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1958-02-27 第28回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 須磨彌吉郎君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    松田竹千代君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    西尾 末廣君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君  委員外出席者         外務参事官   藤崎 万里君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員北澤直吉君辞任につき、その補欠として小  坂善太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十五日  沖繩土地問題解決に関する陳情書  (第四一一号)  原水爆実験禁止等に関する陳情書外四十二件  (第四一二号)  同外六十二件  (第四七六号)  沖繩地方自治権擁護に関する陳情書  (第四八二号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国パキスタンとの間の文化協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)(参議  院送付)  日本国エチオピアとの間の友好条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第六号)(参議  院送付)  政府間海事協議機関条約締結について承認を  求めるの件(条約第七号)(参議院送付)  通商に関する日本国インドとの間の協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)(  予)  国際情勢等に関する件      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  日本国パキスタンとの間の文化協定締結について承認を求めるの件、日本国エチオピアとの間の友好条約締結について承認を求めるの件、政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件、通商に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたし、質疑を許します。通告がありますので、これを許します。山本利壽君。
  3. 山本利壽

    山本(利)委員 それではパキスタンとの文化協定に関連してまずお尋ねいたしますが、パキスタン日本以外にどういう国と文化協定を結んでおりましょうか。
  4. 松本瀧藏

    松本政府委員 近藤政府委員より答弁させます。
  5. 近藤晋一

    近藤政府委員 パキスタンが現在結んでおります文化協定はトルコ、イラン、エジプト、シリア、この四つと結んでおります。
  6. 山本利壽

    山本(利)委員 このパキスタンとの文化協定は、昭和三十二年の五月二十七日に署名調印したということになっておりますが、これに対するパキスタン側批准状況はどういうことになっておりますか。
  7. 近藤晋一

    近藤政府委員 パキスタンにおきましては文化協定批准パキスタン国会承認を要しないことになっておりまして、パキスタンの内閣の承認さえあれば国内的の手続は済むようになっております。従いまして現在御審議中の日パ文化協定わが国におきまして国会承認を得ますれば、パキスタンにおきましては直ちにその国内的手続を了することになっております。
  8. 山本利壽

    山本(利)委員 パキスタンは現在のインドとセイロンと一緒に、もとわれわれはインドと言っておったわけでありますが、終戦後宗教の関係を主として三つの国に分れておりますが、そしてパキスタンの方は大体回教と思っておりますけれども、パキスタン文化、これは概括してまことに答えにくいかもわかりませんけれども、パキスタン文化という場合に、われわれが得て参考にするとか、利益を感ずるとかいったような点はどういうようなことがあるでしょうか。大体パキスタン文化事情といったようなことについて伺いたい。
  9. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいま御指摘のごとく、パキスタンは宗教的には回教徒圏に属しておるわけでございまして、わが国におきましては、エジプト等との間におきまして文化協定を結んでおると同様の意味におきまして、パキスタンにおきましても、回教徒文化というものが独自の発展を見ておりますことと、さらに新興国家といたしまして、今後パキスタン近代化をはかりつつ、その新たな文化を生みつつあるわけでありまして、この意味におきまして、わが国といたしましても、パキスタンの単に古い文化のみならず、新興国家としての新しい文化発展等わが国との交流によりまして、わが国として稗益するところが少くないと存ずる次第でございます。
  10. 山本利壽

    山本(利)委員 日本人パキスタンについてまだあまり詳しい事情を知らないのと同じように、パキスタン人々も、日本についてはまだあまり知らないだろうと思うのです。ことに昨年私、パキスタンに参りまして、日本大使館等でもお世話になったわけでありますけれども、その際に、日本のいろいろな事情現地向うの国の人に知らせるためには、文化映画であるとかその他資料外務省を通じてもっといただきたい。そうでなければ、単に遠いところに日本という国があるという程度のことで、なかなかうまくいかない。実際フィリピンであるとかインドネシアであるとか、あるいはタイというような国は、東南アジアとして割合に日本に知られている。それで経済交流とか、いろいろな点も漸次緒についておるけれども、国が離れておるだけに、インドとかパキスタンというようなところとはまだ非常に隔たりがある。日本人としても、これに対するところの認識が非常に薄いし、先方もそうである。けれども、それだけにわれわれは、あの方向に向ってもっともっと外交的にも経済的にも力を尽すべきだ。というのは、ヨーロッパ諸国もあの方向今出ようとしておるし、それから日本としても、今後はインドパキスタンというところは大いに注目しなければならぬ。貿易その他の面でいっても、あそこへ力を入れなければならぬのに、どうも今日まで、日本外交方面では手薄であったということを、行ってみてたくさんの人からも聞いたわけでありますけれども、パキスタン方面と今度は文化協定を結ぶとなると、一段とその方面には力を尽されると思うのですけれども、今日まで大体外務省としては、先ほど申しました日本紹介するための映画とかパンフレットであるとかいったようなものをどの程度出しておられたか、あるいはこの協定ができたらどういう工合にしようとしておられるか、そういったようなことについて承わりたい。
  11. 近藤晋一

    近藤政府委員 外務省といたしましては、従来とも予算の許します範囲内におきまして、でき得る限りの文化活動パキスタンのみならず各方面でやって参った次第でございます。御指摘のごとく、パキスタンは何分地理的にも遠いものがございますので、たとえば人的交流の面でも、なかなか実施し得ない面があった次第でございます。しかしながら、数ははなはだ僅少ではございますが、従来は大体毎年二名ないし三名の学生を、日本の国費をもちまして日本に留学させております。本年度パキスタンとの協定ができましたので、その数を五名にふやしまして、学生日本に留学させたい、こう思っております。また昨年の秋、北海道の知事がパキスタンに行かれましたのを機に、札幌の大学がパキスタン学生を二名、給与学生として呼ぶ計画ができまして、本年度からその計画が実施される段取りとなっております。またさらに昨年は、パキスタンのカラチの有力な新聞の編集長等三名わが国に招待いたしまして、わが国事情を視察してもらいました。本年度も同じように、言論界有力者等を本邦に招待する計画でございます。また先ほどお話しになりました映画を通ずる日本文化なり産業経済等紹介につきましては、従来とも力を注いでおることでございまして、現在パキスタン大使館には約十四、五本の映画を送付してございまして、これをパキスタン大使館におきましては巡回映画展というのをやっておりまして、一年間を通じまして、適当な場所等を選びまして、講演をし、かつ映画を映して巡回するという計画をやっておりまして、相当の成果を上げております。幸い本年度映画関係経費が昨年度より倍にふえましたので、新しい映画等を作成し、また買い上げまして、在外公館等に配付いたしまして、映画を通ずる文化紹介に努めたい、こう考えております。
  12. 山本利壽

    山本(利)委員 今留学生の話も出まして、これは両国親善のためにも、文化交流のためにも非常にけっこうなことだと思うのでございまして、この点には今後とも十分力を注いでもらいたいのです。ところが、留学生というものは、招いておきさえすれば、みな親日家になるかというと、案外これは排日家になって帰る例も非常に多いように思うのです。これは日本人が外国へ留学した場合についても、その国の政府とかあるいは一般民間人扱い方によって、非常にその国をひいきに思うて帰るのと、場合によっては反感を抱いて帰ることがある。日本の国は、特に日本国民生活程度が低いからか、一般国民留学生をいたわってやるとか指導するということが非常に少いと思うのでありますけれども、この機会海外から日本へ来ておる留学生に対して、外務省としては、あるいは文部省も深い関係があるかと思いますが、どういったような扱いをしておられるか、指導しておられるかといったようなことを、わかるだけ一つ聞かしていただきたいと思います。
  13. 近藤晋一

    近藤政府委員 お話のごとく、留学生を呼びまして、日本に着きましてから、そのお世話を十分にする、そしてパキスタンならパキスタンに帰りましてから、日本のよき理解者となってもらうということが一番大切でございます。従いまして、わが国留学生の受け入れの態勢が十分でなくてはいけない次第でございまして、外務省といたしましては、その補助団体でございます国際学友会というものがございますし、文部省の管轄には国際教育会館と申しますか、正確な名前は忘れましたが、そういうような施設も作っておりまして、文部省外務省との間におきまして常に協議機関を設けておりまして、留学生日本におります間、所期の目的を達することができるようにいろいろ協議し、最善の努力をいたしておりますので、今後ともお話の御趣旨に沿いまして努力いたしたいと考えております。
  14. 山本利壽

    山本(利)委員 今のお話でございますが、これはわれわれが忙しいからそういう機会を見のがしておるのかもわかりませんけれども、海外から留学生が来て、日本で勉強して帰るまでには国会等にも招くというか、見学に来てもらって、議長以下われわれ議員もできるだけ注意して、それらの人々とたといお茶一つでも出して交歓するということは非常に有益だと思うけれども、今日までわれわれ外務委員をしておっても、海外から来ており、しかもその学資を日本が持っておるというその留学生でさえもそういう機会がなかったと思うのです。あるいはわれわれが忙しいのでそういう機会をのがしたのかもわかりませんけれども、この国会あたりは、私昨年東南アジアからヨーロッパ各地を見て、少くとも外形から見てこれほどりっぱな国会議事堂というものは少いと思うのです。でありますから、こういうところで日本政治機構であるとかあるいは国会運営等についても話をし、われわれも一緒になって話をして帰すということも、非常にいいことだと思うのですけれども、そういうような催しが今までにあったのか、ただ招いて学校にまかせ切りになっておるものかということが一つと、それからもう一つは、日本からも向う相当留学生が、この前はパキスタンでありますが、行っておるかどうかというような点について一つ承わりたいと思います。
  15. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいまのお話留学生国会見学によこしたかどうかという点でございますが、私情報文化局長を一年足らずしておりますその間は、そういう事例はございません。その前にやったかどうか、私ただいま承知いたしておりません。しかしながら、ただいまのお話は非常にけっこうなお話だと思います。国会等見学させることは、留学生にとって非常に役立つと思いますので、至急関係方面と連絡をいたしまして、近い機会にそういう計画を実現させるようにいたしたいと考えます。  第二点の日本留学生パキスタンに行っているかどうかという点でございますが、パキスタンから招かれてパキスタン日本人留学生はまだ参っておりませんし、またパキスタンは、日本人留学生を招致する基金と申しますか、経費は今のところ政府は持っておらないようでございます。
  16. 山本利壽

    山本(利)委員 もう一つパキスタンについて伺いたいことは、これはやはり広い意味文化だと思うから言及するのでありますが、今、日本からはいろいろの機械設備等パキスタンに向って入っておるようであります。それにつれて日本技術者が行って、これはおもに紡績機械類であろうと思うのですが、現地パキスタン人々を技術的にもいろいろ指導しておる様子でありますが、言葉関係その他からなかなか困難を感じておるようであります。パキスタンでも上層部の人や相当教育を受けた者との折衝ということは、お互いに常識があるからやれますけれども、紡績工場へ集まってくる工員というようなものは、日本よりもさらに一段教養程度が低いのじゃないか。それを日本から行った言葉のわからない技術者たちが――技術者にもいろいろ段階があって、相当数行って指導しておられると思いますけれども、そういう場合に摩擦が起りやすい。片方は一生懸命教えようと思っても、言葉に困るとかあるいは国情が違うとか、そういうようなことについても今後外務省在外公館というものは協力しなければいけない。あるいは勝手に各商社が売り込んでやっておるのだからという態度でなしに、在外公館というものは十分に協力してもらいたい。これに対して、先ほど申しましたように、やはり向う技術指導者として日本人を敬愛するという念が起らなければうまくいかないのでありますから、先ほどの巡回映画であるとか、その他パンフレットとかいうようなものも、ちょうど日本指導者たちの行っているようなそういう町あるいは工場等にできるだけ連絡して回して、真の日本のいろいろな工場のありさまであるとか、あるいは一般文化状況を知らせれば、間接的にも私はこの経済進出を非常に助けることができる、かように考えるのでございますが、それでその点についてぜひやっていただきたいということと、もう一つは、この文化交流というものが単に在外公館の手を通ずるだけでなしに、その他の団体とか施設を通じてやる方が非常に効果的な場合もあり得る。これは外務省から大使館に送ってきたのだからといって、じっとしまい込んでおくようなことのないように、十分向うの国の役所とも連絡し、その他民間団体とも連絡して、日本から送った資料等は百パーセントに活用してもらいたい、かように考えるのでございますが、この点についてどういう工合に考えられておりますか。
  17. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいまのお話にございますように、わが国から参ります技術者等が、言葉のハンディキャップのために、しばしば活動が制限されるという点は確かにございます。ただいまのところそういう欠陥は外務省としても十分承知しておるのでございますが、外務省としてそういう海外に出られる技術者等民間の方々の言葉訓練までやるということには至っておらないのでございます。しかしながら、最近はその点に関する認識民間の各機関におきましても盛り上って参りまして、各機関においてそれぞれ語学の訓練等も研究されておるように承わっております。  また、ただいま御指摘の、単に外務省または在外公館のみならず、民間の種々の機関を通じて相互の交流をはかるようにというお話でございますが、その点は私といたしましても全く同意見でございまして、本来文化交流と申しますのは、政府の役割は民間においてできないことを手伝い、また民間の足りないところを補っていくという、いわば補完的なものであると私承知するわけであります。従って、たとえば国際文化振興会という団体がございますが、その団体は戦前は、現在の金に直して約一億ないし二億くらいの補助政府から受けて、その団体が中心になりまして国際間の文化交流事業をやってきたわけであります。戦後財政等事情によりまして、その補助金が本年度はわずか三百二十万円という僅少な額でございますので、今後はこういうような団体等にも政府としては十分できるだけの御援助をして、民間を通ずる文化交流活動を活発にして参りたいと考えております。
  18. 山本利壽

    山本(利)委員 引き続いてエチオピアの問題を少し聞きたいのですが、日本国エチオピアとの間の友好条約締結についての条約案議題となっておりますから、エチオピアについて少し御質問いたしたいと思います。  われわれは全くエチオピアというところについては実際の状況を知らないのでありまして、第二次世界大戦が起る前にエチオピアとのいろいろな友好関係が起っていたという程度のことしか知らないのでありますが、戦後、ことに最近において、この条約のできる前の日本エチオピアとの友好関係あるいは経済的な関係というようなものがどういうことになっておるか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  19. 松本瀧藏

    松本政府委員 エチオピア日本関係は、こういう正式の会談あるいは協定に入りまする以前から精神的にはいろいろと近いものがございました。非公式にもエチオピアの方からいろいろと顧問に類する日本人招聘等があったのでありますが、特に一九五二年の六月に対日平和条約をいち早くエチオピア批准いたしました。そして一九五五年に至りまして外交関係が正式に確立されておりますが、特に日本国連加盟並び国連内における専門機関理事国として日本が立候補をしたりいたしましたときには、率先このエチオピアはわれわれを支持してくれておるのであります。絶えず友好関係日本に示しております。ことに昭和三十一年にハイレ・メラシェ陛下日本に国賓としてお見えになりましてから、層一そうその関係が深まって参ってきております。ことに貿易関係におきましては、もちろんこれは小さい額ではありますが、昨年一年間の貿易額というものは、日本の方が輸出超過でございます。数字から申しますと、ごくわずかではありますが、日本エチオピアから輸入いたしましたのは百七十四万ドルであります。日本からエチオピアが買ってくれましたものは、これは主として繊維並びに衣料品でありますが、五百二十七万ドルに達しております。さらに最近にはいろいろと、医師であるとか、あるいは宮中におけるいろいろな顧問であるとか、技術者等をだんだんこの日本から招いてくれておるのでございますが、こういう関係にありまして、日増すごとに友好関係が非常に増大してきておる次第でございます。
  20. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま松本次官からの御説明によって、そういう両国間において今回友好条約締結されるということは、まことに時宜を得たけっこうなことだと考えるのでございますが、特にこういう条約お互いに結ぼうではないかということになったその経過、及びこの条約ができたら精神的には一そう友好関係が深まるということは当然でございますが、実質的にもこの条約によって一段と進むことが期待できるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  21. 松本瀧藏

    松本政府委員 この条約は、形の上におきましてはこまかい具体的なことは出ておりませんが、とにかく友好親善関係をますます増大していこうという精神にのっとってできたものでありますが、さらに特徴といたしましては、この条約締結されましたならば、通商航海条約にまで一つ進めようじゃないかという申し合せ等がありますので、日本にとりましては非常にけっこうな事態になるのではないかというような予測のもとにこれを調印いたしました。
  22. 山本利壽

    山本(利)委員 現にエチオピア日本商社その他がどの程度行っておるかという問題と、もう一つは、エチオピア政府日本以外にどういう国とこういう友好条約を今日までに結んでおるかという点、もう一つは、日本アフリカにおいてこのエチオピア以外にどういう国と今後この種の条約を結ぼうとしておるかという点について承わりたいと思います。
  23. 松本瀧藏

    松本政府委員 足りないところは一つ政府委員に補足してもらいたいのでありますが、商社等は、今大して行っていないのでありますが、こまかい、たとえば名前であるとか数字ということは、一応調べて提出させていただきたいと思います。  エチオピアが今日まで友好条約その他を締結しておりますのは、アメリカ合衆国と連合王国でありまして、日本がこれに次いでおるのでございますが、あまり多くの国とはまだ協定を結んでおりません。  さらにアフリカのその他の国におきまして、日本はどういう国とこういう種類のものを締結するかという御質問でございますが、今後これがきっかけになりまして、他の国にもいろいろと好影響を及ぼすのではないかと思いますが、まだ当面のところ、これという折衝に入っておるところはございませんが、サウジ・アラビアあたりもいろいろと日本に接近しかけておることは事実でございます。
  24. 山本利壽

    山本(利)委員 一応私の質問は終ります。
  25. 床次徳二

  26. 松本七郎

    松本(七)委員 現在文化協定あるいは友好条約を結ぶための交渉過程にある国はどこですか。
  27. 藤崎万里

    藤崎説明員 現在アクチブに交渉しているものはございません。
  28. 松本七郎

    松本(七)委員 この文化協定の問題でこの前もちょっとお伺いしたかと思いますが、たとえばインド日本の間に文化協定ができた。インド相当予算を組んでこれを実質的に推進しようという準備を進めておる。ところが日本の方ではさっぱり予算がとれない。インドとしてはせっかく協定を結びながら自分の方はこれほど熱を上げているのに日本の方は冷淡じゃないか、こういう批判をしょっちゅう聞くのです。協定だけたくさん結んで、そしてその協定を実施のための予算というものが幾らもとれておらない。ただ在外公館文化交流費用ということでお茶を濁しておる現状を、このままほっておいていいのか。一方では協定ばっかり作って協定倒れになる。こういう点については今後どういう方針で臨まれるのですか。やっぱり依然としてこういうふうに協定さえ結べば、民間同士文化交流幾らかでも役に立つから、特別の予算はとらなくてもいいというような考えで放置されるのでしょうか。
  29. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいま松本委員から、インドの例をおあげになりましたが、確かにこのインド文化協定に関しまして非常に力を入れまして、さっそく、日本とは少し事情が違いますが、ネール首相の独断で相当費用をその方にあてがったことは事実でございます。しかし日本といたしましては一応予算措置等ありますので、インドにマッチするだけのものがもちろん出せなかったことも事実でございますが、この文化協定裏づけになります大きな予算、たとえば活動範囲というものは予算によっても制約される面があるかもしれませんが、予算外でいろいろと活動できる面もあるのであります。もちろん十分な予算でないということはお説の通りであります。将来いろいろとこういう実績を積み重ねまして、もっと文化関係予算が増大できるように一つ努力していきたいと思うのでありますが、予算裏づけのない協定でも、ないよりも歓迎されておることは事実でございまして、予算は非常に少いのですけれども、協定によって精神的に、また民間等に呼びかけまして、できるだけ一つ先ほど申しましたごとく実績を上げて、将来予算が多く取れるように努力したい、こう考えております。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 実績を上げると言われますけれども、それは金がなくても、何とかないならないで実績も上げなければなりませんけれども、しかし金がなくてもこれだけの実績が上れば、やはり金は要らないじゃないかということになる。やはり文化協定を作る以上は、それの裏づけになる費用が特別に予算に組まれなければならないと私は思う。現在のところは、たとえば在外公館における文化交流費とか報償費ですか、そういうものでどうにかこうにかやってきておるのであろうと思いますが、そのほかに文化協定のための費用はこれこれあるという、項目別にどういうものがありますか。
  31. 松本瀧藏

    松本政府委員 私ちょっと数字を記憶しておりませんので……。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 数字でなくていい。せめて項目くらい、どういうものから出すのか。
  33. 松本瀧藏

    松本政府委員 ちょっと条約局長が参りましてから……。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃそれはあとで伺います。  この前、外務大臣も、ソ連との文化協定質問を私がしましたときに、なるべく早く文化協定を結ぶようにしたいという御答弁だったのですが、これは一体いつごろ話を始められるのですか。
  35. 松本瀧藏

    松本政府委員 ソ連との文化協定の問題につきましては、外務大臣もまた私も御答弁したことがあるのでありますが、まだ今のところでは先方からも結ぼうじゃないかというような正式の申し入れもございませんが、だんだん機運がそういう工合発展していけば、ぜひやりたいという気持は持っております。その前に、御承知のごとく、いろいろスポーツの交換であるとかあるいは芸術家の交換等におきまして、だんだんとこれがほぐれてきておることは事実でありますと同時に、民間同士のいろいろな取りきめ等にも入る必要があるのではないかと思います。もちろん先方からいろいろと具体的に交渉がございました場合には、われわれといたしましても一つ取っ組んでいきたい、こう考えております。
  36. 松本七郎

    松本(七)委員 正式な申し入れはなくても、鳩山さんがモスクワに行かれたときに、非公式の会談のときにそういう話が出た、それから最近も非公式にはおそらく再々言ってきておると思います。そういう非公式な話は出ておるのでしょうか。
  37. 松本瀧藏

    松本政府委員 非公式にもまだわれわれの方には入っておりません。
  38. 松本七郎

    松本(七)委員 欧亜局は、この間私が聞いたら、正式なあれはないと言われましたが、非公式にはしょっちゅう話し合っておられるのじゃないですか。
  39. 金山政英

    ○金山政府委員 雑談のうちにも、文化協定の問題に関しては、まだ大使館の方から別に何も聞いておりません。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 私どもからすれば、いろいろな実質的な交流も必要だけれども、協定を早く結ぶ段階にきておる。各学術団体だとかいろいろな文化団体からそういう声が非常に強くなりつつあるのであります。政府はもう少し積極的にこれを扱ったらどうかと思うのです。向うさんの言うのを待つのでなしに、こちらからもう少し積極的にそういうことを働きかけたらどうか。接近するのをはばんでおるいろいろな困難な事態があればあるほど、そういう面についてもう少し日本側が積極的になった方が全般的によくなるのじゃないかという気がするのですが、この点いかがですか。
  41. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいまの説、十分参考にいたしまして、将来考えさせていただきたいと思います。
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 外務省としては、それはやりたいが、どうもやれない何か特別な事情でもあればそれを説明していただきたい。
  43. 松本瀧藏

    松本政府委員 特別な事情はございませんが、通商協定等も今まだ国会でいろいろ審議の過程にございますし、またこれを片づける前にすぐ飛び込んでやるという段階でないというような気持もございますが、別にこれをはばむような特別な事情はございませんです。
  44. 松本七郎

    松本(七)委員 それと関連してちょっと、日ソ間の全般の空気をよくするという上で私が非常に気になったことは、この前のブルガーニンの書簡に対する返事を政府はこの間発表された。これはもっと早く出すべきところを、安全操業問題や何かで、いろいろな問題が起ったために延びたのだろうと思いますが、やっと出された。ところがその内容を見てみますと、何となく全体が非常にきつい調子なんです。あれはもちろんロシヤ語で向うにはやられるんだろうと思いますが、あの返信はモスクワの大使館でロシヤ語に直されたんですか、それとも本省でロシヤ語にして出されたのでしょうか。
  45. 金山政英

    ○金山政府委員 従来ともこういう公文の発出は日本文でモスクワに送りまして、向うにはロシヤ語の練達の翻訳官もおりますので、向うで翻訳して提出することにいたしております。
  46. 松本七郎

    松本(七)委員 あの返書の中に、領土についての日本の考え、本来日本国有の領土の返還を日本国民が一致して希望している、その希望に合うように、そうしてその領土のソ連側の不当な占有云々という言葉があるのですが、この不当な占有という言葉はロシヤ語で直せば、どういう言葉でこれは翻訳されたのですか。
  47. 金山政英

    ○金山政府委員 私は実はロシヤ語を解しませんので、どういう翻訳になりましたか、向うでその字義に合った翻訳をしていることは確かでございますが、近く航空便でその原文を送ってくると思いますので、その節お答えいたします。
  48. 松本七郎

    松本(七)委員 これは国際慣例上からいっても、言葉意味というのは、どういう言葉で翻訳されたかということは非常に重要だと思う。ロシヤ語が今すぐ返事ができなければ、日本文はこっちで書いたんですから、この不当な占有という不当なという意味は、英語で言えばどういう言葉に当るのですか。
  49. 金山政英

    ○金山政府委員 アンジャスティフアイあるいはアンプロパーであると考えます。
  50. 松本七郎

    松本(七)委員 アンジャスティフアイ、アンプロパーというと相当意味に開きがありますが、どっちですか。
  51. 松本瀧藏

    松本政府委員 アンプロパーという言葉の中にもアンジャスティフアイというこの意味も入っていると思います。またアンジャスティフアイという言葉の中にもアンプロパーという意味がありますので、これは受けるニュアンスによっていろいろ違うかもしれませんが、そこにそう大して大きな差異があるような気は私いたしません。
  52. 松本七郎

    松本(七)委員 これはアンプロパーなら今までの慣例からいってそう私は向うにきつく響きはしないのじゃないかという気がします。だけれども、その翻訳いかんによっては――日本語で聞くと不当というのは非常に強く響くのですね、だから翻訳いかんでは私はこの微妙な段階にあって、こういう言葉であの書簡を出された、こういう言葉が中に含まれているということは、あるいはまたこの大事なときに漁業問題にも関係してきたりいろいろなことに響いてくるのじゃないか。そこで特にこの言葉をどういう意味に理解して書かれたかということを伺いたいのですが、これはロシヤ語の翻訳のあれを聞いてみないと、英語の場合にもどれに当てはまるか判断しにくい。まあアンプロパーならばそう心配することはないと思いますけれども、全体の調子、さらに安全操業という問題にも触れたあの調子が、何となく今までよりもちょっとけんか腰に響いたのです。そういうことで伺ったのですが、これはまた後にさらに返事がきてからお伺いすることにしたいと思います。  そこでその次は、日本はアメリカとは全然文化協定というようなものは結んでいないわけですが、これはアメリカやイギリスとはこういうものを協定として結ばなくても、よく言われるように、はっきりした協定はなくても、両国の信頼関係で、実際に文化交流というものは非常に進んでおるのだから、その協定は必要ない、このいう考え方で、はっきりした協定というものは結ばれないのですか。
  53. 近藤晋一

    近藤政府委員 アメリカもイギリスも、いわゆるわれわれが結んでおりますような文化協定というものは結ばないという建前をとっております。今般アメリカとソ連邦の間で、いわゆる文化協定ができましたけれども、これはただいま御審議願っておりますようなパキスタンとの文化協定というものと内容的には違いまして、むしろ今後二カ年間にわたって、米ソ間で実施を計画する文化事業に関する取りきめ、すなわち実施細目のような協定でございます。日本がイギリス及びアメリカと文化協定を結びませんのは、先方がそういうような文化協定を結ぶ意思がないということが明らでございますし、また御指摘のごとく、現在それがなくても文化交流が実際行われておるという二つの点から結んでない次第でございます。
  54. 松本七郎

    松本(七)委員 二十六年でしたか、アメリカ合衆国と日本国間の教育文化交換計画に関する何とかありましたね、あれは往復書簡でしたか、あの往復書簡後の実施状況はどういうふうになっておりますか。
  55. 近藤晋一

    近藤政府委員 今御指摘のごとく、昭和二十六年に、日米教育交換計画に関する公文交換が行われました。その後、昭和二十七年度から昨年度までの間に、日本人学生等は約千六百名アメリカへ参りまして、教育等を受けました。それに対しまして、アメリカから日本に参りましたのが総計三百十五名であります。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 さっき局長のおられないときにちょっとお伺いしたのですが、いつでしたか、参議院の外務委員会だったと思うのですが、この文化協定実施のために特別の予算を計上した、こういう御答弁をなされておる。それが結局削られたわけですけれども、全額削られた。その削られたいきさつはどういうのですか。
  57. 近藤晋一

    近藤政府委員 参議院の外務委員会で申し上げましたのは、当初の予算要求におきまして約二億の、現行の文化協定を実施するための経費を要求した次第でございます。予算折衝の過程におきましては、その他のいろいろの問題とも関連いたしまして、大蔵省といたしましては、文化協定の実施のための経費は財源等の関係から認めがたい。従来文化協定というものは、ただいま御審議願っておりますパキスタンとの文化協定のごとく、予算を伴わない内容を持った協定でございまして、そういうような文化協定一つ一つ結ぶ際に、予算を伴うような要求は、今後の文化協定を結ぶ際にも、大蔵省としてはそういう理由から、結んだから予算をよこせということでは困るというような立場で、いろいろの理由から反対がございまして、結局文化協定を実施するための経費としましては、全額と申しますか、ほとんど全額でございまして、認められましたのは二万六千円認められております。二万六千円と申しますと、これは文化協定において、たとえばフランスとの文化協定またイタリアとの文化協定におきまして委員会が設置されております。その設置されておる委員会を開くための会議費として認められた次第でございます。
  58. 松本七郎

    松本(七)委員 今、大蔵省の考え方ちょっと御説明いただいたのですが、文化協定を作るたびに予算を出すようなわけにはいかない、こういうことになると、インドなんかとまるでやり方が違うことになって、それは協定を作ればないよりはいいと思いますけれども、やはり相手国に対してはなはだこれはみっともない話じゃないかと思うのです。相手国は相当予算的な裏づけを持ってこの協定を実施しようとしておるのに、日本の方は新しく協定を作ろうとするが、予算はびた一文も出せないのだ、今後どんな協定を結んでも、予算のことは出せないぞ、という初めから大前提がここに打ち立てられておるようなふうに御答弁を聞くと感じるのですが、暫定的に今年は出せない、しかし必要ならば将来十分考えよう、話のいかんではこれは出し得るものか、もう大蔵省としては、文化協定なりあるいはその協定のための費用というものは、特別には絶対出せないという大原則があっての話ですか、そこのところがちょっと不明確です。
  59. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいま御説明しましたのは、今回の予算打衝における大蔵省の立場でありまして、今後ともそういう経費を絶対出さないという原則を大蔵省において持っているとは考えない次第でございまして、今後私どももさらに文化交流の重要性、特に文化協定を結んでからの予算裏づけの重要性等を十分認識してもらいまして、明年度にはこの関係経費をぜひ計上いたしたいと存じておる次第であります。
  60. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでさっき御質問したのは、松本政務次官が、予算はないけれどもだんだん実績を積んで、そうして予算を取れるようにしたい、こういう話だったから、予算が全然金なしじゃ実績を積もうにも積みにくい、また予算なしで大きな成果を上げれば、予算がなくても成果が上ったじゃないかということになって、また予算を取るのにむずかしいことになる、なかなかこれはやりにくいことだと思うのです。そこでさっきお伺いしたのは、ある程度実績を積むにも金が要るのですから、おそらく在外公館国際文化交流費だとか、あるいは報償費だとかいうものから出るのだろうと思います。その項目はどこのが使えるかということをさっき伺ったのですが、それは局長さん来られてからというので留保しておいたのですが……。
  61. 近藤晋一

    近藤政府委員 お答えいたします。情報文化局予算総額は約一億八千万円であります。このうち文化関係の純粋の文化関係予算としましては五千六百万円ございまして、この五千六百万円のおもなものは、特に文化協定を結んだ国とかいうような、国別についておる予算でございませんで、いわゆる文化資料を作りますとかあるいは種々の催しものに対して融通できる費目であります。また先ほど申しました一億八千万何がしのうちの約一億二千万円は、広い意味におきましてはやはり文化関係予算でございますが、項目といたしましては、日本の国情等を招介するような啓発関係予算であります。これは在外公館に啓発関係として経費を配賦する分も含め、またすでに東南アジアにおきましては、バンコックにインフォーメーション・センターがございます。またニューヨークにおきましてもインフォーメーション・センターがございますが、こういうようなセンターの関係費用等も入っております。また三千万円余が映画の作成、購入費として計上されております。
  62. 松本七郎

    松本(七)委員 それから報償費もやはり使うわけですね。
  63. 近藤晋一

    近藤政府委員 御承知のように報償費と申しますのは、一括して報償費として計上されておりまして、そのうち文化関係に何がしというふうに予算面においては細分されておりません。外務省内におきまして新年度におきます報償費の使途をきめます際に、われわれの局の関係におきまして、今後どの程度報償費から振り向けるかという点がきまるわけでございます。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 この報償費というのは、予算上あるいは会計法上、報償費として取った以上は、内容は何に使ってもいいのですか。
  65. 近藤晋一

    近藤政府委員 私は会計法上の詳しいことは知りませんので、官房長ないし会計課長からその点は御返答いたさせたいと思います。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 藤山外相が会長をされている団体にアジア善隣国民運動中央本部というのがあります。各県知事、市長、そういうところもこれに協力しながら、最近広範囲にわたって寄付金の募集をやっている。その趣意書の中に国会外務委員会の決議によってできた団体だ、そういうふうに書いてあるために、私の方に方々から問い合せが来た。国会の決議でこの寄付金を奨励しているのかという問い合せなんです。この団体のおい立ちとそれから現状、現在そういう寄付金募集をそういう名においてやっておる事実があるかどうか、もしおわかりでしたら少し説明していただきたい。
  67. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいま御指摘団体につきましては、私の局の方の所管でございませんから詳細につきましては存じませんので、ただいまお答えは差し控えたいと思いますが、これはアジア局の関係のものであるということをちょっと聞きました。この点につきましては後ほど取り調べまして御回答したいと思います。
  68. 松本七郎

    松本(七)委員 詳しいことはあとで知らせていただくとして、藤山さんが会長になられたのはいつですか、おわかりですか。
  69. 近藤晋一

    近藤政府委員 その点につきましても私は初めて伺った次第でございまして、事実藤山さんが会長をされておりますか、あるいはいつ会長になられましたかにつきましても、私はただいまのところ承知いたしておりません。     ―――――――――――――
  70. 床次徳二

    床次委員長 それでは国際情勢等に関しまして調査を進めたいと思います。通告がありますので許します。菊池義郎君。
  71. 菊池義郎

    ○菊池委員 防衛庁長官にお越しを願いましたのは、新島に防衛庁でもって誘導弾の試射場を設ける、これにつきまして新島の人々は絶対反対を唱えて、村の決議でもってこの計画を返上するなんという騒ぎになっておるのでございますが、まず第一にお伺いしたいのは、新島の試射場は将来基地にするというお考えでありますかどうですか、その点についてお伺いしたいと思います。
  72. 津島壽一

    ○津島国務大臣 新島の試射場は、試射場という言葉の通り、ここを基地にするという考えは全然ございません。この点につきましてはあるいは誤解があるかと思いますから特に申し上げておきます。単純なる技術研究所で試作をいたしました誘導のロケット、またはミサイルというものを大体年間二十発と申しますか、月一、二回程度、きわめて短期間ここで試射をする、こういう用途のものでございます。
  73. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、絶対に新島を誘導弾の基地にしないということをさらに明確にいたしますために、新島というところは基地に適当か不適当か、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  74. 津島壽一

    ○津島国務大臣 新島というところはきわめて小さい島でございまして、補給も十分でない、面積もないといったようなところでありますから、これを基地にするということは、その条件に絶対に合わないところでございます。そういった観点から、単純なる試射ということは可能であり、また適当な場所と考えておりますが、重ねて申しますが、これが基地になるということは、その条件に適合しない場所でございます。
  75. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、誘導弾の基地にするにはどういう条件を備えていなければならぬのでございましょうか。
  76. 津島壽一

    ○津島国務大臣 誘導弾の基地ということについては自衛隊としては今のところは考えておりません。これは諸外国にもあることでございますが、相当広範な地域を要し、また付近に被害がないような場所、航空あるいは交通その他において、なおまた補給、連絡の便がなければならぬ、また相当の部隊員を駐在さすといったようなことがなければ運営はできないものと思っております。
  77. 菊池義郎

    ○菊池委員 もし将来基地として実戦に備えんがためには、太平洋岸と日本海の海岸とどちらの方が適当であるとお考えになりますか。
  78. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は仮定のことでございますが、現在の日本の地位から申しまして、これはそういった構想を持っているという趣旨ではございませんが、太平洋は遠く陸地を離れて広い海面に面しているところでございまして、とうていそれを基地として利用するのには不向きであろうということだけは申し上げられます。
  79. 菊池義郎

    ○菊池委員 もし局地戦争でも起りまして、対日侵略でもありました場合を想定いたしますときに、現在米軍が返しております日本の軍事基地、あるいは自衛隊が持っております軍事基地、そういうところからは自由自在に誘導弾を発射することができるものですか、どうですか。
  80. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は自衛隊としてということがついていると思います。その場合に、自衛隊の誘導弾というのはいろいろな種類がございましょうが、われわれの考えているのは、たとえばサイドワインダーの場合におきましても純然たる防御的のものを利用しようという建前でございまして、それに沿うところは他にも日本国じゅう適当な個所ありやといえば、あるということを申し上げていいと思います。
  81. 菊池義郎

    ○菊池委員 つまり私がお伺いしたいのは、新島に限らずどこにも誘導弾の基地というものは――軍艦の上も基地にすることができるということも聞いておりますし、簡単に誘導弾の基地は移動できるものかどうか、こういう点であります。
  82. 津島壽一

    ○津島国務大臣 基地という言葉を、艦艇の上に装備されたる誘導弾というものも艦上基地というふうな広い意味にお使いになれば、これはわれわれの考えておる、いわゆる基地という言葉には合致しないように思います。私の申し上げますのは、そこに基地としての装備、あらゆる設備を維持し、固定的なものを作って、相当ここに部隊を置いてやるといったような場合を今基地と言っておるわけです。基地部隊を置いて操作をするというのが基地、ちょうど航空機において航空基地というのは、そこに格納庫、また整備の部隊を置くとかいうのがいわゆる基地でございまして、そういった意味において私は基地ということを了解してお答え申し上げた次第でございます。
  83. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうすると、航空局からの横やりが入って、新島は誘導弾の試射場には不適当であるというようなことが新聞に出ておりましたが、この点いかがでございましょうか。
  84. 津島壽一

    ○津島国務大臣 それは正式には私は承わっておらぬところであります。新島につきましては種々調査いたしまして、国際空路とかその他については、そこで試射をいたそうという射程の関係で、全然それと関係ないというところに一つの適地であるという条件があるわけでございまして、航空部面の上からあそこは不適当な土地であるからというようなことについては、私の方は正式に何ら聞いたことはございません。また異議あるわけではございませんが、当方からもその説明はいたしてあるわけでございます。
  85. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから誘導弾は弾頭に核兵器を使うことができるものでありましょうか、私しろうとでよくわかりませんが、この点ちょっと教えて下さい。
  86. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は、誘導弾というものの中には核装備というか、核弾頭をつけるものがあるか、こういうことでございますが、これは種類によってはございます。また絶対にできないものもあるわけでございます。米国においても誘導弾という広い意味においては、四十近くの種類があると思います。その中で絶対に核弾頭をつけないような構成のものもあり、またそれをはずして、炸薬によって用途がかえられるというものもある。また必要に応じて核弾頭をつけることの可能な構成のものもあるわけでございます。そういったようにばく然と誘導弾と申しますと、その内容、構成、種類いかんによって違っておるものだ、それを俗に総括してガイデッド。ミサイル、そういったような名前をつけておるようでございます。
  87. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、日本には核兵器を持ち込まないという建前もございますので、申すまでもなく原子弾頭の実験は行わない、これは事実だと考えてよろしいのでございましょうか。
  88. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の通りでございます。ここで試射いたそうという誘導弾は核弾頭をつけないというものを試射したい。大体ここで試射したいといって今考えておりますのは、空対空のミサイルのテスト、発注したもののでき上ったもの、これは技研で研究した結果のものでございます。それから地対空のテスト・ロケットというものをここで月に二回、この所要時間はきわめて短かいもので、五分くらい実験をすれば、それで済むものでございます。長期の火砲による実弾演習という種類のものではございませんで、あらかじめいつ何時何分にこれを試射すると言えば、試射いたしますれば、これは五分で試験は済むような性質のものでございます。そういうようなものでございまして、今の御質問範囲外でありましたが、私は核兵器を受け入れないということは、もういわんや試射においても当然のことでございます。
  89. 菊池義郎

    ○菊池委員 向うへ軍事評論家など参りまして、今度向うでもって試射する誘導弾というものは至ってちやちなものであって、実戦には何ら役立たない。そういったものを試験する必要も何もないじゃないかというようなことも言っておるそうでありますが、この点について御意見を伺いたい。
  90. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは外国ですでに実験済みであり、すでに開発され、使用されているといったような誘導兵器については、私はそういった試射というものは必要ないかと思います。しかし新島において試射しようというものは、あるいはそういうものを含むような事態があるかもわかりませんが、主としてわが国の技術研究所において研究をいたしておるものの試作ができた時分に、果してこれがどういうような結果になるかということの実験をしなければ、これはほんとうの製作が目的に沿うようにできておるかということの結果を得られないのでございます。そういう意味において、どこかの場所で、せっかく技研に相当予算を出し、何年か研究したものを外国に持っていって外国で試射してもらうというようなことは、われわれのとらないところでございます。陸地においては万一の場合に、あるいは被害が起っても悪いという念慮から、これをなるべく海上に、被害の少いところに持っていこうという趣旨でございまして、いろいろ適地を探しました結果、あらゆる観点からいって、ここが一番いいだろうと考えた次第でございます。
  91. 菊池義郎

    ○菊池委員 防衛庁が施設します場合に、港とか飛行場とか道路は、これを制限しないで民間にも利用させるというような条件を向うの人は望んでおりますが、この点はいかがですか。
  92. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの試射場につきましては、港から試射場に至る道路、また小さい飛行機が離着陸できるというものも、仕事の能率を上げる上においても必要であり、いろいろな場面に必要だと思いまして、きわめて小さい飛行場といいますか、滑走路をつけよう、またその他の設備もできるわけでございます。これらの港湾、また道路あるいは飛行場というものは、単に技術研究所の試射を担当するものだけが利用するのではなくて、どうかこれは村の方々も御利用願う、もっともそこに飛行機が着くとか、あるいは資材を持って道を通るといったような場合は、優先的にこちらが使わせていただかなければならぬと思いますが、これは島民の福祉の上、また村の発展の上からいって十分御利用をいただけるように、ちゃんと仕組みを作ってみたい、こう考えておる次第でございます。
  93. 菊池義郎

    ○菊池委員 さらに向うの人の希望は港でありますが、少くとも千トン以上二千トン程度の船を着けることができるような防波堤を作ってもらいたいという希望です。この前防衛庁から行かれた説明員は、三百トンぐらいの船を着ける防波堤を見込んでおるというようなことを言って、向うの人はすっかり失望落胆いたしまして、これが反対に回る大きな動機になっております。防衛庁はどのくらいの規模を想定しておられるのでございましょうか。この点お伺いしたいと思います。
  94. 津島壽一

    ○津島国務大臣 港湾の拡張と申しますか、設備の改善ということについては、こういった仕事をする上においても必要なのは当然のことでございます。そこでさしあたりは三十三年度にこの設営関係、あるいは地代等は計上いたしましたが、この計画は三十三年度、三十四年度の二年度にわたるわけでございます。試射は三十四年の秋以後三十五年にかけてこれが実施されるのでございます。三十三年度にはまだこの試作品ができ上らないという関係もあり、設営の関係もありまして、三十三年度において試射をやるかと申しますれば、まだその手配はつかぬわけでございます。従ってこの新島試射場の予算関係においても、三十三年度と三十四年度の両年度にまたがってこれを完成していこうという腹づもりでございます。そこで港湾の問題でございますが、これは離島振興対策とかその他建設省の関係の、まあ運輸省ですか、といったような関係もございます。それで防衛庁だけで、これだけの大きな港を自分の予算で全部作るのがいいか、またこれは一定の計画がございますから、あわせて考慮して、できるだけりっぱなものにするという考え方もあると思います。従って三十三年度予算には一応のことはいたしたいと思いますが、この問題は今申しましたような三十四年度とあわせての計画でございますので、いろいろ皆様方の御希望なり御意見なり、また技術的の部面を考えまして、十分検討いたしたい、こう思う次第でございます。今おっしゃった何トンの船とか何トンということを今この場合に申し上げるということはしばらく御猶予を願いたい、こう申し上げる次第でございます。
  95. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、三百トン程度の船のつける防波堤というふうに向う説明したのは、それは防衛庁の首脳部と何ら相談もなく、説明員自体が独断で言ったことでございましょうか。
  96. 津島壽一

    ○津島国務大臣 それは庁議として固まったわけではございません。大体の見通しといたしまして、この程度の設営をすれば、まあ利用はできるだろうというような頭はあったかと思います。これらは私は十分検討いたしたいと思っている次第でございます。
  97. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうすると連絡はなかったのでございますね、トン数につきましては、この問題につきましては。
  98. 津島壽一

    ○津島国務大臣 それは技術者が参りましたので、行政担当の予算担当の者が行ったわけじゃございませんで、技術研究所の技術者向うへ行って、どういうことをやるかという試射の説明がしてあったと思います。その技術研究所において考えておるというような構想はあるいは一部述べたかもわかりません。この問題は今申し上げましたように、三十三年度、三十四年度にまたがる事業であるという観点から、長官としてはとくと検討してみたい、こういう趣旨でございます。
  99. 菊池義郎

    ○菊池委員 よろしゅうございます。
  100. 床次徳二

    床次委員長 引き続いて国際情勢に関しまして質問がありますので、これを許します。植原悦二郎君。
  101. 植原悦二郎

    ○植原委員 ちょっと外務省へ、あえて質問というわけではありませんが、特に注意したい事項があるから皆様方の注意をちょっと喚起しておきたいと思います。しかもこれはソ連に対しての文書でありまして、かなり私は重視しております。もちろんソ連の原文はここにありませんからわかりませんが、きょう配付された文書を私手にして、第一の冒頭にこういうことがあります。「日本国民は恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、その安全と生存を保持しようと決意した。」これは過去ですね。過去の文章です。「しかるに第二次世界大戦が多大の惨禍を人類に与えて終結した後、世界は東西の両陣営に分裂し、いわゆる冷たい戦争なる情勢が出現した。」日本は平和を決意しておる、しかるに世界に第二次戦争を起して驚くべき惨禍を世界にもたらした、その後どうかといえば、世界は両陣営に分れておる、こういうことになるのですね。第二次世界戦争の惨禍をもたらしたところの責任は多く世界の目から見れば、日本国民が負わされる立場にある。だからこの前文は、まるでどこから飛んできたか、要らぬじゃないか。もし私がこれをするなら、日本国民は恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、その安全と生存を保持しようと常に最善の注意を怠らなく、そうしてこれに努力する、しかるに世界は今や東西の両陣営に分裂して、いわゆる冷たい戦争が行われている、こういうならまことに意味が整うですね。しかるに日本は世界の平和を維持するために決意した、そこで第二次世界戦争が驚くべき惨禍を世界にもたらしたということになると、聞く者からいって、これを読むものからいって、非常に異様な感じがするのです。これは重要な文言であるのに、外務省はどういう人がこういう文書を書いたりするか、私はすこぶる疑問なんです。これをよく注意してごらん願ったら、日本は平和を、世界国民の平和を保持しようとして決意した。しかるに第二次世界戦争が驚くべき惨禍を人類の中にもたらした。もしこの等二次世界戦争を、他の国が主導者であったら、これは言わないでもいいことであるけれども、言っても差しつかえないと思うけれども、ここへそういう文句をはさんでそうして世界が東西の両陣営に分れて冷たい戦争をしておるということになると非常な――ことにソ連人というのはサイコロジカル・アフェアーにおいては世界一番のものですよ、心理的の作用を考えて。この文書を読むと非常に異様なる感じが私はするので、私はとがめもどうもいたしませんが、どうか外務当局としてはこれを一つ注意して解剖して、これがいかなる心理作用を与えるか、しかしこういうことをいわなければならないソ連の文書であったかないか、その後を読んでいくとそういうものはなかったのじゃないかという感じがいたします。だからして非常に重要なことだから、外務当局にこういう外交の公文書に対しては最善の注意を払って下さらなければ、ソ連のような心理作用の働きのえらいものにはとんでもないいい印象を与えないと思っておるから、念のためにちょっと一言申し上げておきたい。
  102. 床次徳二

    床次委員長 答弁は要りませんか。――それでは先ほどの防衛庁長官に対する質疑に関連いたしまして、山本君の質疑を許します。
  103. 山本利壽

    山本(利)委員 先ほど菊池委員の御質問に答えて防衛庁の長官は新島の問題についてる御説明がございました。その説明を聞くとわれわれからいえば当然なことであり、何でもないように思う、わが国が自分の国を防衛するために自衛隊を持っておる、防衛隊を持っておる、そういう場合に当然必要な処置であると考えますのに、一時は全島こぞってこれの反対運動が起った。よく日本では飛行場の拡張であるとかあるいは試射場の新設であるとかという場合に、とかく誤解から、それはこの前の戦争に日本人はもうこりごりしておる、再び戦争の惨禍を受けてはならないという国民の気持が強い、そこへまたあるときには思想の違う方からとかくそれを使嗾するといったようなこともあるかもわからない、こういうような点からとかく政府としては当然しごくだと思われるような処置をとろうとせられる場合に、いろいろな誤解や摩擦が起きる。でありますから今後防衛庁においては、こういう試射場を作るとかあるいは飛行場の拡張をするというような場合には、秘密にやらないで――こっそりやってからでないと横合いから文句が出るのをおそれたかのごとく世間が疑いましては、所期の目的を得ないわけでありますから、前もってこれは危険なものでないということをよく周知徹底させて、ことに報道機関等にもその趣旨をよくわかってもらって、着手される方が、これは円満にいくのではないか、かように考えますので、この点について一つ承わりたい。もう一点はあとから伺います。
  104. 津島壽一

    ○津島国務大臣 山本委員の今の御意見、まことその通りでございます。自衛隊の関係施設また装備に関しまして、われわれは時世に沿うように改善刷新を加えて、また武器の改善ということについても、いろいろと努力しておるのでございます。ただ何か新しいことになりますと、十分に周知の道を講じなかったために、誤解が生じて、これに反対を受けるという事例が過去にあったと思います。これはまことに私どもの念慮の至らなかった点もございます。今後はそういった点について、疑惑または誤解の起らないように、十分周知の方法を考えて、また間違ったいろいろな言説をする者に対しても、十分理解をするような措置を講ずるように、今後は鋭意努力したいと存じておる次第でございまして、なるべく御期待に沿うように今後努めたい、こう存ずる次第でございます。
  105. 山本利壽

    山本(利)委員 今一点は、やはり菊池委員の前会の質問に関連してございますが、今ちょうど日韓交渉が始まろうとしておるときでございますから、お互いにデリケートな段階においては、十分注意してものを言わなければならぬ、かように考えますから、私も国民の一人として、ことに国会議員の一人として、十分そのことは念慮に置いて申し上げるつもりでございますが、とにかく今回日韓の交渉が成立して、両方の抑留者は釈放されることになった。さらにまた近くは本交渉が始まろうとしておる。その成立を切に望んでおるものでありますが、この間防衛庁長官に関する範囲内の質問におきましては、一体われわれは李承晩ラインを認めておらないのである。そこへわが国の漁民が魚をとりに行くのは当然でありますが、そういう場合に、常に抑留されるということは、残念しごくであり、また漁民の生活権を脅かすものであるから、一体海上自衛隊は何をしておるのか、そういう場合に出動できないのかという意味質問がございました。国民の中にはそのくらい熱心に漁民のためを思い、わが国の国威のことを思うて、そういう言葉の出ることもございますが、防衛庁の長官としては、この際は両国の親善を増さなければならぬ、誤解を生まないように、今度の交渉を円満に妥結せしめなければならぬという配慮からであったと思いますけれども、今は海上自衛隊の出動の段階ではないと考えるというふうにおっしゃった。海上自衛隊の役目は、自分の領土が侵されたときに、それを防御するために出るのが役目であり、そういう際の役目は、海上保安庁のやることであるから、今はその段階ではない、こういう御答弁がございました。  そこで私は考えますのに、その防衛庁長官の御配慮はわかりますけれども、韓国が今日やってきておる日本海における措置というものは、必ずしも妥当ではない。妥当でないからこそ、われわれは独自な見解を持って交渉を始めようとするのである。彼の言うことが妥当であるならば、われわれからはそれに対立するところの新しい交渉条件というものは何らあり得ない。日本は断じて李承晩ラインを認めることはできない。もう一つ日本海における竹島はわが国の領土である。これはもう日韓合併以前から、わが国の領土としてはっきりしておる。これは島根県の管轄のもとにおいて、行政を行なっておった。人は住んでおりませんけれども、島根県の漁民はあの周囲に行って魚をとっておった。サンフランシスコの平和条約締結されるときに、その平和条約の審議の際にも、私はしばしば、ここではっきりしておかなければ、竹島の領有ということについて、韓国との間に疑惑が起るということを、外務当局に向ってしきりに発言したのでございますけれども、あれはマッカーサー・ラインにかかっておるだけであって、韓国との問題ではないから、大丈夫これは日本に帰るものであるという答弁があった。ところがあにはからんや、その後において、韓国はこの領有を主張して、そこを防備しておる。そこに韓国の領土であるというところの柱も立てておる。しかしわれわれはこれには納得していない。だから自衛隊の建前としては、わが国の領土が侵された場合には、直ちに出動してもいいはずである。またあの広い李承晩ラインの中を韓国の領海と認めない場合においては、わが国の漁民がその生活のために漁をする場合には、それを保護する責任があると思う。これをむげに拿捕して抑留していくということは、それは国民の権益を阻害するものであるから、理屈の上からいえば、これは自衛隊が出動してもいいと思うけれども、しかしながらこういう問題はわれわれは力によって解決しようとは考えない。そういう段階ではない。先ほど申しましたように、わが国国民は再び戦禍に巻き込まれることをいとうております。韓国もおそらくそうでありましょう。世界の平和を好むところの人々はもう戦争があってはならぬと考える。そういう際に、うっかり日本の海上自衛隊が出動して、向うの巡視船が日本の漁船を拿捕しようとする際に、割り込んでいってこれを防衛したのでは、まかり間違って再び戦争が起ったりしてはまことに残念なことであるから、理屈の上からは、わが国の領土である竹島が侵略されておるのであるから、自衛隊は堂々と行ってこれを取り返すということはあり得る。繰り返しますけれども、防衛庁長官も私どもも、今韓国と戦火をまじえたくない。これを円満なる交渉によって妥結しようとする。しかもその段階に今来た。両国の抑留者をお互いに釈放する、その段階に今進みつつある。ことに近く両国は正式な交渉に入るのであるから、理屈の上では、自衛隊は出動しても国際法上は差しつかえはないけれども、その念願からわれわれは差し控えておるのだというのが、私は理論的に正しい。もしこの理論を通しておかなければ、本交渉において、韓国は実際にそれをとって自分の領土だと言っておるのに、なぜ日本は黙っておるのか、防衛庁長官は自衛隊の出動するところの段階ではありませんと言うたのは、すなわち韓国の領土であるということを認めたものではないかという理論が、成り立たないとも限らない。この点ははっきりと今の点について私の申し上げた理屈が通っていないかどうか、これらの李承晩ラインの問題も、竹島の問題も、その他在外資産の問題その他にわたっても、正式交渉においては十分これから討議せられるということをわれわれは承知しておりますが、今はこの国会においても、常に理論の点からも実際の点からも考えて、最後に妥協すべきものは妥協する。あるいは決裂する場合もあるかもしれませんけれども、そこらのところをはっきりして、日本政府の立場は、これはあくまで日本国民のための権益であるから守らなければならぬという確信がなければ、交渉会談に臨まれても私は効果がないと考えますから、この点について防衛庁長官の御意見を承わりたい。
  106. 津島壽一

    ○津島国務大臣 過日当委員会において、この問題について私も答弁いたしたのでございます。きわめて簡単でありましたから、十分に趣旨が徹底されなかったかと思います。しかし今山本委員のお述べになったような気持は、当然私は長官として持っておるわけであります。ただこの日韓関係の問題は、当面の問題としては、外交交渉により日韓の友好関係をここに打ち立てようというような段階でありまして、当然これらの問題が討議される段階でございます。そういった場合に、航空あるいは海上自衛隊がどうするのだということを申し上げるのは適当でないという配慮からでございまして、別に御趣旨の点に私が違った考えを持っておるというわけではございませんので、どうぞその趣旨を御了解願いたいと思います。
  107. 山本利壽

    山本(利)委員 関連質問を終ります。     ―――――――――――――
  108. 床次徳二

    床次委員長 再び条約に関する事項を議題として、質疑を許します。高岡大輔君。
  109. 高岡大輔

    ○高岡委員 先ほど日本パキスタンとの文化協定についての質疑が行われたのでありますが、私はここで一つ――文化というものは、なほるど映画も必要でありますし、いろいろ必要なことは申し上げるまでもありませんが、ここで政府当局に注意を喚起したいことがあります。それは、どうも日本――外務省ということを申し上げるわけではありませんが、日本としてパキスタンを考える場合には、西のパキスタンだけを対象に考えて、東パキスタンを忘れているかのごとく私には受け取れるのであります。これは外務省がそう考えているという意味ではありません。それはどういうことかといいますと、私はこの前向うのミルザ大統領と話し合ったことがあるのでありますが、大統領自身も、東パキスタンは農業立国だ、西パキスタンは工業立国に将来持っていこうとするのだといよううな、いろいろな話をしたことがあるのでありますが、この東西両パキスタンは、歴史的に見ましても、経済的に見ましても、相違点が非常に多いのであります。過般日本の学界の方々がカンボジアからタイ方面にわたって米の歴史を探りに行かれました。こういうことこそ、私は文化協定といいましょうか、文化お互いに知り合う最も必要なことと考えるのでありますが、そういう面から見ますと、東パキスタンのいわゆるダッカ地方を中心とした文化というものは、すばらしいものがあります。御承知のことと思いますけれども、エジプトの綿というものは、世界じゅうで一番フアイバーの長い、良質の綿であります。しかしこれはかつてイギリスがこの地域を支配しましたときに、ダッカ・モスリンといって薄い織物があったのでありますが、これを織った者の指を全部切ってしまいまして、二度と再びモスリンができないようにしよう、しかも製品は全部これを取り上げてしまった、さらに綿の種のある程度のものを持ち去って、そうして綿畑に火をつけて燃してしまって、ダッカから完全に綿を消してしまった。しかもその種をエジプトに持っていって移植したのが、いわゆる今日のエジプト綿の歴史であります。そういう点を再びわれわれアジア人の手において、もう一度私はダッカ・モスリンの歴史を振り返る必要があると思う。これは御承知でもありましょうが、ダッカ・モスリンは、あのインド人の着ますショールでありますけれども、これをぐっとしぼりますと、指輪の中をすっと通るくらいの非常に薄手のものでありまして、この芸術はすばらしいものであります。これはいわゆるペルシャのじゅうたん――今のイランのじゅうたんと相匹敵する芸術品であります。そういうダッカ・モスリンを中心とした東パキスタンの農業、さらにこれが、イギリスがあそこを領有するに至って、こうしたところを全部なくしてしまって、あそこヘジュートを植えてきたといのが、現在世界の九割以上を占めるジュートの産地となっております。しからばジュートになぜその土壌が適しておるのかというようなことを掘り下げて考えていくことが、今後日本がカンボジアを初めとして、東南アジアの各地にジュートの移植――われわれが農業技術の協力と同時に、そうした面を考えていかなくちゃいけないという、やはり今日の東南アジア開発という題目からしましても、この東パキスタンのそうした歴史的、経済的な調査を十分にして、そこに初めて日本パキスタンとの文化協定を結んだ効果が現われてくるのだ、こういう感じがするのであります。ここに文化的にいろいろなものが多いと思う。さらに一つ研究をしていただきたいことは、御承知のように、西のパキスタンはイラン高原から来た純粋な回教徒であります。しかし東パキスタンにおります住民は、歴史的にいいますと、回教徒ではございません。すなわち西暦十一世紀から十六世紀にわたった回教徒のインド侵略の際に、追い詰められて改宗した回教徒であります。従って人種的に見た場合、またその習性から見た場合、その他あらゆる面からこれを探求して参りますと、完全に東西パキスタンの住民の性格、ものの考え方というものが変っております。こういう点の調査をして参りませんと、そうした文化のあとをたどって参りませんと、結局両国の親善というものはぴったりこないという感じがするのでありますが、そういうことについて、この文化協定を結ばれた暁には、そういう面をお考えになっていらっしゃるかどうか、一つ伺っておきたい。
  110. 近藤晋一

    近藤政府委員 ただいまの高岡委員お話は、私といたしましても非常に教えられるところが多いと思うのであります。私は寡聞にして、東西パキスタン文化等について全面的な知識を持っておりません。ただいまのお話の御趣旨の通り、東パキスタンまたは西パキスタンのそれぞれの文化、特に今御指摘の東パキスタンの農業の発展等につきましては、今後文化協定を結びました趣旨に沿いまして、十分研究して参りたいと考えております。
  111. 高岡大輔

    ○高岡委員 今東パキスタンのことだけ申し上げましたけれども、西パキスタンには今度は回教文化、これはコーランからきた文化でありますが、これもすばらしいものがあります。これはすべていわゆる回教圏内に通ずる問題ではございますけれども、なぜ回教徒の諸君が豚を食わないかとか、ないしは細君を四人まで持っていいのかとか、一体コーランの解釈自体も、日本においては完全に行われておりません。ある一部の人がコーランを日本語に翻訳はしてありますけれども、私の聞いておる範囲においては、その翻訳は完全でないとさえ言われておる。もっとも英訳そのもの自体も完全でないとさえ、学界では言われるのです。この本物のいわゆるコーランを日本語に翻訳するといいましょうか、こういう仕事を考えて参りますと、これは非常に大きな仕事でございまして、とても今外務省が頭の中に考えていらっしゃる一万や二万の金でそういう仕事をなさろうということは、とうてい不可能なことでありますし、またそういうことをずっとお調べになりますと、そこに初めていわゆる指導者のものの考え方というものがわかってくる。たとえて言えば、せんだって日本に来られて、そうして今はたしかやめられたような気がしますけれども、スラワルディという総理大臣、この総理大臣に会われたときに、この総理大臣はどんなことを考えるだろうかということを外務省がお考えになる場合に、スラワルディが東パキスタン出の人だということだけがわかっただけであって、それじゃ東パキスタンというものの習性は一体どういうものか、そういうものを調べないと、スラワルディのいわゆる人となりというものがわからない。従ってスラワルディの言ったことをわれわれがどう解釈していいだろうかということが、判断が誤まる場合がある。そういう面から見ましても、いわゆる回教徒はすべてコーランによって動いておる、しかも一面においては経済的に、歴史的にいろいろなものの考え方が出てくるというようなことが現実でございますので、そういう点を深く掘り下げて研究することこそ――また同時に日本並びに日本人を知ってもらうためには、よほど金をかけるといいましょうか、あらゆるものによってPRをしないとなかなか理解してくれないだろう。そういうことが、また一面において留学生を迎えたときでも、そこにいろいろな点で誤解といいましょうか、国際学生会館がいつも問題を起しているというのも、日本人として向うの諸君のいろいろな習性といいましょうか、ものの考え方がわからないところに私はごたごたが起きるのではないかという気がしますので、今後各国と文化協定をお結びになる以上は、そこまで掘り下げた研究といいましょうか、文化交流一つ考えていただきたい、こう思うのです。  そのほかまだいろいろ申し上げたいことがございますけれども、あまりこまかいことは申し上げなくても御存じでしょうからいいかげんにやめますが、パキスタンにつきましてたった一言、これは外務当局にお伺いしますが、今この私の問いに対して御返事がおできにならなかったら、後刻十分調べて、何でございましたらパキスタンの大使と御連絡の上で御答弁を願いたいと思います。それは、二十六日の新聞を見ますと、こういうことが書いてあります。カラチ発の電報でございますが、「権威筋が二十四日明らかにしたところによると、日本の農民四百家族の西パキスタン移民計画ははっきりととりやめになり、そのかわりに東西パキスタンの数カ所に農業訓練センターを設置、そこで日本農業専門家がパキスタン農民に日本式の米栽培法を訓練することになったといわれる。」こういう記事であります。これは外務省としてあとで一つ調べて御返事いただけるものなら御返事をいただきたいと思います。御答弁をあえて必要としませんけれども、これの行きがかりを一つ申し上げます。  それは、昨年の五月に岸総理大臣がアジアを一巡されました。そのときに、今議題となっております日本国パキスタンとの間の文化協定の調印が官邸で行われたのでありますが、そのときに随行のうちの遠藤三郎代議士が、向うの農商務大臣といいましたか、その大臣といろいろ話し合いをして懇談をしておりますうちに、それがもととなって一つ総理におみやげを差し上げたいという話が出ました。そこでどういうおみやげかと思って、総理も顔の筋肉をほころばせながらお待ちになっておりますと、向うのいわくには、日本の方々からぜひ私らの国に大量に移民をしていただきたいと思います。つきましては数千エーカーを一つただで寄贈したいと思いますが、受け取りを願いたいという話がありました。そこで、これは俗にいうおみやげというので、ありがたくちょうだいしてきたのでありますが、それがこれであります。私は文化協定を限ったわけではございませんけれども、何か日本東南アジアにやっていることは、かけ声ばかりで、カンボジアに対してもしかり、ラオスに対してもしかり、あっちこっちに何かうまいような話をしたり、あっちこっちやってくるのだが、一体あとはどうなっているのかということを考えると、私は非常に寒心にたえないものがあるのでありまして、この問題についてもそれらに対しての計画をさっそく外務省としてお立てになって、そして向うと移民の計画をお進めになれば、さなきだに日本はラテン・アメリカの方の移民にしましてもなかなか困難だという今日、こうしたところへ、向うでは四百家族とかいうのでありますが、そういうものを快く迎えようというときになぜそういう話を進行しなかったのか。一体その経緯はどこにあるのかということが私の一つ質問の要点であります。  もう一つ、私はここに外務省の注意を喚起したいことは――向うでは日本式の米の栽培方法を訓練してもらいたいというのであります。私は東南アジアをずっと回ってみまして、日本が技術協力のできるものは何か、こう安易に考えて米の栽培だ、米の増産方式を教えるのが、とかく簡単な常識のような感じを私は持つのであります。しかしこれほどばかげた考え方はないと私は思います。  どうしてかと言いますと、御承知のように東南アジアは、カンボジアにしましてもタイにしましても、ビルマにしましても米は輸出国であります。インドは多少ないのであります。パキスタンはなるほど食糧は輸入しております。しかし私の知る範囲内におきましては、各国とも日本の農法を習いますと、少くとも五、六倍の収穫がある。これは五、六割じゃございません。五、六倍であります。数倍の収穫量を上げる。ところで反当収穫を調べてみますと、反当二石前後しかありません。もしもこれが日本のように反当四石という収穫を得て参りました場合を一つ想像していただきたい。東南アジアには驚くべき米の余剰が出てくるのではないか。しかもそれは日本が指導したのだということになってきますと、この米の始末は一体だれがやるのか。責任を日本に負わされた場合に、日本は果してその責任が果せるかどうかということを考えますと、これは容易ならぬ問題だと思うのであります。従いまして日本東南アジアに対する技術援助というものは、米の栽培に対しましては一つこの際再検討を願いたい。私は農林省というか外務省といいますか、日本政府に対して一大警告を発したいと思う。この点は十分考慮していただながければなりません。  東南アジアの農業は、大体において先ほど申し上げた地域の、あるいはメコン川、メナム川、イラワジ川、バラマプートラ川のそれぞれの流域に生じた元は雑草であります。雑草から米というものが今日まで進化発展してきたのでありまして、その米はどういう栽培方法をやっているかというと、皆さん御存じの通り、大体洪水の水の引いたあとの泥のところへぱらぱらとまいて、そして草取りもしなければ何もしないで実るのを待って刈り取るのが現在の東南アジア全般における一般の農業であります。そこへ日本が参りまして、いわゆるもみの消毒から始まって、苗しろだとか田植だとかあるいは農薬だとか化学肥料だとかいうものを徐々に日本が指導といいましょうか、技術協力をした結果というものは、おそるべき増収があることはもうすでに御承知の通りであります。ただいろいろな土地改良とかいったような問題からしてそう広範囲にまだこの技術が広まっていないということが現在ではございますけれども、これをこのまま日本がその方向へ進んで参りますれば、これは非常な結果が生まれてくるだろうと思うのでありまして、この新聞記事が果してどういうことかわかりませんけれども、日本が東西パキスタン数カ所において日本の米の方式といいましょうか、米作のやり方を教えるのだということになってきますと、この点も非常に問題だと思いますので、一つパキスタンとの間のこの問題に関する問い合せとでもいいましょうか、そういうことをなさる場合はこの二点について一つ十分調査研究の上政府としては対処せられんことを希望しておきます。
  112. 松本瀧藏

    松本政府委員 高岡委員の非常に造詣深いお説を今承わりましてほんとうにありがたく思っております。仰せのごとくいろいろな点におきまして不十分なものがあることは私どもも決して否定するもではありません。ただしこのパキスタンの問題に関しましては、岸総理が向うに行かれまして――先ほどいろいろと内輪の話も承わりましたが、そういったことから例の移民並びに米の栽培の問題等が出たのだと思います。先方ももちろんおみやげのつもりで非常に好意ある申し出であったこととわれわれは承知しております。従って日本ではこれをほうっておいたわけではございませんので、専門家を派遣いたしましていろいろと先方と打ち合せ、調査をいたしまして、帰りましてごく簡単な報告はございましたが、今文書でこれを提出してもらうことになっておりますので、この文書を研究いたしましてさらにこれを進めていきたいという気持でございます。  二十六日の新聞記事の件につきましては仰せのごとく間違った回答があるといけませんから、これは十分連絡をつけて御回答したいと思います。  さらにカンボジア、ラオスの問題が出ましたが、これももちろん約束だけではいけないので、外務省といたしましては十分これを前進するように努力して参りまして、カンボジアとの問題に関しましてはすでに先方といろいろと専門的の折衝が開始されまして、どういう形で援助するか、どういうものを対象として援助するかというようなことも大体固まりかけております。ラオスの問題に関しましては近日中ラオスの総理が閣僚を若干従えまして日本に来ることになっておりますので、その折にいろいろとラオスの問題等が軌道に乗るのではないかと考えております。なお詳しいことは調べまして御回答さしていただきたいと思います。
  113. 高岡大輔

    ○高岡委員 カンボジア、ラオスが今進行中であることは仄聞しておりますが、ぜひ一つ外務省としてはこの際日本があまりいつまでもほうっておかないように十分推進していただきたいと思います。  次にインドとの通商協定についてですが、この問題の最初に提案理由の説明をなさいましたときに、「わが国東南アジア諸国との間で戦後初めて締結する広範な通商協定でございます」とおっしゃって喜んでいらっしゃるのでありまして、まことに御同慶にたえませんが、なぜ条約というところまで進み切れなかったか、その間の事情がございましたら御説明を願いたい。
  114. 松本瀧藏

    松本政府委員 インドは、一等国と申しましょうか、一流国と申しましょうか、ちょっと表現がまずいのでございますが、英国とか、あるいはアメリカ、フランスというような国と大きなこういう協定に入っていないことは御承知の通りであります。もちろんこの範囲まで伸びたということは、相当インド日本に期待しておることと同時に、一年、二年前であったならば、ここまで範囲の広い協定は結べなかったろうと思うのです。従って、一足飛びに条約に入るというところまではちょっと困難でありましたが、われわれといたしましては、ここまで伸びたということは、非常にインドとしても協力的であった、また日本に対するものの考え方が非常に変ってきたという工合に考えております。
  115. 高岡大輔

    ○高岡委員 ただいま松本政務次官がおっしゃった通りでありますが、私もどういう風の吹き回しで、こういうようなうまい協定ができたんか、実は私自身で驚いております。なるほど期間は二カ年でございますけれども、これはその二カ年の実績によって、さらに前進ができるだろうと期待されますし、ぜひまたそうありたいと思います。ところで、なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、御承知のことと思うのでありますけれども、インドの今総理をしておりますジャワハルラル・ネール氏は、いろいろな面で社会主義的な考え方を多分に持っておられます。これはネール氏はいつもおっしゃるのでありますけれども、私のやることは、社会主義者のやる仕事ではなくて、物事を社会政策的に考えるんだ、御自分が社会主義者でないということを必ず前提に置いていろいろのことをおっしゃいますから、そこがみそとでもいいましょうか、こういう協定が結ばれるところまで来たんだろうと私は思いますけれども、一応インドとしては、いろいろの面で社会主義的な政策をとっておることは御承知の通りであります。たとえていいますれば、いろいろの問題を国営でやっていこうということが非常に多いのでありまして、貿易それ自体にもそうした思想が強く出ておることは御承知の通りであります。そういう面を私が考えますと、この協定についていろいろこの際確かめて、ここに至るまでの協議の間において、どういう話し合いがあったか、ないしは、私が申し上げるような意味でこの文書は書かれたかということを、一つこの際明白にしていただきたいと思うのであります。私は他の協定条約等はあまり見ていないのでありますが、この協定文を読みますと、実に天下の迷文だと考えます。それは第一条をごらんになりましても、何々に関し、何々に関し、何々に関しというて、一ページぐらい書いてしまったのが第一条であります。よほど落ちついて読んでも、どこから一体どこまでがどうなっておるかということがわからぬほどに回りくどいといいましょうか、いろいろなことが書いてある。これはインド人の癖でして、何でも物事は回りくどく言わないと、学のあるところを示せないことになっておるものだから、回りくどく書くのがインド人の癖でありますけれども、その癖がまた皆さんの方へも移って、こうなったのかわかりませんけれども、いずれにしましても非常にわかりにくいことなんでありますが、一応この点を一つ一つ、非常にこまかいようなことを申し上げますけれどもお伺いして参ります。  まず第一にお伺いしたいことは、前文でありますが、通商を容易にするために、こう書いてあります。ところが、通商については、日本の方は、各商社のいわゆる自由貿易の型をわれわれは考えておるのでありますけれども、インドの方は自由貿易ということを考えているのかどうか、国家管理のようなものを考えておったのかどうか、その点をまず最初にお伺いいたします。
  116. 牛場信彦

    牛場政府委員 インドは御承知の通り貿易につきまして国営の会社を作っているわけであります、しかし貿易を全部国営にしようという気はないわけでありまして、国営のものを作って、民間の方のものと並行させていこうという考え方のようでございます。そこで、国営事業が非常に多いものでございますから、第五条という規定を設けて、国家企業を作った場合においても、国家企業でやることは民間の普通の商業べースでやることと同じ考慮に基いてやらなければならないという規定によりまして、その点は向う側に約束させておる次第であります。
  117. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、この貿易というものはものによっては政府と直接やりとりをし、それから小さな雑貨のようなものだったらインド人の商社と取引していく、こう解釈してよろしゅうございますか。
  118. 牛場信彦

    牛場政府委員 もちろん品物によりまして相手は違って参ると思います。
  119. 高岡大輔

    ○高岡委員 それからこの条約の第二条の中にあるのでありますが、支払、送金云々と書いてありますが、今までインドにおります日本商社がLCも組めないで困っていたのでありますが、その点はどうなりますか。
  120. 牛場信彦

    牛場政府委員 今までLCが組めないで困っておりましたのは、銀行との取引がうまくいかなかったということによる場合が多かったと思います。これは日本商社のみでなくして、外国商社一般にそういう不便はあったようでありまして、今度の条約によりましてはそういうことは最恵国待遇でやろうということでありまして、日本だけが差別待遇されるということはなくなると思っております。
  121. 高岡大輔

    ○高岡委員 御承知のことと思うのでありますが、インドは戦前からずっと続いて来ておるものは、本国に本社があってインドに支社ないしはそれに準ずるものを認めてきたのであります。戦後のものは全然認めないという形式を今までとってきたのでありますが、今後はこの協定が結ばれれば、日本に本店を置く会社がインドに支店ないし支所といいましょうか、そういうものが置けるようになりましょうかどうか、その点をお伺いします。
  122. 牛場信彦

    牛場政府委員 法律的にはそうなるわけであります。ただし向う側のインドの銀行が商業的考慮に基いて、日本商社の支店に対して金融をするかどうか、この点はこの条約では実はまだきまっておらぬわけでありまして、それは商業的な取引によるというほかないわけであります。
  123. 高岡大輔

    ○高岡委員 その点が非常に重大といいましょうか、商売人から言わせますと、それは非常に重要な点なのであります。日本に本店があるものが、カルカッタとか、ボンベーとか、ニューデリーに店を持ちましても、その点が非常にあやふやでありますので、商売はできないのです。今までインドに駐在しております日本商社の人たちがどんな商売をしておったかといいますと、向う政府の入札等がありました場合には、日本人の顔は出せないのです。それでインド人の名前を借りて入札する。インド人の名前でうまくいった場合に落札ができる。落札ができた場合に日本人はどうするかというと、一切の手続から書類はインド人の名前を借りてやる。いよいよ商売になったときに日本人ではLCが組めないということで、インド人は名前と顔だけ貸してすばらしいさやを取っておったというか利潤を取っておった。日本人というものはちっとももうからないから、お互い商社は血みどろの競争をする。そこに日印貿易の混乱といいましょうか、醜い姿が生まれておった、こう思うのです。ところが今の局長のお話を聞きますと、この点が何かあやふやな感じがするのですけれども、この点は両国の話し合いの際にどの程度まで話が進んだのでございますか。この条約条約としまして、その間にはやはり速記録等ございましたでしょうが、その点はどうなっておりますか、お伺いします。
  124. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまのお話は第三条第二項の事業活動の問題になるわけでございますが、これは最恵国待遇になっております。内国民待遇を日本としてはもちろん希望したのでありますが、インドとしてはこれは絶対に認められない、ほかの国にもいずれも認めておらないということで、これはやむを得ず最恵国待遇という線で折れ合ったわけであります。従いましてほかの外国商社に対しても認められていないものは、日本商社に対しても認められないということでございます。
  125. 高岡大輔

    ○高岡委員 ところが局長そうじゃないのですよ。それは戦前からでありますのと戦後あらためてこれから協定を結んでやるのとは違うのです。日本に関する限りこれからになるわけでありますが、それは区別されている。だからその点を局長そう甘くお考えになりますと、とんでもないことになりますから、その点は一つもっと話し合いをやっていただきたいと思うのであります。別に局長に対して文句を言うわけではございませんから、この程度で先に進めますけれども、それは一つ十分今後も話し合いを続けていただきたい。  それから今の第三条であります。ここに入国、滞在、旅行、居住といろいろなことがありますが、居住についてはどのくらい――今までは半年でもってこれを更新することさえも非常にきらって、こっちから行った商社の諸君は半年々々で入れかわり立ちかわり行ったり来たりしておったのです。中には顔のきく連中とでも申すのか、二年も三年も在住している人もありますが、一般はそういうわけなんです。この点は一体どの程度お話し合いがあったか。もちろん今も申し上げましたように、私の知っております諸君は戦前からずっといる人なんでありますが、そういうのはかまわないのです。それからこんなことを言うとはなはだあれでありますが、インドの独立軍と一緒に仕事をしていたような諸君とか、インド人に好感を得ているような者は顔がきいております。きいておりますけれども、一般の人はなかなかそうはいかないのが現状でございます。この居住、滞在期間というものは一体どのぐらいの話し合いでおられるか、この点を伺いたい。
  126. 牛場信彦

    牛場政府委員 第三条第一項の規定は、入国、滞在、旅行、居住は認めなければならない、従って日本人に限らず、つまり日本人を入れないとか、滞在させないとかいうことは向うは絶対にできない、しかしながら入国なり、滞在、旅行、居住については一般の外国人に適用されるような法律に従わなければならない、こういう意味でございます。従いまして大体最恵国待遇というふうに御解釈願っていいと思いますが、最恵国待遇の場合には、どの国の国民も入れないという場合には、日本人は入れないわけであります。この規定はそれよりも強く、日本人は入れてもらえる。入ることは入るが、しかしその入るについては法律に従わなければならない。それでただいまの査証の更新その他につきましては、実際上いろいろの問題があったことは存じておりますが、この条約ができました結果改善されるものと思っております。この点につきましてはニュデリーの大使館の方にも問い合しておりましたところが、そういうふうに改善されるであろうし、今後支障があるとは思われないというふうな回答をよこしております。
  127. 高岡大輔

    ○高岡委員 局長を決して責めているわけではないのでありますけれども、おそらく滞在も数年にわたるというようなことになってくると、結局私は問題が出てくると思うのです。ところが御承知のように、なるほどネールさんとかそういう指導者の諸君は、英語でしゃべってちっとも差しつかえないのでありますし、また英語でしゃべることを誇りとしておるようにも私は感じるのでありますが、商売人となりますとこれはインド語でしゃべる。いわゆるヒンディーでしゃべる。ことに商売となりますと、向うで一番手広くといいましょうか、大きくやっておりますのはマルマリーという民族でありますが、これは外国語をしゃべるのをきらいます。これは宗教からいえば例のジェーン教――ジャイナ教ともいいますが、あの教徒の諸君が一番商売が上手で手広くやっておる連中であります。これはまたがんこだといえばがんこ一点張り、外国の水は一滴も飲まないというくらいで、宗教の面から見てもどこから見ても――ちょっと今ここでそんなことまで説明するほどの時間はございませんからやめますけれども、そういう人が商売を一番手広くやっているのでございます。この人たちは英語はほとんど使いません。そういう人と本気に取り組んで商売すをるには、どうしても長くおってインド語、いわゆるヒンディーをしゃべりませんことには、商売がうまくいかないのです。従いまして、とにかく向う言葉を覚えるというところまでいくには、半年くらいずつで帰ってきたのでは困るのであって、相当長い間インドに滞在して、いわゆる俗な言葉でいうなじまないと、このインド商人との商売というものはなかなか容易じゃありません。これはどこの国にもありますでしょうが、大体種族によっても言い得るのでございますけれども、それを一つ言いますと相手国を軽べつしたようなことになりますから、名前はあげませんで形だけ言いますが、暗やみのところで机の下で受け取っても、金の勘定が間違わないというりっぱな種族があります。ところが中には、にせの銀貨と本物の銀貨とまぜておいて、それを渡すのがいる。だからそれを一つ指でぴいんとはじいてみて、これは本物だか、うそものだか注意して受け取らないと、うっかりするとにせの銀貨をつかまされるという種族もおります。中には、初めからにせものばかり片方のポケットの中に入れておいて、いい方のは反対のポケットの中に入れておいて、まずにせものだけを渡して、相手がそのまま黙っていればそのまますっと帰ってしまう。だれか注意すれば、ああそうか、じゃ下さいと言って、にせものの方をまたポケットに入れて、別の方から、これが本物でございますと言って渡す。そのくらいに種族によって、地方によってみんな違います。そういうこまかいところまで知って、そして相手の商人の名前を聞いたり、ないしはダーバンの形一つ見ても、これはどこの地方の人でどういう階級でどういう性格を持っているのだというところまでわかりませんと、インドでの商売というものはなかなか容易でないのです。御承知のようにインド人というものは理屈はうまいし話はうまいし、とてもそれは日本人のように向う言葉をちょちょらでしゃべったのでは位負けしてしようがないのです。従ってそこまで突っ込まないとなかなか容易でないのでありますが、そういう面から考えまして、もう少し深く掘り下げた考え方で、滞在等も一つ今後とも十分折衝していただきたいと思うのであります。どうも今の局長のお話では、文章に書けば向うもその通りするだろうというようなお考えのようで、何か心もとないような気がするのですけれども、そういう国民性なのですから、その点を一つ十分お考えを願いたいと思います。  それから次にお伺いしたいことは、さっき申されましたけれども、インドの国内に日本の会社の支店を設置することを――これは五条でありますが、その点はどういうふうになっておりますか。
  128. 牛場信彦

    牛場政府委員 先ほどの入国のことをちょっと申し上げますが、ただいま先生のおっしゃいましたことは、これは条約問題よりもっと先の問題のことでありまして、条約による問題としましては、要するに差別待遇を受けないということをきめるのが主眼であるわけであります。インドにしましても、日本も同じことでございますが、滞在の査証と申しますのは、大体三カ月、六カ月、一年というように分れておりますが、これは必ず交付するということは約束していないわけであります。交付するかしないかということは、結局そのときそのときの査証を出す官庁の判断によるということになるわけでございまして、その場合にはこれをなるべく更新してくれというふうに話しますことは、もちろんこれは在外公館としましてもやるわけでございますが、これは条約には書ける種類の事柄ではないわけであります。従って条約によりまして相手国との関係がよくなりますれば、そういう更新もやりやすくなるということを私どもは期待しております。また先方が非常に理不尽なことをしますれば、日本にはたくさんのインド人がおるわけでありますから、それにつきましてわれわれとしましても手心を加えることができるわけであります。これはこの条約だけで解決できない、条約を作りました上でさらに突っ込んで話をしなければならない問題でありまして、ただいまの御意見の通り、今後とも外務省といたしましても努力をいたして参りたいと思っている次第であります。  それから会社の支店を作ることにつきましては、御承知の通りインドにおきましては、数種の企業につきましては将来はだんだん国営にしていくということで、外国人の資本参加でありますとか、あるいは営業を認めないものがございますが、それ以外のものにつきましては最恵国待遇をこれによって与えられるということでございます。
  129. 高岡大輔

    ○高岡委員 それから次にお伺いしたいことは、最近インドに百八十億ですかの借款を許したのでありますが、あれによって出る機械類等は貿易といううちに入るのでありますか、入らないのでありますか。これはこの通商協定のワク外に外務省としてはお考えになっておりますか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  130. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは貿易の中に入るわけであります。この間、円借款ということがきまりましたのは、これは日本から機械類を輸出するにつきましてインド側はすぐ金を払わないということでございますので、その間の金融をつけてやるということだけでございまして、結局、物の動きますこと並びにその決済というものは、これはいつでも貿易という範囲内で行われるわけであります。
  131. 高岡大輔

    ○高岡委員 その問題につきましては、インドは例の第二次五カ年計画の進行中でありますが、御承知のようなインドの経済状態でございますので、いろいろ向うでも注文といいましょうか、希望を述べてくると思う。いわゆる五カ年延べ払いないしは七カ年延べ払いということを向うは希望しておったのでありますが、そういう点はどういう工合になりますか。
  132. 牛場信彦

    牛場政府委員 インドの方で資本財を買いますときに、たとえば三年据置で七年間の延べ払い、合せて十年という期限がなければライセンスを出さないという規則があることは、私ども承知しております。しかしそれは必ずしもあらゆる機械についてその通りになっているわけではなくして、非常に重要なものについては、現金による頭金の支払いも認めているようであります。この間の円借款の条件につきましては、一応三年据置、七年間の延べ払い、合せて十年ということでありますが、それにつきましては、日本から出します資本財全部について何でもいいからこの条件を適用するというふうにはいたしませんで、品目を限りまして、その品目表に掲げましたものについてのみそういう条件を適用する、それ以外のものにつきましては、インド側の希望があれば、その条件はさらに新しくインド側と日本輸出入銀行との間で相談するということにいたしておるわけでございます。
  133. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、あの百八十億というものは通商協定外と見るのが適当でございますか。
  134. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは実は通商協定といいますのは基本的なことをきめているわけでございまして、貿易に関してお互いに最恵国待遇を交換するということでございまして、その基礎の上に立ってああいう借款もできる、こういうことに御理解願えればよろしいかと思います。外ということではなく、つまりあれは貿易一つの形態でございます。貿易をしやすくするために、日本側がインド側に対して金を貸すということでございます。
  135. 高岡大輔

    ○高岡委員 もう一つつけ加えてお伺いしますが、昨晩インドに鉄鋼使節団が行きました。初めはルールケラーの鉱山開発が非常に大きく取り上げられたのでありますが、どうやら下調査等によりまして、ルールケラーでないところがいい。むしろルールケラーは、ご承知のようにあれはビサガパタムの港からたしか二百マイルくらい奥へ入っておりますが、そういったような輸送関係なんかで好ましくない。むしろそのほかの方がいいということで、今いろいろ取りざたされておりますが、あの鉱石は、将来日本が買うことになるわけですが、これは一体どういう取扱いをするのですか、その点を一つ……。
  136. 牛場信彦

    牛場政府委員 これももちろん貿易一つの形態となるわけでございますが、それにつきまして、日本側でもって鉱石の輸入を容易ならしめるために、特別の外貨を割り当てるとか、あるいは特別のワクを設けるということはあるいは起るかもしれません。これは通産省の方で主管いたすことになると存じます。
  137. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、今の鉄鋼問題はちょっとこの協定からは別格に取り扱われているというように理解してよろしゅうございますか。
  138. 牛場信彦

    牛場政府委員 最恵国待遇だけでは説明できないことは事実でございます。従いまして、これはこの協定ができれば、ルールケラーの題問も直ちに解決できるというわけではありません。ルールケラーにつきましては、別途の措置をするわけでございます。
  139. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうすると、あの問題は両国の単独の協定によって、今後経済的に折衝していくというようになるわけですか。
  140. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはおそらく、日本政府インドの鉄鉱石を買うにつきまして、ある程度の保証を与えるということになると思います。しかし本来の契約は、日本側の鉄鋼業者と、多分これはインド側の中央政府になると存じますが、それとの間の契約になりまして、それに対しまして、日本政府がアメリカから金を引き出す関係上、アメリカに対して、日本政府としてはルールケラーの鉄鉱石の輸入につきまして、輸入を保証する用意があるということをアメリカに対して言うことになるのじゃないかと存じます。まだはっきりさようなことがきまっておりませんし、これは実はアジア局の方で主管しております関係で、詳しいところまで私も存じませんが、大体の考え方としては、そういうことになると思います。
  141. 高岡大輔

    ○高岡委員 私が自分で私案を申し上げると、はなはだ恐縮ですから、申し上げないのでありますけれども、これは日本の八幡にしましても、いろいろなそういう会社がございますが、これを一体、今の視察に行かれたあの一団の関係会社だけでなさろうとするのか、それとも今まで長い間日本インドとの鉄の輸入をしておった商社もそこへ入るのか。そういう問題は局長の関係事項でございますか。関係事項でございますれば、私はうんと突っ込んでこの問題は聞かないと気が済まないのですが、おれの関係でないとおっしゃれば、この程度にしておきます。
  142. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは実は通産省が行政的に指導すると申しますか、そういうことになると思いますので、その点は一つ通産省の方へ御質問願いたいと思います。
  143. 高岡大輔

    ○高岡委員 それならいずれ委員長からその機会をお与えいただくことにしまして、今の鉄鋼問題ないしはその他の機械類につきましては、その節に御質問したいと思います。  それで今私は通商協定だけについてお伺いしておるのでありますが、最後にお聞きしたいことは、今度は議定書の中であります。議定書の一項のところで、朝鮮、台湾、沖繩の人はこれには適用しないということは、なるほど朝鮮にいる朝鮮人、台湾にいる台湾人、沖縄にいるこれは沖繩県民と言いましょう。沖縄人と言うと、沖繩の人は非常に憤慨しますので、沖繩県民と私は言いますが、沖繩県民が沖繩にいた人はこれは困るかもしれないけれども、というだけであって、台湾の人でも日本に長く住んでいる人がございますし、朝鮮の人で日本に長く住んでいる人がいる。ことに沖繩県民に至りましては、日本本土に長い間居住し、経済生活をやっていらっしゃる方がおりますが、そういう方は除外にはならないのですか。
  144. 藤崎万里

    藤崎説明員 この規定の趣旨は、朝鮮、台湾出身の人で日本に今まで残っておる人は、国籍が変っておりますけれども、これは従来外国人扱いしないで、特別の待遇を与えているわけで、そういうものに特別の待遇を与えているからといって、インド人が日本においてそれに均霑するということにはならない、あるいは(b)項の方は、沖縄の人で日本内地におる人、そういう者に与えられておる内国民待遇みたいなものでございますが、これに均霑しない、そういう趣旨でございます。
  145. 高岡大輔

    ○高岡委員 私は今質問申し上げる際に、沖縄県民という言葉を使っている。平和条約第三条を縦から見ようと横から見ようと、それから最近岸総理並びに藤山外務大臣がアメリカヘおいでになって、アメリカの首悩部とトップ・レベルの話をなさいましたときも、潜在主権はあるのだということを向うははっきり言っています。私どもが先日アメリカへ行って、アメリカのたしかワシントン・ポストの人だと思うのですが、沖縄に日本人が何人いるかと聞きましたから、冗談言っては困る、八十何万全部日本人ですと言ったら、なるほどそうですと言ったが、あれは日本人ですよ。その日本人を、どうしてこの協定を結ぶ場合に、いつの間にやら日本の国籍からはずしてしまったのです。これは私はちょっと解せない感じがするのですが、その点一つお伺いします。
  146. 藤崎万里

    藤崎説明員 今まで日本貿易協定等を結びます場合に、適用範囲は、現に日本が支配している区域ということにいたしております。それで沖縄が日本の領域でないというような誤解を避けるために、いつも付属の交換公文等をいたしておるわけでございます。今回の場合は、インドの方で万一、沖繩出身者といいますか、沖繩県出身者といいますか、これについて誤解があるといけないから、念のために規定してある、こう考えていただいていいと思います。
  147. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうすると、沖繩県人はだめなんですか。
  148. 藤崎万里

    藤崎説明員 さようでございませんで、沖繩県人が日本で外国人扱いにされてない、あれは外国人じゃないか、だから自分の方にも、日本政府沖繩県人に与えていると同じような待遇を与えてもらいたい、そういうようなことをひょっとしてインド側から言い出すことがないようにという念のための規定を設けているわけでございます。むしろそういう方々が特別の待遇といいますか、外国人じゃないのだぞということをここで明らかに念を押しておるわけでございます。
  149. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、しつこいようでありますが、沖繩の人は除外されないのですね。本土の人と同じような待遇を受けるということなんですか。私、頭が悪いものだから、回りくどく言わずに、さっとそのまま言ってもらいたい。
  150. 藤崎万里

    藤崎説明員 この規定に即して申し上げておるものですから、非常に回りくどくなるかもしれませんが沖繩出身者に日本でどういう待遇を与えるかということは、この協定で規定すべき範囲内の問題ではございません。ただ、インド人が日本でどういう待遇を受けるかという面から規定しているわけでございます。その場合に、インド人は、沖繩出身者と同等の待遇は与えられないんだぞということを、念を押して規定しているわけであります。
  151. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、台湾に原籍地があって、そしていろいろ名前がありますが、これは明らかに内地本土の人と、文字の上からも区別がわかるような気がします。朝鮮に原籍地を置かれた人も、改名しない限りは大体わかるような気がします。ところが沖繩県人は、文字から言うても、それから原籍地を調べていってももう本土に籍を移していられる方もありますし、名前を見ても、どこから見たところで、それは区別がつかぬ場合がある、私はそう思うのです。日本の方でそれを調べればそれはわかるかもしれませんが、そこまで調べますか。
  152. 藤崎万里

    藤崎説明員 そういうことが問題になる可能性がないようにしたいという趣旨でございます。この条約では沖繩出身の方の待遇を規定しておるわけではございません。ただインド人が、日本で沖縄の出身の人がこういう待遇を受けているんだから、自分の方にもこういった待遇をしてくれというような要求をすることが、万が一にもないようにという趣旨を規定しているわけでございます。
  153. 高岡大輔

    ○高岡委員 つまらぬ協定を結んだと思って、私は情なく思うのでありますが、それはほかの委員からもいろいろ御質問なさいましょうから、この程度にいたします。  それから議定書の第三項で、パキスタンの船舶はインドの沿岸貿易の制限の例外とするというのですが、これは一体どういうことを規定しておりますか。
  154. 牛場信彦

    牛場政府委員 この第六条におきまして、沿岸貿易というものは、最恵国待遇から除外してあるけわでございます。つまり外国船に対しては沿岸貿易を認めないということにしております。ところがインドパキスタンの船に対しましては沿岸貿易を認めておる。しかしながら、日本側はそれだからといって、インドの沿岸貿易に従事することを要求しないという趣旨を、ここに明らかにしたわけであります。
  155. 高岡大輔

    ○高岡委員 条約協定文を見ますと、私がこれを読んで、個条書きでないものだから、非常に頭に入りにくいのです。しかし、先ほどからの局長の御答弁によってわかったような気もしますけれども、条文は一応それでいいとしまして、実際インド貿易をします場合には、そんななまやさしいものでないということを十分一つお知りを願いたいと思います。  最後に、どれほどむずかしいかということを、一カ所にしぼってお伺いしますが、この日印間の貿易において、クレームの出た場合の処理方針については、この協定を結ばれるときに、どういう話し合いをなさいましたか。これは協定を離れて、このフレームというものは非常にむずかしいのです。たとえて言いますと、インド人の着ますサーリーとかドホテーというのがあります。それを向うから寸法を言ってきますが、これは日本から考えまして、インド貿易を知らない人は、これは丈はたっぷりした方がいいだろうというようなことで、三丈だというと三丈一尺ぐらい、こう延ばしてやる。そうすると向うの方で、尺をはかってみて、長いからといって切ってしまいます。これは日本の反物と違って、縫いもしなければ、切りもしないで、ただぐるっとからだに巻いてしまうのは、御承知の通りであります。従って、一尺か二尺長いと、下の方で引きずってしまいます。だから困ることは事実であります。そこでどういうクレームが出るかというと、日本に言わせるならば、丈をたっぷりやったからいいじゃないか、むしろ負けてやった気持で長く出すのですが、向うから言わすと、長いところを切るから切り賃を出してくれ、しかも、機械で切ったのと違って、はさみで切るのだから、切り口がきたなくなって商品価値が下るから、その商品価値の下ったクレームを出してくれ。もう一つは、そのために商売が、きよう売れるのがあす、あさってと日が延びるから、そのクレームがほしい。こういったような三重のクレームを申し込むというぐらいに、インド貿易というものはむずかしいのでございますので、この点は一つ今後、どなたがその方の担当をなさるか知りませんけれども、外務省はこのクレームの処理については、だれがどうやって、どうした場合にはどうやるんだということを、あらかじめ十分話し合いを願いたいと思います。幸いにして局長さんがこの協定を結ぶべく交渉に当られましたので、その間にクレームに関してはどんな話をなさいましたか、最後にその点をお伺いいたしまして、私の質問を終ります。
  156. 牛場信彦

    牛場政府委員 御承知の通りクレームの処理は、ただいま日本の制度としましては、商業べースでもって当事者間で行うということか原則になっておりまして、その際仲裁条項等がありまして、解決につきまして話し合いで当事者間に合意があれば、それに従って行うことになっております。政府の立場といたしまして、もちろん問題がむずかしくなりました場合にはそこに関係をしまして、クレームの解決を援助する、これはいたすわけでございますが、こういう通商航海条約的な協定の話し合いの場合に、クレームの問題を取り上げるということはないわけでありまして、従いまして、この条約の交渉中に、特にクレームの問題について話があったという事実はございません。ただ第七条に「各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施から又はそれに関連して生ずる問題に関して行う申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。」となっておりまして、この問題、つまり通商に関しまして問題が起った場合には、常に相手方の言い分に対して好意的考慮を払って協議を行うということになっております。この条項を最大限に活用いたしまして、民間のクレームの解決に対しまして、十分援助をしていきたいと思っております。なお、クレームにつきましては、外務省の経済局にも一つの部屋を設けまして、特に注意を払っておりますが、所管は正確に申せば通産省の方であります。
  157. 高岡大輔

    ○高岡委員 そこに幸い、最もうるさい貿易港であったカルカッタの元総領事がいらっしゃいますが、この問題は一つ十分御考慮を願いまして、せっかく結ばれますこの日印通商協定によって、両国の経済関係の今後ともますます密になりますように、外務当局の一段の御努力を願いまして、私の質問を終ります。     ―――――――――――――
  158. 床次徳二

    床次委員長 それでは、再び国際情勢に関して調査を進めまして、大臣に対する質疑を続行いたしますが、本日の会議は非常に長くなりまして、お疲れで恐縮でありますが、あと一時間近くでありますからしんぼういただきたいと思います。  通告によりまして質疑を許します。田中稔男君。
  159. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ただいま手元にいわゆるブルガーニン書簡に対する政府の回答の文書が配付されたのであります。これを一読いたしますと、一口に言えば味もそっけもない、何らの理想も情熱もない外交文書にすぎないという感じがいたすのであります。そこで私はこの回答文書の内容につきまして外務大臣に若干の点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。その場合ブルガーニン書簡をも引用いたしましてお尋ねいたしたいと思います。  まずこの回答文書の前文でありますが、これを見ますというと、東西両陣営の緊張が非常に強化されているということだけ書いてあります。なるほど東西両陣営の緊張はありますけれども、一方また緊張緩和の努力が政府並びに民間において行われているという事実をこれは全然見落しております。今日東西両陣営の間において平和えの努力が政府及び民間人によって行われておる、そうしてこれの具体的な結果としては、たとえば日ソの国交の回復ともなったわけであります。また米ソの文化協定ともなったわけであります。あるいはまた今日あたりの新聞を見ますと、ソ連はハンガリー及び東独から撤兵をする、あるいはまた中国は朝鮮におりますところの人民義勇軍を引き揚げるとか、そういうふうなことがいわゆる共産主義陣営の方で行われておるわけであります。こういうふうな具体的ないろいろな事実を通じて現れた国際緊張の緩和の方向というものは全然お認めにならないかどうか、一つお尋ねいたしたい。
  160. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 両陣営の間におきましてお互いに緊張緩和の努力をいたしておることは、もちろん私も認めるところであります。ただそれにもかかわりませず、全体としてなおいまだ不信の念がお互いに取れず、ややもすればそれがいろいろな意味において緊張を強化していくというような面が強く出てくるような感じもせられるわけでありまして、われわれとしても個々の努力を全部無視しておるわけではありません。しかしながら東西両陣営の中で十分なる信頼感も取り戻し、そうしてその事態において円満に行くような方向にはまだ行っていないということを申し述べたわけであります。
  161. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の外務大臣のような御趣旨であれば、その回答文書の前文の文章は、私は表現として不十分ではないかと思いますがどうでしょうか。
  162. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この文章の一々については十分であるか不十分であるかは見解の相違もあろうかと思いますが、しかしながらとにかく両陣営がまだ全体として不信感を持って、そして何らかの打開の道を必要とするような大きな意味での打開がされるような状態にあろうかと思うので、その事実を述べたわけであります。
  163. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 具体的にお尋ねをいたしますが、現在ソ連や中国あるいはいわゆる北鮮が日本に対して何か侵略の意図を持ち、何かそういう準備をしておる、こういうふうにお考えになりますかどうか。そうはお考えにならないと思いますが、一つはっきり御答弁願いたいと思います。
  164. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どものここに申し述べておりますことは、両陣営の間に不信の感があって、そうしてそれがまだどうもほんとうにしっくりした感じに打ち解けていないということを強調しているのでありまして、個々の問題につきまして、日本としましてもソ連に対してできるだけの努力を払って通商協定もいたしますし、安全操業の問題等につきましても友好裏に暫定的ではあるが話し合いをしていこう、ソ連もまたある時期にはそういうものを受けて、できるだけやっていこうということも考えた時期もあるようであります。そういうことでありますから、そういう個々の問題としてはむろん最大の努力が払われております。しかし何となく世界の全体の空気としてはまだしっくりいかないものがあるということは、これは否定できないことではないか。ことに科学兵器が発達し、それの競争等というような問題を通じても何かの激しい感じ方が持たれておる、そういうことを述べておるわけであります。
  165. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いわゆる共産圏諸国のうちで、地理的に日本に一番接近しておるのはいわゆる北鮮であります。ところが最近中国の周恩来首相がいわゆる北鮮を訪問いたしまして、朝鮮民主主義人民共和国の金首相との間に中国の人民義勇軍の撤退の協定に調印したと新聞紙が報じております。これは最近に起ったきわめて具体的な事実であります。これが中国及び北鮮の日本に対する態度をわれわれがテストする、これは確かに一つの平和への努力である、緊張緩和への努力であるということはいなめないと思う。われわれは共産圏諸国からの侵略があるから自衛隊を作らなければならぬ、こういうふうに教えられてきております。ところが朝鮮においてこういう事実が現に起っておる。朝鮮戦争は北鮮の侵略に始まったと言われ、そうしてそれに中国が協力をした、こういうふうに教えられております。その過去の歴史的な事実につきましても争うべきものが私はあると思うのでありますけれども、しかしながら今日北鮮に駐留しております中国の義勇軍が、年内には撤退するということがはっきりここで表明されている。こういうことを対岸の火事みたいに考えて、こういうことに何らの関心を払わないということでは、政府の外交的な感覚はゼロだと私は思います。国民はこういう記事を見ますと、今まで北鮮が日本に侵略する、その前に韓国に侵略するというような話も、まるで一つの作り話だ、こういうふうに受け取ると思うのです。この中国と朝鮮との撤兵の協定、この事実を外務大臣はどういうふうにお考えでありますか、この意義をどういうふうに評価されますか。ただばく然たる御答弁でなくて、もう少し具体的に一つ御答弁願いたいと思います。
  166. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 北鮮からの中共軍の撤兵問題につきましては、さきに二月五日でありましたか北鮮の首相が中共に対して話しかけたと承知しております。その後周恩来首相も二月十二日でしたかにそれに応じて声明を発表しておられます。その後十四日に北鮮に行かれまして話し合いをされた結果が十九日の共同声明ということになったかと思っておるわけであります。北鮮から中共軍が引き揚げられますことは、朝鮮半島におきます平和への道が一歩前進したのではないかと考えられるわけでありまして、私どもとしては朝鮮におきます平和が確立されますことは、地理的に見て非常に近い日本としては望ましいことであると考えております。ただこれらの問題につきましても、諸般のいろいろな不信感からいろいろな説が行われておるのでありまして、ただ単に、そういうような説によって将来これが正当に発展していくことのないような状態になることをわれわれは心配するわけでありますが、その意味におきまして意義の大きいものだと考えております。
  167. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 この撤兵の協定の中で日本に言及いたしまして、アジア・アフリカ諸国との団結と中朝両国との友好関係発展を要求する日本人民の声が高まっているにもかかわらず、日本政府は依然として両国に対し非友好的方針をとっていることを遺憾ながら指摘せざるを得ない、こういうふうに言っているわけであります。そこで今日まで日本民間人は――あるいは政治家にしても経済人にしても文化人にしても多数北鮮を訪問いたしました。そして北鮮における建設のすばらしい発展を見、また北鮮の政府及び人民の平和に対する熱意をはっきり感じとってきておるのであります。ところで朝鮮の中に二つの政権があり二つの国があるということは遺憾ながら厳然たる事実であります。にもかかわらず政府は韓国との間に近く全面会談を始めようとしておる。その予想される結果は、日韓の間に国交回復をやり、平和条約を結ぶということになろうかと思うのでありますが、そういう場合において、いわゆる北鮮、正式には朝鮮民主主義人民共和国というものを日本政府は一体どうお考えになるのか。これにどう対処されようとしておられるのか。このことにつきまして一つ御答弁を願いたいと思います。
  168. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 朝鮮におきまして二つの形になっておりますことは、まこにと残念なことだと思っております。しかし、日本といたしましては、一九四八年の十二月に国連が韓国の政府を選挙によって合法的に正当にできた政府だと認めておりますので、それを対象にして、現在いろいろ漁業の問題その他がありますので、そういう問題を解決していくことが適当であろうと考えております。
  169. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いわゆる国連の決定というようなことは、私は形式的なことだと思います。問題は事実の問題でなければならぬと思うのでありますが、今のような政府の御答弁では私は満足できません。そのことについてさらに私から言葉を加えることはやめますが、正式の国交関係、正式の承認というようなことは別といたしましても、少くとも民間人が北鮮と往復いたしまして経済的、文化的な交流を行うということは少しも差しつかえないことだと思うのであります。現にこれはやっていることなのであります。ただ、政府がこれに対してどういう態度をとるか、そういう民間交流すらこれを抑える態度をとるのか、それともある程度これは黙認する、あるいはむしろそういう交流が行われることを政府は希望するというような態度をとるのか、このことは私は実際問題として非常に重大な問題だと思いますが、これについての政府の御見解をお伺いしたい。
  170. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 北鮮との関係は、ただいま申し上げましたような関係から見ましても、私どもとしてはそういう問題について積極的に進んでいく考え方は現在ないのであります。その他閣議決定等においても北鮮とは貿易をしないというような申し合せも行われておりますので、その線に沿って、現在情勢に変化のない限りそういうことで進んでいきたいと思います。
  171. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今の御答弁は低声で少しあいまいであったので、私よくわかりませんが、現に民間において経済交流文化交流を行なっております。またごく最近北鮮との間の貿易問題で、民間使節の方が向うに行かれた、こういう事実もある。こういう小さな傾向は、むしろこれを助成することが東西の緊張緩和のためにもやはり役立つと私は思う。こういうことまで政府が押えるというようなことになれば、吉田内閣から鳩山内閣、鳩山内閣から石橋内閣、こういうふうにだんだん日本の外交政策が変って参りまして、従来のような完全なアメリカ従属の外交をだんだん脱却しておるという方向を逆転させることになると思います。良識を持った藤山外務大臣でありますから、そういう民間における経済及び文化交流についてはむしろそれを希望するというくらいの御答弁があってしかるべきだと思いますが、どうでしょう。
  172. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際関係というものは絶えず変化をいたしております。従いまして、今日までの情勢からいいまして、北鮮に対する交流政府が好まなかったこともまた当然だと思います。国際関係はいついかなるように事情が変転していくかわかりません。われわれとしてはそれに対処していくということでございます。
  173. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 万物は流転するという、そういう哲学で一つ情勢によって態度を変えようという、外務大臣としての苦しいお立場はよくわかりますが、物事は変るのであります。しかもいい方向に変っております、だから日本の外交政策を一ついい方に変えるようにお願いいたします。  次に、巨頭会談のことについて述べてますが、この内容は、全くアメリカ政府の言っておりますことのオウム返しにすぎないのであります。巨頭会談をやることは望ましいが、そのためには外交機関を通じて慎重な準備をしなければならぬというようなことを言っておりますが、こういうことはよけいなことだと思います。もちろん巨頭会談をする前には何らかの準備が要ることは当然のことです。だから、巨頭会談は、何といったって世界の運命を決することに重大な責任がある大国の首脳者が集まって、そうしてすみやかに会談を開け、こういうことをずばり回答すればいいと私は思うのでありますが、そのことについてはどうでしょうか。
  174. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日のような、世界の相互信頼というような感じの欠けており、しかもそれをもとにしていろいろな問題が出てくるというような時代に、巨頭会談というものが行われまして、そうして隔意なく話し合いをすることによって、そのこと自体がまた世界の不信感を一掃するに役立つということも考えられるわけであります。従いまして日本としても、そういう意味において巨頭会談が一日も早くできることに賛成するのであります。  しかしながら、同時に、この前のジュネーヴのサミット会議の結果を見ましても、巨頭会談で話し合ったことが、後のそういう問題を具現していく外相会議等において蹉跌をいたしたというようなことが、その後の不信感を非常に深めた点であります。従って巨頭会談をやりますために十分な準備をして、そうして外相会議であるか、あるいは外交ルートによる折衝であるか知りませんけれども、またどちらが適当であるか、それらの問題についてもわれわれも研究して参らなければならぬのでありますけれども、そういうような意味で問題を限り、円満に巨頭が集まって話し合った結果が具現していくということができますならば、それが一番いいことであることも申すまでもないことであります。従って、そういう意味において、巨頭会談を開きます道のいろいろな方法について、各国がそれぞれ十分な研究をいたしまして、この巨頭会談がただ単にあったというだけでなく、成功裏に終るように努力することもむろんのことであります。日本といたしましてもただ単にアメリカの意向だけを代弁しておるわけでもないのでありまして、イギリス等の意見も聞き、その他の国の意見も聞きながら、われわれとしてはいかなる道が適当であるか、そうしてそういう道を開きながら、一日も早く巨頭会談のできることを念願しておるような次第なのであります。
  175. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ブルガーニン書簡にあることで、政府が全然触れてないいろいろな問題があります。その一つはこういうのであります。ブルガーニン書簡の翻訳のうちの十四ページに、「全世界の平和を確保するという立場に立つならば、われわれの考えでは、資本主義国家と社会主義国家が存在しているという世界の既成事実をはっきりと認める必要がある。」と書いてあります。今日、ソ連、中国あるいは東欧諸国を含めまして、人口を数えますと大へんな数になります。またその領域を計算しますと大へんな広さになると思います。そこに社会主義の一つの世界ができておる。それからアメリカ、イギリスなどを中心としまして資本主義の今までの古い世界がある。世界は実質は新旧二つの世界に分れたような格好なんです。この場合に、たとえばアメリカのダレス国務長官のように、一種のカトリック的な反共的な信念でもって、社会主義は悪である、共産主義は悪である、とにかくこれをぶっつぶさなければならぬといって、予防戦争でもやろうかというような考えを持つことはきわめて危険でありますが、一ときはそういうような思想もアメリカにありました。そういう危険思想がアメリカにあった。しかし今日はダレス国務長官といえどもそういう危険思想はもう主張できなくなっておると私は思う。神のおぼしめしには反するか知らぬけれども、とにかく社会主義の世界があるんだ、この資本主義と社会主義の二つの世界、これがあるという既成の事実を認めるというところから、平和的共存が始まるわけですね。そこでこのことについてブルガーニン書簡は言及している。これはソ連の外交政策の一番基本的な考え方であります。こういうことについて一体日本政府また外務大臣はどういうふうなお考えを持っておられますか。  これは藤山さんならそういうことまでお考えになれると思うのですがね。決してただ事務的な外務大臣ではないと思う。それから哲学を持たない外務大臣でないと思う。だからあなたは一体どう考えるのか。あなたは日本の資本主義のいわばチャンピオンみたいな方であります。ダレス国務長官と同じように、とにかく神のおぼしめしに反する社会主義、共産主義はぶっつぶさなければならない、そういう国是を持っている、そういう体制を持っている国は、予防戦争をやり、巻き返し戦争でもやって、つぶさなければならぬとお考えになるのか。とにかくそういうものが、そういう世界があることは事実だ、そういう世界と、それから従来の資本主義世界、この二つの平和的共存というものを建前にしていかなければ、世界は平和になっていかないのだとお考えになるのか。これは重大なことです。御答弁願いたい。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 非常に哲学的な御質問を受けましてなんでありますが、まあダレス長官が神のおぼしめしによって共産主義はたたきつぶさなければならぬとまで言ったかどうかについて、私も確実にそうだということを申し上げかねるのでありますが、最近のダレス長官の言動からいいますと、そこまではいっておらぬように考えておるわけであります。自由主義社会の人として考えますことは、やはり自由主義の立場でもって、思想には思想をもって対抗するということが、これが基本的な自由主義陣営の立場であろうかと思います。従って右翼であるか左翼であるか存じませんけれども、一つの大きな圧力を持ちまして、思想方向を動かしていくということ、そのことにつきましては、私は自由主義陣営の一員として反対せざるを得ないのであります。しかし現実の事態としてそういう国家が現在世界にあるということもまた事実でありまして、これを抹殺するわけにいかないと思います。しかしそういう国が一日も早く、やはりわれわれ自由主義陣営の立場と同じように、思想の自由を持つことを私は念願をしておるのでありまして、一つの固定的な思想を強力に押します政府というものは、自由主義を信奉しておる私の建前からいえば、今申し上げたように好ましいとは思いません。しかしながら、人間はやはり武力をもってこういう問題を解決するよりも、思想をもって解決していくことが必要なんでありまして、そういう意味においてはできるだけ思想をもって戦わして、そうして世界がよき傾向にいくように念願していかなければならぬと考えております。  特に今日平和共存の問題があるわけでありますが、平和的に各人が共存していく、個人にいたしましても隣を接している者がお互いに、社会党に属する人でも、あるいは自民党に属する人でも、同じように隣で円満にいくことが望ましいわけであります。ただ何と申しましても、現在までの歴史的な事実から申しますと、どうもトータリタリアンの国家としてはその自分の思想を隣のうちまで押しつける、そうして隣のうちの平和を乱すというようなことが考えられるわけであります。これは単に不信感というばかりでなく、そういう点があることを、私は公平な事実として考えていかなければならぬのではないかというふうに思うのであります。そういう意味において一日も早く不信感が是正されるようなことになりますれば、平和共存というものは必ずいくのではないかと思うのでありまして、そういう意味で、高い人類の理想としてそういう問題を私どもも念願をいたしております。
  177. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 リベラリストとしての外務大臣の答弁として、私は大体それでいいし、それが限界だと思う。  そこでもう少し具体的に言いますと、二つの体制を異にする世界があるということ、それはもう認められたのですが、好むと好まざるとにかかわらずある。そしてそれが双方武力によって自分の方の領域を拡張するようなことはいかぬということは、外務大臣の御答弁からわかったわけであります。そこでたとえば、一つの朝鮮に北と南と二つの政権がある、まあ二つの国がある。ヴェトナムにも北と南とがある。ドイツにも東西があります。そしてそれはやはり体制を異にする二つの国、体制を異にする二つの政権です。そうするとそれはドイツ民族、ヴェトナム民族、朝鮮民族がみずから平和的、民主的な方法で統一のために努力することは、これはけっこうだし、望ましいことだが、そのことがまだ実現を見ないまでの間、とにかく二つのそういうものが併存しておる場合、その事実を何か武力によって変更するということ、はっきり言えば、朝鮮の三十八度線を越えて何か武力で北鮮の体制を変えさせる、具体的に言えば北鮮を自由世界の方向に取り入れて、そして韓国の領域を拡張するというようなこと、こういうことは外務大臣としては賛成なさらないということになると思いますが、どうですか。
  178. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 分裂国家は、分裂国家におります人たちの考え方で一日も早く、国連でもいっておりますように、選挙その他の方法で統一されることをわれわれは希望しております。従ってこの両者間の武力による争闘はただいまもお話のように、南から北に攻め入るということだけでなしに、北から南におりてくることもまた好ましいことでないのでありまして、そういう意味において、両者が話し合うことを希望しております。
  179. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 よくわかりました。そこで、北から南に武力でもって領域を拡張することもいかぬ、しかしまた南から北に向って同様のことをやることもいかぬ、こういうことになるわけでありますが、現在韓国の大統領である李承晩という人は、盛んに武力によって北進する、武力統一というようなことを豪語しておるわけです。これははっきりした事実であります。そういう李承晩大統領の言明、武力によって北鮮を倒してしまうのだ、そして全朝鮮を韓国一色に統一してしまう、話し合いではない、武力による、実力によるのです。こういうような李承晩大統領の考えなり言明に対しては、外務大臣は賛成されないと思いますが、どうですか。
  180. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連の精神からいいましても、武力によらずして平和的なもとに安全な道で問題を解決するということが国連の精神だと思います。長い間圧迫を受けていた人が、ときに北方からの圧迫、武力攻撃というような過去の経験も考えまして、いろいろに言うこともあろうと思いますが、国連の精神から申してわれわれは平和的にすべてが解決されることを希望しておるわけであります。
  181. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 書簡のうちには核爆発実験の禁止問題についても書いてございます。ところがこれにつきましても政府の回答は問題をはぐらかしたような態度であります。御承知のごとく、ソ連は核兵器使用を禁止したい、さらにまたそれが実現するまでは、核爆発の実験を少くとも二、三年間だけやめようじゃないか、こういうことについて、軍縮会議における全面的な協定とは切り離して、これだけについて何か国際協定を結びたい、こういう意向であることは御承知の通りであります。ところが政府の回答文書によりますと、ソ連が軍縮会議を脱退したために全般的な軍縮協定ができない、従ってその一部として考えられる核兵器の問題、こういうことについての国際的な話し合いもできないんだ、だから結局ソ連が軍縮会議を脱退したことが悪いのであって、こういう問題を相談するためには、一つソ連政府がすみやかに軍縮会議にもう一ぺん戻ってもらいたい、こういうふうなことになっておるのでありますが、今も申しましたように、ソ連は一般的な軍縮協定と別個に切り離して核兵器の問題は話し合いたい、こう言っている。私どもは一般的な軍縮協定の一部として核兵器の問題を取り扱いましても、なかなかこれは協定には達しがたい。むしろ今日人類みな殺し戦争というようなものが起るかもしれぬという、そういうことに人類が非常に今危険を感じておる。この際に、この人類の要望は、一般的な軍縮協定はできなくても、少くとも核兵器についてだけはもう実験から使用から貯蔵から一切、これは一つやめるという協定を早く結びたいということにあると私は思うのです。日本国民の要望もまさにそこにある。年々繰り返される原水爆禁止の世界大会あるいは国内大会も、みなそういう要望を決議として表明しております。ところが何か軍縮会議にソ連が入っていないから、脱退したからこの問題ができないんだというような、私は非常にこれをずるい回答だと思います。政府の真意は一体どういうところにあるか、御答弁願いたいと思います。
  182. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本が核兵器の生産、保有、使用というものに対して、これを禁止するということは国民的な要望でもあり、われわれもそれを体して今後の国際外交の上においてやって参らなければならぬことは当然であります。同時に、核爆発の実験等についても、やめることについて努力して参らなければならぬわけ正であります。従いましてそういう線に沿いましてわれわれとしては最大の努力をして参るわけであります。しかしながらこれらの問題を論議いたします場合に、やはり一番論議の場として適当なのは、国連における軍縮委員会ではないかと私ども考えております。昨年六月、七月の初頭において、軍縮委員会はソ連とアメリカとの間に若干の歩み寄りも進められてきたのでありますが、その後の状態は残念ながら、軍縮小委員会の決裂の状態に相なったわけであります。その後軍縮委員会の構成等の問題につきまして国連において諸般の討議がされたのでありまして、その結果として、最終的には従来の軍縮委員会を二十五ヵ国まで広げたわけであります。ソ連側におきましても、最初は八十二ヵ国全員をもって軍縮委員会を再編成したらどうだという意見もあったのでありますが、それが三十七ヵ国程度の軍縮委員会の構成にソ連もおりてきたわけであります。そういう努力を続けて参ったわけでありますが、残念ながら国連におきまして、最終的に軍縮委員会の人数等についても決定をいたさなかった、合意に達しませんものでしたから、ソ連は軍縮委員会から脱退し、離れておるような状況にあるわけであります。でありますから、これらの全般の問題を取り上げます場合には、ぜひとも軍縮委員会の場においてやるのが適当であると思うのでありまして、今後とも日本としては軍縮委員会にソ連が再び復帰して、そうして話し合いを軍縮委員会の中において続けていくことを希望してやまないわけであります。それらの問題につきまして日本国連の代表部としては、各国の意向を打診し、またソ連側の事情等も聞きながら現在努力をいたしておるわけであります。そういうことで、通常兵器の軍縮もさることながら、核兵器そのものがまず禁止をされて、その後にさらに一般軍縮にも進んでいくということを望んでやまないわけであります。日本といたしましてはそういう線に沿って極力やって参りたいと思うのであります。そういう意味において、この場においてもソ連が再び軍縮委員会に復帰することを希望する意思を表明して参っておるのでございます。
  183. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一つ尋ねますが、原水爆の使用だとか、あるいは実験の禁止、こういうことは一般的な軍縮協定と別個に、また会議の場所も別に軍縮委員会というようなことでなく、それを離れてでも、とりあえずとにかくこういう禁止について国際協定を実現するために努力しようというお考えはないか。何かあくまで軍縮委員会を開いてそこでやらなければならぬ、また一般的な協定の一部分としてやらなければならぬ、こういうふうなお考えにとらわれておるのかどうか、これをお尋ねしたい。
  184. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題につきましては、あらゆる面から日本は努力をするのが当然であります。従いまして、現在までの過程におきまして軍縮委員会をその場としてやりますことは、非常に必要な場であり、私は適当な場だと思っております。しかしながら、巨頭会談等も開かれまするし、あらゆる機会にそういう場面において取り上げて、一日も早くこの目的が達成せられるようにわれわれとしては努力して参りたい、こう考えております。
  185. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは一つの考えですが、日本はAAグループに入っているわけでありますが、とにかくAAグループに所属している国々の国際的な世論を形成する上における役割も相当大きいと思うのです。だからインドのネールだとか、インドネシアのスカルノだとか、あるいはエジプトのナセルだとか、そういうふうなところに呼びかけて、アジア・アフリカ諸国の一つ国際会議でも開いて、この問題について一つの決議を行い、それで一つの世界の世論を作るという、何か日本がイニシアチブをとられる御努力は考えられないでしょうか。
  186. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アジア・アフリカの、必ずしも首脳者でなくてもいいわけでございますが、それぞれ外交の責任にある者が相集まって話し合いをしてみたいという希望は私も持っております。そういう意味において今後われわれはこういう問題についてできるだけの努力をして参りたい。ただそういう場合、今お話のように日本がすぐに表向きイニシアチブをとるかどうかということは、これは各国の空気もございます。そういう問題について十分話し合いをしながら――日本だけが主張して集まるというわけにもいかぬ点もありますので、日本としては努力いたしたいと思います。
  187. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日本がイニシアチブをとることは、外務大臣、少しも遠慮は要らないですよ。たとえばこれがアジアの開発というような仕事に乗り出すとき日本があまりイニシアチブをとり過ぎますと、これはまた大東亜共栄圏の再版じゃないかという誤解を受けるかもしれない。しかしながら、原水爆を禁止するために、平和のために日本がアジア・アフリカ・グループのイニシアチブをとるということは、これは少しも遠慮は要らぬと思う。現に原水爆禁止世界大会が四たび日本において開かれようとしております。これは広島、長崎、ビキニにおいて原水爆の被害を受けた世界における最初の国民として私は日本国民の持つ当然の権利だと思うのです。権利であり、またある意味で義務だと思うのです。だからどうでしょうか、そういうことについて遠慮しないで、一つアジア・アフリカ会議でも開いてこの問題を討議するということについて、外務大臣勇気を出していただきたいと思いますが、どうですか。
  188. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれとしましては、主としてアジア関係国際問題を担当している者、外務大臣であろうかと思いますが、それが集まって話し合いをするということは必要なことではないかということで、先般参りましたときも私の話し得る範囲内において話をしてきたわけであります。従いまして、そういう意味で、将来単に原水爆の問題のみならず、そういういろいろな問題についても話をする機会を得たいと思っております。ただ私は遠慮しているわけではございませんけれども、日本がそういうような話をする場合に、やはり十分各国との間の準備もして参らなければなりませんし、ただいたずらに日本がイニシアチブをとったというような形でない方が好ましいということを申したわけでありまして、特段に遠慮したわけでもないわけでございます。
  189. 床次徳二

    床次委員長 だいぶ予定の時間が近づきましたから、早く結論に入っていただきたいと思います。
  190. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ことしの八月また原水爆禁止世界大会が日本で開かれる。これは例年開かれておりますが、若干の問題について政府の御意見を聞き、また政府に対して御要望を申し上げたいと思っております。  まずこの大会が開かれましたときに、これは多数の外国代表が来るのでありますが、その入国査証の問題が毎年会期が切迫してもなかなかむずかしい問題で困っております。昨年は外務省の態度も非常に好意的であって、大体満足がいきました。ただ朝鮮民主主義人民共和国の代表のごときはついに入国できなかった。しかしながら、ことしの大会は、どうでしょうか、外国の代表は全部入国を認めていただくというふうにお願いいたしたいと思います。朝鮮のことについて申しますと、先ほどお尋ねしました際にも、とにかく北鮮か社会主義の国であろうと何であろうと、そういうものの存在は認めるというお話でもありました。そしてまた外務大臣はとにかく東西の平和共存というようなことにも御賛成のようなお言葉もありましたし、北鮮といえども今日厳然たる一つの国家であります。しかもそこから平和のための使節が来るのであります。原水爆禁止のための大会に協力する使節が来るのでありますから、ソ連までも含めて全世界どこの国から外国代表が参りましても、原水爆禁止世界大会には出席を認めていただくようにお願いしたいと思います。まず一つ簡単にこれについて御答弁願います。
  191. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原水爆禁止の大会につきましては、数年来の政府の方針はいたずらに入国を禁止する取扱いはしておらなかったように私も存じております。ただ分裂国家の問題につきましてはいろいろの問題がありますので、その点については今日まで否定的であったわけでありまして、なお大会参加という以外に、諸種の問題をはらんでいる場合に入国管理局等でもって個個の問題として取り上げる場合もあろうかと思いますが、この大会に参加するというだけのために、今日までの従来のいきさつを調べてみますと、特に禁止しているということはない、そういう方針のもとにやっております。
  192. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一つ具体的に、北鮮から今度原水爆の世界大会に代表が来ます場合に、しかもそれが大会出席だけに目的を限定して入国します場合には、入国を認めていただきたいと思いますが、どうですか。
  193. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在の段階におきまして困難だと私は考えておりますが、なおよく検討いたしてみたいと思います。
  194. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その困難だという理由はどういうわけですか。
  195. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 分裂国家の問題は、いろいろな意味において問題が起ってくる関係がありますので、相当慎重に取り扱わなければならぬ。過去の取扱いもそういう意味において非常に慎重になっておると思うのであります。そういう意味におきまして、私どもは困難ではないか、こう考えておるわけであります。
  196. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 まるで入国管理局長みたいな御答弁でありますが、藤山外務大臣としては、先ほどの御答弁から考えると、北鮮も一つのりっぱな国家である。体制は異にするが一つの国家である。しかもそこから平和のための使節が来るならば、こばむ理由はないと思います。どういう理由ですか、もう一ぺんはっきり言って下さい。
  197. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は今日までの取扱いを申し上げたのでありまして、われわれとしては、今直ちに今日までの入国管理局の取扱いを研究する必要もないかと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、なお研究はしてみたいと思います。
  198. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうすると、これは絶対にだめだというのでなく、政府としてはまだ大いに一つ考えてみよう、こういうふうに承わってよろしゅうございますか。
  199. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在においては困難だと考えております。
  200. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それからもう一つ、毎年の例ですが、この大会に首相のメッセージをいただいておる。ところが、それはだれか代読するのでありますか、ことしは一つ岸総理大臣みづから出席していただいて、メッセージをいただきたいと思います。これは首相にお尋ねしなければならぬでしょうが、外務大臣が所管事項としてお考えになってはどうか、そういうふうにお取り計らい願いたいと思いますが、どうでしょう。
  201. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話の点は総理大臣によく伝えることにいたします。
  202. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もうだいぶ時間が迫りましたが、あと二、三点お尋ねしたいと思います。この間わが社会党に対しまして、緑風会から、領土問題、つまり日ソの領土問題について超党派外交でいきたいが、どうかというような話がありまして、わが党としましては、今日政府の与党である自由民主党と、野党であるわが社会党とは、外交の基本的な路線を異にしておる。自由民主党は言うまでもなくいわゆる自由主義陣営と協力するという名目で、実際は対米従属の政策をとっているし、わが社会党は両陣営のいずれにも属さない、積極的な中立という立場でおるのでありますが、そういうわけで、基本的な外交路線が違うから、そういうときに何か超党派外交といいますか、二党外交はあり得ない。アメリカの場合によく二党外交ということをいいますが、これは共和党と民主党とが外交の基本路線は全く同じでございますから、そういうことになりますが、日本の場合は違う。こういうことで断わったのでありますが、政府はこの領土問題に関する超党派外交あるいは領土問題に特定しなくとも、一般日本において両党外交、超党派外交というようなことが考え得られるかどうか、そういうことについての御意見を一つ
  203. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外交問題を超党派的に考えることになりますことは望ましいことだと思います。しかしながらおのずからそれぞれの党によりまして基本的な立場も違っておるわけでありますから、それらのものが完全に一致するということもむずかしいことだと思います。ただ個々の問題につきまして、お互いに話し合いをして、そうして基本路線についてはとにかくとして、特定の具体的問題について意見が一致することができる場合がありとすれば、それは望ましいのでありますが、外交問題については、そういう意味において、何かの形で超党派的に扱われる場合もあり得るのではないかということは私も考えております。
  204. 床次徳二

    床次委員長 関連して並木君から。簡単に一つ
  205. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣に簡単に一つお尋ねしますが、ブルガーニン首相への回答の中に不可侵条約について触れておらないのですが、これは何か含みがあってのことでございましょうか。大臣の不可侵条約についての御見解をこの際はっきり承わっておきたいと思います。
  206. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ブルガーニン書簡につきましては先ほどもお話がありましたが、全部の問題について全部の意見を書き連ねたというわけでもないのであります。その間に重要と思いますような問題につきまして、意見の開陳をいたしたようなわけでございます。そういうことがありまして、その問題については触れなかったのであります。
  207. 並木芳雄

    ○並木委員 次に領土の問題でございますが、この中に「日本国の固有の領土である島嶼の不当な占有を中止し」こういう文章が使われておるのでございます。この「中止」は新しい表現だとすればかなり強い言い出しであり、即時にも中止してもらいたいというふうにも受け取れると思うのですが、このニュアンスはどういうものでしょうか。この文面だけではわからないのですが……。
  208. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国後、択捉が日本の固有の領土であるということにつきましては、国民一致した要望でございます。従ってそれが今日占有されておりますことは適当でないのでありまして、不当だと考えられるわけであります。むろん外交交渉の中にあるいは外交関係の中においてある場合には弱い言葉を使い、ある場合には強い言葉を使うということはそのときどきの関連において行われることであります。この場合不当ということが特に御指摘のように何か新しい問題として考えられることはないと思います。
  209. 並木芳雄

    ○並木委員 核兵器の問題に触れておりますが、核兵器の問題とミサイルの問題とはやや私は違う点が出てくるのじゃないかということを心配しておるのであります。と申しますのはアメリカとイギリスとの間で、ミサイルの基地の協定ができ上りました。将来アジアでSETO会議なんかでやはりこの問題が取り上げられるようでございますが、日本に対してアメリカからもしもミサイル基地の協定なんかということが、申し出があったような場合に、単なる核兵器の持ち込み禁止とか拒否という問題とはやや違ってくるのじゃないか、特にアンチ・ミサイルのミサイル基地というようなことになれば、これは完全に防御的なものでございますし、一考しなければならぬと思うのでございますが、もしそういうようなことがあったときにやはりがんとしてこれは拒否するのか、それともそのときはそのときで考慮するのか、幾らか含みを残しておいた方がいいのであるかどうかというような点についてお伺いしたいと思います。
  210. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本といたしましては総理がたびたび言われておりますように核兵器を持ち込まないことになっております。ただミサイルという言葉がかなり広義の言葉かと思うのでありますが、たとえばサイドワインダーのごときは一つの誘導弾の問題でありましょうけれども、これは必ずしも核弾頭をつけるものじゃないということもあります。そういう意味において誤解のないようにいたしたいと思います。
  211. 床次徳二

    床次委員長 関連質問ですから、簡単に。
  212. 並木芳雄

    ○並木委員 これで終ります。最後に域外調達のことなんでございます。アメリカの日本に対する域外調達計画の実施状況、つまり前からMSA援助の一環としてアメリカが日本工場などを活用して、域外調達の道を開き、これによってまたべースにおける離職者対策なんかにも貢献しようという見地から域外調達の話もあり、実施もされておるのですが、これらについての最近の状況をちょっとお伺いしたい。
  213. 森治樹

    ○森(治)政府委員 域外調達の問題につきましては、御承知の通りに米軍の撤退に伴って従来日本で発注せられました物資及び役務の発注がだんだん減ってくる。それを埋めるためにもこの域外調達がだんだん増加してくることが、日本としては国際収支上及び産業政策上、並びに労務対策上必要なわけでございます。これらの問題につきましては、通産省を中心といたしまして現在関係各省間の連絡会議が設けられておりまして、そこで詳細に事態の推移を検討いたしておる次第でございます。御承知の通り域外調達と申しますのは、大体アメリカのICAに基く域外調達と、それからMDAP――ミューチュアル・デフエンス・アシスタンス・プログラムに基く域外調達、この二つがあるわけでございます。ICAに基く域外調達は、昨年度も大体一億二千万ドル程度の発注がなっておる次第でございましてこれは日本における駐留米軍の減少にかかわらず、大体従来よりも少し増加の傾向にある。なお軍事援助に基く域外調達につきましては二種類ございまして、一つ日本に与えられる軍事援助が、アメリカで生産せずに日本で発注する場合、たとえば日本の自衛隊の使います車両等を、アメリカで作ったものを日本に軍事援助として提供するのでなく日本で製造される場合、及び東南アジア等に対するアメリカの軍事援助の物資を日本で調達する、この二つの場合がある次第でございます。なおこれらの推移につきましては、アメリカ側とも連絡をとりまして、日本国際収支、産業政策等から支障のないように常時連絡をいたしておる次第でございます。
  214. 床次徳二

    床次委員長 次会は明日午前十時より開会いたすことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会