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1957-11-07 第27回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月七日(木曜日)    午前十一時十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            柴田  栄君            藤野 繁雄君            東   隆君            清澤 俊英君            島村 軍次君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀  末治君            堀本 宜実君            安部キミ子君            河合 義一君            北村  暢君            鈴木  一君            戸叶  武君            上林 忠次君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    行政管理庁行政    官理局長    岡部 史郎君    農林大臣官房長 齋藤  誠君    食糧庁長官   小倉 武一君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林大臣官房総    務課長     岡崎 三郎君    農林省振興局総    務課長     酒折 武弘君    日本専売公社塩    脳部長     三井 武夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (農林水産基本政策に関する件)  (長雨等による農作物被害に関する  件)  (流下式製塩による農作物被害に関  する件)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  農林水産基本政策の件を議題にいたします。  さき農林省から発表せられました「農林水産業現状問題点」、いわゆる農業白書農林水産政策要綱」及び「昭和三十三年度農林省関係予算要求概要」等については、閉会中の委員会において農林当局から一応説明が聴取されているのでありますが、あらためて、これらの諸問題を中心農林水産基本政策について、戸叶、小笠原、北村及び東の各委員から、農林大臣に対して質疑の御要求がありますので、この際順次御発言を願うことにいたします。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 国連のエカフェは一九五六年の報告書において、日本経済が長期にわたって特に問題にしなければならないことは、第一に食糧と原料の輸入への依存と、第二に間断なく増加する労働人工に職を与える必要があるという点であるということを、指摘しております。こういうような問題を中心といたしまして、私は、この日本農政転換期において、私たちお互いに真剣に考えなければならない、問題点の焦点をしぼらなければならないと考えておりましたが、農林省では今年の七月に「戦後農業の成長と構造変化について」、また八月には「農林水産業現状問題点」なる、いわゆる農林白書を公表いたしました。これを読んで、国民経済発展過程における農林水産業の果しつつある役割、農業における問題点というようなことを、数字的に私たちは把握する非常な便宜を得たと思うのです。この提出された統計的資料基礎として観察する場合に、お互いの立場の相違、また観点の相違等から、若干の見解相違はあると思いますが、しかし、この戦後十二年を経て、農林水産政策はきわめて重大な転換期に立っている、そして困難な課題の処理に迫られている、この認識については、私たちは非常な一致点を見出し得たと思うのです。  そこで、私は最初に質問する点は、農林関係予算の問題からでありますが、農林省では、さきに発表した農林水産政策要綱の線に沿うて施策を展開すべく、千七百四十五億円の予算概算要求を行なっております。これは、去年の予算も低調であったので、この要求というのは非常に意味があると思いますが、私たち心配する点は、この千七百四十五億円の農林関係予算要求はやっても、三十二年度予算が八百九十四億であるから、これから見ると、八百五十億の増加要求だとは言われておりますけれども、三十二年度予算の当初における農林省要求数字も、これは相当数字だと思いましたが、結果的には大蔵省でもって削られてしまって、あのような現実的な数字になってしまっておりますので、昨年と同様なような道をたどって、この要求はしたけれども、それが半分にも削られてしまうというのでは、何にもならない。そういう心配が十分ありますので、その点に関して、まず農林大臣から承わりたいと思います。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私どもも、今のお話のように、せっかく農林政策を行うための予算要求をしておるにかかわらず、昨年のような情勢になっては、やろうとすることもでき得ない結果に陥りますので、極力この予算確保といいますか、要求に近いものを実現さしたい、取りたい、こういうふうに努力しておる最中であります。ただ、一番まだ心配の点は、予算の総ワクというものをどの程度にするかということがきまっておりません。でありますから、それによってはおのずから制約を受ける面が出てくるかと思いますけれども、それにいたしましても、ただいまお話ありましたように、鉱工業所得あるいは消費水準に比較いたしまして、農林水産業におきましては非常に立ちおくれを示しておるという段階でありますので、ワク相当縮小されるということはあっても、農林水産業予算については極力増額して、政策の実行に努めたい、こういうふうに努力しておる最中でございます。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 一般会計歳出中、農林関係予算の占める割合というものは、昭和二十八年度で一六・五%だったのが、三十一年度では八・三%になり、三十二年度はさらにそれより少くなっておるのですが、この前の農林大臣の、強引といわれた河野君が農林大臣をやってもあのような始末なんだが、赤城さんは筋は通しても河野君ほどの強引さが足りないと思うので、そういう関係からいっても、非常に——若干の制約というものはやむを得ないとしても、半分にも削られてしまうという去年のような不始末が再現されると、農林省の言っておることに対して国民信頼度というものが薄まると思いますが、その若干の制約といいますが、農林大臣としては若干の制約の限界はどのくらいであると考えておりますか。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 各省からの要求相当額に上っております。そういう関係で、今これをどの程度各省とも要求を貫徹するかということにかかってくると思うのであります。今直ちにどの程度ということは、ちょっと申し上げることは、現在の折衝の段階においては、そこまで行っておりません。極力予算確保に努めたいと思います。  なお、今のお話のように、総予算に占める農林予算の率が非常に減っております。そういうことを回復するつもりでおりますが、さらにこの財政投融資の面におきまして、相当農林政策を実行しなければならぬ面も、そういう面も考えなくちゃなりません。そういう関係で、予算だけでなかなかやり得ない面については、財政融資の方でやっていくという考えを持っておるのであります。  なお、私は、今のお話のように、農林大臣として、農林行政機関といたしまして、強く予算の獲得に努力するつもりでおりますが、これはやはり、それにつきましては農林関係以外のもの、あるいは農民政治的結集といいますか、そういう方面の協力もぜひお願いしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。それは、何も私が河野君よりがんばらないからというわけではありませんが、やはりそういうふうな空気、気分というものが、財政当局やその他に、あるいは財界等に反映しませんと、なかなか農林政策に対するウェートの置き方を考えてもらうことに、非常にむずかしい面があるのであります。そういう面も考えて、一般の世論といいますか、農林水産政策に対するウエートをもっと持つべきである、こういうような面も外部から出るように私も努力しておるわけであります。内部におきましては、今のお話のように、極力予算確保ということに努力いたすつもりであります。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣は、予算だけでやれない面は財政投融資で補うと言われておりますが、財政投融資の方にピントがぼけてしまって、予算の方が縮小されるような結果に陥らないように、注意してもらいたい。  それと、今農林大臣農林関係ウエートをもっと出すように、特にこの問題で農民結集というものにも触れられたのですが、最近の土地改良なりあるいは新農村建設なり、要するに、戦前の地主が土地改良等もやってきたが、それもやれなくなって、国家や公共団体がやる上から、農政改革が行われるというときに、どちらかといえば、農民の自主的な力の結集というものを怠っておるのである。今、国会では中小企業団体法なんかでもめておって、一番の問題と言われておる中小企業の問題すら、非常に強力過ぎるほど強力な組織体が作り上げられるというときに、農民戦線における農民組合戦線統一とか、そういうような動きがあるけれども、もっと広範な形において生産農民結集というものが十分にはかられていないというところに、今日の政治の上における農民政治力というものが十分出てこないで、農林省が一生懸命予算要求をやっても、結果においては半分くらいに削られて泣き寝入りをするような、みじめなところに来ておると思うのですが、そういうところにおいて、農林白書農林官僚一つ数字を武器とした抵抗の現われだと言われておるくらいで、もう絶対絶名のところに来ての一つ悲鳴書とも見られるのだが、しかし、弁慶の、この間何かラジオでやったのですが、勧進帳のように、ただ白書が白紙を読むような形で、中味がないのでは何にもならないので、この農林水産政策要綱農林大臣が九月二日に発表したが、その要綱に沿って予算のことも具体化そうとしておると思いますが、その要綱に示された二つ基本目標という点についてお尋ねいたします。  農林大臣は、第一は、最近における経済発展の推移の過程において現われた農林水産業と他産業との不均衡の拡大、この点を指摘しております。これはもっともな指摘だと思います。これがため、農家の兼業化が進み、農業における就業人口構成が劣弱化する傾向が顕著となる。これも白書に数学的に現われております。これに対して、これを克服する方法としては、生産性向上を強調する以外にない。それは、コスト引き下げによる労働生産性向上と、農林水産業所得の増大をさせるのだというふうに言われておりますが、この中で、農林水産業と他産業の不均衡という点では、西欧諸国アメリカなどと比較しては、ほんとうにお話にならないような不均衡が今出てきておりますので、こういうことがやはり日本の今日の不況の原因にもなっておるんですが、この均衡を保つという方法を、労働生産性向上コスト引き下げ、そういうことだけにしぼっていくつもりなのかどうか。  それから第二点としてあげているところの、国内農林水産の資源を開発して食糧総合的自給力強化、こういうことをねらっておるようですが、今までの農林予算面に現われている食糧増産費なんかも、年々くずれてしまっておって、総合的自給力強化というものを、少くとも農林予算面においては放棄している。赤城農林大臣ですら、ときとして言うことは、外国食糧が安くなったんだから、それに対抗できるようなコスト引き下げをしなければならないということだけを言っておって、現実において農政を担当する当局というものが、食糧増産というものに対して積極的な、具体的な、予算的な責任を持っていないという点が、こういうふうにジリ貧農政に来たのだと思いますが、そういう点に関して赤城さんはどういう御見解を持っていらっしゃるか。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 政策要綱等にも申し述べ、ただいまもお話がありましたが、大きくいえば二つの面を考えておるわけであります。今お話しのあとの方の食糧総合的自給力増加ということは、これは、私といたしましても強くこれを進めていく。というのは、二、三年来の傾向といたしましては、安い外国の、米はそう安くありませんが、小麦などを買った方が採算に合うのじゃないか、多くの費用をかけて国内食糧増産をはかるということは、そろばんに合わぬじゃないかという考え方が、実は二、三年来あったように私は感じております。しかし、その端的な現われといたしましても、外貨不足というようなことでそういう政策が行われていくものでないというふうに、壁にぶつかったように私考えておるのですが、それを別にいたしましても、農業の根本的な考え方といたしまして、やはり国内食糧を総合的に自給化するということは、これは第二の生産性向上所得確保といいますか、向上と相待って、これは最も必要なことであるというふうに考えておるわけであります。  でありますので、食糧増産という面、米等につきましてこれを進めていくことはもちろんでありますが、再々申し上げましたように、畑作振興というようなこと、あるいは畜産奨励畜産を伸ばしてゆくというようなこと、あるいは場所によりましては果樹園芸というような作物を伸ばす必要もあるわけであります。そういうようなことで、畑作畜産ということを非常に強く取り上げて、食糧増産伸びをそういう方面で進めていきたいというふうに考えておるわけであります。  なお、食糧増産基礎であります土地といいますか、農業でいえば土地であり、漁港、あるいは農林でいえば林野でありますが、そういうような生産基盤強化してゆく、こういう面につきましては従来とも政策を進めてきたのでありますが、どうもその方面の力の入れ方をもっと進めなくてはいけない。これは食糧総合的自給力増加のためにも、今御指摘の第一の生産性所得向上のためにも、力を入れるべきだ、こういう基礎に力を入れることが政府責任だ、こういうふうに考えておりますので、従来ともそういうことを行なってきたのでありますが、これを一そう強く強化したい。今年の三年続きの豊作というようなものも、これは農業でありますからすぐに効果は現われませんが、こういう土地改良あるいは土壌の改良ということが、やはり相当作用している。まあ農業の技術あるいは農薬等もありますが、そういう点も考えまして、やはり生産性をまずもって確保するようにしたい。  同時に、白書でも述べておりますように、また御指摘がありましたように、戦後食糧の非常に不足な時代におきましては、農業生産に対するウエートといいますか、関心が非常に強かった。こういうことで、農業所得水準にいたしましても、消費水準にいたしましても、二割程度以上の伸びがあったのでありますが、二十六年ごろから鉱工業伸びといいますか、合理化、そういう方面が非常に進んできて、農業そのものがそれに追いつけないということで、鉱工業の方の六割とか五割とかいう所得水準あるいは消費水準に比較して、三割、二割というふうに伸びが落ちてきた。こういうことでありますので、その生産性を高めていく、それにつきまして、ただ生産費を、コストを低くするということだけではもちろんいけないと思うのであります。もちろん生産費が低くなることは、これは必要でありますが、ただめくらめっぽうに生産費を低くする対策を強力にやっていくということを考えているのではありませんで、増産により、あるいはまた労働生産性向上等によって、所得を増していくというようなことを考えますれば、やはり営農方面、あるいは作付計画等、こういう点につきましても、古い言葉でありますが、適地適作というような方向へ進めなくてはなりませんが、その適地とか土地利用高度化を進めるためには、利用区分推計別あるいは地域別等調査をするということも考え、それについての予算要求いたしておるわけであります。  従って、また所得向上をはからなければなりませんから、流通対策あるいは加工対策についても、今までとかくおろそかにされておりますので、その方面についても力を入れたい。ただ、流通方面は、御承知通り自由経済というようなことになっておりますので、統制力を用いてこれを強力にやるという考え方は持っておりませんけれども、しかし間接に、あるいはまた市場状況、操作、そういう面、また、政府の手の及ぶ限りにおきましては、価格の支持という方面にも強い力を加えていきたい、こういうふうに考えております。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 今、農林大臣が説かれた点は、赤城農政の非常に特徴の面だと思いますが、予算課長は、畑作関係予算は、公共事業の方が固有の畑作三十九億、それ以外の畑地関係予算で二十一億、両者合せて約六十億要求しておる。本年度予算公共事業で十一億、非公共事業で十三億、合せて二十四億あるから、明年度要求というものは、その二倍半の振興予算となると言っておりますが、ここらにもあなたの農政特徴があるのだと思いますが、これもやはり絵に描いたぼたもちで、半分に削られてしまえば、もとのもくあみになってしまうのですが、この畑作振興と水利との結びつき、特に畑地灌漑等には、赤城さんは非常に骨を折られておるようですが、それと同時に、畑作振興とともに、畜産奨励果樹園芸というような方へ力を入れておられますが、その中で赤城さんは、開拓事業において今後は市町村をして総合土地改良開発計画を策定し、開拓営農の方針についても広く畜産果樹等を加えた開拓営農考える、ということを言明しております。この市町村をして総合土地改良開発計画を策定しと言いますが、どの程度責任市町村に持たせるのですか。
  10. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、団体営農等については、団体土地改良区でやるのが従来の方式でありましたが、そういうことで進めると、うまくいく所はいいのでありますけれども、なかなかまとまりにくいような所もありますので、市町村そのもの団体営農土地改良あるいは開拓それで土地改良をやり、あるいは開拓をする。そういうことになれば、今の農林省としてやっております新農村建設の問題とも組み合せができるのじゃないか。新農村建設方面におきましては、二年で一応補助の方は打ち切りますけれども、三年目を継続してほしいという希望も非常にありますが、私どもといたしましても、なお継続させたいのでありますが、今新しく指定をいたしておりますので、その補助方面には、なかなか十分にいかないのではないかという予想を持っております。そういうことにつきましては、融資の面で補なっていきたいと思っておりますが、そういうふうな関係もありまして、新農村建設指定町村等におきましても、もっと恒久的に土地改良とか開拓ということをやっていきたいという希望相当あるのであります。そういう場合に、土地改良区というようなことよりも、市町村でこれを行うというような形にすれば、自治庁で新農村指導一つ政策を持っておりますが、こういう自治庁のやっておりまする新農村に対する政策等とも総合的にこれを、何といいますか、協調施行ができるようなことに話し合いをして指導していきたい、こう考えております。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 赤城さんは長い間村長の経験やなにかあるので、農政における市町村というものの比重を非常に高く考えておられるようだし、また今のお考えを伺っても、農林省のやっている新農村建設との組み合せ、自治庁のやっていることとの結びつき、そういうふうなものもすべて市町村と結びつけてやっていった方が、非常に手っ取り早くよくいくのではないかというお考えのようですが、やはり市町村でも、自治体とはいいながら、お役所仕事になりがちなので、過渡的なそういう方法一つ考えられるかもしれないが、生産農民との結びつきというもの、生産農民をどうやって組織化していくかということに対して、農林大臣としてはお考えを持っていないのか。過渡的便法としてそれがよいという形で、今の方式をとっておるのか。それとも、根本的な日本農村近代化を行なっていくには、中央の農林省なり自治庁市町村とを結びつけて、それで農民を引きずっていくよりほかに手がないのだという結論に到達しているのか。その辺の関係をもう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私といたしましては、当然農民の盛り上る熱意と組織というものを期待しておるわけであります。でありまするから、今の市町村土地改良とか開拓を総合的に、また末端としてこれを行うということにつきましても、従来の通り土地改良区とか、あるいは御承知のように、協同組合でも土地改良も行えることになっておりますので、そういう方面に盛り上りと、また事業を行うように進めておるわけであります。  それにいたしましても、われわれが調査し、あるいは地元の要望に従いまして、どうしてもここをやったらいいじゃないか、ここをやればその市町村基盤もできるのだ、しかしなかなか盛り上りやまとまりがむずかしいというようなことであれば、やはり市町村長などがイニシアチブをとってそれを進めていく、それをみずから施行するかしないかは別といたしましても、それがいいじゃないか。ことに町村合併等が非常に進んでおりますので、町村間のいろいろな点において市町村長連絡協調あるいはあっせんする。土地改良等についても、あるいは開拓等にしても、そういうことが今の段階においてはまだ相当期待し得る面があるのではないか、こう考えておりますので、すべて市町村に天下り的にこれをやらせるようにするという考え方では、毛頭ないのであります。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣が力を入れているところのこの畜産物、それから畑作物果実というものが、近年非常に増産されてきて、農民換金作物の方へ移っていって、農作物構成の変動ということが顕著た現われたことを、農林白書の中においても指摘しております。そこで、問題になってくるのは、やはり換金作物で一番不安定なのは価格の安定の問題だと思います。畜産方面におきましても、牛乳が余ったというので、赤城さん、あなたがそれに対して学校給食との結びつきその他の手を打たれているようでありまするが、これは価格が比較的安定しているところの工芸作物としてのタバコ等を除いて、その他は野菜にしても、くだものにしても、非常に不安定な状態に置かれておるので、このことに対して相当の犠牲を払っても、アメリカやイギリスなんかも行き過ぎがあると言われるほど、価格安定に対して政府責任を負っているのです。この問題は今後の農政においては、農民流れがそういう方向に来た流れに沿うて、当然この対策が練られなければならないと思うのですが、それに対する具体的な対策というものが、応急措置的な方式としての乳価安定以外に、大して見るべきものがないように思われるのですが、その他にどういう御構想がありますか。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 生鮮食料果実等につきましての価格安定策というのは、お話のように、非常にむずかしい問題であります。しかし、私が考えておりますのは、果実類等非常にいいものが日本でも出てきておりますので、一つ輸出に向ける相当余地がある。ことにカン詰による輸出という、こういう面が一つあると思います。  それからもう一つは、これも進んでおりますが、共販体制といいますか、共同販売体制をもっと強化する必要がある。市場調査というようなことも共販体制に伴って進めていく必要があるし、私どもといたしましても、そういう市場状況等につきましては緊密な連絡をはかっていきたい、こういうように考えております。  もう一つ、これはなかなかむずかしいし、手の届きかねる点もありますが、どうしても中間の経費と申しますか、これは果実類牛乳等もそうでありますが、生産者価格と小売の価格との間に相当の開きがあって、小売になると相当高くなっておる。こういう面につきましても検討をいたしまして、どういうふうな手を打ったらよいかということにつきましては、結論はまだ持っておりませんが、こういう面も考究しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 そこで、共販体制強化の問題に関連して御質問を申し上げますが、農林白書に農協の問題に触れていないというので、だいぶ農協から苦情の申し入れがあるそうですが、今日の農協が今までのような、戦時中、戦後のどさくさに対処するような、しかも政府と結びついてきた仕事をやっているような形の仕事をやっている限りにおいては、農協が内部からもっときびしい自己批判をしなければ、農協本来の使命を私は忘却していると思いますが、現実に農協が脅かされているのは、農協というものから離れて、いろいろな販売協同組合というものが伸び出してきたことだと思うのです。果実の問題でも、鶏卵の問題でも、野菜の出荷の問題でも、事実上デンマーク等の農協の伸びというものは共販体制から出ているのであって、日本の農協自体がこれは悪い意味におけるドイツの古い時代の農協方式に結びついておって、近代的な経済戦には間に合わないような点があるので、こういうことは遠慮会釈なく農林白書あたりで私は指摘すべきだったと思うのです。そうでないと、この農協自体がマンネリズムに陥ってしまっていて、一つの重大な転換期に間に合わないような始末になると思うのですが、こういう点ですでにもう各地でトラブルが起きておりますが、畜産なり換金作物なりに転換してきた農民の動きに対処し得るような共販体制というものは、どういうふうに強化していかれるようなお考えであるか、それを承わりたい。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今のお話のように、私も農協については相当批判を持っておるのであります。あるいはまた、経済白書の中でも、農協についてはある程度きびしい批判を加えておると私ども考えておるのでございます。というのは、今のお話のように、協同組合法ができて、十五人以上集まれば自主的な単位組合ができると。この形で、いかにも下から必要性を感じて盛り上ってくるような形で、農協法ができておるのでありますが、実際問題といたしましては、農業会の方をそのまま農協に振りかえたという形で、ほんとうに農民の必要性とか切実感とかいうものが伴わないで、政府食糧を集める、あるいは配給をするということで進んできましたので、農協の必要性とか、農民の切実な要求だという形から、伸びてきていなかったのであります。しかしながら、いろいろな管理、統制そのほかで、現在におきましては、やっぱり農協といたしましても自主性、主体性をもって進まなければならぬという転換期、反省期に私は入っておると思うのであります。そこへ今の共販体制において、特殊農協といいますか、畜産におきましても、果樹類におきましても、その他いろいろな特殊農協、出荷組合的なものが出てきておるのであります。ほんとうに農協の必要性とか、農民の切実性からいいますならば、今のお話のように、特殊農協といいますか、そういうものが出てきて、それが総合的な組合に拡大していくというのが、これは自然発生的な切実な動き方だと思うのでありますが、戦後の情勢からいいまして、そういう体制でなく、総合農協が先に進められて発展してきたという、こういう形でありますが、今のように農協、特に単協等におきましても、限界といいますか、主体性、自主性を取り戻さなければならない、こういう動きにきておると思うのであります。  そういう点におきまして、現在いろいろな特殊農協等ができておりますけれども、これはやっぱり切実な気持からできておりますので、これをやめさせるというわけにはいきませんが、結果的に見ますならば、総合農協がもっと地について、主体性を持ち自主性を持ってくるように、指導いたしたいと思います。そういうことによって、この単協や特殊農協等も総合農協の中に溶け込んでいくという形になると思うのでありますが、総合農協そのものが主体性、自主性を持たぬというような状況だと、やはり必要性から特殊農協とかその他の共販体制の組合などが出てくると思うのであります。しかし、いずれにいたしましても、やはり共販体制強化するということになりまするならば、組合の組織が拡大し強くなことが必要でありまするので、単協等の、総合農協等の力が強くなるように、また主体性、自主性が強まるように、こう考えておるわけであります。  余談になりますが、きょうも農協の十周年の大会があったのでありますが、祝辞の中においても述べておいたのでありますが、いたずらに、まあ私どもも反省しなくちゃなりませんが、政府のやり方だけが悪いという、そういう上にばかり向いておって、自分の足元の主体性や自主性をおろそかにするというようなことであってはいけないし、われわれが政策を行う上におきましても、協同組合というものが中間の農業組織として必要なんで、これに働いてもらわなければならぬ面が相当ありますので、そういう点の反省を促しながら、協同組合農民のものになるという方向へ大きな期待を持つように努めてきたわけであります。私の考え方戸叶さんの考え方と同じでありますが、順序を誤まってできた農協でありますけれども、しかし、農協そのものが共販体制相当活躍していけるように指導もしたいし、そういう期待もいたしております。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 この農協の質的転換がなされるときに来ていると思いますが、それと同時に、私が心配なのは今の農業委員会の制度であります。これも過渡的な便法として作られたもので、一応作られたものはなかなか変えることができないので、その惰性で来ているようでありますが、この農民自体の政治力というものが割合に欠除して、ときとすれば無関心になって、その農民自体の政治力を一番今発揮さしているところが農業委員会なり、あるいは農業関係のいろいろな団体なりになってきており、まあ今の農林大臣としては、いろいろな仕事は市町村にもっと責任を負わせてやった方が、どうも間違いがなさそうだというところに来ているようでありますけれども、ここらで、農民の間の自主的な組織ということはみんな頭の中で構想していながらも、現実において何もしていない。しかも、中小企業の方では中小企業団体法その他、がしっと組織化の問題が伸びてきている。それにもかかわらず、農林省は安閑として、農民組織については積極的な構想もなければ手も打っていないという状態だが、こんな中小企業にもおくれて置き去りをくっているような状態というものは、私は農林省自身の政治力の欠除から来ている。農民もまた、政治力を持たせまいとする、自分によらしむべしという考えから来ているのではないかと思って、心配だ。そういうことに対して何か、調査なり構想を持っておりますか。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私の方では農業団体その他について、よらしむべし、聞かしむべからずですか、よらしむべしというような考え方一つも持っておらないのであります。ところが、何といいますか、農協でもその他の団体でも、すべて統制時代のような考えを持って、何もかも農林省が悪いのだという、自分の方のやっぱり農民結集とか農民との密接なる関係を強めていくということよりも、何もかも政府が悪いのだというふうに、上へ向って、何といいますか、抗議を申し込むということが、一つ農民組織であり政治運動、政治意識だというふうな考え方も一部にあるように、私は感じておるのであります。でありますから、決して私どもはこれを、よらしむべしということで、天下り的にこれを引き回すという考え方は、毛頭持っておりません。  それから指導ということでありますが、指導の点につきましては、やはり何といたしましても、個々の農民、あるいは組合員といいますか、そういうものとのつながりを、末端農協においてはこれは強く持たせるということが必要だと思います。そういう面で一例を申し上げますならば、単協——末端の農協等におきまして、米も予約で売れる、あるいはまた肥料も農協から買えるというような農家はいいのでありますが、米もそれほど売るものもない、肥料だってそれほど買うものがないという小さい農家が、組合員というので相当入っている。そういうところへ、なかなか農協として手が届かない。米も買ってやらなければ、肥料も売ってやらぬということになる。それにはやっぱり営農指導といいますか、技術指導というような面、あるいは作付の指導、営農の指導、こういう面で、農協の末端の方におきましては、そういう農協とのつながりがとかく薄いものに対して、これを強くしていくというようなことが、これは農協、単協自体の農民とのつながり、あるいは組織化するのに役立つのではないか。  それから信用事業等でありますが、どうも質問より余談にわたるかもしれませんが、たとえば県の信連等の金の動きを見てみますというと、必ずしも農業系統関係に金が動いておらないで、金利の高い市中銀行等に金が流れているというか、預けている傾向ども、最近指摘できるのであります。そういう点につきましては、厳に農協方面に、農業方面に金が回るように警告をしておると同時に、いろいろと財政経理方面等も調べまして、農業関係以外に金が流れないようにということなども、指導しておるわけであります。そういうようなことを、いろいろな方法によりまして、ほんとうに農民のための農民組織というような形に指導していきたい、こう考えておるわけであります。
  19. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連して。ただいま大臣は、農協の幹部が政治運動や請願やその他のことだけをやって、農協自身の成長をあまり考えていない、こういうのが幹部になっているんだと。これは私は同感なんですが、しかし、それは大体どういうわけでそういうものが出るかということ、この究明が一番大事じゃないかと思うので、わしら究明はしておりますが、大臣はどう考えておりますか。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農協の幹部が政治運動するからいけないというわけでありませんが、やはり農協の幹部も農民のふところを預かっているといいますか、信託を受けておるものだと私は考えております。でありますから、そういう面について十分の配慮もする必要があるだろう。しかし、とかくそういう配慮といいますか、なかなか自分の思うように動かない場合に、すぐに何もかも政府が悪いんだと、全部統制しているわけじゃないのに政府が全部悪いように上へだけ来て、抗議とか陳情だけしていればそれで用が足りるというような形は、私はまことに農協の幹部として……。
  21. 清澤俊英

    清澤俊英君 私がお伺いしているのは、そこなんです。そういう幹部がどうして出てくるのかということは、大体古い、あまり農協の中心にならぬような人が単協の責任者になっても、実質上の指導能力がないと思う。そこで、自分の地位を保って、自分が何か働いたというように見せるには、農林省へ行って何か頼む、陳情する、請願する。何でもかでもかまわない、みんな農林省に片づけさして、それで動いているというようにして自分の地位を固めようとする。これがそういう原因をなしていると思う。そうすると、そういうものを打ち切るためには、どうした方法農業協同組合の運営の上に考えられるかということは、最近の農林省の、政府の働きはそれと逆に行っておる。片っ端から、選挙制による委員の選出等を、機会があればこれを廃止して、部落推薦制に片っ端から切りかえようとしている。私は、むしろ民主的な方法によって自分の代表者を選ぶということを、これが失敗しても、長くかかっても、教育していかなければならぬと思う。昭和二十一年の農協法ができて以来も、協同組合法ができて以来も、今振りかえってみますれば、いろいろの面でみんなは選挙制が部落推薦制に切りかえられておる。これはあなた、どう思います。私はそれを育てることが、今言われた欠点の是正だと考えておる。もう一ぺん伺いたい。
  22. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) やはり選挙制度が、一時的には悪いといたしましても、長い訓練のもとに選挙制度でいくということが必要であると思います。ただ、町村合併等で非常に地域が広くなってきておる面もありますので、やはり農民の総合共同的な気持から、よく知っているいい人を出すという意味におきまして、今の部落推薦制というものはあまり私は感心しません。公正な選挙によって、地区的に分けて選挙をするということも、一つのこれはまた方法だろうと思う。大選挙区制か小選挙区制かという面もありまするから、それは一つ方法として考えるべきものでありますが、部落推薦制ということで、ほんとうに働けない者でも、能力ない者でも押し出すというような形は、私は、お説の通り、感心しません。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 やはり今の問題に関連しまして、現在農民が、どっちかといえば、陳情政治の方へよろめいてきておるのは、農民自身に自主的な力が培養されていないからだと思うのでありまして、戦前の公共事業費等を見ましても、それは農林予算の約三割を占め、一般会計総額に対しては農業恐慌のときにも二%にすぎなかったというような状態であったのが、戦後はその倍、実質額において三倍も増加したというのは、これは土地改良一つをとってみても、結局国営だとか、県営だとか、団体営だとかいうことに依存していかなければならない。それが六〇%を占めておる。しかも、そのいろいろな団体のおもだったものは、補助金をうまく政府からもらってくるというような形で、いろいろな弊害ができたことで、補助金制度から融資の方へ切りかえるという方向へ来ましたが、今度大臣は、今後灌漑排水の問題も農業水利改良計画だけ再転していかなければならないというようなお考えも持っているようですけれども、すべてこういう基盤が、戦前は地主が土地改良をやる、水利の問題も地主がやった。その力が零細化された農民になくなってしまった。資本の蓄積は足りない、しかも組織結集はなされていない。結局強いものにたよろう、政府にたよろうという嘆願、請願、依存というものが、今後の農政というものを非常に私は低調なものにさせていくのだと思いますが、土地改良の問題だけでなく、農林大臣が力を入れようとする農業水利改良計画も、同様な私は轍を踏む危険性があると思うのですが、これに対してはどういうふうな新しい措置をとっておりますか。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は、陳情そのものが悪いということではありません。陳情そのものにも非常に私どもが啓発されたり、いろいろなことを聞く機会があるのであります。ただ、陳情の方法だと私は思うのです。というのは、やはり議会政治でありますから、やはり議員というものを通じ、議会を通じてものを行なっていくという形の陳情が、私は、陳情といいますか、それならば非常に納得できるのであります。ところが、国会議員の職責を侵した——侵したというわけでもないのですが、議員のような形になって陳情という形でいくということについては、これは一つ反省してもらう必要がある。  そこで、今の灌漑排水その他土地改良等につきましても、農林白書にも書いておきましたが、戦前は地主が相当先に立ってやり得た。しかし、土地解放後そういう力を持っている者がないということでありますので、農林白書にもありますように、国で負担するという負担の率が、戦前よりは非常に多くなってきております。そういう形でありますから、県の方、あるいは国の方で事業を行なってもらいたいというような動きは、これは当然そういうような形に現われてくると思うのであります。そういうことでありますけれども、国だけで相当な、未開発といいますか、土地改良がなされていない所を、まあ計画は持っておりますが、なかなかやり得ません。でありますが、この土地改良等にかかっている問題で一番まあ欠陥は、国なら国でやった、県の方は非常におくれている。あるいは県営の方もやっている、あるいは団体営の方では手をつけない、ということで、末端にまで総合的といいますか、統一的に土地改良が行われていない。そういうことでありまするから、負担金を出している方では、いつまでたっても負担はしておるのだけれども、恩恵が回ってこないじゃないかというような叫びも非常に強いのであります。そういう面から考えまして、 一貫して総合的に国、県、団体営等につきましてやってくれるように、指導あるいは政策を改めていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  25. 千田正

    ○千田正君 さっき戸叶委員及び清澤委員のお尋ねに対して、陳情、請願に対して、大臣から一応の所信を述べられたようでありますが、陳情、請願というのはむしろ民主政治時代におけるところの一つの窓であって、それが最も現段階においては民主政治の根幹をなすものであるとわれわれは考える。かつて旧幕時代においては、佐倉宗五郎のように、直訴してはりつけになった問題があるのだが、今日の時代において、政府政策農民なり、漁民なり、あるいは中小企業者その他に徹底した対策がなされなかった場合において、当然それはある場合においては陳情もしくは請願という形になって現われてくると思うのですが、むしろそれは、政府それ自体が農民の声を常に真直に聞いて、実際的に政治がうまくいっていないという証左ではないでしょうか。陳情、請願に対するお考えをもう一度、はっきりあなたから伺ってみたい。
  26. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほどから申し上げておりますように、私は陳情、請願そのものが悪いというような古い考え方をしておりません。陳情というものも一つの民主主義の方法でありますが、しかし、農協の話がさっき出たのでありますが、その方面のみに走って、やはり自分の足元を固めるということをおろそかにされては困るのじゃないか。陳情、請願、決してこれを拒否するものではない。もう一つは、やはり陳情、請願についても、私どもも聞くべきところもあるし、啓発されるところもあるから、大いにいいのですけれども、やはり議会政治でもありまするから、国会議員を通じてとか国会とかを通じて、ほんとうにいい陳情等については、やってもらうことがよりいいのじゃないか。私どもに直接受けることにつきましても、これは拒むものでもありませんし、幾らでもやっていいのですが、しかし、議員のような形になって、いろいろ、農業の指導者団体が国会議員の形になって、何といいますか、実はまあそういうことはまたあまり脱線するかしれませんが、今日農協に行ったところが、農協で私に対して十項目くらいの質問をするというのです。私、暇があれば、質問でも何でも受けるのです、地方に出ても質問を受ける。私も答弁をするのですが、参議院の委員会が開かれており、午後は予算委員会も開かれるときに、農協の代表が私に対して議員になったつもりで質問応答をやろうというようなやり方は、ちょっと考えさせられるのではないか。議会を通じ、議員を通じて、そういう場合には一つやってもらいたい、こういう考え方であります。別に拒否するとか、それを排斥するとか、そういう気持はありません。
  27. 東隆

    ○東隆君 今いろいろお話がありましたうちで、議員を通してやるのはよろしい、こういうお話でありまして、私ももとよりそのように考えるわけであります。そこで問題は、私は、農民の意思というものを、やはり相当まとめなければならぬと思う。その場合に、今法律的に認められておるものとすれば、農業協同組合、それから農業委員会法による農業会議所、この二つがあるわけで、農業協同組合の方の関係における政治活動ということについては、先ほどお話がありましたように、これは経済の方面を主としてやります。その方面についての仕事に関連をした問題については、おそらく主張していいと思います。その以外の問題については、これはなかなか容易でない。すぐらち外に飛び出してしまうのではないか、こういうおそれもあろうかと思います。それから農業委員会の方の関係でありますが、堀本さんが会長さんになっておられるのですけれども、私は、これは日本の大きな農地解放という仕事がなされたあとを引き受けて、これを一つ十全に進めていくべきものであろう。それから土地問題というのは、これはあらゆる農村関係の問題の中心になるのですから、私はこれと取っ組んでやって十分に仕事があると思う。そういうふうに考えて参りますと、農民の意思というものを率直に議員を通じて議会に反映させる、こういうような場合に、組織がない。政治的な力を発揚するための組織がない。私は、労働組合が、労働者の地位向上をはかるために労働者に組織があるように、私は、農民もやはり身分の安定向上、そういうようなものをはかる一つの法律を作って、そうしてそういうような組織を作っていくべきじゃないか、こういう考え方に立っておるわけです。しかも、それは国からの助成を仰ぐというようなそういうような必要は毛頭ないと思う。みずからの意思で、そうしてそういうようなものを作るべきではないか。それに対して、占領軍当時の場合には、労働組合法にならって労働組合を作るようにというような示唆もあったようであります。しかし、それを作ることに対しては、当時の政府は反対をされて来ております。私は、今の段階において、協同組合に対して政治活動の方面において制限を加え、また農業委員会等においてもやることは、これはやはりらち外に出ると思う。そいうふうに考えてきたときに、やはり農民政治力を強力なものにして、そうして農林省がその意図を受けて果敢に農業政策を確立すると、こういうようなものがやはり必要だろうと思いますが、そういうようなことについて、どういうお考えでありますか。
  28. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 従来戦前、あるいは戦後にも幾らかありますかもしれませんが、地主、小作人というような、まあ階級というような形があって、そこに農民組合というような耕作人の組合というような形は、これはあり得たと思うのであります。ところが、そういう階級対立というような、農村自体においてはなくなっておるといいますか、階層の分裂はあるといたしましても、そういう面は階級対立的な意味が非常になくなっておる。でありますから、もとの考え方のような階級対立的な農民組合という考え方で、そういうものを作るのがいいかどうかということにつきましては、私はこれは作るべきものじゃないと、こう考えております。今のお話のように、農民政治力結集するという意味におきまして、何らかの組織体考えるかどうかというお話でありましたが、まあ農民自体におきましても、実は団体が非常に多過ぎると、こういうようなことにもなっています。そういうようなことで、今にわかに、今のいろいろの団体のほかに、政治力結集ということだけで、どういう目標を持って組織体を作るかということにつきましては、私もいいとも悪いともまだ結論を持っておりません。自主的にできてきたものにつきまして、これをどういうふうに扱うかということにつきましては、また考えなければならないと思いますが、こちらから作り上げる、あるいは法律をもってそういう組織体を作るというふうには、今まだ考えておりません。
  29. 戸叶武

    ○戸叶武君 国民経済の指導的役割を第二次産業たる鉱工業が果たすのは当然だが、日本ではこの飛躍が目ざましくて、第一次産業がこれについていけなかった。しかも、第一次産業は、現状では総人口の四割からの国民生活をささえている。しかも、第一次産業の経済所得中に占める所得というものは、昭和三十一年度においてわずか二割にすぎない。こういう矛盾が今日出てきておるけれども、金詰り、貿易の不振というところだけに政府は重点を置いて、この農業の成長速度がだんだん立ちおくれになってきているという点を見失っている傾向がありますが、しかも、このバランスをとるために、政府は経済成長率というものを三%程度で押えるというようなことも言われておりますが、農業面において農林大臣はこれにどういうふうに対処しようと考えておられますか。
  30. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) どうも、今のお話のように、鉱工業方面については関心が非常に強いが、農林水産業の立ちおくれについての関心が非常に薄いというふうに、私も感じております。たとえば、三年続きの豊作というようなことが日本の外貨事情にどれくらい貢献するか、あるいはまた金融の引き締めとか設備投資というような、こういう政策を行なっていく上におきまして、人心がそれほど不安定になっておらないというのは、これは豊作という結果であると、こういうふうに私考えて、そういう点から見ても、農林水虚業が日本産業に寄与しておるということについての関心が、非常に一般に薄いのではないか。私は極力いろいろな機会にこれを主張しておるのであります。そういう点につきましても、この立ちおくれについての回復といいますか、これは産業自体が大体立ちおくれのような状況でありますから、ハンディキャップをつけて進ませなければ、なかなか歩調を同じくするというわけにはいかない状態でありまするから、その点につきまして認識を深め、あるいはまた今お話がありました財政の裏づけ等につきましても、そういう点を十分考慮していくべきではないかということを、常に主張しておるわけであります。  それから成長率の三%については、私どもの計画におきましては、農林では三・三%くらいの成長率を見なければできないというような、五カ年計画を立てて進めておる次第であります。
  31. 戸叶武

    ○戸叶武君 第二次産業の拡大が五カ年計画の想定成長率を三倍以上も上回ったということが問題になっておりますが、そういうような形から、重要産業の部門でも鉄鋼や電力や輸送力の隘路が問題になってきて、国会でもこの春以来ずいぶん問題になりましたが、しかし、今までこういうふうにバランスがくずれてきておる原因というものは、重要産業の名のもとに重化学工業の方に政府の施策の重点が振り向けられていて、農政というものがおろそかにせられたというような面も、私はバランスがくずれてきておる一つの原因であると思うので、これは物だけでなく、政治というものは人が相手なんですから、国民人口の四〇%を占めておるところのこの農民に対する施策が非常に薄かったという点が、一つの大きな問題だと思うのですが、農業白書においても強調されておる面は、人口の問題と就業人口の問題が大きく取り扱われておりまするが、先進国といわれる国においては、ドイツの例を見ましても、第一次欧州大戦に敗れた前後というものは、フォン・ゼクトが指摘しておるように、ドイツの農民というものは四〇%を占めておる。ところが、昨年私が西ドイツを訪ねてみると、全ドイツにおいて今日においては一七%、西ドイツでは一三%程度まで減少しておるとまで言われておる。これは農業人口を工業部門その他が吸収したことにもよるのでありまするが、日本のだぶついておるところの農業人口、それから兼業農家がふえてきた、このことは非常に私は生きた人間を取り扱う政治の上において大きな問題だと思うのです。  特に兼業農家の問題においても、昭和八年から十年においては、専業農家七四%に対して兼業農家は二六%であったのが、三十年度においては逆に、専業農家が三五%で兼業農家が六五%になっておる。これは西ドイツにおいても、日本以上に兼業農家というものは非常にふえておりまするが、兼業農家は兼業農家としての立ちゆくような農政というものがなされておる。ところが、日本は農本主義的な傾向から、何がゆえに兼業農家を増大したかということを検討しないで、専業農家に中心を置かないと食糧増産できないというところだけにりきみかえっているような傾向がありまするけれども、西ドイツ等においては、御承知のように、兼業農家においては、ラインやフランス寄りの方面においては、果樹栽培とか、あるいは農村の壮丁というものがルールの炭鉱に入ったり、工場地帯に入ったりして、農業所得をかち得るというような方法によって農家をささえているのですが、日本としても、こういう傾向は多分にあると思います。統計だけを見ると、非常に日本農業というものは不健全になっているような言い回し方をしておりますが、健全か健全でないかの問題の前に、あるがままの農村の実態というものを把握して、それに対処する政策というものが出なくちゃならないと思うのですが、こういう関係農林大臣はどういうふうに見ておられますか。
  32. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今の兼業農家の問題は、御指摘通りだと思います。突っ込み方が少し白書において足りなかったと思います。兼業農家のうちにも、所得面においては農業あるいは水産以外に、相当所得を持っておる兼業農家というものがあるはずであります。そういうことで、兼業農家の分析と申しますか、それについては、まだ白書において分析が足りなかった、こういうふうに思っております。  それから、今の農業労働人口をどういうふうにするかということは、国全体の人口問題あるいは雇用問題等と関連して、大きな問題で、農業だけではなかなか解決が困難だと思います。全体的に考えますと、今のお話のように移民の問題も一つ方法でありますし、あるいはまた、経済外交といいますか、後進地域の生活水準が上り、工業化し、日本がアジアあるいはその他中南米等の工場としての価値が高まってくるということになりますならば、輸出もふえるし、あるいはまた工業が盛んになり、そこに雇用の余地も出るというようなこともあるかと思います。あるいはまた、農業自体といたしますならば、土地生産性、労働の生産性というようなものを高めることによって、今までの農業人口以上に、農家がささえ得るより以上の人口をささえるというような方法をとるのも、一つ方法かと考えております。
  33. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、畜産の問題に関連しまして、政府としては、だぶついている今の牛乳の処理の問題で大わらわになっておるようですが、私は、やはり今後問題になるのは、その問題も大きいけれども、何といっても、酪農が伸びていくに従って、飼料の問題が非常に重要である。ふすまの輸入ということも重要でありましょうが、日本は、山岳酪農というものにどうしても手を入れなければならない。日本の国有林、それから大地主の所有山林、治山治水の名によるところの山林不可侵の迷信というようなことが、非常に障害になっていると思うのでありますが、スイスなんかでは、あれだけの山岳国でありながら、日本の三倍の五二%まで耕地面積を拡大しているところに、山岳酪農というものの基盤があるのでありまして、これに対しては、スイスのような力でもって、強力な力でやらなければ間に合わない。今酪農が発達している所においては、草資源を獲得するために、開拓者や何かというものが血眼になって、しかも問題が袋路へ入ってうつせきしている。私は、必ずこれは問題が爆発すると思う。ミラボーがフランス革命の前に、あのなだれのようにくずれてくるところの、問題が山岳地帯の農村に山積しているのが見えないのかといって、予言したように、私は、今山間地帯における酪農がぐんぐん伸びていって、そうして飼料がない。しかも、山は国有林と山林地主によって冷たく拒まれている。ほかの国においては、スイスでも、西ドイツでも、開かれておる。所有権の移動の問題にまで触れなくても、どうしても山岳酪農というものに対して政府はメスを入れなければ、山岳から私は問題が必ず起きてくると思うのですが、農林大臣はそれに対して、どういうお考えを持っておられますか。
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料の問題の解決からいいましても、酪農の奨励ということから考えましても、山岳酪農ということを進めたいと考えております。でありますので、今度予算にも要求しておりまするし、前にもお話し申し上げたかと思いまするが、土地利用調査というようなことで、草地として適当なものは草地として育成していく、あるいはまた山林としてこれを育てていくものはそういうふうにしていくというような、土地利用の区分調査というようなことも行う手はずになっておるのであります。そういう面におきまして、いろいろ、土地所有権そのものに触れないで解決の方法があるということでありますならば、これは強力に進めていきたいと思います。  というのは、これは山林行政にも関係するのでありますが、特別立法をいたしまして、皆さんに御審議を願いたいと思って準備をしておるのでありますが、山林の問題で分収造林というようなことも行なっていきたい。というのは、所有者が造林を行わないで進めていくという場合には、植林をする者に植林をさして、そうしてこれが成長した場合に分けていくというような考え方、これも、所有権そのものをどうこうということではありませんが、所有者と植林をする者との協約によって行なっていく、こういうような考え方も実は持っておるのであります。そういうのともにらみ合せまして、草地造成、山林、山岳酪農というようなことに十分力を注いでゆきたい、こう考えております。
  35. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  36. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を始めて。
  37. 北村暢

    北村暢君 それでは、行政管理庁の局長が見えるまでに、一つお伺いしておきたいのは、戸叶さんから、今、白書及び新政策についていろいろ質問があったわけでございますが、ただし、ここで一つ聞いておきたいことは、白書でも新政策でも言っておるように、生産性向上をはかる、こういうことを言っておるのですが、日本農業の決定的な弱点というのは、やはり規模が零細であるというところが非常に大きな問題である。これを解決していくということが、日本農業を今後発展さしていく非常に大きな要素になるじゃないか、そういうふうに考えるのですが、この生産性向上ということは、零細な農業生産性の拡大に持っていくという場合に、一体農林省農林政策というものは、この零細農家というものをどういうふうに取り扱うか。生産性向上しようとしてもできないような農家が、これはもう相当あるというふうに私は見ておる。幾ら太鼓をたたいても、やりたくもできない。実際には生産性向上なんて言わなくても、やれる資力のある者は機械を導入し、土地改良もやり、どんどんやっておるわけです。ところが、できない階層の者があるということなんです。それに対して、この零細農家というものはもう切って捨てるという考え方もある。兼業の農家というものは、まず第二種農業においては切り捨てる、生産性向上はしない、こういう考え方で、切り捨てるというような意見を持っておる者があるのです。従来の農林政策の重点も、三割農政だとか一割農政だとかいわれておるのだが、一体この生産性向上ということの考え方の中で、こういう階層の兼業農家というものに対する施策は、一体切り捨てるのか切り捨てないのか。切り捨てるということは、これらの農家が、もうこれはとても農業では手が負えぬ。従って、これは転換をしてそうして鉱工業に吸収していくのだ、こういう考え方に立つのか。その点を一つ基本的な考え方一つお伺いしたいと思います。
  38. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 世界の情勢とか、ことにイギリスなどの情勢から見まするというと、農業人口は相当減っても農業生産は増していく、こういうような世界の趨勢であります。しかし、日本農業の特性は零細農業だということになっておりますので、そう、世界の情勢がそうだからといって、零細農業あるいは第二種兼業農家を切り捨てて、直ちに鉱工業の方へ入れるわけには、私はいかぬと思います。でありますので、零細農家等は切り捨てるのだという考えを持っておりません。でありまするから、健全農家を育成するというのは、健全農家にしたいということで、健全農家、大きな農家だけを育成するという考え方ではないのであります。ところで、そこでその零細農、小さい農家に対して生産性向上というようなことをいっても、なかなかできないじゃないか、機械化もできないし、畜産化もなかなか困難じゃないかということは、私もそう考えております。しかし、切り捨てるという考えではありません。これにつきましても、総合的にこれを育てていくという考えを持っております。  というのは、たとえば機械化やその他によって労働の生産性は、ほかの大きい人々に追いつけないと思います。それから、先ほどからお話しがありましたように、営農方式等の改訂といいますか、指導によって、小家畜の問題もありまするし、あるいは果樹、蔬菜、園芸というような面で、割合に手労働といいますか、手の労働にたよって生産を上げるという面は、これは総合的に考えればあると思います。労働の生産性だけからとりますならば、ほかのものには追いつけないという形でありますけれども、いろいろな方法によりまして、零細農家につきましても、これを育成するということは考えております。ただ、鉱工業に入れるということも、これはけっこうでありますが、それほどに、日本の雇用条件や鉱工業の状態がそう伸びておるとは、農業人口を吸収するという程度にはまだ行っておらぬと思います。農業政策といたしましては、小さい農家についても十二分に配慮をしていきたいと、こう考えております。
  39. 北村暢

    北村暢君 もう一つ、断片的になるのですが、解放農地の補償の問題について、これは前回清澤委員からも確かめて、一切これは、大臣からも、考えておらぬということでありましたが、九月の十七日に地主の大会がありまして、そのときに大臣はその陳情団に対して、私も地主の出身だから、あなた方の気持はよくわかる、それ以上に私がわかっているつもりだから、今後善処していきたいということを言っておる。一体、善処ということはどういうことなのか。地主の気持はわかると言っているのだが、その善処をしていくというのは一体どうなのか。赤城大臣は私は良心的で非常にいい大臣だと、こういうふうに思っているのですが、これはあなた御自身ばかりでなしに、私は、井出さんだったならば、その背景は大体解放農地に反対しているのだからいいが、あなたの背景のあるところは、解放農地運動に賛成であるかのごとき方がおるということを聞いておる。そういう点からして、君子豹変する場合もあり得るのじゃないかというふうに考える。従って、この際もう一度、大臣のこの問題に対するはっきりした答弁を求めておきます。
  40. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 地主の気持がよくわかるということを申したのは、これは一般的な地主の問題を言ったわけじゃないのです。未亡人や、それはほんとうに女なんかで働いておって、あのときに自作農になろうという気持でおっても、自作農にはなれなかった。こういう小さい、気の毒で、そのまま、まあ生存権を奪われたような、小さい、困っている未亡人やなんか、そういうような人々の気持というものはよくわかる、こういうことを申し上げたので、それに対して、善処するということは、まあ言ったわけじゃありませんが、こういう考え方を持っておるのです。それは補償ということは私は反対であります、補償は考えておりません。ただ、農地法の改正ということまではどうかと思うのですが、そういう自作農になれなかった者に対して、どういうふうな方法かで自作農にするというような考え方はないものだろうか。あるいはまた、今の保有地を持っておる人も、これは保有地を持っておっても、小作料というものでは、まあ田で千五百円か、畑で六百円ぐらいで、保有しておっても何ら意味をなさない。潜在的な所有権は持っておるが、取り上げするわけにもできないのだし、これを手放してもいいというような考え方を持っておる者もないわけではないのです。そういうものをどうだという話を、私は地主団体にも言ったことがあるのですが、賛成だと、こう言っておりましたが、そういうようなもろもろのことを根本的に考える必要があるのじゃないか、補償というものはこれは考えない、こういう考え方です。
  41. 北村暢

    北村暢君 それじゃ、定員の問題についてお伺いをしますが、岡部行政管理庁の局長も見えておりますから、まず第一番日にお伺いしたいのは、今度の予算要求の中で、非常に膨大な定員増の要求農林省はやっておる。これは農林省から、あとからこの考え方についてお伺いしたいと思いますが、まずお伺いしたいのは、従来次官通達なり或は国会の答弁等において、定員外職員の定員化の問題については、公務員制度の改革と相待って、そのときにこの問題を処理するのだ、こういうふうに答弁されてきておるのだが、今のところ、公務員制度改革による、公務員法の改正というようなものも、次の国会に間に合うか間に合わないか、聞くところによると、とうてい間に合わない、そういうことであるから、定員の問題についてもあまり長い間ほうっておけないので、この改革、公務員法の改正を待たずして、一つ定員の問題に手をつける、こういうふうにせざるを得ないような段階に追い込まれたというふうに伺っておるわけです。  そこで、局長にお伺いしたいのは、従来国会で答弁して参りました公務員制度の改革のときにやるといった考え方は、改められておるのかどうか。今申しましたように、これを待たずに定員の問題を処理するつもりなのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  42. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) お答えいたしますが、先般の国会におきましても、たびたび申し上げてあります通り、定員外職員の問題は非常に大きな問題でありまするので、これの根本的解決は、公務員制度の改正によってやりたい。公務員制度の改正も、当時におきましてはかなり進歩いたしまして、次の通常国会、具体的に申しますばらば、二十八国会において御審議いにだける見通しが相当確実であるということでありまするので、それを待って根本的な定員制度の解決を行いたい、こういうことをまず申し上げ、しかしながら、公務員制度の改正が二十八国会におきまして間に合わないという場合におきましては、実情に応じて、これを手直しするように努めたい、こういうことを申し上げてあったわけでありますが、その方針は現在においても変りありませんわけでありまして、公務員制度の改正がこの国会に問に合うかどうかということにつきましては、目下政府部内において協議中でございますが、もしも間に合わない場合におきましては、先ほど申し上げました通り、さしあたりの定員外職員についての手直しをやりたい。これは次の通常国会において定員法の改正を提案いたしまして御審議いただきたい、こう思います。
  43. 北村暢

    北村暢君 手直しをやるというのは、どういう方針で手直しをやるのですか。
  44. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 定員外職員は、いわゆる常勤職員と称される者が六万六百各省にこれは散在しておりまして、その職種も非常に複雑多岐でございますが、そのうち主として実態調査に基きまして、どうしても定員の中に入れなければならないもの、これはどういう事情によって生じたかというと、いろいろであります。定員の規制がかなり窮屈だったということもございましょう。あるいは事業が膨張したという事情によることもございます。そういういろいろな事情を勘案いたしまして、どうしても早急に定員の中に入れなければならない、すなわち定員の規模を改めなければならないというものにつきまして、これは公務員制度の改正を待たないで入れたい、こう考えております。
  45. 北村暢

    北村暢君 その実態調査をやってやると言われたですが、実態調査は行政管理庁でやるのですか。
  46. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 実態調査につきましては、先般の国会からもいろいろお話もございました通り、私どもはこの問題につきまして真剣に考えておりますので、前国会が終りましてから数ヵ月を費しまして、管理庁が各省の実態につきまして調査いたしたわけでございます。
  47. 北村暢

    北村暢君 その調査は、どのくらいできたのですか。
  48. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) その調査資料がまとまりましたので、この資料に基きましていろいろ分析しておるところでございます。
  49. 北村暢

    北村暢君 聞くところによると、公共事業関係の実態調査は行政管理庁で把握した、それ以外はまだ把握しておらないというふうに聞いておるのですが、もし調査の結果に基いて実態に応じて定員をいじるということになれは、調査をした所だけやるのかやらないのか、調査が完了しなければいじらないのかどうか、その点について……。
  50. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 北村委員御次承知通り、定員外職員の問題につきましては、一番深刻なのは公共事業であります。また、この公共事業はむずかしい問題を含んでおりますので、公共事業については特に実態調査をいたしました。またいろいろ手が伸びないという点もありまして、その他のあらゆる職種について実態調査はいたしませんが、公共事業以外の定員外職員につきましては、かなりティピカルな面もございますので、ある程度まで実情把握もできますので、実態調査をした公共事業だけしか手直しをしないというわけではありません。
  51. 北村暢

    北村暢君 それでは、公共事業は問題があるから、特に調査をした、こういうことで、それ以外についても手直しをする、こういうふうに理解して差しつかえありませんね。
  52. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 定員外職員の定員化という問題につきましては、その全体を対象として検討いたしております。
  53. 北村暢

    北村暢君 それでは、農林省関係についてお伺いいたしますが、農林省の定員外職員は、各省のうちでも非常に多い方なんでありますが、大体一般会計で八千名近く、これは現在大蔵省に要求としては出ております。そのほか食管特別会計、国有林野特別会計、合せるというと二万以上になる。こういう膨大な定員外職員がある。しかも、そのうち相当な部分の人が、定員内の職員と同じような仕事をやっておる人が非常にたくさんある。しかも、三悪追放の中の汚職追放というようなこと、それから綱紀粛正というような点から、公務員の責任体制を確立するというようなことから考えるというと、私は、農林省の今までとっておったこの仕事の内容からいって、この公務員の責任がとれないような形に現在あるのです。そういうことを実態が物語る。たとえば農地局関係にしても、国有林野関係事業にしても、現金出納をやっておる職員、何ら責任のない人がおる。山へ相当、何百万という賃金を支払うために、現金を持って行く。その場合に、これがひどいのになりますというと、人夫給で支払われている者が、何ら責任のない者が、そういう膨大な金を持っている。あるいは農産物の検査、あるいは国有財産の取引をやっている、こういう人、これもまた責任のない人である。こういうのが実態なわけであります。どうしてもそういう人がいなければ、事業の運営なり何なりがやっていけないという中で、常勤職員なり非常勤職員なり多量にかかえておる、そういうふうに考えるわけなんですが、ところが、こういう二万からの膨大な定員外の職員がおるのですから、そのうちには、いわゆる現業的な労務関係に従事しておる人もおるし、管理職的な仕事をやっておる人ももちろんおるわけなんでありますけれども、こういう二万からに及ぶものについて、今までの経緯からいって、簡単に全部定員化するということは非常にむずかしい。今までの定員制度ということで、それに対して定員化していくということはむずかしいように感ずるのですが、しかし、公務員の責任制度の確立という点からいくというと、どうしても大幅な定員というものをここで拡大しない限り、私は責任体制なんというものはとれないというふうに思う。それで、今農林省から要求して出ているものは二万以上に上っておるのだが、これに対してどのような考え方でもって定員化をしようとするか、この点についてお伺いしたい。
  54. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 北村委員の仰せの通り、公務員というものは、その一人々々の責任と権限が明確でなければならないということは、仰せの通りであります。それと同時に、公務員というものは、やはり国民の信託を受け公務に従事するのでありますから、その任用におきましても、明確な任用制度に基きまして、しっかりした定数のもとに採用されなければならないということは、これも仰せの通りであろうと思うのであります。しかるに、定員外の、非常に資格のしっかりしない、あるいは権限のはっきりしない、あるいは権限と責任がマッチしないというような実情が出ていることも、御承知通りであります。こういう点を根本的に解決しなければ、公務員制度あるいは行政組織の上におきまして、非常に多くの困難が生ずるということも明らかでありまするので、これらの点を解決するために、政府といたしましては、この事態を十分認識いたしまして、二十九年以来鋭意努力いたしておるわけであります。  その根本は一応公務員制度調査会の答申によって解決したい、こう考えているわけでありますが、従来長い間のいきさつによりまして、一面におきましては、先ほど申し上げました通り、定員の規制ということが必ずしも十分であったとも言えない点もございましょう。そういうような点を考慮いたしまして、まだ公務員制度の改正が次の通常国会にできないならば、そういう応急の必要に応じた手直しをやりたい、こういうような考えで、目下作業中であります。
  55. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 今、北村さんから、農林省の定員外職員が非常に多く、これらの執務の内容から見れば、定員内職員とほとんど同じ仕事をしている人員もある。かつまた、責任体制強化という面から、当然基本的には定員化すべきではないか、それに対する農林省の所見はどうであろうかという御質問がございましたので、われわれの考えているところを率直に申し上げたいと思います。  この問題につきましては、前々から北村委員から、われわれとしましては叱咤激励を受け、またいろいろな御教示も受けているわけであります。われわれとしましても、勤務の内容あるいは態様からいたしまして、定員内職員と同じような性質のものにつきましては、何らかの方法によって責任体制を明らかにしたいと、こういうことは一貫した念願を持っているわけであります。従いまして、これまでも機会あるごとに定員化の努力を続け、あるいはまた定員内職員の欠員があるような場合におきましては、計画的に定員外職員の繰り入れをはかるというような努力をいたしますとともに、その定員内に入れない場合におきましても、待遇改善の方法によりまして、身分の安定をはかるということについての努力はいたして参っているのであります。しかしながら、やはり基本的には、今申し上げましたような状況のもとにおいて、定員外に長く置くということ自身に不合理な点も多々あるわけでありまして、この問題につきましては、われわれといたしまして、内閣の公務員調査室あるいは行政管理庁等におきまして、公務員制度全般の改正をやらなければ根本的には解決することはできないといたしましても、できるだけ定員化の方向に実現をはかって参りたい、こういう折衝を続けて参ったのでございます。  来年度予算要求におきましても、そういう見地から、従来の調査の結果もございますし、また勤務の態様におきまして、あるいは責任の度合いにおきまして、定員内の職員と相並ぶ性質のものにつきましては、全面的な定員化をはかりたい、こういう考え方によりまして、今お話がありましたように、予算といたしましては一応定員外のものにつきまして要求いたしたいと、かように考えているわけであります。  ただ、非常に農林省は数も多くありますし、また常勤労務者あるいは常勤的非常勤労務者の中には、たとえば、すでに農林省をやめて、ただその知識、経験を活用するというふうな意味において臨時に雇うような、そういう性質のものもありますし、あるいは職務の態様におきまして若干濃淡のあるものもありますので、それについては目下調査を続けております。そういうことと相待ちまして、少くともわれわれといたしましては、他省と同じような条件のもとに今後定員化に努力をいたしたい、かように考えております。
  56. 北村暢

    北村暢君 従来定員をきめるときに、なかなか大蔵省の予算との関係でこれがうまくいかないという一面があったのですが、そういうふうに私ども理解しておった。ところが、実際は非常勤職員という人はもうほとんど、国家公務員定員内の職員と同じ給与で、同じ形であるわけです。従って、その出方というものは、これは国から出ている。あるいは常勤的な非常勤は人夫給から賃金が出ているというようなものも、大体人事院規則によって給与というものが算定されている。すなわち予算の方では、同じ出る分については、大した変りがない。それは恩給とか何とかいう点について、わずかのふくらみはあると思いますけれども、そういう面から来るものというものは、私は非常に少いのじゃないか。少くなっているのじゃないか。従って、責任体制の確立という点からいくというと、私はもう予算関係ではないというふうに感じております。従って、今度の二万何名かの要求について、これについては今官房長からお話がありましたが、これも出し方も私はあまり適当な出し方でないというふうに感じております。それは、現状が何といいますか、こういうふうな折ということでもって、ただそういう点から出すというふうな点が非常に強く見受けられる。それではいけないので、やはり責任体制を確立するという点については、この機構の中でこれだけの人間が必要だという確たる理由がないと、現在これだけ要るからこれだけ定員化するのだと、これではどこへ行ったって通らないわけなんですね。農林省要求にはそういう傾向が、形が出ておる。私はやはりそれではいけないので、しかも、現状がそうだということについて、私は決してそれがずさんだとか何とかいうのじゃなくして、現在常勤的非常勤も次官の認定がないというと各省庁で勝手に採用するわけにはいかないのでありますから、仕事の実情からしてやむにやまれなくしてこういう事情にあるというふうには思うのでありますけれども、そこら辺の理由づけがはっきりしていないというと、これは大蔵省へ行っても簡単にけられてしまうというふうに思うのです。従って、この点についての理由づけというものについては相当はっきりした資料を整えて、そうして大蔵折衝をやってもらわないといけない。大蔵省で理解しないものはやらないわけですから、その点を一つ要望しておきます。  それからもう一つお伺いしたいのは、この二万何名の中にいろいろな人がおる。聞くところによるというと、行政管理庁ではこういう膨大なものを出してもとってもだめなんだから、頭割りに各省庁文句の出ないように、一割なら一割定員化すると、こういうようなことも聞いておるわけなんです。これのやり方もまた、私は理屈に全然合っていない。今言った責任体制とか何とかから、一割だけ各省不公平なしにやる、二割やるとかいうことは、これはもう全然理屈が成り立たない。私はそういうふうに思う。ところが、そういう傾向がある。行政管理庁でも手がつけられなくて、これより方法がないじゃないかというふうにも聞いておる。そういうことではとてもできない。  それからもう一つ、二万なんぼについては、行政管理庁で意図しておるような相当高級な定員外職員、あるいは定員内の職員の中の管理的な部門における、しかも相当責任を持った人と同じような仕事をやっている人だけを定員化するのだ、こういうことも聞いておる。まあいろいろなんで、どこがほんとうかわからないわけなんですけれども、その点について一つ、どういう方針で今度の定員をいじろうとしておるのか。私ども考え方からすれば、先ほども言いましたように、定員外の職員というものが、現状においては非常に厳選されて、そして仕事の必要があるから、現状においてこれだけの定員外の職員がある、こういうふうに信じておるから、全員これは定員化されるべきだ、こういうふうに考えておるのです。ところが、行政管理庁ではそう簡単には考えていないようでございますけれども、そこら辺のところの定員化していく方針というのか、考え方というか、これについて一つお伺いしたい。
  57. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 定員外職員の定員化につきましては、今年度もしも根本的な改正が間に合わない場合におきましては、応急的な措置の御審議をお願いするという方針で進んでおります。その応急的な措置としてどういう根本的な方針をとるか、あるいはどういう基準をとるかということにつきまして、一割とか二割機械的にやるというようなお話がございましたが、そういう点は行政管理庁といたしましては、目下のところ全く考えておりません。むしろ実態に即して、緊急やむを得ないものからやるという方針と申すよりほかないわけでございまして、それにつきましては、いろいろな角度から基準を考えなければなりません。これは今、北村委員の仰せられた通りでございまして、いろいろな角度から、その職務と責任に応じましてやはり考えていくのがほんとうだろうと思うのであります。それにつきましての具体的な基準というものは、目下作業中でございますので、そういういろいろな角度から考えました基準に応じて、具体的に数字を出していきたいと考えております。
  58. 北村暢

    北村暢君 それでは、もう時間も相当たちますし、この問題はまだ作業中ということですから、あまり明かにもならないようですから、続いて今後この問題を私はやっていきたいと思いますが、本日の質疑はこれで打ち切りたいと思います。
  59. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 残余の質疑は後日に譲り、本件については、本日はこの程度にいたします。  ここでしばらく休憩して、次は二時半から再開いたします。    午後一時十八分休憩    ————・————    午後二時四十二分開会
  60. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから委員会を再開いたします。  では、北海道における長雨等による農作物の被害、あわせて佐賀県及び高知県等における水稲冷害の件を議題にいたします。  これらの件については、すでに陳情をお聞き取り願い、なお一部過般の委員会において問題になったのでありますが、さらに東委員及び柴田委員等から発言の要求がありますので、この際発言を願うことにいたします。
  61. 東隆

    ○東隆君 私は、北海道の道東地域の豪雨、長雨、低温等による農業被害、それに関連をしていろいろな点で要請をいたしますが、それに対するお答えをいただきたいと思います。  北海道の本年の災害は、これは四年続きでありますが、区域といたしましては道東地域でありまして、支庁別に申しますと、網走支庁、それから十勝支庁、釧路支庁、根室支庁、この四つの支庁管内であります。耕地面積はざっと総体で三十五万町歩くらいある所でありますが、そのうちざっと十三万町歩ほど被害を受けておるわけであります。そうして、そのうち水田は一万町歩程度、被害の額は四十三億ほどに達しております。その被害の状態は五〇%以下を省いておりまするから、かりに七割作くらいなところまでとりますと、約六十億くらいの被害に達する、こういう状況であります。  これは実は毎年続いておりますので、道の方面においてもはなはだ政府に持ち出すことを逡巡しておったのでありますけれども、非常に被害がひどいので、ことに畑作地帯の中心を襲っておりますので、この惨害は相当なものがあるわけであります。従って、これを何とかして救済をしていかなければならない、こういうつもりでおるわけであります。しかも、政府畑作振興あるいは寒地農業、そういう方面で非常に施策を講ぜられつつあるときでありますので、私は、本年の災害というものに対してしさいに一つメスを注ぎ込まれていきまするならば、それに対する非常に適切な救済策も生まれてくるのではないかとも考えておるわけなのであります。  そこで、その原因は、冒頭に申しましたように、豪雨、それから長雨、低温等でありますが、豪雨は、これは七月、八月、九月の候に非常に各地に向ってピークがあるわけで、非常に大きく降っております。それから低温の方になりますると、一ヵ月の間に二十九日。これは摂氏十五度を限界にいたしますと、これは作物の実るか実らないかという限度でありますが、その十五度以下の日が一カ月の間に二十九日あるいは二十八日と、こういうような日があるのであります。これは皆様のところにお渡ししてあります被害概況、その冊子の中に出ておりますが、そういうような状況で、原因はそういうところにあるわけであります。関係書類その他は、実は非常に災害に何回もあっておりまするので、きわめて適切に、皆様が一目瞭然とおわかりになるように整理されて書いてあると、こう私は思うのでありまして、詳しい説明は申しませんけれども一つよくごらんをお願い申し上げたいと思うわけであります。そして御支援を願いたいのであります。  要望は、これは別冊に、北海道道東地域の豪雨、長雨、低温等による農業被害対策要望書というものが、皆様のお手元に差し上げてあります。この中に詳しく書いてありますが、どうしても災害を受けたものには現金収入の道を施さなければなりませんので、生活資金対策として、救農事業の調整と拡大について、あるいは春季開墾補助金の早期交付について、あるいは薪材の特別払い下げについて、これは例年行われておる——例年というと、はなはだ語弊がございますが、昨年も行われたことであります。それで、開発庁関係その他道関係と関連をして、いろいろな事業をできるだけこちらの方に振り向けていただいて、そうして税金収入をできるだけ得られるように御配慮をわずらわしたいわけであります。  それから金融対策の面では、もちろん営農資金の問題、それから昨年、本年までに借り入れたところの各種の資金がございますが、これらの償還が非常に困難になっておりますので、これの延期方、あるいはこれの繰り延べの方法、そういうものについてお考えを願いたいわけであります。それから自作農維持創設資金を何とか増額割当をしていただいて、そうしてこれによって急場をしのぎたい、こういうわけでありますが、これは伺っておりますと、もうすでにワク内の金が出てしまっておるようでありますが、先年償還財源をこれに充当をして、そうして北海道に割り当てていただいた事例もございますので、今回もそれにならって一つ考えを願いたい、こういうわけです。  それから地方財政対策の問題、これは救農土木事業に対する財源措置、あるいはそれから特別交付税の増額配付、こういうようなものは、これはほとんど天災融資あるいはその他のものと関連をいたしまして、当然必要になってくるわけでありますので、起債の関係でありますとか、こういうような方面についても、一つ御支援をお願い申し上げるわけであります。  それから農業共済金、これは水田と、それから若干の麦類でありますが、これらに対する共済金の早期の支払い、これは例年やっていただいておりますが、ぜひこれは、局地と申しましてもやはり北海道では三分の一くらいの地域にわたっておりますから、一つ取り上げてお願い申し上げておきたいと、こう思うわけであります。  このほかにもう一つ重要な事項は、三十一年の冷害でもって米麦の買受代金の延納ですが、延納措置をやっていただいております。これが約関係地域内で一億程度がどうしても返せないような状況にあるようであります。従って、これをできるならば十二月までのものを来年の三月ころまでに一つ延期をしていただきたい、こういう点であります。これは何らかの措置をしていただけば非常に助かるわけでありますが、その点。それから全体として天災融資法によるところの指定地域に決定をしてもらいませんと、米の前渡金の問題でありますとか、その他各般の問題が、財政交付金の問題にいたしましても、その他の問題も解決をいたしませんので、天災融資法によるところの地区に指定、これを一つしていただきたい、こういう点であります。  簡単に申し上げますと、以上のような要項でありますが、それらの点について政府が今お考えになっておる点を、経過等をお伺いいたしたいわけであります。
  62. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) 私からお答え申し上げます。  本年度は、ただいまお話がございましたように、七月下旬から八月上旬さらに九月上旬から十月上旬にわたりまして、低温のために、北海道において、ことにその東部地帯におきまして、農作物の被害が相当あったのでございまして、そのうちで特にその東部地帯におきまして、農作物の被害が相当あったのでございまして、そのうちで特に水稲の被害につきましては、過般十月十五日現在の予想収穫高を、今月五日に発表したのでございますが、それによりますと約十五万石、冷害の被害だけで十五万石ということでございます。これは平年の冷害の被害に比べますと大へんに少いようでございますが、ただ、局地に偏しておりまして、かなり深刻なものがあるということを聞いておるのでございます。  そこで、この対策でございますが、すでに道庁からも参られまして、ある程度の打ち合せはしておるのでございますが、残念ながら、当局といたしまして、まだ被害も全貌がはっきりいたしておりませんので、そのうち対策としてこういうことをやりたいということだけ簡単に申し上げたいと存じます。  まず、順序が御質問のと変るかもしれませんが、まず第一に、資金の融通、融資関係でございますが、これはこの時期の冷害が、実は北海道だけではございませんで、九州並びに本州等にも被害がありましたので、これらの地域の冷害と関連させまして、さらに被害の実情を把握いたしました上で、天災法による資金の融通に基いて措置いたしたいと考えております。なおまた、地域の指定につきましても、そのときの調査を急いで進めましていたしたい、こう存じております。  ついででございますから……。過去の既往の災害融資分の期間延長のことでございますが、これはすでに八月までの災害につきまして、天災融資法の政令による災害の指定をいたしましたときに、すでにこの既往の災害融資分の借りかえにつきましては、出しておるのでございます。このたびも、この被害の実情をきわめました上で、同様な措置をあわせて考えたい、こう存じております。また農林漁業資金の返還の猶予、償還猶予につきましても、その必要がございますれば、これはケースごとに業務方法書の規定に基きまして措置いたしたい、こう存じております。  それから、次は農業共済保険のことでございますが、この早期支払いにつきましては、過般道庁から参られまして打ち合せをしましたときに、大体話がつきまして、これはなるたけ早く支払いするということで、現在調査を進めております。  それから次に救農事業関係、これは実はまだ被害の実態が明確にわかっておりませんので、この判明次第検討を進めたい、こう存じております。それに関連いたしまして、薪炭材の特別払い下げでございますが、これは昨年度も同様な事例におきまして、その薪炭材の処分をいたしました。これが被害農家救済に非常な効果があったということにかんがみまして、今回もこの被害の実情に応じまして、特に帯広、北見営林局管内で特別処分を行いたいということで、目下農林省の林野庁におきまして計画を立てつつある次第でございます。  次に、自作農維持資金の増額でございますが、これは先ほどお話がございましたように、実は本年度当初すでに四億二千万円の資金ワクを北海道に対しまして割り当ててあるのでございまして、この北海道の冷害につきましても、目下その詳細を調査中でございます。その被害額が明確になり、さらに災害用としてこの融資ワクの追加を必要とする場合には、大蔵省とも折衝いたしまして、この対策に遺憾のないようにいたしたい、そう存じております。  それから最後に、昨年の冷害の場合に米または麦を安く払い下げいたしまして、その代金を延納するという措置をとったのであります。ただいまその回収の時期に当っておるわけでございます。これは各被害農家が払えない場合には、市町村なり、あるいは最終的には道庁が、その責任をとって払うということになっておりますので、ただいままでお聞きいたしましたところでは、先ほどお話しの通り、約一億円ばかりが回収不能になるのではなかろうか。従って、それだけが道庁の負担になるということで、何とかならぬものかというお話は現にあるのでございますが、ただ、この関係では、債権管理法によるいろいろの規制もございますので、今後のこと、また現地の道庁の財政状態がどうかというようなこともございますので、もう少しこれは北海道庁と打ち合せた上で処置いたしたいと考えております。  それから、先ほど申し忘れましたが、例の借りかえ問題、特に今回の北海道の東部の冷害には開拓地が多いのでございまして、一応の報告としましては、開拓地だけで被害戸数が一万余り、被害金額は十億円余りというような中間報告を受けております。この開拓農家に対しましては、以上申し上げたような措置のほかに、天災融資法に基きまして、災害経営資金の貸付、これはもちろんでございますが、先ほどの償還の借りかえの措置も講ずる。そのほかに開拓営農振興臨時措置法、これに該当するものにつきましては、振興計画のあり次第、営農改善資金の貸付を行い、またその償還の緩和措置を講ずるという考えでございます。また開拓者資金につきましては、実情に応じまして、償還の延期の措置を講じたいと考えております。  以上簡単でございますが……。
  63. 東隆

    ○東隆君 先ほど申すのを忘れたのですが、例の米の予約米概算金の金利の減免と返済の延期の措置、これは昨年北海道は講じていただいたわけです。水稲は、御承知のように、昨年皆無作でありましたので、その皆無作の所に少しばかりあったものを、まいたわせ種のものが残ったのでありまして、空知、上川の力からわせを持っていったものは、その地帯ではなかて、あるいはおくてになる。そんなような関係で、いかんともいたしがたい状態で、非常に作況が悪い。こんな状況にありまして、事情ははっきりしておりますし、はなはだ概算金をもらって、そうしてそれを約束通りにしないということも悪いと思いますけれども、これを一つ昨年のような措置によってやっていただきたい、こういう問題であります。
  64. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) ただいま御質問のございました米の予約概算金の問題でございますが、この問題はおそらく、この概算金を返さなければならぬという場合、金利の減免の問題、並びにこの概算金そのものを返済する時期を延期するという問題、この二つかと存じます。  前の金利の利子の減免につきましては、これは昨年のあの例にかんがみまして、今年度政府に売り渡す売買条件におきましては、契約条項の中に具体的に定められてございます。従って、生産者の災害の実情によりまして、皆無作とかあるいは七分作、五分作、三分作というような、その程度に応じまして、その被害農家が一町村にその数がどの程度の割合を占めるか、そういうようなことに応じまして、それぞれ減免されることになっております。従って、これはこの条件に合致して発動いたしたいと、こう存じております。  ただ、その次の返済の延期でございますが、これは昨年度におきましても、御承知のように、実はいわゆる指定集荷業者と申しまして、単協あるいはその上の段階協同組合連合会というようなものが、いわゆる代位弁済ということによりまして、一たん国にはその概算金は返してもらう。しかしながら、直接各農家の今直ちにの負担にはしない。従って、その代位弁済をするための各農協なりに対します資金はあっせんをするということで、当初話は進んでおったのでございますが、なおそれでも、これが昨年は北海道の冷害は非常に激しく、かつ非常に広範であった。従って、北海道全体の経済連その他が非常に金融的あるいは財政的に困難を来たしたというようなためにとりました異例の措置といたしまして、利子補給という措置をとったわけでございます。従って、今回は果してこの措置がとれますかどうですか。これはもう少し検討いたしたい、こういうふうに実は考えておるのでございます。
  65. 柴田栄

    ○柴田栄君 北海道の特殊な冷害等と原因は多少違っているとは思いますが、前回、あるいは今日、それぞれ陳情がありましたように、佐賀、長崎、高知等々南方地域において、異常な気象のために、冷害被害を局地的にこうむっているという事情があるようでございますが、これらについては農林省として調査が進められているかどうか、まず第一にお伺いいたしたいと思います。
  66. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) 農林省におきましては、ただいままでのところ、ある程度の情報は入っておるのでございまして、ただいまお話しのように、西日本におきましても、七月上旬以降の低温、あるいは日照不足などで、不稔現象が発生いたしまして、その冷害による被害の面積その他もある程度わかっておるのでございます。  たとえば高知県におきましては、これは中間報告でございますが、水稲の二期作のあと作、及び疏莱あと作等の水稲被害のうちで、四千三百町歩という一応の数字が出ておるのであります。あるいはこれはもう少し少くなるのではなかろうかとも思われます。佐賀県におきましては、特に高冷地帯の被害の面積が多いのでございまして、これが約一千町歩余り、それから収穫皆無がそのうち二百十町歩、それから平坦地帯におきましては五百町歩。長崎県でもやはり六百町歩程度の被害が出ているという報告を受けております。
  67. 柴田栄

    ○柴田栄君 ただいまのお話だと、まだ経過中のようにも見えますし、報告を特に取られたというわけではなしに、情報を集めておられるという程度のように承わりますが、こういう災害地の対策というものは、適期に処置をしていただくということでないと、いたずらに苦しみを多くするだけで、効果は割合に薄いというようなことにもなりはしないかと思うのだが、かような情勢が察知されるとすれば、私は、局地的であり、多少いつもの災害から比較すれば地域的にひどくても、全体的に軽いというような見方のために、やや調査その他対策がおくれるというような危険があるような気がしますが、これらの問題については、何か具体的に農林省としてこれの対策を進めるための手を打っていただけるかどうか、その点一つ伺いたい。
  68. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) 西日本の方の冷害の各県に対しまする対策でございますが、これは先ほど申し上げました通り、冷害が全国的にわたっておりますので、これを全体として把握しました上で、まず資金、融通の問題、天災融資法による指定をまず行なって、資金融通をまずはかりたい、こういうふうに考えます。そのほかまだ、共済保険の早期払いという問題があれば、もちろんこれは制度的な問題でありますから、極力進めるというようにいたしたいと思います。なお、そこで特に今回の被害、冷害で問題になりますのは、種の対策かと思いますので、種の対策その他のために、ただいま各地に農林省からも人を派遣しておる最中でございます。
  69. 柴田栄

    ○柴田栄君 具体的に調査はどういうふうに進めておられるか、ちょっとお聞かせ願います。そうすると、大体どれくらいで一応対策を立てていただくような調査を完了していただくかという時期の問題が、相当に問題だと思いますので、ただ調査を進めておるというお話だけでは、ちょっと明確でないのです。
  70. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) これは至急に調査いたしたいと思うのでございますが、御承知のように、農林省としてのまずよりどころとすべき調査は、統計調査部の調査ということになりますので、現在そちらの方の機構を動員してやっておるわけでございますが、なおまた現地の実情をじかに感じとるということも必要でございますので、こちらからも人をやっておりまして、現在高知あたりに対しましては、本省の統計調査部の管理課長あたりが現在行っておる最中でございます。その調査が済み次第、直ちに対策をいたしたい、こういうふうに考えております。
  71. 柴田栄

    ○柴田栄君 それは統計調査部をお使いいただくこともけっこうだと思いますし、本省から出かけて行くこともぜひ必要だと思っておりますが、ただ、それは漫然と調査を進めていただくということになれば、大へん相手方としては、一体いついろいろな対策、救済の手が伸べられるかということで、非常に不安があると思うのです。ですから、大体本省でもお認めいただいているような天災の一部だということになれば、これに対して極力早く具体的な手を打って、当該罹災者に安心を与えるということも必要なことだと思うのです。おわかりでしたら、大体調査はいつごろまでに完了して、具体的な手を打つということをお示しいただけないかと思うのです。
  72. 岡崎三郎

    説明員(岡崎三郎君) まことに残念でございますが、まだそこまで聞いて参っておりませんでしたので、今直ちにお答えできませんので、直ちに調べてお知らせ申し上げたいと思います。
  73. 柴田栄

    ○柴田栄君 まだはっきりつかんでおられないとすれば、これはやむを得ませんが、しかし、九州地方では、御承知通り、七月以降大水害のために、その対策には相当、国をあげて真剣になって、救済あるいは対策をしていただいていると、こう思われるのですが、災害を受けた当事者にとってみれば、大きな災害も、局部の災害も、罹災者としては同じだと、こう思うのです。ややもすると、大きな災害にかまけて、小規模の災害については国の手が及ばないという印象を受けることは、政治の公平のために大へん望ましくないことだと思いますので、農林省としての行政措置としても望ましくないことだと思うのです。まあ今調査中というお話でありますならば、まあなるべく早い機会に具体的な調査を完了されるお見込み、あるいは完了される時期等おわかりでしたら、一つお示しをいただきたい。そうしてそれに対しまする対策を御報告をいただきたいということを、お願いしておきます。
  74. 堀末治

    ○堀末治君 関連ですが、これは今北海道の災害その他について、東さん、柴田さんからもお話があったが、去年は北海道はああいうように特殊な冷害で、大へん困ったのです。しかし、幸いに昨年は政府の手の打ち方が非常に早くて、非常に喜んでおる。また私たちも各地を歩いて、九九%いろいろの政策をこうむって、ありがたかったというお礼を受けたのです。さようなことで、当然このような問題は措置しなければならないのだから、どうか今皆さんの御希望通り、できるだけ早く……。年を越すようなことのないように、特に北海道は雪が早いので、もう間もなく雪が降るのです。北海道は半分はよくて半分は悪いのですから、その半分の方はこれはひどいのですから、どうかそれらを考えまして、至急に一つやって、年内のうちにそれぞれの施策が行われることを、特に私からお願い申し上げます。   —————————————
  75. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 次に、流下式製塩による農作物被害の件を、議題にいたします。  この件については、堀本委員から質疑の御要求がありますので、この際御発言を願うことにいたします。
  76. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 専売局と農林省にお伺いをいたしたいと思いますが、流下式製塩法は従来からもあったと思いますが、近年非常な長足の進歩で、製塩法の改良に伴いまして、ほとんど従来の日光によるといいますか、あるいは太陽熱によりまする従来の方式が改められて、ほとんど流下式に変っておるようであります。この製塩法によりまして、農作物あるいはその他の家屋、周囲の耕作物等に被害が出ております。この被害がありますことを専売局は御承知になっておりますか。被害があることを承知して、あの流下式製塩法を行われたのか、あの流下式製塩法を行うに当っての専売局のとった措置を、お伺いしたいと思います。
  77. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) ただいまお話のございました流下式塩田の塩害の問題でございますが、お話のございました流下式塩田は、この塩田面をいわゆる流下式という方式に変えまする以外に、これと組み合せまして、枝條架といっておりますけれども、この枝條架というものをつけまして、流下面で一たん濃縮いたしました海水を、さらに枝条架にかけまして濃縮するという方式をとっております。枝條架で濃縮いたしましたものを、工場に送りまして、精塩いたすという順序になっておりまして、ただいまお話しの塩害は、枝條架に伴って発生をいたしましたのであります。  この点、公社といたしましては、実は枝條架というものをまだ始めまして二、三年でございまして、二、三年の間に長足に枝條架が普及をいたしましたので、専売公社といたしましては、ただいま流下式塩田の転換につきましては、塩田面積に対しまして五%以内の枝條架を標準といたしまして、その範囲内におきまして寄金のあっせん等をいたしておるのでございまするが、ごく、この一、二年の間に、枝條架の効果が非常に高いということが塩田業者の間に知られて参りまして、専売公社が指導いたしまする割合以上に、枝條架を非常にたくさん作りまして、それによりましてこの塩田の成績を上げるというような傾向が非常に強くなって参りました。私どもも、この枝條架と申しまするものが相当高いものでありまして、それから飛びまする鹹水、海水の飛沫が相当広くその近所へ飛ぶおそれがあるということを心配いたしまして、枝條架の高さあるいはその枝條架の設置場所というようなものにつきましては、相当細心な指導をいたしておるのでありまして、この枝條架を立てることによりまして、付近の農村あるいは住宅地というようなものに何らかの御迷惑をおかけするというようなことは、公社といたしましては絶対にこれはもう考えてもおりませんでしたし、そういう指導をいたす考えはなかったのでありまするが、ただいま申しまするように、枝條架の割合が公社が奨励いたしまする以上に非常に最近急激にふえて、しかもその高さも公社が標率といたしておりまする高さ以上に非常に高いものが出て参り、あるいは風によく当るようにというので、堤防の上とか、そういう相当高いところに争って設けるというような傾向が出て参りまして、ついにお話しのありましたような塩害の問題が発生するということになりましたのは、非常に専売公社といたしましても遺憾に存じておることでございます。  今年になりましてから、香川県等にまずこの問題が起りまして、公社といたしましても非常にその点の影響を心配いたしまして、直ちにこの点につきましては管轄の地方局を督励いたしまして、その状況調査し、これは農林省にお願いをいたしまして、先般香川県等の御調査も願ったのでありまするが、その御調査の結果に基きまして、今後の枝條架の指導方策というようなものも相当検討し直す。また現在枝條架を立てておりまするものにつきましても、気象条件、あるいは風速等によりましては、その操作を制限する、あるいは停止するというような基準を、各塩業組合ごとに設けさせまして、その基準を励行させるというふうに非常な努力をいたしまして、塩業者の実は指導をいたしておるのであります。しかしながら、多数の塩業者の中には、まだその点の公社の指導いたしておりまする趣旨が徹底いたしませんで、特に台風が襲来して気象条件が製塩に適するというようなときに、かまわずに枝條架を操作してその近傍に御迷惑を与えたというような例が出て参りまして、これにつきましてはきつく注意をいたし、改善方を指導いたしております。  なお、高松の地方局が特に地元の責任地方局でございまするが、高松地方局におきましては、各塩業組合ごとに枝條架の塩害防止に関する申し合せ規約というものを作りまして、これを各塩業組合ごとに実施せさて、責任者を定めて地方局に届けさせるというような程度まで、その後の指導に遺憾なきを期しております。この例を他の地方局にも知らせまして、他の地方局も現在ではこれにならいまして、相当綿密な枝條架の操作に対しまする注意をいたしておるような状況でございまして、これまで枝條架によりましていろいろと御迷惑をおかけするような事態を引き起しました点につきましては、まことに申しわけない次第でございまするが、今後のこの点につきましての専売公社並びに地方局、塩業組合の措置につきまして御了解を願いまして、御了承を得たいと思います。
  78. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 農林省はどういうふうな態度をとっており、これに対して調査をしたことがあるか。また調査をして被害があった統計があがっておれば、それを知らせていただきたいと思う。それから農林省と専売局がこれの問題について協議をしたことがあるのかどうか、それも伺いたい。
  79. 酒折武弘

    説明員(酒折武弘君) お答えいたします。この点につきましては、本年の六月に香川県知事から農林省に対しまして、被害の実態調査をしてもらいたいという希望がありまして、これに基きまして、農林省でも専売公社と打ち合せの上で、七月中旬に調査団を現地に派遣いたしました。専門技術者による調査団を派遣いたしまして、その結論といたしましては、まず一番目として、今回の被害の原因は塩水の付着によるものであるということについて、両者の意見が合致しておりました。そこで、これに対する対策といたしまして、まず製塩業者側では操業について適正を期する。それから海水の飛散を防止する必要な設備をするということについて、業者の指導をすべきだ。それから果樹生産者側におきましても、そういう製塩業者側の防止策にもかかわらず、なおかつ被害があった場合には、できるだけ早く噴霧器による水洗いをするこいうようなことで、できるだけ被害の防止を行うべきである。そういうふうな調査結果の報告がございました。  そこで、この報告に基きまして、公社に対しまして、この趣旨に従って現地指導をやってもらいたい。それから、われわれの方でも都道府県知事に対しまして、こういう状況であるから、ぜひ製塩者側と協議して被害の防止に努めなさいというふうな通牒を出した次第でございます。  で、その後の中間報告がございましたが、報告によりますと、過去の被害につきましてのいわゆる損害賠償の問題は、おおむね片がつきまして、一部残っておりますけれども、これは十一月中にはおそらく解決するであろうという見通しでございます。  それから今後の対策の具体的方法につきましては、現在話し合い中の模様でございまして、できるだけ早く中間報告なり最終結論をこちらに連絡してもらいたいということを、向うに連絡中でございます。大体そういう状況でございます。
  80. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これは農業と専売局とは、今に始まったことじゃないので、養蚕とタバコの問題でもそうなんだが、非常にこれは古い関係で、古い問題でありますが、問題になったことがある。今度の問題もそうなのであって、どうも農業の方が弱いのですね。結局傷つくのは、農業の方が傷つくわけなのであります。タバコと養蚕の問題でも、相互の理解と技術の進歩で、おおむね最近は紛争はないようでありますが、しかし、これも絶無とは言えないと思います。そういうことで、この農地、農業の災害なんていうものは戦後にも続発をいたしましたが、これらは非常に農業経済に重圧を加えるものでありますが、しかし、この災害が主として自然的な、不可避な、不可抗力によって起ってくる暴風だとか、あるいは洪水だとかいうものによる災害、被害が大きいのでありますが、こういう一つの目的を持っておる構築物が、今にその被害の跡を絶たないというようなことがあるのにもかかわらず、しかも、二、三年前から各所にこういう問題が起っておるのにもかかわらず、専売局もそのまま、いろいろ注意したとか、あるいはこういうことを要望しているとかいうことにとどめ、農林省も、でき上ったことを調査して、あとから通牒を出したとか何したとかいうことにとどめておるということは、私は抜本的な解決ではない、こういうふうに考えるのであります。  で、要は、製塩も大事なことでございましょう。けれども、この製塩法というものは、私が申し上げるまでもなく、風を利用してやる方法だと思っております。日光を利用し、太陽熱を利用してやるということから進んで、高い——どういう基準か、先ほども標準を設けておるとおっしゃいましたが、専売局はどういう標準を設けておいでになるか知りませんが、私の知りますところによりますと、二十五尺ないし三十尺の構築物をしておるのであります。しかも、風当りのよい大体場所を選んで、そういう構築物をしておる。だから、風を利用しておるのでありますから、風のときにそれを吹かさなければ、製塩には、減水にはならない、密度が悪いということになるわけでありますの、で、そのことによって受ける周囲の耕作物、あるいは農家のとい——農家に限りません、といでありますとか、トタン、金属製品等がまっかになっている例はあるんでありまして、一々それを噴霧器を毎日持っていって洗えるものではございません。これは口で言うことは非常にやすいが、年々毎日やっておるそういう被害をこうむる周辺の農家というものの受ける精神的なショック、あるいは実害というものは大したものであります。今年も起っております。これは、ただに香川県だけの問題ではございません。流下式製塩にほとんど日本の製塩は変ったと思いますが、製塩場のある所はことごとくかような状況でございます。これに対しまして、私は、一ぺんの考慮するとか、通牒を出したとか、あるいは自粛をしたとかいうような問題で解決すべき問題ではない。  現にその損害要求を出しておりまするけれども、損害要求を判定いたしまする方法が、きめ手がないのであります。農作物は日に日に変っております。そして作物みずからが、その侵されたところをいやそうとする自衛的手段によって、その損害は日とともに軽い様相を呈するものであります。そういうような状況下に置かれて、このまま農林省等におかれましてもこれを看過する等のごときは、私は少し考え方が甘いのではなかろうかと、こう思うのでありますが、また専売局におきましても、自衛的な、自主的な考え方なんと言わないで、周囲は板張りをするとかなんとか、はっきりとした防災法を講じるべきではないか、こういうふうに考えます。これについての両者の所見を伺いたい。
  81. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 簡単に、要点をつかんで……。
  82. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) お話の点、まことにごもっともでございまして、私どもも塩業者に対しましては、塩害の問題に関する限りは専売公社は塩業者の味方にならぬぞ、ということをはっきり申しております。そして防除の方法ということをお話しございましたが、これにつきましては、ただ単に努力するとか、善処するとかいうんでなしに、本社におきましても地方局におきましても、各塩田ごとに具体的に、どこにどういう向きに技條架がある、この技條架は大体の風向きに対しては危険である、これはここに移転しろ、というようなところまで指導いたしまして、大体御承知のように、塩田地の風向きは一年の時期によりましてきまっておりますので、この風向きに即しまして、被害をできるだけ食いとめるような方向に位置も移す。それからなおそれでも危険のある場合については、このまわりに、技條架のまわり、あるいは塩田のまわりに障壁を設けさせまして、それによってしぶぎの飛散を防止をさせるというような措置を、具体的にそれぞれやっております。  それから、それでもなお被害が起った場合には、これはまことに申しわけないことでありますので、できるだけすみやかに相手方と円満にお話し合いをして、お見舞をいたすということで、その場合には金銭の醵出によりまして誠意を示すということで、その方の指導もいたしております。  しかし、これは事後の処置でございまして、こういう必要がなくなることが理想でございまするので、その方向に向って処理をいたしておりまするが、今年になりましてから見舞金を出しましたものだけでも、すでに約三百万円になっております。個々の問題について塩業組合と相手方——耕作者あるいは貸付業者との間に、それぞれ話し合いをつけさせるようにあっせんいたしております。今後の処置につきましてなおとくに注意をいたしまして、今後さらに塩害が起るというようなことがないように、一そう努力をいたしたいと思います。
  83. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これは申し上げておきますが、農作物に被害がなければそれでいいという問題ではないのでありまして、たとえば地価というものが下ってくるんです。流下式塩田をやって技條架をやりますとその付近に家を建ててもどうしてもだめなんです。ですから、全然地価が下って、周囲の土地の値段が下ってきている。現実にもそういう例は随所に見られるわけであります。現にこの間の台風によって被害があって、まだもんちゃくを起している所もございます。御調査になりましたらよくわかりますが、私は所は申し上げませんが、それがなかなか心持よく話し合おうとしない。金さえ払えばそれでよいという考え方では、これは大へんなことが起ってくると思う。そうでない。それを未然に防ぐという方策が必要なのでございます。ことに暴風のときは、昼は周囲の目があるので流していないが、夜になるとスイッチを入れ、一番上に塩水が上って参ります。これは夜昼自由にできるのであります。そういうことをしているということを申しますが、私はそういうことはないと信じております。そういうインチキ的なことはあろうはずはございませんが、これについては専売局は、後日この議場その他でかようなことが問題になることのないように、永久の対策を講じていただくようにお願いを申し上げる。  また、農林省もそうなんです。とかく何でも引っ込み思案ですが、私は、農村がかくのごとくに大きなものに常にいためつけられている現状承知しながら、調査調査といったって、農林省がその報告を聞いて調査に行かれるまでには、相当の日時がたっている。もとの姿はございません。一体どういう方法調査するんですか。ほんの行ってみただけなんです。ほんとうの科学的な調査というものは、そのときでなければわからないのであります。なかなかこれはわかりません。そうしてわれわれの想像もできないような、その飛沫は一里も二里も遠方に飛ぶのでありますが、その周辺のつい隣りの田だとか、つい一町向うの畑だということではないのであります。そういうところも未然に防ぐという対策を、今後も農林省は専売局と相談をされてやっていただきますように、後日この御報告をしていただきますようにお願いをいたしておきます。
  84. 酒折武弘

    説明員(酒折武弘君) 先ほども申し上げましたように、この件につきましては、公社と合同の調査団を派遣したということでありまして、非常に私どもこの点については、公社も非常にわにれわれに協力的な態度をとってもらっております。  なお、調査団には、農業技術研究所の園芸部長梶浦氏等を派遣いたしまして、二人とも日本の園芸に関する権威者をもって実地調査をなさっております。その結果は、先ほど申しましたように、確かに塩害の結果であるという断定を下しておるわけでございます。そういう意味で、われわれといたしましては、できるだけの調査をいたしたつもりでおります。  なお、今後の問題につきましては、すでに具体的な被害防止の方法を指示しまして、万全を期するように通達はしてありますけれども、なお御趣旨に沿いまして、さらに遺憾のないように措置したいと考えております。
  85. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 もう一つ。今課長からそういうようなお話がありましたので、申し上げておきますが、これは架空な問題ではないのでありまして、現に両者の共同調査によりまして、その被害が完全に調査し得たような印象のあるお言葉で御報告になりましたが、私はさようには思わぬのであります。現にそういう自信があり、そういう権威あるものでございましたら、愛媛県越智郡の波止浜周辺に起った塩害が、現在紛糾しております。その賠償要求も紛糾しておりまするし、製塩業者もそれを是認いたしまして、一部の損害補償を出したのでありますが、そういうことについて即刻御調査を願って、御報告を願いたいと思います。お願いいたします。
  86. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) ちょっと私から御報告いたしておきますが、愛媛県の波止浜でただいま問題がございました。これは、この間の七号台風と十号台風の両方の台風時に、被害が発生したということでございます。七号台風の分につきましては、一部見舞金を出しまして、話がつきましたのでありますが、その以外の方々からさらに要求が出て、それからあとまた他の地区で十号台風の分が出て参りまして、ただいま三十二町歩にわたりまして、百七十万円の被害があるから、補償をよこせというお話が出ております。ただいま塩業者側と、それから市の農務課関係、それから地元の農業委員の方々と、その見舞を差し上げる金額につきまして話し合いを進めております。できるだけ早く解決をするようにということで、私の方からも特に指示をいたしました。  それから愛媛県のもう一つ、波方にやはり台風七号の被害がございまして、これは塩田七町歩の塩害が、被害を与えておるわけであります。これは米を収穫した上で、その減収状況によりまして被害額を協議しようということで、お話し合いができております。さようなことであります。
  87. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) いいですか。  本日は、この程度にいたします。これをもって散会いたします。    午後三時四十四分散会