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1958-04-10 第28回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 南  好雄君    理事 青木  正君 理事 石坂  繁君    理事 古川 丈吉君 理事 松澤 雄藏君    理事 井堀 繁雄君 理事 島上善五郎君       加藤 精三君    高橋 禎一君      橋本登美三郎君    森   清君       井手 以誠君    松本 七郎君       山下 榮二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         自治政務次官  中島 茂喜君         総理府事務官         (自治庁選挙局         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙局         選挙課長)   皆川 迪夫君         総理府事務官         (自治庁選挙局         管理課長)   桜沢東兵衛君     ————————————— 四月九日  委員原健三郎君及び田原春次君辞任につき、そ  の補欠として山本利壽君及び横錢重吉君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五〇号)  公職筆法の一部を改正する法律案島上善五郎  君外八名提出衆法第一一号)      ————◇—————
  2. 南好雄

    ○南委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び島上善五郎君外八名提出公職選挙法の一部を改正する法律案一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  井堀繁雄君。
  3. 井堀繁雄

    井堀委員 昨日岸総理に御答弁をお願いしようと思いましたが、時間の都合上許されませんので、引き続いて自治庁長官から御答弁をいただきたいと思います。  今回の改正に伴いまして、選挙法全体として改善を要すべき問題と私が思う一点がございます。それは議員定数についてであります。議員定数については、これは、いずれも民主政治理想を実現していくためには、この問題は基本的な区要素になるわけであります。ところが、法律建前からいたしますと、国会議員は衆参いずれも公職選挙法によって定数が定められ、都道府県会議員市町村会議員自治法の定めるところに従っておるわけであります。この点は私は当然整理されてこなければならぬ問題の一つだと思います。いずれかにこれを統一することが、法の建前からいっても当然なさなければならぬ処置だと思います。なお、そのことは、やがて主権者である有権者意思を、合理的に、選挙を通じ、あるいは議会代議制の中におけるそれぞれの発言を合理化するための基本的な、まず第一に処置しなければならぬ問題だと思いますが、自治庁長官はこの点に対してどのようなお考えを持っておりますか。
  4. 郡祐一

    郡国務大臣 お話のように、議員定数ということはそれぞれの議会基本的な問題だと思います。そのために、ことに地方議会議員につきましては、ニューヨークの市が百に近い議員を一挙に二十数名にいたしましたように、地方議会議員定数がどのくらいだったらよろしいものかということは、私一つの非常な根本の問題だと思います。現在は、自治法で、議員定数というものは、上の方の制限は設けておりますけれども人口比例をいたす一つ方針をとっております。これと国会等関係というものも、私は十分考えなければならぬ問題だと思います。  それで、御指摘自治法選挙法との関係という点でありまするが、自治体の議会定員というものは、これは自治法の側から見れば一つの自己の議決機関の基礎なんでありますから、自治法としても大事な規定だ、こう思うのでございます。現在自治法がみずからの組織をきめ、みずからの予算をきめ、いろいろなものが集まったのが自治法でありますので、自治法からむげにはずしてしまうことも一体適当だろうかどうだろうか、あるいは同じことが自治法選挙法の中に平仄を合せてあっていいのじゃないだろうか、そういうようなことを考えます。それで、私は、自治法選挙法——この公職選挙法をこしらえまして、事選挙に関する一切のことを移そうといたしましても、たとえば、選挙管理委員会の扱うリコールの問題、これはやっぱり自治法に残る。どこかに重複いたして相関連する部分があるのであります。場合によりましては、原則はどちらかに置いて、そしてそれに同じようなことをまた片方の法律で受けるというような調和を、私は考えてみなければいかぬところだと思っております。そういう意味で、自治法公職選挙法は方々で関連をして参ります。選挙管理委員会の方で仕事をしていきます場合に、自治法選挙法と両方見ないと仕事の全貌がわからない。それらの点を十分考えなければならぬ。従いまして、御指摘の点は、私は十分考えなければいかぬことだと思います。
  5. 井堀繁雄

    井堀委員 非常に重大な点にあるということは、全く見解を一にしておるようであります。そこで、私は、この問題は、なるほど、法体系の上からいきますと、憲法精神を受けて、公職選挙法に関する点も、また自治に関する点も、きわめて明確になっていると思います。しかし、これは、あなたも御答弁のように、共通した部分をその法律の中にどういう工合に表明するかということは、私どもしろうととしては、にわかに決断はできませんけれども、しかし、これは、いずれから参りましても、たとえば、公職選挙法のように、公職選挙に関する基本法としてこれが定められておるということについては間違いがないと思うのであります。その基本法の中で最も重要な要素をなしまする議員定数というものが、国会議員だけは示され、地方議員定数は他の法律による。そしてそれからよってくるところの関係の法令というものは共通させておる。この矛盾は、私は基本法たるこの選挙法における一つの盲点だと思う。これは、やはり、あなたがおっしゃられるように、地方自治法の中にもこれを明らかにするが、公職選挙法には、それに先だってなお明確に規定していかなければならぬ事柄だと思うのでございます。しかし、今回このような地方議員定数に重大な関係を持つような法案改正を提案されたのでありますから、こういう機会にこそ、こういう問題に解決を与える措置が同時にとらるべきであったのではないかと思うのであります。この点は、選挙制度調査会などについても記録を見たのでありますが、政府は諮問もされておりませんし、また従ってその問題に対しては掘り下げた討議が行われていないので、まことに残念に思うわけであります。  そこで、この問題については、私は最も近い機会にしかるべき措置を講ずべき必要を痛感するのでありますが、当面しての問題について、これに関連してただしておきたいと思います。それは、この都道府県会議員に関する定数の問題は、法九十条で規定しておるようであります。この定数のきめ方と、第九十一条の市町村会議員定数の定め方についても、必ずしも原則人口比例させるという形はとっていない。人口増加が高まれば、すなわち高率逓減の形がとられておるという点は共通しておると思うのであります。私はこの点について一つの疑問を持っておるのでありますが、一体、市町村会議員の場合に、有権者すなわち市民の意思というものを数の上で言い表わそうとする場合にはどういうふうにするか、という原則についての定めがないのであります。やや便宜主義的に取り扱われているんじゃないかという感じがいたすのであります。これは国会議員の場合にも同様のことが言えるのでありますが、この点についてこの機会に私はお伺いしておきたいと思うのであります。元来、民主主義政治形態というものは、国民の、すなわち人民意思議員を通じて代理せしめるか、あるいは代表せしめるかということは、非常に重大なものとして、これは、学者の間でも、民主主義のあり方に対する大きな問題になっておるのであります。各国の民主主義権威者が、いろいろとこの問題に対して多くのことを論じておるのであります。その国々によって、時期によって多少そのとり方は相違しておるのでありますけれども、これは一体人民意思を代表せしめるものであるか、あるいは限られた者によって代理をさせるものであるかということが、大きな問題になってきておるわけです。こういう基本的な問題を具体的に表明するのは、やはり人民の数と議員の数とに私は大きなウエートがあると思う。こういう問題を便宜主義に取り扱うということは、民主主義理想を追求すると言いながら、民主主義基本的な精神に対する無関心を表明しておるものと私は思うのであります。従いまして、こういう問題を論議するときには、やはりこの民主主義の本質の問題にわれわれは十分思いをいたして、結論を下さなければならぬ問題だと思うのであります。これは、実は、一国の責任者である、政府を代表する総理大臣に、この問題については当然明らかな答弁を願うべき事柄であります。また、総理個人としても、絶えず口にするように、民主政治実践者たらんとする強い決意を表明されておるわけであります。もっとも、自治庁長官も同様の立場でありましょうが、私は、このことはこういうものを論議するときに非常に重大なことだと思いますので、まずその考え方を明らかにして、いろいろ御意見を伺おうと思っておったわけであります。しかし、その機会を昨日失ってしまったので、あなたは、国務大臣として、また郡さん個人の、すなわち民主主義を追求する政治家としてのこういうものに対する基本的なお考え方があると思いますが、この点をまず明らかにしていただいて、そうしてきょう改正されようとする法案についてお尋ねを進めていきたいと思います。
  6. 郡祐一

    郡国務大臣 人民意思を完全に代表し得る形態代議政体理想的なものだと思います。従いまして、普通直接の選挙基本思想というものは、いかにして最も完全に人民意思を代表する議会を作ろうという点にあろうと考えております。ただ、地方議会議員定数等につきましてはこれは、立法例等を見ましても、いかにすれば一番よく地方議会の運営もできるし住民の意思にも合致するかという点で、いろいろ工夫がこらされておるように考えます。しかし、基本は、おっしゃる通り、代理するのじゃなくて、人民意思を代表する機関を作るという点にあることは当然でございます。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと関連して。  私は大臣にこの際ちょっとお伺いしておきたいのですけれども、これは、二十五日が三十日に縮まったということばかりではなくて、二十五日の場合でも考えられる問題でありますけれども、この選挙期日に関する規定の仕方なんですね。衆議院議員選挙期日は、少くとも二十日前までに公示または告示しなければならないものとする。これは少くとも二十日前であって、それ以上にわたることは差しつかえない。法的には差しつかえないわけでありますから、そうすると、そのときの行政当局判断で、この規定で二十日前までですから、それ以上に期間を置いて告示または公示することは、行政官庁判断一つにかかっておるということになりますでしょうか。
  8. 郡祐一

    郡国務大臣 これは、古くは非常に長い選挙運動期間を事実上置いておったりしたような経過から見まして、最短限選挙運動期間を保障すると、こういう考え方でいたしておりまするから、その法律がきめておりまする最短限を越えまする期間ということはこれは公示または告示のいかんによってきまるわけでございます。そういう意味合いでは、おっしゃるような運用になるわけでございます。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、かりに二十日にきめましても、次の行政当局が、一回二十日でやってみた、しかしどうも次の政府当局考えでは、二十日では短か過ぎるようだという判断を持った場合には、今度は延ばす場合は、必ずしも法の改正をしなくても、行政当局判断一つで延ばすことができるということになりますね。
  10. 郡祐一

    郡国務大臣 これは、法律読み方はさようなことと存じます。少くともというのは最短限を保障しておるという気持でいつも読んでおります。ただし、それをどの程度にいたすかということは、事実上の慣習で、政府が独自の判断でどういたすというよりも、法律読み方は、おっしゃる通り、また私の今申し上げた通りでありますが、実際の運用といたしましては、それに先んずる何回かの選挙一つの形で事実上の選挙運動期間を割り出しまして、そうして公示をいたしておりますから、その後において特別の事情変化のない限りは、同じような例をとっておるということだと思います。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 もう一度重ねてお伺いしますが、この立法技術として、そういうふうに厳密に法的に解釈した場合に、自由に延ばし得るような余地を、行政当局判断でできるような余地を残すことが法制上妥当なものかどうか、という問題が一つ残ると思いますが、この点はどうでしょうか。
  12. 郡祐一

    郡国務大臣 松本委員のおっしゃるような点は、確かに立法技術として考えるべき問題でございましょう。ただ、日本の国では、明治二十二年の衆議院議員選挙法制定以来、この形をとっております。それから、日本のように事前運動を認めない国として一番類似しておりますのがフランスでございますが、フランスでは二十一日前といたしております。それで固定しております。西ドイツ、イギリス等も、次の何曜日の幾日というようなきめ方でありますけれども、大体二十日くらいになるように日取りをきめております。それらの場合、それぞれの事情による立法例はあると思いますけれども、大体選挙法制定以来の、少くも二十何日という最短限を保障する場合に、その最短限に近いものであるということ、そういたしませぬければ保障した意味はありませんから、大体最短限に近いということが、法律読み方としても正しく、また最近の何回かの選挙がそのようになっております。しかし、法律読み方といたしまして、普通選挙前には、かなり長い、少くとも三十日というておりました時分にも、かなり長い時期を置いておりますから、さような意味合いでは、「少くとも」という言葉読み方について、おっしゃる通り、当時は政府裁量にまかしておくという考え方が強かったのでありましょう。ことに普通選挙後における読み方としては、「少くとも」というのは、最短限は絶対に保たなければいけないし、またそれに大体近いものというような読み方で慣熟をいたしておりますので、これをはっきりと固定してしまいますよりは、むしろよろしいのではないだろうか。従って、その間にずれが起りましても、一日か二日の違いだけであって、そうして最短限に近いもので運用されておる。そういう意味合いですと、慣熟した立法例というものが、今の日本の法の運用といたしましては、別に障害も疑問も起らずに動いて参る状態になっていると思います。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと関連質問が長くなって恐縮ですけれども、今までは、そういう慣例と解釈でもって、何も問題なくやってきたからいいようなものですけれども、今後二十五日と二十日で意見が分れてきた場合、社会党としてはどうしてもこれはやはり二十五日の方が正しいのだという意見を持っている場合に、かりに社会党政権を取ったとすれば、これはそういう主張を今までもしてきたのだし、また政権を担当しても依然として二十五日が正しいという判断を持った場合、それでは法の改正をしなければならないかというと、今の御説明では、法の改正をしなくても、法の読み方としては、最短期間がここで保障してあるのであって、それ以上ならいいということなんですから、それならば、政府が、新たに、その裁量によって、もう少し長い方がいいということで、告示を二十五日なら二十五日とってやるというようなことは、今の御説明によっても違法にならないわけですから、そうすると、今後そういう例が開けてくる可能性があるわけです。そういう道を——可能性を残しておいて果していいものかどうかということ。私どもは二十五日の方がいいという主張をしているのですから、そういう余地が残っていた方が便利かもしれないけれども政府当局として、行政担当者として、それで差しつかえないと思っておりますかどうか。もう一度伺います。
  14. 郡祐一

    郡国務大臣 お尋ねの点、私は、少くとも、今度の改正案通りといたしますならば、二十日が保たれておれば、それ以上延びますことは法律上上違法とは存じません。ただ、これは、憲政に関しまする法の運用——他のことを申すようでありますが、選挙法でありますとか、国会法とかいうものは、多分に慣熟した実例によって運用されるものでありまするから、方針は、何か重大な変更をする事由があればともかく、そうでない限りは、慣習は十分尊重されるべきだと思いますけれども法律問題として考えますならば、お話通りと存じております。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 基本的なことについて、もう少し明確に自治庁長官のお考えを伺っておきたいと思います。  議員定数は、その議会種類によって、定め方がおのおの違うようでありますが、国会議員の場合、すなわち公職選挙法による場合は、第四条で、衆議院定数は四百六十六人とする、参議院定数は二百五十人とする、このうち百人が全国選出、百五十人が地方選出議員とする、こういうふうに、全国のそれぞれ——参議院の場合は二種類になっておりますが、こういう定数を定めて、人口がそれに比例配分されるという形をとっておる。ところが、自治法の第九十条の府県会議員定数の場合には、人口七十万未満都道府県にあっては四十人、そうして人口増加するに従って高率逓減をとってきておる。それから、第九十一条の市町村議員定数については、二つに大きく分けて、人口二千人未満の町や村については十二名、それから市にあってはまたそれぞれ形を変えてある。こういうように、いわば三つのケースが考えられるわけです。一体この点に対する共通したものということになると、どこに見出すことができるかという点を先ほどお尋ねいたしました。民主主義政治議会を通じて実現していこうということになりますと、これはきわめて重大な基本的な要素だという点は、あなたも考え方は同じようであります。こういうような問題に対して、一応われわれとしては、はっきりした態度をもって、ここに出ておりまする地方議会議員定数に影響のある選挙区の区域を定めることについて考えなければいけない。そういう意味であなたのお考え方政府のこれに対する統一した見解がありますなら、伺っておきたい。
  16. 郡祐一

    郡国務大臣 私は、国会議員定員というものは、一つ国会の構成の重要な問題だと思います。従いまして、国会議員定数任期というものを、昔は憲法付属の法典として特に重きを置いて衆議院議員選挙法に書きましたのを、新憲法では、任期憲法に書き、定数は依然として選挙法に残しております。これは、あるいは人口の著しい変化等によりまして定数が変る時期があるということで、分けたのかもしれませんけれども、むしろ、任期定数というのは、そこにウエートを新憲法選挙法におけるような関係に分けることが果して適当であったかどうか、これは私は一つの疑問として現在も持っております。しかし、その問題は別といたしまして、定数の問題でありますると、国会議員定数は、人口の相当な変動がありましても、国民意思を代表する機関として、これはそのつど人口の著しい変化に必ずしも鋭敏に応ずる必要はない。ところが、今度は、地方議会を見てみますると、これは、地方議会個々によりまして、現在は減員条例だけを法律規定しておるようであります。かつては増員条例減員条例をそれぞれ認めることができ、同じような規模の町村でも、いつもこういうことの例に出しますのは、京都の雲原村でありますか、あそこは非常に少い議員定数運用をいたしておったというような例もございまして、あまりに多く議員を置く必要がないということが一つ。これは全然逆な議論ができますから、私はここでそう確信を持って申し上げるんじゃありませんけれども地方議会議員については、国会議員と違って、ある程度定数が少い方が個々人の責任感が強いのではないだろうか、そして、言葉には語弊がありますが、よい人を選ぶためにはむしろ少くていいんじゃないか、という一つ思想がどうもあるように考えるのであります。そのような状態から、人口には比例していくが、必ずしも著しく多くする必要はないというような考え方で、ことに人口増加に応じて逓減をきめて参るという自治法の書き方をいたしておりますのは、やはり、定数というものについて、国会議員地方議会議員との間に若干違った考え方、違ったものの見方を地方議会にはしようという、私はそれが一つの現われだと思っております。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 私は、抽象的にいえば、主権者総意を実行せしめるのに一番適当なということになると思うのでありますけれども、それを、われわれとしては、どこが適当かということを、ここで断案を下すわけでありますから、きわめて重大だと思う。それが結果が適切でない場合は、私は民主主義原則を冒涜することになると思う。でありますだけに、起案者においても、これの審議を続けますわれわれといたしましても、この点に対してやはり重大な責任を感ずるのであります。そこで、あなたもお認めになっておりまするように、必ずしも人口に正比例させるということが絶対でないということは、私も同じだ。といたしますと、公職選挙法地方自治法のこれに関係する条文あるいはその他をずっと見てみましても、人口比例するという考え方が、その人口比例のさせ方は違いますけれども、させる点が一貫して共通しておるようにとられる。公職選挙法の方のきめ方は、参議院の場合がやや違うだけの話であって、衆議院の場合は定数を定めて、それと人口行政地区がくっついて出てくるというような形をとっている。このことは今まであまり選挙法の中で論議されていないようであります。選挙法の起案されるときのいろいろな文献を見てみたのでありますけれども、存外この問題については深い検討が続けられているという姿が、記録の上では拝見できないのであります。しかし、民主主義を追求する先進国のそれぞれを見ますと、この問題は非常にやかましく論議されている。ということは、抽象的にいえば、ごく簡単で、主権者総意をどうして実行させるか、一番正確に総意が実行に移せる形をとるということ、実際になると、一番直接的に出てくるのは、議会代議制をとってやるということになると、主権者の実態とそれを代理する議員との関係を一番初めに結んでくるのは、地域と数であります。そしてそれを選挙法という手続に結びつけておる。日本民主主義というものは、そういう点から見ますと模倣的で、ある点はいいのですけれども、そういう大事な民主主義というものは、経験主義と一般にいわれているくらいで、長い経験をくぐって民族が民主主義理想を獲得するまでには、多くの困難を克服し、犠牲を積み上げてきた経験の中から、やはりある程度結論を得たというふうに見ておる。よいものをそのまま取り入れることはけっこうでありますけれども日本はそういうものに対する経験が比較的薄い。しかし、日本自治の歴史というものは決して短かくない。こういう点から考えてきますと、選挙法扱い方の一番大事なものについて関心が薄い。調べれば調べるほどそういう感じがいたすのでありまして、今回出された選挙法改正は、なるほど条文ではごく簡単に言い表わしておる。そして、その改正を必要とする客観的な条件についても、そうむずかしく考えないでもいいと思うのでありますが、しかし、この法律をいじる場合におきましては、やはりその基本精神について細心の注意が払われて、いささかも後退しない、多少でもいいから前進の姿をとっていくということについては、提案者も、これを審議する方の側も真剣に考えなければならぬ。こういう立場から実はこの問題をながめてみますと、非常に重大である。以上の考え方を明らかにいたしてお尋ねをしてきているわけであります。そういう点からいたしますと、ここで出てきます市町村の地域が変更されてきた実情については、これは必然的な要素があるわけです。それだけを考慮して選挙区割ができてくる。選挙区割ということは、要するに人口議員定数とがすぐうらはらになって出てくるわけであります。ここに問題があるわけです。この辺に一体どのような配慮が払われて起案されたかということは、私どもにとっては非常に大切なことであります。ここを明らかにいたしたいと思いまして、多少時間をとっても検討を加えたいというので、お尋ねをしている。大へん前置きが長くなったのでありますが、そういう意味お尋ねをいたしますので、御答弁もそのおつもりで一つ願いたい。  そういたしますと、ここで言っておりますのは、御案内のように飛び地ができる。飛び地というのは、一応割り当てます人口の限界に達しないものをくっつけて、その数に合せる。このこと自体はまことに機械的な措置である。しかし、今の基本的なものからいたしますと、果して主権者すなわち有権者総意——その地域において選ばれた者が、県会議員の場合にいたしますならば、その県全体の調和のとれた、すなわち有権者総意を代表し得る、しかも平等の条件を備えた議員であるやいなやということは、わかりやすくいえば、たとえば五百人の人に選ばれた者と五千人で選ばれた者とは、十に対する一といったような、そういう単純な算術的な比例にはならぬかもしれません。私もその点は考えている。しかし、これを無視いたしますと、あるいはこれを軽視すると、一体どういう原則の上に立って総意を表明してくるかということは、法律に書く場合は非常に重大になってくる。この問題が今度の改正に出てきている。ところが、それに対する何らの説明が今まで加えられていない。この点を一つ起案者としてどのように配慮されたか。その点の説明をこれから事務当局にお尋ねするわけでありますが、人数が一番少いところでは何名ぐらいで、何名の定数が定められてくるかという全国一つの表が出てくると思うから、その表を一つ資料として提出してもらいたいというのが資料の要求の一つであった。要求の仕方が不十分なために徹底しなかったが、この機会に、選挙局長の方から、一番大きな地域は人口何ぼに対して議員一人当り何ぼになる、一番小さいところは何ぼ、平均はどのくらいになるということはできていると思うので、こういう点をお答え願いながら今の問題を検討していけば、やや明らかになると思う。原則的なことについては一つ長官からこれに対する御見解を聞いておいて、具体的数字についてお聞きしたい。
  18. 郡祐一

    郡国務大臣 前提となさいました定数の問題は、私は、非常に大事な問題であり、これはぜひ政府としても念を入れた検討をいたしたいと思っております。と申しますのは、私自身の感じにいたしましても、参議院議員の総数を二百五十人とし、これを百五十の地方区と百の全国区に振り分ける。これは割に早々の間にいたしましたけれども、これに果してどういう合理的な根拠があるだろうか。また、参議院は御承知の通り半数改選をいたしまするから、三年ごとに一人か二人、そういたしますと、四人の定員を持つか、二人の定員を持つか、非常なきわどい境が——実を申しますと、その後人口の異動はできておりますけれども、宮城県のごときは、ほんとうにわずかの境で、二名出せるのが一名になっている。そういうような偶然の要素によるきめ方が果してよろしいものであろうかどうか。衆議院につきましては、私は、沿革的な理由というものは、かなりにたっとばなければならぬと思います。そういうような点で、定数の問題は、大は国会から小は町村会に至りますまで、おっしゃる通り非常に根本的な基本の理念に関係するものがあると思います。現に、町村などは、人口段階で、多いところはやはり事務が多い、行政の態様が多いというようなことで、人口段階にいたしておりますけれども、私は、農山村だったらこういう程度、都会に入ったところはこういう程度というような、一つの標準があってきめてしかるべきもので、ことに、町村合併をした大きな町村で、人口だけで一様にいっておるというのは、ほんとうにいいものであろうかどうか。  しかし、いずれの場合でも、国民または住民の意思を代表するものが議員であるに相違ないのです。ところが実際の運用は必ずしもそうはいかない。そういたしますと、オーストラリアの国会のように、北方から出た議員と、首都地区から出た議員は、自己の選ばれた選挙区に関するときにだけ投票ができるというようなもので、地方の利害を調和させるというふうな工夫、これは私はいい立法例じゃないと思いますけれども、オーストラリアについてはそういうようなやり方をいたしております。これはよほどいろいろな要素をこの中に入れていかなければならぬ。そういう点になりますと、御指摘のように、府県議会について、小は一人から、上は郡の大きさによりましてはかなり多いところまである。これは果していいことであろうかどうであろうかというような判断もあろうと思います。しかし、これは、井堀委員が初めから御指摘のように、何かそこに悪意的な人数を適当なところで一かたまりする。これの方が何かもっと重大な欠陥が起るおそれがございます。そういうような意味合いで、町村合併に関しました部分について、このたびのような改正をお願いいたしておきましたけれども、各議会についての定数の問題、ことに地方議会について、今度はどういう割り方をすべきかという、もう一つ前の問題のあることは、私は御指摘通りだと思っております。ただ、このたびの三十八の郡は、全国で確かに議員定数人口当りの半分以下でありまするから、これはどこかにつけることにいたしまするけれども、その余につきましては、さしたる著しい変化はない。中に確かに飛び地で市が一つ入ったり、たとえば、新潟県の岩船郡というのは二つに分れて、まん中に村上市でございましたか入っている。しかし、岩船郡とはどこまでも一体になっているというようなことで、飛び地になっておるからといって、それが直ちに選挙区に影響はない。現状というものを根本的に見直すという問題はございます。しかし、現状に著しい変化は起さずに済む。こういうような一応の判断をいたしまして、このたびのような改正をお願いしたのであります。その根本問題は、繰り返すようでありまするが、井堀委員指摘のような問題を十分考えなければ相ならぬと思います。具体的な事例につきましては、政府委員の方から申し上げます。
  19. 南好雄

    ○南委員長 この際申し上げますが、郡国務大臣参議院委員会に採決の関係上約三十分間出席いたすことになりますが、中島政務次官が出席されておりますので、質疑を継続してなされるようお願いいたします。郡国務大臣は、参議院の採決が済み次第、こちらに戻っていただくことになっておりまするから、御了承をお願いいたします。
  20. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 ただいま大臣のお答えで、今回の改正が郡市の区域を原則としておる点からいって、飛び地の処理をはかった今回の改正は、従来の立て方とそれほど異なったものではないという御趣旨の御答弁がございましたが、やはり今回の改正によりまして郡市を原則といたしておりますので、人口の大きな市——全国的に見て人口の大きいというのではなく、府県内における人口比率の大きさで議会議員定数はきまって参るわけでございますが、現在石川県の金沢市が対郡部との比率で一番高い。そういう関係で、石川県の金沢市は、現在十二名の定員でございますが、十三名の定員になるものと考えております。それ以外に大きな議員定数のところは、川崎が十一名、広島、熊本が十名、その他いわゆる中都市がやはりその府県内で占める人口の比率が高いのでございます。郡の方の大きいのは市の議員定数に比べてずっと低くなっております。九名程度が一番大きいように記憶いたしております。それから、小さい市は一名というところが現在もあるわけでありますが、今度飛び地の処理によりまして、まん中に市をはさんでおりまして、郡を従来通りそのままの選挙区でいくという考え方、それから飛び地を市に合せて合区できるという考え方をとっておりますので、そういう面におきましては、市が、議員定数の面において、従来の郡市の厳格的な原則によるというものよりは、弾力性を持ってくるということが言えるのではないかと思います。現実に府県の実情によって選挙区がきめられました場合に、それに基いて、先ほど来お話しの人口の計算をいたしまして、定数がきまってくるものでございます。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、この法案が原案通り施行されたと仮定いたしますと、石川県の場合は定員十三名というと、定数一名に対して選挙民は何名の割合になるか。それから、川崎が十一名で、熊本、広島が十名、郡部では大きいのが九名だ、こう言っておりますが、市の場合の最高は石川県とするならば、有権者何名に対して一名の議員の配当になるか。それから、一番小さな市、また最大の郡部と最小の郡部、この関係で数字を一つ御披露願いたい。
  22. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、人口の点につきましてはすでにお手元に資料をお配りしてございますが、金沢ですと、石川県の場合を申しますと、議員一人当り人口が二万一千四百七十一となっております。それから、川崎でございますが、神奈川県でありますと四万三千五百七十五でございます。そういう意味におきまして、自治法議員定数の総ワクがきまっておりますので、東京都が一番議員一人当りの人口数は高くなりまして、東京におきましては六万六千九百七十六、これが最高でございます。それから、最低は鳥取県でございますが、一万五千三百五十六人でございます。議員定数自治法によってきまっております関係上、府県によってこれだけの段階が現われて参るのでございます。  それから、小さな郡のお尋ねでございましたが、奈良県に宇智郡という郡がございます。これは人口が二千四百十四名でございます。郡の人口の最大は北海道の支庁だと思いますが、ちょっと調べてから後ほど申し上げます。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 人口でいきますと、東京の議員一人当り人口が六万六千、鳥取の場合は一人の議員に対して有権者一万五千、こういうふうに御答弁になりましたが、なお、郡の場合は、奈良県の宇智郡におきましてはさらに低く二千四百十四人で一人出せる、こういうわけですか。二千四百というのは何ですか。
  24. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 一人出せるのではなく、郡の人口の一番小さいのは二千四百でございますから、当然合区しなければなりません。二十八の郡の一番小さいものを申し上げたのであります。
  25. 井堀繁雄

    井堀委員 一部ですね。そういたしますと、一部の単位で出すということの原則が出てくると、三千四百十四人なんというのは今度の改正では強制合区になる。従来はどうなっておりますか。
  26. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 従来は、そういう点は一以下の区域は合せることができるという建前でございますので、どうしてもそこから出すということでありますれば、独立し得たのでございます。それは、先ほど来のお話にありましたように、人口の面からいって不合理ではないか、このような思想のもとに、今回いわゆる人口の小さいところは強制的に合せなければならぬということにいたしたのであります。
  27. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、従来は、郡市を単位にするということから、二千四百十四人であっても一人の定員が割り当てられている、今度の改正によってこれは強制合区の対象になる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  28. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 従来は割り当てられておったかどうかは調べなければなりませが、割り当てることができたのでございます。制度的に独立し得た、あるいはまた反対に隣の郡と合区し得たのでございますが、現実にそこから一人出ていたかどうかは調べないとわからないのでございます。具体的の独立選挙区であったかどうかということは調べないとわからないのでございます。法律の制度といたしまして独立として扱い得た建前にありましたものを、今回そういう独立し得るという建前改正して、強制合区の制度を採用いたしたのでございます。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 今まで出ておったかどうかわからないですかね。
  30. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 宇智郡の現在の人口が二千四百十四名ということを申し上げましたが、これは、この前の選挙は約三年前でございまして、昭和三十年四月でございますので、その後合併がございまして、その付近に桜井市、橿原市等の市の新設等がございましたので、郡が小さくなったように記憶いたしておりますので、従来は一名出ておったのではないかと思うのでございます。それから、先ほど郡の一番大きいのを申し上げなかったのでございますが、これは北海道の空知支庁でございまして、三十八万六千五百人でございます。北海道におきましては、支庁の管内を選挙法上は郡と読みかえておるのでございます。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、昭和三十年の実績で伺いましょうか。三十年の県会の選挙のときで一番小さな人口を持っている選挙区はどこで、その数は何名であるということをちょっと……。
  32. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、選挙上の統計をそのような角度からとっておりませんので、今手元に資料がないわけでございます。調べました上で、調べがつきますれば、お答えを申し上げたいと思います。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 この選挙は三十年だから、かなり前のことでしょうが、その結果の報告は自治庁に集まっているでしょう。集まっておりませんか。
  34. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 選挙の結果は集まっておるのでございますが、選挙区別の定数等はとっておらないのでございます。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 それはおかしいじゃないですか。一体、選挙原則の中でも最も基本的なもので、どこの選挙区は有権者が何ぼで議員定数が何ぼだから、一つ選挙区が何ぼということはわからないはずはない。調査ができてないということならば、これはまことに乱暴な話で、元来ここに提案されておる——選挙区を変更する場合には、実態がこうなっておるので、こういう不合理があるからこうだという意味での説明がなされているはずである。一番大事なのは、実態がどうなっておるかということを明らかにしないで、不合理も合理もあったものじゃない。これは調べればわかるんですか。それとも調べてないんですか。
  36. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 当時の人口におきましての調べ等がむずかしいということを申し上げたのであります。新しい今回の二十八郡を中心にして調べますれば、調べがつくわけでございます。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 私がお尋ねしているのは、ですから昭和三十年の選挙の実績をもとにしてお答えをいただきたい、こう言っているわけです。今市町村合併その他で動いている状態を聞いているのではなく、過去の既存の事実の上に立って——わからぬということはないでしょう。
  38. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 現行選挙法建前は郡市の原則によっておりますので、市ができますれば当然選挙区が変って参りますので、三十年のものは現在調査しておりませんが、御要求がございますので、早急に調査いたしたいと思います。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 こういうことがわかってなくて、こういう提案はずさんだと思うのですが、だめですよ、そういうことじゃ。早急に調べて下さい。  そこで、今度の改正によりますと、過去の実績がわからないとすれば、実績に合せてお伺いすることはちょっと困難ですが、この法案が原案通り成立し施行されるという結果からどういうふうになるかということは、よもわからないことはないと思う。そうすると、一番小さな選挙区は、強制合区の場合あらかじめわかっておる。任意合区の場合は条例ですかに譲るということであるから、都道府県意思によってある程度自由選択はできるでありましょうけれども、こういう二つに今けてお尋ねいたしましょう。そうすると、強制合区の中で一番小さな選挙区はどこで何名、一番大きなのはどこか、それと平均、この三つについてお答えいただきたい。
  40. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 強制合区は、先ほど申しましたように、各府県の議員一人当り人口の半数に達しないところでありまして、全国的にその人口の一番小さい郡は、先ほど申した奈良県の宇智郡でございます。それで、全国的に見て強制合区の対象となるもので人口の多い郡市というものを述べろ、こういうお尋ねでございますか。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 そうです。
  42. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 これは、わかりますから、調べましてから、お答えいたします。強制合区の対象には市はございません。
  43. 井堀繁雄

    井堀委員 郡は……。
  44. 皆川迪夫

    ○皆川説明員 お手元に「配当議員数一人未満となる郡市の調」という表をこの間お配りいたしたのでありますが、その中に「配当議員数〇・五人未満の郡」という欄がございます。これが合計して二十八でございますが、北の方から申し上げますと、福島県の北会津郡というのがございます。これは人口が九千十八人、茨城県の多賀郡が一万五百五十三人、東京都の大島支庁管内が二万三百八十二人、同じく三宅支庁管内が七千四百六十八人、同じく八丈支庁管内が一万二千七百五十人、神奈川県の三浦郡が一万五十二百二十九人、同じく愛甲郡が一万七千五百二十一人、新潟県の古志郡が六千五百四十三人、長野県の下水内郡が一万五千三百八十九人、岐阜県の土岐郡が七千二百五十七人、愛知県の葉栗郡が二万百七十三人、三重県の名賀郡が九千百八十四人、京都府の南桑田郡が四千十九人、同じく加佐郡が一万一千百三人、大阪府の豊能郡が一万五千百十九人、兵庫県の川辺郡が七千六百十人、同じく美嚢郡が九千三百六十四人、同じく印南郡が一万九千八百五十六人、同じく赤穂郡が一万九千人、奈良県の添上郡が二千六百八十三人、同じく宇智郡、これは先ほど申し上げた通りであります。それから、島根県の隠地郡が八千二百九人、同じく海士郡が六千六百七十八人、同じく知夫郡が九千二百四十九人、岡山県の上道郡が七千九十六人、同じく後月郡が一万二千三百五十六人、福岡県の早良郡が一万二千二百三十三人、それから三池郡が一万八千八百二十五人という数字になっております。
  45. 井堀繁雄

    井堀委員 今ずっと説明がありましたが、それを要約してお答えいただこうと思います。そうしますと、最大の有権者を持つ選挙区は、一人の定数に対して最高が何名になるか、最低が何名になるか、その平均がなんぼになるか。今の答弁の中で、計算ができたら一つお答えをいただきたいと思います。
  46. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 ただいま申し上げました二十八郡の強制合区の対象について平均を出せ、こういうお尋ねでございますが、これは御承知のごとく各県によって議員一人当りの人口が違うのでございますが、単なる算術平均を出せ、こういうことでございますか。
  47. 井堀繁雄

    井堀委員 そういうことです。
  48. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 それでは至急計算いたします。
  49. 井堀繁雄

    井堀委員 そのような数字をこの機会に明らかにしていただくことは、この地方自治法第九十条の規定によりますと、都道府県会議員定数は、人口七十万未満都道府県にあっては四十人、人口七十万以上百万未満都道府県にあっては人口五万に対し、人口百万以上の都道府県にあっては人口七五を加えるごとに、おのおの議員一名を増す、そうして百二十名をもって限度とすることになっておるわけです、そうしますと、その人口関係というものは、この法律によると、都道府県という行政区画によって、それぞれ人口増加率に対しては五万と七万があり、さらに最高は百二十人ととどめておるわけであります。この関係を具体的に現状で言い表わしますと、さっき東京の一人当りが六万六千何がしと、こういう計算になると思いますが、それをもう一ぺんここで整理する意味で、この第九十条の規定に従って計算をすると——議員一人当りの有権者の数の一番大きでいところはわかりました。小さいところも一万五千、これは間違いありませんか。現行法ではそうである。さらに今度の改正によりますと、強制合区をされるところについては、算術平均でけっこうでありますから、その最高を一ぺんこれに比較してみたいと思いますから、明確にしていただきたい。
  50. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほどのお尋ねの、各都道府県会議員一人当り人日の最大は東京都、最小は鳥取県。先ほど申し上げました数字は間違いございません。それから議員一人当りの全国の平均は三万四千百六十六人となっております。これはお手元の表の通りでございます。それから先ほどお尋ねの二十八郡につきましての平均人口は、計算をいたしましてから申し上げます。
  51. 南好雄

    ○南委員長 それでは、ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止〕
  52. 南好雄

    ○南委員長 速記を始めて下さい。
  53. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 お答えいたします。先ほどの二十八郡の強制合区の対象になっております選挙区の平均人口は、一万一千五百十人でございます。それから、前回の昭和三十年四月選挙における一番小さな選挙区は、新潟県の古志郡でございまして、一万七千五百八十九人でございます。
  54. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、今度二十八郡の場合は平均が一万一千で、従来の三十年の選挙の実績でいくと、最小が一万七千五百八十九人。そうすると、任意合区の問題ですが、任意合区の場合に、いろいろなケースが予定されましょうけれども、この改正案の条文から、町村合併などによっていろいろ変更が行われた中で、強制合区に関する問題はわかりましたが、さて任意合区を地方の条例に譲る場合と、その条例と、さらに政令によってある程度の基準を設けることになっておるようでありますが、問題は、政令によって定めようとする場合には、ここでいう自治法の第九十条のこの規定との関係において、いろいろの変更が生じてくるのではないかと思う。たとえば、これによって府県に割り当てられた議員定数を配分をしていく場合には、今二十八郡の予定できる強制合区の平均にしても一万一千になりますと、従来の最小の一万七千からかなり下回ってきている。任意合区の場合は、これより下回った人口によって議員定数が割り当てられるところが相当できると思います。これは自治庁長官にお願いいたしたいと思っておるのですが、そういたしますと、前回の場合においても、郡を単位という原則法律に定められておりますから、一番小さなところでは二千四百十四人に対して一名の県会議員を出すことができる。そういう事実はそちらはまだ調査ができていないというのですが、法律の上でできる。そうすると、ある県会議員は二千四百十四人で選ばれた県会議員、ある議員は六万六千人以上の有権者によって選ばれた議員、こういうようにもし人口にこだわって議員の資格を論議する場合においては、非常な数字的な懸隔が出てきている。こういうものを今度の改正である程度訂正しようということが、ここでいっている合理化の目標に当然なると思うのでありますが、この点はいかがですか。
  55. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 議員定数につきましては、御承知のごとく、地方自治法の九十条の規定によりまして各都道府県議員定数がきまっているわけでございますので、各府県の議員一人当りの人口は、それぞれ段階があることは御承知の通りであります。従いまして、各府県の人口の問題を各府県の要素をとりまして御比較になりましても、これは御無理ではないかと思うのでございまして、同一府県内におきます選挙区の人口に対して比例を破るようなことがあってはならないということが、法の精神であろうと思うのでございます。今回の改正におきまして、そのような精神のもとに、従来独立してもいいし合区してもいいといういわゆる任意合区の制度でありましたものを、議員一人当り人口〇・五未満の地区につきましては、これを強制合区の対象にいたしましたゆえんのものは、先ほど申し上げました人口によって比例した代表者を出していこう、このような趣旨にほかならないのでございます。
  56. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、府県の総人口をずっと一応当りまして、そして、たとえばどの県は四十人、どの県は四十五人、どの県は六十人、どの県は百二十人といったように、数字ははっきり今きまっているわけですが、その数字から今度の改正を試みようとする場合には、各府県ごとにそれぞれ答えが出ていると思うのです。たとえば、どの県では最高が幾らぐらいになる、最低はどのくらいになりそうだということが明らかだと思います。それを一つお述べ願いたい。
  57. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の規定によって強制合区を任意合区の規定が合理化されましたために、具体的の選挙区を設定いたしますのは都道府県議会でございます。その条例によってきまるのでございますが、現行法におきまして最大のところは石川県の金沢市が十二名でございまして、それで、これが、新しい人口の計算に基きまして、次の選挙におきましては、金沢市が十三名に相なるわけでございます。
  58. 井堀繁雄

    井堀委員 一人当り幾らになりますか。
  59. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほど石川県で申し上げましたように、平均二万一千四百七十一人でございます。
  60. 井堀繁雄

    井堀委員 問題は、条例によっていろいろ場合が異なってくるということが原案から受け取れるのですが、ここで実に不明確だと思いますのは、これは政令に譲るお考えかもしれませんが、郡という境界が、この場合においては、ある程度衆議院選挙区の境界を越えない限りにおいは、移動されるわけなんです。そうしてくると、平均当り県内でその選挙区というものは何名以下を下ってはならぬということは政令で規定されると思いますが、その場合には、第九十条にもありますように、東京都のように人口百万をこえたところでも百二十名しか議員定数を置けないということなんですから、こういうところは一人頭の平均がなんぼということは自然に明らかになってくると思う。ところが、あとの場合は、五万に対して一名を増加したり、七万に対して一名を増加するということですから、現在の何名という定員に対して有権者平均がなんぼということは、明らかになっておるわけなんです。そうすると、その平均から上下はどうするかということを政令で指示なさるおつもりであるか、そういうものまで条例にまかせるのであるか、この点を一つ……。
  61. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 議員定数につきましては、地方自治法で総ワクがきまり、公職選挙法の今回の規定によりまして選挙区がきまって、その人口の計算によって議員定数人口関係がきまるわけでございます。お尋ねは、政令で一つ選挙区における最大限、最小限というものをきめるのじゃないかというお尋ねでございますが、現行法もそのような考えはとっておりませんから、人口がふえますればふえていく、このようなシステムになっておるのであります。最大限も最小限もきめない。しからば政令で何をきめるのかということになりますと、これは一つの郡の区域が三つ以上の選挙区にわたるというような場合があるわけでございます。飛び地等でそういう場合が起り得るわけでございますが、そうした場合に、一つの町村が境界の変更によってその郡に新たに入ってきたという場合があり得るわけであります。その町村がどっちの郡に属するかということは、その処分だけではきまらないのでございまして、郡のうちのAの地区に属するかBの地区に属するのかという規定をしなければならない。そういう境界変更に伴う根拠規定を政令に置いておこうということが一つ。それから、合併等の関係におきましてその選挙区の所属の関係がどうなるか、ということを規定する根拠を政令に置くものでございます。
  62. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、ある府県においては五千くらいの有権者に対して一人、あるところはそれに数倍するような非常なアンバランスがあってもやむを得ぬということになりますか。
  63. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、都道府県議会定数がさきに法律できまっておりまして、その結果各都道府県議員一人当りの人口は非常に段階があるのでございます。小さいのは鳥取県の一万五千三百五十六人から、大は東京都の六万六千九百七十六人というような段階があるのでございまして、議員一人当りの人口は当然各都道府県において違うわけでございます。そういう面から見まして、人口のアンバランスは当然起って参るのでございます。ただ、問題は、都道府県内においては選挙区と人口との比率は人口の増高に従わなければならぬ。こういう原則でおるわけであります。
  64. 井堀繁雄

    井堀委員 そうしますと、どうもよくわからぬが、全国の場合は、最高が六万六千の東京、また最低が二万なんぼか、あるいはそれに近いものがある。非常な開きがある。しかし、それと同じように、同一都道府県内における定数は九十条でもう明らかになりますから、その割当の範囲内においては、このような全国的な開きがある。たとえば、そういうような開きがあるので、やむを得ずそういうことは条例に譲るのだ、こういうふうに解釈していいですか。
  65. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 県内においては、先ほど来申し上げますように、各選挙区と人口比例は保たなければならないのでありますから、東京と鳥取の差というようなものは当然考えられないわけでございます。片一方のある県で二万人で一人の議員を出し得るということでありますれば、四万の人口でありますれば当然二名出すわけであります。二万のところは一名、四万のところは二名、そういう比率になるわけでございます。
  66. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、その府県における定数人口を除すれば平均が出てくるわけですが、その平均をこの程度上回る、この程度下回ってはならぬといったような目安を何か政令などで明らかにするのか、ということを先ほどから聞いておるのです。いや、そうじゃありませんとあなたは御答弁される。全くこれは地方自治の自由にまかされる。ただ政令の中で定めるのは境界の限界についてのみ政令できめる。あとは格別関係がない。どっちなんです。
  67. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 政令ではお尋ねのようなことは書かないのでございまして、ただ、たとえば二万で一人であります場合に、三万で二人の場合と二万九千で一人の場合があり得るわけでございます。それは各都道府県におきますところの選挙区の人口の大きいところに議員を割り当てていく、こういう割当の原則に基いて計算をするのでございまして、当然人口に伴う計算をいたしますことによって、そういう内容が内包されておる。従来選挙法はそういうものであるというようにわれわれは理解いたしておるのであります。人口の大きい地区から割り当てていく。これは、衆議院選挙区の議員定数の配当につきましても、同様な措置をとっておるのでございます。
  68. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは、一つ具体的に例示してお尋ねした方が明確になると思います。たとえば、群馬県をとりましょう。群馬県の定数はなんぼになりますかな。
  69. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県は、議員定数五十四名、人口は百六十一万三千五百四十九名でございまして、議員一人当りの人口は二万九千八百八十人でございます。
  70. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、人口定数がきまって、しかも一人当りが二万九千八百八十、こういう工合に明らかになっておりますが、これで幾つの選挙区になるというお見通しですか、群馬県は。
  71. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県におきましては、市が十、郡が十二でございまして、人口の小さい強制合区または任意合区の対象となるものはないのでございます。
  72. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、市は十ですから、これは十区になるわけですね。それから郡の十二は、これは強制合区がないし、任意合区の場合はどうですか。これは選挙区は幾つになりますか。そうすると、十二と十ですから、二十二の選挙区でいきますか。
  73. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県におきましては二十二の選挙区になるものと思われます。
  74. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、二十二区でいきますと、人口の配分は平均から上下というのはどのくらい開きそうですが。
  75. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県におきます具体的の郡市の人口を出しまして、それで、それに定数を創り当てまして、そまれで端数がありますと、大きいところから議員一人ずつ配当をいたしていくのでございます。
  76. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、人口比例させようとすれば、結局、ここで言っておりますような交通や地勢というようなものと、衆議院選挙区も同様ですが、特に群馬県の場合は、山間僻地をかかえたところと、それから南の方に工業都市、商業都市のように、人口の密集したところとの関係というものを、どういう工合に——人口だけで調整していこうとすれば非常な無理が出てくる。そういう点のあんばいは全く条令にまかされるのであるか。そういうものについてもあらかじめ基準となるべきものを示すのか。その辺はどうなりますか。
  77. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 たびたび申し上げております通りに、都道府県議会議員選挙区は郡市の原則できまるのでございます。それで、市が十、郡が十二でございますと、二十二の選挙区ができる。その場合人口が少なければ強制合区あるいは任意合区の対象になると思いますが、それ以上の人口のものは独立性を保って参るわけであります。それで、定数が先ほど申し上げましたように五十四名でございますので、具体的に郡市にその人口を割り当てて参るのでございます。それで人口比例するということを先ほど来申し上げておりますが、具体的の選挙区がきまりまして、その人口の多いところへ一人ずつ、端数につきましては、たとえば二・五と六という選挙区が出るとしますと、二・六の方に先に三人という定数をはめていくわけでございます。そういう意味において、人口比例とは申しますけれども、算術的な意味人口比率ではないのでございます。
  78. 井堀繁雄

    井堀委員 算術比例ならすぐ出てくるわけです。答えはおのずから算数を心得ておれば出てくるんですが、人口が百六十一万で、五十四で割って、選挙区が二十二ですから、一つ選挙区はなんぼ、平均はここでは三万九千八百八十と出る。そうすると、実際については平均はこれですが、上下というものにははなはだしく開きを生ずるということは起らないという御答弁がたびたびあった。それをややはっきりいたしますために、私はある程度わかっておるつもりですが、記録に残しておきたい。そうすると、群馬県の例を出しましたから、もう一ぺんそっちの数字で答えて下さい。現在二十二の選挙区で平均は二万九千八百八十、最高はどこでなんぼ、最低はどこでなんぼということが出ましょう。それをちょっと……。
  79. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 現行選挙区におきましては、群馬県においては前橋市が最高で五人でございます。最低は山田郡と北群馬郡が一でございます。人口は前橋市は十七万一千二百五十三でございます。それから山田郡は三万一千二百十、北群馬郡が三万七千七十一でございます。それで、ただいま申し上げました定数は現行定数でございます。次の選挙におきましては、新しい人口、今申し上げた人口によって定数を定めることになりますので、その関係を申し上げますと、前橋市が六の割当になるわけでございます。大きい方は前橋市が六、山田郡は一、北群馬郡はやはり一でございます。北群馬郡と山田郡は、人口は一人区でありますから、先ほど申し上げた通りであります。前橋市の議員一人当り人口は二万八千五百四十でございます。
  80. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、北群馬郡は一人当り三万七千七十一名、これに対するに前橋の場合は二万八千五百四十名、こういう割合になるのですが、ほかの郡市等で、一人当りの数を出してみますともっと低いところがあるでしょう。前橋が一番低いのですか。そんなことはないでしょう。
  81. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 平均は郡市全部出してみないとわからないわけです。ただ、ただいま申し上げました議員一人当りの人口というのは、それは比例してないのでございまして、端数について大きいものから割り当てていく。これが選挙法原則でございますので、単純なる比例でないということを申し上げておきます。
  82. 井堀繁雄

    井堀委員 その単純でないところに、いろいろわれわれのお尋ねしなければならぬ事情が出てくるわけなんです。果して群馬県が適当な例であるかどうかは、私は何もわかりませんけれども、そういう具体的なものを明確にしてお尋ねすればと思って聞いておるわけです。そうすると、今までのところで群馬県の総人口定数が明らかになり、さらに、今度の改正によって、前橋が一名ふえて六名、議員一人当り二万八千五百四十人、それから、郡部の場合には、北群馬郡が定員一名、従って議員一人当りの人口は三万七千七十一、こういうところまで明らかになったわけです。そこで、さらに明らかにしなければなりませんのは、各選挙区全体をながめて、一番一人当りの人口数の少いところはなんぼになるかという実例、これを一つここに出してもらいたい。そしてお尋ねすれば、具体的でありますからわかりいいと思います。ここでもう一ぺん、群馬県全体の中で定数一人当りの人口が一番少いところをあげてみて下さい。
  83. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県におきましては、藤岡市の人口が四万三千三百五十八人でございまして、これだけで選挙区ということになりますれば、二名の配当になって、議員一人当りの人口は二万一千六百七十九人と相なるのでございます。しかしながら隣接して多野郡の飛び地がございますので、そういうものを合区するということになりますれば、その二万一千六百七十九が若干上回るということに相なるわけでございます。
  84. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、やや具体的な例示がはっきりいたしました。群馬県の場合は、現存選挙区でいくと、藤岡の場合が一番少い数になるという御説明で二万一千六百七十九人、一番一人当りの人口の高いところは北群馬郡の三万七千七十一人、これから一番少いところの二万一千六百七十九人を引きますと、一万六千人ばかりの相違が出てくる。この相違は、任意合区あるいは強制合区——ここには強制合区も任意合区もないという御説明でございましたが、そういうアンバランスを調整せしめるための合区をこの法律は要請しておるのであります。あるいは、それはかまわないで、地方の府県の自由にまかされておるのか、その点をまずはっきりいたしておきたいと思います。
  85. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほど来例で御説明いたしました群馬県の選挙区十市十二郡につきましては、これはそのままの選挙区としての扱いで議論を進めて参ったのでございますが、御承知のごとく、町村合併の結果、新市の設置等によりまして、郡の飛び地ができております。そういう関係で、郡の一部を市に入れるということが可能になって参るのでありまして、そういう意味の任意合区の地区はあるのでございます。それで、さような場合には、選挙区を先に設定いたしまして、人口比例によって議員定数を割り当てて参るのでございまして、その割当の原則につきましては、従来と何ら変更いたすものではないのでございます。
  86. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは、お尋ねいたしますが、今御説明の中に、先に選挙区を設定してということがあったのですが、そういうことは実際上できますか。極端な事例をとればわかるのですが、今群馬県の場合に選挙区が二十二ある。それを二十一にするという場合は、言うまでもなく一人当りの人口が高くなってくる。逆に二十二を二十三ないし二十五というようにふやしてくれば、一人当りの平均人口というものはきっと減ってくる。そういうことですから。選挙区をあらかじめ設定するということは、この二十二という選挙区がふえたり減ったりするというようなことがこの法律ではありますか、そういう点はどういうことになりますか。
  87. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほど来申し上げておりますように、町村合併の結果、郡の飛び地がありますれば、これは合区し得る。その結果片方の飛び地の片割れが人口が小さいということになりますれば、これは選挙区の数が減って参ることになるわけであります。
  88. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、これは仮定でありますけれども、減るということは少いかもしれませんが、今の傾向からいいますと、群馬県の方では、地勢から判断いたしますと、都市がどんどんふえつつある傾向です。町村合併によって市制がしかれる。郡の中に市ができますと、選挙区はおのずから二分されて二つになるということで、選挙区のふえる可能性は今後相当見通せる。そういう場合に、今の選挙法でいいますと、郡の単位というものがややくずれておりますから、市の単位ができれば、選挙区は独立し得るわけです。そういう意味で、そんなことはないだろうけれども、いろいろ議員の都合から考えて、選挙区を別に持ちたいというような場合には、今でさえ町村合併などにこの問題は非常に大きな障害になってきている。自分の選挙区を切られたり、あるいは自分の都合のいい選挙区なら独立させたい、いわゆるゲリマンダーの一つ要素がここにあるわけです。もっとも、まあ自治庁なりあるいは総理府のそれぞれの別な法規によって、独立に対する権限あるいは制限があるでしょうけれども、しかし、この場合は、これは別の法律ですね。だから、そういう市や郡がどんどんできていけば、そのたびに選挙区は一つふえてくるわけです。そうすると、これはどうなるかわかりません。たとえばの話ですが、北群馬郡といったようなところは、なかなか近い将来市ができそうもない。しかし、山田郡——どういうところにあるか知らないけれども、山田郡というところは南の方にあって、市が二つある。それがさらに三つも四つも市ができる可能性がある。そういう場合には、人口が必ずしもそれにマッチしない。たとえば、市ができたから、それを一つ選挙区にする、しかし二万九千なら二万九千の数よりも非常に低い、そういう選挙区ができる可能性があると思うのです。私は市のことはよく知りませんけれども、四万くらいで市ができるでしょう。そうすると、そこで二人とれば二万ということになる。山田郡のごときは四万近い三万七千、するとこういう結果が出てくると思うのでありますが、その点は本法律の中では是正の可能性があるか、あるいはそれは全く条例できめることだというのであるか、その点を一つ明らかに願いたい。
  89. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 ある府県の一定の地域に人口が多くなりまして、市ができるということになりますれば、選挙区の建前といたしましては郡市の区域によるのでありますから、市ができますと、現行法では必然的にそれが選挙区になる。新しい今回の選挙法考えで参りますと、人口の少いときには、それが〇・五未満の場合は強制合区の対象にする、こういう考え方をとっておりますが、現実に新市ができます場合には、府県の人口の総体的な数字からいきまして、〇・五未満の市というものは考えられないわけでございます。でございますので、具体的には独立の選挙区になることと思うのでございますが、従来その地域の社会生活等あるいは経済、交通、文化、いろいろな面で、これは独立とすべきじゃないという府県の住民の判断がありますれば、これは、かりに独立の選挙区になりましても、付近の隣接した地域の人口が少いというようなことがございますれば、当然合区で参るだろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、市ができたら当然選挙区の数がふえるとも限らないのでございます。理論的にはふえることになるのでございますが、現実の扱いとしては、隣接の断続の郡部が人口の小さい場合には、これに合区してくるということが考えられるのでございます。
  90. 井堀繁雄

    井堀委員 しかし、この法律からいいますと、市が一つの区域を明らかにしておるのでありますから、市ができると、そこの府県で独立選挙区と認める。しかし、その市に隣接しているところで飛び地を生ずるような町や村は、必ずしも合区しなければならぬということにはならない。何か改正法の中でそういう強制をすることができるのですか、それともそれは条例で定めるのだというのですか。しかし、飛び地になっていても、その飛び地というのは何も島みたいにはっきりしておるわけではなくして、少しでも隣の部落とつながっておれば、これは飛び地ではないという理屈も成り立つわけです。だから、今の町村の地図を見ていきますと、各方面にありますけれども、私の一番手近なところで、鳩ケ谷というところは全く川口のまん中に囲まれてしまっている。しかし最初はそうではなかった。しかし、そういうふうにだんだん新市町村が合併してきて、飛び地の合併が行われるという事実もあるわけです。ですから、こちらの方は、飛び地は原則として合区の対象に考えているようでありますが、しかし、町村合併というものは別として、市制施行のための合併が行われてくることは、現実にもうすでにあるわけです。そういう場合には条例だけにまかされるということになるのか、いやそういう場合は当然強制合区の対象としてこの法律規定しておるのか、その点が実にあいまいだと思うのです。はっきりしていただきたい。
  91. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 この法律は、建前は郡市でありますが、郡市の人口議員一人当りの平均人口の半数に達しない場合は、強制合区の対象としておるのでございます。なお、その間飛び地等があります場合に、その飛び地の地区の人口は、同様な独立の郡とみなして、そういう扱いをなし得るということをいたしておるのでございまして、郡が、飛び地を合せまして、当然議員定数が数人の割当を受ける地区でありましても、一部の飛び地が非常に離れておる、郡の一体性を欠いておる、回りの市と合区する方が望ましいということでありますれば、これはその地区が強制合区の単位でありますれば、強制合区の対象になり得るわけでございます。ただ、郡の全部ではございませんから、当然強制合区の対象にしてはおらない。その判断都道府県議会にまかせておるわけでございます。
  92. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、この選挙法によって、町村合併の範囲が一つの重要な条件になってくる。たとえば、あの村とこの町をくっつければ県会議員定数が二名のところが三名になる、あの村を省くと二名の定員で、そうして今度はその一つの町村を奪われた郡については〇・五という原則はあるにいたしましても、そのかすかすのところで計算をしてみると、片方の方は一名足らなくなって、片方の方もふやすだけの数が足らぬといったような数字がきっと出てくると思う。そういうようなものの判断は、あげて地方自治体にこの法律はまかせているのか、あるいはその原則というものは犯してはならぬというのか、その点がここは実にあいまいもことしておるのです。そういう点は政令に譲るのではないかと思うのですえが、政令の中ではそういうものをどういう工合に書き表わすのか。また、あまりきつくなりますと、これは問題になると思うのです。このままの状態では紛糾の種を残すということになるので、そこを明らかにしていただきたい。
  93. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 合区の基準と申しますか、原則は、この第十五条の第六項に書いておるのであります。「選挙区を設ける場合においては、行政区画、衆議院議員選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」この規定によりまして、都道府県議会が良識を持って当然きめるべきである。このような考え方に立っておるのでございまして、また、都道府県議会は、当然背後に住民の監視を受けているわけでございますので、おのずから都道府県議会が正しい姿においてきめ得ることであろう、このように判断をいたすものでございます。また、従来におきましても、このような考え方は、都道府県議会において任意合区等の規定があるわけでございますので、その点におきましては議会判断にまかせて、こうも差しつかえなかった点でございます。  それから、政令に規定するのではないかというお尋ねでございますが、そういう点は政令には規定せず、一切この法律の十五条の六項の規定で、都道府県議会の自主的判断によってきめることといたしておるのでございます。
  94. 井堀繁雄

    井堀委員 やや明確になってきました。そこで、ここで言っておりますのは合区に当っては行政区画、衆議院議員選挙区、地勢、交通などの事情を総合的に考慮していく、こういう表現でありますが、これは、前会にも質問いたしましたように、行政区画と一口に言うけれども、この行政区画の中には、市町村というものは法律にも明らかです。郡の区画というのが不得要領なものになりがちなんです。だから、ここで明らかにしておきたいのは、郡という区域については、ここではこの法律に書いてありますけれども、「区域を郡の区域と見なす」、そこで、他の郡から新しく町村が市に併合されたり、あるいは独立した市制を町村の合併によって作る場合、二郡にわたる場合、あるいは三郡にまたがっておる場合には、その郡の区域というものはくずれてくる。この法律でいきますと、その点がただ行政区画というふうに一本になっている。この行政区画というものについては、もっと明確な規定が、やはり必要ではないか。市町村というのは明確ですが、郡の区画というものは、それは、なるほど、町村合併の場合においては、どちらの郡にくっつけるかということも問題になりましまう。市ができれば、郡というものは自然解消するわけですが、この場合、選挙区の場合は、衆議院議員選挙区とからんでくるわけです。次に、衆議院の場合には、郡の境が問題になってくるわけです。ちょうど隣の郡から一町村だけが入ってくるというのであればいいのですけれども、そんなことはあるかどうか知りません。一応の仮定でありますが、四つの町が一つになって市を作る場合、その二つの町がはからずも他の郡で、しかも人口その他の条件を伯仲した場合には、衆議院選挙区の場合はどう判断していくべきでしょうか。市をどっちにくっつけるかというような場合には、この法律ではどう理解していくか。この点を一つ明らかにしておいていただきたい。
  95. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 この第六項の規定は、この前に第五項の規定がございまして、これは今回改正に触れておらない点でございます。第五項は「市町村は特に必要があるときに、その議会議員選挙につき、条例で選挙区を設けることができる。」という規定でございます。これは、第二項はいわゆる強制合区、第三項は任意合区及び選挙区の規定でありますので、市町村選挙区を設定する場合、そのように合区あるいは選挙区の設定に際しまして、合理的な判断でやらなければならぬということをその精神にうたったものでございまして、この行政区画には、市町村選挙区を設ける等の場合におきましては、大字と申しますか、そういうものも入ります。また、都道府県議会議員選挙区におきましては、国の行政機関、あるいは都道府県の行政機関と申しますか、そういうものの行政上の区画も一つの考慮に入るわけでございます。それから、郡が行政区画に入るのではないか、このような御疑問をお持ちのようにお聞きしたいのでございますが、郡の処理を第十五条において書いておるのでございまして、十五条の六項におきましては解釈上、おのずから、行政区画といいます場合には、郡は除いておるというふうにわれわれは考えておるのでございます。
  96. 井堀繁雄

    井堀委員 まだだいぶありますけれども長官がお見えになりませんので、あと先になりますが、次にお尋ねしておきたいことは、選挙期日を二十五日から二十日に短縮することによって起るいろいろな事態を予測してお尋ねをしたい。その中で一番大きな問題は、選挙運動をやる側と、それからこれを批判して審判する方の選挙民の側と、両方の立場において問題があると思う。まず、勝手のようでありますけれども、運動をやる方の側からいたしますと、二十五日で片づけたものを二十日でおしまいにしなければならぬ。これは物理的に五日間の仕事を何とか合理的に整理していかなければならぬということが一つある。そうすると、ここで当然選挙運動に関するいろいろな処置を考慮しなければならない。たとえば、立会演説会の回数がたびたび問題になっておりますが、立会演説会の回数を減らさないという御答弁が、総理、自治庁長官から何回となく明らかにされております。そういたしますと、従来もありますが、立候補の締め切りをいつにするか。その締め切り以後でなければ、従来立会演説会を開始することが事務的に困難とされておった。そういうような点で、五日間をどこで短縮して——従来日曜とか土曜というような場合を立会演説から省いた、あるいは会場の都合などで許さなかったりするというような事情どもあったと思いますが、回数を減らさないでやろうとすれば、どこで一体調整をされるのか。抽象的には交通機関や宣伝機関が発達した、こう言っておりますが、これは発達したことは間違いないけれども、発達せぬところもある。この法律を作られたときから見ると、発達したという意味でしょうけれども、それにしても各選挙区の実態はまちまちです。これは一般的な例示としていえるのでありますが、実際立会演説会の回数を減らさないということになると、どこの場合とどこの場合ということで違ってくると思います。しかし、ここでまずお尋ねいたしたいのは、全体として立会演説会の回数を全国で平均四十五度とかこの間答弁された。そういう場合、平均で減らさないということなのか、あるいは実数を減らさないようにするのであるかということでも、大へん違ってくる。この場合は、実数を減らさない。東京の場合は七十回やって、埼玉県の場合は四十回というような場合があるかもしれません。その実績を減らさないという意味だろうと思いますが、それをやるためにどういう処置を講ぜられるか、それからその実績はどうかという点をお尋ねしたい。
  97. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 立会演説会につきましては、一候補者当りでいきますと、二十七回程度でございます。一選挙区当りで見ますと、四十五回を上回る四十八回程度になっておりますが、そういう数字を示しております。今回の改正によって立会演説会等が減らないということを申し上げましたのは、従来立会演説会は公示がありましてもすぐに開始しておったものでない。九日目ごろから立会演説会をやっておったのでございます。今回五日間短縮になりましても、四日目か五日目にはできるわけでございますので、そういう意味におきまして、初めを早くする、それからまた終りも従来より勉強するということになりますれば、従来と中身は変らないで立会演説会が行えるということに相なるわけでございます。そういう趣旨におきまして、影響ないということを申し上げられると思います。
  98. 井堀繁雄

    井堀委員 立会演説会の時期を早く初めて、終りを、と言っておりますが、開始の時期を早くするということはある程度可能性があると思う。しかし、終りの時期が投票の前日の場合は、会場その他の関係で実際できないんじゃないか。終りの場合はぎりぎりまで従来はやってきているんじゃないか。やってみたところで一回ぐらいじゃないか。こういう点ではどうも納得ができかねますので、平均じゃなくて実績を維持していこうということでありますならば、この点についてはもっとお尋ねをいたしたいと思います。  残念なことには今本会議の予鈴が鳴ったようでありますが、もっとこの点は詳しくお尋ねをいたしたい。それからなお、今度はポスターをふやし、あるいははがきをふやしてきておるのでありますが、この場合に当然問題がいろいろ出てくると思うのです。こういうような点について次会に詳しくお尋ねいたしたいと思います。きょうのように大へん時間待ちになるようなことのないように、あらかじめ資料を御用意いただいて、てきぱきと御答弁のできるように要望しておきたい。  次にお尋ねいたしますことを予告しておきたいと思いますが、それは今尋ねかけました立会演説会あるいは個人演説会、街頭演説会などの二十五日間に全候補者が全力をあげて戦ってきておりました実績を減らさないように、どうして維持するかということについて、具体的にお尋ねをしていきたいと思います。その点に対する実績などについて御調査を願って、すみやかに御答弁できるようにお願いしておきたい。それから、次は、せっかくポスターをふやすのですから、そのポスターを張る場所などについても、今度の場合は配慮が必要じゃないか。一例ですけれども、従来公共の建物について貼付することを形式的に断わっている場合がかなりある。具体的な例としては、これは電電公社の関係か、電信柱、電話線、ああいうようなものに対する貼付などについては、むしろそういう便宜を提供するというようなことこそが、公営への一番合理的な行き方ではないか。ほんの一例です。何も張ったからといって、電信柱がどうなるわけじゃない。大ぜいの人が一ぺんに張っては困るのなら、あらかじめ選管などで立候補有の間で協定させて、フェアなやり方に近いようにすればいいのです。それから、公共の建物については、やかましく言わないで、むしろ公共の建物を大いにフルに活用させるということを、この際考えていくべきじゃないか。それから、できるなら都市の美観を、そこなわない、個人の建物に迷惑を与えないといったこと等を考えて、掲示の場所を設けるというようなことは、格別費用のかかるものではありません。もし選挙公営を拡大しようということであれば、格別費用のかからない方法でポスターの掲示場所を提供する。人通りの多い人の集まるような場所はたくさんありますから、あるいは公共の掲示板を臨時拡張して、これを利用せしめるというような道はたくさんあると思う。こういったような問題について具体的にお尋ねをしていきたいと思います。長年選挙についていろいろ御苦心をなさっております選挙関係自治庁といたしましては、そういういろいろなものを集めておいでになると思いますから、こちらから一つ聞いたら十を答弁なさるくらいの御用意をいただいて、せっかくポスターをふやすのであるから、そのポスターが高率に利用されるということを配慮すベきではないか。それも二十五日間でやるのを二十日間でやらなければならない、スピードが必要だ、こういったような点に対するいろいろな具体的措置が望ましい。われわれも具体的に提案をしたい。そちらからも、こうする、ああするというような計画を発表して——いや実行に移すための処置を講ずべきではないか、こういうことをこの次お尋ねいたします。用意してきてもらいたい。  それから、選挙管理委員会の公正な選挙事務の執行について、自治庁として配慮を加え、あるいは選挙管理委員会に望むべきことがございますれば、こういう点も希望しながらお尋ねをしていきたいと思いますから、そちらの方で、積極的に、こういう方法で——公明選挙の実行のための選挙管理委員会の活動、あるいは自治庁のいろいろな処置というものをお示しいただく。そういうことを次会にお尋ねいたしたいと思います。  今予鈴が鳴りましたので、私の質問を保留いたしまして、きょうのところはこれでやめておきます。
  99. 南好雄

    ○南委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  100. 南好雄

    ○南委員長 速記始めて。  この際暫時休憩いたしますが、明十一日は午前十時理事会、それから引き続き委員会を開催することにいたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後三時二十六分開議
  101. 青木正

    ○青木委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。  井堀繁雄君。
  102. 井堀繁雄

    井堀委員 午前中お尋ねをいたしました今度の選挙法改正の問題点の第一の段階について、大臣が途中でいらっしゃらなくなりましたので、事務当局から具体的なことをお尋ねいたしておりましたが、だんだん検討を加えていきますと、ますます重要な事態をこの法案の中で発見するのであります。それは、午前中にもちょっとお答えいただきましたように、選挙区の変更が今日の場合一番大きく具体的に現われてくるのは、定数とそれの対象になる人口比例の問題であります。これをいかに合理的に処理されるかということが、今回の改正案の中において強く主張されておるのでありますが、その具体性に欠くるところがありましたので、いろいろのお見通しを事務当局から伺いました。具体的な事例を一応とりまして、その中でお尋ねした結果、やや明らかになってきた。それは、群馬県の例をとりましてお尋ねをいたし、お答えを願ったのであります。それによりますと、従来群馬県に割り当てられた定数は、人口の自然増によって変更されない向きが明らかになりました。すなわち、群馬県は定数は五十四名、現在の選挙区は、市の単位が十で、郡の単位において十二、二十二の選挙区。そこで、議員と人日の割合でございますが、現在まで明らかになったところによりますと、一番多いところでは一人当り三万七千七十一名のところと、それから二万一千六百七十九人という二つの対照が明らかになってきております。これが今後どういう工合に変更されるであろうか、またその場合法律がどのような働きをするかという点を、実はお尋ねしたわけであります。ところが、この点については、今までの御答弁によりますと、確定的な見通しはすなわち条例によって左右される点も明らかになりました。すなわち、市町村の合併その他によって市の区域がどういう形で発生してくるか、そのことによって、町なり村なりというもの、すなわち郡に残るべき地域のものが市に吸収されたり、あるいは町村が市に昇格したりすることによって、郡に残されてくるものがどのくらいの数字になるかというようなこと等が、今日の場合明らかでないわけであります。こういうような点について、なかなか捕捉しがたいという事情もわかったわけであります。こういう点で、こういうものを法律の上で規定するということが困難だという事情も明確になったわけであります。そこで、私のお尋ねをいたしておりましたのは、ここにあります自治法の第九十条による府県単位の定数の割当については、これがいいか悪いかは今日議論することは避けたいと思うのでありますが、一応人口比例によって大別して四つのケースを規定しておるようであります。でありますから、完全に人口比例するのでないということだけは明らかです。たとえば、五万人に対して一人、七万人に対して一人といったように高率逓減、すなわち人口の密度の高いところに行けばその比率は下るという規定の仕方が、九十条の規定であります。ところが、今回こういう府県に割り当てられた定数がどのように配分されるかということについて、またこれと同じ趣旨のものがそのまま今度は県内において配分されるというのであれば、これはいい悪いは別として、九十条に問題がある。しかし、その通りに行かないであろうということが明らかになった。すなわち、五万に対する一でありますから、十分の一なら五千人に対する〇・一というような算術的なものにはならない。そこへ持ってきて、この法律改正案でもいっておりますように、行政区画、衆議院選挙区、そうして地勢と交通の事情などを総合的に考慮してきめる。この中で、事務当局に明らかにしてもらいましたのは、この行政区については、市町村という区域については明確でありますが、郡の区域については、この規定の中からはずされている。こういう点が今までの質疑の中で明らかになってきた。  そこで、自治庁長官にこの際明確にお答えをいただきたいと思いますのは、こうなって参りますと、どうしても、自治法定数規定した部分だけでも公職選挙法の中に移さなければいけないのじゃないか。というのは、国会議員の場合においては、参議院の問題はここで一時別にいたしまして、法の沿革はしばらくおくことにいたしまして、この際この種の改正ということになりますならば、やはり一つの統一した法の一貫した精神というものを貫く必要があるのじゃないか。すなわち、第四条の規定自治法の九十条なり九十一条なりに共通せしめるということが必要になるのじゃないか。その必要性がますます濃厚になって参りまして、これをもっと私は追及いたしたいと思っておりますが、国の場合は、全国国民意思を、四百六十六人にこの総意を実行せしめようとする型をとっておるのでありますから、そうだとするならば、府県に割り当てる場合においても、この四条の精神を取り入れるべきではないか、またそのまま市町村の場合にもその一貫した思想でやっていくべきではないか、こう思うのであります。どうしてもこういう矛盾を解決することのできない事態を明らかにした以上は、この辺の改正について私はこの際政府に決断願わないと、かえって本法のこのような改正は、この重大な事項を混乱に導くだけであって、改善のきざしには絶対にならないと思いますが、自治庁長官の御見解一つ承わっておきたい。
  103. 郡祐一

    郡国務大臣 自治法というものが、みずからの組織を定め、みずからの機関を定め、みずからの財政を定める。従って、組織法であり、財政法であり、議会法である。あらゆる様態を含めまして一つの条項にしておりますから、従って、その組織の基本である議決機関定数というものを自治法に書いて、それをそのまま公職選挙法が受け取っておる。この形は私は一つの一貫した形と思います。ただ、おっしゃるように、選挙法自体が議員定数というものを各種の団体について書きますということは、私はもちろん意味のあることだと思います。従いまして、現在もややそういう態勢になっておりますが、両方に掲げて、その掲げ方は主たる場所を公職選挙法にするというお考え方も、私は一つの筋道の通ったお考え方だと思います。国と地方との選挙を分けた法律にすればともかく、一本の公職選挙法にしてあります以上、御主張の点は十分傾聴すべきことだと思いますが、自治体自身の組織という点に重きを置きますならば、もう一段私どもは検討させていただいて、公職選挙法自治法の立て方をあるいは逆にした方がよろしいか、というようなことも考えられるのであります。この点は十分いろいろな研究点と一緒に考えさせていただきたいと思います。  それから、これまた御指摘がありましたが、今の自治法の九十条なり九十一条なりのその数というものが実質上それでいいものかどうか、これらの検討もあわせていたしたいものだと思っております。
  104. 井堀繁雄

    井堀委員 これは非常に重大な問題でありますので、私もここでにわかに結論を出すことはいかがかと思うのでありますが、日本自治を沿革的に見まして、それぞれ都道府県という単位で独立した自治としての形をとることが、果して妥当かいなかという本質論もあると思うのです。しかし、日本都道府県というものは、従来中央の下部組織のような機能を長い間続けてきた。そういう沿革もあるが、しかし、現在は、憲法でも、自治に関する宣言で明らかなように、自治精神を急速に育成しようとする意図を明らかにしております。従って、知事の公選のごときもその具体的現われであると思う。そういうように、自治の本質、精神は、理想を追うて改善されようとする憲法自治法基本精神で明らかなんです。しかし、肝心かなめの自治の機能を正面で果そうとする、すなわち住民の総意というものを実行に移す具体的方法が、議会を通じて、すなわち住民の代表者を選んで、それにその権限の一部あるいは全部を与えてこれを行わせようとするところに、民主主義理想から言うといろいろ論があるといたしましても、一応その理想に近づこうとする段階の代議制としては、私はこの問題は大きな問題だと思う。もしこれを公職選挙基本法にするとするならば、まず第一にここに歩調を合せなければ、これは基本法とはなり得ないと思う。ところが、この公職選挙法全体から見ますと、基本法に、いろいろな、いわばそれぞれの特殊な性格を持たせなければならぬものまでが一緒にされてしまっているというような、法体系自身にもいろいろな問題があると思うのです。私はそういう問題の急所に触れる改正法であると思うわけです。こういう点で十分御検討をいただきまして、また、この改正についても、こういう点についてわれわれの意見を述べたいと思っております。しかし、このことは今にわかに結論を求めるわけにはいきますまいから、一応問題のあるところを指摘いたして、次に質問を進めたいと思います。  そこで、そういう重大な関係を持ちますだけに条例に譲ります事項というものをわれわれはある程度明らかにしなければならない。これは、やり方が悪いと、定数の割当だけは国が法律できめておりますが、それをどういう工合に配分するかということについては、かつて小選挙区法で世論の非難を受けたように、ゲリマンダー、すなわち権力やあるいは候補看などの利害関係の非常に強い事柄でありますだけに、問題をかもさないとも限らないのであります。もしそういう紛糾の原因をこの改正でまくようなことになりますと、責任はきわめて重大だと思います。私はそういう点に対して杞憂なしとしないと思う。そういう場合に、この改正によって各都道府県議会がこれをきめる場合に、この法律改正の経過並びに法律を起案いたしました起案者考え方議会における審議の一つ一つについて、きわめて重要な責任が生ずると思うのであります。そういう点を懸念しておりますから、さっき群馬県の例だけを求めましたが、私は、各府県に分れておりますから、できるならば、これと同じように、全国都道府県関係のものを一応数字で表わして、それを検討さしてもらいたい。そういう方法を審議する期間も割合短かい期間でありますから、質疑応答でいたすこともできましょうが、大へん時間がかかりますので、そういう資料を整備して出していただけるかどうかお尋ねいたしまして、質問を進めようと思います。
  105. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 御要求の資料は、できますものはできるだけ早くまとめて提出いたしたいと思います。
  106. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは、その資料が出ましてからまたお尋をすることにいたしまして、次にお尋ねいたしたいと思いますのは、今度の改正の第二の問題点として私が重視しているものであります。それは期間の短縮に伴う結果であります。二十五日間を二十日に短縮するということは、非常に大きな割合の変更になるわけであります。二十五分の五ですから、その五日間の失われるものを選挙運動の上でどのようにして補うていくかということを、明確に知りたいと思っております。先ほどちょっと具体的にお尋ねいたしかけたのでありますが、選挙をやる方の側と、それから住民の側との両方の立場で検討しなければいけないわけで、まず身勝手ではありますが、われわれ選挙をやる者の側からお尋ねいたしますと、五日間失うことによって、まず第一に立会演説会の回数を圧縮せざるを得なくなるのではないか。それを圧縮せぬで済むにはどういう方法で補うか。午前中選挙局長の御答弁によりますと、立会演説の開始の時間を早める、それから終了の時間を延ばす、こう言っておられましたが、開始の時期を早めるということはある程度できる。しかし、切り上げるのを一日延ばすということは事実上できないのじゃないかと思います。その他、街頭演説会でありますとか、あるいは個人演説会でありますとか、言論の第一条件であります直接有権者に候補者が訴えていく——一番効果的でしかも今日の段階では一番合理的とされておりますのは、候補者自身の言論を直接有権者に訴えるという機会を多く与えるということ、それは、しかし、今日の場合、いかに宣伝機関が発達し交通機関が発達したとはいいながら、一体そういうことがどの程度可能であろうか。これはやはりある程度具体的にいたしませんと、抽象論ではいけませんので、この点具体的に自治庁の方で計画がありますればそれを伺って、それからそれが選挙管理委員会にそのまま受け入れられるやいなやについても、また考えがあると思います。ここら辺について詳細に説明を伺っておきたいと思います。
  107. 郡祐一

    郡国務大臣 詳しくはまた政府委員の方から申し上げることにいたしますが、立会演説会は、実績は一個人当り二十七回くらい全国平均になっているかと思います。この立会演説会というものにつきましては、地域の選定——地域の選定と申します点で特に考えたいことは、候補者の立場からもまた有権者立場からも最もよく聴衆の集まりますような場所、それから、回を重ねるにつれて進歩はしておりますけれども、まだその立会演説会開催の順序というものに工夫をされるべきところがかなりあるのじゃないだろうか。それから、選びます時間というようなものも、もっと選挙に有効適切なものにしなければいけないのじゃないか。これは、運動期間の変更のあるなしにかかわらず、私は考えるべき点があると思います。それで、このたびの選挙運動期間短縮に伴いまして、従来実施いたしました程度は、むしろやり方を改善しながら——改善と申しますのは、決して無理をいたしませんでも、これを確保することができるように考えております。それから、個人演説会にいたしましても、これも、私どもの得ておりますところでは、一個人三十二回が平均になっておるかのようでありますが、個人演説会なりあるいは街頭演説会なりというものは、二十五日が二十日になる、従いまして、選挙に入りましてから直ちに白熱的にものが行われることと思いますが、従来の実績を十分確保できると思いますし、公報とか氏名の掲示だとか、政見、経歴の放送等につきましては、これは従来も選挙期日に比較的近くなっていたしておりますから、これらの点についても支障なく行われる。もちろん、いろいろな努力をこれからもいたさなければならず、改善すべきものもあると思います。それから便宜供与ではもっと考えなければならぬ点があると思います。しかし、それらのことを考えながら、こうした公営なり、またおっしゃる通り、最も主たる運動方法となるべき言論の自由な有効な選挙というものは、私は保証ができるように考えております。  さらにこまかい点については、選挙局長からお答えすることにいたします。
  108. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 補足的に御説明申し上げます。立会演説会におきましては、現在までの実績から見ますと、立会演説会の開始は告示後八日目、九日目、十日目くらいに開始をいたしております。そういたしますと、五日間短縮になりましても、公示後五日目には十分開始ができるのでございまして、従来の実施いたしましたものと変らずに実施ができるのじゃないか、このように考えております。十五日間、一日二回実施いたしますとすれば、三十回できるわけでございまして、大体従来と同様な実施ができるのじゃないかと思っております。
  109. 井堀繁雄

    井堀委員 回数の点では、今まで八日、九日、十日といったものを五日目にやるということになりますと、あるものは五日間短縮できる。これはいい。八日の場合は三日しかない。それから二回ずつやって三十回。ところが、今までの実績は平均四十八回という発表でしたね。そういたしますと、どうしてもこれはだいぶ減ります。ここら辺を、実際的に減らないようにという御答弁がたびたびあったのですが、これはどうですか。
  110. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 立合演説会の回数は、候補者当りは、先ほど大臣から答弁されました通り、二十七回の平均になっております。各選挙区当りと申しますと、選挙区によって候補者の数が多い場合には、班を分けて立会演説会を実施するわけでございまして、そういう場合に二班のところが半数あると申しますか、そういう関係から、四十五回の予算を組んでおりますけれども、四十八回程度の実績になっておるということを申し上げたのでありまして、候補者の数によって回数がふえるということでございます。
  111. 井堀繁雄

    井堀委員 もちろんそうでありましょうが、個々の場合平均をとって論議しておるわけです。これも、できるなら、全国で実績がありましょうから、そういうような実績を大体四段階か五段階くらいにとってみればよくわかると思う。これも時間がありませんから資料で出してもらいたい。前回、前々回、二回か三回くらいの衆議院の総選挙の場合に行われた立会演説会の個人当りの平均、それから選挙区における平均を出していただきたい。  それから、今お話の中で、一体班を幾班にするか。多いところは二班、三班と班をふやすお考えがあるかのように思いますが、これは候補者の側からいっても、また有権者の側からいっても、できるのなら、同じ場所ですべての候補者の政見が聞けるということが一番理想に近いと思う。しかし、人数の多いときは物理的にできぬわけであります。物理的に可能な限りはやはり、全候補者が一堂に会って、同時期に政見発表ができるようにすることがいいのじゃないか。今度の改正の中で、何か抽せん順位等についても配慮が行われておるようであります。これも三回くらい交代して選挙期間中やろうというのですが、こういう点はどうなんですか。実際上の問題についていろいろな経験の上から、どういうふうになさるというお考えか。そういう点をもっと具体的に詳細を発表してもらいたい。
  112. 郡祐一

    郡国務大臣 時間を短かくいたしましても、一堂で各候補者の演説をいたす。これにはそれだけの意味があると思います。しかし、やはり、個々の候補者につきましては、勢い時間を著しく短縮することになっても好ましくないので、ただいまの立候補の状況から申しますと、場所によりますと、どうしても二またはそれ以上の班を設けなければならぬように考えております。それで、演説の順序の組み合せ、これは、かりに三回に分けるといたしますならば、五、六日ごとに一回変るわけでありますけれども、ちょうどその切りかわりのときに、その日から翌日までの立会演説会開催地に行きます時間を見ておきますれば、なめらかに行えることでありますし、この点は、いつか手をつけてみたいと思っておったところでございますし、実施に支障がないように考えますので、二回にいたすか三回にいたすかは、それぞれの選挙区で、政党の支部の代表者等が協議によって適宜にきめられることでございますから、ともかくそういう順序の変更をいたすことができるようにいたした次第でございます。
  113. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 立会演説会につきまして、前回の昭和三十年の総選挙におきます立会演説会の開催回数等は、表をお配りしてごいます。これについて御説明いたしますと、北海道の第一区は、候補者十人で班が二班でございます。開催回数六十四となっておりますので、候補者当りにいたしますと、半数の三十二回ということになるわけであります。第二区は二班でございますので、これは三十四回と三十三回、何かの都合で一回できなかったということがあるのでございます。それから、第三区は二班で五十四回でございますので、候補者当り二十七回になります。第四区は二班で六十六回でございますので、三十三回になります。第五区は二班で六十四回でございますので、三十二回、同様にいたしまして、開催回数だけをとりますと五千七百九十回というのが全国の回数でございます。
  114. 井堀繁雄

    井堀委員 昭和二十年に執行されました総選挙の場合は、今御説明通りに、同じ県でも、山形県のようなところは、北海道と同じ候補者数で三班に分けておるようです。それから、東京のように十四名もいて二班に分けてある。必ずしも候補者の数に比例して班がふえているというわけでもないようだし、回数にいたしましても、九十回もあるかと思うと、二十九回というような和歌山県のような事例もあるわけです。これはいずれ選管がそれぞれの事情に合せてやったということでありましょうけれども、こういうものは、現行法でいきますと、もっぱら挙管の意思におまかせになるのですか。それとも、一応自治庁としては、法何条でしたか、なるだけ数をやれということを具体的に指示されるのか。それからもう一つ、これに関係して、この場合候補者の意思をある程度問うということでありますけれども、実際は、おぜんごしらえしてあるところへ飛び込んで、同意を求めるということが実態だと思う。そういう点で、こういうものについては、あらかじめ全国的にある程度共通したものができ上るのじゃないか。でこぼこがあるのは一体どういうわけでしょう。またそういうことに対するどのような話し合いを自治庁として選管とされておるかについて、また今後どうするかをお聞きいたしたい。
  115. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 立会演説会につきましては、法律規定に従いまして、百五十三条の第三項の精神につきましては、都道府県選挙管理委員会に、できるだけこの精神に従ってやるようにということを申しておるのでございます。ただ、先ほど申しました、この表の九十回と二十九回でございますが、山形の九十回、これは三班でございますから、候補者でいきますと三十回、和歌山は二十九回ということで、これは大差ないと思います。それにしても、若干県によって違いますのは、これは府県で従来の実績を検討いたしまして計画を立てるわけでございますが、その場合に、ただいまお話がありましたように、候補者の方々の御意見を聞いて計画を決定するわけでございます。十分その点は意見を聞いておると思うのでございます。なお府県によって回数が違います。私どもも、この表を見まして、いつも思うのでございますが、具体的に聞きますと、その選挙区の距離と申しますか、そのコースによって非常に時間のかかるところがございます。そういうところと、都会のようなところとは、その間の交通に要します時間というものが違って参るのは当然でございます。そういう点をいろいろと考慮いたしまして、また候補者の御意見等を聞きますと、立会演説会だけをやって、次から次へといくというわけには参らない。その前後でそれぞれ街頭演説等を御計画あるいは個人演説会も場合によっては御計画になっておるようであります。地域によっては、一回しかそういう地区に行かれないという地域もあるわけでございますので、そういう候補者の御希望等を織り込んで、都道府県選挙管理委員会は、過去の経験に基いて計画を立てておるのでございます。
  116. 井堀繁雄

    井堀委員 そのようにいろいろ地理的な事情などがありましょうが、いずれにいたしましても、立会演説会の回数をふやせば、自然個人演説会や街頭演説会がそれだけこっちに時間をとられるわけでありますから、その方が少くなるか、どっちかになるわけであります。それにしても、立会演説会をふやすというのは、この提案理由の説明の中にも明らかなように、交通機関や宣伝機関が発達した以上は、そういう近代的な交通機関あるいは宣伝機関というものをフルに活用されることが前提になっておるだろうと思うのです。そこで、テレビがかなり普及されてきておる今日、テレビを採用する計画があるか。また、交通機関の中で、岩手県は、この間私ども実情調査に行きましたが、なるほど不便で、一山越えるために一日かかるようなところがある。こういうところはヘリコプターを使うというようなことになれば、これはもっと合理的な成果を上げることができる。要するに、地勢の悪いところについては、候補者のためにももちろん、主権者である有権者のために候補者をそれぞれ紹介する機会を多く作るということは、この改正の趣旨に合うと思うのです。しかし、交通、地勢がいろいろ違うように、またこういう法律で数多くやれときめても、事実上制約を受けるといったような地勢上の理由などを解決するための交通機関の利用というものを、そう画一的に、たとえば東京ではヘリコプターを使う必要はないと思うが、北海道であるとか岩手県といったような山岳地帯はヘリコプターを使う、そういうような近代的な交通機関をこれらに採用してこそ、短縮するということの説明が生きてくる。こういう点はもちろんお考えになっておると思うのですが、実行される用意がありますか、伺っておきたい。
  117. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 テレビを選挙運動の手段に使うことを認めたらどうか、こういうお尋ねでございますが、テレビの普及状況からいきまして、現在のラジオのように全国的に普及しておるというわけにはまだ参らないのでございまして、将来はあるいはそういうことになろうかと思います。現在のところ、私どもといたしましては、これは個々の候補者の運動の手段としては適当ではなかろう、このように考えます。  それから、ヘリコプターを使ってスピーディにやる考えはないかというお尋ねでございますが、まだ、ヘリコプターの国民の利用率と申しますか、そういう点からいきまして、選挙運動に使いました場合に、果して候補者に公平にいくかどうかというような点も心配でございますし、また一部の地区だけしか利用できないというような点も考えられますので、これまた私どもは実施は困難ではないか、このように考えます。
  118. 井堀繁雄

    井堀委員 でありますから、交通機関であるとかあるいは宣伝機関が急速に発達したからということを理由にして、一番人事な選挙期間を、しかも二十五日のものを大幅に五日も詰めるなどということは、どうも、御答弁によりますと、宣伝機関などは従来の選挙に使われたものと一向変らないのに、おかしい。新しいものを一つも取り入れていない。取り入れてもいないのに、実際に何かそういうものが使われるようなことをいう提案理由の説明は、まゆつばものだと思う。自治庁長官、どうです。新しいもので何か出すものがあるなら、何もヘリコプターにこだわっておるわけじゃありませんが、そういうところにはこういうものを使わせるのだというような、何か新しいものがありそうなものですが……。
  119. 郡祐一

    郡国務大臣 確かに、テレビのようなものは、その普及の状況に応じて、私はやってみるべきものだと思います。ただ、ただいまの状況でテレビをそこまで利用することは無理だと思いますが、かりに、提案理由で申しましたように、とにかく大正十四年の少くとも二十五日、それから明治二十二年の少くとも二十日、それに比べますと、昭和年間今日までの発達の経過でございますが、これは交通通信あらゆるものが隔世の感があるのでございまして、前回の三十年の選挙とただいまの選挙、この間にも私はかなり便利にはなってきていると思います。それから、立会演説会などに人寄せするのに、割に遠距離の人でも来てくれるようになったということは、三十年の総選挙と今回を比べても、ことにいなかのバスその他の発達というものはかなり進んできておると思います。終戦後、あの何も手に入らないで総選挙をやりました当時、非常に特殊の時期というものを経験してきておりますので、私は今日三十日にするということ、これにはその面からの無理はないのじゃないか、こういう工合に考えております。
  120. 井堀繁雄

    井堀委員 自治庁長官、その答弁は詭弁です。というのは、この選挙法が決定されたのは昭和二十五年の四月です。それから二十六年に、さらに二十七、二十八、二十九、三十、毎年、ひどいときには二度も三度も一年のうちに選挙法改正している。しかも、前前国会のごときは小選挙区法を施行して大幅の選挙法改正をやっておるのです。でありますから、いいますならば、昭和三十一年の大改正、三十三年の大改正が行われておるのです。そのときにこの種の改正が提案されるというのであれば理解ができるのでありますが、そういうときは一向変えないで、もしこの前の選挙法の大改正のときから今日までの間にこれほど変ったというのであれば、この説明は私は正しいと思う。しかし、これは大正時代の選挙と比べたら、それは問題にならぬ。あるいは明治の初めごろのわらじがけの時代と、それはもちろん比較になるべきものではないので、もしこの場合比較するならば、前回は二十五日が正しいということで改正をしなかった。そのしなかったときから今日までの間の交通機関や宣伝機関をこの選挙運動に取り入れるという具体的な方法が講じられなければ、この提案理由はインチキなんです。何とか世間をごまかすための提案理由にしかすぎない。これは何か少し新しいものを入れなければ工合が悪い。何かあるでしょうから、一つ……。
  121. 郡祐一

    郡国務大臣 これは井堀委員の方が三十一年の改正のときの経過はよく御存じで、参議院の方も二十五日にして、あのときも、一体、全国区などをやらせながら、二十五日に五日間短縮してできるものであろうか、地方区といっても衆議院選挙区の三倍もある、あれでできるものかという議論がありまして、そのときも、しかしだいぶ状況が違ってきている、それじゃ、衆議院の方もこれにならって、あのときに二十日にしたらどうだろうかという論がありました。しかし、あのときは参議院選挙の前だから、つり合いをとったり何かするのは後日に譲って、地方の長だの議員選挙のところだけ直しまして、それからポスター、はがきも、そういう部分は直しまして、そして参議院の方は三十一年の選挙の前に直したから、衆議院の方は一つ別の機会にと、こういうことでございました。別にヘリコプター、テレビをあのときにもだいぶ状況は変ってきた、こういうことでございまして、従いまして、三十一年のときに直してもしかるべき時期に来ておった、こういうように考えておるのであります。どうか御了承願いたいと思います。
  122. 井堀繁雄

    井堀委員 もちろん自治庁長官がかわっておりますけれども、政党は依然としてかわってないのです。政党内閣ですから、特に今の総理が幹事長の時分に小選挙区を前提とする選挙法の大改正をいたした。そのときと今日とを比較してそういう提案理由の説明なら、われわれうなずける。しかし、とほうもない前の話を持ってきたのでは、これはいけません。でありますから、やはり、先ほどお尋ねをしておりますように、従来の立会演説の回数実績を保持するというためにも、これはある程度近代的な宣伝機関を具体的に取り入れる、交通機関を具体的に利用するという内容のないものだったら、どんなに言いくるめようとしても世間は納得しません。だから、現議員のために御都合主義に考えたんだ、もっとひどくいえば、金のある者のために、怠けて当選できるようにしたんだ、こういうように、主権者側からいうと、まことに横着な改正だといわれても返す言葉がないと思う。やはりこういうものには具体的な裏打ちがなければならぬはずである。でありますから、たとえば、選挙公営を拡大して、交通機関の不便なところについては——バスがだいぶんふえてきたことは事実です。だけれども、そのバスを活用する、あるいはこういう方法をいたしましたとか——どうせ何でしょう。出すのは鉄道の無料乗車券と私鉄くらいでしょう。何かそれを拡大いたしましたか。バスの方を入れましたか。それとも、また何かそういう交通機関についてこれこれのことを拡大いたしましたというのが、一つや二つはありそうなものだ。宣伝機関にしても、テレビの問題については全国的普及ができてないとするならば、政党政治ですから、政党の政策を選挙前からもしくは選挙中に大々的に送るとか、テレビが全国的に使えないならば、ラジオなどについても、従来と違って、積極的に活用の範囲をこれだけ拡大しましたというものがなければならぬ。それがないとするなら、この提案理由はまことにいかがわしい提案理由になります。
  123. 郡祐一

    郡国務大臣 放送にいたしましても、民放の発達というのは、私は便宜供与をいたし得る幅がふえて参ったということはいえると思います。それ以外に、なるほど会社のバスが動いている、それに乗っけるようにと申しましても私は候補者並びに運動員に対する便宜供与というのは、いろいろな取締りの面での心配よりも、むしろ便宜供与の方を広めていくべきものだとは考えております。機会あるごとにそれはいたして参らなければいかぬと思っておりますが、今日これをするから五日というのじゃなくて、五日というのは、参議院なり知事の選挙なりあるいは五大市の選挙なり、そうしたものとのつり合いということでも、ある程度見ていいことでありまして、便宜供与そのものは私は広めるべきものだと思いますし、またテレビも——御承知のように放送を初め入れますときに、一体、今の程度の放送で、ある者のときはよく聞え——ちょうど停電などのあるときでしたから、停電したらどうするんだという御議論がありましたが、まあまあできるということであり、それでりっぱにやれているのであります。おそらく、次の総選挙のその次の総選挙のときあたりには、テレビというものが利用できる状態に相ならねばならぬと思います。それから、あるいは一人々々のがむずかしければ、数人を組み合せたテレビの利用などということも、できればしたいものだと私も考えておりましたが、このたびの状態ではやや無理だと思います。従って、期間の点と切り離して、そうした運動のための公営と申しますか、便宜供与は広げて参りたいものだと思います。
  124. 井堀繁雄

    井堀委員 そういう御意思がありましても、この際そういうことを具体的に御計画なさらないと、提案理由がやはり生きてきません。そこで、私は、テレビの問題については、何も一人一人の候補者のためにということではなくて、立会演説会の回数をどうしてもふやせないという事情があるならば、一つの立会演説会をテレビを利用して——何もテレビは一つずつの家庭に置かなくてもいいんです。公園でありますとか、あるいは集会の特定の場所を村か町の一角にこしらえて、借りたっていい。買わなくたっていいでしょう。そういう計画を具体的に組んで、そしての提案理由でありますならば、国民も納得する。多少程度の問題もあるでありましょうが、これは何も出ていません。今までと同じなのです。これはいけません。これは、いずれ、われわれの方としても、与党とも相談をして、あなたがそういう御趣旨であるようでありますから、一つ具体的なことを検討してみたいと思います。  次に、ポスターをふやすことについてはしごくいいと思うのです。このポスターの貼付の便宜供与などについては、選挙公営としては、この際積極的に開拓していく一番やりよい問題である。午前中ちょっとお尋ねをしておいたところですが、私ども経験しておるところから見ましても、電話の電柱というようなものは、国がきめれば自由に使える。電灯のないところはありませんから、電信柱はあるわけですが、こういうものについても、これは公益事業ですから、国が声をかけることによって使える性質のものです。それから、従来は公共的な建物にべたべたと張るとやかましかった。やかましいどころか、張ったものをはがすのですから、のりのついたものをはがせばそれはふいになってしまう。そういうような非常に機械的な取締りはやめ、それから、そういう当然利用して弊害のない公共物の提供といったものがかなりあると思うから、こういう点について改善をいたすべきであると思いますが、私のちょっと気のついたのはその程度です。まだいろいろあると思いますが、そういうようなものについて別に何か御計画があるかどうか、また、選管でそういうものについて要望があったときには、国としてはそういう手続に遺憾のないような措置をお考えになるのか。そこら辺についてやや具体的に御答弁を願いたい。
  125. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 電気の電柱と電信電話公社の電信柱にポスターを張ることについてでございますが、ともに、それぞれ会社なり公社なりで、これは団体等に一括して契約をいたしまして、広告の場所に供しておるようでございます。そういう面からいいまして困難な点があるようでございますが、御趣旨の点は十分検討いたしまして、できます地区におきましては、これはやるように努力いたしたいと思っております。なお、今まで、御承知のごとく、埼玉の県選挙管理委員会におきましては、そのようなことをやったように記憶いたしております。
  126. 井堀繁雄

    井堀委員 同時に、それと関係して、できるなら、新しく市に昇格されたような地域は、市のまん中ではあるけれども、たとえば、役場のあるところが、周囲はたんぼで、しかも交通の要所というような、なかなかいいところもあるのです。立木にポスターを張ってあるようなところがたくさんある。ああいうことは、私はもっと選挙公営にちょっと手心を加えれば、できることだと思う。そういうところは掲示板を——幾らも金がかかるわけではありません。候補者の利用のできる程度のものは、そう大きなものを作らぬでもいい。そういうようなところを数カ所設けるとか、あるいは選管がそういうことをやりたいというなら、そういうものを具体的に援助する道を講ずべきものだと思いますが、ここら辺はいかがですか。  もう一つ、ついでにお尋ねしておきますが、どうも立会演説会の会場などの設備が——これは選管としてはいろいろな言い分があるようであります。候補者は突っ立ってしゃべるだけですから、どんなところでもかまいはしません。しかし、聴衆の方については、かなり長時間しんぼうしなければならぬ。そういうような点で、もう少し会場などについての配慮が心要ではないか。ああいう点は、百万べんの常時啓発の講演をやるより、そういうところに近づきやすい便宜を与える。もっとも、山間僻地のところならば、バスで選管がお迎えに行くくらいのサービスをしたって、決してむだな費用ではない。都市のように数分にして集まれるようなところは問題はありませんけれども、せっかく人口の全体の割合で立会演説会場をきめますけれども、なるほどそれは地図の上ではちょうど中心になって、どれだけの聴衆を集めることができると見ましても、それこそ交通機関が自由に使えないとか、いろいろそういう不便があるので、そういうような問題については、ある程度選管に権限と費用などについても——あまりお役所式といいますか、伝票を書くことに形式をこだわるようなことにしないで、目的がどこにあるかという点をもっと高く評価して——候補者の便宜をはかるということは、公平を期するという意味でなかなかむずかしい問題がありましょうが、有権者側が立会演説会を聞くような機会となると、これほど世話なものはありません。もっとも、早い時間に集まらぬで、あとから集まるようなことをしたらいけませんけれども、きめられた時間にちゃんと集まれるように、終ったら帰れるように、集まる場所などについても、茶菓の接待などをやれというのではありませんが、やはり腰かけて聞けるくらいの設備はほしいと思う。ひどいのになると、雨天体操場の板張りに寒いときなんかすわらせておる。ストーブを入れるとかなんとかいうことは別として、むしろの一枚くらい心配してほしいといったような点について、まるきり配慮を欠いておる点がたくさんある。これでは選挙公営としては中途半端である、今度のように、せっかくポスターをふやしたり、はがきをふやしたりしてみたところで、しょせんは五十歩百歩。一番いいのは、やはり立会演説を聞かせる機会というものが一番効果的だ。そういう点についてもう少し配慮すべきではないか。ここら辺に対する何か名案をきっとお持ちになっているだろう。そこら辺を一つきょうは明らかにしておいてもらいたい、ぜひすみやかに実行してもらいたいと私は期待しておるのであります。
  127. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 立会演説会の会場の施設の改善の問題でございますが、私ども機会があるごとに、県選管の方にはさような趣旨のことを申しておるのであります。私どもも、回って見まして、できたらいすで聞くようにした方が便利ではないかと思っておるのでありますが、相当大きな都市におきましても講堂でむしろにすわるというようなところもあるようでありますので、そういう点につきましては配慮するように指示をいたしておるのであります。  それから、それ以外の投票所の施設等につきましても、最近、なごやかな空気を与えるようにということで、これは花等を飾りまして美しい気分で投票するというような点も、非常にこまかいことでございますが、そういう注意もいたしております。  それから、公営のポスター掲示所の点でございますが、これにつきましては、全国的の制度といたしますと予算等の関係がございますので、十分研究をいたしたいと考えます。
  128. 井堀繁雄

    井堀委員 格別予算が要るほどの仕事ではないと思います。これは、選管にやってくれということさえこちらから指示が出れば、町村、県などもそればかりに使うわけでもありますまいし、いろいろやり方はあると思う。この点はよほど積極的な改善を要すべき事柄だと思います。  次に、選管の活動について毎回言っておりますが、常時啓発の運動にようやく気をつけたということは、一つの前進ではあります。これは、衆議院選挙の場合には、町村、県の選管などがこういう選挙管理に対してフルに協力できる態勢が一応とれる形はできていると思う。予算の点については、国の予算が決してそういうものを十分に動かすだけのものでないことは、たびたびわれわれの言っていることであります。しかし、大蔵大臣は、本会議で、ことしは十分とはいかぬけれども、事は欠かぬようにいたしましたと言っておりますから、きっと予算をおとりになっていると思いますけれども、予算面において選挙管理委員会の活動が活発に展開できる要素は多少盛り込まれておりましたか。
  129. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 常時啓発の関係についての御質問に対して大蔵大臣から答弁があったわけでございますが、常時啓発につきましてはおおむね前年通りの金額を予算化しております。そのほかに、臨時啓発費として御承知のごとく五千万円計上いたしておるのでございます。これは衆議院選挙の前に選挙の啓発をするという考え方でございます。それから、選挙期間となりますと、これは選挙等のいわゆる基準経費の法律によりまして、その中で啓発経費が組まれておるのでございます。この金額は大体啓発宣伝等に要します経費でございますが、一億円計上いたしておるわけであります。
  130. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、格別見るべき措置はできておりませんな。大蔵大臣の言っているのは少し誇張かな。
  131. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 そのほかに常時啓発費が地方財政で一億あるのでございまして、本年度は全部やりますと三億五千万円の経費になるわけでございます。昨年は国の委託費一億と地方財政計画一億、計二億であったわけでございますので、そういう趣旨から大蔵大臣は御答弁になったと思います。
  132. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、三億五千万円が実際どのくらい出てくるかわかりませんが、今までなかったものが一億ふえて、さらに五千万ふえて、半分自治体が持つから倍になるわけなんだが、そういうふうになりますと、前回の総選挙よりは、今回の場合は、選管として相当積極的な活動が行い得るというふうに理解してよろしゅうございますか。
  133. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 前回の総選挙のときには、総選挙費に組んでおりました一億、それから臨時費、これは解散された関係で予備費から支出いたしておりますが、五千万、合計一億五千万の経費であったわけでございますが、今回は、先ほど申し上げましたように、選挙に関します啓発的な予算は三億五千万円になるわけでございます。これは、ものによりましては常時啓発——衆議院選挙だけを目当にするものだけではないのでございまして、常時的に使います経費が含まれて、その総額になるわけでございます。
  134. 井堀繁雄

    井堀委員 次に、今度の改正で、立会演説会場における秩序を保持するための措置として、たとえば、従来は演説を妨害するような行為に対して立ちのきを命ずることができるとあったのを、しなければならぬように変えておりますが、これは実際どうなんです。どの程度効果が上ると期待しておいでになりますか。まずその辺を伺っておきたい。
  135. 郡祐一

    郡国務大臣 従来も、退去せしむることができる、そういう場合に処置することをしようと思えばできるのだということ、私は従来のやり方は必ずしもそうでなければならぬとも思いませんけれども、非常に従来の言葉を消極的な読み方をしておったという点がございます。私は、そういう立会演説会というような大事な場所に対する秩序の妨害でありますから、それは退去させるのだ、そうしなければいけないのだ、そういう権能と責任と両方持つのだということをはっきりさせるということは意味がございますし、これを実行いたします方法もさることながら、これにあわせまして、立会演説会場等におきましてそのことを十分周知するような方法を講ずる。そうしますと、組織的なと申しますか、非常に質の悪い立会演説会場の秩序妨害等に対しまして、あらかじめ、有権者がそういうことをしてはいかぬのだ、とにかく立会演説会というものは、すべての候補者に一様にかつ静かに——白熱化することはけっこうでございますが、だれもが目的を達することができるような状態におこう。それを一方では有権者に十分しみ込ませますと同時に、そういう事態が起りましたときは、権能を持つと同時に、その委員会の責任において秩序を保持するということ、これを両方合せますことは、選挙管理委員会責任を明らかにすると同時に、有権者全体に対して一つの立会演説会についての関心を高めるゆえんにもなりますし、また誤まってそういう事態の起ることのないように予防いたす意味にもなろうかと考えております。
  136. 井堀繁雄

    井堀委員 その趣旨については私ども全く同感であります。ただ選管がその目的を法の命ずるように実効あらしめようとする場合に、問題があるのじゃないか。今までであれば、消極的ではあるけれども、選管としてその会場の秩序を維持することは、従来の法律だってその意味においては何も変りはないと思う。しかし、今度の改正によりますと、もっとその意を強める。ということは、逆に言いますと、今度は秩序を保持する責任が選管に非常に強く求められてくるわけであります。今まではまあまあでしんぼうしたものを、今度は、候補者側からあるいは聴衆の方から、選管に、こういうことになっているのだから立ちのかせろということを迫られた場合には、百人や二百人の会場ならよろしいですけれども、われわれの経験したところによりますと、千人をこえる、あるいは数千人近い大きな演説会場で、かなり大きなヤジが出て収拾のつかなかった事態もありました。今度その秩序を保持しなければならぬ。今度の改正で、選管としてはかなり困難な立場に追い込まれる。そういう事態について何か想定なさったことがございますか。また、そういう場合には、もちろん警察力を動員するとかいろいろな権限の発動になるでありましょうけれども、多衆運動の取締りというものは昔から非常にむずかしいのです。ことに集まっている人たちがお客様ですからね。単なる興行のお客様と違って、いわゆる試験官なんですからね。その審判を求めようとしてわれわれが出ていくのであるからして、この点の扱い方は実際問題で存外困難に遭遇するのじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  137. 郡祐一

    郡国務大臣 選挙管理委員会仕事が、かなりにふえると申しますか、重くなって参ります。あるいは、選挙管理委員のいかんによっては、こういうことを大へんな荷を背負わされたという感じを持つ選挙管理委員もあるだろうと思います。ただ、私思いまするに、井堀委員指摘のように、私は、選挙管理委員というものを、もっと活動しやすいように、もっと力づけることを別途考えなければならぬと思っております。それと同時に、選挙管理委員というものは非常に任務が重いものだ。立会演説会を主宰するものは選挙管理委員会のほかにないのでございます。それは同時に重い責任を負う。それから、この条文によりまして直ちに発動いたしますような場合には、多くのときに、諸所の立会演説会を荒し回る——荒し回るというと語弊がございますが、そういうのがございますね。近ごろ一方ではやや落ちついていると思いますが、それだけに目立つような事態が起るのであります。選挙区によりましては、そういう例を聞くのであります。これが全国一様に各選挙管理委員会がこういう秩序保持の措置を講じなければならないとは考えませんが、場所によりましては、そういう事態が起ると思いますので、それらに対しましては、決して私は警察官の出向を直ちに求めることを上策とも考えないところでございますけれども、私どもとしては、そういう事態の起りやすい選挙区等につきましては、あらかじめ選挙管理委員の方も訓練しておきまして、そして立会演説会というものに、何か失望と申しますか、立会演説会というものが、有権者に候補者の言うこともよう聞えないなりに、混乱して終ってしまったということのないように、立会演説会の信用を高めますためにも、選挙管理委員会にとっては確かに一つ仕事であると私は見ております。  それから、さっきの井堀委員指摘の中にありました立会演説会場の設備なんでありますが、選挙のことだから、あまりに違法というようなことになってはいかぬとか、甲の場合と乙の場合に厚薄があってはいかぬとか、甲の会場と乙の会場とお互いに気をつける方にあまりに急でありまして、それで勢い、有権者全部のためとか、候補者に対して一様に好意をもって気を配ろうということの方が、何だか日本選挙では、気がついているのだが、手が出ないというようなことがあります。この辺をもう少し踏み切っていいんじゃないかと思います。それには選挙管理委員会の平素の待遇ということも問題になると思うのでありますが、この秩序の保持の点も、さような意味合いで、立会演説会というものを信用のあるものにいたしますためには、こういう措置は講ずることにしておきたい。しからば、そういう事態が起りますところに対して、どういう工合に対処するかということについては、ややある程度の訓練と申しますか、やり方を考えてみなければならぬと思っております。
  138. 井堀繁雄

    井堀委員 御趣旨の点については、提案理由でもうかがえましたし、それから今の御説明でもはっきりしたのでありますが、その点は私ども期待しておるのであります。しかし、実際問題として、この改正によって選管は窮地に立つのではないか。これは取り越し苦労かもしれませんが、というのは、この種の秩序保持の事態は二つの形で予定することができる。一つは、会場の雰囲気から自然発生的に起ってくるものがある。これはなかなか鎮撫するということはむずかしいと思う。しかし、この場合に、この法律をたてにとって選管の責任を追及されたら、そのときは非常に困ると思う。それから、もう一つの場合は、あなたもさっき御指摘になったように、特定の候補者のために、計画的なヤジの集団が今かなり横行し始めておる。こういうものに対しては、もう相手が計画的にやるのですけれども、その計画が判定しがたいと思うのです。わかっていても、なかなか証拠をつかんでどうするということのできがたい事柄なんです。二つのケースのうちいずれにいたしましても、選管にとっては、一方では強い権限と責任を持たされたのでありますけれども、それを効果あらしめ実効あらしめるためには、なかなかむずかしいと思うのです。しかし、こういう規定が必要だという情勢のあることは私ども認めております。そこで、これはあなたもお認めのようでありますが、従来の選管では、これはあまり義務だけ強要して、その立場を作ってあげることに欠けておるのではないか。これには、限られた選挙管理委員だけが、しかも毎日のように一日に二回も三回も今後はやるようになると思いますが、そうなりますと、それはとてもやりきれたものじゃないと思う。だから、それを補佐するための要員というものを、私はこの部分だけでも相当考えていかなければならぬと思うのであります。これは府県によっていろいろ違いましょうけれども、候補者あるいは議員定数に対してどのくらいの予算を特に見込んで、そういう活動を促すような措置があるかどうか。きっとあるだろうと思いますが、どのくらいのものでありますか。
  139. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 都道府県選管の経費につきましては、これは地方自治体の機関でございますので、地方財政計画上、地方財源の所要額として計算をされております。その場合にいかなる計算をしておるかと申しますと、これは地方財政計画の計算は、市で申しますと、人口十万の市を抽出いたしまして、それで具体的の市につきまして数カ所調査をいたしまして、それで標準的な経費を出すわけであります。それに基きまして経費を計算して、寒いところにはそれに燃料費をつけるとか、いろいろそういう不足の経費、あるいは都会地でありますと、それに伴って職員でありますと超勤や何かの割増しがつく、こういう計算を財政計画ではいたしておるのでありますが、選管自体としては、地方財政計画でそういう経費が選管委員並びに職員の基本給等について見られておるのであります。ただ、選挙になりますと経費が要るわけでありまして、これは従来の選管の専門の職員もおりますし、また兼任の職員を動員する場合もあるわけでありますが、そういう職員の超過勤務手当等は、委託費の方で計算をいたして出しておるのであります。
  140. 井堀繁雄

    井堀委員 前回もそういう問題で私は言ったのでありますが、どうも選管に関する予算の組み方はまことにけしからぬ点がたくさんあって、この前は法律違反じゃないか——たとえば緊急失対事業に雇用される労働者の日当よりも低い額のものを定めて予算を出してきたりしているので、三十一年度の予算だと思いますが、御注意申し上げたことがあるくらいであります。これは場当りをやってはいけません。ことに、今回この改正に伴うて立会演説会を遂行していくだけでも、選管は前回と異なって莫大な負担になると思う。もしそういう予算の裏打ちをしないで、経費を十分見ないで、このような重い任務を期待することになりますと、それこそ角をためて牛を殺す結果になる。予算についてのこまかいことはきょうはお伺いいたしませんけれども、こういう点は十分配慮して行うべきものは行う、そういう意味で私は本会議で大蔵大臣答弁を求めておいたわけであります。答弁を見ますと、なるほど、ごく簡単ではありますけれども、また私の質問した趣旨に答えるのには十分とはいきませんけれども選挙を完全に遂行するには事を欠かないという答弁が行われておる。しかし、実際において、そうでなくなりますと、もちろん第一線にある自治庁責任とも相なります。そういう点では、十分に一つ間違いを起さぬようにやってもらいたいと思います。  いろいろお尋ねいたしたいことがありますが、時間がなくなりましたから、この程度で私の質問を終りたいと思います。
  141. 青木正

    ○青木委員長代理 本日はこの程度にして、明十一日午前十時理事会、引き続き委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会