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1958-03-25 第28回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 須磨彌吉郎君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       野田 武夫君    松田竹千代君       松本 俊一君    田中 稔男君       森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      鈴木 壽一君         外務参事官   藤崎 万里君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月十九日  委員中居英太郎君及び原茂辞任につき、その  補欠として田中織之進君及び勝間田清一君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十五日  委員北澤直吉君、薄田美朝君、岡田春夫君及び  勝間田清一辞任につき、その補欠として小坂  善太郎君、大橋忠一君、八百板正君及び西村彰  一君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する日本国とインドとの間の協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)(  参議院送付)  人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第九号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を許します。戸叶君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本でも売春防止法が、いろいろ問題がありましたけれども、通りまして、四月一日からいよいよ完全実施ということになって、それに伴いまして日本の婦人が国際的な人身売買条約にも早く加盟すべきであるということを前々から言っておりましたが、条約がようやくここに出されましたことは、おそまきながらいいと思うのですが、そこで二、三点条約についての質問をしたいと思います。  まず第一条にあります「拐去」ということは、どういうふうなことであるかを伺いたいと思います。誘拐拉致するという意味ならば、売春による罪ばかりでなくて、ほかの刑事罰が課せられると思いますけれども、わが国には一体これに該当する罪があるかどうか、これをまず伺いたいと思います。
  4. 藤崎万里

    藤崎説明員 第一条にある「拐去」と申しますのは、人を現在の環境から連れ出して自己の事実的な支配下に置くことをいう、かように解釈しております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本にはこれに該当する罪があるのですか。
  6. 鈴木壽一

    鈴木説明員 「拐去」という言葉に該当する罪といたしましては、刑法二百二十四条未成年者略取誘拐罪、それから二百二十五条の営利誘拐等、それから売春防止法、これは四月から罰則が適用されるわけでありますが、七条一項、二項にございます困惑等による売春、それから児童福祉法の三十四条一項七号、六十条二項、これらの罪が「拐去」に当ると存じます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に第三条の「違反行為の未遂及び予備」について、罰則国内にもあるのですか。
  8. 鈴木壽一

    鈴木説明員 これはあるものもございますし、ないものもございます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 あるものもないものもあるということになりますと、こういうふうな条約に加盟したときに条約違反になりはしないでしょうか。
  10. 藤崎万里

    藤崎説明員 この条約に「国内法が認める範囲内で」とございますので、そういう問題は起らない次第でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第一条、第二条を見ると、これは業者とかそれに類似する人に対する処罰が中心になっている条約でございまして、日本売春防止法と同じように、売春婦についての直接の刑罰ということはないわけでございますけれども、この条約そのものの中では売春婦に対する保護更生ということには何ら触れられておらないのですが、この条約が成立する過程においてそうした保護更生というような面での論議は一体行われたものでしょうか、どうですか。
  12. 藤崎万里

    藤崎説明員 この条約の十六条に「この条約締約国は、その公私の教育、保健、社会経済その他の関係機関を通じて、売春防止並びに売春及びこの条約に掲げる違反行為被害者更生及び社会的補導のための措置を執り、又はこれを奨励することに同意する。」という規定があるわけでございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ここにその程度のことは述べられておりますけれども、売春防止する以上は、そういった売春婦保護更生ということが考えられていかなければならないわけです。一応ここにはうたってありますけれども、売春防止するため、売春婦人たちがそういうところに行かないでもいいようにするための保護更生施設がこの程度に必要だとか、あるいはこうなければならないということが、当然議論されたのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。と申しますのは、日本の場合に当然必要とされる最小限度の予算として関係各省から二十一億円要求しておりましたにもかかわらず、五億一千万円しか実際においては組まれていなかったというようなことから見ましても、条約に加盟する以上は、今読み上げられた十六条にしるされておりますような目的を、十分達成するための更生施設が、今日日本には大へんに少いように思うのですけれども、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  14. 藤崎万里

    藤崎説明員 私どもが会議記録等で調べた範囲では、あまり立ち入った議論はなかったようでございます。こういう第十六条に掲げられてありますような内容のことは、本質的に国内事項でございまして、国際協力の分野であまり細目にまで立ち入って指図するというのはどういうものかと考えられた結果ではないかと想像いたすわけでございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ほかの国にはあまりないと思うのですけれども、日本には待合という制度がありますね。その待合というのは第二条の中に一体入るのでしょうか、入らないのでしょうか。大体第二条の二号に日本待合は入るのじゃないかと思いますけれども、その点を伺っておきます。
  16. 鈴木壽一

    鈴木説明員 待合実態がどういうものかというのは、場所によっても違うのじゃないかと思われます。ある場合には売春のために場所を提供したという売春防止法の罪に当る場合も多かろうと思います。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今私がお聞きしました質問そのもの答弁はまだ伺っていないように思うのですけれども……。この二号に一体入るのか入らないのかということを伺っているのです。
  18. 鈴木壽一

    鈴木説明員 第二条第二号に入ると存じます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この条約に加盟して参りますと、日本待合というものは、今あるままの姿では許されていかないような面が出てくるのじゃなかろうかと思うのですけれども、その点はいかがでございますか。この条約違反になるような場合が出てきはしないかと思うのです。
  20. 鈴木壽一

    鈴木説明員 そういう場合も多分にあると存じます。先ほども申し上げましたように、待合というものの実態が必ずしも同一のものではございませんので、一概には申し上げられませんけれども、待合の中にはこの条約の二条二号、それから売春防止法場所提供罪、これらに当るものもたくさんあるのじゃないかと考えます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 あとでまた法務委員会等の問題になってくると思うのですが、今日は一応この条約関係のことだけずっと伺っていきたいと思うのです。  次に伺いたいことは、第四条の「加担行為」というのがあるのですけれども、日本の国の法律では四条にしるされている加担行為についてはどういう概念を持っているのでしょうか。たとえばアパートとかホテル事情を知らずに宿泊させた者の売春行為が摘発された場合、アパートとかホテル責任者加担行為と認定されるのでしょうかどうでしょうか。
  22. 鈴木壽一

    鈴木説明員 「加担行為」と条約にいっておりますのは非常に広い概念であると存じます。日本法律における教唆とか幇助等も含めた共犯という概念よりも、もっとばく然とした意味に使われているように考えます。日本では教唆とか幇助とかいうものになりますと、処罰される行為になっておるわけでございます。ここの四条の二項で加担行為特別罪と申しますか独立罪として扱うということをいっておりますのは、たとえばポン引き行為でありますが、これは売春宿経営者幇助行為としてここにいう加担行為であると見られると考えるのでありますが、しかし、売春防止法ではこれを特別の罪として六条の二項の一号でしたかで罰しておるわけでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、その後半の方と日本売春防止法の方との関係は、食い違いが出てくるのじゃないでしょうか。それは出てきませんか。
  24. 鈴木壽一

    鈴木説明員 食い違いはないと存じます。ちょっと私おっしゃる意味がよくわからなかったのですが。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃ違う角度から伺いますけれども、この四条の後半のいっていることは、どういうことをいっているわけでしょうか。「加担行為は、」から「取り扱われるものとする。」という、その内容はどういうことをいっているのでしょうか。
  26. 鈴木壽一

    鈴木説明員 これは先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、加担行為は本来教唆とか、あるいは幇助とかいう形で罰することのできる行為でございます。しかしそれをある罪の教唆とか、幇助とかいう形で罰するのではなしに、特別の罪として加担行為自体を罰する。そういうこともできるのだというのが第二項の趣旨だと考えます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わかりました。そうすると、この条約加入している国が、二十カ国としてここに書かれているわけなんですけれども、その中には、米英とか、それからフランスとか、ドイツとか、カナダとかいうような国が入っておらないで、ソ連とか、東欧諸国とか、中南米諸国とか、中近東、アジア諸国の一部しか入っていないのですけれども、こういうふうな国々が入らない理由が、一体どこにあるかということを、どういうふうにお考えになるかを伺いたいのと、それからもう一つは、たとえばアメリカなんかが入っておりませんのは、州法によって違うというようなこともあると思いますけれども、アメリカのどこの州も、たしか公娼は禁止しているはずだと思うのですけれども、そうした場合にどうして入らないかということをまず疑問に思うのですが、この点はどうなんでしょうか。
  28. 藤崎万里

    藤崎説明員 アメリカについては、今御指摘通りであります。現実にこれに入ることの障害があるかどうかは別にしまして、事柄が法律上州の権限に属する以上は、合衆国政府としては、対外的に国際法上の制約を受けるようなことは留保なしにはできないということになると存じます。英国につまきしても、フランスにつきましても、それぞれ独自の事情がいろいろあるわけでございますが、両方に共通しているのは、この条約が無条件に植民地について適用があるということのために入らなかった、かように承知いたしております。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではおしまいの方に、特に何々のためといって、いろいろな国があげられてあるわけですね。まだ批准とか、国連に加入書を寄託しておらない国のために、何々のためといって何カ国かあげてあるわけです。四十くらいだと思うのですが、そうしますと、独立国全部に一応そういうふうな、これを何々のためと、各独立国をあげてもいいはずであるにもかかわらず、ここに、ある特定の国をピック・アップしてあるのですけれども、これはどういう関係で、こういう国をここにピック・アップしてあるのでしょうか。
  30. 藤崎万里

    藤崎説明員 これはこの条約が採択されまして、署名のために会合されたその日に、会議に参加した国名だけをあげているわけであります。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わかりました。それでは、第五条に「被害者」というのがあるのですが、被害者というのはどういう何を意味するのかを伺いたいと思うのです。通常、外国人は住んでいる国の刑事裁判管轄権に服することになっているはずであります。従ってその権利義務については、その国にいる内国民と同じであると思うのです。そうなるとすると、この第五条を特にここに設けた理由が私はわからないのです。というのは、一般国際法でここにしるされているようなことは当然であるにもかかわらず、ここにわざわざ第五条を持ってきた理由は何にあるのでしょうか。
  32. 藤崎万里

    藤崎説明員 第五条の規定は、必ずしも規定がなくても当然に行われるべきはずのことだとも言い切れないのではないか、かように考えております。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 当然にこれがなくてもいいとも思われない、一応必要だとおっしゃる、その具体的な実例はどういうことなんでしょうか。
  34. 鈴木壽一

    鈴木説明員 この条文は実は日本の国には関係のない条文だと私ども考えております。と申しますのは、日本では刑事訴訟法におきまして当事者となりますのは、検察官と被告人ということになっておりますので、私人訴追に基きまして刑事訴訟が係属するという事態が起らないわけであります。ところが外国におきましては、私人訴追することによって刑事訴訟がいきなり裁判所に係属するという法制を持った国がございます。この条文はそういう法制を持った国におきまして、外国人といえどもやはりその私人訴追権限を行使することができるということを規定したものと考えております。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の法務省の、大体日本にはこういうものは必要でないというお答えで大体わかったわけなんですけれども、その次に第七条の二項に「犯罪者公権を行使する資格を喪失させるため。」という言葉がありますけれども、日本ではここにしるされているようなことによっての罪は、公僕としての権利公権を剥奪されるような場合はないように思いますけれども、外国にはそういう例があるのでしょうか。
  36. 鈴木壽一

    鈴木説明員 外国の例をあまり渉猟してはおりませんけれども、日本ではおっしゃる通り、こういう事態の起ることはございません。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第八条に「犯罪人引渡条約」というのがあるのですけれども、日本犯罪人引渡条約を結んでいる国はどことどこでしょうか。
  38. 藤崎万里

    藤崎説明員 アメリカとだけであります。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカとだけということになりますと、実際この犯罪人引渡条約を結んでも大した影響がないというわけで結ばれないのでございましょうか、どうでしょうか。
  40. 藤崎万里

    藤崎説明員 具体的にその必要が感ぜられる場合が日本の場合には少いということが、あまり多数の国と結んでいない理由でございます。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 結ばれていても効果があまりないのじゃないですか。犯罪人引渡条約を結んでいましても、裁判権の問題で、たとえばアメリカの人が日本で何か悪いことをしてアメリカへ帰ってしまう、その場合に日本の国が要求しても、その犯罪人日本引き渡さないわけです。アメリカの方で裁判なり何なりをする。そうなってくると犯罪人引渡条約というものを結んでおいても、実際上は最後にはその効力が薄いのじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  42. 藤崎万里

    藤崎説明員 今お引きになった例の場合が、犯罪人引渡条約に規定されている場合にぴったり当てはまるかどうか、ちょっと疑問に思うのでございますが、現実の問題といたしましては、犯罪人引渡条約が結んでなくても政治犯罪人以外のものならば、お互いに協力という面で引き渡しが行われたりするという方から、その必要があまり感ぜられない事情にあるのだと考えております。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう少し具体的に申しますと、たとえば日米関係で両国間に先ほどおっしゃったように犯罪人引渡条約というものがあるわけですけれども、その七条で「互ニ具臣民引渡スノ義務ナキモノトス具引渡至当ト認ムルトキハヲ引渡スコトヲ得ヘシ」とあるわけでございますけれども、その条約が発効してから、この条項の規定アメリカ日本の間に自国民犯罪人を一体引き渡したというような例がありますかどうでしょうか。
  44. 藤崎万里

    藤崎説明員 自国民引き渡しをやったことは、今までこの条約のもとでなかったはずであると考えております。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この犯罪人引渡条約の七条のただし書きの「引渡至当ト認ムルトキハヲ引渡スコトヲ得ヘシ」とありますけれども、実際においてはそういうことはほとんどないと理解してもいいわけなんでしょうか。ないものならば結局犯罪人引渡条約というものは効果がないのじゃないでしょうか。
  46. 藤崎万里

    藤崎説明員 犯罪人引渡条約に犯罪人引き渡しが行われるような犯罪の種類も列挙してあるわけでございますので、そういう面からいうと、犯罪人引渡条締結効果というものは、御指摘のように局限されておると感じられます。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先日日本アメリカ人が何か悪いことをして逃げていった、それに対して日本では当然一応アメリカに対して犯罪人引き渡しというようなことを申し出られると思うのですけれども、実際にそういうようなことがあった場合に、日本アメリカ側引き渡しに関する申し入れをおやりになっているかどうか、この点を伺いたいと思います。
  48. 鈴木壽一

    鈴木説明員 古いことはよく存じませんが、最近におきましては、犯罪人引き渡しを実際に請求したという事例はございません。先ごろ新聞紙上でいろいろそれに関する記事が出たわけでございますが、実際には本人の所在がはっきりしないということのために引き渡しを請求しなかったわけでございます。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 どうもそういうふうないろいろな事例を見ていきますと、犯罪人引渡条約というものが、先ほど政府委員の方からも御答弁があったように、事実上大して、効果がないというふうに私にも考えられるわけです。そこでいわゆる人身売買禁止のこの条約に加盟している国で犯罪人引渡条約に加盟している国はどれくらいあるか、おわかりだったら知らせていただきたいと思います。
  50. 藤崎万里

    藤崎説明員 多数国間条約がこういうものについてございますと、加盟している国というものは申し上げられるわけでございますが、犯罪人引き渡しに関する条約は、二国間条約という形式をとっておりますので、当の二国の間に条約関係があるということしか出てこないわけでございます。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今この人身売買条約に加盟している国で、その国とどこかの国で二国間の犯罪人引渡条約を結んでいる国があるかないかということは、今ちょっとおわかりにならないわけですか。
  52. 藤崎万里

    藤崎説明員 今おっしゃいました各国について、それぞれの国が第三国とどういう犯罪人引渡条約を結んでいるかということは、調査はいたしておりませんので、ここではお答えいたしかねます。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、第六条のしまいの方に「現行の法令又は行政規定をも無効にし、」こういうふうに書いてあるのですけれども、これが英文になってきますと、「法令又は行政規定」というふうに二つに分けないで、「法律、規則、行政規定」というふうに三つに分れているわけなんですが、これはどうして日本文条約の場合には、その三つをまとめて二つにしてしまったかを伺いたいのです。英文では「エグジスティング・ローレギュレーション・オア・アドミニストレーティヴ・プロヴィジョンというふうに三つ書いてあるわけであります。日本文の場合は「法令又は行政規定」というに二つに分けてしまっているわけですけれども、一体これはどういうわけでしょうか。この条約を訳すとするならば、三つ言葉が当然述べられるのじゃないかと思うのですが、その点を伺いたいと思います。
  54. 藤崎万里

    藤崎説明員 「ロー」と「レギュレーション」とあります場合は、従来とも「法令」という訳語を用いておりますので、ロー法律と訳しまして、令の方は政令でも省令でも、すべての行政府の命令というものを総称しておりますので、この「法令」ということで「ロー」と「レギュレーション」の両方がカバーされておるわけでございます。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、こういうふうな英文条約の場合には、いつも日本文に訳すときにはこの二つ言葉をもって代表しているわけですか。
  56. 藤崎万里

    藤崎説明員 「ロー」と「レギュレーション」がくっついておる場合は、「法令」というふうに訳す例にいたしております。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 十四条に「この条約に掲げる違反行為を調査した結果を整理しかつまとめることを任務とする機関を設置し、又は維持するものとする。」こういうことが書いてありますけれども、日本の国ではまだそういうところがないと思うのですけれども、実際にそういう場所がございますか。
  58. 鈴木壽一

    鈴木説明員 日本では法務省がこの機関を受け持つことに話し合いができております。従来これと同じようなものは、前の条約関係でもあったのでございますが、それは内務省が担当しておったわけでございます。戦後内務省もございませんし、売春防止法制定に関連した問題もございますので、この条約に関しましては、法務省がこの情報担当機関を受け持つということになった次第でございます。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはもうきまっているのでしょうか。法務省の何課でこれをお扱いになるのでしょうか。
  60. 鈴木壽一

    鈴木説明員 これは実は内部的にはまだどこの課ということにはきまっておりませんけれども、おそらく刑事局になるだろうと存じております。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間がないですから急ぎますけれども、第十九条の国内でこういうふうなこの条約に抵触するようなことをした人を送還する場合ですけれども「本国に向って最も近い国境、乗船港又は空港まで」というふうに送ることになって、それだけの費用をその国で持たなければならないことになっているわけですけれども、日本の場合は空港なら羽田、それから港ならば横浜というふうに限られると思うのですが、そうすると羽田まで送られた場合に、そのあと飛行賃、その国へ帰る飛行賃というものは、当然日本なら日本にある大使館なり何なりが一時立てかえをするということになるだろうと思うのですが、その点の話は一体きまっているのでしょうか。日本の場合は、南米等に行きまして日本に帰されるような人ができた場合には、その人の船賃は日本大使館が立てかえて送還するというふうな取りきめが、ずっと前のこの委員会で審議されたことがあるのを覚えているわけですけれども、外国にもそういうことがきめられてない場合には、非常にそこに混乱が起るのじゃないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
  62. 藤崎万里

    藤崎説明員 この条約当事国の間におきましては、今おっしゃいましたように当然残余の費用は、その本国が負担するということになりますので、東京にあります大使館なり、あるいは横浜にある総領事館、領事館というところで適当に計らうものと存じます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな取りきめはされているものでございますか。計らうものと思われるという程度でございましょうか。
  64. 藤崎万里

    藤崎説明員 そういう話し合いは、具体的な場合に応じて行われる必要があるわけでございますが、その準則というものは、この条約自体ですでにきまっておるわけでございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点伺いたいのですけれども、この条約が発効するためには必ず批准されなければならないのでしょうか。「この条約は、批准されなければならず、批准書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。」と書いてありますけれども「加入は、加入書国際連合事務総長に寄託することにより行うものとする。」というふうに書いてあって、その辺のいきさつがちょっとわからないのですけれども、必ず批准を必要とするものでしょうか。それとも加入書国際連合事務総長に寄託することだけでいいものでしょうか。
  66. 藤崎万里

    藤崎説明員 批准書でも加入書でもよろしいということになっておるわけでございます。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、日本の場合は批准書という方法をとるわけですか。
  68. 藤崎万里

    藤崎説明員 日本の場合は、加入の手続をとるつもりでおります。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 けっこうです。     —————————————
  70. 床次徳二

    床次委員長 次に通商に関する日本国とインドとの間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。松本君。
  71. 松本七郎

    松本(七)委員 この通商協定の内容にわたった点は、後ほど事務当局に簡単にお伺いすることにして、大臣に数点について基本的な問題を少しお伺いしておきたいと思います。  私どもが観察しておりますと、一国との外交の処理の仕方が、特定の条約に基いてその条約規定した問題を処理するのは当然のことですが、たとえばインドとの通商を今度発展させるについて、やはり基本的な日本の外交政策がどういうものであるかということが、当然この条約に基いた協定の実施に影響してくるわけなんです。これはもうインドに限らず、ソ連の場合でも、漁業条約に基いたところの交渉なり、あるいはその交渉でまとまったところの協定を実施していく上には、やはり基本的な対ソ外交というものが問題になると同じことであって、どうも個々の条約の運営ということにあまりにもとらわれて、総合的なその国に対する基本政策がはっきりしないために、その具体的な個々の問題も十分な成果が上げられないというような事例が、相当多く出てきておるように思います。インドの場合は、特にアジアの新興国家として、日本がこれから当然密接な関係を持っていかなければならない大事な国であると思うのでありますが、それだけにインドに対する基本的な政策というものが問題になるだろうと思います。今までも外務大臣がかわるたびにいつもお伺いしておったことなのですが、最近のインドの経済機構とかあるいは経済状態全般が一体どの方向に向っておるのか、資本主義的な行き方を基本にしておるのか、それともやはりこれも社会主義の方向にどんどん成長する過程にあるのか、ということがいつも一つの問題点になるわけであります。前大臣は、やはりインドの経済というものは社会主義の方向に向っておるのだというふうに見られておったようです。それから前の経済企画庁長官も、やはりインドの経済の将来は社会主義の方向なんだ、だんだんそういうふうに向いておるのだ、もうその過程に入っておるのだ、こういうふうに見られておったようですが、藤山外務大臣は、現在のインドの経済の方向をどのように考えておられますか。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、インドは基本的には人権を尊重する自由主義国家だと考えております。ただ、先般もネール首相と話をいたしましたときに、自由主義の立場をとっておるけれども、経済建設には若干社会主義的手法を自分は採用すると言われておりましたが、おそらく新しく国をなすような国家において、国家の政府の力によって経済を考えていくということはあり得ることでありまして、それがどこまで社会主義的に伸びていくのか、あるいはその過程において今後、日本が明治初代にやりましたように、国家で作りました銀行をそれぞれ民間に払い下げていくというようなことに移していきまして、ネール氏の考え方を聞きましたところでは、基本的なものは国営にして、社会主義的手法を持っていく、こういう形でおそらく進まれるのではないか、こう考えております。
  73. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると基本的なもの、それからさしあたりインドの経済を発展させるためには、国営なり国有でやらなければならぬものはそれでやるけれども、ある程度の段階に到達した後には、むしろこれを民有あるいは民営に切りかえる方策をネール首相はとっておるということが言えるのでしょうか。
  74. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そこまで言い切りますことは、少し言い切り過ぎではないかと思います。しかしながら、ネール首相と私が話しましたときには、とにかく経済の今の発展段階では、基本的な問題については社会主義的手法を自分は取り入れていくけれども、自分の考え方としては自由主義の考えで人権を尊重して、議会によって民意を反映して政治的に運営していくけれども、経済建設にはそういう考え方をとっておるのだ、こういうことを言われたので、私はその通りであろうか、こう思っております。
  75. 松本七郎

    松本(七)委員 その経済政策全体は民主的なものだということは、基本的なものとしてわかるのですが、その上に立った企業の形態は国有が拡大されていくものか、それとも今の国有というものは民有あるいは民営の企業を拡大するための一つの過程として、一つの手段として国有にされておるのか、将来これを土台にだんだん国有政策というものを広げる政策をインドはとっておるのか、その点はいかがでしょうか。
  76. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 非常に将来のむずかしい問題になると思いますが、いろいろな意味におきまして社会主義的な手法の欠点もあります。あるいはその長所もあると思うのであります。従って今後の経済の発展の上において、常識的な言い方でありましょうけれども、ネール首相なりあるいはその他のインドの有力な指導者の考えておることは、おそらく社会主義的国営のいいところはできるだけ取り入れ、その悪いところは廃棄していくというような気持でおられるのではないか、こう思っております。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 現在どういう経済部門が国有あるいは国営になっておるのでしょうか、少し概略説明して下さい。
  78. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私も詳しくインドの経済を個々に検討はいたしておりませんが、しかしながら、重工業のおもなものは相当な大きな費用もかかりますし、必ずしも民間経営でスタートするわけに参りませんので、そういう部面においては国営的手法を現在でもとっておられる、あるいは公団的な手法をとっておられるというふうに考えております。
  79. 松本七郎

    松本(七)委員 最近のインドあたりに対する経済援助という、特にソ連との関係を考えてみた場合に、やはりインドの場合にはむしろ一時的な手段としての国有でなしに、だんだんに社会主義的な方向を深めていくのではないかという観測を私どもはしておるのですが、この間ネールさんが来られたときに、ソ連の経済援助の実情なり、それからソ連のやっておる国有方式、公有方式というものについてインドはどういう評価をしておるか、そういうことについても話し合いをされたでしょうか。
  80. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ソ連の共産方式に対して特に話はいたしませんけれどもも、しかしただいま申し上げたようなネール首相のインド経済に対する考え方から見ますと、ソ連に対する批評も、全部が国営であって運営が必ずしも完璧に行くというふうには考えられておらぬと思います。ことにインドの現在あるいは将来の事情を考えてみましても、人口なり資源の関係から言いましても、あるいは中小企業的ものを育成する必要がある立場から考えてみましても、全部ソ連式にやられるとは考えられないと思います。
  81. 松本七郎

    松本(七)委員 インドの今後の経済の発展方向も大いに重視しなければなりませんけれども、世界特に国連におけるインドの活動なども、基本的な方針というものについては相当日本がこれまた重視しなければならぬ。具体的な問題に取り組む場合にも、これとどうタイ・アップしていくかということがいつも問題になると思うのです。いわゆるアジアにおける中立外交のインドネシアあるいはビルマ、インド、この三国のうちでも、インドの動きというものはいつも中心になってくるだろうと思います。国連でも相当な力を持ってきておるし、日本が今後国連中心でいく場合に、インドとどの程度提携してやるかということについては、これは今後の日本の外交方針をきめる相当な一つの要素になると思います。インドとの提携についてはどういう方針でおやりになるのでありましょうか。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 インドがいわゆる中立主義といいますけれども、思想的な意味における中立主義という考え方はあり得ないのではないか。つまりインドとしては、政治的な立場において共産主義に対しても、自由主義に対しても、その悪いところは批評し、いいところは賛成していくという立場だと思うのであります。そういう意味におきまして、われわれといたしましてもインドと協調する点については、そういうインドの考え方というものを十分のみ込んでいく必要もありますし、今後インドの動向がそういうことによってどういうふうに動いていくかということも十分判断して参らなければならない、こう考えております。
  83. 松本七郎

    松本(七)委員 たとえば核実験の禁止の問題でも、インドあたりともう少し密接に連絡して、そしてほんとうにインドとの共同提案を出すとか、あるいはアルジェリアの問題が次に出る、あるいはチュニジアの問題が出た場合に、そういう具体的な問題で常にインドと協力しながら事前に共同の案を作って出す、そういう活動の中で私はインドとの関係をだんだん深くすれば、アジアにおける日本の信頼というものも、インドとの提携の活動を通じて高まるのじゃないか、むしろそういうやり方が日本の信頼を高めるのに早道じゃないかという気がするのですが、何かそういうようなお考えはございませんか。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アジアの中におきまして、あるいはさらに広げましてAAグループの中において、インドが非常に大きな立場を国際政治に持っておるということは認めるわけであります。従いまして日本が国際社会に出て参りますときに、インドと十分な話し合いをし、意見を戦わして参り、意見の合ったものについては、ともに手をつないでいくということは当然なことだと思うのであります。しかし国際社会の諸般の問題につきましては、いろいろな過去の経緯もありますし、インド自体につきましても過去の経緯もあるわけでありまして、そういうふうなニュアンスから来る影響もあるわけでありますから、われわれとしましてもそういう点は十分考えていかなければならぬと思うのでありますけれども、インドとできるだけ緊密な連絡をとって参りますことは、昨年のネール・岸共同声明にもうたわれておりますし、われわれも国連等におきましてもそういう意味におきましてお互いに話し合いをしていきたい、こう考えております。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 今までたとえば国連で何かの案を日本から出すような場合に、事前にインドと十分打ち合せしてやるというようなことをやられたのでしょうか。たとえば核実験の登録案というものを出す場合に、事前にインドと相談をする、あるいは今度の軍縮委員会の問題で、たといソ連がこの委員会に入らなくてもやるのだというような方針を国連の日本大使に指令されたという報道もこの間あったのですが、そういう動きをするときに、事前にインドと十分打ち合せてやるというようなことを今までやられたことがあるでしょうか。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連において国際問題を扱いますときに、日本はインドと事前に十分な連絡をつけておる、たとえばAAグループの会合があそこにあるわけであります。国連総会のありましたときには、毎週一回くらいずつAAグループだけで寄っております。やはりその中でインドなりあるいはエジプトなりインドネシアなりとおもに相談をすることになるわけであります。そういう意味において、事前に相談はいたしております。また先般のチュニジアの問題等につきましても、AAグループの中で相談する場合には、おもにインドとやはり相談をするということになっております。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 その場合に、具体的に言えば、たとえば核実験の登録制については、事前にインドと相談されて、インドはどういう態度だったのですか。おそらくこれに批判的な態度だったと思うのですが……。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 核実験の登録制につきましては、実は、私、外務大臣になる前の年でありましたので、詳しくその間のことは存じません。しかし昨年の核実験禁止日本提案に際しましては、インドの代表部と数回私自身も会って折衝いたしました。
  89. 松本七郎

    松本(七)委員 そのときのインドの意見は、どうなんですか。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その場合におけるインドと日本との関係でありますが、インドはすでに案を出しておるし、それから年数等について若干の意見の違いがありました。また共同して話し合いをする場合に、少くも、インドは日本案に対してアブステンションしてもらわなければ困るわけでありますが、反対投票するというようなことがあったわけです。これはやはり国連におきます過去のいきさつ等もありまして、あの場合に、お互いに、必ずしもその問題に関しては一致した態度がとれなかったわけでありますけれども、その後といえども、いろいろな問題について話し合いをいたしております。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 統計を見ましても日本とインドとの貿易はだんだん増加してきておるようなんです。将来は、日印借款等もあわせて考えたときに相当増加するのじゃないかと思うのですが、それと同時にインドとの文化協定がだんだん実施され、あるいは人の交流も盛んになるだろうと思うのです。そういうインドとの関係が深まるにつれて、インドにおける日本の領事館の増置というようなことについては、何か具体的な御計画がありますでしょうか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日印関係が深まるにつれまして、大使館の陣容もふやして参らなければならず、将来それぞれの経済協力関係が出て参りますれば、領事館の問題も考えなければなりませんけれども、ただいまのところ、増置はマドラスに計画しているほかにはございません。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 この条約による自由職業の規制はどうなっておりましょうか。
  94. 牛場信彦

    牛場政府委員 自由職業と申しますと、おそらく医師、弁護士等のことをお考えになっておるのだと思いますが、医師につきましては、日本の帝大医学部及び日本政府の認める公立、私立の医大の卒業者は医師開業適格者とされております。そして国籍の限定がなくて、インド政府の審査によって許されるということであります。弁護士につきましても、資格要件、適格要件はございません。高等裁判所の審査によって認められております。学校の先生につきましては特別な条件はないということであります。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 日本とインド両方外国人に許可していない業種をちょっと説明していただきたい。
  96. 牛場信彦

    牛場政府委員 インド政府で外国人に許可しておりません業種は、兵器製造その他の公益事業それから重要鉱工業種、これはいろいろありまして、たとえば製鉄業のごときものはこれに入ると思います。それから国有化された生命保険というようなものでございます。それから日本につきましては、これは日米通商航海条約におきまして公益事業その他二、三留保しております。
  97. 松本七郎

    松本(七)委員 日米友好通商航海条約八条二項で留保が合意されているわけなんですが、どういう業種が相互に適用されているのですか。
  98. 牛場信彦

    牛場政府委員 外国人の従事し得ない業種を留保しておりますのは、七条の二項だと存じます。これは「公益事業を行う企業若しくは造船、航空運送、水上運送、銀行業務、若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業を設立し、当該企業における利益を取得し、又は当該企業を営むことができる限度を定める権利を留保する。」となっており、これにつきましては、必ずしも内国民待遇を与えなくていいということになっております。
  99. 松本七郎

    松本(七)委員 さっき大臣にお伺いしたインドの経済部門で国有または国営になっているものを、ちょっと概略でいいのですが、御説明を願いたい。
  100. 牛場信彦

    牛場政府委員 一九五六年四月にインド政府が出しました産業政策要綱というものがございまして、これにおきまして国営産業として指定されましたものが、兵器製造業、製鉄関係事業、原子力関係その他合計十七種ということになっております。それからまた鉱産物採掘、非金属の精練、工作機械の製造等十二種は、逐次国営化していくということにいたしております。ただし製鉄関係事業のごときは現にタタという民営の事業がありまして、これは指定業種ではございますけれども、依然として民営として引き続き認められているということになっております。
  101. 松本七郎

    松本(七)委員 このインドの国有のやり方は、結局国の力でやらなければならぬような産業を国有にして、そしてそれを民営に移すというのではなしに、やはりだんだん国営を広げておる傾向にあるのじゃないでしょうか。
  102. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはたとえば最近造船会社は国営の船会社を作りましたし、それからステート・トレーディング・コーポレーションというような貿易企業につきましての国営の会社を作りまして、その方面から見ますと、確かに国営の範囲が広がってきているようでございますが、これは必ずしもそういう事業を全部国営にしてしまうというのじゃございません。主として民間に資本の乏しい関係で、たとえば船会社のごときは、さしあたって政府事業でないと開始できないということがあったようでございます。それからまた貿易業につきましても、なるべく外国の商社の活動を認めたくないというような気持から、国営の商社を始めたのじゃないかと思います。従いましてこういういろいろな業種につきましては、大体におきまして民営と国営とが並立しておりまして、いずれか一方にはっきりきめてしまうということはやっておらないわけであります。また最近の現地の事情を伺いますと、非常に資本が足りない関係外国から金をたくさん借りております。金を借りるということになりますと、どうしても私企業を尊重するという建前をとらないと、自由諸国から金がきにくいわけであります。このごろでは社会化とかそういう方面はあまり強調しないで、むしろ民営の事業の自由な活動を尊重し、かつ利益配当その他の送金を保証するということをしきりに強調しておるということでございまして、まだその将来の帰趨ということは今のところわからないのじゃないか、私どもはそういうふうに観測いたしております。
  103. 松本七郎

    松本(七)委員 重工業の場合に、何%くらいが国営になっておりましょうか。
  104. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは今ちょっと数字を持っておりませんので、後ほどお答えさせていただきます。
  105. 松本七郎

    松本(七)委員 第二次五カ年計画の進行状態がおわかりでしたら、一つ……。
  106. 牛場信彦

    牛場政府委員 第二次五カ年計画は、投資総額が七百二十億ルピー、ドルに直しますと百五十一億二千万ドルという非常に大きな金を予定しておりまして、これはことに工業化を重点として施行いたしておるわけであります。そして第二次計画の初年度におきましては、すでに資本財の輸入実績が四十五億四千二百万ルピー、九億五千四百二十万ドルに達しております。これはこの計画におきまして必要な資本財の輸入として予定しておりました年間の額が平均いたしまして四十三億ルピー、九億三百三十万ドルということでございますが、初年度においてはその平均を上回ってすでに外国から資本財を買ったということであります。従いましてその方面におきましては順調に進行しているということが一応申されると存じます。しかしそのはね返りといたしまして、非常に国内経済状況が悪くなって参った。一つは食糧の生産が天候その他の理由でうまくいかなかった事由もございまして、食糧を中心として国内物価が騰貴いたしましたり、それから先ほど申しましたように、輸入が非常に進みましたので、国際収支が悪化いたしまして、政府の手持ち外貨がたとえば一九五六年一月に七十四億ルピー、十五億五千四百万ドルありましたものが、五七年九月に三十五億九千万ルピー、七億四千五百万ドル、つまり半分以下に減ってしまったというような状況でございまして、従いましてただいまのところでは、当初の計画を幾分ゆるめていかなければならない状況になっております。それと同時に、外国からできるだけたくさん金を借りて国際収支の悪化に対処していくという必要を感じておるところだろうと存じます。最近インドの国会に予算案が出ておるようでございますが、これによりますと、一部増税も行なっておりますし、また支出の方も締めまして、第二次五カ年計画にはあまり大した削減を加えるとか変更を加えるとかいうことなくして行い得るという計画を立てておるようでございます。これは新聞の報道を見ましても、今後の食糧増産に関係のあります天候の工合でありますとか、税の徴収がうまくいくかどうかということに非常にかかっておるということのようでございます。しかし外国からの援助という点は、割合最近順調でございますし英、米、独、日本その他ソ連からも相当の金を借りておりまして、国際収支上の危機は一応切り抜けたという状況ではないかと存じます。
  107. 松本七郎

    松本(七)委員 さっき自由諸国からの資本導入というお話があったのですが、外国資本と国営事業との関係はどうなっておりましょうか。
  108. 牛場信彦

    牛場政府委員 最近一番目立っておりますのは、鉄鋼業に対する外国の借款でございまして、これはイギリスとドイツ、それからソ連から借りたのでありますが、これは投資ではございませんで、借款になっております。つまり延べ払いでもって機械を買いまして、そして建設等につきましても向うの技術の援助等を受けて、結局十年とか二十年とかいう期間に返すということでありまして、外国から特に基本的な産業につきまして投資という格好で資本を導入しているという状況ではないと存じます。主として借款ということになっております。
  109. 松本七郎

    松本(七)委員 ある程度経済部門によっては外国のいわゆる投資という形で来ているものもあるのじゃないですか、国別にもしおわかりでしたら……。
  110. 牛場信彦

    牛場政府委員 私今はっきり知っておりませんので、これは後ほど調べまして資料を提出いたします。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 今鉄鋼のお話も出たのですが、この鉄鉱の開発については、日本の新聞でもいろいろ報道しておったようですが、日本の場合実現する可能性のあるもの、それから実現したもの、その進行状況等をお伺いしたいと思います。
  112. 牛場信彦

    牛場政府委員 日本と製鉄所を作るという話は、御承知の通り、四、五年前にあったわけでありますが、これは一時御破算になりまして、形が変りまして最近鉄鉱石資源を開発して、そしてその鉄鉱石を日本が買うという格好でもってただいまルールケラーというところの山を開発する話が出ております。最近日本から鉄鋼業界を代表するミッションが参りまして、向う側の政府と調印して参っておるわけでございます。これにつきましては、調印したのでございますから大体話はできたようなものでございますが、なお幾らかまだ問題が残っているわけでありまして、開発に必要な資金は、日本が八百万ドルだけ、ただいまのところは機械の延べ払いという格好でもって、事実上向うに貸すということになっております。そのほかにアメリカ経済開発基金から二千五百万ドルという金が出てくる、それを予定してできているわけでございますが、果してアメリカがそれだけの金を出してくれるかどうか、ないしは全体の資金の需要量が予定通りで済むか、あるいはもっとそれを上回るのじゃないかというような問題もあるようであります。それから鉱石の値段につきましては最後までもめているわけでありまして、一応案はできておりますが、これは日本がほかから買う鉱石の値段とか、あるいはインドがほかへ売る鉱石の値段とか、相当ヴアリアブルな不定の要素を基礎としてそれからリベートを引くという格好になっております。さらにこれはおそらく細目的な交渉が必要ではないかと私ども存じております。詳しいことは通産省の方で主としてやっておりますので、そちらの方からも申し上げられると存じます。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 日印円借款の百八十億ですが、これは三カ年を均等分して借款を与えることになっているわけですけれども、焦げつき債権の放棄というような結果になるおそれはないですか。
  114. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは純然たるコマーシャル・ベースの借款でありまして、輸出入銀行が一件々々審査をして貸し出すということになっております。そしてまた全体としましてインド政府が返却を保証しているということでございますので、これは焦げつくおそれは絶対にないと考えております。
  115. 松本七郎

    松本(七)委員 この使い道はある程度わかっておりますか。
  116. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは借款と同時に、借款の成立の際に発表になりました両国政府の共同声明にございますが、鉄道施設、水力及び火力発電施設、送電及びダム建設施設、採炭、鉱石採掘の設備、船舶、港湾施設、それから産業機械、工作機械というような品目が上っております。もちろん今あげましたような品目全部を五千万ドルでカバーできるはずはないのでありますが、向うがただいままでにおもに買いたいと申しておりますのは、船舶、それから発電設備、さらに鉱山関係の施設というようなものに特に重点を置いておるようでございまして、現に商談が相当進行しておる状況でございます。
  117. 松本七郎

    松本(七)委員 主要国の、特に英、米、ソ連の対印借款の条件をちょっと比較したいのですが、一番大きな違いを言っていただきたい。
  118. 牛場信彦

    牛場政府委員 詳しいことは後ほど資料として差し上げますが、ただいまちょっと覚えておりますのは、ソビエトはたしか十二年で利息が二歩五厘、イギリスも結局それに近いような条件を出しておると存じます。西ドイツは最近償還の延期を大幅に承認いたしまして、西ドイツとしては戦後初めてのいわゆる政治的考慮を伴った大きな借款になっておるようであります。条件につきましては、さらに詳しく調べまして、後ほど資料として提出いたします。
  119. 松本七郎

    松本(七)委員 この議定書第二項は不動産の権利の最恵国待遇、相互主義ということになっておりますが、彼我の間に現行国内法で何か相違があるのですか。
  120. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまのところ、インド側も日本側も外国人に対して不動産を持つことは制限いたしておりませんので、相違はございません。ただ将来そういうことが起る場合を予想いたしまして、こういう規定を置いたわけでございます。
  121. 松本七郎

    松本(七)委員 それからこの条約の正文は英語になっておって、ここへ出てきておる日本語のものは、法的効果のない単なる翻訳だと思うのですが、なぜエチオピアの場合の友好条約の例のように、この場合は日本語、それからヒンヅー語及び英語三通を正文にしなかったのでしょうか。
  122. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは便宜上英語ということにいたしたのでありまして、日本語を正文にしようといたしましたところ、ただいま御指摘通り、向うがヒンヅー語のテキストも作らなければならない。さらに解釈を明らかにしますためには、英語の分も作らなければならぬということで、非常に煩雑になりますので、こういうことにいたした次第であります。これは最近ほかにもそういう事例がだいぶありますので、条約局の方からお答えいたしたいと思います。
  123. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 実は最近東南アジアの諸国との条約が非常に多くなりまして、たとえばアフリカの方はエチオピア、エジプト、イラン、パキスタン、インドと、御承知のように非常に多くなったわけでございます。従いまして、ほんとうに正式に申し上げますれば、日本国と相手国の自国語と、それから解釈が問題になります場合のために、英語かフランス語ということが正式でありますけれども、実はこういう国々の条約もたくさんになりますし、われわれといたしましても、実は相手国の言葉というのはなかなかはっきり——専門家がたくさんいるわけでもない、そういうことになりますと、次第々々にやはり英語というものが、一番適当ではなかろうかというふうに考えてきている次第でございます。
  124. 松本七郎

    松本(七)委員 やはりわれわれからちょっと考えると、もちろん相手国の言葉も使うのだから、お互いにわかりにくい言葉でありながらも、当事国言葉はやはり正文があって、そのほかに、たとえばエチオピアの場合には、日本語とアムハリックですか、それにフランス語と三つ、そういうふうにした方が、本来のやり方のような気がするのですが、何か特別にそういうふうに当事国言葉を入れて、不便なり弊害があったという事例が今まであるのでしょうか。
  125. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 御指摘通り、それが正式でございますし、非常に不便ということはないかと思います。ただ大きな政治的な平和条約とかそういう問題でなくて、いわば通商的な協定的なものは、これは条約自体のウェートをつけるわけではございませんが、すべてがすべて相手国と両方言葉としますと、相当煩雑になりますので、その点適宜いたしておる次第であります。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 インドとの平和条約四条で、戦前インドにあった日本の財産は返還することになっておるわけですが、この問題はもう全部解決したのでしょうか。
  127. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 この問題は昨年、私はっきりした日にちと経過は今資料を持ち合せておりませんが、全部解決したことになっておると思います。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 これは全部で金額はどのくらいになっておりますか。
  129. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 ちょっと今資料を持っておりませんから、あとで差し上げます。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 タイとの経済協力については、相当両者の間に見解の相違があったように聞いておりますが、この問題は解決したのでしょうか。
  131. 松本瀧藏

    松本政府委員 まだ最後の解決はついておりませんけれども、何とかしたいという機運はございますので、早晩解決できるのではないか、こう考えます。
  132. 松本七郎

    松本(七)委員 それからこの日印通商協定が成立した後、ガットとの関係はどうなるか、二月四日の日本経済新聞では、何かガット三十五条について、牛場さんとインド側との間に書簡の取りかわしがあったように報道してあったが、その書簡がもしあれでしたら、参考資料として出していただきたいと思います。
  133. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはたしか参考資料としてお出ししてあると思うのです。要するに内容は、日本側から三十五条を撤回してくれということを申し入れまして、向うは日本側の要望に対して、最善かつ最も迅速な考慮を払うことを約束するということを申しております。今度の条約ができますと、事実上ガット三十五条は撤回すると同じようになると思いますが、ただ条約には期限がついておりますので、その点だけが違うことになります。これはぜひ最近の機会に公式に撤回したということをインドに言ってもらいたいと思います。
  134. 松本七郎

    松本(七)委員 これは他の適用諸国に対する影響はどうですか。他の国に適用撤回の動きは出てこないのでしょうか。
  135. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまガット三十五条を援用しております国の中で、おもなものは二つございまして、その一つは、ベネルックス三国、それからフランスというように、これは将来ヨーロッパの共同市場に入ることが予定されておる国でございます。これにつきましては、共同市場というものができますと、共同市場の中のドイツとかイタリア、これは日本と完全なガット関係の中にある国でありまして、その共同市場相互間の関連が全然なくなってしまうということでありますから、これは一部が日本に対して三十五条を援用しておっても、その意味がなくなるのであります。この問題は日本側からも十分注意は喚起してございますし、向う側でも真剣にそういう状況になるということの不合理を認めまして、検討を約しておる状況でございます。他の一つのグループは、これは英連邦の諸国でありまして、英本国を大将にいたしまして、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、インドというのが、三十五条を援用しておるわけでございます。パキスタンとセイロンとは、これは初めから三十五条は援用しなかったのでございますが、それ以外の英連邦は援用した。それから最近マラヤとガーナと新たに独立した国が加わりまして、いずれもこれが三十五条を援用しておるということになっております。そして結局一番の強硬なのは英本国であります。英本土との間にはいろいろな関係がありまして、なかなか感情的にも、また実際の利益の上からいいましても、解決がむずかしいということになっております。今度インドとの交渉ができましたことは、この英本国に対する影響という点から申しますと、私は非常にいい影響があるのじゃないかと考ております。オーストラリアとも昨年の条約によりまして、三年間のうちに三十五条援用撤回の交渉を始めようという約束ができております。今度インドとこれは事実上完全に三十五条を撤回したと同じ効果のある条約ができたということ、さらにたとえばマラヤのような新興国との間にもそういうような話をなるべく早く始めまして、そういうふうに周辺を固めてから、本城であるところのイギリスに対して向っていきたいというふうに考えておりまして、そういう意味から申しまして、インドとの条約ができましたことは、将来イギリスとの交渉において相当有力な立場を獲得する効果があったと考えております。
  136. 床次徳二

    床次委員長 ほかに質疑はございませんか。——質疑がなければ、本件に関する質疑はこれにて終了いたしました。  本件につきましては別に討論の通告もございませんので、直ちに採決いたします。通商に関する日本国とインドとの間の協定の締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって本件は承認するに決しました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 床次徳二

    床次委員長 御異議なければさよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四分散会      ————◇—————