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1958-02-27 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)     午前十時三十六分間議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       倉石 忠雄君    小林  郁君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    堂森 芳夫君       中原 健次君    長谷川 保君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     山本 正淑君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (公衆衛星局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (児童局長)  高田 造運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     牛丸 義留君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員亀山孝一君及び勝間田清一辞任につき、  その補欠として北澤直吉君及び岡良一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員北澤直吉辞任につき、その補欠として亀  山孝一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十二日  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第九五号) 同月二十六日  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号) 二月二十二日  失業対策業等に関する請願井堀繁雄君紹  介)(第一〇三〇号)  同(坂本泰良紹介)(第一〇三一号)  同(山花秀雄紹介)(第一〇三二号)  衛生検査技術者身分法制定に関する請願外一  件(安藤覺紹介)(第一〇三三号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第一〇三四号)  同(椎名隆紹介)(第一〇三五号)  同外一件(門司亮紹介)(第一〇三六号)  同外一件(長谷川保紹介)(第一〇三七号)  同(小泉純也君紹介)(第一〇六三号)  国立療養所給食費増額及び看護力充実に関す  る請願長谷川保紹介)(第一〇三八号)  養老年金支給に関する請願周東英雄紹介)  (第一〇三九号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (松澤雄藏紹介)(第一〇四〇号)  同(黒金泰美紹介)(第一〇四一号)  同(中川俊思君紹介)(第一〇六五号)  同(高橋禎一紹介)(第一〇八六号)  同(二階堂進紹介)(第一〇八七号)  同(上林山榮吉紹介)(第一一〇八号)  同(保利茂紹介)(第一一三四号)  同(池田清志紹介)(第一一三五号)  同(河本敏夫紹介)(第一一三六号)  同外一件(中馬辰猪紹介)(第一一三七号)  同(灘尾弘吉紹介)(第一一三八号)  同(山本粂吉紹介)(第一一三九号)  国立病院等の医師の待遇改善に関する請願(小  川半次紹介)(第一〇六二号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (渡海元三郎紹介)(第一〇六四号)  同(永田亮一紹介)(第一一〇九号)  職業訓練制度確立に関する請願三浦一雄君紹  介)(第一〇六六号)  同(石坂繁紹介)(第一一〇七号)  同(大橋武夫紹介)(第一一四三号)  同(川村継義君紹)(第一一四四号)  同(五島虎雄紹介)(第一一四五号)  同(河本敏夫紹介)(第一一四六号)  同(山本猛夫紹介)(第一一四七号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願  (高岡大輔紹介)(第一〇六七号)  同(亘四郎紹介)(第一〇六八号)  日雇労働者健旗保険法の一部改正に関する請願  (高岡大輔紹介)(第一〇六九号)  同(渡邊良夫紹介)(第一〇七〇号)  同(亘四郎紹介)(第一〇七一号)  国民年金制度創設に関関する請願藤本捨助君  紹介)(第一〇七二号)  里帰り婦女子処遇改善に関する請願二階堂  進君紹介)(第一〇八八号)  国民健康保険財政確立等に関する請願中馬  辰猪紹介)(第一〇八九号) の審査を本委員会に付託された。 二月二十五日  災害救助法の一部改正等に関する陳情書  (第四一七号)  国民保険制度確立に関する陳情書  (第四一八号)  同(第四八  七号)  精神薄弱者保護更生対策に関する陳情書  (第四一九号)  工場及び事業場の煙害、汚水等の防止に関する  陳情書(第四二〇  号)  結核回復者保護施設運営費補助率引上げに関  する陳情書(第四二  一号)  身体障害年金制度早期設定等に関する陳情書外  二件  (第四二四号)  診療報酬一点単価引上げに関する陳情書  (第四二五号)  韓国抑留船員及び留守家族に対する援護措置に  関する陳情書(第  四二六号)  大阪に労災病院設置に関する陳情書  (第四二八号)  同  (第四九〇号)  薬事法の一部改正に関する陳情書  (第  四二九号)  病理細菌技師法制定に関する陳情書  (第四三一号)  結核健康診断費等全額国庫負担に関する陳情  書  (第四三二号)  老齢年金制度早期実現に関する陳情書  (第四六三号)  生活保護法に基く事務町村移管に関する陳情  書(第四八四号)  診療報酬単価引上げ等に関する陳情書  (第四八五号)  健康診断費全額国庫負担等に関する陳情書  (第四八六号)  下水道、都市水利事業促進に関する陳情書外五  件(第  四八八号)  国民健康保険事業強化等に関する陳情書)  (第四八九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  厚生行政一般について、厚生大臣に対する質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 先般予算委員会大臣にいろいろ御質問をしたいと思いましたが、ちょうど大臣御病気のためにできませんでしたので、予算委員会ではきわめて表面的な御質問しかできませんでした。従ってきょうは少し掘り下げた、直接責任の立場にある大臣からいろいろお聞かせを願いたいと思います。  まず総論的なことで先日山下先生堂森さんや、田子先生がいろいろ御質問いたしましたが、それと重複することは全部省きまして、残っているところで、大臣が就任されましてから自分一つ悲願として医療保障基礎的条件をぜひ実現をしていきたい、こういうことを所信の表明をいただいたわけですが、率直に一つ大臣基礎的条件のまず第一は皆保険をやっていく、これに対して具体的にどういうことを今度の予算であなたはおやりになろうとしているのか、これをまず一つ。それから同時に皆保険をやっていくためには医療費改訂を当然やらなきゃならぬ、こういうことをおっしゃった。それから同時に無医地区解消をはかっていく。それから三番目に結核対策、あるいはその予防対策を拡充強化していくんだという、こういう点をはっきり言われたわけです。それからいま一つは、少くとも皆保険をやっていくためには地方財政を圧迫しない国庫負担最少限の要求をやるんだ、こういうことを同時に仰せられた。これに対してどういう工合予算の上では具現をしてきたのか、これは本会議でも、今度の国民健康保険予算は断じて地方財政に御迷惑をかけない程度に取れたということを言われた、たぶん二月一日か二日の本会議だったと思いますが。それからもう一つあなたがやはり言われたことは、厚生行政末端機構の弱いところを整備していく――あるいは言われたことを忘れていらっしゃるかと思うのですが、私は全部書いているんですが、そういう三つの重要なことを言われて、皆保険のためには医療費と無医地区結核予防対策、こういうことを言っているのですが、一、二、三と今私が言ったことを要約して大臣から、予算に具体的に現われたところのこまかいことは要りません、一つ大ざっぱにこういう点はこうなっているということで御説明願いたいと思います。
  4. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 医療保障の問題を解決したい、国民保険を進めていく上においてどうしてもこの問題について従来よりも積極的にかつよりよいやり方に入りたい、こういうことを申し上げましたことは確かでございます。その中で今五項目にわたってお取り上げになっておりますが、これにつきましても同様に私自身も、この五項目について努力をいたしたい、かく考えたのでございます。医療費改訂につきましては、御承知通りの八・五%の医療費改訂というものを、年度始めからいたしたいという考え方でございましたが、今回の予算編成に当って、下期からこれを実施するように予算を計上いたしましたような次第でございます。  それから無医地区解消という問題は、全国に三百近い無医地区と称せられるものがございますので、これらについて解消年次計画を立て、そして国民保険の完成とあわせていたしたいというふうに考えたのであります。無医地区解消につきましては二つの方面から解決をしなければならない。一つは何と申しますか、医療体系の一環として基幹病院整備、それから無医地区自体に対する医療機関設置というふうなものを解決いたしたいと思ったのであります。これも最初考えておりましたほど完全に予算上計上することができませんでしたが、公的医療機関整備として、予算は全体としては少いのでありますが、従来よりは率としてはかなり多いものを獲得することができたと思います。  結核対策につきましては、問題が具体的の解決に当ります場合に非常にむずかしい問題になりまして、結局従来のやり方というものに対して一歩を進めるといいますか、数歩を進めると申しますか、ともかくも健康診断及び予防接種それから医療費等につきまして、従来のやり方で問題になっているものを解決するにつきまして、わずか十億足らずの予算を計上するというふうになったわけであります。  地方財政との調整につきましては、御承知通りどうしても医療給付の二割というものを各市町村に確保いたしまして、さらにその上積みといたしまして五分の財政調整交付金を計上いたしたいということで、予算を編成いたしましたような次第でございます。従来の二割を医療療養給付に持っておりますと、二割を欠ける場所が非常に出て参るというふうな情勢調整いたしたいということ、すなわち五分の範囲内において、調整交付金によって市町村財政との調整をはかりたい。さらに事務費実費を償っていないという情勢にかんがみまして、三十一年度、三十二年度、三十三年度にわたって、実費に近いものを計上するというふうな情勢で、御承知通り一人当り九十円というものを実施することができたというふうな点で、まあまあ現在の情勢から見ますると、これでもって地方財政に対して国保の進展に伴って、地方財政にしわ寄せをより大きくするような状態にならない。いなむしろある程度地方財政に寄与することができるのじゃなかろうか、こういうように考えました次第であります。  なお厚生行政現場機関、特にあげました保健所強化というふうな問題につきまして、私どもといたしましては、この問題の強化に当りたいということに考えたのでありますが、補助率引き上上げという問題につきましては、今度の予算編成上全般的に補助率の引き上げを前年以上に認めないという方針を立てましたために、保健所現場機構整備という点が、私どもの所期の目的を達成いたさなかった。ただ結核対策の中で、御承知通りの、従来保健所が非常に手薄い定員の上に、さらに結核対策に多くの手数を必要としている、ことに予防面におきまして非常に手数がかかっておる、今回京神阪というものにあわせて人員というものをつけまして、この点が整備いたされますると、結核対策の従来やっておりましたような点が、実施上相当強化されるというふうに考えておるような次第であります。  概略ただいま申し上げた通りに、予算編成上の結果がこうなったということを申し上げたいと思うのであります。
  5. 滝井義高

    滝井委員 大体皆保険基礎的条件整備するための、五つの重大な柱となるべき要件についての、要約的な御説明をいただきました。そこで時間の関係もありますので、今の一番最後の厚生行政末端の問題から先に、一、二質問してみたいと思いますが、すでに保健所が本来の機能を発揮するためには、非常に人的な面において弱点をさらけ出しておることは、もう今に始まったことではない。私は厚生行政末端整備するための保健所のことをすでに何回も問題にしたので、きょうは問題にしたくありません。私が厚生行政末端強化する問題を特に取り上げなければならないのは、現在の府県における衛生部というものの姿が、一体どういう状態になりつつあると大臣はお考えになっておるかということです。都道府県の中ですでに衛生部というものがなくなりつつあるところが出てきておるということなんですね。一体こういう末端行政の、少くともセンターになる――ちょうどわれわれが病院の配置をやる場合に、基幹病院というものが必要であるように、少くとも末端行政をやるためには、末端行政中心というものがなければならぬです。一体大臣都道府県衛生部というものがどういう姿になりつつあるとお考えになっておりますか。
  6. 山口正義

    山口(正)政府委員 地方衛生行政機構として、府県昭和二十一年十一月にまず十県に衛生部独立しました。翌年に全部の県に衛生部設置せられたのでありますが、それが数年続いておりましたが、その後地方財政がいろいろ窮迫してくるという状態が起って参りまして、地方でいろいろ地方財政とからんで機構改革を行う。一方地方自治法におきまして、人口百万以下のところは四部制が基準になるというようなこともございまして、全部の府県にございました衛生部が、その機構改革の際に衛生民生と一緒にして厚生部にする。あるいは衛生部民生、それに労働部もつけるというようなことで、まず人口の少いところからそういう機構改革が行われたのでございまして、地方財政との問題もございますので、私ども厚生省としてはできるだけ衛生行政を主管する部の独立ということを主張して参ったのでございますが、全般的な見合いでそういう一部の県が機構の統合を行なったわけでございますが、その後各府県赤字財政が非常に多くなって参りまして、再建整備というようなことも行われるようになって参ったので、その際に地方財政立場からできるだけ機構を整理していきたいということで、現在大体二十一県くらいのところで衛生部独立せずに、衛生民生、あるいは衛生民生労働というようなところが統合された組織になっているわけでございます。そういうことは、機構のために行政をどうこうということは直接ないというふうなことは、二部ではいわれるのでございますけれども、やはりこういう特別な技術行政を伸ばしていくというためには、機構を確立しておくということが、どうしても必要でございますので、私どもとしましては、事情が許す限り、それの復活をしてほしいということを主張しているわけでございまして、経過的には一部統合されたところがまた独立をした。がしかし、その後財政の都合でまた統合されたというようなところもございます。今後は全般的な財政状態ともにらみ合せて、やはり末端と申しますか、府県における行政機構整備という際には、衛生行政というような特殊性を持った行政につきましては、機構独立して強化してやっていくということが、とりもなおさずその行政を伸展さしていくのに非常にプラスになるというふうに考えますので、関係の庁とも相談し、また地方の県知事とも、財政当局とも相談しながら、できるだけ衛生部というものの機構を確立させるように努力をして参りたい、そういうふうに考えております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今お聞きの通りでございます。こういう現象の起り始めたのは今に始ったことではありません。すでに川崎君が厚生大臣のときにこういう現象が起り始めた。そこで私は、少くとも厚生省ほんとう厚生行政をやっていこうとするなら、やはり末端行政というものから積み上げていかなければ、幾ら中央で大きいことばかりいったって、地方には侵透しない。だからこれは大へんな事態が起りつつあるということを、私はここで川崎君に警告した。当時川崎君はこれはやはり重要な問題だから十分閣議で話して、そういうことがないように努力をするという言明があったはずです。ところが実際に厚生当局はその後どういう努力をしたかしれませんが、当時は多分岩手かどこか、一、二県がそういう情勢が出てきたときだったと思います。四県くらいだったと記憶します。ところがすでにそれから五倍以上の二十一県にわたって、民生部衛生部、あるいは労働部等が合体した一つの姿になりつつあるということです。これでは厚生行政末端整備するといったって、これはお話にならない。こういう点を堀木さん、厚生大臣になられて、末端行政整備することに力を入れると、こうおっしゃったが、末端行政というものは、これは保健所だけが末端ではない。何といっても中心がなければ、こまというものは回らない。心棒があって初めてこまが回る。心棒がだんだん腐って崩壊の過程にあるときに、回そうといったって、これは回らないと思う。そういう意味で、厚生省末端行政というものは、保健所がだんだんやせ細っていく、そしてやせ細りつつある保健所に、今度は市町村単位母子健康センターというものを作って、お茶を濁していくというような形は、これはやはり考えなければならぬと思うのです。だからまずあなたが厚生行政ほんとう整備せられようとするならば、地方財政の問題と、こういう衛生部をなくすという問題とからまってきている。そうすれば、少くとも皆保険をやるためには、地方財政に迷惑の及ばぬような予算を出しているとおっしゃるけれども現実の進行の状態というものは、事務費が六十八円かそこらのものが八十五円になり、八十五円が九十円になっただけで、これは地方財政が完全なものになって衛生関係機構が縮小するなんて考えたら大間違いです。現実府県行政を見てごらんなさい。重心はどこに移っているかというと、民生部に移ってきています。それはことしの予算を見ても、たとえば生活保護の患者がふえている、あるいは健康保険がだんだん皆保険で膨大になってきている。民生部です。その姿は厚生省自体機構を見てもわかる。私はここで言うのは三度目ですが、今の厚生省省機構を見ると、高田保険局長のもとにおける曽田医務課長になっている。今度は小沢医務課長になる。そういう姿です。そうしてそこに皆保険のために働いている、たとえば療養担当者の姿を見ると、もはや衛生部に行く用はない。行くのは保険局ばかりです。一番交渉の多いのは保険局です。医者身分というものはだれが握っているか、衛生部が握っている。つまり医務局が握っている。しかし医者の収入の根源はどこが握っているかというと、民生部が握っている。従って民生部衛生部が合体したときに、一体行政重心はどこに行くか、衛生行政結核予防なんかに行かない。それはやはり生活のかてを得る保険課行政重心が行く、あるいは社会課生活保護のところに重心が行ってしまう。しかも衛生部がそういう形で民生部に合体されれば、衛生部の姿というものはだんだん先細りです。そうなると、もはや予防行政というものは、言っているだけであって、実際は何も行わないということです。こういう根本的な点がすでに厚生行政末端に起っている。そういうことでありますから、末端保険所だけを今の三分の一の補助を二分の一にやりますということだけでは、もはや問題は解決しないところに来ているのです。それで私はこういう地方行政、いわゆる再建整備の問題、十二条とか二十九条の適用団体赤字団体、準赤字団体というものの根本的な問題にメスをと入れなければ、もはや末端衛生行政保健行政もどうにもならぬところに来ている。こういう点を一体大臣はどうお考えになるのかということです。われわれはもっと高遠な年金の問題や皆保険の問題を論じなければならぬが、その基盤になる、そのにない手である末端行政がこういう状態ではどうにもならぬです。この点を一体大臣はどういう工合に推進していくのか。一つ明確にしてもらって、そうしてここで言明したことは厚生省があげて実施に移していく、実践に移していくということでなければいかぬと意う。国会で言明したことが、大臣がかわればもうあしたから変っている。こうなっては困る。同じ自由民主党という保守党の内閣連綿として続いているのだから――連綿という言葉はどうかしらんが、とにかく連綿として続いているのだから、そこらあたりをもう少し大臣、はっきり言って下さい。
  8. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 おっしゃることは、私、全然同感であります。ただ滝井さんに申し上げたいのは、あなたは私が厚生大臣になったときに、お前の在職期間は短かいだろう、一つだけなりとほんとうにやれとおっしゃったことを私は記憶しております。実際のところ、この複雑な厚生行政を担当して、しかも先ほど列挙いたしましたものの一部は、率直に申せば六年来の懸案であり、あるいは数年来の懸案であります。それもあなたが、私が厚生大臣として何をするかということを約束しろとおっしゃったから、お約束して解決に当ってきたつもりであります。前厚生大臣以来その点については私終始一貫してやったつもりであります。ただ率直に出して、厚生行政の上に、私滝井さんのお話にもう少しつけ加えたいと思うのは、最近において衛生行政関係というものが従来に増して重要になってきた。現に厚生省におきましても、公衆衛生局の一部局でありました環境衛生の部を独立して、そうしてこの面についての強化拡充をはからなければ近代国家社会を作っていく上からは欠陥があるというような観点に立っております。そういうなウエートが変って参りましたので、私どもは今おっしゃったような方向に対してできるだけの努力をいたしたいと思っておるのであります。不幸にして経済の調整過程という間に立って、予算を編成しなければならなかったために、自分のふだん抱懐いたしております考え方が必ずしも十分に満足させられることができなかったということは率直に認めざるを得ないと思うのでありますが、今後それらについて十分努力いたしたい。もともと私自身厚生省に参りましてから、どうも本省で考えておるようなことが必ずしも現場に透徹していかないというところにはどこかにウィーク・ポイントがある、一番痛感する部門は御指摘の部門であるというふうに考えますので、今後――滝井さんは大体お前の命は半年だとおっしゃったが、事年以上たちましたから、今後はそういう方面にも努力を傾注していきたいと思っております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 大臣が就任のときに、なるほど私はせいぜい常識的に見て七カ月か八カ月、長い大臣でも一年ちょっとだと言いました。従って大臣は一応平均の寿命は保ったわけです。しかし今の答弁を聞いてみますと、どうも大臣自信がないですね。少くとも大臣自分の任期中にやるただ一つのことは国民保険基礎的条件整備することだとおっしゃった。少くとも主眼をそこに置いてよろしいと思う。しかし基礎的条件整備していくためには、そのまた集礎的条件があることは事実なんで正す。そこで大臣みずから、今から二カ月くらい前のこの委員会で、今私が前に述べたような五つの問題について、ここに三十三年度の予算を編成するに当ってこういう五つのことをやらなければならぬということをおっしゃったわけです。その一つ末端行政強化していく、これについては相当の予算をとりたい、こうおっしゃったわけです。ところがこの点について一体末端行政整備する重点というものの的はどこに置いてやっていくかということを考えてやっていかなければならないと思うんです。ところがその的が保健所整備ということになるとそれは少し的をはずれていなかったかということを言うわけです。少くとも皆保険政策をやっていくためには、やはりその中心になる衛生部なり民生部――というはっきりした的が確立されていなければなかなかできないのですよ。そういう点で私は指摘をしておいた。しかもそれは川崎君の大臣以来の懸案事項であり、閣議においてもそれは断じて阻止するということを若い川崎君は言明をしている。ところがそれ以来まさにその堤防が崩壊をするというような状態で、まるきり二十一もそういう状態になってしまったということは――大臣の寿命は六カ月ですけれども事務当局の命は当時からほとんど同じ人が続いてきているわけだ。そうすると事務当局の補佐が悪かったということになる。だからそういう点はもう少し注意をしてもらわなければならぬ。なるほど大臣厚生大臣に就任をして、厚生行政のあまりにも複雑多岐にわたる点において悲鳴をあげたことは、田子先生が冒頭において指摘をされた通り、てっぺんの頭の髪の毛の問題から終末処理に至るまで、足のつま先の問題までが厚生行政にはからまってきております。それだけに末端行政というものがきちっと整備をされておらなければならぬ。これがすでにいろいろなもののにない手の機構地方財政のために縛られておるとすれば、一体その上に日本の国民の運命を決定するような社会保障の重い荷も負わせることができるかと言えば負わせることはできないですよ。少くともその大きな綱を広げようとすれば網をささえる基盤を強化していかなければならぬと思う。そういう点どうも今の大臣の答弁は落第です。もう少し自信のある末端打政をやるというならして、地方民生部長なり衛生部長というものを正確に把握していかなくちゃ話にならぬと思う。私はこの問題はいずれまたやりますから、もう少し大臣研究してみて下さい。これは何も大臣がただ一つこれはやらなければならぬ問題の中に入れなくても、前の問題の連続なんですから、当然これは並行的にある程度指示をして、そういう問題を阻止するだけのものを押し出していかなければならぬと思う。それだけを注意しておきます。  次には医療費改訂の問題、今まで私たちが大臣からたびたび聞かせてもらっておった点はどういう点であったかというと、少くとも今回厚生省が中央社会保険医療協議会に提示している案というものは、これは厚生省独自の案ではない、あるいは自由民主党そのものの案でもないし、閣議決定の案でもないのだ、これは全く一事務局の試案でございます、こういう形でありました。従っていよいよ答申が出れば必ずしも八・五%にこだわるものではない、それでは大臣、八・五%というものは、自信を持ってやれるかと大臣に迫りました。ところが滝井さん、あなたは出せ出せ出せといって何でもいいから出せというから、私は八・五%のものを出した。ところがそれを出したら、お前は責任を持ってやれるかと詰め寄ってくるのは御無理でございましょう、こういう御答弁だったのでございます。ところが単なる一片の試案にすぎなかったものが今や政治の脚光を浴びて日本の医療の運命を決定することになろうとしている。こういうことならば大臣の今まで言明されていた情勢と少し違ってきた。まずこの点大臣の感想だけを伺って、次に具体的にどういう考えがあるか伺いたいと思います。
  10. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 第一段の衛生部設置問題は研究だとおっしゃるのだから研究をいたします。あなたと約束すると、もうあとが苦しくてしようがありませんから研究にいたしておきます。  それから医療費の問題につきましては、中央社会保険医療協議会には一つの参考案として提出いたしました。むしろあれについてさらに御審議を得て、積極的ないろいろの修正案が出ることを予想しております。しかし私は中央医療協議会におきましては、この問題をやはり土台にして御審議を願ったものだと考えているのであります。ただ中央医療協議会の御答申が非常に全体としてばく然――ばく然といっては申しわけございませんが、具体的に各単価、点数にわたっての御審議の結果を得られなかったということは残念でございましたが、しかし中央医療協議会は御答申を下さいました。その答申に従って当然あの事務局案につきましても、中央医療協議会としてもある程度お考えになったのだということは否定することができない事実だと思います。私ども予算編成に当りましても、中央医療協議会にかけましたあの案によって、さらに具体的には御答申の趣旨に沿って予算を編成いたしましたような次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 大蔵当局は、昨年十二月十二日に出た中央社会保険医療協議会の答申は何のことを言っているか読んでわからぬというのです。わからぬから従ってこれは大蔵原案に出せなかったのだというのが大蔵省の見解ですよ。これは多分あれが出た直後の昨年の十二月十八日の委員会であったと記憶いたしております。当時高田保険局長はどういう見解を表明したかというと、あの医療協議会の答申が行われたあとで、事務当局の見解として、まず第一にあの案からくみ取れるものは点数を合理化しようということがはっきりしたのが一つ、第二はワクを八・五%に拡大しようというのが一つ、第三番目はできる限り国民の負担を軽減する方向において解決しよう、すなわち国庫負担の大幅増額において医療費問題を改訂しよう、こういう三つのことが出ておりますということを言明した。その後委員会事務当局はこういう考え方であるが、大臣もその通りかということを迫ったら、大臣は、それは事務当局の考えで、私はそういう考えではありませんと否定をされたのでございます。私は全部速記を持ってきている。あなたは私と約束されると困るというが、否定をされた。事務当局の考えはそうかも知らぬが、私はそうじゃありませんと言われた。事務当局は当時八・五%を四月一日から実施しますということだった。あなたのあのときの考え事務当局のいうような厳格なものじゃなくて、正直に申し上げてもっと自分は上回ったものを考えているというニュアンスだった。大蔵省の答申案に対する大臣考え方その他を通じて見て、全く保険局長の非常に厳格な線よりかさらに後退をしなければならぬ線というものが出てきたということなんです。一体これに対して大臣はいかなる見解をお持ちなのか。
  12. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 大蔵当局が何と言いましょうと、この問題は厚生大臣の責任においてきめるのであって、大蔵当局は総ワクの予算の編成の上においての責任は持つと思います。しかし個々の具体的内容については厚生大臣の責任においてきめていくべき問題である、こういうふうに考えておるのであります。と同時に中央医療協議会の御答申の方針は、私ども自身ができるだけこれを尊重して参らなければならぬ。予算には、計算の上におきまして半年分として八・五%を計上いたしましたことは数字が示しておる通りでございます。従いまして私どもは八・五%を基準にいたしましてやりたい。ただいま私ども考えておりますことは、なるほど事務当局の一つの試案としてあの問題を中央医療協議会にかけましたが、それらについてこまかい御答申を得られなかったとするならば、実施までにその予算の範囲内においてより完嘩を期するのは当然事務当局のやるべき事柄であるというので、現に事務当局はこの問題についてできるだけの努力をいたしておるはずでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 中央社会保険医療協議会の答申があったのちに、その答申に対する厚生当局の具体的な方針を事務当局から聞いたことは今述べた通りです。合理化をやる、八・五%を四月一日からやります、国民諸君にできるだけ負担をかけないようにして国が大幅の負担をやりますというのが事務当局の答弁だった。当時大臣大臣自身の見解を明らかにしませんでした。あの答申に基く大臣の見解をきょうははっきり一つ公式にここで述べてもらいたい。
  14. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 医療費の合理化をすべしという答申は、日本医師会の代表も入って全会一致をもってきまりました事柄でございます。従いまして合理化がその根底をなすことは私ども当然認めなければならない事柄であると考えております。八・五%の問題は、大体中央医療協議会も八・五%はお認めになったように考えられますし、予算上もこれにおいて編成されておりますので、八・五%のワク内において操作いたしたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。一方国民負担の軽減をできるだけはかるということは、これは当然中央医療協議会の御答申を待つまでもなく、われわれも予算編成努力すべきものであるというふうに考えておりましたので、その点についても私どもできるだけの努力を尽したわけでございます。正式の見解と申せば、それが正式の見解でございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 確認をしておきますが、まず中央社会保険医療協議会の答申に基いて、正式の厚生省の方針は医療費を合理化していく、これが一つ、二番目はワクの拡大を八・五%にする、三番目は予算の範囲内においてできるだけ負担の軽減をやっていくという、要約すればそういうことになるが、一体実施の時期はどういうことになるか。
  16. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 実施の時期は、滝井さんもよく御承知通りに下期から実施いたしたいと思います。
  17. 滝井義高

    滝井委員 下期にも第一・四半期、第二・四半期、第三、第四・四半期といろいろある。いつからですか。
  18. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 下半期から実施いたしたい。
  19. 滝井義高

    滝井委員 頭が悪いので何月からか、月をはっきりしていただきたい。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十月一日から実施をいたしたい予定でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 保険局長に尋ねます。再再にわたって今まで四月一日から実施するということをこの委員会で言明されてきましたが、どういう理由で十月一日に変らなければならなかったか、これをまず先に大臣に言ってもらって、それから一つあなたに事務的に御答弁願いたいと思います。
  22. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これは事務当局に御答弁をお求めになることは私は無理だと思います。私ども予算編成に当ってすべての財源を考慮いたしまして、先ほど政府委員から申し上げましたように、予算編成上所要財源が満一年にわたって獲得することができませんので、下半期からいたしたいということで大蔵当局と打ち合せもした次第でございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 委員会の言明はお互いに速記録をとって、それを基礎にしていろいろ仕事をやっていっているわけです。それならば四月一日から実施するとかいうようなことを言わずに、医療費を上げたい、しかし予算編成の問題があるので実施の時期は不明でございます、こういう答弁をするのが親心というものだ。われわれは一月一日から実施してもらいたいという考え方だった。ところがそれは無理だ、四月一日からということを今まで言ったのですよ。少くとも一国の大臣が四月一日から実施いたしますと言ったものが、いつの間にかずるずると十月一日に変ってしまったということでは、政治責任がはっきりしない。皆保険政策をやろうという自由民主党の重大な一つの政策スローガンですよ。そういう大きな公約を掲げておりながらそれが十月一日になってしまった。与党の諸君は、昨年三月三十一日に健康保険が通るときには、その法案に附帯決議までつけておるのです。しかも健康保険には低率の国庫負担をやりなさいと言った。低率の国庫負担だ。ところが三十億さえ削られておるというのではないか。低率の国庫負担をやれやれ、医師の持越改善をやれやれということを附帯決議までおつけになった。その与党を基盤にしておる政党内閣大臣ですよ。それが今になって、どうも予算がとれませんでしたから十月一日というのは何事ですか。予算はだされが作るのですか。政党内閣ですよ。政党自身が作るのではないですか。与党が附帯決議をつけて、大臣が四月一日からやりますと言明しておいて、それが十月一日に処ばさなければならぬという政党政治がありますか。ほんとうに一国の政治を責任をもって行う大政党ならば、こういうことを明白にしなければならぬのですよ。もしそれができなければ大臣はなぜ辞表を出さないか。(「その通り」)私はきょうは真剣ですよ。あいまいもこの形でこういう点が委員会で討議をせられているところに、日本の政治は問題がある。だから少くとも言明したことは実施してもらうだけの情熱と政治的責任がなければならぬと思う。まだあなたには政治的責任はたくさんありますよ。あなたは四月一日からやると言ってここで言明しており、与党の諸君も附帯決議をつけておる。ここにおられる方もみなつけた一人だ。附帯決議をつけて、そのときには、何というか、野党を見下しながら法案を通していった与党の諸君じゃありませんか。だからこれだけでもあなたは不信任ですよ。だから、この点をもう少しわれわれに納得のいくような工合に――局長も言明をした、大臣も言明をした、与党も附帯決議をつけて健康保険を通したものが、それからわずかに一年もたたない現在、まるっきり手の裏を返すような工合にやっていくといつうことは私は許されぬと思う。だから今後、もし大臣がここで言ったことが手の裏を返すようりにしょっちゅう変るというのなら、われわれは速記も何も要らぬですよ。委員会を開く必要もない。少くとも委員会国民の血税を歳費としてもらってひまを費してここにお互いが出てきて、たくさんの局長さんが出てきてやっておるのに、そういう姿は許されぬと思うのです。だからその納得のいくような理由を国民の前にまず明白にしてもらいたいと思うのです。
  24. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 四月一日から実施をいたしたいと考えておりましたことは事実でございます。今その点について問題があるのですが、滝井さんに私は申し上げたいのだがこの問題は六年間解決しなかった問題です。私がともかくも渾身の努力を払って解決に当って、それが全体の前提になる日本経済の情勢が変っている場合に、半年おくれたからといってお責めになることは当然だと思いますが、私は全力を尽してその実現に当ったことは事実です。ともかくも三十三年度予算に、半年分でありますがこれを計上することが、私どもとして全体をながめて――予算の場合にはあえて申し上げるまでもなく全体の調整でございます。必ずしも部分的な問題だけを考えるわけにいかないという立場に立ちますときに、そういう問題が起ることもあり得ることはお考え願いたいと思うのであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 四月一日が十月一日から実施されることに変った主たる理由は、日本経済の変化だけに求められたのですが、私はそれだけでは納得がいきません。これは議員諸君みんなお聞きだが、日本経済が変っただけで四月一日が十月一日になるという、そんな子供だましの答弁ではだめなんです。もう少しはっきりわかるようにやらなければいかぬ。そのために私は予算委員会ではっきり指摘している。日本の潜水艦の建造状態を見てごらんなさい。日本の防衛庁の経費は幾ら余っておるか、繰り越しが五百億をこえておるじゃないか。そういうことをほおかむりしておいて、わずかに百億か百五十億の金を出せば解決する問題をほおかむりしてきておるというのが今のあなたの政党の実態じゃないですか。なぜ防衛庁の経費に勇気を持ってメスを加えませんか。何回私はあの問題を指摘しましたか。五百億をこえる金が使い切れずに残っておりながら、わずかに五十億か百億の金さえも日本経済で出せないということは絶対にないのです。しかしあなたが日本経済というのなら私は承わっておきます。日本経済でそうなっておるのでしょう  次には、今あなたの言明の中にありましたが、三十三年度の予算で半年分を計上した、こうおつしゃいました。今まであなた方は八・五%のワクを拡大するためには二百十七億の金が要ります、こう言ったのですよ。八・五%の金は一円程度である、その場合に、二百十七億の金が要る場合に、一体国は一年分で幾ら負担するのだという質問に対しては、八十四億要ります、八十四億負担せしめる方針であります、こう言った。そうしますと、八十四億が一年分であるならば、単価八・五%を改訂するためには半年分ならば四十三億要りますが、四十二億がどこにあるか、一つ御説明願いたい。
  26. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 こまかい健康保険その他にわたります数字ですから、政府委員から答弁させます。
  27. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二百十七億ということは、あのときも申し上げましたように概算でございまして、その後若干の数字の出入りがこれはありますということを申し上げたのでありますが、その点は相当な出入りがございました。結局全体的に見ますると二百十億余りと見当をつけております。これは、引き上げをいたしました場合に、医療費の総ワクといいますか、社会医療費の総ワクが広がる額でございます。それに対して国がどういうふうな援助をいたすかという問題でございますが、私たちは、八十億余りの援助を受けたいという欲求を、持っておったのでございます。その額が半年分になると四十二億になるはずじゃないかという仰せでございますが、それはまさしく、その八十四億というものを頭に置いて考えますればそういうことになるわけでございます。ところが、その国の援助というものは御存じのように各保険財政的な強弱に関係があるわけでございまして、私どもといたしましては、当時その程度の援助を受くることによって、各保険、各制度の財政的な強さの万全を期して参りたい、こういうふうな考え方をいたしておったのでございます。ところが、その後の経緯や実績等をいろいろ検討いたしますることによって、各保険の強さというものはもう少し強いものがある。顕著な例をあげますると、政府管掌などでございますが、それらが、当時、昨年の夏ごろ私どもが見込みましたものよりは、その後の実績の検討の結果財政状態が非常によろしい、そういうふうなことがだんだんと判明をいたして参りましたので、従ってそこに一つ保険財政という弾力があるわけでございまするので、それらの検討によりまして、さほどなてこ入れをいたさなくても十分医療費の値上げというものはこなしていける、こういうふうなことに見きわめがついて参つりましたわけでございます。その結果、半年分といたしまして、直接医療費の引き上げに関するもの、並びに直接形式的にそれと結びついておりませんけれども、実質的にはその医療費の引き上げに関するものといたしまして、これを合計いたしますと約三十二億程度のてこ入れをいたせばよろしい、こういうふうな考え方に相なったわけでございます。  八十何億と今回の予算措置との関連、並びに二百十七億と見込まれておりましたものとの関連につきまして一応御説明を申し上げたわけでございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 なかなか役人というものは答弁がうまいものだと感心をいたします。いいですか、今までは、単価一円上げれば二百十七億要りますぞといってかねや太鼓で宣伝して回ったのです。日本医師会の十八円四十六銭というような案や、歯科医師会の十九円四十銭ですか、そういうことになると千四百億も要りますぞ、大へんですぞと言っていらっしゃったその人たちが、今度は、まあまあ財政の強弱があるし、半年分で三十二億もあったらいいでしょうと言う。こういう工合に話がうまく変ってくると、国民は何が何だかわからぬ。私らもわからぬ。二十  一日の未明になりますか、予算閣議が終って、そして翌日の新聞を見た国民は、医療費改訂には四十三億五千万円ですか、医療費改訂が出たとみんなそう思っていた。私も思っておりました。それはどうしてかというと、単価改訂であなた方が二百十七億とるためには、国は八十四億負担しなければならぬ。その半分だからなるほど四十三億五千万円というものはちょうど数字が合っているなと思っていた。ところが今のあなたの御説明では、直接関連する分と、それから直接には結びつかぬが、まあ関連する分と合わせると三十二億だ、こういうことをおっしゃり始めた。それならなぜそのときにそう言わないかということです。そのときなぜそういうこまかい分析をしないかということです。あれだけ医療費の問題が国民的な視野の中で論議をせられたっときに、どうしてもう少し親切な、そういうこまかい分析をわれわれに教えなかったかということです。今予算が大蔵省からずたずたに切り裂かれてしまって、そして半年分さえも、かき集めた残った予算でどうにかつけられて、今ごろそういう言いわけをしたって納得しないですよ。そういう言いわけはもはやわれわれは聞きたくございません。大臣、お尋ねしますが、二百十七億要りますよ。二百十七億要るとすれば、半年分ならば百億です。百億の中から三十二億だけを国が出したら、あとの七十億は一体だれが負担するのですか。どういう形でだれが負担しますか。一番大事なところです。
  29. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これは当然私が申し上げなくとも、保険者、被保険者それぞれにおいて負担するということに相なるわけであります。
  30. 滝井義高

    滝井委員 いいですか大臣、具体的に私は申し上げますよ。健康保険では本人は保険証でみなみてもらいますから、負担をしなくともよろしい。これは家族すですよ。健康保険で、政府管掌の健康保険は単価八・五%引き上げれば六十三億六千三百万円の経費増になる。そうしますとその場合に被扶養者の負担する分は二十億一千四百万円です。これは半年分にすると十億、千億の中に一体幾らのものを国が負担することになりますか。これは全部被保険者の負担に、少くとも十億の中の五億はなっちゃうでしょう。本人は負担しなくていいんです。保険証を持っていけば初診料だけであとは無料です。入院というものはわずかですから三十円そこそこです。だからこういう大局論では大したものにならない。そうすると今言った政府管掌の七十億というものの中に、一体家族は何ぼ負担することになる。これはわかっておるはずです。
  31. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府管掌の関係におきましては、ただいま御審議をいただいております予算の、政府管掌の医療費の見積りから計算をいたしますと、家族の負担分といわゆる患者の負担分を入れますると、全体で五十六億一千五百万円程度の年間の比率になりまして、そのうち十一億五千六百万円程度がいわゆる患者負担でございます。この中で家族負担が幾らかという計算は、私その資料を持って参っておりませんが、これは政府管掌でございますから、大部分が家族の半額分でございます。あとはわずか本人の一部負担分がある程度でございます。
  32. 滝井義高

    滝井委員 今の十一億五千六百万円というのは年間分ですか、半年分ですか。
  33. 高田正巳

    高田(正)政府委員 年間分であります。
  34. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと私が大体概算いたしました通り五億あまりを患者が負担することになります。いいですか。大臣、日本経済はもはや一国の予算においてさえも、医療費改訂を半年見送らなければならぬ事態であることは、あなたが冒頭に、その大きな理由として述べられた。そういう日本経済の中で、零細な、一事業場に平均二十一人しか働いてなくて、しかも一万三千しか給料をもらっていない国民諸君に五億負担させるじゃないですか。こんな理論的な矛盾はありはしない。これは一体どうするのです。こういう大事な政治問題になったとき、保険局長はうそばかり言ってきたのだからもうだめです。これは大臣がやらなければだめです。一番大事なところじゃないか。きょうは真剣勝負だ。高田さんではだめです。一番大事なところをあなたは教えておらなければだめです。大問題です。
  35. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御指摘の通り医療費が引き上げになりますと、政府管掌において患者負担分が今半年分で五億何ぼふえることは事実でございます。このことは給付率を変更せざる限りにおいてはそういうふうになるということは、私どもは医療協議会におきまして、それから当委員会でも申し上げたつもりでございます。私どもといたしましては、今回の医療費の引き上げの措置について、給付率の変更までは考えておりませんということも申し上げたつもりでございます。従いましてそれは当然初めから、医療費の引き上げというふうなことをいたしますれば、そういうことが起るということを頭に置いて、私どもはそのことを考えておったわけでございます。  なおもう一つ先ほどの滝井先生の御質問の中に出ておりました、一円上げると二百十七億かかる、そうして日本医師会等の案によると千四百億くらいかかる、医療費がふえるということをお前たちは言っておったじゃないかということでありますが、それはその通りでござざいます。以上でございます。
  36. 滝井義高

    滝井委員 とにかく大臣、五億の負担が零細企業の労働者の家族諸君にかかるということは明らかなんです。あなたの約束は貧乏を追放するのでしょう。これは一体どうなるのです。日本経済は四月一日から実施するのをもはや六カ月延ばさなければ耐え得ない程度によろめいている。その日本経済の中で生活しておる、また零細な勤労者諸君とその家族に、五億以上負担を増加せしめるじゃないですか。それでもってあなたが厚生白書に高らかに貧乏を追放する政策を掲げるというのはナンセンスですよ。矛盾もはなはだしいですよ。従って私はこういう点はもっと明らかにしなければならぬ。当然これはその程度のものは保険財政で吸収できるならばやってもらわなければならぬ。できなければ何か措置を考えなければならぬということになる。(「国から出させろ」)私は無責任に国から出せとは申しません。ただしかしこれを政治の現実として、――私は今は端的に政府管掌をとりました。国民健康保険はどうせ法案が出たらゆっくりやらせてもらうつもりですが、国民健康保険はまだはなはだしいのですよ。国民健康保険は六十二億ですから、これは二十億なら二十億の負担増になれば、全部患者がやらなければならぬ。それはあなた方今こから皆保険をやられるのですから、従ってこういう矛盾は、今のような健康保険における――私はあとから健康保険のもっと詳しい実態を質問しますが、そういう中において、これは医療内容の改訂をしなければならぬという当面の問題と、この患者負担の問題をどうするかという、この問題というものをやらなければならぬのです。医療内容を今より上げなければ、日本の皆保険はできませんよ。今のままのものではできません。大臣はどうも事務当局にまかせて、ただ日本経済云々と言われるだけで、御答弁できかねるようでございます。私はそれ以上大臣には言いませんが、どうも今のような状態ではだめです。  そこで、まずはっきりしてきました。とにかく被保険者と保険経済で吸収すると言うけれども、家族については保険経済というものは吸収しようがないのだ。本人ならばできるのだが、家族は全部かかっていく。これが堀木厚相の保険行政に対する、被保険者に関する限りの実態であることははっきりしてきました。そこで、八・五%のワクの拡大を、四月をやめて十月から実施することになりましたが、具体的には一体いかなることで実施せられるのか。答申はもう出ましたよ。あなた方は告示をすれば、それで済むのです。これは政治問題ですから、具体的な実施の方法を大臣から一つ御説明願いたい。
  37. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 この医療費の値上げに関連しまして、負担割合を変えなければ、ある程度被保険者に負担がかかるということも――これはかからなければなおいいということも、私ども考えております。しかし滝井さん自身がおっしゃるように、今の医療費について合理的な医療費としなければ、診療機関そのものが崩壊するということをしばしば言われておる。われわれは、診療機関自身が崩壊して何の国民保険医療であるかということを考えざるを得ません。でありまするから、予算を編成するに当りましては、どうしたって全体をにらみ合して、私どもとしてはいまだ国民健康保険に加入しない多くの国民のことをも、この際解決をいたさなければならぬ責任を持っておる。そうすると、医療機関が崩壊したときには、その未加入者自身に対する救済もできないということを考え、かたがた日本経済の調整過程における状況とあわせて考えますと、この程度の解決よりやむを得ないのじゃなかろうかというふうに考えたわけであります。  なお、第二段のどういうふうに実施すつるか。なるほどわれわれとしては最善を尽して告示をすればいいわけでありますが、その最善を尽す方法を、私にお問いになっておられるのだろうと思うのですが、私どもとしては、できるだけ医療担当者各方面の意向を組み入れつつ、八・千五%の間において最善の処置をとりたい、そして十月一日から実施をいたしたい、こう考えておるわけであります。
  38. 滝井義高

    滝井委員 具体的に実施をするためには、合理化をやらなければならぬ。私は一回大臣に合理化の構想を尋ねたが、大臣ははっきりしなかった。一体具体的に実施をするためには、合理化をやるということと、八・五%のワクを拡大するということと、患者の負担をできるだけ軽減をして、国の負担でやっていく、こういう三原則を打ち出されておるのだから、まずその合理化をやらなければならぬ。合理化というのは、一体何と何と、どういう工合に合理化していく所存ですか。もう国会は一五で終りますから、そろそろはっきりしておいてもらわなければならぬ。答申は昨年十二月に出ているのでしよう。三カ月経過している。合理化の具体的な構想を一つ……。
  39. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 合理化を一言にしていえば、各診療行為間の適正化をはかるということでございます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 診療行為間の適正をはかると、こうおつしゃいました。そうしますと単価の方はどうなるのですか。
  41. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 診療報酬は全体として合理化をはかるということが当然であって、これは申し上げるまでもなく、点数と単価のかみ合せによって診療報酬ができ上るわけでありますから。それについて単価は、計算の簡素化ということが一方にいわれます以上、なるべく簡素化いたして参りたい、こう考えております。
  42. 滝井義高

    滝井委員 診療行為の間の適正化をはかるということは、何も今の単価を動かさなくてもできることではないですか。あなたの言われる通りかけ算ですから。AとBをかけたら十になるというのに、これはAを動かさなくても十にはなる。どっちを動かしてもなる方法もありますが、あなたの考えの主たるものは、診療行為問の適正化をはかると、こうおっしゃっている。診療行為というものは単価じゃないですよ。注射をしたり、薬をやったり、手術をするのが診療行為ですよ。そうすると、診療行為間の適正化をはかれば、これは何も今の単価を動かさなくてもできるじゃないですか。大臣は専門的なことを自分でおっしゃっているし、これはあなたの基礎的な条件を整備する一番大事なかなめですよ。龍を描いて眼を入れなければ堀木行政は役に立たない。今一番燃えている問題です。その燃えている問題を大臣が消し切らなければ、大臣の資格はない。だから、診療行為門の適正化をはかるというならば、一体診療行為のどことどこが今不合理であるからどういうことになるのか。大ざっぱな線というものは出ているはずです。
  43. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 専門家のあなたがしろうとの私にお聞きになるのですが、私一は診療行為間の適正正化をはかるということと、あわせて計算の簡素化もはかりたいということを申し上げているわけであります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 答申はすでに出たのですから、大臣もその答申は十分お読みになっていると思う。従って、診療行為間の適正化をはかっていくと同時に計算もしやすくする、こういう方針ははっきりしてきたわけです。具体的に予算ももうきまりました。そこで道具は揃ったでしょう。これは十月一日からの半年分で、三十二億予算もきまった。そして診療行為間の適正化をし計算をしやすくする、こういうことになってはっきりしてきたのですから、もう少し具体的に、一つ例を上げて――これはわからなければ保険局長でけっこうです。例を上げて、もう少しわかりやすく説明してもらいたい。専門家々々々と言うけれども、こっちも専門家じゃない。少し勉強しているだけのことで、専門家じゃない。そこでもう少しわかりやすく、しろうとわかりのするように、これは局長でよろしいが、一つ例を上げて説明して下さい。
  45. 高田正巳

    高田(正)政府委員 滝井先生の御質問は、合理化をすると言うが、どういうところにそのねらいがあるのか、おそらくこういう御質問だと思いますが、これは医療協議会の答申の中にも、その不合理の最たる点がはっきり書いてあります。一口に申し上げますと、医療技術というものに対する評価が薄い、そして物を使う医療行為に対する評価が非常に高いということを直して参りたいということが一つと、それからいま一つは、それに関連することでございますが、物を使う医療行為の評価においては、材料費が高ければ高いほどそれに含まれておる余分の技術料というものも大きくなるというふうなしかけになっております。そこらを、この際医療というものはそういうものであってはならぬのであるから、直していこうじゃないかという辺が一番大筋であろうかと思うのです。その具体的な例は、私はあげろとおっしゃればあげられますけれども滝井先生もよく御承知の点であろうかと存じます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 わかりやすく言うと、医療技術の評価が薄い、非常に技術料が尊重されていないということです。それから技術と物とが一緒に組み合わされると、今度は物の値段が高いとそれにつれて技術料が高くなる、こういうことなのです。そうしますと、これはこの前もここでちょっと議論しました。大臣よく聞いて下さいよ。これはわかりやすく、専門家でなく、しろうととしうろととの話し合いでいきますよ。かぜを引きますね。そうすると、われわれはこのかぜという病気から早く脱却したいことは病人になったらみんなの念願です。その場合に、健康保険では、たとえばアスピリンならアスピリン、サルゾールならサルゾールを使うことが限界です。ところが、大臣はこのごろ病気されたからよくわかると思うのですが、もし大臣予算委員会に早く出て滝井質問の矢面に立たなければならぬと思って、健康保険医  へ行ってクロロマイセチンを使えと言ったら、その保険医は首です。使うことができないのです。しかし大臣の病気がこのまま感冒を放置しておっては急性肺炎に転化する、肺結核になると思ったときには医者は使ってもよろしいのです。大臣の病気が肺炎に転化する、あるいは結核に転化するということを見る技術は一体だれが見るかというと、医者が見るのです。その場合に、なぜ高い薬を使って、高い技術料をその中に取って悪いかということです。どうして悪いのですか。その場合に、肺炎になるということがわかっておって、かぜという病名をつけて、アスピリンだけをやっておったら堀木厚生大臣は死んでしまいます。そんなことでは大へんです。だから、いかにもこういう文章に書けばうまい。しかし人間は十人十色です。それぞれの体質がある。だから、そこまで医療というものにワクをはめてしまって、そして物と技術と分けてやるということは、今の日本の現状では不可能ですよ。無形の技術に対する評価というものがないのです。日本にはそれに金を払うというそういう伝統的な思想というものがまだ芽ばえていない。その芽ばえていないときに一挙にこういうことをやろうとするところに医療費問題の混乱がある。それは高田さんは事務で育ってきておりますから、事務の上ではできますれども、しかし生きている人間ではできないのです。だから、今の高田方式でいけば、かぜという病名がついたのだから、かぜという病気にかぜという技術の評価をつけたからには、それは高い薬を盛ってはいかぬと言われたら、やぶ医者はみんなかぜに持っていってしまうのです。しかし肺炎なり何なりに転化するというふうに見通したところはクロロマイセチンを使わなければならないという技術の評価が出てくるのです。だから、そこらあたりをあまり事務的に、作文だけで生きた人間の問題を処理をしておると、みな人間は死んでしまいます。健康保険はくずれます。実際今まで医療費体系ができて以来、物と技術と分離して、技術をいかに評価するかということができなかったのじゃないですか。それが専門医制度ができないという一つの証拠である。だから、あまりしゃくし定木に、理論的にはそうであっても、その通りになかなかいかないような姿に伝統的に徳川の長い昔からなってきているということなのです。だから、そこにはやはり過渡的な処置として妥協というものが考えられなければならぬ。それをあたかも甲、乙二表が最上のものであるがごとくにやっていくところに問題があるのです。だから、合理化というようなものをやる場合に、そういう点を考えておかないと、皆保険も何もできませんよ。それは現実療養担当者の協力がなくしてあなた方いかに力んでみたところでできないということなのです。安田局長がおりますが、私はこの前もここで日赤の状態をただした。安田局長さん、日赤はどうですか、改まりましたか。もうあれから約四、五カ月になると思いますが、日本赤十字病院は今健康保険の単価で全部の患者を見る状態に改まりましたか。答弁して下さい。
  47. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 ちょっとまだ存じておりません。
  48. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣、よく聞いて下さい。いいですか。かっての厚生大臣のもとにおいて次官であった葛西さんが副社長さんですかになっていらっしゃる。その病院健康保険でやっていない。税金がかかっておりませんね。健康保険じゃやれない。保険証を持っていっても入院はできませんよ。一番最高の部屋に入るためには何ぼ金が要ると思いますか。三万円の身のしろ金を耳をそろえて出さなければ入院できませんよ。税金を払わぬで、そうして厚生省のかっての次官が副社長になっていらっしゃる病院が、一点単価二十円でなければやっていけない。私はそれを改めてくれと言った。改めたら国から金を出さなければ日赤は一番先に倒れますよ。そういうことをしいておられるのがその人なんだ。だから、私は高田さんに言いたい。こういう物と技術を分ける方法をほんとうにやられようとするならば、まず聖路加病院と日赤と東京の第一病院実施してみて下さい。それをあなた方が実施できると言明されるならば、私はこれをのみます。どうですか、大臣、できますか。健康保険の単価で東京第一病院と聖路加病院と日赤のこの三つだけをモデル・ケースとしてまずやらせるということを大臣言明できますか。
  49. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 ……。
  50. 滝井義高

    滝井委員 局長は大臣が答弁されるまで待って下さい。大臣に先に尋ねてみてから……。  大臣の所管に属している第一病院もそうだし、国立病院でもみなそうだ。だから、自由診療は公的医療機関は一切まかりならぬ、健康保険で全部やれ――今度大蔵省で公益法人の医療行為というものは一つの収益事業とみなすということになって、公益法人の規則に合致したものは全国の医療機関に税金をかけることになった。それには健康保険から一割引きでやらなければだめだということになっておる。だから、公的医療機関の最たる東京第一病院と日赤と聖路加病院――済生会でもよろしい、この三つに大臣が命令を出して、全部一割引きする必要はないから健康保険でやれ、そうして国家公務員と同じべースを職員にお払いになりなさい。それができたら、日本の皆保険はできると私は思います。そうしてあの三つの病院が手を上げたときには、厚生行政なり保険行政が間違っておったということになる。そこで大臣、これが言明できますまで私はがんばりますよ。この三つに健康保険でやらせる。私はこれを三、四カ月前に局長に忠告しておいたんです。
  51. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 専門的にわたることは私は別だと思うのですが、今そういう病院保険患者以外は見ちゃいけないといったのでは私はいけないと思う。  それからもう一つは、率直に申しますけれども、今お話を承わっていて私自身が奇異に感ずることは、物と技術とを分けた方がいいというお医者さんも相当ある、だから、これはあなたの言われるように、物と技術を分けることはおかしいと言われる意見が全体じゃないと思っているのです。  それからもう一つはいろいろ例をあげるうちに、診断自身が非常に大切だということは、これはお医者さんの従来の主張なんです。それで病状の診断自身について相当大幅なウエートを置けということは、これは一致した意見なんです。だからそれにウエートを置くことは先ほど滝井さんのおっしゃるように非常にいいことじゃないかと思います。私どもが今回やりましたことも、単純にはお医者さん自身なり、あるいは、医療機関そのものの収支の問題のみならず、それを通じて最近の医学の進歩というものが社会保険に取り入れられるということを希望しておるわけであります。そういうふうな情勢から考えまして、いろいろな要素が錯綜しており、私自身の病気も実際はクロロマイセチンを使ったのですが、これは保険じゃないのです。現在の診療報酬自身の問題につきましてまだ解決すべき問題もあることは事実でありますが、とりあえずわれわれの現在許す範囲においてできる限り合理化という方面に進むように努力するのは当然の責任じゃないか、こういうように私ども考えております。
  52. 滝井義高

    滝井委員 自由診療とおっしゃるけれども大臣がやる政策は皆保険でしょう。皆保険政策というものは少くとも自由診療が野放図に公的医療機関によって放置されておったら、皆保険なんかできやしませんよ。従ってあなたの傘下にある公的医療機関の代表的な日赤と聖路加と東京第一、この三つでよろしいと私は限局している。この三つに来る全部の患者は貴賤貧富の差なく健康保険と同じ単価でやってみて下さいということなんです。いいですか大臣。われわれ福岡県は皆保険ですよ、もう自由診療じゃありませんよ。国民保険実施され、そして共済組合あるいは政府管掌の健康保険組合、これらのものが全部です。従ってわれわれの福岡県下においては医療担当者の諸君は四苦八苦の状態です。しかも勤労者の諸君は四苦八苦の状態医療機関に行って、今後八・五%のワクの拡大をやって、患者が負担しなければならぬものが今よりもっとかからなくなる状態になっている。この姿は真実だと言っている。だからそれが真実であるかないかということは、あなたの傘下の代表的な三つの病院一つ実施してみてくれというのです。そこである程度あなた方の言う通りの技術料を評価してもよろしいから……。現実にあなたの傘下の日赤では普通診療は一点単価二十円でやっている。だから、今の十一円五十銭なり十二円五十銭で、それを八・五%拡大したもので医療従業員に国家公務員と同じベースを払ってやれるならば一つやってみてくれというのです。私はこれから高田さんの足もとの社会保険病院をやりますが、まずそれを大臣言明して下さい。局長に私はこの前から要求している。明確にして下さい。三つをとにかく四月一日から健康保険の単価でやらせますと言明して下さい。公的医療機関ですよ。われわれのところは全部やっているんだから、それを一ぺんやってみたらどうか。これを大臣がここで言明できないということがおかしい。できないならば今言ったのはうそだということになる。日本の医療機関昭和三十三年の六月から十一円五十銭でという状態を作る。昭和二十七年の三月の二・一倍の収入を得るのだということになっている。あなた方の八・五%拡大の根拠はそうなっている。だからそれが真実なりやいなやということを三つの公的医療機関でやってみたらいい。それで手を上げたらあなた方のうそだということになる。だが私はこれを五カ月も六カ月もやれといいません。三カ月でよろしい。三カ月で妥協いたします。大臣どうです、やれますか。これは大臣の命令一つでやれるのだ。
  53. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私はお約束しません。あなたはいつもお約束、お約束とおっしゃるが、慎重に物事は考えなけっればならぬ。今そういう問題を科学的に実態的にやっているところですから、お約束できる時期とは私は思いません。同時に現在の厚生省事務当局案の中で甲表を希望しておられるのは、大体そういう大きな病院の方々だということは事実です。私どもとしては現在の状態よりはるかによくなるであろうということを確信しております。ただ今おっしゃったような問題は、前から私が申し上げておるように、一方においては国民保険を進めて参りますと、一つの統制単価的なものに支配されることになる。お医者さんは非常に自由を欲する。また自由がなければ医学の進歩、技術の進歩はなかなか伴わない。そうすると保険制度とそういう実態とのかみ合せは、将来の一つの研究問題として考えなければならぬ問題だということは前から申し上げている通りなんです。ですから、私どもとして、そういう一つ一つの問題についてともかくもどういうふうになるかということはなお実態を見きわめる必があると思います。八・五%とおっしゃるが、八・五%の中身でもっていろいろ少しは変ってくるのであります。そういうような情勢でありますから、私どもとしては全体の問題をどう一番よくあんばいするかということを考慮すべきであるというふうに考えます。
  54. 滝井義高

    滝井委員 大臣、問題をすりかえてはいかぬ。今大臣は甲表と言う。甲表でもかまいません。甲表ではやっていけぬということは神崎博士も言っておる。八・五%の甲表ではやっていけません。少くとも二〇%にしてくれなければ公的医療機関の運営ができないということは、公的医療機関の専門家が言っておる。私なんかよりはるかに専門家が言っておる。あなたはそれをお認めになっておる。やっていけませんということを言っておる。八・五%のワクの拡大で甲表でよろしいということは医療機関だれも言っておらぬ。現実の問題として八・五%の問題は二の次にして、今すでに日本の市町村においては五割ないし六割は皆保険態勢に入ってしまっておる。皆保険態勢に入ってしまっておるということは、単価が十一円八十三銭という平均でやられているということだ。従って十一円八十三銭でやられている実態が現実状態であるならば、公的医療機関である日赤なり、聖路加病院なり済生会とか、東京第一病院というものはできるはずだから、それがやってみて八・五%でいけるというのならば、あなた方の分析が正しい。ところが倒れて手をあげる状態が出たら、高田保険局長の分析は間違いだったということになる。病院が倒れてしまっては大へんだから、四月一日から五、六の三カ月間だけでよろしいから、一切患者は国民健康保険診療報酬でやってみて下さい。それが大蔵省は今度税金でそうなった。公益法人は全部それでいけということになった。それでいかなければ税金を全部取るということになった。今まで非課税の公益法人もそうなった。ところが日赤、東京第一病院、済生会というものは法律で除外されてあった。初めから除外された。公けの活動をやっておりますから、あるいは特殊な日赤法というような立法がありますから除外された。除外される、とそこで税金はかからないから、おやりになってみて下さいというのです。これくらい簡単な質問に、できる、できぬ、慎重に検討しなければならぬとついうことはない。そういう病院の実態を慎重に検討して出しております。高田保険局長の八・五%をやれば日本の医療機関は、十分日本の医学の進歩にたえ得るし、皆保険のにない手としてたえ得るし、日本の医学技術の生成発展にも耐え得るということを説明の中に入れて出しておるのですよ。条件は全部そろえて八・五%がよろしいということを出しておる。だから大臣は、それを約束せぬと言われるけれども、時間が少しかかってもこれはできぬはずはないのです。だから、あなたが日赤やら聖路加病院が悪いというのなら、東京第一病院だけでけっこうです。
  55. 小澤龍

    ○小澤政府委員 東京第一病院はただいま御指摘の趣旨の通りで、自由診療の患者も健康保険の単価点数でやっております。国立病院はすべてそういうふうになっております。
  56. 滝井義高

    滝井委員 東京第一病院は入院料から何から全部いわゆる自由診療でやっておりますか。
  57. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただ病室につきましては、一人部屋を特に希望する場合には病室の差額は若干あります。
  58. 滝井義高

    滝井委員 東京第一病院では、いい部屋に入院しますと、水屋や洋服だんすがあると、その代金まで取られますよ。その通りでしょう
  59. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま御指摘のことは実は私ども知りませんで、その後その事実を承知いたしましたので取りやめさせました。
  60. 滝井義高

    滝井委員 大臣、お聞きの通りです。そういうことをやっておった。患者が入院すると、洋服だんすや水屋が病室にあると、その代金を、一カ月の使用料一万何千円を取ってしまった、これが公的医療機関の実態なんです。そして零細な国民医療のほんとうのにない手として営々、粒々辛苦をしておるものにはまるっきり仁王様のような冷厳さをもって当っていくのです。公約医療機関はその通りじゃないですか。大臣、そういう実態でございます。  そこで私は健康保険病院の実態を、まだきょうだけでは終りませんが、だんだん尋ねます。大臣の所管のもとにおける全国社会保険協会連合会の健康保険病院というものは、一体責任の主体はどこにあるのですか。これは大臣御存じだと思うのです。
  61. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 高田政府委員から答弁させます。
  62. 高田正巳

    高田(正)政府委員 いわゆる健康保険病院というのは、国が施設をいたしまして、経営は都道府県の社会保険協会、そういう団体に委任しておるものもございますし、あるいは市、いわゆる公共団体当局に委任をいたしておるものもございます。
  63. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、その責任の主体というものはだれなんですか。いろいろ問題が起ったときに、行って解決をする一番の責任者というのはどこですか。
  64. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その当該経営主体でございます。委任を受けて経営をいたしておるとすれば、その委任を受けた団体でございます。
  65. 滝井義高

    滝井委員 都道府県保険課長が常務理事ですね。これは一体どういうことなんです。国の財産を社会保険協会というものに国が貸して、そしてそこで委託経営をさせておる。委託経営をさせる側は、大臣から保険局長から知事から保険課長になっていくわけですね。ところが今度は受ける側の常務理事保険課長なんです。人格が同じじゃないですか。そうしますと、そこで紛争が起った場合には一体どこへ持っていったらいいのです。保険課長が保険課長に持っていく、こういうのが社会保険病院ですよ。そしてその社会保険病院の俸給というものは一体どうなっておるか。これはどういうことでそこに従事する従業員の俸給というものをきめるのですか。これは大臣、御存じだと思う。社会保険病院は全土国にたくさんあるのですよ。そして社会保険病院というものは、われわれ被保険者のなけなしの金を出したその中からいくのですよ。国民の税金からいくのですよ。それが保険局の所管にあるのですよ。それが監督するものと監督されるものとが同一人格ですよ。高田保険局長は三重の人格です。中央社会保険医療協議会に入っては、何になっているかというと探険者の代表になっておる。厚生省に出ていくと今度は監督する側の保険局長になっておる。家に帰ると政府共済組合の被保険者です。こういう人たちがやっている。だからさいぜん私は聖路加病院なり日赤のことを言ったのだが、日赤は、ここにいらっしゃる厚生省の人たちをかって指揮しておった人が副社長なんです。そうしてその病院は、特一等とか最上のものに入院するためには身のしろ金三万円を前に出さなければならぬ。そういう病室を百作ったら、患者が入ると同時に三百万円運営費として入る。そういうことが日本の私的医療機関には許されておりますか、むちゃくちゃじゃないですかこれは。こういうことを放置しておいて日本の皆保険をやるなんて、そんな大きなことを言わない方がいい。しかもその病院については、やめさせるという言明さえ何らできぬじゃないですか。あなたは六カ月の厚生大臣の期間ならば、皆保険政策の基礎的条件整備するということを約束したならば、もう少し腹をきめて実行しなければだめですよ。ここでにやにやして言うだけじゃだめです。口先だけじゃだめです。一体給料はどうしてきめておりますか。何を基準にして社会保険病院の給料をきめておりますか。
  66. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医師の一般的な給料を頭に置いてきめておると思います。
  67. 滝井義高

    滝井委員 落第です。こういう実態だが、あなたは保険行政の一番の責任者だ。この予算書を見てごらんなさい、施設費から相当年々注ぎ込んでいる。あなたの所管のもとにある全国の社会保険病院は幾つありますか。この設立の目的は一体どういうことになっているのですか。健康保険病院というものは保険診療のモデル病院でなければならぬということですよ。しかも被保険者のための病院であって、サービスにこれ努めなければならぬとその目的には書いてある。あなたの所管のもとにある病院は全国で幾らありますか、この病院はずいぶんたくさんありますよ。七十七も大きな病院を持っている。その、あなたの所管のもとにおける病院の給料を一体どうしてきめるか。医者だから、一般の医師の給料を参考にすることは当然なことです。それはもう落第です。大臣、こういう実態です。全国七十七の、公的医療機関の中に入っている社会保険病院の実態を保険局長は知らない、これはもう落第ですよ。大臣、あなたもそうです。これはモデル病院ですよ。あなたが予算委員会に来ておったら、私はこれを全部やっておった、あそこであなたは首ですよ。こういう実態を保険局長も知らないし、そこにいらっしゃるだれも知らないということは厚生行政の恥ですよ。これは公的医療機関なんですよ。税金がかかっていないモデル病院ですよ。給料は国家公務員の一般職の給与にならってきめることになっているが、一体それをやっているかどうかということですが、やっておらない。それじゃどういう状態病院の給料をきめておるかというと、独立採算制になっている。規則で、国家公務員の給料にならって支払いますと言ってその病院医者を集めておきながら、今度は給料を払う段になると、どうもおれのところは赤字だ、隣の病院は黒字だけれども、隣は高いからだ、おれのところはやむを得ないといって、社会保険病院は、規則はできておるけれども、給料はばらばらです。これと同じなんです。高田さんの方で、診療報酬は物と技術を分けます。物の値段が高くなると技術料が今度は高くつくからいきませんと、なるほどうまいことを言っているんですよ。これもうまいことを書いてある。一つも実行してない。独立採算制で、損がいったときには給料は安くなり、もうかれば給料が多くなるということは、公的医療機関つが営利性になるということです。そうでしょう。営利性になるということはお認めになっている。頭を振りよるから。それが実態なんです。だから実態をそのままにしておってあなたのところの病院で働く医員の身分というものは不安定である。しかも病院は公益性があるんだ、こうおっしゃる。何で公益性があるんです。国の財産を借りているだけじゃないか。国の財産を借りているだけで公益性があって、それで鼠小僧次郎吉と同じようなことをやっておっていいのなら、日本の厚生行政はむちゃくちゃですよ。まず大臣、皆保険政策を、言う前にあなたの足下を全部洗いなさい。それから一カ月かかって社会保険病院、それから済生会、日赤、国立病院全部一ぺん洗ってごらんなさい。そしてあなたの傘下にある、あなたの権限の届く病院が、一点単価十一円八十三銭でりっぱにやっていけるという形をあなたが確認したなら、医療問題をもう一ぺんここでやり合いましょう。それが出てこない限りはだめです。私はもう少し健康保険病院について研究する時間を局長に与えますから、次回に私はもう少しやらしてもらいます。実態をもう少し国民の前に一つ明白にさせる必要があります。そこで働いている医者というものは哀れなものです。そこに働く従業員というものは哀れなものです。それが監督の立場にある保険課長が常務理事、帰ると監督者の保険課長、その上には知事がいらっしゃる。あなたがいらっしゃる。大臣がいらっしゃる。何も知らない。そんなことでどうなりますか。  それから医療費問題を改訂するために、与党の方で十五人委員会を作るということをおっしゃっておる。これは日本医師会からも発表になっておる。新聞でも発表されております。大臣十五人委員会をお作りになるのですか。
  68. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 いろいろ何なんですが、私一ぺん医療機関を洗うことは洗います。この点につきましては私自身洗いたいと思っているときなんですから洗います。ただお話を承わっておって考えられることは、一体六年間ほってあったものを少しでもよくしようという考え方で、現実にそれができておるのです。だからそういう点は、それではただこれで解決しなくていいかとついう問題ではないと思う。  それから医療費の問題につきまして十五人の問題であります。これは私かねてから社会保険医療協議会の答申を受けまして、それを忠実によりよくすることは、最後の段階まで私どもが努めなければならぬ仕事である、こういうふうに考えておるのであります。何も十五人委員会だとか、特別な制度を設けてする考え方はないのであります。しかしそれを直していくのに、一番これの完璧を期する努力やり方がよいかという考え方からいいますれば、これも一つの方法かと考えておるのでありますが、何も十五人ということにとらわれておるつもりはありません。適当に診療報酬自身につきまして、専門家の意見をいれて、よりよくしたいということを考えておるだけであります。
  69. 滝井義高

    滝井委員 この段階になってから混乱をさせてはいかぬと思うのです。すでに大臣就任になりましてから、――私はそれは医療費の問題の改訂努力をしている努力は認めます。率直に、頭を下げて認めますが、これはやはり努力をしたからにはその成果が上ってこなければならぬと思うのです。しかし堀木さんが大臣になってから六カ月ないし七カ月の経過を見ると、非常に日本の医界というものは混乱をしました。これは相手のあることですから、私は大臣ばかりの、その打った手がよかったとか悪かったとは申しません。しかし現実問題として多くの混乱が日本の医界に起ったことは事実です。しかもその混乱のために、たとえば皆保険の重大なにない手である国民健康保険実施というものがなかなかはかどらないことは、もう大臣御存じの通りです。五百万とか、四百万とか入れるといったけれども、三百万はちょっとこえた程度しかできなかったところは、これは反省してみてもいい。それは地方行政財政的に非常に苦しいという状態もあるでしょう。しかしその中にもやはり医療担当者が心よく堀木行政に一致協力する姿というものが出ていなかったことも事実です。私はなぜそれが出なかったかということを、今日ここで言いたくありません。しかしほんとうに日本の皆保険政策がうまく実行せられて、その皆保険政策のワクの中で日本の医療と医学が上っていき、向上していく、医学、医術が進歩していく、そして被保険者なり、療養担当者がりっぱにそこに治療をし、治療を受けられる姿を作ろうとするなら、やはりこれはその現実の問題というものを、積極的に解決をする努力をしなければなりません。その努力をする一つの場というものが十五人委員会っというものに求め得られるとするならば、これはわれわれ作ることに不賛成ではありません。大いに作っていただかなければならぬと思う。この段階になってから、十五人委員会を作るからぬか、もう少しはっきりする必要があろうと思うから、大臣一体十五人委員会をお作りになるのかならぬのか。これは何か新聞で見ると、厚生省と日本医師会と日本歯科医師会とが入ってやるのだということも聞いております。そういうものを作るのかどうか。一つ一つ聞いていきますから、これをまず先にはっきりしてもらいたい。
  70. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 人数にとらわれておりません。物事によってまた担当者も変っていく、そういう相談の機関、実際に具体的に相談する機関は作る。ただ作りたいと思う機関、と申しますより率直にいえば意見を聴取するのに非常にいい方法を発見したい。ただ滝井さんも御承知のように、こういうものをただ形だけ作ったって意味はないのです。お互いに協力し、お互いによりよくする共通の場において意見を戦わされるというふうなことが一番必要だと思う。そこが滝井さんよく御承知通りに、不幸にして今まで私どもの真意というものが、何としてもよく徹底しないというような状況でございまして、ただ形だけ作ったからといっていい結果を得られない。問題はいい結果を得られることです。私はいい結果を得られる状態を作り上げて、そうしてそういう一つの方法でもって、さらに事務案の宗壁を期したい、こう考えております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと要約しますと、人数等は十五人とは限らなくともよろしいが、十五人委員会というものは作る。そこで共通の場においていろいろと合理化その他の問題も話し合っていく、要約すればこういうことになると思うのです。そこでその場合にこれは閣議了解をとってやるものなのか、それとも全くあなたの個人的なといってはおかしいが、行政上はどういう形になるのか、やはり明確にしておいていただきたい。
  72. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 率直にいって十五人委員会というのはどこにもないのであります。ただ五人、五人、五人でしたらどうだろうという示唆があったことは事実であります。私どもとしては今申し上げたような趣旨で作り上げたい、こういうふうに考えておるのであります。これは全くの公的機関であるべきじゃない。中央医療協議会が、私ども診療報酬を決定するに当っての法律上の唯一の機関である。従いまして、中央医療協議会の御答申の趣旨に従って、今事務的に完璧を期したいという考え方で運用して参ればいいのだというふうに考えております。
  73. 滝井義高

    滝井委員 こういう場合、やはりもう少し性格を明らかにしておかないと、またあとで問題が出てくると思うんです。私はそういう意味で、今後日本の医療行政というものを、ほんとう関係者が和気あいあいのうちに、高い目標に向って同じ足並みで前進をしていくということのためには、作られるからには、やはり性格を明らかにする必要があろうと思うんです。従ってこれは大臣の方で、たとえば厚生省医療保障の五人委員会とか、あるいは年金のための五人委員会等をお作りになっておるわけですね。そういうものとも私はどうも性格が違うようにも思われるのです。あれは予算も持っております。そこで、人が集まるということになれば金も要ることになる。だからやはり行政上の性格というものをどういうものにするのか、一応明らかにする必要があろうと思うのです。今の御答弁は、私頭が悪いせいかちょっとわかりかねるところがあるのですが、そういう点、大臣の構想で事務上、法律上何か問題があれば、これは高田保険局長の方から、こういう構想にしたらどうだという意見を伺ってもかまわぬと思うのです。
  74. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 ただいまのところは、率直に申してお互いに会って、そしてお互いに中央医療協軸議会の答申に従った共通の目的をもって、事務案をよりよくしようという考え方でもってやっていくということに主眼を置いておりますから、そういう状態ができ上ることにまずもって努力をすべきである。その上で、どういうふうな形にするかも別に考えますが、しかし中央医療協議会自身が、あくまでも診療報酬決定に当っての唯一の法律上の諮問機関であるという方針は貫いて参りたい、こういう考え方でございます。あなたはそうおっしゃいますが、今はまだその性格等については、そう明らかにする段階にもなってないと思います。現に、いわゆるマル単の会議で失敗いたしました私としては、この際慎重を期さなければならない、こう考えておるわけであります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 大臣の真意がよくわかりました。要約すれば、大臣としては、診療報酬の問題を公式に決定する法律上の機関というものは中央社会保険医療協議会である。従ってそれを無視して十五人委員会というようなもの――十五人になるかどうかわからないが、そういうものは作るわけにいかない。しかしすでに答申が行われてきたのであるから、その答申を円満に実施に移していくためには、何かそこに非公式なものをもって和気あいあいのうちに話し合う、何というか大臣の私的機関関のようなものを非公式に作ってみたいという意欲には燃えておる、しかし客観情勢はまだそこまでいっていないような情勢である、こう理解いたしました。及ばずながらわれわれも作る努力をいたしまして、日本の医療の解決のためにぜひ努力をして参りたいと思いますので、その際には大臣も腹をくくって、そして前進のために努力していただきたいと思います。  時間がないから、これを最後にしますが、昨日の新聞でございましたか、大臣年金制度について、赤城農林大臣と岸さんと、三者でお話になったようでございます。それにはまず第一に、今後は厚生年金からいろいろと特殊な年金制度が分立していくということは、もう農業共済を最後としてこれ以上やらないのだ、今後は早急に国民年金制度を成立させて、既存の年金制度との調整に努めていくというようなことを、三者会談で確認されたことが新聞に出ておりましたが、これは一体その通りでございましょうか。
  76. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 御承知通り、農業共済組合というものについて年金制度を始めようとしているのでありますが、私としては、厚生年金制度が今後さらに崩壊していくことは、これは国民年金制度をやって参る上において困ります。困るのみならず、国民年金制度の実施すらも困難になって参るというふうに考えますので、国民年金制度の創設を至急にやらなくてはならない。ただ、御承知通りに社会保障制度審議会が内閣にありますし、私どもの方に五人委員会があります。結局ここの御答申を待ってできるだけ早く――こっちが具体案の構想ができ上らなければ、他にこういう制度が出て参りましたときに、現実にその人々の幸福をはかろうというのを、国民年金制度の実施まで待てということが非常に困難になる。現実の問題としてそうなる。そういう場合に、私ども自身としては、この際一日も早く国民年金制度の構想を確立いたしたい。と同時に、御承知通りの状況でありまして、両制度とも非常にその構想を急いでおられる。私どもの方の事務当局もまたこれに照応いたしまして、御答申を受けるや準備態勢を至急に完備して、そしてこれに照応するようになれば、今後の国民年金制度の崩壊を防ぐことができる、こういうふうに考えている次第であります。
  77. 滝井義高

    滝井委員 簡単にお尋ねしますが、そうしますと、大臣は今後農業共済のようなものが厚生年金から分離をしようとしても絶対に許さない、これが厚生省の基本方針だ、こう確認して差しつかえありませんね。厚生省というよりは、岸内閣、保守党政府の方針だ、こう確認しておいていいですか。これは今後また問題が起りますから、はっきり確認をしておいて下さい。厚生省にその腹がないところにこういう問題が起ってくる。今度だって厚生省が農業未共済について確固たる腹を持って、そして農村のために国民年金制度をやるんだという構想を具体的にしておれば、こういう問題は起らないですよ。ところが、国民年金制度に対してあいまいもこたる態度をとっているからこうなる。左によろめき右によろめいているところに、こういう問題が起る。だからその点をまず、今後は断じてそういう派生的なものを許さぬ、こういうことですね。
  78. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私としては、今後こういう派生的なものは、認めないつもりでいきたいと思っております。
  79. 滝井義高

    滝井委員 私としてはということでなくて、岸内閣として。あなたは岸内閣年金の責任大臣です。だから岸内閣としてそういうことができるでしょうね。あなたは総理と話されたのだから、そこまで言明してもらわぬと……。
  80. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私としてということは、厚生大臣としてです。それは岸内閣としてでございます。
  81. 滝井義高

    滝井委員 岸内閣としては、今後厚生年金から分派するような年金制度は、農業共済を最後として作らない、こういうことでございますね。  そこで一つだけ大事な点をお尋ねしたいのですが、まず問題は二つ出てくる。今後われわれが年金制度を作る場合に、一体基本的なものの考え方として、既存の年金制度との調整をどうするかということが一つ、それから、これは広義の年金に入ると意いますが、現在問題になっている恩給との調整をどうするかということです。実は太幸さんはこの前答弁ができなかったのです。そこでこれは大臣がきょうおいでになっておりますから、これはあなたが五月から年金の準備室を設けられてやられるというならば、まずこの基本的な態度がきまっていないとできないんです。既存の七つばかりの年金制度と一体どう調整していくか。七つの中に入っておる、特に恩給との問題をどうするか、この二つの問題が前面に立ちふさがっておるんです。これをます解決しなければいけないんです。だから既存の制度との調整をどうしますか。
  82. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これはもう滝井さん御承知通りで、大体二カ年の準備期間というものを初めから考えておったわけであります。しかもその案は社会保障制度審議会において現在討議されつつあります。それから五人委員会においても討議されつつある。しかも両委員会とも非常に精力的に、一日も早く自分たちの構想を成案を得て示そうとしているわけであります。私どもは一にこの審議会の答申の線に沿うて私どもの方策を実施いたして参ることは当然であろうと思っております。従いましてそれらの御答申の趣旨に従って、そうして私ども国民年金制度を一日もすみやかに実施いたしたい、こう考えておるわけであります。
  83. 滝井義高

    滝井委員 大臣、答申を受けたらその線に沿ってやることは明らかなんですが、線に沿うためには、こちらにそれをはかるものさしがなくちゃいかぬでしょう。たとえば今、日雇い労務者の健康保険法の改正とか、国民健康保険法の答申を出しているんです。これは厚生省の腹はきまっているんです。自分の方はこういう腹でいきたいがどうでしょうという答申を出しているんです。年金だって同じですよ。基本均なものの考え方、基本方針というものは、やはり堀木厚生大臣の腹の中にきまっておらなければならぬのです。そうして出てきたならば、その答申が一体自分のものさしに合うものか合わないものか、出てきた答申によって、合分のものさしが間違っているかどうか、こういう判断の材料を、持たなければ、向うから言われたことに沿うてやるのだということだけでは、何もあなたにないということですよ。まさか自由民主党という見本の政権を担当しておる政党に、国民年金に対する基本的な腹がまえ、構想がないというわけにいかないでしょう。しかも恩給の問題はすでに法案で出ていますよ。法案で出た場合に恩給と年金調整しますと岸総理は言った。だから調整するならば専門家の方の太宰さんは、どうですか。それは私の答弁するのもじゃありません、だから大臣が来たら答弁しましょうと、予算委員会で保留しておる。恩給はもう法案で出てますよ。法案で出てきて、これが既成事実を作ったら年金というものはどうにもならぬじゃないですか。平年度千三百億――軍人文官合せて千三百億の予算を先食いされて、なお日本経済が千億をこえる無職醵出財源が出るとするならば、単価問題なんか一挙に解決できますよ。ところが三十億の政府管掌の健東保険の金さえも、文句たらたらで、二十億出しても十億しか出せない日本の財政状態のもとで、恩給との調整を基本的に考えずして年金制度をやると言うのは、高田保険局長よりももっとあなたはうそつきになる。だからもう少しごまかさずに、ほんとうにやらなければいかん正ですよ。だから大臣、まず恩給と年金との調整をどうしてやりますか。
  84. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私、まだうそついたことはない。あなたはそう言われるけれども、あなた自身だって、私が従来の政治家と違う、まじめにやっているじゃないかと、この席で公言されたじゃありませんか。それでもうそつきだといううことはおかしな話だと私は思います。国民年金制度と既存のいろいろな共済組合その他の問題との調整、さらに恩給問題との調整についていろいろな困難が横たわっていることは私も存じております。しかし率直に申して、私自身からいえば、きょうあなたのお説に答えて農業共済組合の問題自身に答弁をしたことも、私は実は時期的にはよくなかった。今社会保障制度審議会でほんとうに真剣になって取り組んでおられて、しかも私の観測するところによれば、予定より早く出るという状況であります。そういうふうに皆さんが急いでいられるときに、私がいろいろな意見を述べるときじゃない。むしろその答申を待って、われわれが善処すべきものである、こう私は考えております。
  85. 滝井義高

    滝井委員 どうも大臣大臣になるとすぐに金が穴の中に隠れてしまうようなことを言っちゃいけないんです。前段のうそをついておるかどうかという問題です。これは大臣、いいですか、四月一日から単価改訂はやりますということを言明しておって、日本経済が一夜にして変るわけはない。日本経済の見通しというものは、あなたの内閣は、経済五カ年計画をお立てになり、五年先まで見通した計画を立てて予算を編成されておる。日本経済というものは二・九%、すなわち三%しか今年は上昇いたしません、成長いたしません、しかし平均したら六・五%成長いたしますというその五カ年の経済計画に基いて、昭和三十三年度の予算が出ておる。それは昨年作っておるのですよ。昨年あなたは、四月一日から単価改訂実施するということを言っておる。ところが、それが予算編成過程予算が切られると、今度は十月一日になった。ところが日本経済はそれを許しません。こういうことは私にとったらうそなんです。ところがそう言った単価さえも改訂ができないと言っておりながら、今度は単価どころじゃない、一千億をこえる年金制度を実施いたします、こう言っておるのだから、実施ができるなら、当面問題になっておる恩給制度と年金をどう調整しますかということを私は聞いておる。あなたがやりますとおっしゃるから、恩給との調整をどうしますかと聞いておる。それを答えなければうそになってしまう。うそとかなんとかの感情問題じゃなくて、真剣に今の恩給とどう調整するかということです。これは堀木厚生行政年金をやるかどうかという重要な問題です。その基本構想を、この前太宰局長は、これは非常に大事な答弁だから私はきょうの段階ではできません。――きょうの段階というのは、つまり大臣がおられないからできないとおっしゃったのです。私は、時間もきましたからこれ以上申し上げませんが、しかしこれは恩給法が出れば一番問題になりますので、大臣としては、恩給とあなたの構想せられる年金との調整をどうせられるか、既存の年金との調整を一体どうしながら国民年金制度を実施していくのか、これを御研究になっていただきたい。同時に皆保険政策というものはまだ完成していませんよ。完成していない皆保険政策をも、同時に昭和三十二年度から三十五年度までには完成するということなんです。これも公約されて、その上に厚生年金と恩給をそのまま調整せずにおいてやっていこうとされておる。これはどうしても調整しなければならぬと同時に、今度は皆保険政策と年金との調整が要るのです。この問題も一つ――私はきょうはこれ以上申しませんから、これも研究問題にしておきます。  だいぶ研究問題が出てきましたが、日本の医療機関の実態をもう少し明白にするために、特に社会保険病院中心にしてこの質問の最後に――きょうは答弁ができないので宿題にしておいてやっていただきます。それから今の恩給と年金調整の問題等についても、もう少し先でけっこうですから、ぜひ一つ厚生省としての腹がまえを明確に出してもらいたいと思います。  いろいろ暴言を吐きましたけれども厚生行政を愛する真実を吐露したのですから、そのつもりで一つやっていただきたいと思います。これで終ります。
  86. 森山欽司

    森山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十五分開議
  87. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。質疑を続行いたします。八田貞義君。
  88. 八田貞義

    ○八田委員 厚生省行政一般に対する説明の要旨を拝見いたしまして、大臣に対して質問申し上げたいのであります。  まず第一に社会保障費の問題でございますが、この予算書に対する説明を拝見いたしますと、社会保障費というものを財政規模との関係において比較されて御説明されておるようですが、実際は国民所得と社会保障費との関係をもって論ずるのが正しいのではないかと考えるわけなんです。今度財政規模と社会保障費との関係は御説明があったのでありますが、国民総所得と社会保障費との関係について御説明がなかったものですから、その点についてお答え願いたいと思います。
  89. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 実はよく言われますのは、一般財政の規模に対して社会保障関係経費がどれだけになったかということがよく質問の対象になり、世論の対象になるのでありますが、実際はお話しの通り国民所得との関係においすて対比する方がより正確であるということは、私もその通りだと思います。ただどのパーセントになるか、済みませんが手元に持っておりませんので、政府委員から答弁させたいと思います。
  90. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 二十二 三十三年度の国民所得とそれから社会保障関係費の比率でございますが、三十二年度におきましては国民所得と社会保障関係費の比率は一・三九%になっております。それから三十三年度におきましては一・四八%になっております。社会保障関係費と一般会計の関係は、三十二年度におきまして一〇・一六%、三十三度におきまして九・五八%、そういう関係でございます。
  91. 八田貞義

    ○八田委員 今の数字を拝見しますると、社会保障関係費としましては三十二年度に比べまして百二億円余りふえておるようですが、これは三十三年度の予算全体の増加額、すなわち千七百四十六億円の六%くらいに当るわけであります。しかもこのうち厚生省関係分は五十八億円増でありまして、三十二年度の百四億円増しに比べて半減しておるということになってくるわけであります。従って、先ほど御答弁がありましたように、社会保障費の三十三年度予算に占める割合は九・五%でありまして前年度の同比一〇・一六%よりは低くなっているわけでございます。ただこういった数字の面から見ますると、社会保障費がどれくらいあったならば正しい施策としてあり得るかという問題がありますが、よく外国と比較されて社会保障費の関係が問題にされます。たとえばイギリスに比べて日本がどうだとかなんとかいうことがありますが、日本の社会保障関係費というものに対しましては、内容が非常に外国と違っておるわけでございます。こういったことから考えますると、日本で今言われておる社会保障というものをイギリスの社会保障と比較することはできないわけなんです。  そこで大臣も社会保障関係につきましては非常に御熱意を持って、今まで多方面にわたって検討されておられるわけでありますが、施策にうたわれた社会保障とそれから予算面に現われた社会保障というものが非常にちぐはぐになっているように考えます。というのは、日本の社会保障の内容は非常にばく然としたものであって、そしていろんな人によっていろんな社会保障というものが唱えられているわけなんでありますが、ただ憲法第二十五条に規定されました社会保障と今日言われておる社会保障、これが非常に違っておるわけなんですね。またこの予算書の説明の中でも、社会保障を全般的に取り扱って、公衆衛生も全部この中に入れてきておるわけなんですが、大臣も憲法第二十五条をごらんになるように、福祉国家を作っていく場合には、日本では社会保障と社会福祉と公衆衛生、この三本柱でなければならぬということが明らかに規定されておるわけです。ところがこの予算を見ますとごっちゃになっておりまして、しかも社会保障とか社会福祉とか、憲法に規定された問題は、少くとも特定の人を相手にした一つの施策なんです。ですから公衆衛生とは全く違うのですね。特定の人に出す場合には租税をもってまかなっておるのが社会保障とか社会福祉関係でございますから、一定の限界があるわけです。ところが公衆衛生というのは国民全般に対する問題でございますので、これは利用面から考えるならば、公衆衛生に主力を注いだ施策が正しいのではないか、私はこう考えるのでありますが、こういった予算面から見ました自分の印象というものに対して今申し上げましたのですが、大臣からこの点について御説明願いたいと思います。
  92. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 お説の通りでありまして、外国のと比べるときに、どの問題も実は単純な表向きな経費だけで物事が判断できないことは、実は私社会保障についてはまだ研究の浅い者でございますが、各項目について私そういう経験を持っておるのであります。第一に公的の負担におきましても、国家の形成の仕方によりますと、まず国家が直接負担するのと、地方の自治体自身において負担している場合ということで、各国とも実情を異にいたします。ですから社会保障関係を一般会計の予算だけで比較することは私は非常に困難だと思う。と同時に今おっしゃったように、今度の会計でも、金額的に御比較になる場合にも、昨年とことしを比較いたします場合にも、率直に申して千七百億を標準にとるのか、あるいは実際に使うときめただけの費目の増加額について比較をとるのかという問題で、この率も三十二年度と三十三度の一般会計の率も違って参ります。またこれが後年度に及ぼします影響を考えます場合には、さらに問題は変って参ります。そういうふうな形式的な区別のほかに、実体的に社会保障とは何ぞやという問題で、これは八田さんのおっしゃるように、学者の間でもずいぶん議論がございます。昨日も予算委員会衣で御答弁をいたしたのでありますが、学者的な議論は別にいたしまして、社会保障をごく狭義に解釈する人と範囲を広く解釈する人によって違うと思います。憲法の二十五条二項では、御承知通り社会福祉と社会保障と公衆衛生と三つ並べて書いてあるというふうな情勢からいいますれば、社会保障もおのずからある程度限定して解釈しなくてはなるまい。ところが二十五条の一項から狭く解釈される方も非常にあるという情勢でございますが、今のお話のように、対疾病の問題も、直接的な療養関係の問題を考える以外に、最近の近代国家社会においては、今おっしゃるように公衆衛生と予防という面をさらに取り上げていくというのが漸次の傾向であるというふうに考えますので、私ども社会保障の観念いかんにかかわらず、その面につい  ては努力をいたして参りたいと考えておる次第でございます。
  93. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると大臣としては、日本の社会保障を今後将来あるべき姿としてどういうふうに持っていかれるかというお考えをお聞きしたいのですが、少くとも日本の憲法にうたわれた社会保障という形は、アメリカの社会保障をまねしておると思うのです。そうしますとこれを大臣はイギリスのような社会保障に持っていかれる考えかどうか。これは非常に重大な問題だと私は思うのです。これから日本の社会保障国家を作っていく場合に、憲法に明示された条文と、それから、これから施策を進めていく社会保障との連関をどういうふうにして進めていくか、目標は一体どこに置くのだ、イギリスの社会保障のような状態に持っていくか、こういう問題でございますが、一体どちらの力の社会保障を頭に、描かれてこれから進んでいかれるお考えか、ちょっとお知らせ願いたいと思うのです。
  94. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 憲法の考え方からいいますと、学者自体の中にいろいろな議論がありますのに、私自身がオーセンティックに解釈するのはどうかと思いますが、しかし要するに通説をとれま、社会保障とは国が国民の生存を、公共の扶助または社会保険により確保するという宮沢さんの説が、一応通説じゃなかろうかというふうには考えられます。イギリスのようにとって参るか、アメリカのようにとって参るか、あるいはスエーデンのようにとって参りますか、それらの点につきまして、私自身もいろいろ考えておるのですが、要するに各国で社会保障に関連して種々なる制度が実体的に行われておりますうちで、これはやはりその国その国の実情によって発達はしておるようでありますが、少くとも先進国がやっていることで、弊害を感じているような部分だけはぜひ排除しながら、しかしわが国の国情から見て、やはりこの社会保障の観点の前進というものをはかるのが私の責任じゃなかろうか、こういうふうに考えておるような次第でございます。     〔委員長退席、植村委員長代理着席〕
  95. 八田貞義

    ○八田委員 大臣も御承知のように、イギリスの社会保障はゆりかごから墓場までという言葉でもって表現されておりますが、イギリスのゆりかごというのは、非常に高低さまざまなんですね。貴族のゆりかごもあれば、貧困者のゆりかごもあるということで、スタートは非常にばらばらです。ところが最後の墓場のところにおいて一緒にしてやろうというのが、ゆりかごから墓場までという言葉で表わされている。ですから、老人になれば至れり尽せりの制度がやられておるのですが、日本はイギリスの社会保障をまねするということになれば、出発点は高低さまざまな格好でいってもいいが、しかしイギリスのように老人保障というものをしっかりやるのだということになれば、墓場のところで一緒にしてやるという格好になるわけなんです。今度の国民年金制度の考えなんかも、私はどうもイギリスの社会保障の、墓場のところで一緒にしてやろう、こういうような考えでやっておられるように考えるのですが、日本の社会保障とか社会福祉とかいうものは、みんな生活困窮者を対象としたものなんです。ところが公衆衛生だけはスタートを統一していこう。病気になってから手当をしたのでは金がかかって大へんだ。病気にかからぬようにして、公衆衛生を発達さして、そしてスタートをそろえていこう。教育の機会均等も、やはり同じような意味でスタートをそろえていこうじゃないか。ですから、病気の面についても、教育の面についても、就職の面についても、スタートは同じにして、病気にかからぬような状態にして、ずっと先に進んでいこう。これが日本の憲法にうたわれた、公衆衛生の存在価値を強くいっておるものだと思うんです。ところが日本は、今スタートをそろえようとする施策に対してまだ不十分なんです。不十分なところに持ってきて、すぐに墓場のところにおいて一緒にやろうということになりますれば、一体日本の社会保障の将来のあり方として、どっちの方に重点を注いでいくのか、予算を見ながら、厚生行政の将来のあり方につきまして、始終こういう疑念を持つのです。先ほどの大臣のお言葉では、両方をそろえるような御答弁であったようですが、それを両方そろえるような、いわゆる拡大された社会保障政策をもってやっていく場合には、財源調査というものが非常に大切になってくると思うんです。日本は今までよく政策、スローガンとして、前には結核撲滅対策があげられ、ついで国民保険があげられ、今度は国民年金制度というものが、軍人恩給のはね返りによって、非常に国民の間に大きくなってきているわけです。こういう問題を取り上げてみますと、スタートのところで、初め問題になった結核予防対策というものに対して、これがまだ不十分の間に、もう国民保険をやろう。国民保険が、財源面からまだ実施計画も十分立っていかないような状態に今置かれているその上に、さらにまた国民年金制度がのっかっていくということになると、スローガンだけが先に出まして、財源調査が一つもなされていないじゃないか。これではほんとうの日本の将来あるべき姿の社会保障というものは、だんだんおくれていきはしないか、こういうふうに考えるのですが、この点について再度お願いします。
  96. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私も、実はその問題に一番悩んでいるわけであります。ただ国民保険といい、国民年金といいますが、それは空にできるものではない。一国の国民の富というものが背景になって、そして初めて達成できるものである。そうなると、そこに私は非常に問題が起り得るのだと思います。最近のドイツの例を見ましても、ドイツの経済が敗戦後非常に急速に繁栄してくるといえば、その問題が基礎になって、社会保障関係の経費も進んだ部面ができて参るわけで、ただ空に社会保障を学問的に論議するだけでは、政治の現実になかなか入って参りません。  それからお前は、何だか話を聞いていると二本建てのような気がして、地道な公衆衛生の部面について熱心でないのじゃなかろうか。そうまでおっしゃいませんが、そういうふうな御警告に近いものを含んでおったのではなかろうか、こう考えますが、これまた率直に申して、実際公衆衛生の面は、私厚生省に参りましても、どうしてもこの問題が、近代国家社会としては非常におくれている部面であるということを痛感いたします。これは例をあげるまでもなく、われわれの周辺で日々痛感いたしている問題であります。厚生省が今度公衆衛生局を、実は環境衛生局と予防局にしたいというのも、大きな意味の、公衆衛生全体の観点からみますと、そういう点がおくれているから推進いたしたいというふうに考えておりますし、公衆衛生の面が進みますれば、実は社会保険の方にも直ちに影響して参るわけであります。そういうふうな考え方を私は持っておって、率直に言って、社会保険の方で赤字だ、赤字だというふうな問題も、予防衛生の部面が進んで参りますれば、そしてまた環境衛生の部面が進んで参りますれば、私は医療費は少くなるのだと思う。今は、御指摘の結核対策もそうでございます。そういうふうに考えますと、これは直接につながっていて、両方切り離し得ないが、人間というものは病気になったときには、露骨に言えばその病気について痛感する。その病気が、公衆衛生の部面が完備しておったならば、そういうことをもっと痛感しなくてよかっただろうというおもんぱかりが、やや少いというのが現在の情勢ではなかろうかと思いますので、八田さんのおっしゃるように、確かに現実の問題として、予算編成をいたすときにはぶつかって参る問題ですが、ほんとうに社会福祉国家を作ろうと意図する以上は、現状でも満足すべきでなかろうし、国民自身も、もう少しそういう点に認識が強くなって参れば、現に、ドイツの例をとるのもどうかと思いますが、率直に言って、日本の経済について、最近の実例を御比較になりましても、経済がうまくいくかいかないかで、三億ドルくらいのものはどっちへでもころび得るような日本経済でなかろうかというふうに考えますと、こういう点についての全体の意識が高まりますれば、今よりははるかに私は問題の解決しやすい状況になるのではないか、しかしそんなことをいって、それだけに頼っているのが私どもの責任回避になっても困りますので、私どもとしてはできるだけ今申し上げたような御趣旨に沿って、適切な処置を打っていきたい、こう思っておるようなわけでございます。
  97. 八田貞義

    ○八田委員 公衆衛生の問題についていろいろと質問申し上げたいのですが、まず大臣も説明書の中に結核対策を第二にあげられまして、いろいろと述べられておりますが、この説明並びに予算書を拝見しまして、健康診断が非常に大切であることは十分にわかるわけでありますが、対象人員が相当に大きくとられております。この対象人員が大きくとられておることはけっこうなわけなんですが、現在健康診断に当る機関保健所考えますが、この場合一体健康診断は年何回おやりになるつもりで、この対象人員をあげられたか、年に一回の対象人員としてあげられたかどうか、この点をちょっとお伺いしたいと思います。
  98. 山口正義

    山口(正)政府委員 健康診断結核予防法に基いて実施いたしますが、これは一般の人たちに対しましては、年一回でございます。特殊な人たちに対しましては、さらに大体六カ月の間隔を置いて、もう一回実施するということでございます。それはごく一部分の人に限られるということになっております。
  99. 八田貞義

    ○八田委員 一般の人というのは、一般国民をさしておるわけでございますか。
  100. 山口正義

    山口(正)政府委員 一般国民と、それからもちろん一般国民の中に小、中学生、学校生徒全部入るわけでございます。二回実施いたしますというのは、一回の健康診断で要注意者というふうに判定されました者を、さらに事後措置として実施いたします。それを考えておるわけでございます。さらに患者家族につきましては、定期の健康診断のほかに、また別に健康診断をするということを考えておるわけであります。
  101. 八田貞義

    ○八田委員 大臣にお伺いしたいのですが、現在の保健所の医師の充足率が低く、大体五二%くらいになっておるのではないかと思うのですが、こういった医師の充足率が非常に低くて、現在の保健所の機能としては、健康診断をやるにしても、大体年に二万人くらいだと考えられるわけですね。そうすると、全国の八百くらいの保健所でやるということを考えてみますと、多く見ましても、年間に約二千万人くらいをやるのが精一ぱいになるのですね。このような状態で、一体年二回、もしも健康診断をやるということになりますと、保健所だけでやるという場一合には、数千カ所くらいの保健所が必要だということになってくるわけです。ですからこういうふうに非常に医師の充足率が低く、しかも機能の上から見ても、とてもやれないような数字になっておるのですが、一体どういうふうにしてやっていかれるつもりですか、五千万人が対象になっていると思いますが……。
  102. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 御指摘の通りでございまして、私自身午前中の滝井さんの御質問にも答えたのですが、保健所整備拡充、特に医師の充足、ことに結核についての適格者の、医師の充実ということを考えておったわけでございます。しかし不幸にいたしまして全体の予算の上において私の希望がかなえられなかった、今後の努力に待たなければならぬと思いますが、それにいたしましても実は健康診断の対象になる人が、現在の保健所の力をもってしては十分でないということを考えます。この点につきましては、民間の医者の方方の御援助をできるだけ得ようという態勢に持っていかなければなつらない、こういうように考えている次第でございます。なお詳細は政府委員から答弁をさしていただきます。
  103. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま大臣のお答になった通りでございますが、先ほど五千万人とおっしゃいましたが、その中で一番保健所の負担になって参りますのは、間接撮影をいたしたいとついうことでございます。ツベルクリン反応の実施につきましては、学校の校医の方々あるいはその他一般の開業医の方にも非常に御援助をいただいているわけでございますが、間接撮影の実施が来年度五千八百万人の中で約二千九百区万人を見込んでいるわけでございまして、これを保健所だけでやっていくというのでは、先ほど八田委員からも御指摘がございましたように、現在の保健所の医師の充足率から考えてなかなかむずかしい。そこでけさほど大臣からお話がございましたように、検診班という制度――従来からレントゲン自動車による検診ということを実施はしておったのでございますが、そのレントゲン自動車を運用する人が保健所の人間ということになっておりましたので、どうしても両方の負担が保健所にかかって、なかなか十分撮影ができなかった。三十三年度は新しくレントゲン自動車専門の検診班の費用を計上していただいて、そうして大臣お話がございましたが、一般の医師の方、それから大学の医局あるいは公的医療機関の方々の応援を得て活動してもらって、約二千九百万人と予定しております間接撮影をやっていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  104. 八田貞義

    ○八田委員 その協力態勢の問題につきましてもいろいろと問題があるのですが、これは先に譲りりまして、大臣もいろいろと結核問題について説明を受けられまして、疑問になることがたくさんあると思うのでありますが、現在の結核療養所における患者の状態なんかごらんになりまして、一体結核というものはほんとうになおるであろうか、医学的になおったといわれている患者も今日療養所の中にたむろして実際にいるわけです。これは医務局長にお伺いした方がいいわけでありますが、結核は一体なおるか、こういった施策によって結核をなおすことができるのかという疑問があるわけですが、この点につきまして区医務局長からお答え願いたいと思います。
  105. 小澤龍

    ○小澤政府委員 結核の病気の程度いかんによると考えます。一般的に申しましてごく初期のものであれば、最近の化学療法その他の治療法を加えることによって十分なおし得ると思っております。古い結核はなかなかなおりにくい、さように考えております。
  106. 八田貞義

    ○八田委員 大臣、今お聞きのように早期発見、早期治療というのはそこに重点があるわけですが、そうしますと、それ以外になおらぬ結核も残ってくるわけです。そうしますと、化学療法でもなおらぬ、手術療法でもなおらぬという新たな結核患者が出てくることが想定できるわけです。化学療法でも外科手術でもなおらぬという新たな結核階層の発生に対していかなる措置を考えられておるか、お答え願いたいと思います。
  107. 山口正義

    山口(正)政府委員 八田委員の御質問の趣旨をあるいは間違って解釈しているかもしれませんが、早期発見、早期治療をやればなおるが、なかなかなおらぬこげついた患者が相当数あるだろう、それに対してどういうふうに考えているかというお尋ねかと存じますが、これは治癒という意味が、完全に病巣がなくなってしまうということを意味しますか、あるいは活動性でなくなって停止性になってしまって、菌の排出もない、しかしレントゲンでは何か所見があるというようなものをどういうふうに意味づけるかということになると思うのでございますが、完全に所見がなくなってしまえば、これは治癒でございます。心配ないと思いますが、非常に停止性になってしまって、かといってまだ完全になおったといえないようなものに対して、特別なコロニーのようなものを考えたらどうかというような意見が相当出ているわけでございますが、そういう点につきましては、医務局ともいろいろ相談いたしまして、いろいろな意味での第二種結核療養所というようなものを考えたこともございました。あるいは一種のコロニーのようなものを考えていかなければならぬのではないかというふうに考えております。
  108. 八田貞義

    ○八田委員 大臣、今局長から御答弁がありましたように、こういった新たな不治の結核階層に対しての計画はまだ研究段階にあるようでございますが、研究段階にあるならば、やはりそれに対する予算的措置を今からお考えになって対策を講じておかれることが必要だと私は思うのであります。  それからもう一つお伺いいたしたいのは、結核問題で死亡率が減ったということはだれでも言っていることで、知っているわけなのでありますが、ただ数字として現在五百五十余万人の結核患者が存在しておる。このうち治療を必要とする者は二百九十万人、そうすると二百九十方人のうち直ちに入院を要する者が百三十万人もいるのだと、こういうふうに厚生省の調査は教えているわけなんですが、この数字の中に約十万人くらいの学童が入っているわけです。ところがこれらの結核学童に対しまして、制度的には何ら特別な処置は講じられておりません。全く成人と同じような処遇を受けまして、結核療養所等において猥雑な――と言ってははなはだ悪いのでございますが、猥雑なおとなの雰囲気の中に放置されておる。こういう状態にあるのです。これは結核療養所の実際の雰囲気というものを大臣がごらんになれば、非常に問題点のある療養所の中に子供が置かれておるということはおわかりになると思うのです。現在の状態を見ますると、わずかに一部の国立療養所などで児童のため五十床程度の特別床を作って学習指導などを行なっております。また結核予防法による特例としまして、東京、大阪などの六大都市が小児保養所というものを設けているにすぎない状態であります。それで一体こういった学童の結核あるいは結核児童をどういうふうにして福祉の手を伸ばしていくかということは非常に大切な問題だと私は思うのです。そこで数字としては十万人というようなことを申し上げましたが、実際は結核児童がどのくらいあるのか、これは児童福祉の面から見ましても非常に大切な面だと思うのですが、その調査の数字があればお知らせ願いたいと思います。     〔植村委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二十八年の結核実態調査の結果によりますと、零才から二十才までのもので医療を要すると認められます者が約五十五万という数字になっております。これは今日まで相当変動があったと考えられますが、数字は一応そういうことになっております。それから六才から十四才までのいわゆる就学年令の児童で入院を要すると認められます者が約五万近くあるということであります。それから別の数字でございますけれども、いわゆる長期欠席をいたしております者で、そのうち一年以上の長期欠席、それも原因が結核によると認められます者が二万という数字が出ております。大体そういうふうに非常にばらばらな数字でございますけれども、それによりましても非常に多くの学童が結核にかかっておるということが言えると思うのでございます。それでこれに対しまして、今お話のように国立の結核療養所におきまして、小児病棟あるいは小児病室三の設置を計画をし、あるいは督励をされて現在約九百床あるとか承知をいたしております。それから小児結核の保養所が約千床あると聞いております。これらにつきましては、治療を行いますと同時に学習指導あるいは教育をあわせ行うという形において実施をしておるわけでございます。そういうふうに私どもとしてはここの結核児童につきましては治療と学習の指導ないし生活の指導、そういったいわば生活も一体の形で行えるような子供のための特別病棟あるいは病室というものを整備していき、しかもその運営がうまくいくような適当な方策を考えていくことが、これに対する措置であると同時に、またこの問題は、結核対策全般からいっても、結核の早期発見、早期治療の点からいっても、非常に効果のあることだと思うのであります。今後そういう方向に向って努力をして参りたいと思っております。
  110. 八田貞義

    ○八田委員 大臣、今お聞きのように、結核児童に対する治療対策かあるいは教育対策というものは現在ないわけです。今御説明になった数字も二十八年ですが、実はその後の統計調査というものはできていないわけです。ですからこういった実態を大臣は十分御認識になって、結核児童に対する今後の治療対策あるいは予防対策または教育対策について、私はやはり児童福祉法といったものを対象とした改正も取り上げていかなければならぬ、法律を改正してほんとうに結核児童に対する福祉の手が伸びるような制度を樹立するということが非常に大切な問題であろう、こういうような考え厚生行政の中の重大な点として大臣にお願いしておく次第でございます。  それから、私はいつも思うのですが、食改善運動なんです。農林省では食生活運動というものを起しているようです。厚生省の方では食改善運動なのです。この関係が、農林省と厚生省との間に緊密な連絡なしに行われているのじゃないか。農林省には食改善係というのがあるようです。ところが食改善係で取り上げられている問題は、厚生省が年来指導しておる栄養指導とか食改善というものとは違ったことにおいてやられているわけです。しかも農林省と厚生省とがともに食事の問題について違った観念で動いているわけなのです。というのは、大臣も御承知のように、日本人の主食、ステープル・フードというものは一体何かというと、米だと答えるのですけれども、米は主食であっても、慣習の上からきている主食であって、外国には主食という言葉はないのです。しかも農林省の方は米を主食という考えで、しかも白米を強制配給をしているわけなのです。ところが一方厚生省の方は、白米というのは、これは栄養的に見てあまり意味がない食物だということで、粉食推励をやっておられる。こういうふうな、同じ一国の政府でありながら、農林省と厚生省において食生活に対する観点が違うわけなのです。そこで、今度の予算を拝見しまして、食改善運動に対するところの予算が見えないようですが、一体これはどういうふうなことにされるものか、お知らせ願いたいと思います。
  111. 山口正義

    山口(正)政府委員 三十三年度の予算の中に食生活改善に関する予算がないではないかという御指摘でございますが、これは先般お手元に差し上げました予算要求額事項別調の中には金額の問題もございまして漏れているのでございますが、大体昭和三十三年度は三十二年度と同じだけの予算が計上されておりまして、食生活改善に必要な経費、栄養士法の施行に必要な経費約二千七百六十万円計上いたしてございます。これは主として栄養調査に要します費用、それから集団給食施設等の指導に要します費用、それから食生活改善協議会に要します費用、それから栄養士の国家試験に要します費用、そういうものが計上されているのでございまして、大体前年度と同じ金額が計上されているわけでございます。
  112. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 実際の予算の数字は今政府委員からお聞きの通りでございます。結核対策について、学童対策及び、これはお尋ねになりませんでしたが、学童を中心にしたものというので実は私ぜひやりたいと思っておりますのは、今度学校保健法が出ますが、あれと連携をとって、文部省と厚生省と緊密な連携をとって予防面においては対策を講じていきたい。それから今政府委員から話がありましたような療養と学習とを兼ねたようなことも将来はぜひやって参りたい。そしてまたこういう問題につきましては、ごく軽度の作業なら従事していく、最近よく者えられている労働対策から来たものでございまして、つまり勤労と結核とをどう調整さして、そして幾分とも生産に従事するかというような方法についてのところまで一貫してやって参りたい。それらについては今後十分研究して参りたいと思っております。なお事実、療養所にいた患者でまた病気になると療養所に戻ってくる者が何割かあるわけでございますが、これらについても十分考える。さらに重度の者についても考えて参つりたいと思っております。  食生活改善の問題は、おっしゃる通り、農林省と厚生省との関係でもっと一体的な問題として今後活動して参らなければならぬということも考えるわけであります。ことにこの点は主食に例をおとりになりましたが、農林省自身も、最近御承知通りに、米麦偏重から総合食糧政策というふうな問題に発展して参っておりますときだけに、私どもが農林省と緊密な連携をとって一つの方針で参るということは非常にやるべき時期ではなかろうかというふうにも考えておる次第でございます。さらに、新生活運動の経費が予算に計上いたしてありますが、これらもあわせて総合的に推進して参りたい、こう考えておるわけでございます。
  113. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ちょっと関連して。  先ほどから伺っておりますと、日本の児童の結核問題、あるいはおとなにも亡国病といわれるほどの病気になっておりますが、ここで白書にお出しになりましたカロリーを標準にした点から国際的に調べていらっしゃるのを見ますと、インドと日本とがカロリーの点では同じだということを白書に厚生省は発表をしていらっしゃるのでございまするが、そうなって参りますと、わが国とインドとは人口の面でも非常な差があるのでございますけれども、ここで伺いたいことは、この程度のカロリーによりますればこそ、わが国の結核も非常に膨大な数に上っていっておると思うのっでございます。これだけお調べになりました御当局は、インドの方の同じ程度のカロリーしかとっていない国民の実態もおわかりではないかと思いますが、向うの結核状態はどうでございましょうか、お尋ねしたいと思います。
  114. 山口正義

    山口(正)政府委員 日本のカロリーの基準と申しますのは、戦前からずいぶんございましたが、戦後は昭和二十二年に関係の専門家が集まりまして、当時ございました経済安定本部で一応の基準を作りまして、その後いろいろ専門家が集まっての調査、これは栄養学的ないろいろの調査の結果やや改訂されまして現在の基準が設けられているわけでございます。そういうことを最初に申し上げておきたいと思います。  それからインドの結核患者の状況でございますが、インドは膨大な人口でございまして、いろいろな統計が十分にできておりません。私ども家族計画の問題にしましても、あるいはそのほかのらいの調査とか、結核の調査とか、いろいろ統計資料を見ようと思いますが、インド全体の結核の統計というものは私どもの手に入らないのでございます。
  115. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 インドはむろん国連に入っておって、私の参りましたときもいろいろな問題で活発に発言をしておられたのでございますが、国連あたりからでもそういう統計は得られないものでございましょうか。わが国は幸いにして敗戦国とはいえども、らい患者はすでに二十八、九年に強制収容するということになって、これはインドと比べましたら、インドは百五十万のらい患者が放置されておることを考えますと、厚生省の御努力によりましてここまでわが国の公衆衛生というものが上昇していることを喜ぶものでございますが、私はそういう面も何かの機会に知ることができれば知りたい、こう考えております。
  116. 山口正義

    山口(正)政府委員 国連に加入してWHOの会議にも始終出てきているのでございますが、そういう人たちに直接聞いても見ているわけでありますが、たとえば今のライ患者にしても、結核にしても、比較的数字の整備されている都会だけをとりますと大体の傾向はわかるのでございますが、全国にわたる数字はなかなか集計できないというのが実情でございます。今後も十分連絡をとってそういう数字をできるだけ得るように努力をして参りたいと思います。
  117. 八田貞義

    ○八田委員 それで食生活改善事業として非常に少い予算でしかも内容は相当にいろいろな計画があるわけですが、どういうことを今までやってこられたか、一つお知らせ願いたいと思います。
  118. 山口正義

    山口(正)政府委員 食生活改善の問題は事業としてなかなか実施のむずかしい問題でございまして、現在行政組織的には中央地方を通じて栄養を所管する部局がございまして、末端では保健所に栄養室、それから栄養改善法に基いての栄養相談室というものが設けてございまして、担当の栄養士がおりまして週に何回か母親学級のようなものを開いて指導をする。あるいはそこの栄養士が市町村で食生活改善に関するいろいろな会が催されるというときに出かけていって、いろいろ指導するということをやっているわけでございます。それからその保健所の栄養士が中心になって、その地区々々でそれぞれその土地に応じた食生活の改善のやり方を――これは先ほど大臣もちょっとおっしやいましたが、新生活運動のような地区の組織活動を通じて食生活の改善をやってもらって、それをお互いに持ち寄って府県で検討し合い、いいものを発表し合う、さらにそれを全国から中央に持ち寄って発表し合うというようなこと、それを印刷物にして全部地方に配付して地方を啓発するというようなことをやっているわけでございますが、なかなかそれでは十分に行われているとは申し上げかねるのでございます。しかし先ほど農林省のお話が出ましたが、農林省の生活改良普及員も生活改善について農村に入って参る場合に、食生活の改善ということをやはり一つの旗じるしに掲げてやっているわけでございます。その際に保健所の栄養士と生活改良普及員との連絡が十分でないという批判をしばしば受けているわけであります。そういう点お互いに注意をして改善していかなければならぬと思っておりますが、やはりそういう人たちを通じての食生活改善ということが必要ではないかというふうに考えております。  それからもう一つ現在の外郭団体と申しますか、厚生省も関与してでき上っております日本食生活協会というものがございます。その食生活協会では、国民の食生活改善に関して民間団体として民間運動を起して、雑誌の発行等いろいろな仕事をいたしておりますが、その事業の一つとして栄養改善指導車というものを、これは財源はアメリカからの寄付で八台持っておりますが、これを全国各府県にかわるがわる貸与いたしまして、栄養改善指導車を都会から農村に回して、所々でその地区の人を集めてはその上地々々に応じた食生活のあり方といつうものを専門の栄養王が乗り込みまして指導いたしているわけでございます。そういうことで現在食生活の改善をいたしております。  それからもう一つ重要なことは、集団給食施設に対して栄養士を配置するという建前になっておりまして、その集団給食施設を通じての栄養改善、これは学校給食が一番大きなものでありますが、学校給食やそのほかの施設給食、あるいは病院給食というようなものを通じての食生活改善、病院給食は食生活改善には直接当らないかもしれませんが、そういうことをやっております。
  119. 八田貞義

    ○八田委員 私がいろいろ申し上げているのは、要するに日本は今平面土地農業であって、大体五百五十万町歩くらいの田や畑を使って食糧生産に当り、九千万の人口をささえているわけですが、こういった形態ではとても食糧が増産できないということで、毎年九千万の人口をささえるために二百万トンから三百万トンくらいの食糧を輸入しているわけです。ところがイギリスを見ますと、日本の耕作面積の大体四倍くらい持っておって、百万人くらいの農業従事者が働いて五千万の人口を優にささえているわけです。ところがわが日本は四分の一の耕作面積に一千五百万くらいの農業人口を擁しておって、しかも九千万の人口をささえるだけの生産性がないという根本問題があるわけです。ですから、日本が九千万の人口をささえていくためにどうしても外国に食糧を依存していかなければならぬ、こういった食生活の上において独立をしていないという格好の、しかも米食を偏重しているがためにこういうことが起ってくるわけです。しかも米食偏重で、そのためにエンゲル係数というものは非常に低い。よく生活水準というものを取り上げてエンゲル係数が引き合いに出されますが、実際からいったら、米食にたよっている状態においてエンゲル係数を出してみても、白米が主食になっているのですから、これはどうにもならぬと思うのです。特に農村なんかでは白米をたくさん食べて蛋白は全然とらないというような状態になっているのですから、どうしても食生活改善のためには、日本人の体質改善と結びつく面、すなわち栄養指導面においてもっと機動力のある方法を講じていく必要があると思うのです。ただいま局長から答弁がありました栄養指導車を八台ばかり、日本食生活協会で持ってやっておるそうですが、これは非常にみんなから喜ばれている問題なんですね。こういう栄養指導車なんか国民生活にぴったりする問題なんですから、こういったところに予算の重点を置いてやっていかれるということが必要であろうと私は思う。わが日本は大体国民一人当りの所得が八万円といわれ、昨年あたり九万一千円といわれておるのですが、その半分を食費に回すと見てる、八万円として四万円を食費に回すとすれば国民の一人々々が一日百円の食事費で十分にやっていけるのですね。食事費百円とすればとてもやっていけないというふうな考えを持っておるのですが、実際に今日栄養指導車によって栄養献立を指導されておるのを見ますと、七十八円か八十二円くらいでもって十分に栄養がとれるんだというような指導をやっておるわけです。こういった非常に有意義な仕事に対して、ただ単に白米をどんどん配給して米価問題で毎年々々問題を起すというようなことでなしに、いかにしたならば老いふけない、活動的な人間になるか、人間の体位を向上させるかというと、やはり栄養問題が一番大切だと思うのです。ことしは非常に有用な力を持っている栄食指導車の予算化ができなかったわけでございますが、厚生大臣として三十四年度には栄養指導者の予算をとってみせるというようなお考えをお持ちかどうか、ぜひとも一つお願いしたいと思います。
  120. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 一々ごもっともなお話で私全く同感でございます。と同時に食糧が不足のときにせっかく粉食のくせがついたのがまた戻りつつあるのではなかろうかというような点を憂慮いたしまして、現に厚生白書でも、カロリーは大体とっておるが、脂肪とかカルシウムは基準価値より非常に少いということが実態調査で現われております。そういう点から考えまして、十分この点には今後力を添えて参りたい。三十四年度のお約束はどうかと思まいすが、私が厚生大臣でおります限りは、この面はもっと強化して参ることをお約束いたします。
  121. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して。私はきょう数字を持ってきておりませんが、文部省にある予算でございましょうが、新生活運動のための予算は、聞くところによれば、使い切れないということになって、単に事務所とか数人の人たちを置くくらいのことで一向うだつが上ってないのです。それで私は、厚生省は使いたいのに金がなく、文部省がそういうものを持って使い切れないというのは実におかしいことであると思うのでございますので、閣議でもっておやりになるとき、そういうことも一つ大臣、御折衝下さいまして、なわ張りでもってくくられないで重点的に要るところにやっていただきたい。今も委員の御質問の中にお米の問題が出ましたが、外国人は、日本人ほど電車の中で居眠りしている民族はないということを申しております。これはお米を食べ過ぎるから、いわゆるお米の中にある毒素か、(笑声)そういうことでもってやっておるのではないかという冗談とも皮肉ともつかぬようなことを私は言われたことがあるのでございますが、こういうわけで、私は大いに  一つ文部省のあり余って使い切れないものをぜひ厚生省に回しておもらいになって、活発にやっていただきたいと思います。今大臣もおっしゃいました通り、せっかく粉食になじんでいるものがまたお米に戻ってきている。お米は豊作々々とは言っておりますが、外国から入れてこなければならないのですから、こういう矛盾を何とか一つ解消の御努力を賜わりたいと思うのでございます。後藤新平さんが、年寄りはもうどうにもならぬ、若い世代に新しい考え方を普及しなければならぬとおっしゃったのでありますが、やはり子供たちにしっかり粉食を好む習慣を打ち立てていくということに厚生省は御努力賜わりたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
  122. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 実は新生活運動は、松村謙三氏が文部大臣のときに非常に熱心で、私あの案には参画しました。厚生大臣に就任いたしますと同時に、新生活運動の責任者を呼びまして、今後はぜひ厚生省考えている各種の問題、ことに今御指摘の食生活の問題に  ついて積極的な活動をしてもらいたいというような点――今のところ文部省の所管になっているか、内閣でしたか、はっきり覚えていないが、多分文部省だと思うけれども、その所管に関せず、その所管に属しているからその大臣だけが監督するというのではなく、自主的に積極的にやるべく、民間の積極的な意欲を受けてそれによってやっていこうということが主体でございますから、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  123. 八田貞義

    ○八田委員 それから大臣にお願いしたいが、保健所行政の中で食品衛生とか、環境衛生関係の法律の違反者はどんどん減ってきているわけです。これはもちろん保健所監視員の努力と業者その他の一般の人々の自覚が向上してきたと考えるわけであります。さらに実際にやられている方法を見ますと、告発する前に改善命令を出す、それで徹底しない場合は営業の禁停止を行政的に行い得る、こういうふうになっておるわけですが、そういった行政上の趣旨が徹底しているために、食品衛生とか、環境衛生関係の法律の悪質違反は滅ってきておる。ところが狂犬病予防法、へい獣処理法、伝染病予防法とか性病予防法など、主として個人を対象とした法律の違反は非常に多いのですが、いずれも罰則が比較的軽い、そのほとんどが告発されてない、こういったことでありますと、保健所職員の熱意がだんだんさめてくる。法律に従って告発するためには、相当の研究と調査をして情熱を傾けてやるが、実際は告発してみても取り上げられない。取り上げられないものですから、だんだん情熱がさめてくる。憎まれ損だということで、現在こういった個人を対象とした法律違反が非常に多いにもかかわらず何ら告発されてない。狂犬病予防法など実際あってなきがごとき状態になっておる。この点は非常に問題だと思う。狂犬病予防法を一つ例にとってみますと、東京都内には大体二十五万頭の犬がおって、正式に登録されているのは十五万頭だ。完全な野犬は五千頭で、残りの九万五千頭の所有者はすべて違反者になっているわけだ。さらに予防注射を受けないものを含みますと、その数は非常に多いのです。悪質なものは告発するようなことをやっておりますが、多くは不起訴になっておる。これは罰則が非常に軽いせいではないかと考えるのですが、この点につきましてどういうふうにお考えになるか、今後の保健所行政にとって非常に大切な問題だと思いますので、伺っておきます。
  124. 山口正義

    山口(正)政府委員 今八田委員から、環境衛生関係、食品衛生関係、その他伝染病予防法、性病予防法、狂犬病予防法などについて罰則が軽い、あるいは告発しても不起訴になるというようなことで、なかなかその法の施行が十分行われていない、違反者に対する罰則、処罰規定が十分行われていない、こういう御指摘がございました。ただいま環境衛生関係、食品衛生関係については比較的よいということでございますが、率直に申し上げまして、なかなかそれも十分に行われ得ない。そこに先ほどお話が出ました、告発しても不起訴になるというような点もあるのでございますが、私どもこれは衛生行政をやる際に、今さらそんなことは申し上げるまでもないことでございますが、罰則を振りかざしてやるということが問題ではなく、やはり指導行政を建前としてやって処罰は最後の手段としてやるという趣旨で指導はいたしております。しかし悪質なものについてはやらなければならないのであります。今朝も衆議院の法務委員会で性病予防法の違反事例についてのお尋ねがあったのでございます。実際に存在するよりも法的に処罰が行われている数は非常に少いのでございます。それは処罰規定が軽いからかどうか、食品衛生法等については先般改正して少し重くしてもらっているわけでございますが、全体のバランスがございますので、処罰の軽重については法務省の刑事局と十分打ち合せしてやっていかなければならぬと存じます。私どもとしては、現実に違反者に対してはできるだけ指導していって、それでいかないという者には、やはり処罰規定を的確に適用していくようにやっていかなければならないと思います。現実はただいま御指摘のように、なかなか十分に行われていないということでございます。
  125. 八田貞義

    ○八田委員 大臣に知っておいていただきたいことは、今保健所関係の法律が五十八あるのです。ところが五十八の法律を六一%くらいの人的整備ではとても運営できないのです。さらにまた営業関係の法律だけでも十四くらいあるのです。今局長からは指導によってやっていくのが保健所行政であるからというお話があったのですが、法律が非常に古くなっているのです。伝染病予防法一つを取り上げてみましても、古典的なものになっちゃった。これは早急に改正しなければならぬ。罰金などを見ても三百円以下、二百円以下というのがある。こういうことを考えますと、指導だけで、二百円、三百円なんかの罰則で実際に告発する意欲はないです。これでは、やはりほんとう保健所行政に熱のある活動ができない、こう考えるわけですから、局長のいわゆる指導によってやっていかれるという基本信念はいいですよ。しかし、実態は伝染病予防法一つ、取り上げても、三百円以下、二百円以下の罰金ということとになっておりますと、これで実際にやっていけるかどうかという問題です。早急にこういった問題は再検討して、近代立法に直す必要があると思うのです。この点いかがですか。
  126. 山口正義

    山口(正)政府委員 先ほど保健所で取り扱っている法律の数を申されましたが、その中には比較的新しく制定されたものもございます。それからただいま御指摘になりました伝染病予防法などは古いものの一つでございますが、必要なものについては改正していかなければならないと存じます。水道条例もあまり古いものでございましたので、この前の国会で改正していただいたわけでありますが、必要に応じて改正をしていかなければならないと存じます。伝染病予防法についても、過去数年来改正すべきであるという声は伺っております。ただ、これは非常にうまくできている法律でございまして、それを改正するのはなかなかいろいろな問題を含んでおりますので、慎重に検討しているわけ正であります。罰則の点は、今御指摘になりました伝染病予防法の三十条、三十一条の中に書いてあります金額の五十倍というふうに改正されておりますが、そういう特別な措置は講ぜられております。しかし、そのほかの点についても改正すべき点はやはり改正しなければならぬと思います。
  127. 八田貞義

    ○八田委員 伝染病予防法がよくできているということは私も認識しておるのです。しかし、現在の近代防疫陣にはほとんど適用できない面がたくさんある。内容的に検討される時期に来ておるわけなんですから、こういった問題につきまして御検討を願いたい。  それから大臣にもう一つ、犬の問題で、予算委員会でちょっと質問しておいたのですが、犬の放し飼いを狂犬病予防法よって取り締っておる。ところが、これが徹底しておらぬわけです。これは食糧問題の面から見ても考えていかなければならぬと思います。というのは、犬は人間一人くらいの食糧をとっている。これは米を食っている。日本の犬は雑犬が多い。雑犬なんか飼っておって一体、どういうことになるか。厚生省では受胎調節運動で家族計画の普及のために予算をと七千万円取っておられますが――人間に対する受胎調節はもちろん必要ですが、犬に対する受胎調節というのも考えていく必要があるのではないか。前の予算委員会質問したときには、犬は農林省の管轄だと言われておったのですが、狂犬病予防法というのがあるのですから、狂犬病予防法を改正して犬の雑婚、野婚を取り締っていくことが必要であろうと思うのです。前にも申し上げたのですが、非常にたくさんの野犬がおって、これが毎年々々犬算式にふえていく。しかも一方においてセパートとかコリーとか新犬種をどんどん輸入するというふうなことになっている。そこでやはり犬の放し飼いというのは、犬をむやみにふやさないという見地から見ても徹底して取り締っていく必要があるわけです。長崎市では三十二年の四月一日、全国に先だって畜犬取締条例というものを制定しました。そして問題の核心とも言うべき放し飼いの禁止と、連行にはくさりまたは綱をつける、こういったことを規定しておるわけです。畜犬全体の取締法としては完備したものとは言われないのですが、こういった犬の放し飼いを取り締っていくためには、狂犬予防法を包含した畜犬法というものを制定して、各都道府県はこれによってその地区に応じた施行細則を定めて実施していくという筋合いのものであると私は考えます。こういった法律を作っていかなければならぬ段階にきておるのですが、畜犬税というものが障害となっているのです。大臣も御承知のように、畜犬登録というのは毎年更新されております。その都度登録手数料というものを徴収されております。これは狂犬病予防法の第二十二条によって狂犬病の予防のみに用いなければならないと規定されておるわけです。ところが、実際にはこれが使われていないのです。こういった手数料のほかに別の畜犬税を課しておる地方が五県と千百四十五カ市町村あるわけです。こういう数字は全国の市町村数の三割に当っているわけです。その税額を見ますと、二億四千万円に達しておるわけです。ところが二億四千万円の金が、今然何ら犬のために使われていないわけです。こういう状態では、先ほど申し上げましたように、野犬というものはどんどんふえてくる。何ら犬のための施策がなされていない。こういう状態になっておるわけでありますから、畜犬取締法というふうなものを実際に作って、その点について、税金を取ったならば犬のための施策を講じていくのだということを考えてやらなければならぬと私は思うのです。この点狂犬病予防法の今後のあり方について、私は問題点を大臣に申し上げたのですが、これは厚生省内にあってもよく相談されまして、実態はこうなっているのだ、しからば今後犬の取締りというものは一体どうしていくのだというようなことについてやはり御研究を願いたいと思うのであります。
  128. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 いろいろ教えていただきましてもう頭を下げますが、根本的に私は外国人等の犬の飼い方を見ておると非常に違うと思うのです。ほんとうに犬を愛するということがどういうことかということ自体が大切なことじゃないかと普段考えておったのですが、今いろいろ御指摘の点につきましてはよく研究をいたしたいと思います。
  129. 八田貞義

    ○八田委員 それから今度は日本の医療保障という問題についてお伺いしたいのですが、日本の医療保険制度は結核予防とか、あるいは性病予防、伝染病予防などの公衆衛生行政との十分な調整というものがないのです。個々別々に運営されておる。ですから、公衆衛生行政との完全な結びつきを根本的に考え直すのでなければ医療保険制度というものはうまく運営されないのだ、こういう状態になっておるわけであります。それからまた生活保護法による医療扶助制度も医療保険制度と完全に融合した態勢になっていないのです。これもやはり改変していかなければならぬというふうな状態になってきているわけです。こういった、同じ厚生省でありながら医療保険行政と公衆衛生行政というものとが個々ばらばらに軍営されているというところに問題点があると思うのです。この点につきましては、大臣はこれらの結びつきをいかように調整していったならば、ほんとうの意味の医療行政というものがうまくいくかということについて御検討願いたいと思うのであります。  それからもう一つは、国民保険実施していく場合、今日は地域保険と職域保険の二つになっているわけであります。ところがまだ職域保険にも入っていない、あるいは地域保険にも入っていないという人が多数あるわけであります。一体どうして未加入者が現在あるのかという問題でありますが、第一は、職域保険の場合について考えられることは、五人未満の事業所の従業員に対しては医療保険結成の規定が現在ないわけなんです。こういった問題が一つあるわけでございます。大都市では住民の大部分が職域保険に入っておりますために、これから漏れた住民を入れる国民健康保険の組織というものができていないわけです。こういった二つの原因が考えられるわけでありますが、この五人未満の事業所の問題につきましては実態がなかなかつかめないということや、あるいは保険料徴収の技術的な面とか、あるいは事業体そのものの確認がむずかしいといったことから、健康保険に入れるかあるいは国民健康保険に入れるかという問題が未解決のまま今日まできたわけであります。特に考えなければならぬことは、五人以下の事業所の場合こういった感情も見のがすわけにはいかぬと思うのです。同じように雇用されている勤労者が、全額給付を受ける健康保険と半額給付を受ける国民健康保険とに分けられているということは非常に納得ができない。なぜ全額給付の健康保険に入れてくれないのだ、半額給付の国保に同じ勤労者でありながら入れるというのは一体何だ、こういった感情も無視できないわけでございます。こういったことに対しまして、今度の国民保険計画を見ますると、職域健康保険の方には、大体五万人くらいですが加入者を勧めていく、あとの残りは国民健康保険にやっていくのだ、こういうことが述べられておりますが、結局は保険給付のアンバランスということが非常に問題になっていると思うのであります。  そこで、国保の現在の一世帯当りの保険料とそれから保険給付との関係から見まして、保険料の増額をどれだけやり得る幅が現在あるかという問題です。現在二千四百八十五円くらいが一世帯当りの保険料というふうに考えておりますが、現在の国民保険をやっていく場合一体これをどこまで伸ばし得る幅があるか。保険料を上げて保険給付をもう少しやっていくというのは――現在国民健康保険というのは日本独自の制度でございまして、外国には見られない制度です。しかも国民健康保険には現金給付というのがない。いろいろと問題がございまして、それは結局は保険料の問題に結びつくかと思いますが、今後保険料を上げて保険給付を上げていくというようなことにつきましての幅ですが、その問題について見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  130. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 医療保障の達成のために、社会保険関係と公衆衛生及び医務行政との結びつきという点について研究しろというお話で、答弁を御要求になりませんでしたが、私も、皆保険をやって参ります上においてはこれは一体的に非常に必要なことだと考えておりますので、この点の改正努力いたしたいと思っております。  それから今の、各種社会保険につきまして給付の内容を異にするという点が、将来の社会保険の統一化と申しますか、そういう問題から見ますと遺憾な点が非常にあるということですが、さしあたりのところどの社会保険にも入っておられない方が社会保険制度という特徴のある近代的な組織を利用されることが国民生活安定の上でどうしても必要であるというので皆保険を急いでいるわけでありますが、これらの問題につきましては、今後皆保険完成と並行いたしまして逐次解決していかなければならぬ問題である、こういうふうに考えておるのであります。  実際のアンバランスから、保険料を負担能力とかみ合せていったらいいかというような具体的問題については、政府委員の方から答弁さしていただきたいと思います。
  131. 高田正巳

    高田(正)政府委員 国保の全国平均の保険料年額は、大体今八田先生からお話がありましたように、三十一年度一では一世帯当り二千八百五十円程度ですございます。これは二十六年以来の数一字が手元にございますが、逐年一世帯当りの保険料額は相当程度増額されてきております。平均をいたしまして大体二、三百円程度増加をしてきております。さてしからば今先生の御質問の、これ以上に保険料を増徴することができるかどうかという問題でございますが、これは各市町村によりましても事情が違いましょうし、また国民所得の伸びが今後どうなるかというふうなことによりましても、いろいろと非常に複雑な問題として検討いたさなければならぬと思います。しかし私ども考え方では、そう無理な増徴はできないにいたしましても、これでもう限度ぎりぎりであるというふうには実は考えておらないのでございます。  なお給付率の関係でございますが、これはたしかに私どもも先生御指摘のように、国保の給付率をもう少し上げたいという念願を持っておるわけでございます。これを一時に全部引き上げるということにいたしますと若干無理も生じまするので、それぞれの保険者の事情に応じまして逐次引き上げるという方向を考えておるわけでございます。なおさように引き上げました場合には、しかも取るべき保険料は取っておるというふうな場合におきましては、今回十月一日から実施しようといたしておりまする調整交付金の一部等で、そういうふうな奨励的な手当と申しますか、そういうふうなことをも考えておるようなわけでございます。
  132. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して。厚生省におかれましては、国民保険というようなことをお考えになっておるようでございますが、国会の議員さんたちがどれだけ健康保険に入っていらっしゃるか。ここにいらっしゃる数人の方にお聞きいたしましたけれども、どなたも入っていない。灯台もと暗しの感を私は持つのでございますが、厚生省におかれましては国会の衆議院あるいは参議院の方で今どれだけが健康保険に入っておって、どれだけが入っていないかということをお調べになったのでございましょうか。まず隗より始めよで、もし相当数の人が健康保険に入っていないとすれば、そういう手をお打ちになって、まず国民に手本を示す。――私もむろん入っておりません。ここ  にいらっしゃるお医者さんの加藤先生も入っていないし、田中先生も入っていないということを聞いております。むろん団体生命保険には入っております。そういう生命保険には入るように、党内において手を打たれておるのでございますが、ちょっとしたおなかが痛いとか頭が痛いとか疲れたとかというなら、ここの医務室でお世話になれるのですけれども、われわれこういう激しい生活をいたしております者が病気になって長期治療をしなければならぬというようなときには、健康保険というものがあればありがたいと思うのです。私も昨年の夏ちょっと悪くして、東大に診察に行きました。ところが、国会議員ですからあなたは健康保険をお持ちでしょうと東大の医長さんに言われて、いや私は持っておりませんと言ったら、国会にはそんなものもないのかと言って不思議な顔をして私の顔を見られたときに、全くこれはわれわれとしては手落ちではないかということを考えたのであります。いずれ御質問申し上げようと思いましたけれども、忘れるともなしに忘れておりましたが、今日この問題が出ましたので、御当局におかれましては参衆両院とも、どれだけの人が健康保険に入っていて、どれだけの者が入っていないか。そうしてこのごろなくなられました方の御病状を見ておりましても、急になくなった人もありますけれども、胃ガンだとか肝臓ガンだとかいうことで、相当長い療養を要するということで死んでいく人がございます。国会議員のお給料というものは世間ではえらい高いように思っておりますけれども、なかなかそんなものではないと私は考えておりまするが、そういうわけで、いざ病気ということになったときには、健康保険もない議員さんたちは、何か会社の社長だとか、あるいはそういうふうなことをしている人は平気でしょう。しかし私みたいに家庭婦人ですと、また自分がどうなろうとも家族の者にささえられることがあり得るのですけれども、御本人がほかに職業を持たないで、代議士というものによって生活をしている人々たちの末端というものは哀れなものだと思うのであります。官僚には恩給あり、国会議員には恩給なしというような実にみじめな立場に立たせられている。いわゆる病気というものは結局貧乏神なんです。貧乏追放ということは病気の問題から入っていかなければならぬというのが私の信念でございまするが、そういう意味でそういう御調査をなさったことがあるかどうか、何人が現在健康保険を持っておるか、持たないかということをもし御存じならばお知らせいただいて、御存じがないとしますれば一つ御調査いただきまして、大臣の政治力をもってそういうことに――解散も近いかもしれませんが、今さらそんな問題じゃないじゃないか、大臣は参議院でいらっしゃるのですから、解散でも済んでかつらにしようとおぼしめすかもしれませんが、一つその辺をお知らせ願いたいと思います。
  133. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今御指摘のように、国会議員の方で別に会社に御関係があるとかあるいはまた住所地の方でその市町村が国保をやっておる。御郷里になりますか東京になりますか、先生のような場合には両方とも国保をやっていないと思うのでありますが、そのいずれかで国保をやっておるというふうな方々は、被用者保険あるいは地域保険にお入りになっておるわけであります。ただそういう方が国会議員の方々のうちで何人おありになるか、大へんうかつでございますけれどもども調査をしたことはございません。そこで国会議員ということで一つの医療保険機構考えまする場合には、被用者保険でもございませんし、また地域保険でもございませんで、結局今の国保の中の特別国保というふうな組織のものが考えられるかと思います。しかしなかなか出入りも相当激しい方方までございすので、その辺で組合といたしましてどういうふうな格好になって参りますか。私ははっきりしたことは存じませんが、過去においてそういう御計画が一度あって、それが立ち消えになったようにもちょっと小耳にはさんでおるわけでありますが、私自身がその御計画を伺って中身を知っておるわけじゃございません。やるとすればそういう方向になるかと思います。
  134. 八田貞義

    ○八田委員 国民健康保険を進めていく場合に、大都市にどうして国保が普及しないかという原因についての数字的な根拠、なぜ伸びないかという原因についての数字的な根拠というものが出されていないわけなんです。こういったことは厚生省の方におかれましても、なぜ伸びないかというふうなことにつきまして科学的な根拠を御明示を願いたいと思うのです。  それからもう一つは、医療保障の確立ということが国民健康保険の拡充というところに重点を置いていかなければならぬという現状からしますと、先ほど申しましたように、給付費の差異というものをどうしてもなくすような財政計画を立てていかなければならぬと思うのです。それとともに医療保障というものを現在の相互扶助的な保険でいくのか、あるいは政府が責任を持つ公営制度にするかという問題につきましては、今までのいろいろな御答弁とか、あるいは社会保障制度審議会なんかの御意見を拝聴しましても、従来の制度というものを充実していくんだ、こういう御意見のようでございます。そうしま今の制度でいく場合問題となってくるのは医師の片寄り、これを一体どうしてやっていくかという問題こういった点については、大臣国民保険への構想として大切な問題であると思うのですが、御答弁を願います。
  135. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大都市にどうして国保が普及しなかったか、その数字的な説明をしろという第一点の御質問でございます。これはなかなか数字的には説明をいたしかねるかと思いますが、原因を大まかに申し上げてみますれば、従来の国民健康保険というのは八田先生もよく御存じのように、農山漁村を頭に置いて、しかも相扶共済といいますか、そういう意識の非常に強い制度でございます。従いましてそういうふうな、たとえば東京都とか大阪市とかいう例をとってみますと、お互いに隣同士でも、お隣の人は何をしているのか知らないというふうな、いわゆる最近の都会生活の状況でございまして、従来の国保の考え方からいきますと、これは現行法に底流として流れておる一つ考え方でございますが、そういう考え方にあまり大都市というものがなじまなかったということが、一つの精神的といいますか、無形的な理由であろうかと思います。そのほか具体的には出入りが農山村と違いまして非常に激しい。その人の所得等をつかむにもなかなかむずかしい。そういうふうな人の面から、保険料を賦課し、徴収するというふうな技術的な面におきまして相当むずかしさがあるというふうなこと。なお出入りの問題につきましては、これは数字的に東京都はどのくらいあるとか、あるいは何々市はどのくらいあるかということは数字的にわかっていて御説明申し上げられます。  それからいま一つの問題は、先生も御指摘のように、大都市におきましてはいわゆる中産階級といいますか、勤労階級が、被用者保険に相当多くとられる。たとえば東京都等を例にとってみますと、東京都の人口の中で国保の対象になりますのは、私ども三百万見当と抑えております。あとはそれぞれ被用者保険の方で吸収をされておる。従いまして、そのあとの残ったものを組織し、医療保険の技術に乗せていくということが、なかなかむずかしい問題である。そこいらのところが、一番大都市に普及しなかったゆえんであろうと思います。ただそのかわりに大都市におきましては、職域を中心といたしました特別国保というものが発達をいたしております。農山漁村と比べますと、組合等を単位とした、同業組合等を地盤にした、そういう組織が比較的地方よりは発達しております。  それから第二点の医療機関をどうするかというふうな問題でございますが、これは御指摘のように、皆保険を推進いたしますためには、当然医療機関から給付を受ける便宜というものを、なるべく公平にしていかなければならぬ。非常に便利なところと不便なところとあるということは、公平の原則から申しましてあまり適当ではないということは当然であります。しかし今一時にそういう公平化を期するということは、これは医療機関の配置に対して何らかの規制を加えるというようなことにもなりまするので、さようなことも不適当なことである。従いましてまず医療機関のないところにそういう医療機関を作って参るということは、ぜひともいたさなければならぬことであろうかと存じます。医務局の方の予算にも出ておりますし、また私どもの方の国保の直診予算、これらもわずかな額でありますが、そういう点をねらったのであります。
  136. 八田貞義

    ○八田委員 国民保険を進めていくためには、午前中滝井委員も触れておったようですが、医療機関整備というものが非常に大切になってくると思うのです。というのは、現在厚生省所管以外の国及び公社の開く病院というものは開設数においては全体の四・七%でさす。ベット数は約八・六%を占めておるわけであります。これらの医療機関はいずれも特定多数ですね。たとえば職員並びにその家族に対する診療を目的とする病院であるということになっておりますが、その整備についてはすべてが全額国費でまかなわれておるわけであります。ところで代表的な現業公社における病院昭和三十年度の経営内容というものは、いずれも多額な赤字経営となっておるわけであります。これは一体どういうことかと申しますと、診療単価が社会保険よりもはるかに下回った、三円か六円程度の安価な診療単価で実施しておるのだ。こういった歳入不足の赤字というものは、それぞれの企業体の事業収益で穴埋めしておる。さらにまたその所属職員及び家族に対する福利厚生のために、いわば労務管理の費用として大きな金額が使われておる。こういった国費で開く病院が、国全体の医療機関の都市偏在をますます助長しておるのだ。しかも労災病院とか警察病院などは、それぞれ労災協会とか、あるいは政府とか府県共済組合、警友会が運営しているなど、経営者がまちまちであって、運営の内容が不統一である、こういったふうになっておるわけでありますが、こういったことから考えまても、国民に医療の機会というものを均等に与えていくためには、現行の医療法を根本的に改めていく必要があると思うわけであります。厚生大臣は、厚生省所管以外の三公社、五現業とか、その他のいろんな病院においてやられておるこういったばらばらな病院行政に対して一元化をやっていかなければならぬということは、医療の機会均等を与えていく場合にはどうしても必要な事項なんです。ところが現在厚生大臣による取締りは何らできないわけです。ですから医療法を根本的に改正していかなければならない、こういう状態になっているわけなんですが、大臣は一体病院行政の一元化ということについてどのようにお考えになっておるか。国民保険をやっていく場合に、これは非常な問題であろうと思う。この点ちょっと大臣の御答農をお願いします。
  137. 小澤龍

    ○小澤政府委員 医療機関の地域偏在についての問題でございまして、先ほど保険局長からもその一端をお返事申し上げたのでございますが、なぜこのように地域的に医療機関が偏在するかの問題でございます。  これは御承知通りに、わが国におきましては古くからの伝統で、医療機関につきましては自由開業医制が建前となって、今日も行われておるわけであります。従いまして、たとえば病院について申しますならば、これは許可制にはなっておりますものの、病院ができ上ってから、その内容が医療法に適合するかいなかを検討するわけでございまして、医療法に適合しておる限りにおきましてはこれを許可せざるを得ない建前になっている関係からいたしまして、次第に地域的偏在の程度をものに対しまて、医療機関の計画配置をやるためにメスを加えることができるかできないか、これは非常に大きな問題だと考えるのでございます。特に憲法でいいますところの営業の自由の原則から申しまて、私的医療機関に対して自由開業医制を認めないような措置をすることは非常に困難なことだと思うのでございます。しかしながら公けの資金を使う病院については何とかこれを規制して計画的配置に持っていきたいということは、私どものかねてからの念願でございまして、都道府県市町村等におきまして開設いたします病院につきましては、その主たる財源を起債に仰いでいる関係から、またそれらを私どもがあっせんいたしている関係からいたしまして、資金面からの配置の規制をやっておるのでございます。問題は国の金を使う病院の開設でございます。ただいまの御質問の焦点もそこにあるかと存じます。これはただいま御指摘のごとくに、医療法を改正するかどうか等、特別な処置を講じなければ、現状を変更することは困難だと考えております。ただ鉄道病院にいたしましてもあるいは専売公社の病院にいたしましても、治療する対象は当日事業場に働いております職員並びにその家族に限定されます。つまりその事業体における特別な厚生施設の一環としてやっておることでございます。これをしも計画配置に取り入れていいかどうかは大きな問題だと考えるのでございます。一般大衆に解放せられる国費を投ずるところの病院につきましては、今後われわれは研究いたしまして、何とか医療機関の適正配置の線に乗せるような措置を講じていきたいと考えておる次第でございます。
  138. 八田貞義

    ○八田委員 今局長の御答弁にありましたが、国費で建っている病院言である限りは、職員の労務管理に支障のない限りは一般に解放すべきだ、私はこれは強く思うわけでございます。さらにまた公的な医療機関については、現業職員だけ低料金なのを一般並みに改める、その管理運営については厚生省で一元的に行うのだ、今後厚生大臣の手でもって医療機関の適正配置をやるのだということをぜひお願いいたしたいのであります。今事務当局の御意見ではいろいろと各省間の調整がむずかしいという御苦心を伺ったわけでありますが、これはやはり大臣という立場から大きく見た目でもって、一元的に医療機関というものは厚生大臣の手で調整するのだ、こういったことをおやりになる考えがあるかどうか。現在の実態を御説明申し上げまして、厚生大臣の御決心をお伺いしたいと思います。
  139. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 実は厚生省に参りまして、国民保険の推進に当ってみて一番今痛感いたしておりますことは、医療機関整備、その体系化の確立というふうなことがやはり一番実体的なものである。しかも一方におきまして、日本の現状から見まして、いわゆる開業区に依存するということが非常に大きい状態である。これらがまた互いに繁栄に向うというふうな方向をさらに立てなくてはならない。まことにむずかしい問題に当面いたしておるのでございますが、実はことしはこの問題と取り組もうと心ひそかに考えておるような次第でございます。
  140. 八田貞義

    ○八田委員 どうか一つ、この問題は大臣の大きな政治力によってぜひとも解決をお願いいたしたいと思います。そうしませんと、これが都市の医師偏在を大きくしているのです。この問題を解決しない限りは幾ら国民保険を叫んでみてもできないのです。まずこういった公社とか現業機関とか、あるいは各省においてばらばらにやられる医療機関の問題は、やはり国土計画に沿った大きな見地からやられていかなければならぬと思うのです。それでなければ雨後のタケノコのようにどんどん勝手に出てきて、とんでもない、国民保険とは違った状態が起ってくる。こういう点が現有国民保険をして最もじゃまにさせておる点でございますので、大臣はこの問題が今後の国民保険を進めていく上に最も大切だということを十分認識されまして、ぜひとも――この問題は何回か問題にしているのですが、堀木厚生大臣の手によってこれが実現するように強く要望しておくわけです。大臣もう一回、一つ大臣の期間中にこの問題を各省間の調整をとって実現するという気がまえのほどをお知らせ願いたいと思います。
  141. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 どうも工合の悪いときに厚生大臣になったものだとつくづく痛感いたしております。これは御質問の八山さん自身がいかにむずかしい問題かということを御認識の上に立って、あえて私に解決しろというお話なのでございます。私はこの問題が、ほんと言うに国民保険と口で言うのはやさしいが、診療報酬の決定も、それから地方財政との調整も、たま医療体系整備という問題も、何カ年か残ってきた問題です。それを何と申しますか、皆さん万御承知の上で、何でもかんでも仏のときに解決しろとおっしゃるのでありますが、私はしかし少くとも医療費の問題、地方財政の点も御不満ながら一応レールを敷いていく。そう言いましたら、あるところで曲ったレールだと言われまして恐縮に存じたのですが、とにかく今まで全然なかったのをある程度引き出した。残っておるのは、率直に言って医療体系整備なん、です。私どもこの皆保険の問題を、私が参りましてからいろいろ難問題と取り組んでいるうらに、この問題を抜きにしてはだめなんだ、事務当局にすでにそれについては、ことしはやるんだから、少くとも従来に増してこの問題について解決に当るような方向で渾身の努力をしてくれ、私もその問題について取っ組みたい、こういうことを言っているような次第でございます。また曲ったレールだと言われるのは、心配なんでありますが、ともかくも厚生大臣である限りは、この問題を抜きにしておくわけにはいかないと、心ひそかに決心はいたしております。
  142. 八田貞義

    ○八田委員 大臣は曲ったレールとおっしゃったのですが、曲ったレールでも何でもいいですから、ぜひともこの厚い壁をぶち抜いていただくことをお願いしたいのです。そのためにはやはりどうしても、何としても一つの規制を加えていかなければならぬということは、大切な問題なのですから、国全般の医療機関整備の見地ということから、必要な立法的処置を講ずるのだということが考えられるということが一つであります。それとともに閣議決定に基いて、事実上そういった施策が行われるような処置を講ずるという二つの点があると思うのです。どうか大臣、決してレールはまっすぐ引っぱらなければならぬものではありませんから、曲ったり、いろいろくねったりしてレールは敷いてけっこうなんですから、ぜひともこういった立法処置で対処するか、あるいは閣議決定でそういった処置ができるような方途を講ずるか、この二つの道があるわけなんですから、大きな問題には違いないが、大臣ならば必ず私はできると思うので、大きな期待を持って、また協力さしていただくことにいたしまして、ぜひとも実現して下さらんことをお願いいたします。なお医療費問題等につきまして質問をいたしたいわけでありますが、時間も参りましたので、別な機会に質問さしていただくことにいたしまして、私は質問を保留して、これでやめます。
  143. 森山欽司

    森山委員長 岡本隆一君。
  144. 岡本隆一

    ○岡本委員 先般質問申し上げました場合に、保険の問題について、局長がおいでにならないで、質問を留保しておりますので、それらの点についてお伺いしてみたいと思います。  まず第一に、今度国民保険に備えるために、国民健康保険改正案をお出しになる模様であります。それについて五人未満の事業場に働いている人たちが長い間懸案として問題となって、先般新聞の報道を見ますと、その五人未満の事業場に働く人たちは健康保険の被用者保険の方に任意包括の形で吸収する、こういうような報道があったのでございますが、そういう人たちが、国民保険でなしに健康保険の被用者保険の方に吸収されるということは、私は非常にけっこうなことだと思う。しかしながらそれをどういう形で吸収しようとされるのか、具体的に御説明を願いたい。
  145. 高田正巳

    高田(正)政府委員 零細事業の被用者の方々をどうして保険の綱に入れていくかということにつきましては、私どもいろいろ検討を実は加えておるのであります。それでただいまも御指摘がございましたように、これは被用者という立場でございますので、できるだけ被用者保険の方え取り入れていきたいという気持を相当強く持っています。ところが実際にそういう企業の実態なりあるいはそこ働いております人々の賃金の形態とか雇用形態とか、そういうようなものを調べて参りましたり、あるいはまた異動性等を調べて参りますれば、なかなか今の被用者保険そのまま全部一緒に包括していくというには無理のある実態が相当あるわけでございます。従って私ども考えといたしましては、入れられるものはできるだけ被用者保険の方に入れて、そうしてそういう点で被用者保険の技術に乗ってこないようなものにつきましては、これはやはり地域国保で参るとかあるいは特別国保で参るというような制度を利用することによって全部抱き込む、こういうような考え方でございます。  しからば被用者保険の方で入れられるのは、具体的にはどういうことを考えているかという御質問でございますが、私ども今申しましたように、その人の標準報酬をきめて、そうしてその事業主から保険料を取り立てる、事業主は保険料を納めていくわけでありますが、そういうようなシステムに乗り得るような企業の実態でありまた賃金雇用関係の実態であるというものをねらってそれをやって参る。その場合に別個に被用者保険でまた第二種健保とか何とかいうものを作ることでなしに、現在の政府管掌、あるいは総合組合という組合組織で小さい事業場が集まっている組合がございます。それが大体今日では五人以上の事業者が集まっているわけであります。それで政府管掌なり、そういうような総合組合なりに抱き込んで参る。総合組合ということになりますと、これは組合々々の自主性に持たなければなりません。政府管掌の力ではとりあえず来年度は五万人程度を予定して予算を組んでいるわけでございます。それで従来は政府管掌の財政状態等も考えまして、これらのものが入って来ることを先生もよく御承知のように、財政の観点から若干チェックをするような運用をいたしておりました。その点はいやしくも財政の観点からさようなものをチェックするというふうなことは来年度からはいたしたくない、もっぱら保険のシステムに乗ってくるかどうかという事業の実態なり、雇用内容の実態なりというものからものを判断して取り入れて参りたい、かような考え方をいたしておるわけであります。
  146. 岡本隆一

    ○岡本委員 それではそういう仰せのようなシステムに乗ってくる業者の組合というのは、現在中小企業協同組合法等によるところの組合ができておりますが、それなのですか。あるいは同業組合をさしておられるのか。どちらをおさしになっておるのか。
  147. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府管掌に取り入れて参ります場合には、例をあげて申しますと、これはもう少し具体的に検討をしてみなければなりませんけれども、私の考えでは製造業みたいなものはそう簡単にその事業が消えたりできたりするものでもないのが多うございますから、企業が比較的安定性がある、賃金形態というものも比較的はっきりしている、こういうふうなものにつきましては、別に従業員が五人であろうと四人であろうと、それほどの本質的な相違はないわけでございます。それでさように比較的容易に従来のやり方でも取り込んでいけるものについては、これは従来と同じような方法で、個々の事業場をねらって包括をして参りたい。なお今御指摘になりましたように、その場合に同業組合でも何組合でもよろしゅうございますが、そういうふうな業者間の一つの組織を利用して保険のシステムに乗せるのに非常にやりやすいというふうな実態のものにつきましては、さようなことも一つ考えて参つりたいと思います。ただしかし現在の健保法の建前では、あくまでも保険料を納める責任者は事業主であって、その組合ではないのでございます。従ってその組合、あるいは組合みたいなものを利用するといたしますれば、法律の建前と実際の運用というものは、それぞれの実情に応じてものを判断してもらわなければならぬ、かように考ておるわけでごます。
  148. 岡本隆一

    ○岡本委員 もう一つ私には理解ができないのですがね。零細企業場を健保に入れる場合、個々の企業場を直接加入させるのか、あるいは保険料の徴収その他の責任をもってやれるような一つの形態を作って、そういうような形態を一括して一つ健康保険組合というふうなものを作って加入させるのか、いずれの方式をおとりになるのかということを聞きたかったのですが、もう一つはっきりしないので明確にし  ていただきたい。
  149. 高田正巳

    高田(正)政府委員 結論から申しますと、両方の建前でいきたいというふうな気持を持っておるわけであります。ただし何か固まりみたいなものを作って抱き込んでいくということにつきましては、現在の法律の建前というものも尊重いたさなければなりませんので、その辺のところは実際の運用としてどの程度そういうことがやれるか、またそれがどの程度の成績を上げるか、そういうふうなこともいろいろ試験的と申しますか、やってみて将来のやり方なりについて一つ大いに検討をいたしたい、かように考えております。
  150. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういうことになりますと、やはり零細企業の経営者は相当被保険者の従業員の保険料の負担分がございますから、保険に入ることを目の子算用をして結局いやがるのではないか、健康保険の制度というものはやはり働く勤労者のためにできている。しかしながらよほど事業主に対する指導がうまくいかない限り目先そういうふうな保険料の負担分を持つことを忌避して、入っても入らなくてもどちらでもいい、入りたいだけの人は来なさいというふうな制度であると、案外入ってこない人が多いのではないか、従ってせっかく政府の方で、小企業であって、しかも低賃金にあえいで生活している人たちのことを考えてそういう制度を作っていただいても、結果においてはあまり効果が現われないのではないかという心配をするのです。従って困難はあろうとも強制加入をしていただくという方向へ進んでいただくべきであると思います。そこで今度失業保険法の改正案が出る模様でございますが、同じように五人未満の零細企業の従業員もその被保険者の対象になる模様でございます。まだその法案も出て参っておりませんし、労働省のお考えも承わっておりませんが、しかしこの失業保険は私の推察でございますけれども、やはり強制加入になるのではないかと思っております。そうすると同じように保険料徴収の問題、事業場の安定性の問題というようなものが出て参りますし、またそういう保険料徴収の問題は共通した問題でありますから、あらかじめ労働省との間に何らかの話し合いをされた上で同一歩調をとり、また同一路線の上をお互いに助け合いながらやっていけば、強制加入にしてもやっていけると思うのです。また同時にこういう社会保障の面では、これは任意加入だ、入りたい者は入れるようなことでないと徴収は困難だとおっしゃいますが、税金の方だけはちゃっかりとどんな零細企業者でもシラミつぶしに戸別訪問で徴収はされる。従ってそういう意味においてはやはりこういう社会保障制度、しかも失業保険健康保険というふうな勤労者の生活に密着したものによって、その職場に働く人たちが正しく守られているかどうかということを、あなた方はやはり十分に査察もし、また同時にそういう綱の目から漏れる不幸な人の一人もないようにしていただかなければならないと思うのです。そういう点であらかじめ労働省と打ち合せ、その上に立って今度の五人未満の問題を立案されているのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  151. 高田正巳

    高田(正)政府委員 失業保険の方とよく打ち合せをしておるか、こういう御質問でございますが、これはもちろん両方でいろいろ相談し合っております。私が承知をしておるところでは失業保険の方も強制加入ではないようです。強制加入ではなく任意包括という制度を利用いたしまして、そうして試験的に一つやってみよう、こういうことでございます。それはそうでございますが、ただ失業保険の場合と医療保険の場今日とちょっと違いますことは、失業保険の場合はこれからおっぽり出されますといわゆるこれにかわる失業保険の手当がないわけです。ところが医療保険の方は被用者保険国民健康保険か、その国民健康保険の中でも私ども今後も特別組合というものは残して参りたい、この特別組合におきましては、一般の地域組合と違いまして、たとえば事業主、おやじは保険料を月三百円出し、使われている人は百五十円なり百円だというような保険料の取り方もできるわけです。そういうふうな非常に弾力のある特別国保というようなものもございますし、地域国保というようなものもございますから、どっちへ包括していった方が一時も早くとにかく綱の目から漏れている人を救い上げられるかということであろうかと思います。しかし先生が今仰せのように、事業主がいやがるために被用者保険の方で任意包括ということでは、強制にしないとうまくいかぬことはないか、これは確かに私どもも心配をいたしておるところであります。ところが事業主と申しますか、使用者側にもいろいろ事情がございまして、私どものところにこのごろちょいちょい入って参りますのは、むしろ事業主の方から何とか入れてくれぬか、政府管掌に入れてくれぬか、府県保険課へ行ってみたらお前さんのところは標準報酬が低いから入れられぬ、こう言っておる、それで標準報酬は逆に高く、うそをついて保険料をよけい納めてもいいから入れてくれぬかというふうなことまで実は言っておいでになる方もあるわけです。これは業態によって違い、また車業主の性格によってもいろいろ違うと思いますが、私は今日のように保険ということが非常に関心を呼んでおりますときには、必ずしも先生が仰せになるようりなものばかりでもあるまいと考えておりますが、しかしやはりそこに先生が御指摘になったような配慮は私どもとしては当然加えていかなければならない。しかしそうだからといって直ちに被用者保険に全部強制をするということは少し行き過ぎではあるまいか。それには、先ほど申し上げましたように、片方で国保という制度があるのですから、だからその辺のところを考えまして、私ども来年度といたしましては、さっき申し上げましたようなところで一つやってみたい、かように考えております。
  152. 岡本隆一

    ○岡本委員 ことし出ました「社会保障」という雑誌でございますが、それを見ますと、三十二年の九月から十月ごろの統計じゃないかと思うのですが、統計を発表しておられる人は総理府の事務官の嶺という人でありますけれども、ごらんになっているかもしれないと思います。それを見ますと、中小企業の社会保険の加入の状況が出ている一のですが、製造業で九人未満――だから十人未満と理解していいですが――のところでいきますと、約四〇%より保険に加入してないのです。それから十人から二十人のところになりますと九〇%加入している。従って二十人以下の十人から二十人の工場というふうな製造業ですら、まだ一〇%が健康保険に加入漏れになっておる。これは製造業でありますから健康保険法の十三条がきちんと適用されて、強制加入であります。強制加入になっておる事業場ですら、十人以上二十人という程度の事業場ですら、一〇%の未加入がある。それが今度は十人以下になると六〇%が未加入であるというふうなことになっておるわけであります。さらにそれが卸売業というふうな、これも物の販売でありますから十三条が適用される事業ですが、これになるともっと数字が大きいです。そういうふうに現在当然健康保険に加入しておらなければならない事業場でもって、これほど見のがしがあるわけなんです。そうすると今あなたは五人未満の零細事業場だってそう案じたものでもなかろうというふうな御見解のように承わりましたが、強制加入になっておる事業場ですらこれだけ大きな漏れがあるということは見のがすべからざる事実であるのであります。今健康保険、被用者保険を五人未満のものにまで任意包括の形で広げていこうというふうな方針に出られる限りにおいては、それでは五人以上の強制加入のところは今のままでいかれるのか、あるいはこれに対して事業主の教育をうんとやって、その職場に働く人たちに対しては十分な社会保障の制度の中にその恩恵を受けさせるべきだ、また事業主もその義務があるということを徹底的に教育をされ、そしてまたせっかくそういうふうな位置にある勤労者、しかも社会保障の網から漏れている者を徹底的に救い上げていくという努力、手を広げるなら広げるで、広げる前にまずそれが行われておらなければならない。その大事なことをほったらかしにしておいて、入るや入らぬやわからぬものに間口ばかり広げて、店の中はばらばらでほったらかし、それでは客はつきやしません。やはり間口を広げるなら広げるで、きちんと店の中の整理もしてかからなければならないと思います。そういう点、これからどういうふうな方針でおやりになるのか承わりたい。
  153. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今岡本先生御指摘の通りでございます。五人未満というところを考える前に、五人以上で実は未適用があるわけなんです。私どもの方はそれを一応調査いたしまして、大体概数をつかんでおります。そこでこれは徹底的に、先生は今教育をしてという仰せでございますが、もちろん教育も必要でございますけれども、これは強制適用の事業場でございますから、教育よりもう少し進んで、強制的に取り入れていく必要があるわけです。ただ三十一年度、三十二年度あたりに被保険事業場の数が過去と比較いたしまして格段にふえておりますが、これは一般の経済界の繁栄で雇用の増大というものもあったのでございますけれども、同時に今先生御指摘の未適用が相当どんどん入ってきたわけでございます。それで三十一年度、三十二年度で相当程度解消しておると思います。しかしまだ相当数残っております。そしてこれはもう五人未満のことを考えるより先に措置すべき問題でございますので、来年度といたしましてはわれわれ第一線機関の能力の及ぶ範囲におきまして、徹底的に一つ解消いたしたい、そうして次にものの順序といたしましては零細企業の問題に行くべきである、かようなつもりで来年度の被保険者数の予定なんかにもそういうふうなことを配慮いたしておるような次第でございます。
  154. 岡本隆一

    ○岡本委員 ぜひそういう方向へ進んでいただきたいと思うのでありますが、しかしながらそれには社会保険出張所の陣容が今のままでいけるのかいけないのかということを私は心配するものです。今社会保険出張所では手が足りなくて困っている模様です。従ってそういう点において、今そういうふうな未適用の工場をずっと調べて歩き、加入を督促して歩く、そういうふうなことを果して今の陣容でやっていけるのでしょうか。
  155. 高田正巳

    高田(正)政府委員 社会保険出張所の陣容は御指摘の通り、最近の事業場数、被保険者数から申しますと決して十分とは申せません。従来ともかような未適用のものを放置しておいたということは私どもの責任であるわけでございますが、一番大きな原因はやはり手が足りない、従って草の根を分けてもというようなことでなく、まあまあ言ってきたものだけということで実はやっておったわけでございます。しかしこれは来年度ほんのわずか人をふやしてもらうことになっておりますが、これが能力があるとかないとかいうようなことを言っておれませんので、ほんとうに馬力をかけてやらせたいと思っておるわけでございます。同時にまたこれは非常に私どもとしてはあれでございますが、三十年度、三十一年度健康保険の赤字騒ぎ以来非常に世の中で騒がれて、しかもまた今回政府が今年度から皆保険というような線を打ち出したものでございますから、どうも見ておりますと、今までは黙っておった従業員も黙っていない、事業主もやはりこれは保険に入れておいた方が能率が上るというふうなことで、現実に私どもの方で働きかけないでも、ずいぶんそういう関係で世の中の考え方が高まってきたということで、みずから進んで適用を願い出るところが非常にふえておるわけでございます。そういうふうな事業主、被保険者たるべき方々の御協力とわれわれの役所側の努力とで何とか一つやりたい、かように考えておるわけでございます。
  156. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 いろいろ実際の問題についてお聞き取り願ったのですが、率直に言って五人未満の事業場が捕捉しにくいということでじんぜん、どうしても域地保険に入るよりやむを得ないじゃないかという傾向で従来来ておったわけでございます。しかし率直に申して最近の情勢は、最低基準法も作り、また最低賃金関係の法律も制定する、五人未満の失業保険考えようじゃないかというときに、ただ手続の困難でこの問題を放置しておくわけにいかないということから、あらゆる困難はもう従来とも、困難をあげれば切りがないのはわかり切っておるのだから、この問題を解決しようじゃないかというふうな考え方になってその方針で行ったわけでございます。従いまして五人未満について非常に困難はあると思いますが、技術的にもこれらの困難を克服いたしたい。そうするとまたさらに今御指摘のように五人以上のところで実際は法律上加入をしているべきものが加入してないのが約百七十万くらいですか、あるということを私自身も発見するようになりました。これはその前に改正すべき問題だというようなことで、今年から来年にかけてはこの問題をぜひ改正してやって参りたい、こういうことで技術的な非常な困難を何とか克服しようと思っておるわけです。その中には捕捉しやすいものもあり捕捉しにくいものもあることは御指摘の通りでありますが、全力をあげて解決いたしたい、こう思っておるわけでございます。
  157. 岡本隆一

    ○岡本委員 今までの政府のやり方を見ておりますと、金を取る徴税の面では横の連絡がよくついておるのです。たとえば一般不動産を購入しますと、別に申告しなくてもちゃんと不動産取得税は市町村から府県から調査に来てとります。あるいはまた死亡者があれば、こっちから申告せぬでも、税務署の方から相続税は何ぼ出せ、こういうことでちゃんと横の連絡がついておるのです。ところが逆に社会保障の面になってくると、全然横の連絡がついていない。とにかく市町村あるいは都道府県、国にも徴税機構はある。従ってどこにどれだけのどういう種類のどういう事業場があるかということは、徴税機構でもあるいは労働関係労働省の基準局でももう全部わかっておる。そのわかっておる労働関係あるいは徴税機構というふうな役所と社会保障関係の役所の間には、片方から別に入っていっても金の要る分にはもう全然連絡しない。そういうふうな一方的な連絡だけである。ほんとうに働く人たちを守るための連絡こそ逆に完全に行われなければならないと思うのです。従って今度は閣議でもそういう問題を持ち出していただいて、各役所間の横の連絡は単に徴税の面だけの連絡――現在ではそういうふうに理解される。そういうふうな徴税の面だけの連絡でなくて、逆に住民を守る、勤労者を守る、そういう意味において政治が正しく行われておるかどうかという意味における横の連絡を完全にやっていただく、こういうことを私要望しておきたいと思うのです。  そこでもう一つ最近私が経験したなにでお伺いしたいのですが、社会保険の手続であるとか、それからまた保険料の徴収の手続がことにかなり煩瑣である。それから人手が足りないから、徴収面に対して社会保険出張所が親切でない、と言うとしかられるかもしれませんが、まあ役所は小さい業者にとってはなじみにくいのでしょう。従ってそれの仲介をやるような私的機関ができております。御承知だろうと思うのです。労働基準協会とか何とかいうふうな機関がある。ところがそれが京都で、社会保険加入の手続はした、代行してやると言って保険料を集めて、集めた人間がそのまま失踪してしまって、中心になる人間が途中から逃げてしまった。被保険者になっていたつもりなのに入れないという問題が起っているが、そういうのは窓口で認めておられるのかいないのか。その人たちは他の幾つかの事業場でも代行しておったが、途中から金の持ち逃げをやった。従ってそういうような中間機関を役所としてお認めになるとそういう間違いが起ってくると思う。その点そういうようなものがあった方が便利であるとするならばそれの指導、さらにまたそういうような事故が起った場合に、そういうものを認めた場合については役所も責任があると思いますが、そういうふうなことについての局長の御見解を一つ承わりたいと思います。
  158. 高田正巳

    高田(正)政府委員 具体的な京都の事件、そういう事件があったかどうかということにつきましては、私まだ承知をいたしておりません。ただ役所の側といたしましては、保険料等の納入あるいはいろいろな手続を事実上事業主の代理人がやるということは拒否はしておりませんけれども、今御指摘のような、そういうふうなことを業とするようなものは、私どもとしては認めておりません。従いましてさようなことを業とするような者が、御指摘のように相当出てきているといたしますならば、私そういうことを聞いたことがないわけでありますが、よく取り調べまして、役所の方といたしましても何らかの措置を講じなければならぬ、かように考えております。
  159. 岡本隆一

    ○岡本委員 お調べの参考に事件の内容を申しておきます。ある被保険者が私のところに陳情に参りました。二、三年前じん臓膿腫でもって片方のじん臓を摘出しておった。ところがその患者はまた尿に白血球がまじったりしまして、悪くするとじん臓結核の疑いも持てないでもないというような状態でありました。健康保険に加入しているはずだということで、工場主は健康保険の被保険者としての手続中だから、これでもって治療してくれという証明書を発行している。医師はその証明書に従って治療しておった。ところがいつまでたっても保険証がやってこない。それで本人は医薬機関から請求されるままに何べんも保険証を早くくれということを工場の方に請求するわけです。三十名ほど人を使っているその工場の方は、金を渡したブローカー的な人間を追い回しても、どうにもならない。そのうちに詐欺としてひっつかまってしまったというわけです。幾つかのところでそういう事件を起しているわけです。そういうような機関があることは私も前から知っておりました。それは各工場労働基準関係のことをやっております。たとえば年に二回の健康診断なんかを請け負う。そうして労働基準法に基く身体検査を請け負います。それからまたそれに伴っていろいろな保険関係事務一切を代行いたします。従って今度は失業保険から健康保険というような事務一切の代行をしてきて参っておったわけですが、その代行を業としておった者が、たまたま何かで使い込んで失綜してしまったためにそういう事故が出て参ったわけであります。従って労働基準署関係も社会保険出張所関係も、そういう業者があることは十分承知しておったろうと思います。同じ人間が幾つかの事業場保険料納入の代行をしているわけですからよく御存じだったと思います。ただ零細企業車の保険事務所はかなりめんどうなものです。なかなかまだ法律になれない業者が多い。私どもでもああいうこまかい法律とか規則を読むのは、滝井君のようではないから、非常に混乱して困る。だから日ごろ商売のことよりほか何も考えない業者にとっては、ああいう無味乾燥なものはまるでわらでもかむような感じがするだろうと思います。そういう感じがするので、まかすだろうと思います。また役所に行っても事務的な返事をされるのでこまごましたことがわからない。わからないままに仕事ができないから、ついそういう人があればまかせてしまう。それで今度は一番迷惑をこうむってきているのは被保険者だ。現実にそういう病気の疑いがあり、しかも保険料は第一回は徴収して支払っておる。二回目は事故のために取りにきておらぬから払っておらぬ。現実に被保険者たる資格がありながら診療が受けられない。しかも一般の医療機関ではそういうような精密検査ができないから、大学に行って大学病院でもってじん臓結核かどうかよく調べて、その上で万一そうであれば直ちに適当な処置をしなければならない。しかもその人はじん臓が片方しか残っていないので、もう片方摘出することは死ねということだ。だからもうその人にすれば実に真剣な問題なんです。しかも働いておって得られる給料は少いのに、そういうじん臓検査というようなものは非常にお金がかかる。レントゲン検査なんかやらなければならないし、御存じのようにじん臓造影は非常にお金のかかることです。膀胱検査を受けたり、じん臓の機能検査を受けたりする金のかかる治療検査は受けられない。だから一日も早く保険証がほしい。それを持って指定された病院に診断を受けに行きたいが、待てど暮せど保険証はこない。その人は医療機関と業者との間をうろうろして催促しておる。事業主に幾ら催促しても、その人間を追っかけ回しておるだけでどうしていいかわからない。それで私はこの間事業主にそんなことはほっておいてはいかぬからすぐ相談に行って、これから後でも早く健康保険に加入してしまいなさいと言って勧めておいたのですが、それにしてもそうなってくると、その人はそういうような病気が発生してから被保険者になる。病気のからだをもって被保険者となるということになると、今度はまた保険給付の面で問題が出てくると思う。もっと早くから健康保険に入っておればそういう問題は起らないが、そういう病気が発生してから被保険者になって、その加入した日から保険給付を受けなければならないということになってくると、今度は保険者たる政府の方から文句が出ると思う。そういうことになってくると、一番かわいそうなのは何も知らない被保険者だ。そういう点についての事故については政府はどういう責任をとっていただけるのか、あるいはそういうような患者もあたたかく保険給付の対象として被用者保険の中に吸収していただけるのか、他の健康な者はもちろん無条件で被保険者として受け取っていただけると思いますが、そういう事故があった場合には、そういう患者は被保険者として受け取っていただけるのかどうか、もしそれが結核であった場合には、三年間の療養の給付をやっていただけるのつか、またそういうふうな特別な場合には、何か除外例のような形でもってそういうふうな規定があるのか、その辺のところもあわせて承わりたいと思うのです。
  160. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今の具体的なケースにつきまして、私がここで判定を下すということはちょっと避けたいと思います。具体的な事情というものをよく調べてみませんと、大体岡本先生が仰せのようなことで間違いあるまいと思いますけれども、ただ一般的に申しますと、健康保険法は保険料を滞納しているから給付をしないとか、そういうしかけには健康保険はなっておりません。だから被保険者の資格を持っておれば――保険料を滞納するのは、今の具体的な事例は中間の変な業者がこうやったわけですが、よくある例は事業主は給与から差し引いておいて、そうして保険料の滞納をしているというような場合がよくあるのです。従って保険料が滞納になっておるかどうかということによって、給付をチェックしたりなんかすることはないわけであります。従って、その方が被保険者の資格があるかどうかということにかかると思います。ただ先ほど申し上げましたように、そういう具体的なケースは、実際をよく調べまして、そうして基礎のある判定をいたしませんと、そういうふうな争訟があそこの社会保険審査官並びに審査委員会に出てくるわけであります。これは御存じのように、裁判に似たような手続をやりまして、いろいろそういうことを判定を下しておるわけであります。一般的に申しますとそういうことであります。私の方でもその具体例につきましては、できましたならば資料をいただきまして調べてみたいと思います。
  161. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは、事業主が第一回の保険料を納める意思は持っておる。そうしてある人に託した。それでもって社会保険出張所へは手続もできておらないし、保険料も払っておらない、そういうふうな場合には、一応それは一つの事故であって、被保険者たる資格はないと思うのです。被保険者たる資格は、やはり正当な手続が完了してからでないと出てこないと思うのです。だから、被保険者であるかないかという問題は、明らかに被保険者でないということは、しろうとの私にもわかっております。また保険局長もそうお思いになるだろうと思います。しかしながら、そういうふうな機関があったということですね。そういうふうな機関を社会保険出張所が認めておった。しかも、もしそういう保険料の徴収の代行というような機関を社会保険出張所が認めておるという限りにおいては、今度は、そういう機関に基いたところの事故が起った場合には、その責任の所在はどこにあるのかということが問題になってくると思う。だからその責任の所在を――それはどこまでもそんな者に金を渡した業者が悪いのだということであれば問題じゃありません。しかしながら、そういうふうな中間業者から金を受け取ったというふうなことは、やはり中間業者と承知しておりながら金を受け取ったことになれば、これはやはり政府の方にも責任なしとは言えないと私は思うのです。もし政府にそういうふうな責任があるとするなれば、政府に責任を持っていただく、こういうことになれば、私はそれによって出てきたところの被害者は、政府において守っていただかなければならないと思うのです。従って、そういう健康保険に加入する意思があり、しかも一回保険料は徴収されたというふうな人が、その後において病気が発生した場合には、当然被保険者として、本人も思っておるし、また事業主も証明書を発行しておる。今手続中だというわけです。従って、そういうふうな人については、政府において被保険者として取り扱うできであるし、また吸収すべきである、私はこのように思うのですが、あなたはどういうふうに御理解されるでしょうか。
  162. 高田正巳

    高田(正)政府委員 法律問題になりまして恐縮でございますが、健康保険法の二十一条の二に、「被保険者ノ資格ノ取得及喪失ハ保険者ノ確認ニ依リ其ノ効力ヲ生ズ」こうなっておるわけであります。従いまして、その確認がないと被保険者証も配付されませんし、確認がなければいけないわけでございます。ところが、この確認は、時期というものは、必ずしも確認をした時期から被保険者だということを確認するわけじゃないのであります。過去にさかのぼって、その人がほんとうに雇用関係がちゃんとあって被保険者の資格がある、五月一日から雇い入れられて、手続をしてきたのは六月になって手続をしてきた。そうしたならば、五月一日からの確認をするわけでございます。従って、今のような御事情であるとすれば、事態は明白でございますから、その間の事態が明白になって、すでに一回の保険料を納めている。
  163. 岡本隆一

    ○岡本委員 一ぺん納めていない。第一回の保険料を。
  164. 高田正巳

    高田(正)政府委員 そうですが。そうしますと、その確認の手続を受けて、その確認の手続を受ける際に、これはこうこういうわけで、いついつ雇い入れられたものである、こういうふうな事件で今までおくれておったということが明らかになれば、さかのぼって被保険者資格を確認しますから、従って保険給付は受けられるわけであります。ただ、今のケースで私ちょっとどういう事情だろうかわからないのは、何だか逆選択のようなにおいがちょっとするのです。実際に使用という関係ができたのであるならば、雇われてとたんにそういうむずかしい病気になったのでございましょうか。その辺のところが、やはりこれは相当実態を調べてみませんと、現実に確認の手続のときにそれが問題になってくると思うのでございます。これは先生もよく御存じのように、いろいろなケースがあるわけでございます。従ってその辺の実態もよく調べまして、この具体的なケースとしてやはり判断をしなければならぬ、かように考えております。
  165. 岡本隆一

    ○岡本委員 これは逆選択であれば問題ないと思うのです。しかしながら、万一逆選択でなかった場合、万一というよりも逆選択でないものという仮定において、私はこれからもこういう事故は起り得ると思うのです。保険料の納入事務というものについて、中間にそういうふうな業者があるということ、これはもう現実の事実なんです。もうすでに数年前から私は知っております。おそらくそれは京都だけの問題じゃないと思うのです。非常に煩瑣な何があります。たとえば税のいろいろなものについての機関ができるように、これから後もまたできてくると思うのです。そういうふうなものがだんだんふえてくれば、当然こういうことは起ってくると思う。ことにまたその業者が逃げてしまわなくても、その使用人がまた不正を働いておるということ、そういうことも起ってくる。それじゃそういう何々協会というふうな業者があって、代行事務をやっておる使用者が不正を働いた、従ってそういう事故が起ったという場合に、一切の責任を業者がとらなければならないのか。もちろんあるいはそうかもしれませんが、しかしながら、その場合にやはりそういう機関の存在を認めるというところに、また政府も責任の一半をとらなければならないし、また業者の方にその負担能力がなかった場合、業者に責任をとれといってもどうにもしようがないのです。だからそういう場合には、やはり最終的には、そういうものの存在を認めた政府におしてその責任をとらなければならない。従って今の事例が逆選択であるないは別として――私もその点十分調べておりませんので、あるいは帰って京都の社会保障出張所等にも行ってよく事情を調べますが、おそらく社会保険出張所はこれは知らないかもしれない。あるいは知っているかもしれない。しかしながら、いずれにしてもそういう事故が起った場合には最終的にどうなるのか。だから、もし最終的に政府がそういうふうな責任をとる気持があるならば、そういう事業の存在をお認めになってもいいし、また政府がそういう責任はとれないのだということになれば、時とすれば非常に不仕合せな被保険者が出てくるということも考えなければならないと思う。従ってそういう事件が起ったのを機会に、そういうものをどう取り扱っていくか、あるいはまたそういうふうなものがあっていいのなら、はっきりしたところの許可制度とか、そういうものの上に立ってそういうもうろう業者、消えてなくなるような人がそういう重要な仕事をしないような制度というものを考えていただかなければならないし、その辺についての御見解なり方針を承わりたいと考えます。
  166. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今のケースは、伺ったところでは、これを結論的に申しますと、保険給付の面では、そういう事情を御説明いただいてさかのぼって確認をすれば、その確認の実際の手続よりは前の給付も保険給付として行われる。保険料が入っていようといまいと、これは行われる。  それからもう一つ、問題は第三者が持ち逃げをした保険料が一体納まったことになるか納まらぬことになるかという問題でございますが、この点はやはり保険料は納まらぬことになる。だからその事業主は滞納でございますね。それでその事業主とその持ち逃げをした人間とには民法上の問題、あるいはもちろんそういう場合には刑法上の問題が出てくる。だから事業主の方にその当該の者に対して求償権は出て参りますけれども、役所との関係においては、保険との関係においては、滞納である、これは間違いない、そういうことに一応整理できるかと思います。なお最初申し上げましたように、具体的なケースでございますから、よく事情を調べまして問題を結論つけたいと思います。  それから、そういう変な業者、そういうものに対して一体どういう考えを持つかという御質問でございますが、この点はそういうふうな実態がどの程度あるかということも、大へん申しわけないことでございますが、私十分つかんでおりません。従ってその辺は少っし調べまして、何らかの措置をとらなければならぬものであるとすれば、これはやはり措置をとらなければならぬ、かように今先生のお話を承わまりしてから、この席で考えたような次第でございます。
  167. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと関連して。今の問題ですが、一般論として事業主が健康険保料を滞納しておる場合でもそれは被保険者として認めていくのだ、こういう御説があったのですが、大体厚生省は一般行政指導としてそうやっておられますか。
  168. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。
  169. 滝井義高

    滝井委員 ところが事実はそうじゃつないですね。私のところで、会社の名前を言うと工合が悪いので言いませんが、昭和二十八年ごろまでは非常な石炭のブームで景気がよかったが、二十九年の吉田内閣の末期、いわゆるデフレ政策をとり始めてから、同時に石炭の貯炭も多くなって非常に会社の状態が悪くなった。従業員は七百人以上おったわけですが、その会社の国税それから労災、失業保険健康保険等の借財が五億をこえたのです。従って当然社会保険関係の滞納もおそらく四千万円くらいになっておったと記憶するのです。保険証をストップされた。そしてその会社は今度は裁判所の許可する整理会社になった。そうしてずっと人員を縮小した。ところがこの被保険者は何も罪はないわけです。依然として整理会社になっても継続して働いておる。けれども社会保険出張所が保険証を出さない。いわゆる今の被保険者としての確認をやらないことになる。従って保険証をもらう資格はあるにもかかわらず保険証が出ない。結局社会保険が適用できないという形です。私この前予算委員会でも労災だけをちょっとやったが、これは同時に労災にも問題が出てきた。坑内に水が入ってしまって労働者が死亡してしまった。ところが労災保険の滞納があるために、これは滞納がなければ当然全額保険金がもらえるわけですが、滞納があるために――あれは給付の制限が多分行政措置でやられることになっていて、実際に労災は行政の通達か何かでやっておる。従って二分の一ないし三分の一程度の給付になる。しからばその場合には、労働者はまず労災面から問題を解決していかなければならないことになる。どうすることになるかというと、この場合にはたった一つの救済方法がある。それは事業主を破産に追い込むことです。これ以外に救済の方法がない。そこで破産に追い込むとどういうことになるかというと、すでに働いておる三百ないし三百の勤労者諸君が路頭に迷うことになる。そうすると二分の一を労災保険から給付してくれるにしても、あと二分の一は事業主が払うことになる。ところが給料もいわゆる見合いといいまして勘定々々で八割か七割ずつやるので、あと三割はたな上げしてやっているような会社ですから、労災保険を何方、何十万とはとても出せないから出さないままです。そうすると、勤労者は二分の一だけは労災保険から保険金をもらうが、あと二分の一は事業主の経済が好転しなければもらえないということです。ここに本質的に、日本のいわゆる社会保障制度といわれるにもかかわらず、保険という、原理で貫かれて一つも保障がないのです。保険者と被保険者との冷厳な事実はあるけれども、勤労者を保障するものがない。死んだら死に損なんです。そうしてそれが今度は健康保険に及んでくると、そういう会社には保険証を出さない。出したら政府管掌はつぶれてしまう。保険というものは、保険料を納めた者に初めて給付というものがいくのが保険の精神です。社会保障ならば事業主が納めていなくても、これは勤労者のためのものなのだから、保険証が出て給付が付加されるわけなのです。従って今局長さんは滞納があってもやると言ったが、現場はそうはいかぬ。滞納の会社にどんどん保険金をやっておったら、成績が上らぬといって所長はくびです。だから一般論としてはそういうことになるのですよ。現実現場はあなた方が各出張所の保険料の徴収状態というものにランクをつけて、しかも九三%、九二%というような高い徴収率をだんだんあおっていく。赤字のときは九七%まで上げたと思う。いわゆる保健経済の赤字の原因というものは微収率が悪い。だからこれは九七%――ことしは九二%くらいになっています。そういう形なのだだからこれがもし今の局長さんのような御答弁ならば、一般論として今後滞納があっても当然会社へ行って保険証をもらってこいということになる。それは十人以下とか五人未満じゃないのです。れっきとした二百人、三百人を使用している中小の炭鉱においても多く見ることなのです。この点は今の答弁を貫いてもらえれば私は賛成です。そのかわり赤字は今度十億、二十億、三十億、五十億あるいは定率の国庫負担ということになりましてだめなのです。そうなると初めて今の政府管掌の健康保険が社会保障制度として一歩を踏み出す――今は労務管理なのだからそうはいっていないと思うのです。
  170. 高田正巳

    高田(正)政府委員 健康保険では保険料の滞納をする者は相当あるわけです。しかしこれに給付をストップできるようなら私どもは非常に楽なのです。だから今保険料が滞納されているからといって、現実にそこの被保険者の給付をとめるというようなことはいたしておりません。ただ、今御指摘のやつは、会社の健康保険組合だったんじゃないのですか。政府管掌の事業場だったのですか。そうすると、第二会社ができたから一たん解雇になったわけですね。被保険者の資格が切れた、今度新たに会社ができてそこの使用人だからということでこう来たわけですね。そういたしますと、それは二百人、三百人ということであれば当然これ適用すべきですね。しかしその滞納ということは過去の会社が滞在しているだけであって、その会社の滞納じゃないわけですね。それならば当然これは適用すべきだと思うのです。
  171. 滝井義高

    滝井委員 Aという会社がありまして、その事業場が非常に滞納してきたわけです。そこで滞納してきたために今度は新たに雇用がどんどん起ってくるわけです。滞納しておっても石炭がうんとふえれば雇用を増大しなくちゃどうにもならぬ。そうすると新たに雇用された者は前に滞納が多いので適用しない。保険証を出さない。そして今度は出さないままでその会社が整理正会社となって――社長はそのままなのです。社長はそのままで第二会社ができる。第二会社といっても、整理会社になっても裁判所が管理するだけなのです。いわゆる債権者が裁判所に行って、債権者もその中に債権者団というものが加わってやるわけです。ところがこれは向うの労働者なのですから、その会社がだんだん事業を続けていけば全部にどんどん保険証を出さなければならぬ。ところがなかなか出さなかった。最近ようやく出しつつありますが、まだ全面的に出さない。だから今の保険局長さんの言うのが私は理論的な筋だと思う。ところがそれはあなた方が言うように昭和二十九年から三十年、三十一年と健康保険は百億の赤字を背負うておったときに、九二%の徴収率しかなかったのを九七%の徴収率に上げようというときに、それはそんなときは保険証は出しませんよ。出せば赤字になる。そこで今言った理論的な筋というものはそうだと思う。現実の問題として第一線の行政官というものはそうはいかぬので、これは出していない。だから今の局長さんの答弁と現実とは非常に食い違ってきておるということです。だから局長さんが今のような御答弁なら保険局長通達を出して、会社が滞納しておっても健康保険制度というもつのは、ダーウィンの進化論じゃないけれども、労務管理からだんだん社会保障に進化しておるんだから、滞納があっても必ず保険証を出してやれという御通達をしてもらえれば、これは非常な大進歩だと思う、日本の社会保障のために。今の答弁を修正されなければ、私はそれで了承しておきます。
  172. 岡本隆一

    ○岡本委員 それじゃもう一度振り出しに戻りますが、いつか新聞で発表されておるのを見ましたのですが、五人未満の事業場の被保険者を健保にお取り入れる場合に、何か組合のようなものを作らして、おそらく私はそのときにはこう理解したのですが、そういう事業場だけでもって集団的に健康保険組合を作るように指導して、そうしてその運営が困難な場合には、五%の調整交付金を支給するというふうな意味のことが新聞に発表されてたように思うのですがそういう方針はおとりにならないのですか。
  173. 高田正巳

    高田(正)政府委員 いえ、私の方は、今先生仰せになりましたようなことは考えておりません。
  174. 岡本隆一

    ○岡本委員 五人以下の事業場については、直接健保に取り入れて、それらを集団的に組合を作らして、その組合保険でもってそれらの事業場の人たちを健保に吸収しようというようなことはお考えになっていられないのですね。
  175. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一つの方法は、政府管掌の中に入れていこう。その場合に直接社会保険出張所と結びついて、今までの事業場と同じようなやり方をするのが筋でございます。ところが保険料の徴収その他いろいろな問題につきまして先ほど来御指摘のように、もし何らかの組織を作らして、そういう手伝いをさせるというようなことが妥当であるとすれば、将来そういうことも考えて参りたい。しかしそういうふうなことをしまするには、やはり法律上何らかの措置を講じなければなりません。従ってそういうふうな法律上の措置等につきましては、実際にそういう適当なものをやらしてみて、そうして成績がいいということであれば、そういうふうなことも将来は考えて参りたいということが一つの方針でございます。  それから一つの線は、御存じのように、健康保険では組合を作って自主的に運営するという方法があるわけでございますね。この組合は、大部分は御存じのように千人とか二千人とか、一つの大きな単位の事業場が組合になっておるわけでございます。総合組合と称しまして、たとえば埼玉県の行田のたびの関係でありますとか、あるいは京都の西陣でありますとか、そこらに小さい業者が集まりまして、そうして健康保険組合を作っておる。いわゆる私どもが総合組合と呼んでおるのがある。その総合組合も今日の建前ではやはり五人以上使っておるものが集まっておるのが多いのでございます。しかし今日でもそれ以下のものを入れておるのもございます。従って、同種の事業で五人以上だけが集まって総合組合をやっておるというような組合があるといたしますと、同じような業種でそれより下のものも入れてやる、入れてやっていこう、その組合の運営が立ち、またやってやれるというようなことであれば、そこで今まで五人以上であったのを四人まで抱きかかえるとかあるいは三人まで入れるとか、全部入れるとかいう措置もできるわけです。しかしこれは組合自体のあれにまかしてわれわれはやっておるわけでございますから、従ってこれは強制するわけには参りません。しかしそういう方法も考えられる、またその方が手っとり早くいくということも考えられる。それらの方法を被用者保険としては私考えておるわけでございます。しかしいずれにしろ零細事業場の問題はある程度やってみて、いろいろ考えておるよりは、できるものからとにかく手をつけてやってみるということが必要だ、かように考えておりますので、三十三年度ではとにかくできるだけやってみようというつもりでおるわけでございます。
  176. 岡本隆一

    ○岡本委員 先ほど来話に出ていますように、五人以上だけでももう一度すっかりそれを綱の上に乗せてくるのはなかなかの大事業になると思う。その上に五人以下にも手を伸ばすということであると、その仕事はそう伸びないんじゃないか、伸ばすにはよほどはち巻を締めてかかって、厚生大臣が陣頭指揮をして、ほんとに熱意を注いでいただかなければ非常に困難であるということを私は心配しております。そこでことしはそういう困難を乗り越えて、どれくらいの五人未満の被保険者を被用者保険の中に吸収するつもりか。その吸収するつもりの中に今仰せの総合組合として吸収していこうというお考えを持っていらっしゃるか。私が今申しました五%の調整交付金というのはおそらくそういうふうな総合組合の運営が困難な場合に出してやろうというような構想をお持ちじゃないか、それが新聞発表になって出たんじゃないか、私はこういうふうに理解しておりますが、その二点についてお伺いしりたい。
  177. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府管掌につきましては先ほど御説明いたしましたように三十三年度では五万円程度を手初めとして予定をいたしておるわけでございます。総合組合の方にどれだけ入れていくという計画はいたしておりません。それは先ほど申し上げましたように各組合の自主性にまかせておるわけでございます。それから五分の調整交付金とおっしゃいますのは国民健康保険の方で各保険者に定率の二割という補助金を出しまして、弱い保険者、と申しますのは言葉をかえて言えば被保険者の負担能力が低いところということでございますが、そういう保険者に対しましては五分の範囲で財政調整をやっていこう、そういう意味の予算をお願い申し上げておるわけであります。これは国民健康保険の方でございます。  もう一つあるいは岡本先生のお話に関連があるのじゃないかと思いますが、今健康保険組合の数が一千近くございます。九百幾つであったと思いますが……。それで今回医療費の値上げをやるというようなことも十月から予定をしておりますし、かたがたそれによって――それでなくても足弱な組合があるわけでございます。その代表的なものは大体総合組合でございます。そういうふうな足弱な組合はそういう医療費の値上げというようなことにも関連をして従来とも困っておるところがあるわけでございます。御承知の西陣あたりは相当大きな赤字を過去に出しておる。どこここということではございませんが、そういうことで赤字が出るような組合に対しては、二億円の範囲内で補助金を交付しててこ入れをしていく、こういう計画を片一方で持っておりまして予算でお願い申し上げておるわけでございます。
  178. 岡本隆一

    ○岡本委員 今お話の出ました西陣の組合でございますが、これは昔から赤字で、ほんとうに弱っている。こういうような総合組合という構想は、これから後は新たにまた零細業者が作るといった場合にも一応作らせていくというお考えでもあろうと思うのです。しかしながら、現在の組合に新たに五人未満を吸収していくということになれば運営はより一そう困難になると思うのです。しかも、こういうものは標準報酬が非常に低いのです。一般の組合、政府管掌よりももう一つ下になるのです。それはおわかりでしょう。だから、政府管掌の標準報酬の平均よりもさらに低い人たちの集団によって組合を作って、その組合がわずかに五分の調整交付金のごときてこ入れだけでもって運営が行われるとは私はとうてい思わないのです。だから、もしもこれから後、五人未満の事業場の被用者を健保の中に取り入れるのに事務上の利便とかいろいろな点において組合を作られるとするなれば、政府管掌より以上の非常に大幅な国からのてこ入れなくしては、その組合は成り立ちません。従って、そういう形において吸収をしようとお考えになるなれば、それはただ理想を求めるだけであって、現実には、もしもかりにそれはけっこうだ、一つやろうじゃないかというような話ができても、できたとたんにその組合は運営困難に陥ってしまうと思うのですね。だから、もしもあなたの方でそういう構想であれば、その構想そのものは、組合としてやっていけばいろいろな点で自主的にやらせるということもいい面もあると思うのですが、しかしそれには相当な財政的なてこ入れの約束が要ると私は思うのですが、そういう点についての御用意が気持の上でおありなんでしょうか。
  179. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私が先ほど来申し上げておりますのは、零細事業の方たちに集まってもらって、それを組合として自主的に運営をしてもらうという方向で考えておりますということを申し上げておるわけじゃないのです。政府管掌に入れるか現在ある大きい企業も一緒になった総合組合に入れるか、大体それは五人以上の事業場が集まっているわけなんですが、そのどちらかの既存の制度で入れるに適当なものに包括させていこう、こういう考え方なんです。それで、政府管掌に入れる場合に、技術的に見てあるいは保険料の徴収とかいろいろな仕事をある程度下請させるために、組合というようなものを利用したらどうだろうかということを考えておる段階でございます。しかしそれは、経済は政府管掌一本になるわけです。そういう事務のお手伝いをお願いするようなものを考えていく方法はあるまいかということを考えておるわけです。あくまでも建前は、その場合には政府管掌に抱き込むわけでございます。従って政府管掌全体の財政の中で経理をいたしていくものでございます。そういうわけでございまして、もし小さい業者だけで組合を作らせるという基本方針を打ち出すならば、それは当然標準報酬も低いし、いろいろやりにくい点はあるわけですから、それは国が相当なてこ入れをするということを考えなければその構想は成り立ち得ないものと思います。それの全国一本というような思想が、御承知の第二種健保というものを政府管掌でやったらどうだろうか、小さい者だけ集まって、そして特別な制度を設けて、そこには国がうんと補助金を出してやったらどうかというふうな構想が示唆されたこともあるわけです。しかし私どもはそういうふうな特別な制度を作るよりは、現在の政府管掌なり組合管掌なり、あるいは地域国保なり特別国保なり、そういう既存の制度に、業態あるいは雇用関係の実情に応じてそれぞれに入れられるものから入れていった方が、特別な制度を作って、保険料の取り方はフラット制にするとか、給付は健保より下げるというようなことをするよりは、むしろその方が実際的である。五人未満と一口に言われますけれども、その事業の実態なり、労働の形態が非常にまちまちなんです。従ってそういうものを十ぱ一からげにして、そういう一つの制度を作ったらいかにもうまくいくように思われますけれども、なかなかそれはむずかしかろうという考え方をいたしておるわけであります。
  180. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは最後に一点お伺いしておきたいと思いますが、大臣は先般、御病気になられる前の参議院の社会労働委員会でもって、政府の国庫負担三十億が十億に減った。そのかわりに保険料を値下げするような心がまえがあるというふうなことを答弁しております。ところがその後、何かの何で、今度は保険局長が、いやそういうことはいつからやるとも、また必ずやるともまだ方針はきまっておらないのだ、しかしそういうことが財政からにらみ合し可能な時期がきたらやらぬでもないというふうに、せっかく大臣が非常にいい構想を出したのに対して、局長の方からばっと煙幕をかけてしまっておられるのです。しかしながらその後大臣は御病気になられて、医療保障制度というものについてよくお考えになる機会もあったことではあり、またこれは非常に問題の焦点になっておることでもありますので、従って政府部内でもって意思の統一ができているだろうと思う。そこで私がお尋ねいたしたいのは、三十億が千億になった、そのときの条件というものはよく御存じであろうと思うのです。お互いにここでもって、岸総理もあるいはまた前厚生大臣も局長も、幾たびかわれわれにはっきり約束しておられます。とにかく前の神田厚生大臣は、双方一両損でいこう、政府も金を出すのだから被保険者もしんぼうしてくれ、そういう形で健康保険改正案が通った。それは一部負担を内容としたものです。一部負担をしてもらうというのについては、これは被保険者も一つ出して下さい、一部負担の形で出して下さい。そのかわり政府も三十億出します。こういうふうな話だった。従って、まず政府が三十億の約束を御破算にされるなら、一部負担も御破算にされる義務があると思うが、一部負担の問題をどうされるのか。さらにまた保険料の値下げも、まるで山ネコにさらわれたよう調子で被保険者は政府にかっさらわれておるのです。無断でもってかっぱらわれているのです。従って被保険者の方は二両損で政府は一両損だ。その一両損も単なる見せ金にして引っこめてしまうというようなことでは、被保険者の方は二両損そのままになるわけです。これをどういうふうに解決していただけるのか、その辺のことを承わっておきたいと思います。
  181. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 政府管掌健康保険につきまして、一般会計から三十億の繰り入れという問題が二十億減額されまして十億になりました。その点は私としても、この問題の過去の経緯にかんがみまして、まことに残念には思っております。ただ、しばしば申し上げますように、全体の社会保険というものにおいて、いろいろな当面した問題を解決しなければならぬときにやむを得ざる処置であった。ただ御承知通りに、最近実質的に保険財政がいいということから、財政自身をあずかっている者からいいますと、大蔵当局としてこの際に三十億を減らしたいという気持もわかります。しかし三十億を繰り入れるに至った経緯は、今岡本さんの言われるよりうな経緯を持っておるということになりますと、私の方としてもこの問題について、単純に政府の負担を減らしたいというだけでは申しわけないという考え方になることも、これもまた当然でなかろうかと思うのであります。と同時に、率直に申しまして三十一年度、三十二年度の決算見込み等を見ますと、相当の黒字が出るのじゃないか、ということを考えますと、この保険料率の問題については被保険者のために考慮いたしたい、こういうふうな考え方を持って、おるわけであります。しかしたびたび赤字を出してあれだけの問題になったわけですから、私どもとしてもこれは非常に正確を期さなければならぬ。そこへ御承知通り保険会計では一年度黒字を出した、二年度黒字を出しただけで長期の見通しの立ちませんことも、これまた非常に困るわけでございます。ことに経済調整過程に入った推移等もにらみ合せまして、将来の経済事情とあわせ考えまして、できますならばこの問題を解決いたしたい、こういうことを考えまして事務当局に命じてあるわけであります。そういうふうな段階でございまして、できるだけ将来に対する見通しの上に立って、可能な限り保険料率の値下げができないだろうかということをせったく検討いたしておるところでございます。その点につきましては保険局長と意見の相違はございません。保険局長に私が命じてあるのですから、保険局長も確かにその問題は私の今答弁申し上げました趣旨によってせっかく検討しておる、こう御了承願いたいと思います。
  182. 岡本隆一

    ○岡本委員 参議院の委員会の速記録を私読みまして、今のようなあいまい模糊とした御答弁でなかったのをよく覚えております。もっとはっきりした形であなたは言明しておられる。それを今になってそのようにぼやかされるのはおかしいと思う。しかしそれよりも重要なことは、あなたが今おっしゃった、保険財政というものは不安定なんだ、今は一時的にいいかもしれない、しかしながらまた悪くなるかもしれないのだ、だからこの際は保険料の引き下げや一部負担はそのままにしておいてもらいたい、こういうふうに被保険泊に要求されるなれば、政府の方もやはり出したものは引っ込めちゃいかぬと思う。一方にだけ出さしておいて、それはそのままにしておいて、政府だけ引っ込めてしまうというのでは、まるでえさを見せつけて、ちょうどエビでタイを釣るというやつです。えさだけ見せておいて、ぽっと引っ込めてしまう。これでは被保険者の方がいかれたままであるという格好になるわけです。こういうことは政府のとるべき態度でないと私は思う。保険財政が不安定であるという前提に立って、あなたが、保険料の料率は下げられない、あるいはまた一部負担の軽減ができない、こう言われるのなら、そういう不安定な状態にあるものなら、やはり政府からのてこ入れというものは当然なくてはならぬと思うのですが、それはどうなんですか。
  183. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 幾分言葉の――私の参議院で申し上げましたのも、大体今申し上げた方針で申し上上げたわけであります。ですから私どもは、一方において政府の繰り入れが減額されて、できるだけ保険財政が許す限り下げたいという気持で、事務当局に下げることについて検討をさしていることは事実なのであります。それ以外、どこで申し上げても私は変りはないつもりでおります。参議院の社労でもって山下委員から言われたときも、私はその趣旨でお答えを申し上げました。
  184. 岡本隆一

    ○岡本委員 私は参議院の問題はおいておいて、今申し上げた、見せ金だけ見せて引っ込めてしまったということに対する政府の責任ですね。とにかくあなたは、事情はよく御承知だろうと思う。前の神田厚生大臣がどういうふうに私たちに言明されたか。とにかく私らも出すんだからそっちも出してくれ、こういうことで被保険者が出すことになった。ところが出したとたんに、その次にはぼっと引っ込めてしまっておる。その犯人はあなたなんです。出させた方はとにかく一応出した。神田さんは出した。出したやつをぽっと引っ込めたのはあなたです。一番悪い役をあなたは引き受けておる。そういうふうな損な役、悪い役を引き受けさせられて、しかもそのまま、どうもいたし方ございませんと頭をかいて引き下ってくるようじゃ、困ると思う。やはりこれはそういう建前上、そういうばかなことはできないということは、ここの委員会でもって話が違うんだからという追及があるのは、当然あなたも覚悟しておられると思う。それにはそれで、それだけの理由、もっとはっきりしたところの理由の上に立って、あなたはそれを承認されなければならなかったと思う。だからそういう点について、あなたはそういう見せ金だけ出してぽっと引っ込めてしまった、その引っ込めたということについて、ただ単に不安定だからというふうな理由じゃ――不安定であれば、片一方を引っ込めなければ片一方もそのままに置かなければならない。そういうふうな見せ金を引っ込めたということについては、やはりあなたは十分な責任があると思う。その辺についてどうお考えになるのか承わりたい。
  185. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 何だか神田さんが見せ金を出して、私が引っ込めたようにおっしゃいますが、三十一年度、三十二年度、ともに三十億は入っておるのです。そういう点も、それからこの委員会なりその他の場合におきまして、この三十億が入るのに多大の御努力をなすったことも、私は了承しているわけであります。たびたびこの問題については、各種委員会及び本会議等で御質問になった点でございます。今申し上げましたように、むろん政府管掌の健康保険につきまして、五十億が十億に減ったことはまことに遺憾でございます。それははっきり申し上げています。この三十億が入りました経緯にかんがみると、私としても非常に遺憾だということは考えております。ただ私としては、各種社会保険を通じて、また診療報酬の問題その他もすべて考慮して、ある程度の解決をしなくちゃならぬというときに、財源に一定の限度がある。そういうふうな面から、この問題については非常に不自由いたしましたが、全体の調整上やむを得ない。ことにほかの問題も解決いたさなければならぬような状態であった。しかし、それと同時に、実質的にはこの保険が相当の黒字がありとすれば――あることも存じておりますので、保険料率の引き下げという問題は何とか解決したいと思って、事務当局に今命じておるような次第であります。
  186. 岡本隆一

    ○岡本委員 あまり長時間では恐縮でございますので、もうまたの機会に譲りたいと思いますが、ただ私が今申し上げる意味は、一応三十億政府が出す、従って被保険者も一部負担してくれ、こういう約束の上に立って出てきた三十億円ですね。政府が引っ込めるなら、被保険者の方も、同時に負担軽減をやらなくてはいけない。もし被保険者に出さしておくなら、政府もやはりそのまま三十億の負担を続けなければならない。さらにまたそのときに、大橋さんがこの委員会で、だんだんふやすつもりかといって質問されたら、保険局長は、だんだんふやすつもりです、一割国庫負担というものを目途として考えておりますということをはっきり――とにかく政府の方針は、三十億からだんだんふやしていく、そうして医療費の一割を負担するところまで持っていくつもりだということを、局長はここでお答えになったのを覚えていらっしゃると思います。そういうふうに将来への大きな希望を被保険者に抱かしておきながら、その希望のゆえに、被保険者の方もやむなく一部負担、保険料率の引き上げというものに耐えておるにもかかわらず、それをすぽりと抜いてしまうというふうなことでは、あまりに裏切り方がはなはだしい。これは全くペテンにかけたようなものです。従ってせっかく大臣が、今料率の引き下げについて研究を命じておるということでございますが、研究というものは、一カ月で研究が終るのか、研究中であるということでは、一年かかるのか――ことに診療報酬の引き上げに至っては、数年にわたる研究でもってまだ当てがつかぬというふうな状態ですね。だから、ただ研究中というようなばくとしたことだけでは、あまりにもあいまい模糊としておると思うのです。従って、たとえば年内にそういうことをやりたいと思う、あるいは年内にできなければ、せめて来年度にでもそういう措置を取りたい、こういうふうにお考えになるのか、その辺のところだけをお伺いしておいて、きょうは質問を終りたいと思うのですが、それについてはっきりとした御答弁を願いたいと思います。
  187. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 岡本さん、私申し上げたいんだが、研究中々々々で六年かかった問題を、ともかく――私は就任いたしましてまだ半年でございます。しかし、ここへ参りまして皆さんのために、皆さんとお約束したことはやっておるということをお考え願っても――私が検討中と申し上げても、ここで検討中と申し上げる以上はそんなに長い期間ではないということをお考え願いたい。もう実は私は率直に言えばこりたのです。滝井さんが診療報酬の問題を八月中にどんな案でも作ることを約束しろというそのときに、事務当局から見ると、大体八月中にはできるんじゃないかと思ったら、九月になって、お前一カ月違ったじゃないかということを言われたことがあるのですこういう事務的な問題は、率直に言って期限を切るということは非常にむずかしいことなのでございます。そういう意味で検討さしておるのでございます。検討することを命じている以上は、そこに合理的な期間があるのでございますから、それは御信頼願って、私がそう事務当局に検討さしている以上は、これは非常識な期間を考えることはないということを、御了承願えないかと思います。
  188. 岡本隆一

    ○岡本委員 研究中で六年もかかったものを今しばらくできめられるかというようなお話でございますけれども、それは診療報酬の問題です。問題が違うのです。私が言っているのは、とにかく財源としても一応去年のこの前のままいっても三十億未満の問題ではありません。被保険者に一部負担してもらいたいというのが財源として三十億です。保険料率の五%の引き上げはもっとになっている。計算してみておりませんが、六、七十億にはなっている。しかし、とにかくその一部負担の問題にしても、それからまた料率の問題にしても、これは診療報酬の引き上げほどは大きな問題ではありません。ただ約束なんです。話は話なんですね。だからあなたの方でとにかく三十億出すからしんぼうしてくれ、こういうことで三十億引っ込めるのだったら、こっちの方も引っ込めなければならない。同時にまた研究しなければそれができないのなら、あなたの方を引っ込めるのなら、研究してからお引っ込めになったらいいんです。引っ込めることばかり遠慮なしに引っ込めて、片っ方の方は研究してからというのでは話が合わぬじゃないか。だから私はそういうふうな筋の通らぬ、話の合わぬことは困る。だから引っ込めるなら引っ込めるで、両方もう一ぺん振り出しに戻りましょう。だから一部負担はやめるという改正案をもう一ぺん出して下さい。しかしながら私はそこまで無理をあなたに要求しておりません。しかし三十億引っ込める限りにおいては被保険者に出さしたものもやはり引っ込めてもらわなければ困る。それについてあなたはせっかくそういう考えをおきめになってそういう方向へ持っていきたいということを先般の参議院の委員会で約束されたんだから、それについて事務的な検討をする期間がすでに一カ月あったんです。だからそういうふうな点についての検討がどの程度進み、あるいは次の国会にでもせめてそういうふうな方針を打ち出していきたい、こういう信念をお持ちなら、そういうふうな信念を披瀝していただけたらいい。しかし私の政治力ではどうにもならぬというのなら、あっさりここでかぶとを脱いでいただいてもけっこうです。
  189. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 私の考え方は、率直に申し上げると、下期をなるべく早く締めて下期の情勢を見たいと思うのです。ですが、次の国会のときには必ず御返事できます。それは私は申し上げることができると思います。これは政治力の問題じゃございませんで、事務的な問題でございます。決して厚生大臣だけでできることでございません。
  190. 岡本隆一

    ○岡本委員 時間ですから、きょうは、今後一そうの御努力大臣にお願いいたしまして、この程度でまたの機会にいたします。
  191. 森山欽司

    森山委員長 次会は明二十八日金曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会