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1957-03-30 第26回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月三十日(土曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員曾祢益君辞任につき、その補 欠として栗山良夫君を予算委員長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      豊田 雅孝君    副主査     岡田 宗司君    委員            泉山 三六君            小山邦太郎君            関根 久藏君            苫米地義三君            前田佳都男君            安井  謙君            海野 三朗君            栗山 良夫君            佐多 忠隆君   担当委員外委員  小林 孝平君   国務大臣    通商産業大臣  水田三喜男君    郵 政 大 臣 平井 太郎君   政府委員    通商産業政務次    官       長谷川四郎君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業大臣官    房会計課長   川崎 立太君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    通商産業省軽工    業局長     齋藤 正年君    通商産業省鉱山    局長      森  誓夫君    通商産業省石炭    局長      讚岐 喜八君    通商産業省公益    事業局長    岩武 照彦君    特許庁長官   井上 尚一君    中小企業庁長官 川上 為治君    工業技術院長  黒川 眞武君    郵政政務次官  伊東 岩男君    郵政大臣官房電    気通信監理官  松田 英一君    郵政省監察局長 久保 威夫君    郵政省貯金局長 加藤 桂一君    郵政省簡易保険    局長      成松  馨君    郵政省経理局長 八藤 東禧君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    通商産業省重業    局次長工    大堀  弘君    特許庁会計課長 松原憲太郎君    郵政事務次官  小野 吉郎君    郵政省郵政局次    長       千葉 三男君    日本電信電話公    社副総裁    靱   勉君    日本電信電話公    社業務局長   吉沢 武雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  まず昭和三十二年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、通商産業省所管の部を議題といたします。  本件につきまして政府側より御説明を願います。
  3. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) ただいま議題となっております通商産業省予算各案について御説明を申し上げます。  まず三十二年度通商産業省所管一般会計予定経費要求額は百一億二千七百十五万五千円でありまして、これを三十一年度総額八十億七百三十四万四千円に比較いたしますと、二十一億一千九百八十一万一千円の増額となるわけであります。  次に、三十二年度予定経費中重要なものについて、御説明を申し上げますと、第一に、貿易振興対策といたしまして、総計十二億四十九万円を計上いたしましたが、これを前年度予算額十億七千九百八十三万五千円と比較いたしますと、一億二千六十五万五千円の増額を見ております。  施策の重点は、わが国貿易商社等がいまだ弱体であり、従ってその海外における活動も十分とは申せない現状にかんがみ、海外市場の開拓と販路拡張とをはかるため、前年度に引き続き貿易情報整備市場調査充実及び取引あっせん等のための在外機関整備拡充をはかるとともに、輸出検査強化意匠改善等輸出増進のための基礎的施策推進することといたしております。  まず、わが国商品展示、紹介及び貿易あっせんを行う貿易あっせん所については、三十一年度に引き続き、既成のニューヨーク、サンフランシスコ、カイロ及びトロントの四カ所を維持いたすとともに、その活動を活発化せんといたすものであります。次に、国際見本市参加等補助については、二億八百二十万円を計上し、来千度開催予定されている国際見本市中、特に輸出振興上効果の期待されるニューヨークリオデジャネイロ等五カ所程度に対し、大規模参加予定し、なお国際絹業博覧会、及び中共川本市についても参加いたすことといたしております。また、一九五八年ブラッセルにおいて開催される万国博覧会に参加するために必要な準備経費一億六千二百万円を別途に計上いたしております。  次に、海外投資促進をはかるため、必要な法的措置を講ずるとともに、プラント輸出促進対策といたしよしては、現地における機械設計技術相談等の便宜を供与する重機械輸出プラント協会活動を継続するため一億八千万円を計上し、経済協力に関する基礎的調査を行う等、事業内容充実をはかることといたしております。  なお海外における土建事業に協力し、あわせて建設機械輸出促進するための海外建設協力会の事実を引き続き補助するとともに、農水産物輸出増進をはかるため、海外に設置されている農水産物輸出振興共同施設事業を継続する費用等を計上し、なお医薬品輸出増進のための措置を講ずることといたしております。特に三十二年度における新規施策の主要なものといたしまして、バンコックに化学肥料サービス・センターを設置して、東南アジア地域等に対し化学肥料輸出増進をはかることとし、また、医薬品、雑貨、繊維製品等につきこれらの輸出を一そう促進するため、海外共同施設を増置することとしたほか、輸出品検査を強力にするため別途所要法律改正を検討中でありますが、国立検査所経費増額するとともに、民間検査機関検査施設強化拡充する必要があるので、所要補助金一千万円を計上いたしました。  海外市場を開拓し、わが国商品販路拡張をはかることは輸出を振興するための根本でありますので、海外市場調査のため、前年度とほぼ同額の一億四百八十一万三千円を計上いたしまして、海外における諸情報の迅速なる収集をはかるとともに、わが国商品および産業経済の実態を海外へ紹介宣伝するための海外広報宣伝費を一億三千八百三十七万五千円計上いたした次第であります。  さらに、わが国中小企業製品輸出に占める役割はきわめて重要でありますので、その輸出商品品質向上意匠改善等をはかるため、新規試作品奨励技術研究推進各種展示会講習会開催等を行う経費として六千五百万円を計上いたしております。  その他、日本国際見本市補助については、前年度に引き続きまして、同額一千万円を計上いたしました。  第二に、技術振興対策でありますが、これは前年度対比二億七百九十二万円の増加で十三億二千九百六十八万六千円を計上いたしております。  まず、鉱工業技術研究助成費については、四億円を計上し国家的見地より見て重要と思われる応用研究工業化試験補助いたしたい所存でありますが、そのうち特に欧米諸国に比して立ちおくれていると思われる電子技術か振興するため、一億三千万円を充て、また、将来における中型輸送機需要を勘案して、その国産化促進するためその設計補助として、三千五百万円を計上いたしております。  次に、当省所属試験研究機関につきましては、それぞれの基礎的研究に必要な研究費のほか、特別のテーマにかかる特別研究費として前年度対比一億三千九百五十二万円増し総計七億六千四百五十万六千円を計上いたしました。  これにより、三十一年度に引き続ま工作機械オートメーション海水利用石炭化学新種合成繊維の製造、電力系統連繋運転等わが国経済にとって喫緊の重要事項に関する研究推進するとともに、新たに高度分析技術研究機械工業における部品の互換性研究生産加工技術研究等重要研究を開始する予定でございます。  なおこのほか、電子機器試験検定のための設備整備する費用のうち本年度分として一億円を計上いたしました。また将来科学技術庁より当省所管試験研究機関に移替を予定されているもので原子力関係試験研究費三億三千七百四十九万七千円がございます。  次に、発明奨励費につきましては三十一年度同額の七百二十四万円を計上し、外国特許出願発明協会補助を行うこととしております。  なお発明行政重要性にかんがみ、本年度特許庁の人員並びに事務費充実をはかりました。  第三に、中小企業振興対策であります。  まず、金融対策でありますが、中小企業金融公庫につきましては、資金運用部よりの借入金二百億円に、回収金等自己資金二百十五億円を加えますと、運用資金総額は四百十五億円と相なり、三十一年度における運用計画三百億円に比し相当程度増額になるわけであります。  さらに商工組合中央金庫につきましては、産業投資特別会計より十五億円出資するとともに、資金運用部資金をもって同金庫の債券二十億円を引き受けることとし、これによって資金充実金利の引下げをはかりたいと存じております。  また、全国五十二の信用保証協会強化をはかるため、中小企業信用保険特別会計に十億円を投入し、これを信用保証協会に貸し付けることによってその資金的基礎強化に資すことといたしております。  中小企業振興対策の第二は、協同組合共同施設設備近代化及び中央会に対する補助金でありますが、前年度四億七千万円に対し、三十二年度は五億三千五百万円を計上し、施策の一そうの強化をはかることといたしました。  次に、中小企業相談所補助についてでありますが、中小企業特に零細企業に対する指導相談に応ずる機能を一そう強化中小企業の要望にこたえるため三十一年度に一千万円を増加し、六千一百九十一万円を計上いたした次第であります。  また、都道府県の行う中小企業振興事業に対する補助については、三十一年度同額診断指導を中心として計上いたしており、さらに、先年からの風水害に伴う小企業に対する復旧資金利子補給につきましては、引き続き所要額一百万円を計上いたした次第であります。  なお、中小繊維工業産業規模を合理化し、過当競争を避けて輸出市場安定確保をはかるための補助金として、三十一年度同様一億二千万円を計上いたしました。  第四に、産業基盤強化対策であります。  まず、わが国語産業生産性向上を三十一年度に引き続きさらに強力に推進するため、三十一年度に三千五百万円を増額して、一億一千万円を計上いたしました。  工業用水事業補助といたしましては、工業用水確保が今後における工業生産伸長のため重要不可欠な基盤である点にかんがみ、従来取り上げた地盤沈下地帯以外に、補助対象拡張し、重要工業地帯工業用水確保を特に必要とする地帯にも及ぼすこととし、三億一百万円を計上いたしました。  次に砂鉄、磁硫化鉄鋼等重要鉱物生産維持をはかるための探鉱費補助は三千万円増しの五千万円とし、水溶性天然ガス探鉱費補助は三十一年度同様二千万円となっております。  なお、重要機械国産化補助三千万円を新たに計上し、重要工作機械等国産化補助いたすこととしておりますほか、発電水力調査費は三十一年度同額の一千四百五十八万九千円及び核原料物質探鉱奨励費三千三十七万六千円を計上いたしました。  第五に、以上述べましたもの以外の主要施策といたしましては、防衛産業特定設備管理補償費七千七十五万二千円、鉱害対策費八千三百四十七万二千円等を計上いたしております。  次に、当省所管特別会計について、その歳入歳出予算の大要を簡単に御説明申し上げます。  まず、アルコール専売事業特別会計でございますが、三十二年度歳入予定額は三十三億三千二百六十六万四千円、歳出予定額は三十億四千四百二十五万七千円でありまして、資産、売掛金等関係を加減しますと、三十二年度益金予定額は二億三千九百五十四万七千円となります。  第二に、輸出保険特別会計について御説明申し上げます。三十二年度歳入歳出予定額は、ともに五十二億八千十八万五千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入八億七千四百三十七万八千円、資金運用収入二億一千六百万円、雑収入八千一百六十九万八千円、前年度剰余金四十一億八百十万九千円等であり、歳出のおもなるものは、支払保険金五億六千四百六十八万円、予備費四十六億八千五百十三万一千円等であります。  なお、海外との経済協力促進するため、すでに設けられている海外投資保険制度所要改善を行い、填補率の引き上げ、保険料率引き下げ等を実施するとともに、プラント輸出促進をはかるため普通輸出保険において機械包括保険を新設し、また、保険料負担の軽減をはかることといたす所存であります。  第三に、中小企業信用保険特別会計について御説明申し上げます。三十二年度歳入歳出予定額は、ともに三十二億七千四百六十万六千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入四億八千三百三十七万六千円、資金運用収入一億二千六百二十五万円、雑収入一億三千五百八十四万七千円、前年度剰余金二十五億二千九百十三万三千円等であり、歳出のおもなるものは、支払保険金七億二千八百八十万八千円、予備費二十四億八千八百五十六万四千円等であります。  なお、このほか、先に申し述べました通り信用保証協会に貸し付けるため一般会計から本会計の基金に十億円を繰り入れることといたしております。  第四に、特別鉱害復旧特別会計について御説明申し上げます。  本特別会計は、戦時中の石炭増産に伴う特別鉱害を復旧することを目的とする臨時立法に基くものでありまして、本年五月をもって一応期限が到来するものでありますが、別途一年間の期限延長のための法律案の御審議をお願いした次第であります。  本会計の三十二年度歳入歳出予定額は、ともに二億六千四百十七万五千円でありますが、歳入のおもなるものは、納付金収入二億六千三百九十一万九千円であり、歳出は、その大部分が鉱害復旧事業費であります。  なお、本特別会計のほかに、臨時鉱害復旧事業としては、前に申し述べました当省分八千三百四十七万二千円のほかに、国庫補助金四億九千二百八十六万円を建設農林等の各主務省に計上してありますが、鉱害全体としての事業総額は十七億円程度に上ることとなり、鉱害地帯における失業対策にも、万全を期しておる次第であります。  第五に、特定物資納付金処理特別会計について御説明申し上げます。  本会計は前々国会において成立いたしました特定物資輸入臨時措置法に基くもので、三十二年度歳入歳出予定額はおのおの三十億四千六百十五万七千円で、歳入のおもなるものは、納付金十八億三千六百万円、前年度剰余金受入十二億一千十四万七千円であり、歳出のおもなるものは、他会計繰入二十九億円等であります。  以上をもちまして、一般会計及び特別会計予算の概要について御説明いたしましたが、この際、当省関係財政投融資計画について簡単に御説明いたしたいと存じます。  まず開発銀行でございますが、電力鉄鋼石炭等重要産業及び新規産業強化発展をはかるため、財政資金二百五十億、自己資金三百五十億円、合計六百億円を計上し、特に重点的効率的運用に留意して施策推進に努める所存であります、  次に、輸出入銀行につきましては、プラント輸出振興等に必要な資金として自己資金を合せ六百九十二億円を計上し、昨年度額に比し百四十四億円の増加をはかり、所要資金の円滑なる供給をはかっております。  次に、電源開発株式会社につきましては、財政資金四百四十六億円を計上いたし、電源開発計画を円滑に達成いたしたいと考えている次第であります。  また、石油資源開発株式会社については、原油の探鉱試掘等を一そう促進するため、財政出資として十五億円を計上いたし、民間出資増額と相待って事業費確保をはかる所存であります。  中小企業関係金融機関につきましては、すでに中小企業対策のところで触れましたので、ここでは省略させていただきます。  以上で通商産業省所管一般会計及び特別会計予算の御説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細に御説明申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上御可決下さらんことをお願い申し上げます。
  4. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) これより質疑に入ります。質疑のおありの方は御発言願います、
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨日は経済企画庁外務省防衛庁と、三つの所管予算審議をやったわけです、その際に、経済企画庁については宇田国務大臣が御出席、それから防衛庁については小満防衛庁長官が御出席になっておる。外務省についてはもちろん総理大臣は私ども要求申し上げませんでしたが、本日は通産大臣おいでにならぬのですが、私どもはぜひ出席していただきたいと思います。
  6. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 閣議中でありますので、十一時ごろには出て参るということでございます。もう間もなく見えるだろうと思います。  速記をとめて。    午前十一時二分速記中止    ——————————    午前十一時四十五分速記開始
  7. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 速記を起して。
  8. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 中小企業の問題についてお尋ねしたいのです。政府重要政策一つとして、中小企業維持育成に努力するとしばしば伺っておるのでございますが、この予算によりますと、予算面から見て中小企業に対しての熱意というものは政府で声明されておるほどのものは見えない、わずかに投融資の点において、従来よりもやや認めるものがあると思いますが、これについては、中小企業庁長官はこの程度をもって満足されておるのか、あるいは長官としては、どの点に予算上のゆとりがあるならば、より要望しようという御意見を持っておりますのか、その御意見を伺いたい。
  9. 川上為治

    政府委員川上為治君) 来年度におきましては、今先生もおっしゃいましたように、財政投融資関係、あるいは税制関係方面につきましては、これは非常に満足しておるという意味じゃありませんが、三十一年度と比べますというと、相当程度中小企業については特別な措置がとられておるわけでございます、一般予算につきましては、おっしゃいましたように、大体一億程度しかふえてないということになっております。しかし、この一億というのは、来年度新しく行うことになっております信用保証協会に対する十億の貸付、これを除きまして一億程度ということになっておりますが、私ども従来考えておりましたことで、来年度におきましては少くともこの中小企業金融公庫でありますとか、あるいは国民金融公庫でありますとか、あるいは商工中金に対する財政投融資につきましては、ある程度三十一年度上りも飛躍的にふえたということが言えるんじゃないか。税制についても先ほど申しましたように、いろいろな点について特別な措置をとっておるわけでありますし、また、保証協会に対しまする政府の十億の貸付につきましても、これは全く新しい制度として来年度から行うことになっておりますので、そういう点につきましては、これは十分満足するということではないのですけれども、まあまあわれわれとしては、相当程度できたんじゃないかというように考えますが、一般予算につきましては、先ほども申し上げましたように、そんなにふえておりませんので、まあことしは、財源等関係からこの程度にとどまりましたけれども、この次の機会におきましては、たとえば設備近代化助成金とか、あるいは診断指導関係補助金とか、そういうようなもの、あるいはまた、技術指導関係とか、そういうものにつきましては、もっと一つ予算を私どもの方としましては確保したいというふうに考えております。
  10. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 政府中小企業者経済活動を一そう円滑に、そうしてその運営を安定せしめるために、団体法等の制定に努力されておることは承知しておりまするが、何と申しましても中小企業は、金融の面において不足するところがある。従って、前年に比べまして、中小企業金融公庫及び商工中金にそれぞれ考慮を用いられたことはけっこうでございまするが、今日中小企業わが国輸出産業の上にになっておりまする使命の重大さから申しましても、この程度をもって満足すべきものではない、一段と長官におかれては、この方面に力を入れて、次年度予算にはさらにこの融資の点を拡大されると同時に、この取扱いが専門店ばかりでなしに、普通銀行その他信用金庫等を通じて円滑に行い得るような窓口を広げ、その広げた窓口に対して金融上のバツクを十二分にするということが非常に必要だろうと、こう考えるので、これらに対して明年度に対する御意見、御計画、心がまえ、これを伺いたい。  それからいま一つは、予算面でこの機械設備近代化、あるいは診断その他に対する諸経費補助等のお話もありますが、私はこの中小企業者は、最も弱いものが金融の便を得ない点と、たとえその金融の便を得た場合でも利率が高い、この点に対する十二分の考慮を持ち得るほかに、業者が相寄りまして共同の力をもって足らざるところを補うということが非常に大事である、いたずらに統制の力によって、統制の上にあぐらをかくようなことをすると、あるいは中小企業特異性というものを失って、かえってその発展を害することがないでもない。こういうような場合に特に必要なことは、協同組合の精神を発展させる、これを育成することだと思います。そうだのに、これを指導する中央会等に対する補助金がわずかに五百万しか増しておらぬということでははなはだいかんと思うのでありますが、これはいかがお考えでございますか。大臣も見えられましたから、御答弁はお差しつかえなければこれだけの答弁をしていただいて、私の質問は打ち切ります。
  11. 川上為治

    政府委員川上為治君) この中小企業育成強化のために、金融措置強化すべしという問題につきましては、私も全く同感でございまして、われわれとしましても極力そういうような措置を講じつつあるわけでございまして、三十二年度におきましては、中小企業金融公庫につきましても新しく政府財政投融資が二百億、それから国民金融公庫につきましても同様に二百億そういうふうに四百億の新しい財政投融資が行われるわけでございまして、それによりまして、相当程度従来よりも中小企業者金融難から救われるのじゃないかというようなふうに考えておりますが、先ほども申し上げましたように、最近の中小企業者資金需要から見ますというと、とうていこれでは足りないというふうに考えますので、今後におきましては、さらにこれを増額するように努めたいというふうに考えております。  それから金利の問題につきましては、これまた、きわめて重要な問題でございますけれども、現在、中小企業金融公庫国民金融公庫にしましても、大体長期につきましては九分六厘ということになっておりますが、この金利につきましては、さほど問題はないと思いますけれども商工中金につきましては、金利が非常に高いということがいわれておりますので、特に来年度におきましては、政府から増資をすることにいたしまして、十五億出資することにいたしております。この十五億出資をすることによりまして、少くとも現在の、長期が大体年一割一分五厘程度でありますが、これが一割三厘程度にはなるかと思うのであります。また、平均金利につきましては、短期をあわせまして大体九分九厘幾らということになって参ります。もちろんこれは中小企業金融公庫と同等のところまでいきませんと、少くとも第一段階措置としましては、相当現在よりも金利が下げられるということになりますので、われわれとしましては第一段階措置としてそういうことをやりまして、今後におきましても金利を下げるような努力を払いたいと考えております。  それから協同組合関係の施設に対する助成金につきましては、来年度におきましても一億程度ということになっておるわけでございますが、私どもとしましてはさらに今後におきましても、何とかしてもっとこれを増額していきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから中央会助成金につきましては、やはり私はこれは基本的には、この経費についてはやはり組合がお互いに出し合って、そうしてその資金孝もって中央会を運営するということが基本的な問題ではないか。ただそれに対しまして、政府がある程度の助成をすればよろしいのではないかというふうに考えますが、それが従来三千万円でありましたものが、来年度におきましては三千五百万円になるわけなのですが、その程度がいいかどうかといろ問題については、私の方としましては、もっと検討の余地がございますけれども、まあこれよりもある程度増額すべきじゃないかというふうに考えておりますけれども、財源の関係から来年度は三千五百万円ということになったわけでございます。
  12. 栗山良夫

    栗山良夫君 この際、水田通産大臣一つ、三十二年度通商産業省予算に関しましてお尋ねを申し上げるわけでございます。先ほど政務次官から予算の内容につきましては逐一御説明をいただきました、大体よくわかりましたが、問題は、内閣には総理が代表されるところの内閣の施政の方針があるのでございます。重点的方針というものがあるわけでございますが、これと同じように、通商産業省といたしましては、大臣の抱負、識見から出てくる通商産業省の基本施策というものがなければならぬと私は思うのでありますが、従って、もちろん先ほど説明をいただいたところには、相当各方面にわたって重要ポイントをあげて、そうして御説明になってはおりますが、まだそれだけでは、水田大臣が果してどこに一番重点を置いて、どういうことをおやりになろうとしているのか、この点が明確でないと私は思いますので、その点お聞かせいただきたい、こう思うわけであります。
  13. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき予算の御説明で、私どもが重点政策として考えておることを御説明あったかと思いますが、通産省としましては、一番力を入れるべきものは、やはり貿易の振興だろうと考えております。そのために、国内産業との関連におきまして、産業基盤強化する施策を強力にやりたいと思っております。  さらに、国際競争力をわが国の産業が持つために、産業技術の革新をここでやらなければならぬ、そうして国内における産業対策としましては、産業規模確保のために基礎産業を中心とする各種産業、新興産業を育成する政策と相待って、中小企業の振興対策をここであわせ行わなければならぬというのが、大体私どもの産業政策の大きい主眼点でございますが、そのうちで、私どもが今特に力を入れたいとしておりますことは、やはり貿易の振興ということを中心にした政策と、それから産業がだんだんに高度化していき、産業規模が大きくなっていくということになりますというと、この公正な自由な競争によって、政府の立てた経済政策のその目標に達するような施策をとっていく途上において、中小企業の競争力というものがだんだんに比重が弱まってくるという傾向がはっきりしておりますので、ここで一般産業の拡大政策と関連して、中小企業が自分の力による健全な競争力を持っていけるような施策を、実際の施策と同時に、法的保護を必要とする段階に来ていはせぬかということを考えまして、今度はこの中小企業金融対策、それから組織の強化というものについて、法的ないろいろの措置を考えたいということから、今国会にもそれを中心として法案の審議をたくさん願いたいという予定になっております。大体以上が私どもの力を入れている点だと言えます。
  14. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体お考えになっておる点はよくわかりました。で問題はですね、貿易の振興ということが通商産業省の最大のやはり目標であるとおっしゃったのでありまして、私どももその通りだと考えます。で、これに対するやはり政策がどういう工合に盛られるかということは、三十二年度の外貨予算というものがどういう格好になるかということが問題だろうと思います。で、この点はいずれ後ほどどなたか御発言があろうかと思いますが、私はこの問題とは別個に産業振興の面で今お話をいただいた線で、二、三疑問になっている点をお尋ねしたいと思います。  まず第一は、大企業中小企業との関係に今お触れになりました。それで先ほど説明を伺ったところによりますというと、なるほどその中小企業に対する問題は、相当出資されて、いろいろな金融措置、あるいは技術振興その他の措置がとられるようになっておりまするが、私どもはこういうことでは、今までの累年やって参りました施策を若干延長をし、部分的には若干拡大をしたという程度のものでありまして、抜本的な形にはなかなか進め得ないんじゃないかということを心配しているのです。で、これを脱却するために金融政策はもとよりでありますが、中小企業の組織強化のために格段の措置をとりたいと、こういうことをおっしゃいましたが、それはおそらく今問題になっておる中小企業団体法を政府提出するということだろうと思います。しかし、中小企業団体法を成立せしめまして、中小企業をかりに組織化したところですね、今のように特別な国家的な直接、間接の支援を受けておる大企業、ますます発展していくところの大企業の前に立たされておる中小企業はですね、その程度の国家的な支援では大企業との幅を拡大をますますするかもしれませんが、縮めることは非常に困難じゃないかということを私は考えておる。で、そこに中小企業助成法——社会党で申しますというと、産業分野の確立に関する法律であるとか、あるいは小売商振興法、こういうような法案の構想があったわけであります。ところが、伺うところによるというと、五億は三本足がなければ用を足しませんが、それと同じように、中小企業対策としては、三つの足がほしいと、こういうことで、民間の中小企業団体も熱心に要望し、わが党もそういう構想を進めて参りました。政府の部内においてもそういう動きがあったことは私ども承知しております、ところが、今国会に直接反映してくる姿を見ておりますというと、二本の足はなくなってしまっておる。中小企業の組織法だけになっておる、こういう工合に大体私ども今見通しを立てておるわけでありますが、果してそういう工合になるのか、まあそういうことで、中小企業はほんとうに今水田大臣がお述べになりました育成政策というものが達成できるかどうか、この御自信のほどを一つ伺いたい。
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま団体法と申しますか、組織法は準備を完了しまして、もう閣議決定も済みましたので、国会に提出する運びになっております。で、引き続いて検討しておりますのは小売商の振興法でございますが、これも準備が完了次第、今国会に出す予定になっております。で、中小企業の振興助成法の方は今のところでは、この国会に間に合わぬのじゃないかと考えております。で、これは現在中小企業庁で行なっているいろいろな助成事業にはっきりした法的の根拠を与えようという問題でございますので、この法案の方がおくれても特別大きい支障はない、他の法案において相当いろいろな点が解決される部分がございますので、この法案のおくれるのはさして私の方は心配ないのじゃないか、準備ができればむろんこの国会に出しますが、今のところ、見通しとしては間に合わないのじゃないかと考えております。
  16. 栗山良夫

    栗山良夫君 私ども中小企業を検討する場合に、一つ間違いますというと、戦争中は国家権力で中小企業企業整理を行いましたが、今度は自由競争下において中小企業の整理というものが私は必然的に行われるようなことになりはしないかということを非常に私は心配しております。もうすでに経済界においては、中小企業の業種別の担当者が多過ぎるということを言われておる。中小企業の業種別担当者が多過ぎるから、これを整理をしなければ中小企業はやっていけないのだということすら言われておる。そういうものが非常に人口過剰な日本において、ある一つの政策を間違ったために起きてくるというようなことになるというと、私は社会の混乱を招く一つの大きな要因になると思う。そこを非常に心配しておるわけですが、今大臣は助成法が若干おくれたところでそう混乱はないとおっしゃったのですから、従って、私は社会党が今用意しておりまする中小企業の産業分野の確立に関する法律の構想、こういうものをやはり何とかしないというと、中小企業をほんとうに救う道にはならないのじゃないかと僕は考えておりますので、それをもう少し述べまして、御意見を伺いたいと思います。  たとえば最近の産業界を見ますというと、だんだん資本集中が行われて、しかも大企業がどんどんと第一線の小売部門まで系列を直接、間接に強化して、そうしてその産業を守ろうという非常に強い動きがあります。まあ一番徹底しているのは、たとえば繊維なんかというものは、繊維メーカーがワイシャツまで作って、そうして系列を強化していくと、こういうことになれば、繊維加工業者である中小企業者が生きる道はどこにあるでしょう。これと同じことは、たとえば大企業としてはいささか遠慮されたらよくはないかと思うような家庭用の消費物資をどんどん大企業の名において作って、そのネームによって売り込んでおる。こういうことになればもう中小企業が生きる道というものはないわけであります。極端な言い方をすれば、八幡や、あるいは冨士製鉄が火ばしや、かままで作って売ってごらんなさい、どうして中小企業は生きる道がありましょうか。これと同じような傾向がどんどんと進んでおるから、従って、私は十分に研究をして、大企業には国家の過分な保護を、資金の面においてもその他あらゆる面で加えられておるのでありますから、これと相対的に中小企業に向っても、やはり中小企業が社会的な任務を持っておるその業種あるいは品種、そういうものについては、やはり相当強い保護を加えてあげ、そうして中小企業の仕事というものを確保してあげない限りは中小企業というものはつぶれてしまう、こういうふうに私は非常な心配をしておるわけです。そういうことを大臣は深刻にお考えいただければ、今のような御答弁にはならないと私思うのでありますが、その点の御構想はいかがでございますか。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 全くその点同感でございまして、そのためにやはり立法的な措置まで考えたいということで検討しておりますので、来国会には間に合わせられるのじゃないかと思っております。
  18. 栗山良夫

    栗山良夫君 中小企業庁、川上長官のお考えはどうでございましょうか。
  19. 川上為治

    政府委員川上為治君) 今大臣がおっしゃいましたように、私どもの方としましては、中小企業団体法、それから小売業振興法、それから中小企業振興助成法案、こういう三つの問題についていろいろ検討して参ったわけであります。中小企業団体法につきましては、閣議決定もしましてすぐ提案されるところに来ておりますが、この中小企業振興助成法案につきましては、先ほど大臣からお話がありましたように、その内容としましては、現在中小企業庁でやっております中小企業診断、指導でありますとか、あるいは中小企業の相談所関係の助成でありますとか、そういうものについてこれを具体的に法制化しようということでありますけれども、これにつきましては、まあいろいろな検討すべき問題もありまして、そして現実にまたやっておりますので、別に法制化する必要もないのじゃないかというような議論もありますけれども、その点については、さらに私どもの方としましても検討すべき点がありますので、今検討いたしておるわけなんですが、それ以外には、たとえば政府機関で、この中小企業に対しまして特に優遇的な発注なり、受注なりをするという、そういう措置も法律化したらどうかという問題も入っておるのですが、こういう問題についてもさらにまだ検討すべき点がありますので、私どもとしましては、これも今後さらに十分検討した上で実行に移したいというふうに考えております。  それから大企業中小企業の調整の問題につきましては、これは団体法によりましてある程度調整ができないかというようなふうにも考えておりますし、また、小売業者の部門につきましては、小売業振興法において調整ができないかということも、そういうところで一つやったらどうかというような検討もいたしておりますので、そういうところへ十分できないというようなことで、なおまだ足りないという点がありますれば、さらに検討しまして、先ほど大臣がおっしゃいますように、少くとも次の国会におきましては、そういう法案をまとめまして出したいというふうに考えております。
  20. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はこの問題は掘り下げていけば時間がかかりますので、きょうはこの程度にしておきたいと思いますが、特に大臣に強く要望しておきたいと思います。  予算委員会における総括質問あるいは一般質問においても完全雇用問題がもう非常にやかましく取り上げられましたが、やはり完全雇用というのは内閣のこれは重要政策なんですから、それを直接受けられるのは通商産業省であるわけであります。で、通商産業省でも特に中小企業対策ということがこれがもろに受けるわけであります。従って、そういう意味では、今私が述べました考えについて大臣も共鳴をしていただいたわけでありますから、その考え方が法制的にも、また、具体的にも、中小企業に直接予算化されて、そうして中小企業がほんとうに振興する、育成するように緊急な施策一つとっていただきたい。まあ今国会には間に合わないでしょうから、来国会ということをおっしゃいました、次の国会ということをおっしゃったのでありますが、それを特にやっていただきたいということを特に要望しておきます。  たとえば私が非常に不思議に思っておることがありまして、これはまた後ほど専門の方の部局にお尋ねいたしますが、たとえば鉱工業関係の技術補助ですね、これも非常に強化したと、鉱工業関係技術研究に対して格段の措置をとっておる、こういうことが先ほど説明せられましたが、私はどうも中小企業という立場から考えるというと、そういうような気がしないのです。役所から出されました資料に基いて工業化試験補助金あるいは応用研究補助金、こういうものの三十年度補助の内訳を見まするというと、資本の大小に関係なしに、これは野放しに出されております。そしてまあ試みに見まするというと、資本金五千万円以下と五千万円以上とを比較してみますると、工業の企業体にとって比較してみると、ちょっと私計算してみたのでありますが、全部で工業の方で見ますというと、工業化試験補助金の場合は三十一件あって、そのうちで十六件というものがこれは大企業、数字で言うと五一・六%くらいになりますかね、そのくらいはこの五千万円以上の企業についているわけです。今一番問題になるのは中小企業近代化であり、技術振興でありまして、こういう大資本を持っておる会社というものは自力でどんどんなし得るわけです。ところが、そういうところにもこういうわずかな金、これは一億に足らないのですが、わずかな金をどうして流すか、私はこういう点について非常に割り切れないものを持っております。ほんとうに中小企業が自力で技術研究ができ、そこにいろいろ発明をし、それを工業化まで持っていこうとしましても、金がなくてできない。結局大企業が取り上げてしまうことになる傾向が強いのですが、その場合に、中小企業を守ってやろうとするならば、五千万円以下の中小企業に、このなけなしのわずかな補助金くらいならば全部つけて、大企業の方は自力で、御遠慮下さい、別のもので補助してやるのですから。こういう面で施策してやらなければならぬと思うのです。それがどうしても出ていないというのはどういうわけですか。これに対して通商産業省としては、こういう方針がいいとお考えになっているか。あるいはまた、工合が悪いということであれば、近い将来に変える御用意があるのか、その点を伺っておきたい。大臣から一つ基本的な考えを伺って、それから工業技術院長の方から、技術的な観点から必要な点を一つお答え願いたい。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) あとから事務当局から説明していただきたいと思いますが、これは中小企業にできるだけ多く研究費を出すということは、これは当然必要だと思いますが、問題は日本の現在の技術水準から見て、もう当然技術は研究され、確定されておるものでも、それが中小企業段階で全然利用されていないというような問題と、そうでなくて、これについては新たにこの点を解決しなければならぬという水準を一歩上げる技術の問題がたくさんございますので、この題目によって通産省としては、一般の産業技術水準を上げるために、どの題目に今金を出して研究させたらいいかという、そういう選択からくる問題が今のような結果になってくるんじゃないかと私は考えていますが、具体的な問題は一つ事務当局から……。
  22. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) ただいまお話の出ました研究補助金の件でございますが、これにつきましては今大臣が御説明されました通り、この工業技術院に関します研究補助金の性質は、わが国の技術水準を高め、高度の新研究に対しまして与える補助金ということが建前になっております。従って、その内容におきまして、今のような新しい技術あるいはまた、高度の技術に対する将来の研究題目を選び、また、その研究内容以外に、それが果してそういう研究ができるかどうかというような研究者の問題、あるいはまた、その補助金につけ加えまして動員される資金があるかどうかというような観点を勘案いたしまして決定いたすものでございます。従って、中小企業に対しましてもなるべく多く御趣旨に沿うようにいたしておりますのですが、数字的に申しますと約半分という今お話がございましたが、私どもは、さらに中小企業のそういった技術水準を高めますために、極力同種業者の企業者を集めまして、研究組合というようなものをなるべく作るようにいたしてもらいまして、そうしてその結集した力でその補助金を巧みにあるいは効率的に使っていただいて、いい結果を出していただくように今促進中でございます。慫慂中でございます。
  23. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が指摘しておりますのは、技術水準を上げるというのは大財政でやらなければならぬことなんです。私はいつも外国のイミテーション・インダストリーではだめだということを申しておるし、独創的な技術水準を上げるということは何をおいてもやなければならぬ、それは異議ないのですが、何億という資本を持っておる会社はほっておいたって自分で研究し、実用化、工業化するのです。そういうところへ、件数でいえば全国で三十年度のを見ますと二百三十九件、工業化と応用とで二百三十九件でありますが、今度の予算案を見ても四億円ですよ。わずか四億円ばかりの金をこれだけのところへ分けるわけです。大企業へそんなに分けてあげたところで、それは全然効果がないとは私申しません。申しませんけれども、喜び方はうんと薄いんじゃないか。中小企業へやればほんとうに喜んで一生懸命研究していく。そういうところに総花的な通商産業省の技術水準引き上げの政策があってはいけないのじゃないか、もっと重点性がなくちゃいけない、こういうことを私は力説しているわけです。今までのやり方は、今答弁をいただきました通りなんですが、今後そういうようなふうに施策一つ転換していただくことができないか、これを私はお尋ねしておるわけです。
  24. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) ただいまお話がありました通り、私も中小企業に関する技術振興ということにつきましては、この補助金以外につきましても、いろいろな点でこれを振興しなければならぬと痛感しておるものでございます。従って、中小企業庁ともよく連絡いたしまして、ただいまの御趣旨に沿うように補助金提出についても今後十分留意したい、こう思います。
  25. 海野三朗

    ○海野三朗君 関連して……。そういう場合に、これを選定するのは、工業技術院の人たちで判断するのでありますどういう基準によって金を分けるということを定められるのでありますか。
  26. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) この補助金につきましては、最初それぞれの申請される方が、地方の通産局を経て工業技術院の助成課に参ります。助成課におきましては、工業技術院管下の研究所、それから通産局それから原局、この方々から成りますところの合同委員会におきましてこの題目の取り上げ方を審査いたしまして決定いたしております。まず予備決定をいたします。その後、学識経験者の大学の先生というような方々にお願いいたしまして、さらにそれを審査してもらいます。その結果を工業技術院の院議にかけまして、さらに省議にかけまして決定いたすことになっております。
  27. 海野三朗

    ○海野三朗君 今、地方の通産局を通じてと言われましたけれども、地方の通産局では、そういうことに対しては全くわかっていないと私は見る。その実例をあげて伺ってもいいのですが、最も大切なる研究がほぼ完成しておるということも地方の通産局がぼんやりしておる。なぜぼんやりしておるかと申しますと、通産局の方のその方面に従事する人たちにその人を得ないからじゃないかと私思うのですが、そういう点については、地方の通産局が持ち出してこなければ、つまり工業技術院にも持ってこれない、局長、次官にも話が至らないということになっておるので、私は通産省のそういう方面に対する考えというものは麻痺しておるのじゃないかと思っておるのですが、大臣はどういうふうにごらんなさっていらっしゃいますか。たとえば東北大学の計測研究所がございます。あそこでどういうことをやっておるか。この間、私はあそこを見てきたのでありますが、人間のばかだか利口だかをためすところの機械を発明しておる。頭にはめると、ばかだか利口だかすぐわかる。こういうことなんです。医学部の方では、これがぜひ必要であるからたくさん作ってくれないかという医学界からの申し込みがありましたけれども、あの研究所においてはその金がないし第一、人間がいないのです。ところが、あそこの教授及び助教授でこれを作り上げておった機械を私は再度見にいったのでありますが、そのときには、大学病院の方に借りていかれて精神科の方でまず試験をしておる。仙台の通産局は何をしておるか、私は局長に出てこいと言ったのだが、そのときには出てこない、課長が出てきておる。君たちは何をしておるのかと言ったのでありますが、地方の通産局というものはそういうことを取り上げて本省に持ってきてそうしてその方面研究が実際化する、そういうことに当らなければならないのじゃないか、私はそう思う。それからもう一つは、雲に字を書く、雨雲に字を書く、これができておる。ところが、そういうことができておっても実際にこれを工業化し得ない。地方の通産局は何をしておるのでありますか。私はこの点に対しては通産局からもう少し麻痺しておる状態を何とかしていかなければならないと思うのでありますが、ただいま工業技術院長がるる述べられましたけれども、どうもそれはただ単なる理屈をお述べになったので、実際現状はそうなっておりません。どうなんですか。私はそういう機械を見てきたのですから、頭が変になっているかどうかすぐわかります。これは仙台の計測研究所、あそこに相当の博士がおります。それからレンズですね、レンズもすばらしいレンズがすでに作られておる。そのレンズは何であるかと申しますと、これは専門的なことになりますが、遠方の写真をとりますとぼんやりするのです。なぜぼんやりするかといいますと、コンベックスレンズに平行光線が当りますと、フォーカスがライン状にくるのです。ライン状にくるからイメージがはっきりしない。これをワン・ポイントに集めることを考えて、今実際にその試作をやっておった。また、それでもって作ったレンズで遠山の景色をとった写真を私は見てきた。そういうことは実に世界的な発明なんです。なぜそういうものに仙台の通産局はぼんやりしているか、そのぼんやりしておるという一例を私は申し上げるのでありますが、全国の通産局はたくさんあると思うのですが、そこで何をしておるのですか。そういうことにこそ金を与えて、実際工業化することに尽されることが通産行政のあり方じゃないかと私は考えるのでありますが、大臣はいかにお考えになっておりますか。
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一国の文化水準を上げるとか何とかという発明もござましょうしそうじゃなくて、この工業技術水準に関係して、研究によって産業界全体に影響するというような工業技術の問題、これもいろいろございますが、発明されたものの今度は工業化というようなことについては、私は別個考えておりまして、発明品が埋もれないで、それが工業化されるためには、金融という点においてどう心配したらいいかという問題は現在別に考えておりますが、通産省が扱っにおる限りのものは、むしろそういうものでなくて、工業技術に関係している技術が完成することによって、日本の産業界全体がよくなるんだというような問題を中心に私どもはやっておりますので、そのほかの問題についてはあるいはぼやぼやする問題があるかもしれませんが、そうでない、事、工業技術というようなものに関しましては、通産省に申し出られたものは関係者で検討して、これは取り上げて研究の助成をする必要があるというものは、これに研究費をつけるというようなことでやっておりますので、こちらの研究費をつけるねらいにそれたいろいろな研究というようなものについては、見落しがあろうかと思います。
  29. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はこまかい点については企業長官にあとでお尋ねしたいと思っておりますが、私の申し上げている要旨だけをよく理解しておいていただきたいのです。それは何かといいますと、三十一年度の科学技術振興費というのは四億五千万円でしたか、鉱工業関係はそれが五千万円減っているのです。しかも発明実施奨励金が二千二百万円、試作奨励費が千五百万円、中小企業輸出振興技術研究費の補助が千三百万円ですか、こんな内訳で実に微々たるものなんです。こういう微微たるものが大企業に流れていくところに私は施策の貧困があるということを指摘しているのです。たとえばなぜそういうことを申すかと申しますと、民間企業研究費をどのくらい取っておるか私はよくわかりませんが、ある資料からとったところによりますと、民間企業の自分で出した研究費が、昭和二十五年が四十八億円、昭和二十八年二百二億円、三十年度には二百六十億円以上に達するであろうということが言われておる。これはほとんど全部が大企業と言っても差しつかえないと思うのですが、これくらいやはり自分の力を持っておる企業に、二、三千万円の金をこの中から分けて与えるというようなことは、全くこれは施策でなくて、総花的施策の一番大きな私は欠陥だろうと思うのです。特にこれはまたあとで技術庁の長官にお尋ねいたしますが、たとえば海外技術関係で、あの外資法がきめられました昭和二十五年ですか、六年でしたか、あれからあと外国の技術導入をいたしましたのに使った金が幾らかといいますと、大体昭和三十年まで六カ年間に二百四十八円億使っております。毎年四十億円以上、特に三十年度のごときは七十二億にもなる、こういう金を出し、大企業業はどんどん外国の特許を入れてそうして技術水準を上げている。中小企業はこういうことはできない。従って、私が中小企業に熱心にしなければならないと申し上げているのはこのことなんです。このことをよく一つお考え願いたいと思います。  それからついでですから大臣にお尋ねいたしますが、外国の技術導入ですね、この問題については、過日の予算委員会の公聴会においても安川第五部民に私が質問をいたしましたところ、目に余るものがある、あまりにも外国の技術導入に対し、特許取得について業者が狂奔し過ぎる、競争し過ぎる、何とかしなくちゃいかぬという意味のことをおっしゃったのですが、私は全く同感ですが、こういう外国の、日本の産業水準を引き上げるかどうかというような大きなパテント等を取得する場合には、これは国が取得をして日本国内に公開をする、そうして不要な競争を外国に向ってやって、もう少し安く契約できるものを業者同士でつり上げてしまって、そうしてそれを消費者に転嫁する、産業投資の面にも転嫁するというようなことのないように、そういう施策というものを通産省はお考えになる必要がある、この点についての御所信を伺いたい。この点も技術の問題ですから、長官と両方に一つお尋ねしたいと思います。こういう欠陥をお認めになるか。お認めになれば、今後どしうてもこれは直さなければならぬと思いますが、何か御研究になったことがあられるかどうか、その点を伺いたい。
  30. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) 外国の技術の導入の問題でございますが、これにつきましては御承知のように、戦後外国技術の導入によりまして、日本の科学技術の水準が高まったということは事実でございますが、御指摘の通り、十年も経過しております、日本の外国技術にたよるという依存性をここに反省しなければならぬ時期にきていると思います。そこで私どもといたしましては、まずもって日本の技術を高めまして、そうしてなるべくすみやかにこれを実施化するようにして、でき得る限り必要なものを別といたしまして、なるべく日本の技術でもって日本の産業を伸ばしていきたい、そういうことにいたしまして、特に国の試験研究機関研究に重点を置きましてその研究費増額いたしております。先ほど説明がございましたように、かれこれ一億三千九百五十二万円を今年は増額をいたしまして、そうして研究をいたしている次第でございます。
  31. 栗山良夫

    栗山良夫君 大臣は、今の外国の特許権の取得について、民間の業界がああいうある意味において過当な競争をやって、特許料のつり上げをやって日本の産業へ持ち込んでくることについて、何とかこれは手を打たなければならぬ、その一つの方法としては、国が取得して国内では無料公開をするというような方法が私はあると思いますが、そういうことについてお考えになったことはありませんか。また、そういう必要はないとお考えになるのですか。その点を一つ
  32. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に今までその問題について考えたことはございませんが、実際問題としましては、国がそういうことに出ていくことは事実上の問題としては困難だろうと思います。やはり業者同士の相談によってやらせるというほかには、事実の問題においてむずかしいのじゃないかと考えております。
  33. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすれば、外貨の割当のときには、これはチェックする窓口はあるわけです。そういうところで十分おやりになる用意があるか。
  34. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その用意は十分ございます。現在でもこれは政府として許さないというような面で押えておる例もございますので、これは十分やりたいと思います。
  35. 栗山良夫

    栗山良夫君 今まではそうできていないから、私が質問申し上げているのですよ。安川第五郎氏もこの点をはっきり仰せられたのです。私は具体的な例を申し上げましょう。実は最近もアメリカの有名な特許について、日本の国内の二社の業者から共願があって、アメリカの本国の会社の方もどちらにやったらいいか困っているのだ、それで安川第五郎氏にあなたがどちらがいいか推薦してくれと来たが、しかし私はそういうものに介入すべきでないと思うのでお断わりをしたけれども、そういう実情にあるということを述べられたのです。これは速記録に残っております。そういうことが好ましくないということは、これは実例がたくさんあるわけであります。それをどうしてチェックされるか、今までチェックしておられると思うのですが、それではきわめて不十分である、そういう程度ではよろしくないということを私どもは申し上げておるのです。
  36. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 御承知のように、技術の導入その他に関しましては、技術的な面ではかつてはスタック、現在では科学技術庁の企画調整局の審査を経て、外資法の運営で審査をやるのは御承知の通りでございます。ただ実際問題といたしまして、ただいま御指摘になりましたような、日本の二社以上の企業体が外国の技術を獲得するために競争関係に立ちます際に、あらかじめ外資法の運用等でチェックするということは従来そういう態勢になっておりません。むしろいわゆる自由競争原理によって向うの会社の向うの技術を獲得するために、自由競争をやっておる態勢に従来きております。ただ実際問題といたしまして、そのような場合に、それでは政府なり何なりがそういう企業の経営の内容の実態に入りまして、お前の方はあの会社と提携するに値する資格を持っているとか、お前の方はそういう能力がないはずだとか、あるいは資本の実力が伴わないはずだとかいうような企業の実態に触れた政府の審査をやるということは、従来もできなかったと思いますが、今後も非常にむずかしいと思います。たまたま最近これは私若干知識は不正確でございますが、テレビの技術導入につきまして、そのロイアリティの引き下げという場合に、日本の関係の会社が歩調をそろえて向うと交渉したという例があるようでございますが、当初の提携の際に、民間会社相互にそういう自制をしてくれることは非常に望ましいのでありますが、政府企業体の内容に入って資格審査をするというところまでは今後も非常にむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、非常に重大な問題でございますので、今後この問題については、政府部内あげて研究をいたさなければならない問題であると思います。
  37. 栗山良夫

    栗山良夫君 僕は大臣に特に要望している点は、従来のやり方の合理性を主張していただきたいということじゃないのです。もし必要とあらば、法的措置を講じてでもこういう点を防がなければならないのじゃないかということを申し上げているのです。そういう研究の余地があるかないかということをお尋ねしたい。今の官房長は大いに研究したいというお話でありますから、それならそれでその研究の成果を待つ、そういうことになりますが、今までそういう欠点ということをまず認めて、そうして施策するということでなければならぬと思います。先ほどもテレビジョンの話が出ましたが、私はテレビジョンがある時期にああいう格好で特許権をとられておるということは、私は心外です。日本の戦前のテレビジョンの水準はアメリカに負けていないのです。国際特許は日本から出されておったのです。それが戦争のときに適当な保証がなかったために、全部だめになった。そうしてああいうあれだけ大きな特許を設定されてしまったのです。これは今少しでもテレビジョンのことを知っている人はほんとうに心から嘆いていると思います。これはやはり国の政策が誤まった結果、そういうことになっていると思います。従って、今の点は一つ水田通産大臣に強制するわけではございませんが、とにかく何とか一つ考える、日本の技術水準を外国水準に追いついていく方法の一つとして、また、不必要な費用海外に出す必要はないのですから、この点に関しまして、国家的の規制を加えられる、こういう必要を認めるだろうと思います。そういう点でお考えを述べていただきたいと思います。
  38. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お説のように何とか考えたいと思っております。
  39. 栗山良夫

    栗山良夫君 中小企業の問題からそこまでいってしまったのですが、中小企業の中で、もう一点、問題点を指摘いたします。それはきのうも私、大蔵委員会で同僚議員と議論してきたのですが、中小企業の今一番困っておることは、技術水準がおくれておるということ、資本力がないということでありますが、この資本力のないところには各種の対策がとられております。豊田主査も一生懸命おやりになっておるわけでありますが、これについて政府中小企業に対する金融施策の中心というものは金利の引き下げということが中心でなければ意味がないと思う。中小企業に対して幾ら金融措置を講じてやっても、高金利であっては何ら意味がない。大企業は開銀から六分五厘の金利でどんどん仕事をしておる。社債も簡単に充足できておる。中小企業資金難に陥り、しかも高金利であったら何の意味もない。そういう意味で、政府がもし中小企業に向ってほんとうの意味の金融政策をとるというならば、原資もさることながら、金利を引き下げるということでなければならぬと思います。そういう意味でただいま御説明になっております中に、こういうことがあります。十一ページに、「また全国五十二の信用保証協会強化をはかるため、中小企業信用保険特別会計に十億円を投入し、これを信用保証協会に貸し付けることによってその資金的基礎強化に資することといたしております。」こう書いてあります。これはやらないよりいいことは、私はよくわかりますが、これは全部貸付金ですから利息もついております。十億ぐらいの金ならなぜこれを国家が直接投資できないのか、直接投資すれば、ほんとうの意味の中小企業に対するところの支援になります。しかるにこれは一定の時限を切って貸し付けて返済を命ずるわけです。しかも利息もついておるということであれば、これは結局末端の中小企業者全部に影響を及ぼしていく、だから形だけは整っておるけれども、精神が入っていない、私はこういう工合に申し上げたいのです。この点は、大臣川上長官に対してこれくらいの言い方をしないと、あなた方にわかっていただけないと思って申したのです。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 実は私もその通りだと思います。今度の場合、全国の五十二の信用保証協会があって、そして民間の金も、基金も非常に多くなっております。これに対して、政府がせめて二十億以上ぐらい出すというのでしたら、ここでつり合いもとれるのでありますが、それで別個の、各地にある五十二の上に、もう一つ中央機関を作って、そこで信用保証能力の拡大をはかっていくということをやりたいというのが、私どもの当時の考えでして、そうすると、そこに国が直接投資して、お説のような方向でいけると思いましたが、予算の折衝におきまして、本年度どうしてもそこまで政府部内の話がつきませんので、十億円という金額になりましたので、今年はこういう暫定のやり方で、ないよりもこれがいいのでございますから、そこで十億円を今年踏み切りをつけまして、来年さらにこういう形の金をふやすというときに、そういう方向にいこう、大体こういう話し合いで、今年踏み切りをつけたということでございますから、おっしゃられる通り、その点の不徹底さはございますが、来年度は必ずそういう方向で解決したいと思います。
  41. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは私は空理空論を述べているのではないのです。実は今年の一月ですね、福岡と熊本の財務局の管内の視察に行きました。そのときに、南九州はもちろん経済的に非常に貧困の地帯ですから問題ありませんが、あの工業地帯の福岡中心でも、大企業は全部金融は東京へ直結しているから問題はないが、中小企業は全部地方金融です。福岡はきわめて金利が高いのです。中小企業に対して、信用保証協会も利用されていない、これは福岡の信用保証協会の利用率はきわめて低いものです。これは川上さん御承知かどうか知りませんが、事務局からもってきた数字を持っておりますが、非常に低いのです。保証率というか、保証高というか、非常に低い。だんだん聞いてみると、結局金利が高いということになる。そういう意味で、商工組合中央金庫の方へ、直接出資を、力があられる人が多いものだから、相当見えますが、そういうところが一番脆弱なんです。一番盲点なんですから、保証協会に金を出資していくということは、直接中小金融に非常に役立つことなんですから、利息のつかない金を一つ出していただきたい、こういう工合に特にお願いいたします。来年やるというお話でございますから、鬼が笑わんように、どうぞよろしくお願いいたします。  その次に、もう一つ大臣にお伺いしたいのは、わが国のエネルギーの見通しの問題、これは産業に直接関係をするのでございますので、このエネルギーの見通しについて伺いたいと思います。実は過日経済企画庁の方から出していただいた資料を私拝見しておるのですが、これを見て、私もこれは容易ならざることだと思っておりますのは、主要国、アメリカ、イギリス、その他世界各国の一人当りのエネルギーの消費量を出してもらいましたところが、これは石炭に換算しておるわけです。石炭に換算しておりまして、わが国の一九五四年における一人当りの消費量というものは、〇・九七トンですね、イタリアが〇・九一トンですから、イタリアよりもちょっといい〇・九七トン、アメリカは七・六二トン、二番目のカナダが六・八八トン、それからベルギーは五・〇二トン、イギリスが四・七八トン、それからデンマークが三・七六トン、ノールウエーが三・六八トン、オーストラリアが三・六七トン、西ドイツが三・〇三トン、こういう工合に、世界の少くとも先進工業国というものの一人当りのエネルギー消費量というものは、日本と格段の相違があるわけです。それで今政府が、総合エネルギー対策として、石炭なり電力に集中する計画を立てておいでになる数字は〇・九七トンです。わが国の鉱工業生産あるいは国民の生活水準の若干の規模を見ながら、〇・九七トンをどんどん伸ばしておいでになるにすぎないと思う。しかもそういうふうに伸ばしておっても、昭和五十年ぐらいになるというと、日本のエネルギーというものはにっちもさっちもいかない、原子力を入れなければどうにもならぬ、こういう結論になっているようですが、そういうことで、宇田長官なり水田さんが、非常に楽しんで説明をせられた日本の経済規模の拡大というものは、われわれがその通り受け取っておっていいかどうかということは、非常に疑問を持っているのです。この点はどういう工合にお考えになりましょう。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) このエネルギーの需給見通し、大体二十年後の需給はどうなるだろうかという問題は、非常に大きい、また大がかりな研究を要する問題で、産業合理化審議会では、官民の専門家を集めて計算したものでございますが、その計算のいろいろ前提条件になっているものが、非常に多いと思いますので、この作業がどういうふうに行われて、大体こういう見通しが出てきたかというような問題については、こまかいことは官房長から一つ、御説明いたしたいと思います。
  43. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 栗山先生の御指摘になりました資料が、経済企画庁から出ておるのでありますと、多少私の方のと若干狂いがあるかもしれませんですが、大体傾向としては合っているはずであります。通産省でやりました長期エネルギー需給見通しと申しますのは、従来のいわゆる長期計画というのは、せいぜい五、六年のところの計画でございますので、それではエネルギーのような非常に長期の見通しを持たなければ調整のとれないものは、それでは困るというので、約二十年後に足を延ばした計画を、一応見通しを立ててみたわけであります。このときには、一応経済企画庁で立てられました従来のいわゆる改訂版の経済計画長期計画は、すでに実績と非常に食い違ってきておりますので、これは当然訂正をして、むしろ昭和三十年、四十年、五十年と、十年ごとの大きざみで、日本の経済の伸びを一応想定をいたしまして、そのような日本の経済なり生産の伸びに必要なエネルギー源は、その必要なだけを一応計上して、エネルギーの計算をやってみたのであります。で、実際問題といたしましては、エネルギーの需要だけで、需給のバランスをとるわけにいかないのでありまして、実際に供給面から調節をとって、たとえば石炭がほしいというエネルギー需要に対しましても、供給面の制約があれば油にかえるとか、電力がほしいものについても他のものにかえるというような調節を、そこでとらなければならないのでありますが、一応エネルギーの需要をそのまま一応計算いたしまして、その上であと日本の貿易関係その他を考慮して、若干の調節をとって作りましたものが現在のエネルギーの長期見通しというものになっております。これによってみますと、たしか経済企画庁から出ておりますものは、ただいま御指摘のございました一人当りのエネルギーの需要というものは、先ほど御指摘のございましたのはたしか国連統計による一人当りのトン数であると思いますが、これを経済企画庁の数字によって参りますと、昭和三十年度にはすでに一トン一人当りのエネルギーの需要供給が一・二二トンということですでにもう上っております。先ほどのお話の点は昭和二十九暦年の数字だと思いますが、三十年度にはすでに一・二二トンに上っておりまするし、このようなことで参りますと、三十二年度計画におきましては、すでに丁四七トンというふうに上って参っております。こういうことで、三十二年度以降の問題を広げて参りますと、こういうことで広げて参りますと、昭和四十年度におきましては一・八二トン、それから昭和五十年度におきましては二・三四トンというように、一人当りのエネルギーの需要量がふえて参るわけであります。これはこういうふうになって参りまずと、日本の現在のエネルギーの供給源の構造から見て参りますと、たとえば石炭をこのようなことで、そのようなエネルギーの需要に対しましてそのまま石炭に対しましてどのくらいな需要になってくるかということになりますと、その数量は昭和五十年度におきましては八千八百万トンというような大きな数量になって参ります。こういう実際問題として昭和五十年度におきましても、日本の石炭をそんな大きな数量を取ることは実際上不可能でございますので、こういう点は当然輸入のエネルギー資源に転換をして、主として石油資源の方では海外の石油資源にたよっていかざるを得ません。というような状況に相なるのでありますが、このような一人当りのエネルギーの需要量の非常に大きな増大に対しましては、国内のエネルギー供給で足りないことは当然でございます。そのような調節策をとらなければならないと思うのであります。なお諸外国に比べて日本の一人当りのエネルギーの量が非常に少いという点は確かに御指摘の通りでございます。これはまあ当然第一には日本の経済の規模が小さいということにもよるでありましょうが、もう少し掘り下げて考えてみますと、日本の人口が非常に多いということにも大きな原因があるのではないかと思います。
  44. 栗山良夫

    栗山良夫君 今おっしゃったことは確かに一つのエレメントではあると思います。あると思いますが、日本の経済がもう国際的に野放しになって、つい立がなくなっておるわけですから、おそらく私はエネルギーの消費量というものはまあこのべースは若干違いはありますが、こういう低率なところからどんどんふえていく、鉱工業の生産指数がふえる、その度合いをこえて私はふえていくという見通しを持っているのです。そのふえ方というのは鉱工業の生産指数がふえていく、そのエレメントと、もう一つは国際的な国民生活へ日本の生活がだんだん近づいていくためにこの格差がどんどん縮められていく、その二つのエレメントで私は伸びていく、こういう見通しを一応立てて間違いないと思うのですね。現にアメリカでも、イギリスでも、ドイツでも、この表だけを見ましても、毎年やはりそれが停滞しているのじゃなくて伸びているのです。一人当りの消費量はどんどん日本が伸びていれば向うも伸びているわけです。その伸びているのに対して、日本の消費量は接近しながら鉱工業の生産はふえているわけですから、従って、内訳は電力不足でもこの前見通しがだいぶ狂ったのじゃないかというので、だいぶ私も極端なことを申し上げましたが、そういう現象が出ている、こういう工合に私は考えるわけです。そこでだいぶ克明な調査をしていただきましたから今度はわかってきましたが、この前いただいた資料、電力関係の資料の第五表の中で見ますというと、昭和五十年になっても電力だけを見ました場合に、石炭換算で約三千六百六十万トンですか、油と石炭ともちろん入っておりますが、これでやっていかれるのである。こういう計画になっておりますが、かりに三千六百六十万トンの石炭を電力に取ろうとしまするならば、まず油だけ考えても一千万トンですね。一千万トンの油を日本に持ってくるということは容易なことじゃないと思うのです。過日、水田通産相は石炭のストライキがあったときに、こういうストライキをやるのなら百万トン入れてやるとおっしゃったのですが、百万トンの石炭を日本に持ってくるのは大へんなことだと思う。こういうふうに総エネルギー対策を真剣になって考えようとすれば、特に外国燃料に依存するのでありますから、海上輸送のことから、船のことから、そういう広範な計画を立てなければならぬ、今おっしゃったように、八千八百万トンは無理だとおっしゃいましたが、おそらく今の計画では六千五百万トンになっているわけですよ。石炭の安定出炭は六千五百万トンであるわけですよ。従って、私は原子力に依存することは悪いとは申しませんし、これはやらなければならないと思いますが、その前に、やはり国民が安心するようなエネルギー政策を立てるとすれば、今の船のようなものまでもこれは総合計画の中に入れてそうして今から着手をしていかないというと、えらい断層ができてしまう。こういうことを心配するわけです。今後通産省におきましては、それぞれ各部局においてもちろん経済企画庁と連絡をとりながら、こういう長期の非常に重要な計画を進めていかれると思いますが、この問題については、やはり内閣として全く新しい観点に立ってですね、総エネルギー対策というものをチェックする。そうしてそれに対して総合計画をつけていくという考え方がなければならないと私は思いますが、そういう御準備、研究、用意、そういうものがあられるか、そういうことを伺っておきます。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう長期計画を立てて、そうして今おっしゃいましたようなその日本の船をどういうふうに計画的に伸ばしていくかというような総合政策を取り扱っている機関が経済企画庁にございますので、経済企画庁においてそういうものを全部取り扱っておる。そうして各省がそこで立てられる計画に従って担当行政をその線に沿ってやっていく、こういう建前になっておりますので、企画庁がそういう線でいろいろこの研究をやっております。私どももエネルギー関係はもっぱら通産省の管轄でございますので、この部分については、そういう一つ長期の見通しが立てられればこの線に沿った今度は担当の部門の計画というのもを立てて行政をやっていかなければなりませんので、絶えず連絡しながら、こういう総合研究をやっておるというわけでございます。
  46. 栗山良夫

    栗山良夫君 私がなぜこういうことを心配しているかと申しますと、電気事業連合会から取りました長期電力需給想定案という、昭和五十年度までの表を持っておるのですが、これを見ますというときわめてイージー・ゴーイングな計画なのです。なぜかというと、電力需要量はこう書いております。これはいいと思いますが、それに対するエネルギーの補給はどうかというと、日本の国内で石炭が六千五百万トンで、そのうちで電力に持ってこられるのはこれだけである。水力は包蔵水力の約九〇%までは五十年度までに開発してしまう。昭和五十年度になると、日本の水力はゼロになる。その残ったエネルギーの不足だけは原子力でやるのです。そろばんで差し引きして書いてある。そういう計画で、日本の産業界なり、日本国民の生活というものが、安心しておれるかどうか、私は非常なこれは疑問を持っている。だから今の経済企画庁でおやりになるのはけっこうですが、何らかここまで問題が真剣になってき、原子力発電の問題も、内閣もすでに動いておるような状況でありまするから、去年とは違った、おととしとは違った何らかの新しい構想でこの総合エネルギー問題というのを扱わなければならぬのじゃないか。私は今原子力の問題について非常に熱中しておられることについて、若干の異論を持っております。それは、原子炉はどこのものを買ってきて、どこに据えるかということに熱中しておりますが、それは枝葉末節のことであって、エネルギーの総量をどういうふうに解決するかということが根本になって、それから研究していくべきであるのに、そういうものが全然出ていない。これはやはり直接将来の責任は、経済企画庁と通産省がお負いになると思いますけれども、今のようなやり方でいけば、昭和五十年はすぐ来るのです。私どもは生きているか死んでいるかわからないけれども、とにかくすぐ来る。だから相当思い切ったことを、この内閣では結論をお出しなさいとは私は申し上げません。そういうような将来への展望が十分し得るようなやはり一つの構想というものを立てて、それに着手するという用意がなければ私はならぬと思う。この点は、ある意味においては、それは岸総理にもお伺いしなければなりませんことかもしれませんが、とにかく責任省ですから、経済関係の水田さんと宇田さん、この二人の方にはっきりわかっていただいて、それじゃわれわれもわかったから何か考えてやろうという、こういうことでなければ、これは内閣の問題にもならないわけです。そこで水田さんに御決意のほどをお伺いしたい。
  47. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今御指摘がありました問題につきまして、実は事務的に取り運んでいる段階のことを御報告いたしまして御了承いただきたい。  実は総合エネルギーのうちで、将来の見通しを立てますと、一番増加率が高く、かつ、量的に大きなウエイトを占めるのは電力になるように思われますので、実は過日来、経済企画庁と、それから原子力局の方といろいろ寄り寄り相談をしておりまして、何かかなり長期電力需給の見通しを立てて、それによって水力、火力の燃料源を検討し、かつ、それの中で、原子力というエネルギーをどういうふうにはめ込んで考えるべきかということを検討中でございます。まあどの程度の先の期間を見通せますかという問題はありまするが、大体とりあえず十年くらいのところでいかなければしようがないのじゃないかと思っております。  それからまた、原子力の問題も、電力用の燃料といたしましては、単に石炭や石油が足りないから買うということだけではなくて、いろいろな外貨収支の問題、あるいは輸送力の問題等の点も比較検討いたしまして、この方を進めた方が、国民経済的にも、より有利だというふうな観点になるかどうかということを検討中でございます。まあ発電原価とか何とかいう問題はいろいろありますが、その前に一つそういう問題があると思います。重油を輸入した方がいいか、原子力を輸入した方がいいかという問題になると思います。目下検討中であります。あまり遠くないうちにと申し上げても、三、四ヵ月はかかりますが、ある程度の見通しは立つのじゃないかと思います。
  48. 栗山良夫

    栗山良夫君 エネルギーの観点からも、今の石炭、油その他の問題は、これ以上ここで今お話を伺うというのは無理でしょうし、何ですから、なるべく早く国会の中において、国会を通じて議論がされて、そうして国民が安心できるような、そういう成案を一日も早く得ていただく、そうしてその成案を元にして個々の問題が具体化されていく。ただ一つ出た現象だけに皆が狂奔してしまって、一番大元を忘れてしまっておるという印象を今受けますから、そういうことのないようにしていただきたいということを要望しておきます。  これに続いて、電力問題を伺いたいんですが、これは後ほどにいたしまして、もう一つ昭和三十二年度の一番大きな問題は、やはり産業設備資金需要の充足の問題だと思いますので、これについて二、三伺いたいと思います。ただいま巷間でいわれておるのは、昭和三十一年度の産業設備資金の実際の需要は、対象企業が約七百社で、六千九百億円近い額があった、こういう工合にいわれておりますが、大体それくらいにつかんでおいでになるんでしょうか。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初設備投資の見込みを取るために調査したときは、大体四千三百億くらいの投資需要というふうに見ていましたが、これは非常に狂ってしまいまして、ただいまの数字くらいになっておるだろうと思います。
  50. 栗山良夫

    栗山良夫君 三十二年度はどれくらいに見ておいでになりますか。
  51. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今六千幾らくらいだろうと申されましたこの数字は、なかなかむずかしゅうございまして、当初の見込みの四千三百億円と申しますと、調査外のほかの産業は大体この倍、そうしますと八千億をもう少しこす程度に見ておったわけですが、きょうの新聞あたりでは、やはり一兆円を三十一年度はこしておるというような見込みで、この点はまだ私どもの方では十分検討してございません。そういう意味で四千三百億円分と見たものが、大体実績は五千五百九十億円、約三割増と見ますので、一般ももしこの通りいっておるとしますれば、ちょうどこの二倍で、一兆円をこしておるという数字になろうと思います。それと基礎を大体同じにした見込みでは、去年のこの五千五百九十億円の大体ことし一五%増くらいになりはせんかというのが、今の当初の私どもの見込みでございます。
  52. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはあれですか、海運だとか造船だとか鉄鋼だとか、そういうものが全部入っておるんですか。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 全部入っております。
  54. 栗山良夫

    栗山良夫君 通産省は、もうちょっと正確な資料をお持ちじゃないんですか。それを全部入れて一五鬼増しで三十二年度がいけるといいますと、少し小さいような気がするんですが。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今、間違いましたが、通産関係だけの問題でして、海運とか鉄鋼とか、そういうものは入っていない。大体それは私どもはそのほかが同額くらいだろうと思っております。
  56. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体わかりました。要するに、そのものすごい資金需要があるということになるわけですがね。問題は、そういうものが三十二年度財政投融資を含めて所要資金を、社債から公債から増資から全部入れて充足できるかどうかという問題ですね、問題は。その見通しを一つ伺いたいことと、それからもう一つは、何か今通産省の中ではいろいろ作業をしておられて、どの程度か私もよく確かめて、聞いておりませんからわかりませんが、とにかく開銀融資から始めて市中銀行の融資、その他財政投融資ももちろんでしょうが、そういうものをひっくるめて融資順位というようなものを作って、そうして資金需要に大きな狂いのこないように手配をしたい、こういうお考えで寄り寄り作業に着手をしておられるということを、これは漏れ承わっているのですがね。その辺はどういう構想ですか、伺いたいと思います。
  57. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 去年の投資需要は一昨年に比べて六〇何%、これはまあとにかく異常な上昇でございますので、ことしの見通しはどうかと申しますと、それだけふくれた規模に対してですから一五彩前後だろうと私は思っていますが、なかなかそれではおさまらぬだろうというような見方も濃くなっております。で、昨年あれだけの大きい投資需要があったのに、これが日本の蓄積の内部で行われたものであったかどうかという見方でいろいろ問題が出て参りますが、私どもは、去年の蓄積の中で大体この投資が行われたという見方を現在しております。と申しますのは、日本銀行のオーバー・ローンがあれだけふえましたが、ふえてもこれはたとえば輸入が多かった、そのために輸入の資金は国内から吸い上げられて、それだけ金はマイナスになっておっても、外為会計はそれだけプラスになっておって蓄積されている、政府のこの引き揚げ超過が千数百億ということだとしましても、これだけ市中からは金が吸い上げられておっても、それだけは同時に政府へ蓄積しているというようなことから見まして、三千億円前後の日銀のオーバー・ローンというものは実際においてはこの蓄積をこえた貸し出しにはなっていないだろう、大体あれくらいのオーバー・ローンがあるのがむしろ正しい姿じゃなかったかと私どもは考えておりますが、そうしますというと、昨年のあの異常のときにおいても、一応蓄積の内部でこの投資が行われているとすれば、やはり物価の動向を見ましても、もっと大きい変化があるはずでしたが、今の程度のことだったら、まだこれはインフレ現象には全然なっていないのだという結論をつけていいのじゃないかと思います。その去年からの動向から考えますというと、ことしも大体一五%前後のこの投資増というものが起っても、今度年の蓄積の範囲内で私はややまかなえるのじゃないかという楽観論者ですが、しかし、日本の金融を預っている方面からみますというと、この状態をそのままにはなかなかできない、ここで投資についても相当ある程度考える必要がありはせぬかという点に疑問が非常に出ておりますので、その点につきましては、政府も手放しに、需要増はこれはいい現象だという考えはございませんが、しかし、これを下手に締めるというような問題のこともまた問題になろうかと思いますので、やはり不要不急と思われるような金融については、自主的ないろいろな考慮があってもいいのじゃないかということを考えておりますので、そういう線に、そういう考え方に沿って金融機関が、今委員会を作っておりますが、ここで自主的に今年度金融について、そういうのもについても何かの考慮をするということはあるのじゃないかと考えています。
  58. 栗山良夫

    栗山良夫君 今の大臣のお話ですと、金融機関が自主的に若干の融資順位を設定して融資規制を行うということですが、おそらく資金面が非常に窮屈になるであろうという見通しは、私も専門家でありませんから知りませんが、いろいろ皆さんの御意見を伺うと、ほぼ一致している。従って、そういう資金の非常に窮屈な中で一五%をこえるような新しい産業投資をしようとすれば、そこに当然競合が起きる、そうして混乱を巻き起す、そうしてしかも隘路産業がうまくいかないというような結果になってしまったんでは大へんなことになると思うので、先ほど私が申し上げましたように、賢明な通産省はこのことを、ちゃんとよく先を読んでおいでになって、そうして重点度が、融資順位というか、設備投資を行うべき順位というものをきめて、どういう格好でおやりになるか知らぬが、行政指導をして効果をあげていくように努力しておられる、こういう点についてはそうあるべきでありますが、なるほど通産省は賢明なことをおやりになっていると敬意を表しているわけですが、そういうことはないのですか。それは全然ないのですか。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、特別にそういうことはやっておりません。ただ御承知の通り、日本の経済計画というものは一応あるのですから、その計画遂行に差しつかえないように、特に現在一番問題は電力でございますので、電力の電源開発の資金政府が十分する。それで九電力の方の所要資金の二千二百億円というものに支障があってはならぬ、こういうものは、最優先の金融というものを考えてもらいたいという政府側からのいろいろな要望は金融界へ出ておりますが、こまかい点について、政府からのまだ指示というものは特別しておりません。
  60. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、今一番産業界で資金源にしている社債ですね、社債というものについてはまずまず来年度の三十二年も全然不安はない、こういう見通しを立てられているわけですか。
  61. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは私どもの方の関係じゃございませんが、それに支障を来たさぬように、従って、必要の場合には、従来から持っている銀行の手持ちのいろいろなものを政府は買い上げるというようなことで、そこへ社債に応じられる余裕を与えるとか、こういう政策は大蔵省が当然今年度はやると思います。
  62. 栗山良夫

    栗山良夫君 設備投資の場合は、やはり何と申しましても、内閣が隘路産業の振興という一つの政策を掲げておるわけでありますから、その政策に従って開銀に一般的な融資がついていく、従って、開銀の融資順位というか、融資の割当方法、これがやはり大きく三十二年度金融界あるいは産業界を私は支配していく中心になると思うのです。そういう意味で、開発銀行がそういう構想でおやりになっておるかどうか、その点はわかりませんか。
  63. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 御承知のように、設備投資の中で、開発銀行の占める金額の絶対額は決して大きな金額ではございませんけれども、ただこれが特に基幹産業でございますとか、特殊の部面に財政投資、融資の配慮が織り込まれて出ていくというところに非常に問題があると思います。従いまして、当然開発銀行の融資につきましては、開発銀行自身の自主性と申しますかを大きく傷つけない限りにおいては、やはり考え方なり、基本方針なり、また特に御承知の造船でございますとか、電力というようなものは、あらかじめ大体予算編成のときにきまっておりますけれども、その他産業、本年度で申しますと、百二十億というようなものの配分といいますか、融資先につきましては、従来すでにこの配分につきましては、通産省なり、通産省のみではなくて、産業関係の各省から、まあこういうものについてはぜひ必要であるというようなものを若干予定の額よりも大き目な金額で、ある程度の順位をつけて、開銀の方には参考までに推薦をするような形をとってきております。これも当然来年度につきましては、金額は百二十億というので、若干押え目になっておりますから、よけいこの問題につきましては、順位と申しますか、そういう重点的な配慮が必要であろうと思います。現在せっかくその辺の検討をいたしておるところであります。
  64. 栗山良夫

    栗山良夫君 この開発銀行は、あなたの方からいただいた——どこからいただいた資料か知りませんが、通産省関係と書いてありますからあなたの方でしょう。財政資金が二百五十億、自己資金が三百五十億、計六百億ですね、これは説明いただいた通りですが、これの運用を三十二年度やられるわけです。従って、それをやるのに今あなたのお話では、やはり通商産業省も相談に乗るのだと、こういうことをはっきりおっしゃったわけで、どの程度の相談か知りませんけれども、とにかく相談に乗るのだということをおっしゃったのですから、従って、そういうことであれば、この開発銀行の六百億の運用というものが産業界には非常に大きなウエイトを占める、融資傾向については。私はこれは否定なさらぬと思うのですよ。そういうことであれば、先ほど大臣は、一般産業設備投資については、通産省はあまりおせっかいをしてはいけないので、民間の方の自主的な運用にまかすと、こういう工合におっしゃったのだけれども、ちょっと違うのじゃありませんか。
  65. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは開発銀行の融資について、こちらからいろんな比重をつければ民間銀行も協調融資によって、開発がこの点の貸し出しを重視しているのだから、自分たちもその手伝いをしてこれだけ貸付をしようというふうに、開銀に縛られて協調融資の形で民間も相当その方向には左右されるだろうと思っております。
  66. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうでしょう、どうも大臣、それを最初から言ってもらえばこんなに時間かからなかったのに……。まあそういうことであれば、大体今通産省がお考えになっておる融資の進め方と申しますか、これとこれとこれの企業についてはもちろん内容のチェックの必要であることは常識ですから私申し上げませんが、こういうものについては事欠かないようにあらゆる手配をするのだ、こういう一つの構想を持っておいでになると思いますが、これはどの程度の考えなんでしょうか。
  67. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 開銀の資金につきましては、先ほども触れましたけれども、九電力電力の開発、造船、これはもう当然大体の予定をされた重点でございますが、あとその他の産業部面に百二十億、予備に五十億というふうに予定を立てておるのでありますが、この内容につきましては、先ほども申しましたけれども、今後の当然検討に待たなければならないわけでございまして、私たちの方でも、開銀に対する財政資金の要求をする際には、ある程度こういう産業部門に開銀の資金がほしいという意味の、従来すでにある程度積み上げた資金要求を持っておったわけであります。しかし、財政投融資増額に限度がございますので、当然われわれの当初の希望からは圧縮された形で運用をされると思うのでありますが、しかし、やはり圧縮された場合でも、圧縮されたものをまさか按分比例で総花的に運用するわけには参りません。当然そこにはある程度の重点的な考え方をしなければならないと思うのでありますが、先ほども申しましたようなものを除きましては、まあ若干抽象的になりますが、やはり新規産業、たとえて申しますと、来年度の問題として、まあ従来からもあるのでございますが、新しい金属工業でございますとか、あるいは電子工業でございますとか、あるいは従来からいわれております木材利用の合理化と相関連しまして、木材利用の新しい。パルプでございますとか、そういう関係の、いわゆる新規産業の部門に当然重点が置かれなければならないと思います。さらに国内の資源関係におきまして、新しい資源の未利用資源を利用するという意味から申しましても、従来言われておりました、たとえば磁硫鉄鋼でございますとか、その他の砂鉄その他の利用部面につきまして新しい財政資金の投入が必要であろうと思います。こういう新規産業、未利用資源の産業というもののほかに、従来実はある程度、法律措置によりまして予定されたといいますか、ある程度期待されておる開銀に対する期待がすでにあるのであります。御承知のように、重要機械につきまして、その機械工業振興臨時措置が施行されておりますが、この法律を中心とする基礎的なまた一般的な技術を伸ばさなければならないような機械工業部門も重点として取り上げていかなければならないと思います。また、石炭につきましては、御承知のように、整備を進める一方、合理化が必要でございますから、これもある程度法律と相関連した資金要求として、石炭部門も重点的にとらえていかなければならないと思います。まあ大体ただいま申しましたような意味で、新規産業、新技術の工業化、未利用資源、それから今申しました石炭、機械というような、すでにもう従来法律をもって政策の方針がきまっておるようなもの、こういう点を特に重点的に取り上げていくことに相なると思います。
  68. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  69. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 速記をつけて。
  70. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから電力に入る前にもう一つ伺いたいのは、ただいま説明を承わりましたところによりますというと、「発明行政重要性にかんがみ、本年度特許庁の人員並びに事務費充実をはかりました。」と、こう書いてありますが、私これはしごくもっともだと思っておりますが、どの程度特許庁の仕事がこれで改善されるかということについて伺いたいと思うのですが、実はその前に、ただいまこの特許庁で一年に扱っておられる発明並びにこのうち実用新案関係の申請件数がどのくらいあって、それがそのうちどれくらいが特許されているか、あるいは申請してから特許の公告が行われるまで平均してどれくらいかかっているか、これを一つ伺いたいと思うのですが、わかりますか。
  71. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 特許庁は、御承知のように、現在大体八百人程度の人員で特許関係の出願の処理をいたしておるのでありますが、出願の件数で申しますと、三十一年——これは暦年でございますけれども、出願件数が十六万四千件、これに対しまして処理件数が、まあ端数を整理しまして約十三万件、従いまして、あとの分が約三万ほどは未処理件数として残っていっておるわけでありますが、大体このような未処理件数のふえますまあ一番大きな原因は、まあほかにもいろいろありますが、一番大きな原因は、やはり出願件数が終戦後と申しますか、終戦後も特に最近三、四カ年の間に非常に急速にふえたということが、言うまでもなく一番大きな原因でございます。これを例にとってみますと、まあ戦争の初めごろ、昭和十四年におきましては出願件数が八万件であったのであります。終戦近くになりますともっと減っております。それが終戦直後にはもちろんこのような非常に減っておったと存じますが、昭和二十七年になりますと九万七千件、二十八年になりますと十万九千件、二十九年が十二万一千件、三十年が十四万六千件、三十一年がただいま申しましたが、十六万四千件というふうに、大体最近三、四年間で年間二万件ぐらいずつふえてきております。これが一番大きな原因であろうかと考えております。これに対しまして、これを処理する方の特許庁の人員と申しますか、人員で申しますと、先ほど申しました点にあわせて申しますと、昭和十四年におきましては八万件の申請に対しまして九百十八人の定員でございました。それから昭和十七年におきましては申請件数は五万四千件くらいに低下しておりましたが、このときには約一千五十五人の定員でございました。その後、出願件数の増加にもかかわらず、二十七年におきましては定員が六百七十二人まで減りまして、その後、年々ふやして参ったのでありますが、現在八百三十二人という定員になっております。このような状況で、こういうふうに未処理件数がふえることの原因につきましては、まず第一には、出願件数をなるべく減すということも方法でありましょうけれども、これには公知になっておるような出願案件につきまして、さらに出願をして無用な手数をかけるということを省くということがまず第一であろうと思いますが、しかし、出て参りました出願に対しましては、やはり定員をふやしてこれを処理する以外には方法はないわけであります。そういう意味で百人のこの人員増加をいたしました。しかし、同時にまた、出願の案件を処理するにつきまして、事務能率の増加のためのまあ調度その他を別に予算でお願いいたしました。このようなことで、大体今後現在までこのように累積の傾向になっております特許庁の未処理案件をこの百名——また本年度百名だけではもちろん不十分でありますが、来年度以降につきましてもやはり若干の人員増加を、必要な人員増加をいたしまして、今後約三年ぐらいの間に現在の未処理件数の、少くもふえる傾向だけは完全に清算をしたいというような予定になっておるわけであります。
  72. 栗山良夫

    栗山良夫君 今の十六万四千件というのは、過年度の未処理文も累計しての数でございますか。
  73. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) そうではなくて、新しい出願件数の数でございます。
  74. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、その今の残、未処理残の三万件というのは三十一年度に出た分であって、過年度の分はこのほかにまだ残として入っているわけですね、それの分がまだあるわけでございますね。
  75. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) ただいま申しましたように、この処理件数の中には、前年度の出願のものを処理したものも実は事例が入っておりますが、そのようなズレを考慮外に置きまして、三十一年、二年をとってみますと、十六万四千件の出願があって、ずれてきたものの処理を含めて十三万件ほど処理をいたしました。累積の未処理件数でいきますと、二十万件ほど未処理件数が残ったということでございます。
  76. 栗山良夫

    栗山良夫君 それでよくわかりました。やはり一年の申請数よりも多いような未処理数が残高として残っているわけなんですね。ここがやはり一番私は問題だと思うのです。申請者からいつも特許庁はスローモーで、とてもだめだという攻撃が出るのはこれだと思うのですね、だからこれを解消しなければならないわけだと思うのです。それで今おっしゃったように、その三年間に吸収するというのは、この二十万件のことは入っていないわけでしょう。一年受けたものは一年に何とか結論を出すと、そういう方向だけじゃありませんか。
  77. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 年々の処理というだけではこの未処理件数が減らないわけでございます。それでは困るわけでありますから、この未処理件数をだんだんくずしていって、今後三年間ぐらいには未処理件数を、ゼロにするということはちょっと不可能でございますが、現在まあかりに年間十五万件ぐらいの申請が平均的に出てくるといたしますと、それに対して二十万件という未処理件数が残ることは不合理でございますから、まあせめて一年分とか十カ月分ぐらいの目標は、十五万とか十三万とかぐらいの未処理件数までは、ここ三年ぐらいまでの間に未処理件数をくずさなければいかぬというような計算に相なっておるわけであります。
  78. 栗山良夫

    栗山良夫君 今度人員が充足されると何名になりますか。
  79. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 九百三十二名、百行増加で九百三十二名に相なるわけであります。
  80. 栗山良夫

    栗山良夫君 ただいま目標としておられるのは、申請されてから一応公告できるまでは何カ月ぐらいを要していらっしゃるのですか。
  81. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 案件を完全に処理してしまいますのには、従来一年半から二年ぐらいかかっておるようであります。公告までのところでございますと、大体七、八ヵ月というのが平均だそうでございます。
  82. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは公告をすれば、それでもう特許権は保証されることになりますね、一応。私の言い方がちょっと悪かったが……。
  83. 松原憲太郎

    説明員松原憲太郎君) ちょっと今長官が出ておりますので、会計課長から説明さしていただきます。  御承知のように、公告されましてから二カ月の広告期間というものがありまして、それで異議がなければ初めて本決定になるわけでありますが、ただ特許のような場合は、公告されると同時に仮保護規定があります。完全な保証ではありませんが、一応権利発生の前提になるわけであります。
  84. 栗山良夫

    栗山良夫君 今まで、非常に重要な発明で、特許庁の審査が非常におそいため、同じ特許を外国でとられて、日本人が非常に権利の侵害というか、損失を招いたというような例はございませんか。
  85. 松原憲太郎

    説明員松原憲太郎君) 審査がおそいためにということはないはずであります。といいますのは、それを審査する標準になる日は、特許庁に出願された日が標準になりますので、先ほど申し上げましたように、審査がおくれておって一年半なりかかっておりますが、それを判定するときは、一年半前の出願日が基準になりますので、早く出願さえしてあるものでありますれば、審査がおくれたために外国にとられるということはないはずであります。
  86. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、具体的にちょっと私しろうとだからお聞きするのですが、たとえばちょうど一年前に本人が出願しておってまだ未決定である、ところが、ある外国ではそれと同じ特許を半年前に出願して、もう決定してしまっている、こういう事態が起きたときに、その特許は、日本人の特許は一年半たってから決定をすることができるのですか。もうすでに外国では——日本人は一年前に特許庁に出しているわけですよ、外国は六ヵ月前に出してしかも決定してしまった、まだ日本人の方は半年たたなければ決定するかしないかわからない、こういうような事態が起きたとき、向うが非常にスピーディにやっておる、そういうときはどうですか。
  87. 松原憲太郎

    説明員松原憲太郎君) 日本で特許を査定する場合は、日本に出た出願を基準にしてやりますので、外国ではどういう出願が出て、外国でどういうふうに決定されるかということは一応別になっております。ただ外国の特許関係のものは、御承知のように、国際的な規定がありまして、外国で出願したものも日本のようなところにも出願できる制度になっております。従いまして、たとえば昭和三十一年の一月一日に日本に日本人が出願しておる、ところが、その出願が三十二年の六月になってやっと審査されるというような場合、その場合に外国では三十一年六月にアメリカで出願しておって早く審査されてしまったということがあるとしますれば、ただ日本で出願されたものと外国で出願されたものとは全く別でありまして、外国だけで出願されている場合には、向うで権利になりましてもそれだけでは日本で権利となるものではありませんので、日本国内では問題にならないと思いますが、その外国で出願されたものが同時に日本に出願されてきた場合のことが問題になると思います。その場合には、やはり日本人のものが三十一年の一月一日であって、アメリカ人のものが三十一年の六月一日でありますれば日本においては日本人のものが優先的にここに権利が設定されることになると思っております。ですから、日本国内においては問題は起らないと思っております。
  88. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはそうでしょうが、私が先ほど特に重要なる発明と申し上げましたのは、要するに、日本人として諸外国の特許も取り得るようなそういう重要な発明のときを申しておるのです。国家的に非常な損失を受けるのじゃないかというのは、そのことを申しておるのです。だから日本人が、たとえば、おそらくそういう重要な発明ですから、特許庁へ出すと同時に、諸外国へも同時に申請すると思いますけれどもね、そのときに日本人が不測の損害を招くようなことが起きないか、そのことを言っているのです。
  89. 松原憲太郎

    説明員松原憲太郎君) 今の問題は、特許制度先ほどもお話しいたしましたように、国際的にお互いに出願できるようになっておりますので、日本人が先に出願した場合には、その日本に出願した日から一年以内に、たとえばアメリカに出願いたした場合は、アメリカにおきましても、日本に出願した日にアメリカに出願したと同じように優先的に考慮されることになっておりますので、優先期間の期日以内に出願さえしておりますれば、問題は起らぬと思っております。
  90. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体わかりました。まあ要するに、そういう質問をするのは、とにかく愚の骨頂なんですけれども、問題は特許庁が早く審査をして結論を出してもらえばこういうことは起きないわけです。従って、非常にいいことだと思いますが、将来もっとスピーディにできるような工合に事務能力の点においても、あるいは人員の点においても、さらに積極的な努力をされるように要請をしたいと思います。  それから最後に電力問題ですが、この前、予算委員会で御質問いたしまして、そして資料が不備でありましたので出していただきまして、大体よくわかりましたが、これについて二、三お尋ねしておきたいと思います。あのときに資料なしでお互いに議論しましたから、突き合せがないので申し上げます。まず最初にいただいた資料の第五表ですが、個別原価と料金収入というのを申し上げて、ただいまの電気料金というものは、計算で出た個別原価に相当モデレーションが加えられておる。そして電灯であるとかあるいは小口電力に割高につけられ、大企業というものは原価の計算においても保護されているということを申し上げた。私の記憶では、大企業は計算上の原価の九掛ぐらい、一〇%だけはそういう零細消費者の方につけられているのだ、こういうことを申し上げたところ、ここが非常に不明確でした。この表を出していただきますというと、私が申し上げました九〇%というのは、おそらくこの前のときだったかもしれません、この表では九五%になっておるはずです。九五%になっておりますね、たとえば、特約電力というのは全国総平均で九五%にしかなっておりません。電灯なんかは一〇四%になっておる、それから低圧電力が一〇四%になっておる、こういうことが行われておるということをここで一つこれは数字が出た以上は認めていただかなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  91. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 御指摘の通りでございます。ただあのとき私も詳しい資料を持ちませんでしたが、若干のこの出入りのところは、実は端数処理なんかございますので、二、三彩はどうしても狂うようでございます。  それからもう一つはこれでごらんになるとわかりますが、東京と中部にそういう傾向が現われておりまして、あとはまあ大体個別原価に近い程度になっております。
  92. 栗山良夫

    栗山良夫君 これはまあそれでよろしい。  それからその次に第一表ですね、東北の関係ですが、東北の方の関係も非常にあいまいでしたが、電力量の方は私が計算してみますというと、大口、特約と、こう消費量を合計いたしますと、これが全電力量の六九%になります、東北の場合はですよ。全販売電力量の大口と特約に送っているのは六九%、そのうちで特約に送っておるのは三八%、あの場合三分の一という大づかみな数字で申し上げましたが、大体これは合っておる、しかも平均単価の方は、特約は一円五十八銭で売られておる、大口は二円二十八銭で売られておる。ところがその下にある第三表を見まするというと、東北の平均原価は四円になっておる、それから第二表の地帯間の購入電力は三円二十三銭と、こういうことで、少くともまあいろいろな意味はありますが、東北電力の持っておる発電原価なり、あるいは販売原価よりも、きわめて割安に大量の電力というものが消費されておる、こういうことはお認めに結局なるわけですね、これは。
  93. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 融通の関係は御指摘の通りでございます。  それからもう一つ、特約の方も大体一円五十八銭ということになりますれば、これは発電原価を下回っておるかと思います。大口の二円二十八銭といいますと、これは発電原価以上だと思っております。需用端換算の発電原価以上だと思います。まあ若干のあれがあると思います。
  94. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこでもう一つ、この前に私が申し上げましたのは、九電力の営業格差、企業格差の問題ですが、料金改訂のときには格差ができないようにできておるのに、数年間足らずであれほどの格差ができたのは一体どういうわけです。地域差料金を設定したのにおかしいではないかという、こういう質問をいたしましたときに、その資料として出していただいたのが第一表の総括原価表と、それから三十年度の収支実績表、これを見ると大体わかると思います。で、なるほど相当な企業格差がこれに出ております。その収入の方ももちろんですし、支出の方もそれぞれの原単位がどうなっておるかということは、これはチェックできません。たとえば役員の給与というものが果してそろっているのか、あるいは給料手当のベースがどうなっておるのか、そういうことはわかりませんが、そういうまだチェックをしなきゃならぬような要素がたくさんありますけれども、それは差しおいて、差引の計においても総括原価のときは収入と支出がぴたっとそろえてある。これは全部そろっておる、ところが、三十年度の収支計算表ではでこぼこになっておりますね、おわかりですか、三十年度の収支実績表の二枚目のけつのところですね、でこぼこになっておる。こういう工合に相当内容をチェックしなければ議論はできないけれども、それにもかかわらず、こういう差ができておるということは、これはどこかにいろいろな要素の欠陥が出ておるのじゃないか、こういうことを私は指摘をしたわけです。この点もまあお認めいただけるでしょうね。
  95. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) その点につきましては、あの予算委員会の席上でも御質問ございましたし、また、私も答弁いたしましたが、大体それに尽きておりますしなお具体的な問題の御参考と思いまして第六表をつけております。これがまあ他の火力地帯の社との格差のできた一つの原因の資料かと思っております。
  96. 栗山良夫

    栗山良夫君 第何表ですか。
  97. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 第六表でございます。一番最後の表でございます。出水率、火力発電量云々とございますね。
  98. 栗山良夫

    栗山良夫君 ああそうですが、わかりました。
  99. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) これも一つの格差の生じた有力な原因だと思います。
  100. 栗山良夫

    栗山良夫君 こういういろいろな原因があって、そうして企業格差が今出てしまっている、しかもその中で、特別に経営難に陥るような企業が出たという場合には、これはやはり通産省の責任において何とか処置を、どういうふうにされるかそれは私は知りませんけれども、されなきゃいけない。それ以上申し上げませんけれども、その点はお認めになりますかどうか。
  101. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 企業格差の原因のうちで、人為的に処理し得ますものも若干あると思います。そういう点も含めまして、今後開発を進めなければならない会社において、開発資金の調達等がきわめて困難になるということでは困りますので、その辺の諸般の事情もいろいろかね合せて研究いたしまして、処理したいと思っております。
  102. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから、まあ現状はこういうことでよくわかりました。私もほんとうはもっときびしい批評をしたいのですけれども、まあそれをするまでもなく御理解をいただいたようですから、まあ私はこの程度でとどめておきますが、一つよく、こういう半ば専門的にわたるようなことでありますので、通産省の公益事業局がよく理解されて、それを処理されなければ、ほかにだれもされるところはないわけです。私はお認めになると思いますが、従って、そういう意味で大切な電力不足がこういうようなことで招来しないように努力を願いたいということを切に要望しておきます。  それからもう一つ心配になっておりますのは、昭和三十二年度の石炭というか、燃料手当というものが果して工合よくいくかいかないかということなんですがね。これに対するお見通しをちょっと聞きたいと思います。
  103. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 明年度の需給関係を考えますると、火力発電も相当入れまするので、どうしても多量な燃料が要るわけでございます。今作成中の明年度の需給見通しでありまするが、大体石炭換算いたしまして千三百万トン程度の燃料が必要とされております。国内の出炭の方も五千三百万トン近くが期待できるということでございますが、御承知のように、石炭の炭質からいたしますれば一般炭の微粉炭でございます。ほかの産業の事情もございまするし、輸送の問題もございまするので、おそらく国内炭で発電用に期待いたしまするものは千万トンが山ではないだろうかと実は考えております。ことしが大体実績といたしまして八百五十万トンくらい使っておりまするので、さらに百五十万トン増加になりますれば、いろいろ問題があると思いますが、まあ大体その見当でございます。  それから輸入炭の方でございますが、これも一応百万トン程度を考えております。これは実は具体的な段取りをつけておりません。今後の情勢を見まして運びたいと考えております。  それから重油でございますが、一応現在の発電施設では百四、五十万キロリッターくらい使うと思います。輸入炭の方とからみ合せまして大体百万キロリッター必要と考えておりますが、いろいろ輸入炭の不円滑なこともありますし、いろいろな事態もございますので、相当の予備量といたしまして手当をしていきたいと考えております。側とかして明年度の冬場の燃料対策に万全を期したいと思っております。
  104. 栗山良夫

    栗山良夫君 結局、絶対量においてどれだけ足りないということになりますか。五千三百万トンの出炭に対して千三百万トン、これは取れないけれども、そうすると、一千万トンとすると二百万トン足りない。そのうちで百万トン輸入せられて、あと百四十万キロリッターは重油にかえる、こういうここですね。そうすると、百万トンの石灰の輸入と百四十万キロリッターの重油がなければ来年の需給計画、不足のままで、何%でしたか、不足の状態で作られておるその電力量の発生も保証できない、こういうことになるのでしょう。そういうことですね。
  105. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) この前、委員会で申し上げました二十億キロワットアワーの不足はそのままにいたしまして、今申し上げておるような燃料が要るということでございます。
  106. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで通産大臣にこれは決意のほどを伺っておくのですが、だいぶ火力発電所の振興も進んでおります。水力も軌道に乗っておるわけなんですから、そういう運転設備の方はほぼ計画通り充足されると私は見ているのです。問題はこの燃料ですね。石炭の百万トンと重油を百四十万キロリッターと一口に申しますけれども、これは大へんな量なんです。石炭にしたって三万トンの船で何ばいですか、大へんな量なんですが、そういうものはほんとうに責任を持って手当をしていただかないと大へんだと思います。この問題だけは、いただけるかいただけないかどうですかという問題じゃなくて、いただかなければならぬ問題なんです。また、今年の冬のような電力不足が来年の冬場も襲うということになると大へんなことになると思います。従って、需用の伸びもそんなに内輪目に見ることはできないと思いますから、平水を考えて、これだからもし渇水になればもっとひどい、従って、特に通産大臣にこの点を、大へん御多忙で目を配ることがあるいは困難かもしれませんが、特に忘れないように一つ覚えておいていただきたい。もうそのときになって、この問題の石炭ストのときに百万トン入れるのだとおっしゃっても、それは口では言えますけれども、あのときには入りません、百万トンは。百万トン入れようと思えば今から手当をしなければ間に合いませんから、そういう決意でやっていただきたいと思いますが、いかがでしよう。
  107. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この前に緊急輸入をきめまして、そのときの石炭は一部でありますが、四月末にたとえば十何万トン入ってくるとかいうふうな手配はしておりますので、さらにそれに続けて今年の外炭輸入の手配をつけていくということはずっと続行いたしております。と同時に、これは私どもがいざというときに足らなくなってはいかぬから、これだけの計算から出た外炭の輸入はやるという政策を立ててやっておりますが、国内の事情から見て業界の方では五千二百万トンといわず、五千三百万トンぐらい何とか出したい、こういう態勢を一方整えておりますので、そちらの方でも万全の措置をとっておくということにいたしませば、万一の場合、火力炭がないために電力をどうするというような事態が避けられるのじゃないか、一方、安全のための方法を国内、国外にわたって両面からやっておきたいと存じます。
  108. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 速記をとめて。    〔速記中止
  109. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後二時十六分休憩    ——————————    午後三時五分開会
  110. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) ただいまから再開いたします。  午前に引き続き、昭和三十二年度予算中、通商産業省所管議題といたします。  御質疑をお願いいたします。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど通産大臣の御説明ですと、まあとにかく通産省としては、貿易の振興ということを非常に重視しておるというお話でございました。もとよりその通りでございますが、三十一年度の貿易の状況を見ておりますというと、だいぶ、三十一年度予算を組みましたとき、また国会で審議いたしましたときと、様子が変っておるのであります。もちろん輸出も増大しておりますけれども輸出の増大よりも、輸入の増大の方がずっと大規模でございまして、従って、その差が大きくなって参りまして、予想と違いまして、この年度末においては、赤字がまあ二億ドルになろうかというような状況になっております。手持ち外貨も十二億ドルか、それを割るような事態になっておる。輸入のこの増加につきまして予算委員会で大蔵大臣質問いたしましたところ、かなり楽観的な見通しでございました、しかし、どうも私どもは、あまり手放しで楽観もできないような状態だと思うのでありますけれども、三十二年度予算を作る場合においての見通しからいいますると、輸入は三十二億ドル、こういうことでございますが、この輸入は、果してそれだけでとどまるかどうか、これは一月から三月までの傾向を見ておりますと、どうもそういうふうに思われないのでありますが、この三十二年度における輸出入の見通しについて、依然として十二月に予算を組まれたときのその見通しのままか、あるいは一—三月の状況を見て、これに対して、例な見方と申しますか、つまり見方の修正をされたかどうか、この点をお伺いしたい。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日本経済の伸びを、一応私どもは今年度はこのくらいであろうと想定し、それに伴っていろいろな所要資材というものを想定しまして、これくらいの輸入があったら一応国内の生産拡大の支障にならないという、物資別の積み重ねをやった結果、大体三十二億ドル前後の輸入によってまかなえるだろうという考え方は、ただいまでも変っておりません。見方によっては、もう少し大きい輸入の需要があるだろうという数字も出ますけれども、三十一年度の輸入の状態を見まして、相当在庫補充というものが、昨年三十一年度において行われておりますので、そういうものも勘案して、大体この程度の輸入で済むのじゃないかと考えております。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 輸入の見通しは非常に大きな問題ですが、昨年度は予想外の経済規模の拡大がありまして、そうして設備投資もずいぶん行われた、こういうような関係で、来年度における生産の上昇というものも相当あろうかと思われるのですが、現状といたしましても、あるいは今後の投資拡大というようなことから見ましても、なかなか三十二億ドルにとどまらないのじゃないか、在庫の補充というようなことでございましたけれども、それだけではなかなかおさまらないのじゃないかというふうにわれわれ見ておるのでありますが、この輸入の増大に対しまして、政府はやはり従来の方針のままで、何かこれに対して適当にチェックするとか何かの方法をとるということは考えておられないのですか。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 輸入を抑制するということは、ただいま考えておりません。必要な原材料は入れる若干余裕を持って予算を組みたい、こういう態度でやっております。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、一応輸入の三十二億ドルが大体のめどとしても、なおそれ以上に上る傾向があっても、これは抑制しないと、それでむしろ積極的に輸出増加をやっていくのだ、それで貿易の拡大によってこの輸入と輸出の均衡を保つのだ、こういう方針でございますか。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体そういう方針でございます。昨年の輸入のふえた理由を私どもは見ますというと、当初の生産指数の見方とか、投資の見方、それから国内消費の見方、こういうものがもう大幅に狂っていますので、それに伴った必要な輸入増というものもこれは当然でございますが、そのほかには、やはりスエズ運河の問題から、将来資材の購入難というようなものを起しては困るという若干の思惑も入っておったと、私どもは考えております。やはりそういう先行きどうなるかという懸念が輸入意欲を特に起したりしますので、私どもは必要な材料は入れるのだという態度を持っていけば、これが反対に必要限度の輸入を実現させるということになりますので、そういう思惑的な問題を起さないためには、どうしてもこの輸入を抑制するという方法は一切取りたくないと思っています。従って、その結果輸入がこれだけでは足らぬという事態があるいは出るかもしれませんが、それは押えることによるものではなくして、それだけ積極的な輸出政策を私どもがやっていけば、国際収支の赤字は避けられるという考えで、ことしはいきたいと思います。
  117. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは非常にけっこうなんですが、輸出の増大の方には相当懸念があるのじゃないかということも、私ども予想されるのじゃないか。それは、もうすでに方々で論じられておることでございますけれども、欧州における投資景気の頭打ち等のこともあり、景気が横ばい状態になっておる、アメリカにおきましても最近そういうような徴候が現われているということで、世界景気が去年みたいに大きく上向線をたどらぬ、横ばいあるいは若干の停頓というようなことがいわれておるのであります。しかも、一方におきましてスエズ運河の再開が行われるというと、やはり欧州の品物がどんどんと東洋方面にもまた出て参ります。そうして日本人との競争が非常に強くなるということが起って参りまするし、また日本の国内における輸出品の生産の低下というのを考えると、またなかなか思うようにいかぬ。逆に、だんだん上っていくということからくる競争力の低下も起って参ります。またアジア諸国におけるドル貨その他外貨の不足から、やはりなかなか思うように伸びないというような事態が起ってくるでありましょう。輸出の困難ということは、去年よりもことしの方がずっと大きいというふうに私ども見ております。一方において輸入は増大してくる、輸出は非常に困難だ、これもよくぶち破って輸出増加していくしいうことは、去年以上の大きな努力を必要とするわけであります。もちろん通商産業省ばかりでなくて、これは政府全体が輸出増加ということに一そうの努力をされるということは、私どももそう予想できるのでありますが、輸出の見通しについて、また輸出についての諸困難に関する、今私があげましたような困難のほかに、まだいろいろありますが、それらの諸困難について、政府の方はどういうふうにお考えになっているか、それを伺いたい。
  118. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 輸出については御指摘のような困難がございますので、これは昨年度以上の努力をしなければ、二十八億ドルの輸出を行うということは非常にむずかしいことと思っています。しかし、ことしの二月—三月の輸出状況を見ましても、輸入が非常に多かったから、国際収支の問題もございます。輸出それ自体の傾向というものは、決してまだ悪くなっていない。当面この基調が続くだろうということも予想されますので、今御指摘のよううないろいろな困難な問題に対処する努力をすれば、私はそう悲観する状態ではなかろうと思います。  特に従来は、輸出の努力をしてみましても、日本の国際的な地位の問題もございまして、努力は困難だったといういろんな制約がございました。御承知のように、日本が国際連合に加入する、そうして日ソの国交回復もできて、新しい共産圏に対する日本の窓口が現に開かれておる、こういう状態でございますので、従来の努力よりもまたさらに新しい努力をする、この場面が私どもには現在出ておりますので、各国との個別のいろんな交渉なんというようなものは、今後非常に日本の立場としてやりよくなるということもございますので、たとえば豪州の問題、あるいはフィリピンというように、国別に私どもが外交的ないろいろな努力も重ねてこの問題に取り組んだら、私はまだまだ日本の輸出は相当打開される面が多かろうと思っておりますので、そういういろいろな事情を勘案して、ことしの輸出を目標程度に今達成するということは、何とか必ずこれはできるだろうと、この点はそう悲観しないで努力しておるのでございます。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ目標程度、二十八億ドル程度輸出を実現するということは、あるいは一—三月の傾向から見てできるということも、これは私どもも予想がされるところです。しかしですね、先ほど申したように、輸入の方の増大はやはり相当の程度増加するんじゃないか。こういうことを考えて参りますというと、その輸入の予想以上の増大に見合う輸出というものを考えなければならない。そこに困難性が私はあると思う。こういうふうに考える。たとえば、まあ輸出品の状況を見ておりますというと、あるものは非常な伸び方をしておるが、鉄鋼のごとき、逆になってきて、これは内需の関係もあるから相当前から見ると減ってしまう。今年も果してどうかというふうなものも現われております。それからまた一面において、セメントのごとくうんと出ているものもある。しかし、今度は国内における需要が非常に多いため、これはまあ輸出もできるだろうけれども、国内における価格の値上りがこれを規制するというような面もある。なかなか困難があるのであります。それから個別的に各国との通商交渉をやって、これが成立したとしても、これは年当初からその結果が現われてこないのですから、従って、その結果が現われてくるのはなおの先になるということも予想されてくるわけです。  これはまあ大臣でなく、通商局長の方にお伺いしてもいいんですが、本年度輸出の傾向ですね、一体どういうものが伸びて、どういうものが、まあいろんな事情でもって、去年と違って、減るかという点についての見通しですね、それをお聞かせ願いたい。
  120. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) まず一般的なこの輸出の傾向でございますが、ここ、たとえば昨年の七月からずっと毎月々々このLCの接受額をとって調べていきますと、決して悪くはないわけでございます。若干月によって増減はありまするが、たとえば三十一年の七月では、ドル、ポンド、オープンアカウント入れまして、一億八千五百万ドル程度のLCを受けた。それがたとえば八月では一億九千三百万ドル、九月は少し減っておりますが、十月でも一億九千百万ドル、十一月はまた逆にちょっと減っておりますが、十二月では一億九千五百万ドル。で、今年の一、二月はいずれも二億ドル台を突破しておるわけでございます。で、われわれは輸出の見通しを立てます場合に、いわゆるこのLCの接受実績というものが一番有力なより所になるわけでありますが、そういう工合でありまして、一応二億ドル以上になっております。そのほかに、LCが来ませんで、いわゆる電信払い等の、貨物を輸出する直前に金を送ってくる式のものも、昨年一年の傾向を見てみますると、大体こういう、このLCを受けた額の一二・三%ぐらいが、このLCを受ける額の上につけ加わるわけであります。それは今年のこの一、二月を見ますると、それが一割五分程度になっております。従いまして、こういうそのLCを受けておる実績と、それからしCによらないこの毎月の実情を勘案をしてみますると、この上期におきまして大体十三億七、八千万ドルは大体シュアーにいくのじゃないかというふうな感じを持っております。  で、まあ一年間二十八億でありまするが、下期におきまして十三億七、八千万ドルとなれば、一応二十八億の目標達成はそう困難ではないというふうに考えておるのでありますが、これを地域別、それから商品別に若干申してみますると、この二十八億の中で、ドル地域につきましては十三億八千二百万ドルを予定しておる。これは三十一年度におきましては十一億五千八百万ドルぐらいでありますので、大体一九%程度増加を見ておる。スターリング地域につきましては、三十二年度におきましては十一億一千百万ドル程度を予想しておるのであります。これはこの三十一年度の九億九千万ドルに比べますと、一二%程度増加予定しておる。それから清算勘定地域は、三十二年度におきまして三億飛んで七百万ドル程度が予想されておるのですが、これは三十一年度におきましては三億二千九百万ドルでありますので、若干減って参る、いわゆる九三形程度になるのであります。合計しますと、三十一年度の二十四億七、八千万ドルに対しまして、一三%程度増加でありまする二十八億ドルというものが、大体いけるのではないかというふうに思っております。  これをこまかくまた国別に申し上げますと、時間がかかりますから、商品別に見ましても、一々この食糧、繊維、機械等を申し上げますと、非常に時間がかかりますが、最近の大体傾向を延ばして見ました場合、それから今先生いろいろ御指摘のような要素をももちろん加味してみまするし、外交交渉の方も、完全に成功する場合もあれば、なかなかいかぬ場合も、いろいろ危険も含んでいろいろ計算をいたしておりますが、まあ二十八億の方はいくのではないかというふうに実は感じておるわけでございます。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ私も今までの趨勢から見て、二十八億ドルが割れるようなことはこれはまあないと思うのですが、しかし輸入が三十二億ドル以上に増大することは、もう大体どうも必至じゃないかと、今までの状況から見てもですね、ということになるというと、だいぶその政府の見通しは狂ってくる、しかも、これが国内の経済にも大きな影響をもってくるというふうにまあ考えるのですが、そこにいま一つの問題があるのだが、この輸出の、いろいろの輸出に加わってくる諸困難のうち、まず第一に、何ですね、スエズ運河の再開に伴ってきて、欧州の諸国の東洋における運賃も安くなり、欧州の諸国の東洋に対する輸出が相当伸びてくる。また将来は、例の欧州共同市場の問題から来るいろいろな影響もあるでしょう。直接でも、スエズ運河の再開に伴ういろいろな影響があるのじゃないかと。それはどういうふうにごらんになっておりますか、通商局長
  122. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 実はそのスエズの紛争が起りましたときには、率直に申しまして、いま少し日本の輸出について好影響があるのではないかというふうに、率直にいいますと見ておったわけであります。ところが、まあこれはどの分がスエズ運河の好影響か、あるいは現地の購買力の問題かよくはわかりませんが、あれは確かに予想をしておったほどのはっきりした数字は現われて参っておりません。従いまして、まあ一言にして申しますと、ヨーロッパ市場というものは、日本の輸出総額の大体一割なんであります。大体二億五千万ドルぐらいのものがヨーロッパの市場であります。従いまして、かりにそれがスエズの問題で悪影響を受けても、それをカバーするのではないか、アジア地域においてカバーするのじゃないかと思っておりすしたが、あまりヨーロッパ向けの輸出もそれほど影響もしませんでしたし、アジア向けの輸出もそれほどわれわれが割に期待しておったほどのことも丸くて、大観してみますると、先ほど申しましたように、三十一年度におきましては二十四億六千万ドルぐらいな見通しを立てておったのが、今日、きょう見ますと、あしたを控えて、まあ三月の月末で見ましても、二千万ドル実はふえて参っておるわけなんであります。従いまして、何がどういう原因で、どこがどうふえて減ってということは、非常に仔細には申しにくいのでありまするが、スエズ運河の問題を非常にシーリアスに考えておったこともおかしかったし、また今後スエズの問題が解決した後、ヨーロッパの商品が東南アジアに大いに出てきて日本が競争上困るというふうなファクターも、あまりそれはない。私はないと思いまするが、それほど深刻なものではなかろうじゃないか。それよりも、われわれは、スエズの問題が遠のきました結果、輸入物資の価格の下落、あるいは運賃の下落の方が、輸入面において非常に好影響を及ぼしてくるのではないかというふうに考えております。  今も輸入の三十二年度三十二億の問題について御意見がございましたが、この三十二億というものは、国際収支のいわゆる支払いが三十二億ということでありまするので、輸入は三十八億程度、三十八億から三十九億ぐらいになるのだろうと、こういうふうに予測をしておりますが、従いまして、この三十一年度の下期でありまする現在の期におきまして、異常に輸入の外貨予算がふえましたが、これも運賃の増その他のファクターが相当入っておりまするので、ここ二月、三月、それが大体スエズ運河問題の発生前まではまだ復帰はいたしておりませんけれども、非常に下降の傾向になって参っておりまするので、輸入面におきましてはそういうファクターも含んで、いろいろ数字を算出しておるわけであります。まあそういうような点をあれこれしますると、支払いベース三十二億、貨物の輸入で三十八億から三十八億五千ぐらいにとどまる。そうするならば、いわゆる経済企画庁で立てておりまする生産の伸び一二・五%にも大体見合っていけるのじゃないかというふうに考えておる次第であります。
  123. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ輸入の、つまり欧州の方がそういうふうな状況になってきて、運賃が安くなった、あるいは輸入物資の価格も若干下落の方向にあるということになって、輸入の方も値段が安くなるということになるわけですが、このスエズ問題が起ってから、だいぶ高い品物を高い運賃で日本が買い込んで、これが今どんどん届いておる。これは日本の製品のコストを高める作用を起しておると思うのです。そのほかに内需が増加して、需要が高まって、だんだんコスト高を招来する傾向が現われておるというようなことから、輸出品の価格が三十二年度においては、本年よりも全体として高くなった。そのために競争力が低下するということが、どうもこれは憂えられるのですが、果して国内における生産工場がそれを一体吸収しておるかどうか、そういう見込みがあるかどうか。高くなるのじゃないかというふうに考えられるのですが、それらの点はどういうふうにお考えになりますか。
  124. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 非常にむずかしいお尋ねなんでありまするが、確かに砂糖のごときものは、一時よりは倍くらいに実は暴騰しております。現在も確かにそうでありまするが、まあ綿花、羊毛等の輸出原材料をとって見ますると、さほどのことはないわけであります。運賃の方が増が若干響いておるという程度でありまして、国内の生産の現状も、御存じのように、どっちかというと過剰生産で、値は下っておるくらいでありまして、上っておるということとまあ反対の現象を呈しているわけであります。確かに大豆とか砂糖のごときものは、ここに輸入価格の高いことを反映しまして、国内でも上っておりますが、これはあまり輸出には直接響いて参っておりません。今後響くと思いまするのは、鉄鋼原材料の確かに価格は上った。この原材料の価格の上った結果、あるいはまた国内の需要の非常に強かったがために、鋼材の値上りをしておる。その辺は若干は響くのではないかと思いまするが、その他のものにつきましては、まあほとんど響かないと申し上げると、これは言い過ぎかもしれませんが、そう大した実は響きにはなっていないように思います。化学品の輸出にいたしてもそうであります。たとえば鋼材の値上りに伴いまして、機械類あるいは船舶の輸出の競争力が劣るじゃないかというふうな疑問も出るわけでありますが、船につきましては、御存じのように、もう三、四年分実は注文を持っておりまして、率直に申しますと、一年くらい注文がなくともできるような実は態勢になっております。ただ若干、まあ船舶以外の機械類——重機械類になりますと、鋼材の値上りで若干響くのではないかというふうに考えておるわけであります。  まあ、あれこれ考えますと、鋼材関係を除きましては、スエズ運河問題後の輸入物資の価格上昇というものは、もうほとんど響かないと見ていいのではないか。それよりも今後の輸出の問題は、結局相手の市場における外貨の事情とか、あるいは外交交渉によって、どの程度そういうふうな点が打開できるかどうかにかかっているのではないかというふうに考えておるわけであります。
  125. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ繊維製品は、これはもうスフの現在の過剰生産から見ても、価格は上らぬと思うのですけれども、しかし、今言った鉄鋼類を原料とするものは相当上ってくるのじゃないか。あるいはまた、セメントの最近非常に輸出が増大しているけれども、これなんかも、国内における需要増加によって、また国内における値上りから、なかなか前みたいなわけにはいかないのではないかというような点、あるいは化学製品の面においても、そういう面が見られるのじゃないか。これは欧州においても相当、去年から見ると、景気が横ばい状態になってきているために、日本品に対する競争力が出てきているというふうに考えるのですが、そういう点から見て、私はやはりなかなか楽観できないという気がするのです。  それから、今あなたの方から言われました相手国の外貨事情です。この点も、特にアジア諸国においては相当むずかしい問題を提起してくるのですが、特にこのところ、ごく最近、インドネシアなんかもそういうようなことから輸入制限を始めているようですが、そういうことがほかの国にも及んでくるんじゃないかというような気がするのですが、その相手国の外貨事情でもってなかなかむずかしい問題が起るというのは、大体どういう国々になっていますか。
  126. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) まあ概して申しますと、東南アジアを考えているわけでありますが、今いろいろ御指摘の点も、われわれいろいろ作業をするときには、そういう要素を考慮に入れまして、外貨事情の悪い国には一応、現状ないし現状よりも若干輸出は減るというふうな数字を見て、またふえる所におきましても、なかなか理想通りにはいかないだろうというふうなことで手かげんをしまして、従いまして、国別に見れば、たとえて申しますと、ドル・エリアにおきましても、アメリカ、あるいはカナダ、あるいはリベリア、パナマというふうな地域は、かなり増加をするというふうには見ましたが、その他の地域におきましては、大体横ばいかあるいは若干減る地域もある。あるいはスターリング地域におきましても、たとえば豪州のごときは、交渉が成立すれば三倍になるという見通しもあるわけでありますが、三倍になるというのはあまりにも過大の見通しである、まあせいぜいよくて倍ぐらいではなかろうかというふうに増加を押えた所もありますし、またその他たとえばビルマにいたしましても、セイロンにいたしましても、イラク、パキスタン、あるいはイタリアとかアルゼンチン、フィンランドというような地域には、若干現状よりも減るのではないかというような要素も入れて、考えております。清算勘定地域におきましても、おおむね現状ないし若干の増を見ている所もありますが、概して横ばいというふうな感覚で見ているような次第であります。  一言で申しますと、割に手がたく各市場々々の情勢を判断して、横ばいないし若干の増、あるいはマイナスというようなものを入れまして、先ほど申しましたような二十八億という推定をいたしたわけであります。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 本年度の外貨予算、これはもうそろそろ論議しておきめになる時期だと思いますが、もう大体おきまりになっておるのですか。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 外貨予算は、きょう大体決定いたしました。
  129. 岡田宗司

    岡田宗司君 こまかいことは新聞で見ますが、概要をここで御発表願えますか。
  130. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 本日閣僚審議会におきまして御決定になりました三十二年度上期の外貨予算の概要を申し上げます。全部申し上げますと時間がちょっとかかりますので、ごく概要を申しておきます。  予算の編成の方針といたしましては、従来とほとんど変りはないのであります。一言に申しますと、国民経済の健全な発達に即応しまして、必要な輸入需要を充足する予算規模とするということでありまして、貨物予算といたしましては、予備費の一億五千万ドルを含めまして二十二億三千六百万ドルということになっております。これを前年の同期と比較いたしますと、三億ドル以上の増加になっております。なお、品目別の予算の算定に当りましては、鉱工業の原材料、生活必需物資等につきましては、十分な金額を計上する、特に当面の隘路部門につきましては、この隘路打開のために必要な輸入を特に推進する、それから不急不要の物資につきましては、通商協定等の特別の必要ある場合のほかは、輸入をしないという従来の方針を継続しております。また自動承認制の拡大につきましても、通商上及び産業上の諸問題との調整をはかりつつこれを実施する。それでまた自動承認制の適用品目につきましては、国際収支上の理由により、外貨割当制に偏向しないこととする従来の方針はこれを堅持するというふうな方針をもちまして、先ほど申しましたように二十二億三千六百万ドルの貨物予算を編成したわけであります。その結果国際収支におきましては、上期においては若干の赤が出るのではないかという数字になっております。  なお、輸入貨物予算の内容を主要物資について大きなものだけを申し上げますと、たとえば食糧でございますが、食糧の上期の全体の金額は二億五千九百万ドル百万ドル——以下は四捨五入して申し上げたいと思います。四捨五入しますと、二億五千九百万ドル程度になっておる。このうち大きなものは米と小麦と大麦、砂糖、大豆ということになっております。米は、大体年間としまして五十万四千トン買う、上期におきましては原則として買わないで、下期にほとんど買おうということでありますが、この三十一年度で諸外国と約束をしておったものでの買い残し分の七万四千トンだけを、上期で一応買おうということであります。それから次に小麦でありますが、年度間二百十九万二千トンで、上期におきましては百万五千トンの買いつけを見込んでおります。大麦につきましては、年度間を八十八万トン、上期は四十万七千トン買います。砂糖は年度間百十五万トンないし百二十万トンを買うことにいたしまして、上期において五十八万トンを予定しております。これは三十二年度の粗糖需要量を百十六万トンという推定に立っております。それから次に大豆でございますが、年間を八十五万トンと見まして、上期に大体四十万トンの予定であります。  それから次に、専売物資は合計五百六十六万四千ドルでございますが、そのうちの大きいものは塩でございます。年度間に二百六万七千トン、上期は百十三万トンを買うという計画であります、  それから次に、繊維原料は総額三億七千八百万ドルの予算でございますが、そのうちの原綿は、綿糸生産を二百六十四万七千コリと推定いたしまして、非紡績用を含めまして、上期百三十四万七千俵、年度間としましては二百八十九万七千俵の予定でございます。原毛は、三十二年度上期におきまして四十八万俵、それから年度間は百三十万俵でございます。それから次は肥料及び肥料原料でありまするが、これは二千百万ドル若干でございます。そのうちのカリ塩は、上期におきまして二十四万五千トン、年度間で五十二万トンという予定であります。それから肥料の中の燐鉱石は、今期までは割当制であったのでございますが、これは自動承認制物資の方に移しております。  それから次が鉄鋼原料及び鉄鋼製品でございまするが、総額二億八千八百五十万ドル程度になりますが、そのうち銑鉄は、上期におきまして二十九万八千トン、年度間は五十万七千トン、鋼材は上期におきまして六十九万二千トン、年度間で百十万トンを買いつける予定であります。これは三十二年度の普通鋼材の需要を千三十六万トン、こういうふうに予定しておるわけであります。高炉銑を六百七十万トン、普通鋼鋼材を九百九万トンと生産を見込んで、なお不足になる銑鉄及び鋼材を、今申し上げた数字のものを輸入するのであります。次に、以上のような生産見通しに立って、鉄鉱石、石炭、くず鉄のいわゆる原料の輸入計画を予想しておるのであります。鉄鋼原料といたしましては、鉄鋼くずを上期におきまして百三十八万トン、年度間で二百九十二万トン、それから原料炭は、上期におきまして二百八万トン、年度間は四百十二万二千トンでございます。鉄鉱石の方は、全地域が現在自動承認制の品目になっておるのであります。  それから、この原料炭のほかに、一般炭としまして、上期に三十万トン、年度間百万トンの石炭を入れるという予定をしております。それから石油につきましては、三十二年度の石油製品の需要を、揮発油は三百九十四万百キロリッター、重油が八百三十九万キロリッター、原油の精製量は日産二十六万一千バーレル、こういう前提に立ちまして、原油は、上期におきまして四千三百六十八万三千バーレル、年度間で九千三百二十万一千、バーレル、それから重油は、上期におきまして八十二万八千キロリッター、年度間で二百十七万九千リットル、それに小量の航空用の揮発油を考えております。  それから機械類の輸入は、上期は一億九千万ドル程度予算を計上しております。  これがおもな物資につきましての数量でございます。若干この説明が前後したかもしれませんが、先ほど申しました石油を金額で申しますと、石油は一億九百二十四万六千ドル程度になっております。そのほか、もちろん化学品、医薬品、加工貿易原材料、あるいは求償取引物資、あるいは雑輸入の品目というものも掲げ、それから自動承認制の金額といたしまして、四億九千八百万ドル程度を上期の自動承認制の金額に予定をし、通常予備費は一億五千万ドル、合計、先ほど申しました二十二億三千六百万ドルということになるわけであります。  申し上げるまでもなく、現在の生産の伸びを十分に盛り込みまして、数量につきましては、それの達成可能なように、ゆとりのある予算にし、この価格につきましては、先ほども申しましたように、スエズ運河問題の影響が漸次さめつつあるちょうどその途中の段階でありまして、非常に単価のはじき方がむずかしいのでありますが、一応事務的に予想し得る先行きの価格をとりまして、必ずしも今日現在の運賃、あるいは単価でなしに、若干こう下るであろうというふうな要素も加味しまして、算定をいたしております。また九月末におきまする在庫量なりスリッページの量につきましても、三月末現在の在庫なりスリッページを基準といたしまして、鉄鋼原料なり油類につきましては、かなり在庫をふやすという気持で編成しておりまするが、食糧等につきましては、いろいろの問題もありまするので、やや在庫を現在に比べますと、九月末では減らせるというような気持でやっております。その他のものにつきましては、大体三月末の在庫でもって適正在庫に復帰したという前提のもとに、九月末におきまして同様の在庫量を保持するというような考え方でやっております。
  131. 岡田宗司

    岡田宗司君 自動承認制の上半期が四億九千八百万ドルですが、ほぼ五億ドルですが、これは去年の上期に比べるとどれくらいふえておりますか。
  132. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 去年の上期は三億五千万ドル前後ではなかったかと思うのでありますが、若干あるいは数字が食い違うかもしれませんが、四億にはなっていなかったかと思うのです。ただ下期、いわゆる三十一年度下期の自動承認制の総額は五億一千万くらいになっております。それから比べますと、三十二年上期は若干、一千万か二千万ちょっと減ってはおりますがこれは先ほども申しましたようなフレートの関係もあるし、あるいは在庫調整もかなり下期において完了したというふうな前提に立ちまして、すでに心もち減らしたということであります。これは自動承認制でございまするし、先ほど申しますように、一たんやりかけますととめることが比較的困難な項目でございますので、また、もしこの金額で不足を来たすというときには、予備費から若干を繰り上げて追加することも可能でありますので、四億九千万ドル程度の金額にしているわけです。
  133. 岡田宗司

    岡田宗司君 自動承認制の外貨予算は、これは全体の傾向としては、ふやしていくということではなくて、大体押えていく、あまりふやさないという方針ですか。
  134. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 予算そのものは、御存じのように、チェックがきかないのでありますので、国内の経済の状況を反映して需要が多くなれば、それだけふえるわけでありますが、品目の方はここ数期にわたりまして非常にふやして参っておるわけでございます。従いまして、三十二年上期におきましては、新しく自動承認制にいたしましたのは、燐鉱石と羊皮革の二品目でありまして、なお若干の品目はいろいろ通商協定の関係がありまして、今やっておりますいろいろの通商協定がうまくいくならば、自動承認制に振りかえたいと予想しているものは数品目ございます。大体その程度でございます。
  135. 岡田宗司

    岡田宗司君 外貨予算の大体の大筋を承わったのですが、食糧は、特に米は前期については輸入はいつも少いので、問題は大してないと思うのですが、鉄ですね、これは今年はこれだけ輸入しなければならぬとして、確保できる見通しは十分立っておりますか。ことに鉄鉱石なんかの確保、これはどんな見通しですか。確実になっておりますか。
  136. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) ただいまの御質問の点でございますが、今年度予算に計上しております原料につきましては、ほぼ輸入が確保できる見通しを持っております。ことに鉄鉱石につきましては、今年度中はすでに各地域ごとに確実に入手できる。供給の方はわれわれの需要に対しましてさらに余裕がある状況でございますしスクラップの問題につきましては、三百万トンくらいの考え方になっておりますが、御承知のように、アメリカのスクラップの問題が多少問題点を残しておりますけれども、総量といたしましては、今年度必要な量だけは大体におきまして確保できると、私どもは考えております。
  137. 岡田宗司

    岡田宗司君 鉄鉱石の問題ですが、これは地域別に見て、どういうことなんですか。
  138. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 地域別に見ますと、大体ドル地域、ポンド地域、オープン・アカウント地域の各地域がございますが、ポンド地域につきましては、現在最も大きなソースはマレー地区でございまして、その次にインドが相当に多い。  参考に、三十一年度どういうような入手をしたかということを申し上げますと、三十一年度におきましては、マレーから二百十万トン、インドから九十六万トン、その他合せまして、ポンド地域で三百二十六万トン入っております。オープン・アカウント地域ではフィリピンが一番多くなっておりまして、これが百四十六万トン、その他合せまして百五十八万トン。これが大体基本的の供給ソースでございまして、そのほかに、ドル地域のポルトガルのゴアから百十万トン入っております。これが大体基本的な安定したソースでございます。それ以外に米国及びカナダあたりからスポット買いをいたしまして、アメリカから九十六万トン、カナダから三十万トン入っております。その他こまかいものもございますが、全体として七百六十万トンが三十一年反の輸入実績でございまして、三十二年度は輸入は八百九十万トンの計画でございますが、ただいま申し上げましたマレー、インド、フィリピン、これらの地域がそれぞれ増加いたしております。マレーにつきましては二百七十五万トン、インドは百三十万トン、フィリピンが百九十万トン、ゴアが百四十万トン、これが本年度計画でありまして、これはすでに山との関係がついておりまして、確実に入ることができるわけであります。それ以外の地域からは、スポット買いによりまして、カナダ、アメリカ、ベネズエラその他の南米地域からも若干入れまして、三十二年度につきましては確実に入手ができるということでございます。
  139. 岡田宗司

    岡田宗司君 三十二年度は、そういうふうに確実に入手の目標がついておるのはけっこうでありますが、しかし、今後日本の経済の拡大発展に伴って、鉄の使用量もぐんぐん伸びていく。そういうことになって参りますると、ここらで鉄の原料がないということから、まあ今後の鉄鉱石の入手という問題が非常に重大な問題になってくる。きのう私、宇田経済企画庁長官にも、この点についての質問をしたのですが、その長期の入手を可能ならしめる方法ですね、これが今後重大な問題なんです、もちろん向うのものを買うということ、あるいは投資をして共同で開発するというような方法もとられるでありましょう。そういう方法もけっこうですが、なお、これらの地域以外にも、鉄材、鉄鉱石を求める所が必要なんじゃないかということで御質問いたしましたところが、宇田長官は、海南島ですね、海南島を非常に重視しているけれども、今中国の関係がああいうふうだから、今はだめだけれども、しかしこの関係を打開して、そうして海南島における鉄鉱石の——海南島からの鉄鉱石の供給をできるだけ確保したい、こういうようなことを言っておられたのです。これは今得ている地域と違いまして、中国の領土ですから、なかなか国交回復の関係とか、あるいは貿易協定等の問題から、すぐには役に立たぬけれども、将来考えなければならぬ、日本の基礎産業の原料の入手の問題と関連しての、中国との国交回復ということが重大な問題になってくるのですが、この海南島の鉄鉱石の問題は、今すぐには問題にならぬですけれども、将来大きな問題になるものとしてみて、この点について水田大臣も、宇田さんと同じように、これは重要視すべき問題である。そしてまたこのために日本と中国との貿易というようなことを、もっと国交の正常化の方へ進むことが必要だというようなことを、お考えになっておりますか。
  140. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日本の市場としては、これは鉄鉱石はなるたけ近場から買いたいのですから、そういう希望を十分に持っておりますが、従来はむずかしくて、中国から鉄鉱石か買うことはできませんでしたが、今町大阪を中心とした向うへ視察に行き申した人たちの報告を聞きますというと、直接聞いておりませんが、日本が長期計画をしてくれるなら、向うの開発も長期計画をもってできるので、そういうことを日本とぜひしたいという希望があったというふうな報道も聞いておりますが、そうだとすると、私どももそういう方向へもっと積極的に進んでいきたいと考えております。
  141. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、これはインドネシアとか、それからアルゼンチンとか、あるいは韓国とかというような、例の焦げついている所ですが、あの問題はどういうふうに、今後これは貿易の面にも影響がある問題ですが、どういうふうにしていかれるつもりですか。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この日本で輸出すればするほど焦げつきになるということから、まず向うから輸入したという実績によって、そうして輸出させるという、いわゆる輸出権というものを与えるというやり方で来ましたために、向うにとっては、日本が買ってくれる範囲でしか向うも買わなくていいのですからして、今の程度のところへとめて、実際からいうと貿易の縮小になりますが、そういう形でやりたい。だから、従来の契約は打ち切りたいという申し入れが来たということでございますが、これは輸出権というふうなものでやることがいいか悪いかということは、こちらの方にも問題がございまして、こうすれば結局縮小貿易になるよりほか仕方がないというので、この解決策は私どもは考究中でございましたが、向う側からそういう申し入れが来たという状態になっておりますので、これについての対処の仕方は、これから私どもは検討したいと思っております。
  143. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは非常にむずかしい問題だと思うのですけれども、しかし、今のままでいけばだんだん縮小するだけで、あるいはインドネシアのごときは、これはまあ日本にも近い方であるし、政情の不安や、手持ち外貨が少いことや、いろいろ障害があるけれども、将来の市場としては重大な所だ。賠償の解決ももちろんしなければならぬでしょうけれども、とにかくさしあたりのところの通商関係についても縮小するようなことであってはならないので、これは何らかの方法で打開をしていかなければならないと思いますが、特にインドネシアについては、戦争前にも相当大きな市場であったのですから、これは重要な問題でございますので、これは努力をお願いしたいと、こう思うのであります。  それから、これは貿易と直接関係がないかもしれませんが、海外投資の問題、さっき鉄のお話が出たので、ついでですが、ブラジルのミナスの製鉄所の問題、あれは計画だけはできた、ところが、何かむずかしいことで作らないようなことなんですが、その難点はどこにあるか。
  144. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 昨年私ども調査団といたしまして現地へ参りまして、ミナス州内に五十万トンの製鉄所を作るということで、先方と相当具体的に話し合いをいたしました。この間に特にむずかしい問題はないわけでございます。問題は、日本側においてこれに投資をいたすわけでございます。投資の方式について若干、法律上または貸付の運用上について若干問題が残っているので、それが片づきますれば、政府といたしましては、民間側の考え方も固まっておりますので、進行できると考えております。
  145. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、単にそのミナス製鉄所の問題だけじゃない。今後まあ海外投資を必要とするような場合に起る問題は、いろいろあるのですが、輸出入銀行との関係といいますか、その輸出入銀行の法律の改正を必要とするのですか。話し合いで何とかいくものか、法律の改正を必要とするのか、法律の改正を必要とすればどの点を改正の必要があるのか。
  146. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この海外投資促進をいたしますためには、現在の輸出入銀行法をかなり改正する必要があるのであります。で、前々からわれわれ事務当局といたしましては、改正点につきまして話し合いをいたしまして、およそ両方意見が一致をしているのでありますが、率直に申しまして、この輸出入銀行が日本の投資会社の株を持つかどか、いうわゆる直接出資という言葉で表現をいたしております。直接出資をするかどうかということにつきまして、意見がまだ調整をできておらぬということでありまして、先ほど大堀次長が申しました点も、その一点を残しましてはおおむね両者の意見が一致しておるわけであります。で、その点につきましては、まあ首脳部に御折衝をお願いをしているというのが率直な段階でございます。
  147. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいま岡田委員も法律のことに触れられましたが、この鉄鋼需給に関する通産大臣としての御所見はいかがなものでございますか。現在の鉄鋼需給の状況はまことに窮屈な状態であると思うのですが、これに対する御所見、対策等、御高見を一つ承わりたい。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年需給の逼迫を起したことは事実でございますが、いろいろな措置によりまして、大体昨年も切り抜けをやって参りましたが、本年は国内で八十万トンくらいの鉄の増産をやり、さっき通商局長から説明しましたように、不足と思われる部分の鋼材を百十万トンも輸入する、こういう方針を立てておりますので、これによって大体本年度の需給の円滑化ははかれるであろう、こう考えております。
  149. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、来年度も同様、ますます輸入しなければならない鉄鋼が多くなっていくと思われるのでありますが、そういう方面に対してはさらにお考えがなくて、ただ急場しのぎのために一時入れればいいというふうにお考えになっていらっしゃるのですか、どうなのですか。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 鉄鋼につきましては、大体これからの需要増に対する増産計画というものができておりまして、この計画に従ってやっていきますので、年々輸入がふえるというようなことにはなっておりません。
  151. 海野三朗

    ○海野三朗君 増産計画と申しますと、どういう増産計画になっておるのでありましょうか。
  152. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 昨年、三十一年度のインゴットに関しまして、総鉄量の生産は一千百六十万トンでございます。本年度、三十二年度につきましては、溶鉱炉が二本、本年の初めに一基入りまして、さらに年度途中に一基増設になりますので、銑鉄が八十万トン程度増産になります。銑源といたしましては、国内で増産になります銑鉄が八十万トン、原料面から参りますと、さらにスクラップの問題といたしまして、これは実は一昨年あたりでございますと、百万トン程度の輸入でございましたので、昨年アメリカからも二百万トン買っております。来年度はさらに二割程度予定いたしたい、かように考えております。スクラップの輸入が約三百万トンになり、東南アジアその他を合せまして、ほぼ、現在の状況から参りますれば、何とか確保できるのではないかと考えております。それにあわせまして、三十二年度といたしましては、スチール・インゴットの生産は千二百九十二万トンとこういうことで、国内で約一割二分程度の増産をいたします。これによりまして国内における生産をふやしますと同時に、私ども需給の想定からいたしまして、需要が、昨年度は一月以来十二月まで非常に機械その他の需要が上昇いたしまして、四割、五割という生産指数の伸びを示しておりますが、本年度はそういった急カーブな上昇はないということでございますが、昨年度はそういう急カーブな上昇をしておりますので、その高いところで相当横ばいといいますか、多少上ると思いますけれども、そういう想定で考えてみまして、なお若干不足をいたしますので、鋼材を百十万トンばかり年間を通じて輸入をする、こういう考えでおります。昨年度、三十一年度には鋼材が四十五万トンばかり輸入ができたのでありますが、国際情勢が非常にむずかしい状態でございましたので、入手に非常に骨が折れました。本年度は、先ほどお話ございましたように、ヨーロッパは多少ゆるんでおります。アメリカの市場も多少ゆるんでおりますので、入手の点については昨年度よりも楽にできるのではないか。同時に、輸入関税につきましても、ただいま国会で御審議をいただいておりますが、近く法律が通りますれば、需給が逼迫した品種につきましては関税を免除いたしまして、さらに輸入をしやすくできる、かように考えております。昨年は非常な時期的なアンバランスがございまして、途中で非常に価格が高騰いたしましたが、その後だんだん市中価格も下向いておりますので、私どもといたしましては、この方策によって三十二年度はもう少し市場価格を安定するような方向に持っていけるものではないか、かように考えております。
  153. 海野三朗

    ○海野三朗君 昨年の急カーブの上昇が緩和したというのは、鉄鋼を輸入されたからでありまして、それが人心に非常に影響して、価格が幾らか安定した。それでもまだ、今日やみ値と建値との間には相当な開きのあることは、御承知の通りであります。で、通産省としては、この鉄鋼政策の根本が、私はどうも確たるお見通しがあるのかないのかというふうに非常に疑われるのでありますが、高くなったからちょっと輸入をしようというような一時的な弥縫策では、私は非常に危ないものである、こう思うのでありますが、そういうことに対しては、どうしても日本といたしましては、重工業の根本政策を確立していかなければならないんじゃないか、こんなふうに思うのでありますが、大臣はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。これがすべての産業に及ぶのであります。
  154. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 同感でございます。
  155. 海野三朗

    ○海野三朗君 そこで、私はもう一つ伺いたいのは、溶鉱炉一本ぐらい建てていくのは、ほんとうに弥縫策にすぎないであろうと思うのですが、もう少し政府が力を入れて高炉をふやす、そうしてスクラップが要らないように持っていかなければならぬのじゃないかと思うんですが、重工業局ではどういうふうにこの鉄鋼政策についてお考えですか。
  156. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) ただいま御指摘がございましたように、私どもも、鉄鋼需要というものが年々上伸していくというふうに考えておりますので、それに対する根本的な対策といたしましては、やはり鉄源をふやしていくということが根本と考えております。従いまして、私どもの一番今日重点を置いております考え方は、溶鉱炉の建設を急ぐ、同時に、スクラップにあまりに依存した製鋼方式というものは、長期的に考えました場合に、行き詰まるおそれがございますので、同時に転炉を建設いたしまして、鉄鋼一貫で、しかもスクラップを使わないで鋼の生産をふやしていく、こういう考え方で進んでいくべきである、かように考えまして、ただいまは三十二年度たけで申し上げますが、三十三年度、三十四年度、三十五年度と、相当長期にわたりましての高炉の建設と同時に、転炉の建設並びにこれに必要な鉄鉱石の手配ということを、先ほど御指摘がございましたが、私どもはインドその他にも大きな商社がございますので、相当大きな山を手配しまして、鉱石に不自由を来たさないようにという考え方で、現在それぞれ努力をいたしておるところでございます。
  157. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉄鋼需要の状況、二十八年、二十九年、三十年、三十一年度の上昇の仕方はどんなふうでございますか、国内における需要状況は。
  158. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 御承知のように、一昨年あたりは実は非常に、鉄鋼需要と供給が、逆に供給過剰といいますか、需要が伴いませんので、一時鉄鋼を南米へ売らなければならぬというふうな事態がございましたのですが、これはまあ金融情勢その他の関係で、産業界がそういう事情にあったためだと思いますけれども、一昨年の中ごろから輸出船に対する注文が非常に伸びて参りまして、それをきっかけとして造船の契約がどんどんふえて、現在では三、四年の契約を持っております。それにあわせて、国内の生産設備拡張のための機械の需要がふえて参りました。それが昨年は一挙に現われてきたという形でありますので、昨年度のカーブは非常に急に出ておるわけでありますが、ならしてみますれば、やはり平均しますれば一割程度とか一割二、三分というカーブになるんじゃないかと考えておるのでございます。本年度は一割五分程度昨年に比べて上るという想定で考えておりますが、それから先は私どもは八%くらいのテンポでいくんじゃないかという想定のもとに、長期計画を考えております。この点につきましては、経済企画庁の全体の産業の見通しとの関係がございますので、なお検討中でございますけれども、そういう見方をいたしております。
  159. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉄鋼の建値とやみ値とのこの違いは、どういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。建値では決して手に入りません。みなそれぞれのやみ値があります。そのやみ値とは相当の開きがあるんです。これはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。これが国内における機械工業すべての方面に私は重大なる影響を持ってくると思うんですが、ただ鉄鋼を輸入したから事はそれでいいと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、決して建値では手に入っておりません。それはもう御承知だと思うのでありますが、それはいかがなものでありますか。それに対してはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  160. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 現在製鉄メーカーにも多数ございますので、いわゆる鉄鋼三社といっております八幡、冨士、日本鋼管、この大メーカーにつきましては、建値販売制になっておりまして、建値の決定の場合に、実際上これが相当に基礎産業でもございますし、一般の需要家に相当の影響があるということで、三社の方で、法律の根拠はございませんけれども、通産省に常時伺いを立てて、話し合いの上で実際上建値をきめていく、そういう運用になっておるのであります。一般のメーカーにつきましては、これはなかなかそういったことが実際上困難でございます。従いまして、需給が逼迫して参りました場合に、建値をきめております所は建値を厳守してとにかく売っておりますけれども、一般の市中に出まするものについては、やはり市中の需給関係のもとに、自主性相場でそれが売られてしまう、ことに販売関係の末端へ行きますほどそういった自主性で動いていく、こういうことに相なっておるわけでございまして、私どもとしましては、他の各社に対してもできるだけ三社の線に、コストが違いますから同じ価格でいくということは無理かと思いますけれども、なるべくそれに沿って協力してもらうように要請はいたしております。しかしながら、これは実行問題としてなかなか困難でございます。問題は、結局需給を緩和して、供給力をふやして自主性相場を下げていくという以外に方法はないんじゃないかと考えまして、現在私どもがやっております輸入政策なり何なりは、そういった考え方で、市中の自主性相場を下げるというために努力しておるわけであります。
  161. 海野三朗

    ○海野三朗君 今お話を伺って参りますと、それはその通りなんでありますが、たとえば八幡なり富士なり、あるいは日本鋼管なり、これが百トン要るからといって要求しても、実際は三十トンくらいしかもらえない。あるいは、はなはだしきはその二割くらいしかもらえない。ただし、それは建値で向うは出しておりますが、あとの八〇%というものは手に入らない。従って、大きい三社からもらうときにはその値段でありますけれども、横流しと申しますか、品物が足りないからして競争で買う。従って、ここにおそろしいやみ値が出てきておる。通産省としてはそういう実態をおつかみになっておると思うのでありますが、それに対しては、ただ溶鉱炉一本建てる計画だとか、何とかかんとか言っておっても、それはどろぼうを見てなわをなうのであって、あとからあとから行く形になるんじゃないかと思うんです。  それで、たとえば鋳物銑のようなものに対しましては、業者は、注文があるけれども、材料たる鋳物銑がないから作れないと言っているんです。で、五十トン要求しても、五トン入るか入らないかというので、その五トンはやはり建値で三社からもらうが、あと何ともしようがないから、ほかをあさるというと、やみ値でべらぼうに高いものを買わされるというのが現状なんでありまして、それは通産省の方がとくと御存じであると思うのでありますが、この状態は決して、日本の産業振興という立場から考えても、これはゆゆしき大事ではないかと思うのでありますが、これに対して来年足りるとかどうとかということでなしに、もう少し考えを進めていただかなければならないのじゃないかと、こう思うんですが、この点に対してはどうなんですか。現在はかなりそうなっております。すべてがもうやみ値です。建値で品物が入ろうと思ったら大間違い。どうなんですか。
  162. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 非常にむずかしい問題でございますが、やはり取引の実態から参りまして、従来からやはりメーカーから直接買っている場合、小口の人になりますとやはり問屋から買う、問屋も大きいのも小さいのもありますが、そういった取引の従来の形がございますので、一挙に八幡なり何なりの建値販売をしております所へ参りまして、これに一度もこういう今までに取引のない者は売ってくれと言うことも、実際問題として非常に困難かと思います。しかしながら、私どもといたしましては、市価も上っておりますので、小口の方で相当困っておられる方もありますので、昨年やっております制度は、プール機関というのを作りまして、各社から建値で入れ、同時に、そのプール機関に同額の鋼材を輸入しまして、低い値段、多少市中価格よりもだいぶ低い、建値よりは多少高くなりますが、その値段でそういった小口の需要家の求めに応ずるということで、このあっせんを現在いたしております。具体的には相当それによって、当面困っております場合において、救済の方法も考えております。同時に、輸出用につきましては、建値の引き上げにかかわらず、昨年の六月の建値によりまして輸出用鋼材は引き渡すという制度を確立いたしておりまして、これは各輸出用機械を作っております需要家に対して建値で渡す、昨年の六月の建値で渡す、こういう制度も併用いたしております。そういうことで、われわれといたしましてはできる限りの努力をしまして、そういった面の不平を少くするように努めておるわけでございます。根本的になりますと、なかなか実際問題として取引の歴史がありますので、一挙に理想通りに持って参るということは困難な状態でございます。
  163. 海野三朗

    ○海野三朗君 大メーカーと取引をやっておる所は幾らか手に入るのでありましょうが、つまり中小企業で、わずかの人数で鋳物をやっておる、それが、つまりガス・バーナーであるとか何とかいう小さい製品を作る人たちが、なかなかこれはもう手に入らない。こういう状態に対しては、どういうふうにお考えになっておりますか。これは川口にしても同じこと、また山口の鋳物業者にしても同じことです。これに対してはどういうふうにお考えになっていますか。あの三社がたくさん作って、そうして問屋に建値でおろしてやるのでありますから、大口の所は困らないのですが、小物がみな困っているのですよ。それはどういうふうにお考えになっているか、この辺の状態は……。
  164. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 鋳物銑につきましては、特に昨年来非常に問題がございましたので、私どもとしましては高炉メーカーに対しまして、全体の製鋼計画を作ります前に、鋳物銑については毎期鋳物銑用としての銑鉄の生産をきめまして、われわれの方で勧奨しまして、確定数量を鋳物銑用として出すという運営をやっております。それは昨年来、毎期鋳物銑の生産をふやして参っております。同時に、昨年来並行してやっておりますことは、古銑の輸入を鋳物業者に対して認めております。これが相当、いわゆる古銑の市中相場が非常に上っておりましたが、古銑の輸入を認めましてから、相当にその点が緩和されて参りました。同時に、新銑につきましても、鋳物業界に対して直接外貨の割当をいたしまして、新銑の輸入をやらしております。本年度は鋳物用の新銑の対する関税を引き下げることができますので、それによりますと、新銑の値段がかれこれ古銑よりも安くなります。従いまして、これによって相当その方面の入手は容易になるのではないか、かように考えておりますが、私ども十分事情を伺っておりまして、常時業界の、中小の方が多いものでありますから、皆さんに集まっていただいて、御相談しながら運営しておるわけです。できるだけの努力はいたしております。
  165. 海野三朗

    ○海野三朗君 今、需要と供給の割合がどうなっておりますか、鋳物銑に対しては。幾らの要求があり、それに幾らだけやられておりますか。
  166. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) ちょっとその数は、資料を持ち合せておりませんので、調べてから申し上げたいと思いますが、新銑としましては、かれこれ八十万トン程度でございます。
  167. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は、そういう方面に対して、どうも通産省が鉄鋼の国策に対してのはっきりした御研究が足らないと思われるのでありまして、これがあらゆる産業の基盤でありますから、この方面にもっと意を注がれなければならないのではないか。今お話を承わっておるというと、実際のところ、御存じないようです。実際は非常な、何といいますか、やみ値でございまして、これは小さい人たちの話を聞いているのですが、これが現状なんです。それですから、ただ通産省が、鉄鋼はどうだというようなことではなく、もし足らなければ外国から入れればいいじゃないかという一時的な方策ではいけないと思うのです。そういうことに対しては、もう重工業はあらゆる産業の基盤でありまするから、特に私は力を入れていただかなければならぬのではないかと思うのです。これに対しては、通産大臣はそうずっと前からおなりになっていたわけではありませんから、私がこうお責めするのも無理かしれませんが、大臣一つ御決意を私は伺っておきたい。
  168. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほど申しましたように、需給の逼迫という事態を起させないように、万全の措置をとりたいと存じております。
  169. 海野三朗

    ○海野三朗君 この鉄鋼需給安定に対する法案が、今国会に提出されるのでありますか。
  170. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 鉄鋼長期安定のために、ここで立法的な措置を考えたいということで、ただいま検討しておりますが、まだ政府部内においても完全に意見がまとまっておるというところまで行っていませんので、もう少し検討したいと思っております。
  171. 海野三朗

    ○海野三朗君 新聞の報ずるところによりますというと、なかなかこれには問題があって、八幡、富士、大きいところで、日本鋼管あたりの意見と食い違っておるということで、この法案に対しては吟味をされておるのだと思いまするが、この鉄鋼業者以外の学識経験者と申しますか、そういう人の意見もやはり徴されておるのでございますか。
  172. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 鉄を使う方の関連産業の意見も十分聞いております。
  173. 海野三朗

    ○海野三朗君 それから、先ほど岡田委員が貿易のことについて言われたのでありますが、昨日も私はちょっと宇田長官に申しておいたのでありますが、セイロンとの貿易関係が、向うにはつまり外貨がない、非常に片貿易になっておるという話でありますが、どのくらいの差になっておりますか。  それからもう一つは、セイロンの鉄鉱山についての調査を日本としてはなさなけりゃいかぬじゃないか。イギリス人がすでにセイロンの鉄鉱山を調査した報告が出ております。で、そうすれば、あすこは片貿易になるところのものを、鉄鉱石を日本で買い受けるというようなことにすれば、ゴアよりもはるかに近いし、片貿易を是正する点で私はいいんじゃないかと思うんですよ。そういう点に対しては、どういうお考えでございますか。
  174. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ、私、はっきり数字を記憶しておりませんが、日本から買うのは割合に、紅茶そのほかごくわずかでございまして、向うへ輸出する方が非常に多くなっておりますので、わが国からの輸出が大体二千万ドル程度で、輸入の方が二、三百万ドルということでございますから、千数百万ドルの日本側の出超ということになっております。で、セイロンとは比較的この経済提携がうまくいっているところでございまして、過去においても合弁会社その他の設立が幾つも行われて、その点は非常によくいっておりますが、今申しましたように、日本から買うものが少いということで、この貿易のアンバランスを改善するために、ただいま日本とセイロンとエジプトの間の三角貿易の問題が起っている。今相談をしておるというところでございます。  それと、もう一つは、昨日セイロンから工業大臣が日本に来られておりまして、私どもと会った結果によりますというと、さらに日本からいろいろの技術、資本を仰いで、もう一歩経済提携を進めたいと、そうしてそこで開発された物資を日本が買ってもらうということによって貿易の改善にお互いに尽したいという、きのうお話がございまして、私どもの方もそれは賛成だということになって、一、二の問題について今後両方で協議するということになっておりますが、その中にきのうは鉄鉱の問題は出て参りませんでしたが、過去においてそういう問題がどうなっておるか、局長から……。
  175. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) この鉄鉱石の話は、一般的には伺っておりますけれども、実はまだ日本側として具体的に調査したことはございません。十分研究をいたしてみたいと思っております。
  176. 海野三朗

    ○海野三朗君 イギリス人が前に調べております鉄鉱山が、相当ございます。で、それを日本から行ってやはり調べてみなけりゃならないんじゃないか。で、私はセイロンのフォン・セカ大使にもこれを話しましたところが、専門家に来て見てくれと言うんです。向うではあまりその鉄鉱石なんというものには関心なかったらしいんです。しかし、イギリス人のレポートを見ますと、相当の鉱山があるのです。地質学上から考えますと、ゴアあたりの鉄鉱石に似ておるのじゃないかと私は思うのですが、で、将来こういう方面にも、通産省がやはりよく調査をなさる必要があるのではないか。単なる民間のスポット買いをやるのに対して、外貨を割り当てておられるということでなしに、やはり通産省みずから一つ筋金をお入れなさらなければならないのじゃないか、こんなふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  177. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) お説の通りでございまして、私どもも、鉄鉱石は、今後の方向としましては、やはり鉱山の開発からこちらが入っていかなければならない。そうして安定ソースとして、量的にも価格的にも安定したソースとして確保していくということが、根本の考え方だと考えます。そういう方向で努力いたしたいと思います。
  178. 海野三朗

    ○海野三朗君 それに対して、工業技術院長はいかにお考えになりますか。
  179. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) 鉄鋼の問題につきましては、ただいまるる御説明がございましたように、わが国のあらゆる工業のもとの一つになる重要なものでございますので、なお入手につきましてはもとより、その製鋼方法あるいは製鉄方法につきましても、今後新しい技術を勘案いたしまして、わが国に適するような方向に、より適するような方向に研究を進めて、そうしてそれを実用化していきたいというふうに考えております。
  180. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは、私は石炭のことをお伺いしたい。石炭の合理化法案、この前通りましたが、その後の実施状況はどんなふうでございますか。
  181. 讚岐喜八

    政府委員(讚岐喜八君) お答えいたします。石炭合理化法案ができまして、まず合理化基本計画が定められたわけでございます。で、その基本計画が、昭和三十四年度におきまして生産目標四千九百五十万トン、生産能率十八・四トン、平均生産費を三千二百三十円、それから石炭鉱業整備事業団で買い上げまする非能率炭鉱の能力は三百万トンと見まして、なおその買収の基準といたしまして、これは能率と品位の相乗積の基準を設けてあるのですか、その基準の六〇形以下のものにすると、こういうことでございます。なお、その他合理化工事といたしまして、縦坑の開さく工事、一般合理化工事、その目標が定められたわけでございます。それで、今日まで、三十年度及び、二十一年度が今まさに終ろうとしておるわけでございますが、その実績といたしまして、三十年度におきましては生産目標を四千三百万トン、能率を十二・五トン、それから平均生産費で三千九百五十八円、買収の炭鉱が四十万トン、こういうように見られたわけでございますが、実績といたしましては、生産で四千二百五十一万五千でございまして、能率がほぼ十三・五トンということで、平均生産費が三千九百五十八円になっております。それから買収炭鉱は、これは炭鉱整備事業団が店開きをすることができましたのが十一月になりましたので、申し込みとしては相当ございましたが、実際買上げを完了したものは一トンもございませんでした。次に、三十一年度に入るわけでございます。  三十一年度は、生産目標を当初四千六百三十万トンとふみまして、能率を十四・五トン、買い上げ炭鉱を百六十万トン、かようにきめております。しかしながら、その後一般産業の伸長によりまして、石炭の需要が非常に増加いたしましたので、昨年十一月に計画を変更いたしまして、出炭を四千八百万トン、能率は同様十四・五トンといたしまして、平均生産費は三千八百六十一円ということになっております。それから買い上げの実績でございますが、今日まで、ちょっと今手元に詳しい資料を持っておりませんが、申し込みの件数といたしまして九十三件、生産能力にいたしまして約百六十万トン、これは当初計画通りでございます。このうち買い上げの完了いたしますのは、年度内に約五、六十万トンになるかと思います。これは買い上げの評価なり、その他準備がおくれまして、来年度に持ち越されるわけでございます。  大体以上のような経過になっております。
  182. 海野三朗

    ○海野三朗君 今の九十三件のうち、炭鉱幾つぐらい今日まで買収いたしましたか。
  183. 讚岐喜八

    政府委員(讚岐喜八君) 大体件数にいたしまして約四十件、能力にいたしまして約六十万トンだと思いました。この点につきましては、後ほど詳しい資料で申し上げたいと思います。
  184. 海野三朗

    ○海野三朗君 これは最近になって、つまり石炭の値が少し出てきたというので、やはり買収されるものも数が相当減っておるのじゃないかと思いますが、この辺はいかがでありますか。
  185. 讚岐喜八

    政府委員(讚岐喜八君) お話の通り、私どもだんだん環境の回復に伴いまして申し込み炭鉱の数が減るのじゃないかと、かように考えておりましたが、最近までの実績で申しますと、毎月大体四件ないし五件、能力にいたしまして大体四万トンないし五万トンの申し込みが着実に毎月ございます。さようなことで、当初のわれわれの予想よりは、はるかに堅実な足取りで申し込みが行われている、こういうことでございます。
  186. 海野三朗

    ○海野三朗君 この買収した炭鉱は、つまり廃鉱にするわけでありますか、どうでありますか。
  187. 讚岐喜八

    政府委員(讚岐喜八君) 一応石炭鉱業整備事業団が買い上げまして、買いつぶすということにいたしております。しかし将来の問題としては、あるいはそれについて何らか考えなきゃならぬことがあると存じますが、一応買いつぶすことにいたしております。
  188. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は、その点につきましても通産省がもう少し、石炭合理化法案のときは、まあわれわれがこれを審議したのでありますが、石炭というものを燃料に使うということ以外に使うように仕向けていかなければならないのじゃないか、そういう意味を持っておってこそ、通産省の研究所の存在の意義が明らかになるわけであって、こういう石炭が困ったといって、今度は合理化法案を出した。出してみたが、今度は少し景気が出てきたら、買収する所は少くなったというような、朝三暮四のあり方ではいけないのじゃないか。私はもう少し遠い将来に目をすえて、そうしてこの石炭産業というものを通産省が指導していかなければならないのじゃないか、こんなふうに思うのでありますが、この合理化法案、つまり買収の案はいつまでお続けになるお考えでありますか。
  189. 讚岐喜八

    政府委員(讚岐喜八君) 非能率炭鉱の買い上げ計画、大体三年間に三百万トンと計画いたしております。従いまして、昭和三十二年度中に買い上げを終るわけでございます。
  190. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは次に、発明、特許のことについてお伺いしたい。先ほど私が大臣にお伺いいたしましたところが、大臣の御意思は、中小企業方面研究とか進歩、そういう方面だけに限っておるように考えられる御答弁でありましたが、先ほど私が申しましたように、それがやがてすぐ企業化するばかりか、実際企業化するところまで行っておるような発明とか研究とか、そういうものに対しては、通産省はどういうふうな態度でいらっしゃるのでありますか。そこをはっきり私お伺いいたしたい。
  191. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) 国の研究の結果の完成したもの、あるいはまた民間の研究の完成したもの、それぞれの場合によって多少違いがございますけれども、でき得る限りこれを実用化するということにつきまして、国の試験所における成果につきましては、あらゆる広報機関、あるいは工業技術院にございます工業技術協議会、こういうような協議会を通じまして、この協議会は民間の方あるいはまた全国の方々より成っておるのでございますが、こういうようなものを通じまして、できる限り産業界に取り入れていただきたいというように、方法的に御協議申し上げております。それから民間の研究機関につきましては、特にそれが新しい技術であって、しかも相当企業化には資金も必要であるというような場合につきましては、開銀の融資のあっせんというようなことをいたしまして、できるかぎりその実現方に努力しております。
  192. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういうことについては、工業技術院としては、内地の各研究所をやはりときどきお回りになりますか。
  193. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) 大体都道府県に公立の試験所が約二百ほどございますけれども、この試験所のいろいろの研究分野、たとえば機械、化学、窯業、繊維というような部類に分けまして、年に一回なり二回、それぞれの部門におきまして中央に集まりまして、相互技術の連絡をやるというような連絡会議を開いております。それと同時に、それぞれの分担に近い研究をやっております、たとえば機械に非常に重点を置いておる試験所がございますと、それに工業技術院の機械試験所の所長ないしはその従業員が行って、連絡を密にしておる。それから私も機会あるごとに参りまして、できる限りいろいろな事情を聞き、またその地方的ないろいろ産業の育成に努力してもらうように、努力いたしておる次第でございます。
  194. 海野三朗

    ○海野三朗君 地方の通産局にはそういうふうな方面を視察する人が行っていないのですか、どうなんですか。通産局は……。
  195. 黒川眞武

    政府委員(黒川眞武君) 通産局には技術課というのがございまして、大体一般の民間のそういう技術につきましての御相談、あるいはまた標準熱管理というようなことに特に重要な指導をしておりますが、一般の研究ということにつきましては、ややその技術が欠けておりますので、技術相談室というようなところを設けておりまして、技術相談をやりまして、そこで担当官が回答できるものはお答えすることになっております。もしもこれで回答できない場合には、工業技術院の方へ問い合せて参りまして、それぞれの分担の試験所で調べましてお答えすることになっております。
  196. 海野三朗

    ○海野三朗君 通産大臣にお伺いいたしたいのでありますが、通産省では今、課というものは百二十二ほどありますが、このうちの課長というものは、技術出身の者が約十人ぐらいしかいないのです。そういうふうなあり方では、通商産業政策というものは半身不随にならざるを得ないのではないかごいうふうに、私は非常に憂うるものでありますが、百二十二のうち十きり技術者の課長がおりません。あとは全部事務官です。これに対してはどういうふうに大臣はお考えになっておりますか。私は前々国会におきましても、このことについては、石橋通産大臣にもやかましくこれを主張した。また経審長官にも言い、官房長官にもそう言ったのでありますが、どれだけ改良されておりますか。当時は官房長の岩武君かいて、るる説明の任に当りましたが、のど元過ぎれば熱さを忘れるで、何ら変ってきたところがないように思う。  ことに、この技術官の待遇というものは、今度の公務員給与法とも関連をしておるのでありますが、事務官の方が昇進がずっと早い。技術者の万はおそい。そういうふうなカムフラージュが今度の公務員給与法の中に含まれておるので、これに対しては現行法によっただけでも、大学を出た法経の学士と技術出身者とは、平均四千五百円の差がはっきり出ておる。十五年たてば一万円の差が出ておる。二十年たてば一万三千円ほどの差が出ている。こういうふうなことはよくお調べになっていらっしゃるのでありますか、私はこれは大臣にお伺いいたしたい。こういうことが日本の通商産業のふるわざる根本であると私は思うのでありますが、これに対しての御所見を承わりたい。
  197. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先般予算委員会で同様の御質問がでございましたときお答えした通りでございまして、技術官の待遇が特に不利になるというような差別的なことはやらないという方針で運営しておりますし、また課に技術官の課長が少いというお話でございましたが、先般説明しましたように、この点もだんだんに改善されておるのだという官房長からこの間お答えがありました通りでございまして、今後ともそういう方向で留意していきたいと思っております。
  198. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは、一昨年の国会から、私は口をやかましくして申しておるのでありますが、現行体系によりますと、十年後においては四千五百円の差がある。ところが、改正体系によると、五千円も差がついてしまうのです。こういうようなことがカムフラージュされておりますので、あの公務員給与体系というものは古今未曾有の愚案だと私は思うのですよ。実際当てはめてみればわかるので、これをそういうふうに区別しないようにやるとおっしゃるけれども、あのことは何とか一つ考慮を願わなければならないと私は思うのです。もっとも本省におる技術官もいけないのでありましょう。しかしながら、一方から考えると、技術官で入った者はほとんど局長にはなれないという不文律がある。こういうふうな差別待遇をして今日まで至ったのが政府のあり方であると、私は思う。この差別待遇を撤廃する必要がある。ことに科学技術庁ができて科学技術の振興を叫ばれておる今日、この差別待遇を改めなければ、根本から私はだめだと思うのです。この点に対しては、水田通産大臣のほんとうのお気持をお伺いいたしたい。  私は単に野党だからこういうことを申し上げるのじゃないのですよ。私はそんなけちなことを考えておるのじゃない。科学技術の振興をはからなければならない今日、過去何十年という間、技術官と事務官とははなはだしい差がある。これを改めないうちは、幾ら科学技術振興でもって太鼓をたたいても、私はほんとうはいかぬと思うのでありますから、この点に対しては、特に大臣には力を入れていただかなければならないと思うのでありますが、もう一度大臣の御所見を伺っておきたい。
  199. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 同感でございます。
  200. 海野三朗

    ○海野三朗君 発明特許のことについてでありますが、特許庁につきましてはやはり技術官が待遇されていない。それですから、失礼ながら、特許審査会の人たちは、ある意味において非常に萎縮しておるように思う。従って、仕事に熱意が乗ってこない。この特許庁に対するお考えはどうなんですか。官房長一つお伺いいたしたい。あなたは人事の方をいろいろ大臣と一緒になってやっておられるのでありましょうが、どうなんですか。
  201. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 御承知のように、特許庁の仕事の内容といたしましては、技術関係の仕事が多いことに伴いまして、当然審査官審判官、その他、その方の仕事はほとんど全部が技術官で埋められておることは、御承知の通りでございます。従いまして、その方の審査の関係その他の部長なり何なりは、当然技術官で埋められておることは御承知の通りであります。あるいは海野先生の御質問のところは、歴代の長官の中で技術官が何人おったかというようなところにあるのかと思いますけれども、これはそのときどきの適材適所ということで、そのときの人事の都合でやっておるのであります。特許庁の技術の仕事関係の要所々々は申すまでもなく、技術官が大部分を占めてやっておる、こういうふうに考えております。
  202. 海野三朗

    ○海野三朗君 今、官房長は適材適所と言われましたが、お役所に技術官が入れば、課長になったらもう鬼の首を取ったようなものであって、どうせ課長にはなれない、局長にはもちろんなれないということで、足元の明るいうちにみなほかへ行ってしまうのです。従って、残っておる技術者というものは劣っておるのも、これはまたやむを得ないことであると思いますが、適材を適所とおっしゃる前に、私はそういうことを念頭に置いていかれなければならないのじゃないかと思います。それで私は、官房で人事のことをやるときには、技術官の者を入れて、相談の上でおやりになるようにやったらいかがなものですか。
  203. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 先ほど申しました適材適所という意味のうちには、御承知のように、技術の関係の方にはそれぞれはっきりした専門がございまして、従いまして、それぞれの専門と違うところにそうむやみに配置がえをするわけには参らないような事情が当然伴うと思います。そういう関係で、技術関係のそれぞれの専門の人を適所ということで人を配置しまするには、普通の一般の事務系統の者よりもやや窮屈な感はございますけれども、そういう意味で、技術関係の人の人員の配置等につきましては、もちろんそれぞれの技術関係の専門の人を配置して配慮いたしまして、それももちろん事務系統の者だけが技術関係の人事をやっておるわけではありません。たとえて申しますれば、技術院におきましては院長の技術的な判断を当然伴いまして、技術院の内部だけじゃなくして、技術官の全体の配置についても、従来とも十分御意見を伺い、御相談しながら人事の配置を進めておるつもりであります。
  204. 海野三朗

    ○海野三朗君 今あなたがおっしゃいましたのは、技術者はどこにも利用できるとは限らないというお話、それもそうでありましょうが、それならば、事務専門に出てきた者が技術の方に関する課長というものをやったり、局長をやるということは、なおおかしいじゃないですか。それを伺いたい。そこに私はあなた方のお考えの正しからざるところがあると思いますから。必ずしも技術者は技術以外に使えないのだ、こういうようなお考えはなくしていかなければならぬと思うのですが、どうですか。  たとえば鉱山局長にしても、事務官です。石炭局長にしても……。失礼ながら、それですから石炭のことに関しても、朝三暮四の政策をとっておる。あるいは鉄鋼にしてもそうです。鉄鋼にしても、数年前からわかっていたはずです。鋳物銑鉄が足らなくなることは、どの方向を見てもわかる、増加しつつある、現状は。ただ机の上だけでおやりになるから、そうなるのです。ただ事務を片づけさえすればいいのだという簡単なお考えであるということが、根本的な誤まりであると思います。鉄鋼鉄鋼に関して、その方面の技術者にしても相当なものがおると私は思いますが、それを加味した政治をやらなければいけないんじゃないか、こう思うのです。今日通産省が、私が申し上げますならば、一番悪い。通産省が一番つまらないと思います。建設省なり、ほかの厚生省なり、その方面に比べて。なぜかというと、技術者をできるだけ圧迫している。こういう状況では、私はさっき伺った鉄鋼の政策についても、石炭の行政についても、あるいは機械工業、ミシンにしても、まるでなっていないということは、私はまだ申し上げてもいいのだけれども、私は、そういうことに対してはもう少し日本の通商産業というものは働いてもらわなければならない。重要なるキイを握っておると考えるのでありますから、官房長の考えなどについても私はどうかと思う。もう少し考えていただかなければならないと思いますが、あなたはいかようにお考えでありますか。やはり以前のごとく、官房長は文官を通ってきた者でずっと一貫しておる。それだけで、ほかの者は決してはいれられないようなんです。そういうふうに考えているからだめです。旧套を脱することができないんじゃないかと私は思いますが、その点に対してはどうなんですか。
  205. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) ただいまお話のございました点は、主として本省関係を中心にお話があったんじゃないかと思いますが、御承知のように、今たとえの例としておあげいただきました鉄なら鉄と申しますと、本省では重工業局でやるのでありますが、かような重工業全体の政策についての問題には、技術の問題が伴うことは当然でございます。しかし、これを必ずしも重工業局がその全部をやっておるわけではございませんで、御承知のように、別に工業技術院という所では、技術院におきましてその方の技術もあわせて技術関係全体の研究をやっておるわけであります。本省には、御承知のように、全体で約二千数百名の人員を擁しておりますが、工業技術院は、その傘下の試験所を合せまして、約四千人の人員を擁しておるわけであります。この方の関係には、先ほど来申しておりますように、院長以下その大部分が、技術者が、その試験研究なり、その統括なり、各部長なりを占めておるわけでございまして、その方の面から技術的な協力はやはり重工業局に対してもやっておるわけであります。たまたま本省というような、こういう機構になっておりますので、いかにも重工業局には技術関係の問題が入っていないように、まあお考えいただかない方がいいのではないかと思います。  あまり議論にわたって恐縮ですが、いい例かどうかわかりませんが、たとえば本省におきましても、鉱山保安の関係におきましては、これは鉱山保安法規の運用を主とする局であります。しかし、法規の運用を主とするのでありますが、相当技術的な問題が多いという意味で、現在では鉱山保安の局長は技術官をもって運用しておるというような状況であります。
  206. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは千中有一でありましょう。鉱山保安くらいのものですよ、ほかにありますか。
  207. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 今のはたまたま本省の例だけをとって、確かに本省では鉱山保安局長だけが技術官でございますが、本省におきましても、もちろん課長にある程度の技術官は配置してございます。しかし技術関係の中心である工業技術院、あるいは特許庁その他の関係におきましては、ほとんど全部が技術官でその運用をされておる、こういう状況でございますので、本省だけが通産行政をやっておるわけでございませんので、それらの外局ともあわせて通産省の行政は動いておる、こういうふうにお考え願いたいと思うのであります。
  208. 海野三朗

    ○海野三朗君 私がお尋ねしたいのは、通産省が技術出身の者は局長になれない、戦争中たまたま一人あったかもしれませんけれども局長にはしないんだというところの不文律がございましょう。これはどうしたのですか。局長には技術官はしないんだ、それはどうなんですか。
  209. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 最高人事の問題でございますので、一官房長がお答えしていいかどうかわかりませんが、そのような不文律は、私、従来人事を担当して、まだ耳にしたことはないようでございます。
  210. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは大臣一つそれをお伺いしたい。通産省においては課長にさえもなれない。課長は百四あって、たった十人そこそこしか技術官は課長になれない。局長には絶対なれないんだ、こういうふうな不文律があるのでありますが、これを大臣はいかようにお考えになっておりますか。
  211. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう不文律は、おそらく私はないと思っております。
  212. 海野三朗

    ○海野三朗君 不文律がないのであるとおっしゃれば、それはまあその通り承わっておきますが、しかし、実際今日までそうなんですよ。なぜそういうことはしないのでしょうか。たとえば石炭にしてもそうだ。重工業にしてもそうです。あるいは鉱山局にしてもそうです。どうもそういうところ、そういう不文律はないと言いながらも、こういうふうにゆがめられたるあり方には、どうも私は納得できないのでありますが、これは大臣はこれで納得していらっしゃいますか。百四の課があって、技術の仕事を担当しておるのである。建設行政なんであります、通産というものは。それをたった十人しか課長がいない、技術者出身が。これはどうも私は不健全なるあり方ではないかと思うのでありますが、通産大臣はいかようにお考えになっていらっしゃいますか、一つ御所見を承わりたい。この前、通産大臣の石橋さんも、これは正しくないから考えるということをおっしゃった。速記録を読んでみればわかります。それから根本官房長官もそうだった。それから経審長官にもこれは言った。あのときの速記録を読んでいただけばわかりますが、通産大臣はいかようにお考えなっていらっしゃいますか、一つ御所見をお伺いいたします。
  213. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今のお話は本省の構成についてだと思いますが、さっき官房長が話したようなことで、通産省全体としてそういうふうになっているわけではございませんし、本省においても適材適所主義でこの部署の配置が行われておりますので、たまたまそういうことになっておるかもしれませんが、それを意識的に不文律によってそうしているというものではないと思っておりますので、今後なるたけ御意見のような線に沿って運用していきたいと思っております。
  214. 海野三朗

    ○海野三朗君 このあり方をあなたが直視なすったときに、これは正しいあり方であるとお考えになっていらっしゃるのか。日本の通商産業の行政をつかさどっておる通産省において、百四の課がありながら、技術家の課長は十人そこそこである、こういうあり方自体が正しいあり方であろうかどうでありましょうかと私はお伺いするのです。それは外務省とは違いますよ。あるいは法務省あたりとは違いますよ。この方は、法経出身の方でしっかり固めておって差しつかえないのだ。しかし通産省としては、これではあり方は私は正しいとは思われないので、私が大臣の御所見を承わると言っているのはそこなんです。このあり方が正しいと見ていらっしゃるかどうか。
  215. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 技術者のこれは優遇の問題と職制の問題はまた別でございまして、技術者を優遇しなさいというようなことは、これはもちろんやりませんが、この部署の構成というものはやはり適材適所主義で私はあるべきだと思います。産業会社を見ましても、その会社のマネージメントが、鉄を作っている会社だから、鉄の専門家でなければ会社幹部は構成できないようなこともありませんので、全体を運営するための管理者として、あるいは行政官として、どういう人がその部署につくのが適任かというようなことで人事は行われておりますので、技術家であっても、技術家で使うよりもむしろ対外折衝をさせた方がよほど能力を発揮するだろうという人がありましたら、その部署へ技術者が来ることについてはちっとも差しつかえありませんが、この姿がいいとも悪いとも一がいにここで言い切れないので、要は、人事の運営において各役所が適材個所主義で、決して差別した人事はしないということで運用するより仕方がないだろうと考えております。
  216. 海野三朗

    ○海野三朗君 まことにりっぱな御答弁をなさいましたけれども、通産省に採用される事務官と技術官の割合はどんなふうになっておりますか、年々採用される……。
  217. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 年々によってもちろん異動はございますけれども、最近の例で申しますと、事務系統の関係は、いわゆる学校の新卒業としての意味では、事務系統が約二十人前後、技術系統がたしか七十人前後であったと思います。これは御承知のように、最近通産省の各試験所の拡充等の関係もございまして、本年度におきまして、本省等の事務系統の者を二十数人定員をさきまして、工業技術院を中心とする技術系統の方で定員をふやすような特別の措置を、本年度も来年度もとるようにいたしております。こういう関係がございまして、技術者を若干よけい採用するように本年度は採用いたしております。
  218. 海野三朗

    ○海野三朗君 それはほかの方の工業技術院とか、あるいは特許庁の者が入るから、七十人になるのでございましょう。本省に入れる事務系と技術系はどれくらいの比率になっておりますか。
  219. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 来年度採用いたします……。ただいま申しました人員の配置は、今度四月に現実に採用になるのでありますけれども、取りあえずは、ここ三、四カ月の間は、いわば教習の期間でございまして、現在取りあえず本省の各局に配置をいたしておりますけれども、その教習が終りましたならば、ほんとうの仕事につく各局に配置するわけでございます。おそらく、まあそのときの人員のやりくりでございますけれども、事務系統は比較的本省に多く、技術系統の人も、もちろん先ほど申しました七十何名の相当程度は、技術官として本省にも配置になると思いますけれども先ほども申しましたような来年度試験所の拡充等もございますので、たとえば試験所の方に技術員の方は余計配置をするということに相なると思います。
  220. 海野三朗

    ○海野三朗君 大臣は適材適所主義と言っておられましたが、まことにりっぱな御答弁でありましたけれども、適材適所主義とおっしゃるが、そうすると、技術家の方は役立たないのに、通産省は採用しているのでございますか。そういう結果になる。これ以上人材がないとおっしゃるならば、学校を出てきたものを、技術者を入れる場合には、くずばかり入れられておるのかどうですか。その点お伺いいたします。
  221. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 将来の幹部候補といいますか、通産省の仕事の中心になる人を毎年、新卒業者の中から採用するわけでございます。当然公務員試験を相当優秀な成績で合格された方の中から、さらに選考するようなことでございまして、まさかその中に初めからくずであるとかいうことを予定してやっているわけではないと思います。
  222. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは、通産省におる間に、そういうふうな差別がつくのですか。役に立つ事務官と、役に立たない技官とはどうなんですか。百四の課のうち十人きりしかないのです、技術官の課長は。どうひいき目に見ても、正しいあり方でないと思う。
  223. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 先ほど来繰り返して申し上げておると思いますが、今例としておあげになっておりますものは、本省関係だけでございます。本省におきまして各課の仕事の内容、またその内容に合致するような適材適所主義ということで参りますと、現在の状態が最もいい案であって、これ以外に絶対にほかに案がないということを主張するわけではございませんけれども、現状のところで、まずこの辺が一応の適材適所主義の配置になっておるのではないか、これは通産省の人事が全体に誤まっているということでこの問題を議論するわけに参らないのではないかと思います。一応現状が、決して差別待遇したということではなくて、適材適所主義で配置された状況であると思います。  これも先ほど来申し上げておりますように、技術関係の中心である工業技術院と特許庁の部局と合せて、通産省の人事行政が動いているということを、一諸に見ていただきませんと、本省だけであまり議論を進めていただきますと、かえってわれわれも説明に困るような状態になると思います。
  224. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは、私はもう一つ伺いますが、これは農林省とも関係がある問題でありますが、バナナの問題ですね。外貨割当の問題で、バナナが腐らないようにするために、愛媛県の農事試験場ですでに実験済みなんです。そこで愛媛県で試験をしてもらったその人が、今度は実際にこれを実行してみるからしてバナナの割当をくれということを通産省に願い出た。ところが、それはバナナは農林省の方にも関係があるので、農林の方の一つ許可を得たらどうかということで、農林省の方に持っていった。ところが、愛媛県の農事試験場でやったその結果をちゃんと添えて出しておる科学的研究を、少しも理解せざる態度を通産省は示している。農林省もまたそうである。少しでもいいということになれば、少しくらいは犠牲に供してでも、この科学研究に重きを置いておる、その人の仕事を助けてやるのが、ほんとうじゃないかと思うのです。ところが、研究に理解がない。これは一つの例ですよ。どうでございますか、このバナナの割当については、通商局長、御存じありませんか。
  225. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 最近非常に有効なバナナの腐りをとめる薬が発見されたということは、まだ私は聞いておりません。が、私前に通商局の次長をやっておりましたときにも、数回そういう企てがあって、試験輸入を認めたことがございます。それも今先生御指摘の人かどうかは私はわかりませんが、何しろ四国の某青果物の業者であると思います。ところが、そのときは完全に失敗をいたしたのでありますが、もうかれこれ二、三年たっておりますので、あるいはそういう新しい薬なりあるいはそういうような方法が発見されたかもしれませんが、まだ私は具体的に聞いてはおりません。もしそういう有効な方法があるならば、聞きまして、研究をいたしたいと思っております。決して故意にそういう研究を無視し、また輸入をさせないというつもりは、毫もないわけでございます。
  226. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日中貿易を中心にして二、三お聞きしたいと思いますが、すわったまま御質問いたしますから、どうぞお答えになる方もすわったままで答えていただきたい。  まず第一点、大臣にお尋ねしたいのですが、中共貿易に対してアメリカがどういう態度、気持を持っておるかということ、特にバミューダ会談でマクミラン首相とアイゼンハワー、あるいは両国外務大臣の間で、この問題がどういうふうに扱われたか、その結果がどういうことになったと大臣の方では推測しておられるか。それからその後アメリカの態度はどういうふうに変りつつあるか、そこいらをどういうふうに見ておられるか、その辺を一つ
  227. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私はまだバミューダ会談のそういう結果について、外務省方面から正式なお話をまだ現在のところ、一切開いておりません。
  228. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 われわれが新聞で承知しているところによると、この会談でマクミラン首相は、相当強くこの対中国との貿易制限緩和の問題を要求したようですが、その後発表された共同コミュニケによると、これは必ずしもイギリスの要求をいれられなかったというような形でのコミュニケになっておる。従って、この点はイギリスとしては失敗だったというふうに報ぜられておるようでありますが、それにもかかわらず、コミュニケのときはそうだったが、コミュユニケを出したあと、特に最近においては、どうもアメリカの方の態度が相当変ってきて、この緩和に対して相当考えなければならないのではないかというふうな空気になってきておるというようなふうに、私たちは見ているのですが、この最近のアメリカの空気なり動き、そういう点をどういうふうにお考えになりますか。
  229. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) アメリカがココム関係国に対していろいろ個々の意見を聴取したという事実はございますし、それについて各国もそれぞれ、自分の国はこう考えるというようないろいろな意見がアメリカへ行われておるということも事実だと思いますので、そういう各国の意見というようなものをもとにして、アメリカがこの問題についていろいろの検討をしておることも大体事実ではないか、ただいまそういう検討中の段階ではないかと、私は考えております。
  230. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 一、二カ月前は、その点に対して、むしろ制限を強化するということは、例の中東のアイゼンハワー・ドクトリンの実施に関連をして、むしろチンコムの制限を緩和するというような方向に進めるらしいという報道があり、それに関連して各国政府にいろいろな意向を聞いていたと思うのですがね。しかし、これは一、二カ月前の問題で、どうもバミューダ会談後はそこのところが相当変ってきたのではないか。きのうでしたか、おとといAPあたりからの通信によると、アメリカが対中共輸出の問題を緩和の方向に再検討する用意があるらしい、従ってそれを受けて、日本は中共貿易に対するアメリカの態度が緩和される可能性があるらしいと見て、アメリカにそういう問い合せをしておるというようなことが報ぜられておるのですが、そこいらのいきさつなり空気はどうなんですか。
  231. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題は、私どもは現在、新聞報道以外に正式な情報というものを、まだ全然外務省からもどこからも受けておりません。
  232. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これはしかしね、外務省から情報を得て、それから間接にどうというようなことでなしに、その情報を得られるのは外務省から正確なものをお取りになることはけっこうですが、やはり貿易を、通商政策をあずかる担当の原局というか、原大臣としては、むしろあなたの方からこういう問題はもっと積極的にお出しになって、逆に外務省その他をプッシュするような空気と態度があってしかるべきなんじゃないかという感じがするのですが、そこいらの大臣の気持なり態度はどうです。
  233. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先般フェアレス委員長が日本に来られましたときも、私どもはココムとチンコムの差別について了解に苦しむ問題があるというようなことを中心にして、いろいろ私どもの立場を説明するというようなことで、いろいろ通産省として各方面に努力はしておりますが、結局いろいろのそういう問題は外務省を通じて行われておりますので、それについてのいろいろな情報というようなものをまだ正式には得ていませんが、これは政府部内においてもいろいろ相談してやっておることでございます。
  234. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その外交折衝自体は外務省がやるのですから、それにまかしておく、それからそれらの情報はもちろん向うにまかしておいてもいいと思うのですけれども、その必要性なり何なりというような問題については、むしろやはりあなたの方からもっと積極的にプッシュしていただくことの方が妥当じゃないか。というのは、アメカリのいろいろな方面の人たちとも直接に会って話したりなんかした感じから言いますと、たとえばこれは去年のことになりますけれども、ロバートソンあたりと話をすると、これはとってもかたい、きついことを言って、はしにも棒にもかからぬような感じがするのですが、これはあなたもよく御経験の通りだと思うのですね。ところが、今のフェアレスとの話のときにはどうであったか、そこらの感じはもう少し若干違うのじゃないかという気がする。それからもっと、たとえばフォード二世なんかになると、これは今年の二月、あれはどこでしたか、カリフォルニア州であった自動車業者の大会ですが、そこらではやはり、中共貿易を、むしろチンコムの緩和あるいは制限を廃止するということくらいまでいかにゃいかぬということを、相当強く大ぴらに主張をしていると思うのですね。これは自動車業者ですから、業者的な意見だと見てもいいと思うのですが、しかし、同じ業者の業者的意見としても、向うにおけるフォード二世の財界における、あるいは政治的な圧力というようなものは、私はこれは相当強く見ておかなければならないのじゃないか。それから同じような感じは一月くらい前でしたか、ロックフェラー三世でしたか、あれがこちらへ来たときに、これもゆっくり話してみると、それはとても、ロバートソンやダレスなんかの考え方と非常に違っているという感じを受けるのですが、そういうことを考えると、向うの国の内部においても、すでにそういう空気がある。そしておそらくそういう面の空気も受けて、ごく最近における空気の変り方が出てきているように思われる。  そこらのデリケートな、いろいろな内部のあれは、もう少しあなたとしても正確にキャッチしながら、しかも必要性という面を、あなたの通商政策なり何なりから、積極的にもっと強く押し出して、そして外務大臣をむしろ押していくというような態度があっていいんじゃないか。この点は私たちは、前の石橋通産大臣のときには、何かそういう感じなり、少くともそういう気魄なりを受けたのですが、必ずしもこれはまだ実効を収めるまでに至らなくてああいうことになっておりますが、時期からいっても、相当あのときよりか非常に進んでいる、それらの点をお考えになって、もっとその点積極的におやりになるべきだと思いますが、そこらはどうです。
  235. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもの考え方は、すでに国会でも申し上げておりますように、ココム、チンコムの緩和に努力するという方針はきまっておりますし、また今おっしゃられたようないろいろな情勢というものも、見られないわけではございませんので、ただいまその緩和に私どもは努力中だというふうに御理解願いたいと思います。
  236. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その努力を積極的にやっていただきたいと思いますが、そこで今度は中共の方の関係の問題ですが、いつも問題になる例の民間通商代表部設置の問題ですね。一番問題になっている例の指紋の問題、これについてはどうも、通産大臣のお話、法務大臣のお話、あるいは岸外務大臣のお話、いろいろ言われることに若干の食い違いがあるような感じもするし、それからときどきによって、場所によって、非常に感じが違う。そこで一つ、ほかの方々にはほかの方々に聞きますが、直接に、あなたはその問題は、ぎりぎりのところ、どういう点で問題を解決しようとしておられるか、解決するためにはどういう気持なり覚悟をしておられるのか、そこらを一つ直接にお聞かせ願いたい。特に新しい最近の気持を……。
  237. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、御承知の通りの問題でして、ひとり中共に対して日本がとっている処置だけじゃなくて、世界のどこの国の人にも同じようにとっている処置でございますので、この問題が特に中共側が侮辱ととるような考え方は間違いだ、そういうことを今まで相当説明しておりましたが、まだ十分の理解を願っていないというような事情もございますので、さらに私どもはやはりその線に沿って今後努力する。しかし、法務省は法務省の態度が、外務省としては外務省の一定の方針があったために、政府部内でもなかなかこの点の解決に困っておったという事情は、もう御承知の通りと思いますが、しかし、私どもの立場からしてみますと、日中貿易のいろいろな困難な問題を解決する近道は、やはり代表部を両方に置くという、このことを実現させることが、やっぱり一番の有効な方途だと考えておりますので、これを何とかして実現したい。これが、そういう向うの理解に訴えても、どうしても解決しないという場合には、それが解決しないから、それじゃ代表部の設置というものをお互いにできないことにしようということにならないように、私自身はこれは何らかの努力をして解決したい、こう考えております。
  238. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこで、これが侮辱になるかどうかというような問題は、単に中国に対してだけでなく、ほかの一般的な問題として、そして指紋に関する法律自体の問題として、これは論議しなければならぬと思いますけれども、これは今は一応別にして、通商代表部という特殊なものに対して通商振興上特殊な扱いをする、その特殊な扱いをどういう様式でどの限度にやられるか、やる腹があるかという問題にしばられるだろうと思います。だから、一般論として、これはちっとも侮辱じゃないのだからという説得の仕方なり何なりは、今問題じゃないのですね。そこのところを、ぎりぎりどういうふうにお考えになるのか。そのところ、相当幅を持たせて、これは民間代表部ですから、外交宮と違うのだから、外交官待遇をせよとは言わないでしょうけれども、指紋その他に関する限りは私は外交官に準じて、これは準じてさえすればいいので、準じてやるという腹なり何なりはお持ちになることが必要だろう、それでなければ問題は解決しないのじゃないだろうかと思うのですが、そこらの気持なり態度を一つ……。
  239. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま申しましたような、そういう具体的な計画方法によるとかいうようなことではなくて、何とかこの代表部の両方の交換ができるような方向で考えたいという程度で、一つ御了解を願いたいと思います。
  240. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何とかできるようだということだけでは、遷延の許されないような、御承知の通り、貿易協定その他時期的の問題もありますから、この点はもう少しお考えを願いたいと思います。  この点はこれ以上申しませんが、それじゃ、民間代表部を置いたとして、その通商代表部が日本から北京に置かれるもの、あるいは向うから東京に置かれるもの、その通商代表部に対してはどういうことをやらせ、どの限度のどういうことをやらせるというふうに予定を持っておられるのか、これは日本側の場合と向う側での場合とは違うのですか、そこら辺一つ局長でけっこうすがね、局長その辺はどういうあれなんですか。
  241. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) まあこれは中共側の意思はこれはわかりませんが、向うは御存じのように貿易は国営形態です。それから日本は、いわゆる個人貿易といいますか、自由貿易の形態でありまするので、従いましてこの通商代表部の置かれました場合、それぞれの機能はおのずから違うのじゃないかというふうに考えております。で、中国側の通商代表部が、そこで商取引までをされることになるか、ならぬかは、これは相手の腹次第でありますので、何とも付度はしかねますが、おそらくは向うはそういうふうな考え方ではないかと私は想像しているわけであります。中国側の、それぞれのいわゆる公司の支店といいますか、出先機関という性格を持つのではないかというふうに思うわけであります。日本側としまして今具体的にどういう性格のものにするかというはっきりした考え方はないのでありますが、一応われわれはそういう場合を予想しまして、御存じの日中輸出入組合の現地支部といいますか、駐在員事務所といいますか、そういう格好を今考えているわけであります。実は今御審議願っておりまする本年度の、三十二年度予算の中におきましても、はっきり金額は今覚えませんが、六、七百万円程度補助費を、そういう輸出入組合の現地事務所を設置した場合、その事務費補助を予想して、この貿易振興費の中に組んでいるような状況でございます。で、日本側のそういう出先機関の機能としましては、直接そこで売り買いということには、日本のこの貿易の形態から申しまして、なかなかむずかしいのじゃないか、やはりそこがまあ調査、連絡、取次程度の機能になるのではないかというふうに想像しているわけです。いずれはそういう問題が具体化しました場合に、向うとの間の話し合いで、それらの点ははっきりしてくるのじゃないかというふうに思っておりますが、今の大体のこっちの考え方を申し上げれば、そういうふうな考え方をわれわれといたしてはしておるわけであります。
  242. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 通商代表部ですから、これはまあ本来ならば、政府が在外公館として、あるいは在外公館の中にそれを置かなければならない筋のものが、今のような国交未回復の状態だから、それがまあ置かれない、そこで民間通商代表部ということになるのでしょうが、そうすると、やはり日本側の考え方としては、その通商代表部は、本来ならば行政官庁がやるべき行政事務に準ずるようなものを、一応その民間通商代表部でやる。それから今度は、この今の……。だからそれをだれが当るか等々はいろいろな問題になりましょうが、それからもう一つは、その輸出入組合の代表者は、これはまた各業者の商売上の共通事務を何かいろいろやるという機能があり、そして第三番目には、その業者自身の直接の商売の仕事がある、そういふうに、こう三つくらいに分れるのじゃないかと思いますが、そのときに日本の意向としては、その通商代表部を、今言ったその第一の行政事務にかわるようなものと、それから商売上の共通事務手続、そういう両方を一体にしてやらした方がいいというお考えか、それらはおのおの分けてやるべきだというふうにお考えになるか、その辺はどうなんですか。
  243. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 今佐多先生のお尋ねは、中国側の通商代表部のものよりも、日本の現地に置く……。
  244. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ええ、日本が向うに行った場合をまず……。
  245. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 日本のファンクションかと思いますが……。
  246. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ええ。
  247. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) その行政事務とは何ぞやというようなことを、その内容にも関するかもしれませんが、この通商協定の形式がどういうふうになるかにもよりますが、かりに従来のように、三団体なら三団体と中国側とで協定が締結をされた場合は、もちろんその協定履行上の仕事、すなわちその直接商売そのものに関するよりも、全体の協定履行に関連を持つ一般的履行事務——あるいは行政事務と表現していいのか悪いか、若干疑問はあると思いますが、そういう協定履行上の一般的事務は、当然現地の事務所がタッチするところにはなるであろうと思っておりますが、われわれとしましては、まあ当面のこの通商振興上の問題としては、やはり現地の調査とか、取引上の連絡とかというものが主体であるのであって、何もいわゆる国交回復後の、この日本の政府機関のやるような行政事務というようなものは、今のところ考えられないのじゃないかというふうに感じておるわけなんでありますが、これはまだ具体的に各団体とも相談をしたわけではもちろんございませんが、一応われわれの頭で考えておりますのは、今申しますように、日中輸出入組合の現地事務所を置く、それがまあ主としてそういう取引上のいろいろな調査、あっせん、連絡ということであり、それがまああわせて若干の協定履行上の一般的な事務にもタッチしていくというようなことになるのではないかというふうにも考えておるうよなわけであります。
  248. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこのところが……、まあ今の局長のお話だと、私の言う第一の行政事務的なものと、それから組合の商売の共通事務的なものと、両方を通商代表部が一緒にやればいいのじゃないかというお考えだろうと思うのですが、しかしこれはもっと実際に話をお進めになっていくと、これはやはり両方区別して考えて、通商代表部というのは、やはり厳密には本来は政府機関がやるべきものを、通商が、国交がいまだ回復をしていないから、それにかわってやるというようなことになる、そしてその仕事自体が、非常にやはり大きな分量にもなるのじゃないか。そうすると、その仕事と、それから商売上の共通事務とは、おのずから区別して考えて、向うに置く場合でも、人を選ばれる場合でも、区別して、分割したものとしてお考えになる方がいいのじゃないかと思いますが、その辺はもっと具体的に話が進んでみなければわからぬと思いますが、そういう問題のあることを一つお考えの上に、至急にそういう点も検討をしていただきたい。というのは、この通商代表部は、民間通商代表部はどうしても置かにゃならぬという御意見なんです。そして大臣も、非常にそれは積極町にやるのだというお話だから、問題はそこまで積極的に少し検討をしていただく時期、段階だと私は思いますので、その点も考えていただきたい。そこで今度は逆に、中国の方から日本に派遣する民間通商代表部なるものは、どういう性格のものであってほしいと……、向うは向うの意見を持っているのでしょうが、少くとも日本側はどういうものであってほしいというふりにお考えになるか。たとえばさっきのような問題で、向うはほとんど大部分が国営貿易ですから向うの政府行政事務のみならず、商売の方の事務も、それからさらには商売自体もそれがやるということでかまわないのだというふうにお考えになるか、いやそれは分離して考えてもらって商売自体は各公司なりから適当な人が別に来る、通商代表部自身はもっと限定したものとして置いてもらいたいというふうな意向になるか、そこいらは話をする場合に、今後たとえば員数の問題その他の問題とも関連してくるので、政府としては、あなたとしてはどういうふうにお考えになっておるか。
  249. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) まだ実はそこまで私も突き進めて研究をし、頭の整理もいたしておりませんが、われわれこの通商振興という立場からこの通商代表部の問題を考えました場合に、あまり政治的な性格を持つ代表部には率直に申しまして興味を持っておらんわけでありまして、今の民間通商協定が円滑に運営をされ、それによって輸出入が振興して伸びればいいわけであります、そこでそのよく議論になりまするのは、ここへ来た通商代表部が取引までもするのかしないのかという問題はよく議論になるわけであります。これは私はまだ私見でありまするが、国営貿易をやる国の相手方の機関が取引をやるやらんというようなことを規定する方法もなければ、やらないということを希望してみても、ちょっと二、三日じゃ待ってくれということで、北京なり上海なりへ打ち合せてそこでオーケーということになれば、あるいは東京なら東京でオーケーということになれば、実際は東京で商売はやらんといいましても、実際は取次という名目において実質はここでやるということになるのであって、従って出先の機関が取引をやるとかやらんとか、取次だけに限定するとかいうようなことは、私は経済上の感覚からいってそれは意味がないので、やや観念の遊戯にすぎないのじゃないかというふうに考えるわけであります。これは便宜に従ってやればいいのじゃないかというふうに私はとるわけですけれども、これは先方はどういうことをお考えになっておるかわかりませんが、しかしわれわれはあくまでここに置かれるその通商代表部には、要するに通商の事務であって、協定の履行ないしその取引に関連する問題を処理してもらうということであって、あまりその政治的なことは私自身もよくわかりませんので、あまり研究したこともないわけでありますし
  250. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政治的な性格を帯びる必要はもちろん毛頭ないのです。しかし通商代表部である限りは、民間のものでも行政事務的なものが相当やられなければならないということにはなると思うのです。そのときにそれだけに限定するようなものを置くことをこっちは希望をするのか、いやそうでなくして、商売その他もやるところの人もちっとも差しつかえないのだ、こっちの意向としては、意見としてはそれを持つのだということになると、員数その他の問題では非常に膨大なものにならなければならない、それをお許しになるつもりで今のようなそこのところは考えているのだというふうにお考えになるのか、いや、それは困るから一つ通商代表部は人数は非常に制約をされるのだから、商売自体をやるのは、別に来てくれればいいのだとかいう政府の間に希望や意見はないのかということをお聞きしている。こういうものは何もなくて、いやそれは向うの要求通りでいいのだとか、あるいは向うの希望を聞いた上でおやりになるならそれでもいいのですが、私はその辺も相当今後問題になることではありましょうが、相当単にあなたは観念遊戯だと言われますけれども、観念論ではない。これは現実的な、具体的な問題としていろいろな問題が出てくるのじゃないか。少くともあなたが積極的にこの問題を解決しようとお考えになっているのならば、そう今の観念の遊戯にすぎないというようなことでは済まされないのではないか、こう思いますが、これは意見になりますから、これ以上申しませんが、そういう点も一つよく御検討を願いたいと思います。大臣に、一つそれらの問題を至急に、具体的に検討するように御指示を願いたいと思います。
  251. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 承知いたしました。
  252. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それからもう一つ、例の問題になっておる支払い協定の問題ですが、これについては通産省としては、特に通商局としてはどういうふうに落ちつけたらいいかというお考えですか。
  253. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 支払いの問題につきましては、先生御存じのように今大部分のものはバーターということになっております。このバーターのやり方が実際いわゆるストレート輸出、輸入というやり方から見てかなり不便なことは、これは当然ございます。従いましてわれわれとしては、できるだけストレート輸出入のできるような方向では考えておらぬわけです。  そこでオープン・アカウント方式になりますと、これは政府間の協定になりますが、現実問題としては、これは国交のない限りできない。そこで銀行をしていわゆる何といいますか、日本の為替銀行と支那側の銀行との間のコルレス契約と申しましょうか、そういう方式で解決をすればいいのじゃないかということで、民間団体にも申し上げておるわけです。そういうラインでかりに交渉をされておるようであります。まあなぜその案が今行き悩んでおるのか、実は私自身としては了解に苦しんでおるわけでありますが、そういうラインにつきまして、われわれ政府側としましては大体けっこうだという意思表示は前からいたしておりますが、まだいまだにできないような状態であります。われわれとしましてはそういうような方向で早く解決することを希望しておるわけです。  まあそれよりも、今中国との貿易の問題は、先方の甲、乙、丙という分類の仕方が、ともかく日本の貿易の実情に沿わないということでありまして、これを何とかもう少し弾力性のあるように直してもらうということが先決問題じゃないか。もちろん日本側にもいろいろな拘束がございますが、ともかく今の中共との貿易形態というものは、率直に言うと向うのやり方をそのまま採用しなければならぬというところにあるのです。もう少し中国側も日本の実情を理解して貿易を伸ばすというラインで考えてもらえないかどうかということを、強くわれわれは考えておるわけであります。
  254. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 向う側の商品分類については、相当調整することはちっともかまわないといっているようですが、ただ支払いの問題で問題になるのは、コルレス契約だけでは……すぐ問題になってくるのは、長期契約をやりたいという問題になってくる。長期契約をやることになると、単なるコルレス契約だけではなかなか問題が解決しないということにひっかかってくると思うのですが、これはしかし単に支払いの問題以上の問題になるので、ここのところちょっともう一ぺん根本的な問題として大臣にお聞きをしておきたいのですが、長期計画、向うの第二次五カ年計画は、この間の協商会議で非常に批判をされて、これを相当大幅に改訂——今まで考えていたのを改訂をしなければならない、その改訂をする場合に、きのうでしたか、おとといでしたか帰ってきた関西の財界の諸君の意見を聞くと、改訂をする場合に相当程度日本への期待、依存を改めて考え始めているということになっていると思うのです。そこでそういう長期計画を、日本の長期計画と向うの長期計画とのかみ合せというような、組み合せというような問題が問題になってくると思いますが、そういう長い目で見たかみ合せなり組み合せということをお考えになっているかどうか。たとえばさっきちょっと話が出ました、海南島の鉄鉱石の問題、これはまあ重工業局あたりのお話を聞くと、いやここ数年間、少くとも五、六年あとまでは海南島なんかにはほとんど期待をしなくたってやっていけるし、またやっていきたいという意向のようでもあるし——ところがきのうの宇田長官のお話を聞くと、さっき岡田君の質問にもあったように、逆にもし長期契約ができるならば、そしてスポット買いの値段でなくて、長期契約としての適正な値段であるのならば、むしろ相当程度海南島に期待をする考え方を考えたいのだ、考えるべきだということを言っておられるし、関西の財界諸君が持って帰ったのによると、年間三百万トンだけは長期契約として確定をするというような話し合いができればそれに応じた設備その他は積極的にやるという意向を示してきております。そういうことになると、今度はさらにその設備輸出というような問題もこれは起ってくる、もちろん中国のことですからフィリピンやあるいはインドみたように、合弁の形態なり、あるいは何かそういう協力態勢なり何なりを向うが好むか受け入れるか、それはもう少し話を進めてみなければわからぬと思います。一体そういうところまで長期計画の組み合せ、あるいは技術協力というような程度までは経済交流の促進という意味でやっていいと、あるいはやるべきだという腹はお持ちになっておるかどうか、そこいらどうなんです。
  255. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういういろんなからみ合いができるできないは先へいっていろいろ出てきて善処すればいいと思うのですが、当局は日本が物が売るということができる、向うがそれを日本へ必要なものを売れるというこの貿易が円滑にいく形が今問題でして、今のような協定そのままでは日中の貿易は私はあまり進まないということになりますので、今度の契約で、今局長が話しましたようにこの決済方式というようなものが改められ、また分類に弾力性がつくと、そして総合バーターの方式というようなものがここで協定できるとかというようなことによって、向うが日本に依存するというのでしたら、向うが向うの計画でいろんな物資で日本に依存したいというものがあれば、こちらは応じられる態勢ができますし、また向うからこの日本が相当自由に買える態勢ができるのでしたら、それによってこちらの計画の、たとえば物資の需給先の変更とかというようなものも、こちらでいろいろ計画の上で変えていくということはできると思うのですが、問題はそういう先のことじゃなくて当面日中貿易の、今のあり方、現実に支障になっているものの解決がやはり急務であって、それとこの解決によって自然に将来いろんな問題が出てくる問題だろうとまあ私は考えております。
  256. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の段階では、当面の貿易の問題にしても、さっきからいろいろお話があるように、もう長期契約なりスポット買いとか何とかでなしに、長期契約の問題として話を進めたければならない、そうすると、たとえば今の海南島の鉄鉱石の問題にしても、あるいはもっと必要性があると思いますが、炭の問題にしても、製鉄原料としての石炭の問題にしても、これは長期計画の問題長期計画の問題になると今度は逆にこっちからそれじゃ石炭の設備その他についての話もついている、最近での中共の考え方からいえばもちろんソ連の経済援助と技術援助によって水力発電でも火力発電でも、あるいはその他の設備全部ソ連の援助なりソ連の協力によってやっていますけれども、中国の最近の考え方は、基本的にはソ連なり何なりに依存をしているが、たとえばある産業の工場なり何なりを十カ地点作る場合、その二、三地点あるいは一、二地点は日本との技術協力なり何なりでやって、そして日本の進んだ技術を取り入れて、それとソ連とある意味では社会主義競争をさして、そして両方のいいところをとって、新しい中共システムというものを作り上げようというようなふうなねらいを持ってきている。それは、非常に遠い将来のことのように大臣はお考えになっているけれども、私は今の鉄鉱石なり石炭、あるいは大豆でも搾油の設備その他との関連においてはもうすぐの商売との関連において裏にはその問題が控えている、そういう時期だし、そういう段階だと思うのです。単なる貿易だけでなくて、そこいらまでもう踏み込まなければならない時期であることを認識してそこまでいくことをきめらるべきだと思うのだが、どうなんです。それはたとえば輸出する場合でも、プラント輸出の問題がすぐ出てくる、そうすると輸出入銀行がそれに手伝うかどうかという問題などにも関連をしてくる、そこいらまでも進むべきだと、進めていいというふうにお考えになってしかるべきだろうし、そのことが非常に必要になってくると思うからこういう点はどうなんです。そこいらはもう大臣の政治的判断の問題です。
  257. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ちょっと大臣にかわりまして申し上げますが、確かに鉄鉱石なり石炭を……。
  258. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 塩でもそうですがね。
  259. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 中共から取るという場合に、スポット買いではおのずからこれは限度があるわけです。やはりかなり長期にわたって何万トンなら何万トン、何百万トン買いましょうということでなければ、向うもそのつもりで開発もできないというのはこれは明らかな通り、問題はたとえば鉄鉱石にいたしますれば、この日本側の製鉄業者がそういうところと安定したこの鉄鉱石の供給をしようとして長期契約を結ぶか結ばないかに私はかかるのじゃないかと思う。これは私の私見になるかもしれませんが、製鉄業者が海南島の鉄石鉱をかりに長期契約で買うということが、これは価格についても合理的な話し合いはついた場合に、われわれとしては結局その政府側措置をするのは、要するに輸入許可をするかしないかという問題だけでありまして、要は業界がそういうところと長期契約をまずなさるかなさらぬか、安定した市場として手を結ばれるか結ばれぬかにかかるわけでありまして、政府側としてそれを許可するということは私はそうむずかしい問題じゃないんで、鉄鉱石にしましても、石炭にしましても、いろいろほかの地域とは多かれ少かれ長期契約的なものがあって輸入されているわけなんであります。別段中共だからといって長期の輸入契約を拒否するという理由は私はごうもないんじゃないかと、こういうふうに考えております。ただその開発をかりにいたします場合に、機械なら機械をともかく何ぼか持っていかなければいかぬという場合に、その機械の種類がいわゆるそのチンコムの制限にひっかかるものであれば、今のところはだめだということになるわけでありますし、またかりに今も特認の範囲が非常に拡大されておりまして、かなりの機械は持っていけることに実はなっております。かりにその機械はチンコムの制限下において持っていけると仮定した場合に、どういう問題が起るかと言いますと、結局その金融の問題ですね。その先に機械を持っていくということになれば、結局そのクレジットを与えなくちゃならないというまあ問題になるわけです。そのクレジットを与えるのにこれまた民間の機械の輸出業者なりメーカーが大丈夫だと、心配はないから一つクレジットを与えたいという気分になられるかなられないかがまず先決問題であって、政府としてはそれから先そういう輸出のいわゆる延べ払いを許可するかしないかを第二段に考えるべきじゃないかと、だから今そのわれわれの方で先走って業界がそういう長期の輸入契約なり、あるいはそういう延べ払いの輸出の契約を認める、認めぬという問題を申し上げるのは、ちょっとその行き過ぎじゃないかという感じが私はするのであります。
  260. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはね、私から申し上げるまでもなく、鉄鉱石なら鉄鉱石の長期契約その他をやられる場合には必ずそれにくっついて設備なり何なりの問題が出てきて、そしてそれに対してクレジットを与えるとか何とかの問題がまあくっついてくるわけですね。そういう問題になると、あなたはみんな業者さえ言えばいいのだとおっしゃるかもしれないけれども、それでは問題が解決しないからこそ、あなた方は輸出入銀行なり何なりを作り、その他でまあ金融なり何なりで大いに積極的に援助してやろうと、そしてそういううしろだてがあるから鉄鉱石なり何なりのああいうフィリピンにおいても、インドにおいても、マレーにおいてもあすこまで話が進んでいると思うのですよ。だからそういうふうなそれに準じたような態度を示されるべき用意なり覚悟を政府は持っておられるかと、政府はそこまで踏み切る覚悟を示されなければ、業者自身は決して出ていきやせぬですよ。その点は日本の経済の場合は私から言うまでもなく、国家資本なり国家のあれというのは非常に強いと知ていいんじゃないですか。だからいつも業者の諸君に言えば、政府の方がそれを少くとも許すか、あるいはそういうクレジットを与えるなり何なりのときに、何らかの指示なり何なりをやってくれるかどうか、そこのところがいつもかね合いになる。そこいらをもう決意をされなければならない、中国に対しても決意をされなければならないときだと、こういうふうに思っている。そこいらまでおやりになつたらどうかと、決意をされたらどうかということなんですよ。どうですか。
  261. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ちょっと補足をさせていただきますが、確かにわれわれ研究をすべき問題ではありまするが、これまで民間からそういうそのこうやりたい、どうだというて要請を実は受けたことはまあないわけで、あるいはわれわれとしてもこれ以上研究をしていない怠慢はあるかもしれませんが、まあ真剣にそれらの問題を実は研究をまだいたしておりませんので、オフ・ハンドであまり申し上げてもいけませんが、もし民間がそういうことをほんとうに積極的にお考えになってやった場合には、われわれとしてもこれはもちろんまじめに研究はしなければならぬと思っておりますが、今これを突然に先生からそういう議題を与えられて、またそのあまり民間からそういう要請を受けてシリアスに研究したことのない問題についてちょっと答弁をするのはなかなかむずかしいようでありますので、申し上げておるのですが……。
  262. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、それはまず鉄鉱石とか何だとか電源開発の機械とか何とかになれば、これはもうむずかしいとか何とかいうことははっきりわかっているでしょうが、そうでなくて、たとえば製油の搾油工場設備だとか、あるいは製粉の設備だとか、あるいは農機具の設備だとかいうようなものは、そういう何かこのクレジットをやるとかプラント輸出をするとかというような態勢さえできれば大いにやりたいのだ、これをちっとも政府がそういう考え方なり何なりをしてくれないから、もう初めからこれは希望のないものとして言わないだけなんです。だから政府がそっちの方面に積極的に、その程度までは、少くとも経済協力の点まではやってもいいのだと、あるいはやらせるべきなんだと、少くとも遠い将来との関連においてはそのことをもう今からあれしなければならないのだという決意さえあれば、それはその点は民間の空気なり何なりが非常に違ってくる。まあその点は大臣どうです。
  263. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に決意という大げさな問題でもなんでもなくて、東南アジア、中共、そういういわゆる経済提携というような問題が民間の強い要望となって出てきたときには、そのつどその実現方に骨を折って今でも来ているのでして、今局長の言われたようなそういう問題はほかのいろいろな考慮から今までなかったとしても、事実そういう問題が出てきて、この融資をどうするかというような問題になったときには、別に私どもは差別待遇をした取扱いをしようとは全然思っておりません。
  264. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、その点はもうはっきり聞いておきます、  で、どうも今までの初めの方の御答弁では、この貿易に関する限りは積極的だが、財政協力なり技術協力等の段階まではまだ中共に関する限りはいかないのだと、その点で東南アジアとはちょっと違うのだというような口振りでしたけれども、今のあれでは、いや必ずしもそこは地域的な区別は、差別はしないのだ、必要とあれば大いにそれをやるのだというくらいな気持はすでに持っておられるということを再確認をして……。  それでもう一つちょっと実はあれですが、このスクラップの輸入をアメリカとの関係をまあおきめになりましたが、もし日本がアメリカのまあ意に完全に反しているというわけじゃないが、アメリカのあんまり好まないのにかかわらず、貿易なり何なりの促進をこっちがやった場合に、このスクラップの輸入ということは、すぐそういう政治的な問題がスクラップの輸入に対して響いてくる見込みなり、公算があるかどうか、そこいらはどうお考えになりますか。そういう政治的なものを考えなければならないか、いやそれほど政治的ではなくて、純粋に商売上の問題として考えておいていいというふうにお考えになりますか。
  265. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) これはまあ現在チンコムなり何なりのやり方に反して問題になると思うのでありますけれども、スクラップの問題に直接関係してどうということはないと思います。
  266. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題をもっと一般的にして——これでもう最後にしますが、このアメリカとの関係でまあ私たちの考え方によれば、御承知の通り中立主義の方向、従ってこの安保条約体制から離脱することを、そして安保条約体制自体を解消することを目標にしてやっているわけです。かりにそういうような方向がとられていくということになった場合に、アメリカはこれに対して日本に報復的な手段なり何なりをとるというふうにお考えになるかどうか。報復的な手段をとると考える場合に、どういう手段なり方法があり得るというふうにお考えになるか、そこいらはどうですか。
  267. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日本は世界的に、信義にそむくというようなことで世界から排斥されるというような事態はなくするために、今国際間においてきめられておることを守ってやっているというときですから、吉田さんじゃありませんが、そういう仮定の問題でここでいろいろ答えない方がよろしいのじゃないかと思います。
  268. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 世界から排斥されるような態度なり行動をする必要はありませんが、しかし必ずしもアメリカのお喜びにならないような政策なり態度で日本の独立の完成なり何なりはやらなければならぬという方向なりあれはあると思います。そういう場合に、たとえばもっとそれじゃ具体的に言いますが、そういう方向なりあれになった場合に、たとえば今問題になっておる綿輸入であるとかそういうものに、そういう方向なりそういう政策が支障を来たすというふうに考えなければならないか、あるいは、いやそういうものはほんとうにこれはもうコマーシャル・ベースによるほんとうの商売だけなんだから、そういうことにはほとんどわずらわされることなしに、商売上そういうことにかかわりなく運行ができるというふうにお考えになるか、その辺はどう考えられますか。
  269. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今の問題は政治問題と関連しておりますので、それと経済問題がどう結びつくかというようなことを、今ここで私は想像しない方がいいと思います。
  270. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、それは事務当局には、だから言いませんが、大臣はそこいらをどういうふうに……まあそれはお考えにならなければやむを得ませんが。
  271. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 他に御質疑はございませんか。
  272. 海野三朗

    ○海野三朗君 通商局長にお伺いしますが、ビルマのラングーンに農機具を展示する場所を設けるというので、その予算が通っておったように思いますが、あれはどうなっておりましたか。
  273. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) これは昨年予算通りまして、先方の政府と設置について話し合いを進めて参りました。これは相手方の内部でもいろいろ関係官庁がありまして、非常に交渉が遷延いたしまして、非常に遺憾でありますがおくれましたのでありますが、ごく最近に、最後に残っておりました土地の問題も解決いたしましたので、ようやくこの四月初旬に機械、建物の船積みを始めるということになっております。五月の末までには完成しまして、向うに持ち込みまして、いよいよ仕事を始められる段階になっております。
  274. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうですが、それでその際に私らの方から農機具を大阪まで持って行ったところが積み出しストップになって、今度は倉敷料というものを非常に高く取られた。それで、その倉敷料に対しては、とても民間の方で払えなかったものだから一時通産省の方の金から支払った、そうしたところがえらいお目玉をちょうだいしたということで、業者が非常に困っていたのですが、それはどうなりましたか。その倉敷料の関係、何百万円も取られておる……。
  275. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 多少建設時期がずれましたので、経費予算を多少超過しておるようでございます。これは予算にございませんが、民間の費用を出しましてあわせてやる事業になっておりますから、現在の予算ではちょっと救済の方法が困難かと思われるのでありますけれども、そういった事情で動いておりますので、何か解決方法がないかということを実は今相談をいたしておるところでございます。まだ結論は得ないのでございます。
  276. 海野三朗

    ○海野三朗君 その倉敷料はどうなりましたか、何でも一年ぐらいストップしておったものですから——大阪に農機具をどっさりやっておったのです。倉敷料を何百万円か取られたというので、通産省からお目玉を食ったということでしたが、あれはどういうふうに結論づけられましたか、そこをちょっとお伺いしたい。
  277. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 倉敷料等につきましても、一応予算の範囲内でできるようでございますので、何とか解決できるのじゃないかということに進行しているそうでございます。
  278. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 御質疑がないようでありますから、通商産業省所管についての質疑はこの程度で終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。
  280. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) これより郵政省所管案を議題といたします。  まず政府より御説明を願います。
  281. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) それでは私から昭和三十二年度郵政省所管案と、これに付随する若干の問題につきまして説明申し上げたいと存じます。  まず郵政事業特別会計予算について申し上げますと、この会計予算総額は、千四百十四億一千万円でありまして、その歳出予算の内訳を申し上げますと、郵政省において取り扱う郵便、郵便貯金、簡易生命保険及び電気通信等の諸業務に要する業務費が千五十二億六千万円、収入印紙、失業保険印紙等の収入をそれぞれの会計に繰り入れる業務外の支出経費が三百八億六千万円、公債及び借入金の償還金が一億円、予測しがたい経費の支出に充てるための予備費といたしまして、八億円、郵便局舎等の建設費といたしまして約四十四億円を計上いたしております。  次に定員関係について申し上げますと、郵政事業特別会計における昭和三十二年度予算定員は、二十五万八千六十二人でありまして、前年度に比べ千九百六十一人の増員となりますが、この増員は主として郵政窓口機関の増置、郵政業務量の増加並びに特定局における電話施設の増加に伴う所要人員であります。  次に歳入予算について申し上げますと、歳入予算総額歳出予算同額の千四百十四億一千万円でありまして、その内容といたしましては、郵政固有業務収入及び雑収入が四百九十二億七千万円、郵便貯金、保険年金、電気通信等の各業務の運営経費に充てるため、他の会計から繰り入れられる他会計からの受入収入が五百八十一億一千万円、郵便局舎の建設財源に充てるため郵便貯金特別会計、簡易生命保険及び郵便年金特別会計の両会計から受ける設備負担金が、八億八千万円、郵便局舎等の建設財源に充てるための借入金が二十三億円。以上のほか、収入印紙等の売りさばきに伴う業務外収入が、三百八億六千万円となっております、  次に郵便貯金特別会計予算は、歳入歳出ともに、四百五十七億四千万円を計上いたしております、  簡易生命保険及び郵便年金特別会計円で、歳出は四千二百二十六億五千万予算は、歳入が百十九億七千万円を計上いたしており、歳入超過額八百六億八千万円は、法律の定めるところによりまして、積立金として処理することになっており、一般公共貸付の運用原資といたしまして七百四十億円を確保する予定となっております。  次に当省所管一般会計予算案について説明申し上げますと、歳出予算総額は、十六億四千百万円でありまして、これを前年度予算額十五億五百万円に比べますと、一億三千六百万円の増加となっております、  この増加のおもな事項といたしましては、無線局の検査並びに電波監視業務における機器類の整備充実経費として千三百万円、電波に関する新技術の研究開発の経費として九百万円、海外放送交付金の増加において九百万円、一般公務員の給与改訂に伴う人件費等の増加に伴う経費として一億二百万円、その他旅費等の増加経費として三百万円であります。  なお、国際地球観測に関する経費の各省間の配分額につきましては、未定でありますが、当省所管経費は三十一年度の九千四百万円を下回らない額が予定されております、  次にこれら業務の運営に必要な定員について申し上げますと、本年度予算定員は、二千九百四十二人で前年度予算成立定員二千九百四十七人に比べ五人の減員となっておりますが、この減員は昭和三十一年中における科学技術庁の新設に伴い、これに定員を移しかえたことによるものであります。  次に日本電信電話公社の予算案について申し上げますと、同公社の予算は、損益、資本及び建設の三勘定に分れており、その総計におきましては、収入支出とも二千七百七十七億九千二百万円でありますが、このうち勘定間の振りかえによって重複する金額一千八十五億五千七百万円を控除いたしますと、収入支出予算の純計額はいずれも一千六百九十二億三千五百万円でありまして、これを三十一年度と比較しますと、百八十九億七千万円の増加となっております。  次に主要勘定たる損益、建設両勘定の収入、支出の内訳について申し上げますと、損益勘定につきましては、収入は、電信収入及び電話収入が一千四百二十四億三千五百万円、委託業務収入が十七億九千二百万円、雑収入が三十一億一千二百万円、計一千四百七十三億三千九百万円となっており、支出は、給与その他諸費が四百八十六億一千五百万円、営業費が二百二十四億二百万円、保守費が百五十八億六千二百万円、共通費が五十二億八千三百万円、利子及び債務取扱費が七十八億七百万円、減価償却費が二百五十八億円、受託業務費が五億八千四百万円、予備費が十五億円、計一千二百七十八億五千三百万円となり、収支差額百九十四億八千六百万円は、建設改良及び債務償還に充てるため、資本勘定へ繰入れることになっております。  次に建設勘定につきましては、建設改良のための財源として、電信電話債券の公募による分が九十五億円、加入者及び受益者引き受けによるものが五十四億七千万円、電話設備負担金等が六十九億二千七百万円、損益勘定からの繰入金が、減価償却引当金二百五十八億円を含めて四百十三億七千四百万円、計六百三十二億七千百万円を計上いたしております。同じく支出といたしましては、総係費が五十五億五千八百万円、建設改良工事費が五百七十七億一千三百万円、計六百三十二億七千百万円となっております。  この建設改良工事につきましては、昭和三十二年度は、電信電話拡充五カ年計画の最終年度に当りますので、今まで種々の理由で繰り延べを余儀なくされてきました主要工程を極力完遂するとともに、農山漁村の電話普及につきましても、特に重点を置きまして、ただいま申し上げました六百三十二億七千百万円をもちまして、加入者開通十八万五千名、六大都市とその近郊都市との即時通話サービスを含めまして、市外公衆回線が四十四万二千キロメートル、電話局の建設では年度内にサービスを開始するもの六十九局、継続工事であって次年度以降にサービスを開始するもの十六局、新規着工のもの五十一局等の主要工程のほかに、町村合併に伴う区域合併局二百三十局、市外線増設一万四千六百キロメートル及び農山漁村電話普及特別対策として、三千個の公衆電話、二千二百余名の加入電話の設置を計画いたしております。  次に建設財源の調達について一言申し上げますと、政府財政投融資計画と関連いたしまして、公募による電信電話債券の発行によって九十五億円か調達し、その他、電話設備費負担臨時措置法に基く加入者等の引受債券及び電話設備負担金による外部資金、並びに減価償却引当金、損益勘定よりの繰入金等の内部資金によることといたした次第であります。  なお、建設勘定の支出面におきましても、工事能率の向上、新技術の導入等による設計面の合理化、経済化等により極力、経費の効率を高めて、拡充五カ年計画工程の完遂を期するように配意されております。  以上、公社の予算について申し述べましたが、今後とも公社の経営合理化に一段と意を用いますとともに、建設資金の調達に努力し、健全なる財政的基礎の上に、電信電話事業を拡充発展せしめ、熾烈な現在の需要にこたえるとともに、今後ますます国民経済活動の進展に寄与して行いきたと存じます  これをもちまして、私の説明を終りたいと思いますが、なお詳細な点につきましては、御質問によりお答え申し上げたいと存じます。よろしく御審議の上、すみやかに御承認下さいますようお願い申し上げます。
  282. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 順次御質疑を願います。  この際お諮りをいたしますが、分科担当委員外委員小林孝平君より質疑の通告がございます。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 小林孝平君、御質疑を願います。  ちょっと速記をとめて。    午後七時七分速記中止    ——————————    午後七時三十五分速記開始
  284. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 速記をつけて。
  285. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 電電公社の関係事業についてちょっとお尋ねいたします。ただいま電電公社では広告電報を試験的にやっていられて、近くこれを正式に取り上げられておやりになるというお話ですが、どういうふうになっておりますか。
  286. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) お答え申し上げます。子供さんの入学とか、あるいは誕生日にデパートとかあるいは洋服屋さんとか、そういうような商人がお祝いをかねまして、ついてはお祝い品を買っていただきたい、こういうような電報を打つのがあるのであります。それを試験的に実は二、三年やった地方がございます。その電報とともに商売人の広告のビラを一緒に配ったことがあったのであります。ところが、はなはだまずいのでありまして、そのような広告のビラを一切配ってはならないということにいたしまして、ただ電報だけは普通の料金をいただく、こういうようなことで案内電報というようなものではっきりしていきたい、こういうふうにこの四月一日から改めましてやりたい、こういうふうに考えております。
  287. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) そうすると、広告電報というのは今度は廃止されることになったわけですね。
  288. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) その通りでございます。
  289. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) それに関連しまして今やっておいでになる慶弔電報、あの慶弔電報というものは電報の発信総数のうちの何割くらに当っているのですか。
  290. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 慶祝電報と弔慰電報、それから年賀電報、この三つを大体慶弔電報、こう言っておるのでございます。それらの数の上におきますというと、年賀電報が一番その三つの方では多いのでございまして、本年の正月では、それが大体二百十四万通くらいあります。その他の一般の慶祝あるいは弔電こういうものが三百万近くございました。都合四百四、五十万というような通数があるのでございます。そこで全体の電報の通数が約八千二、三百万通ございまして、大体そのような電報の率は総数の六%くらい、こんなふうに当っております。
  291. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) するとこれは、年賀電報が二百十四万で、慶祝弔電が三百万なら、合計五百十四万くらいになるんじゃないですか。ちょっと数字が違うようです。
  292. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) そうでございます。私の方のちょっと言い違いでございまして、やはり五百万ちょっとこすのでございまして、やはり率は六%ちょっとくらいになります。
  293. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 最近のことはわかりませんけれども、電電公社の仕事のうち、電信の方は損をしておるはずだったんですが、最近はどういうことになっておりますか。
  294. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 電報の利用の通数の傾向でございますが、実はこの二、三年来ずっと利用の通数が減っておりました。ところが昨年の暮ごろからただいまにかけまして幾らかずつ増してきておるように思います。それにいたしましても、電信事業自体からみまして収入と支出を考えますと、収入全体が、大体これは料金でございますが、年間七十億ちょっとくらいのものでありまして、それに対しまして経費総額というものが百九十億ぐらいかかる。従って収支の赤字が百二十億ぐらいな赤字になっておる、こういう現状でございます。
  295. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) こういうふうに電信事業というのは赤字になっている。そうしてこれをやればやるほどだから赤字になる傾向になるんじゃないか。そこでこういう傾向になっておるのに、慶祝、弔電、あるいは年賀電報を、この数は少いけれども、こういうことをやることによってますます赤字をふやすことになるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  296. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 実は電報を打つごとに相当な赤字が出るということは、ただいま申し上げたような通数で割りますとそういうような結果になるのでありますが、実は現在の電報につきまして、その電信の機械、あるいはそれにつく人というものにつきましてまだフルにほんとうに電報のために稼働していない、こういうことでございまして、その意味からひまなときに電報を送る、こういうようなことによりまして、別に経費を増高せずして利用をする、こういうことをわれわれとしては大いに考えなければならぬ、こういう意味からいたしまして、このような慶祝電報というものは、実際を申しますというと、年賀電報を例にとりましてもあるいはおわかりかと思いますが、これは前もって受けておりまして、ひまなときに送っておる、こういうふうなことでございますから、今申し上げたような人件費設備の消耗、こういうことには関係なく収入が増すというようなわけであります。  もう一つ私は電報の利用する内容を考えますというと、欧米の文化国におきましては、電報が非常に社交的に大いに利用されておる。ところがわが国におきましては、最近はだんだんふえつつありますが、やはり電報を商業上の電報というものに使うのが大体八割二、三分ある、こういうようなことでございまして、やはりわが国におきまして社交的に電報を使いやすく、いつを問わず電報が使える、こういうようなことは、今後やはり事業の拡大、開拓の分野が相当あるように思いまして、その意味から慶祝電報というようなものが考えられまして、その分野をだんだん広めていきたい、こういうふうに考えております。
  297. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 私、これは三年前でしたか、電通委員をやったときお尋ねしたのです。今は電報の取扱いは、取り扱えば取り扱うほど赤字になっておるから、この慶弔、年賀電報のごときは廃止したらいいんじゃないかということを申し上げたら、この年賀電報はあらかじめ打っておくのだ、今もこういう御答弁ですが、年賀電報はそうですが、この弔電や祝電はひまなときに打ってもらっては間に合わない。そういうことをおやりになっていたのですか、そういうことですか。私はきょうの会合に打ったんですが、それは間に合わなかったのでしょうか。それは今晩にでもつくのですかな。
  298. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 実は主として今申し上げましたのは慶弔電報の問題でありますが、今のひまなときに打つというのは年賀電報であります。その他の慶祝電報はおっしゃるように、それをやはりおくらしてというようなことは毛頭考えておらないのでありまして、そこでどうしてそれで経済的か、こういうことを考えますと、御存じのように、慶祝電報、あるいは弔慰電報には文例がございまして、長い文句を三字の略号にやってある。御利用なさる方がいずれかの電報の文句を御指摘になりますと、私どもの方ではそれをその三字の略号で送る、こういうわけで、電送上非常に簡単に済みますし、受ける方では略号を見ますと、きまり文句ですから、それをすっと特別送達の色紙に書いて渡す、こういうふうなことで、一般の電報よりも経費的にも、あるいは取扱いも簡単で、こういうところに妙味があると思います。
  299. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 私はしろうとですけれども、今おっしゃったことは間違いがあります。その暗号、三字の場合、その三字で出す場合もあるかもしれませんが、それにつけ足すことがあるんですよ。何とか何とかお祝いします。そのほかに、私は今日予算委員会質問するから出席できませんなどというのが入つちまう。それからこの電報は本文もありますけれども、その前に、何々県の何々町の何番のだれだれと、これが多いんです。暗号は三字ですけれども、これが相当ついてるんです。ですから暗号でやるから金が経済的だということは私成り立たぬと思うのです。実際はそういう計算をされていますか。普通の電報ならマイナスになる例でも、祝電、弔電は得になるというが、やはりこれはマイナスになってるんじゃないかと思うのです。私はこの前の、三年前にもそれを申し上げたのですけれどもね、こんなに百二十億もマイナスになっているところを見ると、こういうことがすべてこの百二十億のマイナスの原因になっているのじゃないですかね。御研究になっているんですか。
  300. 靱勉

    説明員(靱勉君) まことにごもっともな御意見でございまして、少し年賀電報にとらわれて吉沢説明員が申し上げたのでございます。まさに一般の慶弔電報におきましては、略号に対してさらに翻訳する手数がかかります。そういう次第でございますから、まあ外国の例を見ましても、ことにあのような特別の紙を使っている。イギリスあたりではかえって紙代をよけいとる、あるいはああいう例文など作らないで、きれいな紙で送る場合にはそれだけよけいとるというようなのもありますし、一方におきましては、非常に、まあ例文がございますので、できるだけ安くして、利用を増していただくということでやるという手もあるのであります。そこで結局根本的な御意見としましては、これは電報通数がふえればふえるほど赤字が増す、こういうこことが前提になっているかと思いますが、それはそうではないのでありまして、やはりわが国の電報サービスというものは、これはまあどんなところまでも行けるようにいたしております。従いまして合間に手わけができて行く。ある局に、一日にそう通数がなくても、やはり当然サービスができるようにしておかなければならぬ、こういうことで、結局電報におきましては、人手のあきというものが出てくる。そこである意味におきましては、それがかなり流れ作業的に出ますれば経済的なんでございますが、そういうわけには参らぬということで、結論的に申しますれば、一定限度の設備をしました場合に、それをやはりできる限り稼働するということになりますれば、あるいは赤字が減少いたすんではないか、そういう意味合いにおきまして、やはり電報通数の増加というものは、収支状況がある程度改善されると申し上げなければならんので、結局稼働率の問題だと存じます。
  301. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 私はもうごく簡単に、ふえればふえるほど赤字になるということを思ってないのです。今御説明になったことをあわせて考えてみても、なお赤字の原因になっていると思う。もしそうでないなら、慶祝電報、あるいは弔電をやっなことによって赤字にならぬという正確な資料を私は出していただきたとい思う。たとえば弔電は違いますけれども……弔電だってそうだと思うのです。慶祝電報あるいは入学、そういうものをみんな昼の時間に打たれるのです。そうすると夜間のすいたときにはやはりそのまますいて、混んでいるときにやはりそこにまた波が大きくなってくるということで、今靱さんがおっしゃったようにはならぬのじゃないか。私は専門家でないからわかりませんけれども、その御答弁になるときに、私はあなた方を意地悪い質問をして困らせようと思ってやっているわけじゃないのです。なるべく赤字が出ないようにと思ってやっているのですから、そういうつもりで御答弁を願いたいと思うのです。それから私はそういうことでこの今の慶弔電報、それはそれでやめておきます。いずれまたそういう正確な資料を出していただきたいと思いますが、年賀電報ですね、これはほんとうにむだだと思うのです。年賀電報なんてこの前も申しましたけれども何のためにおやりになるのか、こんな年賀電報をもらって喜ぶなんというのはよほどこれは電報を見たことのない人じゃないかと思うのですね。普通の五円のはがきの方がよほど情愛がありますよ。印刷したものでも文句をあまりありがたくないというのでかなで書いておめでとうなんて、しかもこれがあらかじめ打った安い電報だと思って、これを喜んでいるなんということを考えられるのは、この電電公社が非常に近ごろサービスがよくて、私も非常に感心して方々で宣伝しているくらいなんです。また電通院時代にいろいろ御要望申し上げた市外通話料金の問題、あるいは料金の内容を御報告願うというようなことをことごとくおやりになっていただいて、私はもう電電公社の宣伝をしているくらいなんですがね、この年賀電報が喜ばれいてるなんというこの感覚ですね、これはよほどどうかしていますよ。またかりに喜んだってこんなものは今の生活を簡素にするとか、合理化するという精神からおよそ遠いものです。こういう点を反省されないかどうか、商売上手の電電公社ともあろうものがこんなことで人が喜んでおると考えておられては困ると思うのです。これはどうですか。
  302. 靱勉

    説明員(靱勉君) 年賀電報につきましては、私どもも必ずしもこれに非常な重点を置いてということじゃなく、今おっしゃったような点は確かにあると思います。ことに地域的にもそう広くないのですから、遠距離とか何とかの場合にはクリスマス電報とか年賀電報なんというものは確かにある意味においては、これは外国ではクリスマス電報という制度で動いているわけでございますが、これはまことに今おっしゃる通りな点も多々あるのでございますが、実際問題としてそういう需要もあるということで、これをどうしても積極的に年賀電報をぜひたくさんやらにやならぬとは考えておりませんし、また全然それは無意味だから廃止してしまえということにも考えていないのでございまして、これは結局利用者の方の需要というものをよく見まして判断いたしていきたい、こう考えております。  そこで一番初めの御質問でございますが、先ほど申し上げました通り、やはり世界各国どこでも国内電報につきましては赤字に悩んでおります。結局は料金をそう手当てしますればまた通数も減るというようなことで、まあ料金に限度もあるわけでございます。要するに先ほど申し上げましたように非常に手当にかかってくる。必ずしもたくさんの通数がなくても至急電報が来ますれば即刻夜中でも配達をしなければならぬ、こういう体制でありますので、できるだけその設備並びに人の稼働率を高めるという意味でできるだけ、まあ電報通数が増してくれば先ほど申し上げましたように、その収支率というものは改善される、こういうふうに考えておる次第でございます。
  303. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 利用希望者があるからとおっしゃいますけれども、こんなことは言いにくいのですけれども、二、三年前でしたが、あなたの方は各郵便局に割当をされたのです、そうして局員の人がわざわざ自宅まで訪問してやってくるしで、やらなくてもいい電報を打った者も相当ある、また会社方面にも同様ではないけれども、やられた。そんなことまでしてやられている。だから今のような御答弁では私は満足できません、これはどうしたらもっと赤字が少くなるということはもっと合理的に考えられたらよいと思う。こんなこそくな慶祝、弔電、弔電のごときはこんな制度があるものですから打たなくてもいい弔電を打つ、ほんとうは手紙で書いて慰めてやりたいと思ってもこういう制度があるからついこういうことをやるのです。かえって失礼です。それをまあ電報料が高いからありがたいなんて、あんなものをたくさんもらって読む者はない。あなたの方はよほど苦心して略語をたくさん作って、いやおめでとう、おめでとうございます。いろいろやる。受け取ったものはそんな内容を見ている人がありますか。略電に苦心している、そんなことでは公社がほんとうに公社の精神になっていないと私は思う。それはお役人の感覚ですよ。失礼だけれども、これだけで終らない、こんなことを言って宣伝されるものですから今度は、最近は何でも電報でやればいいということで、いろいろな陳情はみんな電報になってくる。それであるから束になって電報が来る、そうするとまたあれかと思って私も見なかったから中に重大な電報が入っていて私は物心両面で莫大な損失をこうむったことがあるのです。(笑声)ほんとうにそういう例がたくさんあるのです。あなた方は公社の中におってそういうことを御存じない。またそういう大した重要でない電報を夜間配達される方は持ってこられるのです。こんなものは明日の朝でたくさんだ、こういうけれども中には重大なものもありますからそうはいかない。非常に迷惑をしているのは国民です。電報なんというものは、外国の例を引かれますけれども、民度が違うのです。向うののんびりした人間と、こっちのまごまごしていれば食うに困って死ななければならない、こういうのと一緒に考えられたら困りますよ。電報なんというものは、人が死んだとか、あるいは急用で人が来るとか、そういうときに使う。このマイナスはこれまた別に考えればよい。場合によってはそういうものは電電公社から離して郵政省の方にやって、そしてこれはやるとか、あるいはこの赤字は国が負担するとか、そういうことを考えればいいことであって、そういう根本的なことをやらないで赤字の問題を押しつけられたから今度は国民にみんな慶弔電報をやれ、慶祝電報をやれ、弔電を打て、いや年賀電報だなんてみんなやられる、これによって国民生活が複雑になり、非常に迷惑をこうむるのは国民なんです。だからこの際反省される意思がないかどうか、今回広告電報をやめられたことは非常にいいのです。ついでにどうですか、おやめになったら……。
  304. 靱勉

    説明員(靱勉君) ごもっともな点、私どもよくわかるのでありますが、かつて割り当てたというお話もありましたが、非常に現場の人としましては、電報の減少ということを心配しまして、新しいサービスをやって増したいという気持も確かにあった。しかしながら御指摘のようなことは決して正しいことじゃないので、今割当というようなことはやっておりません。それから全般的に、慶祝電報でなく、年賀電報をやめる意思があるかということでございますが、慶祝電報につきましてはもちろん夜間等においては、至急電報以外は配達しておりませんから、そういうような特別に手教をかけるようなことはございません。ただいまのところといたしましては、年賀電報は、確かに御指摘の点なお考えなければならぬと思っております。ただいまのところ全般といたしましては、全般のサービスは維持していきたいと、こういうふうに考えております。
  305. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) これはもっと郵政省にほんとうはまだお伺いしたいのですけれども、あなたの方も赤字のものを押しつけられて、これは世界的で、どこでも赤字です。それほど本質的に電信事業というものは赤字なんです。その赤字を解消するために、国民の迷惑も省みないで、それをやろうというやり方は、私はやはり反省される必要があると思う。まあ今こういっても、あなたはやめるとはおっしゃられないから、これ以上やりませんけれども、適当な機会にお考え直しをされたらどういうものですか。私は特に靱さんのような、非常にものわかりのいい方が、きょうはほんとうはやめますというお言葉があるかと思っておったのですが、そうしたら広告電報をやめる、これはなかなかものわかりがいいと思ったけれども、あとの方になったら、どうもあまりよくない、こういうわけです。そこで今申し上げましたように、あなたの方があまり宣伝されるから、膨大な陳情は全部電報です。あなた夜間は、それは真夜中は来ませんよ、しかし夜おそく来ますよ。それは末端の方が非常に心配されて特別配達されるのです。実際来ておりますよ。私は非常にお気の毒に思うけれども、大したことでない電報が来ますね、そうして電報と言われると、あ、だれかいなかに病人があると思っておりますから、あれ死んだかなと思って、われわれえらい精神を悩ます、これはよほど考えていただかないと、われわれ小さいときから電報というときは死んだときとか、あるいはえらい何か変ったことでもなければ、電報というものはないというほど、何十年となくやっているのです。最近、(「考えが古いぞ」と呼ぶ者にり)考えが古いといっても、現実にそのたびごとに心臓がどきりとするのです。困りますよ。どうですか。われわれのことを考えて、一つ反省していただくわけにはいかないでしょうか、重ねて靱さんのお答えをお願いいたしたいのですが。
  306. 靱勉

    説明員(靱勉君) 夜間等の配達は至急電報以外やりませんが、しかしながら非常に生命の問題のあるような場合には、やはり夜間でも特別に配達いたしております。と同時に、陳情の例をおっしゃられましたが、私どもでもかなりそういうのが来る場合があるのであります。はがきなどもかなり、はがき戦術というので、盛んにこういう陳情が参っている。その中には普通はがきが入っている場合があります。これは、そういうものは困るからといって禁止するということは、私ども慶祝電報については、遺憾ながら考え直すことは不可能ではないかと思います。年賀電報については、いろいろ御非難があるかと存じます。先ほど私の申し上げたように、なお検討いたしますが、ただいまのところはそれでやつで、いきたい、こう思っております。
  307. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 夜間の普通の電報は来ないといっても、最近は、今度は普通の陳情の電報が至急報で来るのです。夜中に来ますよ。あなたはあまり下情に通ぜられておらないから困りますよ。われわれもう非常に悩まされておるのですよ。あなたは国会議員は幾ら悩んだっていいというのならそれでいいですよ。とにかく困っているから何とか考えてくれというのに少しくらい考えたっていいじゃありませんか。(笑声)
  308. 靱勉

    説明員(靱勉君) 陳情もおっしゃる通り、私どももいろいろ陳情の場合に夜間も配達されて困ったことがありますが、それは至急電報でございますとやはり配達することになっておりますので、電報局で勝手にそういうものを判断するということも間違いがあるわけでありまするから、特別の陳情の場合にはあるいは考えなければならぬと思いますが、私ども大体いろいろ陳情がある場合にはあくる朝にそういうものはしてもらいたいということを電報局に頼む場合もございます。ただともかく至急電報は必ずすぐ配達せなければならぬということになっておりますので、これは発信人の方の考えによるものでございますから、その点はなはだ御迷惑をかけているような点もありますが、全体の利用としてはその点悪いものではないのではないかと思います。
  309. 小林孝平

    担当委員外委員(小林孝平君) 私はもう最後に申し上げますけれども、そういうふうに電報を利用させるようになったのは、あなたたちがあまりこの仕事に一生懸命になったからそういうふうになったのでしょう。私はそれをあらかじめ三年ばかり前に御忠告していたのですけれども、そういうふうになるおそれがあるからこれはやめたらいい、その通りになってきたんです。その発信人の常識を、と言っても発信人に陳情しようと思っているからもう何でもかんでもいろいろやられるでしょう。ところがそれからもう一つは、はがきのことを言われました。はがきの中に重要なものも、陳情のはがきの中にも重要なものが入ってまぎらわしい。電報と同じだ、これだってそれは言いのがれですよ。手紙の場合は一目でこれは何だということがわかるのです。電報はかなでしょう。わかりませんよ、みんなかなである。とんとんとんとんみんな読まなければ……。はがきなら見てこれは関係があるかないかすぐわかるのです。靱さんはそれはあなた悩まされないから、国会だからきょう一日だから何とか話しておけばいい、僕らは日々悩まされておるから、これはもう陳情に類するものですよ、あなたに……。そういう声があるのを私はこれをやるためには長い間実際僕だけどうかというようなことも調べてあなたに言っているのだから、そうその簡単にきょうだけのがれればいい、あともう十分くらいでやめるだろうというようなことで答弁されてはだめですよ。私何べんでもやりますからね、これから。赤字の処理は例です、これはあらためてやりますが、あなたたちの責任ではないのです。これは世界の電信事業というものはみな赤字になるのです。それをみんな自分の責任のように思って、思われることはそれはあなたのりっぱなところだけれども、責任を負わぬでもいいようなところまで考えているからそういうことになるのです。私はもうほかの方が御質問なさいますからやめますけれども、そういうことでなくもう少し親切に、そうしてその国民の声を聞かれて、反省される必要があれば反省されたらどうかと思うのです。今ここですぐやめるかどうかの返答を聞こうとは思いません。御調査の上そういう余地があればおやめになったらどうかと思います。またいたずらに電報を打つようなことはやめろということをむしろ積極的に国民に呼びかけられた方がいいと思うのです。出せということの逆に、電報はそういう不必要なものは電報でやるべきではないということを、外国の例を言われますけれども、外国と日本は違います。外国の例とよく言いますが、外国の例をいえば、外国はみな再軍備をやっているのだから日本もやらなければならぬということになるのです。そういうことはだめです。日本は日本です。靱さんに特にお願いしておきます。
  310. 靱勉

    説明員(靱勉君) 決して簡単に答弁して、いいかげんなことを申し上げる意思は毛頭ございませんから、その点は御了解願いたいと思います。いろいろと私も実は同じように悩まされたこともありますので、その実態は存じておりますが、結局慶祝電報につきましても、人間生活の儀礼と申しますか、そういうものを電報の機関というものは絶対に使うべきでないというふうに判断できますかどうか、いろいろ御意見もありましたが、先ほど申し上げましたように、同時に私の方も電信事業の合理化ということ、これにつきましては公社内に委員会のようなものを設けまして、一応結論を急ぎつつありますので、総合的にいろいろ施策を考えたい、こういうつもりで検討いたしております。
  311. 海野三朗

    ○海野三朗君 今の電報のことですが、これは実際困るのですよ、夜どんどん戸をたたいて電報々々という、新聞を見ると、ときどき悪人がこうやって、電報と言って女ばかりのところへ踏み込んでいく、そういうふうな犯罪を防止する点についてはどんなふうなことをお考えになっておりますか。これは夜おそく電報々々と呼ぶのです。何かと思ってあけてみればどっこい電報。こういう方法を防止するという点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。  それからもう一つは、陳情電報で何何会長という名前がないのがくるのですね。これは実に困る。そういうのは僕は続まないようにしている。そういうふうな弊害があるので、そういう点についてはいかようにお考えになっておりますか。一つ御高見を承わりたい。
  312. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 非常に御迷惑をかけている向きも、事例は私どもはよく伺っておるのです。そこで公社の立場といたしまして電報を必ずうちへ配達をするばかりでなく、電話があるお方には電話でなるべく電報をお送りする。こういうことによってわざわざうちまで行っていろいろ御迷惑をかけるということなく、かつまた早くいけるということを考えております。なお利用者の方のいろいろな御注意も十分考慮いたしまして、こういうことのまた御心配のないようにというようなことでなおいろいろな施策を今考えております。
  313. 海野三朗

    ○海野三朗君 今米軍の方に対しての電話はどうなっておりますか。駐留軍に対する電話交換手は、それはどうなっておりますか。
  314. 吉沢武雄

    説明員(吉沢武雄君) 駐留軍に対する電話の施設なり交換手の問題でありますが、これはただいま正確な数字を持ち合せませんが、駐留軍の施設区域内には特別な駐留軍の専用の電話局がございます。そこに私どもの交換手が行っている、また保守の人間が行っている、こういうわけでございまして、最近はだんだん数が減っております。
  315. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 海野君、関連ですからその程度で……。
  316. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 中共との郵便関係ですがね、これについてちょっと御説明を願いたいのですが、現在貿易も相当進んできたし、その他のいろいろな交流が行われているので、郵便をもう少し円滑にやりとりができるようになったら非常にいいと思うのですが、現状はどうなっているか。それは変えようとすればどういうことが必要になるか、あるいはどういう障害があるか、それらの点について一応御説明を願います。
  317. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 御質問の点は非常に大事な問題でございます。しかし中国とはまだ国交が回復いたしておりません。従いまして郵便、電信その他の業務も正式には開始されておらぬのでありまするが、お話のごとく日中貿易が主張されておる今日、やはり貿易に先駆するものは通信業務だと、こう考えておりまするので、これはすみやかに政府としても考えるべき問題だと、かように思います。具体的な問題については担当官から説明いたさせます。
  318. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 中共との郵便関係につきましては、目下のところ通常郵便物の一部が香港を経由して交換されておるところでございます。しかしながら香港経由ではいろいろ不便の点もございますので、これを直接交換に切りかえることができるようにと考えまして、その点中共の郵政当局との話し合いができますように事務的に取り運び中でございます。
  319. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 香港経由というのはどういうことを意味するのですか。中共は郵便協定なり何なりに入っていないのでしょうが、そこいらはどういう関係になるのですか、協定は。
  320. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) お答え申し上げます。現在中国は申し上げるまでもなく、いわゆる二つの中国に分れておるわけです。郵便につきましては御承知のように万国郵便連合条約というものがございまして、その条約にのっとりまして郵便物が交換されておるわけでございます。ところが、現在の万国郵便連合条約には中国は国民政府が加盟しておることになっておるわけであります。いわゆる中共が万国郵便条約の適用地と申しますか、国民政府の加盟しております条約の効力が中共まで及ぶかどうかということにつきましては、これは現在の中共の社会的な地位その他にかんがみまして、いろいろ意見もあるわけでございます。従いましてただいま政務次官からも申し上げましたように、まだ中共との正式な国交もございませんので、私どもといたしましては事実上中共と直接郵便の交換をするということができないものでございますので、香港を経由して交換をしておる、かような状況にあるわけでございます。
  321. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 香港を経由するのだが、香港までは万国郵便協定なり何なりでいって、そこから向うに入るときには協定なり何なりはどういうものにのっとって入ることになるのですか、
  322. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) その点はちょっとあいまいな点もございますのですが、まあ、ことに通常郵便物につきましてはこれは九十五カ国も万国郵便連合条約というものに加入しておりまして、ほとんど世界のすみずみまで外国郵便が届くようになっております、従って厳密にいいますと、たとえ香港といえども中共との関係においてはいろいろ問題があるわけでございますが、郵便という特殊な性格と申しますか、そういう点から事実上郵便物がそこを通っていく、中共と香港の間は正式に国交が回復されておるかどうかわかりませんが、いろいろな点で交流があるようでありますので、その交流のある香港を窓口といたしまして中共へ届くように事実上そうなっております、
  323. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、万国郵便条約には中国として入っておるだろうと思うのですが、その場合に中共に及ばないという考え方は、その協定者たちが万国そういう認識をしているのか、そうでなくて、その人たちはそこはやかましく言わないんだけれども、中共側が、台湾政府の代表者がサインしたようなものには認められないし、従ってわれわれはそれを受け入れない、という態度でそこの疎通はうまくいかないのか、そこのところはどうなんですか。
  324. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 先ほど申し上げましたように、国民政府が万国郵便連合条約の加盟国ということになっているわけでございます。従いましてこの国民政府の主権が現在の中共の地域にまで及んでおるというふうに考えますれば、その万国郵便連合条約の効果も一応形式的には及んでおるということも言えるかと存じますが、しかし実際問題といたしますれば、現在の状況からいたしましてそうかりに考えたといたしましても、その法律的効果が及んでおるかということ、また事実問題といたしましても、国民政府の加盟しておるその効果としてすぐ中共が受け入れてくれるかどうかということもむずかしい問題だと思います。で、ただいま御質問になりましたその効果がどうかということにつきましては、いろいろ国際法上も学者の間でも意見があるかと存じますが、私どもそういうむずかしい問題は一応別といたしまして、郵便という特殊な性格からいたしまして、きわめて事務的に、技術的に郵便物が中共に届くような方法を考えていきたいと、かように考えているわけでございます、
  325. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、その国際法上の問題は別に他の機会に譲りますが、通常郵便物はそうなっていて、小包の方はどうなります。
  326. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 小包郵便物につきましては、これは万国郵便連合条約におきましても、先ほど申し上げましたように、通常郵便物につきましては、その万国郵便連合条約に加盟しておる国におきましては、条約が成立しますれば当然にどこの加盟しておる国にもそれが直接交換できるような建前になっておるわけでございます。しかし小包郵便につきましては、一応万国郵便連合の小包約定というものがございますが、しかしそれに必ずしも加盟しなくてもいいことになっている、つまりその約定通りに加盟国全部が約定に従って交換しなくてはならないという建前にはなっておらないわけでございます、従いまして、たとえば現在でもアメリカとかイギリスなどにつきましては、私ども個別条約なり協定というものを結んでおるわけでございます。さようなわけでございまして、ちょっと通常郵便物と小包郵便物との建て方が異なりまするので、小包郵便物を中共へということになりますと、中共と正式な話合いで協定を結ばなくてはちょっとできない、こういうことになっております。
  327. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると通常郵便物については今のところ香港経由でほとんど支障はないと思っていいですか。たとえば直接にやればもっと簡単にいくということがあるが、その程度の支障はあるけれども、日にちが少しかかるということになるのかと思いますが、直接には支障がないと考えていいですか、これはどうですか。
  328. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 先ほど通常郵便物の一部が、と申し上げましたが、その通常郵便物の中におきまして、たとえば書留とか、あるいは価格表記というようなもの、すなわち損害補償ができますもの、そうした郵便物につきましては、それぞれの特別の手続が必要なものでございますので、現在そうしたものにつきましては残念ながら中共の方には届かないという建前になっております。しかし大部分の普通の通常郵便物は届くと、こう考えていただいてもけっこうじゃないかと思います。
  329. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると通常郵便物、さらには小包まで直接に中共に送るという道を開こうと思うならば、今すぐ中共が中共として万国郵便条約に加盟するとか何とかいうことは非常にむずかしい問題があるから、日本と中共との間に何か個別の業務協定を結んだら、それは直接に行けますか。
  330. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) ただいま先生のおっしゃいました通りでございます。
  331. 岡田宗司

    岡田宗司君 中共が万国郵便条約に加盟してない。しかし中共とイギリスとは国交回復はしていますね。その際にイギリスと中共と別な条約を結んでいるようですか。
  332. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 先ほど申し上げましたように、通常郵便物につきましては、加盟しておる国はどこでも交換できるわけでございますので、中共とイギリスとが国交回復しておるということはございましても、その辺のところ非常にむずかしいことになるかもしれませんけれども、中共が万国郵便条約に加盟しておるかどうかということによって……、まあ、よその国から、つまりイギリス以外の国からは当然にそこへは行かないということになるわけなんですが、今お話のございました、国交回復しておるからイギリスと中共との関係はどうかということにつきましては、これはイギリスと中共との間において、しっかりした何か取りきめがございますれば、これは当然通ずると思います。しかし取りきめがもしございませんならば、事実上私どもどうなっておるか存じませんが、たとえば今の日本と中共とのような関係程度のものはあるのじゃないかと考えております、
  333. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはね、どうして聞くかというと、さっき中共は万国郵便条約に入ってない、ところが香港はイギリス領、それで香港と中共との間は、どんどんもう普通のように郵便物が行って、日本もそこを通って中共へ物を送ることができるようになった。だからイギリスと中共との間は、きわめてスムーズにいっているわけだ。そこでそれは特別にイギリスと中共との間に結んでいるのか、それともイギリスはですな、中国が万国郵便条約に加盟しているとしかし今台湾政府というものをイギリスは認めてないから、従ってその継続として、政府が継続しているものとみて、署名は国民政府がしたにせよ、中共は万国郵便条約に加盟せるものとして取り扱っていると、こういう解釈でやっているのかどうか。もしそうだとすれば、日本だって中共との間にそれができないわけじやなかろうと、こういうことなんだがね。
  334. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) 中共とイギリスとは国交が回復しているというわけでございますので、郵便の交換につきましても、中共とイギリスとの間におきまして、あるいは特別なる話し合いがあるかも存じません。その辺のところは私、実はつまびらかにいたしておりません。従いまして日本と中共との関係は、現在国交が回復しておりませんので、多少違う点があるかとは存じます。
  335. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、どうしても直通するためには、これは中共と日本との間に、郵便上の業務協定みたいなものを結ばなければならないと思うのですが、これは中共承認その他の問題に関連をすることかもしれませんが、しかしこれはちょうど人道上の問題はこれは別だというふうな考え方をとろうと、現在の政府は考えている。この間、岸総理に行方不明者の調査その他のことについて、役人自身が直接に、向うの役人とこっちの役人と交渉をすることをやられるかと言ったら、それもやる。さらに、それじゃ必要とあらば、そうして向うがそれを許す、あるいは希望するならば、日本の役人を北京に常駐して、その行方不明者の調査をさせる等のことをやってもいいというお考えかという質問をしたときに、総理は、これは人道上の問題だからやります。その点までは進めますということをはっきり明言をされて、事務当局はそれに従って処理をしておる。ちょっと問題は違いますが、この郵便協定の問題もそういう意味で人道的ではないかもしれないが、純粋に技術的な業務上の問題として両国の間に政府間交渉を開くということ、しかも政府間交渉を、たとえばジュネーヴあたりでやるということでなくて、現地で、北京なら北京で、あるいは向うからこっちへ呼んで役所で役人が直接に交渉をやるということが必要だと思うのですが、それはやるべきだし、やっていいというふうな判断をされているかどうか、これ一つ政務次官に……。
  336. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 大へんむずかしい答えになるのでありますが、一体郵便精神というものは、私はこれがほんとうの平和主義だと思っております。そこから出たものだと、こう思っております。ですから郵便協定をしない、中国とも今のところでは郵便がとにかくまずまず流通ができるというこの一点は、やはりこの郵便精神の発露だと、こう私は思うのであります。さような見地からいいまするならば、佐多先生はただいま人道上からとおっしゃいました、私もそういう点は同感でございます。しかしこの問題はいやしくもやはり国交に関係のある問題でありまするから、政務次官からこの点をどうするというお答えをすることはかえってよくないと思いまするので、私の気持は以上申し上げた通りでございます。
  337. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこのところは非常に大きな政治判断になると思うのですが、これは大臣がおられたら大臣にもう少し決意のほどをお聞きし、さらにはこっちも要望したいと思っているわけですが、政務次官今のようなお答えだから、これ以上はその問題については追及しませんが、しかし精神としてはそうであるべきだ、あっていいと田ふうと、精神としては、というお考えだと思うので、それを前提にしてもう一つお聞きしますが、それならば、そういうふうに役所間の郵便協定の、これはまあ一種の業務協定でけっこうだろうと思いますが、その協定をかりにやるという場合に向うを東京へ呼んでやった方が便利だとお考えになるか、あるいはこっちからむしろ二、三の役人諸君が北京に行って北京でやった方がいろんなあれ上有利だというふうにお考えになるか、その辺はどういうふうにお考えですか。
  338. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 非常に重大な問題でありまするから、答えをいたしますることは遠慮する方がよろしいかと、こう考えております。
  339. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、少くともジュネーヴその他ではそういう話はおやりになるか、現在やっておられますか。
  340. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 私の私見としては、私は差しつかえないと思います。それを希望するわけでございます。
  341. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、これはもうそれから以上は意見と希望になりますが、それならばもう一つ進んで、やっぱり当事者の現地で直接にやるということをぜひ担当の省あるいは事務当局としても一つお考え願ったらどうか、それからもし中国の方でどっちでもいいというような場合には、向うをこっちに呼んだ方がいいというか、あるいは私はよく事情がわかりませんからわかりませんが、むしろ日本の方は政府直接の専業ですから、政府の二、三の責任者が北京に行かれると、きまる問題だろうと思いますから、むしろ役人を向うに派して、北京で現地交渉されることの方が早いように思いますが、そういうことが早い機会にあり得るように希望をするし、またそういうふうに開けることも目途におきながらいろんな準備を一つおやり願い少くとも予備的な準備はおやり願いたいこういうふうに考えますが、どうですか。
  342. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 御意見として承わっておくことにいたします。
  343. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それから、それに関連してもう一つ電信と電話ですか、これはどういうことなのですか。
  344. 松田英一

    政府委員(松田英一君) お答え申し上げます、電信につきましては、これはずっと戦前から電信の日本と支那大陸との間の連絡がございまして、戦争後一時とまっておりましたのですけれども、また占領時代に回復いたしまして、現在もその後上海とやっておるわけでございますが、それが中共にかわりましたときに一時とまりましたけれども、直ちに業務を開始したいというふうな現場同士の話し合いでもって、すぐにそのことがまた、当時まだ司令部がおりましたころで、その方からもいいという話で始まりまして、その後ずっと現在まで引き続いてやっておりますので、電信の方は現在通じております。電話の方はまだ要望がありませんので始まっておりません。
  345. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 電話もやろうと思えばできますか。
  346. 松田英一

    政府委員(松田英一君) 電話の方は機械その他の点がございますが、しかしやろうという気が両方にあれば可能です。
  347. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これがやれるのは、何ですか、国際電電かなんかが、主体はそっちですから直接に政府機関でないから、そういうことがさっきの郵便とは違ってやれるのか、技術的に。そういう技術的な面はやれる。しかも現実にやっておる、しかも郵便で言うならば、政治的な支障がないというのはどういう事情に基くわけですか。
  348. 松田英一

    政府委員(松田英一君) 電気通信の場合におきましては、国際条約におきましても、それぞれの業務の担当者といいますか、これには民間企業もございますし、政府企業もございますが、兼務の担当者自身がお互いに業務協定といいますか、契約を締結して適当に業務を開けるということになっておりますので、従って電信におきましては、もちろん日本の場合にもそういうものをやる場合には政府の認可ということは必要でございますけれども、事天上はお互いの業者同士のことでやっておるわけでございます。ただその場合に、実際外国の例を見ましても、政府がその間にあっせんに入る場合もあり、入らない場合もあるということでございますので、そのときの情勢その他によりまして、やり方はいろいろあると思います。
  349. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、連絡の主体はこっちでは国際電電ですか、国際電電が向うとやっておるわけですか。どこがやるのですか、連絡の主体は。
  350. 松田英一

    政府委員(松田英一君) 国際電電が直接にはやっておるわけであります。
  351. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと問題が違いますが、郵便貯金のことなんですが、郵便貯金の増加目標額が、昨年の三十一年度九百九十億、三十二年度千百五十億の目標ですが、九百九十億という目標は実績から見ましてどうなっておりますか、三十一年度は。
  352. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) 三十一年度は九戸九十億の目標に対しまして、ちょうどただいまで一二〇%行っており、まして、増加高は一千百七十億でございます。
  353. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その前の三十年度の目標の場合は一千一百だったと記憶しますが、このときには実績は幾らだったのですか。
  354. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) そのときは成績があまりよくございませんでして、たしか八三%で、金額にいたしますと、八百五十億だったかと思います。
  355. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、三十年度千百億の目標を立てたがあまり成績がよくなかったので三十一年度は九百九十億に下げられた。前年度より目標を下げた、しかし今お話のように千百七十億になった、こういう実績から考えますと、今度は三十二年度千百五十億というのはむしろ低目にできた目標で、実績あるいは努力の仕方によってはこれを相当オーバーするというふうに見ておいていいでしょうか。
  356. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) ちょうどその千百五十億という目標をきめました予算提出いたしましたころの状況におきましては、大体例年の例から申しますと、郵便貯金は一二月から一月の初めにかけまして非常に伸びるのでございますが、二月、三月のいわゆる入学とか卒業とかいろいろの場合に非常に貯金を引き出しすることが多くなりまして、大体の例年の例によりますと二月、三月で五十億近く引き出しされて、結局その五十億ぐらいが赤字になるのが例年の例でございましたが、大体千百五十億ということはむしろそれよりも来年度の実績は下るという見通しであったわけでございまして、それでちょうどこの三十一日の計数がまだはっきりしたものがおくれて出るわけでございますが、ただいまの状況では一日に大体十億くらい現在引き出しされておる状況でございますので、ただいま申した数字はちょうど二十九日の数字で千百七十億でございますが、三十一日をもって締め切りました結果によりましてはおそらく千百五十億を割るのではないかという見通しを持っている次第でございます、従いまして来年度の目標は本年度の実績と比べてたまたまとんとんということになったわけでございますが、やはりわれわれといたしましては、安全度を見込みまして、まあ与えられた目標は必ず完遂しようというような気持で従来やっておりました次第でございます。
  357. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 まあ安全度を見て、含みをもたしてやっておられるそのお気持はわかりますが、実際の問題としては、この収入は相当ふえる。減税その他で貯蓄性向はふえる、上るというよようなことから考えると、少くともことしの、三十一年度の実績よりか相当は上回るものと見ていいのではないかと思いますが、その辺をどうお考えになるかということが一つと、それから現在のような、今年度あるいは来年度みたようなときに、郵便貯金に移行する方と、そうでなくて銀行その他の金融機関にそういう貯蓄余力がいく傾向とはどういうふうだと見ておけばよいのか。というのは、特にそれをお聞きしたいのは、三十年度は銀行預金その他から見れば、すでにあのときに相当ふえたのではないかと思うのですがね。それにかかわらず郵便貯金の方はむしろ目標より非常に減った。全体としては貯蓄なり何なりは伸びているにかかわらず、郵便貯金の方は減った。その反動というか何というかが今三十一年度に来ているのでありますが、そういう傾向が三十二年度にはどういうふうになると見通しているのか、一般の貯蓄の伸びほどには伸びていかないと見ていいのか、一般の貯蓄の伸びよりもっと郵便貯金の方が伸びると見ていいのか、その辺はどうなんでしょうか。
  358. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) ただいまの御質問にお答えいたしたいと思いますが、実は三十年度におきまして非常に郵便貯金の成績が思うようにいかなかったという原因はいろいろあると思いますが、そのうちの一つといたしまして、御承知かと思いますが、租税特別措置法におきまして、時限立法といたしまして、銀行預金のいわゆる利子に対する課税が免除されたことがございました。そういう点からいたしまして、おそらく預金者の心理といたしまして税金を課せられる、総合課税をされるようなことをおそれまして、郵便貯金に、従来は郵便町金は無税であるという建前から郵便局に入れておきましたが、それがまあ二年間銀行の方が大丈夫だということになりましたので、相当銀行の方に郵便貯金が向いたのじゃないかというふうに考えるのでございますが、しかし、その後あれは時限立法で、本年の三月末日をもっておそらくそれがなくなる、銀行の方は課税になるという考え方でありましたので、郵便貯金の方へ相当それがふえてきたというふうに考えておるのでございますが、御承知のように、この四月一日から一年間、いわゆる長期の、銀行預金の一年ものにつきまして、また二年間でございますか、時限立法として課税されないということになりましたので、これを郵便貯金と比較いたしますと、銀行の一年ものの方が、利子の点におきまして相当銀行の方が得であるということになりましたので、この点われわれといたしましては、郵便貯金の方が非常に損でありますので、郵便貯金の増加が、そういった一年ものにつきましては銀行の方に相当吸収されるのじゃないかということを懸念しておる次第でございますので、私どもといたしましては、仕事の上から考えましては、一千百五十億という目標は、相当勉強を要するような額ではないかと、こう考えておる次第でございます。
  359. 岡田宗司

    岡田宗司君 電電公社の方にお伺いするのですが、二点、三十二年度は五カ年計画の最終年度ですか、三十一年度の終りにおいて、この計画が大体何%達せられているか、それから三十二年度においてこの計画は全部達せられるか、これはごく概略でいいです。それが一つ、  第二点は、三十二年度で五カ年計画か鈍るとすると三十三年度から新しい五カ年計画か年カ年計画かお立てになるだろうが、それも大体できているたろうが、その概略を、従来の五カ年計画に比べての規模、どのくらいになるか、それをちょっと、その二点だけ、
  360. 靱勉

    説明員(靱勉君) お答え申し上げます、三十一年度でございますと、計画に比しまして、大体、あるいは加入者の数とか市外電話回線の増設、その他公衆電話、あるいは構内交換電話、ケーブルの施設、マイクロウエーヴの設備、こういうものは予定よりある程度上回って出ております。そこで、三十一年度、この御審議願っている予算通りに実行いたしますと、大体全体におきまして全部上回って参りますが、おくれておりますのは、電報の中経機械化と申しまして、人手を要しないで電報がA局からBを通ってCへいく、こういうのが予定よりおくれております。それから市外電話局の建設が当初予定したより若干おくれている。その他は、あるものにつきましてはかなり大幅に伸びている、こういう状況でございます、それから三十二年度終りまして、第二次と申しますか、三十三年度以降九カ年計画というものは、私ども目下検討いたしております。その大きな目標といたしましては、この五年間やって参りまして、かなり加入者数も百万近く増したのでございますけれども、依然として需要に対して供給は大体三割程度ということで、この壁がいつになっても突き破れません。そういう状況になっておりますので、大体第一次五カ年計画におきましては、予算としまして加入者大体十八万ということでございましたが、今後やはり二十万か、あるいはもう少し上回ったところをやりませんと、なかなか積み残しと申しますか、たまっていってしまうのが解消できないというので、もう少し規模を大きくいたさなければならぬ、こういう考えで今検討いたしております、
  361. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 さっきの郵便貯金で千百五十億としますと九百九十億に比べて百六十億くらい予定よりふえると思うのですが、それを引っくるめて資金運用部特別会計資金調達全体としてはそれがどのくらいふえるか、それからふえた分の運用の問題はどういうことになるのか、これは大蔵省からと思いますが、もしあなたの方でおわかりだったら聞かして下さい、
  362. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) この千百五十億と申しますのには、いわゆる預金者に支払いまする利子も含まれておりますので、実際の現金の増加は約八百五、六十億と記憶いたしておりますが、それが結局預金部に入りまして、郵便貯金の金として運用されるわけでございます。それでもちろんこれには郵便貯金だけでなく、簡易保険の方のものも加わりまして入るわけでございます。
  363. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこのところ、そうじゃなくて、資金運用部特別会計は、資金調達として郵便貯金の分を九百九十億予定しておられるわけでしょう。だからその九百九十億に該当するものが千百五十億だ、実績は、ということなんでしょう、そうすると、資金調達の面では、ほかの方が、郵便年金とか、簡易保険とか、その他がどうなるかにもよるでしょうが、全体としてやはりほかの方に大きなマイナスさえなければこの百六十億は資金調達分として増加が出るわけですね。その予定より多く集まったのは運用の方面ではどう考えられておるのかこれは運用審議会はあなたの方もお入りなっておるでしょう。
  364. 八藤東禧

    政府委員(八藤東禧君) 佐多先生のお尋ねの、預金部関係の方の資金のふくらみ状況でございますが、御承知のように、私どもの方では預金部に預けることにおきましては、非常に多額のあれをいたしているわけでございますが、体系それ自身にはちょっと直接関係がございませんので、どのくらいふくらむかということは申し上げることはできないのでございますが、手元にあります資料で申しますれば、ちょうど三十一年度においては、預金部全体としては千六百九十九億という予定であったのが、三十二年度予算では二千百二十八億・五というふうに、全体の金はふくらましているようであります。そうしてこのふくらんだ数の中に、今の郵便貯金の千百五十億が入っていくわけでございますが、その程度で、これは預金部の三十一年度千六百九十九億に対して三十二年度二千百二十八億になる内容が、ほかに貯金以外に何があるか、私どもちょっと手元の資料ではわからないのでございます。はなはだ間接的な数字でございますが、そういう数字は手元に持っている次第でございます。
  365. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私が聞いているのは、今のお話しの郵便貯金の九百九十億を引っくるめて三十一年度は千六百九十九億の計画を立てられたわけですね。このうち郵便貯金関係は百六十億ふえるのだ、ほかのところに非常なマイナスがなければ、千六百九十九億というのは百六十億はふえることになる、わかればそれ以外の項目でもどうなるのか知りたいのだけれども、それがわからないとするなら、大体百六十億きることがないと思うのですから、百六十億ふえる、実際として、そのふえた分の運用をどういうふうに考えられるのか、それはまだきまってないのかどうか。単に前年度よりの繰り越しとして百二十五億以上のものを繰り越されるのか、そこいらの見当です、
  366. 小野吉郎

    説明員(小野吉郎君) お答え申し上げます。今正確な資料は数字で持っておりませんで、数字でお答え申し上げかねますことを非常に遺憾に存じますが、今年度の当初、三十一年度当初、資金運用部といたしまして計画いたします資金の集積高につきましては、郵便貯金を除きましたその他の資金は大体予定通りについておるのでございます。先ほど貯金局長が御答弁申し上げましたごとく、郵便貯金におきましては千六百何がしのうち九百九十億の資金集積を予定しておったわけでありますが、実積はまだ算定がはっきりできておりませんので、大体大よそ予定せられますところ千百五十億見当のものが実積として上るわけでございます。従いましてそこに九百九十億との差百五、六十億の、予定以上の集積を見るわけであります。ところが現在までのところにおきましては、年度当初の計画を中途で融資の面におきまして変更する措置資金運用部でとっておらないのであります。従いましてその剰余はそのまま融資の形では三十一年度現われませんで、そのまま持ち越し資金としまして、来年度の集積予定の中に入ってくるというようなことに相なるのではないかと思います。
  367. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、前年度繰り越しの百二十五億が、さらにプラス百六十億足して二百八十五億くらいの前年度繰り越しということになるのですか。
  368. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) どうも大へん資料が見つかりませんで、申しわけないことをいたしました、  実は三十一年度は先生のおっしゃいました通り九百九十億のいわゆる目標でございまして、三十二年度にはいわゆる千百五十億にふくらむわけでございますが、実際は……。
  369. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 二年度でなくて、私の言っているのは三十一年度計画と実積を比べると、実積が千百五十億になるでしょう、従って百六十億ふえる、それは、今次官のお話だとそれが前年度よりの繰り越し百二十五億にさらにプラス百六十億になって、二百八十億という前年度繰り越しということになる、そうすると私の疑問はその百六十億が資金調達の面に、もうすでに確実にふえるのみならず、千百五十億がこれは辛過ぎるから実積はもっとふえるだろう、そうすると資金運用部資金調達というのは相当ふくらみがあるという問題が出てくるわけです。そこいらのかげんをどう考えておけばいいかという問題です、
  370. 小野吉郎

    説明員(小野吉郎君) 現在の郵便貯金の増減、いわゆる年度当初計画いたしました九百九十億よりもどのくらい多く出るかということは、まあ最近になりまして非常に明確になったわけでございますが、郵便貯金といたしましては先ほど貯金局長が御答弁申し上げましたるごとく、年間を通じまして見よすと、月々の上昇、下降のカーブが大体毎年同じようなカーブをたどっております。そのカーブでいきますと、例年三月という月は非常に郵便貯金の増でなくむしろ減になっておるようでございます、はなはだしいときは六十億ばかり引っ込んでくるような減になります。この減は年度によりましてかなりの差はありますが、三月中における増は見込み得ない、大体赤字を出すということは郵便貯金の長年の傾向でございます。従いまして来年度計画を立てました当時におきましては、郵便貯金でぎりぎり今年度どのくらいの増を見ているかということは、まだ未定であったわけでございます。十二月ごろから組んでおりますので、未定であったわけでございます。現在までのところでは、その後十二月から一月にかけましての増が非常に多うございまして、そういう関係で百数十億に上る計画で、資金が集積されるであろう、こういうような見通しを持ち得るような段階は二月以降あとになりまして持ち得たわけでございます。従いましてこの金は今年度内におきましてはさほど融資の対象になっておりません。全然ないかと申しますと、ある一部短期融資の面には出ておるかもわかりません、長期関係におきましては、来年度の計界におきまして二千百何億を見込みましたときには郵便貯金のこのような大きな計画増はまだ未定であったということでありまして、従いましてこの金は短期融資になっておりましょうと、あるいはそうでなく手持になっておりましょうとも、予定外の資金の集積高としましては、来年度に持ち越されるというようなことに相なるわけでありまして、これを来年度どのように使いますか、いろいろ地方公共団体貸付等にいたしましても、県の地方財政の健全化の線に沿いまして、融資の面ではかなりそういう放漫な融資をいたさないようにいたしておりますので、長期計画を変更することになりますか、あるいはこれを短期融資の原資として来年度運用いたしますことになるか、いずれにいたしましても予定外に来年度に持ち越しの資金というような形になって参ろうかと思います。
  371. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) 御説明いたしますが、ただいま次官からのお話がございましたのを補足させていただきますと、実は三十一年度は九百九十億の目標であったものが、ちょうど二日ばかり前におきまして千百七十億の実積がいっておる。それでその間百八十億もふえておるじゃないか、従ってこれが預金部のいわゆる運用部の計画との間に百八十億も違うじゃないか、そうするとその運用計画がまあ非常にしつかりしてないというような先生のお話でございましたが、実はこの資金運用部委員会、あの計画ができる前におきまして九百九十億のこちらは目標でございましたが、相当十月、十一月ごろから非常に成績がよかったものでございますから、大蔵省と私の方と協議をいたしまして、実は九百九十億の目標を千八十億に改訂いたしまして、それを大蔵省はもとにいたしまして、あの資金運用部計画を立てておるわけでございます、従いまして実はこの千百七十億というものにつきまして、それでは三月三十一日ぎりぎりで預金部に預託される額は幾らかということを私ども検討いたしたわけでございますが、大体私どもといたしましては現在千百二十億円となる見込みでございます。従いまして千八十億との間に四十億というものの差ができるわけでございますが、これはおそらくただいま次官からもお話がありましたが、翌年度に繰り越されるものになるというように考える次第でございます。
  372. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると年度内に運用計画を変えて、すでに食っておられる、それであと少しが繰り越されるというわけですね。いやその事情がわかればそれでいいのです。  ちょっと一つだけ、さっきの御説明のところに郵政事業特別会計というのは始終使うのですが、郵便貯金特別会計という言葉がありますね、これを郵政事業特別会計との関係はどういうものですか。
  373. 加藤桂一

    政府委員(加藤桂一君) 郵便貯金につきましては、すべて上ってくる金はいわゆる預金部資金といたしまして預金部に預託することになっておりまして、それからある一定の利率で郵政省へいわゆる預金部から経費をもらいまして、郵便貯金の運営に充てておるわけでございます。従いまして郵便貯金の金を一括いたしまして、郵便貯金特別会計というものを郵政省の中で作って運営いたしておるわけでございまして、その内訳は大体現在預金部から本年度は六分、三十二年度も六分でございますが、総預け高に対しまして六分の利率でこちらが経費をもらいまして、その中から預金者に利子を支払うのと、それから運営の経費に充てておるわけでございますが、実は今、現在貯金のコストは六分六厘ということになっておりまして、そのうち二分四厘に相当するものが運営経費でございまして、四分二厘に相当するものが預金者への支払い利子でございます。従いまして六厘というものの逆ざやが出ておるわけでございまして、これが大体四十億に相当するわけでございますが、これは預金部で運用いたしておりますので、預金部のいわゆる運用益剰余金が出ますが、それをもちまして郵貯特別会計のいわゆる赤字を補てんするということになっておりますので、預金部から四十億をもらって成り立っておるわけでございます、そういう郵便貯金だけを特別に郵貯特別会計というものを作りまして経営いたしておる次第でございます。この郵貯特別会計からさらに郵便局の窓口などで郵便貯金を扱っている従業員の経費等につきましてあるいは郵便局の建築その他郵便局で負担するような特別の負担分につきましては郵貯特別会計からさらに郵政事業特別会計にいわゆる繰り入れを行なって経営いたしておる次第でございます。
  374. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) ほかに御質疑ございませんか。
  375. 海野三朗

    ○海野三朗君 切手のことでありますが、いろいろなこのごろ記念切手が出ますが、インドやビルマあたりでは、セイロンでも国をあげて、つまり仏陀の生誕二千五百年祭を祝福するという、国をあげてのお祝いする際には、たとえばインドのガヤ市の大塔なんかを切手に出してやったならば国際的に非常におもしろいのじゃないかというふうに考えるのですが、どういうものですか。あるいはセイロンの何か名勝とかそういうものを日本の記念切手に出してやるというのが国際的に非常におもしろいのじゃないかと思うのですが、それはどうお考えになりますか。
  376. 千葉三男

    説明員(千葉三男君) お答え申し上げます。記念切手の発行にきつましては、ただいま先生がおっしゃいましたようなことも確かに一つの考え方として考えられるかと存じますけれども、私どもの方の従来記念切手を発行しております方針は、まあ国家的に重要な記念事項でありますとか、祝典その他重要な、あるいは大規模な催しがあるとか、あるいは記念すべき事柄であるというものについて記念切手を発行するというふうな考え方になっておるのであります。御了承願いたいと思います。
  377. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでそういうふうなのを考えに入れて切手を発行しようというようなお考えはないのですかというのです。日本の内地のことばかり切手に出して、中には女の人やあるいは俳優を出した記念切手もありますが、それなんかはどうせ切手に出すならば国際的な他国の名勝であっても、そういうものを一つくらい出すということは国民感情上非常におもしろい結果になるのじゃないかしらんと、こう思うのですが、どうなんですか、それについてのお考えは、先方は国をあげてのお祝いをやっている、インドにしても、セイロンにしても、ビルマにしても。
  378. 小野吉郎

    説明員(小野吉郎君) 御質問の趣旨はまことにけっこうな趣旨と思います。そういった切手の発行につきましては私どもも非常に慎重に検討をいたしまして、郵便切手を発行するいろいろな計画、また具体的に今どういうふうな事件あるいは行事がありましてそれを切手に現わすべきかどうかをいろいろ外部の専門の委員を委嘱いたしまして検討いたしております。そういったような委員会にもそういったけっこうなる御趣旨を十分に伝えまして、今後検討いたしたいと思いますが、今までの発行の現状を見ましても、日本国内のみのことにとどまっておりませんか、世界的な偉人の非常に意義ある年に相当しますような場合には、そういった切手を発行するというような気持は、十分方針の中に織り込んでおります、そういう面で今後慎重に切手審議会等にもいろいろ諮りまして検討いたして参りたいと思います。
  379. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは同時に非常に国民感情の上において日本の得るところ、非常な利益になるのじゃないかと思いますので、どうかそこを慎重に御研究をお願いしておきます。
  380. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 他に御発言もないようでございますから、郵政省所管についての質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  381. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。以上をもって昭和三十二年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中総理府のうち、経済企画庁防衛庁外務省通商産業省及び郵政省所管に関する質疑は終りました。これをもちまして、本分科会の審査を終了いたします。  なお、委員会に対する報告の内容等につきましては、主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  382. 豊田雅孝

    主査豊田雅孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後九時十二分散会