運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-30 第26回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月三十日(土曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員高橋進太郎君及び永岡光治君 辞任につき、その補欠として野本品吉 君及び横川正市君を予算委員長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      小林 武治君    副主査     吉田 法晴君    委員            新谷寅三郎君            苫米地英俊君            土田國太郎君            野本 品吉君            武藤 常介君            成瀬 幡治君            湯山  勇君            横川 正市君            加賀山之雄君            八木 幸吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    国 務 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    管理局長    丸尾  毅君    人事院事務総局    任用局長    松村 清之君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     大山  正君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省調査局長 北岡 健二君    文部省管理局長 小林 行雄君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君    海上保安庁長官 島居辰次郎君   説明員    人事院事務総局    職員局長    川崎 三蔵君    人事院事務総局   職員局職員課長  中村 一成君    大蔵省主計局主    計官      相沢 英之君    文部大臣官房人    事参事官    田中  彰君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林武治

    主査小林武治君) ただいまから第四分科会を開会いたします。  本日は人事院所管及び文部省所管を議題といたします。  それではまず人事院所管についての政府説明を求めます。
  3. 丸尾毅

    政府委員丸尾毅君) 昭和三十二年度における人事院歳出予算について、その概要を御説明いたします。  昭和三十二年度歳出予算額は、三億二千九百二十八万三千円でありまして、これを前年度歳出予算額二億九千六百六十七万円と比較いたしますと、三千二百六十一万三千円増加いたしております。人事院歳出予算に計上いたしましたものは、国家公務員法に定める人事院所掌事務執行に必要な経費であります。  その経費事項別に申し述べますと、人事院一般行政に必要な経費、二億八千百三十二万円。  政府職員任用に必要な経費三千二百五十六万三千円、政府職員給与制度運営に必要な経費七百十五万九千円、政府職員苦情処理に必要な経費三百四十九万円、政府職員服務制度確立並びに能率増進に必要な経費四百七十五万円であります。  その概要を申し述べますと、人事院一般行政に必要な経費人事院一般事務を処理するために必要な経費であります。政府職員任用に必要な経費国家公務員任用のための公開競争試験を実施する等に必要な経費であります。政府職員給与制度運営に必要な経費国家公務員給与民間賃金等調査研究行い給与制度の適切な運営を行うに必要な経費であります。政府職員苦情処理に必要な経費国家公務員行政上の措置に対する苦情を処理するために必要な経費であります。政府職員服務制度確立並びに能率増進に必要な経費は、国家公務員任用及び服務に関する調査並びに国家公務員教育訓練保健等について調査研究を行うため必要な経費であります。  以上をもちまして昭和三十二年度一般会計内閣所管のうち、人事院歳出予算説明を終ります。  詳細につきましては御質問に応じまして関係政府委員からお答えいたすことにいたします。よろしく御審議あらんことをお願いいたします。
  4. 小林武治

    主査小林武治君) 御質疑のある方は御発言を願います。
  5. 野本品吉

    野本品吉君 ちょっとお伺いします。今思いつきのことですが、国家公務員法の第六条に規定する宣誓服務についてお聞きしたいと思います。宣誓内容を大体わかりましたら御説明願いたいと思います。
  6. 丸尾毅

    政府委員丸尾毅君) 宣誓書そのものは、私、うかつにしてまだ中を見てございませんけれども、要するに人事官は任命直後に最高裁判所長官の面前において、人事官として適切な仕事をとるということを宣誓をいたすということが法律で定められております。宣誓書に署名をされて、それから職務を行うということを厳格に行なっておるわけであります。ただ私、ふつつかにして宣誓書内容そのものをまだ見ておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  7. 野本品吉

    野本品吉君 公務員法の二十八条のいわゆる情勢適応の原則というのがあります。情勢をどう見るかということが給与問題の根本だと思うのですが、今度の給与改訂等につきましても、いろいろ人事院の立案のよりどころになります一般社会情勢検討判断に誤まりがあるというようなことを言われる向きがあるのですが、あれはどういうふうな方針で、どういうところをこういう方法調査いたしますか。
  8. 丸尾毅

    政府委員丸尾毅君) 給与局情勢に適応するような大体の方針を申し上げますと、民間給与調査というものを給与勧告の前に綿密に全国にわたっていたします。それは五十人以上の事業所数千をとりまして、特に人事院調査根本といたしましては、ちょうど政府職員と同じような格のグレードに応じますところの民間のいわゆる役職員以下の大体の職種、それから、それの格と申しますか、職能の内容でございますね、それを比較いたしまして、国家公務員のおのおののグレード比較するというところに特徴があると存じます。同時に、昨年からは三公社その他の給与にも、直接調査権能はございませんが、その資料を参酌いたしまして、そこで国家公務員について公正な給与調査ができ、それの勧告をいたす資料をととのえるわけでございます。抽象的に申し上げれば大体そういうことでございます。 大体そいう
  9. 野本品吉

    野本品吉君 そうすると、政府職員が現在こういう状態にあるというそれを基準にして、その政府職員の格に合うような場所選定する、こういうことですか。
  10. 丸尾毅

    政府委員丸尾毅君) 政府職員に合う場所選定するのではなくて、五十名以上の事業所を結局適切な、つまりサンプリングをやるわけで、ことさらに政府職員に合うというところを物色するのでなく、つまりその事業所をピックアップいたしました中で、そこの支店長であるとか、そこの次長であるとか、あるいはその下の課長係長と、その段階に応じまして、政府職員のやはり局長とか課長とか係長とかいうものと相互に比較をするわけでございます。
  11. 野本品吉

    野本品吉君 それは事業所のピックアップですか。それはいわゆる引き抜きというようなことでいくのですか。
  12. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまの民間給与調査事業場選定のお話でございますが、われわれがやっております方法は、規模が中心ということにはなっていないのであります。ただ、われわれとしましては、国家公務員の中におきまして、民間で同様の職務内容あるいは責任の程度のものを調べるということが趣旨でございます。ただ、そういうことをやりますのに、あまり小さい事業場におきましては、それに該当いたしますような職務のない場合があるわけでございまして、われわれは、これを従来から五十人以上の事業場ということで一応切りまして調査をいたしておる次第であります。で、われわれのやり方は、実は五十人以上の事業場は全部調べたと同じ効果を生むような方法でやっております。これはいわゆるサンプリングメソッド方法によっているのであります。その事業場選定に当りましては、無差別にサンプリングメソッド方法に従いましてこれを選択するということをやっておる次第でございます。結果は五十人以上の全事業場を調べたのとほぼ同じことになるのでありますが、現実にわれわれが調査いたします事業場は、数にいたしましてほぼ六千くらいであったと思っております。
  13. 野本品吉

    野本品吉君 それから、この七十八条の、本人意思に反する公務員免職ということがあるわけですが、これは相当ありますか。どんな状況ですか。
  14. 川崎三蔵

    説明員川崎三蔵君) 詳細な統計につきまして、ただいま職員課長から詳細な御報告を申し上げます。
  15. 中村一成

    説明員中村一成君) お答え申し上げます。人事院におきましては、各省が懲戒処分をいたしました場合におままして、その報告を受けることになっております。その報告数字を申し上げますと、最近のものでございますが、昭和三十年度をとりますと、昭和三十年の四月一日から三十一年の三月三十一日まで、昭和三十年度におきまして総計三千十件と相なっております。翌三十一年度につきましては、三十一年の四月から明日までの数字に相なるわけでございますが、昨年の九月三十日までの数字をまとめております。これで一千五百二十七件でございまして、約一年の半分の集計でございますので、大体私どもの推計から、やはり三十年度と同様三千件をこえるのではあるまいか、こういうふうに考えております。
  16. 野本品吉

    野本品吉君 この三千件が、いわゆる本人意思に反して身分を下げるとか、免職するとかいうことですが、まあ先ほどのこの説明にありました苦情処理の問題は、ここから出てくると私は常識的に想像するわけです。そこで、そういう公務員法による処分に対して、三千件のうち苦情処理機関にその処分の不当を訴えてくるという件数はどれくらいありますか。
  17. 川崎三蔵

    説明員川崎三蔵君) 苦情処理関係は、人事院の中の公平局という局で所管いたしておりますので、私ただいま、その方の資料を持っておりませんので、公平局の方に連絡をいたしまして、至急お答えをいたすことにいたします。
  18. 野本品吉

    野本品吉君 それからこれも五十四条の採用候補者名簿失効期間が一年ということになっておりますが、まあ私は、試験を受けた者が一年たって採用されなければ、前年の試験失効してしまうということは、ちょっと無理じゃないか、気の毒じゃないかというような感がしておるのですが、この失効の一カ年間という期間に対しまして、特に一年ということにしておく必要性ですね、その点についてちょっとお考えがあったら伺いたい。
  19. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまの野本委員質問は、任用局関係のことになりますので、至急任用局長に来ていただくように手配いたしておりますので、ちょっとあと回しにしていただきたい。
  20. 野本品吉

    野本品吉君 現在国会で論議されております給与法に関しましては、世間にいろいろな批判が行われておるわけであります。これは今、国会でどうきまるかわからないのですから、人事院意見を聞くことはちょっと御迷惑かしりませんけれども、人事院としては一定の信念の上にああいう勧告を出され、その勧告を尊重する線で政府が提案しておる。今、世間で伝えられておりますいろいろの給与改訂に対する批判に対しまして、その根本になりますものを勧告された人事院として何かお考えがありましたら、所見を承わりたいと思います。
  21. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 人事院は、昨年の勧告におきまして、民間におきまする給与改善方法というものが、ベース・アップ方式というよりも、むしろ、いわゆる給与制度確立いたしまして、そうして昇給制度というものを合理化するということによりまして給与改善に努めておるという事情が判明いたしました。これはまあ前年から同様の傾向が続いておりまするので、そういう観点から、いわゆる一律べース・アップ方式を避けたわけでございます。人事院といたしましては、昭和二十四年以来現行給与法の実施の責めに当っておるのでございまするが、すでに二十八年にも給与準則勧告をいたしておるのでございます。これは公務員法が要求いたします職階制に基く給与体系ということに相なっておったのでございまするが、その後、職階制の問題はいろいろ議論がございまして、なかなかまだそれを実施する段階に至っていなかったのでございまするが、そうこうしておりまするうちに、現行給与法運営というものが非常に行き詰まって参ったのでございまして、われわれは職階制ということに直ちに踏み切らないのでありまするけれども、現行給与法を変えまして、少くも給与法第四条に要求いたしておりまする、給与というものは、職務責任に基いて支払われるべきものであるという観点に即応いたしまして、職階制ではございませんけれども、そういう観点を明らかにするということが一つのねらいになっております。申し上げるまでもないことでございまするが、現行給与法も、これは実は非常に職階給的と申しますか、職務給的色彩を帯びておるのであります。十五の職務給というものがございまして、その職務段階別職務内容というものが一応定めてございまして、それに従って運営するはずなんでありまするが、御承知のように、昭和二十三年、二十四年当時というものは、非常にわが国窮乏の時代でございまして、給与水準生活水準が非常に低かった。従って給与法の掲げておりまする通り運営が実は困難でございまして、そのために、この形としては非常に職階給的な形をとっておるのでありまするけれども、この給与法運営が実は非常に生活給的に運営されて参った次第でございます。その結果、今日におきましては、この給与法運営に非常に幾多の矛盾が出ております。このことはすでにわれわれ昨年の報告において述べた通りでございまするが、さらにその詳細な点につきましては、現在衆議院内閣委員会の小委員会で十分御審議願っておりまするので、われわれはその機会にも述べようと思っておりまするし、いずれ参議院に参りました際には、参議院内閣委員会十分説明をいたそうと思っておりますが、そういう事情でございまして、現行給与法は非常に行き詰っておりまするので、これをやはり適正なものにいたすということを考えたのであります。ただいまこの給与法四条の職務給的な考え方を基礎にしてやったということでありまするけれども、これはやはり現在の段階におきましては、生活給的要素も十分考慮しなければならない現状でございます。現に給与法運営におきましても、報告いたしておりまするように、頭打ち、ワク外者の数というものが二〇%にも近いというような数字に上っておりまして、これは現在の状況から見て、決して給与法が適当な法律と申しがたい点がございまするので、こういう点を考慮する、すなわちこれは主として生活給的考慮になろうと思うのでありますが、そういう点も十分加味いたしまして、現在の段階におきまして、職務給とそれから生活給との調和をはかる、このような趣旨に基きまして勧告をいたしておるのであります。多少つけ加えになるのでありまするが、今回提案されておりまする政府側法律案というものは、部分的に人事院勧告と多少違った点もございまするが、その大体の構想におきましては人事院勧告を十分尊重されておる、このように考えております。
  22. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  23. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  24. 野本品吉

    野本品吉君 私は官公署の全体を眺めてみまして、今、日本の国において最も必要なことは、職場秩序維持職場秩序確立、こう思っておるのですが、職場秩序確立維持の問題につきまして、人事行政についてたえずお考えになっておられる総裁の御意見をお聞きしたい。
  25. 淺井清

    政府委員淺井清君) 御意見はまことに御同感に存じておりまするが、人事院といたしましては、一方において公務員給与改善その他の保護に努めるとともに、他方においては、あくまでも官紀はこれをふるい立たせるということが必要だと思っております。ただこの場合において、人事院のなし得ることには限度がございまするので、それはやむを得ないと思っておりますが、人事院としては全く御意見に御同感であります。
  26. 野本品吉

    野本品吉君 これは人事院権限外のことだか知りませんが、ただいま申しました職場秩序確立維持という点から、給与の面においてはどこまでも合理性科学性を持ったものでなければならぬ。その職場秩序というものが、職場における一つの圧力と申しますが、そういうことによって、その職場を管理し、統率していく責任者が法の精神を貫くことができないというような場合もあるように私は見受けておるわけです。そういう場合に、これは考え方によりますというと、その職場責任者が無能力であり、あるいは職務上の怠慢であるという見方も一つできる。そういうような情勢をかもし出す一方の職場人たち責任であるとも考えられる。これは両様の考え方があると私は思いますが、そういうような点について人事院は何らかの意思表示をする道がありますか、ありませんか。
  27. 淺井清

    政府委員淺井清君) 人事院はまず大体において人事行政に関する勧告権を持っておりまするので、場合によってはさようなことも考えられると思っております。
  28. 湯山勇

    湯山勇君 最初に人事院総裁にお尋ねいたしますが、今回の勧告は、ベース・アップという形をとならいで、昇給制度合理化というようなことに重点を置いて行なったと、こういうことでございますけれども、それはベース・アップというものの必要を認めないと、こういう意味でしょうか。こういうふうにお考えですか。
  29. 淺井清

    政府委員淺井清君) ベース・アップという言葉意味に問題があると思いますが、まあこれは湯山先生に御説明申し上げる必要もないことでありまするが、ベースとは給与の総平均意味しまするので、この平均が上ってくればこれはベース・アップである。そういたしますれば、どのような給与改善をいたしましても、それは結論においてはベース・アップになるのでありまして、今度のものでも約六%のベース・アップにはなっておる。しかし湯山さんの使われるベース・アップというのは、いわゆるベース・アップ方式意味するものだろうと思うのでありますが、それは号俸を一律に増額する俸給表をこしらえる、これが湯山さんのいわゆるべース・アップ方式だろうと思うのでありますが、この方式をとらなかったかとおっしゃれば、これはとらなかった。しかし結果においてはベース・アップになっておる。それではなぜベース・アップ方式をとらなかったかと申せば、給与改善にはいろいろの方法がありまするから、ベース・アップ方式が唯一の給与改善方法ではない。それから、人事院勧告をいたしました時点におきましては、これを調査いたしますると、民間事業所等においても、ベース・アップ方式ということはとらない方が多かったのであります。大体昇給制度によって給与改善をはかっておる事業所が多かったのでございます。そういう事情にもかんがみまして、昨年の勧告は、いわゆるベース・アップ方式はとらずに、結果において六%のべース・アップになるような給与改善を行なったと、まあこういう状態でございます。
  30. 湯山勇

    湯山勇君 まあ勧告時点においてということが一つ問題になると思うのですが、過去二回にわたってこういう勧告留保されてきたわけでございます。そうすると、今回の勧告というのは、過去二回の留保を含めた勧告なのか、あるいは過去二回の留保したものと無関係に最終一カ年の実績に基いての勧告なのか。その点はどうなっておりましょうか。
  31. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは実は同じことなのでございまして、結局民間給与とのどれだけの違いがあるかということが第一の主眼点になっておりますが、民間給与を、ある時点で、つまり昨年の三月の時点で押えましたものが約一一%違う。しかしながらこれは公務員一般職のうちで行政職比較いたしましたものでございまするので、全一般職公務員との比較においては約六%くらいの相違になるであろう。従って六%の給与改善をやればそれでよいのではないかと、こういう考え方に立っておるのでございます。
  32. 湯山勇

    湯山勇君 それは断面だけについて言えばそういうことが言えるかと思いますが、過去二回において、実際は民間給与水準の方が公務員よりも上回っておったということは、人事院勧告で御指摘になっておる通りでございます。従って、当然その面だけから言えば、ベース・アップということをやらなければならない、引き上げをやらなければならない事情にありながら、それを押えてきた。そうして何年かたったあとで、それをしたということでもって事終れりとしてよいものかどうか。私はそこに問題があると思います。もっと極端に言えば、それでは今回の勧告留保しておいて、そうしてまた一年たったときの断面において民間給与に合わす勧告をしておいて、それで過去三年帳消しだ、あるいはもっとそれを五年、十年ほうっておいて、幾ら下ってもほうっておいて、しかも勧告しなければならない要素がありながらほうっておいて、十年ののちに、かりにまあ五千円なら五千円ベース・アップさして、これで過去十年間帳消しだ、こういう考え方は私はとれないと思うのですが、どうお考えですか。
  33. 淺井清

    政府委員淺井清君) まことにごもっともなお尋ねでございますが、結局、それは勧告をいつから実施するかという問題ともからみ合ってくると思っております。過去二年間に人事院がベース・アップ勧告をしませんでしたのは、報告書でも申し上げました通り、この際はベース・アップをする必要は……。見合せるのを適当と考えたのでございます。昨年は、結果においてはベース・アップをする必要がありと認めておるのでございます。結局、湯山さんのお説は、つきつめれば、つまり過去の借金は返す、返さぬかと、こういうことになるだろうと思いますが、ここは人事院意見が違っておるのであろうと思っております。
  34. 湯山勇

    湯山勇君 借金を返す、返さぬという問題ではなくして、総裁のお言葉から言えば、留保したということは、もう、しなくともよいというふうに解釈すれば、おっしゃるようなことが言えると思いますけれども、留保したということと、ベース・アップをしなくともよいということとは、私は意味が違うと解釈しておったわけです。そういうふうにとっていけば、私の言うことと解釈が違うと言われますけれども、私は人事院勧告をすなおに読んで、すなおに解釈して、そういう結論が出るのじゃないかと思いますが、重ねて伺いたいと思います。
  35. 淺井清

    政府委員淺井清君) 留保するということは、将来いつ勧告するかわからないということを意味するために留保という言葉を使ったのでありますが、その勧告の時期が昨年の七月に参った、こういう意味でございます。
  36. 湯山勇

    湯山勇君 そうすると、留保ということは、いつ勧告するかわからないという勧告可能性を含んでおるわけですね。だから、勧告はするけれども、それは見合わしておるのだというふうなのが留保だと思うのです。そこで、過去二回にわたってそういうふうな形で、まあ人事院がそれだけ預かっておった、その預かっておったものの始末は、それじゃもうあの留保はやめたのだ、この留保もやめたのだ、こういうことが明確にならなければ、やはり留保留保として残ってくると思います。私は、昨年でしたか、人事院総裁に、それでは、今回は留保されたが、前回の留保はどうだとお尋ねしたときに、それもまた留保されておる、留保のままだ、こういう御答弁があったことから推しましても、留保がもう留保でなくなったということの意思表示はまだされておりませんから、そうすると、今回の勧告は、過去一年のものについてやったのだ、こういうことであれば、当然その前の年、その前の年の留保が解消されたという意思表示がなければ、やはり年が何年たったにしても留保のままであるということが、人事院総裁の以前の御答弁から推して当然ではないかと思いますが、これはどういうことになりますか。
  37. 淺井清

    政府委員淺井清君) 留保は、昨年の勧告で解いたわけでございます。その解いた時期における、時点においての民間給与との比較は一一%になっておる、かような基礎にかんがみて給与改善勧告をしたわけでございます。
  38. 湯山勇

    湯山勇君 そうすると、留保ということと勧告しないということとは、どこが違うのですか。
  39. 淺井清

    政府委員淺井清君) 結局これを過去に振りかえりますれば、同じことになると思うのでありますけれども、われわれといたしましては、勧告をしないということは、あるいは将来をも拘束することになるかと思いましたので、勧告は見合せるという意味留保と、将来いつ勧告するかもわからないという意味で、留保という言葉を使ったのでございます。
  40. 湯山勇

    湯山勇君 それは非常に私はごまかしだと思うのですが、勧告の必要なし、勧告しない、その時点においてはそういう勧告をしない、勧告の必要なしと、こういうことだと、今のような御答弁だと、とれます。それをほんとうに希望が持てるように、留保するという表現でやるということは、今のような御答弁を聞きますと、全く、悪い言葉で言えば、ごまかしのような感じがいたしますが、これはどうも総裁留保という言葉について、私がしばしばお尋ねしたことに対するお答えとはちょっと概念が違っておるような感じがいたしますけれども、どうなんでしょうか。
  41. 淺井清

    政府委員淺井清君) 決してそういうごまかす意味ではなかったんでありまして、あの場合は経済情勢がいろいろと変化をして参っておったのでありまして、あのときはとりやめても、将来いつ勧告するかわからなかった、そういう意味留保という言葉を使ったのでございます。
  42. 湯山勇

    湯山勇君 人事院のお考えは大体わかりましたが、次に、今回勧告されたものと、それから政府の出しておる案との間には、これは大部分一致しておるというふうに瀧本給与局長はおっしゃいましたけれども、私どもの見たところでは、性質から見ると、相当重視すべきものがあると考えます。そこで、人事院勧告は大体わかりましたから、今度は政府の方から伺いたいんですが、人事院勧告を修正しておりますけれども、その修正点について、これをこうしたのはこういう理由だということを、一つ明確にしていただきたいと思います。
  43. 大山正

    政府委員(大山正君) 勧告の主要な点につきまして……。
  44. 湯山勇

    湯山勇君 主要な点だけじゃなくて、勧告と違えたというのは、相当重要な理由がなくちゃならないのだから、違えた点全部について、その理由を明確にしていただきたいと思います。
  45. 大山正

    政府委員(大山正君) 今回の改正案につきまして、勧告の幾つかの項目のうちで、違っております最も主要な点は、いわゆる特別俸給表の水準差の問題につきまして、勧告では現在各特別俸給表に含まれておる水準差に、相当の部分を離しまして、調整額にするという勧告があったのでございますが、この点におきましては、私どもいろいろ検討いたしました結果、技術的にも非常にむずかしい問題がありますし、早急にこの分離を行うことは適当でない、かように考えまして、今回の俸給表におきましては、いわゆる水準差を織り込んだままの俸給表にしたという点が大きな項目としては違っておる点でございます。  それから俸給表の種類につきまして、勧告のありました種類は八種類十三表でありますが、今回の改正案におきましては、それを十六表にいたしております。違いました点は、行政職俸給表におきまして、勧告では一表であったのでございますが、改正案におきましては二表にいたしております。その理由は、勧告のありました行政職俸給表が中央の本省庁の組織段階に適合するのでございますが、地方の官署におきましては、やや職務段階区分が違うというように考えまして、違う段階区分を持った俸給表を別に作るということで二分したのでございます。  次に公安職の俸給表を、やはり勧告では一表であったのでございますが、これを改正案におきましては分けまして二表にいたしております。一表は一般の警察あるいは刑務所というようなところを適用するのが一表でございまして、もう一つは海上保安庁その他のために表を別に作ったということでございます。  次に俸給表の種類として違いますのは、医療職俸給表勧告では二表でございましたが、改正案におきまして三表にいたしてあります。これは薬剤士、栄養士、その他の医療技術者がそれぞれ勧告では医療の(一)あるいは(二)に含まれておったのでありますが、現在の給与の制度、実態が異なりますので、薬剤士、栄養士等のために一表を別に新設する方が適当であると、かように考えまして新設したのでございます。俸給表の種類につきましてはこの点が異なっております。  次に俸給表の等級区分が若干異なっておるのでございますが、総体的に申しますと、先ほどお話いたしました水準差を俸給表に含んだために、俸給表の適用範囲が若干異なってきたという関係もございまして、等級区分も多少移動いたしております。税務職の俸給表におきまして一等級を新設いたしておりますが、これは首席監督官あるいは監察官等を適用するために一等級を新設いたしております。  次に公安職の俸給表は、勧告では九等級ありましたが、これを七等級にいたしております。違いました点は、九等級が先ほどお話しました海上保安庁の関係でありますので、公安職の(二)の方に入れました。それから勧告のありました一、二等級は行政職の方に入れるということにいたしました。勧告の三等級を行政職俸給表(二)に応じて二分いたしましたために、九等級が七等級に変っております。  次に海事職の俸給表は、勧告は六等級構成でありますが、これを改正案において五等級構成にいたしております。これは勧告の三等級と四等級を一つにいたしまして、五等級と六等級を一つに合せましたほかに、大型船舶の船長、機関長を新たに一等級に適用せしめるという意味で一等級ふやしましたので、六等級が五等級の構成になっておるのでございます。  それから教育職俸給表の(一)におきまして一等級ふえて六等級になっておりますのは、教務職員丙の適用を、教育職俸給表の適用をすることが適当であると、かように考えまして、一等級ふやしております。教育職俸給表の(三)におきまして、勧告では教諭の俸給表だけの勧告でありましたが、改正案におきまして校長の一等級、助教諭の三等級をつけ加えまして三等級構成にいたしております。  研究職の俸給表におきまして、研究所の、特に大きな研究所の所長のために一等級新設し、さらに補助研究員のために七等級をつけ加えております。  医療職の俸給表におきまして、研究所と同じく、特に大きな病院長、療養所長のためにやはり一等級を新設いたし、薬剤士が六等級にありましたのを、先ほど申し上げました理由で別に表を作りましたので、その六等級を削っております。  最後に技能労務職俸給表におきまして、小型船舶の船長、それから特殊技能職員というものに適用するために、技能労務職俸給表の(一)に一等級を新設いたしております。等級区分が異なりましたのはそういう点でございます。  次に昇給制度につきまして勧告と異なっておりますのは、号俸金額をできるだけ統一をはかりたいということで、一種の通し号俸的な構成をとった点。それから昇給期間につきまして、勧告が大体現行の六カ月、九カ月、十二カ月を踏襲いたしておるのでございます。改正案におきましては、現在の昇給期間が短期小きざみであるという点を若干延伸する方が適当であると、かように考えまして、標準を一年にいたしました点でございます。  ワク外昇給につきまして、勧告では回数に制限があったのでございますが、政府案におきましては、回数制限は設けませんで、ワク外昇給の期間を原則として三年、技能労務職につきましては二年ということにいたしております。  初任給につきましては、勧告は大体現在の初任給を変更しないという建前をとっておるのでございますが、改正案におきましては、昇給期間を延長したために、若干金額を調整した点、昨年の暮の国会で学校教職員の学歴差是正の法律が通っておりますので、その趣旨にかんがみまして、初任給について、新高卒を基準として、短大あるいは新大等資格免許に関係のある学歴差について若干の調整が行われるということを想定して俸給表を作っております。大体以上のようなものでございます。
  46. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  47. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  48. 湯山勇

    湯山勇君 先ほど人事院の方からの御見解では、大体人事院勧告が尊重されたというような御答弁がありましたけれども、今政府の方から御答弁いただきましたように、相当大幅な修正が加えられております。人事院としては、一体どちらが合理的で、どちらがいいとお考えになっておられるか。もし政府案の方がいいというようなお考えであれば、なお人事院勧告そのものには、これ以外に、政府がお述べになった以外に是正すべき点もあるのではないかというような懸念もありますので、もしお気づきの点があればそれもお述べいただきたい。
  49. 淺井清

    政府委員淺井清君) それはまあ申すまでもないことでありますけれども、人事院としては人事院勧告を一番最良のものだと考えてやった次第であります。しかしながら政府の修正というのは、おおむね技術的な方面においてなされておるのであって、非常に重大な点において違っておる、たとえば人事院が六%のベース・アップを主張しておるのが削られておるというような重大な点はないのであります。そこで、まず技術的な問題となりますと、これはどっちにするかということは、これは給与の技術の問題になりますので、そこで、さいぜん瀧本局長から、まず大体よかろう、こういうふうに申したのであります。しかし個々の点においてまた御意見が出ることもあると思いますが、それはその都度お答えをいたしたいと思います。
  50. 湯山勇

    湯山勇君 六%というのは、必ずしも六%上げるためにこういう体系をとったんだというのではなくて、先ほどのお話では、昇給制度合理化するその結果こういうふうになったんだ、どちらかといえばシステムとしては昇給制度合理化ということでいく、こういうことでしたけれども、昇給制度その他職階制の問題等については、相当大きな、今総裁が六%という線は崩れていないからいい、こういうことですけれども、しかし大きい柱の昇給制度とか、それから職階制とか、職階制的なやり方とか、そういうものについては、かなり大きく動いておると思うのですけれども、これは政府の方はそういう点はどうお考えでしょうか。
  51. 大山正

    政府委員(大山正君) 今回の政府の改正案におきまして勧告と違いました点は、私どもといたしましては、根本趣旨勧告趣旨にかんがみておるのであって、若干技術的な点において修正を加えただけでありまして、本質的には変らない、かように考えております。
  52. 淺井清

    政府委員淺井清君) 私からも補足いたしますけれども、人事院としては、この六%のべース・アップというのは非常に重要に考えておる、これは給与改善の根幹をなすものであると思っておるのであります。その際にあわせて給与体系を是正したい。ただ湯山さんの言われるベース・アップ方式はとらなかった、給与改訂俸給表の号俸それ自体は変えなかったけれども、要するに給与体系の是正による号俸調整によって、このベース・アップを実現する、こういうふうに考えておる次第であります。
  53. 湯山勇

    湯山勇君 そこで今回のやり方の昇給制度合理化ということがやり方としては採用された、ところがその昇給制度そのものにも、昇給制度では昇給の額と期間が一番大きい柱だと思うのです。その額についても若干の調整があったわけですけれども、それ以上に昇給期間、これがこんなに動いておって、それで尊重されたということは私は言えないと思う。で、昇給期間をこういうふうに変えたところにどういう合理性があるか。大蔵省の、政府の御意見、それから私が申しましたことに対する人事院の御所見を伺いたいと思います。
  54. 淺井清

    政府委員淺井清君) この一年に変えたということは、昇給期間を延伸したことになるのです。これは昇給金額はそのかわりそれに対して調整されておる、結果においては変らないのであります。しかし人事院が下級職員に対してなぜ現状の六カ月制度を維持したかということは、それは御承知のように下の者は昇給の額が、一回に昇給する額は少いのであります。ですからまあ下級職員の勤労意欲を増進する上におきましても、やはり六カ月の方が望ましいと考えておるのでありますからして、結果においては技術的でありまするから、それは大同小異というお答えをいたしましたけれども、それでは人事院としてはどっちがいいと思うのだという仰せならば、私は人事院勧告の方がいいと、こういうふうに思うのであります。
  55. 大山正

    政府委員(大山正君) 今回の改正案におきまして、昇給期間六カ月、九カ月をおおむね一年ということにいたしました。技能労務職につきましてはなお六カ月、九カ月の昇給期間を残しておりますが、その他につきましては一年といたしましたのは、かねて公務員制度調査会の答申にも、現行の昇給制度は短期で小きざみになっているから、この期間を延長し、昇給の額を大きくする等、合理的な昇給制度確立すること、というような答申もございましたし、事務簡素化の点から申しましても、六カ月というような短期の昇給期間よりは、やはり一年に一回という方が合理的であると、かように考えまして一年を標準にいたしたわけでございますが、ただそのために現行の俸給金額のままで六カ月を一年に延ばしますと、手取りにおいて不利になるおそれがありますので、その点は調整をはかるという形にいたしまして、今回一年に延伸したのでございます。
  56. 湯山勇

    湯山勇君 では一年の方が合理的だというなら、技能職はどうしてそのまま残したわけですか。
  57. 大山正

    政府委員(大山正君) 技能職につきましては従来とも異動も相当ございますし、あるいは金額において少額の者も多いというような点を考えまして、なお六カ月、九カ月の制度を残したわけでございます。
  58. 湯山勇

    湯山勇君 今の御説明と先の御説明とは、ちっとも一貫していないのです。下の方の者の昇給期間を、技能職について給与の低い者は一カ年にしないということならば、一般職だって同じことだし、全くそのおっしゃる根拠が不明確ですが、これはどうですか。
  59. 大山正

    政府委員(大山正君) お説のように、その点必ずしも全部を原則で統一したというわけではございませんですが、技能労務職におきましてかなり短期間でやめる者もあるというような点も考慮いたしまして、なお六カ月、九カ月という昇給期間を残すことといたしたのであります。
  60. 湯山勇

    湯山勇君 技能労務職で短期間でやめるというのは、臨時とか、あるいは正式に任用形態をとっていない者が多いはずです。今じゃ公務員に正式に任用をされた者ではそういう事例はあまりないと思うのですが、どうですか。そんなに三カ月でやめるとか、六カ月でやめるとか、一年以内でやめるとかいうことはないのじゃないですか。
  61. 大山正

    政府委員(大山正君) お説のように短期の雇用の者も含まれると考えます。その他一般の通常の形態で任用される者につきましては、お説のようにそう違わないかと考えます。
  62. 湯山勇

    湯山勇君 それなら同じ扱いでいいのじゃないですか。
  63. 大山正

    政府委員(大山正君) そういう短期の者もかなり含まれていると、かように考えた次第であります。
  64. 湯山勇

    湯山勇君 技能者で短期というのはどういうのがありますか。国家公務員である技能者で短期というのはどんなのがありますか。
  65. 大山正

    政府委員(大山正君) 現在御承知の二カ月更新等の形で採用されておる者もかなり多いと、かように考えております。
  66. 湯山勇

    湯山勇君 そういうのは、国家公務員として任用を受けておりますか。
  67. 大山正

    政府委員(大山正君) 国家公務員になっております。
  68. 湯山勇

    湯山勇君 それはこの俸給表を従来も適用されておりましたか。
  69. 大山正

    政府委員(大山正君) 二カ月更新の者につきましては、従来俸給表の適用を受けております。
  70. 湯山勇

    湯山勇君 そういう二カ月更新の者は、二カ月ごとにこの雇用が変るわけですから、六カ月昇給なんかは意味がないじゃないですか、昇給なんかしないでしょう。
  71. 大山正

    政府委員(大山正君) 二カ月更新の形で、ある程度長期間継続して雇用される者があるという意味でございます。
  72. 湯山勇

    湯山勇君 それは変ですよ。二カ月更新で任用が変るのですから、任用のときの初任給が変るということはあります。任用の条件が変るということはありますけれども、昇給ということはないはずです。おかしいじゃありませんか。
  73. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまの問題は現在の給与法の実施の問題に関係いたしておりまするので、私から若干補足さしていただきたいと思います。ただいまお示しの二カ月更新のものございますが、これは事実上において二カ月更新という法律上の形はとっておりますけれども、この二カ月更新が継続して行くという場合があるわけでございまして、そういう際には常勤労務者といたしまして、現在は一般俸給表を適用しておるのであります。それで、そういう方々が二カ月更新しました場合に、今御指摘のようにまたもう一ぺん新しく採用するのであるから初任給に戻すという手も実はあろうかと思います。またそれも一つのやり方とは思いますけれども、現実の問題といたしましては、そういう方々がまた更新するということも事実気の毒であるというような観点もございまするし、給与法を適用いたしておりまするので、そういう方がかりに二カ月更新で参ります場合にも、やはり経過期間があるわけでございますから、六カ月そういう状況で続きました場合には、やはり昇給させるという現実の運営をいたしております。
  74. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと申し上げますが、先ほど申しましたように淺井総裁の御都合もありますから、なるべく一つ総裁質問を、ほかの方も集中していただきたいと思います。
  75. 湯山勇

    湯山勇君 今のは問題が別になりますから、あとにいたしまして、総裁に先にお尋ねいたしておきますが、地域給を先般……。
  76. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちょっと待って下さい。これは大臣がおられぬから尋ねにくいのですが、今の初任給あるいは昇給期間の問題は、技能職について昇給期間を今までのままで置いておくというのは、技能職が民間に比べて、やはりその初任給なりそれから初めの方については給与が低いと考えられるから、そういうことをおやりになるのか。同じことがこれは一般職についても、下級の者については私はあると思う。それが昇給期間を六カ月なり、あるいは短期のままで置いておく方がいいか、あるいは一年にしていいか、こういう問題だろうと思う。その根底には、人事院なら人事院が、争議権、団体交渉権を奪ったり制限をしたかわりに、公務員のいわばその代理機関と申しますか、保護機関としてできておって、専門におやりになった勧告を、使用者としての政府が、使用者の立場から勝手に直すことがいいか悪いか。こういうこまかい問題でありますけれども、腹の中にはやっぱり大きな問題を伏在して論議されていると、まあ思うのです。ですから、その点について、この勧告、それから政府案、人事院を含んで、政府とその立場のあるべき姿を人事院総裁から意見を述べてもらいたいと思います。
  77. 淺井清

    政府委員淺井清君) 人事院勧告は、仰せのごとく、これはすべての点において一貫性を持っておるものと見てよろしいのでございますから、人事院としては、これは人事院勧告がそのままの姿で実施されることを望むことは、これは人事院の立場上当然なことでございます。ただ政府のいろいろの立場から修正を加えられておるのでありますが、その中には技術的なものもある、これはどっちがいいかということは、これはどっちとも言いがたいものもありますし、またワク外昇給が人事院では三回に限ったのが無限になっておる、これは公務員にとって有利だろうと思いますから、そういう点もあるように思いますから、私は必ずしも政府の修正案全部がいけないのだ、そういう立場はとっておりません。しかし人事院勧告をする者の立場からすれば、勧告はすべての点において一貫性を持っておるものでありますから、勧告そのものが実施されることが望ましいと思っております。
  78. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今の話ですよ、抽象的なことを言われましたけれども、その昇給期間なり、初任給の問題が今問題になっているのですから、その点についてどうですか。
  79. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは私は人事院勧告の方でよろしいかと思っております。
  80. 横川正市

    横川正市君 今度の俸給体系表を出すに当って、職務の級別区分について、人事院ではこの区分の変更をしなければいけないと、その点についてどういうふうにお考えですか。職務の級別区分、これは十五級に分けて級別区分が出されておるわけです。今度新たに級別区分をしないと、何級と何級が六等級だとか七等級だとか、そういうふうに区分か分けてあると思いますが、その区分について……。
  81. 淺井清

    政府委員淺井清君) もちろんこれは人事院規則でやることになっておりますから、その区分のどういうものがこの等級に入るのだということは、これはやらなくちやならぬと思っております。これは御要求によっては所管委員会へやはり提出しなくちゃならぬかとも思っております。
  82. 横川正市

    横川正市君 今度の体系を見ると、概略、上級と下級と分けられた七等、六等の当該は、今人事院でもし級別区分をするとすると、どの級を当てはめようとしておるか、その点について全然まだ案としても持っておらないのか。
  83. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまの問題でございまするが、この現在の職務の級か今度は等級にかわるわけであります。また俸給表も現在五表ございまするものがふえるわけでございます。そういたしまするとどの俸給表をどの職員に適用するかという適用範囲の問題、それから、その職員がどの俸給表のどの等級に格づけされるかいうこと、等級格づけの問題、この二つがあろうかと思います。従いまして、その二つの問題に関しましては、人事院といたしましては、当然人事院規則の改正をいたしましてこれは出さなくちゃならぬわけでございます。現在成案を練りつつございます。ただ、この俸給表の適用範囲、また等級の格づけ等におきましては、人事院勧告政府案とは多少合っておらぬところがございます。従いまして、われわれといたしましては、政府法律案として出されました参考資料に代表官職例というのがございますが、これはまず俸給表をお作りになりますときに、こういう官職を頭に置かれまして、この俸給表を作られておるのでございます。これは代表官職例でございますので、これだけがここに入るということでもありませんし、また代表官職がある等級にありましても、またそれが結果においてその等級だけに決定されるものというふうにもわれわれは受け取っていないのでありますけれども、しかし政府側の出しております代表官職例というのを参考にいたしまして、ただいま申し上げました俸給表適用の範囲並びに格づけというものは人事院として立案いたしたいと、このように考えております。
  84. 横川正市

    横川正市君 大体現在の公務員給与の成り立ちは、私は昭和二十三年ごろに一応の体系ができて、その後六三ベースが決定したときにその職務内容も明確に格づけされたというように記憶しておるわけなのです。今度八等級に、七等級ですか、七等級のそれぞれの区分した俸給表というものを作られたときに、当然これはもうそれに格づけすべき職種、それから当面該当する職務の区分内容というようなものは、これは付いて出てこなければならないものだ、こういうふうに考えておるわけなのですが、そうすると、今これからやろうとする内容については、ここで聞いても仕方ありませんが、大体現在の俸給をもらっております公務員の中で、たとえば外地から引き揚げてきて、そしてその経歴その他からいって概算できる給料と、それからやはりその役職とがマッチしない場合、当然これは格づけの内容が役職の内容とマッチしないまま、たとえば平である場合には五等とか六等とかに格づけせざるを得なくなってくる。こういうような結果が生まれてくるのではないかと思うのでありますが、この点はどういうふうに処理しようとされておるのでございますか。
  85. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 人事院と、いたしましても、ただいままで全然その案が、試案というのができていないわけではないのでありまして、目下それを検討して最後案にまとめつつある段階でございますが、ただ昭和二十三年当時に、お示しのように、級別の職務内容というものが当初大蔵省の給与局長の通牒案というような形で出まして、その案を受けまして、人事院規則の中に現在あるわけでございます。しかし御承知のように、給与法運営というものは厳格に現在の給与法の形のままで運営することができなかった。これはある意味においては非常におかしいことでございますけれども、当時の状況からいたしまするならば、これはやむを得なかったと思うのであります。それから、その後におきましても御存じのように、一般職の職員の級を一つ上の級まで上げるとか、あるいは例外級を設けるとか、あるいは係長にいたしましても、その上の段階にいたしても同様でございまするが、現在の運営の実態は二十三年当時の職務分類を、まあ拡大解釈しなければできないような状態になっております。で、われわれは現在の状況を、現在人事院でやっておりまする人事院規則、あるいは細則、あるいは指令等によりまして、職務の級の区切りとかいろいろなこともやっておりまするが、そういう現実の状況を基礎といたしましてこれは処理して参りたい。現在におきましても、たとえばその人の勤続年数と職務内容とマッチしていないものがあるではないか、そういうおそれがあるではないかというお示しでありまするが、こういう点から見れば、そういうこともないとは言えませんけれども、現行給与法運営におきましては、それ相当の理屈がついております。従いまして、そういう状況を勘案いたしますならば、ただいま御指摘のようなことは今度の給与法の切りかえに当りまして支障なくいける。また今回の給与法におきましては、付則の十四項等にある程度の人事院の調整権等も残されておることでありまするので、そういうふうな方法を活用することによりまして、まあ支障なく移りかわりができるものと、このように考えております。
  86. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を止めて。    〔速記中止
  87. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をつけて。
  88. 湯山勇

    湯山勇君 総裁にまとめてお尋ねいたしたいと思いますが、先般地域給の勧告をされたのですけれども、それはその後そのままになっておりますが、あの勧告は今日も生きておるとお考えになられますか、いかがでしょう。
  89. 淺井清

    政府委員淺井清君) あれは二十九年のことだと思います。しかし私はこの勧告は死んでおるとは考えておりません。
  90. 湯山勇

    湯山勇君 そうすると、あの勧告は、あの当時実施するとして、九十七億という財源が必要だということでございましたが、先ほども六%というのは非常に大きな柱だ。今回の勧告においても六%というのは非常に大きな柱だと、こういうお話でありましたが、あの勧告においてもやはり是正に要する金額も大きな柱とお考えになっておったかどうか、この点を伺いたいと思います。
  91. 淺井清

    政府委員淺井清君) あの勧告は二十九年のことでございますが、もちろん人事院勧告をいたします以上、これは実現を期したことはもちろんであります。ところがこれは国会においていろいろ修正を受けまして、非常に多額の金額になったのであって、また内閣の方においては、この勧告の始末をも含めて公務員制度調査室を設けて、ここで結論を出そうと、こういう形になっておるのであります。ただ、ここで一つ申し上げたいことは、人事院はなるほど地域給の勧告はいたしました。しかしながら人事院といたしましては、終局の形では、何とかしてこの地域給というものは廃止すべきものだという考え方は持っております。ただこの廃止しまする場合に不利益を公務員に与えないように廃止することが重大であろうと思った。ところが、なかなかそれには金がかかるということで、まだ結論は出ておりません。
  92. 湯山勇

    湯山勇君 廃止の段階には廃止ということの勧告をされるおつもりでございますか、いかがでしょう。
  93. 淺井清

    政府委員淺井清君) その点は何とも考えておりません。しかし承わるところによりますと、政府と申しまするか、の方では、何か地域給廃止の企てがあるように聞いておりますけれども、その点は人事院は何にも関知いたしておりません。
  94. 湯山勇

    湯山勇君 それは非常におかしい問題で、それを専門にやっておられる人事院でも、なかなかむずかしくてまだ結論が出られないでいるという問題を、政府の機関である公務員制度調査室が勝手に廃止しようとか何とかいうのは、私は若干問題があるのじゃないか、人事院の立場からお考えになっていかがでしょうか。
  95. 淺井清

    政府委員淺井清君) 私はその決定案をまだ見ないのでありますけれども、それは何か成案があるのじゃないかと思っております。
  96. 湯山勇

    湯山勇君 人事院でも廃止の方向をとって検討をしておられるわけでございましょう、あの勧告以後において。それでなお結論が出ないほどむずかしいと、こういうお話でございます。それが簡単に政府の方で結論が出るとお考えになられますか。人事院よりも政府のこういう公務員制度調査室の方が能力もあって、そうしてより妥当な結論が出せるというように人事院総裁は御判断なさいますか。
  97. 淺井清

    政府委員淺井清君) 私は政府のやり方を批判する立場にないのでありますけれども、何か私の聞くところによりますと、この三十二年度の予算書の説明の中に、地域給はこれを廃止する、ただし公務員に対しては不利益を与えないようにするというような説明があったように聞いております。
  98. 湯山勇

    湯山勇君 それからもう一点は、御承知のように、最近民間給与は相当上昇の傾向を持っております。炭労、私鉄、その他ずっと上昇して参っておるようであります。そうすれば、当然次の機会にはそれらが考慮の中に入れられるもの、次の勧告になりますか、報告になりますか、その段階においてはそれらが考慮されるものというように私どもは考えますが、人事院総裁のお見込みはいかがでございましょうか。
  99. 淺井清

    政府委員淺井清君) 結論はまだ出しておりません。これは目下調査中でありますが、お説の通り、その後の人事院勧告は、昨年の三月を基準とした勧告でありますが、その後の経済界一般の変動等はむろん今年の七月十六日までにやるべき人事院報告の中に盛られると思います。
  100. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私、各省庁の懲戒処分状況や依願免官の問題を起した人の状況、休職者の依願免官の状況等を伺いたいのですが、これはほかの方に伺いますから、あとでもけっこうですが、総裁にただ一点伺いたいのは、先般運輸省の官房長が休職中に依願免官したということです。あの問題の取扱いは私は妥当でないと思っておるのですが、総裁はどういうふうにお考えですか。
  101. 淺井清

    政府委員淺井清君) これは二つの問題があの事件にはあったように思います。第一は刑事事件によって起訴されており、休職中の者を依願免官にしたこと、第二は本人が運輸省と関係のある、ある船会社の専務取締役に就任したこと、問題は二つあるように思います。前者の問題につきましては、私はこれは公務員法に規定がないのであって、任免権者といたしましては、休職中の者を依願免官する権限はございます。しかしながら従来官庁の慣例といたしまして、一応人事院意見を聞いてくることになっております。  そこでこのお尋ねの事件に関しても、人事院意見を聞いて参りました。そこで人事院といたしましては、ただいま綱紀の粛正ということは国民の世論である、それから第二には総理大臣の施政方針の演説中にも綱紀の粛正ということはうたわれておるということ、また国会においてもしばしばこの問題が取り上げられること等にかんがみて、これは好ましくないということを返事いたしたのでありますが、しかし任免権者としてはこれをいれませんで、依願免官にしたわけでありまして、この点はそれじゃ人事院はそれを取り消すことができるかと申しますと、さような権限は持っておりませんので、この点はそれ以上人事院としてはどうすることもできないのであります。  それから第二には、某船会社の専務取締役になった事件でありますが、これは人事院の所管事項である承認の問題に触れてくる。そこでこれは、人事院といたしましては、御承知のように、公務員法百三条に、在職五年間密接の関係があった営利企業へ二年間は行ってはならぬ、いわゆる天降りの禁止規定というものがございます。人事院としては、研究をした結果、これに触れるものと決定をいたしました。運輸省といたしましては、それより前に非公式に意見を聞いて参ったのでありますが、そのとき人事院はすでに、これは天降り禁止の規定に触れるのであって、承認はできないということを申しております。
  102. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私企業から隔離の百三条の二項ですか、あれに違反していると、人事院がそういう意見を決定されたら、これら先はどうなるのですか。つまりやめさせるのですか、どうなんですか。
  103. 淺井清

    政府委員淺井清君) これは、そういう決定をしたのは実は最近のことなんです。それは、人事院はすでに運輸省から非公式に尋ねて参りましたときに、これはいけないということを言っておるのでございますから、正式の申請書類は出しておりません。ですから、私はそういうことはないと思っております。人事院がこれを知ったのは、はからずも、ある新聞にこのことが掲載されたので、これを知って、それから研究しまして、これは百三条に触れるんだと、こういうことを言いましたので、人事院といたしましては、まず穏やかな方法をもってすみやかに本人が善処するように運輸省を通して折衝中でございます。
  104. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大へん突き進んだことを伺うようですが、もし本人があくまでもその職にとどまっておると、こういうことになれば、どういうことになりますか。
  105. 淺井清

    政府委員淺井清君) 人事院といたしましては、公務員法上それをその職から退職させるというような手段は、これは法律上ないように思っております。
  106. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、それはそれでけっこうですけれども、各省庁の懲戒処分の件数並びに種類の一覧表と、依願免官で問題の起った人の数を、休職者の依願免官の状況と、それだけの資料を要求しておきます。  それからもう一つ伺いたいのですが、国鉄の東管管内の事業課長がガード下の汚職問題で逮捕された。これもやはり二月の何日かに依願免官になっておりますが、この件もお調べになりましたか。
  107. 中村一成

    説明員中村一成君) 国鉄のガード下の問題につきましては、国鉄の職員が国家公務員でございませんので、私の方としましては、正式には調査いたしておりません。従って、正確な資料は承知いたしておりません。
  108. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これも運輸省を通じて一応お調べを願うことといたしまして、私この程度で打ち切ります。
  109. 中村一成

    説明員中村一成君) 承知いたしました。
  110. 湯山勇

    湯山勇君 労働大臣にお尋ねいたします。政府人事院勧告を尊重したと、こういうことをしばしば言っておられますけれども、ただいま質問によって明らかになったところによりますと。今回の人事院勧告は、従来のベース・アップ・システムをとらないで昇給制度合理化によって水準を上げるという方式をとった、従って今回の勧告の中で昇給制度というものは非常に重要な要素を持つと、こういうことでございます。ところが、今お尋ねいたしますと、昇給制度の根幹は昇給金額と昇給期間、この二本である。にもかかわらず、昇給期間については、大幅な修正が行われておる。これについては人事院は、人事院勧告がやはり正しいと思うということを明瞭に言っております。これで果して、今回の勧告の大きい柱を取りかえておいて、人事院勧告を尊重したと大臣しばしば言われますけれども、果してそういうことか言えるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  111. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 基本的には人事院勧告を十分尊重いたしまして、それを、この改訂の柱として、政府責任において技術的な面においては多少変更を加えたところがございます。同時に、六カ月あるいは九カ月の制度を十二カ月にしたのはどういうわけかということでございますが、これに対しましては、公務員制度調査会の答申を参考にいたしまして一年にいたしましたのではございますが、受ける方の方に六カ月ごとに昇給するものを一年にしたからといって損失を与えることがあってはならないと思いまして、今度の新給与に移りかわりの際の調整によりまして、一カ年になりましても、六カ月でやっても、実損にはならないという考え方のもとにやったのでございますが、この詳細に対しましては、技術的な面、数字の面については、大山室長から答弁いたさせます。
  112. 湯山勇

    湯山勇君 大山室長にはその問題についてお尋ねしておったわけです。六カ月、九カ月というきざみ方は、必ずしも手取りの額の大小だけの問題ではなくて、若い公務員、下級公務員の勤労意欲を増進させるというねらいも人事院ではあったはずでございます。公務員の勤務能率を引き上げていくというようなことを考えれば、やはりこの額だけでみたから、もういいのだというお考えには、大へん問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
  113. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 御指摘のように、勤労意欲を十分に振起させるために、やはり心理状態というものをキャッチしていかなければならぬことは、よくわかります。しかし、従来の六カ月というものがあまりに小きざみ過ぎるという公務員制度調査会の方の意見も、これは私は一般民間の昇給期間というものを見まして、大体民間の方が、今まで調べたところによりますと、七〇%は一カ年ごとになっておるようであります。そういうことも参酌いたしまして、実損にはならないという建前の上に立っていたしたのでございます。
  114. 横川正市

    横川正市君 ちょっと、大臣がもしあれでしたら、室長にお答え願いたいと思うのですが、先ほどの職務による級別区分の基準というものが、人事院では当然改訂しなければならないという立場に立ってその内容の検討を始めておるという瀧本給与局長の御答弁でありましたが、公務員制度調査室としてその問題についてどのように考えられておるのか。これは私は少くとも、この七等級の区分につれて出ております七等と六等との関係というものは、これは初任給決定の場合には、学歴と、それからそれに付随する試験等の問題がありまして決定されるのでありますが、上級、下級の分け方というものは、あとは熟練の度合いというものが、これが上級、下級の係員の分け方だと思う。そうすると、これは区分を明確にいたしませんと、上級、下級という給与体系を作られた趣旨というものは、十分に私は委員会の席上で表明されないのではないかと、こういうふうに考えられますので、その点を明らかにしていただきたい。  もう一つは、今の湯山委員質問なんでありますが、大臣の答弁によりますと、なるほど六カ月ごと昇給ということが、一年というふうに延ばされても、実額において決して現行よりかマイナスになっておらない、こういう意見でありますけれども、それならば大体各省庁において給与総額上占めております昇給のための原資、これは三十一年度と三十二年度はどうか、あるいは三十三年度と三十四年度はどうか、この昇給原資というものの将来の見積りについて、あなたの方ではどう考えておるのか、どう計算されておるのか、この点を一つお聞きしたい。
  115. 大山正

    政府委員(大山正君) 等級の区分の分類の基準につきましては、ただいま御指摘の中にもありましたように、人事院におきまして、人事院規則で定めるということになっておるわけでございまして、この俸給表立案に当りましては、六等級が上級の係員、七等級が初級の係員という立場で立案しているのでございます。  それから、昇給原資の問題につきましては、私ども承知しておりますのは、来年度の予算におきましては、本年度に比しまして、約四%程度の昇給原資を計上しておるというように承知しております。将来とも、おおむねそういう程度に計上されていく、かように考えております。
  116. 横川正市

    横川正市君 その数字については検討された結果ですか。予算の計上額四%ということは、あなたの方で検討された数字ですか。
  117. 大山正

    政府委員(大山正君) 各省の予算の、人件費の内容につきまして、公務員制度調査室といたしまして、それほど深く検討し、触れてはおりません。昇給期間を延ばしました点につきましては、昇給原資としては別に変らないと考えております。
  118. 横川正市

    横川正市君 実は、私の調べたところによりますと、公共企業体等の関係の昇給原資は、四・六%ないし五・二%くらいに、その昇給原資を必要とするということに大体なったのです。ただそれを予算の建前上、四%に限定されまして、運用上としては、三・八%ないし三・九%を実際の昇給額に充てて、あとの一%程度を運用に回すというような方針をとられたようでありますけれども、これでは、私は公共企業体関係の実際の昇給原資には満たない。そのために、この昇給基準というようなものを制定するために、相当困難な団体交渉が行われておるというような官庁もあるように聞いておりますし、ことに、あるところでは、すでに交渉によって七割ないし七割五分昇給というものを実際上運用しておるというようなところもある、そういうような結果から、四%の昇給原資というものでまかない得る、まかなはなければならない実情にある、ということを聞いておる。ところが、一般公務員の場合は、これは、いわゆる定員の操作によって、その操作された金額がプラスされて、予算運営を行なっておる。こういうふうに私たちは聞いておる。そういうところからいきますと、大体四%というのは、非常に無理な昇給原資の決定だということになる。そういう状況の中で、さらに今度の給与体系の中での昇給の原資の度合いというものを調べてみますと、はなはだしく私はその数について非常に驚くべきことを発見したのでありますが、ひどくなりますと、四年後あたりから、二・八%、三%を出ないで、実際の昇給運用ができるのではないか、こういうことを聞いておるのです。そうすると、今大臣が、大体この運用によって昇給の月は変っても、実額については決して損をしない。こういうふうに言われておりますけれども、三年、五年というように経るに従って、これは非常な差が出てくる。いわば初年度において直近上位に一号俸高くして格づけしたことが、三年ないし五年後には、元のもくあみになってしまう。さらに五年、六年たつと、現行体系よりか悪くなってくる。こういうような結果が生れてくるのじゃないかと思うのでありますが、その点、大山さんの方ではどう検討されておりますか。
  119. 大山正

    政府委員(大山正君) 現行のままといいます場合に、現在通し号俸で、そのまま頭打ちワク外なしに上る場合と比較いたしますれば、新しい俸給表は、あるいはお説のようになるかと思いますが、やはり現行制度におきましても、級の規定をこえまして、どこまでも上るというわけではございませんので、そういうものと比較いたしまして、決して四年後、五年後にみんなが悪くなるというようなことはない。大体現在の昇給の速度でいくものと、かように考えております。
  120. 横川正市

    横川正市君 今の大山さんのあれは、非常におかしいのは、いわゆる、先ほど私の方から質問いたしました級別区分の基準というもの、これは人事院が現在着手されておるようでありますから、その基準によって出てくるもの、それからもう一つは、運用によって、その基準によって不備な点をカバーするという、この二道か現在までにとられてきておるわけなんです。ですから、たとえば一般職でありまして、平職員の場合であっても、それぞれその事情というものを級別区分とは別個に認めて、その昇格というものを行なっておったという事実がありますし、これは現在の官庁の中で、調べていただけばわかりますように、相当多数に上っておるわけなんです。そういうようなものがきめられない中で、今の論議をするということは、私はいささか危惧を持つわけなんです。そこで問題は、七等級という等級は、現在の職務区分からいきますと、まず一級職の格づけは、使い走りや官庁間の書類の伝達等のいわゆる業務に該当する級なんであります。新制中学を卒業して、たとえば三年使い走りをやったとしたら、一体どういうことになるのか。これは一回の昇給で百円ずつ上っていって、三年で三百円、そのときに一体上級職員になるのか、ならないのか。三年も実際上の実務についておれば、いわゆる運用上の問題として、上級職員といわれるような仕事をもやりこなせる人が出てくるのじゃないか。こういうことになりますと、七等級の現在の号俸が、たしか十一号だったと思いますが、これまで必要なのかどうか、その点について非常に疑問を持つのです。そうなると、大体六等級、七等級のこの二つの区分といものは、これは初任給決定基準というのが別にあるのでありますから、別にこれを二つに分ける必要がない。六等と七等とは一本のものにして運用することができるのじゃないか。もう一つは、五等と六等との関係なんでありまするが、五等は係長とか、あるいは主査、班長、主事、そういったものに該当することになっております。熟練の度合というものは——たとえば六等級で十五年も経験をしたものが、一体五等級に格づけされる要素というものが、熟練の度合の中から出てこないかどうか。これは私は級別区分の区分上の問題ではなしに、運用上の問題として当然出てくるのではないか、こう考えるわけでありますが、その点の関連についで公務員調査室ではどう考えられているのかお聞きしたいと思います。
  121. 大山正

    政府委員(大山正君) ただいまの御質問の御趣旨は、運用をどうするかというところにある……。
  122. 横川正市

    横川正市君 いや、実際上、七等級の三年、五年以下の俸給表は要らぬのじゃないかと思う。
  123. 大山正

    政府委員(大山正君) お答えいたします。  大体七等級で数年たちまして、お話のように、まあ一本立ちの係員といいますか、そういう仕事につくという場合には、六等級に上るものというように私どもも通常は考えるわけでございまするが、ただ、俸給表の幅を延ばしましたのは、かりに、現在で申しまするならば五級程度の職務をいたしておりまして、そのまま五級で頭を打つというような場合を想定してみましても、それよりは有利なようにということで一応頭を延ばしておるわけでございますが、お話のように、大多数の者にとりましては、ある程度熟練し、また一人前の係員として仕事をやるということで六等級にいく場合が多いのではないよと、かように考えております。
  124. 横川正市

    横川正市君 これは、今度の分けられたこの五、六、七の内容を見てみますと、確かにまあ頭打ちという問題を解決するということもあるようでありますけれども、私は、それよりか、級別の区分によって、かえって七等級に固定してしまう、あるいは六等級に固定してしまう、そういうような人の出てくる率が非常に多くなるのではないかというように思うのであります。で、五、大、七の各等級については、これは少くとも各初任給によって格づけされた人が就職をする、それから大体一本立ちになって働くようになる、結婚適齢期になる、それから二人半ないし三人の家族を持つようになる、こうなると、当然職階によって縛られないで進んでいく道というものを盛っておかないと、これは私は、雇い者側の政府として、雇った人のそれぞれの生計の保障というものを作り上げていくことが困難じゃないかと思うのであります。これはまあ一律に、大体どんな能力の差があるとかないとかということは別にして、生計をその段階ごとに認めていく、それだけのものは給与として与えてやる、こういう形のものにならないと、私はこの俸給体系というものは事実上非常に苛酷なものになってくるんじゃないかと、こう思うのです。ですから、そういう点について、ただ七等から六等に行かれない人々のためにこの俸給表を延ばしたのだ、こういうことではなしに、七等、六等、五等の場合には、それぞれの最高額というものを私は取り払って、そして年数の積むことによって五等の最高までは当然いける、こういう俸給体系にしておくことが私はいいのじゃないか、こう思うのでありますが、その点で一つ意見を伺いたいと思のであります。
  125. 大山正

    政府委員(大山正君) いろいろ御意見のあるところと思いますが、私どもといたしましては、まだ七等級の幅を延ばしましたために、かえって、ここに長く大ぜいの者を置いておくのではないかという誤解を実は逆に受けまして、はなはだ、われわれの最初意図したところと違う受け取り方を各方面にされていることを、非常に遺憾に思っておるわけでございますが、かりに全く補助的な、初期的な仕事をしておる者でも、現在五級で頭を打つような形よりはよいようにという考え方で作っておるわけであります。なお、これをさらに延ばして相当な額までにしてはどうかという御意見でございます。これも確かに御意見の存するところと思うのでありますが、大体、現在の昇給速度を基礎にいたしまして、この俸給表を構成したわけでありますが、なお、ワク外に出ますような場合には、期間は伸びるわけでございますが、ワク外昇給の道を残しまして、別に回数の制限等も設けずにやっていくという考え方でございまして、昇給の速度は確かに落ちるのでございますが、相当なところまでいけるという形にいたしております。
  126. 横川正市

    横川正市君 この初任給決定のときに、たとえば新制中学校を卒業した者とそれから新制高校を卒業した者との期間差というのは、三年、これは実務について修練熟練を重ねた者と、それから学校にあって実務じゃなくて学務を修得した者と、この関係についてはどういうふうに考えておられますか。新制中学校を卒業して実務についた者と、それから高校に行って三年修学した者との関係です。ですから、いわゆる就職年限というのは、現在中学を卒業して就職した者と、三年も同一官庁に就職した者とのこういう関係はどうですか。
  127. 大山正

    政府委員(大山正君) 新制高校と、短大あるいは新大の関係におきまして、昨年の暮の国会で成立いたしました教員の学歴差是正の関係は、修学年数一に対して給与上の差を一・五%に見るという趣旨でございますので、おおむねそれを基準にいたしまして立案いたしたのでありまするが、新制中学と高校の関係におきましては従来と同様にいたしております。
  128. 横川正市

    横川正市君 そうすると、私はこの実務について、そして熟練の度合というものが上っていくそのカーブと、それから修学を積んでおって全く実務を知らないで入って来る者の修練のカーブというものは、そうこの年代においては違わないというふうに見るべきじゃないかと思うのです。そうすると、現在の俸給の立て方からいきますと、実務につかないで学業に入った方の者が非常に有利な取扱い方を受ける。ここに、この六等級、七等級という関係というものを私は生んだ間違いがあるのじゃないかと思う。大体まあ現在の俸給の中で八級職から上の方にいきますと、これは困難な度合というものがそれぞれ加わってきて、その中には勤続年数、いわゆる修練の度合、熟練の度合というものよりか学歴の問題を非常にたくさん取り入れておりますけれども、現在の俸給の中でも七級まではそうそれを取り入れておらない、いわゆる運用上の問題として十分解決づけて、四級、五級、六級へのそれぞれの級別定数による横すべりというものが多く出ておる、こういうふうに見るべきだと思うのです。今度の場合は、いわゆる運用の面が全然切り離されておりますから、それをどう運用してくれるのか私はわかりませんが、大体七等を三年、五年と修練した場合に、これは全く期間的に年数的に自動的に六級へ移行するのだ。こういう建前を立てて置くべきじゃないか。あるいは六等から五等への移行の場合も、いわゆる一年六カ月ないしは一年八カ月、二年、三年というようないわゆる頭打ちを是正するといういわゆる名目に隠れて、実際上は非常に希望を少くする職種に長く格づけさせておくような、そういう状態にとどめて置かないで、これもたとえば十三年とか十五年とかいうある年数に達したならば五等へという、そういう便法を設けて置く必要があるのじゃないか。こういう考え方について調査室長はどういうふうにお考えになるのか。その点をお聞きしたい。
  129. 大山正

    政府委員(大山正君) それぞれの等級にある一定年限おれば必ず上に上るような運用はどうかという御趣旨かと思うのでございますが、今回のこの改正案の等級区分はやはり職務を中心に考えておりますので、あくまでもやはりその上の職務につく場合に上るという建前であろうと考えるのであります。ただ実際問題といたしまして、相当年数下の等級で勉強し、実務についたものが、できるだけそういう順序に従って上の等級に上るであろうということは十分考え得ることでございますが、制度上として必ず一定年数が来れば上るのだということには参らないかと存じます。
  130. 横川正市

    横川正市君 今の問題は、また別途に人事院その他とも話してみないと、運用上の問題で私どもが考えている建前と、それから職階給をある程度五、六、七の下級の職員にまで、ないしは、この生活というものを立てていかなければならない全体の人にまで職階給というものをある程度加味させて、そして人事権というものを持たなければいけないというふうに非常にきつく私は縛っている点については不満なのであります。ですから、この点はもちろんこれは級別基準がのちにできてくるわけでありますから、その級別区分の中でさらに論議していかなければならない問題だと、こういうふうに思いますので、一応その点は終っておきますが、先ほどの昇給原資の問題については、これは非常に私は調査室としては不勉強なのじゃないか、この点はもし三年、五年後に昇給原資というものが、現行のいわゆる非常に政治的な含みを持った、いわゆる予算編成上の含みを持った四%という線を下回っていく、こういうような数字が明らかになった場合に、現在の十二カ月昇給というところを六カ月ないしは九カ月昇給にそれだけの原資を回して修正する意思があるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  131. 大山正

    政府委員(大山正君) 六カ月、九カ月を十二カ月にしたために減る、あるいは十二カ月で減る場合に、六カ月にしたらふえるというようには、実は私どもは考えておらないのでございますが、結局この問題はこの俸給表全体として今後昇給率が上るだろうか、下るだろうかという問題になろうかと思うのでございますが、まあこれは見通しの問題でございますので、的確に何とも申し上げかねるわけでございますが、当分は大体現在のような形でいくのではあるまいか、むしろ感じとしましては将来ふえるのではないかという感じもいたすわけでございますが、これはさらに分類基準なりあるいは実際の格づけなりによって違ってくる問題でございますので、やはり実施いたしました推移を見まして、お話のような点はあるいは何らかの調整を要するというふうに考えております。
  132. 横川正市

    横川正市君 ちょっとおかしいと思うのです。たとえば五、六、七への格づけが、職務の級が上位の級に上らない限り、内容が上らない限り、七から六へ行かないのですね、七等級から六等級に。そうすると、これは六等へ行く場合と五等へ行く場合とは、それぞれ非常に厳しい職階というものがあるわけです。五等へいく場合には係長という職務変更を必要要件とするのです。そうすると係長という職を奉じない限り五等の給料はもらえない。そうすると結果的にその人数が相当きつく限定されてくる、こういうふうに思われる。それからもう一つは、六カ月、九カ月が一年と変ったから昇給原資の総額的に変化があるとは思わないということのようでありますが、実際の今度のカーブを調べてみると、三年後で大体直近上位一号俸というやつは食いつぶしになっているし、五年たつと、いわゆる三年間もらっておった先もらいの分である直近上位だというやつが、今度は、吐き出しになって来る。そうすると五年以降のやつは現行体系がよくなるというふうに、こういう資料になっておる。これはもちろん級別区分や格づけ区分が明確になっておりませんから、その級別区分、格づけ基準によってそういう点はなくするのだということなら、今私が言ったように、等級の七等級の頭打ち、あるいは六等級の頭打ち、五等級の頭打ち、こういった問題は、もっと私は職階級的内容を排除して、当然生計を、家族構成がふえていく、それに従った生計を持てるように直していくべきだ。そうでないと、その点は私はもう当然の結果として、昇給原資というものは五年後から少くて済む、こういうようになるだろうと思う。もちろんこれは直近上位に格づけした本年度だけは総体の金額は大幅に要るようになりましょうけれども、来年度からは私は変ってくるだろう、こういうように明確に数字に出てくるものだろうと思う。そこで、その総体の原資を来年度から見てみますと、今年はなるほどある程度の原資が要るわけですが、来年度からは現在四%を下回るだろう、こういうことになれば、今のいわゆる最下級の格づけをされる五千百円ですか、あるいは六千三百円、こういうような格づけのところから、三年なり、五年なりの間は、六カ月昇給、あるいは九カ月昇給という期間を設けることができるのではないか、いわゆる財源的に。そういうふうに私たちは、将来の金の余り工合を十分勘案して、本年度はなるほどそれだけふえるけれども、来年度からはそれを使って十分昇給期間というものを短縮することができるのではないかと、こういうふうに考えておるのですが、もしそういう結果になったり実施する意思があるかどうか、そういう点を聞いているのです。これは瀧本さん、もしあれでしたら……。
  133. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいまの問題は、実施の問題といたしまして人争院に関係するところが非常に多いと思うのであります。政府側におきまして俸給表を立案されますときの大体の構想はあっただろうと思うのでありますが、実際の実施の権限は人事院にございますので、ただいまの点に関しまして、簡単にちょっと御説明さしていただきたいと思います。  政府側の御説明にもありましたように、昇給期間を六カ月を一年にするということになりますれば、同じたとえば六カ月区間の昇給金額がかりに二百円といたしまして、それで間差を四百円にするという、単なるそういうやり方をいたしますれば、これは前の一年にした場合にいつ昇給するかということもございますが、平均的に年の中央で昇給するといたしますると、前の六カ月間の昇給金額は損をするという現象が起きるわけでございます。その点に関しましては、政府側の方では昇給金額を変えておられまするので、年間の手取りにおきましては同じようになっておると思います。従いましてこの点に関しまして、たとえば昇給期間を短縮すれば原資が出るかどうかというような御意見でございまするが、われわれも政府案を研究いたしてみました結果、そのようなことには相ならないのではなかろうか、このように考えておるのです。それからおっしゃる通り、格づけの問題が非常に関係がございます、この問題は。で、われわれはどういう格づけをしようと、もちろん政府案に代表官職例が出ておりまするから、これを無視して、政府案がそのままの形で通過いたしたとかりに想定いたしました場合には、それを無視して人事院で勝手なことをやりますと、計画がくずれてしまいますので、この代表官職例は十分尊重されなければならないと考えております。しかし大体において見まするのに、俸給の適用範囲を変えておるとか、あるいは等級を直しておるということがございますけれども、そういうところについては多少実施上の技巧が必要でありまするが、おおむねのところにおきましては、大体人事院勧告いたしました線で、その当時においては人事院は実施計画も一応は考えておったのでございますけれども、それとそれほど遊離しておるものではなかろう、かように考えておるのでございます。御指摘のように、六等級、七等級の問題は、これはなるほど係長以上の段階と比べますると、職務責任ということが多少不明確でございます。従いまして六等級、七等級というところにおきましては、これはやはり現在やっておりまする昇格基準というものが運営の基準にならざるを得ないのではなかろうか、このように考えております。現在におきましても係員を二つに区分いたしまして、級のくくりというものを三級、四級、五級というくくりと、それから五級、六級、七級と例外級八級と二通りに分けておるのであります。従いまして今回の切りかえに当りましては、おおむね現在の三級、四級、五級というくくりの中に入っておる人はこれは七等級にいくことになるでしょうし、それから五級、六級、七級、例外級八級というくくりのところに入っておりますものは、これを六等級に入れていくということになるのでございまして、その意味におきましては現状を平均化するということに相なるのでございまするけれども、そのために今回の俸給表ができましたために、そこで抑圧がされるということにはならない、またそのような運用をするつもりは全然ございません。従いまして切りかえのときはそれでいいのでありまするが、将来の問題といたしましては現在の昇格基準表を、この辺につきまして平均化いたしまして、現在の運営と大体同程度のことをやっていこう、このように考えております。それから昇給原資の問題に関しましては、これは予算書を見ましてもなかなか計算がむずかしいのでございます。と申しまするのは、定員の中におきまして、年度の前半だけを定員として認めるとか、あるいは後半になって新しくその定員を増加するとか、いろいろな要因がございまして、これは予算の専門家でありませんと、この予算書をひっくり返して見ただけでは十分なことはよくわかりません。しかしわれわれは従前の経験並びにその予算書を見、また大蔵省のいろいろお話等も承わってみまするならば、大体四%あるいはそれをこえるかとも思いますが、その程度の原資はことしも三十二年度においても入っておる、このように考えておるのであります。で、三十一年度もその程度でございました。これはお話のように一般職におきましてもそれだけで足りるものではございませんけれども、これは事実そうであります。この予算の折衝におきましてはわれわれ十分努力いたしておりまするけれども、なかなか予算全般の考慮が大蔵省としてはおありになるというわけでございまして、これはなかなかむずかしい、しかしながらわれわれは前年の昇給原資を切っておる、このようなことはないのでございます。現在それではどういう一体昇給をやっておるか、全体の三割程度のものが昇給延伸をくらっておるかというようなことになりますと、これは私は一般職に関する限りは年度当初等において、予算の入り方がよくわからぬときに多少延伸したということは従来事例がございましたけれども、そういう場合には遡及してまた直すというような手直しも行われておるのでありまして、現実にはおおむね長期病欠者でありまするとか、停職者でありまするとか、そういう方々が大体、これは非常に率は少いのでありまするが昇給延伸というようなことになっておりまするが、そのほかの人々につきましては大体あそこにきめてありまする昇給期間で昇給しておるという状況でございます。われわれは人事院勧告においても考えたのでありまするが、政府案においても、これが通りました場合においても同様の運営をしなければならないと思っておるのであります。大体ただいま申し上げましたような例外者を除きまして、一般には昇級し得るという方法をやっていきたいと思っております。このためには多少昇給原資の窮屈なところもございますので、たとえばある職員が欠員になりました際には、次期職員を採用いたします場合には多少の期間を置くとか、その辺で多少の原資をかせぐという方法は事実問題としてとらざるを得ないと思うのでございまするが、そういうことによりまして、おおむねこの昇給だけは現在と同様にいくのではなかろうか、このように考えております。新しいこの人事院勧告におきましても平均的な昇給率というのは保っておるのでありまするから、政府案におきましても大体その程度のことをやっておられます。あるいは見ようによっては多少必要昇給原資がふえるのではなかろうかというような観測もできるのでありまするが、大体そういうことでやっていけるのではなかろうかと思っております。現在それでは、先ほどお示しがございましたが、将来に向って平均昇給率が落ちていくのではなかろうかというようなお話でございました。これはいろいろな見方ができると思うのでありまするが、現在におきましてもいわゆるワク外者というものが年々約二%ないし三%の割合で増加いたしております。このことはやはり今人事院は従来級別定数の改訂をいたしまして、上位の級別定数を増加して下のものを削っていくということをやっておりましたけれども、現在の給与法の体系のもとにおきましても、これは限度があることでございますが、やはりやってきたのでございますけれども、よほどこれは窮屈になってきておる。やっておるにもかかわらず、なおかっそういうふうにワク外者が漸増して、二ないし三%の割合で漸増しておるのであります。そういうようなことを合せ考えてみましても、現在の給与法におきましても、昇給原資といいますか、昇給率というものが現在の率で一体保っていけるのか、あるいは将来に向ってそれが減るとか、こういうことはいろいろ将来の推測の問題も入って参りまするからわからぬ面がございます。ちなみに現在の給与法におきましては、号俸の間差はおおむね三・八%になっております。特定昇給のところでありますと、一号上るのに三・八%でございまするので、これは二号上りますとその倍の七・六%ということになるわけであります。上の方は三一八%でございます。そういたしますると、率から見ますると職員構成がどの辺にあるかということも、全体の平均昇給率に関係して参るのであります。そのようなことをいろいろ考えてみますると、大体将来の、遠い将来の予測はなかなか立ちがたいのでありまするけれども、大体現在程度の昇給原資が入っておれば、おおむね支障なく運用できるのではなかろうかと、このように考えております。
  134. 横川正市

    横川正市君 私は今の瀧本さんの意見と実際とはだいぶ違っているように承知しているのです。ことに来年度からの、今年度は四%の昇給原資をそれぞれ予算書に盛り込んでありますけれども、来年度からのこの公務員関係の昇給原資は三%くらいに下るのじゃないか、こういうふうに見ておるわけなんであります。その点はここで明らかにしてもらうことはちょっと困難だと思いますから検討していただきたいと思います。  それからもう一つはなるほど級別区分の基準と格づけの問題に非常に大きな関連性があるわけでありまして、この点については私は、現行通りにという表現でありましたけれども、単に今のような級別定数の配算方式でなくて、もっと明確なものを一つ出してもらいたい、それは先ほど言ったように上級下級の熟練の度合いというのは、三年か五年たてば、文書を使い走りする給仕でも一般の仕事のできるような立場に変っていくと見るのが、これが常識だろうと思うのですが、そういうことで現在十二カ月、それから一年半ないしは二年、ひどいのは三年というような七等級にさらに頭打ちを是正する意味で作られた俸給の延びが、昇給期間というものをそれだけ大きく幅をとったという点は非常に不合理だと思うので、だからその点はもしもどうしても六等へいくことができないというならば、七等の場合には期間的に設けられない理由があるならば、当然それは昇給期間において、同一昇給期間で七等あたりはいくべきじゃないか、それを十八カ月、二年というようなそういう昇給期間でいくのは少し立案の趣旨と実態とは違っておるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。この点も事実上職員構成の問題と関連がありますから検討してもらいたいと思うのです。それからもう一つは今度は管理職手当というのは全廃するのですか、これは一つ大臣にお聞きしたい。
  135. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) これは人事院の方から答弁してもらう方が適当だと思います。
  136. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 現在特別調整額というのはあるのでございます。おそらく特別調整額のことをおっしゃったと思うのでございますが、この特別調整額はいわゆる管理監督の地位にありまする職員の勤務の実態を見てみますると、たとえば国会関係でありまするとか、これは時間がなかなかうまく勤務時間内に運営していただくというようなことが困難なような実情もございまするので、いろいろ超過勤務の実感というものは、比較的上級職員になりますと多いのでございます。そういう多い職員に勤務の実態に応じて超過勤務を支払うということが果して適当であるかどうか。またそういう職員は時間的に継続するというよりも、むしろある一カ月なら一カ月というふうにまとめて、この勤務の代償というふうに考えた方がよろしいのではなかろうかというようなことが議論されまして、これはたしか昭和二十七年だったと思いまするが、そういう管理監督の地位にありまする人々の超過勤務手当というものを平均化いたしまして、これを月額のいわば超勤打ち切り手当と申しまするか、そういう意味におきまして、特別調整額が設けられておるのであります。従いまして、これは職務給的な観点から見ましても、職務の量に応ずる一種の手当でございまして、職務責任あるいは複雑の度合いということとは多少違った点がございまするので、これは並列さしても別に理論的におかしいということはないのではなかろうかというふうに思います。もっとも、この特別調整額に対応いたしまするものを特別職等におきましては本俸化しておるという例もございます。そういう意味におきまして、むしろ量に対応するものであっても、これを俸給にしてしまうということもいいのではないかという議論もあろうかと思うのでありますが、これはそういうものを本俸に入れてしまいますると、これは退職手当でありまするとか、恩給とかというものの計算にやはり響いて参るのであります。そういうものを入れて、さらに有利にするということが一体いいのかどうかというような問題もございまして、これは本俸とは別にしてございます。従いまして、今回の人事院勧告におきましては大体従前の給与というものを平均化して、合理化するということが主でございましたので、それをとつ払う、ないしは本俸化するという措置は人事院勧告でも取らなかったところでございまするし、また政府案はそれを大体踏襲されましてお出しになっておる、このように承知をいたしております。
  137. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  138. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  139. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 特別調整額のお話がありましたが、特別調整額に関連をして、そういうものがないからということで、裁判官それから検察庁も関連をしておるようですが、裁判官の待遇改善ということで、これはかつての給与引き上げのときに起った事態ほどではありませんけれども、大阪高裁関係においても裁判官から待遇改善の要望が出ておる、実際に。それから大学教授の問題についても、これは朝日新聞の論壇であったと思うのですが、出ておりました。声が公けに出ておるか出ておらぬかはとにかくとして、裁判官なり大学教授なりが特別調整額をもらっておられる上級公務員に比べて待遇がよくない、こういう声が出ておることは、これは御承知だろうと思うのです。その点についてどういう工合に実施をしようとされるか、あるいはしようと考えておられるか、大臣なりあるいは政府委員から一つお答えを承りたい。
  140. 大山正

    政府委員(大山正君) 今回の改正は御承知のように一般職の職員につきまして、人事院勧告趣旨にかんがみてやるわけでございまして、特別職につきましても若干これと均衡を取るために改正案が別途出ておるように承知いたしておるのでございます。御指摘のありましたそれぞれの特別職と一般職、あるいは特別職相互間の調整、いろいろ問題点があると思うのでございますが、私どもの方でまだなかなかそれを全部調整するというところまで実は参っておりませんので、今後さらに検討する問題としてやって参りたい、かように考えております。
  141. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これはやはり裁判官なり、それから大学教授の点からは、今のようなおざなりの答弁ではなくて、大臣から一つはっきり要望にこたえる方針をお示し願いたい。騒ぎが大きくならなければやらぬというのではないでしょうね。
  142. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 御指摘の点はごもっともでございます。しかし、これにはいろいろな複雑事情なもあるのでありますが、御期待に沿うように今後努力していきたいと思っております。
  143. 湯山勇

    湯山勇君 ずいぶんたくさんお尋ねしたいことはあるので、整理しながらお尋ねしますから。一つは地域給勧告は現在も生きておるとはっきりただいま人事院総裁から御答弁がありましたが、大臣もあの地域給勧告は生きておると判断しておられますか、いかがでしよう。
  144. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) このことは、この間予算の全体質問の場合にずいぶんもみ合った問題でありまして、どうもあの時答えた以上には答えられないのでございますが、なお予算書において地域給を廃止するというようなことが説明書に載っております。その方向に向って今党の政調及び総務会の方で検討いたしておりまして、大体決定に近付きつつありますから、それはですね、党の方から国会提出するようなことになるかもしれませんが、予算書に規定してありまするような方向に向って検討いたしております。
  145. 湯山勇

    湯山勇君 まあ生きておるか生きていないかということに対して、それは当然生きておると御判断になると思うのですが、これを明確にしていただきたいということと、それから予算書に政府責任をもって書いたことを、党の方でやらせて政府がほおかぶりしておるというやり方には私は納得できないと思うのです。政府の方では一体どうなのか、これをお尋ねしたいのと、それから第三点は、今回の給与改訂についての人事院が、なるほど先ほど私がお尋ねしたように基本になる問題で変更になっておるものもあるけれども、やはり一番大きい問題は六%程度の昇給だと、これが確保されておるからまず大体において人事院勧告は尊重されたものと認める、ところが地域給勧告についても九十七億でしたか二億でしたか、これだけの原資が必要だということを伴って人事院勧告しておるわけです。従って人事院勧告を尊重するという場合には形と実質が伴わなければ尊重されたことにならないので、で、大臣が終始言われる人事院勧告を尊重するということは、やはりその両面をあわせて尊重すると、こういう御意図であろうと思うし、大臣といえども、やっぱり党員ですから、党のしかも大幹部ですから、おそらくそういう基本線をかりに党の方でどう決定されようとも、その中において無視するというわけには参らないだろうと思うのです。その点について一つ御答弁いただきたい。
  146. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 人事院勧告そのものは生きておると思うのです。しかしあの事情は当時八十六億ぐらいだったものが、今の状況において換算すると九十二億ぐらいになると思うのです。それをあなた方の党とわれわれの方と相談しまして、それで百八十たしか四億だと思うのですが、下の方の数字は当らないと思いますが、大体百八十億前後だと思いますが、そこで話し合いがつきまして国会に提案しようとしていろいろ政府の財政当局とも折衝して提案はしたのですけれども、解放になったものですから、そのままになったのです。その後情勢の変化によって今われわれの政府はこの地域給を一つ従来の特権を侵さない範囲において廃止しようと、こういう考え方の上に立っております。現在の姿はそうであります。それが党と政府の間でいろいろ検討いたしておりまして、大体方向はそういう方向にきまるであろう、まあ政調の方は大体きまったのですが、総務会その他できまっておりません。提案を政府がやるか、党の方でやるかということはまだ決定いたしておりませんが、大体今申し上げましたような状況であります。私は情勢の変化だと思っております。
  147. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは党と政府、それから政府公務員法上拘束される義務との間に混淆があると思うのです。労働大臣として、まあ給与大臣としてここに出ておられるわけですが、その政府の拘束されるのは、国家公務員法に基いて勧告がなされた、それを実現をする責任人事院勧告が生きておると言われるならば、その何といいますか、実施について党なら党で具体的に意見があるというなら、それは積極的に参加されていいと思うのだけれども、しかし人事院勧告は生きておる、しかしその人事院勧告以前の既得権は尊重しておるけれども、人事院勧告をどういうふうに実施するかということについては、全然考えないで地域給を廃止する、そうしてそれ以前のとにかく既得権だけは生かそう、これでは給与担当大臣としての人事院勧告が生きておるという立場からすら、これは間違っておりますよ。それを根本的に政府なり給与担当大臣としての任務の十分な自覚がないから、根本問題はあとでやりますけれども、地域給の勧告の問題についても党が人事院勧告を生かすためにどういう工合にやろうとしているか、それが修正になった部分はともかく、やらなければならないという点について御研究なりあるいはお考えがあるというならわかるんだけれども、根本的に間違っておりますよ、あなたの意見は。その点は人事院勧告が生きておるというなら、それを生かすためにどういう工合におやりになるか、そこを一つ承わりたい。
  148. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 党と政府の問題については、これは政党内閣でありますから、党の考え方をやはり重視してゆくということは当然であります。また党と政府との責任については、大局から見るならば、政府責任であるけれども、同時に政党内閣でありますから政党の責任でもあると思います。でありますから、これをどっちで出すかということはまだきまっておりません。けれども一応検討は七割通り済んで、先ほど申し上げましたような方向に向って提案しようという考え方の上に立っております。それで今の人事院勧告を、ああいう事態になっておったが、どうかということですが、人事院勧告は先ほど総裁がおっしゃったように生きておると思う。しかしその後の政治上、すべての経済上の変化によってわれわれは今実損のいかない範囲内において行いたい、こういうふうに思います。
  149. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  150. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  151. 湯山勇

    湯山勇君 大臣にお尋ねしますが、今回の地域給を廃止するなら考えなければならない問題点が二つあると思います。一つは大臣が言われたように実損をかけない、これはたしかに一つの大きい問題点だと思います。それから第二には政府は常に人事院勧告を尊重するというお立場に立っておられて、しかも人事院勧告は生きておると、そうすればこの人事院勧告をやはりこれに織り入れなくもやならない、この二つをどういうふうに考えておられるかということが私どものどうしてもお聞きしなければならない点で、実損をかけないというだけでは、これは人事院勧告を無視する、こういうことになるわけですから、それを一つ御答弁願いたいのと、その際解散によって政治情勢が変ったとか、そういうことの影響を受けないために人事院という独立の機関があるわけですから、で、解散をしたのは政府責任で、不信任案が通って解放したわけじゃないので、そういうことも考え合してゆけば、公務員に迷惑をかけないためにあるのが人事院、その人事院勧告ですから、これはどうしても損をかけないということと、人事院勧告を尊重するという二つの柱は、これは尊重してもらわぬと困ると思うのですが、それをどうマッチさせるか、その点について一つ御所見を伺いたいと思います。
  152. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 人事院勧告された通りの九十二億というものを織り込んで今度廃止するなら廃止したらいいだろう、こういう考え方なんですが、それは先ほどから申し上げております通りに、政治経済の変化によったのであります。
  153. 湯山勇

    湯山勇君 具体的にいえばどういうことになりますか。
  154. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 情勢の変化であります。
  155. 湯山勇

    湯山勇君 情勢の変化といいますのは、政治というのは今言われたように解散でしょう、解散というのは、そういうことが公務員に迷惑をかけないように人事院というものが独立の機関としてあるわけですから、それが生きている以上は、政治情勢によってそれを無視するということは言えないと思います。(「大臣は、生きていると言うじゃないか」と呼ぶ者あり)
  156. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今の問題はこれは政治上の一つの変化だと思うのですよ。だから当時の経済状態、当時の状況からいえば、そうできなかった。これはもう解散になってああいう状況になりまして、それで今度は実損のいかないように、まあ無給地についても当相な考慮を加えて廃止しようと、こういうふうな政治上の変化が起ったのです。この点は内閣責任において非常に考えておるつもりなんです。
  157. 湯山勇

    湯山勇君 実損がいかないというのは各個人について実損がいかないと、こういうことになりますか。
  158. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 給与の手取額を減らさないという考え方です。
  159. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あれは大臣、手取額が減らない云々、実損がいかないというのは現行においてでしょう。その現行は勧告以前のものですよ。地域給について九十二億という話もありましたか、こういう工合に改善をしなければならぬ勧告があって、これは給与の一部ですよ、その勧告が生きておると言われるならば、現在において生きておると言うなら、それは法律に基いてなされた勧告をどういう工合に政府は尊重するか。その中身について、あるいは地域給を、地域給でない形でやるというのならそれはまた別の話です。しかしそれをネグレクトして現在からして実損のいかないようにというようなことなら、その勧告は尊重されていかぬことになります。これはほかのことでもそうです。今度とにかく、去年も給与改訂勧告についてあなたの方がそれを尊重して云々と言われるけれども、その柱になっておるものを無視されておる。だから人事院勧告をどういうふうにお考えになっているかということを聞かなければならぬと同じです。明らかに人事院の地域給の勧告が生きているというならば、その九十二億の人事院勧告というものはどういう工合に尊重されているか。それについて政府あるいはその裏の方で与党が意見を出されても、それはかまいません、かまいませんけれども、政府がとにかく勧告に基いて給与行政をやり、あるいは地域給の改訂をやらなければならぬというその義務を、法的な義務、これはそののままでないかもしれません、そのままでないかもしれませんけれども、一応負っておる。公務員法の義務というものはこれは残っておる。それはどうなるのですか。
  160. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほどから私は自分の心境を申し上げておるのですが、私は人事院の九十二億という勧告そのものは生きておるけれども、これは解散の前の状況ですね。その倍額にもうなってしまった。そういうようなふうにこれは地域給というのは根本的に直さなければならぬというものが、解散後に起ってきた空気なんです。でありますから、当時はそうできなかったけれども、今の情勢からいけば九十二億ということの勧告があっても、財政経済の関係、日本の経済事情関係から政府責任においてこれは廃止しなければならぬ。その廃止する場合には現在の手取りというものには損をかけない。むしろ無給地の方には多少の手ごころを加えるべきでないかというような考え方において、政府責任において人事院勧告をのめないという状況なんです。これは地域給を根本的に直さなければいかぬ。こういうところへ今きているわけでありますから、これは口先ではありません。人事院勧告はあるけれども、その今のような推移から見て、九十二億の勧告されたものを百八十億にしなければ国会の中がおさまらないというような地域給というものを、このまま存置しておくことはいけない。だから政府責任においてこの際一つ廃止しようじゃないかということがこの予算編成に当って考えられたことでございますから、その人事院勧告が九十二億あったから、九十二億を今度の廃止に当って、加えた上に廃止しようということはできません。
  161. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あのときに百八十億の原資を要する修正案が国会を通っておれば、それはおそらく実施されたでしょう。ところが九十何億というものが百八十億になった。そんなにどんどんふえるものなら、ということで考えられた、これはわかります。わかりますけれどもね、あなたは人事院勧告が生きておるとこう言われる。それならばその国会の決議に至らなかった、人事院政府勧告したその勧告は生きておると、こういうことなんですが、その数字が九十二億という数字を言っておられるわけです。それについてどうするかということの、尊重しなければならぬという義務が今日残っているとすれば、それならばその勧告は、その後のときの国会の動きを無視してしまって、そうして現状よりも悪くならなければそれでよろしいのだ、そうして地域給というものは、なくすべきだ、こういう意味なら昨年の勧告を完全に無視しようと、こういうことだろうと思います。
  162. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 無視という意味ではない。
  163. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 無視になるのです。
  164. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは人事院勧告したものを尊重することは尊重しますけれども財政経済の関係、それからこの地域給というものの体系そのものがいいものじゃないという観点の上に立って、九十二億の勧告をしたやつが国会の中で百八十億にしなければならないというような非常に利害関係のある制度ですから、これはやっぱりその既得権を侵害しない範囲内において廃止した方がいい、そうして新しいこういう給与体系にした方がいい、こういう観点の上に立ったのです。でありますから、人事院勧告は尊重はするけれども、政治、経済上の関係から、これはあのときの九十二億というものはのめないということが現在なんです。
  165. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 だから口ではとにかく尊重しなければならぬということを言われるけれども、何も尊重しておらんじゃないですか。全然とにかく無視をして、まあ勧告後のときの経緯もあったけれども、勧告を無視する、現状の、今の給与の実態から損はさせぬけれども、その勧告を生かして——その勧告の生かし方がどうであるかということをここで言っているわけではない。それについて考究されることについては、別に政府が考究することをいい悪いと言っているわけではないが、全く無視して、そうして現状ある、いは勧告以前の状態を基礎にして地域給を廃止する、こういう動きをするならば、その勧告が完全に無視されておることになる。だから生きておると言われるなら、人事院勧告趣旨を尊重をして、ここでどうするか、これは人事院それ自身も地域給については廃止すべきであろう、こういうことで検討されている。しかしなかなか実際にむずかしいから、今日まで結論が出ておらない。それだけむずかしい問題だから、国会でもまた問題になるのだと思いますが、それはあの九十二億、あの百八十億のときに、将来にわたって廃止したい気持があったかもしれぬ。しかし廃止するについてはこういう矛盾を是正するようにしていくならいいだろうということで、こういうことで与党としても賛成されたのだろうと思いますが、そういういきさつを全然抜きにし、そうして勧告を無視するような格好で、勧告を尊重すると言っているが、そういうことはないですよ。
  166. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今のお話はさっき私か申し上げたので尽きておると思うのですが、政府人事院勧告を無視したかもしれませんけれども、この九十二億というものを組み入れて地域給をこのままにおくということはおもしろくないということであって、人事院勧告はあるが、政府責任においてこれを受給者に損のいかない程度において改善しようと、廃止しようと、これが今度の予算編成に当って考えたことでありますから、御指摘はいろいろありましょうけれども、それは政府責任でやるのでありますから、どうか、その点は皆さんのいろいろの御要望もありますけれども、これは廃止した方がいい、こういう考えの上に立ったのです。
  167. 野本品吉

    野本品吉君 関連。私は地域給というものができた由来をだんだん考えますと、終戦直後におけるいろいろな生活に直結する条件というものは地域によっていろいろ変ってきた、変っている。非常に利益、不利益、幸不幸がある、この利、不利、幸不幸をどういうふうにして調整したらいいかということから地域給というものは出発しておるということは申すまでもない。ところがその後逐次日本の経済の復興、安定に伴いまして、地域給を設定した当時の条件とはむしろ逆な状態まで起って来ておる。私が逆と申しますのは、つまり衣食住、生活必需物資のうちで当時地域給を必要としたところの方が現在は恵まれているところもある、従って地域給に対しては従来の考え方根本的に改めるべきである、私はそう考えます。で、今度の地域給の扱い方についてはどういう考え方に立っておるか、私はさっき申しました地域給設定当時の状況と今日の状況が非常に違っておるというふうな私の見方が間違っておるかどうか、それが間違っておらないとすれば、ただいま申しましたように、地域給の考え方に対しては相当の修正を必要とする、こういう考え方に対して、人事院、労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  168. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 御指摘の通りであると思うのです。これは終戦後の物資の不十分の場合において考えられたものでありますから、御指摘の通りであると思うのです。むしろ今日は私は僻地給を考えるべきである、こういうふうに考えられると思います。それを今の制度そのものを、まあいろいろ御指摘がありますけれども、人事院勧告の九十二億というものは、それは勧告はしているでしょう、しかし政府責任において、こういうような弊害の伴うものは、この際受給者の実損のいかない範囲内において、また無給地解消の意味も加えて改廃をしよう、こういう見地の上に立っておりますから、人事院勧告を無視した、これは自由民主党及び岸内閣はけしからぬ、こうおっしゃればそれまでなんです。われわれの責任においてこれをいたしております。
  169. 小林武治

    主査小林武治君) まあこれは質疑だからして、質問と応答で、なるべく議論は一つ……。
  170. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 人事院の見解につきましては、先ほど人事院総裁が申し上げた通りでございます。
  171. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大臣は政府責任においてやると言えば何でも片づくかと思って、予算委員会のような、とにかく声を大きくしたり気ばったりしてやられるがそうじゃない、問題は。国家公務員法の建前は私が言うまでもありません。公務員から争議権を奪い団体交渉権を制限して、そして人事院という機関を作って、そして人事院がたえず研究をし、その結果を報告し、あるいは勧告をする、それを政府国会報告なり勧告をして、その報告なり勧告か尊重をされるというところに国家公務員法の建前かある。それが崩れて人事院勧告を完全に無視してもかまわぬ、政府責任ならばかまわぬ、こういうことならば、これは国家公務員法政府から蹂躙されることですよ。それは人事院勧告を無視してもかまわぬ、政府責任ならばかまわぬというのが、公務員法の精神であるかどうかあらためて承わりたい。
  172. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは私は先ほど申しましたような弊害を伴うものでありますから、人事院の方といえども、私は現在やっぱりこの制度そのものがよくてどこまでも続けていこうというお考えがあるかどうかも私はまだ疑問に思っておるのです。それは現在の状況において人事院勧告の倍にもなるような修正をしなければならないという情勢における制度を私はこれは長く続けて行くべきものではないと考えます。でありますから、この問題については政府責任を持って損のいかないような方向において改廃したい、こう申し上げておるのであります。しかしこれらについてもまだ十分に仕上ったわけではございません。目下検討中の問題でありますから、これが仕上って審議の過程に入りましたならば、またいろいろ御議論も伺って審議いたしたいと思っております。
  173. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 でき上ってからのことを具体的に私は申し上げておるのではない、あるいは案について給与担当大臣が人事院勧告を無視してもかまわぬ、政府責任ならば無視してもかまわぬ、こういうことを言われるから私は申し上げている、そういう建前じゃないじゃないですか、それならばとにかく国家公務員法を廃止してストライキもやれ、あるいは団体交渉も無制限にやれというのなら別問題です。勧告が生きておると言いながら、そういうとにかく無視してもかまわぬというのは放言ですよ。
  174. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 無視してもかわまぬとは言いません。尊重しております。(「尊重しておらぬ。」と呼ぶ者あり)けれども、その部分については考慮を払ったわけであります。
  175. 湯山勇

    湯山勇君 今の吉田委員の言われたような根本的な問題はこれは大臣は十分お考えを願わないと、これは問題だと思います。(「給与担当大臣の資格がない」と呼ぶ者あり)それから大臣は人事院が将来も地域給を置くつもりかどうか知らないけれどもと、こういうような御発言でありましたが、これは一つ訂正してもらいたい。人事院は将来廃止をすべきだと勧告しております。大臣は御存じでない、廃止を前提としてあの勧告をしているのです。だからあれをいつまでも続けていこうという考え人事院には全然ありません。お読みになればわかります。そこで……。
  176. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それならば……。
  177. 小林武治

    主査小林武治君) 黙って発言しちゃいけません。
  178. 湯山勇

    湯山勇君 そこでこれは大臣も大体おわかりになっていますから、その問題ははっきり、現在の人の収入はダウンをしない、無給地については若干よくする、こういうさっき御答弁でありましたが、こういうことをするとすれば、予算措置がなければできないと思いますが、現在の人の収入は変らないのですから、そうして無給地の人は引き上げるということでありますから、当然予算措置がなければできないと思いますが、どれだけ考えておられますか。
  179. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) まあこの問題もまだ仕上ったわけじゃありませんから、はっきり申し上げることはできないのです。しかし方向を申し上げたわけであります。そこで三十二年度の予算には直接関係はないやり方で考えていきたいと思っているのであります。
  180. 湯山勇

    湯山勇君 私はそういう手品のようなことは、いかに労働大臣といえども、できないと思うのであります。現在の人は現在の既得権を侵さない額においては。無給地のものは引き上げると言うのです。そうしたら、これは金なしでできますか、そういうことはできないですね。だから、そういう場合には別途の予算措置を講ずるとか、補正をするとか、そういうお約束がなければ、これはいかに大臣といえども、できないと思います。手品なんかはできない。これはどうですか。(「無責任だ」と呼ぶ者あり)
  181. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) でありますから、先ほどから申し上げているように最終的な仕上げができておりませんから、目下検討中の問題でありますので、これが提案されたらば一つ御審議を願います。
  182. 湯山勇

    湯山勇君 私は勝手にわからぬことを言っているのじゃない、大臣がさっきそういう御答弁があったから、そういうことを聞いているので、だからこれはお答えがあってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  183. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほど答弁した通りであります。
  184. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  185. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をつけて。
  186. 湯山勇

    湯山勇君 労働大臣に一点と、職員局の方見えておりますか、一点づつ、二回聞きますから。  大臣は今のような御答弁ですが理屈はよくわかっていただいたと思いますから、一つ手品の種をぜひはっきりと、さっきの御言明がこわれないようなりっぱな案を、政府か与党か存じませんけれども、見せていただきたいと思います。その上で一つ検討さしていただきます。それから、それについて、そうしますなら、そうしますと、そうしないなら、しないという御答弁をいたたきたい。これは記録に残りますから。  それから職員局の方にお尋ねしたいのは、こういう昇給原資がだんだん窮屈になって参りますと、勤務評定、能率増進のための勤務評定に直接昇給が結びつけられるという可能性がありますし、そういう事例が特に地方においてはたくさんあります。これは瀧本局長に以前お尋ねをいたしたのであります。これについて一体どういうふうに考えておられるか。人事院でおきめになったああいう勤務評定によって、それでもって昇給を制限する、あるいはその勤務評定に順位をつけて、今のパーセンテージに従った率がありますね。それによって下の方の評定のついたものは昇給させない、こういう事例が方々かなりあるようですが、これについてどうお考えになるか、これは明確に一つお答え願いたいと思います。大臣から一つお願いします。
  187. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) いろいろお説がありますが、先ほどから何回もお答えいたしておりますように、最終的な決定には至っておりませんから、検討中の問題であります。しかし、いろいろ御議論のある点も伺っておりますので、最善の努力はいたしたいと思っております。
  188. 中村一成

    説明員中村一成君) 人事院職員課長でございます。勤務評定制度につきましての御質問でございますが、私どもは、勤務評定と申しますのは、この制度は、ただいま御質問にございましたように、能率増進のための制度であろうと考えております。従いまして、その勤務評定の結果、これが人事上の要素としていろいろ使われるということは、勤務評定制度の結果当然出てくることでございますが、逆に昇給を切るために勤務評定を使う、そういうことはこの勤務評定の趣旨ではございませんので、そういうことにこれが使われまするならば、私どもとしましては、この制度の主管者として非常に迷惑であると考えております。
  189. 湯山勇

    湯山勇君 政府の方にお尋ねいたしますが、そういう事例が、これは直接御関係がないかも存じませんけれども、特に地方公務員では起っておる事例がございます。それについては、何か是正させるというようなことをお考えになっておられませんか。
  190. 大山正

    政府委員(大山正君) 地方公務員のことにつきましては、私ども直接の権限がございませんので、遺憾ながらお答えいたしかねます。
  191. 湯山勇

    湯山勇君 国家公務員では、そういう事例は絶対ありませんか。
  192. 大山正

    政府委員(大山正君) ないように承知いたしております。
  193. 野本品吉

    野本品吉君 今、勤務評定の問題が出ておりますが、この国家公務員法の七十二条の終りに書いてあります、「人事院は、勤務成績の優秀な者に対する表彰に関する事項及び成績のいちじるしく不良な者に対する矯正方法に関する事項を立案し、それについて、適当な措置を講じなければならない」、これはこういうふうに講じられておりますか。
  194. 中村一成

    説明員中村一成君) ただいま実際実施いたしておりますることといたしましては、給与上におきまして特に成績優秀な者につきましては、特別昇給をするという方法を具体的に実施いたしております。
  195. 野本品吉

    野本品吉君 その成績の著しく不良な者に対する矯正方法というのは、どういうふうにやっておりますか。
  196. 中村一成

    説明員中村一成君) 特に不良な者に関する矯正方法につきまして、研究はいたしておりますが、適当な措置を具体的に講ずるというところまではいっておりません。
  197. 野本品吉

    野本品吉君 将来その問題については、研究して措置ができるような方向へ進める御意図ですか、どうですか。
  198. 中村一成

    説明員中村一成君) 人事院といたしましては、この法律の条項に従いましてただいま研究をいたしておりますので、その結果によりましては具体的な措置を講ずることができるのではあるまいかと、こういうように考えております。
  199. 小林武治

    主査小林武治君) それでは、人事院所管につきまして、質疑は一応終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 小林武治

    主査小林武治君) 御異議ないと認めます。  午後は二時正確に、文部省所管を議題といたしたいと存じます。暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩    —————・—————    午後二時十一分開会
  201. 小林武治

    主査小林武治君) 第四分科会を再開いたします。  文部省所管を議題といたします。政府説明を求めます。
  202. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 昭和三十二年度文部省所管の予算の大要につきまして御説明申し上げます。  昭和三十二年度文部省所管の予算額は、千四百四十四億五千七百九十九万七千円でありまして、これを前年度予算額千三百五億三千四百八十三万八千円に比較いたしますと、百三十九億二千三百十五万九千円を増加いたしております。  なお、文部省予算額を一般会計総予算額に比較いたしますと、その比率は前年度同様一三%弱となっております。  次に昭和三十二年度予算のうち重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は教育委員会の育成強化に必要な経費であります。  改正後の教育委員会制度の円滑な運営をはかるため、教育委員会関係職員の研修を行い、また国、都道府県、市町村間の指導、連絡を緊密化するために必要な経費として千四百二十一万五千円を計上したのであります。  第二は義務教育費国庫負担制度の実施に必要な経費であります。  義務教育の機会均等とその水準の維持向上とをはかるため、公立義務教育諸学校の教職員給与費の実支出額の二分の一及び教材費の一部を国で負担するため必要な経費でありまして、給与費としては本年度約十一万人の児童生徒の増加に伴う教職員約一千四百人の増加と、給与改訂に伴う必要額を含めて八百三十三億八千七百万円、教材費として十三億千三百万円を計上したのであります。  なお、昭和三十二年度においては政令第百六号の適用をうける団体は、東京、大阪並び神奈川の三団体と見込まれますので、他の四十三道府県については実支出額の二分の一を負担する建前で必要経費を計上したのであります。  これに関連しまして第二十四回国会で成立いたしました公立養護学校整備特別措置法に基き昭和三十二年度より実施の公立養護学校教職員給与費の二分の一及び教材費の一部の国庫負担金につきましては、その所要額三千三百万円を計上いたしました。  第三は文教施設の整備に必要な経費であります。  国立文教施設の整備につきましては、戦災を受けた施設の復旧、老朽校舎の改築等前年度より重要工事の施行を続けるとともに、学術の進歩に即応る文教施設の整備には特に重点をおき、その所要経費二十九億八千百二十七万四千円を計上したのであります。公立文教施設につきましては、これが必要な経費五十七億八千二万円を計上したのであります。  特に本年度においては学校統合に対する補助金を七億千四百八万四千円を計上いたしましたが、これは町村合併等による学校統合を促進することにより、学校経営の合理化及び教員の適正配置等を促進し、教育水準の向上をはかるためであり、また不正常授業の解消のために五億九千百二十七万四千円を計上して、特に児童の社会増に伴う教室の不足の解消をはかる考えであります。  なお、小学校校舎の戦災復旧費につきましては一応完了したものと考えてこれを打切り、なお残余のものについては不正常授業の解消の経費の中に含めて処置する考えであります。  第四は科学技術及び科学技術教育の振興に必要な経費であります。  初等中等教育については、理科教育及び産業教育の振興に留意し、それぞれ三億八千四百十五万円及び七億二千四百十一万八千円の経費を計上してこの面での基礎的充実をはかり、国立大学においては理工系学部の八学科増設等により約八百人の学生増募を行って技術者の養成に備え、また、五大学、三研究所において原子力に関する講座、または、部門の増設を行い、新たに物性研究所の創設、研究用原子炉の設置をはかるなど、科学技術の進歩に即応した学術の振興に特段の措置を講じました。これに関連し、講座研究費及び教官研究費について一割、学生経費について二割の増額を行なって基準経費の充実をはかり、また在外研究員の派遣に必要な経費を増額して一億円を計上したのであります。  また私立学校についても同じ趣旨に基き、理科特別助成費として五千万円及び研究基礎設備補助として八千八百万円を計上いたしました。  なお、本年度は国際地球観測年の本観測の年に当っておりますので、前年度の予備観測に引き続き南極地域の観測を含め八億五千万円の経費を計上したのであります。  第五は教育の機会均等の確保に必要な経費であります。義務教育の円滑なる実施をはかるためには経済的理由により、就学上困難な状態にある者に対して特別の対策を講ずる必要がありますが、これがためいわゆる準要保護児童生徒に対する教科書費、及び給食費の補助を充実し、新たに中学校の生徒をも、これが対象に含めることといたし、教科書費については一億九千八十八万八千円、給食費については一億百五十八万九千円を計上いたしました。  次に僻地教育の充実をはかるため従来の施策を続けるとともに、新たに無電灯地帯における発電設備の補助として一千万円を、また、特殊教育の振興をはかるためには特殊学級を整備充実することが必要であるので、その設備費の補助として八百万円をそれぞれ新たに計上いたしました。  さらに勤労青少年教育の振興は社会教育の推進と相まって行われなければなりませんが、特に定時制高等学校に対する国の財政援助として第二十四回国会で成立しました夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律に基き、夜間給食の施設、設備の補助千三百十万九千円を計上するとともに、新たに学校の施設費の補助五千万円を計上したのであります。  第六は社会教育の助成及び芸術文化の振興に必要な経費であります。  従来に引き続き青年学級の充実のため六千万円、社会教育施設整備に一千万円、設備整備に千八百万円をそれぞれ計上するほか、青少年教育、婦人教育等、社会教育として特別に助成を必要とする事項を一括含めて、社会教育特別助成費としてこれに七千万円を計上し、又旧松方コレクション受け入れのために新たに西洋美術館を創設することとし、これに必要な経費一億五千万円を計上したのであります。  第七はスポーツの振興に必要な経費であります。  国民の各層にわたってスポーツの振興をはかるため、地方スポーツの振興及び指導に必要な経費を新たに二千万円計上し、また国民体育大会の補助七百万円のほか、新たに日本体育協会に対する助成金一千万円を計上し、また昭和三十三年に開催のアジア・オリンピック大会に備え国立競技場の設置に必要な経費十二億七千六百七十六万八千円を計上したのであります。  第八は国際文化の交流に必要な経費であります。  国費による外国人留学生、特に東南アジアからの留学生の招致は、我が国の今後の国際関係観点からも、きわめて重要な問題でありますが、昭和三十二年度は、留学生の増募をはかるとともに、これらの留学生の宿舎の建設及び、その管理運営に当る団体の助成等を含めて五千八百十二万一千円を計上したのであります。  第九は文化財保護に必要な経費であります。  文化財保存事業は、逐年その成果を上げてきておりますが、昭和三十二年度は、特に建造物の保存修理及び防災施設の整備に重点をおくとともに文化財としての法隆寺の維持管理に新たな措置を講じ文化財保存事業費として四億三千六十万八千円を計上しまた、国立劇場の設立準備のため千七百万円を計上したのであります。  第十は国立学校運営に必要な経費であります。  国立大学七十二、国立高等学校八、大学付置研究所五十七、大学付属病院二十二を維持運営するために必要な経費でありまして、昭和三十二年度におきましてはさきに申し述べましたように、科学技術教育振興に主眼を置きまして、東京大学に物性研究所を創設するほか、北海道大学、東北大学、山形大学、山梨大学、静岡大学、九州大学、千葉大学工業短期大学部及び名古屋工業大学短期大学部にそれぞれ理工学系の学科を新設し、東北大学、東京大学、東京工業大学、京都大学、大阪大学に原子力研究に関する講座または部門を増設する等の措置を講ずるため必要な経費を含めまして三百六十九億二千六百六十四万五千円を計上したのでありますが、このうち二百六十九億二千二百三十七万四千円を国立学校の項に、七十二億二百三万六千円を大学付属病院の項に、二十八億二百二十三万五千円を大学付置研究所の項にそれぞれ計上したのであります。  以上文部省所管に属する昭和三十二年度の予算の大要につきまして御説明申し上げた次第であります。  何とぞ御審議の上御賛同あらんことを希望します。
  203. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  204. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。  御質疑の方は御発言願います。
  205. 湯山勇

    湯山勇君 義務教育費国庫負担金の給与費については先般予算委員会でもお尋ねいたしましたので、教材費についてお尋ねいたしたいと思います。  教材費の算定基準が昨年あたりから変ったように予算面からは受け取れるのですが、これはどういうふうになっておるのでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  206. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 教材費の算定の仕方は、御承知の通り政令に基きまして義務教育費国庫負担法に基く教材費の国の負担額等を定める政令、この政令に基きまして基準がきまっておるのであります。大体小、中学校とも三百人を基礎にいたしまして、それに増減の補正をいたしておるわけでございます。そこでこの三百人の規模につきまして小学校は九十円、中学校は百三十五円で増減補正をいたしますので、それで前年度から実施しておるわけでございます。
  207. 湯山勇

    湯山勇君 前年度からこういうふうになったというのですが、それまではどういうふうになっておったのでしょうか。
  208. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) それの前は単価が小学校が百円、中学校が百五十円、規模は同じでございます、三百人のところをとっておるわけでございます。それとこの前、二年ほど前に一割の節約を受けましたので、そういう措置を講じたわけでございます。
  209. 湯山勇

    湯山勇君 それで小学生一人当りが平均して幾らになっており、中学生一人当りが幾らになっておりましょうか、おわかりですか。
  210. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 小学校が全国平均で五十九円であります。中学校が九十五円。
  211. 湯山勇

    湯山勇君 これは私は実はそういうふうに教材費単価は、小学校が九十円といえば、その九十円に児童数をかけたもの、それを学校規模において適当に補正していくから、中にはももろん九十円を越えるものもあり、下回るのもある。しかしその平均が九十円になるというのがそもそもの教材費のできた当時の考え方であったように思っておったのですけれども、今お聞きしますと、教材費は一人単価九十円と言葉の上では言いながら、実際は五十九円であった。それから百三十五円というふうに中学校はなっておりながら九十五円になる。これはどうも大へん了解に苦しむところであるのと同時に、こういうことだと私は非常に計算をしにくいのじゃないかと思うのです。たとえば児童生徒増が九十万とかあるいは七十万、五十万というような児童生徒増に伴って計算するにしても、一体それではどういう規模の学校でどれだけふえたかということはわかりませんので、今こういうふうに教材費を十三億何がしをふやしても果してこれでできるのかできないのか。この教材費の立て方そのものは非常に問題だと思うのですが、これは直さなければ困るのではないでしょうか、大蔵省の方へ一つお尋ねいたしたいと思います。
  212. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 教材費の単価につきましてはただいま初中局長から御説明がございました通りの立て方に二十八年義務教育費国庫負担法が施行になりましたとき以来、そのようになっておるわけでございます。ただいま、それでは児童、生徒の増減があった場合に見積りが困難ではないかという御質問でございますが、この点は従来の積算は、実績によるところの平均単価を基礎にいたしまして、小学校、中学校それぞれ増減の人員をかけて算出をしております。それで支障はないかという御質問でございますが、たとえば三十一年度におきましては、予算が約二千七百万円不用になっております。今年は大体うまくいくのではないかと思っておりますが、もちろん過不足がございますれば、事後において清算で調節をするということになっております。ただ児童、生徒がふえる場合には、大体都会地の大きな学校においてふえるという傾向が大きいのでございまして、従って平均単価よりも低いところがふえるというような姿になるわけであります。従って平均単価で増加を見込めば大体において小学校も払える、こういうふうに考えております。
  213. 湯山勇

    湯山勇君 そういうような考え方に立てば、九十円、百三十五円というようなものは、意味のない数字になるということになるのではないでしょうか。この標準を九十円、百三十五円にしたという意味が、これは何のことかわからないと思うのです。これはどうなんでしょうか。
  214. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは配分の基準でございますから、予算の積算とは必ずしも一致しないと思います。ですから、配分政令の書き方の問題でございますが、一応小、中学校とも三百人のところを基準にした、この基準のとり方がいいか悪いかということは私はあるかと思いますが、それと予算の積算の問題とは別個の問題ではないかと思います。
  215. 湯山勇

    湯山勇君 これは大臣に一つ申し上げたいと思うのですが、通常言われておるのは教材費というのは一人九十円、百三十五円だということを言われております。実際はこういうふうに五十九円、九十五円、予算の積算のときにはこれを基準にして大体算出して、あとで、過不足があれば調整するというので、実際に言われておる数字とそれから実施されておる数字との間に非常に大きな違いがあります。で、こういうことがかなりまあPTA負担その他に影響するところが大きいのではないかというように思いますが、もっと明確に一人当り幾らと、その中で一人平均幾らというものを明確にしておいて、その中で、学校規模によって調節するといういき方が、私は三百人とるということにも大した根拠がありませんし、五百人とってもいいし、もっと学校の規模の平均規模を、それをとってもいいと思うし、これにはいろいろないきさつがあろうと思うので、私もそういうことは若干推察もできますけれども、しかしそういうことにいつまでもこだわって、こういう不明朗な——不明朗なという言葉は悪いかもしれませんが、不明確なやり方じゃなくて、来年度あたりからこれのやり方を一つだれでも計算できるような基礎計算だけはおやりになった方がいいのじゃないかと思うのでございますけれども、大臣はどうお考えでございましょうか。
  216. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 事務的な答弁を先にさしていただきたいと思います。実はあの教材費の負担金の総額というものが大体政治的にきまって、それを配分する場合にどういう配分の仕方が一番いいかということを考えますと、小規模の学校になるべく予算がよけいにいくような配分の仕方をしたいと思うのです。そういう趣旨で政令の趣旨がきまっておるわけでございまして、別に湯山さんのおっしゃったような意味で小学校一口に九十円あるいは百三十五円という意味じゃなくて、むしろ配分の問題が中心になって、小さい学校にできるだけよけいにカーブをつけた、こういう意味に御了解をいただきたいと思うのでございます。
  217. 湯山勇

    湯山勇君 大臣の御答弁の前に、ちょっと今の……、これは私はそんなにたびたび質問する必要もない問題だと思うのです。配分の基準は九十円、百三十五円と、実際はそれは違うのだ、それから小さい学校にたくさんいく、大きい学校は少ない、これはけっこうですが、とにかく配分の基準というか、教材費について数字として出ておるものは九十に百三十五しかないのです、中ではですね。
  218. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) それはちょっと違いますので、ここに百五十人以下の場合には百五十人、計一・三四ですが、あるいは百五十人から三百人、三百一人から六百人まで、こういうように非常に細分化されているので、(湯山勇君「それはわかっております」と述ぶ)一口に九十円、百三十五円といいますのは、これは非常に不明確な表現で、むしろ三百人の規模において九十円あるいは百三十五円という表現をしなければならないものです。表現だ省いてありますので、そういう誤解を招いたことは大へん残念に思っております。
  219. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 予算を見て実際に、実際というものが想像できるような予算でなくちゃならぬ思うのです。その点につきましては湯山委員の仰せになることもごもっともだと思います。これにつきましては、今日までいろいろな経過もあることだと思うわけでございますが、なるべく実際と予算というものとが不可分に近いものでなければならないと思いますので、十分一つ検討さしていただきたいと思います。
  220. 湯山勇

    湯山勇君 それから次にお尋ねいたしたいのは、予算面には出ておりませんけれども、学生の健康保険の問題ですが、これはまあしばしば文教委員会でも問題になりましたし、それから政府の方でも非常に御熱心に検討しておられた。で、私どもは実は学生の健康保険が今回は何か現われてくるだろうということに期待をもっておりましたし、政府の方もそういう御言明をしばしばしておられたのですけれども、今回の予算を拝見しますと、そういうものがいつの間にかといいますか、影がなくなっておるので、これは非常に意外に思っていますが、これについてはどういうふうになっておるのでしょうか、一つ伺いたいと思います。
  221. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 学生の保健衛生のために健康保険を実施したいということで、文部省としまして従来から検討して参ったのでございますが、これはやはり多くの大学が、すべてと申しませんでも、大体全部の大学がこれに参加するという態勢ができませんと、運営につきまして困難でございますので、実はまだそこまでの態勢ができかねておりますので、なお検討を続けている段階でございます。お話しのように三十二年度の予算には要求いたしておりませんが引き続いて検討を続けて参りまして、ついせんだっても各大学の代表等にも集まっていただきまして、それぞれ意見の交換をしているような状態でございます。なお、十分検討を進めていきたいと思っております。
  222. 湯山勇

    湯山勇君 これは三十三年度からは実施できるお見込みでしょうか。そこまではまだきまっておりませんか。
  223. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) まだそこまでの見通しは得ておりません。せんだって開きました打合会におきましても、まだいろいろ意見のあるような状態でございまして、三十三年度に必ずやりますということは確信をもって申しかねる状態でございます。
  224. 湯山勇

    湯山勇君 大多数が参加できなければならないということは同感ですが、学生生徒の健康保険については大多数の学生が希望しておるのではないかというように思いますけれども、特に問題になる点はどういうところでございましょうか。
  225. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これはやはり健康保険の制度を立てます上におきましても、基本的意見のある向きもあるようでございます。特にこれは学生を対象として、そういう学生のための健康保険でございますけれども、学生たちが保険料を払い込んでやっていくという体制はどうであろうか、といったような基本的な観点に対しましても意見のある向きもあるようでございます。これは扶養を受けている親がかりの者でございますから、その辺の組み立て方につきまして、もう少し考慮すべきだという意見も一部にはございます。ただそのほかいろいろな点もございますけれども、特に私立大学の方面におきまして意見が多いようでございまして、なお、十分意見を調節したいと考えております。
  226. 湯山勇

    湯山勇君 それから次にお尋ねいたしたいのは、やはり大学関係で研究費の問題でございますが、実は先般来も方々調査に参ったのでございますけれども、大学で研究費として幾ら文部省の方から交付されておるということのわかっておる学校はほとんどないのですが、研究費にはちゃんと基準もありますし、で、自分の大学にはどれだけ研究費が来たということが年次別にはっきりしていなければならないはずだと思うのですけれども、どの学校もどうもわからない、こういうことなんで、非常に私は意外に思ったわけですが、これはどういうわけでしょうか。
  227. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) ただいまのお尋ねは、いわゆる教官研究費、講座研究費のお尋ねであろうと思いますが、これはすでに御承知であろうと存じますけれども、大学の運営経費の立て方でございますが、基準経費といたしまして学生経費、教官経費というものがございます。これは学生一人当り幾ら、教官一人当りあるいは一講座当り幾らという積算の基準をきめまして、それで積算いたすわけでございますけれども、これの運用につきましては、あるいは消耗品とかあるいは光熱水料費とか、あるいはそのほかの経費とか、そういう共通経費も、これは共通経費として運営される部分も相当あるわけでございまして、ただいまお話しのように各教室に幾らいくというような形で運営されない建前になっております。これは今おっしゃったようなことを各大学に行ってお聞きになればそういう話が出るかもしれませんが、これは予算の組み立て方といたしましてさようなことになっておりますので、そういうお話が出るかと思います。
  228. 湯山勇

    湯山勇君 各教室でわからないだけではなくて、その大学全体として幾らきたかということがわからないところが多いのです。もちろんその大学へいった中から共通経費に抜かれる分があるということはよくわかりますけれども、たとえばその学校ではありませんけれども、埼玉なら埼玉大学というところでは研究費として総額幾らいったということは大学自身も年次別にわかていなければならないんじゃないかっと思うわけですけれども、これはどういう関係でしょうか。
  229. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これはどういう具体的な御調査であるか、私よくわかりませんけれども、大体各大学としましてはわかっているはずだと存ずるわけでございますけれども、ちょっと御調査の具体的なことがよくわかりませんので一概には申しかねます。
  230. 湯山勇

    湯山勇君 具体的にはこういうことなんです。この大学へは研究費が幾らきましたかと言うと、年度当初にはこれだけきました、ところがその年度の当初にきた額は文部省の方でおきめになっておる基準の額よりはどこも下回っております。そしてそれからあとどれだけきたか、どうも一緒になってくるのでわからないということで、現在三十年の当初にはどれだけきたかということはわかります。それ以後その学校の教官の構成から見て、あの基準で見ればこれだけくるべきはずのものがそれ以後きたのかこないのかの判定がつかない。つまり何かの費用で一括してきたものはあるけれども、その中に研究費がどれだけ入っておるのかどうなのかわからないので、結局三十年度一年間に研究費としてきたものが幾らかわからない、三十一年度においてはまだわかりませんけれども、そういう状態なんです。これは非常にわかりにくいのは、ああいうふうに文部省の方で基準をきめておられれば、大体その学校で教授が幾ら、助教授が幾らということであれば、それによって年間にはそれだけがいくと、こういうふうに受け取れるわけですけれども、あるいはもっと違った方法で操作されて、たとえば当初その中の八〇%なり九〇%なりが各大学に配付になって、残りの一〇%程度のものは文部省の方へとめ置かれて、そして特に必要なる大学へだけその分はいくから、ある学校はそれはもういかないし、必要なる学校へいくときにも、これは前の研究費の残りだというような名目でいかないで、ただばく然として校費としていくと、こういう形をとっているのではないかと考えられますので、それをお尋ねしているわけです。
  231. 小林武治

    主査小林武治君) 今のに関連して私もお聞きしたい。よくうわさに聞くと研究費を文部省がピンはねをするんじゃないか、それを文部省の一般経費あるいは会合費あるいは雑費に充てておるんじゃないかといううわさもあります。今の関連のことですが……。
  232. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 今の点お答えいたします。先ほど大学局長から御説明しましたように、大学の基準経費、学生経費、あるいは教官研究費という単価の積み上げ予算をいたしておりますが、科目で申しますと校費という形で一本になります。非常に結果的なことから申し上げますれば、自分のところに教官が何人おるから予算で本年度教官研究費が幾らだということがきまりますれば、その数をかければ自分のところの教官研究費の総額はわかるわけでございまして、ただ実際の配分としまして個々の先生にその単価通りの金をお渡しして実際全部使うという形にしておらないことは御存じの通りでございます。従って個々の先生については、そういう単価が計算されておるのに、自分のところへこないという御疑問を持つかもしれないのでございます。しかしそれは研究の共通的な経費をまかなうためのやり方で了解いただけると思いますが、何と申しますか、最近の研究でも相当一つの研究テーマに多額の金がかかるものもございますし、特に科学研究費やその他で特別にまかなうもの、同じ学部でも重点的に金を使うということがございます。従って場合によりますれば、一つの学部でもある教室に重点的に研究費をつぎ込むということもありますし、あるいは大学として学部をこえてやる場合もございます。そういうことを考えますと、その経費が機械の場合もありますし、消耗費の場合もございますものですから、大学の運営全体の中に没してしまうというような感じを個々の先生がお感じになるかもしれませんが、決算的にごらんになればわかりますように、校費で計算したものはそのまま最終的には学校にいっておりますので、文部省でピンはねしてほかに使うというようなことは絶対ないのでございます。  それから大体今湯山さんの御質問の中で一つの問題は、文部省で留保しておいて、特定のところではみんな使うのじゃないかという点じゃないかと思うのでありますけれども、これは大体私たちの方でも教官の研究費の単価がきまっておりまして、各学校の教官の数がわかっておりますから、その学校に行くべき教官研究費のそのワクというものは見当がつくわけであります。そのワクというものは常に考慮いたしておりまして、ただ重点的な部分の配分ということについて若干の調整を最後にする、こういうやり方をいたしております。  それから主査のおっしゃったとめ置いて文部省で使ってしまうということでございますが、これは全然組織が別でございまして、国立学校経費として文部省本省でございませんので、そういうことは予算制度上あり得ません。決算をごらんになればおわかりになりますが、毎年全部学校に配付済みになっておるので、何かそういううわさがあったとしましても、それは全然やり得ない制度でございますから……。
  233. 湯山勇

    湯山勇君 それでお尋ねしたいのは、今のような御説明だと、学校によって文部省でおきめになっている基準よりも上回って配分になる学校と、それからそれを割って配分になる学校とがある、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  234. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 最後のこまかい数字まで私は今すべての学校について申しかねますけれども、こういう形になると思うのです。別に大学の予算の組み方の中で、特別な設備費でございますね、これは設備の更新拡充でありますとか、あるいは戦災復旧の経費であるとか、特別なものに特別な予算の組み方をしております。それで研究費で買うべき機械を買う場合もございますし、それから何と申しますか、最後の金というものは、それが共通に使われる場合もございます。従いまして大学として教官研究費として、その教官の数を掛けた総額の校費が下回るということはないのでございます。
  235. 湯山勇

    湯山勇君 今のように全部を合していけば、そういうことになるかもしれませんけれども、今の研究費という費目の中だけでいえば、それの配分がある学校では教授一人当り幾ら助教授幾らというので積算したもの、これは各学校がわかると思います。その額よりも少く配分になる学校と、文部省で操作することによってそれよりも多くなる学校とが、先ほどの御答弁でできるのではないかというような感じがするのですが、それはどうでありましょうか。
  236. 天城勲

    政府委員(天城勲君) それが予算積算の単価でございまして、あとの学生経費も教官研究費もその他の設備費などみんな校費という形で出て参りますから、それのつっ込みの中で行った金で、教官の研究費の単価と教官数とを掛けた額が自分のところに来た校費を下回るということはないわけです。ただこれを積み上げて幾らというやり方をして、旅費で行った分が旅費なら旅費ではっきりいたしますし、給与費は給与費ではっきりいたしますけれども、校費という一本の科目で参りますと、何と申しますか、その分だけを見てもちょっと議論がしにくいのじゃないかと私ども思っております。結論といたしましては、教官研究費とその他の経費をまぜて学校へ全部いっておるわけでございますから、その総額において一人々々の計算をして掛けて、みんなそれよりも上回っているという形になると思うのでございますが、その分だけを取り上げてやるということはちょっと御説明もしにくいし、制度としてそういうふうにはっきり出ていないんです。と申しますのは、湯山さん御存じのように、全体の教官研究費のたとえば五%なら五%を全体の中から最終配分に留保してございまして、そのときに特別な機械の経費などをまぜて重点的に学校へ配分いたしますものでありますから、その経費だけで一〇〇%積み上げて、そのまま流してしまうというやり方はやっていないわけでございます。
  237. 湯山勇

    湯山勇君 文部省の御説明はわかりましたが、そこに私は問題があるのではないかと思うのです。研究費というのはやはり大学の経費の中では相当重要な経費で、しかもそれがほかのものとごっちゃになりまして、文部省御自身でもその点はっきりどれだけがどうということは言いにくいというような状態ですから、ましてそれを受け取った学校では一体研究費のどれだけがほんとうの研究に使われておるかというようなことを把握することができないのではないか。そういうところから今主査の言われたように、研究費はこれだけくるといっているのに一向こないで、そこでまあ横流しがあるのじゃないかというようなことにもなるし、それから研究費はこれだけだというのに、実際は中間経費にだいぶとられてこない。で、まあ事務当局へ聞いてみても、どれだけきているかわからない、全部でどれだけになっているかわからない、こういうことになりまして、非常にこの点は不明確だと思いますので、研究費に関する限りは明確にして、たとえばほかの機械を買うときに一緒にするにしても、この機械幾らの中には幾らは研究費の中でいっておるんだ、あとの分はこうだというふうな説明ができるような配分をなされば、私はこの誤解はある程度解けるんじゃないかと思うのですけれども、そういうふうなことはおやりになる御意思はございませんか。
  238. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 理論的におっしゃると確かにそうで、この千円は青は色をしておる、この千円は赤い色をしておるを札に色をつけるのと同じような議論じゃないかと思うのでして、たとえば学生経費にいたしましても、一人当り幾らといって学生教育費というものをその金だけでやられると、それ以外は少しも使えないかといえば決してそうではございませんで、もっと使っているところもございましょうし、教官研究費といっても学生研究費と突っ込みで使う場合もございますし、それから同じ研究費と申しましても、理工系のうんと消耗品の要るところもございますし、本代の要る場合もございます。比較的それはおっしゃるところが分けられるところはあるかもしれませんけれども、一般的に個々の、たとえば百万円のうち教官研究費が五十万円で、他の経費が五十万円だということを言っておりましても、あまり実効がないんじゃないか。要はこの予算の積算の上の問題でございますので、予算科目の面と会計上の予算科目の面で使っておりますので、何か教官研究費というものは必ず教官の研究費に純粋に使われるというお話なんでしょうけれども、その教官の研究費自身の使われ方が電気代になる場合もあればガス代になる場合もある、非常に広範の弾力性のあるところに特色があるのじゃないか。それで校費という科目になっておるのでして、かえってそれに一々ワクをつけてしまうということは逆に研究を金の面から規制してしまうことになるのじゃないかと考えております。ただおっしゃる点はしばしば御指摘のある点でよくわかっておりまして、この金が何か今主査の御指摘もあったように、勝手に使われているのじゃないかという誤解を受けることは私どもも残念でして、決してそういう性格のものじゃございませんで、そういうことのないように努めたいと思っております。
  239. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今そのワク内配分の方法についての質疑応答が行われておると思いますが、私は郷里の九大の法文系の大学に参りました際に、研究費が少く、洋書を二冊も買えば一年分くらい使ってしまう、こういう、何と申しますか、訴えがございました。それからこれは大臣にお伺いしたいのですが、裁判官等についても、午前中裁判官あるいは大学の教授等について給与が低いのじゃないか、こういうことを給与担当大臣に聞いたのですが、研究費が足りないで、洋書を二、三冊買ったら一年分の研究費がなくなってしまう、それから給与が他に比べて、これは超勤もなければあるいは管理職手当じゃありませんが、文部省その他における局長やあるいは何かにございます特別の給与もない。そこで学校に残れということを、学生の成績のいい者について言いたいのだけれども、実は言えない実情にある。学校に残って大学の先生になるのがあまりにも気の毒のようになって実は困っておる、こういうお話がございました。これはひとり九大だけではないと思うのであります。各大学でそういう点があると思うのですが、その点について今までのワク内の配分のやり方だけじゃなくて、価格の水準がどういうことになりますかということは、実に日本の全体の大きな問題でございますから、文部大臣として思い切った措置をお講じ願わなければならぬと思うのですが、大臣の御所見を一つ承わりたい。
  240. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 大学の教官の待遇の問題につきましては、従来からも心配いたしておることでございますけれども、なかなか思うようにまかせないのでありますが、それにしましても、教官研究費でありますとか、学生経費というようなものについて、できるだけの措置を講じて、幾らかでも楽にしてあげたい、こういう気持を持っておるわけです。そこで来年度予算におきまして、その点につきましては若干のことはし得たと思うのでありますけれども、これも決してまだ大学の教官諸君が満足するというところまではいっていないかもしれませんが、できるだけそういうふうな配慮をいたしまして、何とか少しでも楽に研究のできるようにいたしたいと考えております。
  241. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  242. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  243. 湯山勇

    湯山勇君 大臣の御配慮はよくわかりまして、今年研究費が増額になっておることは大へん喜ばしいことだと存じます。ところがただいま御説明にありましたように、せっかくふやされましても、校費一般で処理されますために、実際に研究に回る分がふえるかふえないかということになると、これは全然別個な問題になってしまうわけでございます。そこでふえたから一つしっかりまた研究にも熱を入れようというような意欲が校費全体で処理されてしまうために全く出てこない。こういうことになってはせっかくの御配慮がむだになってしまう懸念もございます。そこでやはり研究費は研究費でこれだけいったのだということがわかるような方法が、額はあの額よりも中間経費が抜かれますから少くてもけっこうですけれども、何とかこの際そういう方法がつかないものだろうかということが一点と、それから中間経費に抜かれる分が光熱費等が中心になるということでございますから、だとすれば、電力料金等も特殊な企業に対しては割引の制度もとられておるようでございます。大学の研究に用いる光熱費等については特別な減免措置、こういうものがとられれば、私は文部省の方でこれだけは研究費へ組んだというものが、現在のように三分の一とか、あるいは四割とかというのではなくて、もっと多額に実際研究に回るのではないかというようなことを考えまして、最後に文部大臣にこの問題についでお伺いしたいと、こういうつもりで今まで聞いて参ったわけでございます。
  244. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 私が来年度予算に当りまして不十分ながらも増額したというようなことにいたしました心持は、先ほどお答え申し上げましたように、いくらかでも教官諸君を楽にしてあげたい、こういう気持からやっておることでございますので、これがそうならないでしまったというようなこととなりましては、私の志とは違ってくるわけであります。そこで、そういう気持につきましては、大学当局にもよく一つ連絡いたしたいと思います。ただこの経費経費でございますので、先ほど来お話がございましたが、明確にここからここまでこうというふうな運用にならぬ経費だと思いますので、その点は一つ事情を御了承を願いたいと思うのでございます。  なお、ただいまお話のような光熱費の料金の問題等につきましては、従来も努力いたしておると思いますが、十分心をいたしましてやってみたいと思っております。
  245. 湯山勇

    湯山勇君 次に国際地球観測年事業についてお尋ねいたしたいと思います。  無事に隊長も帰えられまして、大へん喜ばしいことと存じがます。子算の面におきましては、来年度は宗谷の改装費が全然みてないということでございますが、しかし実際は、おそらくもう島居長官もそう御判断になっていると思います。あのまま宗谷を出すということは、これはできないだろうと存じますが、これについてはどういうふうにお考えになっておられるか、一つ島居長官から事情をお聞きしたいと思います。
  246. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) この予算を組みますときにおきましては、まだ宗谷は向うへも着いていないときでございまして、実際行って見なければ、いろいろの経験、また外国に従来出ておる文献からしても、なかなかわかならかったような状況でございまして、そういう意味で、実は山本航海長を先月帰して、そうして今いろいろ事情を聞いているようなわけでございまして、その当時から、予算には盛れないけれども、もしできたら予備費その他でみていこう、こういうふうに話し合いをしておったようなわけでございます。昨晩ちょうど帰ったばかりでございまして、今もっぱら向うの事情を聞き、なお、これは非常に技術的な問題もございますので、聞いてからすぐ左から右へというふうにもいかないものでございますので、これから大いに研究しなければならぬ、こういうふうに思っておる次第でございます。
  247. 湯山勇

    湯山勇君 相当大幅な改装も考えられるのではないかというように思うのですけれども、またしなければならないと思います。で、予備費から何とか操作しようというのは、どことの了解ございますか、国際地球観測年事業の予備費でしょうか。それとも政府の予備費でございましょうか。
  248. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 私からお答え申します。ただいま島居長官からお答えがありましたように、昨晩無事に隊長及び航海長が帰ってこられまして、非常に安心をしたところでございます。二人ともきわめて元気でありまして、喜んでおる次第でございます。次の本観測ということを考えました場合に、今度の経験を基といたしまして、いろいろ検討すべき点があると思うのでございます。ただいまお話しになっておりますところの船の問題、これが最も中心の問題になるかとも私も思うのでございます。それと同時に、今年の秋、大体昨年の秋と同じような時期には少くとも本観測に出かけて参らなければならない、さような時間的な制約もあります。その時間的な制約と同時に、船をどうするかという問題等が出てくるわけでございます。そこで、実際の経験とにらみ合せ、また各専門家の意見を聞きまして、十分考えなくちゃならぬ。その結果、あるいは従来の計画に対しましてもある程度の修正もしなくちゃならないというようなことも出てくるかと思うのでありまして、この前予算を編成いたしまする際にも、今もお話が出ておりましたが、実は戻ってこないと様子もよくわからないというような点もございましたので、一応の予算を組んだようなことでございまするし、その予算の内訳等につきましては、実際の話を聞いた上でまた実行上いろいろ考えていこうと、こういうような話もいたしておるわけでございまして、万が一にも予算が不足するというような事態になれば、それはその問題として一つ相談しようじゃないかということは、私と実は大蔵省との間でお話をいたしておるようなことでございまして、いずれ今後の検討によりまして、何らかの結論が出ることと思うのでありますが、その結論に従いまして判断をいたして参りたいと考えております。
  249. 湯山勇

    湯山勇君 私の感じを率直に申し上げますと、南極探険に宗谷が出発するときの改装の予算も決して十分ではなかった。相当無理をさしておると思います。それにもかかわらず、まあああいうふうにりっぱな成績をあげたということは、これはまあ非常にわれわれとして喜ばしいことだと思うわけでございますけれども、しかしもう一ぺんあのまま行かすということは、これは大臣としても、また島居長官としても、お考えにならないと思いますし、国民もそういうことはおそらく許さないと、こう思うわけでございます。ところが、あの宗谷をそのまま向うへ派遣するとすれば、船体の古い関係もありますし、それから改装するにしても時間的な制約もあるわけでございます。そこで、あの船を許された時間で精一ぱいよいよするということが私はこの際とるべき最上の措置ではないかと、こう思うわけです。そうすると、そのためには予算上の制約というものだけは三つの制約からはずすということが、どうしてもこの際われわれ予算を審議しておる者としてやらなければならないことではないか。ところが、従来の例から見ますと、あの宗谷を出すときでも、文部省と申しますか、関係者はもっと予算がなければ困るということを言ったにもかかわらず、大蔵当局との折衝の結果あれだけに落ちついた。今回宗谷の改装に当っても、同じように時間的な制約、船の古さというものの制約、これは何ともいたし方ないとしても、予算の制約によって思う通りのことができなかったということであっては、私はこれはいかぬのではないかということを考えますので、予算審議も最終段階でございますから、その点については心配ないのだということにぜひこの予算の審議の段階においてしておきたいと、こういうことでこの問題を特にまあ取り上げたわけでございますが、それについてどういうふうにお考えでございましょうか、重ねて伺いたいと思います。
  250. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 本観測を実施するといたしますれば、出かけていく際に行かれる方たちが第一不安を持たれては困る。自信を持って行ってもらわなければならん。またお互いといたしましても、非常に心配だという状態のもとに本観測を続けるというわけには参らない。その意味におきまして、与えられた条件のもとにおきまして、できるだけのことはしていって、これなら一応安心であるというところまではこぎつけていかなければならんと思います。そういう意味合いにおきましては、私といたしましては、予算につきましては皆様方に御不安のないようにいたしたい。その方角に努力をして参るつもりであります。
  251. 小林武治

    主査小林武治君) 今の問題ですが、八億五千万円の中には船舶の改装とか、その他の経費か入っているかどうか、その点を伺いたいと思います。
  252. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 大きな改装とかいうふうなことは入っておらないと思います。ただこちらへ帰って参りますれば、もちろんドックにも入ってもらわなくちやならないと思いますし、一応考えられる補修費というふうなものは入っておると思いますけれども、お話に出ておりますような意味における改装費というふうなものは入っておらないと思います。
  253. 湯山勇

    湯山勇君 この問題は、文部大臣のお気持はよくわかったし、ぜひそうやっていただきたいと思うのですけれども、これは予算の関係だし、予備費との関連もあると思いますので、大蔵大臣のこれに対する御所見をぜひ伺っておきたいと思うのですが、そのお取り計らいは願えないでしょうか。
  254. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  255. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  256. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちょっと島居長官に伺いますが、国民が受けた印象は、宗谷で再び本観測に行くということが非常に危険じゃないか、こういう印象を受けておりますが、これは精細な報告を聞き、結論を出されるのはあれだろうと思いますけれども、予算の審議の終りますまでに、改装しなければならん、あるいは船をとりかえなければならん、それについて要望があるかどうかという点は明らかにしておかなければなりませんので、お尋ねをしておるので、あれでいいか、あるいは大改装なり、あるいは船をとりかえなければならんか、この点の今の所見だけは一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  257. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) 最初からお話がよくおわかりになればけっこうであると思うのでございますが、最初に宗谷が行くときも、実は南極観測統合推進本部の方の手から世界の市場の方に適当なものがあるがどうかということをお問い合わせになったのであります。そのときに砕氷船といいますか、あるいは耐氷船くらいのものがノルウエーに一隻とフィンランドに隻こういうものがあったのでありますが、いずれも排水量が千トン程度で、どうも使いものにならんというので、それはだめになり、それから国内で何か適船はないかというので、それではと、物色されたのであります。そのとき二隻ばかり候補に上ったのであります。その一隻が国鉄の宗谷丸であり、その一隻が私の方の海上保安庁の宗谷と、名前はちょっと似ておりますが、片方は丸がついており、片方は丸がついておらないのであります。それで、国鉄の方のは、船は大きいのでありますが、相当古い。改造するにも困難である。またその他の事情からこれはだめになりまして、結局海上保安庁行ってくれないかということになったのでございます。そこで今度の場合ももしほかに適船がありとすれば、何も私の方は進んでその手をあげるわけでもないのでございますが、その点は、これは私の方から申し上げるよりもむしろ文部省の方の統合推進本部の方でいろいろ御調査下さって、また宗谷行けというふうなお話かございませばというふりな段階のもとに、もし行くとすれば云々ということでいろいろ現地の事情を聞いておると、こういうふうな状態を申し上げたら一番いいかと思っておみわけでございます。
  258. 湯山勇

    湯山勇君 それで、島居長官はこの宗谷の責任者ですから、宗谷をどうしてももう一ぺんやらなければならんということになればおやりになる、何といいますか、御決意ございますか。
  259. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) 一昨年のときも、実はそういうので、私の方は本部でもございませんけれども、もしお断わりするとああいう観測もなかなかむずかしくなるというようなことで、いろいろ内部でも宗谷の改造その他につきまして検討して、そうして決心をしたのでございますが、まあ一ぺん、今度は行ったああいう経験もございますので、もし万一どうしても宗谷もう一ぺん行けというふうなお話がございますれば、それこそ今現地から入っておりますいろいろな報告あるいは技術的の検討というものを加えまして、あの船を出したいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  260. 湯山勇

    湯山勇君 文部大臣はその点についてはまだ御検討になっておられませんでしょうか。宗谷をもう一ぺんやるか、別な船にするかということは……。
  261. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 先ほど長官からお話しがございましたが、船の問題につききましては、もちろん主体は私の方でございます。従いまして私の方で判断しなければならぬことでございますが、しかしどういう実情であるかという専門的なことになりますというと、結局海上保安庁をわずらわす以外にない。こういうことになるわけでございますが、私の今日までの知り得たところによりますれば、今年の秋までに宗谷にまさる船を得るということは事実上困難ではないか、かように思っておるのでありまして、その宗谷というものを主体にしてもう一ぺん出ていってもらうためには、船をどうしなくちゃならぬかという問題もございますが、同時にあるいは計画それ自体についてもやっていかなければならぬという問題も出てくるかと思うのでございます。今のところは宗谷を中心にしてものを考えて参りたいと、さように存じておる次第でございます。従いまして結論はまだまだ検討を要すると思いますけれども、さような場合には海上保安庁にまた一つ御苦労をお願いしなければならない。こういうふうに考えております。
  262. 湯山勇

    湯山勇君 それで予算審議も最終段階でございますし、また宗谷をもう一ぺん行ってもらうかどうかというような点についても、早急な判断をしなければならないと思いますし、それから改装についても——かりに宗谷を改装する場合においても、大体どういう点をどう改装するという大ざっぱな目安はこれはそう長くかからないで結論をお出しになる段階ではないか。すでに発表しておるだけでも、かじを二つつけるとか、あるいは前の方の模様変えをするとか、あるいはエンジンの馬力を強くするとか、こういうことを新聞に発表になっておるだけでも、大きい点が指摘されておるわけでございますから、もし宗谷がもう一ぺん行くとすれば、そこでこの予算審議の段階において、こまかい金額が幾らになるとか、そういうことまでではなくても、相当大きい改装をしなければならない。場合によっては宗谷をああいうふりに仕立てるまでの程度の改装をしなければならないとか、かなり大ざっぱな見込みでもいいと思うのですけれども、その見当を立てていただいて、そしてそれに基いてそれに対する予算は来年度どうするという一応のこの見通しが立てば、これはまあ関心を持っておる人、国民全体ある程度納得するのではないかというような感じがいたしますが、私は、非常に技術的な問題ですから、こまかいところまでを要求するわけじゃありませんけれども、そういう大ざっぱな目安は立てていただけるかどうか。文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  263. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) ちょうど予算の御審議も大体終末に近づいており、最近のうちに御審議を終えられることと存じますが、それに対しまして、私どもといたしましては、今どの程度どうするかというふうなことにつきましては、急いで結論は出したいとは思いますけれども、ここ二、三日のうちにその結論が出るというわけには参らないかと存ずるのでございます。現地の経験者のお話しもございまするし、そしてまたその御注文というものか果して今国内的にやっていけるかいけないか、技術的にもいろいろ検討を要する点があろうかと思いますので、急ぎますけれども、ここ両三日のうちにこうなるというような具体的な結論を出すということは、これは困難ではないかと思います。従いまして先ほど申し上げましたようなことでございまして、結果といたしまして、相当の予算増額を必要とするということでありますれば、それによって適当な処置を考えていきたいとこう考えておるわけでございます。
  264. 湯山勇

    湯山勇君 もう一回だけ承わりたいと思うのですが、まず、予算の増額をしないで済むということは考えられない。これはもう大臣もそういうおつもりで、必要とすればという表現をされたのだと思うのですけれども、今回の八億五千万の中には、ほとんどその費用は盛られていないとすれば、これはどうしても大幅な増額が必要であるということになると思うのですが、この点はもしお差しつかえなければ、やはり相当増額をしなければならないだろうと、いうお考えなのかどうなのか。
  265. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) これは主として船の話になって参りましたが、船をどうやっていくかということに帰するわけでございますが、伝えられておるような意見というものが、実行いたします場合に果してそれが可能であるのかどうであるのかというふうな問題もあるわけでございます。それがきわめて短期間のうちにできる問題であるのか、あるいは船舶を扱う上におきまして技術的に可能なのかどうであるかというふうな点もあろうかと思いますので、今直ちに結論的なことを考えるわけには参らない状態でございます。極端な例をかりに申し上げますと、ほかに手がない、まあ結局宗谷に対して不備な点をある程度直して、そうしてかたいものにして出していく以外にかりにないというふうなことになれば、またそれで考えていかなくちゃならぬということにもなるわけで、そういうふうなことで結論的にははなはだはっきりしたことを申し上げにくいのでございますが、私としましては、この秋に出かけていくまでの間にどの程度のことが可能であるか、またその可能なことをやれば、どの程度の観測ができるかというふうなこととにらみ合せて、これは考えていかなくちゃならぬ問題でございますので、あるいは現在の予算につきましても、かりに今からさようなことを申すのはいかがかと思うのでありますけれども、向うに滞在する一体期間なんかについて、これは検討を要すると思います。一部にはもう少し早く切り上げるべきじゃないか。向うへ早く行って早く切り上げたらどうか、そういうような意見もあるわけでございます。そういうふうな点をにらみ合せて考えてみまして、今度の一体実行計画の上において、どれだけの経費を必要とするであろうかというものをまず考えてみなくちゃならぬと思う。それで今度の予算は一応内輪でございますけれども、あの予算は彼此ある程度相融通はつく予算になっておりますので、それでどの程度まかなえるか、あるいはそれが足らないという場合もあろうかと思います。足らないという場合におきましても、私はとにかく本観測を実施いたしたいと考えております。その可能な範囲において実施いたしたい、こう思っておりますので、それに必要な経費はあくまでも一つ要求し、計上いたしたいと考えております。
  266. 湯山勇

    湯山勇君 文部大臣に対する質問は一応これで終りまして、島居長官にお伺いいたしますが、先般私がお尋ね申し上げたときに、ケープタウンからこりらへ帰る途中で時間がないじゃないかということをお尋ねしたときに、こりらへ帰る途中で必要な点の打ち合せほして、帰ればもうすぐ改装に着手する場合は着手できるように手配をするというような御説明があったわけですか、しかしそれをさらに繰り上げて飛行機で帰るような措置をとられたことについては大へん敬意を表しておるわけでございます。そこで、しかしそれにしても、大体隊長との間、航海長との間にはいろいろその間の打ち合せもケープタウンその他からおやりになったと思うのですが、これはこういうことでございましょうか。
  267. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) いろいろ御配慮にあずかっておりますことにつきまして厚く御礼申し上げるわけであります。やはりケープタウンをたちまして、実はきょう聞きますと、ケープタウンまではとても動揺が激しくて大へんだったという話でございます。御存じのように、ああいう船でございますので、おわんみたいな船なので、非常に動揺が激しいので、平水であるようなところでも非常に動揺すると、こういうので、なかなか船の中で会議をするのも大変だと思っておりましたが、案の定その通りでありました。そこでケープタウンを出てから多少楽になりますので、そこでいろいろ会議をして、今までの資料、経験をもとにしてやってくるとは思っておりますが、なお、だれか一人帰ってくれば、より現実にこちらも質問をすぐできるしというので帰したわけでありまして、今もっぱらそれを聞きつつあるところであります。きょうも午前中ちょっとやりまとし、午後はこういうふうに国会へ引っぱり出されましたので(笑声)……、まことにどうも言いにくいのでありますが、もっぱらやっているようなわけでございます。それで非常に技術的なことでございますので、船で一カ所、たとえばかじならかじだけで済む問題ではないのでございまして、それと関連するいろいろ船体にも影響するものでございますので、そうなりますと、宗谷が出かけていく前に、実は日本の学界、また実際の造船界の最高権威を集めまして、宗谷の改造の設計審議会というものを設けてああいうふうにやったのでありますので、まあ実は聞くところによりますと、一メーターの砕氷でも、ものによるのでありますが、フローというふうな定着氷でないところは、もっと多く砕氷しているようなわけでありまして、その日本の造船界の最高権威の方々がおきめになった造船というものの設計が非常によかったということも言っておるようでございます。まだ途中でありまして、それでもう一ぺん技術的なことはそれにかけて、また研究なしければならぬ問題でございます。むずかしいのでございまして、一日や二日ではなかなかむずかしいと思いますが、しかし日も少いので、できるだけ早くこれを何とか結論をつけていきたいというようなわけでございますが、御存じのようにそういうわけで、ある期間は必要とするかと思うのであります。その点一つおそれ入りますが御了承を願いたいと思います。
  268. 湯山勇

    湯山勇君 どうもお忙しい中を恐縮でございました。どうぞ一つしっかり……。
  269. 小林武治

    主査小林武治君) では他の質問を続けます。
  270. 野本品吉

    野本品吉君 きわめて、簡単なことですが、二、三お伺いしたいと思います。  それは教員養成学校の募集人員減の問題であります。私の手元にあります資料によりますと、たとえば北海道のような、あるいは福井のような、全然減員されておらない県と、それから山形のような、福島のような、以下十一県は全然二年制の課程の者がいない。それから百九十五名、これは東北でありますが、それから二百十名新潟、こういうふうに非常に大きな減員をしておる。この全然減員を見ないところと、非常に多数の減員をしておるところ、これはどういう事情からでございますか。
  271. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 来年度の教員養成大学、学部の学生定員を減員いたしたのでありますが、これは御承知のように、一般的に申し上げますと、学生の就職が非常に最近行き詰ってきております。で、教員養成を主としてやります大学の学生でございますから、その需給に見合って全般的に申しますと減員をいたしたのでございますが、減員数につきましては、やはり土地の状況等を十分勘案しまして、たとえば今おあげになりました北海道のごときは、なお定員に満たぬという実情もございますので、そういう需給の関係を十分勘案いたしまして、また大学の実情も十分勘案いたしまして、さような割当をいたしたのございます。
  272. 野本品吉

    野本品吉君 そうすると、たとえばただいまお話の北海道のようなところは教員の新規採用というようなことが相当行われておって、需給関係からいって減員をする必要がない、それからまた相当多数の減員をしておるところは供給部面が需要よりもはるかに多いということでよろしゅうございますか。
  273. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) ただいま申しましたように、需給関係そのほか土地の実情にかんがみまして、さようなことにいたしたのであります。
  274. 野本品吉

    野本品吉君 そこで減員されたもの、あるいは全然募集しないものは大部分が二年制の課程のようですが、このことは教員養成大学、学部の二年制の将来のことにつきまして、いろいろと考えさせられる問題があるように私は思うんです。もっと率直に申しますれば、さような状態が何年も続くとすれば、自然に二年制というものは廃止になってくる。これが一部特殊の府県だけのことになるか、それとも将来二年制というものをどうしなければならぬかということになるか、この辺に私は問題があるように思うんです。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  275. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これも一般論を申し上げますと、御承知の通り教員の資質を向上いたします意味合いからいたしましても、四年制大学でこれを養成していくということが望ましいと思います。従いまして、ただいまのように需給の調節をはかっていくために定員減をいたします場合に二年課程を減らしていく。今度も四年の課程につきましては若干でございますが増員をいたしております。そういう基本的な考え方は持っております。二年制の課程というのを作ったそもそもその当時の実情からいたしましても、教員は非常に不足でございまして、急速にこれを充実しなければならぬという要請もございまして、こういう経過になったのでございますから、やはりこういう需給の調整をはかります上におきましては、二年制学部を減らしていくということに相なります。ただしかし、全般的にこれを廃してしまうかというまでにはまだ至っておりませんので、先ほど申し上げましたように、なお教員か足らぬといった地方におきましては二年制学部を残しておるような実情でございまして、今後の実情とにらみ合せまして全般的に考えていきたいと思います。
  276. 野本品吉

    野本品吉君 そうしますと、教員の過剰な状態にあるところは、主として二年制の募集の数を調節することによって実情に合せていくのではあるが、二年制を廃止するという方針のもとにこういうことをやっておるのではない、こういうことでございますか。
  277. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 今直ちに二年制を全部やめてしまうことときめて、その方針でやっているということではございません。実情に応じまして考えております。
  278. 野本品吉

    野本品吉君 これは大臣にお伺いしたいんですが、従来、経済界が活況を呈して参りますと、いわゆる好況時代になりますと、教員養成諸学校の応募者が極度に減ってくる。従って予定の人員を採用するということになりますると、質的の低下ということが当然起ってくる。私どもは長い今までの実情を見ますというと、そういうふうな経済界が非常に好況を呈しておりましたときの教員志願者の減少は、必然的に教員の質的低下ということになっておりまして、それがこう波を打って現われてくるわけです。そこで何と申しましても、教育の振興とか教育の充実ということは、結局は人の問題でありまして、今の状況は私は現在及び将来にわたって人材を教育界に招致するという点から見ますというと、相当深刻に考えなければならない問題だと思う。で、この点については教員というものの経済的な地位あるいは社会的な地位、身分の保障、そういうようなあらゆる角度から検討して、やはりいつでも人材を教育界に招致することのできるような条件を整えて教員養成に当らなければならぬ、そうでないというと、先ほど来申しますように非常な欠陥を生じてくると思うのですが、大臣はこの点についてどういうふうにお考えですか。
  279. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 先ほど来御質疑がございましたが、教員の供給が若干過剰な状態になりましたので、それを調節し、その関係において二年課程の方に相当手が入ったというようなことを申し上げておるわけでございますが、ただいまこの問題につきましては、局長の答えましたように、一応四年課程を重んじて二年課程の方を地方の状況を見ながらこれに手を入れていくと、こういうような考え方をいたしておるわけでございます。私はただいまの教員養成制度と申しますか、養成機関についていい面も確かにあるに違いないと思いますが、私もそのままでよろしいのかどうかということについて若干疑問を持っておるわけでございます。何さましろうとのことで的確な具体的な考え方を持っておるわけじゃございませんけれども、一体今のように各府県の教員養成大学というものを一つにしぼっていく行き方がいいのかどうかというふうな点もございますし、また今お話のようにほんとうに地方の人材を吸収して、そしてその地方において親しみを持ちつつ教育に従事するというようなことが今の制度でうまく行われるであろうか、どうであろうかというようなところに、しろうとながらも、実は疑問を持っておりますので、この点につきましては、文部省の方でもう少し検討してみたらどうであろうかと、こういう考えをいたしておるわけでございます。いろいろ次の国会までには何とか文部省としての考え方というふうなものも固めて参りたい、その上でまた御批判を受けたい、かように考えておる次第でございますが、今の教職員養成の機関につきましては、ともかく一つ検討してみて、まあどんな結論が出るかわかりませんけれども、先ほど申しましたような心持において再検討してみたい、こう考えておる次第でございます。
  280. 野本品吉

    野本品吉君 それから最近における教員養成の学部を卒業した者で、未就職の者が相当累積してきておると思うのですが、その状況は大体どういう状況になっておりますか。
  281. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 就職率の実情を年度を追って申し上げてみますと、昭和二十七年度——これは各年度とも六月一日の状況でございます。二十七年度が九六・四三%、二十八年度が九四・二六%、二十九年度が九〇・九五%というふうになっておりまして、大体就職ができているという状況だろうと判断いたします。その年度中におきましては就職ができているだろうと判断いたします。ところが三十年度の卒業生に対して七三・三一%、ぐっと率が下ってきております。これを四年課程、二年課程に分けて率を申し上げますと、四年課程の方が七九・二七、二年課程の方が六八・三二%、こういう実情でございまして、児童生徒の増加の傾向もだんだんやまりまして、むしろ減員の状態になりますし、それからまた退職者の数も減って参りますし、そういうことが三十年度の卒業生の就職率が悪くなった、こういうふうに現われたことだろうと思います。
  282. 野本品吉

    野本品吉君 三十一年度の推定は今までの実情から見てどうですか。
  283. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 三十年度の卒業生と申しますのは、三十一年三月に卒業した者でございますが、これが一番新らしい……。
  284. 野本品吉

    野本品吉君 いやことしの……。
  285. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) まだこれは出ておりませんが、まあ見込みとしましては、もう少し下回るかもわかりません。これはまだはっきり申し上げかねます。六月一日の統計を毎年とっておりますので出ておりません。
  286. 野本品吉

    野本品吉君 私はこの傾向が続きますというと、ここ二、三年たちますというと、教育という仕事に打ち込んでいこうという、きわめて純情な青年教育者というものがだんだんと就職ができない状態によって累増していくということになると、これは教育問題であるというより、むしろ社会問題化する傾向を持ってくるのではないかということを心配しておるのですが、需要と供給とのつり合いのとれない現実をどういうふうに処理するかということは、非常に重要な深刻な問題だと思うのです。この点についてどうお考えですか。
  287. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 従来からも、これは採用いたします側の教育参員会と、それを送り出します大学との間に十分緊密な連絡をとって、できるだけ就職の円滑をはかって参っております。養成計画にいたしましても、採用側は教育委員会意見を十分に聞いてやるという方式を従来もとって参ったのでございますけれども、ただいま申しますように、最近かような著しい就職率の低下の現象が現われておりますので、先ほど申し上げましたように、全国的に定員減の方策をとったのでございます。今後においては、これは先ほど大臣からもお話がありましたように、需給の面からだけについても、相当深く掘り下げた研究が必要だと、かように考えております。詳しいことは今後具体的に考えていきたい、相当考慮を要すると思います。
  288. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  289. 小林武治

    主査小林武治君) 速記始めて。
  290. 野本品吉

    野本品吉君 要するに私がそういうことをお伺いしますのは、今のような事態の中で、将来の有為な教育者を招致する上において、いろいろな方面からの隘路が生じておる。この点をどう打開するかということについて、文部省当局はむろん、一般といたしましても、十分考えていかなくちゃならないことを思っておるからです。  次にお伺いしたいと思いますのは、先般の春季闘争における教員の一斉早退という、私どもといたしましては胸を痛めた問題があったわけですが、この実情はどういう状態でしたか。これをお伺いしたい。
  291. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 一口に申しまして、大体、日教組が指令いたしましたように、午後二時に一齊に授業を打ち切って早退したというような事実はないのでございます。今回の特色は、特に佐賀県と奈良県、この二つは全然参加いたしませんでした。佐賀県の方は特に再建団体であり、特殊な事情もございましたので、参加しなかったのですが、奈良県は統一行動がとれなかった。それからほとんど統一行動を行わなかった——名目的には多少職場大会等をやったのですが、ほとんど参加しなかったという県が、富山、山口、香川、徳島、島根、鹿児島、この六県がほとんど参加しなかった。それから統一行動には参加しない郡市があった。すなわち一部参加したという府県が一部十二県に上っておるのであります。午後二時に授業を打ち切ったとか、あるいは学校の授業計画を変更したとかいうようなところは非常にまれでありまして、北海道、高知が比較的その部類に属するのですが、その他の府県では、数校程度にとどまっているのであります。  それから、特に今回の参加人員についていろいろと新聞紙上で食い違いがあるのでございますが、今回は、市町村単位で行なったということでございまして、十二月五日の郡市単位に行なったのと非常に異なりまして、学校ごとに職場大会をした、こういうような点で、その人員の捕捉が非常に困難でございますが、私どもの集計によりますと、大体三割程度に見ておるのであります。それから、なお大部分の県では四時ないし四時半というのが非常に多いようでございます。以上が実情でございます。
  292. 野本品吉

    野本品吉君 私はあのことをあらかじめ聞きましたときに、教育界から、この一齊早退の問題にからんで行政処分等を必要とするような事態の起らないようにということを心の底から念願しておったわけですが、今の文部省の方の説明によりますというと、かような処分を必要とするというような事態というものはないということでよろしゅうございますか。
  293. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この点はそうも申しかねますけれども、目下調査中でございますが、多少問題がありますのは、北海道、高知には問題があるようでございます。
  294. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 ちょっと関連して。所によっては、教育委員会が、あれは合法的だと明言しているところがありますね、これは委員会は独立だから何とも仕方ありませんけれども、ああいうことを、文部省があらかじめ会議でも開いて討議をしてみるということは、非合法的になりますか、干渉になりますか。
  295. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私どもとしては、午後二時に一齊に授業を打ち切るということは、違法であるという見解を明らかにしておりますし、教育長の会合があったついでにもそのことは申し上げております。しばしば通達も出しているわけでございます。
  296. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 教育長の会議でもそういうことが問題になったといわれるのですね、それでは、もうこれ以上は、教育委員会が合法的だと、文部省の考えは間違っている、こういって公表しても、もう仕方がない、黙ってみている、こういうわけですね。
  297. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 黙ってみているつもりはないし、そういうことを合法的だという委員会の見解が誤りであると思いますので、そういう委員会については、よく個々に指導して参りたいと思っております。
  298. 野本品吉

    野本品吉君 これは地方的なことでありますが、やはり国のことでありますから、この際お伺いしておきます。  私の県で、先般群馬大学の医学部が火災にあいました。実は連続三年という火災の記録を作っているわけで、学校当局は非常に恐縮をしているわけですが、私のところへ学生諸君が参りまして、たぶんそんなことはあるまいと思っているのですけれども、非常に心配していますので、この際その心配をなくす意味におきまして、私はお伺いいたしたい。それは、火事などを出すような学校は、少し罹災後の復興等について手心を加えて、何といいますか、懲罰的な意味において、学校の再建復興を少し先へ送る、こういうようなことを学生が耳にしたというので、心配して参っているわけです。出火の責任者の処罰と、処罰と申しますか、責任を追及するということと、焼けた学校の再建復興というものは、全然別個な問題としてわれわれは考えべきだと、こう思っておりますが、文部省及び大蔵省の方もおみえのようでありますから、この際両当局からそういうような事柄に対してお答えをお願いいたします。
  299. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) ただいま野本委員からのお言葉にありましたようなことを、群馬の大学の学生から私のところにも手紙でありましたか、はがきでありましたか、きているのでありますが、文部当局といたしましては、火災の責任の問題ということと、学校の復興の問題ということとは全然別個に考えておりますので、私の気持だけを申し上げておきます。なお、詳細は政府委員から。
  300. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 大臣から御答弁があったわけでありますが、補足して申し上げますと、今回の群馬大学の付属病院の外来本館の火事復旧の問題でございますが、さしあたって必要な応急対策的なものは、四月早々から最小限度の復旧をしたい。なお恒久的な対策といたしましては、現在群馬大学の病院につきましては、建築計画が進行いたしておりますので、それを促進するということで参りたいと思っております。大体病院の病棟の建築は、三十二年度には五千万、六千万程度は実施することになろうと思っております。決して懲罰的な意味で復興をおくらせるというようなことは、文部省としては考えておりません。
  301. 野本品吉

    野本品吉君 そうしますと、さしあたっての学生の勉学、それからして外来患者の診療等に対しましては、応急措置によって何とかやっていけるように御心配下さる、こういうことですか。
  302. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 御質問の、その通りでございます。
  303. 野本品吉

    野本品吉君 大蔵省の方がおみえなんですが。
  304. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 群馬の病院の火事につましては、私どもも火事が出ましてすぐ文部省の方に実情はどうかということをお聞きしておったわけでございまして、学生の方も見えまして、火事の問題と学生の教育及び患者の治療の問題とはやはり切り離して考えてほしいというような陳情もございました。どうも群馬は二十九、三十、三十一年——二十六年にもございまして、(笑声)四回ほど病院が火事で焼けておりますので、どうも建てるといいますか、端から焼かれていきますと、はなはだ財政的にも問題がございます。そこで私どもといたしましては、今後火事が起らないように十分に配慮していただくということをまず希望するとともに、事後の処置といたしましては、これはやはり病院としての運営が十分にいくように配慮しなければならないというふうに考えておりまして、先日来文部省等の御要求に基きまして協議をいたしております。差しあたり病棟の一部を外来に切りかえる、そのための一部の補修なりあるいはレントゲン室とか手術室の一部新営というようなことを来年度の既定予算のワク内で予定いたしておりまして、その応急処置をとった後においてどういうことをするかという点につきましては、来年度の国立文教施設費の実行の問題とあわせて十分協議していきたいと、かように考えております。
  305. 野本品吉

    野本品吉君 もう一つ。今の作っても作っても燃してしまうから、もう作ってやらぬというようなお気持ではこれは災難をする。災難なのは学生と診療を受ける人たちなんですから、そういう気持はぜひ持たれないように大蔵省の方にもお願いをいたしたいと思う。  もう一つは、医学部が焼けまして、その復旧のために金がかかるから、ほかの学芸学部、それから工学部といったようなものがこのとばっちりを食って、何もすることができないようになってしまっても困るのであります。医学部が焼けたということは医学部のことなんで、学芸学部のせいでもなければ工学部のせいでもないのですから、どうかその他の学部へいろいろな面において波及し、あるいは悪い影響を与えないようにお考えを願いたいという希望を申し上げまして終ります。
  306. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  307. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  308. 横川正市

    横川正市君 最初ちょっと過去の問題、それから今度実施されようといたしております教員の俸給体系の問題と関連して二、三点お聞きしたいと思います。文部省の現在の立場が人事院の決定をそのままうのみにするような立場に立っておりますので、そういうような意味ならば、体系がきめられる前にいろいろ要望した事項もおありになったことと思います。また体系ができてからもその不合理については十分意見というものをもっておったのじゃないかと、こういうふうに思いますので、その観点から大臣初め担当の方に御答弁願いたいと思います。  その一つ人事院交流の場合に俸給表の、三つに分れている俸給表のうち、それぞれの俸給表で交流をしなければならない事情が起って、その交流がたとえば第三表と第二表との交流があった場合に、第三表の二等級の二十号とそれから第二表の二等級の十七号というのは、これはそれぞれ金額が二万五千三百円と二万五千八百円というふうになっておりまして、これは交流する場合に一体どういう方法で交流をしようとされているのか。これがもし交流が金額の面で不可能だということになりますと、私は相当支障を来たすのではないかと思うのですが、その点どうされようとしておるか。ことに第三表の方の二等級の二十号のときには十五カ月昇給になっておりますが、二表の方の二等級の十七号の方は十二カ月昇給ということになっておるわけであります。一段違っただけで三カ月だけ昇給期間というものが格差があるわけであります。こういう表の中の矛盾点はどうお考えになりますか。  もう一つは、小学校中学校の講師とそれから高校等の助手、教師、助教諭等の場合の格づけでありますが、教員二級の免状を持っております場合には、それぞれの格づけは二等級になっておるはずであります。ところが実際には教員を本人意思でなくて退職しなければならないという事情になって、再採用された場合、これは二級の免状がありましても三等級への格づけをする。そういう不合理が行われておるようでありますが、その点について是正をする意思をもっておられるかどうか。  それからもう一つは高校と大学の人事交流の場合でありますが、大学に助手とそれから高校の教諭の場合には、同じ金額で、三万三千二百円それから三万三千三百円と百円の違いでありますけれども、これは片方は二十四カ月昇給。それから片一方は十五カ月昇給ということになっております。そういたしますと、人事の交流を行う場合におのずとこれは、非常ないろんな意味で不都合が起るのではないかというふうに思われるのでありますが、その点についてどう対処しようとされておるのか。これは全然人事院が、ないしは今度政府提出いたしました俸給表には文部省としては全く意見というものは持っておらぬということになれば別問題でございますけれども、実際に実施をする段階で当然いろいろな不都合が起れば、それに対して意見というものが当然生まれてくるだろうと思いますから、そういう意味でこの点をお聞きしたいと思う。  それからもう一つはこれは子弟が教育をされております直接の担当の学校長とか、あるいは教頭さんたちの意見の中に、日々の教員間の給与のアンバランスというものが大きく子弟教育に影響するのだということが言われておるのですが、その中で師範学校を卒業した場合に同一方面の学校に配属されまして、その後、片方は夜間その他で旧制中学やあるいは高等女学校ないしは専門学校の免許を持っておる、この免許を持っているということで新制大学の大体格づけをする、ところが同じ師範を卒業しても、これはいわば子弟教育に非常に熱を入れて、みずから勉学をするという機会を多くしてまで非常な努力をされたという、こういう人が短期大学の格づけをされる。これは今の俸給はそれぞれ免許状によって、ないしは修学証によって、俸給が非常に大きく勤続年数によって開いてくる。こういうことが実際上学校の校長さんや教頭さんあたりが、自分たちの部下がいかに子弟教育をまじめにしているかという点から勘案してみて、常にじゃまになるものである、こういう意見を聞くのでありますが、これは学歴区分とかあるいは資格区分の基準というようなものが、就学年数や経歴年数り積算年数によって何とか勘案できないものか、それとももっと校長のいろいろの採用権といいますか、そういったものがある程度認められて、実際上この教育に最も熱を入れている方々の不満を、これをまあ不満としないで解決するような方法はないのか、この点にいて私は文部省の意見を伺っておさたい、こう思います。
  309. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) このお尋ねの要旨の大部分は結局日本教職員の俸給表の二本建か三本建かという議論に尽きると思います。すでに教育職員につきましては、俸給体系は御承知の通り大学と高等学校と小中学校と、こういう三本建の制度をとっておるわけでございます。この現在の制度を簡素化したというのが今度の趣旨でございまして、二号、三号表につきましてはそれぞれ十、十一のランクをむしろ教官の実態に合うように校長、教諭、助教諭と、こういう三つの柱にして頭打ちをなるべくなくするように配慮したわけでございまして、文部省といたしましては、十分人事院当局とも相談し、あるいは公務員制度調査室とも相談いたしまして、現在の小中学校あるいは高等学校の先生方に非常な支障のないように号俸を伸ばすとか、あるいは昇給期間を短縮する等、できるだけの配慮をいたし、また折衝してきたわけでございます。その結果がお手元にある表でございます。  そこで先ほどお尋ねのこの二号表と三号表の勤続二十年のところでございますけれども、これは小中学校の勤続二十年と高等学校の勤続二十年、これは教諭として職階の建前から違うわけでございます。その同じ級に交流するということは、する場合もあり得るということですが、一応職階の建前をとっておりますので、小中学校と高等学校というものは分けておる。この分け方は大体現在の俸給表を基準にいたしまして新しい意図は加えておりません。大体従前通りでございまして、そこで多少御指摘の点になりました小中学校の方が二十年が確かに低いわけです。しかしこれは小中学校の場合には校長の方へ移るという、一等級の方に移る可能性が非常に多いものでありますから、そこで御比較になれば、その点は事実でございますが、私どもとしては一等級の方の俸給表に移り得る段階だと、かように考えておるのであります。もう一つ、短大出のお話しがございましたが、小中学校の方は短大の卒のところから始まっておるわけでございまして、しかし四年制大学を出られた方は九千八百円の勤続四年のところに格づけされるわけですから、そういう点で両方の意図がこの三号表には盛り込まれておる。事実また現在これは今後の切りかえとそして初任給をきめたのでございますので、今おる方について再計算をするという趣旨じゃございませんので、御懸念の点は私ないだろうと思うのであります。
  310. 田中彰

    説明員(田中彰君) 俸給表を異にいたしまして、教員が異動いたします場合に、異動先のポストについての俸給がどうなるかという点につきましては、今後人事院が格づけの問題としてきめることになるわけでありまするが、おそらくは今後人事院がこれが立案に当りましては異動後の等級、異動後の号級に従いまして、一般原則に従いまして等級別定数の範囲内で人事院がきめます基準に従って決定されることになろうと思います。号俸につきましては、現行のやり方でありますと、いわゆる水準差というものがございます。小中学校、高等学校、大学の間にそれぞれ一号ないし二号の水準差がございますが、おそらくは今後はかような水準差を加減をするというやり方を廃止をいたしまして、採用時から引き続いて異動後の俸給表の適用があったものとみなして計算をいたしまして、その結果求められる額を基準としまして、なおかつ部内の他の職員との権衡を考慮いたしまして決定されることになるだろうと考えております。
  311. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今の関連してお尋ねしますが、あなたは三本建とおっしゃったですけれども、そういう意味じゃなくて、今度示された三等級にわかれることによって、たとえば小学校長においても非常に問題が起るんじゃないかということが御指摘されておると思うのです。その例は、たとえばこの二等級をもらっておる人がまあ郡部で校長さんになるような場合には、大体十年やったら校長になられるような場合があるわけです。そうすると一万五千三百円でその人が校長になった場合には、一等級へいって一号の二万三百円になるものかならないものか、これは一つの例なのですが、あるいは十一年やられてもいいです、十二年やられてもいいですが、そういう場合にこの一等級の校長になったのだからここへくるのだという格づけをするのか、それとも一号上げるのか。こういうふうに分けたのだけれども、これはちょうど二万三百円という十五年のところにきておるのだから、十五年やったものが校長になったときにだけつなげていくのだ、あとはこっちへ移りかわらぬ、こういうものか、その辺はどういうふうになっておるのか伺いたいと思います。
  312. 田中彰

    説明員(田中彰君) 校長になりました場合に直ちに一等級ということで、お話しの一号俸、二万三百円を支給することになるかどうかという点でございますが、これまた今後人事院がこれが格づけ基準を決定いたしますので、その結果によりませんと明瞭にはなりませんが、ただいまのところ人事院考え方としてはこの二等級の教諭が校長になったからというので二号俸も三号俸もとんで一等級の一号俸に行くという考え方はないように伺っております。従来でありますと、いわゆる飛び昇級というものはございましたが、今後はさようなことはないのではないかと想像されます。号俸は同じ号俸を持っていく。ただしその場合に二等級の方に暫定的に据え置くか、あるいは一等級の方の下のワク外——これらは今後人事院の定めるところによってきまる問題であろうと思います。
  313. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 なるほど二等級をずっと飛ぶから、一等級と比較して見ますと、最高の四万一千七百円まで行くのには、昇給期間は違いますけれども、号俸はいいわけです。そこでこれが二等級から一等級と移るのと、二等級にそのままいるのとじゃ非常な違いがある。号俸の額は同じなんですが、昇給期間は非常に違うわけですから、だからどちらにするかということについては、人事院が今後きめることだから知らぬと言うのだが、これは文部省としては非常に重大な問題だと思うのですが、こういう問題がきまって政府提案をされる以上は、どういうふうになっておるかというようなことを聴取されてしかるべきだと私は思うのです。あるいは話し合いもある程度進められておって、こんな計画であり、話しはここまでいっているのだというようなことが行われていなければならないと思いますが、そういう点についていま少し御説明を願いたいと思います。
  314. 田中彰

    説明員(田中彰君) たしかに御指摘の通り、二等級と一等級では金額は同じでありましても、昇給期間、すなわちスピードが違いますので、教諭が校長になったのでありますから、やはり校長として一等級の格づけをし、この一等級のスピードで昇給をして行くのが、これがもちろん筋でございますが、ただ二万三百円に、初号に達しませんような場合におきましては、あるいはこの二等級、一等級いずれの俸給表を使いますかは人事院が今後定めるところでございますが、もとより昇給期間が違いますので、その間にらみ合せまして不利な取扱いにはならないようにしなきゃなりません、また人事院としてもさような不利なことにならぬように取扱い方をきめられると思っております。
  315. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあこの表であなたの方も満足されたかどうか。こういうふうに不合理な点がたくさんありますが、問題はこういうところが一番ガンだと思います。それもそれで、いわゆる二等級と一等級と分けたことで一番問題になりますのは、単式という極端なことは私は申しませんが、四、五学級のところの校長になった人と、それからそうではなくて、普通の学校でたくさんおるところだというと、校長になる期間が非常に遅いと思うのです。これは職域級というのですか、全体でも言えるのですが、中央で課長になるためには何年間かおらなければならない。ところが札幌とか——とは言わないのですか、ああいう地方じゃ、統計で例をとって見ても、課員で二年くらいしかおらないのに課長になる。そういうところに、こういうものを取り入れられたところに矛盾があると思うのです。そういう二年しかおらんでも課長だ、だから何等級だ。こちらの方は同じようにおっても課長にもなれない。係長にもなれない。だからお前はここの等級だと、こういうところに格づけされるところに、一つの職域級をとられたところに非常に問題があると私は思うのです。ですからよほど運用をうまくやっていただかないと、私はつまらないところにトラブルが起きて来る。だからそういう点については一つ文部省としても、ほかの省のことは別として、文部省において少くとも教職員にはそういうトラブルの起らないように、あるいは各都道府県の教育委員会あるいは市町村においては市町村の教育委員会において取扱い方が分かれてくるということのないようなことについては、十分私は指導していただきたい。
  316. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お話しの点もありますが、相当一等級の中にも幅がございますので、まあ大体この幅の範囲でおさまるだろうという見通しでございますが、御指摘のような事態がありますれば、その運用基準におきましてできるだけ不利にならぬように努力いたしたいと考えます。
  317. 湯山勇

    湯山勇君 今の点はそういう御答弁では了解できないのは、人事院は義務教育については今のように区分してないのです。一本の通しでいっております。ところが政府でこれを直して今のような校長、教諭、助教諭と、こういう格づけをしているわけですから、そういうふうな御答弁では、これは人事院勧告なら今のような御答弁でけっこうですけれども、政府の、あなた方が関与して作られたその俸給表についての説明がそういうことではこれは大へん問題だと思う。もう少し明確な御答弁がなければ非常に問題だと思うのですが……。
  318. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 現在の俸給表は御承知の通り十一ないし十に区分されております。それを三つに、三段階にした。で、そういう意味では簡素化されている。結局御指摘の点は、教諭から校長への乗り移りだと思います。その乗り移りがこの幅では非常にまずいのだという事実は、私どもは今の校長になる経験年数等から考えまして非常に支障があるとは考えていないのです。ですからもしたとえば小中学校の場合、二万三百円以下の校長があった場合、あるいは高等学校の場合には(湯山勇君「高等学校はいいのです」と述ぶ)小中学校の場合、二万三百円以下の校長があった場合にどうするかというお尋ねだと思います。その場合にはできるだけ不利な取扱いのないように、私どもとしては一等級の方に下にランクを、ワク外を設ける、こういうふうにすれば御疑問の点は解決されると思います。大体私どもは二万三百円と申しますと、教諭の場合に勤続十五年でございます。ですから勤続十五年前に今のところ校長になるというのは非常にまれだと思います。
  319. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 冗談じゃない。これはありますよ。
  320. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) いや、そういうことはないと思います。大体この幅で納まると……。もちろん今後の問題でございますから、現在これに該当があるかないかという問題、そういうようなはみ出たものがありますれば、もちろん考えなきゃならぬと思います。
  321. 湯山勇

    湯山勇君 これまた考えなきゃならぬというのじゃなくて、この人事院国会及び政府勧告したものでは一本になっておるのです。それに基いて、この一本では高等学校の方は三等級になっておりますから、この内容が一致する、しないは別として、これは別ワクにして、教育職員俸給表の第三は一本にずっとなっております、人事院勧告では。それを政府の方では、特にこの今のような小中学校も三等級に分けたわけですから、そういうふうに分けるということは、これは直接文部省は責任ないと言えば、押しつけられたのだと言えばそれでも済むかもしれませんけれども、しかし政府の原案としては今おっしゃったようなことではなくて、実体はこうだと思う。だからこれがいいのだと、こういう御説明であればともかくも、自分はこう思うのだということだけで押し通すということは、私はこれは了解できないと思うのです。で、実際に、御承知のように僻地の多いところでは十年もたたないで、三人、四人、あるいは五人くらいのところの校長というのは相当たくさんあります。不利にならないようにどっちへどうするかということでなく、そういう実態に立って、それじゃ校長職はどこから始まるということができて、初めて私は政府の案として了解できるので、今のような案だと、いかにも人ごとで、よその人のことを考えるような感じがしてならないのですが、その点をお尋ねしておるのです。
  322. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この点は私どもは高等学校と同じように、小中学校の場合にも、校長と教諭、助教諭、こう分けた方がいいと思います。その点は校長の職責というのも相当重要なものでございますので、一般の教諭とは違うと思います。職務内容、その責任の度合いが違うと思いますので、三等級のものに分けた方がいい、こういう考えであります。
  323. 田中彰

    説明員(田中彰君) 教育職俸給表の三におきましては、三段階になっております。その意味が、御指摘の通り人事院勧告につきましては等級の区分がない、一本でございます。しかるに今回の政府案においてこれが三段になっておりますのは、校長並びに助教諭というものが、公立学校に適用します場合にこの方が便利である。国立学校の場合は校長あるいは助教諭というそのものを特に考える必要がありませんので、一本立てになっておるわけでございます。これが今回政府案を三本立てにした理由でございます。それから今回の政府案、初号並びに最高号俸、それから間差額等につきまして考え方のもとになっておりますのは、現在の現員現給というものを考慮いたしまして、それをもとにして作られた、現在の実態にいわば合せて作られたやに考えております。
  324. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  325. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  326. 湯山勇

    湯山勇君 大蔵大臣は、当初南極の国際地球観測年の予算が組まれた当時は、その責任者ではおありにならなかったので、事情を若干申し上げなければならないかと思うのですが、国際地球観測年に日本が参加するということになりまして、これは大へんな大事業だからよほど慎重にやらなければならないというところで、学術会議その他いろいろ検討した結果、相当額の予算の要求があったわけでございます。ところがそれがずいぶん削られまして、結局船体の関係、船が古いということ、それから予算の問題、これらの制約のもとに、結局現在の程度の改装しかできなかった。で、それによって非常にむずかしい、困難な事態であったけれども、それを克服して、今日の成果を納めて、とにもかくにも無事であったということは非常に喜ばしいことだと思うのですが、ところが今回の経験から見まして、とうていこのままでは再び南極へ向わせることはできない。これは国民全体がそう考えているところだと思います。にもかかわらず、三十二年度予算ではそれらに対する予算は、従来計画がなかったために組れていないわけでござまいまして、今いろいろ聞いてみますと、文部大臣としては、できればもう一ぺんほかに適当な船も見つかりそうもないから、南極の方へ行ってもらわなければなるまい、というような大体の御意向のようでございます。だとすれば、相当大きい改装をしなければならないということになるわけですけれども、その予算がほとんど盛られていない。そこでこれに対していろいろ検討もしなければならないけれども、もし、そういうことになった場合には、改装するということになった場合には、時間的は制約もあります。それから船体の古さという制約もあります。しかしそういう制約の中でできるだけの改装ですから、それにはおのずから限度があるわけですけれども、その上に予算の制約ということが加われば、まことに行ってもらうということもお気の毒なことになる。こういうふうに考えて、文部大臣にお尋ねいたしましたところが、文部大臣の御答弁では、そういうことになれば、それはそういう心配のないように文部大臣としては努力をしたい、こういう御答弁でございました。しかし、予算ももう数日のうちに成立する段階でございますし、組まれている予算の中でそういう費用が出るということはまずまず考えられない。とすれば一体どこをどうするかということになると、予備費等の操作に待なければならないと思うのですけれども、大蔵大臣としてはそういうことについてどういうふうにお考えになっておられるか。これは国民の重大な関心であっただけに大蔵大臣としても、もうそれに対してのお心がまえはおできになっていると思いますので、伺いたいと思います。
  327. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 心がまえが実はできていないのでございます。それはやはり今度、宗谷丸で行かれた方々がお帰りになりまして、とくと事情を聞きまして、そうして文部大臣がどういうふうな結論をお出しになりまするか、ただいままででも、文部大臣からは、帰ってきてからよく研究してまた相談する、この程度でございますから、どういうふうにしようかという心がまえはできておりません。しかしこのこと自体は国民のひとしく関心を持っていることでございます、私はそのとき大蔵省におりませんでしたが、新聞界の方の方々からもよくこれを聞いております。事柄自体は重要でございますので、文部大臣から相談を受けましたならば、善処いたしたいと思っておりますが、お話の通りにいろいろな制約がございます。だから事情を聞いた上で善処いたしたい、こういう気持でおるわけでございます。
  328. 湯山勇

    湯山勇君 そういうこともあろうかと思いまして、私は主査にぜひ隊長を呼んでいただきたい。そうして委員会で大蔵大臣も御一緒にこれを聞いてもらって、一緒に検討する。そうすれば事態が明確になるのじゃないかというつもりでおったわけですが、これは一つなお質問あとで、その結果いかんによってお願いしたいと思います。  で、文部大臣にお尋ねしたいのですけれども、この観測について、民間等から寄付金が相当集まったと思いますが、それはどれくらいになっておるでありましようか。
  329. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 一億二千万円ほどになっておると記憶しております。
  330. 湯山勇

    湯山勇君 この一億二、三千万円の金というのは、当時宗谷が出るのは不安だということに対して、国民がぜひこの事業を成功させたいという熱意から出たものです。国民がこれだけ寄付をするほど、それほど当時の事情はお気の毒だ、これは無理だという状態にあったわけで、もし今回もまた同じように、ぜひここまではやりたい、ここまではやらなければならないというような結論が出たときに、それを大蔵省の方で、そういう結論にかかわらず、ぱさぱさやっていくというようなことになれば、これはもう私は国民にとつては重大な問題だというように考えますので幾ら出すとか、出さないとかじゃなくて、そういうことはないようにする。つまり時間的な制約、それからあの船体でできる限度というものはありますから、予算の面でそれを制約するというようなことはしない。こういう点の心がまえは、これは現在の段階でも大蔵大臣としておできになるのじゃないかと思いますが、いかがなものでございましょう。
  331. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 必要な予算につきましては、われわれは何も出し渋ったことはございません。ことにこの観測隊の出ますについての予算は、主計局長が答弁いたしますが、お話しのように、そうぶった切るというようなことはしていないはずであると思います。(笑声)私も、これは大蔵省に参ります前に、民間の人といろいろ相談いたしまして、大いにやるべきじゃないか、こういう、ふうにして、私は激励したことがあるのでございます。寄付金の一億何千万の問題のときにも、それを私は聞いておるのであります。予算を組みましたときの事情を主計局長から御説明いたさせます。
  332. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 宗谷の改装費の予算は、一部三十年度からの問題でございます。主たる部分は三十一年度の予算でございます。五億数千万円でございましたが、これは当時大蔵省に要求がございましたものに対しまして、主たる性能に関する部分、これは人命にも関するものでございますから、そう切った覚えはございません。(笑声)機関であるとか、砕氷能力とか、そういったことを、学界の協力を得られて、関係各省が計画せられて、持ってこられた予算に対しましては、そういった主たる機関部分であるとか、性能に関するものにつきましては、極力尊重いたしまして、予算を認めて、編成しておるつもりでございます。  本年度の予算も、文部省の御要求よりは若干下回っておりますが、しかし南極探検に関する部分につきましては、ほとんどといってもいいくらいに、実は要求を是認いたしておるつもりでございます。機能的な部分につきましては、私ども極力全計画を尊重してやって参っておりますので、その点御了承願いたいと思います。
  333. 湯山勇

    湯山勇君 私はそれは了解できないのは、委員会で述べられた中にこういうのがあります。これは出る前です。出る前に、改造は、船が古いことと、それから金が足りない、そこで十分なことはできない。今おっしゃったように、五億一千二百八十六万五千円でしたか、これだけではとても十分ではない。文部省関係も当時の説明では、これは非常に遠慮して言っておるのは、十分とは言えない、余裕はないけれども、所期の目的を達することはどうにかできるのじゃないかという非常に苦しい答弁をしております。特に海上保安庁関係の、長官ではありませんけれども、砂本という人が委員会で述べてあるのも、この程度では接岸も困難かもしれない。それから氷にとざされる心配もある。そこで、不十分であるけれども、まあ直接大きな危険にさらされないように注意してやりたいという、非常に心配した答弁をしております。そこで、これについては新聞でごらんのように、学術会議とかその他の団体が、それじゃとても無理じゃないかということを言ったけれども、最終的には何かぱさぱさと学術会議等がくずれたところがありました。そこで、そういうことに対して国民が、それは一つしっかりやってもらわなければいかんという——これについては若干の呼びかけもあったはずです。政府が呼びかけたのじゃありませんよ。けれども、若干の働きかけもあって、ああいう寄付金が、大口もありますけれども、零細なのが集まった寄付金もあったのが、これは実情だと思うのです。そういたしますと、今回の場合、もし宗谷を再びやるとすれば、私どもが心配するのは、もう時間的にも制約されておるし、あの古い船を改装するとすれば、これにも限度がある。だからせめてそれなら、新しく作るほど要るとか何とかいうようなことは、あれの改装ですから考えられない。そこで予算の面から思う通りの改装ができないとかいうようなことだけはないようにしてもらいたい。こういうことを、それはそういうことはしないのだという御答弁を大蔵大臣からいただけば安心できると思うので、これを前回から繰り返しお尋ねしておるわけですから、御答弁願いたい。
  334. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 私も、一年以上前のことですから、記憶が細部にわたりましては適確でないかもしれませんが、馬力を幾らにするとか、砕氷能力を幾らにするとか、そういう点につきまして、私ども予算の面では制約したことはございません。関係各省が要求されました通りの馬力ないしは砕氷能力をお認めいたしておるつもりでございます。ただ、たとえば居室についての改装とか何とか、そういった主たる性能以外の部分につきましては、若干私ども査定を加えたこともあるやに記憶いたしておりますが、肝心の砕氷能力に関する面につきましては、要求を予算の面で削ろうというようなことはいたしておりません。今後どうなりますか、これは先ほど大臣からお答えがございましたが、お帰りになった方の御意見を基礎にして、文部当局あるいは海上保安庁で十分御検討の上、私どもに御相談があるわけでございましょうから、その御相談を十分伺いまして善処をするということでございますが、どうしても最小限度の改装をするのにこれだけの金が要るという場合に、その金を出し渋って、人命を危険に瀕せしめるというようなことは、私の方といたしましてはとるべきでないというふうに考えております。従来からもそういう態度で本件についての査定に臨んでおりますので、その点御了承いただきたいと思います。
  335. 湯山勇

    湯山勇君 この分はなるほどそれは砕氷能力の一メートルぐらいですか、それから馬力も五千馬力とか、そういう点についてはあるいは確保されておるかと思いますけれども、しかしこの地球観測年全体からいえば、たとえば国内の分にしても不足の分は最終年の三十二年度にやるといいながら、やはり足らないで付置研究所等のものも使う、こういうことになっておりまして、そういうことから見ても、とにかくこういうのに最小限度最小限度ということによって、最小限度という考え方が私は若干違うのじゃないかというような気持さえ持つようなのですが、結局この砕氷能力があって馬力がそれだけとれなければ、どこでも行けるというものではないと思うのです。場合によってはヘリコプターを持っていくというようなことも考えなくちゃならぬかもしれないと思うのです。それは一つあれば最小限度だということにはなりますけれども、今度の場合でもヘリコプター一つではとても運べないかもしれません。あの離れてしまったときには。まあこういうこともありましたので、ああいう危険な仕事のときには最低最低でしぼっていくべきかどうか、この辺も私は問題だと思うのですが、これはどうお考えでしょうか。
  336. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 最低と申しましても、これは私どもとして決して、その貴重な税金のことでございますから、むだ使いをさせたくないという意味で申し上げておるわけでございまして、事業の執行の安全というような要素はもちろん考慮に入れなくちゃならぬと思っております。たとえばヘリコプターなんかのお尋ねがございましたですが、初め予算を作りましたときよりも事業計画が相当改訂されまして、事業費がよけい要ることになりましたわけです、三十一年度。それにつきましては、私どももこの事業の重要性よくわかっておりますので、海上保安庁の既定の予算のやり繰りなり、あるいは文部省の同じ系統の事業費の捻出なりにできるだけ努力をいたしたつもりでございまするし、またヘリコプター等につきましても、防衛庁所属のヘリコプターを動員するというようなことまで、実はいろいろな私どもはあっせんをいたしまして、事業全体の完全なる遂行のためには及ばずながら協力をいたして参ったつもりでございます。
  337. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  338. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  339. 湯山勇

    湯山勇君 大切な税金ではありますけれども、使いようがあると思うのです。それで国民が満足するような使い方ならば、これはもう非常に、多少今のような場合にぎりぎりでなくてもいいじゃないかということも考えられますけれども、そういうことを大蔵省の方からおっしゃることはできないだろうと思いますから、その点は了承いたします。ただ私が申し上げておる意味は、その前に、当初のときに、これはあるいは新聞報道だけだったかもしれませんけれども、いろいろ伝えられたようなことが、今回の帰ってからの措置についても伝えられるような事実、事実でないにしても、そういう誤解でも生まれるようなことがあると、これはやはり今度は影響が大きいと思います。今までの南極での苦心した事実に立ってですね、そこでそういうことはないようにするということの御言明があれば、私はもう満足するわけですから、最後に一つ大蔵大臣その点について御答弁願いたいと思います。
  340. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話しの点か私の最も努めなければならないところでございまするから、文部省とよく打ち合せますし、また向うの様子を聞きまして善処いたしたいと思います。
  341. 湯山勇

    湯山勇君 それじゃこれで終ります。
  342. 小林武治

    主査小林武治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  343. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  344. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 今度の、総理大臣は青年の奮起を求められておるわけですね。そういうことからまあ文部省の予算は大体青少年を目標にして組まれている予算だと思うのですが、特にあの政府の気持を出す上において青年の士気を鼓舞するというか、ああいう総理大臣の演説に対してどういう点に重点を置いて組まれたか、その対象になるこういうものは、特にふやしたとか、探してみたのですが、その点一つ文部省の方から御指摘願いたいと思います。この予算中、三十二年度の……。
  345. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま三十一年度に比較してどういう点が青少年の点でふえているか、こういうお話しでございましたが、社会教育の面におきましては、この社会教育特別助成費は七千万円、三十二年度に計上しております。これは三十一年度に比較いたしますと確かに同額になっておりますけれども、三十一年度の七千万円のうち、約二千万円は建設費等に使用する分でございます。実際にこの青少年の野外活動あるいはいろいろ読書指導だとか、あるいはまた音楽、演劇等、あるいは映画等に関しまするいろいろ実際上使いましたのは大体正千万円弱でございます。そういった点から申しますと、実質的に三十二年度におきましては約二千万円の増ということになろうかと存じます。そのほかに特にスポーツの振興という見地から、この青少年のために、特にこの地方にスポーツの指導組織を確立したいというような点で、新しい予算といたしまして二千万円、三十二年度予算に計上いたしました。そういった点が若干従前と異なる点だろうと思います。
  346. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 地方スポーツの指導というのを二千万円、これは一体どういう使い方をなさるおつもりですか。
  347. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは要するに各市町村等の地域におきますところの一般国民のために、一般国民のできるスポーツの普及をはかっていきたい、こういうような趣旨から、各市町村にスポーツの指導委員というようなものを設置いたしまして、そうしてこの指導委員を中心にして各地方の教育委員会なり、あるいは上の府県の教育委員会等に緊密な連絡をとりながら、そういうスポーツの指導をやっていきたいということと、同時にまた、そういった面におきましては、指導者の養成ということが非常に重要でございまするので、各府県単位に指導者の養成をしていくといった経費にこの二千万円を使用することになっております。
  348. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 この間、スポーツ振興審議会ですか、そういうものもできたようですが、まあスポーツを非常に奨励されることは私異議はないのだけれども、どちらかというと、スポーツというのは選手主義になって、その方の弊害もかなりあると思うのですね。それで、一体この指導員を作ってやっていくのだと言われるが、私から言えば、むしろもう日本はスポーツは過多で、もうそういう普及をしなくても、各種のスポーツを日本ほど青年がやるものは……、世界中のスポーツを全部やっているので、ここでさらにスポーツ振興とか指導員を設けるとかという必要はむしろないので、そういった選手主義でない、何というか、レクリエーション方面の正常な指導、こういうことなら私は音心義があると思うのですが、一体その点についてどういうようにお考えですか。大臣の方から。……
  349. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 私は、ただいまの加賀山委員のお尋ねの御趣旨には全く同感であります。この予算におきまして、スポーツの地方指導組織というようなことをお願い申し上げておりますが、これはまあざっくばらんに申し上げますと、予算の編成の大体済んだところで私は就任いたしましたので、幾らかでもその心持を出したいというので、わずかばかりでありましたけれども、予算をあとで追加して出しましたようなわけでございますが、私の心持といたしましては、今日の世相の上から申しましても、また青少年の状態から申しましても、スポーツを大いに振興する必要があるのではないかというふうに考えましたので、これをやりましたわけでございますが、金額はきわめてわずかでございます。先ほどお話にもございましたが、政府に今回スポーツ振興の審議会を作りまして、これによりまして、今後の方針を決定いたしまして、それに従って施策を進めて参りたいと思うのでありますが、基本の心持といたしましては、選手の養成ということも大切でございますけれども、ただ選手養成に堕してしまうというのが私の本旨ではございません。できるだけスポーツ人口をふやすと申しますか、国民がそれぞれその状況に応じましてスポーツ、体育というようなものを楽しむというような状態に実は持って参りたい。そしてまたスポーツ人口をふやすということによりまして、優秀な選手も自然に輩出することだろうと考えるのでありますが、考え方といたしましては、国民がまあ老も若きもスポーツを楽しむというような一つ社会環境というものを実現するように努めてみたいと、こういう考えのもとにいたしておることでございますので、次の年度におきましてはもっと新しい構想をもって御批判を受けるというようなこともあろうかと思いますが、とにかく気持は加賀山さんの考え方と同じことでやりたいと思っておるわけでございます。
  350. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 まあ普通のスポーツ振興とか、それから地方スポーツの指導員を作るということになると、どうしても大臣が今のように言われますけれども、何というか、どうしても派手な方へいく、特に選手主義になりがちになって、むしろだれでも今、大臣が言われたように、老も若きも楽しむというような、そしてそれに適当なスポーツを指導するということはじみなことですから、むしろなおざりにされるおそれが多分にあると思うのですね。その点を特にお考えおきを願えればいいと思うのです。  その次の、社会教育の面で、ここに「社会教育施設の整備充実」、いただいた資料の八番目の(2)、それから同じく(5)に「社会教育施設整備」というのがあるのですが、金額にして一千八百万円と八百万円に分れているんですが、これは何か別に分けるのは意味があったのでございましょうか。
  351. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 分れておりますのは、この図書館、公民館等の施設の建築の補助の経費と、それから図書館、公民館等の社会教育施設に対しまする設備費の補助と両方に分れております。そういった意味で二つに分れております。
  352. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 そうしますと、(2)の方が公民館とかの設備で、(5)の「社会教育施設整備」というのは何を考えておられるのか。
  353. 福田繁

    政府委員(福田繁君) (2)の「社会教育施設の設備充実」とございますのが、これが図書館、公民館等におきまするところの設備費の補助の金額でございます。五番目の「社会教育施設整備」とございますのが、これが建物を建てます場合の補助に使用する経費でございます。
  354. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 どういう建物ですか。
  355. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 図書館、公民館でございます。
  356. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ちょっと、今おっしゃったことで十分よくわからないのですが、なお7の(リ)にも「社会教育施設」という欄があって、一千万円計上されている。
  357. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ちょっと言葉が不適当だったかと思いますけれども、8の「社会教育の助成」の中の(2)の「社会教育施設の設備充実」、これは先ど申しました通り公民館、図書館、博物館の中身の設備費の補助金でございます。(5)の「社会教育施設整備」、これは建物の補助金でございまして、便宜ここに掲げたので誤解があるのでございますが、前の7の(2)「公立文教施設整備」の(リ)に本来は上っておるのでございまして、そこに一千万円計上して、ここでは社会教育という面で再び計上した形で、実はカッコをつけておいたのですけれども、落ちておったものですから……。建物の建築でございます。
  358. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 二重に出ているんですね。
  359. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ええ。
  360. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 社会教育について、これは定時制あるいは通信教育等、やはり私は社会教育の一環として考えらるべきものであろうと思うんですが、この教育の機会均等というようなことからいい、また青年のほんとうの士気を鼓舞するという意味からいって、こういうものをもう少しまとめて一つの大きな構想で考えられる、そしてそれにはもう少し、一千万円とか、こうちぎらないで、何か予算をつけるというようなお考えは、まあこれは文部大臣御就任後であれなんですが、文部大臣としてそういう点について何かお考えがあるかどうか。
  361. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 予算の立て方の問題につきましては、実は私も文部省の予算を見まして、いろいろ感じさせられる点もあるのでございますが、いろいろな事情からこういうことになっておるかと思うのでございますが、十分一つ検討してみたいと思うのであります。  なおまた、お話しのように教育の機会均等というふうな面から予算を一つ編成してみるというのも一つ考え方であろうかと思います。いずれにいたしましても、予算の金額か、まあ文部省だけの立場から申しますと、はなはだ意に満たないものがございます。全体の財政の都合もありまして思うようには参りかねると思いますけれども、ことにこの教育の機会均等、あるいは社会教育というふうな面におきましては、さらに十分実情も研究いたしまして、できるだけこの方面の予算を伸ばして参るように努力して参りたいと思います。
  362. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、これも青年学徒の一つの大きな施策になっていると思うんですが、育英事業あるいは学徒援護について、この育英事業がこれはかなり多くの予算を盛っているわけですが、これはどんなに運用され、そして所期の目的を達しておられるかどうか、その点について概略でいいですが、御説明願いたいと思います。
  363. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 育英事業は御承知の通りに日本育英会がこれを運用いたしておりまするが、特に来年度の予算といたしましては、四千四百万円の貸付金の返還金の増を合せて八千四百万円の資金を増額いたしまして、これで運営いたしたい計画に立てております。特に改善いたしたいと考えております点には、高等学校の関係におきましては、単価を従来七百円と一千円とありましたものを、一千円に全部引き上げましてこれをやっていきたいと思っております。
  364. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ちょっと、それは知ってるんですが、大体実質的にどういうふうに効果を上げ、たとえばそういう選定を誤らずにやっているかどうか、貸与を受ける人ですね。これは一面からいくと教育の機会均等ということかもしれないが、一面こういった育英資金を借りられる人は大へん仕合せなわけですね。これは希望者があって、これは何かの選定方法でやっておられるんだろうが、どれぐらいのパーセンテージで育英資金を借り受けができるのか、またその手続はどういうふうにやっておられるか、)そういう内容についてちょっと伺いたい。
  365. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) この選定につきましては、日本育英会におきまして選定を、高等学校の生徒につきましては、地方の教育委員会等の協力を受けましてやっておる次第でございますが、ただいま。パーセンテージのお話しもございましたが、これは高等学校、大学につきましては、それぞれ率も違っておりますけれども、特に大学関係につきましては、学生の採用率は二〇%ということでございます。高等学校につきましては、これは全日制と定時制と両方ございますが、これは三%ないし二%という程度でございますけれども、大学の一般につきましては二〇%でございます。なお、ただ教育の奨学生につきましては特別のワクを設けまして、これは五〇%、それから一部は二五%でございますが、これも本年度率を上げまして、特に三年、四年の分につきましては従来の率を上げまして二五%を採用する。採用の率も若干来年度は高めていきたいと思っております。これは実質的に、一面教育の機会均等ということもございますのと、さらにまた実際に成績の優秀な者に、しかも学費の経済的に困難なる者の中から選んでやっておるという方法もございまして、大学の場合におきましては学校と十分連絡をとりまして、成績を十分勘案いたしましてやるという方法をとっております。日本育英会におきまして、それぞれ大学あるいは地方の教育委員会と連絡いたしまして、さような観点から遺憾なきを期しておる次第でございます。
  366. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ちょっと高等学校の率を聞き漏らしたんですが、高等学校の方はどれくらいがこれで救われているんですか。
  367. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは全日制が三%、それから定時制は二%。
  368. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 非常に少い、ごく一部分の方が救われている。これはなきにまさると思いますけれども、予算的にかなりの額を使っておるわけですね。それだけにこれは非常に何というか、そのやり方なり効果というものをよく十分考えてやっていただかないといけないと考えるわけです。  もう一つ学徒援護会の方は、これは補助をしておられるだろうと思いますが、どういう事業を……。
  369. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 学徒援護会は学生会館あるいは学生の相談所等を経営いたしまして、その宿舎を提供し、あるいはアルバイトのあっせん等をいたしておるわけでございまするけれども、これに対しましても来年度におきましては予算の増額をはかりまして、五百七十二万円の増額をはかっておるのでございますが、内容におきましては、この学生会館の修理とかあるいは相談所の内容の充実というようなことを来年度はやっていきたいと考えておる次第であります。
  370. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 これはむろん文教委員会でも私ちょっと大臣に質疑したんですが、いわゆる科学技術方面の教育を大いに振興しようと考えておられるこの方向は正しいんで、しかしこの基礎教育から始まって、急速にこの技術面と事務面との比率を私は変えていかなければならないと思うんです。これは日本がこれから技術的に海外に伸びていくにはぜひともそうあらねばならぬと思うんですが、どっちかというと事務偏重できた。私どもの経験によると、たとえばドイツの青年あたりは何になるのか、あるいは将来何をやっていくのかと聞くと、エンジニアだと言う。そしてそのエンジニアということを誇りを持って言っているのですが、その点全く違うので、これは根本的に何か社会制度、あるいはそういう関係もあろうと思いますが、第一は私何と言っても理科……こういった技術科学方面に興味を持たせるような教育をするのが非常に必要じゃないか、子供のときから。それともう一つ必要なことは、それを興味を持たせるように教える実力を持った先生の養成と、この二つが非常に必要になると思うのですが、今回のことでまあ多少その面の予算を見ておられますが、たとえばテレビ、ラジオの視聴覚教育を通じ、あるいは学校教育そのものにおいて何かこの理科教育にもっと興味を持たせるような工夫があってしかるべきだ、こういう気がするのですが、そういうことは何か文部省で考えておられますか。
  371. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 先般来科学技術振興ということをしばしば申し上げたわけでございます。文部省といたしましては、今後の施策の大きな項目といたしまして、これを取り上げて参りたいと思うのでございます。この目則を達しまするためには、大学、高等学校、初等、中等学校いずれについても考えなければならぬことと思うのでありまするが、わけても今お話のように、初等、中等あたりの理科教育というものが、結局日本の科学水準を将来引き上げていく上におきまして重要な役割を持つものと考えております。この方面につきましては、特にお話になりましたような方角に向って努力して参るべきであろうと思うのであります。いずれにいたしましても、来年度の予算につきましても、なるべくさような方向にと思いまして、予算の決定に当りまして、重点を科学技術面に置いたつもりでございますけれども、これは決して目下の国家または社会の要請にこたえるだけのものではない。急いでこの方面のことはやって参らなければならぬと思いますので、ただいま次の機会のために科学技術振興に関する文部省といたしましては何か計画というようなものを一つ作ってみたい。その計画に基きまして、閣議の御協力を得て、これを予算化するなり法制化するなり、それぞれのことをやって参りたいというので、手をかけ始めておるわけでございます。できるだけすみやかに結果を得て実現いたしたいと思うのでございます。明年度の予算において特に今お話になりましたようなことについてどこにそれがあるかというふうにお尋ねになれば、別にここにそれをお答えするようなものがあるというわけには参らないのでございますが、学校教職員の研修等につきましても、その方面のことにつきましては特に配意をいたしまして、できるだけお話のように、生徒児童が理科の方面に興味を持つようにということを心がけて参りたいと思います。いずれにいたしましても、この問題はきわめて重要視いたしておりますので、何とか一つうまい成果を得たいと念願いたしまして、極力努力するつもりでおります。
  372. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  373. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。
  374. 横川正市

    横川正市君 予算の面でちょっとお聞きしたいのですが、これは北海道の原住民でありますアイヌ族が日高、それから旭川周辺と白糖周辺等にそれぞれ散在して居住をしておるのでありますが、生活様式がもうほとんど内地人と交流をいたしておりまして、その原住民の正統な血統というのは逐次そこなわれてきておるという状況にあるようであります。そういう建前から、二十五国会では北海道の旭川の酋長が中心になりまして、この原住民の現在の生活状態、それから今までの歴史の過程をぜひそこなわれない先に残すための会館を建てたい。こういう趣旨で請願をいたしまして、これは受理をされて、当局へ行っておると私は思うのでありますが、それに対して予算上の問題としてどういうふうに処理しておられるのか、この来年度予算案についてその点をお伺いしたいと思います。
  375. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) このお話は伺っております。北海道の方の非常に熱心にアイヌの民族を何とか復興しようという話は伺っておりますが、ただいまのところは、来年度の予算にはまだ計上はしておりません。しかし私どもといたしましては、アイヌの貴重な風俗習慣と申しますか、そういうものはできるだけ保存いたしたい、かような考えで、無形文化財の方の民族資料の方にこれは該当するかと思いますが、その方の部門でできるだけの措置をいたしたい、かように常に考えておる次第でござまいす。たしかユーカラ——アイヌの民族の象徴であるユーカラの記録は私どもの方でこれを一部買い上げるというような措置もとっております。その他アイヌの民族を映画にとりまして、そして、これを保存するというような方法も講じております。予算同等につきましても将来十分に御要求したい、かように考えております。
  376. 横川正市

    横川正市君 大臣にお伺いしたいのでありますが、今のような形で映画とか、あるいは種族の中で優秀な頭脳を持った人として生まれてきた、特別にアイヌ史に貢献を残して、非常に若死をした人の、その人の書物だとか、そういったものが今のような形で保存されるということは、これはもちろん私は大切なことだと思うのです。ただ、その北海道という地域において原住民の生活状態というのは、たとえば穴居時代から、あるいは和人との結合の時期、それから農耕その他が和人とほとんどその様態を同じにするようになるまでの経過とか、これはまあ家であるとか器具であるとか、一切の生活様式を歴史的にずっと現地に保存するということは、私は非常に意義あることだと思うのです。そのためには、陳情請願の中にありましたように、北海道の旭川で現在地元の人たちが協力いたしまして、アイヌ部落を相当町から離れた山の中に設けて、その中に原始そのものの生活そのものを再現させようと、こういう努力をしておるのであります。ですから、そういうような場所に相当永久的に保存のできる建物を建てて、それらを陳列するというようなことも、私はぜひ必要なことだと思うのです。本年度予算でそれが出されておらなかったということは非常に残念なことでありますが、一つそういうものを大臣としては将来取扱い、ないしは陳情にあるような趣旨に従って尊重していくのかどうか、この点について一つ意見を伺いたいと思います。
  377. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) まことに勉強が不足で、実は今あのようなお話はここで初めて伺ったのでありまして、かつて在官中に北海道旧土人保護法というようなものがありまして、アイヌの生活問題等につきまして多少関係したこともございましたが、その後その方のことに一切触れておりませんし、また今のようなお話を実は初めて伺いましたようなことでございまして、ただいまお答えを申し上げるだけの用意も準備もございません。この資料につきましては、よく一つ検討さしていただきたいと思います。
  378. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 もう一度最後に伺いたいのですが、昨年度の予算で、これは清瀬文部大臣のときだったと思うのですが、学生の寮を作ることに補助をするのだ、あるいは国みずからが寮を作ることに乗り出すのだということで予算に顔を出しておったように思うのですが、本年はそれがなくなっているようです。で、私は青年にいい環境を作ってやるということはきわめて大事なことで、これは非常にいいと思っていたのですが、いつの間にか姿を消してしまったのですが、結局いわゆる学徒時代は寮生活によってお互いに非常に切瑳琢磨される面がこれは莫大なものだと思うのです。そして人格をみがくとか、あるいは社会へ出てどういう考え方で世の中の役に立つ人間になるのだということを学ぶのは、むしろ学校における、教壇における先生のお話よりは、その学生同士の共同生活から学び取る面が非常に重要なので、そういう点から予算はたった一千万円くらいだったが、それすら姿を消してしまったことを非常に残念に思うのですが、この私立学校等にはそういった学校にその寮を一つ義務づけて作らせる。あるいはそれがもしできるならば、私立学校あるいは公共団体、現在公共団体でそういった、まあ私に言わせればおざなりと思いますが、小さな家を買い上げて寮にしているような、各府県が持っているというような例はたくさんありますが、そういうものを基盤にして国が補助をして、それでいい環境を作り上げていく、そういうことに対して文部大臣はどういうふうにお考えになりますか。その予算が削られたいきさつ等についてももしおわかりでしたらお答え願いたいと思います。
  379. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 学生の寮を作り、いい環境のもとに勉強してもらうということは非常にいいことだと思います。そのつもりで学生寮に関する予算も計上しておったわけでございますが、実施の状況にかんがみまして、なおその構想についてさらに検討する必要があるのじゃないかというようなことで、来年度予算からは影を落しておるわけでございますが、これにつきましては十分一つ私どもの方でも再検討いたしまして、何らかそういう方面について新しい構想のもとに進めてみたいと考えておる次第でございます。その経過等につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  380. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 三十年、三十一年、両年度にわたりましておのおの三千万円の予算を計上いたしまして補助をいたしております。これは公益法人で寮を建設させるという構想でございまして、その資金の関係といたしましては、国庫補助が一割、住宅金融公庫の融資を五割、それから自己資金の四割というような内容でこれを進めたわけでございますけれども、三十年度はこの通り参りましたが、三十一年度の実績を見ますと、やはりこれは地方の財政の関係もございますけれども、あるいは建設費の値上りというような関係も影響したかとも存じますけれども、相当予算の補助額が残ったというような実情にもございまして、これはいろいろただいま大臣からお話もありましたけれども、この計画の内容自体につきましても相当検討を要するようなものがありはしないかというようなこともありまして、なおさらに今後も検討をいたしたいと、かように考えております。
  381. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 新生活運動の予算は一昨年五千万円、昨年一億、今年六千万円、これは文部省直接ではありませんが、内閣所管だと思うのですが、この運動に対して文部省は何かむろん協力をしておられると思うのですが、側面的に非常に効果が上っておるとお思いになるか。
  382. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 大へんむずかしい御質問のように伺いましたが、新生活運動は御承知のように各者道府県に新生活運動協議会が置かれまして、それを通じまして内閣の方からいろいろ内閣の補助金に基きますところのいろいろの施策が行われております。その末端におきまして、県におきますいろいろな社会教育関係の仕事と緊密な連絡があるのでございまして、そういった意味におきまして、文部省といたしましては新生活運動協議会にいろいろ実施上の連絡をとりながら現在までやってきておるわけでございます。従いまして、文部省としてはあくまで協力的な立場でございますが、地方におきましては新生活運動の成果が相当上っておりますものと私ども考えております。
  383. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今度の予算で文化財保護事業が四千万円ふえて四億三千万円になっております。私、大へんこれはふえるのはけっこうだと思うのですが、この仕事は文化財保護委員会が監督をいたしますか、あるいは文部省直接ですか。
  384. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) 文化財保護委員会の保護事業は、文化財保護委員会は文部省の外局でございまして、文化財保護委員会が直接にこの仕事に責任を持って当っておる次第でございます。
  385. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで文部大臣に私お尋ねをいたしたいのですが、文化財の保護ということは非常に申すまでもなく重要な仕事でありますが、ほかのことは存じませんが、最近正倉院の御物と観光道路との関係の問題で、私は文化財保護委員会の熱意が非常に弱いと、こう思って、実は私は憤慨しておるのです。そこで文部大臣にお尋ねしたいのは、予算は幾らふえても、文化財そのものに対する熱意のある方が当局でなければ、四百人も人がおってもどうもすみずみまで徹底しないのではないかと、こう思うから、文部大臣に特にお尋ねしたいのですが、その具体的な例を申し上げないとわからぬと思うのですが、二十六年の秋から奈良の正倉院裏の新若草山と俗に言われておるところに長さ四キロ幅五メートルの観光道路が無断でできた。その道路は史蹟の中を通っておりまして、五カ所以上も勝手に土を採掘しておる。こういう事態があって、いまだに原状を回復されておらない。ところが文化財保護法律の中には、わずかではありますが、罰則もありますけれども、何らそれに対する処置が行われていない。そこでこの観光道路の問題になるのですが、三百メートル余りの正倉院裏に道ができまして、そうしてそこに許可がおりた。この許可の問題では、運輸省と建設省が文化財保護委員会に諮られぬのです。二度も諮らずに許可を与えて、私は文化財の当局者としては、憤慨その極に達するというようなやり方なんですね。ところが、その最初の三百メートルの道を許可するときに、地主の中でどうしても売らないというのがあったのを、会社が、必ず買ってみせますという誓約書で、文化財保護委員会が許可している。ところが、文化財の原状変更の申請の規則の中には、明らかに所有主の承諾書をつけろという規則があるにもかかわらず、その非常に不誠意な、とにかく無断で四キロばかりの道をつけるといったような、一営利会社のために、何のために一体文化財保護委員会が規則を違反してそれに同意を与えたか、こういう点、私は非常に憤慨であるのみならず、現にその会社に対して文化財保護委員会が、正倉院の裏の、北と西ですか、舗装の条件をつけているのに、いまだに舗装が、北はできているけれども、西はできていない。その許可を与えたのはもう数年前のことでいまだに舗装ができていない。それで実情はどうかといえば、一月に多いときは五千台自動車が通る、年間三万台自動車が正倉院の近くを通る。今度新しく、今申し上げた手続不備の許可路線の中に、法隆寺の管長の佐伯さんの地面があったので、正倉院の御物に影響があるというので、倍額手付金の金を返して売却の契約を取り消した。そこで今度、四百メートルの道を許可なくしてつけちゃって、その許可の問題が今問題になっている。ところが最初の方も今度の道も非常に正倉院に近いから、私現地に行ってこの間見てきたのですけれども、そこを土掘りされて何千台という自動車が通れば、風の工合では正倉院の御物に影響がないとは言えない。影響があると思うからこそ、舗装道路をつけるという条件でいやいやながら文化財保護委員会は承認している。ところがその舗装の条件を、許可してから後に舗装しろという条件であるのだけれども、すでに数年前に許可して、いまだに舗装しないような無誠意な会社に対して、何のために舗装があったら許可しよう、私は許可には反対ですけれども、舗装があった後に許可しようというくらいのことはいえそうなものだが、許可をしておいてから、なるだけすみやかに舗装しろ、これはまるで盗人に追い銭のような非常にやり方が手ぬるい。つまり既成事実に対して、まず運輸省と建設省が、文化財保護委員会の許可がなければ自動車の営業ができないにもかかわらず、土地の方は関係なしに、両省が許可を与えた運輸省も建設省も非常にけしからぬと思って、大臣の出席を要求しているのだけれども……先に許可しちゃって、そして仕方なしに文化財保護委員会があとからずるずるついていった、そんなやり方では、文化財保護委員会のそんな熱意では、私は文化財の保護というものはできない。私見をもっていえば、そんな道路などは許可しなくても、もっと遠方の方に道路をつけかえるということは十分考えられますし、土を運ぶのにも、逆のコースを通れば出られるのです。それは現地へ行って私も見てきたし、土地の人もそういっております。そこで私が申し上げたいのは、文部大臣にもう少し文化財、文化財でもいろいろありますが、正倉院のようなものにはもっと熱意を持って対処してもらいたい。実に憤慨にたえない、こう思うのです。アメリカだって爆弾は落さなかったのですからね。その正倉院の御物に対する文化財委員会の態度を見れば、また何をかいわんやといういいたいくらいの態度に見えるから、くどいようでありますが、機会あるごとに申し上げているのです。きょう幸い文部大臣お見えになっておりますから、文化財に対してもう少し熱意を持ってもらいたい。今の新しい道路の許可についても、条件がかなって舗装すれば許可するというくらいのことはおやりにならなければ、またどんどん何千台という自動車が通って、ほこりがくれば、あの千二百年来の御物が汚染しないなんということはだれも保証されない。それより遠い、柳生街道というところらしいのですが、その方へ新路線をつければ、そうすればこんな悪い影響を与えるところを通らなくたってよいわけなんです。それが前に約束した条件さえまだやってない。会社に対してぐじぐじしているということは、実にけしからぬ、その点に対して特に強い御所見を披瀝していただきたいのと、もう一つは、文化財保護法の罰則が、たしか二万五千円か、わずかな金額であって、それではとうてい無道者や乱暴者に対抗できない。もう少しこの罰則を刑事罰にするか何か強化してもらいたい。この二点を特にお願いいたしたいと思います。
  386. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 文化財の保護ということについて熱意をもって当れという御叱責でございますが、さような御叱責を受けましてまことに恐縮にたえぬ次第でございます。もちろんこれにつきましては、熱意をもって当らなければならぬと私どもは固く信じております。  今お話しの正倉院をめぐる今日までのいろいろな問題につきましては、私もあらましその話は一応聞いたことはございます。まことにその間の事情につきましては、遺憾と申しましょうか、さような点も確かにあるという気持がいたすのであります。しかし、これも数年かかった問題でございます。特に新任の河井委員長きわめて熱心にこの問題を見ていらっしゃいますので、私は新委員長の御努力と善処に期待をいたしている次第でございます。同時に、また世の中のあまりかような方面について関心の薄い人が、文化財保護に関する法規に違反するというふうな場合の制裁が十分でないという御意見、まことにごもっともな点があると考えますので、これにつきましては、文部部内におきまして十分一つ検討したいと考えます。
  387. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の新観光道路を舗装してから後に許可を与えるのが当然じゃないか、いや、許可しておいてから会社の誠意に信頼して舗装させる、その点どちらをおとりになりますか。
  388. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 詳しい事情はよく存じませんので、詳細のことは政府委員一つ補足してもらいたいと思いますが、ただいまお話しになりました問題は、文化財委員会といたしましては、舗装を条件にして許可するというふうに進んでいるように聞いております。
  389. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 その舗装を条件として許可というのは、すでに前の道路でも、三年前に許可をして現在まだ舗装ができていないのです。できていなくて、年間三万台の自動車が通る、また新しく許可するために、すみやかに舗装しろという条件で許可をして、これまた三年もかかるかもしれない。ところが舗装しなくて御物が汚染しない確信があるなら問題は別ですけれども、条件をつけるという以上は、舗装しなければ御物の汚染のおそれがあるということを認めておればこそ舗装の条件をつけるのですから、今三年前のものを履行しないような相手に向って許可をしておいて、舗装をさせるということは、一体御物保護の立場から私は納得ができないのです。だから舗装してから後に許可をしてなぜ悪いか、またなぜそれをやらないかという点は常識でわかるのですから、私は文部大臣の勇断を望みます。
  390. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 現実の場合がどういうようないきさつになっているかよく承知いたしませんが、お尋ねの御趣旨はよくわかるのであります。ただ、許可の場合におきまして、まず舗装をしろ、その上で許可する、あるいは可否を決定するというふうな取扱いができるものかできないものか、この点もよく検討してみなくちゃならぬと思います。委員長ともよく相談いたしまして、その間将来に悔いを残さないように、善処してもらいたいと思います。
  391. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 くどく申し上げませんが、相手は世界的の宝物であって、ささたる手続の問題ではないのです。かりに、今の手続でそれができぬものなり、手続を変えて、そうして私は先に舗装さすのが当然だと思う。舗装の条件を、今までだって三年も履行しない相手に向って、ぐじぐじいって先にやつてしまうということは、私はつまらぬものを相手なら別ですけれども、相手は正倉院の御物なんですから、もう一ぺん大臣が冷静にみずからお調べになって、どうしたら一番いいかということを御検討願うことを私お願いいたしまして、質問を打ち切ります。
  392. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) ただいまの御質問でございますが、ずいぶん古い問題でございまして、一たんすでに観光道路の原状変更を許可いたしましたのが昭和二十九年の六月でございますかその後に一部の路線の変更の申請がございました。で、路線の変更は、これは前路線のほんの一部でございまして、まず前の許可のときの事情と大した変りはないということでございましたけれども、特に問題は十分念を入れまして、宮内庁に十分所見をただし、宮内庁におきましてもきわめて慎重に、正倉院に被害があってはいけないというので、その方面から調査研究されました。また私どもにおきましても、特に前の許可の場合には問題なしと判断いたしましたが、変更のことにつきましてはさらに文化財委員会自身もみずから塵埃の研究を始めまして、正倉院に対してどういう影響があるか、もしあるとすればどういう措置を講じたらいいかということを詳細に研究いたしました。さらに運輸省、建設省が道路関係、自動車関係でございますから、いろいろと打ち合せをいたしました結果、非常に期間が延びまして今日に至ったのでございますが、最近八木先生も御承知の通り、運輸、建設省ともいろいろと打ち合せておりまして、すでに運輸、建設省も路線の変更をよほど前に許可しておることでございます。舗装あるいは植樹等の厳重な条件を付して、そうしてこの際、路線の変更も文化財委員会でも許可しよう、そうしてその条件の履行等につきましては運輸、建設、宮内庁、法務省と四者でもって十分なる監督をいたし、これが処置に誤まりないようにいたしたい、かような考えで、文化財委員会といたしましてはすでに方針を決定いたしましたので、その方針によりまして許可をさしていただきたいと考えております。ただいまの先に舗装さしてそれからあとに許可というお話も、実は八木先生からも先般お話がございまして、十分検討いたしてみたのでございますが、やはり運輸、建設省といたしましても、文化財委員会が認可しなければ舗装の許可も運輸、建設省としてはちょっとできがたい。舗装の許可は運輸、建設両省の許可事項になっておりまして、まず文化財委で先に許可の事実があって、その後に舗装の許可が公けに認められますから、それからその方にとりかかる、さようなことにならなければならぬ、そういうようなことで、先生の御意見も十分に慎重に考慮いたしましたけれども、許可をいたしましてそうして条件を履行させようと、かようなことに決定いたしました。
  393. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも長い間の問題になっておると言われるけれども、相手は千二百年もたった日本の国宝の正倉院の御物の問題です。三年か五年前に申請を出して道を作ったといっても、それを今のような説明じゃ、質問を打ち切ろうと思ったけれども再質問せざるを得ないのです。しかも前の路線は承認したと言われるけれども、規則に違反して一体、会社の契約書——それも所有主に代った契約書を、規則に違反して既成事実を認めて、そうして文化財保護委員会がそれを許可すると、こんなばかなことがありますか。規則に違反しているじゃないか。その事実を土台にしてその手続をしたから今度も許可しよう。しかも成り行きからいえば、建設省も運輸省もまるで文化財保護委員会というものを無視して、二度も先に自動車道を許可している。ところが運輸省と建設省が許可したから、それは私の方でも許可します。それじゃ一体正倉院の御物に対するあなた方の熱意というのはどこにあるのですか。私は規則のこまかいことは知らないけれども、舗装をしなければ害があるということがわかっていればこそ三年前の許可も……、それにまだ舗装もできていない、その会社に対してすみやかに舗装しろといってもむだで、私には許可するというその考え方が全然わからない。もう私はこれ以上言いませんけれども、どうか文部大臣が良識をもってこの点をもう一度あらためて新しい大きな見地からこれを再検討されんことを要求しておきます。
  394. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 さきの加賀山委員質問に関連しますが、学生寮の問題ですが、これは文部省が進んで、三十一年度の予算等が余ったからそこで計画を再検討するために進んで引き下げたものか、大蔵省の方から、文部省が要求したけれども、大蔵省からそれを切られてなくなったものか、その間の御説明を願います。
  395. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) 先ほど申し上げましたように、計画自体を再検討すべきであるということで、文部省自体と、いたしましてはさような措置をとりました。
  396. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これはそうすると大体わかりましたですから、あえて私は申し上げませんが、とにかく初めのうちは各県ともそういうことがあることを実は知らなかった。そこで今度各府県等でやろうとしたときに、もうそれがなくなっているというようなことで非常に残念がっているものですから、至急に計画を立てて、私は学生寮等の建設に十分に何と申しますか処置をしていただきたい。  次に芸術祭の話でございますが、これは私もよく知りませんが、聞くところによると、文部省の予算は六百万ほど計上してございます。そして何か一年に一回あそこに出されるのに対して何百万という——数百万というと大きいのですが、百万円か二百万円くらいのものがかかるようですが、やったら文部大臣の表彰、金一封、一万円くらいのものをもらう、これが唯一の楽しみと申しますか、当てにしてああいうことをやっている人に対して、私は少し気の毒だと実は思うのです。そこで文化のと申しますか、いま少しそういう問題を大衆化すと申しますか、そういうような意味合いにおいて、文部省としていま少し努力されると申しますか、腰を入れる。たとえば芸術課というような課、そういうようなものを拡充されて、広い意味の文化の交流に資せられるような努力をしてもらう。たとえば今度国会で審議中の入場税等が議員修正によって修正されるようでありますが、そういう入場税等の問題がいろいろな面において文部省として検討していただきたいのですが、そういう点について大臣の御所見だけお伺いしたい。
  397. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 芸術祭に関する事情は、詳細のことは私はよく存じませんので、必要があれば政府委員からお答えさせようと思いますが、芸術の問題についてのお尋ねと考えますれば、御質問の御趣旨はまことにごもっともでございますので、文部省といたしましても今後十分怠らずにそのことについて検討もし、また努力もいたしたいと考えます。
  398. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 時間がないとおっしゃるから、私も来年度の予算措置を十分お願いしてこの問題はこれだけにして、次に科学振興の問題にからんでですが、これは故意か偶然か知りませんが、今度国立大学の学部許可がすべて理科系統に大体属しておるということがいえると思うのです。文科系統が非常に多過ぎて、理科系統は少いじゃないかという非難もある、こういうふうな点を勘案されて、今度学部の認可に当られたものか、または偶発的な結果としてそういうものになったのか。
  399. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは理工科自然科学系統の増強という観点から特に学科の増設につきましては理科系統をとりました。
  400. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうするとあなたの方から文科系統の認可申請がある、そういうものはなるたけ押えて、一つ理科系統を伸ばしていこうというそういう大きな方針が文部省としてあるか、こういうふうに考えてお聞きしていいわけですか。
  401. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 今のお話は、国立大学の学科増設の問題につきまして私申し上げたんでございますが、文部省といたしまして、そういう関係からそういう施策をとったのであります。
  402. 小林武治

    主査小林武治君) それでは文部省所管につきましては、一応質疑を終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  403. 小林武治

    主査小林武治君) 御異議ないものと認めます。  では、明日は午前正十時から正十一時まで大蔵省所管について補充的質疑をすることにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会