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1958-04-10 第28回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 齋藤 憲三君    理事 秋田 大助君 理事 有田 喜一君    理事 菅野和太郎君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 志村 茂治君      橋本登美三郎君    平野 三郎君       保科善四郎君    岡本 隆一君       田中 武夫君    滝井 義高君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君  委員外出席者         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局政策課         長)      島村 武久君         外務事務官         (国際協力局第         一課長)    北原 秀雄君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    松井佐七郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  放射線障害防止技術的基準に関する法律案(  内閣提出第一四一号)  原子力行政に関する件(英国及び米国との原子  力一般協定に関する問題)      ————◇—————
  2. 齋藤憲三

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  放射線障害防止技術的基準に関する法律案を議題とし、質疑を行います。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 この法案の主たる内容は、審議会を設けて、放射線障害防護に関する基準等について、いわば統一的な基準を求めたいという建前に相なっておるわけでありますが、この運営に伴う予算はどういうことになっておりますか。
  4. 島村武久

    島村説明員 放射線審議会予算について御説明申し上げます。この法律に基きますところの放射線審議会予算といたしましては、予算編成時期にこの構想がまとまっておりませんでしたために、この審議会予算自体としてはございませんでしたけれども、従来、放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法相に基きます審議会予算がございますが、これを、附則にございますように廃止いたしまして、この審議会に振りかえるわけでございます。予算的には、それに計上せられました予算をこの審議会経費に充てることにいたしまして、大蔵省とも話し済みでございます。その予算額は、手当旅費会議費等庁費全部合計いたしまして三十六万七千円でございます。前年には三十万八千円でございましたが、若干ふえております。いろいろなものを合計いたしまして、三十六万七千円ということになっております。
  5. 岡良一

    岡委員 放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律というこの前の国会で成立を見た法律運営上必要な審議会人数、構成と、今度のとを比較して、どういう違いがありますか。
  6. 島村武久

    島村説明員 御存じの通り、前の審議会と申しますか、現在あります審議会も、同じように放射線審議会でございます。今度の審議会になりまして、エックス線等の分野が拡大されたわけでありますけれども、同じ放射線に関する審議会でございますので、大部分の方々は従来と同じ方になっていただいて差しつかえないのじゃなかろうか、もし入れかえを行いましても、ごく少数の方でいいんじゃないかと考えております。現在の審議会は、委員を、総括、施設、保健、技術という四部会に分けまして構成いたしております。人数は、ちょっと正確な資料をお持ちいたしませんでしたけれども、約三十名近い委員専門委員で構成されております。将来この新しい法律を御承認いただきました上での構想につきましては、これはまだきめておりませんけれども、やはり同じようなことで進んで差しつかえないのではないかと考えております。
  7. 岡良一

    岡委員 それでは、問題は、できるだけ適正な基準を求めるということが仕事になってくるわけだが、具体的にどういう方法基準を求めようとされるのですか。たとえば、原子炉の周辺における大気汚染度なりあるいは大地の汚染度なり、そこに作られておる蔬菜その他の汚染度なり、そういうものの調査と、あるいは調査されたデータ基準に、一方では外国事例等を勘察して基準を求めていかなければならぬ、そういう具体的な方針は立てておりますか。
  8. 島村武久

    島村説明員 お尋ねは御例示だと思うのですが、従来の放射線審議会でやっておりましたやり方と申しますのは、事務局原案を作りまして、それについて御審議願うということでございます。会議としましては、事務局原案をもとに御審議いただくのでございますけれども原案を作ります際には、それぞれ個別に専門委員の御意見を伺って、各方面からの深い造詣、お知恵を拝借して事務局原案を作る。それをまたそれぞれ専門立場から御審議願うというやり方で進んでおりました。御例示に引かれました放射能調査関係でございますけれども、これは従来の審議会では扱っておりません。と申しますのは、現在のは、アイソトープによる障害防止法律に基くものでございますので、従来は扱っておりませんでした。それは別に原子力委員会の方に放射能調査専門部会というものを作ります。また科学技術庁に、主として関係官庁との連絡のための集まり、委員会を作りまして、学者の方々の御意見を伺うと同時に、関係官庁との連絡緊密化をはかって参ったわけでございます。今後は、この新しい審議会がお認めいただけましたならば、放射能調査関係仕事も、新しくこの審議会仕事ということになるわけでございますが、実質的には、やはり従来と同じように、十分各方面方々の御意見を伺って、集めて審議していただこうというふうに考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 この調査ということと調査に基くデータによる基準設定ということは不可分だと思うのです。ということは、いわゆる調査されたデータというものは、非常に両度的、可動的だということですね。そこで、放射能と一口に申しましても、自然の放射能もあるでしょうし、あるいはフォルーアウトによる放射能もあるでしょうし、人工的な放射能といっても、アイソトープによるものも、レントゲンによるものも、あるいは原子炉等による拡散され、放散されてくる放射能や、いろいろあるでしょう。しかもそういうものが逐次蓄積されることが予想されるわけです。従って、放射能の可変的な蓄積というものと基準そのものが、最近アメリカなんかでは、三分の一に許容量を低めることになったと伝えられておる。そういう外国事例も今後調査しながら、日本としては、その審議会が最終的には責任を持って基準をきめなければならぬ。基準をきめるということは、調査データと不可分なわけですから、そこで統一的な基準設定のためには、やはり統一的な調査をしなければならぬ。調査基準設定が不可分であるということになれば、今言われたような三十六万云々というふうな予算で一体これだけの仕事ができるのかどうかということを、僕は心配をするわけです。そこにはただ手当とか旅費とかきわめて形式的なものが計上されておりまするが、それ以上もっと立ち入った運営上というか、調査その他必要な費用を含めた、そういう総合的な予算の裏づけによる統一的な運営の進め方をされたいと思うのだが、その点はどういうふうになっておりますか。
  10. 島村武久

    島村説明員 大へん失礼いたしました。この審議会会経費ということでございましたので、三十六万七千円と申し上げましたけれどもお尋ね放射能調査するという仕事は、同じ調査と申しましても、実際にフォールアウトあるいは自然放射能を調べますのは、これは予算の御審議の際にも申し上げましたけれども、数多くの機関、気象庁その他者行政機関が実際に資料を集め、あるいは分析して結果を出すわけでございまして、この審議会はそういうような調査をを行います際のやり方あるいは測定の方法、分析の方法というようなことについての統一的なやり方をきめ、あるいはそれを実施いたしましたあとの資料調査審議する、こういうわけでございます。従いまして、この審議会みずからが資料を集めて調査するというわけではございませんので、放射能調査費用は、この審議会経費としては入っていないわけでございます。ただし、各省庁等で行いますところの放射能調査経費と申しますものは、やはり原子力予算の中に一本にたって入って起ります。これは三千六百万円でございましたか、とにかく昨年よりも多い経費原子力予算の中に組まれておりまして、それを科学技術庁から各省庁に移しかえをしまして実施を行う、こういうことになっております。繰り返して申し上げますが、三十六万円は、委員手当あるいは委員会議出席するための旅費とか、そういうような経費でございます。
  11. 岡良一

    岡委員 そうすると、その審議会運営ということは放射能基準設定する、いわば防護のために必要な許容量を求めていこう、その作業は、現実天然放射能なり、あるいはフォールアウトなり、あるいは人工的な要因によって起る放射能、こういう可変的な放射能蓄積というものを前提としなくては、やはりこの審議会の目的は達せられないと思うのです。今おっしゃったように、なるほど原子力委員会には、一昨年でしたか昨年でしたか、私どもも強く要望いたしまして、すべての放射能原子力委員会責任において調査すべきであるということを申し上げて、原子力委員会もまさっそく藤岡さんを責任者にされた。そこで、今調査機構はどういう機構がありますか。それと審議会とは、事務局があって、調査資料事務局へ来て、事務局原子力局の方の担当の係でそれを整理して、現実にはこういうものであるというようなことが、やはりこの審議会に報告される。審議会は、そういうものの実態に即して基準設定をする。そして、設定された基準の取扱いをある程度まで実施させる責任も伴うと思うのだか、それをやっていくという機構関連性をどういうことに運営されるのですか。
  12. 佐々木義武

    佐々木政府委員 先ほど島村さんから御説明した通りでございますが、原子力委員会の中に作っております調査部会では、四千万円近くの金で関係各省——主として官庁でございますが、関係各省並びに地方の公共団体を選びまして、そこで基準に従って調査をしておるわけでございます。その調査した成果はどうなるかという問題でございますが、その成果はそれぞれの官庁から一定の方式に従いまして出していただきます。それを今のところでは原子力局が整理して、その調査会でさらに再検討するという建前になっておるわけでありますが、せっかく放射線医学総合究研所ができておりますので、できた成果をああいうところに持ち込んで、ああいうところで十分検討を加えた上で、その調査会にかけまして、そこでさらに再検討して、最終的には今度できます審議会に持ち込んで、これは基準を立てる際のうらはらになるデータでありますから、それを参考にして、かたがた海外の事情をも調べ上げ、基準設定していきたいというふうに考えております。
  13. 岡良一

    岡委員 もう一つの問題は、なるほど〇・〇三ミリレント・ケンなら〇・〇三ミリレントゲン、が最大許容量だとかりに数字が出るわけですね。ところが現実ストロンチウムなりセシウムなりの元素許容量以下にあるかないかということのためには、現実にどれだけあるかという調査がまずかぎですね。こういう調査基準もこの審議会で扱われるわけでしょうね。
  14. 佐々木義武

    佐々木政府委員 その通りであります。
  15. 岡良一

    岡委員 現在新聞等に、この間のソ同盟核実験によって大気中に天然ウランが含まれておったとか、いろいろなことが大きく取り扱われておるわけですね。そういう取扱い方が非常にセンセーシロナルに取り扱われて、それが安全であるか、安全でないかというふうな点について、国民の立場からすれば、何ら納得というか、安心ができかねるような報道が伝えられておるというようなことが、やはり無用な放射能に対する恐怖を誘うことにもなろうかと思うのです。そういう点で、もう少し大学なんかの発表についても、社会面の記事としても、センセーショナルなものとしてではなく、やはりもっと科学的な発表があっていいのじゃないか。むしろ大学教室調査調査として大いにやってもらいたいのだが、そういうものが集約されてきて、そうして、原子力委員会が持っておる調査機能の中に十分摂取されていくというような体系ができておらないのじゃないかというふうな感じもするのですが、そういう点はどうなんですか。
  16. 佐々木義武

    佐々木政府委員 先ほど申し上げましたように、原子力委員会調査部会でやっておりますのは、農林省、運輸省、厚生省等が主たる官庁でありますけれども、そういうところで調査いたしました累積した成果は、これは先ほど申し上げましたように、アッセンブルいたしまして、整理して発表することになっております。大学でやって起りますのは、それぞれ大学の独自の研究でやっておりますので、ただいまの段階では、この方の発表等に対しては何ら実は手が及ばないような格好になっております。近く文部省とも話し合いまして、そういう問題に関しても、できますれば、統一をとってやれれば非常によろしいのじゃなかろうかと考えております。
  17. 岡良一

    岡委員 いずれにしても、国連の科学委員会へ出しておるストロンチウム等蓄積資料等は、これは大学の先生が中心としてやっておる。しかし一方、各国立大学専門教室は、独自の立場でやっておられる。しかし、ここにはやはり非常に正確なデータがあり得るわけですから、こういうものも総合的に調査の結果を取りまとめるようなものがあってしかるべきだと思うのです。  そこで正力大臣も来られましたので、特に一言最後にこれは要望として申し上げておきたいのですが、この放射能許容量というものに対する観念、これは放射能を出すいろいろな施設原子炉等施設安全性に対する観念と不可分のものなんです。厳密に言えば、これは生物学的にいって放射能安全性というものはないわけです。放射能は絶対にないことが最も望ましい状態である。ところが、残念ながら、自然界には自然の放射能がある。そこヘレントゲンがある。そこへまたあなたが旗を振られる動力炉が入ってくるということになれば、ますますこの放射能というものはあり得る状態になる。そうすると、やむを得ずこの辺ならばよかろうというのが許容度ということで、これは、あってはならないが、やむを得ず一つの線を引いて、ここまではよろしいと泣く泣くこれを認めておるというのが現状なんです。だから、これ以下ならば大丈夫だ、こういうようにさかトンボ返りに考えられると、これは実は放射能危険度に対する認識が非常におろそかになると思うのです。その点外国では、最近アメリカなんかは、許容量を三分の一に下げようというようなことも言い出しておるような状態で、国際放射線学会許容度基準は年々下っておる。三年間に十分の一に下っておる。そういうわけで、いよいよこれは注意意をしなければならぬ。しかも遺伝的にどういう影響を与えるかということはまだわかっておらぬ、これはうかうかしておって、五十年、百年後に遺伝的に変な影響が現われてくるということになれば、われわれの次の時代にはまことに取り返しのつかない影響を及ぼすということがあり得るわけです。あり得るけれども、それがどの程度のものかわからぬ。あり得てから、さて百年前のわれわれが、われわれの子孫から恨まれると、それは正力さんの重大な責任になる。そういう点を十分——せっかく審議会ができるんだから、審議会はここまでなら安全だという、ここまでという最高の限度をきめて、それ以下ならいいのだろうという、こういう扱いはしないで、子々孫々のためにも、原子力産業の永遠の発展のためにも、やはりこの際よほど注意深く取り扱ってもらいたいということを要求いたして、私の質問を終ります。
  18. 齋藤憲三

    齋藤委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本案に対する質疑はこれにて終了することといたします。  これより討論に入る順序でありますが、討論通告がありませんので、直ちに採決に入ります。放射線障害防止技術的基準に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  19. 齋藤憲三

    齋藤委員長 起立総員。よって本案原案通り可決すべきものと決しました。  次に、お諮りいたします。すなわち、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
  20. 齋藤憲三

    齋藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  午前の会議はこの程度にとどめます。正午より外務大臣出席を求めて再開するにとといたします。  これにて休憩いたします。     午前十一時五分休憩      ————◇—————     午後零時三十五分開議
  21. 齋藤憲三

    齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子力行政に関する件につきまして、調査を進めます。  英国及び米国との原子力一般協定に関する問題について、質疑通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  22. 岡良一

    岡委員 先般の委員会で、英国並び米国に対する動力協定について、正力国務大臣に対し若干の質問をいたしました。しかし、協定は、外務省がその衝に当っておられますので、不分明な点が多々ありましたから、きょうは、外務大臣より責任ある御答弁をいただきたいと存じます。ただ、私も簡潔にお尋ねをいたしますし、御当局におかれても簡潔に結論をお答えいただけば、けっこうと存じます。  あらかじめお伺いをいたしたいのでありますが、昨日の夕刊によると、米国に対する一般動力協定交渉において、いわゆる濃縮ウラン七トンという数量に関して米国側から疑義が生じ、交渉は一時停頓のやむなきに至っておるかのごとき報道が伝えられました。そこで、その問の経緯の御説明を、事務当局よりお願いをいたします。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員より答弁いたさせます。
  24. 宮崎章

    宮崎政府委員 この七トンという数字の算定につきましては、これは実質問題でありますので、われわれの方の作りました数字というわけじゃございません。われわれの方では、一応原子力局で立てられました詳細な計数に基きまして、それを了承いたしまして、その協定の案の中に入れた次第であります。
  25. 岡良一

    岡委員 それでは、七トンという数字基礎となる原子炉は幾つであるのか、いかなる種類原子炉であるのか。
  26. 佐々木義武

    佐々木政府委員 発電用船舶用あるいは動力試験用研究用、非常に多種にわたってこの七トンの内訳ができておるわけでございますが、ただいまお尋ね発電用に関しましては、期間中に四十五万キロワット、それから期間の済んだあくる年に建設できますようにということで、協定期間中に燃料を発注いたします関係もありますので、それも合せますと六十五万キロワットになります。大体四基ぐらいを目標にしております。ただ、この基数は、今解際されましたのが御承知のように五種類でございますが、この五種類のどれを選ぶかということをあらかじめはっきりきめまして、これであるというふうには、現段階ではなかなか参りませんので、一応PW、BWなりに想定いたしまして、これでやればこれくらいになるというような出し方でやっております。御承知のように、原子炉の方は日進月歩状態でございますので、ただいまの段階で、十年先にまで、こういうものというきめ方自体が非常に危険でもありますので、私どもといたしましては、原子力委員の皆さんとも御相談の上了承を得まして、発電用炉を四基入れたいわけです。それから船舶用に関しましては、四万トンのタンカーを二隻というふうに考えておりますが、これも一応希望といたしまして、こういう希望でやりたいということで、その炉の内容がどういうものかというところまでは詳しくわかりません。
  27. 岡良一

    岡委員 ここに「発電用原子炉開発のための長期計画」というものが私たちの手元にあめるわけですが、いずれにいたしましても、船舶用動力炉については、これを二基入れるという御決定は、原子力委員会としてはいつなされたのですか。
  28. 佐々木義武

    佐々木政府委員 御承知のように、発電用並びに動力試験炉用等に関しましては、長期計画の中に定めてありますが、船舶用に関しましては、ただいま作業中でありまして、はっきりした結論が出ておりません。従って、一応の想定といたしまして、十カ年くらいの門にはおそらく二基くらい建造に着手することになるんじゃなかろうかということで、委員会の方でも了承しまして、その程度めどと申しますか、見通しで出したわけでございます。
  29. 岡良一

    岡委員 わかりました。それでは大臣に御質問いたす前に、ちょっとこういう点を確かめておきたいのですが、そうすれば、原子力委員会としては、何らこの計画は決定しておらないということですか。
  30. 佐々木義武

    佐々木政府委員 十年先の分を今はっきり決定いたして、これはもう二度と変更できないものだというふうなことは、発電用原子炉に関しましても同じ態度でありまして、むしろ大体のワクとしてはこのくらいの規模じゃなかろうかということで、そうして具体的な内容に関しましては、その時代の進歩に伴って一番いいものを定めていくというふうな建前計画自体としてとっておりますので、研究炉等に関しましては、事前にはっきり今からこういう炉ということできめておりますが、動力炉等に関しましては、長期発電用動力炉におきましても同じような態度でございます。
  31. 岡良一

    岡委員 外務大臣にもあわせてお尋ねいたしますか、事、原子力の問題については、その原料、資材等についても、やはり政府間の協定で授受するという建前になっておる。そういう形で、非常にいわばきびしい国の規制があるわけです。ところが、今原子力局長のお話によれば、原子力委員会としてはただめどは持っておる、しかし、日進月歩のものであめるから、十年先はわからないということであるが、ところが外務当局としてはワシントンで正規に国と国とのかけ合いをやっておる。ところが、一方国内において、原子力計画企画機関であり、国会の承認を得た委員でもって構成されておる権威あめる原子力委員会が、これが何ら決定したものではないということであれば、これは私は国と国との外交という立場において、日本側の提案というものは、おそろしく権威のないものになるのではないでしょうか。そういう権威のない、日進月歩のものであるから、いつどう変るかもわからないものを基礎として、そして交渉するということは、これは日本側態度としては私は権威がないものだと思うし、もう一つそういうふうに日進月歩であるということならば、そういう将来のものにわたってまで、何ら計画にない船舶用動力炉も二基入れる、あるいは六十五万キロワットの発電をやって四基入れる、そんなようないつ変わるかわからないような数字を一応持ち出してくるよりも、現在日本計画されたもので入手する、資材をほしい、情報がほしいという態度でいくのが、常識的な私は外交だと思うのです。そうではないでしょうか、外務大臣
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましては、原子力委員会も、日進月歩立場からいろいろな新しい、また急速にいろいろな問題を取り上げて、そうして原子力平和利用のために仕事を進めていかれるわけでありますから、当然それらを予想されまして、ある程度のゆとりを持って、将来、機に応じ変に応じてどんどん進んでいきますそれらの設備に対して、供給し得るような予想のもとに数量をきめられたことと思うのであります。また、同時に、外務省として、若干いろいろ調査いたしましたところでは、アメリカ協定を結んでおります他の諸国も、要求をいたしているような計算の基礎は、右のような基礎の上に立ってやっておるように考えられますので、適当ではないかと思って交渉を開始したわけでございます。
  33. 岡良一

    岡委員 私そういうことをお尋ねしそおるのではないのです。問題は、向うの原子力委員会とこちらの原子力委員会が、政府から授権されたものとして事実上協定の実施に当るわけですね。ところが、さてその協定によってわが方が引き取るところのもろもろのものは、何も原子力委員会が正規に決定したものではない、将来可変的なものなんですね。しかも、お聞きすれば、十年間の協定期間中には、四十五万キロで四基入れる、あとまた六十五万キロにするためにプラスして二基は十年後に入れろ、こういうようなめどを立てておる。めどを立てておるのに、なぜそのめど原子力委員会の正規の決定でないかというと、原子力問題は日進月歩であるというんですね。そうなれば、やはり日本がさしあたり、たとえば材料、試験炉か要るとか、そのほかいろいろの研究段階において要る炉、これは再来年、またその次に注文すれば、一年後でも二年後でも入るもので、はっきりこれだけの資材が要るという、日本がほんとうに自主的に要るというものを原子力委員会がきめて、外務省かこれを基礎として交渉するというなら、私は国と国との交渉としては常識的なものだと思うのです。ところが、日進月歩であって、要るか要らないかわからない、わからないが一応めどを立てて交渉する、そういう交渉の仕方ってあるんでしょうか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この原子力協定は、十年間にわたりますような原子力平和利用の問題についての大ワクの交渉であるわけでありまして、個々の問題については、それぞれまた細目協定等に譲っていくわけでありますから、必ずしも全部がかっちりと見通しがつかないからこういう協定を作らないのだ、あるいは外交渉として非常におかしいのだということは、基本的な協定でありますから、おかしいのだとは考えないでいいじゃないかと思います。
  35. 岡良一

    岡委員 なお一方国際原子力機関がある、国際原子力機関も、日本理事国としてその機能を現実に発揮せしめる責任があるわけです。そしてまた、原子力機関には、アメリカを代表して参加しておるマッキニー氏も、日本がほしい原料等については、これは供給し得る段階に来ておるということさえも最近は発表しておる。そういうことであれば、原子力機関から資材、情報、施設等を入手する機会というものは、かなり迫っておる。かなり近い将来に私はそれが実現し得ると思うのです。マッキニー氏は語をついで、原子力発電についても、近い将来において機関を援助し得るであろうということをはっきり言っておる。そのときに、十年先にもなおということで、六十五万キロワットの発電を予想するということになれば、政府のそういう計画をもってアメリカ交渉するということは、国際原子力機関というものを全く無視しておる、その機能に対して信頼も持たなければ期待も持たない、こういう態度であると私は言わなければならぬと思う。これは日本原子力外交の基本線としては非常にずれた、片寄った方向であると私は思うのですが、いかがでしょう。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際原子機構につきましては、御承知のように、日本理事国になったわけでありまして、この機関が発達し、十分平和利用のために貢献していきますことは、われわれとしても努めてやって参らなければならぬことだと思います。従ってこの機関の育成強化ということについては、日本としても責任があります。十分努力して参るつもりであります。将来この機関が原料を供給するというような問題は当然起ってくると思うわけでありまして、そういうようなことがありました場合に、やはり日本としても、国際原子力機関からそういうものを入手するというような問題は考えていってしかるべきだ、こう考えております。そういうことでありますが、ただ発足当初でありまして、まだ原子力の国際機関を通じてそういうものを入手するという当面の問題等について、十分、価格の点でありますとか、そういう問題もはっきりいたしませんし、将来の問題としてそれは考えられなければならぬことだ、こういうふうに思っております。
  37. 岡良一

    岡委員 そうじゃないんですよ。こういうふうにすでに昨年の暮れ十二月、これはアメリカを代表し、常任をしておるロバート・マッキニー氏が、国際原子力機関について語っておるのです。「国際機関はウラン、トリウム、黒鉛及び重水のような炉心構成材料を信頼し得る方法で提供する手段を持っている。」現に先進国か国際原子力機関に提供した濃縮ウランは五千七十キロです。あるいはそのほかトリウムにいたしましてもイエロー・ケーキにしても、相当のものを国際原子力機関に提供しておる。だから、ほかの小国の代表ならいざ知らず、アメリカのしかもロバート・マッキニーといえばアメリカ原子力政策の大立物だ、これがアメリカを代表して国際原子力機関の常任代表となって参加して、この人が提供すると言っておるんです。しかも、近い将来には原子力発電についても援助をし得る、次の段階においては、われわれは援助する、こう言っておるのですよ。ところが、十年先、十何年先の発電計画アメリカに依存するのっだというような計画を立てて、この動力協定を急がなければならぬということになれば、日本原子力開発というものは、少くとも対外的な折衝においては、国際原子力機関を無視して、大国に依存しておるという姿を私は如実に出しておると思うんです。そうじゃないでしょうか。国際原子力機関というものは、ここまで責任ある立場の者ができると言っておる、しなければならぬと言っておる。ところが、これを無視して十年先、それ以上先の発電計画を、しかも非公式に作り、そうしてそれを基礎としてアメリカとの問に動力協定を急ぐということは、全く国際原子力機関を無視しておる態度ではないでしょうか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本としては、国際原子力機関理事国にもなっておることでありますし、ただいま申し上げましたように、国際原子力機関を育成強化していくということは当然考えていかなければならず、またやるわけであります。今お話のように、アメリカは提供を出し入れておりますけれども、まだ現実に国際機関がそういう問題について十分動いてきておりません。将来、国際機関がら原料を入手するようになりますように、われわれは国際機関の十分な発達と運用が進んでいきますように努力していかなければならぬと思います。一方にそういうことをわれわれ努めて参りますと同時に、国内の原子力政策の発達の上から、今日急速にこれを解決して参ります上においては、アメリカとこういう基本協定を結んで、そうして原料を入手しそいくということが、原子力委員会その他の御決定であるわけでありまして、われわれもそういう意味においてアメリカ交渉を続けておるわけであります。
  39. 岡良一

    岡委員 外務大臣が、国際原子力機関が現在大国、先進国によって提供を約束されておるところの資材、情報等が、まだ日本の要求によっても提供し得ないであろうというような断定を下される根拠は、どこにあるのですか。アメリカのロバート・マッキニー氏ができると言っておるのに、あなた方はできないだろうと言われる。どういう理由でそういうことを大臣は言われるのですか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、御承知のように国際原子力機関はできたばかりでありまして、アメリカとしてもそういう申し込みをいたしたわけであります。組織、機能等が確立し、また原料等を引き渡すような方法については、それぞれ原子力機関においてどういう価格で、あるいはどういう方法でと、そういうような問題も整備をしてくるのでありますから、まだ時間的に相当かかるのじゃないかということを考えておるわけであります。
  41. 岡良一

    岡委員 それでは大臣に、今の御所信から、結論として二つの点をお聞きいたします。一つは、今外務当局がワシントン政府に御交渉中の動力協定というものは、何ら原子力委員会の決定に基く具体的なデータに立ったものではない。そこに七トンの問題がひっかかってきておる。私は、外務当局が、原子力委員会という権威ある機関が公式に決定もしないものを基礎として、他国との間に折衝されるという」とは、外務当局のとられる態度としては妥当ではないのではないかと思います。この点。  いま一つは、国際原子力機関はまだその機能を発揮するに至っておらない、私もそう思っております。しかし、発揮し得るという条件が備わっておるということは、その機関に常駐されておる人も言明をし、また現にわれわれの情報によっても、発揮し得るような形に、いわば援助のために自由に提供し得る物資を蓄積しておる。そこで日本理事国として、国際原子力機関を強化するためには、それではまだどうにもならない、まだできないのである、こう断定されるのではなく、国際原子力機関というものを強力に育てようとするならば、外務省としては、この際日本原子力計画との関連において、どういう手段をとるべきであるかということが一つの問題点で、何か具体的にそういう政策を持っておられましょうか。アトミック・ディプロマシーという言葉があるでしょう。原子力外交というものは、やはり国の大きな一つの路線を示すものであろうと思います。そういう点で、もっと私は外務大臣として責任ある、こうあるべきだという線を持っていただきたいと思う。そういう線で、国際原子力機関をいかにして育成強化されようとするか、特に理事国としての曲責任において、この点を一つお答え願いたい。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第一の点でありますが、原子力委員会が要望されましたことは、原子力委員会が最終的にいかなる決定の方法をとり得るかという方法論にかかわらず、われわれは原子力委員会の意思と考えまして、そういう基本的な協定をする必要があるのだということを考えて起るわけであります。  第二の点は、国際原子力機関をできるだけ育成する日本立場からして、できるだけ原子力機関を利用するように、日本としてもやったらいいじゃないかという御質問だと思うのでありますが、われわれは、当然原子力機関をできるだけ育成していくということは、先ほど申し上げた通りでありますので、その意味において、日本が原料を入手し得るように、将来とも原子力機関と連携を保ちながら努力をして参ることは当然のことでありまして、それは原子力機関の育成の一つでもあろうと思います。また、将来にわたって、査察条項等につきましても、原子力機関等の問題とともに考えていくべき必要があるのではないかというふうに考えておるわけでありまして、そういう点について、原子力機関を育成する方針は、今日でも変らなく努力しておるわけであります。
  43. 岡良一

    岡委員 原子力委員会は、「原子力利用に関する政策に関すること。」これを企画、審議し、決定するという所掌事務か法律で明らかにされておる。この決定は、内閣総理大臣委員会から報告を受けたときはこれを尊重しなければならない。さらに委員会は、原子力利用云々については、関係行政機関の長に勧告することができるというふうに、相当な権限を持った決定をしなければならぬというが、してないのですよ。今のお話を聞けば、何ら手続を踏んでおらない。ただ、非公式にめどとして申し合せたというにすぎない。船舶用動力炉のごときに至っては、われわれは原子力委員会の決定として一言も聞いたことがない。しかも、そういうものが問題として今ひっかかっておるとも聞いておる。こういう非公式なものを基礎として外務当局——外務大臣の今のお話を聞いておれば、原子力委員会の意思とあなたは認めておられる。しかし、意思であるならば、公式機関がこれを意思として決定するならば、公式に決定されなければならぬ。何も決定されておらぬ。だからここは、そこに原子力局外務省、従って結果的には外務省としては、日本の正規な機関が公式に決定した意思に基いて交渉しておるのじゃないということなんです。もう一つは、国際原子力機関を育成強化する。そのためには機関の援助を受ける。なぜ私はそれをなさらないのかということを言いたい。機関憲章によれば、日本が援助を受けたい原子力開発の計画を作ったときは、これを機関に提出するわけです。機関理事国は、自分か持っておるもののうち、これとこれとこれならばやれるというならば、機関日本との間に協定なら協定を組んで入手し得る。だから、日本外務省は、あるいは原子力委員会の決定に基いて、機関に対して、こういう具体的な開発計画を立てたから、これにはこれだけのものが要るから、ぜひ援助をしてくれと、これを機関に出すのがほんとうじゃありませんか。機関は全然援助をする力がないであろう、開店早々であろうということで、アメリカの方に交渉する。私は感情的に反米とか反共とかいうのではないのですが、日本原子力計画を育てる、国際原子力機関を育てるという立場からいけば、当然これは常識的に、私は、機関計画を申請し、そして機関の援助を要請する、これが大道だと思うのです。これができ得ないという理由はない。ただ育てなければならないといううたい文句であったならば、育てようと思うならば、その手続をとるべきではありませんか。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど私は原子力委員会の意思だと申したわけであります。この交渉をいたしまして、そうして燃料そのものの入手が確定的になってきますれば、おそらくその線に沿って、日本原子力委員会は、最終的な意思決定をされるのではないかと思うのでありまして、相手方の考え方等も加えて意思決定が最終的にはなされる。従って、われわれとしては、そういう原子力委員会の考え方を体して交渉いたしますことは、別段差しつかえないのではないかと思います。それから、それでは国際原子力機関に対してなぜそういうような申し込みをしないのか、こういうことであります。当然近き将来において、日本としては、この機関を育成するために、そういう申し込みその他をいたすことになろうと思います。それらの点につきましては、原子力委員会等とも十分協議をいたしていく考えでございます。
  45. 岡良一

    岡委員 それでは外務大臣原子力基本法というものを御存じないのですよ。原子力基本法の第二条には、「原子力研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な軍営の下に、」かつ「自主的にこれを行うもの」と書いてあります。これが日本原子力基本法の三原則の一つ、大きな柱ですよ。ところが、さてこちらではきわめてあいまいな非公式な話し合いをしてみた。そして向うに交渉した。交渉はワシントンで政府交渉として公けに行われ、非公式なそういうあいまいな申し合せを基礎として行われている。そして、さて向うとの話し合いの上で交渉がまとまった。この協定によって、令度は原子力委員会がまた原子力開発計画を立てるというならば、自主的というものは完全に裏切られるじゃありませんか。大国問の二国間協定によって、日本原子力開発というものは、自主的どころか従属的になってしまうということなんです。これは原子力基本法の大きな違反ではありませんか、こういう態度は。これは重要な政治的な問題ですから、外務大臣から……。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま御指摘のように、基本法にあります自主的に決定することは、これは当然なことだと思います。日本日本の国内におきます原子力政策をやり、また原子力委員会がそれをきめますことは、これは当然だろうと思います。ただ原料の多寡、原料の総量その他によって、その原子力をどういうふうに使うかというような問題については、おのずから決定されてくることではないかと思うのでありまして、それが足りるか足りないかというような問題は、入手の量によって、私はその用途その他が決定されるのではないかということを考えておる。原子力をどういうふうに使うかということ自体については、当然日本が自主的に決定するものだと思っております。
  47. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私の説明が不十分だったかもしれませんが、原子力委員会は全然この問題にはノー・タッチで云々というわけじゃ毛頭ないのでありまして、これは各委員ともおそろいでずいぶん長い間御検討下すって、そうして特に石川委員などは非常に御熱心にこの問題を御検討下さいまして、そうして大体今の段階ではこのくらいが一応の見通しとしてはよろしかろうということで完全に各委員の了承を得まして、事務当局としては外務省に通達をいたしたわけでございまして、決して科学技術庁原子力局独断でやったというふうに誤解なさらぬようにお願いいたしたいと思います。
  48. 岡良一

    岡委員 私は、原子力委員会が設置法に基く国会の承認を得た顔ぶれの委員をもって構成されておるとすれば、長時間されようが徹夜してされようが、そんなことは委員会の御自由であります。問題は、公式に決定をしておるかどうかという点、公式には決定をされておらないということがははっきりしたということなんです。こういう権威ある原子力委員会の公式に決定されたものでもないものを基礎として協定を結ぶ、国と国との公式な折価が始められるということは、外交上非常に異例なことだと私は思う。  それから、藤山外務大臣お尋ねをするが、憲章に基いて、日本が開発計画をすみやかに国際原子力機関理事会に提出して、具体的に持っておるものを日本にもらう積極的な手を私は当然打つべきだと思う。お打ちになる御意思がありますか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 原子力委員会に対して、日本立場からこれを育成していくためにも、将来原子力委員会に対してこの種の問題を持ち出すことは当然なことだと思うのでありまして、われわれとしては、その意思を持っております。
  50. 岡良一

    岡委員 それからもう一つ外務大臣は、この門本会議で私がお尋ねをいたしましたところが、対米協定における動力協定については、すでに研究協定で免責条項が承認をされておる、従って、問題にするに当らないという意見を私は伺いました。そういうふうにお考えでございますか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私のあのときの言葉を正確にただいま覚えておりませんが、研究協定においてこれがすでにその趣旨を承認されているという事実を申し上げたのでありまして、その点あらためて申し上げます。
  52. 岡良一

    岡委員 免責条項という概念は、研究協定においても承認された。ところが免責条項というものは概念じゃないのです。何を免責するかという具体的な事実を対象として生まれたものなのです。今、東海村で運転されておるところの一号炉、あるいは二号炉や三号炉の問題ではないのです。今度動力協定によって導入されようとするこの炉というものは、よほど大規模な、ものです。言葉をかえて言えば、おもちゃの鉄砲が万一故障を起しても大したことはない。しかし、本物の大砲が入ってきて、故障を起せば大へんなんです。本物の大砲が万一故障を起しても、相手国は何らその責任をとらない、損害賠償の責めをになわない。その場合、全部日本日本がになう。おもちゃの鉄砲ならばそれでいいでしょうけれども、具体的に免責をされる事実、事故に基く損害の賠償というものは、非常に大規模なものである。としてみれば、研究協定で免責という概念をのんでおるから、動力協定でも免責という概念は同じだから、のんでもいい、私はそういうふうにはいかないと思うのです。いがないんじゃないでしょうか。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんその趣旨は、研究協定にありますものと同じだという事実を申し上げたのであります。さて動力協定等を締結いたします場合には、十分それらのものをまた再検討して交渉していきますことは当然なことでありまして、外務省としても、その問題については、原子力委員会とも相談の上、できるだけ慎重に交渉を続けておるわけであります。なお、実際問題としては、アメリカが各国と協定を締結しておりますが、大体そういうものと同じ条件になる、現在の段階で免責条項を認めるとしますれば、そういうことになろうかと思います。
  54. 岡良一

    岡委員 予鈴が鳴りましたので、あと十分しかありません。たくさんあなたにお尋ねしようと思って、恋人のごとくお待ちしておったわけですが、どうも残念であります。プルトニウムの点が、この間の正力さんの御答弁では若干わかりませんでしたので、お聞きしますが、現在調印寸前、今週にでき上るといわれておった協定では、プルトニウムの軍事的転用の点はどういう取扱いになっておるのですか。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 プルトニウムにつきましては、これは重大な問題なんで、再三十分な交渉をいたしました。現在の段階では、アイゼンハワー大統領が声明をいたしましたその声明文を引きまして、この政策は、アメリカにおいても変りないというような文書による確認書を取りつけたい、こう思っております。
  56. 岡良一

    岡委員 それは覚書のようなものですか。交換公文というようなものですか。文書の内容をここでちょっと御発表願いたい。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 文章の最終的な決定はまだ検討中でありますが、ただいま申し上げたように、かつてアイゼンハワー大統領、が宣言されましたその宣言の文句を引きまして、この政策は変らないということを確認する文書をとりたい、こう思っております。また向うも出すような状況になりりつつあります。
  58. 岡良一

    岡委員 それでは、御努力は御努力といたしまして、これはこの間の委員会でも問題になったんだし、その後も、その事実が証明しておることは、アイゼンハワーはなるほど声明を出した。そして、原子力を平知目的に利用しようという、これは一九五六年の十一月に出されているわけですね。ところが、その後核兵器が非常な進歩をしている。そこでアメリカは、プルトニウムが足りなくなってきたということで、アメリカ原子力委員会は、外国に与えた濃縮ウランからくのプルトニウムを軍事目的に使うことも認めようという提案を先般アメリカ国会にした。これは若干改正案に反対等。ありまして、今のところ引っ込めましたけれども、足りないという状況にある。だから、アイゼンハワーが平和目的にのみ使いたいという意思表示をされた時代と、この二カ年の間には、米ソ等の力関係においても、非常に不足をしていることは、私は当然だと思う。そのときに、アイゼンハワーのそういう二年前の声明で、日本側が軍事転用をされないという信憑性をはっきりとあなた方おつかみになるのかとうか。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げた文書に対しましては、二年前に言ったアイゼンハワーの言葉を引きまして、アメリカ政府を代表して、その政策が変らないということを書いた文書として交換をするということになろうかと思いますので、二年前のアイゼンハワー声明を、アメリカ政府として、現在において確認したということになると思います。
  60. 岡良一

    岡委員 アメリカ原子力行政を内外にわたって統括しておる原子力委員会が、プルトニウムば足りないから、外国に渡した濃縮ウランの使用済みのプルトニウムを軍事用に転用して利用しようということで引き取ろうということを、はっきり言っているという情勢にあるわけです。この中で、二年前のアイゼンハワー大統領の声明か、なおその通り通用し得るかどうかということは、何と申しましたところで、核丘器をめぐる東西両陣営の息詰まるような角逐の中では、日本が必ずそうだというのでは、国民は納得しがたいと思うのです。そこで、とにかく問題は、日本が引き敗って日本が使ったものを向うへ返したとして、日本側が軍事利用をされないという査察をやるのです。日本が出かけて行って査察する、そこまでやれませんか。私は特に日本のように原子力の軍事利用で大きな犠牲を払った唯一の国民として、そこまで強腰でやれませんか。技術的にやれる、やれないという問題ではなく、外務省としては、原水爆禁止という国民の悲願を体されるならば、そこまで突っ込んで万全を期するのが、国民に忠実なゆえんではないかと思う、当然私はそうすべきだと思うが、いかですか。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点の交渉に関しましては、外務省もできるだけの努力をいたしたつもりであります。そうして、現在の外交渉段階におきまして、二年前ではありましょうと、現在アメリカ政府がそれを軍事目的に使わないという政策を変更するものでもないし、またそれを確認するのだということでありますれば、それは十分私は現在のアメリカ政府の政策として了承し得るのではないかと思います。またそういう書いたものを出します以上は、アメリカはそういうものに使わないのだということか考えられるわけであります。
  62. 岡良一

    岡委員 問題はアメリカ国内においても、先ほど申しましたような事情で、プルトニウムの軍事的需要がふえているということは、これは動かせない事実なのです。一方原水爆実験禁止、ひいては全面禁止という世論は、国際的にも、あるいは国民の世論としても非常に大きく盛り上っているということも事実なのです。とういう相手方の主観的な事情も、それを取り巻く客観的な国際情勢も大きく変化しているこの時点において、日本動力協定をやろうとするときには、日本が平和目的を掲げて原子力発電をやる、事実においては向うの核兵器の下請工場になるというようなことは、絶対にこれは避けなければならない。とすれば、その保障は、絶対に日本の使用済み燃料というものは軍事目的に使用させないということをわれわれの目で確認をするという、日本自体の査察というものがあったっていいと思う。私は、これは主権国家としても当然だし、現在の国際的な諸情勢の中にあって、それくらいのことは当然日本は言うべきだと思う。それが言えない。向うに遠慮をしておるのか、いろいろな技術的な理由をつけて言えないというところに、この動力協定というもののきわめて大国に従属した一方的な性格が、如実に出ておると思うのです。なぜ言わないのですか。言っていいじゃありませんか。交渉したことがありますか。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は、決してアメリカに遠慮してとかなんとかいう問題を考えて、外務省としてはこの種の交渉をやっておるわけじゃないのでありまして、と言うべきことは言う。外交交渉におきまして、向うの政府が文書をもってその政府の方針を示しました以上、それを信頼すべきか当然でありまして、それを信頼いたしません、その通りに行われるものと考えないというならば、外交文書の意義がなくなるわけでありますので、そういう点については、われわれとしては、アメリカがそういうことを必ずやるということを確認し得るのではないかと思うのであります。将来の問題につきましては、国際原子力機関等を十分強化しまして、そういう機関がこういう査察に当るということを進めていくことは、私ども必要だと考えておるわけであります。
  64. 岡良一

    岡委員 本会議の鐘が鳴りました。皆さんには非常に仕合せな鐘で、私にはきわめて不幸な鐘が鳴っておりますが、いずれあらためて、また機会を持ちたいと思います。ただ、原子力委員会なり外務当局なりは、もっとこういう重要な、国民の関心を集めておる問題について、権威ある行動をとってもらいたい。同時に、国際情勢なり、国民の世論の動向というものを察知して、むしろその先頭に立つという気魄を持って当っていただかなくては困ります。  もう一つは、私は、原子力局も非常に不謹慎だと思う。委員会の公式決定でもないものをひっさげて、そうしてワシントンで折衝に当るということになると、外務当局として、そのようなまことに不権威基礎の上に立った交渉なんというものは考えられませんん。もっと原子力局なり原子力委員会は、外務当局と密接なる連係のもとに、堂々と原子力外交を進めていただきたい。  以上をもって終ります。
  65. 齋藤憲三

    齋藤委員長 本日の議事は、この程度にとどめます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。     午後一時二十二分散会