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1958-02-06 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月六日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 吉川 兼光君       小川 半次君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       小島 徹三君    田子 一民君       中山 マサ君    古川 丈吉君       松浦周太郎君    亘  四郎君       赤松 勇君     岡  良一君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       中原 健次君    山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局          長)     百田 正弘君  委員外出席者         労政事務官         (労政局労働法         規課長)    辻  英雄君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         日本国有鉄道理         事       吾孫子 豊君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月六日  理事吉川兼光辞任につき、その補欠として滝  井義高君が理事に当選した。 二月三日  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第二〇号) 同月五日  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(予) 一月三十一日  日雇労働者健康保険法改正に関する請願(淺  沼稻次郎紹介)(第五〇一号)  同(唐澤俊樹紹介)(第五〇二号)  同(島村一郎紹介)(第五〇三号)  同(橋本龍伍紹介)(第六〇六号)  職業訓練制度確立に関する請願田中伊三次君  紹介)(第五〇四号)  同(小川半次紹介)(第六〇二号)  同(北山愛郎紹介)(第六〇三号)  保育所予算に関する請願中垣國男紹介)(  第五〇五号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間  延長等に関する請願佐竹晴記紹介)(第五  四〇号)  日雇労働者賃金引上げ等に関する請願(淺沼  稻次郎紹介)(第五九九号)  里帰り婦女子処遇改善に関する請願床次徳  二君紹介)(第六〇〇号)  同(池田清志紹介)(第六〇一号)  国立療養所看護体制改革に関する請願(楯兼  次郎君紹介)(第六〇四号)  国立療養所給食費増額に関する請願楯兼次  郎君紹介)(第六〇五号)  保育所予算確保に関する請願平田ヒデ君紹  介)(第六〇七号)  簡易水道普及に関する請願外一件(平田ヒデ君  紹介)(第六〇八号)  失業対策事業費全額国庫負担に関する請願(牧  野良三君紹介)(第六〇九号)  精神衛生対策推進に関する請願吉川久衛君紹  介)(第六一〇号)  結核保護施策恒久的制度確立に関する請願  (吉川久衛紹介)(第六一一号)  国民健康保険療養給付費国庫補助増額に関す  る請願吉川久衛紹介)(第六一二号) の審査を本委員会に付託された。 二月一日  動員学徒及び青少年の犠牲者に対する国家補償  に関する陳情書(第一  二五号)  養老年金制度確立に関する陳情書  (第一二六号)  結核検診費及び結核医療費全額国庫負担等に関する陳情書  (第一四四号)  民間保育所施設整備児童福祉施設従事者身分保障等  に関する陳情書(第一四五号)  社会保障関係費増額に関する陳情書  (第一四六号)  国民保険制度早期実現に関する陳情書  (第一四七号)  社会保険診療報酬一点単価引上げに関する陳情  書  (第一四八号)  同  (第二一五号)  国民健康保険事務費及び保健婦設置費全額国庫  補助等に関する陳情書  (第一四九号)  国民健康保険法の一部改正等に関する陳情書外  一件  (第一五〇号)  旧軍物資処理の不始末による四エチル鉛禍対策  に関する陳情書  (第一七八号)  同和対策促進に関する陳情書外一件  (第一九七号)  下水道及びし尿処理施設整備促進に関する陳  情書(第二〇七  号)  国民健康保険事業強化等に関する陳情書  (第二〇八号)  清掃施設設置費国庫補助等に関する陳情書  (号二〇九号)  下水道整備促進に関する陳情書  (第  二一〇号)  簡易水道施設拡張等に関する陳情書  (第二一一号)  生活保護対策に関する陳情書  (二一二  号)  失業対策事業費全額国庫負担等に関する陳情書  (第二一三号)  医療費国庫補助率引上げに関する陳情書  (第二一六号)  福岡市における上水道布設に伴う飲料水配給経  費の措置に関する陳情書  (第二一八号)  上水道水源水質汚濁防止に関する法律制定促  進に関する陳情書  (第二一九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  労働行政について説明聴取手      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事吉川兼光君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
  3. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認めます。  つきましては、理事補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ありまもんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、滝井義高君を理事に指名いたします。
  5. 森山欽司

    森山委員長 次に労働行政一般について説明を聴取することにいたします。石田労働大臣
  6. 石田博英

    石田国務大臣 この機会に新年度労働行政につきまして私の所信を申し上げたいと存じます。  ここ数年のわが国経済の著しい発展に伴いまして、近代的雇用増加実質賃金向上等労働経済の面におきましても相当改善を見ておりますことは御同慶にたえないところでありますが、なおここ当分の間、年々八十万人に及ぶ新規雇用労働力増加が予測されます。とともに、大企業と中企業との間における賃金格差が逐年拡大の方向に向いつつありますことは、わが国のいわゆる潜在失業問題の深刻さを物語るものでありまして、これが解決をはかることこそ労働政策の最も重要な課題であると信ずるものであります。これがため政府は、昨年末長期経済計画を策定し、国際収支の均衡と通貨の安定を維持しつつ最大限の経済成長をはかることにより、新規労働力吸収労働状態改善を促進し、完全雇用の達成を計画の理想といたしておる次第であります。  私は労働政策分野におきましても。更に具体的な施策を推し進める必要があると考え、来年度におきましては最低賃金制実施、小模事業所への失業保険適用職業別訓練制度拡充強化等措置を講ずるとともに、労働経済をより的確に把握すべく統計整備に特に重点を置いた次第であります。以下これらの点につき、その概要を申し上げたいと存じます。  第一に最低賃金問題でありますが、最低賃金制実施は、ただに労働者労働条件向上に資するのみならず、ひいては企業公正競争確保国際信用維持向上等国民経済の健全な発展を促進する上にも必要なことは今さら申し上げるまでもありません。しかして最低賃金制実施については、わが国経済、特に中小企業実情より時期尚早とする論が存在し、事実わが国中小企業にはこれを裏づける実態が存することは否定できません。また一方には全産業全国一律の最低賃金制実施せよという議論もありますが、これは中小企業に甚大なる影響を与え、ひいては、経済に摩擦と混乱を招くものがありますので、なおわが国の事情に合わないものと考えます。しかしながら、これらの中小企業実態を十分勘案し、最低賃金業種別職種別地域別に決定し、漸次これを拡大していくような最低賃金制実施することは、かかる弊害を伴うことなく所期目的を達することができる適切な方策であると考えるものであります。  政府は昨年五月中央賃金審議会を再開し、わが国実情に即した最低賃金制はいかにあるべきかについ慎重審議を願ったところでありますが、御承知のとおり、昨年末の答申においては右の方式を骨子とする最低賃金制実施をうたっている次第であります。政府は目下この策申に基いて最低貸主法案を作成中でありますが、近日中に今国会に提出したす所存であります。  次に失業保険通用拡大について申し上げます。失業保険制度を五人未満の事業所拡大適用いたしますことは社会保障画期的充実であり、これらの事業所に働く労働者諸君にとって一大福音であると信ずるものであります。ただこれら事業主に対する適用実施に当っては、事業所の把握がむずかしく、また事業主事務処理能力にも限度がありますので、一挙に全事業主について強制適用とすることなく、当面は、事業主の団体が、失業保険事務を一括して処理する制度を設けること、保険料の納付につき簡便な制度を設ける等、事業主事務負担を軽減する措置を講じ、漸次所期目的に到達し得るようはかって参りたいと考え、本国会失業保険法の一部を改正する法律案を提出いたすべく準備中であります。  次に職業訓練制度確立でありますが、最近の産業界においては、生産技術の発達、機械設備近代化が進むにつれ、高度の技術及び技能を必要とする生産分野拡大し、このため、技能労働者確保が強く要請されております反面、労働市場現状は、多くの失業者不完全就業をかかえながら技能労働者が著しく不足しており、このことが雇用及び生産の降路となっております。さらに中小企業における技能水準一般に大企業に比べて著しく低いことが生産性の低位と賃金格差をもたらす原因ともなっております。わが国における職業訓練は、従来職業補導技能者養成等、別々に行われておりますが、その内容は必ずしも満足すべきものでないので、昨年八月労働告臨時職業訓練制度審議会を設けて慎重に御検討を願った結果、総合的職業訓練制度確立技能国家検定制度創設等内容とする答申が出されました。政府は、これに基き職業訓練法案を今国会に提出するよう、その準備を進めております。  なお、以上のごとき政策を円滑に推進するためには、何よりもまず労働実態についての基礎資料を完備することが必要でありまして、労働統計は戦後逐年整備されて参りましたが、さらに賃金基本調査を初め、賃金雇用、その他労働経済に関する統計調査整備拡充することとし、相当予算を計上いたしたのであります。  以上のごとき長期的根本的対策充実と並行して特に明年度におきましては経済引き締め影響駐留軍撤退等原因から相当数失業者の発生が予想されておりますので、当面の失業対策強化に慰を用い、予算の編成に当りまして、特に雇用効果の高い道路整備を中心とした公共事業費増額及び財政投融資関係事業拡大をはかり、健全な雇用機会増加に努めたほか、失業対策事業につきましても、前年度に比し予算額において二十二億八千五百万円、吸収人員において二万五千人の増加をはかった次第であります。すなわち特別失業対策事業三十五億円、一日平均吸収人員一万八千人、臨時就労対策事業七十四億円、二万人、一般失業対策事業百七十五億四千八百万円、二十一万二千人、計二百八十四億四千八百万円、二十五万人となっております。  なお、失業対策事業に働く日雇い労働者生活実情にかんがみ、その住宅費の軽減をはかるため、最初の試みとして、さしあたり、東京、大阪に日雇い労働者住宅の建設を計画しております。また失業保険給付金につきましては、三百一億五千万円を計上し、月平均三十七万三千人の離職者に対し給付をはかることといたしましたが、これは前年度に比し、予算額において七十五億八千万円、人員において六万八千人の増加となっております。このほか第一線の職業安定機関事務費増額し、その活発な運営を期しております。  次に労使関係について申し上げたいと存じます。わが国労働運動は逐年健全化の道をたどってきていると考えられますが、一部には、なお未成熱な面がかなり残存し、国民の強い批判を受けて参りましたことはきわめて遺憾に存ずるものであります。政府といたしましては、これら労働運動の欠陥を是正し、健全な労働慣行を育成するために、昨年来現行法規の順守という点に重点をおいて諸施策を講じて参ったのであります。すなわち政府としては人事院の勧告を尊重し、仲裁裁定の完全な実施に努めるとともに、官公労の組合に対しては違法な争議行為を行わないよう、法の解釈を明らかにする等の措置を講じてきたのでありますが、最近労使双方において政府の意図並びに国民の世論に従って、よき労働慣行を作ろうとする動きが見られるに至りましたことは、まことに善ばしいことであります。  近代的労使関係確立のためには、労使はもとより、国民全体の労働問題に対する理解と良識をつちかうことが不可欠の前提条件と考えられますので、本年は民間労働教育機関として日本労働協会を設立し、労働問題に関する調査研究等を行い、広範な教育活動実施するとともに、労使自主的教育活動を一そう促進したいと考えております。このため十五億円の日本労働協会基金資金運用部に預託し、これが利子収入をもって当該事業費に充当するこことし、近く関係法律案を提出いたしたいと考えております。  最後に労働基準及び婦人少年関係行政について一言申し上げたいと存じます。労働基準法運用に当りましては、中小企業が大企業に比し、あらゆる点におきまして格差がはなはだしい現状にかんがみまして、過般の臨時労働基準法調査会答申にもある通り、各般の施策により中小企業の振興を一段と推進し、中小企業のよって立つ基盤の強化をはかり、法の定める基準を順守し得る態勢の樹立をはかるとともに、監督行政の通常につきましてはこれらの推置と見合いつつ、重点的、段階的な監督推進し、積極的な啓蒙指導を行う所存であります。  また産業災害防止については一段の努力を重ね、けい肺その他の職業疾患に対する予防対策充実をはかるとともに、労災保険の面におきましても予算規模を三百十六億円にまで拡大し、なかんずく補償費関係予算を前年度に比し四十二億円増の二百三十七億円とし、保険給付適正化を促進する措置を講じ、労災病院その他の保険施設につきましても、さらに整備拡充に努める所存であります。  婦人少年行政については、現下の未亡人問題の重要性にかんがみ、婦人職業対策推進するため、内職公共職業補導所拡充強化家事サービス公共職業補導所整備充実をはかるとともに、三十三年度において、婦人労働者保護福祉推進するために、中小企業密集地に働く婦人福祉施設設置すべく所要の予算を計上しております。また売春問題の対策につきましても、更生を望む婦人のための相談、職業補導等機能強化するための予算措置を講じたほか、来年度は特に婦人少年室職員を約五割増員し、また事務費増額して、その機能充実をはかって参りたいと存じております。  以上昭和三十三年度所管行政について私の所信を申し述べた次第でありますが、今後とも各方面の御意見に十分耳を傾けつつ政策推進に当って参る覚悟でございます。何とぞよろしく御協力を賜わらんことをお願い申し上げる次第であります。
  7. 森山欽司

    森山委員長 次に、ただいまの労働大臣説明に関連し、来年度予算措置概要について説明を聴取することにいたします。松永会計課長
  8. 松永正男

    松永政府委員 お手元に差し上げてございます資料に基いて、昭和三十三年度労働省関係予算概要について御説明申し上げます。  まず最初一般会計でございますが、資料一般会計分をごらん願いたいと思います。第一ページに昭和三十三年度歳出予算総括表が掲げてございます。第一が失業対策に必要な経費で、三百二十一億九千二百万円を計上してございます。この内容は、失業対策事業費失業保険費国庫負担金と、それから政府職員失業退職手当三つでございますが、合計して前年度に比較して四十八億円の増加と相なっております。第二は、職業訓練に必要な経費でございますが、この経費として五億八千三百五十八万二千円の予算を計上してございます。昨年度に比較して七千三百匹十四万八千円の増でございますが、職業訓練制度につきましては、このほかに特別会計に十二億五千万円の予算を計上いたしてございまして、総額におきまして約十八億の予算になるわけでございます。第三は、労使関係安定促進に必要な経費でございますが、二億一千四百十九万八千円でございまして、昨年に比べてやや増加をいたしております。第四は、労働保護行政に必要な経費といたしまして十六億九千五百五十二万円を計上いたしておりまして、前年度に比較いたしまして一億三千百九十三万七千円の増となっております。第五は、婦人及び年少労働者保護に必要な経費でございまして、一億九百九十二万六千円でございます。前年度に比較いたしまして一千百七十万六千円の増と相なっております。第六が、職業安定行政に必要な経費でございまして、三十三億八千七百七十五万六千円でございます。前毎度に比較いたしまして二億万八千円でございまして、前年度に比較いたしまして二千三百二十三万九千円の増と相なっております。第八は、国際協力に必要な経費でございまして、七千五百六十七万四千円で、前年度に比較いたしまして二百八十二万五千円の増となっております。第九が、その他の一般行政に必要な経費で、三億五千六百八十七万一千円でございまして、前年度に比較いたしまして一千三十六万一千円の増と相なっております。合計いたしまして、労働省所管一般会計予算は三百八十八億五千五百二十万五千円でございまして、前年度に比較いたしまして五十三億五百四十一万八千円の増と相なっております。  そのほかに大蔵省所管といたしまして、日本労働協会の設立に必要な経費といたしまして十五億円を計上しております。建設省所管といたしまして、労働本省庁舎及び労働省地方官署庁舎整備に必要な経費として一億二千三百六十万二千円を計上しております。他省計上の分も合計いたしますと、労働省関係総額四百四億七千八百八十万七千円と相なりまして、前年度に比較いたしまして六十八億六千五百三十五万三千円の増と相なっております。  次に第三ページ以下、各項目につきまして予算概要を掲げてございますが、ごく簡単に御説明を申し上げますと、第一が失業対策に必要な経費でごいます。まず最初に、このうち失業対策事業費でございますが、これは先ほど大臣からも申し上げましたごとく、三十二年度におきましては吸収人員二十二万五千人の予算でございましたが、三十三年度におきましては二万五千人の増加によりまして、総数二十五万人の吸収を見込んでございます。経費といたしまして二百十億四千八百万円でございます。このうちの一般失業対策事業費が百七十五億四千八百万円でございますが、これは人員増による経費の増が大部分でございます。なお単価につきましては、労力費は、昨年は、三ページの下の方に書いてございますように三百二円でございましたが、三十三年度におきましては四円増額をいたしまして三百六円でございます。その他資材費事務費等につきましては前年とほとんど変っておりません  次に、四ページに参りまして特別失業対策事業費でございますが、これは前年度同額吸収人員同数でございまして、三十五億円、一万八千人でございます。臨時就労対策事業費も昨年と同額の七十四億、吸収人員二万人であります。失業保険費負担金は三十二年度雇用情勢にかんがみまして失業保険金総額を三百一億五千六百万円を見込んでございましてここに書いてございますように初回受給者、又給実人員とも大幅の増加を見込んでおります。このうち国庫負担額は三分の一相当額の百億五千二百万円でございます。  そのほかに、五ページに書いてございますが、日雇い健康保険におきまして十億九千五百万円を見込んでおります。このうちの三分の一国庫負担額三億六千五百万円、移転費給付金を三百万円見込んでおりまして、そのうち国庫負担額百万円、合計いたしまして失業保険給付金に対する国庫負担額は百四億一千八百万円ということになるわけでございます。  次に、失業保険事業費負担金は一億を見込んでございます。これは、事業費総額に対しまして運用収入雑収入等を差し引きました残りに対して国庫負担をいたしますので、計算上、昨年は一億円で、ございましたが、本年度は一億円をもって足りるということになるわけでございます。  政府職員等失業者退職手当は、過去の実績に基きまして計算をいたしました結果、六億二千六百万円を見込んでいるわけでございます。合計いたしまして、労働省所管失業対策費といたしまして三百二十一億九千二百万円、そのほかに建設省計上分といたしまして七十四億という数字になっているわけでございます。  次に六ページに参りまして、職業訓練に必要な経費でございます。職業訓練に必要な経費は、大きく分けますと三つになるわけでございますが、一つは職業訓練所に必要な経費でございます。第三は企業内の職業訓練に対する補助金でございます。第三は職業訓練行政を施行いたしますための事務的経費でございます。職業訓練所経費といたしましては、まず中央中央職業訓練所設置いたします。各都道府県総合職業訓練所設置いたします。各都道府県に数ヵ所一般職業訓練所がございますが、そのほかに、特殊な情勢によりまして、特別職業訓練所設置いたします。これらの経費職業訓練所経費といたしまして計上されているわけでございます。財源は、一般職業訓練所につきましては一般会計が主でございまして、中央職業訓練所総合職業訓練所につきましては特別会計からこれを支出いたしまして、労働福祉事業団をして設置、運営せしめるという構想になっているわけでございます。  まず第一の一般職業訓練所でございますが、これは三億九千九百六万三千円でございまして、昨年度と大体同額ですが、やや増加いたしております。このほかにカッコ書きで一億円がございますが、これは失業保険特別合本計からの補助金でございます。合せまして四億九千九百六万二千円が一般職業訓練所経費でございます。内容は、カッコの1、2、3にございますように、一般職業訓練所経費と、これに併設いたします。ところの夜間職業訓練所経費、それから先ほど申し上げました一般職業訓練所機械、器具の充実のための失業保険からの補助金一億円ということに相なります。職業訓練所規模個所数訓練人員等は、ここに掲げております通りでございまして、前年度と大体同数でございます。  次に、七ページに特別職業訓練所経費が掲げてございます。一億二千九百十四万六千円でございますが、これは二つございまして、第一は駐留軍離職者に対する職業訓練経費でございます。これは二千九百三十一万三千円を計上しておりますが、このほかに特別会計におきまして一千十八万六千円を計上してございます。合計いたしますと、駐留軍離職者職業訓練経費といたしまして、三千九百四十九万九千円と相なるわけでございます。訓練所数は既設の職業訓練所に併設いたしますものが七カ所、駐留軍労務者が特に密集しております地帯に、臨時に設置いたします臨時施設が十カ所でございます。種目、訓練人員等はここに書いてある通りでございます。  それから身体障害者の職業訓練費は九千九百八十三万三千円でございまして、前年よりやや上回っておりますが、規模、種目、収容人員訓練人員等は前年と同額でございます。  次に企業職業訓練費でございますが、これは三千万円を計上いたしてございます。企業職業訓練につきましては、従来労働基準法に基きまして、技能者養成制度といたしまして、これに対する補助金として九百万円を計上いたしたわけでございますが、今度新しく総合的な職業訓練制度確立するという建前のもとに、従来の直接補助にかわりまして、国から都道府県に補助をいたしまして、都道府県を通じて事業主に補助をするという構想によりまして、三千万円が計上されました。従いまして、国と都道府県の分を合せますと六千万円になるわけでございます。残りの六千万円は事業主が負担をして、企業内の職業訓練を行うということになっております。  次に八ページでございますが、中央職業訓練指導所の経費でございます。五千三万七千円を計上してございますが、これは新しく職業訓練所中央センターといたしまして、三十三年度設置に着手をいたすわけで、その建設費の一部といたしまして、五千万円を計上してございます。中央職業訓練指導所におきましては、職業訓練及び技能検定につきましての基本的な調査研究を行うということを主たる業務といたしておるのでございます。これは労働福祉事業団をして設置、経営せしめるという予定になっております。  次は総合職業訓練所経費でございますが、これは従来とも労働福祉事業団法に基きまして、労働福祉事業団によって設置、経営せられておる訓練所でございますが、これに対する交付金及び出資金を失業保険特別会計からの経費といたしまして、十一億五十七万六千円を計上いたしております。前年度に比べまして一億二千五百八十二万四千円の増でございます。運営費、建設費、機械器具購入費の五つがございますが、それぞれ前年度に比べまして増額をいたしておるわけでございます。  職業訓練につきましてのその他の事務事業費といたしまして、九ページにございますように、二千五百三十七万四千円を計上いたしております。これは本省及び地方公共団体が行います職業訓練行政事務費並びに人件費でございます。合計いたしまして、職業訓練関係の経費といたしまして、特別会計から十三億五千六十一万三千円、一般会計から五億八千三百五十八万二千円を計上いたしております。合計いたしまして十八億三千四百十九万五千円、前年に比較いたしまして、約四億五千万円の増と相なっております。  次に、第三の労使関係安定促進に必要な経費でございますが、十ページに掲げてございます。第一は労使関係対策費でございますが、前年とほぼ同額を掲げてございます。労働情報募集費、労働教育費でございます。なお労働教育関係につきましては、このほか先ほど申し上げました十五億円の日本労働協会基金大蔵省所管で計上しておるわけでございます。  次に十一ページに、その他の労政局の一般行政費といたしまして、三千二百四十万三千円が掲げてございます。これはここにございますように、労政懇談会、労働金庫の監督指導、在日米軍慣用労務者紛争処理、労働関係法の施行等に要する人件費、事務費でございます。  それから労働委員会経費といたしまして、一億三千九十六万八千円が計上してございます。これは中央労働委員会並びに公共企業体等労働委員会に必要な経費でございまして、昨年よりそれぞれやや上回った額が計上してございます。  次に十二ページでございますが、労働保護行政に必要な経費でございます。これは労働基準局系統の経費でございますが、第一は最低賃金制実施に要する経費でございます。一千十四万円を計上いたしております。最低賃金法の施行に伴う経費でございまして、内容といたしましては、中央、地方を通じまして最低賃金審議会、専門審議会の設置運営に要する経費、それから業者間協定の推進に要する経費業種別実態調査に要する経費、それから家内労働実態調査に要する経費、最低資金法の周知徹底に要する経費でございまして、合計一千十四万円を計上してございます。  次は十三ページの珪肺等特別保護費でございます。一億七千四百四万六千円を計上してございます。これはけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法によりますところの給付金その他に対する国の負担金でございます。同法によりまして、一般会計が半額の負担をいたすことになっておりますので、労災保険特別会計に半額相当分を繰り入れる経費といたしまして、一億七千四百四万六千円を計上いたしておるわけでございます。内書は十三ページに書いてございますように、珪肺等給付費、給付に要する事務費でございます。  なお健康診断につきましては、昭和三十年から三カ年にわたりまして政府実施をいたしたわけでございますが、三カ年で総数約十五万人の健康診断を完了いたしましたので、けい肺法の規定に基きまして三十三年度からは事業主がみずから健康診断を施行するということに相なりまして、政府の行う健康診断は終了いたしましたので、この経費は落ちてございます。  次に、その他の労働保健行政経費でございますが、十四億七千八十一万三千円を計上してございます。これは本省、地方を通じての人件費、事務費でございまして、昨年よりは相当増額になっております。  なお労働基準局関係の調査研究機関、といたしまして、産業安全研究所及び労働衛生研究所の二つがございますが、それぞれ千九百十一万二千円、二千百四十万九千円を計上いたしてございまして、昨年より増額になっておるわけでございます。合計いたしまして、労働保護行政関係の経費といたしまして、十六億九千五百五十二万円を計上いたしております。昨年に比して約一億三千万円の増と相なっております。  次に十五ページの婦人及び年少労働者保護に必要な経費でございます。これは婦人労働者福祉施設が二百八十万円、これは新規の経費でございまして、特に婦人労働者が密集しております地帯に対する福祉施設設置に要する経費でございます。三十三年度は一カ所の予定でございまして、二百八十万円を計ヒいたしてございます、。  次に婦人職業対策経費は千八百五十三万二千円でございまして、これは特に未亡人等の就職対策といたしまして内職公共職業補導所家事サービス公共職業補導所等の設置運営に要する経費でございます。このうち特に内職公共職業補導所につきましては、前年度に比べまして大幅に増額をいたしまして、千六百十三万四千円、約倍額相当を計上いたしてございます。前年八カ所に対しまして、三十三年度は十五カ所を設置運営するという予定になってございます。  次に十六ページの売春問題対策費でございますが、これは前年九百十二万円に対しまして、三十三年度一千七百二十七万、五千円を計上してございます。内容はここに書いてございますような経費でございますが、特にこの点につきましては、地方の婦人少年室職員の増員と活動費の増額をいたしまして、一番下に書いてございます間接的経費一千百三万九千円を大幅に増額をいたしまして、合計におきまして一千九百六十七万五千円と相なっております。カッコで掲げております二百四十六万円は、一般職業訓練費の中にこ抜き出したものでございます。その他の婦人少年関係経費といたしまして七千百三十一万九千円を計上いたしてございます。  次は職業安定行政に必要な経費でございますが、これは総額三十三億八千七百七十五万六千円でございまして、前年度の三十一億四千百六十二万九千円に比べますと、特に来年度雇用情勢に対処いたしまして大幅の増額といたしておるわけでございます。一の職業紹介業務費は職業安定所に関する経費でございます。二のその他職業安定行政費は、本省並びに都道府県の職業安定主務課に要する事務費、人件費等でございます。  次に、第七、労働統計調査に必要な経費でございます。第一は賃金基本調査でございますが、これは特に統計調査として重点を置きまして、二千三百四十五万五千円を計上いたしておりまして、前年の賃金調査八百五十一万二千円に比べて大幅の増額をいたしております。ここに説明書きで掲げてございますように、賃金決定の各種要因別に、かつ産業別、地域別規模別等によりまして、賃金の構造を明らかにするという目的経費でございます。  次は毎月勤労統計調査経費でございますが、三千七十三万四千円でございます。これは二つありまして、甲調査は従来とも実施いたしておりました調査でございまして、常雇規模三十人以上の事業所に関する労働時間、並びに雇用賃金についての調査でございます。乙調査の方は昭和三十二年度から実施をいたしました調査でございまして二十九人から五人までの調査でございます。これは前年に比べまして大幅に増額をいたしております。なおこれと関連をいたしまして、四人から一人までの零細規模事業所につきましても、特別調査といたしまして、年一同調査するという予定になっております。  その他の労働統計調査に関する経費といたしまして一億八千五百四十八万九千円を計上いたしてございます。  次に国際協力に必要な経費でございますが、総額七千五百六十七万四千円でございまして、昨年よりやや増加いたしておりますが、国際会議の関係の経費と、事務処理に必要な経費でございます。  第九は、その他一般行政に必要な経費でございますが、これは大臣官房所掌にかかる人件費、事務費等一般経費でございます。  第十は、日本労働協会の設立に必要な経費でございますが、これは大蔵省所管で十五億円を計上いたしてございます。  第十一は労働省の本省、地方官署庁舎関係の経費でございまして、昨年に比べまして大幅の増額をいたしてございます。  以上で労働省所管一般会計の御税明を申し上げたのでございますが、次に特別会計につきましてごく簡単に御説明を申し上げます。  特別会計資料が別冊でございますが、これの一ページに総括表が載っております。労災保険特別会計及び失業保険特別会計簿も、前年に比べまして歳入歳出規模が大きく増加をいたしておりまして、労災におきましては三百十六億四千四百六十九万六千円となっております。失業保険におきまして四百九十五億九千二百六十一万四千円でございます。事務的経費概要は省略をいたしまして、六ページをごらん願いますと、労災保険保険施設費が計上されております。保険施設費はここにございますように、労働福祉事業団をして経営せしめております。労災病院、傷痍者訓練所、看護婦養成所等の運営に要する経費としての交付金が一億七千七百二十二万八千円でございます。その他外科後処置等、ここに掲げてございますような各種の福祉施設経費でございます。労働福祉事業団の資金は十三億二千百八十三万二千円ございましてこれによりまして労災病院その他び整備拡充並びに機械器具の整備等を行う経費でございます。七ページに掲げてございますように、労災病院は三十三年度予定において二十六カ所でございます。  失業保険関係につきましては、失業保険の保険費の総額は、先ほど申し上げましたような増額をいたしておるわけでございます。保険施設につきましては十ページをごらん願いますと、失業保険保険施設費が掲げてございます。これは労災保険と同様に、総合職業訓練所を労働福祉事業団に経せしめておるわけでございますので、それに対する交付金が二億四千五百十七万七千円でございます。それから先ほど申し上げました一般職業訓練所に対する機械器具の充実費といたしまして、補助金一億円を掲げてございます。それから十一ページでございますが、労働福祉事業団に対する出資金といたしましては、十億五千三十九万一千円と、前年より大幅の増額をいたしております。これによりまして総合職業訓練所の建物の整備充実機械器具の購入をいたすわけでございます。十二ページに中央職業訓練指導所の経費、先ほど申し上げました経費が掲げてございます。このほかに簡易宿泊所の施設費といたしまして四千九百六万二千円を掲げてございます。これは設置個所四カ所分の経費でございます。それから託児所等の日雇い労働者に対する簡易総合福利施設の経費といたしまして、二千四百五十五万一千円を掲げてございます。  最後に、日雇い労働者に対する住宅建設の経費といたしまして、五千五百万円を経上してございます。  以上で特別会計の主要部分につきまして簡単に御説明を申し上げた次第でございます。  以上で御説明を終ります。
  9. 森山欽司

    森山委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。大坪保雄君。
  10. 大坪保雄

    ○大坪委員 私はただいま御所信をお述べになりました事項等に関連を持たせつつ、石田労働大臣労働行政の各般についてお尋ねを申し上げたいと思いますが、申すまでもなく労働政策は、国の産業をになっている労働者生活の問題であり、その福祉増進をはかるべき問題であろうと思うわけであります。従って、これはひとり労働者生活向上、安定のみならず、ひいてその業績の成否が社会問題に直ちに関連いたしまするし、またこれはひいて国の産業経済の全般に非常に大きな影響を及ぼします。国の盛衰に直接直結している重大なる問題である、かように言っていいかと思うのであります。従いまして私どもとしましても、この問題の円満なる解決と推進には平素心を痛めておるのでありますが、私どもの属しております自由民主党におきましても、この問題を党の重大政策の一つとしてきわめて重視して検討を加えておることは御承知の通りであります。ただいま石田労働大臣労働行政上の御所信の一端を伺いますと、労働政策の各般にわたってきわめてあたたかきお心持を持って御施策をお進めになっておるところがにじみ出ておりまして、私ども平素から石田労働大臣の識見と御手腕には非常に高い期待を持っておるのでありますが、一応安心した感じを実は持たせられた次第でございます。今年予想をされる失業者増加に対する失業救済事業の拡張のことにつきましても、労働者技能を持たすべく、従って雇用の安定をはかるための、労働者一般に対する技能訓練の措置などにつきましても、さらに日雇い労務者の住宅拡充なり、婦人、少年等、日陰の弱少労働者に対する特別の御配慮というようなところまで至っての労働行政全般に対する御措置、一応私ども非常にけっこうだと思います。しかしながら先刻申し上げましたように、問題が問題でございますから、各般にわたって私どもともとと、さらに労働大臣のこれらの問題に対するお考え、御措置、今後の御決意というようなものを伺いたいと思うのであります。ただ本日は他の同僚議員等からの御質問もございましょうし、時間の都合もございますから、当面している二、三の問問題について当局にお伺い申し上げたいと思います。なるべく私は筋潔にお話ししたいと思いますが、まずこれは簡単に一応お伺いだけしておきたいと思います。  先刻の御所信の御表明の中に、最低賃金法案を近い機会に提出する、そういう意図を持っているというお話でございました。これは最低賃金制について、は昨年の暮れ、中央賃金審議会答申を基礎として、その線に沿ってやりたいということでございますから、私ども一応安心をいたしておるのであります。昨年の春、二十六国会に社会党から提出されました最低賃金制というものは、御承知の通り全国全産業一律一体、十八才以上八千円という、私どもからすれば、わが国の産業労働界の実情を全く無視した、仮空とでもいうべき実行不可能の案であったと思うのであります。これらに対しては私どもきわめてきびしい批判をいたしたいと思いますが、そういうものでないということであるようでありますから、一応私ども安心しておるのであるが、その最低賃金法案は一体いつごろ今国会に御提案になるお見込みであるか。
  11. 石田博英

    石田国務大臣 おそくとも二月十五日までには提出いたしたいと存じております。
  12. 大坪保雄

    ○大坪委員 最低賃金法案については二月中旬までには提出する御意図のようでありますから、これはその際、また私からも、なおおそらく同僚の諸君からも、とくとお尋ねがあると存じます。この点についてはその機会に譲ることにいたしまして、私が本日お尋ね申し上げたいと思いますことは、今総評が進めつつありますことしの春季闘争に対する労働省としての、ないし石田労働大臣としての対策いかんという点が第一であります。  ことしの春季闘争は、御承知のようにもうすでに戦術会議、幹事会等を経て、去る三日でございますか、総決起大会を開いて本年のスケジュールをきめたようであります。これは炭労、私鉄等の民間企業を中軸として、これを前面に押し出して、その目標として賃金値上げ、これも相変らず二千円、三千円という、今日経済界の不況にもかかわらず観念的な高額賃金の値上げであります。それに最低賃金制実施さらに権利擁護というような項目を目標に掲げているようでありますが、その闘争のやり方として、炭労と私鉄労連を第一線に押し立てて企業別の統一闘争、それから拠点ブロック共同闘争、これを十字砲火のごとく大きな戦術として押し進めていこうとしておるのであります。問題は、おそらく石炭鉱業に対する炭労の攻勢ということでことしの春闘は強く押し進められ、これが結局大きく問題になってくるものというように考えられます。そこで石炭産業についていわゆる拠点ブロック共闘をやろうとしているわけでありますが、これに対しては過日の総決起大会で、これに輸送力関係の争議を組み合せて石炭の生産をはばむと同時に、それの輸送をもはばむということによって、第一段階としては企業者に打撃を与えるということになりましょうが、その副作用として、日本の産業経済界に非常に大きな影響を及ぼすことをもくろんでいることと思う。この点について、これはいわゆる民間企業  でありますから、従来政府の態度は、民間企業には原則として労使当事者の話し合いにまかせるという態度をとられておったのであるけれども、企業が基幹産業であるし、それが拠点ブロック共闘として輸送機関等とともに、これと組み合せての闘争ということになりますれば、これは単なるある民間企業の争議なりとしてのみ、さように軽くは取り扱われないのではないかというように考えられるのでありますが、そういう点等から考えて、ことしの春闘の一番の重点、それはおそらくは将来社会問題等にも発展してくるのではないかと思われるので、この炭労を中心とする拠点ブロック闘争についてどういう対策をお持ちになりますか、この点を一応まずお伺いしておきたいと思います。
  13. 石田博英

    石田国務大臣 民間労使間の労働問題についての紛争に対しましては、大坪委員の御発言にもありました通り労使間の自主的な解決を期待するという態度を基本線として対処して参りたいと考えておる次第でございます。ただ、労働条件改善ということは、労働省といたしましても望ましいことでございますが、それがわが国経済、財政上の他の諸条件を無視して行われますることは、結局労使の問題を円滑に解決する方法でもなく、実際上労働者諸君生活改善にもなる問題ではないと私どもは考えておるわけでございます。従って、画一的な他の諸条件と見合わないような一方的な要求を力だけによって解決しようという方法は決して望ましいものとは考えておりません。しかしながら、それに対する基本的な対策は、先ほど申しました通り、それぞれ自主的な解決をする能力を持っているものという建前に立ちたい、そうして話し合いによって平和のうちに、他の国民諸君に迷惑をかけないように解決してもらうことを勧奨して参りたいと思っております。しかしながら、先般の総決起大会において決議せられたような、石炭の輸送をストップし、全産業を麻痺させるというようなことを初めから掲げて、そうして行うような態度に出ることは、やはり依然として力だけによってものを解決しようとする態度がまだ失われていないことであって、私といたしまして、きわめて遺憾に存じます。だが、もしそういうことを行われるといたしますならば、また再び世論の非常に大きな批判を受けることになりまして、組合自体の健全な発達にも悪い影響を及ぼすものと思っておるわけであります。ただこの際特にお願いを申し上げておきたいことは、いろいろ事前にと言われますけれども、やはり公平なアンパイアとしての態度に終始いたしたいと存じます。従って、もし法律に違反した行為が行われました場合においては、これは従来とって参りましたごとく、峻厳な、妥協を許さない態度を持って対処いたしますけれども、しかし事前に何かあおり立てていくようなものの取扱い方、いかにも不法行為が当然行われるだろうというような言葉の使い方、私はそうでなくて、やはり書意を持って、良識あるものとしてそれぞれの人、が対処して下さることを期待しつつ、一方におきましては、違法行為には峻厳な、妥協を許さない態度を確保するという建前で参りたいと思いますので、これをことさらあおり立てて、何か労使の対立を感情的な方向へ持っていくようなことは、労使双方はもとより、第三者においても避けていくことが望ましい。こう考えておる次第でございます。
  14. 大坪保雄

    ○大坪委員 労働争議に対する態度として、今お述べになった点はまことにごもっともだと存じます。ただ、これも所によりけり相手によりけりであろうと思います。私どもから見ますると、総評の現在までの――現在も変りないと私は思うのでありますが、労働運動の指導の方針というものは、労働者労働条件を維持、改善して、その生活向上を期待する。さような経済上の目的を達するための、労働組合としての本来の目的に向って労働運動を指導するということより幾らか逸脱して、いかにも政治的意図を持っているにおいがしてならぬのであります。私は労使の関係は、最終的にはやはり力関係を世論のアンパイアによって解決つけられていくべきものと思うのでありますけれども、それはあくまでも裸の力、裸による相撲をとる力の関係、力の比べ合いでなければならぬ、何か腹に特殊の一物を持っての相撲勝負であってはならぬと思うのであります。世論はもちろんそれを見なければならぬのでありますが、特にこの問題を取り扱う政府の機関としては、フェアな状態で土俵の上に両当事者が上るように、そこをアンパイアとして調査し、検討もし、もしアンフェアな何かをからだにつけているという場合には、それを取り除いて土俵に上れという勧告もしなければいかぬのではないかというように考えるのでありますが、総評の最近の労働争議の進め方を見ますると、何か裸以外の何ものか、相手の持たぬものを持って土俵に上っている、何か特殊の意図があるのではないか、土俵上相手方を倒す、ないし土俵外に押し出すということ以外に、もう少し大きな打撃を与える意図を持っているのではないかと思われる節が少くございません。たとえば、ことしの春闘でねらっている炭鉱中心の拠点ブロック闘争のごとき、これは石炭の生産をとめることによって石炭企業者に大きな打撃を与えるということであれば、炭労と石炭鉱業の経営者との間の経済上のフェアな闘争でいいと思うのであるけれども、これと関連せしめて、総評傘下の他の企業陣営を動員して、そうしてこれの輸送をとめて、一般産業、ひいては日本の経済全体に影響を及ぼすような闘争のやり方というものは、これはどうもアンフェアな感じがしてならない。特に、御承知のように、昨年の六月でございましたか、春季闘参争の跡始末のごとくして開かれた総評大会におきましては、たとえば国鉄労働組合の違法行為者に対する処分等に対して、これは独占資本及び政府の弾圧である、この独占資本及び政府に対する対決のためには、原材料と輸送力に対して長期的なるストップをかけることが必要である、それによって多くの譲歩を期待するべきである。こういうようなことをきめている。その昨年六月の総評大会できめた線によっているのではないかと思われるのであります。でありますから、ただいま申されました労働大臣の非常にフェアな、アンパイアとしての立場を失わないでいきたいというお気持はよくわかりますけれども、今私が申し上げましたように、やはり力関係の勝負、相撲でありますから、フェアな状態で出ていく、そうでないものに対しては、やはりあらかじめ注意を喚起するという措置も私はとらるべきじゃないかというように思うのでありますが、その点について、もう一度あらためてお尋ねをいたしたい。
  15. 石田博英

    石田国務大臣 フェアな土俵を作らせるためのアンパイアとしての役割は先ほど申しました通り現行法規をあくまで守らせるということであります。あくまで守らせるということについては峻厳な、妥協を許さない態度で参りたいと存じます。それから労働組合、特に総評がしょっちゅう話題に上りますが、私は労使のよき慣行を作って参りすためには、労働組合、特に総評側では、経営者側を初めから敵と見てかかる、特に政府に対してもそういう態度をとる、そういう初めから敵と見てかかる態度も、これは誤まりだと思いますが、同時にアンパイアであるべき政府が、ことさらに総評の人間全体を現在秩序の破壊だと初めからきめてかかる態度も、私はやはり誤まりだと考えております。わが国労働運動は戦後、いろいろの御批判はございましょうけれども、漸次健全化の道をたどっておりまするし、特に昨年におきましては、きわめて平静に推移をいたしました。それは表だけのことであって、その実態は変っていないのだという御判断もございましょうし、またそれが事実に近いかもしれませんが、その形の変化を質的変化にもたらしていきますためには、やはり公平なるアンパイアは善意をもって対処しなければならないと私は考えておるわけであります。  それから昨年の六月の総評の大会の決議を取り上げられましたが、事実はその決議の通り行われなかったのでありまして、総評側には総評側の御事情もあろうと思いまするから、表に出た言葉だけを取り上げて、ことさらあおり立てていくような態度は私は避けて参りたい。しかし決して無準備に対処するつもりではございませんし、公共の利益と産業の平和を確保いたしまするためには、十分な覚悟と準備を持っておることだけは申し上げておきたいと存じます。
  16. 大坪保雄

    ○大坪委員 大体基本的なものの考え方は、私はけっこうだと思います。特に当局としてはそうでなければならないと思います。ただ、今最後に、十分なる覚悟と準備を持っておると仰せになりましたが、それには何か具体的なものがございますかどうか、もしここで御披露願えるものであれば、簡単でよろしゅうございますから一つ…。
  17. 石田博英

    石田国務大臣 これはあまり適当なたとえではございませんけれども、赤穂浪士が討ち入りをするとき、陣太鼓を鳴らして討ち入りする方法もございますし突然討ち入りする方法もございます。私はそれぞれそのときに応じて対処いたしたいと存じておる次第でありまして、基本的に申し上げておきますことは、十分な覚悟と、そうして自信を持って対処したい、先ほど何か不規則発言がありましたが、私は、私の労政は決して失敗でなかった、そういう自信を持って対処するつもりでございます。
  18. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は、石田労政は石田大臣個人の御性格のごとく、きわめて明朗、活発、大体けっこうだと思うのであります。しかし私はほんとうはやはり、ことしの春季闘争というものは昨年ほどの苛烈なものはない。それは、総評は姿勢を低くすることを六月の大会で言ったようでありまして、いささか低くしているようでもありますけれども、これは本心からしているように私どもは見ていない。たとえば去年の春季闘争等がうまくいかなかったというのは、これは何も姿勢を低くしてうまくやらなかったというのではなくして、客観情勢がうまくいかなかったから、やむを得ず低くなってしまったということであったろうと私どもは思う。従っていつ何どきでも、機会があれば、やはり公然と頭を持ち上げてくるのではないかということは、アンパイアも知りつつ見ておいていただかなければならぬと思うのであります。私どもは今の石炭鉱業について、ことしの春季闘争に対してやはりある程度の心配をいたしております。昨年ほどの苛烈なる春季闘争には全般的にはなり得ないと思いますけれども、部分的には今の石炭鉱業を中心とする拠点ブロック闘争は、相当社会不安をもたらすようなことまでいくのではなかろうかということを実は私は心配いたしております。あるいは相当長期のストライキも行われるかもしれない、あるいは一鉱山重点闘争ということが、部分スト等の方法によってやられるということも考えておかなければならぬのじゃないか。ところが、石炭は御承知のように基幹産業である。のみならずこれは直ちに汽車をとめ、発電をとめるというほどのものである。でありますから、これは日本の労調法等においては公益事業として取り扱ってございませんけれども、本来この事業の性質からして、私は石炭鉱業のごときは労調法の八条で公益事業としての認定をやる、ことしの春季闘争のように、もう差し迫ってこれに重点を置いて争議をやっているような場合には、これを公益事業として認定をして企業者に対しても、また企業内で働く労働者に対しても、さらには一般国民に対しても、これは単なるある地方の山奥にある一民間企業ではないんだという感じを持たせ、それに対するさような覚悟も持たせるということのためにも、特に今重点的に行われようとしていることしの春季闘争を目前にして考えてみて、労調法八条による公益事業の認定をするというようなことはお考えになったことございませんか。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 現在のところは考えておりませんです。先ほどから申し上げております通り、私は昨年平静に、平穏のうちに過ぎました労働情勢というものを、初めから、これは質的転換ではないんだ、おなかの中は別なんだというふうにきめてかかる考え方には反対であります、事実の認定は別でございますが。従って、こういう情勢労使双方に対して質的転換に持っていきまして、そうしてよき産業平和の確立へ向っての努力を傾注すべきであると基本的に考えます。  第二は、こういう問題は、えてしてあおり立てられて不測の事柄になりがちでございますから、第三のアンパイアの立場に立つべきものとしては、平静に、そしてあおり立てる行為あるいは言動は厳に慎しむということで一貫して参りたいと思っております。
  20. 大坪保雄

    ○大坪委員 春季闘争に関するお尋ねは一応その程度にいたしまして、次に公労法についてちょっと大臣の御所見を伺いたい。  御承知のように公労法四条三項には、職員でない者はその組合員ないし役員となることができないとありますが、石田労働大臣就任以来、終始労働組合の諸君にも強く呼びかけておる法律を守れというお言葉に対する返事として、逆の回答がなされているという感じを持たれるほどのことになっておる。少くとも国鉄労働組合について見ますれば、この公労法四条三項は明らかに無視されておる。機関車労組についても同様でございます。これはこの公労法四条というものが厳存する限り、これに対してはいろいろ議論があるようであります。先般自由労連、運輸労連から来た人たちも、この問題について忠告めいたことを向うに帰ってから申したりしているようでありますが、論議があるようであります。しかしこれは今日の公共企業体の秩序維持のために必要なりとして定められた法律である。これが明らかに無視されておる。先般の国労の臨時大会においても、副委員長一人改選されて、何か団体交渉の橋だけは残したという印象でありますけれども、全体としては委員長、副委員長、書記長と、ちっとも変っておらぬ。これらのことは明らかに公労法無視であります。これは現在ある法律を守っていく、守らせていくという建前からすれば、今の状態で放任するということは適当でないと思うのでありますが、この点に関しての労働大臣の御所見を承わりたい。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 公労法四条三項の問題は、私は議論として二つあるように思います。一つはILOの決議であります。結社及び団結の自由に対する条約の批准の問題、これとの関連が一つあります。それからいま一つは、ただいま御指摘のように、現存しておるのに守っていないじゃないか、こういう問題。私は前者につきましては、またその労働法等の建前における四条三項の存在についてのいろいろの御議論は、双方とも一理があるものと考えておりまして現在労働問題懇談会にこの問題を付議いたしております。小委員会が設けられて御検討を願っておる次第でございます。政府はILOの決議並びにその精神は尊重いたして参りまするが、しかしILOの精神そのものも、各国の実情というものを無視し、これを全部強制しようとしている建前のものでないことは御承知の通りでございます。ので、政府はILOの決議は尊重いたしますが、しかしわが国実情に沿ってわが国労働政策わが国政府の責任においてこれを行うのだという建前で参るつもりでございます。  第二段の問題は、先般の国鉄労働組合における役員の改選、これは公労法四条三項無視の結論に達しているんじゃないかというお話でございます。私は国鉄労働組合の現在の幹部が総辞職をした機会に、完全に公労法の四条三項を守る建前の改選が行われなかったということは非常に遺憾に思っております。遺憾に思っておりますが、しかしその前に行われました藤林あっせん案というものは、やはり公労法の四条三項の精神というものを、その建前を守ったあっせん案でありまして、そのあっせん案を国鉄の労働組合は受諾をしておるわけであります。それから副委員長一名に馘首せられて、いない者を選んでおりますことも、不満足であることはいうまでもないのでありますけれども、これは今までの国鉄の労働組合の態度から比べますならば、公労法四条三項に対する考え方について、一歩前進をしたものと言うことができるんじゃないか。それから藤林あっせん案を受諾するということを国鉄の労働組合で決議をいたしましたことは、来たるべき通常の大会におきまして国鉄の幹部は四条三項にのっとったものになるのだということを事実上約束したことになる。現在において、公労法四条三項が完全に守られているということは言えないかもしれませんけれども、しかしそれに近づきつつある、今まで全く否定しておったものが、認めざるを得なくなったということはやはり前進である、そういう理解のもとに、労働問題はやはり人と人との関係でございますから、そしてまた大ぜいの人たちによって組織せられておりまする組合を相手にすることでございますから、私はせっかちにならないで、腰を落ちつけてやって参りたい、こう考えておる次第でございます。
  22. 大坪保雄

    ○大坪委員 労働大臣の非常に温情ある態度は、まことにけっこうであります。またお話の通り人間関係でありますから、理屈通りなかなかいかぬ。それをせっかちに実行せしめようとする、ということも適出でない。しからば時期を待てばよくなるかというと、私は四条三項が法律の条文通りなかなか実行はできないだろうと思う。のみならず、国鉄労組以外の公労協等においても、これをまねされることもあり得るというふうに私は心配いたしております。これは今のような状態でも、組合の運営にはちっとも差しつかえありませんし、今回一人現役の副委員長を改選されましたから、当局との団交にも一向差しつかえない。ただ私は、そうでありながらやはり心配いたさざるを得ないものがございます。それは御承知のように、公共企業体の職員のストライキ等の争議行為は公労法十七条によって禁止されておる。これを誘惑、扇動することも禁止されておる。ところが、実際の労使間の交渉から争議行為にまで移るという労働争議の段階を見ますと、これはやはり労働組合の中央指導幹部のところで争議の方針をきめる。戦術もきめる。そうしてこれを指令をして流すのであります。その流した結果争議行為となり、公労法十七条に触れるという事態をかもし出す。その場合には、これは十八条によって解雇せられる。しかし、これも事態によって、すべて行為者が解雇されるということにはなり得ないのが実情であります。しかしながら、そういう事態がたびたび繰り返されるということは、これは十分想像がつくわけであります。その場合に、その計画をなし、実施を決定し、指令を流したところの者は組合の幹部である。その組合の幹部は、本来公労法四条三項からすれば法律違反によって、解雇せられておるが、この人たちは改選せられるまではその地位にある。その地位にあって、何ら法律上の責任追及がなされることなしに、法律違反の指令を繰り、返そうとすれば繰り返される状態であるのであります。これの救済策はないものであるかどうか、これに対して労働大臣はどういうように考えておりますか。今のような状態に、解雇者が組合幹部として残っておって、この人たちがだんだんよくなっていくであろうから、長い目で見ていれば正常なる組合運動に持っていってくれるであろうから、それまで待つのだというお考えであるか。あるいはこの春、この夏、この秋にも、この人たちの指導によって、またぞろ法律違反が断行されるということにならぬとも限らぬと私は心配されるのでありますが、そういう際にも、これは仕方がないものであるというようにお考えになるのであるか、その点一つ……。
  23. 石田博英

    石田国務大臣 私が申し上げましたことは、現在の幹部が、現役の人が一名しか残っていないという状態で満足しているということを申し上げたのではございません。きわめて遺憾な状態だ。きわめて遺憾な状態だと思っているが、今までは公労法を乗り越えてやるのだ、これは悪法だから守らなくてもいいのだ、こういう建前ばかりで、法治国であるまじき行為で一貫しておったのが、藤林あっせん案をのみ、そしてそれに向っての具体的な措置を講じて、不十分であるが一歩進んだということが、私は前進だということを申し上げたのが一つと、それから藤林あっせん案をのんだ以上は、次の通常大会、すなわち六月に行われる通常大会には、全員四条三項にのっとった改選が行われるべきものと、こういう前提でございます。ただ、それを一ぺんにしないから、これは全然法律無視だ。法律に十分合っているとは思いませんが、そういう態度では私は臨みたくない。やはり人の関係のことでございますから気長にいきたい、こう思っていることを申し上げたのでございます。  それからもう一つは、質的転換についての善意の努力を私どもはしたいと思います。そうして労働組合に限らず、そういう大衆的な動きに対しては、やはり一般世論と同時に、それを構成している構成員の中の良識というものも、これは厳として存在いたしております。従って世論は、その構成員の良識というものを無視した行為が行われれば、それは非常に大きな世論の批判を受けて、そのもの自体を弱めることになることは、これは昨年の例でよくおわかりであろうと存じます。この善意の努力をみずから行い、そして善意の、あるいはよきそれに対する答えが出てくることを期待しておりますときに、やってみたってどうせだめなんだ、幾らやったって守りっこないのだというような考え方で対処することは、私はやはり間違いなんで、善意の努力、その成果を期待まして全力を尽すべきだと考えているわけであります。  それから、もう一つは公労法に対する考え方でありますが、公労法十七条のような行為を起させないように、政府はやはり努力しなければならぬ。それは何かというと、われわれが仲裁裁定を完全に実施するという建前を貫き、それに対する組合員大衆の信頼をかち得ることが、私は第一であると考えておりますので、十七条違反行為が行われないように、たびたび申しておりまする通り政府仲裁裁定を完全に実施いたす方針を堅持する、同時に、それでもなお十七条の違反行為が行われた場合には断固たる態度に出るという、この二本立ての方針を貴いて参ることを、公社、公共企業体の労働対策の基本といたしておるわけでございます。
  24. 大坪保雄

    ○大坪委員 時間がだんだん迫りますから、簡潔に私の期待する方向に向っての御質問だけに要約したいと思いますが、私は先刻申し上げましたように、解雇者が、要するに職員にあらざる者が組合の役員となって指導をすると、その結果十七条違反を敢行するおそれがある。国鉄について言えば、この事業の性質上、たとえば怠業のような状態があっただけでも、これは社会、公共に及ぼす影響がきわめて大きい。公共の福祉を害し、国民生活に非常な迷惑を及ぼすということは明らかであるのですから、そういう計画をし、指令を出した場合には、これに対して何らか責任追及の道がなければならぬのじゃないか、これが社会秩序を維持する根幹じゃないかというように考えるのでありますが、今の公労法上からは何ら追及の道が残されておらぬ、それでいいのかどうかという点であります。たとえば幹部の法律上の責任を追及するような罰則を規定することも一つの方法でありましょうし、あるいは処罰をもって組合自体の責任を追及するというような方法、これは労調法三十九条かにあるのでありますが、そういうものを公労法の十七条に対しても持ってくる、何かこういう責任追及の担保の方法が得られなければいかぬのじゃないかというように考えるわけでありますが、その点について一つお尋ねしたいと思います。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 公労法上におけるただいま御指摘の担保は十八条でございます。それで十分か十分でないかということは…(大坪委員「解雇された者に対して、この十八条は及ばないですね」と呼ぶ)ですから、解雇された者については、十八条ではだめでありますが、その解雇された者は組合の役員になってはならないという四条三項を守る建前の藤林あっせん案が国鉄の大会においても承認されたのであります。ただ経過的に次の通常大会までの間それが十分に実施されてないとしても、これはやはり前進であると私は思いますから、四条三項を守る建前の藤林あっせん案が国鉄の大会で承認せられた以上は、次の機会において四条三項を守る措置が行われるものと現在は考えておるわけでございます。それから将来にも、四条三項を守る一貫した方針で参りたい。ところが、もし守られない措置が行われましたならば、団体交渉を拒否することができるわけでございますから、やはりこれは組合に対する一種の対抗措置であると考えていいじゃないかと思います。しかし公労法に限らず、他の労働関係法についていろいろ御議論がございます。また御議論が生ずるだけの不備な点もあると思います。しかし公労法につきましては、ただいま公共企業体のあり万につきまして、公共企業体等審議会の答申が出され、それに基いて政府は具体策を考究中でございます。その具体策が出、あるいは実施せられましたときには、公労法全体が検耐を加えられなければならぬ時代がくると私は考えております。労働省に参りましたときも申し上げました通り、労働関係法規というものは、基本的にはこれは保護法規であるべきものであって、私は、この保護法規であるべきものだという建前を貫きたいということが一つ。いま一つは、法律は欠点があったからこれをすぐ改正するというところにいくのではなくて、とにかく基本的には現行法規を守ってみる、守らして見る、そうした上において、ほんとうの欠点を見出して検討を加えるべきだという考え方で参りたいと思っております。しかしそれは労働関係法及び公労法というものについて、私どもの役所で検討を行なっていないというのでけなくて、検討は常時行わせておるわけでございます。現在も相当準備はいたしておるわけであります。
  26. 大坪保雄

    ○大坪委員 その問題はその程度にとどめておきたいと思います  ただ、これと関連いたしますが、昨年の春闘、これは何も国鉄に限らぬ、電電についても、郵政その他についてもそうでございましたが、そして、さらに昨年の秋参りました自由労連の代表者が、当時わが国において新聞記者に語ったところによっても、そういうことをだれから聞かされたのか、言っておる点は、仲裁制度の不完全さが、この数年間日本における労働不安の重要な要因をなしたなどということを申しておる。仲裁制度に不完全なものがたされましたが、改正の結果が必ずしもよくなかったというような感じを昨年の経験によって持たされた。ということは、同じ委員が調停段階と仲裁段階においてダブってこれを処置するという点、その他昨年の情勢から見ますると、これは仲裁委員会にかかっは間は労使ともに行動を慎むべきであるのでありますけれでも、実は昨年は労働組合の方において、相当これに圧力をかけたがごとき印象の行動が相当なされ、いわゆるストもやられたのであります。そういう争議さなかのきわめてきびしいときに、短期間に仲裁裁定を下すというようなことがなされた労使双方に問題を残し、国会においても問題を残し、非常にあと味のよくない不明朗な裁定という印象を与えてしまったということは御承知の通りであります。そういう点から考えますると、私どもは党内においていろいろ検討いたしたのでありますが、仲裁裁定はきわめて大事なものであるということは、労使双方がこれを聞かなければならない。それだけに権威あるものでなければならぬ。権威あるものであれば、争議のさなかに倉卒の間に、あるいは労働組合運動等の圧力下に影響を受けるようなことで裁定が下されるということであってはならない。平素から相当経営の内容についても、あるいは労働条件についてもあるいは一般経済界の事情等についてもよく検討を加へ準備をしたその基礎の上に立って裁定がなされるというようにありたい、こういうように思うのであります。従いまして、現在の仲裁制度に対しては相当そういう事務的な平素準備がなされるような強力な機関を付置することが必要ではないかというようなことを考えているのでありますが、それらの点等も含めて先刻来いろいろ御準備になっているというお話もあったのでありますが、公労法の全体、特に仲裁制度について再検討を近い機会に加んるというような御意向はありませんか。度についていろいろ議論があり、これは十分なものであるとは決して思っておりません。これをほんとうに権威らしめるものにするような検討は行わしめているわけでございます。しかし先ほど大坪委員もおっしゃいました通り、一昨改正されたばかりでございます。その改正されたばかりのものを今度改めまするときは、これはもうほとんど完全に近いものにして改正すべきであって、こういう制度は年々、一、二年のうちにしょっちゅう変えられるようなことであってはいけないと思いまするので、これの再検討の必要は認めまするし、その準備はいたしておりまするが、しかし今度改めるときは、何人も納得するような、ほんとうに権威のあるものにいたすべく、慎重な態度でこれを改正いたしたいと存じておる次第でございます。
  27. 大坪保雄

    ○大坪委員 完全なものにするというお話でございますが、これはちょっと人間わざではできないと思います。改めるにはばかるなかれ、わかったらトライ、アゲイン、トライ、アゲーン、やはり何べんでもやってみてよいんじゃないかと思います。これは私見でございます。  この機会労働大臣にちょっと関連してお尋ねしたいと思います。先般国鉄労組が、全国大会を静岡でいたしましたね。新聞記事による知識程度で、十分でありませんからよくわかりませんが、その際、何か東京地本の国労の客貨車両協議会の諸君が、二等寝台車二両を、無断ではない、必要なる手続を独断で踏んで、そうして静岡に持っていってこれを宿舎がわりにしたという新聞記事が出て、幾分世の批判を受けておるようであります。(「そんなことは運輸委員会でやれ」と呼ぶ者あり)これはおそらく運輸委員会等で御説明願っておると思いますけれども実情少し伺わないと、こういう問題が起るのは、労働規律が国労の間に十分立っておらぬ結果じゃないか、これはいろいろ新聞記事によってみますと、どうも文書偽造もあるようでありますし、何かいろいろあるようです。法律上の、問題が残されているようです。運輸委員だけでなく、法務委員会等においてお取り上げになることがいいのではないかと思いますが、どうもこれは労働秩序の案乱と申しましょうか、そういうところに起因しているのではないかと思われますので、きわめて簡潔に、要点だけでよろしゅうございますから、いきさつを御説明願いたいと思います。
  28. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまのお尋ねに対して、概要を私から御説明申し上げたいと思います。実は今回の静岡で開かれました国鉄労組の臨時大会に当て、宿舎が足りないから客車を利用さしてもらいたいというような話が昨年の暮れに国鉄労組の客貨車協議会の副議長から東京鉄道管理局の客貨車課長に対して出たごとがございました。その際には、むろんそういうようなごほ認めらるべきことでもございませんので、そういうことはできないといって東京鉄道管理局の方ではこれを断ったわけでございます。課長に断わられまして、またそのあと引き続いて、今度その下の関係の係長に同じような申し入れがあったわけでございますが、これももちろん断っておるわけでございます。それで正式に国鉄当局に対して組合側で客車をそのような目的に利用させてほしいという話は、それでなくなったわけでございますが、その後、今度の大会の開かれます直前、一月の中旬ごろ、客車の送配をやっております当直司令員に対して、組合側の客貨車協議会の方から、またそういう働きかけがございまして、その結果、当直司令員のうちの一部の者が、上司の許可を得ず、また関係個所にも必要な連絡をしないままに、権限外の処置をとったわけでございますが、東京鉄道局所属の寝台車二両を静岡の管理局の方へ回送させるという輸送手配を指令いたしたのでございます。その結果、東京の管理局の方から二両の寝台車が、大会開催の前日であります二十八日に、静岡の方に回送あれた。この車を利用した者の氏名その他は、まだそこまで明確になっておらぬ点がございますが、主として客貨車協議会の委員をやっておる諸君に使われた、こういう事実があったわけでございます。それで、静岡に寝台車が回送されましたその当日並びに翌日の二十七日には、実は当局側で気がついておりませんでしたのですが、その翌日の二十八日になりまして、静岡管理局の一旅客課員がこのことにきがつきまして、それから関係個所に責任者がいろいろ連絡をし、調べてみましたとこ、正規の手続を経ないで、許可なくそのようなことが行われておったということがわかって参りましたので、直ちにその客車を所属の東京鉄道管理局の方に返すようにという手配をとられまして、二十九日にその命令を出して東京の方へ返した。いきさつは大体その間、責任者が許しておらないのに、一部の関係者によってそのようなことが行われたということは、国鉄当局としてもまことに監督の不行き届きな点もあったと考えておりまして、申しわけなく思っておるわけでございます。事実の概要はそういうようなことでございます。ただこの間、この客車の利用に関係いたしました関係者を、今いろいろ詳細に取調べをしておる次第でございますが、まだ若干不明確な点も残っておるようなわけでございましてすみやかにそれらの取調べを完了して責任の所在を明らかにすると同時に、今後こういうようなことのないように、部内の規律を振粛することのために、できるだけの努力をいたしたいかように考えておる次第でございます。
  29. 大坪保雄

    ○大坪委員 ただいま吾孫子理事から概要の話がございまして、責任者もまだ十分に明らかでない、従ってそれの処置はもちろんお考えになっていないということでありますが、あらためて申すまでもなく、国鉄は国民のものといってもいいでしょう。国民のもので、国民のためのものである。民主主義みたいなものであります。そこでやはりああいうことが新聞紙等において世上に流布されますと、国民が非常に疑惑を持つ。疑惑を持って、それの責任が十分に追及されないまま放置されると、国民もそういうことを平常時やっても差しつかえないものだというような感じを持つようになっていく。そこでそういうところから私は社会秩序というものは乱れていくと思うのでありますから、この点は一企業内のことだという非常に簡単な話ではなしにそういうものじゃないと思いますが、一つすみやかに十分に事情も調査をされ、責任を追及すべきものは追及する方にいっていただきたいと思うのであります。そこでついでに、これは先刻私は、秩序の問題じゃないかとちょっと申し上げましたのでありますが、お尋ねしておきたいと思いますのは、今でもなお新聞紙等に伝えられるところによりますと、労働組合の幹部にはパスが支給されておる、あるいは鉄道電話が相当自由に使わされておる、労働組合のための専用電話がある、あるいは事務所も――国労本部はそうでないでありましょうが、事務所も国鉄の庁舎が使われておる、チェック・オフも相変らずなされておるのじゃないかというように思うのでありますが、そういう点がどういう実態で、そういう事実があるかどうか。私ども、国鉄のような大組合は民主的に育っていってもらいたいと思うのでありますが、民主的労組合の成長を期待する上からすれば、そういうことは適当でないと思うのであります。そういうことがずらずら従来から許されておったということが、たとえば事務所も使わされておる電話も使わされておるということが、安易に鉄道を労働組合の私有物視して、寝台の一両や二両持っていって使うのはもう何でもないのだという、安易な気持になってしまっておるのじゃないか、その結果が今日のような問題を起すのじゃないかというようなことが危惧いたされておるのでありますから、そういう事実が今でも相当行われておるかどうか。パス、電話、事務所、チェック・オフ等について一つ御説明をお願いいたしたいと思います。
  30. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 いろいろとお尋ねがございましたが、そのうちでまずパスの方から御説明申し上げたいと思います。  実は解雇されてやめた職員に対しては、もちろんこれはパスは出してはおりません。それらの解雇された人たちか現在組合の活動を現実にやっておるわけでありますが、これに対しては組合の方で旅費その他を支給して組合活動をやらしておるわけでありますから、通常の場合切符は解雇された人たちは買っておるはずだと思っております。ただ、実は今回の静岡の大会につきましては、先ほどお話の出ましたあっせん案受諾に伴う組合の正常化のための臨時大会であり、私どもは大いに正常化されることに期待を持っておったようなわけでございまして、今回に限りということで、今回静岡の大会に参加しました組合幹部に対しては、その中に被解雇者が相当、十数名おるわけでございますが、それらの諸君に対しては日数を限り、かつ区間を限った乗車証を発行いたしました。しかしこれは率直に申し上げまして、私どもの考えの中に、公私混同と申しましょうか、そういう気持が完全にまだぬぐい去られていなかったということもあったと思いますので、今後はそういうようなことがないようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。  それから鉄道電話のことでございますが、これは労働組合のみの使用目的のために鉄道電話を使わせるというようなことはいたしておらないつもりでございまして、今回の大会で、たまたまこれも新聞等に報道されたのでございますが、実は組合大会等の際に、当局側の関係職員も傍聴者としてそれに列席させてもらうということをいつもやっております。  そうしてこれらの当局側の傍聴者等から始終、大会の運営状況その他の報告を私ども受けておりますので、そういうことの必要のために、大会等の場合には、その場所に鉄道電話を使わせるということをやっておったわけであります。しかし目的は、こちら側も関係職員がそこでいろいろ連絡をするための必要という趣旨で入れているわけでございましたので、実は今回の大会の途中で当局側の傍聴者を締め出されるというような事実がございましたので、それでは電話を入れておく理由もないということで、さっそくその、電話を撤去した、こういうことがあったわけでございます。そのことが、あのように新聞等に伝えられた次第でございます。  それからチェック・オフのことでありますが、これは実は昨年国鉄労組並びに機間車労組等の間で団体交渉を拒否するということを行いました際に、一たんチェック・オフということもやめたのでありますが、十月の末にあっせん案を示されまして、そのあっせん案を受諾して、とりあえず臨時代表者を相手に交渉を始めることになりましたので、十一月、十二月、この三月はチェック・オフ、組合費の給料からの控除ということを実施いたしました。しかしその後、本年の一月に入りましてから、この組合品費控除ということは組合の自主性をはっきりさせるという観点からも、やめるのが至当ではないかということで組合品側とも話をいたしまして、一月以降、組合費控除はやめております。これは現在国鉄の中に国鉄労組、機関車労組、職能別の俗に第二組合といわれております新しい組合ができておりますが、そのいずれの組合に対しても、すべて一様に組合費のチェック・オフはやらないという処置をいたしておりまして、今後もこの方針は変えずにいこうと私ども考えている次第でございます。
  31. 大坪保雄

    ○大坪委員 時間がございませんから、お尋ねするのはこの程度にしておきますが、今回の静岡の二等寝台盗用の問題は、一言にして言えば、いわゆる汚職なんです。ある人はこれを集団汚職と称しておりましたが、そういう印象である。十分そういう点に配慮して、今後戒めたいということでありますから、当局の御措置に私どもは大きく期待をいたしたいと思うのであります。  そこで最後に一点だけ労働大臣に、この問題に関連するわけでありますが、お伺い申し上げたいと思いますことは、チエック・オフの問題であります。国鉄は今お話のように、今年の一月からは実施したようになっていると言っておられますが、他の公社、現業等もあると思います。民間企業に対してはどうということはなかなかできないが、民間企業においても、すでにチェック・オフ禁止をやっておられるところもある。全般的に、私は労働組合の民主的な成長を期待するという建前からすれば、これはちょっとおかしい問題である。民間企業の場合に、御用組合のようなことがいいということであれば、これは別でありますが、正常な労働組合合としての成長を期待する上らすれば、かくのごときものはしかるべからざるものと私ども思うのでありますが、このチェック・オフの問題に対して労働大臣はいかようにお考えになり、その考えに基いていかような御処置をおとりになるのでありますか。この一点だけ最後にお伺いをしておきます。
  32. 石田博英

    石田国務大臣 チェック・オフの問題は、人事院規則において明確にされておる一般公務員の場合を除きましては、これはやはり労使が自主的に解決すべきものだと考えております。しかし、労働組合が使用者側から独立して、その自主性を保って参りますため、さらに組合員がそれぞれ自発的に参加し、組合構成員であるという責任と義務と自覚を持ちますためには、チェック・オフというものは望ましい制度であるとは思っておりません。ただ日本の場合は、諸外国の場合と違いまして労働組合運動に一番困難な組合員の獲得、それから組合費の徴収というものについてのほんとうの深刻な経験を持たずに、戦争が終局をいたしました後において、上から与えられた労働関係法規の恩恵のもとに、産業報国会の組織をそのまま継承したという形、今までの形成の径路から見てそういうものが今日まで継続しておった理由もあったと思うのでありますが、これは、ほんとうの自主的な組合として育ち、組合員がほんとうに自覚を持っていくためには、先ほど申します通り望ましい制度だと思っておりません。ただ基本的には、それぞれ労使双方において話し合ってきめられるべき問題だと思っておるわけであります。
  33. 大坪保雄

    ○大坪委員 私の質問は、きょうはこれで終ります。
  34. 森山欽司

    森山委員長 午後一時十五分まで休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  35. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  休憩前の質疑を続行いたします。山花秀雄君。
  36. 山花秀雄

    ○山花委員 労働大臣から、新年度労働行政に関する一般の施政の方針が明らかにされました。私はそのうちの二つほど、重点的にお尋ねしたいと思います。なお残る問題は同僚議員の方からいろいろ質疑をかわすと思います。また細部にわたりましては後日に譲っていろいろお尋ねをしたいと思います。  最初にお尋ねしたいことは、失業問題に関連する、御承知のような駐留軍引き揚げに伴うところの善後処置に関して、本年度は一体どの程度の駐留軍労務者が失業をするか、それに対してどういう対策をお考えになっておるかという点について大臣の所見をお伺いいたします。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 本年度は大体三万から四万程一度の間じゃないか、こう考えております。それに対して具体的に予算措置をとりましたものにつきましては、今職安局長から説明させます。
  38. 百田正弘

    ○百田政府委員 三十三年度におきまする駐留軍労務者離職見込みにつきましては、現までのところ明確な数字はございませんが、大体間接雇用の労務者、直用労務者及び軍のその他の労務者を通じまして今大臣からお話がありましたように三万ないし四万程度と推定されるわけでありますが、これに関しまして、労働省といたしましては、昨年度におきましてては、御承知のように昨年の十月、予備費の措置をいたしまして、各府県に対する離職者対策本部の設置並びに安定所の活動を促進いたしますための雇用促進、並びに臨時の職業補導実施いたしますための職業補導補助金、こういったものを昨年において予備費をもって実施いたしたのでございますが、本年度におきましても引き続きこれらの対策充実して参りたいと考えておるわけであります。昨年度におきましては、一般会計特別会計を通じまして二千二百万程度の予算措置をいたしたのでございますが、本年度、三十三年度におきましては、労働省関係におきまして、直接の費用といたしまして四千七百万程度計上いたしてあるわけでございます。  その内容について簡単に申し上げますと、離職者対策本部設置費のほか、安定所の機能充実いたしまして求人開拓、職業紹介に努力いたさせるということで、この費用が昨年の約二倍程度に見積ってあるわけであります。さらに現在までの実施の結果、最も効果をおさめて参りました職業補導につきましては、昨年におきまして予算措置といたしましては、約千三百人程度の、臨時の補導を実施することに予算措置がなされたのでございますが、大体昨年度におきまして、既定の予算を含めまして三千六百人程度の職業補導実施いたしたのでございます。  来年度におきましてはこれをさらに拡充いたしまして、予算措置といたしまして四千百八十人程度の職業補導実施するとともに、従来からの既設の補導所にできるだけよけい吸収する、あるいは既設の夜間補導所をフルに活用するということで、これによって約五千数百人、合せて一万人程度の職業補導実施できるように計画いたしておるような次第でございます。  なお、広い範囲にわたりましての職業紹介を行うことが必要になりますので、これらの場合に就職を容易ならしめますために、現在計画中のものといたしまして、東京と大阪におきまする軍の返還施設に臨時の居住施設を設けましてこれによって、住宅がないために就職ができないという点を打開して参りたい、こういうふうに考えております。
  39. 山花秀雄

    ○山花委員 この際特にお尋ねしたいことは、職業補導も大へんけっこうだと思いますし、それから就職のあっせんもけっこうだと思いますが、今駐留軍関係においては、自力更生という建前から自発的に企業組合を作って、自後の処置をみずから開拓していこう、こういう積極的意欲に燃えておりますが、これらに対しまして、政府としては、これを助成するようなお考えを持っておられるかどうか。持っておられましたならば、具体的な対策を一つお示し願いたいと思います。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 企業組合を作って、自発的かつ積極的に自分の道を切り開いていこうという努力に対しましては、労働省といたしましてもできるだけこれを助長いたしたいと考えておりますが、それについての金融の措置あるいは具体的な指導の措置は、現在のところでは大蔵省及び通産省等において考究をしていただいているわけでございます。特に金融の措置等につきましては、特別ワクというわけではございませんけれども、積極的にこれに対応するような措置を考究するよう、あるいは処置せしめるよう、私どもの方でもあっせんをいたしたいと考えております。
  41. 山花秀雄

    ○山花委員 前には、駐留軍関係の労務者は大体労働大臣の直轄でありましたが、今度は防衛庁の方に移りましたので、いろいろやりにくい点がたくさんあるだろうと思いますが、経済閣僚懇談会というものをお持ちになっておられますから、一つ一段とこの問題に関して御努力を願いたいと思います。  それからもう一つは、これは他の領域にわたりますが、電通の関係、オートメーション関係で多量の失業者が出ております。この場合には特別の退職金が支給されるというふうに承わっておりますが、駐留軍関係は、御承知のようにアメリカの雇用にはなっておりますけれども、間接雇用形式で、大体公務員に準ずる身分関係を持っておるのであります。以前から、退職手当を一つ三割増してもらいたい、こういう熾烈な要求がございました。従来政府行政整理を行います場合には、八割増しという先例もございます。今駐留軍は、労務者諸般の事情を考慮いたしまして、三割増しという要求を出しておりますが、これに対して労働大臣はどうお考えになっておるか、一つ承わりたいのであります。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 駐留軍労務者の退職に伴う特別措置につきましては、調達庁で予算措置をとってあるそうであります。これが十分であるかないかということは別といたしましてそういう措置をとっております。それから今の御要求につきましては、前々から議論があり、いろいろ研究をいたしました結果、先ほどお答えを申し上げましたような措置をとっておるようなわけでございます。  それから電通関係のことは、実は私は今初めて伺いましたので、退職手当その他についてどういう考えを持っておるか、まだ連絡がございません。取り調べました上でお答えをいたしたいと思います。
  43. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま百田さんの方から答弁を願いました際に、特に施設の返還の利用というようなことを言われましたが、最近各地に起きておりますアメリカ側の傾向を見ておりますと、民間企業に仕事を譲り渡して雇用の切りかえ形式というような形をやっておるのであります。具体的に申し上げますと、アメリカ側に雇われているときの賃金からぐっと減るというのが具体的な問題であります。今までの例は、移行をいたしますと、別ワク条件のもとに、身分関係も定まらずに、そして気に食わなければぽかぽかと首を切られる、こういう悲惨な経験をなめております関係上、これに極力反対をしておるのであります。ところがそういう切りかえに際しましても、アメリカ側と日本政府の、合意と申しましょうか、了解と申しましょうか、それなしに、先方さんの一方的意思によって各地で行われておるのであります。これに対して、これは労働省にかようなことを申し上げるのは筋違いかもわかりませんが、もとはやはり労働者の労働問題に関連する問題でございますから、経済閣僚懇談会あるいは外務省の関係等々においても、一段と労働大臣の尽力をお願いしたいと思いますが、この問題につきまして労働大臣の所見を承わりたいのであります。
  44. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、一月四日に特需等対策連絡会議を招集いたしまして、各省からの情報を交換いたしますとともに、本日の日米合同委員会においてアメリカ側の反省を求めることになっております。なお問題が具体的に発生をいたしておりまする立川等に対しましては、私どもの方からも係官を派遣いたしまして、交渉に当らせておるつもりでございます。
  45. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま具体的事例をあげて労働大臣の方から御答弁がございましたが、立川の問題は係官の派遣によっていい徴候が見られるような形かどうか、この点はおわかりにならないでしょうか。
  46. 石田博英

    石田国務大臣 私、今答弁が間違っておりました。係官というのは調達庁の係官が直接行っておるわけでございます。その結果についてまだ報告は承わっておりません。これも報告をとりまして、何らかの形でお知らせしたいと思います。
  47. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題につきましては、駐留軍に働く労働者といたしましては、相当重大な関心を持っておることと思います。またアメリカ側のやり方も、われわれといたしましては首肯できないやり方であると思うのです。おそらくこのわれわれの見解は、政府も同じようにお考えになっておると思いますので、一段の努力を払っていただきたい。またその払う努力に対しましては、われわれは野党でございましても、ともに協力をしていきたい、かように考えておりますので、労働大臣におかれましても、重要な労働問題の一環として積極的に働いていただきたいことをお願いしたいと思います。  それからもう一つは、これは少し具体的になりますが、今東京を中心にいたしまして駐留軍の諸君が企業組合を作るということで、俗に言うタクシー、ハイヤーの企業組合の認可申請が、もう十幾つ出ておるそうであります。ところが御承知のように車数の制限というのがございまして、なかなかこれがうまくいかない、こういう事情のことは労働省でもよく御存じだろうと思います。ところがわれわれ利用者の立場に立ちますと、人口増加に伴いまして、今の制限された単数ではとても円満に需要を満たすことができないし、また一方から考えて参りますと、もっと安く需要者にサービスできるのだという声もあるわけです。何か少し独占企業めいた形になっておるとも一般では言われておるのであります。この際二千台なり三千台なりの車両を増加をして、一般大衆の足の利便をはかるべきではないかというふうにわれわれは考えておるのであります。それから独占的な傾向が強くなった関係上、ナンバーの売買が、百五十万とか百八十万というようなべらぼうな値段で売買をされておるというふうにも聞いておるのであります。また一方には、この虚をつきましてハンカチ・タクシーであるとか、あるいは書籍タクシーとかいうようなもぐり営業がばっこしておることも、おおうことのできない既定の事実であります。これらの問題を解決するためにも、やはりこの際、ある程度の車両増加ということがもう常識論になっておると思うのであります。万一そういう場合に、これは労働省の管轄違いではございますけれども、自発的に長い間、関接雇用でやってこられましたこれらの駐留軍労務者が、企業組合で発足しょうというときに、増車のあかつきには、企業組合に対して優先的な考慮を払っていいと私どもは考えておりますが、労働省といたしましてはどういう見解に立っておられますか、一つお答えを願いたいと思うのであります。
  48. 石田博英

    石田国務大臣 現在の人口の増加にかんがみまして、どの程度のタクシー量が適当であるか、どれくらいふやした方がいいであろうかというような御議論については、私の所管外でございますから、私のお答えすべき問題ではないと存じますが、駐留軍関係からタクシー業の申請をされておりますものが合計で三十八件、今までございました。そのうち許可件数は四件でございます。それから、そのほかに貨物自動車運送事業の免許が一件、自動車整備事業の認証を二件やっております。おっしゃる通り私どもといたしましては、こういう特殊事情で離職をいたしました者を優先的に考えてもらうように、運輸省に対して常に折衝をいたしておるわけでございます。なお他面におきましては、現在営業をやっておりまするタクシー業者あるいは貨物運送自動車業者というようなものに対しまして、雇用の増大を求めておるわけでありまして、これは先方も非常に協力的でございますので、これについて今話を進めておるわけでございます。具体的に申しますと、駐留軍関係から離職をいたしました運転手の人たちを、現在やっておるタクシー業者、貨物運送業者というようなものに、雇用も増大という方法で吸収してもらうという話を積極的に進めておる次第でございます。
  49. 山花秀雄

    ○山花委員 そういうお話も伺っておるのであります。ところが実態をごらんになりますと、これは労働大臣もよくおわかりだろうと思いますが、勤務時間が非常に長くて、労働基準の上から考えてもいかがかと思われるような業態の実態であります。駐留軍の諸君も、私は明るい職場であれば喜んで行っただろうと思うのであります。しかし今言ったような職場でございますから、みずからの力によって明るに職場で、そしてサービス本位のタクシー事業を新規に一つやっていきたいという積極的意欲に燃えておるのが、現在の駐留軍企業組合の実態であります。若干許可がございましたが、これはおおむね地方関係でございます。東京近在としては、まだ一件も許可されたということを聞いておりません。まあ議論はこの程度でおきますが、大体実態は私が言わなくても労働大臣よくおわかりでございますから、一段の御努力を一つ他省との関係において御折衝願いたいということを、駐留軍労務者にかわって私からこの際お願いを申し上げておきたいと思うのであります。  次に、先ほど自民党側の質疑にありました最低賃金の問題でありますが、十五日ごろに法案を整備して本国会に上程をする、こういう労働大臣の答弁でございましたが、この審議会の答申によりますと、大体四つの方式というふうに言われておるのであります。その一つは業者間の協定による最低賃金、二つは一定の地域における拡張適用をした最低賃金三つは労働協約を一定地域に拡張適用した最低賃金、四つは行政官庁の決定による最低賃金一般的には四方式というような答申が出たということを承わっておるのであります。労働省当局は、大体これらの答申に基いていろいろ勘案をして、目下法案の整備ということを承わっておりますが、大体どういう方式のものを法案に織り込んで十五日に上程されようとしておるか。一応労働当局のお考えを法案提出に先立って、骨子はもうおわかりでございましょうから、この際御説明を願いたいと思います。
  50. 石田博英

    石田国務大臣 いずれ法案を提出いたしました際に詳しく御説明を申し上げたいと思いますが、骨子は中央賃金審議会答申を下回らないという方針で法案整備を行なっておるわけでございます。それからただいまの四方式は、その四方式とも採用をいたしておるわけでございます。大体答申をよくお読みいただけば、おわかりと存じます。
  51. 山花秀雄

    ○山花委員 そこで、私はたしか金額の明示はなかったと思うのでありますが、労働当局においては、大体それらの方式に伴うところの金額の御検討をなすったかどうか。もし御検討なすっていらっしゃれば、大体めどがついておると思いますが、どの程度の金額をもって今度の最低賃金法を制定されようとしておるか。
  52. 石田博英

    石田国務大臣 建前が業種別職種別地域別の建前でございますから、従って金額の明示はいたさないつもりでございます。ただ昨年一年間でやりました二十件ばかりの実績に徴しますと、それまでの最低賃金よりは大体一割五分から二割程度の上昇を示しております。中には四・四%程度のものもございますが、大体は一割五分から二割程度の上昇を示しておりますので、そういう程度の効果はまず期待できるのではないか、こう考えておるわけでございます。
  53. 山花秀雄

    ○山花委員 石田労働大臣は、日本の賃金水準ということを、もう百も御承知だろうと思います。このいわゆる低賃金水準を中心に、若干の値上りを何か非常によくなったというようなお考えで今答弁をなすったと思います。先だっての本会議においても同様の御答弁をなすったと思うのであります。私どもの党におきましても、本国会に継続審議として最低賃金制法律案を提出しております。われわれといたしましては、経過規定六千円、一律八千円という金額を明示して提出しておることは御承知の通りであります。最低賃金法であります。従って業者間においてまとまらない場合に、行政官庁において強制力を持った法案実施をいたすお考えであるかどうかという点をお聞きしたいのです。
  54. 石田博英

    石田国務大臣 それは、その第四方式がそれに当るわけでございます。  それから一律幾らという明示をいたしました最低賃金法は、それが理想だという点は中央資金審議会の答申にもうたってございます。それを目ざして進んでいくということについて、私どもは今とやかく申すわけではございませんけれども、しかし今世界じゅうの最低賃金の状態を見てみましても、各業種、地域、一律にやっておりますのは、一応アメリカとフィリピンとだけでございます。アメリカの場合におきましても、これは連邦法として出ておるのでございまして各州にまたがったものに適用されて、各州だけのものについてはそれぞれ別個の制度があるようであります。フィリピンについてはいろいろ問題があって、それぞれ所期の成果を上げていないように思われるのでございます。日本の賃金格差が生じてくる、よってきたる原因は、中小企業の弱体あるいはその生産性の低さというような点にありまして、その生産性を高め、かつ弱体なものを近代的にして参るためにも、私は最低賃金制が必ず効果あるものと信ずるのでありますが、しかしその現状を無視して、あまり急激なことを期待いたしますると、結局角をためて牛を殺す結果になることをおそれるのでありまして私は結局は順を追うて漸進的に参りますことが、昔から申します急がば回れ瀬田の唐橋で、その方が結局早くなるのではないかと考えている次第でございます。
  55. 山花秀雄

    ○山花委員 労働大臣はアメリカの事例をただいまお話になりました。私も若干心得ておりますが、アメリカの、国の法律を下回らないという原則が州の法律になっておると記憶しておるのであります。そこで、今政府が考えておる第四方式でございますが、そうなりますと、大体第四方式の金額がもう労働大臣にはおわかりになっていると思うのであります。これは労働大臣が見た常識的金額という点でありますが、その金額はどの程度のことをお考えになっておられるのですか。
  56. 石田博英

    石田国務大臣 第四方式をとります場合におきましても職種別業種別地域別実情を勘案してやられなければならぬことは、やはり中央賃金審議会答申もそうでございますから、金額を最初からどこに置くという建前はとるつもりはございません。そこで先ほども御質問にありましたように、日本は低賃金だ、その低賃金のところから二割や一割五分上ったからといって、非常に大きな恩恵を与えたような、いいことになるようなことを言うのは誤まりだとおっしゃいしまたが、私どもはこの低賃金実情は直さなければならぬと思います。また低賃金実情も認めもいたします。しかしそれを前進せしめていきたいと思うのでありまして、たとい一割五分でも、二割でも上って、しかも摩擦をできるだけ少くする方法を見出していくことは私は進歩であると強く信じておるわけでございます。
  57. 山花秀雄

    ○山花委員 これはさきに労働当局から出されました一つの賃金統計であります。私も拝見さしていただきましたこの賃金統計によりますと、これは俗に中小企業賃金統計でありますが、大工場の場合五百人以上、これを一〇〇として換算して参りますと、百人以上四百九十九人までは七九%くらいに当る。それから三十人以上九十九人までは五九%に当る。大体六割で、全額と六割の差がある。百人以下という工場が日本では圧倒的に多いということは、もう労働大臣十分御承知の通りであります。これは今すぐよその国と比較してどうかというふうにも、私はそれは確かに考えます。しかしながら英米の先進国家の例をながめてみましても、千人以上を一〇〇として二十人程度、これは千人と二十人ですからほんとうの零細企業でありますが、その較差は八三%というのがあなたの役所の統計に発表になっております。そこで問題になりますのは、この最低賃金と出される場合に、それに応じ切れないような企業保護育成をどうするかという関連法律を私は出さなくちゃならぬと思うのです。家内労働法であるとかあるいは中小企業の振興のための法律であるとか。ただ最低賃金法だけを一本ぽっと出して、ほかの法律を出さないということでは、私は最低賃金法が生きないと思うのでありますが、この点、関連法律案を出す御意見を持っておられるかどうか、あるいは最低賃金法だけでこの場合の処理をしていかれようと考えておられるかどうか労働大臣の御所見を承わりたいと思います。
  58. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま最低質金を実施いたしますための中小企業の基盤を育成いたします有効なる措置、あるいは最低賃金と関連をする同種の労働に対する賃金の問題、たとえば家内労働法との関係でりますが家内労働法につきましては、やはり将来立法措置を講じなければならないものと考えております。しかし現状におきましては、なかなかこれをつかむことが困難でございます。この実態をつかんでその上で適当な措置一般的には講じなければならぬ、こう考えておりまして、その実態をつかむ作業を本年度から始めたいと思っております。しかし最低賃金実施いたしましたら、関連ある家内労働につきましては最低工賃というようなものを最低賃金法の中に制定をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。それから中小企業に対する保護育成の措置は、これは直接的には私どもの所管でございませんが、政府は今次予算において、われわれの方の最低賃金法を制定するということにも、それだけではございませんが、関連を持たせて、でき得る限りの適切な措置をとっておるものと考えておるわけでございます。  それから、いま一つ脅えなければならない問題は、結局日本の場合、特に大企業は基幹産業に多いわけであります。あるいは特に原料、動力、輸送その他に多いわけでございますが、その生産性向上に伴う利益の分配を、それに関連をしておる中小企業の安定並びに従業員の待遇改善に充てるような方法を、特に中小企業団体法等の活用によって期待をいたしますとともに、立法措置までは考究をいたしておりませんけれども、大企業労使双方協力を得て、その関連する下請の中小企業の安定、ひいてはその労務者諸君の賃金向上に資していきたい、こう考えておるわけでございます。
  59. 山花秀雄

    ○山花委員 なかなか実態の把握がしにくいというような労働大臣の答弁でございますが、そういたしますと、それに関連して、いま一つの失業保険実施拡大を五人未満のところまで行うという労働政策の御説明がございました。片一方ではその面でどんどん作業を進めていかれる、最低賃金の問題になりますと実態の把握がちょっとつかみにくいというのは、ちょっと矛盾しているように考えられますが、この点いかがでございますか。
  60. 石田博英

    石田国務大臣 家内労働法の対象になります家内労働と、それから今の失業保険適用範囲の拡大になります五人未満の小企業とは、ちょっと対象が違うのでありまして、失業保険の対象になりますのは、人をたとい一人でも二人でも雇っておって仕事をしておるのが対象になるわけであります。家内労働は、親族とか家族とかでやっておる場合でございまして、少数の人を雇っておるところもなかなかつかむのが困難でございますが、なお一そう家族、親族でやっておるところはつかむのがむずかしい、こういうことでございまして失業保険適用範囲の拡大についても、一ぺんにつかむことができればやりやすいのでありますが、つかむ努力と、それからその効果を期待する努力と、両方あわせていきたいと考えております。
  61. 山花秀雄

    ○山花委員 今度の最低賃金を出される一つの意図でありますけれども、これは国際労働機構に日本の面も合わせるという点もあるだろうと思いますが、大体その基本的な考え方は、企業向上する考えに重点を置かれておるのか、それとも社会保障の面を重点的に考えておられるのか、どちらに重点を置いて今度の法律案をお考えになったかという点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  62. 石田博英

    石田国務大臣 もちろん低賃金に苦しんでおる労働者諸君生活向上ということに重点を置いておるわけでございます。しかし、それがひいては労働能率の向上、労働秩序の確立企業近代化生産性向上をもたらして、必ず中小企業の経営の安定にもなるのだという建前に立っておるわけでございます。
  63. 山花秀雄

    ○山花委員 両面に置いておるという御答弁でございましたが、社会保障の面にかりにこの問題を考えて参りますと、ただいま労働大臣は金額を明示しない。それから今地方で、たとえば十なり二十なりの業者協定が現在の低賃金から一割なり二割増した、こう言われておりますが、大体その辺の業種と、締結されました賃金の額を一つお示し願いたいと思います。
  64. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま持っておりますから、簡単に要点だけ御説明申し上げます。これは御希望ならあとで資料を差し上げますが、一、二申し上げますと、神奈川県の手捺染業、事業所数が百七、労働者数が二千六百四十一名でございます。これは十五才が、一年未満の者二百十円、十六才が二百二十円、十七才が二百三十円、十八才以上が二百四十円、こういう協定でございます。一年以上の者二年以上の者、三年以上の者、実質的な昇給ということも考えて、ずっとかなり詳細にできております。これは大体一四・三%の賃金増加率を示しておるわけでございます。  それから和歌山県新宮の鉄工業協同組合、これは業者数が十一、労働者数が百二十六名でございます。初任給、すなわち中学校を卒業した初任給でございますが、百八十円、あと半年ごとの昇給の割合を続いて申し上げます。二百円、二百二十円、二百四十円、二百六十円、二百八十円、三年たちますと三百円になります。これは二一・五%の上昇率を示しておるわけであります。  それから群馬県の絹人絹織物製造業、これは業者数が七百十三、労働者数が九千百三十五名。これで織布工の賃金の最低を、一日実働八時間といたしまして百六十五円とする。これは二九・四%の上昇率になっておるわけでございます。
  65. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま労働大臣が二つ、三つ指摘されて御説明がございました。おそらくこれは今の段階においては、ざっくばらんに申し上げますと、上々の部類のところを御説明されたのではないかと思います。そこで私が特にお尋ねしたいことは、社会保障の面で参りまして、ともかく勤労を売って賃金を得て生活をするという、この最低はやはり守られなくてはならぬと考えておるのであります。ところが業者協定ということになりますと、今の力関係――というのは、あるいは語弊があるかもわかりませんが、しかし実際は力関係というのが大きく作用しておるのであります。そういたしますと、零細企業には、労働組合の組織もあまりございません。できてもすぐ懐柔政策あるいはその他の政策によってつぶされておるというのが日本の多くの実態であります。そういたしますと、業者が満足するような形でなければ業者協定ができないというのが、大体の私は形じゃないかと思うのであります。こういう問題につきまして労働当局はどうお考えになっておるか。
  66. 石田博英

    石田国務大臣 四つの方式とも、地方におきましては、その地方の最低賃金審議会、それから東京では中央最低賃金審議会というものを設けて、それに諮問をいたすことになっておるわけでございます。その審議会は三者構成でありまして、そこに労働者諸君の代表も入っておるわけであります。従って未組織の、あるいは力関係の弱い労働者諸君の立場を、そこで十分主張していただけるものと考えておるわけであります。しかしおっしゃる通り今度の法律案では、なかなか今の御議論の趣旨は御満足のいけるようになっていないのでありますが、しかし現在の実情のもとからいきますと、御指摘の通りの組織の状態でございますし、そういう方法で救済していくことが現実的ではないかと考えておる次第であります。
  67. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  68. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて下さい。
  69. 山花秀雄

    ○山花委員 大体労働当局のお考えも伺い、そのお考えに基いて、十五日になれば提案されますから、提案内容を見なくとも、もう大体わかったような気がいたします。しかしながらまだ二つ、三つ、ちょっとお尋ねしたいと思いますが、企業向上という面から考えて参りましても、われわれは常に高能率、高賃金ということを労働政策の一環としてうたっておるのであります。あまり最低で、再生産のきかないような形で生産をやっておりますと、結局は安かろう悪かろうというような形で、輸出も伸びない、産業も滅びる、こう考えておりますので、そこの啓蒙活動が、おくれた業者に非常に必要だと私は思います。それから、これはうらはらの関係で、やはりある程度の、今の業者が考えて高額と思われる、われわれが考えますとそれは低額と考えておりますが、しかしながらこれは考える人によっていろいろ違って参りますが、中庸をとったような負金体系においても、なかなか今の日本の零細企業では痛手を受けるというふうにも、現実面としてわれわれは考えております。そこでその保護政策をともに考えなくては、絵にかいたもちのような形になるのではなかろうかと思うのであります。そこでこの問題に関して、政府は特別の補助金といいますか、あるいはその他の援助金と申しますか、そういう金額支出の点をお考えになっておるかどうか、あるいは金額を支出せずにやろうというお考えになっておるかどうかという点を、一つ聞かしていただきたいのであります。
  70. 石田博英

    石田国務大臣 今山花さんも高能率、高賃金ということを労働政策としてお考えになっておるという御発言で、私どもも非常に心強く感じました。やはり能率を高めていってこそ労働者の諸君の賃金も上っていくのでございますから、この最低賃金法というものはそういう方法で、むしろ賃金を高めることによって、逆に労働秩序あるいは労働意欲の高揚をはかりまして、そしてそれとともに生産性向上をはかって経営も安定し、さらに続いて賃金の上昇もはかっていくということを期待いたしておるわけでございます。しかし中小企業の経営について具体的な金額措置をとっておるか、あるいはとるつもりかという御意見でありますが、この賃金問題は中小企業の経営の要素の一つではございますが、そのほかに中小企業経営の安定にはいろいろな要素がございます。そのあらゆる要素の解決策としまして通産省におきましては中小企業の振興のための可能な限り適切な措置をすでにとっておる、また本年度予算でもとっておりますので、それに期待をし、漸進的な効果を最低賃金法によって上げていきたい、こう思っておる次第であります。
  71. 山花秀雄

    ○山花委員 石田労働大臣は岸内閣の閣僚の一員であります。従って岸内閣の政策協力する閣僚と私どもは見たいと思うのであります。岸内閣は御承知のように三悪追放を唱えております。どれも国民が賛成しておることではありますが、そのうち身近な面はやはり貧乏追放であります。貧乏でなくなりたい、これはほんとの身近な要求だと私は思うのであります。それと、この最低賃金とやはり相当からみ合ってくると思うのですが、もし今度出てくる法律案が、ただいまいろいろ議論いたしました最低賃金の精神を生かさないような内容が出て参りますと、貧乏追放も看板だおれになるのではなかろうかと私は思うのであります。先ほど労働大臣が新年度労働政策の概略をお述べになりまして、私は聞いておりました。そして最後に一つ感銘をして聞いていた一節がございます。これは一つ読み上げて、いま一度労働大臣に心していただきたいと思うのであります。「今後とも各方面の御意見に十分耳を傾けつつ政策推進に当って参る覚悟でございます。」こういう一節でございます。とかく労働大臣は自信過剰というあだ名をつけられております。私はこの際、さようなことのないように謙虚なる気持で、反対派、野党の意見であっても耳を傾ける、一つの謙虚さをもってこの問題に取り組んでいただきたいことを、最後に要望しておきたいと思います。  いずれ法案が出て参りましたら、詳細な点はまた議論して参りたいと思います。私の質問をこれで終わります。
  72. 森山欽司

    森山委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次会は明七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十八分散会