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1957-11-06 第27回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月六日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 淺香 忠雄君 理事 有馬 英治君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       足立 篤郎君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       川野 芳滿君    高碕達之助君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    前田房之助君       山本 勝市君    有馬 輝武君       井上 良二君    石野 久男君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    田万 廣文君       竹谷源太郎君    横山 利秋君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  酒井 俊彦君         大蔵事務官         (為替局長)  石田  正君         通商産業事務官         (通商局長事務         代理)     杉村正一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         通商産業事務官         (通商局為替金         融課長)    金井多喜男君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 十一月五日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  石村英雄君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員石村英雄辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  石村英雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十一月五日  酒税引下げに関する請願小牧次生紹介)(  第二三号)  同(三宅正一紹介)(第九六号)国内塩業対  策に関する請願田中武夫紹介)(第二四  号)  国家公務員等退職手当暫定措置法施行令の一部  を改正する政令の改正に関する請願今井耕君  紹介)(第二五号)  同(上林山榮吉君紹介)(第二六号)  同外五件(床次徳二紹介)(第二七号)  たばこ耕作に関する請願田中武夫紹介)(  第二八号)  停年退職者等退職慰労金課税免除に関する請  願(淺香忠雄君外一名紹介)(第九五号)  国立たばこ試験場設置に関する請願助川良平  君紹介)(第九七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  設備等輸出為替損失補償法の一部を改正する法  律案内閣提出第四号)     —————————————
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び設備等輸出為替損失補償法の一部を改正する法律案の両案を議題として審議を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。井上良二君。
  3. 井上良二

    井上委員 ただいま議題となりました租税特別措置法等の一部を改正する法律案に関連して、二、三質問いたします。  この法律案は、最近の国際収支現状にかんがみて、これを改善するための総合施策一環として、輸出振興をはかるための措置として、現行の輸出所得特別控除制度をさらに拡充して減税をせんとするものでありますが、この特別措置法輸出所得特別控除制度にさらに拡充の対策をやろう、その場合に、政府税制全体の立場からこの問題を検討されたのですか、それを伺いたい。別な言葉でいえば、税制全体の均衡立場からかようなことをやってもいいとお考えになったのですか、それを伺いたい。
  4. 原純夫

    原政府委員 お話しの点につきましては、常々心がけておるところでありまして、特に一昨年から昨年にかけましての税制調査会におきましては、所得税大幅減税のために、一つの大きな財源としまして、一連の租税特別措置の全部の措置について洗い直して再検討いたしました。その際、この輸出所得控除制度は、課税理論公平理論からいいますればいろいろ問題があると思います。しかしながら、やはり税にある程度政策が入るということはやむを得ないであろう、その政策面要請として、輸出を伸ばすということは、おそらく一番優位のものの一つであろうからということで、いわば相当整理されました中において、この項目が一番優等生の部類に判断されたような経緯がございます。従いまして、昨年の調査会、それに続きます立法におきましては、これは従来通り残しておくということになっておったわけであります。そこへ今般の外貨、国際収支変調というようなところに現われました、経済全般の持って行き方を直さなければならないというときに当りまして、いろいろな手を打つ緊急対策として扱う手の中に、輸出を一そう税の面で促進したいという考えが出たわけであります。ただいま申しましたような経緯から申しまして、この措置特別措置の中で最も優先順位の高いものの一つであるということを考え、かつ現実総合緊急対策を必要とした事態から考えまして、今回御提案申しておる程度のことは、税の一般論をはずしましてもやむを得ないというふうに考えて御提案申し上げた次第でございます。
  5. 井上良二

    井上委員 政府みずからかような特別措置法をさらに追加拡充するということについては、妥当ではないという原則的な立場は一応お考えのようでありますが、ただ輸出振興といいますか、国際収支の改善、そのための輸出振興を推し進める必要があるという一つ政策的な立場からやられた、こういうことでありますが、政策的に輸出振興考えます場合、この税制改正通り、いわゆる輸出高が高ければ高まるに従って減税をしていくという考え方も、なるほど同業者にとりましては一つ魅力かもわかりませんが、国全体の貿易策から考えますれば、それは輸出促進という一つの国策的な通商政策によって補助助成対策を別に考える必要があると私は考える。大蔵省は、大体原則的には租税体系の本質をくずす、いろいろな紛淆を来たすような租税体系はやめていきたいということは、従来一貫してとられております。われわれが本委員会を通じて租税特別措置の一部改正を上程いたしました際においても、常に租税体系を混乱させ、紛淆させ、全体の均衡の上から妥当でないという意見で、大体反対的な立場を堅持されてきたのです。しかるに、その政府みずからが租税体系を乱し紛淆を生ずるような提案をされているということは、この輸出振興にだれ一人反対する者はありませんから、これに便乗して、かようなみずから否定していることをみずからがこわすようなやり方をやってきている点ではないかと思います。輸出振興をもっと積極的にやらなければならぬならば、別の補助助成対策はいろいろありますから、それを積極的にやるべきではないか。その別の輸出振興の積極的な国の政策として行なっているいろいろな政策は、どういうものが具体的に考えられておりますか、それを明らかにしていただきたい。
  6. 原純夫

    原政府委員 まことにごもっともなお話で、一般論として、原則として特別措置は避けるような方向で、財源がありますれば、一般的な減税に充てるというような考え方を強く持っております。ただ日本経済がまだかなり落ちつかない現状にありますので、ある項目につきましては特別措置を存置し、あるいは今回のように伸ばすということになった次第でございます。そこで、特別措置法措置ではなく、ほかの方でどういうようなことをやるかというお話でありますが、これは、いわば今回の総合緊急対策全部がそれに充てられておる。大きくいえば、国内での諸般の引き締め政策ということによって、あまりにもわいてきました内需市場にある程度水をかけ、そこにおける需給の関係を直して輸出に向けた方が——よりきつい言葉でいえば、輸出に向けざるを得ないというような状態、少くとも内需で非常にもうかって輸出魅力が薄れるというようなことであってはいけないというようなこと、その辺が一番大きな点であろうと思います。なおお話し予算面措置につきましては、今後予算編成が具体的に進みます間に、輸出振興費項目についての詮議が重ねられると思います。この面では、今後そういう際にどういうことになって参りますか、ただいまのところ輸出振興費は、たしか年額十二、三億円計上しているというようなところであろうと思いますが、若干の要求が通産省あたりから出ておるのは承知いたしております。今後の折衝に待つところであろうと考ております。
  7. 井上良二

    井上委員 私どもは、いずれ後ほど明年度予算編成に伴って、税制全般に対する態度を具体的に要求いたしたいと考えておりますが、かような税全体の均衡を破る、別な言葉でいえば、特別措置という抜け穴をもって特別な業体だけに減税の恩典を与えるとい、行き方は、私どもとしても相当これは考えなければならぬことではないかと考えますし、またこの際主税局長といたしましては、来年度税制に対して一体どういう具体的な意見を持っておられるか。新聞で見ますと、また今国会を通じて政府のいろいろな見解を総合的に判断すると、一つは昨年所得税を中心に減税をいたしましたので、今年は法人税地方事業税を軽減することに具体的な対策が進められており、検討が進められておる、こういうような要望が非常に強まっておるということがうかがわれるのでありますが、もちろん法人税の中にも、非常に零細な法人もありますし、また事業税の中におきましても、非常に零細な事業主もあるわけでありますから、これらが別に悪いとは申しませんが、もし税制全体を検討いたします場合は、やはり低額所得者減税というものが、何としても今日取り上げられて、これが解決をはからなければならぬと考えますが、事務当局たる主税局長は、明年度税制全般に対しては、具体的にどの面をどういうふうにした方がいいということについての御意見を持っておられるか、これは全然考えておりませんか、そこらを伺いたいと思います。
  8. 原純夫

    原政府委員 明年度税制をどうするかという点につきましては、私としての考えを申し上げるのは、なお十分検討を経ました上で申し上げたいと思います。一昨日もいろいろ当委員会で御議論がございましたように、三十三年度予算編成にからみまして、特に歳出の緊縮と財源のある程度余裕ということとからんで、税の問題が非常に前面に出てきておる感じでございます。その間にありまして、私税制をあずかる身としては、機会あるごとに、国民税負担を合理化し、軽減したいという気持は年来持っております。しかしながら、今回はまず税制改革減税というのが主題という事態ではございませんので、やはり変調を来たしておる経済全般をどういうふうに運営して参るかということが主題でありますので、その主題についてのいろんな手の打ち方、その一環としても、税の問題は考えられ得る面がございます。そういうような意味で、大きくその辺についてのこなしが検討され、それの帰趨がきまって参るという際に、初めて税制としての具体的な方向議論するということになろうと思います。やはりその前に、私が非常に熟さない条件のときにいろいろと申し上げるというのは、ある意味で早過ぎるという感じもいたしますので、一つ、それは後刻検討の熱しました上申し上げさせていただきたいと思います。
  9. 井上良二

    井上委員 私、ただいま提案されております本案に対しましての具体的な各条章につきましては、追って質問をいたしますが、ただいまの主税局長の御説明は、われわれはなはだ遺憾といたします。主税局は、本年の自然増を約一千億と見込んでおるということが大体いわれておる。それから昨年度、三十一年度の決算において、すでに一千億円の自然増が出ておる。さらに明年もまた多少世界景気が頭打ちをいたし、本年通りの情勢に推移しないとしても、なおかつ八百億から一千億近い増収が予想されるということは、昨日予算委員会における大蔵大臣答弁で明確であります。現に三年も続いて一千億円も自然増が続いておる。このことを一体主税局はどうお考えになっておるか。これは、明らかに予算以上に税が取り過ぎになっておるということを示しておるのであります。それならば、これはこのままほっておくのではなしに、当然減税の具体的な措置事務当局としては検討して、いつでも国会要請に応じ得る態勢作業を進めるべきである。それをしていないというのは、怠慢もはなはだしい。そういうことをお考えになりませんか。これは、取れるものは勝手に取ってしまおう、こういう考え方ですか。
  10. 原純夫

    原政府委員 先ほど私申し上げましたことが、検討しておらないという意味におとりになったとしますと、私の申し上げ方が足りなかったと思います。検討は非常にいたしております。お話し通り、私どもは、いつでもそういう問題について検討するのが当然の任務であると思いまするから、あらゆる検討をいたしております。ただ申し上げましたのは、やはり税のことは、たとい検討といいましても、私がただいまの段階で、条件がきわめて不確定で、前提条件についての考え方にいろいろまだ問題があるというときに、どうする、こうするという考えを申し上げるのは時期が早過ぎるという意味で申し上げたわけでありますから、一つ御了承いただきたいと思います。
  11. 井上良二

    井上委員 現実にあなたの方で、本年度の税収の動向がどうなっておる、あるいは明年度はどうなるということによって、歳出のいろいろな計数がはじき出される。あるいはまた増税、減税計数がはじき出されるのであります。いわゆる実際の作業の土台は、あなた方が握っておられるのでありますから、あなた方が、税の動向というものについては事実を一番よく把握されておる。従ってこの状態が続く以上は、当然国民の中からも相当減税の問題がやかましくなってくるということになりましょうし、もしこのまま自然増を見のがすということで放任しておきましたならば、来年度は、国会が解散されるということは当然でありますが、そうなれば、総選挙対策として、この自然増がいわゆる党利党略のためにいろいろ奪い合いに使われて、全く国民の汗の結晶が国家目的に役立ついろいろな重要な施策に使われぬということになりやすい傾向が出てくるのであります。そういう方向が打ち出されるならば、進んで大蔵当局は、積極的に減税方向へ踏み切ることが何よりも必要じゃないか、こういう意見が相当強いのであります。当然事務当局としては、国民から血税を取り立てておるということでありますならば、それが予算以上に増収されるということが本年も来年も予想される今日に、減税案を準備することは当然ではないか。それは閣議として、あるいは内閣として減税案についていろいろ検討されるのは当然でありますけれども事務当局もまた事実の動いておるこの数字によって、当然減税方向へ持って行くことが妥当であるという考えをやはり強固に持って進んでもらいたい、こう考えますが、いかがですか。
  12. 原純夫

    原政府委員 大へんごもっともなお話で、私一々おなかにこたえて伺っております。ただ先ほども申しました通り、ただいまの主題は、日本経済をどういうふうにこれから切り盛りして参るかということで、そのためには、ただいまお話にありました歳出の放漫な膨張というようなことがあっては、まずこれが一番いけないことだという考え方から、若干の余裕があっても、それは景気調節にとっておいて、締めに締めて参るのだという態勢でおるわけであります。もちろんその間に、お話し減税に充てろという議論は強力に打ち出され得るわけで、世の中にもいろいろ御意見がございますし、ただいま井上委員からも強い御所見を伺ったわけでありますが、三つのこの減税歳出増留保かというように並べての議論が、やはりとっくりと行われなければならない事態だろうと私は思っております。若干この席でこう言うのは言い過ぎかもしれませんけれども、いずれそういう議論が要るだろう、こういうように考えておる次第で、それらについて政府として十分配慮を払いました上で最終結論を出す、そういう際に、ただいま井上委員のおっしゃいましたことは、私税制担当者として十分きもに銘じて伺って、私としてもできるだけの努力はいたしたいという気持でおります。
  13. 井上良二

    井上委員 それからもう一つ主税局長に、特に事務当局に頼んでおきたい問題は、減税の問題を考えます場合、負担の公平ということがよくいわれますけれども、本年行なった減税というものは、負担公平性を非常にはき違えて実施されておる。たとえば本年の課税最低限度額は、給与所得者扶養家族四人の場合年収二十七万円が限度額になっている。これが事業所得者の場合になると二十万円くらいのところが限度額ということになっている。配当所得者になると百四十九万円ということになる。一体こういうべらぼうな限度額つけ方がどこから出てきますか。具体的に国民から質問されて私ども困っているんだが、一体どういうことでこういう差別がつけられたのか。配当所得の場合こそ、もう少し大幅にとってもいいと思うが、その方はえらい余裕的に優遇をいたしまして、そして実際自分の生活費にも食い込んで税金を払っております勤労者給与所得に対しては、非常に限度額が辛い、どういうところからそういう作業が出てきたのです。政治的な問題じゃないです。作業の問題ですから、あなた方の責任のある御答弁を願いたい。
  14. 原純夫

    原政府委員 税制で一番問題の点を御指摘いただいたわけでありますが、その点については、私どももいつも非常に大きな論点であるとして、現在もそれについて研究をし、おそらくこの問題は、将来長い間議論の対象になることであろうと思います。ただいまおあげになりました配当所得であれば、配当だけの所得を持っているんだと百四十九万円まで税金がかからない、おっしゃる通りでございます。しかるに勤労者だと、夫婦子供三人で二十七万円、事業所得者で二十万五千円というものをこえるとかかってくる、その間の不公平な関係をつかれたわけであります。これはもう御案内と思いまするが、配当法人から払われるわけでありますが、その場合に払う法人は、所得がありますと法人税を払う。その残りの中から一部を配当に、一部を留保にというふうにいたすわけであります。そして配当があると、配当所得税がかかるという仕組みになっております。  そこでいろいろ考え方がある問題でありますが、ただいま日本税制のとっております考え方は、企業という実態について考えてみよう。企業という実態について考えてみると、企業個人格好をとっていると、所得に対して所得税だけで一本でかかっていく。法人格好をとっておりますと、まず利益が出ますと、法人税がかかる、その残り配当留保も結局は株主のものになるわけでありますから、結局配当になるはずである、配当になると、配当所得税がかかる。法人形態の場合には二段になっておる。しかし税を公平にするためには、実体である企業所得にかかる税金がそろうようにということで、いわゆる法人擬制説と呼んでいるわけでありますが、そういう考え方から法人税をとられておるということは、配当を受けるそのもとで、いわば企業利益源泉で税がとられているという考え方に立って、個人配当が行きます場合は、配当控除という制度をとっております。そういう考え方からいたしますれば、ただいまの制度はおおむね公平な関係に立っているということが言えるのであります。お話し通り、実際に株を、貸し家を持ったり何かしているのと違わないセンスで持っているのが、百四十九万円まで配当をもらっても、それには所得税は一切かからないという事態が、実際のこの感覚として納得されるかどうかという点に非常に問題がございます。私ども、その点は相当問題だと思っております。これが同族会社のようなものでありますと、その関係は割合のみ込みやすいというような感じもいたしまするが、非同族の株式を単なる投資物として持つというような関係でありますと、お話しのような関係が特に強い。私どもそういう考え方から、つまりお話しのような不公平な感覚をやはり率直に持つものでありますから、その点、二十六国会でお願いいたしました特別措置法改正におきましては、それまでの配当控除の特例の五分増しをやめて、本法控除率でありました二割五分を二割に直すというふうにお願いしたような次第であります。問題は、冒頭申し上げましたように、なおそれでも解決されないで、ただいま井上委員の言われるような御議論がなお出得るような次第であるように感じます。従いまして、その点は今後なお十分研究いたしまして、善処いたして参りたい。ただし何分この法人個人との課税の調整と申しますか、公平をはかれという問題は、世界各国において、雑な言葉で申しますれば、ほんとうにてこずっておるというほどむずかしい問題でありますので、相当紆余曲折が必要なようにも思われますが、お話し通り、私どもも同感の意を多分に持っておりますので、十分含んで検討させていただきたいと思います。
  15. 井上良二

    井上委員 その点は、今後われわれ地方へ出ますと、国民に本年かような減税があったと喜んでもらうためには、この不公平な限度額の差額を追及された場合は、答弁の仕方がないんです、実際言いようがない。ですから、その点は、ぜひ今後できるだけさような不公平のない措置一つ願います。  それからいま一つ重要な問題は、どうも政府考え方は、給与所得者源泉徴収というものを非常に重要視しておりますが、この課税人員がきわめて多い関係から、この面の減税というものに対してはなはだ冷淡であります。そこで、もし政府減税案考えます場合は、この低額所得者減税——現在なおかつ独身者で、一万円以上の所得のある者は税金がとられている、あるいはまた夫婦者で、一万七、八千円の場合はとられておるというような次第にありますから、せっかく限度額を二十七万円にいたしましても、実際は二十七万円の所得を得てない低額所得者は他にたくさんある。しかもこれらの人々は、政府の米価の値上げ、あるいは運賃の引き上げ、その他諸物価の騰貴によってわずかの減税も全部相殺されておる。こういう事態が起っておりますから、特に低額所得者には大幅な減税というものをお考え願うとともに、その限度額をもっと引き上げるということを、今後税制改正を行います場合、特に御配慮願っておきたいと考える次第であります。  それから次に本案についての質問でありますが、本法によります実際の減税は、本年度どのくらいになりますか。さらに昭和三十三年度は、どのくらいの減税額になる意向を持っておるのか、それをお示しを願いたい。
  16. 原純夫

    原政府委員 今回お願いいたしておりますのは、二つ事項がありますが、一つは、輸出所得特別控除の割増しであります。それにつきまして申し上げますが、減収額は、今までの法律でどれだけの減収があり、今度のでどれだけそれがふえるかという形で申し上げますと、昭和三十二年度、今までの法律で七十六億の減収見込みでありますものが、今回の改正で三億減収がふえて七十九億になる。三十三年度は、一応の見込みでありますが、従来の法律で約八十億円の減収程度であろうと見込まれるものが、これに二十四億円の減収が加わって百四億円程度減収になるという見当をつけております。  それから第二の事項は、国民貯蓄組合のあっせんする預金の免税限度額を、二十万円から三十万円に上げるようにということでありますが、これは、平年度計算でいたしまして三億円の減収の増というふうに考えております。
  17. 井上良二

    井上委員 問題は、この三十三年度に約百億円の減収になる、いわゆる輸出業者は百億円減税による恩典を受ける、こういうことになるのでありますが、実際それによって輸出がどれだけ伸びるというお考えでございますか。別に租税の面でそういう具体的なこまかい数字をはじき出したことはない、これをやれば輸出にそれだけ恩典があるという一つの刺激剤であって、別にそれからそんなに大きな実効を期待することは考えてないというのですか。具体的に、本年二十八億二千万ドルの輸出、さらに本年は三十二億五千万ドルということをいわれておりますが、そこへ持っていくための一つのてこ入れと解釈していいのですか。
  18. 原純夫

    原政府委員 この措置によりまして輸出がどれだけふえるということは、私なかなかむずかしいと思いますが、やはり相当輸出の増進に貢献はしておるのではないか。実は本日は、井上委員御要求の資料でそれを明らかにする——明らかになるかどうかわかりませんが、輸出の累年のふえ方と輸出所得特別控除制度をどういうふうにやってきたかというものを一応用意しておるわけでありますが、それらを見ましても、数字的にこれをやったから幾らふえたというところまではなかなかむずかしい。しかしながら、やはり輸出というものは日本経済にとって一番大事なポイントであるということは、だれしも疑わないところでありますから、これを伸ばすためには、端的にいいますと、あらゆることをやらなければいかぬという気持で従来もきておると思いますし、今般の総合緊急対策というのは、特にそういう気持を一段と新たにしてやるということでありますので、先ほども申しましたように、現在あります法律ですでに相当の優遇を与えておるわけであります。その上に加えますものが、それの三割程度というようなことになっておりますけれども、しかしただいま申しましたような気持で、もう輸出にはあらゆる力を注ごう、注がなければとにかく日本経済はうまく運転していかないという判断でいたしておりますので、大へん因果関係は抽象的になると思いますが、そういう気持でやる。それでやって、効果はやはりあるものと期待しておるということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  19. 井上良二

    井上委員 たとえば、具体的に私ども一番考えますのは、輸出振興の重点は、税制改正でいろいろ恩典を考えるということは、もう一番政策としては下の下の政策です。というと、はなはだどうも言い過ぎみたいになりますけれども、問題は、やはり輸出振興の土台は、日本産業の近代化、合理化というものが何よりも総合的に組み立てられなければならぬ、そのまた裏づけには、科学なり技術なりというものが国際的に太刀打ちできる水準にまで達するか達しないかということにあるし、またその科学技術を推進するのには、それに携わる勤労者の生活がそれをなし得る生活条件にあるかないかということを考えなければなりません。同時にまた、それをつちかうところの科学技術の学問というものがどれだけ普及しておるということがやはり問題になってくる。減税をしたからといって、一朝にしてすぐ貿易が飛躍的に高まる、そういう線香花火的なものではないと思います。これが、たとえばドイツと日本商品との海外市場における競争の結果、ドイツは輸出において大幅の減税をやっておる、従ってこれに対しては日本減税しなければ対抗できない。こういう海外市場における対抗上、減税の面で日本の商品は対抗できない、高くついているのだ、このようなことなら、減税の効果も現われて、国際市場における競争に勝ち得ることができましょうが、そういう具体的な事実がどこの市場にあるかその具体的な事実がないのに、単に減税だけをやって、それが貿易が非常によくなっていくということは、軽率であろうと思う。それよりも、われわれがもっと大蔵当局に要求しておきたいのは、いわゆる国際市場において太刀打ちできるよう、わが国の貿易産業を飛躍的に高めるための国内的な生産規模の近代化、合理化、これを推進し得る科学技術の振興、それをまたつちかう勤労者の生活というものに所要の予算措置、所要の財政的裏づけというものが積極的に講じられなければならぬ。その面は至って大蔵当局は冷淡であるというか、あるいは至ってその面については財布のひもを締めておるという行き方が、従来えてしてあったわけであります。そういうことについて、もっと積極的な対策を講じる必要があると思います。これに対して、一体大蔵当局はどうお考えになっておるか。これは主税当局でなしに、政務次官からお答え願いたい。
  20. 坊秀男

    ○坊政府委員 お答え申し上げます。輸出振興をはかるためには、租税措置だけではこれは下も下のものであって、もっとほかに有効適切なる手段があるのではないか、大蔵省はこれに対して非常に冷淡だという御趣旨かと思いますが、私は、下の下ということではなくして、租税措置輸出振興に対して相当な効果があるであろうということを考えておりますが、その他の科学技術の振興、あるいは設備の合理化、近代化ということについて冷淡とおっしゃるようでございますが、三十年から三十一、三十二年というふうに、予算全体のワクから考えまして、科学技術の振興というような面に相当の経費を支出しておりまして、それが逐年予算総額に対する率というものが増加して参っておることを御承知願いたいと思います。これらの数字につきましては、私ここでただいま覚えておりませんが、もし御必要とあらば、あとで調べましてお答え申したいと思います。
  21. 井上良二

    井上委員 私、そういう抽象的な答弁では困るのです。やはり具体的に、この目的は、本年度よりも来年度はさらに輸出振興したい、そこで手っとり早く税を負けてやるという行き方だ。税を負けただけで輸出が伸びないということは、主税局長の御答弁通りです。そんなに税を負けたからということで、大幅に輸出は伸びないということは明らかです。多少は効果はないとはいいません、ありましょうが、それに大きな期待をかけるわけにいかない。そうなると、本体はやはりわが国の産業の近代化、合理化、科学技術の振興を飛躍的に進める全体的総合対策というものは、具体的にこうなっておる、だからこの一つの突っかい棒として税制もこうしてもらいたい、こうこなければいかぬ。本体はそっちなんだ。そっちの説明がきわめてずさんで、肝心の本体の活動がさっぱり用をなしていないのに、ただ減税だけやったのでは、片方で税を負けてもらいたいというのがたくさんあるのだから、そのものを犠牲にして、こっちを税を負けようとしておるのだから、そうはいきませんよ。だから、その方をあなたが説明できなければ、通商局長なり、通産大臣なりにここへ来てもらって説明をしてもらはないと、おれの方はこれだけやるから、この上で税を負けてくれればこういう効果があるということが具体的になってこなければ、これは税を負けただけの効果はありません。税の問題だけを考えると、私はこんなものに税を負けるよりも、こっちを負けてもらいたいものがある、こういわなければならぬ。だから、あなたの方は積極的に、その方面に力を入れて予算措置を講じている、財政的裏づけもいろいろ講じているということを具体的に示してもらわぬと、この結果から見ると、来年はこうなる、再来年はこうなる——私はさいぜん言う通り、海外市場において、欧米の諸国が税を負けたことによって日本商品は太刀打ちできない、だから日本の海外輸出商品に対しては税を負けてやらなければいかぬのだ、こういうことになるなら、税を中心の議論になってきますから、それは大いに負けてやってけっこうでありますが、そういう実例はない。そうすると、輸出総合対策一環としてやっているのだから、本筋はこっちにある。その本筋の力をもっと具体的に説明して、なるほどそれはやはり税もこうした方がいい、こういうところへ持っていってもらわぬと、どうも話が転倒する形になりますから、その点をもう少し委員長からもおとりなし願って、通商局の代表者を呼んでもらいたい。
  22. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいま井上委員のおっしゃる通り輸出所得に対して税を若干引き下げるということだけでは、輸出の飛躍的な増大を期待することはできないということは、私も決してこれを否定するものではございません、おっしゃる通りであります。しかしその本体の、今力説せられました科学技術の振興といったような経費につきましては、過去数年来、非常に少い予算ではございますけれども、逐年これが支出が増加して参りまして、そうして率におきましては、予算総額に対しましてこれに要する経費が飛躍的にふえて参っております。私はここで数字を持っておりませんが、その数字につきましては、もし御必要でございますれば、これを詳しく調べて、資料で出すなり、あるいはお答え申し上げる、こういうこと々申しておるのであります。
  23. 原純夫

    原政府委員 ちょっと税のことを補足して申し上げます。外国で云々という点でございますか、外国の例といたしましては、ドイツが一時これと同様なことをやっておりました。日本制度は、商社の場合は輸出額の一%、メーカーの場合は三%、プラント輸出だけ五%となっておりますが、プラント輸出分のない一%と三%の所得控除を、ドイツはやっておりました。一九五一年から五五年までやっておりました。おそらく、ドイツの輸出が御案内の通り非常に伸びて、マルクが強過ぎるというようなことをいわれるようになったせいもありましょう、一九五六年からやめておりますが、そういう事例が一つございます。それとフランスでは、国内の付加価値税、それから社会保障税といいますか、賃金税と訳したりしておりますが、それが輸出されます品物の中に幾ら入っているか、それは引きましょうというようなことをやっておりまして、この間フランが、切り下げではないということでありましたが、部分的な切り下げのようなことをやりました。あのときにその措置は廃止しておりますが、ドイツ、フランスでそういうような例がございます。私ども、このためにドイツ、フランスが安くなったから、日本は安く売るためにこれをやっているんだということになりますと、まっ正面ガットの規定に反するわけで、そういう趣旨ではないということで、むしろ商社を、あるいはメーカーを強くするんだという気持でおりますけれども、例としては外国にそういう例があるということを、補足して申し上げておきます。
  24. 山本幸一

    山本委員長 井上委員に申し上げますが、今発言がございましたように、いわゆる本体の所在を明らかにする、そのためには、坊政務次官から、ただいま予算上においては漸次高まっているという御答弁でありましたけれども予算の使い方、その効果はどこにあるのか、今後どうするのかという具体的な井上委員の御質問についての御要望、それは、直ちに通産省の方へ、適当な人の出席を求めるよう手続いたしますから、他の質問が続いてあるものなら、続行していただきたいと思います。
  25. 井上良二

    井上委員 ただいま主税局長お話し通り、問題はこれによって国際競争に打ち勝とうという、商品競争を市場においてやろうというのではない。いわゆるメーカーの実力を培養する、そうして新しい市場を開拓する、こういうことになれば非常にけっこうだ、こういう御趣旨のようでございます。そうすると、この法案による減税分年間約百億、相当大きな金でありますが、その百億もの減税分をそのまま見のがす——この減税をあなたがおっしゃるようにメーカーの生産施設の拡充、あるいはまた資本の蓄積等の具体的な用途にこれを使わなくてはならぬというその減税分による剰余所得は、そういう輸出振興をさらに一段高めますための所要経費にこれを充当することが望ましいとお考えになるならば、国民もまた、不公平な税制でありますけれども、がまんをして賛成をするとして、そういう用途を明示する必要かあるのに、それをしないのはどういうわけです。
  26. 原純夫

    原政府委員 まことに星をついた御質問でありまして、私ども全然同感であります。現在の制度になぜそれがないのかというところから、すでに問題になるようなわけでありますが、創設の際、非常に急いだ情勢でやったということも一つあると思います。しかし、おっしゃる通り、商社なりメーカーなりの力を強くしようというのならば、免税された百億が全部配当になって株主を喜ばしてしまうだけだというようなことでは、その効果はきわめて微々たるものになってしまうということでありますから、やはり減税された額は商社またはメーカーが留保して、かつその留保を最も輸出力をつけるように使ってもらうというのが、この制度の本質からいって当然のことであろうと思います。それで、実は今回その話が出ました際に、私どもとしては、その点を特に一つの要点として考えまして、現在そういうことが法律上何も書いてない、もし今まで配当にどんどん出してしまっておったとすると、それを部内に留保して力をつけるために使うだけで、今までのものもさらに生きてくるではないかというようなことを考えて今回の措置をきめました。八月の閣議決定におきましては、企業内部に相当額を留保させるように行政措置を講ずるということを決定いたしました。お話し通り、これを法律上きめるという行き方ももちろんあると思うのでありますが、実は今回も、国際収支がこれではいかぬぞということであらゆる手を尽して改善するようにという、いわばかなり急がれた作業である、しかもそういう環境でありますために、正論ならば遠慮する必要はないじゃないかという御意見も出るかと思いますが、割増しをしようというのに対して、税金の減った額を留保しなさいというのは、企業に対しては拘束がつくような格好になるもので、一時このわれわれの考え方経済界の有力な人からは、大新聞の紙上で、非常に官僚的である、よけいなおせっかいをやくというような意味の御投稿があったような次第で、実際問題として、輸出を優遇して伸ばそうというときに、何か制限するようなことが官吏側にあるというような意見がだいぶ出ました。そのために、ただいま申しましたように。法律で規定するということはこの際はやらないが、行政的にそれをやっていただくということを閣議できめて、通産その他の当局もその気持になっているわけであります。全然お話しの御趣旨の通りども感じておりますし、そういう線を今後十分生かすようにこの措置を運用していくべきだと考えている次第であります。
  27. 井上良二

    井上委員 その気持だけはよくわかりますが、気持だけでは業界は動きません。ですから問題は、やっぱり法律に規定するなり政令で規定するなりして、——この減税をいたしますのは、輸出を伸ばしていこうということでありますから、それを伸ばすために使ってもらいたい、その規定は一向差しつかえない。さらにメーカーなり業者は、これだけ窓口が拡大され、利潤がさらにまた増大され、蓄積資本になっていくわけでありますから、そういうことに使ってもらいたいということを規定することは一向差しつかえない、こう私ども考えます。ですから、具体的にさような規定を本委員会で入れます場合、政府はどうしますか。
  28. 原純夫

    原政府委員 政府の態度をその場合どうするかということについては、所管の通産省その他とも十分相談の上、確定的には御返事申し上げたいと思います。  ただなお申し上げておきたいのは、この留保をさせるというような行き方につきましては、書く場合に非常にむずかしい。また実態としても、通常の所得留保させるわけでありますから、一体どれが免税額の留保になるか、通常の所得についてはどうするかというような問題もございますし、その辺のことも十分御研究願いましてお考え願いたい。それにつきましては、また別途いろいろ私ども研究しました点は、井上委員、あるいは必要があれば委員会でもけっこうでありますが、いろいろ申し上げて参りたいと思います。お話しの点は、関係各省十分御相談いたしました上で、御返事申し上げたいと思います。
  29. 井上良二

    井上委員 次に問題は、この措置によって考ども一番重要に考えますのは、現在の国際市場における日本商品の飛躍的な輸出振興がどの程度高まるかという問題と、それからいま一つは、新しい市場をどういう方面に開拓するかという市場の開拓の問題がこれにからんでいくように思います。しかし、これは通産省でないと、大蔵省ではわかりますまいと思いますから、この問題は通産省が見えましてから質問をいたすことにいたしたいと思います。要は、せっかく百億もの減税を予想するのでありますから、それだけの効果が内と外とに現われてくることを、われわれ国民としては期待するわけでありますから、そういうような具体的な措置がやはり裏づけされることが保証されないと、この法案の成立が意義をなさないと思いますから、その点に対して十分御注意を願いたい。  なおこの法案をずっと読んでおりますと、まことにややこしくて、われわれしろうとにはよくわかりませんが、これはもう一度事務当局から、この法案の具体的な説明を地図でも書いてもろうてしてもらわぬと、とても複雑多岐にして結論を見出すことは容易ならぬ。そこで、そこへ何か大きな紙で表でも書いてもらってやっていただくか、それとも実際は、法律もは全く荒筋で書かれておりますので、これを具体的に審議してわれわれがのみ込みますためには、当然それには政令がつけられるはずでありますから、その政令を一つお出しを願いたい。そうしませんと、この法案はめんどうくさくて、ややこしくて、結論をつかむのに容易でないと思います。どっちかよくわかる審議の方法を、政府当局においては御協力願いたい。
  30. 山本幸一

    山本委員長 井上委員に申し上げますが、今通商局から杉村通商局長代理が来ておられますので、先ほどの問題点からまず答弁を求めたいと思いますが、よろしゅうございますか。——杉村政府委員
  31. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 輸出振興をはかりますためには、もちろん単に税制面で輸出所得に対して優遇措置を講ずるだけでは足りないということは、申すまでもございません。政府といたしましては、でき得る限りあらゆる施策を講じまして、輸出振興を期しておる次第でございます。輸出振興施策と申しましても、きょうやってあす効果があるということは、なかなかむずかしいわけでございますが、常にたゆまず努力を続けることが大切だという意味で、従来のいろいろやっている施策を続けて参る面もございますし、それからそういう面につきましては、直接的な面といたしましては、海外のいろいろな輸入制限運動に対しまして、市場維持の対策をはかる、あるいは積極的に海外広報宣伝を活発にするとか、あるいは輸出意匠をさらに改善するとか、その他輸出市場の調査をさらに詳密にして行くとか、そういう海外に向けての事業を将来ともさらに強力に進めて行く必要があると考えて、ジェトロその他を中心としまして、この種の事業の拡充をはかりたいと考えております。  そのほか日本輸出としまして、従来からしばしば日本人みずからの過当競争で輸出を阻害しておるということがいわれておりますが、確かにそういう面もございますので、過当競争防止のための取引秩序の整備をはかりたい。それには輸出入取引法とか、あるいは中小企業安定法というような法律的な制度の力もかりまして、輸出取引の面で過当競争ができるだけ少いようにやって行きたい。  さらに最近の傾向としましては、海外に投資をするというような形でさらに輸出を伸ばすという必要がございますので、そういう面につきまして、保険制度の充実をはかるというようなことも進めて参りたいと思います。  そのほか価格の変動が日本の商品については常にありて、これが輸出の阻害の非常な原因になっておりますので、輸出用品、あるいはその原材用品について価格の変動ができるだけないように、価格の安定策も講ずる必要があると考えて、その方面の施策も講じておる次第でございます。  また、これらの対策は、単に役所だけでできるものではございません。結局は、よいものを安く、しかも安定した形で売るという民間業者態勢も必要でございますので、こういう点に心がけまして、官民合同の形で輸出会議というものを設けておりますが、これを積極的に活用いたしまして、輸出態勢を確立して、輸出振興のために官民力を合せて進むということにいたしたいと考えております。  こういうような直接輸出に関連しました施策面のほか、経済協力という形を通じまして輸出の増進をはかることが、最近の傾向としては非常に大切であろうと考えられております。これは、日本ばかりではなく、諸外国が低位開発国の経済開発の協力をするという形で、資本財その他の輸出を進めておりますが、日本もこのままでは立ちおくれるおそれもありますので、ぜひこういうことをやりたい。ただ、これは遺憾ながら日本経済力の限度もございますので、技術協力あるいは中小企業の進出というような形を中心としまして、将来の資本財を中心とした輸出の安定した市場を求めるようにしていきたいと考えておるわけでございます。  そのほか経済外交の面につきましても、輸出拡大のために通商協定の締結、あるいは従来ありましたものの改善をはかる、あるいは在外公館との連絡を一そう緊密にするというようなことでやって参りたいと考えております。特に私たちとして一番大切と思いますことは、こういう諸般の輸出そのものの対策ももちろん重要でございますが、何と申しましても、直接輸出品を作る生産態勢の面で企業の合理化が徹底的に行われ、設備の近代化が進み、そこで諸外国の競争品に負けない優秀な製品ができるということが結局は根本でありますので、そういう点につきましては、輸出会議その他を通じまして、業者にこの点も特に認識してもらうことも必要と考えておりますが、こういう面で、御審議願っております税制上の優遇の措置が特に効果的であろうかと考えておる次第でございます。  こういう施策を講じて、われわれはできるだけの輸出の増加を期待しておるのでございますが、特に税制改正をしていただく結果幾ら輸出が伸びるかという御質問かと承わっておりますけれども税制改正の結果幾らかということは、なかなか申し上げにくいと思いますが、私らといたしましては、来年は少くとも三十一億二千万ドル程度、あるいは三十一億をこえる程度はぜひ輸出をしたいものだと考えておることを申し出げまして、御了解願いたいと思います。
  32. 井上良二

    井上委員 ただいま通商局次長の御説明では、従来政府のやってきておる通商政策に何ら積極的な新しい対策は述べられておりません。問題は、本年二十八億二千万ドルの輸出から、来年は三十一億ドルに伸ばそうということは、全く一つ見込みである、かようなことをするがゆえにこう伸びるのだという、国民に自信を与える具体的政策を打ち出されてないように伺ったのですが、それでいいですか。
  33. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 私の説明もまずかったかと思いますが、この施策によって輸出が幾ら伸びるというふうな直接的な関連は、なかなかむずかしいと思います。しかし、大体最近の輸出傾向その他から見まして、あらゆる努力を政府側も、あるいは民間側も輸出のために集中するならば、先ほど申し上げましたような程度輸出目標の達成は、そう不可能というほどでもないというふうに考えられる次第でございます。
  34. 井上良二

    井上委員 ですから、言うことがはなはだ抽象的だと申すのです。具体的に、たとえば中近東なら中近東の方面に対してはこういう手を打つ、あるいは東南アジアなら東南アジアにはこういう手を打つ、南米なら南米にはこういう手を打つ、北米からカナダはこういう手を打つ、中共にはこういうことをやりたい、それによってこうなるということでなかったら、はなはだどうもから宣伝をやっているだけで、意気込みだけはまことにけっこうでありますが、意気込みだけでは、世界相手のことだから、なかなかそうはいかない。世界は全体的に頭打ちになって、不景気になっていこうとしているから、そこへもっていって日本の商品を売り込もうというのは、なかなか容易ならぬことであろう。本年度もさらに三億ドルもよけい輸出をしようという場合には、今申したような地域に対して具体的にどうするかということが打ち出されてこなければいかぬのに、そういう点が全然打ち出されていないのじゃないか、そういう点をもっと具体的に打ち出す必要がある。今あなたは、経済協力をやって資本財を輸出すると言うておるけれども、これも、具体的になるのは容易ならぬ問題です。それからメーカーの過当競争をできるだけ規制して、取引秩序を確立するということはけっこうなことだけれども、実際それをどうやって規制するのです。法律を作るのですか。現実にわれわれは海外を回ってきて、日本商社が現地においていかに苛烈な競争をやっておるか、そのためにみずから日本商品をどんどん値下げをして、相当値打ちのあるものを、競争の結果安く売っているということを至るところで見せつけられてきておる。これを通産省は依然としてほったらかしている。具体的にどう処置するのですか、法律で処分するのですか、外国の土地において行われることだから、これを取り締まるためには、日本から相当通商官が現地に行って張り番しないといかぬが、そんなことが一体できますか、なかなかそうはいかぬでしょう。ですから、あなたももう少し自信のある話をしてもらわなければいかぬ。
  35. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 ただいま私がお答え申し上げました各種の輸出振興対策は、お話しのように地域別にこれを見ますと、その地域々々に対してそれぞれ適当な施策が重点的に適用される形になるわけでございます。幾つか例をあげて申しますと、アメリカ市場に対しましては、日本側の対策としては特に宣伝あるいは市場調査ということと、それから業者の方面におきましては、過当競争の排除というようなことが特に重要になるわけでございます。東南アジアのような地域に対しましては、経済協力態勢を進めるというような方向での技術協力、あるいは輸入の面で向うの主要産物を買って、そのかわりこちらの輸出品を向うが買えるだけの力を持てるような、通商外交上の考慮というようなことが効果的なやり方でありますので、そういうように各地各地について見ますと、それぞれの対策がそれれぞ色合いを異にして適用されることになるわけでございます。それからお尋ねのありました過当競争排除のための手段でございますが、これは、すでに輸出入取引法という法律制度がございまして、これによって、必要な場合は業者輸出に関する価格や数量の協定をし、あるいはまた輸出組合を作り、組合員の順守すべき事項として、価格や数量の過当競争を排除する協定をする、そういう道も開けて参ります。またアウトサイダーがあってこれを乱すような場合には、通産大臣からアウトサイダーを規制する命令が出せるようになっておりまして、幾つか実施の例もございます。それで、新しく法律制度を設けませんでも、この制度の運用によって目的が達成せられるわけでございます。
  36. 井上良二

    井上委員 私もっと具体的に申し上げます。たとえば中近東を私どもずっと回ってみますと、向うでは近代化への建設がどんどん進んでおります。こういうところへは、日本からトラクターとか、あるいは貨物自動車、三輪車、それからセメント、こういうものがどんどんいくのです。だから、それを、もっと積極的に推し進めるのには具体的にどうすべきか、それからそれを製造しておる会社に対してはどういう保護政策を講ずるかという具体的な問題、あるいは東南アジアについては、向うから米を買う、反対にこっちからは肥料を輸出するという問題もありましょうし、そういうように具体的に、三億ドルも輸出を伸ばすにはこうやって伸びるんだということがなければならぬ。向うはち巻で輸出振興だ、輸出振興だと言っていたら、三億ドルくらいお祭の太鼓のように伸びていくと思うておるかもしれぬが、世界からみんな売り込み競争にきておりますから、なかなか容易ならぬのです。やはりその土地々々、その地方々々、その国々のいろいろな特殊事情や産業経済、文化等の諸般の状況を十分調べられて、それに対して必要な物資を集中的に売り込んでいく、そのためにはやはり国内生産の面でも積極的に援助助長していくという、輸出中心の一貫的な政策を打ち出されてこなければならぬ。その一貫的な集中的な政策を打ち出されなければ、計画的な輸出は伸びてこないのです。今年よくてもまた来年は悪くなってきます。そういう一時的な場当り対策ではいかぬ。そこを私どもはもっとはっきりしてもらいたいと思う。
  37. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 お話しのように、確かに輸出についてはたゆまざる、しかも総合的な努力が必要なわけでございます。従いまして、まずどういう地域にどういうやり方でどんな品物を売ったらいいかということをつかむのが先決問題でございますが、これらにつきましては、海外市場調査、あるいは広報宣伝というところから始まるわけでございます。そのための組織としまして、海外貿易振興会というものがございまして、これにいろいろ補助金を交付しておりまして、そういう活動をしておるわけでございます。大体それで見当がついてきますと、業者がそれぞれ売り込みができるわけでございます。そういう場合には、結局ほかの国の商品と競争して売り込みが行われるわけで、そこで値段が問題になるわけでございます。そのためには、先ほども申しましたように、日本の製品を作るメーカーの経営が合理化されておることが必要でございますが、さらにつけ加えまして、ただいま御審議いただいておるような所得の面でも輸出についての優遇が行われるということになれば、輸出意欲もさらに増すわけでございます。そうして輸出する決心をつけた場合には、金融上の配慮も特別に講ぜられておれば、さらに輸出しやすくなるので輸出金融については特別の配慮が行われております。こういうように、輸出につきましてはずっと一貫した施策が、あるいは十分ではないかもしれませんが、それぞれ講ぜられておるわけでございまして、不十分な点につきましては、なお完備するように私どもも努力いたします。こういうような形で輸出振興することによって、目下の国際収支の危機を一日も早く切り抜けるようにしたいと考えておる次第でございます。
  38. 井上良二

    井上委員 問題は、あなたの方は輸出の数字の伸び縮み、そういう点について非常に専門的にいろいろ検討されることを中心に働かれておると思うが、その輸出品を作っておる、あるいはそれを指導助成しております通産省の生産局か何か知りませんが、そういう方面との連絡というものはあまりとられてないですね。それから、あなたみずから輸出品を作っておる工場を見にいったことがありますか。事実そういう工合に横の連絡、それから下の連絡がまことに抜けている。あなたは口では総合的々々々と言っておられるけれども、行政は総合的に行われていない、セクト主義だ。その点、あまりよそのことに干渉せぬというのが、実際の方面では非常に至るところで大きな障害になっている。だから、自動車を一つ作るにしても、鉄が要る、石炭が要る、油が要る、全部まちまちばらばら。だから安くてよいものを作ろうとしても、安くてよいものを作れぬようないろいろな規則があり、いろいろな役所があり、いろいろなものが妨害して、なかなかうまくいかないということになっておる。あなた方みずから輸出振興の旗を振る以上は、みずからいろいろな隘路と、それからいろいろな矛盾を克服して、そして実際にすみやかに振興の度合いが高まっていくような行政組織が推し進められなければならぬ。よその局課については、あまりくちばしをいれるといろいろうるさい文句を言われるというようなことから、できるだけよそのことにあまり干渉しないという行き方がどうも強いように思う。そこらは一体どうです。あなたがほんとうに輸出振興をやろうというのなら、もっとざっくばらんにそういうセクト主義を打ち破り、ほんとうに輸出一本に立て直すということでなかったら伸びませんぞ。どうですか。
  39. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 お話しのように、輸出振興は決して一通商局だけの努力でできるものではございません。通産省内部にも、それぞれ重工業局とか軽工業局とか繊維局というのがございますが、それぞれの局でも、通商局と同じようにそれぞれの所管の産業について、輸出のための努力をしてもらう必要がございますし、現にしてもらっている状態でございます。わかりやすい例をあげて申しますと、それぞれの局にはみな輸出課というものがございます。通商局だけでなしに、そういう局にも輸出課というものがございまして、そこが窓口になりまして、輸出振興のいろいろな仕事をしてもらっている状況でございます。さらに単に役所だけでなしに、各産業がそれぞれの課題として輸出振興はそれぞれの産業の一番重要な課題だということを認識してもらいまして、輸出振興に力を合せてもらう趣旨で、先ほども申しましたが、輸出会議というのを各産業別、たとえば軍機械輸出会議とか、繊維輸出会議というのを作りまして、そこではメーカーも商社も、また関係の官庁も一緒になって、輸出振興のいろいろな対策検討し、その推進をはかっておる次第でございまして、将来も決して通商局だけでなしに、また一通産省だけでなしに、政府全体あるいは業界全体の共同歩調のもとに、輸出振興をさらに積極化していきたいと考えておる次第でございます。
  40. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 井上委員質問に関連して、通産省に一つお尋ねしたいのですが、先ほどの答弁の中で、日本の商品の価格の不安定というのが非常に障害になっておると答弁になりました。私もそう思う。もう一つ重要なことは、数量についても不安定である。この二つの問題が、非常に重要な貿易振興上の障害になっているのじゃないかと思うのですが、それに対して、何らか施策をとっているようなお話がありましたが、どんな施策をとっているか。それをお伺いしたい。
  41. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 数量につきまして安定しないと、確かに一時に輸出が伸びると、粗手国の競争業界に過度の刺激を与えまして、すぐに輸入の反対運動が起るというような例がございますので、輸出振興と申しましても、決して安ければいいとか、あるいは量がふえればよいというだけでなしに、やはり価格も数量も安定した形でいくことが必要であるわけでございます。この面につきましては、先ほども御説明いたしましたが、そういう結果に陥るのは、大体日本業者がお互い同士せり合うとか、あるいは必要以上に値段を下げ、あるいは相手国の関連業者が非常な刺激を受けるほど一時に数量を増す、しかも一つの品目に集中して増すというような場合が多いのでございますから、そういう面につきまして、輸出入取引法とか、あるいは中小企業安定法とかいうような形で制度がございますが、そういう制度に乗りまして、業者が行き過ぎのないような形で、協調した形で輸出ができるようにする必要があるわけでございます。現に合板とか、あるいは綿織物というような商品につきましては、この形での安定した輸出をするような努力が続けられておるわけでございます。
  42. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 答弁は全く的がはずれておる。今のあなたの答弁は過当競争に関するもので、私のお尋ねしたいのは、今井上委員からもお話がございましたが、中近東であるとか東南アジアは、それぞれ政府もしくは政府の代行機関、公社のようなものが、年次計画に基いて、五カ年計画とか六カ年計画とか、そういう開発計画に基いて旺盛な開発が行われておる。それは一定の計画と予算によって行われておる。しこうしてこれらの諸国は、その六、七割が建設資材や新しい開発の資材なんです。そういうものは、数量も価格も安定をして、コンスタントに日本からあるいはその他の外国から供給を受けなければ、その開発計画に支障を来たす。しかも買うものは政府の代行機関だ。民間の買う雑貨品や何かは、これらの諸国の輸入数量の少い部分しか占めていない。そういう中近東とか東南アジアに今後日本輸出を大いに伸ばさなければならぬのだと思う。そうだとすれば、これらの諸国に対してどのような通商政策でいけば最も安定した輸出振興ができるかという問題が、早く回答が出てこなければならぬ。今の過当競争というような問題は非常な弊害を起しておる。あなたは輸出振興何とか法というようなことをおっしゃいましたが、在外の大公使は非常にこの問題で頭を悩ましておる。通産省や農林省へいっても処置なしといっている、こういって大公使が弱っておりますが、私の今質問しているのはその問題じゃない。数量、価格の安定というのは、今後日本がどんどん輸出を伸ばしていく、そうして東南アジア、中近東の開発に経済、技術の協力をするという場合には、根本的に問題を考え直さなければならぬ、こう思うので、これに対して通産省はどう考えるか。ヨーロッパやアメリカの貿易も大事でございましょう。しかし何といっても十五億の世界の六、七割を占めるアジアの諸国との今後の日本経済提携ということは、日本の将来のホープでもある。それに対して根本的な通商政策を打ち立てなければ、今度の百億の減税などではだめなんです。こんな膨大な金をそういう方面に使うべきではないか、こう私は思うのだが、これに対する政府の方策はどうなのか、それを私はお尋ねしたい。過当競争の問題ではありません。
  43. 杉村正一郎

    ○杉村政府委員 アジア諸国が各種の開発計画、あるいは建設計画を持っておりまして、そのために日本からの重工業製品を売り込むとすれば、非常なよい市場になるということは、お話し通りであると思います。従いまして、こういう方面に安定した輸出が出ることは、非常に望ましいわけでございます。ただ、こういう建設計画の性質上、普通の商業上の取引と違いまして丁支払いの方面でなかなかむずかしい面がありまして、簡単に申しますと、延べ払いあるいはクレジットというような形でないとなかなか話が進まないという面がございます。そういうプラント輸出につきましては、輸出入銀行を通じまして金融の措置が講じられておるわけでございますが、何分にもこういう面でも諸外国との競争が非常に激しいものでございますから、日本側がいろいろ努力いたしましても、なかなか思うにまかせないという面があろうかと思います。政府としましては、できればこういう国の開発について両方で何か話し合いができて、日本からある一定の条件経済開発に協力するというような話し合いができれば、非常にその話も乗りやすいかと思います。現にそういう話し合いができておるところもございますが、まだ全体にはそれほどではございません。将来は、できるだけそういうアジア各国の開発と日本輸出とが結びついた形でいくようになることを望んでおる次第でございます。
  44. 山本幸一

    山本委員長 先ほど井上君から御要望のありました、本法律案がどうも複雑怪奇だから図解を示せということですが、政府委員の諸君と相談いたしまして、明日ここにわかりやすい、しろうとでも最も頭に入りやすい図解を示してもらうことにいたしましたから、それを一つ御了承願いたいと思います。  午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時半から再開することにいたします。  暫時休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  45. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。委員長に差しつかえがありますので、私が委員長の職務を行います。ただし、この会議では租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び設備等輸出為替損失補償法の一部を改正する法律案、この二案件につきましては、野党側から修正動議も出される、こういう見込みもあります。従いまして、この委員会における質疑は与党の方に聞いていてもらわなければならぬのです。そこで、与党の出席が悪いので、きょうはこの二法律案の直接的な質疑はやりません。そこで直接的な関係でございません銀行局長に対する井上良二委員からの質問だけをこれからやります。井上良二君。
  46. 井上良二

    井上委員 ただいま提案されておる法案のうちにも関係はいたしますが、国民貯蓄組合法の一部改正、すなわち預貯金の課税限度額を現行二十万円から三十万円に引き上げるという改正案が出されておりますが、これは、今まで二十万円の所得税課税限度額を引き上げた成績が非常によろしい。そこでもう十万円追加すればさらに預貯金の増加が非常に効果的である、こういうことでこの改正案が出されたと考えるのですが、そうすると、昨年からことしにかけて預貯金の伸び工合というものが、地方銀行、市中銀行、あるいは特殊金融機関、または郵便貯金等においてどういう上昇を示しておるか、それを一応お示し願いたいことと、第二には、三十万円に限度額を引き上げた場合、政府が予想する預貯金の増加率はどのくらいを見込んでおるか、それを明らかにしてもらいたいと思います。
  47. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいま井上先生からのお尋ねでありますが、御承知のように貯蓄がふえましたり減ったりします場合に、どういう原因でふえるかということは、たった一つの原因だけではなく、なかなか分析しがたいのでございます。全体の経済情勢の推移、あるいは国民所得の増減、いろいろな要素が重なりまして、その全体の要因から貯蓄に対する動きが出てくる、かようなことでありまして、この前二十万円にした結果どれだけふえて、どういう効果があったかということは、なかなか把握しがたいところがございます。しかし先生も言われましたように、これからの日本経済が発展して参りますためには、輸出をうんと伸さなくちゃいかぬ。その場合に、国内の設備を合理化する、近代化するというようなことは、非常に大切だと思います。しかし、これがただ金を出す方だけでやりますと、結局最近のような国際収支の逆調というようなところの壁にぶっつけて参ります。従って、これはどうしても国内において貯蓄を大いに増強して、そういう近代化投資の額に見合う貯蓄をぜひ集める必要がある、こういうことからいって、今度の貯蓄組合法による限度額の引き上げはその一つでありますが、あの手この手で貯蓄を増強していきたい、さように思っているわけであります。  それからこの二十万円がうまくいったから三十万円にしたのかというお尋ねでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、実はこの措置による増加分が幾らということは、的確につかむことはむずかしいのでありますが、しかしこれをやったためにある程度効果があったであろうということは考えられるところであります。数字的にどうかということは、なかなかつかみ得ないのでありますが、これを出しましたのは、郵便貯金におきまして限度額の引き上げを行いました。郵便貯金は無税でございます。あれを三十万円にいたしますと、貯蓄組合法の方もやはり権衡をとって三十万円にする方が適当じゃないか、かような点から出しましたわけであります。
  48. 井上良二

    井上委員 銀行局長さんの今の御説明を伺っておると、全体的に当面わが国の一番重要な課題は、輸出振興することである、輸出振興するためには、国内産業を近代化しなければならぬ、近代化するためには相当の資本を蓄積しなければならぬ、蓄積するためには貯蓄増強を大いにやらなければいかぬ。こういう建前でございますが、そのこと自身には何も問題はないと思うし、当然のことであります。ところが、政府の最近やっておりますのは、全体的な貯蓄増強の方向と相対立し、相異なり、これを減殺する政策が打ち出されておる、政府は一体これをどうお考えになりますか。たとえて申しますならば、一番多く国民貯蓄を要求します郵便貯金あるいは銀行の普通預金というようなものがどんどん伸びなければなりませんが、それが最近政府のとっております消費者物価の引き上げをめぐりまして、なかなか容易ならぬ実情になってきておるということであります。現実に貯蓄をしようとしましても、生活に追われてなかなか貯蓄はできない。しかしその生活を圧迫するいろいろな事柄があとからあとから押し寄せてくるというこの事態を、一体政府はどう考えておりますか。たとえば鉄道運賃の値上げが行われる、消費者米価の引き上げが行われる。消費者米価の引き上げに相呼応して、パン類の引き上げが行われる、あるいはうどん類の引き上げが行われる。これら主食の引き上げに伴って生鮮食料品全体が値上りしてきておる。そこでふろ屋も値上げになる、散髪屋も値上げになる、私鉄の運賃もバスも値上げを要求してきておる。こういう国民の消費生活を取り巻く一切が値上げの状況に置かれておるのに、それらを抑止する積極的な対策を何ら打ち出さずに、一方に貯蓄増強を必要とし、あるいはそのために少しでも役立つような政策をとろうとする、これは矛盾もはなはだしいじゃありませんか。こういうやり方をしていて、政府はどうお考えですか、大蔵政務次官、どうお考えになっておりますか。これをいいと思っているのか。一方でこんな法律を出して、片方では値上げをして貯蓄をできぬようにしてしまう、そういうむちゃなやり方がありますか。
  49. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいま井上委員の列挙せられました消費者米価の値上げとか、あるいは鉄道運賃の値上げといったようなものを一つ一つとってみますと、これは、あるいはおっしゃる通りの性質を持ったものでありましょう。しかしながら、今度の消費者米価にいたしましても、あるいは国鉄運賃にいたしましても、上げました幅というものはきわめて少いものでございまして、われわれの生活で十分吸収し得るということを考えて上げたのでありまして、これを別々に考えますと、そういう性質を持っておるかと思いますけれども、全体の経済の総合性、あるいは財政の総合性ということから考えてみますと、これは、やはりそれをあえてやることによって経済政策のバランスがとれて、経済なり財政なりの安定と申しますか、そういう方向を目指したものでありまして、必ずしもこれが貯蓄全体から見まして、増強を阻害することになろうとは考えないでございます。
  50. 井上良二

    井上委員 私は、部分的に言うのではないのです。やはり総合的な政策一環として考えなければなりませんから言うのですが、貯蓄の増強、あるいは輸出振興をやるためには、総合的な施策を進めなければいかぬ、輸出振興にしても、一番重要な問題は安くてよい品を作るということです。安くてよい品を作るもとは何ですか、安い原料が必要であるとともに、安い精巧な技術が必要である。その技術は一体だれが持っているのです、結局働く大衆じゃありませんか。働く大衆の生活を脅かしてベースアップをしなければいかぬような情勢に追い込んで、そして安いよい品を作れといっても、安いよい品ができぬようなことをしておいて、それで輸出増強や貯蓄増強や、何ということを言うのです。はなはだしく方向が変っているじゃありませんか。全体的に貯蓄を進め、輸出を進め、日本の国富を高めていこうというのには、やはり国民生活を脅かさないような政策をまずとることが第一番です。そして物価を安定し、貨幣価値を高めるということですが、物価を安定し、貨幣価値を高める政策をとらんで、物価を暴騰させ、貨幣を乱発して貨幣価値を下げて、国際収支を赤字にして、それで輸出振興じゃ、貯蓄の増強じゃと言うたとて、およそ国民をばかにしたやり方じゃありませんか、そう思いませんか。
  51. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいま井上先生のお話しの、貯蓄を増強いたしますためには、物価の安定がまず第一である、これはもう基本的な原則であります。ただ物価とそれから個別の価格の問題でございますが、物価全体は、経済を引き締めることによって、これは消費者物価と卸売物価と分れますけれども、一般的な物価の状況は、今年の春ごろからずっと下り始めまして、最近横ばい程度になっております。なお全都市の勤労者世帯につきまして、これは統計局の調べでございますが、家計収支の実績を調べましても、家計の貯金というのは相当ふえて参っております。一方これを銀行その他の金融機関の方で見ますと、なるほど預金は非常に減っておりますが、その減った原因というのは、みんな営業性預金と申しますか、商売のために回転する資金が、金融引き締めという一つ政策のために、預金を引き出して減ったということでございまして、個人の貯蓄性預金というのは現実に伸びているということでございますので、ほんとうの意味での個人的な長期の貯蓄は、現在でも相当好調であるというふうに考えております。
  52. 井上良二

    井上委員 輸出増強のためには、設備の近代化、合理化をはからなければならぬ、このために相当の資本を必要とする。特にそういったことを、神武以来の好景気であって、この際積極的に生産規模を拡大し、輸出を大幅に振興する必要があるということで、第二十六国会の通常予算ではそういう建前で出発した。そして一般民間は、この政府政策に協力して積極的に生産規模を拡大し、設備を更新するために必要な投資をどんどん始めた。ところがそれが過当投資であるとして、それを中止せしめた、あるいはまた繰り延べせしめた、つまり金融引き締めによって、そういう投資を一時見合わせろということになった。せっかく意気込んで設備の近代化、合理化、規模の拡大をはかろうとしておったのが、政府の金融引き締めでできなくなった。そういう生産規模全体を萎縮させる状態に置いておいて、それで近代化だ、合理化だ、規模の拡大だ、輸出振興だというて、一体やれますか。政府の金融引き締めのあらしの中に立った市中銀行、地方銀行、特殊銀行は、それぞれ自己資本を上回った貸付をどんどん始めておる、お得意先に迷惑をかけちゃいかぬ、お得意先に非常な打撃を与えちゃならぬとして、やむなく不当な貸し出しをやった。これに対してあなたは、十一月二日付で、銀行経営に対する警告を発している、これらは全く一貫した政策じゃないか。一体どういうことですか。積極的にやれというのか、やるなというのか、一体どういうことか。積極的にやれ、資金も貸してやる、金融もつけてやると打ち出して門出をさせて、工場の施設を近代化、合理化するためにどんどん始めた。そうしたらそういうのには金を貸さぬ、過当投資は相ならぬ、こういうて金融を引き締める。ところがせっかく設備の拡充に投資をいたしておりました銀行は、そのまま打ち切られたのでは元も子もなくなるものですから、そこで無理とは知りながら、いわゆるオーバー・ローン的な貸し出しをやっておる。今度はあなたの方が、それはいかぬ、こう出た。一体どっちをやったらいいのか、どうしたらいいのか、そういうむちゃな行き方があるか。初めからそれならそれで、あなたの言う通りオーバー・ローンをやっちゃいかぬということでいけばいい一体どういうことです。民間市中の者はどうしたらいい一貫性がないじゃないか。そこをもっとわかりよく説明して下いさ。
  53. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 先ほども申し上げましたように、日本経済を発展させますためには、輸出が非常に大事だ、そこでその輸出を維持していくためには、やはり近代化、合理化のための投資が必要であるこることは異論がございません。これは方向として、ぜひそうしなければいかぬと思うのであります。ところが日本のような国におきましては、そういうことで生産規模を拡大いたしますと、それに伴ってどうしても輸入がふえて参ります。従って国際収支のバランスする程度に適正成長率を押えて、あまり波動なくそういう近代化投資等をやっていくことが必要であろうと思います。ところが一昨年、昨年と続きまして、経済成長率が非常に高い成長率になりまして、ことに昨年の暮れ以来、異常なほど国際収支に逆超を見ることになりましたので、ここで国際収支の壁にぶっつけてしまいますと、日本経済はここで破綻を来たすということでございますので、正しい安定的な成長の軌道の上に戻そうということで、引き締め政策をやったわけでございます。その場合に、従来の惰性があってなかなか引き締まらなかったという面があることは、お話しのありました通りでございます。銀行にも多少行き過ぎがあったと思います。そういう意味で、もう一ぺん反省しようじゃないかということで、ちょっときつい表現でございましたが、私はああいう通知を出したわけであります。
  54. 井上良二

    井上委員 あなたの今の説明を聞いていると、御無理ごもっともな説明のように聞えるが、本年の春の予算審議の出発点において、すでに輸出は大体二十八億ドルを目標とするということで出発をいたし、輸入は三十二、三億ドル、初めから三、四億ドルの赤字を覚悟しているのじゃないか、そういうことではないのですか。
  55. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 あの当時の関係は、私は実は直接に携わっておりませんでしたけれども、一応ことしの一月でございましたか、関係各省が集まりまして見積った数字は、今おっしゃったように二十八億の輸出、三十二億の輸入、大体あれでバランスするだろうというのが見通しであったわけであります。それが国際情勢、ことにスエズ以来の情勢が相当変ってきたために、われわれの予想がかなり狂ってきたのではないかと思います。
  56. 井上良二

    井上委員 そこで問題は、初めから今お話しのありましたように四億なり三億の赤字が予想されている。もちろん外貨が、余裕金がございましたから、これを食いつぶしてもいいというつもりで出発したのかわかりませんが、それは、最初計画を立てるときに予想されることなのであって、それだからといって、途中でにわかに大幅な金融引き締めをやる、その結果が非常な影響を与えているということになってきている。ですから、問題は、政府施策が、常に国策がおもむく大方針をいつもがたがたゆすぶり倒して、少しも安定的な上に立っていないということをわれわれは非常に遺憾に存じます。そんなことで、春の間は窓口をどんどん広げてやれ、もう夏になったら窓口を広げることは相ならぬ、窓口を広げると金も貸さぬ、こういうようなことをやられたのでは、実際どうにもこうにもならぬ。しかもあなたが、銀行経営に対してきびしい警告を発しているのですが、これは一体どういうことからきたのですか、このままでおいておけば、金融原は危ないと見たのですか。
  57. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 あとの通牒のお話でございますが、これは、このままでほうっておったら危ないということで出したのではございません。むしろ経済を健全化していくと同時に、金融機関本来のあり方、つまり市中金融機関というものは一応商業金融機関である。あまり長期の固定資産を持つというようなことはやはり困るのではないか、現実を見ると、そういう金が相当出ている。たとえばオーバー・ローンの問題にしてもそうでございます。これは、一挙に全部是正しろと言いますと、非常に混乱が起きるから、わかり切ったことであるけれども、もう一ぺん振り返って、逐次そういうまっとうな銀行経営に返るようにしようじゃないかという意味で、通牒を出したわけでございます。  それから第一の点の、ことしの一月ごろに三十二億の輸入を見ておった、そのときは保有外貨を食いつぶしてもいいじゃないかという腹であれをきめたのかというお話でございますが、私の聞いておりますところでは、そうではございませんで、大体あんなところで落ちつくのではないかというところで、関係の各省が数字を突き合せておきめになったのと承知しております。
  58. 井上良二

    井上委員 あなたのお出しになりました銀行資産構成の改善を目的とする通達は、これは一片の警告通達にすぎないのであって、相手方の銀行がこれを守ろうと守るまいと、それは御勝手、こういうのですか。それとも、もしこの通達を良心的に受け入れずに、また警告を聞かずに、依然としてオーバー・ローンを続け、資産構成を不健全な方向に運営しておる銀行に対しては、今後日本銀行からの融資も相当手心を加えるといったくらいの腹を持っておやりになったのですか、どうですか。
  59. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、これを単なる一片の紙切れとして通知しておるわけでございません。私どもも、御承知のようにときどき銀行検査をやります。銀行検査をいたしまして、いろいろ調べました結果、これが直っていないということでありますれば、厳重な警告を発していくということをいたします。また日本銀行といたしましては、すでにそういう意味で、オーバー・ローンもなるべく解消させるとか、そういったあの通牒と同じような意味で、各金融機関の窓口に指導を加えていっているという状況でありまして、今後ああいう方向にだんだんと進めていくにつきましては、日本銀行と協力いたしまして、私の方の検査もあわせまして次第にああいう方に持っていきたい。ただこれにはかなり年限がかかるところもございます。オーバー・ローンにつきましても、現在の状態を一挙に改善して、あそこにありますように八〇%くらいにしろといいましても、もしそれをやらせますと、経済界に非常な混乱が起きることも考えられます。その辺は、実情に適したように徐々にやっていきたい、かように考えております。
  60. 井上良二

    井上委員 特にこの通達の中で、今お話しのオーバー・ローンの問題は、徐々に解消を願うように協力を願わなければならぬと思いますが、特にこのうちで私ども問題にしなければなりませんのは、両建、歩積みの問題です。これは、この委員会でも先般来たびたび問題になっておる問題です。ところが今度またこれがあなたの方の通達となって現われておるのです。これはいつになったら解消できましょうか。両建、歩積みの問題で、融資を受ける者は非常な迷惑をしておる。これはたびたびこの委員会で問題になっておって、少しもそれが改まっておらぬ。その証拠には、本日再びこの通達が出されておる。一体銀行検査官は何をしておるのです、改まらなければ、一ぺん大蔵委員会から検査に行きましょうか。あなたの方の検査官ではちっとも改善された何がない、一体どうしているのです。
  61. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは、全然改善されていないのではございませんで、私の方も方々の検査をしておりますが、その際に両建、歩積みというものを発見いたしました場合には、やかましく言って改善方を要望し、またあとの報告で、改善されたかどうかということを常時目を光らせております。なおこの問題あるいは特利の問題というようなものが若干出て参っておりますので、各府県ごとに金融機関の懇談会を設けさせまして、そこでいろいろ事例なども持ち出して、具体的にはちょっと話ができませんけれども、各金融機関の自粛の申し合せをするというようなこともやっております。検査の際に若干発見されておりますが、それに対しては厳重に警告を発しております。
  62. 井上良二

    井上委員 その警告を発して改善がされておりますのか、それからいま一つは、集中融資の問題です、集中融資というものも、この委員会では相当問題になっております。中小企業の金融等について非常にやかましい問題がありまして、市中銀行等が主として集中融資をやっておるということから、たびたびこの委員会でも政府に注意を喚起しておる、それが少しも改まらぬ、本日再びこの通達になって現われている。これは一体どういうことです。
  63. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 集中融資の件でございますが、これは通牒にも書きましたように、銀行経営の立場からいいましても、大きなものに集中して融資することは経理上安全でないという面もございますし、なるべくそれは直していきたいと考えております。従って、そういう通牒になったわけでございます。これも、こういう時代に一挙に強制力を用いて、これはいかぬというようなことを言いますと、やはり経済界に相当混乱を来たしますので、そういうことで、徐々にやはりそういう精神でやってもらいたいということを申し上げ、ておるわけでございます。
  64. 井上良二

    井上委員 一方はですね、市中銀行は公益性を持っておるといえども、営利事業ですね。営利事業に対しては、相当の公益性的な規制を加えていただかぬとなかなか目的が達せられないのじゃありませんか。ましてただいま問題にしております両建、歩積みの問題等は、現に担保をとったり保証人を入れて、この人なら融資してもいいということで融資をしておるのでしょう、その上に両建をやらせたり歩積みをやらせたりすることはもってのほかですよ、そんなことは違法ですよ。その違法を、自粛願いたいというお上品な言葉で、あなたはどう思いますか。それは不確実な、担保もない、保証人も、銀行が信用するだけの保証人もない。しかし火のつくような金融の申し込みであるから、この人に対しては特別に融資をしなければならぬ、そういう場合の特別な緊急やむを得ない事態に即応して、歩積みやあるいは両建をやるなら、それはわれわれもその事態について、そこまでやぶさかではありません。しかし少くとも私どもの調べによりますと、ほとんど銀行が信用のできる保証人もいるし、そしてそれに相当する担保をとってでなければ、融資も認められません。その上にこういうことをされたのでは、たまったもんじゃない、借りた金が用をなさないという実情になってしまうのです。せっかく政府が融資をし、いろいろ手厚い何をしておるのにだね、そんなことをされてはたまったもんじゃありませんよ。それをあなたの方の通達で、自粛を願いたい、御協力を願いたいということぐらいのことで改まりますか。これはもう弱い者いじめだね。金融業務に対してもっと強い行政力を発揮しなければいかぬじゃありませんか。
  65. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 おっしゃる通りに、歩積み、両建というのは、はなはだ好ましくないといいますか、ずいぶんいけないやり方でありまして、これは従来もしばしば警告を発し、また検査の都度発見して、きびしく注意をいたしております。ただ現実に、それがだいぶ改善はしてきたようでありますけれども、しかしまだ残っておるところもあるようでございますから、これは、常時金融機関としては、そういうことはいけないのだということを頭に入れて自粛せい、もちろん検査等におきまして発見した場合には、きわめて強硬に、その不当なることを、こちらとしては検査の結果示達書において要求いたしております。
  66. 井上良二

    井上委員 ちょっと申し上げておきますが、あなた方が御交際されておりますいわゆる都市の有力銀行では、これら両建とか歩積みとかは、そう問題はありますまい。また地方の有名銀行についても、そんなことはあまりないことであります。しかしわれわれが一番よう心配するのは、それら都市銀行も相手にされぬ、地方の有力銀行にも相手にされぬいわゆる相互銀行、あるいは信用金庫といいますか、そういう庶民を対象にしておる特殊銀行、金融機関は、この制度が非常に多い。たまにというわけではないのです、片っ端から、軒なみですよ。ほとんど全部です。従って、これは非常にやかましい問題になっている。だから、この点に対してももう少し厳重な手入れを願いたい。もしさような不当な貸付をやっておる金融機関がある場合には、政府の方で融資をとめるとか、何とか間接的な制裁を加える措置を講じなければ、もうあなた方の銀行行政にまかしておけ得なくなりますから、そうなれば、当然その特殊銀行に関係する法律改正しなければならぬ。改正して防ぐよりしょうがなくなる。どうですか、そういうことでもわれわれは考えざるを得ないのですが、あなたは、自分の部下の検査官を使って是正できますか。
  67. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは、検査をやりますつど発見しております。それは事実でございますので、厳重に注意はいたしておりますが、ただ両建の中には、なかなかむずかしいものがございまして、貸し出しをしますと、銀行が要求するのではないのですけれども、今すぐ金が要らぬから、ある程度金融機関に預金をしておこうと、むしろ借り手の方の発意のものもございます。しかし、それにしてもほどほどでございまして、あまり大きな額を歩積みとか両建とかという格好でとるということは、これは公共機関としての金融機関の自覚が足らぬということでございますから、これはもちろん厳重に注意しなくちゃいかぬと思います。  なお、法的規制を加えるかどうかでございますが、これは、やはり金融人がそういう公共性を十分に認識するということがまず第一でありまして、私どもも相互銀行の方々、信用金庫の方々ともいろいろおつき合いをいたしておりますけれども、そのつどそういう意味で、もう少し金融というものをよく考えてやってくれということをお願いしておるわけであります。
  68. 春日一幸

    ○春日委員 関連して、一つ具体的な問題をお伺いしたいと思います。  今井上委員から触れられておる問題ですが、この相互銀行、信用金庫等の一件貸し出し限度額は、銀行局長通達で一千万円をこえることはいけないという通達が出されておると承知しておりますが、そこでお伺いいたしたいことは、中小企業金融公庫から代理貸しをする分、これは限度内に入るのか、あるいはその限度の外に認められておるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  69. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 一応現在の建前といたしましては、限度外と申しますか、一千万円の限度がありますけれども、代理の分は別に見てよろしいということになっておるのです。しかしこれは、実際どういう基準で運用するかということは、中小企業公庫にまかしておるのです。そちらの方で、その限度内の方がいいということでありますれば、そうしても間違いではございません。しかしわれわれから出しました通達では、限度外といいますか、一千万円をこえてもよろしいという建前になっております。
  70. 春日一幸

    ○春日委員 それは、ちょっと実情とは違うのではないかと思います。われわれが現実にいろいろ陳情を受けたところによりますと、現在では、やはり少い資金量をもって多くに均霑せしめるという考え方から、一千万円の限度内に入れられておる、こういう工合に聞いておりますが、御答弁は間違いありませんか。  それからもう一つは、中小企業金融公庫というものは、一般銀行を指導するとかなんとかする権限というものを持っておらないと思います。従いまして、その限度内にきめるかきめないかは、大蔵省銀行局において行政指導の立場から決定さるべき問題で、そういうものを外にするか内にするか、そんなことは公庫の権限としてないと思うし、かつまた、銀行局長答弁のごとく、それは限度外に見るということならば、それに対して公庫が自主裁量をしておるということならば、これは方針がまちまちであってはなはだ困る問題だろうと思うのでありますが、この点はどういうことになっておるのか、もう一ぺん明確に御答弁を願いたい。
  71. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまの私の答弁がはなはだわかりにくかったと思いますが、信用金庫及び相互銀行に対しては一千万円の限度があるが、中小公庫からの代理貸しの場合には、それをこえてもやむを得ないということになっております。  それから、中小公庫の方には、やはり限度一千万円ということにいたしております。従いまして、今の通達でいきますれば、両方合せて一千万円こえても差しつかえはないのでございますが、ただ、先生がただいま仰せられましたように、中小企業金融公庫としては、その本来の使命にかんがみて、できるだけたくさんの人に金を回したい、そのためには、やはり限度内というくらいのところで大衆の金融を見る方がいいのではないか、こういう方針で今動かしておられるようであります。
  72. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、大蔵省の通達と、それから公庫の審査基準というものとは相異なる立場にあるのでありますか、いかがでありますか。
  73. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 私どもが向うに申し上げているのは、一応の基準でございますが、その範囲内におきましてどうするかということは、一切公庫にまかせております。要するにこちらの方針だけは示しますが、それをこえない以内でどうするかということは、公庫の総裁がお考えになることだと思います。
  74. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっとこれはわからないと思うのです。たとえば相互銀行と信用金庫に対して、一件貸し出し一千万円をこえることを得ずという御通達で、しかも中小企業金融公庫の資金を代理貸しする場合は、この制限に加えない、こういう御通達ならば、これらの金融機関、相互銀行なり信用金庫なりは、その御通達に基いてその貸し出しを実行していかなければならぬ、そうではありませんか。それだのに、あなたの御答弁によりますと、そういう通達を出しているけれども、信用金庫が、その実際の運営は、中小企業金融公庫の実際的な運営にゆだねておるということになる。そうすると、その通達は、中小企業金融公庫が同意する場合だけその効力を奏するという形になるのでありますか、いかがでありますか。
  75. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 どうも私の説明が下手で、まことに申しわけございませんが、信用金庫と相互銀行に対しましては、限度が一千万円ということになっているけれども、中小公庫からの代理貸しを受ける場合には、その一千万円のワクをこえても差しつかえない、こういうことになっております。中小公庫に対しましては、別に指示をするわけではございません。公庫の総裁におまかせしているわけであります。その際に公庫の方で、やはり自分のところの金は小口の金にして、できるだけ多くの人に貸したいということでございますので、現在まで、信用金庫、相互銀行からの貸し出しと合せて一千万円にならないような額の貸し出しをやっていく、こういう御方針で中小企業公庫は今日まできておるわけでございます。
  76. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、これは僕の判断が間違っておるかどうか知りませんが、中小企業金融公庫の資金源というものは、これはことごとく財政投融資でありますから、国家資金なんですよ。金融行政は、本来これは大蔵省一本でやるべきものなんです。その資金源が、これは一般預金によらざるところの国家資金であるんだから、いわんやその運営は、全的責任が大蔵省にあるわけなんです。指導行政は一本であるべきなんですよ。今の御答弁によると、そういうような通達を出しておいて、その通達に反するような実際の運営が行われるわけなんです。それは、中小企業金融公庫総裁によって、その通達に反するような、あるいはそれと現実に異なる執行がなされておるわけなんです。そうすると、公庫の総裁の行政指導というものも、これは認めておるのでありますか。認めておるとするならば、銀行法の中では、大蔵省がその行政指導を通じてそれぞれの勧告を行なったり、通達を出すことが認められておるんだが、公庫法の中においては、そういうようなことは条文の中にありません。一体いかなる根拠によって大蔵省の銀行局長の通達と相異なる執行を公庫総裁にゆだねておるのか、その法的根拠をお伺いいたします。
  77. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまの公庫のやり方でございますが、これは戦後できましたいろいろな政府機関におきまして、あまりに政府が干渉することをしないで、まあ細部にわたるものにつきましてはおまかせをするというのが、大体の方針でございました。中小企業金融公庫におきましても、融資基準というものを公庫でお作りになりまして、それでやっておられます。今申し上げましたのは代理貸しの問題でございますが、直接貸し方は、これは、やはり公庫としては一千万円でやっております。代理貸しがあります場合に、それについて限度を設けておる、そういうことであります。
  78. 春日一幸

    ○春日委員 これは公庫の方針によって、たとえば公庫の総裁が一千万円の限度内でおさめようと思えば、公庫の金を三百万円貸そうと思うときには、相互銀行なり信用金庫なりの独自の商業資金、そういうものを七百万円に押えなければならぬという、自動的な制限をもたらしてくるのです。というのは、一般金融に対して、公庫の総裁の意思が、代理貸しを行う場合に、相互銀行並びに信用金庫自体の貸し出しマキシマムが、あなたは一千万円という通達を出したにかかわらず、その場合には五百万円になったり、三百万円になったり、あるいは限度額一千万円の貸し出しの場合は、一銭も貸すことができぬという、こういう拘束力を持ってくるのですよ。そういうことが許されるかということなんです。要するに銀行局長は、一件について一千万円貸してもよろしい、それから公庫の金を代理貸しする場合は、その限度額をこえてもよろしい、こういう通達を出しておるんだが、一方公庫の方は、それを一千万円の限度内に押えるという方針だとするならば、一件一千万円貸した場合は、相互銀行なりあるいは信用金庫なりが一銭も貸すことはできぬ、貸してはならぬという結果になっておる。一般銀行業務が公庫の総裁によってそういうような制限、規制を受けるということがあり得るかというのだ。あり得るならば、その法律の根拠はどの法律の何条にあるか、これを私は聞いておる。
  79. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 この点につきましては、別に公庫の総裁が一般貸し出しを規制するということではないのでございまして、結果においてそういうことになるかもしれませんけれども、貸し出しを審査いたします場合に、一般的にいわれておりますところは一千万円以下、あるいは使用人三百人以下、これが中小企業だ、そういうわけでやっておるのであります。
  80. 春日一幸

    ○春日委員 僕は、非常に熱心に局長の職責を勉強中のあなたに、これ以上申し上げようとは思いませんが、坊政務次官は、この質疑応答を聞いていかに考えておられますか。たとえば銀行局の通達と、それからこの公庫の実際運営を通じての結果とが相異なる事態が、現実に予測されるわけなんです。そういう事柄が許されていいかどうか、これは現実の問題といたしまして重要な問題だと思う。たとえば自己資金を信用金庫なり相互銀行が一千万円までは貸し得るという、貸してよろしい、こういうことで通達が出ておるにかかわらず、その代理貸しを行う場合は別だという結果になるわけなんです。しかも、その結果になるということは、大蔵省も金融公庫も同じ理解の上でそういう執行がなされるならば、お互いの観点の相違であって論議の余地はない。けれども大蔵省自体は、この金額の外にはみ出てもよろしい、こういう解釈で通達を出しておいて、そうして公庫がそれと相反する、はみ出してはいけないという、そういう執行をやっておる。こういう事態をそのままほうっておいてもいいと思うか。そういうことを、政府機関はいかにお考えになりますか。意見の調整、それから現実の執行の面を通じて何とか意見を統一して、そういう相反する、矛盾するような点を一つのものにまとめるような必要はないと考えられるか、坊政務次官、いかがでありますか。
  81. 坊秀男

    ○坊政府委員 ただいまの御質問でございますが、それぞれの借りる方の立場考えますと、大体中小企業というような人々に、相互銀行にいたしましても中小企業金融公庫にいたしましても、そういう方々を対象にして融資をする、こういうことになっておりまして、そういった場合に借りる方の側、すなわち中小企業の方々、大体これはできるだけたくさんの方々にお貸しするというので、一件当り一千万円というような限度で、そのあたりが妥当であるということできめておる。借りる方の立場から申しますと、いろいろ通達もありまして、春日委員御指摘の点もありましょうが、まあ一千万円あたりが——これはまた変えるということはあり得ると思いますけれども現状におきましては、そのあたりが妥当でないか、かように今考える次第でございます。
  82. 春日一幸

    ○春日委員 大体それは、私の質問に答えていないですよ。坊君は、やはり大蔵委員会も欠席がちだったものだから、政務次官になっても、とんとその辺の真相をわきまえていない。私の言うことは、そういうことではないのですよ。相互銀行や信用金庫が自分の資金をもって貸し出しを行う場合、一千万円までは同一人格を対象として授信行為を行うことができるのです。そこで新しく今度公庫の金を代理貸しを行う場合は、大蔵省は、一千万円の限度額をはみ出して貸付を行なってもいい、こういう通達を出しておる、こういう理解の上に立って監督をしておる。ところが公庫の総裁は、そういう政府の見解と相反した執行をやっておる。どういうことかというと、代理貸しをやってもらうその貸付を、一千万円の限度内でなければならぬという執行をやっておる。だとすると、極端な例を言うならば、公庫の金の一千万円の代理貸しをなさんとする場合は、自己資本独自の貸付を一銭もすることあたわず、こういう結果になってくるというのです。いいですか、そこは非常に矛盾があるということ。それから大蔵省の方針と相反するような運営を公庫に許しておいて、ここに何ら支障を感じないか、こういうことなんです。たとえば国民も、それからそれぞれの相互銀行も、信用金庫も、大蔵省から了解を得ておることと、公庫がそれぞれ行うことと相異なるということであっては、一体いずれを信じ、いずれを目標にして事務を運営していってよいのか、これはわからぬじゃないか。だから、わからぬとするならば、これをわかるようにしてやる必要はないと坊君はお考えになるか、この調整を行う必要ありとお考えになるかどうか、この点を政務次官にお伺いしたいのであります。
  83. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 私の説明も下手で、なかなか御了解を得ないのでありますが、例をもって申し上げますと、通達の方は、信用金庫と相互銀行に出ております。そこで相互銀行、信用金庫あたりが、すでに公庫から一千万円借りている企業にさらに一千万円出す、これは差しつかえないわけであります。ところが中小公庫の方は、代理貸しの場合には、まず一千万で限って、広く金融をした方がいいというお考えで、もし相互銀行、信用金庫の貸し出しを受けているものがあれば、それを含めて一千万円にした方がいいんじゃないか、こういうことを融資基準でおきめになっております。これは公庫内部の基準でございますが、先般来春日先生からそういう話がございましたので、実は中小公庫の方には何べんもお話しして、意思の統一をはかっておるようなわけであります。
  84. 春日一幸

    ○春日委員 私は、これは心を開いて聞いてもらいたい。私は、何も神経質な立法論をやっているわけではない。ここからいろいろな問題が派生してくるのです。というのは、たとえば公庫の言うようなやり方で貸し出しの規制を行わしめるとどういうことになるかというと、まず相互銀行、信用金庫等にして見れば、自己資金的な性格が非常に強くなってくるわけなんです。実際の資金源はお国の金である公庫の金でありながら、当然自分で貸し出し得る一千万冊の限度内においてのみ貸し得るという形になると、これは要するに国家的性格というか、政策的な性格というか、そういうものに乏しくなってくる。自己資金的な性格が非常に強くなってくる。その結果、問題はどういう工合に派生してくるかというと、やっぱり債権確保の道を講ずるとかいろいろなことで、公庫の代理貸しをやった貸し出し分に対しても今、井上委員が指摘されたような歩積みや両建が行われてくる。もってのほかなんです。それはあなた、今頭を振っておるけれども、実情を御存じない。先般の委員会において、東京、大阪、名古屋等の中小企業地帯において、信用金庫、相互銀行自体が代理貸しを行なった、その代理貸しの中において、歩積み、もしくは両建に類するような取扱いを金融機関においてなされているものの実態調査を行う、こういうことになっている。だから、これは調べてみればすぐわかる。そういうような影響を持ってくると思う。これは政策金融機関として、またその資金も純然たる国家の財政資金、政策資金なんだから、従って相互銀行や信用金庫がみずからの商業ベースで貸し付けておりまする、また貸し付けの制限を受けておる限度額の外にこれを置くべしという大蔵省の理論は、明らかに私は正しいと思う。だから、そういうようなやり方にこの公庫の取扱い方を指導して、是正せしめるの必要が私はあると思う。少くとも大蔵省はいいと言っていることを、公庫自体が悪いと言っておったら、一体国民は、そしてそれらの金融機関は、いずれが正しいと判断し、いずれの指令に従うべきでありますか、現実の問題として困るでありましょう。こういうような現地における混乱を避けることのために、この問題は、少くとも公庫の取扱いも、それから政府の指導方針も同一のものでなければならぬ。相異なるものが同一の事態において行われるということは許されてはならぬ。幾ら政務次官、名前が坊だからといって、ぼうっとしておって、こんな事態を見のがしておってもらってはいかぬと考えますから……、(「政務次官はぼうっとしてはおらぬぞ、取り消せ」と呼ぶ者あり)この問題は、慎重に御検討いただきまして、明日あるいは明後日の本委員会において、公庫との間に調整された意見、それから今後の取扱い方針、これを一つあらためて銀行局長から御答弁を伺いたいと思います。  それからもう一つお願いをしておくのでありますが、日本不動産銀行がたしかこの九月一日からその業務を開始したように聞いております。数カ月経過いたしましたその運営が、どういう工合に行われておるのであるか、現状はいかがであるか、これは一つ金融情勢全般の問題として、特殊の性格を持っておりまするこの金融機関の実情を知りたいと考えますので、一つ委員長において、明日もしくは明後日の委員会にこの日本不動産銀行の責任者を本委員会にお呼び願いまして、われわれの知らんとするところを述べてもらうようにお取り計らいを願いたい、このことをお願い申し上げたいと思います。
  85. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 春日君の要望の通りに取り計らいます。     〔「理事会々々々」と呼ぶ者あり〕
  86. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 要望の通り取り計らうというのは、手続としては理事会を開くということも含んでおりますから、御了承願います。  有馬君。
  87. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あとから銀行局長にお伺いしますが、最初にきのうお話をしておきました余剰農産物の問題につきまして、政務次官の方からお話をいただきたいと思うのですが、岸総理が帰られて、この問題については大蔵、農林等関係各省においていろいろ御検討をいただいておることを知っております。問題は、現在円資金の使い方、それからそのワクをどの程度にするかというようなことで、相当交渉が暗礁に乗り上げておるというふうに聞いておりますが、現在までの交渉の経過、それから今後の見通し、そういった点についてお話をいただきたいと存じます。
  88. 坊秀男

    ○坊政府委員 余剰農産物につきましては、ただいま四千七百三十万ドルの買付を申し入れております。その内容を申しますと、小麦が三十八万トン、金額にいたしまして二千六百七十万ドル、大麦が八万トン、金額にいたしまして四百六十万ドル、それから綿花が十万俵、金額にいたしまして千六百万ドル、以上の買付申し入れをいたしております。しかしながら、その中で日本でどれだけ円資金を使うかどうかということにつきまして、ただいま折衝中でございまして、ここではっきりと申し上げられる過程には至っておりません。ただいま交渉中であるということだけを申し上げてお答えにしたいと思います。
  89. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それで、八〇%を下回った場合には受け入れないという態度を基本方針として堅持しておられるのかどうかという一点について、お伺いします。
  90. 坊秀男

    ○坊政府委員 先ほども申し上げました通り、ただいまのところ八〇%を下回った場合はどうだとか、あるいはそれ以上の場合はどうだとかいうようなことは、折衝中でございますから、そういういわば仮定のことにつきまして、決定的なことを申し上げる段階にないと思います。
  91. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それで今の問題につきましては、その折衝が暗礁に乗り上げておるのは、日本側の考え方と、向うの六五%以下ということとの考え方の相違が暗礁に乗り上げておるのであって、問題は、大蔵省としてその態度をあくまで堅持されるのかどうか、ここをお伺いしておるわけなんです。見通しとしては、あなた方がその線を堅持されれば、これはどうせ見送りにしなければならない、第三次と同じように受け入れないということになるでしょうし、八〇%を下回ってもいいんだ。第二次のときみたいに、七五%くらいでいいのだということになれば、話はまとまるわけです。そこら辺についての大蔵省としての考え方をお伺いしたい、こういうことでございます。
  92. 坊秀男

    ○坊政府委員 繰り返して申すようでございますが、この交渉はなかなかむずかしい段階になっておると思います。そこで、八〇%を割るというような場合はこれをどうするというようなことは、有馬委員の御質問ではございますけれども、ここで言明いたすわけには参らない段階と思います。御了承願いたいと思います。
  93. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その問題につきましては、また日をあらためまして、経済企画庁長官その他と一緒にお伺いをいたしたいと思います。  実はきのう春日委員からも、金融引き締めの問題につきまして大まかな質問がなされまして、基本線については明らかになったわけでございますが、ただ大蔵大臣答弁の中で、でこぼこを調整するのだとかなんだとか、非常に抽象的な答弁がございましたので、私銀行局長から、その具体的な問題についてお伺いをいたしたいと存じます。大まかな点については、聞くほど勉強いたしておりませんので、きめのこまかいことだけお伺いをいたしたいと思うのであります。  問題は、まず第一点として、やはり神武景気といわれたもの、その中での発展の不均等性というか、そういったものを見のがして、一律に手を打っていっても、私はその効果が現れないどころか、むしろブレーキ自体がこわれてしまうというような事態を引き起しておるのではないか、そういうふうに考えるわけであります。たとえば経済企画庁で出しました法人企業統計を見ましても、三十年の上期に対して、大企業の営業利益金は五六・七%もふえておりますけれども、中小企業の場合には三・三%しかない。その中小企業も、売上高は増加しておるけれども、結局利益率はさほど上ってない、こういう事態を現出しておりますが、今後も引き締め政策を堅持していくとしても、部門別に検討される考え方はないのかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  94. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは、何べんも大蔵大臣から御言明がありましたように、引き締め政策自体につきましては、当分堅持していかなくちゃならぬ経済情勢だと思います。ただその中で、今お話のありましたように、できるだけバランスのとれた経済に持っていく、経済成長率が相当高い、これを下げなくちゃならぬ、そうしないと国際収支のところで破綻がくるという場合におきまして、やはり完全に自力で均衡化するというような経済に持っていきますためには、やはりそこに各部門間のバランスということが必要になることはもちろんであります。ただいまの中小企業と一般法人の問題でございますが、そういう点もありまして、中小企業に相当しわ寄せがくるのじゃないかという意味で、総合対策を出しました際にも、一般の投融資は削る、相当削るけれども、中小企業金融についてはかなりの額を増額して、そのしわ寄せがきて困難しないように、要するに中小企業であっても、非常にまじめに合理的に経営されて、なおかつ非常に成績が上らぬというものにつきましては、金融その他で十分手を打っていきたいと思います。ただし最近までの倒産その他を見ますと、これは、今度の金融引き締めというよりも、昨年あたりからのいろいろな物価の関係、それから過剰生産の関係、そういうようなもので倒れたものがかなりあります。そこまでは拾えないというのが実情でございます。
  95. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 抽象的にはそうおっしゃるでのすけれども、果して私はその通りできるかどうかという点について疑問を持つわけなんです。たとえばことしの初め、通産省が設備投資について部門別に配分率を考えた。それによると、いわゆる隘路部門というか、電力、石炭、鉄鋼、産業機械、そういったものは、三十一年度には四二・二%ふえるけれども、本年度の見通しとしては五六%増加するのじゃないか、また新規産業部門で、石油化学とか、合成樹脂とか、有機化成、チタン製練、こういったところでは、三十一年度に八%ふえたものが、ことしは九・二%ふえるのじゃないか、こういう工合に見ておるわけなんです。しかもその八〇%というものは、去年から継続してやられるものだ。これについて、今おっしゃるように、非常にたやすいような形で抑制していくのだ、見通しはわれわれの考え通りにいくのだという工合におっしゃるけれども、それは果してできるのですか。
  96. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 さっきお話がありましたように、まあ隘路部門が出てきたということは、部門間のバランスが破れた。それはなぜかというと、全体の生産の伸びが適正成長率をはるかに越えまして、国際収支に逆調を来たしたということであります。そこで、通産省の各隘路部門を中心とした産業資金のお話がございましたが、これは、設備投資資金のうちで、そういう隘路産業部門の金というものは非常に多いのであります。従って、この国際収支を改善して、適正な成長率のところまで徹底的に落していくというためには、隘路部門といえども相当繰り延べていただかなくちゃならぬということで繰り延べまして、ただこれは、別にやめてしまえということではないのでありまして、効果が早く出るものは、どんどんやっていいけれども、そうでないものはあとに回そうじゃないか、経済が正常化したら、そのときに予定していたより以上のプラスをそこで出せばいいじゃないか。ああいう計画はみな長期計画でありますが、たとえば五カ年計画ならば五カ年計画で、五年目にはああいう計画が完成するように、一つやりくりして考えていくということでございますから、私は、それでこれからの長期の見通しとして、そういう部門間のバランスをとることはできるというふうに確信いたしております。
  97. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いしますけれども、問題は、バランスのとれた経済の発展ということの中で忘れられてならないのは、やはり貨幣賃金率の上昇ということだろうと思うのです。その点で、労働生産性が非常に高まっておりますけれども、貨幣賃金率というものはちっとも高まっていない。抽象的に過ぎるかもわかりませんので、勤労所得との関連で申し上げますが、勤労所得は三十一年度が一一・三%伸びておりますが、たとえば法人所得というようなものは二九・五%伸びておる。問題は、この貨幣賃金率というものを考慮に入れていかないと、結局消費部面が縮小してくるという結果を起してくるのじゃないか、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  98. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 だんだんお話が私の守備範囲を越えてくるような気がいたしますが、私の考えを申し上げますと、労働生産性の問題でございますが、これが結局生産性が上らずに賃金が上るということになりますと、最近ヨーロッパ各国に見ますように、コスト・インフレ、アメリカにもある程度その傾向は出つつありますが、そういうことになりまして、結局それは経済の成長を順調に伸ばすよりは引き下げ、阻害する要因になるかとも思います。労働賃金も相当上っております。生産性はそれより若干上回っておることは事実であります。そういう生産性が向上するということによって、経済の規模が大きくなるのでありまして、それがあまり差がひどいということはいかがかと思いますけれども、賃金が一緒でなくちゃならぬとか、あるいは賃金が越えるということになりますと、そこにやはりインフレの問題が出てくるのじゃないか、かように私自身は考えておるのでございます。これは、銀行局長としてこういう席で申し上げるには不適当な答弁かと思いますが、お許し願いたいと思います。
  99. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 昭和二十六年に比べまして、今おっしゃいましたけれども、労働生産性というものは七〇何%も伸びておるのです。ところが貨幣賃金の方は、一向にそれに付随した形で上っていないのでして、今おっしゃったように、インフレーションとかなんとかおっしゃるけれども、そういった状態にないのです。しかしこの問題は、あまりぎゃあぎゃあ言っておってもしょうがないと思いますから、次にお伺いしますが、昭和二十八年から二十九年にかけて行われたデフレ政策措置といいますか、そういったものは、当時世界経済というものが、御承知のように伸びる方向にあった。その場合にはある程度効果をおさめたと思うのでありますが、私は今度の場合は、相当違っておるじゃないか、こう見ておるわけなんです。たとえば西欧諸国、特にイギリスとかフランスあたりでは金ドル準備が減少しておる。こういった状況、またアメリカでは、やはり設備投資その他についても頭打ちの状況になってきておる。こういった状況の中で、この前やったから今度のやつも成功するだろうというような考え方では、私は問題があろうと思うのですが、そこら辺について、現実の国際経済の見通しの中で、今度とられた措置というものがどういう意味を持っておるか。昭和二十八年から九年にかけてとられた措置との関連の中で、その見通しについてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  100. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 二十八年当時に比べまして違いますのは、二十八年当時は、今よりも各企業の、何といいますか、自己資本といってよろしいですか。企業の力自身が現在より相当弱かったのであります。現在は、あのデフレ政策以来、各企業とも自己の力をつけるということに相当努力いたしました結果、かなり耐久力があるようになったと思います。それと同時に、今御指摘のありましたように、あの当時海外の方は、非常に大きく伸びてきた、そこに日本のデフレ政策と申しますか、あれがぶつかったものですから、海外に貿易が伸びてきた。それ以来急速に回復してきたというのが実情だろうと思います。ただ今度の場合は、御指摘のように、世界各国が二十八年程度のような貿易の拡大を示しておりません。それだけに、日本がこれから輸出を大きくして経済を回復し、さらに発展するためには、もっともっと輸出努力が要るのじゃないか。そのためには、国内需要がふくれて海外に出にくくなるということは、どうしても避けなくちゃならぬ。こういう意味におきまして、今日の引き締め政策をなお引き続いて真剣にやっていかなければ、これからの貿易増大というものはむずかしいのじゃないか。従って、そういう面で当分の間努力すれば、おそらく回復してくるのじゃないか、その努力の過程はなかなか楽じゃないということは、ごもっともでありますが、大体そういうことでつないでいけば、日本経済も回復するのじゃなかろうか、私はこう考えております。
  101. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 けさほど井上委員から通産省の方に、輸出の伸長に対してどのような手を打とうとするのかというような質問があったのに対しましても、私は明確なというか、納得させるだけの御答弁があったとは思われません。今銀行局長から御答弁がありましたけれども、その点についても、私たちは、ああそうですかという形で、納得いくだけのものを感じとれないのであります。今の点について、政務次官の方から、いま一度私が質問したことに対する関連しての御答弁をいただきたいと思います。——それでは再度御質問いたしますが、昭和二十八年から九年にかけて同じようなデフレ政策がとられましたが、そのときには、世界経済が上向きの情勢にあったから、一応の効果をおさめたけれども、そのときの情勢と現在では各国の事情も違う。その中で輸出振興と増強というようなことを大蔵大臣も財政演説の中で述べておられますけれどもそういった安易な考え方が果して通るものかどうか、この点をお伺いいたしておるわけであります。
  102. 坊秀男

    ○坊政府委員 先ほど銀行局長がお答え申し上げました通り、二十八年、九年というときには、日本経済力と申しますか、大蔵大臣がよく言いますが経済の骨格と申しますか、それが非常に弱かった。ところが今度の場合は、二十九年、三十年から経済が非常に拡充せられまして、設備にいたしましても、何にいたしましても、日本経済というものは非常に発展して参っております。ところが設備投資その他のものを少しやり過ぎまして、一時的な障害と申しますか、一時的に国際収支等の関連におきまして、非常に行き詰まって参ったということでございまして、それを今度の引き締め政策、総合政策によって回復するということでございますから、この総合政策が効果を奏して、日本経済が安定するということになりますれば、二十八年、九年のあのデフレ政策のときと、今度の場合の総合対策をとった場合とは相当性質上の違いがあろうと私は思います。
  103. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは、次に銀行局長にお伺いいたします。全国銀行の勘定の推移でありますが一昭和三十年度と三十一年度の状況は、御承知のようにがらりとその様相を変えておりまして、きわめて対照的な状況を示しておることは、御承知の通りであります。三十年度には、実質預金の増加額が五千六百五十五億円、貸し出し増加額が三千三百十八億円ということで、実質預金では二千三百三十六億円の余裕、大体日銀の借り入れについても、二千一百八十五億円も返済するというような状況であります。ところが昨年度は、実質預金の増加が八千二百六億円で、貸し出しが一兆四百三十七億の増加で、結局実質預金の不足は二千二百三十一億、そして一昨年とは逆に、銀行の日銀借り入れが二千三百八億円もふえておるような、きわめて対蹠的な状況を示しております。問題は、昭和三十二年度はこれがどのような様相を呈するか、これをはっきりとした見通しを持っておらなければ、皆さんが今おっしゃっておるような施策というものが、功を奏するかどうかきわめて疑問とせざるを得ません。いろいろな点で、見通しその他について誤まりばかりやっておられる大蔵省なんだけれども、ここら辺について、本年度はどういう工合になっていくのか、この見通しについて、上半期の情勢から推察されたところをお聞かせいただきたいと思います。
  104. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 上半期におきましては、御承知のように金融引き締めがほんとうにきいてきた時期は、夏からでございますので、まだ割合に貸し出しが減っておりません。ところが預金の方は、日本銀行が五月の初めから窓口が規制を始めました。そのために貸し出しは減って参りました。それとともに、この営業性預金が、さっき申し上げましたようにだんだん減ってくる、一般の貯蓄性預金は着実にふえておりますけれども、営業性預金が減ってきたということが一つあります。  それからオーバー・ローンの関係でございますが、これは、国庫収支の問題と対比して考えなくちゃならぬわけでありまして、一がいに日銀からの貸し出しがふえた、けしからぬというわけにもいかぬところがございます。しかしこれからの下期につきましては、今の情勢がだんだん浸透して参りますとともに、もうすでにこの毎月の貸出増というものは、昨年よりだいぶ減ってきております。通貨の方の発行増の部分も減って参っておりまして、結局本年度の下期におきましては、昨年の貸し出しを下回る程度の貸し出しというくらいに推移していくのじゃなかろうか、私どもはそんなふうに見ております。
  105. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いいたしますが、長期貸し出しの金利については、どういった考え方で臨んでおられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  106. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 長期資金につきましても、こういう金融情勢で需給のバランスがとれておりませんので、一応若干引き上げるということになっております。
  107. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 先月の半ばですか、日銀では全国の支店長会議を開かれて、いろいろ意見を聞いておられるようであります。それからまた通産省でも、通産局長会議ですか、そういったものを開いて、いろいろ中だるみ論とかなんとかいうものに対する考え方検討しておられるようでございます。問題は、その投資意欲というものが現在どのようになっておるか、この点について、私は支店長会議なり何なりで論議せられた結論を見ましても、皆様方がどういう把握をしておられるのか、この点についてはっきりとしたものが知り得ないわけなんであります。この際、その点について銀行局長としての考え方を伺うと同時に、問題は、投資意欲というものがある程度押えられないと、やはり国際収支については逆調を来たす要因を失わないわけでありますし、そうかといって、それを無理に抑制するというようなことになると、輸入原材料を初めとする値上りになって、インフレーションの発生その他を惹起してくるわけでありますが、この矛盾するものについて、相当きめのこまかい措置を講じないと、私は所期の成果は上げ得られないと思うのですが、そこら辺についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  108. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 初めに御質問のございました、投資意欲の問題でございますが、これは立場々々でいろいろ見方があることとは思いますけれども、私ども地方の財務局、あるいは日本銀行筋というものから聞いておりますところでは、まあだんだん鎮静はしてきておるけれども、その底はまだかなり固い、ことに最近になりまして、一応国際収支が形式的にも実質的にも黒になった、もういいのじゃないかというような気分とか、そういうものがまだ若干残っておるようであります。しかしながら、この現在の輸出入の均衡ということは、引き締め政策以来輸入を押えまして、国内にある過剰の輸入在庫を食っていたというような実情でもあろうかと思いますので、現在の輸入信用状ベースで果していいのかどうかということになりますと、一億八千とか、そういうことでは間に合わないのじゃないか、つまり自然の均衡状態において国際収支がバランスするというところには、まだまだ行っていないにもかかわらず、いろいろな批評が、もういいのじゃないかというようなことを考えさせる向きもあるようでございますが、私どもは、それではいけないので、もう少し浸透するようにやっていかなかればいかぬのじゃないか、かように考えております。
  109. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今おっしゃっておりますが、やはり生産というものは高水準を示しておりまして、投資意欲も衰えていない。また物価も成長を示しておるというような状態で、その効果が現われる期間というものについても、相当考えなくちゃならない問題を含んでおるのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。そして今度の短期の政策というものが、即時的な調整の効果を出すことを期待しておられるのか、それとも長期のものとして考えておられるのか、そこら辺から、今の御答弁と関連してお聞かせをいただきたいと思います。
  110. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 見通しでございますが、それはおっしゃるように、結局バランスのある発展、そのバランスの発展の中に、一番極大というのが理論的に望ましいわけであります。できるだけ生産なり計画なりを伸ばす、ただし伸ばすについて、伸び過ぎると、今度は物価の問題とか国際収支の問題等にぶつかる。そこで適正な、そういうことのない最大限の発展という線を見つけて、できるだけその線に早く乗せたい、それに乗せて、各部門がそういう成長率でバランスをとって発展していきますならばこれは大体割合早く回復するのじゃないかというふうに考えております。
  111. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の問題に関連して、政務次官にお伺いいたしたいと思うのでありますが、単なる金融政策だけでは、私は所期の効果をおさめ得ない。イギリス、フランス等の例から見ましても、やはり総合的な政策というものがこれに相マッチして行われない限り、所期の効果をおさめられないと思うのですが、これについて、政府としての具体的な施策というものがありましたならば、お聞かせをいただきたいと思います。
  112. 坊秀男

    ○坊政府委員 有馬委員の御意見通りです。金融政策だけでもって効果を期待することはできないと思います。そこで、金融も財政もその他の経済といったようなものも総合的に考えて打ち出されましたのが総合対策でございますが、さらに昭和三十三年度等を見越しまして、御承知の通り昭和三十三年度経済の見通し、あるいは昭和三十三年度予算の基本方針といったような方針に従いまして、具体的な施策を打ち立てていこうと考えておる次第でございます。
  113. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 総合的な政策の重点といいますか、具体的なものがどこにあるか、それは具体的に御答弁になりませんので、この問題については、後日大蔵大臣に御出席願って、あらためはお伺いいたしたいと思いますから、私はこの程度で本日の質疑を打ち切ります。
  114. 横錢重吉

    横錢委員 ちょっと関連して。先ほど質問の中に、貯蓄組合の件が出ておったのですが、この点を伺っておりますと、今銀行その他の金融機関がたくさんあって、これらが預金の獲得に全力をふるって努力をしておる。そういう中において貯蓄組合を作っておることの意義、またその必要性、そういったようなものは非常に低くなってきておるのではないか、こう思うのです。しかし、また現実にはどういうふうに行われておるのか。あの中には、地域的な貯蓄組合、あるいは職域を単位とした貯蓄組合、そういうふうなものがあるので、そういう地域別、職域別の組合の数がわかっておるのか、あるいはその総人員、あるいは一人当りの貯蓄額、あるいはまた分けていくならば五万円以下、十万円以下というような貯蓄の額別の人員、そういったような内容等、おわかりならば一つお教え願いたい。
  115. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 前段でお話のありました、各金融機関にも預金獲得に非常に働いておる、その場合は、貯蓄組合を作る必要があるかという御質問でございますが、貯蓄組合による貯蓄につきましては、利子に対する課税は無税になるわけでございます。貯蓄組合によらない場合には、税をとられるわけですから、それだけ貯蓄組合を作るということは有利になるということです。  それから数字でございますが、組合の総数を申し上げますと、これは三十二年の三月末でございます。全部で十一万三千、組合数でございますが、その内訳は、後ほど資料で御提出いたします。
  116. 春日一幸

    ○春日委員 一つだけ伺いたいのですが、今度政府が市中銀行手持ちの金融債を十二月末までに七百億円売り戻しますね。そうすると、現在政府の手持ち余裕金というものは、相当潤沢であります。そこへもってきてさらに七百億円の売り戻しをいたしますから、さらに潤沢になる。ところが一方市中銀行は、資金がない。それで今論議されておるような工合に困っておる。そこへ七百億円の金融債を、これまた買い戻さなければならぬわけだから、いよいよ資金がなくなってくる。そこで問題は、あの法律によると、これは一年間に元に返さなければならぬということらしいのだが、年を越せば、もう一ぺんその額を政府が買うことはできると思うのです。御承知の通り、かつては政府余裕金を預託することもできて、たしか昭和二十八年には六百数十億の指定預金が行われておったのだが、今六十九億何千万円しかないわけなんです。だから、それに見返りの総合施策として、来年ごろになりますと、今有馬君が言われたようなきめのこまかい、実情に即した施策を講じていかなければならぬであろうと思うのです。そこで、私が聞いておきたいのだが、日本銀行の信用というものも今非常に膨張しておるので結局もう一ぺん困っておる市中金融機関に政策的な内容を持つところの金融債を押しあてがっておいて、彼らがその金の足らざるところを日銀から借りておるというような事態は、慎重に検討を要する事柄であろうと思う。そういうような理由によって昨年度からこれを買ったのですから、その考え方を本年度においても踏襲されて差しつかえないと思う。だから、私はこの際坊政務次官からでも、一つ高度の政策的な立場から、これをいかに考えておられるか、なお時間的にはしばらく余裕もあるわけではありますが、この法律で定めれた時期が過ぎれば、一年以内ということですから、一たん買うことは買わざるを得ないであろうが、時期が過ぎたら、新しくこの市中銀行が持っておる手持ち金融債を政府が肩がわりしてやって、彼らの資金難をこれによって救済し、かつは政府余裕金もあるときなんだから、政府の責任を負って、これを一応買うてやる。それからその金を、もし何ならば、日銀から借りておる五千億円をこえておるオーバー・ローンの解消というような方向へ持っていく必要がありはしないかと私は考えるのだが、この問題について、政務次官はどめように検討を進められておりますか、お伺いいたします。
  117. 坊秀男

    ○坊政府委員 春日委員のおっしゃられる御意見は、非常にごもっともなことと思いますが、ただテクニックを必要とする。ただ単にそれがいいからやろうということは、大へんけっこうなんですが、それはテクニックの問題も非常に伴うと思いますので、この際私から、それを実現するとかしないとかいうことは相当テクニックを考えなければなるまいと思いますから、これはむしろ私よりも、銀行局長あたりからお答えした方がいいと思います。
  118. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 法律的に申しますならば、春日委員のおっしゃるように、一年未満ということで運用しておりますので、一たんここで売り戻しまして、そうしてまた第三・四半期に買うということは、法律上は可能だと思います。ただ現在の状況におきましては、金融の方では、なおもう少し詰める必要があるというふうに感じておりますので、今後さらに金を出してゆるめるということは、全体の政策にとっていかがであろうか。ほんとうに困った場合には、これは日本銀行が一本の筋で、われわれも十分御相談いたしますが、金融をどう持っていくかということで貸出政策をおとりになれば、何とかそれで越していけるのではないか、かように考えております。
  119. 春日一幸

    ○春日委員 テクニックの問題については、われわれしろうとがとかく容喙する必要がないものであるのでありますが、こういうことがあり得るのじゃありませんか。たとえば、この次にこれをもう一ぺん政府が肩がわりをする。そうすれば、その同一額、相当額を日銀へ返していくという形ができるかどうか。あるいは行政指導で、私はできないことはないと思うが、いはばそれでこのオーバー・ローンを解消する一つの形式的な目的をも果し得るし、さらに金融機関の資産内容改善の趣旨にも即した結果が得られてくると思うのでありまするが、要するに金融引き締めの至上命令から申しますれば、今御答弁になった通りであろうと思う、引き締めておいて、もう一ぺん肩がわりをすれば、それだけまた膨張いたしますから。けれども、それだけの分を彼らが現に日銀から借りておるのだから、日銀の償還に当てさせていけば、引き締めの至上命令というこの趣旨に何ら背反することなく銀行の資産内容を改善でき、かつオーバー・ローンを減らしていく、解消の方向へ持っていく、こういう両々相待って効果があると思う。さらに、今政府には余裕金が潤沢でありますし、金融債の性格からいたしまして、一般予算で立てられなかった政策をこういうような財政投融資で行なっていくというような実質、内容等もありますので、そういう処理をテクニックの中で行なっていくということは、私はきわめて現実に即した、妥当性あるテクニックだと思うが、いかがでありますか。
  120. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 テクニックとしては、おっしゃるようなことも考えられると思います。ただ政策といたしまして、現在はそういうことを考える時期でなくて、もう少し銀行の資金を詰める時期ではなかろうかということが一つ……。
  121. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっと待って下さい。それはおかしいじゃありませんか。私が言うのは、金融引き締めの至上命令というものは、これは一切の政策の大前提になるものだから、やはり資金が膨張するようなやり方は避けるということについては、異存はない。けれども、七百億なら七百億のその金融債を政府が今度新しく肩がわりした場合、その相当額を日本銀行のオーバー・ローンの解消のために償還していくということになれば、この資金の絶対量というものは、プラス・マイナス・ゼロで悪い影響は何ら残さぬ、こういうことじゃありませんか。だから、私は、テクニックとしてできて、しかも今国民の重大関心事である銀行の資産内容の改善だとか、あるいはオーバー・ローンの解消だとか、こういう政策目的が達し得ると思うのでありますが、いかがでありますか。
  122. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 実はその問題につきまして、第二段にお答えしようと思ったのでありますが、テクニックとしては可能でありますが、もしそれで完全にオーバー・ローンの解消をしようと思いますと、結局持っております金融債を長期に買い上げてやるということになるわけでございます。これは、毎年売った買ったということであれば、一時的にそういう状態は出てきます。これを完全に直してやろうということになりますと、どうしても長期に資金運用部資金か何かで保有しなくちゃならぬ。そこで、資金運用部資金がそういう金融債を七百億持つのがいいかどうか。またこれは、来年度の財政投融資計画と関連しまして、結局今資金の余裕があるというのは、ほんとうに余裕があるかどうかというような、いろいろな問題もありますので、目下のところは結論を得ておりません。
  123. 春日一幸

    ○春日委員 これは、大いにお互いにわれわれ専門家の仲間で——しろうと衆を交えておっては帰りたがっておって非常に困るのだが、(笑声)これは非常に深く検討願わなければならぬ問題だと思うのです。と申しますのは、この資金運用部資金にしろ、これは何らか運用しなければならぬのです。郵便貯金の利子も払わなければなりませんでしょう。そうすれば、実際の話が、これを何か運用益を生じてくる形において運用せんならぬのです。遊ばしておくわけにいきませんよ。実際問題としまして、短期債を買えば、逆ざやは一分生じてくるし、いろいろな問題があるんですよ。だから、どうしてもこの金融債を買うことによって、資金コストの六分三厘を上回るか、あるいはとんとんの形において運用せぬならぬという一つの制約があろうと思います。そういうような条件をも含めてこの操作を検討いたします場合には、私が今申し上げましたような、もう一ぺん肩がわりをして、そうしてその相当額をひもつきで日銀へ返させていく。そうすると、銀行の資産内容は改善を必要とすることは、焦眉の急であろうと思うのだが、その焦眉の急にこたえるに、七百億円の改善ができるということは、私は相当のことだと思うのだ。それからもう一つは、今あなたがおっしゃったことは、そうであるとすれば、長期性の性格を持って肩がわりせぬならぬというお説でありますけれども、現在政府は、別途総合施策を講じておるから、たとえば三十万円までの預貯金に対する特別措置等がありますから、そういう形で営業的性格を持つところの預金や、あるいは個人的な預金や、そういうものが、他の面においてだんだんと金融機関の預金量がふえてくれば、一年間なら一年間肩がわりしておるうちに売り戻ししなければならぬ。すなわち昭和三十三年十二月末に売り戻ししなければならぬとすると、七百億円程度の預金増が、総合施策の効果が次第に現われて、そうしてもうこれは引き受けてもよろしい、もう一ぺん売り戻していただいてもよろしい、こういうような金融機関のいわゆる貯金増強の態勢が現われてくる。だからテクニックとして、これはわれわれ専門家でないとわからぬと思うのだが、そういう高度の施策を講ずることによって、私は応急の当面の効果を上げ得る措置を講じ得ると思う。それは、今なさなければならぬ段階であろうと思う。すなわち金融機関の資金梗塞は、だんだんと深刻化しておる現状にかんがみまして、そういうような措置をとるべきであろうと思うが、これはいかがでありますか。しかし、この問題は相当大きな反響のある問題でありましょうから、これは本日いい悪いのといって、あなたもここで即断するがごときは越権だろうと思って、これは一つ省議にかけて十分御検討をいただいて、またの近い機会において、大蔵省としての大体まとまった意見一つ答弁願う、こういうことにいたしまして、きょうの私の関連質問を終ります。
  124. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明七日午前十時三十分より開会することといたします。  これにて散会いたします。     午後四時九分散会