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1958-03-05 第28回国会 衆議院 建設委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午後一時二十八分開議  出席委員   建設委員会    委員長 西村 直己君    理事 大島 秀一君 理事 荻野 豊平君    理事 久野 忠治君 理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    荒舩清十郎君       池田 清志君    井原 岸高君       薩摩 雄次君    徳安 實藏君       堀川 恭平君    松澤 雄藏君       井谷 正吉君    小川 豊明君   農林水産委員会    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 笹山茂太郎君 理事 助川 良平君    理事 原  捨思君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    大野 市郎君       小枝 一雄君    椎名  隆君       鈴木 善幸君    田口長治郎君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       永山 忠則君    松浦 東介君       松野 頼三者    伊瀬幸太郎君       井手 以誠君  出席国務大臣         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         通商産業技官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         建設政務次官  堀内 一雄君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      戸嶋 芳雄君         農 林 技 官         (林野庁指導部         治山課長)   若江 則忠君         建設事務官         (河川局次長) 関盛 吉雄君         建設事務官         (河川局水政課         長)      国宗 正義君         建 設 技 官         (河川局砂防課         長)      戸田福三郎君         建設事務官         (住宅局住宅総         務課長)    鮎川 幸雄君         建設委員会専門         員       山口 乾治君         農林水産委員会         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地すべり等防止法案内閣提出第七六号)  地すべり等による災害防止等に関する法律案  (井手以誠君外二十五名提出衆法第一号)      ————◇—————     〔西村建設委員長委員席に着く〕
  2. 西村直己

    西村委員長 これより建設委員会農林水産委員会連合審査会を開きます。  案件を所管する委員会委員長でございますので、私が委員長の職務を行います。  これより地すべり等防止法案及び地すべり等による災害防止等に関する法律案の二案を一括して議題とし、審査を進めます。     —————————————     —————————————
  3. 西村直己

    西村委員長 質疑の通告がありますから、順次これをお許しいたします。大野市郎君。
  4. 大野市郎

    大野(市)委員 ただいま御提案の地すべり等防止法案につきまして、主として政府案に対しまして質疑をいたしたいと思うのであります。国土保全民生の安定という目的でこの法律御作定の御趣旨はまことに同感でございますが、この地すべりは、実際の形が、長い年代にわたってその地方地すべり地帯と言われておったのか方々の形だろうと思うのでありますが、全国的な分布状態というものはどんなふうになっておりましょうか。これをまずお伺いいたしたいと思います。
  5. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま御指摘のように、山くずれという自然現象は古くからございまして、かなり広範にわたっておりまするが、詳細については河川局長から御説明申し上げます。
  6. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいまお尋ねのございました地すべり地域分布状況でございますが、地すべり全国における発生しておりまする面積は十四万三千余町歩ということになっております。そしてその個所数におきまして約五千五百余力所ということになっております。これを全国的に見ました場合に、全国府県の中で関係いたしまするのは、北海道を初めとして三十六都道府県にまたがっておるのであります。そのうち、ただいまお尋ねになりました地すべりの多い府県として、一千町歩以上の面積を持っておるという地域についての府県を申し上げますと、山形県では四千町歩余り、千葉県で千七百町歩新潟県で二万一千九百町歩余り富山が二千八百五十町歩石川が六千二百三十町歩、山梨が五千百町歩長野が一万二千八百町歩、それから兵庫に参りまして一千百七十五町歩、和歌山県が二千百二十町歩余り、それから徳島県の七万町歩愛媛の二千二百四十町歩高知県の一千四百七十町歩佐賀県の一千百五十町歩長崎県では二千三百九十町歩余り、こういうことになっております。従いまして今申し上げましたような概況を大づかみに申し上げますと、新潟長野富山石川北陸方面地帯、それから徳島愛媛高知地帯、九州におきまする佐賀長崎穀倉地帯等に、今申しました局地的に地すべり面積を膨大に擁しておる、こういうのが概況でございます。
  7. 大野市郎

    大野(市)委員 ただいまの十四万町歩を越しまする膨大な地帯の御指摘でありましたが、これは御調査個所につきまして単位面積の最低をいかほどにごらんになっておられますか。
  8. 関盛吉雄

    関盛説明員 地すべり地帯地すべり規模とかあるいは地層とか、いろんな関係規模的には大小さまざまございますけれども、これを平均して申しますと、二十四、五町歩というのが全体の概況になっております。
  9. 大野市郎

    大野(市)委員 全国的な分布状態はただいま承わりましたが、このほかに実際におきましては、各地方で小規模でありますが、人命並びに耕地などあるいはまた人家を含めまして、非常に悲惨な状況にある場所が多数あるのでありますが、こういう点に対しましての別な御調査はございますか。
  10. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいま申しました全国的な地すべり調査概況の中には、五町歩内外にわたりますものも含めて申し上げておりますので、従って今御質問になりました地域的に小規模であっても災害の予想されるというような部分も、大体これに入っているのじゃないかと推定されます。
  11. 大野市郎

    大野(市)委員 この点はまた後ほどの法文の中でさらにお聞きしたいと思っております。そこで、今までに、これだけのものが累計されておりますので、今日まで地すべりに対して国が指導せられ、実施されたその技術面でお答えをいただきたいのでありますが、どんな方法でこれら災害防止に当られておりますか。
  12. 山本三郎

    山本(三)政府委員 地すべり対策工事の種類の問題だと思いますが、主として行なっておりますのは、御存じの通り地すべりは地中にすべり層がございまして、それが非常に水を含みますると、それに沿ってすべるという場合が非常に多いわけでございます。その地下水を何とかその層から早く抜く方法、これは地下水を抜く方法でございますので、その層までボーリングをいたしまして、それから水を早く地すべり地域外に抜いてやるという方法がおもなものでございます。そのほかといたしましては、地すべり地域内に雨水なりが入ってこないように早くその水を区域外に出してやる方法、要するに下水みたいな管を作りまして区域外に早く放出してしまうというような方法、それから場所によりますると、やはり地すべりを起す地域のり先を固めて、のり先からつぶれていかないようにするために防壁を作ったり、あるいは川の部分でありますと、その中に堰堤を作りまして川床を下らないようにしてやる、あるいは上げて地すべりが起らないようにするというふうなことも考えております。主としてはやはり先ほど申し上げました地下水を早く抜くという方法重点を置いてやっております。
  13. 大野市郎

    大野(市)委員 この方法に対して、この法が成立いたした暁において実施される何か画期的な防御方法をお考えでありますか。
  14. 山本三郎

    山本(三)政府委員 地すべり防止するには、やはり地質構造等の問題を十分調査いたさなければなりません。従来調査地方公共団体、県あるいは市町村——市町村の場合は少いのでございますが、県が調査を行なっておったのがおもなのでございますが、今回はこれを直轄で国か調査をいたしまして、地域指定はもちろんのこと、工事方法につきましても調査を十分いたしまして、その上で計画を立てるということになっておりますが、しかしその具体的の工事方法といたしましては、やはり地下水を早く抜いてやるという方法が主眼になると思いますので、従来の小規模地下水を抜いていた方法をもっと積極的にやるというような方法は考えられると思いますが、新しく画期的の別の概念の方法を考えるということは、現在のところは考えておりません。できるだけ地下水を大規模に的確に抜いてやるということは十分研究をしたい、しかも実施していきたいというふうに考えております。
  15. 大野市郎

    大野(市)委員 そういたしますと、これだけの広大な地域に対しての防御方法でありまするので、ずいぶんと予算措置も大きなものになるわけでございまするが、この法に基いて実施せらるべき今年度の予算並びにこの十四万町歩のただいま判明いたしております限りのものにおいても、これを完全に防止するために概略いかほどの予算計画を用意しておられますか、この二点をお尋ねいたします。
  16. 関盛吉雄

    関盛説明員 地すべり防止工事を必要といたしまする地すべり地帯における地すべり防止工事の全体の事業費はどうようなものであるかといういうことが第一点の御質問でございます。先ほど申しましたように、地すべり防止工事の全体計画につきましては、この防止法案によりましてごらん通り建設及び農林両省において計画を立てまして実施することになっております。従ってその事業の全体計画両省にまたがっておるのでございますが、これを建設省関係について申し上げますと、建設省において行います地すべり防止区域所管個所数は五千五百八十四カ所のうち、三千五百カ所あまりを担当することになっておりまして、その全体の対象地域面積は八万七千九十三町歩余りになっております。これは全体事業計画といたしましては百八十七億円ということになるわけでございます。  なお農林省関係につきまして便宜御説明申し上げますと、農林省関係では二千八十カ所の個所数がございまして、対象面積五万六千百余町ということになっておりまして、全体の事業費は百四十六億、これが国といたしまして地すべり防止に必要な全体の事業計画でございます。  なお昭和三十三年度の防止工事に必要な事業はどのように予算上なっているかということでございますが、これは防止工事に対します三十三年度の建設省事業費は、補助事業として実施いたしますが、国費として一億八千八百万円、これが三十三年度の国費分でございます。三十二年度九千五百万円でありましたのですが、今回の法律の制定並びに事業計画的な実施ということで予算も増額いたしておるのでございます。  なお農林省関係につきましては農林省から御答弁があることと思います。
  17. 戸嶋芳雄

    戸嶋説明員 ただいま三十三年度の建設省関係予算についてお話がございましたが、農林省関係林野庁農地局と両局に関連をいたしておりまして、両局の関係面積におきましては円百四十五町歩防止工事を行う、それから対策を立てるための調査といたしまして六百十六町歩、それから指定するための調査、それは一万五千町歩、これだけの仕事をやるために二億一千八百十三万五千円、これと調査費を合せまして二億二千四百二十八万九千円というのが三十三年度の予算でございます。
  18. 大野市郎

    大野(市)委員 さようになりますと、建設省並び農林省におきまして百八十七億あるいは百四十六億の全体の事業量想定せられましたのに対して、昨年よりは格段に増額をいたしておるのはわかりましたが、何年でただいまわかった千四万町歩地域に対する民生の安定、国土保全が確保できましょうか。  一体何年くらいの想定でおられますか。
  19. 山本三郎

    山本(三)政府委員 先ほどの総事業費を三十三年度の事業費で直接割りますと七十年という数字が出て参ります。そういう数字か出て参りますけれども、この全体計画の中には、先ほど申し上げましたように地下水を抜く工事と、それから私どもといたしましては川の中の工事砂防堰堤に類するような、渓流の中に堰堤を作りまして、根を固めてやろうという工事が半分以上入っておりますので、これらの事業は全体計画の中に入っておりましても、状況に応じて逐次やって参ればよいわけで、一ぺんにやってしまわないでも、年を追ってやっていけぱよいものでありますので、実際問題といたしましては全体をやらなければ努果がないというものではないのでありますので、それらの中でも緊急を要するもの、しかも効果の的確に上るものを選んでやって参りたいと思いますので、全体のものか安定する、しかも重要なものが安定するというめどのつきますのは、少くとも十カ年ぐらいではやりたいというふうに考えております。  それから予算が少いではないかというお話もございますが、先ほども御説明申し上げましたように、他の事業に比べまして、少い予算の中からではございますけれども、私どもといたしましては、地すべり対策事業といたしましては、八割程度去年よりもふやしまして、重点を置いておるという点は一つ御了承をいただきたいというふうに考えます。
  20. 大野市郎

    大野(市)委員 実は地方実態から申し上げますと、今まで予算も少かった関係もありまするが、まさに危険に瀕しておりながらこれを救う道がなくて、お互いに冷汗をかいておるような実態をたくさん見ておるのであります。その実例は幾つかありますすれども、時間の関係もありますから省略をいたしますか、一例をあげると新潟県の栃尾市の地域の中に、半歳余という旧体制当時の村がございますが、ここなどが実は非常に傾斜面に家が建ち並んでおりまして、これらの家の移転を必要とすることはもうわかっておるのでありますが、そこに住む者も移転するには金がなし、また防止工事をするにしても、これが防止の技術的な方法が見つからないというふうな現地の判断がありましたために、ただ不安にのみ襲われておるが、これを救済する方法がないというふうな人道上の問題にまでなるような集団農家被害のおそれのある場所さえあるのであります。あるいは川筋において地すべりのためにそこが閉ざされて、一面湖になるというふうな実例も見て参っておるのでありまして、ただいまの河川局長お話で、実際は選択をうまくしていくことによって、十年くらいで何とか安定して順々にいけるというお説でありまするが、私の見るところでは、この点は大へん疑問であります。ただ国家財政全体の上からの問題でありますので、ただ要るから出せというわけにも参らぬことは私もわかりますが、この予算程度であっては、実際せっかく地すべり防止法ができても、地方によってははなはだ危惧にたえないような個所が取り残されるのじゃないか心配をいたしておるのであります。この点は意見でありますので、その趣旨を御当局においても御理解いただいて、善処をお願いいたします。ただ先ほどの五町歩内外まで含んだ数字が十四万町歩だというお話でございますか、どうぞ一つその点は、新しき調査においては取り残しがないようにお願いをしなければならぬと思います。予算規模その他につきましては、同僚議員からもお話があると思いますので、要望を述べるだけで次に進みます。  次は法案内容になるのでございますが、第三条で「公共利害に密接な関連を有するものを地すべり防止区域として指定する」となっておりまして、この公共利害に密接な関係を有すると限定せられたはどういう意味でありますか。
  21. 関盛吉雄

    関盛説明員 この法律目的といたしておりますところは、第一条にありますように、地すべり、ボ夕山の崩壊による被害除却、または軽減をいたしますために、それらの地すべり、ボ夕山の崩壊防止するということによって国土保全民生の安定に資するということがこの法律目的でございます。従ってこの目的を達成するためにまず第三条によりまして、この主務大臣関係都道府県知事意見を聞きまして、地すべり防止区域指定をいたすわけでございます。その指定が行われますれば、その法律上の効果といたしましてその区域管理知事が行いますし、またその管理に基きまして防止工事基本計画を立てるということが続いて参りますし、また同時にその区域の中における行為制限ということを行いまする効果か発生してきておるのであります。それらの事柄はいずれも国に事務としての建前を貰いておるのがこの法律趣旨でございますので、第三条におきまして第一条の目的に連なる趣旨を入れまして、地すべり区域及びこれに隣接する区域のうちで公共利害に密接な関連を有するものを防止区域として指定する、こういうふうにいたしたのでございます。
  22. 大野市郎

    大野(市)委員 これは私先ほど対象になりまする地域に対して平均は二十五町歩であるが、計算上五町歩内外も入っておるという御答弁で一応承わっておきましたが、私が心配いたしますのは、予算その他の関係もあるというような見地から、公共利害に密接な関係を持つものという解釈をあるいは厳格にせられるのあまり、相当のまとまった被害があるにかかわらず、防止地域指定から除外されるおそれがないか、こういう心配を持つのでありまするが、この第三条によって指定せんとする地域の大よその想定規模をどんなふうに考えておられますか。
  23. 山本三郎

    山本(三)政府委員 具体的には今後できるだけ公共の利益の強いものにつきましては指定していきたいというふうに考えておるわけでございますが、特にこの地すべりか起きたために治山、治水、国土保全に影響のあるもの等につきましては、その面積の大小を問わないということではございませんけれども、それがすべりますと、そのすべった上に乗っかっている部分だけでなくて、そのほかにも影響するところが大きいというようなものはもちろん取り上げたい。それから人家等がその下にありまして、それが非常なる被害を受けることが予想されるというものにつきましては、地すべり地帯面積が大きいとか小さいというようなものは顧慮しないで、人命及び人家の保護というような問題につきましてはぜひ入れていきたい。それからそのほか鉄道とか、道路、橋梁等公共施設がある場合、それから官街とか、学校病院等公共建物等がある場合には考えていきたい。それから林地及び耕地等の安定のためにやらなければならぬというふうなものは、ぜひ指定の中に入れていきたいというふうに考えております。
  24. 大野市郎

    大野(市)委員 炭地関係林野関係においては、そういう単位町歩についてどういう構想を持っておられますか。
  25. 正井保之

    正井説明員 地すべり関係防止工事は非常に復旧のための、防止措止のための事業費も高うございますので、通常私ども土地改良におきましては、団体営農事業等採択基準は二十町歩とか非常にまとまったものを対象にいたしております。しかしただいま申し上げましたように、防止工事事業費が非常に高うございますので、その単位というものは、先ほど町歩というお話がありましたけれども、もっと低いものできめて参りたいと思っておりますが、どの程度ということはまだ最終的な結論を得ておりません。ただ何と申しましても、事業費か非常に高くつきますので、基準をずっと下げて参りたいと思っております。一つ判断としましては、面積だけではなくて、事業費、そういったものも指定基準にいたしたいというふうに考えております。
  26. 大野市郎

    大野(市)委員 河川局長の方では、いわゆる公共利害という問題で、学校があるとか、あるいはそういうふうなもので大へん説明がわかりやすかったのでありますが、農地林野の問題におきましての公共利害に密接な関係ということは、具体的に言うとどんなことでありますか。
  27. 正井保之

    正井説明員 耕地だけが離れてある場合はございませんので、おおむね営農をやっておりますとそこに農家住宅がございますし、農業用施設がございますし、また農道等もあるわけでありまして、そういう点の関係を考えて参りたいということでございます。御参考までに申し上げますと、林野の方で保安施設指定をいたしておりますが、この場合には大体地区指定基準事業責が百万円程度というものを対象にいたしておるのが例でございます。そういった点を考慮いたしまして、先ほど河川局長が申されましたように、いろいろと公共的な施設との関連もございますので、その辺をあわせ考えて指定をいたしたいと考えております。
  28. 大野市郎

    大野(市)委員 要するに、落ちこぼれのないようにせねばならぬという観点で御質問いたしましたので、またこの点も同僚議員からもお話があると思いますから、次に進みます。  やはり三条の問題でありますが、この法案によりますと、隣接地域というものがあって、そもこ同じく、いわゆる地すべりのおそれのあるものまでしか入っておらないので、現実に地すべりしている地区、または地すべりするおそれのきわめて大きい地区地すべりを起しますときには、そのすべっていった場所がやられてしまうわけなんでありまして、従って、この防止区域指定が、第三条の内容によりますと、すべったために被害をこうむった地域はどういうふうにしてこれを救ったらよろしいか。条文から見ますると救えないような印象がありますが、これについてお伺いします。
  29. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいまの御質問は、本法律案地すべり防止区域地域というものが、現に地すべりを起しておる地域と、それからおそれのある地域地すべり区域として、これに隣接する区域は、地すべりを助長し、誘発し、または誘発するおそれのある地域というふうに区切って地すべり防止区域としておるから、その地すべり地域がすべったならば被害を受ける地域は、一体どういふうになるのだ、こういう御質問であったように存じます。被害を受ける区域というものを、なぜ防止区域指定しなかったかという問題でございますが、地すべり防止するために工事を行いまする必要性のある場所は、現に地すべりを起しておる地域及び起すおそれのある、つまり隣接区域等でございまして、そこでは防止工事をやる必要があるわけでございます。ことにその防止工事と同様に、地すべり防止に支障を与えるような行為制限するという区域につきましても、ただいま申しました防止区域に限定をいたしたのでございまして、要はすべったならば被害を受ける、こういう地域についての問題は、この法律の第二十四条におきまして、関連事業計画という項目を設けてございますが、関連事業計画を行います地域については、この二十四条によりまして、地すべり防止区域の中と外と両方にわたってて行う、すなわち地すべり防止区域隣接する危険区域について関連事業を行うわけでございまして、従ってそれらの地域における危険家屋移転、もしくは除却等寺については、この条項で、さらに必要な農地あるいは農道等の計高等につきましても、この条項で行う、こういうことでございます。そういうことによりまして、防止区域及び被害区域と両方あわせまして、この法律によって必要とする施策総合的に考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  30. 大野市郎

    大野(市)委員 それでは次に、十八条の行為制限というところでありますが、ここで述べられておりますことはよくわかるのでありますが、そのうちの第一号のカッコ内の軽微な行為は政令で定める、あるいは第二号にもそれがあります。それから第三号では、「のり切又は切土で政令で定めるもの」というふうな用語がございます。第四号においても、「ため池、用排水路その他の地すべり防止施設以外の施設又は工作物で政令で定めるものの新築又は改良」というふうな事項が並べてありまして、いずれも政令にこれをゆだねている部分がございますが、この行為制限は、この地すべり等防止法案趣旨からいたしますと、厳格なことを望むのでありますが、また農地の経営に当りまして、あるいは林野の経営に当りましては、それだけでない経営上の必要がありますので、許可を受けねばならぬ事項の解釈においても、あまり煩瑣になっては困ると思いますが、これらの政令の内容などは、すで、に当局においての御腹案があるのでありますか。
  31. 山本三郎

    山本(三)政府委員 ただいまお話行為制限は、地すべり防止する建前からいいますと、きつくやった方がいい。それから一方から申しますと、一々小さなものまで許可を受けるということは、非常に煩瑣である。要するに阻害するようなもの以外は、一々許可を受けさせないようにして差しつかえないじゃないか、こういう御意見のようでございます。その通りでございまして、たとえばため池等の問題につきましても、あるいは地下下水道の問題等にいたしましても、関係各省と御相談して政令はきめるわけでございますが、たとえば第一番目の「地下水を誘致し、又は停滞させる行為地下水を増かさせるもの、」という項目がございますが、詳しくこの通りやりますと、人家で自分の飲み水にする井戸等を掘る場合、あるいはよそから飲み水のために水を持ってくる、そして地すべり地帯に、その余った水を捨てるというようなものまで、一々入るわけでございますので、そういうふうなたぐいのものは、一つこの政令で除外しようというふうに考えているわけでございます。また第二号の問題も同じくでございまして、水をまいたり、あるいはたんぼへ水をかけたり、あるいはたんぼに水を貯留するというような問題を、一々許可にかけさせるのも煩瑣であるので、こういうものも一つ除外したいというふうに考えております。それから三号は、「のり切又は切土で政令で、定めるもの」でございまして、これは許可にかけるのを政令で定めるものでございますが、盛り土あるいは切り土をいたしまして、それがために土地の均衡が破れまして、そのために地すべりが起るというようなことでは困りますので、これらの問題につきましては、地質の状況等もございますけれども、のり切りの高さであるとか、盛り土の量であるとか、そういうものを、差しつかえない程度のものは除外いたして、政会できめたいというふうに考えております。それから四号につきましては、やはりため池、用排水路等の問題は、漏水などがありますと、地下水が非常にふえてくるおそれがありますので、水が非常に漏るようなものは、一つ考えてもらわなければならぬというふうに考えているわけでございます。それから第五号は、「前各号に掲げるもののほか、」でございますので、そのほかといたしましては、その地すり地帯に非常に大きな重量物を置くとか、あるいはたくさんの土を盛るとかいうような行為でございまして、これらによってもやはり目方がふえまして、地すべりを助長するということがあってはいけませんので、それらの問題についても、政令できめたいというふうに考えております。
  32. 大野市郎

    大野(市)委員 それでは次に参りまして、二十七条であります。「地すべり防止区域管理に要する費用の負担原則」の条項でございますが、これがいわゆる「防止工事の施工及び標識の設置その他地すべり防止区域管理に要する費用は、この法律及び他の法律に特別の規定がある場合を除き」これらの費用は都道府県が負担するという条項でありますが、「他の法律に特別の規定がある場合」という「他の法律」はどういうものがありましょうか。
  33. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいま御質問のありました二十七条の特別の規定は、地方財政再建促進特別措置法及び昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害による公共土木施設等についての災害復旧等に関する特別措置法でございます。
  34. 大野市郎

    大野(市)委員 次にこの法律の中に、約三カ所ほど協議によってものをきめる内容が載せてあります。すなわち、ちょっと戻りますが、二十条に「許可の特例」といたしまして、その第二項「国又は地方公共団体が第十八条第一項各号に規定する行為をしようとするときは、あらかじめ都道府県知事に協議することをもって足りる。」という言葉があります。それから三十条に参りますと、「受益都府県の分担金」の項目で、これが分担金を他府県知事と協議して分担させることができるという規定があるのですが、この他府県知事との協議という言葉の内容、それから三十三条の「兼用工作物の費用」の項目でありますが、この費用の分担についても「当該都道府県知事と当該他の工作物の管理者とが協議して定めるものとする。」となっております。そこで、たとえば土地の収用法の問題に関しては、協議が相整わざるときには、そこに持ち込むことができるという救済規定、あるいは仲裁規定があるのでございますか、ただいま申しました第二十条二項、第三十条、第三十三条はいずれも協議とだけきめて、その次の段階がございませんが、協議相整わざるときはいかようになりますか。
  35. 国宗正義

    国宗説明員 まず第一点の二十条の協議でございますが、これは法律案第十八条による許可にかわるべき協議でございますから、協議をもって許可にかえる措置でございまして、協議をもってかえられる主体は国または地方公共団体でございまして、これらの主体はいずれも法権力の主体でございますので、地すべり管理するところの都道府県知事と同じ系統の資格を持つ人でございますので、許可にかわるに協議をもってしたわけでございます。なお協議整わざる場合いかがかということでございますが、このような措置を規定いたします場合には、国、公共団体が、他の人格である国、公共団体と協議整わざる場合の措置が書いてないのが通常でございまして、これはあくまでも協議整うことを前提といたしまして、協議整ったときに、初めて許可にかわる効力を有するものと考えておるわけでございます。次に、三十条の受益都府県の費用負担の協議でございますが、これは他府県に対しましては、一方的に受益者分担金を徴収するために賦課するという方法をとらずして、協議をいたしました上で賦課し、そうしてその金額をも定め、徴収方法をも同時に定めることにいたしておりまして、その手続き基  準につきましては、政令で詳細を定めることにいたしております。このようにいたしておりますことは、河川法等の土木法規におきましても同趣旨でございまして、やはり政令で方法基準、手続き等を定めまして、他府県と協議をいたした上で受益者分担金を徴収いたす、こういう建前でございます。  次に、兼用工作物に関します第三十三条の規定でございます。この種の兼用工作物と申しますのは、地すべり防止施設が同時に他の施設たとえば道路の擁壁の役目をなす、このような場合における工作物を兼用工作物と言っておるわけでございますが、この種の工事につきましても、相手方の管理者と協議が整った上で、初めて兼用工作物の工事を行い、かつその費用の分担につきましても、ここに書いてございますように、協議をして定めようという趣旨でございます。これは道路法、河川法におきましては、協議せずして一方的に工事をし、あるいは工事を相手方に施行せしめて費用を徴収する旨の規定があるわけでございますが、海岸法並びに本法律案につきましては、兼用工作物につきましては、このような強硬措置よりはむしろ協議をいたしました上で工事を施行し、その費用につきましても協議をして、その協議を整えた上で施行し費用を徴収いたしたい、そのように考えておるわけでございまして、協議整わざる場合の措置は考えておらないわけでございます。ただし兼用工作物につきましては、協議が整わない場合につきましては、地すべり防止工事施設のみは施行できる建前になっておるわけでございます。
  36. 大野市郎

    大野(市)委員 この第三十条などにつきましては、政令でその手続きを定めると言われますから、どうなるか政令を見ないとわかりませんが、これは罰則までついている規定でありまして、第三十三条は第三十八条の「強制徴収」の条項の該当になるのでありまして、これを納めないと督促をせられたり、延滞金をとられたりするものでありまして、強権を持っておるのでございます。今の御説明ですと、協議は必ずまとまるから、まとまるまで待ってきめたことだから守らなければ強制徴収もやむを得なかろうという理屈になるのでございますが、あるいは他の法律にも同じ形のものかあるから、これはこのままでよろしいというような御議論でありましたが、私はそれの趣旨を了解いたすわけに参りません。第三十三条は特に強制徴収の第三十八条にひっかかりますので、この疑問を持つのであります。この点については、同僚議員もおられますので、私は時間の都合で保留をして先に進みます。  次はちょっと戻りますが、二十一条の「監督処分及び損失補償」でありますが、この条項の第二項の第三号でありますが、「地すべり防止上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じたとき。」はいわゆる許可を受けた者に対して「規定する必要な措置を命ずることができる。」というので、一ぺん許可を出したものに対して、「地すべり防止上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じたとき。」もそういうふうな形で必要の措置を命じて、場合によると取消しを命ぜられることがあるわけです。これは地すべり防止法趣旨からいって、第一号、第二号の意味はわかるのですが、第三号に特別に公益上やむを得ない必要ということを規定しましたのは何を想定せられたのでございますか。
  37. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいまお読みになりました第二十一条の第二項でございますが、ここに書いてある該当の例といたしましては、たとえば道路工事とかあるいは鉄道工事というふうな工事が、その地帯についてどうしても行われなければならない、こういうことで、その関係から公益上やむを得ない必要が生じたとき、こういうふうな場合を想定して規定いたしたのであります。「地すべり防止上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じたとき。」こういうことを言っておるのでありまして、この場合においては、第三項以下において通常生ずべき損失補償を規定いたす、こういうことでございます。
  38. 大野市郎

    大野(市)委員 それでは四十六条「関連事業計画に基く事業を実施した者に対する補助」という項目でございますが、これは結局、「事業を実施した市町村その他政令で定める者に対しその事業に要する費用を補助した場合においては、当該都道府県に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、当該事業に要する費用の二分の一以内を補助することができる。」とございますが、この場合の「その他政会で定める者」はどういうふうなものでありますか。
  39. 正井保之

    正井説明員 関連して行う事業につきましては、府県がみずから行うことなく、その実施を市町村その他のものにまかせておるわけでございますが、具体的に申し上げますと、土地改良区あるいは農業協同組合、また土地改良法どで土地改良事業を行います際に、数人が共同で行う場合があるわけでございますが、そういう場合であります。
  40. 大野市郎

    大野(市)委員 なお、その条正項の当該事業に要する費用の二分の一以内を当該都道府県に対して補助することができるとございますが、この意味は、市町村の施行した事業に対して都道府県が費用の補助をする。だがその補助した額でなくて市町村がかかった費用の二分の一以内の一補助か許されるのでありますか。
  41. 正井保之

    正井説明員 この補助につきましては、間接補助の建前をとっておりまして、第一段階にそういった事業を実施した者に対して都道府県が補助をいたします。その補助をした場合に、その都道府県に対して国が補助するわけでありますか、その場合は府県が補助をした額の二分の一以内ではございませんで、事業費の二分の一以内、こういう意味でございます。
  42. 大野市郎

    大野(市)委員 最後に第四十七条の「家屋の移転者等に対する住宅金融公庫の資金の貸付」の項目でありすが、この項目によると、組手が住宅金融公庫であるからでございまょようが、「住宅部分を有する家屋を移転し、又は除却する場合」というもので、この内容をまず押えてあるようでございます。そこの中で三行目の「当該家屋を所有し、若しくは賃借し、又は当該家屋に居住している者か、自ら居住し、又は他人に貸すために、」云々という規定があります。この場合所有者あるいは現在居住者が、居住住宅あるいは他人に貸すために家を作るということはわかるのです。そして賃借人がみずから居住する意思を持って金を借りるならば、この条文によると可能のようでありますが、この場合に所有者か移転するぞと言ってしまえばその場所になくなりますので、賃借り権は形の上からは消えると思いますが、しかしこれでは賃借りしているものは行くところがないことになります。何か救済策をお考えになっておりますか。
  43. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまの御質問は、住宅を賃借している者が行き先がない。これの救済策をどういうふうに考えているかという御質問でございますが、この法律におきましても、現に住宅を所有している人、あるいは居住している人のほかに、賃借している人も、自分はその家を持っていないけれども、その家が除却され、または移転をするということが考えられますので、そういう場合に賃借人がこの際住宅を建てたいということも考えられるわけでございます。従いまして普通公庫におきましてはこういう場合の規定はございませんが、特にそういう方々も住宅建設、または建設のための資金が必要な場合には、この規定によって融資をしようということのために特にこの規定をいたしたわけであります。もちろんこの法律によらないで、一般の公庫融資によりましても賃借人に住宅の融資ができるという道もございますが、特にこの規定においては賃借人にも融資ができるという道をこしらえたわけであります。
  44. 大野市郎

    大野(市)委員 四十七条でこの問題を特に申し上げますのは、この地すべり地帯に住んでおります者は、あるいは一説によれば地殻が変動するので、農地ども肥沃であるからというようなことを言われますが、われわれが地方実態を見まするとき、地すべり地帯というのは祖先の時代から動くところだというようなことを知っておるのでありまして、いろいろの場所があると思いますが、私の見聞いたしている地方におきましては、そういう場所に住みたくないのです。もっといい場所に行きたいのだけれども、そこがたまたまあいているので、開墾して家を建てて住み込んだというような家族が多いのであります。従ってこれらの諸君は金を貸すからというので、さっそく借金をして移転するが、その借金をいつ返すかという問題で、返済能力からいっても非常に苦しい生活をしている者が多く見られるのであります。そこで私は四十七条の規定によって新しい方法住宅金融公庫の資金のワクがとれることは、もちろんないより喜ぶ者でありますが、金を借りればよかろうといっても、実際は返却に困る人たちがおるのでありまして、こういう点に対して昨年の八月ごろには政府部内におきましても、移転に対して補助金を出したらよかろうというふうな御主張が流れておったやに記憶しておりますが、それらの補助金というふうな構想が住宅移転に対して姿を消したのは何か事情かございますか。
  45. 山本三郎

    山本(三)政府委員 家屋を移転した者に対する補助金の問題でございますが、これは補助金をつけてやりまするならば移転する人たちに対しましては非常に有利になるわけでございますが、その後いろいろ研究をいたしました結果、移転するということは、非常に個人の財産なり生命を守ることにおきましては重要なことでありますが、さて一方から考えてみますと、その移物するということが他の一般の公共的な利益の増進になるかどうかというふりな考え方も一方なさなければならぬというふうな点から問題があるわけでございまして、他のこんなふうな例と比較勘案いたしまして、出せばいいここはわかっておりますけれども、たとえば災害を受けた住宅等の問題につきましても補助金を出していないような祝状でございますので、それは一つ融資の方法で救っていくのがいいじゃないかということに相なったわけでございまして、それでは金のない人は返す目安がないからできないじゃないかということも考えられるわけでございますが、それは現在におきましても、このために公営住宅等を県が作りましで、それに移っていただくというふうな方法も併用いたしまして、公営住宅ならば家賃が非常に安くて済みますのさ、その方も併用いたしましてその方法で考えていただくのが諸般の状況を勘案いたしましていいのじゃないかということで、こういう形にいたしたわけでございます。
  46. 大野市郎

    大野(市)委員 この条項関連いたしまして、条文にないのでありますが、やはり関係いたしまする地域が、林野あるいは農地を保有するところの農村地帯にほとんど全部がありまする関係で、このほかに、いわゆる住居のほかに農業の諸施設というものが、たとんば納屋とか畜舎とかいうようなものが必ずあるのでありますが、この点に対してせっかく住宅金融公庫の新しい構想が盛られるくらいでありますから、民生の安定を国土保全とともに目的としておる建前からいいますと、このいわゆる付属建物に対しても、これは独立家で、住宅部分を有する家屋にならないで、住宅と別個の建物の場合が多いのでありますが、これを住宅金融公庫にお願いするわけには参らぬでしょうから、いわゆる農林漁業金融公庫の方でこれと同様なる条件をもってその貸付——私は補助を欲するものでありますが、この条文の形での貸付の形でいくにいたしましても、そういう用意が欠けておるようでありますが、この点は農林当局においてはどんな工合でございますか。
  47. 正井保之

    正井説明員 ただいま御質問がございましたように、農村地帯において地すべりが多いわけで、山の現象でありますし、ほとんどが農家であるわけであります。そこで住宅に対して融資の道を講ずるとともに、農舎あるいは畜舎につきましても農林漁業金融公庫から融資の道を講ずることを考えております。ただ公庫法の十八条に、主務大臣指定をした施設について融資することができるという規定がございまして、特に法律に規定をしなくても十分にその措置ができるわけでありますので、法律の規定はいたさなかったわけであります。融資の条件等につきまして申し上げますと、現在個人施設につきまして農林大臣の指定施設がございますが、ただいまは条件といたしまして、たとえば畜舎に例をとりますと七分五厘で十年、そして据え置き二年という扱いになっております。これにつきまして災害がございましたときには、その災害のつど主務大臣がまた指定をいたしまして取り上げることになっておりますが、その際の条件が七分で据え置き一年、償還期限十五年ということになっておりまして、地すべりの場合農舎をつけ加えることにいたしたいと思いますが、農舎及び畜舎等につきまして災害並みの条件をもちまして融資の道をいたしたい、据置期間につきましては延ばす、また償還期限も一般の場合よりは五年延ばしまして、融資の道をつけたいと考えております。
  48. 大野市郎

    大野(市)委員 それについて承わりたいのです、が、住宅金融公庫の方ではこの四十七条でお貸し下さるときの坪単価はいかほどに見ておられますか。
  49. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 貸付金の貸付条件の利率、償還期間等につきましては法律で明示いたすようにしておりますが、貸付金額の限度につきましては政令をもって定める予定にいたしております。政令の際にその坪当りの単価が出て参るわけでございますが、ただいま私ども事務当局において検討しておる考えを申しますと、大体平均して坪当り二万円程度を考えておるわけであります。
  50. 大野市郎

    大野(市)委員 これは住宅金融公庫の従来の形におきましても、災害復興住宅に対して標準単価が二万七千円となっておるような状況でありますが、これはいなかであるから安いもので済むというふうな御判定でございましょうか。
  51. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 坪当り二万円の点につきましては、これは貸付の坪数とも関連いたして御説明申し上げますが、大体貸付の一件当りの金額を——先ほど申し上げましたように政令の際に最終的に定まるわけでございますが、十五坪程度と考えますと、二万円で三十万円程度になります。従いまして一件当りの貸付の金額の最高限度は三十万円程度になるわけでございます。さらに土地費を三万円程度考えておりまして、合計しまして三十三万円程度の貸付の限度をただいま考えておるわけでございます。このような計算をいたしました基礎を申し上げますと、地すべり移転の場合、これは建築の場合もございますが、主として移転が行われるだろうというふうに考えておるわけでございまして、移転の際には従来の住宅の材料がそのまま使える場合もございますので、新築の場合よりも古材の使用率等が相当多いのではないかと考えられまして、私どもの計算の基礎としましては大体このように考えておるわけでございます。
  52. 大野市郎

    大野(市)委員 これは議論になりますからあれでございますが、家屋の移転はそれを取りはずして運んで組み立てねばならぬのでありまして、壁などはもちろんやり直さなければならぬので、これは移転だから新築より安いということは、何か統計がございますか。
  53. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 新築の場合は、この例で申し上げますが、公庫の融資住宅災害復旧住宅の新築の貸付をいたしておりますが、その際の坪当り単価が大体二万五千円程度であります。従いまして、そのようなことを考えまして、古材の使用率あるいは河川などで移転をいたします場合の補償の基準、そういう点を勘案いたしまして、大体二万円程度で妥当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  54. 大野市郎

    大野(市)委員 この点に対しては、政令の内容でありますので、そういう御腹案は承わりましたが、私ども移転ということがずいぶん金を食うことであるのを知っておるのであります。従って、ただいまの御腹案が妥当かどうかということに対しては疑問を持ちます。この点に対しては承服をいたすわけには参らぬのであります。  引き続いて農林漁業金融公庫の方にお伺いしたいのでありますが、条件の悪い待遇を受けそうな住宅金融公庫でも今のお話しでありますが、ただいまの形で、七分という金利でやりますと、片方は五分五厘になりますので、この点もこの際特殊な災害を未然に防ぐ工作でありますので、住宅金融公庫並みに金利を引き下げる、そういうような事柄を望みたいのでありまするが、当局においてはそういう御用意はありませんか。
  55. 正井保之

    正井説明員 お話の点でございますが、実は住宅の融資条件と比較いたしまして、私どももいろいろと検討いたしたわけであります。住宅の場合は、一般の場合もすべて五分五厘で融資をいたしておりますが、農林漁業金融公庫の場合、土地改良、あるいは林業の代調資金、いろいろな資金があるわけでありますか、同様の施設につきまして、現在の融資の条件と申しますのは、先ほど申し上げましたように七分五厘、十年の償還という建前になっておりますので、それをそういった金利体系の中でできるだけ有利に進めるという意味合いにおきまして、先ほど申し上げましたように、災害に相当する扱いまで条件をよくする、こういうことで大体の結論に近いものを得たわけでありまして、どうも金利の体系の中での一つでございますので、非常にその点やむを得ない線ではなかろうかというふうに考えております。
  56. 大野市郎

    大野(市)委員 ただいまの金利体系の問題もあるからというお話しでございますが、この点はせっかく地すべり法案という新しき方法で、恵まれない国土のそれらの個所が救われるというところでありますから、金利その他の点に対しても、格段の御配慮をなさるべきものと思うのであります。これは議論でありますので、委員会の審議の過程においては私はその形においては承服ができないのであります。  以上、まだ申し上げたいことがありまするが、時間の関係もございまするので、質疑を打ち切ります。どうぞ初めて日の目を見ようとする地すべり地帯のことでありまするから、とりこぼしのないように、またせっかく救済をするならば、ほんとうに善政、徳政、喜ばれるような政府の施策を望むわけであります。審議の過程にあたりまして、以上御質疑をいたしまして私の質疑を終ります。
  57. 西村直己

  58. 井手以誠

    井手委員 地すべり防止法案の審議に先立ちまして、この法案が、最近地すべりの惨害が非常に大なのにかんがみて、各地元の要望に沿って、建設農林両省が、両省間にまたがる立法作業の困難を克服されまして今国会に提案されたことにつきまして、おそくなってはおりますけれども、この努力に対しまして敬意を表するものであります。法案の条文についてはいろいろただしたいとこもございますが、本日は大臣もお見えになっておりますし、法案の基本問題について数点お伺いをいたしたいのであります。  最初に事務当局にお伺いいたしますが、先刻、地すべり地帯の総工事費は百八千億に上ると承わったのであります。その五千五百個所、十四万町歩百八十億に上る地すべり防止工事の中に、緊急にやらねばならない個所、その区域内の農地あるいは移転を要する家屋はどのくらいお考えになっておるのか、ほかの問題と違って、御承知のように地すべり地帯では、一日々々地すべりが拡大いたしております。特に雨期を控えて、こういう緊急なものは早急にやらねばならない問題であります。両省でも五ヵ年計画であるとか、あるいは緊急にやらねばならない家屋の移転が一万四千戸だとか、いろいろときたま発表されておるようでございますが、緊急に人命、財産、国土保全しなくてはならない地域は、何個所であるか、どのくらい農地があるか、あるいはどのくらい家屋を移転しなくてはならないのか、その数字をまず承わりたいと思います。
  59. 山本三郎

    山本(三)政府委員 ただいまのお話しでございますが、来年度の問題から申し上げますと、三十三年度でぜひやりたいという県からの申し入れがあったのがございます。それによりまして、私ども建設省といたしましては、来年度の予算を要求したわけでございますが、その分が補助金といたしまして約四億円であります。それから家屋移転でございますが、これにつきましては、県からの要望といたしましては、三十三年度で千五百戸やりたいというふうな申し入れがあったわけでございまして、これはお話のうちで一番急ぐ分だというふうに考えておるわけでございます、これに引き続きまして、緊急度の次に続くものが出てくるわけでございますが、先ほどの百八十七億と申し上げまして、それに該当するものが建設関係は三千数ヵ所あるわけでございますが、この中で五年でさてどれだけやろうかという点につきましては、これから具体的に調査をいたしまして決定するわけでございますが、もちろん来年度の予算は県側の要求の半分にも及ばないというような状況でございます。従いまして三十三年度の予算をそのまま続けていったんでば、五ヵ年なりあるいは十ヵ年に要望するあるいは危険と思われるようなものができないような状況でございまして、私どもといたしましては、どうしても現在の程度の倍以上の速度をもってやらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  60. 井手以誠

    井手委員 そういうふうに承わっておるわけではございません。建設省農林省も主管省としてはこれだけはやらなくてはならぬという良心的な数字をお持ちになっておると思うのです。先回りをして答弁なさらぬでもいいのですよ。ときによると、五ヵ年間であなたの方は二十億とか、林野関係では二十億とかいう数字も出ております。ここに持ってもおりますが、そんなふうに百八十七億円にも上る工事費のうち、緊急にやらなくてはならない、五ヵ年くらいでやらなくてはならぬというその範囲はどれくらいであるか。これを私は数字だけお聞きしているわけですからここで何も大蔵省にああだこうだという予算関係ではございませんから、その点は御心配なく御答弁願いたい。
  61. 山本三郎

    山本(三)政府委員 よくわかりました。その点につきましては、私どもの方といたしまして、五ヵ年計画を立てておりますのは約七百ヵ所ございまして、それに要する事業費は二十億円でございます。
  62. 井手以誠

    井手委員 家屋は。
  63. 山本三郎

    山本(三)政府委員 家屋は約一万戸であります。
  64. 戸嶋芳雄

    戸嶋説明員 林野関係の方では最も緊急に手をつけなくてはいけないといううものは、大体五ヵ年でこれをやっていきたいという考え方でおりますが、それによりますと防止事業をやる直接の地区としましては二千七百六十町歩、これに要する——これは直轄と補助と両方の事業費を足しまして、二十億五千万円こういうことになります。
  65. 正井保之

    正井説明員 農地関係といたしましては、面積にいたしまして四千二百五十二町歩事業費で十八億七千百万円、大体その程度を五ヵ年間の事業といたしたいと思います。
  66. 井手以誠

    井手委員 大体緊急にやらねばならない見当がつきました。農林省は家屋は別にありませんな。
  67. 正井保之

    正井説明員 住宅につきましては、建設省で一括して取り上げております。
  68. 井手以誠

    井手委員 そこで大臣にお伺いをいたします。ただいまお聞き及びの通り、各道府県の要望によって緊急に良心的にやらねばならないところが、少くとも五ヵ年間に建設省で二十億、農林省では三十億という数字が出て参ったのでありますが、これはほかの土地改良事業であるとか、あるいは河川改修とは違いまして、目の前に災害が来ることがわかっている、もう刻々地割れが拡大しておるのです。そういう危険を前にして、これは災害は先般私も申し上げましたように、あらかじめ知ることができるわけです。そういう緊急な五十億を要する工事に対して、ことしの予算は初年ではありますけれどもあまりにも私は少いと思う。五十億といこうこの緊急な工事をどうしてもやってもらわなくてはならぬ。これに対して大臣はどのようにお考えであるか。来年は必ずこうするという今後の見通しを、関係地方が安心できるあなたの熱意なり誠意を、一つこの際お見せ願いたいと思います。大蔵大臣ではあなたはありませんから、そこまでは聞きません。
  69. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘通り地すべり法案を出すようになりましたのは、従来から非常にこの問題が取り上げられておりましたけれども、なかなかこれが現実的な措置としてはむずかしかったのでありまするが、昨年の九州の豪雨によるあの惨害が世論を動かし、かつ政府部内各党ともこれに共鳴されて、いよいよこの単独立法をすることになったのであります。私どもといたしましては、これについては、実は特別会計を設けるような根拠はございません、ございませんがやはりこれは年次計画を立ててやりたいと思って相当苦心いたしましたけれども、実際上今まではいわゆる緊急砂防という名のもとに、あるいはまた林野庁におきましても保安措置としていろいろやった程度でありまして、全体としてまだ必ずしも完全なるこれが調査もできていない、そのためにまず全体の実態を把握して、しかる後これはやらなければならないという実は議論になって参ったのであります。大蔵省との折衝の際におきましても、これは従来県方面からの申請があったのと、それから一応概定した数によってこれは算出の根拠を出したのでありまするが、なかなかその点意見が一致しないために、今年は残念ながら今御指摘のようにこういう立法措置をしたことに対する裏づけの予算としてははなはだ私も実は残念でございます。しかし今後におきましては、御指摘通りこの地すべりによる被害がまことにこれは深刻でございます。範囲はそれほどではありませんけれども被害を受けるところは非常に深刻である、しかも個人的措置としてはどうにもできない。しかもまた一面においては、そういう危険なら他に移転したらいいじゃないかという声もありまするが、しかしこういう地すべり地帯に危険を冒してなお生活しなければならないという、その地区における農地の非常に少いところ、そういうところからきておりますので、これはぜひ今御激励を受けたように、農林省ともどもに明年度からはこの緊急の五ヵ年間において一応体をなす程度までは予算措置をするように努力をいたしたいと考えている次第であります。
  70. 井手以誠

    井手委員 三十三年度が初年度でもありますし、また調査の必要もあるという意味で、私はこれ以上大臣に追及はいたしませんが、しかしお聞きのように五ヵ年間で五十億の工事をしなくてはならなぬ、一万戸を移転しなくてはならぬという緊急事態でございます。法案にはおそれのあるという文句がずいぶん出ておりますけれども、これは危険に瀕しているのです。おそれのあるどころでなくして、刻々これは迫っているのですから、その意味でその意気でやってもらいたい。特に雨季を控えまして緊急に工事をしなければならぬところがずいぶん出てくるだろうと思う。おそらく一億二億の金では私は足らぬと思う。そういう場合には予備金でも出して、八十億に上る予備金の中からでも出して、この危険を未然に防止するという熱意はお持ちかどうか。この点を一つ……。
  71. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは一応現在の予算措置で施策を講ずるのでありますが、予算を執行してなおかつ不足にして、しかも非常に危険が現実に迫っておるという事態が明確に把握されますれば、われわれの方としては、それの対策として、必要の場合においては予備金支出も要求する覚悟は持っております。
  72. 井手以誠

    井手委員 そういうふうに多額の工事費が緊急に要るということを私ども見まして、私ども地すべり地帯における災害防止に関する法律案におきましては、初年度十五億円を予定しております。やはり十五億円内外はこれを計上しなくては、防止対策は立てられぬと思っておりますが、大臣の格段の御努力をお願い申し上げる次第であります。     〔委員長退席、久野委員長代理着席〕  そこでお尋ねいたしますが、この地すべり地帯というのは、全国で三十数道府県にまたがっておるように承わっております。どこもやはり緊急な事態であろうかと思っておりますが、この地すべりというものはどういうもので、最近どういう傾向にあって、どういう危険な状態にあるかということ、特に最近被害が頻発しております西九州の状態、こういったことについて、地すべりは非常に危険だ、さらに今後拡大するおそれのあるというこの問題について、概括的に一つ事務当局からでもいいのですが、伺いたい。
  73. 山本三郎

    山本(三)政府委員 地すべりも地層の状況によりまして、いろいろ種類があるわけでありますが、大体申し上げますと、まず第一に佐賀長崎方面の西九州における地すべりは、三紀層の上に玄武岩が乗りまして、その間にすべり面ができてすべるものでございます。それから宮城県の鬼首というところがございますが、あるいは箱根とかあるいは霧島付近がございますが、これは温泉地帯に酸性白土がございまして、その層がすべるものでございます。それから四国の徳島県、愛媛県、高知県等の場合におきましては、古生層の結晶片岩の部分が節理に沿ってすべるというものがございます。それから新潟長野富山等の北陸の分におきましては、佐賀長崎と大体同じでございますが、やはり第三紀層の中にすべり面が発生いたしましてすべるものというふうに相なっておりまして、大体におきまして、地質構造の上から申しますと、この三種類に相なるというふうに考えております。
  74. 井手以誠

    井手委員 地すべりがどうして起るかは大体わかりましたが、最近急激に地すべりというものが大きな問題になっておる。被害を受けておる。この今後の見通しを——これは地すべりをほかの問題のように見通していくわけには参りますまいけれども、現実は、この地すべりというものが非常に大きな問題になっておる。私の郷里の佐賀長崎においても、地元の新聞は、毎日どこが地割れがしたとか、拡大したとかいって騒いでおるのでありますが、これは新潟もそうでありましょう。北海道もそうでありましょう。とこもあるようでありますが、非常に拡大する地すべりについて、どうなるのかということで、各関係の地元民において不安がられておるのでありますが、あまりはっきりした見通しも言えますまいけれども、大体どういう傾向のものか、この点もしわかっておりますれば、伺いたい。
  75. 山本三郎

    山本(三)政府委員 地すべりは昔からもあったわけでございまして、私ども一戸現場を全部見たわけではございませんが、地すべりによりましてできたような地帯も見受けられるわけでございますので、昔からあったということは認められるわけでございますが、最近になりまして、地すべり個所もふえて参りました。特に被害が多くなったということは、目立った事実でございます。私どもといたしまして、地すべりが多くなった原因として考えられる点は、局地的に最近非常に強い豪雨があるという点、それから被害の多くなった原因といたしましては、土地の開発が進みまして、先ほどお話がございましたように、住む人が多くなったという点も被害が多くなった原因ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  76. 井手以誠

    井手委員 もう少し聞きたいのですが、お呼びしております法制局がお急ぎになりますそうでそから、ちょっとこの機会に承わっておきたい。政府提出の本法案によりますと、地上の物件については工作物などは行為制限、禁止ができるようになっております。ところが炭鉱地帯におきましては、炭鉱の試掘、採掘、坑道の掘進によって地すべりが促進されたという地元民の不安が非常に大きいのであります。その原因については大学の教授あたりも再々お見えになっておりますけれども、私どもが考えましてもやはりどこの責任だということはなかなか言えないわけであります。いずれにいたしましても、この坑道の掘進というものか地すべりを促進するおそれがあるということは一通りは言えるわけであります。断定的には申されませんけれども、不安のもとになっておると言ってもいいと思うのであります。坑道の掘進がこの法案によって制限または禁止ができるかどうか。私は御承知の通り、炭鉱地帯でありまして、私の地元の町長はもう鉱害町長と言われるほどに炭鉱の鉱害対策で奔命いたしております。もしこの法案で坑道の分が制限、禁止を受けないというならばこれは大へんなことだといってずいぶん激励を受けておるような状態ですが、この政府提出法律案で、果して坑道の掘進によって地すべりを促進するおそれのある場合に、これを制限または禁止することができるかどうか、その点をまず提案者から見解を承わっておきたいと思います。
  77. 山本三郎

    山本(三)政府委員 行為制限という条項がございますが、法制上はこの条項によってできることになっております。
  78. 井手以誠

    井手委員 それはどういうふうにできるわけですか。何も書いてないからできるということもいつか承わったようでありますが、炭鉱は施業案によって、鉱山監督局ですか、通産省関係から認可を得て掘進をいたしております。従ってすでに許可を受けたものはこの法律によって許可を受けたものとみなすというみなす規定がある。そうなりますと、通産省の方から——私は認可か許可かはっきりいたしませんけれども、いずれにしても認可か許可を受けて、施業案に基いて坑道を掘進しておるその行為に対して、何も書いてなのいこの政府提出法律案制限ができるかどうか、この点を一つ法律的に納得のいくように御説明いただきたい。
  79. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいまの御質問の点でございますが、十八条の第一項の一号二号は、いずれもそれらの地下における工事並びに地表にそれが連結いたしました場合の工事等につきましても地すべり地域管理しておる都道府県知事の許可を得なければならないことに規定いたしておるのでございます。従いまして鉱山保安法等の許可がありましたものにつきましても、当該地域地すべり地域であります以上は、本法による許可を必要とするということにいたしております。御了承願います。
  80. 井手以誠

    井手委員 本法によって許可を要するという条文はどの条文ですか。
  81. 関盛吉雄

    関盛説明員 十八条の第一項の一号、これは「地下水を誘致し、又は停滞させる行為地下水を増加させるもの、地下水の排水施設の機能を阻害する行為その他地下水の排除を阻害する行為」、これらはいずれも地下において掘さく等の行わわれます行為がすべて含まれておるわけでございます。第二号におきましても、「地表水を放流し、又は停滞させる行為その他地表水のしん透を助長する行為」、いずれもこれのいずれかに該当すると思うのです。
  82. 井手以誠

    井手委員 第十九条の経過措置まで続いて説明して下さい。
  83. 関盛吉雄

    関盛説明員 第二十条におきましては許可の特例というのを規定いたしております。この許可の特例の条項は、森林法または砂防法の規定によりまして許可を受けた者は、その許可にかかる当該行為についてはこの法律による許可を要しないということでございまして、森林法及び砂防法はいずれも国土保全目的といたしました地域管理をやっておる法律でございます。従って森林法、砂防法のみが許可の特例に該当するのでございまして、その他の法規はいずれもこの第二十条の明記してない関係がございますので、十八条による許可を必要とするわけであります。     〔久野委員長代理着席、委員長着席〕
  84. 井手以誠

    井手委員 この問題は別に論議する必要はございません。それが適用されるかどうかはっきりすればいいわけですが、これについてやはり別の解釈をする者があるわけです。この際内閣としての統一ある見解を私は承わっておきたいと思います。
  85. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいま井手先生から御質問のございました経過規定の件について答弁漏れがございましたので補足して申し上げます。  第十九条におきましては、この法律を施行する前において、第十九条に定めておりますように、「第三条の規定による地すべり防止区域指定の際現に当該地すべり防止区域内において権原に基き他の施設等を設置(工事中の場合を含む。)している者は、従前と同様の条件により、当該他の施設等の設置について前条第一項の許可を受けたものとみなす。」ということで、今までやっておる行為並びに工事についての経過的な規定を一応みなすことで規定いたしております。ところがこれにつきましては第二十一条は監督処分の規定がございまして、この監督処分の規定によりまして、要するにさらに公益上の必要その他地すべり防止工事上支障を生じたというふうな場合、これは例の第二十一条の第二項に該当するわけでございますが、経過的措置によって許可を受けたものとみなされておる場合につきましても、第二十一条第二項第一号、第二号等に該当する場合においては、必要な措置を監督処分として命ずることができる、また措置することもできる、こういう規定にいたしておるのでございます。経過的な関係は以上の通りでございます。
  86. 井手以誠

    井手委員 その点は私も二、三回説明を受けて承知いたしております。大体地上の防止施設防止工事というものが三百メートルとか五百メートル地下にある坑道の掘進に及ぶのかどうか、これは工事の一般論になって参ります。その問題とあわせて一方では施業案によって通産省の許可や認可を受けておる坑道の掘進、これが果してこの法律で押えられるかどうか、この十九条とか二十一条のことで押えることができるかどうかを私は聞いておるわけであります。そこで大体問題の点はわかりましたので、この際一つ法制局からはりきりした御答弁を承わっておきたい。そうでなくては、通産省方面では、おかげで私の方は関係がなくなりましたという言葉を聞いておる。これはおそらく今後争いのもとになろうかと思いますので、その点だけ一つはっきり御明示を願いたい。
  87. 野木新一

    ○野木政府委員 御質問の要点はよくわかりました。十八条と十九条ないし二十一条の関係については、先ほど河川局の当局者が申し述べられたような解釈になると存じます。というのは、まずこの法律施行の当時、すでに「第三条の規定による地すべり防止区域指定の際」、従ってこの法律施行のときと一致するわけでありますが、また施行後にも新たな指定をする場合は、その指定のときということになるわけでありますが、その地すべり区域内において、すでに権原に基いて他の施設すなわち坑道等を設置しておるものは一応十九条の規定によってすでに十八条の一項の許可を受けたものとみなされるということになりますので、そういうものはそのみなされた限りにおいては新たに十八条の許可を受けることはない。これが第一点。  次にそういうものについても、二十一条におきまして監督処分等の規定を働かせまして、地すべり防止上著しい支障が生じたという場合においては、それぞれ必要な措置を命ずることができる、そういうような関係になっておるのであります。このことは先ほど河川局の当局者から申し上げた通りであります。  次に地下何百メートル下にある坑道と十八条の行為制限との関係いかんという点でありますが、これはまさに具体的な場合々々によってやはり考えなければならないのではないかと存ずる次第であります。従いまして観念的に申しますれば、その地下の坑道を掘っておることと、十八条に規定しております地すべり防止区域内において地すべり防止をするための必要な行為、それとが何か因果関係みたいなものがあり得るというような場合が観念的には考えられますので、その限りにおいてはやはり十八条の問題になってくる、そういうように考えるわけであります。全然関係がなければ、影響がないということになればおそらく問題はないと思います。ここらは個々の具体的の場合において判断すべき問題ではなかろうかと存ずる次第であります。
  88. 井手以誠

    井手委員 こういうことですね。坑道の掘進が地すべりを促進するおそれがあると認めたときは、二十一条によってその許可を取り消したり、あるいはその条件を変更し、その行為を中止させることができる、都道府県知事が、鉱山監督局ですか保安局ですか、その認可を得て施業案に基いてやっておる坑道の掘進を中止させたり取り消させることもできるという結論になるわけですね。結論だけでけっこうです。
  89. 野木新一

    ○野木政府委員 第二十一条の適用によりまして、そのような結論になると存じます。
  90. 井手以誠

    井手委員 もう一ぺんくどいようですけれども、通産省の一局から認可を受けて掘進しておる坑道、これを都道府県知事の認定によって、おそれがあると認めたときは、取り消したり中止を命ずることができますか。その点ちょっと結論だけでけっこうです。あらためてお伺いいたします。
  91. 野木新一

    ○野木政府委員 二十一条にありますように、二十一条の問題はあくまでも十八条の許可及び十九条において十八条の許可を受けたとみなされる許可の関係をいっておるのでありまして、通産省の方の、取り消すとかそういう対象の問題とは直接に法律的には関係がないわけであります。
  92. 井手以誠

    井手委員 ちょっとおかしくなりましたが、第十九条によって権原に基いて施設をやっておる行為、これは十九条によって許可を受けたものとみなされる、しかしそれが地すべりを促進するおそれがあると都道府県知事が認めた場合には、その許可を取り消すことができる、もしくはその条件を変更したり中止させることができるというわけですね、そうなりますとあらためて都道府県知事がその掘進施業について許可するということになるわけですな。鉱山局が認可したものをあらためて都道府県知事が許可をやり直すとか不許可にするとかいうことになるわけですね。
  93. 野木新一

    ○野木政府委員 法律的に申しますると、通産省ないし鉱山局側の許可とこの法律による許可とは別の観点というか別のものでありまして、この二十一条でいうておりますのはあくまでこの法律による許可であります。すなわち十八条の許可、これを取り消すとか何とかいう問題でありまして、それが自然的に反射的に通産省側の許可ですか、認可ですか、それに影響することはあります。従いまして鉱業権者はこの方の許可を取り消されたりしてしまいますと、この法律に違反してその行為ができない、そういう関係になることはあるかと思います。しかしそれはそれだけのことでありまして、向うの施業案の許可ですか認可ですか、それを直接都道府県知事が取り消すとか何とか、そういう関係ではないわけでありまして、私はそこを申し上げたわけであります。
  94. 井手以誠

    井手委員 大体それでわかりました。それでは地すべりのおそれがあるという場合には都道府県知事は自分の認定でやれる、こういうことはわかりました。これはなかなかむずかしい問題ですが、片一方は通産省あるいは鉱山局が認可した施業案に基いて掘進しておる、だから鉱業権者はそれに基いてどんどん掘っている。片一方がそれはいかぬといったってなかなかそこら辺の調整が実際はむずかしいのではないか。だからその場合にはこれが断固やれるかどうか。
  95. 野木新一

    ○野木政府委員 私の説明は非常に口下手でうまくありませんけれども、理論的には今申し上げた通りであります。そして実際的にはおっしゃったような場合が生ずる場合がありますが、この点につきましては、私どもは立案のときにも一応議論しましたが、これは建設省も通産省もそれぞれ政府の一翼でありますから、密接な連絡をとって実際の軍用においてはそういうそごが生ずることがないようにする、こういうような十分な当局間の連絡があったことを今思い出しておるわけであります。
  96. 綱島正興

    ○綱島委員 関連して。今の点でありますが、法制局の見解では通産省のことは別であるというお話でありますが、法律は一本でございますから、国家の行為としてはどこの省だろうが関係がありますね。それで通産省が許可しておろうがどうしておろうが、ここに特別な除外規定がない限りは、こういう事情の発生についてはこの条項によって都道府県知事は——特に都道府県知事の中止権限を制約する規定が別な法規にない限りは、都道府県知事地すべり対策をこの条項によって遂行することができるものと思いますが、そこはどうですか。
  97. 野木新一

    ○野木政府委員 御意見通りだと存じます。
  98. 井手以誠

    井手委員 その点は一応了解いたしましたけれども、なお法文に書くべきだ、そういう意味で私なんかの出した法律案にはそれを明記しているのです。坑道の掘進、試掘、採掘についても明記しております。その点がもし紛議の的になってはいかぬというので坑道の試掘、採掘も入れておるのです。ところが今度の政府提出法律案によりますと書いてない。書いてないけれどもこれでできるのだという見解を今建設省なりあなたの方から述べられた。一応それでいいようなものの、片一方ははっきりお墨付をもらっておる、片一方は書いてない、これでもできるのだというその点についてはなお若干の疑義が残っておるようでありますが、第二部長も内閣委員会から非常に急がれておるようでございますので、本日はこの程度にしておきたいと思います。もし時間があればもう一言お答え願います。
  99. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいま私の申し述べましたことは、ここで条文を読んだところの解釈であり、また念のためここに列席しておる建設、通産両当局とも打ち合せましたところ、両当局とも同じ見解でありまして、これが一つの政府の統一見解であります。そのように御承知おきいただいてけっこうだと思います。
  100. 井手以誠

    井手委員 それでよろしゅうございます。どうぞお引き取り下さい。  次に、地すべりの定義でございますが、建設省でも当初この地すべりにはいろいろと定義がある、学問的にもいろいろと表現の方法がある、そこで山くずれ、がけくずれという大きなものを入れてもよくはないかという見解も一時あったようにも承わっておるのでありますが、私どもはこれに対してやはり範囲を広く、地下水がどうのということではなくて、被害というものをまず第一に置いて、地すべりや山くずれ、がけくずれ、ボタ山という大きなものを並べて、そのうちの緊急な、大事なものだけを取り上げて防止施設をやった方がよくはないかという見解を私どもは持ったわけですが、最近奈良県を初め山くずれ、がけくずれの被害が非常に多いようであります。ところかこの地すべり地帯ということに限定いたしますると、そういう地帯被害というものは、ほかの法律ではできましょう、森林法、砂防法ではできるかもしれませんけれども、これでやっていいようなものはどうなるのか、その辺の御見解を承わっておきたいと思います。
  101. 山本三郎

    山本(三)政府委員 山くずれ、がけくずれ等もこの法律対象にすべきではないかというお話でございますが、当初におきましては、これらも一括して対象にしようじゃないかということも考えたわけでございますが、その後いろいろ研究した結果、先ほどからもお話がございましたように、地すべりは、それが起る前におきましていろいろの徴候が現われてくるという点で非常に予知しやすいと申しますか、予見できる事柄でございます。一方山くずれ、がけくずれ等はそれと異なりまして、その発生する場所を科学的に予知することが非常に困難であります。従いまして、地すべりのようにこれをあらかじめ指定しておきまして防止するということになりますと、どこもかしこもやっておかなければならぬ。従いまして、金を使ったけれども経済的でなかった、的中しなかったというような点もございます。またそういうものにつきまして行為制限をやるということになりますと、おそれがあるような所を非常に大範囲にやらなければならぬということが懸念されるわけでございます。従いまして、この地すべりあるいはボタ山等と違いましてなかなか予知がむずかしいので、地域指定なりあるいは行為制限等の問題におきまして非常に取り方がむずかしい。しかも行為制限等を、やりますると、大きな範囲についてこれをやらなければならぬというふうな関係になりまして、実はこの法案に入れることが非常にむずかしいという観点に相なりまして、取り上げることができなかったわけでございます。しかしこれをやらないということではございませんで、これらが公共釣に非常に重要な場合につきましては、砂防法なり森林法でやるわけでございますし、またその他のものにつきましても、従来と同じように財政の補助におきましてはやっていきたいというふうに考えておるわけでありまして、入れることはいろいろ考えておるわけでございますが、以上申し上げましたような理由で取り上げることが非常にむずかしいという観点から、残念ながらはずしたという次第でございます。
  102. 井手以誠

    井手委員 なおその点もお尋ねしたいのでありますが、時間の都合で先に進みたいと思っております。  私は、地すべり対策の中心をなすものは家屋の移転であると考えております。最近惨害を引き起しました佐賀県の伊万里市や佐世保の世知原その他、移転させなくては人命が危ないということで、県も市当局も再々移転の勧告を行いますけれども農家というものは金は持っていないのでありまして、やりくり算段でやっとその日その日を過ごしておるような程度でありますから、家屋移転ということがなかなか難事でございます。たとえば伊万里市のあの人形石山におきます地すべりにおきましても、別に掘立小屋は作っておりました。しかし田畑がその地すべり地帯の中心にありますために、どうしてもそこにおらなくては農作業かできないということで、掘立小屋は作りながらもやはりもとの家に起居しておったということから、ああいう悲劇を起したのであります。  それじゃなぜ移転ができないのか。私はこまごまとしたことは本日は聞きませんが、根本問題であります。なぜ移転ができないかといえば、もちろん土地に対する愛着がある。それとともに金がないのであります。さあ移転しろ移転しろと申しましても、金かなくては移転するわけには参りません。この移転ということは、それじゃ金を貸してやればいいじゃないかということにもなるかもしれませんけれども、その移転する前後のかなりの期間は仕事ができない。現金の収入もないわけです。そういう環境のもとに家を移転しなくてはならぬということになりますと、やはりそれに対する十分の融資がなくてはならぬ。しかし融資をいたしましても利子をつけて戻さなくてはならぬわけです。先刻当局から御説明がありましたように、公共施設を守るために、国土保全するために家屋を移転しなくてはならぬという御答弁かありました。中には、自分はあくまでも父祖伝来の土地と家を守るという人もありましょう。しかしその農地なりあるいは家屋を守るために移転を本人が希望しなくても移転をさせる、あるいは土地利用をするためには移転させなくてはならぬという、この地すべり地帯における家屋移転問題について、当初は建設省においても農林省においても——農家はあなたの方の関係ですよ、建設省にまかしておくべきような問題ではございません。この農家に対して家屋移転の命令を出すことかできる、いわゆる家屋移転を勧告する、こういうふうな建前になっておって、移転の勧告をした場合には若干の補助を出そうという構想があったというふうに私は承わっておりましたけれども、提案されたこの法律案によりますと、補助というものが全然ない。先刻来大野委員との間の質疑応答を聞いておりますと、三十三万円程度までは貸してやろう、こういうわけでありますけれども、今の住宅金融がいかに手続がめんどうであるかは私は多くは申し上げません。とにかく危険にさらされておる農家移転しなくてはならぬのに、ああいうめんどうなことが果してできるかどうか。しかも家屋の方は住宅金融公庫に行かなくてはならぬ。畜舎、農舎の農業刑施設については、今度は農林漁業金融公庫の方にお百度参りしなくてはならぬ。そういうことが実際できるかどうか。非常に手続がめんどうである。しかも両方に行かなくてはならぬ。本人は家屋移転で一生懸命朝から晩まで走り回らなくてはならぬというこの家屋移転の人たちに対して、まあ要望もあったから融資の道を開いてやろうという程度では、一番大事な家屋移転の円滑な推進はできぬと思う。場合によっては自分は動きたくないという者を強制的に立ちのかさせねばならぬ事態もたくさんあると思う。そういうときにはやはり補助も若干出してやろう、融資も簡単な方法で必要な者には出してやろう、そこの親心と申しますか、その点が私は一番大事だと思う。なるほど農地も大事だ、家屋も大事だけれども、一番大事なのは、家屋を移転して人命を守ってやるという措置が一番大事である。その点については十全の措置が講ぜられていないような感じが非常にいたすのでありまして、この政府提出法律案に対して、関係地方民の要望はここに集中されておる。家屋はできないまでも、少くとも農業施設に対して——災害復旧なんかには、法律の補助が認められている。二十八年度災害には九割までも補助が認められた農舎、畜舎に対しては、今度はびた一文も補助がございません。この家屋移転という大きな問題に対して、大臣から一つ誠意ある御答弁をこの際承わっておきたいと思います。
  103. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この地すべり地帯に対する根本的対策については、実は家屋の問題以前に相当深刻に考えているわけです。というのは、本来ならばこういう危険な土地に営農させる、あるいは居住させるということが、そもそもこれは非常に気の毒なことだ。ところでこれを全部全面的に抜本的に処置できるかというと、技術上困難である。そういう場合はむしろこれらの防除のための施設あるいは移転、こういうものをいろいろ考えてみると、総体的にいうならば、むしろそういう地帯を全部国で買収して、そしてそこには立ち入りさせないで、他の方にこれを使う、そうしてむしろ新たなる農地を造成してやった方かいいじゃないか、総体的にはそういう方法か立ちはせぬかということまで実は考えてみたのでございます。ところがこれにつきましては、先ほど事務当局が報告したように、全体の額として百数十億かかるということであって、むしろ今のような措置を談じたらどうかということまで言ったけれども、これはほとんど大蔵省その他意見全く対立で、措置できません。そこで現在のような段階の措置になったわけでありますが、その際御指摘の家屋移転に対するところの補助、これは一応われわれ担当省庁としては、もちろんこれは考えなくてはならぬ。これは先ほど事務当局がらお話申し上げましたごとくに、一般の災害に対する公共施設については、これは補助その他いろいろあります。しかしながらある意意味においては、これは個々の人々の危険の回避のためにやる場合については、原則としてこれは補助をしないという一般的な態度をとっておる。それでありますから、普通の災害によって行われたところの家屋の移転等についても、これが土地計画公共事業のために強制的にやられる場合には補償その他もいたしますが、これは補償ではなくして、危険防止のためにいろいろの施設をやった上、なおかつ危険であるがゆえに退避させるということであるので、どうしてもこれは大蔵省との意見は一致いたしません。これは農林省とわれわれの方としてはいろいろの見解はあるけれども、現実に今あなたが御指摘のように、普通ならば東北あたりで相当土地の余裕のあるところなら、退避するなといっても危険なところですと退避してしまうんです。ところがそれにもかかわらず退避せよ、退避せよと言いながら、なおかつそこに居住しておるということは、結局移伝先がないためにやむを得ずこれはやっておるのだ、そういうところに災害があるのだから、やはりこれは、移転する人間の利益にもなることだと割り切って補助を出さないということについては、いろいろわれわれも議論があったのでありますが、ついにこの問題については妥結することができません。それだといって放置するわけにいきませんから、今回はこういうふうな措置をとったのでございます。  それからもう一つ、全体の事業量として、先ほど指摘のように非常に額が大きいのです。しかも予算措置が現在の状況のままで行きますと、大へん微々たるものです。それに今度は補助その他になってきますと、今度は非常に一年間におけるところの事業量が圧縮される。こういうような観点からして、現在ではこれはやむを得ないものとして考えておるのでありますが、今後とも十分にこういう点については研究いたしてみたいと考えております。
  104. 井手以誠

    井手委員 今の政治機構のもとにおける建設大臣のお言葉としてはわかりますけれども、政府の対策としては私は多くの意見を持っておるのであります。お話のように利益を受ける者が負担すべきではないか、財産に補償はできない、そういう原則は私は承知いたしておる。しかしこの地すべり対策というものは、決してお前のところは危いから早く移転せよ、そうすれば俺の方から金を貸してやるぞ、そういった簡単なものではこれはないのであります。そこにおれば人命の危険がある。本人はそこにおりたい。父祖伝来の家を守っていきたいという気持があっても、これは大局から見れば移転させなければならぬ。水田をそのままにしておいては、地すべりのおそれがあるから、それを畑に変えさせよう、そういう大きな面、公共のために地すべり地帯というものを指定して、防止工事をやらうという国の仕事ですから、これはお前の財産だから補償するわけにはいかぬ、補償はできぬ、そういう考え方は私は間違っておると思う。そういう私どもと同じ立場で主張されて、残念ながら大蔵省の反対でできなかったということは、私は答弁としてはわかりますけれども、やはり大きな立場、国土を守り民生の安定をはかろうという立場からの立法として、私は家屋移転に補助がない、特に家屋というよりも農業用施設、農舎、畜舎の補助のないということは、私は非常に残念に思っております。それがないならば、それでは金を貸す力だけでも簡単な方法はないものか、今住宅金融公庫の金がどんなにやかましい手続が要るかは、大臣も大体御存じだろうと思います。建設委員会あたりでもずいぶん聞かされたことだろうと思いますが、何かもう少し簡単にいける方法はないものですか。先刻来申し上げましたように、農舎、畜舎の方は農林漁業金融公庫でむずかしい手続をする。家屋の方は住宅金融公庫の方にお百度参りをしなければならぬ、こんな膨大な書類を作る。それでも大へんな仕事です。この地すべり地帯についての家屋移転に対しては、こういうように簡単な方法で貸そうじゃないか、こういうような特別の構想はありませんか。市町村長の認定ぐらいではできませんか。
  105. 根本龍太郎

    根本国務大臣 従来公団、公庫の手続が非常にめんどうだということで、だいぶ改善したつもりでございますが、特にこういうような問題については、現場におきまして最も時宜に適した措置を講ずるように指導しているわけでありますが、事務当局からこれについて一応御説明申し上げたいと思います。
  106. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 住宅金融公庫の方の手続が非常に複雑で、こういう場合に十分役立たないではないかというお尋ねでございますが、特にその点を考慮いたしまして、今度の法律改正におきましても若干そういう手続の簡素化について考慮いたしておるわけであります。御承知のように、住宅金融公庫の一般の申し込み受付等につきましては、金融機関に申し込みまして、状況によりましては抽せんをやったりいたしまして、貸付をいたして今お話のように若干煩瑣な手続もございます。しかし御指摘のように地すべり対策の一環として移転いたします場合には、関連事業計画というものに基いて一定の計画のもとに移転されるわけでございます。従いまして、私どもはこれについてはできるだけ手続を簡素化いたしたいと考えておりまして、従来のものは申し込みは金融機関だけになっているわけでございますが、この法律の附則において公庫法中一部を改正いたしまして、こういう場合には公共団体に申し込みができるようにいたしております。従いまして、詳細につきましてはさらに公庫においても検討いたすわけでございますが、この関連事業計画に基く移転につきましては、できるだけ取りまとめてできるように、しかもできるだけ不要な手続は要らないようにいたすように、今後とも私どもは十分に検討いたしたいと考えております。
  107. 綱島正興

    ○綱島委員 関連。ただいまの応答をよく承わっておったのですが、私は考え方に非常な錯誤があると思う。地すべり災害でございます。住宅を充足するとか何とかいうことでやるべきものでなくて、いわゆる大変地異による災害でございますから、災害対策という考え方で立法をするのでなければ、これは事実に合わない。従って先ほど建設大臣が予備費からでも出せぬことはないというお話があった。それは災害であるから、もちろん予備費から出ていいわけであります。これは住宅移転災害による住宅移転と考えないで、その他の考え方で考えていただくところに差が出てきておるのじゃないか。従って住宅公庫でこの住宅移転をやろうとかいうような結論に達したのじゃないか、こういうふうに考えるのです。これは大臣に伺いますが、これは本質的には災害対策として脚取扱いを願わなければならぬ。いわゆる普通の場合の住宅を充足するための住宅公庫の扱いというようなものでなく、むしろこれをお取扱いいただくならば、越非常災害に大体当ると私は思うのです。地すべういうものは、なるほど大きい地域からいえばそうはなりませんが、局部的に見れぱ超非常災害に当る。これは三分か幾らかで利子補給をしていただければ、それだけの補助があったことになるのですから、その超非常災害に当る程度の融資でもよろしいのです。だから、やはり三分くらいのやつで据え置き三カ年とかいうようなことでやっていただかねば、実際に合わぬと思うのです。全く住宅公序でこれをやっていただこうということは私は観念が違っておりはせぬか、基本的理念が違うのじゃないか、こう思うのです。
  108. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今綱島さんから、これは災害対策であらねばならぬと言われたのですが、これは私もさように思っております。その意味において施策をやっております。ただ問題は、その前提条件は同じでありまするが、それゆえにあなたばこれは公庫でやるべきではない、従ってこれは結局公共事業体というか、自治体に補助金でもやってやらしたらいいのじゃないかという意味にとれたのですが、私はこれは公庫でやって差しつかえないと思います。現実に災害地区につきましては、緊急、応急のための住宅に対する融資もいたしておるわけでございます。そこで問題になりましたのは、いわゆる災害対策としてやるならば、現在の公庫でやっておる手続はなるほど簡素化するにしても、利子負担が違ってしかるべきだ、ここに重点が来ているわけだと思います。これは先ほども、そこまでいく前に井手さんの御質問において、補助金制度というのはある意味における利子を負けるということにもなるし、そういう意味において実はこれは議論したのでございます。けれども、現在まで災害の場合における措置も同じにやっているから、とにかく今回は特別に一般の住宅計画と別個にこれをやるというところまではいき、しかも手続も簡素化する、また先ほど御説明申し上げましたように、普通ならば坪数も相当制限されておるわけですが、それも大体農家が多いということで、十五坪までというふうに緩和しているわけでありまするか、御趣旨の点は十分わかりまするから、今後この問題については、関係省特に大蔵省と十分に検討して善処したいと思います。基本的な災害の施策であるという点については、御指摘通りに考えている次第であります。
  109. 綱島正興

    ○綱島委員 この第三条を見ますと、二重にも三重にもがんじがらめで地域指定を非常に困難にするような規定がございます。地すべりが起り、または起るおそれのある地域ということはいいですが、「誘発するおそれのきわめて大きいもの」というきわめて大きいというのは、法律にはめったに害いてない作文のような文章で、こういうものはめったにありません。それから公共利害に密接な関連を有するもの」というように、特に密接という字を用いてある。それからその第二項に「前項の指定は、この法律目的を達成するため必要な最小限度のものでなければならない。」こういう点等から見て、これは建設省農林省も非常に御努力になったんでしょうが、大蔵省が銭をやるまい、なるべく指出定はさせないようにする、指定はさせたとしても、その目的を達するため最小限度にしておこう、こういうような用意が非常にあって、これは世間の俗な言葉でいえば、建設省農林省が負けたように見えるので、この負けはちょっと私どもの気に入らぬのです。これは何のためにこういったがんじがらめな、全く手のつけられないようなものにされたのか。また法制局がよくこんな法律を書いたと思うのですが、こんな文章というものは前例かどっかにあるのですか。法律はみななるべくりっぱに施行することのできるように、精明に規定するのが当りまえなのに、がんじがらめにして、まるでなるべくできぬようにしようというので、そっちこっちからくさびを打ち込んで作った法文、こういうものはどうも僕には気に入らぬのです。これは委員会としてはなかなか疑問が多いんじゃないかと思う。幸い農林委員会でありませんが、農林委員会に来ればこういうものは承知しません。建設委員会も常識をお持ちだろうから、こういう法律は私はちょっと困ると思うのですかね。法制局のどなたか——河川局の次長さんでもいいですか、こういう法律の類例があなたの方に何かございますか。
  110. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいま綱島先生から御意見があったわけでありますが、それはこの地すべり防止区域といたしまして主務大臣指定いたします場合の区域の表現についてのことであったと思います。この表現につきましては、まず忠実に書きました精神は、地すべりという現象を起しておる地帯を具体的にとらまえるように書いたことがその第一点でございます。従いまして、「主務大臣は、この法律目的を達成するため必要があると認めるときは、」というところから地すべり区域というものが出て参りますか、これは地すべりをしている区域、それから地すべりのおそれの大きい地域、こういうことでいわゆる地すべり区域というものをとらまえました。(「重大とあるではないか」と呼ぶ者あり)「おそれのきわめて大きいもの」とありまして、重大とは書いてございません。これは現象的にとらまえておりまして、決して価値判断をしているわけじゃないのです。現在の河川でありますとか、あるいは道路の場合で申しますと、公共利害に重大な関係のある河川というものは建設大臣が適用河川とする、こういうふうな青き方で、重大というふうな表現をいたしまして法律一の適用区分をいたしておりますが、今回の第三条は、要するに物理的に地すべりを起しておる、こういうところを忠実にいかにとらまえるかということをと重点法律表現を用いておる、こういうことであります。従って、地すべり防止区域法律上の効果として現われますものも、やはり行為制限ということも出て参ります。またそれに関連した防止工事計画というものも国の事業として国が立てて、そうしてその工事地方知事をして実施せしめる、こういう態勢になっておりますものですから、第二項に、この目的の達成のため必要最小限度のもの、こういう表現を入れたのでございます。従って公共の利益に密接な関係という意味の条文がまた縛りになるのじゃないかという御疑念をお持ちになったのでございますが、これはまさしくこの法律の第一条の目的国土保全民生の安定というところが公共の利益に密接な関連を持っておる、こういう意味にほかならないのでございまして、第三条は、地すべり現象を起しておる地帯をまずとらまえる方式を立てまして、そうして第一条の目的条項でもってこの法律区域指定をする基準といたした、こういうふうに御理解願いたいのでございます。
  111. 綱島正興

    ○綱島委員 いろいろあなた説明をされたが、とらまえるためならば、この特別な修辞を用いる必要はない。法律というものは役人同士の、大蔵省の役人とあなた方とのないしょの文章じゃないのです。国民が見るものです。法律というものは国民に見せるために作るもものなんだ。こういう法律は適用しないのだというに近いものだ。こう書かなければわからぬかといえばみなわかる。密接という字をとったってわかるのですよ。それは河川が大きな河川と小さい河川とで重大な利害があるとかなんとかいうのは、それはありますよ。しかしこうやって四方八方からがんじがらめにした条文がよそにあるか、こう聞いておる。それは重大なという言葉があるということくらい、私は法律家だから知っておる。こういうことはまれだから言っておるので、議員が質問をするのは知らぬのを君に習うのではない。君らに教えているのだから……。こういう表現というものは、この地すべり地帯というものが非常に重大な問題になってきて、世論が起ってきておるときに、ちょうど水をかけるような条文で、これは私はおもしろくないと思う。何のためにこういう条文を羅列しておるか。どこかあったらもうやらぬのだぞというに近い。ちょっと書きかえてみたらてどうですか。もう少し注意して、やはり地すべり地帯の身になって書いてもらわないと、こういう文章はちょっと私どもは受け取れない。私は関連だからこのくらいにしておきます。あとでやります。
  112. 井手以誠

    井手委員 非常になごやかな質疑応答のようでありますけれども、この内容はきわめて深刻であります。  そこでまたもとの家屋移転の問題に戻りますが、住宅金融公庫から借りれば五分五厘、農林漁業金融公庫から借りれば七分五厘、元金を払った十に利子も払わなくちゃならぬ。片方では農地もなくし、家産も移転しなくちゃならぬ、こういう事態で、利子まで本人に払わせる建設省の方針ですか。何かそこにいい案でもお持ちでございますか。政府では利子の補給はできないけれども、これは県と市町村にやらせるのだとかなんとか、もっとあたたかい、実態に沿うようなお考えをお持ちであれば、この際大臣から、ほかの方でもけっこうですが、七分五厘の利子を払う、元金も戻さなくちゃならぬ、てんやわんやの移転者に対する利子補給の問題について、構想があれば承わりたいと思います。
  113. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 今度の地すべり移転に対する貸付の条件でございますが、これはまず災害に準ずるものと私ども考えまして、第一には特に従来一般の場合に対してやっておりませんところの併置期間を設けて、できるだけ負担の軽減をはかったわけでございます。その他利子につきましては、災害の際に災害復興住宅という貸付をいたしておりますが、その際にも同じ五分五厘で融資をいたしておるわけでございまして、その例にならった次第でございます。私どもといたしましては、現在の建前におきましてできるだけ借り入れやすいように努力をいたした次第でございます。
  114. 井手以誠

    井手委員 ただいままでお聞きしたところによりますと、それでは家屋移転者の実情に沿うものでないように私は思います。私は本日はその問題については追及いたしませんが、やはり家屋を移転する人の身になって、どうしたならばすみやかに金が届くのか、移転かできるのか、利子補給という問題はどうするのか、あるいは手続はどうするのか、ただいままでお聞きしたお話によると、窓口を市町村にやらせるとか、あるいは措置期間があるとか、こういうような話でございますし、一方では災害のときには災害復興住宅もあるなどという御答弁もされております。しかし家屋を移転する者はほとんど農家であります。農家の者か災害のときの何坪かの仮設住宅みたいなもので済まされるはずはないのであります。もちろんあの仮設住宅とは私は考えておりませんけれども、そのようなお考えではとても農山村における農業経営をあらためてやらせようという対策にはならぬと思う。従って補助ができないものであるならば、それではそれにかわる方法として、こういうふうに簡単な手続ですみやかに資金か回るようにいたしますとか、あるいは利子の点についてはこういうふうに考えておりますとか、そういうふうに罹災者が安心して移転に応ぜられるような、前は土地利用計画と出しておりましたが今度は関連事業となっておりますけれども関連事業によって家屋を移転しなければならぬ者がすみやかにできるような家屋移転の具体策を、あるいは政令に盛られるものもございましょう、それもあわせて、一つ次の機会に具体的に御答弁がいただけるように御用意が願いたいと思いますが、いかがでございますか。特に私はあわせてお尋ねいたしたいのは、この家屋を移転するものは先刻も申し上げましたようにほとんどが農家である。これは農林省のあなた方の方の所管である。この農家の経営を守っていくためには、こういう程度のものでいいかどうか、私はこういう対策ではとても移転に応じられない、この程度では農業経営をやっていけないと思う。だからここで答弁は求めませんけれども一つ両省打ち合せて、これならば大丈夫移転が促進されるという具体的な方法をこの次の機会までに御用意を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  115. 山本三郎

    山本(三)政府委員 ただいままでいろいろ御説明申し上げて参りましたけれども、手続の問題等につきましては、具体的に今までこうやっていた、今回の分につきましてはこういうふうにするというような点は、はっきり申し上げられるように準備いたします。
  116. 井手以誠

    井手委員 その対策が示されてから、あらためてさらに疑問のある点は御質問いたしたいと考えております。  次にこの条文で感じましたのは、関連事業計画にボタ山の点が抜けておるようであります。御存じかもしれませんけれども、所有の者判明しないボタ山、そのボタ山の下には所によりますと多くの家屋があるわけであります。危険に瀕しておる家屋を移転させなければならぬ地区かかなり多いのであります。そういう地帯の家屋はこの政府案によりますると家屋移転対策対象になっていない。条文から申しますと読みかえには該当いたさないのであります。従ってボタ山の下にある家屋を移転しようという場合には、金も貸されない、補助金もない、こういう結論になるようでありますが、この点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  117. 関盛吉雄

    関盛説明員 ボタ山の崩壊防止区域指定した場合における、その区域隣接する地帯住宅その他の部分についての関連事業計画が本法の条項にないじゃないか、こういう御意見でございますが、これは地すべりの現象とボタ山の現象というのは若干趣きを異にしておるということかもう一つの理由でございます。大体地すべりは異常な天然現象がなくても、先ほどお話か出ておりますように、地質の状況によりましてある一定の方向に向って地すべりを起しておるわけでございます。従ってその程度も方向も判明できるのが通常の状態でございます。従ってこれを未然に防止するということを関連事業計画の具体の内容といたしまして、危険区域につきましても含めまして立てるということが可能であり、また有効経済的でありますが、ボタ山の場合におきましては、異常な降雨等によって崩壊するのが一般でありまして、若干これらの崩壊の原因等につきまして地すべり現象とは趣きを異にしておるというようなのが実態でございます。またボタ山におきましては、地すべりの場合と比較いたしましてそのボタ山自体の有効利用の状況というものが、宅地につきましてもまた農地につきましても事例があまり趣きを異にしておる、こういうのが実際の状況でありますので、従って関連事業による計画を立てるということをボタ山については地すべりと同様にはいたさなかったのでございます。ただ問題は、ボタ山の場合においては周辺地の住宅の問題につきましては、いろいろな方法でこの事業というよりは、むしろ公営住宅あるいは産労住宅等の方法によりまして措置すべき必要のものは逐次やっておるのでございます。
  118. 井手以誠

    井手委員 どうもその点は、両省が話し合いをして作られたこの法案の過程において、抜けたものじゃないかというような感が私はいたすのであります。あなたは地すべりとは違うとおっしゃいましたが、なるほど地すべりの現象とボタ山の崩壊とは違うのであります。違うけれども災害防止しようという立場からは、第一条に、地すべり及びボタ山の崩壊防止するためと書いてある、そうであるならば、現象は違いましても被害は同じ程度に大きなものを及ぼすものでありますから、家屋移転の場合にも関連事業として、あるいは農地と一緒に計画が立てられないならば別にして、やはり家屋移転には融資の道を講じてやるのが私は親切ではないかと思う。ボタ山に対する次長さんの認識が足らぬのじゃないか、ボタ山というのは上からざらざら、ざら今でも落ちておりますよ。所によると雨が降りますとどうっと流れてきまして、私は目の前に十軒も十五軒も炭鉱の住宅がつぶれたことを見ております。そんな危険な場合に資金かないために家屋移転ができない、そういうものに対して融資の道を講じてやることが、私は本法案の大きなねらいの一つではないかと思う。あなたの方は原案を出されたのであるから、それは間違いであったとは言われぬでしょうけれども、私は同一に見るべきがほんとうじゃないかと思う。この点は福岡県選出の国会議員の方は非常に強く要望されておる、なぜ抜かしたんだと私に文句を言われるくらいに非常に強い要望があるわけです。隣にいらっしゃる法律家の綱島先生も同様な見解であります。やはりそれにはその必要がない、ほかの法律でかまわぬ、産労住宅なんかでいいという考えですか。それでりっぱにできますか。私はここに、読みかえの条文から申せば、当然読みかえの中に入れて、ボタ山の下にある危険な家居の移転については同様融資の道が講ぜらるべきだと思いますが、どうですか。
  119. 関盛吉雄

    関盛説明員 ただいま種々御意を承わったのでございますが、ボタ山の崩壊防止につきましての対策をまずこの法律重点と考えました。従いましてそれに関連する事業地すべりとは違ったもので、ただ具体的に一部の地帯において住宅等の必要の措置を講ずべきものは産労並びに公営住宅等の運用によりまして、住宅局の方におきましてこの法律を待つまでもなく実施するという計画で進めておりますので、今回の特別立法の中には考えなかった、こういうことでございます。
  120. 井手以誠

    井手委員 それでは重ねてお尋ねしますが、ボタ山の崩壊地すべりの現象の被害除却し、防止する、そしてもって国土保全民生の安定をはかるという目的からいきますならば、私は何も差はないと思います。ボタ山の真下にたくさんの家が並んでおる、もう裏口までどんどんすべってきておるのもあります。そういう危険な状態だから関係方面から強い要望があって私はこの法にも盛られたと思っております。それはほかの法律でできるのだとおっしゃいますが、そう簡単にできるのではございません。これは入れてもよかったというお感じはございませんか。あなたの方からはこれは間違ったとは言えませんでしょうが、同じ目的じゃございませんか。被害を未然に防止する、そして国土保全し、民生を安定するを目的とするというこの第一条の目的からいえば、同じことですよ。所によっては危険はもっと大きいかもしれません、もっと切迫しておるかもしれません。それは福岡県、長崎県、佐賀県の事態を見ればおわかりだと思うのです。
  121. 関盛吉雄

    関盛説明員 ボタ山全体の問題のうち、本法律案対象とするボタ山の部分は、鉱業権者もしくは鉱業権者とみなされる所有権のないボタ山についての防止工事を主調といたしておりますので、すべてのボタ山の周辺にある住宅等がこの法律対象になるわけでもございません。従って権利者が当然負担して現在においても実施すべきものも入っておりますし、その点は地すべり地帯の現象とは、またそのとらまえ方の態様も、緊急工合によりまして本法律案の実際の対象としては趣きは異にしておる、こういう考え方で原案かできておるのでございます。
  122. 井手以誠

    井手委員 私も鉱業権者のはっきりしたものがこの法案対象外であることは十分承知しております。鉱業権者が不明であってどうにもならぬからこの法律を幸いにこれで救おうというのが、ボタ山崩壊防止するこの法律案目的です。それは私は百も承知しております。これ以上は意見にもなりますし、またあとで質問なり意見を申し述べる機会があると思いますので、この程度にしておきます。  最後にもう一点お伺いをいたしたいのは——ほかにたくさんありますけれども、時間がありませんし、ほかにも質問者かあるようですから、あと一点程度にとどめておきますが、補助率の問題であります。補助率が低いということ。ただ読みかえによって昭和三十三年度に限り高率の補助を適用するということになっておりますが、三十三年度だけではどうにもなりません。本来ならばこれは読みかえじゃなくて、当分の間と基本法に盛るべきだと思うのです。それはどういうふうにお考えになっておりますか。
  123. 関盛吉雄

    関盛説明員 補助率の点については、三十三年度というふうに法律案附則の第三条において規定いたしましたのは、実は昭和三十年度から地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫の負担等の臨時特例に関する法律がございまして、その法律によりまして三十年度以降国の負担金補助額の率が引き上げられておるのでございます。しかもこの法律昭和三十三年度一ぱいでもって効力をなくすることになっておるのであります。従ってこの表現といたしましては、本則の方におきまして、それぞれ現在やっておりますところの国の負担率を明記いたしまして、附則の第三条におきまして三十三年度ということを規定いたしましたのは、一面において地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫の負担等の臨時特例に関する法律が三十三年度一ぱいをもって切れますので、切れる年度に臨特に関することを書くのもおかしい。従って三十四年度にあの法律がさらに続くという形になれば、第三条の附則もそれに平仄を合わせた格好になるということで、国と地方公共団体の負担区分に関する一般の例によりまして、三十三年度において臨時特例が適用されておると同じ格好の実質効果をここに規定したわけであります。従って将来臨時特例に関する法律の取扱い方とこれは平仄をまたそのときになって合わすべきことであるというので、この法律案ではかような表現になっております。
  124. 井手以誠

    井手委員 そうしますと不幸にして臨時特例が廃止になれば、三十三年度は高率補助であったが、三十四年度からは補助率が落ちるということになりますね。
  125. 関盛吉雄

    関盛説明員 この法律案が本則でさように規定いたしておりますので、ただいまの御意見通りでございます。
  126. 井手以誠

    井手委員 それでは災害防除という大きな精神から出発した災害防止工事についてやや定見が足りないような気がします。あなたの方はもっと高率補助が必要であったけれども、大蔵省がなかなかのまなかった、幸い臨時特例によって救えるのだ、またこれが延びるかもしれない、そうすればなお幸いだというお気持だろうと思っておりますけれども、そのくらいではどうも定見が足りないと思う。もっと強い筋を通してもらわなければならぬ。災害防止工事をやるならば大蔵省とけんかしてもかまわぬ、そのくらいの意気でやるべきだと思う。あくまで本則でうたうべきだと思う。これは地方団体では非常に不安がっておりますが、この際大臣からその点について伺いたいと思います。
  127. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この問題は本法ばかりではありませんで、道路関係その他みなございます。そこで実はこの問題については、この法律案で特に自治庁の関係が密接な関係がありまして、補助金に関する特例について本年中にさらに延期の法律を作ろうじゃないかという議論もあったのであります。しかしながら現在では本年一ぱい存続期間のあるものをやるのもおかしいということで、これはそのままになっております。そこでこの法律を作る場合においてもいろいろ議論がございまして、そのためになかなか議論がまとまらなかった。道路法についても同様でございます。そこで補助金の特例に関する法律は、御承知のように地方財政が非常に窮迫しておるからという特殊の事情によってできたものでありますが、最近は地方財政もよくなったから廃止してもいいという議論で参っておりますのが観点を変えて、地方財政の問題と別個に、災害に関するところの公共事業の推進のために、より事業をりっぱにというか積極的にやるという観点において、別個の観点から来年これを取り上げようではないかということで、自治庁とわれわれの方は今共同に研究をしているという状況であります。従いましてこれは明年度特例に関する法律案が失効することになる場合においてあらためて議論しようということになっておるのであります。実際はそういう状況でありまして、実は法制局も中に立ちまして、この条文を入れるか入れないかの問題で相当時間をかけた問題でありまして、今後ともこれは自治庁、農林省、われわれの方、運輸省みな関係がありますので、これらが相ともに協力いたしまして研究を進めて参りたいと考えておる次第であります。
  128. 井手以誠

    井手委員 法制上からいってもこういうものはおかしいですよ。しかし私はこの法案に限っては与党的立場でございますから、これ以上は文句は申しません。しかし私は百歩譲っても当分の間くらいは書くべきであったと思う。三十三年度に限りというのは、法文としては不体裁ですよ。当分の間ということと臨時特例とはどういう関連があるか、これは法文の作りようです。私が法制局の中におりますればそんなものは一晩でできる。五分間でできます。その点はなお審議の過程で話を進めるといたしましてもう一点だけついでに伺います。  この補助率の中に渓流工事工事である、ほかの方は工事ではない、しかし工事関連した密接不可分のものが多いと思っておりますが、これは農林省関係が深いと思いますけれども、それでよろしゅうございますか、確信がか持てますか。
  129. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 渓流工事の補助率は三十三年度は四分の三となっておりますが、これに関連して直接渓流に土砂を排出することを防止する防止工事も含めているわけであります。そこで御質問の点について申し上げますと、農林省は、林野庁が行いますようなことと農地局が行います場合とその他の場合がございますが、特に高率であればこの種のものは公共性をうたっておりますから望ましいと思いますが、だんだんお話がありましたように、地すべり工事、そのうちの高率補助の渓流工事に関する限りば、関連工事も他の農地でやっております防災等との関係もございまして、補助率は国が二分の一を限度として普通の防災よりも一割方高くする、こういうことでやられるのではないかと思ったのであります。なぜかと申しますと、普通の土地改良事業では直接に農民に受益者の負担がいきますが、この法案で実施をいたします限りにおいては、都道府県、それから市町村関連工事を行いますことがむしろ原則でありまして、他の場合は例外でございまして、農民負担が少くなって公共的団体が全額を持つ、またはそれに近い、こう見まして他の銀行でできるのではないか、こういうふうに見たのであります。もちろん三十三年度の予算折衝に当りまして、でき上りました予算との関連からも配慮をいたしたのでありますが、将来どうしてもうまくない、こういうことになれば、その推移に従って再検討をすべき点もあるかと思います。
  130. 西村直己

    西村委員長 綱島正興君。
  131. 綱島正興

    ○綱島委員 今までずいぶん詳しく皆さん御質問がございましたから、私は少しだけ質問いたしますが、その前に、ただいま安田局長の答弁された二十九条の一項、二項この二項の国の負担分が二分の一となっておるそうでありますが、これは、どうも私は一項と区別する理由は一つもないと思うのです。ことに耕地の砂防のごときは、地すべりの場合は、かえってよけいかかるのではないかと思うから、別に二分の一の分だけを上げることは、地すべりに原因があるものに限っては、ちょっと無理じゃないかと思う。これは御考慮を払われたと思うけれども農地局長いかがです。
  132. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 非常にお詳しい綱島先生の御意見で、現地に即する御意見かとも思いまするが、予算要求案を編成いたします場合に相当かんばりまして、原則的に二分の一となった沿革がございましたので、事務的にはこの辺で立案をするよりやむを得なかったという実情なのです。
  133. 綱島正興

    ○綱島委員 この前の一項は、要するに砂防で林野庁建設省との関係だ、二項は農地局関係だ。地すべりの場合は、農地復旧は山や何かを復旧したり、あるいは予防したりすることは、実は山のやつは水を抜くにしても割合に楽ですが、平地の水抜きは山よりはむずかしくて、費用はこの方がかさむのだから、国家の補助率は、この方が逆に高くてもいいのだ。私どもは採決にかたらぬですけれども建設委員の方は御注意を願いたい。これは私は意見だけ申し上げておきます。  それから次に伺いたいのでありますが、地すべりは、三紀層の上に玄武岩が乗っておる地帯、特にその上のかぶりの深いところはそれほどでもないが、薄い地帯は非常に危険が多い。これはちょっと予測を許さぬ。相当金をかけて調査をしなくちゃわからぬ事情にある。他の、たとえば酸性白土のやつ、古世紀層のやつ、あなた方が今までやっておられる砂防はこういうやつです。今までやっておらぬのが、大体三紀層の上に玄武岩が乗っかっておって、そうして降った水を地核の方に容赦なく吸い込んでしまって大きな地すべりを起す地帯、この二つの書き分けが一つもこの法案の中にないようですが、これで大体両方とも共通していけますか。たとえば、三紀層の上に玄武岩が乗っておる地帯は、調査に非常に金を食う地域です。これについての配慮は、どの条文をうかがえばわかるか、どうぞ御説明を願いたい。
  134. 山本三郎

    山本(三)政府委員 この点につきましては、しばしば御教示をいただいておった部面もございまして、むずかしい問題であるということは、私どもよく承知しております。従いまして、今までは地方公共団体等が調査をしておりましたけれども、来年度は、特に国で調査しようということにいたしまして、地域指定にあたりましても調査をする。今度工事実施の基本計画を作るときも、実際にボーリングなり、あるいは地質の状況をもっとよく調査をやろうということで、直轄の調査費を計上いたしました。従いまして、今むずかしい問題は仰せの通りでございますので、そういう点に重点を置いてやりたいということにしておりまして、法文上には国が調査するという点が特に書いてありまして、国で調査するのでありますから、農林省ともよく連絡いたしまして、むずかしい地帯には特に調査を入念にやろうというふうに考えておるわけであります。
  135. 綱島正興

    ○綱島委員 それさえあればよろしいのでございます。
  136. 西村直己

    西村委員長 他に御質問はありませんか——。ございませんければ、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十七分散会