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1957-03-29 第26回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十九日(金曜日)    午前十時三十二分開会   ――――――――――――― 三月二十八日予算委員長において、左 の通り分科担当委員を指名した。            小林 武治君            新谷寅三郎君            高橋進太郎君            館  哲二君            野村吉三郎君            武藤 常介君            栗山 良夫君            永岡 光治君            湯山  勇君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            八木 幸吉君   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員館哲二君、野村吉三郎君及び 栗山良夫君辞任につき、その補欠とし て土田國太郎君、苫米地英俊君及び成 瀬幡治君を予算委員長において指名し た。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    主査      小林 武治君    副主査     吉田 法晴君    委員            新谷寅三郎君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            武藤 常介君            永岡 光治君            成瀬 幡治君            湯山  勇君            加賀山之雄君            八木 幸吉君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    大蔵政務次官  足立 篤郎君    大蔵大臣官房会    計課長     崎谷 武男君    日本専売公社管    理官      白石 正雄君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    国税庁長官   渡邊喜久造君    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生大臣官房会    計課長     堀岡 吉次君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働大臣官房会    計課長     村上 茂利君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   説明員    大蔵省主税局税    制第二課長   吉国 二郎君    大蔵省主税局調    査課長     中島 晴雄君    大蔵省主計局主    計官      上林 英男君    労働大臣官房労    働統計調査課長 堀  秀夫君    労働省婦人少年    局年少労働課長 竹林 外之君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○正副主査互選昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――    〔年長者土田國太郎君仮主査となる〕
  2. 土田國太郎

    ○仮主査土田國太郎君) ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。年長者にかわりまして私が選挙管理者となり、主査及び副主査互選を行います。つきましては主査及び副主査互選成規手続を省略いたしまして、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 土田國太郎

    ○仮主査土田國太郎君) 御異議ないと認めます。それでは私から主査小林武治君、副主査吉田法晴君を指名いたします。    〔小林武治主査席に着く〕
  4. 小林武治

    主査小林武治君) それではただいまから付託された議題審査に入ります。  当第四分科会付託議題昭和三十二年度予算中、大蔵省文部省厚生省労働省及び人事院所管についてであります。なおこれらにつきましての審査は今明日中に終了したいと存じまするので、念のためお含みおき願いたいと存じます。  本日はまず労働省人事院及び厚生省所管につきまして議題といたしたいと存じます。まず労働省所管について説明を求めます。
  5. 湯山勇

    湯山勇君 ちょっと議事進行。本分科会に付託された文教関係のことでちょっとただいまお願いしておきたいことがあるので申し上げたいと思います。それは南極観測隊長永田隊長が今夜帰られるということでございます。ところが御承知のような事情南極観測については非常に困難をきわめたいきさつもあり、宗谷をどう改装するか、あるいは宗谷随伴船にして別な船を出すか、そういうことは非常に重要なことであるにもかかわらず、今年の予算にはそういういうための経費は見られてないわけでございます。相当もし宗谷の大改装をやるとかあるいは別な船を出すとかいうことになれば、大きい問題なので、どうしても今その詳細を知るということは困難ですけれども永田隊長をこの分科会にお帰りになって早々ですけれどもおいでを願つて簡単に大体どういう意向かということをお聞きする、そうしてそれに対する予算措置の態勢をとっておく必要があるのではないかというように思います。と申しますのは当初宗谷が出るときにずいぶん無理なことをして船が古いという関係もありまして、十分な装備ができなかったというような点もありましたし、それから宗谷が非常に困難な事態に立ち至ったときの救援を要請するときにも、予算関係があって、外務省では大蔵省と打ち合せしてでなければその要請ができなかったと、三十六時間かかったとか何とかいうことは間違いであったようですけれども、ともかくもそういったようなこともありましたので、主査におかれて一つ短時間でけっこうだと思いますから、永田隊長をこの分科会にお呼びいただくように御手配願いたいと思います。
  6. 小林武治

    主査小林武治君) ただいまのことはできるかできないかは別といたしまして、主査におきまして文部省と話をしてなるべく一つ出ていただきます。
  7. 湯山勇

    湯山勇君 それからそのときには大蔵省文部省をお呼びいただくようにし。
  8. 小林武治

    主査小林武治君) あしたの午後は文部省をお願いすることにしておりますから、当然文部省が出てこられますから、なるべく一緒にこられるように一つ交渉いたします。
  9. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 今回提案されました、昭和三十二年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきましてその概要を御説明いたします。  まず第一に、一般会計におきましては、歳入において総額四億五百二十三万円でありまして、前年度の四億一千七百六万三千円に比較いたしますと、一千百八十三万三千円の減少となっております。この歳入のおもなるものは、国家公務員等退職手当暫定措置法に基き、退職した政府職員日本国有鉄道日本電信電話公社及び日本専売公社等職員に対し、失業中の退職手当を支給するために必要な財源を、特別会計等から一般会計へ繰り入れまたは納付するための負担金であります。  一方、歳出におきましては、総額三百三十五億四千九百三十一万三千円でありまして、前年度の三百三十八億五千九百八十七万一千円に比較いたしますと、三億一千五十五万八千円の減少となっております。なお、このほか、建設省所管官庁営繕費に、六千三百六十六万七千円を労働省関係分として計上いたしておるのであります。  次に、この歳出の内容について概略の御説明を申し上げたいと存じます。  その第一は、失業対策に必要な経費であります。最近における経済の好況を反映して、雇用失業情勢は漸次好転しておりますが、わが国雇用構造特異性からなお多数の不完全就業者が存在し、加うるに年々約百万人に及ぶ新規労働力人口増加石炭鉱業合理化及び駐留軍国連軍引き揚げに伴う関係労務者解雇等によりまして、雇用問題は依然として楽観を許さない実情にありますので、この際完全雇用の達成を目標とし、総合的雇用政策確立を期する方針のもとに、内閣雇用審議会を設置いたしまして、基本的な諸問題について調査審議を行うことといたし、また当面の失業者吸収につきましては、公共事業財政投融資事業の拡大と相待って、失業対策事業につきましても一そうの充実をはかることとし、事業効果向上と、日雇労働者生活の安定に重点をおき、事業費単価の引き上げ、事業種目の改善、地方公共団体財政負担軽減等措置を講ずるのほか、日雇失業保険給付金額につきましても、実情に即してこれを引き上げる等、失業対策整備充実を期することといたし、これに必要な経費として、失業対策事業費補助百五十二億六千三百万円、特別失業対策事業費補助三十五億円、失業保険費負担金八十一億九千九百万円、政府職員等失業者退職手当四億三千万円、合計二百七十三億九千二百万円を計上いたしております。  その二は、労使関係安定促進に必要な経費であります。労使相互の信頼と納得による円滑なる労使関係確立が、経済発展の基盤であることにかんがみまして、多数の納得協力が得られる労働政策を樹立推進するため、さきに設置いたしました、労働問題懇談会の一層円滑なる運営を図るとともに、常時的確に労働運動の動向を把握して労使関係健全化促進し、また中小企業における労働関係特殊性にかんがみ、両当事者に対する指導を積極的に行なってその合理化を進め、さらに労働教育を刷新強化して、民主的労働組合発展を啓蒙するのほか、労働組合福祉活動促進労働金庫の適正なる運営等施策を講ずることとし、これに必要な経費として、八千三百二十一万八千円を計上し、また労使関係の合理的、かつ、円滑なる調整をはかるため、中央労働委員会並びに公共企業体等労働委員会に必要な経費として、一億二千五百二十万五千円を計上いたしております。  その三は、労働保護行政に必要な経費であります。労働者保護福祉を積極的に推進し、労働生産性向上を期するため、労働基準行政を刷新整備することとし、特に中小企業に対する労働基準法運用に当りましては、単なる取締り摘発主義に墜することなく、実情に即した指導監督を行い、労働者保護本旨を達成するとともに、最低賃金問題については、輸出産業等を中心として、産業別地域別業者間の自主的協定を勧奨するのほか、技能者共同養成施設に対する助成、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の円滑なる運用、及び労働衛生研究所整備充実等労働保護行政に要する経費として十五億七千八百七万円を計上いたしております。  その四は、婦人及び年少労働者保護に必要な経費であります。戦後における未亡人福祉問題は、重要課題として関心の深いところでありますが、とりわけ一家の支柱となって働く未亡人等就業は多難をきわめている実情にありますので、婦人職業対策をより一そう推進することとし、内職職業補導所家事サービス職業補導所充実をはかるとともに、働く年少者を健全に育成し、労働力質的向上をはかるため、これが保護福祉対策促進することとし、とりあえず中小企業に働く年少労働者福祉施設として労働青少年ホームを新設するのほか、婦人労働者保護福祉増進一般婦人社会的地位生活向上及び売春問題対策等に関する施策を講ずることとし、これに必要な経費として、九千八百二十二万円を計上いたしております。  その五は、雇用対策に必要な経費であります。現下の雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一そう強力に実施する必要がありますので、公共職業安定所職業あっせん機能を強化して、これが効率的運営を期するとともに、産業界の要求する技能労働力の円滑なる需給調整をはかるため、職業補導事業充実整備を行うこととするのほか、身体障害者雇用促進港湾労働者雇用安定対策雇用移民促進等に関する施策を講ずることとし、これに必要な経費として、三十六億三千六百九十七万円を計上いたしております。  その六は、労働統計調査に必要な経費であります。労働関係における賃金給与問題の重要性にかんがみ、毎月勤労統計調査整備拡充し、中小規模事業所を含め賃金雇用その他労働条件実態を正確に把握して、給与施策合理的推進を期するとともに、前年度に引き続き職種別等賃金実態調査労働生産性統計調査及びその他労働事情に関する統計調査実施して、労働行政施策基礎資料とするとともに、労使その他関係方面に提供し、紛争議合理的解決生産増強等に寄与することとし、これに必要な経費として、二億一千六百四十三万九千円を計上いたしております。  その七は、国際協力に必要な経費であります。国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに協力するために必要な分担金、及びL関係の諸会議への出席旅費等経費、並びにわが国労働事情に関し、海外広報活動実施するための経費として七千二百八十四万九千円を計上いたしております。  その八は、その他一般行政に必要な経費であります。大臣官房等における行政事務費として、三億四千六百三十四万二千円を計上いたしておるのでございます。  第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計歳入歳出はいずれも二百六十二億五千八百六十九万九千円でありまして、前年度の二百五十三億五千九百四十二万九千円に比較いたしますと、八億九千九百二十七万円の増加となっております。歳入の主なるものは、保険料収入の二百三十六億三千百七十二万九千円と、支払備金受け入れの十四億六千四百十万七千円であります。また歳出のおもなるものは、労働者災害補償保険給付費の百九十三億一千六百八十万六千円でありますが、このほか労働者業務災害被災者に対する療養給付適正充実をはかるため、前年度に引き続き労災病院整備拡充を行うこととし、十二億二千百十六万三千円を、またけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基き、けい肺患者及び外傷性せき髄障害患者に対する療養休業等給付けい肺健康診断実施並びに配置転換労働者のための就労施設を設置する等のため、二億八千六百五十二万四千円を計上いたしております。  第三に、失業保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計歳入歳出はいずれも三百九十六億百十九万七千円でありまして、前年度の三百五十二億九千五百六十三万二千円に比較いたしますと、四十三億五百五十六万五千円の増加となっております。歳入のおもなるものは、保険料収入の二百七十七億六千二百万円と一般会計より受け入れの八十一億九千九百万円であります。また歳出のおもなるものは、失業保険給付費の二百三十九億九千七百万円でありますが、このほか本会計積立金より生ずる利子収入のおおむね二分の一を充当することにより、労働者福祉増進をはかるため、総合職業補導施設簡易宿泊施設及び総合福利施設等保険施設を拡充整備することとし、これに必要な経費として、九億七千万円を計上いたしておるのでございます。  以上昭和三十二年度の労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格段のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  10. 小林武治

    主査小林武治君) 主査から申し上げますが、先ほど湯山委員発言につきまして、実は私、手続に通暁しないためにあのような発言をいたしましたが、永田隊長政府委員ではない、従って参考人としておいでを願うためには委員会の了解がなければならぬと、こういうことでございまするので、理事会等に諮らざるを得ない。従ってあしたの分科会には間に合わないと思いまするから、その点、また委員会の問題として御審議願ったらどうかかと、こういうふうに存じますので、前言を訂正いたしておきます。速記をとめて。    〔速記中止
  11. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて下さい。それでは、ただいまの労働省予算につきまして御質疑の方は御発言を願います。
  12. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 ちょっとお伺いいたしますが、この予算説明書の中にあります、建設省所管官庁営繕費というものが労働省関係分として計上されているのは、どういうあれですか、わからないのですが。
  13. 松永正男

    政府委員松永正男君) お答え申し上げます。官庁営繕費につきましては、各省分それぞれ積算をいたしまして、建設省所管として一本で計上するということになってございますので、建設省所管予算の中に労働省分としてそれだけは計上されておるということでございます。
  14. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そうすると、労働省営繕のためにこれだけの予算をとって、それを建設省へ回したと、こういうわけですね。
  15. 松永正男

    政府委員松永正男君) さようでございます。
  16. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 わかりました。
  17. 武藤常介

    武藤常介君 労働省所管特別失事業は、非常に最近各方面で有効適切に採用されておりまして、地方公共事業相当の功績をあげておる。従って、この失対事業も非常な救済をされまして順調にいっておるようでありまするが、ただ問題は、この失業者の数がその工事と適合しない場合がかなり多いのでありますが、これを何とかいま少し融通性のあるようにしてはどうか、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  18. 江下孝

    政府委員江下孝君) 特別失事業につきましては、労働省所管予算に計上いたしまして、実施いたします場合は建設省に移しかえをして実施するということに相なっております。来年度も三十五億の予算を計上いたしております。この特別失事業は、安定所窓口におります登録失適格者を吸収するという目的をもって設定されておりまして、従来の一般失業対策事業の非建設性を補うという意味で、建設効果の高いものをこれで実施するということになった場合、そこで今お話のように、失対の適格者の中で果してこの特別失事業に属する者がどれだけおるかということでございますが、これは、私どもは、事前に建設省と十分相談いたしまして、大体各安定所登録労働者ごとに数を大体はじきまして、そうしてその数に見合うだけの特別失事業をその地方実施してもらうと、こういう建前に相なっております。ただ実際の問題といたしましては、お話のように施行の時期が非常に三十一年度ではずれたというような関係もございまして、窓口適格者だけでは十分吸収できないという場合も若干あったように聞いております。従って来年度におきましては、できるだけこの特別失事業実施の時期等につきましては、建設省と十分打ち合せまして適格者がこれに就労できるようにいたしたい。こう考えておる次第でございます。
  19. 武藤常介

    武藤常介君 なお、予算委員会でもだいぶ問題になって質疑応答が盛んにかわされたようでありますが、例の最低賃金制の問題でありますが、これは前から労働省でも相当研究されまして、今や世界情勢最低賃金制はどうしても実施したいというようなそれぞれ考えもあり、またわが国の国情からいうと、世界情勢からいって、さっそくこれを実施するにおいては、わが国産業構造また配置分布関係から相当の困難を来たしまして、日本産業頓挫を来たさせるというようなこともないではないというようなことを心配いたしておるのでありまするが、何か前から四種目かの最低賃金をきめる、こういうふうなことも聞いておりますが、たとえば和紙手すきの製造などは、とうてい最低賃金制をしくということになれば、産業が全く頓挫せざるを得ないというような実情相当私はあると思うのであしまして、この最低賃金制の設定には周密なる注意を払いまして、産業頓挫を来たして、かえって最低賃金制はきまったがその仕事がなくなってしまうというような結果に陥らないように、周密な御注意が必要であろう、かように考えておるのでありまするが、労働省の御意見をお伺いしておきます。
  20. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 最低賃金制に対するいろいろな御心配は、私どもまことに同感であります。それゆえに私どもは直ちに全国一律の最低賃金制をしくことには反対しておるゆえんであります。ところで、ただいま御指摘のいわゆる四業種に対する最低賃金制の問題、ことに和紙手すきの問題、これらにつきまして一ぺんに最低賃金をしいては適当でないではないかという御意見でありましたが、これは最低賃金制と申しましても、中央賃金審議会からの答申にありましたことは直ちに法律として一斉にやるというのではなく、地域別にそういう業種につきまして協定のような方式でまず進めようというのが本旨でありますから、ことに今回労働問題懇談会からの答申にもございます次第を受け入れまして、急速に地域別業種別協定による最低賃金制を進めていきたいと、かように考えておるのでありますからして、そういうような混乱は十分避けられるような方式で進められる、かように信じております。
  21. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今のお話のように地域別業種別というお話がありましたが、業種別というようなのは私は非常に疑義を持っておるのでございますが、同じ業種であっても中小零細に至るまであるのです。そこで中くらいな中企業者と小企業者零細企業者とがある。これを業種別で一本でいくということが果してできるかどうか、こういう疑念を持っておるのでありますが、その点はどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  22. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) ただいまのお話でございますが、労働問題懇談会の御意見によりまして、明年度から地域別業種別に可能な産業について、業者間の協定を採用していくことが、適当な方策ではないかと考えまして、労働省といたしましては第一線の部局がこれに対して協力援助をするという建前で進んで参りたいと思っております。この問題につきましては、もとよりこれは業者間の自主的な協定でございますので、業者間で自主的に話合いをされまして、適当な額をおきめになるというのが第一段階として出てくるのではないか。労働省といたしましては、従いましてそれに対して資料の提供その他必要な援助を行う、このようなことで漸進的に進んでいったらどうか、その場合におきまして今お話のように一つ地域の中に大企業中小企業零細企業、これが共存しておりますような所では、今のような方式ではなかなか最初はまとまりにくいと思います。従いまして当面におきましては一つ地域に同じ以たような規模の業態があるというようなものについて、今のような方式がまず採用されていくのではないか、かように考えておる次第であります。
  23. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そこでこれは同じような規模のものというと、最低賃金が同じ業種の中でも何階かできるということになりますですね。それからも一つはそれに参加しなかったものはどういうことになりますのですか。
  24. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) ただいま考えております方式によりますると、これは法律に基くものではありませんので、参加しないアウトサイダー的な事業主法律的には拘束されないわけでございます。ただ実際問題といたしましては、たとえば清水周辺カン詰業者協定を結んでおりまするが、同じような業種がその地域に集まっておりまして、統制力相当あるわけでございまして、事実問題としてはアウトサイダー的な業者もその協定に従わざるを得ないということになっておりますわけです。法律によって制定して参りますれば、今のような問題については法律的な強制力がつくわけでございます。われわれのただいま現段階において考えております方法によりますると、事実的な拘束力を期待する、かようなことになるわけでございます。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 最低賃金問題について、今労働省労働問題協議会答申もあり云々ということでありまするが、労働基準法の原則、賃金問題については賃金審議会の意見が優先すべき建前にあると思うのであります。きのうも予算委員会で、人事院とそれから公務員制度調査会との法律上の権限その他で、どちらが法的に優先すべきかというような議論もございましたが、同じような問題が賃金問題についてもあるのだろうと思う。労働省として本来賃金問題について特に最低賃金問題についてどういう基本原則に立たなければならぬのか。それから日本実情等もおそらく入って参りましょうけれども、法の建前、基準法の建前からどういうふうにしなければならぬと考えておられるのか、まずそれから承わりたいと思います。
  26. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 最低賃金問題は、ただいま御指摘のありましたように、労働基準法にその基本は定められておりますが、中央賃金審議会の議を経て、という場合には議を経てやらなければならないということになっておりまするが、中央賃金審議会を数回開きまして、その答申を得ておるのであります。その得ておる段階をさらにどういうふうにして実現していったらいいかといようなことを、先ほど労働問題懇談会にお諮りいたしまして、その答申を得ましたので、大体その答申の趣旨を尊重いたしまして、最低賃金制をしく準備に取りかかろうということと、その地域別業種別に自主的に協定してやっていける方式を四月から実行に移そう、こういう方向で最低賃金問題には今後対処していきたいと、こう考えております。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働基準法の中に賃金関係の章がわざわざ設けてありますのは、従来賃金問題について、あるいは正当な賃金が支払われない。あるいは賃金でなくて、何と申しますか不定期に支払われたり、労働の対価らしい賃金が支払われない実態があったから、労働基準法にわざわざ賃金という章が設けられたと思うのであります。それから最低賃金の項が基準法の中に相当大きな部分として掲げられておりますのは、賃金も支払われない分がある。それから賃金が支払われるとしても非常に低い賃金があって、労働の再生産もできないような賃金が支払われておる。そこで最低賃金を定めることが望ましいというのが法の精神であるように思う。具体的にそれではどうするかということもございましょうけれども、基本は最低賃金を定めること、最低賃金制を設けることが望ましい。こういう精神はもう争うことができないと思う。いきなりけつの方から労働問題協議会、これは労働大臣が作られた諮問機関、その結論をもって、何と申しますか部分的にしかも強力によって、現状の力関係によりますと、中小企業等の置かれておる困難の事情もありましょうし、それから労使関係のその部面における関係もございまして、相当賃金制、最低賃金制度を設けなければならぬという法の精神と違ったまあ協定なり何なりができる心配がある中で、法の精神を生かしていくという点については問題があろうかと思いますが、もう少し労働省としては基本原則なり方針をきめて、そしてその具体的な方法について諮問をしていく、あるいは方策を求めていく、こういう態度でなければならぬのではなかろうかと私ども考えます。どうも政務次官の答弁を聞いておりますと、基本原則がなくていきなりけつのところから、まあ中小企業について可能な方法云々、こういう御方針、それでは法が求めます最低賃金制を漸次作って行くということが実際に行われないのではないか、こういう心配等もあるわけであります。それらの点についてもう少し労働省の基本方針を明らかにしながら、具体的な方法として一つ説明を願いたいと思います。方向が逆です。
  28. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) まだ先ほど申し上げたことがあるいは不十分だったかもしれませんが、労働省といたしましては、最低賃金の問題は非常に重要であるから真剣に取りかからなければならないという決意の下に、中央賃金審議会がしばらく休んでおった状態でありましたのを、四月にはこれを再開する段取りをつけて、最低賃金制の問題とまっ正面に取り組んで参ろう。こういう覚悟でおるわけでありまして、先ほどの地域別、職種別に自主的協定による進め方というのは、別途にそういう方法で進めながら、実態に即した協定が一方では進められ、一方では中金が再開されてこの問題を十分審議して進めていただく、こういうことで最低賃金制の問題を、逐次日本経済実態に即した方法で進めて参ろう、こういう考えであります。
  29. 武藤常介

    武藤常介君 最低賃金制の問題は労働省の計画を私は了承いたしますが、次にいま一つお伺いいたしたいのでありますが、御承知のように本年は神武以来の景気と言われておるにもかかわらず、必ずしも失業者が目立って減らないという事情を考えまして、今回雇用審議会を作るということは、きわめて適切な措置であると私は考えておりまするが、これは審議会でやりましても、やはりにわかにこれを解消するというわけにはいかないと思うのですが、やはりだんだん失業を解消することを基礎として計画したものを積み上げていって、初めて失業がだんだん解消されると思うのでありますが、だんだん失業の状態を考えてみますると、今の高等学校卒業生などは一般的の学問をやっておりまして、雇用方面では相当特殊の技術、あるいは特殊の技能に対しては相当希望もあるのであるが、なかなかそれが適合しないと、これを解消するには、ただいま労働省で始めておりまするところの総合職業補導所というのは、非常な有効な施設であると私は考えておるのでありまするが、昭和三十二年度の予算には幾ら計上されておりますか。
  30. 松永正男

    政府委員松永正男君) 総合職業補導所は失業保険の福祉施設といたしまして設置をいたしておるのでございますが、現在二十三カ所の設置計画を持ってございます。三十二年度におきましては予算額を九億七千万円の予定をいたしまして、これによりまして総数におきまして三十一カ所の設置を予定いたしてございます。従いまして三十二年度だけで八カ所新設をいたすという予定でございます。
  31. 武藤常介

    武藤常介君 長くなりますからこれでやめますが、これは非常に有効な施設でありますので、やはり昭和三十二年はもうきまってしまったと同様ですから、三十三年度あたりはもっと思い切った予算を請求して、そうして能率を増進するように特段な御配慮が必要ではないかと私は考えておりますが、いかがでございますか。
  32. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 御趣旨の点につきましては労働省といたしましても十分考えていることでありますので、さらにこの保険会計の状況を勘案いたしまして努力して参りたい、とかように考えております。
  33. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 この最低賃金制は合意したものだけで作る、これはけっこうですが、ある業種が、またある業種に属している員が引き合わなくて入れない。こういうときに、事実上はそれは入らざるを得なくなる。そういうふうに行くことは結局その企業をつぶすという結果になりはしないかということをおそれるのでありますが、またもう一つこれに関連して考えられますことは、労働争議のときに賃金の値上げをするのは、本来ならば分配が不適当であって、労働者が当然もらえるものがもらえない、これを団体交渉によってやる。これが本旨であるけれども、近ごろのを見ておりますと、資本家がもうけておるのでなくてもこの賃上げの要求がされ、仲裁によっても、もしくは直接交渉によっても賃上げされる。この結果が、例をあげれば近ごろの炭労争議です。これはあの賃上げをやったからトン三百円上げるといっております。これでは企業の負担で賃上げをやるのではなくして国民の犠牲において賃上げをするのだ、こういう結果になる。これは公益事業である電力においても言えるわけです。こういうことが盛んになって行くと、やはり最低賃金制というものがそういう労働争議の種になる。それが国民一般の利益に反するような結果も起らないとは限らない。こう考えられますのですが、二つに分けて、労働省としては値上げが国民に転嫁されるのは当然であろうとお考えか、もしくは企業の余裕のある場合にこの分配を増すのは正当であるとお考えになるか、この点がまず一点ですね。もう一つ最低賃金制を強行することによって、ある業者を成り立たなくしてしまう、もしくはある業種が労働争議の的になって苦況に陥る、こういうことはないものでしょうか。
  34. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 値上げは直ちに価格に転嫁されるということは必ずしも望ましいことではありませんけれども、民間企業における賃金問題というのは、他の労働条件とともに労使間において自主的に決定されることでありまして、労働省といたしましては、自主的に決定されることを見ておる以外には、これに容喙あるいは介入するということは適切ではない、かように考えておるのでありまして、こういう賃金値上げ競争がやがてインフレに導くという御心配はごもっともでありますが、インフレに導かない政策は他の面でしなければならないことでありまして、民間企業における自主的交渉によってできました賃金がどういうふうに転嫁されても、これは事実上やむを得ないことである、かように考えておるのであります。  また、第二点の最低賃金をきめることによって成り立たなくなる企業がありゃしないか、この御心配はまことにごもっともなことでありまして、私どももそういう観点から、直ちに一率な最低賃金法というようなものをこしらえることは賛成できないと言っておるゆえんでございまして、そういうことのないように、そういう摩擦を避けながら最低賃金制の実現される方向に持って行きたい、かように考えておる次第であります。
  35. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連して伺いますが、この民間賃金については労使の自主的な解決による、これはけっこうなことと思う。炭鉱の場合、特に坑内労働の賃金は一般地上労働の平均賃金に対して、これは規模別格差はありますけれども炭鉱一般としてはむしろ低いのだ、こういう工合に理解して参っておりましたが、今まで幾らの坑内賃金水準で、今度の場合にどれくらいに上ると考えておられるのか、その数字を一つお伺いしたい。
  36. 中西實

    政府委員(中西實君) 今度の賃上げで炭価にどの程度響くか、これは……。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうじゃない。今までどのくらいで、今度でどのくらいになるのか、こういうことです。坑内賃金の平均です。
  38. 中西實

    政府委員(中西實君) ちょっとそれじゃこれを調べてからお答えいたします。
  39. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今の政務次官のお話ごもっともですが、民間企業として十ぱ一からげにお話になるということは、ちょっとおかしいじゃないかと思います。それは独占的な企業と普通の民間企業とがあるのです。独占的企業というものは消費者に対してはもう独断的にやっていけるのです。これをわきから物を買うとか自分の欲求を転換するとかいうことができないものであります。それは石炭であるとか電力であるとかいうようなものは国家の補助を非常に受けている、援助を、国家資金を使っているのです。そうしてそれはほとんど独占的な立場に立っておって、しかも労働省企業の中で解決される方が望ましいのだと、国民の負担の増減ということはこれはやむを得ないのだと、こういう立場をとられることは、他の企業と独占的な性質を持って、そして政府の援助を受けている機関とでは、性格が非常に違うと私には考えられるのですがね、こういう点どうでしょうか。
  40. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 公企業の場合であれば、当然御承知のように、公企業としての特別な法制のもとにありますから、この点につきましては政府はこれに対して介入する、介入という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、十分これに関与して参ります。また政府の許可を必要とする電力料金のような場合、これもまたそういう観点から政府はこれに対して関与して参ります。基本産業であるからというので、鉄あるいは石炭の問題、これは基本産業である場合においては、政府は財政投融資をしたりするような場合もあった、からと言って、これには別にそういう条件もつけておらなかったのでありますから、基本産業なるがゆえに、あるいは独占企業なるがゆえにということだけで、何ら根拠のないそういう問題に政府が介入するのはこれは適当でないと思うのでありまして、そういう問題は別に、たとえば昨年の十二月石炭が割合出なくなりそうだ、あるいは春季闘争で相当逼迫するだろうというような予想のもとに、七十万トンの石炭を急速に輸入するというふうにきめて、これでこの方面の需給関係及び値上りを防止するという措置をとっておりますが、そういうような他の政策でやるべきものでありまして、賃金問題から労働省がこれに入っていく、自主的にきめる賃金問題に入っていくということは、石炭業の場合には適当でないと私どもは考えております。
  41. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今の法規の上では、今政務次官のおっしゃる通りだと思うのです。けれどもこれでは体国民生活というものはもう自由に引き回わされると思うのです。今度のこの賃金を上げた結果、トン三百円は上るだろうとまあ企業者自体が言っているのですよ。今でも高いこの炭価が三百円も上るということになると、非常に各産業に影響してくるのですよ、国民生活に影響してくる。そこで私は労働省は今の法規はこうなっておるからやむを得ないのだという形で、今後も永久にいかれるか、これは将来そういう独占的なものについては、そして消費者が何らこれに対抗する力を持っておらないものについては、何かもう少し考慮を加える余地がないかどうかと、こうお伺いしておるわけなのです。
  42. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 御心配まことにごもっともでありますが、労働省といたしましては、ただいま政府も非常に力を入れております生産性本部、この運動に特に力を注ぎまして、生産性を向上することによって賃金の値上りというぐらいのことは吸収させていきたい、また生産向上ができました場合には、これを使用者側で独占することなく労働者にも分け、また同時に一般消費者へのサービスにもあてさせよう、こういう心組みで生産性運動を推進しておる次第でございますので、生産性運動に必ずしも労働者諸君が賛成しないということにつきましては、非常に遺憾に思っておる次第であります。
  43. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 生産向上ということは、もちろん労働者福祉、正当なる利益というものを考慮された計画であって、これが達成されれば、これはもちろん考慮しなくても、それでなければ生産向上ができたとは言えないのですから、人的関係とか利益の分配高ということまで考慮されたものが生産向上ですから、これが達成されればそうなることは当然でございますけれども、私は、ただ生産向上ができるまで待つのだというのでは、あまり策がなさすぎるように思います。けれどもこれはこんなことをここで押し問答してもしようがありませんからそれだけにいたしますが。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどの問題について。
  45. 中西實

    政府委員(中西實君) 手もとに持っております資料は若干ラフでありますが、従来基準賃金一万三千八百二円、坑内外に分けまして、一方あたり坑内が六百四十八円四十銭、坑外が四百十七円五十銭でありますが、これが今度基準賃金で千三百円上がった。それは一方にいたしますると日額五十八円、坑内外共に。これは方数は二二・五万という計算になります。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃわからない。おそらく私がわかってもほかの方はおわかりにならないと思います。月額で平均して一万三千八百二円とおっしゃいましたが、それを坑内外に分けると幾らずつになるのか現状、それから改善されたものは。  それからもう一つ、苫米地さんはこれは一律だと思っておられるようでありますが、大手でそういうことで幾ら、あるいは中小企業で幾ら、こういう工合に月で分けて説明をしていただきたい。  それと、あとでいいですから、国際的な水準、イギリスにしても、ドイツにしても、これは賃金水準の違いは別として、炭鉱の賃金がどういうふうになっているかということもあわせて一つ説明を願いたい。
  47. 中西實

    政府委員(中西實君) 今の坑内外は一方に二二・五を掛けてもらえば、今までの月額の額になるわけです。そこへ千三百円を足していただくということで坑内外が出るわけです。  それからあとのいろいろな資料は今、手もとに持っておりませんから、わかるだけあとで。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 平均して二二・五、こう言われるけれども、中西さんが、坑内が二十二方じゃなくて二十一方ぐらいで、坑外は二五で計算するぐらいのことは御存じと思いますが、坑内外一緒くたにして説明されるということじゃどうもわからない。それから数字はわからなくても、坑内賃金がほかの産業に比べて四割以上増しになっているという実際は御存じの通りで、そういう点を具体的に説明していただきたい。  それから質問をされておる苫米地さんが立たれましたけれども、独占企業で一律云々というお話しですから、これは財政投融資などがある仕事じゃないという答弁は政務次官からありましたから、助ける労政局長としては、もら少しそれを賃金問題として具体的に坑内外に分けて、それから日本においても一般産業と、一般産業の何割増かであるべき、坑内賃金としては低いという現状を御説明にならないと説明にならぬ。
  49. 中西實

    政府委員(中西實君) 坑内外方数が違うことは存じているのですが、こんどの妥結の条件は千三百円というものが月額で、坑内外ともに二二・五で割った。従って坑内外ともに日額五十八円、こういう協定をしたのでございますので、従って実質はそのために、坑内夫は相当、坑内外ともに千三百円ということから見ますると、実態は若干違っている。妥結の条件は坑内外ともに五十八円、こういうふうに妥結したようでございます。
  50. 吉田法晴

    吉田法晴君 そのプラスの面でなくて、実際に抗内あるいは坑外で幾らで、そうしてプラスするところは五十八円の云々ということでありますけれども、直したところで幾らになりますか。そういうふうにわかりやすく説明願いたい、こういうことを申し上げたのです。
  51. 中西實

    政府委員(中西實君) 今持っておりますのは先ほど申し上げました数字だけなので、坑内外総額、あるいはこんど上って月額どのくらいになるか、これはあとで計算して、調べましてお答え申し上げます。
  52. 湯山勇

    湯山勇君 たくさんありますが、大臣が見えてからお尋ねしたいこともありますから、いろいろなのを一つお願いしたいと思います。まずけい肺法の予算が五千万円ばかりふえておりますが、これは法律ができて以来改正しなければならないという動きも相当あったと思います。この内容については、給付内容というのは変ったのでしょうか。どうなっているのでしょうか。
  53. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) この予算でふえておりますのは、けい肺の対象者がふえておる。つまり従来保険で療養いたしておりましたものが、けい肺になったということがおもなものでございます。今御指摘のありましたいろいろな点について、衆議院等で付帯決議等がございました。その処置等につきましては非常に御意見の多いところでございますので、けい肺対策審議会におきまして、今日までずっと三者構成でまだ議論は続いておる。まだ結論を得るに至っておりません。今回の三十二年度につきましては、従前通りの内容ということになっております。
  54. 湯山勇

    湯山勇君 これはいつごろ結論が出る見込みですか。ずいぶん長いと思いますけれども
  55. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 実は今少しずつ歩み寄りと申しますか、そういうあれが見えておりますけれども、まだいつ結論が出るかはちょっと今のところ私ども予想がつきません。
  56. 湯山勇

    湯山勇君 どういう点で歩み寄りがついている状態ですか。
  57. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 付帯事項にございました第一点は、収容施設の予算増加するというような問題でございます。予算措置はわずかながらございますが、それをどういう性格のものにし、どういう規模のものにするかというような点につきましては、その内容につきましてはお互いに何しておりますが、性格ないしあるいは収容施設に収容中の身分をどうするかというような問題が、まだ根本的な解決に至っておりません。それから年間給付の増額の問題につきましても、これをどういう理論構成でやるかというような点で、まだ検討中ということであります。
  58. 湯山勇

    湯山勇君 これは一つ労働省の方で促進していただいて、確かに今のような問題は早急に解決しないと、このままずるずるいってはいけない問題だと思いますので、委員会まかせにしないで、労働省としても積極的に一つ結論を出すように願いたいと思います。  それから次に労働生産性の問題、先ほど次官からちょっと御答弁がありまして、生産向上運動に労働組合協力しないのはいかぬのであるという、非常に明確な答弁があったわけですけれども、私は若干この御答弁は事実と相違しておるというように感じております。というのは、労働生産性運動に協力をしないとか、労働生産性向上協力しないというのではなくて、今進められているようなそういう形では困る。これは御承知のように、イタリアのワイアットなんかでは生産向上に伴って一日六時間就労ということでけっこうやっているのです。ただ生産を上げればいいということだと、先ほど大臣から御答弁がありましたように、実際は設備、施設の改善による生産性の向上よりも、むしろ長時間労働による生産向上の方が多くなってきておるというような事実もありまして、生産向上協力しないというように政務次官が御把握になっておるとすれば、これは私は大へんなことだと思うのですが、もう一度一つその点をお伺いしたいと思います。
  59. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) ただいまの資本主義下における生産向上運動には、直ちに賛成できないというふうに総評の人々は言っているように、私は承知しております。
  60. 湯山勇

    湯山勇君 それも相当ニュアンスがありまして、お聞きになったと思います。ですから政務次官はなるべくそういうふうな何と申しますか、きめつけるような表現をなさらないで、もう少し政治的な御答弁をなさる方が私は実際にこの生産性運動を進める上からも、生産性を向上する上からもいいのじゃないか。というのと同時に、この対策が私は大へん大事だと思いますけれども、それには触れないでおきまして、雇用移民……
  61. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣が来ておられますから一つ伺いたいが、生産性の向上というのは何だとお考えになっておるのか。それから、生産性の向上をどういう工合に上げようか、これは生産性の向上について、いろいろ相手によって方法が違うと思います。生産向上そのものについては、これは社会党といえども反対をしているわけではありません。ただ、やり方について反対もし、賛成もするわけです。生産性の面上というのはどういうものだ、定義です。そうしてその生産向上について、どういう方法をとろうとしておるのか、それについて一つ労働大臣の所見を承わりたい。
  62. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 郷司浩平のやっておる生産性運動そのものですか、それとも……
  63. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうではなく、生産性というものは何……
  64. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それはやっぱり生産性じゃないでしょうか。まあさっきこちらからおっしゃったように、設備その他を拡充しての向上か、あるいは労働生産性向上といわれるのか、私どものは総合的な生産性の向上を考えております。
  65. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは、労働の生産性というのは、一人当り生産量の向上云々ということでしよう。その生産性が向上をするということは、私ども本社会の進歩として別に反対をしておるわけではありません。ただ資本の投下によって、資本の有機的構成があって、設備なら設備が改善されて、そうして上っていく、それに伴って技術が進歩していく、いわゆるあなたたちの言われる技術が進歩していくということなら、これは人間の自然征服を含んでの社会の進歩でありますから、私どもも反対するものでもない。ところが設備の改善あるいは資本の投下ということよりも、労働の強化あるいは労働者の負担ということで、あるいは労働時間の中身も含めてでありますけれども、強化されるけれども、それに伴って待遇の改善、賃金向上がなくて、そしてただ労働者を減らす、あるいは労働の強化をはかり、それだけで労働の生産性を向上させよう、こういう方向に動くならば、これには反対しなければならない。ところが実際に生産向上でやられようとするのは、その後者の方法になろうとするから、私どもは反対し、あるいは労働者も本能的に反対しておる。この点は多少おわかりになっておるかと思うのですが、労働大臣としては、あるいは政府と言ってもいいが、どういう点でどういう方法で労働生産性向上をはかろうとされるのか、そこのところをお伺いしたい。
  66. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 前者といいますか、さっき言われました前者の方に共鳴をいたしております。しかし労働時間は短かくても、労働生産性向上は、時間の長いばかりが問題じゃなくて、設備がよくなって、技術が進歩して、そして熟練をすれば、それは短時間で長時間労働以上の労働生産性を上げることができると思うのですよ。そういう意味で私は総合的と言ったんであります。あなたの方でおとりになったのは、労働時間は何ぼでもいい、しかし一人当りの生産量が上ればいいのじゃないかというように考えておるのだろう、という御指摘だろうと思いますが、そうではなく、私どもは近代設備、近代科学、近代技術を総合的に組み合せて、そうしてともに労働生産性の設備からくる生産向上も兼ねあわせた、総合的な意味における生産向上を提唱しておるのであります。それで、今運動しておる、生産向上をやっておる人たちの考え方が悪いというならば、それは悪い点を直していくべきであると思います。それで私はやっぱり国全体が生産向上の面にお互いに協力しあって、そうして国際経済に勝っていくんでなければならない。私は常に言っておりますように、この民族は何といっても一つの宿命の中に追い込まれておると思うのです。それは原料がないということ、人口が多いということ、でありますからどうしても加工貿易の場合、科学的、合理的に近代科学を取り入れたものにしなければならないことが一点と、もう一点は、未開発の資源を総合開発するということが資源のないわが国にとって最も必要でありますから、その二本の柱を中心にしてこの民族は立っていくより道がないと思うのです。でありますから、勤労者も経営者も、国全体がそこに協力一致していくような方向でいくんでなければならない。今御指摘になりましたような点、悪い点があればその悪い点を直して、そして皆さんが協力できるようにいかなければいかん、こういうふうに思っております。
  67. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  68. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて下さい。
  69. 吉田法晴

    吉田法晴君 資源の開発によってとおっしゃいましたが、そういう抽象的な話でなくて、生産向上問題についての話がありましたが、多少ケリをつけておかなければならぬと思いますが、技術の向上も言われますけれども、技術の向上というのは設備あるいは資本というものに結びついている。そこで生産向上の場合に設備なり機械、こういう面の改善を重点において技術の進歩をはかっていき、生産性の向上をはかるか、それとも労働者の数を減らし、あるいは労働の密度を強化するというか、中身をよくするということだけで、時間が問題だということで賃金は変えないでやっていくことにするか、この二つの方向があると思うのですが、生産向上ということでやられようとするのは、これは資本家にまかせればあとの方法をとります。そして現にそういう方法がとられようとして首切りが行われている。金を貸すときにもそれが何に使われようといいわけだが金を借りようとするならば首切りを行なえ、こういうことで銀行がやって参りましたことはこれは事実です。だからそういう方向については今のお話であるならば、労働大臣としてもそういう生産性の向上は間違いだ、直さるべきだ、基本的には設備投資あるいは設備の改善、こういう面で労働者の負担を軽くしながら、人間を苦役から解放しながらやっていく。それには当然待遇の改善というものも伴ってくると思うのです。そういう方法でやられるべきである、これは大体御賛成になると思うのです。それからなお、あと人が多いという問題もございます。ですから純理論的に先ほどのような問題だけではいかぬ。これは役所を含んででありますけれども、九千万の人間がおるのだから九千万の人間を、そういう方向はあっても、できるだけ経済的な効率だけでなしに、使っていかなければならぬという面もあるだろうと思う。そうすると冷酷無情にどんどん首を切っていくというようなことでない、経営の規模なら経営の規模の中でできるだけ人をかかえながら、そうした労働者の負担だけでない設備の改善、技術のの向上、そして待遇の改善というものをやっていかなければならない。こういうことだろうと思うのですが、その点は御異議がなかろうと思うのですが、どうですか。
  70. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 大体そういう方向にいくことが理想だと思っております。現実の面において多少食い違う点があろうと思いますが、それは一時間の問題で解決できると思います。なぜならばオートメーションなり進歩した技術なりでやることは人手が要らなくなるのじょないか、それはなるほど要らなくなるのですよ。要らなくなるが、企業そのものが、相当な設備を拡充する点においても、あるいは量産、今まで五トン作っていたものが二十トン、二十五トンできるようになる。そうすると、従って原料操作その他の面においても人手が多く要るようになりますから、工場設備そのものについては非常に少くなるけれども、量産によってくる人手を多く使うという面も生れてくるのであります。また現在の日本の輸出量が二十八億ドルを予想いたしておりますが、二十八億ドルだけで終ってしまうならば御心配のような点が起ってくると思うのです。いろいろ経済外交の問題もありますけれども、年々これをふやして国の生産量がずっと多くなるということになれば、自然私は御心配のような失業者をどんどん出すというようなことはなくて、むしろ雇用量は増大していく。それから設備が拡充されて生産向上がほんとうにできるならば、短時間働いて従来よりも多く支払ってもその企業は成り立つのでありますから、そういう方向に向けていくべきであるというように私は考えております。
  71. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣は経営もですが、経済全体の規模が拡大されて、雇用がふえていくと、こういうことを言われますから、生産性の向上によって初め人は減るかもしれぬけれども、どうせ吸収できるのだと、こういう一般的な言いわけをとられておるから、その点は松浦さんのいいところだと思うのですが、ところが生産向上の場合に通産大臣なり何なりが、ただ一人当りの生産量がふえることのみを求めるということで、人を減らすということを言われるなら別問題です。あなたとしてはこれは資本の投下を求めて、設備の改善によって生産向上に重点を置かるべきだ、生産向上問題についても労働大臣としてはおのずから立場があるだろうと思うのです。これは労働大臣の基本的な立場になりますけれども、自民党の政府といえども労働者の立場に立って、私は、その問題を見られるというのは、労働大臣の責務ではなかろうかと思うのです。労働省それ自身の任務ということにも関連をいたしますが、ここで一つ労働大臣は労働者のために生産向上問題を見、その他の行政というものも、あるいは最低賃金という問題もございましたけれども最低賃金制をしけばあるいは中小企業はつぶれるとか何とかということでなくて、労働者の地位の向上のために、日本全体の向上のために最低賃金制を考える、という基本的な立場に立っていただくことを要望し、生産向上問題それから最低賃金制の問題がありましたが、進歩的であるといわれる労働大臣の方針を一つここに明らかにしていただきたいと思います。
  72. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 経営者の方のことだけ考えるじゃないかとおっしゃるけれども企業の経営から見るならばやはり日本最低賃金問題、生産向上問題も、中小企業の振興対策というものと並行していかなければやれないと思うのです。それはいろいろなる理想はありますけれども中小企業の立っておる姿というものは、これは神武景気だとかいろいろいっておるけれども、不渡り手形の多いこと、また失業者の数が全然変っていないこと等を考えると、それは部に偏在しておるのです。その偏在しておる日本の景気というか、経済の偏在を保守党の内閣がこれはやはり引きならすことに専念しなければいけないと思う。その引きならす結果どうなっていくかといえば、やはり生産に基礎をおいた配分でなければいけないと思う。それで私は設備のこと、経営のことを言っておるのです。さりとて私どもの行政は経営者、使用者と勤労者の間に立っておるものであり、どっちについてもいけない。それはやはり勤労者大衆のことをわれわれは考えなければならぬ。その生活を考えなければならない。けれども国の予算から給料をもらう人でも、あるいは直接企業関係して給料をもらう人でも、その生産の基礎が旺盛にならなければ不安定なものなので、そこで私はそのことを言っておるのであって、私の立っておる立場はあくまでも使用者と労働者の間に立ってこれを調整し、これが調和され、これが友愛精神によって結ばれていくというところに、私はもっていきたいことを念願としております。
  73. 吉田法晴

    吉田法晴君 中小企業の話がありましたから具体例を出しますが、この間予算委員会で江東の中小企業、それもいわゆる零細といわれる小さな工場、これは神武以来の景気あるいは神武以来の積極政策といわれますけれども、一千億といわれても実際は五百億くらいのものですが、その影響の実態を見に日の当らぬといわれるいわゆる小さい工場に行って参りました。五つほど見ましたがその中の二つほどについて、一つは鉄工所です、五人ばかり使っておる。ところがその賃金を払っておるかというと、賃金を払っておらぬという。そこに泊って、住み込みですね、住み込みですが手当をやる、小づかい銭をやっておる。それでうんと仕事があったときにはよけいもらう、少いときには少しもらう、食っているから生活は保障されているという考え方なんでしょうが、賃金というものはやっておらぬ。そしてそこでまあ国民金融公庫から十万か十五万か借りているというのです。その中小企業一つの例をとってみても、その賃金をもらっておらぬ労働者を安定向上させるには、資本をつぎ込んで設備を小さいなら小さいなりに、十分してやらなければならぬ、こういうことだろうと思うのです。ですからそこでは私はまあガリガリとは申しませんけれども、そういう古い考え方の資本家の立場に立つのじゃなくて、資本を投下して設備技術の向上をはかって、そしてちゃんと人間らしい賃金が支払われるようにしてやるというのが、私は労働大臣なり労働省の行き方だろうと思うのです。そうすると、その生産性を向上する問題についても、今いわれておる資本というものの投下では足りません。生産向上をはかるについて、いわれるような、もっと資本を投下して、設備の改善、技術の向上をはかるべきだと、こういう点をいわれるべきじゃないか。それから最低賃金の問題については、賃金ももらっておらぬ、あるいは四千円とか六千円とか七千円とかいう賃金をもらっているのなら、それが人前の賃金がもらえるようにしてやること。それからその賃金についてあなた方はそういうふうに言われるけれども、私どもはそういう少額では実際に生活を保障するだけの賃金ということはできないから、これは法律でやらなければなるまい。具体的な方法はともかくとして、最低生活を保障するだけの賃金がもらえるようにしてやらなければならぬ。これが最低賃金の私は問題だと思うのです。中小企業といおう話がございましたから、具体例をあげて御意見承わりたい。私はそうだと思うのですが、どうですか。
  74. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 同感であります。
  75. 湯山勇

    湯山勇君 大きい問題はあとへ残して、先にこまかい問題からお尋ねします。  雇用移民の問題ですけれども、これはどの程度どこへ出す予定でございますか。
  76. 江下孝

    政府委員江下孝君) 雇用移民につきましては、三十年度は若干趣旨が違いますが、西独に炭鉱の労働者を五百名出す約束ができました。そのうち五十五名だけがすでに現地に行っております。残りは来年度あるいは再来年度にかけて行く、こういうことになっております。それからクウェート、これはアラビアにある国でございますが、ここからラジオ関係、自動車修理関係の技術、まあ技能工でございますが、これを約二十名程度希望がございまして、これはすでに送出をいたしております。なおこのクウェート国からはそのほかにも若干追加の依頼があるのでございますが、さらにこれを進めて参りたいと思っております。現在までのところ具体的なものはそれだけでございます。
  77. 湯山勇

    湯山勇君 これに対して国の負担はどれだけになっておりますか。
  78. 江下孝

    政府委員江下孝君) 来年度予算におきましては、この炭鉱労働者雇用予定者に対しまする訓練をいたします。この訓練の経費といたしまして三十六万円を計上いたしております。
  79. 湯山勇

    湯山勇君 旅費等はもう全然見ないのですか。これは向う持ちになっていますか。
  80. 江下孝

    政府委員江下孝君) さようでございます。
  81. 湯山勇

    湯山勇君 次は売春対策ですが、九千八百二十二万円、これで来年度のどれだけ収容する御予定なのか伺いたいと思います。
  82. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 売春関係政府委員からお答えいたさせます。
  83. 竹林外之

    説明員(竹林外之君) 売春対策につきましては、労働省経費総額八百五十万円でございまして、内容といたしましては、各全国に五百人の婦人少年の協助員の経費、さらに各婦人少年室に一名ずつの婦人相談員をおきまして、それぞれ売春の厚生保護の方策はむしろ厚生省でおやりになるわけでございますが、労働省といたしましては、むしろ事前の転落防止に重点をおいて進めて参りたい、こういう考え方であります。従いまして、この予算そのものは非常に少いのではございますが、労働省は転落防止についての広報活動を中心にしていくということが予算の内容でございます。
  84. 湯山勇

    湯山勇君 大臣に伺いたいと思うのですが、来年度、再来年度六十万の完全失業者というふうにみておりますが、実際は売春の数は三十万をこえるといわれております。防止法が発動になれば、当然これらは失業者の中に入ってくると思いますけれども、これは小さい数ではなくて、やはり働かなければならない者が二十万なり三十万なり入るとすれば、現在の失業者の数は、何といいますか、六十万といいますけれども実際は八十万、九十万ということになるのじゃないかと思いますが、それは計算に入れておられますか、どうでしょう。
  85. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 安定局長から申し上げます。
  86. 江下孝

    政府委員江下孝君) お話通り、売春対策が直ちに実施されますれば、相当婦人関係失業者が出て参ると考えております。ただ現実の問題といたしましては、来年度直ちに全員が就職戦線に出されるというのではございませんので、おそらく大部分は保護施設等で訓練をして、あるいは職業補導とい面で再訓練をすることが必要でございます。従って、まあ来年度の完全失業者という関係におきましては、一応見ているということに私どもは考えております。
  87. 湯山勇

    湯山勇君 これは非常に問題だと思うので、保護施設の収容数というものはわずかなものです。これをここに入れるわけにはいかない。一年間猶予期間があるにしても、とにかく来年度一ばいしかないわけですから、当然来年度末には失業者の中に入るという計算をしておかなければならないと思いますが、どうでしょう。
  88. 江下孝

    政府委員江下孝君) 売春婦として相当年限を経ました者に対しましては、現実の問題としまして、私の方が直ちに職業あっせんということをいたすことは困難であると考えております。私はどうしても半年、一年は保護施設なり職業訓練をする、すなわち職業人として立てるような再訓練がどうしても必要だと考えております。なお労働省の職業補導関係予算で一千万円ばかり増額いたしております。これは売春関係のこれらの職業可能な人を収容するために、一応予算的に職業補導所の増設ということで認められているものでございますので、来年度におきましては、この段階を通じて措置いたしたいと考えております。
  89. 湯山勇

    湯山勇君 それで何名くらい今のような措置がとれますか。
  90. 江下孝

    政府委員江下孝君) 大体私どもの見当では非常に数は少うございますが、五百名から千名程度であります。
  91. 湯山勇

    湯山勇君 ですからまあ三十万の中で五百から千を二カ年やったとしても、残りの二十九万九千ですか、それだけは結局失業者の中に入るか、やはり同じことをするのじゃないか。労働省施策がこういうふうに貧弱じゃ結局今の仕事を続けていけということと同じになるんじゃないかと思うのですが、大臣、この法律実施とともにこれこそ画期的な飛躍的な対策を立てなければならぬじゃないかと思うのですが、御所見伺いたいと思うのです。
  92. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) まことに痛いところです。これはやはり職業補導千人といいますけれども、貧弱な労働省予算ではそういうことになりますが、生きようとする彼らは、まだ年の若い人たちはそれぞれのやはり職を求めて更生の方向に行くだろうと思いますから、三十万全部は失業者にはならないと思うのです。しかし御指摘になったように、何も対策を講じなければ彼らはあの泥沼から足を洗うことができないんじゃないかというようなお叱りですが、私どもそれをほんとうに心配しております。それで今後はほんとうに画期的な予算をもって彼らを救済するようなことを考えなければ、今年のようなこそくなことではこれは救済できないので、まことに痛いところでありますから今後努力いたします。
  93. 湯山勇

    湯山勇君 大臣の御努力を期待いたしまして、次に失業保険ですけれども、これは確かに実績は減っておるようですが、五人未満の不安定な雇用状況にあるところの失業者というものは、この段階ではやはり相当多くなっておると思います。そこで五人以上のものの失業保険の受給が減ったからといって、予算を減すのではなくて、私はむしろ五人未満の事業場にも拡大していって、この際やはり雇用問題が非常に重要な段階ですから、労働行政としては減すんじゃなくて今のように拡大すると、こういう方向をとるべきではないかといように考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  94. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) これは衆議院の委員会においても答弁いたしましたが、お説の通りに五人未満の事業数というのは百二十二万もありまして、その従業員は約二百万に達しております。というような状況でありますから、これを入れることにすると予算面にも非常に大きな影響があるのです。けれど御指摘になりましたような重要な問題でございますから、この予算の中にもたしか五百三十万ばかり、五人未満の毎月勤労統計子その他諸般の統計を集めさせる金を提案いたしておりますから、御協賛願えましたならば鋭意その方の把握をいたしまして、それができ次第失業保険にかかりたい、かように思っております。
  95. 湯山勇

    湯山勇君 これは五人未満を一挙に解決するということはあるいはむずかしいかもしれませんけれども、やはり三人でやってみるとか、段階を追ってでもいいから、ぜひこれもやっていただきたいと思います。  次は、先ほど武藤委員から御質問のありました特別失対の問題です。これは昨年もちょっとこの問題にはふれたのですけれども特別失対が実際は失対効果を現わしていないという部面が相当あると思います。先ほどは失業者の分布と事業の分布が合っていないということもありましたけれども、それよりももっと重要な問題は、特別失対というのはやはり相当能力のある者でなければできません。ある程度熟練を要する関係から、土木業者等の雇用関係にある者がそこで働くために、一応失業した形にして登録をして、そして同じような形で今度は特別失対で働いておる。こういう人員は相当たくさんありますし、現に調査員が調査した中にでもそういう例をあげたのがございます。これは何とか私は考えなければならないのじゃないかと思うのですが、どうお考えでしょうか。
  96. 江下孝

    政府委員江下孝君) 特別失事業に働きます失業対策事業就労者につきましては、私どもは一定の身体的な適格要件というものを定めまして、これを各安定所で検査いたしまして適格者をあっせんする、こういう建前に実はなっておるわけでございます。ところが現実の問題としましては、先ほど申し上げましたように施行場所、あるいは施行時期の問題等から、その安定所適格者の数と符合して必ずしも行われていなかったという点は御指摘の通りでございます。そこで本年度におきましては、特にこの点についての御批判にこたえるために、建設省とも十分事前に打ち合せまして、施行時期と施行場所というものを失対の適格者と見合うように行うということで、十分準備を進めておるわけであります。ぜひこの三十二年度においてはさようのことのないように一つ努めて参りたいと、かように考えております。
  97. 湯山勇

    湯山勇君 これは今おっしゃったような施策だけではむずかしいのではないかと思いますのは、現在の日雇労務者というのはもうほとんど固定化しておると思います。政府の方の統計によりましても、四十才以上が四〇%を占めておるとか、しかも彼らは二年以上続いておる者がこれまた七〇%以上、こういう状態で実際は現在の日雇の人の中からそういう、今おっしゃったような有資格者を抜くということは非常に困難だ、また実際抜きにくい。そこでこの仕事をする方は自分のところで使っておるのを応失業者にして、それを窓口を通して使うというような非常に合法的な脱法行為をやっておる、こいうのが相当あると思うのです。で、そういうことに対して何か特別な対策を立てなければ、今おっしゃった季節的な問題とかそういうことだけでは解決しないのじゃないかといように思いますが、それらの点についての対策というのは別にございませんでしょうか。
  98. 江下孝

    政府委員江下孝君) 再度の御質問でございますが、実は安定所失業対策事業就労者のうちには私ども調査によりますと、四〇%程度は公共事業に適応する能力を持っておると考えております。問題はやはり施行時期が時期に集中してくる、そういうことのためになかなか円滑に適格者が紹介されにくいという点が大きいのではないかと考えております。これらの点につきましては、なお今後十分検討はいたしたいと思いますが、先ほど申し上げましたようなことを、さらに来年度におきましては強く推進することによって解決をしたいと考えております。
  99. 湯山勇

    湯山勇君 これは特別失対に働く者に条件をつけて、どれだけの期間日雇でやったというような条件でもつければ、また緩和できるのじゃないかと思ったりするのですけれども、そういう点ももしできれば、いいか悪いか、私もしろうとですからわかりませんけれども、御検討願うことにして、昨日政務次官から、日雇には大体年末手当等を出すかということに対して、日雇の性格上出さない方が建前だというようなお話もありましたけれども、今申し上げましたように実際はもう固定化しまして、ほとんど七〇%以上が二カ年以上継続して日雇をやっておるということになれば、私はこれはそういう事実に立って、年末手当とか期末手当とかを公務員に劣らないくらいの率で、特にこの人たちが恵まれない環境にあるということも考慮して考えてやってもいいのじゃないか。現在の法の建前だけからだけではなくて、この実態から考えてやってもいいじゃないかというふうに考えますが、いかがなものでございましょうか。
  100. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 昨日この問題は私から申し上げたことでありますが、手当という形で取ることは適切ではないが、ただいまお話のように実態に即してこの数年やって参っておるわけでありますから、三十二年度におきましては夏期三日、年末七日、三十年度の三日、六日に日というわずかながら増して、本年度就労日数の増加ということで取っておるのであります。総額八億千九百万円、これがあの全体の数と三百二円という単価と積算した基礎の上に、これをアルファとして加えている今回の予算であります。
  101. 湯山勇

    湯山勇君 まあ十日分はお考えになっていらっしゃるということですけれども、実際公務員等の場合は合計すれば二カ月分をこえるというようなのですから、そうすると二年間もぶっ続けでやっている、年間を通してやっているとか、半年もこれをやっているとかいう者については、これはまた違った性格があると思いますので、何かもら少しせめて一カ月分ぐらいか二十日分ぐらいというような考慮があってもいいのじゃないかと思うのですが、いかがなものでしよう。
  102. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 固定化した人だけみますとそういうふうにも考えられますが、失業対策事業としての性格から考えまして、そういうふうに落ちつかれることは正直に申し上げれば迷惑なことなんで、できるだけそういう人にはよそへ、ここから足を洗って常用の方へついてもらう。職業安定の機関においてもそう心がけ、またそういう人たちにもここはいいのだというので落ちついてしまわないように心がけてもらいたい、こういうふうに安定化しないようにむしろ勧めて参るのが失対事業の性格ではないかとかように考えております。
  103. 湯山勇

    湯山勇君 確かに理屈はその通りですけれども、これはもうLOの報告を見ましてもどこの報告を見ましても、老令の失業者というのは固定化するという特徴を持っております。現在の日雇いの人たちは四十才以上の人が七〇%を占めておる。これが今のうちに次官のおっしゃるような形で消化されれば、こういうことを言わないで済むし、非常にけっこうなことなのでそうあってほしいと思うのですけれども、事実はもう高令労働者の運命というのは世界共通です。日本だけの現象ではありません、このことに関する限り。だとすれば建前は確かにそうですけれども、やはり考える余地が、現在お考えになっておられるけれども、もう一つ進めてもいいのじゃないかということを私は考えて申し上げておるので、これはおわかりいただけると思いますからそれまででとどめます。  それからもう一つ小さい問題では、労働金庫についてですけれども、これはかなり順調な歩みをみせておって、勤労者にとっては非常に感謝されておりますが、最近、昨年あるいはもうちょっと前から社内貯金が非常に盛んになって参りまして、これがその会社の資金の方へ回ります。そこで労働金庫に預けるよりも社内貯金に預けた方が利回りがいいものですから、労働金庫に対する預金の熱がだんだん冷却して、社内貯金の方に回っていく、こういう傾向がだんだん起きてきておるように、私はこれは統計的にではなくて事実について承知しております。そうするとこの際何らかの手段を講じなければ、せっかく今日まで育ってきた労働金庫がだんだんまた下火になってい又のじゃないかといようなことを心配するのですが、これについて何か対策か御所見があれば伺いたいと思います。
  104. 中西實

    政府委員(中西實君) おっしゃるように社内貯金の利率は相当高いのがあるようでございます。とうてい金庫の定期預金等の利率では太刀打ちできないような高いのが多いようであります。しかしながらこれを制度といたしまして今のところちょっととめようがないということでございますので、そこは結局は各労働者労働金庫育成の自覚に待つということでございましょうし、今のところ法律上これを社内の方の貯金にいかず、金庫にいけということはむずかしい状況でございますので、われわれとしましては、労働者の利益になること、また個人から考えてそうしたいというものをとめるわけにもいかないというふうに考えております。
  105. 八木幸吉

    八木幸吉君 関連。今の会社の貯金、もし会社の基礎が非常に危うくなった場合に、その金の回収が不能になるというふうなことがなきにしもあらずですが、それに対する予防的措置はどうしていらっしゃいますか。
  106. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 労働基準法では強制貯金を禁止いたしております。しかしながら使用者が貯金を管理しようという場合には、そこの職場に労働組合があれば労働組合が、なければそれにかわるもの、これとの書面協定をして行政官庁に届ける、そういう方式でなければこれは強制貯金になる。
  107. 八木幸吉

    八木幸吉君 私は強制貯金のことを申し上げておるのでなくて、任意貯金を非常に高い利率で会社が預かる、その会社が実は経常の内容が外かはわからぬが悪いというときに、高い率で会社のために利用するというようなことを何か予防する措置がありますか。
  108. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 今強制貯金ということで申し上げましたが、この意味は会社が、使用者が労働者の貯金を管理する、契約をする場合は、今のような事前の労働者とのそういう協定がなければできない、こういうことです。
  109. 八木幸吉

    八木幸吉君 協定というのでなく、実際の監督ができておりますか。
  110. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) それについては監督いたしております。
  111. 八木幸吉

    八木幸吉君 不祥の事例は最近ありませんか。
  112. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 現在まで聞いたところによってはございませんが、先般部につきましては、そういう事例がございまして、問題を起したことがございましたが、これは解決つきました。
  113. 湯山勇

    湯山勇君 今の問題ですけれども、実際は中小企業あるいは零細企業相当多いのです、監督をしておられるというけれども、もうそういう末端までの監督はおそらくできないと思います。これは今簡単に監督しておるとおっしゃいますがどうなんですか。それかその数が少い場合ですね、たとえばその組合員全部がやるというのでなくて、その中の三分のがやるとか、あるいは五分のがやるとかそういう場合はどうなりますか、手続は。
  114. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 十分監督ができていないじゃないかというような御質問でございますが、非常に零細にまで十分に監督が行き届いているという、私どもも自信を持っては私は言い切れないのであります。従いまして、そういう場合に労働者協力労働者かの申告によりまして発動する場合が多いわけでございます。協力を待って、われわれとしてはこういうことを周知させ、それによってそういう事態があれば、使用者側で強制的に差し引いて貯金させるといったようなことがあれば、申告をいろいろさして、それに基いて発動する、こういうことにいたしておるわけでございます。仰せのごとく、十分それは徹底しておるかということになりますと、これは私たちもそこまで申し上げませんが、できるだけそうした労働省協力を待って、こうしたことのないようにやって行きたい、こういうように考えております。  それから部でやるというお話でありますが、これにつきましては、使用者がその委託を受けて貯金を管理しようといった場合には、私が先ほど申しましたような方式をとらなければできない、こういうことであります。
  115. 湯山勇

    湯山勇君 そこで、今のお話を総合してみると、社内貯金がだんだん盛んになって、労働金庫が衰えて行っても仕方がないのだということになると思います。御答弁だけからいえば。労働金庫への預金の熱はだんだんさめて行く、社内貯金の方に行く、労働者の自覚に待つというのですけれども、それはたくさん金の入る方に行くのは、幾ら自覚してもとめるわけにいかないと思います。そうだとすれば、私は労働金庫がほんとうに役に立つのだという事実をうんと示さなければならないと思うので、そういう面では、たとえば労働者の要求に応じて貸し出せるような態勢、これを十分整える、こういう方法を、これは政府の方でやれてもしかるべきじゃないか。たとえば労働金庫の貸し出しの資金を幾か融通するとか、今、県などで相当預託金を入れておった所がありましたが、しかし地方財政が詰って参りますと、それもだんだん取り上げてしまって、定期でやってもっておったのが、いつ取り上げるかわかないし、その次には一切こういうことはやらないというようなことになって相当苦しんでおるのもあると思います。これは、何かそうい方面か救う道はないものでしょうか。あるいは助成する、補助金を出すということは不可能ですが、何かそういう方法はありませんか。
  116. 中西實

    政府委員(中西實君) 労働金庫の貸し出しは、最も簡易と言いますか、担保なしでやれるということで、労働者の貸し出しにつきましては最も利用されていいものだと思います。従って最近、もちろん当初のように預金の伸びはございませんが、それでも現在全国で百七十億近くになっております。除々ではありますが、さらに伸びを見せております。従って貸し出しについて非常に便宜な貸し出し方法になっております。しかも金庫の貸し出しは、今全体で百二十億程度かと思います。相当の余裕金があるわけであります。従って労働者が借りるということにつきまして、限度はございましょうが、しかし不自由はない、こういうように考えております。
  117. 湯山勇

    湯山勇君 長くなりますからやめますけれども、貸し出しの要求を断われておるのがたくさんあります。とても要求に応じれておりません。それかたとえば組合が保証する場合に、組合の預金額の総額と、その借り入れ額のバランスとか、それの保証の関係とかで手固くやっております。ああいう基盤の弱いものが、そんなに、百七十億の預金の中で百二十億も貸し出しておれば相当のものです。アメリカですか、どこですか、五五%こえたらいかぬというのがありますね、そんな状態ですか、今言われたように、これでよく行っているのだとは私どもは考えておりませんので、これは何とかしなければ、労働金庫をせっかく作ったのが下火になってしまうということについては、一つ十分御検討を願いたいと思います。  それから昨日の続きのようになりますけれども最低賃金の問題、これはぜひ一つお尋ねいたしたいのですが、大臣は中小企業と大企業とのギャップを埋めなければ最低賃金もむずかしい。これは確かにわかりますけれども中小企業と大企業とのそういうギャップを埋める役目は、労働大臣の役目ではなくて、むしろ通産大臣の役目です。労働大臣としては、大企業中小企業も、労働者生産に従事した労働の賃金によって、とにかく生活ができて行くということを考えれることがまず第だと思うのです。これは大臣のお考えはどうでしょうか。
  118. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 御指摘の通りでありますが、先ほど、この問題は何べんも他の生産向上の問題で御答弁いたしましたように、生産の基盤が養われなければ、自然よい賃金は払えないということで、生産の基盤を培養し、中小企業が安定して行くというところに、初めて最低賃金が実際に行われていくという考え方を持っておるのでありますが、しかし、さりとて勤労者大衆の生活を忘れたものではありませんが、この間ある統計を見ますと、八千円に全部引きなすとすると、約千二百億ぐらいの資金が必要であるということを言っております。六千円にしましても、やはり六、七百億の資金が必要であるということを言っておりますが、今の日本の現状としては、私どもは先ほどか加工貿易の線だと言っているのですが、加工貿易の面か持って行く、近代産業国家としては、やはり最低賃金というようなものをきめて、本腰に産業基盤を養わなければ、私どもは三十年ばかり小さな貿易をやっておるのでありますが、材木でありますけれども、勉強しておるということを、低賃金のダンピングだと、向うは言うのです。現にアメリカへ合板の世話をしているのですが、合板の方でもその議論が起って、国会に提案されたのです。私ども非常に困っておりますけれども、それならば、六千円なら六千円とい最低賃金制中小企業に一律一体にやったらどうなるかというと、現状か見れば失業者はふえると言えると思います。そこでこの最低賃金制というものを国際経済の面に、戦う面においても、あるいはILOに入っておるわが国から見ても、国際連合に入っている面から見ましても、近代産業国家の日本としては、どうしても最低賃金を早くまとめなければいかぬと思うのですけれども、払う方の使用者の方の側の状況はどうかと言えば、もう少し今の内閣のとっているような政策を、資金の偏在、経済の偏在を引きならす減税であるとか、一千億施策であるとか、あるいは七百億の財政投融資の増加であるとかいういうようなことを進めて行って、それと最低賃金制との並行的な考え方が必要になってくる。ある人の、最低賃金を要望する側の方から見れば、それだから、最低賃金制の方からきめて行けば、中小企業は成り立たないから、そこで政府の施策も自然そこから生れてきて、やらなければならなくなるのではないか、追い込まれるのではないか、それを呼び出す一つの手としてやるべきであるという主張もあるようでございますけれども、私は自分の経験と政府の今までやっていること、貿易のすべての点から見れば、やはり生産の基盤を培養しつつ考えるべきものである。私はそうっておりますが、それは通産大臣の考えることで、労働大臣の考えることでないじゃないかというお叱りでございますけれども、私はそれがほんとうである。そうして勤労者の生活も考えるべきである。これが今まで私のやってきたことであるし、今ここでいろいろ御議論になって、それならそうすると言えないことは、衆議院においても参議院においても、どこに行っても、今まで言ってきたことですから、今まで言ってきたことをこの国会で直すことはできませんから、御了承願います。
  119. 湯山勇

    湯山勇君 何も、今まで言われたことにこだわらなくても、一つ御遠慮なくおっしゃってけっこうです。それによってどうこうということはありません。失業者が減るか減らないかということは非常に検討を要すると思います。大臣は簡単に、失業者はふえる、最低賃金六千円なら六千円をしけばふえるということをおっしゃいますが、これは実態調査をなされば、私はそういう資料は出てこないと思うのです。これはちょっと昨日申し上げましたけれども、長時間労働、それから生活を補助するための低賃金労働者相当多いのですから、完全失業者の数はあるいは若干ふえるかもしれません。十万ふえるか、十五万ふえるか、労働省の方で資料をお出しいただけないので、どうもその数の計算はできませんけれども、完全失業者の数が、かりに一割、二割ふえたにしても、潜在失業者と呼ばれるものはうんと減ってきます。それから完全失業者も減るという計算もできます。しかしこれは御見解の違いもあるかと思いますが、たとえば義務教育を受けながら工場で働いている者、これだって二万名をこえています。それは別な道で保障して、そのかわり、そのおやじさんの賃金はもう少しよくする、そうすれば、そういうことをしなくて済む、そのかわり新規採用できるわけですから、これだけで二万おれば六十万が五十八万になるわけです。まあこんな計算もできるわけで、その検討はしていただかなければなりませんが、それについては、二十五年の例の賃金審議会の零細低額所得者の実態調査をやっておられないことは、私はやはり非常に今日最低賃金をやるかやらないかの支障になっておるということを指摘して、ぜひそういう調査を早くやっていただきたい。それで最低賃金を、今、政府の方で考えておられるのは、どちらかと言えば、自然発生的にやって行こう、こういうお考えでしょうけれども、そういうことで果してできるかできないか、世界各国で自然発生的に最低賃金を作ったというような例があるかどうか、これは、私はおそらくないと思います。どうでしょうか。
  120. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) 各国の例を見てみますると、最初、最低賃金制実施されましたのは、御承知かと思いますが、一八九四年にニュージーランドで実施されたのがその例でございます。それから以後、各国において漸次発生してきたわけでありますが、イギリスとか、アメリカの各州あたりを見ますると、法制がしかれる前に、やはり労使間の協定等によって最低賃金律的なものが確保されていた。それをさらに法制によって前進させたというような例も見受けられるのでございます。もちろん全然ないところに作った例もあるのであります。要するに、その社会経済実態と、それから法制化推進のための努力と、両々相待って行くことがやはり最低賃金制の推進のために必要なことではないか、かように考えております。
  121. 湯山勇

    湯山勇君 今のように、やはり法律的な規制がなければできない問題で、労使間の交渉によってできておるのならば、それは日本だって今もたくさんできています。そういう問題じゃなくして、先ほど申しましたように、賃金によって生活の保障ができるということについては制度が必要だ。これは申し上げるまでもないことですが、そこへ行く前の段階にしても、たとえば中学校を出た者が一カ月二千円とか、あるいは千五百円とか、先ほどのお話では、もう賃金なしで食べさしてもらうだけ、こういう雇用の状態が一体あっていいものかどうか、これはどうでしょうか。
  122. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 食べるだけといっても、月にやっぱり四、五千円かかるでしょう。出す方で。
  123. 湯山勇

    湯山勇君 そうですか。
  124. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 食べるだけといっても、食べて着せればやっぱり四、五千円かかると思うのですよ。二千円や三千円というようなものじゃ全然生活できない内容なんですが、それはやっぱり一軒の家で主人が働いておって、奥さんがそういう安い賃金、主人が普通の賃金をもらっておる。副業的な、あるいは子弟の子女の賃金といったようなものがなければ、ほんとうに生活して行くための賃金ということになれば、それは五千円なり六千円でなければ食えないと思うのですよ。けれども、御指摘になるような安い賃金、千円とか、五百円とか、あるいは千二百円とかいうようなものは、それは副業的な働きの人が多いのではないかと思うのです。それで、働くだけで、食わせてもらって、着せてもらったということになると簡単でありますけれども、今の状況からいったら、やっぱり四、五千円かかるじゃありませんか。働くだけという……。
  125. 湯山勇

    湯山勇君 大臣は大へんいい御認識をしておられるので私は安心しました。実は今おっしゃったように、食べて着るだけで最低四、五千円かかる、ところが昨日手紙でも読みましたように、とにかくいなかから出て来て東京へ就職して、工場に働いて二千五百円、残業を入れて。これで食べて行けないという訴えを聞いております。そこで、まあ私は今の四千円とか、大臣の言われた最低をとって、四千円も払えないような企業が果して企業なのかどうなりか、こういう点も問題だし、それからそういうところが人を雇う資格があるかどうか、こういうことは人道上の問題ですよ。経済上の問題じゃなくて人道上の問題として考えられるかどうか、こういうことを考えますと、少くとも、大臣が今言われた四千円ぐらいは保障してやらなければならない。そり産業なり事業なりがほんとうに国に必要なものなら、国が助成をしてでも、資金面なり何なりで助成をしてでも、とにかくそれだけは確保できるという態勢をとるには、たとえば六千円にすれば五百億かかるにしても、四千円ということならわずかで済むと思うのです。そういうことぐらいは、少くとも最低賃金をやろうという心がまえの第一歩として、私はおやりになるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  126. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) いずれまあそんなところに協定賃金ができるじゃないかと思うのですよ。なぜならば、静岡でやっているマグロ罐詰が大体百六十二円ですね。二十日働いて三千二百円ですか。二十五日働けば大体そんなところになるじゃないでしょうか。それは十五才、年次が上るに従って順次高くなって行くんですから、業者協定が大体そういうところに行くんじゃないかと私は思っておるのです。
  127. 湯山勇

    湯山勇君 行くんじゃないかというのじゃなくて。
  128. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 現状の確認だけ。
  129. 湯山勇

    湯山勇君 勤務時間はこれだけ、それから年齢もこれだけだというような制限はすでに基準法でしておられるのです。憲法でもそういう基準を設けなくちゃならない、賃金の基準は法律によってきめようということになっておる。その基準、物差しができていないです、実際は。抽象的なものばかりで、だからそういう物差しができていないから今のようになるわけで、政府がタッチしておる一番低い日雇い労働者だってこれだけ保障されている。今のままで行けば五、六千円保障されているわけでございましょう、二十日か二十一日で。そうだとすれば、たとえそれが民間であろうが何であろうが、それだけは一つ見てやらなければならない。これを割れば日雇いの失業者と同じことになって、いっそのこと、じゃ働かないで、生活保護なり何なり受けた方がいいと、これでは全然勤労意欲を失ってしまう。労働大臣の大きな使命というものは私はそこにあるんじゃないかと思うのですが、まあ時間も長くなりますから、なるべく簡単にやめたいと思いますけれども一つもう一ぺんその点お尋ねしたい。
  130. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほどお話しになりました二千五百円、二千円しか払えない企業はやめさした方がいいというような意味のことがありましたのですが、まあ、これは私は中小企業と一口に言うけれども中小企業は千差万別であって、ピンからキリまである。私は日本の潜在失業者というものは中小企業零細産業だと思うのです。そこでこの零細産業のリヤカーや自転車で商売をしている連中、そこのところが日本の一番私は問題だと思うのです。そこを解決する政策がなければいかぬと思うのです。だから結局最低賃金をやるという場合に一番問題になるのは、中小企業の中以下の線、いわゆるそれが潜在失業者であるかもしれないその人たちが救われる政策が行われるんでなければ、一律一体のものはできないじゃないかということなんです。そこで、私どもは先ほどから申し上げておりますように、近代国家としてはどうしても最低賃金をきめたきゃいけない。しかし一律に御主張になっておられますような線はまだ時期尚早である、もう少し準備期間が要るんじゃないかという点を心配いたしておるのであります。
  131. 湯山勇

    湯山勇君 もう一点。大臣のお考えと私の考えとは鶏と卵のようなことになりまして、結局どっちがどうとも書けないと思います。しかしながら、大臣の言われるような方向だけから考えていく行き方、私は一歩譲歩して申し上げれば、大臣の言われるような方向からいく行き方もあれば、大臣が卵の方からとすれば、鶏が先だという言い方も確かに成り立つと思うのです。そこで大臣としては、その両方面からの検討をしていただかないと、私はやはりいつまでたってもできないと思います。業種別地域別にといっても、大臣自身がおっしゃったように、中小企業零細企業と大企業との断層はますます大きくなって行く、これで一体企業別にきめられるかきめられないか。きめられない条件の方が多くなって行く傾向にあるわけですから、その点から言えば今が一番きめやすい、将来を見通せばですね、ということも言えるわけで、これは埋めても埋めてもなかなか埋まるものではないと思います。ぜひ一つこれは裏側の方からも見ていただく、業種別地域別というようなことは、これはできることではないということも、これも一つ大臣よくわかってもらわないと、業種別に、地域別にきめさして、それからということは、結局やらないということと同じにとれる人もあります、全部が全部ではないでしょうけれども。で、ぜひ一つ早くやっていただきたい。少くとも非常識な賃金というものがある状態は、来年あるいは再来年解消してもらいたい、こういうことを切に要望いたします。
  132. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私初めて来たものですから、ダブつたり何かしては御迷惑になりますから、そういう点については一つ注意していただきまして、そして時間もあることですから簡単に……。  第一は、先ほど湯山君の触れておりました失業保険なんですが、この資料によりますと、三十一年度予算額に大体八十二億、そして三十二年度の予備費が百二十九億と上っておる。まあ決算額はどのくらい出ておるかわかりませんけれども、とにかく莫大なお金が残っておる、事実なんです。そしてそれとからみ合せて、大臣は、調査費等をもって一つこれから失業保険の対象の員数等をふくらまして行こうじゃないかという考えだと伺っておるんですが、これだけの金か残っておるところからみれば、たとえば一挙に三人という段階を設けることも、私はやればやり得るだろうと思うのですが、そういうような問題についてどういう見通しを持っておるか、お伺いしたい。
  133. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 一定の積立金が必要でありますから、ある程度の資金は残して行かなければなりませんが、五人未満の問題については先ほどもお答えいたしましたように、今年特別に五百三十万円という調査費をもらっておりますから、その調査ができ上りましたら、できる面から取り上げて実施して行きたい、こう思っております。
  134. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 一定の積み立てとはどのくらいですか。
  135. 江下孝

    政府委員江下孝君) 失業保険法の規定で、一般失業保険の支給に要する大体六カ月分の資金を安全弁として積み立てる、こういうことに相なっております。もしこのワクを割る場合には保険料の改訂を建議しなければならない、かように相なっております。  それから今お話のように、確かに失業保険の積立金は非常にふえております。ふえておりますが、実は二、三年前に非常に不況の時代がございました。そのときには一年間に三百五十億の実は失業保険金を出したことがございます。で、赤字が出まして補正予算を組んだこともございます。しかしこの好況が将来もずっと続くとすれば、当然失業保険のワクの拡大等も、このワク内で考えて差しつかえないと私は思っております。五人未満の問題につきましては大臣が申し上げました通りであります。
  136. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 六カ月で幾らになりますか。
  137. 江下孝

    政府委員江下孝君) 現在のこの保険金の大体支給月額は二十億から二十五億でございます。
  138. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 次に、これは住宅の問題でございますが、中小企業のというのですか、非常に零細の人に産業住宅で工員のために家を建ててやろう。ところが今度床面積が拡張されてしまって、たくさんな部屋数と申しますか、床面積がふえてしまったので、いわゆる小企業の人たち、たとえば五人の人しか使っていないというところで借りて作ろうと考えても、十人収容するような単位に引き上って参りましたので、そういう保護政策で出ておるけれども、結局大きいところに産業住宅政策というものが流れるようなことになりますので、一つ大臣で住宅公庫等とよくお話し願って、あの立法趣旨は大産業を云々するというものじゃないと思うので、だから一つそういう零細企業等も、金を借りて厚生施設としてやられるような方向に一つ御努力願いたい。これはどんどん引き上げて行けば逆の方向に行くから、そういう点を十分御留意願いたいということが一つ。もう一つ、要望めいたことでありますが、全繊同盟が、いわゆる中小の紡績に対して、どうも夜間作業と申しますか、労働基準法違反の疑いがある。だからその摘発は基準監督官の方ではあまりやらないから、一つ合繊でやろうじゃないかということを決定しております。そうして実際打撃を受けておるのは、実は経営者というものはあの決定について非常に打撃を受けている。非常に戦々きょうきょうとしているのは事実だ、そういうことがあるということを一つよく御認識願って、私はこの基準監督行政、いわゆるああいうところでほんとうにしぼられておられる人たちに対する労働省の立場を、私はいま一度認識していただいて、そういうことが行われないように監督行政をやってもらわなければならない、これは要望であります。
  139. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいまの二点とも承知いたしました。努力いたします。
  140. 八木幸吉

    八木幸吉君 私ごく簡単に、時間にして五、六分伺います。  第一点は労働大臣、まあ住宅の話が出ましたが、この各事業会社、事業場で、その従業員に対して特に住宅を建てれば、それに対して税制上の特典を与える、あるいはそれを損金に見るとか何とかいったような、積極的に下級の従業員の住宅を建てるように、政府の方で指導して行くという何かお考えがございますか。
  141. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいまのお説、まことにごもっともであります。従来、どの企業におきましても、勤労者住宅については戦後相当拡充されてきておりますが、今御指摘になった点は非常に重要な問題でありますから、今後、大蔵省とも一つ協議をいたしまして実現に努力いたしたいと思っております。
  142. 八木幸吉

    八木幸吉君 もう一、二点伺いたいのですが、これは小さな問題ですけれども労働衛生研究所が、定員が十七人ふえて予算が千四百万円ふえておりますが、何か新しいことをおやりになるのか、従来どういうことをおやりになっておるのか。
  143. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 衛生研究所は、この人員がふえましたのは、これは去年、大体定員法で六十人程度にしたいということで出発して参ったのでございますが、創立当初は二十人ということで出発いたしました。本年度におきましてこれを十七人ふやしまして、そして現在の二部四課でございましたか、ありますのを、さらに二部七課に拡充いたしまして研究の万全を期したいということで、大体昨年度の計画を漸次整備して行くと、こういうふうな建前でふえております。
  144. 八木幸吉

    八木幸吉君 私の伺うのは、何をやってるのかということです。
  145. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お答えいたします。労働衛生研究所におきましては、今の二部と申しましたが、職業病部と職業労働環境部、職業病部と申しますのは、職業病その他の職業性疾患に関するところの診断基準あるいは健康診断の技術的な方法、病勢の増悪防止に関する調査研究といったようなことが職業病部にございまして、それでそれぞれ、たとえば放射線、あるいは振動、あるいは音、圧力といったようなものに関するものと、それからいろいろ化学的な中毒、鉛中毒でございますとか、一酸化炭素中毒、そういった方面の化学的な方面に関する部門と、それから主としてけい肺、塵肺等に関するもの、それからその他の耳、目、口腔、上気道、歯牙といったような方面に関して、そういうそれぞれ部門別に職業病部については研究いたしております。職業労働環境部におきましては、粉塵の環境の調査でございます。あるいは保護具の研究といったようなもの、労働環境部ではこういったことをやっております。
  146. 八木幸吉

    八木幸吉君 たとえば疲労研究だとか、休憩時間の割当だとか、災害防止だとか、そういったのはどこで研究するのですか。
  147. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 災害防止に関しましては、産業安全研究所で研究いたしております。  それから今お話のございました疲労防止等につきましては、現在の段階ではまだそこまで至っておりませんが、これは環境部において関連して研究して行くということになっております、こういうことになっております。
  148. 八木幸吉

    八木幸吉君 労働科学研究所なんかに補助金を出しておりますか。
  149. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 労働科学研究所には現在補助金は出しておりませんが、一部の保護具の検定等を委託しております。
  150. 八木幸吉

    八木幸吉君 疲労研究だとか、休憩時間の分配だとか、そういったことは、産業労働環境の上からいって非常に必要な問題だと思うのですが、そういったことは政府ではどこでもやっておりませんか。
  151. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 現在のところ衛生研究所で関連してやって行くことになっておりますが、まだ大々的にこれをやっておりませんので、今後こういうことにも手をつけて参りたいと考えております。
  152. 八木幸吉

    八木幸吉君 この衛生研究所は何かレポートは出ておりますか。
  153. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) まだその段階に至っておりません。
  154. 八木幸吉

    八木幸吉君 産業安全研究所と合併して総合的にやった方が能率が上るのではないですか。
  155. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 管理面につきましては、そういうことが言えると思いますけれども産業安全研究所、安全と衛生の面は、一面においてあるいは相関連する面がございますけれども、それぞれ専門が違いますので、現在のところはこの両者を並立してやっておる、こういうような状況であります。
  156. 八木幸吉

    八木幸吉君 さらに労働大臣に伺いますが、勤労者の健康保険の問題ですが、今お聞きのような点について、やはり産業安全研究所と労働衛生研究所と一体的なものにしまして、そして疲労の研究だとか、今、職業病に中心が置かれておるようでございましたが、疲労研究だとか、あるいは標準動作の研究だとか、労働生理的の問題を、もう少し大きくおやりになる必要があるのと、大学の研究所とか、たとえば労研のような民間、大学等の研究所と、もう少し連絡を密にされて、総合的におやりになるということが、かえって能率を上げる上に私は必要じゃないか、これは一つ大臣の方で一応御研究いただくのがいいのではないかと思います。
  157. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいま御指摘になりました点、まことにごもっともでございますから、鋭意一つ研究して御期待に沿うように努力したいと思います。
  158. 小林武治

    主査小林武治君) それでは労働省所管につきまして、一応質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 小林武治

    主査小林武治君) 御異議ないと認めます。  それから本分科会の日程でありますが、都合で、本日の午後は厚生省及び大蔵省所管、明日午前、人事院、午後、文部省所管ということに変更いたしたいと存じます。御了承願います。  それではこれにて休憩いたします。午後は二時から再開いたします。    午後一時七分休憩    午後二時二十二分開会
  160. 小林武治

    主査小林武治君) 休憩前に引き続き第四分科会を開きます。  厚生省所管について議題といたします。  まず、政府の説明を求めます。
  161. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 昭和三十二年度の厚生省所管予定経費要求額の概要について、御説明申し上げます。  昭和三十二年度厚生省所管一般会計予算要求額は一千百十四億六千二百十二万二千円でありまして、これを昭和三十一年度の当初予算九百三億一千七百億円に比較いたしますと、百十一億四千五百十二万二千円の増加と相なっておりますが、さらに、これを補正予算を加えての前年度予算総額九百四十二億四百十七万五千円に比較いたしますと、七十二億五千七百九十四万七千円の増加と相なります。  次に、右予算のうち、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、医療保障制度の確立に必要な経費であります。現在国民のらち約三千万人が疾病保険の対象となっていない状況にかんがみ、昭和三十五年度を目標として国民皆保険の実現をはかることとし、三十二年度におきましては、特に大都市を含む市部に重点を置きまして、国民健康保険の普及に力を注ぎ、新たに通年五百万人の被保険者の増加をはかり、前年度の三千万人と合わせて被保険者数を三千五百万人に推算いたしました。これに伴い国民健康保険の助成に要する経費は、療養給付費の二割に相当する金額八十六億七千九百万円、事務費の補助金二十九億七千五百万円、直営診療所建設費補助金三億円、被保険者の画期的増加をはかるために新たに計上しました普及促進費の補助金二千三百余万円、及びその他の経費を合わせて合計百二十一億八千五百余万円となり、前年度に比較して二十二億九千六百余万円の増加と相なっております。なお、事務費の一人当り単価につきましては、実績等を勘案し、前年度の単価六十八円六十銭を八十五円に引上げて積算いたしております。  次に、健康保険につきましては、最近その財政に若干好転のきざしがうかがわれるとは申しますものの、いまだ楽観の域には達しません。目下継続審議をお願いいたしております。関係法律の成立と相待って、前年度と同じく一般会計より三十億円を給付費財源として繰り入れを受け、保険財政の再建整備をはかることといたしております。船員保険の疾病部門につきましても、健康保険と同じく、一億円を一般会計より繰り入れることといたしております。また、日雇い健康保険につきましては、昨年八月、給付内容の改善充実をはかった結果、給付費の増高はきわめていちじるしく、多額の赤字が予想されますので、三十二年度においても、国庫負担率を従来の一割から一割五分に引上げ、前年度より四億三千二百余万円増加して六億五千五百余万円を計上いたしました。  次に、医療保障制度の確立には不可欠の条件であります医療機関の整備拡充に必要な経費であります。まず、国立病院施設の整備改善のため、十二億七千四百余万円を国立病院特別会計に繰り入れ、六カ年計画をもって実施いたして参りました第一次基幹病院の整備を三十二年度において完了し、新たに第二次基幹病院の整備に一部着工いたしますとともに、その他の老朽不良施設の改善をはかることといたしております。次に、公的医療機関の整備でありますが、前年度に引き続き、都道府県単位に医療サービスの基幹となるべき病院の整備を行うほか、僻遠の地で経済的に民間診療所の開設と期待できない無医地区に国立病院六カ所、公的病院二十カ所の出張診療所を開設せしめ、新たにその運営費の赤字に対しても補助を行うこととし、右に必要な経費四千五百万円を計上いたしております。次に、精神病床は、現在入院治療を必要とする患者に比べて病床が過少な実情にありますので、引き続いて三千三百床を整備拡充するため二億三千四百余万円を、また、伝染病院の隔離病床一千床の整備に必要な経費九千六百余万円をそれぞれ計上いたしております。  次は、原爆被爆者の医療等に要する経費であります。原子爆弾による被爆者については、その置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、また人道上の見地からも、国が健康診断、医療等を行うことにより、その健康の保持、向上をはかるべきものと考えられますので、健康診断を行うための費用として七千余万円、医療費として一億円余、その他の経費を加えて合計一億七千三百余万円を計上し、前年度に比較して一億四千七百余万円の増加となっております。第二は結核対策の強化に必要な経費であります。結核は年々その死亡数がいちじるしく減少しているにもかかわらず、今日なお多数の結核患者が存在し、国民生活に重大な脅威を与えている実情にありますが、一方治療薬品、治療方法のめざましい発達進歩により、早期に発見し適切なる治療を行えば短期間に治癒可能の疾病となって参りましたので、三十二年度におきましては、全額公費負担で健康診断、予防接種を徹底的に行うこととし、そのために要する経費六億八千百余万円を計上いたすとともに、医療費についても結核治療指針の改正に伴なう三剤併用の採用、並びに手術の際における輸血、麻酔等を公費負担の対象としてその範囲を拡大する等の措置を講じ、十六億四千余万円を計上いたしております。結核病床の整備はかなりの進歩を見ているのでありますが、地域的にはなお偏在不足している地方もありますので、一千床の増床を予定し、五千二百余万円を計上いたしております。  右のほか国立結核療養所百八十一カ所の経営のための経費百十六億三千余万円を加え、百四十九億八千余万円と相なり、前年度に比較しまして十四億二千九百余万円の増加となっております。次に、保健所については、新設五カ所の整備X線機械等の購入、職員の給与改善等に要する経費のほか、新たに医師充足対策の一環として修学資金貸与制度を設ける等の措置を講じ、前年度より二億六百余万円を増加し、二十一億七千四百余万円を計上いたしております。  第三は、環境衛生対策の推進に要する経費であります。最近における屎尿の農村需要の激減と、都市人口の膨張等に起因して余剰屎尿の処理が全国的に困難性を加え、国民の生活環境が次第に汚染され、このまま放置し得ない状態となって参りましたので、まず人口の最も密集しております東京湾、大阪湾周辺の都市については、三カ年計画をもって屎尿の海洋投棄を禁止して、陸上処理を行うこととし、そのために要する清掃施設、下水終末処理施設の整備費として、三億四千五百万円を、また一般都市の清掃施設、下水終末処理施設の整備として、三億四千万円、合計六億八千五百万円を計上いたしております。次に明るく健康な生活環境を作るため、蚊とハエのいない実践運動を前年度に引き続き強力に推進いたしたい所存でありますが、このため蚊とハエの駆除に好成績をあげた市町村に対して、その効果を持続せしめるため、みぞの改善整備、簡易ごみ焼却炉等、恒久施設の整備補助として三千三百余万円を計上しております。次に、水道施設の整備については、農山漁村に対し、簡易水道の普及をはかって、伝染病発生の予防と生活改善に資するため、前年度より一億六千万円を増加し十億円を計上いたしております。以上、環境衛生対策に必要な経費の合計は十七億二千余万円に上り、前年度の八億九千二百余万円に比し八億二千九百余万円増加となっております。  第四は、生活保護に必要な経費であります。最近におけるわが国経済の著しい伸長発展の結果、国民の消費水準も大幅な上昇を来たして参りましたので、去る昭和二十九年一月、改訂されたままとなっておりました保護基準を六・五%引き上げ、扶助内容の向上をはかることといたしました。これに要する経費は十一億五千万円で、これを東京都の標準五人世帯の額で申し上げますと、現行の生活扶助月額八千二百三十三円が八千八百五十円となり、六百十七円の増加となっております。また、母子世帯に対しては、母子年金を含む本格的な国民年金制度創設までの暫定措置として、現在実施いたしております生活保護の母子加算月額五百円を千円に引き上げ支給することといたし、これに要する経費四億五千万円を計上しております。しかしながら経済の好転の結果、逐年著しい増加をきたしていきました扶助人員が、漸次減少の傾向にありますので、生活保護総額では三百六十二億九千四百余万円となり、昨年度に比し二億二千七百余万円の増となっております。  第五は、児童保護に必要な経費であります。まず、措置費につきましては、施設の増加に伴う収容児童の増加を見込みますとともに、収容児童に対して新たに一日五円の間食費と被服費を若干引き上げることとしたほか、これら施設に勤務する職員の給与の改善を行うこととし、六十一億八千五百余万円を計上いたしております。次に、身体障害児の福祉をはかるため実施して参りました育成医療につきましては、その実施成果に照して、さらに一そうこれを助成促進することとし、従前の実施人員の約二倍を見込、補装具の支給等に要する経費と合わせて身体障害児の援護のため一億三千四百余万円を計上いたしております。次に、児童福祉の施設につきましても、昨年度に引き続き整備拡充する予定でありまして、これに要する経費四億円を計上するほか、今年新たに繁忙期における農漁村の乳幼児のため、季節保育所万カ所を設置することといたしております。さらにまた、児童福祉行政関係者の長年の念願でありました重度の精神薄弱児を収容する国立の施設を新設いたすことといたしましたほか、新たに児童福祉行政の機構の強化のため、各都道府県に全額国費の指導職員百八名を設置することといたしたのであります。以上、児童の保護福祉に要する経費は総計七十億四千八百余万円で、昨年度に比して六億千六百余万円の増加となっております。  第六は、母子及び低所得階層等対策に必要な経費であります。母子及び老齢者の福祉の根本的な解決策として、国民年金制度の確立は焦眉の緊要事でありますが、昭和三十二年度においては、とりあえず、臨時に、厚生省に学識経験者からなる五人の委員を置いて、その具体的方策の調査企画を願うことといたしておるのでありまして、その設置並びに資料調査等のために必要な経費として一千余万円を計上いたしております。母子対策といたしましては、暫定策として、先に申し上げました生活保護の母子加算を増額して支給いたすこととしたほか、従来行なって参りました母子福祉資金の貸付金に対する補助率を、地方財政の現状にかんがみ、二分の一から三分の二に引き上げる等の処置を講じて、前年より一億四千万円を増加して五億九千万円を計上しております。次に、いわゆるボーダーラインの低所得階層に対しては、その自立更生を促進するため、世帯更生資金の貸付金として、昨年度より二億円を増加し三億円、新たに医療費の負担に悩む人々のために医療費貸付金制度を創設し、これに要する経費として二億円、合計五億円を計上いたしました。これらの制度に対しては、母子福祉資金と同様、地方財政の現況にかんがみ、補助率を三分の二に引き上げる等の処置を講じ、本貸付制度が有効適切に効果を発揮できるよう配意いたしたのであります。  第七は、婦人保護その他社会福祉増進に必要な経費であります。売春防止法の施行に伴い、これら転落婦人保護更生対策を強化するため、本年度に引き続き婦人相談所を未設置の三十八県に新設いたすとともに、新たにその更正のための保護施設三十九カ所の設置、婦人相談員、相談所職員の増員等、合計三億七百余万円を計上いたしているのであります。次に、身体障害者保護更生のため、更生医療の実施と、補装具の支給に必要な経費として三億七千五百余万円を、庶民階層の金融機関として重要な意義を持つ公益質屋の整備のため二千五百余万円を、民間の社会福祉施設整備充実促進助成するため、社会福祉事業振興会に対し、さらに追加出資を行うため一億円等を計上いたしております。さらにまた、身体障害者福祉法でその設置を義務づけられておりながら、今日まで実現を見なかった国立ろうあ者更生施設を新設して、これらの人々の再訓練、社会復帰のために貢献することといたしております。  第八は、引揚者等戦争犠牲者の援護に必要な経費であります。昨年秋締結された日ソ間の国交回復により、終戦以来の懸案であったソ連地区よりの引揚も一応完了したとは言いながら、いまだソ連中共地区等には生死不明の未帰還者多数が存在いたしておりますので、今後ともこれらの未帰還者の調査究明に段の努力をいたすとともに、三十二年度には引揚予定者を約二千五百人と推算し、これに要する経費七千三百余万円を計上しております。次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基く遺族年金及び障害年金の支給に必要な経費として、五十七億七千百余万円が計上され、前年度に比し六億四千余万円減少しておりますが、これは失権等のため受給者の減少によるものであります。また、未帰還者留守家族援護法に基く留守家族手当、障害時金及び療養費の支給等のため十三億八千四百余万円が計上され、前年度に比し若干減少しておりますのは、引揚、調査究明等の進捗による対象人員の減少によるものであります。また、海外戦没者のらち遺族に引き渡すことができない遺骨を納めるため、新たに無名戦没者の墓を建立することとし、これに要する経費を五千万円計上いたしております。  最後に、受胎調節運動につきましては、前年に引き続き推進いたしますとともに、その地方第線指導機関たる実地指導員に対する手当を、五百円から一千円に引き上げ、これに要する経費一千百余万円を計上するのほか、国立公園、国定公園の施設の整備のため、直接国が行う施設整備費五千万円、新たに二分の一の施設整備費補助金五千万円を計上し、その他保健衛生費、社会福祉等の各費目についても、それぞれ所要の経費を計上いたしております。  以上、昭和三十二年度厚生省所管一般会計予算についてその概要を御説明申し上げたのでありますが、次に、昭和三十二年度厚生省所管特別会計予算の大要について御説明申し上げます。  まず第一は、厚生保険特別会計についてであります。さきに申し述べましたように、一般会計より健康保険給付費財源繰り入れ三十億円、日雇い健康保険給付費財源として一割五分の国庫負担額六億五千五百余万円を見込みまして、健康勘定におきましては歳入歳出とも六百七十二億七千七百九十万千円、日雇い健康勘定におきましては歳入歳出とも四十六億五百二十八万八千円、年金勘定におきましては歳入五百三十億四千四百五十七万三千円、歳出、百十一億五千七百三十五万二千円、業務勘定におきましては歳入歳出とも三十七億九千八百八十万円をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてでありますが、さきに申し述べましたように、大体健康保険と同様の措置をとることといたしておるのでありまして、これに要する経費といたしまして、歳入五十七億六百六十三万五千円、歳出四十五億千五百六十二万千円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてであります。さきに述べましたように、国立病院の施設改善のため所要財源を一般会計より繰り入れするのほか、三億円の国庫債務負担行為を計上いたしております。また、新たにアレルギー疾患、リューマチ等の治療センターをそれぞれ若干個所整備する予定であります。右に要する経費として、歳入歳出共八十七億二千六百三十六万六千円を計上いたしておるのであります。  最後に、アヘン特別会計についてであります。本年度のアヘン買い入れ予定量は、輸入三十七トン、国内産ミトンでありまして、方、製薬原料としての売り渡しは四十トンを予定いたしております。右に要する経費として歳入歳出とも二億二百九十六万二千円を計上いたしています。  以上、昭和三十二年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算につきまして概略説明申し上げたのでありますが、どうか本予算案の成立につきましては、格別のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  162. 小林武治

    主査小林武治君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止
  163. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。御質疑の方の御発言を願います。
  164. 吉田法晴

    吉田法晴君 けさの新聞には、国民健康保険の改正案は今国会にはお出しにならないということが出ておりました。昨日の参議院の社会労働委員会でそういう御言明をされたということですが、この説明の冒頭にも、国民健康保険への予算上の措置説明されておりますが、国民皆保険の構想からする最初の予定、それからどうしてやめたのか、それからそれで国民皆保険は、これは新聞にも書いてありますが、大きく皆保険の普及は困難になったと、こう世論は判断をしておりますが、そうであるかどうか、その辺御説明を願いたい。
  165. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) きょうの新聞の記事、朝日でございますか、そんなようなのが出ておりました。実はこの国民の改正につきましては、ご承知のように、石橋内閣以来、国民皆保険を一つ実施しようというしばしば決意を述べておるような次第でございまして、その中核として健康保険の改正の御審議をお願いするとともに、国民保険の実施に必要な制度の充実をはかろうという所存であったのでございますが、いろいろ検討して参りますと、御承知のように国民保険のおくれておる、今残っておる市町村等につきまして、その実情を十分洗ってみますと、どうも市町村財政の行き詰りと申しましょうか、現に国保を実施いたしております市町村におきましても、その影響を非常に受けておりますので、法律制度で実施を急ぐ面よりも、まず、政府の行政指導が非常に必要ではないかということ、それから財政上の裏づけの問題を一つ解決いたしたい。政府のやるべきことをまずやって、しかる後に皆保険実施の支障があるとすれば、法律命令等によって強制するというような考え方をすることがよろしいのではないか。それらの規定を織り込んで参りまするには、大蔵あるいは自治庁その他関係方面とも十分な連絡をとらなければならない。さらに、この国民皆保険を四カ年間に実施するということは、政府の重要政策として掲げたのでございまするが、これを具体化するのには相当のこれは緻密な計画を立てて実施を完了しなければならない。そういういろいろな事務上の準備というようなことを考えますると、法律の条文の整備は、それは簡単にできるのでございまするが、御審議を願うにいたしましても、今申し上げましたような諸般の積み重ねが十分この会期中には間に合わないのではないか、こういうふうな結論に達しまして、一昨日の晩おそらく、この国会には今度の国保の改正は見合せようではないかという結論に達しまして、きょうの閣議で御了承を得たような次第でございます。しかし国民健康保険の実施に必要な諸般の準備は、この法律の提案といなとにかかわらず、なお一そう強力に進めて参りたいと、そういう所存でございます。
  166. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、今お話は、政策として国民皆保険というスローガンを掲げたけれども、まだ準備段階であって、いろいろな教育なり、あるいは整備の必要なところがある。あるいは各省間においても意見のまとまらぬところがあって、初年度として四カ年計画でもって国民皆保険に向うということは事実上できぬのだ、こういうことなんですか。
  167. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) その点はちっとも支障なく、この初年度として予算もただいま御説明申しましたように、事務費も六十五円より八十五円に引き上げたということ、それからまた新たに五百万円を計上して医療費に支障ないようにする、あるいは宣伝費を二千四百万円計上するというようなことをいたしまして、十分なとは申しかねますが、諸般の用意はいたしておりますので、行政指導をもっぱらやりまして、そうしてその方も見合いながら国保の改正を断行いたしたい、そして両々相待ってこの四カ年に完成したい、こういう考えでございます。
  168. 湯山勇

    湯山勇君 ただいまの国保の問題について、なおお尋ねいたしたいと思います。私は大臣のとられた措置は賢明だと思います。今前々から言っておられたようなことをおやりになつたつて、とうていできない。それは第一、無医村の解消ができておりません。それから給付もまず御承知のようにてんでんばらばら、しかも半額負担の関係があって金持ちでなければかかれない、こういう状態で今おやりになったって、これは絶対無理です。だから、今までやる、やると言っておったのがおかしいので、非常に賢明な措置をとられたというように私は思います。  そこで第一は、やはり無医村解消ですが、これは行政的におやりになるとすれば、無医村解消の計画がなければならないと思うのですが、どういう御計画でしょうか。
  169. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今の湯山さんのお尋ねでございますが、無医村の解消につきましては、ここにも述べましたように、一つ国の療養施設、あるいは県立とか、その他法人等も加えた一つの公的な医療機関から派遣制度をとりたい。無医村自体にお医者さんを単独で持って参りましても、これはなかなか実効をあげることがどうもむずかしいような見方をとっておりますので、優秀な医師を交代制と言いましょうか、派遣勤務にいたしたい、そういたしますれば、その主たる公立なり、あるいは公益病院との連絡が十分になりまして工合がいいんじゃないか、こういうように考えまして、その方の人件費等も助成して、実際に置けるような情勢にしよう。今までは施設だけ助成して、人件費は助成しなかったのですが、今回はそこまで置き得る態勢にしょう。それが今度の無医村対策の特徴だと思います。しかし、最近の例をみますと、どうも医師が中央集中と言いましょうか、都市集中の傾向が顕著になりまして、今申しました無医村も地方々々によって偏在と言いましょうか、薄くなっている地方が出ている。この薄くなっているところの手当をどういうように考えて行くかという問題が新たに出てきたんではないかと、こういうように考えております。これらに対しましても今後十分に検討いたしまして見合うようにして参りたい、こういうように考えております。
  170. 湯山勇

    湯山勇君 ただいまのように、その対策も十分立っていないというような状態ですから、やはりこれは無医村解消というようなことが先行しなければいけないと思うのですが、大体の方向はわかりましたけれども、年次計画とか、そういうようなものはどうなっておりますか。実は保健所の医師の充足率ですね、これも悪かったと思います。そこで今度からは特別な措置をとられてけっこうだと思うのですけれども、現在の保健所の医師の充足の状態がどんな状態か、それらとにらみ合せて、無医村が現在どれだけあって、その中で医師派遣によってどれだけがいつまでに解消する、あと四カ年でこれを達成されるのであれば、どんなにしても三年目くらいには解消してないと、皆保険ということはできないと思いますので、その辺の御計画、具体的にお願いしたいと思います。
  171. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいまの具体的の点については医務局長から一つ答えさせていただきます。
  172. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) なぜ無医村ができるかという問題でございますが……。
  173. 湯山勇

    湯山勇君 理由じゃなくて、無医村をどういう計画で解消して行くか、その具体的な……。
  174. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 承知いたしました。この絶対的の無医村、つまりそこに医者が開業いたしましても経済的に成り立たないような無医村が、一体日本に幾つあるかという問題でございますが、ただいま医務局におきまして、この調査を進めております。申請は約二百カ所ほど出ておりますが、その手続におきまして、いろいろな条件に当てはめますというと、その数よりも減るのでございます。そこで私どもといたしましては、その中で、絶対的の無医村というところを拾いあげまして、現会計年度におきまして三十二カ所、来会計年度において二十六カ所を選定いたしました。そうして、ただいま大臣のお話のありましたように、比較的近い、また規模の大きい公立医療機関に委託いたしまして、この公立医療機関がその地に無医村診療所を建てて、かつ元気のいい若い優秀なお医者さんを交代制で配置していただくという措置をとることに相なったのであります。かようないわゆる絶対的な僻地は、大体現在のところの見通しでは百五十から二百の間ではなかろうか、これは再来年度、またその次の年度、大体国民皆保険の線にあわせまして、この僻地をいま一歩、申しましたような要領によりまして解消して行きたい、かように考えている次第でございます。
  175. 湯山勇

    湯山勇君 今の本年度三十二、来年度二十六というふうなテンポでは、こういう百五十ないし二百の解消はできないと思いますが、これは三十三年度には五十なり百なり、まとまっておやりになる御予定ですか。
  176. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) その通りに考えております。
  177. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいまの湯山先生の御質問に対しまして医務局長からお答えをいたしましたが、私の方にも、国保の関係の、先般御承知の通り、直営診療所の経費が計上してございます。これは従来二億ございましたのですが、来年度は三億お願いを申し上げております。この三億の中で新設百カ所、それから整備がその他にございますけれども、新設百カ所をやる予定でございます。で、医務局の方でおやりを願う分は、もう非常に極端な、そこへ何か医療施設を設けても、それが立っていかないという無医村の地区でございまして、私どもの方のは若干それよりは程度のいい、しかしながら、この医療機関がないというようなところをねらっているわけでございます。これもあわせて御参考に申し上げたいと思います。
  178. 湯山勇

    湯山勇君 来年度が百カ所で、この国保の皆保険とあわして年次計画が何かおありですか、今の診療所については。
  179. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) まあ私どもこの四カ年間で四百カ所という気持を持っておりますが、これはもう最小限度でございまして、これは事情に応じまして増加いたしたい、かように考えております。
  180. 湯山勇

    湯山勇君 先般、厚生省で御発表になった三十二年度は、どの市とどの市というような計画がございましたですね、あれはもう一応御破算にしないと、ただいまのようなお話だと、まあ民意の高揚によってやって行くということでございますから、御破算になるんだと私は解釈しておりますが、いかがでしょうか。
  181. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) あの年次計画は、大体当該市町村の意向も聞きまして一応策定したものでございまして、そういうふうにお考えにならずに、大体あれが一つの目標だ。しかし先ほど申し上げましたように、こうなって参りますと、困難とするいろいろな面がありますので、それについては急速にそういう措置一つとるような方法を講じたい、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  182. 湯山勇

    湯山勇君 先ほどの良心的なお考えと、今の御答弁とは若干御趣旨において違うように思いますが、とにかく五百万ふえるという計画で、強制的にやるという法律の裏づけはしない。こういうことであれば、任意に大体計画通りの五百万を作って行こう、こういうことですから、ああいうふうなワクづけをしますと、現在やっていない地域というものは、やはりそれぞれに理由があると思います。その理由があるものを、こういう強制的にやるという裏づけのもとに計画されたもので、そうでなくなれば、その状態というものは変ってくるわけですから、一応御破算にして考え直してしかるべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  183. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) そこが少し誤解と申しましょうか、お考えすぎになっておるのじゃないかと思います。初めから強制しようというような立法措置の意味ではなかったのでございまして、やれる状態にありながらやらないというところを強制しようということでございまして、それが強制の方が強く出たのでございます。私どもはやるような態勢を生むことがまず先決だ。それでも、なおかつやらないというものについては、強制というような立法措置をしょう、こういうことでございまして、立法措置をするよりも、やるようなふうにすることがむしろ実質的な効果をあげるのじゃないか、こんなふうに考えまして、法律の整備よりもその実態一つ整備しよう、こういう気持であります。いま一つは、先ほど申し上げましたように、御審議願うといろいろな統計資料が必要になって参りますが、その準備がいろいろな事情に制約されまして、御審議を願っても資料が整わないと皆さんに御迷惑をかけますので、思いとどまっている次第でございます。
  184. 湯山勇

    湯山勇君 そこでやはり問題になりますのは、ああいうふうにして進めて行かれるとするならば、私は事務費等でその市町村に迷惑をかけちゃいけないと思います。ところがこの予算を見ますと、どんなにしても、これは迷惑がかかるという結論しか出てこないんですが、何とか別途補う方法をお考えでしょうか。そうでなければ、あの計画通り進んで行く、五百万は確保する。しかも地方財政の赤字を今回出さない理由として、先ほど大臣自身おあげになった理由に入っております、このままで行くというのは、私はどうしても無理と思いますが、いかがでしょうか。
  185. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) その御心配は私どもも非常に切実に感じております。ただしかし、地方財政もだいぶ再建の曙光が見えていることは御承知の通りであります。しかしそういう甘い意味で考えておりません。私どもの考えを率直に申し上げますと、国保の伸びておらない地方の国保をやってもらいたいという要請は非常に強いわけですね。ことに最近町村合併が行われまして、外郭の町村がやっておって、まん中の市がやっておらぬ。あるいは市がやっておったのに、外郭の町村がやっておらないということになりまして、一つの市町村の中に一部国保が行われて、一部行なってないということで、国保に対する熱意と申しましょうか、熾烈なる要請がございます。これはもちろん国民医療費が漸増して参りまして、切実に負担の問題になってきたことも事実と思いますが、そういう機運が出て参っておりますので、市町村としても急いでやりたいという非常な熱意がございます。厚生省におきましても、今度は今までの上げ方からいうと、八十五円に上げたことは相当思い切った上げ方かと思います。それならそれでいいかとおっしゃると、それは満足すべき状態ではないのでございまして、しかし、これもこの夏、三十一年度の市町村の国保財政の調査大蔵省厚生省が共同調査して、そこで一つ国保の事務費の一年当りをはっきり打ち出して、それでやって行けるのだという約束ができておるわけでございます。そういうこと、それから宣伝普及費も打ち出しておりまするし、だいぶ未実施地方の国保の市町村準備の声が強いから、市町村長あるいは市町村会というものが、その声を取り上げなければならない段階に来ているのではないか。財政上の問題でどういうふうなかね合いになるかということでございますが、それも私ども十分考えて、熱意を傾けて行こうということでありまして、これはやってみなければわからないのでございますが、五百万人を非常に無理だという見方、あるいは間違うと、間違うとという言葉はおかしいのでございますが、むしろ希望が多いのではないか。その際にわれわれが追加予算一つなるべく早く用意しなければならぬじゃないかということを言われている向きもあるのでございます。いずれにいたしましても、四カ年間に一つ完全実施と、それから整備したものにしたい。たとえば今の二割の医療費の助成なんかも、もう少し上げたものにしたいという考え方でありまして、この点も大蔵省は、それは二割で行くのだというようなことは言っておりません。割合いにわかったことを私は言っているつもりに考えております。早く一つ大ワクの中に入れて、そうしてその入れたところで一つ給付費の引き上げの相談をしようじゃないか。給付費の引き上げを先にやって、徐々にやって行くよりも、一応抱き込んでから整備しようというような、今までの大蔵省の考え方からいうと、非常に手固い考え方からいうと、この国保に対する問題は少しわかってきているというふうに考えておるのでありまして、思い切った措置をやって行きたい、こんなふうに考えております。
  186. 湯山勇

    湯山勇君 よくわかりましたが、それでは実態調査によって、確かにこれでやれないということであれば、補正その他の方法によって埋めて行く、そうでなければ、今年度だけの赤字だって、地方にとって大きいと思いますから、そういう措置がとられるものと期待をしますが、給付費の今の二割を引き上げるということも考えられないことではない。それは今度給付率の引き上げに関連を持ってくるわけですか、給付率はそのままで、ただ国の負担だけをふやして行こう、こういうことなのでしょうか、両方でございますか。
  187. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは給付率と関連して考えないと、厚生省としては完璧なものではないと思っております。これは十分一つ引き上げ、しかも全国ばらばらになっておりますから、これはどうしても国が財政負担をして行く限りは等しいものにいたしたい、こういう考え方でやっております。
  188. 湯山勇

    湯山勇君 これは大臣の一つ御努力を期待いたしまして、次に健保ですが、五人未満のこれを国保に入れるか、一般健康保険に入れるか、これは非常に重要な問題だと思います。で、社会保障制度審議会の答申も、五人未満のものを直ちに現在の健保と同じようにすることは無理かもしれませんけれども、被用者保険は被用者保険として、やはり建前を堅持すべきだという観点から、暫定的に第二種保険というのを答申しているわけですが、ところが厚生大臣の御答弁では、どれに入れるかきまってない。大蔵大臣はもうはっきり国保と、本会議でも委員会でも言っておられるのですが、これは私は厚生大臣のお気持はよくわかるのです。国保なら、簡単に厚生大臣も国保ですと言い切れるのを、それをがんばっておられる気持はよくわかりますが、がんばり切れますか、切れそうにないですか。
  189. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは何と言いましようか、池田大蔵大臣は、個人として国保に割り切って行きたいということをしばしば言っておりますし、閣議等におきましても、どうか国保で行こうじゃないかというようなことも、一、二度お話があったようでございます。私はこの実態を実はまあ知り過ぎておると言いましょうか、非常に知っておりますので、何とかこれは一つ特別な立法をして、しかも事務上にあまり金のかからないような、そういう事務上に金をかけたのでは意味がないわけですから、これらの零細な従業員なり、あるいは企業者に、あたたかい気持で実質的に一つ給付率のいいものを作りたい。そのために事務費の割合が非常に高くなるというようなことだと、どっちへ一体主眼を置いたのかというようなそしりを免れないわけですから、何か事務上に簡易化して、しかも実効のあがる、出た金がまるまる一つ給付費になって行くというような、何とかうまい制度はないかということでまだ苦慮しているわけです。これは健康保険に入れるにしても、この問題は解決しなければならないし、また第二種健保にしてもそういう問題はあるので、そこで一体どの程度の金が要るかということは、まだ実際において五人未満の従業者実態の数字が、正確にいってどの程度になるのかということは、いろいろの調べが多かったり少かったりしておりますものですから、それによって国費の出る割合も違い、事務費の計算も違うものですから、この問題をもっと突き詰めて私は最後の腹を固めたい。要は、国保だけへこれを追い込むと、どうも気の毒なように思っております。正直なところ、これは何とか一つ、五人未満の零細企業日本経済にこれは非常な協力をしているので、むしろこれはもっと改善をしてやらなければならぬ、ほかの面でうんと改善をしてやらなければならぬが、それができないでおって、なお医療費の給付の場合に見れないということは残念なことですから、これを何とか突き詰めて解決したいということで、まあいろいろ事務的の研究等もありまして、おくれておるわけでありますが、しかし、いつまでもこれは日をかけるわけにもいきませんので、適当な機会には結論をつけなければならぬと思っております。大蔵大臣も、まあなかなかむずかしいので、そういうふうに割り切った方が早く行くのじゃないか、あとでまた一つ別なことをやるのなら考えてみてもいいのじゃないかという意味だと思いますが、これはまあ政府部内で、そういう意見が対立するというようなところまで行っているわけでもありません。まあ私ども労働省の方へも今連絡をとって十分にやりたいと思っておりますから、当然のことでございますが、なおしばらく時日をかけて練ってみたい、検討してみたいと、こういうふうに思っております。
  190. 湯山勇

    湯山勇君 この問題は、まあ大臣の言われたような意味もありますし、現在相当数任意包括の形で健保に入っているものもあると思います。これが全部国保というようなことになりますというと、たちまち健保の後退というような事実もできて参りますし、それから今では五百万ずつ伸ばして行こうというときに、それらの人は、その態度がきまらなければどうしようか、国保へ入ろうか、健保へ入ろうかと迷って、結局入れない。そうなれば、その地域実施することにもまた影響をもってくるので、私は早急にこの政府の態度をおきめになる必要がある。その態度をきめる方向としては、これは大臣の言われる通り、ぜひがんばっていただいて、私どもは健保と同じようにしてもらいたいという希望を持っておりますけれども、そうばかりも言えませんから、せめて社会保障制度審議会の第二種を下らない程度の健保をぜひやっていただきたいと思います。それだけをお願いいたしまして、次はやはり政府の重要政策の一つである年金制度、これは昨日もお聞きできなかったのですけれども、四年間でおやりになるということですが、これはほんとうにおやりになるのでしょうか。
  191. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これも石橋内閣のときにやるということをきめまして、そうしてやる準備としての調査一つするということで、所要の経費を提示をしていただきまして、達識、練達の方々を五人を選んで、もって一つ調査をして行こう。その調査が完了いたしますれば、社会保障制度審議会にこれをかけまして、そうして主要な審議をお願いいたしたい、こういう方針でございます。まだ審議中でございますので、委員をどういうふうに選ぶかということも、突き詰めたところまで行っておりませんが、これはおそらくこの予算が通る時分には、いろいろな方が浮かんでくるだろうと思います。拙速主義というわけにも参りませんし、といって、あまり時間をかけるわけにもこれは参りませんので、すなおな気持で一つ十分りっぱな調査をしていただいて、その調査の結果に基いて所要の手続をいたしまして制度化したい、実施いたしたいと考えております。ただ、この機会ですから、その当時いろいろこれを取り上げるに際しまして意見の出たことを申し上げますと、やつぱり少くとも二年くらいはかかるのじゃないだろうか。年金保険そのものの実態から、あるいは国力の計算等からも、これはいろいろ膨大な資料が必要なわけでございまして、その二年間を調査々々で送るということは待ち切れないから、将来、老齢年金なり、母子年金なりにかわるように振りかえて行くというようなことは、それとこれとは別にして一つやって行こうじゃないかというような了解もできておりますので、あわせてお答え申し上げるわけでございます。
  192. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連しますけれども、母子年金あるいは養老年金という話は、参議院の選挙のときだったと思うのですけれども、社会党から三千円程度の無醵出年金制度を出しておる。そしたら、当時の山下政務次官は、自分は賛成だ、これは新聞その他で御言明になったのです。自分は賛成で、すぐ実施したい、こう言われたのですよ。これはその当時省議にかけられたか、かけられなかったか知りませんけれども、一般の受けた印象は、厚生省も賛成なんだ、そしてすぐ無醵出年金制度については、これはまた山下さんのことですから、母子が中心でしょうが、母子、養老の金額はわずか二千円ですけれども、その程度のものならばすぐにでも実施したい。こういうことを言われたのであります。これは少くともその当時政府の方針として国民は受け取りました。ですから二年先に本ものはやるのだ、まあそれまでにもほんとうの年金制度にかわるべき、私が申し上げるような無醵出年金制度かもしれませんけれども、それをやろうということかもしれませんけれども、山下厚生政務次官が約束されたことからいうと、それは一年か二年か先の話じゃなくて、ことしから私は予算に出てきて、ほんとうの国民年金制度の創設については準備期間を置いてやって行く、これは川崎厚生大臣のときも約束された恩給なり何なりの関係から、全体について年金制度を考えて行かなければならぬ。これは一昨年の話、そうして去年は厚生政務次官から、とにかく年金制度、養老、母子年金をやりましょう、こういうことだから、私はことしから、調査ばかりでなく無醵出年金制度は実施し、そして川崎厚生大臣が言われたのは、それは三年、四年かかるかもしれませんが、やるべきだ。こう思いますが、どうでしょうか。
  193. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 私の在任前のことを逃げるわけではありませんが、ちょっと承知いたしておりませんので、お答え申しかねますが、とにかく政府がやるという気持は、今度の三十二年度の予算にも母子加算というものを持ち出している。これは今打ち出したのは、いろいろの手続上の問題もございまして、要保護者のことに増加というようなこと、あるいは基準引き上げ等に貢献したことになっておりますが、とにかく政府といたしましては、今年度も母子年金と称して計上しようといった意気込みでございましたが、いろいろ年金制度の前にそういう言葉を使うのはどうだろうかというので、母子加算というような名称をとったわけでございますが、われわれといたしましては、もっと三十三年度になったら、一つこの母子加算というものを幅を広げて行きたい。それから老齢加算と言いますか、そういう形式によって一つ見合いのものを考えて行きたい。調査は、これは非常に年金制度の各国の例を見ましても、これはもう非常に膨大な調査を要することになっておりまして、しかも国力の判定というものもまた大事なことでございまして、醵出制で行くか、無醵出制で行くかという問題、ことに醵出制にいたしましても、現在の老齢者の問題、あるいはこの不具廃疾者の問題等もございますので、そういった諸般の問題に関する調査、それから国民の年令が逐次こう引き上がって参っておりますから、死亡率の逓減と相まって寿命が延びてきておりますから、そういう計算を科学的にやはりしなければならぬということ、いろいろ準備調査相当時間がかかる。やはり計算等の問題が、非常に高等数学でおやりになることでございましょうから、相当これは諸外国の例、また日本実情等も勘案いたしますと、これは幾ら急いでも適当な期間が必要だということになるのはやむを得ないのじゃないか。そこでそれまでの間に、できるだけ、その節には振りかえ得るような、年金に吸収されるようなものを一つ打ち出して行きたい。決して調査だけをして、あとは調査が終って、それから正規のものができるまでに何もしないというようなことではなく、調査即そういうような考え方を予算化して行こう、こういう構想でございます。
  194. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、あのときの山下政務次官の言った話というのは、あれは個人的な放言でしたのでしょうか。その点を厚生省の、その当時おられた局長さんに伺いたいのですが。それから党で検討されたのなら、今の厚生大臣も党の幹部としてお聞きになっていると思うのですけれども、相談がなかったのですか。それから今伺いますと、国民年金制度がほんとうにできるまでに、やりたいという考え方は母子加算に出ているのだから、それを来年度は金額をふやして無醵出年一金程度のものはやりたい、来年から、あるいは母子加算をもっとふやしたい、こういうお話、それから老齢者についても、その老齢加算というか、そういう加算という名目を使うか、無醵出年金という言葉で行くかはとにかくとして、同じようなものを上げたい、こういうことで言われてきたのでしょうか。あのときのことを私は思い出しますけれども、最近は選挙のときに演説会等に相当婦女子もですが、老齢者等もこられるのですね。そして選挙の話をこれは真剣に聞いておられる。ですから、あなたはどういう工合に考えられるか知らぬけれども、受け取った方は三十二年度から実施されるのだと、こう受け取ってきておりますから、やはり責任がありますよ。それだけに、もう一ぺんそのときのきめ方と来年度からの実施の方針と言いますか、抱負を一つ
  195. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは今私聞いたのでございますが、川時大臣のときには、年金は昭和三十五年度を目標にして準備をしたいというような答弁をされた例があるそうでございます。それから今の山下政務次官のことに関しましては、私そういった具体的な引き継ぎ等も受けておりませんので、ちょっとお答えしかねるのでございますが、ただ母子年金については非常に御熱心でございまして、いわゆる年金制度の年金という意味ではなしに、母子に特殊な事情があるのだから、年金を支給するように大臣骨を折れということを、始終私が就任以来言われておったのでございます。参議院の選挙等でどういうことを言われましたか、私も当時党の……。
  196. 吉田法晴

    吉田法晴君 委員会じゃありません。
  197. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 委員会じゃありませんか……。党の方も私は当時商工委員長をやっておったものですから、党の方は少し遠ざかっておりまして、党の方でどういうことを取り扱ったか了承しておりませんが、私ども昨年の参議院の選挙には、この問題を掲げて世論に訴えたことは記憶にないようでございますが。
  198. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ来年。
  199. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 来年とは。
  200. 吉田法晴

    吉田法晴君 来年度、ことしの母子加算をさらにふやして、年金というかどうかはともかくとして、ふやして、母子年金と言われるような程度のものを出したい。それから老齢者についても、加算して行くか、無醵出で行くか、醵出で行くか、それの金額、構想等について、先ほどの説明を補足していただきたいと思います。
  201. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 三十二年度は、これは予算の大詰めのときに、大蔵省と党と妥協してしまって、今年度四億五千万だけ母子加算、来年度は十一億円にふやそうという約束になっております。ことしは老人に対する加算は予算要求をしておりませんが、来年度においては、予算要求をして、一つ年金制度のかわる場合に吸収するような、頭を一つ出すことを、ことしから申し入れしておくから、来年度は十分この点に一つ相談に乗ってもらいたいという要求はいたしております。
  202. 吉田法晴

    吉田法晴君 その十一億というものは、それじゃ母子関係について、あるいは老齢関係についてどのくらいになるのですか。
  203. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは、今年度は御承知のように四億五千万というのは、来年度十一億に増加するという計算で了承してもらったわけでございます。
  204. 吉田法晴

    吉田法晴君 額は同じですか。
  205. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 一人当り千円という支給額。
  206. 吉田法晴

    吉田法晴君 ふやすわけじゃないですか、先ほどのではふやすようなお話でしたが。
  207. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 支給額の上をねらおうということなんです。ことしは要保護者の基準引き上げにきまった。来年はもっとボーダー・ラインの所得制限を上回るようなところへ持って行きたい、そういう相談をしようということになっております。
  208. 湯山勇

    湯山勇君 今の年金のことでもう少しお尋ねしたいのですが、調査会の結論が二年くらいかかって出た、その結論のいかんによって無醵出制にするか、醵出制にするか、こういうことですか。
  209. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは、それを諮ってきめるということも、これはそういうふうにもとられると思いますが、政府としてこれは非常に希望するものですから、そういった達識、学識経験の方に一つ十分御調査を願って、どっちがいいかというような比較された案を一つ作っていただいて、そうして社会保障制度審議会にも諮問いたしまして、そうして基本的な永久立法になります、恒久立法になりますから、そういったすなおな気持で整備したい、そうしてできたのを御答申願うことに当然になります。
  210. 湯山勇

    湯山勇君 そうすると、社会保障の一環としてやられますので、現在の恩給とか、厚生年金あるいは軍人恩給、遺族年金、こういうものとは関係しない年金なのかどうか、これを一つ
  211. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) この五人委員会は、おそらくそういうことを全部込みで御調査になっていただくだろうと思います。それからまたそれをはずした場合にどうなるかという調査もしていただけると思います。それをどうとるかは、そこが今後また政治の問題として考慮すべきことと思いますが、五人委員会には、社会保障制度として一本にしたらどうなるかということも御調査を願うことになろうかと思いますし、また今の現行制度のほかに、社会保障制度としての年金として考えてもらうという、やはりこれは二つのところをお願いすることになろうと思っております。
  212. 湯山勇

    湯山勇君 そうしますと、問題は、今まで考えておったのよりもはるかに大きい問題になると思うのですが、社会保障だとすれば社会保障の原則がありまして、最低保障という通念がございます。ところが現在の恩給とか、厚生年金には、そういう、ことが言えるかもしれませんけれども、軍人恩給とか、そういうものには必ずしも社会保障という、そういう最低保障という考え方は全般には通っていないと思います。そういうのを含めて社会保障制度審議会でやってしまうというようなことが妥当かどうか、私はむしろ厚生大臣としておやりになるのであれば、そういう面だけをおやりになるおつもりかどうかということが、ちょっと疑問だったものですから、お尋ねをしたのですけれども
  213. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) むろんそれは今の現行制度の根本は、これを中心として考えるのだが、しかし軍人恩給は将来なくなるものでございまして、その他の恩給制度は、これは永続しましょうがなくなるものもございますから、全部そうした場合にはどうなるかということは、やはり一応の議題として、ある程度の調査の結果というものは伺う必要はあるのじゃないか、こんなふうに考えておりますが、しかし、これはこれから委員の人選とか、委員会に諮問することはどうするかということは、まだきまっておりませんので、これはむしろ私個人の考え方をあるいは申し上げるかもしれません。その点すなおに申し上げているつもりなんでございまして、御批判を受けますれば、またよく参考としまして十分一つ尊重して参りたい、こういう気持でございます。
  214. 湯山勇

    湯山勇君 大臣のお考えはよくわかりましたが、結局調査して行けば行くほどむずかしいと思います。さっき高等数学ということをおっしゃいましたけれども、その高等数学よりももっとむずかしい政治数学になろうと思いますし、非常にむずかしいのじゃないかという感じがしますが、調査した結果、なかなか容易でないから、四年向うでやろうというのを見合そうというようなことは絶対ないということは、閣内でもう御決定になっておるのでしょうか、どうですか。
  215. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これは非常な強い決意で踏み切っておりますので、そこへきて、どういうような経済情勢、政治情勢になろうかわかりませんが、わが国の現下の情勢から言えば、戦争の大傷のあとで、むしろおれているというふうにも考えられますので、この際こういう制度を十分調査して、調査が完了して、そうしてこれを政治的の考慮も払ってやって行くという段階がきているのじゃないか、こういうふうに考えておりますので、一致して声援をちょうだいしているような実情でございます。
  216. 湯山勇

    湯山勇君 時間もたちますから次に移りますが、生活保護の中で義務教育に就学しておる者が、労働大臣にもさっきお尋ねしたのですけれども、結局学業を放棄して就労しておる、こういう数が、そのために昼間の学校をやらないで夜間の中学校というのをやっておるという事例がこれはもう二千名以上ございます。こういうのは、私はまあそれらについては生活保護の道もあるし、生活保護の中で六生活扶助もあれば、今の学校へ行く関係の扶助もあるわけですから、そういう事態はあってはならないと思うのですけれども、現実にはそういう事態がありまして、文部省の方もこれをとめるわけにいかぬし、とめて結局長欠児童にして行くわけにもいかないしというので、全く手を焼いているという、こういう事実があるのでございますけれども、こういうのに対しては、私は生活保護法のもう少し行き届いた扶助があれば、救えるのじゃないかという感じを持つのですけれども、大臣はどうお考えでしょうか。
  217. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) この生活の困難な方々に対しましては、できるだけ生活を保障する仕組みになっておりまして、もちろんこれは、それが十分であるという意味で申し上げておるのじゃないのでありまして、そういう場合に、まだ義務教育の児童がいろいろな作業に従事して、そうして勉強のし盛りに十分教育を受けられないというような者が、なお相当あるということにつきましては、われわれも実際大きな責任を感ずるわけでございまして、こういうことの一人でも一つないようにすることが、これはもう当然な政治のあるべき姿だと考えております。いろいろ伺うのでございますが、なかなか手も回らないと申しましょうか、あるいはまたときによりますと、これはまあ日本人の昔かたぎと申しましょうか、さむらい精神と申しましょうか、公けの世話にならぬで行きたいというようなお考えをお持ちになる方々がおありだったり、また子供心で非常な親孝行と申しましょうか、けなげな気持をもって、そうしてうちの生計をかばっているというようなこと等もございまして、今お尋ねになられたような事例が相当ありますことを、われわれこれは十分一つそういう家庭には特に目をかけて、勉強し盛りの子供に一つ学問に専念できるようにしなければならぬわけでございまして、まあ個々の場合でありまして、これは何かもっと手続等が手軽に、所要のめんどうを見て行けるような予算の仕組みと言いましょうか、何か制度を一つある程度変えることができれば、そういうことも避けられるのじゃないかと思うのでございますが、しかしこれもまたなかなか国の一定の様式行為を、そういう簡単なものにする弊害のことも考えなければならぬというようなこともございますので、気にしておるようなわけでございますが、私はできるだけ一つ保護者等の、今申し上げたような事例が、国の様式行為が非常にめんどうくさいということのために、病気にかかり、早くからかかれば治る人が治らなかったとか、あるいはちょっとの手続のめんどうで保護が遅れたというような例がたくさんございますが、こういう面を一つ十分末端にもっと簡易化し、迅速化する、そうして今言ったような例についても、何かあたたかい処置のできるようなことを一つ心がけて、一日も早く実施に移したいという気持でございますが、具体的にそれじゃどこまでやっておるかということになりますと、まだ、日も浅い関係もあり、手が伸びておらないわけでございますが、十分一つ労働省とも連絡をとりまして、今のような事態を防止して行きたい、そういう措置一つ末端に十分浸透させて行きたい、こういう気持でございます。
  218. 吉田法晴

    吉田法晴君 きのうお尋ねしたかどうか知りませんけれども、今手元に要望の資料がないのですが、その生活保護費の中で、盆暮の餅代あるいは灯籠代というのですか、それから学校に入りますときの学用品の補助と言いますか、そういうものを設けられたら若干緩和するのじゃないかと思うのですが、それで日雇いについて、これは日雇いとは、失業者で短期間とにかく何か仕事をさせて、まとまった仕事じゃなくても仕事をさせて、そうしてその次に仕事につくのだ、あれは臨時失業対策ですね、ところが実際に固定してきたのだから、年末あるいは盆にしても、若干の、何日分という就労日数なり、あるいは餅代を支給しているわけですね。それはほかにもそういう例があるのだから、生活保護について、そういう制度を設けることは、実情からすると、私は妥当な措置だとも思うのですが、今、学費補助云々という点がありましたが、今よりもさらにその点について新しくお考えになってはどうだかと、こう考えますが、どうでしょうか。
  219. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 私からお答え申し上げて、そのあとで社会局長から御説明をさせたいと思います。  今の何と言いますか、生活保護を受けてる方々が立ち上ろうとして、いろいろ仕事についた場合、その仕事によって入ってくる収入をみんな差っ引かれてしまう。働く意欲がそこで減殺される。それを何とかしないかという声が非常に強いわけです。これは厚生省のと言いましようか、国の今までの方針としては、法の前にはみんな平等にしておかなければならぬから、最低生活を保障しているのだから、それは引くことが当然なんだという、法律的な考え方、また制度上の仕組みとしては当然のことがよくわかるのでございますが、しかし立ち上るためには、多少の余裕がなければならないのじゃないかというような問題ですが、ことに今、吉田委員からのお話しのように、盆暮れ等の手当加算、それも引かれる。それじゃちっともあたたか味がないじゃないか。盆暮れの手当の加算を、生活保護を上回るから、それも引くのだということはひどいじゃないか。月々のものはやむを得ないとしても、少くとも盆暮れぐらいの加算は認めた方がいいじゃないか、あるいは家庭によって、立ち上るというような方々があったら、その差額は、民生委員が郵便貯金か何かにしてお預かりして、そうして立ち上るまで預かっておいて、そういう経済的な基礎ができれば、要保護からはずれて行くわけですから、むしろ国費の使用としては、その方が効率がいいのじゃないかという、こういう御意見もよく聞くわけでございます。これはもう何と言いますか、日本のここまできておった今までの制度を、今後多少なりとも、そういう考え方を入れたらどうかという、私は一つ大きな研究課題になっておるのじゃないか。実際問題として、要保護者が立ち上るという問題と、それから国の経済も、そういうことをさせることが究極においては支出が楽になるわけです。要らなくなって参りますから、そういうことも一つ考えたらどうだろうということなんでございまして、それと同じような意味合いに受け取ったので、私申し上げたのでありますが、この点が、私は今の最低生活を保障して行く場合に、何かの正当な理由づけによって立ち上りをさせるようなめどをつけるのが必要なんじゃないかというふうに考えておりますが、これはいろいろまた社会局長に、これは法律上むずかしい問題も一つ説明させたいと思いますが、このことが非常に私気がかりになっておるものですから、今お尋ねがあったので申し上げるわけでございます。非常に大きな問題だろうと思っておりますが、どう解決するかということでございます。
  220. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 学童の入学いたしましたときの費用でございますけれども、学用品はそれで見ておるわけであります。先般もランドセルがないじゃないかということでございましたが、これは一般の家庭におきましても、ランドセルの買えないような方もありますので、これはふろしき程度でがまんしていただくということでございます。服なども、大体新たに入学をいたしますところの生活保護児童の八割ぐらいには交付をいたしておるような実情でございます。それから盆と暮れに生活保護世帯に若干の金を出したらというふうなお話でございましたが、これもわが国生活慣習から言いますと、やはりそういったようなものは被保護階級におきましても必要ではないかというふうに考えられるわけであります。これは最低生活が何かということをやかましく言いましたら議論はありますけれども、実際問題としては、その程度のものが必要じゃないかということで、実はたびたび案も立てておるのでありますけれども、いろいろな事情で実現に達しないのでございます。それから保護世帯の収入の問題でございまして、それを差し引くことによりまして自力更生ということがむしろ阻害されないかということ、これは大臣がただいまおっしゃいました通りでございまして、私も大臣のお気持と全く同じ気持でおるわけでありますが、実施に当りましては、いろいろな問題があるわけでございます。これは吉田委員もたびたび御質問がございましたので、よく御存じの通りでございまして、たとえば日雇い労務者の問題にいたしましても、最近は盆暮れの収入というのは相当多くなりましたが、それを全然差し引かないということになれば、これは日雇いの労務者だけは、それだけのものが生活保護の基準よりプラスしたものになる。ところが日本賃金の現状というものは日雇いだけではないのでありまして、たびたび予算委員会で問題になっておりますように、低賃金の労働というのが実はたくさんあるわけです。そういうものは何も言わないから、これは収入をぴしっぴしっと引くのだ。それから日雇いの方は、いろいろやかましく言われれば引かないのだ。これはこういう取扱いはできない。そこでいろいろ考えました末、日覆いの労働の実態から言いまして、被服というものが非常にこれは破れたりするというようなことを考えまして、盆暮れの特別の手当の中で、千五百円に達するまではそれは被服費として、必要経費として、そのかわり被服だけというわけにはいきませんから、それと類似の仕事をいたしております者につきましては、同様の基準でそれを差し引いて行くというふうな取扱いで現在来ておるわけであります。これは昨年から比べますというと一歩前進したわけでありますが、これが今、大臣のお話のように、もう一般的な保護家庭にも同様な問題がございまするので、そういう点もせっかく今研究いたしておる次第であります。
  221. 湯山勇

    湯山勇君 夜間中学の問題は、今、大臣、局長の言われたのと、大体は合っているのですけれども、若干性格が違うところがあると思いますので、これは一つ御検討願いたいと思います。  それから次に、まああと気のついた点で大へん恐縮ですけれども、結核対策費の中で居宅隔離室の設置を本年から廃止されておりますが、これも厚生省御自慢の政策であったわけで、私どもこんな小さな額では何にもならぬのじゃないかということを申し上げたこともあったのですけれども、ことにこれをのけられたという理由はどこにあるのでしょうか、結局やってみてあまり用をなさなかったと、こういうことでございましょうか。
  222. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 私からお答えいたします。居宅隔離室は三十年、三十一年にわたって実施したわけでございますが、これは家庭で、生活環境が非常に混んでいるところで、開放性の患者が寝ている場合に、家族への感染を防止しようということでこの案を考えて、一部の府県ですでにやっておりましたので、これを国として取り上げて、地方に助成してやらせるということで始めたのでございます。ところが、まあこれは地方が実際にこの仕事を認識して、それを予算を組んでやります場合に国が補助して行くのでございますが、実際にその予算を国が考えましただけで、なかなか地方予算化できない。これは一つには、その地方で実際に敷地その他の関係で、なかなかうまくそういう希望者も出ないという面もございましたが、また地方の財政の点で、大した額ではないのでございますが、それがなかなか新規の事業でございますので、予算が計上されなかったということもございます。またもう一つには、地方の状況によりまして、必ずしもこの予算の単価でうまくそれが実施できないというような状況もございまして、二年続けてやってみましたが、いろいろ検討を加えなければならない点が出て参りましたので、三十二年度には一応見送って、将来もう少し考え直して、この政策はやはり居宅隔離患者の感染防止という点から、ぜひやっていかなければならない問題だと考えておりますので、再出発をしたいと、そういうふうに考えております。
  223. 湯山勇

    湯山勇君 そこで、結核の問題についてですけれども、結核対策は、これは全般的にいろいろ前進は見られますけれども、こんなことでは決して結核対策にはならないという指摘だけにとめておきたいと思います。これを申し上げておると限りないと思いますから、よくおわかりだと思いますので。あと、療養所の完全看護に伴って、つき添いを廃止して、看護婦をしてこれをやらしておる。ところが各地で聞くことは看護婦が過労になって倒れていく、相当数あるそうです。そういたしますと、看護婦の定員が足りないのじゃないかということを感じるわけですが、簡単でけっこうですが、どうなのか一つ
  224. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) これは、病院の管理運営の面から申しますれば、従業する人は、看護婦に限らず、多い方がいいのでありますけれども、しかし現段階におきましては、国立病院、療養所の運営は、この程度で御努力願い、そうして完全看護体制をしいたときには、今手元に数字を持っておりませんけれども、そのつき添い婦と振りかえにいたしまして、相当職員数を増加していきたい。それから単に人力だけでなくして、給食施設であるとか、あるいは洗たく施設であるとか、建物並びに設備についてかなり大幅の改善をいたしまして、機械化することによって人間の労働力を補う、こういう措置をとったのでございます。両々相待ちまして、大体は間に合っておるんではないか。もちろん御指摘のごとくに、看護婦の中で結核で倒れるものもございます。しかし、これは前からもあったのでございます。最近特にふえたというふうには、ただいまのところ考えておらぬのでございます。なお、この点十分に調査をいたしまして、実情に合うような措置を講じていきたいと考えております。
  225. 湯山勇

    湯山勇君 お考えは了解できますけれども、実際は決してそうなっていない。国立第一で、これはまあ御存じのように、藤原委員が入られて、あの人さえつき添いをつけなきゃどうにもならなかったという実情です。必ずしもすべての人がそうでないと思いますけれども、ことに結核の手術なんかしたあとの看護等には、つき添い婦のつき添い制度の廃止ということは相当響いておるし、過労で倒れておるというのも確かに相当多くなっております。これは一つぜひ数をもう少しふやしてやらないと、患者も困ると思いますので、御考慮を願いたいと思います。  それから軽症ベッドが今度整理になったのか、再編成されたのか、数が変っておりますけれども、実際はそれだけ使っておるのに、数の減った所があるようですが、これはどういうわけでしょうか。
  226. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) これは、そういう軽症ベッドとしてこれを上手に運営できる能力ある療養所にこれを再編成いたしたのでございます。これは減らしたということではないのでございます。
  227. 湯山勇

    湯山勇君 今まで、たとえば五十なら五十あったのが、四十になるとか、三十になるとかいうふうになったのはありませんか。
  228. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) たとえば従来外気小屋で軽症患者の医療をやっておったものもございますが、かなり腐朽しておったものはこれは整理いたしまして、軽症病棟に再編成したという関係からいたしまして、数が、施設によりましては増減しておる所もございます。
  229. 湯山勇

    湯山勇君 その施設によって増減しないようにしてやらないと、外気なら外気を廃止した、それでその定員も減ったということになれば、行き場のない者ができるわけですが、そういう者については何か特別の措置がとられますか。
  230. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) それはそれぞれの患者の病状に応じまして、特に軽症病棟に入れなくても、こちらの病棟でも間に合う人もおりますので、そういう振りかえ等をいたしまして、患者等に悪影響のないように、それぞれの施設において善処いたしたいと考えております。
  231. 湯山勇

    湯山勇君 それじゃ絶対数が足りない場合に追い出すより仕方がないと思いますが、どうなりましょうか。
  232. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 軽症病棟を再編成したことによって、そのことの理由でもって患者を特に退院せしめたという事例はございません。
  233. 湯山勇

    湯山勇君 これは、そういうことになりそうだという心配を訴えてきておるのがありましたからお尋ねしましたので、そういうことがないということであればけっこうだと思います。  それから、次はまた変りますが、蚊とハエの撲滅運動ですが、これは毎年私は申し上げておったのを、今度はだいぶ増額になってけっこうだと思うのですが、御説明によれば、これは奨励的なような性質が強くて、必要な所に必要に応じてやっていくというような御説明ではないようですけれども、先ほどの御説明では。私はやはりもう少し徹底して、たとえば簡易水道が伝染病の多い地区に対して積極的になされたように、下水道の施設等で……。簡易下水道というのは簡単なものでしょうが、そういうことが積極的にやれるようにお計らいにならなければならないと思う。しかし、やはり非常に増額になったとはいえ、これではとても目的は達しられないというように思いますが、これは大臣の御所見を伺いたいと思います。
  234. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) この蚊とハエの駆除運動でございますが、これは、何といいますか、全国的に甲乙なくやりたいという考えなのでございます。特定の地区を特に指定してやろうという気はないのでございますが、しかしこの予算が非常に、率からいうとふえたのでございますが、額からいいますと少額のものでございますから、それを特に有効に一つ使いたい、こういう運動は常時熱心に継続してやっていただかないと効果が上らないものでございますから、この仕事に非常に協力された団体等を表彰しよう、ほめて、そういった運動で責任を持つようにして、長く持続させようという考えでございます。決して特定の所だけやって参ろうという考え方はないのでございます。今、湯山委員の述べられたように、伝染病がはやって、そうして簡易水道をせっかく作って飲料水を確保したのだから、その機会に一そう下水その他の汚物の処理等をやらして、蚊とハエの撲滅をしたら効果が上るのではないかという御質問でございますれば、そういうことこそは水道布設のときに総合的な施策として相談したい、こう思っております。今まで厚生省は、ばらばらでなく、強力に推進して参ったつもりでございますが、今後特に予算の消化と事業運営等は、そのように持っていきたい、こういうふうに考えております。
  235. 湯山勇

    湯山勇君 そこで、この下水の、まあ完全なものというものはなかなかできないと思います。そこで簡単な下水をやはり厚生省の方で設計されて、こういうものに対してはやはり二分の一なり三分の一なり国が補助するというような対策をお立てになることの方が、今、大臣の言われたような趣旨を達成するためにも私は有効じゃないかと思うのですが、そういうお考えはございませんでしょうか。
  236. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 御指名でございますので、お答えをいたしたいと存じます。  ただいま御指摘の、きわめて簡易なる姿の下水、つまり水はけをよくするという問題でございますが、この点は、御指摘の通り地方実情、特に海岸その他の低湿地等におきましては、きわめて衛生上また生活上必要なことでもあり、有効適切な効果が上る対策でもございます。そこで、ただいま大臣からお答えがございましたように、本年は特に蚊とハエの駆除等に重点を置きまして、水はけの悪い地域については、みぞとなっておりますが、いわば簡易下水道ともいうものを逐次設けて参りたいという考え方でございます。しかしながら、この仕事は、何分にも本年最初の仕事でございますので、今後十分、わずかな予算ではございますが、これを有効に実施をいたしてみまして、その結果、さらにこの仕事を将来発展をさせまして、かような不衛生地帯の解消に一つ資していきたいという考えでおりまして、従って三十二年度におきましては、まず最初の試みとして実施をさしていただくというふうにお考えいただきたいと思います。  なお、農村地帯等におきまする環境衛生の面で、ごみの焼却等がまたきわめて重要な施設でございます。これらの点も、従来は非常に顧みるところがなかったのでございます。しかし、今回、やはり蚊とハエの駆除等を中心といたしました事業の中に、これをもさらに含めまして、簡易焼却炉というものを、わずかではございますが実施をして参りたい。これも先ほど申し上げましたように、今後の成果を見、十分な運営をいたしてみまして、さらに今後は地方実情に応じて普及をはかっていきたい、かような所存でございます。
  237. 湯山勇

    湯山勇君 これは一つ、やはりことしの倍率ぐらいまた来年も伸ばしていただかないと、目的が達成されないと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。  それからついでに、ネズミですけれども、これは海岸の島嶼部でネズミの発生がひどくて、まさに村が全滅しようというような所が瀬戸内海の沿岸等については多いのでありますが、こういうようなものについては特別の対策をお考え願えないものでしょうか。対策を立ててやっているようでございますが、なかなかネズミが撲滅できないのです。
  238. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) ただいま御指摘の、瀬戸内海沿岸等におきまするネズミの害につきましては、地域によりましてはかなり著しいものがございます。のみならず、全国的に見まして、ネズミの被害というものは、衛生上また産業上からもきわめて膨大なものがあろうかと存じます。私どもは、かねてこれらの対策を試験的に実施をして参っております。来年度の予算におきましても約七十万円程度、この実験費と申しますか、実験を意味した経費に振り向けて、この仕事を進めて参る……。ただ、何分にもこれはきわめて困難な事実でございまして、従来、過去数年間これを繰り返しておりますが、まだこうすれば確実にネズミがいなくなるというような段階にまで、技術的にもまたやり方にも自信を得ておりませんので、今後一そう私どもはこれらわずかな予算ではございますが、これによりまして技術的な面並びに実施上の面を十分に確立いたしまして、その結果、これならば大丈夫だという自信を得ましたら、全国的にネズミの駆除を実施していきたい。かように考えております。
  239. 湯山勇

    湯山勇君 特に今の集団的な発生の著しい所ですね。これについては今お答えいただかなくても、ぜひ来年度においても何らかの対策を立てていただきたいと思います。  最後に、時間がありませんので保育所費のことですが、ことし、予算ができるまでにいろいろいきさつがあったことは私も存じております。が、これによってやはり昨年よりもやや困難になるのじゃないかということを懸念しておるのですけれども、その点はどうなんですか。
  240. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) まず保育所の問題としましては二つあると思います。第一は、新たに建設する場合の問題と、それから経営の問題。おそらく御質問の点は後者だろうと思いますけれども、これにつきましては、経費としまして、三十二年度におきまして約二十五億を予定をいたしておるのでございまして、金額としましては前年度よりも増加いたしておりますが、ただ、実情については、御承知の通りに問題な点は、現在保育所に措置をされておりまする児童のうち、これをしさいに検討すれば、措置児童として適当でない、すなわち児童福祉法に言っておりまする保護者の疾病、あるいは労働等のために保育に欠けるということに必ずしも該当しないものが若干入っておるとの問題でございますが、この点につきましては、多少そういう事実があるということは、これはいなめないことだと私どもも考えておるのでございます。従って、ここに問題の一つのポイントがあるとすれば、将来保育所の健全な発達をはかっていくためには、やはり児童福祉法に定めてありまする本来の保育所あるいは措置というものの建前を守り、かつ守っていただくように指導していただくということが根本であろうと思いますので、その線に沿って十分指導監督をして参りたいと思っておるのでございます。もちろんこれは非常に保育所自体もすでに八千六百カ所、それから保育所へ入っておりまする児童も六十数万という多数ございますので、これはなかなか役所だけでそういう目的を達することはむずかしいと思いますので、地方庁はもちろんのこと、あるいは市町村あるいは実際の経営に当っておられる方の御協力を得まして、保育所についてとかくの非難なりそういったものが出ることがないように、今後十分努力をして参りたいと考えております。第一段の建設の場合でございますが、これは予算的に申し上げますと、確かに昨年よりも補助金は減っておりますので、従って昨年よりも数としては少くなる、かように考えていただきたいと思います。
  241. 湯山勇

    湯山勇君 私は、ことしの厚生予算の中では保育所関係が一番冷遇されておるのじゃないかという感じがするくらいです。子供のためにやってやることですから、大臣もずいぶん御努力願ったことはわかります。国の負担率の切り下げを食いとめたという御努力はよくわかりますけれども、一部悪いものがあるからといって、全体が窮屈な思いをするということは、やはりやり方としてはよくないと思いますので、これによってもし窮屈な面が出てくるようでしたら、補正とか何らかの措置で、ぜひ一つ見ていただくような御努力を願いたいと思います。それからもう一つは、保育所で働いている人の待遇が非常に劣悪なんです。これはよく御承知だと思いますが、これらの改善については、何か対策がないものでしょうか。
  242. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 保育所の職員の待遇がよくないということは、私も実は就任以来心を痛めておる次第でございまして、今度の予算の折衝等におきましても、基準六%の引き上げ、あるいは超勤手当の二千円というようなところまでようやくこぎつけたわけでございますが、しかしこれはほんの一部でございまして、いろいろ今保育所自体の問題等の誤解といいましょうか、基本的なあり方の問題について、十分納得してもらわなければならぬ問題があるようでございます。いろいろの面から一つ段取りをつけまして、十分とまでは一挙にはなかなか困難ではあろうかと思いますが、しかし他の施設等に従事しておられる方々に肩を並べて、そのあとについていくようなところまで、さしあたり水準を持っていきたいというような気持で一つ予算化していくような措置を講じたい、こういう気持で、その後折衝いたしておるような現状であります。今児童局長からも説明がございましたように、どうも実態納得がおくれていることは相当やはり理由があるようでございまして、われわれが反省し、その運営等にればならぬ面があるわけでありますから、それが保母さんにしわが寄ったのでは申しわけないと思いますので、御趣旨よく私も同感でございますので、努力いたしたいと思います。
  243. 湯山勇

    湯山勇君 最後に一点だけお伺いしますが、去年は地盤沈下がなくなつたので、簡易水道の方でそれをカバーするということでしたが、今年もやはり地盤沈下地帯の簡易水道については――地盤沈下の地帯の水道というのが昨年からなくなったのです、大臣御承知だろうと思いますが。そこで、そのなくなった分といえども、工事査定を受けておるわけです。そこでやはりまだ相当残っておりますから、今度の簡易水道の割当において、地盤沈下地帯に対しては特別な御配慮がなされてしかるべきだ、昨年もそういうふうになったかと思いますので、やはり本年もそういうふうになされるのかどうか、これを最後に承わりたいと思います。
  244. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今年は先ほど御説明申し上げましたように、相当増額を見ております。簡易水道の効果といいましょうか、要望は非常に強いものがあるわけでございまして、相当査定をしなきゃならぬことは御承知の捕りでございますから、今までとって去りました査定方針を十分尊重いたしまして、支障のないようにしてやっていきたいと、こう考えております。御了承願います。
  245. 湯山勇

    湯山勇君 地盤沈下地帯については特別な考慮がなされるのですか。
  246. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今まで通り見おります。
  247. 八木幸吉

    八木幸吉君 最初に引揚者の人数のことについて伺うのですが、たしか去年の日ソ共同宣言の特別委員会で、当時の厚生大臣が昨年の九月末現在だと思うのですが、ソ連の残留者は、厚生省の調べで一万五十二名ということを御発表になっております。三月十六日でしたか、帰国者、死亡者、残留者などの名前の発表がありました。それが千八百二十七名、それを引きますと八千二百二十五名というものは厚生省の調べを基礎としてのソ連残留の消息不明、もしくはその他の人ということになるわけなんですが、この人数について、その後何か新しい事態が出たかどうですか。
  248. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 引揚援護局長から、数字のことでございますから、詳細説明させます。
  249. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) 現在ソ連地域に残っております未帰還者の総数は九千九百六十一名でございます。これは本年の一月一日現在でございます。これは一人片々名前を把握している未帰還者でございます。先般ソ連から発表になりました数字は、今日までの調査によりますというと、樺太に終戦当時おった人のものであります。樺太地域につきましては私の方で全部名前を把握しているわけじゃございませんので、私の方で把握している未帰還者以外にもおるようでございます。従ってあの数字の中には、先ほど申しました九千九百六十一名の中に入っている人もあり、入っていない人もあるわけであります。それからお尋ねの先般発表になった者以外の未帰還者の状態、ことに現在ソ連本土において生存している者の状態につきましては、おおむね二百名をこえております、それは二百名と申しますのは、昭和二十五年以降ソ連本土において健在であったという資料がある人であります。従って、特別の事情がなければ現在も生きていると考えるのが妥当である人数が二百名をこえております。その中で、内地へ手紙をよこしておりまして、ぜひ帰りたいという希望を表明しているものも三十名程度ございます。三十名を除いたあとの二百名ぐらいの中でも、これは一人々々はっきりわからないのでございますが、相当数帰りたいという希望を持っている人があるのじゃないか。これらについては現在ソ連からは何も言ってきておりません。これらを含めましてソ連地域に残っている未帰還者につきましては、昨年名簿を提出いたしました。その名簿には、名前と本籍地とそれから生年月日、性別及びその人の最終のソ連地域における生存しておった場所と年月日、詳細資料を添えまして、これについて向うに調査を要求しているわけであります。もちろんわれわれの要求といたしましては、全員について現在どうなっているかを知りたいわけでございますが、十年もたっている今日でございますので、一々その場所へ行って調べてみましても調べようもないわけでございますから、ソ連側が現在保有している資料に照合して、資料のあるものはその資料によって生死がわかるわけでありますが、生存している者については、現在どこにいるか、どういう状態で生存しているか、また帰国する意思があるのかないのか、死亡者については、いつどこでどういう病気で死んだか、それから資料のないものはいたし方ございませんから、資料がなければないということを調べてもらいたい、こういう要求をしたのであります。これにつきましては、日ソ共同宣言によって、調査するという確約をいたしておりますが、その後、機会があるごとに外務省の方から向うに要請しておりますが、構太関係調査につきましては、おそらく昨年あたり実施したと思われるふしがございます。それが今回の回答となって現われたのじゃないかと思います。そこで、いずれ樺太に配船をいたしまして引き取るわけでございますが、その結果、帰還者の情報によって、樺太に残留している方の全部を調べていきたい。なお、残った問題につきましては、先ほど申しましたように、ソ連本土において現在生存していると思われる人の問題、それ以外に状況不明の人の問題が残っているのでございますが、これは今後強くソ連側に調査回答の促進を要請していきたい。ことに現在生存していることが確実と思われる人につきましては、さっそく私どもの方から、今回の措置に関連いたしまして、氏名をあげましてこれらの方々について至急調査してもらいたい、できれば今回帰る人と一緒に帰してもらいたい、こういうことを外務省を通じてソ連側に要望いたしているのであります。
  250. 八木幸吉

    八木幸吉君 そうしますと、九千九百六十一名の中で、二百名だけは生存がはっきり確認されて、あとの人は大体死んでいるというふうに見られるのですか。
  251. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) 九千九百六十一名の中で、樺太を入れまして、昭和二十五年以降健在であったという資料のある人は、四百五名であるわけであります。この中には、ソ連本土と樺太とあるのでありまして、これらの方々は、先ほど申しましたように、特別の事情がなければ現在生きている、こう判断するのが妥当であると思います。ところがそれ以外の方は、死亡したという資料はあるが、きわめて不確実でございまして、死亡公報を出すだけのまだ措置をとるには不十分である、あるいは昭和二十五年以前に生存しておったというその大部分は、終戦直後の資料でございます。入ソしたという直後の生存資料でございます。今日までソ連地域において死亡通知をしている者は五万名をこえております。大部分はソ連に入ソした二十五年の暮から二十九年の春にかけての死亡者が大部分である。極端に申し上げますれば、氏名が判明しないまま死んでいかれた方が相当あるわけであります。というのは、ソ連が武装解除をして、部隊をソ連本土に連れて行った場合に、部隊はもうこういうふうに入りまじってやっております。従って、同じ部隊におりましても今まで一緒におらなかった方々でございますので、そこになくなった方がおりましても、その方がだれであるかわからない、洋服を着ているから、洋服の裏をひっくり返せば名前はわかるのではないかと申しましても、何枚も着ているし、同じ洋服であっても、兵隊ですから数人の手を移ってきておりますので、だれかわからない、日本側さへわからない者があるわけであります。またソ連の実情を見ますというと、ソ連が捕虜名簿というものを作製いたしましたのは二十一年の春ごろのようでございます。従って、私の方ではソ連に回答を要請いたしましても、資料のないものが相当あるのじゃないか、こういうことをまあ観察いたしているわけであります。しかし、まあでき得る限り人事を尽して、わかる限りの調査を願う、まあそういたしませんと、いつまでもこの状況不明の問題が解決しませんので、相手国の協力を求めて、でき得る限りの手段を尽しても、なおかつわからないという場合には、最後の手段措置をとらなければならない、その前に、できるだけの措置をとりたいと思っております。
  252. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に、医務出張所のことを伺いたいのですが、これは各県でどんな仕事をするのですか。
  253. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 医務出張所は北海道と東北、関東というふうに各地区ごとに一カ所置いてございます。全国で八カ所でございます。その地域にあります国立病院、療養所の運営に関する監督と指導をいたしております。
  254. 八木幸吉

    八木幸吉君 本省直轄で一体監督はできないんですか、できるんじゃないのですか。そういう所に三人や五人置いたってしょうがないのじゃないのですか。
  255. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 病院の経営というものは非常に複雑でございまして、多数の入院患者の生活を確保したり、またその治療に任ずる、毎日冷々非常に変った多数の外来患者を取り扱う、それからそのために従業している人間は非常に多いのでございまして、国立病院、療養所の中の従業員、職員は全部で四万人ほどでございます。そういうような複雑なものでございますので、東京にある中央からだけでは、全国の毎日々々動いておりますところの病院の指導とか監督というものはなかなかできにくいのでございまして、どうしてもそうした仕事をしております病院、療養所の監督には出張所が必要だと思っております。
  256. 八木幸吉

    八木幸吉君 国立病院は幾つありますか。
  257. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 七十四カ所ございます。
  258. 八木幸吉

    八木幸吉君 七十四カ所を八カ所で監督するのですと、本省でやるのとあまり違わないのじゃないのですか。
  259. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 国立病院は七十四カ所ございますが、結核療養所が百八十二カ所ございます。それかららい療養所が十カ所ございます。精神療養所が三カ所ございまして、そのほか脊髄損症と申しまして、非常に特殊の疾患を取り扱う所が一カ所ございます。全体で約三百カ所ございます。
  260. 八木幸吉

    八木幸吉君 私の申し上げるのは、八カ所で三百カ所をやるのですから、四八、三十二で四十カ所を一カ所で監督するわけですね。それなら何も地方に置く必要はないのじゃないか、私はこう思いますけれども、これ以上は議論になりますから差し控えます。  次に病変米のことを伺いたいのですが、あれは一体もう検査は終ったのですか。
  261. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 病変米につきましては、現在在庫品につきましては、昨年ようやく学者の一致した結論に達しまして、それぞれ処分方法を定めたわけでございます。従って、その処分方法に従いまして逐次処分をいたしておりますが、ただ、今までどの程度処分されたかはちょっとはっきりいたしておりませんが、資料で後ほどお答えをいたすことにいたします。
  262. 八木幸吉

    八木幸吉君 その学者の説できまつたとおっしゃいますが、この黄変米ですね、ああいったものの再搗精をすれば無害だとはっきりわかったのですか。
  263. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 学界の全く一致した意見というものを得るのは、かような複雑な問題ではなかなか困難でございますが、その度合いにもよりますが、きわめて軽度なもの、たとえば外見上全く正常と認められるようなものは無害である、しかしながら、さらに念のために再搗精をするなり、あるいは再検査をして逐次食糧に向けていこう、こういうことでございます。
  264. 八木幸吉

    八木幸吉君 話が非常に抽象的なんですが、時間の関係もありますので、たとえば何。パーセントのものはどの程度は差しつかえないというふうな、もう少しデータに基いたその所見を資料にして、この席でなくてようございますから、ちょうだいいたしたいと思います。  それからこの間予算委員会で伺ったのですが、たしか最近に一万トンほど処分されているんですが、非常に病変米についてはわれわれは神経質に考えるのですけれども、これはみそとか、しょうゆとか、せんべいとか、そういったようなやはり一種の食糧品の方へ払い下げられたのか、あるいは工業用のアルコールのようなものに払い下げたのか、その辺のことは御承知でありますか。
  265. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この処分をいかにするかということは、これは必ずしも厚生省の所管でございません。私どもは同じ病変米と申しましても、きわめて痕跡的の存在のもの、かようなものにつきましては食糧に回して一向差しつかえないものと、かように判断をいたしております。
  266. 八木幸吉

    八木幸吉君 その一万トンは全然無害のものである、こうお考えになっているのか。やはり有害、無害という問題になると、厚生省関係になると思うが、その点いかがですか。
  267. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これは処分に当りまして、かようなデータであるが、どうだろうか、食糧に回しても差しつかえないかいなかという点を、念のため農林省から厚生省に連絡をして参っております。厚生省といたしましては、そのデータに基きましてそれぞれ意見を出している、こういうことでございます。
  268. 八木幸吉

    八木幸吉君 それじゃもう一ぺん検査の方のことを伺うのですが、この前、今の楠本部長がいらっしゃるときに伺ったかとも思うんですが、検査員は非常に少かったのですね。その後におふえになったのか、あるいはどれくらいの歩合の抜き取り検査で今やっていらっしゃいますか。
  269. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 現在は大体五十袋につき一検体、一検体をさらに十に分けて検査をしております。五十袋に一袋、こういうふうに……。
  270. 八木幸吉

    八木幸吉君 もら少ししろうとわかりでどういうことですか。私は前に調べたら、五千トンに三百粒という数字があったのです。五千トンに三百粒といったら五トン貨車千台にたった一握りじゃないか。こんな検査で何がわかるかと、私は言ったのです。五十袋に一俵というのは割合にしたらどうなんですか。たとえば百トンに何升とか、何石に何升とか、しろうとわかりでどういうことなんですか。
  271. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 五十袋につきまして調べる量は約三百グラム程度でございます。それをさらに十に分けて培養する、こういうやり方でございます。
  272. 八木幸吉

    八木幸吉君 どうも説明がくろうと向きでわからぬのです。たとえば百石の米について何合検査しますか。
  273. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 一袋が約七十キロでございます。七十キロの五十倍について三百グラムというふうになっております。
  274. 八木幸吉

    八木幸吉君 まああとで計算してよく考えますが、非常に話がわからないのですが、つまり何分の一になるのですか。この前五千トンに三百粒ということだったのですね。非常に少いじゃないか。こんなことじゃサンプルにならないと、こう言ったのですが、それじゃ逆の質問をしますが、検査は何人でやるのですか。
  275. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これは検査の方は十七人が検査を担当いたしております。
  276. 八木幸吉

    八木幸吉君 病変米は今、在庫十万トンありますね。十万トンを全部十七人で調べるのですか。在庫米十万トンあるわけですが、十万トンを十七人で全部一応調べるのですか、そのままの割合において。
  277. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 今十七人と申し上げましたのは、今でもどんどん米は各港に入っております。それを五十袋に一俵の割合でとりまして調べておる職員が、検査しておる職員が十七人でございます。なお現在約十万トン余り滞貨いたして在庫しております品物につきましては、先ほどお答えをいたしましたような一つの検査方法を立てまして、これによって、これは別個国の試験機関あるいは農林省の試験機関等で検査をいたしておるわけであります。
  278. 八木幸吉

    八木幸吉君 どうもこの話よくわかりませんから、資料一つわかるようにお出しを願いたいと思うのです。  もう一点だけ伺って私やめますが、国立病院とそれから現業病院との設備それから内容、内容という言葉は少し悪いかもしれませんが、設備や入院料といいますかね。非常に差があるのですね。そこで露骨に言えば、現業病院は非常に設備がりっぱであるし、どこが補助しているのかしりませんが、健康保険の点数なんかも非常に安いという。国立病院なんかに行きますと、非常にそれはもうはなはだしいボロ病舎がたくさんある。それで一体現業病院の赤字はだれが補給しておって、健康保険の点数なんかはどれくらいの開きがあるのだというようなことは、厚生省では大体おわかりになっておると思いますので、今簡単に要点だけ伺って、あと資料でいただきたいと思います。
  279. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 国立病院はすべて健康保険の診療報酬と同じでやっております。ただいまお話しの現業病院というのは、おそらく国鉄病院とか逓信病院をお指しになるのかと思いますが、あれはそれぞれの経営主体別によって違いますけれども、大体一点が五円前後であります。六大都市におきましては、一点十二円五十銭、それ以外では十一円五十銭でございますが、ただいまの御指摘の病院では、大体五円前後でやっているというふうに聞いております。ただ、これがいかなる方法でやっておるか。いかなる経営方法で赤字を埋めているかということは、これは私どもの方では十分わかりません。
  280. 八木幸吉

    八木幸吉君 その赤字はどこでわかりますか。たとえば国鉄なんかは十七億円くらい赤字があるということが何かの雑誌なんかに出ておりましたが、あなたおわかりになっておられますか。
  281. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) これはやはりそれぞれ当該病院についてあるいはその経営主体について調査する以外は、わからないのじゃないかと思います。
  282. 土田國太郎

    土田國太郎君 身体傷害者福祉法で設置を義務づけられておりながら、今日まで実現を見なかった国立ろうあ者更生施設を新設して、これらの人々の再訓練と社会復帰のために貢献することにいたしますと、こういうことになっておるのでありますが、現在のろらあ者の保護とか援助とかいうような現状はどうであるかということ、まず第一に大体どのくらいの数のあるものなんですか。これと、その今の保護施設、これからどういうことをおやりになるか、具体的に簡単でよろしうございますから、要点だけお聞かせ願いたい。
  283. 安田巖

    政府委員(安田巖君) ろうあ者の数は一昨年の十月に調べましたものによりますというと、全国で十万人の数字が出ているのであります。これはきわめて内輪なものでありまして、とかくこういうものを調べますときには、内輪の数字が出てくるようであります。もっとたくさんいると思います。現在やっておりますのは補装具と申しまして、これは具体的に申しますというと、ろうあ者の場合には補聴器でございますが、これをまあ生計の困難の度合によりまして無料であるとか、あるいは安い費用で渡す、本人に。聞こえないからよくこう耳に携帯ラジオのようなものをちょっとはさんでおりますが、ああいうようなもの。それから更生援護施設、これはまあごくわずかでございまして、三百万円ばかりが出ておるのでございます。それから更生医療と申しまして、耳が聞こえない者に何か医療を加えることによって、それが若干でも障害が軽減するといった者に、四百幾ら、四百五万円でございますが、大体そういったようなもので、きわめて率はわずかであったわけであります。それで今の身体障害者保護更生の施設というのが各地方にありますのですが、そういう所にろうあ者が入りまして、たとえば洋服を作ることを習うとかということをやっている所が少々ございます。ろうあ者自体の施設というのは、授産施設でもって大阪と愛媛でございましたかにあるくらいで、きわめて少いのでございまして、そういう意味から、今度国立のろうあ者の更生指導所を作るということは、非常にろうあ者にとりましては喜ばれている、期待をされている計画でございます。
  284. 土田國太郎

    土田國太郎君 国立の授産施設ですね。
  285. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 国立のろうあ者の更生指導所という意味。これが予算額で申しますというと建物の費用と、それから事務費を三カ月分見てあるのでございますけれども、一緒にいたしまして五千七百万円ばかりでございます。
  286. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がありませんから、ほかのことは別の機会にして、一点だけこれは大臣に聞きますが、私どもの所に何個所からかのらい療養所から、療養所の中に留置場を作ろうとしている、これは療養所の患者を罪人視して取り扱おうとする、こういうことで人権問題ではないかということで、そのとりやめ等について訴えをしてきております。大阪地方とそれから関東のどこかであったと思います。そういうあれが療養所についてあるのか。なるほど警察に病監というものもあるわけですが、そういう所で作るならば別問題だと思います。これはどこにどういうあれがあるかわからぬからあれですけれども療養所の中に留置場を作るということになりますと、この間からこれは健康保険なり入院料、あるいはつき添い婦廃止云々ということで療養所の職員厚生省等にも来られた。しかし彼らが病院の中で――あるいは病院の外に出ることは大へん好ましくないことでありますけれども――訴えをどこかにしたいということは、これは基本的な人権の問題だと思います。それをあたかも、その訴えをいたしますことを罪悪視して、そうしていわば、そういう運動と申しますか、あるいは動きを、留置場でもっておどかすと申しますか、留置場に入れる。こういうことになっては、これはやはり人権問題になると思うのでありますが、療養所の中に留置場を作るという方針が、各地でとられておる場合に、これは政治問題ですから、大臣にお答えを願いたいと思うのですけれども、そういうことはやめるべきであって、作るなら、警察なり何なりの留置場、あるいは拘置所の中に、そういうものを一時作られるというなら、これは別問題でありますけれども、おやめになるべきだと思うのでありますが、どういうようにお考えになりますか。
  287. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま吉田会員のお尋ねの、らい療養所におきまして、いろいろ被疑者といいますか、犯罪の嫌疑を受けた者を留置するというようなことで、今の問題が起きておることを、私も承知いたしております。御承知のように、らいの伝染を防ぐといいますか、取扱いを慎重にということでございましょうが、大体十一ヵ所らい療養の施設がございまして、そこで大体その付近に、いろいろ犯罪か、相当重犯罪もあるようでございますが、そのうちに、全生園と駿河療養所、この二つだけがその施設がないというので、これはまあ警察の所管なんで、私の方ではないのでございますが、全生園の方に申し込みがございましたのですが、厚生省といたしましてはお断わりいたしまして、今、中止してあるようでございます。それから駿河療養所の方は、でき上っておりますが、電気工作物の関係か何かで、まだ使用しておらぬというふうな状態であります。  二つだけ問題になっておる。全生園の方は中止している。御殿場の駿河療養所の方は、電気工作物の関係等があって、まだ使っておらぬように聞いておりますが、集団生活をしておるすぐ近い所らしいのでありまして、非常にらい患者からきらわれておると申しましょうか、そういう施設は取り払えというような要望もございまして、全生園の方は中止しているようでございます。  なお詳細の事情でございますれば医務局長からお答えさせますが、警察の方がむしろ十分承知と思いますから各機会にまたお調べ願いたいと思います。
  288. 小林武治

    主査小林武治君) では、厚生省所管につきましては、一応質疑を終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 小林武治

    主査小林武治君) 御異議ないと認めます。   ―――――――――――――
  290. 小林武治

    主査小林武治君) それでは次に大蔵省所管を議題といたします。大蔵政務次官、御説明を願います。
  291. 足立篤郎

    政府委員(足立篤郎君) ただいまから昭和三十二年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について、去る二月一日内閣提出いたしました予算書に基きまして御説明いたします。時間の関係もございますので、なるべく簡潔に御説明いたしたいと存じますので、詳細につきましてはお手元にお配りいたしました書類によりましてごらんを願いたいと存じます。  まず、一般会計歳入予算額は、一兆一千三百七十四億六千四百八十八万円でありまして、これを前年度予算額一兆三百四十九億二千二百五十二万円に比較いたしますと、千二十五億四千二百二十六万円の増加となっております。  以下、各部について簡単に申し上げますと、第一に、租税及び印紙収入の総額は、九千四百六十九億一千五百万円でありまして、これを前年度予算額八千二百六十七億一千七百万円に比較いたしますと、千二百一億九千八百万円の増加となっております。これは、現行の税法によって算出いたしました収入見込総額一兆百八十九億三千三百万円から、今国会に提出の税制改正案による所得税の減収額九百五十億七千八百万円を差し引き、これに法人税、揮発油税、とん税、印紙収入の増税額二百三十億六千万円を加えたものでありまして、現行の税法によって見積った場合の収入見込総額に対して七百二十億一千八百万円の減収となっております。  次に、各税目別内訳を申し上げます。  まず、所得税につきましては、現行の税法による収入の見込額は、三千二百五十一億三千九百万円となりますところ、所得税負担の軽減合理化をはかるため、諸控除の引き上げと税率の引き下げによる一般的減税を行うことによる減収額千九十一億九千二百万円と、各種の特別措置の整理合理化等による増収額百四十一億一千四百万円との差引九百五十億七千八百万円の減収額を見込み、収入見積額として二千三百億六千百万円を計上いたしました。  その内訳は、源泉所得税千七百二十八億七千三百万円、申告所得税五百七十一億八千八百万円となっております。  法人税、揮発油税、トン税及び印紙収入につきましては、お手元にお配りしてあります書類によりましてごらんをいただきたいと存じます。  次に(6)ページに飛びます。  以上申し述べました税目以外におきまして、三十二年度に計上いたしました収入見積額は、相続税六十四億九千六百万円、再評価税三十七億九千百万円、酒税千八百十億四千七百万円、砂糖消費税五百三十一億六千四百万円、物品税三百四十二億六千八百万円、取引所税五億九千百万円、有価証券取引税十八億百万円、通行税三十一億七百万円、関税四百四億四千九百万円であります。以上、租税及び印紙収入の合計額は、九千四百六十九億一千五百万円となっております。  第二に、専売納付金は、千百八十二億六千六百九十八万六千円でありまして、これを前年度予算額千百二十七億一千三百十七万八千円に比較いたしますと、五十五億五千三百八十万八千円の増加となっております。その内訳を申しますと、日本専売公社納付金千百八十億一千五百三十四万五千円、アルコール専売事業特別会計納付金二億五千百六十四万一千円となっております。  このうち、日本専売公社納付金は、三十一年度に比べ製造たばこの販売が若干増加することが見込まれることのほか、経営の合理化による経費の節減等を実施せしめることにより、五十五億五千三百八十万八千円の増加となっております。  第三に、官業益金及官業収入は、百四十五億一千八百四十三万四千円でありまして、これを前年度予算額百三十六億一千九百五十一万円に比較いたしますと、八億九千八百九十二万四千円の増加となっております。内訳を申しますと、印刷局特別会計受入金五億五千四百五十九万九千円、病院収入百二十九億六千三百八十三万五千円となっております。  第四に、政府資産整理収入は、八十六億八千六百六十五万六千円でありまして、これを前年度予算額七十七億二千二百十五万六千円に比較いたしますと、九億六千四百五十万円の増加となっております。  そのおもなる内訳について申し上げますと、国有財産売り払い収入三十八億一千九百三十五万九千円、特別会計整理収入四千六百七十二万一千円、公団引継債権整理収入一億五千三百万円、貸付金等回収金収入十億八千三百五十万四千円、地方債証券償還収入三十四億六千五百二十八万円等となっております。  第五に、雑収入は、二百九十九億四千六百三十四万五千円でありまして、これを前年度予算額三百六十億八千六百五十四万九千円に比較いたしますと、六十一億四千二十万四千円の減少となっております。  そのおもなる内訳について申し上げますと国有財産貸付収入十九億六千九百七十七万七千円、共有船舶利用収入八億九千九百十六万円、利子収入七億八千三百十万六千円、日本銀行納付金六十一億六千六百万円、日本中央競馬会納付金十二億一千八百四十万円、恩給法納金及特別会計等恩給負担金七十四億二千六百十五万五千円、授業料及び入学検定料十八億二千九百九十八万六千円、免許及び手数料四億八千七百七十万八千円、懲罰及び没収金十五億二千五百九十五万四千円、弁償及び返納金十一億九千六百五十一万八千円、刑務作業収入二十一億七千四百七万七千円、物品売り払い収入二十一億二千六百六十五万四千円、雑入十二億二千五百七十五万円等となっております。  最後に、前年度剰余金受入におきましては、昭和三十年度の決算によって生じました剰余金から昭和三十一年度への繰越歳出予算額の財源に充当した金額を控除した歳計上の純剰余金百九十一億三千百四十五万九千円を計上いたした次第であります。  次に、昭和三十二年度大蔵省所管一般会計歳出予算額は千三百七十二億七千八百四十五万二千円でありまして、これを前年度予算額千二百四十二億九千九百十七万円に比較いたしますと、百二十九億七千九百二十八万二千円の増加となっております。  この歳出予算額を、まず、組織に大別いたしますと、大蔵本省千百十九億三千九十二万九千円、財務局二十四億二千百五万二千円、税関二十億一千百三十四万八千円、国税庁二百九億一千五百十二万三千円となっておりますが、その組織別主要事項につきましては、お手元にお配りしてある書類によりましてごらんをいただきたいと存じます。  次に(24)ページに飛びます。  次に、昭和三十二年度大蔵省所管の各特別会計歳入歳出予算につきまして、その概要を申し上げますと、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも二十三億六千九十二万六千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、歳入歳出とも六億五千三百八十五万一千円の増加となっております。増加いたしましたおもなる理由は、歳入におきましては製造経費増加に伴う補助貨幣回収準備資金より受け入れの増加によるものであり、歳出におきましては原材料地金購入に必要な経費増加によるものであります。印刷局特別会計におきましては、歳入五十四億三千四十五万円、歳出四十八億七千四百五十七万八千円、差引五億五千五百八十七万二千円の歳入超過となっておりまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、歳入において一億六千九百七十三万二千円、歳出において二億二千五百二十七万七千円を増加いたしております。  増加いたしましたおもなる理由は、歳入におきましては日本銀行券、はがき類及び雑種証券等の製品売り払い収入の増加によるものであり、歳出におきましてはこれに伴う製造経費増加によるものであります。  次に、資金運用部、国債整理基金、貴金属、外国為替資金、産業投資、経済援助資金、余剰農産物資金融通及び賠償等特殊債務処理の各特別会計につきましては、お手元にお配りしてあります書類によりまして、詳細ごらんをいただきたいと存じます。  次に(35)ページに飛びます。  この会計は、今国会に提出の官庁庁舎等の活用促進に関する特別措置法案を実施するため、所要資金を確保し、その経理を明確にするため、今回新たに設置いたすものでありまして、歳入におきましては同法の実施に伴って処分する財産の売り払い等による収入であり、歳出につきましては、本年度は同法に基く営繕は行われないので計上せず、本年度歳入金は資金として全額昭和三十三年度以降の歳出の財源として持ち越すことにいたしております。  最後に、昭和三十二年度大蔵省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明いたします。  日本専売公社におきましては、収入二千五百二十一億七千八百五十万円、支出千四百十四億七千五百八十五万五千円、差引収入超過額千百七億二百六十四万五千円となり、これに昭和三十二年度における資産増加額七十三億四千四百六十九万七千円を加算した千百八十億四千七百三十四万二千円が事業益金となるのでありますが、これより固定資産増加額三千百九十九万七千円を控除いたしまして、専売納付金は千百八十億一千五百三十四万五千円となるのであります。これを前年度予算額に比較いたしますと、収入において八十七億二千七百九十三万四千円、支出において四億二千八百万六千円をそれぞれ増加し、差引収入超過額において八十二億九千九百九十二万八千円、専売納付金として五十五億五千三百八十万八千円をそれぞれ増加しております。  以下、たばこ、塩及びショーノウの各事業につき、おもな事項の概略を申し上げますと、たばこ事業におきましては、三十二年度における製造数量は千百六億本、販売数量は千九十七億本でありまして、前年度における製造数量千百七億本、販売数量千百億本に比べますと、製造において一億本、販売において三億本をそれぞれ減少しております。  たばこ事業予算額は、収入二千二百五十一億七千二百二十四万四千円、支出千百十七億九千四百三十四万円、差し引き収入超過額千百三十三億七千七百九十万四千円となっており、これを前年度予算額に比べますと、収入において六十八億三千七百八十五万二千円を増加し、支出において六億一千三百五十八万九千円を減少しております。  塩事業におきましては、三十二年度における収納及び購入数量は、内地塩七十七万一千屯、輸入塩二百二十九万屯、計三百六万一千屯、塩の売り払い数量は、一般用塩百十九万二千屯、工業用塩二百万屯、計三百十九万二千屯でありまして、塩事業予算額は、収入二百六十億五十八万円、支出二百六十八億五千四百四十三万五千円となっており、これを前年度予算額に比べますと、収入において十八億九千六百二十六万一千円、支出において二十一億八千五百五十一万八千円をそれぞれ増加しております。  次に、ショーノウ事業予算額におきましては、収入十億五百六十七万六千円、支出九億七千四百五十四万三千円となっており、これを前年度予算額に比べますと、収入において六百十七万九千円、支出において六千五十五万八千円をそれぞれ減少しております。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行の収入支出及び前年度予算額に対する増減の理由につきましては、お手元にお配りしてあります書類によりまして、詳細ごらんをいただきたいと存じます。  次に、北海道東北開発公庫におきましては、収入九億六千七百万二千円支出九億一千七百二十二万五千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、収入において七億四百九十四万八千円、支出において六億七千七百五十九万六千円の増加となっております。増加いたしましたおもなる理由は、三十二年度から新たに東北における産業の振興開発を促進するための長期資金の融通等を行うことによる業務量の増加等により収入におきましては配当及び受取利息の増加によるものであり、支出におきましては支払利息及び債券取扱い費並びに業務増量に伴う事務費の増加によるものであります。  最後に、公営企業金融公庫におきましては、収入支出とも一億九千九百六十一万円を計上いたしておりますが、この公庫は、地方団体の公募地方債の合理的な消化をはかり、水道事業、交通事業等の公営企業発展を助長するため、本年度新たに設置いたすものでありまして、収入におきましては貸付金利息等による収入を計上し、支出におきましては事務費並びに支払利息及び債券発行取扱い費に必要な経費等を計上したものであります。  以上、昭和三十二年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について、その概要を御説明いたしました。
  292. 小林武治

    主査小林武治君) 御質疑のある方は御発言願います。
  293. 八木幸吉

    八木幸吉君 大蔵省の方に、手形印紙税の改正の問題について伺うのでございますけれども資料を実は三日ほど前にお願いしておいたのですが、まだできておりませんので、その点、少し質問するのに資料が足りないわけなんですけれども、時間の関係もありますので、とにかく伺います。第一点は、マージャン牌の税率が半分に下っているのですが、その理由を伺いたいと思います。
  294. 中島晴雄

    説明員(中島晴雄君) 私、所管でございませんので、今担当課長を呼んでおりますが、マージャン牌につきましては、象牙製あるいは骨製以外に、合成樹脂製のものが最近非常に多くなって参りました。これも大量生産が進みまして、非常にコストが下って参りました。そういうことから、今の税率の一組二千円という数字は、これは原価に対しまして、たしか十五割くらいになっているのじゃないかといういうふう記憶しますが――これは責任者から答弁していただきますが、かなり高い税率になっております。そういうことで、かなり租税の回避も行われているようでございます。この際税率を引きげまして、引き下げますとともに、未完成骨牌を組み立てます所まで未納税移出を認めまして、その場所を製造場とみなして課税するというような、課税方法の改善も行いたいというふうに考えておるのでございます。
  295. 八木幸吉

    八木幸吉君 原価が一五%とおっしゃいましたか、一五〇%ですか。
  296. 中島晴雄

    説明員(中島晴雄君) 一五〇ですね、パーセントにすれば。
  297. 八木幸吉

    八木幸吉君 どうもマージャンということ自体が奨励すべきことでないというふうに私は思うのですが、この間も実は芸者の花代のことを予算委員会で伺ったのですけれども、合成樹脂のマージャンの税率を新しくかけるのならかけてもいいですけれども、今までのを安くするというのはどういうわけかわからぬ。これはどういうわけですか。
  298. 中島晴雄

    説明員(中島晴雄君) 今まで象牙製のものにつきましては、一組六千円の税率でかけております。なお牛骨製のものにつきましては四千円でございます。その他のマージャン牌、つまり合成樹脂のものにつきましては二千円でかけておるわけでございますが、そのコストの関係等からいたしまして、かなり合成樹脂製のものに重課されておるきらいがあるというふうに考えておる次第でございます。
  299. 八木幸吉

    八木幸吉君 合成樹脂のものよりも象牙の方が安ければ、象牙の方を上げる考え方の方がいいんじゃないかと思うのですが、そういったようなことを御研究になったことはありますか。御研究というか、御討議になったことがありますか。
  300. 中島晴雄

    説明員(中島晴雄君) ただいま申し上げましたように、一組六千円の課税をいたしております。合成樹脂製は二千円でございまして、象牙製の三分の一、牛骨製の二分の一という税率になっておるわけでございます。これは象牙製、牛骨製につきましては、かなり念入りに作る関係もありまして、人件費なり資材費その他でかなり高いものになっておるわけでございますが、合成樹脂製につきましては、型に入れまして、これを切る、切断して簡単に作れるというようなことから、かなり製造原価が最近下っておるように聞いております。従いまして、象牙製の三分の一程度の税率ということではかなり高いということで、これを下げるわけでありますが、象牙製につきましてこれを上げるかどうかという問題につきましては、これは間接税全体のバランスもございまして、特に検討をいたさなかったのでございます。
  301. 八木幸吉

    八木幸吉君 次は手形に対する印紙税の税率の階級別定額税率の改正をされたことについて伺います。金融機関相互間の手形を除外されたのはどういうわけですか。
  302. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) 金融機関の相互間の手形を階級別定額を適用いたしませんで、定率課税といたしましたのは、第一点といたしましては、金融機関の相互間の手形は通常の手形と異なりまして、金融機関がいたします貸付その他の金融活動の結果の資金の過不足を調整いたしまして、全体としての金融の円滑を維持するという意味におきまして行われておるという点で、その手形の発行によって収益が推定されるという通常の手形と意味を異にしておるという点が第一点でございます。第二点といたしましては、金融機関の手形は、そういう意味におきまして大部分コールでございますが、金額が非常に大きいのと短期でございまして、それが貸付金利その他に及ぼす影響が考慮されます。この二点から金融機関相互間の手形につきましては、定率課税で据え置くことにいたしたのであります。外国の例では、イギリスにおきましては、金融機関相互間の手形は非課税といたしておりますが、従来から金融機関の手形も課税しておりました関係もございまして、今回は非課税にいたしませんで、一律の最低二十円を適用して、定率課税といたすことにしたわけでございます。
  303. 八木幸吉

    八木幸吉君 手形交換所で今交換せられる手形の平均記載金額はどのくらいですか。
  304. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) これは東京の手形交換所で調べました実績は、約束手形におきましては二十八万三千円と記憶いたしております。それから為替手形は非常に額が小さくなっておりまして、平均いたしまして、ちょっと資料が……二十四万五千円程度だと私は思っております。
  305. 八木幸吉

    八木幸吉君 両方合せて総平均約二十五、六万ということですか。
  306. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) さようでございます。
  307. 八木幸吉

    八木幸吉君 そういたしますと、二十五万円をかりに平均記載金額にいたしますと、今度の印紙税だと、今まで十円のものが幾らになるのですか。
  308. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) 二十五万円程度であれば、今度の階級定額におきましては、五十円の課税になるわけであります。
  309. 八木幸吉

    八木幸吉君 そういたしますと、五倍になるわけですね。
  310. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) さようでございます。
  311. 八木幸吉

    八木幸吉君 今までの十円定額であれば、七億三千万円ですか、大体収入があった、こういうふうに資料にあったように思うのですが。
  312. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) ただいまの課税される手形の枚数が約七千三百万枚一と推定いたしておりますが、それに十円を乗ずれば七億程度ということになります。
  313. 八木幸吉

    八木幸吉君 ところが今度の予算では、この税率の改正によって二十七億の収入が予定されております。ところが今のお話だと、五倍になれば三十五億、その間に八億円の差があるのですが、手形の平均から見ても、三十五億収入があるものを二十七億と計算されたのは、どういうわけですか。
  314. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) 平均の手形金額が二十五万前後でございますと、御承知の通り手形の中には何億という手形もございますし、平均が二十五万円程度でございまして、その中心になる部分は、中心と申しますか、最も数の多い部分はずっと低くなって参りまして、従いまして二十円の税率の適用を受けるものが相当数に上って参りますから、平均の五倍ということよりも、むしろ若干低目になって参るのが当然かと思います。
  315. 八木幸吉

    八木幸吉君 そこで私の伺いたいのは、しかも今資料が未提出になっておるのですが、その資料は印紙税の増収見込額の二十億円の算出の基礎になった記載金高別の階層算出の根拠になるのですが、これがこの前、大阪の商工会議所でもらった資料等を見てみますと、大体大阪の糸商三団体五十七社を調べたもののパーセンテージは、十万円以下が九・七%、五十万円以下が三一%八、百万円以下が三二%六、こういう数字になっております。それから絹織物商人百七社、これは大阪、京都、名古屋、神戸、福井、金沢等の八百七社の調べが、十万円以下が三〇%、五十万円以下が三六%九、百万円以下が二一%五というふうな数字になっております。ところが政府の方は、十万円以下が六七%、非常にそこに階層別のパーセンテージが違っておるわけでありますが、そこで、なぜ政府が六七%に十万円以下を見たかということは、今の平均の二十五、六万円という問題からいっても、よほど低く見過ぎておる、つまり収入を過小に見過ぎておるという懸念があるのですが、この根拠を伺いたい。
  316. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) ただいまお尋ねの点で、大阪の糸商連合会が提出いたしました資料によりますと、非常に大きな手形の分布が大きい、大蔵省はそれに対して非常に小さな手形に多い分布を見ておるが、どうかというお尋ねのようでございましたが、最初の点からお答え申し上げますと、糸商の提出いたしました資料は、これは糸商が五十七社でございますかが、それぞれの会社の手形の分布を持ち寄りまして、その合計いたしました国内階層別をとっておるわけであります。そうしてその階層分布によりまして全体の手形交換所の手形枚数を按分した結果でございます。ところが糸商の連合会の各五十七社の平均の手形金額を見ますると、一件当りが約二百万円程度になっております。二百万円よりちょっと上になっております。同じく糸商の連合会が提出いたしました資料の中に述べてございます全国の手形交換所の手形枚数と金額とを使いまして平均金額を算出いたしますと、約二十五万円程度になるわけでございます。つまり糸商の五十七社が扱っております手形は、平均におきまして手形交換所で流通しております手形の平均の約十倍程度の高い金額を持っておりますので、その分布が自然高いところに集中してくるわけでございます。それがまず第一に大蔵省と非常に違っておる第一点かと思います。次に大蔵省の計算をいたしました過程を簡単に申し上げますと、この手形の階級別の分布というものは、今までのところでは全般的な資料というものが実はございません。唯一の階級別の資料は、中小企業庁で作っております毎月の不渡り手形の階層別の資料があるだけでございます。従いまして、この全体の手形の階級分布を推定することは非常にむずかしいわけでございますが、一応のやり方といたしましては、まず手形の総金額はどのくらいであるかという推定から始めまして、各手形の振り出しの原因別にその金額を推定いたしたわけであります。それによりますと、手形の振り出しの原因と申しますか、手形の分類をいたしますと、まず第一は手形枚数推定の基礎になるグループ別に調べたわけでありますが、まず第一のグループといたしましては、手形交換所に交換に回っている分がございます。これは枚数と金額が総体として判明しておりますので、これによって平均金額、それから枚数、それから総金額というものが把握できます。次に手形交換所を経由せずに、銀行限りで決済される手形が相当数ございます。これは全国の当座預金の払い戻しの実績、これから手形交換所を経由して落ちた手形の額を差し引いたその残りが手形総金額になると考えられます。これは遺憾ながら枚数が出ておりません。枚数を推定するためには逆に一件当り金額を推定して出さざるを得ないのであります。この銀行の手形、銀行の当座によって直接決済される手形の一件当りの金額というものが、これがまた実際上は不明なのでございまして、それで一応は手形交換に回る手形と同様の一件当りの金額であろうという推定で、これは平均やはり二十四、五万円に押えまして計算いたしまして枚数を出します。そのほか、手形の発行の大きな原因となりますのは、金融機関の貸付手形の書換継続があります。これは書換継続の実績が出ております。それによりまして総金額、枚数を推定をいたす、その他外国為替手形もこれは実績が出ております。これを集計いたしまして総金額を出しましたわけでございますが、そのほかにコールの手形があります。それらを集計いたしまして、一応大蔵省として計算いたしましたのは、手形総金額が十九兆九千八百億円という数字になるわけであります。それに対応する枚数が七千三百六十九万枚ということになります。そこで、その総平均を出しまして、その平均金額を前提にして階級分布を推定したわけでございますが、階級分布を推定する一つの手段といたしまして、およそ百社程度の大中小、と申しましてもかなり大きなものでございますが、商社あるいは製造会社の実績をとりまして、それによって階級別を出したわけでございます。ところが、この階級別によってとりました手形の実績は、やはり相当程度平均金額は高いものでございますので、二十五、六万の平均にもっていくためには、実際上はそのままでは使えませんので、さらに小さい手形の分布を示すものといたしまして、先ほど申し上げました不渡り手形実績、これがやはり一件当り十万円になっております。これを両者を組み合せまして、平均金額に落ちつくような段階を作り上げまして、それによって推定したのがこのお配りいたしました資料の階級別でございます。
  317. 八木幸吉

    八木幸吉君 不渡り手形を土台にして非常にいろいろな推定をして結局こういう数字が出た、こういうお話なのですが、説明は非常にこんがらがっておりまして、私は一ぺんによくわかりませんけれども、私の申し上げるのは、とにかく平均が二十五万なら五倍になる、五倍になれば三十六、七億になるのじゃないか、しかし予算面では二十七億になって、そこに十億ぐらいの過小見積りがあるのじゃないか、これが私の申し上げることの一点。それからもう一点は、私はそういったような推定は、やはりいろいろなものを使わずに、実績からいって、大阪の大中小日本スフ商協会、大阪スフ糸商協会、大阪合成繊維商協会、これが五十七社について昨年一年のこれは実績であります。現行法によれば八百三十三万六千円印紙税を払っておるのに、改正法によれば一億八百八十万円、約十二倍の税金の増税になる。それから大阪綿スフ織物商懇談会百三十一社では、現在では一千四十九万円の印紙税を払っておるのが、改正法では一億四百八十万円、ざっと十倍になる。それから東京四百、京都百二十九、大阪九十二、名古屋二十一、福井百三十二、金沢二十七、神戸六、合計八百七社について調べたところによれば、現行二千四百三十八万円の印紙税を払っておるのが、改正案によれば一億八千七百五十三万円、約七・七倍になる、こういう実績を持っておるのだが、政府に同じくこういうふうな実際についての取り調べをなすったことがあるか、こういうことをこの間大蔵大臣に伺いましたら、大蔵大臣は約千社について自分の方は調査をした資料を持っていると、それではこれとだいぶ違うのだろうから、その千社についての資料をお見せをいただきたい、こう私申し上げましたら、あとで事務当局からのお話によれば、何か大蔵大臣の勘違いで、千社ではなくて実はあれは両社内外であったと、こういう十分の一に御訂正があったわけであります。私記憶違いを何もかれこれ言うわけではありませんが、それならその百社のお取り調べを私の調べと突き合せてみて、そうして大体大蔵省のこの二十七億という税収入が妥当であるかどうか、われわれが見れば増徴はざっと六十億くらいになるのじゃないか、大蔵省の手形の平均金額の中から言っても約五倍、今の税収入の見積よりもふえて、二十七億が三十六、七億になる、はや、それでも違っておるじゃないか、こういうことを申し上げておるので、これ以上のことは、今の百社の調べを至急にお出しを願って、それであさっての朝、もう一ぺん伺いたいと思います。
  318. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) ただいま仰せの百社の実績は、ただいま集計しておりますから、あさって御提出申し上げることができると思います。  それから今おっしゃいました大阪の糸商の計算によると、六十億取れるというお話でございますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、全体の手形の平均金額に対して約十倍あるいは七、入倍程度の大きな手形の分布になっておりますから、当然分布の姿が階級別に見ますると、十万円程度のところが百万円程度に分布し、百万円程度のところが千万円程度に分布しておるという姿にならざるを得ないと思います。千万円以下の金額が五百円の課税でございまして、百万円以下の部分は百円でございますから、その十倍に分布しておるということは税金自体が五倍になるということになるわけであります。同じように百万円以下の手形に対しましては百円の税額でございますが、十万円以下のものに対しては二十円の税額でございますから、この場合も、もしかりに十万円の分布が百万円の分布に変ったとすれば、やはり五倍に税額が上るということになるわけでございます。従いまして、大阪の糸商の計算によりますと、約百億円増収が得られると言っておりますが、それをちょうど五で割れば二十億ということになりまして、大体階級別の一件当りの手形が、大阪の糸商の場合でございますと、御承知のように伊藤忠以下日本の大商社が全部ほとんど入っておりますので、扱う手形が非常に大きい、その階級分布をそのまま持ってきて、全国の手形交換所の二十何万という平均である何千万枚かを分布階級別に分けますと、どうしても過大な計算になると思うのでございます。そういう意味で大蔵省の税収見積が過小であるという点は、いろいろ御疑問もあると思いますが、糸商の調べによって直ちには申せないのではないかと思っておりますが、これはいずれ資料を御提出いたしまして、御説明申し上げたいと思います。
  319. 八木幸吉

    八木幸吉君 糸商が百億と言っておるかどうか知りませんけれども、私の申し上げるのは、五十七社は十三倍以上になっておる、ようございますか、それから百三十一社は十倍になっておる、八百七社は七倍七分になっておる、これをただ私が見て、三倍と見ても六十億になるのだから、あなたの平均の二十五万円と言われても約五倍になるのですから、十円が五十円になるのですから五倍になるのです。だからこれが二十七億と見ていらっしゃるのは六十億ぐらいに……、私がそれくらいになりはせぬかとつかんでいるだけの話で、糸商が八百七社の中の全部ではないのですから、三つに分けて十三倍、十倍、七倍七分とそういう三つのデータが出ているのだが、政府のデータを拝見してなるほどと思えば、六十億をやはり三十億と言うかもしれませんが、政府に幾ら言ってもお出しにならぬから、それで私のデータで推定で申し上げているので、政府の資料を拝見して、あさってまたお伺いしますけれども、できればそれをあしたじゅうにお出しを願いたいと思います。
  320. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 防衛支出金ですね、これは一体経理面はどうなるのですか。
  321. 上林英男

    説明員(上林英男君) 防衛支出金は一応大蔵省に計上されておりまするが、事実これを実際に支出いたしますときには、それぞれ支出いたします官庁に移しかえをいたしまして、それで使用いたすことに相なっております。
  322. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると防衛支出金は全然大蔵省では扱わなくて、たとえば調達庁なら調達庁でやるのか、あるいは米軍に渡す場合には指定されている東京銀行ですかどこかの銀行に振り込んでしまう、こういうことになるのですか。
  323. 上林英男

    説明員(上林英男君) そういうことでございます。
  324. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしましたときに、米軍の指定している東京銀行なら東京銀行へ振り込んでしまって、そうして……、ああそうか、防衛分担金ですね。分担金を入れまして、そうしてまあ向うは足らないというかもしれませんが、余っているとか、あるいはこれはこういうものに使ったとかどうとかというような、いろいろな報告というものは、大蔵省で受けておいでになりますか。あるいは一定の額を話し合ってきめる、そうしたらそれを銀行に振り込んだそのままで何にも知らないものか、決算と申しますか、跡始末と申しますか、そういうようなものはどういうふうになっておりますか。
  325. 上林英男

    説明員(上林英男君) 実は私大蔵本省を持っておりますが、防衛支出金につきましてはほかの主計官が持っておりますので、正確に存じておりませんので、今ちょっと呼びに参りましたので、後刻御説明申し上げます。
  326. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それではあしたでもいいです。
  327. 小林武治

    主査小林武治君) ほかにありますか。今すぐ来るそうです。
  328. 崎谷武男

    政府委員(崎谷武男君) ただいまの上林主計官の答弁を補足いたしますが、防衛支出金につきまして、分担金だけは大蔵省で支出しております。これは日本銀行にある合衆国合同支出官の特別勘定に払い込んでおります。その跡始末は全部大蔵省主計局の方に報告が詳細に参っております。
  329. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そのときに条約でもって幾ら出るか一応きまっておりますが、しかし話し合いでもって減らすことができますね、防衛分担金を。たとえば給料に対してはこのくらいだとか、あるいは訓練費はこのくらいだとか、そういうような向うの積算の資料を示されて話し合いとしてきまるものか。そうではなくて大づかみにこれだというふうになってきて、そうして何に幾ら使ったという、款項目といいますか、そういう費目別の報告がなされるものか、ただ伝票みたいなものが回ってくるだけか、大蔵省の主計局に報告されるのか、どういうふうになっておりますか。
  330. 崎谷武男

    政府委員(崎谷武男君) ちょっとただいまの答弁を保留させていただきます。
  331. 小林武治

    主査小林武治君) ほかに御発言ありませんか。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  332. 小林武治

    主査小林武治君) 速記を始めて。  それでは、大蔵省所管につきましては、一部補充的の質問を留保しまして、一応質疑を終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  333. 小林武治

    主査小林武治君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十一分散会