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説明員(大沢一郎君) ただいまより
法務省所管
昭和三十三年度概算要求の概要を御説明申し上げます。
法務省所管
昭和三十三年度概算要求の数字的な御説明を申し上げる前に、概算要求に当りましての基本的な態度について簡単に申し上げることを御了承願いたいと存ずる次第でございます。
法務省所管
事務は基本的な法令の立案あるいは法令の執行という、きわめて重要ではございますが、じみでかつ人を中核として行われるという性格のものでございますだけ、その予算要求もおのずからじみでございまして、人件費を中心とした
事務的な予算にならざるを得ないのであります。従いまして
昭和三十三年度予算要求に当りましては、まず法律上義務づけられました新規事業を除きまして、いたずらに新規事業を追うことなく、
法務省所掌の本来の
事務を確認した上、その
事務の遂行に必要な経費を確保すること。
第二に、各組織におきまして、中央機関、地方機関の
事務分配の合理化を
検討して、その円滑な運用を実現すること。
三、各組織におきまして所掌
事務を分析して人員の合理的配置、機械化の可否を
検討して、他方研修、講習等によりまして
事務能率の増進をはかるということ。以上のことを勘案しまして増員の要求、
事務能率の向上に必要な経費を
検討してこれを要求すること。
第四に、全般的に、特に新規事業につきましては、その必要性、緊急度合等を考慮しまして、可能な限り年次計画化して要求すること。
第五に、ことに営繕費につきましては所管施設全部につきまして、老朽度合、立地条件等をしさいに調査、
検討しまして、年次計画化して要求することといたしたのでございます。その結果、
昭和三十三年度予算要求に初めて姿を現わしたという新規要求は、新立法に伴いますもの並びに選挙
関係事項を除きましては皆無となっておるのでございます。
国会提案を予定されております新立法で、予算措置を伴いますものを参考までに申し上げますと、
売春防止法の一部改正
法案、婦人補導院
法案、証人等の被害保障に関する
法案、法律扶助
法案、
裁判所法の一部改正
法案、矯正医官修学資金貸与
法案等でございます。
次に
法務省の予算が人件費を中心としたものにならざるを得ないという点に関連しまして、人員要求は所管全体を通じまして
昭和三十三年度におきまして三千九百五名となっておるのでございますが、これは各組織の所掌
事務を分析し、機械化の可能なものは極力機械化しまして、人員配置の合理化も
検討した上で算出したものでございます。
以上の観点に立ちまして、概算要求の
内容について申し上げたいと存じます。組織別の事項別経費の詳細につきましてはお手元に資料として
昭和三十三年度予算概算新規要求額事項別一覧表を差し上げてございますので、これによりまして御
承知を願いましたら幸いに存ずる次第でございます。所管全体の概算要求総額は三百六十四億七千三百十四万八千円でございまして、うち官庁営繕費として三十二億六千八百三十八万四千円が計上されております。また、これ以外に在外公館駐在官四名の要求が外務省所管に計上されるはずでございます。前年度すなわち
昭和三十二年度予算額二百三十一億八百十七万五千円に比較いたしまして、百三十三億六千四百九十七万三千円の増額要求となっております。右の要求総額中百五十一億六千六百二十八万四千円は標準予算でございますので、新規要求額は二百十一億六百八十六万四千円となるわけであります。
なお、御参考までに申し上げますと、三十二年度の概算要求額の三百五十六億七百七万一千円に比べますと、八億六千六百七万七千円の増加となっておりますが、標準予算におきまして十六億三千二百五十二万四千円の増額を示しておりますので、差し引き新規要求額といたしましては七億六千六百四十四万七千円の減少となっておるのでございます。
なお、この新規要求額二百十一億の中には標準予算百五十三億の不足分として要求いたしたものや、また実質は経営的な経費すなわち標準予算に組まれて差しつかえない経費も
相当多額に存するのでありまして、結局その余りの金額が新規事業の経費ということにもなろうかと存じます。
以上総論的に御説明を申し上げましたので、次に各論的な御説明を申し上げる次第でございますが、次のように分類して順を追うて御説明申し上げることといたしたいと存じます。
すなわち第一に一般
事務費のうち標準予算に準ずるような経営的経費に関する新規要求、第二に
事務費中、政策的重点経費に関する新規要求。第三に営繕費に関する新規要求の順に従って御説明申し上げたいと思います。
第一に経営的経費でございますが、要求総額は百九十四億九千八百二十五万六千円でありまして、その内訳は、標準予算額百四十五億三千百七十四万二千円、新規要求四十九億六千六百五十一万四千円となっております。そのおもな
内容を列挙いたしますと、一、既定の事業計画の完全な遂行を目的とする増額、二に
事務量の激増に対処するための増額、一に職員の素質向上のための増額、四に従来の予算の不合理の改善、五が従来の一律的予算の節約、削減に伴う絶対的不足経費の増額等でございます。御参考までに資料として提出してございます説明参考資料をごらんおき願いたいと存じます。
第二に政策的経費でございますが、その要求総額は百二億九千五百二十二万八千円でありまして、その内訳は、標準予算額六億二千九百九十三万一千円、新規要求額九十六億六千五百二十九万七千円となっております。そのおもな要求
内容について御説明申し上げますと、その一が治安対策経費でございまして、その費用としまして十七億一千四百四十一万四千円を要求しております。ここに治安対策と申し上げましたのは狭義の治安対策をさすものでありまして、国の内外のいわゆる公安情勢にかんがみまして、
法務省所管治安
関係者機関の機能及び活動力を整備充実し、能率的な運用をはかるものでありましてこれに関する事業計画はおおむね次の
通りでございます。
すなわち刑事同
検察庁関係につきましては、最近の公安労働情勢に対処しまして、外国からの治安撹乱工作の実態を把握するための調査活動、公安
関係事犯の
捜査並びに裁判の適正迅速化、その他公安
検察の全般にわたりましてその機能を充実するため基礎的な資料の収集整備を初め、採証設備、無電施設等の整備拡充をはかろうとするものでございます。その要求額は二億九千六百八十一万三千円となっております。
次に入国管理局
関係といたしましては、諸外国との交通ひんぱん化に伴いまして、出入国
審査業務の充実をはかる必要がありますとともに、在留外国人に関する記録を整備しまして、外国人の実態を把握しつつ、出入国管理行政の適正な運用を期し、あわせて不法出入国、不法残留
容疑者等の取締りを強化しようとするものでございます。そのほか韓国側の強制退去送還者の引き取り拒否によります収容の長期化に伴います処遇面等の改善充実をはかりたいと存じておる次第でございまして、その要求額が二億八千六百五十八万四千円となっております。
次に公安調査庁
関係について申し上げますと、調査活動をさらに刷新強化しまして、
事務の運営の適正強化を期したい、かような
意味合いで要求額は十一億三千百一万七千円を計上しております。
第二に、(1)として
法務行政刷新強化に関する経費でございまして、その一が総合的刑事政策の樹立に要する経費でございます。従来
犯罪防止の施策を総合的見地から統一的に
検討する機関がございませんために、各担当機関の処理方針がともすれば統一を欠きまして、また総合的な
犯罪学研究機関がございませんため、
犯罪の社会的、個人的な原因を総合的、科学的に調査分析してその成果を集積することができず、さらに刑事政策の担当者が主として法律家によって占められておりましたため、社会学、精神医学、心理学、統計学等の諸科学を十分に活用することができなかったうらみがございます。このような認識の上に立ちまして、最近の
犯罪の激増と悪質化に対処して、適正有効な刑事政策を実施するため、まず少年非行の早期予防に関する調査研究、量刑の
地域的、個々的の不均衡に対する量刑の科学化に関する調査研究、
犯罪原因の科学的調査研究を行おうとするものでございます。その所要額として八百四十二万七千円を計上しておる次第でございます。
次に(2)としまして、涜職事犯等に要する経費でございます。御
承知のように涜職事犯あるいは補助金
関係事犯の徹底的な
検挙を期します上には、的確な
捜査の
端緒の把握が要請されるのでございます。この要請に応ずるために、
地検に調査室を設置しまして、基礎的な資料を収集整備し、この種事犯に対する
検察の強化をはかろうとするものでありまして、その所要経費として三千五百三十五万円余りを要求しております。
次に(3)、
公判審理の適正化に要する経費でございますが、第一審強化方策要綱が最高
裁判所によりまし策定されましたに伴いまして、
検察庁の公訴維持のための体制を整える必要がありますし、また刑事
事件の証人が他人から危害を加えられることを防止するため、適切な措置を講じまして、刑事司法に対する
国民の
協力を確保することが喫緊の要務と存ぜられるのであります。暴力事犯の証人保護措置の一環といたしまして、証人の
公判への出頭に際しまして、
検察事務官等をして身辺を警備せしめ、その安全を確保して
公判審理の適正化を期そうとするものでありまして、その所要経費として六千八百九十万六千円を要求いたしております。
(4)に、非行青少年対策並びに
犯罪者
更生保護に関する経費でございます。
犯罪全般の増加、非行青少年の増加の傾向にかんがみまして、社会保障の一環として
更生保護活動を活発ならしめるために、保護観察所の機能を充実いたしますとともに、
更生保護会及び保護司の方々の活動を強く援助いたしまして他方少年院におきます補導能力を強化するため、教官の充実をはかろうとするものでございます。
まず保護
関係におきましては、保護観察の強化充実、
更生保護会に対する補助金、保護司に対する実費弁償金等の適正化をはかりたいと思うのであります。その費用としまして七億二千四百四十四万三千円を要求しております。
少年院
関係につきましては、少年院におきまする教化活動の充実、精神医の配置、職業補導の拡充等、処遇の科学化、刷新をはかりますとともに、食糧費、特に菜代の増額等をお願いしまして、処遇の充実を期したいと存ずる次第でございます。その費用といたしまして、七億六千六百十八万八千円を要求いたす所存でございます。
次に(5)、
売春防止法の全般的な施行施策に関する経費の要求を申し上げます。刑罰規定の施行に伴いまして事犯の効果的な処理をはかりますとともに、
売春婦に対しまする補導処分の実施、
売春婦の
更生を円滑ならしめるために、
検察庁に身上調査室を設置しまして、また
更生保護会を拡充し、婦人補導院の新設、少年院の整備拡充をはかりまして、さらに人権擁護活動の一環として特設人権相談所を開設するに必要な諸経費を要求したのであります。
まず
検察関係でございますが、
売春、人身売買等の事犯の処理の厳正適確をはかりますとともに、主要
地検に身上調査室を設けまして、
売春婦に対する事犯処理の適正化を期そうとするものでありまして、その所要経費として六千五百四万三千円を要求しております。
次に矯正
関係におきましては、補導処分を実施いたしますために、婦人補導院全国七カ所の新設、既設女子少年院六カ所の整備拡充をいたすことにいたしております。その要求額は、八億七千八百四十八万一千円となっております。
これに関する人権擁護
関係につきましては、温泉地、都市等の
売春婦の多い地区に婦人相談所を設置いたしまして、
売春婦の
更生と転落の防止に寄与したいという趣旨で、五百八十四万三千円の費用を、要求しております。
次に保護
関係につきましては、主要
地検に
更生保護相談所を開設いたしますとともに、これに対応いたしまして、
更生保護会を増設充実しまして、
売春婦を収容して保護
更生に当ろうとするものでありまして、その費用として一億一千三百五十七万七千円を要求いたしております。
次に(6)、法律扶助
法案立法による施策経費について申し上げます。法令の複雑化及び訴訟手続の専門化、技術化に伴いまして、貧困のために法律の保護を受けられない者が激増する傾向が見受けられますので、
法務局、地
方法務局に法律相談室を設置いたしまして、無料法律相談を行いますとともに、民間の法律扶助事業を助成強化しまして、貧困者の権利の保護を強化しようとするものでございます。その所要経費として、三百七十一万四千円を要求いたしております。
次に第三に人権擁護活動、これに関する経費でございます。人権擁護活動の強化拡充は
法務行政の重点の
一つとなっておるのでございます。人権侵害
事件につきましても、まず予防施策を実施しまして、従来の侵犯
事件調査と相まちまして、人権擁護活動の強化をはかりますほか、人権擁護
委員制度の拡充とその画期的な運用を期したいという
考えのもとに、その所要経費として五千二百五十一万六千円を要求いたしておるのでございます。
第四に、矯正行政の刷新充実についての経費でございます。矯正機関におきましては、監獄法の改正事業と相まちまして、矯正行政の刷新と充実を期日するものでありまして、その目的達成のためには、収容者に対する処遇の問題、特に科学的
方法の導入、収容者に対する部外者の
協力、医療施設の充実、食糧費、原材料費等の増額等を計画しておるのでございます。すなわち
犯罪者矯正の具体的方策につきまして科学的に調査研究を行うための矯正科学研究室の設置、精神障害者の処遇対策として医官の増員、菜代の増額、作業賞与金の増額等をはかろうとするものでありまして、その所要経費として五十億八十五百十五万七千円を要求いたしております。
第五、基本法典の立案並びに諸法令の整備に関する経費でございます。これは前年度に引続きまして、これが法令の整備充実をはかろうとするものでありまして、おもなる点を列挙いたしますと、特別顧問室の整備拡充、所要図書の購入、司法
制度の改善、法制
審議会の活発な運用、民法財産法、民法身分法、商法、強制執行法、国際私法の改正作業の推進、民事行政
審議会の運営の強化、刑法、刑事訴訟法、少年法の改正及び各種行政取締法規の整理改廃、改正監獄法施行規則の制定、矯正
審議会の運営強化、少年鑑別所法の制定、少年法、少年院法の
検討、
犯罪者予防
更生法、執行猶予者保護観察法、
更生緊急保護法、保護司法等の改正についての調査、出入国管理
関係法令の改正、登記台帳の一元化に関する
制度の準備等、その他現行法令の整備等の調査研究を行うための経費を計上しておるのでございまして、それに要する経費として一億一千六百二十三万円を計上しておる次第でございます。
次に第三の営繕費について申し上げます。営繕費は要求総額は六十六億七千九百六十六万四千円でありまして、その内訳は官署施設費三十二億六千八百三十八万四千円、収容施設費二十四億八千百三万九千円、各所修繕費七億七千百七十二万六千円、不動産購入費一億五千八百五十一万五千円でありまして、それに
先ほど申し上げました
売春関係の施設費六億七千四百九十万五千円を加えますと、計七十三億五千四百五十六万九千円と相なるのであります。この営繕の方針といたしましては、四つの方針のもとに計画いたしておるの参でございます。
まず第一に、新営、整備の年次計画を
考えて計画したのでございます。御
承知のように
法務省所管には三千四百有余に上る所管施設がございますが、その大半が木造建築でございまして、ほとんど老朽廃しているばかりでなく、その広さ、間取りとかあるいはまた設備等
内容におきましても、
事務能率上遺憾のものがきわめて多いのでありまして、早急にこれを恒久性の建物といたしますとともに、快的な施設に改めて、執務環境の改善、
事務能率の高揚をはかることが喫緊の要務と存じておるのでございます。しかし、国家財政の上からこれを一挙に解決するということは困難でございますが、そうかといって漫然これを放置いたしますると、近い将来これが対策にかえって一時に莫大な出費を要することになろうかとも存ぜられるのであります。そこで全施設の現状を個々に精査いたしまして、緊急度に応じた長期にわたる年次計画を立て、計画的に新営、整備をはかろうとしておるのでございます。
第二は庁舎の集約化ということでございます。前にも申し上げましたように多数の施設が全国に散在いたしておりますが、組織が多岐にわたるために、現在地方の小都市におきましてさえも出先機関の数が二、三にとどまらないのであります。国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法の制定の趣旨にかんがみましても、国土の利用、国費の節約の面からゆるがせにできないことは申すまでもないことでございますが、
国民の利便、所管機関相互間の連絡の上からも深く
考えねばならぬ問題だと存ずるのであります。そこで将来に向いまして、これらの庁舎の集約化を実施しようとするのでございます。
第三には地方財政依存の脱却ということでございます。国家機関の施設はすべて国有としまして、国費をもってまかなうのを理想と
考えるのでございますが、遺憾ながら当省の下部組織におきましては、今日なお市町村等地方公共団体に依存しておるものがきわめて多いのでございます。たとえば
法務局出張所のように全国千八百庁中三分の二以上のものが市町村等から無償、または無償に近い条件でその施設を借り上げているという状態でありまして、地方財政再建促進特別措置法の建前から申しましても、はなはだ好ましくない現状であります。なおまた矯正施設
関係におきましても、代用監獄制のもとに警察署の留置場が拘置所化いたしまして、処遇上、
捜査上問題を起しているばかりか、その通常上都道府県の財政に影響を及ぼしている例が少くないのでありますが、その好意に甘えてこのまま放置すべき筋合いのものではないと存じます。いわんや昨今では地方公共団体から買い取りの陳情を受け、あるいは正規の収容施設の新設を要望されるもの等も数件ございまして、供手放任すべきときでないと思量いたします。そこでこれらに対しまして、すみやかに国有施設を新営して、地方財政の負掛軽減をはかり、その依存から脱却しようとするものであります。これも目標の
一つに加えているのであります。
第四には立地条件の是正という点でございます。所管の組織中その多くは終戦後独立しあるいはまた新設されましたものでありまして、これらは当時の状況といたしまして急場をしのぐのあまりに施設の立地条件等を考慮するいとまなく設けられましたために、今日環境不適の場所やあるいはまた
関係諸機関と隔絶した地にあるものが多いのでございまして、その機能を十分果していないと思われるものが少くないのであります。なおまた最近の傾向といたしまして、都市計画あるいは都市発展の見地から、都会地に現在する矯正
関係施設の移転を要請する声が各地に起りつつありまして、現在その対象となっているものがすでに二十カ庁に及んでいるありさまでございます。これは国家機関としてのその機能発揚の面からも、あるいはまた
国民の福祉増進の面からも、早急に解決すべき重要問題と存じております。そこでこれらの施設の立地条件をつぶさに
検討して、その是正をはかろうとするものであります。以上申し述べました諸点を交えて営繕費を要求いたしているのでございます。
これをもちまして
法務省
昭和三十三年度概算要求の御説明を終ります。