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1958-03-05 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       小林  郁君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       山下 春江君    赤松  勇君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       中原 健次君    福田 昌子君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君  委員外出席者         厚 生 技 官         (保健局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月五日  委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として  福田昌子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月四日  衛生検査技師法案八田貞義君外三十八名提出、  衆法第三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  衛生検査技師法案八田貞義君外三十八名提出、  衆法第三号)  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  昨四日付託されました八田貞義君外三十八名提出衛生検査技師法案議題とし、その審査を進めます。まず、提案者より提案理由説明を聴取することといたします。八田貞義君。     —————————————
  3. 八田貞義

    八田委員 衛生検査技師法案提案理由説明を申し上げます。  ただいま議題となりました衛生検査技師法案につきまして、提案理由とその要旨を御説明申し上げます。  現在のわが国におきまして、保健衛生上の危害防止のためにも、医師診断業務のためにも重要な基礎資料を提供するものは、衛生検査技術者でありまして、近時、その需要年ごとに増加し、その役割はますます重要性を加えてきております。  しかるに、これらの技術者につきましては、現在何らの身分上の法的規制が加えられておらず、正規職業教育を経た者も少数でありまして、その資質向上は心ある識者によって強く要望されております。  このような状態にかんがみ、衛生検査技師資格を定めることによりその資質向上させ、もって公衆衛生向上に寄与しようとするのがこの法案提案いたしました理由であります。  次にその要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、この法案では、衛生検査技師とは、都道府県知事免許を受け、衛生検査技師名称を用い、医師指導監督のもとに、細菌学的検査血清学的検査病理組織学的検査原虫寄生虫学的検査その他の政令で定める検査を行うことを業とする者をいうことといたしております。  第二に、衛生検査技師免許は、厚生大臣の行う試験に合格した者等につき、都道府県知事が与えることといたしております。  第三に、衛生検査技師試験ば、高等学校卒業者等であって厚生大臣の指定した養成所等において二年以上衛生検査技師として必要な知識及び技能を修得したもの等につき、厚生大臣が、毎年少くとも一回、行うことといたしております。  以上がこの法案提案いたしました理由及びそのおもな要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 森山欽司

    森山委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。
  5. 滝井義高

    滝井委員 厚生当局に一、二点だけお伺いしたいのですが、現在医学進歩によりまして、いわゆる検査あるいは試験が非常に重要なものとなって参りましたが、そういう検査試験を行う衛生検査技師というような役割を演じておる者は、現在日本医療機関の中にどの程度の人数おるものなのか、これを一つわかっておればお知らせ願いたいと思います。
  6. 山口正義

    山口(正)政府委員 私どもの方で調査いたしました結果私ども手元にまとまっております数字を申し上げますと、合計七千五十七という数字が出ております。その内訳を見ますと、国立予防衛生研究所、その他の国立機関に百三十六、それから都道府県立あるいは四大市立地方衛生研究所に五百九十、それから保健所検査室に九百八十四、官公私立病院あるいは診療所、これが非常に数が多いのでございまして、四千八百四十七、民間研究所その他で五百という内訳になっております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、民間等給料はなかなかわかりにくいと思うのですが、国立関係機関におる者、あるいは都道府県衛生検査関係機関におる者の給与の体系は一体どういうことになっておるのでしょうか。
  8. 山口正義

    山口(正)政府委員 国立機関等におきます給与の実態はちょっと今手元資料を持ち合せておりません。保健所に勤務いたしております試験検査技術者給与は平均いたしまして、年間の基本給が十八万六千八百八十一円、これは三十二年四月一日現在の数字でございます。府県立政令市立と分けてみますと、府県立は十七万五千七百四十二円、それから政令市立が二十五万一千九百四十一円ということで、政令市の方が府県立に比べて待遇がいい。十八万六千八百八十一円と申しますのは保健所の全職員の平均給料、大体その程度というところでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 月額の給料が一万五千から二万の間にあるようでございますが、どうも私現在そういう約七千人をこえる衛生検査関係技術者がおられますが、それらの人が衛生検査技師になるコースはどういう経路をたどって衛生検査技師になったのか、いろいろコースがあると思うのですが、どういう経路をたどった人が一番多いのですか。
  10. 山口正義

    山口(正)政府委員 先ほど申し上げました数字は、もちろん医師とか薬剤師とか獣医師、そういう資格を持った方は除いております。従いまして大部分の方は旧制中学等を卒業いたしまして、ある程度実地で修練したというような人、それから最近はだんだん新陳代謝で減ってはきておりますが、旧軍の衛生関係衛生下士官というような人が大半を占めておるというふうに承知いたしております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 大体今の御説明のような経過をたどってそれぞれの機関に就職をされておるということでございますが、そうすると今度この法律が通りますと、三条で免許を与えることになるわけですが、その試験科目は一体どういうものをやられることになるのか。それから政令で定める同等以上の知識技能を有すると認められる者はよいことになるのですか、そういう同等以上の知識技能を有すると認めるということは、政令で定める場合に公衆衛生当局としてはどういうものをお考えになっているのか。その二点をお知らせを願いたいと思います。
  12. 山口正義

    山口(正)政府委員 第一のお尋ね試験科目でございますが、一応私どもの方で考えておりますのは、一般教養として化学、物理、生理衛生というような科目、それから専門科目としては公衆衛生学細菌学血清学医薬品衛生学薬品衛生学環境衛生学臨床病理検査法というような科目考えているわけであります。  それから第二の政令で定めるというのは、どういうものを考えているかという点でございますが、たとえば正規大学関係学科を修めた医学士理学士等を規定したいと考えております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 理学士医学士ですか。
  14. 山口正義

    山口(正)政府委員 さようでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、理学士医学士というのは試験がなくて当然衛生検査技師になれるんだということになりますと、薬剤師薬学士ですか、こういうものも当然なれることになるんじゃないですか。それからたとえば農芸化学というようなものも当然同じような実験がやられるのじゃないですか。私はこの政令で定めるところによりこれと同等以上の知識及び技能を有する者というのは、何か今言った医学士とか理学士とは別なものかと思っておったのですけれども、それは医師指導監督のもとにこういうことをやるというのだから、医学士なら医師ですから当然じゃないでしょうか。それとも医学士とはインターンをして、国家試験に合格をしない前のものを言うのですか。今のようないわゆる同等の学力というのは、そこらあたりちょっとわかりにくいのですが……。
  16. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘の点は薬学士あるいは獣医学士というような人も当然同列に考えなければならぬと思いますが、農芸化学の方は私どもとしてまだ十分考えていなかったわけでございます。それから医学士の中には当然医師免許を受けないインターンの人も考え得るというふうに考えております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたり一つ慎重に御検討になって、ぜひ政会を定めていただきたいと思います。  次に現在技術者育成計画というものが、それぞれ文部省の職業教育等とも関連をし、あるいは労働省の職業訓練法とも関連をして、ある程度技術者計画的に育成をされるという方向が出てきているわけですね。人工衛星とか大陸間弾道弾というものの出現によって、急速に日本科学技術の振興のブームが起っておるのですが、それはブームで終らしてはいかぬと思うのです。その中で特にこういう非常にじみな縁の下の力持ちをやるような衛生検査技師というものは技術者育成計画の中には考えられていないと思うのですが、現在日本大学でこういう衛生検査関係技師専門養成している機関がありますか。
  18. 山口正義

    山口(正)政府委員 私どもの承知いたしております範囲では、専門教育しているという機関はないと思います。そういう計画をお持ちの点はいろいろ私承わっておりますけれども、現在専門にこういう検査技師というものを養成しておられるところはないと思います。
  19. 滝井義高

    滝井委員 私もどうも不勉強でそこらあたりわからないのですが、実はもらった陳情書に、短期大学同一課程専門学校がすでに二校開設されてきわめて高級の教育が行われておるというようなことを書いておるのですが、一体そういう専門にやっている短期大学と同程度のものがどこかあるのでしょうか。
  20. 山口正義

    山口(正)政府委員 官公立大学にはそういう専門教育しているものはないのでございますが、私立大学で御指摘のような課程を設けているところは若干ございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 私立大学であるそうですが、私は将来の日本の皆保険政策を実施していく上において、やはり医療関係技術者というものが無方針養成その他が放置されておってはいかぬと思うのです。どうしてもやはりエックス線技師とか、看護婦とか、保険婦栄養士歯科技工士、その上にさらに当然歯科医師薬剤師というようなものも加えて、何か計画的な養成計画と申しますか、日本の人口の増加あるいは国民経済伸び等をも勘案しながら考えていく必要があるのじゃないかという感じがします。これはあとで児童福祉法を審議するときに少し尋ねたい点もあるのですが、そういう点について一体どうお考えになっておるかということです。最近国家公務員地方公務員を中心として給与法が改正せられた後には、それぞれ身分法というものが一つの流行の形態となって、調理士法とかいろいろのものが出てこようとしておるわけなんです。従って何かそこらあたり当局としてはやはり明確なじ計画と、その計画に見合った養成機関というようなものをきちっと整備をしていく必要があると思うのですが、そういう点何かお考えになったことかあるかどうか。
  22. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘の点ごもっともでございます。私どもこの衛生検査技師というものの身分をどういうふうに考えたらいいかというようなことは、以前からいろいろ検討しておったわけでございます。現在先ほど申し上げましたように約七千名の従事者がおりますが、現在従事している人たちは先ほど御質問にお答え申し上げましたような経歴の人でございますが、だんだん損耗していくわけでございまして、それに対して必要数とその損耗の程度から考えて、どの程度養成を今後考えていかなければならぬかというようなことを検討したことがございます。ただいま手元数字は持ち合せておりませんが、従ってそれに基いて私ども一応地力衛生研究所に付設してこの養成をやっていったらどうだというようなことで、省内で予算的な計画を立ててみたこともございます。過去においてそういうふうに考えたことがあるかという御質問に対してのお答えとしては、私どもとしてはそういう点従来も検討して参ったわけでございまして、今後この衛生検査技師身分がはっきり規定されまして、そしてそれの需要供給という立場から養成計画をはっきり定めて、どこでどういうふうにやっていくべきか、それに対して国として援助する必要があるならやらなければならぬではないかというふうに考えているわけでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 最近における医学、医術、薬学の進歩は、非常に総合化が進むとともに細分化が行われ始めたわけです。医師の中にもすでに専門医制度ができようとしております。そうしますと専門医普通医との役割、同時に専門医なり普通医のもとにおける薬剤師との関連、そして医師薬剤師との業務上における衛生検査技師等との関連、こういう問題は、職業的な役割境界が非常に微妙になってきておるわけです。そうしますと、医薬分業野澤さん等の御努力によってようやく解決をしたわけなんですが、なかなか微妙な問題が衛生検査技師の登場によっても起ってくると思うのです。そこらあたり境界をやはりある程度明白にしておかなければいかぬ問題が出てくると思うのです。と申しますのは、具体的に申してみますと、たとえば皆保険になってすべてが健康保険なり国民保険になる。その場合に物と技術を分けて、技術料というものを請求する場合に、医師技術料薬剤師技術料衛生検査技師技術料というものは一体どういう評価になるのかということなんです。こういう問題は、今言ったように身分法はお互いにできておるが、その境界をはっきりしておかないと非常に問題が出てくると思う。保険局長が来ておりませんので、そこらあたりはなかなか具体的にはわかりにくいと思いますが、医師指導のもとに衛生検査をやることになっておるわけなんです。すると今まで保険請求する場合、たとえばワッセルマン反応を検査してもらった、実際は衛生検査技師がやった、しかしその証明を出すときにはあくまでも医師名前で出してきているわけなんです。そうすると、その場合保険請求は、今度は医師自身がやった場合の技術料衛生検査技師がやった技術料薬剤師がやった技術料とは、具体的にどうなるのかということなんです。物は原価でやっておる。しかし技術というものは、その技術の高下によってきまってくる。大学を出たての者と、われわれみたいなやぶ医者と、非常に優秀なお医者さんとは違うんです。技術屋がある。同じ検査査であっても、学力経験等によって違ってこなければならぬと思う。こういう問題が当然検査の面で起ってくるのです。現在社会保険における検査の問題というものは非常に多いのです。最近エグザミネーションというものを強化しようという論が非常に起ってきた。こういう保険とこういう身分法ができたときの関連というものは、やはりこの法律ができる初歩の段階において明白にしておかないと、だんだん先になって混乱が起り、紛争が起るということでは困ると思うのです。こういう点をどういう工合にお考えになっておるのか。調剤技術料その他についても、今度は薬剤師さんの場合と医師とは違っておるのです。当然これはもう新しく身分法が確立されればすぐに具体的な問題として出てくるのです。これは医務局長さんの方にも関係が出てくると思うのです。この前角膜移植のときも、すぐ健康保険のことを出しましたが、やはり政治というものはきわめて具体的でなければならぬと思うのです。法案が出ていけばすぐに九千万国民を拘束します。拘束すれは、明日から動く法律になるのだから、そこらあたりを、やはり段階をつけるものなのか、同じ請求を出してもいいのかどうか、こういう問題は、この法律が通れば明日から具体的な問題として登場してくると思います。まあわかっておらなければ、研究をして、保険局長と打ち合せして次会にでも答弁してもらってけっこうですが、基本的にどういうお考えなのか。
  24. 山口正義

    山口(正)政府委員 医師の行う仕事衛生検査技師の行う仕事の内容については、はっきり区別をしていかなければならないという指摘でございますが、私らもそういうふうに考えているわけでございます。ただ衛生検査技師のやる仕事医師身分を持った人がやり得ることは、先ほどの御質疑に対してお答え申し上げたところでも明らかでございます。その際に、技術料に対して、たとえば保険点数の上で医師が行なった場合と衛生検査技師が行なった場合にどういうふうに区別するか、あるいは差異を設けるかどうかというような細部については、まだ保険局と十分打ち合せを済ませておりませんので、しばらく御猶予をいただいて御返事申し上げたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 今後やはり衛生検査技師身分を確立する上から言っても、そういうことがある程度明白にされていないと、今度は給与体糸の上にこれが出てくる。今国立病院なり公的医療機関というものは独立採採算制の形をとっているわけです。独立採算制をとるということは、この前言いいましたが、これは底流はある程度営利性貫かれているということです。そうしますと、技術者のやった検査評価が不当に安くなると、従って給料も安くなって、身分法ができても、短兵急な結論ですが、ものの役にも立たないという結果が出ないとも限らないわけです。従って、そういう点をぜひ一つ御勘案願って、この法律の施行に当っては、法律が出てから三ヵ月以内に政令で定める日からということになっていると思ういますから、それらもろもろの問題を十分御討議いただいて万遺憾ないように要望いたしまして質問を終ります。
  26. 森山欽司

  27. 田中正巳

    田中(正)委員 この法案免許ということについて二点ほどお聞きをいたしたいと思います。ごく簡単に質疑をいたしますから、簡単に答えていただきたいと思います。第七条に「免許は、都道府県知事衛生検査技師名簿に登録することによって行う。」としてありますが、同じ厚生省関係法律でもこの点はまちまちのようであります。免許証を交付して免許を行う場合もあるようでありますが、これについて区別している実質的な理由があるのか、あるいは単なる立法沿革的制度だけであるのか、この点をまずお尋ねしておきたい。
  28. 山口正義

    山口(正)政府委員 免許の仕方にいろいろ差がある、厚生省は実質的にそれをやっているかどうかという点につきましてのお尋ねでございますが、その前に、この法律に基きましての免許は、ただいま御指摘になりましたようにいろいろ仕方がございまして、登録によって行うということもございますのでその法令に従ったわけでございますが、ほかの方法、意識的に厚生省として区別する理由があるかどうかという点につきましては、まことに恐縮でございますがただいまつまびらかにいたしておりません。
  29. 田中正巳

    田中(正)委員 おそらく立法時代的推移によってこういうことができてきただろうと思いますが、実際問題として僕は理由考えられないと思いますから、しかるべき機会にこれは統一をしていただきたい。法律によっては免許証を交付することが免許形式的要件になり、あるいは登録することが要件になるということは、実質的に大した心配はないと存じますが、やはりときに問題が起ると思いますから、今後これは御留意願いたいわけであります。  次に、もう一つ質疑でありますが、この法律による免許とは一体どういうことを言うのかということであります。普通免許というのは、一般的な禁止特定の場合に解除し適法に特定行為をすることを得せしめる行為であるというふうにわれわれは聞いておるのですが、そういったような意味に解釈してよいかどうか、その点お伺いいたします。
  30. 山口正義

    山口(正)政府委員 この免許は、この法案根本理念にございますように、衛生検査技師名称制限ということでございますので、本法の第二十条にございますように、「衛生検査技師でない者は、衛生検査技師という名称を使用してはならない。」というところに主眼点を置いての免許というつもりでございます。
  31. 田中正巳

    田中(正)委員 名称制限について、一般的に禁止しているものを特定の者に解除する意味というふうに解釈でき、免許一般原則に照らしてさしたる不都合はないようでありますが、実際問題といたしまして、免許を与えられない者は一般的に当該業種禁止するということが行政法上の建前になっているのですが、この法案では名称禁止だけでありまして、衛生検査技師資格を持たない者でも衛生検査技師としての実体上の仕事をすることは、実は差しつかえないようになっているようであります。これは単にこの法案だけでなしに栄養士法も多分そう出ていたと思いますが、他の法律はほとんどそうなっておらないのでありまして、そうなって参りますと一般的な免許といったような法律上の意義とこの法案の志向するところがはなはだしく違うような、最近の法体系がくずれて免許ということが従来の行政法上の解釈で律しきれないような方向に走っておるように思われるのですが、こういうような衛生検査技免許を持たない者が、名称を使わなければ実際上衛生検査技師仕事をしてもよろしいという根拠について一体どういうふうにお考えになっているか、その点をお聞きしたいのであります。
  32. 八田貞義

    八田委員 ただいまの質問に対してお答えいたします。今の名称禁止でございますが、衛生検査技師名称を使わなければやってもよろしいのであって、衛生検査技師という名前をほしければこの試験を受けて免許を受けなければならぬ、こういうようにこの法の建前を作っておるわけでございます。
  33. 田中正巳

    田中(正)委員 実際問題としてそういう御趣旨だろうと思いますが、この法の目的とするところを完全にやるためには、一歩進んでそういった普通の免許のような形まで持っていかなければ、この法の目的とすることが十分達せられないと思いますが、あえてそれを避けてこの段階までにとどめておったという根拠について、もう一度お伺いします。
  34. 八田貞義

    八田委員 この問題は田中委員も御承知のように、数年来の懸案の問題であったわけであります。その間いろんな問題がありまして、われわれの理想としては田中委員の御質問のような点に持っていきたい念願を持っておったわけでありますが、いろいろその現状から見まして一歩前進の形をとって、将来の理想な形に進んでいこう、こういう考えから芽を出して参ったわけでございます。
  35. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま提案者八田委員から御説明がございましたように、本法は現段階においては名称制限ということになっておりますが、今後この法律が制定されました上での指導方針としては、できるだけ各種の検査施設等における衛生検査はこれらの衛生検査技師に行なってもらうように指導して参りたいというふうに考えております。
  36. 田中正巳

    田中(正)委員 厚生省の方でも行政指導でさようなことをいたすというふうな趣旨ですから、私はこれ以上この点はあまり申し上げませんが、実際問題としてこういう形の俗にいう身分法というものが次第にふえつつあるような傾向にありますが、しかし何としてもやはりこういった身分法を単にこういう程度にとどめないで、はっきりした免許制度あるいは他の者には当該業種を業として行なってはいけないというふうなところまで踏み込むのがこの種の法律趣旨であろう、かように考えておるのです。極端に申せば、この法案のような形の法律というものは片手落ちで、ある場合には非常な弊害も考えられるというふうに思いますので、今後一つこの点は十分御勘案の上、こういうような身分法ということについて根本的な検討を一つお役所側でも考えていただきたいという希望を申し添えて、私の質問を終りたいと思います。
  37. 森山欽司

    森山委員長 野澤清人君。
  38. 野澤清人

    野澤委員 提案者の一人でありますから、提案者お尋ねするというよりも、政府側の方に念を押しておきたいのですが、先ほど滝井委員田中委員の方からも詳細にわたって御質問がありましたが、もともとこの法律というものは、高度に発達した日本科学技術というものの最先端業務をやる人たちに対して身分を確立してやろうというのが事の起りであります。従って立法趣旨は、既存のそうした特殊な技能者に対する技術身分を与えようというのが根本のねらいであります。そうしますと、先ほど滝井君の方から養成施設等についての御質疑があり、これもそう追及せずに終ったようですけれども、念のためにはっきりしておきたいことは、医師歯科医師薬剤師等の業務範囲を侵してはならないというので、この法律をまとめますまでには提案者の方でも相当苦労しております。そうしてそういう職業区分と、いうものを今後厚生省自体ではっきり検討してもらうのは当然でありますけれども、私一番心配になりますことは、どの業種、どういう業態の身分法でも、身分法を作りますと、いわゆるその身分を与えるために、社会でいう学校屋というものの活動分野が非常に広くなり、従って短期大学を作るとか、特別に衛生技師の学校を作るというような目的で、金もうけ主義にそういう学校等を開設される傾向が非常に強い。たとえて申し上上げますならば、あんま、はり、きゅうにしても、あるいは理容認、美容師等にしましても身分法がきまれば、当然養成施設というものがそれに付帯してきます。ところがこの法律の出発というものは、高等学校以上とはなっておりますが、実際は医師歯科医師等の指導監督のもとに養成された実務技術者なんです。そういう実務技術者を対象にして衛生技師という称号を奉るというのが立法趣旨なんですが、おそらくこの法律が完成しますと、金もうけ主義の学校屋がばっこするのであります。そうした場合に、文部省としても、厚生省としても、しっかりしていただかなければなりませんことは、こうした特殊な業態に対する養成施設に対しては、営利主義の学校というものはどんなことをしても排撃しなければならぬ。そうして医科大学なり薬科大学なり、そうした特殊な大学等に付属して衛生技師教育をするというならよろしいが、もう各府県で、あの学校をやれば志願者が多い、技術教育だというので太鼓をたたかれますと、野放図にこれが広がっていく。広がっていきさえすればこの法律の内容だけの業務範囲ではとうてい食っていけない。しかもまた医師の監督のもにというと立法趣旨がさらに拡大して、みずから第三者と対抗できるような、いわゆる自由開業の制度までこれを飛躍発展させなければならぬという段階が、将来はともかくとして、案外早くそういう事態を引き起すのではないか、こういうことを心配するわけでありますので、この点に関して政府としては政令をまとめるまでの間に、この養成施設に対する基本的な考え方というものをはっきりまとめてもらわなければ困る。しかもこの法律というものは社会党から出、自民党から出て、お互いに話し合った結果やっとここまでまとまったものでありますが、案外綱の目が大きくて大事なところを抜けた法律のような感じもしますので、これらを穴ふさぎするには、どうしても厚生省当局が、議員立法だからというのでただ投げやりにせずに、一つしさいに御検討を願いたい。この養成施設に対して滝井君からお話がありましたが、私からもう一度念を押しておきたいと思うのです。養成施設に対する基本的な構想を取りまとめていただく御決意があるかどうか、この点はっきりさしていただきたいと思います。
  39. 山口正義

    山口(正)政府委員 養成施設の乱立というような点についての御注意でございますが、過去ほかの身分法についての例をあげての御指摘がございましたが、私どももいろいろ痛感している点が多々ございます。今度のこの衛生検査技師養成施設につきましては、御指摘の点十分勘案しまして、さしあたって文部大臣が指定し、また厚生大臣が指定するという際に十分その点は注意して参りたいと存じておりますが、先ほども申し上げましたように、全般的な需要供給、損粍の程度というようなことを考えまして、養成計画をはっきり立てて、どういうところで養成してもらうのが一番いいかというような基本的な方針をはっきり立てて今後の養成に当って参りたい、そういうふうに考えております。
  40. 野澤清人

    野澤委員 御趣旨はよくわかりました。そこで政令を取りまとめて出される場合に、もう期間がきたからというので早々の間にほとんど検討を加えずに出されるというような事態が間々多いのでありますから、こうした特殊な身分法については慎重の上にも慎重を期していただきたい。従って公式に話し合いをするという機会はなくてもけっこうですから、これは社会党なり自民党なりの提案者の代表になっている先生方くらいにはせめて通知を出す前にそうしたことのお打ち合せがあった方が将来のためによいのではないか、こういう感じがいたしますので、これは希望意見として申し上げておきます。これは一番ポイントになりますから、よろしく御考慮を願いたいと思います。以上をもって終ります。
  41. 森山欽司

    森山委員長 中山マサ君。
  42. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ただ一点だけ私は確かめておきたいと思います。先ほど滝井委員の御質問の際に私はちょっと聞き漏らしたかに思いますが、いわゆる医学校を出た人で八回も試験を受けてしかも合格しなかったというような人から私はよく陳情を受けておるのでございます。そういう人、すなわち医学校を出てインターンを済ませた人は、知事に免許を要請すればこれが下付になるという建前をおとりになっていらっしゃるのか、その点を一つ確認しておきたいと思います。
  43. 山口正義

    山口(正)政府委員 先ほども申し上げましたように、医学士資格はとっておるが、まだ医師資格はとってないというふうな人は、この政令で定める同等以上というふうに認めたいというふうに考えております。
  44. 森山欽司

    森山委員長 他に御質議はありませんか——御質疑がないようでございますから、これについて質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入るのでありますが、別に通告もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  45. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なおただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 森山欽司

    森山委員長 御異議なきものと認め、そのように決します。     —————————————
  47. 森山欽司

    森山委員長 次に児童福祉法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。古川丈吉君。
  48. 古川丈吉

    ○古川委員 児童福祉法の改正案に関連して政府当局に保育所の運営に関して御質問申し上げたいと存じます。  御承知のように、保育所の制度というものは非常に要望があり、実際実施されております結果は非常に喜ばれておる制度であります。しかしながらその設置の認可の基準について多少問題があり、さらに運営の問題につきましては実際経営するのに非常に困難であるという問題、またそれに従事する保母の待遇が非常に悪いというような問題があるわけであります。しかしながらこの保育所関係の予算をとりますのになかなか御承知のように国庫負担となる予算がとりにくい。これは問題点は、ただいま申し上げましたように、保育所の設置に関する問題と、それから保育所の経費の認定に関する問題、さらに保育料の問題、さらにこれに対する国庫負担の問題等に問題があると思いまするが、その一つ一つについて政府の方針を伺いたい。御承知のように去年より少しばかり予算がふえておりまするが、これで従来通りにやっていくと運営がむずかしいのじゃないか。保母の期末手当〇・五が出されることになりましたが、しかし実際運営できないのじゃないか。できるのかどうかということを非常に心配をいたしておるわけでありまするが、まず第一といたしまして、御承知のように町村で保育所を設置される場合に措置児童ばかりでもいけないので、保育所と幼稚園の二つを経営することが非常にむずかしい。こういうことで措置児童に該当しない児童がやはり保育所に入っておるという事実がある。こういう点から考えまして、やはり公立の保育所でも設置認可の基準というものを考える必要があるのじゃないか。この点につきまして児童局長の御答弁を願いたいと思います。います
  49. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 御承知のように保育所は幼稚園と違いまして保護者の疾病あるいは労働のために保育に欠ける児童を行政措置によって入れるというのが本旨でございますので、従ってそれに該当するような児童を入れなければ、これは保育所としては認めることはできないわけでございます。実際問題として今お話のようにそれ以外の子供がありまして、かつ保育所に余力があります場合には、これは当然考えていい問題でございますけれども、しかし考えることによって生ずるいろいろな弊害等も勘案いたしまして、私立の保育所につきましては、措置児童以外の者が大体五〇%以内であってもらいたい。公立のものにつきましては全都措置児童であってもらいたいというような考え方を持っておりましたが、後者についても私はこれは今後の問題としてやはり検討を要する問題じゃないだろうか。余力がありますれば、これは多少のことであれば措置児童以外の者も入れるというようなことを場合によっては認めるということが実情に合うのじゃないかというふうに考えますので、この辺はなお検討させていただきたいと思います。
  50. 古川丈吉

    ○古川委員 ただいまの局長の答弁で大体了承いたしましたが、後ほど質問申し上げまする保育料の徴収の問題と関連いたしまして、この点は十分に考慮をしていただきたいと考えます。  次に保育所の経費のうちの十分の八を国庫が負担をする。あとの十分の二を府県と市町村が負担をする。こういう建前のようでありまするが、実際問題として非常に経営が困難であるという原因は、この保育所費用の認定にも一つの原因があるのではないかと思いますので、この保育所費用を認定する基準と申しまするか、それに対してこの際はっきり一つのしっかりした基準を立てなければ経営がうまくいかないのじゃないか、かように考えますが、政府の御方針はどうか、一つ伺いたいのであります。
  51. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 御承知のように保育所の経営に要します費用は二つから成り立っておるわけでございます。その一つは公費の補助でございます。もう一つは保護者から徴収をいたしてますいわゆる保育料でございます。前者の方は予算的に申し上げれば全体の経費の三六%を公費で持って、そのうちの十分の八を国が持つ、そういうふうな仕組みになっております。残りの六四%分を保育料でまかなう、そういうふうな予算の仕組みになっておるわけでございます。ところが実際問題としては六四%分はなかなか父兄からとれない。そこで一面においては公費の負担が少いじゃないか、一面においては親からのとり方が足りないじゃないか、そういうような議論が出てくるわけでございます。そこで一つの問題は、今御質問の保護者からの徴収の問題でございますが、実は徴収の基準の表が六表ございますが、その一表につきましては、大体収入別あるいは家族別にいたしまして、百五の欄に分れております。従って六表でございますから、大体六百三十の段階に分れるわけでございます。結局収入についていえば大体四百円刻みの収入を認定する。それを市町村の吏員がやる。ところが実際問題としてそういうような綿密なテストをやるということは、現在の市町村の状態では非常に困難な状況でございますので、収入の認定が的確に行われてない向きが多少あることは私どもも認めざるを得ないところでございます。問題はこういうふうなやり方で、すなわち現在の市町村の状態において、各家庭について四百円刻みの、それに家庭の数を入れたそういう綿密な収入認定をやることは非常にむずかしい。むしろそういうような収入認定のやり方でなしに、客観的に区分し得るものさしによってやるということでなければ、うまくいかぬのじゃないだろうか、大体そういうふうな考え方を持っておるわけであります。
  52. 古川丈吉

    ○古川委員 費用の認定は、ただいま保育料が六四%で、政府並びに地方団体が負担するのが三六%だ、その保育料の徴収の標準が、徴収がうまくいっておらぬために費用の認定の問題もうまくいかないんだと、こういうお話で、そういうことでこの保育料の徴収に関連をして、全体の費用の認定に影響するので、基準の単価を作りたい、こういう御趣旨だと思いまするが、それはぜひともそうやってもらいたいと私は思います。  次に保育料の問題でありまするが、先ほどちょっと申し上げましたように、今度の予算折衝でも非常に保育所の費用がとりにくかったということは、ただいま児童局長からお話のありました通りに、保育料の徴収を規定通りにやっていなかったということが、会計検査院並びに大蔵省及び行政管理庁から指摘をせられまして、それが一番問題になっておるようであります。会計検査院の検査報告によりますると、その点がきびしく指摘されておりまするが、しかし実際はただいま局長からお話がありましたように、これはとろうと思ってもとりにくいような表になっておるのじゃないか。地域が区別されておるほかに、収入についても非常に小刻みに分けておる、また家族の数が一人ずつふえることによってまた違う、そういうようなこまかい表はとうてい実行不可能なんです。これは責める方が無理なんで、大体この保育料を徴収する基準表そのものがとり得ないような——頭の上で考えるとなるほどもっともな理屈はありまするけれども、実際問題として四百円、五百円、その家庭の収入の相違はなかなか区別できないので、保育料の徴収の基準はもっととりやすいような方法にしなければならぬ、こういう考え方を持っておるわけですが、一つ保育料の徴収の点につきまして、今後どういうような方針でやられるのか、一つ伺いたいと思います。
  53. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 保育料の徴収の成績がよくないという点で会計検査院あるいは行政管理庁からいろいろ批判的な意見が出て参っております。これらについては、もちろん私どもとしても、その内容につきましては別個の意見を持っておる点もございますけれども、しかし徴収の成績が十分でないという事実は否定できないことだと思うのであります。これにはいろいろな点が考えられると思いますけれども、やはり現在の制度に一つの無理がある、そういうふうに考えられるのでありまして、これを三十三年度の予算の執行につきましては改革をするということでいかなければいけないのではないか、どういうふうな方向で改革をするか、現在のやり方は今申し上げましたように市町村の吏員が各家庭の収入をこまかに認定をして、それを表に当てはめてとる。たとえて申し上上げますれば、東京で三人家族で一万一千二百円の収入がありますと六百円とる。それから二人家族で七千百円の収入がありますと五百円とる。そういうふうになっておるわけでございますが、一応これをやめまして、客観的な基準によって家庭を振り分けて——客観的基準については私どもいろいろ検討をいたしたのでございますが、生活保護を受けておるとか、あるいは税金を払っておるかどうか、そういうような客観的な基準を一つのものさしにすべきじゃないか、そういう観点から大体四つの段階に分けまして、一つは生活保護を受けておる世帯、第二は生活保護は受けていないけれども税金は何も納めていないクラス、第三は市町村民税は納めているけれども所得税は納めていないクラス、第四は所得税を納めているクラス、大体この四つの階層に区切りまして、それに応じて徴収額あるいは国の負担の割合、そういったものをきめていくべきじゃないだろうか、かように考えております。
  54. 古川丈吉

    ○古川委員 先ほど御質問申し上げました通りに、徴収の方法があまりこまかいのでとりにくいと考えておりましたが、ただいま児童局長の御答弁によりまして客観的に非常にわかりやすい基準でとられるということは、私は非常にいい制度だと思う。ぜひともそういう方針でなるべく早く具体的に幾ら幾らとるというようなことをきめていただきたい。御承知のように、予算も衆議院を通過いたしまして四月一日から執行しなければならぬわけでありますから、ぜひとも一日も早く具体案を、お作りになってやっていただく。それができますれば、先ほどの根本問題の、徴収費を当てにしてその差額を国庫補助をしているから、徴収費がとれないので保育所の経営が困難だという問題も解決するわけでありますので、どうか一つその方針を確立せられて、早急に決定をしていただきたい。さらにこの制度がそういう教字がはっきりするならば、大蔵省との予算折衝も非常にやりやすくなるのではないか。ことし予算の範囲内において、具体的の徴収料の金額等もそれとにらみ合せてきまるでありましょうが、そういうようなはっきりした制度になりますれば、今後国庫負担をふやす場合にも一つのはっきりした根拠が出てくる、また個々の待遇改善をするにいたしましても、これは正々堂々と待遇改善を要求し得るようになると思いますから、どうか一日も早くこの方針を具体的にきめられんことを切にお願いいたしまして、私の質問はこれで打ち切ります。
  55. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 ただいまいろいろ御要望の点がございましたが、それについて簡単に現在の経過を申し上げておきたいと思います。考え方は先ほど申し上げましたような方向で大体関係当同も趣旨においては賛成でございます。ただしかしこれは非常に大きな改革でございますので、私ども数字等についてしさいに検討いたしております。またそれに基いて関係当局とも打ち合せをいたしておりますし、最終的にはまだ数字上の結着を見ておりませんが、大体の考え方と申しますと、今申し上げました四つの階層に分けまして、第一の生活保護を受けている階層につきましては、これは全部公けの費用で持つ、すなわち保育料はビタ一文ももらわない。それから第二の全然税金を納めてないクラス、これに対しましては大体百円だけ徴収をする、あとは全部公けで持つ。それから第三に市町村民税だけを納めているクラス、これは大体四百五十円程度を徴収をして、あとを公費で持つ。それから第四の所得税を納めているクラス、これは所得税という形で国に金を納め、また片一方から別の形で補助を出すというのもおかしいという議論もありますし、これは一つ全部本人に持ってもらう。そういたしますと、大体全体の額がどのくらいになるか、これが一つの問題点でございますが、一般の地域とあるいは六大都市というものとを分けて考えまして、一般的には大体九百円前後、それから六大都市は子供一人当り一千円をオーバーをする、そういうようなことになるわけでございますから、大体その範囲内において、今申し上げました額を本人から徴収をする、そういうような考え方で、今後さらにまた数字等をしさいに検討いたします場合に多少の動きがあると思いますけれども、大体の方向としては、今申し上げましたような方向で事務的な話を進めていることを御了承いただきたい。
  56. 古川丈吉

    ○古川委員 大体了承したのですが、分局長の御答弁で、具体的のお話がありましたので、それに関連して、所得税を納めているような階層には全額を負担さす、こういうお話でございますか、この点については私立のやつはあるいはそういうことでいいかもしれませんが、市町村立の場合には全額を持たすというより、やはり市町村立であるから全額でなくてもいいのじゃないかという感じもいたしますが、その点は一つ御研究を願いたいと思います。
  57. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 これは御承知のように、また私立の場合も公立の場合も措置費は全部市町村を通じて出すわけであります。ただ市町村立については、これは結局市町村が経営上の最終の責任を持っているわけでございますから、市町村の福祉のために市町村当局が相当の経費を出す、その結果今お話のありましたような線に沿うということは、私どもとして希望するところでございます。
  58. 古川丈吉

    ○古川委員 私の質問はこれで終ります。
  59. 森山欽司

    森山委員長 滝井義高君。
  60. 滝井義高

    滝井委員 児童福祉法の一部を改正する法律案の審議に当りまして、一、二点だけお尋ねをいたしたいのですが、未熟児の対策としては、当然重要な役割を演ずるものは保健婦なり助産婦なんでございます。厚生白書を見てみますと、保健婦の免許を持っている人たちは四万三千七十三人、助産婦は十三万三千九百四十九人、ところが実際に業務についておる者は保健婦は一万二千百五十六人、助産婦は五万三千七百四十三人と、こういうようにほとんど三分の一程度しか就業していないということなんです。今後母子衛生を都道府県の知事の権限から保健所を設置する市の市長に移す。あるいは第一線の保健婦なり助産婦にそういう仕事をやっていただくことになるわけなんですが、そうすると問題は保健婦よりかきわめて重要な役割を演ずるものは助産婦だと思うのです。この助産婦の養成計画ですが、最近いなかに行ってみますと、若い助産婦はほとんどいない。みんな非常に年をとられているようです。従ってこれらの保健婦、助産婦、看護婦等の実態を見てみますと、看護婦だけは各地にそれぞれ簡易な養成所ができたためにここ数年いたしますとどうにか充足できると思います。ところが助産婦と保健婦に至っては、見通しがつかないというのが私は実態じゃないかと思うのです。特に保健婦、助産婦の不足が非常に著明になってきつつある。そこで未熟児、特に乳幼児死亡率の非常に高い地位を占めておるこの未熟児対策をやろうとするならば、この保健指導を拡充強化していかなければならぬ。同時に施設内の分娩というものを普及しなければならぬ。そうするとそれらの施設なりそれから保健指導に重要な役割を演ずるものはやはり何といっても保健婦と助産婦なんです。そこでこれらの者がだんだん年をとっていくという形で、非常に御老人方が多くなってくるということは、失礼な言い分でございますが、なかなか近代的な指導のできる勉強が追いつかない、こういう形で出てくるわけです。それでやはりこれは新進気鋭の人を養成してつぎ込んでいく必要があろと思うのです。一体この未熟児対策に特に重要な役割を演ずる助産婦の養成計画としていかなる養成計画を立て、いかなる見通しを持っておられるのか、これを一つ説明願いたいと思います。
  61. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいまの御質問まことにごもっともでございます。だんだん出生率が滅って参りますので、助産婦の需要はさほどではないのでございますけれども、反面において病院、産院における分娩が最近非常にふえて参りました。病院、産院におきましては、出生率の減少にもかかわらず実体的には出生がふえてきておる。それに対応いたしまして、実は助産婦を要求する声が強いのでございます。そこで私どもといたしましては計画的に助産婦の養成所をふやしていかなければならぬということを考えておるのでございますが、現状を申し上げますと、助産婦の養成所は全国で十九校ございます。一年に大体三百人くらい卒業しております。卒業生は病院等に羽がはえて飛ぶようによく就職できるのであります。ところが、実は原因がつきとめられないのでございますけれども、一、二年この方、助産婦の養成所に入学する志望者が減少して参りました。昨年のごときは、実は採用予定数に達しないという助産婦の養成所さえ出てきたわけでございます。そこで、一面においては需要があるにもかかわらず、助産婦になる志望者が減ってきたということはゆゆしき事態でございますので、実は私どもといたしましては、各助産婦養成所を中心といたしまして、その周辺の看護婦養成所に働きかけをいたしまして、助産婦の実態と必要性を認識してもらいまして、看護、婦養成所の卒業生を積極的に助産婦養成所に入学を勧誘するような、そういう運動を起したいと考えまして、先般も実は助産婦養成所の業務主任を集めまして、この点を具体的に技術的に打ち合せをしておる次第でございます。従いまして、私どもは世論を喚起いたしまして、養成所への入学志望者をふやすということを第一段において、そして希望者が、ふえるに従って学校も逐次数を増して充実していきたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 実は今医務局長から御説明のありました通り、十九校の学校で三百人しか卒業をしないということです。しかもその三百人か、五百人か知りませんが、その程度の志望者もないという実態なんです。いなかを回ってみて、非常に産娑さん方が老齢化しつつあることは事実なんです。これはやはり日本の過去において、助産婦あるいは看護婦等になる人たちの出身する家庭の経済的な状況と非常に結びついておる。保健婦とか看護婦あるいは助産婦の資格というものが非常に高くなってきたために、それらの高度の学校に行く経済的な基盤というものがないわけなんです。従って、現在学校教育においては、英才教育というものが言われておるわけなんです。あるいは保健所等の医師を充足するためには、資金の貸与が行われるという制度ができました。今後こういうきわめて国民生活に密着をしておる——初歩的な技術者といってはおかしいけれども、ともかくも婦人の職業のきわめて重要な技術者養成するために、何か国が育英制度に類似した、あるいは資金貸与に類似した制度というものを作らなければ現在の日本の農村なり、あるいは中小の家庭から、高等学校を出て、そして大学の下級コースまでいくというだけの経済的な余力が出てこないのです。ここに私は根本的な原因があると思うのです。  それからいま一つは、局長の言われたように、日本の人口増加の傾向は、協和二十二年ないし二十三年のベビーブームを契機として、それから十年経過した現在は、二百六、七十万の出生率が百六十万程度になってきておる。百万だけ出生が減っておるということは、同時に助産婦の生活基盤というものが非常に不安定な状態に追い込まれておる。こういうことにも新しい志願者がないという原因がある。だから、こういう経済上の問題と、そういう客観的な日本の人口の動態というものをよくにらみ合した計画を立てなければいかぬということなんです。これは私はさいぜん衛生検査技師の動向は申しましたが、こういう日本全体の経済、そして全主体の人口動向と医療技術者との関係は、やはり医務局なり厚生省全体が、真剣に、もう少し振り出しに戻って、根本的な検討をやらなければだめな段階にきておると私は思うのです。それが端的に現われておるのは助産婦です。今のような人口動態の問題もありますが、問題は助産婦の出身をする家庭の状態というものが重要な影響があると思う。そこで、その育英制度というか、資金貸与の制度というか、何かこういうものを作って養成をすることが必要じゃないかと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  63. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘の点ごもっともと思います。御承知のように、助産婦並びに保健婦になるためには、現在の看護婦養成所を卒業して、さらにその上にそれぞれ半年ないし一年の教育課程があるわけであります。現状を申しますと、助産婦養成所は、ほとんど金を取らないで、ただで養成しているのが現状でございます。保健婦養成所は、おおむね授業料を取っておるのでございます。保健婦の養成所に入る方が金がかかる。助産婦養成所に入る方が実際は金が少くて済むにもかかわらず、保健婦養成所への入学志望者が多い。ところが、助産婦養成所の入学志望者は、最近一、二年とみに減少しつつあるという、ふしぎな現象が起きて参っておるのであります。従って、ただいま御指摘の学費の面もさることながら、助産婦の仕事に対する理解が非常に薄れてきているんじゃないか、この点が私ども心配されるのでございます。先ほど申しましましたように、助産婦養成所を中心にして、その入学者を出すところの基盤である看護婦養成所に向って積極的なPR運動を行うという方針をまず打ち立てたのでございますが、御指摘の点も十分今後考えていきたいと思っております。
  64. 滝井義高

    滝井委員 原因がわからないけれども、とにかく助産婦の志望者が減っている。しかも養成所は授業料も取らないで無料である。それにもかかわらず志願者が少いということになれば——助産婦なり看護婦の修得する学科は大して変らないわけです。分娩その他の問題が助産婦が多いだけです。しかし保健婦は、地域社会における第一線の衛生指導の尖兵となるためには、当然母性保護の知識と分娩の知識を持たなければならぬと思う。それならば、むしろ保健婦の課程の中に助産婦の課程を入れて、そうして保健婦に助産婦の免許を同時に与えるという便法も考えられると思うのです。これは大して変らないのです。そうしますと、技術者としての地位も、保健婦の諸君は確立されてくるし、ますます志願者がふえてくるという結果を呼ぶだろうと思います。そういう点を考えなきゃならぬ段階にきておると私は思うのです。そうしないと、昔ながらの取り上げばあさんというのですか、そういうものができないとも限らない。辺陬地に行ったら産娑さんはいない、助産婦はいないという場合も起るのです。そういう点今後御研究になっていただきたいと思います。  次に、この法律の二十一条に関連することなのですが、「都道府県知事は、命令の定めるところにより、前条の規定により、妊娠の届出をした者に対して、母子手帳を交付しなければならない。」ということになっておりますが、この母子手帳を持って行って保健所なり医師歯科医師、助産婦もしくは保健婦について保健指導を受けるわけですが、一体この保健指導を受ける料金は無料なのか有料なのか。
  65. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 無料でございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 これは保健所に行ったら無料だと思います。しかし、普通の医師歯科医師は有料のはずです。そうしますと、御存じの通り、保健所は十万単位に、中心地に一つぼつんぽつんとあるわけです。今度母子センターとかいうのを児童局長の方でお作りになるのですが、これは全国五十何カ所かできるそうですが、医者がまんべんなく配置されることは不可能だと思うのです。そうすると、先般新聞にも出ておったが、母子手帳を持って医師のもとに診断に行った、ところが健康保険では、予防ですからだめなんです。病気ではないから見てもらえない。そうすると、わざわざ百円なり二百円なりの診察料を出して、健康なのに母子手帳に書いてもらう気持にはなかなかなれない。われわれ貧しい者にとっては何とか便法はないものだろうかという新聞の声の欄か何かに出ておった。なるほどこれはもっともだと思う。保健所にいけば無料だ。しかし普通の医師に行った場合に、尿その他も検査をするということになれば、なかなかこれは無料ではできないということになるわけです。そうしますと、問題は、全国の妊婦の諸君にとって、一々遠距離の保健所まで行くということになれば、相当の交通費もかかる。これはほんとうに母子手帳を活用して未熟児をなくし、よりよき次代を背負う子供を作るためには、ここらに一つの盲点があると思うのです。これはたとえば母子手帳を持ってきた、私的医療機関というものがその何かの証明であとからあなたの方に請求すれば初診料だけはお払いするという便法を私は考える必要があるのじゃないかと思うのですが、そういう点どういうようにお考えになっておりますか。
  67. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 今御指摘の点が、実はこの母子衛生上の確かに一つの盲点であるし、児童福祉上の問題でございます。私どもはそういう意味において、母子の保健指導のその辺のやり方を何とか改善する工夫はないかということで苦慮して参った問題でございます。その一つの施策というのが、今お話のありました母子健康センターというような格好においてこれを実施していきたいということでございますが、今お話のありました費用の点が、いわゆる補助金等につきましては、金に困って金が払いにくい、そういう人たちに対して補助をする、そういう仕組みになっておる関係上、今お話のように、自分で金の持てる分は負担をしなければならないということになっておるわけでございますが、この辺のところを一つ今申し上げたようなりやり方ではなしに、母子保健指導の体系を確立する、一般的な施策としての母子保健指導の確立をするというようなことで、せっかく従来検討して参りましたので、一つ検討させていただきたいと思います。
  68. 滝井義高

    滝井委員 私は妊婦が出産までに何回母子手帳を持って医師に見てもらうか知りませんが、おそらく三回か四回、せいぜい五回見てもらったらいいと思う。せいぜい二カ月に一回でいいと思う。そうします、まあ一人五百円ですね。年間百万人ずつの子供が生まれておる。幾らになりますか、五千万円ですか、そこらの金ですね。このくらいのものをやはり出さなければいかぬと思うのです。保健所に行けば無料だということになっておりますが、御存じの通り保健所もなかなか手不足で、そして無料で見るということになると、親切がやっぱり行き届かない。保健所がある程度収益をあげれば、都道府県というものは、保健所の手数料がふえてくれば、金は出すでしょう。しかし保健所が金を食うばかりだから、都道府県の一般財源からこれを出すことを渋るわけです。そういうところに保健所一つの隘路が出ているわけなんです。それならばむしろ五千万円の金をやって——百万人分見ておけば大体足るわけですから、そういう百万人分の金を何か考えてやることが、おそらく児童福祉対策に大前進をもたらすものじゃないか、こう思うのです。そういう点は一つ至急に研究してもらいたいと思います。  それからいま一つは、今度の予算で未熟児の養育指導費二千五百七十八万九千円が計上されておるわけですが、一体健康保険なり国民健康保険の被保険者で保険証を持っておる者と、指定養育医療機関に行って治療するときの関係ですね。たとえば私なら私の家内は健康保険の被保険者の家族なんですね。そうしますと、当然これは養育医療機関というものに行けば、未熟児は無料で、あなたの方は一日五十点見積っていますな。千二百九十五人と見積っておるわけです。これは当然健康保険を使わずしてやってくれることになると思うのですが、健康保険との関係はそれでいいでしょうか。
  69. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 社会保険と養育医療の給付との関係でございますが、私どもとしては一応社会保険による給付をまず適用せしめまして、その残りの分を養育医療の給付を与える、そういうふうな立て方に考えております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その取扱い方は生活保護の医療と同じ、こういう形になるわけですね。
  71. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 さようでございます。生活保護と養育医療との関係につきましては、生活保護よりもこっちの方を優先させる、こういうふうに考えております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 これは児童局長も御存じだと思いますが、未熟児というのは病気ではないのです、未熟児だからといって病気でないのだから、これはなかなかむずかしくなってくるところが出てくると思うのです。先天性弱質、これにあなたが一日五十点を見られておりますということは、相当高度の治療を必要としますよ。未熟児には病名というものはない。そうすると、いろいろの高度の治療をやっていくということになると、健康保険は認めないと思うのです。その場合に今あなたの方は健康保険でやらせる、その不足分ということになると差額徴収の問題になる。だからそこらの、同じ赤ん坊に半分か七分は健康保険にいった、残りの三分は養育医療だということはちょっと審査関係その他があって、筋が通らぬことになる。そこらの限界をはっきりしておかぬと、健康保険法と同じように、当該医療機関についてはいろいろ検査をやるわけです。これは基金で検査をやられる。そうしますと、一体どこまでが養育医療で、どこまでが健康保険治療かということが必ず問題になってくる。一日五十点も見られておるというのは、これは私は相当なものだと思う。普通の一つの病気が治るまでの平均というのは六十二、三点そこそこなんです。そうしますと、これは一日ですからね。未熟児というものは少くともやはり二、三カ月くらいは見なければならぬ。そうすると、普通の健康保険の常識を越えた治療形態を必要とするのです。その場合に未熟児はまず健康保険へ行け、そうして次の段階は養育医療で見る、こういうことではちょっと問題が出てくると思うのです。それで私は岡本さんに譲りますから、保険局長をちょっと呼んでくれませんか。保険局の見解もちょっと尋ねておきたいですから……。
  73. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 従来未熟児は御承知のように保険でも見ておりましたので、その保険との関係においては従来の形のままにおいて引き継ぐつもりでございます。それからそういう関係で従来の社会保険の適用関関係をそのままの形において継続させて、この制度に乗り移っていく、そういうふうな考え方をいたしております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 従来健康保険で見られておったというけれども、従来の実績というのをどういう工合に見ておったのかちょっと僕らにはわからないのですよ。一日五十点を見るというのは今度が初めてなんです。予算としては今まで出ていないのです。今度初めて二千五百七十八万九千円というお金が出てきたわけなんです。一体保険で過去の実績はどういう工合にやっておったのか、少し聞かしてもらって、そしてあとで見解を述べさせていただきたいと思います。
  75. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 私の方で承知をいたしております範囲で申し上げたいと思います。従来保険で見ておりましたのはもちろん入院料、保育器使用料、強制栄養、酸素の使用料、注射料、内服薬料、処置料、検査料、そういったいわゆる滝井先生よく御存じの内容のものは大体包含をして見ておりました。
  76. 滝井義高

    滝井委員 それは健康保険で全部やってもらっておったわけなんでしょう。
  77. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 そうです。
  78. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、健康保険でそれを全部やってもらっていたとすれば、あなたの方のこの予算というものは健康保険の被保険者以外だけを対象にする、こういうことになるわけですか。
  79. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 これはいわば健康保険に入っておるとすれば扶養家族になるわけでありますから、半分は結局本人負担、その本人負担分についてはこの養育医療の給付の対象になる、それ以外の健康保険に入っていない者については、もちろん全面的に給付の対象になる、そういうふうに御了解いただきたいと思います。
  80. 滝井義高

    滝井委員 問題は二千五百グラム未満の子供です。これは乳幼児死亡の三分の一を占めている。だからこういう法律が必要だ、こうなるわけです。ところがその二千五百グラム以下の子供が全部治療を必要とするとは限らないのです。やはり親にしてみたら小さい子供というのはみんな医者に連れてくるのです。やっぱりかぜ等も引きやすいし、保温等もなかなかうまくいかないのです。みんな連れてくるのですよ。そうしますとこれは未熟児だからすぐに病気だということで、——これは一応二千五百グラム以下の子供は全部健康保険でも対象になるということになれば問題はないのです。ところが未熟児だからといって一日五十点の治療をやってごらんなさい、保険局長はなかなか納得しない。それを全部あなたの方で見てくれるというのならばこれは話がわかるのです。ところがまず前提は保険で見てくれ、そうして足らぬ分は私の方で見ましょう、こういうことだから問題があるのです。だからそれは保険局の見解が、二千五百グラム以下の子供は未熟児と認めましょう、そしてそれらの子供の養育医療についてはまず保険が第一に責任を持ちます、こういう形になってくると話は簡単です。ところがどうもあなたの方だけの見解を尋ねておると問題が出る。今私は別の問題もまだ持っておるのです。たとえば保険局では——これは社会局長が要りますからあしたすることにしますが、保険局では認めておる薬を、たとえば薬価基準に登載されていない、すでに注射薬は薬価基準に登載されておる、しかし散薬は登載されていない、注射薬が登載されているものは散薬も見てもよろしいといって、県の保険課なり県の基金というものは認めてやっているわけです、ところが社会局がやってきてまかりならぬとみな切ってしまった。これはあしたやりますが、最近切ってしまった。こういうように保険局はいいと言っても今度は社会局が悪いと言う、児童局がいいと言っても保険局が悪いと言わないとも限らないのです。これは公けの場所で両者の見解をはっきりさえしておけばあとで問題は起らない。これはきわめてかわいい子供の問題ですから、あとになって問題が起ったのでは処置がない。国が払ってくれると思っておったのに、それはお前の方で払わなければいかぬと言われたら、親も大へんだし医療機関も大へんです。しかもその医療機関にはいろいろの健康保険と同じような処罰の規定がついてきているわけです。これは二十一条以下の改正というものはほとんど指定医療機関に対する改正なんです。診療報酬に対する改正なんです。ここらあたりもう少し保険局の見解も同時に一つお聞かせ願いたい、こういうことなんです。  委員長保険局長がすぐに来るそうですから、一応岡本さんに先にやらしていただきたい。
  81. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 よく御存じで誤解はないと思いますが、念のために申し上げてみますと、一応二千五百グラム以下が未熟児の一つのタイプでございますが、もちろん養育医療を給付をしますのは、そのうちの養育のため病院または診療所に収容することを必要とするいわゆる特別の未熟児について考えておるわけでございまして、実際問題としては大体千八百グラム以下がこれに該当するものと考えておるわけでございます。具体的な症状としましては、呼吸困難のある者でありますとかあるいはしばしばチアノーゼを起す者でありますとか、それから吸引反射、嚥下反射の自律がなくて直接栄養を行えない者、それから体温調節能機に異常がありまして体温の動揺の程度が著しい者でありますとか、発汗等の排泄機能に異常のある者でありますとか、循環器系の生理的な機能に異常がありまして出血性の素質等のある者でありますとか、また主として脂肪の消化吸収機能に異常がありまして普通の栄養法に耐え得ない者でありますとか、具体的に症状を申し上げますとそういったものがこの養育医療の対象に該当するもの、そういうふうに考えておるわけでございます。従って未熟児のうちのこういったものに該当する者は、数としては全体からはそう多くないと考えるわけでございます。
  82. 滝井義高

    滝井委員 今の呼吸の困難とかチアノーゼとか吸引反射等がうまくいかぬで直接栄養ができないとか、あるいは発汗機能、出血性素質、こういうようなものは千八百グラムでなくても、二千五百グラム以下くらいの子供になりますと多少あるわけなんです。そうしますと、最近における分娩の傾向は施設内の分娩なんです。そうすると子供が生まれて小さいということになると、それはもう非常に心配です。だから二千五百グラム以下なら未熟児だ、何とか一つしばらく病院に置いて、そしてこれは安心だと太鼓判を押せるまでは見てもらいたいというのが、必ず親の要望です。そうした場合に、いやもうだめでございますと言うわけにはいかないことになる。まあ連れてお帰りなさい、そして苦しがったり色が青くなったらまた連れてきて下さい、こういう形になるということが普通なんです。ところがこういう制度ができて——これは初めてできる制度なんですから、できますと、これは医療機関医師の側もそれからそこで分娩した妊婦、お母さんの側も、こういういい制度ができたならもうしばらく四、五日見てもらいましょうとなるのは当然なんです。その場合に健康保険では厳格にいってだめなんです。そして養育医療ができて、今言ったようなことは文句でいえば呼吸困難とかチアノーゼとかいうが、これは見る医師とお母さんの熱意によって、それではそうしましょうか、こういうことになる。医者としても帰らしてしまったあとでチアノーゼを起したら大へんなんです。だからここらのことは文章の上ではきわめて科学的にいきますけれども、人情の機微というものがこれは入ってくる。こういう分べんという、しかも早生見とかあるいは未熟児という問題になってきますと、必ず入ってくるのです。だからそこらあたりの見解はある程度保険当局において健康保険の取扱いの場合に弾力性のある考えを持っておかないと、しゃくし定木に行くといこうとになると、この制度は死んでしまう。みんな保険で見なさいということになれば、年度末になると金が余って、大蔵省から来年は金をばっさり切られるのが落ちだということになるのです。だからむしろこういう新しく発足する制度というものは、大胆にやはり大衆性があるような姿で運営しなければいかぬために、私は特に保険との関係を言うのです。特にみな保険になったらそうなるのです。一応これは保険局長の見解を簡単にお聞かせ願ってみたいと思います。あなたの方の見解はよくわかりましたから……、
  83. 植村武一

    ○植村委員長代理 岡本君。
  84. 岡本隆一

    ○岡本委員 だいぶ滝井委員から詳しい質問がございましたが、残っている問題について少しお伺いしたいと思います。  今まで未熟児は産科の医者からもあまり重要視されなかったし、また小児科の方でも比較的手のついていない、ちょうど境界線のものでありますから、勢いまま子扱いになっておる。さらにまた保護者の方でも、ことにいなかの方では、子はわきものというような感覚がありまして、未熟児については、あまり厚い看護が及ばなかったのですが、こういうような法案ができることによって、未熟児問題というものが大きくクローズ・アップされてくるでありましょう私は非常にこれは喜ばしいことだと思うのです。そこでこの法律案を見せていただきますと、未熟児が生まれた場合には、保護者が届出する。届出があった場合には、保健所はその家庭を訪問して、指導して未熟児の養育に当っていく、こういうふうなことになっておるのであります。そこで未熟児が生まれる数が、二キロ五百以内のものが年に約十万。全国に保健所が七百八十三ある。それを平均して割っていきますと、一保健所当り百四十という未熟児が年間生まれることになるわけであります。従って月間十名余りの未熟児の養育指導保健所が当らなければならないとなりますと、その仕事の分量というものは相当大きいはずである。未熟児の指導は、書物なんかを見ますと、大体外国などでは、一人の助産婦もしくは保健婦が担当できるところの未熟児の数は二、三名程度である、それでもう指導に手一ぱいであるというふうなことが記載されておりまけすれども、事実未熟児というものは非常に細心な注意が必要であります。毎日観察しなければ、元気そうにしておったのに、ぽこっと急に容態に変化が起りまして、毎日専門家が見ておりましても、まるでローソクの火が吹き消えるような調子で、容態が急変して死亡する場合が非常に多いのです。従って未熟児を養護していく場合に、指導するところの保健婦が三日に一ぺん行くとか、五日に一ぺん行くとか、こういうふうなことであったのでは、断じて未熟児の養育指導というものはできません。毎日経過を見に行かなければなりません。そういうことになりますと、たとえていえば山間の地帯をその範囲に持ったところの保健所で、先日も委員会で申し上げておったのでありますが、医師のいない保健所があったり、あるいはおっても一名きりよりないというような保健所がある。そういうようなところで、あちらの谷間で一人見る、こちらの谷間で一人見る、そうしますと一人の未熟児の経過を見に行くだけで保健婦一人が私は要ると思う。そうしますと、月間平均十名。そういう僻陬の地であれば、比較的出産の数も少いでありましょう。しかしながら一たん未熟児として生まれた限り、少くとも二週間や三週間は毎日経過を迫って見てやっていかなければならないと思うとき、果していなかの保健所でそういうようなことが可能かどうかということを私は心配します。従ってこれを公衆衛生局長へのお尋ねになるかもしれないと思いますが、こういうような未熟児の養護の制度ができた場合に、それだけの分は全部保健所仕事がかぶさるわけであります。ところで先般も結核の問題について私が申し上げておったのでありますが、今度は前年よりも検診の数が倍になる。仕事の分量がうんとふえるのに医師の充足ができておらない、またその他の人員の充足もできておらない。そういうような非常に保健所の機構の人的な形において低下している時期に、もう一つ保健所へ未熟児の養育という問題がかぶさっていって、果してやり通せる自信があるのかどうか、またそれがなければ、どれだけの人員を保健所にこの未熟児対策として増員されるのか、保健所でどういうような受け入れ体制をとっておられるか、この点を私はお尋ねしたいと思う。
  85. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 一応私からお答え申し上げて、足らない点は公衆衛生局長から申し上げます。お手元資料にもありますように、未熟児のうち二千三百グラム以上が四三%を占めている状況であります。二千三百グラム以上のものにつきましては、これは一般的にいえばそう神経質に考えてかかる必要のないものと理解をいたしております。それからその次の二千グラムと二千三百グラムの間が三九・二%ぐらいというふうになっておりまして言いかえれば手のかからない方のものが相当多きを占めている状況でございます。従って十一万の未熟児が全面的に保健所なりあるいは養育医療の先ほどお話のようなひんぱんに手をわずらわすというふうに考える必要も、これはないのではないかということが第一点でございます。それから、しかし、それにいたしましても、手がかかりますことはお話の通りでございますし、保健所としてはいろいろ多方面の仕事をかかえておりますので、この保健所の能力と申しますか、機能との関連、確かにこれは一つの問題点でございます。個々の具体的な問題につきましては、今御指摘のように不都合の点が一応考えられることは、もちろん私らも覚悟しなくてはならぬと思います。これはこれとし、個々の問題として市町村なり、あるいは国保の保健婦の援助等を得て善処していかなければならぬと思いますが、一般的に申し上げますと、やはり保健婦によります家庭訪問件数というものは相当あるわけであります。その中で妊産婦あるいは乳幼児を対象としたものが約二割近くはあるわけであります。それらの精力というものをこれらの未熟児の面に相当振り向けていけるものと考えております。それやこれやで一つ公衆衛生局の方とも十分打ち合わして参りましたが、御協力いただいて進んで参りたい、かように考えております。
  86. 山口正義

    山口(正)政府委員 この未熟児対策を三十三年度から実施して参ります関係で、保健所、特に保健婦に対するいろいろな仕事の過重ということが相当大きくなってくるということは御指摘の通りでございます。ただいま児童局長からお答えがありましたように、すべての保護者を訪問するとは限らないと思いますけれども、現在保健所の保健婦の充足率は全般的に見ますと、平均して大体六十六%というところで、五千三百人ばかりの保健婦が配置されているわけでございます。保健婦の一カ月の訪問指導の件数は平均して約二百八件ということになっております。もちろんその中には先ほど児童局長もお述べになりましたように、結核とか性病とかいろいろな仕事が含まれております。そのうち乳幼児保健指導関係で二割近くが占められているということになります。先ほど岡本先生のお尋ねで、三十三年度保健所としては、この未熟児対策として、保健婦の増員計画を特別に考えていくかどうかという御質問でございましたが、この問題については私ども児童局の方とたびたび相談をして進んで参っておりますが、特にこのためにということではなしに全般的に現在六六%という充足率、平均いたしまして六七%でございますから、それを全職員平均して七一・五%まで上げていく。そうしてしばしば問題になっております医師とか、保健婦というようなところに重点的にやっていくように保健婦を指導して参りたい、そういうふうに考えております。限られた保健婦で行う訪問指導をできるだけこの新しい仕事の中でやりくりをしてやってもらうように指導して参りたい、こういうふうに考えております。
  87. 岡本隆一

    ○岡本委員 保健所の人手の足りないのを充足してやっていきたいというふうなお考えのようでございますが、今度は新しく任務が一つ加わるわけです。従って未熟児の養育というものは、今までの助産婦でも十分な知識を持っておりますが、最近になって未熟児の問題が特に医学界に持ち出されるようになって参りましたから、日本医学の未熟児に対する水準はそう高いものでありませんし、それはまだ普及いたしておりません。未熟児の養育の本格的なものは、これから普及させていくというのが私はほんとうじゃないかと思うのです。従って各地に未熟児センターというふうなものを作りたいという動きが最近になって出て参りました。これまでは各地の大病院ですらそういうふうな未熟児問題について本腰を入れた受け入れ態勢というものを持っておりません。各地の大学その他の病院でも、たとえば小児科でも未熟児を扱っておりますし、また産婦人科の方でも未熟児を扱っておる。しかしながら、そのいずれにも未熟児が集約的に集まりません。そしてまたたとえば未熟児の特別な病棟なり、特別の施設を設けて、未熟児がある病院内で分べんされれば全部そこへ集めて、未熟児の問題を専門に担当する医師がおって、その未熟児を十分に保育をやっていくというふうなことは従来あまり行われておりません。あるいは乳児院と申しますか、そういうところで一部そういうことがあるかもしれませんが、全般的な傾向としては、未熟児の問題はまだそういうふうな発展段階にあると私は思うのです。従って日本の現在までの助産婦であるとか、あるいは医師も含めていいと私は思いますが、やはり未熟児の取扱い方については、もう一度再訓練すべき段階ではないかと思う。外国でのいろいろな未熟児についての施設を、最近日本の数名の小児科もしくは産科の学者が見てこられまして、今それをどんどん日本へ持ち込んでこようとしておるというふうな段階であると思う。従って本格的な未熟児の養育方針は、これから全国に普及していく段階であると思うこの法律をこれから運用していく場合には、保健婦ないしは保健所医師をもう一度未熟児について目を開かせてなれさせる、そういうことをまずやらなければ、ただ法律ができたから、末熟児を見にいくのですよ、こういったことで、未熟児について何の経験もない人が未熟児を見に参りましても、大きな効果はないと思うんです。また、見にいって、ああ元気にしていますね、これはいいですね、と言って帰ってくる。あくる日にぼこっと容態が変って死んだりすることがある。事実そういうことは病院の中ですらあるのです。思いがけない急変というものが未熟児の場合にはあります。それほどまた症状というものは未熟児の場合には外へはっきり出てこないんです。同じ呼吸困難でも、おとなが呼吸困難を起しますと非常にうめき声をあげて苦しそうにします。ところが未熟児が呼吸困難を起して、鼻翼が少し動いておりましても、小さいからわかりにくいのです。さらにまたうめいておりましてもほんとうに小さい声で保育器の中でうめいておりますと、密閉してありますので全然わかりません。閉鎖式の保育器の中だとわからないのです。従って保育器をお貸しになって家庭で養育をやろうという方針をお立てになっておりますけれども、そういう場合に相当熟練した未熟児の保育経験のある者でなければ私はいろいろな間違いが起ると思うのです。だからそういう点について、これから全国の保健所医師及び保健婦をもう一度未熟児について熟練さすとまではいかなくても、ある程度の素養を持たせるというところまでいくのには、それだけの養成期間というものを見なければならない、そうするとそのために養成の方法を、どうされるのか、あるいはまたその期間それだけの人員は欠ができますから、そういうふうな点について相当保健所には人的なバック・アップということを考えておいていただきませんと混乱が起る、仕事の分量は結核の面でもうんとふやそうとする、しかもその上に未熟児対策をおんぶさせるというような形の問題で、しかも保健所の方に受け入れ態勢を作ってやらなければ保健所は非常に困ると思う。だからその辺十分に考えていただいておるのかどうかということをお伺いしておるわけなんです。
  88. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 日本においてはまだ未熟児の取扱い技術が未熟じゃないかという御摘指で、確かにそういう点もあろうかと思います。私どもとしましては、この未熟児対策ということを念頭に置きまして、実は先年来いろいろ準備をして参りました。その一つはただいまお話しのありましたように、この方面についての先進国に医師等を派遣をして十分研究をさせ、知識を吸収するということが第一、それからさらに今御指摘保健所等の医師、保健婦、助産婦については二年ほど前から未熟児の取扱いについての講習会を開いて参りました。医師については大体一期二十日、保健婦、助産婦については二カ月の期間を使って講習を開いて参りました。もちろんこれは数においては限られた数でございまして、医師一般、保健婦一般ということになると、ただいまお話のような点が多々あろうかと思いますが、今後ともこの講習等を通じ、あるいは一般的な指導等によりまして、御注意の点は十分進めて参りたいと思います。
  89. 岡本隆一

    ○岡本委員 一回何名くらいですか。
  90. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 一回医師については二十名、保健婦、助産婦については三十名見当でやって参りました。
  91. 岡本隆一

    ○岡本委員 この運用には人的な要素が非常に大きな問題でございます。従ってこの点については、十分に保健所に対してバック・アップしていただくことを特に私はお願いしておきたいと思う。  次に移っていきますが、千八百グラム以下の未熟児の中で、病院に収容するものを大体三分の一と見ておられる模様でございます。そして三分の二を訪問指導という形にして予算をお組みでございますが、大体千八百以下の子供については、これはもう保育器に入れなければなりません。従ってこういうふうな小さい子供は原則として入院さすというのが常識のようでございます。こういう小さい子供をなお三分の二を家庭養育という形で組んでいかれるということは、これは予算上の問題なのか、あるいはその他医学的に考えて三分の二程度は病院に入れなくてもいいということでこういう措置を講じておられるのか。少し専門的になって、もし局長で御無理なら課長さんからでもけっこうですが、お答え願いたい。
  92. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 その方の専門であられる岡本先生からしろうとの私に聞かれますので、満足なお答えがあるいはできないかもしれませんが、一応こういうふうな振り分けをいたしましたのは、一つは適当な設備とのにらみ合せ、それからそういう意味で間接的には予算との関連ということも出てくると思います。それと医学的な観点ということももちろんそれに応じて考えまして、大体三つの観点からこういうふうな振り分けにしております。
  93. 岡本隆一

    ○岡本委員 千八百以下の子供はみんな家庭で保育するとしましても、夏ならいいですが、冬でありますと、日本の家庭というのは保温ということが全然できておらない。都会のアパートとかであればまだましでございますけれども、都会では大体このごろは産院で分べんいたします。従って都会で発生する未熟児はほとんど病院に収容された形になる。家庭訪問という形に出てくるのはやはり農村の、産院に収容されずして分べんされてくる未熟児の問題であると思う。ところがそういう農村の家の構造というものは、御承知のように寒さというものに対しては何らの備えがないわけです。そういうところで家庭でもって未熟児を保育していくということは非常に困難です。だから死亡率が高くなる。未熟児の一番大事なことは、何といっても保温です。その保温についてはたとえばこうりの箱をこしらえる、あるいはたんすの引き出しを使ったり、いろいろなことをして保温するといたしましても、絶えずいろいろな操作を加えるたびに温度が逃げますから、さめたりぬくもったり子供をさせておったのではうまくいかない。ところが保育器もだんだん発達をして参りまして、ふたをあけて操作するものを、このごろは全部横から手を突っ込んで完全に密閉した形で操作されて温度を保てるように設備が工夫され、さらに空気の汚染を防ぐために密閉しておいて、酸素ボンベで酸素を入れるというふうに変ってきております。それほど保温というものを未熟児に対しては完全にやらなければならないのに、こういうふうに三分の二の未熟児の保育を家庭保育という形で見ておられるのには、かなり無理があるのではないか、この家庭保育という形の中には健康保険国民健康保険の適用がございます。従ってかりに病院に収容されても、これはめんどうを見なくてもいいのですというような意味において給付の対象にしない。実際給付の対象として必要なのはこれだけの数であるというような形で、三分の一を病院養育の給付の対象というふうに計算されたのではないかと思っておりましたが、そういうことではないのでしょうか。
  94. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 そういうことではございませんで、先ほど申し上げましたような意味でこういうような振り分けをいたしたのでございます。結局設備その他がまだ完全にカバーするというところまで至っていないという現実が一つの要素をなしているわけでありまして、今後いろいろお教えをいただきました線に沿って充実して参りたいと考えております。
  95. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういうことであれば、これは未熟児対策としてはあまり大きな費用でもありませんから、従って来年度からは千八百以下の子供は一応全部収容していく、そういうふうな考え方の上に立って可能なる限り収容していく。しかし収容しても、その中には国民保険の給付を受けられる人が相当あるのでありますから、その適用のない人だけが結局、——先ほど社会保険の対象になるかならないかについては、滝井委員はならないという見解をとっておられるのですが、私は未熟児は社会保険の適用になるという見解をとっております。また私どもは現在までそういう見解に立って医療を加えておりましたし、それでもっていまだ保険者の方から文句を言われたことはございません。また当然そうでなければならないと思っております。私は正規に生まれるべきものが早く生まれたがために虚弱であるというならば、これが二キロ五百以上あったと仮定いたしましても、やはり正常の体重がないということだけでもそれは身体に対する一つの事故であります。早く出たということは一つの事故であります。その事故のゆえに弱いということは、これは一つの病気である、私はこういう考えを持っておりますから、当然私は給付対象になると思っております。きょうは保険局長に来ていただいてその点を確認したいと思っておったのでありますが、ちょうど医療課長が見えましたから、医療課長はどういう見解を持っておられるか。
  96. 館林宣夫

    ○館林説明員 ただいま岡本委員から御質問のありました未熟児が健康保険の給付対象になるかというお話でございますが、未熟児でありましてこれに医学的治療を必要とするものにつきましては、健康保険の給付対象になると存じます。
  97. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで一つ問題があると思うのです。未熟児に対して医学的治療を加えるというと、それじゃ未熟児に対して医師が保温の問題あるいは栄養の問題等について指導していく、それも私はやはり一つ医学的操作であると思います。医学的な手を加えるということは、単に注射をするとか薬を飲ませるとか、そういう物の形ではっきり出なくても、知識を与えるということは、これは一番の医学的な操作であるのであります。またあなた方はいつも注射なんか無理するな、指導料というものをそのためにあげるのだというような形でもって診断指導ということを強調されておられる。従って月足らずの子ができました、どうも弱いのですが、元気がないのですが、こう尋ねられた場合に、それじゃこういうふうにして暖かくしてあげなさい、こういうふうな箱の中でしばらくはやっていきなさい、こういうようにして指導していくということは、これはりっぱに医学的な操作が加えられているのだ、従ってそれに対しては指導料というものが保険によって給付されて当然だと私は考えますが、課長はどう思われますか。
  98. 館林宣夫

    ○館林説明員 今お尋ねのありました未熟児の状態が疾病すなわち健康状態の異常と判断し得る状態でございますれば、お尋ねのようにそれに対応して医師指導することは健康保険の給付対象になるかと思います。
  99. 岡本隆一

    ○岡本委員 あとでまた滝井君から追加があるかもしれませんが、私はこの問題はその程度に了解しておけばいいと思うのです。またその範囲においてやっていけば運営していけると思います。あとでまた滝井君の質問で疑義が出ましたら御質問したいと思います。  その問題に関連してお伺いしたいのですが、健康保険では分べんが医療給付対象になっておりません。それは病気でないというゆえをもって対象になっておらない。ところがそれもグレンツ・ゲビートで困る場合がある。たとえて言えば分べんのときに会陰裂傷がある、一針縫えば産婦は医学的な操作が加えられてそれから後は入院料は保険給付の対象になる。ところがそれが正規な分べんであれば給付対象にならない。そうすると産科の医療担当者は、産婦を無事故で分べんさせた場合にはその入院から一切の分べんに要する費用を被保険者に負担させなければならない。事故が何か起った場合には被保険者が入院料その他の点で軽減されてくる。だからそういう点非常に矛盾があると思うのです。従って分べんというのは非常に事故をはらんだところの身体的な問題でありますから、少くとも分べんというものは医療の給付の対象にされた方がいいのじゃないか。また児童局と保険局考え方が違うでありましょうが、母性保護の立場からいえば、分べんというものは健康保険の給付対象の範囲の中に入れて先ほど滝井委員から問題になっておりました妊娠期間中の健康診断の問題でも、たまたま診断を受けに行きます。そうして尿の検査をやって蛋白が出ればそれでもってそのときの初診料は健康保険の給付の対象になる、事故がなければそれは自費だ、これはきわめておかしいのです。また受け付ける場合も困るのです。妊婦が見てもらいたい、こう言って医療担当者の方に参ります。妊娠かどうか見てくれ、こういうことであればそれは先に初診料を徴収します。ところが今度はその場合に何か事故を発見すれば、もらった初診料を返さなければならぬ。そういうふうな非常な矛盾があるのです。従って医療給付の対象の中に——妊娠及び分べんというものは婦人にとって非常に重要な問題であり、同時にまた婦人にとって大きな病的な危険をはらんでおるものでありますから、単なる普通の健康診断と妊娠、分べんという問題とだいぶ内容が違うと思う。従って保険局の方で方向に一大転換をやっていただいて、妊娠、分べんというものについては給付の対象にする、こういうふうな考え方を一つ検討していただけないものかと思うのですが、どうでしょうか。
  100. 館林宣夫

    ○館林説明員 ただいま健康保険の制度では、分べんに際しての経費は、分べん費として標準報酬月額の二分の一を支給をいたす、従って金額として被保険者の手に渡しておるのであります。従ってもしその際被保険者が産婆にかかればその経費を費用から払っておるわけであります。ただいまお話がございました妊娠中に健康診断に行く場合の扱いは、妊娠という現象を私どもの扱いでは一応生理現象として扱っておりますので、ただいまお尋ねのありましたように、その際何らかの異状があれば、もちろんこれは疾病として給付対象にいたしますけれども、他の、たとえば非常に危険な職場における労働者が結核をおもんぱかって保健所を訪れるような健康相談あるいは健康診断に類するようなものが給付対象になっておらないと同じような意味合いにおきまして、今日は健康保険の給付対象になっておらぬわけであります。ただお尋ねのように健康相談とか健康診断に類するようなものまで、すなわち予防的措置まで将来の健康保険では給付対象に入れるような考慮を払っていくべきであるというような御意見は、ときどき伺っておるわけであります。これらにつきましては今後検討して参るべき問題であろうと思います。
  101. 植村武一

    ○植村委員長代理 午後二時まで休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  102. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  児童福祉法の一部を改正する法律案についての質疑を続行いたします。岡本君。
  103. 岡本隆一

    ○岡本委員 けさの質問の続きでございますが、養育医療の給付の範囲でございます。未熟児が生まれました場合に、まだその母親が産褥期間中である場合でありますけれども、母乳の栄養の関係その他でもって、母親も一緒に施設に収容しなければならぬ場合は当然出てくると思うのです。あるいはまた、たまたま母親が多少ほかのなにでもって医療の対象となる場合はもちろんでありますが、そういう場合に母親の方は養育医療の対象となるのかならないのか、その辺を承わっておきたいと思います。
  104. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 養育医療の対象にいたしますのは、けさほど来申し上げておりますように、たとえば吸引反射の自律のないような者を対象として考えますので、当然産褥中の母親の母乳を飲むという現象はそういった対象の未熟児については起り得ないと考えておるのでございまして、そういう意味において母親の入院というのは養育医療の対象には考えていないわけでございます。
  105. 岡本隆一

    ○岡本委員 母乳を与えますのに必ずしも乳房で直接与えるわけではございません。先ほども説明があったように強制栄養の形をとっております。従って御承知だろうと思うのですが、このごろは非常に進んで参りまして、ナイロンですか、ビニロンですか、とにかく非常に細いパイプを鼻から絶えず通しておきまして、そして少量ずつ母乳を注射器で注入するわけですね。そういう場合にやはり初め三日、四日は、ことに未熟児は比較的ほかの成熟児よりも長く飢餓の状態にある、何も栄養与えませんから。しかしそういう強制栄養をやる場合に、母乳をとる必要があって母親を絶えずそばに置いておく必要がある場合、のみならずやはり未熟児が分べんされた場合に単に栄養だけの問題でなく、かりに母乳を使わずに他の人工栄養をやっていく場合もよくございます。そういう場合にいたしましても、それじゃ未熟児だからといって乳児だけを収容して母親と完全に離してしまうということは、日本の今までの風俗習慣上そういうことが困難な場合もあろうかと思います。もちろんそういうふうな収容の場合に単独で乳児だけを収容するということが理想的であるかもしれません。しかしながらことに今まで自宅で分べんしている習慣のある農村地帯で、保育器を持ってきて未熟児だけさっとその中に入れて施設に遮れていくというふうなことは、感情上困難だと思うのです。そういうことをすると、そんなにされてまで未熟児を病院に連れていってもらうよりうちに置いてもらいまっせということになってくると思うのです。そういった場合にはやはり母親のそういう感情というものも——そのことがいいか悪いかということは別として、そういうふうな状態に日本の習慣が訓練されるまでは、やはり母親も一緒に施設の中に収容してやるというふうなことも私は必要であろうかと思うのです。そういうような産褥期間であるというふうなときに、たまたまその母親が産褥熱を出しておったとかいうような、産褥熱とまではいかなくても、膀胱炎その他で熱を出しておったとかいうようなことがあった場合、これは原則的には給付の対象にはならないものだとは思うのですが、しかしながらそこにやはり医療機関との間にいろいろな摩擦も起るので、たとえば産褥期間中だけくらいはそういう場合には母親の入院も給付対象にするとかいうような特別のお考えがあるのか、あるいはそれはそれで原則通りやっていきますということなのか、その辺のところを確かめておきたいと思います。
  106. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 日本の母親の特殊な感情から、今お話のような事例はあり得ることだと思うのでございます。ただ問題はこの法律によります給付の対象をどの範囲にするかということであろうと思いますが、それはまあそういう現実の事態に臨んで、そういう場合もカバーできれば両方とも全部満足するようにできるわけでございますけれども、しかし法律上の制度と申しますか、あるいはこういった制度としまして、そこまで初めから見るということになりますと、これはまた非常に範囲が広がりますし、さしあたり未熟児の対策として、この法律に書いてありますように、未熟児に対する直接的な養育医療というものに限りまして、それに付随して生ずることあるべき母親の入院の費用についてはこれからは費用を出さない、そういうふうに考えておるわけでございます。なおこれは今後の問題として、医学的な点あるいは心理学的な点はいろいろ検討を要することだと思いますけれども、それはそれとして今後研究をいたして参りたいと思います。
  107. 岡本隆一

    ○岡本委員 もう一点同様な面でお伺いしておきたいと思うのでありますが、第二十一条の十であります。支給する費用の額は本人及びその扶養者が負担することができないと認められる額とございますね。その負担することができないと認められる額を認定されるのは、保健所がおやりになるのか、あるいは福祉事務所の方でなさるのか、その辺のところを一つ伺いたい。
  108. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 社会福祉事務所の福祉主事が認定をするというふうに考えております。
  109. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで社会福祉主事が認定するということになりますと、いわゆる生活保護法の基準もしくはそれに準じた方法でその認定をされますか、あるいはおのずから別な立場に立った認定基準というものをもって臨まれるか、お伺いしておきたい。
  110. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 これは生活保護法と別個の制度でございますので、別個の基準に基いて認定をするということにいたしております。
  111. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういう場合に、ことに農村地帯にありましては、まだ封建的な気風が相当濃厚です。第一児なり第二児は非常に大切に扱われるのですが、だんだん第三児、第四見ということになって参りますと、いなかの人はよく言うのです。生まれて間もない子供がなくなった場合に、案外お年寄りはあきらめがいいのです。母親さえぶじであればけっこうです、子はわきものでございますから——わきものというのは幾らでもどんどん出てくるという意味なんですね。こういうふうな考え方がまだあるのです。人の生命をどこまでも尊重するという考え方にまではまだヒューマニズムが徹底いたしておりません。そういう場合に未熟児が生まれて、非常に小さいからこれを病院へ収容しなければならぬ、しかしながらそれには費用が伴います。そうすると母親はかわいくても、まだ日本の家族制度が強いですから、おしゅうとめさんの方でそんなお金のかかることはまっぴらです、こういうことになってくると私は思うのです。そういうことはしばしばあると思うのです。そういう場合、必要のある未熟児が経済的には能力があるが、家庭的な事情によってその未熟児は収容することができない、こういうことが出てくると思うのです。そういう場合には相当そういうふうな家庭的事情というものを勘案してやられるのか、あるいは経済的な余裕があればもう養育の対象にならないのだ、給付の対象にならないのだ、こういうようなお考えの上に立って、その未熟児に頑迷なおしゅうとめさんがあったときに、未熟児の養育というものをお見捨てになるのか、その辺のところを承わりたい。
  112. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 もちろんこれは経済的な問題として取り扱っていくべきだと思います。今お話のような事例で、せっかく助かる子供の命が助からなくなるというようなことは、これはいわばあり得べからざることでありまして、もしそういうふうな考えの違う人があるといたしますれば、これは児童福祉法趣旨なり考え方が十分徹底していないということでございますので、その辺は児童福祉法趣旨なり精神のさらに一そうの徹底ということに努力をいたしていかなければならぬと思います。
  113. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこでもう一点明らかにしておいていただきたいことは、そういうふうな家庭の赤ちゃんが施設に入院いたしました場合に、初めは支払いの義務に応ずるつもりで入院を承諾したと仮定いたします。ところがあなたの方で能力をどの程度認めるかは別として、能力のある範囲においては支払わなければならぬわけでありますが、入院日数が非常に長くかかる、あるいはまた医療費が高くかさんで参りました場合に、途中で気持が変ってくることがあると思う。初めは大体この程度はあなたの方で負担して下さい、政府の方はこの程度負担いたします、こういうふうな話し合いがついてかりに入院してきた場合でも、途中で費用がかさんできて長期に入院を要するというようなことが起ってきた場合に、もうその支払いの義務に応ずることがいやになってくる場合が出てくると思うそういうふうなことによって支払い不能というのではないでしょうが、未払いが出てきた場合、その医療費の支払いの責任はあくまでも本人にありとして医療機関からの取り立てを要求されるのか、あるいはそういうふうな場合においては一応保健所側においてその支払い責任をとっていただけるのか、将来医療機関がこういうようなかなり本人の意思に基かない入院をさせた場合、こういうような紛争が起ってくると思う。そういうような紛争の最終的な責任を政府の方でとっていただけるのか、それを承わりたい。
  114. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 費用徴収の問題は、やはりどこまでも経済的な問題として客観的に取り扱っていかなければならぬと思います。ただ取扱い方でございますが、第一次的には県が負担をいたしましてそうして県が本人から徴収をする、あるいは市が徴収する、そういうことになるわけでございますから、医療機関との関係は県と医療機関との関係ということになるわけであります。
  115. 岡本隆一

    ○岡本委員 その次にはこの養育医療機関の指定でございます。これは衛生部長がやるのか、あるいは民生部長がやるのか、児童福祉関係でありますから、指定の所管がいずれになるのか。また今度はその指定をされる場合の基準ですね。これは人的な意味もある、その人の能力の問題があると思います。また設備の問題、二つの面があると思います。それについての何らかの構想を、持っておられますか。
  116. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 未熟児の問題は一応衛生部の所管となるところが大部分であろうと思います。従ってその一つの実施の問題でありますが、医療機関の指定もそうなれば結局衛生部の方の系統で指定をする、そういうふうに御理解いただきたいと存じます。それから指定に当りましては、もちろん物的な要素、人的な要素両方にらんで指定をすることになるわけであります。
  117. 岡本隆一

    ○岡本委員 その基準的なお考えを何かお持ちでありましょうか。
  118. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 基準につきましては、法律の実施といたしましてさらに十分検討いたしたいと思いますが、現在考えておりますのは、たとえば物的な面でありますと、未熟児を収容いたします独立の病室と、それに相応して完備した器械器具、そういったものを備えていることが必要であります。それから人的な面でありますと、やはりこれは全然科が違うところでは困ります。未熟児の養育にもある程度習熟をした職員がおるところでないと困る、そういうふうに考えております。さらにこまかい具体的な条件等につきましては、実施に当りまして慎重にきめたいと思っております。
  119. 岡本隆一

    ○岡本委員 ただいまの独立した病室というお言葉の内容でございますが、外国の例を見ますと、未熟児センターがある。未熟児は完全な設備を要求する。未熟児は非常にバイラスに弱いのです。だからバイラスから守るためには完全な隔離が必要である。たとえば未熟児の病室は独立のむねであること、あるいはまたそうでなければとびらが二重になっておる。そこへ入っていくのにはすっかり外套を着かえ、手を洗い、マスクをはめて入っていくというようなのが本格的な未熟児の病室であるわけであります。そういう点を考えておられるのか。あるいは私は政府の考えておられるのは、外国の例にあるように、非常に小さい子供は未熟児センターへ、またいろいろ技術的な入院保育を要するとしても、比較的大きな者は一般の産科の病院あるいは一般の小児科の病院に、それがある程度の施設を持っておればそこで養育医療させるというような方針でおられるのではないかと思う。その辺を御説明いただきたいと思います。
  120. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 もちろん理想的に申し上げれば、ただいまお話のありましたように十二分に完備したところを指定するのが理想にかなったやり方だと思います。しかし現実の問題として、そういったところは日本国中でもごくわずかなものでございますし、一方この制度をこなして、未熟児の対策をやっていきますためには、やはりある程度医療機関の数がなければ結局絵にかいたもちになるわけでございますので、その辺は理想と現実の相違の姿の妥協をどの辺に求めるかということであろうと思います。いずれにいたしましても、少くとも保健所管内に一つ程度医療機関がありませんと、実際問題としてできないと思いますので、その辺の現実の問題は十分考えて運用して参りたいと思います。
  121. 岡本隆一

    ○岡本委員 さらにその養育の指導に当る人の問題でございますけれども、先ほど保健所の充足を十分にやってそれを補っていきたいというふうな御意見のようでございました。これは一つ提案のような形になるかもしれませんが、最近助産婦の分べん取扱数が非常に減ってきておる。それは出生数が減ったということもありますが、もう一つは、やはりだんだん国民の医療水準が高くなりまして、分べんを産院もしくは病院のような完全な設備のあるところでやりたいという風習が出てきたためである。従って、助産婦が自宅で分べんを取り扱うのは非常に減って参っております。ですから、そういう助産婦を各府県ごとに訓練をして、助産婦に養育指導をまかせる、またそれに対してある程度委託費と申しますか、そういうものを支払うことによって人手の足らないところを補うというふうな方策をおとりになったらいかがかと思うのであります。これは児童局長よりも山口さんの御意見を聞いた方がよいでしょうが、どちらでもけっこうでございます。
  122. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 たしかに一つ考え方だと思いますが、申し上げるまでもなく、養育医療に関するものはいわば医療でございますので、助産婦は補助者としてもちろん手伝ってもらうのでございますが、主任者としては役柄ではないということになるわけでございます。それからいわゆる在宅未熟児についての保健指導、これは保健所仕事というふうに一応考えているわけであります。これは保健婦ないし助産婦が保健所におりますので、それを動員してやるということになるわけであります。充足率が非常に低いために足らないじゃないかというようなことから、お話のようなことが出てくるかと思いますけれども、これは保健所の運営全般の問題でございますので、今後十分検討さしていただきたいと思いますが、現実の問題としては、かりに分べんを介助いたしました助産婦がおりますれば、保健所からの指導と並んでその助産婦がある程度めんどうを見てくれるということは当然期待していいではないだろうか、かように考えております。
  123. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういう場合に、たとえば普通助産婦が産婦を取扱いまたは新生児を取扱うのは大体一週間である。臍帯が脱落すれば、関西の方では六日だれと申しますが、その日をもって一応産婦との縁が切れる、こういうことになっておるのです。ところで未熟児の場合にはそのめんどうを見なければならない期間がうんと延長されるわけです。その場合は、今度は保健所から来た助産婦があとのめんどうを見て指導に当っていくというふうなことではなくて、取り上げた助産婦にずっとそのめんどうを見させ、その指導のためのいろいろな費用は保健所から委託費として支払うという形をとる。また同時に、そういう助産婦に保健所医師とかもしくは各都道府県ごとに講習会でもおやりになって未熟児の取扱いについての一応の知識を与えておき、保健所の人手の足りないところはそういう助産婦を動かすことによって補っていくというふうなことをお考えになってはいかがであろうか、こういうふうなことを私は申し上げているのです。
  124. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 ただいまのお話の点は、一つ今後の問題として研究さしていただきたいと思います。
  125. 岡本隆一

    ○岡本委員 それから医務局長にお伺いしたいのでありますが、先ほど助産婦が非常に減ってきた、志望者が減ってきた、こういうふうなお話でございます。その減ってきた理由は、私は助産婦の教育課程というものが少し長過ぎるためではないかと考えておるのです。私の記憶が間違っておるかもしれませんが、正看護婦になって、それから後にさらに二年の助産婦の教育を受けるというふうに記憶しておるのですが、そうじゃございませんか。
  126. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいまの助産婦は看護婦の学校を卒業いたしました者が、半年以上助産婦の学校で修業すれば助産婦の国家試験の受験資格が得られますから、半年以上でございます。今日は大体半年ないし一年で、一年以上というのはないように思います。
  127. 岡本隆一

    ○岡本委員 それから準看護婦が助産婦になる道はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  128. 小澤龍

    ○小澤政府委員 準看護婦は、準看護婦資格を取りまして実務に就いて、実務三年以上の者は、特殊の進学コースの学校がございまして、それは二カ年の学課程でございますけれども、そこを修業いたしますといわゆる正看護婦としての受験資格が認められます。従いまして準看護婦が助産婦になるためには、準看護婦になってから三年間実務をやって、さらに二カ年間の進学コースを終えて、それからこの助産婦の養成所に入る、こういうコースになります。
  129. 岡本隆一

    ○岡本委員 だんだん助産婦の将来性というものが危ぶまれておりますが、それは衛生思想がだんだん高度になるにつれて、病院あるいは産院で分べんをする、従って助産婦の取扱い件数というものが非常に減ってきているというところに一つの原因があるのと、もう一つは、やはり高度な教育を要求しておるからだと思うのでありますが、準看護婦が助産婦になる道をもう少し緩和して、もう少し助産婦になりやすいというふうな道を将来考えていただく必要があると私は思います。ことに助産婦という仕事は、御承知のように夜昼もないし、しかも都会ではこれからはどんどん病院に収容されるのですから、いなかの山間僻地の不便なところで夜昼のないそういう仕事につくのに今後あまり人が喜んで行かない。それは高度であるに越したことはございません。しかしながら、そういう道を将来もう少し研究してみていただきたいと思うのであります。  それからこの機会に一つ伺っておきたいと思うのでありますが、それは専門医制度の問題であります。最近専門医制度調査会なるものを作って出発された模様でございますが、その専門医制度調査会というものをお作りになった理由と、それから経過を一つ説明願いたい。
  130. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御承知のごとくに、医師であればどういう医師であっても自由に診療科目を標榜することができる、医療法上に掲げてある診療科目ならば、だれでもどんな診療科目を標榜しても差しつかえないということになっておるわけであります。従って、必ずしもほんとうの専門科でない人もにわかに産婦人科を標榜する、小児科を標榜するという事態があるわけであります。しかしこういうことでは一般庶民が医師を利用する場合に非常に不安である、この療診科目と別に、ある程度お医者さんの持っている特別な技術が標榜できる道が開けたならば、庶民は医療機関あるいはお医者さんを利用する上において非常に便宜が多い、だからそういう専門医を標榜するような制度ができないだろうかというところにこの制度を考えた出発があるのであります。諸外国におきましてもほとんど大部分の国はすべて専門医の制度を持っております。外国におけるその専門医制度の発生の基盤も、大体ただいま私が申し上げたところにあったようでございます。しかも専門医制度を作ることによりまして、専門医たらんとして臨床の医師が一そうの修練を重ねる、ひいては医療能力の向上ということになる。また、専門医というものが学問的なコンサルタント的な働きをして、他のお医者さんといいチーム・ワークでもってよりよい医療ができるという事態ができておりますので、日本におきましても一つそういう制度を考えてみたらどうであろうかということが専門医調査会を作った動機でございます。ところで、これは必ずしも外国のまねをしていいかということになると、そうはいかない。外国の医療制度と日本の医療制度は非常に違っておりますので、なまなかに外国の制度をそのまま日本に応用するということは非常に危険である。また外国の専門医制度も、国柄によっても非常に違いがあるわけでございます。そこで、日本の国情にふさわしい専門医制度一つ考えてみたらどうであろうかということで、先般その方面の学者方にお願いいたしまして、専門医調査会のメンバーになっていただきまして研究を始めたという次第でございます。
  131. 岡本隆一

    ○岡本委員 構想は非常にいいと思うのでありますが、しかし実際問題になると非常にむずかしい問題がある。日本の医療制度というものは今までだんだん専門化されて参りました。なるほど仰せのように標榜する科目は自由でございますけれども、しかしながらほとんどの医療機関は、大学を卒業して医師になってから普通二年は大体実習課程としておる。そして専門医としてそれぞれの人は開業しているというのが習慣のようになっております。中にはなるほどそれだけの課程を経ていない人もあるでしょう。しかしながら、そういう人でもそれぞれ日赤であるとかその他の病院へ勤めてある程度の修業課程を経て開業しております。従って今日の日本医療機関というものは、そういう意味においては大体において専門化されてきている。なるほど農村地帯へ参りますとそういうわけには必ずしも参らないかもしれませんが、しかしながら、農村地帯といえどもそういう何を経てきております。そうしてまた農村で開業している人で耳鼻科を標榜している人が、付近に内科の医師がおらないから内科も兼ねてやっている。そして近くの人は、その人が耳鼻科のお医者さんであるということを知っていて、軽い病気についてはその人に治療を求める。また特に内科の専門家の必要な場合には、そういう過程を経た人のところをたずねて参っております。従って日本の医療制度というものが、従来の医療機関のあり方からだんだん専門化されてきました。イギリスのように専門医と一般医というように分れておって、一般医は一応のことは何でもやる。目をひっくり返して見れば、耳の穴ものぞくというようになっておった一般医が、今日ではもう内科、小児科の人は目もあまり見なければ耳ものぞかないというようになって、そのかわり耳鼻科の人は耳の穴や鼻の穴ばかりのぞいておるというように、非常に専門化されてきておる。厚生省は、医療制度というものがそういうように流れていくのをそのまま放任して見てきておるわけです。というのは、そういうような流れというものも一つの医療制度のあり方という形でもって、こういうように専門化していったらそれ、でいいのだという形で、今まで専門化してきておることを傍観しておられる。ところが今度、今仰せのように専門医制度調査会というものを作るということになりますと、これは日本医療機関にとって革命的な変革になってくるのです。これは非常に大きな問題になってくる。なるほど、それには数年かかって研究するんだというような言葉がございましたけれども、それほどの重要問題をこれから論議されていくのに、あの構成メンバーを見ると学者ばかりなんです。学者ばかりでああいうふうな医療制度の画期的な変革というものを実際上検討していくことができるのかどうか。そこにはやはり医師でない学識経験者、あるいはまた日常第一線に立って働いておるところの医療機関人たち、そういうような人をも含めた調査会をお作りにならないと、学者ばかりのああいう医療機関でありますと、私は非常に意見が片寄ってくると思うのです。ことに日本大学で医科大学ほど封建的なところはないということが言われておるということはあなたも御承知であろうと思う大学のプロフェッサーが診察に参りますときには、大名行列という言葉が使われておりますが、その医局の者が全部そろってついて歩くということがいまだに行われておる。とにかく、あそこほどいまだに徒弟関係というような形が残っておるところはないのです。従って、そういうような封建的な現在の大学の中にさらに専門医制度というようなものをそのまま持ち込んで参りましたら、私はあれは封建の牙城として最後まで残ってくると思います。そのことがいいか悪いかということは別といたしましても、しかしながら将来の医療担当者が、現在までは学位制度というものがあり、その学位制度というもののために非常に修学期間が長いのです。ほかの大学を出た人よりもさらに数年勉強しなければ一人前の医者として扱われないというふうな現状になっているときに、さらに専門医制度というようなものができてきた場合には一そうそれが助長されて、専門医にあらざれば医者にあらずということになってくると思うのです。そういう問題については各界の意見、各方面の意見を取り入れ、各方面の論議を十分尽した上でそういう制度の変革をおやりにならないと、私は大へんな方向にずれていく心配があると思う。従って、どうしてあんなふうな構成メンバーになったのか、さらにまた今後専門医制度調査会の検討を続けていかれる過程の中で、また別にそういうふうな広い方面の意見を聴取するように、その意見が反映するような機関をさらにお作りになる御意思があるかないか、その辺のところも承わりたいと思います。
  132. 小澤龍

    ○小澤政府委員 大へんありがたい御注意を受けたことを感謝いたします。実は専門医制度につきましては解決しなければならないたくさんの問題点があるのでございます。たとえばわが国における専門医というものは、きわめて高度の診療能力を持った少数の人にその称号を与えていいか、あるいはもっと程度を下げて、ある程度臨床経験があればどんどん専門医として認定していいかというような問題、それから専門医制度というものは内科でも外科でも、眼科でも各科に共通する一つの基準でした方がいいのか、あるいは各科の特殊性に応じてそれぞれ境界線を書いた方がいいか、あるいは専門医というものが、単なる臨床経験、臨床の研究だけでいいか、基礎医学というものをいかに加味した方がいいかどうかというような問題、すでに大学院というものがたくさんの医科大学で発足してございますが、その大学院というものの制度と専門医制度との関係が調整できるものであるかどうかというような問題、その他たくさんの問題があるのでございます。私がただいま列挙いたしたような問題は、大体医学という学問あるいは診療という医学技術、それに深い関連があるのでございまして、まずその辺の解明を第一にしなければならないのではないか、そうすれば、つまりどこら辺でもって線を引いたら専門医と非専門医が科学的に合理的に線が引けるか、あるいは専門家というものの程度というのはどの辺に考えるのが学者として適当だとお考えになるかどうか、あるいはその調査員の中には大学の先生方が大ぜいおられるのでありますけれども、その大学の先生方が担当しておられまするところの大学院との調和をどうすればいいかというような医学あるいは医学技術それ自体に関してのお知恵をまずもって拝察したいという考え方が、あの専門医調査会の発足に当って私どもまず第一に考えたことであります。もちろんああいう学者の先生方におかれましても、わが国の医療制度との関連においていろいろ御意見を下さると思いますけれども、これを実際に適用する場合には、また対社会的な問題がいろいろ他にあると思うわけであります。たとえば医療費の問題をどうするかというような問題も出てくると思います。従いまして専門医調査会というものは、まずもってわれわれが解明したい第一段階のものをあの学者の先生方にお願いし、学者の先生方にふさわしい御研究を願う。さらに調査会というものを中を広げて参りますか、方向を転換して参りますか、これは今後の経過によって考えるべきものだと思いますけれども、いろいろなことを考えていきたい。ただいま岡本先生の御注意を生かしていくようにしたい、かように考えております。
  133. 岡本隆一

    ○岡本委員 御意見よくわかりましたが、私は今度できました専門医制度調査会のような構成だけでもって結論を出して、それをもって日本の医療制度の改革え持っていこうというふうなお考えをもし持たれた場合には、非常に、大きな反撃が私は各方面から出てくるし、また混乱も出てくると思うのです。従って今の調査会でなしに、もっと広い範囲の声を聞くような機関をお持ちになって、そこで十分な調査をされた後にお進みになるように私は希望いたしておきます。私の質問はこれで終ります。
  134. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんの続きを簡単に御質問いたします。今回のこの養育医療と健康保険との関係でございますが、今度の法案の改正の一番重大なところは、二千五百グラム以下の乳児が生まれたときには、保護者はこれを保健所長に届け出る。届け出ますと、そこに保健婦、助産婦あるいはその他の職員が訪問をして、そうして未熟児の指導をいろいろやる。その場合に養育上医療が必要だということになると、その医療の給付をやるんだ、こういうことになっているわけです。そしてその医療の給付を受ける場合には、健康保険を持っておればまず健康保険でやってくれ、なかったときにはそれは本人の負担ができない部分は保険で見てあげます。できる部分は本人がおやりなさい、こういう建前なんです。そうしますと養育上医療が必要だ、こういう認定ですね。問題は養育上ということなんです。そうすると養育上ということは治療ではないのです。さいぜんの館林課長の岡木君に対する答えは、医学的な治療を必要とするときにはよろしい、こういうことなんです。医学的治療ということと養育上必要ということと、それから療養上必要ということはみな違うのです。健康保険では療養上必要な場合には指導だけなんです。いわゆる健康保険の点数表をごらんになると、療養上必要なときには、注射や投薬がない場合に限って初めて療養指導をやってもいい。このときは五点という指導料をくれるのです。ところが治療が必要なときには、初めて注射投薬というものをやってよろしい。ここに新しい養育上必要な概念が出てきた。医学的に見て、これは養育上必要だということなんです。しかもそれがこの説明でもおわかりのように、さいぜんの御説明では二千五百グラム以下がいわゆる未熟児になっている。ところが実際に医療を必要とするものは二千三百グラム以下であろうという見解なんです。二千三百グラム以下は一体どのくらいおるかということなんです。これは六万くらいおる。そうしますと現在の健康保険の限界というものは、健康保険の入院のところをごらんになると、母親が入院をした場合にできる限界というのは十日以内に限っている。今回予算に組んでいるのを見ますと、大体七十日です。非常な開きがある。健康保険の上に出ている数字と、今度は養育医療の委託のための補助金で出る額とが、非常に開きがあるわけなんです。そこで第一前提として健康保険が出ている。第二前提として本人の負担をやる。そして負担ができないときに初めて養育医療がいくという、法律建前はこういう三段がまえになっている。だから第一段階健康保険において未熟児というものをどの程度見ることになるのか、どの程度までを病気と見るかということなんです。たとえば呼吸困難があるとかチアノーゼがある、あるいは吸飲の力が非常に弱い。直接お乳が飲めないんだ、いろいろ条件をあげましたが、さいぜん岡本委員からも御説明があったように、これは出生後十一日たったらいなかはお祝いをしますが、それまではなかなか小さいのだけれども、まあまあどうにかお乳を綿花に吸わして飲んでおった。ところが十一日になったら急に悪くなったという例はざらです。突如として富士山の山の上の気候の変化と同じような状態が起ってくる。そうするとこういう新しい法律ができると、親としては産院で分べんをします。分べんをするとどうも子供の発育が悪いからしばらく置かしていただきたいということに必ずなる。そこでまず第一は健康保険が出ていくことになるんだが、一体どういうところに限界を引いて養育医療というものを健康保険は見ていくかということなんです。これは館林さんの方で法律を出すんだから、政府は意思統一をして出してきているはずなんだが、それをまず御説明願いたい。
  135. 館林宣夫

    ○館林説明員 健康保険におきまして未熟児を入院治療する場合は、その未熟児が健康状態でなく、すなわち疾病の状態がありまして、入院して治療する必要を認めた場合に、入院の治療に対して給付をいたすわけであります。従いまして単なる未熟児であるということだけでなくて、あわせて何らかの生理上の障害があって、これに対して入院せしめて医師の常時監督のもとに医療的措置をとる必要がある容態に立ち至ったときにその給付をいたすわけであります。それが健康保険におきます未熟児の入院治療に対する給付でございますが、今回のこの法律におきます養育医療と申しますのも、実体は同じであります。ただここに養育という表現を用いましたのは、単なる一般的入院治療のほかに、特に未熟児におきましては生きるための育児ということが非常に重要な部分を占めておりますので、表現上かような字句を使用したにとどまるのでありまして、実体は健康保険における必要な際の入院の治療と同じでございます。
  136. 滝井義高

    滝井委員 それならば何もこういう法律はこれほどの宣伝をする必要はないのですね。今のような見解ならば。日本の乳幼児の死亡というものの中に占める比率というものが、この未熟児が三分の一を占めておるということなんです。従ってこれは大へんだから、こういう処置を講じて予防的な面を重視しながら、死ぬであろう子供を救っていこうというのが、この法律立法趣旨だと思うのです。今のような工合に、疾病の状態が明白であるというときに初めてやるのだ、こういうことになれば、こんな法律は要りませんよ。疾病ということがはっきりしておれば、みな健康保険でできるのですからね。だからそういうことになればこの法律はわれわれは通しませんよ。そういう趣旨法律ならば、もう病気が明白なときだけしか養育医療なんかできないというならば、この法律がなくとも同じです。健康保険でみなできますよ。足りないときは生活保護でいったらよい。わざわざこういうものをやるからには、これは日本の乳幼児の死亡率の三分の一を占めておるこの未熟児というものを救うためにこれを作っておるのですよ。今の館林さんのような健康保険当局の見解と社会局なり、児童局の見解というものはいつも食い違うのです。もう一つ問題をあとで出しますがね。だから問題がある。少くともこれは乳幼児の死亡を未然に防ぐということが立法趣旨でできておるのだが、実際は児童局長の言われるように、まず健康保険でごらんなさい、こういうことになれば、健康保険は見ないですよ。今のような状態ですから見ない。見ないということになりますとこれは処置ない。だからまず健康保険でやれということになると、はっきりした病気の者だけしか救えないということになる。はっきりした病気の者はこの法律で救わなくても健康保険で救えるのですよ。だからこれはもう少し明白にしてらわないと、そこらあたりが非常に問題だと私は思う。そこで今度は医療機関がその養育医療をやった場合にどういうことになるかというと、全部健康保険と同じですよ。これは診療録を全部いって調べますよ。出した請求書は基金に対して健康保険の診療報酬に基いて出すのですよ。怪しいと思ったらそれを全部随時いって調べることができる。そしてこれを調べてみて、これは健康保険のいわゆる治療指針に合っていなければ金は払わないのですよ。だから建前は全部健康保険建前にならっておるのですよ。二十一条関係全部ごらんなさい。これは全部健康保険法律を持ってきて写したのと同じですよ。だから建前健康保険と同じになっておる。うたっておるのはきわめて予防的に、日本の死亡率が非常に高くなったのだ、高くなったのを防ぐには、これはもうこういうものを作らなければいかぬといって、われわれの血税の中から二千五百七十八万九千円を出しておる。そうして一日の見積り額は地区一日六百二十五円です。そうすると六百二十五円を七十日出すという見積りなんですね。そうするとこういうものならば当然健康保険か見なければならぬことになる。これは少し重いものは明らかなんです。ところがその問題と紙一重くらいの二千三百以下の約五、六万のものというものは、こういういい法律ができたならば、少し疑いがあれば必ずみんな見てもらいますよ。その疑いのあるところを見てやる、救い上げて乳幼児の死亡率の低減の大きなてこ入れができるところに、この法律のねらいがある。ところがそういうものはだめだということになると処置ない。だから一体健康保険でどの程度見るのかという見解を保険局と社会局でもう少しはっきり打ち合せなければいかぬですよ。その点、この法律を出すときに打ち合したのですか。
  137. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 だんだんお話のありました点、十分御理解いただいた上での御質問だとは思いますけれども、この未熟児対策としてのいわゆる養育医療というものはその一つでございまして、そのほかに家庭における養育の、いわゆる保健指導という面が相当のウエートを占めていることは、言うまでもない次第でございます。それから数の上から申しましても、二千五百グラムあるいは二千三百グラム以下のうちには、そういったむしろどちらかというと、未熟児の中でも目方の重い方が数としては相当重きを占めていることは、これは数字によって御承知の通りでございます。そういう意味でこの養育医療の対象といたしておりますのは、大体見当として千八百グラム以下のうちの一部分、そういうふうに考えておるわけであります。もちろんこれは出発当初でございますから、医療機関その他の整備等も関連をして今後改善をしていかなければならない点も多々あろうかと思いますけれども、一応この法律の体系としてもそういうふうな考え方であるということを御承知おきいただきたいと思いますと同時に、この養育医療にかける場合におきましては、やはりこれは一応行政機関がタッチするわけでございます。自動的に参つるわけでもございませんので、その辺もお含みおきいただきたいと思います。
  138. 滝井義高

    滝井委員 今の児童局長さんの御答弁では、千八百グラム未満だ、千八百グラム未満で一万人ちょっとこえるのですね。実際に予算では一割しか計上してない。千二百九十五人、ですか、一割ちょっとです。そうすると、あと八千人ばかりのものは当然千八百グラム以下ということになると、これはみんな医者の手にかかりますよ。われわれの過去の経験から考えてみても、ほとんど医者の手にかかります。まず健康保険は皆保険になるのですから、われわれは医療問題を論ずるときにはすでに皆保険の姿を頭に置いて論議しなければうそなんです。皆保険になった場合は、保険局がそれを認めなかったら、あなたの方にみんないくのです。ところがあなたの方はまず保険局でみんなやれという見解なんでしょう。ところが保険局は今までの健康保険の診療報酬の点数表を見ても養育医療なんという概念がない。だから新しい法律を作られる場合には、やはり医療において一番大事なのは健康保険の点数表ですから、この点数表で一体どういうことになるのだということを考えていただかなければならない。ところがそれを考えずに、ただ千八百グラム以下を対象にしますという。実際において一万人の予算を計上してくれておれば問題はない。ところがそうじゃないのですから、ほとんど大部分のものはまず健康保険にいくのだということです。ところが健康保険はそういうものは明白な疾病状態がなければだめであります。こうなりますと、疾病状態というものは未熟児については非常に不安定なんで症状が明白に現われてこない。非常に動揺が激しいものだ。動揺が激しいものだとするならば、必ずお母さんが入院しているその産院でやっぱりこの申請をしよう、こういうことになるのです。そうすると、産院は私の方は十日間でございます、そうして一日につき二点だけあげましょう、こういうことになったら、医者は一生懸命になってやりません。だから、それならばここに健康保険の点数表を変えて、この五十点の半分くらいの二十五点をやる、こういうことになると、これは話がわかってくる。十日間でも二十五点をやるということになれば話がわかってくる。ところがこの二点はそのままにしておる。ところが一方においては五十点と、こうおっしゃる。そこに矛盾があるわけなんです。私はどうしてこういうことを申すかというと、もう一つそういう点をもう少し連絡してもらわなければいかぬが、最近矢野という社会局の技官が京都に生活保護の監査に行っています。多分一月の中ごろか、二月の初めかと思いますが、行っておる。そうして薬価基準に注射液は登載されている。しかし散薬というものは登載されていない。ところが、そういう薬はもはや注射薬が出ているので、保険局の側、すなわち保険課とそれから基金の審査委員会はこれをよろしいと認めたわけです。ところが今度は社会局の矢野という人がやってきて、審査をして全部削っちゃった。そうして金を返せということになった。散薬は薬価基準に載っておらぬからだめだ。健康保険は認めるかもしれないけれども、社会局の方は断じて認めませんということで、金を返せということになった。次回の請求金の中から過誤として差し引いてしまえ、こういう指令で帰っちゃった。そうすると、同じ医療ですが、すべて生活保護は健康保険の診療報酬によっています。そうすると、社会局の見解と保険局の見解が違ってきたわけです。ちょうどそれと同じですよ。ここで今言ったように館林さんの方はきわめて消極的、片一方は乳幼児の死亡を減らさなければならぬというので健康保険でまずやってもらえ、こういうことになると、やった医者と、そうしてそれを、受けたその赤ちゃんのお母さんなり、お父さんなりというものは一番ばかを見ることになる。国がしてくれるだろうと期待をしたら、やってくれない。してくれるだろうと期待した請求書が削られた。そうしてその上に審査にかけられて、指定医療機関を取り消される。こういう事態が起る。すでにノブロンという薬で起ってきた。ノブロンというのはウィンタミンとグレランが入っておる。ところがノブロンというのは、たとえばウィンタミンとグレランを二つ買ってきて投薬するよりか、ノブロンにはこの二つが入っているのだから、これの方が経済的にはるかに安い。ところがはるかに経済的に安いにもかかわらず、しゃくし定木にそれが薬価基準に載っておらぬからだめだということで、保険が認めておるにもかかわらず、社会局が認めないという、こういうしゃくし定木の行政つが末端に行くと行われておる。だから私はこういうことを心配するわけです。これは私きょう通したいと思ったのだけれども、どうもあなた方の間に見解の一致を見ていません。一番大事な指定医療機関診療報酬の請求の状態その他について意見の一致を見ていないようでありますから、一ぺん今の問題とあわせて一つあすの冒頭にやって下さい。保険局保険局の養育医療に対する見解、どの点まで保険局は認めますということをもう少し局長とも相談をされて、明白な御答弁をいただきたいと思うのです。それから今言った社会局と保険局との見解の統一、薬価基準に載らなかったということで、保険局は認めたにもかかわらず社会局が生活保護で認めなかった、こういうこと。これもすぐ起ってくる問題ですから、その二つをあすの冒頭にわれわれの納得のいくような姿で統一見解でやっておいてもらいたいと思うのです。
  139. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 別に両局の間に食い違いはないわけでございまして、私どもの方としては保険局で、いわゆる保険で従来やっておりましたその現状の上にこれを積み重ねる、そういうことになるわけでございまして、それはもう未熟児対策がこの法律でこれほど進むならば、保険の方もむしろこれと同じようにしたらどうかという意見があるかと思いますが、それはそれとして将来の問題として、あるいは検討し、あるいはこれに相応した措置をとるということはあり得ることかと思いますけれども、一応現状としては、従来やっておりました上にこれを積み上げていくということで、私は別に不都合はないと思います。問題は、しからぱこの予算で足るか足らぬかという問題が出て参ると思いますけれども、これに正該当します医療機関の現状、それから未熟児対策全般についての世上の理解ということとにらみ合せまして、暫定的にこういうふうな入院率を見たわけでございますので、この辺は今後の問題として、予算の増額あるいはこの法律の適用の範囲の拡大ということについては、努力をしていくべきものだと思っておりますし、そういたしたいと考えておるのでございます。  それからこの法律が、できたために、未熟児の問題について、過当な誤解に基いていろいろ迷惑する面があり得るのではないか。これはそういう面もあるいはあり得るかと思いますけれども、しかしこの法律のやり方その他については、十分徹底をしていくように私たちも努力をしていかなければならぬと思いますし、末端にもそういうことで指導いたしたいと思います。そういうことでございまして、両局の間に根本的に意見の扞格を来たしているというようなことは、別にないわけでございますから、これで十分実施ができるものと思うし、またこの未熟児対策が発足して相当の成績をあげ得るものと、私どもとしては確信をしておることを御了承願いたいと思います。
  140. 滝井義高

    滝井委員 私は法律そのものはいいと思うのです。問題は、さいぜんあなたの御発言にありました通り、まず保険でやれということなんです。建前は初めからこれでやることにはなっていない。本人が負担できれば、本人が負担しなさいということは、まず保険を持っている者は保険でやってこい、こういうことなんです。ところが一体発汗機能が少し異常があるとか、脂肪消化がちょっと悪いということを保険で認めるかというと、赤ちゃんの問題になりますと、絶対認めないのですよ。しかも一日五十点ですからね。局長御存じの通り、一件当りの疾病の平均点数は六十点かそこそこです。ところが七十日間にわたって、とにかく一日五十点ずつ認めるというのは相当濃厚治療です。濃厚治療をやらなければ赤ちゃんは育たないのだから。そうしますと、それは非常に重い方です。ところが軽い場合というものがたくさんあるということです。重い場合の方は手を入れるから死亡率は下ってくるが、軽い場合も、手を入れればなお死亡率が下るということです。だから、軽い場合というものを保険で見ろと言っても見ないだろう。それを保険局が認めるといえば、私どもは大歓迎です。そこらあたりの見解をもう少しはっきりしておかぬといかぬと思います。私がノブロンという薬で言っているように、すでに一月の二十七日か何かに起った問題です。一月か二月に京都で現実に起った問題です。あしたどうせ日雇い健保がありますから、社会局長と保険局長、それから矢野さんも来てもらって、その実情を聞かしてもらいたいと思います。こういうことが起っておることは、これでも起るということなんです。しかも、これは厳重に医療機関に対する手かせ足かせがなければ問題はありません。一々診療録を調べ、随時審査することができることになっているのですからね。こういうように厳重な取締り規定を作ってやる医療ですから、その前に、やはり保険局の一応の公式見解というものを聞かしてもらっておかないと、あとになって、どうもあれはあんなことはなかったがと言うてもおそいということです。だから法案が通る前に、一つ保険局の公式見解を、未熟児に対してはどの程度の治療をするのだ、どういう方針だという治療指針を——保険局は治療指針を出すのが得意ですから、未熟児に対する治療指針というものを、ここできちっと解釈して御説明願えれば納得がいくと思うのです。未熟児の治療指針というのはこういうものだ、これなら健康保険をやっても削られませんというものがあれば、今でもかまいませんからお出しいただきたい。
  141. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 この法律によりまして、指定医療機関にかかる場合におきましては、一応その問、いわゆる児童福祉法でいえば、措置的な行政行為が介入するわけでございますから、勝手に指定医療機関にかかった、それであとだめだということで、指定医療機関が監査を受けてどうのこうのということは、これは保険の場合とは相当径庭があるのじゃないかと私は思います。これが第一です。  それから第二は、今お話のように、千八百グラム以下のうちの一部分をこの養育医療にかける、むしろそれ以上のものについても、それ相当の養育医療類似のことをやることが、この末熟児対策として、いわゆる配備した姿になるということは、これは考えられると思います。考えられると思いますが、一応とにかく発足としましては、先ほど来申し上げておりますように、それより以上のものは、いわゆる保健指導で参る、そういうふうな考え方をとっているわけでございまして、この辺は将来の未熟児対策全般の問題として——これは未熟児対策自体が、ここで初めて対策として発足するわけでございまして、いろいろ未熟な点もあろうと思いますが、その辺は今後の問題として、一つこの対策の完備をはかっていかなければならないと思います。範囲につきましては、私どもの方としては、いわゆる保険が現状において行なっておりますこと、この上に立ってこの制度を積み上げていくわけでございますから、この制度を実施するために、保険が現在やっておりますことに特別変改を加えるとか、あるいはこれをネグレクトするとか、そういうことでないことを、御了承いただきたいと思います。  それから、こちらの方で養育医療の内容として考えられることは、先ほども申し上げたと思いますが、入院料がその一つであります。そのほかに保育器の使用料、あるいは強制栄養でありますとか、あるいは酸素の使用でありますとか、あるいは注射でありますとか、内服でありますとか、措置でありますとか、検査でありますとか、いろいろな医療関係行為が当然入ってくるわけでございまして、この点については、現在保険で行なっておりますものと径庭はないものと心得ているわけでございます。そういうわけで、この問題を契機にして、保険についての考え方をこの際改める云々ということでありますと、これはお話のように、いろいろ考慮すべき問題があろうと思いますが、一応現状を一つのベースとして発足するわけでございますから、それはそれとして一つ御了承いただきたいと思います。
  142. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一つだけもう少し具体的に。この養育医療というのは、入院だけしか認めないのですか。
  143. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 養育医療は、在宅のままで養育医療を給付するということは、一応原則的には考えておりませんで、これは法律に書いてありますように、「養育のため病院又は診療所に収容することを必要とする未熟児に対し」、云々、そういうふうなものを対象として行うわけでございまして、入院の一つの手段として多少在宅の者が入ることは当然考えられますけれども、入院を全然考えないで在宅のままでの養育医療を給付するということは、一応この法律としては考えておらないわけです。
  144. 滝井義高

    滝井委員 そうするとますます法律の欠陥があるのです。その前の条項をお読みになると、「養育上必要があると認めるときは、医師、保健婦、助産婦又はその他の職員をして」未熟児の指導に当らせるわけです。そうすると保健所にそういうところまでやれる医者がいないところはざらです。そうしますと普通の開業医が指導に行きます。養育上必要なりということは、これは病気じゃないから健康保険では毎週指導にいくことは認めないですよ。だから養育上ということと、療養上ということと、治療上ということとは健康保険では三つがみな明らかに違うのです。療養上というときには注射や投薬をやらないときに初めて指導上と認める。だから新しい概念として養育上という言葉が出てきた。ところが養育の場会合には入院だけだということになりますと、二十一条の三というものは保健所の職員がいく以外にはできぬということになるわけです。そうするとこの法律には大きな欠陥が出てくるのです。養育医療だったら、軽い者も、この二十一条の三に該当する者も入院しなければできないんだからみんな入院しますよ。入院するとますます健康保健との関係が問題になってくる。健康保険はあなたの言われるように現状でやっているというのは何かというと、二点だけ一律に十日以内にくれるだけです。そうすると、厚生省の予算要求額事項別調に書いてある未熟児養育指導費一日五十点、七十日内というのは、一体どういう根拠から出たかということです。五十点という根拠健康保険の基礎があるから五十点ということになっている。健康保険は現状はこういうことをやっていない、ですよ。入院の項をごらんになると、お母さんが入院して子供が生まれる、そうすると子供は「沐浴其ノ他ノ介補ヲ為シタル場合ハ新生児介補料トシテ一日ニ付二点ヲ加フ但シ生後十日以内」と書いてある。これ以外は健康保険には規定はないのです。法律上明確な規定が出ているのはそれだけです。そうしますと、今言ったように二十一条の三というものは、医者は指導に行くけれども、それは保健所以外の医者は認めないということになると、医者は保健所の医者だけではないのです。法律で医者と書くからには病院の医者であろうと、私的医療機関の医者であろうと医者です。そうするとこの人たちが行っても金をもらえない、健康保険の対象にならぬと言われれば本人が出さなければならぬ。そうすると本人はそういうことをやらぬですよ。二十一条のそこらあたりは非常に重大なところなんですから、あすもう少し冒頭に保険局と児童局との見解を統一をして明白にしていただきたい。きょうそれが明白になれば採決をしてもらいたいと思っておったのですけれども、あす済みませんが、緊急上程してもらえませんか。
  145. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
  146. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて。  他に御質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますから、これにて質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入るのでありますが、別に通告もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  147. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  148. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  次会は、明日木曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十四分散会      ————◇—————