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1957-11-07 第27回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月七日(木曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 原  捨思君 理事 芳賀  貢君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大石 武一君    大野 市郎君       川村善八郎君    木村 文男君       清瀬 一郎君    草野一郎平君       鈴木 善幸君    中馬 辰猪君       永山 忠則君    丹羽 兵助君       松浦 東介君    松野 頼三君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石山 權作君    楯 兼次郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  本名  武君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房参事         官)      立川 宗保君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      河野 恒雄君         農林事務官         (振興局総務課         長)      酒折 武弘君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 十一月六日  臨時食糧管理調査会答申に関する陳情書  (第二〇号)  米麦価等に関する陳情書外十三件  (第二一号)  同(第  九二号)  森林組合育成強化に関する陳情書  (第六四号)  北海道における中型機船底びき網漁業禁止区域  改訂に関する陳情書  (第八三号)  園芸品輸出振興に関する陳情書  (第八五号)  国立園芸試験場整備拡充に関する陳情書  (第八六号)  森林災害補償制度早期実現に関する陳情書  (第八八号)  凍霜害対策に関する陳情書外一件  (第八九号)  水産加工専門技術員の設置に関する陳情書  (  第九一号)  昭和三十二年産米穀予約売渡制に関する陳情書  (第九三号)  開拓不振地区振興対策樹立促進に関する陳情  書(第一〇四号)  八代平野水利事業促進に関する陳情書  (第一〇六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業基本施策に関する件     ―――――――――――――
  2. 小枝一雄

    ○小枝委員長 これより会議を開きます。  引き続き農林大臣に対する質疑を続行いたします。山田長司君。
  3. 山田長司

    山田委員 昨日同僚細田委員がいろいろ質問をされたのでありますが、どうも選挙区が同じせいか、最初から何か迫力が弱かったような気がするのです。そこで私は大臣にきょうはいろいろ伺いたいのです。  農業協同組合というものに農林省がいろいろ盛んに力を入れているけれども、この農協仕事を阻止するような傾向にあるかのごときたばこ耕作組合法案なるものが今盛んに継続審議大蔵委員会でされておる。その法案提出者の中に大臣が入っておるわけです。この組合法案を見ますると、ややもすると、農協仕事を分散するかのごとき内容を第二章の第八条の一項から十二項までの間に持っているわけです。こういう点について最初大臣所見を伺いたいと思うのです。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 たばこ耕作組合法案提案者に私も入っておることは御指摘通りであります。言いわけするわけではありませんが、当時私は自民党の副幹事長でありました。そういう関係で、党で提案するということで賛成いたしたのでありますが、法律案内容については、実は落度といいますか、よくその当時見ていなかったんです。党といたしましても、内容はあまり検討しないで、大体こういうことで提案するということでありましたので、副幹事長として賛成を求められて、提案者の一人として入っておったわけであります。その後法案が出ましてからいろいろ検討いたしました。また農林大臣なりましてからも法案内容等について検討を加えておるわけであります。そこで、私どもといたしましても、根本的な考え方からすれば、タバコ耕作ということも農作物でありますので、これが農林省監督とか指導下にあるのがほんとうの姿だ、こういうふうに考えておるのでありますけれども沿革的な事情もありまして、タバコ耕作組合については専売公社が指導したり監督したりするような形になっておりますので、これを急に農林大臣管轄下に移すということは沿革上からいって困難だと思います。しかし、法案内容等につきまして、農林行政上、農林政策上まずい点が相当といいますか、ある程度あると思います。今御指摘の八条の一項から十二項は、今法案を持っていませんが、多分資材共同購入というような面だろうと思うのでありますが、そういうことによって協同組合仕事と競合して、協同組合仕事を奪っていくような形で法人化されるということにつきましては、これは法案成立過程においてぜひ訂正、是正するようにいたしたい。あるいはまたきのうも申し上げたんでありますが、これは根本的な問題で非常に議論はあるかと思いますけれども公社設立認可をしたり監督をするという制度行政権の発動として果して適当なものであるだろうかどうか、設立認可あるいは監督等について大蔵大臣がその衝に当るということならばまだ法制的な筋は通るかと思いますが、しかしそれにいたしましても、農林大臣と協議するとか、農林大臣がこれに介入しないというようなことはまことに筋が通らない話じゃないか、こういうことにつきまして検討を続け、法案審議過程におきまして私の方からもそういう点について申し入れる、こういう考えを持っております。
  5. 山田長司

    山田委員 大臣たばこ耕作組合法案提案者である、しかも今申しましたように、資材購入その他に関連のあるところの団体協約という規定がこの法案の中に入っておるとすると、農林官僚いろいろ案を作っていく上においても、大臣がこういう法案提案者になっておるということは、やはり農協関連のある仕事をしている人たちが、仕事をする場合には、非常にやりにくい面があるだろうと思うのです。こういう点から、私はやはり最初提案者であってもあとで取り消すべきものと思う。この点についてはあなたはどう考えますか。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 提案者となったいきさつにつきましては、先ほど申し上げた通り、党の副幹事長として提案者となったのでありますが、そのときには法人化ということに党として賛成いたしたので私もなった、こういうことであります。しかしながら法案として継続審議中でありますから、今取り消すというようなことはどうかと思います。でありますが、今の御注意の点もありますので、農林省内におきましては、私は農林大臣として賛成しておるのじゃない、農林大臣になる前に党の一役員として提案しておるのだけれども法案内容については、自分では深く検討したわけでもないし、そう内容をこまかく見せられて検討したわけでもないから、農林省として、また農林大臣としての見解は先ほど山田委員に申し上げたようなことなんだから、決してこれによって農林省内の意見が、私が農林大臣としてでなく衆議院議員の一人として提案者になっておっても、それに拘束されるとか、抑制されるとかいうことでなくて、独自の研究、意見をまとめるように、こういうように内部には指示しておるような次第であります。
  7. 山田長司

    山田委員 内部に指示しても、なかなかこういう法案に賛成しておると、あなたの部下とすれば、大臣考えていることと違った意見を次々出すということについては、私かなり勇気が必要とされることになると思うのです。そういう点については、今大臣が言われたことで、部下がどういう案を出してきてもそのことについては拘泥しないという意味にとれますから、これ以上質問しませんが、葉タバコ農作物であることには間違いないのであるけれども、どうも農林省もあまり積極的にこれを取り扱わない、大蔵省もあまり積極的でない。今大臣が言われるように、公社が積極的になっちゃった。これは両省の間にはさまっているエアポケットだと私は思う。これでは私は農民が浮ばれないと思うんですが、この点大臣所見は、明確に農作物であるということは間違いないと思われるのですけれども、この点についてどういうふうにしたらいいと思いますか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 申し上げるまでもなく農作物であることに間違いがありません。そこで、法案として継続審議中でありまするし、先ほど申し上げましたように、農作物だから農林大臣がすべてこれを根本的に掌握するということも、沿革上非常にまだむずかしい問題であります。現実にむずかしい問題であります。でありますので、私の方の主張といたしましては、タバコ耕作組合設立認可あるいは監督等につきましては、これは大蔵大臣監督するということに変えることが第一段階だと思いますが、同時に大蔵大臣のみではいけない、農林大臣と協議といいますか、そういう方向で逐次農林大臣タバコ耕作組合というものを指導監督する、農民の問題であり農作物耕作でありますから、そういう方向へ持っていきたい、こう考えております。
  9. 山田長司

    山田委員 今まで大蔵大臣農林大臣はどういう見解でこのことについての話し合いをせずにおるのか、私には理解ができないのです。農林大臣はもっと積極的に大蔵大臣とこの問題について話し合うべきだと思うんですが、この点についてどうでございますか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が農林大臣になってから臨時国会が開かれたのは今度が初めてでありまして、その前にはそれほど問題が私の方へ来ておらなかったのであります。いろいろ農協タバコ耕作組合との間においてこの法案についての議論があるということは聞いておりました。私も最近におきまして法案内容検討いたしたのでありますが、考え方としては、私どもといたしましても、農協というものを農民経済団体として育成強化していくということでありますから、農協のためにならぬようなことは押えていくといいますか、改めなくちゃならぬという考え方を持っておったのであります。その監督権問題等につきましては、実は私うかつでありましたが、最近法文を見て、これはおかしいということを内部にも言って、その点についての検討をさしておるようなわけでありますので、近く大蔵大臣ともこの点について話し合いをいたしたい、こう思っております。
  11. 山田長司

    山田委員 大蔵大臣と近く話し合いをするというのですね。……  次に余剰農産物としてタバコ輸入がなされるといわれますが、このタバコ輸入がなされることによって一割も減反がなされると言われておるようですが、このことによって農民は、自分が減らされるのじゃないか、その犠牲になるのじゃないかというので、かなり不安があるのです。輸入数量、そういう問題について、やはり農作物に非常に関係が出てくることでありますが、何か農林大臣にその当局からこのことについての連絡がありますか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 余剰農産物受け入れにつきましては、私どもの方といたしましては、小麦三十八万トン、大麦八万トン、綿花十万貫、こういうようなことで申し入れをいたしたのであります。しかしながらアメリカの予算の事情、それから世界各国から非常に申し込みが多いので——アメリカの十億ドル以上二十五億ドルぐらいの申し込みがあるのであります。こういうような関係で、十億ドルの範囲内において日本に余剰農産物を入れるか入れないかという問題につきましては、河野企画庁長官向うモース次官と相談したのでありますが、あまり見込みはない。私どもの方ではベンソン農務長官が来ましたので、ベンソン農務長官とその点について話し合いをいたしましたが、私ども要求通りには相当ほど遠いような情勢であります。でありますので、具体的にその数量をどういうふうにするかということにはなっておりませんが、私の方から出している出先の者からの情報によりますと、タバコも買ってほしいというような意図は向うにあるようでありますけれども、これにつきましては正式に向うから話が来ているわけでもありませんし、私どもといたしましては、私ども要求の必要な小麦とか、大麦とか、綿花とかというものが非常に減らされてタバコにすり変えられるというようなことでありますならば受け入れはいたしたくない。でありますので、タバコの問題には全然入っておりません。タバコを入れるということにつきましては私は賛成しかねるのであります。でありますからその点は不要のないようにお話願ってけっこうだと思います。
  13. 山田長司

    山田委員 すでにこのことについては、耕作農民にとっては実に大きな不安に考えられている。それは今日の専売法によりますと、毎年一年ごとにタバコ耕作というものについては切りかえされるということになっているからで、たまたま余剰農産物としてタバコが入るということになると、農民としては方向を変えていかなければならないということから、不安の状態が起っているものと思うのです。こういう点についても、大臣の今の説明からいきますと、タバコの買い入れはないように言われておりますけれども、やはりもっと積極的に、農民に不安を与えないためにも大蔵当局折衝をして、農民理解のできるような形で知らせる必要があるのではないかと私は思うのです。これが一点。  次に農民収奪の問題であります。今最もエアポケットにあるタバコ耕作者農民について農林省大蔵省折衝を持ってもらいたいという理由のものは、私はタバコ耕作者の控除されている額の伝票を持ってきて大臣あとでお目にかけたいと思うのですが、収納代金——これは三反以上タバコを作っている人なんですけれども、十四万七千九百十六円です。それからいろいろなものが引かれて、手に入っているのは十万九千八百五十五円であります。三万八千四十五円引かれております。この控除されている種目の中には肥料の代金等もございますけれども、特に目立つのは組合費——人反割、これが九百六円、及び組合費が二千二百九円、共済組合費百四十七円、事務所建設費千九百八十六円、こんな額で次次と引かれているわけですが、三万八千四十五円という額が引かれております。タバコ耕作組合くらい今日非民主的なものはないのです。この非民主的なタバコ耕作組合というものがどうしても民主化されないのは——農林省協同組合及びそれらのタバコ耕作者関係のある機構というものを大蔵省なり専売公社なりにまかせ切りにしておかないで、農民の収益を上げるために農林省がもう少し積極的に知恵を借し与えていかなければならぬと思うのです。なぜそういうことを私が申し上げるかというと、タバコ耕作タバコを植えた間には麦を作る、あるいは場合によればソバも作るということで、公社にまかせ切りにして監督させるだけでなくて、農林省で実際に関係のある農業農民は実際やっているのですが、エアポケットになっている関係でこれを放擲してある。これは私は大へんな間違いだと思うのです。こういう点について農林省はもう少し積極的に農民収奪されない方向に持っていくために、何か一つの方途を持って入っていってくれる意思はないですか、どうです。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の法案が通過するということになるなら、法案の中にそういうようなことを盛り込ましたい、こう思っております。今のお話のように間作もありますし、あと作の問題もありますので、栽培方面におきましては、これは私どもは非常に深い関心を持たなければならぬ問題であります。ただ御承知通り、事実上の問題といたしましては、タバコ耕作組合組合員そのものがなかなか協同組合の方にはついてきませんし、役員も一緒に両方を兼ねるというような形にもなっておりませんで、タバコ耕作組合員そのものが私どもの方をそっちのけにして離れていく、こういうのが実態でありますので、そこへ私どもがかき回すといってはいけませんが、いろいろやろうといたしましても、今までは実際にはなかなか困難なような状況であったのであります。しかし実際問題としては、栽培耕作方面あるいはあと作の問題も間作の問題も農林省として非常に関係の深い問題でありますから、そういう点につきましては、私どもといたしましても、この耕作組合組合員の頭というか考え方を、やはり農業全体としての中において考えて総合的に農業生産にいそしんでもらいたい、こういう方向へ指導していきたいと思います。  それから第一段の余剰農産物タバコの問題について大蔵大臣と協議しろ、こういうことでありますが、これは大蔵省から言ってきている問題ではありません。専売局から言ってきている問題でもありません。先ほど申し上げましたように、アメリカの方で事務的に幾らかそういう意向があるという程度で、交渉中でありますから、決して大蔵省専売局の方でタバコ余剰農産物として入れようという考えは私ども聞いておりませんし、協議した際にもそういう申し入れは全然なかったのであります。でありますから、それに対して不安を持つということは、少し報道等において正しくない報道、あるいは推測の報道などが出たせいだと思いますので、私も余剰農産物タバコを入れるという意思もないし、大蔵省も全然そういう意思申し入れのときになかったのであります。その点は申し添えておきます。
  15. 山田長司

    山田委員 タバコ余剰農産物としての輸入の問題については、大臣説明で了解できますが、今このことを私が強く質問をいたす理由のものは、タバコ耕作者というものは、今の法規に従いますと、専売公社人たちに少し文句でも言えば、来年度は作れなくなってしまうというような危険があるわけなんです。そこへ持ってきて、タバコ輸入をするということになれば、これはもう不安の上にさらに不安が重なるというようなことで、ずいぶん農民にとってはけられたり踏まれたりするような状態になるわけなんです。そこで今の問題をただしたわけなんですが、そうすると、これはまだきっぱりと入れないということははっきりしてないのですね。これが一つ。  もう一つは、このタバコ耕作組合法なるものが今継続審議になっておるにしても、大蔵委員会審議をされておりますので、遠かれ早かれ通る危険があると思う。この場合に、タバコ耕作組合法などよりも、当然農民の上にもう一つ考えられなければならない問題は、農民組合法だと思うのです。この農民組合というものについて、一体大臣はどういうように考えますか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第一点、タバコは入れるのか入れないのかという問題でありますが、余剰農産物交渉はまだ打ち切ったわけではありません。しかしタバコの問題は、初めから申し込みをしないのですから、向うから言ってきても、これは問題にされないことであります。従って結論的には入れない、こう御了解願って差しつかえないと思います。  それからタバコ耕作組合農協等関係して、農民組合というものをどういうふうに考えるかということでありますが、御承知のように、戦前におきましては地主小作人というような対立関係がありました。そういう関係から、農民組合性格そのものが、階級闘争的といいますか、地主対抗的という、こういう組合であったことは申すまでもないのでありますが、最近におきまして、農民における階層の分化といいますか、いろいろそういう面はありましょうけれども、しかし地主小作というような対立関係といいますか、階級闘争的な関係は大体ないと見て差しつかえないのじゃないかと思います。そういうことで、農民組合というものがどういう形においてでき上ってくるか、こういうことにつきまして、そのでき上り方については、私どもも自主的に、自律的にでき上ってくるものに対して、あえてこれをどうこうという考えは持っておりません。私の方で農民組合を作り上げる、農林省として作り上げるという考えは今のところ持っておりません。
  17. 山田長司

    山田委員 さらにタバコの問題についての大臣の御意見を承わりたいのであります。今日大臣は、農民があまりにも収奪されておる姿として、タバコ納入状態というものを御存じないのではないかと思いますから、私は申し上げるわけですが、今日の耕作査定、それから鑑定収納代金、この鑑定状態なんていうものは、まるで原始的な査定方法をし、代金の支払いの方法をしておると思うのです。鑑定などは鑑定官が二人いて、片方の鑑定官がたとえば二等なり三等と言えば、矢じるしで向うの人にもその数字が出ておるというようなことで、二人の鑑定官が同時に誤まりのない鑑定をしたかのごとき印象農民に与えておる。また実際はそこに陳列されておる見本品にしても、そんな見本品ができる筋のものじゃないのです。それをいかにもできるかのごとくつるして製品を置き、そうして耕作者にそれができなければこういう等級はつけられないけれども、特に一等級上げてでもやるかのごとき印象を与えて査定をして買い上げておるようです。こういう問題について農民意見を反映させることに何らかの工夫がなされなければならぬと私は思うのです。こういう点について、タバコ大蔵省関係であり、公社関係であるからというので、農林省は今までほうっておいたのかもしれないが、何かここに農民意思を反映させる方向へ持っていくために、農林省として案を考えたことがあるかどうか。考えていないとするならば、それについてこれから一つ考えるというようなことはできないものか、こういう点を伺いたいと思います。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 タバコ耕作組合員も大てい村においては農業協同組合組合員であるのが実態だと思います。収納関係等につきましてもいろいろ私も聞いておりますし、現場を見たこともあります。そういう点につきましてタバコ耕作農民組合ほんとう意思、気持を農林省なら農林省へ映すといいますか、声が通るような方法考えたらどうかということでありますが、今の段階においては、先ほど申し上げましたように、組合員といたしましては、農協組合員タバコ耕作組合員とは同じように両方に籍があると思います。これは事実であります。農協等を通じてタバコ耕作組合のあり方あるいはタバコ耕作組合に対する専売公社のやり口というものをよく聞きまして、そういう線を通じて改めるべきは改めるように注意を喚起したい。またそういうことが非常に悪弊があるということでありますならば、私どもといたしましても、農民の代表として専売公社大蔵省注意することにやぶさかでございません。そういう方法をとりたいと思います。
  19. 山田長司

    山田委員 大臣は実際のタバコ納入状態納入までの過程の実際の姿を知らないから非常に簡単におっしゃいますが、農村の実際納入するまでの姿を見ますと、専売局の人々に向けて、私が、鑑定官というものはタバコ納入時期になったらそのつど甲の地点から乙の地点にかえなければならないと言う理由のものは、最近では全くないしょで、鑑定の衝に当る人たちに一万なり二万なりの金を現に袖の下を使っておるのです。これはうそだと思うなら、私は一、二の町村の実例をあげて、実地調査に行ってもらったら一番いいと思うのですが、収奪もはなはだしい例があるから、私はここで出すのです。そこでわからないはずになっておるのは、四十軒なり五十軒なり納入を一日にやるのに、ちゃんと鑑定官にはこのタバコのこれはどこでだれが出しておるのだということがわかっておるのです。それで鑑定のときに手心を加えてちゃんと高く買っておる、こういう事例があるのです。それでタバコ耕作者というものは、収入があったよりも現に現ナマを鑑定官に渡しておるのですから、実際収入があったことに帳面づらはなっておらないのです。そういう状態ですから農民意見を反映させる方法を積極的にやはり農林省は講じて、農民の保護の衝に当らなければいかぬと思うのです。こんなことはないように見えるけれども実際においてなされておるのです。もし農林省協同組合なりあるいは農民収奪を少くするために係の者が作られて、現地を一つ調査したいというなら喜んで御案内いたしますが、そういうところに人を派遣して農民収奪の姿を知ろうとする意思があるかどうかを伺いたい。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘のような事実もあると思います。それが収奪というものであるか、賄路というか、金を使うことが収奪になるか、それはちょっと……。そういうようなことは初めから悪いことだと思いますが、実情等につきましては、私も知らないわけではない。しかし今までの沿革がそういうふうになっておりましたので、実地調査ということも農林省としてまだいたしておりませんけれども、そういう機会を得たいと思います。なおその収納等につきまして専売公社の係官が横暴をきわめるというか、そういうような傾向があるということにつきましては、大いに是正をさせなければならぬと思いますし、また葉タバコ収納審議会というような民主的な方法でそういう査定ども一つ方法かと思います。いろいろそういうことによりまして弊害のないように、私どもといたしましても十二分に注意をし、また調査をし、注意を喚起すべきところには喚起し改めさせたいと考えております。
  21. 細田綱吉

    細田委員 関連して。さっき大臣タバコの問題では農民がついてこないというように御答弁になったが、大臣タバコ耕作面積日本一の茨城県に育ってこれはよく知っておる。同じ農民があの封建的なタバコ耕作組合ではうんもすんも言えない。農業協同組合ではのびのびして議論をする。こんなことは考えられない。タバコ耕作組合に入ったのではうんもすんも言えない状態があるということに御注意願って、政治をその方向に持っていってもらいたい。なぜそんなに農民タバコ耕作組合に入ったのではうんもすんも言えないかといえば、先ほども山田委員が言っておったように、一年限りの契約に原因がある。たった一年限りの契約では、御承知のように乾燥場その他多くの投資をする、これだけ投資をしてしまって来年作れなかったらどうするかという不安、そうして組合側もボスのにらみが非常に強いところだから、あの人ににらまれ、公社の役人ににらまれたら来年は吹っ飛んでしまうという不安があるから何も言えない。その根本原因は一カ年限りの契約に原因があるわけです。それが一つ。それから大臣もしきりに沿革のことを言っておられたのでありますが、たばこ専売法は明治三十二年か三十三年以来の半世紀以上たった古くさい法律でその当時のままやってきておる。言いかえればタバコ耕作組合というのは時代離れのした構成の上に立っておる。従ってボスの支配が非常に強いということです。これが第二であります。第三は、買うのが大蔵省だからというが、大蔵省が買おうとだれが買おうと、作るものは農民で、農民の重要な耕作物である限り、農林省はもっと強く大蔵省にぶつかって、第一次監督官庁こそ農林省だという線を打ち出してもらわぬとだめだ。漁業にして農林省にしても買う先は労働者であり市民である。これは当りまえの話だ。従って大蔵省が買うから大蔵省が第一次監督官庁だなんていうばかなことはない。農民の重要な耕作物である限りは、農林省こそ第一次監督官庁でなければならぬ。ここを赤城大臣は一番よく御存じなのだから、赤城大臣のときにこの問題を一つ強力に推し進めて、第一次監督官庁は農林省、第二次こそ大蔵省、こういうふうにしていただかないと、農林省が何にも知らない問題に、大蔵省余剰農産物としてどんどん輸入して、そしてどんどん減反を強制されているというようなことになり農林省は一生懸命で農村の民主化のために骨を折りながら、先ほど山田委員が言ったように、検査官のところへわいろを持っていったら一等になった、二等になったというばかな現象が今もって行われておる。農村の民主化もここに大きなガンがあって進められないということになっては大へんです。どうか赤城大臣のときにこの問題を、第一次監督官庁こそ農林省だ、大蔵省は買う——なるほど買うには買うけれども農民のことなどは大蔵省が重点にものを考えっこない。農林省は今までそれに対して何の関心も持たない。関心があったかもしれないが、権限上何も監督できないということになるから、これがエアポケットになって、明治三十何年の耕作組合が今もって大道闊歩して、大手を振って歩いているという奇現象がある。どうかこの意味において、赤城大臣のときにぜひ解決していただきたいが、大臣のこれに対する御決意を承わりたい。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 耕作期間が一カ年だということはタバコ耕作農民にとりまして非常に不安だと思います。そういう点で流れた法律かもしれませんが、専売法改正の中では、これを三年とか五年とかいうことに改めたい。その作付の割当等につきましても、民主的な方法といいますか、耕作者の代表を入れた協議会のような形のものに諮問するという案が、正確には覚えておりませんが、あったように感じております。しかしこの法律の方は前の国会で流れたと思います。そういう点も私どもとして考慮しなくちゃならぬ問題だと思います。  それから、たばこ専売法あるいは耕作組合沿革があるけれども、これは非常に古い時代のものじゃないかというお話、ごもっともであります。そういう点で今度のたばこ耕作組合法につきましても、近代化ということまではいきませんけれども、これは是正していく必要があるというふうに考えまして、先ほどからいろいろ申し上げておったような次第であります。  第三の、買うのは大蔵省だが大蔵省監督権を与えておくのは不合理じゃないか、こういう話であります。買うというか、タバコ専売というような制度で、タバコ専売公社で作っておるのでそういう沿革になっておると思いますが、酒などもどもで米を作り、力を入れているのに、大蔵省が酒のことではじっとしておる。塩の問題もあります。そういうような法制的あるいは沿革的な問題もありますが、筋といたしましては、私は農林省耕作の面においては少くとも指導監督をやるべきだというふうに考えております。私もそういう線を打ち出しますから、大蔵当局やその方向にも細田委員 等も力強く押していただきたいと思います。
  23. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石坂繁君。
  24. 石坂繁

    ○石坂委員 大へんに時間を制限されておりますので、当面の二、三の問題について大臣にお伺いいたしたいと思います。  第一の問題は、災害対策として自作農維持創設資金融資ワクの増額の問題であります。先般九州地方の七・二六災害に際しましては、政府もいち早くそれぞれの処置をとっていただき、赤城大臣みずから災害地を御視察になりまして、罹災者を鼓舞激励されたことにつきましては、罹災者たちもまたわれわれも深く感謝いたしておるところであります。しかるにその後の災害復旧に関してでありますが、私の熊本県におきましても、農林水産の災害だけでも三十六億を上回っております。そうしてこれに対しまして天災法の融資、共済金、補助金等を差し引きましても、なお二十二億程度の損害の復旧をしなければならぬというような状況になっております。この罹災農家の数二万五千尺、そうして自作農維持創設資金融資法の対象となる農家が約一万五千戸になっております。しかも被害が五〇%をこえた農家が五千五百七十戸という多数に上っておるのでありますが、これに対しまして、自作農資金の融資を要望いたしておる金額は実に四億二百八十一万円になっております。ところが現在の配分額はわずかに七千六百万円であります。しかも私の地方では九月六日の十号台風の被害も受けまして、この被害も農業関係の被害が六億七千万円にも上っておる。そうしてこの被害農家一千四百二十六戸、一億円程度の融資を必要とするような状況になっておりますが、現実の配分額は、今申し上げましたように七千六百万円にすぎない。他の地方との比較におきまして公平であるとか不公平であるとかは申しません、もちろんそれは災害の程度の差もありまするけれども、他に比較いたしましてはなはだしく僅少である、こういうふうなことでありまして、現在罹災農民の強く訴えておりまするところは、もう少しこれをふやしてもらいたい。少くとも他の県に比較してはなはだしく僅少であるこの不均衡を是正して、融資のワクを増してもらいたいというたっての要望であります。もっともな要望であると思いますが、農林省におかれまして、もうこの陳情は受けておるだろうと思うのですけれども大臣はこの際その点に一つ留意されまして、配分額を増額していただく意思はないかどうかということであります。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 石坂委員などの非常な御注意もありまして、九州災害につきましては、実はとりあえず自作農維持資金としては四億円を配分いたしたのであります。そのうち熊本県は、今お話の通り七千六百万円であります。しかしなお今のお話のような事情も聞いておりまするし、またお話もあるのでありますので、現地に係官を派遣いたしまして、なお調査いたしたいと思います。しかし調査をしないでも今のようなことは承知もしておりまするし、また自作農維持資金が足らないという声も非常に強いのであります。今大蔵省とも折衝中であります。増額するつもりでおります。
  26. 石坂繁

    ○石坂委員 大臣の好意ある御配慮に対しまして深く感謝いたすのでありますが、ぜひとも一つ十分な折衝を遂げられまして、増額方をお願いいたしたいと思います。  第二は、これもまた要望でありますが、有明海の農薬被害の問題であります。これも数年前から問題になっておりまして、だんだん農薬が使われるようになりましてから、有明海の漁獲物が激減した。関係の県は熊本県、福岡県、佐賀県、長崎県の四県でありますが、非常に減って参りまして、この関係漁民は大体において四県とも零細な漁民であります。しかも数はかなりの多数に上っております。四県合せまして、専業の漁家にいたしまして三万一千三百二十二名、兼業は一種、二種合せまして一万八千八百人、こういう多数に上っておりますが、その被害額も十二億円を上回っておるというような被害額になっております。そこでこれに対しまして、農林当局もいろいろ調査はしておられるようでありますが、農薬の被害というその因果関係を、これは常識的に見ましても、あるいはまた九大の水産試験所等においての調査の結果によりましても、農薬の被害であるということを認めらるべきでありまするが、農林当局はなかなかその因果関係を認めておられないのであります。今日までも同様な見解をとっておられるようでありますが、現実に農薬使用後この四県の沿岸の魚貝類の漁獲が非常に減ったことは事実であります。被害額は今申し上げました通りであります。  そこで三十一年度におきましては、大臣も御承知通りに、この転業資金として金を出された。そうしてノリあるいは魚貝類の漁業を転業させた。これは三十一年度だけで打ち切られたのでありますが、その後依然として被害は続いておる。また転業も三十一年度に出されましたこれだけでは十分でないのでありまして、これを何とかして解決いたさなければならぬというような状況にあるのであります。さればと申しまして、現在の食糧増産の段階からいたしますれば、直ちに農薬の使用を禁止するというようなことは、とうてい米麦等の農家にとりましてはできないことであります。そこで何らかの対策を講じてもらわなければなりませんが、この有明海の農薬の被害に対する農林省の現在の見解及びこれに対する今後の対策についてお伺いをいたします。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 有明湾の漁獲が減少した理由が、農薬の被害であるかどうかということにつきましては、今お話の通り、まだ農林省としては九州大学とか東京大学に調査を依頼しておるのでありますが、結論が農薬被害であるという結論にまだ達しておるようなことになっておらないのは、今のお話の通りであります。しかしながら漁獲高の減っておるということは事実でありますので、これまたお話の通り昭和三十年度より三十一年度にかけまして、ノリ人工採苗施設あるいはノリ、モガイの採苗事業とか、魚礁設置等に対しまして、補助金五千五百万円を計上いたして助成いたしたのであります。その結果、統計調査等によりましては、漁獲の増加を認められておるということにはなっております。しかしそれにいたしましても有明海に対して考えないわけではないのでありますが、今までのような方法で助成するかどうかということでありますが、それにつきましては、今までのような助成方法ではなくして、別にまた考えようじゃないか。それは有明海の特殊事情も考慮いたしまして、今農林省として実施しておりまする水産増殖事業開発費の運用によって、関係四県と具体的に協議して方策を立てたい。たとえて申し上げまするならば、有明海においては最も適当と思われるノリ漁場の造成とか、ノリの人工採苗とか、魚礁設置等に重点を置いて助成したいということで今研究を進めておる段階でございます。
  28. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石坂先生、大臣は予算委員会に出席を要求されておりますので、政務次官にかわって答弁していただきますから、さよう御了承願います。
  29. 石坂繁

    ○石坂委員 それでは今の問題をけりをつけます。何とか方法を講ずるというお話でありますから、私もはなはだこれを多とするものでありますが、三十年度、三十一年度にノリ、モガイ等の種苗等の購入によりまして、ある程度転業いたしましたけれども、なお減産の傾向は減っておらないのであります。この際これに対しまして四県とも協議されて、十分なる対策を立てられますると同時に、農薬の被害全体に関する調査をお願いいたしたいと思います。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農薬や鉱山等の汚濁等の被害というものも所々にあるように聞いております。またそういうことがありますので、現在も有明海の農薬被害ということにつきましては、先ほど申し上げましたように、九州大学あるいは東京大学で調査を進めさしておりまするから、この結論を待ちたい、こう考えます。
  31. 田口長治郎

    ○田口委員 関連して……。今大臣は、有明海の農薬の問題を一般の浅海増殖によって解決しよう、こういうようなお考えのようでございますが、その点は二つの問題をぜひお考え願わなければいかぬと思うのでございます。第一は、予算の総額がとうてい有明海を特殊扱いする金額でない問題が一つ、もう一つは、あの奨励金でいきますと、補助率が三分の一になっておりますが、ここ数年被害で痛めつけられた漁業者は、国庫補助三分の一では仕事が実際にできないのでございます。従ってこの率の問題は、どうしても三分の二をお考え願わなければ消化ができない事情にありますから、予算の増額の問題と補助率の問題だけは、いずれの方法をとられるにしましても、特に特殊な海域で疲弊こんぱいに達した漁民、こういうことを対象にされるのでございますから、その点はよく含んでおいていただきたいと思います。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 浅海増殖の中において助成といいますか解決をはかろうとするのでありまするから、当然ワクはふやしていく所存であります。なお補助率につきましては慎重に検討してみたいと思います。
  33. 石坂繁

    ○石坂委員 大臣はお急ぎのようでありまするから、あとの問題は政務次官に伺います。一見小さきごとくして必ずしも小さくない鶏の問題であります。乳牛その他の大家畜、中家畜等に比較いたしますと養鶏という問題は大へん小さい問題のようでありますが、実際は日本の農業経営にとって小さい問題ではないと私は思っておるのであります。先日の農林大臣の農政に関する所見を拝聴し、また八月二十八日の省議決定の農林政策要綱を拝見してみましても、食糧消費の面から、あるいはまた営農の面から、農家経営の安定のために畜産を振興するという点に大きく指向されておることは、私大へんけっこうなことだと思うのです。ぜひ畜産振興を大きく押し出していただきたいと思います。しかし、それにもかかわりませず私どもが受ける印象は、この養鶏というものを非常に軽んじておられるのではないかということであります。しかるに養鶏による生産というものは、三十年度中の鶏卵生産高は六十八億個を越えております。そして鶏肉その他を合計いたしますと、大体一千億円、畜産生産高の六〇%は養鶏による生産だという統計が出ております。しこうしてこの一千億円という金額は、日本の農業生産のうちで米麦に次ぎ第三位であるというこの点から見ますると、養鶏は決して小さくない。しかも栄養食料として、生鮮食料として非常に価値のあるものだという点から考えてみまして、これまた軽視すべからざる日本の産業だと思うのでありますが、形が小さいのと農家の副業的な仕事でありますために、ややともすると軽視されておる状況ではないかと思うのであります。そうして現実の問題として、普通一般の農家で行なっておる養鶏というものは、農業経営からいささか遊離しておる。ですから、養鶏というものを農業経営に溶け込ませることによって農家の経済の安定を期することができる。私はこういう考え方に立って養鶏業を見ておるのであります。ところが相当重要な役割を果しておるこの養鶏について、農林省の政策というものは終戦後ほとんど顧みられないできておるような感じがあります。しかるにもかかわりませず、一時戦争により壊滅したかに見えた養鶏が、今日また大へんに回復してきたということは、四百万養鶏農家の努力の結果だと申さなければならないのであります。こういう状況下にあるにかかわらず、養鶏の持っておる弱点は、鶏卵の価格の変動が常ないということ、春は非常に下るが秋になると一般に上ってくる。本年度のごとき、最近の状況を見ますと、七百円台を割っておるというような状態であります。それも春からひなが成長いたしまして、いつも減産になるはずの秋に生産が多いからということからでありましょうけれども、ごく最近の状況を見ますと、十月十七日遂に七百円台を割って非常に安くなっておる。こういうふうに鶏卵の価格の変動常ないということ飼料が非常に高いということ、ほとんど七〇%は飼料代に使われるというような状況であること。もっとも農林省の政策要綱等によりますと、飼料対策は畜産を奨励するためにいろいろ考えられてあるようであります。養鶏を対象としての飼料対策が全然ないとは申しませんけれども、主として対象とされているものは養鶏以外の畜産である。こういう状況であって、価格の問題、飼料の問題が不安定でありますために、養鶏農家は安定性を欠いておる現状である。それで養鶏の日本の農業経営における地位と申しましょうか、比重と申しましょうか、それをここで再認識してもらって、あらためて畜産奨励の一路線としての養鶏の振興方法を講ずる必要があると私は考えておるのでありますが、これに対する農林当局の御所見と対策を伺っておきたい。
  34. 本名武

    ○本名政府委員 細部の点は畜産局長から御説明申し上げることにいたしたいと思いますが、その前に私から、ただいま御指摘のおもな点についてお答えいたしたいと思います。  農林省は養鶏対策について熱意がないのではないかという御指摘でございました。なるほど今日まで農林当局の政策といたしまして現われておりますところは、そういうような御見解をお持ちいただくような点がなかったわけでないと思います。しかし、少くとも私どもは、養鶏に対しては相当深い関心を持っているつもりでございます。御指摘通りに、大家畜中心の有畜農業というものが形としてはまず重点的に考えられねばならないことではありますが、実際農家の経営の安定あるいは所得の向上ということを考えますと、必ずしも大家畜依存の有畜農業が合理的でないということは十分承知いたしております。もっと具体的に申しますなれば、地理的環境や気象状況によって異なりますが、有畜農業としては家畜の種類がある程度整備されて初めて安定するのではないかと考えております。具体的に申しますれば、牛を飼う農家は必ず豚がなければならない。牛と豚を飼う農家は必ず何がしかの鶏を飼わなければならない。こういう姿が、有畜農業一つの形として当然とられなければならないでないかと考えております。ただ、今日までは、やはり牛を中心にした酪農振興が農業経営の上に大きく取り上げられる実情にあり、日本の農業としてはやはり牛に重点を置かれた形が現われておりますが、御指摘通り、今申し上げましたような形をぜひ実現して、農業経営を安定させるために今後は鶏にも相当に力を入れていきたい、このように考えてただいまいろいろな施策を検討し、さらに講じているわけであります。  そこで、ただいまそれについてそれならばどういう考え方をしているか具体的に話せというお話でございますが、先ほど石坂先生が御指摘通りに、鶏卵の価格は産卵の季節によりまして増減があったり、あるいはまた長期保管が非常にむずかしいというような理由のために、いろいろ問題が起きまして、特に価格の面に変動があることは御指摘通りでありますが、それともう一つは、この養鶏というものは、今日までの姿が農家の副業的な形になっていたというところに一つの大きな問題があり、従って農林省といたしましても、現況に対しての対策としても、やはり副業的な実態に置かれているというところに価格政策その他に直接施策を講ずるということが非常にやりにくかったという点はあったと思います。しかしながらこれではいけないのでありまして、まず政策の上で養鶏業を振興させるということ、さらにその上に立って有畜農業を安定させるということと同時に、農業協同組合などの機関を利用して、出荷調整の制度も確実に実行するとか、あるいは必要があるならば長期保管のために冷蔵庫の施設を農協に持たせるとか、あるいは加工卵の形で保存をさせるようにするとか、そういうようなことをぜひやっていきたい。しかしこれをやるにつきましても資金が要りますから、それらの所要資金はぜひ一つ融資の道を講じてその施設を一日も早くやっていくようにしたい。今考えてそれの実行に移す熱意でおります。  それからまた品種的な問題も当然今後取り上げて検討していかなければならないことでありますが、品種の改善についても、産卵の能力の向上をはかるために来年度はぜひ予算をとりましてその実を上げたい。それにつきまして孵卵業者や育雛業者の任意登録制を設けまして、これに必要な経費を確保して養鶏業者の経営の安定に資したい。このために来年度の予算要求の中にこれをたしか五百万見当だと思いますが要求をいたしております。これをぜひやるようにしていきたい、こういうふうに考えております。  それから飼料の問題についてのお話がございましたが、もちろんこれらの対策と並行して飼料対策はとられなければならないのであります。また今日までも実はそれぞれ対策をとりまして、飼料の中でも特にトウモロコシなどは従来非常に安い価格で供給しているような実がだんだん現われてきているということを申し上げ、さらにその他の飼料についてもそれぞれ対策をとっていかなければならない、かように考えております。
  35. 石坂繁

    ○石坂委員 私は珍しく発言をいたしておりますのに、委員長時間を制限することははなはだ厳格であります。非常に残念でありますが申し上げませんで、ただいま政務次官から大へん理解ある御答弁でもありましたし、養鶏の効能書きを申し上げることは釈迦に説法であると思いますので略しますが、要するに養鶏振興のために、実は養鶏を農業経営に溶け込ませるという基本的線に立っての養鶏振興、なお鶏卵及び鶏肉等の価格の安定の問題、低廉なる飼料の入手の問題その他消流関係も考慮いたしまして、基本的に今政務次官の申された政策を織り込んだ養鶏振興法というような立法を必要とすると私は思っております。業者においてもその要望がはなはだ切なるものがありますが、これに対する御意思と御用意があるかどうか。  これで私の質問は終ります。
  36. 本名武

    ○本名政府委員 養鶏振興法が必要であることは考えております。ただその内容は今結論的なものは得ておりませんが、御要望の点は、いわゆる養鶏振興に関する当面の処置としては立法処置を必ずしも必要としなくても予算措置その他によってかなりの振興を期することができるようにも考えております。また立法措置に対する二、三の御要望もありますので、せっかくその内容について検討はいたしておりますが、努めて早急に、しかも来年度の予算にはぜひ一つ予算措置によって振興を期するような道だけは必ず講じたいと考えております。
  37. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石山權作君。
  38. 石山權作

    ○石山委員 私今度は赤城農相にでもお聞きしようかと思ったのでありますが、政務次官がせっかくおいでになったのでお聞きしますが、政務次官は大臣の代理が、一省を代表しておやりになるというふうに思うわけなのです。しかし法制上からいうと、ちょっと疑義を受ける。たとえば大臣の代理であれば、赤城さんが外国へ行ったあと代理として指名されるくらいの権限があれば、政務次官というものは非常に有効で、いつでも代理として十分論争をかわしても何でもないと思うのだけれども、どうも政務次官の性格は場当り式に御答弁をしていればそれで終りだという印象が大へん強い。一つのお役所の機構からして、そういう意味からするならば、むしろ政務次官の御答弁を聞くよりも局長さんの御答弁の方が、あとに痕跡が残るような考えが浮んでくるわけです。こういうことを言うのは、私はいやみを言うわけではなく、こういう機会に皆さんから十分お考えを願って、いわゆる二人の政務次官を置かれた趣旨からして、政務次官の一つの権威、そういう立場は十分に擁護されなければ、委員会はいつでも大臣の答弁を求めるというふうな変な形に移行されていく。そういう点では、私も今までの考え方からすれば残念でございますけれども、きょうは政務次官からそういう意味で意のあるところを御答弁願いたい。  農林省最初白書を出されて、白書は大へん評判がよいようでございますが、白書の中で、私気になることは、今度お出しになった農林省の政策要綱、あるいはまた、先ごろの大臣の農林水産政策についての所見、こういうふうなことと比べて、白書がこの二つの問題のバックボーンをなしておるのかどうか、こういうことをまず第一にお聞きしておきます。
  39. 本名武

    ○本名政府委員 大臣からも白書に対する意見の開陳があったと思います。また先日の委員会で私も何かの問題に触れて申し上げましたが、白書というものは初めて農林省で作ってみたわけでございます。その作ったということは、農林行政に御熱心な方々、あるいは日ごろ関心を持っておられる方々には、白書をごらんいただかなくても、当然わかり切ったことが書かれてあるというふうにおとりになっていると思いますが、国民的な世論として農業実態、その現況がどこまで浸透しておるかということは、農林省としても不安であったので、ぜひこの機会に新しい農業政策を打ち立てて、真の農業経営の安定と食糧の自給度を高めたい、こういう考え方から、それがためにはまず第一に実態をつまびらかにすることが必要ではないか。その上に立って皆さんの世論をお聞きし、また農林省としてその現況の上にどの点をどういうふうに補い、どの点をどういうふうに行なっていって、所期の目的、いわゆる農業経営の安定や食糧自給度の向上が期せられるかということの政策を積み上げたい。従いまして農林白書はそういう考え方で作られ、政策はその中からとりあえずやらなければならないという方向とやり方というものを書き現わしておる、こういうふうに考えております。
  40. 石山權作

    ○石山委員 私が白書から受けた印象は非常に暗い印象です。深刻なものです。そして示された政策綱領は深刻じゃないのだ、平面的なんですよ。まず私にしいて言わしめれば、白書はことし新しい面を出したのですが、やられる政策は極端に言えば去年もやったことだし、ことしもやったことだというような感じ、来年もその通りだということなんです。ただここでちょっと気をつけられることは、稲作より畑作へ転換するという一つのテーマが出されていることは確かなんです。変ったといえば変ったのですけれども、じゃこれは政策としては予算の裏づけを持ってどのくらいの実行力があるかとなりますと、これもまた未知数でございます。だから私は概括的に言いますと白書は非常に深刻であるけれども、それに対応するような態勢で政策は組まれていないのではないかということを考えております。  私、この白書の読み方はいろいろとあると思いますが、この白書を見た結果四つくらい浮んだのでございます。第一に変っておる点は、新しくぽかんと十三万町歩の田が生まれてきたということ、それから次にはいわゆる都市と農村、鉄工産と農業というものの比較、いわゆる農業の後進性というものが深刻に論じられて、内容も非常にできばえがりっぱだと思っております。われわれが見たうちでは非常に手っとり早く計数などもうまくつかんでやっておられる、これはりっぱなものだと思います。ただそこに富農というか貧農というか——工業と農業との断層を明確にしておきながら、自分内部にある富農と貧農の問題をばこれをえぐっておらないということ。なぜえぐらなかったのか知らぬけれども、これが欠点といえば私は欠点になるだろうと思います。もう一つあるわけなんです。先ほど政務次官は、この白書によってたくさんの意見を聞いて政策を積み重ねていくというふうなことをおっしゃったわけなんですが、私は白書の中に、章間と章間、行間と行間の間でもいいから、農林官僚の意欲というもの、こうすればこうなるのではないかというふうなものの暗示というものがその中に現われていなければ白書というものは生きてこないはずだと思っておったのです。しかし残念ながら何年間ぐらいたってどういう格好で工業との差をばなくするのだ、こういう意図というものがどこにもなかった。あなたの言われた通り、これはみんなの意見を聞いてというのだろうと思うけれども、それにしてはあそこまで分析しておきながら最後の点をば人まかせにするということは、私はどうも意に満たないわけなんですが、そういう事情を、官房長官がおいでになっておりましたら一つ聞かしていただきたいと思います。
  41. 本名武

    ○本名政府委員 きょうは予算と参議院の農林委員会がありまして、実は手分けいたしておりますので、官房長はちょっとあちらへ回っておりますが、いずれ来ましたら事務的な詳しいことを御説明申し上げるようにいたしたいと思います。  ただいま石山先生から、白書をながめて、そうして政策要綱をごらんいただくと何か物足りないところがたくさんある、そう御指摘なりましたが、まさに見方によってはその通りでございます。ただ問題は、先ほども申し上げましたように、あの白書によって解決すべき幾多の点がたくさんございますが、それを実は財政その他の関係から一気に農林省の実行政策としてお示と、さらにまた強力に実行に移すということはなかなか容易ではないので、一応今日の段階としては、あの経済要綱にまとめたわけでございます。しかしながら一方におきましては、あれは御指摘のように、まさに文章だけでございます。これだけでは御納得がいかないので、別途に長期計画を立てまして、これの御批判もいただいて、またこの計画に従ってぜひこれを実現したいと努力をいたしておるつもりでございます。それからもう一つは、農業と工業あるいは都市と農村の国民としての所得の開きのあること、これは数字でお示しした通りでございますが、これを一体どうして近づけていくかということ、しかも富農の政策であるかに見えて貧農に対する政策ではないように思われるという御指摘、これはあるいはごらんになった感じではそうおとりになるかもしれませんが、実はあの政策要綱の冒頭に掲げてあります通りに、必ずその不公平を是正するということがうたわれているわけでございます。それならばその不公平をどういうふうにして打開するかということ、これは農業自体の中におきましても、水田耕作者と畑作農業との開きがございます。それからまた工業と農業の所得の相違もございます。特にその所得においては労働所得の面で相当の開きがある。さらに農業の経営といういわゆる企業という面からいきますと、土地に対する資本なり投下された資本に対する利潤の見方が今日まで非常に不健全である、不健全であるというよりも非常に貧困であったということを思うのであります。これらを是正するために、一つは畑作振興を打ち出す、一つにはまた土地の利用から初まっていろいろの営農類型、経営規模に至るまでの対策をとりつつ、今まで低かった貧農に対する政策を、この政策の中身の実現によってこれを引き上げていきたい、そういうことをあの政策要綱の中にうたって、あの要綱をこしらえたつもりでございます。なおそれ以上のことにつきましては、官房長が参りましたら御説明申し上げたいと思います。
  42. 石山權作

    ○石山委員 白書から受けた印象をお互いがよく研究し合えば、日本の農政の基本が探し求められるように思います。白書がある意味では謙虚な意味で、自分の手段を示唆しなかった。非常に謙虚な態度なのですが、謙虚な半面——私はこの雑誌を見たのですが、この雑誌の中に十三万町歩ふえた理由というふうなことを説明している方があるのですけれども、この説明の仕方を見ると、決して謙虚じゃないのだ。もし白書がそういう建前で作られたとするならば、私は決して謙虚なものではなく非常に強い意図のもとで白書が作られて、そうして暗示をしないということは、むしろ何かを意図して暗示を隠しているという印象なのです。というのはこの十三万町歩ふえたことに対しては、まことに自信満々として書いておるのですよ。十三万町歩といえば概算三百万石です。三百万石というと秋田県のことしの算出米とやや同じでございます。これは十三万町歩といったって、畑地を入れて六百万町歩ですか、六百万町歩から見れば大したことはないのだ、こういう意見だろうと思うのです。こういう意見が大へん見えるのです。しかし実際三百万石の米、十三万町歩という土地というものがあるとないことによって予算措置からみな違ってくるわけでしょう。それも危険分散の形で六百万町歩で割ればそんなことは問題でないといえばおそらく問題でないでしょう。しかしその言い方がはなはだひどいと私は思うのですよ。こういう言葉がある。「絶対の真実は神のみぞ知り給う」とか何とかなかなか自信たっぷりで書いてあるのですよ。私はこういうところを見ると、どうもあまり謙虚なようには見えません。十三万町歩違ったということは約束と基準が違うからいろいろに違ってくるのだといっておる。それじゃなぜ約束と基準を同じにして調査をしなかったかということです。前々何べんもそれはあなた方統計でなさっていらっしゃるのだから、なぜ私どもに誤解を与えるようなやり方をなさるかということになる。その例が書いてあるのです。「十六年の耕地面積より二十六万町歩、二十五年の世界農業センサスの数字より九十七万町歩、二十七年の農業動態調査のそれより六十二万町歩、三十年の臨時農業基本調査より八十八万町歩いずれも多い。これは前にも言ったように、耕地が実際にこれだけふえたのではなくて、調査上の約束や基準が違うために、このような違いが出たのである。」と言っておる。基準と約束です。なぜそれを同じにしないかと、にくまれ口をきくならば、そう言いたくなる。それが当り前だというような記述の仕方を見ると、この白書の中心をなす統計がそういう形で出されたとすれば、なかなか信用がおけないということになるでしょう。今度の白書の数字も、基準と調査の約束が違うということになれば、いつ変るかわからぬ。一体どれが正しいか、神のみが知りたまう。神のみが知りたまうで逃げておるのでは、とても相手にならぬ。それじゃ私は誠意をもってやったこととしては、少し言い方が大げさだと思うのです。そうして最後に言っているのは「もっとも、正しいことをするということはかなり勇気のいることであった。」と結んでいるのですよ。十三万町歩出したことはかなり勇気の要ることであったというふうな結び方をしておりますけれども、取る人によってそれぞれ違うけれども、ずいぶんひどいことを言うものだというふうに私は思うのです。六百万町歩ですから十三万町歩とは大したことはないといえばそれまでです。誤差があるといえばそれまでですけれども、しかしこの中には生きている人間が住んでいるわけだから、税金も出しているでしょうし、肥料の配分の問題だってあるでしょう、交付金の問題だっていろいろあるわけです。それがあるとないとでは違うのでございますから……。なぜわざわざこういうことを出したかというと、お役所の機構の問題と、あなたと大臣の立場とからんで、特にこの問題を出しているような格好なんですが、高級官僚の方々がこういう考え方でものを見るから、お百姓の方々に言われるのだ。机上プランである。それでも農林官吏は一番やはり国民とは血肉的に近いと言われている、言われていながらもこういう文書を書くところを見ますと、私非常に残念にたえないわけなんです。こういう点は、私はいいとか悪いとかいうことは別にして、そういうやり方で数字が組まれてあったというふうになりますと、今度の白書の基礎数字というものはまた違うだろう、来年になったらまた都合よく皆さんのやりいいような数字の形で変ってくるだろうという印象を受けるわけです。そうではないでしょうか、私はそう思う。そうなると、官僚の都合のいいような数字設定がいつでも生まれてくるという危険性があるわけです。そういう疑問を起されてもやむを得ないと思う。私は十三万町歩ふえるというだけにすればよかったと思う。こういうことを書かれて内容をよく聞かしてもらったら不信感が生まれてくる。親切にやっていただいたのが不信感が生まれたり、そうしてこの文章の中から受け取る感じが自信の過剰であって、独善的にも見えたようなことに私は受け取った。残念でございますけれども、本人の考え方とは受け取り方が私は全然違うと思う。思うけれども、私は私なりにこういうように残念ながら受け取って、せっかくりっぱな数字を出してくれたけれども、これはまた変るものじゃないかというような感じを持っているわけです。これをお作りになっただれかに答弁してもらえば一番いいわけですけれども、政務次官ではあるいはちょっと的はずれで気の毒かもしれませんが……。
  43. 本名武

    ○本名政府委員 私は不勉強でありまして、その本を読んでおりませんので、十分お答えできないと思いますけれども、一応十三万町歩が、結果からいいますと、ぽかりと現われてきたということは、これはいかにも統計調査の不備か粗漏か、あるいは無責任ではないかという御指摘、数字がいきなり現われてきた点から見ますれば、まさにその通りに感じられるのでございますが、この十三万町歩というのは、決して本年度になってぽかりと現われたのではなくして、これを現わすために実は三年なり五年、長い間苦心をして苦労した結果、ここに今日現われてきたのだと私は思っております。それではその苦心とは一体どういうことか、そこが一番問題点であろうと思います。その雑誌にはどういうふうに意見が述べているかわかりませんが、石山先生の今のお話から想像いたしますと、実は調査の技術といいますか、方法といいますか、今日までなされてきた、そのことが非常にむずかしい問題であったということ、御指摘通り、直接農民の所得、収入に影響する問題もございますし、あるいはまた米価を初め価格設定に対して、非常な大きな影響をする問題でもありますし、さらにまた農家の経費として——これはこういうことを申し上げることが適切かどうかわかりませんが、納税関係にも影響してくる、こういうようなことは実は遠慮しなければならない言葉かもしれませんが、現実として私は考えていかなければならぬ。この現実の上に立ってどういうふうに正しい数字を出すかということは、私は統計調査としては、味方をするわけではないが、相当苦労してきたと思います。そこで御判断は御自由でございますけれども、このことがあったために、今後も統計調査の数字というものが常にそのときそのとき、折に触れて変化するのではないかという御意見のようでございますが、農林省といたしましては、決して今後の数字に対して、特別のこういった基礎的な事由のために、調査ができなかった場合を除いては、決してそういう数字の変更ということはないようなやり方でやっておりますので、その御不審は御無用かと考えております。いろいろ申し上げたいのですが、御指摘通り政務次官はそこまで詳しくは存じませんので、一応この程度のことを申し上げておきます。
  44. 石山權作

    ○石山委員 政務次官は忙しくて見ておらぬでしょうが、この本にはもう一ついいことが出ているのです。私、先ほど富農層と貧農のことをお話ししたのですけれども、その中に食べものを書いた人がいるのです。「農民食生活変貌の実態」というのを書いている。これは力作です。富農層と貧農を食べものによって比較したわけです。なかなか力作です。私は前にはああ言いましたけれども、実際はなかなかよくやったと思っているのです。十三万町歩も、口では言っているけれども、これも力作です。まあほめておいた方があとあとのためになるでしょうから、一生懸命まじめにやったことがけなされたのでやりがいがないから、言うことは言っても、やはりその実績に対しては賞讃していいと思うわけで、そういう意味では私はやはり十三万町歩はよく出したと、最終的には修正しておきましょう。  それから今の食べ物によってやった、これもなかなか労作でございます。これも今度白書の中にない農民自体における、いうところの断層、農民自体における富農と貧農の断層が白書の中にないのでございますが、それのかわりでもないのでしょうが、これはやはり統計の方の方が書いたわけですが、これによると、貧農と富農層、つまり五反程度と一町五反以上から二町程度の人の生活の様相は、食べものによっても明確になるように記述されているわけでございます。肉や卵もそうですが、大体五反の程度の人と、二町歩くらいの程度の人と、大体三倍違う、こういうふうに常識的に判定してもいいのではないかという資料がここに出ております。これは反別というものと、卵や肉の類までも違うというのは、統計というものはなかなかうまくできているものだと思いますが、その通り、反別の差というものと、卵や肉の食べ方も、それに相応したような形で違っているという統計が出ております。この人はちょうど私が言いたいようなことを、末尾に結んでいるわけなんですよ。これを一つ読んでみたいと思います。「この消費水準の上昇は所得水準との均衡を失した消費の先走りであったことには注意しなければならない。」ということは、この方は、農民はあまりぜいたくをするなということを考えながらも、全部うたっているのですが、それでも差があるということが次に出ているのです。「一方、農民層間にみた食生活の向上、ないしは変り方には大きな開きがあった。その階層差は質的にも量的にも拡大方向にむかっている。」ということです。食べ方の問題が、肉と卵の差がだんだん大きくなっている。これは食べものだけでなく、農家の経済そのものが、そういうふうな格差の方向に向っている。いわゆる質も量も伴って差ができていく現象が、この日本の農家の経済の中にあるのではないか。もちろん工業と農業との格差を白書は非常に上手に示したのでありまして、あえて言う必要はないのでございますけれども、私の言いたいことは、内部におけるこの断層が農林行政の主流をなすものでなければ、あるいは鉱工生産に追いつくいわゆる生産性の問題が右の手であれば、内部における断層是正をしていくのが左の手であるというふうな政策の立て方をしなければ、決して私は農民自体が恵まれないし、あなたも先ほど言ったように、富農層だけの農林政策に終る可能性があるのではないか、こういう心配でございます。特に故意かどうか知りませんけれども、経済白書において内部の断層にメスを入れない、内部の断層に言葉を費さないというところに、そういう政治的な考慮が払われているのではないか、これは政治的ではないということもだいぶ言っておるようですけれども、そこに何かあるのではないか、起草者がおいででしたら、なぜ触れられなかったかということを簡単でよいですが、お聞かせ願いたいものだと思います。
  45. 立川宗保

    ○立川説明員 白書の起草に当りました者ではございませんが、官房におりますので、感じだけ申し上げさしていただきますが、今御指摘のように、農民層の中の階層の分化なりあるいは諸階層の間の関係ということは、非常に農業の問題としては大切なポイントではあると思います。その点を無視してはならぬという御指摘は私は非常に大切な点であると思いますが、この白書をいろいろ書きました際には、全体の国民経済の構造の中で、農業がどういう地位にあるかということが非常に大切ではないかという感じを強く持ったわけでございます。     〔委員長退席、吉川(久)委員長代   理 着席〕  そういう角度で全体的な組み立てを考えましたために、農業内部の諸階級の問題ということはともかくといたしまして、重点を鮮明にいたしますために、そちらの方面に問題を集約した。でありますから、もし申すならば、農業内部の階級の関係ということはまた別にあらためて取り上げるというような角度で問題にしなければならないじゃないか、こう思っております。
  46. 石山權作

    ○石山委員 そこら辺が保守系と革新系の物の考え方の分れる基準かもしれません。たとえば私たちは日本経済の全般から見て、いわゆる世界的な格づけを行う場合がありますね、その場合の格づけが非常に低いんだ、追いつかなければならぬ、ある意味では生産性というものがまず第一に浮んでくるんだ、たくさんの機械を買うとかいろいろあるわけです。それが競合、いわゆる内部の矛盾、内部の断層をカバーしないで、生産性のみを強調し、蓄積のみを強調していきますと、国全体から見れば、なるほどそこには巨大な蓄積と大きな生産性の発展はあるのでございますけれども、反面に国民の消費経済というものはちっとも上っていかないという数字が現われてくるわけなんですよ。私はそれを言いたいのです。つまり国は栄えたけれども民はちっとも潤わないような政治形態はあり得るのでございますから、そういう資本の蓄積はやり方によってはできるのでございます。今の日本にそういう機構があるのでございますよ。ですから私は農業にそのまま及ぼすのでは、陰惨な感じの暗い農村がなおさらだめになるという見解でございます。ですからなるべくあなたの方の手がけないような、これは内部でやれることだからおおまかに国民に与える一つ印象としては、経済白書に示されたようなこともあるいは一つの方便かもしれません。たくさんの政治家の目、経済家の目をそこへ向けるというのは一つの方便かもしれませんけれども、しかしそれが置き忘れられたというようなことになりますと、ゆゆしい問題だし、ともすればこれは政策としては非常に困難な問題です。たとえば日本の工業、商業から見て、中小企業問題が日本の一番のガンになっていると同じで、農業政策から見たらこの階層の断層を埋めるということは一番難儀なんです。そうして目に見えないと思うのです。数字であげてくると蓄積も少いだろうし、生産性向上もできないでしょうし、だからそんなところで手をかけたくなくなるというのはお役人の方々の気持があると思うのですよ。あなた方が何かおやりになれば、やはりデスクに集計された場合にはプラスになった数字が多くならなければ効果がなかったような、政策がむだであったというふうな印象を受けるだろうと思う。しかしわれわれが今提唱しておるのは、デスクに集計された数字としてはなかなかプラスになって浮かばれないところが問題だと思うのですよ。そこをうまくやっていただかなければ実際農村は明るい農村にならぬでしょう、住みよい農村にならぬということを私は言いたい。日本の中小企業の問題もそういうような観点で力説さるべきものではないか。私はお役人さんを信用しないわけではないのですけれども、数字を大切になさるだけで、内部矛盾に対してともするとそれに労力をそそがないというふうな傾向が在来あったのだし、これからももしそういうことが続くとすれば、政策的にも断層は広がるのでございますから大へんでございます。黙っておいても広がるのを、政策でこれを広がらないように差を縮めていくようにというのがわれわれの希望なんだから、そこを一つよろしく勘案してもらって、これは内部でやることだということだけでなくて、やはりこの問題は外部にもアッピールしていただいた方が私は白書をより以上に簡潔にしたものであり、農民実態ということも国民の方々に覚えてもらえたのではないか、非常に残念だから、私は繰り返し繰り返し申し上げるのでありますし、それからこれは保守党であっても間違いない、国民の一人々々、農民の一人々々が生活向上をたどることが悪いとはだれも言うのではないから、お互いに大いに勉強して、官吏の方々が特にその断層から目をそらさないようにいろんな数字を集めていただきたいし、立案の基礎も一つ政府与党に提出してもらうという努力をやっていただきたい、こういうふうに思って、私はこの問題を打ち切りたいのでございますが、先ほどのあなたの方の政策の中で、私の方の秋田県あるいは新潟、山形等の単作地帯では、稲作から畑作へ転換ということがかなり大きなショックを与えております。これはどういう格好で移行していくかという具体的なものがまだ現われておりませんから、どういう格好で畑作に移行していくかということはまだはっきりしておりませんけれども赤城農相は「水田経営の改善を図って主食を増産して参りますことは勿論でありますが」と、稲作問題をたった二行くらいで片づけている。だから稲作なんてものはだんだん追いやられるであろうと、私の方の地方新聞でもやはり社説として取り上げて、農林省に望む、転換の場合は単作地帯に対しては十分の措置を講じて転換をしていただかないと大へんな問題になるというふうなことで心配しているようでございます。新聞社でも心配しているのですから、一般の農民などは、二行くらいで片づけられていますから、相当心配するのではないか、こういう点でもう少し農林省では稲作の問題に対してもPRしておいていただきたいものだ、これは今後ともこういう格好でいくんだ、畑作転換は——五カ年計画かどうか知りませんけれども、こういう格好で転換をしていくのであってというふうなことをこの際示す必要があるのではないか、新予算を組む場合には特に示す必要があるのではないかと思っております。それに対する次官の所見を伺いたい。
  47. 本名武

    ○本名政府委員 今まで参事官からも申し上げましたが、私ももし石山先生のおっしゃるようなことであるとするならばこれは大問題だと思います。すなわち米の増産は二の次にして畑作振興に重点を置くんだというような政策を農林省がかりにも打ち立てたとしたならば大問題だと思います。   [吉川(久)委員長代理退席、委員長着席〕  しかしながら私どもの政策要綱の中には決してそういうことはうたっておりませんので、水田に対する対策は今後もより重点的に取り上げて参りたい。土地改良を初めといたしまして品種改良、肥培管理その他のものについて積極的に従来以上にやっていきたい。しかし富農、貧農の断層があると同じように、水田耕作者と畑作農民との間にもうかなり開きのあった面も多々ございますので、これを救うために、畑作振興も水田対策と同じく引き上げていきたいというのが今度の新政策の要綱でございます。従いまして、もちろん水田を畑作に転換するということはわれわれ毛頭考えておりませんので、畑作は畑作自体として振興していきたい。ただ水田の場合に、最近酪農が農家の方々の間にも盛んに関心を持たれております。従いまして水稲の裏作として飼料作物その他の畑作作付をやるような場合はございますが、これはあくまでも水稲の収穫を犠牲にして裏作をやるという意味ではないので、従来の水田の増産対策というものを今後もより積極的に打ち出していくことはもちろんでございます。ですから、政策の上で御心配のようなことは決してないと私も考えております。
  48. 石山權作

    ○石山委員 次官は林業にたいへん詳しい方と聞いておりますので、私二、三研究していただきたい事項を申し述べておきます。  最近林業は非常に急速に育つことを要求されている。それから今よりもっと切らせろ切らせろという要求が非常に強い。この要求に応ずるためには、切らせることとあるいは輸入をうんとふやすことだろうと思います。輸入の場合はどこから持ってくるかというと、カナダの場合、アメリカの場合も国内法によって簡単に素材は出せない。今原木をもらえるのはソ連だけでございますが、このソ連は港が二つしか指定されておらない。その港は非常に浅くてどうにもならぬ。それでも、ことしは四、五十万ぐらい入ったと思いますが、林野庁では約一千万石三十二年も三十三年も不足だろう、こう言っている。工業用としては大体押えられた格好の一千万石であって、ほんとに必要量であれば、一千五百万になるか二千万石になるか、これはわからぬと思います。たとえば私たちの関係している産業の紙パルプにしましても、パルプとして年間十万トン以上外国から入る。これを国内でまかなうとすれば、それだけ伐採量をふやさなければならぬわけです。この伐採量をふやすということと治山治水の問題ですね。その費用というものと製造工産の上げる利潤というふうなもの、こういうふうなものは私は相当違ってくるのではないか。それからこれは農業全般から言われることだろうと思うのだが、日本の製造工産の経済に農業を近づけるためには、第一次製品の農産物をば農村の中で第二次製品化するという努力がなされれば私は成功するだろうと一応解釈しているわけです。そういう場合の林産物の問題等があります。この場合たしか私の記憶だと、次官はもっと切らしてもいいのではないか、こういうふうな御意見をいつか聞いたように思うのですが、どんなもんでしょう。切らしてもらいたいという要望は、先ごろ北海道をずっと回って、有名な王子などを回ってきた場合——国策も回ってきましたが、そういう場合に、あの北海道でさえも原料不足で困る、切らしてもらいたい、こういう意見が非常に強いのですが、一つそういう点の所見を伺いたい。
  49. 本名武

    ○本名政府委員 御説に従いまして今後研究をさしていただきたいと思います。ただお話の中で、森林経営と経済林の不合理はどうして解決するかという御指摘が要点だろうと思います。実は私は切れるだけうんと切らしたらいいだろうということは申し上げたことはございません。ただ森林を国土保全あるいは水源涵養その他いろいろな方面から保護しなければならないということは申すまでもないことでありますが、ただ森林を保護することと森林を経営するということはおのずからその実行の上において変ってくると思います。ただ森林を守るために木を切っちゃいけないというのでは、実は森林は衰えてしまうのでありまして、切らなければならない。切りながら育てていかなければならないのが森林の実態であります。ところがたまたま経済的な意欲からぜひもっと切らしてくれという要望のあることは事実でございます。特に御指摘通り、国内の木材の需給関係というものは非常に矛盾をいたしておりまして、国内生産だけではとうてい需要に満たない。特に日本の生活水準が上るに従って当然木材の消費はふえていくわけでございますから、今日においてこれだけのアンバランスがあるので、将来はより一そうこれが大きくなるということを予想しなければならない。そういう場合に、切らせろというから切らしたというのでは森林は壊滅してしまう。従ってそこに水源涵養林その他絶対でたらめな切り方をしては困るというところは、国が積極的に民有林であっても保安林の指定をいたしまして、これを保存するということを考えております。それからもちろん地方からの要望によってそれらのことを実行していっておりますが、前段申し上げましたように、その他の経済林におきましては需給を充足することを前提といたしまして、やはり林種転換なり林相改良あるいは樹木の成長率を増長させるために適当な方法によって択伐あるいは皆伐の方法をとっていかなければならない。それに見合うところの経済効果を上げていかなければならない。それでももちろん足らないわけでありますから、外材を入れなければならない。ソ連材も相当入れる計画をいたしておりますが、アメリカ、アラスカ方面の材も入ってくる計画もいたしております。しかしそれらのものは相手のあることでございまして、必ずしも意にまかせて需要を満たすだけのものを自由に入れるわけにいかないところに一つの大きな問題がありますが、それはそれとして別途方法を講ずべきであると思います。  それからもう一つ私が申し上げたことに誤解があるようでございますが、切れということは純然たる土地の上にはえる木の林業経営として切れと言ったのであります。国土保全その他のために経済意欲が要求するから切れと言ったのではなくして、私はその林野の形態あるいは地理的状況、それから諸般の森林そのものの持つ使命によって異なって参りますが、少くともいわゆる造林をいたし、経営の上からいってまずこれを経済林として扱う場合には、私はもう少し切るということ、もう少し植えるということ、この二つの両面が積極的にとられることは、日本の木材消費需給の上からいっても、あるいは林業、農業経営の上からいっても必要である。さらにつけ加えて農業、特に高冷地、寒地農業における林業をこれに含めて農業経営の営農類型に加えるべきだという意味から考えますと、成長率の早い樹種を作り上げて、選んで五年ないし十年間に植伐することによって農業経営を安定させるべきではないかということも一つ考え方であります。そうなると従来の森林法によるところの三十年、五十年たたなければ切れないということであったら、これはいわゆる純然たる林業経営にはだんだんほど遠くなりはしないか。そのときには時至れば森林法の改正なりなりをいたして、そういう農業経営をやるべきではないか、こういう意味で申し上げましたので、山の木は経済の要求によってどこでも切っていいということを申し上げたわけではないのであります。
  50. 小枝一雄

    ○小枝委員長 楯兼次郎君。
  51. 楯兼次郎

    ○楯委員 各人が御迷惑と思いますので、私は二点だけ御質問をし、要望をしたいと思います。  第一は、一昨日来各委員がいろいろ心配をいたしまして、大きな立場から質疑応答がかわされましたので、重複いたすと思いますが、予算の問題について質問をしてみたいと思います。先日もらいました経済白書を読みまして、特に私は農業関係のことはしろうとである関係か、驚いたわけであります。といいますのは、これは十人が十人、口を開けば日本の農業というのは商工業に比べて非常におくれておる、資金の投入不足という面が大きく言われておりますから、何とかして日本経済を調整するためにもこの後進性を取り戻さなければならぬ、こういうことが白書にもいわれておりますし、十人が十人、そういうことを言っておるのであります。ところがこの農林予算は、二十九年以降六百億あるいは二百億とだんだん減少をしまして、本年度は八百九十五億と記憶いたしておりますが、半分になってしまった。こういう点について特に私はしろうとである関係か、なぜこんなになるだろうと驚愕をするわけであります。今やかましくいわれております土地改良、それから開拓ということが重要であるということを大臣も先日再三言われておりますが、土地改良の点も白書の中で見ましても、現在手をつけておるのが三千五百地区あるという。本年度の百三十八億の予算規模でやれば五十九年を要する、こういうことが書いてあります。現在手をつけておるところが五十九年もかかる。だから先ほど申し上げましたように、商工業に追いつくためにこういう土地改良一つをやりましても、このようなばかげた措置がなされておるにもかかわらず、また他の予算は多少なりとも予算規模の拡大によってふえておるにもかかわらず、最もおくれを取り戻さなければならぬ農林省関係の予算が年々減少してきて、本年度は半分だ。一体大蔵省なり政府は、農林省のあなた方のこういう声を今まで聞いてくれなかったのか。来年度の予算はどうするか、この点をまず第一に聞きたいと思います。
  52. 本名武

    ○本名政府委員 予算の数字の上から見ますと、私ども全く同感であります。こんなことで農林省ばかりではなく、国民ひとしく食糧の自給度を引き上げるとか、農業経営を安定させるとかいうことを言ってみましても、大へんなことになりはしないかと私は非常に心配をいたしております。ただ今年度の予算がだんだん減ってきて、八百九十億になったのは不思議だということでありますが、これは実は御承知通り災害復旧費などが年々減っておりますし、また共済金なども支出が減っておりますので、数字の上では若干これらのものが減っておるわけでございます。それからまた大切な土地改良の予算が全く十分でないばかりではなく、現在手をかけているものが五十九年もかからなければ完成しないのは不都合だというのはまさにその通りで、もしそんなことがあるとすれば大へんなことでございますので、実は先般御協力をいただきまして土地改良特別会計制度を設けまして、これを努めて促進させるという措置をとりました。また来年度の予算におきましては、土地改良予算の要求は本年度の倍額を要求しております。御指摘通り大蔵省もなかなかうんと言わない役所でございますので、今後これが獲得のためには非常な苦心が要ると思いますけれども、この土地改良予算獲得のために、ただいま大蔵省説明折衝をいたしておるわけでございます。
  53. 楯兼次郎

    ○楯委員 この間も来年度の予算を大蔵省からもらいましたが、おそらく三十二年度予算の要求でも倍額くらい出されておったと思う。私がここで強調しておるのは、商工業と頭をそろえておる状態にあるならば、農業の方にそれ以上余分によこせというのは通らない場合があるかもしれないが、しかしすでに商工業は百メートル先を走っておる。百メートルおくれておるこの農業が、なぜ年々予算が減少されて半分になってしまうか、われわれしろうとなるがゆえにあの白書を一べつしてびっくりしたわけであります。だから今ここで農林当局は非常な決意をもって予算の折衝をやられるであろうと思いますけれども昭和二十八年以降災害その他のいろいろお答えになりましたような要素はあったと思いますけれども、それらを勘案をしてもあまりにみじめではないかということを私は考えておるわけです。だから一つ政務次官は大臣を助けて、とにかく他の産業と同じ地域まで到達のできるように骨を折っていただきたいと思います。農民はこの点について、われわれ回ってみましても非常に憤慨をしております。この点をまずお願いをしておきます。  いま一つは、国土開発縦貫自動車道建設法というものが、この前の二十六国会で私どもが提案し、通過したのであります。私はその提案者の一人でありますが、この法律は日本の土地造成のために特に農林省で力を入れて研究をし、今後五年十年たったら日本農業の中核的な立地条件になるものであろうと考えておったのであります。ところが先日各局長がおりましたので、どうですかと聞いたら、残念ながら非常に関心の薄い印象を受けたのであります。だから私は、白書を出され、あるいは大臣が施政方針の演説をされても、具体的に白書がうたっておる土地造成に対するいい条件の法案が通ったにもかかわらず、これを研究をされ、対策を立てないで、どうしてあなた方が希望するような状態に日本の農業がなっていくか、こういう点を心配しておる。白書を見ますと、たとえば開拓の地区でいわゆる立地条件の整備されておるところは今日発展をしていっておる、こういうことをあなた方が指摘をされておるのです。それから林業の関係でも、たとえば林道を作る作るとおっしゃいましても、何十キロもあるような林道を奥地に作ったところで、輸送費が高くなるだけであって何にもならない。だからああいう道路を作ってそこから枝線連絡道路、林道を作ってこそ初めて生きてくると私は思うのですが、大して関心がない。こういう点について農林当局は過去どういうふうなことをやってこられたか。あるいは政務次官のこの問題に対する方針を一つ承わりたい。
  54. 立川宗保

    ○立川説明員 お許しを得まして私から便宜申し上げます。  ただいまお話のように、非常に高速度の縦貫道路ができますることは、いろいろな経済条件に大変化を起します。従って農業、林業、畜産業を含めて輸送条件を十分にらみ合せてそれの処置をしていく必要が非常にありますので、これはことしの春国会を通りまして、国土開発高速度縦貫自動車道建設の準備の始まりましたとき以来、建設省と道路公団とは非常に緊密に連絡いたしまして、特にインターチェインジの関係で林道なりこちらの連絡道路をよく整備をして、そこにうまくくっつけるということが非常に大切であろうと思います。その辺の準備を鋭意やっておるところであります。まだ実施計画の過程でございますから、御注意の点をさらに体しまして十分やらなければならないと存じます。
  55. 楯兼次郎

    ○楯委員 再度質問をいたしますが、大体あの法案が通ったことによって一番びっくりしなければならないのは、私は農林省でなければならぬと思うのです。というのは今申し上げましたように将来——大体自動車やトラックを商工業のためだと思っているようなことでは、あの白書にあるような目的を貫くような日本の農業にならぬと私は思う。だから自分たちのものにしなければならぬので、この道路法案が通ったら、あなた方の方が総合的な対策を立てなければならぬということ。いま一つは、この道路の設定によって農地がつぶれます。だから、一番びっくりして対策を立てなければならないのがあなたの方なんです。ところが私の聞いた範囲では、非常に関心が薄かったわけです。それから、私もその委員をやっておりますが、農林大臣もあまり出てこられない。そういうことで、繰り返すようでありますが、白書あるいは大臣の指向しておる方向には政策は進展をしていかないと思う。  いま一つこの点についてお聞きしたいことは、犠牲者に対する対策です。土地がつぶれます、この犠牲者に対する対策をどういうように考えておられるか。
  56. 立川宗保

    ○立川説明員 その補償の仕方、あるいは路線は大体きまって参りましたので、それを技術的に変え得るかどうかという点は、こちらの意見をいろいろ出して突き合せておりますが、それが第一点。第二は、それによりまして土地がある部分、幅は狭いのでありますがつぶれますから、その部分を、単位当りの土地の生産力を上げるということでカバーをすることも考えなければならないと思います。  それともう一つ、その自分の土地がこっちと向うにまたがるというようなことが出ますので、必然に耕地の交換分合、集団化というようなこともそれと関連をしてやらなければならない。その結果道路敷地をみなで相談してきめていくというような形が一番合理的でないか、こういう工合に思いますので、いろいろな角度から耕地整理あるいは交換分合、集団化というような措置が必要なのでありますから、この事業の沿線にはそれを徹底的にやるという方向をとるつもりであります。  それから、全面的にそのために農地を失う人はきわめて少いようでありまするが、その人方が、もしその沿線の人が他に転じて農業をやろうという場合には、移転先を十分用意をしてあげるような措置を考えたい、こういうことでございます。
  57. 楯兼次郎

    ○楯委員 今のお答えは吹田——神戸間に建設されようとする自動車道に対する今起っておる、紛糾しておる問題に対する考え方ですが、これは、中央道か東海道かあるいは東北道かということに今なってきております。だから、そういう問題が起きた場合に糊塗的な考え方では困るじゃないか、こう私どもは思います。だから、第一番に私たちは代替地を作らなくちゃいかんと思う。それから該当地を個人にのみ負担をさせることはいけないので、その地域全体の負担において施策をしていくという考え方が私は非常にいいと思います。ただ現在起っておる吹田——神戸間の農地だけを対象にせずに、やがて起るであろう日本全国の問題を根本的にあなたの方で対策を立てておかなければならぬ。だから、次官に私は同じようなことは言いませんが、一つ大臣と御相談なさってやっていただきたいことは、この道路に対する対策協議会なり委員会農林省の中に作っていただいて、そして現下要請をされておりまする農地造成に対する根本的なこの道路に沿った開発計画を立てていただきたいと思います。
  58. 本名武

    ○本名政府委員 予算につきましては、御激励をいただきましてまことにありがとうございました。あくまでも御趣旨に沿うように一生懸命努力いたします。  それからただいまの縦貫道路の問題につきましては、参事官からも御説明申し上げましたが、やはりお説の通り農林省としても、非常に重大な関心をもって当らなければならないところでございます。同時に先ほど来御指摘がありました政策要綱にのっとりまして、実は農林省の中に、土地に対する総合的な調査を初め、総合的な検討をいたしたいというので委員会を作っておりますので、この委員会には本問題を取り入れるということは特にうたってはございませんけれども、お説の通り大臣とよく相談いたしまして、別途に新委員会を作るなり、あるいはこれに含めるなり、いずれにいたしましても、積極的にこの問題を取り上げて、検討いたしていくように、大臣によく申し述べまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  59. 楯兼次郎

    ○楯委員 確かに白書の中には土地の再調査をするということが強調されております。これは私はけっこうだと思う。ところがえてして、各官庁が自分たちの立場からこういう調査を行うと、しまいにはなわ張り争いになってくると思います。従ってせっかく日本本土のいわゆる脊梁を貫くこういう法案が通ったのですから、やはりこの道を中心にして、これに対する対策協議会なり委員会を作っていただく方が私はいいと思います。白書を読みましても、先ほど吉川さんは私をさして中央道と言って笑いましたけれども、各所に、たとえば酪農の問題のところを読みましても、政府がこれほど宣伝しておるのだが、なぜいかぬだろう、これはやはり交通機関が整備されないからとか、たとえば林業のところを見ましても、先ほど言ったように、適当な搬出路がないとか、みんな強調されておる。開拓はやはり立地条件がそろったところはよろしい、それでもって今日まで等閑視されたということは非常に残念だと思いますので、この道を中心にして、一つこれは机上プランでも何でもけっこうだと思いますが、作って、それをもとにして日本の開発をやっていただきたいと思います。
  60. 本名武

    ○本名政府委員 いろいろ貴重な御意見を承わりました。さっそく相談いたしまして、御期待に沿い得るよう努力いたしたいと思います。
  61. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後四時三分散会