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1957-11-09 第27回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月九日(土曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 赤澤 正道君 理事 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       秋田 大助君    小坂善太郎君       小平 久雄君    平野 三郎君       保科善四郎君    石野 久男君       岡本 隆一君    佐々木良作君       田中 武夫君    堂森 芳夫君       原   茂君    松前 重義君  出席政府委員         科学技術政務次         官       吉田 萬次君         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君  委員外出席者         科学技術庁事務         次官      篠原  登君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      大野 実雄君         参  考  人         (朝日新聞社論         説委員)    渡辺 誠毅君         参  考  人         (東京天文台         長)      宮地 政司君         参  考  人         (東京大学教         授)      糸川 英夫君     ————————————— 十一月九日  委員滝井義高君辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— ○本日の会議に付した案件  小委員会の変更及び小委員追加選任に関する件  原子力発電株式会社に関する件  人工衛星に関する件     —————————————
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。  この際、原子力委員会設置法に関する小委員長有田喜一君より発言を求められておりますので、これを許します。有田喜一君。
  3. 有田喜一

    有田委員 原子力委員会設置法に関する小委員会中間報告を申し上げます。  本小委員会は、昨日第一回の会議を開会して、原子力委員会設置法を中心として科学技術行政機構現状につき協議し、あわせて小委員会の運営について協議いたしたのであります。しこうして、本小委員会は、科学技術行政機構現状と諸般の情勢にかんがみまして、この際、広く科学技術行政機構全般にわたり根本的な再検討を加えて、急速に進展しつつある科学技術情勢に対処し得るよう、強力な行政機構を研究調査する必要を痛感するのであります。  つきましては、本小委員会科学技術行政機構に関する調査小委員会と改めて現在の小委員会の所管を拡大し、かつ小委員を六名増員し、十三名とすべきであると小委員全員意見の一致が見られたのであります。  以上、中間的に御報告申し上げますが、委員長におかれましては、しかるべくお取り計らい下さいますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 有田小委員長中間報告は終りました。  この際、お諮りいたします。すなわち、ただいまの有田小委員長報告通り小委員会を改めたいと思いますが、これに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なしと認めて、さように決定いたします。よって、原子力委員会設置法に関する小委員会は、科学技術行政機構に関する調査小委員会とし、小委員の人数は十三名に増員となりました。  ただいま増員いたしました小委員六名の指名につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なければ、小委員に    秋田 大助君  小坂善太郎君    小平 久雄君  岡  良一君    石野 久男君  松前 重義君を御指名申し上げます。     —————————————
  7. 菅野和太郎

    菅野委員長 引き続き、原子力発電株式会社に関する問題につきまして、調査を進めます。  参考人より意見を聴取いたします。本日出席参考人は、早稲田大学教授大野実雄君であります。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会調査のため御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  御承知通り電源開発株式会社は、今般設立されました原子力発電株式会社に対し、二〇%の出資を行なっております。本委員会といたしましては、原子力行政の一環として、かねてより実用原子炉受け入れ態勢につきまして深い関心を払って調査を続けて参ったのでございますが、先般の委員会におきましては、電源開発株式会社が行う出資は、電源開発促進法に違反するのではないかと、法制上の疑義について論議が行われたのであります。本日は、この問題について学識者意見を承わり、もって、調査参考に資したいと考えまして、参考人の御出席を願った次第であります。何とぞこの問題について忌憚のない御意見をお願いいたします。では、参考人大野実雄君。
  8. 大野実雄

    大野参考人 私、大野でございますが、この問題について私の考えて参りましたことを、率直に申し上げたいと思います。  電源開発株式会社原子力発電をみずから行い得ないということは、問題はないんじゃないか、こういうふうに考えられます。それは、電源開発促進法の第二条に、「この法律において「電源開発」とは、水力又は火力による発電のため必要な」云々と規定せられておりまして、この「水力又は火力」ということが原子力を含むかどうかという問題でございますけれども、やはり原子力というものはここに含まれてないというふうに法文の解釈をいたしたいと思うわけであります。それは、電源開発促進法では、「電源開発」、こういうはっきりした言葉を第二条でカッコして用いておりますし、日本原子力研究所法第一条では、「原子力開発」という言葉を区別して用語を使っておられるようでありまして、やはり範疇を区別しておるんじゃないか、こういうふうに解釈されます。結局、電源開発ということと原子力開発ということとは、潜在的な競争関係に立つ、こういうふうに見ていいんじゃないかと考えられるわけであります。従いまして、電源開発促進法の第二条、それから十三条、二十三条から総合いたしますと、この電源開発株式会社というものの目的範囲ということが、かなり明瞭になっておるのでありまして、この中に原子力開発という意味は含まれてない、こういうふうに私は解釈したいと思っております。従いまして、電源開発株式会社がみずから原子力発電を行うということは許されないのじゃないか、第一点はそういうふうに見ております。  第二に、それでは電源開発株式会社発起人となって原子力発電株式会社株式を引き受けることができるかどうか、こういう法律問題でございますが、この問題については二つの角度から考えられるのでありまして、一つは、電源開発株式会社というものは公企業である、公共の利益を目的としてできておる会社であって、営利追求ということを目的としてない株式会社だ。しかも、過半数を国が出資しておりまして、しかも第十五条でありますか、国は絶えず過半数を持つようにしなければならない、増資をいたしましても、必ず国に新株を割り当てまして、過半数を維持していくというような態勢に置かれておる会社でございます。私、実は調査が行き届きませんで、原子力発電株式会社というものが、公企業なのか、あるいは営利追求目的とする株式会社であるのかという点がわからないのでございますが、新聞紙等によって拝見いたしておりますと、やはり原子力発電株式会社というのは、一応商法の規定しているような営利性を持った株式会社としてお考えになっておられるのではないかというふうに解釈させていただきましてそういう前提で問題を見て参りますと、営利性を持った株式会社設立するという行為そのものが、一体コマーシャルなものであるかどうかということが、問題とされなければならないのでありますが、今日の通説では、そうした営利会社設立する行為自体に、商行為性商性というものを認めるという趨勢にございます。そうなりますと、電源開発株式会社発起人となって、そういう営利会社を作るということは、電源開発株式会社目的とか性質から見て、それに沿わないのではないかというふうに理解されます。これにつきまして裁判所判例とか学説とか、いろいろ調べてみたのでありますが、適切な例がございません。ただ一つ法曹界の古い決議でありますが、大正十年の十月二十九日に法曹界決議がございます。その決議を申しますと、銀行株式会社設立を発起することが、銀行目的に反するかどうかについては、事業性質いかんによって決定するほかないという決議があるのであります。これは、御承知のように、銀行というのは固有業務がはっきり規定されておりまして、その固有業務範囲を逸脱するような場合には、やはり銀行能力外行為になってくる、当然無効なものと解釈されるのであります。従いまして、たとえばたくさんの銀行手形交換所というものを株式会社組織で作るとしますと、これは目的範囲内であろうと思いますけれども、ミュージック・ホールを作るというようなことになれば、これは銀行としては許されないのではないかというふうに解釈されるのでありまして、電源開発株式会社というのは、電源開発促進法によってはっきりとその固有業務目的というものがうたい出されているのでありますから、やはり原子力発電株式会社営利会社だったとしますると、これは電源開発株式会社のなし得るものではないのではないかというふうに解釈したいと思います。  これに関連しまして第三に、会社能力の問題、商法上いろいろやかましい問題でありますが、例をあげて御説明を申し上げたいと思います。下級裁判所判例でありますけれども、ある出版会社がある映画製作を始めましたときに、本屋さんが映画を作るのは目的範囲外行為ではないかという異論が出まして、その会社では臨時株主総会を附いて、定款を変更して、映画製作ができるようにした例があります。実例は、こういうように定款を変更したのでありますけれども、私ども解釈としましては、活字によって文化を伝えるのも、映画によって文化を伝えるのも、やはり同じ出版という中に入ってくる。だから営利会社である出版会社映画製作するということは、能力範囲内であって許されるというように解釈するのでありますが、それでは出版会社旅館を経営したらどうかという問題に発展させてみますと、これはおそらく不可能ではないか。一種の法人格乱用というような見地から、旅館の経営というようなことは許されない、こういうふうに解釈するのであります。そうなりますと、原子力発電ということと、水力または火力による発電ということとは、あたかも出版映画製作とに似ているように思われるのでありますが、しかし大きな目的が違っている。公共性というものと営利性というものとはっきり区別しておるのでありますから、公共性を理念としております電源開発株式会社としては、営利性を追求する原子力発電株式会社発起人となることは不可能ではないか、こういうふうに考えるわけであります。  第四に、それでは電源開発促進法を改正する必要があるかどうかという問題なのでありますが、電源開発促進法を改正いたしまして、ここに原子力発電を含むというような注を入れることもあるいは可能かと思いますけれども、やはりどなたかおっしゃいましたように、日本原子力研究所、あそこでそういう仕事はなさった方が適切ではないか、こう考えております。それは、日本原子力研究所法という法律の第一条にもありますが、これは原子力開発及び利用促進に寄与することを目的として設立された法人である。もちろん、この法人政府出資過半数になっておるのでありまして、同じ国家の経営しておる法人でございますから、この原子力開発利用促進ということは、原子力研究所でなさることが適当のように私は考えております。  そういたしますと、結論みたいな形になりますが、原子力研究所とそれから純然たる民間会社としての原子力発電株式会社、この二つが併存して原子力発電という新しい仕事をなさっていくのがいいのか、あるいは外国に二、三例が見られますように、公社と申しますか、国家独占事業としてこれを一木にしていくかという二つの問題に分れてくるかと考えられます。これに対して、私ども結論を与えるなどということは不可能でありますけれども、そういう二つ考え方に立っていかれるのじゃないか。いずれにしても、この電源開発株式会社発起人となって、設立に参加するということは、不適当ではないかと考えております。  簡単でありますが、以上で終ります。
  9. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより参考人及び政府当局に対し質疑を行います。なお、念のため申し上げますが、法制局野木第二部長が出席いたしております。  それでは、通告に従いまして質疑を許します。佐々木良作君。
  10. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 ただいま大野教授から、大体これまで法制局がとっておった見解とは完全に反対の意見の開陳があったわけでありまして、電源開発会社はみずから原子力発電を行い得ないであろうということ、並びに原子力発電会社株式引き受けも不当であろうという意味解釈をなさったわけでありますが、この解釈に対しまして、今開かれまして、法制局見解を承わりたいと思います。
  11. 野木新一

    野木政府委員 今、大野先生から非常にりっぱな学問的な御意見を拝聴しまして、いろいろ教えられるところがありました。しかしながら、私ども法制局の、前に議論をいたしました結果といたしましては、結局火力というものに原子力が入るかどうかという点が一番大きな要点になっておると思いますが、この点は今、大野先生がお述べになった見解も確かに一つ見解とは存じますが、私ども見解もまた成り立つものと存じまして、今すぐに改めるというまでには至らないものでございます。
  12. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今の法制局お話は、火力原子力を含まないという原則の大野さんの見解に対しての水かけ論みたいな話ですが、株式引き受けについての解釈はどうですか。ことに大野さんが第二段目に述べられましたところの、電源開発会社原子力発電会社株式を引き受けることは妥当でなかろうという見解に対する御解釈はいかがですか。
  13. 野木新一

    野木政府委員 株式を引き受けることが果して政策的に適当かどうかという点は、私ども判定立場にございませんから、これは別問題といたしまして、法理上可能か不可能かということになりますと、これは大野先生のおっしゃったように、見方によりましては論議があるということは承認せざるを得ませんが、私どもといたしましては、火力原子力を含むということを前提として解釈してみますと、この場合も法理上絶対不可能というまでに言わなくともよいのじゃないか、そういうような立場でございます。
  14. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 法制局お話はあまりはっきりわからないのですが、質問を続けたいと思います。  大野教授に伺いますが、今のような御見解に従いますと、電源開発会社自身原子力発電を行なってはならない、同時にまた原子力発電会社の株を引き受けることも適当ではないというお話であります。ところが、御承知のように、電源開発株式会社は、今お話に出ましたところの日本原子力研究所にも出資しておりますし、今度の原子力発電会社の株も現実に引き受けております。その場合の監督責任といいますか、あるいはまた社内部責任といいますか、それはどういうふうにお考えになりますか。
  15. 大野実雄

    大野参考人 私の申しましたのは、発起人として設立行為に参加することは不適当だ、こういうふうに申し上げたのでありまして、一般から募集する場合に、電源開発株式会社出資として株式を引き受ける、あるいは日本原子力研究所への出資を引き受けるということは、これは問題が多少違ってくると思います。単なる株主としてそこに投資をしていくということでありますと、これは発起人として設立に参加していくということとは考え方が違うのじゃないかと思います。
  16. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 この間、現実原子力発電株式会社設立されております。あの設立行為の内容をごらんになりまして、適当だと思われますか、不適当だと思われますか。
  17. 大野実雄

    大野参考人 実は私はまだそれを見ていないのでございます。資料がございませんでしたから見て参らなかったのですが、私の申し上げたのは、発起人としてそこに参加するかどうか、参加することが適切かどうかという問題としてお答えしたのであります。ただ、新聞によりますと、一般から公募するというようなことも出ておるのでありまして、公募に応じて出資をするということは、それと全然別だと思います。
  18. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 たとえば、証券取引所株式の売買をされて、そうしてその株を保持するというような問題と、現実原子力発電会社設立をされましてその設立の過程に、たとえば相談に入って役員を送り込むという形で設立をされておるとするならば、今言われましたところの発起人に参加してやるというのと同じことだろうと私は思うのですが、いかがですか。今度の場合は、現実電力会社電源開発会社と一緒になりましてそうして設立行為の実際に参加しまして、できた会社に対して重役を送り込むという現実行為がとられているわけであります。
  19. 大野実雄

    大野参考人 そういたしますと、発起人として電源開発株式会社総裁でございますか、その方が署名か何かしておられるのでしょうか、それが私にはわからないものですから……。
  20. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 政府当局の人がいましたら、形式上の発起人になっておるかどうか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  21. 法貴四郎

    法貴説明員 発起人といたしまして、電源開発株式会社総裁内海清温氏が入っております。
  22. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今、政府当局からのお話にありましたように、現実電源会社総裁原子力会社設立に参加しておることになっております。そして今の御解釈によりますと、そのことはやはり不当だということになろうかと思います。その不当だという解釈が成立いたしますならば、電源開発法あるいは関連法規によりまして、業務責任並びに監督責任というものは、どういうふうに起ることになりますか。
  23. 大野実雄

    大野参考人 ちょっと私にはその問題はわからないのですが……。
  24. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 おそらく電源開発法をずっと御承知だと思います。同時にまた公共事業令を御承知だと思います。電源会社に対しましては、通産大臣監督が二重に行われておることになっております。公共事業令に基く監督と、電源開発促進法に基く監督と、両方の監督が行われておることになっております。同時にまた、この促進法によりまして役員罰則等も規定されております。これらから見まして、今のように法上することが不当な行為現実にしたことになっているわけでありますが、その場合はどういうふうになるかということでございます。つけ加えますけれども、この電源開発法自身は完全な私法でもありませんし、まあ公法的な性格を持ったものであります。従って、罰則がくっついております。同様な意味公共事業令——事実上の電気事業法ですね。これも似たような性格を持って規定されたものと思いますので、電源株式会社公企業であるという解釈をされておるわけでありますから、従って公企業責任者公企業責任者としてふさわしくない行為をした場合の責任考えられましょうし、それを黙認したといいますか、あるいはむしろ推奨したかもしれないところの当局責任ということも、当然関係法規によって考えられなければならない。その前提に立って初めて法体系解釈が、今のような適、不適の解釈が成り立つのではなかろうかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  25. 大野実雄

    大野参考人 電源開発株式会社発起人として加わっておられるというお話でありますが、そういたしますと、私の考えでは、原子力発電株式会社設立に瑕疵があるということになってくるのであります。従って電源開発株式会社が何%かお持ちになった、結局それだけ原子力発電株式会社の資本に不足が出てくるということでございますから、その問題は原子力発電株式会社の方の発起人責任の問題になる、こういうふうに考えております。
  26. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 では、その問題は一応それくらいにいたしましてもう一つお伺いいたしたいと思いますのは、公共事業令に基いておる他の九つの電力会社、御承知のように関東ならば東京電力会社がありますし、関西ならば関西電力という会社があります。この電力会社は、当然に原子力発電を行い得ると御解釈になりますか。同時にまた、原子力開発会社株式引き受け行為を、当然に可能だというふうにお考えになりますか。
  27. 大野実雄

    大野参考人 電力会社の場合は差しつかえない、こう私は思っております。
  28. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それは発生された電力を供給するという意味でですか。それとも、公共事業令その他の関係法規の中には、水力火力というふうに言葉が並べて書いてありまして、いわゆる第三の火であるところの原子力というものは規定されておらないわけでありますが、電力会社の場合には、水力火力のほかに、原子力発電は当然に可能だというふうに考えられるのは、そのときの火力という言葉には入っておるのではないけれども業務上当然に必要だというふうな御解釈でございますか。
  29. 大野実雄

    大野参考人 そうではなくて、むしろ私はこの電気事業法という法律がまだたしかできてないように思っておるのであります。そしてこの九電力と呼ばれておる電力会社の場合は、やはり公共事業令の適用があるとは申しましても、日本の現在の段階では、これは純粋な公企業性格が違っているように思うのであります。
  30. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 あんまり追求するようで恐縮でありますから、問題を避けたいと思いますが、ただ一言申し上げておきたいことは、電力会社の場合ですね。これは私、公企業というよりは、完全な私企業の系列にあるものだと思います。しかしながら、先ほどお話のありましたのは、電源開発法の二条の火力という言葉に、当然原子力は含まないと解釈すべきだというお考えだったんだろうと思います。そうしますと、今の公共事業令なりその他の関係法規の中に出てくる火力という言葉にも、当然に原子力は含まないというふうに考えなければならない。そうしますと、今の電力会社業務の中に、原子力は入らないと解釈するのが普通じゃありませんか。公企業であろうがなかろうが、つまり二番目の、原子力発電会社設立行為に参加することが妥当か妥当でないかという議論に対しましては、完全な公企業であるところの電力会社は不当であるという解釈が生まれ、あるいはそうでないところの普通の電力会社は可能であるという解釈が生まれるといたしましても、みずから原子力発電を行い得るか行い得ないかという解釈につきましては、これは火力という従来使い古されておる言葉の中に、原子力ということが入るか入らないかということになるわけでありますので、これは電源開発促進法に書かれておる火力という言葉の中に、原子力という言葉が入らないというふうに解釈するならば、当然に電気事業公共事業令等のその他の法令に書かれておるところの火力という言葉にも、原子力は入らないというふうに解するのが妥当だ。そうすれば当然に私は、電力会社においても同様に、もし原子力発電電源開発会社火力という言葉の中に入らない、従って、これはみずから行なってはならないという解釈になるならば、やはり普通の電力会社の方もみずから原子力発電を行なってはならないという解釈になろうかと思いますが、その点はよろしゅうございますか。
  31. 大野実雄

    大野参考人 私の申しましたのは、私個人の解釈でございまして、電源開発促進法公共事業令その他にございます「火力」という文字に原子力を含むか含まないかという、そういうできた法律解釈というものは、やはりこれは司法解釈、最高裁判所解釈を得ませんと何とも申し上げられないのでして、ただ私どもできた法律を読んでおります立場から申しますと、率直に申しまして水力または火力というものに原子力というものは含むものとして積極的な解釈を下すことはきわめて困難である、こういうように解釈しておるだけなんであります。ですから、法律の文字というものはわかりやすく作っていただきたいのでして、水力火力原子力を含むということは、私ども解釈としては、非常に困難だということを申し上げる程度にしていただきたいと思います。
  32. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 よくわかりました。従って普通に読むならば、火力の中には原子力を含まないだろうという御解釈として、了解をいたしたいと思います。  そこで、法制局の人にもう一ぺん聞きたいと思います。今お話がありましたように、率直に条文を読んだ場合には、火力という言葉の中に原子力を含むか含まないかということで、少くとも疑義があると思います。その点は御承認になると思います。もしこれに疑義があって——そして、現実は今まだ電源開発会社一般電力会社も、みずから原子力発電を行なってはおりません。しかしながら、今問題が出ました二番目の、原子力発電会社株式を引き受けるということ、むしろ設立行為には現実に参加しているという状態であります。そこで問題は、先ほどの解釈に従いまして、もし火力というものの中に、原子力を含まないと考えるということと同時に、電源開発会社公企業性にかんがみて、そして今度でき上った原子力発電会社はやはり営利性を持つもので、少くとも公企業の系列には入りがたい会社であるとする場合には、やはりそれの株式を引き受けることは妥当ではなかろうという解釈が一応成り立つ、今、大野さんからお聞きの通りであります。その際に、先ほど法制局野木さんは、火力の中に原子力を含めるという解釈だから、別に何でもないというお話をされた。しかし、今の大野さんのお話では、火力の中に原子力を含めないという解釈と、もう一つは全然別に、電源開発会社は完全な公企業である、そして今度でき上ったところの原子力会社営利性を持つものだ、従って、この営利性を持つ会社設立行為に参加するということは妥当ではなかろうという解釈が成り立つ。従って、この後半の解釈に対しましては、火力の中に原子力を含むか含まないかという問題と、ちょっと問題が別であります。従って正直なところ、現行法を解釈する場合に、火力の中に原子力が完全に入らないと言い切る解釈は、現在のところ困難だろうという解釈を私はとります。しかしながら、あとの問題の電源開発促進法並びに関係法から見まして、営利性を持つところの会社に対して、会社株式を引き受けられるか、引き受けられないかという問題に対して、これは半分くらいイエスとかノーとか言えるぐらいの感じで解釈してもよかろうと思います。その場合に、先ほどお話がありましたように、もしこれが不当だという解釈が成り立つならば、この原子力発電会社設立行為に瑕疵があることになる。従って、電源開発会社が参加した分の資本だけは不足ということになって、その意味発起人責任が発生し得るという解釈に対しましての法制局の御見解を承わりたいと思います。
  33. 野木新一

    野木政府委員 私どものとった考えと反対のお立場に立ったお考えでありまして、ちょっと何とも申し上げかねますが、しかし、仮定論的に、お考えのような解釈が全部唯一絶対に正しいという前提をかりにとるとすれば、やはり発起人責任という問題は法律的には生じ得る、そういう論理の過程にはなるだろう、そう思います。
  34. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 どうもあまり話が違い過ぎて、ピントが違い過ぎちゃって困るのだが、野木さんにもう一ぺん伺います。  火力の中に原子力が入るか入らないかという問題は、松前さんが、専門家が来られましたからそちらに譲りますが、それはあとの問題にしまして、電源開発株式会社原子力会社設立行為に参加することが適当であったかなかったかという問題、その問題につきましての先ほどの解釈は、これはまず公企業論になっていると見ていいと思うが、そこのところのあなたの解釈はどういうことですか。電源開発会社がこの設立に参加していいという解釈の論拠、つまり営利性を相当に持つところの会社、現在の電気会社とほとんど同じくらいの営利性を持つところの会社設立に参加していいという解釈の根拠ですね。
  35. 野木新一

    野木政府委員 私どもといたしましては、電源開発株式会社が将来原子力発電までもやるということが相当確実性があるというお話がありましたので、そういう場合に備えて、将来そういう事業を行う場合に習熟しておきたい、そういう方法として金を出すということに主眼を置きますので、すなわち、逆に申しますれば、出資して、それによって大いにもうけようという方に主眼を置いて金を出すというわけではありませんので、その点はまず解釈としてもいいのではないか、そう存じた次第であります。
  36. 有田喜一

    有田委員 関連してちょっと大野教授にお伺いいたしますが、公企業は、その関連した事業に投資するとかなんとかいうことは許されないのですか。あなたは公企業と普通の事業とで違うというような解釈をとっていらっしゃるようですが、公企業というものは限定した形でなければならねということは、その妥当かどうかということはわかりますけれども法律論として、公企業ならばそういう関連したものに対して投資することはいかぬとか、あるいは発起人になってはいかぬとか、そういう法律論はどこから出てくるの、でしょうか。
  37. 大野実雄

    大野参考人 その問題は非常に重要な問題だと考えるのでございますが、私は、電源開発株式会社というものは、この法律にございますように、ある一つ目的を持って、日本の九電力会社というものに対して、それを公共的な見地から助成していき、ある一定の将来の時期には、電源開発という事業目的を達成して、解散していい会社じゃないか、こういうふうに考えるのであります。ところが、新しい産業として起きて参りました原子力発電というようなものを考えてみますと、これは全然別な考え方に立っていくべき問題でありますし、それからもう一つ電源開発会社という銀行固有業務のようなはっきりした目的を持っている会社が、民間の営利会社設立発起人として参加して、もしそこに資本に瑕疵があったとか設立手続に瑕疵があった場合は、発起人としての責任を負わなければならない。それからまた営利事業でありますから、非常なリスクを負担することは当然明らかなんでありまして、それを営利会社出資する、発起人にならないで単純な公募に応じて株式を持つということが、少しでも利潤をふやしていこう、資産の運用として上手に運用していこうという建前なら、これは理解できるのでありますけれども、みずから自分の危険、固有の危険の別個の危険に参加していくということは、公益中業でありますところの電源開発会社としてはやはり許されない。アメリカのフレッチャーという人の書きました書物を見ましても、大体パブリック・ユーティリティを持ったそういう会社というものは、非常に能力を厳格に規定しておりまして、これは一々控えて参りませんでしたけれども、そういうものをアメリカでは、ほかの一般営利会社の場合とはかなり区別して厳格に扱っているように私ども読んでおるわけなんであります。ですから、私が申しましたのは、電源開発会社というものの目的がそういうところにあるということと、自分の事業の危険だけでなくて、他企業に投資することによって、ほかの企業の危険までかぶってくるということに、公共性というものに反するおそれが出てくるんじゃないか、無制限にそういうことを許すということになれば、本業である電源開発というよりも、その別な事業の方に本体が移っていくということは、これは法律の趣旨じゃないんじゃないかというふうに私考えるものでございますから、公共性を持った電源開発会社としては、プロパーの仕事に邁進すべきであって、もし必要があるならば、すみやかに自分の仕事を達成した後に、新しい構想でもって国家独占事業として——大へん口幅つたいことかもしれませんけれども、実は法律を調べますと原子力関係の法律が実にたくさんありますし、法人が幾つもできておるのでございまして、これはむしろもっと一元的に強力な、国家独占事業ぐらいにして育成していくべきじゃないか。それでないと、おくれております日本原子力産業というようなものが飛躍的に発展していくということは、なかなか期待し得ないのじゃないか。資本金の額から申しましても、そう大きな仕事ができるようなお金を政府が出しているとは思わないのでありまして、もしたくさん必要なものでありましたら、一元化して、国の独占でりっぱな成長を遂げてもらいたいというくらいに考えておるわけでございますから、電源開発会社がそういう民間を主体とした営利会社出資していく、しかも発起人として入っていくというようなことは、私は、極端に申せば、逸脱じゃないかとさえ考えておるわけであります。
  38. 有田喜一

    有田委員 営利会社営利会社と一口に言われますけれども、電気会社というものは、純粋な営利会社ではないのです。御承知通り、いわゆる公益事業という広い意味公企業なんです。従いまして、先ほど佐々木委員から御質問のあったように、普通の九電力会社といえども、これは法律によっていろいろの拘束を受けるいわゆる広い意味の公益事業です。そこでお尋ねいたしたいと思うのですが、電源開発促進法の二十三条を見ますと、四号というのがあります。このような条項は従来の特殊会社によくある条項なんです。たとえば九電力会社ができる前に、日本発送も会社も、やはりこの四号の付帯業務といいますか、各号の目的以外に、それに関連する事業をやることになっておった。自発があるいは石炭の採掘をやる、あるいはその当時普通会社の電気会社の株もたくさん持っておる、そういうことをやらないと電源開発の固有の業務を達成する上において苦痛が出てくる場合がある。むしろ関連のものに対しては、固有の業務ではないけれども、それに投資することが、一そう適切な場合があり得る。それで、広い意味電源開発の場合には、原子力発電も入るわけです。今度できるであろうところの原子力発電会社は、営利会社営利会社とおっしゃいますけれども、その辺の普通の営利会社と趣きを異にしております。そこで、さっきの法制局火力論もありましたが、これは水かけ論だと思います。これは公益専業法ができたときにも、電源開発促進法ができたときも、原子力発電というものがなかったときですから、だれも原子力発電というものは想像していないのです。そこで、水力または火力ということが書いてありますけれども法律というものは時代の進運に従って適切な解釈を下すのが私は妥当だと思います。この意味において、火力という中に、電源の一つとして原子力発電を入れることは、必ずしも不可能ではないと思います。しかし、それは一歩譲って考えましても、二十三条の第四号の関連といいますか、関連事業に投資あるいは発起人となるようなことは、法律論として私は不可能ではないと思います。しかし、それが非常に行き過ぎになって、投資が大へん大きな額に達して、本来の業務を逸脱するときには、政府、その監督官庁において、こういうものをいろいろ制限することが必要かもしれませんが、法律論として、関連したもの、いやしくも企業以外のものは一切まかりならぬというような、それほど厳格なものではないと思う。今までの日本発送電などという会社は、従来の普通の電気会社の株も所有しておったし、平気でやっておった。そのことが本来の固有業務を発展せしめるゆえんであると監督官庁がそれを認めながら、許認可して、そういうものをやらしておった。それは政治なり経済論からいって、当、不当を人の見解によってし、電源開発会社が株を持つことが妥当であるかどうかということは、これは第二段といたしまして、一がいに今度できるところの原子力発電会社株式会社であるから営利会社である一口に言って、こういうものに投資することは絶対まかりならぬというような、それほどのものでは私はないと思うのです。今度の原子力発電会社も、先ほど言いましたように広い意味で公益事業であり、公企業性格を持っておる。ことに発電ということは、電源開発と共通の目的を持っておるわけですから、それに対してそうやかましく言うほどのことは私はないと思います。私は今までの法律常識論として、日本発送電会社の運用のときにも、そういうことを考えてきたのですが、その見解はどうでしょう。
  39. 大野実雄

    大野参考人 これは二十三条第四号の付帯事業でございますけれども、先ほど申し上げましたように、たとえば、銀行手形交換所に参加するということは付帯事業としてもっともだと思うのでありますが、しかしながら、ミュージック・ホールを作る会社出資をするということになれば、これは逸脱してくる。それから銀行の常務に従事している取締役が、ほかの会社の常務に従事するというときには、主務大臣の認可を受けなければならないというような規定さえあるのでございまして、やはり何が付帯であるかどうかということは、これは必ずしもこういう一般条項があるからといって、電源開発原子力発電にまで参加し得るというふうには直ちにいけないのではないか。お言葉を返すようで失礼でございますけれども、むしろ私は、この付帯事実というのは、民間の会社である場合には、最高裁判所判例を見ましても、だんだんその能力を拡大して参りまして、そうしてある学者は、むしろそういうワクを考えない方がいい。法人格の権利の乱用にわたらない限りは、能力を広く認めるべきだというふうに申しておるのであります。そういう問題はございますけれども、私一つ疑問に思いますことは、それならなぜ二億円くらいのお金を政府がじかに原子力発電会社出資なさらないのか。政府が完全に支配しておる電源開発を通して間接に原子力発電に投資しなければならないという理由が私にはわからないのでありまして、もし必要があるならば、政府がなぜじかに原子力発電出資していけないのだろうか、なぜそういう道をおとりにならないのだろうかという  ことが、私にはむしろ大きな疑問になって参ったのでございます。ですから、ただいまの解釈につきましては、私はやはり付帯事業の中に原子力発電会社設立発起人として参加するということまでは含めない、こういうふうに解釈したいと思うのでございます。
  40. 有田喜一

    有田委員 これ以上言うと見解の相違になってくるのでありますけれども、しかし、普通の九電力会社ならばかまわないが、電源開発はそうはいかぬ、これは法律論として私はおかしいと思うのです。かりに火力というものの中に含まれているというならば、これは普通の九電力電源開発も同じ解釈をとらなければならない。かりにそれを一歩譲ってみましても、決して関連していないものじゃないのです。電源という大きなものは共通しておるのです。ことに電源開発と九電力は、大きくいえば十のものが一体となって日本の電気を開発し、日本の電気の供給をやっておるところなんです。それを便宜上、電源開発促進する意味において、こういう特殊会社ができておるだけでありまして、そう九電力電源開発性格が違うというものではないのです。やはり電源開発も、公共事業令ですか、この適用を受けながら来ているのですから、性格は同じものです。特別な監督なり制限が加えられておるだけでありまして関連事業というものは、やはり普通の九電力会社原子力発電に関連してそれに出資し、あるいは発起人となる、それと同じように、電源開発がそれに加わっていくということは、必ずしも私は逸脱していると思わないのです。しかし、これ以上言うと見解の相違になりますが、そう設立に瑕疵があるというような、私はそういう性格のものじゃないと思う。これが証券会社の株を莫大に買うとか、そういう方面に逸脱すると非常に問題がありますが、広い意味電源開発ということに参加していくことは、そう設立に瑕疵があるというところまでいかなくても済む問題じゃないか、私はそういうふうに解釈します。たとえば、今までの日本発送電会社が石炭会社を作り、あるいはそれに出資していく、これはだれも少しの疑問も抱かずに来たのです。それと同じように、これが関連産業として原子力発電を直接やるならばともかく、これに投資していくくらいのことは、私は二十三条の四号の解釈としても、当然成り立つと思う。ましてや、火力ということに対してその当時はなかったということですから、今日の時代にふさわしい解釈なら、広い意味開発の中に含めるという解釈は、九電力電源開発も同じ解釈をすべきだと私は思います。
  41. 菅野和太郎

    菅野委員長 田中武夫君。
  42. 田中武夫

    ○田中(武)委員 先ほどの佐々木君の質問に関連をいたしまして、一言お伺いしたいと思います。法制局の方にお伺いしたいのです。参考人法制局との見解の相違は二点ありますが、一番大きいのが電源開発促進法第十三条三号の、いわゆる火力の中に原子力を含むか含まないか、こういうところにあると思うのです。法制局の方は含むという解釈のようですけれども電源開発促進法は二十七年の七月に成立した。それならば、この電源開発促進法制定の当時すでに火力の中に原子力を含むということを立法者は考えていたか。その当時火力というものの中に原子力というものは考えていなかったと思う。もし考えていたならば、原子力ということもあわせて記入すべきではないかと思うのですが、立法者の意図は、その当時そういうことを考えていなかったと思うが、法制局見解はいかがでしょうか。
  43. 野木新一

    野木政府委員 私は、当時直接ただいま御言及の法律の立案に関与しませんでしたから、果してその当時そういうことを考えたかどうかわかりませんが、しかし、常識的に考えまして、当時原子力というものはあまり問題になっていなかったのではないかと考えますので、具体的に含むとかなんとかいう意味で頭に置いたかどうかという点は、あるいはおっしゃる通りないのではないか、そうは思います。しかしながら、法律解釈といたしまして、立法者の意思という言葉を使いますれば、その立法者の現実的意思というよりも、むしろ立法者の合理的意思を探求するのが法律解釈の態度ではないかと思うのであります。そして、火力というものにつきましては、今まで電力の方を主管しておる通産省方面では、火力という言葉におきまして、今度の問題が始まる以前から、火力をむしろ熱力という意味解釈してきておるようでございます。そうしますと、今まで電力関係の主管庁あたりがとってきた解釈の態度から推して、今度の問題を考えてみますと、原子力もおのずから火力のうちに含まってくるのではないかということで、私ども火力原子力は含めて解釈し得るのではないか、そういうような結論に到達いたしたのでございます。
  44. 田中武夫

    ○田中(武)委員 法律のことについては法制局は専門家でございますから、あなたの方の解釈の方が私たちのしろうと考えよりは正しいかと思いますけれども、十三条のこの一号、二号、三号を見ました場合、一号は、たとえば「只見川」云々とあり、二号は、とこう見た場合におきまして、非常に限定的な規定をあげておる。しかも、先ほど電源開発株式会社の問題について、公企業とか、あるいは公益性とか、特殊法人とかいう言葉が問題になっておりますが、特に特殊法人として公企業をやらすというところから、そのなし得る事業目的を限定して書いておるのではないかと考えるのです。そうすれば、火力ということについても、厳格な解釈をなすべきであって、そう拡張解釈または類推解釈をなすべきではないと考えますが、その点いかがでしょうか。
  45. 野木新一

    野木政府委員 繰り返して申し上げますが、私も、今度原子力の問題が起ったとき、初めて火力というものをむしろ熱力というような点を中心的に考えたというような解釈をとったのではないのでありまして、すでに電気の方を主管しておる主務官庁あたりは、水力発電火力発電といっておるような場合には、火力というのは、文字通り火の力というふうに考えないで、熱力をむしろ中心として考えてきた。そういうように、少くとも常識的に考えていろいろな行政なりあるいは多少の規則というものも、そういうような考えでできておるということがわかりましたので、それならば、そういう点から考えてみるならば、原子力もおのずから火力の中に含まれてくるのである、そういうように解釈したのでありまして、今度の問題が起ったので、これを押し込めるために特に火力を拡張解釈したというわけではございませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  46. 田中武夫

    ○田中(武)委員 法制局の言われることは一応聞いておくことにいたしましょう。  そこで、大野参考人にお伺いしたいのですが、先生は法律のこれまた専門家でありますが、私たちが電源開発促進法を見ました場合、この十三条がことにこまかく地域をあげて規定しておる。こういうような点から見てあとの火力という点もそう拡張解釈をすべきではない。こういった特殊法人事業、こういうものに対する各号に掲げてあるその他の字句、そういうものを私そう拡張解釈すべきでないというのが建前であろうと考えますが、参考人のお考えはいかがでしょうか。
  47. 大野実雄

    大野参考人 一番最初にその点私申し上げたのでありますが、電源開発促進法では、電源開発という用語を使っておられます。それから、日本原子力研究所法という法律では、原子力開発、こういう用語を使っておるのでありまして、法律の用語としてははっきり範疇を区別しておる、こういうふうに私考えるのです。法律目的から見ましても、電源開発促進法でいう電源開発という言葉には、原子力開発という言葉は入らないのだ、法の精神はそういうふうに解釈できるのだというふうに、私率直に一番最初に申し上げたわけなんです。
  48. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私それはわかりますが、私のお伺いしておるのは、そのことと同時に、一般的な法解釈をやる場合に、たとえば、この電源開発促進法といった特殊法人の規定、これは特別な目的をもって作られる特殊法人でありますから、それらのような会社のなし得る行為は厳格に規定し、また定められた法律あるいは規則は、厳格に解釈すべきではないか。特殊法人ということによって、一般になし得ることから特別なものをきめるのですから、この特別法に対しては特別に厳格な解釈をすべきではないか、こういうように考えるのですが、そういう点について、一般的なルールの問題としてお伺いしているわけです。
  49. 大野実雄

    大野参考人 それは、法律解釈の場合非常に難問題でございますが、たとえば刑法とか親族法とか、こういうような法律でございますと、あるいは私が再々例にいたします銀行とか保険、こういうような業務になって参りますと、解釈はかなり厳格でございます。しかも、先ほどもちょっと触れましたアメリカのパブリック・コーポレーションの中のパブリック・ユーティリティを目的とする企業につきましては、厳格な解釈が行われているようでございます。
  50. 田中武夫

    ○田中(武)委員 大体わかりましたが、私ども、特別法の解釈は拡張解釈すべきでない、このように考えておるわけです。  あと続けて政府委員の方にお伺いしたいのですが、日本原子力発電株式会社定款を私見ていないのですが、日本原子力発電株式会社目的事業、そういうことほどういうように規定してありますか。
  51. 法貴四郎

    法貴説明員 お答えいたします。目的を読みますが、「本会社は、初期の段階における原子力発電の企業化のために実用規模の発電原子炉を輸入して、次の事業を営むことを目的とする。一、原子力発電所の建設、運転操作およびこれに伴う電気の供給二、前号に付帯関連する事業」とございます。
  52. 田中武夫

    ○田中(武)委員 九月十七日ですか、本委員会において、松前委員の質問に対して、正力国務大臣は——きょうは大臣が見えておりませんので、あらためて大臣にその点をお伺いしたいと思いますが、正力国務大臣は、「私は先ほど申し上げました通り、これは電力の供給もあるが、研究ということに重きを置いておるということでありまして、従って、これは試験的なものであります。」こういうように、本委員会において、今度作ると予想されておる、すなわち今できておる原子力発電株式会社の構想について意見を述べておる。もし正力国務大臣がこの委員会において言われたことがそのままの構想であるとするならば、ちょっと違っておると思うのです。先ほどもちょっと参考人からも話がありましたが、もしこの研究とか企業化に持っていくといったようなところに重点が置かれているならば、今できておる原子力研究所においてなすべきではないか、このように考えられるのですが、参考人はいかがお考えですか。
  53. 大野実雄

    大野参考人 私も同様の意見であることは、先ほど申し上げてあります。
  54. 田中武夫

    ○田中(武)委員 けっこうです。あとは正力国務大臣に来てもらいますから。
  55. 菅野和太郎

  56. 松前重義

    松前委員 私は法制局にお尋ねしたいのです。あなたの御答弁は、法制局長官の御答弁と同じだと受け取ってよろしゅうございますか。
  57. 野木新一

    野木政府委員 説明のこまかい言葉づかいは別問題としまして、考えの基礎においては、長官の承認を得てきております。
  58. 松前重義

    松前委員 先ほど来の論議の中にありました電源開発促進法の中の電源開発株式会社に関する事業の内容の問題、わけてもあれは地域的に北上川、只見川、球磨川という川の名前まであげて規定してある法律であります。その最後のところに、ちょこっと火力ということをくっつけておりますが、それで、そこに原子力発電は熱を利用してやる発電であるからしてそれを加えたのだ、こういうことなんです。この点再確認したい。当りまえのことかもしれませんけれども原子力発電は熱を利用するものであるから火力とみなした、こういう御解釈ですね。
  59. 野木新一

    野木政府委員 実は、私技術的なことはあまり詳しくは知りませんでして、今言うような点は、通産省側からとかほかの方の説明を聞きましたところを私了解したことでありますが、火力というのは、文字通り火の燃える力というのが中心なのではなくて、今まで電気産業方面で使っておりましたのは、熱力、英語で言えばサーマル・パワーというのと同じように使ってきておるわけであります。そういうことを基礎にして考えますと、今言われているような原子力発電というのも、おのずからここに含み得る、そういうふうになるということから申し上げておるのであります。
  60. 松前重義

    松前委員 もしも原子力発電が熱を利用しない場合はどうなりますか。
  61. 野木新一

    野木政府委員 熱力が中心という観念からいきますと、そこはまたいま一度議論をし直すということになる。また別の議論も出るのではないか。私ども一応その点を限定して、その限りで議論しておりましたので、それ以外のことはまだ十分議論しておらないわけであります。
  62. 松前重義

    松前委員 その場合は別にまた、それだけを限定した熱力外のものである場合においては、また別な会社をしかるべき方途でお作りになってやらせるというつもりなんですか。原子力発電会社にそういう熱を利用しないものはやらせられないことになるから、そのおつもりなんですか。それができたと仮定してですね。
  63. 野木新一

    野木政府委員 今のところでは、大体熱力ということはサーマル・パワーですか、そういう説明を聞きましたが、そういうことを中心に考えると、今考えられている原子力発電は、そのうちに含み得るというので、通産省側とか電気の方の主務当局が今までずっととってきた解釈、態度を前提として考えましても、その解釈におのずから乗ってくるという限定で、私どもは、普通の問題から言いますと、ここでしばしば議論したように、火力というのに原子力は含むのだなということにちょっと首をかしげる、実は私全然電気の方は知識がなかったのでありまして、初めは多少異様に感じたという点がございます。しかしながら、だんだん電気の実際の行政を運営しておるという方の人から考えますと、火力というのは非常に国語的の火の燃える力というのが中心ではなくて、むしろ、もう少し広く解釈し、熱力、サーマル・パワー、そういうような意味解釈されてきておる。そうして、そういう解釈のもとに立つと、今の原子力というものはどうなんだ。果して原子力はサーマル・パワーに入るかどうか、そういう技術的のこまかい点は、私どもは十分は承知いたしませんが、そういう技術的の知識のある者の説明では、サーマル・パワーという場合には含み得るというので、それならばそれで問題ないのであるというような議論になったのであります。
  64. 松前重義

    松前委員 科学技術庁に伺います。通産省は御存じないでしょう。それだけの説明をされたとすれば……。科学技術庁はおそらく御存じだろうと思う。それは、ニュークリアスというアメリカのニュークリアン・エンジニアリングとアトミック・パワーの雑誌でありますが、この雑誌のオーガスト・一九五七年、これに出ておりますのは、プラスマ・リアクター・プロミセス・ダイレクト。エレクトリック・パワー——直接原子力から電気を起す場合に、熱力を利用しないで起す、すなわち原子力が出てくるベータ線をマグネチックに集めて、そうして。ポテンシャルを上げて、直接直流をとる、こういう発電方式が生まれようとしておる。これは御存じだろうと思いますが、いかがですか。これは熱を利用しませんよ。
  65. 法貴四郎

    法貴説明員 拝見しております。ただ、それはまだアイデアの域でありまして、これから基礎研究、実用段階というふうに進むには、まだ相当年数がかかるというふうに考えております。
  66. 松前重義

    松前委員 あんまり法制局を擁護しないように……。(笑声)火力の中に原子力を含めるという解釈自身が非常に無理どころではなく、その当時は考えていなかったということは当然なことなんで、そんな牽強付会なことをこじつけて、こうやくばりのやり方をしてはいかぬと私は思うのですけれども法制局が無理やりにそういう御答弁をなさって、そうしてこじつけようとしておられるから、そこでもしもそれをこじつけたと仮定しても、こういうふうにベータ線を直接磁力でもって集めて、そうしてこれでポテンシャルを上げる、直流を出すというようなやり力が今考えられておる。私はエネルギーの転換というものは、何も熱にしなくともいいと思う。今、法貴さんから答弁がありましたように、それは将来のことではあるが、人工衛星だって今どんどん飛んでおりますから、そう遠いことじゃありません。のんきにしておると間違うと思う。科学技術庁はもう少し熱を上げて、こういうものを推進して、アメリカのまねをしないようにしてもらいたいと思う。とにかく、このようにして原子力発電なるものは、エネルギーを熱に転換するものは何でもかんでも熱と関係があるから、エネルギーであって、それは火力であるというならば、森羅万象のすべてのものは火力ですよ。そうすると何でもかんでも火力というものの中に結びつけてしまうのが、あなた方の解釈なら、ほかに言葉は要りません。だから、そういう意味において、こういう時代が訪れておるというこの現実に対処して、あなた方の解釈はあまり冒険であり、しかも牽強付会過ぎやしないか、私はそう思っている。法律屋ならば法律屋としての厳格な限界点をここにしたらいいじゃないか。そうしないと誤まりますよ。非常に早い機会に私はこういう現象は出てくると思います。どうですか、法制局の御意見は。
  67. 野木新一

    野木政府委員 松前先生のおっしゃったことは、立法論的に考えますと、非常に傾聴すべき点を多々含んでいるものと存じます。しかしながら、法律解釈論といたしまして、私どもが先ほどからしばしば申し上げておりますように、原子力電源開発促進法にいう火力にこの際特に押し込めるために、火力を拡張解釈したという態度は少しもないのでありまして、私ども火力というものにつきまして、今まで火力は、全然こういう電気に関係のない人が火力ということを聞きますと、火の力というように常識的に想像されるよりもさらに広く解釈されて運用されてきておる。その中心としては、英語のサーマル・パワーといいますか、熱力が中心の観念として、水力火力というように運用されて、通常考えられておるというのでございまして、そういうことから考えますと、今度行われておるような原子力発電というようなものは、今までいわれている熱力という解釈の中におのずから含まってくるというような事情がありますので、言葉自体からいうと、火力原子力が含まれるのだというのは、一見非常に無理ではないかというような議論も出ると思いますし、確かに私どもの部内でも、初めのころには、そういうものも果して含めるのかという議論もありましたが、今言ったような説明をいろいろ聞いておる過程におきまして、なるほどそれは必ずしも無理ではないという結論に達したのであります。ただ、松前先生が御指摘なさいました最新の知識による原子力発電の点でございますが、この点は、私ども、その説明のときに、実は全然承わりませんので、そこまで果して含み得るかどうか、むしろ熱力を中心として考える点からいくと、そこまではあるいは無理ではないかというような気持もいたされますが、その点はまだ十分検討はしてございません。
  68. 松前重義

    松前委員 だから、私が申し上げるのは、そういう技術の発達というものは、決してサーマル・パワーの方向に行ってばかりいない。またサーマル・パワーの方向に行かせるということは、非常に発電能率が悪くなります。従って、こういうふうな直接電気をとる方法に必ず向います。もう設計までちゃんとできておる。だから、そういう方向に向います。そういう場合も想像されるのだから、あなた方が火力の中に原子力も含めるという無理やりな解釈そのものをせっかくなすったと仮定しても、それを一応肯定したと仮定しても、熱力以外のものにこれが進展する、そういうものをやはり火力の中に包含さして、ああいうふうな無理な法律をお作りになるようなことはいかがだろうかと私は思う。これは後世において笑われることになる、とんでもない大きなあやまちを犯したことになるのです。人間ですから、いろいろ言いわけはありましょう。しかし、今にしてこの問題を本質的に、法律的に——私は法律の専門家ではありませんけれども、科学の立場から見て、包含するのは無理であることはわかっておる。こういう場合もありますから、従って、その点について、あの法律解釈は間違いであったということをお感じになっていらっしゃるかどうかをお伺いいたします。
  69. 野木新一

    野木政府委員 私ども立場といたしましては、今、現実に持っているいわゆる原子力というものを考えた、それを前提にしての考えでありまして、その限りでは、今までの解釈は必ずしも直ちに修正するということにしなくともよいのではないかと存じます。
  70. 松前重義

    松前委員 歴史はどんどん進んでおります。しかも、現実というものに対処しての法律でなくてはならぬと思う。今、審議する法律は、昔の法律を審議しているのではない。この過去の時代を中心とした法律のごときは、現在審議すべき法律ではないと私は思っている。そういう意味においても、今のあなたのお話は、どうもこの私が言っている現実というものを無視して、さらに昔の科学の基準でもってやるのだというような御答弁のようであります。また、政府の中にそういう知識がなかったから仕方がない、だからおれは責任がないのだというような御答弁のようにも聞える。もしそういう知識が政府にないならば、政府の責任であります。だから、勇敢にこれはあなた方はそういう解釈をお取り消しになる必要があると思う。いかがでしょうか。
  71. 野木新一

    野木政府委員 私どもは、水力及び火力といった場合の火力は、いわゆるサーマル・パワー、熱力というように今まで解釈、運用されてきている。その限りで、原子力も、今度の問題になっているような原子力発電というものは、その限りでその中に含まれ得る、そう考えたのであります。御指摘のように、いろいろ原子力の方は発達する時代でありまして、サーマル・パワー、熱力という点では包含できないという事態が招来いたし、また近く招来されるということが確実であるというのならば、これはむしろ立法論的に解決すべき問題でありまして、それをすべて解釈でまかなえるかどうかという点は、やはり問題が残るもととなります。
  72. 松前重義

    松前委員 どうも御答弁が苦しそうでありますけれども、お気の毒ですが、もう少しお尋ねしたいと思います。とにかくここに設計もちゃんと出ておりまして、カリフォルニア大学で——名前を言いましょうか、コルゲートという人とラーモントという人が、ユニヴァーシティ・オブ・カリフォルニア、ここで研究を続けております。そこで、こういうふうな方式は、明日の発電方式として必ず登場してきます。そういうときに、政府の内部にその知識がなかったから、この解釈でいくんだという御答弁で一体いいんでしょうか。現実にこういうものがあった。そうして、この方向を向いているということも一応頭において考えるときには、サーマル・パワーばかりをあなた方が無理やりに拡張解釈をなさろうとしても、それは無理だという結論に到達する——したはずなのです。したはずだけれども、そのときそういう意見が政府部内になかったから、もうこれでいくんだ。すなわち政府の知識というものが最高であって、そのほかにいかなる知識が存在しようとも、そんなものは法律の対象にならない。法律を作るときの一つ参考にならない。こういう考え方ならば別といたしまして、とにかく現実に存在している知識なんだ、この姿を無視しているということは、私はいけないと思う。そういう意味において、政府はすみやかに今の拡張解釈はもうおやめになっていただいた方がいいと私は思うのです。法政局を代表して、やめるかやめないかはっきり答弁して下さい。
  73. 野木新一

    野木政府委員 私どもは、今度の解釈をする際におきまして、現在の時代を頭において考えましたので、現在のところでは熱力ということで考えられる、その範囲原子力も広義に含めて解釈することについては、さして問題ないだろう、そういうふうに解釈したのであります。
  74. 平野三郎

    ○平野委員 関連して。実は先ほど電源開発促進法を制定したときの立案者の意図がどこにあったかという御質問がございました。それに対して法制局では、当時立案者が原子力というものを予想していなかったかもしれないが、しかし、合理的な立案者の意図というものを解釈しなければならぬというようなお話がありました。私は電源開発促進法の成立に参加した一人でありまして、ことにこれは福田一君が提案者の代表として国会において答弁なさったわけで、福田君とも協議しまして、熱心にこの法律の制定に当ったものでありますが、われわれは当時そういうことは全然予想しておらなかったのであります。特に申し上げたいことは、もしあの法律を作るときに、火力の中に原子力を含めるのだというような解釈をわれわれがしたとするならば、当然原子力というものをそこへ入れることが当りまえであります。そして、それだけじゃとどまらない、ということは、原子力はほかの水力火力と違いまして、全く世界の産業の基礎を変革するような独特のものである。しかも、それには非常に広範な社会に及ぼす影響というものを考えなければならない。たとえば、具体的に言えば、発電炉を作りましても、日本は地震国であるから、もし地震によってこれが破壊されたような場合に、どういう影響を及ぼすか。その影響は、大きくいえば、放射能を出すわけでありますから、人類の絶滅に通ずるほどの大被害というものを考えなければならなくなる。従って、もしあの火力の中に原子力を含めるのだという解釈をすれば、当然当時そういう広範な社会に及ぼす影響を防除するような別の法律の条項というものがなければならない。いやしくもあれだけの法律を作るのには、非常な苦心をしたのであります。おそらく普通の常識で判断しましても、当然別の規定というものを考えなければならないのであって、ただ火力の中に原子力が含まれておるとか、火力水力の場合と同じように、特別の規定というものがなしで法律を作るというような、そんな浅薄な立案者ではない。だから、この法律を作った立案者の精神を侮辱する、じゅうりんするのもはなはだしいものがあると思う。それほどわれわれはばかじゃないですよ。法制局ともあろうものが、そんなわかり切ったことを調べもしないで、立案者は、そういう意図でなかったかもしれぬが、今日これを合理的に判断すれば、原子力というものは火力に含まれておるんだというような、それほどの私は曲解というか——、しかもこの曲解は広く国民社会一般に非常な悪影響を及ぼすということを考える場合は、今の法制局解釈というものは重大な問題であって、軽々しくここで見のがすわけにはいかぬ。これはほんとうによくお考えになって、誤まりは率直に直せばよろしい。すみやかに一つ政府も法制局もお考え直しになって、今、松前さんの御指摘になっておる通り、科学的に見てもつじつまが合わない。それは別として、政治的に考えた場合、そういう解釈をするということは、おそらくは誤謬を生ずることになるのでありますから、これはすみやかにお考え願うべきものと思うが、政府及び法制局の御見解を重ねて伺いたい。
  75. 野木新一

    野木政府委員 立案に関係せられました方の御意見でありまして、まことに貴重に拝聴いたしたわけでありますが、私どもは、部内でいろいろ論議しましたときには、最初は入らないじゃないかという議論もありましたが、いろいろ議論していくうちに、火力というものは今まで熱力というように解釈されてきた、そうしたならば、原子力発電というものも大体熱力という中に入り得るということになりますので、その町長では原子力発電火力発電ということになり得るじゃないか、そういうふうに解釈したわけでありまして、立案のときのことも多少は聞きました。何か初め水力があって、火力というものがあとで入ってきたという多少いきさつを聞きましたが、今伺ったようなことまでは私どもも聞きませんでした。というのは、おそらく当時原子力というものは今ほど具体的になっていませんでしたので、そこを具体的に頭において立案したものでないということは、私ども想像されたのであります。しかし、法律解釈というのは、何と申しましょうか、できてしまえば、法律は一本立ちになってしまうのでありまして、その解釈はそのときに従って合理的に解釈するということになるのだと思います。しかも電源開発促進法の中にいろいろの危険とか何とかいうような手当も何もないじゃないかというようなことでありまして、そういう点から見て含めるのは無理だということもありますが、それも一応の御見解とは存じますけれども、すでに危険とか、危険防止とかいうような点は、ほかの法律の方でそれぞれ順次手当されてきておりますので、あながち電源開発促進法にそういう点の規定がないからといって、原子力火力に入らぬのじゃないかということまでも言い切れないのじゃないかと存ずる次第でございます。従いまして、私どもの下した解釈は、今の時代におきましては直ちに変更するという必要もないのではないかと存じておる次第でございます。もっとも、非常に有力な方々がお集まりの席でこれだけの議論があるのでありますから、われわれは何か立法論的に解釈したらどうかという御批判に対しましては、十分傾聴すべきものだとは存じております。
  76. 平野三郎

    ○平野委員 今のことであなたは、原子力というものを根本に認識をしておらないと思うんです。水力発電火力発電とかいうものが発達して、そのうちに原子力までできたというようなことは、全くの新しいものが出現した、いわゆる一つの産業革命の基盤になるものなんです。それを火力の中に含めておるんだという解釈をするとなれば、これは原子力というものを全然知らないということになるわけなんです。その点からいっても、今のあなたの御見解というものは、根本に間違っておるということを御反省願いたい。議事進行の発言もございましたから、これで一応質問を打ち切ります。
  77. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この際、ちょっと議事進行として一言申し上げたいと思います。先ほどからの御質問を聞いておりますと、参考人でなく、ほとんど法制局に対する質問なんです。本日は参考人が来ておられますし、参考人の御都合もあろうかと思いますから、参考人の方に対する質問を先にやっていただいて、法の解釈についての法制局見解については、別に理事会で相談をしていただいて、それから私もさっきちょっと申し上げましたが、正力さんの言っていることと、今発足している日本原子力発電株式会社との間にも相当食い違いがありますから、正力国務大臣と法制局責任者等を呼んでいただいて、そのときにこの問題を究明したいと思います。先ほどからの法制局見解を聞いておると、どうもこじつけだと思うのです。もしそんなことだったら、その他一切の電源開発に関する件と書いておけばいいんで、書いてないところを見ると、言っていることはこじつけなんです。だから、それをうんと究明していただく必要があると思いますので、そういうふうにしていただきたいと思います。
  78. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ただいま議事進行の発言がございましたが、私も全く同感であります。本日は参考人意見を中心としていろいろ質疑応答が重ねられたのでありますが、一応本問題は打ち切りにいたしまして、今後質疑応答に対する方法をいかに取り扱うべきかということを、理事会を中心として懇談会を開いて、今、御発言がございましたように、責任者出席を求めて問題を解決していきたい、さように考えます。
  79. 松前重義

    松前委員 まず参考人に対してお尋ねしてみたいと思います。初めから大野先生に伺わなければいけなかったのかもしれませんけれども、一応これだけの新しい事実をさらけ出しまして、それを参考にして先生の御意見を承わりたいと思っておったわけであります。ただいままでの論議の結果を、裁判所ではありませんが、どういうふうにお考えになるか、御意見を承わりたいと思います。
  80. 大野実雄

    大野参考人 別に私最初に申しあげたことを変更するというような考えはございません。最初に申しあげた通り意見でございます。
  81. 松前重義

    松前委員 ここに新しい、いわゆるサーマル・エナージー、熱力を利用しない発電方式が提案され、これがだんだん設計されつつある現実である、この事事実の上から見ても、先生の御意見はますます基礎が強固になったような気もするのでありますが、ほかの法理論の立場から困難でありましょうけれども、それに対してお考えを承わりたいと思います。
  82. 大野実雄

    大野参考人 私は最初から申し上げました通り、範疇が違っているというふうに考えておることと、もう一つは、公共性というものと営利性というものと鋭く対立させて見ていかなければいけないじゃないか、こういう考え方から、最初に申し上げましたような意見を述べたわけでありますから、別にお話を伺いましても、意見としては変りございません。
  83. 松前重義

    松前委員 先ほど来議事進行で御発言がありましたように、この問題は理事会を中心とした懇談会を開きまして、法制局長、正力国務大臣、場合によっては通産大臣にも来ていただいて、この問題を論議してみたいと思います。私は、きょうはこの程度で打ち切りたいと思います。
  84. 菅野和太郎

    菅野委員長 参考人意見聴取はこの程度にとどめます。田中君及び齋藤君の御提案の通り、追ってこの問題については、委員会を開会いたしたいと存じます。  参考人には長時間にわたり、しかも貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げます。  午前の会議はこれにてとどめます。午後は一時より、人工衛星について、参考人より意見を聴取することになっております。委員諸君には多数御出席下さいますよう、特に私よりお願い申し上げます。  午後一時まで休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  85. 菅野和太郎

    菅野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  人工衛星に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。本日出席参考人は、朝日新聞社論説委員渡辺誠毅君、東京天文台長宮地政司君、東京大学教授糸川英夫君、以上三名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、本委員会調査のため、きわめて御多用中のところ、わざわさ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  八月二十六日・ソ連は大陸間弾道弾の発射成功を発表し、本月三日にはついに人工衛星第二号の打ち上げに成功したのでありますが、このことは、近代科学の驚異的発展を物語るとともに、全世界の人々に科学技術の重要性について深い関心を呼び起したことも事実であろうと思います。科学技術の振興を目的とする本委員会におきましても、これら一連の問題について、またその背後における科学技術水準につき、深い関心を持っておる次第であります。従いまして、本日は人工衛星等についての正しい知識を得たいと考えまして、各位の御出席をわずらわしたのであります。どうか隔意のない御意見をお願い申し上げます。  それでは、渡辺参考人よりお願いいたします。
  86. 渡辺誠毅

    ○渡辺参考人 渡辺でございます。人工衛星に関する政治、経済、軍事というふうな問題で話をしろということでございますが、十五分くらいということでございますから、特にこの委員会が科学技術特別委員会でありますので、そういう点に中心を置きまして、科学技術の発展が国際軍事外交情勢というものにどういうふうな影響を及ぼしつつあるかという点と、そういうふうな画期的な影響を与えるような科学技術の発展がソ連で可能になったという事実、それは一体どういうことを意味し、何がそういうことをもたらしたのかというような、大体二つの点を中心にお話をしてみたいと思うのであります。  第一に、ソ連が人工衛星に成功したといいますことは、やはり人類の科学の目ざましい成果ということでありまして、地球の人類の共有の財産というふうにとってもいいような成果だと思うんですけれども現実の事態はどうかといいますと、そういうふうには受け取られていない面があるわけです。たとえば、アメリカのアイゼンハワーが、十一月七日の夜に、国家の安全保障における科学という非常に重大な演説をしておりますけれども、その中では、やはりこういうものが人類の共有財産というふうな意味での受け取り方、対応の仕方というものはほとんど見られないで、これをもっぱらソ連の挑戦あるいはソ連の軍事技術の脅威という観点からだけ受け取られているというふうに見受けられるわけです。それにはいろいろ理由があるわけで、ソ連の側は、こういう画期的な成果を振りかざした——西欧側に言わせればロケット外交というふうな面で、強硬な外交政策を進めろという面が感ぜられますし、アメリカの側から言えば、その脅威、つまり今すぐ戦争があるというふうな脅威ではございませんけれども、ソ連がミサイル外交あるいはロケット外交、つまりそういう科学技術を振りかざす外交上の優位あるいは戦略上の優位を持ち得た、そういう脅威に対抗していこうという以外のことは、アメリカの方ではあまり考える余裕を持っていないというふうに私ども見ているわけです。人工衛星の打ち上げというのは、あとで両先生からお話があります通りに、地球観測年における科学的な行事でありまして、それ自体は別に軍事的なものでも何でもないわけでありますけれども、これがどうして工事的な脅威あるいはソ連の挑戦というふうに受け取られるかと申しますと、やはりこれは人工衛星を打ち上げたということが、究極兵器と言われる大陸同弾道弾あるいは中距離弾道弾というものの技術と関連をしておりまして、ソ連の上げた人工衛星によって、すでにそういう長距離弾道ロケットというものをソ連が保有したということを裏書きする、つまりそういうことをアメリカの、ダレス国務長官も認めておりますが、西欧側にとっての脅威というふうに受け取られていると思うのです。たとえば、半トンもあるような、重さでいえばフォルクスワーゲンの自動車が約半トンでございますが、そういうふうなもの最高千七百キロというふうなところに打ち上げられる、そういう非常に強力な推進力を持つロケットの技術あるいはこれはあとでお話があると思いますけれども、それを一定の予定した軌道に乗せるところのいろいろのエレクトロニクスの技術、あるいは近い将来だと思いますが、月に向ってのロケットとかあるいは地球に帰ってくる人工衛星とかいろいろなことが言われておりますが、そういうこともできそうなにおいがしておるわけです。そういうようなことに示されたソ連のロケット工学あるいは軌道計算の技術あるいは制御の機構、それからまた新しいロケットの燃料でございますとか、そのほか耐熱金属の研究であるとか、そういうふうな面で著しい発展が見られる。それがやはりアメリカ並びに西欧にとっての軍事的な脅威というふうに受け取られているわけでございます。今申し上げましたような点から見ると、やはりICBMというものを一実際にソ連が保有している、それがどういう段階であるかというと、オペレーショナルな兵器として、あるいは正式兵器として現に配備されているかどうかということはわかりませんけれども、長い目で見ればそういう段階がくるのは明らかなわけですし、そういう事実が生まれたということの戦略的な意味ほかなり大きいだろうと思いますし、それが大きいからこそ、アメリカでは非常に深刻な打撃を受けておるというふうに、えられるわけです。  アメリカの戦略というものは、これは皆様御承知通り、ソ連を取り巻く基地網と戦略空軍というものが中心になっておりまして、原子力を用いた大量報復力というものが戦略の根幹になっておった。しかし、最近ではやはりそういうもので対応することが共倒れを意味するような結果になるので、そういうことよりも、むしろ、そういうものは背景に置きながら、制限戦争という方向へ戦略が切りかわりつつある、つまりきれいな水爆とかあるいは小型の核兵器とか、そういうものをもって局地的に戦争を限定するというふうな方向がとられてきているわけです。そういうものが今後どういうふうに影響を受けるかと申しますと、制限戦争が可能な最大の条件は何であるかといいますと、つまりコンヴェンショナルな普通の兵器で侵略してくるソ連側の勢力に対して、小型の核兵器でもって対応して、その進出を抑止するという場合には、それ以上にソ連の側が戦略爆撃とか世界大戦に広がるような方向に出てこないということが抑止の条件になるわけですけれども、ソ連がそれ以上に出てこないということのためには、アメリカの側に圧倒的な戦略的の地位の優位がなければならぬ。それだからこそ小型核兵器を使う抑止戦争が局地的に可能だということになるわけですけれども、今度のICBMの出現ということで、そういう戦略体制がゆらいできておるというふうに考えていいのじゃないかと思うのです。  そこで、アメリカの対応の仕方を見ますと、七口のアイゼンハワーの演説を見てもおわかりだと思いますけれども、この分野でソ連に追いつき追い越すということが中心になっておりまして、国内的には、国内の三軍の間におけるミサイル計画の非常な争いがあったわけですけれども、そういうものを統制して、一本にまとめていくというふうな動きが出ておりますし、外に向っては、たとえばイギリスや西欧諸国と技術協力あるいは軍事技術の秘密があるものですから、なかなかそういうものがプールできない。そういうものを打破するためにアメリカの原子力法を修正してでも、与国と技術的なりソースのプールを作る、特に人間のプールですけれども、そういうようなものを作るという方向に動き出してきておるわけです。おそらくそういうふうな統合がどの程度できるか、これは戦時中でありませんから、私は若干疑問を持ちますけれども現実にソ連の脅威といいますか、目の前にソ連の人工衛星が回っておるような状態ですから、やはり力を入れざるを得ない。そうすれば、アメリカが追いつくことは決して不可能ではないと考えるわけです。しかし、結局そういうことで、力には力ということで、現実には当面軍拡競争が続くというふうな傾向が出てくるのじゃないかと思うのです。  しかし、長い目で考えてみますと、一体そういうことでいいのかということなんです。つまり原爆をアメリカが独占的に所有しておりましたけれども、四年後にはソ連が原爆を持ち、それから水爆では九カ月くらいの差に縮まっておるわけですけれども、運べる水爆はソ連が一九五五年の十一月に作っております。アメリカは翌年の五月というふうに、その点ではおくれてきて、それからICBMの段階ではアメリカがいつできるか、レッド・ストーンなどが試験に不成功でありますからいつできるかわかりませんが、要するにICBMではソ連の方が先になった。そうしてまた人工衛星という時代になったというふうなこの歴史的な過程を考えてみますと、これはただICBMだけの問題ではなくて、やはり二つの体制の軍事力というものの一つの大きなトレンドから見ますと、力には力で対応するということの無制限な大国間の大量殺人兵器の競争というものに、限界が出てくるときが必ずくるのではないかというふうに考えられるわけです。  第二の点は、それではそういうふうな画期的な影響を国際情勢その他に及ぼすようなソ連の科学技術の発展というものがいかにして生まれてきたかという点なんですけれども、それは今度人工衛星で初めてアメリカはソ連との非常に大きな科学競争というものを認識せざるを得ないという立場に立ったと思うのです。実際には、そういうことばもう少し前から行われておった。つまり原子力発電では、一九五四年にソ連が先に原子力発電所を作っております。それから、原子力路面の現在の計画でも、その規模はソ連の方がはるかに大きな計画を持っておりますし、今ソ連にある原子核研究の道具であるシンクロフアゾトロンというものは、百億電子ボルトという非常に大きなものでありまして、こういう原子核研究の基礎研究の面でも、やはりアメリカに排戦して、ソ連の方が大規模のものを開発しておるということは、アメリカの核物理学者もひとしく認めておるところです。それから、今これから進水すると伝えられている二万五千トンの原子力砕氷船、これは、原子力の船に対する利用というのは、アメリカでは軍事的には確かに進んでおりまして、今や軍用の全艦船を原子力に切りかえるというふうなところまで進んでおりますけれども、民間の船に平和的に利用するという動きはやはりおくれているようでありまして、今、客船の計画がございますけれども、やはりソ連の方が一歩先に進んでいる。それからまた大型のジェット旅客機というようなものにしましても、モスクワとニューヨークの間を十二時間以下で飛ぶ大型ジェット旅客機ができ、そういうものについての挑戦もすでに始まっていると思うのです。将来はまた水素の原子核融合反応による発電という点も、たとえばクルチャートフがハウエルの研究所で発表いたしましたように、あるいはまたアメリカでもシャーウッド計画というような名のもとに進められておりますが、やはり相当な競争期にきていると考えるわけです。  では、どうしてソ連がこういうふうにいろんな面で対応できるようになったかということなんですけれども、これは一時アメリカや何かで、言われていたように、スパイがその情報を持って行ったとか、あるいは、これはある程度そういうことがあると思うのですけれども、ドイツのべーネミュンデのV2の情報というようなものが非常に大きな影響を持っておったというようなことがある程度は言えると思いますけれども、最近はアメリカでもそういうことはないというふうに認識し直してきているようであります。ソ連の人たちはよく、社会主義体制に科学が解放されるとこういう目ざましいものができるということを申しますけれども、私はそれだけでもないと思うわけで、すでに帝制時代にもロケット科学にはツィオルコフスキーというようなきわ立った人もありましたし、それから原子核や何かに関係してくるわけですが、元素周期律表を作ったメンデレーフというような人もおりますし、今人工衛星に乗せている犬に対しては心理学者のパブロフというような非常に傑出した学者が出ておるということで、科学の伝統は、むしろ日本よりソ連なんかの方がはるかにあったのではないかと私は考えているわけです。しかも、それだけではなくて、革命後のソ連の体制というものは、科学技術の発展をもたらすのに非常に大きな役に立っていると思うわけです。その第一点は、ソ連が軍事優先で科学の進歩をはかってきたということだろうと私は考えるわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、原子力にいたしましても、ジェット旅客機にいたしましても、あるいは人工衛星にしても、すべて軍事に関連した面というものが、科学の平和利用でも先に進んできているように思うわけです。ただ軍事優先ではありますけれども、そういう新しい科学技術を、軍用だけでなしに、割合早い時期に平和利用に開いていく努力をしてきているという点は、注目しなければならないわけです。原子力にいたしましても、原子爆弾で追いついたのは一九四九年でありますけれども、一九五四年には世界で最初に原子力発電所を作るというところまできておるということは、軍事的に原子力開発しながらも、やはり同町に平和的に使える可能性というものを開いていたからだと思うのです。ロケットの面でも同じことが言えるわけで、アメリカが今度人工衛星でおくれました非常に大きな原因の一つに、そういう人工衛星というものを半ば遊び的なものに考えていた面がありはしないかと思うのです。その点、たとえば予算にいたしましても、アイゼンハワーが、おくれた理由として、軍の計画と切り離したということを言っておりますが、予算は今まで最終にきまったものが一億一千万ドル、約四百億円です。それに対して、ソ連のスプートニク計画にどれだけの投資が行われたかというと、これはわかりませんけれども、いろいろでき上ったミサイルと、それのディヴェロップに要する費用、そういうふうなものを考え合せまして、アメリカの科学者が計算したところによりますと、この五、六年の間にソ連が支出したものは、イギリスのポンドにして五十億ポンド、つまり日本の金にいたしますと、約五兆円ということになるわけで、日本の財政規模の五年分くらいに相当するわけです。アメリカの計画に比して、この数字は当てになるかどうかわからないけれども、やはり結果から見まして、ロケットをICBMに使うというだけでなくて、やはり平和利用という面を開いていくことを、両方かね合せて進めてきている点は、考えなければならないと思うわけです。そういう点がソ連の科学技術をこういうふうに驚異的に進めた大きな原因だと思うわけです。それは戦後アメリカとの軍事競争ということからだけで進んだかというと、そうではなくて、実はソビエトの経済体勢を維持していくためには、スターリンの言葉によれば、「五十年、百年先進資本主義国におくれて出発したソ連が、その包囲態勢の中で生き伸びていくためには、どうしても科学技術の成果を完全に生産化していく必要がある」。という、この点は、日本みたいに人口が多くて資源のない国の場合でも、先進国に追いついていくためには、科学の力を完全に生産に使っていって、科学を輸出するということが必要だと思うのですけれども、その点は、ソ連の方がもっと深刻だったと思うわけです。従って、科学技術に対する政府の態度あるいは党の態度が非常にはっきりしておった。技術教育に対して非常に力が入れられており、技術教育を受けた人の数も非常に多いわけです。それから、研究に資金を集中することも非常に多く、アメリカに対して国民所得なんかは追いつかないのですけれど、科学技術費は日本の円にして年に一兆三千億くらい出ておりますから、非常に大きな金を科学技術に投入しているということが言えそうです。特に直視しているのは基礎研究ですが、重視しているのは予算がそっちの方に一番多いというのではなく、よその国に比べて、軍事の基礎研究に力が入っているということです。この点、アイゼンハワ一も、七日の演説で、アメリカはその点で及ばなかったということを言っております。最近そういう反省がたくさん出ておりますが、基礎研究では、人間の数にしても、ソ連の三分の一くらいしか従事していないだろうというふうにアメリカの科学者は言っているわけです。しかし、この基礎研究の開発というのが、あるときには非常にプラクティカルな実用に結びつくということ、たとえば水素の融合反応にしてもそうですが、シンクロファゾトロンを使って何するかと思えば、あるときは画期的な実用に結びつく可能性を持っているわけで、この点を先に開発してしまわぬと、大きなファゾードロンを作ってもそれから追いいつくわけにいかないので、そういう点で非常に力を入れているのではないかと思うのです。そういうふうに科学者の発明の成果が国の発展に直接関係してくるというようなことから、科学者を非常に英雄として遇しているという点も見落せないと思うのです。サラリーなんかも非常によく、科学アカデミーの学者には月三万ルーブルといいますから、円にいたしますと約六十万円与えていることになるわけです。ソ連で小型自動車はちょうどその半分くらいですから、毎月自動車を買っても平気なほど高給を与えているとイギリスやアメリカの学者が言っております。糸川さんの書かれた木を読みますと、糸川先生は非常に忙しいので、自助車を買わなければならなかったけれども、お賢いになるのに非常に苦心したということが書いてありました。そういう点、ソ連の学者に対する待遇は非常にいいのではないかと考えるわけです。それから、アメリカの場合は科学技術者のチーム・ワークが非常に欠けていたということが今度のアイゼンハワーの声明でもわかりますけれども、ソ連の場合には、科学アカデミーに統合されておりまして、研究がかなり共同化され、チーム・ワークがとれるというふうな利点もあったかと思うのです。  最後に問題になるのは、やはりソ連の政治経済体制であります。つまり新しい技術を開発いたした場合にでも、その場合にコンヴェンショナルなものに投資したものが非常に因るというような、利潤を動機とした生産がないということから、技術革新というものが実際に応用される面で早いということがはっきり言えるのではないかと思うのです。というふうなことで、ソ連の科学技術体制というのは、やはり西欧としてもいろいろ考えなければならない問題を含んでおりますし、単に人工衛星、ICBMということだけでなしに、将来いろいろな面で、初めは軍事的なものに関連した面での競争から始まると思うのですけれども、将来はもっと広範な科学技術での競争、その科学技術に基礎を置いた経済での競争ということが問題になってくる。最近のソ連では、一九六五年くらいを目標にいたしまして、基本的経済課題の達成ということを言っております。基本的経済課題というのは、一つの生産物、鉄でも石炭でもそれの国民一人当りの生産高でアメリカに追いつき、追い越すということがソ連の基本的経済課題だといわれているわけですけれども、やはりそういうものに向って動きつつあるということははっきり言えるわけで、そういうふうなものが果して一九六五年に達成されるかどうかわかりませんが、片方アメリカの方も動いているわけですから、いつ追いつくかということはわかりませんけれども、経済発展のテンポのある程度の差ということから見れば、やはりいつかはアメリカに対してソ連の経済が脅威になる。今日、人工衛星を脅威といっておりますけれども、ソ連の挑戦というものが、単に軍事と関連したものだけでなく、経済全般においてソ連の挑戦を受ける段階が来やしないか。そういうものに対処することが今アメリカでは忘れられておりまして、軍事だけで問題と対応しようというふうな方向に動いておりますけれども、やはりいつかはそういう面に当面してくる段階が来るのじゃないかと思うのです。  ほかにまだいろいろ申し上げたいこともありますけれども、だいぶ時間が過ぎましたので、一応この辺で終りたいと思います。
  87. 菅野和太郎

    菅野委員長 引き続き宮地参考人意見を承わるのでありまするが、渡辺参考人は所用で二時までに退席いたしたいとのことでありますので、簡単な質疑を許します。岡良一君。
  88. 岡良一

    ○岡委員 渡辺さんにこれはお教えを願いたいと思うのでありますが、今お示しの、ソ同盟が科学技術の研究に非常に莫大な予算をさいておる、特に人工衛星の実現までには五兆円という莫大な予算を出しておる、あるいは基礎研究に非常に重点を置いている、科学者には非常な優遇措置を講じておる、また利潤ということも無視して、国のさし示す方向に科学技術の動員体制を整えておる、こういうことがアメリカに対する現地におけるあるいはICBMなりまた人工衛星における大きな先鞭をつけ得た動機である、こういうふうな御説明でありました。なお私はこの際率直にお伺いをいたしたいのでありますが、それらを貫くもっと基本的なソ連の優位というものがあったのではないかということです。それは、いわばソ連的体制の基礎である世界観の問題であると思うのです。端的にいえば、人間は自然の法則を見つけることはできるが、これを動かすことはできない、こういう物質的な場における絶対的な信条というものが、こういう科学技術というものをあらゆるものの課題の中でも、非常に大きく優先的に取り扱った原因である。そこで、こういう信条、こういう世界観というものが勝利を占めたというのが、人工衛星なりあるいはICBMにおける現地の優位の大きな動機ではないか、こういうふうに私は考えているのでありますが、この点についての御所見を伺いたい。
  89. 渡辺誠毅

    ○渡辺参考人 私も大体そういうことはわかりますけれども、しかし、人工衛星をそれでは資本主義体制ではできないかというと、そういうことはないと思うのです。ですから、相対的に、ソ連体制というものが資金を効果的に集中的に使えるとか、利潤動機でなしに、国家の必要に基いて金が出せるというふうな点、あるいは科学に対する根本的な認識というふうなこともありましょうけれども、そういういろいろな面で有利だということはありますけれども、やはり資本主義体制のもとにおいても、人工衛星とか大陸間弾道弾というものができないということではない、そういうふうに考えるわけです。
  90. 岡良一

    ○岡委員 私はできないと申し上げているわけではありません。ただ、現在においては、少くとも優位を示しておる。むしろ優位を示すものはアメリカであるとさえ想像されていた。一九五五年の七月に、アイク大統領はすでに人工衛星を発射するということについて言っておるし、一九五七年の八月から、つまり今年一ぱいには十二個の人工衛星を放つ、それは十キロ程度のものであるというふうなことも言っておった。しかし、事実その計画というものは、むしろ具体的に、結果としてはソ連の方がいち早く打ち上げてしまった。こういうふうにテンポにおいて大きな優位性を示している現実ということが、ソ連的体制の基礎にある世界観の問題と切り離して考えられないのではないか。そういう点で渡辺さんのお説の中にはその点がさらに強く指摘されていいのではないか、こう思って申し上げたわけなんです。
  91. 菅野和太郎

    菅野委員長 ほかに御質問はありませんか。——それでは引き続き宮地参考人にお願いします。
  92. 宮地政司

    ○宮地参考人 宮地であります。私は今度の人工衛星の打ち上げについて、まず学術的な面を申し上げます。  今度の人工衛星の打ち上げと申しますのは、現在行われております地球観測年の仕事の一環として行われておるものでございます。まず、地球観測年のことについてざっと申し上げますと、これは全世界のいわば大学を持っておる国全部が集まりまして、地球全体を調べようということであります。地球の上ではいろいろな自然現象が起っておりますが、そういったもので、たとえば日本だけで行うのではわからないものがありますので、世界中でやろう、そういった組織でございます。その一つとして、よく知られておりますように、南極へ日本から船を出しております。これは余談になりますが、あのことは、日本という国が世界の学問のためにあれだけの費用を出した、全体から見れば非常にわずかでありますが、国としては相当大きな費用を出したのであります。このことについて、世界中で非常に感謝をしております。また日本という国を知らない、たとえば南アフリカなんかでも、非常な好評を博しております。こういうようなことが、学問を先頭に立てて、輸出とか日本の品位を上げるという面に役立っておるものであると思うのであります。そういった意味で、日本では最初から地球観測年の計画に参加して——これは学術会議日本の本部になっておりますが、参加して、世界中とともに学問のために尽そうという努力をしております。幸いに相当の費用が国の方から出されまして、その仕事がこの七月以来行われております。今度の人工衛星は、特に地球観測年の仕事としまして地球の非常に高いところの状態を見よう。もっと端的に申しますと、太陽と地球との間をよく調べようということであります。そのことによりまして、今までわからなかったことがわかり、自然現象に対する予報ができるのであります。これはもちろん人類の将来の幸福のためになることは間違いございません。  さて、今度のソ連の人工衛星について申し上げますと、この地球観測年の一般の約束と申しますのは、あらかじめその仕事の準備をいたしまして初めてなされるものでございます。実は、人工衛星の観測に対しては、全世界の準備がまだできておりませんでした。そのときに打ち上げられましたので、非常にわれわれあわてたのでございます。初めは観測に協力すべきかどうかということさえ考えたのでございます。あの人工衛星それ自体が、地球観測年のために上げられたものであるかどうかということすら、わからなかったのであります。ところが、この人工衛星の観測に関しては、アメリカとソ連とに本部がございます。その本部に対して、各国が協力するように約束ができております。その協力は、あらかじめ発射の一、二週間前には通告をし、準備をして、初めて世界中が協力した仕事ができるということは当然なことでございます。ところが、実はわれわれは上ったあとで聞かされたわけでございます。大へんあわてましたが、これはアメリカの本部で観測の指令を全世界に依頼したわけであります。日本もさっそく協力をいたしまして、相当な観測の成果を上げております。これはああいう高いところの状態がわかりませんのに、とにかく衛星が飛んでおるのを見ますと、いろいろなことがわかります。新しいいろいろな知識を得られております。  ところが、一たびこういうものが上りますと、世間では大騒ぎになったわけでありまして、それが政治、経済、あらゆる方面に響いたわけであります。そのことは何かという問題でありますが、人工衛星そのものを打ち上げるということ自体は、一つの科学技術の総合した成果であります。今、日本にここで百億を積むからそれではやつてみろと言われましても、なかなか簡単にはできないと思うのであります。これは金の問題ではないのであります。科学技術がちゃんとつちかわれておりまして、準備ができておりますならば、今では大ていのことはできる時代になっておるということであります。さっきも軍備の競争のようないろいろなお話がございましたが、すべてその先頭に科学技術が立っておるという事実であります。ですから、将来は軍備競争よりもむしろ科学技術競争の時代だとさえ思うのであります。しかし、私は各国の間でその競争をする必要はなくて、この地球観測年と同じように、手をつないで科学研究というものをやるべきだと考えます。たとえば軍事の問題にしましても、あのソ連の上げました人工衛星は、あとからソ連から電報がきておりますが、あれは地球観測年のために上げたのであるということを言っております。決して軍事の目的で上げてはおりません。純粋な学問研究のために上げております。同時に、ソ連でもって観測をしました資料は、いずれそのうちに送るということを言っております。資料は公開されるはずでございます。そのことも電報でよこしております。世界中の地球観測年の本部は、現在ブラッセルにございます。ブラッセルからは、なるべく早く資料を公開していただきたい、いつ送っていただけるかというような問い合せを出しております。その辺のことまで私にはわかっておりますが、その後の様子は存じません。  今度は、日本の状態を申し上げますと、日本の科学技術の水準がどうかということなんでありますが、これはソ連の水準、アメリカの水準といったものと比べて考えられると思うのでありますが、今申しましたように、今すぐ金をここに積んでもなかなかできない状態である。それは一体何かという問題であります。これはやはり種をまいておかなければできないのだと思うのであります。ローマは一夜にしてできない。これは日本が科学技術をもう少し真剣につちかっていかなければならない、いわゆる教育の問題であると思います。教育の問題も非常に重要な問題だと思います。外国の雑誌で見たことがありますが、これは私が調べたことではございませんからよく存じませんけれども、科学技術者の数というのは、大体十年で倍になる。一体日本の教育はそうなっておるかどうかという問題であります。こういった長い国家計画というものが何かちゃんと立ててあって、世界の動きに応じていかないと、日本はだんだんおくれていくだろう、今のままではいけないということを痛感するのであります。こういった一つ国家の計画性、科学技術の計画性ということは、非常に重要だと考えております。  それから、今もお話がございましたが、ソ連の学問的伝統とか、アメリカの学問のやり方とか、いろいろございますけれども、その伝統そのものは何かということであります。これはやはり科学技術者をもっと大切にすべきであると思うのであります。科学技術者の言うことは非常にまじめでございます。間違いのない予想をある程度し得るのだと思います。そういったものがもっと国策に反映すべきであると考えます。簡単でございますが……。
  93. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、糸川参考人
  94. 糸川英夫

    ○糸川参考人 東京大学の糸川でございます。私は人工衛星を打ち上げるのに用いられましたロケット及びこれに関連することについて、簡単に申し上げたいと思います。  大体これからいろいろな事件が地球上に起きて参りましょうが、ロケットの速度がある速度に到達した段階にいつもいろいろなことが関連して起きて参ります。たとえば、千九百何年にはロケットのスピードがどこまでいっているかということを把握しておかれれば、何が起きるかということが容易に予測できるであろうと思われます。今から十五年前にドイツが有名なV2号というロケットを作りました。このときに驚いたのは、それがロンドンを攻撃したということでなくて、かりにV2号を月へ運ぶことができれば、月から地球へ向けて打ちますと、地球まで到達できる性能を持ったロケットであるということであります。つまり、地球から月をねらったのでは、地球の引力が大き過ぎまして脱出ができませんが、月くらいの大きさですと、あの引力を振り切って地球まで届く性能を、初めて人類が作ったわけでございます。このときからロケット科学の方向は、もっぱらそれをねらって進歩してきたわけでございます。このときの秒速は、一秒間二キロメートルでありましたが、これが一秒間六キロメートルになりますと、ICBMができるのであります。さらに二キロメートルふえまして、秒速八キロメートルになれば、人工衛星ができるのであります。さらに三キロメートルふえまして、秒速十一キロメートルのロケットができれば、月ないし火星、金星へ行くことができるであります。さらにスピードが出まして秒速十三キロメートル以上をこえますと、太陽系を脱出することができるのであります。これらの技術が年を追いまして世界各国の研究によって着々と実現されており、ことしには秒速八キロメートル——ことしの初頭におきましては、秒速六キロメートルの段階に達した、こういうことなんであります。非常に大きな目から見ますと、米ソの戦いというよりは、人類がどれだけの速度を出すロケットが作れるかという歴史的な技術の発展の段階にかかっていると言うことができるのであります。  さて、それでは問題は、ロケットのスピードの高いのを作ればよろしいわけでありますから、それにはどういう技術が必要かと申しますと、大体四つの技術が必要である。第一には、ロケットの燃料であります。ロケットの燃料には、ガソリン、アルコールなどの液体を用いるものと、プラスティックを基体とする固体のものと二種類ございます。そのほかに半練りのチューブ入りの歯みがきのように、固体と液体の中間のものも考えられておりますが、今日実用になっているものは、液体及び固体であります。これらのものを燃やしましたときに出るガスの速さをはかりますと、その燃料を使ってどれくらいの速度のロケットができるかが容易に計算される。ごく大ざっぱに申しますと、燃料を燃やしたときに出る、ガスの速さと、その燃料を使って飛ぶロケットの速さと同じなんであります。ですから、新しい燃料ができたというときに問題になるのは、一秒目でどれだけのスピードのガスが流れるかというその速さを知ればよろしいわけであります。私の推定では、今日世界の最高の技術をもって作れる燃料のガスの速さは、一秒間三キロメートルであろうと存じます。ソ連が一秒回二キロメートル以上のガス速度を持つ燃料を発見したかどうかが、実は今度の人工衛星打ち上げの事実に関連して非常に大きな問題となりまして、かりに一秒間三キロメートル以上のガス速度を持つ燃料を作ったとすれば、これは超新型燃料でありまして、米国その他をひっくるめて、西欧諸国は断然技術の上で、一歩抜かれたということになりますが、これが一秒間三キロメートルの燃料で上げたことになりますと、問題は量的な問題だけでありまして、質的に科学技術にそう大きな差はないという結論になりますので、この判定が非常に大きなキー・ポイントになるわけであります。  今から十五年前、ドイツのV2号が飛んだときの燃料は、一秒間二キロメートルでございましたので、それから十五年かかりましてわずか五割しかふえていない。その当寺一秒間二キロメートルの燃料ができておりましたのにかかわらず、十五だってわずか五〇%ふえただけであります。このことは、世界中のロケット学者が非常に遺憾とするところでありまして、ドイツの技術から十五年たってわずか五割だ。せめて倍くらいできないものかというので、今日やっきになってその新型燃料の研究をやっているのが世界の現状でございます。将来は電気の粒子を使いまして、それを電圧をかけて加速するようなものまで考えられておる。化学薬品から電気を使うものに変ることと、非常に遠い将来には、光の粒子を使ってその反動で進むような、いわゆる光波ロケットの構想まで立てられまして、かなり現実の問題として基礎研究に着手しているようであります。  二番目には、その燃料を燃やすに必要なモーター、つまりエンジンでありますが、この燃料とエンジンは、切っても切れない関係にありまして、一つの新しい燃料が発見されると、それを燃やすに一番いいエンジンは一種類しかないのであります。ディーゼル・エンジンでしたら石油を使い、ガソリン・エンジンでしたらガソリンを使うようなもので、エンジンと燃料というものは一体になっておりますので、一々それに付属したものと一体の研究と考えられてよろしいのであります。  それから三番目には、いわゆる飛翔体でありまして、ロケット全体の設計でございます。機体の設計でございます。この設計上非常にめんどうな点は、高いところに上るときに、最初に通過する空気層をどうやって突破するかということでありまして、空気周を三十キロメートル突破いたしますと、上は、あとは引力を脱却するだけの問題で、ロケットの技術上からいいまして、非常に楽になります。かりに空気が地球上に存在しなければ、ロケットの技術は今の十倍くらいの速さで進んだに違いないのであります。空気との格闘ということが、ロケット自体の設計には非常に重要なことになります。  四番目がコントロールの技術で、これを任意のところまで、人工衛星でありますと、空気層を突き抜けるために垂直に上りますが、それからだんだん経路を変えて、水平に打ち出します。この角度が一度ずれただけでも非常に軌道が円からずれて参りますので、精密にプラス9マイナス一度の誤差で水平に送り出す。こういうコントロールの技術は、将来月へ行くロケットにしても同様でございます。  大体これだけの四つの技術ができ上りますと、二キロメートルが六キロメートルになり、八キロメートルになって、人工衛星となり、さらに十一キロメートルとなって月へ行くロケット、そういう段階で進んでいくわけでございます。  さて、今回上げましたソビエトの人工衛星第二号は、4常に目方が大きくて、しかもその中に犬を入れて、その犬がまだ生存しているという事実から、私どもの研究室で、どれくらいのロケットを設計したものか、ざっと計算してみたのでございます。あるイギリスの学者が計算したところでは、五百トンくらいのロケットを使ったろうということを新聞で発表いたしておりますが、われわれどもの方のところでざっと計算しましたところは、その半分くらいの二百四十トンか二百五十トンくらいのロケットで間に合いそうでございます。今まで地球上に存在したロケットの計画の中では、私どもが知っております一番大きいのは、ドイツが第二次世界大戦の末期に計画しておりましたA10というロケットでございます。これが総重量大体百トンのロケットでございまして、これが一番大型のロケットでございますが、目方にしてそれの約二倍半になっておるわけでございます。それから、直径、寸法、長さの割合にいたしますと、約四割大きくなっておる。そういたしますと、目方の方は約二倍半になる見当になりますが、タンクの寸法その他はA10の大体四割増くらいの大きさであろうと推定いたしております。それで燃料を計算してみますと、一秒間三キロメートルのスピードの燃料で十分今の性能を発輝いたしますので、今日までの人工衛星の大きさから逆算すれば、超新型燃料であるまい、大体世界のアヴェレッジの技術が持っておるところの一秒間三キロメートル、これはかなりよい方ではございましょうが、最近としては大体オーソドックスの燃料を使っており、大ぜいの学者とお金を動員したために、大型のものができたという結果になるのではないかと思うのでございます。今後ソ連の人工衛星並びにアメリカの人工衛星その他がどういう発展を遂げるだろうかということなのでございますが、ソ連はだいぶ前に国際地球観測年の間に百個以上の人工衛星を上げるということを声明いたしました。この百個という数が非常に多いので、最初私は相当宣伝が入っておるのではないかというふうに考えておりましたが、今日計算いたしました二百五十トンくらいのロケットだといたしますと、百個くらいに要する費用は大したものではございません。非常に微々たる費用でございますので、ソ連の国力からいって、当然、百個以上げることは、経済的に可能であろうと思っております。  それから、今、官地先生からお話がございましたように、一号機及び二号機は、国際地球観測年参加のための人工衛星だということを言っておりますが、中に犬が入っておるのは、国際地球観測年の観測項目には、たしかなかったと思います。このことから思いますと、ソ連では国際地球観測年をきっかけとして、人工衛星及びロケットの研究をやり、さしあたりの目標は、月に届くロケットをその最終目標としておるとにらんでおるのであります。そういうふうにして、今までソビエトがロケット並びに人工衛星について行なった研究を回顧してみますと、話のつじつまかだいぶ合って参りますので、遠からず月に何らかの方法で生物を送るか、あるいは生物の乗っていないものが最初でございましょうけれども、しかし、非常に近い将来に生物を月に送るという計画をはっきり立てておるのだろうと思うのであります。  さて、人工衛星以外にそれではロケットの性能の進歩とともに、将来どういうことが世の中に現われてくるかと申しますと、私は三つあると思うのです。その一つが、今、宮地先生の御説明がありましたような、宇宙及び地球の観測用のものであります。これで忘れてならないのは、今年の十月から多分始まっておると思いますが、アメリカではハリケーン、日本でいうと台風ですが、台風の目を非常に早期に発見するための専用ロケットを作って、定期的に打ち上げる計画を発表いたしております。日本でもいずれ台風の目をつかまえる専用のロケットが必要になってくるかというのでありますが、このロケットは、アメリカで計画しておりますのは、日本で、秋田で飛ばしておりますカッパー四型ないし五型というロケットとほとんど同型で、寸法がほとんど同じだというので、両方で今情報の交換をやることになっております。その程度の小さいロケットでも、気象の観測その他に非常に役立つことがあり、人工衛星のように派手ではありませんが、われわれの生活に密接に関係のないものではなく、もっと生活に密接に関係のある分野でロケットがいろいろじみな活躍をしておるということを、この際特にお耳に入れておきたいと思うのであります。それからこの観測用ロケットにつきましては、宮地先生からお話があった国際地球観測年では、日本は、参加国六十五カ国の中で五カ国が選ばれて、ロケットによる観測をやる一つの国に人っております。アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、日本と、この五カ国が昭和三十二年七月から三十三年十二月まで、ロケットによる観測をやることになっておる。そのためにカッパー、シグマ、パイという三種類のロケットを作りまして、目下実験中でございます。  二番目のロケットの効用は、おそらくロケット旅客機ができるであろうということでありまして、プロペラ式の旅客機がジェット旅客機になったその次は、当然ロケット式の旅客機になる。このことによりまして、空気の中を飛ばないために、燃料費が非常に節約になる、それから航速時間が非常に早くなる、相当まずいロケットを作りましても、太平洋を二時間ぐらいで飛び、それから費用は今の三分の一くらいで済む、そういうロケット旅客機の出現が間近いものと思います。このために日本もでございますが、各国で今基礎的研究がぼつぼつ始まっておるのであります。  三番目は、世間でいろいろ取りざたされておりますところの宇宙旅行、つまり月や金星や火星に行く旅行でございます。第三番目の宇宙旅行関係につきましては、国家がこの計画を自分の計画として立てて、そして、それを研究遂行しております国は、私の知るところではソ連一国のようでございまして、英国、フランス、アメリカ、日本、いずれもこれらは政府外、民間のアマチュアの同好者の集まりとして、世間からは物好きな連中のグループとして見られているのが現状であります。ソビエトは、政府がはっきり宇宙旅行計画を国の方針として立てていると思うのでありますが、それは在来いろいろな学界で発表されております宇宙旅行に関する論文の出し方、それからそういう会合に出る学者の出席率などを見て、そういうふうに想像いたしております。  最後に申し上げたいと思いますのは、宮地先生がおっしゃいましたように、これだけの技術は一朝一夕でできるものではない、米ソ両国とも、少くともロケットを専門とする研究所が五十ずつあると思うのでございます。申しあげるまでもなく、日本には一つもございません。
  95. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人の一応の御陳述は終りました。  これより質疑に移ります。質疑は、通告に従って許します。中曽根康弘君。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 両先生に、どちらでもけっこうですから、お伺いいたします。  今度の二つ人工衛星をごらんになり、御研究になって、今まで自分たちが期待しておったことと、これは違ったなというようなところはありますか。たとえば、宇宙塵が相当あって、それにぶつかってこわれやしないかとか、あるいはよもや犬を入れようとは思わなかったのですが、そこまで進んでいたかどうかとか、そういう今まで日本の学術の水準で考えられておって期待に反して進んでおったとか、変っておったというようなところがもしありましたら、教えていただきたい。
  97. 宮地政司

    ○宮地参考人 現在のところ、人工衛星自体でもって観測した結果というものは、われわれは入手しておりません。これはわかっておりません。しかし、現在日本で観測しました材料及び外国の材料を少しばかり入れまして求めた結果によりますと、地球の非常に高いところの空気の量と申しますか、空気の密度でございます、これは将来、今申されましたロケット飛行なんかに非常に重要なことでありますし、それから地球の高いところにあります電離層、電波の反射する層でございますが、電波通信に非常に重要な層でございます。こういったものの研究にも役立つわけでございますが、その高いところの空気の密度というものが、全然今までわかっておらなかった。それに対して、今度ソ連の最初の人工衛星で、ある程度の知識が得られたという程度でございまして、詳しいことはまだわかりません。今までいろいろな想定がありまして、たとえば、一あるだろうと言う人がありますと百あるだろうと言う人があったのです。ところが、それが大体どのあたりだというようなことの見当がつきました。それが一つ。それからもう一つ、それは天文学の問題であります。地球のふくらみ、赤道部のふくらみというものは、これは将来のロケット飛行機、そういったようなものにも関係するのでありまして、地球の形、それから上のあたりの重力の関係、そういったものは、これはロケット飛行自体のかじとりに非常に影響があるのでありますが、そういったようなものについての知識が新しく得られました。それは、従来考えておったものより少し違うようであります。実は、私たち日本の観測は、天文学的な観測でありますが、それが国際的なものと少し食い違いがありましたのです。そういったものに対して説明がつくものだと考えます。これは少し専門的になりましたが——現在の非常に荒っぽい観測、これはほとんど現在ではアマチュアの奉仕的な観測で得られた資料であります。それだけでも、そういった新しいことが出ております。この人工衛星でやりました結果というものは、これは驚くべきものが出ることは確かでございまして、全然知識がなかったのでありますから、そういった知識がはっきりして参りますと、たとえば電波の通信でよくデリンジャー現象というようなことが起りまして、莫大な損失をしておるわけであります。これが予防される。これを回避することができるならば、世界中の通信網というものは非常によくなります。そういったものに必ず役に立ちます。それから、今申されましたように、たとえば、台風の目というもの、これがロケットでやりました結果では、ちゃんと写っておる、写真をとってみた結果ではよく写っておる。ところが、地上の観測の資料をどんなに探しても、それはわからない、そういうようなことがわかっております。ですから、将来いろいろなことの予報に人工衛星が使われることは確かでありまして、この一年間ほどの間に非常にすばらしいたくさんの知識が出ると思いますが、しかし、ただいま申し上げましたように、資料のあとの研究というものがこれまた大へんなことでありまして、公式に資料の交換というのは八カ月後までに交換をすることになっております。少くとも、第一号のソ連の衛星についてのソ連の研究とか、アメリカに集まりました研究は、八カ月後になって初めてわれわれの手に正式には入ります。しかし、協力しておる国にはなるべく早く渡すということになっておりますから、いずれそのうちに膨大な資料が来ることと期待しております。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今そうすると正式な資料が来る前に、向うから電報やその他で、概要とかそういうものは連絡があるわけですか。
  99. 宮地政司

    ○宮地参考人 参っております。これはこちらからも電報で送りますし、先方からも電報で参っております。ただ一つ、ソ連からは何も参っておりません。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、今のお話は、日本で観測したことから、地球のひずみとか空気の様子とか、そういうものはわかったわけですか。
  101. 宮地政司

    ○宮地参考人 そうであります。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 両先生どちらでもけっこうですが、一体人工衛星あるいはロケットを打ち上げるには、何と何と何の観測を目的にして、今まで大体どういう性能の機械を乗せておるか、その具体的目標は幾つ何があるかということをお尋ねしたい。
  103. 宮地政司

    ○宮地参考人 これはもう非常にたくさんございまして、ここで一々申し上げることは大へんだと思うのであります。非常に大ざっぱに申し上げますと、さっき申しましたように、太陽と地球との間、と申しますのは、地球上で起るあらゆる自然現象というものは、主として太陽から来るものによって起っておる。その太陽から来るものは何であるかということは、全部がつかまっていないということ、地上では観測できないもの、それをつかまえる。それでまず何が来るかと申しますと、一番わかっておりませんのは、紫外線と白しまして、目で見える七色の光よりももっと波長にして短かい光、言葉をかえますと、一種の殺人光線であります。そういったものが非常に多量に降ってきております。それは幸いにして空気の中で全部こなされます。空気に対してそれが働きかけている、従って、地球上には参りません。そのために高いところではいろいろなことが起っておって、地上にそれが響いてきております。そういった道筋は大体のことはわかっておりますが、確実にはわかっておりません。それから次には宇宙線でございます。宇宙線は、非常に早い原子核でございます。そういったものが飛び込んできております。地上で観測しております宇宙線は、第二次宇宙線と申しまして、一度大気に宇宙線が当りまして、大気をぶちこわすとか、いろいろな作用をしたあとの残りを地上で観測しております。そこでなまのものが知りたい。なまのものがつかまりますと、それがどういう径路をたどってどういうように働くかということがよくわかるのであります。それから、次には流星塵と申します、非常に高いところにたくさんの流星のちりと申しますか、針の先のようなものから小石のようなものまであるのでありますが、そういったものが無数に飛んでおります。ある学者の推定によりますと、一日に総量一トンも降るという人もありますし、それが千トンという人もあります。これがどの程度降るかわかっておりません。そういう点が将来のロケット飛行なんかに大切なことであります。それをはかります。それから、高いところを衛星が飛んでおりますときに、衛星の中の温度がどうなるかということは、それにつきます電池、動力になります電池の寿命という問題に関係があります。作用ということに関係がございます。その温度が非常に重要でございます。これは人為的にある程度抑えることもできます。第一段のソ連の衛星を上げまして、そういうことがはっきりわかったと思います。あれが三週間電波を出しております。三週間と申しますのは、大体積んでおる電池の寿命でございますが、それがちゃんと働いておったという事実、それからソ連でもって計画しました人工衛星の構造は、成功であったと判断します。どれくらいの温度であったか、まだ情報が入っておりませんが、とにかく電池を動かすのには差しつかえなかったということであります。それだけのことがわかりますれば、たとえば生物を積むこともできるということが言えます。第一段はどれだけのことをやったかわかりませんが、第一段は高いところの大気の空気の量をまず知って、今後上げる衛星をどのようにして上げれば飛び続けるとか、どこへ飛ばすことができるかということに役立ったと思います。それから、温度を必ずはかったと思っております。それから、流星が非常にたくさんございますので、それにぶつかると、もちろんこわれるのでありますが、それがこわれない。これは多分こわれないだろうとわれわれも予想しておりましたが、こわれないということは、それほど心配することはない。そんな程度のことが最初のものではわかったのじゃないかと思います。それから、衛星自体の観測の目標をもっと追加いたしますと、高いところの地磁気の状態を調べます。地磁気というのは、御承知のように、磁石が北を向いておるその力でありますが、それの高いところの様子を調べますと、実は地磁気の一番大もとになるものは、地球自体が一つの磁石のようになっていると普通は考えるのでございますが、高いところに電流が流れております。この電流が流れるのは、太陽面でちょうど水素爆弾何千個というものを一ぺんに爆発させたような爆発現象が起ります。そういったときにたくさんのものが地球に降って参ります。それが地球のまわりに電流として流れます。その様子は地上で大体つかんでおるのでありますが、高いところへ上って、もう一ぺん調べますと、どれくらいの電流が流れ、どういう影響を地上に与えるかということまでわかるのであります。それを調べる。それから、気象上の問題を調べます。たとえば、日本の気候が非常に寒い冬があるとか暖かい冬が起るとか、そういった長期の気候の変化といったような問題は、やはり太陽からどれだけの熱をもらって、地球からどれだけの熱を出しているかという、いわゆるエネルギーの出し入れの状態を調べる。こうしますと、地球全体としての気候の長い間の変化というものをつかむことができます。それを調べる機械も積みます。それから、地球上にどれだけ雲があってどうなっておるか、その時々刻々の変化を、一日で世界中を回って全部調べることができますから、そういうような衛星も上げます。今私が申しましたのは、アメリカ及びソ連で計画しております第一次の最初の種類の観測の種目でございます。  この次にもう少し大きな衛星を打ち上げることができるようになりますれば、たとえばテレビを積むこともできましょうし、下からいろいろな操縦もできましょうし、何でも好きなことができる時代がくると思っております。それはそんなに遠くではないと考えております。これは全部が人間の役に立つものになると思います。
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 犬を乗せているという話ですが、犬の心臓とか、血液とか、そういう要素は、どの程度のことが地上にわかるのですか。
  105. 宮地政司

    ○宮地参考人 実は、犬を乗せるというのは、地球観測年の種目でございませんので、詳しいことは存じません。しかし、これが地球観測年の種目でなくても、それをやって悪いということは決してないのでありまして、実は日本の今度の南極観測隊の中には、生物学者が行っております。やはりそういうことは国の学問としては必要なことでありまして、ソ連ではそれをやったというだけであります。  それで、何を調べておるか、それはどうも医学の面でよくわかりませんが、すべての観測はちょうどわれわれが実験室で調べたいようなことを、全部衛星に言いつけておきまして、そしてその記録をとることもできますし、その様子を全部電波に載せて地上に送ることもできます。それから、その電波に載せての送り方でございますが、これは時々刻々その観測資料を放送しながら飛ぶ場合と、それから一回り回る間、約一時間半、百分間でありますが、その間の観測資料というものを、テープ・レコーダーのようなものに記録させておきまして、地上から指令電波を出しますと、数秒間に全部の資料を送ることができます。アメリカの計画によりますと、約十七種類の信号を、約五秒間で地上に降ろすことができるというようになっております。ですから、その通信連絡には困らないと思いますから、調べようと思えば相当なことができます。
  106. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 糸川先生にお尋ねします。昨日の新聞によりますと、アイゼンハワーがアメリカのロケットの結果をある程度発表しておりますが、三千キロないし六千四百キロ、アメリカのロケットは飛んだということが出ております。果してそんなに長距離を飛ぶものが今の科学でできたものか、先生の御推測その他を教えていただけばありがたいと思います。
  107. 糸川英夫

    ○糸川参考人 人の国の話だものですからよくわかりませんけれども、三千キロないし六千キロならば、十分飛ぶ技術が今日あると思います。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一つ大事なことは、弾道弾あるいはロケットを、昨日の発表によりますと、誘導して回収したというふうに書いてありました。そうすると、人工衛星あるいはロケットを相当な高度において走らせた場合でも、誘導して帰せるということが、今日可能ですか。
  109. 糸川英夫

    ○糸川参考人 御質問は、たとえば今の二号人工衛星で、犬を回収することができるかどうかということを御返事すればよろしいでしょうか。——私は可能だと思うのであります。方法は二つありまして、一つは今ロケットがこういうふうに横に飛んでおりまして、犬の入っておるケビンがこの中に入っておりますが、前に飛んでおりますが、そのケビンの、人工衛星の進む方向に小さい補助ロケット・エンジンをつけておいて、そのエンジンを吹かせますと、後に飛び出します。そのとき人工衛星に対して相対的に速度が落ちますから、地球に対しては今の秒速八キロよりも落ちますので、遠心力と引力のバランスが破れて、だんだん地表に近づくスパイラルの運動をいたします。そうしたときに、人工衛星の場合とICBMの場合とでは条件が違いまして、ICBMの場合では、弾道を描いて空気層に入ります。その角度が急激であるために、第一、空気に戻るときに空気の衝撃でこわれる、また空気の摩擦でひどく温度がしりますので、たいていの物体は溶けてしまう。アイゼンハワーが発表しましたのは、こういう非常に急角度で大気層に戻しても、大気の衝撃でもこわれず、それから熱によっても溶けないで回収することができるということを証明したわけです。人工衛星の場合は、非常に緩徐に大気層に入って参りますから、物によりましては、人工衛星の材料を適当に選んでおけばパラシュートその他を全然使わないでも、非常に緩徐に大気がクッションになりまして戻ってくる計算もできますし、それから多少の補助のエア・ブレーキとパラシュートをつけておけば、もっと簡単に戻すことができるのであります。この十月の一日から六日までワシントンで国際地球観測年のロケットと人工衛星の専門委員会がございましたときに、初めてソ連側が発表したことでありますが、記録回収技術というのは大体がロケットの方の技術で、ロケットに観測器を載せて上げまして、観測した結果を電波で下に知らせるのと、それからそのものずばりをまた自分のところに戻す技術があるのですが、その記録回収技術というのは非常にむずかしくて、日本でも秋田の海で再々やりましたが、非常にむずかしいものであります。それを非常に高いところに行ってものを出させて、それから特殊なパラシュートで大気層に入ったときに、衝撃などに耐えて落す。それを見つけるのが大へんむずかしいのですが、ソビエトはこれを上げまして、落したのをまたロケット発射地点に戻すことができたということを公表いたしまして、並みいる各国の科学者が非常に驚いたのであります。これがつい一カ月ほど前のことであります。そういうことから、記録回収技術はソビエトの方がアメリカより一段と進んでいるということも考え合せますと、一そう今の人工衛星の中に入っているものを地上に回収する、しかもソ連の領土内にそれがおりてくるように計算することは、可能であろうと思います。
  110. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 宮地先生に伺いますが、核融合反応というものがだんだん現実化してきましたが、日本でもそういう研究会ができたようです。そこで、日本におけるそういう研究は、外国の水準と比べてどの程度のところにあるのか。もちろん実験や何かはありませんが、理論的な面において、外国とどの程度の落差にあるのか、またそれをどういうふうにしたらいいか、御説明願いたいと思います。
  111. 宮地政司

    ○宮地参考人 非常に残念でありますが、核融合反応の研究の全貌についてはよく存じません。専門でございませんので、ここで確実なことを申しあげることができません。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最近の学問の世界を見ますと、あるいはヴィールスの研究とか、あるいは人工衛星とか、ともかく究極のものに向っているような気がいたします。われわれがあまり今まで注目しなかった天文学とか、宇宙学とか、あるいは高層におけるロケットとか、そういう学問が非常に重要な意味を持ってくるということがわれわれにもわかり、国民にもわかったと思うのですが、日本においてはあまり関心がなかったために、あまり重点を置かなかったようです。今お話を聞いて、八カ月後に外国からいろいろ資料が来るという話でありますが、それを十分完全に消化するような態勢日本の学界にあるのかどうか、またそれを改革するためにはどういうことをしたらよろしいか、伺いたいと思います。
  113. 宮地政司

    ○宮地参考人 非常に重要な問題だと思います。私は先ほど科学技術ということによほど注目しなければならないと申し上げたのでございますが、この発展のやり方、発展の進め方ということは、非常に重要な一画であります。私が考えますのに、あるものが欠けてはいけないということであります。何かはやりものがありますと、これは一つの国民性かもしれませんが、騒ぎ過ぎる感がありはしないかと思うのであります。たとえば、原子力なんというと大騒ぎする。そして金を出す。今度人工衛星だというとまた大騒ぎをして、それに金を出す。これはよほど考えものだと思うのです。やはりその基盤をなすものをつちかっておかなければいけない。そうしておきさえすれば、何が出ましても驚くことはない。まず一番大切なことは、あらゆる学問の分野が並行して進まなくてはならぬ。何か一つ欠けましても、必ず総合的な毛のは欠けるのでございまして、かつて私が、何か新しい機械を作ろうと思って注文したことがございます。そうすると、つまらないところで日本ではそれができない、こういうことが起ります。このことは非常に悲しいことでございまして、あらゆる分野がその用意をしておかなければならない。全部のポテンシャルを高めておくことが必要だということが、まず第一だと思います。しかし、それはやはり国力とか国の経済の問題でございまして、どの程度にするかは、これは問題でございます。それと、今の重点というものがございます。たとえば、最近は原子力の問題、こういったところが大きな重点だと思います。さてそれをやっておりますと、物性論をどうしてももう少しやらなくてはいけない。原子力々々々であらゆる物理学者が原子力の方に向いておったのですが、振りかえって見ると、物性論の研究者がいなくては仕事にならない。また大騒ぎをして物性研究所ができるといったように、あとからあとを追っているわけです。従って、私は全体としてのレベルは一様に上げていかなくてはならないと思います。と同時に、必要なものに主点を置く、これがやはり国の考え方、政治の問題だと思います。どれが大切だとは私は申し上げかねますけれども、その必要な方向へ大きい力を傾けていく、いわゆる傾斜政策がある程度必要だと思います。しかし、落ちるものがあっては困るということでございます。
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 茅先生が、いつか朝日新聞に書いておりましたが、ソ連へ行ってみますと、そんなに普遍的に学問、科学が発達はしていない。しかし、あれだけのことをやったのは、やはり、重点的にやったせいであろう。そういう記事を読んだことがありますが、私も実際行ってみてそういう感がするのです。そういう点を見ますと、もちろん一般的な基盤はなくてはならぬと思うのですが、しかし、やはり重点を置いて、それを目標にすべての科学の態勢を確立して整えていく。そうなると、いわゆる物性が必要だということが出てくる、あるいは材料の方に欠陥があるといえばそれを補強していく、そういうことで、ついにあの人工衛星というようなものが出たのではないかと思うのです。そういう点からすると、日本の今までの学問やあるいは科学というものが、そういう目標なくして、単に漫然として基盤を作る、基盤を作るということで過ぎ去ってきたような感がしないでもないが、そういうことはありませんか。
  115. 宮地政司

    ○宮地参考人 言われた通りだと思いますが、基盤を作るということは、とにかく必要なことである。しかし、それで十分ではないということでございます。と申しますのは、あらゆる草間というのは、お互いの関連性があるのであります。たとえば、今の原子核の研究をやるといった場合に、さっきお話が出ました核融合反応の問題は、天文学ではよく天体の研究としてわかっていることでございます。やはりそういう知識を入れる必要がある。ですから、原子核研究だけではいけない。ほかのそれに関連したものが必ずあるのであります。ところが、一応基盤ができておらぬと、その関係すら見落すということがありまして、非常に損をすると思うのであります。  それから、今のソ連のやり方とアメリカ的といいますか、ちょっと言葉が——米ソの対立として私は考えたくないのでありますが、そういった二つの行き方がある。たとえば、さっきここでお話がございましたが、軍需産業というものを先頭に立てれば、科学技術は発展するというような言葉が使われたように思いますけれども、そういうこともできる。これは可能だろうと思いますが、しかし、それが望ましいかどうかということは問題でございます。科学技術には必ず裏表がございまして、人間の幸福のために役に立つものでなければならないことは当然でありますが、非常事態になると、それを裏返すならば、軍事的にも使われるものでございます。ですから、必ずしも私は防衛科学だとか、軍事研究のものだとか、特別に名をつける必要はないじゃないか。むしろ旗頭としては、平和のためにすべての学問は発達すべきでありまして、それならば、私に堂々と金も出せる、研究者も喜んでそれに参画することができると思うのであります。  今のソ連の問題でございますが、これは茅先生の見てこられたこと、またいろいろな話を聞きまして、ソ連はあらゆることを国民が節約をして、そうして一つの方向に向けておると考えられるのであります。これは力によってそうしているのか、国民が進んでそうしているのか、これは知りません。しかし、そういうようなやり方もできる、結集することができる。日本で今何かやろうとしまして、その方向に結集すれば、日本の科学技術が結集されれば、相当な力を持っておりますから、大ていのことはできると思います。しかし、それだけでは、長い目で見た場合に十分ではない。ですから基盤を整えていくということと、それからある方向に、ある程度傾斜させるということは、これは必要だろうと考えております。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に糸川先生にお尋ねいたしますが、日本のロケットも、先生の御努力で、大体国際水準に近づきつつあるようでありますが。カッパーは非常に成功したようでしたけれども、あとのシグマですか、あるいはパイですか、遺憾ながらまだ十分成功していないような記事を新聞で拝見いたしました。日本の技術のどこに今欠陥があるのか、燃料にあるのか、材質にあるのか、あるいは機体の設計にあるのか、その辺を少し解明していただきたいと思います。
  117. 糸川英夫

    ○糸川参考人 その前に、先ほどのお二人のディスカッションされていたことについて、ちょっと私の所見を申し上げてよろしゅうございますか。
  118. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 どうぞ。
  119. 糸川英夫

    ○糸川参考人 非常に狭いフォーカスを作って、そこに一応の目標を置いて、そこにたくさん重点的にお金をつぎ込んでやるか、ごく一般的に、目標をきめないでやるかという問題ですけれども、たとえば一つの例として、今の人工衛星の問題をあげると、ソ連で人工衛星が上ったから、人工衛星の研究所を作って、人工衛星をやるというのではいけないだろうと私は思うのであります。そうでなくして、人工衛星を作る基盤になる、今、中曽根さんから御質問がありましたロケット科学全般にやっておけば、それが実りますと、台風の目をつかまえるロケットもできるし、ロケット旅客機時代になってもすぐ応用できるし、人工衛星を作ることもできるし、宇宙旅行時代になれば宇宙旅行もできる。ですから、人工衛星というものは非常にフォーカスを小さいところに置かないで、もう一つ基盤になるところをつかまえて、そこに重点的に焦点を置くというのが一つの方法ではないかと思うのであります。私がロケットをやっているから、私の口から言いますと我田引水になりますが、これは一つのエグザンプルとして、そういう例があるということを一つ申し上げておきます。  ただいまの御質問ですが、シグマとパイは、両方とも非常にきれいに飛んでおりまして、今まで失敗したことはありません。もし新聞にそういうのがあったとしましたら、何かの誤報ではないかと思うのです。おそらくシグマを風船につけて上げる計画で天候が悪くて、風船を上げることができないで、待機して帰ってきたという記事がそういうふうに誤まって伝えられたのではないかと思います。今のところ別にさして非常にここにネックがあるというような問題はありません。パイプは、カッパー、シグマ、パイと三つ並べますと、一番近代的なロケットになっておりまして、燃料のみならず、ロケット・エンジン、ロケット全体がオール・プラスチックスでできております。パイというロケットの名前のパイは、ギリシャ文字のピーでありまして、プラスチックスのピーをとったのであります。これはたとえて申しますと、オール・プラスチックスの自動車ができても、ボンネットをあけますと、エンジンだけは鉄でできておりまして、ボディはオール・プラスチックスでありますが、このパイというのは、ボディのみならず、エンジンから一切オール・プラスチックスでできております。工業的に生産されましたのは、世界で初めてであろうと思うのでありまして、多少欠点もございますけれども、しかし、ロケットの単独の性能からいいますと、われわれの方では、質量比という値で性能を表わしますが、世界の水準、あるいは水準を抜いた非常に軽量のものになっております。また値段も安いものですから、これが日本の将来のロケットにディヴェロップして使われるのじゃないかと思います。これはすでに小型のものでは数回、地上試験は数十回ないし数百回、飛翔試験も済んでおります。一応その点申し上げておきます。  今の御質問ですが、私は現在の研究体制自体に非常に問題があると思っているわけでありまして、今日日本のロケットの研究は、国際地球観測年の観測ロケットを日本で引き受けたために、これに間に合すためにできている臨時の部隊でございます。ちょうど南極探険隊が探険が済んで帰って参りますと、それぞれの職場について雲散霧消、解体いたしまして、何も残らなくなるのと同じように、今の情勢は、ロケット専門の研究所が一つあるわけではなく、いろんな研究所、いろんな会社から人が集まりまして、ちょうど臨時に部隊を編成してやっているのでありますから、国際地球観測年が済みますと、それぞれの職場に帰りますと、その年からゼロになる、現在の日本のロケットの研究の状況はそういう状況にございます。むしろ根本的にはそこに問題がございまして、研究の速度が思うようにはかどらないというようなことは、一切かかってここに来るように思います。
  120. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一つ今のお話で、そうしますと、今集まっているスタッフやら、その他を分散させるのは、われわれも非常に惜しいように思いますし、国のためにも恒久体制を作らなければならぬと思いますが、具体的にはそれを国立の研究所か何かに編成がえするとか、新しいものを作るというやり方がいいということになりますか。
  121. 糸川英夫

    ○糸川参考人 私はかねてずいぶん前から、日本一つでいいから、国立のロケット研究所を作るべきだと申しておりまして、これを一年おそくしますと、一年その方面で日本の技術がおくれることは、非常に明白な話だろうと思うのであります。今の中曽根さんのお話の国立の研究所を作るというのが一番理想的でありまして、こういう人工衛星とか宇宙旅行というような消費財を作るには、とても利潤を目的とする民間の事業では不可能でございまして、政府の仕事として、採算、利潤を度外視してやるよりほかに、やっていけないのであります。
  122. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ありがとうございました。
  123. 前田正男

    ○前田(正)委員 私は中曽根君の質問に関連して御質問したいと思います。ごく簡単にいたしたいと思うのでありますが、まず宮地先生にお聞きしたいのであります。今、日本の科学技術の総合的な基盤を上に上げていかなければだめだというようなお話でございました。実は、この問題につきましては、私は技術の出身でありますけれども、国会に出ましてから非常に骨折って参りました。特に、日本の学術というものは、相当水準が高いのでありますけれども、それが日本の力にならないという点で、それがためにはどうしても科学技術の総合した行政官庁を作り上げていかなければできないのではないかということで、私は科学技術庁というものを作り上げるのに、七年かかってきたわけであります。しかしながら、そういうことに対しまして、先ほどもお話がありました科学技術に計画性を持たさなければならないというようなことに対しましては、この問題を私らが唱えましてから長い間にわたりましたが、ほとんど学者の諸君は、そういうような基盤を上げるために、あるいは計画性を持たせるために、そういう総合官庁を作るということに対しては、学問の自由を侵すとか、学問の発展に支障があるとかいう点で、ほとんどの方が学術会議を中心にして反対してこられたのが今までの実情でありました。私たちは、この科学技術庁を作るときにも、これでは困る、たとえば今、糸川先生が所属しておられますような東大の付属研究所とか、少くともそういうような付置研究機関は科学技術庁で総合してやらなければ、現実に困るではないか、こういうようなことを唱えたのでありますが、これも学術会議の反対がありまして、結局国会で付置機関は落すということになったわけであります。また宮地先生の天文台関係や気象庁関係の問題、こういう問題につきましても、私どもはかねてから科学技術庁の中にこれを統合してしまったらいかがかというような話をしておったのでありますけれども、そういう問題もみな反対がある。こういうようなことで、現在できておりますのは、非常に中途半端なものができておるのであります。ところが、その後、できましてからこれで二年くらいになりますが、その間に国会の委員の方たちの御協力によりまして、その中で大きく取り上げました原子力とか、あるいは一般の科学技術の問題は非常な発展をいたしまして、科学技術庁ができましてから、予算なんか大てい倍、何倍というような数字に伸びていっております。ところが、それに比べまして、私たちが懸念いたしました学術方面の予算その他については、私ども委員会からもしょっちゅう文部省とか関係の方に、もっとやらなければいけないということを激励をするのでありますけれども現実の結果といたしましては、科学技術庁で総合しました予算は非常に出ているけれども、科学技術庁で総合しないところの関係の予算、たとえば今お活のロケット研究所を作るとか、付置研究所の問題とか、その他の学術関係の予算、あるいは科学技術庁の予算をもっとふやさなければならない、そういったものは、みんなおくれておるのが現状でございます。そうして、最近になりまして、この人工衛星とかそういった問題で、科学技術というものが大きく取り上げられて、今日もこれが非常に大きく取り上げられておるということは、私ども幸いでありますけれども、こういうものに対しまして、皆さんが実際の仕事をしておられて、科学技術というもののレベルを上げるためには、ある程度の総合的な計画性をもって国家としてやって、学問というものを生かしていかなければならぬ、こういうことに対して、率直にどういうふうにお考えになっておられるか、その点を一つお聞きしたいと思います。
  124. 宮地政司

    ○宮地参考人 これも重要な問題だと思います。それで、いわゆる政治というもので学問が動くということは、政治が学問を動かしてはいけないと考える。学問が動くように政治としては援助していただきたい。その点が一番大きな問題だと思います。たとえば大学の各研究者が、その研究者のやっておる内容とか進む方向について、どうして政治がそれをきめられるかということで、その点に問題があると思います。ですから、冬研究者の自由な考え方というのは生かしていただく、これは統制すべきではない。その意味で、私は基盤を盛り上げていくという言葉を使ったのであります。もう一つは、国策として進まなければならないものがあると思います。そういったものについては、重点的に相当多額の費用をかけなければできない、ちゃちなことではできないと思います。それは今のたとえば科学技術庁の構想なんかもけっこうなことだと思っております。その二つの面が私はあると見ております。
  125. 前田正男

    ○前田(正)委員 その点につきまして、実は行政に属するものは科学技術庁でやるのはもちろんでありますけれども、非常に金を投じなければならぬのは、大学の付置研究機関ではないかと実は思っておるのでございます。これは学問に属するものではありますけれども、その内容について、政治統制が介入していくという必要は私はないと思いますけれども、しかし、少くともこれは総合的に調整されて、政治の力によって、政治的に大きく金というものを投じていかなければならぬと思います。それは今のような方にやっておりますと、実は原子力関係におきましても、御承知通り、われわれは学問の自由ということで、学問関係のものははずしたのであります。はずしたところが、関西の原子力センター、原子力研究機関がなかなか実現できない。予算はつきましたが、なかなか実現できないというか、そういう結果になっておるのであります。従って、少くとも学問の中では、私は侵害するという気持はないのでありますけれども、しかしながら、そういう問題については、きょう私が特にその問題を取り上げましたのは、今度また人工衛星で科学技術というものが世間で大きく話題になると思いますけれども、私は世間の話題になるたびに、この問題については一つ学者の諸君の御協力を願って、何も政治が学問の中へ干渉しろというわけでもありませんけれども、しかし、政治が援助できるのは、やはり援助の仕方というものが私はあると思います。だから、その点については、ある程度学者の方々、学術会議の方たちに御協力を願って、政治のやり方、金の出し方というものには御反省願わなければならぬと思うのでありますが、そういう点について、一つ付置研究所なんかある程度科学技術庁の統制を受けて、そうして、もっとたくさん予算をとるというのが、やり方としては私は進んでおると考えられるのですが、いかがでしょうか。
  126. 宮地政司

    ○宮地参考人 どうも学問の統制ということになりますと、一歩間違いますと、学問が、たとえば研究者の意に沿わないような方向に進められることはしばしばございます。これは今の人工衛星のロケット研究の生みの親であるブラウンなんかでもそうでありますが、彼が最初研究をしようとしたのは、高いところの情勢を探ろうというほんとうに純学術的な面でロケットを研究しておったのでありますが、それをヒトラーがむちを当てまして、そうしてV2号の製作に努力さしたということであります。そういうふうなことがないことが望ましい。ですから、大学の研究の自由というもの——ほかにはないと思うのですが、とにかく大学の研究の自由というのは、大学自体の考えで進むべきである。今の援助していただきたいというのは、どこまでも政治という線を通して動くのでございますから、それは金の出し方で自由になると思います。しかし、今の予算の形なんかも、われわれは非常に変に思いますけれども、大学自体が考えて出した予算が、全然それに無関係な方々によって左右せられる。非常におかしなことだと思うのであります。この辺もよほど考えなければならない問題があるのじゃないかと思います。これは今言われたことは非常に重大なことでございまして、どっちにきめるかということは非常にむずかしい問題でございますが、少くとも両者の間で相当よく理解をして進めたいということは事実であります。
  127. 前田正男

    ○前田(正)委員 この問題に突っ込んでもなんですけれども、実は大学に金を出しておるというのは、官立の大学は結局文部省で統制をして出しておるわけなんです。今お話通り、どこかわからぬ人がやっておるということは——そういうふうなことをやるなら、私は科学技術全般の統制のもとにおいておやりになるのがいいのではないか。というのは、大学に金を出すのは、文部省から出すか、科学技術庁から出すかの相違でありまして、私は全体の今のお話の基盤を受けて、そうして計画を変えて出していかないと、実際あちらこちらに跛行したような問題が出てくるのではないかと考えておるのであります。ただ、私は科学技術の問題は、この機会に相当世間の注目を浴びると思いますから、ぜひ一つ学者の方たちもその点について、日本の科学技術を伸ばすにはどうしたらいいか、特にせっかく相当高水準にある学術というものを日本の力のためにするのにはどうしたらいいかという点について、一つ忌憚のないお考えを承わっておきたいと思います。  最後に糸川先生がちょうどおいでになりまして、しかも付置研究所に所属しておられるわけでありますから、私が先ほど述べた点について、付置研究所の所員として実際にいろいろの問題に最近ぶつかっておられるわけであります。特にロケットの新しい予算の獲得にはいろいろ苦労されておると思いますので、何かわれわれの参考になるものがございましたら、お話し願いたと思います。
  128. 糸川英夫

    ○糸川参考人 今のお答えと全然別のことなんですけれども、この機会にちょっと私の心境を聞いていただきたいと思いますのは、こういう人口衛星などが上りまして、それじゃロケット研究所を作れという声があがってできたとする、実は今ロケットを日本でやっておる現状でも、日本全体のバランスから考えて、少し過ぎたことをやっておるのではないかと私はしょっちゅう反省するのであります。たとえば、ロケットを実験場まで運びます道路が非常に悪くて、発射の衝撃でこわれなくても、途中の道路でこわれるというのが、ロケット研究の現状でございます。基盤からとおっしゃっておるのは、そういうところにあると思いますので、そういう足元をぜひ政治家の皆さんがお忘れにならないで、その問題をとり上げていただきたいと思います。
  129. 菅野和太郎

    菅野委員長 岡良一君。
  130. 岡良一

    ○岡委員 両先生に若干お尋ねをいたしたいと思います。私どもこの委員会としても、実は科学技術の振興については、現在の行政機構について十分検討した上で適当な結論を出したいと思っておるのでありますが、こういう機会にそれに関連して若干お尋ねいたしたいのであります。実は私きょう読んでおりました本に、日本の大学の卒業者の学部別の数、これにソ連、米国、日本、英国が出ておるわけです。それで宮地先生がおっしゃったのには、科学の各分野におけるいわばポテンシャルというものは、なるべく並進的に進めていきたい。科学の各分野どころか、文化系統、人文系統と理工科系統において非常な較差がソ連と日本、英国、米国と日本との間に出ておるわけであります。数字を申し上げますと、日本は人文系統が大体各年ごとに大学の卒業者の中で七九%となっておる。これに対しまして理工科並びに医薬系総合しまして二一%、ところがソ連は理工、医薬系統を含めて約七三%になっておる。日本の三倍以上になっております。米国にいたしましてもこれは二七%でありますが、英国のごときはこれまた三三%ということで、非常に率が高いわけです。これは日ごろ私どもも多少関係がありますので考えておりますが、日本の各大学における若い学徒の養成されたものが人文系統に非常に多くいる。そして事実はそれが失業の源泉になっておるというふうな、狭い門に追いやられておるという現状を見るにつけましても、やはりもっと理工方面に若い研究者あるいは技術者を養成しながら送り出していくという教育的努力が必要なのではないか。そういう努力が、先生の言われる科学の各分野ではなく、すべての学問の各分野におけるポテンシャルを日本現実に即応して進めていくという場合には、どうしても格段に必要なのではないかと思うのでありますが、その点いかがでございましょうか。
  131. 宮地政司

    ○宮地参考人 これは先ほど申し上げましたように、現在の世の中というのは、科学技術をあらゆる面の先頭に立てておるということでございます。別に私は文科系とかそういった人文科学と自然科学とを区別しておるのじゃございませんで、自然科学であれ工業界であれ人文科学であれ、それはすべて科学的に進めなくちゃならないということでございます。ことに科学技術、いわゆる理工系の方の養成というもの以外には、今後日本のような国を救うものはないと思うのでございます。それをとにかく進めていくことが国の将来を繁栄に導くものであると考えます。従って今までのように科学技術者が——私はこれは非常に古い思想だと思うのでありますが、たとえば学者が技術者をあまり尊敬しない、階級をつけているように見かけられる節があります。また世間の方は、学者をごらんになって、あれは何もわからないといったような、いわゆる世間には通じないものだといったように考えられがちでございます。何かしら私はもう少し日本全体として一つの伝統を作るべきだと思う。それは、新しい時代に入ったのですから、今後は科学技術というものをあらゆる面の先頭に立てなくちゃならない。そういったものに対する敬意と申しますか、取扱い方ということに、もう少し関心を持たなくちゃならない。そうすれば必然的にそちらへ人が向くだろうと思うのでございます。  それから、今の教育という問題を私が申し上げたのは、結局教育組織がそういうように進んでいかなくちゃならない。科学技術者が十年に倍になるのだから、そのつもりで科学技術者の数を増すような教育の制度ができておらなくちゃならないのです。ところが、科学技術の学生の教育というものは、ほかの文化系の教育よりも、金がかかります。単に学生を募集するだけでは何にもならない。これはりっぱな教授も必要でございますし、それから実験などの設備が必要でございます。従って、金が相当かかるわけであります。そんなことが今までの理工系の学生が少い原因になっていやしないかと思います。こういったことは、非常に多額の資本を投ずることでございまして、もしこれが簡単に養成ができるものでしたら、多分会社なんかで技術者をどんどん養成してそこで使うだろうと思いますが、なかなか普通の利潤では考えられない多額の費用が要るのです。これは国全体のためにそれだけの投資をしなくちゃいけない、その投資がしてないわけです。その現われが今のような非常に科学技術者の比率の少い結果になっておると思います。
  132. 岡良一

    ○岡委員 現地の大きなメーカーなどでは、相当やはりサイエンティスト、テクニシャンがトップ・マネージメントに出ておるわけです。しかし、行政機構になると、その点はまだ非常におくれておるように思うわけです。そういう意味で特に具体的に申し上げれば、たとえば政府が新しい経済建設五カ年計画を発表する、その裏づけとして予算は出ておりますが、問題はやはり人というものですね、そのために全体的にどれだけのどういうテクニシャンが必要か、どういう学問的な体系を進めていかなければならないかというようなことが何ら裏づけられておらない、こういうところにやはり日本の現在の政治の科学技術に対するいわばまだ十分な理解のない現実の姿があるのではないか、こういうふうにも私は考えます。こういうような点、国が経済建設計画をやるには、何年目にはどれだけのどういうテクニシャンが必要だという、人に裏づけられた経済建設計画を作る、ここまで僕は徹底すべきだと思うのです。そういう点いかがでしょう。
  133. 宮地政司

    ○宮地参考人 その点私も非常に痛感するのであります。とかく何か起ると、ばたばたとやろうとする、十分な計画がなくていろいろなことをやるように見えるのでございますけれども、その辺は相当長い時間をかけてそういう計画はすべきでありまして、一ぺんにはできないと思います。ですから、今仰せられた通りだと思います。人という問題は、非常に重要な問題だと思います。
  134. 岡良一

    ○岡委員 それからもう一つの問題は、この科学技術全般を見渡しますと、研究所を置くにいたしましても、ある部分は科学技術庁の所管のものもあれば通産省所管のものもある、あるいは運輸省所管のものもあるという格好になっておる。そうかと思えば、文部省の方でも、科学技術振興ということで、今年度相当な予算をとる。しかし、他とはかかわりなく、十分な打ち合せなく、とにかく各省別に要求しておる。そして、予算のぶんどり的な運営というものがその欠陥として出てくる。これは国全体の科学技術を組織的に進める上においては、何らプラスにならない。予算は多いけれども、その予算の効率がどの程度まで出てくるかということにおいては、現在のような姿では、私はせっかくの資金というものの効率は疑わしいと思う。やはり科学技術行政全般にわたって、これを一本化する。一本化するといったって、一つの機構を作る必要はないかもしれませんが、相当強力な、昔の言葉でいう参謀本部的なものを作って、これで日本全体の科学技術行政というものを強力に運営していく、こういう体系がやはりこういう機会に考えられていいのではないかとも私は思うのですが、そういう点いかがでしょうか。
  135. 宮地政司

    ○宮地参考人 中曽根さんが言われたと同じような問題になって参りましたが、これはなかなかむずかしい問題だと思います。これは、私個人の考えとしましては、今のそういった考え方も必要であると思いますが、全部が全部そうするということについては、ちょっと先ほど申しましたように疑問を持っております。ですから、その二つの道を並行してやるべきだと思っております。
  136. 岡良一

    ○岡委員 私は別にいわゆる官僚的な天下り的な権力的な統制という考えを持っているわけじゃないのです。あくまでも学問の進歩の生命は自由と創意ですから、これを尊重しつつ、それをやはり一つの目標に結びつけていくという全体的な視野の上における行政指導というものが必要ではないかということを申し上げたわけです。  それから、委員長から御注意がありましたので、日本の特に科学上の問題について最後に一点だけお聞きしますが、基礎の研究と応用の分野は非常に緊密な協力関係にある。私ども医学をやっておれば、細菌学の日本の業績というものは、論文としては非常に世界的に認められている。日本の伝染病はどうかというと、実際は、敗戦前はチフスにしたって梅毒にしたって世界でも高率を示しておるという状態なんです。こういうところに理論と応用というものの一体化というものが欠けている。これは現在でもやはりそのうらみがあるのではないか。だから、日本が科学技術というものを進めるためには、この理論と応用というもの、基礎研究と応用というものの一体化、象牙の塔の研究室ではなくて、それが実際にすぐ足が踏み込める形において研究の業績が応用化されてくるという顧慮、こういう点について、先生方は研究室におられる方として、糸川先生なり宮地先生なり、どういうふうな実感を持っていらっしゃいますか。
  137. 糸川英夫

    ○糸川参考人 ただいまなかなか痛いところを突いた御質問がございましたが、日本ではなぜ応用と基礎がなかなかつながらないかということなのでありますけれども、科学技術と一口に申しましても、科学と技術というのは相当離れたフィールドで、技術ということになりますと、はっきりした目的がないとスタートしないわけでございます。日本では、応用つまり技術の面になりますと、このものが、たとえば工業の場合には利潤を上げ得るかどうかということによって、そこに技術が伸びるかどうかということがはっきりきまるわけであります。ある会社がその製品を売り出せばもうかるということになれば、そこに研究費も出るし技術も進むのでありますけれども、さてそれをやるについては、非常に年数がかかります。一説によると、日本では金利が非常に高くて、それだけの年数を待っているひまがないものですから、応用面になりますと、もっぱら外国の技術を手っとり早く輸入してそれを応用する。ですから、日本における基礎研究が日本の応用面につながらないで、日本の基礎部門は外国の基礎とつながって国際会議その他で交流をやる、それから日本の技術は外国の技術とつながって、非常に遠回りをして外国から技術が入ってくるというのが現状であろう、こういうのが私どものよく議論する結果になります。そういうことは、今の日本の経済界だとか経済事情だとか、そういう非常に複雑な原因に根ざしておりますので、私どもがここでどっちがいいとか、どうすればいいかということは、ちょっと一朝一夕には御返事できないようなことであります。
  138. 岡良一

    ○岡委員 端的に、一つ率直に科学者としてお答え願いたいと思うのですが、具体的に申し上げますと、今度の予算で、無線誘導弾としてスイスからエリコンを何機か入れるために、三億数千万円の予算が計上され議決された。ところが、先ほどおっしゃったように、ロケットについても、皆さんの研究費というものは、ごくプライベートなものしかない、おそらくメーカーについて間に合せの補助金が政府から出ている程度でないかと私は聞いている。そういうような形で、無線誘導弾はロケットそのものではありませんが、非常に不可分なテーマだろうと思います。こういうものは防衛庁が予算を計上するのではなくて、もっとあなたの方にその予算を張り込んで、皆さんの方で基礎から応用までの一貫した研究態勢を作ってもらって、国は予算的努力をそういうところに示していくというのが、新しい国の科学技術政策じゃないかと私は思うのですが、率直なところ、糸川先生どうお考えになりますか。
  139. 糸川英夫

    ○糸川参考人 だんだん大きな問題になってきたのでむずかしいと思うのですが、私は科学政策のことばよくわかりませんが、技術の面ではやはり何か現場にいつも直結しているものですから、現場から問題が起きてくる。それを解決するために、非常に何か抽象的なものがあって、そこからいろいろなものを考えるというのも一つでしょうけれども、技術というのは非常に細分された現場からいつも問題が提起されまして、それを現場々々で解決しなければならないことがたくさんあるように思うのであります。ただ、そのどれもに通ずるような基礎的な問題については、お説の通りかと思います。
  140. 岡良一

    ○岡委員 これも先生としてはいろいろお立場もありましょうが、率直な御見解をぜひお聞かせ願いたいと思うのです。私は専門家でもありません。ただ、いろいろな文献等を機を得て見て思うことなんですが、現在の武器の進歩というのは、もはや核兵器は実用化の段階にある。問題はこれをいかにして正確に照準に撃ち当てるかというのが、現在における一つの段階ではないかと私は見ておるのです。そういうふうに解釈していいのではないでしょうか、皆さん科学者としての立場からごらんになって。
  141. 糸川英夫

    ○糸川参考人 どうも私どもの専門ではないように思いますので、防衛庁長官の方に聞かれて下さい。(笑声)
  142. 岡良一

    ○岡委員 糸川先生はサイエンティストだからあまり政治的な御答弁は無用だと思いますが、あなたはあなたとしての、科学者としての良心に従った明確な御所信を私は承わりたいと思って、あえて実はお尋ねしておるのです。
  143. 糸川英夫

    ○糸川参考人 それではお答えいたします。よろしゅうございますか。ロケットについてだけと限定いたしますと、防衛庁なり大学なりでばらばらにやるよりも、一カ所がいいということは、必ずしも言えないのでありまして、ロケット技術に関する基礎的なことは大学でやらなければいけないと思いますが、実際応用する面は、防衛庁でやらなければいけないかと思います。それが私の学者としての考えでございます。
  144. 岡良一

    ○岡委員 私は、いずれにしましても、ロケットの研究というところに今後における新しい核兵器の効率の問題がかかってくるのじゃないかと思うのです。私は皆さんと議論をしようと思うのではないのですよ。しかし、両先生のお話を伺っておれば、とにかく人工衛星が打ち上げられた、これはソ同盟からも言うてきておるが、平和目的のためで、また糸川先生のお話を聞けば、ロケットの飛行機もできるであろうし、人間は将来宇宙旅行もできるであろう、なるほど窮極すればそうありたいと思います。しかし、それは非常に希望的な観測ではないかと思うのです。現に十月四日に第一回の人工衛星が打ち上げられた、そうするとアメリカのペンタゴンはにわかに、われわれは世界戦略を根本的に検討し直さなければならぬということを公式に言い出しておる。こういう形で、たとい打ち上げた者の平和目的は別として、それを越えてもはやこうしてロケットというものが大規模に、かつまたさらに新しい燃料を実験しようという努力が、平和目的への努力に連なってはおるが、現実にはこれが軍事目的を非常にねらっておる。そこにやはりアメリカのペンタゴンが開き直った原因もあろうと思う。そういう現実の中で、もはや、原水爆も核兵器も弾頭をつけたものがロケットをもって運搬される。そこに現在における人工衛星というものの問題があるのではないかということを私は懸念をしておるわけです。  そこであらためてお尋ねいたしますが、人工衛星が打ち上げられたということは、八月二十六日に打ち上げられた大陸間弾道弾をさらに有効化せしめるためのどういうプラス的な条件が、人工衛星の観測の結果から得られるものであろうかという点です。これは先ほど渡辺さんも若干述べておられましたが、宮地先生はその専門の方でありますから、宮地先生から、また糸川先生にも、そのためのロケットのいろいろな問題があると思いますが、われわれしろうとが承わってわかりやすいように御説明を願いたいと思います。
  145. 宮地政司

    ○宮地参考人 話がどうも横っちょにそれているように思います。きょう実は出て参りましたのは、人工衛星それ自体の話で、もちろん初めに申し上げましたように、人工衛星そのものは、地球観測年の一環として行うものは、少くとも純学術的な目的で使っておるわけであります。ですから、それがどのように使われるかということは、それぞれの運用の問題でございまして、その結果があらゆる分野に使われることは事実でございます。そこで、軍事的に研究される方は、その専用の方がやられるべきで、すべての資料が与えられるわけです。それをどのように使うかというのは、これからの問題でございまして、今その問題の、特に軍事的方面だけをお聞きになっているようでありますが、軍事的にはいろいろな役に立つものがあると思いますが……。
  146. 岡良一

    ○岡委員 具体的にどういうところがありますか。
  147. 宮地政司

    ○宮地参考人 それは私はよく存じません。
  148. 岡良一

    ○岡委員 もう最後の一点だが、しかし、この委員会でこういう側聞を申し上げることは、この委員会にふさわしくないことじゃないと私は思うのです。われわれは科学技術というものの振興が、平和の目的に役立ってほしいということにおいては、皆さんと同じ希望を持っているのです。皆さんよりも強い希望を持っておるから、あえて私は皆さんの専用的な意見というものを承わらしていただきたいという強い願望を持ってお尋ねしておるのです。良識から考えてみたところで、たとえばICBMというものが、これが空中街燈ということになれば、それが千八百キロか七百キロの上空において、一定の軌道をもって地球を一時間何十分で回転させるということのためには、これを操縦するコントロールの技術というものは、私は大へんなものが要ると思う。大陸間弾道弾はそのまま実用化のために役立つのではないでしょうか。あるいは今日地球上において想像の域にすぎないそのような高空における空気の密度がどの程度のものであるかというようなことは、そのスピードと関連づけて直ちにわかるのではないでしょうか。あるいは上空に打ち上げられた人工衛星が、地球の形状その他について、われわれが地球上から観測しておった以上に、別の経緯度から現在の誤差というものを発見し得るでしょう。これは人工衛星の発見ではあるが、それは新しい平和への道でもある。と同時に、それにはやはり大陸間弾道弾は大きな役割を持つでしょう。そういう点は、あなた方は率直に言うべきだと思う。そういうことを回避しながら、あなた方が科学について論ずるということは、われわれは日本の科学者としてはとるべき道でないと思う。私はもう質問はしません。しかし、そういうような卑怯な態度であってはいかぬと思う。日本の科学者の中には、もっと核兵器の問題についても、平和のために役立つとして立ち上っている者がいるのです。せっかくおいで願った参考人に対して失礼だと思うけれども、もっと科学者としての国境を越えた良心に立って、こういう問題についてのわれわれの質問に対しても、親切な御答弁を願いたいと思う。これをもって私は終ります。
  149. 菅野和太郎

    菅野委員長 小坂君。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂委員 きょう参考人として両先生においで願ったのは、ここに書いてありますように、人工衛星に関する問題についてであります。ただいままで科学技術諸般の政策にわたる非常に広範な問題が展開されまして、あるいは御答弁がしにくかった点があるかと思います。私ども御答弁を通じて符ましたことは、非常に優秀な科学技術庁の長官候補者がおられるということを認識した意味で、意義があったと思うのであります。  私は簡単に技術的なことをお教え願いたいと思うのでありますが、私ども人工衛星が上りましてから、これがICBMとの関係で、非常にICBMの着弾点が正確になるというような話を聞かされておる。どういう点でそういう議論がされるのかという点について、一つ糸川先生から技術的にお教え願いたいと思います。
  151. 糸川英夫

    ○糸川参考人 ICBMの命中精度を上げる原因として、今まで四つがあげられておったと思います。  第一は、重力の分布が場所によって違います。一キログラムの重さは、地球上どこでも一キログラムでないために、弾道がずれて参る。重さの方が一定だとすれば、相当ずれます。その重力の地球上全部の分布を調査することは大事業でございますが、人工衛星の軌道を正確に観測すれば、重力の比重が出るということであります。  その次には、先ほどの御質問の中にもありました通り、上層の空気の密度がどの程度であるか今はっきりしておりませんので、人工衛星につきましても、最初は二日回ると言ってみたり、二年回ると言ってみたり、数カ月回ると言ってみたり、非常にあいまいな点が出ておった。高い所の空気の密度が理論的に計算されます場合にいろいろな価がありまして、どれにしていいかわからない、それがはっきりわかると思います。  三番目は、地球の外形、それから大陸間の距離というものが現在非常に不明確であって、地球儀の上に士いてありますものは、必ずしも正確でない。そういう地球の形と大陸間の相対距離が、今度の人工衛星の観測によって非常に明確になり、地図が非常に正確になりますのに役に立つということであります。  第四は、機械固有の誤差ということがありまして、どんなに精密な機械を作りましても、これには固有の誤差というものがあくまで残ります。その固有の誤差を技術でどこまで小さくできるかということが、人工衛星の円軌道をどれくらい正確に円に近いものを作り上げられるかということにもなるし、あるいは作り上げられた人工衛星の軌道を観測することによってそれが逆に出て参りますので、その判定がつく。主としてこの四点ではないかと思います。
  152. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そういたしますと、さっきお話があった犬を現地に帰すという場合、ロケットを保有したままで打ち上げて、それを打ち出すと、その速度の差でもって、思った地点に犬は到着するわけでございますね。この考え方からいたしますと、人工衛星にたとえば核兵器を積んで、それにロケットをつけておいて、ICBMを使わないで人工衛星そのものから、思う地点へ核物質による爆撃をすることもできる、そういうことも可能になるわけでございますか。
  153. 糸川英夫

    ○糸川参考人 非常にむずかしい問題だと思いますが、常識的に考えられていることは、兵器としてそういうふうに使うことは損であろう。つまり人工衛星というものは、天文台で観測いたしますと軌道が正確にわかりまして、何日の何時何分にはどこを通るということがはっきりわかって、それを変えようと思っても変えることができない。従って、事前にいわゆるアンチ・ミサイル・ミサイルで待ち受けていれば容易に落すことができます。そういう意味で、兵器としての意味は非常に乏しい。やはりICBMのようにどこを通るかわからぬというものの方が、非常に役に立つと思います。ただ、私昨年アメリカに行っております間に、先ほど宮地先生も引用されましたが、フォン・ブラウンがペンタゴン幹部の人たちにされた通俗講演を聞きましたが、ブラウンは人工衛星は自分で爆弾を落したりするようなことはしないでも、地球上に非常にたくさん飛んでいるICBMを上から観測して、それをコントロールするのに役立つだろうというようなことを言っておりましたが、それはICBMが音速の二十何倍という早さで飛びますので、地上から観測するという非常に早くてむずかしいけれども人工衛星は自分自身が非常に早さが早いもんでございますから、人工衛星から見ると相対的におそく見える。ですからコントロールが非常に楽になるという理論であると思うのであります。そういうことはブラウンその他が考えておったようであります。しかし、そういうことが実用になるかどうか、あまり研究しておりません。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂委員 次に、人工衛星というものが一つのステーションになるということは考えられますでしょうか。たとえば、月なら月、火星なら火星に向って行くというときに、ある程度の燃料を、それが固体燃料であろうと液体燃料であろうと積んでおいて、あるロケットが飛んで行って給油する。そうしてまた次の人工衛星に行って給油をする。そうして目的地に到達する、こういうことは私どもしろうとから見ると夢のような話ですが、専門家から見ると可能な問題でございましょうか。
  155. 糸川英夫

    ○糸川参考人 将来ステーションが作られる可能性が二つあると思うのであります。一つは、地上から大体四万キロメートルぐらいの高さに人工衛星を上げますと、人工衛星が地球を一周する周期と地球の自転の周期がちょうど一緒になりまして、二十四時間しなりますから、高く上げたものが、たとえば東京で上げればいつも東京の真上にある固定点になります。それは非常に便利な、たとえば非常に大きな柱を立ててその先に置いてあるようなもので、一緒に回っておりますから、そういうものを地球のまわり数カ所に立てますと、テレビジョンの中継所とかあるいは通信の中継所に便利である。将来技術が進歩すれば、こういう可能性があるわけであります。  その次は、月や火星に行きます場合、スペース・トリップをやる、こういうことをやる場合の基地として、必ずしも人工衛星ステーションを必要といたしませんけれども、しかし、あると便利だと思われる理由が三つほどございます。一つは地上から飛び立つものは、空気を一度通り抜けるために、すべて流線型に設計しないといけないというので、在来のロケットはみな鉛筆みたいにとがった形をしておりますが、これはたかだか三十キロメートルぐらいの空気層を通り抜ければ用がない形であります。あとは真空でありますので、流線型は意味がないものであります。従って、空気の中と空気の外で一度乗りかえた方がいい。そこで流線型から非流線型に乗りかえるためのステーションとして一つ考えられると思うのであります。二番目には、地球の脱出速度というものは、人工衛星の早さの平方根二倍になりまして、約一・四倍になります。人工衛星から出れば、すでに八キロメートルのスピードがある。平方根二倍しますと十一キロになりますが、あと三キロメートルのスピードさえ出せばいいわけであります。三番目は、地球のいろいろな生理状況にからだをならすために、しばらく人工衛星に滞在して、ならすのがいいだろうという生理学的な見地からの理由によるものであります。大体この三つから、あった方がいいだろうというのであります。しかし、必ずしも必要ではございませんので、人工衛星ステーションなしでいきなり月に人間を送ることも、将来は可能であろうと思います。
  156. 小坂善太郎

    ○小坂委員 将来は直接行くことも可能であろうし、ステーションとして使うことも可能であろう、こういう意味でありますか。
  157. 糸川英夫

    ○糸川参考人 さようであります。
  158. 小坂善太郎

    ○小坂委員 最後にもう一つ伺わせていただきたいと思いますが、すでに十五年前に秒速二キロの物体ができておった。現在人工衛星に成功したのは、秒速八キロのものができたために成功した、こういうのですが、そうすると、アメリカはなぜまだ上らないのか。燃料としては、先ほどのお話ですでに三キロの燃料のものがある、こういうお話でございますが、なぜアメリカの場合はまだ上らなくて、ソ連で上ったということでこう大騒ぎをするのか。  それからもう一つは、ICBMは一応ソ連で成功したといわれておりますが、アメリカはアトラスというのですか、私は名前はよくわかりませんが、そういうものをやろうとして、どうもうまく上らない。こういう点はどこに技術的に美があるのでありますか。それを一つお教えいただきたいと思います。
  159. 糸川英夫

    ○糸川参考人 秒速三キロメートルのものですと、先ほど申し落しましたけれども、八キロのスピードは出ないものですから、三段式に重ねるわけです。つまり親子ロケットで、親のロケットが子供のロケットをしょって走る、親が三キロまでスピードが出ると、それでおしまいになって、子供をかわりに出す。子供は生まれたときから親からもらった三キロというスピードを持っておりますから、合計六キロのスピードになる。そこでまた孫を出しますから、親子二代にわたった遺産を相続して六千メートル・プラス実際の二キロメートル、こういう勘定になります。つまり三キロメートルのスピードの燃料では、三段式にしないと人工衛星はできない。従って、アメリカのものは三段式ロケットで計画されておりますので、今の計算で参りますが、ソビエトは二段式でやっておるか、三段式でやっておるか、公表がございませんのでわかりませんが、今まで発表された新聞、雑誌程度のものを想像しますと、三段式のもののようでありますので、大体程度からいえば似たようなものであります。ただ、時期的にソビエトの方がだいぶ早く、それから重さもアメリカの計画したものよりも重かったという量的な差があるわけであります。  この差が何で起きたかということですが、そんなに米ソ両国の内部事情を研究したわけではありませんので、ごく個人的な私の観測としてお聞き取り願いたいと思うのですが、すでに新聞、雑誌等でいわれました通り、アメリカはドイツA9、A10という計画書を持ってきましても、すぐそれを作りませんでしたが、ソビエトはA9、A10という一番大きなロケットの図面を持って参りまして四、三年で完成しております。そこから、つまり終戦直後からすでに差が出てきたのであります。一説によりますと、これは確かではありませんが、アメリカの爆撃機製造会社が非常に反対をして、当分の間飛行機による爆撃機で戦争ができるということを非常に強硬に主張したために、弾道弾にかわるのが非常におくれたという説もございます。それから、空軍と陸軍と海軍の間の対立が非常に激しくて、同じような計画を政府に出して、政府はその取捨に困りまして、今度新聞によりますと、何とかいう方が長官になるそうですが、今までに数回アメリカのロケットの研究を整理する委員会が、私の記憶だけでも三回できております。一番最後のものはガードナー・コミッティといわれて、ガードナーという敏腕の人が出まして、快刀乱麻で、麻のように乱れた発注計画書を全部すげかえて一本のものにするという非常に大きな期待を持って、ガードナー・コミッティが出発いたしたのであります。その後いろいろな雑誌が伝えるところによりますと、ガードナーの関係のあった会社だけが残って、あとの会社は全部取り消されたということで、風評はさんざんでありまして、そのたびに委員長をすげかえて、今まで三回ほどやりそこないをやっております。そういうことで、研究がおくれたのではないかと思うのであります。
  160. 宮地政司

    ○宮地参考人 ちょっと今のことで補足したいと思いますが、地球観測年の人工衛星はこれは別に人工衛星打ち上げ競争ではございませんので、初めから計画に基いておるものでございます。それで、アメリカの最初の大統領の発表のときには、単に地球観測年間に衛星を上げる、こういう発表でございます。その後の発表では、正式に言って参りましたのは、ことしの秋に上げるということは最初言っておりました。それで、ことしの初めごろの様子を見ますと、実は地上観測装置というものがまだ全世界に配られておりません。これは世界じゅうが同じような機械でもって人工衛星の位置、運動を観測しようという計画でございます。それが全部完成いたしますのが、実は来年の三月でございます。三月以降に上げられるのが、ほんとうに人間の学問のために役立つものであるということだけを申し上げておきたいと思います。
  161. 菅野和太郎

    菅野委員長 齋藤憲三君。
  162. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 だいぶ長い時間参考人の御意見を拝聴いたし、またお尋ねも申し上げたようでございますので、私はほとんどお尋ねを申す必要を認めないのでありますが、特に糸川博士が秋田県の道川でいろいろ御苦労なさっておる実情を、私は私の郷里でございますのでたびたび拝見いたしまして、非常に粗雑な、小さな規模で大きな目的のために努力をいたしておられるのを見て、もっと国家は大きな力をいたすべきではないかということを常々考えておったのであります。特に先ほどのお話の中で、どうも道路が悪いので機械がこわれる、運搬するたびに機械がこわれる。しかし、私の現場における考えでは、あれが一番りっぱな秋田県の道路でありまして、ただ、残念なことには、国道から現場に参りまする間が、いろいろ地元でも御協力申し上げても、予算の少いせいか道路がつかない、まことにお気の毒だと存じております。と同時に、きょう伺って非常に驚きましたことは、その研究態勢国家的にコンクリートされておらぬということであります。地球観測年が終ると、その研究スタッフはばらばらになるということを承わりまして、非常に驚いたのであります。これはわが党においてもよく今後これに対処するの相談をいたしまして、また関係当局にも十分希望を申し述べて、御期待に沿うように努力をいたしたいと考えておるのであります。  ただ、二点だけ簡単に御質問を申し上げたいのは、先ほどの御説明の中に、今やっておられますところのカッパーその他のロケットは、プラスチックスであるということであります。私の今まで考えておりましたのは、打ち上げますると、非常な速力を持って参りまするから、空気の抵抗があって、非常に、熱に耐えなければいけない。だから、このロケット、人工衛星には、まず第一に耐熱材料というものを非常に重点に考えなければいかぬというふうに考えておったのであります。この点もう一度御説明を願いたいと思います。  それから、世界的なプラスチックスの容器ができておるということは、世界に誇るべきことだと思いまするので、来年の四月から万国博覧会がブラッセルにおいて開催せられます。これは予算三億円で日本がやっておるのでありますが、この間現場を見ましたときには、他国に比較いたしまして、非常に小さい規模でございます。ただ、私はその陳列内容が、日本の実態を世界に示すかどうかということに今かかっておるのではないかと思います。半年間に三千五百万人の入場を予定しております。ほとんど世界各国の人、特にそういう関係に興味を持つ人が入場する、そういうところに出品の御準備ができておるかどうか、この二点を一つお伺いしたいと思います。
  163. 糸川英夫

    ○糸川参考人 だいぶ技術的なこまかい問題になりましたが、最初の、プラスチックスで作っているのはカッパーではありませんので、カッパー、シグマ、パイと三種類あるうちのパイ・ロケットだけであります。  それから、空気との摩擦の問題でありますけれども、ロケットは消耗品で一回しか使えませんですから、あまり高級の材料を使うことは忌避しております。ニッケルとかコバルトなんかは非常に不経済で、何回も使えませんので、なるべく安い材料を使っております。片やプラスチックスの耐熱性はだんだん高くなりまして、一番いいプラスチックスですと、耐熱性はどんな金属よりもいいものができております。しかし、今の日本のものは、一番高い耐熱性の金属よりはよくはありませんで、そこでカッパー、パイに使いますときには、あまり空気の抵抗が大きくならない条件で使っていくことを考えております。それが第一のお答えです。  二番目の、外国の博覧会に出さないかということでございますが、本年の四村にイギリスのロンドンでございましたか、高層観測用ロケットのショーがございます。非常に大きな会合がございまして、各国から出品してくれということで、日本からもカッパー・ロケットその他を出品してくれということだったのですが、インヴィテーションが非常におそくて間に合いませんで、そのかわり写真その他を出品いたします。ブラッセルであることが早くわかりましたならば、私どもとしてはできるだけ出品するように努力もいたしたいと存じますし、関係機関その他と御相談しまして、実現、協力できるようにいたしたいと思います。
  164. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 今のロケットは、私しろうとでわかりませんが、いわゆるセラミックで作られておるのじゃないか、非常に耐熱度が大きなものでなければ人工衛星は飛ばせないのじゃないか、そういうふうに考えておったのでありますが、その容器の金属というものは、今どういうふうな考え方をされておるのですか。
  165. 糸川英夫

    ○糸川参考人 今回っている人工衛星そのものでございますか。
  166. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ロケットから千七百キロまで到達する間の……。
  167. 糸川英夫

    ○糸川参考人 間のロケットの弾頭ですか。ロケットの弾頭は耐熱金属であろうと思います。しかし、今度ソビエトが犬を入れて上げたということは、発射の加速度が非常に少いということであります。専門の方の言葉で、加速の単位一gに対して三gないし五g以上の加速度をかけております。従って、空気のあるところは非常に緩徐なスピードで上っていく計算になりますので、あまり大きな問題は出ないと思います。大体今ある程度の耐熱材料しか使えるものはないので、最初スタートのときに非常にスピードを出しますと、空気の摩擦で溶けますし、また犬も死んでしまいますので、両方勘案して、緩徐にスピードを上げておるように思われます。
  168. 菅野和太郎

    菅野委員長 志村君。
  169. 志村茂治

    ○志村委員 一問だけ。これは非常に愚問かもしれませんが、ソ連が今度の人工衛星を打ち上げ、やがては月の世界に行く、こういうことをいわれております。月の世界に行くということは、人間昔からの一つのあこがれでもあったようでありまして、確かにわれわれ興味としては理解できますが、ソ連があれだけの経費をかけて月の世界に行くのは、実際上の利益はどこにあるか。彼らはどういうことを目標として月の世界に行くのか、月の世界に行けばどういうことになるのか、その点を……。
  170. 宮地政司

    ○宮地参考人 月というのは、天文学的に運動が非常に問題でございまして、そういったことを調べるということがもしできるならば、非常に重要な問題だとは思いますが、しかしながらソ連が今考えておりますのは、目的が何であるかということはIGYの報告には何も書いてございませんので、よくわかりません。多分月をまずソ連のものにしようと考えておるのかもしれません。(笑声)
  171. 志村茂治

    ○志村委員 ロケットそれ自身の生産についての技術情報ですが、これはもちろん平和利用の場合と兵器としての場合とは違うのですが、そういう技術情報はどの程度自由になっておるか、平和の場合の自由程度を伺いたい。
  172. 糸川英夫

    ○糸川参考人 ロケット製作に関する技術情報が今世界各国で活発に行われておるかどうかという御質問でしょうか。
  173. 志村茂治

    ○志村委員 自由であるか、秘密があるかどうか。
  174. 糸川英夫

    ○糸川参考人 ほとんど秘密でございます。たとえば、燃料のごときはほとんど公表されることがないのであります。ただ、アメリカが人工衛星を上げますバンガード・ロケットについては、詳細に報告されております。燃料、エンジンの重量、全体の寸法、中の図面まで公開されております。その他のものは、国際地球観測年に使われるものでも、公表されないものがほとんど大部分であります。  これは、つけ足しますが、軍事用の秘密ももちろんございましょうし、一つはそれを作ったメーカーの製造上の秘密がありまして、お互い同士これを出しておらないのであります。
  175. 菅野和太郎

    菅野委員長 ほかに御質疑はありませんか——なければ、参考人よりの意見聴取は、この程度にとどめます。  参考人各位には、長時間にわたり、しかも貴重なる御意見を承わり、まことにありがとう存じました。本委員会の今後の調査に資するところきわめて大なるものがあると考えます。委員会を代表して、私より厚く御礼を申しあげる次第であります。  次会は来たる十一日、午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十五分散会