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国務大臣(
岸信介君)
お答えをいたします。
第一は、原爆の実験禁止を主張するためには、その科学的根拠を示すような十分な資料を持つ必要があるのじゃないか、これに対する日本の研究機関の何については十分でないが、これを強化する
意思はないかというお話でありますが、原爆の実験禁止に対して、これの実験をやっておる方では、人体に
影響がないのだというような議論や、あるいはきれいな原爆というような議論が近ごろ出ておりまして、われわれは原爆の実験を、とにかく根本的に言えば、人道的な立場から、また
国民感情に基いて、被爆を受けておる、被害を受けておる日本としは、これを強く主張をいたしておるのでありますが、さらにこれを有力ならしめるためには、この科学的な基礎資料を持つことは、最も有力なことであって、必要であると思います。特に原爆自体ではなく、一面から申しますと、原子力の平和的利用というものを促進することは、これは大いに必要であります。われわれは、破壊的ではなしに、これが平和的に利用されなければならぬということを強く言うておるわけでありますが、平和的の利用をいたしましても、それが人体に、それをいろいろ扱う上においてどういう
影響を持つかということも、これまた重大なことであります。ことにそれが遺伝の上においてどういうふうな
影響を持つかということも、これは非常に大事なことであると思う。一方、今の原水爆の実験をされた場合において、それが大気をどれだけ汚濁しておるかというそれの検出の問題も、これは研究しなければならぬと思いますが、それがひいて人体及び遺伝の上にどういうふうな
影響を持つかということにつきましても、お説のように、われわれとしては十分に
一つ研究をしなければならぬと思います。私かねて注意を受けておるのでありますが、参議院の石黒
委員から、日本においては遺伝の
関係を研究するのに蚕で研究するということが、非常に他の資料よりも、短かい
期間でゼネレーションを重ねたものができるのだというお話を聞きまして、石黒
委員の御協力も願って、実はその方の試験所等におきましてその研究をある程度進めております。こういうことを見まするというと、一番問題なのは、いろいろな機関がこういうことに
関連を持っておるわけであります。それを統一するということは、これは必ずしも、ほかにも目的を持っているわけですから、なかなかできないのですが、この研究だけについて協力するということについては少し
考えてみたいと思います。たとえば、蚕糸試験場自体は蚕の資料はたくさん持っているけれ
ども、本来言うと、そういうことを研究すべき目的のものではないのだ。ところが、ほかのその方を研究する機関においては予算を持っているけれ
ども、蚕を飼うという、そのためにやるということになると非常にダブったことになる。この場合に蚕糸試験場と協力できるようなことについても実は
考えていく必要がある。できるだけそういうことで、こういう科学的な資料を得るように、今後といえ
ども努力していきたいと思います。
それから、赤十字
会議に日本が
政府代表を出さなかったのはどういうわけかというお話であります。これはいろいろな見方があると思いますが、本来、赤十字
会議そのものから申しますと、人道的といいますか、あるいは博愛的な見地から、
政治的の立場を離れて、純粋の人道的なそういうような立場からこういうことをやられる
会議、そにに対して
政府としては直接介入するより、側面的にこれに協力して、赤十字
活動を活発ならしめることの方が望ましいじやないかという
考えのもとに、実は代表を出さず、オブザーバーを出したわけでございます。
それから最後に、ビルマの医療の問題でありますが、これは私、この前ビルマを訪問いたしましたときに、そういう話が現地において取りかわされ、自来、日本に持ち帰りまして、厚生省を中心に置いて、これが
実現のためにいろいろと検討を加えてきておりまして、せんだって厚生
大臣の話に聞きますというと、これが
実現の緒についておるように聞いておりました。これは非常にけっこうなことだと思っております。なお、ビルマその他からの医学の学生がこちらにおいていろいろ勉強され、医学を修められるというようなことについて便宜を供与するというようなことにつきましても、できるだけ
考えてゆきたいと、こう思っております。