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1958-03-07 第28回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月七日(金曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    並木 芳雄君       野田 武夫君    松田竹千代君       松本 俊一君    田中 稔男君       森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         外務参事官   白幡 友敬君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月五日  委員大橋忠一辞任につき、その補欠として薄  田美朝君が議長指名委員に選任された。 同日  委員薄田美朝君辞任につき、その補欠として大  橋忠一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国インドネシア共和国との間の平和条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求  権の処理に関する日本国政府インドネシア共  和国政府との間の議定書締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  政府間海事協議機関条約締結について承認を  求めるの件(条約第七号)  (参議院送付)  人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第九号)  国際情勢等に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  昨六日付託されました人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件、これを議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。松本政務次官
  3. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいま議題となりました人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。売春目的とする婦女子売買禁止につきましては、わが国は、すでに、  1 醜業行ハシムル為ノ婦女売買取締二関スル国際協定、一九〇四年五月十八日作成したものであります。  2 醜業行ハシムル為ノ婦女売買禁止二関スル国際条約、一九一〇年五月四日作成したものであります。  3 婦人及児童売買禁止二関スル国際条約、一九二一年九月三十日作成したものであります。の三つ条約加入またはこれを批准しておりますが、ただいま御承認をお願いしておりますこの条約は、以上三つ条約及び成年婦女子売買禁止に関する国際条約、一九三三年十月十一日作成、ただし、わが国はまだ加入しておりません。この内容を統一するとともに、一九三三年国際連盟作成した売春からの搾取禁止に関する条約案内容を考慮に入れ、一九四九年、国際連合第四総会において作成されたものであります。わが国のすでに参加している三つ条約が主として未成年婦女子人身売買禁止対象としていたのに対しまして、この条約は、年令、男女の区別なく、広く人身売買禁止することを対象としておるものであります。また、この条約売春からの搾取売春宿の経営、売春のための場所の提供、売春業者に対する融資等人身売買を助長する他の行為をも禁止し、また、これらの禁止措置を実施するに当り、締約国国際協力を行うことも定めております。さらに、この条約は、売春者の更生、及び社会的補導並びに外国人売春者についての情報交換及び本国送還についての規定も有しております。人身売買が人間としての価値及び尊厳に反することは申すまでもないことでありますが、また、これに伴う悪弊社会に及ぼす影響もきわめて重大なものがあります。従って、わが国人身売買及びこれに伴う悪弊を防止するこの条約加入することは、国際的にきわめて有意義であると考えられます。よって、この条約への加入について御承認を求める次第であります。御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。
  4. 床次徳二

    床次委員長 これにて提案理由説明は終りました。本件に関する質疑次会に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 床次徳二

    床次委員長 これより政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を許しますが、最初に政府より、前回の委員会における発言に対する答弁をいたしたい旨の申し出がありますので、これを許します。条約局長
  6. 高橋通敏

    高橋政府委員 前回留保申し上げた点が二点あると思いますが、第一は、この海事協議機関条約につきまして各国が二、三留保いたしております。そこで何ゆえにこの留保条約の中に一体として承認対象にしないか、この点が第一だと思っております。ところが実はこの留保につきましてはこの前の船荷証券条約のときもいろいろ留保がございまして、それも御承認の正式の対象とはしなかったわけでございます。これは大体こういうふうな取扱いにしているわけでございますけれども、個別的な二国間の条約でございますと、留保をするということは、すなわち新しい約定と申しますか、留保したものに従いまして両者間で新しい協定締結するという意義があるかと思っております。従いまして二国間の留保の場合は当然正式の御承認対象にお願いしなければならない。ところがこのような多数国間の条約におきます留保の場合は、実は留保と申しましても多数国間条約にわれわれが加入いたしますことは、条約全体としてその条約加入するというふうに考えておりまして、この多数国間の加盟国個々と新たに加入する国との個々関係というよりは、むしろわれわれはこの条約全体として加入し、条約全体としてこれを動かしていく、そういうふうな見地で考えますと、まず留保を一応除きまして、条約全体として見て、全体としてこれに加入するというふうに考えた方がいいのではないか。従いまして個々留保がありましても、これは正式の御承認対象にせずに参考として差し上げたい。と申しますのは将来また加入する場合に——多くの国が加盟いたします。その場合の留保というものを特に国会の御承認対象にして提出しないことになっておりますから、そういたしますと留保の場合、この場合の留保国会承認対象にいたしますと、取扱い上また非常にまちまちになるというふうなこともございますので、一応従来までの扱いにしまして、留保参考として差し上げるということにいたしたいと考えておる次第であります。  それから第二点の、国際専門機関わが国のいかなる職員がどのくらい入っているかという御質問かと思いますが、現在国連専門機関に十九名の職員が採用されております。その内訳といたしまして、ユネスコに四名、FAOに四名、WHOに二名、ILOに四名、IMFに三名、IBRD——これは国際復興開発銀行ですが、これに二名というふうな経過になっております。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 それからこれはこの間御答弁があったのですが、この機関特権免除ですが、それは国連総会によって承認された専門機関特権及び免除に関する条約に基いてという規定になっているのですが、この条約にまだ加盟してないわけです。この前質問したときには、早く加盟するようにしたいということだったのですが、この条約発効するまでにこれに入るのか、条約に加盟する手続だけでも発効前にでも直ちにやるつもりなのか、それともこの附属書II規定しておるものによって当分はやって、なるべくすみやかに入る手続であるのか、そこのところをもう少し……。
  8. 高橋通敏

    高橋政府委員 とりあえずは附属書II規定したところでやっていこうということでございます。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 そのとりあえずというのは、大体どのくらいの間それでやることになりますか。
  10. 高橋通敏

    高橋政府委員 発効しましてから機関がすぐ協定を結ぶわけごでざいます。ですからちょっとそれがどのくらいになりますか、発効してから直ちに協定を結んでこの関係ができるかと思っております。
  11. 床次徳二

    床次委員長 ほかに質疑はありませんか。——質疑がございませんければこれより討論に入りたいと存じますが、討論申し出がございませんので、直ちに採決いたします。本件承認すべきものと議決するに御異議ございませんか。
  12. 床次徳二

    床次委員長 御異議がございませんので承認すべきものと決しました。  なお本件に関する報告書作成につきましては委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんか。
  13. 床次徳二

    床次委員長 それではさよう決定いたしました。
  14. 田中稔男

    田中(稔)委員 議事進行について。第二十六通常国会における各種委員会における所管大臣出席状況を調べてもらったのでありますが、外務委員会は二十八回開かれました。農林水産は五十八回、社会労働は五十七回、大蔵は五十二回、だから委員会開会の回数が外務委員会は一番少いのであります。だからこれはわれわれ同僚の方でもっと開催して熱心に討議したいと思いますが、大臣出席状況は、外務委員会二十八回のうち十五回であります。出席率は五三・六%であります。必ずしも悪いとは思いませんが、もっと悪い委員会、たとえば経済企画庁関係では、大臣出席率はわずか八・九%でありまして、いかに河野長官が怠慢であるかということを証明しております。しかしその他の委員会、たとえば法務委員会のごときは、大臣は八九・二%出ております。それから外務委員会を上回るのが運輸省関係郵政省関係、たくさんあります。そこで私ども委員会をもっとひんぱんに開催すると同時に、この委員会外務大臣の御出席をもっとお願いしたいと思いますので、この記録は前大臣時代でありますが、藤山外務大臣に特にこの際御要望申し上げておきます。—————————————
  15. 床次徳二

    床次委員長 それでは質疑に入ります。日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との問の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、通商に関する日本国とインドとの間の承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろからインドネシア政情につきましてはいろいろと新聞に報道されておりますけれども、そしてまた一方において、反乱軍政府樹立宣言というようなことも伝えられておりますけれども、しかし全体から見ましたときに、まだこの反乱軍政府というものはごく少数の限られた地方的な反乱にすぎない、こういうふうに私どもは考えるわけでございます。従って今日ある政府日本正統政府と認めた上で、この政府に対して賠償を支払う、こういう態度をもって臨まれているであろうことを確信いたしますが、この点はいかがでございますか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシアスマトラにおきまして、若干の軍隊中央政府に対して反乱をしております事実はございます。ただしかし私どもの知り得る範囲内におきましては、スマトラにおきます全部の軍隊中央政府に対して必ずしも反乱をしておるわけでないようでありまして、一部の軍隊が反旗を翻しているということが実情だと思います。それに対して中央政府としては最近爆撃等をいたしておるような情勢になっております。インドネシアの問題につきましては、私どもはこう考えておるのであります。御承知のように、インドネシアの現在の力ある指導者というものは、スカルノ大統領とバッタ氏だと思います。それはまた一面においては、その人たちが実力を持っておりますのみならず、国民的な信望を集めた二人の指導者だと思います。スカルノ氏とハッタ氏との間にはインドネシア独立に対する考え方というものについては全く一致して、そうして植民地主義から脱却して、インドネシアを健全な独立国家に育て上げるということについては全く意見が一致し、また長く両氏が共時の動作をとって今日に至っていることも、世間周知の事実であります。ただ政策の面において、両氏性格からくる点もありますし、ハッタ氏の方が事を運びますのに実際的である、またスカルノ氏の方が、性格からきますか、やや理想主義者的であるという相違は感じられますけれども、しかしこの政治の上におきますこれらの態度相違というものはありましても、二人がお互いに、今日の実情では、相手方をたたきのめして、そうして自分政権を単独にやろうという考え方は持っておられないようでありまして、それは今日でも、またスマトラ反乱が起りましても、その後に数回会談をしておられるというような状況から見ましても、できるだけ政策面における意見を一致さして、インドネシア国民の福祉のために共同に進んでいこうという考え方を持っておられると思います。  従いまして、中央政府の今後の立場というものは、私はそういう状況から見まして弱体ではないというふうに考えておるわけであります。むろんスマトラの方の反乱軍としましてはいろいろな問題を提起しておりますが、これまた必ずしもインドネシアを四分五裂させて、そうして自分独立を達成しょうというよりも、むしろ内政上、スマトラの資源その他に対して中央政府が必ずしも十分な財政上の援助をしないというような点から問題が起きておる点が多分にあるわけであります。従って完全に独立をするよりも、むしろその目的から申しますれば、究極的には連邦自治というような形で、ジャワ中心でなくて外領をもっと重く見ていただきたい、特に経済的な問題、徴収された租税等使い方等について、外領にもっと厚くしてもらいたいというような意味から、内政上、外領に相当自治的な面を認めてもらいたいというのが、反乱軍の大体の考え方であります。  そういうことでありますので、私どもとしてはこれが将来のインドネシア中央政府を激しく壊滅に瀕する、あるいは四分五裂とするというような状況には、現状においてないということを判断して参りたいと思っております。しかしながらヨーロッパ方面その他からのニュースは、われわれとしてはかなり注意して見て参りませんと、これらのニュースがただいまのような状況をかなり誇大にいってくるものがあるように感じられるのでありまして、そこいらの点は十分慎重にやって参りたいと思います。それらのニュース等について分析して考えなければならぬのではないかと思うのであります。  そういう意味におきまして、スカルノ政権というものを、かりに今後の事態が起りましても、たとえば政府首脳部はかわるとしましても、総理が交代する、あるいは議会等においていろいろなそういう意味における人物の交流がありましょうとも、スカルノ氏、ハッタ氏が健在である限り、現状のような形において現政府が存続していくというふうに見られるのでありまして、従ってこの政府を相手としまして平和条約締結し、賠償を遂行して参るということは、むしろこの中央政府を強化することにも相なるかと思うのでありまして、日本国民としてはインドネシア独立の達成のためにいろいろな面から援助をして参る必要もあろうと思いますが、賠償を通じて経済的基盤に何らかの貢献をすることができますれば、賠償もさらに大きな意味を付加してくるのではないか、こう考えまして、ぜひともそういう方向に進めて参りたい、こう考えておる次第であります。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣が今おっしゃったように、私どもインドネシア政情を見ているわけでございますが、ただいまお答えの中にもありましたように、ヨーロッパ諸国は相当これに対してとかくの批判もしているようでございます。そして実際以上に大きくこの反乱を考えているようであり、そういうことによって、またその反乱をかえって大きくするような傾向がなきにしもあらずだと思うわけです。  そこで聞くところによりますと、何か反乱軍がSEATOに対して武器の援助を申し入れる意向があるというようなことも聞いているわけでございますけれども、そういうふうなことになってみますと、あるいは日本にも経済的の援助なりあるいはほかの何らかの援助を、反乱軍の方から求めてくるようなことがなきにしもあらずと思いますが、そういうようなことには決して応じない、こういうふうに、はっきりとそういうお考えをお持ちでございましょうか、どうでしょうか。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシア反乱軍に対して何らかの援助をいたすつもりはございません。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に伺いたいことは、最近インドネシアの方から領海十二海里の線をいってきたように聞いておりますけれども、それは相当広い範囲に及ぶと思いますけれども、このことによってわが国の航行とか漁業に悪影響があるようなことはないでしょうか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、日本領海三海里説を主張しております。世界の各国におきましても、領海三海里説を主張しておるところもございますが、また最近では十二海里説を主張しておるところも多数あるわけであります。これらの問題につきましては、ただいま開かれておりますジュネーヴの海洋法国連会議において何らかの結論に到達することを希望いたしておるわけであります。インドネシア方面に対する漁業その他の関係は、全然ないとは申し上げかねるわけでありますが、しかしながら現状において、われわれとしては三海里説を主張しておりますので、できればそういう状態になることを希望いたしております。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に伺いたいと思いますことは、インドネシア日本との間では、今まで入国の問題とか、あるいは取引上支店を作るとかいうのに大へんにむずかしい傾向がございましたけれども、今回の平和条約締結されますと、そういう点がずっと緩和されるというお見通しをお持ちになっていらっしゃいましょうか。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は、平和条約にも規定してございますが、私が先般参りまして、スバンドリオ外相と話をいたしましたときに、インドネシア側としては自由に日本の人を入れる、ただし率直に申しますと、旧憲兵隊の人だけは日本でも自制してもらいたい、その他の人は自由に入れるというような話をしておりまして、またインドネシアもそういう方針で今後ともいってくれるものと確信をいたしております。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約が批准されますと、新たにやはり日本の方から外交使節が当然送られるようになると思うわけでございますけれども、今内閣委員会に提案されております在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案には、インドネシアのことについて触れておりませんけれども、どういうふうな形で新しく外交官を送ることを考えておられるのでしょうか。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平和条約の批准が終りましたならば大使館を設置して、そうしてそれをやるつもりで、現在あそこで大使館の建築をやっておりますから、そういう時期がすぐくると思います。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうなるといたしますと、当然国会在外公館法律の一部を改正する法律案というものが出されなければならないはずですけれども、それはもう提出されておられるのでしょうか。
  27. 松本瀧藏

    松本政府委員 実は講和条約締結されませんと、正式の大使交換にはならないわけであります。従いまして、これが成立いたしましたならば、もし開会中であれば、もちろん設置法をまた出す方法もございますが、間に合わない場合には、従来の例からいたしますと、政令で一応これを取りきめておきます。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今開会中でございますし、この条約も今審議されているわけでございますから、もしもこの条約が批准されましたならば、当然国会で審議されて、政令というようなことでなくて、正式に大使館が設置されるべきだと考えますけれども大臣いかがでございましょうか。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 手続上の問題といたしましては、この条約が批准されまして、国会開会中であれば、当然直ちに出します。予算等については別に差しつかえないそうでありますから、設置法をすぐ出すことにいたして、政令等に譲らないで、もちろんやることにいたします。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 内容に少し触れたいと思うのですが、今回の賠償協定によりまして、日本の方から二億二千三百八万ドルという賠償高が成立したわけでございますけれども、長い間インドネシアの方は四億ドルということを主張しておりました。ところが、今申し上げましたような、賠償協定としてはずいぶん端数のある数字がきまったわけでございますけれども、こういうふうな金高にきまりました経緯を少し伺いたいと思います。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、インドネシアが数年前に、初めて日本賠償を提起して参りましたときには、百何億という金額を持ってきたわけであります。その後、交渉をしておりますうちに二十億になり、さらにフィリピン等経緯から見て、フィリピンと同額というような話もして参ったわけであります。しかし種々折衝の結果、さらにインドネシア側としては四億万ドルというような数字を固執しておったわけであります。しかしながらできるだけの折衝をいたしました結果として二億二千三百八万ドルという数字で、これを十二年間に払うという約束に成立いたしたわけであります。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 貿易債権処理議定書で一億七千六百九十一万ドル余りの貿易債権日本が放棄しているわけでございますけれども、これと今の二億二千三百八万ドルと合せますと、大体これは四億ドルの線になるわけであって、やはりどう考えてみましても、日本棒引きいたしました貿易債権というものは、賠償として考えられるわけでございますけれども、これは全然賠償としては考えられないわけでございますか。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償問題の話し合いをしておりまして、二億二千三百八万ドルという話し合いがつきました上は、過去におきます貿易債権等の問題を新しい時代に適応して両国の関係を新出発するという意味において清算をする必要があろうかと思いまして、インドネシア側の希望もございますし、日本としてもそれを棒引きにしますことが、将来日・インドネシア関係、またインドネシア経済発展のため必要だと考えまして、そういう賠償の話がつきました際に、これを将来棒引きするということに決定したわけでありまして、賠償とは特別の関連はございません。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 賠償とは関係がないというふうにはっきりおっしゃるわけでございますけれども、これまでの経緯を見ておりましても、私どもはどうもその御答弁には満足しないわけなんです。と申しますのは、日本が前々から向うへ貿易債権を何とか解決するようにというような申し入れをいたしましたにもかかわらず、一九五四年以来、いつでも向うから答えられていたことは、手持ち外貨の不足という理由貿易債務の決済を、いつでも対日賠償と結びつけて答えてきた、こういうふうな経緯から見ましても、それからまた昭和三十一年の九月に、日本正式提案として二億五千万ドルの賠償を提案いたしましたときにも、それに応じておらなかったわけでございます。ところが今回この債権棒引きということを条件として、二億二千三百八万ドルというようなことが決定いたしましたのは、何かどうしても格好をつけるという意味で、こういう債権棒引きというふうな形をとったのであって、これはあくまでも賠償の一環であるというふうにしか私どもは考えられないわけでございますけれども、全然関係のないというふうにおっしゃられますのは、どうも国民を欺瞞するものであって、むしろ正々堂々どやはりこの賠償は四億ドルだということをはっきり示された方がよかったのではないかと考えますけれども、いかがですか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本インドネシアの間の賠償の交渉は、長年にわたりまして紆余曲折を経て話し合いを続けてきたわけであります。従いまして、その間にはいろいろな主張が双方にありましたことも事実でございます。しかしながら今回の交渉におきまして、インドネシア側日本側とが二億二千三百八万ドルという数字に到達するに至りました際には、全然そういうことを考慮しない。インドネシア側もかつ然として悟ったのではないかと思うのであります。そういうようなことから見まして、われわれも一億七千六百万ドルの債権棒引きすることが、インドネシア賠償妥結の努力に対する好意的な将来の問題として必要だ、こう考えましてやった次第でございます。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは伺いますけれども、今日本との関係で、アルゼンチンに六千万ドル、韓国に四千万ドル、エジプトに三万六百万ドル、台湾にも二千三百七十万ドルですか、こういった債権関係が残っているわけでございますけれども、そういうふうな債権を、友好という関係棒引きをなさるお考えなんでございましょうか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アルゼンチンにあります五千五百万ドルの債権は、これは御承知のように昨年三分五厘の利子で十カ年年賦ということでやりまして、第一回の五百五十万ドルという支払いを受けております。従いましてこれは返してもらうようなことにすでに方針はきまっております。韓国の四千七百万ドルにつきましては、今後日韓会談その他において十分討議さるべき問題だと思います。エジプトの問題は、最近の状況から見まして、日本がエジプト綿等を輸入して参りますと、四百万ドルぐらいに減って参ることになりますので、大した大きな債権が残っているとは申し上げかねると思います。それから国民政府に対しますものも、これは現在二千七百万ドルくらいあるかと思いますが、季節的な関係でありまして、必ずしも長期に焦げついていくものだとは現状見ておりません。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今御説明のありました中で、これからも一番問題として残りますのは、やはり韓国との間の問題だろうと思うわけでございますけれども、もしも韓国からの要求があった場合には、やはりこの債権棒引きをなさるのでしょうか。またそういうふうになさる場合に、インドネシアと同じように、この外為から法律改正によって、国民の了解を得ないで済ますような、そういう形をおとりになるのでしょうか。この点もあらかじめ今後起ってくる問題として伺っておきたいと思います。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 焦げつき債権処理ということは非常に重大な問題でありますので、われわれもこれを軽々に扱いたいとは考えておりません。従いまして、今後の日韓間の諸般の問題をやりますときに、棒引きをするというような態度をもちましてわれわれはこれに臨んで参るつもりは全然ございません。なお手続上の問題につきましては、そういう場合が起ったといたしますと、大蔵当局ともよく相談の上、できるだけ公明な方法でやって参りたいと思っております。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今回とったような措置は決してとらない、こういうふうなことでございますか。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今後の焦げつき債権処理の問題につきましては、今後の折衝の結果に待たなければならぬと思います。しかしながら私どもは、先ほど申し上げましたように、焦げつき債権というものを何が何でも簡単に棒引きするというような考え方ではないのでありまして、先般のインドネシア債権棒引きにつきましては、将来の両国のために非常に有益なことであろうという観点から特にいたしたわけでありますので、今後軽々にそういう問題を取り上げようとは考えておりません。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 じきに韓国との問題も起きてくることでございますから、こうした国民をごまかすようなやり方を政府はどうかとらないでいただきたい、こう考えるわけでございます。  そこでもう一点伺いたいことは、焦げつき債権の形をとるに至ったいろいろな経緯があると思いますが、それはあとから事務当局から伺うことにいたしまして、インドネシアから日本にポンドで支払いをしようということを申し入れたそうでございますけれども、そのときにポンドの価値というものが大してなかったために、政府の方で要らないと言って断わってしまった。翌年になってからポンドがなくて非常に困ったという事態さえあったわけでございますけれども、そういう事実を一体外務大臣は御存じでございましょうか、どうでしょうか。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こまかいことにつきましては政府委員から申し上げますが、そういう事実があったそうであります。ポンドの動き方については、大蔵当局その他財政当局の見方がそのときどきでいろいろあるようであります。むろん日本の外貨バランスの関係からいいまして、ポンドの切り下げ等の特段の状況が起るようなことが前途に予見されますときには、そういう問題については財政当局も相当に慎重であることは当然だと思うのであります。しかしながら今後そういう問題が起りましたときには「それらの事情を勘案しまして十分考えていかなければならぬことだと考えております。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これは外務省だけの責任ではないかもしれませんけれども、やはり非常に大きな見通しの誤まりであり、そしてまたインドネシアだけにその責めを負わすことのできないようなこともあると思うわけでございまして、今後非常に重要なことでございますから特に注意をしていただきたい、こう考えるわけでございます。  それからビルマの場合、あるいはフィリピンの場合にも経済協定がございますし、また今回も経済協定があるわけでございますが、その経済協力が実際的にはあまりいい結果を見ておらない、ほとんど実現しておらないというふうに、私は見ているわけでございますが、一体その原因はどういうところにあるとお考えになりますか。向うの借款体制が十分でないのか、それとも日本の方からの積極性がないのか、どちらにその原因があるとお思いになるかを伺いたい。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その民間の経済協力につきましては、これが進行いたしておりません点について種々の問題があると思います。むろん、ビルマ側と申しますか、あるいはフィリピン側におきましても、あるいは資金統制の関係、あるいは外貨証券の関係というような為替管理の関係、その他もございます。また合弁してやりますような場合、その資本形成の問題もございます。また日本の業者から申しますと、何らかの形で輸出入銀行等の金利その他の問題について若干の措置が講ぜられれば、いま少しく採算に乗るべースになるというような場合もございます。また日本の業者等が国外において仕事をいたすということについての精神的な負担と申しますか、そういうものに対して従来海外進出等に対する経験も薄いものでありますから、海外協力の面につきまして、日本の業者の問にやや石橋をたたいて渡るような態度があることも御承知の通りだと思います。それらのいろいろな条件が重なり合いまして、いろいろな交渉が行われてはおりますけれども、最終的に妥結したものがほとんどないという現状はまことに遺憾だと思うのであります。そういう意味において、せっかく締結したこれらの民間経済協力の問題も、いま一そう進展いたしますように、政府においても心がけ、なお民間の業者の方々にも奮発を願わなければならぬ、こう存じております。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 インドネシアとの経済協力に対しましては十分に成功させ得る御自信なり、御努力をお払いになるおつもりでございましょうか。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 できました民間経済協力につきましては、できるだけ政府といたしましても、義務はございませんけれども努力をして参ることが必要なことだと思います。日本の民間的な人たちの考えから申しますと、インドネシアに対しては特に親しいような感じも持っております。過去においてもインドネシアにおいて仕事をした経験のある人もあるわけでございまして、フィリピン、ビルマ等よりももう少し民間側において積極的になるのではないかというふうに考えておりますが、これらの情勢はさらに政府といたしましてもできるだけあっせんもし仲介もし、またできる限りの後援もして参らなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約の第三条で、特に「アジア・アフリカ会議における決定の精神に従って」云々ということが書かれてあるわけでございますけれども、このことはつまりあの会議の決議である十原則の精神を強調して言ったものと私は考えるわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 AA会議の精神と申しますことは、あの会議の結末に行われました十原則というものが、会議総体の空気を集約したものだと思うのでありまして、その線に沿ってできるだけ両国の関係を円満、緊密にしていきたい、こういうのが書き表わされた趣旨だと思っております。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の御答弁を伺いますとやや安心をいたしますけれども、ややもいたしますとこの十原則というものに色めがねをかけて見がちな国々もあるわけでございまして、そういう中にあって日本政府がどうもよろめきがちな気配も見えますものですから懸念もいたしますけれども、どうかその精神をもってあらゆる面であらゆる努力を払っていただきたいということを要望いたしますが、この点に対しての強い御決意のほどを伺いたいと思います。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本といたしましてはアジア・アフリカの各国、特に西欧からの覊絆から脱しまして新しく国を建てたものに対して、同情と同感をもって両国関係を進めて参りますことについては、私は相当強い信念を持っておるつもりでおりますので、そうよろめかないでやっていくつもりであります。いろいろな情勢下において、事は必ずしも思うように運ばないし、また一日にして問題の解決がなるというわけにも参らぬかと思いますが、そういうアジア・アフリカの意図に同情と同感をもって進んで参りたい、こう思っておる次第であります。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 賠償をどこの国に払うにも当りまして一番大事なことは、賠償というものは戦後処理として長期にわたって国民の負担によって支払われるものである。この負担を国民が十分に理解しなければならないのでございますが、その賠償を支払うに当っては、過去のあやまちを再び繰り返すべきではないということを肝に銘じて考えていかなければならないと思うのです。そういう意味で、やはりどこまでもあらゆる努力をして、平和な方向へと日本を持っていかなければならない責任があると思うわけでございますけれども、今日その平和の方向へ持っていく一つの大きなこととして、核兵器の日本への持ち込みはしないということを政府でいわれておりますけれども、それではアメリカとの間に、必ず核兵器は持ち込まないというような取りきめをしたらどうかということになると、っ取りきめをしないでもアメリカとの間の信用関係で大丈夫だというような答弁で逃げてしまっていられますけれども、やはりこの賠償協定が結ばれるのを契機といたしまして、アメリカとの間にも、核兵器は絶対に持ち込まないようにいたしましょうという何らかの取りきめをすべきではないか、こういうふうに考えますけれども外務大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が平和を念願しておりますことは申すまでもないことでありまして、しかも今日のような状況下におきまして核兵器が発達して参るということは憂うべきことであり、世界の平和に対して脅威であるということも日本人の総意だと思います従いまして日本としては、核爆発の実験等につきましても国民的総意を表明しておるわけであります。その基礎に立ちましてわれわれは強くアメリカに対しても日本の立場を宣明しておるわけであります。アメリカとしては、日本のこの意図、国民的な感情を十分に了解しておると思うのでありまして、一片の書類よりもその強い国民的要望が共感を持たれることが、この問題のさらに大きな解決になると考えておる次第でございます。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は時間がなくなりますからこれ以上申し上げませんけれども、今の外務大臣のような理論でいきますと、一片の書類という言葉をもって、一片の書類よりもお互いの信用の方がいいというふうな結論をお出しになりましたが、それならば、日本とアメリカとの間にいろいろな条約があるわけで、そういうようなものをみんな廃止してしまって、もう信用関係だけでいけばいいという理屈にもなると私は考えるわけで、この点はやはり国民の要望でもございますから、よくお考えになっていただきたいと思います。そうでないと、地方へなど参りますと、国会では書いたものを取りかわすべきだという意見があるにもかかわらず、それをあえてしようとなさらないのは、そういうことをすることによって、日本とアメリカとの間の関係がまずくなるのだろうかというような疑問さえ持つ人があり、さらにまたそういう意味では政府があまりになまぬるいのではないかというようなこともいわれておるときでございますから、特にこの点をお考えになるように要望いたしまして、あとの質問は事務当局の方に伺いたいと思います。
  55. 菊池義郎

    ○菊池委員長代理 須磨彌吉郎君。
  56. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 われわれの同僚のこのインドネシア条約問題についての質問がだんだんと進んでおりますから、私は重複を避けまして二、三の点を伺ってみたいと思うのであります。  第一にわれわれが、ことに賠償という協定をでかしますことによりまして——このインドネシア賠償というものは日本のアジアに対する進展の基礎でもあり、また友好関係を進める国としてアジアにおける非常に重大な国でございますから、一日も早くこの審議を進めていきたいという努力をいたしておるわけでありますが、しかしそれによって生ずることあるべき——まあないことを希望いたしますが、あることもあり得るというような問題について少し考えてみなければならないと思うのであります。先ほどからも御質問があったように、ただいまのインドネシア政情の不安というものは、これは現実に存在している事実であります。その事実の裏にはいろいろそれぞれの利害関係によりまして国々によって同床異夢と申しましょうか、考え方が違っておるものもあるわけであります。たとえれば英国のごとき、オランダのごとき、またある意味においてはアメリカのごときもわれわれが新聞、雑誌、ラジオ等によって承知するところでは、これにわれわれとは異なる考え方もあり得るように思うのであります。こういう意味におきまして、この賠償協定の成立によって、その背後における国々の利害関係によって日本との関係が阻害されるようなことがありましては、これは非常に重大なことにもなるわけでございますから、そういうことがないようにとは希望いたしますが、ただいままでに外務大臣が御接触になりました面においてさような懸念はないのかどうか、それをまず伺っておきたいのでございます。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本インドネシアとの賠償締結し、平和条約を結んだということにつきましては、各国とも、日本が戦時中の損害を補償し、そうして東南アジアにおける有力なインドネシアとの間に平和友好関係ができたという立場から、これを歓迎しておると思います。今後のインドネシア政情等につきます見方あるいは立場の相違からくる考え方相違というものは、必ずしも一致していない点が若干あろうかと思います。しかしながら日本といたしましては先ほど申しましたような観点に立ちまして、かりにインドネシアの中におきます政党その他の関係から政治の局面に当ります人が交代し、あるいは異動をいたすことがありましても、インドネシア中央政府というものが四分五裂するというような状況にはならないのではないか。またなしてはいけないのではないかという考え方日本は持っておるわけであります。従いまして個々の人が政権の座につくかつかないかは別として、インドネシアが属領が離れて独立をしてしまう、全然別個の国になってしまうというようなことについては、アジアの平和のために好ましい状態だとは考えておりませんので、日本としてはそういう立場から各国にも日本の立場を宣明しておくことは必要なのだと思いますが、現在までのところにおきまして、インドネシアとの賠償が解決して平和条約締結するということに関しましては各国とも反対はないし、むしろ喜んでおる事態だと考えておるのであります。
  58. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまのお言葉で私どもは安心をいたすわけでありますが、いま一つの懸念は、この賠償協定ができますために、他にかって私ども賠償協定をいたしました国々、ことに私はビルマを考えるのでありますが、そういう国々が受け取りました賠償額につきまして、たとえば先ほどからも御質問がありました日本が放棄をいたした債権、そういうもの等も入れまして、たとえばビルマにいわゆるエスカレータ条項と称せられるものがありますが、そういうものにかんがみて、何かまた問題を起してくるということになりますならば、ひとりわれわれとビルマとの関係のみならず、一般の友好関係を広めるための今度の協定目的が阻害されることもあるわけでございますが、今日伺いたいことは、さような懸念が全くないのでありますか。あるいはさような懸念を持たなければならないような事態が今までのところ存在いたしておったことがありますか、また外務大臣が調印においでになった際等において、そういうようなことにまつわるお話が出たことがありますか、これは私どもの心配までに聞いておきたいと思うのであります。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたようにビルマとの賠償協定につきましては再検討条項がついておることは事実でございます。この問題の進展に当りまして今日までビルマ側からその問題について何らの意思表示もあるいは日本政府の意図を尋ねるようなことも全然ございません。われわれといたしましては二億二千三百八万ドルという金額は、ビルマ及びフィリピンとの賠償金額の関連におきましても適当なものだと思うのでありまして、その意味において本問題について何らかの意思表示が今後起ろうとは考えておりません。あるいはどういう状況かという質問等が出るかとも思っておりますが、それもまだ参っておりません。なお、それらについてはこの二億二千三百八万ドルならば説明をして十分了解を得ることが可能だとも考えておりますので、私どもは今後あらためてそういう問題は起ってこないのではないかと思います。東南アジアの各国とは今後とも賠償問題が解決いたしましても、他の経済協力の面を推進して参ることが必要なんであります。ただいま戸叶委員からの御指摘にありましたように民間の経済協力も大いに進展されなければならない。また将来日本の財政事情が許すならば、他のインドにありましたような問題も将来起ってくると思うのでありまして、そういうようなことで将来の問題としてこういう関係をできるだけ緊密にしていくことは必要だと考えております。
  60. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 インドネシアの今の政情不安がどういう結果になりますか、これはたれにもわからないことでありますが、先ほど大臣の御説明の中にもスカルノハッタ氏という二人の人が担当する以外にはちょっと今のところないであろう、こういうようなお話があって、私どももいろいろな情勢からそう感ずるのですが、ここに申し上げたいのは、去年ハッタ氏が日本に参っております間に私ども数回会合する機会があったのでありますが、その一つの会合におきまして、ハッタ氏が自分から申された中に、日本賠償というものを解決する際において、ただいま私が質疑の問題といたしております金額について、あるいはビルマ等において問題を起すことがあるかもしれないということを日本側において心配をしておるという話を聞いておりますが、それは心配には当りませんということをハッタ氏が申された。しかもそのことは非常に強い自信を持たれて言われたのでありますから、私は質問をいたしまして、それはどういう根拠に基いてそういうことをおっしゃいますかと申したところが、一九五五年の暮れ、ハッタ氏が現職の副大統領としてウ・ヌー首相がビルマの首相でありましたときに参りまして、実は日本との賠償問題について話が出たときにウ・ヌー首相は、これははっきり申したそうでありますが、日本インドネシアとの賠償額がどういう額にきまろうとも、ビルマ政府としては何ら異議を差しはさむものではありませんと申しました、そういうことをハッタ氏は申されたのであります。このことは私どもが考える問題としては非常に重要な点だと思いまして、私はさらに質疑を進めて、それではそういうお考えならば、あなたは今何の職にもついておらぬけれども、今後いろいろなことであなたはお手伝いになることもありましょうが、今の話は非常に重要な話でありますから、今後そういう点についてもし問題が起った場合においては、インドネシア側としてそのことをどこまでも固執されて、ちょうどウ・ヌー氏がまた首相になっておられるのでありますから、その言質に基いて何ら問題の起らないような円満な関係が持続されるように御努力なさる御意図がありますかということを聞きましたところが、私どもインドネシアの人間として必ずそういうことをいたしたいと思うということを申されました経緯が実はあるのでございます。これは全く私ども私的の話をいたした次第でありますけれども、いよいよこの条約をこしらえることになるときにおきましては重大な点として考えていきたい。ことに大臣のおっしゃるようにハッタ氏がまた政府の当局に立たれるということもあり得るやの御印象でもありますから、この点を私は申し上げまして、何らかのお話の間に、あるいは調印に行かれました際、あるいは外務大臣とのお話の間にかような意味合いのお話がなかったものでありましょうか。またそれにまつわるような経緯について他の方からお話がなかったのでございましょうか、そういうことについてお聞きしておきたいと思います。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありました点は、私どもも私的会談の場合にインネシア側からそういう話を聞いたことはございます。むろんビルマとしては、インドネシアがいかように賠償決定をしようとも、ビルマとしてインドネシアを牽制する必要はないわけであります。その意味からいって、インドネシア側にそういう発言をビルマ側でしたことは当然のことだと思います。ただそれ自体が必ずしも日本側に対してそういうことをビルマ側がやらないのだということにはならぬかと思いますけれども、ビルマの今日の気持からいえば、今言われましたような趣旨がやはり考えられておるのではないかというように考えます。そういうことであります。
  62. 床次徳二

    床次委員長 それでは外務大臣に対する質疑は、きょうはこれをもって終りたいと思います。並木君。
  63. 並木芳雄

    ○並木委員 戦時中はインドネシア独立国ではなかったのですが、なぜ賠償を支払うことになったのか、そのいきさつを聞いておきたいと思います。戦時中にインドネシア独立国ではなかったのであるけれども、それにもかかわらず賠償を払うようになったという理由でございます。
  64. 松本瀧藏

    松本政府委員 並木委員の今の御質問の通り、戦争中は独立国ではなかったのであります。従ってなぜインドネシア賠償を払わなければならないかという疑問が一応起ることは当然かもしれません。しかしインドネシアは、一九四五年——これは昭和二十年になりますが、八月十六日に独立宣言をいたしまして、二十四年十二月二十七日にオランダから完全な主権を移譲してもらっております。さらに昭和二十五年八月十五日に単一国家としてインドネシア共和国が生まれたのでありますが、それに引き続きまして第六十番目の国として国連にも加盟を許されております。さらにサンフンシスコ講和会議のときには連合国側の一国としてこれに参加しております。そういう意味におきまして、これはオランダの一部分ではありましたが、独立国として取り扱いまして、戦争中損害を与えましたその賠償を払うという交渉をした次第でございます。
  65. 並木芳雄

    ○並木委員 インドネシアは最初たしか百七十億ドルに及ぶ膨大な賠償の要求をしておったと聞いておりますが、それが今日の額になったいきさつについてお尋ねしておきたいと思います。
  66. 松本瀧藏

    松本政府委員 たしか最初は百七十三億ドルの要求だったと思いますので、その経過を御説明したらその意味がよくわかるのじゃないかと思います。インドネシアとの賠償交渉というものは、昭和二十六年十二月に津島顧問が初めてインドネシアに参りましたときにこの交渉を始めたのでありますが、当時、今のジュアンダ総理が運輸大臣であったと思いますが、いろいろと交渉いたしまして一応軌道に乗りかけました。それから後に内閣がかわりましてたな上げされました。昭和二十八年十月に当時の外務大臣であった岡崎氏が向うに参りまして、そうしていろいろと折衝を始めたのですが、そのときは、百七十二億ドルをインドネシア側が要求いたしましたのに対して、日本側からは一億二千五百万ドルを出したのであります。もちろんこれは並行線でとうてい妥結には及ばなかったことは想像にかたくないのであります。さらに東京で、その年の十一月二十日ころだったと思いますが、中間賠償みたいな形で沈船引き揚げの協定を一応取りきめたのであります。これも奥村次官とスダルソノ・アジア太平洋局長との間で取りきめられたのでありますが、本調印に至らなかったことは御承知の通りであります。後に倭島公使が派遣されまして、いろいろと折衝いたしましたが、御承知のごとくいろいろと暗礁に乗り上げまして、一応日本側といたしましては二億五千万ドルの線を出したのですが、フィリピン賠償締結と同時に五億五千万ドル増額というような線も出たりいたしました。いろいろな曲折がございましたが、ついにこの倭島試案の二億ドルの賠償と一億ドルの棒引き、こういう問題も相当からんでおったように思いますが、あるいは少しばかり正確を失しておるかもしれませんが、あるいはインドネシア側から二億五千万ドルそれから一億一千万ドルの棒引き、四億五千万ドルの経済協力というような線も中途に出ました。こういうようにだんだんしぼられて参りまして、先般の小林特使、その前の岸総理とスカルノ大統領、及びハッタ博士及びジュアンダ総理との間の取りきめに従いまして、これが最後の線まで煮詰まってきたという工合に了解しております。
  67. 並木芳雄

    ○並木委員 平和条約を除くほかの二つの条約がございますが、その正文は英語だということになっております。これはちょっと条約体系としては異例に属すると思いますが、何ゆえに平和条約以外の他の二つの条約を英語をもって正文としたのですか。
  68. 松本瀧藏

    松本政府委員 早期調印を目途といたしましてこの交渉が開始されたことは御承知の通りであります。従いまして一応英文を正文にして、そうしてこれを技術的に運ぼうということであったのでありますが、幾ら急いでも平和条約というのは大切な条約であるからインドネシア語、日本語、英語、こういう工合にしようということになりました。他の条約は英文で差しつかえないということでこれがきまったのでございますが、最初の意図はもちろん早期調印というところにあったように解しております。
  69. 並木芳雄

    ○並木委員 第三条(B)でありますが、その中に無差別待遇という言葉が使われておりますが、この差別待遇とはどういうことを意味するのですか。
  70. 松本瀧藏

    松本政府委員 この問題はときどき論ぜられたのでありますが、なぜ最恵国待遇というような条約にしなかったのかという質問もいつかあったように思います。もちろんインドネシアのサイコロジーからいたしまして、今までオランダ等からもいろいろときつい条件をとられておりまして、そういう意味におきまして非常に警戒しておるのと、いま一つは御承知のごとく、最恵国待遇の条約というものは最近なかなかこれを締結するのに困難であります。最近のインドとの取りきめにおきましても一歩手前までのものはできましたけれども、やはり最恵国待遇という文字は避けましたが、私どもの了解する無差別待遇というものは、最恵国待遇と実質的には変らないものであるという工合に解しております。その意味におきまして、表現は違いますが、内容におきましては最恵国待遇に準ずるものである、あるいはそれにひとしいものである、こういう工合に解釈しております。
  71. 床次徳二

  72. 戸叶里子

    ○戸叶委員 賠償協定の中で二、三点伺っておきたいと思います。第二条の二項の「賠償として供与される生産物は、資本財とする。」と書いてございますが、消費財は認められないのでございましょうか。
  73. 白幡友敬

    ○白幡説明員 お答え申し上げます。御承知のように、日本賠償は桑港条約当時は役務賠償が原則ということになっております。それがだんだん先方の、特にアジア地域の要求、それから特に日本国内の経済力等がだんだん伸びてきたということから、御承知のように昭和二十八年七月の国会だったと思いますが、本会議において、社会党の鈴木委員長からの質問に対しまして、当時の吉田総理大臣が資本財も賠償の中に入るという考えをお出しになったわけであります。その後今日まで役務あるいは資本財という思想をずっと持ってきておるわけでございますけれども、ただしそのあとの方にございますが、末段におきまして、「両政府間の合意により、資本財以外の生産物を日本国から供与することができる。」ということでございますので、これは例外規定でございまして原則ではございませんが、特殊な場合に両国政府が合意する限りにおいて、ある程度のものは消費財も出せるということになるわけでございます。ただこれはあくまでも現在の日本の外国為替の状況等から見まして、消費財というものは非常に例外的に考えるということでございます。
  74. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その例外的なものとして今具体的に考えられているものがございましょうか、ないでしょうか。
  75. 白幡友敬

    ○白幡説明員 インドネシアの場合でございますか。——特に今までのところ考えておりません。と申しますのは、大体先方からの要求が出ましてから、それを日本の経済状況ににらみ合せて検討して向うに合意するかどうかということになるわけであります。先方ではもちろん御承知のような経済状況でございますから、いろいろな種類のものを一応ほしいとは思うだろうと思いますが、これは日本の貿易計画とかそういう面から、必ずしも先方の希望通りにいかないのじゃないかと思います。
  76. 戸叶里子

    ○戸叶委員 サンフランシスコ条約によると、賠償は役務が第一ということになっておるわけで、そういうような建前からこういうふうに書かれたものと思いますが、そうでございますか。
  77. 白幡友敬

    ○白幡説明員 先ほど申し上げましたように、サンフランシスコ条約の当時は、日本の経済状況というものは戦後荒廃の最もひどいときでありました。従って日本賠償として支払えるものは役務以外にないのじゃないかという考え方、これは日本も持っておりましたし、いわゆる連合国側もそういう考えを持っておったのであります。ところが賠償対象国がみんなアジア地域であります。しかしアジア地域では役務ということになりますと、どうしてもそのもとになります原材料を彼らが自力でもって購入しまして、そうして日本に持ち込んで、日本の役務をそれに付加して物になっていくという格好になります。その点アジア地域の国々から非常に不満もございまして、なかなか賠償というものが話が進まなかったようであります。その後だんだんやって参りまして、先ほど申し上げましたように昭和二十八年に新たに資本財も加えるということになったわけであります。なぜ資本財を加えて消費財を加えないかと申しますと、資本財の方は御承知のように、原材料の部分と加工賃の部分との比率を見ますと、何と申しましても資本財の方が原材料の占めるパーセンテージが低いのであります。加工賃の部分が相当大きいわけであります。消費財になりますと、原材料の占める部分が非常に大きいわけであります。特に消費物資はものによりますと、九十何パーセント以上が原材料費であって、加工費というものは非常にわずかということになります。そうなりますと日本現状から見ますと、大体において原材料というものは日本が外貨を払って輸入しなければならないというものが多いわけでありますから、そういう意味から申しますと、外貨の負担というものがどうしても多くなるという考え方で、あくまでも現在のところはやはり、資本財はとにかく出しましょう、しかし消費財の方はそういう意味からなるたけ出したくないという格好になっております。
  78. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第三項に「外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、」こういう文句が入っておりますけれども、これはよそから輸入した物資でも余裕があるときには賠償として払えるというような意味でございましょうかどうでしょうか。
  79. 白幡友敬

    ○白幡説明員 先ほど申し上げましたように、通常の資本財の場合ですと、原材料とそれから加工費と分けるわけでありますが、特殊なものになりますとこれ以外にたとえばパテントであるとかロイアリテイというものがあるわけであります。こういうものが外国のものを使用しなければならぬというような場合も起り得るわけであります。そういう場合には、そのために特に日本が外貨の負担をしなければならないという事態が起り得るわけでありまして、そういうものは困るという考え方であります。
  80. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、こういうふうなことを特にしるされている賠償協定というのはほかにもございますか。
  81. 白幡友敬

    ○白幡説明員 フィリピンの場合もそうでございます。
  82. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうですね、私ちょっとその点忘れてしまったものですから伺ったのですが、次に伺いたいのは六条の使節団の問題ですけれども、この使節団の構成員は大体どういう構想をもって考えられておるか。使節団に対しての構想はどういうふうに考えておられるのでしょうか。
  83. 白幡友敬

    ○白幡説明員 大体まだインドネシア側からこの使節団の構成などについそ具体的な話し合いはございません。しかし従来のビルマ、それからフィリピン賠償使節団と大体同じものだと考えております。それは大体委員長と申しますか団長と申しますかが一人おりまして、そのほかに上級職員が二人ぐらいで、あとは大体その他の事務当局という考え方でおります。
  84. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に平和条約の方で、第三条の(A)に「貿易、海運、航空その他の経済関係」という言葉が使ってありますけれども、この経済関係というのは普通は通商関係といっているように思うのですけれども、通商関係というのと経済関係というのとの違いはどうなんでしょうか。
  85. 白幡友敬

    ○白幡説明員 この第三条を入れました経緯をちょっと申し上げますと、実はこういう条項というもののほかの平和条約の中には比較的少いと思いますけれども、われわれといたしましては、日本インドネシアが国交回復後にきわめて友好的な関係になるのだ、そこで日本側の希望するいろいろな経済活動というものも、ほかの国に比較して、より自由に友好的にやらしてもらいたいという希望があるわけでございます。そこで(b)項にございますように、無差別待遇というお話が出ましたが、われわれとしては最恵国待遇という言葉でもって向う側に入れてもらおうと思ったのですが、先方が最恵国待遇という言葉をきらいまして、無差別待遇ということになりました。そうなって参りますと、ちょっと対象が不明瞭になりますので、なるたけここに何について、どういう事項についてということを入れたかったのでありますが、これも先方が、あまりこまかく言われると困る、つまりインドネシアの世論というか、国会で、あまりこまかく言われると何か猜疑心を起す危険性があるからということで、なるたけ大きな項目にしぼろうということになったのでございますが、通商関係だけではなしに、将来日本インドネシアとの経済協力も起していく、それに伴っていろいろな問題も起きて参るわけであります。そこでこの中には、日本インドネシアとの経済関係は、通商に限らずもっと広い経済協力、つまり合弁の事業というようなものも起きましようし、また技術上の援助というようなことも起きましょうし、そういう関係すべてのものを包含するというのが、この条項でございます。
  86. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで(a)の場合には「貿易、海運、航空その他の経済関係」ということが書いてあるのですけれども、(b)の場合には「両締約国は、両国間の貿易、海運その他の経済関係」ということで、航空が抜けているのですけれども、これはどういうわけでございますか。
  87. 白幡友敬

    ○白幡説明員 航空は、普通二国間協定でもって締結いたすのが建前になっておりますものですから、第三条(b)項のような一般的な待遇規定の中には、特に入れなかったわけでございます。この第三条(b)項というのは、御承知の通りいわゆる最恵国待遇的なものでございます。その中には、一般的に最恵国待遇の中に出てきます一般的な条項を抽象的に入れた格好になっております。航空協定は別個の二国間協定で結ぶという考え方であります。
  88. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二国間の貿易の協定とか海運の関係協定というものは要らないけれども、航空の協定だけ結ぶということですか。
  89. 高橋通敏

    高橋政府委員 ちょっと補足さしていただきますけれども、貿易、海運というようなことにつきましては、「いかなる第三国に与える待遇に比較しても無差別な待遇を相互に与える」ということは、一般的に考えますと、貿易、海運というのが一番初めに考えられるわけでございます。そこで決してほかの方を排除するわけではありませんけれども、航空協定になりますと、非常に二国間的な色彩が強くて、中に非常に専門的な技術的な事項もこまかく規定いたしますものですから、しいてそこまで言わなくても二国間で十分やっていける、こう考えたのでございます。
  90. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わかりました。それから第五条の二項「旧オランダ領東インド又はインドネシア共和国が執つた行動から生じた請求権並びに旧オランダ領東インド又はインドネシア共和国の」というふうに書いてあって、ここではインドネシア共和国だけではなしに、旧オランダ領東インドという字が入っておりますけれども、これはインドネシア共和国とだけ書いた場合とどう違うわけでございましょうか。
  91. 高橋通敏

    高橋政府委員 これは厳密に申し上げますと、インドネシア独立いたしまして、平和条約を結ぶことになるわけでありますが、そういたしますと、インドネシア独立いたしましたので、結局その前にはオランダの一部としてそこは戦争状態にあったわけでございますから、日本とオランダとの間で戦争が起きた場合の旧オランダ領に関係する権利義務を引き継いだという形になろうかと思っております。従いましてこの条約は、それ以前からもある、すなわち一九三九年九月一日、ヨーロッパ戦争開始時からの請求権の放棄、これは平和条約の十九条でございますか、同様な規定がございまして、その規定に準拠した規定でございます。従いましてその当時やはりヨーロッパ戦争が起きました場合に、日本の商船が始終往復しておりまして、臨検や捜査やいろいろなことを受けたことがございますので、もしそういうことがあったとしたならば、この際そういうものも放棄させられる、こういうことであります。
  92. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わかりました。
  93. 床次徳二

    床次委員長 菊池君。
  94. 菊池義郎

    ○菊池委員 このインドネシアに限らず、南方の賠償が、日本側が南方諸国との経済交流に資したいという考えで交流するのと方向が違って、それらが往々他の方面に乱用される。極端に言うならば、向うの一党一派のための選挙費用にまで乱用されるようなおそれすらあるという説もあるのです。それでそういうことのないように、両国の間に取りかわされる文書以外に、両国の間の何か紳士協定みたいなものがなければならぬはずだろうと思うのでありますが、そういうものはございませんか、どうでしょうか。
  95. 松本瀧藏

    松本政府委員 これはちょうど内政にも関与することになりますのと、われわれはもちろんお互い信頼に基いて行うべきものであると思いますので、わざわざ交換文書みたいなものを取りかわすというほどの性質のものではないと思います。またそこまでしなければいかぬというほど、もしお互いに信頼が薄いというのであったならば、今日のごとくスムーズに締結まで行かなかったろうと思います。従いましてお互いの気持だけは十分参酌してありますので、そういうことはない。もちろん多少弊害はあるかもしれませんが、決してこれは好ましいことでないということは、双方において了解しております。
  96. 菊池義郎

    ○菊池委員 でありますから、両国が取りかわす文書以外に、お互いに日本の希望を向うに通達し、そうして向うと話し合う文書以外の紳士協定というものがあったのでしょうか、どうでしょうか、あったとすれば、具体的にどういうことを……。
  97. 松本瀧藏

    松本政府委員 先ほどお答えしましたけれども、もちろんこれはお互いに信頼しあってのことでありますので、わざわざ文書交換の必要がないと認めまして、もちろんそういったものはございませんし、また今までそういう例は非常にまれだと考えます。
  98. 菊池義郎

    ○菊池委員 さっき並木委員が質問されましたが、戦ったことのない南方諸国の賠償に責任が生じたのはどういうわけかということであります。政務次官のお答えもさることながら、日本が南方の諸国に対する賠償の責任が生じたのは、南方諸国は本国の日本に対する賠償請求権を継承したものであるという説もあるのでありますが、この点どうお考えになりますか。
  99. 松本瀧藏

    松本政府委員 これは法律論になりますので、事務当局から答弁いたします。
  100. 高橋通敏

    高橋政府委員 法律的に厳密に申し上げますと、インドネシア独立したわけでございますけれども、その前にオランダの領土の一部であった。そうしてその領土で戦争行為が行われた。従いましてその地域におけるそういう権利義務の関係が、独立することによってオランダからインドネシアの方に引き継がれた、継承したというふうに考えております。
  101. 菊池義郎

    ○菊池委員 よろしゅうございます。     —————————————
  102. 床次徳二

    床次委員長 それでは国際情勢の問題を議題といたします。並木君。
  103. 並木芳雄

    ○並木委員 私、政務次官に第四次日中貿易協定について質問をいたしたいと思います。  実は池田団長初め今度の協定については非常な苦心をされたと思うのです。何しろ国交の回復をされていない間に貿易を進展させていこうという事業は、大きなことであって、いろいろな事情から困難があったことは察するに余りあるものがございます。私といたしましては、何とかしてこの貿易の協定が実を結ぶようにと思っておるのですが、中共の承認の問題ということとからんで難色を示している向きもなきにしもあらずでございます。そこでお伺いしたいのでございますが、問題になっておりますその一つに、通商代表部に外交官としての特権を与えるようなことは、中共の承認になりはしないかという点でございますが、この点についてはいかがでしょうか、それだけで直ちに承認ということにならないというふうに私は思ってもおりますし、思いたいのですが、政府の見解を伺っておきたいと思います。
  104. 松本瀧藏

    松本政府委員 法律問題といたしまして、それが承認になるか、効力を発生するかどうかというようなことは別といたしまして、政治的に考えまして、今日われわれは中共を承認できないという建前をとっておりますことは、何回となく総理大臣並びに外務大臣国会答弁しておる通りであります。従いまして、いろいろと既成事実を積み上げられることによって、承認一歩手前まで持っていく政治的意図のある取りきめということについては、われわれもちろんこれは承認できないのでありますが、まだ実際向うから持って帰りましたものを見ませんと、政府といたしましては、はっきりした態度を示すことはできませんが、もちろん外交官待遇を与えるということにつきましては政府としては最初から反対でございます。
  105. 並木芳雄

    ○並木委員 今の御答弁ですと、承認に持っていくという政治的意図があるかないかというところが重点のようでございます。もしそういう政治的意図がないと認められた場合には、現在政府外交官待遇を与えることに対して反対をしておるその態度というものを緩和していく余地はあろうかと思うのですが、この点はいかがですか。
  106. 松本瀧藏

    松本政府委員 この問題は、国連におきますところの態度、並びに世界情勢等を勘案しなければ、ここにはっきりした回答を出すわけにいかないと思うのであります。従いまして、政治的意図がないものだったならば外交官特権を与えていいではないかというようなお話でありますが、今のところでは政府態度といたしましては、外交官特権を与えるということは毛頭考えておりません。
  107. 並木芳雄

    ○並木委員 その内容にもよりけりでしょうが、全然何らの特権も与えないということではないでしょう。内容によっては条件付で与えるということも考えられるのですが、いかがですか。
  108. 松本瀧藏

    松本政府委員 内容によっては便宜をはかることにはやぶさかでないことは当然でございます。
  109. 並木芳雄

    ○並木委員 次に、非常に問題になっております国旗の掲揚でございます。これはほんとうに新しいケースであるために、慎重でなければならないし、むずかしい問題であると思うのですが、新聞の報道によると、中共の方では、戦敗国が戦勝国に対して承認するとかしないとかいう問題は論外ではないか、だから国旗の掲揚を許すとか許さないとかいう問題も起り得ないじゃないかというような態度らしいのです。その点われわれ納得がいかないのでございますが、戦勝国と戦敗国ということを持ち出されてこられる点については、これはわれわれは納得いきませんけれども、双方で承認し合っていないのだから、国旗掲揚の問題には話がいかないのだという点は、これは専門的に考えてどうなんでしょう。国旗掲揚と国交との関係というようなものは、今までどういうふうになっているのでしょう。
  110. 松本瀧藏

    松本政府委員 国際法におきましては、はっきりした規定はないと思います。これはいろいろとおもしろい新しいケースではないかと考えます。あるいは私不勉強で間違っておるかもしれません。ただその国旗掲揚の問題につきましては、これを忌避することは日本側としてはできません。というのは、憲法違反になりますので、いかなる国がいかなる国旗を掲げようと、それは自由だと思いますが、ただその権利を認めるということになりますと、これは一つのプリンシプルの問題になります。それともう一つは、先ほどから繰り返して申しておりますごとく、これは政治問題も加味して参ります。巷間伝わるところによりますと、中共側におきましても、一時は国旗掲揚の権利ということは避けた方がいいというような意見もあったそうであります。と申しますのは、中共政府におきましては、二つの中国を認めるということはもってのほかだということを言っております。日本が台湾政府を認めて、中華民国の旗を掲げておるところにもう一つの中国の旗を掲げるということは、一方において二つの中国の象徴になるからというような議論もあったようであります。これはいろいろと政治問題もからんでおりますので、法律論できっぱりこれを割り切ることは今のところむずかしいと思いますが、果してこれを日本承認するかどうかということは、もう少し内容を検討してみないと、これも回答できない次第であります。
  111. 並木芳雄

    ○並木委員 前段のところで忌避することはできないというお答えでしたが、つまり国旗を持ってきて飾る、また日本から向うへ持っていって立てるということは、これは憲法上——私はちょっと聞き取りにくかったのですが、憲法上自由なという言葉を今次官は使われたようでありますが、そこのところは大事な点ですから、つまり実際問題として国旗を掲げても忌避することができない、ただそれを権利として、一つの文字なら文字で法律的に認めることになると、プリンシプルの問題だからむずかしいというふうに聞いたのですが、その通りですか。
  112. 松本瀧藏

    松本政府委員 私の説明が不十分であったかもしれませんが、たとえば旗を掲げることは、これを忌避することはもちろんできないと思います。装飾にも使う場合がありましようし、デパートあたりでもいろいろな旗を飾っております。それを下げろということは、私はもちろん憲法上できない、こう思うのであります。ただしこれが国を象徴する旗であるとか、国を代表するものであるとかいうようなことになりますと、これはまた別問題になりますので、内容を見ないとこの問題に関しては回答できないということを申し上げた次第であります。
  113. 並木芳雄

    ○並木委員 その点はっきりしました。そうしますと、一つの権利としてこれを認めることになると、承認したということになるのでしょうか、国際法上その点はいかがですか。
  114. 松本瀧藏

    松本政府委員 これも非常にむずかしい問題でありまして、たとえばボーナフアイドの承認になるかどうかという問題もあると思いますので、今いろいろと一つ勉強いたしましてこの問題は回答させていただきたい、こう思います。
  115. 並木芳雄

    ○並木委員 それではきっと次の問題も同様の御答弁になるのではないかと思いますが、裁判権についてでございます。裁判の管轄権について何らかの特権を与える場合、あるいは例外を与えた場合も同様でございますか、これについて政府としてはどういう御意向を持っておられますか。
  116. 松本瀧藏

    松本政府委員 政府といたしましては、国内法を守ってくれないことには非常に困ると思います。従いまして、特別に裁判権を免除する。裁判管轄権を免除するということにはわれわれとしては同意できない次第であります。
  117. 並木芳雄

    ○並木委員 かりに裁判権というものを免除する、あるいは管轄についての、たとえば日米間の行政協定のような、ああいうものを結んだとしても、それはやはりそれ自体承認にはならぬという点は、前の二つと同様でございますか。
  118. 松本瀧藏

    松本政府委員 これも並木委員に申し上げますが、内容を見ませんと、ただそれだけではちょっと回答しにくいと思うのでありますが、もちろんその裁判管轄権の問題に関しましては、中共の代表部だけにこれを与えなければいかぬという理由もございませんし、またそういう国内法もございません。また裁判管轄権の問題を取りきめるところの協定ということになりますと、これは政府との関係にもなりますので、承認していない政府とそういう取りきめ調印等はできないものと考えます。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 しかし裁判権についての何らかの権利を与えることになれば、これは当然政府政府との取りきめによらざればできないことだと思いますが、その点はどういうお考えですか、伺っておきたいと思います。
  120. 松本瀧藏

    松本政府委員 建前といたしましては、政府政府との間の取りきめでないといかぬと思います。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 そうなると思います。そこで問題はまことにデリケートであり、政府としてもいろいろ考えさせられる立場でもございましょうが、私どもこれはお願いなんですけれども、何とかしていろいろの懸念を一掃されつつ、しかもこの貿易が実を結ぶようにということをぜひお願いしたいと思います。そういうふうに御努力願えますかどうか。  それから最後に、この点についてアメリカ方面その他から何らかの申し入れでもございましたかどうか。日本政府に対して、日中貿易の促進について、何らかの干渉がましいというか、そういうような申し出がございましたかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  122. 松本瀧藏

    松本政府委員 日本といたしましては、もちろん中共との民間貿易というものに対しましては、できる限りこれは伸びることを期待しております。いろいろと陰に陽に先ほど申しましたような政治問題がからまらない限りにおきまして、いろいろ一つ便宜をはかりたいという気持は変りはございません。さらに岸総理とアメリカに参りましたときにも、日本の一行から強くアメリカに中共貿易の問題を議論いたしました。従いましてアメリカといたしましては、まっこうから日本の国内問題であるこれに反対するというような態度は示しませんでした。しかし政治的に考えまして、一応中共と接近するということについては快く思っていないであろうということは想像にかたくありません。先ほど申しましたごとく、これは日本の立場から考えて進むべき問題でありますので、もちろんアメリカあたりから干渉もございませんし、干渉を受ける意思もございません。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して一つ。日中の貿易協定に関しましては、あらためて政府のいろいろな考え方をただしたいと思いますけれども、ただ一点だけ確かめておきたいことは、先ほど並木委員外交官特権を与えるか与えないかというふうな質問に対しまして、内容によっては便宜もはかられるというふうな御答弁があったようでございますけれども外交官特権で、こういう点はどうしても与えられないけれども、こういうふうな点ならばというようなことを具体的にお示し願えましたら……。
  124. 松本瀧藏

    松本政府委員 私もしそういう印象を与えましたら、私の表現がまずかったのでありますが、外交官特権を与えるというような気持は毛頭もないのであります。ただその便宜をはかるというのは、貿易促進をする意味におきまして、政府として便宜のはかられるものがあれば考えようということを申したのでありまして、これは外交官特権を与える、何か便宜を与えるという意味ではもちろんなかったのであります。
  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この貿易を促進させるためのものであるならば、それが外交官特権になる場合も、結果的に見ました場合にあり得るわけでございますね。
  126. 松本瀧藏

    松本政府委員 今のところではそういうことは考えておりません。
  127. 床次徳二

    床次委員長 次会は公報をもってお知らせいたすことにいたします。  本日はこれをもって散会いたします。     午後零時十三分散会      ————◇—————