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1958-02-14 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       小島 徹三君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    赤松  勇君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       滝井 義高君    中原 健次君       長谷川 保君    山口シヅエ君       吉川 兼光君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君  委員外出席者         衆議院法制局参         事         (第二部長)  鮫島 真男君         参  考  人         (済生会中央病         院長)     小山 武夫君         参  考  人         (国立公衆衛生         院衛生微生物学         部長)     染谷 四郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十三日  委員栗原俊夫君及び堂森芳夫辞任につき、そ  の補欠として古屋貞雄君及び辻原弘市君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員古屋貞雄辞任につき、その補欠として片  山哲君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  母子福祉資金貸付等に関する法律案内閣提  出第四六号)  角膜移植に関する法律案中山マサ君外三十九  名提出、第二十六回国会衆法第四三号)  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第二〇号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  去る二月十二日付託されました、内閣提出の、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。  趣旨説明を聴取することにいたします。米田政府委員。     —————————————
  3. 米田吉盛

    米田政府委員 ただいま議題となりました母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  母子福祉資金貸付都道府県母子家庭や父母のない児童に対し、生業資金修学資金修業資金等八種類の資金を貸し付け、その経済的自立の助成をはかることを目的としているものでありますが、昭和二十八年四月この法律施行以来昭和三十二年十一月末現在までに、都道府県母子家庭等に貸し付けました金額は約四十八億円に達しており、わが国における母子福祉対策に多大の寄与をいたしているのであります。  今回の改正の第一点は、生業資金貸付金額限度を五万円から十万円に引き上げたことであります。すなわち、現行の五万円をもってしてはそれによって開始し得る事業範囲がおのずから限られ、母子家庭経済的自立をはかることが期待できない場合が少くありませんので、これを十万円に引き上げたものであります。  改正の第三点は、現行制度のもとでは、修学資金貸付を受けて高等学校に就学した生徒が大学に就学し、または医師実地修練を受けているような場合には、その者が引き続き修学資金貸付を受けたときのほかは、高等学校貸付を受けた修学資金を償還しなければならないこととなっておりますので、修学資金につきましては、高等学校もしくは大学に就学し、または実地修練を受けている間の償還金は、その支払いを猶予できることとしたものであります。  改正の第三点は修業資金につきまして、現存は児童が二十才に達しますと、知識、技能を習得している途中でありましても、それ以後は貸付が打ち切られることになっておりますので、修業資金貸付期間限度とされている二年以内の範囲内におきましては、二十歳に達した後においても継続貸付ができることとしたものであります。  改正の第四点は、都道府県は急を要する場合には、都道府県児童福祉審議会意見を聞かないで、貸付金貸付を決定し得る道を開いたことであります。これは生業資金事業継続資金住宅補修資金等につきましてはその資金の性質上早急な貸付を必要とする場合が少くないからであります。  改正の第五点は違約金の割合を他の貸付金公租公課延滞金等の場合と同様に、日歩四銭から三銭に引き下げたものであります。  以上が改正案の大要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 森山欽司

    森山委員長 以上で説明は終りました。  本案についての質疑その他につきましては後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 森山欽司

    森山委員長 次に角膜移植に関する法律案議題として審査を進めます。  本案についての質疑はございませんか。——なければ、本案についての質疑は終了したものと認めます。  この際、長谷川保君より、自由民主党及び社会党を代表して、本案に対する修正案提出されました。まず提出者より趣旨説明を求めます。長谷川保君。     —————————————
  6. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は自由民主党並び社会党を代表いたしまして、本角膜移植に関する法律案に対する修正案提出いたします。  まず修正案を朗読いたします。   角膜移植に関する法律案の一部を次のように修正する。  第五条を次のように改める。  (省令への委任)  第五条 この法律に定めるもののほか、第二条の規定による眼球摘出及び同条の規   定により摘出した眼球の取扱に関し必要な事項は厚生省令で定める。  第七条中「前条」を「第六条」に改め、同条を第八条とし、第六条の次に次の一条を  加える。  (眼球提供あっせん許可)  第七条 業として死体眼球提供あっせんをしようとするときは、厚生省令の定  めるところにより、厚生大臣許可を受けなければならない。   新第八条の次に次の一条を加える。  第九条 第七条の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処  する。  2 法人代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人  又は人の業務に関して、前項の違反行為をしたときは行為者を罰するほか、その法人  又は人に対しても、同項の罰金刑を科する。  附則附則第一項とし、同項に見出しとして「(施行期日)」を附し、同項の次に次  の一項を加える。  (厚生省設置法の一部改正)  2 厚生省設置法昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。  第五条第四十二号の次に次の一号を加える。   四十二の二 角膜移植に関する法律昭和三十三年法律第号)の規定に基き、業と    して行う眼球提供あっせん許可を行うこと。   第十条第二号の次に次の一号を加える。   二の二 角膜移植に関する法律施行すること。  以上が修正案であります。この修正案趣旨はこの法律が盲者の開眼のために必要な角膜死者死体から摘出して、これを使うということでありますので、死者死体を扱うに当りましては十分な注意、またこれを扱うについての礼を失しない扱いを十分にするということのために、この必要な修正をしようとするわけでございます。またこの修正をするにつきまして、必要な条文の整理、あるいは所管局規定等をここにいたそうとするものでございます。  以上のような次第でございますので、至急慎重審議の上、可決せられんことを望みます。(拍手)
  7. 森山欽司

    森山委員長 ただいまの修正案についての質疑はございませんか。
  8. 八田貞義

    八田委員 本法案修正案に関連しまして一つ、三つ重要な点について質問をいたしたいと思います。  まず第一点は本法案の第二条の問題でございますが、第二条の規定は刑法の身体損壊罪違法性を阻却するための要件を規定したものでありまして、本法案のうちで最も重要な規定と思うものであります。ところで、本条のうちで「角膜移植術を行う必要があるとき」というのは移植術を受ける必要のある特定の患者が存在するということを意味すると解してよいかどうか、この点について法制局の御見解をお願いしたいと思います。
  9. 鮫島真男

    鮫島法制局参事 お答えいたします。お尋ねの点は御質問通りでございます。要するに、角膜移植術を行う必要が具体的に存在しているということが必要でございまして、従いまして、そういう角膜移植術を必要とするような患者がいるかどうか、あるいはいるかもしれないので、この際摘出しておく、そういうようなのはここでいう移植術を行う必要があるということにはならないのでございます。結局、患者が特定していなければならぬ、すなわちそういう必要性が具体的に存在しなければならぬというのでございまして、第二条の解釈お尋ね通りでございます。
  10. 八田貞義

    八田委員 そういうことであれば、問題にされている営利的なあっせん業が業として成り立つ余地が第二条の法意からきわめて少くなると考えられますが、そのように理解してよろしいかどうか。
  11. 鮫島真男

    鮫島法制局参事 ただいまの眼球提供あっせん業態がどういうものが生じてくるかということはちょっと今私の方では明確にお答えができないのでありますが、ただここで申し上げられますることは、第二条の今の角膜移植術を行う必要性につきまして、ただいま御答弁いたしましたように、そういう具体性がなければいかぬ、患者が特定している場合に限って、角膜移植術を行う必要性があるんだという解釈をとりました場合にはそうでないただばく然とそういう必要性を予定いたしましてとる場合に比して、そういう業態が発生する場合が多少減ずるということは理論的に申し上げられますけれども、ただ先ほど申し上げましたように、どういう業態が発生するかということを明確に申し上げられませんので、はっきり少いかどうかということは申し上げられませんが、先ほど申し上げましたように、抽象的にはお答えができると思います。
  12. 森山欽司

    森山委員長 この際滝井義高君より発言を求められておりますので、これを許します。
  13. 滝井義高

    滝井委員 角膜移植に関する法律案がいよいよ通過することになるわけですが、そのときに当って、私は今後この法律を取り扱っていかれる厚生当局に二、三点要望をしておきたいと思います。  それはこの法律審議の過程でいろいろ問題になりました死の確認ということをこの法律は一応飛び越えて死体ということになって、その死体から眼球摘出することになっております。従って死の確認と、死後その死体から眼球摘出する、この時間的な関係というようなものを今後省令を決定する場合には、一つ慎重に考えていただきたいということが一つ、第二番目には摘出眼球取扱いについてです。この摘出眼球取扱いについても、これはなかなかニューフェースの法律でございますから、いろいろむずかしい点が出るであろうと思いますが、そういう点についても一つ専門的に十分省令を作る場合には考えていただきたいということです。それから眼球提供あっせん許可をする場合においても、営利事業であろうと、非営利事業でやる場合であろうと、そういう許可をする場合について、十分これは慎重な態度で臨んでいただきたいということ、それから同時にこの角膜移植を行い、あるいは眼球摘出をやる医師の人格というものを、やはりこの立法精神というものは全面的に信頼をしておると思います。従ってこの法律が出たならば、この立法精神というものを全国の臨床家なり、解剖学者等十分一つ徹底をしていただきたいということ、それから最後に、この法律が出まして実際に働く場合になりますと、現在の健康保険における角膜移植の点数は四百点です。そうすると乙地でいえば四千六百円、甲地でいえば五千円です。こういう料金が果して適正な料金であるかどうかという点の再検討をしなければならぬ段階に来ておると思うのです。と申しますのは今まで角膜移植というのはそう健康保険でたくさんはなかった、従ってこういう料金が適正であるかどうかということはこの法律が出ることによっていわば具体的な裏づけができてきたわけですから、それを考えてもらいたい。  それからもう一つは、眼球摘出は百二十点なんです。これを料金に直せば乙地区は千三百八十円、甲地区は千五百円程度になるわけです。これも果して適正であるかどうか。たとえば解剖学者自身死体から眼球をとる場合もあるだろうし、あるいは眼科医がみずから死体からとる場合もあるだろうし、いろいろなケースが出てくるだろうと思います。あるいは場合によればその間に仲介の労をとる人も出るというようなことで、手数料の問題とかその他いろいろむずかしい問題がからまってきまして、今後むずかしい問題が省令を決定される厚生省にゆだねられることになると思います。従って人道的な立場から見ても非常にいい法律でありますこの角膜移植に関する法律の運用の万全を期するためには、一にかかって今後厚生省令制定に当って慎重な態度で臨んでいただくことを要望いたしておきます。
  14. 小澤龍

    小澤政府委員 ただいまの御意見本案を円満適正に進める上に非常に重大な示唆を含んでおると考えます。従いまして私どもといたしましてはこの法案が両院を通過した暁におきましては学識経験のある人と十分に相談いたしまして、省令制定並びに実施に当りまして万遺憾なきを期していくように努めたいと存じます。
  15. 森山欽司

    森山委員長 他に御質疑もないようでありますから引き続き討論に入るのでありますが、討論の通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  まず修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  17. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって本修正案は可決せられました。  次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  18. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決され、角膜移植に関する法律案修正議決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  20. 森山欽司

    森山委員長 次に予防接種法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  本日はまずここに参考人として御出席をいただきました済生会中央病院長小山武夫君、国立公衆衛生院衛生微生物学部長染谷四郎君の御両君より本案に対する御意見を承わりたいと思います。  この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はお忙しいところを御出席下さいましてまことにありがとうございました。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願います。ただ時間の都合上、恐縮でございますがごく簡単に要約してお述べを願い、御意見を開陳された後委員質疑にもお答えを願いたいと存じます。  なお議事規則の定めるところによりまして参考人方々が御発言をなさいます際には委員長許可を得なければなりませんし、また参考人方々委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、以上お含みおき願いたいと存じます。ではこれより参考人方々より御意見を聴取いたします。小山武夫君。
  21. 小山武夫

    小山参考人 アメリカ公衆衛生協会勧告に従いますと、大体ジフテリア・トキソイドというものは生後ニカ月から六カ月の間に実施するということに相なっております。また事実アメリカの州によりますと、この勧告に従って実行されているようでございます。私ども臨床家としまして、戦争前はジフテリア・トキソイド接種というものは生まれて三カ月後とか四カ月といったような小さい子供でもこれを行う必要がある、また行なってそれが効果的であるという経験からこれを行なってきたものでございます。戦争予防接種法施行せられるようになりまして、またこの方面のいろいろ権威のある学者たち研究によりますると、三カ月、四カ月といったような小さい子供にもやはりこれを行う必要がある、しかも効果があるというような結論が得られております。特に私どもで組織しております研究委員会におきましては各研究者がきわめて慎重にお互いに緊密に連絡いたしまして、年令別にその効果の批判と、それから特に副作用の点につきまして慎重にこれを検討いたしました結果、別に小さい子供でも支障がない、副作用の危険がないということ、それからまた効果があるという結論に相なった次第でございます。以上簡単でございますが……。
  22. 森山欽司

    森山委員長 次に染谷君。
  23. 染谷四郎

    染谷参考人 ジフテリア予防注射が六カ月ないし十二カ月でありますのは、母親免疫子供が持って生まれるわけでございますが、それが大体六カ月くらいまでは続くという考え方から、現在は六カ月以降に一回予防注射をやっている。それからまた母親免疫を持っております——これは受け身にもらっているわけでございますが、そういう免疫をもらっているときに予防注射をいたしますと免疫のでき方が弱いということ、それから三カ月よりもニカ月とか一カ月というようなときはもっと免疫のでき方は悪いのでありますが、そういうふうな母親免疫を持って生まれてくるという理由で六カ月以降にやっておったわけでございます。ところが、最近ジラテリアが非常に減って参りまして、母親が自然に持っておる免疫の度合いが低くなりましたものですから、生後三カ月くらいで母親からもらってくる免疫が非常に低下しております。従いまして、もう少し早く予防注射をすべきであるということになるわけでございます。ジフテリアが少くなって参りましたアメリカとか、そういう文明諸外国ではだんだんと接種月令を早くしております。アメリカなどの公衆衛生協会では二カ月からやれというふうにレコメンデーションを出している次第でございます。それでは三カ月から六カ月に繰り上げた場合に十分いい免疫ができるかということでございますが、これはわれわれの関係しております委員会成績十分免疫ができるという結果がございましたので、当然現在の日本ジフテリアの疫学的な現状に即応いたしまして、予防接種法改正せられるべきだと考えます。そうした場合に、ちょうど百日せきジフテリア予防注射月令一緒になりますので、一般予防接種率をよくするためにも混合すべきだと考え、諸外国では混合ワクチンが使われております。日本予防接種法が強制で行われておる現状でありますので、副作用の点を十分考えまして、現在行われております百日せきの単味ワクチン混合ワクチンとの間の副作用の比較をいたしたのであります。そういたしますと、百日ぜきの単味と比較いたしまして、三カ月から六カ月に繰り上げましても——従来から百日ぜきは三ないし六カ月でやっているわけでございますが、百日ぜきの単味ワクチンと比較して、副作用が実際の予防接種支障を来たしたようなことはないという結論になりましたので、一般予防接種を普及する意味でも混合ワクチンを使用すべきだと考えます。それから今度の改正案に出ております一年ないし一年半にもう一度再接種を、ジフテリア一緒に加えるわけでございますが、これは先ほどお話し申し上げましたジフテリア免疫状況厚生省実態調査成績でもおわかりになりますように非常に低下いたしております。従来は自然感染によって相当免疫を獲得しておったわけでございますが、現在は集団免疫力予防接種によって獲得せられておる実情だと考えますので、予防注射を十分にやる以外に方法がないということになりますと、小学校に入る直前に接種いたしますまで待っておったのでは三、四、五才というようなところの年令免疫状況が非常に低下することが考えられます。ちょうど初回接種を三ないし六カ月に繰り上げまして、一年ないし一年半のときにもう一回再接種を加えることによって十分集団免疫力を高めることができると考えます。初回接種後一年ないし一年半にしましたのは、名古屋大学岡田教授らの成績によりまして、そのころにやるのは最もいいという結果が出ております。これは再接種を従来よりも一回ふやしたわけでございますが、しかし、この際に混合ワクチンを使うことになりますと、従来と比較して接種回数もかえって減ることになりますので、実際の予防接種上非常に便利になると考えられるわけであります。  以上であります。
  24. 森山欽司

    森山委員長 引き続き参考人方々及び政府委員に対する質疑を行います。八田貞義君。
  25. 八田貞義

    八田委員 参考人の方に質問いたしたいと思います。ただいま染谷先生お話によりまして大体了承できるのでありますが、二、三点わからぬ点をお教えいただきたいと思います。  ジフテリアが非常に減ってきさたということは疫学の専門家である染谷先生お話によってはっきりいたすのでありますが、今までジフテリア予防にはジフテリア・トキソイドを使っていると思うのでありますが、ジフテリア・トキソイドによる予防は、生後約半年以内の新産児あるいは乳幼児に対しましては濃度免疫による抗毒素上昇が見られないために無効だ、こういうようにわれわれは了解しておったのであります。ただいま濃度免疫による抗毒素上昇が期待できるのだ、しかも学問上の成績からこれを証明できるのだというお話があったように考えますが、私は抗毒素免疫というものは新産児の場合は上らないと考えておったので、その点ちょっとお教え願いたい。
  26. 染谷四郎

    染谷参考人 ただいま八田先生からお話がありましたが、母親免疫を持って生れておるような子供予防接種をした場合にはなるほど免疫のでき方は弱いのでございます。しかし、厚生省実態調査成績でも明らかでありますように、生後満三カ月以降になりますと免疫のないものが非常にたくさんおるわけでございます。母親免疫が少しは移行されているだろうと思いますが、その程度が非常に低いものですから、三カ月たちますと下っておるだろうと思います。そういう状態の人に予防注射をした場合免疫の上ることは当然考えられるのでありますが、不幸にしてやや免疫を持っておった子供予防接種をした場合はなるほど上りにくいのであります。これは慶応大学中村教授が詳細な研究発表をいたしております。そういうふうな少い免疫を持った子供初回三回した場合予防注射上り方は悪いのでありますが、一年ないし一年半後に再接種すると、全然一回初回接種をやっておらない子供と比較いたしますと、再接種効果が非常に著しくて、第一回のときに免疫を持っておる子供が少しおっても、再接種を一回行うことによって十分な免疫を上げることができるということで、三ないし六カ月は学問的にも非常に正しいではないかという報告をいたしております。
  27. 八田貞義

    八田委員 そうしますと、最近乳幼児とか新生児のシック反応状態はどういうふうになっておりましょうか。
  28. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま八田委員質問乳幼児シック反応状況でございますが、それはお手元に差し上げました資料の一番最後のページ、二十九ページの上の第三図でございますが、それに、性別、月令別シック反応陰性率の一歳未満の者についての表がございます。これは約千五日名についての調査でございますが、そういたしますと、一、二カ月くらいのところは陰性率が高いのでございますが、三カ月、四カ月ぐらいから急に低くなって参るというような成績になっておりまして、先ほど染谷参考人のお述べになりました、母体からの自然免疫を受け継いでいるというのが、四カ月ぐらいから急に減ってくるというような状態がその調査から見られるわけでございます。
  29. 八田貞義

    八田委員 そこで、一番不安になっておるのは副作用の問題なんですが、副作用シック反応と結びつけた場合に、シック反応陽性者の場合と、それからシック反応陰性者の場合の副作用の問題ですね。予防液をさした場合に、どちらの方に多いかという問題でございます。今の御説明ではずっと陰性率の性別、月令別の表をあげてございますが、このシック反応陰性あるいはシック反応陽性と副作用との関係ですね、この点ちょっとお知らせを願いたいと思うのです。
  30. 染谷四郎

    染谷参考人 一般自然感染を起した場合の人間について、シック反応を調べまして、自然感染を起しておりますから自然シック反応は陰性でございますが、こういうものと、それから自然感染を起しておらない場合とで比較いたしますと、自然感染を起しておるシック反応陰性者は、特に高年令の場合にはジフテリアに対する副作用は強いようでございます。しかし、母親からもらっている今のような生後三、四、五、六カ月というようなところの者にやりました成績によりますと、これは農村、都会、各方面の乳幼児についてやった成績でございますが、この生後三ないし六カ月の者と六カ月以降の者との間に、混合ワクチンをさして副作用に有意の差はなかったという成績を持っておりますが、しかしこれはわれわれのやりました成績は、そうたくさんの数でございませんので、日本中の国民を全部やってみれば、あるいは年令の少い方がやや副作用は強くなるというような傾向はあるかもしれませんけれども、われわれの今まで見たところでは、その間に有意の差が見られるような副作用はございませんから、実際の予防接種には支障はない、かように考えております。ただ、母親から移行した免疫を持っている子供と持っていない子供予防液を注射して、その間に副作用の差があったかという成績はまだ私持っておりません。
  31. 八田貞義

    八田委員 ただトキソイドに対する重い全身反応ですね。もちろん副作用と申しましても局所反応と全身反応と分けなければなりませんが、全身反応おいて重い副作用を起すのはシック反応陰性者に多いのだというのが定説なっておるようでございますが、そこでさらにお伺いしたいことは、このジフテリア予防接種法の問題で、ジフテリアが六カ月から十二カ月にわたって初回接種をやるというようなここは、これは連合軍の指令によってできたことなんですが、ただこの法の建前が、乳児ないし学令前児童を対象としているわけでございます。ですから、年令の長じた少年期以降、成人層にジフテリア・トキソイドを注射する場合頻発する相当重い副作用については、特別な注意が払われていないわけなんですね。さらにまたジフテリアの疫学から考えてみまして、最近は成人の間のジフテリアが非常にふえてきておるわけです。そういったところに対するところの配慮というものは、この予防法の中には入っていないように考えるわけなんです。というのは一九四五年ごろから欧米ではジフテリア患者が発生数が次第に増加してきておって、第二次大戦中には特にヨーロッパ全体にジフテリアの流行というものを見た。ことに年令でもって調べてみると、少年ないし成人期のジフテリア患者が著しく増加しておるのだ。オランダではその当時十才未満では従来の七倍から八倍、十才後の年令層では八十倍も激増した、こういうふうに報告があるくらいであります。アメリカの場合をとってみましても、ヨーロッパに兵をやった場合に、一九四五年だけで二千名以上のジフテリア患者が発生したというような事実があるわけです。こういった事実から見ましても、成人のジフテリアが欧州でいかに流行しているかということが想像できるわけであります。  こういうことはわが国におきましても同様なことが見られるわけです。たとえば世界第二次大戦中におきまして少年航空兵の兵舎とかあるいは各連隊の青壮年層にジフテリア流行がしばしば起ったのであります。でありますから、こういった年令層に対するジフテリア・トキソイドによるジフテリア予防ないし流行の防遏を目的とする予防接種の実施法については特段の考慮が要望されなければならぬと思うのであります。こういったことに対しましてこういった青壮年層に対した場合に、シック反応副作用が非常に強い。そういう場合にシック反応はやめて、モロニー反応によるのだとか、いろいろなことがいわれておりますが、こういった成人層のジフテリアに対して染谷博士はどういうふうなお考えを持っておられるか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。
  32. 染谷四郎

    染谷参考人 ただいまのお話はまことに当然考えて参らなければならぬところでありますが、現在われわれが流行地区に参りまして予防接種をする場合にはこの問題を常に考えておるわけであります。現行のトキソイドによる副作用をやってみますと、確かに陰性者は非常に強いトキソイドの作用が見られるわけであります。しかしこれは現行のように、トキソイド〇・一CCを一回接種するという方法によりますと、これをかなり減弱させることができる。しかし理想的にはさらにこれを減らす必要があるのでございまして、それにはどうしたらいいかということになりますと、現在のトキソイドの基準でも当然それは入っておるわけでありますが、できるだけ精製したものを使う必要があろうと思います。さらに今後はトキソイドに明ばんを加えるような方法をやりまして、——精製トキソイドを少量にいたしますと、感染した人は副作用が弱くなる。免疫がない人は十分な免疫ができませんから、その場合にはトキソイドに明ばんを加えまして、そうして少量でも免疫体の上るような、精製トキソイドの明ばんワクチンを作ることによって、この副作用の問題も、それから免疫を作るということも両方満たせるんじゃないか、こういうふうに考えます。
  33. 八田貞義

    八田委員 染谷博士にもう一つお願いしておきたいことは、ジフテリアの伝染源は患者より保菌者が大きな意味をなしておるわけであります。栃内博士が昭和十七年ごろでございましたか、やはれたジフテリアの保菌者調査ですが、その場合に保菌期間というものはわれわれが想像しておったより長くて、保菌期間が四カ月くらいあるというような成績が出ておった。また一カ年に児童の三二%はジフテリアの保菌者になる。しかもその時期は主として冬に多くて、夏に保菌者になるのが少い、こういうような成績を出されておるわけでありますが、今後のジフテリアの疫学とか、ジフテリア予防というものを徹底して行うためには今日予防法が徹底して非常に患者が激減したということはわかるのですが、伝染源としての重要な意味のある保菌者の再調査というものを私は要望いたしたいと思うのであります。もちろんやられておると思うのでありますが、栃内博士のやられたあとの成績、特に昭和二十三年から予防法が施行されたのですから、その以後のジフテリア保菌者の再調査というものがやられてあるかどうか、あったならばそういった論文のお示しを願いたいと思います。
  34. 染谷四郎

    染谷参考人 最近われわれの研究班で調査したところによりますと、非流行地区の冬期におきましても、保菌率は数パーセントという成績で、保菌率は栃内博士がやりました成績に比較して非常に低下しておる。それだけジフテリアの浸染度が低下してきているということが言えますが、しかし集団発生を起しましたような集団では、かなり保菌率は高うございまして、その後一年くらいの間は一〇%、やはり十数パーセントという成績は見せておるようでございますから、かえって免疫のできないような集団ジフテリア菌が入って参りますと、大流行の危険があるということになろうかと思います。  それからもう一つちょっとつけ加えさしていただきますが、最近は毒力の強いといわれておるグレービス型が非常に多くなっております。このグレービス型のジフテリア菌のうち、さらに血清学的に分けますと、浜松ぐらいまでに流行しておる菌と、東京近辺の菌とが血清学的に違うというような、そういうことまでわれわれやっております。栃内博士のあとにおきましても相当ジフテリアについて細菌学的、医学的に調査をいたしております。
  35. 八田貞義

    八田委員 政府委員の人に質問いたしたいのでありますが、今度改正される法律の中に、猩紅熱に対する予防接種の削除があります。これは時間もかかりますからあとに回してもよいのですが、この点とそれからこの法文の中のジフテリアというジがチに点々は間違っておるのですよ。今日はシに点々になっておるジです。ところがこれは全部チに点々になっておるのですが、こういったことはやはり法文上統一していただきたい。それからもう一つは「第八条第一項中「疫病」を「疾病」に改める。」ということが書いてありますが、第八条を見ましても疫病という文字はないように思いますが、これはどういうことでしょうか。
  36. 山口正義

    山口(正)政府委員 猩紅熱を予防接種法の中から削除いたしましたのは、猩紅熱の予防接種液を現在いろいろ検討されておりますけれども、当分すぐ間に合うようなものがまだできそうにございませんので、一応省いたわけでございます。  それからジフテリアの字句の使い方でございますが、先生のお手元の法規集の中にはチに点々になっておりますが、正式の法規集の中にはシに点々というふうになっております。  それから疫病の方もお手元の衛生六法の中が間違っておりまして、原本の中には疫病という字が使ってございますので、それを疾病に直したわけでございます。
  37. 八田貞義

    八田委員 先ほど染谷参考人からお話がありましたように、今度百日ぜきジフテリアとが接種期間が同じになったわけです。そうすると混合免疫にするわけなんですが、それは製剤として初めから混合液を作っておくお考えですか。あるいはそのときに一緒にされるお考えか。そうしますと予防液そのものが今日は明ばんトキソイドを使っておられるのですが、そういったことと、それから混合免疫の思想は今まで使っておったジフテリアとか破傷風ですか、それから百日ぜきとか、そういった混合免疫、そういうものの考えから出発してくるのですが、どういうふうな方法でやられるか、ちょっとお知らせ願いたい。
  38. 山口正義

    山口(正)政府委員 予防接種液は百日ぜきジフテリア混合ワクチンを最初から作っておきまして、そしてそれを国家検定を通して、そうして実際に出すという方法を講じたいと思っております。
  39. 八田貞義

    八田委員 それからジフテリアのトキソイドに対しまして、昭和二十三年京都でもってジフテリア・トキソイド中毒禍事件というのが起っております。あの事件も内容がわかったのでおさまった事件ですが、今後ああいう事態を起さないために十分な施策を講ぜられておられるわけですが、その中毒事件を三度と起さないための国家検定というのですか、そういったものを実施されると思うのですが、その点について不安を解消する意味でお答え願いたいと思います。
  40. 山口正義

    山口(正)政府委員 昭和二十三年に起りました京都のジフテリアの中毒禍事件はジフテリア予防接種液の製造過程におきまして、無毒化のために使いますホルマリンを加えるのを、製造の責任者の方において一つのロットだけ怠ったと申しますか、入れ忘れたというようなことであの事件が起ったのでございまして、それを検定の際に見つけ出し得なかったということでございまして、まことに遺憾な事件だったのでございますが、従ってその後検定の方法を改善いたしまして、もちろん製造の際に製造責任者に十分の注意をさせて、そういうことの二度と起らないようにさせるように指導いたしておりますし、また検定の方法も改善いたしまして、ああいう不幸な事態が二度と起らないように、現在十分の注意を払って、製造並びに国家検定を実施いたしておるわけでございます。
  41. 八田貞義

    八田委員 それから、このジフテリア予防接種に際して、ジフテリアのトキソイドの中には、化膿菌の発育を非常によくする因子が入っているわけなんです。ですから、こういった化膿菌の発育を促進させる因子が少くともジフテリア・トキソイドにあるということは、一般に普及していく場合に非常に問題になる点であろうと思う。この点については、厚生省では指示を厳重にされていると思うのでありますが、今後ともこういった、とかく見のがされやすい点が、末端に行きますと住々事件を起しやすいと思うのであります。ですから、予防接種をして実際的な効果を上げていくことは必要でございますので、こういった点につきまして特に趣旨が徹底するように御指導願いたいと思うのであります。
  42. 滝井義高

    滝井委員 一、二点ちょっとお尋ねしておきたいのですが、それは、昭和十七年を契機として、最近ジフテリア患者が非常にふえてき始めた。二十七年は八千人台であったのが、昨年は一万八千人台、一万人ふえて二倍以上になっておるという理由なんですね。これは何も生後三カ月から六カ月くらいの間にジフテリア予防注射をしなかったから増加をしてきたということではないと思うのですがね。その以前にずっと減少傾向をたどっておって、二十七年に底をついて、二十八年からまた上昇してきておるわけなんです。一体この増加の傾向は、いかなる理由で、いかなる原因で出てきたものか。何かこれは学界の方で明白な原因の把握でもできておるのでしょうか。どちらの先生でもけっこうです。
  43. 染谷四郎

    染谷参考人 最近ジフテリアが多くなってきたのは事実でございますが、その発生の年令分布を昭和二十九年以前と比較いたしますと、最近の方が、年令の高い方に分布がずれてきております。こういうことから考えますと、おそらくこれは、少くともその年令の者の免疫程度が低くなってきているということは当然考えなければならぬと思います。  そこで、それはなぜかということになりますが、一つは、例のジフテリア事件のころに予防注射をしなかったその子供が、ちょうど今その年令にきておるのではないかという説をなしている人がありますが、何年たってもうしろの方が高いようでありますから、やはりこれは、初回免疫を完全にやりましても、免疫がその辺まで続かないのであろうということが考えられます。そこで私たちが、完全に三回実施した人間について、接種後の免疫状態シック反応で調べてみますと、三年くらいたちますと非常に低下いたします。そういうことからいたしますと、やはり初回免疫をやったあともう一度適当な時期に再接種をすることが、小学校に入る前の、従来の第二期のかわりに、その間に追加接種をすることが必要ではないかということになるわけでございまして、そういう趣旨で今度の改正がなされたのだと考えます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 今度の改正初回を三カ月から六カ月の間に持ってきておるわけです。そうしますと今の先生の御説明でもわかるように、傾向としてはむしろ三才以降にだんだん増加の傾向があるわけです。そうしますと三カ月から六カ月にやって、それから一年から一年半でもう一回やる。そうすると今度は小学校入学まではやらない。入学前にやる。その間があまり間隔が遠過ぎるのではないか。むしろ一年から八年までの間、満七年ですか、そこらの間にやる方が予防効果からいったら大きくなるのではないかという、しろうと考えですが、そうい感じがするのですが、そういう点はどうして一才から小学校に上る七才までの間だけをブランクにしておくのかということなんです。むしろあそこに定期的なものを一回入れる方がいいのじゃないか、むしろ小学六年を卒業する前にやるものを繰り上げて……。そういう点はどうでしょうか。あそこに入れる方が予防行政の上からいったら効果が上るのじゃないかという感じがするのですが……。
  45. 染谷四郎

    染谷参考人 仰せの通りなのでありますが、しかし初回に三回を完全にやりまして、そうして一年ないし一年半に一回やりますと、今度は小学校に入るくらいまでは続くだろうという考え方。それから、そうは言っても十分ではないかもしれませんから、さらに小学校卒業のものをやめてしまって前に繰り上げてもいいのじゃないかということは、われわれの集まりでもずいぶんディスカッションをされたのでありますが、しかし先ほどからお話のように、年令の高い方に最近ジフテリアが起りつつあるという傾向にありますので、従来の第三期をやめるわけにいかぬということで、やはり今のような改正案のようなことで、諸外国でもやっておることでございますから、そういうことで大体目的が達せられるのではないかということでございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 大体わかりました。そうしますと今度新しく混合ワクチンが出ることになるわけでありますが、何か官報を見ておりますと、昨年十二月に薬事審議会の答申をようやく得た非常に新しいものだということがちょっと書いてあったように思うのですが、今まで実際に現場で百日ぜきの注射をやると非常な発熱があるわけです。そうしますとこれにジフテリアと両方加えて混合ワクチンでやると、その発熱に拍車をかける状態が出るのではないか。その場合に、今までは生後一年たってやっておったものが三カ月から六カ月というようなところに非常に強い混合ワクチンが持っていかれる形になるわけなんですね。この点の臨床上の——動物実験と少し違うところがあると思いますが、そこらあたりの確信——問題は母親というものは予防注射をやって非常に高い熱が出ると二回目から来なくなってしまうという点があるわけです。そうしますとジフテリア予防するために行うその注射のために熱を出して二回以降にはもう行かなくなってしまう。一回だけでやめてしまうということではなかなか問題だと思う。それから百日ぜきの注射は非常に間隔が長い。きょうやったらあしたというわけにいかない。あれは多分一週間か二週間置いて二回、三回とやったと記憶しておりますが、一回目に熱が出るともう二回以降には行かぬという傾向が出てくる。それでお尋ねしたい点は、百日ぜきのワクチンで熱が出たものが、今度はジフテリアのワクチンを加えて混合ワクチンとした場合に、一体百日ぜきよりか発熱の傾向が非常に強くなってくるものなのか、それとも百日ぜきと同じ程度に作用するにとどまるものなのか、こういう点を一つお教え願いたいと思います。
  47. 小山武夫

    小山参考人 ただいまお話がございましたように、ジフテリア・トキソイドの場合には副作用はほとんど問題にしなくていいのでございますが、百日ぜきワクチンの場合には、子供によりましては相当副作用が起るのが例でございます。現行の方法に従いましても、ある程度副作用は免れることができないのでございます。それで混合ワクチンにいたしました場合にはどうかと申しますると、これは今の御説のように、われわれといたしましてもこの問題を特に重視いたしまして、慎重に研究を重ねたのでございますが、現在の百日ぜき単味のワクチンと、それから混合ワクチンの場合を比較検討いたしますると、一口に申しまして混合ワクチンの方が幾らか副作用が強い。しかしそれがために支障は来たさないという結論を得たのでございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 混合ワクチンの方が幾らか副作用が強い程度であるということでございますので、一応安心をいたしたいと思います。  そこでこれは公衆衛生局当局に尋ねたいのですが、いわゆる予防接種法の九条との関係ですが、疾病その他のやむを得ない事故のために予防接種をやらなかったときには、その事故がなくなった後、一カ月以内にまた予防接種を受けなければならぬ、こういう規定があるわけなんです。実際に一回、二回、三回と各地方自治体、市町村はやっておるわけなんです。そうしますと、一回目にやって非常に高い熱が出ちゃってこりた。それで二回目はもうしばらく様子を見ようということでずっといって、三回やるのを二回だけで、一回飛ばしちゃって三回目を受けて終る。そうするともう一回やらなければならぬということになるわけなんですね。そういうようにきちんとした間隔を置いて注射をしなければならぬものを、一回飛ばしてやった場合に、免疫効果がどういうことになるかということも一つ問題があると思うんですが、その場合にとにかく事故が消滅したときにはやらなければならぬといっても、現実にワクチンの関係その他で地方自治体においてはなかなか行えないところがあるわけなんです。一体そういう場合にこの九条の関係は、受けなければならぬ、こういう義務規定的なものに強くしておるわけなんですが、そういう場合に保健所その他で自由にこれをやれるような行政上の措置がとられておるのかどうかという点です。  それから先生方には、きちんと三回やらなければならないものを一回抜いたり、間隔をあまり置き過ぎた場合の免疫効果は一体どういうことになるのか、これを一つお教え願いたい。
  49. 小山武夫

    小山参考人 三回実施するように規定されておりますが、たとえば中一回抜いた場合にどうかという御質問のようでございますが、これは一回抜けばそれだけ免疫効果は減殺されるわけでございます。しかし一回でやめてしまったよりも、中抜いても、二回目を少し長い間隔を置いても、やればそれだけやはり一回よりは効果があるわけでございます。三回ときめてありますのは、三回やれば大体十分だということに相なっておるのでございますから、一回抜けば抜くだけそれだけ効果は少くなるわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 私もそうだろうと思うわけですが、そういうような行政指導がなされていないということなんです。一回やったら熱が出たし、一回抜いたからあとは行ってもむだだから、三回目はやめましょうという母親が多いわけなんです。だからそういう点にはやはり免疫というものは、一回やって熱が出ても、その次にやらなくても、三回でなくても二回でもいいんですよ、という行政指導を末端に徹底せしめる必要がある。今そういう傾向が強いのでございますから、予防接種は一回目はたくさん来ますよ。二回目、三回目とだんだん減っていってしまうのです。これが現実です。そういう点の徹底を公衆衛生当局はやはりやっておく必要があるということです。そうしますと、やらなければならぬと規定しておっても、一回抜けても三回目に行けばいい、こういう楽な気持になると思うのです。そういう点お願いだけしておきます。これで終ります。
  51. 森山欽司

    森山委員長 これにて参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  この際参考人方々にごあいさつを申し上げます。  御多忙中のところ長時間にわたり御出席いただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  それでは他に本案についての御質疑はありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 森山欽司

    森山委員長 なければ本案についての質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入るのでありますが、通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  54. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって本案原案通り可決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました法律案についての委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十七分散会      ————◇—————