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1957-11-04 第27回国会 参議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月四日(月曜日)    午前十一時四十分開会   —————————————  委員氏名    委員長     近藤 信一君    理事      青柳 秀夫君    理事      西川平治君    理事      阿部 竹松君    理事      相馬 助治君            大谷 贇雄君            小沢久太郎君            小幡 治和君            古池 信三君            小滝  彬君            小西 英雄君            高橋進太郎君            高橋  衛君            海野 三朗君            岡  三郎君            島   清君            松澤 兼人君            梶原 茂嘉君            河野 謙三君            大竹平八郎君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            高橋進太郎君            阿部 竹松君            相馬 助治君    委員            小沢久太郎君            大谷 贇雄君            古池 信三君            小西 英雄君            西川平治君            高橋  衛君            海野 三朗君            岡  三郎君            松澤 兼人君            梶原 茂嘉君            大竹平八郎君   政府委員    通商産業政務次    官       小笠 公韻君    中小企業庁長官 川上 為治君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件理事辞任及び補欠互選調査承認要求に関する件 ○派遣委員報告   —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会開会いたします。  まず、本委員会運営につきまして、一昨二日及び本日の二回にわたって開かれました委員長及び理事打合会において意見の一致した事項について、御報告いたします。  まず、委員会中小企業団体法案外二件の審査を主として、さしあたり本日午前中並びに五日、六日、七日に開会することにいたしまして、特に明五日午前十一時から午後一時まで総理の出席を求め、団体法案関係質疑を行うこととし、その際の質疑の御通告をあらかじめ委員長までお申し出いただくことにいたしました。また、十一月七日午前中、団体法案と憲法との関係について参考人及び横田公正取引委員会委員長出席を求めることにいたしまして、その間通産省関係明年度予算編成の方針について説明を聞くことにいたしました。  以上の打合会の申し合せの通り取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らうことにいたします。   —————————————
  4. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、前回以後の委員の異動について御報告いたします。  去る十月二十八日、木島虎藏君が辞任され、補欠として井村徳二君が選任されましたが、十月三十一日井村君が辞任され、その後任として小西英雄君が委員に選任されました。また同日、土田國太郎君が辞任されて、後任高橋衛君が選任されました。以上御報告いたします。   —————————————
  5. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それではこれより議事に入ります。  まず、理事辞任の件についてお諮りいたします。  一昨二日付をもって西川平治君から、都合により理事辞任いたしたい旨の辞任願い提出されました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましてはこの際、理事補欠互選を行いたいと存じますが、互選の方法は、慣例により委員長指名に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認めます。それでは理事高橋進太郎君を指名いたします。   —————————————
  8. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、調査承認要求の件についてお諮りいたします。  第二十五国会以来調査を続けて参っております経済自立と発展に関する調査につきましては、本国会においても引き続き時宜に応じて調査を行うため、この際前国会と同一の要領により、調査承認要求書を議長あて提出することにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  10. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、閉会中に引き続き中小企業団体法案中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案を一括して審査を行います。  まず、委員派遣によりまして、去る十月二十六日に福岡で開催されましたこれら三法案に関する現地調査会の模様につきまして、派遣委員を代表して青柳君から御報告を承わることにいたします。
  11. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 福岡で行いました中小企業関係法案等に関する現地調査会について御報告申し上げます。  派遣されました委員近藤委員長相馬委員土田委員及び私の四名であります。十月二十四日に東京を出発、二十六日に福岡市の西日本相互銀行会議室調査会を行いました。意見を述べた者は福岡中小企業等協同組合中央会長大塚政次郎君外十二名で、内訳を申しますと、賛成者五名、反対者五名、中立的立場の者三名であります。賛成意見は、協同組合中央会専門店会工業協同組合火災共済協同組合から見えた方々であり、反対意見労働組合生協企業婦人会百貨店等から見えた方々でありました。学識経験者としては、大学教授新聞論説委員商工会議所事務局長でありまして、この三人のうち一人はほとんど無条件に賛意を表し、他の二人は非常に多くの修正を要望されましたが、第一条の目的には強く賛成するという意見でありました。  全体を通じまして各地で行われました調査会と同様でありましたが、ただ、北九州の特徴といたしまして、中心機械工業にあった点は注目してよいと思うのであります。  会は午前十時に始まり、きわめて順調に運んで、午後三時半に終りましたが、終始熱心に意見を述べられ、私ども質疑に対してもよく答えられました。その詳細について述べますと長くなりますので、幸い速記録が参っておりますので、回覧いたしまするからごらん願いたい。また、委員長におかれましてはこの速記録会議録に掲載するようお取り計らい願いたいのであります。  なおこの際、現地調査会に御尽力下さいました福岡通産局並びに現地関係者に厚く御礼を申し述べて、簡単ながら報告を終りたいと思います。
  12. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまの青柳君の御報告に対し御質問はありませんか。——それではただいまの御報告の際に甲されましたように、現地調査会記録会議録に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らうことにいたします。  それではこれら三法案に対する質疑は、明日以後に譲りまして、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十八分散会     ————◇—————   〔参照〕     中小企業団体法案等現地調査会記録   日時 昭和三十二年十月二十六日(土曜日)      午前十時   場所 西日本相互銀行会議室   (出席者)  ○派遣委員    委員長     近藤 信一君    理事      青柳 秀夫君    理事      相馬 助治君            土田国太郎君  ○事務局    商工委員会専門    員       小田橋貞寿君  ○通商産業省    福岡通商産業局    長       人見  孝君    中小企業長振興    課長補佐    関 徹四郎君  ○意見陳述者発言順)    福岡中小企業    等協同組合中央    会会長     大塚政次郎君    九州百貨店協会    事務局長    鬼木  浩君    西日本新聞社論    説委員     速水与一郎君    八幡鉄工業協同    組合理事    湯山  要君    福岡婦人会会    長       柴田 芳江君    福岡商工会議所    事務局長    橋田 有一君    西日本専門店協    同組合理事長  内野 光雄君    福岡総評事務    局次長     江崎  淳君    福岡火災共済    協同組合理事長 野田 貫造君    株式会社安川電    機製作所業務部    長       渡部  博君    小倉機器工業協    同組合理事長  瓦田友次郎君    福岡生活協同    組合連合会会長 中倉 正城君    福岡大学教授  三苫 夏雄君     —————————————    午前十時開会
  14. 近藤信一

    座長近藤信一君) ただいま、通商産業局総務部長から開会の辞で述べられた通り、われわれ、参議院商工委員会において、目下、継続審議中の「中小企業団体法案」等につきまして、親しく現地皆様の御意見を率直にお伺いいたしますことは、至極、欣快に存ずる次第であります。  御承知通り、これら法案は量において厖大なるのみならず、その内容も難解と極め、またわが国産業政策上、或る意味において画期的法案とも申すべく、世間における賛否の論もやかましいので、参議院におきましては、これが取扱いには極めて慎重を期し、国会閉会中にもいくたびか委員会を開いて審議を重ね、また地方では今までに、大阪、仙台、金沢、札幌及び名古屋でこのような現地調査会を実施しました。しかし中小企業の大中心地たる御当地で御意見を聴く機会を持たなかったので、今回出て参ったようなわけで、よろしく願います。皆様の御意見を伺います前にまず、ここに出席しております当委員会委員を御紹介申し上げます。すなわち           青柳 秀夫君           相馬 助治君           土田國太郎君であります。  私は、商工委員長近藤信一でありますが、不肖、この会議座長をつとめさせて頂きますので、何分よろしく願います。  なお、参議院事務当局より、当委員会調査室小田橋君が参っております。また、通産省からも、中小企業庁並びに当地通産局方々が見えております。  参考意見を述べて頂く方は、すでに福岡通商産業局より御手配願いましたように、福岡中小企業等協同組合中央会長大塚政次郎君ほか十二名の方々でございます。御多忙のところを御出席をお願いし、恐縮に存じております。  次に御意見を伺うにつきまして、この会の進行について、一言申し上げます。  私どもは、参議院規則第百八十条の二の規定により派遣されて参ったのでありますが、この現地調査会も、参議院委員会に準じた形で行うことといたします。  従いまして、御意見陳述の方の御発言は、すべて座長の指示によって行います。  この際、お断り申し上げて置きますが、この会議説明会ではございませんので、御意見陳述方々から、われわれ委員に対し、質疑はできないことになっております。  この点、予め御了承願います。  また、傍聴人方々には、特に静粛に願い、拍手なども御遠慮願って、われわれの調査に、御協力下さいますようお願いいたします。  御意見を伺うことになっております法案は、 ○中小企業団体法案中小企業団体法施行に伴う関係法  律の整理等に関する法律案中小企業等協同組合法の一部を改正  する法律案以上の三法案でございます。  このほかに、衆議院では、政府提案の「小売商業特別措置法案」及び、議員提案の「中小企業産業分野確保に関する法律案」「商業調整法案」「中小企業に対する官公需確保に関する法律案」「下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案」「百貨店法の一部を改正する法律案」の五件、併せて六法案継続審査になっておりますので、本日は申すまでもなく参議院継続審査になっております最初の三法案に関する御意見を承るのが主なる目的でありますが、これとの関連において、右の六法案に言及されることはさしつかえございません。  次に、本日の御意見陳述の時間でありますが、先の日程との関連もございまして、恐縮でございますが、御一人当り十分にお願いいたし、その順序は勝手ながら、座長にお任せ願いたいと存じます。  それから御意見を拝聴した後で、御質問申し上げることがあるかと存じますので、しばらくお時間を頂き、これにお答え願いたいのでございます。  本日の議題となっております団体法案、同施行法に伴う法案、及び協同組合法改正案については、すでに各位におかれましても、新聞、その他で御承知のことと存じますし、また、お手許に若干の資料を差上げてありますので、別に説明の必要もないと思いますが、一応その提案されました趣旨などにつき、われわれより簡単に御説明申し上げることといたします。  それでは、法案趣旨について当委員会調査室小田橋専門員に簡単に説明を行わせます。
  15. 小田橋貞寿

    小田橋貞寿君 それでは御命令によって三法案について御説明申し上げます。この三法案はただいまの御挨拶にもありましたように、  中小企業団体法案  中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案の三つであります。団体法案施行法案とは政府提出に係るものでありますが、これが衆議院修正を受けて、そのまま成立しますと名称も「中小企業団体組織に関する法律」ということになるのでありますけれども審議案件としては最後まで中小企業団体法案として取扱うことになっておりますので、その点御了承願います。従いまして、最初原案について、次いでその修正案につき、最後にその修正の際に新しく議員提案となった協同組合法改正案について、主として、その提案理由に従い、その骨子を申し上げようと思います。  まず内閣提出の「中小企業団体法案」について説明します。  御承知のとおり、中小企業組織に関する制度といたしましては、中小企業等協同組合法による協同組合中小企業安定法による調整組合との二つがあるのでありまして、それぞれ、前者は共同経済事業による経営合理化を、また、後者は調整事業による経営の安定を目途として運用してきたのであります。  しかしながら、我国の中小企業の多くは、過度の競争等により依然として経営の不振と不安定に悩んでおりますので、政府は昨年六月、内閣中小企業振興審議会を設置し、同審議会の答申を検討した結果、中小企業振興のための最も基本的な施策として中小企業組織の充実、団結の強化を図ることが先ずもっての急務であるとし、そのため、本法律案提案して参ったのであります。  本法律案の概要を原案について申し上げますと、  第一に、現行調整組合制度を廃止して、新たに調整事業共同経済事業を併せ行うことのできる組合として、商工組合制度を設けることであります。  共同経済事業をも併せ行うことは、協同組合調整組合の二重設立の煩わしさを除こうとするのであります。  第二に、総ての業種について、一定の要件を備える場合には、商工組合によって調整事業を実施できるようにするのであります。  中小企業安定法によりますと、特定の工業部門のみ調整事業を行うことができるようになっておりますが、過当競争に悩んでいるならば、工業以外の各分野例えば商業サービス業等におきましても、調整事業を実施することが出来るようにしようとするのであります。  第三に、組合がその調整事業に関して組合外の者と交渉を行うときは、その相手方は、誠意をもってこれに応じなければならないこととしてあります。  第四に、組合調整事業が、員外者事業活動のため効果を挙げることができず、ために業界の安定に重大な悪影響があり、国民経済上もこれを放置することができない事態に立ち至りましたときは、政府は、その業界における総ての中小企業者組合に加入せしめ、または、組合員たる資格を有する総ての者の事業活動を規制する命令を出すことができるようにすることであります。  所謂員外者の行為を規制する必要がある場合、まず中小企業業界が完全に団結すれば不況事態の克服が可能と思われるときは、中小企業の総てを組合に加入させて自主的調整に参加させるようにし、その他の場合におきましては、現行中小企業安定法におけるが如き員外者規制命令を発するわけであります。  第五に、協同組合制度につきましては、本法においてはこの制度をそのままとりいれ、組織運営等につきましては従来の中小企業等協同組合法の定めるところによることとしてあります。  次に同じく内閣提出の「中小企業団体法施行に伴う関係法律案整理等に関する法律案」について申し上げます。  この法律案は、団体法が成立いたしますと中小企業安定法が廃止され、調整組合がなくなりまして、商工組合ができますので、金融上、税制上、商工組合事業協同組合と同様に取扱うための諸法律改正を行うと共に、関係法律の中にある安定法とか調整組合という文字を、中小企業団体法とか商工組合という文字に改める等、所要の技術的な改正を行うための法律案であります。  次に「中小企業団体法案」並びに「団体法施行法案」の修正について申し上げます。  御承知通り団体法案は五月七日衆議院を通過するに際し自民党、社会党の共同提案にかかる修正を受けました。それに伴いまして「施行法案」にも所要修正が加えられたのであります。  衆議院では政府提出の「中小企業団体法案」と水谷長三郎君外二十三名提出の「中小企業組織法案」とが併行して審議されておりましたが、採決は団体法案修正という形になったのであります。そこで修正の要点を申し上げますと 第一に法律の題名を改めまして  「中小企業団体組織に関する法律」  としております。 第二に組合交渉について応諾の規定を強化するよう第二十九条を改めました。 第三に中小企業団体の新たなるものとして、事業協同小組合及び火災共済協同組合を設けております。 第四に商工組合設立認可に関する第四十二条に一項を追加して、不況事態の認定にあっては、中小企業安定審議会に諮問して定める判定の基準に従うことにしております。第五に加入命令があったとき、その命令の対象となった中小企業者のうち、組合に加入することに支障がある者は、命令の日から二週間以内に、行政庁にその旨の認証を求めることができるよう第五十五条を改めております。この認証は二十日以内に行うこととし、認証を受けた者でも、商工組合の行う調整事業制限には従うこととし、又検査の実施及び手数料、経費、過怠金の賦課ができることにしてあります。また右の加入命令があった日から九十日以内に、調整規程を変更するかどうかについて、総会の議決を経なければならないことという規定を加えております。 第六は設備新設制限又は禁止でありまして、第五十六条の規定により生産設備制限に関する命令をする際又はした後において、特に必要がある場合には、命令有効期間中、 組合地区内における生産設備新設制限又は禁止を命ずることができるという第五十八条を入れております。 第七は不服の申立で、本法にある種々の命令、即ち加入命令規制命令設備新設制限禁止命令又は加入命令のあった商工組合調整規程に不服がある者は、その旨を書面を以って主務大臣申立をすることができる旨の一項を第七十条に加えております。  以上が団体法案の主なる修正点でありますが、これらの修正に伴いまして「中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案」についても修正が行われているのであります。  次に衆議院商工委員長提出の「中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案」について御説明申し上げます。  本改正案骨子は、現行法規定されております事業協同組合等の外に、新たに事業協同小組合及び火災共済協同組合制度を設けること等の改正を行おうとするものであります。  本件につきましては、「中小企業団体法案」の修正案をまとめる際に与野党間において話し合いました結果、事業協同小組合及び火災共済協同組合の構想は、現行中小企業等協同組合法改正によって実現させるのが適当であるということに、意見が一致し、委員会提出の形式をもって、衆議院提案、その可決となったものであります。  本改正案内容につきまして簡単に御説明いたしますと、  まず、事業協同小組合につきましては、第一に、組合員資格は、主として自己の動労によって商工業、鉱業、運送業サービス業等を行う事業者であって、使用従業員数工業等にあっては五人以下、商業サービス業にあっては二人以下のものであります。  第二は、政府は、小組合組合員の助成に関しまして、金融上その他特別の措置を講じなければならないこととすることであります。  次に、事業協同組合及び事業協同小組合に対しましても、商工組合と同様の交渉権を与え、これに関するあっせんまたは調停の規定を設けるとあります。  次に、火災共済協同組合につきましては、  第一に、組合員資格は、組合地区内における中小企業者であることと  第二に、出資金の総額は、組合にあっては二百万円、連合会にあっては、五百万円以上とし、組合員数は、千人以上を要することとしてあります。  第三は、共済金額制限であります。即ち、契約者一人について、百五十万円を限度とし、それはまた出資準備金積立金支払保証額等合計額の十分の一・五を超えないこととすることであります。  なお、事業協同組合及び小組合福利厚生事業として火災共済契約を締結いたします場合には、契約者一人につき、三十万円を限度とし、特例として、以前から、火災共済事業を行っている組合は、これを超えることができることとしております。  第四は、募集制限についてでありまして、募集にあたるのは、当該組合組合員、役員又は職員に限ることとし  第五は、保険業法報告徴収、立入検査、監督命令、その他の監督規定を準用することとしてあります。  第六に、所管行政庁は、通商産業大臣及び大蔵大臣とし、なお、組合設立認可及びその他の権限の一部は、都道府県知事に委任するものとするのであります。  以上簡単でありますが三法案説明を終ることといたします。
  16. 近藤信一

    座長近藤信一君) それではこれより順次ご意見を拝聴いたします。なお委員質疑は、陳述者意見発表が終ってから最後に行いたいと思います。  ではまず、福岡中小企業等協同組合中央会会長大塚政次郎君からお願いいたします。
  17. 大塚政次郎

    陳述者大塚政次郎君) ご指名によりまして、意見を申し上げてみたいと思います。  だいたい大局的に考えてみまして、中小企業がもっております日本の経済構成上の重要性というものは、いまさら私がるる申し上げる必要はないと思うのであります。  しかるにこれらのことが、国民全般の面からながめまして、いわゆる中小企業以外の分野、そういう面をかれこれ考え合わせた場合におきまして、やはりなんとかこれは政府におきましてもご考慮を願い、抜本的な行き方を希求してやまない気持はいっぱいであります。たとえば農民にたいする関係、あるいは勤労者にたいする関係などにつきましては、それぞれ所要措置が講ぜられ、その安定は確保されつつあるのであります。  ご承知のとおり中小企業におきましては、経済界の変動によりまして、常にその波の間に間に押し流されている実情などは、これまたるる申し上げる必要はないのであります。かような情勢などから考えてみますと、どうしてもこれは中小企業そのものがもちます根本的な複雑多岐にわたる性質、また経営上の力が弱いという面もあると思います。  なお、明治維新いらいの過去の歴代政府の大企業偏重政策の関係もありうるかと思います。これらのことはるる申し上げるまでもないのであります。そういう面で常に中小企業は非常に不安定な状態におかれていることは、これまたるる申し上げる必要はないと思いますが、さような見地に立ちまして考えてみますと、どうしてもこれは基本的な対策が必要であります。そのような意味で、従来は中小企業等協同組合法中小企業安定法などによりまして、これらの行き方につきまして、方向が示されておったのでありますが、今回提案されました中小企業団体法によりまして、これをより一歩進める感がいたすのであります。もちろんこれにつきましては、いろいろ論議も多いようでございます。しかし、さきほど申しますような国民全般の職業分野、あるいはあり方、そういうような面から考えますと、どうしてもまずは中小企業の団結、これを基とした組織の強化が必要であります。  而して、この団結、あるいは民主的な基本観念に立った行き方、このような考え方を、抽象的ではありますが、実は希求しているような次第でございます。  そういう意味から考えまして、今回の団体法は是非ひとつ、成立させていただきたいという強い念願をもっておるわけであります。  ひるがえって、本県の実情などを簡単に申し上げますと、ここにご出席を願っております青柳先生は、十二分にご了承のことと思いますが、当県の工業地帯、あるいは炭鉱地帯はどの関係を考えますと、これには関連産業、ないし下請工業などがあるわけであります。これらは親工場という関係におきまして、常に好況の時は安定感をもっておりますが、不況の時はやはりすべての被害を受けるということは申すまでもないことであります。  要しまするに、この下請工場の関係におきまして、私考えますのは、たとえば先生方はご承知と存じまするが、愛知におきますトヨタ自動車の例でございます。  私一昨日東京で関係者から聞いたのでありますが、これらはやはりこの下請工場と親工場の関係におきまして、非常にうまく緊密な関係ができておるからだと思います。  と申しますのは、系列的な組織からできているからだと考えます。もちろんこれは完璧とまではいかないかと思いますが、そういうことを実は聞いております。  これはやはり業界自体が一つの組織を基礎といたしまして、有機的な連絡をとっているからだと思います。而して経営合理化、生産性の向上をはかっているというような状況であるようであります。一面また一つの職業問題と申しますか、人口問題と申しますか、そういう面から考えてみましても、大企業に吸収されないところの多数の若き青年などは、常に中小企業が吸収しております。  こういう面から考えましても、どうしてもこの中小企業組織化し、合理化していかなければという強い考えをもっておるわけでございます。一面商業者の面をみても、商業者の数が非常に多いという関係もありましょうが、ここに過当な競争が行われて、元を割って物をさばくということもありうるわけであります。もちろんこれは自由競争であるという点から考えますと、必然的な結果とは思いますが、その結果がいかになるかということは、これはやはり考えるべきであります。刹那的な目ではなくて、長い目をもって考えて行くべきじゃないかと思います。  この安定をはかる方策として組織化が必要でありますが、これに合わせて金融の問題、税制の問題も相伴ってくるかと思います。  そういう意味合から考えましても過当な競争が起らないような情勢が必要であると強く考えるものであります。  もちろんその結果、価格などの面で消費大衆の一部において危惧の念があるようであります。しかし私は考えますが、中小企業者といえども少なくとも社会の福祉にそわないような行動は許されません。経営の一線に立ちまして、少なくとも社会性をもった経営をやっていただかなくてはなりません。  大多数の中小企業者はそのような気持をもっていると思います。例外はありうるかも知れませんが、そういう意味合から考えまして、やはり国民全体が共存共栄するという高き理念に立ちまして、この法案が是非通過するようなご考慮を重ねてお願いするわけであります。なお、これらの運営上の問題などにつきましては、いろいろ政党の問題もあるようであります。これにもいろいろ議論はあるようでございますが、いずれにいたしましても、中小企業者の一つの基本法と申しますか、そういう意味合におきまして、なお、この中小企業の実態がどういうふうに推移していくか、また将来日本の産業経済がどういうふうに進まねばならないか、そういう見地に立ちまして、この将来の問題につきましては、成立した法案は除々に完璧を期していくということで、私はこのさい団体法の成立をみますことは適切ではなかろうかと、実は行き過ぎた考えかも知れませんが、そういう考えをもっておるわけであります。  なお、この団体法案関連いたしまして、諸法案改正がありますが、その中の一部で、事業協同小組合制度について、私いささか疑問をもっております。もちろん考え方と、ただいまご説明になりました趣旨などはよく了解いたしますが、やはりこれは業種別的な傾向が強いと思います。しかし地域的なものは各業態が違いますので、観念的にはよくまとまったように感じますが、これは組合運営上困難を感ずるわけであります。こういう意味合から考えまして、はたして小組合そのものでうまく結成できるだろうかという点に若干の疑問をもっております。  第二の疑問は、組合を結成したものは税利上の恩典があるということでありますが、それでは結成せざるところの業者はいったいどうなるかということであります。これは過渡的な問題かも知れませんが、バランスの上から考えますと、やはりこれは一考も二考も研究することが必要ではなかろうかという考え方をもっております。そういう考慮を前提といたしまして必要であるということには賛成するものであります。  つぎに申し上げたいことは火災共済協同組合についてでありますが、これはだいたい説明によりまして、既存の組織関係などにつきましても特例があるということで了承いたしましたが、この点につきましては、既存組織の現状などを十二分に考慮され、これらの維持発展をはかっていかれるようにお願いしたいと考えるわけであります。きわめて抽象的なことばかり申したようでありますが、だいたいの考え方を申しました。最後に重ねて申し上げますが、ぜひ本法案、ならびに関係法案の成立にご努力を願いたいと思います。
  18. 近藤信一

    座長近藤信一君) つぎに九州百貨店協会事務局長鬼木浩君にお願いいたします。
  19. 鬼木浩

    陳述者(鬼木浩君) ご指名をいただきました九州百貨店協会事務局長の鬼木浩であります。百貨店という立場上、主として流通機構に関する面から意見を開陳いたしたいと思います。ただいま参議院におかれまして、継続審議中でございます中小企業団体組織に関する法律案は、私ども百貨店といたしましては多年にわたって円満で、しかも安定的な取引関係にあります中小企業者、あるいはまた各都市におきまして、共存共栄の関係におかれております小売商業者との関係をみだりに破壊し、いたずらに対立抗争関係に追いやる、そういった問題も生じてまいります。  その結果、一般消費者にたいしましてもいちじるしく不利益になります。こういう考え方から私どもといたしましては、本法案をそのまま成立させることには強く反対の態度を表明したいと考えておるのであります。  しかしながら私どもは、中小企業者組織化自体につきましては、いささかも反対の意向をもつものではございません。むしろこれが合理的な振興対策につきましては、その必要性を痛感いたしておるものであります。  しかし、目下懸案中の団体法案によりましては、その内容からいたしまして、国民経済の円満な発展を期す上に少なからず障害をもたらすものであるということが考えられ、この点に黙視し得ないものがあると思いますので本法案につきましては、どうか参議院の諸先生方におかれましては、事情の許す限り期間をかけられまして、慎重な再検討を加えられますことを強く望むものであります。  しかしながら諸般の情勢からどうしてもこれを成立させることが避けられないといたしますならば、私ども百貨店といたしましては、以下申し述べます点につきまして、所要の配慮を加えていただくことが絶対に必要であると考えるものでございます。  主として流通機関の面から意見を開陳いたしたいと考えます。  まず第一に「商店街組合」についてであります。法第十条ただし書に定めてあります「商店街組合」の問題でございますが、一応業種別の商工組合というのはうなずけるのでありますが、とくに商店街、小売商、サービス関係に限って異種業種の集団であります「商店街組合」の制度を認めまして、業種別の組合地区との重複を許してあるのであります。  私どもが観察するところによりますと、業種別の小売業者の組合はともかくといたしまして、各商店街におきましては、それぞれ経営の態様、あるいは利害関係の相異なる異業種の集団につきましては、いずれの組合員とも共通的な、しかもそれを一律に行うというような調整事項があるということは絶対に考えられないのであります。それをとくに小売商業者であるが故に一律的にあえてそれができるとお考えになっているところが、私どもにはどうしても納得できないものがあるのであります。無理な制度法律でもって定めておかれますと、政治ボスの利用となりまして、どうしてもそこになんらかの力でもって無理やりに組合がつくられまして、しかも不合理な調整事業によりまして、小売業界に無用の混乱を招来するということが想像できるのであります。ある説によりますとサービスとか、あるいは閉店時刻、休業日といった点までも制限が加えられるというふうにうかがうのでございますが、それらにつきましては、事情を同一にいたします業種別の組合であって、はじめてそういった調整事業が必要に応じて適切にその業種別の組合で行うことができると思います。それをとくにわざわざ異種業種のいわゆる商店街の集団の制度を認めまして、これをやらねば不可能のこととはどうしても考えられないのであります。  またかりに一地域の組合がこの種の非常に消費者に不便をきたすような調整事業を行いました場合、それと隣接する他の商店街におきましては、かならずしもそういった調整事業を行う必要がなかったということも予想されようかとも考えられます。そのような場合に一般消費者はいずれの商店街へ行くであろうかということも当然考えなければならないことだと思います。そういたしますと、かならずしも調整事業をやりました商店街の救済にはならないというふうにも考えられるわけでございます。また一方、商店街はなにも調整事業をやろうとしているのではない。要は未組織の小売業者の団結が必要だというふうにもいわれておるそうであります。私どもは、さきほども申しましたとおり組織化の必要性は、これを痛感いたしておるものでございまして、なにも異存はないのであります。  しかしながら組織化の必要性のみであって、これをただちに団体法案との関連性に結びつけるという議論に対しましては、法案に定められております第十七条の商工組合業に関する規定からもいささか納得できないものがあるのでございます。すなわち第十七条第一項におきますれば、同項に掲げてあります各号の全部、あるいはその一部も行わない商工組合はあり得ないはずであります。商店街組合制度を認めれば、無理やりに調整事業が行われます。しかして無用な混乱を招来するとの私どもの議論はかような理由にもとつくものであります。  本来商店街の振興というものは、共同施設の充実とか、あるいは経済的な協力、税制、金融面の積極的な援助、そういったことこそ必要でありまして、いたずらに安易な調整行為に走ることは消費者の立場からいってもみだりに許さるべきことではないと思います。いわんや他の産業においては許されていない地区の重複の禁止に関する例外が小売業、サービス関係のみに許されるという第十条ただし書の規定は絶対に削除していただきたいと考えるものであります。  第二に商工組合設立ならびに調整規程認可に関する事柄であります。組合設立されますと、さきほども申し述べましたとおり百貨店と多年にわたって円満な、安定した取引関係におかれておりますものは、組合員となりまして、不本意ながらその調整規程に服せしめられるか、あるいはまたアウトサイダーにとどまったといたしましても、加入命令などの強制手段によりまして、強圧的な制限に服せしめられるであろうということも起り得ると考えます。また小売商の組合におきましても、百貨店と円満な共存関係にあるものにつきましても同様であります。組合設立とか、調整規程認可にさいしましては、ただいま申しましたとおり非常に優秀な、しかもまじめな中小企業者に不当な制限を加えることの起らないようなお取決めを願いたいと思うのであります。またこの法律によりまして当然救済される対象になっております中小企業者の中にも、この法律の成立に反対しておられる方々が数多くあるということも聞いておるのでございますが、これもただいま述べました私どもの危惧するところと同趣旨のものと思われまして、けだし当然の声かと考えられるのでございます。  そこで組合設立ならびに調整規程認可につきましては、その組合の規模の大小にかかわらず、さらに資格事業と関連のあります事業者、ならびに一般消費者、広く利害関係の方の意見を聞いて、厳格公正な認可を期していただきたいと思います。また調整規程については、その規程のいかなる事項につきましてもかならず公正取引委員会の同意を要することにご訂正になることなど、所要措置を定めることが絶対に必要であります。なおまた、慎重を期すという点から、組合設立ならびに調整規程認可組合協約の認可について準用される場合を含む)あるいは組合協約といった面につきましても、申請してから二カ月を経過いたしますと自動的に認可があったものとみなすという規定は削除していただきたいと思います。かならず認可を必要とするということにご訂正をしていただきたいと考えます。  第三に組合交渉について意見を申し上げます。まず卸の組合にありましては、この組合員の中に一部でも百貨店と取引があるものにつきましては、組合の代表者はいつでも百貨店にたいして組合交渉が持出せることとなっており、また小売商の組合にありましては、組合員たる有資格者に定められました中小企業者以外のものである百貨店にたいしまして組合交渉が持出せるということになっておりますが、この組合交渉に関する規定によりますと実際の商業取引、あるいはその地域の百貨店、あるいは小売商との共存関係などにはおかまいなしに利害関係のきわめて薄い連合会のボスなど有力者の介入を許しまして、認可も受けていないような調整規程のいわゆる「案」などを振りかざして交渉をもつという恐れもあるわけであります。百貨店はご承知のとおり各種各様の商品を取扱っております関係から卸の商工組合、および商店街の商工組合、そういった方面から相つぐ組合交渉を持込まれる恐れがあるのであります。したがいまして、私ども百貨店といたしましては、とくにこの組合交渉という規定には深い関心を払わざるを得ないのであります。懸案中の法案によります組合交渉規定によりましては多年にわたりまして培われてきました健全な商取引の秩序、あるいは商慣習が経済の実態をはなれた不純な数の力によって押し流されはしないかという懸案ももたれるわけであります。また複雑微妙な人関係を力で解決するという気分をそそのかす原因にもなりかねないと考えられるのであります。しかしながら諸般の情勢上これを削除することがどうしてもできないとすれば、以下申し上げます点に配慮を加えていただきまして、行き過ぎた組合交渉の弊害防止に留意していただきたいと考えております。  まず第一に組合交渉応諾の義務規定がありますが、しかしこれによりますと無法な交渉内容を押しつけられるという懸念もありまして非常な混乱を招来いたしますので、これを削除して欲しいと考えるものであります。つぎに組合交渉の代表者から連合会の代表者などを除外していただいて、交渉の代表者をきわめて少人数に限定して、政治ボスの介入を防止し、しかしてあくまでも民主的な組合交渉により、話合いの実をあげやすいというようにしていただきたいと思います。  第三に交渉事項から調整規程の「案」による交渉を削除していただき、認可をうけた調整規程をもってしなければ、交渉できないようにご訂正願いたいと思います。また中小企業等協同組合法の一部改正案中の組合交渉およびこれに関するあっせんまたは調停の規定は、容易にできる事業協同組合や小組合にことさらに現在以上の強い権限を与えることとなり、一方あっせん、または調停によりましては商取引への行政庁の介入を認めることになり、混乱を招くばかりでありますから削除すべきだと考えております。  第四に加入命令について申し上げますと、組合に加入しないものの中には、組合に加入していたのでは経営の合理的運営ができない、また百貨店と、取引する上におきましても組合の不当な圧迫が加わることを好まないためあるいはその他の理由によりまして、これに加入しない方が多かろうと思われます。このような理由によります員外者を強制的に組合に加入せしめて、強度の制限を加えるということは、中小企業者自身の利益のみならず、組合の専横化をきたし、不当な価格つり上げを招来するのでありましょうし、関係事業者ならびに一般消費者への悪弊もはなはだしいといわなければなりません。したがいまして、加入命令は削除していただきますか、あるいは命令があった場合でも、正当な理由を有するものは適用を除外して、調整規程制限を受けないような措置をお願いしたいと考えるものであります。  第五に事業活動規制命令について申し上げます。組合員たる資格を有しますものを対象とする事業活動規制命令は、それもまた各方面への影響が大でありますので、公正取引委員会への協議は同意を要することに改めていただきたいと考えます。  またその他命令の発動には調整規程と同様慎重な配慮がとくに必要であると考えるものであります。  以上、主としまして百貨店の立場から調整、経済関係を主に申し上げたのでございます。中小企業団体法によりますと、百貨店と中小企業者との協調関係を破壊する恐れもあります。またその結果としてもたらされますのは業務に精励しておられます中小企業者の発展を阻み、消費大衆にサービスをするという私ども百貨店本来の機能も抹殺する恐れも多いのであります。とくに多種多様の商品を集めます百貨店は、多種多様の商工組合、あるいは多種多様の小売の業種別の商工組合、さらに商店街組合交渉の対象となりまして、いたずらに混乱を生ずることが多いかと考えます。また力の弱い地方の百貨店は、その経営に大きな暗影を投げかけられることも明らかであります。単に中小企業者だけでなく、大企業者、関係事業者、消費者、ひいては輸出の振興を阻害し、国民経済全般にも大きな影響をもたらすものでありますから、どうか、参議院の諸先生方におかれましても、本法案重要性にかんがみまして、経済の実情に即しまして、とくに商業面の実態に即しました法案のお取決めをお願い申し上げたいと希望するものでございます。  以上をもちまして私の陳述を終ります。
  20. 近藤信一

    座長近藤信一君) つぎに西日本新聞社論説委員速水与一郎君にお願いします。
  21. 速水与一郎

    陳述者速水与一郎君) あらかじめお断りしておきたいと思っておりますことは、きょう私が申し上げます意見は、西日本新聞社の社論ということではなくて、私個人の意見としてお聞き願いたいということであります。  まず、こんどの中小企業団体法案については原則的に賛成しております。なぜかと申しますと、申すまでもなくわが国の中小企業の地位が現在のような個々の力ではとうてい立ち直れないと考えるからであります。と申しますことは、ことしの経済白書が指摘しておりますように日本経済の根本的な欠陥というものが今日の段階で現われてきております。それはなにかと申しますと、大企業中小企業との二重構造、そういった面で出てきたわけなんでありますが、これをできるだけ解消するということが今日の大きな問題になっておるはずであります。そういう改善が行われない限りはまあ、わが国経済の均斉のとれた成長は、今後とも望みえないということを根本問題として考えておるわけであります。これにはどうやったらいいかといいますと、中小企業全体の近代化、合理化以外に方法はないわけでありますが、それは個々の中小企業者ではできる相談ではありません。  現在の中小企業者の大半の経営観念と申しましては失礼かも知れませんが、非常に時代遅れであります。この時代遅れの経営観念を新しい経営観念に変えて行こうとするのには、どうしてもこれは個々の業者ではできない相談であります。個々の同業者が集まって団結して近代化に努めるということが一番だと考えております。つまり業者がこのように組織化されて、大きな資金力と信用力をもつようになれば、大企業とか、あるいは独占企業に対抗できるほどの地位を獲得できると信ずるわけでございます。しかし現在の協同組合にせよ、これは業者の六割位しかできていないと聞いておりますが、この協同組合とか、あるいは安定性に申します調整組合にしましても、十分な組織力が実際は与えられておらずむしろ現実の過当競争の方にばかり目を奪われて、本来の組合活動がはなはだ低調なものとなっているのが多いのじゃないかとみております。ことに協同組合の中には熱心に共同事業の活動に活躍されておられる方もありますが、だいたい金融目あての、商工中金からお金を借りるというだけの目あてのいわゆる「休眠組合」が多いということはその証拠になるんではないかということがいえましょう。これはやはり業者の共同事業を妨げる環境が、経済的な環境があるからでありまして、そういう邪魔をなくしまして、組織化の本来の目標だと考えられております中小企業の共同事業にあります経営設備の近代化に向かう素地と、そのために必要な業者の保護措置というものを与えるものが、こんどの組織法案の役割でなくてはならぬと考えております。ところが、同法案にたいする中小企業者の期待とか、あるいは関係業界や消費者の懸念がどうも大き過ぎたり、思いすごしがあるように見受けられます。  これは、一つには同法案の立法趣旨の徹底が不十分だからではないかと思います。これは法案の名前からして何度も変っていまして、徹底を欠いております。と同時にこの法案の中身を見ました場合の印象が、商工組合の果たす役割が調整事業ばかりだという感じを強く受けるからだと思われます。とくにその中の価格協定がいつまでも簡単にできるような印象を業者に与えているように考えられます。しかも消費者側にはそれをひどく恐れさせているようにもみられます。いずれ同法案が成立したのちの問題になると思いますが、こういうような懸念をもたせないような配慮を考えていただくことが必要だと思います。これに関連しまして法案内容にふれて参りますが、まず第一の問題は、組合交渉でしょう。これはことさらに交渉に応ずる義務があるといったことが強調されているように見受けられますが、義務制を強調することは、かえって大企業の方に対抗カルテルと申しますか、そういうものを誘発する恐れがあるのではないかと思いますし、ひいてはこの対抗カルテルといったことが全産業におよびまして、経済民主化の本家であります独占禁止法の全面的緩和への道を開く恐れさえないとはいえません。要するに中小企業組織されまして、経済力が強くなってきますと、大企業といえどもこれを無視するわけにはいかなくなるのではないかと思いますので、そういうように中小企業組織化を向けていくことが先決問題だと思います。業者の実力が十分固まらないのに強引に組合交渉を大企業におっかぶせることはどうだろうかと考えます。つぎに強制加入の問題であります。  法案内容を見てまいりますと、共同修正案だといいますのに第五十五条の第項預、第六項によりますと、員外者にも商工組合調整事業制限を受けたり、あるいは過怠金、あるいはその他の過怠料を課せられるようになっているようでありますが、これは修正案ができた当時から思っていたことでありますが、これはまったく実質的に強制加入と同じではないかと考えております。  同法案によります中小企業者への独禁法の例外規定はあくまでやはり自由公正な取引活動あるいは競争のもとにおけるものでなくてはならないと思います。その意味で業者の合理化努力や近代化努力にいそしむ余地を残しておくという意味では、やはり任意加入で、そして業者におきまして全員参加を目指すといった方向が好ましいのではないかと思います。ここで考えますことは、同法案中小企業の安定を第一に考えまして、近代化への努力を二の次にされてはならぬということであります。とかく安定といいますと、現状維持になずんで、なんらの進歩も考えないことになり勝ちでありますから、同法案商工組合調整事業とならんで共同事業の面をもっと強く打出し、独禁法のいわゆる不況カルテルの要素よりも合理化カルテルの要素を重くみるような措置も必要だと思います。  その点で、同法案審議関連しまして、中小企業の近代化のために必要な対策や措置を十分考えておいていただきたいと思います。たとえば生産性向上に必要な技術指導、金融、税制措置、あるいはもっとも大企業との格差をみせています賃金格差をなくすための最低賃金制の実現に業者が努力されるような措置が必要なことを強調しておきます。  最後に同法案審議にあたりまして、もっとも警戒しています点は、前国会であっという間に成立いたしました環境衛生営業適正化法に引きずられて、同様な効果をもつ調整事業が期待されはせぬかということであります。それからそれをキッカケにしてさきほど申しましたように、大企業を含めました独禁法の全面的緩和への口火を切るということになりはしないかということであります。  最後法案の立法趣旨には原則としまして賛成はしておりますが、この原則に立ってあくまで審議をつくしていただきたいと思います。一部伝えられております政治的な意図をもちまして、十分な審議をつくさず、とにかく成立させればいいといった調子で、この法案成立を急がれはしないだろうかということを私は心配いたすものであります。話が抽象論になりましたが、以上で私の陳述を終ります。
  22. 近藤信一

    座長近藤信一君) つぎに八幡鉄工業協同組合理事湯山要君にお願いいたします。
  23. 湯山要

    陳述者(湯山要君) 八幡鉄工業協同組合理事湯山要であります。私は業者でありますが故に抽象的、理論的なことよりもむしろ自分の経験いたしましたことを参議院の先生方に聞いていただきたいと考えまして、自分の経験しました実例を述べさせていただきたいと考えております。  私たち業者におきましては、ただいまでは中央会というものもできておりますし、中小企業組合があるわけでありますが、過去におきまして、社会党の水谷先生が商工大臣の頃であります。われわれ中小企業者にも復金の金を貸し与えることができるということになりまして、私たち北九州の鉄工業者が東京に参じまして、いろいろと運動いたしまして、協同組合の連帯保証のもとにおきまして復金の金を中金の代理貸しで借りたわけであります。不幸にいたしましてその頃は朝鮮事変の前でありまして、日本経済は不景気でございました。その頃金を借りまして業者にみな貸し与えたんであります。協同組合への加入、または脱退が自由でありますので、組合員の中でこの金を借りまして、これはなにか組合が借りた金は政府からもらった金のごとくに考える一部の人がおりまして、金を借りたまま多くの人が組合をやめたのでございます。また、これに反しまして、自分の財政の割合に豊かな組合員は、これでは完全なる組合運営ができないと考えまして、組合を脱退したのであります。そしてその結果三分の一位残りまして今日まで組合を維持してき、以前に払わなかった組合員の借金も払いまして、今日まで組合運動を続けつつあるという実態であります。こういうことを考えました場合に、協同組合への加入が自由であるということにつきまして、組合運営の意義を申しております。また協同組合の共同施設の問題におきましてもそういう例でありますが、こういう事業を組合の総会においてやれば、組合員が助かるということを組合員自体が認めながらも、事業をするためには国家の補助金、または県、市の補助金、あるいはまた自己負担金を要するわけでありますが、その自己負担にたいしまして心配のある人は、組合を脱退しまして、運営が困まる時には組合員を通じまして、こんどはその利益に浴したい、かように考える組合員がたくさんおるわけであります。私たちは将来よくなるものだと考えまして協同組合を一生懸命やっております、努力するんですが、アウトサイダーが、これを逆に利用しまして自分の利益だけをはかるという問題が全国の組合に多々あるわけであります。こういう点からいたしましても、政府がこんど提案されておりますところのこの中小企業団体法案というものはどうしても通過させていただきまして、組合員全員がその利益に浴し、また苦しいときには相しのんでいくことが、一番中小企業組合においては望ましいのではないかと、かように考えております。それから第三番目におきまして、これは本年の春ですが、中小企業にたいする支払い代金の問題が当時法律で取上げられておりまするが、今日の実態につきましては新聞紙上によりまして先生方もご存じと思いますが、九州のある産業のごとき、これは日本でも有数の一流会社でありますが、こういう会社が品物を納めて六カ月しなければ支払いができないという実情でございます。また他の大企業の多くもしかりであります。また不景気といいますか、新聞やその他の報道によりましていままで六十日で手形が切られておりましたのが、一夜にして九十日となり、さらにこの九十日が百二十日になり、また百八十日になったということは、私が申すまでもなく、実際にその現象が現われておるわけであります。こういう点からいたしましてもどうしても中小企業団体法案、または協同組合法案が確立しなければいつまで経ってもこの社会のシワ寄せは中小企業者だけにくるんではないかということが今日の実態でありますので、こういう意味におきましてもよろしくお願いしたいと思うのであります。また私が住んでおります北九州、私は八幡でございますが、この北九州にはご存じのように大企業がたくさんあります。この北九州全体の大企業の中から五十五才の年齢満期でやめられる方がたいてい千七、八百名から二千名あるのであります。この中には役所の人も多少入っておりますが、こういう人が平均二百万円から二百五十万円の退職金をもらって、この社会に流れ込んでおるのでございますが、その大半はわれわれ中小企業の中に就職され、または自営されておるのであります。  その反面に退職金をもらいながらその退職金の使い途がわからない人があります。また、協同組合組合員でない人は割合に人柄が悪くなっておりますので、この大量の退職金を目あてに、その金を自分の事業に投資すればいいとかなんとかいって投資きせ、そしてそれを踏み倒している実情があるのであります。北九州の年令満期の方で、この二年間自分の退職金をどれくらい持っておるかというと一五%ないし一八%であります。  こういうことは、アウトサイダーがたくさんおるということであります。そしてその業者の実態がわかりませんからだまされるといった形であります。組合に聞けばこれははっきりわかると思いますが、組合に入っておりませんからわからないわけであります。そのわからないところに投資しておりますので、二十年も三十年も働いてもらった退職金をだまされて取られてしまうわけです。そのシワ寄せはやはりわれわれのところに就業して働かねばならないという結果になります。そういう意味におきましても社会にたいする悪影響ということが考えられますし、社会秩序のためにも本法案の成立は大切だと思います。  第四点でありますが、ただいま政府におかれましては信用保険の問題が取上げられておりますが、この信用保険問題につきましても、保険自体が保証人を必要としますが、その場合におきまして個人的な保証をするということは危険性があると思います。そういう意味からも協同組合に加入しておれば、協同組合がこれを保証するということになりますと、長期資金にいたしましても設備近代化資金にしましても調査が簡単にできると思います。そういたしますれば、政府の信用保証の問題もスムースに運営されるものと考えます。でありますからどうしてもこんどの臨時国会におきまして中小企業団体法が一日も早く通過するように参議院の先生方にお願いしたいと思います。以上でございます。
  24. 近藤信一

    座長近藤信一君) つぎに福岡婦人会会長柴田芳江君にお願いいたします。
  25. 柴田芳江

    陳述者(柴田芳江君) 私は消費者の立場といたしまして、この法案が通過いたしますことを非常に心配するのでございます。と申しますのは販売価格や購買価格の制限によりまして、私ども消費者にそのシワ寄せがやってくるのではないかと思うからでございます。それ故に反対をいたしたいのであります。いままで私どもにたいします業者のいろんな面では、常にその一部業者は、熱心に上手な技術とその努力によりまして、サービスの値引きも私どもになされてきたのであります。それが団体組織一本化になりますと、団体の圧力によりましてできなくなるばかりでなく、またその幹部役員の命令権が大きくものをいいまして、商人の商売道徳も低下いたすでありましょうし、なんだか私どもには戦時中の「売ってやる」式になる恐れがあります。価格につきましても、業者はそのおかげによりまして、安心して値上げもなされるのではないかと思うのであります。現在以上の物の値上りは、私どもの家庭生活を非常に脅かすものでございますから、この団体法案のうちの物価制限ということを恐れて、私は反対を申し上げるのであります。以上が私の意見でございます。
  26. 近藤信一

    座長近藤信一君) それでは午前中の公述人の方々のご意見発表はこれで終ります。  委員側から質問がありましたら順次発言を願います。
  27. 相馬助治

    相馬助治君 私は速水先生と湯山さんとにお尋ねしたいと思います。  まず速水先生の公述されましたことを聞いて非常に参考になりました。陳述されましたことのうちこの法律案によりまして、ある面では価格調整がきわめて簡単に行われて、たちまち価格が上るという危険があるということ、また一方では、これと逆にこの法律案によりまして非常な利益を中小企業者自身が考えているが、実際問題といたしましてはなかなかできないということ、またこの法律案自体がきわめて難解でありまして、一般の人によく認識されていないということをご指摘されましたが、各地の公聴会ではそういう論説は聞きませんでした。まったくそのとおりであります。賛成論、あるいは反対論にいたしましても見当違いなことばかり聞かされたのであります。誠に失礼でありますが、ただいまの湯山さんの論説に表われておりまする強制加入でも、またアウト・サイダー命令でも、ただいまの退職された方の救済というようなことは、この法律ではほとんど不可能だと私どもは考えております。速水先生にお尋ねいたしたいことは、総括的な意見としてはご賛成なのでありますが、率直に申しますと、先生が指摘されましたことはいずれも重大でありまして、このような要件が満されなければ反対かどうかという問題であります。ご承知のように団体交渉をこういうような形で決めておきますことは、対抗カルテルをつくらせる結果となります。百貨店なども当然これに対抗する手段というものが、いまの大企業では可能だと思います。逆に小売商人の地位をこの法律の運用のいかんによってはせばめるのではないかと思われるのでありますが、速水先生、この点もう一度具体的にどのようにお考えになりますか。つぎに私は社会党に所属しておりますし、かつ私自身の立場から申しますと、先生が冒頭にいわれましたようになんらかの立法措置は、日本の現状からいたしまして必要だと考えております。実に大きな問題は五十五条の強制加入の問題であります。衆議院修正によりまして、知事の認可を受けて組合に入らないことができるんですか、そのつぎに過怠金をとるということがあります。いわゆる組合員でないものが強制命令に服さないときは過怠金をとるということであります。公共福祉のために調整をやるものが、任意でできた組合がアウト・サイダーのものから過怠金をとるということでありますが、この法律はよく見ますと実に大きな問題が発見されるのであります。先生のご見解がどうかということを再確認したいと思います。それから環境衛生法が一番いい例で、柴田さんのような論説がなされましたときには常に反論がありました。この法律ができても価格は絶対上がりませんということがいわれてきたのであります。この間の環境衛生法は、参議院では自民党、社会党が一致しまして業者を落したり、認可事項というものを強めまして、勝手に価格を引上げられないように修正しましたが、衆議院におきまして、衆議院原案で一挙に押し戻されてしまいました。この法律案ができたときには価格が上るんじゃないかといった考え方は杞憂だといって一気に蹴飛ばしてきたことが、すでにこの環境衛生法では杞憂ではないという証明になっておるんでありまして、団体法では、私は環境衛生法ほど簡単に価格調整ができて、価格が上がるとは思いませんが、原則的にはこの点についてはどのようにお考えになりますか、以上三点につきましてご指導願いたいと思います。  それから湯山さんの場合、強制加入不況要件が整って商工組合ができたときにはじめて強制加入調整事業が行いうるのであります。一般の共同事業をやっております協同組合では強制加入権はないのであります。したがいましてこの点につきまして、この法案をどういうふうにお読みになって、そのような陳述をなされのか、確認いたしたいと思いますので、速水先生のあとでご発言願いたいと思います。
  28. 速水与一郎

    陳述者速水与一郎君) 私は価格協定が簡単にできると申し上げたんではなくて、そういう印象を与えて、業者がそれを期待しているということです。私ちょっと法案をくわして読みそこねましたが、価格調整は公取委の同意を要するという点が非常に理解されていないんじゃないかと思います。それから団体交渉の件につきましては、恐らく百貨店と問屋なんかとの団体交渉などを考えます場合に、問屋筋あたりがやはり競争の方に先走って、十分に団体行動をとりえないんじゃないかという懸念も一面あるんですが、実際の場合、たとえば紡績業などをとりました場合、織物業者との間でこういうことが行われたときには、現在でさえ紡績業は操業短縮をやっておる状態ですし、また一種のカルテル行為も認められているようですから、それがもっと強くカルテル化されまして、下の段階の業者の方を圧迫していくんじゃないだろうかという点を頭の中で考えておるんであります。実際問題としましてこれがどのようになっていきますか法律ができて、それが適用されてみますと、もっと理解できるんではないかと思います。団体交渉を強引にやりますことは、しかも中小企業者の方で十分な資力とか信用力、あるいは新しい技術、そういった力が十分整わないままに団体交渉ばかり前面に押し出したんでは、最初から中小企業者の方が負けることになりますし、またかりに中小企業者の力が強引ながら強かった場合は、大企業に向かってそういう無理な注文がきたときには一概にこれを受付けるわけにはいかないし、紡績連合会ではありませんが、紡績連合会式のものがそこに現われてくるんじゃないかと考えておるわけであります。いまのところはそういった考えであります。私としましてはさきほどもいいましたように、団体交渉はできればというよりできるだけ任意にやれるようにしてもらって欲しいと考えています。大企業の方が応諾する義務があるような感じをもつように解釈されております。その点はもう少し弾力性をもたせた方がいいと思います。大企業にしてもそういつも中小企業とにらめっこばかりしているのではありません。まるで労働争議のような感じをもたせるのはいけないということです。  第二の過怠金の問題でありますが、これはまさしく強制加入、そういった策を盛り込んだ修正案だったと思います。できましたらそういう条項をやめるとか、あるいは商工組合調整事業制限にゆとりをつけてもらった方がいいんじゃないかと思います。  第三点は、本法案が環境衛生法的な性格をもっていないかということだったと思いますが、これはさきほどもいいましたように、業者の団体法案にたいする受取り方が問題であろうと思います。環境衛生法はなんだか非常に畑違いな感じをもつんですが、行く行くは価格協定まで簡単にできるのではないかというような感じをもちます。それと似たような、国民生活に密着したような業者の場合でしたら、それと同じ効果を期待する向きがあるんではないかと思います。これが法案審議の上になんらかの形で反映でもしてきましたならこれは団体法趣旨からいいましても非常にこまったことになるんではないかと思います。この団体法につきましては、なによりもまっさきにいいたい点は、物価引上げの原因になるようなことはしてもらいたくないということであります。
  29. 湯山要

    陳述者(湯山要君) お答え申し上げます。  私は冒頭に申しましたように業者でありますから、法案内容につきましてもいろいろ読んでみましたが、なかなかこれを解釈することがむずかしいんであります。しかしながら社会党におかれましてもわれわれ中小企業のために中少企業庁というりっぱなものをつくっていただいて、これにしたがって協同組合ができ、さらに中央会というものをつくっておりますが、それには何千万円という金を私たちに補助金として与えておられます。これによりましてわれわれは組合運動をつづけているわけであります。私たちの協同組合にこの法律がどのようにあてはまるかということは、私にはよくわかりませんが、政府が支持され、またわれわれのいわんとすることを取上げていただいたんですから、将来われわれの協同組合がいまの姿で悪いということになれば、それはそれでまた改組していくということであります。
  30. 相馬助治

    相馬助治君 よくわかりました。
  31. 土田國太郎

    土田國太郎君 さきほどご説明がありましたが速水先生に再度職業柄で批判を願いたいと思います。この協同組合の中に小組合ができることになっておりますが、この法案は小組合組合員にたいしまして税制上、金融上特別の措置を講じなければならない、こういうふうになっております。日本には、これは失礼な話でありますが、中小企業より零細企業と申しましょうか、そういう人が多いので、この小組合資格者がたくさんおられます。そういう人たちがこういうものを組織しまして、さて、税金はまけろ、金融はやってくれということで、これに火がつきまして、こういう空気が全国的に広まりますと、税制上の問題は、これは国家財政の大きな問題です。また金融問題も国民経済にとりまして、これまた重要な問題になります。これらの点についてのご批判をうかがいたいと思うんでございますが。
  32. 速水与一郎

    陳述者速水与一郎君) ただいまおっしゃいました事業協同小組合がそういうふうにたくさんできるということは、それ自体は非常に結構なことではないかと思います。それがたとえば減税運動とか、あるいは反税運動などにいきはしないだろうかという心配だろうと思いますが。
  33. 土田國太郎

    土田國太郎君 法案で税制上の措置、あるいは金融上特別の措置を講ずるということ、これは政府がこれを義務づけられる法案ということになりますが、それによりまして、全国に減税、あるいは金融の要求が殺到するといった心配はありませんか。
  34. 速水与一郎

    陳述者速水与一郎君) そこまで組合組織されるかどうかということに疑問をもっております。恐らく、金融措置という場合は、商工中金あるいは中小企業金融公庫あたりのルートを通じまして資金が流れてくるんではないかと思います。こういう商工中金からの資金のルートをつけさせるという意味では非常にプラスになることではないかと考えます。これが全国に火がついて、どうのこうのということは、いまの段階では私はあまり心配する必要はなかろうかと思います。組織化することによりまして、むしろ業者が経営合理化の面で頭を上げてくると思います。
  35. 土田國太郎

    土田國太郎君 税制の面はいかがでしょうか。
  36. 速水与一郎

    陳述者速水与一郎君) これは、そういう場合に個々の業者よりも組合税制の方に優遇措置をするということは、これは効果的であると私は思います。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 大塚さんにお尋ねいたしますが、中小企業者としまして、いま必要なことは、速水先生も指摘されましたように、調整事業というようなことももちろん必要でありますが、より本質的なものは共同事業的なものであり、中小企業自体の近代化であるということを指摘されておりますが、私もそう思います。そういう角度からいいますと、協同組合合理化のために必要なものであり、こんどの団体法によってできます商工組合は、むしろ臨時措置的なもので、要件ができたからやむをえずつくるという性格のものでありまして、本質的なものは、いまあなたたちがやっておられます協同組合であるとわれわれは考えるんです。私たちが心配いたしますことは、この法律ができますことによりまして、本来の協同組合にたいします熱をみんな失なってしまって、この商工組合に熱中して、臨時的な、むしろ中小企業者に不利益を招くような心配はないものであろうかということが質問の一点、第二点は、この小組合設立がうまくできるかどうか疑問であるということをいわれましたが、私たちもそう考えております。この小組合がうまくできないという前提に立ちますと、この法律は役に立ちませんし、書き直さなくてはならないんであります。それで、なぜ疑問に思われるのかということを説明して欲しいというのが第二点であります。それから三番目は、これは私が一番聞きたいところですが、関係法案の成立を希望するといわれましたが、関係法案といいますのはたくさんです。すなわちこの法律ができるから当然なさなくてはならない関係法案がたくさんあります。たとえばこの法案ができましたためにむしろ中小企業者が百貨店、または大企業は食い荒されるかも知れませんから、そういうことを防止する法律をつくってやらなければならないと主張して、百貨店法の一部を改正する必要があるということをいっております。また下請代金の遅延も警戒しています。大企業のわがままを駆逐しなければならないということをいっています。あなたがいっておられる関係法案の成立というのは、そういうものも全部ひっくるめて考えておられるのかどうか、承りたいと思います。
  38. 大塚政次郎

    陳述者大塚政次郎君) 第二問の小組合設立がはたして全般的にうまくできるかどうかという点についてまずお答えいたします。これは従来協同組合などを組織いたしました経験からの感じでありますが、小組合そのものは必要であるという観念はみなもっております。私どもは経済人でありますから、組合をつくれば、いかなる本質的な効果があるかという期待をもつのが非常に早いのでありますが、ここに私は疑問をもっております。  これはやはり長い目で組合組織といいますか、内部的な努力といいますか、そういう面における業者自体の近代化、あるいは合理化の問題は考えなければならないと思いまして懸念があるわけであります。簡単に組合といいますが、やはり同業種の人は非常に集まりやすいのであります。従来の協同組合などを組織しておりますそれらの実態から考えますと魚屋さんは魚屋さんだけでうまくいけるかどうか、また地域的には数の上におきまして、私は考え方は結構でありますが、はたしてうまくいくかどうか、急速な組織ができるだろうかという疑問をもっております。  それから協同組合でいくということは、やはり基盤をもっております私たちは、ただちに商工組合に転換するということは、これはだんだん理解されてくる問題ではないかと思います。やはり特別の措置であるという考え方は基本であります。したがいましてそういうふうな諸条件の整備したときでなければ、これらの認可がないことは必然であろうと思います。これはご指摘のとおり協同組合中心にやっていくという考え方であります。  三番目の関係法案についてでありますが、これはやはり団体法を基本にいたしまして、その基本的な考え方は縷々申し上げるまでもないわけでありますが、要しまするに、自由企業の現状から考えまして、私はやはり基本的なものが必要であると思います。したがいまして基本的な法令がここにできますれば、これに関連しました提案になっております関係法案は、全部やはり大局的に考えまして、国全般の福祉といいますか、そういう見地に立ちまして必要であります。かような考え方で申し上げたわけであります。
  39. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 福岡婦人会長の紫田さんにお尋ねいたします。この法案ができますると、これは全国的ですけど、価格が上がるんじゃないか、一般の消費者に迷惑をかけるんじゃないかということが、非常にこの法案審議の一つの中心になっております。これはまあ、この法案の各条でそういうことのないように相当規定があるんでございます。政府でもそういうことがあってはならんということをいっておりますが、それに関係いたしましてすでに実施になっております環境衛生法についてもいろいろ問題があるようでありますが、参考のためにこちらの方の状況をお知りでありましたら一言お教え願いたいと思います。
  40. 柴田芳江

    陳述者(柴田芳江君) 環境衛生法が実施されましてこのかた最高の値段を示しておりました業者はだいたいそのままでございます。  しかし中間業者の方でやはり値上がりをいたしております。それからもう一点、私四、五日前に聞きましたことでありますが、やはり価格の引上げをしないならば、この法案に賛成するのではなかったというような組合員のお話であります。それで、やはり業者でこの団体法案に賛成なさいます方は、おおかたそういうふうに非常に競争の激しい、値下げを恐れて、これでひとつ値上げをはかってもらおうというお考えが多分にあるのではないかと私は思います。それでこれが通りますと必然的に値上がりしてくるものであろうと私は思っております。政府の方におかれましては、このような値上げ対策というものには、いろいろ心してこの法案をつくっておられるかも知れませんが、実施する面になりますと、かくれたところの心が結集いたしまして、そして団体交渉となりまして、値上げのやむなきにいたるのではないかということを私は恐れているしだいでございます。
  41. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 重ねてお尋ねいたしますが、それでは理髪でございますね。その方なんかは、いまどんなふうになっておりますか。
  42. 柴田芳江

    陳述者(柴田芳江君) 理髪は、やはり場所によりましてはそのまま据え置いているところもありますが、値上がりしております。それから私ども女性といたしましてはなはだ遺憾に考えましたことは、環衛法が通りまして、いろいろな役職が地方でも決まり、役員ができます。福岡市は、パーマ屋さんはほとんどが女性でございます。理髪屋さんはほとんど男性であります。この役員の状態をみますと、まだこれははっきり決まったかどうかわかりませんが、この間会合がありましたときにちょっと業者から話が出ましたのですが、やはりこの役員には男性がなりまして、女性はやはり下の方でやらなければならない。「これはしまった」とある女性はいっておりました。  これは女性圧迫の法律であったということも聞くのであります。
  43. 近藤信一

    座長近藤信一君) 別に発言もないようでございますから、午前の部はこれくらいにいたしておきたいと思います。午前中にご意見を述べていただいた皆さまにはご多忙中にもかかわりませず、この調査会にご出席をたまわり、貴重なご意見を開陳くださいまして、まことにありがとうございました。皆さまのご意見を帰京のうえ、委員会の席上で報告いたし、こんごの法案審議にさいしまして、十分ご参考にいたす所存であります。重ねて厚くお礼を申し上げます。それでは暫時休会いたします。午後は一時に再会いたします。    再会午後一時
  44. 近藤信一

    座長近藤信一君) それでは午前に引きつづき中小企業団体法案現地調査会を再開いたします。まず福岡商工会議所事務局長橋田有一君の意見から拝聴いたします。
  45. 橋田有一

    陳述者(橋田有一君) ご指名にあずかりました福岡商工会議所事務局長の橋田有一であります。  本日は私、当市商工会議所で取りまとめました意見を述べさせていただくことにいたしました。私個人の意見はいっさいさしひかえさせていただきます。  わが国におきましては、中小企業の振興が経済的にも、社会的にもきわめて緊要でありますことは、すでに一般の常識となっております。それがためには、まず中小企業組織の充実、団体の強化をはかることが急務でございますことは、もはや論議の要のないことであります。  中小企業組織にかんします基本法といたしまして中小企業団体法案が前国会提案されまして、すでに衆議院修正を経まして参議院に回付をみまして、参議院諸先生のご熱心な審議のもとにありますことは、まことに喜ばしいことに思っているしだいであります。中小企業団体法案、それに関連しましての二法律案、それらそのもの、またはその内容につきましては、すでに中小企業者、大企業者、消費者それぞれの立場から意見が出ております。また本日当地方を中心としてのそれらの方々からのご意見陳述もありまして、またこれからもあることになっております。いずれも傾聴に値するものがあり、なお慎重な検討を加えなければならないぶしもないではないだろうと思われるんでございますが、中小企業組織の充実、団結の強化ということを急務といたします現状にかんがみまして大所、高所からこれを考えまして、右法案がすみやかに国会を通過し、施行をみますことを私どもは望んでおるものでございます。  右法ならびに法律は、さきほども参議院諸先生からもご説明がございましたように非常にぼう大、かつ難解、錯雑の感を抱んでございます。これらの制定、施行にあたりましては、後日その法の精神が忘却滅失されることがございませんように、また法の解釈、運用につきまして誤解、違漏がございませんようあらかじめ十分のご考慮とご措置をしてくださいますように付言いたしておきます。  私ども意見は以上でございます。
  46. 近藤信一

    座長近藤信一君) つぎに西日本専門店協同組合理事長内野光雄君にお願いいたします。
  47. 内野光雄

    陳述者(内野光雄君) ただいまご指名いただきました西日本専門店協同組合理事長内野光雄でございます。本日は西日本専門店協同組合理事長として、および中小企業者の代表といたしましての意見を述べたいと存じます。二十六国会において衆議院では通りましたが、参議院でただいま継続審議中になっておりますこの中小企業団体法案は、本年二月に社会党から提案され、四月に自民党から提案されまして、衆議院法制局、その他衆院の社会党、自民党の諸先生方専門家の手によりまして共同修正されまして、十二分に検討いただきまして衆議院は通っております。でありますから私どもは、これを完全なものとは申し上げませんが、諸先生方の熱心なる共同修正によりましたものを現在いざこざ申し上げる必要はないと存じております。ただこんどの臨時国会におきまして是非とも通していただきたいと思っております。それにつきまして一言現地の事情、また私たち中小企業者のおかれております事情をご説明申し上げまして、ご参考に供したいと存ずるしだいでございます。  第一に、私どものおかれております窮状は、もうすでに諸先生方ならびに皆さん方におかれましてもご承知のことと思いますので、いまさら喋々する必要もございません。昨年二十五国会通りました百貨店法も、私どものこの窮状をお察しいただきました結果だと存じております。この百貨店法の第九条に百貨店の事業活動を通じまして、中小商業事業活動を圧迫する場合は、その百貨店の事業活動を調整し得ることが示されております。また中小企業等協同組合法中小企業安定法などによりまして私どもには相当の権利なり、団結その他の事業の自由は認めてございますが、労働三法にたいしましては、はなはだ遅れておるものと信じております。労働者は労働組合法によりましてスト権、団結権が認められ、さらに労働基準法によりまして罰則まで制定されております。われわれ中小企業者はこれによりまして非常なる苦痛をなめておるしだいであります。  労働者にスト権なり、あるいはストを破るものを防止する手段を認めているのにたいしまして、われわれ中小企業者には、こんどの団体法以外には団結の道はないと思うのであります。また私どもにたいして政府、あるいは諸先生方も常に中小企業者は団結が足りないからすべてにわたって不遇にあるということをいっておられます。つぎに説明いたしまするが、こんどの団体法は、われわれの最小の団結のための法律であると存じております。この九州におきましては、団結をもった組織労働者は、長崎の三菱造船所においてしかりであります。昨年の暮あの造船ブームに沸きました三菱造船所では、一人三万八千円の賞与をもらっているのであります。  しかるにわれわれ中小企業者はわずかな給料の遅欠配に悩んでおるような実情であります。  また大牟田の、あの三井王国といわれます炭鉱地におきましては、労働者は、われわれ中小企業者を圧迫するといいますか、労働組合の指定を受けなければ生活ができないような中小企業の現状であります。労働組合の指定店が革新連盟として現在約三分の一が労働組合の指定によりまして商売をやっております。それにつきまして労働組合の指定を受けておらない商売人はどうしても生計が立たなくなり、少なくとも保守の人だけは保守の商店街で買物をしていただきたいということになりまして、革新と保守と中立の三つの商売人に分かれているような現状であります。そして長崎の三菱造船と同じように三井の組織労働者は二万、三万の給料をとっているにもかかわらず、それ以外の下請の工場、中小企業の工場におきましては、それの三〇%ないし四〇%の給料に甘んじて生活に脅威をうけているようなしだいであります。また福岡におきましても、これは昨日調査したのでありますが、西鉄は従業員が約一万人の大会社であります。この西鉄の賃金ベースは、一万九千七百二十六円になっております。時間外給与が千二百余円、妻の手当が千五百円、子供は三人までは一人千五百円、四番目以下は一人千円となっています。親には一人七百円、両親で千四百円が支給されております。かかるぼう大な給料をもらいながらなおかつ賃上げ闘争に終始しておるような現状であります。  これにひきかえまして中小企業に働いております従業員はいかにみじめであるかということは、先生方よく想像のつくことと存じます。また中小企業者にとりましては、労働者、大企業の圧迫はもとより、現在大企業でやっております紡績などの製品は、いままで中小企業の工場、あるいは家庭工場などで生産しておりましたものを大企業の工場が取上げているようなしだいであります。また中小企業を圧迫しております百貨店も、午前中に百貨店協会の方から団体法にたいしまして、趣旨といたしましてはいいが、以上の点を修正していただきたいという希望がございました。それは、百貨店は常に従業員のストに悩まされております。こんどの岩田屋のストは百貨店はじまっていらいの大ストでありました。常に百貨店はそういった従業員のストの脅威にさらされており、かつまた営業面におきましては、中小企業者の問屋を犠牲にいたしまして商売をやっているといっても過言ではないのであります。以上の観点からみまして、中小企業の工場、あるいは中小企業の従業員ならびに営業者は、常に大企業と労働者によりまして悩まされているような現状であります。これを救うものは、ただ団体法案あるのみであると信じております。私どもはまさに洋上で溺れんとしている遭難者と同様であります。これがもしこんどの国会で通らないとすれば、倒産あるいは破産する業者はぞくぞくと将棋倒しに起りまして、社会不安が起るやに思い、これを危惧するものでございます。最後に諸先生方のご理解ある援助によりまして、今臨時国会で是が非でも通していただきたいということは、私ども中小企業者、従業員を問わず、ほんとうに心からの願いであるということをとくに申し上げまして私の説明にかえたいと思います。
  48. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に福岡県総評議会事務局次長江崎淳君にお願いいたします。
  49. 江崎淳

    陳述者(江崎淳君) 私の立場は、中小企業に働いておる労働者の立場であります。また一般消費者の立場でもあります。従いまして、こういう立場からの意見を申し上げたいと思います。  私のこうした二つの立場というものは、結局第一には、中小企業が健全に発展をしていただいて、そしてそこに働く労働者の給与を逐次向上していくという施策を望んでおるものであります。さらにまた給料生活者は、物価が下ることによって、必然的に生活の向上ということがあり得るのでありまして、できるだけ物価が下るような諸施策を望んでやみません。この二つの立場というものは、現在の国民的立場であるとも考えております。従いまして、この立場というものは、国民の支持を律るのではないかと思います。  現状の中小企業を判断しますと、大企業の圧迫によって非常に苦しい状態におかれておると思います。すなわち経済政策の変動の中で中小企業が不当に多くなったり、企業を拡大したりする。半面経済政策が一変すると、結局倒産とか企業の縮小とかいうものによって、非常に犠牲を強要されておると判断しております。そのことは結局中小企業が現在の経済の中で非常にクッション的な役割を果しておる。その結果、犠牲が中小企業にかかっておるのではないかというように思います。そのために、では中小企業としてどういうふうにしたらいいかということになりますと、中小企業方々が自主的に団結をなされて、大企業の不当な圧迫に対する抵抗と申しますか話し合いの場をもたれることは、非常に有意義であろうかと思います。その意味において私は中小企業方々の自主的な団結というものは、われわれとしては必要だと思っておるわけであります。しかしここに出されております法案を見てみますると、若干私として納得できない点が幾つかありますので、申し上げたいと思います。  まず第一に申し上げたいのは、労働者に与えられておるいわゆる生活の権利、団体交渉の権利または団結する権利というものを、それから中小企業企業を防止する立場というものが若干違うかと考えます。そこで現在労働者に与えられておる権限というものは、団結をする自由な立場というものはありますが、これを強制的に団結をさせるという法律はないわけであります。ところがこの法案の中では若干状態によっては、強制加入を認めるという部面があるように考えます。これは法案として若干行き過ぎではないかと思います。結局中小企業経営者自体がよく中小企業の立場を認識されて自主的に団結をするということが現在の法律の中では最も必要なことであるし、それをさらに拡大するということは認められないと思います。  次に大企業と話し合いをされて同一の条件とか同一料金とかいうものをきめることが許されておるようでありますが、これはある意味においては必要であると思いますが、結局現在の社会の中で自由に競争をしていくという一つの厳然たる事実があるわけでありますが、このいわゆる競争をなくしていく、そして大企業の話し合いがなれ合いになって、高物価というものが行われる可能性もあるように思われます。  さらにその交渉の中に一部のいわゆる特権者の介入を得て、ここにいわゆる思わしくない勢力というものがっくられていくといたしますと、これはわれわれとしては納得できない点であります。  次にそこで協定をされた金額というものに一つの弱小企業体がついていけないとしますと、企業を守る立場から必然的にその協定に違反をする。こういうことが余儀なくされますし、またそういう方法をとらないとしますと、企業を縮少するか、またはそこに働く労働者の賃金を不当に切り下げていく、こういう結果も出てくると思います。この点もわれわれとして納得できない点であります。  次にこの中小企業を団結させようとする動きの中に、われわれとして最も危慣しておる点は、これが単に中小企業をいかに守っていくかという点だけではなくして、この中小企業の団結されたカというものが、一部の勢力に利用されていくという結果が生まれてくる可能性が十分にあると思います。以上の点が私たちとして納得できない点であります。  さらに企業を縮小して首を切った労働者の優先採用という項があります、これは往々にして実際の運営上単なる名目になるおそれが十分にあると思います。優先採用をしなければならないということではなくして、そのように努めるという程度のものであれば、これはその人々によって優先採用が適用されたり、また適用されなかったりする。こういう結果になります。この点もわれわれとして非常に憂慮しておる点であります。  私が反対をしている立場というものは、以上の観点に立っております。特に中小企業の安定をはかるために、いろいろ政策を講じていかなければならないという実態はわかりますし、またその必要はあると思います。特にその政策を実施するにあたりまして、御検討願いたいことは、全般的な経済政策の中で、中小企業をいかに発展させていくか、中小企業の健全な運営をいかに行っているかという総合的な観点に立った保護政策というものがなされていないように思います。  最近報道された一つの情報を見てみますと、アメリカに出ておるスブーンの価格が、非常に日本の製品が安い。特にその製品は中小企業でつくられた製品である。それに対してアメリカは関税をかけるとか、輸入を制限するとかいう問題を検討しておるように報道されております。このことを考えてみますと、政府自体がもっとあたたかい方策をもって、中小企業のそういう貿易関係についても積極的な政策を行ってないから、こういう結果が出ておるのではないかと判断をしておるわけであります。このことは一つの事実でありますが、私どもの立場からいわせていただきますならば、中小企業の安定政策というものが非常にないということを主張したいと思います。  さらにこの問題を検討する場合、大きな社会問題でありますから、完全雇用をいかに行っていくかとか、社会保障制度をどのように実施していくかとか、または最低賃金制の確立をどのようにするか、こうした問題を並行して検討していただきたいと思います。そうしないと、不当な中小企業の労働者の圧迫ということも起ってくると考えられるからであります。こうした抜本的な検討をするのは、諸先生方の政治的な責任であると思いますし、政府としての責任であると思いますので、十分御検討をわずらわしていただきまして、国民経済を混乱させることのないように、さらに社会の発展を阻害するということがないように対策を御検討願いたいと思います。
  50. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に福岡火災共済協同組合理事長野田貫造君にお願いいたします。
  51. 野田貫造

    陳述者(野田貫造君) 私は福岡県商工火災共済協同組合理事長といたしまして、中小企業者の立場から申し上げたいと思います。  中小商工業者を基盤といたしまして、本県におきまして、昭和二十七年に火災共済会を設立したのでありますが、その趣旨といたしましては、中小商工業者は、先ほどの陳述者も申されておりましたが、団結がないために相当な苦痛を感じております。農業におきましては農協あり、水産業におきましては漁港あり、各工業におきましては、勤労者の団結がありますが、ただ中小企業者のみが、団結していない関係から 取り残されておりますが、私たちは中小企業者の一人といたしまして、お互いに経費の節減をはかるために火災共済会を設立いたしました。すなわち損保会社に対します料金よりもぐっと安くいたしまして、中小商工業者の経費の節減をはかる。また損保会社は地方から集めた金をみな東京にもって行って、地方では中小商工業者が金融に困っておるという関係がありますので、私の考えといたしましては、福岡県は福岡県として火災共済に加入して、その金を福岡県の地元銀行に預けて、それを中小商工業者への融資の一端にしたい、こういうことであります。  二十六国会におきましては、衆議院におきまして、団体法が通過されました。この際各先生はわれわれ末端の業界の立場をよく御調査下さいまして、どうぞこの団体法がすみやかに通過するようにお願いいたしたいと思います。なおまた詳細につきましては、御質問によって御答弁申し上げたいと思います。
  52. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に株式会社安川電機製作所業務部長渡部博君にお願いいたします。
  53. 渡部博

    陳述者(渡部博君) 実は本日の陳述にあたりまして、同業の他の大企業と打合せる余裕もありませんで、いささか私の関係しております機械工業のうち、電機メーカーの立場に局限されるかもしれません。また一般消費者の立場の問題につきましては、先ほどから陳述の方が申されておられますので、省きまして、中小企業のうち特に工業の面におきまして、意見を申し上げたいと思います。  経団連からすでに意見の具申が出ておると思いますが、大体におきまして一致しております。  日本産業におきまして、中小企業の占める重要な役割ということは申すまでもないことでありまして、経済の発達に役立つ安定強化策というものは、その意義は十分認めておるのでありますが、現在の中小企業団体法案がそのまま実施された場合、大企業中小企業との協力関係、生産流通の秩序が乱れはしないかという面から、悪影響を恐れておるわけでありまして、従ってこんどの国会におかれましても、これを強引に通されるということはむしろ避けて、慎重な審議をお願いしたいと存ずる次第であります。  最近の新聞紙上を見ましても、十一月一日召集の国会で一方的な強行手段はとらないようにしろ、これをつぶす責任を負うことは、選挙対策上極度に恐れておる。ぜひ通したいというような記事を散見するについては法律の制定を急ぐ目標の焦点がいささかぼけて来はしないかという点を憂慮するものであります。  中小企業と一口に申しましても、それが商業工業、国内と輸出、卸と小売、親工場と子工場、孫工場、原材料と完成品あるいは生産財と消費材というように、業種の異るものを一括して、中小企業対策と片づけておられるという点に、いささか明確を欠く点がありますが、特に機械関係の大企業といたしましては、その方針として、下請工場は自工場の延長として作業種別に系列化し、その事業場を専門工場化する方向に進んでおるわけであります。すなわち一定の品質を確保するためにも、検査器具、作業設備機械等の貸与または払い下げを行い、下請工場の近代化、生産性向上をはかるためにも、経営技術の指導を行っておるわけであります。値段の決定につきましても、作業コースを分析いたしまして、合理的にきめておるわけであります。もちろん金融の面の信用の裏づけ、共同施設等についても、少からざる援助を行っておる次第でございます。また下請中小企業者は、親工場と直接間接縁故のある特殊技能者がほとんどでありまして、観工場と相互依存の関係こそあれ、対立的なものではないと存じております。  しかるにこの法案によりまして、既存の協力関係が無視され、多数の力によって強制的に大企業と対立関係に立たせられるとことは、摩擦と混乱を招くおそれが多く、このような対立混乱はそこに特権的なものが介入する結果となりはしないかと恐れるものであります。  次に生産流通の各段階ごとに、団体交渉と広汎な調整活動を認める結果、中小企業企業努力の意欲をはばみ、価格の高騰、品質の低下を招き、輸出振興にも大きな支障となりまた消費者にもその損害を与えるのではないかという心配がございます。  次に中小企業者は、質的にまちまちでありますから、これとの取引条件を団体交渉によって画一的にきめることは不可能でありますが、これを法律の圧力で強行すれば、取引は混乱し、必要な資材などの入手も脅やかされる。こういう点を心配するものであります。非常に優秀な中小企業者が不当に押えられる本法は、いたずらに非能率、不経済な業者を守ることになって、優秀な中小企業者はかえって競争的努力を押えられ、また安定取引の分野を失いはしないかと存ずる次第でございます。  次に今日は資金その他の面で、大企業中小企業と協力して、その生産性を高め、一定の品質を確保しておりますが、この面で大企業の努力は効果を発揮しなくなります。大企業中小企業育成の熱意を失い、むしろ下請工場を整理して、自家生産をやらざるを得ない方向に追い込まれるのではないか、さらには商工組合的なそのカルテルに対して、大企業のこういうカルテルという点を心配する向きもあるような次第でございます。  以上のような次第で、この問題につきましては、慎重に大企業間との打合も行っていただきまして、拙速を戒めていただきたい。こう存ずる次第でございます。
  54. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に小倉機器工業協同組合理事長瓦田友次郎君にお願いいたします。
  55. 瓦田友次郎

    陳述者瓦田友次郎君) 私は小倉機器工業協組合理事長をしております瓦田友次郎であります。商工会議所の議員も務めておりまして、現在同会議所の中小企業の方の委員長をいたしております。私は中小企業団体組織に関する法律制定に関しまして、賛成意見を述べたいと思います。  まず機械工業の現在おかれております実情を申しますれば、最も問題となる点は大企業関係になるのでありますが、第一は納品代の支払いの遅延であります。こんどの金融引締めで、一、二の例外はありますが、その支払いが一カ月以上遅れておりますが、一カ月百万円の生産をしておる工場は、百万円の運転資金が必要となるのであります。市中銀行は金を出さないし、政府は公庫を通じて融資をしてもらっておりますが、その程度のことでは間に合わず、黒字破産の危険さえ生じております。  第二は、納入品の価格の問題でありますが、非常に無理な競争をしいられまして、一部の工場を除けば、過当な競争をなして、赤字経営に陥っておるのであります。では大企業に相談したらということでありますが、そこで中小企業の弱さと申しますか、それをやればただちに取引を停止されるおそれがありますから、やれないのが現実の姿であります。  以上のような観点から、どうしても業者同士の組合をつくって、共同で交渉するということが、どうしても必要であるのであります。  また一時鋼材が非常に少くなりまして、中小企業には廻って来ず、かりに廻ってきたとしても、価格は建値の三倍にもなって、これでは競争にたえられず、つぶれるほかないというので、組合をつくって製鉄所に相談したことがありますが、組合に対する不信、この不信と申しますのは、組合の団結が弱くていいときには組合に入りますが、不利益なときには自由に出ていくということから、組合は信用できないということになり、その不信からなかなか都合よく話ができなかったのであります。こういう点からも十分責任と義務の果せる強固な基礎に立った組合をつくって製鉄所もこれならば安心して取引ができるようにせねばならないと痛感しておるような次第であります。  以上のようなことから、団体法の成立を私ども業界として首を長くして待っておるような次第であります。  次に団体法の問題について、特に誤解のある零細企業及び対消費者関係につき、決してこれが零細業者を圧迫するものでもなければまた消費者の利益を不当に侵害しようとするものでもないということの事実を、私が最近取扱った事件の中から取り上げて、議員各位に納得していただきたいと思います。  問題はとうふであります。とうふ一丁の小売価格の最高は、福岡県では公正取引委員会の議を経て、十五円に押えられております。しかし、県下のとうふはどこに行っても一丁十二円で小売されておるはずであります。十五円までの許可があるならば、無理に十二円で売らなくても、十五円で売ったらよいではないかということは、だれにも考えられるのでありますが、もし今のままの品質で十二円という価格ではもうけ過ぎるというのでは、形を大きくして品質をよくして、十五円で売ったらよいではないかということも考えられます。しかしそのように簡単にきめられないところに、物価の性格があるのであります。とうふの小売価格というものは、他の野菜とかみそしょうゆとか、一般食糧品の価格との比較において定まるのでありまして、業者がとうぶだけの値段をかってに高くきめても、売れるものではないということは、皆様も御理解のいくことと存じます。すなわち商品の価格は消費者を無視して、業者がかってにつり上げるなどということは困難なことで、さようなことをすれば、品物は買い手がなくなり、業者は自滅するばかりであります。  この十二円のとうふを昨年の春、小倉市内の市場で、ある商店が開店披露のために六円でおとり販売を始めたのであります。すなわちとうふは原価でもって売って、それで店の宣伝をし、他の商品の売上げでとうふの損はカバーしようという手で、これは商人のよく用いる手であります。ところがこの市場内でとうふを扱っておる他の小売業者は大恐慌を来たしまして、みなが申し合せて一丁五円にしたのであります。ところがこれがまたその市場に近いところの他の業者に大恐慌を来たさせた。そしてこの恐慌の連鎖反応が小倉全市に拡がろうとしたのであります。小倉市にはとうふの小売業者は千軒近くありますが、製造元は六十軒であります。そして打撃が一番受けることとなったのは、千軒の小売業者ではなく、六十軒の製造業者であります。そこで業者はただちに組合会議を開いて、事態の収拾に乗り出して、ようやくとうふの乱売合戦は止まったのであります。そして組合は今後このようなことの起らないように厳重な申合せをしたのであります。そして昨年の十月ごろまでかかって、大部分の業者の調印は済んだのだあります。しかしここまで話が進んだのに、なおかつ二人の業者はこれに反対して、これが完全に解決するのに、約一年余りの時日を費し、本年九月に至ってようやく全業者が十二円で売るようになったのであります。その間における業者の苦心、会合に費した時間や費用、競争から受けた犠牲は並大ていのものではなく、破産にひんしたものも多数あったのであります。  問題の解決は、二人の業者の反対のために一年近く遅れたのでありますが、反対した業者は小倉市内の百貨店のとうふ販売場でとうふを売っている二人の業者であったのであります。ここでは市中どこでも十二円で売っておるとうふの形を小さくし、品質を落して十円で売り出しておったのであります。組合側といたしましては、品質はいかようによくしてもよいし、形も大きくしていいが、売価だけはどこに行っても十二円で売るように、何回も交渉したのでありますが、がんとして応じないのであります。そこで最後にこの問題は一とうふ業者だけの問題ではなく、中小零細業者全部に共通する問題であるからして私どもの団体に解決方を申し込んできたのであります。  私は商工会議所の中小企業委員会に持ち出し、百貨店側の反省をうながしました結果、ようやく本年の八月末に百貨店側も折れて、十二円で売ることになって、問題は完全に解決したのであります。  以上は事実をそのまま申したのでありますが、わずかとうふ一丁の値段と思われるかもしれませんが、その取引方法一つで、とうふ製造で生活している人々にとっては、死活の問題上もなるのであります。そしてこれと同じケースの問題が中小企業や零細企業の間では山積しておるのでありまし 、業者はこの問題に真剣に頭を悩ましておるのであります。  以上の問題を分析して考えますと、どうしても中小企業には一、二の方が過激な行動をとることを生ずる余地のない組織をつくって団体の力により調整行為を行うことが必要であるということと、そうしたからといって、消費者に不利益になるような物の値上りは、独占企業でないから、決して起り得ないということであります。かかる観点から加入命令制度がぜひとも望ましいと考えるものであります。  もちろん第五十六条の規制命令によって、員外者を従わせる方法もあるのでありますが私どもの体験から申せば、やはり組合の中で話し合いで解決することの方が、団結を守っていくことができ、有効であると考えるものであります。  中小企業団体組織法は、中小企業者の自律的協力によって、この状態をいくらかでも改善していこうというものであります。もちろんこの法律一つで、零細業者、中小企業者の生活が立ちどころによくなるというものではありません。衆議院審議過程において、種々の改正が行われ、ほとんど骨抜きにされておりますが、これでも中小企業を振興させるためには、必要欠くことのできない最低の法律であります。  さらに中小企業の実情はまことにはなはだしいものがありまして、この法律制定は、一日を争う実情にあります。先般お話しのように、確かに中小企業界の合理化、近代化は必要であるのでありますが、合理化を行うにも現在のように過当競争が行われていては、できるものではありません。従って当面中小企業過当競争を克服するために、調整のことを中心とする組織を強化していただくことが合理化への一歩前進であると考えます。  以上の観点からどうか御列席の皆さまにおかれましては、国全体の将来を思い、大乗的見地に立たれまして、本法案衆議院修正原案通り、来る臨時国会参議院において、必ず成立しますよう、格段の御配慮をお願いいたしたいと思う次第でございます。
  56. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。次に福岡生活協同組合連合会会長中倉正城君にお願いいたします。
  57. 中倉正城

    陳述者(中倉正城君) 私は消費者の組織生活協同組合と零細業者の方々の立場から、本法案が制定されますことにつきまして、反対をいたしたいと思うのでございます。  戦時中の強制統制に逆もどりをするようなおそれがあるといわれております本法案は、無理に急いで制定せずに、慎重に審議をしてもらいたい。朝日新聞は社説において、十月十一日に報道しておりましたように、西ドイツの政府におきましては、政府草案ができましてから三カ年にわたって検討を加え、さらに議会に提出されまして五カ年間も長い期間にわたりまして、慎重に審議を行った。そしてこれを制定しておると報道しております。今日の現段階におきましては、現行法でありますところの中小企業等協同組合法に基きまして、自主的な協同組合組織の育成強化をはかって参りますならば、中小企業の安定は促進されるものと考えるのでございます。  中小企業の日本経済に占めますところの地位は、申し上げるまでもなく、その組織化が必要であると考えるのでございます。それは常に大企業や独占企業家から圧迫を受けておるからでありまして、特に金融引締めということになりますと、中小企業がまっ先にその影響を受け、しわ寄せされるのが現状だからであります。それには根本的な中小企業金融措置及び中小企業に対する総合的政策が欠如していることでありまして、その徹底を欠いていることに起因をしていると思うのであります。ところがこの法案提案理由によりますと、今日中小企業過当競争のために、きわめて深刻な状態であるから、その程度が公共の福祉を害するほどになっておるので、政府の権力でこれに介入して調整しようとするための立法であるともいわれております。  この過当競争という事態は、政治の貧困から生ずる現象でありまして、特に増大する人口の圧力、膨大な失業者が飛びつきやすい中小企業にそのはけ口を設け、生活費をかせぐためにどしどし割り込んでくるからでありまして、このことは零細企業の開店と閉業がめまぐるしいことによっても明らかでございます。これを解決するためには、根本的な社会政策、経済政策、完全雇用、社会保障制度の確立等が必要であろうかと考えられるのであります。従いましてこの現状におきましては、強権的統制法が実施されましたならば、中小企業、特に零細企業方々は、これを統制されるために、希望を封じられまして、合法的に整理される運命にあり、社会不安を激化するおそれがあるかと考えられるのでございます。強制的に統制をせずに、現行中小企業等協同組合法との関係の諸法規の普及とその自主的組織の確立を育成強化をはかって参りますならば、中小企業の安定はそういうことで達成できるのではないか、かように考えるものでございます。  次に法第五十五条の強制加入制度についてでございますが、商工組合に加入していないいわゆる員外のアウトサイダーのものが、公正な競争を行っている善良な中小企業者であったならば、一部の業界ボスの人たちが不当利益の価格の維持をはかるために、業者間の協定実施上じゃまになるものを組合に強制加入をさせて、そして消費者のことなどは考えないで、いろいろな形で価格維持カルテルを実行することになることは、火を見るよりも明らかであろうかと思われます。こういうことでは日本経済の発展も一般消費者の利益も失われてしまうことになろうかと思うのであります。独禁法の第一条に規定してありますることは、抜すいを申しますと、事業支配の過度の集中を防止し、結合協定の方法による生産、販売価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正かつ自由な競争を促進し雇用及び一般消費者の利益を確保し、国民経済を民主的で健全な発達を促進することを目的とするとあるのでありますが、これらの趣旨に反するおそれがあると思うのであります。  さらに第三には、法第五十六条、五十七条の規制命令についてでございますが、事業活動の規制を組合員外のものに対して命ずること及び第五十八条の設備新設制限命令というものが、強制加入命令と同様に、昔の官僚支配やボス統制に陥るおそれがあるのではないか、戦時中の統制にかえることになるのではないか、そういうふうに心配をされておると同時に、特に法第十七条では事業の一切を統制することができるようになっておりますので、事業の統合と廃業の危険をもっておるといわなければなりません。特に零細企業方々が、今までは戦時中でさえ転廃業をやったのが、この法律ができることによって、廃業一本にしわ寄せされる。こういうことに心配をされておられるようであります。  また調整規程内容を参酌して制限を定めることができるとありますが、運用のいかんによりましては、この参酌してという言葉の意味におきまして、調整規程と全く同じような政令が出される可能性があるのではないか、こういう点が心配されておるのでございます。  法第六十八条では、政府組合役員の罷免権をもつことになっておりますが、これはあくまでも民主的な平和国家におきましては、組合の自主性によってこのような解任措置が行われることが至当であると考えられるのであります。とありますがゆえに、こういう場合には審議会の少くとも答申を得て行うべきではないか、かように考えるものでございます。  具体的な事例を考えてみましても、現在ふろ銭が高くなっておる。こういうものが何らかの統制をはずしていくならば、きれいなふろ屋さんができ、安い料金でおふろに入ることができる。こういうようなことも具体的な措置として期待できる。かように考えられるのであります。政府が申しております三悪の追放はやはりこういった法律の中で生まれるような危険性をはらむものをなくすることに始まるのではないか、かように考えるのでございます。  第四には法第五十六条の「組合員たる資格を有するもの」こういう中に生活協同組合を除外することが明らかにされておりませんが、こういう点はやはり消費者の利益を考えてこそ始めて国民経済の面からも、あらゆる角度から再生産の意味におきましても、協力ができる。こういうふうに考えられるわけでございます。  第五は、生産工業部門商業サービス部門とは明らかに区別すべきではないかと考えるものでございます。一般的に中小企業といわれておりますが、第二次産業の工業部門と第三次産業の商業サービス部門とは本質的に異るものでございます。それだから中小企業安定法によりましても、調整は工業部門にのみ適用されることになっております。複雑な商業サービス部門におきましては、自主的なことに任されてきたのであります。商業サービス部門に強制カルテルを認めた場合には、消費者の利益が直接侵害されるおそれがあるからでありまして、中小企業等協同組合法の活用を十分考えるならば、商業サービス部門における振興措置はとれる。こういう観点からであったと考えるものでございます。  さらに第六番目は、法第九十二条の報告の徴収についてであります。さらに第九十三条の立入検査の問題にありましても、ただ主務大臣の判断のみで報告を求めることができる。あるいは立入検査を行うことができると、こういうことになっておりますが、これは行政庁の不当干渉や戦時中にいわれておりましたところの官僚統制あるいは業界ボスのような人たちが再び現われてきて、そういう人たちが結託をすることによって、汚職の一因をはらむ、こういう危検性があるということが心配されておるのでございます。  さらに第七番目につきましては、第八節の審議会に関する条項でございます。安定審議会調停審議会の両審議会を設置することになっておりますが、これは審議会運営が複雑になり機能が低下するおそれがないか、中小企業問題を真剣に全般的な見地から検討するならば、そういうことでは運営が阻害されるおそれがあるのではないか、そういう観点から中小企業審議会こそ一本の姿で、運営合理化すべきではないか、こういうふうに考えるものでございます。また審議会委員には消費者の代表をやはり参加させることでなければ、本法案は消費者の利益を考えないで独禁法の適用をすら除外して、一部のボスの支配に運営をまかせることになるのではないかということを心配するものでございます。  次に第七十三条第二項第一号で主務大臣調整規程の設定の際は、安定審議会に諮問する必要はなく、ただ修正にのみ諮問することになっておりますが、こういう大事な調整規定を諮問せずして、修正のみを諮問する、こういう理由がどこにあるか、常識あるものの理解できないところでございます。  次に、すでにカルテル的行為は、生協活動の中におきましては、商業者の方々の中で行われておる、こういうことでございます。消費者の自主的組織であります生活協同組合に対しましては、最近特に福岡、水俣、挙母、鳥取市初め、全国各地におきまして、陰に陽に圧迫の度が加わって来ております。その具体的な現われは、生活協同組合のいろいろ必要な消費物資が荷止めをくらっておる。こういうことがこの法律ができることによって相当大きく影響してくるのではないかと心配されるのであります。  次に第九番は、組合協約及び団体交渉権の問題でありますが、その協約の締結によって生活協同組合に対しまして荷止めをするようなカルテル行為を直接間接に協定する場合があるとすれば、その行為が第八十九条第一項第一号に規定する不公正な取引方法であることを明示すべきではないか、こういう点が明示されておりませんので、先ほど申しましたようなカルテル行為が消費者に対して、消費者の利益を大きく阻害するような物価高が現われてくるのではないか。こういう点が考えられるのであります。  次に消費者の家庭生活に及ぼすところの影響でございますが、この消費者の自主的な共同購入あるいは自由選択、こういう自由選択によるところの購買というものができなくなってくる。そうして消費者が価格決定に参加することもできないし、一方的に悪い品物が高く売りつけられるようになるのではないか。こういう点を特に主婦の方々を始め、消費者の人たちは心配をいたしておるのでございます。と申しますことは、最低の値段が決定されて、その線よりも安く売ったり、あるいはサービスしたりすると、処罰されることになっておるからでございます。資力もある、条件もよい店と零細な生業的業者の悪い条件の店と同じ価格でありましたならば、消費者はサービスのよいところから品物を買うでありましょうし、零細な店はたちまち経営困難になってくる。この法が成立することによって、零細業者は消えてなくなるであろう、こういうふうに考えられるわけであります。これでは消費者の組織もまた零細企業の人たちもこの法律の制定を望むということは困難でございまして、消費者の人たちはこういうカルテル行為による物価高騰によりまして、生活を脅やかされることになるのでございます。第五十五条から第五十八条までの強権によります統制は、消費者が自主的に生活を防止する道をふさがれてしまっておる。こういうふうに理解をいたしております。  環境衛生法も制定されましたけれども、ふろ銭や理髪、パーマ、旅館代等は全国的に高くなってきております。今日行われておりますところの米、運賃、電気料金、新聞、ラジオ等は政府の値上げ政策によって上ってきておりますがゆえに、これ以上この法律ができまして消費者の生活必需品が高騰するということになりますと、消費者の生活をいやが上にも脅かすことになり、社会不安というものが働く人々の中から生まれてくるのではないか、こういうふうに考えるものでございます。  以上の意味から本法案の制定実施につきましては、もっと慎重に審議をしていただきまして、真に中小企業の方方が、大企業の中に伍して、ほんとうに中小企業の日本経済におきますところの地位が確立せられ、振興できますことを、もっと根本的な面からお考えを願いたい、かように考えるものであります。特に中小企業施策におきましては、金融あるいは機械の近代化、経営指導、税の軽減、市場の開拓等を積極的に行っていただくと同時に、大企業中小企業との賃金の格差をなくするような最低賃金制を確立し、過当競争をこういう根本的なことから解決をしていくということが今日の急務の問題でないかと思うのであります。特に現下の大企業のオートメーション、原子力時代に対抗するところの中小企業の姿と申しますのは、まず今日の急務といたしますものは、設備、技術、経営の近代化をほかにおいて、中小企業の振興はあり得ないと考えるのであります。でありまするがゆえに、特に中小企業の自主的な協同組織化による協同事業の促進というものが講じられてしかるべきではないかと思うのであります。  朝日新聞の十月十一日の社説はこう書いてあります。「自民党政府は本臨時国会で本法案を無理やり押し通そうとしておる。これは中小企業の保守性を利用して、これを組織化して、みずからの有力な選挙地盤に利用しようとしてはいないか。」こういうことが心配になるということを述べております。そういうことでないことを私は心から念願したいのでございます。そうして先ほども述べましたように、中小企業の振興を真に考えていただいて、そして慎重に年期をかけて、西ドイツのようにりっぱな中小企業者が大企業に伍して生活ができるように、企業が発展いたしますように、消費者の利益を守られ、零細企業者も明るい希望をもって中小企業の振興が進められるように、政府も要路の方々、特に参議院においてただいま御審議になっておられますので、参議院方々に特にこのような意味において善処方をお願い申し上げまして、公述を終りたいと思います。
  58. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に福岡大学教授三苫夏雄君にお願いいたします。
  59. 三苫夏雄

    陳述者(三苫夏雄君) 第一条に掲げてあります通り経済事業を行うためや事業活動調整のための組織をつくり、これが公正な経済活動の機会を確保し、経営の安定をはかり、この目的を達し、中小企業の発展がただちに国民経済の健全なる発展に直結する。それほどまでにほんとうに中小企業のことを重大視されておられるならば、私は賛成であります。この賛成の前提の下におきまして、私は建設的な批判を加え、あわせて積極的な意見としてひとつお聞きいただきたいと思います。  まず中小企業の範囲を工業は三百人、商業は三十人、こういうようにきめられたことは、過去の非常に古い歴史に立脚しております。今日のオートメーション時代におきまして、こういうような人数によって大企業中小企業の差異をつけられるということは、これは一つの見方でありますけれども、妥当なものとはいえません。法人の製造工業に見ましても、資本金一千万から五千万円の従業員が平均百六十四人であります。一千万から五百万で平均は百二十三人でございます。三百人といえばこのオートメ時代において、相当の大企業もこの中に入ってくるということをわれわれは懸念いたします。しかも一千万円以下で、それが法人における製造工業の八三・九%を占めております。従いまして私は工業の場合は一千万円以下、商業の場合は五百万円以下とする。いま一つの見方は、借入金をどれだけなし得るか、少くとも五百万円の借入金をなし得るものは、中小企業にどれだけありましょうか。こういう事実の観点から、中小企業のわくをきめていく、ただ人数だけできめるということは、これはまことに軽率であると思います。  次は現在の業者を保護するとともに、将来の業者をいかに保護するかということであります。新加入の道が講ぜられておるはずでありますけれども、新加入のためには既存の条件に歩調を合せねばならない。要は新加入の業者についてもあたたかい思いやりをもってほしい。こういうことであります。  次の問題といたしましては、営利を目的としないというのでありますが、私は営利を目的とせよといいたいのであります。今日いかなる企業も社会的な任務をもっておる。金融業は商工業を勃興せしめるための社会的な任務をもっておる、と同時に一面において営利の追求を行うのであります。今日の経済機構におきまして、営利を目的とするなということは、神がかり的であります。少くとも現実から離れておる。すなわち業者はおのおの社会的な任務に目覚めてはおりますけれども、一方においては営利追及であります。これらの人たちが集まりましたこの組織が、営利を追及してはいけないというような考え方が、本質的に誤まりだと思います。これがいわゆる予算の食いつぶしというような、積極的な仕事に対する意欲に欠けてくるのであります。商工組合はどんどん仕事をして利益を上げていただきたい。その利益は中小企業者に還元すればいいんだ、もしこれが還元しないならば、留保いたしまして、この積み立てられたる留保金で、共同施設に投下する。少くとも今日中小企業の悩みは、人件費が非常にコスト高である。しかも実質賃金は非常に低い。大企業中小企業との差異をもし五百万円に線をひいて考えてみましても、大企業の一〇〇%の原価に対する賃金の割合は一三%であるにかかわりませず、中小企業は一五・四%しかも実質賃金は大企業の六〇%ないし五ぉ%程度しかもらっていないということであります。これはなぜか、生産性が上っていない。生産性が上っていないということは設備をそれだけもち得ないということであります。少くとも共同の力で稼ぎ得たものは、共同の設備に投下されて、しかもそれがどんどん自由に使えるならば、これは中小企業者の発展につながるものであります。従いましてもし利益があって、これを将来共同施設の機械購入に充てるならば、その充てられるところの留保された利益は、課税の対象からはずすべきであります。これは極力お願い申し上げたいと思うのであります。  次の問題でございますが、強制加入の問題でございます。強制加入となると、その経費負担に悩みを生ずるものもありましょうし、運営面に先ほどの御意見のような官僚的な匂いが生まれてくる懸念もないではありません。しかしすでに論ぜられておりますように、独禁法の精神からは、業界の自主性を生かし不正競争排除の面からも、強制加入が妥当であるということは、これは理論的に正しいと思います。しかもある程度の強制力をもたなければ成り立たないということだけは、現実の面から確かだと思います。しかしながら問題は商工組合設立の問題であると同時に、加入の問題は実践面で非常に当事者は苦労なさることだと思いますけれども、この点の苦労をいわゆる中小企業者のためだという点からほんとに心から設立することによって、いわゆる中小企業の生きる道が見出せるという思いやりから設立を急がれるならば、私は必ず設立ができると思います。  次の問題は、環境衛生法と同様に価格の調整問題が大きくうたわれます。この価格調整が消費者の生活を脅かさないかといったような懸念、これは確かに私も感ずるのであります。問題になっております電機器具の割引き売出し、これは電気器具の定価そのものに問題があるのであります。すなわち割引して売れるような定価をなぜ過去においてきめたか、割引のできない定価というものが、国民生活につながるところの正しい定価である。それを今日までほおっておいたところにこういう問題が起きておる。価格の安定をなさるならば、消費者の利益を擁護する。消費者の支持し得ない価格の協定というものは全くあり得ない。この点はやはり反省していただきたいと心から念願するものであります。  また問題は、価格の競争がなくなりますというと、改善とか合理化といったような面において、いわゆる中小企業者の怠慢性というものが現われないかという懸念が多少ないでもございません。しかしながら価格が協定されましたときに、争えないものは、やはり技術あるいは品質といったことが問題となるでありましょうが、これがあまりに激しくなりますというと零細な中小企業者をやはり苦しめることになる。この辺も運営面において私はりっぱな価格をとっていかれることが必要だと思うのであります。業者がうるおい、消費者もまたうるおうというのでなければ、長続きはいたしません。これと同時に私は組合員業界に働く人たちにもうるおいを与えなければならない。先ほど申しましたように大企業のいわゆる人たちに対して、中小企業に働く人たちは六〇%くらいの賃金にあまんじております。これでは人材が集まらないのではないか、いわゆる中小企業の発展を期するならば、その中小企業の発展と同時に、そこに人材が集まるような組織というものがもたれなくちゃならないんだ、人材なくして私は中小企業の発展は期し得ない。こう思っております。  次に金融の問題が取り上げられております。こんど国会に、大企業に対する企業担保法というものが提案されるそうでありますが、これは中小企業にむしろもっていくべきであったんじゃなかろうか、中小企業というものは担保力をもっておりません。商品をもっており、それを売ったり売りかけ金受取り手形は、担保能力はございません。その店にあるところの信用といっても、土地は借りもの、家も借りもの、担保を出せといっても、その商品と店にありますところの営業権、いわゆる信用しかない。でありますから、企業担保法に相当すべき中小企業者の営業担保法をこの中におりこんでいただければ、まことに仕合せであったと思います。商工組合の保証のもとに融資をするといった場合に、その融資がされる担保がほしいのではないか。その担保は店全体だ、店一ぐるみこれが全部担保になるんだというような対策をとっていただくならば、中小企業者は浮かび上れると思うのであります。  組織ができ上りましても、運営がまずければ効果が上りません。中小企業協同組合におきましても、現在睡眠組合が相当あるということを聞いております。この睡眠組合も金を借りるということになりますと、むくむくと起き上ってくるといったような現状があるんじゃないか。中小企業者の強力な組織と団結は、私どもの心から願うところでございます。しかしながらこの法案目的を達し得るかどうかは、やはりその運営のいかんということにかかっておると思うのであります。  願わくは一部のものの利益保護にとどまらず、中小企業全体にうるおいを与え、これが国家社会あるいは国民経済の基盤となるという結果をもたらすように、心から念願するのであります。願わくは私はこの運営いかんということが大いにこれにかかってくる、この運営こそ大切だということを叫びまして、私の意見の開陳を終らせていただきます。
  60. 近藤信一

    座長近藤信一君) どうもありがとうございました。  これにて参考人方々の御意見陳述は終ったわけでございます。委員各位から御質疑がございますならば御発言を願います。
  61. 相馬助治

    相馬助治君 私はまず瓦田さんにお尋ねしますが、あなたの組合で自主的におやりになっている業者と下請業者との比率はどのくらいになっておりますか。
  62. 瓦田友次郎

    陳述者瓦田友次郎君) 私は小倉でございますが、自主的に一貫産業で製品をつくっておるという工場は数えるにたりない。あとはほとんど下請業者であります。
  63. 相馬助治

    相馬助治君 私は団体法によって中小企業者を保護しなくちゃならないという建前はよくわかりますが、同時に私ども社会党では、下請代金の支払い遅延の防止法の一部改正案を強く主張しております。内容は下請代金の優先権の確保ですが、こういうものをつくらないと、団体法をつくっても、うまいぐあいに参らぬぞという立場をとっておるのですが、あなたはこの法律ができることに賛成をしますか、しかもこういう保護制度が行われることによって、むしろ大企業と下請業者の問の円満な話し合いが阻害されて好ましくない、かようにお考えですか、いずれでしょう。
  64. 瓦田友次郎

    陳述者瓦田友次郎君) そういうことを直接業者が大企業に話をいたしますと、これは非常な問題を起すのでございますが、国が法律をもってきめていただくならばありがたいことだと思います。しかもこれは大企業といいましても非常によくわかった、たとえば安川さんのような大企業もあるのですが、また無茶な大企業もあるのです。現実に私の取引しておる会社の中で、納品しまして八カ月も支払わず、その支払いも現金かと申しますと、四カ月ぐらいの手形であります。そうしますと、納品して一カ年ぐらいしないと金が入らない。こういうところも現実にあるわけです。そしてただ勧告という程度の法律は、何の役にも立たないのです。それと政府がいろいろ中小企業に融資をしておりますが、私からいわせますと、中小企業に金利を払わせて、大企業の融資をしておると一つもかわらない。そういうことのないように、納めた納品については、検収は何日にやる。支払いは何日までにやる。それ以上特別の事情がある場合は何らかの方法をもって申請して許可を受ける。その場合は金利を払うというぐらいの法律をつくっていただきたい。こう思っております。
  65. 相馬助治

    相馬助治君 その辺の実情はよくわかりました。次にお尋ねしたいことは、あなたの方の鉄工業関係は、現在中小企業安定法によって調整組合をつくれることになっておると思いますが、今までつくった例はありますか。またそういう話題が出たことがありますか。
  66. 瓦田友次郎

    陳述者瓦田友次郎君) それが小倉の鉄工業は業態がまちまちでございまして、今までそういう調整組合をつくるという話が今まで出ていないのであります。またかりにそれを出しましても、なかなか入ってこない。協同組合さえも三分の一程度しか入らないという状態で、何らかそこに強制的に入っていただくような法律が必要になってくると思います。
  67. 相馬助治

    相馬助治君 それは私の非常に聞きたいことを御発言下さったのですが、実は私どもも専門調査室等において調査した結果では、鉄工業では多種多様の製品であり、設備も非常に違っているので、商工組合をつくることは容易なことではない、こういうことを感じておるわけです。そこでこの法律を読んで、そういう困難を感ずるとか、あるいはそのためにこういう改正が必要だということがお気付きになりますれば、あとででもけっこうですから、御意見を開陳していただきたいと思うのです。  そこで渡部さんにお尋ねしたいのですが、あなたのところでは下請機関に対して非常に同情的であり、りっぱであるということを聞いて、心から敬意を表します。そこであなたのところでは下請組合をつくっておる事実がありましょうか。またその組合があれば、その組合と団体協約等の話合いをし、あるいは結んだ事実がございましょうか。それから下請業者といっても多種多様です。ところがこの法律は下請業というということで一本にまとまることは不可能です。そうするとその下請だけでうまく調整組合をつくることができるとお考えでしょうか。
  68. 渡部博

    陳述者(渡部博君) 最初にお尋ねの私の方の下請中小企業組合をつくっておるかということは現在事業協同組合をつくっておりまして、約五十社入っております。別に団体協約らしいものはやっておりません。種類が多岐多様にわたっておりますので、自然個々別別の問題は直接でありますが、金融の面、共同施設の面、そういう問題は私の方で事務所をつくってやっておりまして、そこで共同作業場をもっております。そういう共通面においては面倒を見ております。それから多種多様であるので、事実上商工組合は結成できないものと私は思っております。しかし地域的の問題はどういうようになりますか、他の面から強制加入命令、こういう問題が起きた場合を想像しますと、これがはたして先ほどの心配が杞憂であるかどうかというと、いささか心配になる面がございまして、大体私の方の考えといたしましては、とにかくこんどの商工組合制度というものは病気のようなものであって、病気が治ったらすぐ協同組合組織にもっていくと、こういうように二十六国会でもお話しが出ておるようでございまして、従って商工組合はあくまでも臨時的なものであると解釈されるわけであります。それからこんどの団体法商工組合の協同事業とか、それから今問題になっております強制加入の問題とか、いろいろ問題が出てくるわけでありますが、実際面としましては、皆さんとしては、この団体法を万能薬であるかのように誤解を受けているんじゃないか。実際面として大企業の特殊技術を要する面の中におきましては、一般消費関係とはいささか趣きを別にしております。しかしその業体の中で一般消費者に関係のあるものがありましたならば、いかなる形で強制命令で入っていくか、こういう点が、実際運営面の問題でございましょうが、はっきりしないで心配しておるようなわけでありまして、ただいま申すようなぐあいで、実際にわれわれの協力関係のあるものは、技術的に生産性向上の面から見ましても、強制加入という条項ははずしてもいただきたいし、また今の現実においてもできぬのではないかと思います。それから団交を法律でやることはやめて、相互依存という形で自主的に解決したい。先ほども申しましたように直接間接に親子の関係がありまして、元退職者であったもの、貢献のあったもの、またそうでなくても地域的なものもありますので、金の問題につきましても、親会社が困っておるというのに、全額やるというわけにはいきませんが、そこは賃金支払いに困るようなことがないようにということぐらいの覚悟はもっております。
  69. 相馬助治

    相馬助治君 最後に一点お聞きしたいのは、お話しの中に自己生産を始めるかもしれないということを申されたのですが、これは実に大問題だと思います。これでは法律をつくりましても、力関係で押しまくられてしまう。自己生産をやられてはたまらない面が出てくるわけです。それでわが党においては、産業分野に関する法律案を出したのですが、これは容易に出来そうにないわけです。そうしますと、これはひいきの引きたおしになるんじゃないかということを恐れておるのですが、渡部さんに率直に御回答願いたいと思いますことは、自家生産を始めるかもしれないというのですが、これは今のあなたの会社の機構から見て、下請には出しておるけれども、いろいろな相互扶助の関係から出しておるのであって、あまり下の方でうるさいことをいうならば、たちまちこっちで自家生産できるという面はかなり多いものですか。それとも何といわれようとも、あるものは今の機構では下請にやらせるほかないという面が多いのですか。その辺の事情についてひとつ御回答を承りたいと思います。
  70. 渡部博

    陳述者(渡部博君) 自家生産にもっていくのではないかということをさっき申し上げましたが、もちろん大企業におきましては、生産性向上のために設備の改善を進めておりますので、低級といっては失礼になりますが、技術程度の低いものは外に出す。社内的にはやはり大量生産方式をとる。そういうことからして、これをもってきてもかえって流れを阻害するわけであります。従って当然出すべきものもありますが、程度によっては工場の繁閑を利用して入れ得るものもあります。大体私の今の見当では、私の方の生産の一つの段階におきまして、切削加工など救済的なものも相当ありますが、そういうものは取り上げようと思えば、取り上げられるものであります。こういうものは親子の縁故関係もありまして社内的にもそういうものはやらないということで、本社工場でやるべきものは、さらに数等高度の面をやるべきだということで分けております。しかし今おっしゃるような面は決してないとは申せません。これは電機機械メーカーとしますと、小さいコイルとか、そういうものもごごいますが、これが他の大企業の面におきますと、相当引き揚げ得るものがあろうと思います。
  71. 相馬助治

    相馬助治君 次に瓦田さんにもう一度お聞きしたいのですが、強制加入による商工組合がたとえばあなたのところにできた、八幡製鉄と交渉をして鉄材をもらう。そうしますと、あの法律をよく読んでみますと、出資組合員でも出資組合員でないものでも、議決権は同じだし、非常に商工組合自体の運営でどういうふうにやるんだかわけのわからない、むずかしいというか、はっきりしない面が多いわけです。そういたしますと、商工組合でもらったんだから、おれのところは下請以外のものだけれども、おれのところにも鉄の配給を寄こせということが出てくるわけです。ところが鉄を出した八幡製鉄では、何をいうんだ、よそにやったのではだめだ、こういうことが両者の立場から当然いわれることだと思います。こういう問題を一つ考えますと、あなたのところのように下請業者が多いとはいいますけれども、この組合において、しかも強制加入の場合にはかなり運営上面倒なことが起るように予想されますが、この点についてはどうでしょう。実は今問題になっておる法律からいってどう思うかということをお聞きしたいのですが、事実上こういう問題が起きるかどうか。起きたとしたならば、何とか内部で解決がつくだろうか、こういうことを私は心配して聞いておるので、こんな法律はだめだという前提に立って聞いておるんじゃないのです。
  72. 瓦田友次郎

    陳述者瓦田友次郎君) お説の通りども商工組合をつくりました場合、業種が種々雑多であるがために、その組合で行う調整事業が、すべての問題、すべての人に関連してというように私は考えておりません。その組合員の中でたとえば製鉄に関係のある方でも、資材に関係のある方はその資材に関係のある方の部会をつくって、そこで解決したらいいじゃないか、そうしないと先ほどもお話しがありましたように、商店街の問題にしましても、業種別の団体、これは明らかに調整事業が行われますが、地域的の問題になってきますと、すべてのものが同じ利害のもとにということにはならないわけであります。けれども共通の問題はまたあるのです。その共通の問題を取り上げて考えますときは、そういう問題は確かにたくさんあるのです。そういう問題に限って調整を行っていったらいいじゃやいか、こういうふうに考えております。
  73. 相馬助治

    相馬助治君 これは出ないうちにあれこれいうてみても始まらぬことで、要するに同一商工組合の中で、同一業種の人が集まって、部会のようなものをつくって、その自主的な意見中心にしてやっていけば、解決し得る道があり得る、こう思うということですね。よくわかりました。  次に内野さんにお尋ねしたいのですが、中小企業者を立法措置によって何とかこの際助けなくちゃならないということは、国会において与野党一致しております。特に参議院段階においては、この立法はやむを得ないという段階に来ております。ただ問題は内容をどうするかということなのですが、特にあなたの発言の中で、労働組合を強く非難されたわけです。私どもは実はこの法律を考える場合には、労働組合がストライキをやっているじゃないかということよりも、常に大企業との関係がどうだ、大企業の圧迫から法的に中小企業を守ろうではないかという気持の方が強いのです。これはニュアンスが大分違いますが、自民党の中でも進歩的な方はそのことを明瞭にいわれておるのです。あなたは労働組合を非難されておりますが、これは三苫先生も御指摘になったように、中小企業に働いておる労働者の賃金とか福利の向上をも含めた中小企業の優遇ということをこの法律は狙っておりますが、この点についてもう一度おっしゃっていただいた方が誤解がないのではないかと思います。  それから何でこういうことを申し上げるかというと、労働組合にも実際は強制加入権がないのです。それをこんど政府が強制加入命令をも含めた団体法を決意して出したということには、異論はありますが、非常に大きな意味があるのです。これが中小企業者に対する革命的法案といわれるのもここなんです。そこでそういう法律の性格から考えて、労働組合を敵視する形でこの法律案にのぞまれるのであると、私どももこの法律について考えていかなくちゃいけないのですが、その点について再度御発言願えれば幸いに思います。
  74. 内野光雄

    陳述者(内野光雄君) ただいまの労働組合の点につきまして、私の説明が誤まっておった点があったかと思いますが、私はただ労働組合の人は団結権、スト権をもっておって、いろいろ自分の生活安定のためにみづからの権利を主張するので、あらゆる面でわれわれより優位な立場にある。でありますからただ労働組合のお方を例に出して説明を申し上げただけでございます。  それから最前大企業は自己生産をやるという発言がありましたが、これはただいま安川電機の方からは、そのパーセントは御発言にならなかったのですが、大体において自家生産のできるものもありましょうが、大部分は町工場に流した方がずっと生産コストが安くつく、こういうわけであります。これは中小企業者の犠牲において生産されておるからであります。大企業では設備をこしらえ、給料も高くして、すべてを自分の家でやるということは、とうてい不可能ということを承っております。  なおついでに午前中に婦人代表の方が反対をされましたが、あの方は本日の公聴会に際しまして、何らの会合ももたないで、ただ自分一人の立場で説明しておったように承りして、非常に憤慨したわけであります。
  75. 相馬助治

    相馬助治君 今の説明で全く了解しました。中小企業者が非常にひどくて、労働者と比べてみても、こういう有様だという状況説明でいわれたので、労働組合に対抗するものでないということは確認いたしました。  次に三苫先生にお尋ねしますが、先生の御意見は、よりベターなものとして成立せしめようという賛成論であると私は了解いたしました。特に先生が鋭くおつきになっておる点はいずれもまだ世間に公表されておりませんが二、三日前の委員会で重要な問題として取り上げられた点です。たとえば中小企業の分類をオートメーション化した時代に、従業員で規定することはけしからんじゃないか。また課税に対する特別措置の問題、金融の問題、これらはいずれも鋭く取り上げられた問題でございますので、先生の御意見もわれわれは委員会報告をして、こういう議論に対して裏づけされたような点がありますので、参考にいたしたいと思います。  お尋ねしたいことは、この法律を見ますと世上商工組合がすぐできるように一般の中小企業者の方は考えておるのです。これは私は非常に中小企業者の方、特に町の小売商の方に失望を与えるんじゃないかということを心配しておるわけです。そこで不況要件がなければ商工組合はできないということ、調整事業をある一定の期間行わない場合は解散させられてしまうわけです。そこで三苫先生の御意見を聞きますと、そういうことはばかげている。商工組合は利益追及もさせろ、その利益は共同施設その他に織りこんで、全体的な中小企業の改善にもっていったらいいじゃないかということで、非常に私は参考になり、さもあらんと思ったのですが、今の法律では不況要件がなければ商工組合はつくれないし、調整事業をある一定の期間やらないと解散命令がされることになっておりますが、これを妥当とお考えでしょうか。これは望ましい法律の姿からいえば、どんなふうにもっていったならばよろしいと思いますか、先生は法律の専門家でいらっしゃいますから、ひとつ立法技術上からも御意見を御開陳願いたいと思います。
  76. 三苫夏雄

    陳述者(三苫夏雄君) 私の専攻は簿記学で、中小企業の診断員を長くやっておりまして、実際に中小企業の中に飛び込んでおりますが、法律の専門家云々ということはお門違いであります。  ただその点はそういう懸念があるから、そういうものでなくて、とにかく中小企業商工組合を早くつくらせて、これが組織と団結によりまして、運営がうまくいくようにしてほしいということであります。どういうようにしてつくるかということは、立法措置につきましては、ひとつ専門家の方にお願いいたしたいと思います。
  77. 相馬助治

    相馬助治君 趣旨はよくわかりました。ありがとうございました。
  78. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 江崎さんにお伺いしますが、先ほどの御意見のように大企業との交渉等が認められると、その結果は賃金等の切り下げになるんじゃないかというような御意見があったように拝聴したのでございますが、あるいは私の聞き方が悪かったかと思いますが、その点重ねてお聞きしたいと思います。
  79. 江崎淳

    陳述者(江崎淳君) 私が申し上げましたのは、そういうことではないわけです。大企業との話し合いの中で、その交渉がいわゆるなれない交渉みたいになって、大企業の大きな力の中でなかなかむずかしい交渉になるだろうと思うのです。その場合にかえって犠牲が消費者にかかるような協定がされるおそれがありはしないか、いわゆる中小企業の安定をはかるためには、大企業の圧迫を防衛するという立場でないといかぬ。そのためには大企業と話し合って、大企業の分け前をある程度中小企業に廻してもらう、こういうのが協定の本質でないといかぬと思うのです。ところが大企業は現在のままにして、中小企業も有利な立場になると、結局消費者にその犠牲が廻ってくるおそれがありはしないか、こういうことを申し上げたのです。
  80. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 よくわかりました。いま一つ中倉さんにお伺いしたいと思います。生活協同組合で事業をおやりになっておりまして、大へん失礼な質問かもしれませんけれども、実際中小商工業者の方が心配をしておりますのは、この組合運営が非常に法の精神にかなっていればいいのでございますけれども、所によりますといわゆる員外販売をしているところがあるようにも聞いておりますので、はなはだ失礼でございますけれども、こちらの実情を一言おもらし願いたいと思います。
  81. 中倉正城

    陳述者(中倉正城君) 生協の員外販売の問題がよくいわれるのでございますが、員外利用というものは、十二条によって認められておる。それで生協といたしましては、員外利用の必要性を認める場合に限って申請をいたしましてその認可を受けてやっておるわけなんです。ところが生協の場合に、よく生協が申しますように市価販売という考え方は、消費者がほんとうに賃金をもらって生活をしていく上において、生産者が適正な価格をつけて卸、小売に廻して、そしてその利潤が適正であって消費者もまた苦しい賃金から購入して、そしてお互いに共存していける、こういうような適正な価格がわれわれは望ましいのでありまして、生協が申しておりますいわゆる価格というものは、私たちの生協運動の中では、生協の価格が公正な販売価格である。こういうふうに考えておるのでございます。そういうことで若干市販よりは価格が安いということで、生協から物を買えば安いからということで、生協でない中小企業方々が類似の組合をつくられて、そしてこれを生協としていろいろやっておられる。こういうようなことが往々にして生協の運動と間違われて、反生協運動が行われておる。こういうようなことで福岡県下におきましては、特に久留米地区において、県議会にまでこの問題が出されまして、審議をされておるような実情があるわけであります。そして員外利用が全然ないかということを私はここで絶対にありませんということは、業者の方が生協運動というものをほんとうに中小商工業者の人たちとライバルの形において消費者の人たちの利益を守ろうとする組織であるというように御理解願っておるならば、この問題も解消するでありましょうし、何だか生協運動を敵視するような見方で見られる。会員証ももたずに生協の売店に来て物を買う。ところが中には会員証を忘れてくる方もありますし、大勢の方ですから、売子が一々おぼえてないこともある。それがたまたま見られて、員外利用をやっておるじゃないかといわれる。しかしそういうことではなく、近代的な経営をしていただいて、生協とはライバルの形において競争をしていただきたい。こういうふうに考えております。
  82. 土田國太郎

    土田國太郎君 野田さんにお尋ねしたいのですが、こんどの協同組合法では共済組合が非常に大きな形においてクローズアップされております。政府国会も重大な関心をもっております。あなたの御経営になっております当県の火災共済組合運営状況、概況と申しますか、アウトラインでけっこうですが、もしおさしつかえなければ、簡単に要点だけでも承わればけっこうだと思います。
  83. 野田貫造

    陳述者(野田貫造君) 火災共済会の趣旨につきましては、先ほど申しましたように、福岡県の中小工業者の経費の節減に資したい。それから損保会社が集めた金は東京に集まってしまう。そこで中小企業者は非常に金融に困っておりますので、地方で集めた金は地元の銀行に預けて、中小企業者の融資の一端に資したい。そして中小企業者がお互いに自粛いたしまして、団結をはかりたい。こういうことからできたものであります。農業には農協あり、漁業には漁協あり、ただ中小企業者のみが何にもなくて、税金は高いし、いろいろの窮状に陥っておるという見地から、この会が昭和二十七年に生まれまして、五カ年になりますが、今日ではおかげをもって、十五億の契約高と二千五百名の会員をもっております。損保会社の契約高は五年前には三千億で四十億の保険料が上っておったように記憶しておりますが、五年後の今日では二十億の保険料であることを考えますと、二十億だけは福岡県の契約者が経費の節減になったものと私は解釈するのであります。掛金につきましては、私の方では百万に対して四千五百円程度の保険料金でありますが、損保会社の方は私ども調査によりますと、百万に対して六千円程度であります。そういたしますと千五百円の差があるわけであります。こういう見地からお互いの業界の育成、中小企業者の育成ということにつきまして、火災共済を将来国で法制化していただきたい。国で法制化されますと、信用が強くなり、従って契約者の方にも安心していただけるのではないかと思います。
  84. 土田國太郎

    土田國太郎君 それでさだめし御経営が御好況のようでありますが、余裕金はどの方面にお使いになっておりますか。
  85. 野田貫造

    陳述者(野田貫造君) 今はまだ余剰金はありません。営利会社のように大きな出資がないのであります。一口百円の出資金であります。その出資金が運転資金になっております。県が二千万円の義務負担を願っておりますので、もし非常な場合におきましては、それを利用さしてもらって、火災の保険契約をやっております。
  86. 土田國太郎

    土田國太郎君 その二千万円は借入れになるのですか。どういうことになるのでしょう。
  87. 野田貫造

    陳述者(野田貫造君) それは百万円を、博多で焼いたという場合におきまして、手持資金がたりないというときに、火災共済会が銀行から借りまして、その保証に県が裏づけするのであります。火災共済会が全然払えないというときには県が負担するということになります。
  88. 相馬助治

    相馬助治君 十五億の契約だそうですが、人件費はどのくらいお使いになっておりますか。
  89. 野田貫造

    陳述者(野田貫造君) 私の方は大体四割が保険に対する契約保証金、三割五分が各支部の手当なり外交の手当、二割五分が本部の費用、こういうように分けております。人件費は、固定給が三千円か四千円程度で、あとは募集金に応じて出しております。
  90. 近藤信一

    座長近藤信一君) 最後に私から一点、橋田さんにお尋ねしますが、商工会議所は大企業中小企業、商店街すべての力が入って、会議所を構成しておられるわけで、この法案に対する会議所としての賛否というものは、非常にむずかしいと思うのですが、一体その点橋田さん自身はどのようなお考えをもっていらっしゃるでしょうか。
  91. 橋田有一

    陳述者(橋田有一君) 構成メンバーは仰せの通りでございますけれども当地方におきましては、産業経済そのものが中小企業で成立しており、多少東京、大阪とも違うと思いますが、中小企業の振興育成と申しますことは、やはり当地方の経済産業の発展につながることでございますので、私ども会議所のメンバーであります大企業におかれましても、この点は十分その意味で御理解になり、中小企業の育成のためには、若干の自分たちの犠牲もやむを得ないということでございまして、中小企業団体法案の成立いたしますことは、会議所といたしましては、これを望んでおるわけであります。
  92. 近藤信一

    座長近藤信一君) 別に御発言もないようでありますから、御意見を拝聴するこの会はこのぐらいにいたしたいと思います。  終りに臨みまして、一言ごあいさつ申し上げます。参考意見をお聞かせ下さった方々は御多忙中にもかかわらず、終始熱心に貴重な御意見を御開陳下さいまして、まことにありがとうございました。皆様の御意見は帰京の後委員会の席上で報告いたし、今後の法案審議に際しまして、十分参考にする所存でございます。  申すまでもなく中小企業団体法案は、法律内容といいまた形式といい、きわめて画期的な法律でありますだけに、慎重なる審議を行う必要があります。前国会では残念ながら審議時間が短かかったため、やむを得ず継続審査ということになったものであります。商工委員会といたしましては、この法案国会閉会中にも審議いたしましたが、本日の各位の御意見をも参考にして、今後慎重に論議を尽し、中小企業振興対策の一環として、本法案に対処して参りたいと存じます。  終りに臨み御意見をたまわった方はもちろんのこと、この調査会開催に御尽力下さいました福岡通産局の各位及び最後まで静粛にこの会の進行に御協力下さいました傍聴者の皆さんに厚く御礼申上げます。これで閉会します。