○
淺沼稻次郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
岸総理の
施政演説に関連し、
岸内閣の
重要政策について質問を試みんとするものであります。(
拍手)
先ほど本議場において
岸総理の
演説を伺いましたが、われわれが要求いたしました
臨時国会の意義にはぴったりこないものを感じたのであります。あまりにも抽象的であります。二月に組閣して、その後十カ月を経過し、
内閣の
改造まで行なって新
政策を発表して
全国遊説をやったその
内閣の
施政方針の
演説としては、あまりにも
具体性を欠いており、あまりにもおざなりであるといわなければならないと思うのであります。(
拍手)
そこで、私は、まず第一に、
岸内閣の
政治運用の
根本方針についてお尋ねいたしたいと思うのであります。
わが
社会党は、七月の二日、
経済危機突破政策樹立、
岸総理の
東南アジア並びにアメリカ
訪問の結果の報告、さらには災害
対策のために、七月末日までに
臨時国会を開くよう、憲法第五十三条第二項の規定に基きまして要求したのであります。しかも、両院
議長を通じて、案件を付し、日時を切って、衆参両院とも三分の一の署名をもって要求したのであります。その後、
内閣改造が行われた直後、七月十一日に、災害
対策の緊急を要した八月二十八日に、さらに
政府が
消費者米価の値上げを決定した九月九日に、次いで十四日と、それぞれ五回にわたって要求をしたのであります。このわが党の五回にわたる
臨時国会の開会要求に対し、
政府は、憲法の規定にいつ開かなければならないという規定のないのをたてにいたしまして、重要な
外交交渉を行い、また、
財政経済政策の転換を行い、物価値上げ等によって
国民生活を窮乏に陥れ、拱手傍観し、
国民に挑戦をしたのであります。かかる
政府に対し、わが党は、
国民の知りたいと欲すること、
国民の疑問を感じておることを公開質問状の形において発しまして、
政府が
臨時国会においてこれに回答することを要求し来たったのでありますが、
政府は、みずからほおかむりをしまして、今日に至るまで
臨時国会の召集をおくらせたのであります。しかも、
政府は、新
政策を発表したが、これを
予算化することもせず、何らの
予算の裏づけもなく、ただ宣伝に努めて参りました。(
拍手)世上
岸内閣は宣伝
内閣とさえいわれておることを考慮しなければならぬと思うのであります。(
拍手)
臨時国会の召集要求に応ぜず、今日まで引き延ばして参りました
政府の
態度というものは、明らかに、私は、憲法の精神を無視し、
政策対決の場所である
国会の存在を軽視した反議会主義、独裁
政治への道であるとさえ思われてならぬのであります。(
拍手)ここにおいて、私は、議会
政治の根本について
政府はいかなる
考えを持っておるかをお伺いしたいのであります。
政府はもっと
国会を活用すべきであろうと思うのであります。すなわち、野党からの要求がなくても、アメリカとの
外交交渉をやるとか、あるいは
政策の転換を行う場合においては、
政府みずから
国会を開いて、
国会を通じて
国民の了解を求めるのが
政府のとるべき
態度なりといわなければならぬと私は思うのであります。(
拍手)
また、
岸内閣は石橋
内閣総辞職のあとを受けて成立した
内閣でありますが、第二次鳩山
内閣以来、すなわち、この前の総
選挙が終って以来、保守党は、第三次鳩山
内閣、石橋
内閣、
岸内閣、岸
改造内閣と、四たび保守政権のたらい回しをやっておるのであります。第三次鳩山
内閣は自由党と民主党が合同して自由民主党の上にでき上った
内閣でありますから、その政党的
基盤が変ったからこれは当然解散すべきであるといって強く要求をしたのでありますが、われわれの要求はいれられなかった。さらに、石橋
内閣の成立の際も、解散、総
選挙を要求いたしまして、政権の移動というものは総
選挙を通じて
国民の意思に従うべきであるということを、われわれは高調して参ったのであります。(
拍手)石橋
内閣も、その当初においては総理自体もこの
考えがあるように、われわれは感ぜられました。また、幹部の一部の中にもそういう
考えを持っておるように伺ったのでありますが、党内から強い抵抗にあって
実現しなかったようであります。石橋
内閣が総理の病気のゆえをもって総辞職し、
岸内閣成立の際も、強く解散を要求いたしました。しかし、
岸内閣は、閣僚は石橋
内閣の閣僚をそのまま、
政策もそのまま、
予算もそのままといったように、石橋
内閣の遺産
内閣として生まれて参ったのであります。
岸内閣としては、その自主性のない姿であります。わが党は、
岸内閣に対し、
予算案の撤回、新
政策の提示、解散、総
選挙を迫ったのでありますが、これもいれられなかったのであります。私は、はなはだ遺憾といわなければなりません。
特に私がこの際申し上げたいことは、
岸総理は大東亜戦争の指導者としての
責任者であります。その岸氏が、今、日本の
政治の
中心として、平和建設の指導者として登場して参っておるのでありますから、この
立場に立った
岸総理といたしましては、われわれが求めなくても、一ぺん総理大臣として
内閣の信任を問うのが私は道義的
責任なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)
また、
岸総理がアメリカから帰るや、全閣僚の入れかえを行い、
内閣の
改造を行いました。そして、全閣僚を不適格として辞職せしめたのであります。自分の推薦した全閣僚が不適格なら、推薦したあなた御本人も不適格ということにならなければ筋が通らないと私は思うのであります。また、これをすることが、私は
内閣連帯
責任制の基本でなければならぬと
考えるのであります。七月といえば、五月の中旬に
国会が終って、いよいよ
予算執行という時期になりまして、
予算案の作成に
関係した閣僚、審議に参加した全閣僚を辞職せしめて、そうして
内閣を
改造したことは、明らかに
予算の執行に対して
責任を持たない
岸内閣の姿なりといわなければならぬと私は思うのであります。これは、ある意味においては、総理大臣の持っておる、天下の公器である大臣の任免権を、自己の権力維持、派閥抗争に利用するものであって、納得のいかないところであります。いずれにいたしましても、
岸内閣は一度衆議院を解散して信を
国民に問うべきときがきておると私は思うのであります。
特に、
岸総理は、アメリカよりの帰途、ハワイに立ち寄り、新聞記者との会見において、
社会党との対決を表明されました。この対決とはいかなる意味を持つかわかりません。私も野党といたしまして
議員生活が相当長いのでありますが、
政府から対決を宣言されたのは今度が初めてであるということを申し上げておきたいと思うのであります。(
拍手)しかし、総理より対決を宣言された以上、この挑戦に応ずる用意があることをここで申し上げておきます。さらに、わが党は、
改造岸内閣と、福島県知事
選挙、衆議院再
選挙で対決をいたしまして、勝利を占めております。さらに、最近の地方
選挙は、戦えば必ず勝つといった状況にあるのでありまして、これまさに
社会党の前途を占っておるようなものでありますから、いかなる場合においても対戦に応ずる
覚悟のあることを伝えておきたいと思うのであります。(
拍手)
そこで、
岸総理に対し、対決とはいかなることを意味するか明らかにするよう要求いたします。
政府と野党、また与党と野党との対決は、
政策をもって
国会において論議をいたしまして切磋琢磨するところにあろうと私は思うのであります。ところが、
岸内閣は、その
国会の召集をおくらしてきました。対決と言いながら対決を避けてきたのが
政府の姿なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)さらに、私は、真の
政府と野党との対決は、総
選挙、すなわち解散、総
選挙であると思います。
国民を審判官として、
政府と野党がその
政策を
中心に対決をして切磋琢磨するということであろうと思うのであります。すなわち、
政府は解散、総
選挙をいつに予想しておるか、率直なる意見を私は承わりたいと思うのであります。(
拍手)
岸総理は、解散の時期については、新聞記者に、今年中はやらない、こう言っておる。しかし、来年はやるかもしれぬということを明言しておるのであります。私も来年は解散の時期であるということを
考えております。そこで、総理がいつ解散を断行するおつもりか、お伺いしたい。今直ちに行うことも私は
一つの方法であろうと思うのであります。しかしながら、お互いに対決をするのでありますから、
昭和三十三年度の
予算を
政府は編成し、
通常国会の休会明けにおいて、今のような
施政方針の
演説でなく、ほんとうに
国民に訴えるような
岸総理の
施政方針の
演説、外務大臣の
外交方針の
演説、
大蔵大臣の
財政経済の
演説を行い、野党
社会党また鈴木
委員長を初め代表者を立てまして、そうして
政策の異なっている点を明らかにいたしまして、衆議院を解散し、
国民に信を問うのが最も適当なりと私は
考えるのであります。(
拍手)この点について、
岸総理の忌憚のない意見を伺いたい。
第二に、
岸内閣の
外交政策についてお伺いしたいと思うのであります。第二十六
国会が済んでから、
世界の
情勢は非常に変っております。
岸総理は、この変っておりまする
世界の
情勢をいかに認識し、いかに対処せんとするのか、お伺いをしたいのであります。すなわち、ソ連の大陸間弾道弾の成功、人工衛星の打ち上げの成功は、最近の
科学の進歩がいかにすさまじいものであるかということを物語っております。大陸間弾道弾は
人類最終の兵器といわれ、人工衛星の打ち上げの成功は
人類が宇宙に踏み出した最初のできごとだといわれております。すなわち、人間が自然を征服した勝利の姿であります。
科学はまさに
政治に優先をしております。今日われわれ
政治家が思いをいたさなければならぬことは、この
科学の進歩を戦争という悪魔の手に渡してはならないということであります。(
拍手)このすさまじい
科学の進歩を
人類の平和と幸福のために使用することこそ、
政治家に残された唯一の道であり、その責務と申さなければなりません。(
拍手)
このような核兵器、大陸間弾道弾、原水爆の時代に、
わが国を防衛するものは、再軍備でも、日米安全保障条約のような軍事ブロックでもありません。ネールは「現代すでに二国間の軍事同盟などは、もはや古い時代の遺物と化した」と言っておるのであります。
岸総理は、日本はいずれの軍事ブロックにも入らず、自主独立の
外交を貫くことこそ、真に日本の独立と平和を
確保し、
世界の平和に寄与するゆえんと
考えるが、いかに
考えるか、
一つお聞きしたいと思うのであります。総理の現在の
世界情勢に対する
外交の基本
方針を伺いたい。
日米安全保障条約、行政協定の解消、サンフランシスコ条約の改訂、中国と国交回復、すなわち中共の承認、ソ連との交流の活発化、歯舞、色丹、千島諸島の返還、小笠原、沖繩諸島の完全返還、この要求は日本
国民が長い間要望して参ったところであります。そうして、また、現在も強く要求しておるところであります。
岸総理は、先般アメリカを
訪問、
アイゼンハワー大統領、ダレス国務長官等と会見後、日米共同声明書を発せられました。これによってアメリカと日本との
関係は新時代に入ったといわれておりまするが、日米共同声明によって日本の
国民の要求は無視され、日本のアメリカ依存とアメリカの対日
政策が再確認をせられ、
国民は、深い失望と、深い疑惑と、憤りを感じておるのであります。(
拍手)
渡米前、
岸総理は、この
国会におきまして、安保条約は再検討の時期がきておる、沖繩の
施政権の回復、小笠原島への日本人の帰島等を公約されたのであります。その公約はすべて裏切られております。日米共同声明では、現在日米間に横たわっている基本的問題は一切解決されておりません。これは一方的に日本の対米従属を深めておるのであります。すなわち、日米安全保障条約、行政協定の改訂問題は、日米安保合同
委員会を作ることによって事実上のたな上げにされております。沖繩、小笠原諸島のアメリカによる半永久的な基地化ということを黙認し、教育権すら返還されず、砂川基地の拡張、核兵器の持ち込み等、日本をしてアメリカの原子戦争体制の一環に入れてしまったのは、岸・アイゼンハワー会見共同声明なりと言っても過言でありません。(
拍手)
岸総理はアメリカ
訪問等の
成果をたたえておるのでありますが、私どもは重大なる過失を犯したといわなければならぬと思うのであります。
今、日本の当面しておる問題は、アメリカとの軍事
関係を強化することではありません。アメリカとの軍事
関係を解消することであり、切ることであるといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)すなわち、日米安全保障条約の解消であります。また、中ソ両国に対して、中ソ友好同盟条約中の軍事
関係の解消を求めなければならぬと私は思うのであります。(
拍手)そうして、日米中ソ四カ国並びに
関係諸国が新しい安全保障体制を作って参らなければならぬと思うのであります。これらに対して
岸総理はいかように
考えておるか、その
所見を承わりたいと思うのであります。
また、日本
外交の基本というものは、
アジアとともに生きていかなければならぬと思うのであります。
アジアの孤児になってはなりません。しかし、岸・藤山
外交の今の
情勢というものは、
アジアの孤児より
世界の孤児たらんとしておる傾向があることを指摘しなければならぬと思うのであります。(
拍手)われわれは、いずれの陣営にも属せず、自主独立の
立場に立って
外交を展開すべきだと思います。現在の
世界の平和は、不幸にして力
関係の上の平和であります。アメリカ、ソ連を
中心とする幾多の軍事ブロックによって保たれておるのであります。しかし、
世界は二つの陣営に分れておるのではありません。二つの陣営の中に、戦後西欧植民地から解放されまして、いずれの陣営にも属せず、自主独立、
世界平和のために戦っておりまする
アジア、アフリカの
民族国家あることを忘れてはならぬと思うのであります。(
拍手)
わが国にとって、この
アジア、アフリカ
諸国との提携こそが、日本の平和、
アジアの平和、
世界の平和に貢献する道であります。これを忘れてはなりません。
岸総理は、
さきに
東南アジアを
訪問され、また、この
国会が終りまするならば
東南アジアを
訪問されるということであります。しかし、一貫せる基本
方針なくして迎合することは何らの意義を持たないものであるということを、私は指摘しなければなりません。(
拍手)すなわち、インドにおいてネールと会見すれば原水爆の禁止を言い、さらに、台湾に参って蒋介石に会えば、あなたの本土反攻を望んでおりますといったような、相反する言動をもってしては、私は
信頼をつなぐゆえんではないと思うのであります。(
拍手)従いまして、
東南アジアを
訪問せんとするならば、その基本的な
立場をどこに置いておるのか、これを私は伺っておきたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、
岸総理は
東南アジア開発機構の設立を提唱しております。この間、石井副総理が帰られまして、この問題はまだ
東南アジア諸国の了解を得る域に達していない、こう言っておられるようでありますが、私は、これに対する
東南アジア諸国のいわゆる心配はどこにあるかといえば、この
東南アジア開発基金というものは、アメリカのドルを日本の
技術でオブラートしてそうして、日本がアメリカの
東南アジア発展と帝国主義的な
発展の仲介体の役割を務めんとしておるところに心配があると、私どもは思わざるを得ぬと思うのであります。(
拍手)これを
考えなければなりません。
また、私どもは、一応日本保守政権の明治以来の
外交の経過についても
考えてみる必要があろうと思うのであります。すなわち、日本
外交は、明治の末期から
昭和の初め、イギリスと軍事同盟を結んで、イギリスの番兵のような仕事をやった。さらに加えて、大東亜戦争中は、これまた遠きドイツ、イタリアとの間に軍事同盟を結んで、中国に侵入し、
東南アジアに侵入したところに、私は大きな誤りがあるといわなければならぬと思うのであります。加えまして、今また、岸・藤山
外交は、遠きアメリカと結んで、アメリカの帝国主義的
発展の媒介体をやろうとするところに、私は大きな
外交の失敗があるといわなければならぬと思うのであります。かくのごとく遠くと結んで近くと対立する
外交は修正をされ、
改正をされて参らなければならぬと思うのであります。
今、日本の
外交が当面している問題は、
善隣友好の
関係であり、
善隣友好の
外交の
推進であると私は思うのであります。それには、中国の承認から始められてこなければならぬと思うのであります。日中の国交回復よりなされてこなければならぬと私は思うのであります。現在、中国本土は、六億の人口を擁しまして、中華人民共和国としてその主人公として登場しておるのであります。従いまして、日本は満州事変以来一番大きな迷惑をかけたこの中華人民共和国との間の平和を持つことが
善隣友好外交の端緒でなければならぬとも言い得ると思うのであります。(
拍手)しかも、中国は、
歴史的、地理的に絶対的に日本との
協力関係に置かれ、さらに、
経済的に見ても長き間の友人であります。中国の資源と日本の
技術と結びついたところに両国の
繁栄があるということを、私どもは
考えなければなりません。問題は台湾との問題でありまするが、中国は
一つ、台湾は中国の一部として解決すべきだと私は思うのであります。(
拍手)
政府は中国との国交回復についていかように
考えるか、重ねてお伺いをしておきたいと思うのであります。
さらに、中国の国連の
加盟問題については、われらの支持するところであります。
政府は、中国の国連
加盟問題が論議される場合において、いかなる
態度をとらんとするか、これを承わりたいと思うのであります。(
拍手)
また、
東南アジア諸国のうち、インドネシア、ヴェトナムとの賠償も急いで行わなければならぬと思うのであります。
次に、日本は国連に核兵器実験禁止に関する決議案を提出しておりますが、この案は東西両陣営のかけ橋をするというような
立場において、非常にあいまいなものであります。このような期限付のものをやめて、広島に、長崎に、南太平洋に、三たび洗礼を受けておるのでありまするから、核兵器実験の無条件即時禁止という決議案がなぜされなかったのか、私は伺いたいと思うのであります。(
拍手)日本が東西両陣営のかけ橋となるといっても、
アジア、アフリカのグループと一緒になってかけ橋の役割を務めなければ、ついには
世界の孤児になるということを、私どもは指摘しなければならぬと思うのであります。(
拍手)しかも、
岸総理は、インドの
ネール首相との共同声明において、国連において
協力を誓ったのでありますが、その
協力の結果を一体いかように処理されんとするのか、お伺いをしたいと思うのであります。
第三点は、
岸内閣の
財政経済政策についてであります。まず、私は、
岸内閣の
財政経済政策の見通しの誤まりと、その行き詰まりの
責任についてお伺いをしたいと思うのであります。
わが党は、去る二十六回
国会の、本
会議においては河野密君、並びに、
予算委員会においては和田博雄君を立てて、当時、石橋
内閣、
岸内閣、こう変って参りました
内閣でも、
財政経済の見通しの誤まりを指摘して勧告したのであります。すなわち、
政府の言う一千億減税、一千億
施策ということは、神武以来の景気という声に酔い、日本
経済の行き方を、また、
国際経済の
動向を楽観的に見、かつ甘く見ている、そうして放漫なる
政策なることを指摘して参りました。本年度
予算において一般会計一千二十五億、
財政投融資において六百六十億の増額は、民間
投資を刺激し、ひいては
輸入過剰となって、
国際収支の急激な
悪化を来たすことになり、また、
政府の鉄道運賃の
引き上げを初めとする諸物価
引き上げ政策は
国民生活を圧迫し、一千億減税
政策は水泡に帰する結果を招来するということを予言し、
政府に警告したのであります。この
社会党の予言、警告は、まさしく的中をしたのであります。(
拍手)
政府の三十二年度
予算は
投資インフレを招き、
国際収支は急速に
悪化し、諸物価の高騰を招き、一千億減税、一千億
施策の夢は消えたのであります。このような状態になって、
政府は、その
改造に当り、
大蔵大臣池田勇人君にその
責任を負わせております。緊急
経済政策要綱を発表して、まだ自己の
責任をのがれんとしておるのでありますが、これは単に
大蔵大臣のみの
責任ではありません。
政策の見通しの誤まり、しかも、それが行き詰まったのでありまするから、この
責任というものは当然
岸内閣そのものが負わなければならぬ
責任であろうと私は思うのであります。(
拍手)これに対して
岸総理はいかような感じを持っておるか、お伺いをしたいと思います。
神武以来の景気から神武以来の不景気にしておいて、
責任を感じませんというのでは通らない話であろうと私は思うのであります。(
拍手)
政府の転換をした緊急
経済政策は、民間大資本の
投資をそのまま自主的規制にまかせ、他方、金利の
引き上げ、
財政投融資の一律一五%の繰り延べ、地方債の繰り延べ等々でありまして、労働者、農民、
中小企業者等、大衆
生活を犠牲とするデフレ
政策の強行となって現われて参りまして、デフレ一
萬田大蔵大臣がその
推進力となっておることは、現実の姿であります。
政府の
政策転換はまず
中小企業者にしわ寄せされ、手形の不渡り、破産、倒産が次ぎ、労働者には社外工の首切り、臨時工の首切り、賃金ストップとなって現われておるのであります。現に、鉄鋼争議のごときは、資本家のゼロ回答が争議を深刻にしておるということを知らなければなりません。(
拍手)
現在の日本
経済の
悪化は、
岸内閣の
政策の見通しの誤まりであります。
政策の急転換の結果である。第二十六
国会を終えて一カ月半にして
政策を転換しなければならなかったところに
内閣の
責任ありといわなければならぬと思うのであります。すなわち、
岸内閣は立憲
政治を解し、
責任政治を解する、こういうような
立場に立って静かに
考えるならば、
岸内閣は総辞職して
国民にその罪を謝罪することが当然なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)
次に、
政府に来年度の
予算編成の
方針その他、その
規模並びに内容等についてお伺いしたいのでありますが、これは、他の同僚、並びに、詳細は
予算委員会に譲ることにいたしまして、今
国会で問題になっております補正
予算の問題について一言お伺いしたいと思うのであります。
政府は、今
臨時国会において、
中小企業の年末
金融のみに限定して補正
予算を編成しておりますが、これは明らかに
政府のごまかしであると私は思うのであります。すなわち、前
国会終了以来、長野、岐阜、
九州地方の自然災害、
政府の
経済政策の失敗を原因とする常用、雇用の減少、完全失業者の
増加、駐留軍労務者並びに特需労務者の大量失業、
政府の
消費者物価のつり上げなどによる勤労
生活者の家計の圧迫など、非常な深刻なる変化が来ておるのであります。従って、
政府が
予算を補正しようとするならば、これらに対応するような補正
予算を組むのが
政府のとるべき
財政措置なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)すなわち、
政府が補正
予算の内容を
中小企業者のみに限定して、一般会計の補正を無視しておることは、
臨時国会における
予算審議を通じて自己の失敗が
国民の前に暴露されることをおそれる結果ではなかろうかと思うのであります。わが党は、
政府に対し、災害
対策費の増額、失業
対策費の増額、
公務員、日雇い労働者の年末手当の増額、
中小企業者の年末融資等について、一般会計の補正
予算を要求するものであります。(
拍手)これについて
政府の答弁を願いたいと思うのであります。
さらに、今、日本が当面をしておりますところの日本
経済について、次の三点が考慮されるのであります。この点について
政府の
考えを私は承わりたい。
第一は、
国際収支の
改善をはかるためには、日中貿易を初めとする
アジア経済との結合以外に最善の道はないと思うのであります。
世界的にドル不足と
輸出競争が激しく、ウォール街の株価暴落にも現われておるように、資本主義
経済の頭打ちの傾向をわれわれは見のがしてはならぬと思うのであります。このときに、日中貿易の全面的拡大、ソ連とのシベリア開発計画の
協力、インドその他との
長期契約の拡大等が日本の
輸出を直ちに好転させる最も手近かなる道であると思うのであります。しかるに、
政府の不熱意によって日中貿易第四次協定が行き悩んでおることは、はなはだ遺憾といわなければなりません。
第二には、日本
経済、特に民間資金の統制を計画的にされることが必要と思います。
政府は
金融引き締めを声を大にして強調しておりますが、独占的な大
企業に対しては、自主規制という名において、ゆるやかにしておるのであります。現に、日銀のオーバー・ローンは年末には六千億に及ばんとし、やみ
金融も一千億に及ぶとさえいわれておるのであります。これらの規制なくしては、いかに
財政のみを緊縮しても、
経済の
引き締めの実効は上らないと私は思うのであります。(
拍手)いたずらに
引き締めの犠牲を
中小企業、零細
企業にしわ寄せをしておるのであります。最近、
政府、与党内にも資金計画機関の設置の声が上っておるのでありまして、これは聞くべき声であると私は思うのであります。これについて、総理はいかような
考えを持つか、伺いたいのであります。
第三は、来年度の
予算に対し抜本的な
対策をとるべきと思います。すなわち、今日のごとき大陸間弾道弾、人工衛星の時代には、国の防衛は軍事同盟や自衛隊のよく落ちる飛行機では何ら役に立たないというのが、天下の世論であります。(
拍手)従って
政府は、今日、アメリカに対し、防衛分担金の減額はもとより、防衛費の削減について交渉すべきであると思いますが、いかようにお
考えになるか承わりたい。特に、
予算の
規模を押えて
国民生活の安定、
経済の拡大を行うためには、どうしてもこのような非
生産的浪費を削る以外に道がない。従って、防衛費の最大削減ということが出てくるはずでありますが、これに対していかようなお
考えを持つか、承わりたいと存ずるのであります。(
拍手)
第四点は、
岸内閣の国内
政治についてであります。
岸総理の訪米による日米共同声明で、日本がアメリカの原子戦争体制の中に押し入れられたということは、先ほど申し上げた通りでありますが、それが日本の内政にどういう姿をもって現われておるかといえば、憲法
改正、再軍備、さらに、労働、文教
政策の反動化、
労働運動に対する弾圧となって現れておることを指摘しなければなりません。(
拍手)
そこで、第一に憲法
調査会の発足でありますが、憲法第九十六条は、憲法
改正の発議が
国会にあることを明記し、
国会のみが憲法
改正の発議権あることを明確にしておるのであります。従って、行
政府たる
政府に憲法
調査会を置くことは明らかに憲法違反であるといわなければなりません。(
拍手)憲法
調査会法が多数で
国会を通過したといっても、憲法違反の法律である以上、
社会党が
委員を送らないことは、これまた当然なりといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)しかし、
政府は一方的にこの憲法
改正を行わんとしておるようでありますが、かりに
調査会において憲法
改正の成案を得たと仮定しても、
社会党は衆参両院に三分の一の勢力を持っているのでありますから、発案することはできないのであります。従って、
政府の行動は、ただ憲法
改正を取り上げて世論の分裂をさせているという役割以外に何もやっておらぬといっても、断じて過言ではないと私は思うのであります。(
拍手)特に、わが党から第二十六回
国会に憲法
改正調査会の廃止法案を出しておりますが、この審議にも応じない、審議未了のままにしておいて発足するというところに、私は反動性の現われありといっても過言ではないと思うのであります。(
拍手)
次に、憲法
改正の問題に関連をいたしましてお伺いをしたいのは、参議院の全国区制
改正問題であります。
政府は、最近、参議院の
選挙区、全国区を廃止するために、これを
選挙制度
調査会に諮問したそうであります。果して真にそれを
考えておるかどうか、私は承わりたいと思うのであります。参議院に全国区制のあることは、参議院に職能代表的な性格を与えようとする考慮があって行われたことであり、もし衆議院と参議院が同じ
選挙区において
選挙が行われるようになりますならば、参議院の存在はなくなって 一院制度でなければならぬという議論が出てくることは必然であろうと思うのでありますが、これに対する
政府の
考え方を承わりたい。(
拍手)さらに加えて、多くの人はこう言う。参議院の全国区の改選に当っては常に
社会党が多数当選をする、従って、
社会党を当選させないためにはこの全国区制の
改正が必要である、さらには、これを通じて憲法
改正をするためにはどうしても全国区の廃止が必要であるといって、全国区の廃止は憲法
改正に通ずるといっておるのでありますが、果してしかりか、私はお伺いをしたいと思うのであります。(
拍手)さらに、全国区の廃止は小
選挙区制の採用に通ずる結果を招来すると思うのでありますが、この点についても、私は
政府の所信を承わっておきたいと思うのであります。
第五点は、
岸内閣の重大
政策の
一つとして主張しておりまするところの三悪
追放についてお伺いをいたします。
岸内閣は、その発足に当って、三悪、すなわち汚職、
暴力、貧乏の
追放を公約し、
岸総理も
全国遊説においてこれを公表したやに承わっております。しかし、あまり反響がなかったとも、私は伺っておるのであります。(
拍手)これはなぜかといえば、三悪
追放と自由民主党の現実
政策の間にあまりにも隔たりが多い結果ではなかろうかと私は思うのであります。(
拍手)
三悪を
追放せんとするや、まずその起ってくる原因を追及しなければならぬと思うのであります。汚職は何かといえば、
政治家と資本家の金による結びつき、それによって職が汚されることで、さらには官僚と資本家との金による結びつきによって職が汚されることであります。金による結びつきからくる職を汚すことが汚職であるということを知らなければなりません。何から起るかといえば、この根本の原因はどこにあるかといえば、資本主義がその政権を維持するために金を使うという悪習が根本であるということを忘れてはならぬと思うのであります。(
拍手)
そこで、私は、単なるスローガンばかりでなく、具体的に汚職の
追放を
考えなければなりません。すなわち、あっせん収賄罪の制定、
選挙法の
改正による連座規定の拡大、買収の絶滅、さらに
政治資金規正法の
改正等を考慮しなければなりません。特に、
政府並びに政党は、その身の回りを清潔にしなければならぬと思うのであります。現在、
政府並びに与党の回りには、富山ダム、石狩漁業、西村
金融、外車不正
輸入、バナナ、売春疑獄等、多くの問題を投げておるのであります。(
拍手)売春疑獄に関しては、読売新聞の記者の逮捕事件のごときものがあって、一種の言論弾圧が行われているということを指摘しなければなりません。(
拍手)また、このような傾向に対しては、まさに
岸内閣の末期的現象であるとさえ民間においては伝えられておるのであります。(
拍手)内外世論が起っておることに
政府は心せねばなりません。これらに対して
政府は根本的究明をしなければならぬと思うのでありますが、その方途を承わりたいと思うのであります。
暴力の
追放、内外の
暴力の
追放をうたっておるのでありますが、日本の基本的な組織法であるところの憲法をじゅうりんし、しかも、日本の秩序の根源であるところの憲法をじゅうりんしておる
政府に国内
暴力追放を言う資格がないことを、私は指摘して参らなければならぬのであります。(
拍手)そこで、国際
暴力について私は承わりたい。国際
暴力の最大なるものは何であるかといえば、戦争であります。その最大なるものは原水爆であります。従って、
岸内閣は、戦争
追放と原水爆
追放のために最大の
努力を払っていかなければならぬと思うのであります。戦争
追放のためには、日本
国民が敗戦という冷厳なる現実の前に二度と再び戦争を起さないようにするという
国家体制を作るために自己反省を行なって制定した日本国憲法を守ることから始められてこなければならぬと思うのであります。(
拍手)ことに、憲法第九条に、国際紛争を解決する手段としての戦争は永久にこれを放棄する、従って、陸海空軍及び一切の戦力はこれを保有しない、国の交戦権は行使しないと規定があるのでありまして、
岸内閣は、国際的な
暴力を
追放せんとするならば、この問題に触れてきて、まず、日本国憲法、ことに第九条の擁護から始まって参らなければならぬと私は思うのであります。(
拍手)しかるに、
政府は——戦争
追放を叫ぶ
政府が、その憲法
改正を主張し、国連においては原水爆の無条件即時禁止の決議案を出し得ず、さらに、核兵器持ち込み絶対反対とも言うことができない。こういうことは一体いかなるわけか。私は伺っておきたいと思うのであります。
さらに、
岸総理は、戦争がなぜ起るか、このことを
考えてもらいたい。特に戦争執行の経験者たる
岸総理はわかっておるはずであると思うのであります。(
拍手)戦争は資本主義
国家がその内部矛盾を外に解決せんとするところに起るものであります。また、資本主義
国家の国際市場の争奪によって起るものであることを、われわれは
考えなければなりません。(
拍手)たとえば、
岸総理の
関係深い満州事変はなぜ起きたかといえば、当時の日本資本主義は、農村は窮乏のどん底に陥り、さらに都会には失業者があふれたのであります。この国内矛盾を満州に出て解決せんとしたのが、いわゆる日本資本主義の姿であるといわなければならぬと、私は思うのであります。戦争、それは資本主義の必然の所産であります。戦争
追放というなら、資本主義そのものにメスを加えることから始められなければなりません。また、原子力が発見されて、それが
人類の幸福のために用いられるならば問題はないのでありまするが、戦争という悪魔に用いられるところに問題があるのであります。原水爆禁止も、その根本的解決は、戦争を起さない、資本主義そのものにメスを加えなければ根本的に解決ができない問題であるということを指摘しなければなりません。(
拍手)
貧乏の
追放、まことにけっこうでありますが、しかし、貧乏も資本主義の所産であることを忘れてはならぬのであります。資本主義は、
生産機関を独占する資本家階級と、
生産機関から切り離され、日ごろ持っておりまする労働力を資本家に売って、その代償として労働賃金をもらっておる労働階級と、二つに分れておるのが、資本主義の姿であります。従って、資本主義は、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなっていくという傾向にあるということを忘れてはならぬのであります。(
拍手)現に、貧乏
追放を叫ぶ
岸内閣のもとで、鉄道運賃の値上げ、
消費者米価の値上げ、さらには一般物価の値上げによって
国民生活は圧迫をされておるのであります。貧乏を
追放するという
岸内閣によって貧乏が製造されておるということを指摘しなければならぬと私は思うのであります。(
拍手)
三悪
追放——汚職、
暴力、貧乏、ともに資本主義の所産であります。資本家的
政府、資本家的政党がこれを叫んでも、スローガンたり得ても、実行することは私はできないと思うのであります。(
拍手)これを実行するものは、資本主義を打倒して
社会主義を建設するわが
社会党の任務なりと言って、断じて過言ではないと思うのであります。(
拍手)そこで、私は、資本主義と三悪の問題について総理大臣はいかように
考えるか、答弁を承わりたいと思うのであります。
これで私は
演説を終りますが、答弁いかんによりましてはもう一ぺん演壇に立つことを留保いたしまして、私の
演説を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇〕