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1958-03-05 第28回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 須磨彌吉郎君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       野田 武夫君    松田竹千代君       松本 俊一君    田中 稔男君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         外務参事官   白幡 友敬君         外務参事官   藤崎 万里君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月三日  委員千葉三郎辞任につき、その補欠として大  橋忠一君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員福田昌子辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 三月三日  地方海外協会に対する補助金増額に関する陳情  書  (第五三二号)  核兵器持込禁止協定締結に関する陳情書  (第五三三号)  原水爆実験禁止等に関する陳情書外五件  (  第五三四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国インドネシア共和国との間の平和条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求  権の処理に関する日本国政府インドネシア共  和国政府との間の議定書締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  政府間海事協議機関条約締結について承認を  求めるの件(条約第七号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件、通商に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件、以上五件を一括して議題となし、質疑を許します。高岡君。
  3. 高岡大輔

    高岡委員 最初日本国インドネシア共和国との間の平和条約についてお伺いいたします。両国がこのたび平和条約締結するに至りましたことは、まことに慶賀にたえないのでありますが、第三条に書いてあります「バンドンにおいて開催されたアジアアフリカ会議における決定精神に従って両国間の経済関係をさらに緊密化することを希望する。」このバンドン会議における決定精神ということは何を意味しているのか。こういう文字をこういう条約の中に書き込むこと自体も私はどうかという気がするのですが、この「決定精神」という精神について一つお伺いしたい。
  4. 白幡友敬

    白幡説明員 ただいま御質問通り、こういうような表現方式をこういう条約の中に入れるということは、非常に例が少いわけでございまして、一見奇異な感じをお与えすることと思うのでありますが、これにつきましてはこの条項を入れるに至りました経緯を若干御説明申し上げますと御理解いただけるかと思います。  今度の平和条約並びに賠償協定締結するために交渉いたしておりましたその過程において、日本側といたしましてはただ賠償を払っていく、そして平和条約が成立して正常関係が成立するわけでありますが、その後の事態において、果して日本インドネシアとの間の貿易通商関係かほんとに文字通り円滑にいくかどうか、これはその他の国の例にもかんがみまして、何とかして日本人間の出入国であるとか、居住の問題であるとか、通商の問題とかをしっかりした規定の上に確保しておきたいということでわれわれはインドネシア交渉したわけであります。ところがインドネシアの方ではなかなかこの点で了解がいきませんで、最初われわれといたしましては、いわゆる最恵国待遇、つまり日本が平和な状況になりました後には、インドネシアがほかの国に対するよりも不利な取扱いを絶対日本に対してはやらないという規定を、はっきり平和条約の中に盛り込みたいという考えであったわけでありますが、先方はなかなか最恵国待遇という言葉にこだわりまして承知をいたしません。結局この第三条の(b)項にございますような無差別待遇ということになったわけでございますが、この交渉をやっております最中に、先方からぜひバンドン会議精神という言葉を入れてもらいたいという要求がありました。先方が申しております理由は、インドネシア側にとりましてはバンドン会議というものが一つの国民的な誇りでもあったということ、それから日本バンドン会議に参加しておりまして、日本インドネシアとの間にはバンドン会議で盛られた精神的な規定というものが有効である。それからインドネシアとしてはバンドン会議というものが、インドネシア外交政策の非常に大きな中枢をなしてきておる、そういうようなことから、ぜひこの言葉を中に盛り込んでもらいたいということを言っておりました。特にわれわれの方から無差別待遇ということを申しましたときに、先方では、インドネシアとしては特に各国に対して差別待遇をやっていないのだけれども、しかしバンドン会議に参加した国つまりAAグループと俗称されておる国々に対しては、少くとも気持の上ではほかの国よりも友好的な気持を持ってやっていきたいと思っているのだ、従ってバンドン会議精神という言葉を中に入れてもらうことは、むしろインドネシアの方からすれば日本に対してよりよき待遇と申しますか受け入れの気持を表わすものである、こういう意見の表明がございました。法律的に果してそれじゃバンドン会議精神というものが協定の中に入ってきて日本側が不利になるかどうかということも検討したのでありますが、特に不利にはならないだろうという結論に到達いたしたのであります。特に日本に不利がなく、かつ先方が希望し、かつ先方の言い分によりますと、これによって少くとも気持の上では日本に対して非常な好意を示してあるのだ、こういうわけだものでありますからここに入れることにいたしたのであります。
  5. 高岡大輔

    高岡委員 ただいまの説明で一応了承できるのでありますが、重ねてお伺いします。バンドン会議決定精神ということは例の十原則をさしておるのでありますか。
  6. 白幡友敬

    白幡説明員 この点で若干向う話し合いをしたときに、具体的にあの十原則をそのまま一々あげられるということになりますと、日本側としてもかなり法律的にいろいろな解釈の問題も出て参りますので、この場合の精神というのはいわゆるバンドン会議の十原則の底に流れている精神という意味であります。つまりアジアグループ国々というものはお互いに協力し合っていくのだという意味の非常に抽象的な表現だということに了解しております。
  7. 高岡大輔

    高岡委員 その点をもう少し明白にしていただきたいのであります。十原則一つ一つというものは十分検討していきますと多少そこに問題点もある、しかしバンドン会議全般を通じてあった一つの流れというものを精神と代表した言葉で使っている、こう解釈してよろしいのですか。
  8. 白幡友敬

    白幡説明員 その通りでございます。
  9. 高岡大輔

    高岡委員 なるほどこれは御承知のようにバンドンにおいてアジアアフリカ諸国が集まられていろいろと話し合いをなさったのであり、しかもそこには平和的な、さらに互恵的な精神というものが盛られたことは申し上げるまでもないのでありますが、しかしアジアアフリカ会議というものは、今度は第三者的な立場に立ってこれをながめますと相当に複雑な要素を持っている。一つの例を言いますと、私の漏れ聞くところによりますと、このときの議長はなるほどインドネシア側がとったのでありますけれども、副議長をきめるにしても容易にきまらなかった。しかもその間にあってインドの首相たるネール氏が相当苦慮されたということも聞いているのです。それを裏書きするがごとくこのアジアアフリカ会議はその後において開かれる見通しが今日なお立っていない。それほどにアジアアフリカ諸国には利害の相反するものもある。もちろん一致する点もございますけれども相反する点等もあって、アジアアフリカというものが真に文字通り一体となって今後の民族活動をやって、そして民族の交流をはかり、ひいては国家社会の繁栄をはかるということには、なかなか容易ならざるものがあるということを考えていきますと、私は今ここに書いてあります精神というものが気分的にはわからぬではないのでありますけれども、どうもこういう条約にこういう言葉を使っておきますと、あとで問題になった場合に、一体何が精神なんだということがかなりぼけてくるのじゃないかというような気がしますので、アジアアフリカというものがそうコンクリートされていないものであるという意味からこの点をしつこくお伺いするのでありますが、そういう点に対しては、この条約締結交渉に当られました日本側気持としてはどこまでこれを確認していられますか、その点をもう一度お伺いしたい。
  10. 白幡友敬

    白幡説明員 先ほどの御説明言葉の足りなかった点があったかと思いますが、この第三条はごらんの通り経済関係規定する条項になっておりまして、ここにこれを入れましたのも、特にインドネシア日本との将来の経済関係を緊密化する意味において、バンドン会議精神ということを前に引っ張り出したわけでございます。バンドン会議精神と申しますのは、御承知のように政治的な条項もございますが、お互いアジア国々が協力し合って経済発展をやっていこうというものでございます。そういう点につきましては、全く日本側としても異議のないことだと存じますので、特にこの協定のこういう条項等に対しては反対をしなかったわけであります。
  11. 高岡大輔

    高岡委員 それでいいような気もするのでありますけれども一つのことを申し上げますと、その条約の(a)に「貿易海運航空その他の経済関係」云々と書いてあります。海運事業にしましても、航空事業にしましても、これはそう簡単ではございません。御承知でもございましょうが、インド洋の沿岸漁業に例をとりますと、インド連邦側とパキスタンとかあるいはインドネシアとかその他の利害関係というものは必ずしも一致しておりません。今日までどういうことを繰り返してきたかということはよく御存じだろうと思います。さらにシンガポールを中心とした、いわゆる南方の漁場等に対しての問題とかそういったようなものにつきましても、なかなかそうはっきりしたものはないと私は思います。そういう意味からいいますと、ただぼやっとあの会議のときに、お互いに友好的な雰囲気だったからあの雰囲気でいこうというようなことは、私はそこに、何といいましょうか、はっきりしたものがまだつかめていないのじゃないか。そういう言葉をこの第三条の(a)にうたって、そうしてその精神に従って両国間の経済関係をさらに緊密化するというこのことは、先ほどの御答弁によって、無差別な待遇という言葉等とからみ合せていろいろ御苦心かあったと思うのでありますけれども、私はその点については、日本側としては、将来この条約に忠実たるためには、よほどそういう点は深く考慮なさいませんと、あとで問題が起きる場合があり得るのではないかというようなことを懸念するのであります。何度も繰り返し申し上げてももうあれでありますから、その程度にいたしますが、従ってそういう問題が両国間において起きた場合には、「国際司法裁判所に決定のため付託される」ということが第六条に書いてございます。しかしこれも第三条を好意的にものを考えて参りますれば、第六条についても何らの不安を感じないのでありますけれども、これを両者あわせて考えますというと、なかなか容易でないような感じがするのでありますが、いずれそれらの疑問につきましては、ほかの方からさらにいろいろと御質問がございましょうから、私はその程度にいたしておきます。  それから次にお伺いしたい点は、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定でありますが、最初に明らかにしていただきたいことは、第二条に書いてあります「資本財以外の生産物」という言葉がございます。この資本財以外の生産物というものはこの一番最後附属書がございますが、この附属書の中に含まれているものはこのうちに入らないのでありますか。いわゆる資本財以外の生産物というものは、およそ今日想像されるものとしては、どういう品がありますか、その点をお伺いしておきます。
  12. 白幡友敬

    白幡説明員 お答えいたします。資本財以外の生産物というものを簡単に申しますれば、いわゆる広い意味では消費財的なものになるわけであります。そこでこれはほかの国の賠償協定の中にもございますものでございまして、両方の政府でもって両当事者がこれに合意いたします場合にはそういうことができると、きわめて例外的な処置として考えているわけであります。この最後の方の羅列されました事業項目とは、場合によってはその中に包含されることもあり得ると考えます。またそれ以外にももしも話しく言いが成立いたします場合には可能じゃないかと思います。
  13. 高岡大輔

    高岡委員 そういたしますと、この話し合いの際にはどういうものを大体向う側としては考えておるかというような話し合いはなかったのでございますか。
  14. 白幡友敬

    白幡説明員 正式な話し合いではそういう具体的な問題としては出ておりません。
  15. 高岡大輔

    高岡委員 これはやはり一応日本としてはどういうようなものをインドネシア側要求するかということは、あらかじめお考えおき願いませんと、あまりにもこの点が大きくなって参りますと日本の、サンフランシスコ平和条約との関連が出てくるのではないか。といいますことは、なるほどこのたびの賠償協定等によりまして、資本財相当に行くだろうとは思います。それが大部分を占めるだろうと思いますけれどもインドネシアの現状から見ますと、ちょっと手綱をゆるめるとでもいいましょうか、そうしたことをしますと、資本財以外の生産物すなわち日用消耗品要求というものが相当出てきはしないか、そういうことが出てきますとそれはフィリピンにもビルマの方にも影響する面が出てくるのではないかといったような感じがしますので、この点につきましては私はこの条約に現われております文字についてとやかく言うのではありませんけれども、将来の両国経済行為の進行中にいろいろな問題が出てくるようなことを懸念しまして、私はこの問題については今申し上げましたようにサンフランシスコ平和条約ともにらみ合せて、よほどその点を考慮の上でこういう生産物等話し合いをしていただきませんと、やがてそれは他の賠償国にも影響するのではないかということを懸念するわけであります。  さらにお伺いしたいことはこれの合同委員会であります。これは私はかってフィリピンとの賠償協定の際もこの点を非常に懸念したのでありますが、私はこれはあまりはっきり申し上げることは両国にとって決して好ましいことではないのでありますけれども、この合同委員会というものはよほどこれは注意をしませんと、いろいろな問題が起る可能性が多分にあると思います。たとえていいますと日本業者にしましても、この合同委員会に売り込みが始まるだろう。そのためにはいろいろな不当な競争も行われてくるだろう、そういういろいろなことを日ごろわれわれが見せつけられておりますことを私どもが考えます場合に、この合同委員会のやり方といいましょうか、合同委員会そのものについても十分の検討を加えておかなければならないのじゃないか、これは日本海外貿易ないしは経済外交基本に触れる問題ではございますけれども、ただ単に外務省だけの問題でなく、この問題につきましては通産省の首脳部においても特段な心がまえと用意がなくちゃいけないとは思いますが、この合同委員会構成その他につきましては、その会議の際にどんな程度まで話が進められたのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  16. 白幡友敬

    白幡説明員 お答え申し上げます。合同委員会は御承知のように現在日本フィリピン及びビルマ賠償実施につきまして合同委員会がございます。これはそれぞれの国の政府が任命する委員構成されるわけでございます。そこで今回のインドネシアの場合に、特に合同委員会構成等につきまして話はいたしておりません。しかしながらただいま高岡先生からもお話がございましたように、この合同委員会重要性ということはわれわれも十分認識しておりますので、非公式ではございますが、向う側に一体どういう構成でどういう人物を派遣するのであるかということを聞いたのでありますが、具体的な人間についての話はございませんでした。特にインドネシア側の場合においては御承知のようにいろいろな向う国内政情の問題もございますので、委員会委員長には非常に厳正公平な人を派遣しなくてはならないのだ、そういう考え方を持っておるようでございます。おそらくインドネシア政府筋相当の地位の人で、しかも能力があり、人格的にりっぱな人を送ってこられるのじゃないかというふうに考えております。
  17. 高岡大輔

    高岡委員 私はインドネシア方々を侮辱する意味は毛頭ございませんけれども、とかくわれわれが風評で聞きますことでは、今日までの歴史からして相当いろいろなことがあり得るというようなことをよく聞かされます。そこへ持っていってそういうふうに誘導することの妙手にかけては日本業者というのはなかなか達人ぞろいでございますので、その点は一つよほど注意を願いたい。ただ単に向う方々清廉潔白要求するだけでなく、日本側としましてもそういうことのないような措置は、やはり当然講じなくちゃいけないと思いまして、これは前例があったとか、現にあるとかいう意味ではなくして、そういう醜悪な事態が起きませんように一つ特段の御配慮を願いたいと思うのであります。  それから飛び飛びで恐縮でございますけれども、これの第七条の再輸出の問題であります。これは御承知のようにシンガポールがすぐ近くでありますし、また多少距離はございますけれども香港があります。この香港シンガポールはある意味においては非常な便利な港でございますので、この再輸出危険性というものは相当にあり得ると思うのでありますが、これは一体どこでチェックするのか、その点の話し合いはございましたかどうか。
  18. 白幡友敬

    白幡説明員 具体的にどこでチェックするかというような話し合いはございません。これは一般規定でございまして、そういう事実がどこかで発覚といいますか、事態が起きました場合には、日本側がこれに対して抗弁する権利を持っておるわけであります。ただインドネシアの場合に、実質的に申し上げますと、私ども承知しております限りでは、インドネシア賠償物資として要求いたしますものは、大体あそこの政府事業関係だろうと思われます。つまり政府賠償物資日本から受け取りましてこれをその国の民間に払い下げるというような形式のものはほとんどないのじゃないか。と申しますのは、今インドネシア政府経済五カ年計画で考えております中に、その実現を緊急に必要としている国家事業かございます。この総額を見ましても、日本賠償物資をもってしてもその何分の一にしか当らないのでありまして、先方としては国営と申しますか、国が直接営む事業におそらく優先的に賠償物資というものは充てられるのじゃないかというようなわれわれは印象を持っておりますが、こうなって参りますと、この計画というものもかなり具体的に立てられて参ると思います。従いまして賠償物資が再輸出される危険性というものはまあ比較的少いのじゃないか、こういうふうな考え方をわれわれは持っているわけであります。もう一度申し上げますが、具体的にどこでどういう機関でチェックするかということは、そういう具体的な問題は相談したことはありません。
  19. 高岡大輔

    高岡委員 それで私はさっき資本財以外の生産品ということをお伺いしたのでありますが、資本財の方は設計によって機械その他が持ち込まれるわけでありますから、なかなかわきへ売るとか、再輸出するということはあり得ないと思います。しかし日用必需品と申しましょうか、消耗品でありますと、これは別に政府が買い上げるとか、払い下げるとかいう、いわゆる政府機関がそれほど手を出さなくてもさばきのできるものでございますから、資本財以外の生産品というものをよほど考慮していただきませんと、この再輸出のところにもひっかかって参りますし、またさっきも言いましたように、平和条約基本にまで触れてくる面がありますので、その点を十分御考慮願わなければならぬと思います。従ってこの会議の中で資本財以外の生産品というものについては先様は一体どんなことを頭に置いて交渉しておられたか、どんな品物を想像してこの話が進められたかということをお聞きしたかったわけでございます。私は決して人を疑ったりしているわけではございませんけれども、物事はなかなか目の届かない場合が多いのでありますから、そういう問題が起きないように、私は基本的な筋を通しておかなくちゃいけないという意味から今申し上げたようなことをお伺いしたわけであります。  次にお伺いしたいことは、例の焦げつきの問題であります。これは一体どういう経過をたどって一億数千万ドルの焦げつきができたか。これは一応世間は知っておりますけれども、この条約を審議しますに当って、政府からまとめて日本国民に知らせる意味において、この焦げつきが一億七千万ドルまでたまったということについての御説明を願いたいと思います。
  20. 牛場信彦

    牛場政府委員 まとめて簡単に御説明申し上げます。インドネシアとの貿易は、一番初めは一九五〇年の七月一日にスキャップインドネシア政府との間で締結されました貿易支払協定によって行われておりまして、当初のうちはインドネシア側支払協定に基いてスイング・オーバーの金を支払っておったのでありますが、五一年十月以降に支払いの履行を怠るようになりまして、五一年の十二月にそのオープン・アカウントがスキャップから日本政府に移管されたのであります。その当時すでに約四千三百万ドルの債権があったわけでございます。そこで移管を受けましてからあと政府はその支払いインドネシア要求したのでございますが、その当時すでに協定改訂のための会議を開くことに予定されておりましたので、その会議の席上において話をしようということで延び延びになっておりました。結局新協定が適用されましたのが五二年の七月一日でございます。それまでの間にたまりました金が全部でもって六千四百万ドルになっております。そうして新協定に入りましてからあとこの六千四百万ドルのうち四百万ドルだけが新協定の方に引き継がれまして、六千万ドルは旧協定期間中のインドネシアの債務といたしまして、五四年の七月以降五七年七月までに五回にわたって分割支払いを行うということで約束ができたわけでございます。ところがこれが実際上支払えなかった次第であります。それから新協定に入りましてからあと新たに一億一千万ドルばかりの債権がさらにできたわけでございますか、これは結局インドネシア側といたしましては支払いをしないということは一度も申したことはないのでありまして、わが方の請求に対しては今外貨事情が非常に悪いから待ってくれとか、あるいは日本側との間にはほかにいろいろの問題もあるから、そういう問題が解決する際に考えようというようなことで延び延びになっておりまして、その間にだんだん累積して参ったわけであります。五二年、五三年の間はある程度の決済が行われておったのでありますが、五四年に入ってからは全然行われないということになりました。そこで五四年の七月以降におきましては、日本側インドネシア側が輸入できる限度において輸出をする、いわゆる輸出権の制度というものを採用いたしまして、それによって輸出入の均衡をはかったわけであります。その措置の結果といたしまして五七年七月以降におきましては幾分債権が減って参ったような状況であります。何分五二年の新協定に入りましてから約二年間に累積したものが大きかったものでありますから、全部といたしましては結局一億七千万ドルというものが残ったわけでございます。
  21. 高岡大輔

    高岡委員 ただいま経済局長のお話で大体わかりましたが、しからばその一億七千数百万ドルの焦げつきがなぜ政府がこのしりぬぐいといいましょうか、責任をとるようなことになったか、そのいきさつについて一つ説明願いたいと思います。
  22. 白幡友敬

    白幡説明員 これは御承知のように勘定といたしましてはずっと政府勘定になっていたわけなのでありますが、なぜ棒引きをするようになりましたかは、その経過をお話申し上げますと、御承知のようにインドネシアの方は当初賠償要求額が非常に大きうございました。数次の交渉を重ねているうちにだんだん向う賠償要求が減って参ったわけでございますが、なおかつ依然として日本の考えております額との間に開きがあったのでございます。そこで先方に対して日本側がなぜインドネシア要求の額まで賠償を払うことができないかという内外のいろいろの事情を説明いたしました。ところがインドネシアの方では、それでは何分にも自分たちとしては満足はできないから、一応日本側賠償額というものに対する考え方というものは理解し得るとしても、それ以外に何かインドネシアのためになるような処置を講じてくれなければ納得ができないということにだんだん話がなって参りました。そして一体それじゃインドネシア側を満足させるような処置をどういうふうな方法でとれるかということについては、長い間研究いたしましていろいろな構想が出て参りました。一つはこの債権を棒引きにしてしまうという考え方もございました。もっともこれはすべてが平和条約ができまして国交か正常化するということを前提にしておるわけでございますが、国交が正常化した場合には、日本としても従来やっておりましたような人為的な貿易の制限であるとかいうものをなるたけやりたくない。なるたけ自由な貿易にして、しかも貿易を発展させていきたいという意味から、こういう不良債権を一応整理したらどうかという考え方もあったのであります。こういうものとからみ合せまして棒引き方式も考えられる。また別にこの棒引き分、焦げつき債権分はとにかく返してもらうという考え方もありました。しかし返してもらうについては、ただ返してくれといっても、インドネシア側の事情からいって、これを単純に返すこともできませんから、返すことのできるようにいろいろな処置を講じたらどうかという考え方もあったわけでございます。いろいろな考え方がありまして、経済的にさらに援助してやったらどうであるかとか、あるいは何か特別な政治的な考え方をもって、これに援助を供与したらどうかというようないろいろな考え方があったわけでございますが、結局最後は棒引き方式というものが一番いいのではないかということになって、それに落ちついたというような事情であります。
  23. 高岡大輔

    高岡委員 私が聞いておりますところでは、この話し合いの途中には、資本財をもって——一つの例をもっていえば、向うへ機械を出す。ところがこの据付、運転等その他のアフター・サービスを入れたそういうものまでやってやらないと、万全を期せられない。ところがそういうときの費用というものは、機械が運転しないうちは、なかなかそういうところまで向うとしても支払いがむずかしいだろう。さればといって、それをやらないと、日本から持ち込んだ機械はいつまでも動かない。そういうことから機械を動かすという意味からして、どうしても資本財の据付から試運転から、その後におけるアフター・サービスまで全部入れて日本がお世話するというか、誠意を尽さなくちゃいけない。そのときにもしも金がとれない場合には、この焦げつきと相殺してしまっていいのではないか。焦げつきはあくまでもとるという原則に立って、そうして焦げつき要求するんだし、先ほども経済局長がおっしゃったように、向うでは払わぬということは言っていないのでありますから、払うものであれば、一つ払ってもらおう。その払ってもらうといっておる間に、一面において今申し上げたようなことの経費がなかなか向うとしても出しにくいという場合には、これと相殺していって結局においては一億七千万ドルの焦げつきは、そこで逐次相殺していったらいいだろうという考え方もあったのです。私はその考え方は、ある意味においては非常に実際的のような感じを持ったのでありますが、それがこのたびこの協定に結ばれたように、焦げつきは全部一ぺんで棒引きだということにきまったわけでございます。私は今申し上げましたような考え方もある程度においてはうなずける面があったのではなかったかという気がするのであります。そういう意味からなぜこんなに簡単に一億七千万ドルの焦げつきを棒引きされたかということについては、一応この際政府は、日本国民のためにこういうことをやったことが、さらに有利だったという説明をお聞きしたいという意味でお伺いしたわけなんであります。
  24. 白幡友敬

    白幡説明員 先ほども申し上げましたように、賠償解決の方式というものはいろいろな方式を考えておりまして、われわれも考えておりますし、インドネシアも考えております。インドネシアの方もこの棒引き方式というものがいいのか、あるいは棒引きにしないで、これを償還した方かいいのかということについては、非常に議論はあったようにわれわれも聞いております。これはおそらく最終段階までインドネシアの方でも特ち越された問題であるというふうに考えております。  さて、それじゃほんとうにどっちがよかったのかということになりますと、これは実にむずかしい問題になってくると思います。たとえば高岡委員のお話のように、インドネシア側賠償とか、そういうものがインドネシアで動くためには棒引きにしない方がよかったのではないかという考え方も出るわけでありますが、ただ一つ誤解を起しております点は、この一億七千万ドルのうち六千万ドルが、これは一種の、はっきりした政府間の債務関係になっておるわけでありますが、その残りの一億一千万ドルというものはまだ、清算勘定協定というもので最終的に清算される段階には至っていなかったために、インドネシアの中央銀行の外為勘定の中には一応これは載っております。そこで向う説明を聞きますと、これを棒引きにしてもらうことによって、先方の外国為替操作の上からは非常に有利になるのだという説明もございました。実はそういう点から考えますと、必ずしも棒引きにした方が日本インドネシアとの貿易関係が将来有利でないということにはならないじゃないかというふうにわれわれも考えたわけであります。たとえば棒引きにしないで償還方式ということをとりました場合にも、償還方式につきまして、一体どういうふうな具体的な償還をするか、何年間の分割払いにするか、分割払いの方式にいたします場合にはどういう方法でもって分割するとか、あるいは金利をどうするとか、あるいはさらに支払いの保証をどうするかというような具体的な問題が起って参ります。その場合にそこをそういう点までも最後まで突き進めていくということになりますと、これは技術的にもかなりむずかしい問題が出て参りますので、一時われわれが考えましたこともあるのでありますけれども、棒引き債権は返させる、そのかわり日本側でほんとうに賠償物資が動くようなところまでめんどうを見てやる。もしも万一の場合には相殺するという考え方高岡委員からお話のありましたような考え方も出たことはあるのでありますけれども、それじゃそれが果して確実に、この債務の償還の保証をつけてまでそういうことができるかどうかということになりますと、かなり疑問の点もございます。私どもといたしましては、そういう技術的な面と同時に、もう一つは何と申しましても、インドネシアとの間に長い間賠償が引き延ばされておりましたので、これを早く解決することによって両国精神面を融和させていく、それに乗じてといいますと、ちょっと語弊がございますが、その好転した関係というものに乗せて賠償の実施をやる、あるいは経済協力というものを動かしていくならば十分にやっていけるのじゃないかという考えを持つに至りましたので、棒引き方式も差しつかえないじゃないかという結論に至ったのであります。
  25. 高岡大輔

    高岡委員 ついでにお伺いしたいことは、この議定書の批准についてであります。これの第三条によりますと「平和条約の効力が発生する日のいずれかおそい日に効力を生ずる」とあります。従いまして今、日本の国会においてこれが審議されておるのでありますが、インドネシアの方ではこの審議状況がどんな工合になっておりますか、その点についてお知らせ願いたいと思います。
  26. 白幡友敬

    白幡説明員 一月二十日にジャカルタでもって調印されました直後、藤山外務大臣がインドネシアの外務大臣並びに総理大臣とお会いになられましたときも、インドネシア側としては極力大至急国会の審議を経て批准というところに持っていきたいのだ、インドネシアの内部ではほとんど反対する意見もないと思っているので、非常に早く済むのではないかということを話しております。詳細な情報は入っておりませんけれども、現在すでに国会にかけられておりまして、三月三日から委員会、三月十二日から本会議にかかりまして、三月十五日ごろまでには大体審議を終了したいということのようでございます。ただ先方もおそらく日本側の審議状況をにらみ合せながらやっておることと思いますが、先方といたしましてはなるべく審議の手続を早くしたいというふうに考えておることは間違いありません。
  27. 高岡大輔

    高岡委員 最後にその問題に関連してお伺いしたいのでありますが、御承知のようにインドネシアでは反乱軍だとかというような、いろいろな問題が報道されております。しかしこれはその人によっておのおの見方が違うことは申し上げるまでもないのですが、一つの現われとしては、バッタ氏がどこまで現政府に協力してくるか、話し合いがどうつくかということが私は焦点だと思うのです。そういたしますと今の審議の予定とでもいいましょうか、日本の方を横にらみしながらという御説明でありましたが、横にらみしながらもその通りに進行することを私どもは希望はしまけれども、そういう点に国民としては一応不安を感ずるだろうと思うのです。従いまして、私がインドネシアの政情に不安を感じているという意味ではなくして、一人でも日本国民の間にインドネシアの政情について不安を感じておる者があり、そんな不安なところとなぜ協定を結ぶのだということで懸念されることははなはだ遺憾でございますので、この際一つこの問題について簡単でよろしゅうございますから一応の御説明を願いたいと思います。
  28. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいま高岡委員の御質問は、ひとしく国民のやはり心配している点だろうと思うのであります。事の起りは、御承知のごとく民族主義的の国民党の創設者であるスカルノ大統領の一党と、これに対しまして宗教的であり現実主義的なマシュミ党、すなわち回教徒でございますが、この対立であったのです。理想主義的なスカルノ氏に対しまして、バッタという人は親西欧的であり、また現実的な人だという工合に世間では承知されておりますが、私も両者に会いましてやはりそういうような感を深くいたしました。それと同時にいま一つは、中央におきましてスマトラ出身の勢力が非常に少い。すなわちジャワの勢力にスマトラの勢力が押しまくられているというような観点からいたしまして、スマトラ出身のハッタ博士を一つ中央の実力者にしたいという気持もありまして、御承知のごとく、ハッタ政権ということを反乱軍から言ってきているわけであります。日本におきますところのいろいろな動きも私どもいろいろと教えられておりますし、またスカルノ大統領とも個人的にいろいろ話をしておりますときの印象からいたしましても、たとえば新聞で報道されておるほど事態は深刻ではないという印象を一応持っております。帰りまして、第一回のハッタ博士との会談は内容がどんなものであるか、よくわからないままに終っておりますが、そのときの会談は、私どもの観測では、あまり意のままこれが進められなかったであろうということを想像するにかたくないのであります。しかし第二回の会談におきましてかなり進捗し、今のところではバッタ氏がスカルノ大統領と協力して一つこの国を治めようという気持になっておるのではないかという信ずべきいろいろな情報が入っております。その意味におきまして、私どもはやはりこの問題は、向う政府で今審議しておりますそれに並行いたしまして、  一つこれを早くまとめたいというような気持を持っております。
  29. 床次徳二

    床次委員長 櫻内君。
  30. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいま高岡委員からも御指摘がございましたが、また御答弁を得たのでありますけれどもインドネシアの国情不安につきましては、われわれ非常に憂えておるところであります。反乱軍の関係については、前回の委員会で御質問申し上げて、ある程度の御説明もいただき、また今お話も承わったのでありますが、さらにはオランダとの関係であります。いろいろ紛争事件があったようでございますが、この際インドネシアとオランダとの関係について少しく御説明いただきたい。
  31. 白幡友敬

    白幡説明員 お答えいたします。オランダとインドネシアとの関係は、御承知のようにオランダが今度の第二次大戦の終了まで三百年余にわたって植民地政策をしいておったわけでありますが、太平洋戦争が終りまして、日本軍が全面的降伏をいたしました。そうしますと、直ちにオランダはインドネシアを再び旧来の植民地と同じ形で押えようという軍事行動を起してきたわけであります。御承知のように、一九四五年から四九年の末まで、いわゆる革命戦争というものが行われたのでありますが、不幸なことに、五年にわたる血を流すこの争闘の間に、オランダ人とインドネシア人との間に、なかなか抜くことのできないくらい深い感情的な対立を作ってしまったということが根本ではないかと思います。そうしまして、その後の事態は、御承知のように一応政治的にはインドネシアが独立国家としての体裁をとったのでありますが、経済的には依然としてオランダの経済力が相当支配的で、その力というものは抜くことができない。インドネシアといたしましては、国が政治的に独立したのだけれども、何とかして経済的にも独立したいというところから、だんだんオランダの勢力であるとかあるいは華僑の勢力というものを排除していきたいという考え方になって参りました。たまたまこれと並行して起って参りましたのが、西ニューギニア問題でございます。西ニューギニアの問題は、インドネシア側としましては、旧聞領東インド全部が独立するのだ、つまりオランダとの間の円卓協定によって、インドネシアとして独立を認められるのは旧蘭領東インド全部にわたるものである、そうなりますと、西ニューギニアも入るのでありますが、こういう考え方を持っておったのに対して、オランダ側は、そうじゃない、西ニューギニアは地理的にも歴史的にも民族的にも別種のものであるという考え方で対立して参りました。これは一九四九年に円卓協定ができましてから今日に至るまでの長い一つのオランダとインドネシアとの間の争いになっております。そしてその間に西ニューギニアに対するインドネシア人の考え方というものは、これを自分たちのものにしたいという考え方インドネシア人はこれをナショナル・アスピレーションと言っておりますが、全民族としての民族的な欲求でございます。インドネシアのあらゆる政党、派閥というものを越えて、このアスピレーションは非常に強く起っております。ただその方法論、どうやってやったらよいかということについては、若干意見の違いはありますが、この点については非常に強いわけです。そこで、この問題は国連の総会などでしばしば取り上げられたのでありますけれども、なかなか具体的な解決の道に進まないというので、昨年の暮れになりまして、この感情の対立関係というものが非常に悪化いたしまして、そうしてオランダの勢力を駆逐すると申しますか、そういう形になって出て参りました。しかしながらインドネシア経済というものは、先ほど申し上げましたように、オランダの経済組織あるいは考え方というものが相当残っております。これを一瞬にしてぬぐい去るということはまず不可能なことじゃないかと思います。それからまたオランダ側から申しましても、御承知のように、インドネシアにはオランダは最大の海外投資をやっております。概算的に約百億ドル近い投資をオランダはしておるといわれておりまして、オランダから見ましても、インドネシア経済的に非常に重要なところでございますので、私どもインドネシアとオランダとの関係というものは、そう一挙に清算されると申しますか、縁が切れてしまうというふうなことは非常に考えにくいというふうに思っております。この問題につきましては、私ども再三現地に参りましたときに、オランダの連中ともインドネシアの連中とも、また中立的な立場にありますインドであるとかアメリカの連中などの意見もいろいろ聞いてみました。が、結局その関係というものはそう簡単に清算されるものではないということははっきりいたしております。現在の段階におきましては、両者の感情的な対立というものがちょっと激しくなり過ぎましたので、これを簡単に話をつけるということもそう容易なことじゃないだろう、しかしいずれはこの問題について平和的にお互いが話し合うような状況にいかなければならないのではないかということを言っております。われわれも大体そういうふうに考えております。ただあそこにはオランダのいろいろな権益がありまして、この権益を、国全体というよりも、個々に守るという意味から、どちらかというと、いわば個人的な動きというものが、オランダ、インドネシアの問題の背後に若干ないことは言えないかもしれないとは思いますけれども、私は全体といたしましては、やはりオランダの政府インドネシア政府も、理性的な判断のもとにこの問題を解決していく意思があるのではないかというふうに考えております。
  32. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 反乱軍と中央政府の関係につきましては、その政治的な勢力あるいは経済的な裏づけによりまして、外務省当局が内政問題として見ていくということについて、私ども別に異議を差しはさむものではないのでありますが、この対オランダ関係につきましては、ただいまの御説明にもありましたように、国連においても一応討議された国際的な問題となっておる。しこうして国連で問題になっておる間に、もしくは国連の取扱い方が私は不適当ではなかったかと思うのでありますが、そのことが基因いたしまして一応は国際紛争事件に発展をしておるのではないか、現在では反乱軍の問題にわれわれは気をとられておりますけれども、対オランダ関係の方がきわめて重要な問題ではないかと思うのであります。さらには、こういうような複雑な事情でありますと、反乱軍の方の状況というものをあまり過小評価してはいけないのではないか、もし不幸にして第三国がこれに介入するというような事態がありますと、いろいろ複雑な様相を呈してくると思うのでありますけれども、現在外務省当局におきましては、対オランダあるいは反乱軍の関係等について、私どもの懸念するような心配はないのかどうかということを一応ここで承わっておきたいと思います。
  33. 白幡友敬

    白幡説明員 お答え申し上げます。反乱軍の問題につきましては、さきにも御答弁申し上げたのでありますが、あくまでも国内問題としてこれをながめていくという立場でございます。なぜ私どもがそういう立場をとるかと申しますと、今もお話がございましたように、これが国際的な問題に展開して参りますと、経済的に政治的に非常に基礎の脆弱なインドネシアという国は分裂状態になるかもしれない。分裂状態になりますと、これは非常にゆゆしいアジアにおける重大な国際問題になってきますので、われわれといたしましてはインドネシア人の性格、それから今日までに至りました過去のいろいろな事件を見ておりましても、第三国がこれに容喙しない、つまりあくまでも内政問題であるという立場で見ておりますれば、おのずから彼ら同士の間で話をつけていっておるわけであります。そういう意味から言いまして、われわれはほっておくというと語弊がありますが、とにかく冷静な立場をとっておれば——中央政府側もまたいわゆる革命政府といわれる側も、自分たちの民族の統一を破壊するような事態が起れば、自分たち自身が不幸になるということはよく知っておると思います。そういうふうに私が考えておりますのは、今までにいろいろな連中と会って話しました私の一つの確信でありますが、そういう考え方を持っておりますので、若干の時間はかかるかもしれませんが、いずれはそういう問題について話し合いができるのではないかという考え方を持っております。ただこれにもし第三勢力と申しますか、外部からいろいろな力が加わって参りますと、あるいは問題が転換いたしまして、国のいろいろなユニティというものがくずされていくという事態にならないとも限らないと考えております。そこでわれわれといたしましては、日本がそういうふうに公平な立場に立っておるというだけでなく、願わくばほかの国もみなそういう考え方でもって今日の事態というものを見ていってもらいたいという希望があるわけでございます。従いまして、私どもの接触する限りの各国の外交官というものはわれわれの考え方というものは絶えずよく説明をいたしております。まず現在のところでは大体そういう考え方を是認しているのではないか。つまり日本が、われわれの考えておりますようにそれに干渉しないという立場を一応とることが正当であるというふうな見方をしているのではないかというふうにわれわれは考えております。
  34. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 インドネシア国民か強い民族統一の意思を持っておる。これが何ものにも超越しておるということは私も認識するところでございまして、これ以上インドネシアのいろいろな国情について私自身もあまり神経を使いたくない。せっかく進んでおる平和条約等がすみやかに批准されることを私も望んでおるわけでありますので、この辺で話を変えていきたいと思うのであります。  日本インドネシア共和国との賠償協定でありますが、先ほど高岡委員から合同委員会の問題についての御質疑がございました。その際御答弁は、詳細な話し合いをしておらない、こういうことでございまして、たまたまその中で合同委員会委員長にはインドネシア側のりっぱな委員長を得られる、あるいは得ることが好ましいというようなお話でございましたが、この合同委員会については、委員長インドネシア側であるということが当初からきまっておるのでありますか。
  35. 白幡友敬

    白幡説明員 私の申し上げようがまずかったのでございますが、これは双方が委員会を持っておりまして、その双方が集まるわけであります。この議事の進行の司会は、たとえば今回は日本側がやりますと、その次はインドネシア側というふうにやるわけであります。
  36. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 それでわかりました。ちょっと誤解を招くようでありましたので、聞いたわけであります。  それから第四条第二項の商事仲裁委員会でありますが、この商事仲裁委員会と第十条の仲裁委員あるいは仲裁裁判所、この関係はどうなりましょうか。また商事仲裁委員会というものはどのような取りきめが行われておりますか。
  37. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 第四条の第三項の商事仲裁委員会は、個々の契約について契約の当事者間に紛争が起った場合に、できるだけ一般の商事仲裁の手続によって解決したい、こういう趣旨のものでございます。ここでいわれております取りきめというものは、まだできておりません。それから第十条の仲裁委員と申しますのは、この条約の解釈及び実施につきまして日本インドネシアの両政府の間で争いが起りました場合に、その間の仲裁をするために第三国の人も入れて仲裁手続に付そう、そういう趣旨のものでございます。
  38. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 次に同じく第六条の第七項でありますが、第五項に「使節団の長、使節団の上級職員二人」というふうに書かれておりますのが、第七項を見ますと、四行目に「使節団の法務部長の職にある者」というのがここへ突然に出てくるわけでありますが、この「法務部長の職にある者」というのは、使節団の上級職員二人のうちであるのか。この使節団の法務部長というものは、外交慣例上一応考えられる役職なんであるか。その点の御説明をいただきたい。
  39. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 この法務部長という考え方は、日本フィリピン賠償協定を作る際に初めて出てきたものでございます。元来ならば使節団の長が訴訟においても代表すべき筋合いでございますけれどもフィリピン側でいやしくもフィリピン政府機関の長たる者が、たとい商売上のことであるとはいえ、日本の裁判権に服するというのはどうも好ましくないということで、まあわが方としても結局名を捨てて実をとるという考え方から、使節団としてはとにかく裁判の結果に服するということを確保しまして、法務部長が訴訟においては使節団を代表するということを認めたわけでございます。そういう関係からインドネシアもこの方が好ましいということで、こういう結果になったわけでございます。  使節団の法務部長というようなものが外交慣例上あるかという御質問でございますが、大体賠償使節団というものは、大使館、公使館、総領事館というような通常の外国に設置される政府機関ではございませんで、こういう特殊の目的を持って参っておるわけでございますから、その法務部長たる者も国際法上認められた何らかの資格というものは本来あるわけではございません。それから法務部長は当然上級職員がなるものとわれわれは考えております。訴訟においては使節団を代表するような重要な職務を持つものでございますから、下級の者ではとうていこの法務部長の職は勤まらないだろう、かように考えております。
  40. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 十分お話し合いの結果だと思うのでありますが、いろいろ吟味の点があろうかと思うのであります。  次に経済協力の関係でございますが、二十年間に一千四百四十億円——四億米ドル、この内容等についてはすでに資料か何かで出ておりましょうか。
  41. 白幡友敬

    白幡説明員 これは全く目標額でごいまして、また日本政府といたしましては、それに対して特に財政的な義務を負わないということになっております。内容につきましては先方と具体的に話し合ったことがございます。
  42. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 この投資、それから長期貸付または類似の形で実施される、こういうふうなことがいわれておるのですが、この類似の形というのは、どういうことを考えられておるのですか。
  43. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 これはやはり日本フィリピン経済開発借款に関する交換公文にある文言と同じものでございますが、趣旨はなるべく限定的でなく、将来商業上の投資、長期貸付というのにぴったり当てはまらないような経済開発借款が行われることがあるかもしれない。そういうものもカバーできるようにということで、こういうばく然たる表現で、その他という趣旨の文言を入れたわけでございます。
  44. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 先ほど高岡委員からいろいろ御質問がありましたこのインドネシア債権の棒引きの問題でありますが、この債権政府勘定であるという御説明であったと思うのであります。それで、これは受け取りと支払いと相殺したしりが一億七千六百万ドル余になると思うのであります。この場合日本側からインドネシアに支払うべきものは棒引きになってそのしりが出たわけですが、日本の国内的にはどうなっておるのですか。
  45. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは日本の国内的には、普通の輸出の場合には普通の輸出と同じ手続で、銀行は日本輸出業者に対して円を払っておるわけであります。そのしりがみんな政府勘定として残ってきたわけであります。
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 円を払っておる方は、これは受け取りの方ですね。
  47. 牛場信彦

    牛場政府委員 輸出の場合であります。
  48. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 インドネシアの方に払う分ですね、それは国内的には業者から受け取っておるわけですか。
  49. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは輸出の場合です。輸入の場合も同じく業者が円を銀行に払いまして、それが日本側の債務として記帳されまして、結局それが債権と債務か両方残っているわけでありますが、差引きしますと、結局これだけになるという次第であります。
  50. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ちょっと私は疑問に思ったことは、インドネシアの方に支払うべきものがこの長期の間によく押えておることができた、受け取るものがあるのだから、これは払わぬぞということが、長期の間にそういうことができたのかどうか。実際上できたのでありましょうが、その間の経緯が聞きたいのであります。
  51. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは支払い取りきめでもって現金を使わないで貿易しょうということになっておりまして、つまり掛売り掛買いをしておったわけであります。従いまして毎年々々それを締めくくりまして、こちらがマイナスになっておれば現金を支払うわけですが、そういう状況が今まで一度も起りませんで、ずっとこちら側が貸し越しになっております。そういう状況でございますので、インドネシアに対して支払うという問題は、この協定に関して一度も起らなかったわけであります。
  52. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 そうしますと国内的には貿易業者に支払うべきものは日本政府が外為会計の中で立てかえて全部支払ってしまったとこういうことになるわけですか。
  53. 牛場信彦

    牛場政府委員 そういう御解釈の通りだと存じます。
  54. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 これは一度お調べ願いたいのでありますが、私の記憶ではこういうような政町勘定になって、インドネシアに対する債権放棄の場合、財政法上によってはその債権放棄に伴う法律案が必要ではなかったかと思うのでありますが、その辺はどういうふうな見解でありましょうか。
  55. 板垣修

    ○板垣政府委員 それの放棄につきましては法律にかわる議定書を国会に出しまして、その審議によって放棄を御決定を願う、こういう形になるわけであります。  なお帳簿上のことにつきましては、大蔵省から別にこの国会に対しまして外為資金特別会計の改正に関する法律案が出ております。
  56. 床次徳二

    床次委員長 松本七郎君。
  57. 松本七郎

    松本(七)委員 この海事協議機関というのと海運関係の諸条約との関係はどうなのか、まず御説明願います。
  58. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 この条約の文面上では明示的に海上人命安全条約の事務機関になるということが書いてあるだけでございますけれども、この機関ができましたあとでは大体海事に関する技術的な諸条約の事務機関には、新しくできます機関が充てられることになるのではないかと予想いたしております。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 その次には第二条に「機関の任務は、協議的かつ勧告的なものとする。」となっておるのですが、この機関決定事項というのは事務的に拘束力は全然ないのでありますか。
  60. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 さようでございます。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 単なる審議機関ということになると、この機関の任務がそれほど重要な行為をするものとは思えないと思うのですが、それがなお国連の専門機関となった理由はどういうところにありますか。
  62. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 これはつまり海上交通のいろいろな技術的な諸問題について協議検討いたしまして、それで今までにありますいろいろな条約に種々欠陥がある、あるいはさらにこれを改善したいというような意見がだんだん固まってきますと、そこで現行諸条約を改正しよう、その改正する場合には単に機関でなしに別に国際会議を持ってやるわけでございまして、そういうような条約改正の前提になるような作業を機関が受け持つ、そういう工合に考えていただけばいいじゃないかと思います。
  63. 松本七郎

    松本(七)委員 それから第九条の規定、いずれかの領域または領域の集合が準加盟国となる、こういう規定があるのですが、この領域の集合とはどういうのですか。
  64. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 ここで領域といっておりますのは、結局ほんとうの国家的な独立を持たないものをいっているわけでございます。領域の集合といいますのは、そういうのが一つの単位でなくて、二つ以上のものが併合した形で、この機関の準加盟国となる場合をいう。そういうことで、これは具体的にどういうものが今後準加盟国となるかということは予想しないままで、とにかくそういうものでも準加盟国となる道を開いておく趣旨ができておるものと考えております。
  65. 松本七郎

    松本(七)委員 具体的にどういうものが出てくるか、全然予想はできないが一応そういう規定をした。そうしますと、かりに出てきた場合に、その準加盟国のその機関における行為能力あるいは権利能力というものはどういうものなんですか。オブザーバー・プラス単なる審議権だけくっつくとか、何かそういう具体的な権利能力があると予想されておるのでしょうか。
  66. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 準加盟国の資格については、第十条で規定いたしておるわけでございますが、投票権を持たない。理事会または海上安全委員会構成員となる資格を有しない。そのほかはこの条約に基く加盟国の権利及び義務を有するものとするということでございます。
  67. 松本七郎

    松本(七)委員 それから日本理事国になる見込みがあるとかいう話も聞くのですが、その予想は立っておるのでしょうか。
  68. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 日本はこの条約の署名のときに、まだ参加いたしておりませんために、当然にこの第一回の理事会のメンバーとなるものとして附属書に掲げてあるものの中には入っておりませんけれども、実力からいいまして入り得べき資格を持っていることは否定できないところであると思います。また私どもがこれまで当っております範囲内では、(a)、(b)に入り得ないとしても、(c)のカテゴリーで入り得る。ほとんど確実と申しあげてもいいかと思うのでございます。
  69. 松本七郎

    松本(七)委員 (a)に入る可能性はないのですか。
  70. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 (a)の可能性もあると考えております。
  71. 松本七郎

    松本(七)委員 それからこの機関の加盟国の分担金は、どういうふうに割り当てられるのでしょうか。
  72. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 日本の場合には、大体百ポンド、イギリス・ポンド見当ではないかと考えております。
  73. 松本七郎

    松本(七)委員 説明書だと、分担金は年間約千スターリング・ポンドとなっているのですが……。
  74. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 どうも失礼しました。千ポンド、百万円相当だろうと思います。
  75. 松本七郎

    松本(七)委員 この算出の根拠はどこにあるのですか。
  76. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 これは理事会からの提案に基いて、総会が年間経費を加盟国に割り当てることになっておるわけでございます。その割合につきましては、機関が発足しましてから、総会が加盟国の船腹保有量あるいは貿易量等を勘案して、正式に決定することになっております。一九四八年に開かれました準備委員会では、この機関の年間経費を約二万ポンドと見込んでおります。そういうところが、大体さっき申し上げましたような千ポンド程度という推定をした根拠でございます。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 財政法上の予算措置はどうなっておりますか。
  78. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 予算の上にはまだ組んでありませんです。この加盟が認められて、いよいよ来年度中に分担金支出の必要が起りました場合には、その際に予備金支出かどうか知りませんけれども、そういう措置をとることになるだろうと考えます。
  79. 松本七郎

    松本(七)委員 その次はこの機関の特権、免除について、国連総会で承認された専門機関の特権及び免除に関する条約に基くという規定があります。日本はこの条約にまだ加盟していないのだと思いますが、この海事条約が発効するまでに特権、免除に関する条約に入る手続をするのかどうか。この附属書IIによりますと、特権、免除の条約に加入する衣での暫定的な規則が述べられているのですが、これではすこぶる不十分ではないかと思われるのです。わが国も多く専門機関に加入したのでございますから、やはり条約ではっきり規定する必要があるのではないかという気がするのですが、どうでしょうか。
  80. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 専門機関に対する特権免除の協定については、現在部内で検討中でございます。できるだけ早い機会にこれに加入することができるように取り計らいたいと考えております。
  81. 松本七郎

    松本(七)委員 第七条は、機関の加盟国の資格として、国連非加盟国で一九四八年の海事会議に代表者を派遣した国がこの機関の加盟国になれるという一般原則をきめているわけですが、第八条で、国連非加盟国も申請により加盟国になれる、こういうふうになっているわけですね。日本はなぜ第八条の規定に従って加盟申請をしなかったのでしょうか。
  82. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 この条約承認いただきますれば、その上で加盟の手続りをとるわけでございます。
  83. 松本七郎

    松本(七)委員 この機関の職員になる資格はどういうふうになるのですか。それからもう一つは、日本としてこういった国際機関に今まで何名ぐらい職員として出しているか。
  84. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 事務局の職員については、第三十三条に規定があるだけでごいます。国連の専門機関一般について、日本人で事務局の職員に何名くらい現在入っているか、私ただいま存じませんので、あとで調べて申し上げることにいたしたいと思います。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 この機関が発足したあと、さしあたり当面する重要問題として予想されるのはどういうものでしょうか。
  86. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 第一回総会が、この条約が発効しまして六カ月後に開かれるわけでございますが、実質問題まですぐ入るかどうか、具体的には予測できませんけれども、さしあたりは新しい機関の組織といいますか、理事会の構成メンバーとかいうものの選挙、その他の、機関を成立させるための要件を充足することが、一番大きな仕事じゃなかろうかと考えます。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 提案理由の説明書を見ますと、この機関に参加することにより「わが国海運の利益の増進、ひいてはわが国通商貿易の発展に資する」こううたってあるのですが、この条約の各条項から、具体的にどういうふうなことが利益として予想されるのですか、御説明願いたい。
  88. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 日本の利益という観点からいって、これは海上交通の分野での国際協力を進めるために、国連の専門機関として設立されるものでございますから、国連を中心として国際協力をできるだけ進めていくという大きな趣旨からいって、また日本としては、そういうものに入らないと損するというふうな観点がまず第一にあると思うのでございますが、技術的な面については運輸省の方から説明していただくことにいたします。
  89. 辻章男

    ○辻説明員 お答え申し上げます。この機関で討議されます問題は大別いたしまして、政策的な問題とそれから船舶の運航の技術的な問題というふうに分れるかと思うのでありますが、船舶の運航の技術的な問題につきましては、従来から大きな問題につきましては国際的な条約がございまして、おのおのその条約につきまして、各国が出て意見の交換をして問題をまとめていくということに相なっております。ただ従来は、政府間の話し合いで、そういう政策的な問題についての討議の場がなかったわけでございますが、この機関によりまして、初めてそういう場ができるわけでございまして、技術的な問題は従来からの通りでございますが、そういう政策的な問題につきましても、そういう場で日本海運業あるいは貿易の立場から、問題につきまして発言し、これについて会議で強調していくということが、大きな目で見て海運貿易についてプラスであるというふうに考えております。
  90. 松本七郎

    松本(七)委員 ソビエト初めいわゆる社会主義諸国が国連の専門機関にあまり多く加入していないのですが、その理由は、日本政府として、どういうところにあると見ておられるのですか。特にソビエトのようなああいう大国が加入すれば、こういう専門機関というものの働きがもっと活発になり、目的を十分遂行できるのじゃないかと思うのです。たとえば国際復興開発銀行だとかあるいは通貨基金、こういうものにソビエトが入れば金融上でももっと公平な運営ができるのじゃないかと思われるのですが、現在の開発銀行、通貨基金の運営というものは米国の言いなりになっておる。実力のしからしめるところだといえばそれまでですが、アメリカの世界金融政策の一環として独断的に運営されているような面が多分にあるわけです。そういうものを直す意味からいっても、ソビエトなどがこういうものに入ってくれば、国連の専門機関としての本来の姿が出てくるのじゃないかと思うのですが、どうしてソビエトがこういう機関に冷淡だと、日本政府は判断しているのですか。
  91. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 専門機関一般のことについては、どうも私から説明いたしかねますけれども、この海事協議機関のことにつきましては、ソ連は条約の作成会議にも参加しなかったのでございます。しかしこの機関が事務局を担当することになっております海上人命安全条約の当事国ではあるわけです。従いまして、今までは参加いたしておりませんけれども、この機関がほんとうに発足したあとで、これに参加するということは十分考えられるのでございます。なおソ連以外の東欧圏諸国につきましては、条約の作成会議にはチェコ及びポーランドが代表者を派遣しました。ただこの条約に署名したのはポーランドだけでございます。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 それから参考資料として配付された留保と宣言ですが、これは本条約と不可分なものじゃないかと思うのですが、どうしてこれを参考資料として分けられたのか。特に条約の保留ということは関係国の承認または同意が必要なんですから、当然これは条約と一体のものでなければならぬじゃないかと思うのですが。
  93. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 これまでの取扱いでこういたしておりますが、なおこれと基本協定との関係その他につきましては、詳細に調べました上で法律的な説明を申し上げたいと思います。
  94. 松本七郎

    松本(七)委員 メキシコ、アメリカの留保と理解していいのですか。
  95. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 留保といいますと、相当実質的な内容があるように一般には考えられるわけでございますけれども、実際は条約規定の方向に沿っておりますので、念のためにこういうことを留保ということで宣言を加えたという工合に内容的には考えております。     〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  96. 松本七郎

    松本(七)委員 これには、メキシコまたはアメリカ政府は、この条約の「いかなる規定も制限的商慣行に関する国内法令を変更することを意図するものでない」こういわれておるわけですが、ここでこの両国はこの条約の本質的な事項、条約の第一条に定められた機関の目的、そういうような事項について国内法優先を確認しているわけでしょう。これでは条約の本質的目的が効果を発揮することができないで、国内法によって規制されてしまうという結果になりはしませんか。
  97. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 この機関の目的としまして、第一条の(b)に「海運業務が世界の通商に差別なしに利用されることを促進するため、政府による差別的な措置及び不必要な制限で国際貿易に従事する海運に影響のあるものの除去を奨励すること。」となっております。しかしすぐ続きまして、「自国の海運の発展及び安全保障のために行う援助及び奨励は、」特別のものを除いては差別的待遇とならないという工合になっております。元来ほんとうの趣旨からいいますと、こういうものをまず第一に禁止するとか、特にその機関で了承されなければ行ってはならないとかいう工合に、かたい規定になっておりますと、最も国際協力とじては理想的なわけでございますけれども、なかなかそこまでは各国の話し合いがつかないで、この条約そのものが相当ゆるやかなといいますか、こういうように禁止、制限というところまで一足飛びには行けなかったという事情がある次第でございます。従って現在の段階ではまだ各国が自国の利益のためにいろいろな援助、奨励をやるということは差別待遇とならないということが認められておるわけでございます。
  98. 松本七郎

    松本(七)委員 それから関係国はこの留保を承認または合意しているのでしょうか。
  99. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 今までの関係国の行なった宣言に対して、ほかの国がどういう態度をとっているかしということは、まだはっきり一々承知いたしておりません。おそらくそのまま聞き流されておるのではないかと考えます。あるいはそういう問題は、ほんとうにこの機関ができまして第一回の総会あたりで取り上げられることが筋道であるかとも思われる次第でございます。
  100. 松本七郎

    松本(七)委員 五十八条による宣言についてですが、日本も米国も沖縄については何らの宣言もしていないわけですが、この条約を沖縄にも適用されるのでしょうか。
  101. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 もちろんこの機関ができることが前提でございますか、日本の加盟の効果が当然沖縄に及ぶということにはならないと存じます。
  102. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとこの条約効果は、日本がこの条約に加盟することによって当然沖縄に適用されることにはならない、こういうのですか。
  103. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 日本がこの条約に基いていろいろな義務を負う、あるいは権利を持つ、そういうものが現在三権を行使しておりませんので、沖縄について発生する、日本にそういう権利義務関係が起るということはない、そういう工合に解釈しております。
  104. 松本七郎

    松本(七)委員 政務次官にちょっと伺いますが、沖縄の住民の権利義務にかかわる条約締結権は、一体米国側にあるのでしょうか、日本国側にあるのでしょうか。
  105. 松本瀧藏

    松本政府委員 沖縄自体に対しまするところのいろいろな取りきめは、もちろん今日本がじかにこれをするわけにいきませんが、沖縄におります住民、まあ日本人ですが、これが海外にいます場合には、もちろん日本政府がこの利益の代表権を持っておると思います。
  106. 松本七郎

    松本(七)委員 沖縄の住民の権利義務に関する条約締結権は、やはり主権国である日本がその締結権を持っていると解するのが当然だろうと思いますが、どうでしょうか。
  107. 松本瀧藏

    松本政府委員 これは専門の問題になりますので参事官からお答えいたします。
  108. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 具体的にどういう条約ということがありませんとはっきりいたしませんが、抽象的に申し上げられることは、アメリカとしても沖縄に日本が潜在主権を持っておるのだということと矛盾するような恒久的な条約関係は結べないだろう、しかし現在アメリカが三権を行使しているということからして結べるような範囲の協定ならば結ぶことがあり得る、そういう工合に考えればいいのではないかと考えます。
  109. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると条約の具体的内容によって日本締結権があるかアメリカに締結権があるか、そのつど変るというわけですか。
  110. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 そういう意味ではございません。日本が結んだ条約協定上の権利義務を沖縄住民に直接負わせるということは、これは三権を持っておりませんからできないのでございます。さっき申し上げましたのは、アメリカが沖縄住民の権利義務の関係に影響を及ぼすべきような内容を持つ協定を結べるかどうかという御質問だと考えまして、アメリカのそういう条約締結権のあり方というものを申し上げた次第でございます。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると沖縄住民がほかの国際的な権利義務を負うような条約締結については行政権を持っている米国がさしあたり持っている。しかし非常に長期にわたるものについては制限を受ける、こういう意味ですか。
  112. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 大体その通りでございます。それからその問題と直接関連いたしませんけれども、ちょっと念のために申し上げておきたいのでございますが、たとえば日本通商協定などを結びます場合に、最恵国待遇に関する規定は沖縄には適用がないということを申しております。これは日本と沖縄との特殊関係から、沖縄は日本貿易上外国の待遇じゃないのだ、沖縄と日本との貿易関係が特殊な立場に置かれても、諸外国はそれに均霑できないのだぞというふうな留保条項はつけております。しかしこれはさっきの御質問に直接答えているわけではありませんで、たとえば日本インド条約を結んで、そういう規定を設けましたからといって、その条約に基く権利義務関係というものは、日本だけのものでございまして、それによって沖縄住民が直接拘束されるという関係はないわけでございます。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 潜在主権といってもやはり主権ですからね。三権の行使を今アメリカが行なっているわけです。従って沖縄住民の権利義務に関する国際条約締結権はあくまで日本が持っている、しかし実際に権利義務を拘束する条約を行使する場合には、アメリカが代行するということなら、一応主権が日本にあって、行政権はアメリカが持っているということと一致すると思う。条約締結権もアメリカにあるというのでは、そして長期にわたるものには制限を加えるというのではむしろ逆じゃないかと思う。基本的にはやはり主権者である日本条約締結権を持っているがそれを行使する場合にアメリカが代行するという形にならないとおかしいのじゃないですか。
  114. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 御意見でございますけれども、立法権、行政権、司法権というものが全部アメリカにあるわけでございまして、それと矛盾することなしに、日本が沖縄について条約を結ぶということは理論上考えられないのではないかと思います。
  115. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、三権をアメリカに委譲していることによって、条約締結権もなくなった、こういう解釈ですか。それは少し無理じゃないですか。実際に締結する場合に制限をこうむる。三権を委譲していることと調整しなければならぬということはわかるんです。けれどもその三権を委譲したことによって国としての条約締結権もなくなった、こう理解しなければならぬものでしょうか。
  116. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 沖縄についてたとえば沖縄を一つの対象としまして日米関係で返還するという条約を結ぶということはあります。しかしさっきから申し上げておりますように、日本があるほかの国と条約を結びまして、その条約の結果として当然に現在沖縄に住んでおる住民を直接拘束するような権利義務関係を設定することは、どうしてもアメリカの三権行使と矛盾することになると考える次第でございます。
  117. 松本七郎

    松本(七)委員 それから署名及び受諾の規定ですね。「この条約は、署名又は受諾のため開放される」とあるわけですが、ここでいう署名と受諾というものは、それぞれ違った効果を持つ行為と解すべきでしょうか。通常は署名することによって受諾行為が成立すると考えられるわけですね。それをここでは署名と受諾というものは別個のものとして取り上げられているように解釈できるのです。この点どうですか。
  118. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 これは、二国間条約の場合に引き移せば、署名は二国間条約の署名に当り、受諾は批准書の交換に当る、つまり受諾によってこの機関に加盟することが法律的に完全に成立する、そういう工合に考えていただいていいと思います。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 私は安全操業のことについてちょっと次官にお尋ねをしておきたいのですか、きのう岸さんが国連提訴のことも考えるという答弁を参議院でしております。私調べたのですが、まだ意を尽さないようなんですけれども、どういうことなんですか。安全操業について返事がまだ来ていない、来ていないから、近くこの問題を国連に提訴するということを政府は真剣に考えて具体策を進めているのですか。  もう一つは漁業問題ですね。漁業交渉においても八万トンということをいってきたんですが、その点ももし妥結がつかないようなことになったならば、これもやはり国連提訴ということも考えられると思うのですけれども、そういう対策について政府のお考えを聞いておきたいと思います。
  120. 松本瀧藏

    松本政府委員 北洋漁業の問題を国連に提訴してはどうかという質問が昨日の参議院の予算委員会であったそうでありますが、それに対して岸総理は提訴することも考えられないでもないという意味のことを答弁されたそうであります。われわれといたしましては、政府といたしましては、もちろんこの北洋漁業がもう全然行き詰まりになったとは考えていないのであります。日本の十四万五千トンに対しまして、昨日初めてソ連側から数量を、八万トンという数字を示してきたわけであります。ということは、一歩前進だと考えます。  また国連に提訴するかしないかという問題についてでありますが、確かに国民の多くの中に——多くという言葉も、私決してこれは誇張した表現ではないと思いますが、どうして国連にこれを持っていかないんだということを言っておることは事実であります。また国際法学者の中にも、国連に提訴すべきであるという意見を述べておる人もあるのであります。しかしこれを果して国連に提訴すべきであるかどうかという政治問題、交渉のいわゆるテクニックからいたしまして、いいか悪いかということは、私は別問題だと思うのであります。先ほど申し上げましたごとく、まだこの問題が完全に行き詰まっておるとはわれわれ考えておりません。まだ交渉の余地がある、継続中であるという工合に考えております。  万一それがいよいよ行き詰まった場合にはどうするかという問題でありますが、技術的にこれが提訴できるかどうかということもありましょう。事態であるか紛争であるかという解釈もございましょう。またこれを安保理事会に提訴した場合、拒否権を持っているソ連がこれにどう出るであろうということもありましょう。しかし世界の世論に訴える意味におきまして、あるいは世界の認識をもっと高める意味におきまして、総会にこれを出したらどうであろうというものの考え方もございますが、これはもちろんもう少し見通しをつけてでないと、われわれははっきりしたことを申し上げるわけにはいきませんけれども、今のところでは直ちにこれを国連に提訴するような方針は、まだ立っておりません。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 今の北洋漁業ですか——。安全操業のことについてはどうですか。
  122. 松本瀧藏

    松本政府委員 安全操業の問題に関しましても同じことを言えると思います。
  123. 松本七郎

    松本(七)委員 関連して。今の政務次官の御答弁を聞いていると、漁業委員会交渉の、例の十万トン、八万トンのお話が出たのですが、きのうの岸総理の答弁は、両方を国連に訴えてもいいと言っておられるのですか。安全操業だけじゃないのですか。その点ちょっとはっきりしておいて下さい。
  124. 松本瀧藏

    松本政府委員 あるいはきのうは安全操業の問題だけだったかもしれませんが、先ほどの並木委員のあれも私はぼんやりしておったのでなんですが……、(並木委員「両方です」と呼ぶ)両方の場合も同じことが言えるのではないかと思います。
  125. 松本七郎

    松本(七)委員 どうせこれはもっとあれしなければならぬと思うのですが、政務次官にこの機会に私伺っておきたいのです。安全操業ということになれば、これを国連に訴えるということになれば、当然領土問題です。これはもう一体領海かどうかということから入ってこなければ解決にならないのだから、当然領土問題の争いになると思う。そういうことを予想しながらもやはり国連に訴える可能性があるとあなた自身はお考えですか。
  126. 松本瀧藏

    松本政府委員 先ほど申し上げましたごとく、これが事態となるか紛争と解釈できるかというような技術問題もありますので、今、日本政府といたしましては即座にこれを提訴するという態度はまだきめてないということを申し上げた次第であります。
  127. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたすことにして、本日はこれをもって散会いたします。     午後零時二十八分散会