、そういうものが違っているわけであります。従ってこれを健康保険に吸収して参りまするには、いろいろな意味での無理が非常にあると思われるのであります。御存じのように、その雇用の実態が違いまするので、従って保険料の取り方なんかも違っているということでございます。私どもはこれを一結にするということよりは、元来が違った勤労者でございますから、これは分けておきましても、むしろ日雇い健康保険の給付の中身をできるだけ健康保険と調整をとっていくという方向にものを考えるべきである。もちろんこれにはいろいろな無理が伴ってくることは当然なことでございますけれども、方向としてはそういう方向でものを考えていく。そして給付の内容で調整をとっていくように、できればそうしていきたい。しかしながらこれを一本にしてやるということは非常に無理があります。むしろ一本にしていこうということになりますと、外国でも例がありますように、ナショナル・ヘルス・サービスというような格好で一本にするとか、あるいはわが国でいえば、地域保険の給付の内容がよくなった場においては、住所地において一本にするとかいうようなことにものを考えるよりほかに方法はないのではないか。事務的にはさような考方をいたしているわけであります。
  65. 井堀繁雄

    井堀委員 厚生大臣お尋ねしたいと思いますが、今の事務当局のお話の中で、健保と日雇い健康保険の問題について――将来は国民すべてが保険で完全な治療を受け、生活の脅威かす救済していこうという、この国民保険の的はもうすでに明すかであります。そういう方向へ近づけるように、この種の改正というものは絶えず心がけなければなすぬことは異論のないところだと思うのであります。今局長の御答弁の中で、なるほど保険でありますかす、保険の経営の財源の中には、主として被保険者負担する保険料、あるいは雇い主の負担する保険料の問題が確かに特異なケースにあると思うのです。そういう点を無理に一緒にするということは、角をためて牛を殺すという愚をあえてする結果になると思いますかす、そういう極端なことを私はお尋ねしようとは思っていないのであります。たまたま御答弁の中で先回りをしてお答えいただいたのは、給付の面の歩調をそろえて、そうして近似性をそういうところかす漸次統合へ持っていこうというお考えのようで、けっこうなことだと思うのであります。  そこで厚生大臣お尋ねをいたしたいと思いますのは、今労働省があとかす来ると思いますが、日雇い労働者といいましても片一方は失対事業法という別個の法規の上に立っておりまする特異な雇用関係の労働者であります。ことに給与の面において失対事業法は依然として一般の労働者よりはやや低目の賃金を定めるというようなことが公然とうたってあります。いわば失業保険と生活保護法のような――生活保護法といえばちょっと語弊がありますが、とにかく失業保険で救済するよりは、仕事を与えながす多少でも労働によって生活の資を得さしめようという一つの中間的な政策だと思うのであります。だかす雇用関係の中に一つの社会政策的なものが加味されておる特異なものだと思うのであります。そこに特異な保険を作ったという歴史があるわけであります。そういうような問題を解決していきますためには、やはり給付面で歩調をそろえさせるということが非常に壷要だと思うのであります。これと、それかすこれは労働省の方の所管になるのでありますけれども、失対事業関係の労働者が最近非常に性格が変りつつある。当初この法律が予定しておりました事態よりは非常に変った形にきておるわけであります。こういうような関係を考慮のうちに入れて、やはりこの保険の問題についても、私はただ給付面ではなくて、もっと近似性を持たせる点が現在の保険料率のきめ方やその他にあると思うのであります。これは具体的にあとで条章についてお尋ねをしていきたいと思いますが、そういうような方向について今度の改正案はあまり深くお考えになすなかったのじゃないか、もっとそういう点を深く考えないと、国民保険というような大きな基本政策を貫こうとする場合にみずから障害になるようなものを作り上げる懸念が多分にあると思うのでありますがそういう点お気づきになって準備をされたか。今財政関係は別に私どもわからぬわけでありますが、ただそれだけではないと思います。御用意があるかどうか、また検討なさったかどうかを一つお尋ねしたい。
  66. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私としてはむろん井堀さんのおっしやるような理想というものを考えないと、この問題の現実の問題だけの解決もなかなかできなかったのじゃなかろうか、実はこう考えておるのであります。ことに今お話のように最近の失業問題、子れに関連する労働政策――しかし実は失業保険を扱って、失業保険というものは社会保険一つであろうと考えておりますので、それらと彼此にらみ合せてものを考えていきますと同時に、一方においては終局の理想を持ちつつ物事を考えて参る、率直に言えば、今度の国庫の負担を一割五分から二割五分に上げましたようなことも、あるいは給付内容について考えましたことも、今言ったような見地から考えたのでありますが、これはまあ御質問の内に出ておりますが、その料率の問題等につきましても、日雇い健康保険の性質であるといいながら、相当赤字を出しておる状態であります。しかもそこに長年の希望である傷病手当金、出産手当金というものを解決して参りたい、しかもそれに対して政府が三分の一を負担するというようなこともすべて一つの――すぐに理想を達成することは、沿革的なもの、財政的なものからとうていできるわけではございませんが、何とかこれを努力いたしたい、こういう考え方かうこの法案改正に従事いたしたような次第でございます。
  67. 井堀繁雄

    井堀委員 まだ私不勉強で十分な検討は遂げてはおりませんけれども、一読いたしまして、この改正の中で納付面では傷病手当金の支給と出産手当金の支給の問題が新しく加えられておるようであります。そこでこの点について一、二具体的に疑問の点を明らかにしていただきたいと思います。冒頭に申し上げましたように、こういう保険はできるだけ統合というか、あるいは一つの共通性を漸次強く発展させていかなければならぬという点は、よほど細心の注意と努力をすべき点だと思う。そういう点で今度傷病手当金の制度をせっかく新設してもらったのであります。ところがこの傷病手当金の給付に対して、たとえば健康保険の方で給付の日の起算点であります第四日目からというのを五日目と一日ずらしてみたり、非常にけちな、何かいかにも別にせねばいかぬというこういうところこそ、なぜ健康保険に歩調を合わせないのであるか。それから次は金額の問題についても、健康保険でいきますと標準報酬といったようなものが基礎になりますから、この点、技術面では多少苦心が要ります。しかしどうも安易につこうという傾向が出てきております。やはり法律で百分の六十という言い方をしたり、あるいは百分の四十といったような表現の仕方をしておるのに、ここではこういう金額の切り方をしてきておる。これは労働省の方の今度の失対事業に対する予算の組み方、それから運営の仕方の上においてだんだん変ってきておる。こういうものとの間に無関係であるとは思いません。これはあとで労働省とあなたの方の関係を伺いますが、まず給付を始めるのに四日を五日にずらせるということは意味のないことではないか。多少困難があっても法律的にはやはりそういうところに歩調を揃えていくというところに、先ほどお尋ねしたことに対する御答弁が生きてくると思うのです。それと今言う給付の額で言わない――どっちがいいかわかりませんが、額にするにしても額ではこうなるけれどもこれは百分の六十に相当するといったようなやり方が常識として許されることじゃないかと思う。この点を一つ
  68. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 起算日を四日にしたことにつきまして、これは健保は三日であるからむしろ三日とすべきではないかという趣旨の御質問だと思います。ごもっともな御質問と存じます。私どももこの点はいろいろ検討いたしたのでございますが、率直に申しまして傷病手当金の制度は日雇い労働者の場合におきましては、失業、いわゆるあぶれた場合には失業保険、病気で労務不能になった場合には傷病手当金、こういうふうな格好にはなるわけでございます。それである意味におきましては失業保険と、何と申しますかその社会的な機能というものが非常に以た機能を営むわけでございます。それで御存じのように失業保険の方が待期四日ということにいたしておるわけでございます。そこいらのところも考えましたことが一つと、それからいま一つは、私どもといたしましては傷病手当金制度を実施いたしますにつきましては、何としても国庫の負担を三分の一――今社会保険で三分の一という負担率は一番高い負担率でございます。失業保険が三分の一であります。元来疾病保険におきましていろいろ国の補助があったり、あるいは負担があったりいたしますけれども、傷病手当金の部面につきましては負担をしていないのが、他の疾病保険におきまして通例でございます。医療費に対する負担ということはやっておる例がございますけれども、傷病手当金のような現金給付に対して、その補助なり負担の対象にしたりしてはおらないわけでございます。しかしこの点は、今回日雇い労働者健康保険に傷病手当金という制度を設ける以上は、どうしても国庫負担をしてもらわなければいけない。これは日雇い労働者の保険料で全部やるというのでは絶対に困る、だからその意味において医療保険の今までの考え方というものをある程度例外的な取扱いにしてもらって、しかもその負担率は、失業保険と社会的な機構においては、ある意味では同じような機能を営むのであるから、失業保険と同じ負担率でやってもらわなければ困る。これは内部の事情を申し上げてはなはだ恐縮でありますが、こういう点を私どもは非常にこだわって主張をいたしたわけであります。その主張はいれられたわけなのでございますが、さような立場をとりますと待期の方も三日にいたしたかったのでございますけれども、しかしそれも失業保険とならって四日に落ちついた。この点決してわれわれこれで満足しておるわけではないのでございますが、いろいろの折衝の過程から申しましてさようなことに実は落ちついたわけでございます、いきさつをごく率直に申し上げまして、お答えといたしたわけでございます。
  69. 井堀繁雄

    井堀委員 失業保険との関係についてはどらやら理があるように思われますけれども、この場合は先ほど言っているように、失業保険医療保険との関係はこれは似ても似つかない性格のもので、むしろこれを健康保険に歩調をそろえたからといって、そちらに弊害がくるとは、私の知識では理解ができないのであります。まあしかしそういう事情があったという御説明でありますから、一応伺っておきましょう。  そこで、くどいようでありますけれども、こういう事情以外にないとするなら、私はこういうところはけちなことは言わないで三日目からということにしたらどうだろうと思うのです。先ほど私遠回しのような質問で恐縮でございましたけれども、基本政策の点につい言及したのは、政府態度が問題だと思ったからお尋ねしたわけであります。それでは政府の方針と実際とはマッチしないことになる。どっちかうそを言っておることになる。私はこういう国民生活に直接関係を持つ日本の一番大事な福祉国家建設のための足固めをしていくような政策を実践に移す法律については、できるだけ国民に理解しやすいようにやっていかなければならぬのではないか。私も多少保険に手をかけたつもりで、国民の中ではややくろうとに近い方ではないかと思う。それがちょっとこれを見ても、何でこういうけちなことをするかわからない。むしろこれは片方が三日というなら二日ぐらいにしてやるべきではないか。日雇いですから、その日の収入でその日暮していけるかどうかという問題で、二十一日の就労日は短かいからもっと就労日をふやしてもらいたい、もっと働かしてくれという訴えが一方に起っておるわけです。それは何を語るかというと、働いても生活ができないのです。それが疾病にかかった場合に、せっかくここで傷病手当を出そうというのでありますから、こういうところに、こういう政策を打ち出す場合に大切な呼吸があるのではないか。一日早く出したからといってどれだけ全体の財源に響くか。これ以上は議論にわたりますから避けたいと思います。  次にこれと関係を持ちますのは、この傷病手当の金額です。一級、二級に分けてここでは健康保険に歩調をそろえようとする努力はわかるわけでありますけれども、しかしこれを出すのに、また片方は標準報酬というものがありますからわかりやすい、こうお答えになるだろうと思いますけれども、片方は予算単価が出てきておるわけです。緊急失対法によりますと、今日予算の出し方を見ますと、二十一日の就労で全国平均労務費については三百六円でことしはわれわれに予算の審議をさせて、衆議院はこれを認めたわけであります。また公式のあれがちゃんと出てきておりますから、標準報酬よりもっとつかみやすい。ここは労働省と食い違いが出るかもしれないからあらかじめ呼んでおいたわけでありますが、こういう法律上の公然たる三百六円といったような予算単価が出てきておるが、実際支給しているのは四段階から八段階に刻んでやる。これは少しやり過ぎだといつも言っておる。それはそれとして一応ここの場合には一番やさしい方法が出ておる。予算単価の三百六円を二十一日の就労日で保険の計算をするのは一番楽だと思う。この方法をとらないで、どうしてこういう一級、二級をとったか。これはまた予算単価が変れば変更をなさるのか、あるいは自動的に片方の法律が変れば変ってくるのか、こういう点に対するお考えを明確にしていただきたい。
  70. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 御質問の御趣旨は、健保の方では標準報酬の六割とかなんとかいうきめ方をしているが、なんでこっちの方では二百円とか百四十円というきめ方をするのか、要約すればそういうことだろうと思います。これは私が説明するよりむしろ井堀先生がよく御存じのように、日雇い労働者は、なるほど失対関係の労働者だけをつかまえれば、東京なら東京で働きます労働者の毎日の賃金は同じかもしれない。しかし、日雇い労働者健康保険の対象者は、失対事業だけではございませんで、その他にもたくさんあるわけであります。しかも日雇い労働者の特質は――これが健保の被保険者と本質的に違うわけでございますが、日々雇い入れられるわけであります。従って、その日によって賃金が変る可能性が十分あり、また変っておる人もあるわけでございます。そういうことで、健康保険のように標準報酬制をとらない。また、日々賃金が変る可能性があり、同時に就労日数も変ってくるわけです。従って、その地区のその人の収入が幾らかということは変ってくるわけです。そういう特殊事情にございますので、保険料の取り方におきましても二階級に分けて、しかもその階級の人はフラットで幾らというような保険料の取り方もいたしております。その関係から、傷病手当金の支給額も、標準報酬の支給額が六割なら六割というようなきめ方はできない性格のものであろう、かように思うわけでございます。ただこの二百円と百四十円をきめたにつきましては、おおむねその等級の方々の平均賃金の六割というふうなところを私どもの方の頭に置いてはおるわけでございます。そして先ほども手当のところで失業保険のことを申し上げましたが、失業保険の方の給付金が二百円と百四十円でございますので、それと合せていくことが諸般の事情から申しまして妥当であろうという考え方から、こういう制度にいたしたわけでございます。
  71. 井堀繁雄

    井堀委員 私の質問がまずかったのですが、私のは公共事業に一応限定してお尋ねしておったつもりであります。民間の日雇いの場合は、健康保険へ統合していくのはやさしいと思います。またすべきだと思います。これは私が数年要求しておりますように、零細企業の五人未満の事業場の人を把握せぬようなばかなことはない、そんな健康保険があるか、こういう考え方を私が保持しておるからであるかもしれません。それと同じように、民間の日雇い労働者は賃金の支払い形式が毎日払うか月給になっておるとかいうことであって、健康保険の算定方式をもってすれば三カ月間の標準報酬のつかみ方が一応法律で規定されておりますから、その中でできるのです。ただ経費がかかり、役所は人を大勢使わなければならぬということは起るかもしれません。その問題を除けば私は健康保険法に歩調を合せていくべきものであろうと思う。これは問題がない。問題があるとすれば、公共企業体に雇われている日雇い労働者、これは身分の上でも公務員に準ずるというのでありますから、いろいろあるわけでありますけれども、こういう状態はもっと改善していかなければならぬと思うのです。これは労働省が怠慢です。よい知恵が出ぬからだろうと思っておりますけれども……。こういう問題は別として、そういう実態を十分検討されての上だろうと思いますから、本来ならそうすべきであろうという建前お尋ねしているわけであります。これも議論にわたってはと思いますから、次に進みます。  今私の聞こうとする前に答弁していただいたのでありますが、一級の場合百三十円と二百円、二級の場合は百四十円と九十円、健康保険の百分の四十、百分の六十に近い数字を出したというのでしょうが、今日三百六円全国平均の予算単価でいきますと、百分の六十で百八十三円六十銭、百分の四十でいきますと、百二十二円四十銭になるわけです。それを百三十円と九十円、二百円と、百四十円。しかし、それを割ってもかなり低くなる。それならやはり百分の六十というものを出して、端数は四捨五入するとかあるいは勘定のしやすいように適当にきめるということであれば、将来この種の保険改正しもしくは統合するという形が出てきたときに、きわめて合理的な処理ができるではないか。専門家である厚生省がおやりになったことにけちをつけるような質問でありますけれども、どうもこういう点は理解ができにくいのです。そうむずかしいことではない。財政上の理由は成立しないわけです。みみっちい質問かもしれませんけれども、百八十三円六十銭で払うより、一級と二級にした方が負担が軽く済むというこすっからい考えであれば、こういうことをやってもよいかもしれませんが、この辺の考え方はどうでしょうか。検討をなさったでしょうか。何かもっと私の知らないことでよいことがあるでしょうか。
  72. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 若干先生の御質問を取り違えているかしれませんが、失対事業の場合には全国平均が三百円をちょっと越えている。六割にしますと三六の十八、百八十円。それでそこのところを二百円ということにしたわけでございます。三級二百八十円未満ということで、その辺なかなかむずかしいところでございますが、二百八十円未満の方で申しますと、これは私どもの資料によりますと、失対だけでなく、日雇い労働者の対象の平均賃金は二百三十円程度になるわけであります。六〇%ということになると百四十円見当になる。私どもがこの金額をきめましたにきましては、片方でそういうことももちろん配慮いたしておりますけれども、それよりは、先ほど申し上げましたように、失業保険の給付とそろえておいた方が何かにつけて都合がいいのではないか。その辺のところを非常に強く出しまして二百円と百四十円ということに実はきめたようなわけであります。日雇い労働者の実態がいろいろ千差万別でございますので、人によりましては六割切る人もありましょうし、あるいは六割以上になる方もありましょうし、その辺のところは個々ばらばらになってくると思いますが、そこは日雇い労働者の先ほど申し上げましたような実態から、保険料の方もフラット、給付の方もフラット、こういうふうな考え方で実は立案いたしたわけでございます。
  73. 井堀繁雄

    井堀委員 労働省に伺いますが、今日雇いの全国平均は公共企業体関係は、これはもう補助金で出てきますから三百六円が平均でしょう、民間に雇用されている者の平均をつかんでおりますか。
  74. 三治重信

    ○三治説明員 日雇いの平均賃金は全体としての民間のやつはPW関係で調査をしておりますが、その各職種のやつを平均してもこれはあまり意味がないので、私の方ではその平均のやつは出しておりません。失対の方でやっておりますのは、職種が限られておりますので、非常に軽作業、重作業ということで、一般PWから出しておるわけでありまして、私の方としては民間の日雇いの賃金の平均は存じておりません。
  75. 井堀繁雄

    井堀委員 私の方で労働省の出した資料の中から検討を加えたものがあります。格別今問題になりませんけれども、労働省に答えてもらうと信憑力があると思ってお尋ねしたのですが、民間はこれよりかはるかにいいのです。  そこで保険局長お尋ねするのですが、あなたは今冒頭伺ったときに、保険料の方ではなかなかそろえにくいけれども、給付の点ではそろえたいと最初にお答えになった。金額でひどく開きが出てくれば別ですけれども、金額の問題でそう争いがないとするならば、やはり百分の六十を公共企業体の日雇いに払われたものは全国的につかめておる。それから民間のものについても労働省にちゃんとあります。毎年これは失業保険関係で調査しておりますから、だからそれはちゃんと資料があるわけであります。ただそうなるとここであなたの方の言っておる一級でいきますと、なるほど百八十三円六十銭ですから、二百円に比へれば、これは二百四平均でいった方がいいかもしれない。それからもう一つ問題があります。給付の問題については、一級、二級だけでやることが合理的かどうかという問題があるのです。実際労働者の受け取っている公共企業体の場合の手取りの要するに収入というものは、八段階くらいに分けてある。ひどいところになるともっとこまかく分けてある。けしからぬと思うのです。日雇い労働者の緊急失対事業法の違反ですよ、これは。だからそういう中から日銭で保険料を取り上げていくのですから、せっかくみなのためにやってあげて、しかもこれはもうわずかの収入ですからね。一円、二円がその人の生活に――高額所得者と違いまして、そこで保険料が少しよけいとられますると、すぐその人の夕飯のおかずにさわってくるのです。その人の健康の最少限度を保持する栄養状態に影響してくるのです。こういう改正については、そういう実態を十分つかんでいる労働省の人と一緒に、保険改正の場合には十分な評議を遂げて、それにマッチするように持っていくべきではないか。そういう場合にはこんな一級、二級という割り方をしないで、できるならばそのときの収入にあまり大きな影響の起らないような、まあ六〇%がいいか悪いかは別にして、私はこういう場合には一〇%をやりたいものだ、そういう意味で級別に下の方を下げてきて、上の方をスライドさせるというのであれば理解ができるのです。ところがこれは上の方はとめておいて、下の方は低いのにスライドさせるのです。二級というのはそうなるのです。というのは二級の中で一番低い人はいいのですよ。これは少し上るかもしれない。そんなのができるかもしれない。大部分は下ります。一番給付を受ける人の多い部分がこれに該当してくるのです。こういう点は厚生省は知らぬと思う。だからそういうことを無難なやり方をしようという健康保険精神のように、日ごろの収入に均衡のとれた傷病手当金を出していただけるということが望ましいのです。もし特殊性があるとするならば、傷病手当をせっかく踏み切って出そうという以上は、病気になったときはふだんよりも栄養をとらねばならぬでしょうし、その他人費もかかるわけでありまするから、ほんとうは今まで払っているものが減るようなことのないような保証をつけていただけるということでなければ、この種の保険というものは手が届かぬと思う。社会保障的な性格を帯びた、雇用関係にある日雇労働者の対策としての保険は意義がそこに見出せないと思う。そういう配慮が計画の中に出てきて、一ぺんで行かないというならそういう傾向が芽を出してくるということが大事だと思う。国の予算、財政が許せばどこへ注ぎ込んだらいいか、随時それが効果的に流れていくという制度にしていかなければならぬ。こういう保険を扱うときの配慮としては非常に大事な点ではないか。こういう点を大ざっぱに切り、あるいは健康保険よりは後退した――それは計算は簡単かもしれない、一級と二級に分けてしまえば。そうすれば労働省の方の今後の日雇い労働者の給与のきめ方は一級と二級にしてしまわねばいかぬと思う。こういう関係が起ってくる問題なので、私は配慮が足りないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  76. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 ごもっともな御趣旨の御質問と拝承いたします。実は私どもも最初は保険料の方につきましても、それから傷病手当金につきましても、もう少し賃金の実態に合うように、言葉をかえて申しますと、刻みを多くしてものを考えたわけであります。四段階程度に実は案を考えたわけでありますが、しかしなるほど理屈はそれも一つの理屈でございましてむしろ理論的かもしれないわけなんです。ところがどうもこの原案が不評判でございまして、社会保険審議会あたりでも労使一致して、これはやはり理屈は理としてあまりめんどうくさ過ぎるのじゃないか。それで実際の事務の面でも非常に不必要な――不必要といってははなはだあれでございますが、非常にめんどう過ぎるのじゃないか、やはりむしろ失業保険と合せて二百八十円を――前の現行法は切りが百六十円でございますが、百六十円というのはあれだけれども、二百八十円ぐらいで上下切って二階級にして、保険料も傷病手当金の方もそういうようなことにした方がむしろ関係者全体が円滑にうまくいきやせぬか、こういうような御意見もございましたので、実は考え方を改めまして二つにしたようなわけであります。日雇い労働者の実態というものが確かに先生御指摘のように千差万別でございまして、しかも先ほど私が申しましたようにその労働実態の特殊性というものが常用労働者と違ったところがございますので、どうしてもこういう一つの制度を考えまする場合にはある程度、何と申しまするか、大なたをふるったような整理の仕方をいたしませんと、保険という一つのしかけになかなか乗ってきにくい。しかしまた同時にそういう大なたをふるったようなやり方をいたしますと、御指摘のようにそれぞれの個々の実態と比べてみますと、なかなかこれではぴったりしないじゃないかというふうな欠点が出て参るかと思います。その辺の調整をどういたしますかということが制度を考えまする場合の勘どころであろうと思います。私どもいろいろ考えた末にここに御審議をいただいておりますようなところにおちついて参りました、かようなことで一つお願いいたしたい、こういうようなことに実はなったわけであります。
  77. 井堀繁雄

    井堀委員 今の問題は、健康保険の給付の段階があまりこまか過ぎる。そういう点はもっと荒刻みにした方がいいのではないかと思うのです。それをするには、やはり傷病手当金の金額がもう少し実情をまかなうだけの――本来ならこういう性質の傷病手当金というものは低額所得者、ことに日ごろの生活に余裕がなく、病気にかかって経費がよけいかかるというときには、やはりその最小限度はまかなえるということにしなければ、健康保険の新目的は発揮できないのではないか。そういう点からいうと、今の傷病手当というものの出し方というものは、負担金に正比例させるという厳格な考え方よりはやはり多少相互扶助の精神を高く現わして、負担能力がある者には日ごろからよけい負担してもらって、負担能力は低いけれどもそれによって救済を受ける事情の濃厚な者に対してはやはり高額な反対給付をして差し上げるというように改善をしていくべきではないか。そういう点で多少荒刻みにしていくということには賛成なんです。しかし荒刻みを逆に持っていったらどうかということは、私はいかぬと思うのです。どうも今のお話を聞くと、事務を簡素化するということはけっこうですが、どっちに簡素化したらいいかといえば、簡素化するなら高い方に持っていったらいいのです。二級なんかやめてみんな一級にしたらいいのです。そういう改正ならうなずけるのですけれども、出す方をいやがって何とかそこをごまかそうというような感じを受けたので私は実はお尋ねをしたわけであります。  しかしそれはそのくらいにいたしまして、いたずらに時間がたちますから、厚生大臣にお帰りをいただきますために厚生大臣お尋ねをいたしますが、しかしこういうお話は厚生大臣は特にお聞きとめになっておいていただきたいのです。というのは、事務当局の出された原案を直すということは、いつの場合でも困難なんです。だから原案を作る前にやはり一応方針というものをお示しになってお作りになったと思うのですが、あるいはお示しにならないで、できたものをごらんになって御決裁をしたのか、そのどちらですか、いずれにいたしましてもそういう点で実は聞いていただきたかったのでありますが、大臣お急ぎのようでありますから、あと先になりますが一点だけ先に伺っておきたい。  この法案の中で一番いけないのが一つあるのです、これは削ったらどうかと思うのですが、これは新しく提案されておりまする十六条の五の分べん手当のところで、その二項の終りの方にただし書が出ております。「当該被保険者に被扶養者がなく、かつ、その者が病院又は診療所に収容されている場合には、一日につき、第一級にあっては百三十円、第二級にあっては九十円とする。」この点は大臣削られたらどうですか。こんなことによってどれだけ保険財源を助けるのです。これはさっき議論したことと正反対ですが、これは政策上の問題ですよ。技術もここまでくると政策を殺すことになると思うのですが、あなたのお考えはいかがですか。
  78. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私、今までの井堀さんの質疑応答を全部について拝聴いたしておりますが、傷病手当金の支給の問題も、実は社会保障制度審議会では四日より三日にしろという御勧るわけであります。それから保険料額についても、段階の問題は、社会保障制度審議会ではやはり失業保険とあわせて二階級にして、賃金日額二百八十円以上と二百八十円未満の二等級にする方がいいが、しかしながら保険料額を引き上げるについては十分考慮しなくちゃいけないという御勧告もあるのであります。また、今お尋ねの出産手当についても、金額的に見ましても実は少いのです。みな一つ一つ取り上げると、おっしゃる通りみみっちいという表現が当てはまるかもしれません。私どもも、今おっしゃったようなことはいずれにいたしましても今後十分考慮して参らなければならぬ問題だと考えておるのであります。今のお話しの出産手当の問題についても最後までもんだのでありますが、少くとも日雇い労働者の健康保険井堀さんも御承知の通りなんで、いろいろあげればたくさんございますが、ともかくもこの保険制度が創設されてから比較的沿革の新しいこと、しかも被保険者の数が捕捉しにくいこと、特殊性のあること等から、これで今度は精一ぱい努力したつもりであります。しかし、今おっしゃったような諸点については私としては今後実現方に努力をいたして参りたい、こう考えているような次第でございます。
  79. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたのその好意的な御努力に対しては私ども敬意を表しているのですが、ついでに一つこのことも頭に入れておいていただきましょう。私は今十六条のことをちょっと言ったのですが、これは分べん手当の問題ですけれども、分べん手当は健康保険の場合は四十二日分でしょう。標準報酬は平均してこれより高いですね。しかしお産する費用くらいはみな同じじゃないですかね。ここら辺に多少問題がある。だから私がこういう点を抜き書きにして申し上げているのですが、もっと検討すれば幾らでも出てくるのです。もう一つは、せっかく出産手当を出すということになるならば、やはりこれは健康保険でやっているように保育費の問題も頭を出していくべきじゃないかと思う。これは俗に言う五十歩百歩というやつだ、どうせ赤字だもの、ある程度そうすべきだ。さっき言うように、元来日雇い労働者の問題については、働かせながら出産手当を出すのがいいか失業保険がいいかということで割り切った政策なんですから、そういう政策の基本的なものにあわせてこういう保険も考えていくということになれば、せっかくここにふんばって分べん手当も出そう、埋葬料も出そう――お葬式の費用に差別をつけるというのもどうかと思う。お葬式の費用までも差が出ていますね。埋葬料は原案では十六条の三で四千円ですね。それからまた先の方へいって、私はこういう日雇労働者健康保険法の悪いところは何といっても削るようにしたいのだが、特にいけないのは十六条の三の算用数字の4のところの四項です。これなんかも健康保険にはないでしょう。「被保険者が死亡の際療養の給付を受けていた場合には適用しない。」厚生大臣、どうもこれはこういう点で、せっかくこういう法案に手をつけたのに、仏作って魂入れないというような結果になりそうなんです。これは少しばかり手を加えると、きゅっと生きてくるという、まことに微妙なところにきておると思うので、あなたの御奮起を促したいと思って意見を聞こうと思ったわけです。お急ぎのようですから、せっかく一つふんばっていただきたいと思います。  そこで、事務当局にもう一つ二つ聞いておきましょうか。大体わかったと思いますが、これはどういうわけですか。埋葬料の点で、十六条の三、被扶養者であって埋葬を行う者に対して、埋葬料四千円を出す、これはかかっただけ出してあげるというわけにいきませんか。今大体基準があると思うのですが、一体厚生省は――これはいなかにいけばずいぶん安くなる、六大都市ではずいぶんかかると思うのですが、全国平均では大体お葬式の費用をどのくらい見ておりますか。
  80. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 埋葬料の点につきましては、今回は全然触れておらないのでございます。これをもう少し増したらどうかという御質問だろうと思いますが、まああそこもここもよくしたいというところがだいぶ方々にあるわけでございますが、今回はとりあえず傷病手当金、出産手当金という非常に要望されておりました制度を創設する、その中身につきましても、先ほど来先生御指摘のように、御不満であろうと思いますけれども、まず新しく出発をするということで、まあその辺のところを改正いたしたいということと、いま一つは非常にこれの要望が強うございました受給手続簡素化という点を手をつけました。給付の面ではその二点であります。それに国庫負担の辺を少し明らかにして、国のてこ入れを強くいたしたい。これだけだといいのですが、もう一つ保険料の値上げの問題があるわけで、この辺が今回の改正の要点でございまして、従って、今御指摘の埋葬料その他の点につきましても、これは拾えば他にも幾らもあると思いますけれども、将来の問題に譲って、今回は今申し上げましたような点を一つ改正いたしたい、こういう趣旨法案でございます。
  81. 井堀繁雄

    井堀委員 何もかも金が足らぬということでしょうけれども、私はここで何もかも改めろというのではないのです。これを今度どうして改正の中に入れなかったかということ、その埋葬料の最小限度の実費が支払われるようにしてあげたらどうかということを言ているのは私はそういう深刻な場面に何回も相談にあずかって――むしろこういう保険がなければいいのですが、一般の雇用労働者が健康保険で、一応曲りなりにもお葬式が出せて、日雇い労働者の場合には、もらえるけれども中途半端だ。私はこれが莫大な金がかかるのであれば、今日の保険財政状態を知らないわけじゃありませんから……。だけれども、こういう改正の時期には、こういうものくらいについては――これはむろん都会と地方と額を変えてもいいかもしれません、だから、法律として書くには金額を入れなければならぬなら、そういう金額の入れ方をするし、金額を入れぬで済む書き方もあるわけでありますから、最高と最低を見て実費を払うということもあり得ると思う。こういうものについては、もっと実情について、まあ御検討はなさっておると思うのですけれども、なまなましい悲劇にあまりに当面して痛感しておるから、実はお尋ねをしたわけであります。  それから今度の改正点の中で、せっかく出産手当をお出しになるのでありますから――これは分べん手当を出して出産手当が出ないというのはというところから出たと思いますが、これで一応形が整ったけれども、せっかく形を整えるのなら、これも同様なことで、どうも日常傷病手当というものがかなり出ますから、金額も大きくなりますし、これはなかなか歩調がそろいにくいと私も考える。しかしこういうめったにないことです、お葬式というのは、一生一代で終りを告げることですから……。それから出産の場合に、日雇い労働者の出産というものは家族の出産ではありませんから、気の毒なんです。身重になって働いておる姿を見て、私はむしろ保険が何とかやりくりがつくものであれば――人類の悲劇ですよ。人道主義者的な考え方をして議論をするのはいかがかと思いますけれども、それも大きな経費がかかってどうにもならぬとか、それが保険経済を動かすような支出になるものならしばらく別ですけれども、全国的に見て非常にまれな姿だ、そういうところへこういうてこ入れをしてくるという改正の配慮というものがほしかった、どうしてしなかったかということが実は尋ねぬでもわかるような気がいたしますが、そういう点に対して、何かお考えがあったけれども、削られたとかなんとかいういきさつがありますならば、今後の法案改正のための参考にもなると思いますから、起案者の立場からこの点に対する配慮が行われたかどうであるかということを経過だけでも記録に残しておきたいと思いますから、一つお答えを願いたい。
  82. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 埋葬料につきましては、実は今回は私どもといたしましてはいろいろ問題はありますけれども、先ほど申しましたように、これは手をつけるつもりはございませんでした。ただ出産手当金の問題につきましては、審議会からもう少し給付期間を延ばすようにというふうな御答申がございまして、しかも御指摘のように、この点につきましてはそう金がかかる問題ではない、私ども最後までこの点につきましてはいろいろ実行をいたし、また折衝もいたしたのでございますが、一応予算できまった日数というものがございまして、それらの一点をもひっくり返すということになりますと、傷病手当金の日数にも影響してくる問題です。それらをいろいろ配慮いたしまして、今回は一つ原案の通りでいって、御答申の御趣旨は今回実現しなくても、将来の問題に残しておきましてこれをやって参りたい、こういうことで一応こういうふうなことに落ちついたわけであります。
  83. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは少し先の点を聞いてみたいと思います。二十八条の国庫の今度の負担は増額しよう、明確に支出をいたそうという点については理解できるのでありますが、二十八条の事務費負担はもちろんですが、第二項で療養給付及び家族の療養費の支給に要する費用の四分の一ときめたのですが、これはほかの保険関係などから見てもっと要求ができたものではないか。これは厚生省の要求が小さかったのか、あるいは国全般の関係からいって大蔵省がそこをたたいたのか、その辺の関係は知るよしもありませんが、いずれにいたしましても私はこういう点は、国民保険を打ち出した政府のやり方としては理解ができないのです。質問があと先になりましたけれども、こういう点の解決さえついておれば、今局長が苦して御答弁をされておりますが、何も答申案をそんなにおそろしがる必要もありません。あれは案であって、そう大したことはありません、答申案にもピンぼけしているところがたくさんあると思う。だから、問題はここにあるのじゃないかと思う。これは大臣に聞かなければならなかったのですけれども、医療保険の問題の中で、私はこういうところにくいを打ち込まぬようなことでは、言うことだけは一人前に、もっと悪く言えば羊頭狗肉で国民に喜ばすようなことを言って、選挙には役に立つでしょうけれども、それはすぐ反動になって出てきます。特にこういうような社会保障制度の中の医療保険のようなものについては長い歴史もあり、健康保険で長い経験をお持ちになっておる厚生省ですから、厚生省が案を作られたものとしては、こういうところに四分の一などというのはどういうわけですか。この辺のいきさつについて、将来必要でありますから、ほんとうは大臣から答弁していただくべきですけれども、局長から一つ答弁をいただきたい。
  84. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 この三割五分を負担するということになりましたいきさつはいろいろあるわけでございますが、しかし井堀先生御指摘の点は、こういう階層の保険であるからいま少し国も奮発すべきじゃないかという御趣旨の御質問であろうかと思います。それもごもっともに思いますけれども、また同時に、昨年度までは一割であったものを、三十三年度に一割五分にいたしたわけでございます。三十三年度ではそれをさらにもう一割上げまして二割五分にいたしまして、しかもそれをはっきり義務費として負担をすると法律に書きましたこの国の態度といいますか、御存じのようにいろいろ医療保険がたくさんありますけれども、二割五分の負担率を持っておる医療保険はほかにございません。国民健康保険につきまして今回調整交付金というものが認められまして二割五分になりますけれども、しかしこれは御承知のように事業負担というものはないわけでございます。事業負担を持っておる医療保険で二割五分というものは、これは他には全然例がない。国保等と比較いたしましても、国としては最高の奮発をした状態ではあるまいか。もちろんこれについていろいろ御議論のあるところは私どももわかりますけれども、しかしこれをもって、現在の段階においてはまずまず私どもとしては妥当な線ではあるまいか、こういうふうに考えておるわけであります。
  85. 井堀繁雄

    井堀委員 御承知のように一割から一割五分、そして三割、五分ですから、そういう数字だけを拝見しておりますと、きわめて誠意のある順調な伸び方だということは言えるわけであります。しかし私は大蔵大臣答弁であればそれでいい、見送った。しかし先ほど来質疑応答の中で私の聞こうとするところもわかっておることであるし、多くは言いませんけれども、これはせつかくこの種の保険改正案で出してきたのですから、これはすぐ次に質問しますけれども、この問題は一制から一割五分に上げたのだ、それを二割五分に上げたのだから前々年度より二割上ったのだ、こういうような言い方は、それはしろうとの議論であって、問題はその目的がどこにあるかということが先ほど来の質疑応答の中で明らかになったので、そういうことを承知して今のような答弁は私はまことに遺憾に思うのです。要るだけの費用ならこれは五割伸びたって六割伸びたっていいじゃないですか。それを私が最初から言っておりますように、日雇い労働者の場合には公共団体の緊急失対事業法の精神をきょう時間があれば労働省から説明してもらって、それからお尋ねすればむだの議論をしなくても済む。私の質問の仕方も悪かったわけでありますが、これは今日何回も繰り返すようになりますけれども、日雇い労働者の制度それ自身が社会政策的な意味を持っておるのです。老齢であったり、病弱であったり、ただ単に就職の機会が得られないという失業者とは異なって、要するに雇用の場所を奪われた、いわば人生の落後者でありますから、あなたの方の所管にもありまするように、これは生活保護法でめんどうを見なければならぬ者です。生活保護法でめんどうを見るということになりますと、すべてを見なければならぬ。片方は幾分でも労働によって所得を得て生活を補おうとする。そういう日本独自のこれは一つの社会政策なんであります。それに拮抗するような医療保険制度であるということを忘れてはならぬのです。それを、国民保険に比べて、二割に対して二割五分、そんなことは社会保障制度の理解のできないがりがりの保守的な大蔵大臣答弁ならば許されると思う。長年社会保険を手にかけてこられた、この問題に対しては一番知識の深い局長答弁としては受け取れぬ。しかし努力をしたけれども力が及ばぬということになれば、それはもう何をか言わんやであります。今のような答弁は私はまことに遺憾に思う。何も責めるのではありません。こういう問題についてもっと本質的な論議ができないものであろうかということがほしかったので伺ったわけであります。  時間がありませんから、次に保険料の問題であります。これは答申案の中にも出ておりますし、また労働者の間からの強い非難にもなってきておりますが、これは非常にむずかしいところだと私は思うのであります。私は一がいに労働者の訴えをそのままうのみにするものではありません。保険の性格を理解するということになれば、困難な中からも負担をしてもらうということが保険により関心を高めていくことです。ですから私は、苦しい負担はするけれども、さらにそれよりも困難な状態、すなわち保険者として反対給付を受けなければならぬというような仲間がおるわけでありますから、そのために苦しい中からもつ保険料を負担するということは大事なことだと思う。それは理解しておる。しかし今日の日雇い労働者の実態から見ていきますと、政府も認めたからこそ単価の引き上げをしてきているわけなんです。しかし今度の単価の引き上げは米の値上りに対する補償なんです。米だけではありません。生活費全体が上ってきておりますし、物価の桁数を見てもわかりますように、私はああいう指数から見て低いと思うのです。しかしそれはそれとして、そういう点は他の政策で補い得ないのでありますから、これを一般並みの保険のように反対給付は増額する、要するに国の負担がこういうわけで増額してきたから、それとつり合うようにという意味であろうと私は想像する。この負担の増額は、幾らかするのはいいと思う。しかしこの上げ方はちょっときびしいのです。それは三万も四万も給料をとっている者から比べれば何でもないことであります。先ほどもちょっと言ったように、今日の日雇い労働者の生活の実態を知っておる者は、そしてこれは考えなければいけませんことは、社会保険に対する理解を深めることだと思うのです。反動的なものが出てきております。特に日銭をもらって生活をしている者の傾向として、宵越しの金は使わぬ、もらっただけは使ってしまうという傾向を持つ人も、理屈はいろいろありましょうけれども、保険をやっていくのですから、そういう思想的にくる影響というものは私は非常に大きく評価していくべきじゃないか、ただ単に計数的なものでいくべきじゃない。どうもこの結論は計数的なものに重点を置く。先ほど来の答弁でも想像ができる。私はこういう見解を持ってこの上げ方は適当でないと思うのですが、これに対する起案者の方のそれ以上の何か主張がおありであれば伺っておきたいと思います。
  86. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 日雇い労働者の保険料は、日雇い労働の実態に基きまして実は金額できめてあるわけでございます。普通の健保など他の被用者保険でございますと、賃金が上りますと、率できめてありますから自然に上るようなしかけになっておりますが、日雇い労働者の方は金額できめてありますので、平均賃金が上って参りましてもその保険料が上るというようなしかけにはなっておらないわけです。それでそういう観点から考えまして、片一方給付面におきましては支出の方は実は年々伸びて参っておるのでございます。その辺に日雇い労働者の健康保険の運営のむずかしさがあるわけでございます。従って最近におきましては年々大きな収支の不均衡を来たしておるわけでございます。それで何とか国も相当なてこ入れの強化をいたしますと同時に、日雇い労働者の保険料につきましても若干増徴をいたしまして、そして保険というものを健全に運営をいたしたいという観点から、いろいろ実は私ども案を考えたわけであります。できますならば保険料の引き上げをできるだけ幅を小さくしたい、こういうつもりでものを考えましたことはこれは当然でございます。それで今回の案によりますと、従来八円、八四であったものが、第一級におきましては八円が十一円、しかし当分の間は十円ということで二円上りになっておます。第二級におきましては被保険者負担分は五円でありましたものが八円になるわけでございます。いかにも上り方がひどいというふうに一応外見的には見えるわけでありますが、しかしいろいろ検討をいたしてみますと、第一級の力の保険料の二円上りという方は平均賃金等々と率でとってみますと、むしろ健保なんかよりは率は非常に低い額になるわけでございます。それから第二級の方の三円上りという分でございますが、これは第二級でも二百八十円未満百六十円以上の人は従来も八円でございまして据置であるわけでございます。その据置の方が第二級の中で九五%楳度を占めておるわけでございます。従って第二級の三円上りというように表面上は呈しておりますけれども、区分の仕方を百六十円から二百八十円まで上げましたので、従って百六十円から三百八十円までの方々は従来も八円払っていただいたのでありますが、その方が第二級の中で九五%程度を占めておるわけでございます。大部分の方は実際問題としては据え置くというふうになるわけであります。あたかも急激に上げたかのごとく見えますけれども、実態関係から申しますと、賃金の平均ベースも上っており、また今のような事情もございまして、帳づらで見てみまするほどの引き上げになっていない、こういうことに相なるかと思います。しかし、いずれにいたしましても先生御指摘のように、日雇い労働者の方々の生活の実態からみれば、できれば上げぬ方がいいわけであります。上げるとしても、その程度はできるだけ小幅にいたすべき筋合いのものでございますので、社会保険審議会の答申をいただきましてから後に、保険料の点については全体としては六十七、八百万円程度の減収になるような原案の修正をいたしまして、できるだけその趣旨を生かして参りたい、こういう努力はいたしたわけであります。しかし、何と申しましても相当程度の引き上げになる方もあるわけでございまして、この点は今先生御指摘のようにはなはだ遺憾でございますけれども、保険財政が非常に左前になっておるということと、新たに給付の面においても傷病手当金、出産手当金というようなものが、内容はいろいろ御批判はございましょうけれども、ともかく創設される、こういうところでございますので、この程度のことは何とか一つごしんぼう願いたい、こう思って実は提案を申し上げたようなわけでございます。
  87. 井堀繁雄

    井堀委員 局長のあなたを責めるのは当を得ないかと思いますけれども、これは先ほどの国庫負担の点で言及いたしましたと同じような意味において、今まで八円のものを十一円に上げるということは、それは三円の金なんかというかもしれませんが、今まで八円払っておる人、五円払っておる人の実情をよく知っておられる厚生省としてはこれは問題があるのです。だからそれが保険財源の――今保険財源が非常に困難な状態にあるからという点については、私も知らぬわけではありませんが、しかしどこで問題を切りかえていくかということに、これは政策上の問題になるかもしれません、むしろ大臣お尋ねするのが至当であるかと思いますけれども、この点は今まで八円のものを十一円に三円上げる、五円のものを八円に上げるという比率は高い比率です。しかし、これは議論にわたりますから避けたいと思いますが、こういう点で、それは全然上げないということは保険精神を理解していく上において、ある意味では困難でも、たとい一円でも上げて、そうして苦しい中にも協力を求めるという、要するに一つにはそういう保険に対する思想を困難の中につちかっていくという努力については、私は否認するものではない。理解の少いものの理解を、そういう点であえて困難にぶつかりながら努力していくという、そういう保険の歴史というものがあり得ると思います。社会保険に対する当事言の努力、僕はそういうことがあっていいと思う。しかしこれを三円上げたというのは、そういう点を理解している私どもからいっても、どうにも当を得たものとは判断できない。それでお尋ねをしたわけです。  それから次に、時間もありませんからこれでおしまいにいたしますが、事業主の負担についてであります。これは実際問題としては、被保険者負担は倍になる。三円を上げると六円上げたことになる。おおむね民間の場合は全額負担しております。またそうしてあげなければならぬほど実情というものは――これは今の私の質問の趣旨に関連することなんですが、ここにも矛盾が起っております。こういう点で多少日雇い労働に対する雇用の面に影響がなければいいかとすら思うくらいです。これは労働省に聞きたかったのでありますが、聞くまでもない、私自身も心配しておるくらいです。これは倍になって出てくる。そういう関係で、政府がせっかく米の値上りに心を配って、平均単価を引き上げても、こういうところでためてしまう。だからどうも本末転倒するような政策の運営つが――ちぐはぐといえば好意的ですが、悪くいえば羊頭狗肉、右で与えて左で奪い取るような、それがこういう社会保障制度の健全な発達の上に思いも設けない障害になる。これは直接影響するところは日雇い労働者に限るのですが、大きくいえば日本社会保障制度を健全なものに、企画を進めていこうとする上に、もっと配慮が足らなかった。こういう意味でまことに遺憾でありますけれども、どうも質問して納得のできるような御答弁をいただこうと思っても、答弁していただけばいただくほど私の不安がつのるばかりで、まことに遺憾でございますが、一応約束の時間になりましたので、私の質問をこの程度にいたします。どうもありがとうございました。
  88. 野澤清人

    ○野澤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十三分散会